モバP「……よし」
モバP(服装よし、髪型よし、口臭ケアよし。待ち合わせ時間もそろそろだな……)
千秋「こんばんわ」
モバP「!?」
モバP「来たか千秋。いつもより素敵な服だな」
千秋「ふふっ、ありがとう。今日のために用意した、特別な服よ」
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モバP(俺の名はモバP。超凄腕プロデューサーで、12人ものアイドルを一度にプロデュースしている)
モバP(今日は担当アイドルのひとり黒川千秋とディナーデートだ)
モバP(高級フレンチレストランでいい雰囲気を作り、流れでラブホテルへ連れて行くのが今日の目標だ)
モバP(今日のために何度脳内シミュレーションを行ったことか。今日こそ俺は童貞を捨ててみせる!)
モバP「よし、さっそくだが行こうか」スッ
千秋「貴方のエスコートを受けることができるなんて、とても光栄よ」
モバP「ああ、素敵な夜にしようぜ」ニヤリ
都内のフレンチレストラン入口(高級)
千秋「ここは……なかなかのお店ね」
モバP(よしっ、俺が選んだレストランの評価は上々だ)
モバP(高級レストランらしいが、3万もありゃなんとかなるだろw)
ガチャ
フロアマネージャー「いらっしゃいませ」
モバP「予約していたモバPと申しますが……」
フロアマネージャー「モバP様ですね。お荷物をお預かりいたします。こちらへどうぞ」
モバP(その後、俺と千秋は荷物を預け予約を確認された後、食卓ではなく控室みたいな部屋へと連れていかれた)
千秋「ここはウェイティングルームね。ダイニングで食卓の準備が整うまで、ここでしばらく待ちましょう」
モバP(ウェイティング……?ダイニング……?)
スタッフ「お客様、こちらが本日のワインとディナーのメニューでございます」
千秋「ありがとうございます」
モバP「あ、ありがとうございます……」
モバP(やべぇ……こんな高級店入ったこともないから急に緊張してきたぞ……)
千秋「あら、なかなかエレガントなコースね」
モバP「どれどれ……」
コース一覧(お一人様)
・アメジストコース 16,000円(税別)
・エメラルドコース 20,000円(税別)
・サファイアコース 24,000円(税別)
・ダイアモンドコース 28,000円(税別)
モバP「ファッ!?」
モバP「そ、そうだな……おいしそうだぜ……」ダラダラ
千秋「どうかしたの?顔色が優れないようだけれど……」
モバP「いや!なんでもないっ!なんでもないんだ!」
モバP(ディナーの最低コースで16,000万円、しかも税別!?)
モバP(ふざけてんのかここの店!なんで飯に2万近くも取られなあかんのじゃ!?)
モバP(やべぇ、3万しか持ってきてねーぞ……)
モバP(このコースにワインはついてんのか……?)チラッ
モバP(ついてねーじゃねーかっ!!ワイン完全別売りで16,000だと!?)
モバP(しかもワインもワインで1本最低1万、高いのだと3万……俺の予算額じゃねーか……)
モバP(まぁ、最悪クレジットカードがある……千秋みたいないい女をセフレにできるなら安い出費か……)
スタッフ「お客様、食卓のご用意ができましたのでご案内いたします」
モバP「は、はい……」
千秋(プロデューサーさん、本当にどうしたのかしら。メニューを見てから挙動不審になっているようだけれど)
モバP(ひっ!?なんだこの高級感……!辺り一面輝いているようだ……)
スタッフ「こちらでございます」スッ
モバP「どうぞ、千秋」
千秋「ありがとう」スッ
モバP(俺も座るか……)スッ
千秋「プロデューサーさん、もしかして、緊張しているのかしら?」
モバP「い、いや!そんなことは……」アセアセ
千秋「ふふっ、貴方の態度を見ればすぐにわかるわ」
千秋「貴方が緊張してくれているだけ、私だけを見てくれるのだと実感できる……私にとって、こんなに贅沢なことはないわ」
モバP(お前と二人きりだから緊張してるんじゃねーんだけどな……)
千秋「それにしてもいいお店ね。スタッフのサービス、清潔さ、高級レストランとしてふさわしわ」
千秋「さすが、貴方のエスコートね」フフッ
モバP「お、おう、当たり前だぜ……」
モバP(大丈夫……いまのところ千秋は上機嫌だ。出費は痛いがこのまま高級フレンチのマナーとかでやらかさなければホテルへ連れ込めるっ!)
スタッフ「お客様、お食事の前にアペリティフはいかがですか?」
モバP「???アペ……?すみません、もう一度お願いします……」
スタッフ「アペリティフ、食前酒のことでございます」
モバP「あ、なるほど、千秋はどうする?」
千秋「ミモザはありますか?」
スタッフ「用意してございます」
モバP「私も同じものを……」
スタッフ「かしこまりました」
モバP(ミモザってなんだよ……)
モバP(しばらくするとミモザと呼ばれる食前酒が用意された。なんかオレンジジュースみたいな味だった)
千秋「ミモザは春から夏に飲むカクテルとされているけれど、用意されていてよかったわ。好きなのよ、この味」
モバP「俺は初めて飲んだけど、悪くないかな……」
モバP(緊張で味わって飲めねーけどな!)
千秋「さて、プロデューサーさんは私にどのコースへとエスコートしてくれるのかしら?」
モバP「え?俺が選ぶの?」
千秋「ええ、そのつもりだったわ。今日は、貴方に全ての身を任せるつもりよ」
モバP(俺が選んでいいのか……)
モバP(ここでとりあえず安いコースを選んでおけば、まだ今月の出費を抑えられる)
モバP(でも、ここで安いコースを選んだら千秋からケチな男と思われて幻滅されるかも……)
モバP(最悪ホテルインできない可能性まである……ただでさえバカみてぇな金使わされてんのにそれだけは避けなければいけない……)
モバP(よし、ここは腹を括ろう。一番高いコースで甲斐性を見せてやる!)
しかし、モバPは金額に驚愕するあまり、コース内容をよく見ていなかった。
このレストランのコースの主な違いは「料理の量」で、一番高いダイヤモンドコースは量が多く女性向けではなかったのだ。
モバP「だ、ダイヤモンドコースにしよう……」
千秋「え?」
モバP(うっ、あまり反応がよくないぞ……コースに嫌いな食べ物でもあったのか?)
千秋(ダイヤモンドコース、一番高いコースね。完食できるかしら、カロリーも心配だわ)
モバP「あ、すみません、このコースを2つ……」
千秋「あ、まだ料理を決めて……」
スタッフ「ダイヤモンドコースでございますね?かしこまりました」
スタッフ「こちらのコースではオードブル、ポワソン、ヴィアンドをこちらからお好きなものをお選びいただけます。いかがいたしましょう?」
モバP(は?コースって料理内容まで決められてんじゃねーのかよ)
モバP「えっと……これとこれで……」
スタッフ「かしこまりました」
千秋(……せめてカロリーだけでも確認しておくべきだったかしら)
モバP「大丈夫だ、きっと千秋も気に入るであろう料理を頼んだからな……ははは……」
千秋「え、ええ」
千秋(そうよね、仮にもアイドルのプロデューサーなのだから、味の好みはともかくカロリーくらいは計算して料理を選んでくれたはずよ)
ソムリエ「お客様、こちらが当店のワインリストでございます」スッ
モバP「あ、はい」
モバP(ワインなんかわかんねー!!でも料理と同じだ、料理も高いのを選んだからワインも2万いかないくらいの奴選んどけばいいだろ……)
モバP「これを……」スッ
ソムリエ「こ、このワインですか……?」
モバP「はい、これでお願いします」キリッ
ソムリエ「かしこまりました……」
ソムリエ(こんなに油濃度が高い料理頼んだのにライトボディの軽めワインなんだな……)
モバP(ふぅ、緊張したぜ……)
千秋(今のソムリエの反応、料理に合わないワインでも頼んだのかしら……)
千秋(プロデューサーさん、もしかしてフレンチ初体験……?)
その後、料理が出されモバPと千秋はぎこちない会話をしながら食事を楽しんだ。
千秋(ふぅ。ひとつひとつの料理は確かにおいしかったわ)
千秋(でも、絶望的にワインと合っていなかったわね……それに、全体的に油が多めな気が……)
モバP(味なんかわかんねぇよ……、俺は今飲んでいる食後酒が何の酒かすらわかんねーんだ……)
モバP「そ、そろそろ出るか……」
千秋「え、ええ……」
千秋(うぅ、少し食べすぎかしら……もう少し休みたいわ……)
モバP(ようやくこの重圧から解放されるぜ……)
モバP「じゃ、会計行くか」
千秋「プロデューサーさん、この店では席で会計を行うそうよ」
モバP「あ、マジ?そういやレジがないな……」
千秋「ムッシュ、お会計をお願いします」
スタッフ「かしこまりました。こちらが明細書になります」スッ
明細書
食前酒×2 3,300円
ワイン 18,700円
ダイヤモンドコース×2 61,600円
食後酒 1,650円
サービス料 8,000円
93,250円
モバP「………カードで」
スタッフ「かしこまりました」
スタッフ「ありがとうございました」
モバP(気がついたら9万が消えてたんよ……頭がおかしくなりそうなんよ……)フラフラ
千秋「良いサービスをありがとうございます」スッ←チップ
スタッフ「ありがとうございます」
レストランの外
モバP「ふぅううう、疲れた……あんな高級レストランなんかはじめて入ったわ」
千秋「プロデューサーさん、ごちそうさま」
モバP「あ、ああ……」
モバP(9万か……痛すぎる出費だ。明日からもやし祭りは確定……)
モバP(ここまで金使ったんだ、なんとしてもホテルに連れ込むぞ!)
千秋「……貴方、かなり無理をしたでしょう?」
モバP「!!?」
モバP「そ、そんなことはないぞ!?俺はお前らのプロデューサーだからな……ははは……」
千秋「貴方のレストランでの立ち振る舞いを見ていたら、高級店はおろかフレンチそのものが初めてなことくらいわかるわ」
千秋「フレンチも初めてで、しかも予想外に高くてお金の余裕もなかった、といったところかしら?」
モバP「………」
千秋「貴方が私のために高いお店を選んで素敵な食事を心掛けようとしてくれたことは本当にうれしいわ」
千秋「でも、貴方の足枷せにはなりたくないの」
モバP「あ、足枷だなんてそんな……!」
モバP(やべぇ、千秋の奴不機嫌だ!このままだと計画が……!)
千秋「プロデューサーさん、私がまだアイドルになりたての時、無理して上級のダンスレッスンを受けたことは覚えている?」
モバP「あ、ああ、あの時か、千秋が全くついていけなかったレッスンだろ?」
千秋「そう。あの時、無謀だった私を正しい道へ導いてくれたのは、他でもない貴方なのよ?」
千秋「上級レッスンについていけなくて、初級から始めなければならないことに屈辱を感じたけれど、私には私のペースがあると、あの時の貴方はそう教えてくれたわ」
千秋「それはね、私生活でも同じだと思うの」
モバP「………」
千秋「確かに私は幼少の頃からあのようなお店で食事をしたことはあるし、私の舌を満足させることができるのは、あのレベルのお店だということも否定はできないわ」
千秋「だからって、貴方が私に合わせる必要はない。あの時貴方が教えてくれた「私たちのペース」を見つけるべきだと思うのよ」
モバP「………」
モバP(私たちのペースか……)
モバP(確かに俺は、千秋が綺麗で金持ちだからこんな店じゃないと満足しないと思い込んでたな……)
モバP(でも、千秋からしたら、俺と一緒ならどこでもよかったのかもしれない。むしろ俺にエスコートを任せてくれたんだとしたら、俺が本気でおすすめしたい行きつけの店とかにエスコートした方がよかったのかもしれない)
モバP「……はは、いつもの俺なら、すぐに気付きそうなことだったのにな」
モバP「千秋の言う通りだよ。千秋に気に入ってもらいたくて、ちょっと無理しちまった。すまん」
千秋「……ええ。貴方に無理をさせてしまったことは心苦しいけれど、同時に、貴方が私のために無理をしてくれたのは、嬉しいし心地いいわ」
モバP「言ったろ?素敵な夜にしようぜ、って」
モバP「さっきは空回りしちまったが、こんな俺にもう一度チャンスをくれ」
千秋「もちろんよ。貴方が刻んでくれる貴方らしい夜を楽しみにしているわ」
夜の誰もいない事務所
千秋「ここは……いつもの事務所ね」
モバP「俺らしく、ってのとはちょっと違うかもしれないが、俺にとっては千秋とのかけがえのない場所だ」
モバP「お前もそうだろ?千秋」
千秋「ロマンチックさやムードでは劣るけれど、私も同じ、大切な場所よ」
モバP「だろ?」ギュッ
千秋「っ!?」ドキッ
モバP「とりあえずさ、脱いでくれよ」ビンビン
千秋「……もう、少しくらい貴方との思い出の感傷に浸らせてくれてもいいんじゃないかしら?」ドキドキ
モバP「これが俺らしさだよ……」チュッ
千秋「んっ……♡」
モバP(この日、俺は大切なことを学んだ)
モバP(男女関係で大切なのは、相手に合わせることじゃない。相手に気に入ってもらうことでもない)
モバP(自分たちだけのペースを見つけることが、お互いいい関係でいるため、何よりも大切なのだ)
モバP(だから俺は、俺と千秋のペースを探すため、いや、俺のペースを千秋のペースにするため、これから毎日身体をねだろうと思う……)
モバP(しかし9万は痛かったがホテル代浮いたのはラッキーだったな)ニヤリ
モバP「千秋っ!俺もうっ!!」ガバッ
千秋「んっ……、全く……♡」ギュー
翌日
きらり「なんだか事務所がぷわぷわーんってするにぃ……」
杏「なんかイカ臭くない?プロデューサーなにかしたでしょ」
モバP「………」
千秋「………」
終わりです。
千秋SSRおめでとう。
約1カ月前に風俗で5万使う前の自分の顔面を助走つけてぶん殴ってやりたい。5万ありゃさすがに千秋をお迎えできたはずなのに……
迎え入れることができずにごめん千秋……あとフレンチなんか行ったことなくGoogleの付け焼刃なのでSS内でおかしなことを言っていたらすみません。
過去作です。
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