【艦これ】加賀さんの驚愕 (39)



加賀さんは出撃から戻り、食堂で一息ついていた。


時刻はもう夕食時である。


他の艦娘たちもここに集まりのんびり食事をしていた。


秋月「スパム・スパム・スパム・スパム・スパム・豆・スパム・スパムを下さい」


間宮「ごめんなさい、豆を切らしちゃって……」


秋月「じゃあ豆の代わりにスパムを」


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加賀さんはあくびをする。


加賀「ふわぁ~」


腹が突っ張ると目の皮が弛むとはよく言ったもの。


疲れもあってか、加賀さんはいつの間にか机に突っ伏して眠っていしまっていた。


目が覚めた時には既に誰もいなかった。



加賀「んぅ……寝てたのね」


加賀さんは目を擦る。


すると自身の背中に上着がかけられていることに気がついた


加賀「誰のかしら。お礼を言わなきゃ」


加賀さんは上着をジッと見つめたが、誰のものか見当もつかない。


次に彼女は匂いを嗅いでみる。


加賀「……いい匂い」


クンクンと鼻を鳴らして上着に頬ずりする。


加賀「これじゃ変態じゃないの」


しかし嗅いだのことない匂いだ、と感じた。



加賀さんはまるで警察犬のように匂いの主を探し始める。


傍から見れば妙な光景であった。


当然ながらわかるわけもない。


加賀「困ったわ」


加賀さんは途方に暮れる。


だが諦めずに鎮守府を歩き回り、探し続ける。



そんな時、ローマさんとリベッチオさんは熊の置物について考えていた。


ローマ「ちょっと置く場所考えておくわ。この巨大木彫り熊」


リベッチオ「Si!」


人の大きさほどあるそれは置き場に困る、しかし貰い物なので無碍にも出来ない。


ローマさんは自室に戻り、荷物の整理を始める。


リベッチオさんは巨大木彫り熊を拭き始めた。


リベッチオ「ふんふん♪あ、そーだ!日本語の練習でもしよっと!」


拭きながら一人で話し始めるリベッチオさん。


リベッチオ「私は日本語が話せます!こんにちは!私はリベッチオ!本で学びました!」



そこに加賀さんがやってきた。


リベッチオ「お元気ですか?」


加賀「えっ」


ちょうど加賀さんの角度からはリベッチオさんが見えない。


リベッチオ「私は日本語が話せます!」


加賀「え、あ、どうも」


加賀さんは驚愕した。


木彫りの熊が話しかけてきていると思ったのだ。


リベッチオ「あ、加賀さんボナセーラ!」


加賀「ぼぼぼーぼぼーぼぼ……?」



リベッチオ「今日はいい日でしたね!」


加賀「そそそそうね」


リベッチオ「私は日本語を喋ります!」


加賀「そそそそーなの、ふうん」


そこへローマさんが顔を見せる。


ローマ「ボナセーラ、加賀。どうかしたの?」


加賀「その……喋るんですよ」


ローマ「……そりゃ喋るわよ」


ローマさんは何が何だかといった様子だ。



加賀さんはまたもや驚愕する。


加賀「じゃあ、やっぱりイタリア語も?」


ローマ「当然よ」


当然なのか、と愕然とする加賀さん。


加賀「最近の熊は喋るのね……」


ローマ「球磨?イタリア語も話せるの?」


加賀「あなたが言ったんじゃない」


ローマ「……?」


加賀「じゃあ……アラビア語とか」


ローマ「……話せないわ」


加賀さんはなんとなく安堵した。



そこでふと思い出す。


加賀「これ、誰のか知らないかしら」


上着を広げて見せた。


しかしローマさんには心当たりが無いようだ。


ローマ「ミスクーズィ、知らないわ」


加賀「そう……」


加賀さんはションボリした。


加賀「それじゃあ、行くから。ボラーレヴィーア」


ローマ「えっ」



加賀さんは磯波さんに借りた漫画の人物のようにかっこよく立ち去ったつもりであった。


が、しかし。


ローマ「飛んで行けって……どーゆー意味かしら……」


リベッチオ「飛んで行け、は日本のさよならの挨拶?」


ローマ「日本語のイディオーマの一つなのかもしれないわ。また一つ勉強になったわね」


加賀さんはちょびっと勘違いをしていたようだ。



加賀さんが歩いていると、酔っ払った瑞鶴さんがいた。


瑞鶴「あぁ~~加賀さんだぁ~」


かなり酔っている様子であった。


加賀「あら、随分ひどい……」


フラフラの千鳥足である。


加賀さんは放っておく事もできず、瑞鶴さんの肩を抱いた。


瑞鶴「優しいのねぇ~♥」


加賀「いや……」


瑞鶴「あぁ~~楽しかったぁ~~!久しぶりに飲みまくったんだもん♪」



加賀さんは余計なことをした、とちょっと後悔する。


瑞鶴「加賀さんってぇ、こうやってみるととぉってもぉ、魅力的よねぇ~~~~~♥」


加賀「努力してますから」


加賀さんは驚愕して、ちょっと頬を染めた。


すると瑞鶴さんは突如として加賀さんを抱きしめる!


瑞鶴「うわーっはっはっはっはー!よいぞ!よいぞ!」


加賀「離しなさい、離して、苦しい」


相当な力が入ってるようでなかなか引き離せない。


そこに朝潮さんと村雨さんがやってきた。



朝潮「え!?な、何やって……」


村雨「や、やっぱりそーゆー関係なんですか!?」


加賀さんは大慌てで瑞鶴さんを引き離した。


加賀「あはは偶然ですねこちらが瑞鶴さんだけど彼女酔っ払って千鳥足だったから10秒いや5秒前に瑞鶴さんの肩を持ってあげてたらよろけてこの体勢になって偶然にもそこにあなたたちがやってきたんですもうこんな時間10時ぐらいかと思ってた早く寝ないと明日朝起きれないからからお先に失礼」


そう言って加賀さんは大慌てで走って立ち去っていく。


残された朝潮さんと村雨さんは唖然として立ち尽くすしかなかった。


瑞鶴「あ~ん、加賀さぁ~~~~ん!」


しかし瑞鶴さんが追いかける。


朝潮さんと村雨さんは、こんな状態の瑞鶴さんを放ってはおけないので渋々ついていくことにした。



加賀さんが歩いていると、酔っ払いにばかり遭遇する。


今日は妙に飲み事が多い日のようだ。


しかし瑞鶴さんに会わなければいいと考えていた。


加賀「……いないわね」


加賀さんはこそこそと隠れながら移動していた。


しかし、どこで見つかったのか曲がり角で待ち伏せていた瑞鶴さんが飛び出してきた!


瑞鶴「わーぉ!」


加賀「どひーーっ!!」



加賀さんは驚愕してすっ転んだ。


その弾みで頭も打ったようだ。


加賀「いたい……」


瑞鶴「あぁ、加賀さん、ごめんなさい。でも素敵なプレゼントありがとう♥」


瑞鶴さんは何か箱を持っていた。


さっきは持っていなかったが、もちろん加賀さんが贈ったものではない。


加賀「私のじゃないわ」


瑞鶴「こんな素敵なプレゼントは生まれて初めてよ♥」


しかし瑞鶴さんには関係なかった。



瑞鶴「ありがとう加賀さん♥愛してる♥愛してるわ加賀さん♥あなたは優しい、愛してる♥」


加賀「頭にきました、お願いだから黙って、黙れ瑞鶴」


しかし全く聞き入れられない。


加賀さんは頭を抱える。


そこに朝潮さんと村雨さんの二人がやってきた。


村雨「えぇ……」


朝潮「やややややや」


加賀「あ……」


瑞鶴「愛してる、愛してるよ加賀さぁん♥」


加賀「……翔鶴さんを呼んできて」



朝潮「翔鶴さん?翔鶴さーん!」


村雨「え、あ、はあ」


加賀「早くッ!!」


「はいぃ!!」


翔鶴さんを呼んできてなんとか事なきを得た。


どうにも瑞鶴さんは酒癖が悪いようだ。


寄りかかる相手を見つけてはいつもこんな感じだという。


誰が相手でもこの調子なので、なかなか誘われなかったのだ。


久々に誘われてこれならもう呼ばれないわね、と加賀さんはほくそ笑む。




くたくたに疲れて歩いていると、上着と同じような香りがする。


加賀さんは匂いの元を辿っていく。


するとそこは榛名さんの部屋であった。


加賀「彼女が……」


加賀さんは扉を叩く。


榛名「はあい、どうぞ……あ、加賀さん」


加賀「これ、あなたの」


榛名「ああ、わざわざ届けに!後日お伺いしようと思っていたんですが」



加賀「ありがとう」


榛名「いえいえ、いいんですよ。加賀さん、お疲れの様子でしたから」


相変わらず人のいい、と加賀さんは思った。


榛名「立ち話もなんですから」


加賀「それじゃ、遠慮なく」


榛名さんの部屋は綺麗に整頓されていた。


やはりいい匂いがする。


加賀「素敵な部……屋……」


しかし加賀さんを驚愕させるには十分な物がそこにある。



加賀「あれは」


榛名「私のハムスターです」


加賀「いや……イ級よ」


ゲージには明らかにイ級さんが入っている。


イ級「きゅー!」


榛名「いやいや、ハムスターですよ」


加賀「違う」


榛名「私も違うって言ったんです。でも店の主人が特別なハムスターって。ポリネシア生まれの高級品です」


加賀「えっ」



榛名「なんと店に一匹だけ、飼育セット一式と合わせてたったの7000円ですよ!」


加賀さんはため息をついた。


加賀「そいつはイ級なのよ、イ級は深海棲艦。ハムスターじゃないわ」


加賀さんはゲージを持ち出す。


イ級「きゅっ?」


榛名「何するんですか!」


加賀「これはイ級よ」


榛名「ハムスターですよ!」


加賀「違う」


加賀さんは構わず歩き出す。



榛名「どこに連れていくんです!」


加賀「捨てる」


榛名「ダメ!私のペット!」


加賀「こいつに暴れられたら、下手すれば艦隊は全滅よ」


イ級「きゅーきゅー!」


榛名「この子は悪いことしない!お願いお願い!」


加賀さんにすがりつく榛名さん。


そこに金剛さんが様子を見に来る。


金剛「ヘイ!何の騒ぎデスかー!?」



榛名「加賀さんが私のハムスター取った!」


榛名さんは今にも泣きそうであった。


金剛「ひどい!どうしてそんなことをするんデス!?」


加賀さんは黙ってゲージを見せつける。


金剛「きゃぁぁぁぁっ!?イ級ーっ!?」


金剛さんは慌てて逃げ出した。


榛名「ハムスター!ハムスターです!高級の!」


金剛「イ級デース!!榛名のファッキンストゥーピッド!」


榛名「私のペットなの!返して加賀さーーん!」



榛名さんはついに泣き始める。


榛名「わ゛た゛し゛の゛ペ゛ッ゛ト゛な゛の゛に゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」


ちょっと加賀さんには驚愕だった。


金剛さんも驚愕していた。


榛名「捨てるならッ!!私も出て行く!!!」


加賀「じゃあお元気で」


榛名「な゛ん゛て゛い゛し゛わ゛る゛す゛る゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」


金剛「今は大人しいけど、最悪の場合には殺処分よ榛名!?」


加賀「どっちを?二人まとめてなら割引してね」


榛名さんがあまりにも泣き喚いていたたまれなくなってきたので、加賀さんは渋々イ級を榛名さんの手に返す。


一応上着のことは感謝しているが、流石にこれは無いなぁと加賀さんは思った。



そうして翌朝、食堂。


食堂はちょっとざわついている。


加賀「昨日は、驚いたわ」


龍驤「もう聞いたよ、何回言うねん」


赤城「しかし、そんなに酒癖が悪いとは……お酒には気を付けないと」


そんな中でも加賀さんたちは談笑をしていた。


そこに瑞鶴さんが申し訳なさそうにやってくる。


瑞鶴「あの……昨日は迷惑かけたみたいで……」


加賀「あら、別にいいわよ」



瑞鶴「本当、すみません、あんなみっともない……村雨ちゃんと朝潮ちゃんから聞きました」


加賀「あの二人に……」


加賀さんはちょっと嫌な予感がした。


瑞鶴「酔っ払った時に……その……変なことしちゃったみたいで……」


加賀「何もされてない」


瑞鶴「いや、そんなはずは」


加賀「されてないわ」


瑞鶴「い、いや!責任を取ります!取らせてください!」


加賀「あなたその誤解を受けるような言い方やめなさい」



瑞鶴「いーや!この全責任は私にあります!加賀さん、責任は取ります!」


加賀「やめて」


周りからそれ見たことか、という視線が二人に注がれている。


加賀「……村雨と朝潮は」


龍驤「今朝から遠征に出とるで」


加賀「頭にきました」



おしまい

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