【Lv30】ぱらルカさんが くえルカさんになったようです前章【職業Lv10】 (221)

【注意事項】

・このスレは もんむす・くえすと!前章と もんむす・くえすと!ぱらどっくすRPG前章のクロスSSです

・双方既プレイ済みのが前提です。

・前章 とある通り本SSにはもんむす・くえすと!中章・終章の要素はありません

・ネタバレするとノーム契約後までで終了です

・強くてニューゲーム極まる内容です。苦手な方はブラウザバックを

・主な引継ぎ要素は 装備・アイテム・仲間・種族以外全て です

・具体的には ステータス・レベル・職業・職業Lv・アビリティ・スキル・特技です

・ぱらどっくすRPGのルカさん(以降ぱらルカさん)はアリスルートです

・キャラ崩壊注意です

・自分独自の解釈が間々入ります

・ルカさんがあひぃされる展開は・・・ないです

・文量が半端のと遅筆なので更新は遅いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427459191

ルカ「ふぅ・・・」

今日もタルタロスの東にできた管理者の塔の跡地でモンスターを倒し、仲間の職業Lvや種族Lvが10になったらイリアス神殿で転職して自宅に戻って眠る日々。
ルーチンワークのような感覚が否めないけど、進展が無い以上出来ることは仲間を強くするとこだけ。

ルカ「明日に備えよう・・・」

そう言って僕は慣れ親しんだベッドに潜った。



????「ルカ・・・勇者ルカ・・・」

・・・・・・どこからか僕を呼ぶ声が聞こえる。
僕の目の前に現れたのは―――
イリアス様であった。

イリアス「勇者ルカよ・・・私の声が聞こえますか?」

ルカ「聞こえています。イリアス様―――」

その時僕は1つの違和感を覚えた。
イリアス様は大異変以降一切姿を見せない。それどころか声さえ聞いたものはいない。
更にちいさいイリアス様が僕たちとは別行動で冒険しているはずだ。
僕の疑問をよそにイリアス様は話を続ける。

イリアス「私は、この世界を創世しました―――」

イリアス様の話す内容は僕の頭の中に届いていない。
得体のしれない違和感ですでにいっぱいだった。

「ときにルカ・・・あなたは、とうとう「旅立ちの年齢」となりますね」

イリアス様のその一言で更に違和感が加速した。
「旅立ちの年齢」それに伴う洗礼は1ヶ月以上前のはず。

ルカ「はい・・・・・・その日を待っていました!」

話の腰を折ってはいけないと僕はありきたりな言葉を返す。

イリアス「私はこれまで、何人もの少年に洗礼を―――」

その話で僕の違和感は確定的な物になった。
イリアス様は30年前の大異変以降一切姿を見せない。
その為今となっては洗礼も儀式的なものに過ぎないはずなのだ。

イリアス「行きなさい、ルカ。私は、いつでもあなたのことを見守っています―――」

柔らかな朝の日差しを浴びながら、僕は目覚めた。

ルカ「とりあえず皆のところに行かないと・・・」
そう言って階段を下り、皆のところへと向かう。

ルカ「え・・・」

そこに皆の姿は無かった。
部屋を確認するがベッドのシーツは未使用と思えるような状態だった。

ルカ(まさか寝過ごした―――)
それはない。瞬時に自分自身で否定する。もしそうなのであれば・・・

アリス「いつまで寝ているつもりだ!ドアホめ!」

とアリスが怒鳴りながら部屋に乗り込んでくるはずだ。

ルカ(まさか・・・)
違和感から嫌な予感へと変わった感じを受け、僕は自分と仲間の荷物と装備を見に行く。

そこには何もなかった。
正確には「自分が旅立つ時に用意していたもの」だけであった。
仲間の荷物も、昨日まで自分自身が身に着けていた装備も。
背負っていたリュックは、昨日までとは違い物がほとんど入っていないように見える。

自分の足がガタガタと震えはじめる。
まさか自分は突如発生したタルタロスに――――
そう思った矢先

「た、た、大変だー!」

外から男の叫び声が聞こえてきた。
声からしてきこりのハンスさんらしい。

ルカ(おかしい)
記憶と照らし合わせる。
確かあの時攫われたのはハンスさん自身のはずじゃぁ―――

「近くの森に、魔物が出たぞぉ!」

ルカ(近くの森に、魔物・・・)
イリアスヴィルではスライム娘が商売をしているはずだし、住民の皆も見慣れている。
しかもこの辺の魔物は皆弱いはず。魔物が出ただけでここまでの騒ぎになるということは・・・

ルカ(ここは僕の知っているイリアスヴィルじゃない。別の世界のイリアスヴィルだ・・・)
タルタロスを3つ巡ってきた経験がその結論を導き出した。

平和な村はたちまちパニックに陥った。

ルカ(どうするもこうするも・・・ないよな)
僕は魔改造される前の剣を手に取ると、外へと飛び出した!

大混乱の村の中を人の流れに逆らう様に、僕は村への入り口へと駈け出して行った。
そんな僕を見とがめ、隣家のおばさんが声を張り上げる。

ベティおばさん「おやめよ、ルカ!ここは―――」

ルカ「大丈夫だよ、ベティおばさん!僕は勇者だから!」

ベティおばさんのこえを遮るように僕はそういう。

ベティおばさん「――――頑張ってきな」

ベティおばさんは何かを言おうとして飲み込むと、僕にそう言った。

僕は村の通りを抜け、村を飛び出し、森の一本道を駆け抜ける。

ルカ(あそこだ!)
今ではもう慣れた感じで僕はスライム娘を見つける。


スライム娘が現れた!

スライム娘「あはは、美味しそうな男の子~♪」

僕を前にくすくすと笑うスライム娘。でも構っている暇はない!

ルカ「煌めけ、勇気の刃! 魔剣―――」

そこまで出て次の言葉が出てこない。
それどころか体まで動かないのだ。

ルカ(あれ・・・僕は一体何の技を・・・。迷っている暇はない!)

ルカ「やあっ!」

ルカの攻撃!
スライム娘は280のダメージを与えた!

スライム娘「うにゅ~・・・・・」

スライム娘をやっつけた!

ルカ(よし。殺してはいないな!)
スライム娘は気を失って倒れている。

ルカ(どうやら攻撃力は変わってない・・・)
ルカ(ならどうしてあの剣技が出せなかったんだろう)

ドゴォォン!

ルカ「わわっ・・・・・・なんだ!?」

不意に、凄まじい衝撃と轟音が辺りに響いた。
この付近で、まるで何かが爆発したかのようだ。

ルカ「かなり近いぞ・・・・・・何があったんだ?」

僕は音の方向に駈け出していた。

木々を抜けて、森の奥へと入る。
そこには――大きくはなったが見慣れた姿が、地面にめり込んで横たわっていた。

ルカ「アリス・・・?」

少し眺めていたがアリスはぴくりとも動かない。

なぎ倒された木、へこんだ地面―――
状況を見るに、空から落ちてきたようだ。

ルカ(いったい、何があったんだ・・・・・・?)
【自分】とは異なる出会い。どう対応すればいいのか・・・

ルカ(生きてはいるから助けないと)
洗礼の時間、正午まではまだ時間がある。
そう思いアリスを担ごうと思ったその時―――

アリス「・・・・・・」

不意にアリスの目がぱっちりを開いた。
彼女はまじまじと僕の顔を見据え、そしてむっくりと体を起こす。

アリス「・・・・・・ここは?」

僕の顔をじっと睨みながら、アリスが口を開いた。

ルカ「え・・・・・・」

アリス「ここはどこか、と訊いている」

無礼とも思える、突然の質問。しかし・・・

ルカ(記憶が無い――!?)
アリスの対応はまさしく初対面の者にするものだった。
いささか無礼とも思える態度ではあるがそれは慣れている。
問題は―――

ルカ(記憶があれば・・・)

アリス「何を見ているのだ。ドアホめ」

ルカ(って言うだろうし・・・)
どうやら彼女は僕の知り、僕の知るアリスではないようだ。

ルカ(でもこれではっきりした)
ここは僕のいた世界ではない。どこかの平行世界だと。

ルカ「ここはイリアスヴィルの近くだけど・・・」

アリス「そんなところまで飛ばされたのか。あの女、なんという馬鹿力だ・・・」

アリス「・・・・・・で、貴様は何者なのだ?」

ルカ(ここは【この世界】のルカとして振る舞った方がいいかもしれない)
今の自分の職業はバトルマスター。しかしそういえば何が起きるか予測がつかない。
ならばここは波風立たない回答をした方がういいだろう。

ルカ「勇者見習いのルカだけど・・・・・」
ルカ「この近くの、イリアスヴィル出身の・・・・・・」

アリス「勇者見習い・・・・・・ということは、洗礼を受けていない身か」
アリス「道理で、美味しそうな匂いがぷんぷんするわけだ・・・・・・」

じゅるり・・・・・・と、アリスは舌なめずりをした。

ルカ(アリスの事も放置は出来ないけど・・・今は!)
何のために急いだのかを思い出す。
アリスの方に怪我はない。問題なさそうだ。

ルカ「とりあえず僕は戻るよ。正午に洗礼があるし」
ルカ「じゃぁ僕はこれで―――」

アリス「・・・・・・待て」

アリスの下半身の大蛇の尻尾が僕の胴に巻きつこうとする。
だが殺意も無ければ勢いもない。避けるのは容易かった。

ルカ「何・・・?」

僕は振り返りつつアリスに尋ねる。

アリス「なるほど、事情は分かった」
アリス「今日はイリアスの降臨日、洗礼を受けようとしていたわけか」

ルカ「・・・・・・その通りだよ」

少しの間僕は答えに言いよどんだ。
実際勇者に転職したし、職業レベルも10になった。
でもその洗礼はイリアス様がやったのではなく――――

アリス「イリアスの洗礼など受けるな、くだらん」

ルカ「・・・・・・なんだっていいよ。とにかく、僕は村に戻るよ」

アリスに背を向けて立ち去ろうとする。
いくら事情を知らないアリスだとしても・・・

アリス「・・・・・・なぜ、気を失っていた余に止めを刺そうとしなかった?」
アリス「人間が世を討つ、千載一遇の好機だったはず。仮にも―――」

ルカ「君が魔王アリスフィーズ16世だっていうのは知ってるよ」
ルカ「でも・・・悪い奴じゃないし、仲間を殺そうとは思わないよ」

あまりにも時間が惜しく、僕はそう告げると全速力でアリスを置き去りにして走り去った。

アリス「あ、おい!待て!話は―――」

アリス「行ってしまった・・・」
アリス「だがなぜ辺境の勇者見習いが、余が魔王だと知っている?」
アリス「それに仲間・・・?」

僕はアリスを置き去りに家へ戻ると、常につけている日記帳を開いた。

ルカ「やっぱり・・・!」

ざっとではあるが読み込んでみたが、 ソニア という名前は1回も出てこなかった。
イリアス様の降臨、村人の魔物に対する態度、アリスの振る舞い、そしてこの日記・・・
ここまで揃えばここが自分の知るイリアスヴィルでないことは確実だ。

ルカ「僕は何らかの方法で別の世界の僕になったんだ・・・」

タルタロスを通じて異世界を3回見てきたが、こんな体験は初めてだ。

ルカ「そうするとこれから僕がしなくちゃいけないことは・・・」

3つ目の異世界のラ・クロワさんが言っていた。
―――この世界は正しい歴史を辿っていない
ならばここで洗礼を受けないわけにもいかないだろう。

ルカ「よし、行こう!」
時間は既に正午前。僕は洗礼を受けにイリアス神殿へと向かった。

ルカ(なんでだ・・・?)

時刻は正午過ぎ。
僕は首を傾げながらイリアス神殿を出る。

今日は洗礼を受けられる日―――
それなのに、結局僕は洗礼を受けられなかったのだ。

決して遅刻したわけではない。
ちゃんと正午前には神殿に出向いたのだ。

にも関わらず―――
何故か分からないが、イリアス様は降臨されなかったのだ。

神官様が言うには、イリアス様が洗礼を与えてくださるようになって以来の大珍事らしい。

ルカ(やっぱりこの世界のイリアス様は普通に降臨して、洗礼をしていた)
ルカ(なら何故・・・?)

外野で神官様が辛辣にそうな言葉を浴びせるが、全く意に介さない。
あれこれ考えながら家に帰りついた。

一旦ここまで。なにせ もんむす・くえすと! の文章を混ぜながらぱらどっくすの事を考えると結構難しい。

そして何より文量が多い!数時間じゃこれくらいしかできなかった。

とろとろさんは神 はっきりわかるんだね・・・・

一応明かさなくてもどうとでもなるけど・・・このぱらルカさんのスペック必要かな?

必要なら速攻で書き上げて並べる予定

そうですね・・・あくまで各々のぱらルカさんってことで。

最低限基本の情報を出すと・・・

一般職
戦士・武闘家・魔法使い・商人・見習い勇者

上級職
剣士・拳豪・魔導拳士・バトルマスター・闇商人・勇者 

は経験済み(職業Lv10)です。

>>1にもありますが、種族は人間固定です。



アリス「ふむ、遅かったな」

ルカ「あ、アリス」

僕を出迎えたのはアリスであった。
最早慣れた事だが、家の中へと入り込んでいたのだ。

ルカ「いったい何をしに来たんだ?」
ルカ「洗礼、というよりはイリアス様が降臨されない理由について考えてたんだけど・・・」

アリス「ふむ・・・・・・それを聞くのも、余がここに来た理由の一つなのだ」
アリス「そうか・・・・・・イリアスは、現れなかったか・・・・・・くくっ」

アリスは満足げな笑みを浮かべた。

アリス「余がこれだけの手傷を負わされたのだ、相応のお返しだ」
アリス「【創世の女神】たる面目も丸つぶれだろう・・・・・・くくく」

ルカ「まさか・・・」

自宅で小さくなったイリアス様と、小さいアリスが大ゲンカしていたのを思い出す。
まさか・・・

アリス「食事だ」

顔面蒼白になる僕にアリスは食事を出せと言ってくる。
世界が変わっても図々しい奴だ。

ルカ「仕方ないなぁ・・・・・」

そういいながら食材を出そうとバッグを漁る。だが・・・

ルカ(しまった!僕が持っていたバッグじゃない。この世界のバッグだ・・・)
必死にバッグを漁ると食材らしきものに手が届く。これは―――

アリス「ほしにく・・・・・・」

アリスは露骨な溜息を吐く。

アリス「貴様には、うんざりさせられる・・・・・・」

慣れたとはいえひどい暴言だ。

アリス「まあいい、余も疲れている・・・・・・まずは前菜だ」

アリスは僕の手からほしにくをひったくると、不満そうな顔で噛みはじめた。

ルカ(ど・・・どうしよう。あのほしにくは僕が作ったんじゃない。この世界の僕がつくったものだ)
パーティの要として前線から一切離れることが出来ない僕。
その為得られる職業経験値がもったいなく、粗方の職業をマスターしていた。
その中にコックの上位職・・・トリプルコックも入っている。
今の僕に作らせればいいモノが出来るのは確実。でも・・・
この世界の僕の料理の腕前など知る由もない。

アリス「ん・・・・・・美味いではないか」
アリス「絶妙なスパイスの味付けが、肉の香ばしさを引き立てている」

ルカ「そうだろう?」

僕は作り笑いでその場をごまかす。
内心はほっとした。どうやらこの世界の僕は、旅立つ前の僕くらいには料理が出来たようだ。

アリス「このほしにくは前菜のつもりだったが、これで満足だ」
アリス「喜べ、メンディッシュの必要はない」

ルカ「え・・・・・・?メインディッシュって・・・・・・?」

ほしにく以外に食べ物は無い。そうなるとモンスターが食べるものは・・・
僕は再び顔面蒼白になる。

アリス「さて・・・質問をしよう」
アリス「森での発言然り、ここでの態度然り・・・貴様は余を知っているように思える」
アリス「それもただ見聞きしたような感じではない。まるで共に過ごしてきたかのような―――」

アリスが至極真っ当な質問を投げかける。
僕が逆の立場なら間違いなくアリスと同じことを聞いているだろう。

ルカ「信じてはもらえないかもしれないけど・・・・・・」

下手に隠すよりは素直に話した方が後々問題にならないだろうと感じ、僕は簡単な説明をした。

アリス「へ、並行世界ぃ!?そこで小さくなった余と、お前と、モンスターたちが共に旅をしていた!?」

ルカ「そうとしか言いようが・・・」

これ以上説明できることが無い。何より僕自身がついさっきまでこの状況に混乱していたのだ。

アリス「俄かには信じがたい・・・・・・だが嘘は言っていないようだな」

ルカ「嘘なんてついたって何の利益にもならないよ・・・」

アリス「まぁこの問題は棚上げにしよう。それで、貴様はこれよりどうする?」

ルカ「もちろん旅に出るよ。僕の居た世界じゃ洗礼なんて儀式的なものだったし・・・」

例え洗礼が無くとも冒険はできる。僕の世界で出来たことがこの世界で出来ない道理はない。

アリス「ふむ・・・ならば余もその旅について行こう。貴様が何者なのかを見極めるにはちょうどいい」
アリス「それに余は、この世界を見て回るつもりでいたのだ。理にかなっているだろう?」

ルカ「うん。そうだね。僕の居た世界でも似たようなものだったし・・・」

それに―――世界は違えど同じ仲間と共に旅が出来ることに安堵した。
正直なところ、自分だけが異質な状態での一人旅は相当心細かったのだ。

ルカ「じゃぁ、そろそろ行くか・・・!」

旅の準備は既に終わっていたようだ。
装備を見るにイリアス神殿から帰ってきて、その足で旅に出るつもりだったらしい。

ルカ「アリスは、裏口から出てくれないか?」
ルカ「他の村人に姿を見られると、色々と面倒だし、僕の居た世界より遥かに魔物に対して不寛容だからね」
ルカ「村を出たところで合流しよう」

アリス「分かった、余も無駄な騒ぎは好かん」
アリス「村の外で待っているぞ」

そう言い残しアリスは裏口から出て行った。

ルカ「さて・・・・・・」

いよいよ旅立ちの時だ。
世界が違うとはいえ、今は亡き母さんと過ごしたこの家にも、しばらくは帰ることが出来ない。
・・・・・・と思う。

ルカ「行ってくるよ!母さん・・・・・・!」

亡き母にそう語りかけ、僕は住み慣れた家を後にする。
こうして僕は2度目となる冒険の第一歩を踏み出したのだった。

ルカ「ところでアリス」

町から出てしばらくしたところでふと思い立ち、僕はアリスに話しかける。

アリス「なんだ」

ルカ「まさかイリアス様が現れなかったのって・・・」

僕の世界でのあのいがみ合いっぷり。この世界の2人も同じような関係なら・・・

アリス「さ、さぁ・・・・・・。なんでだろうなぁ・・・・・・」

目をそらし、あからさまに何かあると言っている。
おおかたイリアス様を殴りつけたのだろう。
それでイリアス様は人前に出れなくなって、洗礼に来なかった。
これなら初めての大珍事にも納得がいく。

ルカ「そういえば・・・イリアス様の加護はモンスターから身を守るってあるけど・・・」
ルカ「実際どうなるのかな?」

今更過ぎたことを聞いても仕方ない。僕は別の質問を投げかけた。
自分の居た世界では加護を受けた勇者の方がはるかに珍しい。

アリス「洗礼を受けたものの精は極めて不味くなるのだ」
アリス「だから、モンスターに襲われるのは少なくなるのだろうな」

ルカ「そうなんだ・・・」

初めて知る事実に僕は感心してしまった。

アリス「そういうわけで・・・・・・」
アリス「洗礼を受けていない貴様は、非常に美味そうだ」

ルカ「ひぃ・・・・・・!」

僕は、前身が総毛立つような悪寒に晒された。
これはライオンの傍にソーセージを常に置き続けているようなものじゃないか。
それだけではない。洗礼が機能しているこの世界では、モンスターの過半数が美味い精に飢えていると考えて間違いない。

アリス「ところで、目的地はどこだ? 早速魔王城を襲撃するのか?」

ルカ「まぁ・・・・・・最終的には魔王城に行くわけなんだけど」

アリス「なんだ。かなり気乗りしない顔だが・・・」

ルカ「さっきも言ったけど僕はこの世界の住人じゃない。別の、違う並行世界の住人なんだ」
ルカ「だからそっちに戻る方法を探すのも目的の1つかな・・・」

ルカ「とりあえず、イリアス大陸を出ないといけない。だから、今の目的地はイリアスベルクだね」
ルカ「この調子で歩けば、明日の今頃には着くかな」

アリス「・・・・・・やれやれ。町の名前も大陸の名前もイリアス・・・・・・うんざりだな」
アリス「・・・・・・ところで、そろそろ腹が減ったな」

ルカ「日が落ちたら野営するから、それまで我慢してくれよ」

アリス「ふむ、努力してみよう。貴様の料理の腕は、それなりのようだからな」

ルカ「それなり じゃないよ。転職し歩いたからトリプルコックは経験済みだよ」

アリス「ほぅ・・・ならばさらに努力しよう。ほしにくであの程度なら・・・」

アリスは尻尾の先をぶんぶんと振り、期待している感を全面に押し出す。
どうやら姿は大きくなっても、中身は大して変わらないようだ。
そう思った、次に瞬間だった。



ナメクジ娘が現れた!

ナメクジ娘「・・・・・・旅人ね。しかも洗礼を受けていない、美味しそうな少年・・・・・・」

ルカ(・・・・・・!)
やはり予想が当たった。
この世界のモンスターは洗礼を受けていない精に飢えている。
肉食獣がひしめくサバンナの中に、か弱い野兎を放り込むようなものだ。
・・・・・・普通ならば。

ルカ(・・・・・・?)

ふと振り返ると歩いていたはずのアリスの姿が無い。

ルカ(まぁこっちと向こうでは事情が違うのかもしれない・・・)
そう思った時―――

ナメクジ娘「どこを見ているの・・・・・・?」

ナメクジ娘がゆっくりとこちらににじり寄ってきた。

ナメクジ娘「あなたは、この私の餌食にされるの」

ルカ(現れてきた以上は・・・仕方ないか)
スライム娘に対しては使おうとした技が使えなかった。
でも、全ての技がそうなのかは見当がつかない。
見当が付かない以上片っ端から試すしかないのだ。

ルカ「近くに寄って目にも見よ! 二刀十字斬り!」

ルカは2本の刃で十字斬りを繰り出した!

ナメクジ娘に720のダメージ!

ナメクジ娘「ねばねば分が・・・足りないわ」

ナメクジ娘をやっつけた!

ルカ(二刀十字斬が使えた・・・そう考えると剣士と戦士の剣技は全部使えるのかな?)
あの技は確か威力が高い。
でも今繰り出した二刀十字斬りの方がダメージ的には遥かに大きいはずだ。

ルカ(なんであの技は使えなかったんだろう・・・)
そう考えてふと後ろに気配を感じ、振り向くとアリスが居た。
世界が違えば事情も違う。イリアスヴィルが魔物に対して排他的なのを考えると―――

ルカ「立場上他の魔物とは顔を合わせ辛い・・・ってところ?」

アリス「中々に鋭いな。魔王たる余が、魔物を攻撃する貴様と同行していて、更に止めもしないのは魔物に対する反逆に近いからな・・・」
アリス「とはいえ、剣戟は中々のものだ。だが・・・余は決して貴様の助けには入らん」
アリス「単に貴様を観察しているだけに過ぎん」
アリス「貴様が魔物の餌食になった時は・・・・・・容赦なく見捨てるぞ」

ルカ「そうだね。しょうがないよ」

アリス「さて・・・・・・もうすぐ夜だ。野営の準備もせねばならんな」
アリス「・・・・・・ところで、夕食は何なのだ?トリプルコックの経験、しかと見せてもらうぞ」

ルカ「そうだね・・・今日は・・・」

・・・・・・・・・・・・

僕は野営の準備を進めつつ、向こうと同じ様に手伝いもしないアリスと自分用の料理を作り始めた。

今できた出せる分のストックはここまで。

このあとの野営イベントがかなり難しい。

必要なフラグを埋めないと、後半になるにつれて物語が破たんしていきそう・・・

現段階で書きあがっている分は盗賊団の所まで。

ドブ川様も賞賛するルシフィナ譲りのえげつなさが前面に出たりします。

まぁキャラ崩壊注意ってあるし、許されるよね!

ルカ「ごちそうさま~!」

アリス「美味い・・・トリプルコックの経験、嘘ではないと信じよう。魔王城の総料理長にならんか・・・?」

アリスは幸せそうにとろけた笑みを浮かべている。

今日の夕食は、パン・卵焼き、野草のサラダとスープ、木苺。
アリスの賞賛は結構嬉しかったりする。

アリス「これで剣戟も中々と来た・・・一人で旅をするには十分過ぎる性能だな」

アリス「そうだな・・・・・・余が少しばかり剣技を教えてやる」
アリス「攻め手が多いに越したことは無いはずだ」

ルカ「ありがとう。アリス」

こうして――――
就寝前の数時間、少しばかり剣の特訓を行う事になったのである。

ルカ「教えてくれる技は何?」

アリス「そうだな・・・小さい体格を生かし、敵の懐に潜り込んで喉元を掻き切る秘儀」
アリス「魔剣・首狩り」
アリス「ダークエルフの妖剣士ザックスは、その技で人間百人の首を繰り落としたという話だ」

ルカ「魔剣・首狩り―――」

その技名がまるで欠けたピースを埋め合わせるような感覚を僕に与えた。

ルカ「確か・・・」

アリス「ほぅ。聞いた技名と逸話、概要で技をイメージするか・・・・・・どれ・・・・・・」

ルカは魔剣・首狩りを放った!

アリス「・・・・・・・・・・・・」

ルカ「そうだ。魔剣・首狩りだ。思い出した」

ルカは魔剣・首狩りを思い出した!

アリス「おかしい・・・・・・この剣技を聞いただけで完璧に繰り出すなど・・・・・」

ルカ「違うよ。聞いただけじゃない。しっかりと教わったよ」

アリス「誰にだ?あの辺鄙な村にこの剣技を知る者など―――」

ルカ「アリス自身に」

アリス「・・・・・・並行世界の余が教えた。ということか」

ルカ「確かこの当たりで野営をしていた時に教えてもらったんだ・・・」

アリス「なら何故あのナメクジ娘に使わなかった?二刀十字斬などオーバーキルもいい所・・・」

ルカ「使いたくとも使えなかったんだよ。スライム娘に使おうとしたら・・・体の動かし方どころか技名まで忘れてたんだ」
ルカ「恐らく並行世界の僕と入れ替わったか成り代わった影響だとは思うけど・・・・・・」

アリス「平行世界のことについては分からん。だが・・・貴様の記憶で余から教わった技は全て使えないのかもしれないな」

ルカ「そうかもね・・・・・」

こうして得るものも多く、本日の訓練はあっという間に終わったのだった。

アリス「ところで、貴様。その指輪はどういう由来のものなのだ・・・・・・?」

ルカ「えっ・・・なにこれ」

アリス「つけている貴様が知らんのか!このドアホ!」

ルカ「そう言われても・・・!でもこれ母さんが付けていたものかも・・・」

僕は自分の世界の母さんを思い浮かべる。
似たような指輪をはめていたようないなかったような―――

アリス「その指輪からは、微かな思念を感じるのだ」

ルカ「微かな思念?」
ルカ「それが何なのかは知らないけど・・・・・・この指輪は恐らく母さんの形見だよ」
ルカ「並行世界の僕が絶えず身に着けるのを考えれば・・・それ以外考えられない」
ルカ「軽く読んだ日記で分かったけど、この世界の母さんも10年前に流行病で死んでだんだ・・・・・・」

アリス「そうか・・・・・・それは辛かったな」
アリス「ところで・・・・・並行世界の余の母、アリスフィーズ15世も死んでいるのか?」
アリス「貴様の口ぶりからすると、並行世界では違う点が多い思えるが・・・・・」

確か魔王は1年までしか空位にできない。
その為アリスフィーズ15世がタルタロスで行方不明になって、それを埋めるためにアリスが即位した。
でも冒険を続けていく途中でアリスフィーズ15世は戻ってきた―――

ルカ「アリスの母親・・・アリスフィーズ15世は生きてるよ」

アリス「何だと!?母様が!」

ルカ「当のアリスから聞いた話だけど・・・・・・」
ルカ「アリスフィーズ15世は、家での話に出てきた タルタロスって大穴を調査しに行ってそのまま行方不明」
ルカ「それで1年以上魔王を空位にはできないから、アリスが魔王になったって」

ルカ「それで最近アリスフィーズ15世が戻ってきて、魔王軍を再編成」
ルカ「アリスフィーズ8世とアリスフィーズ17世の三つ巴状態だよ」

アリス「アリスフィーズ17世!?向こうの世界の余は生きているだろ!」

ルカ「うん。だから自称が付くんだけどね」
ルカ「僕もあったけど・・・なんというか・・・」

初対面の彼女にすり寄られたことを思い出す。
あの迫り方は親しげというよりは―――

アリス「この話はやめにしよう。平行世界を歩いた貴様ならともかく、余は理解が追い付かん」

そう思っているとアリスが口をはさんだ。

ルカ「ごめんね。混乱させちゃって」

平行世界のことを知っているのは今のところ僕自身だけ。
他人から見れば頭のおかしい狂人だと思われても仕方がない内容だ。

アリス「いや。いい・・・母様が・・・生きている世界・・・」

僕は何かを察し、そっとその場から離れた。

アリス「・・・・・・ところで、父親はどうしたのだ?まだ健在なのか?」

暫くするとアリスの方から話しかけてきた。

ルカ「この世界の父さんについては・・・よく分からない。日記にも書かれてなかったし」
ルカ「でも向こうの世界の父さんは健在だよ!今もどこかの並行世界で闘ってる。自慢の父さんだよ」

アリス「ふっ、分かったぞ。貴様の妙な使命感は、父親の背を追ってのものだ」

ルカ「そうだけど・・・でも、もうそれだけじゃない」
ルカ「・・・・・・託されたものが色々あるからね」

ルカ「それより、アリスはどうなの?何で旅に同行してるのかなって・・・」

アリス「向こうの余はどうだったのだ?」

ルカ「白い兎に体を縮められて、その兎を倒して元の姿に戻る」
ルカ「っていうのが当初の目的だったね」

でも最近は3人の魔王の問題をどうにかするっていうのが加わったけど。

アリス「そうか・・・余は、少々ながら世の中というものが見たくなってな」

ルカ「魔物排斥の強いこの世界じゃぁ、魔王は気楽に世界も見れないってわけか・・・」

アリス「うむ。レミナの事件以降、魔族と人間の対立は決定的なものになったからな」

ルカ(レミナ―――)
最初に入ったタルタロスの奥にあった町。30年前にタルタロスに飲み込まれて消滅した町―――
どうやらこの世界でもレミナが何らかのカギを握っているようだ。

ルカ(でも―――)
レミナで何があったのかを聞きたかったけど、その言葉を飲み込んだ。
ただでさえ並行世界の情報で混乱しかけているアリスを、これ以上混乱させたくなかった。

アリス「とりあえず貴様の目的は、冒険をしつつ元の世界に変える方法を探す。ということか」

ルカ「それもあるけど・・・この世界は魔物に対して厳しすぎる」
ルカ「向こうの世界でみんな仲良く暮すことが出来たんだから、この世界で出来ないはずはないよ」

ルカ「だから、僕は魔物と人間の共存の為にもこの世界で闘おうと思ってるよ」

僕は決意を込めてそうアリスに告げた。

アリス「現実が見えていない薄甘い理想論―――」
アリス「そう断じたいが、貴様はその理想の世界から来たのだったな」

アリスはそう呟くと黙ってしまった。
暫くの間沈黙が流れるけど、それは悪い意味での沈黙ではないと感じた。

でもこのままだと明日に支障が出るし、僕は―――

ルカ「ともかく・・・・・そろそろ寝よう。明日に備えなきゃ」

アリス「ああ・・・・・」

こうして僕たちは眠りに落ちていくのであった。

短いけどここまで。

次はグランベリア戦だ・・・

ダメージ値おかしくない?って思うかもしれないけど、当のグアンベリアのステータスがぱらで明かされてないから仕方ないね!

31日からはしばらく一切更新できないから小出しだけどやっておいた方がいいと思った。

野営の後片付けをし、再び旅路を北へ行く。
イリアスベルクまでは歩いて約1日。
ハーピーの羽があれば一瞬だが、ぜいたくは言えないし、機能するかどうかも疑問だ。
この調子で行けば、予定通り夕方には到着するはずだ。

アリス「イリアスベルク・・・楽しみだ」

ルカ「サザーランドのあまあまだんご が目的かな?」

アリス「な、なぜそれを・・・」

ルカ「一度一緒に冒険したからね・・・並行世界だけど」
ルカ「ん・・・?」

道の真ん中に妙なものがある。これは――――

ルカ「マンドラゴラの葉っぱか・・・・・・」
ルカ「無暗に傷つけるのも好きじゃないし」

そういって僕は素通りした。

そして日が暮れ、イリアスベルクは目前。
その町並みは、ここからでも見える。
しかし、このまま町に入る訳にはいかないのだ。
僕の居た世界とは違い、この平行正解は魔物に関して非常に不寛容。
あからさまに魔物の姿をしたアリスが行けば、どうなるかは――――

ルカ「アリス、人間の姿には化けられないのかな?」
ルカ「向こうではそのまま行ってもよかったんだけど・・・」

アリス「人に化けるのは簡単な事だが、少々不愉快だな」
アリス「なぜ、余たるものが――――」

ルカ「そのまま町に入ったらあまあまだんごは食べられないよ」

こういう時の対処法など慣れている。僕はアリスが愚痴をこぼし始めたと同時に手を打った。

アリス「く・・・・・・それは困るな。仕方ない、これでいいか?」

アリスは見慣れた妖魔の姿から、人間の姿に変わる。

ルカ(人間という種族になれるならそう言ってほしかった・・・)
僕は向こうの世界のアリスに対して愚痴をこぼす。
人間のアビリティは職業経験を積むのに最適なものがあるのに・・・
それがあればアクセサリを別の物に変えることが出来たのに―――

ルカ「ああ、うん。いい感じだね」

そのことは決して顔には出さず、僕は返事をする。
これなら、破廉恥な格好の旅人ということで十分に通る。
こうして僕たちは、イリアスベルクの町に入ったのだった―――

ルカ「なんだ・・・?町の様子がおかしいぞ・・・?」

ルカ(それに微かに血の匂いが――――)

通りには旅人も商人も見当たらない。
夕刻とはいえ、本来なら人でごった返しているはずだ。

それなのに、人々は息を潜めたように屋内に閉じこもっている。
それに町全体が張り詰めた殺気のようなもので満ちている。

ルカ「なんだ・・・?何が起きているんだ・・・?!」

平行世界では経験の無いことに驚きを隠せない。
でも・・・嫌な予感がする。

通りを駆け、町の中央広場に飛び出そうとして―――
何か異様な気配に気づき、僕は街路樹の影に身を隠し、気配を消す。

ルカ「あいつは―――!」

竜族の魔剣士「・・・・・・なんと他愛ない」
竜族の魔剣士「この町に、強者は一人としておらんのか!?」

その周囲には断っている3人の戦士と――――
何十人もの倒れた屈強な男たち。
血の臭いの正体はあれだった。

竜族の魔剣士「残るは3人・・・・・お前たちは、来ないのか?」

ルカ「まさか・・・・あいつは・・・・」

巨大な剣に無骨な鎧をまとった竜族の魔剣士―――
魔王四天王の一人、魔剣士グランベリア―――

ルカ(まさか・・・ここは・・・この世界は!)
ソニアこそいないものの、イリアスベルクでグランベリア―――

ルカ(僕が・・・グランベリアと戦わなかった世界の過去なのか―――?!)
その世界の成れの果ては・・・最初に訪れた異世界として記憶に強烈に残っている。

思考から戻ってくるとグランベリアは3人―――いや2人の戦士を倒し、1人の戦士は逃げ出したようだ。

グランベリア「これで全てか!?」
グランベリア「ならばこの町は魔族が占領するが、文句は無いのだな!」
町全体に響くほどの声で、グランベリアは咆哮する。

ルカ「文句ならあるさ!」
それに応ずるように僕は叫んだ。
その叫びは――――
グランベリアに対するものよりも、自分自身に向けたもののように思えた。

ルカ(この瞬間、この世界で、戦うことを選んでいれば!)
無残にも破壊され、生存者が居らず、自分の墓まで立ったイリアスヴィルの光景がフラッシュバックする。
それが更に僕自身の闘志に燃料を注いだ。

グランベリア「・・・・・・なんだ、少年」

グランベリアは僕の方向に視線を向けた。
ただ、こっちを向いただけなのに、圧迫感のようなものが押し寄せてくる。

だが僕は意にも介さない。
その圧迫感さえ闘志を更に燃え上がらせる燃料にしかならなかった。

グランベリア「剣を持ち、戦う意思を持っている―――」
グランベリア「ならばお前を、少年としてではなく戦士として扱う」
グランベリア「それで文句は無いのだな?」

ルカ「あるものか・・・」

貧弱すぎる武装、心もとないどころか紙屑同然の防具。誰が見たって戦局は絶望的だ。
でも―――今の僕には戦う力がある。
平行世界で磨いた技術がある。
【選ばなかった】結末を見た事による燃え上がるような闘志がある。
これだけあれば十分だ。

僕は余りにも貧弱な剣を構えた。

グランベリア「分かった――――では、炎の魔剣士グランベリアが相手をしよう!」

ルカ「ぐ・・・・・・!」

対峙しているだけでも全身に重圧がのしかかるほどの圧迫感。
その圧迫感が僕の感覚を研ぎ澄ます。

ルカ(できればクレイジータイムを使いたい。でも2本目の剣どころか片方は素手!)
ルカ(確かに剣術と体術を連続で繰り出す技だけど・・・あまりにも心もとない)
ルカ(それに連続攻撃技は攻撃数が多くなるほど1撃の重さは減っていく・・・)
僕は自分自身が持つ剣術・体術の中から最善手を模索していく。

グランベリア「貴様・・・ただの少年ではないな」

グランベリアは警戒を強めた。

ルカ(これしかない・・・!)
1撃は何としても耐える。その後の3連撃にグランベリアが耐えられなければ僕の勝ち。
耐えられれば――――
僕は意を決して目を開く。

グランベリア「来るか・・・少年」

ルカ「はぁぁぁっ・・・・!」

ルカは闇の気を練りはじめた!

グランベリア「闇の気・・・!させるか!」

グランベリアは剣で周囲を薙ぎ払った!

ルカ「ぐっ・・・・!」

ルカに200のダメージ!

布の服は防御の体すら成さずに易々と衝撃を肉体に通す。
脇腹部分に激痛が走るが―――

ルカ(でも!あの光景を見た痛みに比べれば!)
耐えることは容易かった。

ルカの攻撃力と会心率が上昇した。

ルカ(6撃では力が分散しすぎる。かといってこの状態の僕の攻撃を易々とグランベリアが食らうはずもない!)

ルカ「紅蓮と化して舞い踊れ!紅蓮炎舞!」

グランベリア「これは―――!」

会心の一撃!グランベリアに620のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに600のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに580のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに600のダメージ!

グランベリア「何という剣戟・・・素晴らしいぞ!少年!」

グランベリアは疾風突きを繰り出した!

ルカ「ぐっ・・・!」

ルカに300のダメージ!

ルカ「てやっ!」

ルカの反撃!

グランベリア「これに反応するか!」

グランベリアに300のダメージ!

ルカ「いざ、羅刹と化して!羅刹掌!」

ルカは拳に気を集中し、羅刹掌を繰り出した!

グランベリア「・・・・・・重い!」

会心の一撃!グランベリアに1400のダメージ!

グランベリア「反撃は貴様の専売特許ではない!」

グランベリアの反撃!

ルカ「ぐっ・・・!」

ルカに200のダメージ!

グアンベリア「この連撃・・・耐えられるか!」

グランベリアは無数の斬撃を繰り出した!

ルカ「うわぁぁ・・・っ!」

ルカに400のダメージ!
ルカに370のダメージ!
ルカに430のダメージ!
ルカに450のダメージ!
ルカに350のダメージ!

ルカ「まだ・・・まだだ!」

ルカは食いしばって立ち上がった!

グランベリア「なんと・・・立ち上がるか!」

何とか・・・何とか立ち上がることはできた。
あと1撃でも食らうか、技を繰り出せば間違いなく戦闘不能だろう。
だがここで倒れる訳には、屈するわけにはいかない!

グランベリア「その傷・・・浅くは無いはずだ。全身に凄まじい激痛が走るはず。それでもなお折れぬか」

ルカ「当たり前だ!傷が深くても!体が痛くても!僕はお前に立ち向かわなくちゃいけないんだ!」

僕はそう吠えると、裏練気によって作り出された最後の力をどの技で使うかを選ぶ。
僕が覚悟を決め、構えに入ろうとしたとの時―――

グランベリア「やめだ」

ルカ「な・・・!」

グランベリアは剣を地面に付き刺し、戦闘態勢を解いた。

グランベリア「あまりに貧弱な武装、あまりに脆弱な装甲。技術や闘志、覚悟は一流だがそれが霞んでしまっている」
グランベリア「技術に武器が追い付いていない状態。それを武器に物を言わせ叩き潰す。これでは道に反する」
グランベリア「名を名乗れ。少年」

ルカ「・・・・・・ルカ」

グランベリア「ルカ・・・か。確かにその名、覚えたぞ。次に会う時は・・・万全の状態で闘いたいものだな」

グランベリアはそう告げると立ち去ってしまった。


グランベリアを追い払った!

ルカ「ぐっ・・・!」

身体の痛みに耐えかねて足元から崩れる。
そこにアリスがやってきた。

アリス「まさか・・・そんな貧弱な武器でグランベリアと一時的にでも互角に渡り合うとは・・・」

ルカ「互角なんかじゃないさ。あと1撃でも食らうか、技を使っていたら僕は動けなかった」
ルカ「それに対してグアンベリアは――――」

アリス「人間と竜族。決して埋めようのない差を貴様は覆したのだぞ」

確かにいっぱしの人間が竜族の剣士を追い払う。
一般的に見れば大金星だ。

ルカ「それでも勝ったなんて思っちゃいないよ・・・」

それでも、あと1撃もらえば僕は動けなかった。負けは負けだ。
僕が気分が浮かないでいるその時だった――――

「ど、どうなったんだ・・・・・・?あの魔族、逃げて行ったのか・・・・・・?」

「ほら、あの少年!あの少年がボロボロになりながら追い払ってくれたんだよ!」

屋内からわいわいと住民たちが出てきて、僕たちを取り囲み始めた。

ルカ「いや・・・僕たちは、その・・・」

「いやぁ。ありがとう!もう少しで、この町は魔物のものになるところだったよ!」

ルカ「いえいえ・・・どうも・・・」

住人達はひとしきり僕たちに礼を言うと、それぞれの日常に戻っていった。
叩きのめされた戦士たちも命に別状はなく、ようやくイリアスベルクは平穏を取り戻したのだ。

アリス「ところでそこの住民A、ひとつ聞きたいことがあるのだが」

住民A「住民Aって俺の事?俺には立派な名前が・・・・・・・ああっ!住民Aになってる!」

アリス「貴様の素性など、心の底からどうでもいい。「サザーランド」という宿を知っているか?」

住民A「えっと・・・・・・そりゃ、西通りに出てすぐだ。老舗のでっかい宿だから、すぐに分かるよ」

アリス「ふむ・・・・・・聞いたか、ルカ!西通りにあるという話だぞ!」

ルカ「サザーランド・・・」

確か僕自身の記憶では1泊10万ゴールドだったような・・・
向こうに居るなら余裕で払える金額だけど、今の僕たちは・・・
それをアリスにいうと怒られるので、黙っていることにした。

アリス「よし、西通りに行くぞ!今晩の宿は決まったな!」

はしゃぐアリスに引き摺られ、僕たちは西通へ向かったのである。
当然満身創痍の僕の状態などアリスには見えていない。

ルカ「やっぱり・・・」

「ザザーランド」は向こうの世界と同じ感じであった。
その料金はというと――――

ルカ「えっと・・・お一人様一泊240万ゴールドぉ?!」

自分の知るサザーランドの24倍。向こうの世界の資金全て持ってきてもまだ足りない。
もし僕が洗礼を受けていたなら、勇者料金でタダ同然だったというのに・・・・・・

ルカ「アリス、ここは住む世界が違いすぎる。2人だと、9秒しか居られない計算になっちゃうよ」

アリス「並行世界から貴様の財産を持って来ればいい!」
アリス「そこまでの技術を持つくらい鍛錬したのなら、それくらいあるはずだろう」

ルカ「持ってこれたら苦労はしないよ。それに・・・それでも2人だと6時間しか居られないよ」

アリス「なんと・・・こんなことならグランベリアに制圧させた方が良かったな」

ルカ「おいおい・・・・・・」

アリスがろくでもない事を呟いた時だった。

おかみ「馬鹿をお言い!」
おかみ「揃いも揃って魔物にやられた分際で、何が勇者だい!」

威勢のいいおかみの啖呵が、外の通りまで響く。
おかみの前に居た戦士が何か理由を言うが――――

おかみ「あんたみたいなヘボ勇者が勇者と名乗っちゃ、本物の勇者が迷惑だよ!出ておいき!」

おかみの怒声に圧倒され、戦士は脱兎の様に逃げ去ってしまった。
こうして戦士を追い出したおかみは、ふと僕たちに目を留める。
すると―――その不機嫌そうな顔が、たちまち和らいでいった。

おかみ「あら、あんた。この町の恩人じゃないか。せっかくだから、ウチに泊まっていきなよ」
おかみ「それにその酷い怪我、しっかり休まないと大変なことになるよ」

ルカ「いえ、でも・・・・・・お金が・・・・・・」

おかみ「そんなの、勇者料金でいいよ。お二人様で4ゴールドね」
おかみ「残り479万9996ゴールドは、イリアス様につけとくよ」

ルカ「ど、どうも・・・。でも僕は洗礼を受けた勇者じゃないんですけど・・・・・・」

おかみ「洗礼なんて関係ないよ」
おかみ「勇者の資格は洗礼のあるなしじゃない、その振る舞いさ」
おかみ「たった1人で魔物に挑んで、追い払ったのが勇者じゃなければ何なんだい?」

ルカ「お、おかみさん・・・!」
勇者はその振る舞いで決まる―――
グランベリアの剣戟以上に僕は揺さぶられた。

おかみ「そういうわけで・・・・・ほらほら、どうぞどうぞ!」

アリス「ふむ、貴様は見どころのある人間だな。ほらルカ、いつまでのけぞっている―――」

ルカ「ゴメン・・・限界みたい」

一時的に忘れ去っていた激痛が戻って来て、僕は再び足元から崩れ落ちる。

アリス「仕方ない・・・引き摺って行くか」

ルカ「出来れば優しくお願いします・・・」

こうして僕たちは、おかみの好意により高級店「サザーランド」に一泊することになったのだった。

ルカ「あいだだだだだ・・・」

白魔法と医学、果ては薬学まで駆使して治療を進めるが、やはり痛いものは痛い。
部屋の豪華さによる落ち着かなさなど、あっという間に流された。
アリスはというと、苦しむ僕を尻目に皿に盛られたあまあまだんごをパクパクと食べている。

ルカ「美味いか・・・?」

アリス「・・・・・・あまい♪ 貴様、トリプルコックならばデザートも作れるよな?」

ルカ「うん・・・体が万全に動けばね」

アリス「期待しているぞ」

今の僕は治療で精いっぱい。とても料理なんてできない状態だ。
それを察してなのか「今すぐ作れ」と言わないだけマシなのだろうか。
いや・・・ただ単にあまあまだんごにご満悦なだけみたいだ。

ルカ「おいおい、変身を解くなよ・・・・・・宿の人、来ないだろうなぁ」

アリス「・・・・・・ふぅ、美味かった。余は満足したぞ」

アリスは人の姿に戻ると、ベルをリンリンち鳴らす。
すると――――おかみ自ら、食器を下げに来てくれた。
どうやら僕たちはかなりのVIP待遇のようだ。

おかみ「当店自慢のあまあまだんご、満足してくれたかい?」

アリス「甘さが際立ちながらも、団子の風味を殺してはいない・・・・・・まさに、あっぱれな味だ」

おかみ「でも・・・最近は、ハピネス蜜が不足しててねぇ」
おかみ「このおだんごも、前ほど沢山つくれなくなったんだよ」
おかみ「ハピネス村もあんなことになって、男手が足りないから・・・まあ、仕方ないんだけどねぇ」

ルカ(ハピネス村に男手が足りない?)
向こうの世界ではハピネス村はハーピーと共存している。男手不足という状況そのものが考えられない。
でも、向こうではハーピーが太古の感染症に罹っていたはず―――
世界の違いは問題にも影響しているようだ。

ルカ「ハピネス村で、何があったんですか・・・・・・?」

おかみ「それがねぇ・・・あっ、そうだ。あんた達が行って、何とかしてやりなよ」
おかみ「傷が治ってからでいいからさ・・・」

おかみは全身ボロボロの僕を見てそういう。

ルカ「はい・・・」

傷の方は幸い骨には達していなかった。持てる技術全てを費やせばなんとか今夜一晩で治せそうだ。

おかみ「じゃぁ、おやすみ。ゆっくり休みなよ」

ルカ「はい、ありがとうございます!」

昨日の野宿とは違って、今日はふかふかのベッド。
感染症の可能性が駆逐できる上に、体力回復も相当な量が見込めそうだ。

アリス「しかし・・・腹が減ったな」

アリスが不穏な事を言い出す。

ルカ「満身創痍の僕から精を搾り取ったら、明日も使い物にならないよ」

再び僕は手を打った。いくら洗礼されていない精が欲しいからって、満身創痍の人間から搾り取ることは―――

アリス「そうなったら余が引き摺って行けばいい」

その希望は脆くも崩れ去った。でもまだ手はある。

ルカ「魔物が出たら・・・」

アリスは魔王である以上、魔物には手を出せない。動けない状態で放り出したらそれは―――

アリス「その前に道端に放り出す」

魔王様は無慈悲だった。

ルカ「・・・・・・」

最早何も言えない。痛みに耐えながら精を絞られる。想像するだけでゾっとした。
アリスはじっと僕の顔を眺め―――じゅるり、と舌なめずりをした。

アリス「洗礼を受けていない貴様の精は、なんとも美味そうだ・・・・・」

前言撤回。体力回復は・・・あまり見込めなさそうだ。































「あひぃぃぃっ!」





























このルカさんはあひらないと言ったな。あれは嘘だ。

貯め多分全放出終了。

このあとはネット回線がしばらくの間使えないから、結構日にちが空くと思う。

この後はイリアスベルクで買い物、カスタムソードの鍛錬、アミラとの出会いの3本立て!

ルシフィナ譲りのえげつないルカさんが出てきます。

現在家付近のネカフェから書き込んでいます。

現在の進捗状況として、「ミカエラと再開」までできました。

エンジェルハイロウは装備します。強い相手のときだけ、ハイロウとカスタムソードの二刀流というスタイルです。

自分で書いていてアレですが・・・この後ルカさんはどんどん黒くなっていきます。

アミラに対してはとてつもなく辛辣です。

くえルカさんとは比較にならないほど聡明になります。前章の時点で、くえすと!のラスボスに勘付く程度には。

特に戦闘に関してはかなり端折ります。




ダークエルフ(剣士)が現れた!

ダークエルフ(剣士)「下がりなさい。ここから先はーーー」

ルカは先手を取った!

ルカ「邪魔」

ルカの攻撃!

ダークエルフ(剣士)に150のダメージ!

ダークエルフをやっつけた!


これくらいになるどころか、


道中でもう1人ダークエルフとあったけど、問答無用で切り捨てた


というあまりにも酷い対応をします。

そりゃぁレベルMAXなのにいちいち雑魚なんか真面目に狩っていられないよね!

ネット環境がない以上、今は更新できませんが、執筆のほうは進んでいます。

回線の復帰にはもう1~2週間ほどです。

それでは

おかみ「ゆうべは、お楽しみだったね。怪我の方も・・・良くなったみたいだし」
おかみ「じゃぁ、また来なよ。あんた達なら大歓迎だからね」

ルカ「ええ、ありがとうございました!」

こうして僕たちは、高級店「サザーランド」を後にしたのだった。
アリスは風呂敷包みをいくつもぶら下げているが、あれはもしかして・・・


この後僕たちは必要なものを買いに露店へと赴いていた。

ルカ「これ、単価15ゴールドって高すぎない?」

店頭に並んでいる商品と値段を見て僕は真っ先に値切る。

おやじ「これでも適正価格だぜ。勇者様」

ルカ「ちょっと手に取ってもいい?」

おやじ「いいぜ。好きなだけ」

商品を手に取ってみる。品質は良くも悪くもない、一般的な品だ。

ルカ「・・・・・・やっぱ15ゴールドは高い。10ゴールド」

おやじ「そんなに値引いたら路頭に迷っちまう!」

ルカ「いや。嘘だね。ざっと見積もると・・・」
ルカ「原材料費2ゴールド、流通コスト2ゴールド、おやじさん以外店員はいないから人件費で4ゴールド。シャバ代で2ゴールド」
ルカ「計10ゴールドで適正価格だよ。単品当たりの純利益が9ゴールドは・・・暴利だよ」

商人の経験と知識を活かし、必要経費と利益を割り出していく。
品を見れば大体どこで収穫されたものなのか分かるようになってから、更にやりくりが上手くなったと思っていた。

おやじ「高いのが嫌なら買わなくていいんだぜ!」

おやじさんが暴挙に出る。でも僕はには対抗策がある。

ルカ「確かこの商品・・・ギルドで定めた適正価格は上限13ゴールドだったよね?」
ルカ「これ・・・ギルドの報告したらどうなるかな」

商人にとってギルドへの不正報告は、魔女狩りの宗教裁判と同じ―――
態度が酷いおやじさんに僕は最終手段をちらつかせた。

おやじ「それだけは・・・!それだけは・・・!13ゴールドで―――」

やはり暴利な事も把握していたようで、おやじさんは縋るように値引きに応じる。
でも、剣を鍛えてもらうにはお金がかかる。妥協するわけにはいかない。

ルカ「10ゴールド」

おやじ「分かりました!それなら12ゴール―――」

ルカ「10ゴールド」

おやじ「勘弁してください!11ゴー――――」

ルカ「10ゴールド」

おやじ「・・・・・・」

ルカ「10ゴールド」
ルカ「とはいえ・・・流石に可愛そうだから少し多く買ってあげるよ」

最後の最後で僕が少しだけ譲歩したことで決着がついた。

おやじ「ありがとうございました~・・・・・・」

おやじさんは消え入るような声で僕を見送る。

ルカ「よし。これで食材とかは十分だな・・・。? 何アリス?」

いつの間にか露店を回っていたはずのアリスが驚きの目で僕を見ていた。

アリス「ルカ・・・貴様えげつないな」

ルカ「えげつないのはあのおやじさんだよ。都市でも9か10ゴールドが適正価格」
ルカ「ましてやここは港町。店の位置も悪くないし薄利多売をすれば、単価8ゴールドでも1.5倍の利益は出ると思うよ」

アリス「詳しいんだな・・・」

ルカ「色々な職業経験積んだからね」
ルカ「買い物は済んだ。後は・・・装備だけか」

武具屋に訪れると僕はまず身を守る鎧を探した。
グランベリアの剣戟で、体を覆う機能しか残っていない。
ましてや残金は心もとない。今の所持金で手に入り、且つ頑丈な防具を―――

ルカ「ん・・・?」

ふと店の奥に陳列されている服に目が行く。
一見ただの服だが、これは――――

ルカ「これにしよう」

アリス「余もそれがいいと思う」

2人とも同じ意見だったようだ。

店主「2人とも随分目が効くねぇ。それは―――」

ルカ「特別な製法で作られた防護服、でしょ。それと産地は・・・エンリカ」

店主「そこまで言い当てるとは!素晴らしい観察眼だね」

ルカ「色々な職を経験しましたので・・・」

店主「まいどありぃ!」

僕は迷いもなくエンリカの服を購入した。

ルカ「ちょっと鍛冶屋に寄っていいかな?」

武器屋を出た直後、僕はアリスにそう尋ねた。

アリス「食事が貧相にならなければ余は一向に構わない」

OKサインが出た。これで剣を鍛えることが出来る。
自分の世界では、この剣を何度も鍛えて常に使えるようにしていたのだ。
平行世界のこのカスタムソードも、自分の世界と同じ感じな為、是非とも向こうと同じ様にしたい。

ルカ「すぐに終わらせてくるよ」

僕はそういうと鍛冶屋へと足を運んだ。

鍛冶屋「いらっしゃい!剣を鍛えるのかな?」

ルカ「お願いします」

僕はそう言って剣を手渡す。すると・・・

鍛冶屋「こいつはいい剣だ・・・今は強くないが、何度でも鍛錬に耐えられるように作ってある」
鍛冶屋「それに・・・お前さん専用の剣だろ?体格などをしっかり考えて作ってある」
鍛冶屋「久々に腕が鳴るな!」

そういって鍛冶屋さんは剣を鍛えてくれた。お金の方も予算内でしっかりおさまった。

ルカ「買い物も終えたし、町から出ようか―――」

やることをすべて終えたので、そう言ってイリアスベルクを後にしようとした時だった。

???「ふふふ・・・・・・見つけたわ、私だけの勇者様!」

その声の主は僕の目の前に姿を現した。
一度見たら忘れようもないその姿は――――誰も得をしない半人半蛇のモンスターだった。

残念なラミア「私の名は――――」

ルカ「アミラでしょ」

残念なラミア「・・・・・・・私の名はアミラ・・・あなたに心奪われた、恋する乙女」
残念なラミア「あなたが私にくれたもの―――ー」

僕は語呂の悪いポエムのようなものを聞き流す。僕は剣の柄を握った。

アリス「気持ちは分かるが、落ち着けルカ」

ルカ「分かってる。分かってるんだ。アミラも仲間だったから・・・」

今の僕を他人から見れば悟ったような目をしているだろう。
そうこうしている内にアミラが住民の皆から歓迎を受けていた。
これも向こうの世界でよくあった見慣れた光景だ。
・・・・・・向こうの世界と同じアミラの姿以外は。

アミラ「今日はあなたに愛を伝えに来たのだけれど、要件はそれだけでもないの」
アミラ「少しばかり、頼みごとを聞いて―――」

ルカ「それってもしかして・・・この町の西の方の洞窟を根城として暴れてる盗賊団の事?」

向こうの世界で得た経験を告げる。

アミラ「・・・・・・」

アミラは黙ってしまった。やはり図星だ。

アミラ「でも決して馬鹿には出来ないわ。何せその盗賊団には―――」

ルカ「ヴァンパイアやドラゴンがいる。でしょ?」

アミラ「・・・・・・」

またしても図星。

アミラ「・・・・・・その盗賊団を打倒してくれないかしら」

ルカ「うん。いいよ」

僕はすぐに承諾する。実際あの盗賊団にはヴァンパイアもドラゴンもいる。でも―――

アリス「あっさりと受けるな。普通なら止めるが・・・知っているのだな」

ルカ「うん。大丈夫だよ」

アミラ「じゃあ、朗報を待っているわ・・・・・・」

そのままアミラは、落ちこんだように地面を這いずりながら去って行った。

アリス「ルカ・・・流石に出番を奪いすぎではないか・・・」

ルカ「アミラのことは嫌いじゃないんだよ。でも・・・うん」

何度見てもあの姿は慣れない。仕方ないじゃないか。

アリス「それに盗賊団の事、知っているのなら敢えて無視することも出来なくないか?」

ルカ「それはしないよ。僕は勇者だし、それに――――」

ルカ(どこで歴史が狂うか分からないからね)
第3のタルタロスの奥にあった並行世界にいたラ・クロワの話を照合する。
確か数十年・・・30年くらいで歴史を踏み外した世界はああなる。この世界をそうするわけにはいかない。

ルカ(異世界を渡ったならどこかにタルタロスがあってもおかしくないはず。でもまだこの世界にタルタロスはない・・・)
まだ3つしかタルタロスに行ってはいないが、タルタロスはタルタロスのある世界にしか繋がらない。
ましてや僕自身がイリアスヴィルで目覚めたとなれば、経験上近くにタルタロスが無ければおかしいはずだ。
仮に近くに無かったとしても、あれほどの大穴があれば話題にもなる。常識にすらなる。

ルカ(それが無いのに異世界に移動した。そうすると・・・)
考えられる可能性は2つ。1つは、まだ発見されていない。もう1つは、そもそも存在しない。

ルカ(そのためにもこの世界を隅々まで見ておかないとね)

こうして僕たちは盗賊団の退治に向かった。



とりあえず町を出たところで、アリスは僕を呼びとめた。

アリス「そう言えば・・・貴様の戦い方を見て、一つ気づいたことがある」

アリス「貴様はモンスターを殺さないために、常に手加減しているな」
アリス「グランベリアの時と、その前の時では全くと言っていいほど剣閃が別物だ」

ルカ「そ・・・そうかなぁ?」

自分では自覚できていないのかもしれない。
でも向こうの世界のアリスは

アリス「魔物は丈夫だからそう簡単に死んだりしない」

って言ってたし・・・

アリス「仮に何かの拍子でそのリミットが外れた場合、貴様はほぼ間違いなく魔物を斬り殺してしまうだろう」

向こうの世界ではもっとえげつない武器で、えげつないスキルを繰り出していたんだけど・・・
もしかしたら魔物自身の強度も世界によって違うのかもしれない。

アリス「そうなっては本末転倒だろう。故に貴様にこの剣を貸してやろう―――」

そう言ってアリスは僕に剣を手渡した。

アリス「堕剣エンジェルハイロウ―――」
アリス「この世に1本しか存在しない、極めて貴重な剣だ」
アリス「今後の戦いでは基本これを使うといい。強敵に出会ったときには、貴様の剣を使えばいいだろう」

ルカ「ありがとう」

僕はその剣を受け取る。
向こうの世界では僕にこんな剣は渡されなかった。
でも――――なぜかこの剣は受け取っておかなきゃいけない気がした。

エンジェルハイロウはその外見に似合わず、異様なまでに軽かった。
丁度カスタムソードと同じくらいか――――

ルカ「・・・・・・今、なんか呻き声みたいなのが聞こえなかったか・・・・・」

アリス「当然だろう、666匹の天使を溶かして精製した剣なのだから」

ルカ「ということは・・・この剣には聖素が多く含まれているんだね」

アリス「うむ。それにより魔素を消散し、生骸から引き離すという効果が得られる」
アリス「そうなると、魔素を固着することが極めて困難となり―――」

ルカ「魔物は魔物になる前の姿に戻される・・・封印されるって言った方が正解なのかな?」
ルカ「理論上は理解できるけど・・・」

そう僕が言いよどんだ時だった。

アリス「うむ。丁度いい相手が近づいてきたではないか」
アリス「いい機会だ、試し斬りでもしてみるがいい」

そう言い残すと、アリスはふっと消えてしまった。
先ほどから地面がモコモコと移動している。ということは―――

ミミズ娘が現れた!

ルカは先手を取った!

ルカ「隼のごとく・・・・・重ね斬るっ!」

ルカは素早く2連斬を繰り出した!

ミミズ娘に450のダメージ!
ミミズ娘に430のダメージ!

ミミズ娘「なんなの、これ!」

ミミズ娘を倒したと思った次の瞬間――――
その姿が消散し、普通のミミズに戻ってしまった。

ルカ「なるほど―――こういうことか」

アリス「理解したな。こういうことだ。これなら普通の剣ではオーバーキルな攻撃を仕掛けても、封印されるだけで済む」
アリス「・・・・・・余はとんでもない魔物スレイヤーを生んでしまったのかもしれん・・・・・・」

ルカ「さて、次の目的地だな・・・」

アリス「そう言えば―――」

ルカ「とりあえず先に盗賊団を潰しちゃおう。向こうと同じ感じがするし・・・」

アリスの言葉を遮って僕は目的地を決めた。

そして数時間ほど歩き――――
目的地である盗賊団のアジトまでたどり着いた。
向こうの世界と同じ位置にあったので、迷うことなく到着した。
すると――――

ゴブリン娘が現れた!

ゴブリン娘「やい、金目の物を―――」

ルカは先制を取った!

ルカ「はぁっ!」

ルカの攻撃!

ゴブリン娘に170のダメージ!

ゴブリン娘「うぅ・・・ぐすっ」

ルカ「盗賊団の一人だよね。アジトはここで間違いない・・・よね」

ゴブリン娘「うん・・・」
ゴブリン娘「で、でも・・・四天王のあと―――」

ルカ「よし!行こう!」

ゴブリン娘が何か言い残そうとするのを無視して、僕は洞窟の中へと向かった。

ラミア「・・・・・・四天王の一人、土のゴブリンがやられたみたいね」

ヴァンパイア「くくく・・・奴は四天王の中でも最弱」
ヴァンパイア「奴を倒したところで何の脅威にもならんわ」

ドラゴン「うがー。その通りだぞ」
ドラゴン「なんであんな弱いのが四天王の一人なのか―――」


ルカ「ウォォォォオオオーッ!」

3人「キャーッ!」

ルカが現れた!

3人は不意を突かれた!

ルカの攻撃!

ルカ「舞え、烈風の刃! はぁぁぁっ!!」

ルカは烈風のような剣線を放った!

プチラミアに600のダメージ!
ヴァンパイアガールに570のダメージ!
ドラゴンパピーに500のダメージ!

3人はやられてしまった。


アリス「なるほど。そういうことか」

アリスが納得したように現れる。
僕が猛ダッシュで突撃したときは焦っていたが―――

ルカ「団員は4人だけでしょ?」

僕は戦意を失った4人に問いかける。
手加減しているので封印してはいない。

ドラゴン娘「いないのだ・・・・・」

ヴァンパイアガール「全部で4人だけ・・・・・」

ぐずぐずと鼻を啜りながら、魔物少女たちは答える。

ルカ「とりあえず・・・イリアスベルクの人達に謝りに行こうか」
ルカ「いっぱい迷惑をかけたんだし・・・・・・ね」

ドラゴン娘「あやまるぞ・・・ぐすっ」

泣きながら4人は頷いた。

ゴブリン娘「迷惑をかけて、ごめんなさい・・・・・」

プチラミア「もうしません・・・・・・」

ヴァンパイアガール「すみません・・・・・・」

ドラゴンパピー「ごめんなのだ・・・・・」

イリアスベルクの中央広場で、素直に謝る魔物少女達。

住民A「やれやれ、こんな少女達だったとは・・・・・・」

住民B「今まで何度か見たけど、ただの下っ端だと思ってたよ・・・・・」

住民C「誰なんだよ、ボスはおっそろしいドラゴンなんて言い出した奴は・・・・・」

ルカ「そういうわけで、もう悪さはしないって言っていますが・・・・・・」

何故だが僕は、すっかり保護者のような気分だった。

おかみ「反省してるみたいだし、許してやってもいいんじゃないかい?」
おかみ「この子たちも―――」

許してやるという方向で話が進んでいく。
二度目とはいえ僕は胸を撫で下ろした。

おかみ「・・・・・・まぁ、そういうことだね。これからは心を入れ替え、地道に働くんだよ」

町の人達も魔物処女たちを受け入れてくれるようだ。
こうして、盗賊騒ぎは円満に収まったのである。

ルカ「めでたしめでたし・・・」

アリス「貴様・・・ここまで予測済み・・・というか体験済みだったのか」
アリス「しかし・・・意外だったな。人間の心にも、まだまだ魔物を受け入れる隙間はあったということか」

アリスも少しばかり感心した様子である。

ルカ「うん。向こうでも同じ感じだったからね。きっと受け入れてくれると信じてたよ」
ルカ「・・・・・・ん?」

ドラゴンパピーは、くいくいと僕の腕を引いた。

ドラゴンパピー「お前には、とってもお世話になったのだ」
ドラゴンパピー「だから、これをあげるのだ」

ドラゴンパピーが差し出したのは、赤く綺麗な宝石だった。
とても美しく、高い価値のありそうなアイテムである。

ルカ「どうしたんだ、これ・・・・・?」

僕がそう尋ねると、ドラゴンパピー曰く
大富豪の馬車が逃げ出した時に、放置された荷物の中に紛れていた。そうだ

ルカ(なるほど・・・でも、もらっちゃっていいのかな・・・・・?)

勇者なら盗品は受け取らない・・・はずだ。
でも、感謝のしるしにくれるものをむげにするわけにも・・・

ルカ(そうだ。旅の途中で持ち主が見つかれば、その人に返せばいいんだ)

それならば勇者として問題の無い行為だ。
そういうわけで僕は、その宝玉を受け取った。

「レッドオーブ」を手に入れた!

アリス「・・・・・・このようなモノが、こんな所にあるとはな」
アリス「悪用の危険性がある以上、人間の手には渡したくないが・・・」

アリス「まぁ、青と銀は魔族が押さえているから問題は無いか」

ルカ「え・・・・・・?」
ルカ「アリス、これが何なのか知ってるのか?」

アリス「向こうでお前も貰ったはずではないか?」

ルカ「いや・・・こんなものは貰ってないよ」
ルカ「それで・・・これは何?」

アリス「人間は知らなくてもいいことだ」
アリス「貴様も、向こうと同じ筋書き通りでは面白くないだろう?」

ルカ「むぅ・・・」

そこまでいう所からして、ただの宝石ではないだろう。

ともかく、これで盗賊団の一件も終わりだ。
僕たちは旅を続けることにした。

ルカ「じゃぁ、そろそろ僕たちは行くから。もう悪いことをしちゃダメだよ?」

4人「はーい!」

こうして僕は、広場を後にしたのだった。


アリス「もし、相手が大人のドラゴンだったら、どうするつもりだったのだ」

ルカ「その時は―――全力で叩き潰すよ」
ルカ「僕は、託してくれた人達の為にも、死ぬわけにはいかないから!」

アリス「そうか・・・」

アリスが微かにほほ笑んだその時だった。

???「さすがは勇者様!」
???「私が見込んだ・・・・・・お・か・た」

ルカ「お前は――――」

残念なラミアが現れた!

ルカは先手を取った!

ルカの攻撃!

アミラに999のダメージ!

アミラを気絶させた!

ルカ「行こうか、アリス」

アリス「鬼だ・・・鬼がいる・・・」

こうして僕たちは、イリアスベルクの街を後にしたのだった

ルカ「よし、ハピネス村に行ってみよう!」
ルカ「何が起きてるか分からないし―――」

アリス「ああ、様子を見に行く必要があるだろう」
アリス「ハピネス蜜は採れなくなるなど、大問題だ」
アリス「あまあまだんごが食べられんばかりか、各地の名品にまで影響が出るぞ」

やはりアリスは、食い物のことばかり考えているようだ。
ともかく僕たちは、ハピネス村目指して東に進んだのである。

アリス「ところで貴様。なぜハピネス村という名前なのか知っているか?」

ルカ「近くにあるハーピーの集落があるから・・・かな?」

アリス「なるほど。世界は変わっても、地理関係は変わっていなさそうだな」

ルカ「みたいだね・・・」

アリス「ハーピーの習性を考えると、村での問題とやらも大方見当がつくが―――」

アリスはそういうと、そのまま姿を消してしまった。これは――――


ミツバチ娘が現れた!

ミツバチ娘「ふふっ・・・・・洗礼を受けていない―――」

ルカは先手を取った!

ルカ「剣閃、車輪の如く・・・・・・払車剣!」

ルカの剣閃で、車輪のような衝撃波が発生した!

ミツバチ娘に580のダメージ!

ミツバチ娘「なに、これ・・・力が抜けて・・・」

ミツバチ娘の姿は消失し、小さなミツバチの姿となり、そのままどこかに逃げ去ってしまった。

ミツバチ娘をやっつけた!

こうして僕たちは、ハピネス村へと向かった。

ルカ「ハピネス村・・・・・・」

そこは向こうの世界と変わらずのどかで平穏な農園。
おばさんや娘さん達が、用法やその他の農作業に精を出している。

しかし、僕からすれば既に違和感いっぱいであった。
まず、男手が居ない。それに加えて―――

ルカ(ハーピーまでいない・・・?これは―――)

僕の記憶にあるハピネス村は、ハーピーと共存している村だった。
その村にハーピーが居ないとなると・・・・・・

おばさん「おや、旅の人かい。随分とお若いねぇ・・・・・」

近くの巣箱で作業をしていたおばさんが、僕に話しかけてきた。

おばさん「せっかくだけど、この村には旅人が喜ぶようなものは何もないよ」
おばさん「名物のハピネス蜜も、人手不足で採る量がめっきり減ったしねぇ・・・」

ルカ「それは一体―――」

僕がそう問いかけた瞬間だった。

「わぁぁぁぁーーーー!!」

不意に、年若い男の子の悲鳴が響き渡ったのだ。

ルカ「な、なんだ・・・・・?!」

僕は慌てて、声の方向に駆けていった!
そこには――――

ハーピーが現れた!

少年「うわー!たすけてー!」

なんと一体のハーピーが男の子を掴み上げ、今にも連れ去ろうとしている所だった!

ルカ(何となく事情は分かった!でも―――!)

ルカ「やめろ!その子を離せ!」

僕は剣を抜き、ハーピーの前に躍り出る。
他の村人たちは、皆屋内に逃げ込んでしまったようだ。

ハーピー「あれれ・・・村では見かけない人だね」
ハーピー「見たところ、旅人かな・・・?」

ハーピーは僕を舐め回すように眺め―――
そして、ぺろりと舌なめずりをした。

かと思ったら、その足で捕まえていた男の子を離してしまう。

ハーピー「そうねぇ・・・あんたの言うとおり、この子は離したげる」
ハーピー「そのかわり、あんたをさらっちゃおうかなー♪」

ルカ「そこのキミ、早く逃げるんだ!」

少年「う、うん!」

男の子がその場から逃げるのを確認しつつ、僕は剣を構える。

ハーピー「えへへ・・・・・さっきの子より、あんたの方が素敵・・・・♪」
ハーピー「巣に連れ帰って、たっぷり子作りしよっと」

ルカ(なるほど―――)

僕はそのハーピーの一言で、問題の原因を何となく察した。
でも今は、このハーピーを倒す方が先だ!

ルカ「・・・・・・・来い」

僕は剣を構える。
ハーピーの物理攻撃の回避率は脅威だ。敵ならば恐ろしく、味方ならば頼もしい。
ましてやこの世界では、武器の持ちかえが出来ない。攻撃を当てやすい武器に変えることが出来ない。
ならば――――

ルカ(カウンターあるのみ!)

ルカ「てやっ!」

ルカの攻撃!
しかしハーピーは空に舞い上がり、剣が届かない!

ルカ(これでいい。今の攻撃は最小限の動きで、すぐにカウンターに転じることが出来るようにしてる!)

ハーピーの攻撃!

ルカに9のダメージ!

ルカ「てやっ!」

ルカの反撃!

ハーピーに300のダメージ!

ハーピー「ひゃあっ!!」

ハーピーは軽く吹き飛ばされてから羽をはためかせ、慌てて距離を取った。

ハーピー「きょ、今日はこれくらいにしておいてあげる!」

そう言いながら背中を見せ、ばさばさと逃げ去ってしまった。

ハーピーを追い払った!

ルカ「ふぅ・・・」

僕は剣を納め、息をつく。

おばさん「ちょっと、どうなったんだい・・・・?」

若い娘「ハーピー、旅の人が追い払っちゃったの?すっご~い!」

建物に閉じこもっていた村人たちが、次々と広場に集まってくる。

僕はたちまち、ハピネス村の人々に囲まれてしまった。
はやり見る限り、女性ばかりで男性の姿は全くない。

老婆「ふむ・・・ハーピーを追い払うとは、中々腕の立つ若者よ」

ルカ「あなたな・・・?」

老婆「村長の妻じゃが・・・村長が不在の今、わしが代わりに村長を務めておる」

アリス「ふん・・・子供がさらわれそうに―――」

アリスが何事かを話しているが、考え事を始めた僕には届いていない。

イリアス様の信仰にある五戒の1つ―――魔物と交わってはいけない。
その意識は基本的にイリアス神殿に近ければ近いほど強いというイメージが僕の中にできていた。
その観点からすれば、僕の知るハピネス村の方が異常なのだろう。

ルカ(確か・・・)
魔物は基本人間の男の精によってでしか繁殖できない。
そう書物に書かれていたはずだ。ならこの騒動の原因は―――

老婆「さて、旅人よ。お主の腕を見込んで、頼みがあるのじゃが・・・・」

僕は依頼の内容を聞く。ハーピーを退治し、連れ去られた男性を取り返してきてほしいといったものだった。

途中で何人旅人を送り込んだ―――という話が出たが、全部の事情を察した僕からすれば酷い茶番だった。

その後村の女性たちが戦うことを決めたが―――不毛に思えた。

アリス「ルカ・・・関わりのない人間を―――ってなんだその眼は・・・」

アリスが話しかけてきたが、僕の目を見て驚いたようだ。

ルカ「うん・・・ものすごーく不毛なことをしていると思うと・・・」

アリス「貴様・・・この騒動の原因に気が付いたのか?」

ルカ「原因どころか根本的な、諸悪の根源までね」
ルカ「でも、一番の根っこは言っちゃいけない」

アリス「・・・ならばそこは問わない。この騒動の原因は何だ?」

ルカ「単純にクイーンハーピーと人間との間のコミュニケーション不足」

その後僕はアリスに考えていることをを述べた。

アリス「なるほどな・・・共存している世界から来た貴様からすれば、単純な問題か」

ルカ「でもこの問題の一番の原因は―――向こうの世界では30年前から廃れはじめた「あれ」が原因だよ」

僕は敢えて遠巻きに指摘した。
アリスもなぜ僕がそれを遠巻きに説明してくれたのか察してくれたようだ。

ルカ「少し難しい話をするけど・・・恐らく平行世界の大きな分岐点は、向こうで言う30年前の「大異変」だよ」
ルカ「それがあった世界と無かった世界では、倫理をつかさどる「あれ」の影響力が大きく違うんだ」
ルカ「だから恐らく、この世界で人間と魔物との間にある問題のもっとも根本的な原因は殆ど「あれ」だと思う」

アリス「ならば今すぐにでも叛旗を翻せばいいのではないか?」

ルカ「それは無理だと思う。まず「大異変」が起きていないこの世界じゃぁ、天使に攻撃できるのは恐らく僕だけだよ?」
ルカ「それに・・・こういう問題は草の根運動で解決していかないと、例え上が変わっても変わらないと思う」

アリス「だから結末が分かり切った問題でも、それに身を投じなければならないから不毛・・・というわけか」

僕は無言で頷いた。

そうこうしている内に、襲撃準備が整ったようだ。
こうして僕とアリス、そしてハピネス村の女性たちは東の森へと向かったのであった。

ルカ「・・・ここまでは何事もなく来れたか・・・」

夕暮れ時という時間を選んだのには理由がある。
この時間帯はハーピーがぐっすり眠っている時間だからだ。
それに・・・マスターシーフを経験すれば、気配の1つや2つは消せるようになる。

記憶を頼りにクイーンハーピーの場所を目指す。
記憶通りの樹木に、最も立派な家があった。

おもむろに、一歩を踏み出した時だった。

???「おねえちゃん。あそこに誰かいるよ?」

???「本当だ・・・人間みたいね」

ルカ(しまった!)

ハーピーツインズが現れた!

ルカは不意を突かれた!

ルカ(ハーピー相手には物理攻撃がほとんど当たらないから、出来る限り戦いたくなかったんだけど・・・)
ルカ(でも仕方ないか。またカウンター戦法で・・・)

姉ハーピー「ふふっ捕まえた」

姉ハーピーはルカの背後に回り込み、強引に―――

ルカの反撃!

ルカ「てやっ!」

姉ハーピーに60のダメージを与えた!

姉ハーピー「きゃっ!」

妹ハーピー「ああ、おねえちゃぁん!」

妹ハーピー「おねぇちゃん!しんじゃやだぁ、おねえちゃぁん!」

姉ハーピー「大丈夫・・・あなたは、お姉ちゃんが絶対に守るからね」

妹ハーピー「やだぁ!おねえちゃんををころさないでぇ!」

ルカ「・・・・・・」

向こうの世界では病気によって正気を失っていたが、こちらの世界では正気なのだ。
僕は猛烈な罪悪感に襲われた。

僕は背中を見せ、その場から逃げ出す。
ハーピーツインズは、追いかけては来なかった。

ルカ「今度は見つからない様にしないと・・・」

あのハーピー姉妹が侵入者を仲間に知らせることは間違いない。
警戒が本格化する前にどうにかしてクイーンハーピーのところまで向かわないと―――
またあの猛烈な罪悪感に襲われることになる。

僕は茂みから飛び出し、一目散に駆けだした。
樹上にあるクイーンハーピーの家へと向かって―――

???「私の家に、何かご用でしょうか?」

背後で、ばさっと羽音が響く。
そして、以前にも味わった尋常ではない気配。
振り返ると、そこには―――
クイーンハーピーが単身で立っていた。

クイーンハーピー「この私に、どのようなご用でしょう?」
クイーンハーピー「まぁ、察しはついておりますが・・・・・・」

ルカ「さらった人たちを帰して、こんな事はやめてほしいんだ」
ルカ「こんなの続けてたら、人と魔物の関係が壊れる一方だよ」

僕は剣を抜く前に、まず口を開いた。
正直なところ、事情が事情なだけに説得に応じてくれる可能性はほぼゼロだろうが―――

クイーンハーピー「・・・人の子よ、それは因果が逆というもの」
クイーンハーピー「人と魔物の関係が壊れてしまったがゆえ、我々はこのような事をせねばならないのです」

ルカ(やっぱり―――!)

「あれ」は向こうの世界のような、人間と魔物の共存には害悪そのもののようだ。

クイーンハーピー「心当たりがあるようですね。なら―――」

ルカ「でも、この手段は正しいとは言えないよ。だから―――」

僕はエンジェルハイロウを握った。

クイーンハーピー「実力行使というわけですね。ならばハーピーの女王の力、その身に教えて差し上げましょう!」

クイーンハーピーが現れた!

ルカ(ハーピー戦はカウンターがセオリー!)

ルカ「てやっ!」

ルカの攻撃!

クイーンハーピーに200のダメージ!

クイーンハーピー「くっ・・・!速く、重い!」

ルカ「何故避けない・・・?」

クイーンハーピー「ハーピーの女王たる者が、そんな姑息な戦いぶりを見せるとでも?」

クイーンハーピーの攻撃!

ルカは20のダメージを受けた!

ルカ「なるほど・・・」

姑息な手は使わない―――その礼節に、僕自身も本気で臨もうと思った。

ルカ「刃と拳だ!ミックスゲイツ!」

ルカは斬撃と格闘技を同時に繰り出した!

クイーンハーピーに700のダメージ!
クイーンハーピーに690のダメージ!

クイーンハーピー「そんな、この私がたった2撃で・・・!」

クイーンハーピーをやっつけた!

クイーンハーピー「それほどの力があるなら、わざわざ忍び込まなくても・・・!」

ルカ「無駄な禍根は作りたくないんだよ・・・」

封印には至っていないが、戦意を挫くことには成功したようだ。
後は、手筈通り、あらかじめ持たされた魔法信号筒を、真上へと投げつける。
それは空中で弾け、色とりどりの光を生み出した。

これが、ハーピーのボスを倒した合図だ。

あちこちで茂みがざわめき、ハピネス村の女たちがなだれ込んでくる。

これだけの騒ぎになれば、眠っていたハーピー達も起き出したようだ。

クイーンハーピー「なぜ・・・なぜ斬ろうとしないのです?」

ルカ「・・・・・・」

僕が無言で立ち上がったとの時だった。

おじさん「ちょ、ちょっと!やめてくれぇ!」

若者「待ってくれ、女王様を斬ろうとしないでくれ!」

ハーピーの家々から飛び出してきた男たちが、僕に思いとどまる様に叫ぶ。
若い青年から老人まで、あちこちの家から駆けよってくると、クイーンハーピーをかばうように間に入った。

それを見た僕は、再びどっかりと地面に腰を下ろし、空を見上げてぼーっとする。
意識の外では、戻ってきた男手たちと襲撃した町の女性たちが言い合っている。
どうやら攫われた男たちは、みんなハーピーと婚姻を結んでいたようだ。

向こうの世界ではあまりにも当たり前の光景過ぎて、何の新鮮味もない。

僕以外の人達は立ち惚けるばかり。
そしてクイーンハーピーは口を開いた。

クイーンハーピー「・・・・・・ハーピーには女しか存在しない以上、繁殖には人間のオスの力を借りるしかないのです」

クイーンハーピー「しかし・・・人間の魔物に対する憎しみが高まっている今、誰がハーピーの婿になど来てくれるでしょうか?」

おばさん「で、でも・・・何も攫わなくたって・・・」

クイーンハーピー「私たちとて、ただ黙って滅びる訳にはいかないのです」
クイーンハーピー「例え無理やりに奪ってでも、男は必要でした」

知識と経験がある僕からすれば、あまりにも当たり前すぎる思考だ。
当然男たちを苦役に処する必要もなく――――

見ればあっちこっちで新しい家族によるもめごとが起きている。
中には非常に深刻そうな表情をしている家族もいる。
男たちを集落から出さないのはハーピーの掟と言っていたが、男の側も帰るに帰れない立場だったようだ。

いつしか、ハーピーとの共存という方向で話はまとまっていく。

アリス「これ以降は、ハピネス村とハーピーの里で解決すべき問題だ」

ルカ「そうだね・・・」

後は、当事者同士の話し合いが望ましい。
ただでさえ徒労だったのだ。これから先の泥沼になど関わりたくない。

ただ―――向こうの世界で当たり前だったことを実現するには、いろいろ大変だということは学んだ。

そして夜遅くまで話し合いは続き―――
友好関係を軸に、ハピネス村とハーピーの里との協定は結ばれた。
それからは、もうお祭り騒ぎだった。

ルカ(ハーピーの側も、事情を説明して男を婿に貰えばよかったのに―――)

なんて口に出せない。婿が来ないからこういうことになったわけで、その最たる原因は―――

ルカ(イリアス信仰なんだよなぁ・・・)

五戒の1つ。「魔と交わるなかれ」
それがこの世界における人間と魔物の友好を阻む、最大の敵だった。

ともかく、この一件は解決したと思いたい。

そして翌朝―――
村一番の鍛冶屋にカスタムソードの強化をお願いして、鍛えてもらった後に僕たちはみんなに見送られて、村を旅立った。
鍛冶代はなんとタダにしてもらった。

おそらく、この世界で人と魔物の信頼が試されるのはこれからだ。
しかし僕は、友好関係が維持されることを確信している。
なぜなら、向こうでは当然の様にあったからだ。
向こうでできて、此方で出来ない道理はない!

アリス「次の目的地はどうする?」

ルカ「次は―――エンリカ」

アリス「・・・恐ろしいほど深刻な顔をしているな」

ルカ「うん・・・」

アリスは何も言わず、そっとしておいてくれた。それが今の僕には有難かった。

エンリカももうすぐといったところで―――

アリス「なかなかに珍しい魔物だな」

アリスはそういうと消えてしまった。
それと同時に、一体の魔物が僕の目の前に立つ。

ダークエルフ(剣士)が現れた!

ダークエルフ(剣士)「ただちに引き返しなさい―――」

ルカは先手を取った!

ルカ「邪魔」

ルカの攻撃!

会心の1撃!ダークエルフに300のダメージを与えた!

ダークエルフは、手のひらサイズの小人の姿になってしまった。
そして何事かを言い残し、封印されたダークエルフは走り去ってしまった。

ダークエルフ(剣士)をやっつけた!

アリス「まさか、このような場所にダークエルフがいるとは」
アリス「いったい、なぜだ・・・?」

アリスの疑問にも僕は上の空だ。

アリス「理由を知っているみたいだな」

ルカ「うん」

上の空のままエンリカへと向かって足を進める。途中で魔物にであったが、先制からの攻撃ですぐに片付いた。

森の道筋も、何回も通っている為迷うことなくエンリカへとたどり着いた。僕は複雑な気分でその村へと入っていったのだった。

ルカ「・・・・・・」

エンリカは向こうと同じく、狭く慎ましやかな村で、雰囲気も同じだった。

アリス「なるほど、そういうことか。ダークエルフどもの事も含め、全て合点がいったぞ」

アリスは一人で納得したようだ。

村の奥から、一人の女性が歩み出てくる。
どこか普通とは異なる雰囲気の、不思議な人―――僕はその人を知っている。

ルカ「初めまして。ミカエラさん」

ミカエラ「何故・・・私の名前を」

ルカ「生きていてくれて・・・本当に良かった・・・」

僕は涙を流し、崩れ落ちる。

ミカエラ「大丈夫ですか?貴方は一体・・・」

そうミカエラさんが言い、僕に近寄った時だった。

ミカエラ「その指輪は・・・!もしかして、あなたは・・・ルカ?!」

ルカ「・・・はい!」

僕は涙ながらに肯定する。

ミカエラ「でもありえない。なぜルカが私のことを・・・?そしてなぜ涙を・・・?」

アリス「どういうことだ?貴様・・・」

アリスも僕を訝しんでいる。しかし僕は安堵の涙のせいでまともに喋れない。

ミカエラ「――――。仕方ありません。本当は好ましくないのですが・・・」

ミカエラさんはそういうと、僕たちを家に招いた。

ミカエラ「・・・・・・落ち着きましたか?ルカ」

ルカ「はい・・・ありがとうございます。お見苦しい所を・・・」

僕はようやく泣き止む。

アリス「貴様・・・いったいどういうことだ?」

ミカエラ「私も知りたいです。なぜあなたが私の名前を?覚えているはずなど―――」

するとアリスとミカエラさんが矢継ぎ早に質問を投げかけてきた。

ルカ「信じてもらえないかもしれませんが、それは――――」

僕はより詳細に向こうの世界であった事を述べていく。

ミカエラ「平行世界、ですか。・・・俄かには信じがたいですね」

アリス「余もここまで詳しい話は聞いていない」

ルカ「だって混乱するって言ってたじゃん」

アリス「それはそうだが・・・」

ミカエラ「ルカ、ちょっと額を」

ルカ「はい」

ミカエラ「いくら転職で勇者でなくとも、聖素循環の術式の痕は残っているはずです」
ミカエラ「それを確かめさせてください」

そういうとミカエラさんは僕の額に手を置く。すると―――

ミカエラ「!!確かに・・・これは・・・私の術式です」
ミカエラ「ルカ、あなたの言葉、疑いようが無くなりました」

ミカエラ「ルカ、そうするとあなた自身の生まれについても―――」

ミカエラさんはそこまで言うと、黙ってしまった。

ルカ「はい。僕の母さん、ルシフィナについても―――」

僕も同じく、そこまで話すと黙った。
アリスは敢えて僕たちの会話に首を挟まなかった。
暫くの間沈黙がその場を支配した。

ミカエラ「ルカ、あなたに力を貸してあげたいのは山々です。ですが、今力を貸すことはできません」
ミカエラ「あなたもその理由は―――」

ルカ「察しています」

この世界で人間と魔物の共存を目指して旅をする以上、どうしても敵対しなければならない相手がいる。
でも移動してきた僕でさえも、その相手には歯が立たない。
ましてや、今ミカエラさんと長期にわたって接触をしていれば―――

ミカエラ「ですが、何もできないというのも癪ですので」

ミカエラさんはそういうと僕のカスタムソードを取りだし、術式を込めた。
カスタムソード改に3属性が宿った!

ミカエラ「今の私に出来ることはここまでです」
ミカエラ「ルカ、どうかお元気で」

ルカ「ありがとうございます」

そういうと僕はアリスを連れて、村の外へ出た。

アリス「この村であったことに余は関知しない。そのほうがいいのだろう?」

ルカ「うん・・・。いつか、何時かはもう1度ここを訪れる事になると思う」

そう言って僕たちはイリアスポートへと足を運んだ。

僕が道中のモンスターを封印したときだった。

アリス「ふむ・・・どうやら刺突技が少ないようだな」

ルカ「一応レイピアの扱いもできるけど・・・この剣だと使いにくくて」

アリス「ならば今日の野営の時に1つ技を教えてやろう」

ルカ「ありがとう」

そして、その夜の野営―――

アリス「恐らく向こうの余から習っているはずだから、概要だけにしよう」

アリス「疾風の魔剣を使いこなしたという「血濡れのフェルナンデス」が得意とした、血裂雷鳴突き」
アリス「この技によって大地に撒かれた敵たちの血は、大きな湖になるほどだったとか」

アリス「どうだ?思い出したか?」

ルカ「うん――――」

僕はそう返事をすると、虚空に向かって血裂雷鳴突きを繰り出した。

アリス「やはり相当の回数を使い込んだ跡が見える。本当に嘘ではないようだな・・・」

アリス「もしかしたらだが・・・貴様は自分自身が自覚していない領域で、記憶が欠損しているのかもしれないな」

ルカ「・・・かもしれない」

僕には思い当たる節が1つあった。
ミカエラさんに会うまで、僕は自分自身を人間だと信じ込んでいた。
でも実際は―――人間と天使のハーフ。

ルカ(何か節目のことが起きないと、向こうで記憶していることが戻らない・・・ということなのかな?)

謎は深まるばかりだった。

こうして――――道を塞ぐ魔物を封印し歩きながら、僕たちはイリアスポートに到着した。

ルカ「やっぱり――――」

アリス「心当たりがあるのか。この活気の無さに・・・」

イリアスポートは向こうと同じように、随分と活気が無い。

その原因は海が荒れているせいで、海路が半ば封鎖されているからだ。
僕がそれをアリスに伝えると――――

アリス「ふむ、ああ、そうか」

ルカ「アリスにも心当たりがあるの?」

アリス「ん・・・まぁ、ちょっとな」

心当たりがありそうだ。
どうやら原因は別でも、起きている現象は変わらないようだ。

アリス「それにしても、これでは各地の名産品が楽しめんではないか・・・・・・」

アリスがそう頭を抱えた時だった。

???「手はあるわ!」

残念なラミアが現れた!

ルカ「僕を追って先回りしてたのか・・・」

アミラ「そうよ。ダーリンのためにお得な情報をゲット。いわば罪な情報屋」

確か向こうではアミラの職業は情報屋だったなぁ。と思い出す。

アミラ「私の集めた情報によれば――――」

ルカ「この町の西に洞窟があって、そこにはキャプテン・セレーネの財宝が眠ってるんだよね?」
ルカ「その中に「海神の鈴」っていう秘宝があって、それがあればどれだけ海が荒れていても沈まない ってやつでしょ?」

アミラ「・・・・・・確かにそうだけれど―――洞窟は東よ?」

ルカ「あぁ。勘違いしていたよ」

僕は努めて平静に答える。でも――――

ルカ(おかしい。僕の経験だと西側にあったはずなのに―――)

どうやら若干地理にも差があるようだ。
でもハーピーの集落の位置関係は同じだった。
この2つの差には何があるのだろうか。

アミラ「でも、その洞窟は――――」

ルカ「例によって魔物の巣窟になっているんでしょ?」

アミラ「流石ダーリン・・・」

アミラはビクンビクンと痙攣した。
どうやら変な性癖を目覚めさせてしまったようだ。

アミラ「それでは、私は潮風の中に去るわ」

そう言ってアミラはビクンビクンと痙攣しながら、地面を這って消えてしまった。

アリス「ルカ・・・責任を持てよ」

ルカ「嫌だよ」

僕たちはそう言いながら洞窟探検へと向かった。

ルカ「意外に距離があったんだな・・・」

アリス「貴様はあのラミアに西側にあると言ったな。しかしこの世界では東側だった」

ルカ「うん。どうやら若干地理が変わってるみたい・・・」

アリス「完全には向こうの世界の知識がアテにはならなんということになったな」

ルカ「でもそれくらいの方がいいよ。同じことの繰り返しはつまらないし・・・」

ルカ「よし!」

僕は迷いを振り払うように、久しぶりに剣の基礎鍛錬に時間を割いた。


アリス「ルカ、この言葉を知っているか?」
アリス「その動きに風を宿し、その身に土を宿し――――」

ルカ・アリス「その心に水を宿し、その技に火を宿す―――」

アリス「向こうの余が言っていたようだな」

ルカ「うん。それで思い出した。精神鍛錬も久々にしなきゃ・・・」

そう言って僕は瞑想をしだす。

アリス「堕天使エリゴーラは、己の瞑想でたちどころに傷を癒したという」

ルカは静かに瞑想をする。
ルカのHPが600回復した!

ルカ「そうだ・・・瞑想すればある程度傷を治せるんだった」

アリス「なにそれ、こわっ。貴様、どういう体をしているのだ?」

僕は目を逸らす。
堕天使が瞑想すれば体力が回復するのなら――――
天使の血を引く僕も回復できるのは道理だからだ。


そして翌朝、僕たちは秘宝の洞窟に到着し、その中に足を踏み入れたのである。

アリス「む・・・やけに狐の臭いがするな」

洞窟に踏む込むなり、アリスは鼻を鳴らして言った。

ルカ「それは・・・そうでしょ。記憶だと「海神の鈴」を守っているのは7尾だし」

アリス「なるほど・・・」

そう言いながら、道中の狐娘や、蜘蛛娘、ミミック娘を封印し歩いて最深部へと向かった。


ルカ「ん・・・?あいつは・・・」

扉の前に立ちはだかる狐は尾が7本。記憶通りだ。ならば―――

ルカ「ここが、最深部か」

7尾「その通りです。ここから先は宝物庫、ゆえに通すわけにはいきません」
7尾「引き返すならよし、それでも進むというのなら―――」

以前は一方的にやられていた。でも今は違う。

ルカ「あぁ。力づくでも進んで見せる!」

7尾「分かりました。たまも様の側近、7尾の力を見せて差し上げましょう!」

僕は利き手にエンジェルハイロウを、もう片方にカスタムソードを握った。
油断や手加減はできない。あの時は戦ったけど、今は1人なのだから―――!

ルカ「はぁぁぁぁぁっ・・・・・・!」

ルカは闇の気を練った!

ルカの攻撃力と会心率が上昇した!

7尾の攻撃!

ルカは320のダメージを受けた!

ルカ「やぁっ!」

ルカの反撃!

会心の1撃!
7尾に600のダメージを与えた!

ルカ「行くぞ、はぁぁぁっ!」

ルカは刃の雨を降らせた!

会心の1撃!7尾に1100のダメージ!
会心の1撃!7尾に1210のダメージ!
会心の1撃!7尾に1050のダメージ!
会心の1撃!7尾に1230のダメージ!
会心の1撃!7尾に1110のダメージ!

7尾の攻撃!ルカは340のダメージを受けた!

ルカ「ていっ!」

ルカの反撃!

会心の1撃!
7尾に550のダメージを与えた!

ルカ「拳と刃だ!ミックスゲイツ!」

ルカは斬撃と格闘技を同時に繰り出した!

会心の1撃!7尾に2050のダメージ!
会心の1撃!7尾に2150のダメージ!

7尾「つ・・・強い!ならばこれでどうです!?」

7尾は魔力を込めた瞳でルカを睨んだ!

ルカ「ぐ・・・!しまった!」

ルカ「・・・・・・ぐぅ・・・・・」

ルカは眠ってしまった!

7尾の攻撃!

しかし、ルカはひらりとかわした!

7尾「なんですって?!」

ルカ「アリス・・・もう少しお行儀よく・・・」

ルカはぐっすりと眠っている!

7尾「今のは・・・偶然?!」

7尾の攻撃!

しかし、ルカはひらりとかわした!

ルカはぐっすりと眠っている!

7尾「まさか・・・私を愚弄しているのですか!?」
7尾「いや・・・間違いなく眠っているはず・・・」

ルカ「ZZZ・・・それ、いっくぞー!」

ルカは踊るような剣技を繰り出した!

7尾に400のダメージ!
7尾に380のダメージ!
7尾に420のダメージ!
会心の1撃!7尾に860のダメージ!
7尾に360のダメージ!
会心の1撃!7尾に900のダメージ!
7尾に400のダメージ!
7尾に390のダメージ!
会心の1撃!7尾に850のダメージ!

7尾「ぐ・・・ば、馬鹿な!」
7尾「更に凶悪になっている!」

7尾「ならば・・・これはどうです?!」

7尾の攻撃!

しかし、ルカはひらりとかわした!

7尾「こ、これは一体?!」

ルカはぐっすりと眠っている!

ルカ「父さん・・・待ってよ・・・」

ルカは魔力を凝縮させた!

7尾に2100のダメージ!

7尾「こ、この魔力は一体・・・?」
7尾「こうなれば、全力で葬るのみ!

7尾は魔力を集中した!

7尾「受けなさい、私の奥義を!」

7尾の攻撃!

ルカ「むにゃ・・・ダメだよぉ・・・」

ルカの反撃!

眩しい星は冥府に落ちる!

7尾に2300のダメージ!
7尾に2400のダメージ!
会心の1撃!7尾に4700のダメージ!

7尾「ま、まさか・・・こんな・・・」

7尾は狐の姿になった!

7尾をやっつけた!

ルカ「ん・・・僕は・・・寝ていたのか」
ルカ「そうだ!眠らされてそれから――――」

7尾「・・・・・・」

目の前には大きな狐が座っている。これは7尾の封印された姿?
これは一体・・・?

アリス「ルカ・・・貴様そんな力まで持っていたのか」
アリス「とはいえ眠っていたから覚えてはいないか」

ルカ「アリス・・・いったい何が・・・?」

アリス「眠っているときの方が強いとは・・・末恐ろしい奴め」

アリスの話によれば僕は眠ったまま7尾を倒したらしい。
でも・・・向こうの世界で、僕は眠ったまま戦闘をしたことなんてない。
ましてや4人1組でパーティを組んでいたのだ。仲間が知らないはずはない。

ルカ「と、ともかく・・・先に進もう!」

そう言った途端、宝物庫の扉が開き―――
そして、1人の少女が姿を現した。

ルカ(一件幼く見えるけど――――!)
その尾の数は9本。7尾より遥かに格上だ。

ルカ「あ、あいつは――――」

アリス「奴こそが、魔王軍四天王の1人、たまも。グランベリアと同じく、最上位魔族だ」

ルカ「なんだって――――!」

たまも「すまんのう、お主たち。ウチがさきさき進んでしまったばっかりに―――」

たまもは、狐の頭を撫で――――

たまも「少しばかり、ウチの魔力を分け与えてやろう」

ルカ(―――――――!)

僕は再び大きな衝撃を受けた。
同じなのだ。向こうの世界で「海神の鈴」を取りに行ったときと、たまもの言動が全く一緒なのだ!

ルカ(確かこの後向こうの世界では―――!)

アリスフィーズ17世が

アリスフィーズ17世「このたまもは、別の並行世界のコピー。平行世界での行動を、忠実になぞっているに過ぎない」

と言っていた!

ルカ(つまり・・・僕の考えに間違いが無ければ・・・あのたまもは、この世界のたまもを持ってきた?!)

僕は内心パニックになる。
じっくりと考える時間が欲しいけど――――

たまも「かわいいのうー♪ ウチの情夫にしてやってもいいぞ♪」

ルカ「・・・・・・」

余りの唐突な事態に頭の回転が追い付かない。
僕はぽかんとしてしまう。

たまも「ふふっ・・・うい奴よのう。寝床の上で、存分に可愛がってやりたいのう」

視線を下におろすと――――
たまもはその手に鈴のようなものをぶら下げていた。
いかにも古そうな鈴だ。僕はその鈴に見覚えがある。

ルカ「「海神の鈴」―――」

たまも「如何にも。これが「海神の鈴」じゃ」
たまも「セントラル大陸に渡られるのは面倒らしいから、もらっていくぞ」

たまも「正直、ウチはどうでもいいのじゃが・・・アルマエルマがうるさくてのぅ」

ルカ「アルマエルマ・・・確か四天王の一人・・・」

アリス「そして風を起こして航路を封鎖している張本人だ」

たまも「そういうわけで・・・・・・この鈴が欲しければ、どうするか分かっていような?」

ルカ(倒して奪えってことだろう?)

僕はそう言いたかったが、今の時点では実力差がありすぎる。

アリス「賢明な判断だな。少なくとも今の時点ではかなう相手ではない」

僕は渋い顔をする。
そんな様子を見て、たまもはにっぱりと笑う。

たまも「およおよ・・・魔王様は、その人間が随分とお気に入りのようじゃの」

たまもがアリスの事を「魔王様」と言ったけど、とっくに知っていることなので驚きもしなかった。

たまも「・・・・・・その様子だと既に知っておるようじゃの」
たまも「ともかく、「海神の鈴」はウチが頂いていくぞ・・・・・・ん?」

たまもの背後で、妖狐がくいくいとたまもの袖を引っ張る。
あの妖狐は確か・・・蜘蛛娘に食べられそうなところを、僕が救った狐だった。

たまも「なんじゃ・・・?ふむ、ふむふむ・・・」
たまも「・・・・・・そうか。あのルカに命を救ってもらったのか」

たまも「それでは狐族の長として、礼をせねばならんのう」

たまもはちょこちょこと僕の前に立ち、にっぱりと笑う。

たまも「礼として、何が欲しいかのう?」

ルカ「「海神の鈴」をください」

僕は間髪入れずにそう答える。

たまも「なんと、そう来たか・・・」

そうは言いつつ、予想通りといった顔だ。

たまも「しゃあないのう、ほれ」

そして、あっさりと「海神の鈴」を渡してきたのである。

「海神の鈴」を手に入れた!

ルカ「でも、いいのか?こんなにあっさり渡しても・・・」

たまも「別にウチは、正直どうでもいいからのう」
たまも「この洞窟の罠がアスレチックみたいで楽しかったから、つい奥まで入ってしまっただけじゃ」

ルカ「おいおい・・・まぁいいか」

とりあえず「海神の鈴」が手に入ったので良しとしよう。

たまも「さて、どうする・・・ルカ?」
たまも「ついでに、ウチを退治してみるか・・・?」

無数の尻尾をぱたぱたと振りながら、たまもはそう言った。

ルカ「やめておくよ。今のままじゃ勝てる気がしないし――――」
ルカ「この世界で僕が倒すのは、人と魔物が共存する世界の障害となるやつだけだ」

たまも「ちと引っかかる言葉があるが・・・殊勝な心がけよ。しかし、いつかは戦うことになろう」

たまも「なにせウチは、魔王軍四天王の一人じゃからのう」

ルカ「・・・・・・その時は、その時だよ」

少なくとも今は戦う理由などないはずだ。

たまも「では、さらばじゃ」

妖狐と7尾ともども、たまもはその場から消えてしまった。

ルカ「とりあえず・・・イリアスポートに戻ろうか」

アリス「そうだな・・・。貴様、途中で顔が真っ青になっていたが――――」

ルカ「僕も混乱してる。だから敢えて考えてない」

アリス「そうか・・・貴様が混乱するほどだ、余では全く分からんだろう」

ルカ「うん・・・」

こうして僕たちは、財宝を回収しつつイリアスポートへと戻った。
早速港へ行って、船を出してもらうとするか。
暇そうな船乗りたちが、生活の糧とすべく魚釣りをしているようだ。

交渉するなら、なるべく偉そうな人がいい――――
そういうわけで、船長らしき身なりの男性に声をかけた。

ルカ「あの・・・船を出してほしいんですけど」

船長「あん?冗談いうな、若いの。ここを出た船が、どうなるか知ってるだろ?」

ルカ「それがですね、この「海神の鈴」を吊るしておけば大丈夫なんですよ」

船長「・・・・・・寝言は寝て言え。こんな汚い鈴で、嵐が避けられたら苦労はしないぜ」

船長は全く取り合ってくれないようだ。

ルカ「実際に、試してみればわかるんですよ。どうか、騙されたと思って船を―――」

船長「おととい来な。ガキの戯言に付き合ってられる程暇じゃねぇよ・・・・・・暇だけど」

やはり、全く聞く耳を持ってくれないようだ。
さて、どうしたものか――――

アリス「どいてろ、ルカ」

不意にアリスは、船長の前に進み出た。

アリス「―――余の意に従え」

不意に、アリスの目が光る。
すると船長は、たちまちびしりと姿勢を正した。

船長「はい!なんなりとご命令を!」

アリス「我々をセントラ大陸に乗せていけ。直ぐに準備をしろ。終わり次第、出港だ」

船長「了解しました!ただちに!」

―――――こうして僕等は、セントら大陸行きの船に乗れたのだ。

そして、船上で過ごす夜。

アリス「ふむ・・・この地形なら、あれを教えられそうだ」

ルカ「技名は・・・?」

アリス「天魔頭蓋斬だ。これは「翼を持った死神」と恐れられたハーピー、デスレイアが好んだ技だ」

アリス「三百人もの頭蓋が、この技で叩き割られ、大地に脳漿が撒かれたのだという」

ルカ「えっと・・・こうだったかな」

ルカは空高く飛び上がると、剣を振り下ろした!

ルカ「うん。こうだ。思い出した」

僕が技を取り戻した感触を味わっていると・・・

ルカ「アリス?もう見慣れたはずじゃ・・・?」

アリスが茫然とした目つきで僕を見ていた。
技を聞いただけで、すぐに出来るようになるなんて見慣れているはずなのに―――

アリス「貴様・・・今5メートル以上飛び上がらなかったか?」

ルカ「え・・・?うん。竜騎士の経験を活かしただけだけど・・・」

アリス「最早何でもアリだな」

アリスは呆れたようにため息をついた。

アリス「ところで・・・ルカ。その指輪を見せてくれないか」

ルカ「この指輪の正体のこと?」

アリス「うむ。この指輪から感じる残留思念も―――」

ルカ「恐らくこの指輪は拘束魔術みたいなのが組まれてると思う」

僕は思ったことを話し始める。

アリス「その根拠は?」

ルカ「エンリカでミカエラさんが僕に向かって、僕の出自についても~って言ってたでしょ?」

アリス「うむ。余には何のことだかよく分からなかったが・・・」

ルカ「伏せた部分を話すと、僕は人間じゃないって事なんだよ」

アリス「はぁ!?貴様、どこからどう見ても人間だろう!人間離れしてるけど!」

ルカ「うん。見た目は、ね。こういえば分かるかな。ミカエラさんと僕の母さん、ルシフィナは――――姉妹なんだよ」

アリス「!! 確か貴様の父親は――――」

ルカ「人間だよ。だから僕は――――天使と人間のハーフなんだ」

アリス「なるほど・・・だからエンジェルハイロウでなくとも、7尾を封印できた。というわけか」

ルカ「うん。だから母さんはこの世界の僕に、天使としての力が目覚めないようにこの指輪を渡したと思うんだ」

アリス「なら何故眠らされている時だけは、その力が使えるんだ?」

ルカ「さぁ・・・?」

そこだけは一向に分からなかった。

会話が終わったその時、不意に海が荒れ狂い始めたのだ。

ルカ(お願いです。熾天使と大淫魔の戦いだけは起きないでください!)

人知れず僕は祈った。
その時―――一筋のつむじ風が船上を吹き飛ばした。

ルカ「うわっ・・・なんだ?」

その風が過ぎた後―――― 一人の美しい妖魔が立っていた!


アルマエルマが現れた!

ルカ「お前は――――」

四天王の一人、アルマエルマ―――

アルマエルマ「なるほど・・・あなたが、例の人間ね」
アルマエルマ「ふふっ・・・アリスフィーズ様が気に入られるだけあって・・・美味しそう・・・」

ぺろり・・・と、アルマエルマは舌なめずりをする。
そして、アリスの方に視線をやった。

アルマエルマ「アリスフィーズ様、魔物を傷つける勇者は、退治していいというご命令でしたが―――」

アルマエルマ「そのご命令、確かに遂行してよろしいのでしょうか?」

アリス「例外は無い。余はあくまで、この・・・人間・・・を観察しているだけだ」

遂に人間と発言するのを言いよどまれてしまった。

アルマエルマ「分かりました。そういうことよ・・・ルカちゃん」
アルマエルマ「この海域は、通してあげないわ」

ルカ「ならば押し通る!」

アルマエルマ「ふふっ・・・勇気溢れる、若い冒険者・・・いいわぁ」

アリス「アルマエルマ。1つ忠告しておく。こいつを舐めてかかると・・・痛い目を見るぞ」

アルマエルマ「は~い・・・なら・・・尻尾だけで遊んであげる」
アルマエルマ「せいぜいもがき抜いて、私を愉しませてね・・・」

アルマエルマ「じゃぁ・・・行くわよぉ」

どうやらアルマエルマは完全に油断しているようだ。
ふと、アリスの方に目をやれば、呆れたようにため息をついている。
この溜息は僕に対してではなく―――アルマエルマに対するものだろう。

ルカ(でも今本気で闘われたら、恐らく勝ち目はない)
ルカ(なら―――)

ルカは天高く飛翔した!

アルマエルマ「ちょっと・・・生身で5メートル以上飛び上がれるの?!」

アルマエルマは驚いている!

ルカ(舐められっぱなしは性に合わない!)

僕は更に船のマストを蹴り上げ、合計で12メートル近く飛び上がる。

そして―――――

ルカ(もしかしたら使えるかもしれない)

ふとした思い付きで、僕は魔法を詠唱すると、さらに重力を味方に受けることに成功した。

ルカは250のダメージを受けた!

ルカ「これでどうだ!天魔頭蓋斬!」

ルカはその高さから、頭上への一撃を繰り出した!

アルマエルマ「嘘ぉ!?」

アルマエルマは刃を両掌で挟んで受け止める!
しかし通常の倍の高さからの攻撃に加え、重力がルカの味方についている!威力の方が大きい!
エンジェルハイロウはアルマエルマの白刃取りを貫通して、その頭上に―――

アルマエルマに2400のダメージ!

アルマエルマは船の甲板に頭が突き刺さった状態になった。
威力こそ軽減されたが、すごいエネルギーだ。

アルマエルマ「痛たた・・・私の負けね♪」

アルマエルマは甲板から頭を引き抜きつつ、そう言った。

アルマエルマ「尻尾だけで遊んであげるつもりが・・・手を使ったあげく、地面に叩き付けられるなんて」

アルマエルマ「そういうことだったのねぇ。甘く見ると痛い目を見るって・・・」

アルマエルマはアリスに視線を送る。

アルマエルマ「今回は私の負け。でも・・・次に会ったときは、本気で相手をしてあげるわ♪」

アルマエルマは人差し指を立て、それをれろり・・・と舐め上げる。

アルマエルマ「じゃあ・・・楽しみにしていてね♪」

船上に、またも一筋のつむじ風が吹き――――
アルマエルマは一瞬で姿を消してしまった。

アルマエルマを追い払った!

アリス「貴様・・・あそこまでする必要あったか?」

アリス「落下速度も異常だったし・・・まさか・・・」

ルカ「舐められっぱなしは性に合わないっていうか・・・」

僕たちがそう言いあっていた同じころ、魔王城―――


アルマエルマ「ただいま~♪ルカちゃんに、ボッコボコにやられて帰って来ちゃいました♪」

グランベリア「・・・その頭にある木くずを見れば、そうだと分かる」
グランベリア「どうせ貴様のことだ、舐めてかかったのだろう?」

たまも「でも、あのルカとかいうのは結構な素質を持っているようじゃ」
たまも「秘めたる潜在能力は、とてつもないと見たぞ」

アルマエルマ「うんうん。あれはきっと、とぉっても強くなるわよ♪」

グランベリア「貴様たちがそう言うなら、もう一度確かめてみるとするか・・・」

アルマエルマ「どこ行くの、グランベリアちゃん?」

グランベリア「知れた事よ。あらためて、腕を試す」

アルマエルマ「・・・行っちゃった。グランベリアちゃんも、気に入ってるみたいね」

たまも「厄介者の芽は、早いうちに摘む・・・のとは全く違うようじゃのう」

アルマエルマ「そう言えば、ベルベティちゃんは?」

たまも「ウンディーネの洞窟に籠りっきりじゃ。故郷の水が、性に合うのじゃろうな」

たまも「・・・・・・ウチも、ちょっと里帰りしていいかのう?」

アルマエルマ「グランベリアちゃんも、私情で闘いに行っちゃったし・・・」
アルマエルマ「みんな、四天王の自覚に欠けるんじゃないかしら・・・?」

たまも「それは、お主もじゃろう?」

アルマエルマ「あははっ♪」

ネカフェからの大型更新でした。

このあたりから雑魚戦を書かなくなりました。

理由として、「○○が現れた! ルカは先手を取った! ルカの攻撃! ○○を倒した!」 という流れだからです。

それに、ぱら・くえ双方を既プレイ済みを前提としてますので、労力短縮も含めています。

あと、先頭システムに手を加えるようになりました。

天魔頭蓋斬で跳躍中に、ルカは自分自身にグラビティをかけています。

回線の復帰には後最低でも1週間、遅くて2週間はかかりそうです。

現在の執筆状況は、「シルフ戦」までです。

ぱら世界では4対1でフルボッコにされたシルフですが、こっちの世界では時魔法解禁だからね・・・

可愛そうな事になります。

それでは

い・・・いえない。未だに死神が倒せず、悪戦苦闘しているなんて・・・

一撃で屠る奥義を教えてください。なんでもしま!

ちいぱっぱに関しては中章で出す予定です。予定ですけど・・・

お久しぶりです。

食中毒やら転職やらでリアルがバタバタしています。

更新はもう少し待ってください・・・

そして―――
アルマエルマ襲撃の翌日、僕たちの乗った船はナタリアポートに到着した。

アリス「ふむ・・・ここはイリアスポートとは違い、中々活気があるな」

ルカ「地理的にイリアス大陸との貿易が途絶えても、死活問題にならないからね」

大通りには数々の店が並び、旅人がワイワイと行き交っている。
そして―――

ルカ「やっぱり・・・マーメイドだ」

町のあちこちにマーメイドの姿がある。

ルカ「ようやく―――向こうと同じ感じの町に来れた」

人と魔物が共存している町。ようやく見慣れた光景に出合えた。

アリス「ところで、これからどうするのだ?」

ルカ「とりあえず、ここから西にあるサン・イリア城に向かうよ」
ルカ「向こうと違って、ここでは問題は起きてないし」

アリス「料理が不味くなければいい」

やれやれ、やっぱり食い物の事か・・・
毎日僕が腕を振るっているせいで、ハードルは相応に高いと思う。
などと、呆れていた時のことだった。

マーメイド「あの・・・すみません。旅のお方、ちょっとよろしいでしょうか?」

ルカ「はい・・・なんでしょうか?」

僕はそう答えつつ、安堵する。
どうやらこの世界のメイアさんは、正気のようだ。

マーメイド「腕に覚えのある冒険者とお見受けし、お願いがあるのです」

メイアさんがそう切り出した瞬間だった。











ドォォォォン!!









「きゃぁっ!」

凄まじい衝撃が周囲を揺るがし、あたりは騒然となる。
向こうの広場にあった建物が、何の前触れもなく爆発したのだ。

ルカ(まさか――――別の問題が起きている!?)

僕がそう警戒を強めた時だった。

マーメイド「あの建物は・・・人魚の学校!?た、大変!」

血相を変え、メイアさんは爆発のあった建物の方に駆けていく。
ナタリアポートの住民たちも、爆発した建物へと集まり始めた。

アリス「火薬の臭い・・・爆弾によるものだな」
アリス「向こうではこういうことは起きていたのか?」

アリスの質問に僕は頭を振った。

倒壊した建物から、大勢のマーメイドが這い出してきた。
駆けつけてきた兵士たちが瓦礫を押しのけ、負傷者の救出が始まる。

僕達は人ごみに紛れながら、救出作戦を見守るのみだった。
漏れる声からして、幸いにも死者はでなかったようだ。

僕がほっと胸を撫で下ろした、その時だった―――
―――見慣れた顔が、群衆の中に混じっていたのだ。

ルカ「ラザロさん・・・?」

アリス「・・・どうした?ルカ・・・?」

ラザロさんは、そのまま群衆の中に紛れてしまった。
まさかとは思うけどあの爆発は――――

アリス「・・・・・・どうした、ルカ。汗だらけだぞ」

ルカ「一瞬知り合い居たんだけど・・・見失った」

アリス「あの薄汚く下品そうな男か」

ルカ「うん・・・向こうの世界では、ね。父さんの親友なんだけど・・・」

ルカ「・・・・・・旅を続けよう、アリス」

アリス「そんな状態で旅ができるか。気になって仕方ないのだろう」
アリス「あの安宿でしばらく休むぞ」

ルカ「うん・・・」

僕たちはこうして、安宿にチェックインした。

アリス「あの下品そうな男は何者なのだ?」

ルカ「あの人は・・・ラザロさん。父さんの親友・・・向こうの世界ではね」
ルカ「今まで向こうの世界との差異に驚いていたけど、この事以上に大きな差異はほとんど無いよ」

向こうの世界でもサン・イリア王の暗殺の下手人っていう濡れ衣はあるけど・・・僕は言おうとした言葉を飲み込んだ。

ルカ「本来のこの世界の僕の記憶があれば分かりそうなんだけど・・・」

アリス「・・・そういえば、貴様は日記をつけていたな。それを読み直せばいいのではないか?」

アリスがもっともらしい提案をする。僕も僕自身の日記をざっとしか読めていないのだ。

ルカ「でも―――そうすると、イリアスヴィルに戻らなきゃいけなくなるよ?」

アリス「分からないことを放置し続ける方が問題だろう。急ぐ旅ではないのだ」
アリス「冒険にひと段落ついたら、イリアスヴィルに戻って読めばよかろう」

ルカ「そうだね・・・」

旅の方針を決めた時だった。

アリス「ところで、話は変わるが・・・余は腹が減った」

ルカ「えっ・・・うわっ!」

アリスは唐突に、僕の体を尻尾で巻き上げてきた。余りの唐突さに反応すらできない。

アリス「少し、腹ごしらえをさせてもらうぞ・・・」

ルカ「お手やわらかに・・・」

ここまで巻き上げられたら、流石に振りほどけない。僕は早々に諦めた。




































「あひぃぃぃっ!」


































翌日僕たちは、道中の敵を封印しつつサン・イリア城に向かって旅を続けた。

特に苦労することもなくサン・イリアに着いた僕たちは情報収集をすることにした。
どうしても知りたいことがあったのだ。

アリスに手ごろな駄賃を持たせて露店外へと誘導すると、僕は町の人達に聞き込みを行った。

聞きたい情報は――――ラダイト村。

向こうの世界では最終的にはリリス3姉妹によって滅ぼされた村。
まずはその存在そのものを確かめたかったのだ。

しかし聞き込んでもラダイト村に関しては皆「存在しない」という回答だった。
隠蔽しているわけでもなく、本当に知らないような口ぶりだったのだ。
リリス3姉妹の言っていた「歴史」という言葉が引っかかるが、今は何の確証もなかった。

そうなると並行的に、法皇様のことも気になるので、アリスを呼び戻すと大聖堂の門の前に立つ。
あたりには、王への謁見を希望していると思われる冒険者たちが暇そうにしていた。

衛兵A「む、お主も王への謁見を希望か。謁見許可の申請書に―――」

僕は手続きを終えた後、退屈そうなアリスを引き連れて城内へと入っていった。

ルカ「休むところまで行って、それからいろいろ考えよう」

そう僕が言いながら移動していたその時だった。

衛兵隊長「おい、ルカ殿はいるか!?さっき、王に謁見を申し込んだルカ殿だ!」

ルカ「はい・・・ここにいますが」

僕は隊長の前に進み出る。

衛兵隊長「お主か。これより至急、王が謁見なさる。ただちに来られるがいい」

ルカ「はい・・・」

サン・イリア王は暇ではないはずだ。なら何故――――

疑問を持ちつつも、僕は王の間へと慌ただしく招かれたのだった。
その背に不機嫌そうなアリスを引き連れて―――

ルカ(違和感を感じるところは―――――ない)

玉座に座っているサン・イリア王に違和感はない。
どうやら爆弾によるテロ自体が起きていないようだ。

衛兵隊長「お連れしました」

サン・イリア王「ふむ、では下がるがよい。この者に内密の話があるのだ」

サン・イリア王は早々に衛兵隊長を下がらせた。

ルカ(それにしても内密の話って一体―――)

サン・イリア王「ルカと名乗る旅の者よ・・・。ひとつ、無礼な質問を許してもらいたい」

ルカ「はい・・・」

サン・イリア王「お主・・・洗礼を受けていない、ということはないか?」

僕は一瞬迷った。
この世界では洗礼は受けていない。でも――――
向こうの世界のミカエラさんが、最後の力を振り絞って洗礼をしてくれている。

ルカ(でも・・・きっとこの世界限定のことだよな)

ルカ「はい・・・僕は洗礼を受けていません」

するとサン・イリア王はかっと目を見開き――――

サン・イリア王「おお!やはりお主こそが、イリアス様のお告げにあった通りの・・・!」

ルカ「・・・え?」

茫然とする僕を尻目に、サン・イリア王は語りだした。

どうやら、僕が来ることをイリアス様はサン・イリア王に告げたそうだ。
「魔王を倒すもの」として――――

サン・イリア王「では祝福なき勇者よ、道を示そうぞ!」

サン・イリア王「このセントラ大陸に住む、三人の賢者を訪ねよ!」
サン・イリア王「そして彼等に己が力を示し、それぞれの証を授かってくるのだ!」

サン・イリア王「三賢者に認められた者にのみ、私はこれを授けよう!」
王の玉座の隣には、いかにも立派そうな剣がおいてあった。でも―――

ルカ(あの剣・・・ただ立派なだけのガラクタだ・・・)

装飾品としては立派なものだが、武器としてみれば見た瞬間に分かるほどの駄作。魔力も何も込められていない。
アリスもそれを察したようだ。

アリス「下らん茶番だ、付き合っていられるか」

アリスはおもむろに、その剣の前に歩み出ると――――剣を掴みあげた。
その瞬間、剣は粉々に砕け散ってしまった!

サン・イリア王「な、なんと―――!」

サン・イリア王は顔面蒼白になり、ガタガタと震えはじめ、目は虚空を向いている。

アリス「この後は四精霊の地を訪れ、彼女たちの力を借りるがいい」

僕は黙って頷く。

その時だった。サン・イリア王が錯乱し始めたのだ。

衛兵隊長「お、王・・・どうなされたのですか!?」
衛兵隊長「こっ、これは!「女神の宝剣」が粉々に!?」

王の間に飛び込んできた衛兵隊長は、たちまち血相を変えた。

衛兵隊長「ル、ルカ殿・・・これは・・・!?」

ルカ「これは――――魔王が突如現れて、剣を砕いたんです」

嘘は言っていない。

たちまち城内は大騒ぎとなってしまう。
どさくさに紛れて、僕とアリスは王の間を後にしたのだった。

城内が大パニックに陥った居たその時―――

「大変だ、魔族の襲撃だ!!攻めてきたのは―――魔王軍四天王のグランベリア―――!」

そう言い残し、衛兵は昏倒した。

ルカ「まさか――――!」

僕の目の前に現れたのはグランベリアだった。

ルカ「いったい、ここに何をしに来た!?」

僕は剣を抜き、グランベリアの前に立ちふさがる。

グランベリア「貴様と再戦しにきた」
グランベリア「他の四天王が楽しそうにしていたのでな・・・」

どうやらグランベリアは僕が考えている以上に好戦的な性格らしい。

グランベリア「いざ、尋常に勝負!」

ルカ「来い!」

口八丁でその場を逃れることを早々に諦める。
僕は二刀流スタイルに切り替えた。加減なんてできる相手じゃない―――

グランベリア「ほぅ・・・二刀流か。様になっている。どうやらハッタリではなさそうだな」

ルカ「それだけじゃないよ・・・!」

ルカはクイックを唱えた!

グランベリア「馬鹿な!時魔法による生体時間の加速だと!?」
グランベリア「時魔法を使える術者は人魔合わせても片手で――――!」

この世界で1つ、向こうの世界とは完全に異なる点に気が付いた。
それは――――物理職でも黒魔法、白魔法、時魔法が使えるということだ。
アルマエルマ戦は、そのための試金石だった。

グランベリア「時魔法による補助、どれほどのものか・・・行くぞ!」

グランベリアは、上段から斬撃を放った!

しかしルカはこれをひらりとかわした!

ルカ「はぁあああっ・・・!」

ルカは闇の気を練った!

グランベリア「させるか!」

グランベリアは周囲を薙ぎ払う!

ルカ「ぐぅ・・・っ!」

ルカは140のダメージを受けた!

ルカ(生体時間を加速しても、気を練りながらの回避は無理か・・・!)
ルカ(でも、これで準備は整った!)

ルカ「受けよ、剣と拳の雨あられ!クレイジータイム!」

ルカは剣と拳を同時に振るった!

会心の一撃!グランベリアに1100のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに1050のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに1070のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに1120のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに1030のダメージ!
会心の一撃!グランベリアに1010のダメージ!

グランベリア「ぐあっ・・・!」

流石のグランベリアも加速状態からの6連撃は対応できなかったようだ。
その表情には痛みと愉悦が混じっている。

グランベリア「これならどうだ!」

グランベリアは電光のような突きを放つ!

ルカ「ぐっ・・・!」

ルカ(時魔法で時間加速しても避けきれない!)

ルカに350のダメージ!

ルカ「てやっ!」

ルカの反撃!

会心の一撃!グランベリアに500のダメージ!

ルカ「行くぞ、はぁぁぁっ!」

ルカは氷の拳で、雹を巻き起こした!

会心の一撃!グランベリアに2300のダメージ!

グランベリア「魔法による氷属性の打撃・・・!これほどとは!」

グランベリア「ならば、これでどうだ!」

グランベリアは無数の斬撃を繰り出した!

ルカはひらりとかわした!
ルカに400のダメージ!
ルカに430のダメージ!
ルカはひらりとかわした!
ルカはひらりとかわした!

ルカ(全部は避けきれなかった・・・!)

でも戦闘不能にはなってない!

ルカ「これでどうだ!天魔頭蓋斬!」

ルカは天高く飛翔し、天井を蹴ると、グランベリアの頭上へと一撃を繰り出した!

グランベリア「ぐおおお・・・っ!」

グランベリアは剣でガードするも、その威力に膝をつく!
僕はガードされた反動で空中を一回転し着地すると、グランベリアに向き直った!

ルカ(クイックを解除して、この瞬間だけはグラビティに切り替えたほうが良かったかも・・・)

グランベリア「・・・なんという威力だ。腕が痺れている・・・」

グランベリア「面白い、面白いぞ!更に時間を置けば、全力を出して戦いうる敵になる!」

ルカ(やはり加減していた―――!)

分かり切っていたことではあるけど、グランベリアはまだ加減していたようだ。

グランベリア「その命、しばし預けておこう」

グランベリアは剣を置く。

グランベリア「次の時は本気で行くぞ」

そう言い残して、グランベリアは消えてしまった。
嵐の様に現れ、嵐の様に去って行ったのだ―――

グランベリアを追い払った!

短いけどここまで。

このルカさんは聡明です。

ちょっと変わった2周目というのは熱意よりも「何が変わったか」という謎解き要素の方が強いと思います。

故に熱血系原作ルカさんとは違い、冷静かつ聡明なルカさんが主人公というわけです。


~次回予告っぽいの~


精霊の本を求めて図書館に来た僕たち。

確か図書館にも魔物は出たし・・・出る前提で行った方がいいよね。

本の魔物は火に弱い。平和的に本が手に入りそうだ。

言い方アレだけど、ぱら次元で世界消滅とか見ちゃった後でくえ前章の事件程度で冷静になるなという方が厳しい気が

乙。

ぱらルカさんは前章終了時点でもミカエラさんとかラクロワさんとの出会いと別れ体験して色々成長したり覚悟してるし
くえルカさんに比べて聡明な感じでもほぼ違和感ない。

ルカ「ふぅ・・・」

僕はため息をつく。
確かに継続戦闘能力は残っているけど、体力は結構ギリギリだった。
更に言えば、裏練気で作り上げた攻撃力も、さっきの天魔頭蓋斬で打ち止めだった。

アリス「グランベリアは楽しいのだろうな。己の全力を出しうる敵が現れることに」

アリスが感慨深そうにそう呟いた。

暫くするとグランベリアに一蹴された兵士たちが、意識を取り戻した。
みな命に別状はないようだ。

ルカ「とりあえず・・・四精霊と契約しなくちゃいけないから、地下の大図書館で本でも探そうか」

アリス「唐突だな」

ルカ「うん。あのまま戦い続けていたら、僕は確実に負けていたし・・・強くならなきゃ」

向こうの世界での精霊は使い勝手が悪かったけど―――
此方もそうであるという確証はないし、弱くなるわけでもないのだ。

アリス「それと図書館で本を探すのと、どう関係がある?」

ルカ「向こうの世界では、父さんがわざわざ『四精霊信仰とその源流』って本を、僕に読ませるように仕向けていたから・・・」

ルカ「この世界でもその本を手に入れなきゃいけない気がするんだ」
ルカ「とりあえず、地下の大図書館に入れてもらえるように交渉するよ」

僕は怪我人救護などの指示を出していた衛兵隊長に、地下の大図書館の入室許可を求めた。
グランベリアを追い払った事により、かなり待遇が良くなっていたようで、二つ返事で許可が下りた。

ルカ「相変わらず広いなぁ・・・」

アリス「本のある場所に心当たりはあるのか?」

ルカ「うん。どこにあるかも覚えているし―――」

僕は空いている手に、黒魔法で火をともす。

アリス「おい、何をする気だ!ここを火事にするつもりか!」

ルカ「そんな気はないよ。ただ―――魔よけとして、ね」

アリス「あ・・・」

アリスには思い当たる節があるようで、そのまま黙ってしまった。

ルカ「さて・・・」

僕はエンジェルハイロウではなく、カスタムソードを抜き、炎の魔力を宿す。
そして『4精霊信仰とその源流』がある書架へと足を踏み入れる。
そこには――――

65537ページが現れた!

65537ページ「魔王様の命により―――」

ルカは先手を取った!

僕は更にカスタムソードに炎の魔力を注ぎ込む。
カスタムソードは今や炎熱で赤く輝いていて、握っている僕が熱い位だ。

ルカ「そこを・・・どいてくれる?」

僕は自分でも素晴らしいと思うほどの笑顔を浮かべ、65537ページに話しかけた。

65537ページ「炎を消してくだされば喜んで」

僕は炎を消し、剣を氷の魔力でさました後、鞘に納める。

ルカ「これで・・・いいよね?」

65537ページ「本は此方です」

そういって65537ページは『4精霊信仰とその源流』を僕に渡した。

ルカ「うん。ありがとう」

僕は再び笑顔でお礼を言うと、書架から戻って、本を借りる手続きをして、地下図書館から立ち去った。

そしてサン・イリア城の城下町。

アリス「・・・えげつないな。本の魔物相手に炎で脅迫か―――」

ルカ「アリス、今夜ごはん抜きね」

アリス「ごめんなさい。それだけは許してください」

65537ページは「魔王様の命により~」と言っていた。
つまりは、アリスが本を取らせまいと妨害してきたのと同じだ。

実力的には魔王はまだ倒せないけど、胃袋は掴んでいる。
アリスへの脅迫など、いくらでもしようがある。

ルカ「まぁいいよ・・・僕が来る前のことだろうし」

僕がそういうと、アリスは心底安堵したようにため息をついた。

僕は近くにあったベンチに腰を下ろすと、『4精霊信仰とその源流』を読み始めた。
内容は向こうの世界と全く同じ。精霊の居場所も変わっていないようだ。

ルカ「よし!まずはシルフに会いに行こう―――」

僕がベンチから立ち上がり、そう言ったその時だった。

???「ここで会ったが100年目。恋してダーリン、この愛百年・・・・・・」

ルカ「お、お前は・・・」

残念なラミアが現れた!

アミラ「私はアミラ、残念な―――」

ルカ「あぁ。そうだ。思い出した。確か北の方にお化け屋敷があったんだっけ」
ルカ「そこに行かなきゃ―――」

僕はアミラを無視して、内心次の目的地を決める。
アミラはビクンビクンしながら、子供達に懐かれていた。

ふと目をやると、掲示鳩が掲示板に新しい依頼を張って行った。

ルカ「これは――――」

それはメイアさんの依頼だった。
僕は記憶を探る。確かメイアさんが操られた理由は・・・
南海の女王に、婚姻届を出すためだった気が―――

ルカ「ナタリアポートでメイアさんの依頼を受けよう」

アリス「向こうで何かあったのか?」

ルカ「あったけど・・・ナタリアポートの様子が向こうとは違うから、確認も兼ねてだね」

アリス「思うところがあるのなら仕方ないか」

アリスも納得してくれたようだ。

ルカ「メイアさんの依頼が終わったら、北のお化け屋敷に行くから、アリスは聖水でも買って来たら?」
ルカ「僕はその間に剣を鍛えてもらうよ」

アリス「何故余に勧める?!」

ルカ「一応・・・気休め程度にはなるから、ね」
ルカ「洞窟で財宝をたくさん持って行ったから、お金には余裕があるよ?」

アリスの顔面が蒼白になった。
僕は無言で聖水を買うにしては、あまりにも多過ぎるお金を渡す。

アリスは一目散に道具屋へと走って行った。

ルカ「さて・・・」

僕は鍛冶屋へと向かい、剣をさらに鍛えてもらった。
これによって、カスタムソードに更に聖属性が付いた!

僕が鍛冶屋から帰ってくると、アリスは一抱え以上も聖水を買ってきていた。
恐らく店の在庫全部を買い占めたのだろう。
お金にはまだまだ相当の余裕があるけど、バックの余裕は無くなってしまった。

短いけどここまで。

長期間空けていたからね。少しでも埋め合わせをば。

>>139 >>140さんの言うとおり、このルカさんは色々経験した結果多少の事では動じなくなっています。

ぱらRPGの精霊の効果時間が短すぎると思うのは自分だけでしょうか・・・。

効果もよくわからないし。シルフは恐らく2ターンの間物理攻撃完全回避っぽい?


~次回予告~

勘違い女王に勘違いされないように、話をしたらどうなるのっと

マジレスすると戦闘が発生せず、平和的に終わる

僕たちはナタリアポートへ到着すると、メイアさんの家へ向かった。

ルカ「ごめんくださーい!」

メイア「はーい!」

ルカ「メイアさん・・・ですよね」

メイア「ええ。あの時声をおかけした冒険者さんですね」
メイア「立ち話もなんですので、どうぞ」

僕たちはメイアさんに誘われるまま、室内に入った。

ルカ「それで・・・依頼というのは―――もしかして婚姻届の提出ですか?」

メイア「何故以来の内容をご存じで・・・?」

ルカ「冒険者であると同時に、いろいろ研究していますので・・・」

僕は最もそうな事を言う。
平行世界の事など、余程のことが無ければただの狂言扱いだからだ。

メイア「それならお話は早いです。海底神殿におられる、南海の女王様に誓書を捧げてほしいのです」

メイア「私はそれなりに魔術の心得がありますが、旦那様は私よりか弱いお体ですので―――」

しっかりと統治されているとはいえ、モンスターの巣窟。
普通の一般男性を連れてでは厳しいものがあるのだろう。

ルカ「分かりました。では――――」

僕がそう言いかけた時、玄関のドアが元気よく開いた。

少年「ただいまー!」

ルカ(向こうと姿が変わっていない――――!)

どうやら性癖は変わっていないようだ。
僕が茫然としていると―――

メイア「そういうわけで、改めてお願いします」
メイア「此方が誓書と、「導きの玉」です」

ルカ「確かに、受け取りました」

こうして僕たちはメイアさんの家を出た。




アリス「ルカ・・・途中で茫然としていたが・・・」

ルカ「うん。世界が変わって、事情が変わっても、変わらないものがあるんだなぁって・・・」

アリス「そ、そうなのか・・・」

僕の表情から察して、アリスはそれ以上追及して来なかった。

道を塞ぐ魔物を封印しつつ―――導きの玉を掲げ、海の中を進む。
襲ってくる魔物をこれまた封印しつつ―――神殿へとたどり着いた。

神殿の道筋は覚えている為、そう時間はかからなかった。

ルカ(南海の女王・・・いったいどういう人なんだろう)

向こうの世界では衰弱して、干しイカになっていたので、クラーケン娘ということだけは分かる。
でも性格面は全く分からない。
戦いにならなければいいのだけれど―――

海底神殿の最奥には、一目で大物と分かる魔物が、そこに君臨していた。

ルカ「あなたが、南海の女王ですか?」

クラーケン娘「ええ、その通り。私が、魔王様より南海の統治を任された女王です」
クラーケン娘「さて、人間よ・・・この海底神殿に一体何の用なのですか?」

口ぶりからするに、彼女は人間に対して好意的でもなければ敵視しているわけでもなさそうだ。
使命を遂行する―――という意思が感じ取られた。

ルカ(口下手な説明をすると、敵と疑われそうだな・・・)

僕はそう感じ、要件を簡潔かつ手短に伝えることにした。

ルカ「結婚の誓書を、代理で持ってきたのですが―――」

クラーケン娘「代理・・・?なぜ、本人が来ないのです・・・」
クラーケン娘「最近の若い者は、まったく・・・」

誓書を受け取りながら、クラーケン娘は愚痴をこぼす。
確かに、それももっともではあるが。

クラーケン娘「とにかく、結婚の誓書、確かに受け取りましょう」
クラーケン娘「南海の女王として、メイアとその夫を真の夫婦と認めます」

クラーケン娘「では、この「契りの指輪」を受け取りなさい」
クラーケン娘「これをいかなる時も指に嵌め、互いに想い合うことを誓うのです」

ルカ「はい」

僕はクラーケン娘からペアの指輪を渡された。

ルカ「用事も済んだし・・・帰ろうか。ちょっと面倒だけど・・・」

クラーケン娘「それには及びません。不甲斐ない若者のお礼に、私が地上へと送って差し上げましょう」

ルカ「それは助かります・・・」

転送魔術の術式が無い以上、素早く帰る方法は1つ―――
まぁどうにかなるだろう。

クラーケン娘の触手が、僕の胴体を巻き上げると―――

クラーケン娘「人間と魔物の仲を取り持つ行動、南海の女王として嬉しく思います」
クラーケン娘「また何かあれば、この神殿に訪れなさい。では、さらばです―――」

クラーケン娘は僕の体を斜め60度の方向に思いっきりぶん投げた!

海底神殿の窓を通って、僕の体は海中に投げ出されてしまう。
そのまま一気に海の仲を突っ切り、海面に投げ出され―――

――――そして、砂浜に着地した。
尋常ではない衝撃が足に伝わるけど、12メートルからのグラビティダイブに比べればマシなのかもしれない。

ルカ「そういうわけで・・・誓書を届けてきました。これが契りの指輪です」

メイア「ありがとうございます!」

メイアは指輪を受け取り、満面の笑みを浮かべた。
夫の方は、漁に出かけて留守のようだ。

なおアリスは、僕に食事を作らせるべく、市場をウロつくとかでここにはいない。
お金は十分持たせてあるので問題ないだろう。

メイア「これで、旦那様もさぞ喜んで下さるでしょう」
メイア「さて、お礼をしなければなりませんね」

依頼をこなした者には報酬を――――
この世界における、絶対の法の1つだ。
でもお金には余裕があるし、なにより南海の女王が無事なのが確認できたのだ。

ルカ「いいですよ、お礼なんて―――」

メイア「しかし私は、ただの一般市民。勇者様のお役にたつアイテムも―――」

猛烈に嫌な予感がする。

メイア「ですので、お礼として――――」

やっぱり!

メイアさんは、僕の下半身へと――――




































「あひぃぃぃぃっ!」


































その後僕はアリスと合流し、ナタリアポートを旅立ったのであった。

すっごく短いけどここまで。

クロム編は連続投稿だと長くなるので・・・

あと前回の投稿分で、「いったん自宅に帰る」という目的が追加されました。

これはノーム契約後に一旦自宅に戻ることを意味します。後は・・・ね。

このルカさんの最大の欠点として、

極めて酷似していながらも、少しだけ違うところがある。という状況に置かれると、ぱら世界を基準に考えてしまうという点があります。

更に緊急性を要する状況に置かれ、その理由がぱら世界と照合できると考えた場合、後先考えなくなります。

具体的には前者はクロム編、後者はサラ編です。


~次回予告~

クロムの様子が気になり、お化け屋敷に乗り込んだ僕たち。

アリスの反応は予想通りだなぁ・・・。

え?ここに生者はいない?!嘘だ!兵士たちが囚われているはずだ!

ここにいるのは死者だけ・・・?クロム、絶対に許さん!


ルカ「よし!お化け屋敷にいこう」

記憶では人々が囚われているはずだし、クロムの事も気になる。

アリス「・・・・・・」

アリスは何も言わず、非常に恨めしそうな視線で僕を睨むのだった。

ルカ「アリス、時には諦めも肝心だよ」

アリス「~~~~~~っ!」

アリスはぶんぶんと尻尾を振って攻撃してくる。
感情が乱れているうえに、弱弱しいから避けるのは非常に簡単だ。

僕はアリスの攻撃をいなしつつ、お化け屋敷へと向かった。

しばらく歩き、時刻は夜。
僕たちはお化け屋敷の前へと立っていた。

ルカ「向こうと一緒だな・・・」

アリスは今から聖水を浴び歩いている。
魔王が聖水を浴びるという光景は、非常に滑稽だった。

ふと見ると、二階の窓からクロムが此方を見下ろしていた。

ルカ(どうやらやってる事も同じみたいだね・・・)

ルカ「まぁ中に入ろうか」

僕は歩を進めるが、アリスは頑として動かない。
アリスにも来てもらった方がいいんだけど・・・
そこで僕は一計を案じた。

ルカ「うわぁあああああああっ!な、なんだあれ!向こうの世界にはあんなの無かった!」

アリス「ひぃっ!な、何を言い出すのだ!余には何も見えんぞ!」

ルカ「アリスには見えないの・・・?」
ルカ「こ、こんなところには居たくない!少しでも安全な所へ―――!」

そう言って僕は館へ向かって一目散に走っていく。

アリス「よ、余を置いていくな!馬鹿者!」

アリスも僕につられるようにして、館へと駆け込んだ。

ルカ(計画通り―――!)

当然真っ赤なウソである。
アリスが動かないので、押してダメなら引いてみただけだ。

迫真の演技も、向こうの世界で積んだ職業の賜物だ。
そのおかげでまんまと引っかかってくれた。

ルカ「ここまでくれば―――!」

僕はアリスが館に入るのを確認すると、扉を閉めた。
そしてへたり込むと、荒い息を吐いた。

アリス「ルカ・・・貴様には何が見えていたのだ?」

アリスは尻尾をぷるぷる震わせながら、僕にそう聞いた。

ルカ(ダメ出しにもう一言―――)

ルカ「アリス・・・世の中には見えないほうが幸せなこともあるんだよ」

僕は酷く憔悴したような顔で、アリスにそういう。
アリスは黙って聖水を浴び始めた。

ルカ「とりあえず・・・内装は向こうと同じ感じだから、進もうか・・・」

アリスは無言で聖水を浴びながらついて来た


アリス「ひゃああああぁぁぁぁぁ・・・」

アリス「ひいいいいいいぃぃぃぃ・・・」

アリス「うぅ・・・」

僕は向かってくるゴースト・アンデット系のモンスターを、不死斬で千切っては投げ、千切っては投げた。

アリスはそのたびに悲鳴を上げ歩いていた。

ルカ(アンデット・ゴースト系の魔物もいるのに、大丈夫なのか・・・?)

僕はアリスの魔王としての統治能力に僅かな疑問を抱いた。

その後もゾンビ娘を倒し歩いていると―――
いつの間にかアリスを見失っていた。

ルカ(仕方がない。先にアリスを探そう―――)

そう考えていると――――

クロム「あ~!儂の実験体達が~!!」

背後からクロムの声が聞こえた。

ルカ「お前は――――」

クロム「わわわっ・・・!」

僕を見るなり、クロムは脱兎のごとく逃げ出してしまった。
僕は部屋から飛び出し、階段を駆け下り、再び広間の前に立つと―――

クロムが、フレデリカを従えて待ち構えていた。

クロム「なんなのだ、お前は。なぜ、儂の研究所で暴れておるのじゃ?」

ルカ「ん~・・・囚われた人々を助ける為かな」

クロム「ほう。殊勝な事じゃが・・・この館に生存者はおらんぞ。あるのは死体だけじゃ」

ルカ「・・・・・・は?」

クロム「じゃから、ここにあるのは死体だけじゃ」

僕は黙ってエンジェルハイロウと、カスタムソードを握った。

向こうの世界で生きていた人が、クロムによって殺されているなんて―――
僕に怒りの火が付いた。

クロム「儂の名を教えておこう。儂の名はクロム。偉大なる―――」

ルカ「ネクロマンサーなんだろ。能書きはいいから早くしろ」

クロム「ほう・・・威勢がいいな。お主も儂の実験台にしてやる。やってしまえ、フレデリカ!」

フレデリカ「了解しました・・・ご主人様・・・」

フレデリカが現れた!

ルカは先手を取った!

――――この後僕がやったことは単純。
裏練気をして、不死斬を3度放つ。それだけでフレデリカの体は消え失せた。

裏練気による攻撃力上昇と、3回目の攻撃まで確定クリティカル。
更にカスタムソードに聖属性が付いていたため、ダメージが更に増加。
挙句、アンデット特攻剣技の不死斬―――

3度目の不死斬は我ながらオーバーキルだと思った。

向こうの世界では仲間だったけど―――
此方のクロムは許せない。フレデリカには悪いけど、退場してもらった。

ルカ「逃がさないぞ・・・」

いつの間にかクロムはいなくなっている。
でも、この館の構造は頭の中に入ってる。
クロムが逃げ込んだ先は恐らく地下墓地。
僕は地下に向かって走り出した。

ルカ「追い詰めたぞ・・・」

僕はクロムの前に立つ。

クロム「まさか・・・フレデリカを・・・貴様、何ということをしてくれたのだ!」
クロム「あいつは、儂の最高傑作だったのだぞ!それを・・・」

ルカ「喧しい。さっさと来い。倒した後に懺悔させてやる」

言葉で激情は出しているけど、一応クロムは殺す気はないので、カスタムソードは引っ込めた。

クロム「よかろう。儂自ら相手をしてやるわ!ネクロマンサーの妙技、その眼で見るがいい!」

クロムが現れた!

ルカは先手を取った!

ルカ「はぁぁぁぁっ・・・!」

ルカは闇の気を練った!

クロムの攻撃!

ルカに30のダメージ!

ルカ「てやっ!」

ルカの反撃!

会心の1撃!クロムに600のダメージ!

ルカ「破壊の刃が死を運ぶ・・・デットクラッシュ!」

ルカは致命的な一撃を放った!

会心の一撃!クロムに2400のダメージを与えた!

クロムの息の根を(ほぼ)止めた!

クロム「ひっ・・・ひぃぃぃぃ・・・!」

クロムはあと一歩で封印されるほどのダメージを一撃で受けて、体を引きずりながら逃げ出した。

ルカ「逃がさん」

殺した人たちに懺悔もさせていないのだ。逃がしはしない。

ルカ「・・・・・・見失ったな。どこに逃げた?」

クロムはどうやらどこかに隠れてしまったらしい。
でも逃がしはしない――――そう思った時だ。
棺の影に人影が見えた!

ルカ「観念しろ・・・」

棺の後ろに隠れていたのは―――ぷるぷる震えているアリスだった。

どうやら僕とはぐれて、何かがあったのだろう。
何らかのはずみで地下墓地に来てしまい、恐怖で動けなくなってしまったらしい。

ルカ「アリス・・・」

アリス「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
アリス「邪神様、初代魔王様、どうか余をお救い下さい・・・」

アリス「もう、悪いことはしません・・・きつねをいじめたりはしません・・・」
アリス「きつねの耳を引っ張ったり、尻尾を踏んだり、油揚げを奪ったりしません・・・」

その弱弱しい姿を見て、僕の怒気は霧散してしまった。

ルカ「アリス、ここにはゾンビ研究をしているネクロマンサーがいるんだ」
ルカ「みんな、そいつが悪いんだよ。こっちの方に逃げてこなかった?」

アリス「みんな、そいつが悪いだと・・・?それは確かか?」

アリスは目を光らせ、ゆらりと立ち上がった。

アリス「そいつのせいで、余はこんな目に・・・許さん、出て来い!」

アリスの目がぎらりと光ると――――少し離れた所にある棺が爆発した。

クロム「ふぎゃっ!」

焼け焦げた棺から、クロムが転がり出る。

ルカ「あんなところに隠れていたのか」

僕の横をすり抜け、アリスは倒れ伏すクロムの脇に立つと―――
尻尾でぴしぴしとぶん殴り始めた!

クロム「なんじゃ、貴様! 何処の妖魔じゃ・・・ がふっ! げふっ!」

アリス「貴様のせいで、余がこんな目に・・・」

クロム「へぶっ! あうっ! や、やめんか・・・あうっ!」
クロム「や、やめ・・・もう許して・・・」

泣きが入ったクロムを、アリスは容赦なく打ち据える。

ルカ「待って。アリス・・・僕もこいつに用があるんだ」

僕はクロムの胸倉を掴み上げると―――

ルカ「とりあえず、殺した人たちに懺悔しろ」
ルカ「さもなくば―――こっちの剣で、さっきの一撃を手加減なしで見舞うぞ」

クロム「し、知らん!確かにこの館に生存者はいないが―――」
クロム「儂は一人たりとも殺しておらんぞ!」

クロム「第一こんなに死体がある場所なら、殺す意味が無かろう!」

ルカ「言われてみれば―――」

ネクロマンサーになったことは無いけど、確かにその通りだ。
僕はクロムを地面にゆっくり下ろす。
クロムは声をあげずに、一目散に逃げ出した。


ルカ「とりあえず・・・戻ろうか」

アリス「うむ。余は一秒たりともここに居たくない」

そう僕たちが移動し始めた時だった。
突然、目の前に上品そうな少女が現れたのだ!

その姿は、肖像画で見たフレデリカそのものだった。

ルカ「君は―――」

フレデリカ「ありがとうございました、勇者様・・・」
フレデリカ「これで、私は・・・いいえ、私達の魂は救われました」

フレデリカだけでなく、屍がゾンビ化した事により、魂を縛られた者たちも解き放たれたようだ。

幽霊たちは、口々に感謝の言葉を述べ―――
煙のように消え失せてしまったのだった。

僕は、向こうの仲間を斬った代わりに、こちらの世界の少女を救った―――

複雑な気分だ。

ふと後ろを向くと―――
アリスは昏倒していた。

ルカ(アンデット・ゴースト系のモンスターのみならず、本物の幽霊だもんな・・・)

僕は気絶したアリスを背負って、館から出ることにした。

ルカ「すっかり朝か」

ぐったりと伸びきったアリスを背負い、サン・イリアに戻ろうとした時―――
敷地内から館を見上げる、向こうの世界で良く見知った仲間と、似た姿をした女性を目にした。

???「・・・・・・」

ルカ「あなたはもしかして―――」

???「クロムはもういないようだな――――」

女性はそれだけ呟くと、姿を消してしまった。

ルカ(あの声・・・もしかしなくても・・・プロメスティン?)

プロメスティンとの出会いはタルタロス内部。
しかも転送されたというレア中のレアケースだ。
本来はどう会うべきだったのかさえ予測がつかない。

またしても謎が1つ増えた。

ともかく、アリスを背負ってサン・イリアに一旦戻ろう。


ルカ「・・・・・・」

サン・イリアには向こうの世界でもない、異様な光景が広がっていた。
町中幽霊だらけだ。あの屋敷に結構な数の魂が囚われていたようだ。
あちらを見れば、子供たちと、幽霊少女が追いかけっこをしながら遊んでいる。

アリス「・・・・・・一刻も早くここから出るぞ。これは命令だ」

帰り道の途中で意識を取り戻したアリスは、白目をむきながら僕に命令した。

このままだとアリスの精神が壊れてしまう。
こうして僕たちは、サン・イリアを後にしたのだった。

ここまで。

このルカさんはキレると無慈悲になります。

世に仇なすモンスター倒すべし。慈悲は無い。

ここら辺からちょくちょく くえすと! の内容で進めるのが難しくなっています。

これ以降のシルフ編、サラ編、特に魔女の村編では、くえすと!の内容を一部無視して進めています。

魔女の村編ではぱらルカさんは未経験な事があるせいで、普通にくえすと!準拠では物語が進まないし・・・

現在はサファル遺跡前まで書き終わっています。恐らく書き貯め分は今日明日で完結します。

それでは


だがくえアリスは幽霊にはビビリまくりだがゴースト娘にはなんだゴースト娘か…だの
エルフゾンビが現れたら脅かすな!と吹っ飛ばすだのでもんむす判定されたらビビってなかったはずだぜ

>>167 さん。 それはすごく迷いました。

でも、ルカさんが無双するせいで、アリスとはぐれるというイベントが起きない為
多少改変して幽霊系統に関することだけは ぱらアリスを導入させて頂きました。

ルカ「シルフに力を貸して貰うために、精霊の森にいこうか」

アリス「シルフの力を手に入れた後は、この地域を後にすることになるが、やり残したことは無いな?」

ルカ「うん。大丈夫」

ルカ(あの鎧の狂戦士が出なければいいけど―――)

一抹の不安を感じつつ、僕たちは精霊の森へ向かった。

その夜の野営――――

アリス「2度食らって入るから予想はつくが―――」

ルカ「剣の稽古だね。グランベリアが使ってきた連撃技。名前は確か・・・・・・」

そこで僕は言いよどんでしまう。見慣れた剣閃のはずなのに、どうしても名前が出ないのだ。

アリス「無数の斬撃を浴びせかけ、敵に連続攻撃を見舞う―――死剣、乱れ星」

アリス「その技を編み出した六手剣士ガーラは、騎士団ひとつを丸ごと肉塊に変えたという。・・・・・・思い出したか?」

僕はその返答の代わりに、乱れ星を虚空に繰り出す。

アリス「少しだが余にも分かったことがある。向こうの世界で同じ時に、同じようにしないと思い出せない事があるようだな」

ルカ「そうみたいだね・・・でもなんでこうなってるのかが、全然予想が付かないんだ・・・」

アリス「それは貴様に分からなければ、余には到底思いつかん。今日はもう寝て明日に備えるぞ」

ルカ「精霊の森かぁ・・・久々だなぁ」

まだ入り口だというのに、うっそうと木が生い茂っていて先が見えない。
向こうの世界と変わっていないようだ。

ルカ「アリスは・・・付いてくるの?」

アリス「魔王たる余が森を練り歩き、フェアリーたちを驚かすわけにもいかん。今回はここで待っているとしよう」

ルカ「分かった・・・なるべく早く戻ってくるよ」

そう告げ、僕は単身で精霊の森に踏み込んだ。

フェアリーたちの悪戯や、エルフの警告を受けつつ、森の最奥へと踏み入れる。すると―――

???「あれれ・・・人間がここに何の用・・・?」

そう言いながらシルフが僕の目の前に現れた。

ルカ「4精霊の1人・・・シルフ・・・だね?」

シルフ「そうだよ。あたしがシルフだよ。あたしに何の用?」

ルカ「えっと――――」

僕は端的に旅の目的を告げた。

シルフ「うん、分かった。私の力、悪いことには使わないみたいだね」

シルフ「でも・・・精霊の力は、弱い人間には貸せないの」
シルフ「・・・っていうより、弱い人間には力を使いこなせないの」

シルフ「だから、キミがあたしの力を使いこなせるかどうか、確かめてあげる」

ルカ「戦うってことなのかな?」

シルフ「うん。あたしに一発でも攻撃を当てることができたら、力を貸してあげるね」

ルカ「分かった・・・一発でいいんだな?」

シルフ「えへへっ・・・たぶん、キミには無理だけどね。じゃあ、いっくよ~♪」

涼やかな風が、シルフの周囲を取り巻いた!

ルカ(まずは小手調べに・・・)

ルカ「てやっ!」

ルカの攻撃!
しかし、風の防壁に妨げられて剣が届かない!

ルカ(なるほど・・・)

シルフ「あたしの風で、どんな攻撃も届かないんだから」
シルフ「しかも、風が勝手に反撃しちゃうんだよ~♪」

シルフのカウンター!

ルカは25のダメージを受けた!

シルフの攻撃!

ルカは33のダメージを受けた!

ルカ(自動反撃なら下手にカウンターを使わないほうがいいよな・・・)

シルフ「どう?風の力って、すごいでしょ・・・?」

ルカ(風のカウンターは自動反撃、防御は突風による剣閃のずらし・・・)
ルカ(なら突風によって剣閃がズレないほどの鋭く、素早い一撃を叩き込めばいいだけじゃないか)

ルカはクイックを唱えた!

シルフ「嘘!?時魔法?!そんなの聞いてない!」

シルフの攻撃!

ルカはひらりとかわした!

ルカ「闇を引き裂き、光を照らせ!雷鳴突き!」

ルカは雷鳴の様に踏み込み、鋭い突きを繰り出した!
風の防壁が妨げるが、それを貫通していく!

シルフに450のダメージ!

ルカ「これで・・・いいんだね?」

シルフ「・・・ふぇぇぇぇぇん!ひどいよぉ!」

シルフ「時魔法なんてズルいよぉ・・・! ヒキョーだよぉぉ!」

シルフを泣かせてしまった!

ルカ(向こうでは4体1、こっちではほとんど使える存在が無い時魔法・・・)

ルカはシルフに同情した。

シルフをやっつけた!

シルフ「ぐすっ・・・ふぇぇぇぇん・・・」

ルカ「ご、ごめん・・・」

しかし、どうしたものか。力を借りたいのに、泣かせてしまった。

シルフ「ぐすっ・・・あたしね、本当は戦いなんて苦手なの・・・」
シルフ「風を戦いに使ったことなんてなかったの・・・」

知ってた。
とは口が裂けても言えない。
ノームはヘビーファイターとして腕を鳴らしていたから、余計にシルフがみじめに見えてしまう。

シルフ「キミなら、あたしの力をちゃんと上手く使ってくれる?」

僕は力強く頷く。

シルフ「それなら、これからずっと一緒だよ」

不意にシルフがまばゆく光り、そして消えてしまった。
その途端、自分の体が、周囲野風と一体になったような懐かしい感覚が全身に広がっていく。

ルカ(でも鎧の戦士の感覚は感じない・・・向こうの世界限定だったのかな?)

1つの疑問を残しながらも僕はその場を後にし、アリスのところへと戻った。

森の入り口では、アリスが退屈そうに待っていた。

アリス「ふむ、無事にシルフの力を得たようだな」
アリス「貴様の中に新たな力が満ちているのが、はっきりと分かるぞ」
アリス「それで・・・力は使いこなせそうか?」

ルカ「向こうと同じ位になら扱えると思うよ」

そう答えた時だった。
今まで穏やかだった周囲の風が、不意に激しく乱れたのだ。

ルカ(まさか――――!)

僕は一瞬で臨戦態勢へと向かう。
あの鎧の戦士が相手だと、魔王が味方に居ても全滅しかねない。

ルカ「アリス・・・来るよ」

アリス「分かっている。この禍々しさ、いったい何者だ・・・?」

がさがさと草を踏み荒らしながら、こちらに近づき、僕たちの前に姿を現した!

ルカ「な、なんだ・・・こいつ・・・!」

目の前に現れたのは、実に異様な魔物だった。
まるで、前身を植物に寄生されたかのようなモンスター。
こんなモンスターには向こうの世界でも出会っていない。

この精霊の森に、異様な怪物が出没する―――
エルフから聞いた話を思い出していた。

僕は視線をアリスに向けて、回答を待つが、アリスは頭を振った。

魔王でさえ知らない魔物―――
そう思い警戒のレベルを上げた時だった。
モンスターの全身に取り付いている植物が一斉に伸び、僕とアリスに襲いかかってきたのだ!

ルカ「くっ!」

僕はとっさに飛び退き、その攻撃を避ける。
アリスも、尻尾での一撃で花やツタを吹き飛ばしてしまった!

アリス「どういうことだ・・・余に攻撃してくるなど―――」

アリス「魔王に挑む事の意味、知らんわけではあるまい!」

アリスは炎の嵐を巻き起こした!

灼熱の渦がキメラドリアードを焦がす!

キメラドリアードに7054のダメージ!

ルカ(エルフの話とアリスへの態度を考えると、こいつは無差別に攻撃してくるのか)
ルカ(ならこの場で倒す以外に道はない!)

僕は即座に二刀流スタイルに切り替えると―――

ルカ「紅蓮と化して舞い踊れ!紅蓮炎舞!」

キメラドリアードに850のダメージ!
キメラドリアードに900のダメージ!
会心の1撃!キメラドリアードに1700のダメージ!
キメラドリアードに950のダメージ!

キメラドリアード「―――――!」

キメラドリアードの体が、無数の粒子となって霧散していく。
そして、周囲にぶわっと花びらや葉っぱが散らばった!

キメラドリアードをやっつけた!

ルカ「これは・・・封印されたのか?」

周囲に広がる何とも異様な花畑。
あの怪物が封印された姿なのだろうか?

アリス「間髪いれない攻撃だったな。知っていたのか?」

ルカ「知らなかったよ。ただ・・・森の中でエルフから怪物が出るって聞いてたからね」
ルカ「それにアリスに対して攻撃をすること自体異常だったし、早めに片づけておいて損はないと思っただけだよ」

アリス「その場の判断力もあるのか・・・それにしても一体何だったのだ?こいつは」

アリスは周囲に散らばった花をまじまじと眺める。

アリス「どうやらこいつは寄生型のモンスターだったようだな」
アリス「あの女の部分は、宿主とされた人間。寄生植物に浸食された、生ける屍といったところか・・・」

ルカ「このタイプの魔物は向こうでも出会ったことが無いよ」

シエスタとはまた違う感じのモンスター。恐らく遭遇は初だろう。

アリス「おそらくは、突然変異した個体だったのだろうな」

突然変異の産物―――それなら会えなくとも無理はないか。

僕は僕自身を納得させた。

アリス「ところで・・・シルフの力はどれくらい使えるのだ?」

ルカ「そうだね。こんな感じかな―――」

僕は敢えて突風を起こさずに、自分自身の動きに風を宿した。

アリス「・・・・・・」

アリスは茫然と僕の方を眺めている。

ルカ「間違ってたかな・・・?本来はこれに加えて敵陣を一掃する竜巻を起こせるんだけど・・・」

僕は少しだけ不安になってアリスに尋ねた。

アリス「まさかそこまで使いこなせているとは・・・想像の範囲の外だった」

アリス「多彩な剣技、白・黒・時魔法を使い、精霊の扱いも上出来・・・」
アリス「更に並行世界での体験で冒険もスムーズ。聡明だから下手に手を出さなくてもいい」
アリス「挙句旅用のスキルも完全に備わっていると来た。もう余は魔王城で待ち構えているだけでいいのでは・・・」

アリスがそう茫然としている時だった。木陰がざわざわとざわめいた。
また魔物の襲撃―――ではないようだ。敵意も悪意も感じない。

フェアリーA「あのこわいの、やっつけてくれたの?」

茂みからおずおずと顔を出したのは一体の妖精だった。
いや・・・一体だけではないようだ。

フェアリーB「あのお花のおばけ、とってもこわいんだよ。みつかったら、たべられちゃうの・・・」

フェアリーC「でも、もうやっつけちゃったんだね!」

大勢のフェアリーが、木陰や草陰からわさわさと集まってきたのだ。
みんな、あのモンスターを恐れて隠れていたのだろう。

フェアリーA「ありがとう、おにいちゃん!」

フェアリーB「こわそうなおねえちゃんも、ありがとう!」

アリス「こ、こわそう・・・?」

僕は爆笑をこらえようと必死だった。
向こうでは今のアリスと比べれば、見た目も言動も幼児化している為、甘やかさはするが、怖そうとは言われなかったのだ。

そうこうしている内にフェアリー達はサン・イリア城へ向かって飛び立ってしまった。
あの怪物のせいで今まで窮屈だった分、開放的になったのだろう。

ルカ「少し心配だから様子を見に行こうか・・・」

こうして僕たちは、サン・イリア城に向かったのだった。

ルカ・アリス「・・・・・・」

そこは向こうの世界でもない人外魔境だった。
幽霊と、妖精と、人間が入り乱れている。
しかも人々はそれを最初からあったと言わんばかりに受け入れて?いる。

ルカ「サン・イリア王の様子だけ見て来て、次の場所へ行こうか」

アリス「そうだな・・・」

僕はサン・イリア城のにいるサン・イリア王への謁見を求めた。

衛兵隊長「おお、ルカ殿。我が王のお体もお心もすっかり回復されました」

衛兵隊長「ただ・・・相変わらず、あの騒動の時のお記憶は戻られません」
衛兵隊長「精神的ショックが大きすぎて、記憶を閉ざされてしまったのでしょう」

衛兵隊長「ともかく、どうぞお通り下さい」

ルカ「は、はい・・・」

僕たちは再び王の間へと通された。

サン・イリア王「勇者ルカ殿、よく参られた」
サン・イリア王「最近、わが城には妙な出来事が相次いておるのだ―――」

ルカ「・・・・・・」

錯乱は完治したんじゃなかったのか・・・?
それに両肩に幽霊まで取りついている・・・。

ルカ「あの、王様・・・頭に被っておられるのは、なんでしょうか・・・?」

サン・イリア王「おお!? なんじゃこれは!!」

頭上のツボを掴み、仰天する王。
どうやら気付いていなかったらしい。

サン・イリア王「わ、儂の宝冠は・・・?」

宝冠は、数名のフェアリーがはしゃぎながら床で転がしていた。
妖精の姿が見えない者にとっては、宝冠がひとりでに転がりまわっているように見えるだろう。

サン・イリア王「おお、なんということだ・・・イリアス様、お救いを・・・」

その肩の上に、わらわらと妖精が乗っかる。
なぜか知らないが、やけに妖精に好かれているようだ。

わいわいきゃっきゃと妖精たちが次々にのしかかり、王様の肩の上ではしゃぎ回っている―――

サン・イリア王「ぬおお・・・なんだ、これは・・・?」
サン・イリア王「肩がくすぐったいぞ、それに少女たちのはしゃぎ声が・・・!?」

ルカ「えっと・・・お忙しそうなので・・・また・・・」

僕は挨拶もそこそこに、謁見の間を後にしたのだった。
向こうの世界では機械化、こちらの世界では―――
サン・イリア王の受難の多さに僕は同情した。

ルカ「そういうわけで、フェアリーたちはやりたい放題だったよ」

この城、一体どうなってしまうのだろう。
幽霊も妖精も住み着き、立派な怪奇スポットと化してしまった。
向こうの世界を最も凌駕している。

アリス「向こうの世界での―――」

アリスがそう言いかけたところで僕はぶんぶんと首を左右に振る。

ルカ「ともかく―――次の場所に行こう」

アリス「ああ、そうだな」

アリスは平静を装っているが、その体はぷるぷると震えている。
見栄を張って、かなり無理をしているようだ。

こうして僕たちは、サン・イリアを後にしたのだった。
この町の様々な住人達が、共存していける事を願いながら―――

このナタリアの地で、シルフの力を再び得ることができた。
だが、まだ残りの三人の精霊に合わねばならない。
更に、一旦自宅へ戻って、この世界の自分自身の日記を読まねばならない。

その為にも次は最も近い所に居るノームの力を借りねばならない。

ルカ「まずは西のサバサ城に行くとするか・・・」

サバサの治安状態、サバサ王の状況、サラの状態などなど・・・
サバサでも知りたいことが山ほどある。

アリス「ふむ、今度は砂漠か・・・色々な珍味が楽しめそうだな」
アリス「余はワクワクしてきたぞ!」

相変わらずの食いしん坊ぶり。
グルメツアーではないと否定したいが、トリプルコック経験者である以上、アリスから見ればそうなのだろう。
一流シェフと行く!世界放浪の旅――― といったところか。

呆れながらも、僕たちは西方のサフィーナ地方へと旅立ったのであった。

ここまで。

書き貯め分は完結まで書けたので、1日1シーンごとに投稿していきます。

この後のサバサ編から くえすと! の内容と乖離する部分が出てきます。ご容赦ください。

それでは

ルカ「流石サバサ・・・行商人が多いな」

僕たちは苦労することなくサバサへと到着した。
サバサの位置も、向こうの世界と同一だったためだ。

ルカ(治安もよさそうだし・・・問題は起きていないのかな?)

向こうの世界ではサラの淫魔化による暴走により、治安が悪くなっていたのだ。
しかしこの様子では心配は杞憂だったようだ。

アリス「ぬぅ・・・。サバサフィッシュ料理だと?」

ルカ「僕も作れるけど・・・食べたいの?」

アリスは子供の様にこくこくと頷いた。
屋台の魅力というものは強いようだ。

ルカ「それじゃぁ・・・はい」

僕はアリスに十分過ぎるほどのお金を渡す。
これなら間違っても金額が足りなくて食べれないということは発生しないだろう。
幸いまだまだお金には余裕がある。

すると一人の兵士が僕に声をかけてきた。

兵士「むぅ!?なんだ、その気味悪い剣は・・・」

兵士は荷物に突っ込んであるエンジェルハイロウを見て、驚きの声を漏らした。

兵士「うむ・・・少々若いが・・・」

改めて兵士は僕の顔を見回し、そしてこくりと頷いた。

兵士「すまないが君、サバサ城まで来てくれないかね?」

ルカ「悪いことはしていませんが・・・」

向こうの世界の治安の悪い状態でも捕まるようなことはしていない。
なら何故呼び止められるのか―――

兵士「・・・いや。そういう事ではないのだ。とにかく、城まで来てくれないだろうか?」

ルカ「・・・分かりました」

兵士の様子からどうやら衆人の前では言いにくいことのようだ。
それに何か厄介ごとの気配がする。僕は素直に従った。

ルカ「ほら。アリス、食べながらでもいいから付いてきて」

僕は料理を食べているアリスにそういうと、サバサ城へと案内された。

何が起きているんだろう・・・
そう考えながら兵士の後を付いていくと、王の間へと通された。

兵士曰く、サバサ王は腕の立つ冒険者に頼みがあるという。

ルカ(サバサ王・・・いったいどんな人なんだろう)

向こうの世界ではタルタロス探索中に命を落としたという。
その武勇と評判は向こうの世界でも目覚ましく、一度会ってみたいと思っていた。

王の間で見たその姿は――――まさしく歴戦の戦士だった。

サバサ王「来てくれたことに感謝する。私がサバサ国王、サバサ9世である」
サバサ王「見た目は若いが―――歴戦の戦士のようだな」

ルカ「いえ・・・そんなことは・・・」

サバサ王「謙遜するでない。王である前に、まず1人の戦士であるつもりだ」
サバサ王「目の前の相手の力量を読めないほど未熟ではない」

サバサ王「その力量を見込んで頼みたいことがある。くれぐれも内密に願いたい」
サバサ王「事は重大であり、民に不必要な動揺をもたらす恐れがあるのだ」

サバサ王と会ってみて、一目でその力量と王としての器が高いことが分かった。
その王が重大かつ内密に事を進めたいと言っている―――

僕は如何なる事態にも対応できるよう覚悟を固めた。

サバサ王「目の色が変わった。やはり相応の修羅場を超えているようだな」

サバサ王は改めて僕を賞賛した。

サバサ王「実はわが娘―――サバサ王女が、魔物にさらわれてしまったのだ」

魔物にさらわれた。さらった犯人で思いつくのは――――
リリス3姉妹。この世界にもいたのか!

相手は強大。今の僕の全身全霊を賭しても勝率は絶望的だろう。
だがサラを救うだけなら―――どうにかなるかもしれない。
僕は彼女たちと対峙しながら、どうやってサラを救出するかの算段を立て始めた。

ルカ「詳しい話をお伺いします」

その為にもより詳しい情報は必須。僕は詳しい話を伺った。

サバサ王「あれは2日前の深夜の事。突然に、娘の部屋から窓の割れる音が響いたのだ」

サバサ王「慌てて衛兵と共に駆けつけると―――部屋はもぬけのからで、娘の姿はない」
サバサ王「そして・・・一枚の手紙が、部屋に落ちていたのだ」

ルカ「手紙・・・?」

サバサ王「それは、娘をさらった魔物の残したものだった」
サバサ王「血も凍るような筆跡で「ピラミッド」とのみ書かれていたのだ・・・」

あの3姉妹がそんな面倒な真似をするだろうか・・・?
僕は疑問に思いつつも、サラはピラミッドの主、スフィンクスの血を継いでいる。
それを覚醒させようとしているのなら一刻も早く止めなければならない。

サバサ王「姫が誘拐されるなど、国の一大事」
サバサ王「民の動揺を避ける為にも、今は事を公にできん」

サバサ王「そういうわけで、姫を救い出せる強者を極秘裏に探し求めているのだ」

ルカ「なるほど・・・」

サバサ王「これまで、冒険者を何人か面談したが・・・勇者を名乗る連中は、恰好ばかりで全く腕が伴わん」

サバサ王「お主はまだ若いが、歴戦の猛者にも勝る力を持っているのは明らか」
サバサ王「どうか、王女を救い出してくれんだろうか・・・?」

ルカ「分かりました。可及的速やかに向かいます」

ピラミッドに連れ去られたとなれば、タイムリミットは長くない。
覚醒させられたらそれでアウトだ。自分の知っていたサバサになってしまう。
それだけは避けなければ!

サバサ王「おお、行ってくれるか!もし王女を―――」

ルカ「事は一刻を争います。申し訳ありませんがすぐに向かわせて頂きます」

サバサ王「この国の王として、そして父親として頼み申し上げる!」

ルカ「承りました」

そういうと僕は頭を下げるサバサ王に背を向け、クイックを詠唱すると速やかに城内を駆け抜けた。

サバサ王「・・・妙にあの少年事情を知っていそうな感じだな」
サバサ王「それに去り際に時魔法の詠唱が聞こえたような・・・」

クイック詠唱後の僕の速度について来ながらアリスは僕に質問した。

アリス「ルカ!どうしたというのだ!時魔法を詠唱してまで急ぐ理由があるのか!?」

ルカ「誘拐から3日。もう手遅れだとは思うけど、急がない理由がない!」

アリス「向こうでも同じだったのか?」

ルカ「向こうとは違う。でも魔物の目的はと正体は知ってる!だから急いでるんだ!」

そう言いながらサバサの町を飛び出す。ピラミッドまでは遠くない。補給なしでも行けるだろう。

アリス「相手の正体と目的は何だ!食事を無視してまで行くのだ。納得できる理由が無ければ―――」

ルカ「相手はリリス3姉妹!目的は王女サラの淫魔化だよ!」

アリス「どういうことだ!」

ルカ「サバサ王家には魔物の血が流れてる!初代サバサ王の妻がピラミッドの主、スフィンクスなんだよ!」
ルカ「それでリリス3姉妹は王女に流れる血を半端に覚醒させて、国を内側から滅ぼすつもりだ!」

アリス「なるほど。だがリリス3姉妹は―――」

アリスがそう言いかけたところでピラミッドに到着する。

ルカ「一気に駆け抜ける!」

僕は二刀流スタイルになると、カスタムソードに炎の魔力を注ぎ込む。
中に居るのはアンデット系のモンスターがほとんど。
炎属性と不死斬の相性は抜群だ。

そう僕が構えた瞬間―――
聞きなれた声が響いてきた。

「ここがピラミッド・・・予想以上に大きいわね」

ルカ「は・・・?」

そこにはピラミッドを見上げるサラの姿があった。
その姿を見るが、淫魔化した様子もなく、ピラミッドの前に立っていることから攫われてもいないようだ。

サラ「あんたも、ピラミッドに用事があるの?」

ルカ「ええ・・・まぁ・・・」

余りの事態に頭の情報処理能力が追い付かない。
僕は生返事をしてしまう。

ルカ「えっと・・・なんでピラミッドに?」

回転の悪くなった頭でなんとかサラに質問を投げかける。

サラ「ピラミッドで、竜印の試練を受けたいのよ。私の愛する、あの方のためにね」

もしかして・・・もしかして・・・もしかして―――!
嫌な予感がよぎり、それがほぼ間違いなく当たっている感じがした。

ルカ「じゃぁ一緒に行こうか・・・内部はいろいろ危ないしね・・・」

サラ「まぁ仲間がいたほうがいいし・・・強そうだもんね」

アリス「・・・・・・では行ってくるがいい。余はここで待っているぞ。早く終わらせて来い」

アリスも僕の表情から察したのだろう。早めに片づけることを僕に言いつけた。

ルカ「えっと・・・僕の名前はルカ。君の名前は?」

一応サラからすれば初対面の人間なので、名前を名乗りつつ名前を聞く。
初めてあった知らない人間が、名前を知っているというのも奇妙な話だからだ。

サラ「あたしはサラ。一流の剣士を目指して、修行中の身よ」

知ってる。
その言葉を飲み込み、ピラミッドの中に踏み込んでいったのである。

ミイラ娘が―――

ルカ「邪魔」

コブラ娘が―――

ルカ「邪魔」

ネフェルラミアスが―――

ルカ「邪魔」


道中の魔物に先制を取ってエンジェルハイロウで切り捨て歩いた。
盛大な思い違いをして、僕の機嫌はかなり悪いのだ。

サラ「ちょっとあんた・・・強すぎない?」
サラ「出てくる魔物を視認した瞬間にその不気味な剣で切り捨て歩いてるじゃない」

ルカ「うん・・・まぁ・・・」

サラ「あたし・・・要らなくない?」

ルカ「いや・・・大丈夫だよ」

正直戦闘が長引くと面倒なのだ。
サラに出番をくれてあげるつもりは毛頭なかった。

ルカ「ここは・・・」

雰囲気の全く違う広間。
記憶が確かなら、ここにスフィンクスが―――

???「とうとうここまで来たか、か弱き人間よ・・・」

その声と共に姿を現したのは―――スフィンクスだった。

サラ「あんたが、スフィンクス?」

スフィンクス「いかにも。妾がこのピラミッドの主スフィンクス」
スフィンクス「ヒトの死を見守る存在にして、竜印の試練の最終審判」

サラ「つまり、あんたに認めてもらえば試練はクリアってわけね?」

スフィンクス「その通り。しかし妾が認めねば、生きたまま丸呑みにしてくれる」

スフィンクス「それでも構わんな・・・?」

ルカ「ええ」

僕は肯定した。仮に認められなくとも、ある程度までは対等に戦えると思うからだ。

サラ「それで、最終試練とやらは何?あんたを倒せばいいの?」

ルカ「サラ。それは無理だよ。倒すには最低でも僕がもう3人は要る」

サラ「・・・っ。じゃあ、どうすればいいのよ!」

スフィンクス「最終試練は、妾からの謎掛けだ。これより、妾が投げ掛ける問いに見事答えてみせよ」

スフィンクス「妾は賢者を好み、愚者を嫌う。汝達が愚者ならば、その身を食ろうてくれよう」

ルカ「謎かけか・・・」

溢れる職業経験値を有効に使うため、学者とその派生の職業はマスターしている。
学術的な問題ならば向かう所敵なしだろう。
もっとも・・・戦闘では物理一辺倒の方が強いけど。

ルカ「サラ・・・大丈夫?」

サラ「大丈夫よ、多分。私、結構学識あるんだから」

そりゃ王女だから当然だろ。
僕はその言葉を飲み込んだ。

スフィンクス「では、問おう。朝は4本足、昼は―――」

余りにも簡単すぎる質問に拍子抜けした。
おとぎ話でも効いたことのある有名な問題だ。
その答えは―――

ルカ「人間・・・」

サラ「そんなの、子供でも知ってる謎々ね」

僕たちはあっさりと答えを口にした。
しかしこんな謎かけで終わるわけがない。
僕は気を引き締めた。

スフィンクス「正解だ。正解した汝達に説明するまでもあるまい」

スフィンクス「では続けて問おう。妾が、このような謎かけを汝達に投げ掛けるのは何故か?」

僕はサラに目配せをする。サラは首を横に振った。

ルカ(なるほど―――)

向こうの世界でのスフィンクスの事を思い出す。
確かあらゆることに倦んでしまったとか言っていたような―――

そしてスフィンクスは初代サバサ王の妻。そのことを考えれば答えは―――

ルカ「人は儚い存在だって事を、悟らせるため」

スフィンクス「その通りだ、人の子よ。人という身は、脆く儚いものなのだ」
スフィンクス「魔獣たる妾よりも、ずっとな・・・」

スフィンクス「では、これが最後の問いかけだ」
スフィンクス「つまり、汝達の受ける最後の試練でもある―――」

スフィンクス「なぜ汝達は、この試練を受けようとしたのか」
スフィンクス「その理由を、偽りなく述べるがいい」

ルカ(――――!い、言えない!勘違いからの成り行きだなんて―――!)

適当な事を言えば間違いなく戦闘になる。
かといって本当のことを言っても戦闘になる。
どうしようもない僕は、サラに任せることにした。

ルカ「・・・・・・答えは、サラに任せるよ」

サラ「え・・・私・・・?」

サラは、きょとんとした表情を浮かべる。

スフィンクス「回答を放棄するのか?ならばその理由を述べよ。妾が納得できぬものならば――――」

ルカ「そもそも、ここに試練を受けに来たのは僕じゃない」
ルカ「別件で来て、サラに付き添う事になっただけなんだ」

ここは正直に言っておこう。
サラに全てを丸投げする形ではあるが、これ以外に道はない。

ルカ「だからさっきの質問は、僕に答える資格はない。答えるべきはサラなんだよ」

スフィンクス「ふむ、汝の言葉には確かに理がある。では、そちらの娘に聞くとしよう」

サラ「悪いけど私、気の利いた答えなんてできないから」
サラ「私が試練を受けたのは、愛する人と結ばれるためよ!」

スフィンクス「・・・・・・」

その答えを聞き、スフィンクスは黙り込んでしまった。

サラ「なによ、文句でもあるの?」
サラ「正義のためとか、栄誉のためとか、そういう答えの方が良かった?」

スフィンクス「そのような答えなら、躊躇なく汝達を食らっておったわ・・・」

スフィンクス「この竜印の試練は、人間と魔物の婚姻の為のもの」
スフィンクス「しかし、本当にそのような目的で試練を受けに来た者はおらぬ」

竜印の試練にはそんな意味合いがあったのか――――
僕はスフィンクスの語る言葉に納得してしまった。

人と魔物が結ばれても、人間の方が先に死ぬということを悟らせるため。
これこそが竜印の試練の真の試練だったのだ。

ルカ「僕もこの話は忘れないよ・・・」

向こうの世界で魔物の人間は睦まじく暮らしてる。
でもその陰にこういう事があるのだということを心に刻んだ。

スフィンクス「さて、最終試練は両名とも合格とする」
スフィンクス「それでは、竜印の試練を潜り抜けたあかしを与えよう!」

すると僕の手の甲に竜の顔を形象化したような紋章が浮かんだ。

サラ「今のが・・・証?!」

どうやらサラの手の甲にも同じものが浮かんだようだ。

ルカ「さて―――目的も果たしたんだし、サバサ城に帰ろうか。サラ」

サラの目的は達成されたのだ。拘ることはもうないだろう。

サラ「えっ・・・あんたの目的って・・・」

ルカ「サバサ城から脱走したお姫様の確保だよ。3日も帰ってないから大騒ぎだよ」

スフィンクス「さて・・・揉め事も収まったようだな。ついでに、これを持って行くがいい」

僕たちの目の前に置かれたのは―――とても美しい宝玉だった。
恐らくプチラミア達から渡された宝玉の色違いだろう。

スフィンクス「それは、イエローオーブと呼ばれる魔道具」
スフィンクス「このピラミッドに死蔵すべきものでは無いが、財宝狙いの盗賊どもにくれてやるのも面白くない」

スフィンクス「いっそ、汝達が持って行くがよい」

ルカ(用途は不明。でも持って行かなきゃいけない気がする・・・)

ルカ「ありがとうございます」

「イエローオーブ」を手に入れた!

ルカ「スフィンクス・・・これは?」

スフィンクス「それは、聖なる翼を蘇らせるためのものよ。まあどうせ、6つ揃いはせぬ」

スフィンクス「・・・ではさらばだ、人の子達よ。あの方の様に、いつ如何なる時も気高くあれ」

そう言い残してスフィンクスは消えてしまった。

ルカ「じゃぁ・・・さっさと戻ろうか」

僕はサラの肩に手を置く。

サラ「え・・・何?」

ルカ「テレポート」

テレポートを詠唱すると、あっという間にピラミッド前にたどり着いた。

アリス「おお・・・戻ってきたか。って・・・普通に出てこなかったよな!」

アリス「まさかまた時魔法じゃ・・・」

サラ「時魔法!?えっ・・・それって―――」

アリスとサラが何か喚こうとしているが、僕は無視する。

ルカ「無補給で疲れてるんだ。さっさと戻るよ」

サラの肩に手を置いたまま、ヒト型アリスの肩に手を置くと―――

ルカ「ワープ!」

こうして僕たちは一瞬でサバサまで戻ってきたのだった。

サバサ王「勇者ルカ殿、よくぞ姫を救ってくれた」
サバサ王「この国の王として、礼を言おう」

サバサ王「お主こそ、真の勇者よ!」

結局、姫が誘拐されたという誤解は晴らさないことになった。
サラにとっても、そのほうが面倒は無いのだろう。

サバサ王「そして、1人の親としても礼を言わせてもらおう」

サバサ王「ルカ君、ありがとう・・・!君のおかげで、我が娘は救われたのだ・・・!」

ルカ「あ、いえいえ・・・」

表情では繕っているが、実際は疲労困憊だ。
ピラミッドに向かうまでの無補給クイック移動
ピラミッド内での連戦に次ぐ連戦―――

飢えも喉の渇きも限界に達しようとしていた。
そして――――

ルカ「・・・っ」

遂に眩暈がして膝をつく。
恐らく日射病と軽度の熱射病、それに軽い脱水症状だろう。

サバサ王「まさか・・・依頼した直後から向かっていたのか?」
サバサ王「いや・・・帰還の早さを考えるとそうに違いないな」

サバサ王「疲労した勇者をもてなすとしよう!準備は出来ておる!」
サバサ王「どうか、好きなだけ召し上がられるといい」

こうして、宴が始まったのであった。
料理の方は十分に美味しく、僕の料理レシピがさらに増えた。

サバサ王「ところでルカ君、サバサの次期副国王になってみる気はないかね」

サバサの副国王つまり―――
サラとの縁談だ。

ルカ「お心は嬉しいのですが・・・僕には成さねばならない使命がありますので」

サバサ王「君が重い宿命を背負っているのは分かる。だが―――」

まずい。このままだと縁談が本格的に進んでしまう。

ルカ「あれ・・・?そう言えば、サラ王女はどこです?」

僕は思い切って話題を変えてみることにした。
当の本人が宴だというのに姿を見せていない。
城を抜け出した可能性があるし、リリス3姉妹を警戒しておく必要性もまだある。

サバサ王「サラなら、少し準備が手間取っておるようだ」
サバサ王「ルカ殿、せっかくなので勇者の手でここにエスコートしてくれんだろうか」

ルカ「分かりました・・・行ってきます」

これ以上縁談を進められるのも厄介だ。
無理やり話を切ったのに、妙にすんなり行くことに疑問を持ちながらも宴の席を中座し、沙羅の部屋へと向かったのだ。

しかし、それはサバサ王の巧妙な罠だった!

僕は妙に重い扉を開けて、サラの部屋に入る。

ルカ「サラ、準備はまだかい?宴は始まってるんだけど・・・」

サラ「はぁ?準備なんてとっくに終わってて、お父様に呼ばれるまで部屋に居ろって言われたんだけど・・・」

ルカ(しまった!)

一瞬で齟齬に気づき、部屋を出ようとドアノブに手をかけた瞬間だった。

サバサ王「ぬぅぅ・・・ふんっ!」

扉の向こうで、めきゃりと何かが潰れる音がした!

ルカ(やられた!ドアノブを握りつぶしたな!)

サバサ王「これは失敬・・・私としたことが、うっかりドアノブを握りつぶしてしまった」

うっかりじゃねーだろ。あからさまに恣意的だっただろ。
僕は言葉を飲み込んだ。

サバサ王「この壊れようでは、修理するまでドアは開くまい」
サバサ王「すぐに職人を連れてくるから、一時間ほど中で待っていてくれ」

サラ「お父様!?何のつもりです・・・!?」

サラの声を無視して、サバサ王は去ってしまった。
サラと2人きりで、この部屋に閉じ込められてしまった!

ルカ(まずい!サバサ王は全て計算済みだ!)

サバサ王からしてみればここで過ちが起きてくれた方が都合がいいのだ。

ルカ(まずい・・・まずいぞ!)

僕は脱出方法を模索した。

ルカ(テレポートで脱出しようにもここはサバサ城・・・効果があるかは微妙だ)
ルカ(かといってワープで移動して、もう1回唱えて戻ってくるか?)
ルカ(ダメだ・・・それこそ誘拐じゃないか。なら・・・)

ルカ「仕方ない・・・ちょっと乱暴だけど無理やりこじ開けるか」

壊れたドア(???製)が現れた!

ルカ「気合を込めて・・・正拳突き!」

ルカは地面を踏みしめ、正拳突きを繰り出した!

壊れたドア(???製)に600のダメージ!

ルカ「・・・・・・っ!堅い!なんだこれ!木製の扉じゃない!」

僕の体をっ突き抜けたのは―――明らかに金属の感触だった。

ルカ(扉は破れなくても、鍵の部分を完全に破壊して出れると思ったけど・・・)
ルカ(脱走に備えてそこも鋼鉄製になってる!)

ルカ「全力を出そう・・・」

ルカ「はぁぁぁ・・っ!」

ルカは闇の気を練った!

ルカ「いざ、羅刹と化して!羅刹掌!」

ルカは拳に気を集中し、羅刹掌を繰り出した!

会心の一撃!壊れたドア(鋼鉄製)に2000のダメージ!

ルカ「~~~~~っ!堅い!堅すぎて破れない!」

僕の渾身の一撃でさえ扉は変形すらしない。
武器は全て預けてある。魔法を使えばどうにかなる問題でもない。
完全に詰みだ。

サラ「ドアは無理でも窓からなら・・・」

ルカ「流石にそれはまずいだろ・・・」

建前上は鍵が壊れてしまっただけなのだ。
ドアが開けば、適当に回したら開いた と出来るが・・・
更に1時間で直すと言っているのに、窓を破壊するわけにもいかない。

ルカ「はぁ~・・・」

僕は深いため息をついた。

サラ「本当にごめんね、ルカ。お父様、あんたを随分と気に入っちゃったみたい」

サラ「そしてあんた・・・本気を出せば相当強いのね」
サラ「鋼鉄製のドアをぶっ叩いて、あんな爆音を出せるなんて・・・」

ルカ「本気じゃなくて全力だよ・・・無茶をすればもう少し威力を上げれるけどね」

僕がそう呟いた直後だった。

サラ「でも・・・せっかくだから、恩返しもしたいし・・・」

サラが不穏な言葉をしゃべる。
僕は恐る恐るサラの方を向く。
サラがにじり寄ってくる。僕は思わず後ずさる。

サラ「ここで断られたら私の方が大恥なんだけど・・・」

これは・・・完全に詰んだ。































「あひぃぃぃっ!」





























サバサ王「もうここを発つのか、名残惜しいことよ・・・」

ルカ「旅の目的の為に、色々情報を集めねばなりませんし・・・」

サバサ王「情報・・・そういえばこの城の牢に情報屋とやらが捕らえられていると報告があったな」
サバサ王「そちらへ向かってみるといい」

サバサ王「また近くに来た際は、この城に立ち寄ってくれ」
サバサ王「では、お主の冒険に幸運のあらんことを」

サバサ王「その剣が、これからも多くの人を救うことを期待している」

ルカ「ありがとうございます。では・・・!」

僕たちは謁見の間を後にし、兵士に案内され、地下牢を訪れた。そこには―――

残念なラミアが現れた!

アミラ「あら、ダーリン―――」

ルカ「ノームの居場所も変わっていなさそうだね。北にあるサファル遺跡に向かおうか」

アミラ「流石ダーリン・・・でもまだ情報は―――」

ルカ「姫様の誘拐なら僕が解決したよ」

アミラ「・・・っ!流石、流石ダーリン・・・!」

ルカ「よし。もう少しサバサ内を散策して目的地へ向かおうか」

ビクンビクンと痙攣するアミラを見て、ドン引きする兵士を背に僕たちはサバサへと戻った。

僕はサバサにて剣を鍛えてもらい、ようやく慣れ親しんだホーリーカスタム改を手に入れた。

アリス「ルカよ。このままサファル遺跡へと向かうのか?」

ルカ「ううん。もう1箇所だけ見ておきたい村があるんだ・・・」

アリス「料理が旨ければ許す」

ルカ「残念だけど・・・料理は期待できないよ。それどころか・・・血生臭い事になると思う」
ルカ「でも、そこには行かなきゃいけないんだ。料理は僕が頑張るから免じてほしい」

アリス「むぅ・・・仕方ないな」

アリスをどうにか納得させることができた。
対アリス関連で最も役立ってる技能は料理技能だと確信してる。

向かう場所は魔女狩りの村―――
向こうでは2派に分かれて戦争のような事をしていた場所だ。
ただ排斥思考が強いから、少しだけ情報を集めたい。

そう思いサバサを回りながら情報収集をしていた。すると―――

神父「「魔女狩りの村」ですね。知っています。そこでは女領主が住民や旅人を捕らえて拷問、処刑を繰り返しているのです」

神父「「魔女」とは、女だけを指しません。老若男女を問わず、疑われた者は容赦なく連行されるのだとか・・・」

僕は思い切り顔をしかめた。
これじゃぁ向こうよりも情勢が悪いじゃないか。
向こうでは間違ってはいたけれど、同じ境遇の人間を救おうとしていたのに―――

ルカ「急いで向かわなきゃ・・・」

僕は神父にお礼を言うと、アリスを納得させるだけの食糧を買い込んで、魔女狩りの村へと向かった。

ここまで。

Q:なんでルカさんは早とちりしたの?

A:向こうのサラの淫魔化の原因がリリス3姉妹で、くえ世界で彼女たちがいないという確証がなかったから。
  更に、サラ自身が王城から脱走することは経験上考えられなかったため。

次は執筆上最大の壁であった「魔女狩りの村」です

先にネタバレしますと、ぱらルカさん(主人公)はイリアスベルクにて迫害は受けていないと考えられたため
くえルカさんのような闇を抱えていないと推測。その為くえすと!の本筋にどうやっても戻しようがなく、仕方なく自分のオリジナルにしました。

オリジナルなど不要だ! というかたは明日投稿分は読み飛ばしてください。

といっても、大きく変わっているのはVSリリィ時におけるルカさんの精神状態ぐらいですが・・・

それでは

魔女狩りの村は、向こうと同じどころか更に活気のない、どんよりとした雰囲気の村。

ルカ「魔女狩りの村・・・」

向こうとでは情勢がほとんど異なる。周囲を警戒しながら僕は町中へと進んだ。

アリス「それで・・・どうするつもりだ」

ルカ「主犯たる領主を倒す。目星はついているから・・・」

アリス「権力に対して力で訴える。勇者らしくないな」

ルカ「それでも、この状況だけは打破しないといけないからね」

向こうでは発明した魔術を広めるか、抑えるかで戦争が起きていた。
その状況も危機的だったけど、今の状況はその数倍悪い。

そう話をしていると、いかにもガラの悪そうな兵士2人が、向こうから近づいてきた。

兵士A「そのこ旅人!少しばかり調べさせてもらう!」
兵士A「ヨソ者が、この村に何をしに来た!?」

兵士B「そこの女、その髪の色は何だ!?貴様、魔女の疑いがあるな・・・!」

2人の兵士は、まずアリスに狙いを付けたようだ。
兵士の1人が、ナイフのようなものを取り出す。

ルカ(あれは・・・)

商人の経験から、あれは刃を押し付けると刃そのものが引っ込むトリックアイテムの1つだ。
この道具を使って、刃物で刺したのに血が出ないというこじつけを作って、連行していたのだろう。

兵士A「まほじゃ、傷つけても血が出ないという」
兵士A「よってナイフを軽く手の甲に刺し、魔女かどうかを判別するのだ」

兵士A「当然のことながら、魔女でなければ血は出てくるはず・・・分かったな」

アリス「ああ、面白そうではないか」

アリスは素直にも手を差し出した。
あの顔は何かを企んでいる顔だ・・・

兵士の一人がアリスの細い手を掴み、その手の甲にナイフを軽く刺す。

アリス「痛・・・っ」

すると―――刺された部分から、血がぽたりぽたりと滴り始めたのだ。
本来血は流れるはずはないのに、出血する。
アリスらしい皮肉の利いた態度だ。

兵士A「えっ・・・」

兵士B「そんな・・・馬鹿な・・・!」
兵士B「お前・・・ほ、ほんもの・・・」

兵士2人はわなわなと震えはじめ――――そしてナイフを放り出して逃げ去ってしまった。

アリス「ふん・・・少し驚かせてやっただけで逃げおって」
アリス「兵士どもは、領主の権力を笠に着てやりたい放題のようだな」

ルカ「これで倒さない理由が尚更なくなったな」
ルカ「でも一応情報収集はしておかないと・・・」

そう思い町の人達に情報収集をしてみるが、よそ者とは話せない。の一点張り。
挙句協会は資金が流れてくる関係で、腐敗していると来た。

その中で唯一と言っていいほど得られた情報。それが―――

老人「この村は、昔から魔術師や知識人を排除してきたのじゃ」
老人「しかし、リリィ様が領主になってからは、明らかに度を超えて、狂気さえ感じるほどに魔女狩りが激しくなった」

というものだった。

ルカ(おかしい。確かリリィは―――)

向こうの世界の事情を思い出す。

確か向こうは女性が酷い差別を受けていて、その中でリリィは魔術を開発。
リリィが領主を殺すことにより、魔女狩りは収まった。

だが、その魔術を広めるか否かで意見が二つに分かれ、戦争状態になった。

というものだったはず・・・
つまり、この状況の村はリリィがその領主の状態そのものということだ。

ルカ(結構事情が変わってる・・・)
ルカ(でも、向こうと違って明確な敵でいてくれるおかげで、気兼ねなく倒すことが出来る!)

向こうはどちらの言い分も半ば間違っていなかったからこそ迷ったが――――
こっちはそんなことは起きなさそうだ。

ルカ「よし。領主の館に乗り込むか」

閑散とした村に建つ、ひときわ豪華な館。
そこが領主の住処という事は、誰が見ても一目でわかる。

アリス「余は適当に待っているぞ。人間同士の問題だしな・・・」

ルカ「うん。作り置きしておいた料理でも食べて待っててよ。すぐに片付ける」

そう言って僕は領主の館へと乗り込んだ。

門の前では2名の兵士が立ちふさがっていた。

ルカ(一応人間だし・・・傷つけるのは最後の手段にしよう)

取り敢えず平和的に交渉してみる。

ルカ「あの・・・ここの領主に会いたいんだけど」

兵士C「なんだ、貴様!?リリィ様はお前などにお会いにならん!」

兵士D「貴様、怪しいな・・・もしかして魔女か?調べさせてもらうぞ」

兵士たちは予測した通りの対応をしてくる。
でも僕にとっては2重の意味で好都合だ。

ルカ「シルフ!」

シルフの力を使い、周囲に強烈な風を呼んだ。
凄まじい突風に煽られ、兵士の兜が地面に転がる。

兵士C「な、なんだ・・・これ・・・!?」

兵士D「ま、まさか・・・本物の魔女・・・?」

ルカ「なんだ・・・本物を見たこともなかったのか?」

そう言いながら僕は右手に炎を、左手に氷を発生させる。

兵士C「ま、魔女だ・・・!ほんものだぁ・・・!」

兵士D「ひぃぃ、逃げろぉ・・・!」

兵士2人は僕を捕らえるどころか、たちまち逃げ出してしまう。
僕は空け放たれた門を堂々と潜り、館へと踏み込んだのだ。

ルカ「やっぱり・・・」

領主の館の中は、大して向こうとは変わりなかった。
魔女狩りを行う主が、最も魔女に近い―――なんとも皮肉な話だ。
そして目の前には―――向こうの世界でも倒したリリィが立っている。

ルカ「お前は――――」

リリィ「私がこの村の領主、リリィ。メーストル。森羅万象の理を追求し―――」

ルカは先手を取った!

ルカ「闇を引き裂き光を照らせ!雷鳴突き!」

ルカは雷鳴の様に踏み込み、鋭い突きを繰り出した!

リリィに750のダメージ!

リリィ「いきなり攻撃してくるなんて―――」

ルカ「受けよ、剣と拳の雨あられ!クレイジータイム!」

ルカは拳と刃を同時に振るった!

リリィに750のダメージ!
会心の一撃!リリィに1500のダメージ!
リリィに800のダメージ!
リリィに700のダメージ!
リリィに750のダメージ!
会心の一撃!リリィに1550のダメージ!

リリィ「くぅっ・・・!話も終わっていないのに―――」

リリィは猛攻に耐えられず膝をつく。

ルカ「とりあえずお前を倒せば丸く収まるんだ。因果応報。大人しく倒されろ」

リリィ「そういうわけにはいかないのよ!」

リリィの攻撃!

しかし、ルカはひらりとかわした!

ルカ「気力チャージだ・・・はぁっ!」

ルカは気力をチャージした!

リリィの攻撃!

ルカは150のダメージ!

ルカ「はぁぁぁ・・・っ!」

ルカは闇の気を練った!

リリィ「闇の気・・・!」

リリィ「させません!」

リリィの攻撃!

ルカは120のダメージを受けた!

ルカ「とりあえず戦闘不能になれ」

リリィ「ひっ・・・」

ルカ「受けよ、剣と拳の雨あられ!クレイジータイム!」

ルカは拳と刃を同時に振るった!

会心の一撃!リリィに1600のダメージ!
会心の一撃!リリィに1500のダメージ!
会心の一撃!リリィに1450のダメージ!
会心の一撃!リリィに1550のダメージ!
会心の一撃!リリィに1650のダメージ!
会心の一撃!リリィに1550のダメージ!

リリィ「あぁぁぁぁ・・・っ!」

リリィをやっつけた!

ルカ「さぁ。大人しくお縄に着くんだ。お前は酷いことをし過ぎた」

リリィ「酷いこと・・・?私が、この村に?逆よ!私が、この村に酷いことをされたのよ!」

リリィの感情が爆発する。
そしてリリィは己の身の上話は始めた。

リリィ「――――私と母が、どれだけ辛く惨めな思いをしてきたか、あなたに分かる・・・?」

ルカ「不幸自慢は、それで終わりか?」

ルカは容赦なくエンジェルハイロウをリリィへと突き下ろす!

会心の一撃!リリィに800のダメージ!

ルカ「お前が何をされたか じゃなくて、お前が何をしてきたかなんだよ!」
ルカ「迫害される苦しみを知っているお前が、なぜそれを他人に振りまいた!」

ルカは更に容赦なくエンジェルハイロウをリリィへと突き下ろす!

会心の一撃!リリィに900のダメージ!

リリィ「そんな綺麗事を・・・!この村の連中なんて報いを受けて当然よ!」

ルカ「・・・っ!向こうのお前は違った!方法は間違ってはいたけれど、それでも同じ境遇の人間を救おうとしていた!」
ルカ「その良心の欠片すらお前にはないのか!」

ルカ「もういい。少しは可能性を信じたかったけど、もういい」

ルカ「完全に戦闘不能になれ」

ルカは両手で容赦なくエンジェルハイロウを突き下ろす!

会心の一撃!リリィに1000のダメージ!

リリィ「こ、こんな・・・私の力が・・・」

リリィの両腕が消散し、人間の腕に戻ると、リリィは地面に倒れ失神した!

リリィをやっつけた!

満身創痍のリリィは地面に横たわったまま動かない。いや、動けない。
殺してこそいないが、暫くの間は自力で動くことは不可能だろう。

ルカ「村人に引き渡そう・・・」

僕に出来ることは、正当な裁きが成されることを祈るのみだった。

その後領主の館に捕らえられていた者たちは、みな解放された。
リリィの魔力が封じられると同時に、皆我に返ったのだ。

村内では再開の光景をあちこちで見れる一方
戻って来ない者を呼ぶ声が、あちこちで悲痛に響く。その中に――――

女性「姉さん・・・!ルシア姉さんは、いないの・・・!?」

ルカ(ルシア?!)

ルシアは確か向こうではレジスタンスたちのリーダー。
あの魔術を外に広めまいとする筆頭存在だったが―――

ルカ(こっちの世界では――――残念だ)

僕は向こうでの仲間を1人失っていた。

青年「勇者様には、どれだけ感謝してもし足りない・・・歓迎の準備は出来ているから―――」

ルカ「いえ・・・結構です。ぢうかリリィに、戦闘かつ厳正な裁きを」

僕はそう告げると、足早にその場を離れた。
そして、村の外れまで来たとき―――アリスが、僕の後ろに立った。

アリス「浮かない顔だな。どうした?円満解決のはずだろう?」

ルカ「向こうで領主・・・リリィは間違ってはいたけれど、彼女なりに同じ境遇の人を救おうとしていた」
ルカ「同じ人物のはずなのに・・・どうして大きく違ってしまうことがあるんだろう」

「自分の耳には今も悲痛な叫びをあげる女性の声が聞こえる」
そう告げて僕たちと戦ったリリィはいなかった。ただ復讐に駆られた醜い女がいただけだった。

ルカ「行こう。アリス。あとは村の人達で決める事だ・・・」

アリス「そうだな・・・」

僕たちは魔女狩りの村を後にした。

ここまで 

ルカさんのリリィに対する激昂の理由を大幅に改編しました。迫害が無かったからね!しょうがないね!

くえルカさんは「迫害で受けた苦しみをさらに他人に振りまいた」ことに対してでしたが、(実際はほかにもいろいろありますが・・・)

このぱらルカさんは「此方のリリィに対する失望」として書かせて頂きました。

最後はサファル遺跡ですが、特に大きな改変はありません。

それでは

僕たちはサバサで再び補給を終えた後、ノームへと会いに行くことにした。

アリス「ふむ、いよいよノームの元へと行くのか。ノームの力を得ればこんな暑い地域にとどまる理由はない」
アリス「やり残したことは無いな?」

ルカ「ないよ。サファル遺跡へ行こう!」

僕たちは来たのサファル遺跡へと向かったのだった。

ルカ「随分と砂漠化が進行してるなぁ・・・」

見たところは一面の砂漠。でも目を凝らせばあちこちの砂の間から柱の残骸がのぞいていた。
向こうとの差異は砂漠化が思いっきり進行していたくらいか。

アリス「ノームの居場所に目星はついているのか?」

ルカ「う~ん・・・ここまで進行していると目安となる目印もないし・・・」
ルカ「土人形を見つけて、その後を追ってみるよ」

アリス「随分と面倒だな・・・余はそこらへんで休んでいるぞ」

そういうとアリスはどこぞに消えてしまった。
そして僕は、砂漠での行動では下策ではあるが、当てもなく周囲をうろつくことにしたのである。

ルカ「おーい、ノームー!いるんなら、出てきてくれよー!」

そう叫びながら、周囲を練り歩いていると―――
人形のようなものが、ちょこちょこっと横切った気がした!

ルカ(見つけた!)

砂漠の中を叫びながら移動するのは下策中の下策。喉の渇きが進むので、なるべく早めに終わらせたかった。
そんななかで比較的早く土人形が見つかったのは僥倖と言うしかない。

ルカ(あれを追っていけば―――)

そう踏み出した時、流砂に足を取られ、真ん中へと引きずり込まれる。

そしてその中央にアリジゴク娘が姿を現すが――――

ルカ「邪魔だよ」

僕はエンジェルハイロウをその顔面に容赦なく突きおろして封印すると、流砂から抜け出て泥人形の後を追った。

暫く泥人形を追いかけると、ノームが泥人形を抱えて立っていた。

ルカ「ノーム・・・だよね?」

ノーム「・・・・・・」

僕がそう呼びかけると、ノームはこくりと頷いた。

ルカ「君の力を貸してほしんだけど・・・」

僕がそう言った時だった。

シルフ「わーい、ノームちゃんだー!」

唐突に、僕の中にいるシルフが姿を現した。
こういう形で現れるのは初めてなので、新鮮な気分だ。

ノーム「・・・・・・」

シルフ「ねぇ、ノームちゃん。この人間に憑りついて、いっしょにあそぼーよー♪」

ノーム「・・・・・・」

シルフ「・・・そうなの。そうだね、ノームちゃんはルカと会ったばっかりだもんね」

ノームは基本的に喋らない。その通訳が出来るのはシルフくらいなので、説明を求めてシルフの視線をやる。

シルフ「力を貸してほしかったら、その前に力を示せだって」

ルカ「なるほど・・・分かった」

僕はそう言うと二刀流スタイルになる。
向こうと同じならばそれなりの強敵。気は抜けない!

ノームの周りに、何体もの泥人形が現れる。相変わらず魔力は凄まじい。

ルカ「手加減は・・・する余裕はなさそうだな!」

ルカ「はぁぁぁ・・・っ!」

ルカは闇の気を練った!

土人形Aの攻撃!

ルカは10のダメージを受けた!

土人形Bの攻撃!

ルカは10のダメージを受けた!

土人形Cの攻撃!

ルカは10のダメージを受けた!

土人形Dの攻撃!

ルカは10のダメージを受けた!

ノームの攻撃!

ルカは200のダメージを受けた!

ルカ「行くぞ!はぁぁぁっ!」

ルカは2本の刃で撫で斬りにした!

会心の1撃!土人形Aに4000のダメージ!
会心の1撃!土人形Bに3800のダメージ!
会心の1撃!土人形Cに4100のダメージ!
会心の1撃!土人形Dに3900のダメージ!
会心の1撃!ノームに3500のダメージ!

土人形A・B・C・Dは崩れ去った!
ノームの攻撃!

ルカに180のダメージ!

ルカ「てやっ!」

ルカの反撃!

ノームに400のダメージ!

ルカ「受けよ!剣と拳の雨あられ!クレイジータイム!」

ルカは拳と刃を同時に振るった!

会心の一撃!ノームに1600のダメージ!
会心の一撃!ノームに1500のダメージ!
会心の一撃!ノームに1450のダメージ!
会心の一撃!ノームに1550のダメージ!
会心の一撃!ノームに1650のダメージ!
会心の一撃!ノームに1550のダメージ!

ルカ(よし!いい手ごたえだ・・・!)

そう思った時だった。

ノームは魔力を集中している!

ルカ「なんだ・・・!?」

嫌な予感がする。次の攻撃は絶対に避けなければ。

ノームは魔力を解き放った!流砂が津波の様に押し寄せてくる!

ルカ「―――!シルフッ!」

僕はとっさにシルフの力を使い、僕の周りに突風の壁を作り、砂の津波から身を守った!

ノームは砂の津波にのみ込まれてしまった!
ノームは2183のダメージを受けた!

ルカ(ノーム、思いっきり自分の攻撃に巻き込まれてたぞ)

ルカ「どこに行ったんだ・・・?あっ!」

見れば、砂の中からノームの帽子が覗いている。
急いで掘り出してみると―――ノームは完全に目を回していた。

ノームをやっつけた!

ルカ「大丈夫か・・・?」

ルカは拳と刃を同時に振るった!

ノーム「・・・・・・」

ノームはぱっちりと目を開け、こくこく頷いた。
そしてじっと僕の顔を見上げ、右手をすっと差し出す。

ルカ「はい、あくしゅ」

ノームの意図を悟り、その手を握ると―――
ノームの体が光に包まれ、そして消えてしまった。

ルカ「これは―――」

またしても懐かしい感覚が戻った。

感慨深く思っていると、不意に僕の心の中で、変な2人が形を成した―――

シルフ「わーい♪ ノームちゃんもいっしょー♪」

ノーム「・・・・・・」

ルカ「ノームとシルフは仲がいいの?」

シルフ「うん♪あたし達、とってもなかよしなんだよー♪」

ビシィ!

シルフ「ひゃぁ!」

ルカ「・・・・・・」

心の中のノームの様子を見るに、本当に嫌がってはいなさそうだ。
間違ってはいない・・・と思う。

アリス「ふむ、ノームの力を手に入れたようだな」

ルカ「あっ、アリス。なんとかなったよ」
ルカ「後の精霊は2体、ウンディーネとサラマンダーだな」

アリス「シルフもノームも魔力こそ膨大だが、戦闘には不慣れだった」
アリス「しかし、ウンディーネとサラマンダーはそうはいかんぞ」

向こうでノームはパワーファイターとしてそこそこ戦い慣れていたんだけど―――
ここは敢えて黙っておこう。

アリス「ウンディーネはなかなかの手練れだし、サラマンダーに至っては―――」

ルカ「サラマンダーに至っては・・・?」

含みのある言い方に僕は戸惑う。

アリス「・・・まぁ、黙っておくとしよう」

若干不満だが、アリスが黙っておくことには必ず意味があると思う。
だから続きは聞かなかった。

アリス「ところで、ノームの力はどうなのだ?」

ルカ「うん―――」

僕はノームの力を開放する。

ルカ(あれ・・・?)

向こうの世界での地面の隆起による攻撃は起きなかったけど、土の力は体に宿ったようだ。

ルカ「ていっ!」

違和感を覚えながらも、僕は虚空に向かって剣を振る。
どうやら土の力による攻撃力増加は失われていないようだ。
でもそれだけではなさそうだ。

アリス「平行世界の件、常々疑問に思っていたが・・・ここまでくると信じざる負えんな」

どうやら使い方は間違っていなかったらしい。
僕は胸を撫で下ろした。

アリス「それで、どうするのだ?次の地方に向かうのか?」

ルカ「ううん。それよりも先に、一旦イリアスヴィルに帰るよ。調べなきゃいけない事とがある」
ルカ「それに次のノア地方は、サバサからは遠すぎるからナタリアポートから東へ行った方が早いし」

アリス「そうだな・・・時魔法が使えれば、一度行った町へはすぐに行けるからな」

ルカ「うん。それじゃぁ・・・」

僕はアリスの肩に手を置く。そして―――

ルカ「ワープ!」

時魔法を詠唱して懐かしのイリアスヴィルへと移動した。

ルカ「っと!」

僕は自分の家の目の前に立っていた。
丁度いい―――戻ってきた口実を考えなくて済む。

ルカ「急いで中に入るよ」

アリスにそう告げると、僕は鍵を開け、家の中へと戻った。

その後、アリスに料理を餌付けして黙らせると、僕は自室の本棚を漁り、この世界の僕自身の事について細かく調べ始めた。

ルカ(――――。なるほど)

一通り調べ終わった頃には、もう夜だった。
書かれていた内容はショックなものだった。

まず、父さんとラザロさんが、魔物を排斥する組織、「イリアスクロイツ」を立ち上げていたこと。
次に、その父さんが魔物によって殺されていたこと。
そして―――僕と母さんが、よそ者ということで10年近く前まで迫害を受けていたこと。、

ソニアの件を除けば、この3点が僕自身に関係する大きなことだった。

アリス「ルカどうだった。向こうとこっちの差は?」

ルカ「結構大きいのがあったよ・・・特にイリアスクロイツに関しては、いずれ決着を付けなきゃいけない」
ルカ「世界は変わっても・・・身内が起こしたことだからね」

アリス「そうか・・・。だがこちらの世界の住人は、貴様の知る向こうの世界の住人とは似て非となるもの」
アリス「無理に気負う必要はないのだぞ」

アリスは僕の表情から察してか、珍しく気の利いた言葉をかけてくれた。

ルカ「ありがとう。アリス・・・」

アリス「ところで夜ももう遅い。余はどこで眠ればいい?」

感謝した途端にこれである。

ルカ「とりあえず客間のベットを使って。明日の早朝にはすぐに発つから」

アリス「うむ。分かった」

そういうとアリスは僕の部屋から去って行った。

ルカ「夜も遅いし、僕ももう寝よう」

最後の1冊を片づけると、僕も慣れ親しんだベットに横になり眠りについた。
この世界の父さんのこと、ラザロさんの事。色々あるけど今はとにかく休む必要がある。
そう思い夢の世界へと旅立った。


――――――――

―――――

―――

???「・・・い!」

ルカ「うん・・・?」

耳に聞きなれた怒鳴り声が聞こえる。

アリス「いつまで寝ているのだ!このドアホめ!」

ビシィ!

ルカ「痛っ!」

鞭のようなもので叩かれ、僕は無理やり目を覚めさせられた。

ルカ「もう朝か・・・ごめんアリス。すぐにナタリアポートで食材を揃えて―――」

アリス「寝ぼけているのか!今日も管理者の塔で仲間の育成だろうが!」

ルカ「それは向こうの世界の話だって――――え?」

ふとした違和感が僕の意識を一気に覚醒させる。
管理者の塔の事についてはアリスに話していないはず。ならなぜ―――

僕はゆっくりと声の主に目を向ける。そこには―――

ルカ「え・・・?」

小さいアリスが居た。

ルカ「!!」

僕は嫌な予感がしてアリスを無視して荷物を置いている場所まで走る。
そこには――――

ルカ「えええええええええええええええ!」

『向こうの』世界で使っているはずの武具一式が並んでいた。

アリス「説明してもらうぞ・・・」

ルカ「うん・・・」

ソニア「どういうこと?」

プロメスティン「興味深いですね・・・」

ポケット魔王城会議室。
そこには僕とアリス、ソニア、そしてプロメスティンが座っている。

プロメスティン「要点を整理しましょう」
プロメスティン「ルカさんは夢の中で、異世界の自分と入れ替わる夢を見たのですね?」

ルカ「うん・・・」

プロメスティン「それだけなら問題ではありません。問題はその内容」

プロメスティンは僕の話したことを要領よく話していく。

大異変が無かったこと
アリスの事
エンジェルハイロウの事
ソニアの事

などなど、タルタロスを介して異世界に移動しなければ起きえない僕の体験を並べていく。

プロメスティン「・・・という様に、ルカさんが体験したことは、別の世界のルカさんと入れ替わらなければ起きえない事です」

アリス「余も半身半疑だったが、エンジェルハイロウの事を使っていたかのように詳しく語られたからな・・・」

ソニア「つまり・・・ルカは昨日一晩で別世界のルカに成り代わって、冒険をしていたって事?」

プロメスティン「俄かには信じがたいですが・・・」

アリス「さらに言えば、ルカの体験してきたことは、あのウサギや17世、ネロの言っていたことと酷似している」
アリス「ソニアが居なく、イリアスベルクでグランベリア、海神の鈴の時の7尾、その後のたまもの言動、サバサ王の件などなど・・・」

アリス「無関係とはいい難いな」

ソニア「それで・・・ルカは一旦こっちに戻って、向こうの世界の自分の事を調べて、自分のベッドで寝たんだよね」

ルカ「うん・・・そしたら、こっちのアリスにたたき起こされた」

その場に沈黙が降りる。
完全に無関係とはいい難い。でも検証する手段が全くないのだ。

プロメスティン「どのような条件でそのようなことが起き、ルカさんの体験した世界は一体何なのかを確かめる術もありませんが・・・」

プロメスティン「1つだけ言えることはあります」

アリス「ほぅ」

プロメスティン「ルカさんは、自分の部屋のベッドで 就寝したら、入れ替わったという事です」
プロメスティン「もう1つは言えそうなのですが・・・確定に足る材料が無いので言えませんが」

ソニア「つまり、ルカは今後この家の自分のベッドで寝たら、異世界に飛ばされるってこと?」

プロメスティン「必ず起きるわけではありませんが、その可能性がある とだけは言えます」

さっき僕はその信憑性を確かめるために、もう一度自分のベッドで魔法をかけられて眠ってみた。
でも向こうに移動することは無かった。

ルカ「それで・・・今後はどうしようか」

かなり煮詰まったので、今後の事について話題を変えてみる。

アリス「そうだな・・・ウサギの言っていることと、体験したことが似ている以上、寝ぼけているでは済まされないな」

プロメスティン「今後も洞窟が通れるようになるまでは、管理者の塔で鍛錬なので、その間はここを拠点としましょう」
プロメスティン「そして、仮にルカさんが再び移動して帰ってきたら、起きたことを事細かに聞いてみましょう」

ソニア「それが一番よさそうね・・・」

アリス「よし!これで方針は纏まったな。今後は拠点をここにしつつ、何かあれば報告を受ける」

ルカ「それじゃぁ遅くなったけど、管理者の塔に向かおうか」

ソニア「そうね!」

こうして僕は、こちらの世界の何時もの日常に帰って来た。
僕が体験してきたことは一体何なのか。いつか分かると信じて、今できることを始めたのだ。
それが世界の真実に繋がると信じて!

僕たちの戦いはこれからだ!

これにて前章完結です。

俺たちの戦いはこれからだ!ENDだけど、ぱら中章・終章がない以上仕方ない事だと思って諦めました。

このオチになることは執筆当初から分かってたので、決して手抜きではありません。


書いてみての反省点

・戦闘が単調過ぎた。強くてニューゲームなら仕方ないけど、それでも工夫の余地はあったはず。

・絶望的なまでの表現力の無さ。

・くえすと!の世界観完全レイプ。時魔法とかチートじゃないですかねぇ・・・


中章、終章に関してはぱらの方が発売されて、やりこんだ後に考えます・・・

短い間でしたが、読んでいただきありがとうございました。

それでは

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