-------------------------------------------------
※注意
・本作は「ダンガンロンパ」シリーズのコロシアイをシャニマスのアイドルで行うSSです。
その特性上アイドルがアイドルを殺害する描写などが登場します。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・キャラ崩壊・自己解釈要素が含まれます。
・ダンガンロンパシリーズのネタバレを一部含みます。
・舞台はスーパーダンガンロンパ2のジャバウォック島となっております。マップ・校則も原則共有しております。
・越境会話の呼称などにミスが含まれる場合は指摘いただけると助かります。修正いたします。
※前スレ
【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】
【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1637235296/)
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642918605/)
※前作シリーズ
【シャニマス】灯織「それは違います!」【ダンガンロンパ】
【シャニマス】灯織「それは違います!」【ダンガンロンパ】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1613563407/#footer)
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「その矛盾、撃ち抜きます!」【安価進行】
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「その矛盾、撃ち抜きます!」【安価進行】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1616846296/)
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「私はこの絆を諦めません」【安価進行】
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「私はこの絆を諦めません」【安価進行】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1622871300/)
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「これが私たちの答えです」【安価進行】
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「これが私たちの答えです」【安価進行】 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1633427478/)
以上のほどよろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1649764817
【4章段階での主人公の情報】
‣習得スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
‣現在のモノクマメダル枚数…2枚
‣現在の希望のカケラ…24個
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】
【新品のサラシ】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】
【多面ダイスセット】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
‣通信簿および親愛度
【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…5.5
【超大学生級の写真部】 三峰結華…0【DEAD】
【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0【DEAD】
【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…4.5
【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…7.5
【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…6.0
【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…6.5
【超高校級のギャル】 和泉愛依…0【DEAD】
【超高校級の???】 浅倉透…6.0
【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…7.5
【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…4.0
‣コロシアイ南国生活のしおり
【ルール その1 この島では過度の暴力は禁止です。みんなで平和にほのぼのと暮らしてくださいね】
【ルール その2 お互いを思いやって仲良く生活し、“希望のカケラ”を集めていきましょう】
【ルール その3 ポイ捨てや自然破壊はいけませんよ。この島の豊かな自然と共存共栄しましょう】
【ルール その4 引率の先生が生徒達に直接干渉する事はありません。ただし規則違反があった場合は別です】
【ルール その5 生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます】
【ルール その6 学級裁判で正しいクロを指摘した場合はクロだけが処刑されます】
【ルール その7 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、校則違反とみなして残りの生徒は全員処刑されます】
【ルール その8 生き残ったクロは歌姫計画の成功者として罪が免除され、島から脱出してメジャーデビューが確約されます】
【ルール その9 3人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる“死体発見アナウンス”が流れます】
【ルール その10 監視カメラやモニターをはじめ、島に設置されたものを許可なく破壊することを禁じます】
【ルール その11 この島について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません】
【ルール その12 “コロシアイ南国生活”で同一のクロが殺せるのは2人までとします】
【注意 なお、修学旅行のルールは、学園長の都合により順次増えていく場合があります】
以上スレ立てまで。
4章の更新はこちらのスレッドで行います。
-------------------------------------------------
CHAPTER 04
アタシザンサツアンドロイド
(非)日常編
-------------------------------------------------
有栖川夏葉。
明朗快活とした自身の性格は老若男女の支持を集め、放課後クライマックスガールズの最年長としてメンバーからの信頼も厚い。
アイドルとしてのパフォーマンスのレベルの高さはさることながら、自身のストイックさに裏打ちされた圧倒的な肉体美も評価が高い。
全身の筋肉はバランスよく鍛えられており、立つ座るの佇まいや歩く走るといった簡単な動作でも彼女の抜群のプロポーションを感じ取れる。
筋肉は全てを解決する、そう息巻く彼女の体は……今。
____カチコチの鋼に変わり果てていた。
夏葉「みんな、どうしたの? そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
ルカ「どうしたもこうしたもねーよ……お、お前……その体、どうなってんだ?!」
夏葉「体……? ああ、私の体のことね。ルカ、あなた見かけのわりに随分と細かなところを気にするのね」
そうは言うが、頭から足の先まで全てを範囲とした時、それは細かなところだと言えるだろうか。
あの艶やかな長髪はワイヤーのようなものに作り変わり、くりりとした瞳は何かLED照明のようなものに付け変わっている。
全身の何が変わったかと挙げていけば何日あっても足りやしないだろう。
そこにはもはや、人間だった頃の有栖川夏葉のパーツは何一つとして存在していない。
智代子「ぶくぶくぶくぶく……夏葉ちゃんが、夏葉ちゃんがロボットになってしまった……」
透「え、やば。気絶した」
夏葉「もう……智代子、大袈裟ね。それにロボットだなんて無粋な呼び方はやめてほしいわね。私には人間の有栖川夏葉と何一つ変わらない自我がある……それはロボットというよりも、アンドロイドと呼んだ方が適切な状態ではないかしら」
あさひ「す、すごいっす! 中に夏葉さんが入ってるっすか?!」
夏葉「いえ、そうではないわ。この機体に私が入っているのではなく、私自体がこの機体なのよ」
あさひ「じ、人格が丸ごと機械に入ってるんっすね! すごい技術……!」
恍惚として会話を続ける中学生に私たちは完全に置いてけぼりだった。
突如として現れたモノクマロック、パンデミックの急な発生と鎮静、そして小宮果穂の人格復旧。
これまでにも非現実的なことは起きていたが、その中でも今回ばかりは次元があまりにも違う。
人がそっくりそのままアンドロイドに変わってしまうなんて、SF小説の中でしか起きちゃいけないことだ。
夏葉「機械の体というのも便利なものよ。今の私は視力が光学望遠鏡並みにあるもの」
あさひ「本当っすか?! それじゃ、星も見放題っすね!」
夏葉「ええ……あれは、シリウスね」
冬優子「い、いやいや……星見たとこで名前がわかるわけでもないでしょうが」
あさひ「あ、それじゃああっちは!?」
夏葉「あれは……M78星雲ね」
冬優子「え、ウソ……本当に?」
雛菜「まあこの際機械になってるのは一旦置いとくとして〜、本当にあなたは放クラの最年長さんで変わらないんですか〜?」
夏葉「雛菜? それはどういう意味かしら」
雛菜「今はさも同一人物のようにお話ししてますけど、今雛菜たちの前にいるロボットさんが本当にそうなのかなって」
ルカ「……そうプログラムされただけのロボット、ってことか」
夏葉「……難しい話ね。私からすれば、私が私であることに疑いようはないのだけど、あなたたちからすれば私が有栖川夏葉だという確証は持てない」
残酷な話ではあるが、それは実際その通りだ。
今目の前にいるのは有栖川夏葉の見た目を模倣して設計されたアンドロイド。
喋り方、思考、佇まいの随所に彼女を感じることはできるが、もしそう動くために設計されたアンドロイドだというのならそれはそれで納得がいく。
いや、むしろ本人の人格を移し替えたなんて奇想天外な話よりも筋が通った話だと言えるかもしれない。
あまりの非現実を前にして、慎重になってしまうのは致し方がない。
夏葉「……わかった、それならば私が有栖川夏葉であるということを証明してみせるわ」
そう言うとアンドロイドはベッドの上から立ち上がり、気絶して倒れている甘党女を引き起こした。
証明と簡単にいうが、かなりの難題のはずだ。
一体どうするというのか、黙って見守っていると、甘党女の耳元で何かを囁いた。すると目をパチリとさせて瞬時に目を覚ますではないか。
甘党女の目は点のようになり、耳から入った情報に戸惑っている様子。
智代子「ほ、本物だ……! 本物の夏葉ちゃんだよ!!」
夏葉「どうやらわかってもらえたみたいね」
恋鐘「な、なんば言いよっと……?」
夏葉「それは、智代子の合意が必要かしらね」
智代子「い、いや……別にそんな隠すほど恥ずかしいものではないんですが……みんな、コロッケって何をかけて食べる?」
冬優子「何って言われても……ソースの種類が違うくらいの話でしょ? ウスター、中濃、BBQ……」
雛菜「あとケチャップ混ぜて特製ソース作ったりとかですかね〜?」
智代子「……うち、醤油をかけるんだ」
ルカ「……は?」
ルカ「しょ、醤油……?」
智代子「ほら〜! やっぱりそういう反応だ! そんなに変わってますかね?! コロッケに醤油?!」
ルカ「いや、ねーだろ……」
あさひ「合わない気がするっす」
美琴「コロッケは揚げ物だし、炭水化物だからあまり食べないかな」
透「えー、どうだろ。案外ありなんじゃん?」
智代子「心の友は透ちゃんだけだよ……!」
夏葉「……とまあ、智代子の変わった食べ方を知っていることで証明に代えさせてもらったわ」
智代子「あのね! この食べ方は放クラの5人が寮にいるときに話した事で……この5人以外は知らない情報なんだよ!」
恋鐘「たしかに……うちもそがん食べ方は初耳やったばい」
雛菜「なるほど〜、人格を移し替えてたからこそわかる情報って事ですね〜」
もっと平たく言えば合言葉みたいなものだ。
当の本人同士しか知り得ない情報、モノクマが知る由もない情報を持ち出せたのならたしかに信憑性は高まる。
夏葉「確かに私は前とは姿が変わってしまって……もはや面影もないかもしれない。でもね、果穂から受け継いだもの……この胸に燃えたぎるもののためにあなたたちと一緒に戦わせてもらいたいのよ」
智代子「夏葉ちゃん……」
あさひ「燃えてるってエネルギー炉っすか?」
冬優子「あんたはちょっと空気を読みなさい」
夏葉「……どうか改めて仲間に迎え入れてもらえないかしら」
そう言って深々と頭を下げた。
かつてつむじがあった場所も渦巻くこともない鉄板にすり替わっていて、サラサラとその髪が風に靡くこともない。
変わり果てたその姿はどう考えても人間ではない……
だが、人間でなくとも『仲間』として承認する事はできるらしい。
恋鐘「夏葉、そげな真似をせんでもうちらは変わらんよ! この島で生きていく……283プロの仲間ばい!」
あさひ「あはは、アンドロイドになった夏葉さんがいれば今までできなかったこともできるかもしれないっすね!」
美琴「力を貸してもらえるなら、大歓迎だよ」
夏葉「みんな……ありがとう! たとえこの身が変わろうとも……私たちの想いは一つよ!」
流石にこれまで通り、とはいかないだろうが違和感はグッと押し殺して私も迎え入れることにした。
これ以上ことを複雑にしたくもないし、今のところこちらに害をなす雰囲気はない。
それに非現実を拒むなんて……もう今更だ。
夏葉「改めて仲間として迎え入れてもらえたところで……いいかしら」
ルカ「あ? なんだよ」
夏葉「……果穂のことについて、改めてみんなと話がしたいの」
俄かに静まり返る。
有栖川夏葉の生死不明という状況に理由をつけて、必死に遠ざけようとしていた話題が、その張本人から投げ込まれたのだ。
全員の表情が急速にこわばってしまう。
何を口にするのかと思うと、メカ女は冬優子と長崎女の前に歩いていき、そのまま頭をまた下げ直したではないか。
夏葉「恋鐘、それに冬優子……ごめんなさい。あなたたちにはいくら詫びても詫びたりないわ。私が果穂を抑えることができなかったばっかりに二人の命を奪うことになってしまって」
おしおきの直後、病院に運び込まれてから数時間。
誰しもが、その顛末を振り返るだけの時間があった。
小宮果穂との壮絶な別離、それぞれの感情の吐露。
その最終的な終着点だけが、今の今まで持ち越されていた。
でも、この時間がメカ女には冷静な判断を取り戻させてくれたらしい。
冷静な判断が彼女にとらせたのは謝罪という行動。
あの時の狂乱状態では浮かんでこなかった言葉が、今なら口にできる。
当の二人は慌ててその謝罪を取り下げさせようとする。
恋鐘「夏葉が謝ることなかよ! 今のこがん島ん暮らしじゃ何が起こるかわからんし、恨んでもなんもならん!」
冬優子「ふゆも同意見。それにあんたは絶望病にかかってたんだから、管理責任を問えるような状態じゃなかったの」
それでもメカ女の気はすまない。
冷静になればなるほど、自分にのしかかる責任と罪の意識が膨れ上がる。
赦しを得るか否かではなく、謝罪をしないことにはその金属製の心臓がどうしようもなく痛んでしまうのだ。
彼女の謝罪は、小宮果穂の殺害行為だけでなくその後の自分自身の言動にまで及んだ。
夏葉「それに、おしおきの執行前。私は果穂のことで頭がいっぱいになって……二人の前で果穂を庇い立てるような発言をして不快な思いをさせてしまったわ。そのことについても改めて謝罪をさせて頂戴」
クロの投票を行い、裁判が終了した直後。
メカ女は私たちに食ってかかってきた。
小宮果穂がクロである事は紛れもない事実、それでも彼女からすれば愛すべき仲間であることには変わりはなく、クロとして指摘を行った私たちに感情を暴走させて当たった。
そのことも彼女は相当に気にしていたらしい。
冬優子「それも謝る必要なし。別に気にしちゃいないわよ。ふゆ達はもう気がついたら二人を失ってたけど、これから二人が死にますって言われたらきっと正気じゃいられない」
恋鐘「夏葉のあん時の苦しみは多分うちらの想像以上ばい、気に病まんでほしかよ。それに、あがん熱の入った言葉が言えるのは果穂のことを本当に大好きだった証明ばい。その言葉を自分で無碍にするような発言はしない方がきっと夏葉にとってもよかね」
夏葉「……二人とも、ありがとう」
冬優子「それに、こっちとしても感謝の言葉を言わせてもらうわ。あんたの訴えでモノクマは果穂ちゃんに自我を戻したわけだし……ふゆの感情に折り合いをつける機会をくれたのはあんただわ」
恋鐘「うちも、最後の最後に本当の果穂と話ができてよかったばい!」
喪った者と喪わせた者。両者がこんな形で再び手を握り合わせるとは不思議なものだ。
子ども同士の喧嘩じゃなく、両者の間には明確な罪と罰とが横たわっているのに、それを飛び越えてしまうのだから人の感情というのは分からない。
メカ女が再び顔を上げたとき、人間だったころの笑顔をそこに見たような気がした。
智代子「よし、それじゃあ夏葉ちゃんも無事だったことだし……そろそろ行きますか!」
ルカ「あー、そうだな。ド深夜に裁判やってからぶっ続けですっかり日も登ってやがる。いったんコテージでそれぞれ休憩でも取るか?」
透「眠……」
夏葉「そうね、睡眠は健康管理そして精神面においても肝要よ。取れるうちにしっかりとっておきましょう」
あさひ「夏葉さん、アンドロイドになっちゃったけど眠るっすか?」
雛菜「そういえばそうですね~、体が機械ですけどどこまで人間と一緒なんですか~?」
夏葉「私もこの体について完全に理解しているわけではないのだけれど……睡眠はとることができるわ。この【おやすみタイマー】機能を使えばいいのよ」
智代子「お、【おやすみタイマー】……?」
夏葉「睡眠時間をあらかじめ設定しておけば、決まった時間内スリープモードにすることが可能よ。終了時刻になれば自動で目を覚ますことができるから、寝坊もなくて安心ね!」
美琴「へぇ……便利だね」
ルカ「そ、それって睡眠って言えるのか……?」
夏葉「背中には強制的にスリープモードにする【おやすみスイッチ】もあるから、そちらでも睡眠を取ることは可能ね」
あさひ「電源ボタンみたいなものっすかね」
冬優子「とりあえず……その右手を引っ込めなさい」
夏葉「ふふっ、こう見えて人並みに夢を見ることもできるのよ。手術中まさにそのスリープモードだったのだけど、智代子が山盛りのドーナツを平らげる夢を見たんだから」
智代子「……!? な、なぜそれを……!?」
夏葉「……正夢だったみたいね」
恋鐘「そいじゃあ今日の所はみんな自分のコテージに好きに睡眠をとって休まんば! 探索再開は明日からにせんね!」
透「ん、そうしよ」
事件発生からぶっ続けで全員の疲労も溜まっている。
私たちはふらつく足取りで第1の島まで戻り、それぞれのコテージへと帰って行った。
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
「ふぅ……」
シャワーを浴びて、大きな息をつきながらベッドに横たわった。
瞼は随分と重たい、すぐにでも意識は遠のくことだろう。
ただ、その前の少しばかりの思考の時間……私は裁判のことを考えていた。
それは、小宮果穂のおしおきでも、メカ女の蘇生の事でもない。
この事件全容について改めて振り返っての検証だ。
私が気にかけていたのはクロではなく、その裏に潜んでいたであろう【狸】のことだ。
七草にちかと田中摩美々の犯行は露骨なまでに【狸】によって荒らされた形跡があり、その正体は冬優子の秘密を知り得る女ということで芹沢あさひに断定した。
しかし小宮果穂の犯行についてはどうだろうか。
今回の事件で起きたすべての事態について、あいつ自身の行動で説明がついた。
要は【狸】による介入を感じることができなかったのだ。
もちろんこちらの見落としの可能性もあるが、今までの二件ではあえて【狸】は粗の多い工作を行いこちらに勘づかせているような節があった。
それすらも一切見当たらないというのは流石に不自然だ。
今回の事件では芹沢あさひは事件中ずっと別の島にいたという。
介入することを諦めたり、飽きてしまったりしたのだろうか?
そんな単純な結論なのだろうか。
それに……和泉愛依の亡骸を見た時のあいつの反応。
事件を荒らして、私たちの裁判中の推理を嘲笑っているという【狸】のクソッタレのイメージとはあまりにも乖離している。
小宮果穂との別れもそうだ、あいつは感情をむき出しにして、その別れを心の底から惜しんでいた。
「……あいつじゃ、ないのか……?」
私の中に沸いた一つの疑問が、だんだんと膨れ上がっていくのを感じた。
____
______
_________
【ルカのコテージ】
しばらくして目を覚ました。
ベッドに突っ伏してから五、六時間たっただろうか。日は徐々に沈みかけているのか、うっすらと橙色が滲み始めていた。
昼夜逆転の生活にはそれなりの経験がある、これももはや見慣れた光景だ。
「……眠くねえな」
今日はもう探索はしないというのが全体方針。
かといって今から改めて寝直すにしては寝足りている。
完全に時間を持て余してしまった状況で、後ろ手に頭を掻く。
「……あ」
そんな中、一つ思い当たることがあった。
こんな時、時間をつぶすのにうってつけの方法だ。
何年も何年も時間を食いつぶし続けた、体にもはや沁みついた方法。
自然と私の足はその場所へと体を運んでいた。
-------------------------------------------------
【第1の島:ビーチ】
「お、やっぱやってんな」
「……ルカ」
どうせこいつのことだ、探索を行わないと聞いて内心小躍りしていたんだろう。
休憩は最低限で済ませて、残りの時間は練習に充てていることが容易に察しがついた。
実際、既に全身に汗が噴き出していて、タオルはもう二枚目を使おうかという頃合い。
私もその隣に荷物を並べて、すぐに練習に合流した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……ったく、時間さえあれば練習すんのはずっと変わんねえんだな」
「うん、最高のパフォーマンスをするための努力は惜しみたくないから」
「妥協もしたくない、っつーわけな……」
そのままぶっ続けで数時間の練習。
日はすっかり沈んで夜空には星が煌めく。
途中途中で水を飲ませたり座らせたりをしたが、普段こいつは一体どうしているんだろうか。
いつか倒れはしないかと余計な気を揉む。
「……ねえ、ルカ」
海岸で隣に座る美琴が私に声をかけた。
「……今朝の裁判、その捜査の事なんだけど」
「なんだよ、急に」
「……浅倉透、あの子と何かあった?」
こいつは余計なところで妙に勘が利く。
私との解散までの間、まるで私の心中には目も向けていなかったくせに、パフォーマンスに追いつけていないとか嫌な所ばかりに敏感な節があって今回もその限りだ。
私が病院であいつと交わした言葉、そこから生じた覚悟と歩み寄り、それを悟られてしまったらしい。
「……えっと」
この話は、まだ美琴には話す気はなかった。
美琴は七草にちかの死を未だにずっと引きずり続けている。
あいつが死の間際にぶち撒けた浅倉透への不信と糾弾、それが胸に楔のように打ち込まれており、私と行動する時でも何度も何度もそれが顔を出していた。
だから、あいつが真実を打ち明けない内から美琴が信頼を預けることはまずあり得ないだろうと思った。
私があいつをちゃんと見極めるまで、口にはしまいと思っていた。
「……ルカ、話してもらえる? 私が非番のタイミング……事件が起きる前に、何か話したんだよね」
「……」
一体どうしたものか、話すにしたって私も何も聞かされていないのだ。
強いて言うなら、あいつは『元々のこの島での暮らし』を始めた人間の一人だという情報。
今のモノクマに乗っ取られる前の生活の運営者ということだが、これも伝え方に困る。
七草にちかとの敵対というバイアスがかかりまくっている状態の美琴なら更にだ。
コロシアイの元凶だと曲解してしまうことだってあり得るだろう。
私も実際、あいつと積極的に関わって見極めていこうと決めたばかり、胸を張って言えるような情報でもない。
「ルカ、教えてよ」
何を言えば、いいのだろう。
「……あいつは敵じゃないって、そう言ってた」
結局、その言葉をなぞるしかできなかった。
今伝えられる情報のプールに、それしかないのだから仕方ない。
そう言い訳したが……美琴の表情は氷のように冷たかった。
「教えてくれないんだ」
光を失ったようなのっぺりとした瞳は、私から視線をずらす。
そしてそのまま数秒の沈黙の後、美琴は立ち上がった。
「……それじゃ」
「お、おい! か、帰んのか?」
「うん、また明日」
掌に嫌な感覚があった。
私は何も触っていない、必死に必死に触らないように細心の注意を払っていた。
それなのに、宙を撫でたはずのその手はもっと別のものに触れていた。
海岸に私だけがポツンと残された。
誰も物言わぬ空間に、押し寄せる波音だけが響く。
波が砂を運んで行く度に、私の心にも後悔が募った。
「……七草にちか、面倒なものを遺してくれたよな」
その後悔を他人の責にすることでしか、感情の捌け口は見つからなかった。
____
______
________
=========
≪island life:day 16≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』
『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』
美琴との練習で体にはいい具合に疲労が溜まっていたので、睡眠自体は割としっかり取れた。
疲労は睡眠で解消できるが、この胸のモヤモヤは寝るだけじゃ払拭できない。
「……チッ」
昨夜のことを思い、舌打ちを一つ。
三峰結華の時は不用意に踏み込んで失敗して、今回は慎重になりすぎて失敗した。
自分のコミュニケーション力の低さがつくづく嫌になる。
解散をしてから他人と関わるのを避け、拒絶し続けた分の負債が今になってやってきたのだと思う。
……千雪の命令を、いつになったら私は守れるんだろうな。
重たい頭を無理やり持ち上げながら、部屋を後にした。
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
夏葉「おはようルカ! 1日休んで疲労はすっかりなくなったかしら?」
ルカ「んあ……!? て、てめェか……驚かすなよ」
レストランに入るなりアンドロイドが出迎える。
だがこのアンドロイドは別に寝食の世話をしてくれるような万能コンシェルジュというわけではなく、
朝からうんざりするぐらいに張った声で私の眠気を無理やり引っぺがす動く目覚まし時計みたいなやつだ。
私は挨拶もそこそこに自分の席についた。
隣の席の美琴は、何も言わない。
恋鐘「1日休んでみんな体力は戻ったとね? 今日からまた頑張っていくばい!」
智代子「うん! 果穂のためにも……みんなで協力して脱出しないとね!」
先の事件で大切な存在を失った連中も立ち直ったというのに、私と美琴の席だけに妙な不和が漂う。
それに気づいてか冬優子が私の元へとやってきた。
冬優子「ちょっと、なんであんたたちまた空気悪くなってんのよ」
ルカ「い、いやそのだな……」
まだ浅倉透とのやりとりはあまり公にしたくはない。
冬優子に説明しようにもまごついてしまう、ついその直後。
ギィィィィ…
透「おはよ」
夏葉「透……それに雛菜も……」
そうだ、こいつは私との会話で今後仲間からの信頼を勝ち取るために、幼馴染を説得して私たちに積極的に接触すると宣言したばかり。
当然この集まりにも参加してくることは想像できた。
本来なら私はそれを歓待するべきだ。
だが、今日ばかりは……タイミングが悪すぎる。
透「来たよ。雛菜も一緒に」
雛菜「透先輩がみんなと協力してって雛菜に言うので、今日からまたよろしくお願いします〜」
ルカ「お、おう……」
美琴「……」
背中に美琴の視線を感じる。
冷たく突き刺すような視線が、私を貫いて浅倉透を刺す。
透「……あの」
夏葉「透、私たちはあなたたちを拒むつもりはないわ。ただ、あなたは外の世界の人間との関与が確定している、そのことについて疑いの目線を向けられていることは理解して頂戴」
透「うん……わかってる。でも、逃げないから。もう」
透「まだ本当のことは言えないけど……信じてもらえるように、頑張る」
浅倉透は覚悟を決めていた。
どれだけ疑いの眼差しを向けられようと、不信をもろに浴びせられようとも正面からぶつかっていく。
全てを話すことは出来ずとも、行動で信頼は勝ち取ることができる。
私が病院で話しただけの思いが、すでに固まっていた。
美琴「……」
ガタッ
ルカ「え、ちょっ……美琴……?!」
それでもなお、美琴は受け入れようとはしなかった。
接触すら赦しをしない、七草にちかの遺恨が全てを拒む。
美琴は音を立てて立ち上がり、そのままレストランを後にした。
透「……うちらのせいだよね、絶対」
ルカ「悪いな、美琴のやつまだ七草にちかの死に際の言葉を気にしてるみたいだ」
透「悪いのはこっちだから。わかってもらわなきゃだよね、自分の言葉で」
雛菜「でもなんか一触即発って雰囲気じゃない〜?」
七草にちかとの絆はいつしか呪縛となり、檻となった。
美琴にとってその領域は誰の介入も許さない絶対的な聖域。
浅倉透に対する不信を取り除こうにも、硬く閉ざされたその檻をこじ開けないことにはどうしようもない。
でも、そのための鍵はもはやこの世に存在していない。
ルカ「……クソッ」
美琴のことは今すぐに解決できる話でもない。
私たちは一旦話を切り上げ、これからの話へと移る。
冬優子「……ともかく、今はふゆたちに出来ることをやりましょう。まずは探索……これまで通りなら、今頃モノミがモノケモノを倒して新しい島が解禁されてるでしょ」
智代子「そうだよね、事件のたびにモノミが頑張って新しいエリアを解放してくれてたもんね!」
恋鐘「ジャバウォック諸島の島もあと二つばい、そろそろちゃんとした手がかりが欲しかね〜」
バビューン!!
モノミ「ミ、ミナサン……おはようございまちゅ……」
あさひ「あ! モノミ!」
話を聞きつけてか、どこからともなく姿を表すモノミ。
その体は前回同様に血に塗れている。
……だからといって心配などしないが。
冬優子「やっと来た……新しい島ね、よくやったわね」
モノミ「あ、あの……それなんでちゅが……」
恋鐘「次の島はどげんもんがあるとやろ〜?」
モノミ「モノケモノ……なんでちゅが……」
雛菜「何か役立つものがあればいいですね〜」
モノミ「あちし……勝てませんでちた……くすん」
ルカ「……は?」
冬優子「あ、あんた……今なんて……?」
モノミ「ミナサンのために、一生懸命戦ったんでちゅが、あちし……あいつに手も足も出なくて……気がついたら目の前が真っ暗になってたんでちゅ」
透「え、それじゃあ今回は……新エリア、なし?」
モノミ「すみまちぇん……あちしが弱いからいけないんでちゅ、この柔肌細腕が非力なのが悪いんでちゅ……中がコットンじゃなくてせめてウールならなんとかなったんでちゅけど……」
(おいおいマジか……)
私たちにとって新エリア開放にモノミの勝利は不可欠。
てっきり今回もやってくれるものだとばかり思っていたが、思いもよらぬ形でその期待は裏切られることとなった。
……だが、そんな期待には別の形で答えてくれるものがいた。
夏葉「ふふふ……今こそ私の出番のようね!」
智代子「な、夏葉ちゃんどうしたの?! 急に大きな声を出して!」
夏葉「人間の体では太刀打ちできなかった……でも、今の私なら! モノケモノだろうと、対抗できるのよ!」
ルカ「ま、マジか……?」
夏葉「昨日解散してから色々と試してみたのよ。せっかくのこの体、何か活かす方法ないかと思ってね。すると、ちょうど今の状況にうってつけの機能を発見することができたのよ!」
あさひ「わあ……! 夏葉さん、その機能って何っすか?!」
夏葉「ふふふ……それは実際試してみてのお楽しみね。みんな、早速第4の島に行ってみましょう!」
私たちは顔を見合わせたが、当の本人は気にせずズイズイと足を進めていってしまった。
私たちは半信半疑でその後をついていくこととなった。
-------------------------------------------------
【中央の島 第4の島への橋前】
透「うわー……デッカ」
冬優子「モノミのやつ、ちょっとは善戦できたのかしら……? 全くの無傷に見えるけど」
あさひ「あれ、どうやって動いてるっすかね! ちょっと近づいてみてもいいっすか?!」
恋鐘「こーら! これから夏葉が破壊するから近づいたら危なかよ!」
ルカ「一体どうやってこんなの退けんだよ……」
智代子「夏葉ちゃん……本当に大丈夫? 無茶はしちゃダメだよ?」
モノミの言っていた通り、今もなおモノケモノは堂々たる様子で橋を守っている。
全身金属装甲で私たちの数倍はあろうかと言う巨躯。
とてもじゃないが一人の力でどうにかなるような機体ではない。
しかし、メカ女は全く臆する様子もなく私たちの前に割って出た。
夏葉「さて、それではお見せするわ。私がアンドロイドになって手に入れた、新しい力よ!」
メカ女は高らかにそう叫ぶと左脚をI字バランスでもするかのように天高く持ち上げた。
そのままグッと振り下ろし右手に渾身の力を込め、パッと開かずグッと握って……
ダン!
ギューン!
ドカーン!!
夏葉「邪悪を打ち破る、正義の鉄拳を喰らいなさい!」
その体は蒸気が吹き出すほどに熱を帯びていた。
辺りに響くエンジン音と共に右手は振り抜かれ、
……そして、そのまま右手は射出されていた。
夏葉「はあああああああああ!!!!」
智代子「いっけええええええええ!!!!」
まるで少年漫画のような勢いで叫ぶと、その声に応えるようにジェット射出された拳はモノケモノをそのまま宙へとぶっ飛ばしてしまった。
その直後、島を揺らすほどの大爆発。
ドッカーーーーーーン!!!!!
何ということだろう、メカ女は宣言通りただの一人でモノケモノを退けてしまったではないか。
夏葉「どうかしら、これが私の手に入れた新しい力……【ロケットパンチ】よ」
あさひ「すごいっす〜〜〜!!!」
宙を舞った右手はそのまましばらく旋回すると、元の位置、腕の接合部にピッタリと収まった。
それをみて爛々と目を輝かせる中学生。
……まあ、こいつからすれば大好物だろうな。
あさひ「それ、どうやってるっすか?! 自分で腕の制御はできるっすか?!」
夏葉「射出してからは標的をオートで追尾するの。もちろんマニュアル操作は可能よ」
あさひ「わたしも撃ってみたい……モノクマに頼めばつけてもらえるのかな」
冬優子「絶対にやんじゃないわよ」
智代子「す、すごい……まだ衝撃でビリビリしてるよ」
夏葉「モノケモノ程度なら簡単に吹き飛ばせる、強力な一撃よ。でもその分連発はできないし、エネルギーの充填と燃料の補充が大事なのだけれど」
何はともあれ、これで目的は達した。
モノケモノがいなくなれば第4の島の探索も可能になる。
私たちはメカ女を褒め称えながら、そのまま島を渡っていった。
-------------------------------------------------
【第4の島】
「ここが第4の島……これまた雰囲気が全く違うな……」
これまでの島とはまた打って変わって大違いの島。
生活感とは完全に切り離された、ファンシーな雰囲気が漂う……一言で言うなら、それはテーマパーク。
そこら中で風船が宙を飛び、コースターのレールが至る所で視界に入り、気の抜けるBGMが大音量でかかっているのだ。
「こんなところに手がかりがあるのか……?」
◆◇◆◇◆◇◆◇
島の探索にあたっての分担。
これまではずっとユニットごとにまとまって行動をしていたが、現段階で生き残りは9人。
もはや分担は分担としての意味を持たない。
夏葉「今回は基本それぞれ個人の調査を行いましょう。手数は多いに越したことがないもの」
智代子「そっか……そうだよね、うん! それぞれの場所で全力を尽くそう!」
夏葉「ただ、その……」
冬優子「ん、あさひはふゆが見ておくわ」
ルカ「……浅倉透、今回は私と一緒に動いてもらうぞ」
透「ん、背中は任せたよ」
雛菜「え〜〜〜! 透先輩は雛菜と一緒に行くよね〜〜〜?」
透「おーおー、千切れるって、腕」
(……これは、引っぺがせそうにないな)
さて……第4の島についてもまずはマップを確かめておくか。
パッと目につく【ジェットコースター】はやっぱり大きな面積を占めてるな。もしかして乗れるのか?
だからといってどう、と言うこともないが……
そして遊園地といえばこれも外せないな、【観覧車】だ。
とはいえ、こんなコロシアイの中で悠長に景色を眺める余裕なんかねーか。
【バイキング】……まあそう珍しくもないアトラクションだが、やたらデカイな。
なんか特殊なもんだったりするのか?
この【モノミハウス】ってのはなんだ……?
このテーマパークの中でも異色だが……アトラクションの一つなのか?
【ネズミー城】……多分ここがテーマパークの中心部なんだろう。
テーマパークを象徴する存在っぽいし、手がかりがあるならここか。
透「ついてくよ、どこでも」
雛菜「透先輩、雛菜も行く〜〜〜!」
ルカ「……はぁ」
さて、どこから調べる……?
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.ジェットコースター
2.観覧車
3.バイキング
4.モノミハウス
5.ネズミー城
↓1
4 選択
【コンマ判定 06】
【モノクマメダル枚数6枚を獲得しました!】
【現在のモノクマメダル枚数…8枚】
-------------------------------------------------
【モノミハウス】
テーマパークの一角に立っている、ピンク色した平屋づくりの一軒家。
……その屋根には巨大なミサイルが突き刺さっていた。
ルカ「……なんだこれ」
雛菜「全然ミサイルと家の色合いが似合ってないし、ナシかな~」
透「この物件はキープもしない、と……」
ルカ「なんのロケをやってんだてめーらは」
確か電子生徒手帳の情報ではここはモノミハウスとなっていたはずだ。
その字面を追うなら、ここはモノミにとっての居住空間ということだがこんな惨状で果たして本当に住んでいるのか?
そもそもあんなぬいぐるみに家がいるのかというのは甚だ疑問だが。
私はその家に近づいて、ドアノブを捻ろうとした。
その瞬間、どこからともなく大声とともにあいつが姿を現す。
モノミ「あーーーー! いけまちぇん、いけまちぇんよ斑鳩さん!」
ルカ「なんだよ、うっせえな……」
モノミ「乙女の秘密を勝手に覗き見るなんて、あんたそれでも女の子でちゅか!」
ルカ「そんな細けぇこと気にしてんな、そんなんだからモノケモノにも負けんだろうが」
モノミ「うぅ……それを突かれると弱いでちゅ……でちゅけど、ここは譲れまちぇん! あちしの目が黒いうちは、中には入れられまちぇん!」
(……チッ)
どうやらここを譲る気は一切ないらしい。
私の前に立ちふさがってまんじりとも動かない。
ここは一度引いた方がよさそうだな。
雛菜「あれ、入らないんですか~?」
ルカ「モノミの野郎がうるせえからな、いったん引くぞ」
透「うぃー」
(……あれ、そういえば……モノミって、この島の暮らしを元々率いる立場だったんだよな?)
(だったら……浅倉透からすれば仲間、なのか……?)
(……ってことは、このモノミの拒絶って浅倉透の拒絶とイコールなのか……?)
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.ジェットコースター
2.観覧車
3.バイキング
4.ネズミー城
↓1
3 選択
【コンマ判定 34】
【モノクマメダル枚数4枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…12枚】
-------------------------------------------------
【バイキング】
遊園地の中に突然現れる巨大な帆船は、宙に浮いていた。
太くどっしりとした芯にガッチリと固定され、前後にスイングするこのアトラクションは案外絶叫系として一定の人気を獲得している。
だが、この島のそれは普通とは明らかに違う。
やたらデカく見える船は、なにやら尋常でない勢いでスイングして……むしろ一回転すらしていた。
ルカ「おいおい……あれ大丈夫なのか?」
透「安全バーは一応あるみたいだしさ、落下はしないでしょ」
雛菜「やは〜! あれすっごく楽しそう〜〜〜!! 雛菜も乗りたい〜〜〜〜〜!」
安全面には問題はないんだろうが……入り口付近に設けられた異常な数値の身長制限が私の意欲を削いだ。
なんだ、身長制限160cmって……そんなアトラクション聞いたことないぞ。
モノクマ「うちのバイキングはかかるGもかなり大きいからね。安全バーでしっかり固定するにはそれだけの身長が必要なんだよ」
ルカ「これ、中学生と甘党女はNGなのか……」
透「あと、生きてたら灯織ちゃんと結華さんとにちかちゃんもだね」
ルカ「……七草にちか、か」
雛菜「……ま、これはやっぱり乗らなくてもいいや〜」
私もこのアトラクションに乗るようなことは今後一生なさそうだな……
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.ジェットコースター
2.観覧車
3.ネズミー城
↓1
3 選択
【コンマ判定 07】
【モノクマメダル7枚を獲得しました!】
【現在のモノクマメダル枚数…19枚】
-------------------------------------------------
【ネズミ―城】
テーマパークの中央でひときわ目を引く建造物。
まるで物語の中から切り出してきたような、西洋風の建築をされている立派な城だ。
だが、その入り口らしきものは見当たらない。
城壁を道に従って歩いて行っても、迎え入れるための扉なんかはどこにもない。
私たちより先に来ていたであろう長崎女とメカ女もすっかり困り果てていた。
恋鐘「どこにも入り口が見当たらん……こん城は一体何のための施設ばい……?」
夏葉「謎が多いわね……ただのハリボテ、というわけでもなさそうだけど」
ルカ「よう、二人ともお困りか」
恋鐘「ルカ、透、雛菜~! こん城、入ろうとしても扉が無いからどうしようもなかよ~!」
雛菜「ん~? こんなにお客さんを迎え入れる雰囲気なのにですか~?」
夏葉「ええ……端から端まで行っても真っ白な壁が延々続くだけ。裏側に回る手段もないから途方に暮れているの」
ルカ「それこそお前のロケットパンチで壁ごと吹き飛ばしゃいいんじゃねーのか?」
夏葉「生憎だけどロケットパンチの射出には燃料と電力が必要よ。モノケモノの撃退で大分消費してしまっているから、準備にも時間がかかるわ」
恋鐘「それに夏葉がしおりのルール違反になることも考慮せんといかん! 不用意に破壊はせん方が賢明たい!」
ルカ「それもそうか……」
夏葉「あ、それでも一つだけ手掛かり……というか、気になることがあるの」
透「え、何ですか」
夏葉「この城の敷地内、どうやらモノクマもモノミも足を踏み入れることができないみたいなの」
ルカ「……! それ、マジか……!?」
ここにきて重要な情報だ。
これまでコテージの個室内でもモノクマは平然と姿を現し、そこら中に張り巡らされた監視カメラによって行動はそのすべてが掌握されていた。
だが、唯一この城だけはその監視網から脱することのできる空間。
これを利用しない手はずはない。
夏葉「どうやらネズミ……が苦手みたいで、それをシンボルにしているこの城は近寄りがたい様子で」
雛菜「ネズミが苦手なマスコットってなんだかあれみたいですね~」
ルカ「おっと……不用意に名前は出すんじゃねーぞ」
透「あ、あれか。どら焼きの」
雛菜「うんうん、ポケットのやつ~~~!」
ルカ「ギリギリセーフか……?」
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.ジェットコースター
2.観覧車
↓1
1 選択
【コンマ判定 76】
【モノクマメダル6枚を獲得しました!】
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
-------------------------------------------------
【ジェットコースター】
島を一周するほど長いレールが行き着く先、そして次の一週が始まるのがこの搭乗口だ。
カンカンと音を鳴らして階段を登れば、数両つなぎのコースターが安全バーを口のように開けて出迎える。
それに齧り付くようにして騒いでいるのは、案の定中学生だ。
あさひ「乗るっす乗るっす! ここまで来たなら乗らなきゃ勿体無いっすよ〜」
冬優子「あ〜もう、いい加減言うことを聞けっての! 人数揃わなきゃダメってんだから、諦めなさいよ!」
ルカ「よう、冬優子……大変そうだな」
冬優子「ルカ、あんた他人事だと思って……ったく、愛依がいればもうちょっとうまく手懐けるんだろうけど、この!」
あさひ「あ~、引っ張らないでほしいっす~」
透「乗りたいの、コースター」
あさひ「はいっす! せっかく遊園地なんすから、乗らなきゃ勿体ないと思うっす」
雛菜「雛菜もコースター乗りたい~!」
透「じゃ、乗ろっか」
冬優子「は、ちょっ……」
透「あれ、動かない」
冬優子「はぁ……何、こいつらも同レベルなの」
ルカ「か、それ以下かもな。このコースター、さっきも言ってたが人数が必要なのか?」
冬優子「みたいよ。さっきモノクマが来て、乗りたければ生存メンバー全員連れて来いって。あんたんとこの緋田美琴も必要ですって」
ルカ「……美琴、も」
冬優子「まあ別にただのジェットコースターなら無視すればいいんだけど……何やら特典があるらしくって」
ルカ「特典?」
冬優子「ええ、この島の暮らしの真実にグッと近づく手がかり……モノクマはそういってたわ」
思わず浅倉透の方を見やった。
あいつもこの島の暮らしの真実、その一端を掴んでいる人間だ。
もしかするとその特典とやらはあいつの秘密を解き明かす鍵になるアイテムかもしれない。
私の中にも、興味の火が急速に灯されるのを感じる。
ルカ「だとしたら、乗るっきゃねえな」
冬優子「一回試してみるだけの価値はあるわね。……そのためにも、ルカ……緋田美琴、頼んだわよ」
ルカ「……あー」
冬優子「何があったのか、詮索はしないけど。せっかく和解出来たってのにまた仲悪くしてんじゃないわよ」
ルカ「おう……悪いな」
流石に少し気が重いが、美琴をここに連れてくるのは私の役目だろう。
他の場所の探索をすべてし終えたら、美琴のもとに行ってみようか。
-------------------------------------------------
【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】
【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】
↓1
【コンマ判定 10】
【モノクマメダル10枚を獲得しました!】
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
-------------------------------------------------
【観覧車】
ルカ「これまたバカでかいな……何メートルあるんだよ」
透「んー、私10人分?」
ルカ「どころじゃねーぞ、その倍いてもおかしくねえ」
麓から見上げてもその頂点が見えないほどの高さの観覧車は絶えず動き続け、外と隔絶された空間をいくつも引っ提げて回転する。
なるほど確かに見晴らし自体はいいだろうが、こんな四方を海に囲まれた空間じゃ見るべきものも特にはないだろう。
智代子「あっ、ルカちゃんにノクチルの二人も来たんだね! ちょうどよかった、観覧車乗ってかない?」
ルカ「あ? おいおい、これ……一周結構時間かかるんじゃねーか?」
見る限り、その速度は一周数十分がかりか。
観覧車の規模が大きくなればなるほどかかる時間も増す。
今乗ってしまうと、どれだけ時間を食われて探索に遅れが生じるかわかったものではない。
智代子「うぅ……そうだよね。ロマンチックな乗り物だと思ったんだけど今は我慢か……」
雛菜「観覧車って結構恋愛系のお話だとよく出てきますよね~」
智代子「そうそう! 二人だけの誰にも邪魔されない特別な空間、そこから見える美しき夜景! その瞳に同じ景色を浮かべながら愛を語らうのです……」
ルカ「ケッ、今時そんなベタな展開流行らねーっての」
透「えー、私結構好きだよ。ベタ的なの」
バビューン!!
モノクマ「さすがは園田さん! よく分かってますね! 当観覧車も恋人たちの健全なる愛の囁きを大いに応援しておりますぞ!」
ルカ「どっから湧いてきやがったこいつ……」
智代子「うんうん、観覧車と言えばやっぱりカップルだもんね!」
ルカ「この島のどこにカップルがいるんだよ、女しかいねーだろ」
智代子「愛の形は何も男女に限ったものではないんですよ、ルカちゃん……!」
ルカ「ああ……?」
モノクマ「当観覧車はカップルの時間を誰にも邪魔されないようにいろんなサポートをしております。観覧車の中ではロマンチックなBGMをオプションで流すこともできますし、飲食物の持ち込みもOK!」
智代子「いいねえいいねえ、せっかくなら間接キスもつけちゃって……!?」
モノクマ「カプセルは外からの干渉の一切を拒絶できるように、なんとナパーム弾ですら傷をつけられない最新鋭の防衛シェルター仕様!」
智代子「おお……それなら二人の時間を邪魔されない……!!」
ルカ「そんなシェルターが機能するなんてどんな状況だよ……」
そこからしばらく甘党女がひたすら妄想を膨らませ始めたので私は早々に退散。
恋愛映画だとかそういうのは私には間に合ってる。
興味のない分野のことには触れないでおこう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
探索を一通り終えたが、今回はまだ終わらない。
ジェットコースターの特典、それがこの島での暮らしの秘密を解き明かす重要な手がかりである以上スルーはできない。
全員を搭乗口に集めて、乗ってみないといけないな。
そのためにも、まず……私はあいつの元へ行かなくちゃならない。
ルカ「悪い、てめーら二人は先にジェットコースターに行っててくれ」
透「ん。雛菜、行くよ」
雛菜「わかった〜、元相方さんとの仲直り、頑張ってくださいね〜」
まるで他人事のように言ってくれるが、その原因はもろにこの二人にある。
だが浅倉透の覚悟に向き合うと決めた以上はそれをこちらから一方的に唾棄もできはしない。
美琴の説得は私の義務、か。
とはいえ千雪に無理やりやらされた時も、聞く耳を持たない美琴には結局強硬策でなんとかと言ったところ。
今回もどうなることやら。
-------------------------------------------------
【第1の島 ビーチ】
案の定美琴はここにいた。
いつかの時と同じように、感情をぶつけまくって乱暴に手足を振り回しているダンス。
とても直視に耐えられるような代物ではない。
私は悟られないように、息を殺すようにしてゆっくりと近づいていった。
まるで草食動物がライオンにバレないようにサバンナを歩くようで、なんとも情けない光景だ。
「……違う、遅れた」
そんなことを呟きながら振り付けをリアルタイムに修正。
普段ならそれも真摯な態度、真面目なやつだと評価できるポイントかもしれない。
でも、今のこいつはいつのどこを目指してこんなことをしているんだ。
肝心の相方はもう生きちゃいない、この島から帰る目処も立っていない、外の世界のことも何もわからない。
今こうして改めて距離を置いて、美琴の異常さを再認識した。
現実逃避、なんて言葉で括れるものでもない。
こいつは、取り憑かれている。
浅倉透のことについてもそうだ、あいつが私たちに敵対している存在ならとっくに仕掛けてきている。
事件をかき乱す狸の方が目に見えてよっぽど凶悪なのに、美琴は未だに浅倉透への僧念を絶やすどころか、その熱量は増している。
もはやここまで来ると呪いだ。
七草にちかの亡霊に、美琴は取り憑かれている。
「……よう、美琴」
「……」
逃げられないように距離を詰めてから話しかけた。
私がずっと気配を消していたので、美琴は本当に今この瞬間まで気づいていなかったらしい。
相当驚いた様子だが、すぐに鉄の仮面のような表情を無理やり戻して私に向き直る。
浅倉透への感情が、私への怒りへと出力されているのを肌でヒリヒリと感じる。
「メカ女がよ、モノケモノをぶっ飛ばしてくれたから第4の島に行けるようになったんだ。それで、美琴にも手伝ってもらいたいことがあるんだよ」
まずはここに来た理由を明らかにした。
下手に浅倉透とのこと、七草にちかとのことを突っつけばその段階で閉ざされてしまうかもしれない。
私だけでなく連中全員にも関わる話で、コースターに連れていくことだけは何よりも優先したかった。
「……手伝うって?」
「第4の島にはジェットコースターがあるんだけどさ、それに乗ると島の秘密に関わる特典がもらえるらしくて……その乗るための条件に、残ってる全員が集まる必要があるんだよ」
「……」
(……頼むぞ)
「……わかった、行く」
「……! お、おう! 助かるよ、美琴!」
浅倉透と接触するリスクと貰えるであろう特典とを天秤にかけたようだが、なんとか望ましい方に傾いてくれた。
ホッと胸を撫で下ろす。
「よ、よし……美琴まだ場所わかんねーだろ? 私が連れてくから、用意してくれよ」
「……うん」
美琴は従順な様子で荷物をすぐに片付け始めた。
私が思っていたよりも怒ってはいないのか、そんな風に思ったのも束の間。
「ルカ、昨日の続き。……話してくれる?」
「えっ」
なあなあで終わらせてはくれなかった。
まるで時が止まったように私の周りからは音が立ち消えて、美琴の手元の片付けの音だけが響いた。
物を持ち上げて下ろす、それだけの生活音が私の回答を急かす声のよう。
私の首筋を嫌な汗が伝う。
(美琴に、話すべきなのか……)
浅倉透はこの島に私たちを招いた人間の一人。
だが、その目的はまだ私に打ち明けてはいないし、おそらく自分の口からもまだ言うつもりはない。
七草にちかの時の『外部の人間との関与』からはわずかに進展はあったものの、信頼を勝ち取れるほどのものではない。
七草にちかの遺した感情を引き継ぐ美琴からすれば、火に油。
でも、だからと言ってここでまた黙ってしまえば、決定的だ。
「ルカ、教えて」
正解なんてきっと無い。
この状況に追い込まれていた時点で、きっと私は詰んでいたんだ。
私は、観念するしかなかった。
「あいつから何か新しいことを聞けたわけじゃない。……でも、あいつは自分の行動で他の連中から信頼を得るために協力するって言ってた。だから、私もそれで見極めようとしている。その最中なんだよ」
あくまで浅倉透の話は隠した上で、あの時の会話をできる限り赤裸々に語った。
何も嘘はついちゃいないし、今の私のスタンスとしては間違っちゃいない。
「別にあいつの肩を持つとかそういうんじゃなくて……ただ、今のままじゃ真実も何もわからねえと思って……!」
狼狽するような言い訳だった。
私の手から美琴がすり抜けていくのが怖くて、嫌われないように言葉を選んだ。
「わかった。ルカはルカなりに一歩進む決断をしたんだよね」
「お、おう……?」
でも、それがまずかった。
「にちかちゃんの言葉を、信じないで」
「お、おい……ちょっと待て、そうじゃなくて……」
「……ジェットコースターだっけ、早く連れて行ってよ」
もはや美琴は私に聞く耳を持たなかった。
冥府からの囁きで耳の中は既に満席、私の割り込む余地などなくなっている。
浅倉透に歩み寄るという行為自体が既に美琴からすればタブー、そういうことなのだろう。
誤解を解くとかそういう次元の話だと思っていた私の見立てが甘かったわけだ。
「早く」
この世界の全部が全部合理的に進むわけじゃ無いってのはわかっていた。
どうしても無理なものは存在していて、努力だとか理論だとかで埋めることもできない穴は迂回する他ない。
芸能界に身を置く私はそれを一番よく知っていたはずだ。
それなのに、この島で暮らして情に絆されるうちにそんな簡単なことすらも忘れてしまっていた。
「……おう」
私も、もう美琴の目を見れなかった。
ここから先、少し長くなるので本日は早めに切り上げてここまで。
次回更新で自由行動パートに移ります。
次回は4/15(金)の21:30~を予定しています。
それではお疲れさまでした。
-------------------------------------------------
【第4の島 ジェットコースター】
あさひ「あっ、ルカさん、美琴さん! 遅いっすよ〜! 早くジェットコースター乗るっすー!」
搭乗口には私たち以外の全員が既に集まっていた。
中学生以外の連中は、私の沈痛な表情から全て読み取ったらしく、言葉に詰まっていた。
ルカ「わ、悪い悪い。ほら、これで全員だろ、さっさとジェットコースターに乗ろうぜ!」
居心地の悪さを押して、私は連中に乗車を促した。
こんなところで浅倉透と美琴の接触も認めたくない。
バビューン!!
モノクマ「あら、全員お揃いのようですね!」
あさひ「あ、モノクマ! みんな揃ったっすよ、早くジェットコースター動かして欲しいっす」
夏葉「ジェットコースターに搭乗した特典とやら、受け取らせてもらうわよ」
モノクマ「うむ、条件は満たしておるし良いでしょう! それでは皆々様、一列二人ずつで乗り込んで安全バーを下げてお待ちください!」
モノクマに言われるがまま、私たちはジェットコースターに乗り込んだ。
全員が乗り込み、バーを下げるとすぐに動き出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ルカ「う、うおおおおおおおお?!?!」
(は、速い……!!!!!)
あさひ「あはははは!! すごい!! すっごく速いっす〜〜〜!!」
雛菜「やは〜〜〜〜〜〜♡ 風が気持ちいい〜〜〜〜〜!!」
智代子「わ〜〜〜〜〜〜!? め、目が回るよ〜〜〜〜〜!!」
(ジ、ジェットコースターにしてもこれはやりすぎだろ……!?)
◆◇◆◇◆◇◆◇
ルカ「や、やっと終わった……吐きそうだ……」
恋鐘「世界がひっくり返っとる……うちが下で、空が上ばい……」
夏葉「みんな、大丈夫? そんなに辛かったのかしら……」
智代子「夏葉ちゃん……今だけは機械の体になっていて正解だよ……わたしたちは足腰がもうおばあちゃんだよ……
思えばレールは島をぐるりと一周するほどあるのを自分の目で確認していた。
全身の臓器を振り回されるような早さと衝撃とからは中々解放もされず、はじめは余裕そうにしていた連中も下車する頃にはすっかりグロッキー。
這いつくばるようにしてなんとか戻ってきた私たちを見て、モノクマは腹を抱えて笑ってきた。
モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! 全員芋虫みたいになって出てきたじゃん、ケッサクケッサク!」
ルカ「お前、元からこのつもりで……」
モノクマ「餌さえあればオマエラ無警戒によってきてくれるんだもんなあ! いい見せ物になってくれて感謝感謝!」
美琴「……約束は守ってもらうよ。この島の秘密の手がかり、渡してもらえるんだよね」
モノクマ「散々笑わせてもらったからね、その代金はお支払いしましょう!」
モノクマ「ジャンジャジャーン! お望みのものはこちらかな!」
モノクマが持ち出したのは表紙が黒塗りのファイル。
文字らしきものも一切なく、内容はまるで窺い知れない。
この中に私たちが知りたがっている秘密へと繋がり手がかりがある。
思わず生唾をひとつ飲み込んだ。
モノクマ「ファイルはこの一冊しかないから仲良くみんなで回し読みしてね! それじゃ!」
モノクマは私にそのファイルを手渡すと、そのまま姿を消した。
内容について質問されるのを避けるためか、随分とお早い退散だ。
夏葉「とにかく中身をあらためてみましょう、見ないことには話も進まないわ」
雛菜「なんだかドキドキしますね〜」
冬優子「……ルカ、ページをめくってちょうだい」
ルカ「お、おう……行くぞ」
全員が見守る中、ゆっくりとそのページをめくっていった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
283プロダクション連続殺人事件
本記は芸能事務所・283プロダクション所属のアイドルが多数命を落とした一連の事件についてまとめたものである。
事件に関与したとされるのは同プロダクションのアイドル全16名、同プロダクションの社長とその賛同者である。
アイドルのうち11名はなんらかの形で命を落としており、今回の事件の主犯格とその腹心も自殺に及び事件は事実上の未解決となった。
事件の大筋は、社長の天井努による殺人の強制である。
アイドル16名は学校を模して建築された専用施設に拉致監禁、その際に記憶を操作する何らかの手術も行われていたとみられている。
アイドル16名は社長たちによる恐喝・恫喝行為を受けたことにより冷静な判断能力を失い、お互いを手にかけるような一種の洗脳状態に陥っていた。
どうやら犠牲者は相互に加害者と被害者の関係に分かれているようだが、その事の次第は未だ明らかになっていない。
以下、本件における死者および検分に基づく推定死因。
【櫻木真乃】鳥獣に全身を食い荒らされ死亡
【八宮めぐる】服毒または至近距離で爆発を受けたことによる全身致死傷
【白瀬咲耶】水に濡れたところに高圧電流が通電したことによる感電死
【幽谷霧子】全身圧迫による複雑骨折および呼吸困難
【大崎甘奈】首元の裂傷による失血死
【大崎甜花】胸部の刺し傷が心臓にまで到達し死亡
【西城樹里】全身骨折および脳出血
【杜野凛世】爆破(死体の損壊が激しく一部発見できず)
【浅倉透】頭部に強い衝撃を受けたことによる脳挫傷
【樋口円香】腹部に槍のようなものが貫通し臓器を損傷
【福丸小糸】全身圧迫による内臓破裂
【天井努】高所より転落したことによる全身骨折および内臓破裂
【身元不明】事件現場において他のいずれとも違う人物の肉片が確認されている。もはや一人物と特定するのは困難な損傷であるため、身元不明として処理する。
また、事件現場からは生存者として5名の人物が保護された。
いずれも同プロダクションのアイドルであり、連続殺人の渦中に置かれていたため精神面で後遺症があるとみられ、現在では心身のケアが進められている。
彼女たちが無事立ち直ってから同プロダクションのプロデューサーの協力を受けた上で取り調べを行うこととする。
以下現場より保護された生存者
【風野灯織】【田中摩美々】【園田智代子】【和泉愛依】【市川雛菜】
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「……は?」
書いてあることの、全ての理解を拒んだ。
登場人物、出来事、内容、そのいずれにおいても現実離れしている『あってはならない』こと。
読み進めていくうちに、一人また一人と言葉を失っていき、騒がしいはずの遊園地は気が付けば音が何もしなくなっていた。
やがてめくっていくページもなくなり、固い表紙裏に行きついて、ようやっと言葉を絞り出す。
ルカ「……な、なんだよ……これ……」
あさひ「……」
恋鐘「283のみんなが……死ん、どる……?」
夏葉「天井社長が283のみんなにコロシアイを強要した……? それに、社長も死んでいる……? 樹里と、凛世も命を落としている……?」
でも、誰も『悪い冗談だ』なんて言葉でその中身を否定はしなかった。
それは、そこに書いてあることを誰もが一度想定していたからだ。
千雪が命を落とすこととなった『二つ目の動機』。
そこで一度このコロシアイの可能性は示唆されていた。
この島にいない面々が登場して描かれた凄惨なコロシアイがゲームのシナリオとして私たちの前に出た時、
あのゲームは『ノンフィクション』だと宣言されていた。
そして、画面上に浮かび上がった大崎甜花の死体。
あの写真とここに書かれている死因とは完全に一致していた。
途端に死と喪失が実感を伴って目の前に立ちふさがった。
智代子「そ、それに……これ、どういうこと……? わ、わたしと雛菜ちゃん、それに灯織ちゃんに摩美々ちゃん、愛依ちゃんも……コロシアイの生き残り……?」
雛菜「……あは~?」
そしてもう一つ私たちの前に現れたのは、大きすぎる謎。
私たちよりも以前に行われたであろうこのコロシアイ……その中にこの島にいた人間の名前も含まれているのだ。
確かにあの『かまいたちの真夜中』でも風野灯織の名前は登場していた。
だが、あいつだけでなく五人の生き残りがそのままこのコロシアイにも参加しているとは思わなかった。
既に三人が命を落として、残るは二人のみ。
だが、園田智代子も市川雛菜も両方ともまるで心当たりがないという様子で目の前の事実に狼狽えている。
あさひ「……もしかして、一つ目の動機の話っすかね」
冬優子「モノミがふゆたちの記憶を奪ったって言うアレ……? それで、この二人もコロシアイの時の記憶を奪われてるの?」
智代子「し、知らない……わたし、こんなコロシアイなんて……知らない……」
智代子「わたしのなくなった記憶の中で……樹里ちゃんも、凛世ちゃんも……死んじゃってるの……?」
何度も頭を掻きむしった。
この脳には、確かにその時の記憶が刻まれていたはず……今もあるはずだ。
それなのに、その記憶は錠前をかけられたかのようにまるで取り出すことができず、自分にもその心当たりがない。
何よりも覚えていなくちゃならない記憶、何よりも忘れちゃいけない記憶なのに、その光景もその息吹も何もかもわからない。
数週遅れで効いてきた動機の圧に、園田智代子はその場にへたり込んだ。
美琴「……それよりも、聞かなくちゃいけないことがあるよね」
冥々たる雰囲気立ち込める中、ナイフのように鋭く冷たい言葉が差し込まれた。
雛菜「雛菜も、これは流石に無視できないですね~……」
美琴「……【浅倉透】、このコロシアイであなたは命を落としていると書かれているけれど、どうしてここにあなたがいるのかな」
透「……」
私ですら、目で追っているうちにその謎の前に思わず声を漏らしてしまった。
今私たちの目の前にいる、【浅倉透】という人間は既に死んでいた。
何度もファイルの写真と本人とを見比べた。
儚げな雰囲気の割にくりくりとした瞳、肩にかからないほどの長さでまとまった少し青みがかった黒髪。そのいずれも写真と相違ない。
だのに、途端にこの浅倉透という人物に薄靄が罹ったように錯覚する。
それほどまでにこの矛盾は異常、そして看過できないほどに大きい。
ルカ「……前にも一度、聞いたことがあったよな。ちょうど千雪の事件の裁判の後だ。あの時にもお前はコロシアイが以前にも一度あったのか聞かれて、知らないと答えた」
透「……」
ルカ「でも、それって……おかしいよな」
一度、この矛盾には手を触れかけた。
千雪の事件の時には、まだその確証がなかったので、私もその矛盾を前にしても感じたのはせいぜい違和感どまりだったが、
今こうして浅倉透のコロシアイの経験が確定して、それは明らかなものとなった。
こいつは、外の世界の人間との接触を認めている。
七草にちかの糾弾を全面的に認めつつも、あくまで敵ではないと主張した。
そして、千雪の事件の時にはこいつはコロシアイのことなど何も知らないと言った。
こいつが本当に一回目のコロシアイに関与していないのならばまだよかった。
だが、コロシアイの参加が明らかになった以上、『外の世界と通じていながらも記憶を有していない』なんてことは成立しえない明らかな矛盾だ。
ルカ「お前、全部知ってるんじゃないのか……?」
一度は信用しようと、歩み寄った一歩。
それはたった一日のうちに、取り消さざるを得なくなった。
透「そっか……私、死んでたんだ」
ルカ「……は?」
透「……ううん、知らない。私は、何も知らない。聞かされてもいなかったからさ、死んでたってのも」
美琴「ふざけるのもいい加減にしてもらえるかな」
ルカ「お、おい……美琴……」
美琴はどんどんと浅倉透に詰め寄っていき、やがて浅倉透からは見上げねば視界に顔が収まらなくなるほどの距離に。
美琴の頭には完全に血が上っているようだ。
美琴「あなたはにちかちゃんの命をかけた糾弾をどこまで時踏み躙りたいの。答えをいつまでも出さずに、バカにしているとしか思えない」
透「……ごめんなさい」
透「もう、言わざるを得ない……か」
その謝罪は美琴に宛てたものだったのか、別の誰かに宛てたものだったのか。
浅倉透は真上を見上げ、ひとつ息をつく。
宙に吐き出されたその息をしばらく見つめるようにしてから、あらためて美琴の顔を見た。
透「……わかりました、話します。私が何者で、みんながどうしてここにいるのか」
ルカ「……ま、マジか?!」
透「もう、言わないと……私が殺されちゃうしさ」
ルカ「……え?」
浅倉透は少し後退り、指で斜め下をさした。
その指先、さっきまで美琴の影と重なっていた部分に私たちも視線を落とす。
ルカ「……美琴!?」
そこには、刃渡り三十センチほどのサバイバルナイフがあった。
美琴は問い詰めるために詰め寄ったんじゃない、あのナイフを腹に当てて脅していたんだ。
逃げ場はない、話さないとここで殺す……と。
美琴「……」
(み、美琴……)
そして、浅倉透は語り出した。
静かに、ゆっくりと、瞳を閉じて。
自分自身のことだというのに、まるで昔話を語るような不思議なほどに穏やかな語り口だった。
透「私は、みんなの知ってる浅倉透とおんなじだけど違うんだ」
透「みんなが覚えてる浅倉透が今の『私』」
透「みんなの知らない浅倉透が写真の『私』」
透「……写真の『私』の過去の私が、今の『私』」
『私』という言葉を何度も繰り返す。
ただの一人称だったはずのその言葉はブランコのように理解と非理解との間を往復し、
言葉が本来持っていたはずの意味合いはやがて脱色していき不透明な物体へと移り変わる。
そして、そのモヤモヤしただけの物質をかき集めて浅倉透は、それを口にした。
透「『浅倉透』のある部分までの記憶と人格とをコピーして作られたのが、『私』なんだよ」
ルカ「…………………………………………………………は?」
一体いつから私はSF映画を見ていたんだ?
つい昨日まで言葉を交わしていた相手は一晩のうちにアンドロイドに作り替えられ、更に別の相手は自分の正体はコピーだと自白。
もうこれは小説や漫画の中の世界じゃないと説明がつかない。
浅倉透の口にした言葉は右から左へ私の中を通過して、通り掛けに脳の神経回路の隅々までをショートさせてしまった。
透「だから、みんながこれまで接してきた『浅倉透』とはちょっとだけ違うんだ」
透「その記憶も感触も、覚えてるんだ。でも、私の身体はそれを知らない」
透「……この体で経験してないことばっかり、覚えてる」
何もわからない。
こいつの口から出る言葉も、私の前に立っているこいつの正体も。
私の視界の中にいる『浅倉透』という人間に黒塗りがされてしまったように、もはやこいつの姿すらも視認できなくなった。
雛菜「意味、わかんない……意味わかんない……」
雛菜「透先輩が、何言ってるのか……わかんないよ……」
幼馴染でさえも、それを受け止めきれなかった。
わなわなと震えながら、両腕で自分の体を抱きとめてなんとか立っている。
美琴「……あなたがこのコロシアイのことを何も知らないって言うのは」
透「……私はきっと、このコロシアイより前の記憶で作られたコピー。なんじゃないかな」
美琴「……」
透「……『私』がもう既に死んでたなんて、今の今まで知らなかったんだ。ごめん」
ちょっと前、いやかなり前だったかもしれない。
晩飯を一人で食べながら、BGM代わりにつけた番組で生命だの倫理だので議論を交わす、おおよそ正気とは思い難い番組をちらりと見たことがあった。
そこで議題に上がっていたのはクローンという存在。
全く持って同じ遺伝子情報の持つ生命体を人間の手で生み出すことは許されるのか、否か。
私はくだらないとぶった切ってカップ麺を啜り上げていたはずだ。
自分と全く同じ存在がもう一つあったからと言ってなんになるんだ。今自分の持っている記憶がある限り、その生命体が同一であると見なされることはない。
例え遺伝子の一つまで同一だとしても、人を人たらしめるのはそういう条理の世界だと思っていた。
……なら、今私の目の前に立っている『これ』はなんだ?
『浅倉透』と全く同じ見た目、声、思考、そして記憶。
更に、こいつのオリジナルであった本物の『浅倉透』はおそらく……死んでいる。
『これ』はそんな状況下では……何に当たるのだろうか。
あさひ「……全然、気づかなかったっすよ。事務所で過ごしてきたときと、透ちゃんおんなじ喋り方だったし、雰囲気も変わんなかったっす」
透「人格も同じ、だから」
恋鐘「そがんことが……あり得るばい?」
冬優子「コピー……そんなの、信じられるわけないじゃないの……!」
智代子「でも、夏葉ちゃんのこともあるし……」
夏葉「……ええ、記憶・人格の移植自体は可能だと思うわ。私も実際アンドロイドの体に挿げ変わっているわけなのだし」
あさひ「わたしたちの時代の技術を、はるかに超えてるっすよ……」
透「うちらが知らないだけでさ、あったんだよ。そういう技術。国とかが、隠してたりで」
雛菜「……」
浅倉透の説明に当惑するばかりの私たちは、何度も何度も言葉をなぞって咀嚼しようと試みた。
でも、どれだけ繰り返そうとも一向に先には進まない。
呆然とその言葉を眺めることしかできない中、あいつだけは一歩先に立ち、吐き捨てるようにして言った。
美琴「……くだらない」
ルカ「み、美琴……?」
美琴「言い訳にしても酷すぎる。……そんな世迷言、私は信じられないな」
透「全部、本当だよ。私のこと、全部話したから」
美琴「あなたは浅倉透。それ以外の何者でもない……この目で、この肌で感じてきたものに間違いはないと思うの」
雛菜「……!」
美琴「黒幕と通じているあなたは、死んだと見せかけて生かされていたんだよね。今の今まで。それで平然と何もなかったように装って、記憶がないとかコピーだとか適当な言い訳を並べて」
美琴「……許せないかな」
ギリリと奥歯を噛んだ。口角はいやに吊り上がり、眉もそれに連動して動いた。
虫唾が走る、というのは今の美琴のような表情のことを指すのだろう。
きっと美琴にはもう浅倉透の言葉は届かないんだろうと思った。
整合性だとか論理性だとか、そういうものは感情の前では無力だ。
迷い戸惑う私たちとは別に、美琴はより一層その僧念の炎を猛らせる。
ルカ「……美琴!」
____凶刃が、舞う。
キィィィィィィン……!!
美琴「……なんで、あなたが」
それを制したのは、鋼鉄の体をもつ有栖川夏葉だった。
夏葉「間一髪、ね。体に改造を受けていて助かったわ。いくら鍛えていても、本来の肉体ならナイフの前には無力だったもの」
浅倉透の首元を狙った一振りはメカ女の掌底にぶつかり甲高い衝突音を立ててから地面に落下した。
その衝撃に美琴の肘がビリビリと痺れる。
夏葉「美琴……少し冷静になりましょう。透の今の話……たしかに鵜呑みにできるものではないけれど、はなから否定して殺意衝動に変えてしまうのは早まった決断よ」
夏葉「にちかの遺志を尊重したい。あなたのその気持ちは痛いほどに理解できる。ただ……あなたの中でその形は少し歪んでいないかしら。にちかはあなたに手を汚させることを良しとしないと思うの」
美琴「……ッ!」
ルカ「あっ! おい、美琴……!」
メカ女の説得にも耳を貸さず、美琴はそのままよろけながらその場を後にしてしまった。
残された私たちの元に、再び『コピー』というおおよそ許容し難い現実が戻ってくる。
透「……あのさ」
透「今、言ってもしゃーないかもだけど。コピーだとしても、浅倉透の偽物だとしても、味方だってのは変わんない」
透「モノクマの仲間なんかじゃない。信じて欲しいんだ」
ルカ「……」
きっと、嘘はついていないんだろうと思った。
あの病院で話した時と同じ、自分のことを分かってもらおうと真正面から向き合う態度、眼差し。
ただ、手放しで受け入れるにはあまりに情報量が多くて、酷な内容だったのだ。
私ですら突然突きつけられた現実にたじろいでいる。
『こいつ』のそれは、私の想像を絶する。
雛菜「……あなたは、雛菜の知ってる『透先輩』ではないんですよね〜」
透「雛菜」
市川雛菜と浅倉透は幼なじみだ。283プロ内でも勿論、芸能界でもそうそうそこまで長い時間を共に過ごしてきたアイドルはいない。
もはや心の根幹にも等しい人間が本当は別人だった、なんて世界そのものが揺らいでしまうほどの衝撃だろう。
雛菜「薄々、感じてたんだ〜……透先輩、嘘とか隠し事とかすっごく下手な癖に……雛菜に全然何も喋ってくれないんだもん〜……」
透「……!」
そんな揺らぎの最中、市川雛菜の表情はある種達観したものがあった。
雛菜「雛菜の大好きな透先輩と、なんだか違うなって場面が時々あって……」
雛菜「今、話を聞いて……意外とすっきりしてるんですよね〜」
智代子「雛菜ちゃん……」
雛菜「……そっか〜」
目を瞑って、今一度噛み締める。
次に瞼を上げた時、その瞳には先程まではなかった光が宿っていた。
雛菜「じゃ、今度から『透ちゃん』って呼ぶね〜!」
透「えっ」
雛菜「あなたは雛菜がずっと同じ時間を過ごしてきた透先輩ではないけど、この島で一緒に過ごしてきたのは変わらないでしょ〜?」
雛菜「雛菜は透ちゃんと変わらず仲良くしたいから! それでいいよね〜?」
「自分がどうしたいか」を優先した答え。
感情を整合性よりも先にして殺意に呑まれた美琴と、その文脈は似通っていた。
しかし至る所は全くもって違う。奔流に飲まれて自分すら見失った美琴と対照的に、そこには確固たる自我がある。
どんな状況でも、自分を見失わないこいつだからこそ出来た清々しいまでの答え。
どこか子供っぽさすら感じさせるその言葉は、私たちの胸に心地よい風を走らせた。
恋鐘「雛菜の言う通りばい! うちの知ってる透じゃなくとも、こん透だって島に来てからうち達と過ごしてきた時間は嘘じゃなかもん!」
冬優子「……そうね、これまで過ごしてきた時間は確かなんだし、その上でどう接するべきかは決めていけばいいのかもしれないわね」
あさひ「よくわかんないっすけど、透ちゃんが何か変わるわけじゃないんっすよね? それなら別にいいっす」
夏葉「透、よく話してくれたわね。あなたの抱え込んでいた秘密は、まだ飲み込み切れないけれど……あなたがそれを話してくれた、その勇気は信じてみたいと思うわ」
透「……ありがと。嬉しい、めっちゃ」
ルカ「……まあ、浅倉透のことに関してはそれで一旦受け入れるとしてもだ。実際……お前らはどうすんだよ、このファイルに書いてある出来事」
智代子「そうだよね……向き合わなくちゃ、いけないんだよね」
夏葉「……正直なところ、これまでにも何度も検討してきた可能性ではあったの。それがこうして具体的な形となって目の前に現れたけど……まだ飲み込めてはいないわね」
冬優子「……これが事実なら、283プロダクションのアイドルはここにいるメンバーしか残っていないことになるわ」
雛菜「……雛菜たちも、もう雛菜しかいないんだよね〜」
透「……ごめんね、雛菜」
雛菜「透ちゃんが謝ることは何もないよ〜?」
恋鐘「でも、まだこれが本当だって決まったわけでもなかよ! モノクマが提示したファイル、偽造の可能性だって全然あるばい!」
あさひ「これが本当かどうか、確かめてみる必要があるっす」
智代子「で、でも……どうやって?」
あさひ「生きてこの島を出て、確かめるっす。みんなで生き残って、それで自分の目で確かめるほか無いっすよ」
(……お前がそれを言うのか)
夏葉「……ひとまずは解散しましょうか。今日は色々とありすぎたわ」
智代子「夏葉ちゃんがアンドロイドになっちゃったことが半分くらい霞んじゃってるもんね……今日は濃すぎだよ……」
ルカ「……美琴のこと、私もどうにか出来ないか考えてみる。浅倉透、てめェにも協力してもらう場面があるかもしれない。覚悟しとけ」
透「うん、もちろん」
雛菜「雛菜もお手伝いしてもいいよ〜?」
恋鐘「それじゃあ今日は一旦かいさ〜ん!!」
私たちはジェットコースターをようやく後にした。
ファイルを開いてから、かなり長い時間を……いや、一瞬だったのかもしれない。
ともかく時間の感覚を失うほどの衝撃を受けてしまったのはたしかだ。
それぞれが胸にモヤモヤとしたものを抱えながら、目を向けたく無い答えを半目半目で見つめながら、自分たちのコテージへと帰っていった。
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『ただいま、午後十時になりました』
『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』
『ではでは、いい夢を。グッナイ…』
「ああクソ、うぜェ……」
その罵倒の先にあるのは、自分だ。
ちょっとばかし交流していたからといって、連中のお仲間が死んでいたことに少なからずショックを受けている自分。
仕事先でたまに見かける程度の繋がりしかない相手が死んでいたから、なんだ。
私はそんな感傷的な人間だったか?
カミサマはもっと傲慢不遜で、独善的な……ぶくぶくと膨れ上がった自尊心の塊みたいな存在だったはずだ。
千雪をはじめとした283の連中にすっかり絆されてしまって、見る影もない。
「マジで、意味わかんねえっての……」
そうなると、自分の中に湧き上がる不安に目を向けざるを得なかった。
過去にあったコロシアイ、それと同じ状況にある自分。
そして、私を取り囲む人間たちの諸々。
「……はぁ」
記憶を失った生存者、浅倉透のコピー、そして美琴の暴走。
「病むっての、こんなの」
私も動かないといけない、解決しないといけないことが山積だ。
それは頭ではわかっていたが、今夜ばかりは体が言うことを聞かなかった。
ベッドに乱暴に自分の身体を叩きつけるようにして、そのまま目をつむった。
……何も、考えたくはなかった。
____
______
________
=========
≪island life:day 17≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』
『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』
「……あ」
目を覚まして、まず最初に自分の右手を見た。
指の長さ、皺、関節……どれも私自身、斑鳩ルカのものだ。
どうしてこんなことをしたかというと、それは眠っているときに見た夢に起因する。
私の隣に立っていた人間が突然自分の皮をはいで、そのグロテスクな正体を曝け出すという胸糞悪い夢。
その原因が分かり切っている。
私たちは、あいつを『浅倉透』のコピーであるということを理解したうえで受け入れると決めた。
本人ではないことを踏まえたうえでの承認。少々歪な体制ではある。
それは、倫理だとか論理だとか、諸々の面倒な思考に蓋をするためのその場しのぎの対策法だともいえる。
……それに、今更口出ししたとて仕方ないが。
「……ざけんなよ」
考えたって時間の無駄だ。
私は適当に支度を終えて、早足でレストランへと向かった。
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
雛菜「あ、おはようございます〜」
ルカ「……なんかすげえ変な感じだな」
夏葉「今朝は珍しく雛菜が一番乗りだったのよ」
つい昨日の出来事がどう作用したのかは分からない。
だが、やけに素直な笑顔を浮かべている様子からして『吹っ切れた』という言葉を使うのが適切なんだろうと思った。
智代子「なんだか、今日はちょっと食欲が……」
恋鐘「あ、あれ……なんか変な味がせんね……塩とお味噌、間違えてしもうとる……?」
他の連中はどうにも調子が悪そうで、対照的だ。
私も例に漏れずそっち側、特に言葉を交わすこともせず、美琴の隣……本来七草にちかが座っていた席に腰掛けた。
冬優子「……緋田美琴は、やっぱり来ないのね」
ルカ「……ああ、悪い。あの後私もすぐに寝ちまった」
冬優子「まあ……昨日は仕方ないわよ。ふゆだってそう。あさひなんか考え込んじゃって動かないんだから、ふゆが引きずってここまで連れてきたわ」
あさひ「……」
ルカ「まあ……あいつはそうなるだろうな」
(……あいつもあいつで、目をつけてなきゃいけないんだけどな)
◆◇◆◇◆◇◆◇
冬優子「……まだ色々と飲み込めてないだろうけど、ふゆたちがやるべきことは変わらない。むしろ出ていく理由が明確にできた今、脱出の方法を見つけ出すことに全力を尽くさないといけないわ」
夏葉「ええ、冬優子の言う通りね。真実を自分たちの目で確かめるためにも、全員が生きてこの島を出ていく術を見出す必要があるわ」
智代子「うん……私たちの前に現れた謎、その答えを知るまでは死ぬに死ねないよね……!」
恋鐘「摩美々に咲耶に霧子……うちらん前のコロシアイでは何があったとやろ……」
ルカ「情報の一端だけ毎度毎度小出しにしてきやがって、黒幕ってやつはよっぽど性格が悪いよな」
冬優子「まあ、今更よ」
あさひ「夏葉さん、最後のモノケモノはいつ倒せそうっすか?」
夏葉「ロケットパンチね。そうね、エネルギーの充填はまだしも燃料の確保が厳しいの……スーパーにあるオイルを借りているけれど必要量の半分と少ししかないわ」
夏葉「パンチを打つこと自体はできてもモノケモノを吹き飛ばすほどの火力には、少し足りていないわ」
雛菜「空港のジェット機に積まれてたりしないですか〜?」
智代子「雛菜ちゃん、あのジェット機はハリボテなんだ……」
ルカ「チッ……せっかくの機能も使えなきゃかたなしだな」
夏葉「あら、失礼ね。まるで私が木偶の坊みたいな言い回しではないかしら」
ルカ「いや、そこまで言ってねえけど……」
夏葉「ふふっ……そんなルカの鼻を明かしてみせようかしら」
智代子「夏葉ちゃん?」
あさひ「もしかして……何か他の機能があるっすか?!」
夏葉「ええ、あれからまた自分の体を少し研究してみたのだけど……また新しい機能を発見したわ!」
ルカ「マジか……脱出に使えんのか?!」
夏葉「刮目なさい! これが私の体に隠された新機能よ!」
そう高らかに宣言すると、メカ女は自分の両方の耳たぶを同時に捻った。
それがトリガーになって……次の瞬間。
ドバババババババババ!!!!
智代子「わ、わあああああ?!?!」
あさひ「すごい量の涙っすー!」
透「あれ……ただの涙じゃない、よね」
夏葉「よくわかったわね、透。これは右目からプロテインゼリー、左目からスポーツドリンクが溢れ出しているの!」
ルカ「お、おい……大丈夫なのかこの絵面」
夏葉「さあ、みんな遠慮せずにコップを持ってきてちょうだい! 好きな方を注いであげるわ!」
冬優子「……ふゆはパス」
ルカ「……私もいいわ」
透「あー、じゃあプロテインの方で」
ルカ「お前マジで勇者だな……」
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
衝撃的な光景を目撃して、なんだか食欲を削がれてしまった。
朝飯もそこそこにレストランを抜け出し、自分の部屋に戻る。
「……あいつ、どこまでも人間離れしていくな」
そんな風に独り言ちたが、よくよく考えれば当然のこと。
あいつはもう、人間ではない。
「……」
いや、これは言及すべきことではないか……
……余計なことを考えてしまう前に、行動するか。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【現在の希望のカケラ…24個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
昨日は寝てしまって申し訳ない……
-------------------------------------------------
【第1の島 ビーチ】
「……」
気が付けばまたこの場所にいた……
別に島に来る前にもこんなにガチャガチャなんかやってたわけじゃねえんだけどな……
射幸心と言うか、人の欲と言うものは恐ろしいなとつくづく思う。
……何かと物入りだし、ちょっとぐらいならまあいいか。
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【現在の希望のカケラ…24個】
1.モノモノヤシーンを回してみる【枚数指定安価】
2.やっぱりやめる
↓1
1 選択
「たまには使えるもんだせよ……?」
もう何度目の正直かはわからないが……ちょっとぐらいは期待してるんだからな
【コンマ判定を行います】
【このレスより直下10回連続でコンマ判定を行い数値に応じたアイテムを獲得します】
↓1~10
【ジャバの天然塩】
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ミレニアム懸賞問題】
【オスシリンダー】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【オカルトフォトフレーム】を手に入れた!
「まあ……そうだよな」
「何を期待してたんだ、私は……」
いつも通りの使い方も思いつかないようなガラクタの数々。
まあ……これはどれもあいつらに押し付けるとするか……
「……ハッ」
あいつら、意外なもんで喜んだりするからな。
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…24個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 透選択
【第4の島 ネズミ―城前】
……流石に昨日の今日。
私と言えど、事態をそのままそっくりはいそうですかと飲み込めるわけもなく。
朝の集まりでは口にできなかった思いのはけ口を探して歩いていると、自然とここに辿り着いた。
ここは、唯一モノクマにもモノミにも干渉されない安息地。
それをどこまで信じていいのかは知らないが、そのとりあえずの知識と情報は、私にとってはこの上なく都合がよかった。
そして、それは当事者もその限りではなく。
ルカ「……お前」
透「……ども」
ルカ「……」
話をする、チャンスだ。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【ミレニアム懸賞問題】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
【ミレニアム懸賞問題を渡した……】
透「げー……なにこれ、数学? 宿題はちゃんと自分でやりなって」
ルカ「ちげーよ、大体こっちはもう成人だ。宿題も何もねえって」
透「え、じゃあなにこれ」
ルカ「世界中の数学者を悩ませてる難問だとよ。これが解けたら滅茶苦茶なお金が振り込まれるんだとか」
透「……マジ?」
ルカ「らしいぞ、噂だけどな」
透「……これ、いつまで?」
ルカ「やるのかよ……」
(妙に食いついてきたな……こういうの、好きなのか……?)
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより親愛度が多めに上昇します!】
------------------------------------------------
これまでとは大きく状況が違っていた。
目の前にいる人間をどこまで信じればいいのかもわからず、かといって信じなければ前に進むこともできず。
そういう置かれた状況故の妥協が、つなぎとめている関係だった。
そこに投げ込まれたのは、あまりにも大きく、そして異常な真実。
目の前の人間は、自分を自分じゃないと言い放った。
私がこれまで観測していた事実を、その根底を、概念を、全部全部、ひっくり返した。
ルカ「……気分はどうだよ」
自分自身の気分も分からないままに、相手にゆだねた。
透「……清々しく、はないかな。言いたくなかったことではあるし」
透「でも、雛菜が……みんなが、受け入れてくれた。それは本当に良かった」
ルカ「……」
浅倉透はコピーである。
本物の浅倉透はとうに死んでいる。
本当に、他の連中はそれを受け入れたと言えるのか?
市川雛菜のあの言葉に追随しただけで、そこに思考はあるのか?
葛藤を無視しちゃいないか?
私にはずっとそんな脳内の声がうるさかった。
透「……ごめん、それも私の感想だから」
透「そっちのが、それどころじゃないよね」
ルカ「……そりゃな、頭がこんがらがったままだよ」
この島に来た時から混乱なら、しっぱなしだけどな。
1.オリジナルの浅倉透の事はどこまで知ってるんだ?
2.本当に、前回のコロシアイとやらのことは知らないんだな?
↓1
1 選択
こいつがコピーであるという話を、一応は信じるとして。
私には聞いておきたいことが一つあった。
ルカ「お前は、オリジナルの記憶と人格とを引き継いでるんだよな?」
透「……うん」
ルカ「なら、お前はオリジナルの浅倉透のことをどこまで知ってるんだ? 生まれてから、お前のコピーが作られる、その瞬間まで……全部を知り尽くしてるのか?」
透「……」
表情を変えることなく、視線もそらさずに十数秒。
透「……多分、全部知ってる」
透「小さい時のノクチルの四人の姿も思い出せるし、小学校の時にみんなで豚の貯金箱にお金を入れた映像も頭の中にある」
透「……人一人分の記憶と言えるだけのものは、揃ってるよ」
精巧で比類のないコピー。
きっとこいつが言っていることに偽りはない。
その時の記憶を語れと言えば隅々まで語るだろうし、絵に書けと言えば当時の色彩でキャンバスに描くはずだ。
透「でも、あくまで私はコピーだから」
だからこそ……本人はそのことを私たち以上に重くとらえている節があった。
コピーとして接する事、生きること。そのこと自体に対する負い目のようなものを言葉尻ににじませる。
しかし、次に紡ぐ言葉はそれでは終わっていなかった。
透「……私のことを、無理に浅倉透だと思わなくていいからさ」
透「雛菜と同じで、別の『浅倉透』だと思ってほしい」
幼馴染と定義されていた人間の言葉を、臆面もなく借りてみせた。
透「私はコピーだけど……それは作り出された瞬間までの話。そこから一緒に過ごした時間は……オリジナルだって。そう雛菜が言ってくれたから」
それは私の良く知る、この島での『浅倉透』の姿だった。
あのどこか抜けていて、それでいて目の離しづらい厄介な微笑み。
誰を真似たでもない微笑みが、その場所に転がる。
ルカ「……ハッ」
ルカ「……そんじゃ、とりあえずのところはそういうことで」
透「ん、よろしく」
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【浅倉透の親愛度レベル…8.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…25個】
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
本人と話したら不思議と気持ちは軽くなった。
別にコピーの話が飲み込めたわけではないが、疑問を疑問のまま受け入れる体制ができたとでも言えばいいだろうか。
『浅倉透』という人間を私の中でどう置くべきかの考えは固まったんだと思う。
……ま、元から理屈っぽいのは好きじゃないんだ。
大事なのは自分がどう思ってるか、そういう生き方しか知らない私が悩んだところで馬鹿らしい。
「ま、美琴はそう思っちゃくれないんだけどな……」
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…25個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 冬優子選択
【第4の島 観覧車】
ルカ「……何やってんだ、冬優子」
冬優子「何やってるも何も、手持ち無沙汰でうろついてんのよ。散歩ってやつ?」
ルカ「ふーん……」
返事に少しだけ違和感を感じた。
冬優子にしては、受け答えが何だかおざなりな感じがするというか、覇気をあまり感じない。
目線もあまり合わないし、らしくないという印象を受けた。
ルカ「……」
……だけど、それを口にするのはなんだか気が引けた。
別に、友達ってことなら普通の事なんだろうが……
私たちは数日前まで気遣いなんてしあう仲でもなかったわけで、私の感じる照れは他の人間のそれとはレベルが違って……
なんて頭で言い訳をしているうちに、時間は過ぎていく。
ルカ「お、おい……!」
やるだけ、やってみるか。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
【アンティークドールを渡した……】
冬優子「えっ、嘘。普通に滅茶苦茶かわいいじゃない、どうしたのあんた。何か悪いもんでも食べた?」
ルカ「ひどい言われようだな……要らねえなら返せよ」
冬優子「バカ、褒めてやってんのよ。あんたもそういう女の子らしいこと少しは出来たのね」
ルカ「そういうの今の時代叩かれるぞ、ご自慢のセルフプロデュースはどうしたんだよ」
冬優子「おっと、確かに失言ね。訂正するわ、ルカもそういう心配りできたのね」
ルカ「……余計悪化してないか?」
冬優子「~~~♪」
(ま、喜んでるならいいか……)
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより多めに親愛度が上昇します!】
-------------------------------------------------
ルカ「お、おい……!」
何を言うかも決めずに呼び止めた。
とはいえ、別に冬優子は立ち去ろうともしておらず。要は私が突然に声を上げた形になったのだ。
冬優子は私の並みならぬ様子にしばらくキョトンとしていた。
それでも多分あいつのことだ。
私の中の葛藤と、私が冬優子に何を見たのかすぐに悟ってしまったのだろう。
先手を取ったのは、冬優子。
冬優子「ルカ、付き合いなさい」
ルカ「……え?」
冬優子「そんなアホ面しない、あんたが今いるここはどこ? 付き合ってもらうわよ」
ルカ「お、おい……ちょっと待てって……!」
冬優子は私の手をグイグイと引いてゴンドラへと乗り込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
冬優子「ま、二人きりで話すなら個室はちょうどいいわね」
観覧車なんて乗るのはいつ振りか。
家族で乗った記憶すら朧気、久々の高所に少しだけ胸がざわつく。
冬優子「……話、付き合ってくれんでしょ」
ルカ「……おう」
ただ、冬優子の胸の内は私のそんなざわつきとはまた別に揺れていた。
私がさざ波なら冬優子は大時化。
彼女があまり口にしない、弱みのようなものが密室の中で吐き出される。
冬優子「……前回のコロシアイってやつ、血の気が引いたわ。283の人間があれだけ死んでたこと、それを手引きしたのが自分とこの社長だってこと」
冬優子「……ホント、頭が痛いわよ」
ルカ「……冬優子」
冬優子「……でも、もっと最悪なのがそのコロシアイに、愛依も参加してたってこと……ふゆはあいつを守ってやれずに命の危険に二度もさらして……」
冬優子「そして今回のコロシアイで、いよいよその命を落としてしまった……」
ルカ「……」
このシェルターは優秀すぎる。
外と中との空間を完全に断絶するせいで、中の空気もまるで外に流れて行かない。
この重苦しく手足を動かすのも躊躇われるような空気も、変わらない。
中の私が、何かしない限りは変わらないのだ。
1.今からでも守れるものを守るしかないだろ
2.和泉愛依がお前のことを恨んでると思うか?
↓1
2 選択
本当に、自分のことが嫌いだ。
こんな時に気の利いたこと一つ言えないし、右手を相手のために伸ばしてやることもできない。
つまらないプライド、くだらない言い訳ばかりが目に付く自分が嫌い。
それでも、なんとか励まそうとした。
私の口から出てくるのは、本心とは無関係な……月並みな言葉だ。
ルカ「和泉愛依が、お前のことを恨んでると思うか?」
ルカ「たとえコロシアイにあいつが二回巻き込まれてたからって……お前が救えなかったからって……お前を恨むような人間だって思うのかよ」
冬優子「……」
でも、相手が弱っているときは、月並みで足ることがある。
使い古されたような何気ないエピソードが、急に琴線に触れることがある。
冬優子「……よくわかったわ」
ルカ「……!」
冬優子「あんたが、こういう状況向いてないってことが」
そして、そういうのは私たちのような人間にはそうそうないことも知っている。
私たちのようなひねくれものは、弱っている時だからこそ綺麗な言葉を斜めから見つめ直したりする。
周りが熱狂しているときこそ醒めたりするような、そういうめんどくさい人間なのだ。
冬優子「別に責任に感じなくていい。ただ愚痴が言える相手が欲しかっただけだから。その分では十分役目は果たしてくれたわよ、ルカ」
ルカ「悪い……ホント、こういうの下手だから」
冬優子「そりゃね、上手だったら緋田美琴とあんなことにもなんないでしょ」
ルカ「……」
冬優子「他人よりもまずは自分の事。……ま、お互い様なんでしょうけど」
観覧車が一周するまでの間、私たちは言葉も交わさずに外の景色をただずっと眺めていた。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【黛冬優子の親愛度レベル…8.5】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…26個】
というわけで本日はここまで。
次回自由行動の三回目からの再開となります。
次回更新は4/17の21:30ごろを予定しています。
それではお疲れさまでした。
申し訳ない…
本日の更新は厳しそうです
シャニ4thの準備もあって今週はいつなら更新できるか前もって伝えづらく、不定期になりそうです……
すっかりライブで惚けておりましたが更新を再開いたします。
明日4/27(水)は21:30分ごろから再開予定、ゴールデンウィークで頑張りたいですね。
またよろしくお願いします。
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
私が口にした言葉は、きっと間違いじゃなかったんだと思う。
言葉に載せていた気持ちも、そこにある事実も、なにも間違っちゃいない。
ただ、タイミングとその間が少しだけ掛け違えていただけ。
相手が自分と同族であるということを見落としていただけ。
そしてそれはつまり、あの言葉は自分にとっても的を外れた言葉であるということ。
「……」
私にとって、それは_____
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…26個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 透選択
【第4の島 ジェットコースター】
動きもしないコースターとレールを茫然と見つめ立ち尽くす姿。
その影がこの場所で揺らいでから、まだ一日。
つい先ほども言葉を交わしたばかりだというのに、まるで陽炎のように映るのは人としての性質か。
ルカ「なんか、お互い忘れられない場所になっちまったよな」
透「……かも」
だが、こいつはあくまで『浅倉透』なんだ。
それは肯定的な意味合いでも、それでなくとも。
だから、こいつの姿をとらえられない……この虹彩が悪い。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
【戦いなき仁義を渡した……】
透「おー、映画のDVD。やるね」
ルカ「お前、映画とか好きなのか?」
透「うん。映画館とか結構行ってた」
ルカ「……過去形?」
透「吹き飛んじゃったんだよね、映画館。爆弾で」
ルカ「はぁ……?」
透「冗談」
ルカ「……わけわかんねー」
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより親愛度が多めに上昇します!】
-------------------------------------------------
こいつの存在を許容するとして、そのうえでどうしても気になることがある。
ルカ「なあ、コピーってのは……その、どういうことなんだ?」
ルカ「本物と全く同じ記憶と人格を持った存在ってのは……お前は、人では……あるんだよな?」
そんな言葉が出てきたのは、きっと変わり果ててしまったメカ女と言う存在があるからだろう。
目の前の人間も薄皮一枚剥けば金属製の骨格が姿を現さないとも限らない。
こいつが、そうでないという確証もないのだ。
透「えー、人じゃん。どうみても」
透「手も足も、二本ずつ。目玉だってほら、丸いし」
ルカ「そういう意味じゃなくてだな……」
透「……私が、『浅倉透』になる前……の話?」
ルカ「……!」
どんな電子機器でも、それを制御するOSを入れる前には、入れるための器となる素体があるわけで。
人間と言う存在が、人格を何かに埋め込んで成立するのなら……『浅倉透』にそれを明け渡した前任がいることになる。
私たちはその考えから自然と意識を背けていた。
透「……私が人だって証明するなら、それがいるか」
ルカ「よくもまあ平然とそんなことが言えるよな」
透「まあ、もう今更じゃん?」
屈託のない笑顔を浮かべるその顔が、なんだか妙に無機質に感じた。
透「……でもね、言ったじゃん。記憶は浅倉透本人と全く同じ。もともとあった記憶に上書きされる形で私はこうなった」
透「……前が何かなんて、知らないんだ」
ルカ「……!」
1.後悔はしてねーのか?
2.もともと前の人格なんてなかった、とか?
↓1
1 選択
ルカ「記憶がないとしてもだ。その……自分の記憶を手放したことに後悔はねーのか?」
透「……どうなんだろ」
彼女は、自分のあごに手を当てて考え込むようなそぶりを見せた。
自分の記憶の中に飛び込んで、その奥底に眠る何かを引っ張り出すような……そんな試行錯誤。
呼吸は停止と再生を繰り返し、一つの場所に行きつく。
透「……それもわかんない」
ルカ「そればっかだな」
透「しょうがないじゃん、今の私は『浅倉透』。それには変わりないから」
自分のことでよくもここまで冷淡に言えるな、と思った。
でも、それは冷淡に見えるだけで、その実は対極であった。
透「……『浅倉透』は言ってるよ。後悔は知らないけど……満足はしてる」
透「自分の選択だしさ、やっぱそれはポジティブで行かないと損だと思う」
透「浅倉透として、この場所に立ってること。雛菜と、みんなと一緒にいること……それは私が私になるだけの価値があったと思うよ」
ルカ「……くっせえセリフだな」
透「んー、元の人格?」
ルカ「照れ隠しがお粗末だ」
透「はは、言えてる」
暖簾に腕押しってのはこいつみたいなやつに使う言葉なんだろうか。
どれだけ不安と疑念を押し付けられても、のらりくらりとかわして、平気な顔をしてきやがる。
こんなやつだからこそ……ある種の諦めがつくのかもな。
こいつは、これでいい。
これで、受け入れたっていい。
たとえ、何者だろうと。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【浅倉透の親愛度レベル…10.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…27個】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『ただいま、午後十時になりました』
『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』
『ではでは、いい夢を。グッナイ…』
一日経ってもまだ私の頭はまるで整理がついていない。
次から次へと押し寄せる謎の数々に頭が焼き切れそうなほどの情報量。
変に昂ったような脳髄は、なかなか冷め切らない。
……今、あいつはどうなのだろうか。
感情が情報をシャットアウトし、獣のように直情的な反応を示していた美琴。
その熱はこの夜風の中でも冷めていないだろうか。
……近づくことが怖い。
その熱に、肌が灼き切られてしまいそうだから。
その刃に、皮膚から肉まで貫かれてしまいそうだから。
その憎悪が、再び私に向けられてしまいそうだから。
……でも、向き合うことが出来るのは私だけ。
纏わりつく責任が、鉛のように重たい。
「……クソが」
手に持ったドアノブは、もっと重たい。
-------------------------------------------------
【第2の島 ドラッグストア】
「なんでこんなとこにいんだよ……」
今まで通り、自分の体を痛めつけるような特訓に打ち込んでいればまだ良かった。
鬱憤やストレスを感じる時間が勿体ない。
気を沈めている余裕があるなら、それも全部練習に注ぎ込む。
緋田美琴とは、そういう人間だったはずだ。
なぜ、こんなところで薬品の吟味などしているのだろうか。
「……手ェ離せ!」
「ルカ……!?」
不意をついてその手から薬品をひっぺがした。
プラスチックの瓶は手を離れて落下しても割れることはなく、コロコロと転がってラベルが目に入る。
「コトキレルX……劇薬じゃねえか」
「……ルカには、見られたくなかった」
「私だって、見たくねえよこんな美琴」
顔を背ける美琴を、下から無理やり覗き込む。
その表情は、これまで見てきたどれとも違う切迫したもの。
「お前……本気で浅倉透を殺す気なのか……?」
「……」
「お前も聞いただろ? あいつはコピーだ、それにこっちに敵意はない」
「そんな話、ルカは信じるの?」
「だから本当のことかどうかは確かめてみないことにはって何回言わせんだよ!」
七草にちかの亡霊は、なおもしぶとい。
美琴の瞳はあの時と同じくワインレッドに揺れていて、私の言葉にも耳を貸していない状態だった。
「……退いて!」
私の体は強引に右手で突き飛ばされた。
背丈は私よりも10cm以上高い美琴、その体格差の前に私話す術もなく尻もちをつく。
「あ、おい! 美琴!」
冷たい床の上、走り去っていく美琴の背中を見送ることしかできなかった。
____
______
________
=========
≪island life:day 18≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』
『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』
あの後、棚を確かめたが薬品が持ち出された形跡はなかった。
私がすんでのところで止めたコトキレルX、あれ以外には手もつけていなかったらしい。
危ない淵だったのだとホッと胸を撫で下ろす。
だがきっと、この危ない淵は終わってなどいない。
美琴は何度も何度もその際に立ち、少しでも風が吹けばそこから落ちてしまう。
その手を掴んで、こっち側に引き戻さねばならないのに美琴は何度もその手を振り解く。
「クソ……病みそうだ」
……まるで、以前までの私だ。
美琴との解散を皮切りに勝手に自分の中で歪んだ感情を募らせて、接触という接触を拒んで認知も歪ませた。
他の誰の言葉にも耳を貸さず、自分だけが正しいんだと自己暗示をかけた。
要は、終わっていた。
私は美琴にそんな風になって欲しくない。
美琴は誰よりも華々しいステージが似合う女だ。
眩いばかりのライトの中で汗を散らし、声を枯らし、踊る姿に目を奪われる。
あいつが着るのは血に塗れた真紅のドレスなんかじゃなくて、スパンコールを散らしたステージ衣装だ。
「……チッ」
面倒、見てやらねーと。
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
透「おはよ」
ルカ「……ん」
透「元気ないね」
お前のせいだ、と言ってやりたいがグッと飲み込んだ。
こいつはこいつなりに大変な時期、下手に背負わせたくない。
適当に誤魔化して、すぐに自分の席に逃れる。
智代子「あれから一生懸命思い出そうとはしてみてるんだけどね、全然思い出せないんだ……樹里ちゃんと凛世ちゃん……二人に何があったのか」
雛菜「雛菜もサッパリです〜、もう幼なじみでは雛菜しか残ってないって言われても実感もないですし〜」
透「ごめん、私もそれは聞かされてなかったから」
(そういえば浅倉透は、私たちの失った記憶に関して『忘れたままの方がいい』とか言ってたが……)
(その割に、前回のコロシアイが明らかになってなお焦る様子はない)
(あいつが言っていた失った記憶ってのは、これのことじゃねえのか……?)
(それなら他に何を忘れてるってんだ……?)
そのまま私たちは例のコロシアイについて話し合いながら食事を口に運んだ。
実感のない喪失、食事との噛み合わせはあまりいいもんじゃないな。
ここ最近、食うメシがあまり美味しくないのは気持ちの持ちようなんだろう。
少なくとも、隣の空席が埋まらない限りは私も食事を楽しむ余裕はない。
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
美琴と一緒に飯を食うようになったのも、そんなに前の話じゃない。
千雪に強引に連れられての会食を発端に、以降は一緒に食事をするようになって数日。
たったそれだけの期間、島に来る前の孤独な食事の方が圧倒的に回数も時間も上なのに、もうそれでは落ち着かない体になってしまった。
水槽の中のヤドカリをつつく。
海水浴場から連れてきたこいつは、ずっと一人。
この狭い空間の中に押し込められて、仲間とも切り離されて、孤独の中で生き、そして死んでいく。
「……悪いな」
それでも逃してやれないのが、人間のエゴだ。
孤独から引き戻された時の執着が、この水槽の蓋を外させない。
こいつを逃してしまうと、また孤独になるような気がしてしまう。
「……美琴」
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…27個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 智代子選択
【第4の島 バイキング】
智代子「あれ、ルカちゃん? どうしたの、観覧車を満喫中?!」
ルカ「この面がそんな様子に見えるかよ」
智代子「あはは……どうやら違いそうだね……」
ルカ「それよりお前こそどうしてここに居んだよ」
智代子「いや……このアトラクションの身長制限を聞きつけまして、検証のために訪れたんですが……」
智代子「ホントに私じゃ乗ることができませんでした……ガックシ」
(……確かにこいつちっせえよな)
中学生と大差ない身長のくせして、やたら気丈にふるまう甘党女。
あまりこうして二人で話をするような機械には恵まれなかったが……せっかくだ。
今回はちょっと付き合ってやるか。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
【新品のサラシを渡した……】
智代子「こ、これは……サラシ……」
ルカ「……」
智代子「ジャパニーズ・切腹に使う奴だよね……?」
ルカ「いや、それだけじゃねえと思うけど……」
智代子「……凛世ちゃんなら、使い方も詳しいんだろうな」
ルカ「……」
(まあ、普通の反応か……)
-------------------------------------------------
智代子「ルカちゃんってすごくかっこいいよね! なんだかうちの事務所にはいない、クールさ……とも違ったかっこよさ!」
ルカ「……」
智代子「……ル、ルカちゃん? どうしたの、そんな睨みつけるような……わ、私何かまずいこと言っちゃった……?」
……こいつだって、内心それどころじゃねーはずだ。
ユニットの最年少、核ともいえる存在を失って間もないのに、そのうえ頼りにしていた年上はあんなことになっちまって。
それでいて、他の仲間は……
ルカ「……いい、変に取り繕うな」
智代子「……!」
____とっくに死んでいた。
ルカ「……痛々しいんだよ、そういう素振り。今ここで生き残ってるやつに、そんな明るさなんてあるはずない」
ルカ「心に突き刺さったモンの裏返しだって言うことが、いやでも分かっちまうのが……こっちだってつらいんだよ」
智代子「……」
智代子「ごめんね、ルカちゃん。……あはは、私ったら弱いなあ……どれもこれも、辛くて、頭の整理がつかなくて……」
智代子「頑張らなきゃ、頑張らなきゃ……それだけで頭がいっぱいになっちゃってるのかも」
ルカ「……」
智代子「……本当は、今すぐにでも叫び出したいし逃げ出したいよ。でも、果穂は最後まで逃げなかったから」
1.お得意の甘いもんはどうしたんだよ
2.……乗るか、なんかアトラクション
↓1
2 選択
甘党女の言葉が、耳にも辛くて私は気が付けば背を向けていた。
反対に昇った太陽がまぶしくて思わず手で瞼の上を覆う。
ルカ「……とりあえず、出るぞ」
智代子「え、ルカちゃん……?」
ここから立ち去りたいと思った。
この太陽が照り付ける子の地面は妙に熱くて、立っていられない。
身体と本能は、涼しさを求めた。
焼ききれそうな脳を、覚ますための涼しさを。
ルカ「このアトラクションじゃ身長制限、かかっちまうんだろ?」
智代子「……!?」
ルカ「……小学生も、小金持ちも……どっちも守りたいもののために最後まであいつらはあいつらを貫いたんだ」
ルカ「だとしたら……それにお前が報いるんだったら、笑顔を振りまくアイドルってのを貫くのも生き方の一つだと思う」
ルカ「……それが、自分自身の力で難しいなら……環境を借りろ」
ルカ「私が言いたいのはそれだけだ」
智代子「……ル、ルカちゃんらしからぬ甘いチョコのようなお言葉……!!」
ルカ「……るせー、あんま言うと私は帰るからな」
智代子「ああ、ごめん! ごめんねルカちゃん!」
そこからは甘党女とアトラクションをいくつか梯子。
コーヒーカップにメリーゴーランド、どれも私の趣味じゃあねえが……まあ、悪くはなかった……かもな。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【浅倉透の親愛度レベル…6.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…28個】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
部屋に戻ってもあの間の抜けたメロディが頭から抜けなかった。
とぼけた世界に無理やり引き込もうとする、あの押しつけがましい夢の世界。
そこに浸るなんてこと、生まれてこの方避けてきた節すらある。
あんなので元気を取り戻す、なんてそれこそ夢物語じゃないのか。
そう思っていた。
いや、もちろんそれにほだされたわけではないし、私が得たのは疲労感だけだ。
慣れないことはするべきじゃない、それは間違いない。
ただ……
『ありがとう、ルカちゃん!』
「……ハッ」
元気を得られる人間は、確かに存在することは、学ぶことができた。
経済とは、マネージメントとは、どうやらそういうことらしい。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…28個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
夏葉選択となったところで本日はここまで。
次回は4/28(木)21:00~再開予定です。
それはお疲れさまでした。
【第1の島 空港】
夏葉「……あら? ルカ、どうしたの、こんなところで」
ルカ「……流石に遠目でもお前がいるかどうかはすぐ分かるな。金属光沢が眩しいぞ」
夏葉「ふふっ、ありがとう。毎朝磨いて手入れをしている甲斐があるわね」
ルカ「……それよりお前こそ何の用だよ」
夏葉「ロケットパンチはもう一度見せたでしょ? あれを再度装填するために使える燃料があればいいと思ったのだけど……どうやらあては外れたみたいね」
ルカ「まあ、ここのは全部ハリボテだからな」
……そんなこと、こいつ自身もわかっていただろうに。
アンドロイドに作り替えられて、うまいこと機能していない……わけじゃあるまいし。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【壊れたロケットを渡した……】
夏葉「こ、これは……本物の、ロケットなの……?」
ルカ「みたいだな、見ての通り錆びついちまってるから使えたもんじゃねえけど」
夏葉「物騒ね……ひとまず預かっておくわよ」
ルカ「え? お、おう……」
夏葉「なるほど、オーパーツのようなものなのかしら……」
ルカ「……何をそんなに見てんだよ」
夏葉「……調べてみる価値はあると思うの、ここに記された歴史、そして干からびた時間」
夏葉「もしかすると、私たちにとって何かプラスなものになるやもしれないじゃない?」
(まあ、普通に喜びはしたか)
-------------------------------------------------
こんな言葉をかけるべきじゃない。
それは流石に私でもわかっている。
こいつはこいつの選んだ道に後悔などしていない、むしろそれを誇りに思ってすらいるだろう。
でも、その妙に金属光する体を見ると、こう呟かずにはいられない。
ルカ「……お前、人間に戻りたくないのか」
夏葉「ルカ、よしてちょうだい。そんな現実離れした夢を口にするなんてあなたらしくないわ」
ルカ「……でもよ、今のお前の体に元々のお前だったパーツなんて何一つ残ってない……そんなの、お前_______」
夏葉「今の言葉、透の前で口にするのは控えてちょうだいね」
ルカ「……!」
夏葉「私は選択を後悔しない。あの時動いていなかった方が後悔をしていたし、それに今はみんなを守るだけの力を手に入れた」
夏葉「断言できるわ、私がこの姿になったのは正解だと」
流石はアンドロイドと言ったところだろうか。
覚悟を示すその仁王立ちは、人間のそれ以上に全くと言っていいほどに微動だにしない。
体に通うものの違いが、その両脚に確かな根を張らせていた。
でも、その芯は私たちのよく知るものと同一だ。
信念という言葉が、称するにはふさわしい。
夏葉「でもね、やっぱり人間の体のほうがよかったことだってあるの」
ルカ「……」
夏葉「人間の時には当たり前だったことでも、今の私ではそうじゃない」
夏葉「そのことに切なさを感じなくはないわ」
1.飯が食えねえのは辛いよな
2.飲み物が飲めねえのは辛いよな
↓1
1 選択
ルカ「そりゃそうだよな……飯が食えねえなんて、人生の楽しみも何割減だっつー___」
夏葉「いえ、そうじゃないわ。この体には味覚もあるのよ?」
ルカ「えっ……?」
夏葉「エネルギー炉で燃焼して自家発電をおこなっているの、体外充電以外にも動力源として確保できるのよ!」
ルカ「すげーテクノロジーだな……」
夏葉「私が困っているのは、汗をかけないことよ」
ルカ「汗……? んなもん、かかないほうがいいだろ」
夏葉「何を言っているのルカ! 汗は代謝の証明のようなものよ。あれがあるからこそ運動をしている意味がある、汗がなきゃそれは運動といえないの!」
ルカ「はぁ……?」
夏葉「同じ文脈で筋肉痛も欲しいところよね、あなたも覚えがあるでしょう? 激しいトレーニングをしたはずなのに翌日に筋肉痛が来ないとかえって不安になる現象」
ルカ「あー、それはちょっとわかるかもな……」
夏葉「私は常にそれなの……その意味では生きている実感に乏しい、と言えるかもしれないわね」
ルカ「そこまでいうか?!」
夏葉「人間は運動あってこそ、そうでしょう?」
ルカ「言わんとすることはわかるけど……」
汗をかくだのなんだの、熱血っぽいことからは無縁な私には理解に苦しむ話だった。
でも、それを語るこいつは真剣に悩んでいる様子で……それだけに胸が痛む部分もあった。
……汗、筋肉痛か。
あって当然と思えるものが突然なくなるのは確かに怖い……かもな。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【有栖川夏葉の親愛度レベル……9.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…29個】
【ルカのコテージ】
身体を動かして、それに起きる反応で初めて確かな実感を得るってのはなんというか、あいつらしいというか……
どっかで聞いたような話なんだよな……
それにしても、汗や筋肉痛がないと落ち着かないってのはなんか言い方は悪いがマゾヒストじみてるような……?
ルカ「……くッ、ハハッ」
やっぱり283の連中はおかしなやつしかいねーのな。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…29個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 冬優子選択
【第3の島 病院】
ルカ「……冬優子」
冬優子「……あんたってなんでこういっつもタイミングが悪いワケ?」
私の姿を見るなり冬優子は露骨にその顔をしかめた。
来てほしくないタイミングだったんだろう、すぐに不機嫌な表情は向こうを向いた。
でも、拒絶の言葉は吐かない。
ただ無言のまま廊下を眺めて、立ち尽くしている。
私はそれを合図と受け止め、冬優子の近くの椅子に腰かけた。
私の隣に彼女が座り込んだのは、そこから数分後の事だった。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【ユビキタス手帳を渡した……】
冬優子「……あんたってどんな教育受けてきたの?」
ルカ「開口一番に失礼すぎんだろ……」
冬優子「いや、褒めてんのよ……そんななりしてプレゼントのセンスが結構いいのが謎すぎて」
冬優子「変にフリフリのもん渡されるよりこういう実用的なもん渡されるほうがこっちとしても助かんのよ。立場上悩みも多いし、整理つけたいことも多いから」
ルカ「……苦労人だな」
冬優子「そんな任務背負うつもり全くなかったのにね、ほんといい迷惑だわ」
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより親愛度が多めに上昇します】
-------------------------------------------------
冬優子「……この前は、悪かったわ。ふゆも虫の居所が悪くて、あんたに当たっちゃった」
ルカ「……え? おう」
冬優子「……なによその生返事」
ルカ「いや、冬優子に謝られるのはなんかしっくりこねーっていうか……悪いのは私だろ?」
冬優子「あんたは口下手なりにふゆを励まそうとしてたじゃない、何が悪いってのよ」
ルカ「……」
冬優子「……ふゆはね、ずっと苛ついてんのよ。口ばっかで偉そうに、ふんぞり返るしかできない挙句……誰も守れない」
冬優子「そんなふゆ自身に」
冬優子「……あんたの言葉は、その事実を改めて突き付けて来たわ。ふゆが愛依を殺したって」
ルカ「そんなつもり……」
冬優子「分かってる。ふゆの曲解だって」
冬優子「でも……無理なのよ、あいつが恨むとか恨んでないとか、そういうんじゃないの……」
冬優子「ふゆが、ふゆ自身が何よりも自分のことを恨んでるんだから……!」
この姿は、前にも見たことがある。
明かりの落ちた部屋の中、シンクの前で髪を乱雑に掻き揚げて目元を力強く抑え込んで、奥歯を食いしばっていたあの姿。
美琴とユニットを解散した時の、あの夜の_____鏡に映っていた私の顔だ。
他に責め立てるものが見つからず、自らののど元にナイフを突き立ててている。
そんなかつての私が再び目の前に姿を現した。
(どうすれば……どうすればいい……)
(今の私が……冬優子のために、何を……)
1.冬優子を突き飛ばす
2.自らの手首をカッターで切る
↓1
1 選択
ドン!!
思考はまとまっちゃいなかった。
目の前でくしゃくしゃになっていくそれを、何とか止めたくて、どこかに逸らしたくて。
声よりも先に、音よりも先に、脳が電気信号を走らせていた。
冬優子「……痛っ……ちょっとあんた何を……」
そして、感情がすぐにそれに追いついた。
ルカ「気持ち悪い真似してんじゃねーよ! てめェがナヨって何になるんだ……!!」
冬優子「は、はぁ……!? なんて言いぐさよ、それ!」
ルカ「何がちげーんだよ! 自分だけ傷ついてればそれで満足か!? ちゃんとお仲間の死に目を向けてる証拠だからって自分を慰められるもんな!」
ルカ「でも、そんなの……何にもならねーんだよ……!! 自分を傷つけたって、その傷を誰かが見てくれるわけじゃない……扉を開けて出て行かねえと……見てほしいやつにも届かねえって……そう、三峰結華に教えたばっかじゃねえのかよ……!?」
冬優子「でも、その結華は死んじゃったのよ……!?」
ルカ「知るかそんなこと!」
冬優子「あ、あんた……いい加減に____」
ルカ「てめェのくだらねえ自慰行為に他人の死を利用してんじゃねえ!!」
ルカ「見てると私がイライラしてくんだよ……ウジウジウジウジ……同じとこで足踏みばっかしてよ……!!」
ルカ「アイドルで輝きたいとか抜かすんだったら、ステップの一つでも刻んでみろよ……冬優子!」
口から出た言葉を確かめているその間も肩の息は収まらなかった。
全身を走る沸騰した血液、その熱は中々醒めそうにもない。
やけに力のこもった眼球が、へたり込んだ冬優子をずっと睨みつける。
冬優子「……生意気」
冬優子「どの口下げてそんなこと言ってんのよ……あんたが一番、ウジウジしてんでしょうが……」
冬優子「一度うまくいかなかったからって、緋田美琴との間で軋轢が生じるの、もうトラウマになってんでしょ? いつまでそんなくだんないことに拘ってんのよ」
冬優子「他人を利用して自傷行為で悦に浸ってんのはあんたもでしょ!」
ルカ「てめェ……!!」
冬優子に返される言葉はまさに図星。
鋭いナイフが今度は自分に向けられて、抵抗することもできず胸に深く突き刺さった。
お互いが血を流しあった醜い顛末。
それを締めくくるような綺麗な仲直りという終幕も用意されてはいない。
お互いがまだ熱を帯びる中、冬優子はやをら姿勢を直して背をむける。
冬優子「……はぁ、くっだんない。こんなヘラってる二人組で口喧嘩なんてこの世で一番生産性のない口喧嘩よ」
ルカ「……」
冬優子「……でも、あんたの言う通りかもしれないわね」
冬優子「ふゆは……責任に言い訳して、その檻に閉じこもってるだけ、なのかもしれない」
冬優子「……本当は、何も向き合っちゃいないのかもしれないわね」
冬優子は私の目の前を後にした。
私の中のイライラはまだ収まるところを知らない。
それはきっと冬優子だってそう。
しかし……ただフラストレーションで終わらせてしまうには、この熱は少しだけ胸の空くような感覚を帯びていた。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【黛冬優子の親愛度レベル…10.5】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…30個】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『ただいま、午後十時になりました』
『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』
『ではでは、いい夢を。グッナイ…』
夜が島を満たす頃、私は頭を抱えてベッドの上。
日中ずっと行動していたのに、美琴の影すら見ることがなかった。
今の美琴を一人にするわけにはいかない。
それなのに、今の美琴の行動はまるでわからない。
練習に打ち込むその背中ばかり追いかけ続けた代償が今になって降りかかる。
緋田美琴という人間の内面の奥底を、もっと覗いておくべきだったんだろう。
だが、後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
なってしまったからには状況を受け入れて、その上でできる行動を。
とにかく今は足を動かして、目を凝らす他ない。
この島のどこかにいるはずの、美琴を捕まえるために。
________
______
________
=========
≪island life:day 19≫
=========
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』
『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』
成果ゼロが齎した疲労はいっそう重たく、そしてしつこい。
一晩眠ったところで抜けることはなく、むしろ胸中にずっしりとした悪感情を募らせる。
ほとんど一晩探し回り、諦めて部屋に戻ったのは時計が三時を回る頃。
ジャバウォック諸島は今解禁されているだけでも5つも島がある。
その中で一人の人間を探し出すなんて到底容易なことじゃない。
姿を隠そうと思えば、どうとでもなる。
美琴が私の目を避けるようにしているのは、もはや火を見るよりも明らかだ。
殺意を膨らませた、次の段階に進んでいるような予感。
焦燥感で思わず肌がピリついた。
「……飯食ったら、すぐに探しにいくか」
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
孤独な食事をしていた頃はどこへやら、もうすっかりレストランでの食事はルーティン化してしまった。
今日も一日美琴を追うための原動力を確保する、そう当然のように考えてレストランに足を踏み入れた。
……だが、その『当然』は『突然』に脅かされることとなる。
恋鐘「ない、ない、ない〜〜〜〜〜〜!!!!」
ルカ「ど、どうした……フライパンとフライ返しなんか振り回してよ」
恋鐘「緊急事態、エマージェンシーたい〜〜〜〜〜!!」
ルカ「だから、その中身を教えろって。まるで話が見えてこねーぞ」
恋鐘「ルカ、落ち着いて聞いて欲しか……!」
ルカ「お、おう……?」
恋鐘「朝ごはんの材料が、一つも残っとらん〜〜〜〜!!」
ルカ「……はぁ?」
恋鐘「レストランの厨房に、いつもやったらパンも卵も野菜も補充されとるはず! やけん、今日もみんなの分作っちゃろ〜って思って行ったのに……」
恋鐘「なんも……アスパラ一本すら残っとらんかったと!!!」
ルカ「……マジか」
雛菜「へ〜? それじゃ今日は朝ごはんないんですか〜?」
あさひ「え〜、嫌っすよ〜! 恋鐘ちゃんの朝ごはん、すごくおいしいのに〜!」
夏葉「材料がないなんて妙ね……今までも毎日ちゃんと補充されていたんでしょう?」
ルカ「ハッ、犯人なら分かりきってんだろ」
智代子「……ええっ?! な、なんでルカちゃん、私に疑いの眼差しを?!」
智代子「ち、違うよ?! 違うからね?! 流石に人数分も食べきれないし……そもそも材料から食べないよ?!」
ルカ「まあ……それもそうか」
冬優子「しかし変ね……ふゆ、昨日の晩にコーヒー飲みに来たけど、その時は材料も全部あったわよ?」
透「誰かが持ち出した感じですか」
恋鐘「うちは頻繁に出入りするからよく知っとるけど、とても一人で持ち出せる量じゃなかよ? 食べ切れる量でもなか!」
あさひ「……なんか、嫌な予感がするっす」
ルカ「……おい、まさか」
バビューン!!
モノクマ「突撃隣の朝ごはん! どうもモノクマです!」
ルカ「やっぱりてめェの差し金か……!」
恋鐘「モノクマ、朝ごはんの材料をどこに隠したばい! 一日3食ちゃんと食べんと元気が出んし、困るばい!」
智代子「そうだそうだ! 私たちには食事の自由があります! 権利を主張します!」
モノクマ「クックックッ……随分と食欲オーセーなことで、いかにも育ち盛りって感じだね!」
冬優子「意味のわからない悪戯はさっさとやめてちょうだい。食い意地のはったコイツもさっきからうっさいのよ」
あさひ「お腹すいたっす〜!」
雛菜「このままじゃ雛菜たちのお腹と背中がくっついちゃいますよ〜」
モノクマ「うぷぷぷ……いいねえ、食欲という欲望を剥き出しにして、醜い獣のようだよ。でも、まだまだ足りないかな」
ルカ「はぁ? なに訳のわかんねーこと言ってやがんだ」
モノクマ「はぬ? これでも意味がわからないと?」
夏葉「……!」
智代子「夏葉ちゃん、どうしたの?」
夏葉「私の電子回路が最悪の試算を弾き出したの……モノクマが私たちに何かをけしかけるとき、これまでのデータから考えてみても行きつく結論はただの一つよ」
智代子「そ、それってもしかして……!?」
モノクマ「そう! 今回ボクがオマエラに提示する動機は【コロシアイが起きるまで食事抜き】の学校規則だよ~!」
ルカ「……マジかよ」
モノクマの動機の悪意は加速度的に増している。
記憶を奪ったという事実で不安を煽り、その失われた記憶の中から更なる恐怖を引きずり出す。
かと思えば感染症で身の危険をチラつかせ、いよいよここまで来た。
食事なんてものはもはや生物としての根源的な営み。
この星に生きる者は例外なく須らくが経口での栄養補給を必須としている。
それを剥奪してしまうことの残酷さは誰にでも一瞬で理解できる。
モノクマ「流石は【令和最新版】最先端アンドロイド LEDディスプレイ残量表示 新規設計デザインモデル 快適な使用感 【高出力パワー充電】の有栖川さんだよね! すぐに結論を導き出せちゃうんだもん!」
恋鐘「ちょ、ちょっと待たんね!? 食事ばのうなったら、身も持たん……絶望病ん時とはわけが違うばい!」
モノクマ「人間って食事を摂らなくても水だけで二週間は生きていけるって言うでしょ? まあ栄養失調で搾りかすみたいな姿にはなっちゃうかもしれないけど、それでもお仲間を手にかけるよりはマシなんじゃない?」
あさひ「本当に、食事は一切なにも無いっすか?」
モノクマ「モチのロン! レストランの食材は当然の事、スーパーマーケット、ビーチのモノモノヤシーン、牧場の家畜などなど……口に入れられるものはぜーんぶ没収させてもらいました!」
透「今、もう結構お腹空いてるんだけど」
雛菜「雛菜も昨日は夜食もしてないから既にペコペコ~……」
モノクマ「飽食の時代に生まれた若者たちに喝を入れる! うんうん、これもまた教育だよね! オマエラがステーキを口に運ぶその瞬間にも地球の裏側では泥水を啜る子供たちがいる……食事のありがたみを改めてよく知るいい機会になると思うんだ!」
ルカ「食事を取り上げるのとはわけが違うだろが……!」
間違いなく、過去最悪の動機だ。
絶望病とは次元が違う。この島に生きる全員が一気に自分自身の命を懸けたチキンレースに参加させられるも同然。
体力も衰弱していき、判断能力も低下していく中で、否が応でも自分の本能的な欲望と他人の命とを天秤にかけさせられる。
ここまでくると、もはや殺人を強制されているも同然だ。
モノクマ「まあオマエラが今所持しているものに関しては無理くり取り上げはしないから、しばらくはそれで食いつないでから考えればいいんじゃないっすかね?」
智代子「そ、そんな無責任な……!」
モノクマ「ちなみに殺人が起きるまで食事提供の一切を行わない、このことを譲歩する気は微塵もないから理解しておいてよね。ルールは厳格に守らないと意味がないからね!」
夏葉「……あなた、本気なのね」
モノクマ「うぷぷぷ……オマエラがどこまで自分の命を切り詰められるのか、確かめさせてもらうよ。それじゃあね!」
バビューン!!
モノクマはそのまま姿を消してしまったが、誰もモノクマを呼び止めたり、抵抗しようとしたりはしなかった。
そんなことをしても無駄であることはこれまでの暮らしで嫌と言うほど理解しているし、今は無駄なエネルギー消費はしたくない。
食事を行えないことの恐怖が、行動を強く縛り付ける。
ルカ「……クソッ、まずくねーか。流石に今回ばかりは……」
冬優子「とにかく無駄に体力を消費することは避けたほうがよさそうね。下手に動いて衰弱すると動けなくなるわけだし」
あさひ「……お腹すいたっすね~」
智代子「あさひちゃん、我慢だよ……とにかく今は耐え忍ぶのみ!」
自分自身の腹もそうだが、私にとっての一番の懸念材料は美琴だ。
すぐに島の状況を見て理解はするだろうが、今の美琴は冷静な判断能力を有していない。
断崖の淵に立つあいつは、モノクマの動機によって今まさに強風に煽られている。
どうにかしないと、すぐに事は起きてしまうかもしれない。
ルカ「……一応、島を回って何か食えるものはねーか探してみるか。どうせ残っちゃいないんだろうけど」
夏葉「ええ……そうね。それなら私も協力するわ、今の私はアンドロイド……人間としての食事は必ずしも必要じゃない、体力の消費は私が請け負う」
ルカ「おう、頼むぞ」
冬優子「あさひ、あんたは部屋でじっとしてなさい。あんたすぐに腹空かすんだから」
あさひ「わたし、図書館で本読んでるっす。何もやることがないと空腹のこと考えちゃうし、別のことに集中してる方がマシっす」
ルカ「……なあ、お前もあんま部屋から出んじゃねーぞ」
透「……あー、うん。そうする」
雛菜「雛菜、しばらく透ちゃんの部屋に泊まってよっか~? 一人でいるより、二人でいたほうが安心だよね~?」
ルカ「おう、そうしてやってくれ。……こっちでも、どうにか動いてはみるけどよ」
……とは言ったものの、私もあいつを追いかけまわして体力を消費するのも望ましくはない。とんだ手づまりな状況になっちまったな。
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
「……あぁ、クソ」
朝飯を完全に食らうつもりでいたから、お預けを食らった分余計に空腹に気が向いてしまう。
腹の虫が喧しいことに苛立ちを覚えながら、時計を見た。
まだまだ一日が終わるには時間がある、別の事でもして気を紛らわせないことには私もこの空腹に思考が支配されてしまう。
「……適当に、時間を埋めてみるか」
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…30個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 冬優子選択
【冬優子の部屋】
冬優子「……あんた、肝座りすぎじゃない? 昨日のがあってすぐ来る? 普通」
ルカ「普通じゃねえだろ、私も、冬優子も」
冬優子「……言えてる」
冬優子の言う通り、昨日の今日だ。
冬優子の顔を見るなりフラッシュバックする衝突と感情とが、途端に頬を熱くした。
その感情の所在は怒りなのだろうか、それとも……
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【希望ヶ峰の指輪を渡した……】
冬優子「……」
ルカ「……」
冬優子「……」
冬優子「………………」
冬優子「………………………………………………………………ありがと」
【PERFECT COMMUNICATION】
【親愛度がいつもより多めに上昇します!】
-------------------------------------------------
居心地の悪い静寂が続いて、もうどれだけ経っただろうか。
一応の気遣いから入れてくれた珈琲にも手付かずで、あれだけ主張の激しかった湯気すらもうほとんど観測されない。
冷め切るだけの時間はもう十分に経ってしまっていた。
冬優子「……前回あんたに謝ったの、結構後悔した。あんたはふゆのこと気遣って拙い言葉で励まそうとしてくれてたと思ってたのに、まさかあんな罵倒のされ方をされるとはね」
ルカ「……冬優子こそ、私と美琴のことであんな風に思ってたなんてな」
冬優子「まどろっこしいのはお互いもうやめにしましょ、今ふゆたちがお互いに求めているのは謝罪なんかじゃない。お互い腹の内をさらしたんだから、やることはただ一つ、そうじゃない?」
ルカ「……おう」
同族であることの因果は思ったより強烈らしい。
どれだけお互いを傷つけあっても、憎しみあっても、お互いの考えてしまっていることは分かってしまう。
冬優子の口にする、ただ一つの結末なんてのも、もう分かり切っている。
ルカ「絶交だな」
冬優子「当然、あんたと友達なんてやってられないっての。自分自身を見てるようで気持ちが悪いのよ」
ルカ「こっちもだ、目障りな存在がいなくなってせいせいする」
関係の清算。それしか行きつく先はなかった。
お互いこのままズルズルと負の感情を引きずったまま行くよりは、よっぽどマシ。
それぞれが目隠しをして、耳をふさぐことで穏便に事は収まる。
人間関係ってのはそういうものだって、私たちは痛いほどよく知っている。
冬優子「……」
ルカ「……」
……知って、いた。
冬優子「……何よ、さっさと出ていきなさいよ。まだ用事?」
ルカ「……いや、別に。そっちこそ、なんだよ人の顔をじろじろ見やがって」
冬優子「なんでもないわよ、もうその面二度と見せないでちょうだい」
ルカ「こっちこそ願い下げだっての」
それでも、脚は動かなかった。
感じる視線は変わらなかった。
時計の針が奏でる音も、耳には入ってこなかった。
聞こえてくるのは、二人の呼吸音だけ。
妙に昂る心臓が、リズムの早い呼吸をさせた。
それがすごく耳障りで、でも耳の穴を防ぐことはできなかった。
冬優子「……」
冬優子「…………」
冬優子「……………………ねえ」
それに先に耐え切れなくなったのは、冬優子だった。
ルカ「……」
冬優子「これ、ただの所感だから反応とか要らないけど。口喧嘩らしい口喧嘩、すごい久しぶりだったの。愛依もあさひも、他の連中も……口汚く罵るとか論外って感じで。あんな風にふゆを悪くいう奴、久しぶりに見た」
冬優子「小学校以来かしら、猫被ってるとか、いいカッコしいだとか。流石に罵倒のレベルもあのころとは大違いだけど」
冬優子「……気づいたのよね、あのころに比べると言い返せるようになってるって」
冬優子「同じ立場で、本気でムカついて喧嘩ができて……」
冬優子「それって、案外悪くないのかもって」
冬優子「……あんたと絶交出来て、楽しかった」
絶交と言う言葉を国語辞典で引いた方がいい。
そこにプラスのニュアンスなんて一つもない。
人と人の交わりを完全否定する言葉、それにどんな価値を与えるというのか。
本当にこいつは気分屋で自分勝手な女だと思う。
思わずその滑稽さに頬が緩んだ。
ルカ「お前、バカじゃねえの?」
冬優子「……はぁ?」
ルカ「そんなに楽しかったんなら、また絶交するか」
ルカ「何回も絶交して絶交して……そのたびに本音を言い合って、本気で罵倒して……そんで楽になる」
ルカ「私たちに求められてる関係って、友達だとかそんな下らねえもんじゃねえんだろ」
冬優子「……流石、同族さんはよくわかってるわ」
滑稽なのは、私もそうだった。
あの時感じた胸の空くような感覚。
それに早くもとりこになっている自分がいた。
親相手にも、美琴相手にも、あんなにぶちまけたことなんてない。
自分とそっくりの鏡だからこそ言えた言葉、聞けた言葉。
その不細工な言葉の数々がとても新鮮で、手放すには惜しいと思った。
私も大概に、自分勝手な女だと思う。
冬優子「お互い、利用しあいましょ。ストレスの発散先として」
自分勝手なもの同士、それを繋ぐのはエゴイズム。
あくまでこれは自分のため。
自分にとって都合のいい時間を過ごすためだけの、都合のいい関係。
そこに絆なんて生易しいものはないし、美談めいた話もない。
現実主義を練り上げたような紐帯は、かたむすびをしたように妙に強固だ。
ルカ「おうよ、そんじゃま……とりあえずのところは」
冬優子「ええ、今日の所は」
ルカ「絶交、しとくか」
冬優子「ええ、あんたなんか大っ嫌い」
ルカ「……ハッ、身の入ってねえ言葉だこと」
冬優子「……うっさい」
私たちの関係は変わった。
ただの他人が友達になり、絶交してまた真っ白に。
その白さに、愛おしさを感じるなんて……
_____そんな日が来るなんて。
-------------------------------------------------
【黛冬優子との間に確かなつながりを感じる……】
【黛冬優子の親愛度レベルがMAXに到達しました!】
【アイテム:魔法のステッキを獲得しました!】
・【魔法のステッキ】
〔幼少期に冬優子が見ていたアニメのヒロイングッズ。可愛らしい効果音とともに夢と希望を振りまいたステッキは、誰にも愛される彼女自身のルーツ〕
【スキル:アンシーン・ダブルキャストを習得しました!】
・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
何度だって絶交しあう関係、か……
なんともちぐはぐな収まり方をしたものだ。
千雪の命令には背く形になってしまったけど……きっとあいつなら、この終わり方をきっと認めてくれる。
そう思うんだ。
私は、一歩を踏み出すことができたんだって今はそう思わせてくれ。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…31個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
というわけで透選択となったところで本日はここまで。
シャツの効果ちょっと強すぎたかもしれない……?
まあいいでしょう……多分
三連休となりますが金土は夜予定が入っているので更新厳しいかと思います。
5月1日の21:30ごろ目安で更新予定です。
シーズのイベコミュ実装を挟むので色々とこのSSも不安ですが……
それではお疲れさまでした。
またよろしくお願いいたします。
明日の更新なのですが、ライブアーカイブ視聴会との兼ね合いで夕方の更新にさせていただきたく…
16:00~ぐらいに考えています
1 透選択
【透の部屋】
ピンポーン
どうして、私はこいつの部屋のインターホンを鳴らしているのだろう。
透「……あれ」
ルカ「……よう」
透「珍しいね。うち、なんも食べるものとかないよ」
ルカ「別に集りに来たわけじゃねぇ……ちょっとだけ、入れてくれよ」
どうして、こんな得体のしれない奴に、ずっと私は付き合っているのだろう。
どうして、どうして……
その答えをどうしても知りたい……きっと、そういうことなんだろう。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【バールを渡した……】
透「おー、これ。ゾンビとか殴るやつじゃん」
ルカ「……ゾンビ?」
透「知らない? これで首引っかけてガッやるの」
ルカ「いや、そんなバイオレンスな趣味はねーんだけど……」
透「これ、いいね。気に入った。これあれば生きていける」
透「ビバ、世紀末」
(映画趣味があって助かったな……)
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより親愛度が多めに上昇します!】
-------------------------------------------------
思えば私は、こいつと会話をしたことがなかった。
私が言葉を交わしていたのはこいつを取り巻く情報。
島の外の人間と繋がっている、こいつは浅倉透のコピー、そういう表層に回遊しているものだけを掬って、そのことばかり気にしていた。
今目の前に立っている存在、そこに触れようとはしなかった。
触れてはいけないと、そう思っていたのかもしれない。
だってこいつは________
透「……昔見た映画なんだけどさ」
ルカ「なんだよ、急に」
透「なんか、魔法みたいなすごろくで。子供たちはそこに吸い込まれちゃうんだよね」
透「すごろくの中は、漫画とかアニメとか、そんな感じの世界で。でも、すっごく危ない場所で」
透「クリアしないと出られないのに、何年も、何十年もクリアするまでに時間がかかるの」
透「やっとの思いでクリアしたら、そのときの時間ごと……その世界はなくなっちゃうんだ」
ルカ「それって、プレイする前の状態に戻るってことか?」
透「うん、大きく成長した身体も、そこで育まれた愛とか、思いも全部ね」
ルカ「……やるせないな」
透「……そうかな」
ルカ「……え?」
透「そのゲームで、そうやって時間を過ごせたってことはさ。何度だって同じ道を歩けるってことでしょ?」
透「たとえ、その記憶が無くなろうとも、人格が無くなろうとも……その人はそれができるだけの何かを、持ってるってことでしょ?」
私たちの記憶を奪って、この島に連れてきた犯人の一人。
ほかならぬこいつ自身がそう言っていた。
そんなやつが口にしたとは思えない、古臭い映画とそのあらすじ。
そこからつかみ取った青臭いメッセージが何だか妙に私の耳に残った。
耳孔を跳ねて反響して、その奥に届く。
私たちが失って、必死に取り返そうとしている記憶の数々。
それを拒絶するでも否定するでもなく、そこに隠されている可能性を、浅倉透は肯定した。
自らを投げうち、忘れ、浅倉透に【なった】……こいつが。
透「……もしかしたら、忘れた記憶の中で世界救ってたりするかもじゃん」
ルカ「ハッ……だったらこの島に集まったのは英雄たちの同窓会、ってか」
透「かもね」
それは自己肯定だったのかもしれない。
自分自身の生き方を他人にとやかく言われたくないとか、そういう思春期丸出しの主張だったのかもしれない。
でも、たとえそうだったとしても、こいつが自分の立場からものを言ったのは、これが初めてだったのかもしれない。
透「私、ドラゴンだって狩れるから」
____そう感じることができたのは、その笑顔があまりにも自然だったから。
-------------------------------------------------
【浅倉透との間に確かなつながりを感じる……】
【浅倉透の親愛度レベルがMAXに到達しました!】
【アイテム:10年後のカセットテープを獲得しました!】
・【10年後のカセットテープ】
〔時を超えて音声とともに大事なものを結ぶ方舟。彼女がそこに吹き込んだ言葉は10年の時を待っている〕
【スキル:つづく、を習得しました!】
・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
【ルカのコテージ】
記憶を失った自分、失った記憶の中の自分。
その二つをどちらも肯定して生きていく、なんてとんだ棚上げだと思う。
でも、映画のあらすじに駆け付けて話したそれが、不思議と悪くないプランに聞こえて、それが我ながらこっぱずかしくて、
話を早々に切り上げて私は撤収してしまった。
「……にしても、つくづくよくわからないやつだよ。オマエは」
今のあいつは、浅倉透という影もぶれて見える。
能天気女が言っていたように、ここで過ごしたあいつとしての時間が……じきに成熟しようとしているのだろうか。
本当に、読めないものだ。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…32個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 あさひ選択
【第2の島 図書館】
ルカ「……オマエ、またここにいたのか」
あさひ「あ、ルカさん! こんにちはっす!」
モノクマの動機提供があり、事態は大きく動き出す。
そうなると真っ先に注意を向けるべき対象が、こいつだ。
以前として狸の嫌疑のかかる中学生が、何かをしでかしやしないかと胸騒ぎがずっとしていたのである。
ルカ「なにをそんな熱心に読んでんだ……?」
あさひ「何か食べられる植物はないか探してたっす! お腹、やっぱり空いちゃってるっすから」
……でも、小宮果穂の処刑の時に見せたあの顔。
あの悲痛な叫びも、どれもこれも……偽物には見えなかった。
こいつの、正体って……本当は……?
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【クマの髪飾りの少女】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【神の砂の嵐の角を渡した……】
あさひ「な、なんっすかコレ……!?」
ルカ「何の動物かもわからねえガラクタだ。いらねえしやるよ」
あさひ「すごい……ロマンっすよ、これ!」
あさひ「なんの動物の角なんっすかね……!? ユニコーン、それともケルピー!?」
あさひ「これ、風が読めるような気もするっす……これ持って外行ってくるっすよ!」
ルカ「あ、おい……ちょっと待て!」
ルカ「ちょっ……足、はや……!?」
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより親愛度が多めに上昇します】
-------------------------------------------------
ひとまずの監視を行うかと近くの席に着座。
空腹を紛らす目的もあり、適当な文庫本を手に取ったのだが……視界の端でこいつはちょこまかと。
さっきまでご執心だった可食植物の本はどこへやら、机の上には人体の解剖図のようななんとも目に優しくない色合いのページが広がっていた。
ルカ「……おい、何やってんだ」
あさひ「え? ああ、これは研究っす。ほら、夏葉ちゃんの身体……変わっちゃったじゃないっすか?」
ルカ「……! お、おう……」
あさひ「だから、この人体と見比べてみようかなと思って。筋構造とか骨格とか、どう変わったのかなって気になったっす!」
ルカ「……」
私はもう齢20を過ぎる身だ。
かつてあった童心も随分と色あせてしまったし、興味関心なんてものも鳴りを潜めて久しい。
でも、そうだとしても……年頃の少女と言うのはここまで自分の好奇心に振り回されるものだろうか。
仲間の肉体が変わり果ててしまったという悲痛を差し置いて、その身体構造に目を向けて爛々と目を輝かせる。
それは果たして、健全な興味なのだろうか。
あさひ「あのロケットパンチとか、自分の意志で制御してたから脳神経と繋がってるっすかね?」
あさひ「神経回路の電気信号で動いてるんだとしたら、すごい技術……義手とかの技術の応用っすかね」
ルカ「なあ、おい」
あさひ「……? どうしたっすか?」
ルカ「オマエ、そもそもで引っ掛からねえのか? 仲間がロボットになった、なんて言われちまって」
あさひ「……」
私の問いかけを耳にした瞬間。
空気が突然に変わった。
眼からはハイライトが消えて、空調の音だけが空間に響く。
あさひ「それ、どういう意味っすか?」
あさひ「わたしが……夏葉さんの身体に、果穂ちゃんの死に何も感じてないって言いたいっすか?」
ルカ「……!」
1.オマエは自分の感情から逃避しようとしてるだけじゃねえのか
2.あの時の涙はなんだったんだよ
↓1
2 選択
ルカ「……あの時の涙は何だったんだよ」
あさひ「……!!」
ルカ「小宮果穂と死別するときの、オマエのあの感情はどこに行ったんだ……メカ女が現れるなりそれに執心しやがって」
ルカ「ガキは時々残酷だっつーけどよ……オマエの振る舞いは、それにとどまらない」
ルカ「……小宮果穂の気持ち、本当に分かってやってんのか……?」
あさひ「……」
あさひ「……わたしだって、ずっとずっとつらいっす」
あさひ「起きる度に、体がなんだか重たいし、胸のあたりがずっとズキズキしてるっす」
あさひ「気を抜くと、愛依ちゃん、果穂ちゃん……みんなの顔が思い浮かぶし」
あさひ「夏葉さんの、あの優しくて、筋肉質な腕の感触が……蘇るっすよ」
あさひ「でも、だからって……それに縋ってちゃダメだって……冬優子ちゃんが戦えって、そう言うから……」
あさひ「……わたしは、負けられないっすよ」
あさひ「ストレイライトの芹沢あさひでい続ける限り、愛依ちゃんとも、プロデューサーさんとも約束したっすから」
あさひ「だから、凹んでいるよりも……もっと、次に続く何かがしたいっす。わたしに何ができるのか、わたしに何がわかるのか、ずっとずっと、考えたいっす」
あさひ「それに、果穂ちゃんが言ってたっす」
あさひ「わたしたちは大きくなれる、変わっていけるって」
あさひ「……なら、わたしがやるのは泣くことじゃないと思うっす」
こいつの振る舞い、わたしはその中で揺れ動いている感情が見えちゃいなかった。
こいつだって、年頃の子供でこの島に起きている出来事にかき乱されない道理なんてない。
脳を揺さぶられるような情報と感情の奔流に、こいつは必死に抗っていた。
自分自身の好奇心と言う逃げ道を用意して、それに縋ることで、やっとここまで歩いていた。
……残酷な仕打ちを受けているなと思う。
ルカ「……悪い」
あさひ「いいっすよ、別に。気にしてないっす」
こいつという人間に近づけば近づくほど、知れば知るほど……どんどん狸のイメージから遠ざかっていく。
この島で暗躍している影、その輪郭はどんどんぼやけていく一方だった。
-------------------------------------------------
【芹沢あさひの親愛度が上昇しました!】
【芹沢あさひの親愛度レベル…8.0】
【希望のカケラを入手しました!】
【現在の希望のカケラの数…33個】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『ただいま、午後十時になりました』
『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』
『ではでは、いい夢を。グッナイ…』
時間がいくら経過しようとも胃を満たすのは消化液の蒸発した気体のみ。
ただでさえ痩せ型の体型の私は、この一日何も口にしないだけで目眩のするような感覚を覚えた。
「これは……想像以上に体力を持っていかれるな」
美琴の状況は気になるが、それ以前に私自身の身が危ぶまれる。
静かになれば部屋にはすぐに腹の虫が響く、耳栓をしたところで体の内側から聞こえるこの声はどうしようもない。
一人になったこの瞬間、空腹感が荒波のように押し寄せた。
……美琴が暴走をする前なら、二人で気を紛らわせる何かもあったかもしれないのに。
水槽のヤドカリを指先でつつく私は、空腹に加えて孤独を痛感せずにいられなかった。
____
______
________
=========
≪island life:day 20≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』
『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』
目が覚めて、まず体に違和感を覚えた。とりもちに引っ付いたように、体が布団から持ち上がらない。
いっせーので目を覚ます、上体を起こすだけの動作が日ごろどれほどのエネルギーを消費して行っているのかをはじめて知った。
腹に意識して力を込めることでようやく持ち上がった体、気怠さがその先を継げない。
「レストランには……行ってもしょうがねえか」
どうせ行ったところで食事の支度はない。なら、無駄に歩くよりも他に時間の過ごしようがあるだろう。
そう思ったのも束の間。
『あ、ここでアナウンス! 朝ご飯が食べられなくなってオマエラも退屈してるだろうから、オマエラのために新しいレクリエーションを考案いたしました! 目を覚ました奴から順次中央の島のジャバウォック公園に集合ね、来なかった奴は分かってるよね~?』
最悪だ。
いや、モノクマの事だ。ただ食事を抜くだけで終わらないのはある程度想像もついたといえばついたか?
空腹に苛まれて思考の幅が狭まってしまっていたのだろう。
これだけほどのアナウンスに過大なショックを受けながら、私は千鳥足で中央の島に向かった。
-------------------------------------------------
【中央の島 ジャバウォック公園】
元から朝は得意な方じゃない。
こちらの都合などお構いなしに照り付ける太陽には毎朝舌打ちをしながら中指を立てていたというのに、
食事もナシにこう島の移動で歩かされると余計に苛立ちが募る。
イライラと鬱憤が溜まっていく状況だというのに、中央の島へと渡ると、更にそれに拍車をかけるようなレクリエーションが私たちを待ち受けていた。
モノクマ「はい、そのままゆっくりと状態を右から左へ回してくださいね!」
あさひ「はいっす!」
モノクマ「そのまま5秒間キープ! 気をため込んで……あ、片足はちゃんと上げたままね!」
智代子「ひ、ひぃ~~~~! バランスが、保てないよぉ~~~~!」
夏葉「智代子、しっかりと丹田に力を籠めるのよ!」
ルカ「機械で制御された体のやつが何を言ってんだ……」
モノクマ「はい、今度はお腹に力を入れて左腕を突き出して~?」
雛菜「このポーズ、可愛くないし雛菜やりたくない~……」
透「なんか昔映画で見た気がするかも。なんだっけ、あの……ジョッキー?」
恋鐘「それやと馬に乗ってしもうとるたい……」
モノクマが私たちに強要したのはまさかの太極拳。
緩慢な動作、されど肉体への負荷はかなり大きい。
原理は良く知らないが、はじめて十分と経たないうちに私たちは汗だくになっており、体力もゴリゴリと削られた。
動作が静かな分、嫌でも自分の空腹と向き合うことになるあたりが性格も悪い。
モノクマ「ふぅ! 朝からいい汗かきましたね! この調子で続けていけばみんなもきっと海王を名乗れるほどの実力が身に着きますよ!」
冬優子「何よ……黒曜石を球体にでも削らせる気?」
あさひ「何言ってるんすか、冬優子ちゃん」
モノクマ「モノクマ太極拳は毎朝10時からこの公園で全員参加! やむを得ない理由がある場合を除き、参加しなかった不届き者にはペナルティが課されるので覚悟しておくように!」
雛菜「えぇ~~~! 面倒くさい~~~~!」
ルカ「……チッ、無駄に毎日運動させやがって」
恋鐘「運動自体は悪くなかやけど……ちゃんとした食事があってこそのもんばい……!」
あさひ「やる前より更にお腹が空いた気がするっす~……」
モノクマの目論見通りと言ったところだろう。
口々に不満を漏らす私たち、いかにも噴出する寸前といった様相だ。
これが毎朝続くとなると私も気が気でいられない。
だが、こんな無意味な太極拳にも一つだけ大きな利点があった。
それは、美琴も必ずこの太極拳には参加しなくてはならないという点だ。
この島で暮らす以上はその規則の中でしか生きられない。
全員参加のイベントには必ず美琴も顔を出す。公園の端で一人ぽつんとではあったものの、確かに参加しているのを私も目撃していた。
モノクマが姿を消すと、すぐに美琴の元へ向かった。
美琴「……ふぅ」
ルカ「み、美琴……」
美琴「……!」
だが、声をかけるとすぐに美琴は背を向けて、その場を立ち去ろうとする。
美琴の体力も削られているようだ、その足取りはいつかに比べるとずいぶんと拙い。
今なら、聞いてもらえるかもしれない。
ルカ「待てよ、お前も体力だいぶ削られてんだろ? 無理すんなって」
美琴「……」
ルカ「なあ、頼む……もう一度、話をさせてくれ。浅倉透のことは置いといてもいい、私の気持ちだけでも聞いてはもらえねーか……?」
美琴「……」
それでも美琴は振り返らなかった。私たちと言葉も交わさずに去っていく。
その背中を追う力は、今の私には残されていなかった。
無力感と疲労感がこみあげて、地面にぺたりとへたり込む。
冬優子「ルカ……あんた、大丈夫?」
ルカ「……おう、悪い」
冬優子「……モノクマのやつ、あんたたちの決別のタイミングを狙ったのかしらね」
ルカ「かもな……クソッ、つくづく嫌な野郎だぜ」
冬優子「ええ、ドブネズミ以下ってところかしら。腐り切ってるわ」
タイムリミットは、そう長くない。
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
部屋に戻って、ベッドの上。
空腹を無理やり眠って誤魔化そうとも考えたが、太極拳のせいで変に目が冴えてしまっている。
運動というのは健康な時には何よりの味方だが、肉体に異常が起きているときは毒になりうる。
運動が体を蝕んでいく感覚に、虫が全身を這い上がるような言い知れぬ不快感を覚えた私は、時間を埋める術を求めた。
「……一人でいたら、気が狂いそうだ」
【自由行動開始】
【事件発生前最終日の自由行動です】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…33個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 夏葉選択
【第1の島 牧場】
牧草地帯の緑の中に一人立ち尽くす……金属光沢。
明らかに異様な存在なので、数十メートルはあろうかという距離でもすぐに見分けがついた。
ルカ「……よう」
夏葉「ルカ……あなた大丈夫? だいぶげっそりとした様子だけど」
ルカ「しょうがねえだろ……腹も減ってるし、さっきのよくわからねえ太極拳でじり貧だっての……」
夏葉「そうよね……人間は体力的に厳しい段階よね……」
ルカ「……アンドロイド目線が沁みついてきたな」
夏葉「……! やだ、私ったら……」
ルカ「照れるのはそこなのかよ……」
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【クマの髪飾りの少女】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【ジャパニーズティーカップを渡した……】
夏葉「あら、随分風情ある贈り物ね。凛世が好みそうな装丁が施されてあるわ」
ルカ「ただの湯飲みってわけじゃないらしい。これを使うとただの水でも甘く感じるんだと」
夏葉「それはすごいわね……! ぜひ試してみたいわ!」
夏葉「惜しむらくは、今の私の味覚はあくまで再現品だということ。生身のうちに試してみたかったわ」
夏葉「でも、とても嬉しいわルカ。ありがとう」
【PERFECT COMMUNICATION】
【親愛度がいつもより多めに上昇します!】
-------------------------------------------------
ルカ「……ああ、くそ」
元から健康体でない身体に食事抜きと言うのは思っていた以上に大きな影響を与えているようで、思わずよろけてしまった。
らしくもねえ、弱弱しい素振り。
そのままメカ女の手を取ってしまったのが余計に癪。
夏葉「ルカ……あなた、本当に大丈夫なの? 無理はせずちゃんと休んでちょうだい」
ルカ「別に無理なんかしてねー、それに何かしてねえと逆に空腹を意識しちまって頭が狂うんだよ」
夏葉「……そうよね、気持ちは分かるわ。でも……」
ルカ「南国の陽気が余計にきついんだろうな、日差しが体力を持っていきやがる」
夏葉「もう……すぐそこの小陰で少し休みましょう。備蓄していた水ならあるから……」
メカ女に促されるまま、木の下で座り込む。
私をエスコートするその間も、ずっとエンジンの駆動音が聞こえていたのがなんとも妙な感覚だ。
夏葉「……ごめんなさいね、私も体が変わってしまってから体調管理に少しだけ鈍感になってしまっているのかもしれないわ」
ルカ「自己意識の変化ってとこか」
夏葉「お恥ずかしい限りよ」
ルカ「いや、そういうもんだろ……もうオマエは管理の要らない完全体なんだから」
休息も栄養も、電気ですべて事足りる。
生物の高燃費で小回りの利かない生活よりは、よっぽどスマートだと言えるだろう。
でも、それを改めて口にすると……こいつは切なそうな顔をする。
夏葉「……完全、ね」
夏葉「私は、もともとカンペキな人間……トップを目指してここまで歩んできたわ。何をするにしても、やるからには頂点が信条だったの」
夏葉「でも……私はその景色を見る前に、道を違えてしまった。私の意志ではないにせよ、もう戻れないところまで来てしまった」
それは、おそらく体のことを指しているのだろう。
あれほどまでに自信に満ちた佇まいはすっかり錆びついて、しおらしくなっていた。
伏し目がちに、排気をしているその様子は、年季の入った旧車にすら重なって見える。
(……自信、か)
夏葉「誰かを守るため、この体になったことに後悔はないわ。でも……」
夏葉「生活が変わることに少しだけ寂しさを感じるのは、ダメなことなのかしら」
夏葉「こんな体では、もう元々の生活には戻れないでしょうから」
1.前例がないだけだろ?
2.オマエの周りの連中が、受け入れてくれないと思うか?
↓1
2 選択
ルカ「……らしくないんじゃねーの」
夏葉「……えっ」
ルカ「オマエは相当に周りに恵まれてる、そうじゃなかったのか? まあ、私からすりゃただの仲良し集団のお節介でしかねえんだけど……」
ルカ「あれだけ殺害予告しといた私を能天気に迎え入れた連中、それがオマエの周りにもいるんだろ?」
ルカ「だったら、何を心配することがあるんだよ。オマエの姿が変わったからって、他の連中の反応が変わるかよ」
ルカ「……実際、今ここにいる連中はオマエを化け物扱いはしてねーぞ」
夏葉「ふふっ……まさか、あなたにそれを教わることになるとはね」
ルカ「教えてねー、思い出させただけだ」
こんな青臭いことを師事したと恩義を持たれるのは御免だ。
私は友情だの絆だのとは無縁。
あくまで今の関係も、利用しあって生き延びるため、それだけの一時的な繋がり……
それなのに、メカ女はそのカメラレンズ越しの瞳を、無邪気に転がして私に微笑みかけた。
夏葉「……そうね、有栖川夏葉という存在をこの世界に、この歴史に刻み付けるうえではいいアクセントになるのかもしれないわ」
ルカ「かもな、私みたいな腫物でもやっていけてんのがこの業界だから」
夏葉「ふふっ、そんなことないわ。あなたのものも、れっきとした立派な個性よ」
ルカ「……うるせー」
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【有栖川夏葉の親愛度レベル……11.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…34個】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
「……ハッ」
あんな安っぽい言葉ですぐに元気になるんだからお気楽な連中だ。
アンドロイドになったところでそれは変わらない、さぞ機械化するときの回路とコードも簡単だったことだろう。
それだけ簡単で単純なものなのに……きっと、作り出すのは難しい。
私は少なくとも、普通に歩んでいるだけじゃああはならなかった。
一体、どこから違うんだろうな。
【自由行動開始】
【事件発生前最終日の自由行動です】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…34個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
というわけで夏葉選択で本日はここまで。
次回更新は5/4(水)を予定しています。
シーズの追加コミュ読みましたがルカのパーソナリティにちょっと違いがありましたかね
大幅な路線変更とかはする予定もないですし、影響はないと思いますが
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
1 夏葉選択
【夏葉の部屋】
さっきの今、空腹と南国の陽気に当てられて。
時間を持て余しているからといってどこへ行けるでもなく、私の足は自然と休息を求めていた。
時間潰しと休息の兼ね合いという贅沢を前に、思考は一つの結論を導き出す。
「さっき一度迷惑をかけたのだから1回も2回も同じ」。
夏葉「あなたが部屋に来てくれるなんて珍しいわね」
ルカ「……嫌ならそう言え」
夏葉「とんでもない! 歓迎するわ、ルカ。あいにく飲み物はオイルしかないのだけど」
ルカ「……だと思って持ってきた。空調だけ効かせてくれれば結構だ」
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【クマの髪飾りの少女】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【蒔絵竹刀を渡した……】
夏葉「これは……随分と凝った装飾の為された竹刀ね」
ルカ「オマエんとこのユニット、確か和服のやつがいただろ?」
夏葉「あら、それじゃあこれは凛世に言づけておけばいいのかしら?」
ルカ「……言づけるも何も」
夏葉「……意地悪を言ってしまったわね。ありがとう、ルカ。あなたの気持ちはよく伝わったわ」
夏葉「ありがとう、大切にさせてもらうわね」
ルカ「おう」
(まあ、普通に喜んだか)
-------------------------------------------------
ワックスのかけられたフローリングはゴム製のソールとの摩擦でアザラシの鳴き声のような音を立てる。
それに時折混ざるのが、金属質な者が奏でる駆動音。
熱気で思わず汗ばむ空間の中央で舞っているのは、彼女だった。
夏葉「……どうかしら、ルカ。振りも歌唱も衰えていないでしょう?」
ルカ「……おう」
いつだったかにテレビで見た通り。
有栖川夏葉は相変わらず画面の中とまるで同じな溌剌として愛らしいパフォーマンスをしてみせた。
完全すぎるほどの再現で。
夏葉「この体になってからも練習は欠かしていないの。いつ元の生活に戻ってもすぐに人前に出れるようにしておきたいじゃない?」
ルカ「……」
果たしてその練習に意味はあるのだろうか。
元通りの生活に戻るとか、そういう文脈だけではない。
機械仕掛けの存在が、練習なんてことをするのに意味があるのか?
プログラムされた通りに同じ動作を繰り返す、その再現性には寸分の狂いもない。
1回目のパフォーマンスも、10000回目のパフォーマンスも全て同じはず。
本人がどれだけ力を込めようとも、どれだけ力を抜こうとも、そこに差異はない。
こいつがやっているのは、ただ自分の体に寿命を近づける……
______自傷行為だ。
夏葉「私、こんな体になったからといって諦めるつもりはないの。一度決めたからには頂点を掴み取るまで妥協しない。有栖川夏葉の名前をこの世界に轟かせるわ」
ルカ「……」
やっぱり、こいつは美琴に似ていると思う。
高みを目指すという口実のもとに、目の前にある練習という麻薬に依存しているだけの空虚な存在。
『私には、これしかないの_________』
本当は練習の『その先』なんて、てんでぼやけているのに。
ルカ「なあ、そんなに盲目的になる必要は______」
夏葉「そのための、最高のステージは自分自身で作り出してみせる」
ルカ「……!」
夏葉「わかっているわ、私の置かれた境遇が元通りを許してくれないことぐらい」
夏葉「好奇の目に晒され……同情だって向けられるかもしれないわね」
夏葉「だから、自分のパフォーマンスを磨くこと以上に……私は私自身の居場所を作り出すことに努力したい」
夏葉「私を待ってくれる仲間と、私を待ってくれるファンの人たちがいるのだもの。彼女たちと一緒に私は頂点に行く」
夏葉「可笑しいわね、初めは一人で登り詰めようと思っていたのに……それでは寂しく感じてしまうの」
『アイドルでいられない人と私は組めない』
ルカ「……見当違いだったよ」
夏葉「ルカ?」
ルカ「いや、なんでもない。オマエはオマエの思う通り練習を続ければいいと思う」
ルカ「それぐらいしか、この島じゃ時間を潰す方法もないしな」
夏葉「ええ! もちろんよ! 1秒も時間を無駄になんてしていられないわ!」
ルカ「……皮肉が通じねえ」
人間のように豊かな表情筋は持たない。
機械的に口角が上がって目尻が動くだけ。
ただ、その先のライトの発光がほんの少しだけ柔和なものになったような気がするのは……
きっと電池の残量のせいなんだろうな。
-------------------------------------------------
【有栖川夏葉との間に確かなつながりを感じる……】
【有栖川夏葉の親愛度レベルがMAXに到達しました!】
【アイテム:極上の赤ワインを獲得しました!】
・【極上の赤ワイン】
〔彼女の生まれ年に醸造させられた上質な赤葡萄のワイン。突き抜けるような爽やかな酸味が、20年と言う時の蓄積を感じさせる〕
【スキル:cheer+を習得しました!】
・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
全てがすべて、人間が人間たる部分まで変えられてしまったというのに、変わらないものというのはあるらしい。
私たち生身の人間の方がよっぽど脆弱で、よっぽど変化させられている。
それほどまでに、あの機体に一本通った芯と言うものが強固なようだ。
「有栖川夏葉……か」
私と同世代で、対極にいるアイドル。
いや、対極に『いた』アイドル。
……今の立ち位置がどうなったかなんてのは、言うだけ野暮な話だろう。
【自由行動開始】
【事件発生前最後の自由行動です】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…35個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 雛菜選択
【第1の島 ロケットパンチマーケット】
雛菜「はぁ~……お腹すいた~……」
ルカ「……よう」
雛菜「あ、こんにちは~……何か雛菜にご用事ですか~?」
ルカ「用事かって言われてもな……」
常にお腹を押さえて前かがみ。
視線はどこか伏し目がちにため息交じり。
いつものこいつらしからぬ様子に、思わず声をかけずにはいられない。
空腹が不調を招いているのはもはや火を見るよりも明らか、と言った様相だった。
ルカ「ま、気を紛らわすのぐらいは手伝うってこった」
雛菜「……そうですか~?」
まあ、こいつはまた違った悩みもあるんだろうが。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【クマの髪飾りの少女】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【クマの髪飾りの少女を渡した……】
ルカ「オマエ、確かクマのキャラ好きだったよな?」
雛菜「あ~、ユアクマちゃんですか~?」
ルカ「そう、よく知らねーけど……この絵にも似たようなキャラが書かれてて……」
雛菜「え~?」
雛菜「……こ、これ……何、この絵……」
ルカ「……え?」
雛菜「わかんない……雛菜、この絵に描かれている人も、キャラクターもまるでわからないけど……」
雛菜「見た瞬間から、寒気が止まらない……」
ルカ「お、おいどうしたんだよ……急に……!?」
雛菜「こんなの要らない……雛菜、この絵大嫌い~~~~~~~!!!」
ドンッ!!
ルカ「な、なんだよあいつ……突き飛ばしやがって」
ルカ「……こ、この絵……なのか? な、なんだったんだ……?」
(その絵に視線を落とすと)
(ピンクのツインテールに白と黒のクマの髪飾りをした少女がほほ笑んでいた……)
(……どうやら最悪のプレゼントだったらしい)
【BAD COMMUNICATION】
【親愛度が減少します……】
-------------------------------------------------
【市川雛菜の現在の親愛度レベル…5.5】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『ただいま、午後十時になりました』
『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』
『ではでは、いい夢を。グッナイ…』
はぁ……クラクラする。
ほんの二日、食事を抜く。それぐらいのことはこれまでにもあったかもしれない。
完全な断食ではないにせよ、多忙を極めた時はゼリー飲料を流し込んで終わらせるようなことだって何度かあった。
状況はそれとそう変わらないはずなのに、これほどまでに苦しいのは、きっとこの島のせい。
自分の身の上、過去にあったかもしれないコロシアイ、美琴との仲違い……
そういう漠然とした広大な不安感は私の精神をスリップダメージのように削り取り、肉体も内側から食い破っていた。
空腹はそこにトドメを指す最悪の一手。
自分の部屋でさえもぐんにゃりと粘土のように歪み始めた。
私も相当に来ているらしい。
なんでもいい、早く何かを口に入れたい……
「ああ、ダセェダセェダセェダセェ!! こんなの、私じゃねえっての……!!」
自分相手に自分を取り繕えなくなったらもうお終いだ。
こんな自分、見ていたくない。起きていたら余裕の無くした自分に気づいてしまって、いつか気が狂う。
ぐうぐうと喧しい腹の虫を無理やり押さえつけて、瞼を必死に下ろした。
____
______
________
=========
≪island life:day 21≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』
『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』
昨日よりも更にごりっと体力が持ってかれている。
もはや瞼を開けることも厳しいぐらい、口にまともなものがここ二日一度も入っていない。
食物を消化するために本来分泌されるであろう唾液は行き場を失い、口の中は妙な感触を作り出す。
頬と歯茎がくっつくように、妙に粘着質だ。
そんな中から迫出されるため息が清々しいものであるはずもなく。
「……そういや、ヤドカリって……あの見た目でカニの仲間なんだったか」
なんてクソみたいな考えもよぎるほど。
すっかり落魄れてしまったカミサマの姿がそこに在った。
「……落ち着け、とりあえず冷静になって……太極拳に行かねーと」
ぼんやりした思考に無理やりに行動の目的と言う核を埋め込んで、体を動かした。
顔を洗って服を着替えて、出る支度を整えるまでに幾度となく腹は鳴った。
もはや腹の音は聞きなれて環境音にも等しい。
『お腹が減った』という認識から、『何かを食さねば』という義務感に徐々に変わりゆく、そのフェーズの途中だ。
「……はぁ、行くか」
-------------------------------------------------
【中央の島 ジャバウォック公園】
智代子「おはようブラックサンダーちゃん! 今日も甘そうだね!」
ルカ「……あ?」
恋鐘「智代子はさっきからこげん感じたい……もう目に入るものすべてが食べ物に見えとるとよ」
智代子「あはは、ちゃんぽんちゃん! そんなに私が食い意地を張ってるみたいな言い方はやめてよ~!」
あさひ「冬優子ちゃん、昨日図鑑で調べたんすけどゴキブリってエビみたいな味がするらしいっすよ」
冬優子「あんたそれ行動に移したら絶縁だから」
透「どっか芋とか埋まったりして無いかな」
雛菜「最悪土でも食べればお腹は膨れそうだよね~」
絶食状態もここまで続くと地獄絵図だ。
全員がその欲望を包み隠そうともしなくなり、荒唐無稽なことばかり口にして現実逃避。
そのやつれた頬も相まってかなり悲壮感の漂う光景、これまでの日常からは想像もしなかった世界だ。
冬優子「はぁ……こんなでも太極拳はやらなきゃならないって、ほんと終わってるわ」
ルカ「……だな、腹の足しになるどころかマイナス……このままじゃマジで衰弱死しちまうんじゃねーのか」
冬優子「それだけは御免よ……死ぬ前の最後の食事ぐらい、選ばせてほしいわ」
ルカ「ハッ、言えてるな……」
だが、私たちがいくら愚痴を言おうとも……その日の太極拳は中々始まらなかった。
つい先ほど召集のアナウンスだって流れたはず、それなのにモノクマは一向に姿を現さない。
雛菜「もしかして、昨日の一回で飽きちゃったとか~?」
智代子「だとしたらアナウンスは普通やらないよね……?」
冬優子「……ていうか、なんかヘンよね?」
あさひ「人数、足りてないっすよ」
ルカ「……!?」
空腹から来た眩暈でよく見えていなかったが、辺りを見渡してみると確かにその通りだ。
私たちから距離を置こうとしていた美琴……そして、この状況下で誰よりも元気なはず、食事を必要としない存在になった……
【有栖川夏葉】の姿が見えていない。
ルカ「お、おい……モノクマ! この状況……説明しやがれ!」
カメラに向かってそう叫んでもまるで応答はない。自分の叫び声が周辺の木々に吸収されて終わり。
ここしばらくの絶食で完全に抜けきっていた体の力が俄かに蘇る。
体力を維持するためにパフォーマンスを落としていた体の器官という器官が過剰なほどに活動を始めた。
視界は開け、耳は音をよく拾い、そして肺は必要以上に酸素を取り入れる。
それは活力なんて前向きなものではない、脳裏によぎった最悪な予感を検証するための……義務としての活動力。
ルカ「急いで探しに行くぞ……!! 胸騒ぎがしやがる……!!」
冬優子「分かった、でも……どうするの? どこにいるかまるで見当もつかないじゃない」
あさひ「智代子ちゃんは夏葉ちゃんと一緒じゃなかったっすか?」
智代子「昨日の夜に会ってからはそれっきりだから……そ、そんなわけないよね!? 夏葉ちゃんが……そ、そんなわけないよね?!」
透「……確かめないと、絶対」
冬優子「しょうがない、片っ端から探し回りましょう。分担して、複数人で残り四つの島を調べるわよ」
冬優子の言う通りに私たちは少数グループをいくつか作り、第1の島から第4の島に至るまで、その全てを捜索する事にした。
私が請け負ったのはもっとも新しいエリア……第4の島。
遊園地なんて、訪れる理由は早々ねーはずだが……万が一のことだってあり得る。
嫌な胸騒ぎを感じつつも、私は島を渡った。
-------------------------------------------------
【第4の島】
第4の島の広大な敷地、アトラクションのすべてを見ていたら正直キリがない。
ある程度見当をつけてから調べに行くべきだろう。
そう、思った。
調査にかける労力だけで見れば、この結末は幾分か助かるものだったかもしれない。
今のこの衰え切った体力と思考力では、いつ見つけられるかもわかったものではない。
そう、発見は早ければ早いほどいいものだ。それは間違いない。
でも、対面が早ければ早いほどいいというものでもない。
対面には必要な準備、【覚悟】と言うものがある。
……すっかり忘れていた。
この島がそんな覚悟なんてものに猶予を与えてくれるはずがない。
そんな慈悲があるのなら、私たちがこんな状況に陥っているはずがないのだから。
「……嘘、だろ」
こいつだけは、死ぬはずがないと思っていた。
誰も殺せるはずがないと思っていた。
殺していいはずがないと思っていた。
だって、こいつはかけがえのないものを守るために、一度その身を挺して肉体を滅ぼしたのだ。
死の淵からよみがえった人間を改めてもう一度殺すなんて、そんな胸糞の悪い話が、あってたまるかよ。
きっと犯人は、人間として大事なものが欠落している存在なんだろう。
____そうでもなきゃ、
【有栖川夏葉の身体をバラバラにして殺害】なんて、できるはずもない。
-------------------------------------------------
CHAPTER 04
アタシザンサツアンドロイド
非日常編
-------------------------------------------------
というわけでやっと事件発生まで行けました……
チャプタータイトルで想像はついていたとは思いますがこうなりました
ちなみに雛菜に渡した【クマの髪飾りの少女】はいわゆる地雷アイテムです。
原作のあの少女と思しき肖像画は誰にとってもトラウマとなりうる品として作用します。
次回更新は5/6(金)の21:00前後を予定しております。
今章の非日常編は例のゲームがある都合で少し長くなります、是非ご参加ください。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
-------------------------------------------------
CHAPTER 04
アタシザンサツアンドロイド
非日常編
-------------------------------------------------
よくテレビで世界の衝撃映像なんてくだらない番組をやっている。
世界中から集めたハプニング映像だとか、規模の大きな化学実験だとか、
そういうのを集めて出演者のリアクションを集めるのが目的の省エネルギー番組。
子供の時から、やる気のないバラエティだと思っていた。
そんな番組で時々、プレス機を使った実験をする動画が流れた。
水風船やスイカなんかをプレス機にかけてスロー再生したりだとか、子供のおもちゃを押しつぶしてその形態変化っぷりを笑ったりだとか。
なんというか、悪趣味だなと思った。
既に完成された形あるものを、抵抗もできないほどの圧倒的な力で捩じ伏せて破壊する。
その絶対的な力関係を体現したような動画を嬉々としてみる人間の気が知れなかった。
____普段見ているものが拉たり歪んだり、形を変えられてしまうことの気色悪さを、改めて噛み締めていた。
私の目の前に散らばっているのは人体ではない。
だが、人型であったはずのそれは……見る影もないほどにバラバラの鉄の塊となってしまっていた。
「嘘……だろ……? なんだよ、これ……」
気がつけば私は両膝をその地面につけていた。
ここ暫くの断食による肉体の疲労も相まって、肉体の虚脱感は凄まじく、意識はもはや肉体の外にあった。
有栖川夏葉のその成れの果てを今のか細く弱りきった体ではとても受け止めきれず、空っぽになった臓物を絶望と困惑が埋め尽くした。
どうして、よりによってこいつなんだ……?
本当にこの島では不条理なことしか起きない。
一度助かったから、もう無事……なんて物語のお約束ごとなんてこの島では守られやしない。
小宮果穂を庇い、肉体を完全に失ったというのに、それに飽き足らず機械の体すらも引き裂いての殺害。
ただ命を奪うだけに終始しない、犯人の手口とそこに交じる感情に苦々しい液体外から迫上がる。
つい昨晩まで言葉を交わした口と言葉を生み出す咽喉は距離を隔て、
機械の体になってから筋肉もないのに鍛えていた自慢の肉体は無残に断裂し、血管のようなケーブルがその間間に垂れ下がる。
肉体を繋ぎ、エネルギーを運んでいただろう液体は地面を黄緑色に染め上げ、私の鼻を刺激的な臭いが刺した。
「……クソッ」
茫然としかける自分を何とか揺り戻す。
今私が死体を発見したこの瞬間から、命を懸けた戦いの火ぶたは切って落とされているのだ。
嘆いているような時間などない。
力の抜けきった膝は、不格好に震えながら上体を持ち上げた。
____
______
________
恋鐘「な、夏葉……!? な、なんね……!? なにが起きとる!?」
冬優子「……惨いわね」
透「これ……エグいなぁー……」
これまでに死体を発見する事、三回。
そのいずれも凄惨という言葉を用いるに足る現場ではあった。
死を迎えた人間とはそうした修飾語を用いなくては表現のしようもない有体である。
だが、バラバラの死体ともなるとまた事情が違う。
これまでの凄惨とはまた尺度の異なる凄惨。
自分自身の身体の節々が妙にソワソワするような、そんな心地の悪い感触を抱かずにはいられない。
智代子「なつ、はちゃん……?」
甘党女はその、頭部だったものを持ち上げて抱き抱える。
かつて眩しすぎるほどに輝いて、私たちを導いていたその瞳のランプはもう灯ってはいない。
智代子「どうして……どうして夏葉ちゃんが殺されなくちゃいけないの……」
甘党女の瞳から涙が滴り落ちて、その無機質な金属面を伝う。
これは感動的な御伽噺でも、ファンタジーのご都合話でもない。
いくら故人を偲んで涙を流そうが、命失し者はもう戻ってはこない。
智代子「なんで、犯人は2回も夏葉ちゃんを殺したの……? もう、果穂のおしおきで一度死んじゃってるんだよ……?」
その質問には誰も回答を返せなかった。
ピンポンパンポ-ン!!
『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』
黙りこくる私たちの背後で鳴り響くアナウンス。
すぐにモノクマもその姿を表した。
モノクマ「死……それは何よりも平等なもの……動物だろうと植物だろうと、有機物だろうと無機物だろうと等しく平等に訪れるのです……」
モノクマ「人間の魂を持った無機物だった有栖川さんにも、それは訪れる……回路の機能停止という絶対的な死がね……」
ルカ「来やがったなモノクマ……!」
モノクマ「いやはや、驚いたね。誰よりも強力な肉体と精神を手に入れた彼女がこんなカタチで退場しちゃうなんてさ、ユウェナリスもおったまげでしょ」
美琴「彼女が破壊された場合でも、やっぱり事件としてみなされるんだね」
モノクマ「当然! オマエラにとってかけがえのないお仲間だったことは変わりないでしょ?」
智代子「夏葉ちゃんはどんな姿に変わろうとも、夏葉ちゃんだったもん……その命を奪った犯人、絶対に見つけ出さないと……!」
ルカ「おう……こんな胸糞悪い事件、犯人をみすみす見逃すわけにはいかねえ」
雛菜「それに、雛菜たちの命だってかかってますからね~」
モノクマ「おっ、ノリノリですなぁ! でも、そんな体調で本当に犯人を見つけ出すことなんてできるのかな?」
私たちを一瞥して首を傾げるモノクマ。
何を熱を冷ますようなことを言い出すのかと思うと、そのすぐ後に意図を介した。
仇を討とうと奮起する心情とは裏腹に、肉体は悲鳴を上げている。
ここ数日何も食事を口に運んでいないその体は、不自然なほどに震えていた。
事件に対する恐怖や不安とはまた別の震え、肉体に貯蔵されていた栄養素を分解しているであろう、見たことのない痙攣を前にして自分自身でギョッとした。
モノクマ「空腹は最大の敵! そんな状態じゃ捜査のために駆けずり回ったり、頭を働かせて推理したりなんて出来ないでしょ?」
あさひ「うぅ……お腹はずっと空いてるっすよ~……」
恋鐘「そげんこつ言うたって仕方なかよ……無茶をしてでも事件に向き合わんと!」
モノクマ「肉体に鞭を打ってでも学級裁判に向き合おうというその姿勢! いかにも日本人らしい社会の歯車精神ではございますが……」
モノクマ「今回はその必要はございません!」
そう言うとモノクマは仰々しく右手を高々と掲げてみせた。
そこに握りしめられていたのは……
モノクマ「あんパンと牛乳~~~~~!!」
ルカ「お、お前……それって……」
モノクマ「約束だったからね、今回の動機は事件が起きるまで食事抜き! 事件が起きた今、オマエラには食事を口に運ぶ権利があるんだよ」
モノクマ「ほら、ここに段ボールに入れてきたのがあるから一人一セット、捜査の前にしっかり栄養補給してから臨んでよね。そうじゃないと学級裁判どころじゃないでしょ?」
ここ数日ずっと探し求めていた食料。
私たちは考える間もなくその箱に群がって飛びついた。
ずっと何も口に入れておらず、唾液ばかりを何度も味わい続けた口の中で、あんパンの優しい甘さがじんわりと広がっていく。
だが、そんな甘さを嚙みしめているような間はない。
本能と肉体とが、味の検証よりも栄養の補給を優先した。
両手に収まらないぐらいの十分な大きさがあったあんパンはみるみるうちに小さくなっていき、
瓶いっぱいにそそがれていた牛乳も、何のつっかえもなく咽喉へと注ぎ込まれて一瞬にして空。
食事と言うにはあまりにもお粗末な咀嚼をし終えて、一呼吸。
腹を満たす満足感、指の先まで染み渡る息を吹き返したような感触。
そして、メカ女に対する並々ならぬ思いがこみ上げてくる。
今この体に入っていった栄養は、こいつの死があってこそのもの。
感謝なんてするわけではない、それは死の冒涜に他ならない。
かといって、謝るのも違う。私とメカ女との関係性をはき違えた言葉は送るべきじゃない。
____では、死を犠牲にして生き永らえた私たちから送るべき言葉はなんなのだろうか。
その答えがどうしても見つからず、私はただ手を合わせた。
何もしないのも気が済まず、手持ち無沙汰になった体で無理やりできる表現のかたち。
何を表現しているのかもわからないが、祈りとは元来そういうものなのだろうと悟った。
言葉にできない万感の思いと言う奴だ。
共に同じ時間を過ごしてきた人間として、私にできるのはそれくらいのものだった。
ルカ「……ごちそうさま」
他の連中も、一通り食事をし終えると不思議と手を合わせていた。
食前食後のただの習慣のやつもいたんだろうが、少なくとも甘党女のそれは私と同じ文脈にあるものだったんだと思う。
そうじゃなきゃ、わざわざメカ女の方に体まで向けはしないだろう。
モノクマ「食事というのは間接的な他殺に他なりません。生きとし生けるもの、常に殺しと共にある。ぼかぁそういう営みの尊さを、この同期提供で噛み締めてもらいたかったんだよね」
モノクマ「どうだい? 有栖川さんを犠牲にしたあんパンのお味は」
ルカ「……クソまずい」
モノクマ「そうかいそうかい! 罪悪感のソースはお口に合いませんでしたか!」
モノクマには好きに言わせておくことにした。
私たちが感じているのは罪悪感なんかじゃない、せいぜいその見当違いな解釈ではしゃいでいればいい。
その余裕ぶった態度にできる油断の隙、それをいつか必ず穿ってみせると決めて、私は背を向けた。
ルカ「……美琴」
美琴「……」
美琴はなおも私と協力する気はないらしい。
言葉に何の反応も見せぬまま、死体のそばにより、一人で捜査を開始した。
寂しさよりも申し訳なさが先に立つ。
あんなに千雪が世話焼いて取り持ってくれた仲を守り続けることができなかったなんて、千雪の墓前でどんな顔をすればいいんだろう。
でも、それもこれも嘆いている暇などない。
手から零れ落ちてしまうのなら、それを掬い上げる何かを用意しなくてはならない。
この島において、それは事件の真実になるだろう。
間違った選択をしないこと、自分たちが生き延び続けること。
その道を歩み続ける限りは、対話の瞬間がきっと生まれるはず。
それを信じるほかないんだ。
気合入れろ、頼れるのは……自分だけだ。
【捜査開始】
-------------------------------------------------
さてと、まずは事件の概要から確認しておくか。
電子生徒手帳を取り出して起動してみると、案の定既にモノクマによってデータが共有されていた。
指先で画面をつつき、モノクマファイルを展開する。
『被害者は有栖川夏葉。被害者は先日の学級裁判によるおしおきの巻き添えに遭い、身体機能の多くを失ってしまったため、機械の体に意識を移植する手術を受けていた。死亡推定時刻は昨日深夜3時ごろ、死体は第4の島の外周、砂地の上で発見された。人間にあるはずの臓器の類いを被害者は有してはいないが、全身に強い衝撃を受けたことにより回路系統を損傷して機能停止を起こしたことをもって死亡したと判定した。損壊は激しく、四肢と胴体部、頭部などはバラバラになっており、凹みも激しい』
なるほど、人間ではない被害者ということでどんな記述になると思ったが、
機械の体に埋め込まれている回路の損傷をもって死亡したと断定するらしい。
人間の心臓が拍動して体中に血液を巡らせ、栄養を運ぶように、アンドロイドの身体は回路が電気信号を走らせて情報を運ぶ。
まさに心臓部と呼べる部分があったんだろう。
死因と死体の有様とは矛盾しない。
死体はまさにバラバラ死体と言うべき状態で、ボコボコに凹んだ死体のパーツが辺りに散らばり、オイルもその場に撒き散らされいる。
その光景を人間に置き換えてみるとぞっとする。
……いや、そんなことを考えている自分の方が残虐か。
ともかく、今回の事件は特殊なんだ。
このモノクマファイルはいつも以上に有力な証拠になるだろうな。
コトダマゲット!【モノクマファイル4】
〔被害者は有栖川夏葉。被害者は先日の学級裁判によるおしおきの巻き添えに遭い、身体機能の多くを失ってしまったため、機械の体に意識を移植する手術を受けていた。死亡推定時刻は昨日深夜3時ごろ、死体は第4の島の外周、砂地の上で発見された。人間にあるはずの臓器の類いを被害者は有してはいないが、全身に強い衝撃を受けたことにより回路系統を損傷して機能停止を起こしたことをもって死亡したと判定した。損壊は激しく、四肢と胴体部、頭部などはバラバラになっており、凹みも激しい〕
今回は、とにかくここを重点的に調べないことには進まないよな。
こういう言い方をするのもなんだが、人体ではなく機械の体だから、今回は自分自身で触って調べることもできそうだ。
まあ、流石につい昨日まで動いているところを見ていたから胸は痛むけどな。
死体を調べてみるとして……パーツごとに調べてみようか。
【頭部】……有栖川夏葉の人間だったころの名残を色濃く残しているパーツだな。あんなに饒舌だったのに、今となっては一切の言葉を発さない。
【胴部】……一番大きな胴体部のパーツだ。やっぱり頑丈なつくりになっているのか、そのまま切り出したような形でゴロンと転がっている。様々な機能がここに集中していたはずだ、確認しておこう。
【腕部】……この第4の島を解放したロケットパンチだ。……大丈夫だよな? 突然、暴発とかしないよな?
【脚部】……あの鋼の肉体を支えていただけあって、他のパーツとは違った構造の断面図が見え隠れしているな。詳しいことは分からねえけど。
-------------------------------------------------
さて、どのパーツから調べるか……
1.頭部
2.胴部
3.腕部
4.脚部
↓1
1 選択
-------------------------------------------------
【頭部】
溌溂とした笑顔、はきはきとした喋り口、つい後ろをついていきたくなるような温かくも力強い眼光。
そうした彼女らしさに満ち溢れた顔は機械の体になってからも変わらない彼女のアイデンティティであり続けた。
構成する物質が変わりこそすれ、不思議とそれを受け入れられたのはきっと彼女自身が変わらなかったからなんだろうと今になって思う。
そんな、有栖川夏葉のなれの果てがこれなのだ。
大きく凹んだ頭頂部からはオイルがだくだくと溢れだし、カメラレンズとなった眼球は閉じることもなく光を失ってそこに鎮座する。
その表情は、どこか苦悶の色をにじませた。
智代子「……」
ルカ「……なあ、その……調べても、いいか」
甘党女の肩に触れる。載せた手が、彼女の肩に合わせて小刻みに上下した。
私の要求を聞いた甘党女は、しばらく自分の顔と同じ高さに有栖川夏葉の亡骸を持ち上げる。
智代子「夏葉ちゃんはね、本当によくみんなのことを見ていてくれたんだ。ユニットで一番お姉さんだったからって言うこともあるけど……きっと、それ以上の理由があったんだと思う」
智代子「こんなカメラレンズなんかじゃなくたって、見えすぎちゃうぐらいの瞳があったんだ。わたしたちのいいところも、悪いところも、辛いところも全部見通しちゃう不思議な瞳」
智代子「こんな、こんなくすんだレンズなんかじゃないよ……!」
もはや直視は出来ていなかった。目を伏せるようにして首を振る。
頬を伝う涙が、動きに合わせて蛇行したのが目についた。
苦しみからもがき逃げ出そうとしているような、現実逃避が露わになったような絵面で痛ましい。
自分の口から出ている言葉を検証もできていないその様子は、流石に私でもこれ以上放っておくことはできなかった。
智代子「……どうして、こんな形で夏葉ちゃんは殺されなくちゃいけなかったんだろう。せめて人の姿のままでって思っちゃう……」
ルカ「それは違うんじゃねーのか」
智代子「え……?」
ルカ「あいつは……この姿になってから、一度だってその変化を嘆いたか? むしろその逆……小宮果穂の死の寸前まで、一番近いところに居たことを誇りに思ってただろ?」
有栖川夏葉という人間は、いつだって自分の選択に後悔はしていなかった。
小宮果穂のおしおきの夜、あの病院に居合わせた者が全員言葉を詰まらせる中でも、当の本人はその体をむしろ誇らしげに見せびらかすほど。
その全てが本当の彼女の心情だったとは言わない。
でも、人に見せる姿はそうでありたいという彼女の信念があったことは確かだ。
他の連中を率いる年長者としての責任だけでない、大切な何かがそこに在った。それは甘党女が今口にした通りだ。
だから、こいつだけには……それを否定するような言葉は口にしてほしくなかった。
ルカ「なら、こいつの姿かたちをお前が嘆いちまうのは……こいつの生きざまと死にざまを否定しちまうのは……悲しいことだと私は思う」
智代子「……」
先ほど目を合わせずに逸らしてしまった頭部を、今度はじっと見つめた。
そのカメラレンズがどう映ったのかはわからない。
が、有栖川夏葉が生前守り続けた何かを僅かながらに掴んだんだろう。
意を決したように頷くと、私の方に向き直った。
智代子「……そっか、そうだよね。夏葉ちゃんは夏葉ちゃんで、ずっと変わらなかったんだもんね! ……よし!」
智代子「ルカちゃん、お願いします! 夏葉ちゃんのこと、とことん調べてあげて! それで……夏葉ちゃんの死を……どうか無駄にしないであげて!」
ルカ「……おう」
手渡しされたその頭部はズッシリと重たかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
頭部の付近には明らかに目を引く異様な物体が落ちている。
いかにもこれで殴りましたと言わんばかりの……巨大すぎるハンマーだ。
ルカ「うお……なんだこれ、めちゃくちゃ重たいな……」
智代子「こんなので殴られたらひとたまりもないよ……夏葉ちゃんの身体がバラバラになっちゃうのも納得だね……!」
ルカ「確かに、これで殴られたらそうだろうな……」
なんとか私たちでも振り回せるぐらいの重量。
凶器として使うには申し分ないだろうが……
ルカ「でも、これで本当にメカ女を殺したのか?」
智代子「え?」
ルカ「きれいすぎるんだよ、このハンマーは」
その金属部分にはオイルが全く付着していない。
人間の血液とはわけが違う、油はしっかりと洗浄しなくては取れないものだし、拭っただけではどうにもならない。
メカ女を殴ったのでもあれば返り血ならぬ返り油が付着していないとおかしいはずだ。
ルカ「それに……疑問は他にもある。このハンマー、一体どこから出て来たってんだ」
智代子「そういえば、こんなに大きなハンマーはスーパーマーケットでも見かけたことなかったよね。見覚えがあれば、こんなの絶対に忘れないはずだよ」
ルカ「……なんなんだ、この不気味なハンマーは」
コトダマゲット!【ハンマー】
〔死体の付近に落ちていた巨大なハンマー。人を殴りつける金属部分にはオイルが全く付着しておらずあまりにも綺麗すぎる。出所不明〕
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルカ「……しかし、どうやったらここまで大きく凹むんだろうな」
智代子「うん……夏葉ちゃん、ただでさえ石頭だったけど……機械の体になってからは磨きがかかってダイヤモンド頭ってぐらいだったよ」
メカ女の頭頂部は頭蓋骨のかたちに加工された金板ごとはっきりとくぼんでいた。
隙間からオイルが流れ出ており、妙な熱を帯びている。
太陽に透かして見るようにしてみると、全面が薄黒い色になっているのにも気が付く。
ルカ「ていうか……前面に煤がかかってるのか? これ」
智代子「う~ん……なんだか焦げちゃったパン、って感じになってるよね?」
ルカ「この頭の凹みと何か関係があるのか、これって……」
金属製の身体がここまでの有様になる、かなり大きな力が働いたことは間違いないだろうが……その全貌はいまだ見えてはこない。
続いて調査はその頭部のつくり自体に移る。
といっても専門知識は誰も持ってはいない。
機械いじりなんか中学化高校の技術の授業でラジオを作ったぐらい。
隙間から見える基盤なんか見たところで得られる情報は私たちにはない。
唯一頼りになるのは、甘党女からの話ぐらいのものだろう。
ユニットの仲間として、誰よりも近くで長い時間を過ごしてきたこいつなら、深い情報まで知っている可能性はある。
ルカ「なあ、お前はメカ女のこの頭を見て……何か気づいたことはないか? 見た目の偏かとかじゃなくて……そう、機能面とかでさ」
智代子「機能? と、言われましても……」
智代子「あっ、夏葉ちゃんの眼、開いたまんま壊れちゃってるね」
ルカ「……? それって変なのか?」
甘党女の言う通り、メカ女の頭部は瞼が落ちておらずカメラレンズの瞳がむき出しの状態になっている。
どうやら人体の構造と同じように、球状のカメラがここには取り付けられているようだ。
智代子「別に変ってわけじゃないんだけど……これ、この状態なら多分……取り出せると思うよ、目玉」
ルカ「……は?! えっ、ちょっ、マジか!?」
智代子「あはは、大丈夫だよ。人間の本物の眼球じゃないんだから」
(いやいや……そういう問題か!?)
智代子「……それに、夏葉ちゃんは使える情報は全部使ってほしいと思うはずだから。逃げない方がいいと思うんだ」
ルカ「……そんな風に言われると止められないじゃねーか」
智代子「よしっ、それじゃあいきますよ! ……よっと!」
甘党女が一思いに引っ張ると、すっぽりとカメラレンズの眼球が抜け落ちた。
ケーブルが眼孔から伸びているのがなんとも惨たらしい。
智代子「ちょっと確かめてみるね……夏葉ちゃんに、前にカメラの機能について聞いたことがあるんだ」
ルカ「へぇ……やっぱり、高機能なカメラなのか?」
智代子「うん、光学望遠鏡並みの視力があるのはみんなのいる前でも披露したけど……暗闇でも物が見えるような暗視補正機能もついてるんだ」
ルカ「暗視スコープみたいなもんか?」
智代子「うん、赤外線カメラなんだけどね。周囲の光量を感知して、一定以下になると暗視モードに切り替わるらしいんだ。それに伴ってレンズも変わるんだけど……」
智代子「あっ、やっぱり。このレンズは暗視用……つまり夏葉ちゃんの眼球は赤外線カメラモードに切り替わった状態で殺害されてるね」
ルカ「ってことは……モノクマファイルに書いてあった死亡推定時刻とは矛盾しないな」
智代子「うん、やっぱり夏葉ちゃんは深夜に暗闇の中で襲われたんだ」
私だけじゃこの眼球の見極めは出来なかった。
甘党女の時間の蓄積があるからこその発見だな。
コトダマゲット!【夏葉の眼球】
〔夏葉は光学顕微鏡並みの視力を持っていたほか、暗視モードも備えていた。暗闇を感知すると赤外線カメラに切り替わり、レンズも変化する。智代子曰く、死体となった夏葉の眼球も暗視モードになっていた模様〕
さて、残りのパーツも調べちまうか…
1.胴部
2.腕部
3.脚部
↓1
胴体
1 選択
-------------------------------------------------
【胴体部】
生前の抜群のプロポーションを形だけ準えたような無機質な胸板。
そこには彼女の努力で練り上げた筋肉も、芸術品のようにしなやかな動きも存在しない。
他の身体と切り離されて落ちている今となっては、もはや人間の胴体であることも疑わしいぐらいだ。
オイルの海に落ちているそれは座礁した船のようにも見えた。
透「あ、これ……使って」
ルカ「ん……ゴム手袋か?」
雛菜「なんか雛菜の看病してくれてた時のやつらしいです~」
(絶望病の時のやつか……)
とにかく、オイルを素手で触ると後が厳しい。この手袋は助かるな。
浅倉透から受け取ったゴム手袋を装着し、胴体部を持ち上げた。
雛菜「なんだかこのパーツ、焦げ臭くないですか~?」
ルカ「ん……? 言われてみれば、たしかに……」
辺りに撒き散らされているオイルの匂いが激しいので若干気づきづらいが、確かに匂いの中に焦げ臭さが混ざっている。
それに注意してみてみると、胴体部のパーツの部分部分は茶黒い焦げ跡のようなものが着いているのも確認できる。
これはなんだ……?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルカ「……なんか、砂被ってんな」
透「多分、殺されたときに胴体部分が地面にぶつかって砂を巻き上げたんだと思う。ほら、ここって砂地だし」
これまでの事件と違って、今回の事件は室内でも舗装された地面でもない。
第4の島の外周、何か名前のある施設でもないただの道の一部分なのだ。
踏み固められたただの砂の上に横たわる死体が砂を被っているのも言われてみればそう不自然なことでもない。
ルカ「……にしても、なんだか多くないか? 倒れ込んだ時って、接地面の裏側にまで砂って巻き上がるもんか?」
透「私たちよりかなり重たかったから?」
ルカ「あんまり女性相手に言うべき表現じゃねーだろそれ……」
雛菜「雛菜も不自然に思うな~。小糸ちゃんが小学校の時運動会のかけっこで派手に転んだことがあるんだけど……そのとき、前半分は砂まみれだったけど裏側はそうでもなかったんだよね~」
砂を巻き上げるほどの衝突となると、相当な勢いが必要になると思う。
誰かに撲殺されて地面に倒れ込んだだけで、こんなに砂を被るようなことがあるんだろうか?
ちょっと覚えておいた方がいい情報かもな。
コトダマゲット!【死体に被さっていた砂】
〔夏葉の死体は砂を被っていた。ただ転倒しただけではこれほどの量の砂が巻き上がるとは考えづらく、何か別に勢いよく衝突したのではないかと思われる〕
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルカ「ちょっとひっくり返してみるか」
かなりの重量のある胴体部。転がすようにしてひっくり返して背面部を確認する。
纏っていた衣服もなく剥き出しになったその背中には……何かが取り付けられていた。
立橋を支えるブリッジ部のように、不完全な半円のような形のそれは何かを通すような構造をしていた。
透「これ、ワイヤーのフックじゃない? ほら、バンジージャンプの命綱とかに使う奴」
くだらないバラエティ番組なんかで見覚えがある。
この真ん中にワイヤーを通すようにして、落下を防止する単純な仕組みだ。
ルカ「まさかバンジージャンプに失敗して死んだ……とかじゃねえよな?」
雛菜「う~ん、バンジージャンプじゃないと思うけど~……このフック、だいぶ緩くなってるね~」
能天気女はフックの接合部をパカパカと開閉して見せた。
なるほど確かに少し強めな衝撃を受けてしまうと完全に開いてしまうようだ。
ワイヤーを通して命綱代わりにしたところで、これでは意味がない。
まさか……こいつの死は事故だなんて……そんなことが?
透「でも、ないよね。肝心のワイヤー」
ルカ「ああ、近くをざっと見た感じ……見当たらないな」
雛菜「なにかの拍子で外れちゃったのかな~」
もともとこいつの身体に取り付けられていたであろうワイヤーは、何かの原因があって外れてしまったに違いない。
その原因が何か突き止めることができれば……事件の全貌を掴むうえで大きな手掛かりになりそうだ。
コトダマゲット!【ワイヤーフック】
〔夏葉の胴体部に取り付けられていたワイヤーフック。だいぶ緩くなっており、少し強い衝撃を受けただけで簡単に開いてしまうようだ〕
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私がこいつの背面を確認したのには大きな理由がある。
それは、生前にもこいつが意気揚々と発表したとある機能だ。
ルカ「おやすみスイッチ……どこにあるんだ?」
人間ではなくなったその体に睡眠は必要なのかと求められたときに、疑似的に人間の睡眠を再現する仕組みがあると教えられた。
タイマーを設定すればその時間通りに眠り、目を覚ます……
それが本当に睡眠と言っていいのかは少し言葉に詰まったが、それと同時に言っていたのが『おやすみスイッチ』だ。
押された瞬間にメカ女は強制的にスリープモードになり、一定の時間が経つまでは完全にシャットダウンとなってしまうらしい。
もし、それが事件のさなかで押されていたのであれば……犯人がどんな手口を取ったのかを明らかにすることができる。
透「確か、背中側だったよね」
雛菜「この人にとってはすごく大事な急所だったわけでしょ~? だったらそんなに見つけやすいところにはないよね~」
衣服の下などを重点的に調べてみた。
すると……背面部のかなり下、人間であれば広背筋の中央に当たる部分に……あった。
ガラス窓で守られたボタンには『押すな』のお触書。
透「……押されてるよね、これ」
そのガラス窓は、強引に指で押し割られた形跡があった。
ルカ「犯人はこいつのボタンを押して、意識を奪ったうえで犯行に及んだ。どうやらそれは間違いないらしいな」
雛菜「人間でいえば、睡眠薬を飲まされた状態で殺されたみたいなもんですかね~」
ルカ「……でも、どうやってこのボタンを押したんだ?」
今確認した通り、このボタンは背面の押しづらいところにあった。
まさか犯人に言われるがままされるがままにメカ女も黙ってボタンを押されるのを受け入れるはずもない。
きっと抵抗だってするはずだ。
だが、こいつが本気で抵抗をすればこの島の誰も適いはしないはずだ。
ただでさえ体格がいいことに加えて、今は人体改造を受けて攻撃力も防御力も異常に上がっている。
それこそ殴り返されでもしたらひとたまりもない。
犯人は、いったいどうやってボタンを押したというのだろうか……?
コトダマゲット!【おやすみスイッチ】
〔夏葉の背中に取り付けられた強制スリープボタン。背面の見えづらいところに取り付けられたボタンで、夏葉の不意でも突かない限りは押すことは難しい。死体となった胴体部では、ボタンが押されていることが確認できた〕
-------------------------------------------------
さて、残りのパーツも調べちまうか…
1.腕部
2.脚部
↓1
うで
1 選択
-------------------------------------------------
【腕部】
ゴロンと転がるパーツ群。
その中で、調査をしている人間が心なしか少ないのは……やっぱり、あれを見ているからだろうな。
モノケモノを一撃のもとに葬り去ったロケットパンチ、あれが暴発でもしようもんなら即死だろう。
こういうところで調査をしている人間となると、やはり……
あさひ「あ、ルカさん。これ見てほしいっす」
ルカ「……んだよ」
狸は私を無邪気に呼び寄せると、まるで臆す様子もなく腕をひょいと拾い上げた。
あさひ「なにか夏葉さん握ってるのに、手のひらが開かないっすよ。力を貸してほしいっす」
ルカ「あ? なにか握ってる……?」
促されるままに見てみると、確かに鉄の延べ棒みたいな指の先に何かが見える。
しっかりとした形のあるようなものではなさそうな、半固形の物質らしい。
ルカ「まさか毒とかじゃねえよな……?」
訝しみながら指を一本一本開いていく。
なるほど金属の指は強く握り込まれており、死体そのものに力がこもっていなくとも開かせるには力とコツがいる。
中学生がすぐそばでソワソワしながら見つめる中、丁寧にそれを取り出した。
あさひ「……これ、なんっすか? 」
そこにあったのは、茶色の塊。
どこか湿っているそれは、指で触れるとすぐに形を崩して零れ落ちる。
液体のようにも見えるが、その触感はどこかザラザラもしている。
ルカ「【泥】……だな」
結構期待をして開けた分肩を落とした。
なんてことはない、ただ死の直前に強くその場で握り込んで泥を掴んだというだけの話なのだろう。
ルカ「はぁ、期待外れだったな。犯人に繋がる手掛かりでも握り込んでたら話は別だったが……」
あさひ「……」
あさひ「このあたりの地面、別に湿ってないっすよね?」
ルカ「あ?」
あさひ「ぱっと見回してみても、砂地の地面は乾ききってるっす。泥なんて、他には見当たらないっすよ?」
言われてみれば確かにそうだ。
ここに来るまでの道中も、ここ自体もそう。地面は踏み固められた砂地で完走しきっている。
泥濘なんかどこにもない。
あさひ「ちょっと見せてほしいっす」
中学生は泥を手のひらに載せると、その粒を一つ一つ持ち上げて丁寧に覗き込んだ。
あさひ「……でも、混ざってる草とかはこのあたりのものと同じっすね。別に死体が他の所から運ばれたのを示す証拠ではなさそうっす」
ルカ「そうか……泥に含まれてるものがこの島以外のもんだったら、移動した可能性を示すものになりえたのか」
ルカ「でも、そうじゃねーんだろ? だったら……たまたまじゃねーの?」
あさひ「……そうなのかな」
誰かが飲み物を零して、1点だけに泥ができてたとかそんなオチだろうと思った。
……そんなに、不思議がるようなものなのか?
コトダマゲット!【泥】
〔夏葉の死体が握り込んでいた泥。あたりの地面は乾ききっているが、一体どこから出てきた泥なのだろうか〕
-------------------------------------------------
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
-------------------------------------------------
【脚部】
かなりの重量がある全身を支えていた二本の柱。
流石に元の姿のままの細さとは言い難く、少しばかり元よりもたくましい作りになっているのが印象的だ。
とはいえ、脚も他のパーツと同様に凹みも激しく壊されてしまっているので、もはやその品評も意味はなさない。
冬優子「はぁ……こんなにスタイルよかったのに壊されちゃってるんじゃ形無しね」
ルカ「おいおい……んなこと言ってる場合か」
冬優子「……純粋に、惜しんでいるのよ。有栖川夏葉の気品や見せ方はふゆもよく見習っていたし……こんなバラバラにされた上に凹まされるなんて残念で仕方ないわ」
残念がる割に触ろうとしない冬優子をしり目に私は脚部を持ち上げた。
オイルが音を立てて跳ねて顔につく。
……冬優子のやつ、これが嫌で手を出してなかったな。
ルカ「……特に変わったところはなさそうだな。バラバラになって破損も激しいことぐらいで」
冬優子「何か脚部に機能は無いの?」
ルカ「これまでに聞いたこともないし……何か変化しそうなパーツも見当たらないな。腕と同じようにジェット噴射で飛び上がったり、とかもなさそうだ」
(まあ、そんなものがあれば脱出のために使ってるか)
冬優子「……そう」
どうやら、この脚部からは大して得られる情報はなさそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一通り死体のパーツは確認し終えた。
どれもこれもバラバラで凹みも激しい……今回の事件はやっぱり異色だな。
確かに人体とは構造も違うが、犯人のやつ随分と入念にやったものだ。
ルカ「……あれ」
一度距離を取って、遠目に死体を見てみると一つの事に気が付いた。
死体のパーツはいずれも損壊が激しいが……【脚部】とそれ以外のパーツでは発色が異なるのだ。
でも、これは脚部がおかしいのではなく、その逆。
他のパーツのいずれも黒ずんでいるのだ。
さっき各パーツを確認した通り、脚部以外にはすべて【焦げ跡】がついていた。
それがこの色の違いを生んでいるのが……どうして脚部だけ、逆に焦げ跡がついていないんだ?
そもそも、この焦げ跡はいつついたんだ……?
死体のバラバラと、何か関係があるのか……?
コトダマゲット!【死体の焦げ跡】
〔バラバラになっている夏葉の死体には焦げ跡がついている部分があった。脚部以外のパーツに焦げ跡は集中しているようだ〕
-------------------------------------------------
現場での調査を一通り終えたが……困り果ててしまった。
これまでの事件ではいずれも死体を調べた後でも周りの物を調べたりだとか、別の現場を調べたりだとか調査の仕様はいくらでもあった。
でも……今回は違う。
死体が落ちているのは第4の島の外周に過ぎず、辺りには特に建物もないし、オイルを見ても死体が移動させられたような跡はない。
……私は、次に何をすればいい?
突如押し寄せた手持ち無沙汰にぶわっと汗が噴き出す。
もちろん調査の手を詰めるつもりは毛頭ない。
それでも、自分の行動の指針が見つからず不安に襲われてしまうのだ。
ルカ「と、とりあえず他の連中の話でも聞いてみるか……!」
迫る時間と空白の脳内。どうにか行動したという事実を求めて、当てもない聞き込みを開始するのだった。
〇
〇
〇
≪OTHER SIDE≫
死体を確認してすぐに、私は移動を開始していた。
バラバラの死体にみんな目を奪われて、調査は当分彼女たちが占有するだろうし……情報ならちゃんと共有してもらえる。
それなら、私がいるべき場所はあそこではないと判断した。
ルカと同じ場所にいるのがきまずかったというのは否定しない。
あの子が目に付くのが煩わしかったのも確か。
でも、もっとそれ以上に……生き残るために行動をしたいという大義名分はある。
事件が起きたと聞いた瞬間に脳裏によぎった場所。
私はその前に立っていた。
「【ファイナルデッドルーム】……きっと犯人は、ここに来たんだ」
私がこのアトラクションを見つけたのは、動機の提示された晩の事。
モノクマらしからぬ、手段を択ばない動機提供に違和感を覚えた私はその意図を調査するために単身第4の島にやってきていた。
この島は夏葉さんが強引に解禁した場所、モノクマにとってそれが想定外だったために決着を焦っているのかと思い、手掛かりを探しに来た。
……けど、どうやら違ったみたい。
モノクマは単純に血に飢えていた。そのためにあんな動機を用意したんだ。
島に来ていた当初は建設中の立て札が立てられていた場所に、我が物顔で鎮座するピエロの顔をした建造物。
入り口の看板にはこう書いてあった。
『ファイナルデッドルームにようこそ!
命を懸けた試練に挑め! クリアすればコロシアイ南国生活において絶対役立つ極上の凶器をプレゼント!』
『極上の凶器』……まさにこの動機のためだけに用意されたような文言。
一刻も早く誰かを殺さなくては自分が飢え死にする。
そんな思考にからめとられている中でこんなものがぶら下げられれば誰でも手に取りたくなる。
でも……気にかかるなのはその前の『命を懸けた試練』の言葉。
モノクマの事だから、はいそうですかとその極上の凶器は渡してくれないのは想像にたやすかった。
だから私はその時は一度引き返すことにした。
まだ……あの子を殺す覚悟もできていなかったし、ルカの説得を受けて少し思うところもあった。
今はまだ、行くべきタイミングじゃないと思った。
____その結果が、今。
あのバラバラの死体とその脇に置かれたハンマーを見て、すぐにここが思い浮かんだ。
あんな殺し方は、今までの私たちでは出来ない。
きっと犯人はこの部屋の先で、新しい力を手に入れたんだろうと考えた。
私たちの想像を超える、『極上の凶器』という力を。
それなら、生き残るためには誰かが挑まなくてはいけない。
この島において、知識に隔たりがあること……それはもっとも致命的。
犯人が何を手にして、何を使ったのか。
それを知るために、犠牲となる人間が必要。
「……にちかちゃん」
私は振り返ることもなく、その一歩を踏み出した。
-------------------------------------------------
【ファイナルデッドルーム】
ガラララララ……ガッシャーン!
部屋に入ると、すぐに背後の扉が閉められた。
地面からは槍のようなものが何本せりあがって天井に突き刺さった。
なるほど、ここは私のために作られた檻のような空間。
この檻の中で『命を懸けた試練』に挑むらしい。
……と、思いきや。
モノミ「あ、あれ……緋田さん、なんでここに……!?」
この部屋には、想定外の先客がいた。
モノミちゃんは部屋の隅で震えながら私の方を見る。
美琴「モノミちゃん、あなたこそ……いつからここに?」
モノミ「えっと……事件が起きて、すぐに……ミナサンのために手掛かりを手に入れたくて……」
なんだ。事件が起きる前からではないみたい。
この様子だと、犯人の正体は知らないみたいだ。
モノミ「でも……この部屋からあちし、脱出できなくなっちゃって……途方に暮れてたところなんでちゅ」
美琴「……脱出できないの?」
モノミ「……はい、あちらを見てほしいんでちゅけど……」
モノミちゃんが指さした側にはもう一つの扉。
でも、そのカギは固く閉ざされている。いくらドアノブを捻ろうともびくともしない。
美琴「困ったね」
モノミ「どうやら、扉の横の機械を使って脱出するみたいなんでちゅけど……そもそも入力パネルすら開けなくて困ってるんでちゅ……」
モノミちゃんの言う通り、扉のすぐ隣には数字を表示している液晶。
その下はネジで留められて蓋をされている不自然なくぼみ。
美琴「リアル脱出ゲーム……ってやつかな」
モノミ「みたいでちゅ……あちし、こういうのはからっきしでちて」
せっかく食事を手にしたばかりだというのに、ここから出られないんじゃまた餓死しちゃう。
それ以前に、捜査時間が終わってもモノクマロックに行けないとペナルティでおしおきされちゃうかもしれない。
そうか……そういう意味で『命を懸けた試練』なのかな?
美琴「……それなら、私が出してあげる」
モノミ「え! い、いいんでちゅか!?」
美琴「こういうのは経験ないけど……要はクイズみたいなものだよね? 一緒に頑張ろうか」
モノミ「緋田さん……よろしくお願いしまちゅ! あちし、今夜は温かいお布団で眠りたいでちゅ!」
【脱出開始】
さて、この部屋について確認をしておこう。
東西南北、どれもコンクリートの壁で囲まれていて窓もないから情報はこの部屋の中で完結している。
まずはそれぞれの方向について整理をしておこうか。
【北】がさっきも確認した脱出口。
鍵は固く閉ざされていて、その脇には数字を入力するだろうパネル。
でも、今はネジで留められているのでパネルに触れることもできない。
他には壁に大きく『4』の数字が書かれていて、あとこれは……藁人形?
確か、凛世ちゃんがいつも持っている人形はこんな感じだったよね。
そのお人形は無残にも釘で壁に打ち付けられている。
【東】にはぱっと目につくのは大きな金庫とその上に載せられたレターボックス。
金庫はダイヤル式で、4桁の数字で開錠する仕組みみたい。
レターボックスは特殊なつくりをしている……間口の狭い穴の奥にボタンが見える。
どうにかあれを押せれば開きそうだけど……小指よりもさらに細い隙間だ。
何か細長いものをどこかで調達できないかな。
そして、ここの壁にも数字が書かれている。ここの数字は『1』だね。
【西】には大きなデスクとその上にノートパソコンが置かれている。
ノートパソコンはキーボードを押しても反応がない。その左のUSBポートに何か指したら反応するのかな?
デスクの引き出しを開けてみたけど……
1段目には『ENSW』って書かれたメモ。これ……なんのことだろう?
2段目には年賀状……? 今年の干支の虎の格好をしたモノクマが書かれてる。
そうそう、虎って干支だと『寅』って書くんだよね。
よく間違えて書いちゃうんだよね……
そして壁の数字は『9』、これまた大きく書いてあるな……
【南】は私が入ってきた入り口でもある。槍のようなものがせり出して檻のようになっているあたり、もう逆戻りは出来ないんだね。
他にあるのはモノミちゃんにそっくりなぬいぐるみ。一瞬どっちが本物かわかんなくなっちゃうぐらいにはよくできてる。
そして、槍に阻まれて見えづらいけど……この数字は、『3』……かな?
大体今確認できるのはこれぐらい。
この中からどうにか脱出の糸口を見つけ出さないと。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
☆これよりファイナルデッドルームの試練、命を懸けた脱出ゲームが開始いたします。
緋田様がとれる行動は【入力】【アイテムの使用】【モノミに相談】の3つです。
【入力】は文字通りのパスコードの入力。
パスコードを入力したい対象を選択し、その回答となるパスコードをお答えください。
見事成功すれば、物語が進行いたします。
【アイテムの使用】で緋田様がゲーム中獲得したアイテムを使用可能になります。
使用したいアイテムと、使用したい対象を合わせて指定することでアクションを起こします。
アイテムは順次増えていきますので、指定をお忘れなきよう。
【モノミに相談】は詰まった時の救済手段。
進行状況に応じてヒントが得られます。
もうこれ以上ないというところまでモノミに相談を持ち掛けると、自動でパスコードを入力してしまうのでご注意ください。
何か別にお願いしたいことがあれば、書き込んでくださればモノミがフレキシブルに対応いたします。
以上のほど、ご確認よろしくお願いいたします。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
(さて、どうしようかな……?)
1.入力 【金庫】
2.モノミに相談
※アイテムが存在しないためアイテムの使用はできません
↓1
入力【金庫】:1439
1 入力 【不正解】
ビー!!
美琴「……あれ」
モノミ「おかしいでちゅね……このメモに書かれたアルファベットって東西南北の頭文字なんでちゅよね?」
美琴「うん……そのはず。だからその通りに数字を追ったつもりなんだけど……」
モノミ「数字はどこからどうみても……1、4、3、9……」
美琴「……どこから、どうみても」
美琴「……見え方の違い?」
モノミ「緋田さん?」
美琴「もう一度、チャンスを貰えるかな」
1.入力 【金庫】
2.モノミに相談
※アイテムが存在しないためアイテムの使用はできません
↓1
2 選択
美琴「ねえ、モノミちゃん。なんでこのパスワードじゃないんだと思う?」
モノミ「何でと言われまちても……パスワードが違うから、不正解なんでちゅよね?」
モノミ「そうなると、数字の順序か、数字自体が違うかのどっちかでちゅ。でも、順序はあのメモ以外にヒントはないでちゅし……」
モノミ「やっぱり、数字が違うんでちゅかね……?」
美琴「数字、か……」
(私の目に見えている範疇で数字に違和感は……)
(……あれ?)
(そういえば、最初に部屋を見渡した時にも思ったけど……あの数字だけ、障害物が被さってるよね……?)
美琴「……もしかして」
1.入力 【金庫】
2.モノミに相談
※アイテムが存在しないためアイテムの使用はできません
↓1
南の数字をちゃんと確認する
美琴「……南の数字、槍に被さって見えづらいけど……よく見たら」
美琴「やっぱり……この数字、3じゃないよ」
モノミ「え?! な、なんででちゅか!?」
美琴「左半分が隠されているだけで……本当は8なんだ」
美琴「あとはデスクのヒントそのまま。『ENSW』はそれぞれ東北南西を英語にした時の頭文字。その順序で数字を入力すればいい」
美琴「だから、正しいパスワードは……『1489』」
ガチャ…
せっかく開いたことだし、金庫の中身を確かめてみよう。
金庫の中にあるのは……【バール】かな?
L字の工具で、尾っぽの部分が割れて細いものを挟めるようになってる。
これをどこかで使えってことだよね。
まさか……扉を壊すとかじゃないよね……?
【アイテム:バールを手に入れた!】
(さて、どうしようかな……?)
1.アイテムの使用 【バール】
2.モノミに相談
※パスコードの入力先が存在しないため入力はできません
↓1
【バール】:北の藁人形を外す
1 【正解】
-------------------------------------------------
美琴「よいしょ……」
バールの先っぽを釘の根元に添わせるようにして、力任せに引き抜いた!
どうやら釘は人形を貫通してかなり深いところまで刺さっていたみたい。
モノミ「あ、緋田さん! その釘は危ないでちゅからあちしが預かっておきまちゅよ!」
美琴「え? ああ、ごめんね。ありがとう」
モノミちゃんに釘を手渡して、私は人形を確かめる。
意味深に供えられていたんだもの、手掛かりがなにも無いわけないよね。
藁をかいくぐるようにしてまさぐると、その中から一つのUSBメモリが出てきた。
美琴「これ……どこかで中を見れないかな?」
【アイテム:USBメモリを手に入れた!】
(さて、どうしようかな……?)
1.アイテムの使用 【バール】【USBメモリ】
2.モノミに相談
※パスコードの入力先が存在しないため入力はできません
↓1
【USBメモリ】:西のノートパソコンのUSBポートに刺す
1 【正解】
-------------------------------------------------
【西】の壁にあるノートパソコン、そのUSBポートに早速メモリを挿してみる。
するとさっきまでまるで反応しなかったパソコンは、息を吹き返したように音を立てて起動。
美琴「……あれ?」
でも、ログインの画面で止まっちゃった。
どうやらこのパソコンはひらがな二文字を入力してロックを解除するみたい。
ここに当てはまるひらがなを考えなきゃいけないんだ……
う~ん、これって一体……?
『とう→しわ→しま→□□→きと→しか→□□→おま→ふま→ひま→こら→はた』
何の法則性があって並んでるんだろう……?
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】
2.アイテムの使用 【バール】
3.モノミに相談
↓1
3 選択
美琴「……モノミちゃん、このパスワード……なんだろうね」
モノミ「うーん、意味がありそうでなさそうな2文字の群……全然ピンときまちぇんよ……」
美琴「……そうだよね」
モノミ「この手のクイズだと、何かの頭文字とか最後の文字とかそういうのを抜き取ったパターンが多いんでちゅかね……」
モノミ「大体の人が知ってるものの名前を題材にしてるケースが多いと思いまちゅ」
美琴「そういわれても……12個のものでこんな文字と関連があるような概念……」
モノミ「どうしてもわからないなら、部屋を改めて検証するのもいいかもしれないでちゅね!」
モノミ「アイテムも手に入ったことだし、何か他にできることもあるかもしれないでちゅよ!」
(そうか……謎を解く以外にもできることはあるかもしれない……!)
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】
2.アイテムの使用 【バール】
3.モノミに相談
↓1
【バール】:東のレターボックスの奥のボタンを押せるか試す
1 【不正解】
-------------------------------------------------
ガッ ガッ
美琴「……ダメみたいだね」
長ぼそい形状だから、と思ったけど。
そもそもバールでは前提としてサイズ感が違いすぎる。
間口につっかえてしまって、そもそも入ることすらない。
木の枝ぐらいに細長い物じゃないとこのレターボックスのボタンは押せそうにない。
モノミ「あ、あんまりやりすぎるとレターボックス自体が壊れちゃいまちゅ……」
美琴「でも、今手を付けられそうなのってこれくらいだよね……」
他に手の付けられそうな手掛かりらしいものもなにもない。
もしかして、何か別のアプローチで開けるのかな……?
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】
2.アイテムの使用 【バール】
3.モノミに相談
↓1
モノミが持ってそうな木の棒とかモノミに回収された釘でボタンを押せないですかね?
無理そうならいっそバールでレターボックスをぶち壊したい
3 モノミに釘を貸してもらえるか相談する
-------------------------------------------------
美琴「モノミちゃん、さっきの釘貸してもらえるかな?」
モノミ「へ? 釘でちゅか? いいでちゅけど……何に使うんでちゅか?」
美琴「このレターボックス、奥のボタンを押すのに細長いものが必要なの。さっきの釘なら届きそうだと思って」
モノミ「はえ~、そんな使い道があったんでちゅね。はい、どうぞでちゅ!」
モノミちゃんから釘を受け取った釘を、そのままレターボックスのくぼみに押し込んでみた。
するとジャキッと音を立ててレターボックスが開き、その中身が明らかに。
中にあったのははさみみたい。ごく普通の右利き用のはさみ。
【アイテム:はさみを手に入れた!】
美琴「何か切るようなものでもあったかな……?」
モノミ「うーん……あちしにはサッパリでちゅ」
その他に入っていたのは……電車の時間のメモ?
『始06:00発 終10:52 着』
美琴「これは……なんのメモなんだろう?」
モノミ「どこかに出かける用事があったんでちゅかね?」
美琴「……随分と早くて、長旅だったんだね」
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
【はさみ】で南のモノミのぬいぐるみを解体する
1 【正解】
-------------------------------------------------
……なんとも我ながら物騒な発想だけど、ほかに使い道を思いつかない。
それにモノクマが仕掛けたこのゲームなんだもん、それぐらい思い切った考え方をした方がいいのかもしれない。
私は右手にハサミを携えたまま、モノミちゃんにそっくりなぬいぐるみを持ち上げた。
モノミ「あ、緋田さん……いったい何をしようと……」
美琴「ごめんね……!」
後はぬいぐるみめがけて思いっきりハサミを振り下ろす!
鋭くとがった刃はすぐにその咽喉元を裂いて、ぬいぐるみは中の中綿を血液のように吐き出した。
モノミ「いや~~~~~! もう一人のあちしがスプラッターでちゅ~~~~~~! 見えちゃいけないところまで全部開陳しちゃってまちゅ~~~~~!!」
美琴「ごめんね、モノミちゃん。でも……これで間違ってなかったみたい」
モノミ「ほえ?」
出てきた中綿を押しのけ押しのけ、中を覗いてみると……そこには一つの小箱。
南京錠で締められた小箱にはカードも一緒に張り付けられている。
『1+2=3 3+4=3 4+5=3 11+12=2
6+7+8+9+10=A 3×5×10=B
パスワードは『A』『B』の順 』
美琴「……これは本格的な暗号だね」
モノミ「なんでちゅかこれ、計算が滅茶苦茶でちゅ!」
美琴「……きっと、純粋な数字ではないんだろうね。何か意味を持った数字に違いないよ」
うーん……これもなかなか複雑な暗号だね。
解くには結構時間がかかるかも……
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
訂正
どちらの暗号からでもどうぞ
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】【小箱】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
3 選択
美琴「パスワードを2つも要求されちゃったね……」
モノミ「むむむ……どちらも難しい暗号でちゅ……」
美琴「法則性を読み解かないことには、前に進めないね」
モノミ「これ以上は何か検証できそうなこともないでちゅよね?」
美琴「うん、持っているアイテムは一通り使ったはずだし……行動はあまりできそうにないかも」
モノミ「それなら、これまでに見てきたものを改めてみてみるのはどうでちゅか?」
モノミ「それこそ、初めのうちに見たものに何か手掛かりがあるかもしれないでちゅ!」
(情報を改めて見返してみるのもいいのかな……)
モノミ「それに、さっきの時刻表も気になりまちゅ! あれってなんの時刻表なんでちゅかね?」
すみません、時間的に厳しくなってきたので本日はここまで。
次回、ファイナルデッドルームの脱出を目指しましょう。
ヒントとして申し上げますと、
ノートパソコンの方はこのシーズンに関連が深いもの、小箱の方は日本の風習に関連が深いものにまつわる暗号です。
小箱の方は正直すぐに閃くようなものでないと思うので、次回はモノミのヒントももっと踏み込んだものにしていこうと思います。
次回更新は5/8か5/9の夜……ちょっとまだわかりません!
突発的に始まると思うのでどうかお付き合いください。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
おつかれさまでしたー
小箱、年賀状のモノクマが虎(=寅)なので干支を数えて、1→ね、2→うし、……、12→い、か
時計と干支を重ね合わせて、12→ね、1→うし、2→とら、……、11→い、で
それぞれの文字数が数字に対応するのかとも思ったんですけど、
前者だと11(いぬ=2)+12(い=1)が2じゃなくて3だし、後者だと1(うし=2)+2(とら=2)が3じゃなくて4になるから
どっちもちょっと違うっぽいんですよね
ふふっ、わからん
ファイナルデッドルーム後半戦より再開します。
あれから自分でも考えたんですけど小箱の暗号は少し捻りすぎた感じがしますね……
もうちょっと素直な暗号にすればよかった……
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【ノートパソコン】【小箱】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
ノートパソコン
「なや」と「しべ」と入力
1 【正解】
-------------------------------------------------
【なやしべ】
美琴「あっ、ログインできたみたいだよ」
モノミ「ええ?! ほ、ホントでちゅか!? この暗号、解けたんでちゅか!?」
美琴「うん、仕事柄お世話になることも結構多いから」
モノミ「仕事柄でちゅか……? そんなに謎解きゲームのお仕事って多いんでちゅか?」
美琴「ううん、そうじゃなくて、この暗号の事。このひらがな二文字の並びには規則性があったんだ」
モノミ「何かあるとは思ってまちたが……分かったんでちゅか?」
美琴「これはね、東海道新幹線・山陽新幹線の停車駅……その頭文字と最後の文字なんだ」
モノミ「しんかんせん……でちゅか!」
美琴「東京→品川→新横浜→名古屋→京都→新大阪→新神戸→岡山→福山→広島→小倉→博多……全部で12個だから、総数からなんとなく思いついたんだ」
モノミ「ミナサンより長くアイドルを続けているお姉さんの緋田さんだからこそ分かったんでちゅね!」
美琴「……」
美琴「そういうわけだから、この画面で穴あきになっているのは『名古屋』と『新神戸』の頭文字と最後の文字。二つを合わせて『なやしべ』がパスワードだよ」
モノミ「あ、あれ……あちし、何か良くないこと言っちゃいまちたか……?」
ログインに成功すると、ノートパソコンは私の操作を待つことなく自動で動き出した。
しばらくローディングをしたかと思うと、パソコンは一つの文書をその場で展開した。
『1×2=1 11×2=2 11×22=3 111×22=4 111×222=5
11×222=A 111×2=B 1111×222=C 111×222=D
パスワードはABCDの順に並ぶ 』
モノミ「ま、また暗号でちゅか……?」
美琴「……これ以外には、何も閲覧できないみたいだね。どうやらこのパソコンはこの暗号を表示するためだけのものみたい」
モノミ「よーし、それなら早速謎を解き明かしまちょう!」
美琴「……それは、そうなんだけど」
モノミ「ほえ?」
美琴「この暗号、謎を解いたところでどこにパスコードを入力すればいいのかな」
モノミ「そのパソコンじゃ……ないんでちゅか?」
美琴「これはただテキストファイルを開いているだけ、入力フォームはどこにもないよ」
モノミ「なんと! 弱りまちたね……」
どこにも解答先のない暗号……
これってきっと、まだ見えていないどこか別の場所に入力するってことだよね。
だとすると、この暗号ってもしかして……最後の暗号だったりして。
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【小箱】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
3 整理
美琴「一度ここまでの情報を整理しておこうか」
モノミ「はい! そうでちゅね!」
美琴「これまでに金庫とノートパソコンの暗号を解いて……今未解決の物を二つ抱えているよね」
『1+2=3 3+4=3 4+5=3 11+12=2
6+7+8+9+10=A 3×5×10=B
パスワードは『A』『B』の順 』
美琴「これがぬいぐるみを裂いた中にあった小箱の暗号」
『1×2=1 11×2=2 11×22=3 111×22=4 111×222=5
11×222=A 111×2=B 1111×222=C 111×222=D
パスワードはABCDの順に並ぶ 』
美琴「これがノートパソコンにあった暗号で、入力先がまだ見つかっていない……」
モノミ「ヒントらしいものも未使用のものがありまちゅ!」
モノミ「初めの探索で見つけた寅の年賀状もその意味が分かってないでちゅね……」
美琴「アイテムは大体使い終えたかな?」
モノミ「そうでちゅね、ハサミもバールも……これ以上は使わないでちゅかね?」
美琴「……なら、まずは小箱の暗号を解いた方がいいかもしれないかな」
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【小箱】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
3
美琴「モノミちゃん、この年賀状の意味って何だと思う?」
モノミ「そうでちゅね……やっぱり暗号にまつわるヒントなんだと思いまちゅ」
モノミ「小箱の数式に登場する数字の最高が12でちゅし……もしかするとこっちの暗号は干支に関係するのかもしれまちぇん!」
美琴「うーん……まあそこは私も何となく察してはいたんだけど」
モノミ「はれ?! そ、そうなんでちゅか!」
美琴「うん……そのうえで何か、ない?」
モノミ「緋田さん……なかなかスパルタでちゅね……! えーっと、えーっと……」
モノミ「あっ! この年賀状、わざわざ『虎』じゃなくて『寅』の漢字になってまちゅ! これ、なにか意味がないでちゅか!」
美琴「……それは案外ありかもしれない」
美琴「漢字に書くことでこの数式に当てはまる法則が見えたりしてこないかな……」
(少し、考えてみようか)
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【小箱】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
3 もっと相談
美琴「漢字、一度全部書いてみようか」
モノミ「は、はい……そうでちゅね、やってみまちゅ!」
モノミ「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥……」
美琴「これと、数式を併せて見てみようか」
『1+2=3 3+4=3 4+5=3 11+12=2
6+7+8+9+10=A 3×5×10=B
パスワードは『A』『B』の順 』
モノミ「う~ん、閃かないでちゅね……」
美琴「数字を干支の順番に置き換えてみてみるとか?」
『子+丑=3 寅+卯=3 卯+辰=3 戌+亥=2
巳+午+未+申+酉=A 寅×辰×酉=B 』
美琴「どうかな?」
モノミ「漢字ならではの共通項の数式、なんでちゅかね……?」
【次のヒントで自動で回答を入力します】
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【小箱】
2.アイテムの使用 【バール】【はさみ】
3.モノミに相談
↓1
読み方の文字の数かな?
だとするなら
ね+うし=3 とら+う=3 う+たつ=3 いぬ+い=2 で当てはまるから
A =10 B=2 ?
読み方の文字の数は最初は考えてたんですけど
それだと足し算はともかく掛け算がそもそも式として成立しないと思ったんですよね……
何も分からん……
>>348
いぬ+いの計算では同じ文字は消えると考えれば
「とり」と「とら」って同じ「と」を含んでるから
だから実質残るのは「ら」と「り」で一文字として考えて計算しろって思ってたんだけど
すみません、時間的に厳しいのでもうきりあげさせていただくのですが、一応答えだけ貼っておきます。
正直これは自分でも奇を衒いすぎたと思うので……申し訳ない。
続きは明日またします。
-------------------------------------------------
【1027】
美琴「……よかった、開いたみたい」
モノミ「すごい……緋田さん、よく開けられまちたね。あちしにはこの計算式が何を指すのか全然わかりまちぇんでちたよ」
美琴「うん……これはちょっと難しかったかな。この暗号は俯瞰的に見てみることが大事だったんだ」
モノミ「フカン的、でちゅか?」
美琴「まず、はじめの3つの計算式だけ見てもさっぱりでしょ? モノミちゃんの言う通り、計算が滅茶苦茶。ここを見ていても何も見えてこない」
美琴「だから注目するべきなのは『11+12=2』の式。数字の刻み方が一気にとんだ計算式をわざわざ書いてる……そうなると、何か意味があるはずだよね。」
美琴「それに、暗号の解読部もそれまでになかった数字が登場したり、足し算が掛け算になったりしてる。それって法則さえ読み解ければ類推ができるって言うヒントだよね」
モノミ「確かに言われてみればそうでちゅね……」
美琴「じゃあ、私たちの身近に『12』にまつわるものは何かないかな?」
モノミ「あっ、時計とか十二支とか……色々ありまちゅね!」
美琴「そう、十二支。子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥。これらを漢字にして書いてみたら何か思いつかないかな?」
モノミ「うーん……脚の数、じゃないでちゅよね……」
美琴「漢字に書く際にまっすぐな横線の数。途中で折れるものは含まないみたい」
モノミ「……ホントだ、それぞれ横線の数は順に1、2、3、0、3、1、2、2、2、3、1、1になるんでちゅね! これを計算式に置き換えると、確かに成立しまちゅ!」
美琴「だから1~12の数字を今モノミちゃんが言った通りに置き換えると……」
6+7+8+9+10=1+2+2+2+3=10
3×5×10=3×3×3=27
美琴「後はAとBの順に続けて並べればパスコードは『1027』になるんだ」
モノミ「これはだいぶ頭を柔らかくしなくちゃいけない謎でちた……!」
美琴「さあ、小箱の中を見てみようか」
南京錠を外して小箱を開けてみると、その中に入っていたのはドライバーが一つ。
なるほど……脱出までの道筋は見えてきた。
【アイテム:ドライバーを獲得しました!】
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.アイテムの使用 【バール】【はさみ】【ドライバー】
2.モノミに相談
↓1
おつかれさまでしたー
直線の数と折れ線の数、跳ね、はらいの数あたりは数えたけど横線だけの数は流石に数えてなかった……
特定の要素の中からさらに特定条件を満たしてる数を使うのは流石に捻りすぎてて当てるのが厳しすぎると思います
見苦しくて草
こんな言葉を知ってる?「嫌なら見るな」
特に暗号について揚げ足取ったり難癖付ける例の読者様に言いたい
ID変わってるかもしれないですけど>>353なのですが、
ID:FE9tMxS00の方から色々言われてる対象って私で合ってますよね?
つきましては、ID:FE9tMxS00の方の貴重なご意見について2つほど質問があるのですが、
まず、1つ目に>>354で「見苦しくて草」とおっしゃっていますが、
どのあたりの言動が見苦しいと感じたのか具体的に教えていただけますか?
2つ目に、>>358で「特に暗号について揚げ足取ったり難癖付ける」とおっしゃっていますが、
これについてもどのあたりが揚げ足を取ったり難癖を付けたりしているように感じたのか教えていただけますか?
これはどちらについても見返しても私は正直な意見や感想を述べているだけなので
自分ではわからず、恥を忍んで聞いています。
また、>>358で「嫌なら見るな」という言葉を知っているか問われていますが、当然知っています。
「嫌なものをわざわざ見に来なくていい」という意味ですよね?
この質問の意図がよくわからないのですが、「嫌ではないので見ます」と答えればいいのでしょうか?
以上、長文失礼しました。
今後の勉強のためにも、ID:FE9tMxS00の方につきましては回答いただけると幸いです。
対話してID:FE9tMxS00の方のことを理解しようと試みたのですが、質問に回答をいただけなかったことから、
どうやら対話に応じるつもりはなく、価値観が根本から全く異なるようなのでこの話はこれで終わります。
作者の方含めてスレの他の読者の皆様にはご迷惑をおかけしました。
私は私の流儀で以後もこの作品を楽しませていただきます。
1 【正解】
キュルキュルキュルキュル……
美琴「よし、外れたよ」
この部屋に入った時からあった、ネジで留められた入力パネル。
やっとそれを解放することができた。
美琴「……4文字を入力するみたいだね」
モノミ「数字4文字みたいでちゅね、何かヒントは……」
モノミ「あわわ! 近くに何のヒントもないでちゅよ!?」
モノミちゃんの言う通り、この入力パネルの他にはなにもなし。
入力すべき数字は、他の場所で見つけてこいということなのかな。
さあ、ここが正念場。
これさえ解けばきっと出ていけるはず……頭を回転させなきゃね。
美琴「落ち着いて、モノミちゃん。これまでに手に入れた情報から考えてみよう」
モノミ「ま、任せまちゅ……」
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【パネル】
2.モノミに相談
↓1
2 モノミに相談
美琴「モノミちゃん、これが最後のパスワードだね」
モノミ「はい! なんとしてもこの謎を解いて、脱出しまちょう!」
美琴「差し当たって解くべきなのは……やっぱりノートパソコンに表示されてた暗号だよね?」
『1×2=1 11×2=2 11×22=3 111×22=4 111×222=5
11×222=A 111×2=B 1111×222=C 111×222=D
パスワードはABCDの順に並ぶ 』
美琴「これの入力先がずっと見つかってなかったわけだし……他には何ももうなさそうだもんね」
モノミ「でちゅけど……これ、どういう意味なんでちゅか?」
モノミ「ヒントらしい怪しい物もこの部屋にはもう残ってないでちゅよ」
美琴「それなら……この暗号は本当にこの暗号だけで完結しているのかもね」
美琴「試しに、素直に計算してみるとかはどうかな?」
モノミ「どうでちゅかね……そんなことで見えてくるものなんでちゅか?」
美琴「わからないけど、立ち止まっている時間はないでしょ?」
モノミ「かっこいいでちゅ……緋田さん! 今の言葉、胸に刻み付けまちたよ!」
美琴「……」
(……自分で計算やらなきゃダメかな)
-------------------------------------------------
(さて、どうしようかな……?)
1.入力【パネル】
2.モノミに相談
↓1
1 【正解】
【4365】
ピピッ
美琴「……よし、正解だったみたい」
私が数字を入力し終えるとパネルは緑色に点滅。
認証したであろう電子音が鳴ると、部屋のどこからか駆動音が聞こえ出した。
モノミ「あ、緋田さん……最後の暗号もすっかりお任せしちゃいまちたね……」
美琴「ううん、気にしないで。元々そのつもりだったから」
モノミ「それで、この暗号はどういう謎だったんでちゅか? また難しい計算式みたいだったでちゅけど……」
美琴「これまでにやってきた暗号の中でも一番これが正統派の暗号だったよ。数字が1と2だけで構成してあるから、何か意味があるように見えるけど、単純な計算であることには変わりないみたい」
モノミ「え? でも、11×2は、22でちゅよね?」
美琴「うん。それに11×22は242だよ」
モノミ「それじゃあ計算が成立してないじゃないでちゅか!」
美琴「よく暗号の計算式と見比べてみて。何か別の見方はできないかな」
モノミ「むむむむ……あっ! もしかして桁数でちゅか!?」
美琴「大正解、計算式の右側の数字は左の掛け算をした時の解、その桁数を表しているの」
モノミ「なるほど、その法則に従ってパスコードも考えるんでちゅね!
11×222=2442で、『4』桁の数字
111×2=222で、『3』桁の数字
1111×222=246642で『6』桁の数字
111×222=24642で『5』桁の数字
これでパスコードが4365になるんでちゅね!」
美琴「そういうことだね。特に他にヒントはなかったけど、閃きさえあればすぐに解ける暗号だったよ」
【脱出成功】
-------------------------------------------------
命をかけた脱出ゲームとやらをクリアした私とモノミちゃん。
最後のパスコードを認証したことで、ついに北の扉も開く……そう思ったのだけど。
私の目の前の扉は開くことはなく、何か別のものが床から競り上がってきた。
私の腰の高さほどの台の上に置かれたのは銃と弾丸、そして一枚の紙切れ。
『おめでとう! あなたは命をかけた試練への挑戦権を獲得しました!』
美琴「どうやら、この脱出ゲームは前座だったみたいだね」
モノミ「え……ま、まだ続くんでちゅか?!」
『ここに一丁の銃と、弾丸を一発用意しました!
極上の凶器を手に入れるにはロシアンルーレットをクリアする必要があります!』
美琴「ロシアン、ルーレット……」
『ロシアンルーレットの作法
①弾を一発だけ込めて、リボルバーを回転させてください。
②銃口を自分のこめかみに当てます。
③引き金を引いて、見事生還できればクリアです』
モノミ「な、な、なんでちゅか……これ! こんなの、1/6の確率で死んでしまいまちゅ……!」
狼狽えるモノミちゃんとは対極に、私は納得がいったとばかりに何度も頷いていた。
命をかけた試練だという割に、脱出ゲームで時間との勝負なんてモノクマにしては生ぬるいと思った。
もっと生と死の狭間に身をおいて、肌がひりつくようなものじゃないと彼は喜ばないだろう。
そういう意味で、ロシアンルーレットはこれ以上なくうってつけ。
ガチャ…
モノミ「あ、緋田さん?! 何をやってるんでちゅか?! 銃を、銃を下ろしてくだちゃい!」
だから私は、特に抵抗もなく銃口をこめかみに当てた。
どうせこの挑戦に挑まないことには捜査時間の時間切れでペナルティ。
この部屋に入った時点で逃げ道はないんだから、やるしかない。
美琴「……? どうして? こうしなくちゃ、ファイナルデッドルームはクリアにならないみたいだよ」
モノミ「だ、だからって……自分の命をみすみす危険に晒す必要なんてないでちゅ! 何か……何か別の方法がきっとあるはずでちゅから……!」
モノミちゃんは縋るようにして私の説得を試みる。
でも、申し訳ないことに耳を貸すつもりなんて全くない。
私はまるで呼吸でもするかのように、日常の1ページを紡ぐように、何も考えず、何も不安に思わず、その引き金に指をかけた。
美琴「モノミちゃん、あのね……どうせクリアしないことには私たちは死んじゃうんだ」
美琴「それに、この先にある極上の凶器を知らないことには、真実にたどり着くことはできない」
美琴「少しでも生き永らえるため、にちかちゃんが死の間際に託してくれた想いを引き継ぐために、真実を解き明かす必要がある」
美琴「その真実が手に入るのなら__________」
美琴「_______死んだっていいの」
引き金を引いた。
美琴「……生きてるね」
生き永らえるために死に身を置く。
我ながら倒錯した覚悟の啖呵を切ったと思うけど、どうやらその覚悟が生を手繰り寄せてくれたらしい。
私の体には一切の外傷もなく、見事クリアをすることができた。
モノミ「あ、あわわ……無事でよかったでちゅけど、あわや大惨事だったでちゅ……」
ガチャリという音がした。
私のクリアを確認したのか、これでようやっと北の扉が開いたらしい。
ドアノブを捻るとすんなりと回転した。
美琴「それじゃあ行こうか、極上の凶器を確かめに」
モノミ「え? あ、は、はい……特にクリア後の感想会なんかもやらないんでちゅね……」
美琴「うん、足踏みしている時間はないから。急いで確かめないと」
モノミ「あう……まだ衝撃でボーッとしてまちゅ……」
-------------------------------------------------
【ファイナルデッドルーム 最奥】
扉を開けると歪な空間に出た。
まるで洞窟をそのまま部屋として使っているような、凸凹な天井と壁。
そこには所狭しと刃物や武器など凶器の類が並んでいる。
モノクマ「コングラッチュレーション! おめでとう、勇者は最強の武器を手に入れた!」
美琴「モノクマ……これでクリアでいいんだよね?」
モノクマ「ええ、ええ! ロシアンルーレットまでしっかりと攻略してくれましたもんね、もう文句のつけようがありませんよ!」
モノクマ「さてさて……そういうわけで緋田さんには『極上の凶器』は獲得する権利を手に入れました! どうかこの部屋から極上の凶器を見つけ出してくださいね!」
美琴「手渡ししてくれるわけじゃないんだね」
モノクマ「で、緋田さんはいいけれど……やい、モノミ! どうしてお前までここにいるんだよ!」
モノミ「ほえ? 緋田さんがクリアしたから、そのついでに……」
モノクマ「ファイナルデッドルームに『ついで』なんかな〜〜〜〜い!!! キッチリしっかりオマエもロシアンルーレットをクリアするんだよ!」
モノミ「そ、そんな! いたたたた! 耳を引っ張らないでくだちゃい! 千切れちゃいまちゅ!」
モノミちゃんはモノクマに引きずられて逆戻りさせられちゃった。
でも、これで集中して調査できる。
真実を明らかにするために……しっかりとみてまわろう。
彼女の命を奪ったであろう『極上の凶器』、それを確かめないとね。
-------------------------------------------------
【凶器】
空間に所狭しと並べられた木箱、その中身はどれも人の命を奪うに足る凶器ばかり。
サバイバルナイフにウォーハンマー、果てはモーニングスターまで。適当に振り回しているだけでも命を奪うには十分すぎると思う。
それだけでなく、木の棚の中には毒薬の類まで揃っている様子。
ドラッグストアにも結構な数が揃えられていたとは思うけど、それとはまた違ったラインナップ。
催涙ガスなどのバリエーションも揃えていかにもこれで殺してくださいと言わんばかり。
「でも、これだけのものが揃ってて爆発物の類はないんだ」
てっきり手榴弾や閃光弾などもあるものかと思ったけどどうやらそれはおいていないらしい。
他の武器が乱雑に木箱に押し込まれているのをみるに、不用意に扱うとリスクあるものを一緒に仕舞い込むのは難しいと考えたのかな。
-------------------------------------------------
【ロッカー】
極上の凶器はこのロッカーの中にあるのだろうか?
そう思って片っぱしから開けてみるけど中にあるのはよくわからない書類や白衣ばかり。
特に使えそうなものも見当たらないのでそのまま置いておく。
ロッカーの中にはいくつか開けられないものもあるみたい。
というのも、ロッカーが並ぶすぐ隣に鍵をかけるボードが掛かっており、その中のいくつかが抜け落ちている。
誰かが使用中、ということなのかそれともただの演出なのか。
その意図はわからないけど、案の定抜け落ちている番号のロッカーだけは開かなかった。
(……あれ?)
開かないロッカーの番号と鍵の番号とを照らし合わせている中、一つの疑問を抱く。
鍵の数が明らかに一つだけ多い。
ロッカーを開ける鍵にしては少し大きめなそれは、特に番号も割り振られずに吊り下げられている。
思わずそれを手に取った。
一体何の鍵なのだろうと表裏を確認してみると……
『極上の凶Key』
「……ふふっ」
おかしな駄洒落が書いてあった。
【アイテム:極上の凶Keyを手に入れた!】
-------------------------------------------------
【島のパンフレット】
隅に追いやられるようにして積まれている書類の山。
カラフルな彩色はされているけれど、埃をかぶっていてそれなりに年季は入っていそう。
一枚手に取って広げてみる。
全体を彩る青色、真ん中に丸く緑の島が鎮座。
その所々にはアトラクションのイラストに、その説明文。
なるほど、どうやらこれは遊園地であるこの第4の島における見取り図のようなものみたい。
一応、一枚貰っておこうかな。
コトダマゲット!【島のパンフレット】
〔遊園地である第4の島の案内地図。画像は後日用意〕
-------------------------------------------------
【何かありそうな台】
私の腰ほどの高さの大理石の台には、ふかふかなクッション。
何かを載せておくための留め金のようなものも備わっていて、そこに本来置かれるべきものがどれだけ丁重に扱われるべきものなのかを窺い知れる。
しかし、肝心のその『置かれるべきもの』の姿はどこにも見当たらない。
もしかして、私より先にここを訪れた【今回の犯人】が既に持ち去ってしまったのだろうか。
だとすると、ここにあったものは一体……?
-------------------------------------------------
一通り最奥部の空間を見尽くした。
でも、手元に残ったのはただの鍵が一つ。とてもこれでは人を殺せそうには思えない。
それに、既にこの部屋から何かが持ち出された痕跡があった。
あれこそが、極上の凶器なのだとしたら私たちはもう真実に辿り着くことはできなくなる。
「……どうしよう」
その持ち出されたものを類推するのは不可能だ。
この部屋には凶器なら山ほど溢れているのに、それを差し置いて手にするべき極上の狂気なんて他に何も思いつかない。
せっかく命まで張ったのに、これじゃあ骨折り損。
そう思ってため息を一つつくと、それに応えるようにしてモノクマが姿を表した。
モノクマ「お探しのものは見つかりましたか?」
美琴「……ううん、もう私の前にクリアした誰かに持ち出されちゃったみたい」
モノクマ「あれ? そうですか? 緋田さんは【初回クリア特典】目当てだったんですね」
美琴「初回クリア特典?」
モノクマ「うん、このファイナルデッドルームを最初にクリアした人にだけ用意されるスペシャルな特典だよ。ほら、あそこの台の上に本来なら置いてあったんだ」
美琴「……ああ、それが極上の凶器なんだね」
モノクマ「え? 違うよ?」
美琴「……え?」
モノクマ「あのねえ、看板にも書いてあったでしょ? 『クリアすれば極上の凶器が手に入る』って。それが一番乗りの人間だけだったらボクが嘘つきになっちゃうじゃない」
美琴「……たしかに、あなたが一番嫌いそうなことだよね」
モノクマ「そう! だからこのファイナルデッドルームは初回クリア特典以外は適宜補充される仕組みになってます! ちゃんと緋田さんの分の極上の凶器もあったはずだよ!」
美琴「適宜、補充……持ち出された分はすぐに補充されて、誰でも凶器の調達には差がないんだね」
美琴「極上の凶器もその例に漏れない……まさか、極上の凶器ってこの鍵……?」
モノクマ「うぷぷぷ……ちゃんと書いてあったでしょ? 極上の凶Keyってさ!」
美琴「ただの冗談じゃなかったんだね」
モノクマ「ま、そういうわけだから……存分に役立ててやってくださいよ! お出口はそこらですので、後はお任せします!」
モノクマが姿を消してからも、じっとその鍵を見つめていた。
指の関節より少し大きいだけの鍵、でもこれが開ける扉の奥には人の命を簡単に奪い去ってしまう何かが秘められている。
そんな扉、まさにパンドラの箱とも言うべきものだ。
開けた瞬間、中から得体の知れない何かが溢れ出し、あっという間に全てを飲み込んでしまう。そんな神話が頭によぎってしまう。
手のひらの鍵が、妙にずっしりと重たく、少し熱を帯びているように感じられてきた。
〇
〇
〇
目的も確証もない聞き込みは大した成果を上げることもなく、時間ばかりがただ過ぎていった。
メカ女の目撃証言、アリバイの擦り合わせ……そのいずれも深夜の事件ともなればあまり役にも立たない。
特に、今の動機のこともあって無駄な行動を避けていた人間も多く、大体が自分のコテージで眠っていたと口を揃えて証言した。
「……まずいな」
真実への光明も見えて来ず、何も積み上がるものもない。
気がつけばその爪先が早いテンポで地面を蹴っていた。
指は腕の布地を何度も叩いて、リズムを裏打ちするように舌が鳴る。
成果をあげられない自分自身への苛立ちが募った故の反応だった。
「どうにか、どうにか手がかりを掴まねーといけないのに……!」
東に見た太陽が今に西に向かう。
さっき見た雲がもう遠くにいる。
時間の経過を空が告げてくるのもまた煩わしかった。
観覧車の支柱の隙間隙間から見えてくる空から目を背けようとした。
……その瞬間だった。
「……え?」
観覧車は、私の目の前で明らかに静止した。
はじめは観覧車の回転速度の緩慢さに自分の目が狂ったのかと思った。
でも、そうじゃない。
流れ続ける時間の中で滑車はピッタリと止まったまま。
その証拠に、
『どうして鳩時計って鳩が使われてるのか知ってる?』
『元々はドイツのカッコウ時計が200年ぐらい前に入ってきたのが走りなんだけどさ、この国では【閑古鳥が鳴く】って表現があるでしょ?』
『それで、喫茶店とかで使うのに縁起が悪くて不都合だから、代わりの鳥として鳩に白羽の矢が立ったんだよね! ま、鳩には立派な体内時計があるから適材適所だったのかもしれないよね』
『だってカッコウなんて托卵を行う鳥、お店の時間を司らせたりなんかして、何か企んでも厄介だしね!』
『さあさ、ボクの体内時計も言ってます、そろそろお時間のようですよ! モノクマロックにみんなでお集まりください!』
捜査時間の終了を告げるアナウンスが鳴っている間でさえも、観覧車は動いていなかったのだから。
「……何がどうなってんだ……?」
目の前で起きた事態は呑み込めないまま。
ただ、整理の時間は私には与えられていない。
頭の中がこんがらがった状態のまま、足を運ぶほか選択肢はなかった。
-------------------------------------------------
【モノクマロック】
既にモノクマロック前には他の連中の姿も見える。
そのいずれも口をまごつかせて狼狽えている……目立った成果は誰も手にしていないんだろう。
漏れなく私もその一人、焦燥が奥歯を強く噛み潰す。
そんな中、美琴だけは……妙に静かに佇んでいた。
焦るでもなく苛立つでもなく不安がるでもなく、無感情にその時を待っている。
そんなふうに見てとれた。
ルカ「……美琴、お前ずっと何してたんだよ」
これまでの事件では、すぐ隣にずっと美琴の姿があった。
美琴と一緒に考えたり、情報を整理したり……美琴がいなくては気づけなかった証拠だってある。
今回、それがなかったことで私は地に足がついていないような、そんな甲斐のなさを感じていた。
この島に来るまでは一人だったというのに、やはり千雪のこともあって牙は抜け落ちてしまっているらしい。
我ながらおかわいいことだ。
美琴「私は、私で捜査していたから」
その口調は冷淡。
必要以上の言葉を私と交わすつもりはないらしい。
ルカ「……その、浅倉透の肩を持つ私のことが気に食わないのはわかるけどよ。学級裁判は結論を誤ればお前も、私も共倒れなんだ。それは分かってんだろ」
美琴「……」
ルカ「何か得たものがあるのなら、それを教えてはくれねーか。歪みあったって、憎しみあったって……私たちは結局一緒に戦うしかないんだ。分かってんだろ、美琴」
美琴「人を聞き分けの悪い子供みたいにいうのはやめて」
ルカ「……!」
美琴「……協力は勿論する。私しか持っていない情報もあるから、共有するよ。きっとこれがないと真実を知ることはできないから」
ルカ「なんだよ、その美琴しか知らない情報ってのは」
美琴「ルカは、ファイナルデッドルームって知ってる?」
ルカ「あ? なんだその、中学生が考えましたって感じの名前の部屋は」
美琴「その名前の通り、この部屋に入る人間は命をかけた挑戦を強いられる。しかし、それに成功することができればコロシアイにおいて圧倒的に優位に立つ『極上の凶器』を手にできる」
美琴「コロシアイが起きるまで食事不可能の動機が出ると当時に出現していたみたいだから……きっと知らない人の方が多いだろうね」
ルカ「極上の凶器、だと……?」
そんなもの、到底後出しで出されていい情報ではない。
人を殺めるのに極上なんて名を冠する凶器、並のものとは考えにくい。
それでいて命をかけた挑戦だとか、突然に出現したアトラクションだとか、荒唐無稽でモノクマらしい文字列が並ぶ。
裁判直前になって、またしても頭の中を掻き乱す情報の登場だ。
ルカ「ていうか、美琴……まさかそのファイナルデッドルームに挑戦したのか?」
美琴「うん、クリアしたよ」
ルカ「ば、バカヤロウ……! オマエ、なんてことを……一歩間違えれば、死んでたかも知れねえんだぞ!」
美琴「でも、間違えなかった」
ルカ「んなもん屁理屈だ!」
美琴「……ルカは私にとってかけがえのないパートナー、それは今でも変わらない」
ルカ「美琴……」
美琴「でも、自分の命の使い方までとやかく言われる筋合いはないよ」
ルカ「……!!」
有無を言わせない強い拒絶。
本当に、美琴との間に溝が入ってしまったことを強く感じさせられる。
もう美琴に何を言っても無駄だろう、それにここで事を荒立てることに対して意味があるとも思えない。
一旦はその命をかけた挑戦には目を瞑り、次の話をした。
ルカ「で、その『極上の凶器』ってのはなんだったんだよ」
美琴「……私は最初、爆弾とかナイフとか、そういう直接的に人の命を奪うようなものだと思ったんだけど」
美琴「でも、そうじゃなかった。もっと悪意に満ちた……残忍すぎる凶器が、『極上の凶器』だったんだよ」
ルカ「……はぁ? だから、なんなんだよ。その『極上の凶器』って」
美琴「それは_______」
ゴゴゴゴゴ…
突然に始まる地響きは私と美琴の会話を遮り、その視線を我が物とした。
私たちの目の前でモノクマの顔をした巨岩はその瞳を赤く灯し、エスカレーターを吐き出した。
美琴「……話の続きは学級裁判でしようか」
ルカ「分かった、待ってるよ」
美琴「……ルカ、今回の裁判は情報に乏しいと思うけど……あなたが見たこと、その事実のありのままを信じればきっと勝ち抜けると思うから」
ルカ「……? お、おう……」
美琴「……それじゃあ、行こうか」
美琴の言い残したことの真意はわからない。
ただ、あいつは無意味なことを言うような人間じゃない。
私がこの事件の捜査で見てきた中にきっと、『極上の凶器』のヒントはあったんだ。
まずはそれを考えてみろってか……?
相変わらず、不器用な野郎だな。あいつは。
コトダマゲット!【極上の凶器】
〔動機提供時から第四の島に現れたファイナルデッドルームのクリア特典。美琴曰く『悪意に満ちた残忍すぎる凶器』らしい。そのヒントは今までの捜査の中にあったらしいが……?〕
-------------------------------------------------
私たち全員がエスカレーターに乗り込んで、モノクマロックの中に入ると、いつものように下降を始めた。
こんなことに『いつものように』という表現を使うようになってしまったことが、何とも言えない切なさがあるのだが……
-------------------------------------------------
【モノクマロック 内部】
ゴウンゴウンと音を立てて下降していくエレベーター。
その内部は旧式のエレベーターを模してあるため、格子の隙間からは機械仕かけの構造がよく見て取れる。
精密に作り込まれた機構が寸分の狂いなく動くことで、この箱は動いている。
それはきっと、あいつも同じことだった。
私たちじゃ想像もつかないほど緻密な作りをされていた機体は、悪意に満ちた何者かによって狂わされ、そして破壊されてしまった。
芸術品が詰め込まれたようなその機体を見る影もないほどに破壊し尽くした犯人……きっと人として何か大事なものが欠落しているんだろうと思った。
破壊の最中、吐き出すオイルや断面から見えるケーブルを見て何も考えなかったのだろうか?
そこを満たす思い出や記憶が、まったくもって脳によぎることはなかったのだろうか?
果たしてそいつは、私たちと同じ仲間だったということが出来るのだろうか?
答えのない問いばかりが浮かび上がっては消えを繰り返し、時間が過ぎていった。
チーン!!
そして、時間の経過がようやっと、終着をもたらした。
-------------------------------------------------
【学級裁判場】
モノクマ「あ、来たんだ……本当に来たんだ……まあいいや、適当にその辺の台使ってよ……」
ルカ「なんだよそのテンション……」
智代子「……周りがトレーニング器具だらけなのは、夏葉ちゃん意識なのかな」
透「なんか、部屋の湿度が高そう」
雛菜「くんくん〜……匂いは普通〜!」
冬優子「汗臭い空間で議論なんか嫌でしょ……」
私たちは足早に証言台へとついた。
それは一刻も早く真相を手にしたいと言う焦燥から。
自分一人では掴めなかった真相も、他の人間と議論を尽くせばなんとかなる。
これまでの経験と信頼とがまさに表出した形だ。
だが……本当にそうなのだろうか、議論をしさえすれば真実は掴めるのだろうか。
死の間際、小宮果穂が言っていた言葉が脳裏をよぎる。
私たちは変わり続ける、強くなり、大きくなり、成長する。
それが時間が経つと言うこと、歳を重ねると言うこと。
しかし、変わるのは私たちだけではない。
私たちを繋ぎ止める関係性、そしてその周りの環境もそうだ。
現にあの時あった美琴との間の結束は希薄なものとなり、今は他の連中も不審の目を互いに向け続けている。
これまでもそういった不穏分子がなかったわけではない。
それを乗り越えてきたから今がある、だけど絶対はない。
今回も、うまくいくとは限らない。
……自分らしくない、不安の芽が顔を出すのを自分でも感じていた。
超大学生級の令嬢あらため超大学生級のアンドロイド、有栖川夏葉。
あいつはこの島に来た時から他の連中を引っ張り続けていた中心核。
年上の自負からくる責任感は勿論のこと、
残酷な現実に誰よりもまっすぐに向き合い、仲間の苦痛からも逃げようとせず分かち合うための努力をしていた。
そのために、小宮果穂のおしおきに乱入して一度その肉体を失したこともあった。
それでも希望を絶やすまいと機械の体になってからも気丈に振る舞って、前に立ち続けた。
決して弱音を自分から吐こうとはしなかった。
そんなあいつは……鉄屑になった。
鋼鉄の体もボコボコに凹まされ、体はバラバラに壊されて、オイルをその場に吐き出した。
彼女の尊厳と意地とを踏み躙るような凶行が、起きてしまった。
許せない、なんて言葉を振りかざすには私はまだ積み重ねた時間に乏しい。
それでも、今回の犯人にはちゃんと言葉を聞きたいと思った。
絶望病なんて理由もつけられない今回の事件……そこには明確な殺意、理由が存在しているはず。
真実とともに、その感情理由を聞かねばいけないと強く感じている。
その権利を得るためには……
______まず、生き残らないと。
というわけで捜査パートも終了したところで本日はここまで。
色々とありましたが本編の大筋には関係ない部分なので流して、これからのお話に注目していただければと思います。
次回から学級裁判パートに移ります。
例のごとくまたテンプレを用意しますので、学級裁判前準備パートとして書き込みに参ります。
次回更新時までに書き込みがあれば反映します。
そして、第4の島の地図を用意するつもりですが、一章でアップロードが上手くできず微妙な感じになったので文字で表現するのも考えています。
諸々含め準備をして、今週末ぐらいをめどに再開予定です。
ぜひよろしくお願いいたします。
それではお疲れさまでした。
画像はとりあえずは一章と同じ方法で上げようと思います。
まあ簡単な図説なので最悪飛ばしてしまってもいいので、見れなかった場合はその時はその時と言うことでいきます。
今週末はよくよく考えたらバンフェスだったので更新滞るかもしれません、あらかじめお伝えしておきます……
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【裁判前準備パート】
☆裁判を有利に進めるアイテムを獲得することができます
何か購入したいものがある場合は次回までにその旨を書き込んでください。
指定が多ければ多数決、特に購入指定が無ければ何も購入せず裁判を開始します。
‣ルカの現在の状況
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…35個】
〇スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕
-------------------------------------------------
【自動販売機】
≪消耗品≫
【ヒーリングタルト】…5枚
〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕
【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕
【高級ヒーリングタルト】…15枚
〔国産フルーツを贅沢にトッピングした高級タルト。裁判中に使用すると発言力が最大まで回復する〕
【プロデュース手帳】…15枚
〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・反論ショーダウンを無条件クリアする〕
≪希望のカケラ交換≫
【Scoop up Scrap】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時に、所持品の中で何が渡すと喜ばれるプレゼントなのか分かる〕
【霧・音・燦・燦】必要な希望のカケラの数…10個
〔発言力ゲージが+2される〕
【幸福のリズム】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時の親愛度上昇が+0.5される〕
【I・OWE・U】必要な希望のカケラの数…20個
〔発言力ゲージが+3される〕
【われにかへれ】必要な希望のカケラの数…20個
〔集中力ゲージが+3される〕
【ピトス・エルピス】必要な希望のカケラの数…20個
〔反論ショーダウン・パニックトークアクションの時コンマの基本値が+15される〕
【おみくじ結びますか】必要な希望のカケラの数…10個
〔集中力ゲージが+2される〕
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
花風Smileyが2つあるねェ
コンマ沼で死ぬことが何回かあったはずだしピトスエルピス買っといた方がいいんじゃないかな
>>397
ああ、本当ですね……
二つ目の花風Smileyは【つづく、】の誤植です…
・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
お久しぶりです、結局バンフェスのあれこれで土日は更新できませんでした。
裁判前準備としては【ピトス・エルピス】の購入で確定します。
【希望のカケラの現在の個数】…35個→15個に変動。
そして、マップを用意したのと一部コトダマの表現を改めさせていただく都合で修正分を投稿します。
画像は最悪見れなかったら見れなかったですっ飛ばして進行するので大丈夫です。
>>376
-------------------------------------------------
【島のパンフレット】
隅に追いやられるようにして積まれている書類の山。
カラフルな彩色はされているけれど、埃をかぶっていてそれなりに年季は入っていそう。
一枚手に取って広げてみる。
全体を彩る青色、真ん中に丸く緑の島が鎮座。
その所々にはアトラクションのイラストに、その説明文。
〔ジェットコースターはみんなで楽しもう! 全員が揃って初めて運行するよ!〕
〔バイキングは脅威の3600度回転! ごめんね、身長160cm以上のお友達だけに限らせてもらってるんだ!〕
〔遊園地は大迫力の絶景が楽しめるよ! 一周するのにかなり時間がかかるから、乗る前にトイレに行っておこうね!〕
なるほど、どうやらこれは遊園地であるこの第4の島における見取り図のようなものみたい。
一応、一枚貰っておこうかな。
コトダマゲット!【島のパンフレット】
〔遊園地である第4の島の案内地図。読み進めると各種アトラクションの注意事項も出てくる。
ジェットコースターは全員が揃わないと出発せず、運行中は安全バーを装着する事。
バイキングは身長160cmの制限を守ること。
観覧車は長いので事前にトイレに行っておくこと〕
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
コトダマ
‣【モノクマファイル4】
〔被害者は有栖川夏葉。被害者は先日の学級裁判によるおしおきの巻き添えに遭い、身体機能の多くを失ってしまったため、機械の体に意識を移植する手術を受けていた。死亡推定時刻は昨日深夜3時ごろ、死体は第4の島の外周、砂地の上で発見された。人間にあるはずの臓器の類いを被害者は有してはいないが、全身に強い衝撃を受けたことにより回路系統を損傷して機能停止を起こしたことをもって死亡したと判定した。損壊は激しく、四肢と胴体部、頭部などはバラバラになっており、凹みも激しい〕
‣【ハンマー】
〔死体の付近に落ちていた巨大なハンマー。人を殴りつける金属部分にはオイルが全く付着しておらずあまりにも綺麗すぎる。出所不明〕
‣【夏葉の眼球】
〔夏葉は光学顕微鏡並みの視力を持っていたほか、暗視モードも備えていた。暗闇を感知すると赤外線カメラに切り替わり、レンズも変化する。智代子曰く、死体となった夏葉の眼球も暗視モードになっていた模様〕
‣【死体に被さっていた砂】
〔夏葉の死体は砂を被っていた。ただ転倒しただけではこれほどの量の砂が巻き上がるとは考えづらく、何か別に勢いよく衝突したのではないかと思われる〕
‣【ワイヤーフック】
〔夏葉の胴体部に取り付けられていたワイヤーフック。だいぶ緩くなっており、少し強い衝撃を受けただけで簡単に開いてしまうようだ〕
‣【おやすみスイッチ】
〔夏葉の背中に取り付けられた強制スリープボタン。背面の見えづらいところに取り付けられたボタンで、夏葉の不意でも突かない限りは押すことは難しい。死体となった胴体部では、ボタンが押されていることが確認できた〕
‣【泥】
〔夏葉の死体が握り込んでいた泥。あたりの地面は乾ききっているが、一体どこから出てきた泥なのだろうか〕
‣【死体の焦げ跡】
〔バラバラになっている夏葉の死体には焦げ跡がついている部分があった。脚部以外のパーツに焦げ跡は集中しているようだ〕
‣【島のパンフレット】
〔遊園地である第4の島の案内地図。読み進めると各種アトラクションの注意事項も出てくる。
ジェットコースターは全員が揃わないと出発せず、運行中は安全バーを装着する事。
バイキングは身長160cmの制限を守ること。
観覧車は長いので事前にトイレに行っておくこと〕
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
‣【極上の凶器】
〔動機提供時から第4の島に現れたファイナルデッドルームのクリア特典。美琴曰く『悪意に満ちた残忍すぎる凶器』らしい。そのヒントは今までの捜査の中にあったらしいが……?〕
本日の所は更新の予告を兼ねてのコトダマ整理だけにしておきます。
明日、21:00頃から学級裁判、開始予定です。
是非ともよろしくお願いいたします。
【学級裁判 開廷!】
モノクマ「まずは学級裁判のルールの確認から始めます」
モノクマ「学級裁判ではオマエラの中に潜む殺人犯のクロを探して議論していただきます」
モノクマ「議論の結果導き出した犯人がクロだった場合はクロだけがおしおき、シロだった場合はクロの生徒以外の全員がおしおきされ、クロのみが歌姫計画の成功者としてこの島を脱出できまーす!」
モノミ「4回目、あちしがこうやって縛られるのももう4回目なんでちゅね……」
モノミ「あちしの体を縛る縄の感触にももうすっかりなれまちた……おばあちゃんの軒先に吊るされてた干し柿も、毎年こんな気持ちだったのかな」
モノミ「はぁ……なんだかおセンチな気分でちゅ……」
智代子「……ひどい、ひどすぎるよ」
智代子「どうして犯人は夏葉ちゃんを殺しちゃったの?! 夏葉ちゃんは果穂のおしおきで一度死んじゃってるのに、何でもう一回殺すような真似ができるの?!」
ルカ「ちょ、ちょっと待て! 落ち着け! 気持ちはわかるけどよ、ここはあくまで犯人を当てる場だ」
ルカ「冷静にならねーと、痛い目を見るのはこっちなんだ。議論をしないことにはなにも始まんねーぞ」
恋鐘「でも、ほんなこつ何故に犯人はわざわざ夏葉を選んだとやろ? うちらん中では一番殺しにくか相手のはずばい」
冬優子「人間だったときの身体能力も高いし、更にはアンドロイドになって訳の分からない機能持ち」
冬優子「ま、ふゆならまず選ばない相手だわ」
あさひ「それに遊園地のある第4の島にいた理由も気になるっすよ。食料を探すにしても、変なところだと思うっす」
ルカ「そうだな……この事件、謎がなかなかに多い筈だ。まずは一つ一つ可能性を絞っていくところから始めていくか」
(今回の事件は被害者が異例だ)
(人間ではなく、わざわざ機械を相手取って殺害した。犯人の意図を読み解いていくのはなかなか骨が折れるぞ……)
(気合い入れろ! あいつの犠牲……絶対に無駄にしちゃならねえ……!)
------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×10
集中力:☆×5
コトダマ
‣【モノクマファイル4】
‣【死体に被さっていた砂】
‣【死体の焦げ跡】
‣【ハンマー】
‣【極上の凶器】
‣【泥】
智代子「今回の犯人は許せないよ!」
智代子「一度ならず二度までも死を経験させるなんて……」
透「わざわざ人じゃない相手を選ぶって」
透「犯人は相当腕に覚えがあったのかな」
恋鐘「きょ〜りょくな武器を持っとったことは間違いなか!」
恋鐘「死体の近く落ちとったでっかい【ハンマー】!」
恋鐘「あれで夏葉をゴチーンとやったばい!」
あさひ「夏葉さんの機械の体はボコボコのバラバラだったっす」
あさひ「相当な力を【身体に受けた】のは間違いないっすね」
雛菜「あは〜、何かの力を【借りなきゃ】そんなのはできそうにないですよね〜?」
透「超人現るってね」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
ルカ「それは違うぞ!」論破!
【BREAK!】
ルカ「あいつの身体は文字通りのバラバラになってた……中学生のいう通り、凄まじい衝撃を受けたことは間違いないだろう」
ルカ「でも、あのハンマーが凶器とは思えない。それはハンマー自身を見れば明らかだ」
恋鐘「ふぇ? もしかしてあのハンマーは金属製じゃなかったと?」
冬優子「いやいや金属も金属、大金属よ。けどよく見てごらんなさい、このハンマーに本来付着するべきものが付いていないでしょ?」
恋鐘「ん〜〜〜?」
透「あ、そっか。オイルだ」
ルカ「ああ、あのメカ女が血液のようにそこら一体にぶちまけていたオイル。それがこのハンマーにはまるで付着しちゃいない」
ルカ「これが直接の凶器だとしたら、妙な話じゃないか?」
智代子「それじゃ、犯人が付着したオイルを拭き取ったとかは?」
あさひ「そんなことをするんだったらそもそもハンマー自体を回収すると思うっす」
ルカ「あのハンマーは犯人が死因を誤認させるために置いた偽装工作ってところだろうな。それこそ今長崎女が言った通り、殴りつけられて死んだと思わせるように」
美琴「……なんだかつい最近聞いたような話だね」
ルカ「……」
智代子「果穂も……結華ちゃんの死因を、誤認させようとしたんだったよね……」
冬優子「……そうね、あの子はドローンで結華を正面から落下させることであたかも正面から殴りつけられたように見せかけた」
冬優子「今回の犯人はハンマーを置くことで同様に殴りつけられたものと偽装しようとした……偶然の一致と言えるかもしれないわね」
恋鐘「じゃあ、犯人はどがんして夏葉の身体がバラバラになるほどの強い衝撃を与えたばい?」
雛菜「それこそ前回と一緒で転落死なんじゃないですか~?」
雛菜「お姉さんの身体はすごくカチカチになってましたけど、高いところから落下した衝撃なら壊れてもおかしくないし、雛菜たちに可能な方法ってだいぶ限られますよね~」
あさひ「そうっすね、夏葉さんは元からわたしたちより身長も高めだし、アンドロイドになってからは重量も上がってる……普通の方法じゃ、そうそう殺せないっす」
透「どうかな、夏葉さんは……落下で死んだと思う?」
ルカ「……私もそれには賛成だ。あいつの全身に及ぶまで強い衝撃、それを与えるなら一番自然な方法だろう」
ルカ「他の方法は、考えにくいかもな」
モノクマ「ふわぁ~あ、なんか続けて同じ死因って萎えるよなぁ……食傷気味っていうか、芸がないって言うかさぁ」
モノミ「こら~! なんてこと言うんでちゅか! 人の生き死ににバラエティなんて本来必要ないんでちゅ! 全人類須らく、数多くの親戚に囲まれて安らかに息を引き取るのがあるべき姿なんでちゅ。死因にまで文句を言うなんて、見下げたものでちゅね!」
冬優子「ルカ、そこまで言うからにはあなたにも根拠があるんでしょ?」
ルカ「……あ? お、おう……まあ、あるにはあるけど……」
冬優子「それなら提示してちょうだい、有栖川夏葉の死因が転落死だと断定するその根拠」
(あいつの死因が転落死だと断定する根拠か……)
(それはつまり、あいつの死体に残されていた落下した時に生じたであろう現象を指し示す)
(冬優子に見せてやるか、私の考えの根拠を……)
【正しいコトダマを選べ!】
>>402 >>403
↓1
ルカ「これだ!」
【解!】
ルカ「有栖川夏葉の機械の身体はバラバラになっていたほか、もう一つ大きな特徴があったんだ。その特徴が死因を特定するうえで、重要な根拠になる」
智代子「死体がバラバラになっていた以外の特徴……?」
あさひ「もしかして、死体が砂を被ってたことっすか?」
恋鐘「ん? それが何か重要たい? 夏葉の死体は室内じゃなくて、屋外にあったってだけじゃなかと?」
あさひ「ただ外にあるだけじゃ、あんな風に砂は上に乗っかったりしないっすよ。よっぽどの勢いの元に地面にぶつかりでもしない限り、砂は巻き上がらないっす」
美琴「……確かに、死体の全面にかかるようにあの砂はついていた。ただ転倒しただけじゃ、あそこまではいかないかもね」
ルカ「ああ、三峰結華の時は死体がコンクリートの上にあったから砂が巻き上がるようなこともなかったけどよ。今回の事件は島の外周で起きたんだ、死体も砂地の上にあった」
ルカ「死体の上に乗っかった砂は十分な証拠になるはずだぜ」
冬優子「なるほどね……あんたの主張はよくわかったわ」
冬優子「でも、有栖川夏葉の死因が転落死だとしたら……明確な矛盾が生じるのよね」
冬優子「しかも……奇しくもこの矛盾も前回の事件と同じよ」
ルカ「前回の事件と同じ矛盾だと……?」
冬優子「有栖川夏葉が転落するだけの高所が付近に全くないという矛盾よ。前回の事件では果穂ちゃんはドローンを複数台使うことでそれを看破したけれど、今回はそうはいかない」
あさひ「夏葉さんの身体は100kgどころの重さじゃないし、ドローンが何台あっても難しそうっすね」
雛菜「もし仮に持ち上がったとしても、前回の台数よりはるかに多くなるだろうし操作は簡単じゃなさそうですよね~」
(……クソッ、確かにそうだ! あいつの死体……どこから落下するっていうんだ?)
(あの砂がある限り、高所から落下したのは間違いないように思うが……この矛盾はそうそう解決できそうにねーぞ……)
冬優子「それこそハンマーと同様に、転落したように見せかけた犯人の偽装工作の可能性もあるんじゃない?」
智代子「でも、それでわざわざ砂をかけるなんて選択をするようにも思えないけどな~……」
あさひ「……あの周りには、何もない。突き落とすこともできそうにない……」
美琴「……」
恋鐘「行き詰った時には議論をせんね! みんなで話し合ってみたら何か答えが見つかるかもしれんよ!」
恋鐘「夏葉が転落した場所、その可能性について議論するば~~~~い!」
(よく思い出せ……死体の合ったあの現場、その状況を……!)
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×10
集中力:☆×5
コトダマ
‣【死体に被さっていた砂】
‣【モノクマファイル4】
‣【島のパンフレット】
‣【極上の凶器】
‣【ワイヤーフック】
‣【死体の焦げ跡】
‣【ハンマー】
冬優子「有栖川夏葉の死体は砂を被っていた」
冬優子「落下時に【砂が巻き上がった】とする推理は分かるわ」
冬優子「でも……いったいどこから落下したって言う訳?」
智代子「ドローンじゃ夏葉ちゃんの身体は【持ち上がらない】よ……!」
智代子「果穂と同じ方法は今回は使えなそうだね……」
雛菜「第4の島って外周をぐるりと一周するジェットコースターがありましたよね~?」
雛菜「死体のあった場所の上にもそのレールは走ってましたし、【そこから落とした】んじゃないですか~?」
透「ジェットコースターの勢いもあれば、落下の時の衝撃もでかいんじゃん?」
あさひ「他にあの辺りに高いものは【何もなかった】っす」
恋鐘「可能性の議論も何も……」
恋鐘「そもそもの候補がまるでなかよ~!?」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
ルカ「それは違うぞ!」論破!
【BREAK!】
ルカ「確かに死体の発見現場の頭上にもジェットコースターのレールは敷かれてた……でも、そこから死体を突き落とすことは不可能だったはずだ」
雛菜「え~? なんでですか~?」
雛菜「あ! もしかして、犯人は絶叫系NGとか~~~!」
ルカ「あの島のジェットコースターは地獄のようなコースに地獄のような速度で運行してるけど、流石にそれが理由じゃねえ」
ルカ「ジェットコースターそのものの……そもそものルールがあるんだよ。一番それをよく知ってんのは中学生、お前だろ」
あさひ「はいっす、あのジェットコースターって一人や二人じゃ乗れないんすよ」
あさひ「わたしが一人で乗ろうとしたら、モノクマに全員が揃わないと発車しないって言われて。それでみんなに集まってもらって、やっと一回のれたっす」
美琴「……前回のコロシアイが発覚したのも、そのジェットコースターに乗ったからだよね」
透「……私のオリジナルが死んだ、コロシアイね」
美琴「……まだ言ってる」
(……)
ルカ「とにかく、犯人が犯行に利用しようにもジェットコースターが動かねーんじゃ仕方ねえ。それに、あのコースターには安全バーもついてるからな、突き落とすには死ぬほど不向きなはずだ」
雛菜「ん~、違ったのか~」
智代子「でも、あの辺りってそのレールしかないんだよね? ジェットコースターがダメなら、いよいよ候補がないんじゃない?」
ルカ「……それは、そうだけどよ」
冬優子「今回ばかりは、この矛盾……解消できない?」
ルカ「あ? いや、まあ……今のところはな?」
(……なんだ? 冬優子のやつ、妙に結論を急いでいるような……)
あさひ「でも、やっぱり死体が砂を被ってるのは変っすよ。絶対、何か理由があるはずっす」
智代子「落下しようにも落下する場所がない……」
智代子「あっ! 夏葉ちゃん自体に飛んでもらうってのはどうかな?!」
ルカ「はぁ?」
智代子「ほら、夏葉ちゃんに飛行機能があってそれで飛び上がったところを撃墜した、とか!」
あさひ「そんな機能あったっすか?!」
ルカ「んなもん聞いたこともねーし、大体今はどこから落下したかの話であってどうやって落下したかの議論はしてな____」
智代子「……ルカちゃん?」
(……いや、待てよ。この甘党女の言ってることは流石に的外れもいいところだとは思うが、どこから落ちたではなく【どうやって】落ちたか、を考えるのは決して悪くはない)
(高所から落下した時、砂は一気に巻き上がるが……そこまで綺麗に真上に砂が覆いかぶさるか?)
(幾分か被ったとしても、満遍なく付着するとは思い難い)
(あいつの落下はもしかして……垂直だったんじゃなくって……?)
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×10
集中力:☆×5
コトダマ
‣【おやすみスイッチ】
‣【泥】
‣【ハンマー】
‣【極上の凶器】
‣【夏葉の眼球】
‣【モノクマファイル4】
‣【ワイヤーフック】
あさひ「死体が砂を被ってたことからしても……」
あさひ「夏葉さんは、転落死したと考えるのが自然っすよ!」
智代子「すごい勢いで落下して、砂を巻き上げたんだよね?」
智代子「でも、ジェットコースターもダメとなるといよいよ落下する場所がないよ!」
恋鐘「やっぱりあの【ハンマーで殴った】んじゃなかね?」
恋鐘「砂なんて、強風が吹けば何とでもなるばい!」
雛菜「どこか【遠くの方から落下した】とかならあり得るんですかね~?」
雛菜「それで風にあおられてあそこまで運ばれたとか~」
冬優子「あんな鉄の塊、【風にあおられる】とか竜巻でもない限りあり得ないでしょ……」
【正しいコトダマで正しい発言に同意しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
【発言力:♡×10→♡×9】
雛菜「ん~? それ、何の話ですか~?」
雛菜「いきなりよくわからないこと言われても反応に困るって言うか~……もっと分かりやすい言葉でお願いします~」
(……まだ極上の凶器については分からないことも多い)
(議論を進める札として使うのは、もう少し情報がまとまってからの方がいいか……)
【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果によりコトダマが減少します】
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×9
集中力:☆×5
コトダマ
‣【おやすみスイッチ】
‣【泥】
‣【ハンマー】
‣【極上の凶器】
‣【夏葉の眼球】
‣【ワイヤーフック】
あさひ「死体が砂を被ってたことからしても……」
あさひ「夏葉さんは、転落死したと考えるのが自然っすよ!」
智代子「すごい勢いで落下して、砂を巻き上げたんだよね?」
智代子「でも、ジェットコースターもダメとなるといよいよ落下する場所がないよ!」
恋鐘「やっぱりあの【ハンマーで殴った】んじゃなかね?」
恋鐘「砂なんて、強風が吹けば何とでもなるばい!」
雛菜「どこか【遠くの方から落下した】とかならあり得るんですかね~?」
雛菜「それで風にあおられてあそこまで運ばれたとか~」
冬優子「あんな鉄の塊、【風にあおられる】とか竜巻でもない限りあり得ないでしょ……」
【正しいコトダマで正しい発言に同意しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
ルカ「てめェの言う通りだ」
【BREAK!】
ルカ「ああ、そうだ……! あの場所に、落下できる場所がないなら……別の場所から落下させちまえばいい……!」
智代子「ちょ、ちょっと……突然何を言い出してるの?! さっきも確認したけど、夏葉ちゃんのオイルはあたり一帯に撒き散らされてたんだよ?!」
智代子「夏葉ちゃんが命を落としたのはあの場所だったことの証明だって話になってたはずですよね!?」
ルカ「ああ、それ自体を否定する気はない。あいつが落下した先はあの場所で間違いない。でもよ、あいつが転落した場所自体は必ずしも近くである必要はねーんだ」
美琴「……どういうこと? まさか強風に煽られたとでも言いだすの?」
ルカ「いや、そうじゃねー。……運ばれたんだ」
恋鐘「で、デリバリーばい……?」
ルカ「あいつのバラバラになってた身体……その胴体部なんだが、裏側にワイヤーフックが取り付けられてたんだ。ベルトみたいなものが巻かれててよ、多分そこにワイヤーが通されてたんだと思う」
ルカ「そのワイヤーを別の離れた高所から、あの落下地点まで通すと……メカ女の身体はそのワイヤーに従って、しっかりと転落してくれるわけだ」
あさひ「夏葉さんは垂直に落下したんじゃなくて、斜めに落下したって言うことっすね」
ルカ「ああ、ロープウェーの要領で勢いよく死体を運んで地面に衝突させる。これならオイルの問題も解決できるだろ?」
恋鐘「ちょ、ちょっと待たんね! 画期的な方法のように言うとるけど、根本的な問題は解決しとらんたい!」
恋鐘「落下したら命を落とすような高所、それが見つかっとらん時点で推理は破綻しとるはずばい!」
美琴「それはあくまであの死体発見現場付近の話。視野を第4の島全体にまで広げれば候補は見つかるよ」
ルカ「ああ、美琴の言う通り。手元の電子生徒手帳で島の見取り図を見てみろよ」
(死体発見現場からはある程度離れたところ、かつ一直線にロープウェーで運べる場所が、あいつを落下させたスタート地点だ)
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
【夏葉は第4の島のどこから落下した?】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【正しい場所を指摘しろ!】
↓1
ルカ「ここだ!」
【解!】
ルカ「観覧車……誰かを落下させるうえではこれ以上なくうってつけのアトラクションじゃねーのか?」
智代子「観覧車はそんな物騒な乗り物じゃないはずなのに……うぅ」
冬優子「でも、確かに条件は揃ってるわね。死体発見現場からは直線で繋がる、落下すれば即死だろう高低差、それにアトラクション自体の速度はかなり控えめ。工作をするにはうってつけね」
恋鐘「他んアトラクションやと山が障害になっとったりするけん、ロープウェーばやるんやったら観覧車を使う他なさそうたい」
ルカ「犯人は観覧車を利用してその高さの頂点になるところから、あいつを滑り落としたんだよ」
【透「それは違うよ」】反論!
透「観覧車を使ったロープウェー。それっておかしくない?」
ルカ「あ? 何がだよ、あの島で他に利用できそうなものもねーし、条件は整ってんだろ」
透「高さ、位置関係……確かにやりやすそうに見えるけどさ。観覧車は犯行には向かないよ」
ルカ「犯行には向かないだと……?」
透「よーし、それじゃやろっか」
透「正面対決……手は抜かないから」
-------------------------------------------------
【反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×9
集中力:☆×5
コトノハ
‣【島のパンフレット】
‣【夏葉の眼球】
‣【おやすみスイッチ】
‣【極上の凶器】
‣【死体の焦げ跡】
‣【モノクマファイル4】
‣【ワイヤーフック】
透「ロープウェーを利用して遠くから運んで落とす」
透「それ、出来そうではあるけどさ」
透「高さと位置関係」
透「観覧車は確かに条件は揃ってるけど」
透「そこから人を滑り落とすのは難しいよ」
透「観覧車だからこそ、ね」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「観覧車と発見現場なら高低差もバッチリだ」
ルカ「勢いよく滑り落とせば十分殺害は可能だった筈だぜ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
透「それだけ見ればできる感じに思えるけど」
透「大事なのは観覧車であること」
透「観覧車は【ずっと回ってる】じゃん」
透「グルグル動いてる観覧車からロープウェーしようとしてもさ」
透「どこかで引っかかったり、角度が動いたりしてやりづらそうに思うんだよね」
透「無理じゃない? やっぱ」
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ70以上で論破しろ!】
1.発言する(コトノハと斬りつける先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
↓1
ルカ「それは違うぞ!」
【BREAK!】
ルカ「確かに観覧車は通常ロープウェーのスタート地点には向いてない。お前の言う通り、常に回転をしているからだ」
雛菜「運んでる最中に動いちゃったら失敗しちゃいそうですよね〜」
ルカ「それなら、止めちまえばいい」
透「えっ、止める?」
ルカ「あの観覧車……私たちはもずっと動いてる姿しか見てこなかったけどよ、事件当時も動いていたとは限らない。その可能性を示すことだってできるぜ」
ルカ「なあ、美琴……そうだろ」
美琴「……極上の凶器、だよね」
智代子「極上の……凶器……?」
ルカ「私も知らなかったんだけどよ、あの動機が提示された時に同時に第4の島で解放されていた施設……ファイナルデッドルーム、ってのがあったらしい」
あさひ「命をかけたゲームに挑戦して、クリアすれば極上の凶器が貰えるっていう触れ込みだったっす。わたしも調査したかったっすけど……冬優子ちゃんに止められちゃったので中は見てないんすよね」
(私だって、それをちゃんと理解していれば美琴のことを止めたのに……)
(美琴のやつは暴走して突っ走り、勝手にクリアまでしちまった)
(……今は、悔やんでも仕方ねえ。命懸けで美琴が取ってきた証拠から考えられる事実だけに集中しろ)
ルカ「美琴、その極上の凶器の正体……お前は知ってるんだろ。教えてくれよ、美琴……!」
美琴「……これのことだよ」
美琴が指先でつまみ上げるようにしたのは……ごくごく一般的なアルミの鍵。
片手に収まるほどの鍵には何も仕込まれている様子もない。
……つまりは。
ルカ「その鍵で開けられる場所が、重要な意味を持つってことかよ……!」
美琴「そういうこと、ルカが実際目にした通りだよ」
ルカ「捜査時間の終わり際。私の見ている中で観覧車が完全に停止した。あれって美琴がやったんじゃないのか?」
美琴「……」
智代子「それってつまり……その鍵はスタッフルームの鍵ってこと?」
あさひ「第4の島のアトラクションを完全の制御できたら、確かにこれ以上ない凶器になりそうっすね」
恋鐘「でも、そがん場所があったとね? 島は一通りうちも見たけど、アトラクションを制御するような場所なんて……」
ルカ「ひとつだけ、あっただろ? 中に何があるのかも分からない、完全に扉を閉ざされた空間が」
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【美琴が極上の凶器を使用した場所を指摘しろ!】
↓1
【発言力:♡×9→♡×8】
恋鐘「ルカ? あん城はそもそも鍵穴すらなかったばい! 中身は分からんけど、鍵を使ったところでどうしようもなか!」
(違ったか……確かにあの城は中身は見えちゃいないが、極上の凶器の対象外だ)
(鍵を使えば中に入れそうな場所……どこかになかったか?)
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【美琴が極上の凶器を使用した場所を指摘しろ!】
↓1
【発言力:♡×9→♡×8】
恋鐘「ルカ? あん城はそもそも鍵穴すらなかったばい! 中身は分からんけど、鍵を使ったところでどうしようもなか!」
(違ったか……確かにあの城は中身は見えちゃいないが、極上の凶器の対象外だ)
(鍵を使えば中に入れそうな場所……どこかになかったか?)
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【美琴が極上の凶器を使用した場所を指摘しろ!】
↓1
ルカ「ここだ!」
【解!】
ルカ「モノミの家……あの部屋、島が解禁した当初は随分と必死にモノミの奴が守っていた筈だが、あの中に何があるのかすらもあいつは一言も言わなかった」
ルカ「それに大体、鍵のかかった部屋なんてあの島じゃそこぐらいのもんだ。ネズミー城はそもそも鍵を挿すための穴がないんだしな」
ルカ「お前はモノミの家の鍵を開けて……そこでアトラクションの操作をしたんだろ!」
美琴「……うん、その通り。大正解だよ、ルカ」
美琴「この鍵はモノミちゃんの家の鍵……扉を開けてみれば家とは名ばかりの施設だったけどね」
モノミ「うぅ……あちしのプライベートが素っ裸のズル剥けにされちゃったでちゅ……」
智代子「みょ、妙に嫌な表現だなぁ……」
ルカ「アトラクションの制御ってのはどこまで操れるものなんだ? あの時は静止させてたけど、もっといろいろ弄れるんじゃねーのか?」
美琴「運転と停止の切り替えはもちろん、アトラクションの操作もできたかな。たとえばジェットコースターを逆走させることも、フリーフォールを空中で停止させることもできる」
冬優子「ふぅん……それなら観覧車を停止させることも簡単そうね」
恋鐘「夏葉ば載せたゴンドラを観覧車の頂点で静止させて、そこからロープウェーを伝わせて急速に滑り落としたってことやね!」
ルカ「ああ、この方法ならあいつの転落死にだって説明がつくだろ?」
あさひ「……」
あさひ「美琴さん、ちょっといいっすか?」
美琴「……何?」
あさひ「アトラクションの操作って、モノミの家からしか出来ないっすかね?」
美琴「リモコンなんかはなかったし……マニュアル操作を行う際はあの家の中にいる必要があると思うけど……それがどうかした?」
あさひ「……そっすか、ありがとうっす」
あさひ「ルカさん、観覧車を利用したロープウェー……多分不可能っすね」
ルカ「あ……? な、なんだよ急に……」
あさひ「だって、その方法は一人じゃ行えない方法っすから」
ルカ「……え?」
あさひ「ゴンドラを止める人と、夏葉さんの身体をロープウェーの軌道上に載せる人。これって別じゃないと出来ないっすよね?」
透「あー、そっか。ゴンドラを止めるには地上にいなきゃだけど、地上にいたんじゃ、ロープウェーに載せることはできない」
透「分身でもしなきゃ、不可能なわけだ」
ルカ「い、いや待て! 確かにそれはそうかもしれねーが、別に一人でも行えなくはねーだろ! ゴンドラに犯人が乗り込まずとも、頂点に着いた位置で扉が勝手に開く仕掛けでも作れば、そこからロープウェーに載せて……」
あさひ「思い出してほしいっす、ジェットコースターの全員参加みたいに、他のアトラクションにもいくつか【制約】のつけられているものがあったはずっすよ」
ルカ「制約、だと……?」
智代子「あの観覧車に何かそんな制約なんて……」
智代子「……あっ!」
恋鐘「智代子、なんか心当たりがあるとね?!」
智代子「制約っていうか……安全のための規則、に近いと思うんだけど……あの観覧車って、【一定の高度以上になるとゴンドラの扉がロックされる〕んじゃなかった!?」
ルカ「なっ……なんだと……!?」
モノクマ「というか当たり前の仕組みだよね、お客さんが落下して事故物件にでもなったらこっちだって商売あがったりなんだからさ。偶然にも扉が開いて落下する……なんて事態はこちらも予防済みなんですな!」
あさひ「観覧車を使えばロープウェーになるかもしれないっすけど、それを利用するのが不可能なんじゃ意味ないっす。ルカさんの推理は破綻してるっすよ」
ルカ「ぐ……ぐぐ……」
ルカ「ぐああああああ!」
(ダメだ……こいつの言う通りだ、観覧車をロープウェーにするための工作と、実際に滑り落とさせるのとは別の人間が行う必要がある)
(共犯関係がこの島では成立しないことを鑑みても、この方法は不可能だ……!)
あさひ「それに、ずっと疑問だったんすけどロープウェーにするにしても、着地点がないっすよね?」
雛菜「着地点~?」
あさひ「ロープウェーって高低差の他に、その二つの地点に導線を結ぶだけの頑丈な柱みたいなものが必要になるはずっす。観覧車はその要件を満たすっすけど、死体発見現場付近には導線を結べそうなものもないっすよ」
冬優子「確かにそれはそうね……そんなものがあるのなら、そこから突き落としたほうが早いわけだし」
恋鐘「ロープウェーみたいにして運んでくるってのはナイスアイデアと思っとったのに……」
ルカ「……確かに中学生の言う通りだ、私の推理はツッコミどころ……論理に欠陥が多い破綻した推理だったよ」
智代子「ル、ルカちゃん元気出して! 大丈夫、誰も怒ってないよ!」
ルカ「んなもん気にしちゃいねーよ、行けたと思った分余計にイラついてるだけだ」
美琴「……でも、極上の凶器を犯人が利用したのは間違いないと思うよ」
美琴「私がファイナルデッドルームをクリアした時、『初クリア特典』のものはなくなっていた。それって、私より先に誰かがクリアしていた証拠だよね」
ルカ「お、おい待てよ……極上の凶器って、その鍵の事だけじゃねーのか……!?」
美琴「え? うん……あの部屋には一通りの凶器が揃ってたかな。ナイフや銃もあったと思うし……」
美琴「でも、モノクマの言う極上の凶器はこの鍵の事で間違いないと思う。クリアした人間は全員極上の凶器が手に入るって言う触れ込みだったから。私が入手できなかったその『初クリア特典』はきっと人の命を奪えるようなものではないはずだよ」
あさひ「それこそ、ジェットコースターに乗った時にもらったファイルみたいな『情報』なのかもしれないっすね」
(犯人は遊園地のアトラクションを自由に利用できた……)
(あの鍵を活用しない手はないもんな……何かしらの方法でアトラクションを犯行には組み込んであるはずだ)
智代子「うーん、極上の凶器の情報はあったけど……推理は振出しに戻ったね」
透「結局、どこから落下してきたのかもわからないまま。運んだ方法も謎」
透「難しいね、学級裁判」
雛菜「死体があった周辺、なんにもなさすぎるもんな~。もっと分かりやすいところで殺害してくれたらよかったのに~」
冬優子「ホント、ただの島の外周ってんだから手掛かりも何もあったもんじゃないわよね」
ルカ「島の……外周……」
ルカ「……そういえば、どうしてあいつはあんなところで死んでたんだ?」
美琴「……どういう意味?」
ルカ「何度も議論で確認した通り、あいつの死体があった場所は周りに何もない場所だ。突き落とすような場所も、ロープウェーを結べるような建造物も、何一つない」
ルカ「そんなところで、わざわざ殺害するのって……変じゃないか? 犯人があんな場所を殺害現場に選ぶのって……おかしくないか?」
智代子「た、たしかに……? もし、私が誰かを襲うんだとしたら……もっと何か利用できるものがある場所を選ぶかも……?」
透「犯人はファイナルデッドルームをクリアしてる。だとしたら、アトラクションを利用しやすい場所で殺害するはず、だよね」
ルカ「そうだ……そもそも犯人がアトラクションを活用できた可能性から、観覧車に行きついたわけだしな」
ルカ「……どうしてメカ女は、あんな何にもないところで殺されてる……?」
雛菜「ん~……でも、死体の状況からして死因は転落死の可能性が高いんでしょ~?」
ルカ「そのはずだ。あんな頑丈な体をしていたメカ女、私たちのマンパワーじゃとても破壊なんてできやしねえ」
あさひ「考えてみると、それも変な話っす。わたしたち生身の人間ならまだしも、相手は機械の夏葉さんっす。確実に殺害したいなら、もっと固い地面にぶつけようとするはずっすよね」
智代子「それこそ、果穂がやったみたいにコンクリートの地面とか……砂はあんまり選ばないかも?!」
ルカ「……どうなってる? 妙なことになってきたぞ……あいつの死因と、犯人の思惑……それが微妙に噛み合ってないような……」
透「それなら、考えてみようよ」
透「ズレてるように見える二つ……もしかすると、見方が違うだけで本当は掠ってる……のかもしれないしさ」
(見方が違う……?)
(もしかして、私たちは……何か大きな思い違いをしてるんじゃないか……?)
-------------------------------------------------
【ロジカルダイブ開始!】
Q1.夏葉はどこから落下した?
A.観覧車 B.ジェットコースター C.ドローンで空中から D.落下などしていない
Q2.夏葉はどうやって落下した?
A.垂直 B.ロープウェー C.別の方法 D.落下などしていない
Q3.なぜ夏葉は落下させられた?
A.命を奪うため B.死体に損壊を与えるため C.死体の発見現場をずらすため D.落下などしていない
Q4.夏葉の死因は?
A.ハンマーによる撲殺 B.高所からの転落死 C.何か別の死因
【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】
↓1
【発言力:♡×8→♡×7】
(いや、ジェットコースターは全員が揃っていないと動かすことができない……)
(ワイヤーを仕掛けようにもレール上にも、コースター上にも結び付けるのは難しいだろうな)
(そう考えるとやっぱり、仕掛けられた場所ってのは……)
-------------------------------------------------
【ロジカルダイブ開始!】
Q1.夏葉はどこから落下した?
A.観覧車 B.ジェットコースター C.ドローンで空中から D.落下などしていない
Q2.夏葉はどうやって落下した?
A.垂直 B.ロープウェー C.別の方法 D.落下などしていない
Q3.なぜ夏葉は落下させられた?
A.命を奪うため B.死体に損壊を与えるため C.死体の発見現場をずらすため D.落下などしていない
Q4.夏葉の死因は?
A.ハンマーによる撲殺 B.高所からの転落死 C.何か別の死因
【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】
↓1
ルカ「推理はつながった!」
【COMPLETE!】
ルカ「……観覧車を利用したロープウェー。それが不可能なのは間違いない。人数の問題はどうやったって解決しないからな」
ルカ「だがよ……位置関係からしても観覧車以上にメカ女の落下に最適な場所もねえんだ。ともなると、ワイヤーと観覧車を使った別の方法がなされたと考えるべきだ」
ルカ「そして、そうまでしてメカ女を運ぼうとした意味……それって偽装工作のためなんじゃねーか?」
冬優子「どういうこと? あいつの死因は転落死って確定したんじゃなかったの?」
ルカ「……そもそも、その認識が危うかったんだ。モノクマファイルを見てみろ、あいつの死因は『全身に強い衝撃を受けたことにより回路系統を損傷して機能停止を起こしたことをもって死亡したと判定した』としか書いてない。確かに転落死ならその要件を満たしうるけど、直接の死因として確定させられるわけじゃねえ」
ルカ「元々の死因に上塗りする形で大きく損壊を与えられた可能性だってあるはずだ……!」
雛菜「ん~? まだ言ってる意味が雛菜はよく分からないんですけど~」
雛菜「オイルは現場にぶちまけられていましたし、そこで死んだって話なんじゃなかったんですか~?」
ルカ「いや、正確にはそうじゃない。あのオイルは他に引きずったような跡がなかったから、現場があそこだと私たちは断定しただけ」
ルカ「死後、あそこに落下させられてオイルをぶちまけただけの可能性は十分ある」
恋鐘「それはおかしかよ、ルカ! うちらならまだしも、夏葉はアンドロイドになっとったばい! 死因なんて、強い衝撃ば受けて壊れるほかにあるはずがなかよ!」
透「死ぬっていうか、壊れる……って感じだよね」
あさひ「多分、夏葉さんの内部の回路が壊れる……基盤が壊されることをもって、死ぬ判定にしてると思うっす。正常に作動できなくなった時点で死んだことになる」
あさひ「それなら、別の方法で先に機能を停止させておけば問題はなさそうっすね」
ルカ「その【先に機能を停止させた現場】、つまり殺害現場……そこから私たちの目をそらしたかったんじゃないか?」
冬優子「随分と回りくどいんじゃない? そんなことをする意味がどこにあるのよ」
美琴「現場に決定的な証拠があるから、だろうね。しかもそれは犯人が隠滅できるようなものじゃない、犯人にとっては最悪の証拠のはずだよ」
ルカ「元々の死因を特定されると、それが犯人に直結するようなものだった……だから咄嗟にあいつの体を運んで、死体発見現場をずらしたんだろ」
雛菜「じゃあ、ロープウェーではない何か別の方法で、死体を殺害現場から運び出して~」
雛菜「その移動の結果、落下することになったからあんな風にオイルが死体発見現場に散らばっていたってことなんですね~」
冬優子「待ちなさい、今の話は全部ルカの仮説でしかないでしょ? 別の死因なんか推定して、随分な回り道をすることにならない?」
恋鐘「うちもそう思うばい、モノクマファイルと転落死は矛盾なく繋がるし、わざわざ別の可能性を考える必要は本当にあると?」
あさひ「夏葉さんがもし、ただの転落死で命を落としてるんだったら死体には疑問が残るっす」
あさひ「転落しただけでは死体に残らないものが、あの死体にはあったはずっすよ」
(転落しただけでは死体に残らないもの……もしかして、あれのことか?)
-------------------------------------------------
【正しいコトダマを指摘しろ!】
>>402 >>403
↓1
ルカ「これだ!」
【解!】
ルカ「死体の一部についてた焦げ跡……あれか?」
あさひ「はいっす。夏葉さんの身体はバラバラになってたっすけど、その一部がまるで焼かれたみたいに真っ黒こげになってる部分があったっす」
智代子「ほんとだ! 他はアンドロイド風の白っぽい素体なのに、ここの部分だけ黒くなっちゃってる……!」
ルカ「死体がバラバラで若干気づきづらいもんだったし、当初はワイヤーを使用したロープウェーで推理を進めてた。だからこの焦げもワイヤーとの摩擦でついたものかと思っちまってたが……」
ルカ「もしかすると、メカ女の本当の死因を指し示す証拠になりうるかもしれねえ……!」
透「うーん……でもさ、アンドロイドになってたんだし、燃えただけで死ぬのかな」
ルカ「あ?」
透「あの体、多分めっちゃハイテクだよ。それこそモノケモノをぶっ飛ばすぐらいの力もあったし、ほかにも機能がいっぱいあった。並大抵のことじゃ壊れない……だから転落死っぽいなってなったし」
あさひ「モノクマ! 夏葉さんの耐熱性を知りたいっす!」
モノクマ「えぇ~、なんだよ面倒くさいなぁ……そのぐらいのこと、自分で調べてよ」
モノミ「何言ってるんでちゅか! こんなの、自分でどうやって調べるって言うんでちゅか!」
モノクマ「う~ん……確かにオマエラの言う通り、有栖川さんの身体は並大抵のことでは壊れはしません。もともと小宮さんのおしおきに乱入して大けがを負った身体だったんですからね、それを補えるような改造を施しました」
モノクマ「耐熱性はそれこそ災害救助マシンぐらいにはあるはずですね、ただ焼かれただけじゃ壊れるようなことはないんじゃないかな」
透「……ってね」
恋鐘「ふふーん、体が高熱になっただけじゃ夏葉の身体はびくともせんとよ! 残念やったね、ルカ!」
ルカ「なんでお前が得意げなんだよ……それに、別に私はアイツの死因を焼死だと断定したつもりなんかねーぞ」
ルカ「大体、焼死じゃモノクマファイルに矛盾が生じちまうからな。あいつがバカでかい衝撃を受けたことは間違いない……あの焦げ跡とその衝撃とを合わせて考えてみると、あいつの死因もだんだんと見えてくんだろ」
冬優子「有栖川夏葉の本当の死因……」
(……それなら私が教えてやるか、メカ女の本当の死因ってのを……!)
-------------------------------------------------
【発掘イマジネーション開始】!
有栖川夏葉の本当の死因は■■■である!
【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
1文字目 21~40
2文字目 41~60
3文字目 61~80
↓1~8
【コンマ11 22 14 35 15 90 71 47】
カンカンカンカン……
【発掘完了!!】
【ぞろ目ボーナス発動!】
【モノクマメダル3枚を手に入れました!】
_______________________
有栖川夏葉の本当の死因は爆死である!
_______________________
ルカ「降りて来たぜ、天啓ってやつがよ!」
【COMPLETE!】
ルカ「爆死だ……あいつは、文字通りに爆発の衝撃で命を落としたんだ」
冬優子「……なんだか、馴染みある響きね」
智代子「ば、爆死ってあの……どっかーーーーーんっていう爆死!?」
ルカ「ああ、今お前が想像したとおりの爆死だ。一見バカげてるようだが、ちゃんと要件は満たすだろ? 激しい炎に大きな衝撃、あいつの死体の状況にぴったりと符合する」
美琴「確かにそうだけど……それって変だよね」
美琴「何度も確認するようだけど、彼女は生身の人間ではなかった。彼女を爆殺しようとするなら、かなり大きな爆発になったはず……」
恋鐘「モノクマが花火大会に混入させた紛らわしか爆弾ぐらいの火力は必要になるたい!」
智代子「あの花火って、今でも使えるのかな?」
冬優子「前回の動機のときにあさひが悪用しないようにスーパーにあった花火は一通りふゆで回収したけど……あの巨大な花火はなかったわ」
あさひ「わたし、ヘビ花火とかまだまだやりたかったのに冬子ちゃんずるいんっすよ!」
冬優子「とにかく、スーパーにはそんな花火はないと断言できるわ。ふゆが回収して以降は花火も補充されてないようだから」
美琴「それに、花火の有無以前の話だよ」
美琴「彼女を殺害したタイミングで生じる爆音も衝撃も……私たちは知らないよね?」
智代子「むむむ……確かにそんなのはここ最近では一度も味わってはいないかも」
冬優子「有栖川夏葉を殺害するくらいの大規模な爆発。島を跨いでいたからと言って聞こえなかったでは通らなそうね……」
冬優子「どう、ルカ。これに答えを提示できる?」
(……どうだろう、あいつの死因は一番爆発がストレートにしっくりくる気がする)
(でも、私たちのいずれもその爆発を知らない……そんなことがあり得るのか?)
というわけで少しぶつ切り気味ですが、本日はここまで。
明日も21時ごろを目安に続きから進行します。
しょっぱなから選択肢安価となります、よろしくお願いいたします~
美琴「彼女を殺害したタイミングで生じる爆音も衝撃も……私たちは知らないよね?」
智代子「むむむ……確かにそんなのはここ最近では一度も味わってはいないかも」
冬優子「有栖川夏葉を殺害するくらいの大規模な爆発。島を跨いでいたからと言って聞こえなかったでは通らなそうね……」
冬優子「どう、ルカ。これに答えを提示できる?」
(……どうだろう、あいつの死因は一番爆発がストレートにしっくりくる気がする)
(でも、私たちのいずれもその爆発を知らない……そんなことがあり得るのか?)
-------------------------------------------------
・爆発がいつ起きたのかを提示する
・爆発の音を消す方法を提示する
・爆発がどこで起きたのかを提示する
【正しい選択肢を選べ!】
↓1
ルカ「これだ!」
【解!】
ルカ「確かに私たちは誰一人として、そんな爆発を見ても聞いてもいやしねえ。でも、だからといって爆発がなかったとは認められねえな」
冬優子「それはつまり、あんたには答えがあるってことよね?」
ルカ「ああ、私たちに気取らせずにメカ女を爆殺する方法がただ一つだけ存在するんだ」
透「気づかせないで、爆殺……」
雛菜「ん~? そんな静か~な爆発で人を殺せるんですか~?」
ルカ「いや、何も爆発を小規模に抑えるってわけじゃねえ。爆発自体はさっきも言った通りハチャメチャにデカかったはずだ。そうでもないとあの鋼鉄の身体は破壊できない」
ルカ「犯人にとって重要だったのは、殺害する場所だ」
智代子「殺害場所……はっ! そ、そういえば……さっきまでの議論で、夏葉ちゃんは本当の殺害現場から動かされたって話だったよね!?」
智代子「そこに、犯人につながる重要な手がかりがあるからっていう……それ!?」
ルカ「まだ私にはその犯人へとつながる手掛かりは見えちゃいねえが……有栖川夏葉が爆殺だったのだとすれば、現場はあそこを置いて他にないはずだ」
冬優子「どこなのよ、ルカ……その爆発があった場所ってのは」
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【夏葉が死亡した爆発はどこで起きたか指摘しろ!】
↓1
【発言力:♡×7→♡×6】
美琴「……ルカ、その場所は私が事件発生後に足を踏み入れているよ」
美琴「爆発なんて起きた形跡、見かけなかったな」
(違ったか……それに、ファイナルデッドルームは別に防音なんて話もなかった)
(もっと明確に、外と隔絶された空間がどこかにあるはずだ……!)
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【夏葉が死亡した爆発はどこで起きたか指摘しろ!】
↓1
ルカ「ここだ!」
【解!】
ルカ「……やっぱり、この場所は事件に大きく関係していやがんだ」
ルカ「観覧車、有栖川夏葉を爆殺するのならここ以上の現場はねえぞ……!」
雛菜「え~~~~~!?」
雛菜「でも、観覧車って死体を移動させるために使ったんでしょ~? そこで殺害までやっちゃうの~?」
美琴「……考えてみると、自然なことかもしれない」
美琴「夏葉さんの身体は私たち一人で運ぶにはあまりにも重たい。死体の移動経路でもある観覧車と殺害現場が近しいところになるのは自然なことだよね」
ルカ「しかも、あの観覧車には一つ大きな特徴がある。そうだよな、甘党女」
智代子「わ、私!? あ、あのー……何か致しましたでしょうか……」
ルカ「お前が何かしたんじゃなくて……最初に島が開いたとき、お前も私と同じタイミングで観覧車に行っただろ? あの時、モノクマが言ってたある特徴があるはずだ。思い出してみろ」
智代子「特徴……特徴……あ~~~~~~!」
智代子「もしかして、ナパーム弾でも壊れないっていう!?」
ルカ「ビンゴ。あの観覧車のゴンドラは、ほとんどシェルターみたいな仕様になってやがって爆弾でも壊れないし、その衝撃を漏らさない。内側で大規模な爆発があっても、そのゴンドラ内で完結するはずだ」
モノクマ「さっすがイナセだねぇ、爆発しても大丈夫!」
ルカ「だから私たちが音や衝撃を知らなくても何も支障はない。メカ女を爆殺したことを否定する材料にはなりえないはずだ!」
【冬優子「Are you ready?」】反論!
冬優子「……なるほどね、ゴンドラの中で爆殺すれば音も衝撃も問題なし」
冬優子「あんたの言い分はよくわかったわ、見かけに似合わず観覧車が大好きってこともね」
ルカ「はぁ……!? ち、ちげぇ……!!」
冬優子「でもね、あんたは重要な見落としをしてる。転落死説が有力だったときは考えなくていい要素だったから忘れちゃってるんだろうけど……」
冬優子「この問題がある限り、今のあんたの推理もただの仮説どまりだから」
-------------------------------------------------
【反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×6
集中力:☆×5
コトノハ
‣【夏葉の眼球】
‣【島のパンフレット】
‣【泥】
‣【モノクマファイル4】
‣【おやすみスイッチ】
‣【ワイヤーフック】
‣【極上の凶器】
冬優子「有栖川夏葉の死体の損壊状況」
冬優子「死体についた焦げ跡」
冬優子「併せてみると確かに一見すると爆殺風よね」
冬優子「音と衝撃も観覧車のゴンドラなら問題なし」
冬優子「だけどルカ、あんたは重大な見落としをしてるのよ」
冬優子「この一点で、あんたの推理は瓦解するの」
◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「推理の見落とし……? んなもん、どこにあんだよ」
ルカ「私の推理に矛盾があるなら言ってみやがれ!」
ルカ「あと言っとくけど、別に観覧車が好きだとか、そんなのは全く違うからな……」
◆◇◆◇◆◇◆◇
冬優子「観覧車のゴンドラはさっきも確認した通り完全な密室」
冬優子「しかも一定の高度以上では扉にロックまでかかる」
冬優子「犯人もその密室からは出られないのよ」
冬優子「そんなところで爆殺なんてしてごらんなさい」
冬優子「有栖川夏葉と【共倒れ】じゃないのよ」
冬優子「生憎ながら他の連中は全員無事」
冬優子「爆殺なんかしようがないわ」
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ70以上で論破しろ!】
1.発言する(コトノハと斬りつける先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
↓1
【コンマ56】
【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15されます】
【最終コンマ71】
ルカ「その矛盾、斬らせてもらうぞ!」
【BREAK!】
ルカ「確かにあのゴンドラは完璧な密室だ。だからこそ、あいつを殺害した爆発を私たちは感知せずに済んでるわけだしな」
ルカ「でも、だからといって犯人もそれで必ずしも共倒れになるわけじゃない……」
冬優子「はぁ……? 何よそれ」
ルカ「何も犯人が同じゴンドラに乗っている必要はないんだよ。あいつだけ載せることができれば、あとは爆弾を勝手に爆発させればいい」
あさひ「時限爆弾とかっすね。一定の時間が経った後で、勝手に爆発する仕掛けがあれば犯人がその場にいる必要はないっす」
雛菜「あは〜! 確かに〜!」
智代子「リモコン爆弾なんかもありかもしれないよね! 外から遠隔で爆発させれば犯人は無事だよ!」
冬優子「ちょっと待ちなさい、そんなの……有栖川夏葉がまず抵抗するでしょ? 一切抵抗も何もなく、そのままあいつは爆殺されたっての?」
ルカ「あいつは自分でとる睡眠の他に、押された瞬間強制でスリープモードに入るスイッチがついていた。犯人はそれを押して、無抵抗な状態になったメカ女を爆弾と一緒にゴンドラにぶち込んだんだ」
ルカ「何も犯人が爆発の現場に居合わせる必要はない。メカ女は無抵抗なままにその爆破の衝撃を浴びてくれるんだからな」
透「じゃあ、今回の死因は爆死で確定?」
雛菜「え〜? でも、爆殺された具体的な証拠はないんだよ〜?」
あさひ「転落死は転落死で成立してないっす。可能性が高いのは現状爆死だと思うっすよ」
冬優子「にしてもねぇ……なんか引っかかんのよね。そんな回りくどいやり方、普通選ぶ?」
智代子「観覧車の条件が整っているからこそだよ! 爆殺をしても、あの観覧車なら問題ないんです!」
恋鐘「モノクマファイルに死因は書いとらんけど……やっぱり転落死のことを言っとるよう
美琴「……ルカの話は全部あくまで仮説だよね」
ルカ「それはそうだけどよ……!」
【モノクマ「そして議論はぶつかり合う!」】意見対立!
モノクマ「盛り上がってきたぁ! 有栖川さんが命を落としたのは転落死なのか、はたまた爆死なのか……!?」
モノクマ「この議論はそのどちらに軍配があがるんだ〜〜〜!?」
(メカ女の死因はきっと爆死……だからこそ、犯人は殺害現場から死体をわざわざ移したんだ)
(きっと、この死因に犯人へとつながる決定的な手がかりがあるはずだ……!)
-------------------------------------------------
【意見対立】
【議論スクラム開始!】
「有栖川夏葉は転落死だ!」vs【有栖川夏葉は爆死だ!】
発言力:♡×6
集中力:☆×5
恋鐘「モノクマファイルの死因もどうみても転落死のことを書いとるたい! ルカたちは勘ぐりすぎやけん!」
雛菜「オイルは死体発見現場にぶちまけられてましたし、それってイコール死因なんじゃないですか~?」
恋鐘「観覧車から滑り落とすようにすれば、周りになんもなくとも夏葉を殺すことは可能やったと!」
雛菜「ロボットを壊しちゃうぐらいにおっきな爆発があったら誰か気づくはずでしょ~? 雛菜たちは誰もそんなの聞いてないよ~?」
冬優子「爆殺なんて言ったって……そんな爆発、どうやって起こすっていうのよ。花火大会の花火は全部使いきったはずよ」
美琴「ルカの推理は全部仮説でしかない……どうして爆死だなんて断言ができるの?」
-------------------------------------------------
【意見スロット】
【ロープウェー】
【手段】
【モノクマファイル】
【可能性】
【ゴンドラ】
【オイル】
-------------------------------------------------
【意見スロットを正しい順番に並び替え、敵スクラムを向かい討て!】
1.スクラムを指示する(解答)
2.集中力を使う(一部スロットが自動で正答位置に並び代わる)
↓1
【ルカ「退いてろ!」】
恋鐘「モノクマファイルの死因もどうみても転落死のことを書いとるたい! ルカたちは勘ぐりすぎやけん!」
【ルカ「甘党女!」
智代子「モノクマファイルに書かれている死因は爆死でも十分成立するはずだよね!」】
雛菜「オイルは死体発見現場にぶちまけられてましたし、それってイコール死因なんじゃないですか~?」
【ルカ「中学生!」
あさひ「オイルがぶちまけられてても、それは殺害現場とは限らないっす。あくまで破壊されただけっすよ」】
恋鐘「観覧車から滑り落とすようにすれば、周りになんもなくとも夏葉を殺すことは可能やったと!」
【ルカ「ここは私が!」
ルカ「さっき中学生の言った通りだ……ロープウェーの方法はとっくに破綻してんだよ」】
雛菜「ロボットを壊しちゃうぐらいにおっきな爆発があったら誰か気づくはずでしょ~? 雛菜たちは誰もそんなの聞いてないよ~?」
【ルカ「甘党女!」
智代子「あのゴンドラはシェルターと一緒だよ! 爆発があったところで、その音も衝撃も漏らさないんだ!」】
冬優子「爆殺なんて言ったって……そんな爆発、どうやって起こすっていうのよ。花火大会の花火は全部使いきったはずよ」
【ルカ「浅倉透!」
透「ファイナルデッドルーム。あそこなら可能性はあるよね」】
美琴「ルカの推理は全部仮説でしかない……どうして爆死だなんて断言ができるの?」
【ルカ「ここは私が!」
ルカ「なにも決めつけてるわけじゃねえ……可能性はこっちの方が高いってだけだ!」
-------------------------------------------------
【CROUCH BIND】
【SET!】
【コンマの合計値360以上で相手のスクラムを打ち破れ!】
↓直下より六回連続でコンマ判定
【コンマ 34 49 23 45 40 68】
【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15ずつされます】
【最終コンマ 49 64 38 60 55 83】
【合計値 349】
【発言力:♡×6→♡×5】
(ぐっ……結構やるじゃねーか)
(でも、ここは絶対に譲れない……なんとしても乗り越えてやるぞ……!)
-------------------------------------------------
【CROUCH BIND】
【SET!】
【コンマの合計値360以上で相手のスクラムを打ち破れ!】
↓直下より六回連続でコンマ判定
【コンマ 20 49 06 54 07 62】
【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15ずつされます】
【最終コンマ 35 64 21 69 22 77】
【合計値 288】
【発言力:♡×5→♡×4】
(ぐっ……結構やるじゃねーか)
(でも、ここは絶対に譲れない……なんとしても乗り越えてやるぞ……!)
-------------------------------------------------
【CROUCH BIND】
【SET!】
【コンマの合計値360以上で相手のスクラムを打ち破れ!】
↓直下より六回連続でコンマ判定
【コンマ 92 38 48 73 90 12】
【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15ずつされます】
【最終コンマ 107 53 63 88 105 27】
【合計値 443】
【全論破】
「「「「「これが私たちの答えだ!」」」」」
【BREAK!】
ルカ「確かに降ってわいたような可能性で、その裏付けも何もない。……だがよ、あの死体は確実にどこか別の場所から移されたもので、その死体には不自然な焦げ跡もある」
ルカ「爆殺という殺害方法……一考の余地はあるんじゃねーか?」
冬優子「……あんたたちの言いたいことは分かったわ。確かに観覧車のゴンドラを利用すれば、爆殺を行うこと自体は可能だろうし」
雛菜「でも、それってすっごく大きな問題をすっ飛ばした議論ですよね~」
智代子「すっごく大きな問題……?」
雛菜「うん、爆殺のための肝心の凶器がまだ分からないでしょ~? 何度もみんなが言ってるけど、あの機械の体を破壊するほどのおっきな爆発はそうそうの事じゃ起こせないよね~」
雛菜「その爆発を、犯人はどうやって起こしたんですか~?」
透「確かに私たちはこれまでの島の生活じゃそんなのは見つけてないけどさ。可能性なら、残ってるよね」
ルカ「ああ、お前が言ってるのはファイナルデッドルームのことだろ?」
ルカ「あの部屋は極上の凶器の他にもたくさんの凶器が転がっていた、そうだったよな美琴」
美琴「……うん」
ルカ「なら、その中にあった爆弾を拝借してちょちょっと細工さえしちまえば____」
美琴「爆弾なんてなかったよ」
ルカ「……は?」
美琴「確かにファイナルデッドルームにはいろんな種類の凶器が揃えてあった。ナイフや銃、モーニングスターなんかもね」
美琴「……でも、爆発物の類いは一つも入ってなかったよ。それは間違いないって断言できる」
智代子「い、いやいや! 美琴さんは確か、最初の攻略者じゃあないんだよね?! それなら、先にクリアした真犯人が根こそぎ持ち去ってる可能性も……」
美琴「それもないかな」
冬優子「確かさっきも言ってたわよね、ファイナルデッドルームは初回クリア特典以外は即座に補充されるって。攻略すれば極上の凶器が手に入るっていう触れ込みを守るために、モノミの家の鍵も補充される」
あさひ「なら、美琴さんが発見できなかったんならファイナルデッドルームにはもともと爆発物なんてなかったことになるっすね」
ルカ「そ、そんなことが……」
美琴「ルカ、どうやら振出しに戻らないといけないみたいだね」
(美琴が嘘をついてる可能性だって……ないわけじゃない)
(でも、こんな局面でわざわざそんな嘘をつく意味は美琴にもないはずだ……)
(じゃあ、だとしたら……)
雛菜「これ、まずくないですか~?」
雛菜「転落死も爆死もどっちもないんだったら、今までの議論全部ムダだったことになっちゃいますけど……」
あさひ「……」
智代子「そ、そんな……ここまで議論を続けてきて、死因も特定できてないなんて、進展はまるっきりゼロですか!?」
恋鐘「し、仕方なか! もっと、別の所から議論せんね! 時間もないし、急いで……」
(……でも、私にはあの観覧車が無関係にはどうも思えない)
(あの死体に残されていた手掛かりだって……私の勘違いだって言うのか……?)
冬優子「まあ、この島に爆弾がない以上はこの議論も打ち止めだろうし……しょうがないわね」
美琴「夏葉さんを殺せるほどの膨大なエネルギー出力……高さ、爆弾……ほかには何があるかな」
(……?)
(あいつを殺せるほどの、【膨大なエネルギー出力】……?)
ルカ「待て!」
冬優子「何よルカ……突然大きな声なんか出して」
ルカ「……そうだ、そうだよな。あいつの体はバラバラになってた、そりゃそれだけバカでかい衝撃、それをもたらすエネルギーが必要になったはずだよな」
恋鐘「ル、ルカ? 何をぶつくさ言うとるばい?」
ルカ「……私に一つだけ、心当たりがある」
美琴「……」
ルカ「確かにこの島には、爆弾は存在しなかったかもしれない。でも……メカ女の体をバラバラにするぐらいの【強い衝撃を与えうる何か】を持っていた人間なら、この中にいる」
智代子「え、ええ……えええええ!? そ、それってつまり……犯人、だよね?」
雛菜「議論の進展がゼロだと思ってたら、一気に犯人まで行っちゃうんですか~?」
ルカ「私たちの中でただ一人、メカ女の体をバラバラにできる【何か】を持っていたやつ……そいつは」
-------------------------------------------------
【怪しい人物を指摘しろ!】
↓1
ルカ「お前だ!」
【解!】
ルカ「ほかならぬメカ女本人……こいつなら可能だったはずだ」
智代子「な、夏葉ちゃん……? ちょ、ちょっと待ってよルカちゃん! 夏葉ちゃんは被害者なんだよ、犯人とは別なんだよ!?」
透「あー……そういうこと、自殺なら可能性はあるんだ」
恋鐘「じ、自殺ばい!?」
透「被害者と犯人は同一人物だったってケース。それならあり得そうじゃない?」
ルカ「いや、そうじゃねえ。私は何もメカ女の体をバラバラにできる何かを持っていた人間としてメカ女を指摘しただけで、それ以外の意図は何もねーよ」
ルカ「あいつが自殺した、だとかそんなのは全く考えちゃいねえ」
透「あれ」
ルカ「私が言いたいのは、あいつの右手についてたロケットパンチの事だ」
≪夏葉「邪悪を打ち破る、正義の鉄拳を喰らいなさい!」
夏葉「はあああああああああ!!!!」
智代子「いっけええええええええ!!!!」
ドッカーーーーーーン!!!!!
夏葉「どうかしら、これが私の手に入れた新しい力……【ロケットパンチ】よ」
あさひ「すごいっす〜〜〜!!!」≫
ルカ「実際、あいつの右手のロケットパンチは一撃でモノケモノを葬り去るほどの絶大な火力を持っていた。それはここに居合わせた全員が目撃したことだろ?」
あさひ「確かに、あのロケットパンチはすごい衝撃だったっす。パンチを食らっていないわたしたちでもその爆風で吹き飛んじゃいそうなほどだったっす」
雛菜「そういえばあのロケットパンチって軌道の制御も自由にできたはずですよね~」
雛菜「じゃあパンチを打った後に自分の体に当たるようにしたってことなんだ~」
透「え、結局自殺じゃん」
ルカ「待て待て、結論を急ぐな。さっきも言ったが、あいつの体をバラバラにできるほどの衝撃を持ったロケットパンチをあいつは撃てたってだけの話であって、自殺だなんていうつもりはない」
ルカ「それに自殺なんだったら、そもそもあいつの死体が殺害現場から動かされてるのが妙な話だろ?」
智代子「死体が砂を被っていたことからも、高いとこから落ちたのはほぼ確定的だし、自殺の線は考えにくいかも?」
ルカ「だから、犯人はあいつのロケットパンチを何かしらの形で利用したんだと思う。あの衝撃をそのままあいつ自身に跳ね返すような真似をしたんじゃねーのかな」
恋鐘「犯人のカウンターパンチが炸裂したばい!?」
冬優子「あんなアンドロイドと正面からボクシングでカウンターなんか決めれたら人間じゃないわよ……」
透「衝撃を跳ね返すって言われても……鏡とかじゃないよね。ゲームじゃあるまいし」
あさひ「殺害現場が観覧車のゴンドラなら、その中でロケットパンチを打っただけでも衝撃は跳ね返ってくるんじゃないっすか? あれ、相当に固いシェルターっすよ」
美琴「少し弱いかな。それに、シェルターは衝撃を反射するんじゃなくて吸収するものだし……ゴンドラの中で撃ったとしても彼女の体は壊れないと思う」
(……あいつの体にロケットパンチの衝撃を返した方法か)
(あのロケットパンチは大量の燃料と電力を消費し、ジェット噴射しながら拳が飛んでいく仕様だ。撃った時のノックバックもかなり大きいが、あいつの受けた衝撃はそんなものじゃなかったはず)
(それこそ、その衝撃を爆発的に増して還元する……そんな何かが仕掛けられたのは間違いないだろう)
あさひ「だとしたら、怪しいのはあの焦げ跡っすね」
透「あー、そういえば……死体は一部が焼け焦げてたんだっけ」
雛菜「だからこそ、爆殺って話になったんですもんね~」
(あと少し……あと少しだ)
(あともう少しであいつの死因が、思いつきそうだ……!)
-------------------------------------------------
【発掘イマジネーション開始!】
有栖川夏葉はロケットパンチで■■■した!
【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
一文字目 1~30の奇数
二文字目 31~60の奇数
三文字目 61~90の奇数
↓1~8
【コンマ 89 12 19 72 57】
カンカンカンカン……
【発掘完了!!】
【規定回数より少ない回数で掘り当てたのでボーナスが発生します!】
【モノクマメダル3枚を獲得しました!】
_______________________
有栖川夏葉はロケットパンチで自爆した!
_______________________
ルカ「そうか、わかったぞ!」
【COMPLETE!】
ルカ「ロケットパンチはあいつ自身の手で制御可能。となると、犯人がどうこうしたところであいつが自分自身に拳を突き立てるようなことは、まずなかっただろうと思う」
美琴「自殺を試みたりしていない限りは、そんなことは起こらないだろうね」
ルカ「でも、あのロケットパンチの他にメカ女の体をバラバラにできるような高出力の凶器は存在していない……となると、もっと別の方法で犯人は利用したはずだ」
ルカ「あのパンチそのものではなく、パンチを撃ちだすための仕組みを利用したんじゃないか?」
恋鐘「パンチば撃ちだす仕組み……? どがん意味か説明して!」
ルカ「あのパンチはかなりの量の燃料と電力を消費して、ジェット噴射して飛んでいく仕掛け。ま、平たく言えば、ガキがロケットを描くときとかと同じで、火を出しながら飛んでいく絵面だ」
ルカ「ロケットパンチを撃ちだした瞬間、その空間に引火性のガスなんかが充満していたらどうだ? 即座に化学反応が発生して大爆発が巻き起こる。要は自爆ってわけだ」
智代子「なるほど……! それなら確かに観覧車のゴンドラはうってつけだね……!」
智代子「衝撃を外部に逃がさないし、密閉性も抜群。ガスと一緒に夏葉ちゃんをゴンドラに入れておけばそれで準備もOKなんだ!」
雛菜「なるほど~、それなら確かに爆弾が無くても爆死の条件を満たしますね~」
美琴「じゃあ、その引火性のガスっていうのは?」
ルカ「なんか、ドラッグストアとかにないのか? そういう感じのやつ」
智代子「急に雑になったね……」
ルカ「しょうがねーだろ、そもそも捜査も何もしてねーんだからよ。あのドラッグストアは常用薬からやべー薬まで一通り何でも揃ってたし、なんか一個ぐらい条件を満たすのが……」
あさひ「……ルカさん、その推理も行き止まりっす」
ルカ「……あ? んだよ、またなんかあんのか?」
あさひ「その方法は、夏葉さんだけは殺害できないっすよ」
美琴「……どういうこと?」
あさひ「夏葉さんの機体には、【空気清浄機能】が搭載されてるっす。もしゴンドラの中をそんな有害なガスで充満させたら、その機能が作動してガスは分解されちゃうっす」
ルカ「な、なんだと……そんなの、初耳だぞ……!?」
智代子「たしかに……あさひちゃんの言う通りだよ、それ、夏葉ちゃんも言ってた! 私も聞いたよ!」
透「え、それじゃ……また?」
雛菜「振出しに戻る~~~~~!!」
(う、嘘だろ……ここまで詰めておいて、またダメだってのか……!?)
(あいつのロケットパンチを利用した自爆殺人……クソ、これ以上なく通っていると思うのに)
(被害者自身の機能ではばまれるなんて……!!)
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×4
集中力:☆×5
コトダマ
‣【泥】
‣【夏葉の眼球】
‣【モノクマファイル4】
‣【死体に被さっていた砂】
‣【極上の凶器】
‣【ワイヤーフック】
‣【ハンマー】
冬優子「有栖川夏葉の死体をバラバラになるまで破壊できる」
冬優子「そんな爆発的な威力を持つのは、あいつ自身のロケットパンチだけ」
冬優子「ゴンドラに可燃性のガスを充満させておけば」
冬優子「着火した瞬間に大爆発が生じる」
冬優子「それがルカの推理よね」
あさひ「でも、夏葉さんには空気清浄機能がある」
あさひ「可燃性のガスでも、人体に有害なものは全部分解されちゃうっす」
あさひ「着火したところで、【爆発は起きない】と思うっすよ」
美琴「ファイナルデッドルームには【爆弾はなかった】」
美琴「他に彼女を爆殺する方法はないんじゃないかな」
智代子「夏葉ちゃんの死因、またわからなくなっちゃったね……」
恋鐘「いい加減議論を進めんと、タイムアップになってしまうばい~~~~!」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
【集中力を使用しました】
【コトダマの数が減少します】
【集中力:☆×5→☆×4】
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×4
集中力:☆×4
コトダマ
‣【泥】
‣【夏葉の眼球】
‣【死体に被さっていた砂】
‣【ワイヤーフック】
‣【ハンマー】
冬優子「有栖川夏葉の死体をバラバラになるまで破壊できる」
冬優子「そんな爆発的な威力を持つのは、あいつ自身のロケットパンチだけ」
冬優子「ゴンドラに可燃性のガスを充満させておけば」
冬優子「着火した瞬間に大爆発が生じる」
冬優子「それがルカの推理よね」
あさひ「でも、夏葉さんには空気清浄機能がある」
あさひ「可燃性のガスでも、人体に有害なものは全部分解されちゃうっす」
あさひ「着火したところで、【爆発は起きない】と思うっすよ」
美琴「ファイナルデッドルームには【爆弾はなかった】」
美琴「他に彼女を爆殺する方法はないんじゃないかな」
智代子「夏葉ちゃんの死因、またわからなくなっちゃったね……」
恋鐘「いい加減議論を進めんと、タイムアップになってしまうばい~~~~!」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
【発言力:♡×4→♡×3】
あさひ「……? あの砂は死体発見現場に合ったものと同じはずっす」
あさひ「それに、粉塵爆発を起こすには不向きな材質だと思うっす」
(……違ったか)
(メカ女の死に爆発が関係しているのは間違いない……自爆に導いた可燃性のガス、考えてみるか……!)
【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果でコトダマの数が減少します】
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×4
集中力:☆×4
コトダマ
‣【泥】
‣【死体に被さっていた砂】
‣【ワイヤーフック】
‣【ハンマー】
冬優子「有栖川夏葉の死体をバラバラになるまで破壊できる」
冬優子「そんな爆発的な威力を持つのは、あいつ自身のロケットパンチだけ」
冬優子「ゴンドラに可燃性のガスを充満させておけば」
冬優子「着火した瞬間に大爆発が生じる」
冬優子「それがルカの推理よね」
あさひ「でも、夏葉さんには空気清浄機能がある」
あさひ「可燃性のガスでも、人体に有害なものは全部分解されちゃうっす」
あさひ「着火したところで、【爆発は起きない】と思うっすよ」
美琴「ファイナルデッドルームには【爆弾はなかった】」
美琴「他に彼女を爆殺する方法はないんじゃないかな」
智代子「夏葉ちゃんの死因、またわからなくなっちゃったね……」
恋鐘「いい加減議論を進めんと、タイムアップになってしまうばい~~~~!」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
ルカ「見つけた……!!」
【BREAK!】
ルカ「……メカ女の体はバラバラで、更には焼け焦げた跡もあった」
ルカ「死体発見現場にはオイルがぶちまけられていて、死体を引きずって移動したような可能性はない」
ルカ「……現場にある手掛かりは、これで終わり。そう思っていた。オイルがこぼれている、だからこれは普通の事だと勝手に思い込んでいた。でも、よくよく考えればおかしいよな」
ルカ「油は砂にそう簡単には浸透しない……あんな風に、現場に泥ができるのって考えづらいよな」
美琴「……どういう意味?」
ルカ「……あの死体発見現場にぶちまけられていたのは油だけじゃなかったかもしれないってことだよ。油ほどの多量ではなかったにしろ、砂を泥に替えるぐらいには十分な量の……水がな」
恋鐘「み、水……」
ルカ「……さて、ここで化学のお勉強だ。中学生、お前……水の化学式は分かるか」
あさひ「えっと、H₂Oっすよね?」
ルカ「じゃあ、次はその化学式を構成している元素は分かるか?」
あさひ「……【水素】と、酸素」
あさひ「あっ」
ルカ「そういうことだ、ここにいる連中も一回ぐらいは経験したことあんだろ? 水上置換の実験、そこで集めた水素で蝋燭を爆発的に燃やすアレ」
透「あー……えっと……塩酸と……金属?」
雛菜「透ちゃん賢い~~~~! 雛菜全然覚えてなかった~!」
ルカ「犯人はあの観覧車のゴンドラの中でその燃焼実験の再現を行ったんだよ。ロケットパンチに着火した瞬間に空気中の水素と酸素で化学反応が発生、その瞬間の大爆発は免れようがなかったろうぜ」
ルカ「その結果、化合物として発生した水が死体に付着。死体を移動した際に周辺の砂に水がしたたり落ちて、それが泥になった。オイルとは全くの別にな」
あさひ「確かに、水素なら問題なく爆発までこぎつけられるかも……それに、気体の問題をクリアすれば、他の条件は全部今の推理で説明がつく……」
智代子「ルカちゃん、これって……もしかして……!」
ルカ「ああ、やっとたどり着いた……これがメカ女の死の正体……あいつは、水素爆発で命を落としたんだよ!」
美琴「……すごいね、ルカ」
美琴「これで、犯人も分かっちゃったもんね」
智代子「……え?」
智代子「は、犯人……?」
美琴「違う? 今のルカが言った通りの、水素爆発……明らかに一人、怪しい人物が浮上するよね」
ルカ「……」
智代子「ちょ、ちょっと待って! 今までずっと、議論の前提となる死因の特定の話をしてただけで……せいぜいこれで確定したのって、死因と事件現場ぐらいの物じゃないの?!」
恋鐘「う、うちも全然見えてこんたい……美琴、頭の回転が速すぎてうちらを取り残してしもうとるよ!」
美琴「じゃあ、ルカに説明してもらおうかな」
美琴「夏葉さんが命を落とした原因が水素爆発だとわかった今、一番犯人だと疑わしい人物を指摘してもらったうえで」
ルカ「み、美琴……!?」
(……マジか)
(いや、美琴だからこそ……か。この状況で私と同じ結論に到達できるのは、この場では美琴とせいぜいもう一人ぐらいのもの)
(あの時、あの場に居合わせていた……あいつならば同じ結論に至るかもしれない)
(でも、でも……)
(そんな結論……私は……私は……)
-------------------------------------------------
【クロを指摘しろ!】
↓1
クロを指摘したところで本日はここまで。
水素のくだりは正直文系化学なので温かい目で見てやってください……
明日も21時ごろから更新予定です。
それではお疲れさまでした。
ルカ「……」
【解!】
ルカ「第3の島が解禁されたとき、私は真っ先に病院に向かった。あの島で最も私たちの生き死にに関与する施設。それを狸に荒らされることは避けたかったからだ」
ルカ「そこで、私と美琴は出会った。狸である可能性が最も高い中学生を擁するストレイライトの三人に」
ルカ「奴らは言っていた、監視の目は常に張っている。中学生が何か怪しいことをしていたらすぐに止める。何かを持ち出させるのも防ぐってな」
ルカ「でもな、一人だけ図々しくも設備を持ち出してるやつがいたんだよ」
ルカ「……美容のため、私はそう聞いてたんだけどな」
≪冬優子「待って。ふゆたちもただ探索に来てるだけ、それに二人がかりでこいつには目を光らせてるから安心して」
ルカ「……本当だな?」
冬優子「あさひの手荷物もついさっき検査したけど、何も持ち出した様子はないわ。愛依とふゆが保証する」
ルカ「……お前のその手に抱えてるのは違うのか?」
冬優子「これは……水素の吸引機よ。ふゆが普段使いする用で持ち出すだけ」
(それはいいのかよ……)≫
ルカ「……冬優子、お前なのか?」
冬優子「……」
冬優子「……あんたね、何言ってんのよ」
ルカ「……あ?」
冬優子「確かにふゆは水素の吸引機を持ち出した。あれを使えばゴンドラの中を水素で満たすこともできたかもしれないけど……」
冬優子「さっきもあんたが言った通り、水素なんていくらでも生成できんのよ。塩酸を金属にかければすぐにできるわけだし、水を電気分解したっていい」
冬優子「それだけでふゆを糾弾しようなんて、あんたいい度胸してんじゃないの」
ルカ「……クク、ククク……」
冬優子「何笑ってんのよ、気持ち悪いわね」
(……正直、安心した。冬優子が認めてしまえば……犯人がわかったとて、私はまた大事なものを失うことになる)
(美琴との仲が悪くなっちまったから……余計に、その喪失はあって欲しくはなかった)
冬優子「水素なら誰でも簡単に精製可能、くだらないこと言う前にちゃんと議論しなさい」
智代子「えっと……それじゃあつまり、ふゆちゃんは別に犯人なわけではない……?」
美琴「……」
あさひ「冬優子ちゃん、違うっすよね? わたし……愛依ちゃん、果穂ちゃんに続いて……冬優子ちゃんとお別れなんかしたくないっすよ」
冬優子「だから、くだらないこと言ってんじゃないって」
あさひ「あだっ」
智代子「恐ろしく優しい手刀……私じゃなきゃ見逃しちゃうね!」
恋鐘「そいじゃあ議論に戻らんね! もともと今、なんの話しとったっけ……」
透「死因と殺害現場はわかった……じゃあ次は……死体の移動方法?」
透「確か、ロープウェーは出来ないって話で……残りはそのままだったよね」
ルカ「おう、モノミの家でロープウェーの操作をする人間と死体の運搬をする人間で二人が必要になるからな」
智代子「う〜ん……殺害現場は観覧車だけど、運搬を行ったのは別の場所なのかな」
雛菜「あんな重たいの、人の力じゃ運べないと思いますよ〜? やっぱり、観覧車を何かしらの形で利用して運んだんじゃないですか〜?」
透「あ、じゃあ何か物を持ち込んで運んだとか。台車とか、猫車とか、そういうの」
あさひ「それ、普通に運ぶのとあんまり変わんないっすよ? それに、台車に乗せるのも大変っす」
恋鐘「死体に風船を結びつけて浮きあがらせるのはどがんね!」
冬優子「風船って、どこぞ老爺の家じゃあるまいし……」
智代子「それじゃあロケット花火でぶっ飛ばして運んだとかは?」
冬優子「なんか響きがヤンキー漫画みたいだけどそれ、大丈夫?」
あさひ「ロケット花火は冬優子ちゃんに没収されてるからそれはないっす」
冬優子「……絶望病の時、こいつが碌なことしなさそうだからスーパーから花火類は根こそぎ回収しておいたわ」
あさひ「む〜、色々混ぜてどんな光り方するか確かめたかったのに〜」
冬優子「ほらね」
(……苦労人だな)
冬優子「で、本題だけど……観覧車、なんて名前でも実際のところ移動なんて一ミリも出来やしない。あそこから死体を運び出すのは不可能だって結論にならなかった?」
(……どうなんだろう、あいつを爆殺した手口は明るみになったし……それが可能なのは観覧車のゴンドラだけ。なら、観覧車から死体発見現場まで何かしらの方法で運び出されたはずだ)
あさひ「夏葉さんの死体にはワイヤーフックが取り付けられてたっす。あれがある以上は何かしらの方法で運ばれたのは間違いないはずっす」
透「……えっとさ、そのワイヤーフックって本当にワイヤーのフックなのかな」
ルカ「あ?」
透「だってさ、フックだけがついてるのって妙じゃない?
死体を運ぶのにワイヤーを使ったんだったら、証拠隠滅のためならフックも両方普通外すよね」
ルカ「……そういえばそうだな。現場には、あいつの死体を運んだであろうワイヤーの本体そのものは残っちゃいなかった」
ルカ「死体を運び出したと言う事実を隠蔽するんだったら、ワイヤーだけでなくフックも両方隠滅するのが普通道理だよな」
あさひ「あのワイヤーって、かなり緩めだったっす。老朽化してたのかもしれないけど、全然強度はなかったっす」
あさひ「もしかすると、ワイヤーは犯人が外したんじゃなくて外れたのかもしれないっすね」
(ワイヤーが……【外れた】……?)
恋鐘「そいなら、犯人は別んところに夏葉を移しとる最中にワイヤーが外れて死体が想定外の場所に落下してしまったとね?」
あさひ「……だとしたら、最終地点に死体が到達してないことに気づいた犯人はもっと丁寧に誤魔化すと思うっす。それこそ、ワイヤーフックだって外したのかも」
美琴「それこそ血眼になって落下した死体を探すだろうね、意図しないところに落ちたせいで妙な手掛かりになっても困るし」
ルカ「それが無いってことは、犯人にとっては概ね想定通りだったってことだ。ワイヤーが外れて落下してもいい……つまりは死体発見現場と殺害現場が別になりさえすればよかったんだろう」
冬優子「だから、また議論が逸れてるわよ。今話してたのはどうやって死体を運搬したのか。その方法が解決できない限りは、犯人の意図がどうとか関係ないじゃないの」
(……観覧車を使った死体の運搬)
(ゴンドラに一度乗り込んでしまうと……一定の高さになるとゴンドラは開かなくなってしまう)
(ゴンドラの動きを停止させようにも、その操作はモノミの家じゃないとできない)
(……一体、犯人はどうやって死体を運んだんだ?)
-------------------------------------------------
【ロジカルダイブ開始!】
Q1.有栖川夏葉の本当の死因は?
A.転落死 B.撲殺 C.爆死
Q2.有栖川夏葉はどこで命を落とした?
A.死体発見現場 B.観覧車 C.それ以外
Q3.犯人は何を使って死体を運搬した?
A.ロケットパンチ B.観覧車 C.ドローン
Q4.犯人はどうやって死体を運んだ?
A.遠隔操作 B.ロープウェー C.円運動 D.ワイヤーで手繰った
【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】
↓1
ルカ「推理はつながった!」
【COMPLETE‼︎】
ルカ「観覧車を運搬に活用しようにも、自由に操作するにはモノミの家にいることが必須。更にはゴンドラは地上から離れてしまうと扉も開かなくなっちまう」
ルカ「その二つの条件があるせいで、私たちは観覧車を活用することを諦めてしまっていた……でも、そうじゃない」
ルカ「今回の殺害現場がゴンドラの中で、死体発見現場とは別だと確定した今、死体運搬の方法がそこにあったのは明らかだ」
智代子「その論理はわかるけど……でも、肝心のその方法がわからないんだよね」
智代子「観覧車の内側は今ルカちゃんが言った通りの条件でがんじがらめだから……」
ルカ「そう、それだ。観覧車に乗るというのを前提で考える以上は推理は行き詰まる。……それなら、乗らなければいい」
恋鐘「観覧車に、乗らん……?」
ルカ「観覧車の外枠を使ったんだ。観覧車の円周上にワイヤーを添わせるようにして、その先端にメカ女の死体を括り付ける」
ルカ「あとは円運動の要領で観覧車をぶん回せば、そのまま死体は空中に投げ出されるって仕組みだ」
美琴「そんな大胆な方法を……?」
あさひ「なるほど、それでワイヤーフックはかなり緩いものを使ったんっすね。空中でワイヤーが外れて運動の勢いそのままに飛んでいくように犯人は狙ったんだ」
ルカ「運搬というには不十分な方法だ。死体がどこに飛んでいくかも予想がつきづらい、とにかく観覧車から遠ざけられればそれでよかったんだもんな」
冬優子「待ちなさい」
冬優子「あんたたち……それ、本気で言ってる? 観覧車は確かに綺麗な円のかたちよ、でも……円の大きさも並みじゃないし、それにただの円じゃなくて観覧車、なのよ」
冬優子「金属でできた観覧車の重量なんて数トンで収まる規模じゃないし、そんな滑車みたいに速度をもって回転すると思うの?」
あさひ「難しいっすか?」
冬優子「当たり前でしょ、大体普段から見てるでしょ。観覧車の回転する速度……一周に数十分かかるのが普通なんだから」
ルカ「なあ、美琴。モノミの家で観覧車の速度を操作することはできるか?」
美琴「……一応可能だったと思う。でも、あくまでそれは通常のアトラクションの運用の範囲内で。外枠に取り付けた死体を投げ飛ばすほどの遠心力が発生するような速度じゃないよ」
美琴「後はせいぜい回転する方向の転換ぐらい。観覧車だけじゃルカの推理は成立しないかな」
恋鐘「なんだかどんどん真実から遠ざかっとるような気がするばい……ルカはさっきから突拍子もないことばっか言っとらん?」
あさひ「そうっすか? 今のって、美琴さんの言う通り……観覧車だけじゃ推理は成立しないかもしれないけど、ほかに何か別のものを利用すれば成立する可能性はあるっすよね」
智代子「そうか! ロケットパンチの勢いをここでも利用したんだね!?」
美琴「いや、ロケットパンチは一発一発にかなりの燃料を必要とするから……彼女の命を奪った一発のほかには打てないと思うよ」
(円運動を助ける、何か別の物……)
(要は、あの観覧車が高速で回転すればいいんだよな……?)
(私の推理では、観覧車にはその演習場にワイヤーが巻き付けてあり、その端にメカ女の死体が括りつけてある)
(……だとすれば、もう片方の端って……)
(あと少し、あと少しだ……これでやっと、あの死体が移動したトリックが見えてくる……!)
-------------------------------------------------
【発掘イマジネーション開始!】
犯人は夏葉の死体を運搬する円運動で■■■■■を利用した!
【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
一文字目 01~20
二文字目 21~40
三文字目 41~60
四文字目 61~80
五文字目 81~00
↓1~12
【コンマ 76 07 87 49 45 86 29】
カンカンカンカン……
【発掘完了!!】
【規定回数より少ない回数で掘り当てたのでボーナスが発生します!】
【モノクマメダル5枚を獲得しました!】
_______________________
犯人は夏葉の死体を運搬する円運動で糸車を利用した!
_______________________
ルカ「そうか、分かったぞ!」
【解!】
ルカ「……おいおい、マジかよ」
美琴「……ルカ?」
ルカ「今回の犯人、どこまで大胆な真似をしてくれてんだよ……! そんな、そんな方法があったなんてな……!」
恋鐘「も、もしかして分かったばい!? 円運動を可能にした、別の何かの正体が……!」
ルカ「おう、私の推理は不完全だったんだよ。犯人は円運動を生み出すために、観覧車を大きな大きな糸車に変えたんだ」
智代子「い、糸車……って、あの……?!」
恋鐘「まきまき……ふふ……上手に巻けました……♪」
恋鐘「……の、糸車ばい!?」
ルカ「ああ、糸じゃなくて、ワイヤーだけどな」
ルカ「ワイヤーの片端を何か別のアトラクションにでも結び付けておくんだ。そして長さをうまいこと調整して、観覧車にある程度巻きついた状態にしておいて、もう片方の端は死体に結び付ける」
ルカ「後は観覧車の回転する方向を合わせて、速度も高めに設定。そして端を結び付けられたアトラクションも起動する」
ルカ「観覧車ではない方のアトラクションが動いてワイヤーを一気に巻き取ろうとする力が発生するのに合わせて、死体も一気に持ち上がる寸法だ」
美琴「……なるほど、それなら観覧車の元々出せる限界以上の速度が発生するかもしれない」
雛菜「そんな無茶なことしちゃったら、観覧車壊れちゃいませんか~?」
ルカ「壊れても別に構やしねーんだろ、死体を運び出せればそれでいいんだからな」
透「じゃあ、そのワイヤーをくくりつけたアトラクションってのは?」
ルカ「観覧車と直線状に在りつつ、ワイヤーを巻き取るような激しい運動もするアトラクションだ。その候補はおのずと限られるさ」
-------------------------------------------------
【スポットセレクト開始!】
画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
【観覧車と併せて使い、糸車を作り出したアトラクションを指摘しろ!】
↓1
ルカ「これだ!」
【解!】
ルカ「バイキング……船が前後に大きくスイングするアトラクションだな」
智代子「ちょうどバイキングのスイングの方向と、観覧車の回転する方向も一緒だよ!」
冬優子「なるほどね……確かにこれなら、バイキングが奥に行ったときには相当な力の牽引力が発生しそう」
ルカ「ああ、それこそ滑車のように観覧車は回転したんだろうよ……メカ女の死体をぶっ飛ばすためにな!」
あさひ「すごいっす! ついに死因も殺害現場も死体の運搬方法も分かっちゃったっす!」
雛菜「ん~……でも、ここからどうします~?」
雛菜「諸々は明らかになりましたけど~、結局犯人が誰だったのかは絞れてなくないですか~?」
智代子「さっきは一応……ふゆちゃんが怪しいって話になったけど……」
冬優子「あれはただの言いがかり。水素なんて誰でも簡単に入手できるでしょ?」
美琴「少しは絞られるんじゃない? ほら、あの遊園地のアトラクションは特殊だったから。身長制限も異常な数値だったよね」
透「あー、そういや……バイキングって身長制限160cmだったっけ」
ルカ「イかれた制限してんな……」
モノクマ「普通のバイキングとは大違い、前後どころかぐるりと一周してしまいますからね! かかるグラヴィティも桁外れ、それなりにがっしりした人間じゃないと近づくこともできませんぞ!」
ルカ「こん中で160もないチビ助どもは……甘党女と中学生か」
智代子「あ、あはは……これもまた個性なので……」
あさひ「そっすね、わたしバイキングにも乗ろうとしたっすけど、柵の段階で止められたっすから」
透「じゃあ、候補は……残りの6人?」
雛菜「ほとんどさっきと変わらないね~」
(……水素爆発、観覧車を利用した円運動。身長が160よりもあればだれでも確かに犯行は可能だ)
(ここから、どうやって絞っていくか……か)
ルカ「……ここで一度、犯人の足取りをたどってみるか。犯人がメカ女を殺して、死体を運搬するその流れを見返してみると、何か分かるかもしれない」
智代子「そうだね、何か見落としがあるかもしれないし! もしかしたら犯人に繋がる手掛かりもあるかもしれないもんね!」
恋鐘「何事も予習と復習が大事やけんね!」
美琴「……それじゃあ、振り返ってみよう。今回の事件について、今に至るまで」
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×4
集中力:☆×5
コトダマ
‣【モノクマファイル4】
‣【死体の焦げ跡】
‣【おやすみスイッチ】
‣【極上の凶器】
‣【ハンマー】
‣【夏葉の眼球】
‣【島のパンフレット】
あさひ「夏葉さんが殺されたのは観覧車のゴンドラっす」
あさひ「音も衝撃も通さないシェルターみたいなゴンドラの中で、犯人は水素爆発を起こさせたっす」
雛菜「まず【背中についてた強制スリープボタンを押して】意識を失わせたんですよね~」
雛菜「その間にゴンドラに水素を充満させて~」
雛菜「目を覚ました被害者さんが【ロケットパンチを撃った瞬間に】どっか~~~~ん!」
冬優子「ゴンドラの防御性能のおかげで誰にも気づかれずに殺害は完了」
冬優子「殺害現場から目をそらすために犯人は死体の運搬を開始した」
冬優子「【円運動】……だったっけ? 観覧車を糸車みたいにしてワイヤーを巻き取ったのよね」
透「バイキングと被害者とにワイヤーの端同士を巻き付けたんだよね」
透「で、観覧車を滑車みたいに経由させた」
恋鐘「でも、こげんこつ、身長制限にかからんかったら【誰でも出来そう】ばい」
恋鐘「犯人ば全然絞れんとよ」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(ロンパ候補の発言の数が減る)
↓1
恋鐘「バイキングに慎重制限があるのはもうわかっとーと!」
恋鐘「うちが聞きたかはその先やけん、もっと頭数を絞る方法を教えんね!」
(……クソッ、こいつじゃ説得には不十分らしい)
(メカ女を殺害する一連の工程……バイキング以外に、行動が可能な人間を絞る方法は何かないか?)
(……それこそ、犯人と被害者はどういう状況で相対したのか、とか)
【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果でコトダマの数が減少します】
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×3
集中力:☆×5
コトダマ
‣【モノクマファイル4】
‣【死体の焦げ跡】
‣【おやすみスイッチ】
‣【極上の凶器】
‣【ハンマー】
‣【夏葉の眼球】
‣【島のパンフレット】
あさひ「夏葉さんが殺されたのは観覧車のゴンドラっす」
あさひ「音も衝撃も通さないシェルターみたいなゴンドラの中で、犯人は水素爆発を起こさせたっす」
雛菜「まず【背中についてた強制スリープボタンを押して】意識を失わせたんですよね~」
雛菜「その間にゴンドラに水素を充満させて~」
雛菜「目を覚ました被害者さんが【ロケットパンチを撃った瞬間に】どっか~~~~ん!」
冬優子「ゴンドラの防御性能のおかげで誰にも気づかれずに殺害は完了」
冬優子「殺害現場から目をそらすために犯人は死体の運搬を開始した」
冬優子「【円運動】……だったっけ? 観覧車を糸車みたいにしてワイヤーを巻き取ったのよね」
透「バイキングと被害者とにワイヤーの端同士を巻き付けたんだよね」
透「で、観覧車を滑車みたいに経由させた」
恋鐘「でも、こげんこつ、身長制限にかからんかったら【誰でも出来そう】ばい」
恋鐘「犯人ば全然絞れんとよ」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(ロンパ候補の発言の数が減る)
↓1
ルカ「それは違うぞ!」
【BREAK!】
ルカ「……いや、この方法は出来た人間はそう多くはないはずだ」
智代子「ど、どうして? 条件はだいぶ緩いと思うけど……」
ルカ「そもそもの話だ、思い出してみろ。被害者となったメカ女……あいつの強制スリープボタンを押すって……どうやるんだ?」
透「え、そりゃ……背後に回って押せばいいんじゃないの」
ルカ「じゃあ、どうやってあいつの背後を取る?」
智代子「……そうだ、そんなの……普通出来るわけないよ! だって、夏葉ちゃんはこの中で誰よりも警戒心が強いし、身のこなしだって抜群で、気取られずに行動するなんてできるわけもない!」
智代子「アンドロイドの体になってからはその性能も高いおかげで、背後を取らせることなんて……まず考えられない!」
ルカ「ああ、それにあいつは私たちの大多数より背だって高い。不意打ちを噛まそうったってそううまくはいかねえだろうな」
冬優子「だからこそ、普通はあいつを標的にはしないって……みんなそう言ってたんだものね」
ルカ「だがな、あいつにとって唯一と言っていい弱点があるんだ」
恋鐘「弱点……?」
智代子「そ、そんな弱点なんかあるはずないよ! 夏葉ちゃんの目は夜の間でも日中と変わらずに物を見ることのできる【赤外線カメラ】だってついてるんだし……!」
ルカ「そう、それなんだよ。メカ女の唯一の弱点はその赤外線カメラだ」
智代子「え……?!」
ルカ「お前らだって経験があるはずだ。ずっとトンネルの中を走った後、急に明るいところに出ると暫く目が見えなくなる現象」
あさひ「ホワイトホール現象っすね。わたしたちの瞳孔の明るさの補正が追い付かないときに起きる現象っす」
ルカ「赤外線カメラなんてものまで使って暗闇に必死に補正をかけている中で急に明るくなっちまったらどうなると思う?」
美琴「……瞬時に適応することは難しいかもしれないね」
ルカ「ああ、その瞬間だけはあいつの不意を突くことが可能になるはずだ」
雛菜「じゃあ、犯人は懐中電灯を使ったとかですか~?」
ルカ「いや、そんなものを持っていたんだったらメカ女の高性能な赤外線カメラがそもそもその電灯を見抜くんじゃねーか?」
ルカ「それこそ、光自体が何の前触れもなく、その本人の手から離れて発生するようなものである可能性が高い」
あさひ「……? なぞなぞっすか?」
透「あ、よく映画とかである閃光弾とか?」
ルカ「イメージとしてはそれに近いな。そうじゃねえと、不意を突いたところで即座にボタンを押すような芸当もできないだろうし」
美琴「でも、そんなもの……ファイナルデッドルームにもなかったよ?」
(何の前触れもなく発光し、犯人が持っておく必要もないもの……)
(そんなもの、この島では限られている。つまり……それを持っている人間こそが、犯人だ……!)
-------------------------------------------------
【ひらめきアナグラム開始!】
発言力:♡×3
集中力:☆×5
け/び/っ/は/ろ/と/な
【正しい順番に並べ替えろ!】
1.解答する
2.集中力を使う(一部文字が正しい位置に移動する)
↓1
ルカ「そうか、分かったぞ!」
【COMPLETE!!】
ルカ「メカ女の視界を一発で奪い去ってしまうような閃光弾のようなもの……ここにいる連中は全員がそれを一度は目にしてるはずだぜ」
智代子「え、え~……? そんなこと言われましても、まるで心当たりがないと言いますか……」
恋鐘「なんのことばい……?」
ルカ「いや、違うな。ノクチルの二人……お前らは見てない」
透「え? なにそれ」
あさひ「……そっか、花火っすね。千雪さんの事件のとき、ノクチルの二人以外のわたしたちはみんなで花火大会をやってたっす。確かに花火なら犯人が持っておく必要はそこまでないし、不意を突きやすいっす」
ルカ「ああ、特にロケット花火なんかはうってつけだろうな。火花に加えて真正面に本体を飛ばせば、メカ女と言えど防御の姿勢を取らざるを得ない」
恋鐘「そいやったら強制スリープボタンも押せそうたい!」
美琴「なるほど……逆に言えば、そうでもしないと彼女の不意を突くことなんて出来そうもないかも」
美琴「痛めつけようにもあの鉄壁の身体……彼女を正面から攻略なんかできるわけもないもんね」
雛菜「じゃあ、犯人さんはそのロケット花火を撃つことができた人なんだね~?」
ルカ「……ああ、そうだ」
ルカ「そして、それができた人間は……ただの一人だ」
智代子「え、それってつまり……真犯人が、分かったってこと……?」
(……やっと、たどり着いた)
(随分と同じところで足踏みをさせられたような気分だが……これで明らかになった)
ルカ「ああ、今回の事件……メカ女をぶっ殺したのは……お前だ!」
-------------------------------------------------
【クロを指摘しろ!】
↓1
ルカ「お前しか、いない……!!」
【解!】
「…………」
……この期に及んで、迷ってるのか。私は。
頭の中に浮かんだ名前を口に出すべきこの局面で、私の口は中々動こうとはしなかった。
口の中に突然沸いた唾液は接着剤のように口腔にべったりとくっついて、唇を持ち上げようにも錘がぶら下がったように重たい。
この躊躇がどこから沸いたのか、その源泉は明らかだった。
____千雪に与えられた。
何年も一緒にいた相手にもずっと出来ていなかったことを、たまたま一度うまく行ったからと言って、他の連中にも同様にすることを求める理不尽な命令を。
何も私は友達なんて薄っぺらい関係性を求めていなかったし、美琴という存在が手元にある以上は満ち足りていて、それ以上を求める気もなかった。
でも、千雪が命を落として……その命令は、優先されるべき義務になった。
千雪の働きに少なからず感謝していたこと、それに言葉すらも送り返すことができていなかったこと。
そういった要因が私にとってこれ以上ないモチベーションになって、その中で最初にできた相手が……【冬優子】だった。
この瞬間から関係性が変わりました、なんて取り決めをしたわけではないが、三峰結華を引き摺り出したあの瞬間から確かに私の認識と感情は変異した。
好き勝手な物言いをして、いいと思った人間はとことん振り回す。
それでいて周りの人間のことはよく見ているし、実際気も回る。
だが、自分が他の人にどう見られるかの意識が強い分、本当の自分を出すのには抵抗意識がある。
私が惹きつけられたのは、その強さと弱さのチグハグさ。
普段無理を推してトゲトゲしいカリスマを演じている自分に、勝手なシンパシーを抱いていた。
なのに、どうして、こんなにもすぐにそれを手放さなくてはならないんだろう。
せっかくできた相手を、どうして自分の手で殺さなくてはいけないんだろう。
これまでにも私は3回自分の手で犯人を処刑台に送ってきた。
無論それにストレスを一切感じなかったなんてことはない。どれもむせ返るような罪悪感に、思わず膝を砕いたものだ。
でも、今感じているのはそれとは全く違う。
真っ黒な泥濘に浸かっているような虚脱感。呼吸は妙に浅くなって、視界は僅かに揺れている。
かと思えば、どんどん焦点は下に下に移っていき、気がつけば横一本の木材。
私の立っている証言台の縁しかその視界には入っていない。
「……顔あげなさい、ルカ」
その声は、人を殺めた人間とは思えないほどに柔らかかった。
この島に来てからよく慣れ親しんだ、聞いているだけで自然と頬が綻んでしまうような声。
私の理性とは別に、糸で引っ張られるように勝手に体が面を挙げた。
視界に突然入ったその姿は、なおも変わらず凛としていた。
太い芯が一本通ったように、まるで影がブレていない。
どこまでも逞しいその立ち姿に、思わず私は苦笑した。
「で、誰なの? 有栖川夏葉を殺した犯人ってのは」
私とこいつとの間で、振る舞いがあまりにも倒錯していたからだ。
背筋を伸ばして、毅然とした態度を取るべきなのは_______
「オマエだよ、黛冬優子」
私だよな。
智代子「ふ、ふゆちゃん……? 一つの裁判で2回目の糾弾……?!」
ルカ「1回目は水素ってだけで確かにただの言いがかりだった。でも……今回ばかりは違う」
ルカ「メカ女の不意を打つような芸当ができたのは間違いなく冬優子だけなんだ」
冬優子「へぇ、言ってくれんじゃない。それなら説明してもらおうかしら。どうしてふゆしかできないのか」
ルカ「お前は前回の事件の時、モーテルで中学生と小学生の面倒を見るためにスーパーマーケットにあった花火を根こそぎ回収したんだったよな?」
冬優子「……それは」
ルカ「有栖川夏葉に搭載されていた暗視補正機能付きのカメラ。夜に起きた事件で、その不意を突くなんて普通の人間には不可能。それこそ、お前だけが使用可能だった花火でも使わない限りはな」
美琴「ロケット花火を夏葉さんめがけて射出すれば、視界は一気に明るくなって私たち人間以上にその対応は遅れてしまう」
美琴「……よく考えてるよね」
雛菜「そうやって不意をつくことで強制スリープボタンを押して、一連の犯行を行ったんですよね~?」
冬優子「……今のルカの推理はあくまで仮説でしょ」
ルカ「確たる証拠はねーが……今のところ、それ以外にメカ女を殺害できる方法は考えられない。他の可能性があるってんなら提示してみろ」
冬優子「……」
【あさひ「それは違うっすよ」】反論!
あさひ「ルカさん、何言ってるっすか? 意味わかんないっす」
ルカ「……!! お前……!!」
あさひ「冬優子ちゃんがクロ? そんなわけないっす、いい加減にしてほしいっすよ」
あさひ「前々から狸だとかいろいろ言われてきて、わたしもずっと我慢してたっすけど……」
あさひ「もう、これ以上黙っていられないっす。ルカさん、わたし……本気で行くっすよ」
(こ、こいつ……なんて殺気だよ……)
(……ここまでの相手は……初めてだ……!)
-------------------------------------------------
【真・反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×3
集中力:☆×5
コトノハ
‣【モノクマファイル4】
‣【おやすみスイッチ】
‣【島のパンフレット】
‣【泥】
‣【夏葉の眼球】
‣【極上の凶器】
‣【死体に被さっていた砂】
あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
あさひ「いい加減にしてほしいっす」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
【発言力:♡×3→♡×1】
あさひ「どういう意味っすか?」
あさひ「このスイッチの状態を見れば、観覧車の外で押されたって言えるっすか?」
あさひ「スイッチの防護ガラスの破片? それとも付着している破片?」
あさひ「そんなもの、移動した後で風が吹けばどうとでもなる証拠っすよね?」
(……くッ、違ったみたいだ……)
(スイッチを観覧車の外で押したと証明することが、実質的に冬優子の罪を証明することになる)
(どこかに……冬優子とメカ女が屋外で直面した証拠はないか……?)
【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果によりコトノハの数が減少します】
-------------------------------------------------
【真・反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×3
集中力:☆×5
コトノハ
‣【モノクマファイル4】
‣【おやすみスイッチ】
‣【泥】
‣【夏葉の眼球】
‣【極上の凶器】
‣【死体に被さっていた砂】
あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
あさひ「いい加減にしてほしいっす」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
【集中力ゲージを使用しました】
【集中力:☆×5→☆×4】
【コトダマの数が減少します】
-------------------------------------------------
【真・反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×3
集中力:☆×4
コトノハ
‣【モノクマファイル4】
‣【おやすみスイッチ】
‣【夏葉の眼球】
‣【死体に被さっていた砂】
あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
あさひ「いい加減にしてほしいっす」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
1.発言する(コトノハと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
↓1
【集中力ゲージを使用しました】
【集中力:☆×4→☆×3】
【コトダマの数が減少します】
-------------------------------------------------
【真・反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×3
集中力:☆×3
コトノハ
‣【夏葉の眼球】
‣【死体に被さっていた砂】
あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
あさひ「いい加減にしてほしいっす」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
1.発言する(コトノハと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
↓1
なんか発言力表示ミスってますけど
♡×1のままです……
再安価
↓1
【発言力:♡×1→0】
【発言力がゼロになりました……】
【スキル:つづく、の効果が発動します】
【……たしまりなにロゼが力言発】
【♡×0→♡×1:力言発】
【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果によりコトノハの数が減少します】
-------------------------------------------------
【真・反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×1
集中力:☆×3
コトノハ
‣【夏葉の眼球】
あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
あさひ「いい加減にしてほしいっす」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】
ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
1.発言する(コトノハと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
↓1
ルカ「その矛盾、断ち切る!」
【BREAK!】
ルカ「甘ェ……甘ェな、中学生よォ! 観覧車の中ならだれでもスイッチを押しに行ける。んなことは私だって分かってたんだ」
ルカ「でも、そうじゃねえ……メカ女は暗闇の中で不意打ちをされた、明確な根拠があるんだよ」
あさひ「……えっ」
ルカ「そうだよな、甘党女」
智代子「う、うん……夏葉ちゃんの眼のカメラはね、周囲の明るさを自動で検出して赤外線カメラを起動したりするんだけど……レンズがそのたびに切り替わってるんだ」
智代子「事件当時、死体となった夏葉ちゃんの眼を私も確かめてみたんだけど……あれは、暗所用のレンズだったよ」
透「レンズって確か、厚さとか、構造とかで光の……くっせつ率?が違うんだよね?」
透「暗闇でも見れるようにするには、その機能にあった屈折率が大事なんだって」
あさひ「そんなの、わからなかった……」
ルカ「破壊された後にいじくりまわされてカメラのレンズが切り替わった、なんてことは考えにくい。スリープモードに入った段階、つまりボタンを押された段階であいつは暗闇の中にいたんだよ」
ルカ「観覧車のゴンドラなんて、明るい部屋の中じゃあない……! だから、そこで不意を打てたのは冬優子だけなんだ……!」
ルカ「どうだ、冬優子……反論はあるか……」
冬優子「反論、ね」
冬優子「……ええ、当然あるわ。ふゆが私欲のために手を汚すような人間だと思われたいたなんて心外だから」
あさひ「冬優子ちゃん……!」
冬優子「……そんな顔しないで、こっちの胸が痛むから」
(冬優子……?)
冬優子「ルカがふゆにかけた嫌疑は大まかに分けて二つ。一つ目は有栖川夏葉の命を奪った爆発はふゆが以前病院から回収した水素吸引機を利用したものであるということ」
冬優子「そしてもう一つは有栖川夏葉を暗所で不意を突けたのはロケット花火を唯一仕えた人間であるふゆだということ」
冬優子「……耳の穴かっぽじってよく聞きなさい」
冬優子「あんたの推理が大間違いだってこと、証明してやるから」
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×1
集中力:☆×3.5
コトダマ
‣【モノクマファイル4】
‣【死体の焦げ跡】
‣【おやすみスイッチ】
‣【夏葉の眼球】
‣【泥】
‣【島のパンフレット】
‣【ワイヤーフック】
冬優子「あんたの推理はどれも確実性に欠けんのよ」
冬優子「まず、有栖川夏葉を殺害した水素爆発」
冬優子「これ自体は水素吸引機を使わなくても【可能】よね」
透「わざわざ機械を使わなくても、化学反応を利用すればいいもんね」
あさひ「水素の入手手段は沢山あるっす、手っ取り早いのが吸引機ってだけっす」
雛菜「でも、ゴンドラの中に【充満させる】のって相当な量が必要だよ~?」
雛菜「一から集めなおすのってすごく大変だと思う~」
冬優子「それに有栖川夏葉の空気清浄機能が水素相手に【発動しなかった保証もない】んでしょ」
冬優子「水素なんて普通の大気中には含まれない、ああいうのってガスそのものの有毒性じゃなくて含まれてる割合とかを感知するんじゃなくて?」
モノクマ「うぷぷぷ……どうだろうね?」
モノクマ「空気清浄機能なんてただのジョークだったりして!」
あさひ「わたしは夏葉さん本人から聞いたっす、嘘なんてそんなのあり得ないっす!」
冬優子「あいつの水素爆発は、そもそも疑問が残んのよ!」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
-------------------------------------------------
(……クソッ、あいつ以外の人間が水素を充満させた可能性。そもそも空気清浄機能が発動していたかどうかの断定。そのいずれも……今の私の手掛かりじゃ、わからない)
(冬優子の奴め……最後の最後まであがくつもりだな)
(……今の私の手持ちじゃ、あいつを論破することはできない)
(それなら)
(今ある手持ちを違った見方をしてみる。新しく見えてきた側面が……真実を切り開く可能性はあるよな……)
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
☆検討プロセッシングについて
相手に何とか反論したい、相手をどうにか言い負かしたい!
それなのに、今の持っている情報では崩せない……そんな時、ございますよね?
そこで今回ご紹介いたしますのが、『検討プロセッシング』でございます!
事態を冷静に見極めて、情報の一つ一つを丁寧に精査。
そうすることでコトダマを多面的に見つめ直し、あなた様に必要な情報を導き出すのがこの、検討プロセッシングなのです。
やり方は簡単。択一式で出てくる斑鳩様の自問自答に対し、適切な道を選び続けるのみ!
そう、ルートを考えるのです。考え……考え……ルート……
……そういえば、最近あちら方のシリーズも続編は出ないのでしょうか?
寂しいものですね……
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
-------------------------------------------------
【検討プロセッシング開始!】
まず第一に、私が冬優子の言い分を論破するなら……
A.【他の誰も水素を充満させることはできなかった】
B.【空気清浄機能は発動しなかった】
のどちらかを証明しなくちゃならない。
どうだろう……どちらなら証明できるだろうか……?
↓1
【COLLECT!】
そうだ……空気清浄機能が発動しなかったことを証明できれば、結果としてあのゴンドラに充満していたのが水素だと証明できるはずだ。
そうなると、水素吸引機を持っていた冬優子の容疑はより濃くなる。
だけど、メカ女の空気清浄機能の詳細が明らかじゃない今……それが作動したかどうかって確かめようはあるか?
何か、利用できるものはないか?
……そうだ、空気清浄機能がよくわからないなら、その標的である水素の方で考えてみよう。
水素の性質で、空気清浄機能が作動しないと断言できるものは何かないだろうか。
A.【可燃性】
B.【過剰な量でなければ吸引しても人体に悪影響は乏しい】
C.【空気より軽い】
D.【酸素と結合して水になる】
↓1
【発言力:♡×1→♡×0】
【発言力がゼロになりました】
【クリア後報酬が半減しました】
【コンテニューを行うため発言力が最大まで回復します】
(いや……可燃性であることは空気清浄機能とは大して関係がないはずだ……)
(有害性の有無、それは論点じゃない……)
水素の性質で、空気清浄機能が作動しないと断言できるものは何かないだろうか。
A.【可燃性】
B.【過剰な量でなければ吸引しても人体に悪影響は乏しい】
C.【空気より軽い】
D.【酸素と結合して水になる】
↓1
【COLLECT!】
そうだ、水素の性質……確か水素って、空気より軽いんだったよな。
ゴンドラに水素を充満させた時も……多分、空気より軽いから水素はゴンドラの上部に溜まるはずだ。
これ、何かに使えないか……?
何かと組み合わせると、大きな意味を持つはずだ……
あのゴンドラの事件当時の状態を思い出してみよう。
A.【ゴンドラの密閉性】
B.【ゴンドラに載っている夏葉の体勢】
C.【ゴンドラの強制ロック】
D.【観覧車の回転速度】
↓1
-------------------------------------------------
B
-------------------------------------------------
【COLLECT!】
そうか……メカ女は強制スリープボタンを押されているし、あの重量……きっと犯人は直立や座らせた状態では載せていないはずだ。
だったら、水素が溜まっている上部に体が接することもなく、床に寝そべる形になっていたに違いない。
それだったら……空気清浄機能も発動のしようがないよな!?
だって、ほかならぬメカ女の身体が水素の混じった気体そのもの触れちゃいねえんだから……!
なら、今の私に必要なのは事件当時水素がゴンドラの上部に溜まっていたことの証明だ。
ゴンドラの上部に水素が溜まっていたなら、爆発が起きたのもゴンドラの全体ではなく、上部だけのはず。
それを裏付けるような証拠はなかったか?
【正しいコトダマを選べ!】
>>402 >>403
↓1
-------------------------------------------------
【死体の焦げ跡】
-------------------------------------------------
間違いない……メカ女の死体はバラバラにはなっていたが、死体についていた焦げ跡はあくまで上半身だけ。
それって直立の時に上半身部分だけで爆発が起きたことの証拠になるよな。
そしてそれは、事件当時にゴンドラに溜まっていた気体が水素だったことの証明に他ならない。
見えたぞ……冬優子の主張を論破する、強力な証拠が!
【FORGING!!】
コトダマ【死体の焦げ跡】→【ゴンドラに充満していた水素】
〔空気より軽い気体である水素はゴンドラの上部に溜まっていたと考えられる。そのため、水素爆発が発生した際でも燃焼が起きたのは夏葉における上半身のみであり、死体の焦げ跡も上半身についているのみである〕
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】
発言力:♡×10
集中力:☆×3.5
コトダマ
‣【モノクマファイル4】
▹【ゴンドラに充満していた水素】
‣【おやすみスイッチ】
‣【夏葉の眼球】
‣【泥】
‣【島のパンフレット】
‣【ワイヤーフック】
冬優子「あんたの推理はどれも確実性に欠けんのよ」
冬優子「まず、有栖川夏葉を殺害した水素爆発」
冬優子「これ自体は水素吸引機を使わなくても【可能】よね」
透「わざわざ機械を使わなくても、化学反応を利用すればいいもんね」
あさひ「水素の入手手段は沢山あるっす、手っ取り早いのが吸引機ってだけっす」
雛菜「でも、ゴンドラの中に【充満させる】のって相当な量が必要だよ~?」
雛菜「一から集めなおすのってすごく大変だと思う~」
冬優子「それに有栖川夏葉の空気清浄機能が水素相手に【発動しなかった保証もない】んでしょ」
冬優子「水素なんて普通の大気中には含まれない、ああいうのってガスそのものの有毒性じゃなくて含まれてる割合とかを感知するんじゃなくて?」
モノクマ「うぷぷぷ……どうだろうね?」
モノクマ「空気清浄機能なんてただのジョークだったりして!」
あさひ「わたしは夏葉さん本人から聞いたっす、嘘なんてそんなのあり得ないっす!」
冬優子「あいつの水素爆発は、そもそも疑問が残んのよ!」
【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
↓1
ルカ「それは違うぞ!」
【BREAK!】
ルカ「……いや、水素だからこそ空気清浄機能は働かなかった。これは間違いないはずだ」
冬優子「確かに水素は体に即座に害をなす物じゃない。医療品にだって使われているし、美容の現場にも持ち込まれてる」
冬優子「でも、有栖川夏葉の空気清浄機能について詳細に分かってもいないのに確実に働いていないなんてどうして断言できるのよ。空気中に含まれる物質の割合を感知して、水素が異常値になった時点で分解するように働いていた可能性だって……」
ルカ「違うんだ、メカ女の空気清浄機能がどんなものかなんてそもそも関係なかったんだ。犯人の手口が明らかになった今、あいつの空気清浄機能は何が起きようと働いていなかったと断言できる」
冬優子「なんですって……?!」
ルカ「考えてみろ。あいつはどうやって観覧車に載せられたんだった?」
智代子「えっと……犯人がロケット花火を打って、不意を突いて強制スリープボタンを押したんだったよね?」
ルカ「そう、あいつ自身に意識はなかったんだ。つまり、脱力しきった状態……しかもあの重量と来た。わざわざ犯人があいつを持ち上げて座らせたり立たせたりする理由がどこにある?」
透「まあ、普通はそのまま乗っけるよね。ゴンドラの床とかに」
冬優子「何よ、それがなんだって言うのよ」
ルカ「メカ女はゴンドラの中で、寝転がった状態だった。これがとにかく重要なんだよ」
恋鐘「ど、どういうことばい!?」
ルカ「本日何度目かの化学の勉強のお時間だ。水素について……その性質を思い出してみろ」
雛菜「水素の性質~? 水を電気分解したら発生するとか、可燃性だとか、それ以外でってことですか~?」
智代子「な、何かあったっけ……?」
あさひ「……空気より、軽い……」
ルカ「さすがだな、中学生。その通りだ。空気より軽い気体なんだ、ゴンドラの中に充満するっつってもそれはゴンドラの上部だけなんだよ」
冬優子「……!!」
ルカ「メカ女が寝そべっているよりも高い地点に溜まっていく水素。どれだけ高機能な空気清浄機能だろうが、そもそも触れてもいない気体を検知することはできやしないはずだ」
ルカ「そして目を覚まして、なんらかの理由によって脱出を試みたメカ女は機械が検知するよりも先にロケットパンチを射出。こうなっちまえば先に爆発が起きてしまう」
ルカ「それを裏付けるのが、あいつの死体の焦げ跡なんだよ。あいつの身体はバラバラになっちまってから気づきにくかったがよ……焦げ跡がついてるのはあくまで上半身部分だ」
ルカ「それって気体がゴンドラの上部にしか溜まっていなかったことの証明に他ならないだろ。ゴンドラ全体に充満していたってんなら全身に焦げ跡は及んでいたはずだぜ?」
ルカ「死体発見現場の泥と合わせ、空気よりも軽い可燃性の気体だって話となると……それはもう水素しかねえ」
ルカ「その水素をゴンドラに充満させられるほどのもんは……冬優子の持っていた水素吸引機ぐらいのもんだろうが!」
冬優子「……」
冬優子「あんたの言い分はよく理解した、確かに今の論証は水素爆発を裏付ける話かもしれない」
冬優子「……でもね、ふゆが犯人だと断定する論理上には載ってない。他の人間に水素を充満させられなかったってわけじゃないんだから」
雛菜「でも、化学反応をわざわざ起こして水素をためるなんて手間も時間もかかりすぎると思うし苦しいと思うけどな~」
冬優子「うっさい! ふゆは手元にあるカードは全部使う……どんなに小さな可能性だろうと、残る限りは追及させてもらうわよ!」
美琴「あなたが追及するのは勝手だけど……あくまで学級裁判は多数決。他のみんなの心証がどちらに傾いているかは気にしたほうがいいと思うけどね」
冬優子「……それは、そう……だけど!」
冬優子「こんなところでふゆは負けてらんない……負けてらんないのよ!」
(……冬優子、お前……)
確かに、私たちは冬優子に対して確定的な証拠を突き付けているわけではない。
あくまで可能性の高い二つの嫌疑をぶつけているというだけ。
でも……これは正式な裁判ではない、あくまで学級裁判。
私刑を下すのには十分な証明は為されているはず。
既に天秤も殆どそちらに傾いているはず。美琴のように諦めるように促す言葉が出るのも納得はいく。
だけど、私は知っている。
そんな形勢など冬優子だって百も承知だ。
もうここまで来れば逃げ場はほとんどないことを知っている。
だからといって冬優子がおめおめ首を差し出すわけがない。
冬優子は何も醜態をさらしているわけではない。
自分の命に縋りついて、みっともなく生き残ろうとしているわけではない。
冬優子は、責任を果たそうとしている。
これまでにこの場で命を散らしてきた三人に対して、自分が手にかけた有栖川夏葉に対して、そして何より……自分の仲間たちに対して。
自分の生を諦めるようでは彼女たちに申し訳が立たない。
最後まで戦い抜くという責任。
彼女はそのために刃先の折れた刀を何度だって構えなおす。
何度だって私にその鋩を向ける。
冬優子は私ならその責任のための闘いに応えてくれると知っているから。
共に三峰結華を説得し、共に小宮果穂が殺めた二人に報いてきた戦友なら、その意図まで汲み取ってくれると信じてくれた。
そうじゃないと、私にわざわざ犯人として指名などさせはしない。
……分かってんだよ、黛冬優子。
だって、私もお前と……【同族】だからな。
冬優子「水素爆発だって、ロケット花火だって……そんなの、ふゆ以外にだって可能だった。抜け道は存在してんのよ」
冬優子「それをやったのが、ふゆだって断定するんなら確固たる証拠を示しなさい」
智代子「そ、そんな証拠なんてあればとっくに突き付けてるよ……」
あさひ「冬優子ちゃん……」
ルカ「……ハッ」
ルカ「……いいぜ、付き合ってやるよ。お前は私にとって、この島に来て初めてできた対等な……ダチだ」
ルカ「だからよ……その最初で最後の喧嘩は最後まできっかり決着つけねーと、収まんねーよな」
冬優子「上等よ、ルカ……あんたのその憎まれ口、ずっとイラついてたのよ」
ルカ「おう、こっちだっててめェの空かした態度はずっとトサカに来てたんだ」
冬優子「あら、奇遇ね。そんじゃやりましょうか、一世一代の大喧嘩。タイマンで」
ルカ「ハッ……上等だよ、クソッたれ!」
「「全力でぶっとばしてやる!」」
-------------------------------------------------
【パニックトークアクション開始!】
冬優子「その程度でふゆに勝ったつもり?」【防御力50】
冬優子「上等じゃないの」【防御力55】
冬優子「これで決めます……!」【防御力60】
冬優子「誰が終わりって言いました?」【防御力65】
冬優子「あんたのことは、ふゆがちゃんと終わらせてあげるから」【防御力70】
【盾の防御力をコンマで削り切れ!】
↓1~5
-------------------------------------------------
【コンマ 95 54 79 84 54】
【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15します】
【最終コンマ 110 69 94 99 69】
【ALL BREAK!】
ルカ「ぶっとばしてやるよ!」
【冬優子「そもそも、ふゆがロケット花火を撃って不意打ちしたなんて証拠はどこにもないのよ!」】
応/煙/反/硝
【正しい順番に並び替えて、コンマ値70以上でとどめをさせ!】
↓1
【コンマ31】
【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15されます】
【最終コンマ 46】
【発言力:♡×10→♡×9】
冬優子「これがあんたの全力? ルカ……あんた、案外非力なのね」
(ざけんな……このまま終わってたまるかよ……!)
-------------------------------------------------
ルカ「ぶっとばしてやるよ!」
【冬優子「そもそも、ふゆがロケット花火を撃って不意打ちしたなんて証拠はどこにもないのよ!」】
応/煙/反/硝
【正しい順番に並び替えて、コンマ値70以上でとどめをさせ!】
↓1
【コンマ85】
ルカ「くらいやがれ!」
【BREAK!!】
ルカ「確かに今、私たちの手元にも……これまでにも、冬優子がロケット花火を撃った証拠は何かあったわけじゃない」
ルカ「でもな、その証拠は……ずっと私たちの目の前にあったんだよ」
智代子「私たちの……目の前……?」
ルカ「それを確かめる術がないから、ずっと手をこまねいちゃいたが……冬優子がここまで食い下がるんだったらこっちだって手は選んじゃいられない」
冬優子「どんな手があるっての、言ってみなさい!」
ルカ「モノクマ! 手ェ貸せ!」
モノクマ「えっ、ボクですか!? そ、そんな急に手を貸せと言われましても……ボクにできるのはせいぜい罪人を縊り殺すことぐらいでして……」
ルカ「グチグチ言ってんじゃねえ、私たちに硝煙反応を調べさせろ」
恋鐘「しょーえんはんのー……ってなんね!?」
美琴「……サスペンスドラマのお仕事で何度か出会ったな」
美琴「拳銃なんかを発射したときに衣服に付着する硝煙を検査する薬品。名前は忘れたけど……火薬が炸裂した時には付近に成分が散布されるんだよ」
透「火薬ってことは……銃と同じなんだね。花火も、硝煙をぶちまける」
雛菜「じゃあ、ストレイの人の身体には硝煙がべったり~?」
冬優子「……そ、それは!」
ルカ「ま、それが実際どうかは……検証してみてからにしようぜ。なあ、モノクマ!」
モノクマ「う~~~ん……それってどうなの? この学級裁判ってオマエラの捜査と推理で犯人を導き出すのが目的であってさ、そういう化学捜査の領域にボクが介入するのってあんまりフェアじゃない気がするんだよね……」
ルカ「んだと……?」
あさひ「そうっすよ! 化学捜査をここでだけ解禁するのはおかしいっす! これまでの事件と条件が変わっちゃうっす!」
(まずい……ここはなんとしても通さねえと……)
あさひ「モノクマが公正にこのコロシアイを進行するって決めた以上はその言葉は守らないとズルっす!」
モノクマ「う~ん……やっぱりそうだよねぇ……」
(私しかいない……私しか、もう冬優子を楽にしてやれる人間はいねえってのに……!)
冬優子「いいわ、やってみなさいよ」
ルカ「冬優子!? お、お前……!」
冬優子「ルカ、あんたはこの検証をすれば満足するんでしょ? それならいいわ、引き受けてあげる。モノクマ、本人が承諾してるんだからそれを断る道理はないわよね?」
モノクマ「え? う、う~~~んと……まあ、いいのかなぁ……」
あさひ「冬優子ちゃん、何言ってるんっすか?! なんで、そんなこと言うんすか!?」
冬優子「あさひ、あんたさっきからキャンキャンうっさいのよ。耳が喧しくてたまんないわ」
冬優子「いい。今から真実が明らかになるわけだけど……結果がどうであれ、それをちゃんと受け入れること。あんた、年の割には頭が無駄に回るんだから……真実から目を背けて騒ぐとか、そんなダサい真似をしたら許さないわよ」
あさひ「冬優子ちゃん……」
冬優子「ほら、モノクマ。さっさとやって頂戴。硝煙反応とやら、確かめてみましょうよ」
(……冬優子)
(ハッ……まだまだ私は甘い。これだけやっておいて、決定的な証拠は見つけられず)
(結局……冬優子に助けられちまったんだもんな……情けねえ)
モノクマ「わかりました! それではこれより、黛さんの硝煙反応を検査いたします!」
モノクマ「てれれってれー! ジフェニルアミン~~~~~~~!!」
モノクマ「これはアニリンっていうのから合成される化合物なんだけど……まあ詳しい説明は文系なんで省略するよ」
モノクマ「とにかく、さっき緋田さんが言った通りなのです! この薬品を拳銃などを使用した人間の衣服にぶっかけるとあら不思議! その衣服が紫色に変わ
ってしまう優れもの!」
モノクマ「これを黛さんにぶっかけたその結果はいかに……! 真実はクロか、それともシロなのか~~~~~!?」
ジャバァッ!!
特殊な液体をかけられた冬優子の衣服。
智代子「こ、これって……」
透「あっちゃ~……」
恋鐘「冬優子、こいは……こん色の変わり方は……」
雛菜「あは~? 服、【紫】一色って感じですね~?」
それは私たちの目の前で……みるみると紫色に染まりあがっていった。
つまり、黛冬優子がロケット花火を使用したという紛れもない事実……
彼女が【クロ】であるという純然たる事実が、そこに浮かび上がったのだった。
ルカ「硝煙反応が出たってことは、冬優子はロケット花火を撃っていたってこと。つまり……有栖川夏葉を不意打ちして強制スリープボタンを押した人間だってことだ」
ルカ「これで認めてくれるよな、冬優子」
冬優子「……」
冬優子「…………」
冬優子「…………………………」
冬優子「……ゲームセット、ってとこね」
あさひ「……なん、で……」
私と冬優子の最初で最後の大喧嘩はこうして幕を下ろした。
私の手からは何かが塵となって消えていき、冬優子の目の前には首を括るためにあるような綺麗な輪っかが垂れさがる。
この喧嘩の幕引きは、どうあがいても最悪な形でしか終わらない。
冬優子「あんた、もっと早くノックアウトしなさい。なんか不細工な終わり方になっちゃったじゃないのよ」
ルカ「はいはい、検証が足りず悪うござんした」
冬優子「ったく……まあ、ふゆの想定より証拠が隠滅されちゃってたから致し方ないけどね」
だからって、私たちの表情が陰鬱の底に陥るかと言われればそれはノーだ。
今この瞬間、感じているものだって黒々としたものなんて殆どない。
そこにあるのは最後まで向き合い続けることができたという安どと、そして相手が自分を信じ続けてくれたということに対する確かな効力感。
満ち足りたというと語弊があるが、そこに流れる汗は決して脂ぎったものではなかったことは間違いない。
智代子「本当に、ふゆちゃんだったんだね。夏葉ちゃんを殺しちゃったの……」
冬優子「……園田智代子。あんたの大事な存在を奪ってしまったこと……それはいくら謝っても足りるものではないと思う」
冬優子「でも、一つ言わせてもらうとすれば……この事件、有栖川夏葉自身の望むところでもあったのよ」
智代子「……えっ」
クロが確定した今、被害者のユニットメンバーであった甘党女は当然ながら……両目に涙を浮かべながらその理由と今の心情とを尋ね求める。
だが、冬優子はその要求をいったんは棄却した。
冬優子「ま、細かいことは後にしましょうか。そういう長話は処刑の前にでもすればいいわ」
智代子「ちょ、ちょっと待って……ふゆちゃん、それってどういう____」
冬優子「まだこの裁判は終わってないわ」
ルカ「……ハッ」
冬優子「ルカ、付き合ってもらうわよ。ふゆがこの事件を起こしたのは……ここから先が目的なのよ」
それは、何も想いを踏みにじるわけではなく、ほかに優先すべき事項があったから。
冬優子にとって何よりも優先されるべきなのは……誰かを殺めた動機ではなく、もっとその大前提。
この事件そのものに託した思い、そして策略である。
自分自身が犯人だと確定した今、それをこの場で明らかにすることに冬優子は異常なまでの意欲を見せた。
きっと、それは私と言う存在が今ここにいることに対しての甘えでもあったんだろう。
斑鳩ルカならば付き合ってくれる、なんてカミサマに対してどこまでも不遜な態度だと思う。
でも、それくらい罰当たりな方が崇められる立場の人間としても気楽なもんだ。
ルカ「はぁ……ダチってのはこんな人使いが荒いもんなのか?」
冬優子「そーよ、ほら文句言わずにやることやる」
ルカ「チッ……それじゃあしょうがねえ、やってやるよ」
ルカ「今からこの事件を最初っから全部振り返る。そんで……そこから先は、てめェの好きにやりな」
冬優子「上出来、それでよろしい」
ルカ「じゃあ、始めるぞ。これがこの事件の全部だ……!」
-------------------------------------------------
【クライマックス推理開始!】
【act.1】
ルカ「今回の事件、私たちははじめスタート地点を完全に見誤っていた。というのも、死体の発見現場が実際の殺害現場から大きく動かされていたんだが……死体のぶちまけたオイルがその誤認を招いたからなんだ。ただ死体が落下した時にぶちまけただけのオイル、それをあたかも私たちは殺害時にぶちまけられたものと勘違いしちまったんだよな」
ルカ「実際の殺害現場は遊園地の観覧車、そのゴンドラの中だ。犯人はその中でなかなか突拍子もないトラップを仕掛けてメカ女の命を奪ったんだが……それは後に語るとするか。まず、前提としてメカ女をゴンドラに載せるってのが難題だからな」
ルカ「メカ女は私たちよりも肉体のスペックも上、更に人体改造(物理)のせいで通常よりも死角が少なくなっている。ただの物理攻撃なんて受けつかない鋼鉄の身体だし、更には暗所では自動で赤外線カメラによって補正をかけることもできる。ただ、犯人はその赤外線カメラ自体を利用して犯行に及んだんだ」
ルカ「被害者であるメカ女をなんらかの方法で呼び出した犯人は、不意打ちを仕掛けた。その際に使用したのがロケット花火だ。これは第三の事件発生時に、病院とモーテルに二手に分かれて私たちが行動した時に犯人が回収しておいたもの。犯人を置いて他に使用できる人間はいなかったんだが……そこはまあ証明は難しいな」
ルカ「犯人の射出したロケット花火はメカ女の視界を一瞬にして光でいっぱいにした。それまでの暗所で補正をかけていた赤外線カメラはその瞬間に使い物にならないお荷物になる。完全に視覚情報が遮断されてしまったメカ女、その不意をつくことで犯人は強制スリープボタンを押すことを可能にしたんだ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【act.2】
ルカ「強制スリープボタンを押して意識を奪ったメカ女を、犯人は観覧車のゴンドラに載せた。そのゴンドラは犯人が病院から持ち出しておいた水素吸引機で、水素を充満させたゴンドラだ。メカ女の重量は百キロを優に超える。ゴンドラに積むので犯人はきっと精いっぱいだったんだろう、その体は寝そべった状態でゴンドラに載せられたんだ」
ルカ「その寝そべった状態ってのがなかなかネックでな。あいつの身体に搭載されている空気清浄機能は、空気より軽いためゴンドラの上部に溜まった水素は検出しなかった。そのままメカ女は何も気づかずスリープモードのままに空中へと運ばれて行った」
ルカ「ゴンドラの速度もきっと調整しておいたんだろうな。一定の高さを超えたところでゴンドラは完全にロック。ナパーム弾すらも通さない鉄壁のシェルターカプセルが完成する。ここまですれば仕込みは完了。後は勝手にメカ女が目を覚ますのを待つだけだ」
ルカ「メカ女にはきっと張り紙でもしておいたんだろう。お仲間の命を脅迫に取るようなメッセージなんかで……すぐにでも助けに行かなくては、脱出しなくてはと思わせるような誘導を行った。目を覚ますなりその誘導に連れられてしまったメカ女はゴンドラから脱出するために……自慢のロケットパンチをぶっ放した」
ルカ「その瞬間、ゴンドラ内の水素が一斉に反応。ゴンドラの中で大爆発が起きちまったんだ。メカ女の身体はものすごい勢いでゴンドラに叩きつけられ、その衝撃で回路が破損。あいつは死亡することとなった。あわせて、ゴンドラの上部の気体で燃焼反応を起こしたため、上半身には焦げ跡もついた。水素爆発の化学反応で、水分もいくらか付着したかな」
ルカ「とにかく、犯人はあの私たちの中で最も殺しづらいであろうメカ女をオートマチックに殺すことに成功したんだ。ほんの少しの化学の知識を用いることでな」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【act.3】
ルカ「とはいえ、ゴンドラには爆発の痕跡も残っているし、死体と一緒に発見されてしまえば真実にたどり着くのも時間の問題だろう。そう考えた犯人は次の工程に移る。それは死体の移動だ。この殺害現場から離れたところに死体を移すことでより事態を複雑にしようと試みたんだ」
ルカ「そこで犯人が考えたのは、なんと観覧車をまるまる糸車にしてやろうというぶっ飛んだ方法。ワイヤーで観覧車を巻いた後、その端を別のアトラクションであるバイキングと死体そのものにくくりつければ準備完了」
ルカ「後はファイナルデッドルームのクリア特典であるアトラクションの操作権限を用いて観覧車の回転方向と速度を弄り、バイキングを動かすだけ。バイキングと同じ方向に回転する観覧車、そしてバイキングの牽引力が合わさることで一気に死体ごとワイヤーは巻き取られる!」
ルカ「持ち上がった死体は取り付けられたワイヤーフックがワイヤーから外れることでそのまま宙に投げ出され、あとは慣性で飛んでいく。犯人からすればどこに落ちるかなんてのはどうでもよかったんだろうな。とにかく、爆破に用いたゴンドラを見られないこと。それが重要だったはずだ。そしてその目論見は見事大成功」
ルカ「落下した先で死体は衝撃でバラバラになり、中のオイルもぶちまけられたことで完全に現場はその落下先だと思わされちまった。犯人のやつ、そこまで食えない奴だとは思っちゃいなかったよ。……お前にしてはよく考えたよな」
ルカ「これで満足のいく証明はできたか? 黛冬優子」
【COMPLETE!!】
-------------------------------------------------
冬優子「やるじゃないルカ、カンペキよ。あんたの言う通り、事件は今あんたが言った通りの方法でやらせてもらったわ」
冬優子は私の証明を一通り聞き終えるとご満悦と言った感じで何度か頷いた。
私もそれを確認すると半歩後ろに下がる。ここから先の中心はこの犯人様にゆだねることにする。
私自身、冬優子のすべてをまだ理解しちゃいない。
その含みを訊かないことには、私も満足できやしないのだ。
美琴「随分余裕みたいだね」
冬優子「余裕……というよりも、まだふゆにはやることが残ってるから」
ルカ「いい加減聞かせてくれよ、なんなんだよ……そのやることってのはよ」
冬優子「そうね、ルカ……あんたの推理、多分正解なんだと思うけど……ちょっとだけふゆとしては否定したいポイントがあるのよね」
恋鐘「な、なんだか容量を得ん言い回したい……冬優子は何が言いたかよ」
雛菜「多分正解ってまるで他人事みたいな言い回しですよね~」
冬優子「そう、他人事なのよ。ルカの推理に出てきた行動の一部はね」
ルカ「な、なんだと……!?」
冬優子「今更有栖川夏葉を手にかけたこと自体は否定しない。それは間違いないわ、事件の犯人はふゆよ」
冬優子「でもね、殺害してからその後……死体を運搬したくだりはふゆは一切関与していないわ」
ルカ「死体を、運んでねーだと……?」
冬優子「そ、糸車とかバイキングだとか……そこら辺のはふゆは知らない。やっちゃいないのよね」
美琴「……それってつまり、事件現場を荒らす者がまた現れたってことだよね」
冬優子「そうなるわね、どこぞの誰かさんが狸って呼んでたやつが現れたのよ」
(……ってことはだ)
当然私たちの視線は一気に中学生……芹沢あさひの元へと集まる。
二回目の事件……千雪の事件でスケープゴート役にされた冬優子の元に届いた脅迫状。
それはストレイライトのメンバーでなくては知ることのできない秘密の書かれたもの。
アリバイなどの条件も絡み、狸として私が指摘したのは芹沢あさひなのだ。
冬優子の事件現場を荒らした狸、その話題になれば当然疑いの目も向く。
冬優子「ふゆの狙い通りにね」
そんなメンバーの窮地に、冬優子はほくそ笑んだ。
冬優子「狸ってのは相当にお間抜けらしいわね。ふゆに誘い込まれたとも知らないで、せっせと現場に工作なんかしちゃって……」
ルカ「ど、どういうことだよ!? お前が……誘い込んだ?!」
冬優子「ええ、ふゆが狸を呼び寄せてやったの。餌をぶら下げることでね」
冬優子「これまでの狸の行動、思い返して御覧なさい。あいつは七草にちかの事件で暗視スコープを黒塗りにして、桑山千雪の事件でふゆを犯人に仕立て上げようとした。前者では事件を起こす下準備、後者では現場を荒らして真実を有耶無耶にしようとした。……その心は?」
ルカ「……私たちを、学級裁判で殺そうとしてるのか?」
冬優子「まあ、そうなるでしょうね。現場を荒らす理由なんて、それぐらいのものだもの。狸の行動には、ふゆたち他のメンバーに対する殺意が垣間見えているわ」
冬優子「……なら、犯人があからさまな事件を起こした時、狸はどう思うかしら」
智代子「なんとしても現場を荒らして……間違った回答に誘導しなくちゃいけない?」
冬優子「そういうこと。狸は学級裁判で誤答させることを目的としているんだから、そんなあからさまな現場黙っちゃいられないのよ」
透「まあ、そっか。犯人ですーってやつがいる事件、狸はやりたくないんでしょ」
冬優子「だからふゆはあえて、現場に水素吸引機をそのままにしてやったわ。ルカでもあさひでも……みれば一発でわかるような証拠を残してやったの。ゴンドラも爆発の衝撃で中が少しひしゃげていたし、あの状態ならすぐに犯人がふゆだって誰でもわかったでしょうね」
あさひ「水素吸引機……あの時の」
冬優子「狸はそれを見て、すぐに死体を移さなきゃと思ったの。焦って焦って……【何故か】ゴンドラの脇に置かれていたワイヤーを手に取った」
美琴「……え?」
冬優子「そのまま【何故か】門が開いていて止まっていたバイキングの船頭にワイヤーをくくりつけた」
恋鐘「ま、また【何故か】……?」
冬優子「そして【何故か】逆回転に設定されていた観覧車とバイキングを動かして、死体を移動させたのよ」
ルカ「お前……その【何故か】って」
冬優子「ふふっ……ホント間抜けな狸さんよね、全部全部、ふゆの設計図通りに動いてくれちゃって」
雛菜「それじゃ狸の行動は、ぜんぶぜ~んぶ、狙い通りだったってことですか~?」
智代子「そ、そんなの……全部、ふゆちゃんは考えてたの?!」
冬優子「ふゆの狙いはただ一つ。ルカ、あんたなら分かるでしょ」
冬優子はそう言って、まっすぐに私の瞳を見つめた。
冬優子から感じる一本の強く太い芯。これこそが、冬優子の今の行動原理……この事件を引き起こした一つの大きな動機なんだろう。
一人の人間を殺め、そのうえで狸をおびき寄せるような罠を仕掛け、裁判で自らをクロだと私に証明させて、その結果今この瞬間がある。
この瞬間の、そのために冬優子はすべてを尽くしてきたんだ。
冬優子の、その狙いは_____
-------------------------------------------------
【発掘イマジネーション開始!】
■■■■■の■■を証明するため
【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
一文字目 01~30の奇数
二文字目 01~30の偶数
三文字目 31~60の奇数
四文字目 31~60の偶数
五文字目 61~90の奇数
六文字目 61~90の偶数
七文字目 91~00
↓1~16
【コンマ 40 52 56 05 36 52 70 74 75 18 52 52 78 08 99 00】
カンカンカンカン……
【ぞろ目の値が出ました!】
【が、既定のコンマ内で採掘が終わっていないためボーナスは発動しませんでした……】
カンカンカンカン……
芹沢■さひの潔白を証明するため
【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
三文字目 31~60の奇数
↓1~4
【コンマ14 51】
カンカンカンカン……
【発掘完了!!】
__________________
芹沢あさひの潔白を証明するため
__________________
ルカ「芹沢あさひの潔白を証明するためか……!」
あさひ「えっ……」
ルカ「あのアトラクションのバイキングは身長制限が160cmと異常に高い。ループをする部分があったり、特殊なつくりをしているからだと言ってたが……私の推理では犯行の行動に組み込まれていたこのバイキングが、狸によるものなのだとしたら」
ルカ「その瞬間……私が今まで狸としてみていた芹沢あさひは……狸ではあり得なくなってしまう……!」
智代子「そっか……あさひちゃんは私と同じであのアトラクションの身長制限に引っかかる……! あのアトラクションを使って死体の移動は出来ないよ……!」
美琴「狸が偽装工作に使いやすいように、あえて偽装工作を途中辞めにしておいた。それを利用すれば、あさひちゃんが狸の嫌疑から外れるようになっていたなんてね」
あさひ「冬優子ちゃん、わたしのために……わたしのために、罠を仕掛けてくれたんっすか?」
冬優子「さあね。ふゆは恩着せがましい真似は好きじゃないの」
(……なるほどな、さっきは甘党女を黙らせるために言ったのかと思ったが)
(そう考えるとこの事件が有栖川夏葉も望むところってのは……あながち間違いじゃなかったのかもしれねーな)
冬優子「ま、ふゆはこの裁判で死んじゃうわけだけど……生き残るあんたたち、忘れんじゃないわよ。狸は身長160cm以上の人間……あさひと園田智代子以外の中に混ざってる」
冬優子「そのことは、ゆめゆめ忘れないように……わかった? ルカ」
ルカ「ハッ……わーったよ」
智代子「な、なんだかおこぼれで私まで容疑者から外してもらえちゃった……」
美琴「……」
冬優子が命がけで張り巡らせた策略。
それは事件に決着がついた後に大きな展開をしてみせた。
私たちがずっと抱き続けていた疑念を根底から瓦解させ、彼女にとって特別な存在を一気に解放させた。
狸をドツボにはめた、事件のうちに隠したトラップ。
それを本人こそ照れ隠しで認めはしないが、その目的は長く目をかけてきた憎むべきも愛すべき年下を守るために他ならなかった。
俗な言い方をすれば、愛情なんて言えてしまうんだろうが……私にはその二文字に収まるものではないと思う。
冬優子が芹沢あさひに向けているものはそんな単純なものじゃない。
本気で煩わしい存在だと思っているし、本気でいない方が楽だと感じているときもある。
その一方で、本気で自分には欠かせない存在だと思っているし、本気でずっと笑っていてほしいと思っている。
そんなちぐはぐな二律背反を積み重ねた感情を、たった二文字で表現しきれるはずがない。
____ましてや、その果てに自分の命を懸けた証明があるのだから。
冬優子「……モノクマ、とりあえず投票タイム。お願い」
あさひ「……冬優子ちゃん!」
冬優子「このガキがごねだす前に、早く」
モノクマ「わかりました! それでは急いでまいりましょう!」
モノクマ「投票ターイム! オマエラはお手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してくださーい!」
モノクマ「議論の結果導き出されたクロは正解なのか、不正解なのかー!」
モノクマ「さあ、どっちなんでしょうかね?」
-------------------------------------------------
【VOTE】
〔冬優子〕〔冬優子〕〔冬優子〕
CONGRATULATIONS!!!!
パッパラー!!!
-------------------------------------------------
【学級裁判 閉廷!】
というわけで4章の学級裁判が終わったところで本日はここまで。
ちょっとコンマ参照のゲームが多すぎましたね……
ピトス獲得してなかったらもっと泥沼になってたな……
次回裁判終了を投稿して、長かった4章もようやく終わりとなります。
金土は予定が入っているので、更新できるとすれば日曜になるかと思います。
また21時ごろより、安価はございませんがどうか本章も最後まで見守ってやってください。
それではお疲れさまでした。
-------------------------------------------------
CHAPTER 04
アタシザンサツアンドロイド
裁判終了
-------------------------------------------------
モノクマ「ピンポンピンポン! 大当たり〜! 超大学生級のアンドロイド、現代叡智の結晶とも言うべき美しき有栖川夏葉さんをメッタメタのガッチャガチャにぶっ壊して殺害したのは……」
モノクマ「綺麗なバラにはトゲがある! 超専門学校生級の広報委員・黛冬優子さんなのでした〜!」
犯人として指摘された。
それはものの数十分と経たないうちに蹂躙されて、命を奪われることを意味する。
それを前にして、冬優子はなおも態度を変えなかった。
それは、これまでに私の見てきた冬優子のあり方と相違しなかった。
人並みに悩んで、人並みに苦しむ彼女……
それでも、自分自身の決断には人一倍の責任感を持ち、そしてその評価には正面から向き合う強さがある。
元々備わっていたものなのか、それともアイドルとして活動する中で身につけた素養なのか、
283の人間じゃない私からすれば分からないが、この点において彼女が私より遥かに『大人』であることは間違いない事実だ。
智代子「……ふゆちゃん、もう聞かせてもらえるよね?」
冬優子「……ああ、話さないといけないわね」
園田智代子はただの遺された者ではない。
一度黄泉より舞い戻ったと思った有栖川夏葉、その期待と喜びを踏み躙られるような形で奪われてしまった。
冬優子の犯行によって生じた精神的ダメージはそれだけ大きい。
それを裁判の最中、進行のためにと不意にされたことを芳しく思っていないのが見てとれた。
智代子「さっき……学級裁判中、ふゆちゃんは言ってた。この殺人は夏葉ちゃんも望むところだったって」
冬優子「ええ、言ったわ」
智代子「本当に……そうなの? 夏葉ちゃんは自分から、ふゆちゃんに殺されにいったの?」
だが、冬優子は園田智代子の言葉を前にして少しためらうような素振りを見せた。
その言葉は間違ってはいないが、中央を正面から射止めたわけではない……そんな表情だ。
冬優子「いや、そうじゃないわ……死はあいつも望むところだったけど……ふゆもそうだったの」
智代子「えっ……?」
そして実際冬優子が口にしたのは、これまでの想定とはまた異なった事実だった。
冬優子「ふゆもあいつも、本気で殺し合った。どっちが死んでも、おかしくなかったのよ」
ルカ「お、おい……どういうことだよ、それ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
真夜中だと言うのに電飾は灯ったまま。
誰を載せるでもない観覧車はなおも動き続け、真っ黒な波にポツリポツリと丸い明かりを落とし続けている。
夜の本来あるべき静けさを嘲笑うような場内BGMを耳にしながら、その時を待っていた。
組んだ腕にはロケット花火を隠し持っている。
数日前の絶望病の一件で隔離生活を強いられた時、あさひが悪用しないようにふゆが一通り押収したものだ。
……ふゆはこれで、命を奪う。
正確にはロケット花火で視界を奪ってからいくつかの工程はあるけれど、直接的か間接的かくらいのもので、これが凶器の一部であることには相違ない。
そして、これが凶器として作用しうる相手は限られている。
「……あなただったのね、冬優子」
標的は姿を表した。
これから生死をかけたやりとりをしようと言うタイミングで、その標的は不気味なほどに物怖じをしていなかった。
いや、彼女らしいと言えば彼女らしい。
自信に満ちた表情を努めてみせようとしている彼女なら、命を落とす直前、そのコンマの一秒まで表情を崩すことはないだろうと思った。
「悪いわね、こんなことに付き合わせちゃって」
「何も謝ることはないわ、あなたも大きな決断を下した末の今なのでしょう?」
有栖川夏葉の推測した通りだ。
実際行動に移すには大きな障害があった。
人を殺めるなんてことはこれまでに経験もないし、きっとその一線を超えてしまえばふゆはこれまでのふゆではいられなくなる。
これまでのどれでもない、新しい自分を作り出さなければ到底耐えられない。
でも、そんなことに耐えられる器などふゆに作り出すことができるのだろうか?
ふゆはそこまで傲慢でも、図々しくもない。
そして、自分が手を下した瞬間に生じるリスク。
目の前に吊り下がる天秤を、正しき方向に傾けることができるのか。
みっともなく生に縋り付くような真似をしてはしまわないか。
絶対に完璧な黛冬優子を、最後の最後で自分の手で台無しにすることがあってはならないのに。
そんなしがらみの一切を、ふゆはねじ伏せた。
正確には目を瞑っただけかもしれない。
それでも、いい。
この一歩を踏み出すことには大きな意味があった、誰かが踏み出さなくちゃいけなかった。
「あんたこそ、別に来なくてもよかったのに。一眼見れば分かったでしょ、この手紙の送り主は殺すつもりで送ってるって」
「あなたと同じ気持ちなのよ。私も……あなたと同じで守りたいものがある。その志を同じくするものとなら、命をかけてもいいと思った」
今更この場に置いて有栖川夏葉の見立てを否定する気もなかった。
ふゆが犯行に及んだ理由は、誰の目に見ても明らかだったから。
この島に来る前から、ずっとずっと口では否定して、心の中でも自分に言い訳をし尽くしてきたが……この局面になればそれは意味をなさないと思う。
____ふゆは、今。
あさひを守る為にこの場に立っている。
別に自分だけなら飢えて死んだって構いやしない。
でも、あいつはただでさえ他の連中に不審な目を向けられているのに、それに加えてひもじい思いまでさせて、どんどん衰弱していっている。
それを目の前で見せられて黙っているほど、ふゆはいい子ちゃんじゃない。
きっと、愛依ならこの状況でも誰かを手にかけることなんて頭に浮かびもしないと思う。
だとしても、ふゆはふゆだから。
「だから……全力で行くわ。全力であなたの命を奪いに行く、全身全霊を持って殺させてもらう」
有栖川夏葉はふゆを見据えて、低く腰を落とした。
名家の生まれなのだ、武の心得だってあるんだろう。
素人目にも感じる気迫が、ふゆの肌をチクチクと刺した。
「上等、あんたこそ……殺されても文句言うんじゃないわよ」
だからといってそれに臆するようなふゆでもない。
こちらには対抗策だって用意してあるんだ、あとは一か八かの博打に挑むだけ。
ギャンブルなら、弱みを見せた方が負ける。
ふゆはこんなところで、負けてらんない。
「それじゃあ、行くわよ。次に合図した時が、始まり」
「ええ、いつでもどうぞ」
「……それじゃ」
「死んでもらうわ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
智代子「夏葉ちゃんとふゆちゃんで……殺し合った……?!」
冬優子「……何も正面から殴り合いをしたわけじゃない。ルカの言った通りふゆがロケット花火で不意打ちをしたんだから激しい接触はなかったわ。でも、有栖川夏葉はふゆにスイッチを押されるその瞬間まで本気でふゆを殺そうとしていたわ」
智代子「そ、そんなの……本気かどうか……」
冬優子「わかるわよ、殺意をふゆは真っ正面から浴びたんだから」
きっと、冬優子の言うことは嘘ではない。
冬優子の口から語られたやりとりも、そこに込められている他の誰かを守りたいと言う想いも、これまでに見てきた二人と相違なかった。
有栖川夏葉と黛冬優子、お互い一度は大切なものをその手から失ってしまった身……
今回の動機で衰弱し、失われていく、最後の大切なものを前にして、黙っていることはできなかったのだろう。
冬優子「だからといって責任逃れをするつもりもない。あんたから大切な存在を奪った事実は変わらないんだから、ふゆはその咎めと謗りとを受け入れる義務はある」
冬優子「……存分に、詰ってくれていいわ」
智代子「……」
冬優子はそう言うと、黙って園田智代子を見据えた。
相変わらず、憎たらしい女だ。
そこまで堂々と語られたら、こちらの方が言葉に詰まる。
実際……園田智代子は口を開かなかった。
パンッ
そして、その代わりに乾いた音が響いた。
智代子「きっと、夏葉ちゃんが生きてたら『私と冬優子は真っ向勝負で雌雄を決したの。結果が不服であっても、それに茶々は入れないでほしいわ』って言うと思う」
智代子「……だからこれは、果穂の時……ふゆちゃんが夏葉ちゃんの顔を叩いた分だよ」
園田智代子の中にはやるせない思いが渦巻いていた。
冬優子の言うことには信憑性もある。
有栖川夏葉の死はきっと本人にとっては不本意なことでもない。
その敗北を受け入れるだけの覚悟をして、事切れたと思う。
でも、それとは別に感情は湧くのだ。
かけがえのない存在を失った相手を、本人がそうだったからとすぐに許せるほど甘口の人間でもない。
かといって自分の感情の赴くままの行動をとれば、それは仲間の決意と死とを踏みにじる行為になる。
その思慮の果ての平手打ちだった。
あくまで仇討ちではなく、いつかのやり返し。
そういう体をとって、想いをぶつけた。
冬優子「……優しいのね、あんた」
赤く染まった頬をさすりながら、つぶやいた。
智代子「武士の情けだよ、ふゆちゃん」
そして、順番は回る。次に冬優子が向き合うべきなのは他でもない自分の仲間。
冬優子自身が、遺して逝く相手だ。
あさひ「冬優子ちゃん、本当にわたしの為に……夏葉さんを殺したっすか?」
冬優子「……」
投票が終わった今、その回答を拒む理由が見つからない。
冬優子は大きなため息をついてから、中学生の方に向き合った。
冬優子「……あのね、目障りだったのよ」
あさひ「……え?」
冬優子「こっちのことなんか一切考えないで、自分の興味関心の赴くまま、それで散々振り回したかと思えば何故だか収まり良く事態がまとまっている。そういうあんたの持ってるところが、すごく目障りだった」
あさひ「……冬優子ちゃん、わたしのことそんな風に」
冬優子「でも、この島に来て、どんどん弱っていくあんたの方がよっぽど目障りだった」
冬優子「他の人間に疑いの眼差しを向けられるわ、制約のある生活を強いられて自由を失うわ、果てには食事も取りあげられてどんどん弱っていくわ」
冬優子「……あんたの、そんなところ見たくなかったのよ」
冬優子「……鬱陶しくてしょうがないから。あんたを取り巻くあれこれを一気に解消したの、ただそれだけ。他意はないわ」
あくまで字面上は、自分のためという体を装ってはいた。
でもその文脈が、『ある特定の人物のため』であることは明白で、本人もそれを流石に解したらしい。
初めこそ拒絶の言葉に面食らっていたが、すぐに前のように『ユニットのお姉さん』に向ける顔色に変わっていた。
冬優子「まあ、でもよかったでしょ? これであんたにかかってた嫌疑は晴れた。ルカにかけられてた言いがかりも全部払拭して、自由の身よ」
あさひ「……」
ただ……それでも中学生には不服だったらしい。
頬を少しだけ膨らませて、抗議の意思を込めた凝視。
らしからぬ雰囲気に、冬優子も少しばかりたじろぐ。
冬優子「……なによ、黙ってふゆの目なんか見て。あんたらしくもない」
あさひ「冬優子ちゃんは、本気でそう思ってるっすか?」
冬優子「……はぁ?」
あさひ「わたしは、嫌っす。絶対絶対……冬優子ちゃんとお別れなんかしたくない。それなのに、冬優子ちゃんはやっぱり自分のことばっかり」
冬優子「あんた聞いてた? ふゆが犯行に及んだのは、あんたを守るためで……」
あさひ「違う、それはただの目的と理由で……冬優子ちゃんはその過程をわかってないっす」
冬優子「何を言ってんの! ふゆがあんたのためにどんな決断をしたのか……」
あさひ「もう今、8人しかいないんっすよ? それに、冬優子ちゃんが死んじゃったら7人になる。それに愛依ちゃんも、果穂ちゃんもいない……」
あさひ「なんで、なんでそんなことをしたっすか? なんでみんな、わたしを一人にするっすか……?」
冬優子「……あんた」
あさひ「わたしの気持ちを考えないで、そんなことをするなんて……冬優子ちゃんらしくないっすよ」
芹沢あさひの言う通りだ。
冬優子が犯行に及んだ理由、それは独りよがりで押し付けがましい善意とも取ることができた。
たとえ容疑が晴れようとも、空腹が解決しようとも、黛冬優子という存在を失うことが芹沢あさひにどれだけ大きな衝撃を与えるのかを無視した動機。
自己正当化の出汁に使われていることに気づいた芹沢あさひは、その疑問を口にしたのである。
冬優子「……それは、その」
あさひ「わたしは他のみんなに疑われても、冬優子ちゃんが生きてる方がいいっす!」
冬優子「そんなこと、言ったって……」
あさひ「ねえ、冬優子ちゃん!!」
それは、冬優子自身に教えられたこと。
小宮果穂との死別を一度経験した彼女は、その死の間際に感情のありのままをぶつけ合うことで、そこに通わせたものを強く実感することができた。
だから、今回も彼女は歳のままの等身大の子供として、冬優子の元に縋りついた。
ごねたところで何が変わるでもないと知っていながら、その我儘を押し通そうとした。
声の限り、自分の感情を吐き出し続けた。
現実は当然、変わらなかった。
この状況においても、モノクマはただ無表情に動くこともなく、時間が経つのを待ち侘びている。
冬優子の死は、逃れられない運命。
……でも、冬優子自身の在り方には揺らぎの色が見えた。
冬優子「ふゆを、これ以上……困らせないで……」
ずっと、奥底に押し殺していたものが顔を出した。
冬優子にも芹沢あさひだけが遺されるという事実はきっと理解していた。
でも、自分が動かなければ結局彼女は救われない。
自分の命と引き換えでしか掬い上げることはできない。
そう考えた時から必死にその事実には目を瞑っていた。
ただ、ありのままの感情を改めて自分の目で、耳で、受け止めれば話は違う。
嫌だろうとなんだろうと、直視せざるを得ない。
冬優子の心中に埋め込まれた支柱は、少しずつ、その根本から突き崩されつつあった。
冬優子「何よ、どうすればいいわけ……? もう、取り返しは効かないのよ……? ふゆがあいつを殺したって言う事実はどうやったって覆らないの……!」
やがて、冬優子の声にもすすり上げるような息が混ざり込む。
後悔とも違う、自分の犯した行いとそれに生じた責任とに向けた半ば狂乱に近い感情の発露。
壁や証言台が、彼女の声に応えるようにピシピシと軋んだ。
冬優子「ふゆはあさひのために、何をしてやればいいの……?」
そして、冬優子はその疑問を口にした。
その疑問は過去なのか、現在なのか。
我道を行く冬優子らしからぬ言葉だった。
ただ、それは彼女自身の純粋な母性の表れ。
共に長い時間を過ごし続けた仲間に対して、何かをしてやりたいというだけのこと。
でも、冬優子自身からすれば、この好意というのは照れ臭さの裏に隠して、ずっと避けてきた道の一つでもあった。
歩き慣れない道は、とかく迷いやすい。
愛情表現を真っ向からはしてこなかった冬優子は、この局面で困り果ててしまっていた。
ルカ「……頭の一つでも、撫でてやればいいんじゃねーのか」
それならば、この島で共に生きてきた仲間として、そして何より……冬優子の理解者として。
彼女が道に迷ったときには、その道標を示してやりたいと思った。
私も愛情表現なんてものに親しみはないし、美琴とは実際今もうまくいってないわけで講釈を垂れるような権利はない。
客観的な立場から、俗的な一意見を述べただけだ。
ルカ「冬優子……悪いけど、オマエが死ぬことはもう私たちにもどうしようもできない。だけどよ、散り際をどうするかってのはオマエ次第……それって、オマエがいつも気にかけてることだろ?」
ルカ「徹底したセルフプロデュース、それがオマエの持つ強みだと私は思ってる。それなら……最後の最後、その散り際を……綺麗事で飾り立ててやったって、バチは当たらねえさ」
冬優子「ルカ……」
ルカ「バチを与える側の、カミサマからの進言だ」
最後にカミサマを出汁にしたのは、今から死にいくものへの餞には少しでも気休めになる言葉をかけたかったから。
別に信心深いわけでもないし、死後の世界なんてものを論じる気もないが、神という存在を借りてでも安心させられる言葉を使いたかった。
私を前にしたこんな時でも気負わないように、その荷を下ろしてやろうとした。
その目論見は、実際成功したらしい。
冬優子はどこか吹っ切れた様子で、腹を抱えて笑い出す。
冬優子「……ぷっ、あはは! 何言ってんのよルカ、あんたクサすぎ!」
ルカ「なっ……オマエが聞いたから答えたんだろうが!」
冬優子「でもまあいいわ、そのクサさに乗じてあげる。あんたはふゆと同族なんだからね」
同族という言葉が孕んでいるものを私はもう理解している。
冬優子の軽口にはそれ以上水を挟まない。
改めて芹沢あさひに向き合う、その姿は不器用という他ない。
ぎこちなく手を伸ばし、これまたぎこちなく抱き抱えるようにして、極めつけにぎこちなく声をかけた。
冬優子「……ほら、よしよし」
あさひ「冬優子ちゃん、あんまり撫でるの上手くないっすね」
冬優子「空気読みなさいよあんた……」
あさひ「愛依ちゃんの方が上手だったっす」
冬優子「それは……敵わないわ、悪いけど」
ぎこちなさと満足感とは両立するらしい。
お世辞にもうまいとは言えない甘やかしに、芹沢あさひは自ら首を伸ばすようにして、嬉しそうにしている。
あくまで切なさに裏打ちされた嬉しさではあるが、冬優子の愛情を初めて正面から受け止めることができ、これまでに見せたことのない表情を作っていた。
冬優子「……もっとこういうの、やってあげてればよかったわね」
あさひ「いいっす、そんな頻繁にやられたら……それはそれで冬優子ちゃんじゃないみたいっすから」
冬優子「どういう意味よそれ……ったく」
そして、そういうタイミングを狙いすましたかのように……その時はやってくる。
モノクマ「前菜はこの辺りにしておいて……そろそろ主菜に参りましょうか! 学級裁判というコース料理の花形も花形……血湧き肉躍るおしおきタイムの時間ですよ!」
あさひ「……!! ダメっす、まだ……まだっすよ!」
モノクマ「欲張りさんだなぁ、お別れの挨拶も済んだし愛情表現までしたってのにこれ以上を求めますか」
あさひ「満足なんかまだまだしないっすよ……冬優子ちゃんは、だってだって……これが終わったらいなくなっちゃうんっすよ!?」
モノクマ「そりゃそうでしょ、それが学級裁判なんだから」
モノクマはなんとも思っていない様子で淡々と言い放つ。
ただ裁判を進行する、ただおしおきを遂行する。
人が一人、完全に死んでしまうと言うのに、それは大したことではないと断言しているよう。
もう4度目にもなるが、胸の底から黒いものが渦巻いて澱む感覚には慣れそうもない。
あさひ「嫌だ……冬優子ちゃん、冬優子ちゃん……!!」
冬優子「……やめて、それ以上騒がれると覚悟が揺らぎそうだから」
あさひ「……!!」
だが、今回は今までの3回とは違った。
これから処刑台に乗せられる張本人の冬優子は、その覚悟を決めていた。
勿論それは体裁としての話で、心中が穏やかではないのは明らか。
目に見えて体は強ばり、口元も妙に硬く結ばれているのがかえって不安を滲ませる。
それでも……彼女は『怖がっていない』、死を前にして堂々と『黛冬優子』でい続けようとしている。
そのことを、我々は尊重せねばならない。
冬優子「あさひ、最後に年長者っぽいことできてよかったわ。そのやってやった感のまま、終わらせてちょうだい」
あさひ「……うぅ」
冬優子「それと、ルカ……あさひのこと、頼んだわ。今やもう、頼れるのはあんただけだし」
初めの頃とは随分と扱いが変わったものだ。
かけがえのない存在を預からせていただく立場にさえ就かせてもらえるなんて、光栄すぎるな。
冬優子「……それと、パートナーともうまくやりなさいよ」
ルカ「……おう」
……それはお節介だ。
私はぶっきらぼうな返事をせざるを得なかった。
モノクマ「今回も超専門学校生級の広報委員である黛冬優子さんのためだけに、スペシャルなおしおきを用意しました!」
冬優子「ふゆはこの選択を間違っているとは思わない、ただ停滞して全員で共倒れなんて……そんなの意味がないじゃない」
冬優子「……だから、ふゆと有栖川夏葉の想いを汲み取ってちょうだい」
モノクマ「それでは張り切っていきましょう!」
冬優子「ふゆたちは、あんたたちを生かすと決めたんだから。その命、雑に扱うような真似すれば……地獄の底からでも蘇って、ぶん殴るわ」
冬優子「ふゆの死、無駄にしたら承知しないんだからね」
モノクマ「おしおきターイム!」
冬優子「ふゆの屍を超えていきなさい!」
-----------------------------------------------
GAME OVER
マユズミさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。
-----------------------------------------------
世界でいちばんおひめさまな黛さん。
キュートな衣装をバッチリ着こなしてますよね!
普段から自分の魅せ方をよく研究しているんですから当然のこと。
それだけ可愛いお姫様の元には当然おうじさまもやってきます!
おひめさまを迎えにやってくるおうじさまと言えば当然『白馬の王子様』!
ほら、今にやってきましたよ!
筋骨隆々、目も血走って、すさまじい馬力で走り続ける白いチャリオットに乗った王子様が!
……あれ?
どうしたんですか、黛さん?
そんな、おうじさまを前にして逃げ出すなんてナシですよ!?
散々人を惹きつけておいて、自分が轢かれるのはそんなに嫌ですか!?
-----------------------------------------------
SOS
超専門学校生級の広報委員 黛冬優子処刑執行
-----------------------------------------------
おうじさまの熱烈アピール!
恋の書状が結びつけられた矢が黛さんに向かって次々に飛んできます!
チャリオットの猛追から逃げながらもなんとか体を捻って済んでのところで矢を回避!
黛さんの元に本来届くはずだった恋文は岩石を砕き、地を穿ちます。
次のアピールはプレゼント作戦!
男女の駆け引きに、プレゼントのセンスは欠かせませんよね。
ダイヤの飾り付けられた綺麗な円形の……チャクラム!
あれれ、これもおひめさまのお気には召さないみたいです。
黛さんがダンスで培った体幹を生かして華麗に回避!
チャクラムに両断されて隣の巨木は根元からボッキリと折れちゃいました!
最後のアピールは100万ドルの夜景で!
それを飾り付ける最高の花火をプレゼント!
あれ? そういえばどこぞの誰かが花火を利用して人を殺したんでしたっけ?
まあいいや、それいけどっかーん!
黛さんも流石にこれには目を奪われてしまった様子、少しばかり火傷を負いながらもなんとか回避。
そしていよいよ目の前に見えてきたのは結婚式場の教会!
なんだ、嫌よ嫌よも好きのうちというわけですか!
白馬のおうじさまに迎えられて、今こそ一つになる時です!
もう黛さんもボロボロで、外堀から埋められていよいよ腹を括る時ですよ!
「ざけんじゃないわよ、バーカ」
……え?
ちょ、ちょっと……!?
そっちは、そっちはルート外ですよ!
おひめさまはモノクマの用意した道から自ら外れ、真っ逆さま。
本来おしおきから逃げ出せないように用意していたはずの保険であった巨大シュレッダーに自分から落ちていきました。
刃が彼女を細切れにする直前、その一瞬に。
黛さんはニッと笑って中指を立てていたとかいないとか……
-------------------------------------------------
モノクマ「な、なんだよ……消化不良だな……」
あさひ「……冬優子ちゃん、自分から……?」
黛冬優子のおしおきのクライマックス直前での自死、私たちではなくモノクマが一番困惑し、釈然としない表情をしていた。
モノクマからすれば一番盛り上がるところに水を刺されたような思いなんだろう。
モノクマ「フンっ、いっぱい食わせたつもりなのか何だか知らないけどさ。死んだのは死んだんだから、ボクの計画は何も崩れてないよ」
モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! どれだけ可愛く飾り立てても、死ぬ時は結局みんなブッサイクな骸に成り果てるんだよね!」
ルカ「……ハッ、それで勝ったつもりかよ」
モノクマ「……うん?」
ルカ「てめェがいくら冬優子の死ではしゃいだところで、あいつも私たちも、その死で塞ぎ込んだりしねえ」
ルカ「あいつの死で、私たちは想いを引き継いだんだ。その想いとともに、私たちは生きていくんだ!」
壮絶な裁判の果て、おしおきによる幕引き。
何度経験しても慣れない絶望の波が押し寄せる感覚。
今にも気を抜けば膝からその場に崩れ落ちてしまいそうな無力感を感じつつも、今回ばかりはそう簡単には折れない芯が自分の中に通る感覚があった。
冬優子が最後の最後まで見せつけた姿、それは他でもない【希望】の姿だった。
他の誰かを犠牲にして生き永らえる。
そのことに負い目を感じ続けてここまできたが、冬優子は『自分の死を有効に使え』と言い残してくれた。
それならば、今ここで悔いてはならない。
悲しんではならない。
今の私たちにすべきことは、明日のために……今何ができるか考えることだ。
ルカ「そうだろ、あさひ」
あさひ「ルカさん……はいっす!」
それに、私はこいつを冬優子から託された。
ガキのお守りなんざ、ガラじゃねえが……
ダチと交わした約束を不意にするほど私も人でなしじゃない。
智代子「うん……夏葉ちゃんが身を賭して私たちを生き残らせてくれたんだもの、こんなところでへこたれていられないよ!」
透「うん、がんばろ」
雛菜「やは〜! 雛菜も頑張る〜!」
恋鐘「ここまで生き残ってきたうちらならもう大丈夫たい! もうこれ以上コロシアイなんか誰も起こさんよ!」
美琴「……そうだね」
これまでのどの裁判とも違う、誰一人として表情を曇らせない様子に明らかにモノクマはイラついている様子だった。
私たちに何か言葉を投げつけてやろうとして、的確な嫌味が見つからず地団駄を踏む。
モノミ「うぅ……あちし、感涙の極みでちゅよ! 黛さんの死でまた一つミナサンは強くなりまちた!」
モノミ「すごい一体感を感じまちゅ。今までにない何か熱い一体感でちゅ! 風……なんだろう吹いてきてまちゅよ確実に、着実に、ミナサンの方に!」
モノミ「絶望なんかに負けない、希望の風を感じまちゅ!」
手のひらの中で熱く鼓動しているものが希望なんだろうか。
それを胸に当てて私は一つ、深く呼吸をした。
肺に通っていく風が、なんだかとても心地よく、私の視線はぶれずに前を見据えた。
モノクマ「ぐぬぬぬ……ぐぬぬぬ……」
ルカ「悪いなモノクマ、お前の目論み通りにならなくて。……それじゃ、私たちは帰るから」
智代子「うん、夏葉ちゃんが取り戻してくれた分ちゃんとお腹いっぱいにしないとね!」
あさひ「あ! 恋鐘ちゃんの朝ごはんがまた食べられるんだ!」
恋鐘「ど〜んと任せるばい! 今まで食べさせてあげられんかった分、特盛サービスで食べさせちゃるけん!」
美琴「楽しみだね」
あさひ「やったー!」
モノクマ「そんなお祭りムードのとこ悪いけどさ、オマエラ……それでいいの?」
ルカ「……あ?」
モノクマ「黛さんは命をかけて芹沢さんの無実を証明したけどさ……それって同時に、他の人間がぽんぽこ狸さんだって謎を提示したのと同義でしょ?」
あさひ「……!」
それは確かにモノクマの言う通りだ。
私たちを学級裁判で殺そうと画策していた狸はまだ、私たちの中に紛れている。
身長160cm以上という条件はあさひと甘党女以外の5人に当てはまるほか特定に至る証拠もない。
____だとしても。
ルカ「言っただろ、お前の目論み通りにはならねえって」
モノクマ「なぬ?」
ルカ「例えこの中にまだ殺しを企んでる奴がいようとも、他の6人でそれを封殺する。私たちはもう誰も死なさない、事件なんて起こさせない」
美琴「……ルカ」
不振の波紋が広がる前に防波堤をつくった。
お互いを疑い合う状況に落とし込まれるなんて、冬優子からすればこれ以上なく癪だろう。
あいつが私たちを生きながらえさせたことの意味を考えれば、今ここでどう受け答えすればいいのかなんてことは考えるよりも先に言葉が出た。
モノクマ「むむむむ……むむむむむ……」
ルカ「用は済んだか? それじゃ、今度こそ行くぞ」
モノクマ「むむむむむむむむむ……」
美琴「それじゃあ、失礼するね」
あさひ「バイバイ!」
透「アデュオス」
モノクマ「く、くそぉ〜……」
背後にモノクマの弱々しい声が聞こえてくるのが、気分良かった。
-------------------------------------------------
裁判場を出て、私たちはそれぞれの個室へ戻っていった。
何人かはこれまで禁止されていた分を取り戻さんとばかりにスーパーマーケットでお菓子なんかを大量に持ち帰っていた。
きっと気分を切り替える意味合いもあったんだろう。
私はというと、なんとなくあさひの元を離れがたくて、個室まで付き添って送り届けていた。
-------------------------------------------------
-------------------------------------------------
【あさひのコテージ】
あさひ「別に一人で自分の部屋ぐらい戻れるっすよ?」
ルカ「……まあ、そうだよな。オマエもガキじゃねえんだし」
あさひ「……? ルカさん?」
気がついたら、あさひのことをじっと見つめていた。
小柄な体躯に、済んだ目の色、生まれながらだろう髪色は鮮やかな色合いをしている。
冬優子が最後の最後まで守ろうとした存在、改めてそう考えると、込み上げてくるものがあった。
ルカ「さっさと寝ろよ、オマエも疲れてんだろうし」
悟られないように、あえて突っ放すような口調で話した。
あさひ「はいっす!」
返事だけはいいのよね、と時々愚痴をこぼしていたことを思い出す。
ルカ「……ちゃんと、寝るんだぞ」
あさひ「あはは、それなんだか冬優子ちゃんみたいっす」
ルカ「……るせえ」
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
あさひを送り届けてから自分の部屋へ。
私も人のことを言えない、かなり疲労は蓄積している。
瞼が重たくなるのを感じながら、ドアノブを握る。
その時、部屋の前のポストがふと目に止まった。
手前に引いて開ける扉は、何かにつっかえて半開きになっていた。
そこに見えているのは茶封筒。
縦長のシルエットを掴み上げて、部屋へと持ち込んだ。
「……一体、誰からだ?」
ベッドの上に腰掛けて、目の前で広げた。
中には一枚の便箋と写真が一枚。
先に便箋の方を確認することにした。
『この手紙をあんたが読んでいるということはふゆはきっと裁判でおしおきを受けた後だと思う。別にそのことを悔いる必要はないし、負い目に感じなくてもいいから。
……まあ、どうせ杞憂だろうけど』
流石は冬優子と言ったところか、気が行き届いているし、私たちのことをよく理解している。
『事件の内容からして、もう知ってのことだと思うけどふゆはファイナルデッドルームをクリアした。どうやらふゆが最初の攻略者だったみたいでその時にモノクマから情報をもらった』
そういえば裁判中美琴もそんなことを言っていた。
美琴は二番目以降の攻略者で、最初にクリアした人間がもらう特典はもらえなかったんだったか。
『その情報をルカに託します。ルカなら、ここに収められている情報を見極めて、有効に使ってもらえると思ったから。ちなみに拒否権はないので、諦めるように』
「……マジか」
手紙はここまでだった。
相変わらず勝手な女だ。冬優子のやつ、一方的に情報を渡してきやがって。
最後の最後まで冬優子らしいその様子に、少し可笑しく思いつつも、襟をただした。
この封筒の持つ意味を改めて確かめる。
私たちの未来さえも左右し得るほどに重要な代物だ。
まだめくっていない写真に、一体何が収められているのか。
生唾を一つ飲み込んだ。
「……いくか」
-------------------------------------------------
【あさひのコテージ】
「……もう、わたしだけになっちゃったんだ」
「愛依ちゃんも冬優子ちゃんも、他のみんなももういない」
「みんなを……学級裁判で殺そうとした狸は生きてるのに」
「……」
「……冬優子ちゃんは怒るかな」
「せっかく生かしてやったのに、なんでそんなことすんのよって」
「でも、わたしは知りたい」
「学級裁判で何度も暴れた狸が誰なのか、どうしてそんなことをしてるのか、知りたい」
「……例え冬優子ちゃんでも、わたしがわたしの命をどう使うのかは指図されたくない」
「この身体が、命がある限り……わたしはわたしのために使いたい」
「真実を知るために、使いたい」
-------------------------------------------------
「んだよこれ……!?」
そこに写っていたのは私たち。
この島にやってきた連中が全員横並びになって……目を瞑っている。
目を瞑ってコールドスリープ用の機械に横たわっている姿が写っていた。
だが、それで終わらない。
この情報の持つ意味、その一番大きなところは……その上。
「なんで、なんでこいつら……」
風野灯織、田中摩美々、和泉愛依、園田智代子、市川雛菜。
前回のコロシアイの生き残りだと名前が上がっていた連中は……白衣を着て、私たちを見下ろしていた。
____その機械でまるで、人体実験でもしているかのように。
-------------------------------------------------
CHAPTER 04
アタシザンサツアンドロイド
END
残り生存者数 7人
To be continued…
-------------------------------------------------
【CHAPTER04をクリアしました!】
【クリア報酬としてモノクマメダル60枚を獲得しました!】
【アイテム:くたびれたショッパーを手に入れました!】
〔出かける際愛用していた買い物袋。自身の所属するユニットの缶バッジを隠れたところに着けていたこの袋も、今となっては血に汚れた〕
というわけで4thやバンフェスを挟んで一か月以上に及んだ4章もようやく終了です。
冬優子をクロにするのは中々悩んだところではあるのですが、お別れの直前のあさひとのやり取りは書きたいものが書けた感じがあったのでだいぶ満足しています。
次はついに第五章。物語もここまで来ると、いよいよ大きく動きますね。
また更新までにはしばらくお時間をいただきます、気長にお待ちください。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いします。
1回気になりだしたらモノクマが想定してた冬優子の本来のおしおきの結末が気になってきた
教会に逃げ込む前に靴が脱げてチャリオットで轢殺?逃げ込めるもののそのままチャリオットが突っ込んできて轢殺?
チャリオットが突っ込んだ衝撃で教会が崩落して圧殺?夏葉の死因と合わせて逃げ込んだ瞬間に爆発して爆死?
偽装工作に合わせて逃げ込んだ瞬間にどこかに吹き飛ばされて転落死?それともSOSが何かの略でそれに合わせた結末?
考えても候補が多すぎるし突拍子のない結末もあり得るから考え出すと気になって仕方がないわ
市民たちの喧騒止まぬ中、ギロチンはゆっくりと持ち上げられていきます。
太陽の光を反射してギラつく、その下には鮮やかなオレンジ色の髪。
色気あるうなじが、木の枷に嵌められて剥き出しになっています。
彼女こそが、悪政を布く傾国の悪女!
国を筋肉によって傾けようとするパワー系悪役令嬢、有栖川さんは断頭台の上に……!
------------------------------------------------
パンがなければプロテインを飲めばいいじゃない
超高校級の令嬢 有栖川夏葉処刑執行
------------------------------------------------
市民たちの怒りはどんどんヒートアップ!
それもそのはず、こちとら炭水化物で腹を満たしたいのに、あんなザラついた液体で飢えを凌げだなんて納得できるはずもありません!
ギロチンが最高地点に到達した時、市民から聞こえてくるのも別れを惜しむものではなく、むしろ歓声すら上がります。
ええい、ままよ!処刑人のモノクマが紐を手放した、その瞬間!
____その瞬間でさえも、有栖川さんは諦めてなどいませんでした。
やはり筋肉、筋肉はすべてを解決する!
有栖川さんの火事場の馬鹿力、筋肉が全身で隆起したかと思うと、バキバキと音を立てて枷の一切が破壊されてしまったではありませんか!
ギロチンは宙を掠め、首を切り落とすことなく断頭台に突き刺さる!
☆有栖川夏葉、奇跡の生還……!?
暴徒たちもさすがにこれには大歓声! 筋肉をほめたたえ、手を叩いて大喜び!
…パンッ!
ですが、拍手に交じって乾いた音が響きました。
有栖川さんは生存を誇ったポーズのまま、何が起きたのかもわからずその場に倒れ込みます。
群衆に交じっていたスナイパー、凶弾には流石の筋肉も無力だったのです。
拿捕の網も被せられ、有栖川案の死体をずるずると退場。
悪嬢の処刑、もとい鬼退治は呆気ない幕引きとなりましたとさ。
というわけで二週間と少しぶりでしょうか、お久しぶりです。
いつもより少し早めですが5章更新の準備が出来てきましたので報告にやって参りました。
>>737
久しぶりに早速ガバ、「超高校級」ではなくて「超大学生級」ですね……
>>735
冬優子のおしおきは「冬優子が途中で台無しにする」前提で考えていたので、最後まで細かなことは特に考えてませんでしたかね……
ロンパらしい終わり方となると逃げこもうとする教会はハリボテで、チャリオットと板挟みになって圧死がそれらしいような気もします
「SOS」はソロ曲からとったタイトルですが、歌詞の恋の苦しみのサインが物理的な苦しみのサインに代わる意味合いでつけてます
何かの略にするのもありですね……また考えてみます。
さて、5章は特に問題がなければ6/11(土)の21:00あたりからの更新を考えています。
ストーリーも佳境、どうかお付き合いください。
それではまたよろしくお願いします。
〇保護観察対象者:風野灯織
保護観察を開始してから二週間余りが経過。
フラッシュバックなど精神衛生に支障をきたす症状は期間中確認されず。
観察者との対話も特に問題なし。
事態認識も正常。事件で命を落とした友人らも正確に把握しており、記憶の自主改竄など自己防衛に走る様子もない。
日常生活の復帰に十分な回復を認めるものとし、保護観察を本日打ち切ると決定。
〇283プロダクション連続殺人事件の捜査状況について
主犯格とみられる天井努の経営していた芸能プロダクション『283プロダクション』から社用PCならびに私用PCを押収。
情報捜査担当者に回し、解析結果が本日到着したため、報告に挙がっていた情報をここに記す。
・本連続殺人事件を『コロシアイ合宿生活』と題して外部に公開していた確定的な証拠は発見されなかった。
海外サーバーを経由していたものと思われ、その履歴も消去されてしまっているため復元はほぼ不可能。
保護観察対象者から得られた証言の裏付けとなる根拠には欠ける。
『チーム:ダンガンロンパ』と呼ばれる組織の特定を急ぐ。
・芸能事業とは別の帳簿データを確認。
巨額が闇口座に注ぎ込まれている不正な流れがあり、当事務所の従業員・七草はづきに確認をしたところ、完全に知覚していないものだとの証言が取れる。
天井努が事務所の経営資金と別に蓄えていた金についても、その入手手段、流用先を調査するものとする。
・外部との通信履歴に不審な送信先を確認。
連絡は数度に渡り、一定の頻度で行われている様子。
主要通信業大手に照会するも該当はなし。
位置情報を解析し、送信先の人物と事件との関連性について追求していくことが目下の捜査方針となる。
・本件が発生してより行方不明となっている10名との関連も併せて調査する。
------------------------------------------------
CHAPTER 05
Killer×Miss-aiōn
(非)日常編
------------------------------------------------
____
______
________
=========
≪island life:day 22≫
=========
【ルカのコテージ】
「……朝か」
冬優子の裁判の翌朝。
私の肩は妙に重たくて、少しだけベッドから身を起こすのに時間がかかった。
肩にのしかかっているのは、いくつもの責任、タスクともいうべきか。
ガキのお守りに美琴との和解、そして私たちの前に横たわる展望の見えない大きく、深い謎。
一方的に押しつけて自分は早々に退場だなんて、最後の最後まで自分勝手な女だったと思う。
私がそういうのを拒絶できない人間だとわかってやっているのが余計に癪だ。
「……」
まあ、それは私も同じなのだが。
私が美琴に無理やり背負わせたものもそれなりにあるし、その背負わせ合いが人と人との繋がりというものなんだろう。
つくづく煩わしいな、と思う。
「行くか」
とりあえずはすぐ手につくところから、ガキのお守りという一番身近なタスクからやっていくことにした。
------------------------------------------------
【あさひのコテージ】
あさひ「あれ、ルカさん。どうしたっすか?」
ルカ「メシだメシ。ついてこい」
未だ冬優子の代わりを私が務めることに慣れていないのか、あさひは私の顔を見て目をパチクリさせた。
ガラス玉のように綺麗な瞳に見つめられると、なんだかたじろいでしまう。
ルカ「冬優子の代わりだよ、私が面倒みなきゃだろ」
あさひ「ふーん……でも、冬優子ちゃんそんなお迎えなんかしてなかったっすよ?」
ルカ「……それは、知らん」
あさひ「そういうのは愛依ちゃんがやってたっす」
聞いているだけで切なくなるようなことを、本人はこともなげに言う。
あさひ「とりあえず準備するっすね。ちょっと待ってて欲しいっす!」
その小さな背中が部屋の奥に消えていくのを見つめていた。
ルカ「……」
本当に、この島に来る前とは大違いだ。
283プロと馴れ合うどころか、こんな風に故人との約束を律儀に守ろうとしているだなんて。
自分の変貌ぶりにウッとなるのを堪えていた。
あさひ「お待たせっす! さ、行くっすよ! 今日は恋鐘ちゃん、どんなご飯を作ってくれてるっすかね!」
ルカ「……うるせえ、朝からキャンキャン騒ぐな。頭が痛くなる」
------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
透「おはよう、二人仲良しだね」
あさひ「透ちゃんおはようっす!」
ルカ「……よう」
冬優子の死に際に見せたあの姿には一定の効用があったらしい。
これまでの裁判の翌日は、どこか取り繕ったような重たい空気が朝食会にも漂っているものだったが、今回はそんなことはない。
全員が全員吹っ切れたような様子で、変わらぬ日常を過ごしている。
……ただ、そこに美琴の姿がないだけだ。
ルカ「……」
あさひ「……? どうしたっすか?」
あさひの顔を見つめてつい考え込む。
……私はどこに座るべきなのだろう。
別に真隣に座る必要もないんだろうが、かと言って美琴の隣(だった)席に座るのもなんとなくバツが悪い。
智代子「ねえ、もう人数もだいぶ減っちゃったし、今日からはこっち側の机でみんなで食べない?」
恋鐘「8人掛け……うちも賛成たい、どうしても空席があると寂しくなっちゃうけん」
(……助かったな)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「恋鐘ちゃん、今日の朝ごはんも美味しいっすね! これ、なんて料理っすか?」
恋鐘「ふふーん、今日のはタプシログばい! この前一緒に図書館に行ったとやろ? その時に読んだ本に書いてあったフィリピンの朝ごはんを作ってみたとよ!」
智代子「このお肉、醤油の風味ですごく美味しいよ!」
あさひ「ほうっふね!」
(……口周りすげえソースで汚れてるんだけど、これを拭き取るのは流石に過保護か……?)
(ああクソ……冬優子はどうしてたっけ……!?)
恋鐘「ふふ! あさひ、口周り汚れとるよ!」
あさひ「……? あ、恋鐘ちゃんありがとうっす!」
(どれぐらい世話を焼いていいのかわかんねえ……)
(283の連中、元々距離感が近いから余計に……)
長崎女の作った朝食を口に運びながら今後の相談。
4回目の事件をくぐり抜け、私たちの状況はまた変わった。
そしてそれは、島の状況も同じはずだ。
ルカ「今回はモノミのやつ、ちゃんと働いてくれるといいんだが……」
あさひ「この前は夏葉さんのおかげで助かったっすけど、どうっすかね?」
智代子「島も残すところあと一つ、だもんね」
雛菜「でもそこに手がかりがなかったらしんどいですね〜」
恋鐘「そんなことなか! 絶対にこの島を出るためのヒントは眠っとるばい!」
透「……第5の島、か」
新エリアの解放を待ち侘びて、手をこまねくばかりの私たち。
そんな雑談ばかりの時間を数十分過ごしたところで、やつはようやっと姿を表した。
バビューン!!
モノミ「ミナサン! お待たせしました! いや、お待たせしすぎたのかもしれまちぇん……」
ルカ「お、来たな……どうだった」
モノミ「話が早いでちゅ……そうでちゅよね、あたちとミナサンの間にもう言葉なんて要らない……それが信頼ってやつでちゅ」
透「あー……うん、そうだね」
モノミ「適当に流されまちた……」
あさひ「そんなことより新しい島に行けるようになったのかどうなのか聞かせて欲しいっす!」
恋鐘「そうばい! どがんね、モノミ!」
モノミ「結論からいいまちゅ……」
モノミ「あちしはモノケモノに…………」
モノミ「勝てま…………」
モノミ「…………………………………」
モノミ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
ガチャ
美琴「新しい島、行けるようになってるよ」
ルカ「み、美琴……!?」
モノミのクソみたいな溜めをぶった斬って登場したのは美琴。
レストランの入り口の扉にもたれ掛かるようにして、私たちに話しかける。
美琴「……その様子だと、やっぱり知らなかったんだね」
ルカ「いや、それはそうだけど……お前……」
美琴「勘違いしないで、ただ伝達に来ただけ。私は今もその子と一緒に行動する気はないよ」
透「……」
美琴「それじゃあ、また」
私たちが言葉を返す暇も与えずに、美琴はすぐに姿を消した。
智代子「……まだ、一緒に行動はしてくれないんだね」
ルカ「……悪い」
恋鐘「ルカはなんも悪くなかよ!」
透「……私、だもんね」
ルカ「……」
雛菜「でも、なんでわざわざレストランに顔を見せたんですかね〜? 透ちゃんがいるのなんてわかりきってるのに〜」
あさひ「だからこそ、じゃないっすか? 美琴さんは透ちゃんを殺そうとした過去もある、そんな相手が何度も目の前に現れたら普通嫌っすよね?」
ルカ「嫌がらせ、ってか……」
あさひ「んー……というよりは、透ちゃんが弱るのを待ってるとかっすかね」
精神的に衰弱するのを待っている、なんてまるで狩りみたいだ。
今か今かとその隙を狙いすまして、弱った瞬間を討つ。
サバンナに潜むライオンのように、その牙を研ぎ澄まして目を凝らしているのが今の美琴。
アイドルとしてパフォーマンスを磨き上げていた時と同じ集中が、あらゆる干渉を拒んでしまっている。
雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ! 雛菜がず〜っと一緒にいて、守ってあげるから〜!」
透「……ごめん、雛菜」
(……)
モノミ「あ、あの〜……ミナサン、あちしのことお忘れじゃないでちゅかね……?」
あさひ「あ、まだいたんだ」
モノミ「ぐすん……決死の思い出モノケモノにリベンジしたのに……完全にいいところを持っていかれちゃったでちゅ……」
智代子「そんなことないよ! 私たち、自力じゃ島の解放なんて出来ないんだから……モノミにはすごく助けられてるよ!」
雛菜「モノミちゃん、ありがとね〜〜〜〜〜!!」
モノミ「ミナサンの優しさがフェルトの五臓六腑に染み渡りまちゅ……」
ルカ「……まあ、とりあえず新しい島には行けるようになったんだ。とりあえず行ってみようぜ」
あさひ「はいっす!」
美琴のことで少し不穏な空気は流れたが、それよりも今は目の前の新しい手がかり。
美琴に対する何か対抗策もあるかもしれない、今はとにかく新しい一歩。
私たちはすぐにレストランを後にした。
------------------------------------------------
【第5の島】
「これが第5の島……なんていうか、ラスボスって感じだな……」
新しく踏み入れた島は、比較的私たちの日常に近しい形をしていた。
コンクリートで整えられた地面、並ぶ高層の建造物。
だが、それがかえってこの南国の諸島では不気味な雰囲気を漂わせる。
あれほど照り付けていた太陽も、工場から噴き出す排気が光を遮り、目にやさしかった緑を上塗りするような灰色が気分を僅かばかりに沈めてくる。
何とはなしに騒つく胸に、思わず手を当ててしまうような光景だ。
「……美琴は、既にここにいるんだろうか」
レストランで私たちに情報を与えてきた辺り、美琴は私たちより先に立とうとしている。
もしかすると、この島にある何かで害をなそうとしている可能性もある。
七草にちかの遺志に、殉じるために。
(そんなものが、本当にあいつの遺志だって……本気で思ってるのかよ)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
電子生徒手帳のマップに目を通す。
この島はやはり他の島とは異なった文明レベルのようだ。
自然や海といったものは全く存在していない隔絶された空間。
【軍事施設】なんてものがあるのがその象徴だろう。
暴と知を体現する施設、これまでになかった情報が眠っているかもしれないな。
【ワダツミインダストリアル】は工場のようなものらしい。マップ上ではその全貌は全く見えない、調査の必要があるだろう。
それとは別に【モノクマ工場】もある。
モノクマ管轄の工場といったところなんだろうが、流石にこの文字列は私でも不安になるな。
比較的平穏なのは【屋台村】か?
とはいえこんな島に設けられた施設、まともなもんは期待できそうにないか……
ルカ「今回は一緒に来てもらうぞ、あさひ」
あさひ「ルカさんと一緒に調べるっすか? 別にいいっすけど」
ルカ「お前一人にしたらどこで怪我するかもわからねーからな、私の目の届くところに居てくれ」
あさひ「……? そうっすか」
(……やっぱ、過保護なのか?)
さて、どこから調べるか。
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.軍事施設
2.ワダツミインダストリアル
3.モノクマ工場
4.屋台村
↓1
1 選択
【コンマ判定39】
【モノクマメダル9枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数……94枚】
------------------------------------------------
【軍事施設】
この国にも一応軍隊はある。
名義を違えているので、あくまで国防のためであり、原義での暴力的な意味合いには薄いが……
でも、多分この島にあるこれは原義寄りの方だろう。
必要以上に大きな砲台を携えたヘリコプター、家ごと押し潰してしまいそうなほどに大きなキャタピラの戦車、宝石箱のように手榴弾の詰め込まれたクランク……
『制圧』という言葉が目的にふさわしいであろうだけのものがその場には並んでいた。
あさひ「すごいっす! これ、全部動かせるっすかね〜?!」
ルカ「おい、むやみに触んな……危ねえだろ」
肩にランチャーを抱え込んだあさひから慌ててひったくる。
なるほど冬優子の生前の気苦労がよく知れる。
こいつの手綱を握るのはなかなかハードなことだろう。
……いや、あいつもしっかりと握れていたのかと言われると疑問符が浮かぶのだが。
透「よっす」
ルカ「浅倉透、お前らもここの調査中か?」
透「まあね、あれ……見てよ」
浅倉透が親指で後方を指差す。
促されるままに視線をやると、そこにあったのは巨大な送風機。
船のプロペラと言われても信じるような、あれほど大きな物は_______
______以前にも見たことがある。
小宮果穂の命を奪ったあの悪趣味なおしおき。
命の灯火を掻き消そうとしたあの送風機にどう見ても相違なかった。
ルカ「な、なんでこれが……こんなところに……?!」
透「……ここにある兵器っていうのは人の命を奪うためにあるんだろうね」
雛菜「もしかして、この戦車とかもおしおきに使うようなの〜?」
透「かもね」
あんな砲身から放たれた弾に当たればひとたまりもないだろう。
それこそ一瞬で消し炭に、生命というものを軽んじて弄ぶ、モノクマらしい趣向だ。
あさひ「……? これ、なんっすかね?」
並んでいる残虐な兵器に目を奪われていると、あさひが奥から何か手のひら大の大きさのものを引っ張り出してきた。
先ほどの手榴弾の入っていたものとはまた別の収納からの様子。実際、その武器の色合いや形状も異なっている。
ルカ「……あ?」
手に取ってみると、ふざけた塗装。
ネズミをモチーフにしただろうマスコットが下品な笑顔を浮かべていた。
ジョークグッズか何かの類いだろう。
そう思って放ろうとした、その時。
透「_____待って」
浅倉透がそれを制した。
ルカ「なんだよ」
透「それ……私のだ」
ルカ「は? これが?」
透「私の……黒幕への対抗策。ほら、前に話したでしょ、電波を断絶する、黒幕の干渉を拒むアイテム。それが、これ」
≪透「……そもそも、私が連絡取れてたのはモノクマからの干渉を拒める手段があったからなんだよね」
透「この島にいる限り、モノクマには全部知られちゃうんだよね。何をしてるか、何を話してるのかも。全部」
透「だから、そこら辺をクリアにする機能を持ったのがあったんだけど……今はもう使えない、取り上げられちゃったから」≫
透「それは『エレクトボム』って言って、炸裂すると辺り一体に妨害電波を発生させてさ。電子機器の類は使えなくなるし、特定の電波以外は通さなくなっちゃう」
ルカ「マジか……んなもんあったら、モノクマの監視カメラも」
透「そういうこと。島の中に安息地が作れちゃう」
透「大体半径百メートル? しかも球でね」
ルカ「ドローンなんかが飛んでても、落ちちまうのか……」
雛菜「でも、それモノクマに奪われてたんだよね〜? なんでこんなところにあるの〜?」
あさひ「黒幕が研究し尽くした後、とかなんすかね?」
ルカ「もう対処法を見つけて用済みだってことか?」
あさひ「かもしれないっすね、わたしたちに返す理由が特にないっすから」
ルカ「じゃあこれは無用の長物ってやつか……」
透「……」
雛菜「透ちゃん〜?」
透「これ、とりあえず預かってていい?」
ルカ「ん? まあ、元々お前のやつだしな……でも、むやみに使うなよ、さっきあさひが言った通り手の内は知られてるんだ」
透「ん、オッケー」
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.ワダツミインダストリアル
2.モノクマ工場
3.屋台村
↓1
1 選択
【コンマ判定52】
【モノクマメダル2枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数……96枚】
------------------------------------------------
【ワダツミインダストリアル】
ルカ「ここは、なんだ……?」
外観は昔見た洋画に出てくる敵組織のアジトのようだった。
蜂の巣のようにくっついた立方体の装飾が前衛的で、まるで内装を窺わせない。
恐る恐る壁に取り付けられたボタンを押すと、仰々しい音と共にシャッターが持ち上がった。
あさひ「中、入ってみるっすよ! ルカさん!」
ルカ「あっ、コラ、走んな!」
あさひが我先にと潜って駆けていくので慌てて跡を追う。
金網と鉄板で作られた足場を勢いに任せて登っていく。
天井の中央に取り付けられた大きな電灯に近づくにつれて、やがて視界は開け……ついに建物の中の全貌が私の視界に飛び込んできた。
天井から垂れ下がる巨大なロボットアームは忙しなくその巨体に何か機械をあてがい火花を散らす。
足元のケーブルは極太の静脈のように複雑に絡み合い、ネオン色の発光をしている。
そうやって壮大で丁重な世話を受けているのは、私たちの背丈の何倍はあろうかというような人柄の機械。
ルカ「なんだよ、これ……」
モノケモノとはまた別の機体がそこに6体も並んでいたのである。
あさひ「なんなんすかね、このロボット」
ルカ「……碌なもんじゃねーのは確かだ」
災害救助用なんかでは間違ってもない。
人間で言う手と思しき部分にはガトリング銃のようなものが備わっており、足の部分はスプリンターのように異常な形状をしている。
血に飢えた悪魔がこんな姿だと言われたら、すぐに飲み込めそうな悍ましき造形だ。
智代子「このロボット……『エグイサル』って言うんだって」
ルカ「なんだ、その……どこぞの男性グループを敵に回したようなネーミングは」
智代子「あっちのコンピュータにあったデータなんだけど……どうやらコロシアイに私たちが従わなかった時の強要の武力手段みたい」
智代子「通常モードとは別に嬲るための手加減モードまであって……用意周到って感じだったよ……」
あさひ「モノケモノの改良版、みたいなもんっすかね」
ルカ「……改悪だよ、こんなの」
赤、緑、青、ピンク、黄色、白。
ハの字に並んだ機体が私たちを見下ろしているこの空間はなんとも居心地が悪い。
あさひ「……」
ルカ「おい、もういいだろ。いくぞ」
あさひは、私とは魔反対の反応を見せていたが。
一体、このロボットの何がそんなに心を射止めたのか。
本当に、よくわからないガキだな。
-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
1.モノクマ工場
2.屋台村
↓1
1 選択
【コンマ判定 94】
【モノクマメダル4枚獲得しました!】
【現在のモノクマメダル枚数……100枚】
------------------------------------------------
【モノクマ工場】
もしこの世界に醜悪な建造物を決めるコンテストがあるなら、この建物はかなり上位に食い込むだろう。
モノクマそのものを象ったドーム状の天井が、汚く濁った黒い煙を吐き出して空を穢す。
見ているだけで胸やけがしそうな光景だ。
あさひ「これ、何作ってるっすかね?」
ルカ「……まあ、碌なもんじゃねえだろうな」
工場には倉庫も隣接して建てられているらしい。
一応後で確認しておいた方がいいか?
------------------------------------------------
【工場内部】
ルカ「な、なんだよ……これ……!?」
工場に大蛇のように縦横無尽に張り巡らされたベルトコンベア。
その上に載せられているのは寸胴な形をした素体。
それがコンベアを進むにつれて毛を纏い、彩色され、そして頭部や手足を身につけて行く。
最後には腹部に不細工な臍を取り付けて完成。
そこで作られていたのは_____
あさひ「モノクマの工場っす!」
ルカ「おいおい……なんだよこれ……」
確かにあいつはスペアの存在を仄めかしてはいたが、そんなレベルの話じゃない。
私たちの頭数の何十倍かという数のモノクマが息を吸って吐いての間に量産されているのだ。
あさひ「あれ、全部一つ一つに爆弾が埋め込まれてるっすよ?」
ルカ「……」
あさひ「それに、武器もちゃんと全部に取り付けられてるし……あ、カメラもスピーカーも!」
立ち眩みがした。
この島に逃げ場はない。そんなことは分かり切っていることだと思っていた。
でも、まだまだ認識が甘かった。
私たちに課せられているのは制限付きの区画ではなく、絶対的な監視と拘束に紐づけられた、檻。
視界の端々まで連なる格子が、途端に実態を伴って現れたのだ。
その壮大さと荒唐無稽さの前に、膝を折る以外の反応など示せようもない。
モノクマ「やあやあ! ボクの生まれ故郷にようこそ!」
あさひ「あ、モノクマ! ここで作られてるのって……」
モノクマ「うん、ボクそのものだよね。いまこうやってお話している『ボク』と性能に何ら遜色ないボクが今この瞬間も量産されているんだよ」
あさひ「じゃあ、モノクマはいくら破壊しても意味ないってことっすか?」
モノクマ「なんでそんな物騒な質問をするのかは置いといて、実際その通りだね。ゴキブリ以上の繁殖能力を持つボクを一体一体潰しても無駄だし、そもそも校則違反でオマエラが死んじゃうよ」
ルカ「……こんなに量産して、お前はいったい何を企んでんだよ……!」
モノクマ「企む? うーん、何って言われてもなぁ……しいて言うなら、世界デビューかな?」
ルカ「はぁ?」
モノクマ「これだけの数があれば、世界中にばらまいても足りるでしょ? モノクマの名をワールドワイドにするその足掛かりにでもしようかな!」
(こいつは何を言ってるんだ……)
あさひ「……」
あさひ「ねえ、モノクマ。あっちの部屋は何っすか?」
モノクマ「ん? ああ、あれはバックヤードで、別に何も面白いものはないよ? 掃除用具とか、そういうのの簡易的な物置さ」
あさひ「へぇ……」
モノクマの馬鹿げた数と、馬鹿げた展望とに頭痛を起こしながら私は工場を後にした。
-
------------------------------------------------
【工場倉庫】
ルカ「……あいつの言ってた世界進出とやら、案外本気なのか」
倉庫を開けた瞬間にげんなりする。
そこら中に転がるのはモノクマの等身大パネルに、マスコットサイズのぬいぐるみ。
雑多な用品も並んではいるものの、埃をかぶっているあたり普段から使われてはいない様子。
あさひ「何か使えそうなものとかないっすかね?」
ルカ「……特にはない、か」
辺りを一応調べては見るが、何も実用的なものはなさそうだ。
工具などの専門的なものはそもそも使い方も分からない。
ここは、そういう空間があったで納得するしかなさそうだ。
そう諦めて、出ようとしたその時だった。
1枚のすすけたファイルが視界に入る。
青色のファイルには、簡素なテープが貼り付けられ、マーカーペンで何か書かれてある。
ルカ「『ジャバウォック島再開発計画』……?」
あさひ「……? 変っすね、この島ってもともと観光地だったっすよね? そんな場所で再開発をするっすか?」
ルカ「……ちょっと読んでみるか」
パラパラとめくって確かめていく。
そういえば、この島に来てまだ日も浅い時……風野灯織が何か言っていた気がする。、
≪灯織「皆さんは中央の島の公園には行かれましたか?」
夏葉「ええ、確か巨大な銅像が置いてあったわね。動物を模したものだったはずよ」
愛依「あー! あのあさひちゃんが登ってたやつ!」
にちか「えぇ……?」
灯織「あの銅像を見た時に、以前聞いた話を思い出したんです。太平洋に浮かぶ小さな島で、風光明媚な常夏の楽園という呼び方をされるにふさわしい島の存在を……」
灯織「中央の小さな島を中心にして、“5つの島”から構成されるその島々は同じく“神聖な5体の生物”を島の象徴にしているらしいんです」
にちか「えっ……?! そ、それって……」
灯織「確か、その名前は【ジャバウォック島】」
雛菜「ふ~ん? 雛菜はあんまり聞き覚えない感じですね~」
夏葉「……以前父の海外赴任の際に一度耳にした名前だわ。でも灯織、それっておかしくないかしら」
果穂「おかしい……ですか?」
灯織「はい……ジャバウォック島は確か……もう人が住んでいないはずなんです」
恋鐘「ふぇ? でも実際島には誰もおらんよ?」
摩美々「そうじゃなくて、管理する人間もいないぐらいの廃島ってことでしょー?」
灯織「はい……こんなに環境が整備されているというのがなんだか気になって」≫
この島はもともと廃島になっていた、それなのにこれほどの設備環境が、手入れをされた状態で残っている。
希望ヶ峰学園歌姫計画とやらで連れてこられたと聞いていた私たちは、あれほどの資金のある組織ならと納得していたのだが……
このファイルに記されている開発元の名前は『希望ヶ峰学園』ではない。
ルカ「……『未来機関』ってのはなんだ?」
あさひ「……このロゴ、何かで見たことあるっすね」
ルカ「私もだ……でも、一体……どこで見た?」
妙に角ばった書式の2文字。
それとにらめっこすること数十秒。
凝り固まった記憶の奥底に、該当するものを掘り出すことに成功する。
≪ルカ「とりあえず近づいてみるぞ」
千雪「あっ……待って!」
近づいてみたが、あるのは私の身長を優に超す大きさの扉。
しかもドアノブがあってそれをひねって開けるような単純な扉ではなく、もっと電子的で近未来的な……全く見なれない扉だ。
ルカ「……これ、なんなんだ?」
しかもその扉の表面にはデカデカと『未来』の二文字。
私たちの良く知る漢字で掘られている……ということは、この遺跡は私たちと同じ文化圏のものだということになる。それもまた妙な話だ。≫
ルカ「……第二の島の、遺跡か……!」
あさひ「ああ、あのツタの絡まってたところっすね!」
ルカ「あの遺跡……何やら厳重な装備がされてたよな……そういえば、あそこのパスワードも結局分からずじまいだよな」
あさひ「……ルカさん、これどういう意味っすかね?」
あさひ「ジャバウォック島の中央に位置する行政施設を改築し、未来機関の活動拠点にする……そんな建物、中央の島にあったっすか?」
ルカ「……いや、あの島にはモノクマロックと、モノケモノの入ってた銅像しかない。それ以外には、何も無いぞ」
あさひ「……それに、ほかにもおかしなところがあるっすよ。手付かずの無人島になっていたこの島で、被検体を見つけたとか……敵対組織が根城にしてたとか……ちんぷんかんぷんっす」
ルカ「被検体……何か実験でもしてたのか?」
ルカ「……」
ルカ「……!」
実験、その言葉を口にした瞬間に昨夜の写真がフラッシュバックする。
あそこに収められていたのは、前回のコロシアイとやらで生き残ったとされる連中が昏睡している私たちを眼前に白衣を着こんだ姿。
実験と言う言葉に当てはめるならあれ以上にうってつけの材料はない。
そしてそうなると、ここにあるもう一つの言葉『敵対組織』というものが当然紐づいてくる。
もしかすると、あのコロシアイを生き延びた5人はその組織とやらに所属していて未来機関との間に何か衝突を起こしていたのではないか?
となると……私たちにとって味方となるのは、そのどちらなんだ?
ルカ「……」
でも、その疑問を口にすることはできない。
冬優子が託した手掛かりは不安と疑念を振りまくためのものではない。
真実にたどり着くための一ピース、切りどころはしっかりと見極めないと。
まだ、あさひにも言うべきじゃない。
ルカ「それにしても、聞いてた話とあまりにも違うな……この様子だと、無人島ですらなさそうだよな」
あさひ「うーん……人が過ごしてたっぽい形跡……あんまり感じなかったっすけどね……」
ルカ「この島で言ってるジャバウォック島と、私たちのいるジャバウォック島って本当に同じものなのか……?」
ふつふつと湧き上がる疑問を前に、首をひねるしか出来ないのがはがゆい。
せめてこの島の事を知っていた風野灯織か有栖川夏葉でも残っていれば話はまた違ったんだが……
-------------------------------------------------
【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】
【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】
↓1
【コンマ判定 42】
【モノクマメダル2枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数……102枚】
------------------------------------------------
【屋台村】
恋鐘「あ、二人とも~! ちょっと食べて行かんね~?」
黒と灰色で作られた無機質な街並みの中に突然姿を現す、人々の活気ある声が聞こえてきそうな軒の数々。
そこかしこから香ばしい香りが鼻をくすぐり、提灯の明かりも目を引いた。
ルカ「よう……ここは?」
恋鐘「見ての通りたい。でも、お祭りとかをやっとる雰囲気じゃなかね」
あさひ「とんこつラーメン、おでん、焼き鳥……なんだか社長さんが好きそうなものばっかりっす」
ルカ「梯子酒でもしろってか……?」
恋鐘「別にここにならんどる食べ物に害はなかよ、小腹が空いたらつまんでもいいと思うばい」
試しに近くのおでんの屋台から大根を引き抜いて口に運ぶ。
……うまい。
出汁がよく染み込んでいるし、型崩れもしていない。
島の外の店にも全く引けを取らない味だ。
……でも、どうして?
なんでこんなところに食べ物を用意する必要が?
ルカ「何か手掛かりの類いはなかったのか?」
恋鐘「んー……ざっと見た感じは特にはなさそうたい」
ルカ「おいおい……いよいよなんのためなんだ、これ」
あさひ「モノクマ、無意味なことも好きっすからね」
ルカ「にしてもなぁ……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
最後の島の探索は私たちに更なる謎と威圧感とを齎した。
圧倒的な武力を前にして私たちに抵抗の手段などないだろうし、この島の暮らしに希望的な展開は待っていない。
それを改めてまざまざと見せつけられたような気分だ。
あさひ「うーん、手がかりないっすね……」
冬優子に押しつけられたガキの世話にも手応えがないし、美琴のことは言うまでもない。
私たちの背中にのしかかるものばかりが増えていく。
パンクしてしまうのも時間の問題といったところか。
ルカ「……病んだ」
口癖のように、乾いた悲鳴をあげた。
あさひ「ルカさん?」
ルカ「ああいや……とりあえずレストランに戻るか、情報共有だろ」
あさひ「はいっす」
------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
智代子「モノクマ……黒幕は、モノケモノ以上の武力を持ってたよ。量産されるモノクマに、新型の人型破壊兵器……軍事基地のものも合わせたらひとたまりもないかも」
恋鐘「それとは対照的になぜか屋台が並んでいる区画があったばい、何の目的があってあんなもん作ったとやろ」
レストランに持ち帰った情報も、どれも不穏なものばかり。
口々の報告のいずれもその言葉尻は重たい。
あさひ「そういえばルカさん、あの工場の倉庫で見たファイルの話はいいんすか?」
ルカ「……! ああ、そうだったな」
雛菜「ファイルですか〜?」
ルカ「ああ、あの悪趣味な造形した工場。そのすぐ隣にはちいさな倉庫があってな、そんなかで見つけたやつなんだよ」
ルカ「『ジャバウォック島再開発計画』、ってな」
智代子「再開発……? あれ、でもジャバウォック島はそもそも廃島だったんだよね?」
恋鐘「そいを希望ヶ峰学園が買い取って改造した島とやろ?」
ルカ「だが、そこに書いてあった内容は大違いだ。どうみてもこの島には人が住んでいるコミュニティが存在していたし、更には……未来機関の敵対組織もいたらしい」
雛菜「未来機関……なんか聞いたことだけはあるかも〜」
透「第二の島の遺跡、あれだよね」
ルカ「ああ、厳重なロックでとても出入りはできやしねーけどな。浅倉透、お前は何か知ってるか?」
透「……未来機関自体はあんまり。島の外のことはあまり知らないし」
雛菜「ふ〜ん……」
あさひ「なんだかわたしたちの知ってる情報とチグハグな感じがして気持ちが悪いっす」
ルカ「だな……まあ分かっちゃいたが、答えを与えてはくれないのがこの島だ。手がかりを探しながら考えるしかねー」
未来機関の話を持ち出しては見るものの、それを知っている人間など要るはずもなく。
結局のところ私たちはただ行動範囲を広げただけで、それ以上の意味もそれ以下の価値もない。
結局はこの鬱屈とした南国生活を延長するほかないのである。
ルカ「……なあ」
ルカ「誰か、美琴の姿は……見なかったか?」
そんな中で私は切り出した。
聞いたところでどうにかなるわけでもないのに、それでも縋ってしまうのは我ながら情けないと思う。
第4の島ではジェットコースターと言う明確な協力の動機があったが故、あいつの姿を追うことができたが、今回はあいつの影を掴むことすらできなかった。
今朝がたレストランで見てから、それっきり。
今のあいつは、あれだけの物騒な品の数々を見て何を思っているのだろうか。
智代子「……ごめん、ルカちゃんには悪いけど美琴さんは見かけてないよ」
恋鐘「美琴も第5の島の探索はしとったはずやけん、誰か一人でも見とってもおかしくなかと思うけど……」
透「……見てないかな」
雛菜「うん、ここの人たち以外は見かけてないです~」
あさひ「わたしたちもっすよね」
ルカ「……チッ」
闇の中に身を隠す美琴、それが異様に不気味で胸がざわついた。
かつての相方に向ける感情としてはあまりにもそれはザラついていた。
ルカ「……こんなこと言いたかねーけどよ、今の美琴はマジで狂ってる。どこで誰に刃を向けるとも限らねーんだ。警戒しとけよ」
あさひ「……」
無意識なんだろう、あさひは私の裾を握っていた。
ユニットの仲間の死を2回も経験したこいつも、自覚しないうちに精神の衰弱を迎えている。
他の連中も下唇を少し強く嚙んだようにして、身を寄せ合う。
どこからやってくるかもしれない外敵に対する、生物の本能から来る防衛機制だ。
透「あ、それじゃあ」
そんな空気の重たいレストランで、浅倉透が一歩踏み出した。
懐を少しまさぐって、少し大きめな石ぐらいの大きさの巾着をいくつか取り出した。
それを机の上に並べて、私たちを見やった。
透「これ、お守り……全員分あるからさ、使ってよ」
不細工な装丁には283プロダクションのマークが縫い付けてある。
これは、こいつ本人がやったのだろうか?
私はその所属ではないのだが、一応は手に取って証明に掲げてみる。
あさひ「これ、何が入ってるっすか?」
透「中は……今は見ないで、いざというときに使ってほしい」
智代子「いざというときって……」
恋鐘「自分の命ば危なくなったときってことたい……?」
透「それは……任せた。でもきっと、みんなの役に立つから」
開けるなのお達し通り、かなり厳重に巾着の口も縫い付けてある。
よほどがない限りはこのままにしておけと言うことなのだろう。
私は素直に従い、懐にしのばせることにした。
透「……前に言ってたでしょ。もう事件は起こさせないって」
≪ルカ「言っただろ、お前の目論み通りにはならねえって」
モノクマ「なぬ?」
ルカ「例えこの中にまだ殺しを企んでる奴がいようとも、他の6人でそれを封殺する。私たちはもう誰も死なさない、事件なんて起こさせない」》
透「私も、そうしたい。もう誰にも死んでほしくなんかないから」
透「生き残ろ。絶対」
智代子「うんうん! 透ちゃん、ありがとう! 透ちゃんの想いのつまったお守りがあると心強いよ!」
恋鐘「うちもおんなじ気持ちばい! ここにいるみんなで揃って島を出る、これはもう確定事項やけんね!」
ここにいるみんな、にここにいない一人が含まれるのか尋ねるのはやめておいた。
もしそれに漏れているのなら、枠に戻してやるのはそもそも私の役目だから。
それができるのかどうか、正直なところ自身は毛ほどもないが……
ルカ「このお守りが、それを助けてくれる……だろ?」
透「うん、神様が見てくれるよ。プリーズ、ご加護」
……自覚がない皮肉が、少しだけ胸を刺した。
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
日が沈んで夜が覆い、外は草木の息吹だけが響く。
この島に私たち以外の人気はない。
人数が少なくなるにつれ、その静寂は増す一方だった。
そんな静寂の中に、身を隠して殺意を研ぎ澄ます。
あいも変わらずも眩い満月を見上げると、自然とお守りを握る手にも力がこもった。
神頼み、ではないが標にはなる。
私は一人で戦っているわけではないというだけの指標で、心もとはない。
それでも妥協して、私は扉に手をかけた。
------------------------------------------------
【第5の島】
この島はやっぱり異様だ。
他の島と違って草木が風に靡くような音は聞こえてこない。
コンクリートで取り囲まれた環境は、うるさすぎるほどの静寂を生む。
自分の靴音だけが響く静けさに、思わず耳を覆った。
______ガガ
音が指の隙間から飛び込んできた。
遠くの方から、怪獣が一歩を踏み出したような音。
思わず首を振り回して音の主を探してしまう。
何度首を振ってもどれだけ目を凝らそうともすぐにはわからない異音に、自然と足が動き出す。
その音は少しずつ、ゆっくりと大きくなり、近づいている。
「……美琴!」
その名前を口にしながら、駆け出した。
------------------------------------------------
【ワダツミインダストリアル】
その音は、夜の裂け目から。
高く高いシャッターの隙間から見える光の奥で影が動くのが目に入る。
照明を足元から浴びているのか、その影は異様に大きく、そしておおよそ人とは思えない輪郭をしていた。
妙に角ばった形に、細長い線が付きまとう。
シルエットだけでは何か伺い知れず、息を殺しながらシャッターに近づいた。
気取られないように、そっと首を伸ばした。
____ガガ
聞こえていた異音は機械音。
ゆっくりと動かすその腕と、処理をするCPUが呟く声。
____ガガ
悠然と我が物顔で手足を動かしているそれは、先ほど称した通り怪物そのものに見えた。
腕の先には尖った爪のような備わり、どっしりとしたその脚は家屋も踏み倒してしまいそう。
その怪物に、私は見おぼえがあった。
つい昼方に初めて見たばかり……
私たちが黒幕の持つ力について、その認識と恐怖とを新たにした火付け役。
……エグイサルが、動いていた。
「……こ、こいつ動くのかよ……!?」
まだ実践で投入されることはないだろうと高をくくっていた。
反抗的な口は聞きつつも、コロシアイには参加してしまっていた私たちは黒幕にとって脅威でも何でもないはず。
そう思っていた。
でも、とっくにお相手は痺れを切らしていたようだ。
今すぐにでもと言わんばかりの暴力を目の前にして、思わずその場にへたり込む。
一瞬にして全身の血の気が引いた。
と、同時に冷めていく体温の中で少しだけ脳は醒めていた。
ここまでの生活の中で麻痺していた部分が、かえって役に立つ。
恐怖よりも先に立った冷静が、眼球を動かした。
今エグイサルが動いているということは、動かしている人間がいるということ。
そして、それは私たちにとっての敵に他ならないだろう。
狸なのか、はたまた黒幕なのか……なんにせよそれを知っておくことには大きな意味がある。
息を呑んで目を見張った。
……でも、そこに人の影はなかった。
エグイサルの足元、奥、整備のための鉄橋、隅々まで目を凝らしても人の姿はない。
「もしかして……入ってやがんのか?」
となると、残される空間はただ一つ。
エグイサル、そのものの内部だ。
コックピットの中になら、その姿を潜ませることができる。
でも、どうやってその正体を探ればいいというのだろうか。
今ここにいるのだって危険なのに、そもそも近づくなんて自殺行為。
「……チッ」
歯がゆさに舌打ちした。
……それがまずかった。
_____ブー! ブー!
「な、なんだ……?!」
何がきっかけになったのかはわからない。
だが、私の舌内を皮切りに辺り一帯に鳴り響きだすブザー音。
侵入者を感知したと声高に叫ぶそれに呼応して、地響きが始まった。
エグイサルが、こちらに近づき始めていた。
(ま、まずい……!)
見つかったら私なんて二秒で肉塊だ。
慌てて辺りに身を隠せるところを探す。
……が、見つからない。
そんなもの、あるはずがない。
この島には自然がそもそも無いのだから。
開けた無機質な視界には、障害物と呼べそうなもの一つ見当たらなかった。
(……終わった)
万事休す、その言葉が脳裏によぎった瞬間。
バッ!!
「……!?」
私の身体は強い力で引っ張られ、その場に崩れ落ちた。
そしてその直後、真っ暗闇に染まる視界。
思わず抵抗しようともがく。
「……動かないで、じっとして」
そんな私を厳しく諭すように、耳元で呟いた。
「……美琴」
その声には、聞き覚えがあった。
「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
「な、何を……」
「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
「……!」
「……静かにしてて」
私に覆いかぶさるようにしているその重みに、身をゆだねた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そこから何分が経っただろうか。
辺りに鳴り響いていたブザーが鎮まり、地響きも完全に収まった。
とりあえずは、凌いだということなのだろう。
私の視界にもゆっくりと星明りが差し込んでくる。
「……危ないところだったね」
ゆっくりと視界がその明るさに慣れていく。
目の前に立つ長身のシルエット、その全貌も見えてきた。
グラデーションがかった毛先、赤と黒のブルゾン、あのころと変わらないペンダント……
「美琴……オマエ、どうしてこんなところに」
やっぱり緋田美琴に変わりない。
「ちょうど用事があって立ち寄ったところだったの。でもちょうどよかった、ルカには死んでほしくないから」
(私、には……)
その瞳には、かつてのハイライトはもう灯っちゃいない。
「用事ってなんなんだよ、こんな島に何の用事があるって……」
「分かってるでしょ?」
「……!」
美琴の肩には頑丈なつくりをしていそうなバッグがかかっていた。
最近はやりのフードデリバリーのカバンを小ぶりにした代わりにポケットを増やした感じだ。
そのポケットの所々から、何か柄のようなものが見えているのが、嫌。
「私も口だけじゃいられないから。そろそろちゃんとしないと」
「ざけんな……冬優子の裁判の時の私の言葉、忘れたとは言わせねえぞ……!」
「殺しを誰かが企んでも、残りの6人で止める、だっけ?」
「そうだよ! だから、美琴もいい加減に____」
「本当に止められると思ってる?」
美琴はこれまでと違って、私の前から逃げようとはしなかった。
むしろその逆、覗き込むようにしながら、一歩ずつ距離を詰めてくる。
思わず私はその迫力の前にあとずさり。
「あ、当たり前だろ……! 美琴だって、体格は私たちより大きいかもしれないけど全員で押さえつけられたらどうしようもないし……!」
「……ルカ。さっきの、見たよね?」
一歩、一歩。
「さっきの……だと……?」
「エグイサル。もし、あれを使って誰かが誰かを殺そうとしたとして、止められるの?」
「は、ちょっと待て……」
「ファイナルデッドルームなんかもあったよね、あそこにも武器は沢山」
「み、美琴……!」
いよいよ背中に壁がぶつかった。
「無理だと思う。私は」
壁にもたれかかって、ズルズルとその場に座りこんだ。
私を見下ろす美琴の背後で満月が笑っている。
「美琴……」
名前を呟くしかできなかった。
手足から力が抜けきってしまっていたから。
「それじゃあ、おやすみ。ルカ」
アルミシートを乱雑にまとめ上げて、背を向けた。
美琴の姿はすぐに闇夜に呑まれて輪郭を見失う。
「……」
30分ほど、そこに座っていた。
というわけで本日はここまで、物語の終わりの始まり、5章がついに幕をあけました。
なかなか5章は事件もその後の展開も考えるのにカロリーを使いましたが、楽しんでいただけるものになっていると思います……!
どうかお付き合いください!
余談ですが今章のチャプタータイトルは「アイオーン」のラテン語表記と言う力技です。
滅茶苦茶好きな曲なので、なんとか章題にねじ込みたかった……
次回更新は6/13(月)の21:30前後を予定しています。
それではまたよろしくお願いします、お疲れさまでした。
【5章段階での主人公の情報】
‣習得スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕
・【ピトス・エルピス】
〔反論ショーダウン・パニックトークアクションの時コンマの基本値が+15される〕
‣現在のモノクマメダル枚数…102枚
‣現在の希望のカケラ…15個
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
‣通信簿および親愛度
【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…5.5
【超大学生級の写真部】 三峰結華…0【DEAD】
【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0【DEAD】
【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…6.0
【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…12.0【DEAD】
【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…8.0
【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…12.0【DEAD】
【超高校級のギャル】 和泉愛依…0【DEAD】
【超高校級の???】 浅倉透…12.0
【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…5.5
【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…4.0
____
______
________
=========
≪island life:day 23≫
=========
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
ようやっと手足の実感が戻ってきた。
萎びてしまった気力から、シワシワにでもなっていないかと思ったがさすがにそれは無かった。
ただ、手足はなんだかいつも以上に細く見えて血管が鮮明に見えた。
「……気色悪い」
ピンポーン
そう呟いたところでインターホンが鳴る。
気色悪い指で髪をかき上げながらドアを開けた。
あさひ「ルカさん、おはようっす!」
ルカ「……あ?」
あさひ「なんでそんな不思議そうなんっすか? 朝ご飯食べないっす?」
ルカ「いや、そりゃオマエ……つい昨日お迎えはいらねえって」
あさひ「冬優子ちゃんはしてなかったってだけっすよ? ルカさんは一緒に行きたいのかなって」
ルカ「……そんなわけねーから、その言いぐさはやめろ。気色悪い」
あさひ「……?」
ルカ「わかった、わかった。とりあえず準備するから、中で待っとけ」
あさひ「はいっす!」
無邪気な返事をするあさひ。
こいつに絡まれているところをほかの人間に見られたくないからあわてて部屋の中にしまい込んだ。
……もう見るようなやつもそんなに残っちゃいないのに。
ルカ「いいか? どこも触んなよ、準備はすぐ終わんだから!」
あさひ「はいっす!」
相変わらず信用の置けない明朗な返事にため息。
ベッドの上に座り込ませてそそくさと支度を開始した。
あさひ「……」
あさひ「……」
あさひ「……」
ずっと背後のあさひが気にかかって仕方ない。
別に見られて困るようなものもないのだけど、自分の空間に人が割り込むというのはそれだけでかなりの異物感だ。
ましてこいつともなるとその異物感も倍に増す。
どこかで爆発でも起きるんじゃないかというざわつきばかりが加速した。
ルカ「……あ」
あさひ「ルカさん、どうしたっすか?」
見られちゃまずいもの……あった。
裁判終わり、ポストに投函されていた冬優子からの手紙。
あれに同封されていた写真……
見られるわけにはいかない。
コロシアイを防ぐのを本格化しようという段階で、前回のコロシアイの生き残り連中が私たちに何かを仕掛けていた写真は不信を振りまく種になりうる。
まだことの詳細がわからぬうちに見せびらかすわけにはいかない。
ルカ「別に、なんでもねーよ」
あさひ「……? そっすか?」
とはいいつつ強引にベッドの脇のキャビネットから封筒を引っ張り出して自分の懐に忍ばせた。
ガッツリその動作を見られはしたものの、中身は見られていないはず。
ルカ「おら、準備できたぞ。さっさと出ろ」
あさひ「入れって言ったり出ろって言ったりよくわからないっす」
ルカ「飯食うんだよ、ほら!」
そしてとにかく秘密からは目を逸らさせる。
準備は中途半端になってしまったが、まあこの島にはパパラッチなんかもいない。
多少不恰好でも許されるだろう。
今はあさひの関心をよそに飛ばす方が優先される。
私はあさひの背中を無理に押して、後ろ手に扉を閉めた。
ルカ「ついてきな」
あさひ「……? はいっす」
あさひ「……ルカさんも、もらってたんだ」
------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
恋鐘「おはよ〜、ルカ! 今日もあさひと一緒ばい?」
あさひ「恋鐘ちゃんおはようっす! 今朝はわたしが迎えに行ったっすよ!」
透「おー、懐かれてるじゃん。やるね、女ったらし」
ルカ「最悪の言葉選びだな」
レストランに着くと昨日と同じ8人掛けの机に既に他の連中が腰掛けていた。
私とあさひも促されるままに席に着く。
ルカ「……そういえば、昨日あの後美琴に会った」
智代子「えっ?! 美琴さんと?!」
ルカ「ワダツミインダストリアル、あそこで開発されてたエグイサルが夜の間に誰かに動かされててよ。その現場で美琴に鉢合わせた」
智代子「じゃ、じゃあ美琴さんがエグイサルを操縦してたの……?」
ルカ「いや、そうじゃねえ。あいつは私が見つかりかけたところを守ってくれた。操縦してたのはまた別の誰かだ」
一応は昨日のことを報告することにした。
エグイサルが既に実用段階であることは周知しておかなくてはならないし、美琴への対策もやはり必要なのを確認した。
これ以上の死者を出さないと冬優子の裁判で決意したからには、誤魔化すわけにはいかないのだ。
恋鐘「そ、そがん危なかこと……一人でそげなところに行ったらいかんばい!」
ルカ「……悪い」
あさひ「なんで美琴さんはそんなところにいたっすかね。操縦してたわけでもないのに」
瞬間、あのときの美琴の荷物を想起する。
鞄から見える柄のような物、その先にはきっと肉を割くには十分すぎる刃物。
ルカ「浅倉透」
透「……うん」
ルカ「美琴は、本気だからな」
雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ。雛菜がずっと一緒にいるから……絶対、守ってみせるから」
透「雛菜……サンキュ。でも私だってただお姫様やるわけにはいかないし」
透「争うよ」
ルカ「……下手な接触はしないようにな」
透「分かってるって」
恋鐘「透、困ったときはルカだけじゃなくてうちらにも遠慮なく言って!」
智代子「わ、私も微力ながら助太刀いたしますよ!」
透「やば。めっちゃいるじゃん、用心棒」
ルカ「だからって気抜くなよ、美琴は私たちの誰よりも背丈だって高い。そう簡単に抑え込めるわけじゃない」
智代子「それに美琴さんはファイナルデッドルームもクリアしてるし、武器だって私たちの予想以上のものを持ってるかもしれないよ!」
恋鐘「毒薬だってドラッグストアから調達しとったけん、不意打ちにも注意せんばね!」
ルカ「……そう考えると、恐ろしいな。美琴のやつ」
雛菜「あなたが弱気になっちゃ一番ダメじゃないですか~?」
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
何も一人じゃないんだ。
私たちは全員が全員、協力する下地ができている。
誰かが狙われようものなら、きっと他の全員で守ることができる。
私も本気でそう考えている。
考えている、のに……
『無理だと思う、私は』
「……チッ」
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…15個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 智代子選択
【第5の島 屋台村】
ルカ「……まあ、オマエはここだろうと思ったよ」
智代子「あ、ルカちゃん! ちょうどよかった、いい感じにここのおでん煮えてきてるよ!」
ルカ「さっき朝飯食ったばっかじゃねえのか……?」
智代子「おでんは別腹と昔の偉い人も言ってたじゃないですか!」
ルカ「どこの誰が言ってたんだよ……」
暖簾に油煙が纏う空間は、朝だろうと爽やかさとは無縁だ。
よくもまあこんなところで朝の日差しを浴びることが出来るものだといっそ感嘆した。
……これくらいの気丈さが、自分にも欲しいところだ。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
【ジャパニーズティーカップを渡した……】
智代子「こ、これは……?! ただの水をも、至極の一杯に変えてしまうという伝説の……?!」
ルカ「……いや、知らねえけど……そんなすげえもんなのか?」
智代子「こ、これを私がちょうだいしても……よろしいんですか?」
ルカ「やたら仰々しくなるのは何なんだ……」
智代子「ははーっ!」
ルカ「……」
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより親愛度が多めに上昇します】
-------------------------------------------------
智代子「いやぁ~、やっぱりおでんは大根が正義だねぇ! 味が染み染みで口当たりもまろやか……!」
ルカ「私は牛筋のが好きだけどな」
智代子「お、ルカちゃんも通だね! さてはお酒のあてにしてちょくちょく楽しんでたり?」
ルカ「……私はそんな、酒とか」
呑まなくはないが、そんな加齢臭の染みつくような飲み方はまだ未経験だ。
……おっさんくさいのみかたなんて、チャンチャラ御免。
智代子「……どうしたの、ルカちゃん?」
ルカ「……いや、別によ」
でも、こう酒に浸されたような淀んだ空気の漂うところでは、飲み交わさずとも変な酔いが回る。
ジジイ連中が酒の席でぐだぐだと愚痴をこぼすのにも、この時ばかりはある程度の理解を示すことができた。
言わなくてもいいのに、言わない方がいいだろうに、口が勝手に暴れ出す。
ルカ「……冬優子の事件、悪かった」
智代子「やだなあ、もうあの事件はふゆちゃんと手討ちにしたんだし、終わったことでしょ?」
ルカ「……あれは、オマエの本意なのか?」
聞かなくたっていい。そんなの答えは分かり切っている。
智代子「……本意かそうじゃないかって言われたら……そりゃ、ね……」
ルカ「……だよな」
なんのための確認なんだ。
……この確認に、一体何の意味がある?
つくづく自分の身勝手さ、不器用さには辟易する。
1.自分のおでんを一本やる
2.無言でおでんを食べる
↓1
1 選択
まずいことを言った、という自覚がある。
口に入れていた筋が妙に固くて、なかなか飲み込めない。
目の前にある数本が、とてもじゃないが食べきれないことに気づいた。
ルカ「……悪い、これ詫びな」
智代子「……ルカちゃん」
詫び、と言うかたちで一本を甘党女の皿の上に置く。
キョトンとした顔でそれを甘党女はしばらく眺めていたが、すぐに何を思ったのか急にべらべらとしゃべり始めた。
智代子「お別れってね、残されるほうが辛いんだって最近知ったんだ」
智代子「向こうはあえなくなるってのを知ったままでいけるけど、こっちはそれすらも知らないから……突然に全部を奪われてしまう」
智代子「……夏葉ちゃんと交わしたい言葉、夏葉ちゃんから聞きたい言葉」
智代子「見たい夏葉ちゃんの姿だって、色々いっぱいあったんだ」
どうやらこいつも暖簾が吸い上げたアルコールに中てられているらしい。
梁の向こう、遠いものを見つめながら話す、その口調には回顧が染みついている。
智代子「本当なら、それをどこまで追求したかったし。それを奪った相手を糾弾したかった」
智代子「でもね、そんなことをすれば……その相手に遺される人に、申し訳ないかなって」
智代子「別れは人の数だけ、無限にあるから……誰かがちょっとでも声を挙げちゃったら全部に伝播しちゃう。それは必ずしもプラスじゃないのかなって」
お人よし、とはこういう奴のことを指すのだろうと悟った。
こいつは二回も奪われた。理不尽の前に目の前でユニットのメンバーが二回も命を散らした。
だったら、少しぐらいわがままを言ったところで罰は当たらないだろうに。
それでもこいつは、『甘口』であり続けた。
智代子「……なんだか私も変なこと口走っちゃったかも」
徹底したチョコアイドルっぷりに、私は思わず息を漏らす。
ルカ「……ハッ」
智代子「もう! なんで笑うの、ルカちゃん!」
ルカ「……別に、こんな場で自分の意志と別に本音を漏らすなんて。ジジくせえなっていう自虐だよ」
……やっぱり、私じゃ283プロのアイドルにはなれやしない。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【園田智代子の親愛度レベル…8.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…16個】
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
後になってさっき口にしたおでんが効いてきた。
寝起きに、しかも朝飯をある程度食ったうえで口に入れるものは、少なくとも普通おでんではない。
こってりとした味付けに、煙の独特な香りが染みついて、後悔を覚えずにはいられなかった。
余計なことを言ってしまったのに関しても、余計なことを訊いてしまったのにも関しても。
あれを聞いてしまったからには、見て見ぬふりなんてもう出来やしない。
「……面倒だよな」
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…16個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
早いですが、本日はここまででお願いします。
次回あさひ選択より再開します……
次回更新は6/18(土)の21:00前後と少し先になります、申し訳ない……!
1 あさひ選択
【第5の島 ワダツミインダストリアル】
昼の自由時間、何かと手持ち無沙汰になることはあったがこんなふうにソワソワと落ち着かないことはあまりなかった。
美琴がどこにいるのか、何をしているのかその懸念こそずっと抱いてはいるものの。
私にはそれ以上には目下の不安材料がその未体験のざわつきを抱かせていた。
ルカ「……勝手に一人でぶらついてんじゃねーよ」
あさひ「あっ、ルカさん! どしたっすか?」
ルカ「どしたっすか、じゃねえ。こんな危ねえところ、一人で来ちゃダメだろ」
あさひ「……? 危ない、っすか?」
ルカ「テメェの後ろにあるそいつはなんだ? ただの置物か?」
あさひ「あはは、エグイサルはロボットっす。置物じゃないっすよ、ルカさん変なこと言うっすね」
……もう説得なんかも面倒だ。
いっそ首輪でもつけちまうか?
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【多面ダイスセットを渡した……】
あさひ「何っすか? これ、さいころ?」
ルカ「おう、ただのさいころじゃなくて複数面……かなり多い数だろ。私には使い道はよくわからねえがオマエならなんか適当に暇つぶしに使えるかと思ってよ」
あさひ「……これ、出る目の確率とかってどうなるっすかね」
ルカ「……随分知的な好奇心だな」
あさひ「あはは、最近学校で習ったっす!」
(……確率の計算、か。もう忘れちまったな)
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより多めに親愛度が上昇します!】
-------------------------------------------------
あさひ「あっ、あっちの機械見てみたい!」
ルカ「おいコラ、だから勝手に行くなって!」
あさひの関心のスイッチはいつ何に向けられるのか分からない。
目を離した隙に姿を消すし、触れてはいけないものほどよく触る。
この危機管理能力でよくもここまで生き残っているものだともはや感心する。
ルカ「……はぁ、なんでオマエはこう自由なんだ」
あさひ「ルカさん?」
……その感心は、慢心にも似ていた。
ルカ「……ったく、冬優子のやつはどうやってこいつの面倒を」
あさひ「……冬優子ちゃん」
ルカ「……ッ!」
迂闊だった。
自分の中だけに押しとどめているつもりだった言葉が漏れ出ていた。
きっとあさひ本人も無自覚にやっていたこと。
自分の関心にいつも以上に従順になって走り回っているのはその喪失を僅かにでも忘れるため。
気を紛らわさせるために、直視をさせないために別のものを自らに仕向けているはずだったんだろう。
でも、私が手綱を握ろうとするあまり、余計なものまで引っ張り出してしまった。
剥き出しになった喪失感が、あさひの手を緩め、床に金属が衝突する音を響き渡らせる。
ルカ「……悪い、オマエだって辛いのに思い出させちまった」
とりあえずの弁解。
されどあさひの水面には重たく大きな石が既に投げ込まれた。
波紋はそう簡単には止まない。
あさひ「……」
俯いたまま、言葉を発さない。
自分の影を見つめるまま、その奥にないものを探す。
……これは、まずったよな。
1.今は辛いけど、前に進むしかない
2.いつまでも目を背けてても仕方ないだろ
↓1
1 選択
どう申し開きをすればいいのか、というところから思考は始まった。
でも、それは私向けじゃない。
直面し続けた美琴との軋轢から目を背け、逃げ出した人間がどう謝るというんだ?
私は逃げて逃げて逃げた末になんとかそのチャンスをつかんだだけの事。
しかもそれを、既に逃してしまっている。
ルカ「……うざってえな」
なら、私がすべきことは申し開きじゃなくて、開き直りだ。
自分の口から出た言葉を無責任に肯定して、押し付ける。
それで乗り切るほかない、無茶するしかない。
そんな無茶でもしない限りは、この少女を救い上げられない。
ルカ「いつまでも他人に気を遣わせてんじゃねえ。ここは外の世界じゃねえんだ、オマエだって他の連中と同じ一つの数頭に入ってる」
ルカ「現実に目を向けられない、そんなの甘えに過ぎねえんだよ。どれだけ辛くても前に進まなきゃならねえ、実際冬優子はそうしてただろうが」
あさひ「……冬優子ちゃん、が」
ルカ「せっかく救い出した三峰結華は死んだ、長い間ユニットを組んだ仲間の和泉愛依も死んだ。それでもオマエと言う存在がいたから、あいつは凹む時間も惜しんで前に進んだ」
ルカ「あいつがその感情を乗り切ったかと言われれば答えはノーだ。でも、だとしてもあいつは前に進むことを選んだ。引きずりながらでも前に進むことを選んだ」
ルカ「オマエもあいつを慕ってんなら……その後ろ姿を見習うぐらいしやがれ」
本当に無責任な言葉だ。
自分にもできていないことを相手に要求する、ここにインターネットの眼なんてあろうものなら大炎上だろうな。
でも、ここは絶海の孤島。
誰にも干渉されない、干渉を求めることもできない。
自分に向けられた言葉は、自分で噛み砕くほかない。
あさひ「……難しいっす」
ルカ「……」
あさひ「ルカさんの言葉、難しいんですぐには分からないっす。……でも、分かりたい、理解したいって思ったっす」
あさひ「……だから、ちょっとだけ待ってもらっていいっすか?」
ルカ「……ちょっとだけな」
……言葉が響いたのかどうか、感触は分からない。
ただ、彼女が俯いていた顔を面に上げたのだけは確かだった。
私とあさひはそのまま、言葉を交わすことなくホテルへと戻った。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【芹沢あさひの親愛度レベル…10.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…17個】
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
分かれるその瞬間まで、珍しくあいつは押し黙っていた。
帰り道をきょろきょろと見まわしていたのは、そこに幻影を追っていたからなのか。
流石にそれを問いただすような残酷な真似はやめておいた。
あさひが自分の中で冬優子の背中らから何を学ぼうとするのか、その答えを見つけるまで私は待つだけだ。
「……私も、いい加減答えを」
無責任さには、目を伏せて。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…17個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 あさひ選択
【あさひのコテージ】
解答をせかすようで、少しだけ悪いと思った。
でも、きっとどれだけ時間を与えても同じことだ。
頭がどれだけいい人間でも、この問題の答えは分からないだろうし、それに自身も持てまい。
だとしたら、私たちがすべきはその正誤の判定ではない。
解答を練り上げるための議論、検討なんだ。
そのためには、同じ空間にいること、同じ時間を過ごすことこそが重要なのだと思う。
ピンポーン
あさひ「ルカさん、早いっすよ。まだモヤモヤしたままで、よくわかんないままっす」
ルカ「……悪い」
あさひ「……」
ルカ「……」
あさひ「……帰らないっすか?」
ルカ「……とりあえずの答えを聞こうと思ってな」
あさひ「……っす」
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【絶対音叉を渡した……】
あさひ「わっ、何これ! 見たことない!」
ルカ「おいやめろ、鼻に突っ込む道具じゃねえ。音叉……一応音楽関連のもんだが、まあアイドルとはあんまり関係ないからな。音同士が共鳴した時に生じる振動を利用して医療とかに活用しているらしいぞ」
あさひ「へぇ……音で、すごい発想っすね」
ルカ「まあこれは破壊兵器として使うみたいだけどな。音で色々ぶっ壊しちまうみたいだから、使い方には気を付け……」
あさひ「透ちゃ~~~~~ん! これ一緒に叩いてみるっすよ~~~~~~~!」
ルカ「バッカ……!!!! おい、やめろ!!!! やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
【PERFECT COMMUNICATION】
【親愛度がいつもより多めに上昇します!】
-------------------------------------------------
あさひの部屋は、案の定片付いてはいない。
そこらの床には乱雑に紙が散らばり、彼女の関心が尽きたであろう使い道も分からない機材の数々は適当に箱に突っ込まれている。
そこに、彼女に対する認識のずれはない。
私も芹沢あさひと言う少女はそう言うものだと思うし、彼女がここで過ごす時間があったならおのずとそうなるだろう。
それでも違和感がぬぐえないのは、ここに出入りしたであろう人間ならこのままにしていなかっただろう、というところから。
ルカ「……どうだ、冬優子と向き合ってみて」
尖った言い方をした。冬優子はもういない、あくまであさひが向き合うべきなのは『今は亡き冬優子』、あさひの中にいる冬優子、そしていない冬優子だ。
あさひ「ルカさんの言ってることはなんとなくだけど、分かった気がするっすよ。確かに冬優子ちゃんはどんな事件があった後でも、落ち込んだり、凹んだり……じっとしていることはなかったっす」
あさひ「きっと、ルカさんの言うように、わたしのためにそうしてくれてたんっすよね。愛依ちゃんがいなくなってからは、余計に」
冬優子の死に際の光景がどうしても蘇る。
あの不器用すぎる頭を撫でる動作、冬優子の思いの丈がそこに滲み出ていた。
ルカ「……冬優子は、最後になんて言っていた?」
あさひ「自分の想いを、汲み取ってくれって」
ルカ「……そうだったな」
では果たして……冬優子の最後の想い、とはなんなのだろうか。
私がさっき投げかけた言葉のように、辛くても前に進めということなのか。
それとも自分を代償に生きているのだと自覚しろと言うこと?
ルカ「あさひは、冬優子はどう思ってると思う?」
私にも、その答えは測りかねる。
だから、それはあさひに託した。
私よりもよっぽど長い時間を共に過ごして、熱心に彼女の観察を続けてきたあさひなら、きっと納得のいく答えを見つけられる。
それは私が冬優子から引き継いだ、『信頼』だった。
あさひ「……わかんないっすね」
あっけらかんとして、あさひはそう答えた。
それは何も、解答の放棄ではない。
むしろ考えて、考え抜いたからこそ見つけられた答え。
自分の都合に無理やり手繰り寄せた、恩着せがましい責任感ではない。
あさひ「あはは、他の人がどう考えてるのか、どう思ってるのか、なんてことはわたしもわかんないっす」
あさひ「でも、それって悪いことじゃない。当り前じゃないっすか。冬優子ちゃんもよく言ってたっす。他人なんて何を思ってるのか分かんないんだから、用心なさいって」
あさひ「だから、わたしも冬優子ちゃんの考えてることなんてわからないっす。わたしが冬優子ちゃんのために何をすればいいのか、なんて」
あさひ「あ、でもこれじゃ答えにならないっすよね。ちょっと待ってくださいっす、解答を用意するんで」
あさひがあさひらしくある所以、彼女のアイデンティティとも言うべき無責任だった。
誰かにゆだねられて生きるなんて、あさひらしくない。
そんな生き方を、冬優子が望むわけない。
冬優子は誰よりもそばであさひを見続けて、誰よりもねたみ続けてきて、誰よりもその生き方を理解しようとしていた人間だ。
だとしたら、その羽に枷をはめようなんざ思うはずもない。
あさひ「冬優子ちゃんが最期に行っていたのは自分の命を雑に使うなってことだったっす。それなら、わたしは……後悔の無いように生きる。自分は自分のしたいように生きる」
あさひ「冬優子ちゃんがやってたのと似てるかもしれないっすけど、これは私の生き方っす。ちょっとだけ違うんっすよ」
あさひ「えっと、だから……引きずる、とも違うし……えっと」
偶然にも私と同じ結論に帰結していたことに、少しだけ口角を上げながら私は苛立った。
きっとこれは、冬優子の読み通りなんだろうから。
冬優子と私は同族、ということはつまり……その理解者であるあさひもまた同族なのだ。
遺される同族を守れるのは同じ同族だけ、そういう意味で私をあてがっていたのだろう。
ヤロウ、どこまでも私を利用しやがって、気に食わねえやつだ。
ルカ「……ハッ、わかったよ。もうそれ以上は、いい」
ルカ「オマエの言葉なんて元々よくわからねえんだ。無理やり言葉を紡がれても不格好でいけねえ」
あさひ「……? そうっすか?」
ルカ「……これは、私の決めた生き方だ」
そう言って私は掌を差し出した。
こいつと同じく無責任に、その場だけの感情で差し向けた掌。
そこに引き継ぎも何もあったもんじゃない。いますぐにだってこの鎖をほどこうと思えば、ほどいてやれる。
……でも、それをしない。
今は、私がこれをしたいから、それだけの理由だ。
あさひ「あはは、ルカさんの手のひら、冷たいっす!」
偶然、こいつともその『やりたいこと』は今、一致していたらしい。
-------------------------------------------------
【芹沢あさひとの間に確かなつながりを感じる……】
【芹沢あさひの親愛度レベルがMAXに到達しました!】
【アイテム:遊園地のぬいぐるみを獲得しました!】
・【遊園地のぬいぐるみ】
〔いつか遊園地に行ったときに持ち帰ったぬいぐるみ。ウサギとネコとクマ、さんたいのぬいぐるみに愛を注いでいたら、不思議なことに一瞬だけ一人でに彼女たちが動いたとあさひは語る〕
【スキル:ジャンプ!スタッグ!!!を習得しました!】
・【ジャンプ!スタッグ!!!】
〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
閉塞とした空気感が時計をせっつかす。
いつもよりも早く進んだ時計の針が、太陽を地中に埋めて一度の夜がやって来る。
今日と言う日はあっという間に過ぎてしまった。
「……そういえば、あさひのやつはどうしてんだ」
冬優子に名指しで託された手前、どうしても思考の片隅にあいつの存在がある。
憎たらしい言葉に自分勝手な行動、正直愛想をつかすには十分すぎるほどの理由があるのだが、それ以上の義務感がそれをせき止める。
多分冬優子も生前は一緒だったんだろう。
鬱陶しさと煩わしさと同じくらいに、放っておけない感じが付きまとって仕方がない。
「……顔見るだけ、な」
あいつ自身もこれまでの生活で変化して、多少は聞き訳は良くなったんだと思う。
今朝も部屋に入れたところで好き勝手荒らす様子はなかったし、必要以上に出歩きはしないし、危険に身は置かないとは思う。
それでも、過去の前例から得られた信頼の値のあまりの低さに、黙っていることはできなかった。
------------------------------------------------
【ホテル】
部屋を出る。
コテージの個室はこう見えて防音性が高いらしく、窓を閉めていると風の音すらまるで聞こえてはこない。
今こうして外に出ることで初めて虫が鳴いていることに気が付くくらいだ。
「……何の虫だろうな、これ」
都会の私たちは虫の名前を知らない。
どれだけ心地の良い声であろうとも、その持ち主は永久に分からないままだ。
「……あさひなら、知ってるか」
照れ隠しの言い訳にちょうどいい都合が見つかったとばかりに左を向いた。
あさひの個室はこの向こう。
中央の桟橋を挟んだ別ブロックに彼女の部屋はある。
ぎしぎしと音を立てて板橋の上を歩き始めたその先。
「……やめて~~~!!」
向こうの木に留まっていた鳥たちが一斉に散っていった。
夜を引き裂くばかりの絶叫は、私の背後から。
ソールを横にすり減らして方向転換。
奥歯をバネに、その声のした方へと即座に駆け出した。
声に混ざっていた怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ……それらをすべて絞り出したような切迫。
一秒を争う事態が起きているのは、耳から脳へと情報を明け渡すよりも先にわかった。
そして本能が嗅ぎつけた緊急は、実際間違ってなどいなかった。
「……な、何やってんだよ……オマエ……!」
半開きの扉から明かりが漏れ出していた。
コテージは入ってすぐに生活空間が見える間取り、廊下らしい廊下もないボックス型の部屋は、その事態を観測するには優れたつくりだった。
美琴が、
____その手に持ったサバイバルナイフで、能天気女の左手をぶっ刺していることがすぐに見て取れたのだから。
美琴「邪魔しないで……!」
雛菜「痛い痛い痛い……!」
肉に深く突き刺さり刃先は貫通している。
だがそれが却って刃にとっては返しとなって、ナイフを抜き取るには障害となっているようだ。
美琴は二の手が撃てない焦りを額の汗で滲ませた。
ルカ「……畜生……!!」
ドンッ
その不意を突いて私は頭から美琴の脇腹に突っ込んだ。
ルカ「お、おい……大丈夫か!?」
すぐに私は能天気女の手を取った。
ひどい有様だ、血は止まらないし、断面からはもはや骨が見えてしまっている。
しかも、この刺さり方はまずい。指の根本の神経が密集する部分を狙っているかのような突き刺さり方。
激痛を感じるどころではないはずだ。
透「雛菜……?」
まるで魂が抜けてしまったかのようにへたり込んでいる浅倉透。
彼女はまだ事態が飲み込めていない様子だった。
ルカ「クソ……何がどうなってやがる……! とりあえず、包帯……なんか応急処置できるもんはねえのか……!」
雛菜「痛い……痛いよ……」
私は突然居合わせただけの存在。
夜に照明と赤とが混ざるこの異様な空間に身を置いて、体を火照らせる以外の反応が未だ示せずにいた。
その一方で、一度強制的に隔絶を行われたせいで襲撃者は冷静さを取り戻しつつあった。
美琴「……ルカ、邪魔しないで」
ルカ「み、美琴……!」
美琴はゆっくりと体を起こしたかと思うと、そのまま二本目を取り出した。
能天気女の手に刺さっているナイフと同等かそれ以上の刃渡り。
そんなナイフを両手で持って、浅倉透に向き直る。
雛菜「だ、ダメ……」
美琴「……今度こそ、必ず」
ルカ「バカ……何やってんだ……! 落ち着けって……!」
慌てて遮るようにして前に出る私と能天気女。
能天気女は傷の手当ても何もしていない。体を少しよじるだけでパタタッと音を立てて血のしずくが床に落ちる。
でも、そんな痛切な状態でさえも美琴の視界には入らない。
美琴が見ているのはただ一つ、憎しみを向けるべき存在。
____標的の、浅倉透だけだ。
美琴「……私は冷静だよ。むしろ他のみんなの方がおかしいんじゃないかな。自分は浅倉透を騙る偽物、更にはこの島に私たちを連れてきた張本人だっていう本人の証言もある」
美琴「にちかちゃんは最初から、ずっと……この子の怪しさに気づいていたのに」
美琴「……どうして、どうして……この子を受け入れて、にちかちゃんを拒絶するの……!?」
ルカ「ち、違う……! 私たちは七草にちかを拒んだりなんかしてねぇ、こいつも……それだから敵になるってわけじゃない、私たちに協力を宣言してくれてんだ……!」
美琴「言葉なんか何の信用になるの……!」
聞く耳を持たない人間に説得なんか無意味だ。
言葉は万能じゃない。
燃え盛る油に水を注げば却って激しく燃え盛る様に、美琴は私の言葉で逆上する。
ヘビが獲物を締め上げるような動作で、柄を持つ手にぎゅっと力がこもる。
美琴「私は……こんなところで止まっていられないの!」
身体の震えが、止まった。
(……来る!)
踵が床から離れた。
この部屋はそう大きなスペースではない。
美琴のすらりと長い脚ならば、ほんの数歩のうちに私たちのもとに到達するだろう。
ナイフを持った手なら更に前に伸ばすことだって。
刃が届くまでの時間となると、もはやコンマの世界だったのだろう。
そんな世界、感知しえない。
人間の反射神経ぎりぎりの世界は本能で観測するほかない。
____私の本能は、ギリギリまだ生きていた。
ルカ「……痛ェな……」
美琴「ルカ……!?」
不思議な感覚だった。
こんなにも冷たいものを触っているのに、両手は焼け落ちそうなくらいに熱い。
掌では生暖かいものが蠢いて、ぐじゅぐじゅと音を立てる。
その生暖かい何かは散々蠢いたかと思うと、わずかな隙間から零れ落ちて、床で破裂し、赤く染め上げる。
それを見ているうちに、じんわりと、それでいて確実に。
ズキズキとした感覚が腕を伝って、全身の力を抜いていく。
両手で、ナイフの刃先を掴んでいた。
ルカ「痛いんだよ、バカ野郎……!!」
砕けそうな腰を軸にして、弱弱しく美琴の腹を蹴った。
美琴はさっき以上の軽さで吹き飛んだ。
透「ちょっ、なんで……なんでそんな……」
ルカ「ああ?! 知らねーよ……私だってなんでこんな真似してんのか……」
浅倉透に手首を掴まれた。
翻して証明の元に晒された掌はパックリと切れており、血に塗れていた。
ルカ「それに、私より市川雛菜だろうが……!」
でも、私の切り傷はあくまで表面上にとどまる。
肉を多少割いていたとしても、まだリカバリーは効く。
市川雛菜のそれは、レベルが違った。
ナイフを掴んだことに当惑するばかりの私たちをよそに、市川雛菜はその場にうずくまる。
ナイフの突き刺さった手を腹部の下に隠すようにして、背中を丸めている。
ルカ「クソ……ナイフを下手に抜くわけにもいかねえ……モノミ、モノクマでもいい……! 早く治療してやってくれ……!」
雛菜「うぅ……」
私が余裕なく叫ぶと、すぐにトテトテと場に不似合いな素っ頓狂な足音とともにモノミが姿を現した。
モノミ「な、何が起きてるんでちゅか……!? 市川さんに斑鳩さん……いや~~~~~! スプラッタでちゅ~~~~!」
ルカ「スプラッタでもオモプラッタでもねえ! さっさと治療しろ! このままじゃ市川雛菜の手は……!」
モノミ「は、はい! わかりまちた……斑鳩さんも、治療しまちゅから一緒に病院に行きまちゅよ!」
モノミは市川雛菜に肩を貸すようにしておぶると、私に同行を促した。
見た目の割に力はある、モノケモノを撃退していただけのことはあるらしい。
透「雛菜、しっかり……大丈夫だから」
モノミの背中で浅く呼吸をする市川雛菜に声をかける。
それに応じて、首をしんどそうに傾げて浅倉透の方を見た。
雛菜「透ちゃん……怪我はない〜……?」
透「ないよ、ありがとう……その、だから」
浅倉透の言葉はたどたどしい。
いつも多くを語るような人間ではなかったが、それに動揺が拍車をかけていた。
雛菜「あは〜……それならまあいいや〜……」
透「なんで……私、本当の『浅倉透』じゃないんだよ……ただのコピーでさ、雛菜が体を張ってまで守る意味なんて……」
いつものような余裕がその言葉からは感じられなかった。
自分自身の存在と言う負い目が、この恩義を否定しようとしていた。
雛菜「ん〜……よくわかんないけど〜……」
雛菜「幼馴染だからとか、透先輩と同じ見た目だからとか、そういう理由じゃなくて」
雛菜「雛菜が守りたいと思ったから! それだけじゃダメ〜?」
失血していくさなか、顔色の悪い笑顔だった。
痛々しいその右手で不格好なピースをつくり、プルプルと持ち上げて。
私でも、その光景には感じ入るものがあった。
___でも、あいつはそうではなかった。
美琴「……」
美琴はお腹を抑えるようにして気配無く立ち上がり、そのまま私たちの横をすり抜けていく。
ルカ「ま、待て……美琴!」
掴んだ裾に、私の手のひらの血がべったりと付着した。
美琴「……ルカ、ごめんね」
ルカ「謝んのは私じゃねえだろ……!」
美琴「……もう、目の前に姿は現さないから」
ルカ「……あ?」
美琴「……それじゃあ」
どうやら私の傷も浅くはないらしい。
がっちりと指で挟んで掴んでいたはずの裾はスルリと離れ、その影はすぐに夜の闇と馴染んでしまった。
あいつだって何度も突き飛ばされて無傷でもないはず、それなのに全く追いつけなかったのはその体に背負い込んでいるものの重量の差。
私の足は部屋の内側には軽いが、外側には重たかった。
モノミ「……これ以上の危害を加えてくる気はないんでちゅかね……?」
透「……多分、相方を傷つけたからじゃないかな」
ルカ「……」
透「雛菜を刺したことよりも、多分そっちの方がずっとずっと……痛いんだと思う」
ルカ「……チッ」
私たちはモノミのすぐ後に続いて、部屋を後にした。
------------------------------------------------
【第3の島 病院】
私の傷はナイフを掴んだために皮膚がぱっくりと切れ、一部筋肉を傷つけた程度。
気が飛ぶほど沁みる消毒をした後に、包帯をぐるぐる巻きにすることで何とかなった。
だが、問題は市川雛菜。
明らかに貫通していたナイフを、美琴は抜き取ろうとあがいたことで更に傷を広げていた。
不幸なことに骨とぶつかることもなく突き刺さってしまったがゆえに、出血も激しく病院に着くころには市川雛菜は気を失ってしまっていた。
モノミにとりあえず委ねるほかなく、私と浅倉透はロビーの椅子に腰かけてその時を待った。
ルカ「……突然、押し入ってきたのか」
透「うん……二人で部屋にいたところに、インターホンが鳴って」
ルカ「扉、開けたのか? 不用心だな」
透「……実は、これ」
懐からくしゃくしゃになった紙を目の前で広げる。
罫線が数本横にひかれた長方形の紙、手紙の様式だ。
私はそれを引っ手繰るようにして目を落とした。
『今晩大事な話がある。夜のアナウンスが鳴ってから十分ほど経ったら部屋に行くから入れてくれ』
ルカ「……は?」
成程二人はあらかじめアポイントを受けていたのだ。
これを受け入れてしまっていたがために、美琴の来訪だというのに不用心にも扉を開けてしまい、結果として刺されてしまった。
その流れは飲み込めた。
でも、どうしても飲み込めない一つの事実がある。
それはどれだけ頭を捻ろうとも答えが見つからない、嚥下するにはあまりにも大きくていびつな形をした謎。
_____その手紙は、完全に私の筆跡だったのだ。
どこの教室に通ってもいない、誰にも師事をしていない、ぶっきらぼうで直線的なボールペンの字は私がスケジュール帳に殴り書いた文字と完全に同一。
だが、当然ながら身に覚えなんてない。
私はあの時扉を開けたのは、あさひの様子を見に行くため。
それにアポイントなんかとるつもりもなかったし、そもそも人の都合を伺って訪問をするような几帳面な人間でもない。
それなのに、その筆跡には数年着古したジャケットにそでを通した時のような順応感があった。
透「……この手紙があったから、きっとルカさんが来るもんだと思って」
ルカ「違う、私はこんなの出しちゃいねえ……」
透「……えっ」
ルカ「意味わかんねえ……なんで、なんで私の文字でこんなのが書かれてやがんだ……!」
夢遊病の類いだろうか。それとも別人格?
私が無自覚なうちにこんな手紙を書き記して、浅倉透の部屋に投函してしまったのかもしれない。
……そんなわけない、あるはずがない。
まだ傷がふさがっちゃいない、手のひらの包帯はすっかり血に染まって真っ赤だった。
ルカ「……わけわかんねえ……これを美琴が用意したってのか……?」
透「……」
____
______
________
モノミ「……手術は終わりまちた」
それから数十分後、モノミがようやっと姿を現した。
ピンクと白のツートンの毛はすっかり血の赤色に染まっており、B級ホラー映画の殺人人形のような見た目だ。
だが、そんな映画の中の人形のように狂気的な笑顔を浮かべるでもなく、モノミはただ俯いている。
言葉など聞かずとも、その意味は理解できる。
ルカ「ダメ、だったのか……?」
透「そん、な……」
モノミ「……命を落とすようなことはありまちぇん。輸血も間に合ったので、失血死なんてこともないでちゅ」
モノミ「……でも、市川さんに重篤な後遺症が残ることは間違いないでちゅ。右手の神経は、もうどうしようもありまちぇんでちた」
モノミ「市川さんは今後もう自分の手でお箸を握ることも、誰かと手をつなぐこともできないでちゅ」
言葉を失う、という表現はきっとこの場にはふさわしくない。
もっと前から言葉を咽喉から持ち上げることは出来かねていたし、頭に浮かんだ言葉はシューティングゲームのようにその悉くを撃ち落としていた。
私がこの場において、言うべき言葉なんて何一つない。
喋るべきでない。
だから、多分正しい表現は呼吸をすることも忘れる、なのだと思う。
一人の人生が大幅に歪められてしまった、その場に居合わせることの重大さを前に、私は口を固く締めあげて、空気をかみちぎった。
透「……う、そ」
モノミ「……あちしには、義手に挿げ替える技術はないでちゅ……モノクマのように大幅な人体改造もできないんでちゅ……本当に、ごめんなちゃい……」
地面に額を擦り合わせるようにして許しを求めるモノミ。
本当に不細工なマスコットだ。こいつがしているのはただの自己満足。
自分の実力及ばずと言うのを、悲劇のヒロインぶることで解消しようとしている。
人間の醜さを体現したような在り方に虫唾が走った。
透「……」
浅倉透もそれは感じ取っていたのか、モノミに言葉をかけようとはしなかった。
背を向けて、力なく再び椅子に落ちるようにして腰かけた。
透「何やってるんだろ、私」
透「……みんなを守るために、ここにいるのに」
透「何も守れず、私のせいで……失って」
透「……キツイなー、人生」
煙のように天井に吐き出した言葉に、天井が軋んだ。
というわけで本日はここまで。
あさひの親愛度がマックスになったり、夜襲があったり、色々と起きましたね……
次回更新は明日21:30頃を予定しています
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
____
______
________
=========
≪island life:day 24≫
=========
------------------------------------------------
【第3の島 病院】
……徹夜だ。
市川雛菜の顛末を訊き遂げてから、この場を離れようにも靴底がのり付けされたように動かず。
そして掌の痛みも相まってすっかり目も醒めてしまっていた。
眠気を全く感じることもなく、気が付けば真っ暗な空がすっかり太陽の熱で溶け消えてしまっていた。
ルカ「……朝らしいな」
透「……」
ルカ「メシ、取ってこようか? オマエ、ここから離れる気ないんだろ」
透「……ん」
ルカ「……わかった、ちょっと待ってろよ」
こいつの気持ちも察して余りある。
流石にここで黙って飯を食いに離れられるほど私も血の通っていない人間ではない。
浅倉透は目線をこちらにくれることもなく、幽かな声量で返事した。
私もそれ以上は言わず、ゆっくりと立ち上がる。
長く座った膝は、それだけでパキッと鳴った。
その瞬間、
「あれ~? ご飯食べに行くんですか~? 雛菜もそろそろお腹すいた~~~~!」
廊下には、あいつが立っていた。
いつものようにキンキンとうるさいトーンとボリューム。
あからさまなくらいな笑顔で、ブンブンと左手をこちらに向かって振っている。
昨日とほとんど相違ない市川雛菜が、そこにいた。
ルカ「お、オマエ……! 目、覚ましたのか……!」
駆け寄る私に先行して浅倉透が肩を揺さぶった。
透「雛菜……雛菜……!」
雛菜「あは~、透ちゃん痛い~」
でも、その手を払いのけることはしない。
いや、できないんだろう。
ここまでのわずかなやりとりでもわかる、体はどこか傾いたようになっていて比重がうまくのっていない。
完全に動かなくなってしまった右手との帳尻が合わない体は、見ていてもどこか違和感を孕んでいた。
雛菜「起きたのはついさっきで~、アナウンスが聞こえたんで朝ごはん食べに行こ~って!」
ルカ「だ、大丈夫なのか……? その、昨日の今日で……」
雛菜「ん~、大丈夫じゃないですね~。お箸もスプーンも持てないし、ごはんは雛菜一人じゃ食べれないので~」
透「……っ!」
雛菜「だから、透ちゃんは雛菜にあ~んしてね~?」
ちょっと転んで擦りむいたぐらいのテンションだった。
これ見よがしに傷を見せびらかすこともせず、なんなら話題をさっさと流そうとすらしていた。
今後一生に関わる話を、日常会話のようなトーンで話す。
彼女のスタンスには従いたいのも山々だが、当事者足る私たちはそれに流石にただ乗りはできず。
ルカ「ちょ、ちょっと待て……その傷、痛むんだろ? 無茶すんなって……」
雛菜「痛いことは痛いですけど~……え、雛菜がご飯食べちゃなんかまずいんですか~?」
ルカ「いや、そうじゃなくて……私たちにもなんか……言いたいこととかあんじゃねえのか……?」
透「私は……雛菜の一生を傷つけたんだ」
雛菜「え~?」
でも、むしろそれを市川雛菜は鬱陶しそうにあしらった。
雛菜「ん~、これ昨日も言ったと思うんですけど~。雛菜は雛菜が守りたいと思ったからやっただけなので、別に透ちゃんもあなたも悪く思う必要なんてないですよ~」
雛菜「結果として、誰も死ななかったしそっちの方が雛菜はしあわせですよ~?」
どこまでも単純な論理だった。
市川雛菜にはずっと迷いがない。仲間のことで思い悩むことはあっても、そこから導き出される結論に、彼女自身が絶対の信頼を置いている。
だからぶれない、悔やまない、立ち止まらない。
この島にいる誰よりも、自分自身の在り方と歩み方を持っているのだと今この瞬間に理解した。
ジェットコースターで浅倉透を『透ちゃん』と呼んだ時のような爽やかさが頬を撫でる。
透「……雛菜」
雛菜「ん~?」
透「朝ごはん食べたら作ったげる。特大のバケツで、プリン」
透「醤油もかけ放題」
雛菜「あは~~~~~♡」
私はこの島に来る前の283プロの連中のことはそこまで知らない。
でも、この二人を見ていたらどんなものだったのか察しはある程度つく。
ノクチルとかいうグループはとんだ問題児の集まりだったんだろう。
等身大の彼女たちがぶつかり合って、補い合って。
他の何かで形を変えない、変えようとしない、それぞれがそれぞれを繋ぎ止めて、他が割って入れないほどの結束感のあるグループ。
そういう厄介な集まりだったのだろうと得心がいった。
雛菜「じゃ、そういうわけで雛菜たちは行きますね~!」
透「アデュー」
ルカ「おう……じゃあな、気をつけろよ」
雛菜「は~い!」
ルカ「……」
ルカ「…………」
ルカ「…………………………………………ん?」
------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
一人取り残されたことに納得のいかなさをはじめは感じていたが、二人だけの時間が必要だったのだろうということで折り合いをつけた。
それに前もって二人がレストランに行っておいてくれたおかげでことの説明の手間も省けた。
私がついた頃には既に後の3人も昨晩の襲撃のこと、そして市川雛菜の手のことも一応情報としては飲み込んでいた。
智代子「そんな……雛菜ちゃん、大丈夫……じゃあないよね、そんな状態じゃ……」
雛菜「まあ不自由は不自由ですけど〜、放クラのお姉さんに比べたら雛菜は生身のままですし〜」
透「ほら、雛菜。あーん」
雛菜「あ〜ん♡」
恋鐘「うちらで雛菜の生活も面倒見てあげんといかんね……片手だけだとシャワーもまともに浴びれんたい」
あさひ「もう手は痛くないっすか?」
雛菜「今は鎮痛剤打ってるのでマシですね〜。でも、薬が切れた瞬間多分凄まじい痛みなので!」
智代子「そんな明るく言うことじゃないよ……」
やはりここでも当事者より周囲の方が事態を重く捉えている様子。
陽の光が差し込んで明るく照らされているはずのテラスで、なぜか陰陽を感じてしまう程。
あっけらかんとした様子に、なんだか私も心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
ルカ「おら、私たちも飯食うぞ飯。片腕使えねえやつより食い終わるのが遅いとかお笑いかよ」
智代子「ル、ルカちゃん流石にそんな言い方って……」
雛菜「あは〜、そうですね〜! 雛菜もう腹六分くらい来ちゃってますよ〜?」
あさひ「あ! 朝ご飯冷えてきちゃってる!」
透「食べて食べて。ほら、遠慮せずに」
恋鐘「もう、透? そいは朝ご飯作ったうちん台詞たい!」
智代子「……うぅ」
段々と市川雛菜の作り出す空気に満ちていく。
心配する方が悪いと言う心情が声のトーンを無理矢理に引き上げる。
雛菜「この傷跡は、犯行を食い止めることができた証拠なんですよ〜?」
雛菜「そんなに憐れむような視線向けないで欲しいかも〜」
雛菜「みんなが笑顔で食べてくれないと、ご飯も美味しくないですし〜!」
これには流石に甘党女も観念した様子。
それ以上市川雛菜に同情をかけるような素振りを見せるのはやめた。
私としても、いい形に落ち着いたとは思う。
ここまでに私たちは多くのものを失いすぎた。
塞ぎ込む時間なら、既に供給過多。そこにカロリーを割いている余裕は私たちにはない。
あさひ「それにしても、美琴さんはどうやって透ちゃんの部屋に入ったっすか?」
雛菜「ん〜、雛菜はそこの人だと思って扉を開けちゃったんですよね〜」
智代子「え? ルカちゃん?」
ルカ「……美琴が来る前に、ポストにコレが投函されてたらしい」
恋鐘「なんね? ……こいはルカの筆跡じゃなか?」
ルカ「……ああ、どっからどうみても私の字だ」
ルカ「でも生憎私にこんなの書いた覚えなんて全くない。そもそも人の部屋に行くのにアポ取ったりしないっつーの」
智代子「それはそれで問題だね……」
あさひ「じゃあ、この手紙はなんなんすか?」
ルカ「……」
恋鐘「美琴に聞いてみるしかなさそうたい……こいを投函したのは美琴とやろ?」
ルカ「どうだろうな……」
当然ながら私たち以外の人間にも心当たりなどない。
この手紙はどこで生まれ、誰が投函したのか。
どれだけ時間が経とうとも、答えが提示されることはなかった。
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
市川雛菜はあの後浅倉透に介助されながら部屋に戻っていった。
とりあえずのところは、浅倉透に任せておけば問題はないだろう。
改めて二人には誰がきても扉を開けないようにと釘も刺して置いたし、今日のところは安心していいはずだ。
「……気が落ち着いたら、眠たくなってきたな」
徹夜明け、朝食も食べたばかり。
瞼はだいぶん重たくなってきた。
……今日はどう過ごそうか。
【自由行動開始】
【事件発生前最終日の自由行動です】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 智代子選択
【第3の島 病院】
朝飯を食った時は市川雛菜に言われるがまま、無理やりにお気楽なムードを作ってやり過ごした。
だけど、やっぱりあいつはそのまま飲み込めていたわけではない。
つい数日前に、自分の大切な存在が肉体を失ってしまったことを重ね合わせていたのか。
いつになく遅いペースで食事を口に運んだかと思うと、食後はふらふらとどこかへ一人で歩いて行ってしまった。
その後を追ってたどり着いたのが、ここだ。
ルカ「……何する気だよ」
智代子「あ、あれ……? あはは、私も自分で気づかないうちにここに来ちゃってたみたい……?」
ルカ「……」
……痛々しいな。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【マリンスノーを渡した……】
智代子「わぁ……! ルカちゃん、すごくキレイだよこれ!」
ルカ「ハッ、こんなので目を輝かせちまってガキじゃあるまいし」
智代子「純粋にプレゼントを喜んでるだけなんだけど……」
ルカ「どのみち私にはいらねえもんだ。欲しいんならくれてやるよ」
智代子「ルカちゃん、ありがたく頂戴します!」
(……まあ、普通に喜んだか)
-------------------------------------------------
ルカ「やっぱり、思い出しちまうか。有栖川夏葉の事」
本人は無自覚にふらふらとたどり着いた認識なのだろうが、私からすればなぜ甘党女が病院にまでやってきたのかの理由など想像にたやすい。
肉体の欠損、それを一番間近で見ていたのは彼女だ。
智代子「思い出す、っていうのは多分違うかな。夏葉ちゃんのこと、一秒だって忘れるわけないし、どっちかと言えば『重なった』んだと思う」
ルカ「……そうだな」
智代子「今朝の雛菜ちゃん、本当に夏葉ちゃんにそっくりだったんだ。右手が使えなくなっちゃったこと、とかじゃなくてね」
智代子「何よりも自分が一番不安なはずなのに、それを周りに悟らせないように強い姿を見せているところとか」
ルカ「……!」
≪夏葉「智代子に果穂……そして、283プロのみんな……この島にいるのは多くが私よりも年下でしょ……?」
夏葉「だから……私が、守らないと……助けてあげないと……その責任があるって言うのに……」
夏葉「こんな、病気なんかに……侵されて……」
ルカ「……お前」≫
私は絶望病の騒ぎがあった頃を思い出す。
寝台の上、高熱にうなされ朦朧とする中であいつが初めて漏らした本音。
年長者として感じている責任、そして不安。私だけの秘密にしておくつもりだったが、そもそもの前提からして違っていたらしい。
ルカ「やっぱり、よく見てんな」
智代子「そりゃあ私たちは友達だもん!」
友達、だなんて用地が過ぎる関係性。波長が合うというだけで何の拘束力も実効性もない結びつき。それをどうしてこうも自信満々に言い放てるのだろう。
智代子「友達ってね、言葉や行動にしなくても分かっちゃうんだよ。今日はいいことあったんだ!とか逆に何か嫌なことでもあったんだ!とか~」
1.オマエにはそれほどまでに大きい存在だったんだな
2.それだけのことを思われてあいつも幸せだろうよ
↓1
2 選択
ルカ「それだけのことを思われて有栖川夏葉も幸せだろうよ」
ルカ「死んでなお、オマエは友達だって胸を張って言えるんだからな。……まあ、私からすれば荒唐無稽な話だけどな」
智代子「ううん、夏葉ちゃんだけじゃないよ。放クラのみんな、283プロのみんな、この島のみんな。ルカちゃんだってそれには入っちゃってるからね!」
ルカ「はあ? 私はそんなの認めた覚え……」
智代子「ルカちゃんが私のことを励まそうとしてくれてること、分かってるよ」
ルカ「……ッ!」
俄かに顔が熱くなる。
別にこれは自分の感情とかではない。
何を勝手に勘違いしているのか知らないが、さも見透かしていますとでも言いたそうな言葉を臆面もなく出してきたことに対する共感性羞恥だ。
智代子「ごめんね、ルカちゃんにも心配かけちゃったよね」
智代子「雛菜ちゃん本人はああ言ってたけど、弱音を中々はけない人のことを私も知っちゃってるから。つい勘ぐりすぎちゃったのかな」
本当にこいつはお人よしだ。
友達と言う関係性に落とし込むハードルが低いせいで、余計なところまで気を回し、自分自身が追い詰められてしまう。
ルカ「……ハッ」
≪ルカ「……お前は確かに立派だよ、自分だけじゃなくいつも他の連中のことも気にかけて。そんだけの責任感があってこその行動なんだろうなって私でも思う」
ルカ「だけど……だからこそ、そんな風に自分を追い込む必要なんかないんじゃねーのか」≫
ルカ「……なんつーか、似た者同士だよな。オマエら」
智代子「き、急にどうしたの!?」
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【園田智代子の親愛度レベル…9.5】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
類は友を呼ぶ、なんて言葉があるが実際のところ「類」と「友」はどちらが先に立つのだろうか。
ふと自分のことを思い返してみると、美琴に出会ってからは染め上げられた自覚は多分にあった。
必死に美琴の後を追い、横に立とうと努めて来れば、それも当然の事か。
……今はどうなんだろう。
二人の関係性は一言で称するにはこんがらがりすぎる。
その志向性は、今や。
【自由行動開始】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 雛菜選択
【第1の島 ロケットパンチマーケット】
甘党女と別れてから、なぜだか喉の渇きのようなものを感じてスーパーマーケットへと足を運んだ。
別にのどを潤すだけならレストランでも事足りるのだが、私の無意識はなぜだかそれを拒んだ。
見えない糸に引っ張られるようにして足を踏み入れた先で目にしたのは、目を背けたくなるようなその姿。
雛菜「あっ、こんにちは~。お買い物ですか~?」
ルカ「お、オマエ……なんでこんなところに……」
雛菜「なんで、って買い物以外何かあります~?」
動かない右手をカートの上に添えるようにして、もう片方の手で商品を持つ。
何不自由してません、といった顔とは対照的に痛ましいが過ぎるだけの不自由が曝け出されていた。
雛菜「何か勘違いしてそうですけど、透ちゃんと一緒ですよ~? 今はちょっとトイレに行ってるんでいませんけど~」
ルカ「そ、そうか……そうだよな……」
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
1 選択
【絶対音叉を渡した……】
雛菜「なんですか、これ~? サスマタ~?」
ルカ「一応音楽用品だよ、共振を起こして医療の現場で使ったりするやつの強化版だ」
雛菜「ふ~ん……」
雛菜「あは~、でも雛菜今この音叉を持ったら手いっぱいなんで共振どころじゃないかもですね~」
ルカ「えっ」
雛菜「まあ透ちゃんに叩くなりしてもらえばいっか~」
(……背筋が凍るようなこと言うなよ)
(……まあ、普通に喜んだ……よな?)
-------------------------------------------------
……一応は、解決のかたちを見た。
浅倉透のことを守れたので満足はしている、手を失ったことよりもその方がメリットとしても大きい。
何よりも、これ以上自分の手のことで落ち込むのを良しとしない。
こういうもの、としてその場を流すことを何よりも本人が求めているのだ。
雛菜「ん~? なにか言いたいことでもあります~?」
ルカ「……その」
でも、いざこうして二人きりになると私としては言葉に詰まらざるを得ない。
だってこの惨状をもたらしたのは他でもない自分の相方。更には自分自身がその場に居合わせていたのだから。
拳を握り込んで肩を震わせる私を見れば、流石のこいつも私の心境を理解したらしい。
雛菜「あは~……」
こいつは普段あっけらかんとして、ワガママに生きている……様に見える。
でもその実誰よりも客観的な姿勢で、今の世の中にそうあるべきものとして認識されている固定概念だって捉えなおせる。
明確な我の中から、正しいものを見定めることができる。
そのしたたかさこそが、市川雛菜がアイドルたる所以なのだと思う。
雛菜「……朝も言いましたけど、あなたのことを恨んだりとかはないです~」
だからこいつは、今この局面においてもなあなあになっている現状を確かめ直すことができた。
私が胸に抱える罪悪感と、実際自分の身に起きた出来事。
それと釣り合うだけの回答を淀んだ水面の奥底から掬い上げる。
雛菜「でも、相方さんのことは雛菜だって恨んでますよ~」
ルカ「……えっ」
何が「えっ」なのか、自分の口から出た音に吐き気を催す。
それは腐った現実世界で生きていたがゆえに浸されていた詭弁の味。
私自身も腐っている。どんな状況でも許されることに、慣れてしまっていた。
雛菜「雛菜だって、まだまだ二十にもなってないんですからやりたいことは山ほどあった。でも、その悉くは奪われちゃったわけですし」
ルカ「……」
でも、そうじゃない。
加害側だって本当は許されることを求めているわけじゃない。
むしろその逆、憎まれて憎まれて、一生許されないことで初めて割に合う。
だからこそ現実では残酷なことに許しが与えられてしまうのだ。
それが一番加害側にとって苦しいことだから。
雛菜「そこに嘘はつけないですし~、ついたところで嘘って丸わかりだもんね~」
だから私からすれば事なかれ主義が横行する世の中で黙殺され続けてきた感情、それをこうして曝け出してくれたことに感謝こそしていた。
しかし、私はこれでもなお市川雛菜を見誤っていた。
雛菜「でも、恨んでるからってそれが全部憎しみになるわけじゃないと思うんですよね~」
市川雛菜はそれでは終わらない。
雛菜「雛菜だって、シーズの人たちと仲良くしてもらった時間はあるし、この島での暮らしのこともあっておかしくなっちゃう気持ちは分からなくもないです~」
雛菜「だから雛菜は、『今』じゃなくて『次』の話がしたいかな~」
やっぱりなんだかんだ言ってワガママではあるんだと思う。
ただ、それは独善とは違う。自分の都合で動きながらも、それに振り回される人間も彼女の持つ幸福の軌道上に載せられる。
雛菜「この恨みに見合うだけの、『次』。雛菜のために何かしてくれないかな~って! ほら、芸能界でも悪いことをしたら代わりに良いことをして補填しますよね~!」
彼女は自分自身の幸福を追うと同時に、周囲に幸福を振りまく存在でもある、ということらしい。
私と美琴がまさにそう、許されないという最高の利益を被ると同時に、喜びの共有と言う贖罪の機会まで与えられる。
雛菜「一緒に甘いもの食べに行ったり、雛菜を遠くに連れてったり! 右手を失った“おかげで”できる体験が雛菜は欲しいかな~」
これほどの回答が果たしてあっただろうか。
ルカ「……は、ハハッ……オマエ、やっぱバケモンじみてるよ」
私より年下で、ここまでのことが言えるなんて末恐ろしいとしみじみと感じた。
透「……あれ、なんかいる」
ルカ「……悪い、邪魔した」
雛菜「……? さよなら~」
浅倉透が戻って来るのに合わせて背を向けた。
これ以上あの場所にいるのはまずい。
今の顔を見られるのは、ひどく恥ずかしいからだ。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【市川雛菜の親愛度レベル…7.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…19個】
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
部屋に戻ってからもなんだか体が震えていた。
市川雛菜の発した言葉が、妙に私の中に響いていた。
美琴の発した言葉、起こした行動。
その一つ一つに市川雛菜の言葉がぶつかって跳ね返り、私の中で乱反射している。
能天気能天気とひとり脳内で悪態をついていたが、あいつはそんな器じゃない。
……本当に、化け物だ。
【自由行動開始】
【事件発生前最後の自由行動です】
-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…19個】
1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)
↓1
1 智代子選択
【第1の島 ロケットパンチマーケット】
そういえば前回の事件の騒ぎでコテージの備蓄もなくなっていたなとふと思い出す。
別に今行かなくてもいい用事、それなのになぜわざわざこのタイミングを選ぶのだろう。
自分でも分からない答えを、棚の中に探す。
でも見つかったのはその答えではなく、向こうの棚の奥に切り取られた甘党女の顔。
智代子「あ、ルカちゃん! ルカちゃんもお菓子?」
ルカ「……別に、暇だっただけだよ」
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
【ジャバの天然塩を渡した……】
智代子「おぉ……まさに塩、そのもの……」
ルカ「……流石に直は行くなよ?」
智代子「い、行かないよ! こういうのは料理にちょいたしするからこそ美味しいんだって、ちゃんと知ってますから!」
ルカ「あぁ……天ぷらにつけたりな」
智代子「そうそう! 調味料をちゃんと使えてこそいっぱしの料理人だよ!」
ルカ「どこに料理人がいんだよ」
(まあ、普通に喜んだか……)
-------------------------------------------------
智代子「クッキーもいいな~、でもやっぱり定番のアーモンドチョコも外せないし……」
ルカ「……太るぞ?」
智代子「太らないよ! ……いや、太るんだけど……!!」
ルカ「……はぁ」
そういえば、花火大会の時もこいつはこんな具合だったか。
ほんの一晩の催しだというのに、食いきれないほどのお菓子をこれでもかとカゴに放り込んで。
それが本当に一晩でなくなってしまったのだから驚きだ。
智代子「だ、大丈夫! ばっちり運動すればいくら食べても大丈夫だって、昔の偉い人が言ってたし……!」
ルカ「どこの誰が言うんだ、そんな煩悩丸出しの言葉」
智代子「ま、松平……定信……さん……?」
ルカ「大飢饉凌いだ偉人に何言わせてんだ」
ふざけたことをしゃべりながらもお菓子をカゴにぶち込む手は止まらない。
いつものこいつなら、ただ欲望のままに動いているだけとしてみるのだが。
ルカ「……」
智代子「とにかく元気をつけなくっちゃ! 甘いものはいつだって私たちの味方だよ!」
……流石に今回限りは、私も邪推してしまう。
ついさっきまでの表情を裏返したような明るい言動。
自分の好きなものを選び取ったかごに入れていくその動作が、なんだかいつも以上に幼く見えた。
きっとそれは私の目が曇っているから。
先入観や偏見と言ったものを捨てきれない私だから、こいつの動作を『痛ましい』と感じてしまうのだろう。
ルカ「……なあ」
1.吹っ切れたのか?
2.もう全部、解決したのか?
↓1
1 選択
ルカ「……吹っ切れたのか?」
私の問いかけに、甘党女の手が止まる。
私がこの質問に込めた意味を確かめているのか、息を一つついてから、斜め上を見つめた。
ついさっきのことだ、仲間と過ごした記憶やそこから生じる感傷に囚われ、引き摺られ続けて気を病んでいるところを目撃したばかり。
そんな最中で鉢合わせるなりに私を引っ張ってお菓子の棚に来て、何も思うところがないとは言わせない。
智代子「……ううん、まだ。というよりも、私はずっと吹っ切れるなんてことはないと思う。果穂のことも、夏葉ちゃんのことも……前回のコロシアイで命を落とした樹里ちゃんと凛世ちゃんのことも……何もかも」
智代子「それに、私自身このことで吹っ切れるなんてしたくないんだ。私で勝手にひと段落つけるのって、なんだか寂しい気がして」
智代子「だからね、決めたんだ。私は変わらなくていい、無理に前に進まなくたっていいって。ほら、チョコレートだって甘い物だけじゃなくて、ビターなものだってあるよね?」
はじめこいつの肩書を見た時に抱いたのは『くだらない』という感想。
名前をもじってその場でぱっと思いついたような『チョコアイドル』、どうせそこに大した戦略も展望もない、キャラ付けどまりの記号なんだと思っていた。
でも、こうしてこいつと直面するとその認識は誤りだったと思わされる。
ただ甘いだけじゃない、どれだけ厳しい現実だろうと、どれだけの苦境に立たされようとも、
向き合い続けることができる。向き合う誰かを支えることができる。
それだけの覚悟とともに背負い込んだのが『チョコアイドル』という看板だったんだろう。
智代子「私は、チョコアイドルだから。ちょっとくらい苦いぐらいが隠し味だよ!」
……こうも誇らしげに言われれば、その看板も認めざるを得ないだろう。
ルカ「……ハッ」
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【園田智代子の親愛度レベル…11.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラの数…20個】
というわけで自由行動終了にて本日はここまで。
突発的な更新となったのにお付き合いいただきありがとうございました。
次回はいよいよ事件発生、捜査パートまで進みます。
第4章が長かった分若干駆け足っぽく感じますが、その分事件や裁判パートは濃くなっていると思うので対戦よろしくお願いします。
次回更新は6/22(水)21:00ごろで予定しています。
それではお疲れさまでした。
突発的とはいえ更新に気づかなかったとは不覚……
最終日の自由行動、てっきり残りで唯一コミュ完走できそうなちょこ先輩連打してスキルもらいに行くのかと思ってたから雛菜行っててびっくりした
でもそういう個人の勝手な思い込み通りに動かないのが安価スレの醍醐味だし、それに雛菜、かわいいしつよいから仕方ないか~
ところで多分6章だと自由行動がないと思っているので個人的な興味から作者の方に質問なんですけど、
【Scoop up Scrap】の効果でわかるアイドルに喜んでもらえるプレゼントって全部終わった後にでも一覧などで公開するつもりってありますか?
単純にどういうプレゼントだと喜ぶ想定だったのかとか逆にマイナスだったのかとかちょっと気になるので可能であれば前作のもの含めて知りたいです。
それと可能であればコミュを完走したときにもらえるアイテムとスキルについても、こちらは金の鍵の使用に影響するのでフェアに行くためにも全部完結してからでいいので、前作含めて知りたいです。
これは単純にデータベースを眺めるのが好きだから知りたいだけなので、無理にとは言わないのでよろしければ一考のほどよろしくお願いいたします。
>>895
【Scoop up Scrap】のアイテム判定はその場その場で持っているアイテム内で考える予定だったので特にリストとかはないですね
100個のアイテムに15人の判定つけるのは流石に無理でした
コミュ完走時のアイテムとスキルは用意してあるので、物語が終わったら載せたいですね~
最後の一章がまた長いんですけどね……
それではそろそろ再開します
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
昨日の今日で、夜はまだ熱を持っているように感じた。
まだ目や耳に焼き付いている昨夜の衝突。
飛び散る血と汗、苦悶の叫び、掌の痛み、そして美琴の独白。
下手なドラマよりもよっぽど壮絶だ。
あの光景が未だこの夜に混じっているような錯覚が、喉元に汗を伝わせた。
ルカ「……美琴」
美琴が別れ際に言い残した「もう姿を見せることはない」、という宣言。
それが妙に奥深くに突き刺さって、忘れられない。
もしかして本当に、今度こそ美琴は遠くに行ってしまうんじゃないか。
この絶海の孤島、逃げ道などどこにも無いというのにその危惧が付き纏って離れない。
嫌に冴えた瞳孔に、無理やり瞼で蓋をした。
------------------------------------------------
【???】
「……冬優子ちゃんは、これでもダメって言うのかな」
「わたしが、狸を止めなかったから……美琴さんは誑かされて、雛菜ちゃんとルカさんを刺しちゃった」
「雛菜ちゃんはもう右手が動かなくなっちゃった」
「もう一生、動かない」
「今回はコレで済んだけど……狸はきっとこれじゃ終わらない」
「次は守れるかどうかもわからない。次はどんな犠牲を払わなきゃいけないかもわからない」
「……わたしは、これ以上失いたくない」
「これ以上さみしくなりたくない」
「わたしは……わたしは……!」
「そのためなら、命だってかけてもいい」
____
______
________
=========
≪island life:day 25≫
=========
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】
一晩経ったが、まだナイフで裂けた傷は塞がらない。
寝起き早々に手が真っ赤に染まっていて言葉を失った。
自分でやったことではあるものの、傷としては残りそうだし、少し憂鬱になる。
顔を洗おうにも両の手で水を掬ったりはしづらいし、物を握るのも痛みが伴う状態。
どうしたものかと首をもたげた。
「……まあ、あいつはそれどころじゃないんだろうけど」
市川雛菜のことを思うと、そんな嘆きもしょうもなくかんじられる。
私は一時的でも、あいつは一生。
ずっとずっと不便がつきまとう。
それだけでなく、安息を不意に奪うような痛みも不定期に現れる。
この先数十年の人生に落とした影は、思う以上に濃い。
「……それでも、あいつはきっと笑顔なんだろうな」
レストランで待ち受けているだろう顔を想像しても、曇っているものは考え付かなかった。
------------------------------------------------
【ホテル レストラン】
恋鐘「おはようルカ~~~!」
智代子「おはようルカちゃん!」
ルカ「よう……」
出迎えた二人にも、その表情に曇りはない。
むしろうざったいくらいの声量で、こちらの表情が曇るくらいだ。
恋鐘「今日は何でか知らんけど、厨房の冷蔵庫は使えんくなっとったばい……故障ばしとるとやろか?」
智代子「えっ……それじゃあ今日の朝ごはんは……」
恋鐘「ばってん、うちに妥協はなか! 冷蔵庫の食材は使えんくても、他のもんで何とでもなるけん! 新鮮なフルーツでとっておきの朝ごはんを用意しておいたばい!」
智代子「いよっ! その言葉を待っていた~!」
ルカ「……相変わらずオマエらは能天気だな」
連中はすっかり市川雛菜のペースに飲まれてしまったらしい。
昨日は後遺症やら襲撃やらでとても笑顔なんて余裕がなかったというのに、今ではすっかり元の調子。
体中の力が抜ける、間の抜けた食卓が帰ってきていた。
恋鐘「ほら、ルカもた〜んと食べんね! 料理は食べられてこそばい!」
相変わらず問答無用で朝食を皿に盛り付ける長崎女。
智代子「ルカちゃん、そのベーコンエッグ……要らないなら助太刀致しますぞ」
やたら仰々しい口調で余り物にありつこうと集ってくる甘党女。
雛菜「次はヨーグルトが食べたいかな〜」
透「ウィウィ、ちょっと待って。箸だとなかなかむずいから」
雛菜「透ちゃん、スプーン使わないの〜?」
透「あー……あったんだ」
ギャグ漫画でもないようなやり取りでこちらの頭を痛くするノクチルの二人組。
レストランの卓には、私が苦手で苦手で仕方ない、それでも無いなら無いで違和感を覚える喧しさがあった。
……一部分を失した形で。
智代子「……あれ、そういえばルカちゃん」
ルカ「あ? どうしたよ」
智代子「あさひちゃん、今日は一緒じゃないんだね」
ルカ「あさひ……?」
今朝の私は完全に抜けていた。
傷ついた自分の体を慰めるのに夢中だったのか、
荒れ果てたかつての相方を見て傷心を引き受けたからか、
悲運を悲運と見ない滑稽とすら感じる開き直りに感化されたからか、
この日ばかりの私は、かつての鋭さの全てを失った形でここに座っていた。
絶対に見落としてはいけないものに、視界の外にいることを許可してしまった。
ルカ「だ、大丈夫だろ……すぐに来るって」
智代子「……行ってあげて、ルカちゃん。不安な気持ちを隠す必要なんかないよ!」
ルカ「……誰が」
恋鐘「素直にならんね、もううちらん前でカッコつける必要なんかなか!」
ルカ「……チッ!」
なぜ手綱を離してしまったのだろう。
散々冬優子から聞かされていた『神出鬼没』、行動の予測がまるでつかない芹沢あさひという存在。
誰よりも彼女の理解者たる冬優子ですら、匙を投げていた。
それにこの島のルールという危険因子が絡んでいる今、ほんのわずかな間の所在なさですら私たちの血の気を引かせるには十分すぎた。
音を立てて引いた椅子、その足を蹴飛ばすようにして入り口へ。
もつれかける足取りも他所に、ドアノブに手をかけた。
そこで思いっきり引けば、あの嫌味ったらしい快晴の太陽が私たちを見下ろしている。
_____そのはずだった。
「……え?」
ガスマスクの向こう側、ガラス玉のような碧い瞳は、私のことを見上げていた。
ブシュウウウウウウ!!
(なんだ……何が起きた……?)
真正面から煙を浴びて、後退。
もといた机の足元に不格好にも尻餅をつく形で倒れ込む。
どうして私がこうも不細工な転倒を晒したといえば、手足の末梢から徐々に弛緩を始めていたため。
口から入った煙は一瞬で全身に行き届き、既に体は言うことを訊かなくなっていた。
ガッシャーン!!
おかげさまで机の上のコーヒーまでひっかけてしまった。
ただ、もうそれを拭うほどの力も手には籠らない。
お腹のあたりにコーヒーの温度を感じながら、悶える声だけを漏らす。
徐々に意識と体をつなぐ縄は解け、糸になり、やがて宙ぶらりん。
頬に感じるフローリングの冷たさと低空の埃っぽい空気を感じながら、閉じゆく瞼に彼女の姿を捉えていた。
顔は見えずとも、小柄な彼女のシルエットは見紛うはずもない。
_____あさひそのものだった。
_____
_______
__________
------------------------------------------------
【???】
「う、うぅ……」
まず感じたのは居心地の悪さ。
自分の意思でなく折り畳まれた体はそれだけで痛むし、この狭っ苦しい空間ではすぐに手脚を伸ばすこともできず。
身を捩っただけで筋肉痛のようなものが走る。
体をあちこちにぶつけながら夜目ができてくると共に、自分のいるこの空間もその正体がわかってきた。
やけに頑丈なつくりで、洞穴のようにゴツゴツとした表面。
それでいて私が横になってちょうどくらいのサイズ感の空間。
そこら中でネオン色の部品が発光していることを見ても、
今私がいる空間を称するのにふさわしい言葉は【コックピット】というものだと納得した。
頭をぶつけないように、ゆっくりと前屈みに身を起こした。
よくみるとすぐそばに操縦桿と座席とが一体になったコーナーがある。
ずっと床に転がっていたせいで体がバキバキだ。
少しでも柔らかい材質に触れたくて、私は椅子の上に腰掛けた。
所詮は乗り物のシート。
そこまで上等な感触では無かったが、床に転がっているよりはマシだ。
ふぅっと息をついて、やっと事態を把握する気が起きた。
……さて、これはどうしたことだろうか。
レストランで何者かが突然姿を表したかと思うと、私の意識はすぐに体を離れていき、体中を暗黒が浸した。
かと思うと、次に瞼を開けたときには既にこのコックピットの中。
全身に鈍い痛みを走らせながら、ここでどれほどの時間を過ごしたのだろう。
それに大体、誰が私をここに?
なんのために? どうやって?
そして、ここは一体なんのコックピットなんだ?
冷静が疑問の五線譜を作り出し、私の神経回路は脳髄の指示に従って活動を開始。
五感でコックピットのその先を手繰り寄せる。
聞こえてくる音は、火花の音。
機械のメンテナンスをどこかでしているのか、バチバチとした音が遠くに聞こえる。
感じる匂いは、オイルの匂い。
私が今いる場所は、どうやら何かの整備場のよう、ガソリンスタンドで嗅いだ匂いが鼻をくすぐる。
触れる機械は、初めてのもの。
見たこともない操縦桿はちゃんとした手順を踏まないと動作しそうにない。
私では一ミリ前に進めることすらできなさそうだ。
……そして何よりも。
私のいるコックピットの上半分はガラス張りになっていた。
私の乗る『何か』の状態に応じて視認性は良くなるらしい。
今はスリープ状態なのか、ガラスは少しすりガラスのようで薄靄のかかったような視界だ。
それでも一番の情報は目から入る。
とにかく事態を見極めるべく、眼球がガラスにぶつかるぐらいの距離まで目をそこに近づけた。
細めにして、片開き。
ガラス一枚隔てた世界を見定めるべく、近づけて……
___【それ】を、見た。
【首のない死体が、エグイサルの取り囲む中央で椅子に座っていた】
------------------------------------------------
CHAPTER 05
Killer×Miss-aiōn
非日常編
------------------------------------------------
昏く、狭い、箱舟の中。
大波に揺られ、嵐に押され、その中に大事に保管された命をどこまでも運んでいく。
外からの声など届くはずもなく、外からの光だけがわずかに差し込んでくる。
内側から外側を見ることも許されず、運ばれる者はただ、その暗闇と静寂の中で己自信と対峙して時間を流れるのを待つだけ。
永遠とも一瞬ともとれるだけの時間が経って、ようやく。
天板が外れ、やっと陽の光を浴びるときがやってくる。
箱舟を出、手を天に向かって掲げ、うんと伸びをして初めて。
____運ばれた者は、滅んだ世界を目にすることになる。
------------------------------------------------
厚みはどれほどだろうか。
私の通う事務所の窓は多分1cmの厚さもない。
小動物や風に運ばれた小石が部屋に侵入するのを防げさえすればいい、それだけの窓なのだからそれで十分なのだ。
では、この窓はどうだろう。
おそらく軍用の機体であるこの『エグイサル』のコックピットを覆う窓がそんなやわなものと一緒で許されるはずもない。
きっと多少の銃弾なら防げるぐらいには分厚くて、特殊な加工もなされているはず。
その甲斐あって私はこのコックピットの中で、外の世界で何が起きているのかを悟ることすらなく、
そしてすべてが起き、終わった後でも……近づくことすらできなかった。
「おい……なんだよ、あれ……何が起きてんだ……誰が死んでんだ……!!」
エグイサルが取り囲む中、椅子に座って無い首から血をだくだくと流している変死体。
コックピットの中で狼狽えるほかない私を嘲笑うように、アナウンスが鳴った。
ピンポンパンポ-ン!!
『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』
3人以上の人間が死体を発見すると鳴るアナウンス。
これが鳴り響いたということは、私で3人目にカウントされるということだろうか。
その推理すら成立しないほど、このコックピットからでは状況がまるで見えてこない。
そしてモノクマはどこから姿を現すかと思うと……
ザザッ……
『……大丈夫? 相当参ってるみたいだね。無理もないか……突然こんなことに巻き込まれちゃって』
コックピットのガラスの表面に突然に浮かび上がってきた。
ロボットアニメなんかで見たことがある、このガラスはスクリーンモニタも兼ねているのだ。
同じ舞台を組む仲間や、戦闘中に地図を画面上に展開して戦闘を補助する近未来的な技術。
それが標準搭載されているらしく、モノクマは悠々とワイングラスを傾けながら私たちの前に姿を現した。
「モノクマ……! これはどういうことなんだ、説明しやがれ!」
画面にかじりついて問いただすも、モノクマはその表情を少し動かさない。
『やれやれ……説明だなんだと言われましても、それはこっちのセリフなんだよね。ボクはこのコロシアイのゲームマスターではあるけど参加者ではないんだ』
「だからって……オマエには説明義務があるだろ! コロシアイを……学級裁判を強いるんだったら、自分たちの置かれている状況を知る権利が私たちにはあるはずだ!」
『……まあ、最小限の情報だけ教えてやるけどさ。お察しの通り、オマエラは今、全員エグイサルのコックピットの中にいます。きっかり一台につき一人ね』
なるほど、死体発見アナウンスが流れたのはそう言うことか。
このガラスは外から内側が見えにくい作り。今こうして他の機体のガラスが真っ暗に見えていてもその裏には見知った顔の誰かが潜んでいるという訳だ。
『そして、エグイサルが収められているのは探索の時と同じくワダツミインダストリアルだよ。ここの整備工場の中で事件は起きたんだ』
遠くに聞こえる火花を散らすような音の正体もこれで説明がついた。
あの工場では常に軍用兵器と思しきものを取り扱っており、耳を劈くような音がそこら中で鳴り響いていた。
この遮音性の高そうなコックピットでもその音が聞こえてくるのは、今も工場が稼働中だからなのだろう。
『オマエラの目の前……中央で座っている首のない死体。これから始まる学級裁判ではオマエラにこの死体を殺したクロを議論してもらいます』
「……ちょっと待て、なんだその口ぶりは」
『ん?』
「あの死体は誰なんだ? それを知らないことには学級裁判なんて____」
『さあね? その死体が誰かなんて……ボクも教えられないな』
「……は? オマエ、何言って……」
『うぷぷぷ……今回のクロには、ボクはすごくす~ごく感謝してるんだ。これで事件も5つ目、展開的にも誰が死ぬかなんて見えすいてきたし、いい加減事件もマンネリ』
『そんなところで、こんなスパイスを混ぜてくれるんだから!』
モノクマは私の狼狽っぷりを認めるなり矢継ぎ早に言葉を並べ立てる。
命を己が掌に載せ、圧倒的優位に立っている側だからこその余裕綽々っぷりで悦に浸る。
その言葉が続くたびに私の胸は不愉快な鼓動を繋ぎ、そしてそのたびに不穏な埃が心臓を包んだ。
そして、モノクマの浸っていた悦の正体が徐々に姿を現していく。
未就学児のような無邪気さで、嬉々として命を弄ぶ残酷さで、空想小説のように突き抜けた突拍子のなさで塗り固められた、ガチガチの『悦』。
それを一言で称するなら、『好奇心』なんだと思う。
私たちが命を懸けて臨む場で、どう転がるのかを見て、笑ってやろうというのがあまりにも透けて見えているのが不愉快を極めた。
『今回の学級裁判は誰が死んだのか、そして誰が生き残っているのかもわからない状態で議論をしてもらいまーす!』
「……は?」
『今言った通りだよ! オマエの他にも、ここにあるエグイサルにはそれぞれ生存者が一人ずつ搭乗しております。ですが、その正体を見た目からは勿論、声からも当てることは不可能です!』
『学級裁判ではそんなアンノウンな状態の相手と舌戦を行い、時には協力して、推理を行い犯人を明らかにしてもらいます!』
……馬鹿げている。
あまりにも、馬鹿げすぎている。
これまでに挑んだ4つの学級裁判だって荒唐無稽な話だ。
齢20前後の女を集めて、その中に潜む殺人犯を見つけ出す……なんてどこのB級映画だという話。
それなのに、誰が死んだか誰が生きているかも話からに状態から犯人を見つけ出せ……なんて。
「いい加減にしろよテメェ……!」
『ん?』
「ただでさえ博打みたいなもんなのに、そんな目に賭けてられっかよ……!」
『ふーん、もしかして自信がないの? お仲間の顔を見ながらじゃないと安心して議論ができないの?』
「そんな安い挑発に乗るかよ……私たちは自分の命を懸けて学級裁判をやってんだ、そんなオマエの一回の思いつきに振り回されるわけにゃいかねえんだよ」
『そんなこと言われてもなぁ……今のこの状況に持ち込んだのはオマエラの中のクロなんだよ?』
「あ?」
『あの死体が誰かわからないように細工をしたのも、エグイサルの中に他の人間を乗せたのも、ぜ〜んぶやったのはオマエラの中に潜むクロ! ボクの思いつきっていうよりはクロの犯行計画なんだよね』
『ボクはその意思を汲んで、このルールを提示しただけ。むしろここでオマエラの要求する情報を開示するとフェアじゃなくなると思うけど』
もはや公平だとか不公平だとかそういう議論の上にはないのだが、モノクマは譲る気はなかった。
そりゃそうだ、こいつからすればクロのこの一策は最高の酒のつまみ。
私がいくら正当な主張をしても認めないのは目に見えた。
「……でも、どうやって学級裁判なんかやるんだよ。このコックピットからじゃ議論なんかできねえし、動くことだってままならねえぞ」
『ああ、それは大丈夫だよ。エグイサルはリモートコントロールが可能だからね。すぐに外が見れるように電気もつけてあげるし、時間になれば裁判場まで連れて行ってあげる』
『それに議論は……うぷぷぷ、とっておきの機能があるからお楽しみに!』
神経を逆撫でする喋り方だが、どうやら学級裁判の進行には問題なし、捜査もできるとのことらしい。
ウダウダいう前にとにかくやれ、と言わんばかりにすぐに電子生徒手帳にはモノクマファイルの情報がダウンロードされた。
『今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定』
……まあそりゃそうだよな。
首をぶった切られて生きていられる生物はもはや生物ですらない。
しかし、犯人の奴はどうやって首を切ったというんだろう。
人間の首には人体でも随一の太さと強度を誇る骨が通っているはずだ。
生半可な刃物では骨に傷をつけることもままならない。
無論それでも動脈を傷つければ失血死には足ると思うが、わざわざ犯人は切り離すところまでやっている。
凶器を特定することが、解明への大きな一歩となりそうだ。
コトダマゲット!【モノクマファイル5】
〔今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定〕
-------------------------------------------------
「で、捜査ってのはどうやればいいんだよ。まさかこのエグイサルを操縦しろっていうんじゃないだろうな」
『そんなことは言わないって。エグイサルの操縦には専用のリモコンが必要だしね、内部のマニュアル操作は……なんかめんどくさいからパス!』
「はぁ……」
『その代わり、エグイサルアイは自由自在に使えるよ! 窓から見たいところをピンチアウトしてくれれば自動でズームするから、隅々まで見てやってちょうだいな!』
『あと動かしてみたいとか要望があればその都度ボクを呼んでね! できる範囲で協力するよ!』
本当にこの状態のまま操作を行うんだな…
……今頃他の連中もエグイサルの中で同じ説明を受けているんだろう。
コミュニケーションどころか言葉を交わすこともできないんじゃ協力は難しいが、戦っているのは私一人じゃない。
それぞれがこの手足を伸ばしてやっとの空間で出来ることをやる。
……他のことなど何もできないんだから。
流石に不可解な状況では私にも蒙昧とした不安が付きまとった。
こんなところで得られる情報でどこまで戦えるのか、自分の手で触れぬ証拠に信用ができるのか。
そして、これから先に待ち受ける学級裁判がどんなものになるのか。
何よりも怖いのは、『わからない』ことだと嫌でも痛感する。
人は指針に縋って生きている。
依り代らしい依り代が無い状況下では、何も無くとも胸がざわついて、呼吸が浅くなるらしい。
そこで私は、昔気まぐれに読んだ小説を思い出した。
イギリスかどこかの国で、脚を弱らせた老人がパイプをふかしながら探偵業を営む。
狭い居住空間から一歩も出ることもなく、椅子の上で論理を転がして事件を解決する。
そんな話だった。
確かガキの頃に、ママにたまには活字でも読んでみろと渡された本だったように思う。
どうしてこんなものを思い出したのか、それは目先の縋るものを失った本能が、過去に縋るものを求めたから。
ただその見苦しい姿勢はこの局面ではある種正解だったのかもしれない。
安楽椅子に腰かけた老爺の姿を思い浮かべると、体の震えが止んだからだ。
……あんな耄碌一歩手前のジジイにできること、私にできないはずもない。
私が座っているのはコックピット。
古ぼけた木製の椅子に比べると、随分と座り心地もいいし、この椅子は機能性だって抜群だ。
____上等。
【捜査開始】
------------------------------------------------
さて、どうやって調べたものか。
エグイサルの操作ができないのは再三確認している通り。
あくまでここから動かないで捜査を行うのが今回のスタンスだ。
つまり基本的には『視る』ことに頼らねばならない。
ここから目視で調べるべきだと思うのは……
やはり【死体】は外せない。
……ここからも首の断面が確認できて少し気分が良くないが、致し方ないだろう。
そして、今自分たちの乗るエグイサルもいる工場、その【工場内設備】は調べたいな。
ワダツミインダストリアルも何度か足を踏み入れてはいるが、そこまで入念に調べたことはない。
工場を調べるなら、今のコックピットからは死角になっている【エグイサルの背後】も見ておきたいな。
モノクマは要望さえ出せば応じてくれそうな態度だったし、これくらいなら許されるだろう……
加えて、私の乗っている以外の【並んでいるエグイサル】も注視しておこう。
自分の乗っている機体と同機種、外観を見ておくことは意味があるはずだ。
忘れちゃいけないのが、この【コックピット内部】の捜査だ。
私たちの放り込まれているこの空間だって、何の意味もないはずがない。
出来る範囲で情報を拾い集めるぞ。
更には、今回の事件は【私自身】も当事者なんだ。
自分が知らずのうちに情報を握っている可能性も十分にある。服とかポケットとか、忘れずに確認しておこうか。
大体調べられるのはこのあたりか?
調べ忘れが無いように、入念に当たっていくとするか……
1.死体
2.工場内設備
3.エグイサルの背後
4.並んでいるエグイサル
5.コックピット内部
6.ルカ自身
↓1
1 選択
------------------------------------------------
【死体】
まあまずはあの死体をよく見てみないことには何も始まらないよな……
顔を窓に近づけて、死体を指でピンチアウト。
窓の液晶には凄惨な首無し死体がデカデカと映し出された。
「……チッ」
見れば見るほどに異様だ。
首は見事なキレ筋というべきか、一切乱れのない直線ですっぱりと切れている。
どれほど切れ味のいい刃物でも、なかなかこうはならない。
それに、死体の身元特定を妨げるためか全身にローブのようなものがかけられてシルエットが隠されている。
「あの布……何だか妙だな」
しかし、シルエットを隠す目的にしては布は妙にぎらついていた。
天井の照明をこちらに反射させ、擦れた時にはかしゃかしゃという音が立つ。
「あれ……アルミシートか」
≪「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
「な、何を……」
「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
「……!」
「……静かにしてて」≫
つい最近、私はあのシートを見た。
それどころかあれを被りすらした。
第5の島が解禁されて間も無く、当日夜。
このワダツミインダストリアルに忍び込んだ私はエグイサルに存在を感知され、あわや襲われかけた。
そこを赤外線センサーを無効化するアルミシートを美琴に被せられ九死に一生を得たのだった。
「あのシート、この工場の中に置いてあったのか……?」
工場に置いてあったからうってつけ、ということなのだろうか?
死体の素性を隠すための布にしては、目立つすぎるような気もするが……気にしすぎだろうか?
コトダマゲット!【死体上のシート】
〔死体のシルエットを隠して素性を隠す目的でかけられたアルミのシート。数日前に美琴がこのシートをエグイサルの索敵から逃れるために用いた〕
------------------------------------------------
「しかし犯人はどういうつもりなんだろうな……」
学級裁判で争われるのは犯人が誰か、ということ。
被害者が誰であろうとその中身を問われることはない。
無論、候補者の選定に一定の妨害効果はあるだろうが……ここまでして隠蔽を行う必要はあるのだろうか。
「……周到だな」
特に手袋まで死体に着用させている辺り、余念がない。
市川雛菜と私は掌にあからさまな傷跡がある。
死体の掌を明らかにすればそれが私たちかそうでないかすぐに分かり、候補を絞ることになりかねない。
ちゃんとそこまで考えられているようだ。
「……ん?」
レザー製の手袋を観察すると、一部分に気になった場所がある。
あらためてそこをピンチアウト。
ズームにズームを重ねることで流石に解像度は落ちるが……私の違和感を明らかにするにはそれでも足りた。
その手袋は、左手の一部分、指先だけが少しだけ破れているのだ。
本当に少し、糸のほつれぐらいの違いだが……新品同然に見える手袋だと際立って見える。
「……一応、覚えておくか」
コトダマゲット!【死体の手袋】
〔首のない死体の着用していた手袋。レザー製で新品同然だが、左手の指先だけ破れている〕
------------------------------------------------
捜査の基本と言えば死体から流れた血、その跡を辿ること。
これまでの事件でも、死体が動かされた可能性や別の場所で争った可能性を検討するうえで何度も調べてみたものだが今回はどうだろうか。
今回の死体は見た目の異様さも際立つ。
死因となったであろう首の両断はかなりの血しぶきも跳んだだろう。
不自然な血痕の流れがあればすぐにわかるはずだ。
死体の足元付近からその周りを指先でピンチアウトする。
何かを引きずったり、持ち出したりしたような分かりやすい形跡は見当たらない。
死体の首はなくなっているし、持ち出した時に血が垂れたりしそうなものだがそれがないということは、
犯人は布か何かにくるんでどこかによこしたのだろうか?
「しかし、この犯行でこうも証拠を残さないなんてことがあり得るのか?」
私が引っ掛かるのは手口の割に証拠が少なすぎること。
先ほども言及したが、首を両断すればそれだけの返り血を受けるのは必然。
レインコートを着ていようがなんだろうが、液体が付着すれば当然滴り落ちる。
犯人の行動を示す何らかのものは残らねばいけないのだ。
だが、まるで犯人はその場で忽然と姿を消したようで、靴の痕も全く残っちゃいない。
「どうやって犯人は首を刎ねたっつーんだ……?」
まさか遠距離で首を刎ねるような方法でもあるのだろうか。
結局、今回もその手口を明らかにせねば真実に近づくことは難しそうだ。
「……ん?」
はじめは気づかなかったが、よく見ると証拠がないわけではない。
靴のような分かりやすい形状でないし、他の血しぶきと混ざっているから分かりづらいが……一部だけ、散らばっている『点』に不自然なものがある。
同じ大きさの『点』の血痕が部分的に連なっている箇所があるのだ。
しかもその『点』はどこに辿り着くでもなく、突然に終わりを迎える。
そこにはエグイサルは勿論扉などもなく、見上げた先にダクトがあるだけ。
人間の力じゃどうやっても辿り着かない場所だ。
これも犯人の工作の一部なのだろうか……?
コトダマゲット!【点の血痕】
〔死体発見現場にあった不自然な血痕。同じ大きさの点が連なり血だまりから伸びているかと思うと、ダクトの下で突然に消えていた〕
------------------------------------------------
さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
1.工場内設備
2.エグイサルの背後
3.並んでいるエグイサル
4.コックピット内部
5.ルカ自身
↓1
1 選択
------------------------------------------------
【工場内設備】
工場内の設備を観察する。
コックピットのガラスがあるので流石に360度まるまるというわけにはいかないが、天井を仰ぎ見ることぐらいはできた。
エグイサルを収容するだけあり天井はかなりの高さ。
高校の体育館、あるいはそれ以上の高さがあるだろう。
そんな高みを支えているのが分厚い鉄板と太い鉄骨。
灰色の骨組みが剥き出しになった構造は、マニアからすれば垂涎ものの建築だろう。
でも、この時私の目を引いたのはその無骨な作りではなく、それに付随するもの。
蝿が料理に止まったかのように、さりげなく、そこにあった。
「……監視カメラか」
私たちを見下ろすように取り付けられたカメラ。
その画角からして、エグイサル六台をしっかりととらえた上で、中央の死体の座る椅子も収められていることが予測できた。
「おい、モノクマ! あの監視カメラの映像……見られるか?」
『はいはい、ちょっと待ってね! コックピットのモニターと同期いたしますぞ!』
ブブ……ブーン
暫く待つと、目の前の窓に私たち自身が乗るエグイサルを見下ろす構図の映像が流れ始めた。
時刻は午前9時半ごろ、レストランでの騒動が起きてから暫く経った時刻で、モノクマファイルに記載されていた事件発生時刻から少し前の時刻に当たる。
この場にいるエグイサル全員を俯瞰するような構図。
エグイサルが円形に並んでいることもあり、画角として収まりは悪くない。
その中にぽつんと置かれたアルミ製の椅子。
そこに腰掛けているのが……
「あさひ、か……?」
私たちをレストランで襲った時と同じくガスマスクを装着した状態であさひはそこにいた。
顔の前面が覆われてはいるものの、髪色や服装、それに小ぶりなシルエットからしても本人まず間違いはないだろう。
あさひはあさひらしからぬ大人しさで、そこにじっとしていた。
「何やってんだ……?」
何も起きていない、ただ座っているだけなのになぜか胸がざわついた。
このまま映像を見ていると、きっと良くないことが起きる。
そんな予感が走ったのも束の間。
ザザザザザ…!!!
映像に亀裂が走る。
突如として砂嵐に覆われ、エグイサルもろともあさひも闇の中へ。
「お、おい……!? なんで……!?」
画面に抗議の声を上げるも無論私の意思は跳ね除けて、モニターは黙り込む。
苛立ちが募る最中、モノクマが画面に割って姿を表した。
『あー、映像データが破損しちゃってますねこりゃ』
「ふざけんな! 破損も何も、オマエの恣意的な編集なんじゃねーのか?!」
当然の帰結だ。
こんな状況下で、与えられる情報にさらに制限がかかるようなら私だって黙っちゃいられない。
でも、モノクマは平然と真っ向から私の訴求を棄却する。
『それは言いがかりというやつだよ。根拠もない、ただの感情の当てつけで罪を被せられても参っちゃうなあ』
「じゃあこりゃ一体何なんだ! 説明しろ!」
『最初に言ったでしょ? 映像データが破損しちゃってるって。これは誰かが意図的に切り取ったんじゃなくて、カメラ側のアクシデント! わかる? ドゥユーアンダスタン?』
確かに誰かが編集したにしてはお粗末すぎる。
砂嵐で画面を覆い尽くして不都合を消す、なんてこの部分を疑ってほしいと言っているようなもの。
やるならちゃんとしたカット編集なりなんなりを施すはずだ。
モノクマの主張には一定の妥当性が認められた。
『破損している部分を確認するのは諦めてもらうしかないけどさ、続きなら見れそうだからそれで勘弁してよ』
「……チッ、だったらその続きとやらをさっさと見せな。これ以上イラつかせるなよ」
『はいはーい』
モノクマが姿を消すと、砂嵐は倍速で流れていった。
そのまま待つこと数十秒、モニターには再びあの構図の映像が流れ始めた。
「……は?」
でも、砂嵐で途切れる前と後では、大きな違いがあった。
それは……エグイサルに取り囲まれた中心。
あの椅子に腰掛けている人物。
芹沢あさひが先ほどまで腰掛けていた椅子には、首のない死体が鎮座していたのである。
「お、おい……これって……!?」
コトダマゲット!【監視カメラ:ワダツミインダストリアル内部】
〔ワダツミインダストリアルの工場天井に取り付けられていた監視カメラ映像。エグイサルが一つの椅子を取り囲む画角で撮影されており、はじめはあさひがその椅子に腰掛けていた。途中で映像データの破損を挟むと、その椅子に座っていた人間が首のない死体にすり替わっていた〕
------------------------------------------------
「モノクマ……これ、どういう意味だよ!? この映像……まるで、あさひが死んだみたいな……!」
『映像の解釈に関してはノーコメント! そこから先の領分はオマエラで話し合うことでしょ?』
「……クソッ!」
違う、そんなわけない。
そうと分かっていながらも、この映像を見せられると流石に私も正気じゃいられない。
叫び出しそうな気持ちをなんとか抑え込みながら、改めて映像を検証する。
重要なのは、この破損した部分のデータであるのは間違いない。
この空白の時間のうちに、椅子の上には首のない死体が現れる。
つまり本来は殺害現場もその証拠が撮影されていたはずなのである。
なのに、都合よくそこだけ映像データが破損するなんて……
どうにか破損部分に繋がる情報がないか、映像を巻き戻したり早送りしたり、あれこれ試行錯誤していると私はあるものが気になった。
「そういえばあさひのやつ……このガスマスク、どうしたんだろうな」
それは本筋とは異なった関心。
何度も映像を繰り返すうちに、あさひの顔を隠しているそれが気になった。
死体では頭部が消失していることもおそらく起因するのだろうが、
天衣無縫な彼女がゴテゴテとしたものを身につけていることがもの珍しく、私にはその理由が気になって仕方なかった。
「なあ、モノクマ。このガスマスク……詳細はわかるか?」
『ガスマスク? ああ、この人がつけているマスクのことだね?』
(個人名はあくまで伏せるんだな……)
『このマスクはロケットパンチマーケットで購入可能なもので何も特別なものではないよ。呼吸フィルターに灰色のガラス、強化プラスチックとご家庭にご用意可能な素材で製作されております!』
「どこがだよ……」
材料のことはさておいて、あさひが私たちを眠らせてからワダツミインダストリアルにいる時もずっとガスマスクをつけていたことは記憶しておいた方がいいかもな。
この映像も裏付けになるし、あさひの行動を辿るヒントになりそうだ……!
コトダマゲット!【ガスマスク】
〔ロケットパンチマーケットで入手可能なガスマスク。呼吸フィルターに灰色のガラス、強化プラスチックで作られている。レストランの襲撃時から事件当時まで、あさひはずっとマスクをつけていた〕
------------------------------------------------
さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
1.エグイサルの背後
2.並んでいるエグイサル
3.コックピット内部
4.ルカ自身
↓1
4 選択
------------------------------------------------
【ルカ自身】
エグイサルを出て捜査は出来ずとも、今私自身が何か証拠を持っている可能性はないだろうか?
レストランで意識を失ってここに至るまで、結構大掛かりな移動をしているわけで。
無意識のうちに何かを掴んでいたり、ポケットに突っ込んでおいて何かが役に足ったり、そんなことに縋らざるを得ない状況下だ。
ごそごそと自分の懐をまさぐってみると、指の先に服の元は違った布地が当たる。
すべすべとして上質な布は、つぼみのように物を包み込んで上部で口を閉じている。
「……これは、浅倉透にもらったお守りか」
第五の島が解禁されてすぐ、浅倉透が生き残っている面々に手作りのお守りをプレゼントした。
私たちが無事にこの難局を乗り切れるように、もう誰も欠けることがないように。
神にも縋る気持ちで作ったんだろう。
そんなものを大事に持っている私も、いつからか考えると信じがたいものだ。
「……」
こんなことを思うのも不躾だとは思う。
願掛けに実際の効用なんて期待する方が悪い。
それは当然その通りではあるのだが……
「全く、お守りの効果はなかった……な」
コトダマゲット!【透のお守り】
〔第五の島が解禁されてすぐに浅倉透が生き残りのメンバーに手渡したお手製のお守り〕
------------------------------------------------
他に何かないかともう片方のポケットも探ってみる。
すると今度はカサッという音を立てて乾いた感触が指先を刺激した。
折り目正しくきっちりと折られていて、それでいて私自身も丁寧に取り扱っているので汚れひとつない。
「冬優子……オマエの期待に応えられなくて、悪かったな」
あさひが私の部屋に入ってきてやむなくポケットに突っこんだままだった冬優子の黄泉からの手紙が、まだそこにあった。
前回の事件、有栖川夏葉殺しの裁判終わりに私のコテージ前ポストに投函されていた1通の手紙は冬優子が裁判に挑む前に遺したもの。
最後の最後まで冬優子らしく、有無を言わさず私に無理やり謎を押し付ける手紙。
なかなかカチンとくる文面ではあるのだが、冬優子亡き今、私とあいつとを繋ぐものはこれ1枚きり。
そう雑に扱うことなどできないのだ。
「……あさひを、私に託してくれたのに」
他ならぬ存在となった私と冬優子。その別れ際に目にかけてきた大切な妹分を私に託してくれた。
私なら、あさひを冬優子に代わって守れると信じてくれた。
でも、実際はどうだ?
あいつの手綱を握るどころか御しきれず、しまいにはこんな事件まで引き起こされてしまった。
もしこれで裁判に負けて私が死にでもしたら、地獄行きは免れられないことだろう。
……いや、その前に冬優子にひっぱたかれるだろうな。
「チッ……」
冬優子のやつにひっぱたれるのも癪だし、やはり私には生き残る以外の選択肢はないらしい。
そうでないと、あいつが託したもう一つの物も報われないからだ。
それは……写真。
前回のコロシアイの生き残りとされる五人、そして私をはじめとした今回の参加者。
それが一枚に収まったあの写真を検証もまだしていないし、検証すべきかどうかも分からない。
ただ、謎を謎のままで終わらせるべきでないことだけは確かだ。
____やっぱり、死ぬわけにはいかない。
コトダマゲット!【冬優子の手紙】
〔前回の事件終わり、ルカの部屋のポストに投函されていた冬優子からの手紙。裁判前に書かれたもので、詳細不明の一枚の写真も同封されていた〕
------------------------------------------------
そういえば……私は意識を失う直前に卓上のコーヒーを引っかけたんじゃなかったか?
催眠ガスを吸い込んですぐに力を失って手がぶつかり、腹のあたりにコーヒーをかけてしまった。
意識があればすぐにぬぐったんだが、時間も経ってしまっているだろうし、もう落ちないシミになっているだろうな……
そう思って自分の腹のあたりに手を触れる。
経った時間がどれほどかは分からないが、流石にコーヒーが渇くほどではないらしく、すぐに布の湿った感触がした。
ああ、結構気に入っている服ではあったのに……
今度は目視でそのシミを確認してやろうとした。
でも、私の目が捉えたのはコーヒーの黒茶色のシミなんかではなかった。
「な、なんだよこれ……」
そこにあったのは、こすれた部分が青色に変色していた異常なシミ。
凡そコーヒーからは抽出できないだろう色素がそこに鎮座していたのである。
思わずさっき触れた手を鼻のあたりに近づける。
香りは確かにコーヒーだ。
だが、よく味わってみるとなんだか匂いの中には異物が混ざり込んでいるような気もする。
妙な甘ったるさと言うか、コーヒーとは決して相いれない風味だ。
「これは一体……?」
私があの時口にしようとしていたコーヒー……なんだか妙だぞ……
コトダマゲット!【コーヒーのシミ】
〔ルカが意識を失う直前に、自分の服に引っ掛けて作ったコーヒーのシミ。なぜか青色の色素の混じったシミになっていて、匂いも純粋なコーヒーのものではない〕
------------------------------------------------
さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
1.エグイサルの背後
2.並んでいるエグイサル
3.コックピット内部
↓1
1 選択
------------------------------------------------
【乗っているエグイサルの背後】
エグイサルは死体を取り囲むようになっているので、自然と目線カメラもその方向に向く。
全員で死体を見下ろすような視点と考えればいい。
とはいえ、ここはワダツミインダストリアルという建物の中。
エグイサルが見ている場所以外にも当然空間は広がっている。
「背後の検証がしたい……視点を変えることはできるか?」
モノクマに協力を要請。
他の部屋への移動とまではいわずとも、視界を変えることぐらいは許してもらえるはずだ。
普通に立っていれば振り向くことなんて日常動作だし、捜査のためにモノクマも加担しすぎというほどではない。
『エグイサル自体を動かすわけにはいかないから……別カメラを同期して、それをモニターに映させてもらうね?』
するとモノクマがどこからともなくエグイサルの見下ろす先で姿を現した。
私の腹の高さほどの身長でバズーカ砲のようにテレビカメラを抱え込み、私に向かって飛び跳ねて手を撥ねる。
あんなに小さな身体のくせに、どこからその出力が来るのだろうか……
モノクマはトテトテのエグイサルの足の間を抜けていった。
すぐにモニターにもモノクマが撮影しているだろう映像が流れだす。
『気軽に気になるところを指示してね! 接写なり調査なりなんなりとお申し付けください!』
妙に協力的過ぎて気持ちが悪いが、せっかく利用できるなら利用しない手はない。
モノクマの流している映像を隅々まで丁寧に確かめる。
工場内には特に変わった様子はなさそうだ。
設備の破損や見慣れない物資の出現と言った露骨な証拠はない。
「視点、もう少し上にしてくれ」
それなら普段見ないところを確かめてみる。
エグイサルを収容可能な建造物ということで天井はかなり高め。
照明もその分いかつい見た目の高出力なものになっている。
その陰に隠れているのが、小型ながら高範囲をとらえる監視カメラ。
この工場内ではエグイサルを見下ろすものともう一つ、入り口を監視するカメラが取り付けられているようだ。
「モノクマ、今度はあの監視カメラの映像をよこせ」
『もう、クマづかいが荒いんだから……ちょっと待ってね、すぐ送ってあげるから』
暫くするとモニターの映像は全くの別角度に移り変わる。
ワダツミインダストリアルの入り口の巨大スライドドアをとらえた定点カメラだ。
録画開始時刻は午前9時前、私たちがレストランで眠らされる前だ。
代り映えのしない映像をじっと見つめていると、動きがあった。
扉を開いて工場を出ていく何者かが、バッチリとその姿をとらえられていたのである。
「……おいおい、特撮映像でも見てるわけじゃねえよな」
その姿はあまりにも巨大、そしてあまりにも角ばっている。
金属製でケーブルの通った指で取っ手を掴み、仰々しい動作で腕を動かした。
「エグイサルが……出て行ってる……!?」
白いエグイサルの退室シーン、この監視カメラはその衝撃的なシーンをとらえていた。
そして、衝撃はそれだけでは終わらない。
大体一時間ほど後だろうか、開けっぱなしになっていた扉の隙間から、影が姿をのぞかせた。
そのシルエットはつい先ほど見たばかり、それと異なるのは、その掌に何かを載せ帰ってきたということ。
長細く、起伏あるシルエット。
それぞれ別な格好で、手足を投げ出して転がっている。
そのいずれも瞼を下ろして、ほかに反応を示さない。
「これ、私たちか……!?」
意識を失った状態の私たち六人の姿がそこにあった。
私たちを落としてしまわないようにか、お盆を運ぶような動作でエグイサルは画面を抜けていった。
時間の表示を確かめる。
丁度事件発生の一時間ほど前、そして私たちが眠らされた後の時間帯。
つまり、この映像は昏睡状態の私たちをレストランからワダツミインダストリアルに運んだ時の映像と言うことになる。
どうやって六人もの人間を移動させたのかとずっと疑問に思っていたがこれなら納得もいく。
どれほど非力な人間だろうが、これほどの重機を用いることができたなら地平線の果てまでだって連れて行くことが可能だろう。
そして、この映像はそれを実行した人間をも炙りだす。
____芹沢あさひ
あの映像に唯一映っていなかったのは彼女だけだった。
レストランでガスを散布したのも彼女だったので当然と言えば当然なのだが、この映像によってその行動の多くの裏付けが取れたことになるだろう。
となると、白いエグイサルのコックピット内にいたのも必然的に彼女になる。
各色エグイサルに誰が乗っているのか分からない現在、大きなヒントとなる情報を手にすることができた。
監視カメラの映像検証は一定の結果を得ることができた。
その一方、一つ浮上するのが大きな疑問。
「というか、あさひのやつはなんでエグイサルを操縦できてるんだ……?」
エグイサルは第五の島が解禁されてからずっと誰でも触れられる場所に保管されていた。
とはいえ、ほかで見たこともない新開発の軍事兵器。
操縦方法はおろか、乗り方すら知らないのが私たちの共通ステータスのはずだ。
それなのにあさひは細やかな操作で工場を出入りし、更には私たちの運搬なんて作業すらこなしているではないか。
ふと脳によぎるのは、一度完全に放棄した可能性。
___芹沢あさひは“狸”である
……いや、まさかな。
コトダマゲット!【監視カメラ映像:ワダツミインダストリアル入り口】
〔事件現場のワダツミインダストリアル工場入り口に設置された定点カメラの映像。白いエグイサルが工場を自分の手で退室し、ルカたちを掌に載せて戻ってくるまでがバッチリ記録されていた〕
------------------------------------------------
さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
1.並んでいるエグイサル
2.コックピット内部
↓1
行動選択したところで本日はここまで。
ついに第五章の事件発生です。
だいぶ挑戦的な事件になっています、裁判を書くのもいつも以上に頭を悩ませました。
毎度のことながら、核心的なネタバレ予測コメントは控えていただけると助かります。
さて、次回更新は6/23(木)21:30ごろを予定しています。
捜査パートのおしまいまで、短めの更新になると思います。
次回更新時にスレ立てもしておいて、学級裁判は新スレで進めていく形にしたいですね。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
褒め言葉と言い訳すれば煽っても許されるって風潮
>>964
ロンパスレなので悪趣味の言葉の指すところは分かってます、大丈夫ですよ!
意地の悪さを褒めていただけて嬉しいです。
予定よりずいぶんと早くなりましたが、安価もないですし始めてしまいますね。
次スレも立てておきました、非日常編がこのスレ内で終われば学級裁判からの開始となります。
とりあえずはこのスレでの再開です。
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/)
2 選択
------------------------------------------------
【コックピット内部】
しかしこのコックピットでの捜査は慣れない。
結局自分の手で何かを触ることもできないというのはそれだけで情報にも制限がかかるし、自分の手元に武器が揃っている実感に乏しい。
「せめてこのエグイサルをどうにか操縦できればな……」
適当にあちらこちらを弄ってみるものの、反応はなし。
そもそもボタンを押していいものかの躊躇いもあって、触れられないところも多々ある。
構造も理解しないままに裁判に挑んでいいものかと首を捻ったその時。
「……ん?」
座席の左手にグローブボックスのようなものが見つかった。
特に鍵などもかかっておらず、取っ手を引けばすぐに開きそうだ。
考える間も無く私はすぐにその中を確かめる。
左上をホッチキスで閉じてあるリーフレット。
どうやらこれは画像付きで説明文の書き添えられた説明書であるらしい。
エグイサルの操作についての基礎的な事項が書き連ねられている。
『自立二足型戦闘重機:モデルAX-00 通称【エグイサル】
ワダツミインダストリアルがこれまでに開発してきたモノケモノなどの戦闘重機のノウハウを結集して作り上げた最新兵器。脚部を重点的に強化したことにより、悪路でも問題なく戦闘できるほか、跳躍により多次元的な戦闘やこれまでネックだった輸送の困難さの解消を可能にした」
『そして操作にも専門的な技術を要さない。専用のリモコンを使えば未経験者でも直感操作で殺戮が可能。即実践投入が図れる。リモコンはユーザー設定のパスコードセキュリティによって外部の人間に不用意に乗っ取られる心配もない』
『コックピット内部でのマニュアル操作も可能だが、特殊重機操縦免許第1級相当の技術が必要。緊急の用事に迫られない限りはリモコンでの操作を推奨』
『装甲も前回モデルより大幅に強化。防弾性は勿論のこと、防炎性、電波干渉防止も性能上昇。コックピットに搭乗中のパイロットの身の安全を徹底的に確保するつくり。また、コックピット内部で動作不良などの緊急事態が感知された場合にはメインシステムとは別付けの単独機構が作動し、オートマチックにコックピットが展開し、脱出できるようになる』
なるほどエグイサルの操作にはリモコンが必要になるらしい。
コックピット内部を見回してみてもそれらしきものは見当たらないし、私が今すぐにどうこう出来るものではないというのが結論のようだ。
パスコード付きのリモコン……か、そんなものどこで手に入れるんだろうな。
コトダマゲット!【エグイサルのリモコン】
〔エグイサルの操縦に必須のリモコン。ユーザー設定のパスコードセキュリティを採用しているらしい〕
そして、見た目通りの頑丈な作りをしているらしいな。
そりゃこれだけ装甲が分厚ければよっぽどのことがない限りは中は安全だろう。
そのせいで外で何が起きてしまったのか私たちは知ることもできなかったとも言えるし、
今の私たちからすればその頑丈さが外に逃さない檻としても機能している。
「動作不良などの緊急事態……ねぇ」
リモコンはなくとも外に出ること自体は可能。
とはいえそう都合よくエグイサルが壊れているはずもないわけで……
今はこのまま操作を続けるしかないみたいだな。
コトダマゲット!【エグイサル・アーマー】
〔改良に改良を重ねたエグイサルの装甲。防弾性、防炎性、対電波干渉機能に優れている〕
コトダマゲット!【緊急脱出システム】
〔エグイサルに標準搭載されている緊急脱出機構。内部の動作不良などの緊急事態を感知するとメインシステムとは別のシステムでコックピットが展開して脱出が可能になる〕
------------------------------------------------
コックピット内部の装置を自分から操作はし兼ねる、がモニターのように常時稼働しているものならそこから情報を得ること自体は可能だろう。
操縦席向かって下側、球状になっている装置には十字の表示が覆いかぶさり、そこにいくつかのマークが浮かんでいる。
同じ赤丸のマークが円を描くように六つ並ぶ。
「……これは、エグイサルを指してるのか?」
こんな並びのもの、この工場内では他にない。
このマークをエグイサルと仮定して、他のマークを確かめてみるとそれらはいずれも電子機器類に反応しているようだった。
『それはエグイサルに標準搭載されている高機能レーダーだよ。電波感知に赤外線感知、さらにはサーモグラフィーまで切り替え可能で索敵性能も抜群なんだ!』
なるほど、センサーの切り替えには特別な操作は必要ないようだ。
ガイドに従って画面端のボタンをおせばすぐに切り替わる様子。
これを使えば工場内に誰かが潜んでいても見落とすことは基本的にないと言えるだろう。
適当にセンサーを弄り、工場内設備と見比べる。
今この状況で有用なのは電波感知だろうか。
私たちの知らない機械を犯人が使った可能性だってある。
そう思って確かめていたのだが、私の目に留まったのは別の異常。
「……ん? モノクマ、オマエだけ表示がなんかおかしいな」
『そりゃそうさ! ボクはとっておきのオーダーメイド、他の鉄屑連中とは異なった電波波長で動いてるんだよ!』
まあ、それもその通りか。
モノクマのあの俊敏な動きが他の機械と同じように作動しているとは思い難い。
どれだけ高性能な技術が無駄に注ぎ込まれているのだろうか。
……なんかため息が出てきたな。
コトダマゲット!【エグイサルのセンサーシステム】
〔エグイサルは電波感知、赤外線感知、サーモグラフィーの三種類のセンサーが使用可能。これによるとモノクマは他の機械とは異なった電波の波長で動いているらしい〕
------------------------------------------------
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
------------------------------------------------
【他のエグイサル】
そういえば私以外のエグイサルを観察して見て……何かわかるところがないだろうか?
それこそ、エグイサルが犯行に使われていたのならば、何か証拠が残っていてもおかしくない。
死体の首をはねるなんて芸当、人間の力じゃ及ばぬところであり、エグイサルという手段を真っ先に思いつくわけだが……
「……どれもこれも、気味悪いぐらいに綺麗なもんだな」
並んでいるエグイサルは赤、青、緑、桃色、白色の5色。
確かこの工場内にはあと黄色のエグイサルがあった気がするが……多分それは私が今載せられているものだろう。
そのいずれも、特に汚れているような痕跡はない。
人の首を刎ねれば返り血が付着しそうなものだが、そんなものはほんの少しも見当たらない。
「エグイサルは犯行には利用されなかったってことか……?」
コトダマゲット!【並んでいるエグイサル】
〔ワダツミインダストリアルに並んでいる五体のエグイサルはいずれも返り血が付着していない。死体の首をはねるのに利用したとは考えづらい〕
とはいえ返り血なら拭きとった可能性もないわけではない。
そうなると私たちには証拠を見つけることが困難なはず。
もっと別の手がかりはどこかにないだろうか?
「……ん?」
観察を続けると、どのエグイサルにも共通する要素が見つかった。
全体的な見た目もそうだが、背中に繋がれているケーブルが目につくのだ。
確か最初にこの工場に足を踏み入れた時には、こんなものはついていなかったはずだ。
ケーブルの先を辿ってみると、大きなコンピュータへと繋がっているではないか。
「モノクマ、このケーブルは何だ?」
『はいはい! えっと……これはですね……ちょっと解析しますよ……』
「……? オマエもわかってないのか?」
『元々ボクが付けてたものじゃないからね、全くどこからもって来たんだか……』
ぶつくさ言いながら数十秒。
向こうに見えるコンピュータがモノクマの手で起動され、内部の情報がモニタに開示された。
「これは……動作ログ、か?」
そこにあったのは各エグイサルの機体番号と起動状態のステータス表示。
エグイサルが動いた時にはその時間と共に記録されるらしい。
実際、白いエグイサル……機体番号05のエグイサルはレストランの襲撃前に動作のログが入っていた。
そのあと、事件が発生した11時前後でワダツミインダストリアル内に収容されて、それ以降の動きはない。
「……何の情報も入っちゃねえな」
しかし、他にも特に怪しいデータが記録されているわけでもない。
これが示しているのは、ただどのエグイサルもいい子して動かなかったという事実。
いよいよもってこのエグイサルは犯行には用いられなかったことになる。
全く、見かけの割に使えない機械みたいだな。
コトダマゲット!【動作ログ】
〔ワダツミインダストリアル内に並ぶエグイサルはいずれも動いた時にはログがとられるようになっていた。白いエグイサルの他には特に動かされたログは残っていない〕
------------------------------------------------
なんとも実感も得られない捜査がひと段落ついたタイミング。
私が息をついた瞬間を狙ったかのように、それは始まった。
キーンコーンカーンコーン……
『世間でもてはやされて、テレビや各種メディアに引っ張りだこになった人のことを時の人って呼ぶけどさ。あれって本当に残酷な表現だよね』
『時は流れる、その人の人気は必ずいつか途絶えて、没落するところまで織り込み済みでそんな表現をしてるわけでしょ? それを褒め言葉として使ってる現代人の認識ってガチヤバだよね』
『だから我々が目指すべきなのは時の人なんかではなく、時代そのものを作るクリエイターなのです!』
『HeyHeyHey! You、時にはムーブメント起こしちゃいなよ!』
『学級裁判場で、オマエラが起こす一大ムーブメント、見せてくれYO!』
モノクマのいつも通り何が言いたいのかいまいち芯を食わないアナウンス。
この聴後のいい知れぬ不快感を感じると、いよいよその時が来たのだと認識するのだが今回はどうしたものか。
学級裁判場に来いと言われても、私たちはここから身動きが取れない。
手足を動かしたところでどこへもいけない、エグイサルのコックピットで完全な監禁状態にあるのだから。
『あれあれ、オマエラ早く行かないと! 遅刻はペナルティものですよ!』
「わかり切ったこと抜かしてんじゃねえ、私たちがどうやって裁判場に行くってんだよ」
『そりゃ両足でしっかりと地面を踏みつけて、手を振り回した勢いでえっちらおっちらと前に進んでいただいて……』
「……」
『……もう、わかってるよ! 分かってます! なんだよノリ悪いな! オマエラ全員、ボクがちゃんと裁判場までお連れしてあげますので、そこで待機!』
『座席について、シートベルトを装着してください! 総員衝撃に備える準備!』
モノクマに促されるまま、コックピットの座席に腰を下ろし、シートベルトをつけた。
座席は新幹線のシートぐらいにはやわらかい。
まあ寛ぐような余裕も時間も私たちにはないのだけれど。
そのまま待つこと数十秒。
_______ブゥゥゥゥン
コックピット内部の装置の数々が突然に息を吹き返した。
外殻を覆っているネオン管が俄に灯り出し、中からは駆動音も聞こえ出す。
途端に熱を持った装置の数々が内部の空気を一変させた。
『今、中央制御に切り替えたからオマエラの乗っているエグイサルは全てボクの支配下にあります! 後はどこへ連れて行くもボクの思いのままってわけ!』
その言葉通り、これまで仏像のように微動だにもしなかったエグイサルがいよいよ体勢を変えた。
手足を小刻みに動かして旋回、私の眼前には開け開かれたワダツミインダストリアルの入口が姿を現した。
『それでは地の底の学級裁判場まで、283プロご一行をご招待〜〜〜!!』
エグイサルの性能を侮っていたのだと悟った。
私があの晩に見た姿はまだ試運転レベルの話。
エグイサルの兵器としての性能の1割も見てはいなかったのだろう。
私たちを乗せたエグイサルは、宙を飛んだ。
歩くでもなく、走るでもなく、【跳んだ】のだ。
俊敏な動きで連続して跳ね、外の景色はみるみるうちに変わっていき、あっという間にモノクマロックへとたどり着いた。
------------------------------------------------
【中央の島:モノクマロック】
「……あ?」
もう見慣れたはずのモノクマロック。
どこかの国の観光資源並みに巨大な岩山は見上げるほどで、そうそう様相など変わるはずもない……そう思っていたのだが。
私たちがこれまでの四回の裁判で足を踏み入れた時とは明らかにその見た目が変わっていた。
並んだモノクマの石像の、懐のあたり。
鋼鉄製の格子の向こうには複雑そうな機械やワイヤーが顔をのぞかせている。
いつの間にこしらえたのか、モノクマロックの動体部は綺麗に繰り抜かれ、エレベーターになっていたのだ。
エグイサルが6体入っても大丈夫なほどの空間のそれはもはや部屋というよりも洞穴の規模。
「これに乗るってのか……」
ガッチャガッチャと轟音をたてながら私たちを乗せた機体が乗り込むと、
____いつも以上の揺れとと共に、下降が始まった。
------------------------------------------------
【モノクマロック エレベーター】
ゴウンゴウンと大きな音を立てて下降するエレベーター。
コックピットの強化ガラス越しでも聞こえているのだから、その音はいつもの数倍どころではないんだろう。
もう5回目になる音と重力とを感じながら、これまでと違う今回の状況を噛み締めていた。
これまでには、裁判場……戦いの舞台に赴くのでもいつも誰かしらがそばにいた。
別に私はそれを頼るわけではないし、自分以上に信じられるものもない。
でも、他の連中の存在で死なずに済んだ場面があったことは否定できない。
きっとそれは今生き残っている全員がそうなのだと思う。
誰かしらが知らずのうちに他の誰かが生き残ることに貢献して、それが輪廻のようにつながったことで今この瞬間がある。
だというのに、今回の裁判ばかりはその連鎖を無理やりに断ち切られてしまう。
私が今このエレベーターに同乗しているのは誰なのか、そして共に行くことができなくなってしまったのは誰なのか。
それを知らないことがここまで恐ろしいとは思いもしなかった。
コックピットの中は空調も完備されている、熱くなりすぎることも寒くなりすぎることもない。
それなのに寒気を感じるのは、きっと内側からの底冷え。
臓器がきゅっと軋むような鈍い痛みが肉を突き抜け、肌を震えさせている。
……以前までなら、誰かがそんな私に上着を一枚貸してくれたかもしれない。
千雪なら自分の来ているものを脱いででも押し付けてくるだろう。
冬優子は多分震える私を小ばかにしてくる、でもそのおかげで緊張は解けるだろう。
美琴は……気づいてくれるんだろうか。
少なくとも、シーズになる前の美琴は多分気づかない。
あの頃の美琴は、自分のパフォーマンス、自分の立つステージ以外は眼中になかった。
命のかかった場面でも、生き残った先のことしか頭にない。
この島で七草にちかを喪ったことで皮肉にも美琴は他の人間の存在に気づくことができた。
だから私は今度こそ存在を認知され、再び手をつなぎ直すことができた。
でも、美琴は自分の目で周りを見ていたわけではなかった。
七草にちかが最期に託したもの、七草にちかの眼から通してみる世界を美琴は引き継いだだけ。
死に際に遺した禍根は美琴の奥深くに浸透し、気づけば私たちとの間に軋轢を生むまでになった。
浅倉透への不信はいつしか浅倉透を受け入れた私たちへも広がりを見せ、美琴は単独行動をするように。
その単独行動の裏では、美琴は着々と浅倉透殺害の準備を進めていた。
私は夜のたびに美琴の後を追い、すんでのところでそれを食い止めてきたが……
市川雛菜の右手への凶刃は防ぐことができなかった。
……ダメだな、一人でいるとどうしても思考がマイナスに偏る。
いつかの自分の部屋にこの空間が似ているからというのもあるだろう。
人一人寝転がってやっとの空間でスマホをつついて、嘆きの言葉ばかりを吐き出していたあの頃。
私は……あの時と変わることができたのだろうか?
コトダマゲット!【美琴との軋轢】
〔透への不信を募らせた美琴は、ルカたちのことも信用をしなくなっていた。単独行動を繰り返し、夜ごとに透の殺害計画を推し進めていた〕
------------------------------------------------
チーン!
目的地に着いたことに気づいたのは、それからしばらくしてからだった。
------------------------------------------------
【学級裁判場】
モノミ「い、いや~~~~~! なんでちゅか、これ! エグイサルが大量に入ってきまちたよ!? 血の七日間でちゅか!?」
モノクマ「おお……さすがにこうやって並んでみると壮観な光景だね」
コックピットから見下ろす裁判場はいつもより手狭に見えた。
特に証言台も変わったわけではない、いつもの私たちの席が用意されているだけ。
モノクマ「えーっと……意思疎通は今はできそうにないし、一方的にこちらから話させてもらうね」
モノクマ「エグイサルに乗ってはいるけど、学級裁判自体は普段のルールと何ら変わりなく行うよ。議論もしっかりとそのエグイサルに乗ったまま行ってもらうから!」
モノクマ「当然、今のままじゃ議論どころじゃないけど……対処法も用意してあるからそこは安心しておいて!」
モノミ「た、対処法……まさかジェスチャークイズでちゅか!?」
モノクマ「あのバカウサギは放っておいて、とりあえずは証言台につこうか。オマエラも仲間同士で会話できないんじゃ、そこで突っ立ってる理由も特にはないでしょ?」
モノクマの確認に肯定も否定も示す方法はなく、向こうで勝手に了承として受理する様子。
またエグイサルは私たちの意志とは無関係に動き出し、証言台の前まで歩みを進めた。
席の配置はいつもと違う、今回は奥まったところに立たされた。
とことん中身をひた隠しにしたい、ということなのだろう。
モノクマ「さ、それじゃあもうちょっとしたら始めちゃうからね。今のうちにトイレとか深呼吸とか済ませといてね~」
モノミ「トイレ……機体の中にあるんでちゅか?」
モノミ「そりゃもうディスカバリーチャンネル方式でヨロ!」
モノミ「それって要は大自然スタイルってことでちゅよね……」
……始まる。
被害者も生存者も不明の前代未聞の学級裁判が。
今こうして向き合っている相手も、分厚いガラスの向こう側で表情一つ伺い知れない。
相手からしても、私は得体のしれない存在に映るはずだ。
そこにいるのは、この島で暮らしを同じくしてきた連中であることには間違いない。
なのにこんなにも不安を感じてしまうのは、きっとこの隠匿性の裏に確かに見え隠れしている人間の悪意のせい
仲間として同じ時間を過ごした相手を椅子に縛り付けて首を刎ねたという、悪意と言う言葉でも生易しいほどの凶行を私たちは知ってしまっている。
その認知が、私たちの心中に影を落として、これまでにあった信頼を掴ませるのに躊躇をさせているのだ。
「だったら、何だよ」
それは最初の事件の時に七草にちかにも誓ったこと。
人間結局は一人なのだ。生まれてから死にいくときまでずっと誰かと一緒にいるなんてことは不可能だ。
だから、別にいまの隔絶だって、元あるべき姿に戻っただけともとれる。
信頼が見込めないのなら、今自分の持てるものを振るうしかない。
縋るものが無いだけに、百パーセントを超えた自分自身を出すことができる。
その理由づけには最適という言葉すら持ちだせた。
私ははじめっからこのスタンスだったはずだ。
牙を抜かれて、弱さを覚えて、すっかり忘れてしまっていた。
【私は、私のやりたいようにやる】
どんなに謎に満ちた裁判だろうと、どんなに悪意に満ちた犯人だろうと、関係ない。
今の私は……この状況が気持ち悪いから、全部全部ぶっ飛ばしてやりたい。
秩序も、責任も、柵も何も関係ない。
私が苛立っているから。
理由はそれだけ。それだけあれば、私は戦える。
_____それが、斑鳩ルカだったはずだろ?
というわけで本日の更新はここまで。
なんとかスレ中に非日常編が終わりました。
残り10レスほどは次回の裁判までの準備パートの投票に使ってください。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【裁判前準備パート】
☆裁判を有利に進めるアイテムを獲得することができます
何か購入したいものがある場合は次回までにその旨を書き込んでください。
指定が多ければ多数決、特に購入指定が無ければ何も購入せず裁判を開始します。
‣ルカの現在の状況
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…20個】
〇スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕
・【ジャンプ!スタッグ!!!】
〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
-------------------------------------------------
【自動販売機】
≪消耗品≫
【ヒーリングタルト】…5枚
〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕
【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕
【高級ヒーリングタルト】…15枚
〔国産フルーツを贅沢にトッピングした高級タルト。裁判中に使用すると発言力が最大まで回復する〕
【プロデュース手帳】…15枚
〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・反論ショーダウンを無条件クリアする〕
≪希望のカケラ交換≫
【Scoop up Scrap】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時に、所持品の中で何が渡すと喜ばれるプレゼントなのか分かる〕
【霧・音・燦・燦】必要な希望のカケラの数…10個
〔発言力ゲージが+2される〕
【幸福のリズム】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時の親愛度上昇が+0.5される〕
【I・OWE・U】必要な希望のカケラの数…20個
〔発言力ゲージが+3される〕
【われにかへれ】必要な希望のカケラの数…20個
〔集中力ゲージが+3される〕
【おみくじ結びますか】必要な希望のカケラの数…10個
〔集中力ゲージが+2される〕
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
アイテムとスキルの購入を一晩待ってから改めて更新の連絡はするつもりでした。
自分の中で勝手に決めて、何も言ってませんでしたね。申し訳ない……
学級裁判パートの更新は新スレッドにて6/25(土)22:00~を予定しています。
◇新スレッド◇
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/)
そしてスキルの表記にピトスが消えてましたが、ちゃんと習得していますのでご安心ください。
購入するのは
【高級ヒーリングタルト】×2、【プロデュース手帳】×2
【霧・音・燦・燦】、【おみくじ結びますか】で良さそうですかね。
特に異論なければこの状態で学級裁判を開始します。
このSSまとめへのコメント
今夜セックスしたいですか?ここに私を書いてください: https://ujeb.se/KehtPl