二宮飛鳥「アイドルは闇の巨人」 【ウルトラマンギンガS×シンデレラガールズ】 (53)


・ウルトラマンギンガS×アイドルマスターシンデレラガールズのクロスSSです

・346プロがギンガSの次元にある世界です

・ギンガS12話「君に会うために」と13話「分裂!UPG」の間のお話です

・ギンガS側のオリキャラがいます

・地の文があります

・蘭子×飛鳥のカップリング要素が多分にあります

・飛鳥くんCDデビューおめでとう!


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456825741


―――月・チブル星人の宇宙船

エクセラー「…………」

ボルスト「おいエクセラー! 新しいスパークドールズを寄越せ!」

エクセラー「…………」

ボルスト「この俺様が今度こそギンガとビクトリーを始末して……っておい! 聞いてるのか!」

エクセラー「あぁ……はい。聞いていますとも。ムッシュボルスト」

ボルスト「だったら早く――」

エクセラー「まあまあ、お待ちを。そろそろだと思いますので」

ボルスト「あぁん? 一体何が……」

 ボルストが言いかけた時、作戦室に地球人女性のような容貌の人間が入ってきた。


???「できましたよ、エクセラー」

ボルスト「む? 誰だお前?」

エクセラー「ムッシュボルスト、ご紹介しましょう。こちらはサロメ星人の――」

 サロメ星人の彼女は手を挙げてそれを制し、恭しく礼をした。

???「私の名はエリス。よろしくお願いいたしますね」

ボルスト「お、おう……俺は宇宙最強のg」

エリス「エクセラー。次の作戦の準備が整いました」

ボルスト「おい、おm」

エクセラー「エクセレント! 流石はマダムエリスですねえ」

エリス「ふふ」

ボルスト「チッ。一体何だってんだ……」

エクセラー「ムッシュボルスト。次の作戦はマダムエリスと共に行ってもらいます」

ボルスト「何だとぉ!?」

 無視され続けて苛立ちが募っていたボルストは更に憤慨した。


ボルスト「エクセラー、貴様、俺様のことをなめているのか!」

エクセラー「まあまあ落ち着いてください。この作戦には貴方の力が不可欠なのです」

ボルスト「ふん?」

エクセラー「この前から作戦の失敗が続いています。ムッシュムエルテ、そしてムッシュジェイスの件……」

ボルスト「ぐ……」

エクセラー「ただ結果はともかく、彼らの目の付け所は中々興味深いところがあります」

エリス「人間の心の闇を突いたムエルテ、そして地球人に強い影響力を持つアイドルのライブを利用しようとしたジェイス……」

エクセラー「そこでこの作戦を思いついたのです。フフフ……」

エリス「うふふ……」

 エクセラーがチブローダーのアームを動かすと、宙にモニターが現れ、ある映像が流れ出した。

ボルスト「これは……」


『よくぞ集った、我らが眷属よ!』
『ついて来てくれなんて偉そうなことは言わない。ただ見ていてくれ、ボクらのステージを……』
『我らが闇の力、今こそ解放せん!』
『そしてキミたちの力も合わせて、ボクらの――ダークイルミネイトの闇を、もっと輝かせてくれ』
『時は満ちた! 行くぞ我が同胞よ!』
『ああ。ボクらの未来という白紙の一ページ目……最初に描かれるのは――』
『『〝-LEGNE- 仇なす剣 光の旋律〟!!』』

 黒を基調とした衣装を纏ってステージに立ち、歓声を受ける二人の少女の姿だった。

ボルスト「……………………」

エクセラー「どうです?」

ボルスト「どうと言われても」

エクセラー「やれやれ、言わなければわかりませんか」

ボルスト「わからん……」

エクセラー「珍しく素直ですねえ」

エリス「ふふ」


エクセラー「彼女たちは『闇』を求めている。これほど都合の良い『心の闇』が存在するとは、私という者が迂闊でしたよ」

ボルスト「…………」

エクセラー「しかも彼女たちはアイドルという、人々に強い影響力を持つ存在です」

エリス「つまり彼女たちをモンスライブさせられれば、その大勢のファンを支配下に置かせることができる」

エクセラー「その戦力で雫が丘に襲撃をかけ、ギンガとビクトリーを倒し、そしてビクトリウムを奪うのです」

ボルスト「…………」

エクセラー「理解できましたか?」

ボルスト「ああ……」


ボルスト「……で、俺様の仕事は?」

エクセラー「マダムエリスが作戦を遂行する間、ギンガとビクトリーに邪魔されるわけにはいきません」

エリス「そこで貴方には雫が丘でギンガとビクトリーを足止めしていてほしいのです」

エクセラー「もちろん、倒せるなら倒してもらっても構いませんがね。フフフ……」

エリス「うふふ……」

ボルスト(まぁウルトラマンと戦えるなら俺様はそれでいいや)

 かくしてエクセラーたちの作戦が始まったのだった……。


―――東京・某撮影スタジオ

 カシャッ カシャッ

健太「はい、いいよー!」

飛鳥「……」

 ホワイトバックを背にポーズを取る飛鳥と、それを撮影していくカメラマンの健太。
 その様子を蘭子は目を輝かせながら見詰めていた。

蘭子「おお……何と妖しき波動か!」

P「しっ、静かに」


 やがて撮影が終了すると、蘭子はいの一番に飛鳥の元に駆け寄った。

蘭子「飛鳥! 汝の波動の禍々しき事、我が体躯にも魔力を満たす程であったぞ!」

飛鳥「そこまで特別な事をした覚えはないさ。強いて言うなら、キミの目があったから、かな」

蘭子「ふぇ? 私の……?」

飛鳥「そうさ。悲しい事にボクも普通の人間でね。可愛い人に見られていると張り切ってしまうものなんだよ」

蘭子「か、かかか、可愛いなんてそんなっ」アタフタ

飛鳥「フフッ、揶揄い甲斐があるね、全くキミは」

蘭子「う、うぅ……むぅー……」ムスー


飛鳥「ただ、今回はカメラマンの腕も良かったからね」

 そう言って飛鳥は、プロデューサーと話をしているカメラマンの方に視線を向けた。

蘭子「あの人?」

飛鳥「ああ。渡会健太、だったかな。まだ若手らしいけど、結構注目されてるらしいよ」

蘭子「へえ……」


スタッフ「すみません、プロデューサーさん。少しお話が」

P「あ、はい。飛鳥、蘭子。帰る支度して入口で待っててくれ。後で行くから」

蘭子「はーい」

飛鳥「理解った。蘭子、行こう」

蘭子「うんっ♪」


―――通路

P「何ですか、お話って」

スタッフ「……うふふ」

P「?」

 振り返ったスタッフは手に妙な機械を乗せていた。

スタッフ「少し眠っててもらいますよ」キィィィン

P「うっ、何だ……? 頭が……」クラッ

 突然押し寄せてきた眠気の強烈さに耐えられず、プロデューサーは倒れてしまった。

スタッフ「ふふ。――さて」


 彼女はプロデューサーを近くの倉庫に放り込み、腕時計のような機械を操作しだした。
 すると、彼女の姿が一瞬にして変化した。スーツに身を包んだプロデューサーの姿に。

スタッフ「完璧ね。やはりサロメ星の技術は宇宙一だわ。うふふ……」

 そう、このスタッフに擬態した人物は、サロメ星人エリスだったのである。
 そして今度は通信機を取り出し、雫が丘で待機しているボルストに連絡を送った。

エリス「これより作戦を開始します。思う存分暴れてくださいな」

ボルスト『おう。まあそっちも頑張んな』

エリス「さて……」

 エリスは飛鳥たちの控え室に向かった。


―――雫が丘

 雫が丘を一望できる公園。
 ボルストはチブルスパークとスパークドールズを取り出した。

ボルスト「むんっ!」

 ボルストが二つの体に分身する。
 そしてそれぞれが同時に、手にしたスパークドールズをリードした。

『モンスライブ! 超コッヴ!』『モンスライブ! 超パズズ!』

 兜のような頭部と両腕の鎌が特徴的な金色の超コッヴ。捻れた二本の角が特徴的な銀色の超パズズ。
 二体の巨大怪獣が街に降り立ち、手近な建物を破壊していく。

ボルストA『早く来い……ギンガぁ!』

 超コッヴの喉元から明滅する光が上っていき、額から光弾となって放たれる。

ボルストB『叩き潰してやる……ビクトリー!』

 超パズズの両角が変形し、放たれた電撃が地上に降り注いでいく。

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)



ショウ「……っ!」

 UPGとは別に現場に駆け付けたショウはビクトリーランサーを取り出し、身体の前に突き出した。
 出現したスパークドールズを掴んでリードし、ウルトラマンの光と一体化する。

『ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!』

ビクトリー「ジュアッ!」


ショウ『俺が相手だ』

ビクトリー「ハアッ!」

超コッヴ「グオォォォォオ!!」

超パズズ「シャギャアアア!!」

 姿を現したビクトリーに対して超コッヴと超パズズは一心不乱に突進を開始した。


アリサ「ビクトリー……」

 一方、遅れて到着したUPGは攻撃の準備を整えると同時に避難誘導を始めていた。

ヒカル「ゴウキさん、アリサさん! 俺は避難指示に向かいます!」

ゴウキ「わかった! こっちは任せとけ!」

アリサ「頼んだわよ!」

ヒカル「ガレット!」

 人目のつかない場所まで移動したヒカルはギンガスパークを取り出した。
 彼もまたショウと同じようにスパークドールズをリードし、空に向かって掲げ上げた。

『ウルトラーイブ! ウルトラマンギンガ!!』

ヒカル「――ギンガーーーっ!!!」

ギンガ「ショウラッ!!」


ボルストAB『揃ったな……今度こそ貴様らの最期だ!』

ヒカル『加勢するぜ、ショウ!』

ショウ『ああ。行くぞ!』

超コッヴ「グオオオオオオン!!!」

超パズズ「シャギャアアアアオオン!!!」

ギンガ「デェヤッ!」

ビクトリー「ジュアッ!」


―――東京・撮影スタジオ・控え室

 そしてその頃、東京では……。

TV『速報です。雫が丘で怪獣が二体出現し、UPGが出動しました』

TV『なお、現場には既にウルトラマンが二体現れ、それぞれ怪獣と交戦している模様です』

TV『繰り返します。現在雫が丘で……』

 控え室に置かれていたテレビから流れてくるニュースに蘭子は不安そうな顔をしていた。

飛鳥「……大変だね。向こうは」

蘭子「うん……」


飛鳥「この前、雫が丘からのファンレターが届いたよ。ボクたちの歌で元気を貰った、だって」

飛鳥「正直アイドルになる前は御伽話だと思っていたんだけどね。実際に体験してみるとこんなボクでも胸を打たれる気分になったよ」

蘭子「うん」

飛鳥「……頑張らないとね」

蘭子「うん……」

 その時、控え室がノックされた。

『入っていいか?』

飛鳥「プロデューサー? ああ、構わないけど……」


 ドアが開いてプロデューサーが入ってくる。

飛鳥「すまないね、待たせてしまったかい?」

 しかしプロデューサーはそれには答えず、逆に問い掛けてきた。

P「二人とも、闇が欲しいか?」

飛鳥・蘭子「「闇?」」

 唐突すぎる質問に二人は顔を見合わせたが、さっきあんな話をしたばかりだからか強く頷いた。


蘭子「うむ。我らが闇の力を更に強大な物とし、其の力で同胞達に力を与えねば!」

飛鳥「ボクも同意見だ。客観的に見てボクらは万人受けしないとは思うけれど、たった一人でも求める声があるのなら応えなくちゃね」

飛鳥「そして、その一人に力を与えられるよう、ボクたちの輝きを磨かなくちゃならない。尤もその輝きは〝光〟ではなく〝闇〟という逆説的なものなのだけど」

飛鳥「少し話が逸れたかな――だけど、それが偶像の使命であり本質なんだろう? 今では充分に理解しているよ」

蘭子「我が同胞飛鳥――否、我が宿縁の片翼よ! 共に魂の研鑽を! そして世界を闇に染めようぞ!」

飛鳥「ああ。ボクらが歩く道は誰も知らない闇の中――だけどキミとなら、その闇すら照らす闇を掴めると思う。だから頑張ろう、蘭子」

蘭子「うむ!」

P「…………」

 プロデューサーの姿をしているサロメ星人エリスは、そんな会話を聞きながら内心ほくそ笑んでいた。


エリス(何なのこの子たち……ここまで強い闇への憧れを持っているだなんて)

エリス(これは最高の駒になりそうだわ……うふふっ)

 いつの間にかプロデューサーの姿など見えていないように見詰め合う二人をいいことに、エリスはこっそりスパークドールズを取り出した。

エリス(貴方たちアイドルに合った最高のスパークドールズよ)

エリス(ま、我がサロメ星の技術によって作られた模造品ではあるけれど。盲目な偶像信者にはこれで充分でしょう)

 そしてボルストも持っていたチブルスパークを手にし、スパークドールズと共にそれを二人に差し出す。

飛鳥「これは……?」

P「更なる闇を得、この世界を闇に染めたいのだろう……?」

 エリスの目が赤く光り出す。
 それに魅入られた飛鳥と蘭子の目もまた妖しい光を帯び――


P「さあ、その欲望を解き放つがいい……!」

 二人とも、まるで操られているかのような動きで、スパークドールズをチブルスパークに宛がい――

『モンスライブ! イーヴィルティガ!』『モンスライブ! ティガダーク!』

P「うふ……ふふふ……フハハハハハハ!!!」

 高笑いを上げるエリスの前で二人の姿は赤黒い光と化し、街の中に姿を現した。

イーヴィル「……」

飛鳥『な……何だ、この姿……』

ティガダーク「……」

蘭子『ぴぃっ!? た、たたた高っ!?』

 飛鳥はイーヴィルティガに、蘭子はティガダークに、それぞれ巨人の姿へと変身していた。

P「ふふ……では私も行きましょう」

『モンスライブ! デスフェイサー!』


 イーヴィルとダークに続いて銀色の人型ロボットが出現する。
 しかし突っ立っているだけの二人とは違い、左腕のガトリングガンと、右腕のビーム砲で街を攻撃し始めた。

飛鳥・蘭子『『!』』

エリス『さあ貴方たちも! 私が授けた闇の力で思う存分暴れるのです!』

エリス『ふふふ、フハハハハハッ!』

デスフェイサー「――――」

 デスフェイサーが逃げ惑う群衆に腕を向けた時だった。

イーヴィル「ジャアッ!!」

ティガダーク「ハアァッ!」

エリス『なにっ!?』

 予想外のことにエリスは驚愕した。
 その両腕に二人の巨人が飛びついてきたのだ。


エリス『何をしている! お前たちも――』

イーヴィル「ドゥアッ!」
ティガダーク「テャッ!!」

 同時に二人に蹴り飛ばされる。
 デスフェイサーの装甲は厚く、その程度では怯みすらしないが、中のエリスは大いに戸惑った。

エリス『何故だ! お前たちの本質は闇! そして世界を闇に還すのが目的ではなかったのか!』

飛鳥『ああ、そうさ。ボクらは闇――』

蘭子『だが貴様の様な下衆と同列に語るでない!』

飛鳥『自分たちを正義だと決めつける気はさらさらない。けど――』

蘭子『お……お前が許せない悪だってことはわかるっ!』

飛鳥『行くよ蘭子!』

蘭子『うむ!』

エリス『貴様らぁ……っ!!』


デスフェイサー「――――」

 電子音を立てながら巨人二人と対峙するデスフェイサー。
 初めに駆け寄ってきたイーヴィルに向けて銃撃を浴びせる。

イーヴィル「グワッ……!」

ティガダーク「! ドゥァッ!」

 攻撃を止めようとするダークだが、ガトリングガンの掃射に足が止まる。

ティガダーク「グッ……」


デスフェイサー「――――」

イーヴィル「ハアッ!」

 ダーク向けて右腕のビーム砲を向けるのを見て、イーヴィルは光弾を放ち牽制する。

イーヴィル「フッ!」

 その場からジャンプをし、宙で一回転するイーヴィル。
 デスフェイサーがガトリングガンで撃墜しようとするが、それよりも先に懐に飛び込む。

イーヴィル「ジャッ! デャッ!」

 胸部に数度拳を打ち込むが、デスフェイサーはこたえる様子を見せない。
 そのうち左腕の銃が首に叩きつけられた。よろけたところを右腕の鋏で掴まれる。

イーヴィル「グゥッ……!」


デスフェイサー「――――」

 イーヴィルの身体をゆっくり持ち上げて行く。

飛鳥『ぐ……がはっ……!』

 左右から凄まじい力で首が圧迫され、ギリギリと肌に食い込む。辛うじて息はできるが、痛覚が電流のように背骨を伝い落ちて行く。
 何とか逃れようと必死に暴れても、デスフェイサーは全く動じることがない。

ティガダーク「ダァッ!」

 ダークも光弾を放って援護しようとするが、命中してもびくともしなかった。
 デスフェイサーは完全に無視して、持ち上げたイーヴィルの懐に左腕のガトリングガンを向けた。

イーヴィル「――ッ!」

 次の瞬間、発砲音が連続して響いた。
 イーヴィルの身体から、まるで溶接をしているかのような激しさで火花が散る。

イーヴィル「グアアアアアッ!!!」

蘭子『飛鳥ちゃんっ!!』


ティガダーク「グゥゥッ! ハアッ!」

 怒りに拳を握りしめて駆け出すダークだったが、その時突然、イーヴィルの身体が猛スピードでこちらに迫ってきた。
 デスフェイサーの右腕は伸縮自在であり、鋏でイーヴィルを拘束したままダークにぶつける算段だったのだ。

ティガダーク「!」

 咄嗟に立ち止まったが躱すことも受け止めることもできず、結局まともに激突し、二人して背後に吹っ飛んだ。

イーヴィル「グ……ウウッ」

 重なりながら倒れ伏す二人を冷淡に見下ろしながら、エリスは独りごとを言う。

エリス『ふん。まぁどれだけ性能が良くても所詮は模造品。それに中身がこんな餓鬼とあっては弱くても仕方ないか……』

エリス『結局、あのタラコ唇の頭でっかち脳味噌オバケの作戦も失敗だったわけね。私には関係ないけれど』


ダーク「ハァ……ッ!」

デスフェイサー「――――」

 何とか立ち上がろうとするダークにデスフェイサーが右腕からビームを放つ。

ダーク「!」

 思わず顔を背けたが、ビームは命中しなかった。
 こわごわと前を見ると、イーヴィルが身体を張ってダークを守っていた。

イーヴィル「グアァッ!!」

 そのまま倒れ伏すイーヴィル。甲高い音と共に胸のイーヴィルタイマーが赤く点滅し始めた。

蘭子『あ……飛鳥ちゃん……』

エリス『あらあら。お美しい友情だこと』

飛鳥『ぐ……っ』

エリス『これでトドメよ』

 デスフェイサーの胸部カバーが左右に開き、中に収納されていた大砲が顔を出す。


デスフェイサー「――――、――――」

 そして、そこにエネルギーが溜まっていく。
 デスフェイサー最強の必殺技「ネオマキシマ砲」の発射準備に入ったのだ。


健太「これ、マジにやばいだろ……!」

 健太は撮影スタジオの屋上でそれを見ていた。

健太(俺には何もできないのか……?!)

健太(あの時みたいに、俺にもウルトラマンの力があれば……!)

健太「ギンガ頼む! もう一度、もう一度だけ俺に力を……!」


―――雫が丘

ギンガS「デリャアッ!」

超コッヴ「グオォォォン……!」

ビクトリー「ジァッ!」

超パズズ「シャオオォォン!!」

 一方、ギンガたちの戦いもまだ続いていた。
 かなり手こずってはいるが、勝てない相手ではない。そうヒカルが思っているところへ――

『ヒカル……ヒカル……』

ヒカル『! ギンガか!?』

ギンガ『ああ……。ヒカル、君に頼みがある……』

ヒカル『頼み……?』

ギンガ『今、別の場所で健太が力を求めている……私たちの力を、彼に分け与えてほしいのだ』

ヒカル『健太が……? でも分け与えるたって、どうやって』

ギンガ『強く念じるだけでいい……そうすれば君の力は、空間を超えて必ず彼の元に届けられるはずだ』

ヒカル『……! わかった、やってみるぜ!』

ヒカル(健太……困ってることがあるなら、俺たちの力を使ってくれ……!)

 すると彼が手にしているギンガスパークが光を放ち始め、そして――


―――東京

健太「……!」

 別の地でのヒカルの願いに呼応するように、健太の手の中にギンガライトスパークが出現した。
 あるウルトラマンのスパークドールズも一緒に。

健太「きっと、俺の願いを聞いてくれたんだな。ありがとうギンガ!」

 そうしている間にもネオマキシマ砲のチャージは着々と進んでいた。
 イーヴィルはダメージのせいで動けず、ダークは恐怖から身動きがとれなくなっているように見える。

健太「!」

 健太は迷いなく、ライトスパークにスパークドールズをリードした。

『ウルトライブ! ウルトラマンティガ!!』


デスフェイサー「――――」

 今にもネオマキシマ砲が発射されようとしていた、その時――

「――テャーッ!!」

 突然放たれた光線が砲門に命中した。
 砲門は瞬く間に凍り、氷によって詰まらされる。

エリス『何……!?』

 デスフェイサーの――そして、二人の巨人の目の前に立っていたのは、もうひとりの巨人だった。
 紫色に包まれた、すらっとしたその体躯。それは、ウルトラマンティガの「スカイタイプ」の姿だった。

エリス『貴様、ウルトラマンティガ……!? だが何故! 何故まだウルトラマンが……!』


健太『二人とも、大丈夫?』

 一方健太はイーヴィルとダークの中身を見て驚いたが、すぐに気を取り直して話しかけた。

飛鳥『その声……もしかして、カメラマンかい……?』

蘭子『ええっ!?』

健太『うん。もう無理はしないでいいよ。後は俺がやる』

飛鳥『い……いや……ボクらも……!』

 よろよろとイーヴィル、そしてダークも立ち上がる。

健太『無理だ、そのダメージじゃ』

飛鳥『ボクたちはファンを照らす闇でなくてはならない……』

健太『えっ?』


飛鳥『だから、皆を本当の闇に堕とそうとするあいつとは闘わなければならない宿命にあるんだ……!』

蘭子『我らが新たなる物語を紡ぎ出す為には、必ず超えてゆかねばならぬ壁……!』

健太『いや、でもね』

飛鳥『今ボク達の進むべき道は一本だけだ……! 共に行こう、蘭子!』

蘭子『うむ……! 我らが闇の輝きで、此の狼藉者を闇へ還す!』

イーヴィル「ジャァッ!」
ティガダーク「デアッ!」

 この二人は止められないと観念した健太=ティガもファイティングポーズを取った。

ティガ「テャッ!」


エリス『おのれ……!』

 ティガフリーザーによって凍らされた砲門はもう使い物にならない。
 デスフェイサーは左右のアームで銃弾とビームを乱射した。

イーヴィル「グッ……!」

 その熾烈な攻撃に怯むイーヴィルとダークだったが、スカイタイプは空中に身を躍らせて宙返りし、鋭い動きでキックを見舞った。
 一瞬攻撃が止んだのを見逃さず、一気に二人は距離を詰める。

イーヴィル「ジャッ!」

ダーク「ハァッ!」

デスフェイサー「――――」


 射撃がない近距離戦に持ち込めば数が多いこちらのもので、ティガたちが優勢になる。
 しかし攻撃によって後ずさりさせられたのを好機として、デスフェイサーの右腕が伸長し、ティガダークの首を絞めた。

蘭子『くぅっ!』

飛鳥『蘭子!』

 何とか引き剥がそうと右腕を攻撃するイーヴィルだが、中々外れない。
 注意が逸れているところを狙って、その背中にガトリングガンの銃口が向けられた。

ティガ「ンン――ハッ!」

 ティガが額のクリスタルの前に両手首を交差させる。
 その腕を振り下ろすと、彼の姿は紫から赤の体躯「パワータイプ」へと変化した。

デスフェイサー「――――」

 ガトリングガンが火を噴こうとしたその時。


ティガ「――テャァーッ!!」

 ティガが近づき、デスフェイサーの左腕を掴んだ。
 左手で標的の腕を支えながら、右の手刀を関節部に振り下ろす。火花が散り、アームが千切れた。

デスフェイサー「――、――」

イーヴィル「! ハァァッ!」

 微かに力が弱まったところを突いて右腕の鋏からダークを解放する。

ダーク「ハァァッ!」
イーヴィル「ジャアッ!」

 そして二人同時に、ティガと同じ要領で手刀を振り下ろした。

エリス『うわああああああああああっっ!!!』

 今度は右アームも切断される。


エリス『こうなったら……食らええええええっ!!!』

ティガ「!」

 砲門が塞がれたネオマキシマ砲。氷の向こう側が光り出した。

エリス『暴発してデスフェイサーは死ぬが、この街も巻き添えだ! ハハハハハハ!!』

 しかし――

イーヴィル・ダーク「「――ドゥアアアァッ!!!」」

 何の躊躇いもなく、二人は拳を突き出していた。


 ――ドゴォォォン!!!

 巨大な破壊音がして、辺りが寂となった。
 その中に静かに響く、火花の音。そして、狂った電子音。

 イーヴィルとダークの拳が、砲門ごとデスフェイサーのボディを突き破っていた。

イーヴィル「――ジャッ!」

ダーク「――ハッ!」

 二人は拳を引き抜くと、ティガの左右に並んだ。

エリス『お……おのれえええええっっ!!!』

飛鳥『キミにも聴こえているようだね。キミを冥府へと送り出す葬送曲の旋律が……』

蘭子『光の戦士よ! 今こそ我らの波動を共鳴させ、奏でる時!』

 意図を理解して(意味はわからなかったが)、ティガがもう一度タイプチェンジをする。
 今度は赤・紫両方が入った基本形「マルチタイプ」。


ティガ「ハッ!」

 両腕を引いてから、身体の前で交差させる。

ティガ「ハァァ――」

 それを左右に開いていくにつれ、両腕にエネルギーが集中していく。

イーヴィル「ジュアア……!」
ティガダーク「オオォ……!」

 二人もまた、ダークはティガと同じ、イーヴィルは正反対の動作で、それぞれの必殺光線の構えを取った。

ティガ「――テャーッ!!」
イーヴィル「――ジャアァッ!!」
ティガダーク「――デァーッ!!」

 縦に構えたティガの右腕から白色のゼペリオン光線が、イーヴィルとダークの腕からも破壊光線が放たれる。
 虚空を裂く三条の光線は合流し、三重螺旋となって勢いを増し、デスフェイサーを襲った。

エリス『ぎゃあああああああああああああ!!!!!』

 チカチカと明滅するだけになった頭部に直撃する。そこから全身に亀裂が走り、内部から光が溢れ、迸る。
 次の瞬間、鼓膜が破れてしまいそうな轟音と共に、デスフェイサーは木っ端微塵に砕かれていた。


蘭子『闇へ還れ! 二度と浮上することも叶わぬ深淵へ! なーはっはっはっはっは!!』

飛鳥『やったね、蘭子』

蘭子『えっ、うっ、うん……』

 すると蘭子は何だか歯切れの悪い声で、

蘭子『あ、あの、飛鳥ちゃん』

飛鳥『何だい?』

蘭子『わ……私を守ってくれて……。その……ありがと』

飛鳥『大した事じゃないよ。キミはボク自身さ。だから、守ろうとするのは当然の事だろう?』

蘭子『飛鳥……♡』

 そんなムードのまま二人は熱く見詰め合っていたが、

飛鳥『…………』
蘭子『…………』

イーヴィル「…………」
ティガダーク「…………」

ティガ「…………」

飛鳥・蘭子『『どうやって戻るの!?』』


―――雫が丘

ビクトリー「――ビクトリウムシュート!!」

ギンガS「――ストリウム光線!!」

ボルストAB『ぬああああああああああっっっ!!!』

 二人の必殺技が決まり、超コッヴと超パズズは倒れた。

ヒカル『ふぅ……。ギンガ、健太たちの方は大丈夫か?』

ギンガ『何とかなったようだが、また別の問題が発生している』

ヒカル『えぇ……今度は俺も行った方がいいかな』

ギンガ『ああ』

ヒカル『よし。じゃあショウ、俺はちょっと行ってくるぜ』

 そう言って、ギンガは健太たちのいる東京へ飛んでいった。


―――東京

蘭子『ど、どどどどうしよう!?!?』

蘭子『こ、このまま戻れなかったら……私……私……』

健太『あ、あのー多分だいじょうb……』

飛鳥『落ち着くんだ蘭子。これは……そう、ボクらに科せられた試練なんだよ』

蘭子『試練……?』

飛鳥『その通りだ。人間、考えることをやめてはいけない。ボクたちの存在意義とは思考能力の元に成り立っているのさ。だからね――』

健太『いや、だから……』

蘭子『うむ……ならば已むを得ず……此の姿のままアイドルを続ける道を模索せねば……』

健太『そっち!?』

飛鳥『成程ユニークな考え方だね。……ふむ。確かにそういう形のアイドルというのも可能性としてはアリかもしれない』

蘭子『……飛鳥ちゃんは、こんな姿でも私を好きでいてくれる……?』

飛鳥『何を訊くまでもないことを訊いているんだい。どんな姿をしていてもキミはキミさ。ボクの片割れという、ね』

蘭子『飛鳥ちゃん……♡♡♡』

健太(なんだこれ)

 そんなこんなしている内に、空の向こうからギンガが飛んできた。


健太『ヒk――ギンガ! 良かった、この二人を元に戻してあげてよ』

ヒカル『オッケー。健太もよく戦ってくれたな。UPGとして感謝するぜ』

健太(せっかく身バレへの配慮したのに……)

健太(……まあでも)

飛鳥『蘭子♡』
蘭子『飛鳥♡』

健太(何も聞こえてなさそうだし別にいいか)


健太『ヒカル。この二人アイドルだから身バレしないようにしてくれると……』

 戦いが終わったと知って周囲にはギャラリーが大勢いてウルトラマンたちに歓声を送っていた。
 こんな中に二人をまともに解放すれば、たちまち正体がばれて質問攻めに遭わされるだろう。

ヒカル『おう。任せとけ』

ギンガS「――ギンガコンフォート」

 ギンガSのクリスタルが緑色に染まったかと思うと、その手のひらから同色の粒子が流れ出した。
 それを浴びたイーヴィルとダークは徐々に影を薄くしていき――

ギンガS「デェィヤッ!」

 その時、ギンガの全身が眩い光を放った。目が眩んだギャラリーたちは思わず顔を背ける。
 光が収まった時にはもうそこにウルトラマンたちの姿はなかった。

飛鳥・蘭子「「……あれ?」」

 そして二人は、知らぬ間に撮影スタジオの屋上に突っ立っていた。


蘭子「……あっ、元に戻ってる!?」

飛鳥「やれやれ、一安心だね」

蘭子「良かったぁ~」

 その時、階段へのドアが勢いよく開かれたかと思うと、人影が飛び出してきた。

P「あっ、二人とも! こんなところにいたのか」

飛鳥「プロデューサー……」

蘭子「…………」
飛鳥「…………」

P「な、何だその疑わしいものを見る目は……」

 飛鳥は溜め息を吐いて言った。

飛鳥「外面というのは人間の本質ではないと常日頃から思っている筈だったのにね。まんまと騙されたよ」

P「えっ」


蘭子「貴殿の『瞳』……真なる闇を宿しているか……?」

P「えっ、ええっ」

 プロデューサーはずっと寝ていたので事情が全くわからないのである。

飛鳥「ボクの好きな思考実験のひとつに『スワンプマン』というものがあって……いや、今はそんな話どうでもいいか。大切なのはキミが本当のプロデューサーかどうか。それだけだ」

P「どっからどう見てもプロデューサーだろ」

飛鳥「一面的に見ればそうかもしれないね。だけどセカイというものはそれほど単純にはできていないのさ」

蘭子「我らが問いに対して正しき道を進み続けられれば、貴殿の潔白が証明されるであろう!」

P「じゃあ、なんなりとどうぞ」

飛鳥「そうだね……蘭子の誕生日と血液型は?」

P「4月8日。A型」

蘭子「ふむ」


飛鳥「公式プロフィールの身長と体重は?」

蘭子「ちょっ」

P「156㎝、41㎏」

飛鳥「正解だ……」

蘭子「な、何故飛鳥にも斯くの如き禁忌の記憶が!」

飛鳥「じゃあ、スリーサイズは?」

蘭子「飛鳥~~っ!!」

P「上から81、57、80」

飛鳥「凄い……」

蘭子「もうやめてーーーーっ!!!」

 ・
 ・
 ・


―――後日、事務所

 あの事件があってから二週間後。
 いつも通り飛鳥は事務所のソファに寝転がってくつろぎ、蘭子はスケッチブックに没頭していた。

P「飛鳥!」

 と、そんな中。上機嫌なプロデューサーがCDを持って部屋に戻ってきた。

P「サンプルCD届いたぞ! 飛鳥のソロデビューCD!」

飛鳥「そうか……」

 思わしくない反応にプロデューサーが首を傾げる。

P「ん? 興味なさげだな」

飛鳥「コンパクトディスク自体には惹かれるものがないんだよ。そこに在るのは飽くまでデータを再現する為の物理的現象に過ぎないからね」

蘭子「しかし、貴殿の妖しき魔力は此の紙面からでも伝わってくるわ」

飛鳥「ああ……ジャケットかい」

 蘭子の手からひょいとCDを取り上げると、飛鳥はジャケットを眺めながら遠い目をした。


飛鳥「渡会健太……彼も中々謎に満ちた青年だったね」

蘭子「うむ……今となっては真相は闇の中……」

P「何の話だ?」

飛鳥「内緒だよ。人には一つや二つ、誰にも言えない秘密があるものだろう?」

P「はあ……?」

蘭子「うふふっ」

飛鳥「フフッ」

 頭の上に疑問符を浮かべるプロデューサーの様子に飛鳥と蘭子はくすくすと笑い合うのだった。


ちひろ「ちなみに飛鳥ちゃんのソロCD『共鳴世界の存在論(オントロジー)』は3月2日発売ですよ♪」

おわり

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