白菊ほたる「運命の輪」 【ウルトラマンジード×シンデレラガールズ】 (81)


(プロローグ)


 街に響く地鳴り、悲鳴、サイレン――

 しかしその少女は、何も聞こえていないかのように足を動かしていた。

 鋼鉄の肉体を持つ、冷徹な機械怪獣。

 その巨躯を目の前にしても、彼女は動じていなかった。

 怪獣が重々しく足を持ち上げ、その影に彼女が呑み込まれる。

 今にも踏み潰されそうになった刹那、浮かべていた表情は――

 疲労と、深い諦念と、ある種の決意が綯い交ぜとなり、

 僕の心を突き刺して止まないほど、

 沈んだ情調に彩られていた。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1553063410


※ウルトラマンジード×アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。

※過去怪獣のリメイクという形でオリジナル怪獣がいます。

※捏造設定・独自解釈などご注意ください。

※ジード18話「夢を継ぐ者」から21話「ペガ、家出する」の間の話です。

※遅ればせながら、ほたるちゃん、総選挙12位、CDデビュー決定おめでとうございます。

※白菊ほたる(13)
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira158433.jpg


(一)


P「次のライブ、ソロでいこうと思ってる」

 それは、冬に向けて空気が冷たくなってきた十一月、ある雨の日のこと。
 雨粒が窓を叩く中、私を呼び出したプロデューサーさんはそう切り出しました。

 しとしと、しとしと。

 やけにはっきりと聞こえる雨音。
 まるで部屋の中だけ時が止まったみたいに、雨音だけが時間を削り取っていく。

P「ほたる?」

 どれだけ時間が経ったかわからなかったけれど、彼の呼びかけで私は我に返りました。
 心配そうにこちらの表情をうかがってくる姿に、ずき、と胸が疼きます。

ほたる「ソロ……ですか」

P「うん。これまでは茄子さんとのユニットだったけど、そろそろひとりでステージに立ってもいい頃合いだと思うんだ」

ほたる「…………」


P「これは総合的に判断してのことだ。ほたる自身の人気も上がってきたし、取材や撮影はもうソロでもこなせるようになってる」

ほたる「…………」

 しとしと、しとしと。

 雨音が心臓の奥深くをざわつかせる。
 これは予感だ。きっと、良くないことが起きるという予感。

P「ファンもほたるが主役のステージを見てみたいと思ってるはずだ」

ほたる「…………」

 しとしと、しとしと。

 ひとつ雨粒が落ちるたび、私の中に波紋が広がっていく。
 止むことのない波紋の連鎖。どこか、目に見えない深い底にまでそれは伝播して、声の無いサイレンが耳の奥に響く。

 ――ダメだ。

 断ろう、そう思いました。しかし――


P「実はもう曲も発注してるんだ」

 それを聞いて、私の言葉は口の中に留まりました。

P「デモを聴いてみたけど、すごく雰囲気があって、ほたるにピッタリの曲なんだ」

ほたる「…………」

P「俺自身、ほたるの一ファンだから、君がこの曲を歌っているのを聴いてみたい」

 彼の眼が私の眼を見詰める。
 まっすぐな視線。お金と欲望と謀略とが渦巻く芸能界にあって、あまりにも無垢な情熱。

 ――あの日、私を拾ってくれた時も。

 同じような眼を向けてくれた。
 ともすれば消えてしまいそうだった私の灯を、再び点してくれた。


ほたる「……やります」

 しとしと、しとしと。

ほたる「やらせて……ください」

 しとしと、しとしと。

P「……そうか!」

 それを聞いて彼の顔がぱあっと明るくなります。
 さっきの言葉に何ひとつ嘘はないのでしょう。そういう反応だし、彼はそういう人だ。

 資料を持ってくると言って慌ただしくデスクに戻るプロデューサーさん。
 その間も雨音は続いていました。しとしと、しとしと。しとしと、しとしと。

 しとしと、しとしと――――

 私は思う。
 私の最大の不幸は、自分の手で、自分を破壊できないことなのだと。


 私、白菊ほたるは不幸体質でした。

 これだけ聞くと鼻で笑われるかもしれない。
 私もそうであればいいと思う。ちょっとアンラッキーなことが起こったとき周りに同情を求める、どこにでもいる女の子のひとりであればと。

 でも私の場合はやっぱり特殊な体質のようで。

 外に出れば雨が降り、道を歩けば植木鉢が落ちてくる。
 喫茶店に行けばグラスが割れ、電車やバスに乗ればかなりの頻度で遅延が起きる。
 これが日常茶飯事なのだから「ちょっと」という程度ではない。そう、思う。

 もっとも私としてはこの体質と長く付き合っているのでもう慣れてしまっていました。
 なのでこのようなアクシデントが起きた際、案じるのは巻き込まれてしまった人たちのことでした。

 にわか雨のせいで私と同様に濡れてしまう人がいる。
 店員さんがグラスをひっくり返したことで余計な仕事を増やしてしまう。
 電車やバスの遅延などは言うまでもありません。

 私がこれまで所属してきた事務所にいた人たちにも迷惑をかけたでしょう。
 これまで四つの事務所を経験してきたけれど、以前までの三つは全て倒産していました。


 その後、今のプロデューサーさんに拾われ、私は現在この事務所にいます。
 またもや迷惑をかけてしまうのではないかとこの体質のことを打ち明けたとき、彼はひとつ提案をしました。

P『うちの事務所にはさ、めちゃくちゃ運がいいお姉さんがいるんだ』

P『その人とユニットを組んでお仕事してみよう。そしたら不安も晴れるよ』

 そのお姉さんというのが茄子さん――鷹富士茄子さん。
 私より七つ年上の茄子さんはプロデューサーさんの言う通り常軌を逸脱した幸運の持ち主で、私とはまるで対照的でした。

 おみくじの類では毎回大吉、ガラポンを回せば必ず特等を引く。
 お年玉付き年賀状は全て当選し、どんな荒天の予報でも彼女が出掛ければ快晴と変わる。

 そんな彼女だからいつもにこやかで、周りもまたそれに引っ張られて笑顔を咲かせていました。
 幸せが幸せを生む好循環。彼女は私の理想としているアイドル像を実現させていました。

 私の不幸は相殺されたのか、それとも掻き消されたのか。
 それはよく分からないけれど、お仕事においては、今のところ大きな不幸が襲ってくることはありませんでした。
 せいぜいたまに機材の調子が悪くなったりするくらいで、私は安心してアイドルを続けることができていました。

 だけど――


ほたる(次のライブは、ひとりで……)

 プロデューサーさんの意図はわかっています。
 もうそろそろ茄子さんから独り立ちさせなければいけないと考えているのでしょう。
 それは正しい。私も、いつまでも彼女におんぶにだっこのままでいいとは思っていません。

ほたる(だけど……)

 胸に広がり続ける波紋はいつまでも止むことはありませんでした。
 勝手に鳴り響く不協和音が体の内から起こり、私の脳を絶えず揺さぶりました。
 取り返しのつかないことをした、そう訴えかけられている気がしました。

ほたる(だけど……)

 だけど。
 私は諦められませんでした。

 茄子さんの手を借りずともひとりでアイドルとして活躍し、私の手で皆を幸せにしたい。
 そんな夢を手放すことができなかったのです。

 こんな身の丈に合わない夢、諦めてしまえばいい。壊してしまえばいい。そうすればもっと楽に生きられる。
 そんな考えが頭をよぎったことも一度や二度ではありませんでした。しかしそのたび私はそれを振り払いました。

 私の夢は既に私の存在意義と化していました。
 それを否定することは私という存在と歴史を踏み躙ることと同義でした。

 それ故、私は自分の夢を諦められませんでした。
 自分で自分を破壊することができませんでした。

 畢竟、私の最大の不幸はそれでした。


   ・
   ・
   ・
   ・
   ・


 ソロステージの話をもらってから四か月――
 ハードなレッスンの日々を経て、私は当日の朝を迎えていました。

 六時に設定していたスマートフォンの目覚ましアラームを止め、ベッドから出ます。
 もう三月ですが、まだまだ朝は寒い。ぶるっと体が震えます。

 インスタントのココアを作って温まろう、そう思ったのですが電気ポットの調子がよくありませんでした。
 仕方ないのでそれを諦め、洗面所に行って顔を洗いました。
 水がくるくると回り、排水溝に流れていく。何の気なしにそれをぼんやり見詰めたのち、蛇口を閉めました。

 リビングに戻ると昨夜のうちにコンビニエンスストアで買っておいたおにぎりに手を付けます。
 ライブの当日に料理をするとどんなトラブルが起きるかわかりません。
 リスクをできるだけ減らすこと、この不幸体質と付き合ううちに私はそれを身にしみつかせていました。

 身支度を整え、忘れ物がないか入念にチェックします。
 まだ会場入りには早い時間でしたが、移動の際のトラブルを考慮すると早いに越したことはありません。
 玄関で折り畳み傘をバッグに忍ばせ、私は家を出ました。


 案の定電車が遅延しましたが、致命的なものではなく、私は無事に会場に着くことができました。
 一番乗りだったようで、楽屋には誰もいませんでした。
 ひとりで段取りのチェックをしたり、歌詞や振り付けの確認をします。
 少しするとプロデューサーさんや共演者の皆さんが来たので挨拶をします。

 十一時のリハーサル開始まで着々と準備が整っていました。
 初めてのソロデビュー。その時が刻一刻と近づいていることに胸が高鳴ります。
 私は興奮していました。いよいよ私の夢を叶えることができるのではと、そう思っていたから。

 ですが――

 それは、前触れもなくやってきました。
 午前十時五十三分。そろそろ舞台裏へ向かおうと腰を上げた、その時でした。

ほたる「ひぁっ……!?」

 建物が揺れたのです。――地震。
 さあっと体が冷えるのがわかりました。やはり逃れられないのか、そんな思いが頭をよぎりました。

P「ほたる!」

 プロデューサーさんは私の肩に手をやって、体勢を低くするよう促しました。
 照明がついたり消えたりを繰り返していましたが、揺れは案外すぐ収まり、照明もすぐ安定しました。


ほたる(よかった……)

 ほっと胸を撫で下ろします。
 しかしすぐハッとなってかぶりを振ります。私は無事でも他の人がどうかはわかりません。
 もしかして作業中のスタッフさんが何らかの怪我に見舞われたりしているかもしれません。

 言わずとも理解してくれたのか、プロデューサーさんは、

P「今からスタッフさんたちの安否を確認してくるから、ほたるはここで――」

 そう言おうとしたのですが、けたたましい音によってそれは遮られました。
 不安を煽る甲高いサイレンの音。それが外から響いてきたのです。

『怪獣が出現しました。落ち着いて避難してください』

『繰り返します。怪獣が出現しました。落ち着いて避難してください』

 続いて、そんなアナウンスの声が。
 抑揚をつけながらもきっぱりと、それでいて固い声質で危機を伝えます。

『怪獣が出現しました。住人の皆さんは直ちに避難してください』

『繰り返します。怪獣が出現しました。住人の皆さんは、落ち着いて避難してください』


P「……ほたる!」

 プロデューサーさんが私の手を取ろうとして、「熱っ!」と叫んで引っ込めました。
 ですが気にしている余裕もなかったようで、代わりに手首を掴んで引っ張ります。
 彼に連れられて一目散に廊下を駆け、非常口から会場を出ます。

 瞬間、轟音が鼓膜を揺らしました。
 頭蓋に振動が走り、思考に電流が走ります。
 悲鳴が上がり、それが街中に伝播します。

 恐怖が恐怖を呼ぶ悪循環。
 至る所から悲鳴や怒号が飛び、車のクラクションが鳴り、そしてそれらを掻き消す地鳴りと破壊音が響き渡ります。

ほたる(何が、起きて――)

 私はそれすら分かっていませんでした。
 人の逃げる方向に従い、プロデューサーさんに手首を握られて走るだけ。

 いったい何が。これも私の不幸が呼び寄せたことなのか。
 好奇心なのか責任感なのか。私は轟音の源である背後を振り向きました。


怪獣「――――」

 そこにいたのは――人型の巨大ロボットでした。
 黒をベースとし、全身に隈なく幾何学的な白いラインが走っています。
 鋭角的な肩当てや、V字型になっている頭部を見ると、豪壮な甲冑を着込んだ西洋騎士にも見えました。

 その頭部にはバイザーのような形をした青白い発光体があり、それが怪獣の眼に見えました。
 そして――

ほたる「…………」

 その眼がじっと私を見ている。
 そう思えてなりませんでした。

P「ほたる!」

ほたる「!」

 知らぬ間に足が止まっていたようで、プロデューサーさんの声が飛びます。
 腕を引っ張られ、またも走り出します。

 頭が混乱します。何でこんなことになっているんだろう。
 今さっきまで夢が叶えられると期待していたはずだったのに。

 ずっと走り続けていたせいで脚も痛み出します。
 息が切れ、小刻みな喘鳴が少しずつ私の精神を削り取っていきます。


 グオオオオオオン……という重々しい音が背後から聞こえてきたと思うと。
 凄絶な破壊音がし、同時に、私の全身から汗が噴き出ました。

 ――危ない。

 自分の身に危機が迫っている。私はそれを本能で察知していました。
 一斉に鳥肌が立ちます。何物かが空気を切る音を耳が捉えます。

 巨大な何かが背後に近づいてきている、それを感知します。
 振り返ると空中に瓦礫が浮かんでいました。
 浮かんでいるのではありません、落下していました。
 視界の中でそれが急速に巨大化していきます。
 さっきまで石ころみたいな大きさだったのに、今では一軒家一戸分はありそうな大きさに――

P「危ないっ!!」

 私の体が突き飛ばされます。
 視線が空から逸れ、地面の方に転じます。
 そのまま私は道路に倒れ込みました。
 咄嗟に突き出した手で顔を守りましたが、膝をすりむきました。

 直後、私の身が飛び上がりそうな揺れが起こります。
 突風が吹き、粉塵が舞います。細かいコンクリートの破片が私の背中に降り注ぎました。


ほたる「……?」

 何が起きたか分からず、私はすぐさま立ち上がってプロデューサーさんの方を振り返りました。
 そこにあったのは巨大な建物の瓦礫でした。私の背丈の二倍くらいはありそうなそれが目の前に立ち塞がっていました。

 いつの間にか街中に響いていた悲鳴がなくなっていました。
 サイレンとアナウンスと、怪獣の地響きだけが街の空気を震わせていました。

 足元に何かが触れました。
 目をやると、赤い水溜りが広がり、私の爪先にまで流れてきていたのです。

 それは瓦礫の下から広がっていました。
 そしてその真ん中に、何かがありました。

 肌色で、生々しい質感を持った腕でした。
 私がずっとずっと何度も何度も見返してきた腕でした。

ほたる「いや…………」

 何が何だか分からなくなっていました。
 心と体がきれいに分断され、心もまた二分されていました。
 何かを口から迸らせている自分と、それを冷静に見下ろしている自分がいました。
 しかし程なくして何もかもが収束し、一致し、私は全てを理解しました。

 私の喉は痛いほどに叫び、私の心は絶望を叫んでいました。

ほたる「嫌ああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」

 絶叫が響き、サイレンがうなり、轟音が全てを破壊し、呑み込み、巻き込み、うねり――
 そしてそれらは渦を巻き暗転する視界と共に――――


ほたる「――――!!」

 ――ピピピピピピッッ!!
 けたたましい目覚ましアラームの音が、部屋に響いていました。

ほたる「…………?」

 ガタガタと体が震え、全身が熱い。
 まるで全力疾走をした直後のように息が切れていて、はぁ、はぁと浅い呼吸を繰り返している。

 どうして……?

ほたる「……?」

 何か、嫌な夢でも見ていたのでしょうか。
 寝汗がぐっしょりで、まずはシャワーを浴びなきゃと思わせられました。

 今なお鳴り響いているアラームを止めます。
 スマートフォンのデジタル時計はちょうど朝六時を示していました。


 さっとシャワーを浴びたのち、洗面所で歯を磨きます。
 くるくると回りながら排水溝に吸い込まれていく流水を見ながら、私はふと首を傾げました。

 昨夜のうちに買っておいたおにぎりを食べることにします。
 しかし何かが変でした。温めてもいないのにお米が熱くなっていたのです。

ほたる「……?」

 何かが引っ掛かる。何か重要なことを忘れている気がする。
 考え込もうとして右手を頭に当てた時でした。

ほたる「熱っ……」

 すぐさま手を引っ込めます。自分の手のひらを見詰め、そっとほっぺたに触れさせてみます。
 ――熱い。異常なほど熱を持っていました。

ほたる「風邪……?」

 体温計を腋に挟んで計ってみましたが、平熱でした。
 ということは手のひらだけが熱くなっているのです。何かの病気なのでしょうか。


 いや、それよりも――
 さっきも感じた違和感。それはデジャヴに近いものでした。
 頭の中の切れ端に引っ掛かり、しかしその正体が分からないから、胸の奥にもどかしさが募ります。

ほたる「……しっかりしなくちゃ」

 発熱している両手で頬をぱしっと叩きました。
 今日は念願のソロデビュー。私の夢を叶える日なのですから。

 テキパキと朝食を済ませ、身支度を整えます。
 忘れ物がないか入念にチェックし、玄関に出ます。

 玄関のチェストの上に置いてある折り畳み傘。
 それにも強烈な既視感を覚えましたが、無視してバッグに突っ込みました。


   ・
   ・
   ・


P「そろそろ行くか?」

 楽屋。プロデューサーさんは少し不思議そうな顔をしながら私にそう訊きました。
 私がしきりに壁の時計に視線を送っていたからでしょう。

 しかし私が時間を気にしていたのはリハーサルの開始時間のせいではありませんでした。
 なら何かと訊かれれば、それは答えられない。分からないのです。何か不安めいた感情が胸に渦巻き、私の眼を時計の針に誘導してしまうのです。


 針は十時五十分を指していました。
 確かに、正体不明の不安は関係なく、そろそろ舞台裏に向かうべき時間です。

ほたる「はい。……行きます」

 楽屋を後にし、廊下を歩いていきます。
 カツン、カツン、という二人分の足音が響きます。

 カツン、カツン――――

 プロデューサーさんの革靴と、私のブーツの足音。
 リノリウムの廊下に靴底が触れるたび、まるでそこから波紋が広がるように、音が広がっていきます。

 そしてその音は私の心の奥底を震わせ、幾重もの波紋となるのです。
 広がり、絶えず、止まない、不協和音を奏でながら、五感とは違う感覚を呼び起こすのです。

ほたる「プロデューサーさん」

 耐えられなくなって、私は足を止めました。

ほたる「今、何時ですか……?」

P「ん? えーっと、十時五十三分だな」

 怪訝そうな顔をしながら腕時計を確認するプロデューサーさん。
 十時、五十三分。その数字を耳にし、私の中でガチャリと、鍵が外れた音がして――


 ――――ドンッ!!!
 地面をどよもす音が響いたかと思うと、建物が揺れ始めました。

ほたる「……!」

P「ほたる!」

 私の肩に手をやり、体勢を低くするよう促すプロデューサーさん。
 ああ、これは。これは。これは――

ほたる「怪獣……」

P「え?」

 揺れが止むと、今度は外からサイレンが聞こえてきます。

『怪獣が出現しました。落ち着いて避難してください』

『繰り返します。怪獣が出現しました。落ち着いて避難してください』

 聞いたことがあるアナウンス。
 台詞の一字一句も、声の波も、全部記憶にある。

 そして、これから起こることも――


ほたる「に……逃げましょう……!」

 私は急いでプロデューサーさんの手を握りました。すると、

P「熱っ!」

 咄嗟にプロデューサーさんが私の手を振りほどきます。
 ハッとなって私の顔を見詰め、ぱちぱちと瞬きします。
 だけどそんなことは後回しだと考えたのか、立ち上がると共に私の手首を握り、走り出しました。

ほたる(これじゃ、また……)

 また、同じことが起こってしまう。
 どうにかして変えなければならない。私はプロデューサーさんの背中に呼び掛けました。

ほたる「プロデューサーさん! 非常口じゃなくて、正面から出ましょう!」

P「ダメだ、非常口の方が近い」

ほたる「お、お願いします! 正面からの方がいいんです!」

 こちらを振り返るプロデューサーさんの顔は怪訝そうでしたが、頷いて進路を変えてくれました。
 確か夢の中(?)では非常口から出たら怪獣に出くわしたはず。正面から出れば逃げられるはずです。


 しかし――

ほたる「はぁ、はぁ、はぁっ……」

 息を切らしながら正面玄関から出た直後のことでした。
 私たちの目の前に、あのロボット怪獣が降り立ったのです。

P「――危ないっ!!」

 怪獣の眼がキラリと光ったと同時に、私の体は突き飛ばされました。
 目の前を駆ける金色のレーザー光線。タイル張りの道を砕き、無数の瓦礫と砂礫を巻き上げます。
 うわあっという男の人の短い悲鳴が上がったと同時に、プロデューサーさんの姿が見えなくなりました。

ほたる「はっ、はっ、はっ…………」

 砂埃が拡散し、薄くなります。
 そこに、プロデューサーさんの姿はありませんでした。

ほたる「どうして……」

 全身が震え出す。両手で頭を抱え、髪をくしゃくしゃに搔き乱す。

ほたる「嫌ああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」


 私の喉が叫び声を上げたその時でした。
 私は、私の服の中から光が溢れ出しているのに気付きました。

 恐る恐る襟を引っ張り、中を覗いてみます。
 アクセサリーは何も身につけていません。キャミソールや下着を透かして、光はその奥にありました。

 私の体の中でした。
 丸い球体をした金色の光が私の体内に存在し、光を放っていたのです。

 輝きを増していくその光に目が眩みます。
 瞬間、全身が捩じれるような感覚に襲われます。
 まるで排水溝の渦の中に吸い込まれているかのよう。

 足元の感覚がなくなり、どっちが天でどっちが地か分からなくなります。
 前後不覚の状態で私の体は回り続け、どこかへ吸い込まれ、そして――

ほたる「――――ハッ!!」

 私はまた、ベッドの上で目を覚ましました。


ほたる「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」

 今度は覚えている。震える手を見詰めます。
 建物の揺れ、けたたましいサイレン、怪獣の襲来、発熱した手、プロデューサーさんの死――
 それらの悍ましい光景がはっきりと脳内にこびりつき、私の体はぐっしょりと汗に濡れていました。

ほたる「あれは……夢じゃ、ない……」

 胸に手を当てます。熱い手のひらが更に発汗を促します。
 肩で息をしながら、私は必死に頭を動かします。めちゃくちゃに乱れた思考を何とか形にしようとします。
 目覚ましアラームを止め、スマホで時間を確認します。六時ちょうど。日付も変わっていません。

ほたる「会場に、行ったら……」

 十時五十三分に建物が揺れ、怪獣の出現を知らせるサイレンが鳴る。
 一度目は非常口から、二度目は正面玄関から逃げた。
 しかしどちらも怪獣がすぐ近くに現れた。
 そしてプロデューサーさんが私を庇い、命を落とす……。

ほたる「それから……ここに、戻ってくる……」

 何故かは分かりません。だけど実際に起こっていることでした。
 あの胸の中の光が関係しているのでしょうか。だとしたら、これは私が引き起こしたことなのでしょうか。


ほたる「……うぅぅぅ~~~~~~っ!!!」

 頭を抱え、ぐしゃぐしゃに髪を搔き乱します。
 どうして、どうして、どうして。どうしてこんなことが起きているのか。
 どうして、こんな訳の分からない現実に襲われなければならないのか。

ほたる「う、うぅぅっ、ひぅぅっ」

 自然と嗚咽が漏れ、溢れ出した涙が布団に落ちていきます。
 布団を顔に押し当て、私は叫びました。声にならない声で。
 でも、その行為には何の意味もありませんでした。

ほたる「はぁ、はぁ、はぁっ……」

 ひとしきりそうした後、私はばたりと倒れ込みました。
 ぼんやりと天井を見詰めます。寝汗が酷く、体を冷やしていきます。
 それでも私は無為に時間を浪費していました。

ほたる(警察に行って話を聞いてもらう? いや、きっと誰も信じてくれない)

ほたる(こんな私の言うことなんか、誰も……)


ほたる(このまま、家でじっとしていたら……?)

 少なくとも、私があの場に居合わせることはなくなる。
 でも私だけ助かったところで、多くの人が不幸になることに変わりはありません。

ほたる(………………)

 どうすればいいのだろう、考えが浮かんでは消え、訪れては過ぎ去ります。
 目を閉じ、瞼の裏の温度を感じていると、いつの間にかうつらうつらとしていました。

 いくら時間が経ったのでしょう、私はスマホの着信音で目を覚ましました。
 プロデューサーさんからメッセージが届いていました。「どうした? トラブルでもあったか?」と。
 時間表示は八時四十五分を指していました。完全に遅刻です。

ほたる(プロデューサーさんに、打ち明ければ……)

 そうも思いました。警察は信じてくれなくても、プロデューサーさんならもしかしたら。
 しかし――先の二回、私を庇ったことで彼は命を落としました。
 彼を巻き込めば、また同じことが繰り返される危険性があります。

ほたる(ほんとうに、どうしたら……)

 頭を悩ませます。十五分おきに彼から連絡が入りましたが、私は答えられませんでした。
 メッセージ、メール、電話、心配されていることが手に取るようにわかってしまいます。

 そして七回目の連絡が来た十時十五分。私は通話ボタンを押しました。


P『ほたる!?』

ほたる「……ごめんなさい、プロデューサーさん」

P『一体どうしたんだ? 何かトラブルがあったのか? 大丈夫か?』

 真摯な声で質問を繰り返すプロデューサーさん。
 胸が痛みます。

ほたる「あの……風邪を、ひいたみたいで……それで、寝込んでいて……」

P『風邪? そんなに酷いのか? 体温、計ってみたか?』

ほたる「えっと……三十九度――」

 そこで私は電話を切りました。
 すぐさま電話がかかってきます。しかし私はそれに応じませんでした。
 少しして電話が止み、部屋が静かになりました。
 恐らく、車に乗り込んだのでしょう。

 こうすればプロデューサーさんは会場から離れて私の家に来てくれるはずです。
 そうなれば彼が怪獣に襲われることにはなりません。


ほたる(……ごめんなさい……)

 自分の知っている人だけ助けようなんて、最低の発想です。
 人を幸せにするアイドルになりたいはずだったのに、こんなの矛盾しています。
 布団の中で自分の体を抱きしめながら、私は時間が過ぎるのを待ちました。

 十時五十分、五十一分、五十二分――
 着々と時間が進んでいきます。五十三分と表示され、私は目を瞑りました。
 ちょうど会場の近くに怪獣が出現する頃合いです。

ほたる「――!?」

 しかし、そうはなりませんでした。
 私の部屋が揺れたのです。窓の外から地鳴りが響いてきたのです。

ほたる「どうして……」

 少し間を置いてサイレンが鳴り響きます。
 怪獣の足が地面を踏みしめる重々しい轟音が聞こえてきます。

 パジャマのまま家を飛び出し、表に出ます。
 怪獣が居ました。私の住むマンションの、すぐ近くに。

ほたる「どうして……!!」


 そして、最悪なことに。

P「ほたる!!」

 背後からプロデューサーさんの声が聞こえてきて、私のそばに駆け寄ってきました。

P「大丈夫だったか!? 早く逃げよう!」

 怪獣の眼が私を見詰めます。
 私の体は石になったように動きません。

 怪獣の右手に光が纏われ、それが銃のような形になりました。
 その銃口がこちらを向きます。私に、向けられます。

P「危ないっ!!」

 視界が閃光に満ちると同時に、私の体は跳ね飛ばされ、同時に爆音が耳をつんざきました。
 立ち上がると同時に背後を振り返ると――道路にぽっかり穴が開き、プロデューサーさんの姿はどこにもありませんでした。

ほたる「どうして……どうしてぇぇえええええっっ!!!」

 絶叫と共鳴するかのように胸の奥に光が溢れ、私の体を覆い尽くします。
 またあの感覚。宙に浮かんだように前後不覚になり、どこかに吸い込まれる感覚。


ほたる「――っ!!」

 そして気付くと、私は部屋のベッドの上、目覚ましアラームの音の中にいました。

ほたる「うぅぅぅ……ぁああああああああああああ!!!!」

ほたる「ぁあッ、ああっ!! あああああああああっっ!!!」

 喉が枯れるほど叫び、私は泣きだしました。
 あの怪獣は私を狙っているのです。だからこちらに来たのでしょう。
 ならば成す術がない。十時五十三分、私がいる場所はあの怪獣によって踏み躙られるのです。

ほたる「うぅぅぅうう~~~~~~っっ!!! あぁぁあああ……!!!」

 何度やり直しても、もうどうすることもできない。
 私がいる限りあの怪獣は現れ、皆が不幸になる。
 どこへ行っても、逃げ場所なんてないのです。

ほたる「ああぁぁああううううう……っっ、うっ、ひぐっ」

 誰に頼ることもできない。頼ればその人を不幸にしてしまう。
 私という不幸の病原菌がこの世に居座り続ける間、それは永久に続くでしょう。
 そして私は何度もやり直し、その事実を突きつけられ続けるのでしょう。

ほたる「…………いや」


 頭の中に雷光が走ったかのようでした。

ほたる「ひとつだけ……ひとつだけ、手がある」

 私はスマホを手に取り、アドレス帳から「鷹富士茄子」の名前を探しました。

茄子『……はぁ~い……?』

 電話に出た茄子さんの声は明らかに眠たげでした。
 当然でしょう、朝の六時なのですから。興奮して配慮できていなかったことを反省します。
 しかし今はそれどころではありません。一刻も早く確認しなければなりません。

ほたる「茄子さん、今日の私のライブ、見に来ますか?」

茄子『え? それはもちろん~行かせてもらいますけど』

ほたる「あ、あのっ、私やっぱり不安で……だから、リハの前にも一度茄子さんに会っておきたくて」

茄子『……ほたるちゃん……』

ほたる「お願いします、あの……一生のお願いです。だから……」

 すると受話器の向こうで茄子さんがくすりと笑いました。


茄子『わかりました~、かわいいほたるちゃんの望みなら。リハは何時ですか?』

ほたる「……! 十一時です。なので、十時半くらいにお会いできたら」

茄子『了解しました~。じゃあ、十時半にまた』

ほたる「は、はい……! ありがとうございます!」

 胸に希望が湧いてきました。
 茄子さんなら。皆を幸せにできる茄子さんであれば、私の不幸なんて払いのけて、怪獣すら跳ね飛ばしてしまうかもしれません。

 私は彼女の幸運を間近で見てきました。
 彼女がいれば大丈夫。そう信じることができました。

 ベッドから下り、私は身支度を始めました。


   ・
   ・
   ・


P「どうしたほたる? まだ時間はあるぞ?」

ほたる「は、はい。そうなんですけど……」


 そして会場。
 いつも通り一足先に入り、段取りなどを確認し、リハーサルに備えていたのですが――

 約束の時間、十時半を過ぎても茄子さんが来ません。
 まさか朝早くの約束だから忘れてしまったのでしょうか。茄子さんに限ってそんなことないとは思うのですが……。

 十時三十三分。私のスマートフォンが鳴りました。
 掛けてきたのは茄子さん。私は急いで通話ボタンを押しました。

ほたる「か、茄子さん……!」

茄子『ごめんなさい~っ! タクシーで行く予定だったんですけど、ちょうど渋滞が起きちゃってて、間に合いそうもなくて』

 さあっと、全身から血の気が引きます。
 立っていられるのが不思議なくらい、私は全身の感覚をなくしていました。

茄子『うーん、こんな日もあるんですねえ、珍しい……。あの、ほたるちゃん? 聞いてますかー?』

 ――ガツッ。

 手からスマホが滑り落ち、床に落ちて画面が消えました。
 プロデューサーさんが驚いて私に何か話しかけてきます。
 でも、何も頭に入りませんでした。「外の空気を吸ってきます」、口をそう動かして、私は楽屋を出ました。


 幸運の茄子さんが、不運にも渋滞に捕まって会場に来られない――
 これは「不運」ではありません。「幸運」だからこそです。

 幸運だから、不幸の私がいる場所に来られないように、神様が仕組んだのでしょう。
 悪いのは怪獣ですらない。疫病神の私だったんだ。

 ふらふらと道を歩いていきます。
 キーーンという音が空中から聞こえ、ロボット怪獣が空から飛んできます。
 瞬く間に大きくなったその影は地上に着地し、地面を揺らしました。

 一瞬の静寂の後、悲鳴が上がり、人々が逃げ始めます。
 サイレンが鳴り、怪獣出現を知らせるアナウンスが街に響きます。

 人の波とは逆に、私は怪獣の方へ近づいていきます。
 顔を上げると、目が合いました。重々しく足を持ち上げ、怪獣が一歩を踏み出します。

 目と鼻の先まで近づいて、私は大きく溜め息を吐きました。

 重い荷物を下ろしたように、心が軽くなっていました。
 そうだ、最初からこうすれば良かったんだ。私がいなくなればみんな幸せでいられるんだ。


 怪獣の足が上がり、私の頭上を覆います。
 私の体はその影に呑み込まれ、強い圧迫感を覚えます。

 これでいい、これでいい、これでいい――
 私がいなくなればいい、これで全部上手くいく――

 ――よくないよ。
 ――何もよくない、何も上手くいかない、私がいなくなったところでどうにもならないよ。

 何故かそんな声が聞こえます。
 どこからでしょうか。私の内から?

 でももう、何を思おうがこれで終わりです。
 怪獣の足が下ろされます。数秒後、私はぺしゃんこに押し潰されてしまうのです。

 プロデューサーさん、茄子さん、事務所のみんな、ありがとう。
 こんな私を応援してくれたファンのみんな、ありがとう。
 私をこれまで育ててくれたお母さん、お父さん、ありがとう――

 走馬灯が巡り、たくさんの人の顔が過ぎっては消えていきます。
 さようなら――、ダメだよ――、これでいい――、よくないよ――

 そんなざわめきを黙殺するように、私は瞼を下ろしました。
 頭上の存在感が徐々に近づき、圧迫感が強まり、そして――






「――――危ないっ!!」






 そんな叫び声がした後、私の体は宙に浮かんでいました。
 直後、すぐ近くから響く轟音。怪獣の足が下ろされた音です。

 また? そう思いましたが、違いました。
 男の人の声でしたが、プロデューサーさんではありませんでした。
 私の体を抱きかかえていたのは、見ず知らずの青年でした。

 ネイビーのデニムジャケットに、オレンジ色のTシャツ。
 癖っ毛は4:6くらいで分けられていて、険しい顔つきもどこかあどけなさを感じさせました。

??「何であんなところにいたんだ、危ないだろ! 早く逃げなきゃ」

 でも、それが誰かということを思うより先に、私の口は勝手に動いていました。

ほたる「どうして――……」

??「え?」

ほたる「どうして、助けたんですか――……」

 私の頬に熱い感触が一筋落ち、それと同時に、意識が溶けて消えていきました。






 畢竟、私の最大の不幸は。

 自分の手で、自分を破壊できないことなのだ。

 存在しているだけで周りの全てを不幸にしていると自覚していてもなお。

 私は、私を殺せないでいる。






(二)


リク「――異次元人ギギ?」

 星山市天文台地下500メートルに位置する秘密基地。
 “星雲荘”と名付けられたその場所で、朝倉リクは画面越しにAIBのゼナと話していた。

ゼナ『そうだ。スパイ活動をしていた奴らを捕らえ、吐かせた。どうやら地球侵略計画を立てているらしい』

リク「侵略計画……!」

ゼナ『今からデータを送る』

 画面が分割され、横半分にその怪人の姿が映る。
 黒い体をベースとして、白いラインで隈なく幾何学模様が描かれている。

ゼナ『ギギ族は我々の世界とは異なる次元に住む種族だ。だがその次元が何らかの原因で崩壊の危機にあり、こちらの世界への移住を計画したらしい』

リク「移住って言ったって、どうやって?」

ゼナ『奴らは高度な科学力を持ち、異なる次元間を自由に移動できるゲートを発明している』

ゼナ『ただ、通常はそれでも二、三人の移動が限度のようだ。そのため、二千億人の住人全てを移送できる大規模なゲートを作ろうとしている』


リク「『作ろうとしている』ってことは……まだ完成してないってことですか?」

ゼナ『ああ。そのためには膨大なエネルギーが必要らしく、しかもそれは崩壊の危機に瀕している彼らの次元では賄えない』

ゼナ『そのエネルギー源として目を付けたのが、我々の世界に散らばるウルトラマンキングの力ということだ』

リク「リトルスター……!」

ゼナ『そう。奴らはリトルスターの保有者を襲撃する計画を立てている』

ゼナ『その力を使い、ゲートを完成させ、我々の世界を侵略しようとしているんだ』

リク「なんてことを……」

ペガ「そのギギって奴らは強いの?」

ゼナ『我々が対応した個体は雑魚だった。しかしリトルスターを狙う際には恐らくレギオノイドが使われるだろう』

リク「レギオノイド……」

レム『ベリアル軍が所有していたものを、奪ったのでしょうか』

ゼナ『そのように言っている。この間のダダが駆っていた個体のように、ギギオリジナルのカスタマイズもされているらしい』


リク「ギギが現れる場所、リトルスターの保有者の居場所はわかるんですか」

 リクがそう訊くと、ゼナは首を横に振った。

ゼナ『残念だが……奴らは完全に神出鬼没だ。リトルスターの保有者が先に見つかれば我々で保護できるのだが……』

レム『ギギ族は高度な科学力を有しています。私たちより先に保有者を見つけ出す可能性も十分にあると思われます』

リク「そうか……」

ゼナ『我々も二十四時間体制で街を見張るが、君たちにも協力を要請したい』

 リクは神妙にうなずいた。

リク「もちろん。レム、高い数値の反応が出たらすぐに報告して。僕が寝てても起こしてよ」

レム『了解しました』

 そして、それから四日後。
 午前十時五十分、リトルスターの反応がキャッチされたとレムが伝えた。

リク「レム!」

レム『はい。エレベーターで転送します』


 現場に着いたリクはまず逃げ惑う雑踏に目を向けた。
 しかし、

レム『リク、そちらではありません。逆です』

リク「逆?」

 そうレムに言われレギオノイドの方に目を向ける。
 すると、何と怪獣の方へ歩いていく少女がいた。慌てて走り出す。

 近づくにつれ、彼女の横顔が見て取れ、リクは不思議に思った。
 その表情は疲労や諦念が見て取れ、そしてそこにある種の決意が混じっていた。
 判断能力をなくしているのではない。何かの意図をもって怪獣に近づいているのだ。

 レギオノイドが重々しく足を持ち上げる。
 それが振り下ろされると同時にリクは地面を蹴った。

リク「危ないっ!!」

 リクの体には超人的な能力が宿っていた。
 その瞬発力は二人の距離を一瞬にして詰め、彼女の体を抱き留めながら、道の反対側へ転がった。


リク「何であんなところにいたんだ、危ないだろ! 早く逃げなきゃ」

 少女の顔を見ながらそう叫ぶ。
 だが返ってきたのは思いもよらない言葉だった。

少女「どうして――……」

リク「え?」

少女「どうして、助けたんですか――……」

 そしてそのまま少女は目を閉じ、ぐったりと力が抜けた。
 意識を失ってしまったようだ。その頬には、一筋涙が伝っていた。

リク「…………。ライハ!」

 その呼びかけに応じて、すぐさまエレベーターでライハが昇ってくる。
 少女を彼女に預け、リクは変身アイテム“ジードライザー”を構えた。

リク「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」


リク『――融合!』

 リクがウルトラカプセルを起動する。
 一本目は光の戦士、「ウルトラマン」のカプセルを。

リク『アイ、ゴー!』

 二本目は闇の戦士、「ウルトラマンベリアル」のカプセルを。
 ジードライザーを起動し、ナックルに装填した二本のカプセルをスキャンする。

リク『――ヒアウィーゴー!』

≪フュージョンライズ!≫

リク『決めるぜ、覚悟! はぁああ……っ、はっ!』

 スキャナーの中央に青と紫の光が走り、二重螺旋を形成したそれらが混じり合う。
 赤く染まった光が放たれ、リクの掛け声とともに、彼を本来の姿に変貌させていく。

リク『――ジーーーーード!!!』

≪ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!≫

≪ウルトラマンジード! プリミティブ!!≫


ジード「――シュアッ!!」

 レギオノイドの前に降り立ったのはリクの変身するウルトラマン――ウルトラマンジード。
 銀・赤・黒を基調とした体躯。何より特徴的なのは縦に長く、鋭い瞳。

ギギ『成程、これがベリアルの息子……ウルトラマンジードか……!』

 そう、それこそが彼の受け継いだ遺伝子を如実に表すものだった。
 悪のウルトラ戦士、ベリアルを親に持つウルトラマン。それでいて正義の心を持つヒーロー。
 それが彼、ウルトラマンジードだった。

ジード「ハァァッ、シュアッ!」

 独特の構えから低い体勢となり、レギオノイドに向け走り出す。

レギオノイド「ギ、ギ、ギ」

 レギオノイドが眼からビームを放つと同時に飛び上がり、その勢いのまま膝蹴りを叩きこむ。

ジード「テヤッ!」

 よろめいたところを見て胴体にパンチを入れる。
 ゴン、という鈍い音が鳴り、攻撃したジードの方が痛そうに手を振った。

ジード「グッ……」


レギオノイド「ガ、ギ、ギ」

 レギオノイドの右腕に光が纏われると、拳状だった手が長いドリルに変わった。

レギオノイド「ギュ、ガ、ギ、ギ、ギ」

 ジードの胸にその切っ先を向ける。
 激突と同時に火花が散り、ジードは背後に突き飛ばされた。

ジード「ジァッ……!」

ギギ『ハハハ! 我らギギ族の科学力で改造したこのレギオノイドのパワー、とくと味わえっ!』

 ドリルを回転させながらレギオノイドが接近してくる。
 刺突攻撃を転がりながら躱す。しかし狭い街中だ、逃げ場所にも限度がある。

レギオノイド「ギュ、ガ、ガ、ギ、ギ」

ジード「テアァ……ッ!!」

 再びドリルに突き飛ばされたジードは後方の建物に倒れ込んだ。
 ウルトラマンの重量に押し潰され、粉々に砕け散ってしまう。


ジード『レッキングリッパー!』

 瓦礫のなか身を起こし、体の前で腕を交差させ、溜めたエネルギーを光刃にして放つ。

レギオノイド「ギ、ギ、ギ、ギ」

 レギオノイドは即座にドリルからビーム光線を放ち、空中で相殺した。
 恐らく搭乗して操っているのもゼナの言う雑魚ではなく、軍人のように高い戦闘力を持つ者なのだろう。
 出し惜しみをしていたらやられてしまう、そう判断する。

レム『リク。カプセルの交換を提案します』

リク『わかってる! 反撃開始だ!』

 リクは装填しているカプセルをセブンとレオのものに変え、スキャンした。

≪フュージョンライズ!≫

リク『燃やすぜ、勇気! ――ジーーーーード!!』

≪ウルトラセブン! ウルトラマンレオ!≫

≪ウルトラマンジード! ソリッドバーニング!!≫


 立ち上がったジードの姿が光に包まれ、変貌する。
 今度は赤を基調として、鋼の鎧を纏っているような姿――“ソリッドバーニング”だ。

ジード「ハァァァ……ッ、ハッ!」

 構えをとると同時に背中のエグゾーストポートから蒸気が噴き出す。
 悠々としているレギオノイドに接近し、再び拳を叩きこんだ。

ギギ『グゥッ!?』

 今度はレギオノイドが後退する。
 ソリッドバーニングは強靭なボディを誇り、機械の体を持つ相手と戦うのに適しているのだ。

ジード「デヤァッ!!」

 手甲から炎が噴き出し、それによって勢いを増したパンチを見舞う。
 突き出されたドリルを左脇に抱え込み、今度は頭部に拳を叩きつけた。

レギオノイド「ギュ、ギ、ガ、ギ、ギ」

 ドリルを消滅させることでジードの拘束を解き、その隙を突いて打撃を叩きこむ。
 しかし頑強なボディを持つソリッドバーニングにダメージは入らなかった。
 ならばと眼からレーザーを放つ。至近距離から放たれれば流石に堪え、後退りを余儀なくされる。


レギオノイド「ギ、ギ、ギ、ギ、ギ――――」

 レギオノイドは右腕をビーム砲に換装し、その砲口をジードに向けた。
 エネルギーが充填されていくのを見て、ジードもまた光線の構えをとる。

ジード『――ストライクブースト!!』

 正拳突きと共に72万度を誇る爆熱光線が放たれる。
 レギオノイドの発射した光線とぶつかり合い、衝撃波が周囲に吹き荒れる。

レギオノイド「ギュ、ガ、ギ、ギ、ギ」

ジード「ハァァァァァ――――テヤアアッ!!」

 ジードが力を込め、押し切った。
 爆熱光線を浴びせられたレギオノイドは動きを止め、成す術もなく爆散した。

ジード「……シュアッ!」

 ジードが飛び立つ。
 その姿が空の向こうに消えた後、街はしんと静まり返った。


   ・
   ・
   ・


レム『スキャン終了しました。リトルスターの反応あり。保有者で間違いありません』

 星雲荘。台の前に置かれた椅子に座っているのは例の少女。
 目を覚ました時はかなり取り乱していたが、今は落ち着いている。
 というより、落ち込んでいるといった方が正しいかもしれない。事情を語ったのちは口も開かず、項垂れて悄然としている。

レム『恐らく彼女は、時間を逆行させる超能力を有しているのだと思われます』

リク「時間を逆行させる能力……!」

ライハ「早いところAIBの保護施設に匿ってもらった方がよさそうね」

少女「…………」

 そういえば名前も聞いていなかったと思い、リクはしゃがみこんで彼女の顔を覗き込んだ。

リク「僕は朝倉リク。ねえ、君の名前は――」


 しかし言い終える前にエレベーターが開き、モアがやってきた。
 と同時に、その場で固まってしまった。

ライハ「モア?」

モア「ほ……ほ、ほ、ほた、ほた……」

ペガ「ほた?」

モア「白菊ほたるちゃんーーーーーーっ!!?!?!??!?!?」

 リクとライハとペガは、揃って首を傾げた。
 するとモアは目を見開いた。「何で知らないの」とでも言いたそうに。

モア「白菊ほたるちゃん! 346プロダクションのアイドルで、『ミス・フォーチュン』の! 知らないの!?」

ライハ「あ、うん……有名人だったの?」

モア「リッくんも知らないの!? テレビ好きなのに!」

ペガ「とは言え見るのはニュースとドンシャインくらいだもんねえ」

リク「あ、あはは……」


モア「んもーーっ、信じられない!」

モア「この、まさに薄幸の美少女って感じの、儚げで、それでいて芯の強さが感じられる白菊ほたるちゃんを知らないなんて……!」

モア「あ、そうだ! 今日だよ今日! 今日がほたるちゃんのソロデビューライブの日! 仕事がなかったら行けてたのになあ~~!!」

ほたる「……無理でしたよ」

 ぽつり、といったふうにほたるが呟いた。

ほたる「私のせいで、全部めちゃくちゃになっちゃったんですから」

リク「ほたるちゃん、君のせいじゃない。悪いのはその力を狙ったギギっていう異次元人で」

ほたる「狙われたのも私がこんな力を持っていたからです。私が悪いんです……」

モア「ほたるちゃん、安心して。幸い、死者は出なかったから」

 ほたるはハッと顔を上げた。
 ほうと息をつき、心の底から絞り出したような声で言った。


ほたる「よかった……」

モア「うん。人間、命さえ助かってれば後は何とでもなるから!」

モア「というわけでほたるちゃん。あなたの安全のため、これから私たちの組織の施設に来てもらいたいんだけど、大丈夫かな?」

 ほたるは、こっくりとうなずいた。


   ・
   ・
   ・


 AIBのリトルスター研究施設。
 民間の企業から買い上げた建物で、特殊なバリアを張っているため、リトルスターの波動を周囲に漏らさず、安全に研究ができる施設だ。
 そのためリトルスターの保持者を保護する役割も担っているのだが、現在収容されているのはほたるひとりだった。

リク「ほたるちゃん」

 研究員のピット星人トリィ=ティプがゲートを開き、リクとライハが部屋に入ってきた。
 護衛のためというのが半分、あれほど落ち込んでいる彼女を放っておけないというのが半分で、リクが自ら志願したのだった。


モア「お腹空いたでしょ? ご飯持ってきたからぁぁあああああっ!?!?!」

 ガッシャーンと盆の上の料理が全部ひっくり返る。
 一緒に入ってきていたモアが転んでいた。

リク「あーもう、何もないところで転ばないでよ……」

ほたる「……ごめんなさい」

モア「え、えっ? 何でほたるちゃんが謝るの?」

ライハ「そうだよ、悪いのはモアだから」

モア「ちょ、ちょ、ちょっと! 言い方ってもんがあるでしょー!? 傷つきますよ私もー!」

ほたる「私も、手伝います……」

モア「えっ、いや、いいのいいの! 本当に悪いのは私だから! ほたるちゃんはリラックスしてて!」

ほたる「は、はい……」

リク「…………」


 片付けが済んで、モアは代わりを持ってくるため部屋を出ていった。
 ライハは外の護衛に回り、部屋にはリクとほたるだけが残された。

ほたる「…………」

リク「…………」

 ほたるも特に口を開かないので気まずい沈黙が流れていた。
 十分ほどして耐えられなくなったリクが、苦笑いを浮かべながら口を開いた。

リク「ちゃんと自己紹介してなかったよね。僕は朝倉リク。よろしく」

ほたる「は……はい。白菊ほたるです。よろしくお願いします……」

リク「うん」

ほたる「…………」

リク「…………」

 またも会話が途切れてしまう(とはいえ、相手が初対面の男なのだから当然だろう)。
 単刀直入に訊くのもどうかと思っていたが、埒が明かないので切り出すことにする。

リク「ねえ、ほたるちゃん」

ほたる「はい……」

リク「あの時……どうして自分から怪獣に近づいていったの?」


 ほたるは目を伏せ、唇を結んだ。

リク「どうしても言いたくないことだったら言わなくてもいいけど、僕が聞きたいんだ」

リク「君は自分のせいで怪獣に狙われたって言ってたけど、リトルスター絡みの事件は僕も要因のひとつとしてあるから……」

 ほたるは驚いたようにリクの顔を見たが、またすぐに顔をうつむけた。
 ダメかな、とリクは思ったが、やがてほたるはぽつりぽつりと語りだした。

ほたる「自分が死ねば、全部解決すると思ったんです」

ほたる「私は昔から不幸体質で……これまで所属してきた三つの事務所も全部倒産してるんです」

ほたる「こんな、周りに不幸を撒き散らすだけの存在なんていなくなってしまえばいい……そう思って」

リク「…………」

 脳裏に蘇る。伏井出ケイがリクに、彼の素性を明かした日。
 ペダニウムゼットンに変身したケイと戦っている最中、彼に言われた言葉。


『お前は自分が救世主か何かだと思っていたな。それは違うぞ』

『お前が存在しなければ街も破壊されなかった』

『自分の存在と決意がいかに大勢を不幸にしているかを自覚するといい』

リク(僕は、伏井出ケイとベリアルの掌の上でヒーローごっこをさせられていただけ)

リク(僕の存在そのものが計画の歯車のひとつになって、人々の不幸を生んでいた……)

リク(――だけど)

 リクはその絶望から立ち直ることができた。
 名付け親である朝倉錘に、自分の命に込められた願いを教えてもらったから。
 自分の人生にはたくさんの仲間が関わっていて、それが自分の人生の価値だと確信できたから。

リク(だから僕も)

 彼女に光を指し示さなければいけない、そう思う。

リク(僕が伏井出ケイの計画の一部として生み出されたのは事実だ)

リク(だから僕は、それに抗うためにも、この事件に責任を取らなきゃいけない)

 リクは目の前の少女を見る。
 自分と重なり合うところもあるこの少女を、どうにかして救いたい、そう強く思った。


リク「ほたるちゃんは、どうしてアイドルになったの?」

 ほたるは少し驚いたような表情を浮かべたが、またすぐ元通りになった。
 そして、すっ、と小さく息を吸って、語り出した。

ほたる「昔……ライブを見に行ったんです。アイドルのライブを」

ほたる「不幸に打ちひしがれていた私を……その人は明るく照らしてくれて、元気づけてくれました」

ほたる「そのとき思ったんです……私もこんな人になりたい」

ほたる「人のことを幸せにできるアイドルになりたい……って」

リク「それで、ひとりで東京に?」

 ほたるはこくりとうなずいた。

ほたる「親は反対しましたけど……でも私は諦めたくありませんでした」

ほたる「内緒で履歴書を送ったらそれが一次審査を通ったので、親に頼み込んで二次審査の面接を受けに行って」

ほたる「それも通ったから……親も折れて、ひとり暮らしを始めさせてくれたんです」


リク「ほたるちゃんにとってアイドルは、大切な夢なんだね」

ほたる「……はい。そうでした。でも――」

 リクは手を差して、その言葉の続きを制した。

リク「……事務所が倒産しても、君は次の事務所のオーディションを受けたんだろ?」

 こくりと、ほたるがうなずく。

リク「それは君が、どんな不幸に遭っても夢を諦められなかったからだ。違う?」

 ほたるはしばらく黙したままだったが、やがて首を横に振った。

リク「今回も、乗り越えられる。大丈夫、みんながついてる。僕も力になる」

リク「運命は自分の意志で変えられる。そうして運命を超えたとき、初めて見える景色がきっとあるはずだ」

ほたる「…………」

リク「僕は、そう思う」

ほたる「……はい」

 うっすらと、といった程度だったが、初めてほたるは笑った。


(三)


 ここは、プロデューサーが住んでいるマンションの部屋。
 壁に掛けてある時計の針は深夜三時を回っている。

P(…………)

 プロデューサーは眠れていなかった。
 怪獣が出現し、ほたるの姿が消えた。探し回っていたらAIBと名乗るスーツ姿の男が現れ、事の顛末を教えてくれた。

 ほたるは今、その組織に匿われているのだという。
 重要な関係者なため居場所が割れてしまう危険性があり、会いに行くこともできず、電話もメールもできないという有様だった。

 しかも護衛とのことでリビングには組織の人間が二人待機している。
 こんな状況で眠れるわけもなく、プロデューサーは何度も寝返りを繰り返していた。


P(ほたる……本当に大丈夫だろうか……)

 しかし、彼が真に案じるべきは自分の身の安全だった。
 彼は気付いていなかった。いつの間にか寝室の隅に正八角形をした妙な機械が出現していることに。

 その中心から青白い光が昇り、それを通り道としてギギが現れる。
 これは彼らの簡易ゲート。ギギの異次元移動を可能にする機械なのだ。

P(ん……?)

 目を開けると背後に何か光っているものがある。
 スマホに通知でも届いたのだろうか、そう思って寝返りを打つと――

P「うわああああああっ!?!?」

 悲鳴が上がると同時に、彼はギギが手にした光線銃の光に呑み込まれた。
 寝室に駆けつけたAIBの職員たち。目の前のギギに向け銃を構えるが、その手に乗っているものを見て目を見張った。

 ギギの掌の上に小さくなったプロデューサーがいたのだ。
 ギギが今にも握り潰そうとするので銃を下ろす。


ギギ「ギ、ギ、ギ」『銃を手放せ』

 ギギの声と共に地球語が聞こえる。
 これもまたギギ族の発明した自動翻訳機の効果だった。

 人質を取られているため、やむを得ない。
 職員たちは言われるがまま銃を床に放り投げる。

ギギ「ギ、ギ、ギ、ギ、ギ」『白菊ほたるの居場所を教えろ』

ギギ「ギ、ギ、ギギ、ギ」『さもなくば、この地球人を殺す』

 苦渋の表情を浮かべながら職員たちはその場所を明かした。

ギギ「ギ、ギ」『感謝する』

職員「ぐあぁぁああっ!!」

 ギギの光線銃が職員たちも縮小化させる。
 再びワープ装置の光に入ったギギは、一瞬のうちに姿を消した。


 AIBのリトルスター研究施設。
 ほたるの部屋にもまた、ギギのワープ装置が出現した。

ギギ「ギ、ギ、ギ……」

 青い光の中からギギが現れ、ほたるが寝ているはずのベッドに近づく。
 しかし、次の瞬間。

ライハ「てやぁあっ!!」

 ヒュンッと風を切る音と共に、ライハの軟剣が一閃した。

ギギ「ギッ!?」

 AIBの職員たちはプロデューサーの部屋での出来事を小型カメラに収め、本部に送っていた。
 その連絡を受けライハはほたるの部屋に潜み、襲撃を待っていたのだ。

 手首を切り落とした後、すぐさま蹴りを放ち壁に吹っ飛ばす。
 その隙にモアが床に落ちたプロデューサーを回収していた。


ギギ「ギ、ギ、ギ……」『舐めるな、地球人風情が……』

モア「舐めてるのはアンタたちじゃないの!? 大人しく投降しなさい!」

ギギ「ギ、ギ、ギッ!」

 ギギの体から二つの影が現れる。
 今まで相手していたギギは頭部に×印の青白い眼があるタイプAだった。
 しかし新たに現れたのは、黄色く光る二つの丸い眼を持つタイプB、そして逆三角形の赤い眼を持つタイプCの二種。

 ギギは複数人をひとつの体に合体させる能力を持っており、それを解くことで三体に分裂したのだ。

ライハ「モア、プロデューサーさんを連れて逃げて!」

 叫ぶと同時に三体の眼から光弾が放たれる。
 咄嗟に転がることでそれを回避し、モアが開けた扉から部屋を脱出する。

ギギA『追うぞ』

ギギC『いや待て。リトルスター保持者の反応がある』

ギギB『どうやら居場所が割れたため、屋外へ逃げたようだな』

ギギABC「「「ギ、ギ、ギ」」」

 ギギたちが再びひとつになる。その体に光が纏われ、そして――


ギギ「ギ、ギ、ギ、ギ、ギ……!!」

リク「っ!!」

 リクとほたるの行く手に、巨大化したギギが立ち塞がった。
 ギギが眼から光弾を放つ。リクに手を引かれ逃げ惑いながら、ほたるが叫ぶ。

ほたる「リクさん……! やっぱり、私は!」

リク「今は逃げることだけ考えろ! モアも言ってただろ、生きてれば何とかなるって!」

ほたる「だけど、逃げれば逃げるだけ被害が広がる! 私が不幸を振り撒いてるせいで!」

 すぐ横手に爆発が起き、その爆風で二人が吹っ飛ばされる。

ほたる「う、ぅ……」

リク「大丈夫か!?」

ほたる「やっぱりダメです、運命は変えられない……!」

 うつむくほたるの両肩を、リクは力強く掴んだ。
 びくりと体が震え、ほたるが顔を上げる。二人の視線が交差する。


リク「ほたるちゃん、君は言ったよな。『人のことを幸せにできるアイドルになりたい』って」

リク「君が人に幸せをあげるように、僕も、君に勇気を与えてみせる」

リク「君の夢は僕が守る。だから絶対に諦めるな!」

ほたる「…………」

 ほたるの前にリクが立つ。その手には変身アイテム“ジードライザー”が握られていた。

リク「――融合! アイ、ゴー!」

 ベルトに取り付けられたカプセルホルダーからウルトラカプセルを取り出し、起動する。
 「ウルトラの父」、そして「ウルトラマンゼロ」の二つを。

リク「ヒアウィーゴー!」

≪フュージョンライズ!≫

リク「守るぜ、希望! はぁああ……っ、はっ!」

 青と緑の二重螺旋が混じり合い、紫に染まる。
 溢れた光がリクを包み込み、その姿を変えさせていく。

リク「――ジーーーーード!!!」

≪ウルトラの父! ウルトラマンゼロ!≫

≪ウルトラマンジード! マグニフィセント!!≫


ギギ「ギ、ギ、ギ……!」

 ギギが放った光弾。しかしそれは、巨大化した光から突き出された拳によって霧散した。

ジード「……ジュワァッ!!」

 ほたるが眼を見張る。目の前に立っていた巨大な影は――
 赤・青・銀・黒が複雑に模様を描く体躯。その上半身には巨大な装甲が纏われ、両肩には一本ずつ赤い突起が伸びている。
 頭部には両側から鋭い刃のような角が生え、雄々しい雰囲気を強調している。

 強大な力を秘めた、崇高な戦士。
 それがジードのこの姿、“マグニフィセント”。

ギギ「ギ、ギ、ギ、ギ、ギ……!」

 ギギの眼が光弾を連射する。だが、

ジード『――アレイジングジードバリア!』

 ジードが張ったバリアに阻まれ、一発たりとも命中しなかった。

ジード「ハァァアア……ッ!!」

 泰然とした歩みでギギに近寄る。
 慌ただしくギギが拳を振りかぶるが、その手首を掴み、ぐいっと捻った。


ギギ「ギ、ギ……!」

ジード「――ジュワァッ!!」

 その腹部に拳を叩き込む。その衝撃でギギの体が浮き上がり、背後に倒れ込む。
 よろよろと立ち上がろうとするところを見計らい、ジードは下手から光刃を放った。
 手裏剣状をした光のカッター“メガスライサークロス”。回転しながら唸り、ギギの体を切り裂く。

ギギ「ギ、ギ、ギィィ……!」

ジード「ハァァアッ!!」

 地面を蹴り、ジャンプする。
 拳に光のエネルギーを溜め込みながら、それをギギの顔面に振り下ろす。

ジード「デアアァッ!!」

ギギ「ギ、ギ、ギッ!」

ジード「ドゥアアッ!!」

 次はアッパーを顎下から叩き込む。
 その一撃一撃が重く、ギギの体力と精神力を抉り取っていく。


ギギ「ギ、ギ、ギィィッ!!」

 このままだと勝ち目がないと判断したのか、ギギが奥の手を出す。
 ジードが拳を振った瞬間に分身し、パンチを躱したのだ。
 そして三方向から彼を包囲し、同時に眼から怪光線を放った。

ジード「グッ――!!」

 ギギAの青い光線はジードの両腕を。
 ギギBの黄色い光線とギギCの赤い光線は一本ずつ両脚を拘束する。

 これがギギの必殺技“グラビトンビーム”。
 これに捕まれば最後、いかに剛力を誇るマグニフィセントでも抜け出すことはできない。

ジード「グ、ア、デアァァ……ッ!!」

ギギABC「「「ギ、ギ、ギ、ギ、ギ……!」」」

 悶えるジードを嘲笑うギギたち。
 そんな戦闘の様子を見て、ほたるは唇を噛んだ。


ほたる「リクさん……!」

 ジードの胸のカラータイマーが点滅を開始する。
 甲高い音が響き、焦燥感を煽る。

ほたる(私が、私がいたせいでリクさんまで……)

ほたる(どうすれば……!)

『運命は自分の意志で変えられる』

ほたる(……!)

 昨夜の、リクの言葉が蘇る。

『そうして運命を超えたとき、初めて見える景色がきっとあるはずだ』

ほたる「私の、意志で……!」

 胸の奥から光が溢れ出す。何度も自分に悪夢を見せつけた忌まわしい光だ。
 だけど、それだけじゃない。この力は、プロデューサーの命を救ってもくれた。
 それと同じように、自分の意志次第で、この力の使い方だって変えられるはずだ。


 光が増し、時間が巡り始める。
 ほたるは気を強く保ち、目を見開いた。

ほたる「止まって……!」

 ほたるが念じた瞬間、逆行が止まった。
 ギギとジードが戦闘をしている。ギギの体はまだ一体のままだ。

 すうっと息を吸い込み、そしてめいっぱいの声でほたるは叫んだ。

ほたる「ジードーーーーー!!!!」

ジード「ジュワッ?!」

 ジードが振り向く。

ほたる「あいつは、三体に分身して、手足を拘束する光線を持っています!!! 気を付けてーー!!!」

ジード「――ジュワッ!」

 うなずくと共に、ジードはギギに拳を振り上げた。


ギギ「ギ、ギ、ギィィッ!!」

 ギギの体が三つに分裂し、三方からジードを取り囲む。
 だが――

ジード『――メガエレクトリックホーン!!』

 ジードが頭を振り回した。
 両サイドの角からムチのような電撃を放ち、それで周囲を薙いだのだ。

ギギABC「「「ギ、ギ、ギィィッ!?!?」」」

 グラビトンビームを放とうとしていたのに完全に不意を突かれ、三体とも膝をつく。
 ジードは拳を突き合わせ、それを両側へ開いた。拳と拳の間に電撃のような光が伸びる。

ジード『――ビッグバスタウェイ!!!』

 そして両腕をL字に組み、縦に構えた右腕から光線を放つ。
 超弩級の威力を誇る必殺光線が炸裂し、ギギAは身動きすらとれない。
 やがて轟音と共に爆発し、その体は木っ端微塵に弾け飛んだ。

ほたる「やった……!!」

 両手を握り締めるほたる。そのとき気付いた。もう両手が熱くない。
 胸の中から光の球体が浮かび上がり、彼女の体から遊離する。
 その光は空中を漂い、ジードのカラータイマーの中に吸い込まれていった。


リク『これは……』

 リクの意識空間とも言うべき、ジードのインナースペース。
 ほたるから離れたリトルスターは彼のカプセルのひとつに入り込んだ。

レム『シャイニングゼロカプセルの起動を確認しました』

 神々しい金と銀に身を包んだゼロのカプセル。
 リトルスターは保有者がウルトラマンに祈ることで譲渡される。
 これは、彼女の祈り、願い――夢が詰まったカプセル。

リク『行くぞ……!』

 カプセルを交換する。
 「ウルトラマン」、そして「シャイニングウルトラマンゼロ」の二つに。

リク『――目指すぜ、天辺! はぁああ……っ、はっ!』

 二つの青の二重螺旋が混じり合い、白光が満ちる。
 清廉な光が溢れ、ジードを神聖な姿へと変えていく。

リク『――ジーーーーード!!!』

≪ウルトラマン! シャイニングウルトラマンゼロ!≫

≪ウルトラマンジード! シャイニングミスティック!!≫


 光が晴れ、ジードの姿があらわになる。

 マグニフィセントから一転、すらっとした金色の体躯。
 両腕にはゼロのスラッガーを思わせる刃が備わり、額の真ん中には白毫のごとき発光体が青く輝いている。

 それこそ、二体の光の戦士の力を融合させた姿――“シャイニングミスティック”。
 ゆったりとした動作で構えをとり、二体のギギと対峙する。

ギギB「ギ、ギ、ギ、ギ――!」

 同胞がやられた怒りからかギギBがジードに向かってくる。
 しかし振るわれた拳は流麗に受け流され、腹部に掌底を受ける。
 ギギCが光弾を放つが、ジードは手刀でそれを払い落す。

ジード「ゼァッ!」

 一回転しながらギギBの体を右腕の刃で切り裂く。
 間を置かず、次は左腕の刃で切り上げる。
 火花が飛び、ギギBの動きが鈍る。


ジード「ハッ!」

 ギギBと距離を取り、右腕を天に掲げ上げる。
 宙に光の球が浮かんだかと思うと、ギギたちの動きが止まる。
 ギギだけではない、砂塵も木の葉も、風も太陽も。

 時を操るシャイニングゼロの力を受け継ぐシャイニングミスティック。
 その必殺技は、世界の時間を停止させ、その間に必殺光線を叩き込むもの。

ジード『――スペシウムスタードライブ!!!』

 十字に組んだ腕から光線が放たれ、ギギBの体を襲う。
 そして時が動き出すと同時に――

ギギB「ギギィィィイイイイ!!!」

 何が起きたかもわからず、ギギBの体は爆散した。

ギギC「ギ、ギ、ギ……!」

 最後の一体にジードは顔を向ける。


リク『融合! アイ、ゴー!』

 ナックルに装填した「ウルトラマンベリアル」「ウルトラマンキング」のカプセルをスキャンする。
 するとライザーの発光パーツから虹色の光が溢れ、超絶撃王剣“キングソード”の形になる。

≪ウルトラマンベリアル! ウルトラマンキング!≫

≪我、王の名の下に!≫

リク『変えるぜ、運命! はぁああ……っ、はっ!』

 キングソードの宝珠に手を翳すとエネルギーが満ち、ジードの姿をさらに変えさせる。

リク『――――ジーーーーーーード!!!!!』

≪ウルトラマンジード ロイヤルメガマスター!!≫


 降り立ったジードは、紫の体躯に金色の鎧を纏う、高貴な騎士の姿になっていた。
 その手にはキングソードが握られ、肩からは長丈のマントを羽織っている。

 “ロイヤルメガマスター”――それは。
 伝説の超人ウルトラマンキングの力を受け継いだジードの最強形態だ。


ギギC「ギ、ギ、ギッッ!!」

ジード「ハアァッ!!」

 破れかぶれといった様子で突っ込んでくるギギ。
 しかしそれはもはやジードの敵ではなかった。

 振り下ろされたキングソードがギギの体を切り裂き、その連撃が容赦なく襲い掛かる。
 痛みによって生じた隙をジードは見逃さない。掌底を叩き込み、体を浮かせ、回し蹴りで跳ね飛ばす。

ギギC「ギギギィィィィ!!」

 眼から光線を発射するが、ジードが構えたキングソードから巨大なシールドが形成される。

ジード『ブラザーズシールド!』

 罅ひとつ入れられず、ジードを一歩たりとも後退させることも叶わず、ギギの光線が力尽きた。
 今度はこちらの番だ。キングソードの宝珠に手を翳し、高く掲げ上げる。


ジード『――ロイヤルエーーーーンド!!!』


 剣と左腕を交差させると、宝珠から金色の光線が放たれた。
 190万度を誇る光の奔流がギギの全身を呑み込み――


 ――ドォオオオオオオオン!!!

 空のどこまでも響き渡りそうな轟音と共に、ギギの体は滅び去った。
 爆風が吹き荒れ、ジードのマントがはためいた。

ジード「…………」

 風が止むと、剣を下ろし、ジードは後ろを振り返った。
 その青い瞳。ほたるはそれをじっと見詰めていた。

ほたる「…………」

 ジードがゆっくりとうなずき、ほたるもまたうなずきを返す。
 掛け声と共に空へ飛び立っていったジードの姿を、ほたるはいつまでも眺めていた。

 ジードが見えなくなって、ほたるは気付いた。
 朝日が昇り、夜が明けようとしていた。

 ほたるの頬は、自然と笑みをこぼしていた。


   ・
   ・
   ・


(エピローグ)


P「ほたる、準備はいいか?」

ほたる「……はいっ」

 後日、改めて開催されたほたるのソロデビューライブ。
 奈落でスタンバイしながら、ほたるはプロデューサーと言葉を交わしていた。

P「いい顔してる。思い切って歌ってこい!」

 力強くうなずくと、昇降機が作動し、セリが上がりだす。
 ほたるの姿が客席から見えるようになると、ファンのボルテージが上がり、歓声のボリュームが増した。

ほたる「……!」

 客席には白のサインライトが鮮やかに敷き詰められていた。まるで、鈴蘭の花畑のように
 こみ上げてくる想いをぎゅっと胸の奥に仕舞い込みながら、ほたるは言った。

ほたる「皆さんの心に、幸せを届けられますように」

ほたる「聴いてください。――『谷の底で咲く花は』」

 ピアノと弦のピチカートのリズムに乗せ、ほたるは踊り出した。


おわり


≪登場怪獣≫

“三面異次元人”ギギ・プログレス
・体長:52m
・体重:47,000t

別の次元に住む異次元人。
住んでいる次元が崩壊の危機に瀕したため、サイドスペースの地球を侵略しに来た。

“帝国機兵”レギオノイド ギギ・カスタマイズ
・体長:53m
・体重:36,000t

ギギが改造したレギオノイド。
右腕を拳・ドリル・ビーム砲に換装することができ、臨機応変に立ち回ることができる。


以下、ウルトラマン×シンデレラガールズの過去作宣伝です。

二宮飛鳥「アイドルは闇の巨人」 【ウルトラマンギンガS×シンデレラガールズ】
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ウルトラマンXP
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三船美優「遥かな旋律、琥珀の夢」 【ウルトラマンオーブ×シンデレラガールズ】
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それでは、読んでくださった方、ありがとうございました。

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