【艦これ】加賀さんの秘密 (44)



出撃を終えた加賀さんが部屋へと大急ぎで戻る。


磯波さんに薦められたとある漫画の続きを読むためであった。


超能力のバトル漫画である。


加賀さんはそのストイックな雰囲気に魅了されていた。


ふんふんと鼻息を鳴らし服をそこらに脱ぎ捨て、


漫画を手に取り畳に寝転ぶ。


服にシワがつくと鳳翔さんに怒られようが加賀さんには関係なかった。


そうして気がつくとすっかり深夜になっていた。


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加賀「……」


この鎮守府では夜間哨戒などを行なう艦娘のためにある程度の施設は二十四時間体制である。


自販機なども動いているため簡易な食事は摂れる。


加賀さんは食堂へと入る。


電気は点いていないので誰もいないようだ。


だが。


加賀「……なにか、気配がするわ」


気のせいだろうと自分に言い聞かせるも一度生まれた疑いはなかなか晴れる事はない。


それどころかヒタリヒタリと足音までするではないか。



加賀「え、ちょっと、オバケさん、いや」


加賀さんは慌てて電灯のスイッチを探す。


しかしなかなか見つけられない。


足音はついに加賀さんのすぐ後ろまで近づいてきた。


加賀「オバケさんやめて」


「ぴょぉーーーーーーん!!!」


加賀「いやあああああああああ!!」


「きゃああああああああ!!」



オバケの正体は卯月さんであった。


二人は今、乙女の事情により入渠ドックにきている。


卯月「ぐす、加賀さんごめんなさい……」


加賀「頭に……きました……」


加賀さんも卯月さんも随分と落ち込んでいた。


理由を詳しく書くことは乙女の事情で出来ないがとにかく落ち込んでいる。


夜中で本当に良かったと思っていた。


二人は風呂場の中で服を脱ぐ。



卯月「でも加賀さんの服も汚れちゃったぴょん……」


加賀「いいの……別に……」


加賀さんは卯月さんの分を片付けるのに、自身の上着を使ったのだが、


既に下も汚れてたから同じ事よ、と加賀さんは思った。


加賀さんは卯月さんの体にシャワーを当て優しく撫でる。


卯月「ん……加賀さんはどうして食堂にいたぴょん?」


加賀「ちょっと、ね。漫画読んでたら遅くなってしまって」


卯月「何の漫画っぴょん?」


加賀「バビル2世」



卯月「あー、磯波ちゃんぴょん」


加賀「そう」


磯波さんは鎮守府では有名な漫画蒐集家であった。


給金の大半を費やしてるようで姉妹たちを困らせているらしい。


加賀「そういう卯月はどうして食堂にいたの」


卯月「……」


加賀「うーちゃん」


卯月「うーちゃんは夜間の見張りから帰ってきたぴょん。それで加賀さんがちょうど見えたから……」


加賀「頭にきました」



卯月「うぅ……ごめんなさいぴょん……」


加賀「……前」


卯月「えっ?」


加賀「洗うから」


卯月さんは頬を赤らめて首を振った。


卯月「前は!……自分で洗うぴょん」


加賀「別にソーイウつもりは無いのだけれど」


すると今度は顔を顰めた。


卯月「じゃあ子供扱いって事? やめて欲しいぴょん」



卯月さんはまさに子供のようにぶう垂れる。


加賀「そう……」


加賀さんは少し残念そうだった。


そうして卯月さんは自分の身体をゴシゴシと洗い始める。


加賀さんはそれをボーッと見つめている。


卯月「……」


卯月さんはそんな加賀さんの視線に気付いてはいたが、


特に何も言わなかった。


それから卯月さんはシャワーで泡を流し終える。



卯月「終わったぴょん、湯船に浸かるっぴょん」


加賀「あら……」


卯月「?」


加賀「私は洗ってくれないのかしら」


卯月さんは驚いた。


卯月「さっき洗えばよかったぴょん!」


加賀「ダメ?」


卯月「ダメじゃないけど……」


加賀「そう、ならお願い」


加賀さんはそう言って鏡の前に座った。



卯月さんは加賀さんの大きな背中を泡の付いたスポンジで擦る。


加賀「いいわね」


卯月「加賀さんは誰かに背中を流してもらった事はないぴょん?」


加賀「ないわ」


卯月「うーちゃんは時々。弥生とかねのピーとかキヨちんとかと流しっこするぴょん」


加賀「ねのピーはわかるけど、キヨちんって?」


卯月「清霜ちゃん」


加賀「ああ」


やっぱり駆逐艦の子たちはそれぞれあだ名を持ってるのだろう、と加賀さんはほっこりした。


卯月「背中終わったぴょん」


加賀「ありがとう」



卯月さんは湯船に浸かる。


しばらくすると加賀さんも体を洗い終わって卯月さんの隣に座った。


加賀「……今夜のことは、内緒にしましょう」


卯月「うぅ~、思い出させないでぴょん!」


加賀「二人だけの秘密ね」


加賀さんと卯月さん、二人だけの秘密であった。


尤も、こんなことを大っぴらにすれば二人の尊厳というものは失われてしまうだろうが。


しばらく湯船に浸かっていると、退屈してきたのか卯月さんがある提案をする。


卯月「ここで加賀さんには、あれを歌って欲しいっぴょん」


加賀「あれって?」



卯月「もちろんあれっぴょん!デデンッ!デンデデ!デデッ!デンデデ!」


この聞き覚えのあるメロディは、と加賀さんは立ち上がる。


加賀「流石に気分が高揚します」


卯月「テレレテレテーテレレー!」


加賀「この手に寄せる袱紗 朱の色♪」


そう、加賀岬である!


すると突然、まばゆいばかりのスポットライトが立ち上がった加賀さんを映し出す。


詰め掛けたオーディエンスは加賀さんの久々のステージに期待で爆発しそうだ。


などと妄想しながらノリノリで歌う加賀さん。



加賀「私とあなた射掛ければそう 朧月夜が綺麗ね♪」


卯月「今夜の勝負は♪」


加賀「引くに引けない譲れはしない♪」


「「女心よね♪ 胸h」」


「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


加賀「!?」


卯月「ひゃっ!?」


加古「寝られないじゃないか!」


加古さんであった。



加古「せっかく人がぐっすり眠っているというのに!ここをどこだと思ってる!」


加古さんは凄む。


しかし加賀さんには不思議に思ったことがある。


加賀「ここ、お風呂なんだけど」


卯月「なんでこんなところで寝てるぴょん!?」


加古さんは神妙な面持ちで考え始める。


加古「わからない」


加賀「頭にきました」


加賀さんは、どこでも眠るお前はハム太郎かよ、と思った。



気分も冷めてしまったので、加賀さんも卯月さんも着替えて部屋に帰っていく。


しかし、加賀さんは肝心な後始末を、忘れていたのだった。


翌朝、食堂で一騒ぎが起きていた。


長門「掃除当番ー!」


深雪「あたしだけどさぁ、っかしいなぁ、掃除した時はなんともなかったのに」


自販機の前で異臭騒ぎが起こっていたのだ。


長門「なんていうか……あれだな」


深雪「食堂でこういう事言いたかないけど、【なのです!】の臭いがする……」


そこに、加賀さんがやって来た。



加賀「何の騒ぎかしら」


長門「うむ、何者かがこの自販機の前で【なのです!】、あるいは故意に【なのです!】をしたようだ」


深雪「こりゃ重営倉ものだぜ」


加賀さんの血の気が引く。


ちゃんと掃除したはず、ちゃんと出来てなかったのか、などと考えるも、


加賀「大変ね、朝ごはん食べるからまた」


と、加賀さんはそそくさと立ち去ろうとする。


しかしそこに巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲さんがやってきた。


巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲「加賀!秋津洲 活躍スル!見テ!」


加賀「え、ええ……」



巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲さんのスキャニングバイザーが、事件現場を捉える。


異臭の正体は、【なのです!】の成分と一致したのだ!


そして、これが誰のものであるかも突き止めることができるのが巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲さんのすごいところだ。


巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲「……!」


巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲さんはバッと加賀さんの方を向く。


巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲「ア イヤ コレハ 多分 動物ノモノ」


なんとか誤魔化そうとした巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲さんの心遣いが加賀さんを苦しめる。


さっきの動きからこれが誰のものであるか皆は察したのか、加賀さんを見ているのだから。



巨大殺人ロボットジェノサイド秋津洲「多分 猫トカ!ソウ!猫ダ!」


加賀「もうやめて」


加賀さんの秘密はあっけなくバレてしまった。


深雪「掃除しろ」


加賀「……ハロウィンだから」


深雪「は?」


加賀「トリックオアトリート」


.*・゜゚・*:.Happy Halloween。..。.:*・


深雪「掃除しろ」


加賀「はい」


あとちょっとで誤魔化せたのに、と加賀さんは残念がったという。


おしまい

おまけ

夜戦戦士ヤセンジャーズV
https://www.youtube.com/watch?v=OmJarwGDqNY

みんなも歌おう!


-夜戦戦士ヤセンジャーズV!-


川内「行くよ!那珂!神通!」

那珂「キャハッ♪」

神通「はいっ!」



-太平洋の平和を守るため-


ヲ級「ヲォーーー!!」

川内「魚雷、発射!」

那珂「いっけぇーーっ!」

ドォーン!!

ヲ級「グヲーーーーッ!!」

那珂「やったね!川内ちゃん!」

川内「これも二人の協力あってこそだよ!」

神通「ふふっ……」



-秘密の鎮守府から出動1,2,3!-


川内「よし、準備は万端!今日も出撃だよ!」

那珂「頑張ろっ!」

神通「はいっ!」



-三女那珂は海原を舞え(蝶のように)-


那珂「那珂ちゃんセンター!一番の見せ場です!」

シュパパパッ

空母棲鬼「くっ!我が航空隊の攻撃をかわすとは!」

那珂「これで、どうだっ!」

ドンドォーン!

空母棲鬼「くそっ!撤退だ!ヤツを倒すのは極めて難!」



-長女川内は闇夜を駆けろ(豹のように)-


ネ級「い、一体何処!?」

サササッ

ネ級「こっちね!」

ガンガン!

川内「ハズレだよ!」

ズガァン!

ネ級「ぐわぁっ!つ、強い……強いわ!」

川内「夜は私の世界だよ!」



-次女神通は生死の狭間を狙って駆逐艦を厳しく扱け(死なないように)-


神通「さあ今度は演習場を10周です」

潮「教官……そろそろ……休憩を……」ゼェゼェ

神通「潮さん、あなたは口答えをしたので20周回ってもらいます」

潮「ひぃ……」

神通「そしてそれを止めなかった周りの皆さんは15周です」

「は、はい……」

神通「……」


-腑に落ちないぜ 次女の神通-


神通「なんなんマジ」



-2つの心が1つになって-


川内「那珂!超夜戦陣形だよ!」

那珂「まっかせて!」

ザッ

チ級「なんだ!?あの陣形は!?」

川内「夜戦パワー!100倍だよっ!」

那珂「那珂ちゃんたちに不可能はないっ!」

チ級「ま、まるで100隻もの艦が襲うかのようなプレッシャー!これが夜戦戦士の力か!」

川内「そう!私たちが夜戦戦士!」

那珂「ヤセンジャーズだよ!」

「「二人揃ってヤセンジャーズ!」」


-夜戦戦士 ヤセンジャーズV!-








神通「……えっ」


-必然的に一人余る 次女の神通-


神通「わ、私は……?」


-(Shock!)どうにも腑に落ちないぜ 次女の神通-


神通「……」

ヒソヒソ

子日「今日機嫌悪そう……」

涼風「大人しくしといた方がよさそうだ……」

神通「何か?」

子日「いえ!別になんでもありません!」



-ビシバシ部下に八つ当たり-


神通「今日はあなたは間宮無しです」

電「ふぇっ……」

深雪「おいおいおい!そりゃ越権行為ってヤツだぜ!?」

神通「何か問題でも?」

深雪「かぁー!行こうぜ電!あたしが食べさせてやるよ!」

電「あぅ……うれしい……///」

神通「……」


-納得いかないこの世の中-


鬼怒「今夜、飲み行く?三人で!」

大井「いいですね~!」

天龍「教官同士積もる話もあっからな!」


神通「……」



-ビシバシボコスカ八つ当たり!-


深雪「うぅ……」

神通「明石さん、怪我がなんですか死にはしませんよ」

明石「いい加減にしなさい!逆効果というのがわかりませんか!」

神通「気合でなんとか」

明石「なりません!!」


-ボコーン!深雪が☆KO☆NA☆GO☆NA☆-


深雪「」

電「あ……ああ……」

神通「……」

潮「深雪さん!返事してよぉ!」

子日「明石さんに連絡します!」

涼風「ちくしょう……なんだってこんな……」



-家に帰ればお母さんが-


「◯◯ちゃん、お友達は出来た?お母さん、◯◯ちゃんのお友達と会いたいな」


-と言い-


神通「うるせぇババア!」


-とついカッとなってしまう-


-日に日にささくれる心-


提督「この演習のスコアを見ろ!!一つ上の大井組の三分の一以下じゃないか!!」

神通「え……そんな……」

提督「お前の乱暴な訓練にも実力が伴うならと目をつぶっていたが、これでは処罰を与えねばなるまい」

神通「はい、受け入れます……」

提督「全く、川内と那珂は優秀だというのに……」

神通「……」



-とどめの一撃-


アハハハハ

ヒラリ

神通「写真落ちました……よ……」

[川内と那珂、他仲間たちが写った写真]

川内「あ……ごめん、それ返して」

神通「……うん」


-TurningPoint!-



-燃える怒りの炎-


神通「うわああああああああああああああ!!!」


-参る丑の刻-


ダンッ!ダンッ!

神通「くっそおおおおおおおおおおおおお!!」


-家に帰ると-


「こんな夜中にどこ行ってたの?」


-とお母さんがしつこく聞いてくるから-


神通「うるせぇな!彼氏だよ!」


-と口から出任せに言った見栄っ張りの神通-


-彼氏なんてできたこともないのにぃ!(Never!)-




-そんな嘘をついたらなんだか悲しくなってきて-


-余計にあの2人に対する怒りがこみ上げてくる-


-何をやっても長続きしない神通だが-


-丑の刻参りだけは不思議と長く続いたァーーーー!!-


-真冬も耳あて 丑の刻(Oh!Winter!)-


神通「わああああああああああ!!!」

ダンッ!ダンッ!


-クリスマスにも丑の刻(それがパーティー)-


神通「ぬうん!!ぬううん!!」

ダンッ!ダンッ!



-果てしない憎しみの炎を消すために-


神通「鎮守府を……潰す!」

川内「やらせはしないよ、神通。姉としてケジメをつけてやる!」

那珂「こうなったんなら……神通ちゃんだって容赦はしない!」


-行け!ヤセンジャーズV!悪を討て!V!-

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月31日 (土) 20:14:19   ID: ktOVZ2f5

加古の謎は深まるばかりである。

・・・赤城さんと流しっこしないのかな。

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