ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!」 キョン「驚愕、だな」 (546)













                        「久しぶり―――」














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β

部室


キョン「あ……あぁ……」

ハルヒ「冬に別れて、春に再開するなんて出来た物語ね!! ホントに!!」

古泉「春は出会いの季節とは、よく言ったものですね」

キョン「……あ……あ」

朝比奈「あっ、再会記念にちょっといいお茶入れましょうか?」パタパタ

長門「茶菓子も希望する」

キョン「…………ぁ」

佐々木「や、久しぶり親友。僕にとっても、おそらくキミにとってもね」

キョン「…………」

ハルヒ「……」

佐々木「……」

朝比奈「あ、古泉くんそこの棚の取ってもらってもいい?」

古泉「これですか? はい、どうぞ」

長門「あれ」ピッ

古泉「はい。これはまた美味しそうなお菓子ですねぇ」

キョン「…………」

ハルヒ「……」

キョン「……………………」

キョン「……あぁー」

ハルヒ「なんか言いなさいよ!!!?!?!?!!!? 結構待ったわよ!!?!?!?!?」ガーン!!

佐々木「まあまあ、無理もないよ。さすがのキョンも茫然自失のようだ。珍しい」


キョン「…………ハッ!?」ビクッ!!

ハルヒ「わっ! やっと正気に―――!?」ガシィ!

キョン「ハルヒ!? ハルヒなのか!!? お前は誰だ!? 誰なんだ!!?」ユサユサ!

ハルヒ「ちょ、ちょっと! こら! 離し、キョン!!」

古泉「落ち着いてください」

長門「冷静になって」

キョン「……古泉!? 古泉なのか!!? お前……死んだはずの古泉!!?」

古泉「そうです、古泉で……えっ!!? そっちの世界でどうなってるんですか僕!!!?!?」ガーン!!

ハルヒ「(あっ、余裕取り戻してきてボケてきてるわねこれ)」

キョン「長門……お前は……」

長門「宇宙人ではない方の、長門有希」

キョン「……そうか」

朝比奈「はい、キョンくん。これ飲んだら落ち着きますよ」ニコッ

キョン「……朝比奈さんの、お茶だ」ゴク

朝比奈「えへへ。あれからすっごい練習したんですよぉ」

キョン「……やっぱり、ここは……この世界は」

佐々木「ようやく認識したかな? やあキョン改めて久し―――」

キョン「っ佐々木ぃ!!? お前、お前! お前ぇえぇえええええ!!!」ピョーン!

ハルヒ「なあっ!? 飛んだぁ!!?」

佐々木「……くつくつ、ならば全力で冗談に付き合うとしよう」パアァ!

ハルヒ「あ、あれは! あたしがふざけてセクハラする時に放たれるヤツ!!!?」クルッ

キョン「なんだそれハルヒお前それ後で詳しく聞かせ―――!!」

佐々木「ついでに、少し記憶も飛ばしておこうか―――!」






チュドーーーーン!!!!!!!!


キョン「…………ハッ!?」

佐々木「おはようキョン。調子はどうだい?」

キョン「…………俺はd」

ハルヒ「記憶失ったフリはいいから。ボケる余裕あんならそこ座って話聞かせなさい」

キョン「……ああ」ガタッ

キョン「…………」ソワソワ

ハルヒ「それで―――」

キョン「ダメだ、落ち着かん!」ガタッ

ハルヒ「ちょ、5秒も座ってなかったけど!!?」

キョン「……わ、罠か!? もしかしてこれは罠なのか!!? ご、ご都合主義すぎるだろうが!」ガタガタ!

ハルヒ「何言ってんのよ! どんだけ疑心暗鬼なのよ!! そんな心配ならあたしたちの頭ん中覗けばいいじゃないの!」トントン!

朝比奈「えっ、そ、それは恥ずかしいですよ!」

ハルヒ「ほらキョン! みくるちゃんが見られると恥ずかしいこと考えてるわよ!!」

朝比奈「ちちち、違いますっ!!」

キョン「ぐ、ぐおぉおぉおおぉおおっっ!! 超、見てぇえ……!」グヌヌ

古泉「……もしかして、彼は」

佐々木「ああ、予想してた通りさ。キョン、キミは今、力を失っているね?」

ハルヒ・朝比奈「「えっ?」」

長門「……」

キョン「…………そうだ。今も戻ってねぇ。だからあの闇の中から出られたのは俺の力じゃないんだろう」

ハルヒ「闇? あんたどんなとこにいて……いや、そんなことより! あんたをこの世界に引き込んだのはあたしたちよ!!」

キョン「…………教えてくれ。何故俺がここに来たのかを」

ハルヒ「ふんっ。こっちの方が聞きたいことだらけだけど、仕方ないから教えたげるわ!」

予告なしの新スレか!


キョン「何故俺があんなところにいると知り、こっちの世界に引っ張ることができたんだ?」

ハルヒ「どうしてあんたがいると分かったって? そんなのあんたが一番分かってるでしょ?」

キョン「はぁ……?」

ハルヒ「分からない?」

佐々木「みんな、聞こえたんだよ。キミの声が」

キョン「!」

朝比奈「聞こえました!」

古泉「ええ、それもはっきりとね」

長門「あなたが、呼んでいた」

キョン「……俺の、声が?」

ハルヒ「『黒龍よ!! 我が身を食らいて―――』」

キョン「んなこと言ってねぇ!!! 敵か!!? 敵なのか!? お前ら!!」ガタッ!

ハルヒ「……なんか面白いわね、これ」

佐々木「一理ぐらいはあるかもだけど、話しが逸れるからやめよう」

長門「『ここにいる』と聞こえた」

キョン「っ!」

朝比奈「とっても、必死な声でした。すぐ助けなきゃって思うほどの……」

古泉「皆、想いは一致していましたよ」

ハルヒ「ふふん! 団長の務めとしては? やっぱり助けを求める団員はほっとけないって言うか―――」

キョン「だんぢょぉぉおぉおぉおおうぅぅうぅうぅううう!!」ガバッ!!

ハルヒ「腰に抱きつくのはやめなさいっっっ!!!!!! 感激してるのは分かるけど、ええい!! 邪魔ったい!!」ゲシゲシ!

キョン「グスン……ちゃんと、届いてたのか」

朝比奈「届いてましたよ。みんなに。こっちの世界ですけどね」エヘヘ

キョン「あざひなざぁぁぁああぁぁあぁあぁぁあぁぁん!!!」

ハルヒ「だからすぐ泣く、どさくさに紛れてみくるちゃんにも同じことしたら……またあそこ閉じ込めるわよ」ギロッ

佐々木「もう一度ぐらいなら開けられるかな?」

キョン「はい、すいません」


キョン「……開けた、ってことは、佐々木お前が……?」

佐々木「結果的にはね。こんなに上手くいくなんて普通ならありえないよ」

佐々木「無限に広がる時間軸、空間軸から特定の、キミがいる異空間をこじ開けられるなんて最早確率では説明できない」

佐々木「いくら僕の『力』とは言え、ここでは万全でないし万能ではないからね」

キョン「あぁ、そうだったな。こっちのお前の力はハルヒの『力』が元だもんな」

佐々木「だから、運命とか奇跡と言った方が適切なのかもしれない。随分ロマンチックに聞こえるけどね」

ハルヒ「ホントホント! 声だけ聞こえるもんだから、とりあえず校内一瞬で回っちゃったわよ」

朝比奈「残像が見えた気がします……」

キョン「…………」

長門「……皆、あなたのことを助けたかった」

キョン「長門…………ああ、身に染みているよ。みんな!」

キョン「……助けてくれて、俺の声を聞いてくれて……本当に!」

キョン「ありがとう!!」ペコ

ハルヒ「……ふん。あったり前よ! なんてったってあんたとの再会はSOS団の至上目的なんだからね!」

朝比奈「はい!」

長門「……よかった」

古泉「当然のことをしたまでです。尤も、一番の功労者は―――」

佐々木「みんな自分の出来ることを精一杯やった、一番なんてないさ」

古泉「……ええ、仰る通りです」

キョン「おい、ハルヒ。さっきの詳しく聞かせろの件だけどな……」コソコソ

ハルヒ「ちゃんとそれも覚えてんのね……まぁいいわ、聞かせてあげ―――」

佐々木「二人なら、どんな世界でも寂しくないと思うんだけど、どうだい?」

キョン・ハルヒ「「とんでもない。すいませんでした」」


佐々木「さて、そちら側の話も聞きたいところだけど、冷めない内に、みくるさんのお茶を飲みながらにしようか」

キョン「ああ、そうだ…………ん?」

佐々木「おや、これは不思議探索の時に僕と有希さんと一緒に買ったものかな?」

朝比奈「分かりますか? さすがミラさん!」

キョン「……んん??」

佐々木「香りがいつもと違ったからね。そうだ一樹くんアレを……」

古泉「ええ、準備していますよ。彼との再開に役立つかもしれないと集めた資料ですね」ドサッ

佐々木「流石は副団長。団長として鼻が高いよ」

キョン「……えぇ?」

ハルヒ「ミラっ!! 聞き捨てならないわね!! SOS団の団長はあたしって言ってるでしょ!!」

佐々木「『世界を盛り上げる佐々木の団』なのに僕が団長でないのはおかしいじゃないか。ハルヒさん」

ハルヒ「そこがまずおかしいのよ!! 『世界を盛り上げる涼宮ハルヒの団』でしょ!!」

キョン「…………なんか」

古泉「どうかしましたか?」

キョン「あいつ、馴染みすぎてねぇ?」

古泉「あぁ、ミラさんですか?」

キョン「それだよ。なんでミラなんだよ? 前の偽名じゃなくて佐々木でいいだろうよ」

古泉「本人たっての希望ですから。彼女が下の名で僕たちを呼ぶのも、より親密になりたいという理由でしたし」 

古泉「ああして誰にでも男言葉で話すことに統一したのも彼女の考えあってのことでしょう」

キョン「あいつがねぇ……」

古泉「あなたの彼女へのイメージがどのようなものかは分かりかねますが、僕から言いますと」

古泉「ミラさんは、随分と人間臭い方ですよ。失礼ながらね」

キョン「…………そうかよ」

佐々木「どさくさに紛れて今ナニをしようとしたか白状してもらおうかな?」ニコ

ハルヒ「む、胸揉もうとしただけ……っ! は、白状したから……卍固めはヤメテ……」ギギギ

キョン「そしてどうしてああなったハルヒ……」

古泉「同気相求といいますか……まぁ二人とも元を辿れば同じな訳でして……」

キョン「尚更ダメだろ」


キョン「ともあれ……お前がこの世界でよろしくやってけてるのが分かってよかったよ」

佐々木「おや? 僕が上手くいかないと心配でもしてたのかい?」

キョン「えー……まぁ」

佐々木「『コイツ変人だしなぁ……』……ほう?」

キョン「しまった! 力がねえから思考がダダ漏れだ!!」ウワァア!

ハルヒ「大丈夫よ! 慣れれば逆に武器になるわ!」グッ!

佐々木「ハルヒさんの頭の中は極力覗かないよ。ナニ考えてるか大体分かるからね」

ハルヒ「失礼ね!!」

キョン「どの口が……ま、仲良さそうでいいじゃねえか」

佐々木「みんな、かけがえのない友人だからね」

ハルヒ「よくそんなこっ恥ずかしいことを堂々と言えるわね……」

佐々木「本心だからね。偽るようなことはしたくないよ。たとえこの世界が偽物だったとしてもね」

キョン「……」

ハルヒ「もー! またそんなこと言って!! 別に偽物とか本物とかどうだっていいじゃないの!」

ハルヒ「あたしも! あんたも! みくるちゃんも有希も古泉くんも! ちゃんとこうしてここにいるんだから!!」

佐々木「……僕がこういうと、彼女は決まってこう言い返して来るんだ」

キョン「ああ。ハルヒならそう言うだろうさ。どこの世界のハルヒだってな」

佐々木「……そうだね」

ハルヒ「さあさあさあ! 一息つけたことだし! キョン!!」

ハルヒ「あんたの世界で今、何が起こってるのか簡潔に早急に話しなさい!!」

ハルヒ「そしたら、あたしたちが全力で何とかしてあげるから任せなさい!!」

キョン「……心強いな。あぁ、頼むぜ。お前の言う通り早急になんとかしたいからな」

キョン「……俺のいた世界では今―――」

























「――――――キョンくん?」


ここまでー

前スレ

ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」
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ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!!」 キョン「分裂するぞ」
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10スレ目ですー。さて完走めざしてもう少し頑張ります!

>>5
スレ立てにお気づきいただきありがとうございます!

少ないですが15時ごろ投下しますー

とうかー


β


ブォオオオォオオオオン






佐々木「そう言えば、『彼女』はどうなったのかな?」

橘「へー、すごいですね息子さ、えっ!? あ、『彼女』のことですか……それは」

藤原「……見失ったか」

橘「はい……すみません……そうみたいです」

佐々木「いや、いいんだ。橘さんが謝ることじゃない」

佐々木「それに、『彼女』相手では当然の結果とも言える」

藤原「いいのか? 放っておいて」

佐々木「いいともさ。むしろ好都合だよ」

佐々木「『彼女』に僕たちが放っておかれているこの状況がね」

藤原「……今のこちらの戦力では太刀打ちできないということか?」

佐々木「断言はできないけど、充分『彼女』1人に計画を妨害される可能性はあるよ」

佐々木「僕は見ての通りだし、頼みの綱の九曜さんはいつ戻ってくるか分からない」

佐々木「僕たちが優位に立っているように見えて、実は結構運任せなのかもしれないね」

橘「け、結構どころか……ホントに『彼女』の気分次第なんじゃ……」

佐々木「くつくつ、なんてね。まぁ大丈夫だろうさ」

佐々木「気分次第と言うなら『彼女』が僕たちに何かをしようという気になるはずがないからね」

橘「えっ? そ、それはどうして……?」

藤原「……」

佐々木「……待っているんだよ。『彼』が帰ってくるのを」

橘「彼って……」

佐々木「誰よりも信じているのさ。『彼女』は」

佐々木「必ず、キョンがまたこの世界に回帰することを」

佐々木「そしてそれまでは、単独では行動しないはずだよ。きっとね」

佐々木「なぜならそれが……彼女の持つ役割だからね―――」


部室


キョン「……ハッ! 今気づいたら古泉、お前これハーレム状態なんじゃ……」

古泉「真剣な顔をして急に何を……」

ハルヒ「話逸らしてないで、続きを話しなさいよ」

キョン「続き、っていってもなぁ。言った通り向こうの佐々木達と対峙して、んで俺は佐々木の『力』を消そうとして……」

キョン「で、あの空間に飛ばされたもんだから……俺の力も無くなっちまったしそれ以降のことは分からねえ」

佐々木「ただ、涼宮さんが危機に追いやられている可能性が高いという訳だね」

ハルヒ「あたしが!? なんで!!? スナイパー!!?」ガタッ!

佐々木「あなたはハルヒさん。涼宮さんというのは向こうの世界の話だよ」

佐々木「元より、向こうの世界の僕の目的は涼宮さんにしかないようだし、行動を起こしたのならそういうことだろう」

キョン「ああ。今までも幾度となくちょっかいだしてきてたが、今回のはかなり本気だ」

キョン「いよいよ大将の佐々木が出張ってきたんだからな」

佐々木「え? 僕が?」

キョン「いや、お前じゃなくて向こうの……おい、いつからそんな小ボケをするようになったんだ」

佐々木「さあね。さて、となると今回もキミの目的は同じだね」

長門「元の世界への回帰方法を調べる」

朝比奈「ま、前みたいに緊急脱出プログラム? はどこかにあったりは……」

古泉「しないでしょうね。おそらく。聞くに、あれは向こうの朝倉さんが仕込んでいたものだったらしいですから」

キョン「お、そういや朝倉はどうしてるんだ? 元気か?」

長門「元気。この世界の彼女はあまり我々には干渉はしないけど」

キョン「あぁ……ツッコミ属性が消えてるからか……」

佐々木「真面目な委員長としてクラスに秩序をもたらしているよ。次期生徒会長の噂もたってるぐらいだ」

ハルヒ「その暁には是非SOS団の部費を増額してもらわなくっちゃ!! それか、あたしも光陽園の生徒会長に立候補しようかしら!?」

古泉「まずは部として認可していただくところからですね」


キョン「あー、そういやこの世界での俺の存在ってどうなったんだ?」

長門「処理したらしい」

キョン「物騒な」

ハルヒ「なんかあたしたち以外は覚えてないみたいよ。ミラがこう、ちょいちょーいってやったみたいで」

古泉「僕たちの記憶はこれまた、朝倉さんによって補完されていますしね」

キョン「そんなあやふやなのか。まぁ、情報操作が上手くいってんならよかったよ」

佐々木「空き家となった家には、キミと入れ替わる形で僕が住んでいるし」

ハルヒ「SOS団の第二活動拠点にもなってるし! すっごい便利よ!」

キョン「俺が消えたことを喜ばれてるようで複雑だ」

朝比奈「そ、そんなことないですよ!」アセアセ

キョン「朝比奈さんのフォローが痛み入ります……ともあれ」

キョン「俺の現状はそんなとこだ。助けてもらった矢先に悪いが、また助けてもらうことになりそうだ」

ハルヒ「もとよりそのつもりよ!! なんならさっそく活動してもいいわよ! ミラ!」バッ!!

ハルヒ「まずあたしたちは何から手を付ければいいのかしら!!?」

佐々木「その質問には答えられないね。なぜなら……」

キョン「お前ですら、今のトコ打つ手がないからだろ」

ハルヒ「そんっ……って、キョン!? 打開策がないって言う割にはえらく落ち着いてない!?」

キョン「分かり切ってたことだ。一朝一夕で元の世界に帰れるなんて思うほど夢見ちゃいないさ」

佐々木「キョンが力を失うほどのことが起きたんだ。向こうの僕もそう易々とキョンに戻ってきて欲しくはないらしい」

ハルヒ「親友親友うるさいくせに」

佐々木「それは関係ないさ」


ハルヒ「だからって諦めるのはダメでしょ!!」バン!

キョン「諦めてなんかねーよ。方法、手段が見つかればすぐにでも行動を起こすさ」

ハルヒ「方法、手段を見つけるための行動をとるべきでしょうが!!!」

キョン「……ごもっともだがなぁハルヒ―――」

佐々木「ハルヒさん、キョン。一度二人共落ち着こうか」

キョン・ハルヒ「「俺は(あたしは)落ち着いてる(わよ!)」」

佐々木「そうそう。そうやって息を合わせて整えるんだ」

ハルヒ「…………スゥ。でもミラ!!」

キョン「一呼吸も落ち着いてられんのかお前は」

佐々木「ハルヒさん。一刻も早くキョンを元の世界に戻してあげたいというキミの気持ちはよく分かるよ」

ハルヒ「なあっ……! そ、そうだけど! 私事じゃなくて仕事としてよ!?」

佐々木「分かってる。そして出来ることがないからと言って何もしないことに異議を唱えるのも分かる」

ハルヒ「……だったら」

佐々木「だとしても、だ。いいかいハルヒさん。事態は刻一刻を争うことなのは間違いない」

佐々木「だけどね、この問題の解決策は時間に縛られたものじゃないんだ。きっと」

朝比奈「???」

古泉「それはつまり、この世界と向こうの世界とで異なる時間軸が存在しているから、ということでしょうか?」

朝比奈「?????」

ハルヒ「……要約すると、こっちの世界でどれだけ早くキョンを送り返したとしても」

ハルヒ「向こうの世界じゃどれぐらい時間が経ってるのか分からない、ってこと?」

朝比奈「あっ、なるほど……」

佐々木「まぁ、そういうことだね」


佐々木「その逆、例えばこちらでキョンが何年もの時を過ごそうが、向こうの世界では一瞬の時も過ぎていない可能性もある」

長門「浦島太郎効果」

佐々木「だから焦って解決しようがしまいが、こちらでの時間軸が向こうの世界には影響しないのさ」

ハルヒ「言い切れるの?」

佐々木「言い切れる。むしろ方法さえ見つけてしまえば元の世界、元の時間に極小の誤差で送ることだってできる」

キョン「だそうだ。ついでに俺もそう思う」

ハルヒ「…………分かったわよ。信じたげるわ」フゥ

佐々木「助かるよ。騒がれたら大変だしね」

ハルヒ「ちょっとそれどういう意味!?」ガタッ!

キョン「せっかく落ち着いたんだから焚き付けるなよ……ともかく」

キョン「なんだ、どれぐらいの付き合いになるかは今のところ分からんが……」

キョン「元の世界に帰るまでの間、世話になる。よろしく」

朝比奈「こちらこそっ! よろしくお願いします!」

古泉「ええ、よろしくお願いします」

長門「よろしく」

ハルヒ「仕方ないから面倒見てあげるわよ! 仕方ないからねっ!」

佐々木「キミも気が気ではないだろうけど、焦らずに解決法を探して行こう。よろしく親友」

キョン「……ああ!」

ハルヒ「そうと決まれば早速周囲で変わったことが起きてないか探しに行くわよっ! ついてきなさいキョン!」ガシッ!

キョン「ちょ、お前、話しきいて―――ぉおぉおおおおおおおおおい!!??」ズザザザザ!

朝比奈「……行っちゃった」

佐々木「よほど彼と再会できたことが嬉しいらしいね。ハルヒさんらしい」

長門「あなたも」

佐々木「うん?」

長門「あなたも嬉しそう?」

佐々木「―――そりゃあね」ニコッ


ハルヒ「……」ズンズン!

キョン「お、おいハルヒ自分で歩ける、からはな、離して……」ズリズリ!

ハルヒ「あっ、忘れてたわ」ポイッ

キョン「ふぐぅ……!」ベチャ

ハルヒ「……ねぇキョン。一つ約束してくれるかしら?」

キョン「約束?」

ハルヒ「あたしは、あたしたちSOS団はあんたを元の世界に戻すことに尽力することを誓うわ」

ハルヒ「その代わり」

キョン「その代わり?」

ハルヒ「…………あんたは」

ハルヒ「……あんたは、元の世界のあたしをなにがなんでも助けなさい!」

キョン「…………」

ハルヒ「それだけっ! 返事は!」

キョン「……どうして、お前がそんなことを……?」

ハルヒ「ふんっ! どこの世界だろうと我が身を案じるのは当然でしょ!」

ハルヒ「それに、団長の身を守るのは団員として―――」

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「っ、なによ?」

キョン「……任せとけ!!」

ハルヒ「……この約束、忘れんじゃないわよ!」ニッ!

キョン「当然だ!」

ハルヒ「そう決まったら早速校内の七不思議から探して行くわよっ!!!」ガッシィ!!

キョン「え? それって関係な―――」グイィ!!

ここまでー
では、よいお年をー

あけおめです。今日中には投下しますー

とうかしますー


α












ヤスミ「先輩っ!! あたしとデートしませんか!!?!?」バンッ!












キョン「コートジポワール」

ヤスミ「なんですかなんですかっそれっ!? オッケーってことですか!!?」

キョン「これはな、『断る』と『コートジポワール』をかけた高度な―――」

ヤスミ「じゃあじゃあ場所はですね! 光陽園駅前の、あっ日にちは―――!」

キョン「断るって言ってんだよ。なんだよ、ここ数日ずっと同じことばっか言ってきやがって」

ハルヒ「……」

キョン「団活に支障が出てる、って顔して団長が立腹だぞ」

ハルヒ「えっ!? ち、そっそうね! ヤスミちゃん! あまりに、その……過剰なのは、行き過ぎはよくないと思うわ!」

ヤスミ「わわっ! す、すいません……」

ハルヒ「いや、いいんだけどね。別に誰をデートに誘おうが……あ、でも一応、一応言っておくとSOS団内での異性交遊は―――」

ヤスミ「じゃあ先輩、デートじゃなくてお散歩になら付き合ってくれますか?」

キョン「お、それなら―――」

ハルヒ「!!?」ガタタッ

古泉・朝比奈「「(面白い)」」

キョン「ってなるわけないだろう。しつこいぞ」ペシッ

ヤスミ「あうっ……うぅ、でもでも、あたしはめげませんよっ!!」

ハルヒ「や、ヤスミちゃん! その不屈の心意気や良しだけど、まだ入団試験が継続中なのは忘れてないわよね!?」

ヤスミ「はいっ! もちろんです! 次は確か第二十七次試験でしたよね? 今からやりますか!?」

ハルヒ「えっ、う、うん。そうね、やるっ! やるわよっ!」

ヤスミ「ではその内容はっ!!?」ワクワク

ハルヒ「え、えーっと…………その、に……にらめっこ?」

ヤスミ「にら、めっこ……?」

ハルヒ「あー……有希と?」

キョン「無理ゲ―だ、これ」


ヤスミ「ふぬぬ……っ! うぐぐぅ……!」

長門「……」ジィー

朝比奈「ぷっ、くふふ……や、ヤスミちゃ……あははっ! お、女の子がしちゃダメな、あははははっ!」

キョン「おいハルヒよ、適当に決めたにしろこりゃ難易度が高すぎねーか?」

ハルヒ「なっ!? て、適当じゃないし! ちゃんと考えてたんだから!!」

キョン「だとしても、長門をにらめっこで笑かそうなんざ至難の業だぜ」

ハルヒ「分かってるわよ。難しいからこそ試験にしたんじゃないの」

ヤスミ「ふうぅ……んべろぉ!」

長門「……」ジィ

朝比奈「あーっはっはっはっは!!」ドンドン!

キョン「朝比奈さんが鶴屋さんぐらい笑ってるし、健闘賞ってことでこの試験はパスでいいんじゃねーのか?」

ハルヒ「…………」

ヤスミ「ふいぃ……ぷぅ!」

長門「……」ジィ

キョン「ほら、もう女の子が、ってか人間がしちゃいけないような顔してるぞ?」

ハルヒ「……キョン」

キョン「なんだ?」

ハルヒ「……あんたはあの子を合格にさせたい??」

キョン「あ? なに言ってんだ?? それを見極めるための試験だろうが」

ハルヒ「…………そうね。今の発言は忘れなさい。いいわね?」

キョン「へいへい」

キョン「(やれやれ……)」

朝比奈「あははっ、ひぃ、ふふ……ひぃ、ひっ……」プルプル


ハルヒ「ヤスミちゃん! 有希はご覧の有り様だけど……」

長門「……」ジィ

ヤスミ「勝てません……全てを見透かされてるみたいです……」

ハルヒ「けど! みくるちゃんが抱腹絶倒してることを加味して!」

朝比奈「ふーっ……ふーっ……っくく……」ピクピク

ハルヒ「延長戦よ!! 古泉くんが掃除当番で遅れてるから、入ってきた古泉くんが笑ったら合格にしてあげるわ!」バーン

ヤスミ「なんと寛大な思し召し!! それと、ポーカーフェイスに御見それしました!」ペコリ

長門「そう」

ハルヒ「ただ古泉くんも手強いわよ! 我が団の副団長だもんね!」

ヤスミ「もちろんです! 心して掛かりま―――!」

キョン「……あれ? 古泉って普段からずっとニヤついてね?」

古泉「すいません、遅れました―――」ガチャ!

ヤスミ「!―――んみゅ……!」グイッ!

古泉「…………」

渡橋「…………」グググ

朝比奈「カヒュー……カッ、ヒュー……」カクカク

ハルヒ「みくるちゃん? みくるちゃーーん!!?」

長門「……」ペラッ

古泉「……はは、なんですか、これ?」

ヤスミ「!! 笑ったーっ!!」

キョン「こっちが聞きてえよ」


古泉「なんと。第二十七次試験でしたか。それはそれは、通過おめでとうございます」

ヤスミ「ありがとうございます! ちょっと不意打ち気味ですいませんでした!」ペコリ

古泉「むしろ不意打ちでなかったら普通に笑ってしまうレベルのクオリティでしたよ。あのお顔は」

ヤスミ「いやいや! お恥ずかしい!!」

キョン「(ほんとにお恥ずかしいぐらいの顔してたけどな)」

ヤスミ「あのぅ……大丈夫でしたか?」

朝比奈「あ、ヤスミちゃん……平気平気。ちょっとツボに入っちゃっただけだか、ふっ!」

ハルヒ「! 有希! もっかい暗示して!」

長門「あなたは笑わない。笑わない。笑わない。笑わない」ジィ

朝比奈「……ふぇ」ポケー

ヤスミ「おおっ!! さすがはSOS団!! ありとあらゆる事態への適切な処置!!」

キョン「あれ適切か? ほとんど洗脳じゃないのか? あれ」

ハルヒ「みくるちゃんを笑い死にさせるわけにはいかないでしょ。とりあえず」オホン

ハルヒ「ヤスミちゃん! 第二十……七次試験! 通過おめでと! まだまだ先は長いけど頑張りなさい!」

ヤスミ「はいっ! 一歩一歩ゴールに向けて進んでいきますっ!」

ハルヒ「……その意気や良し。じゃ、みんな今日はあたしもう帰るから」

キョン「ん? なにかあんのか?」

ハルヒ「ちょっとね。てことで自由解散にするから、最後の人戸締りよろしくね。それじゃ」バタン

古泉「…………」

キョン「……な―――」

ヤスミ「なにか最近、雰囲気違いますよ、ね?」

キョン「……お前が言うのかよ。だがまぁ、その通りだな」


ヤスミ「お悩みでも抱えていらっしゃるんでしょうか?」

キョン「……さあなぁ。あいつを完全に理解するのは俺らでも無理だ」

ヤスミ「むむぅ……あたし如きが出しゃばる必要は全くない、ということですね!」

キョン「ま、ほっときゃいつも通りになるだろ―――」

ヤスミ「そうだ先輩! 今度あたしとデートしませんかっ!!?」

キョン「…………あれ? 今ってエンドレスエイト復活祭だっけ? どっからループしてんだ??」ハテ?

古泉「なんですか、それ……」

キョン「なんで今思いついたかの如く同じ話題を持ち出すんだお前は」

ヤスミ「それだけ必死なんですよ!! どーしても、ですっ!!」

キョン「何故俺にこだわる? 古泉でもいいだろう、なっ古泉」

古泉「えっと、僕ですか?」

ヤスミ「ダメですよっ!! あたしなんかがSOS団副団長と並んで歩くだなんてそんな恐れ多いこと……!」

古泉「おやおや……だそうですよ、平団員さん」

キョン「二階級昇進して会長にでもなるか?」

古泉「遠慮しておきます」

ヤスミ「とにかく! 先輩じゃないとダメなんです!! 絶対!!」

朝比奈「…………ハッ!? キョンくんじゃないとダメなの!!?」ガバッ!

長門「目覚めた」

キョン「なにかの波動を感じなさったようだ……あのなぁヤスミ―――」

ヤスミ「はいっ! なんでしょう!」

キョン「とりあえず、デート云々は置いといてだな……そろそろだな」

ヤスミ「! わ、わわっと! すみません先輩方! あたしも急用がを思い出しましてっ……そ、それじゃあ!」ドビューン!

古泉・朝比奈・長門「「「……」」」

キョン「……なんなんだ、あいつ」


古泉「中々、予測不能な行動を取られる方ですね」

長門「興味深い」

キョン「やれやれだ」

朝比奈「ねぇ、キョンくん。ヤスミちゃんになんて言うつもりだったの?」

キョン「あぁ、それはですね……」

古泉「まさに彼女自身についてのことでしょう」

朝比奈「彼女……ヤスミちゃんについてのこと?」

キョン「えぇまぁ。その内分かる時のその内が来たというか、面倒くさくなる前にやっとくべきだったというか……」

古泉「ずばり、彼女の正体について本人の口から聞き出そう、ということですね?」

キョン「話したがりか」

朝比奈「正体……? それって、もしかしてヤスミちゃんも、その……涼宮さん絡みの?」

古泉「そのようです。まず、『機関』の調査によって彼女は北高の生徒ではないことが分かっています」

古泉「加えて、私生活を観察しようと試みたのですが―――」

キョン「うわぁ……」ヒキッ

朝比奈「古泉くん……」

長門「……」

古泉「……『機関』はそういう組織なんです。そういう裏方の、暗躍的な……そういうお仕事なんです」

古泉「オホン……試みたのですが、なぜか彼女を追跡できない。所在を見失ってしまうという事態が起きています」

古泉「この結果をみるに、十中八九、なにかしらの力が働いていることは間違いありません」

朝比奈「それが、涼宮さんかもしれないってこと……?」

古泉「まぁ、そういうことです」


古泉「考えてもみれば彼女の存在は至極当然なのです。何故ならば涼宮さんが求めたから」

朝比奈「……新入団員として?」

古泉「その通り。僕たちと同じく、涼宮さんによって望まれ、この場に姿を現した存在」

古泉「むしろ彼女がただの新入団員であることの方が不思議である、といったところでしょう」

朝比奈「た、確かに……でも、その。ヤスミちゃん自身には何か役割と言うか……属性?」

古泉「僕ならば超能力者。朝比奈さんならば未来人。長門さんならば宇宙人」

古泉「各々の持つアブノーマルな一面のことですね」

キョン「ん? 俺は? 一男子高校生の俺は?」

古泉「スルーします。今のところ渡橋ヤスミさんには、新入団員以外なんら不思議な能力を持っているようには感じません」

古泉「ですが、潜在的に発現する可能性は大きいと考えられます。そしてその時とは―――」

キョン「入団試験が終わり、正式に団員になった時ってか?」

古泉「違いますか? 僕の現在の考えは話した通りですが」

キョン「つまり、ヤスミは高いポテンシャルを秘めた、能力発現前の能力者である可能性が高い、ってことだよな?」

古泉「ええ。今現在は涼宮さんの『力』に影響されているだけのほとんど一般人と言ってもいい存在でしょう」

キョン「お前ら『機関』がヤスミの詳細について調べきれないのはハルヒの影響であると」

古泉「僕はそう考えます。長門さん、朝比奈さんはどうですか?」

朝比奈「えっ? わ、わたしは……どうかなぁ? 古泉くんの言っていることはすごい正しい気もするけど……うぅん」

長門「…………不確定要素が多すぎる」

古泉「不確定要素、ですか?」

キョン「まぁ、そうなんだよなー」

朝比奈「ど、どういう……?」

古泉「…………」


キョン「多分、俺と長門の考えは同じだろう。古泉のとは違うがな」

古泉「是非、お聞かせ願えますか?」

長門「彼女が涼宮ハルヒが望んだ存在であることは間違いない。一般人であるということはない」

古泉「現段階でも?」

キョン「現段階でも充分、一般人からは離れているさ」

古泉「そうですか……」

長門「ただ、彼女が現れた理由が不明」

古泉「涼宮さんによって望まれたからではないのですか?」

キョン「ハルヒが望んだ存在だとしたら、何故ヤスミをとっとと入団させない?」

古泉「それは、まだ彼女が一般人の域を出ていないため……ではないでしょうか?」

キョン「だから不確定要素なのさ。本当にハルヒが望んだ存在なら、例え一般人であってもこんな遠回しなことはしない」

古泉「…………」

キョン「鶴屋さんでも、ENOZであっても、阪中であっても、SOS団外の一般人だって今までハルヒが手に負えなかったことはないだろう」

キョン「見れば明らかな通り、ハルヒはヤスミに対してどういう接し方をしていいのかを戸惑っている節がある」

朝比奈「確かに……そう見えなくもないです」

キョン「ヤスミが、ハルヒが望んだ存在にしちゃ少し逸脱しすぎてる」

長門「彼女が涼宮ハルヒによって望まれた存在とするには、不確定要素が多すぎる」

古泉「……なるほど。お二方の仰ることはもっともでしょう」

古泉「ですが、となれば……一般人とは違う、涼宮さんによって望まれたわけでもない彼女は……」

古泉「彼女の正体とは一体……?」

キョン「まだ推測に過ぎないがヤスミの正体は―――」


ヤスミ「はぁ……危ない危ない。先輩ったらほんっとに、もう!」テクテク

ヤスミ「んー、でもどうすれば……うーん?」

ハルヒ「うーん?」バッ

ヤスミ「うーん?」タリ












ハルヒ・ヤスミ「「うん???」」












ハルヒ「や、ヤスミちゃん!? な、ど、どうしてここに!!?」ワタワタ

ヤスミ「あ、あたしはそのっ!! きゅ、急に用事が……!」バタバタ

ハルヒ「…………」

ヤスミ「…………」

ハルヒ「……せっかくだしちょっと、話していく?」

ヤスミ「えっ? あ、えっと……」

ヤスミ「は……はい」

ハルヒ「じゃ、そこの公園はいろっか!」

ヤスミ「は、はい!」

ハルヒ「(……言っちゃった)」ダラダラ

ヤスミ「(……ふ、二人きりかぁ)」ドキドキ

ここまでー

時々今何作目か忘れちゃうがスレタイの!の数でわかるから便利

20時までには投下しますー

投下します


α


ハルヒ「……」

ヤスミ「……」

ハルヒ「……」

ヤスミ「……あのー?」

ハルヒ「うーむ……あっ、ごめんごめん! ちょっとボーっとしてて!」

ヤスミ「というよりは何か深い考え事をしてるように見えましたよ?」

ハルヒ「あれっ? そんな風に見えてた!?」

ヤスミ「多分、あたしだけじゃなくて先輩方も……」

ハルヒ「あー……そっか。まぁ、そうかぁ……」

ヤスミ「あのー、差し出がましいのですが……何かお悩みでもあるならお聞きしても……」

ハルヒ「……えーっと」

ハルヒ「うーん……」

ヤスミ「是非是非っ! お力になれるならば!」

ハルヒ「…………じゃあ言うけどね」

ハルヒ「あたし、ヤスミちゃんと相性悪いじゃない?」バーン!

ヤスミ「……え˝っ!!?」

ハルヒ「えっ?」

ヤスミ「そ、そうなんですか!??」

ハルヒ「あれ!? あたしだけ??」

ヤスミ「む、むしろそういう風に思われてましたっ!?」

ハルヒ「なんとなく、そんな感じと言うか……」

ヤスミ「あ、あたしのこと嫌―――」

ハルヒ「いやいやっ! 嫌いじゃないのよ!? 嫌いとかじゃないんだけど……」

ハルヒ「なんか……変なのよね。うん」

ヤスミ「へ、変……ですか?」


ハルヒ「こうやって二人で話す機会なんて今までなかったじゃない?」

ヤスミ「そ、それは他の先輩方ともそうですけど……」

ハルヒ「あたしも家族とか団員以外で人と2人きりで話す機会はあんまりないんだけど」

ハルヒ「それでも、こう何と言うか……身構えたり、臆したりすることはないのよね。例外はあれども、基本的に」

ヤスミ「はい。えっと……」

ハルヒ「でもね、ヤスミちゃん。あなたに対してはちょっとこう……そう、さっきから言ってる通り変なのよ!」

ヤスミ「へ、変とはっ!?」

ハルヒ「あたしがあたしで居られないというか、あたしらしくできないというか……」

ヤスミ「……は、はぁ」

ハルヒ「なんでかしら? あたしは人見知りとかそういうタイプじゃないはずなんだけど……」

ハルヒ「それとヤスミちゃん。あなたもいま結構変よ?」

ヤスミ「えっ? そ、そうですか!?」

ハルヒ「初めてあなたと会った時は物怖じしない、堂々とした子だと思ったんだけど」

ハルヒ「今のあなたからはとてもそうは感じないわよ? 怯えてるとまでは言わないけど、手探り感であたしと接して―――」

ヤスミ「す、ストップ! ストップです! ストップ!」

ヤスミ「そんなことないですよ!? 団長は尊敬すべきお方であることに変わりはないですし」

ヤスミ「あっ、だとしたら緊張してるのかも! あまりに偉大すぎて極度の緊張が―――」

ハルヒ「だから、初めて見た時はそういうタイプじゃないって思ったのよ」

ハルヒ「緊張とか、臆病とか、そういうのとは無縁の存在。天真爛漫を体現したかのような子って感じだったもん」

ヤスミ「そ、それは過大評価です! あたしなんてまだまだ……」

ハルヒ「…………やっぱりあたしたち合わないのかしらねぇ?」

ヤスミ「そんなっ!?」

ハルヒ「なんでかしら? どっかで喧嘩でもしたっけ??」


ハルヒ「ここのところそんなことばっかり考えてるのよ」

ハルヒ「だって、あたしがそんなこと思う人なんて今までいなかったからね」

ヤスミ「あ、あたし邪魔になってるんじゃ……」

ハルヒ「邪魔とかじゃないのよ!? 嫌いとかでもないんだけど……あっ!」

ハルヒ「つまりこうよ! 折り紙の金色の紙とかあるじゃない? 大事なんだけど、結局使わないままでいちゃうみたいな……」

ヤスミ「あっ! なるほどっ! 分かりやすい! そういうことなんですねっ!」

ハルヒ「あたしが言っといてなんだけど……そんなに分かりやすかったかしら?」

ヤスミ「はいっ! でも、そうですか……」

ハルヒ「ごめんごめん! ほんとに邪険にしてるとかじゃないのよ? ただ……そう! そうよ!」

ハルヒ「不思議なのよ!!」

ヤスミ「不思、議?」

ハルヒ「こんなに考えてるのに何故! この結論に至らなかったのかしら!? そうよヤスミちゃん!」

ハルヒ「あなたはあたしの中で『不思議』な存在になっていたのよ!! きっとそうだわっ!!」

ヤスミ「そ、そんな……っ! ま、まさかあたしがSOS団の求める『不思議』そのものだったなんて……!」

ハルヒ「いいえヤスミちゃん! まだあなたは潜在的な可能性を秘めてるにすぎないの!」

ハルヒ「それをどう昇華させるかが今後のあなたの入団試験に懸かっているといっても過言じゃないわ!」

ヤスミ「な、なるほど……やっぱりまだ未熟な身であるということですか!」

ハルヒ「そうね! でもあなたには、そう! 無限の可能性を感じるのよ!」

ハルヒ「その若さに期待大だわっ! あたしをここまで唸らせたのは―――キョンくらいのもんよ!」

ヤスミ「先輩ぐらいの……!!」 


ハルヒ「軽くスッキリした気分だわ!」

ヤスミ「それはよかったです! これであたしとの相性も……!」

ハルヒ「あ、それは変わらないかしら。相性は悪いというか、苦手のままね」

ヤスミ「がーん!!」ガーン!

ハルヒ「気にしない気にしない! 別にヤスミちゃんだけじゃないわよ! 正直、朝倉さんとも相性がいいとは言えないしね」

ヤスミ「朝倉さん……?」

ハルヒ「朝倉さんっていうのはSOS団の……そっかまだヤスミちゃんは会ってないっけ」

ヤスミ「はい。その方とは仲がよろしくないんですか?」

ハルヒ「仲は……悪、くはないとは思うけど……いーや悪いかもね」ニヤッ

ヤスミ「えっ?」

ハルヒ「最近は互いに悪口というか毒吐くことが多い気がするし、いがみ合ってる感じ?」

ヤスミ「へー、そんな方がいらっしゃるんですね」

ハルヒ「最近は部室に顔出さないけど、そろそろ朝倉さんにも相応のポストでも用意しようかと思ってるのよ!」

ヤスミ「おおっ!」

ハルヒ「つまりはね! 相性が良くなかったってなんだかんだ1年付き合ってきた人もいるってことよ!」

ヤスミ「うーん……」

ハルヒ「そういうもんよ! ただヤスミちゃんはなんで相性が悪いか分からないから不思議なわけで……」

ヤスミ「……」

ハルヒ「まったく、本当になんでかしらね?」


ハルヒ「ヤスミちゃんは別にあたしを嫌いだとか、苦手だとか思ってないのよね?」

ヤスミ「そんな恐れ多いこと!! 滅相もないですよっ!」

ヤスミ「……それでもっ」

ハルヒ「うん?」

ヤスミ「団長が、あたしに苦手意識があるのだとしたら……」

ハルヒ「したら?」

ヤスミ「…………それは」

ハルヒ「それは……?」

ヤスミ「…………あたしだからじゃないですか?」

ハルヒ「え? それどういう意味?」

ヤスミ「……あたしは」






ヤスミ「『あたしはわたぁし』ですから!」






ハルヒ「……うん??」

ヤスミ「わわっ! もうこんな時間!! すみませんっ! 今日はこの辺で失礼させていただきますっ!!」シュバッ!!

ハルヒ「あっ、ごめんね引き止めちゃって! 送って行くわよ?」

ヤスミ「大丈夫なのです! 家、近所なので!! それではっ!」

ハルヒ「そ? じゃあまた」

ヤスミ「ええ! また部室で!! それではっ!! あっ、あと!」

ハルヒ「うん?」

ヤスミ「是非っ! 仲良くなりましょうね!! ではではっ!」タッタッタ!

ハルヒ「……ほんと不思議な子ねぇ」クス













キョン「ヤスミの正体は―――ハルヒだ」












キョン「と、俺は思うわけだが……」

長門「……」

古泉「なんと……それは……」

朝比奈「」アングリ

キョン「正確に言えばハルヒの無意識が実体化した……朝比奈さん、大丈夫ですか?」

朝比奈「…………ハッ! だ、大丈夫です!」

キョン「ヤスミはハルヒの無意識が実体化した存在。故にハルヒであってハルヒの意志ではない」

キョン「ハルヒが望んだ存在ではなく、望まずとも生まれた存在で……」

朝比奈「」アングリ

長門「続けていい」

キョン「ああ。つまりヤスミという存在はハルヒによって生み出されたもんだが、当の本人同士にその自覚はない」

キョン「有意識と無意識という対極の存在だから、互いが互いを自分だと認識していない。はずだ」

キョン「ハルヒはヤスミを曲者の新入団員、ヤスミはヤスミでハルヒを尊敬する団長(笑)という認識しか持ち合わせていないはずだ」

古泉「……ヤスミさんを涼宮さんが生み出した存在と決定づける根拠は?」

キョン「根拠ね。そうだな……」

キョン「古泉、お前がこの前言っていたヤスミがSOS団の強力な味方になりえる存在だとしたらどうする?」

古泉「では先ほど僕も言いました通り、彼女には何か潜在的な力が―――」

キョン「その潜在的というトコから違うのさ。あいつの『力』は既に顕在化している」

朝比奈「そ、そんな! でも、そんな感じは……」

キョン「考えてもみてください朝比奈さん。ヤスミはハルヒの『力』から生まれた存在です」

キョン「ハルヒと同じ『力』を持つならば、ヤスミの『力』をハルヒのものだと勘違いしてもおかしくはない」

朝比奈「そ、そんなっ!?」

古泉「……ヤスミさんが涼宮さんと同じ『力』を有すことが、根拠であると?」

キョン「最初に言った通り、これは俺の推測に過ぎん。俺の勘違いかもしれんしな」

キョン「けどまぁ……この予想を大きく外れる、ということはないだろう」


古泉「では……望んでないならなんのために涼宮さんはヤスミさんを生み出したのです?」

キョン「そればっかりはなぁ……むしろハルヒのメンタリスト担当はお前だろうに」

古泉「最近の涼宮さんは精神的に落ち着いており、閉鎖空間の出現頻度も低下傾向にあります」

古泉「安定している状態の涼宮さんが、何故このようなことをしたのかは分かりかねます」

キョン「そうだな。考えられるとしたら、意識的な願望としての新入団員の形成」

キョン「本来なら外的要因によって実現する願望を、内的要因によって補完したというか……あぁー!」

朝比奈「!?」ビクッ!

長門「どうかした?」

キョン「最近な、ハルヒの思考にノイズが入って考えが読みずらいんだよ。同様にヤスミのもな」

古泉「あぁ……ですから保守的な説明を……」

キョン「言うな言うな。あんまり自信のない予測はしたくないんだよ」

キョン「なんでノイズが入ってんのかと思えば、それこそヤスミの存在だよ」

古泉「何故です?」

キョン「言ってみりゃ両方ともハルヒの思考なわけだから、こう、ジャミングというかハウリングと言うか……」

古泉「これまたあなたの推測を裏づける根拠になっているわけですね」

長門「共同個体での思考の共有は不可能ではない。しかし、単一個体時におけるシナプスの―――」

古泉「ほう……」

朝比奈「???」

キョン「そういう小難しーい理由があって、脳へのクラッキングが上手くいかないわけだ」

古泉「言葉に表すととんでもないことをされているんですね」


キョン「まぁ、そういう理由でヤスミがハルヒから生み出されたであろうことは分かってもその理由までは定かじゃない」

朝比奈「はぁ……」

キョン「近々、ヤスミがSOS団に介入してくることは事前に分かってはいた」

古泉「ええ。あなたが未来を見たことをによってね」

キョン「で、その未来がやってきたわけだが……ここで問題だ。残念ながらと言うべきか、次の未来が全く見えん」

キョン「というのも、さっき言った通り、未来を不確定にする存在(ヤスミ)の発する、こうジャミングみたいなもんが……うわぁっっと。な?」

朝比奈「な、なんとなく分かります……?」

キョン「俺を妨害できる程の『力』を持つ奴なんてほんとに限られてるからな。原因を探るのは難しくはない」

古泉「それこそ涼宮さんクラスの『力』でないと話になりませんね」

キョン「……もしくは」

キョン「未来を不確定にする出来事が、もっと別の場所で進んでいるかもってことだ」

古泉「! 先日、仰られていた時空改変よりも大規模な……?」

キョン「もしかして佐々木はこれが狙いだったのか? なんて考えてたらこりゃもう裏かかれすぎてもうだめだーなんて」ハハハ!

朝比奈「わ、わわわ笑ってられる状況なんですか!!?!?」ガーン!

長門「可能性は低い。向こうにとっても、不測の事態のはず」

朝比奈「ふぇ? そうなんですか??」

キョン「冗談はさておき。長門の言う通り、さすがに佐々木にとっても予期せぬ出来事だったことは間違いない」

キョン「何をするにしても俺がここに存在する時点で、何よりもでかい障害になるんだからな」

古泉「……頼もしい限りですが」

古泉「この日常が、嵐の前の静けさのように感じるのは……些か非日常に慣れ過ぎてしまったが故ですかね?」

キョン「……なあに、それは多分」

キョン「全員そう感じてるさ」

朝比奈・長門「「…………」」コクリ

ここまでー

>>54
好きなスレの形式を引用させていただきました!

未完だけは避けてほしい


β


ハルヒ「ただいまっ!!」バンッ!

キョン「」ドンッ!

古泉「これはこれは……」

朝比奈「きょ、キョンくん!!?」

佐々木「おやおやハルヒさん。あなたの引きずっている、かつてキョンで在ったかのような物体はなんだい?」

長門「まぎれもなく彼」

ハルヒ「いやね、キョンつれて片っ端から北高まわったんだけど手掛かりらしい手掛かり見つかんなくてねー!」

佐々木「引きずりまわされた結果がそれというわけだ。ありのままだね」

キョン「そ、それ扱いしてくれるな……」プルプル

古泉「頑丈ですね」

朝比奈「救急箱、救急箱!」ガサゴソ!

ハルヒ「しっかし、これと言って変わったことがないなんておっかしいわねぇ」

キョン「おま……ホントにさっきの話聞いてたか?」

佐々木「そう簡単にキョンが向こうの世界に帰ることのできる方法は見つからない。という旨の話をしたはずだけど?」

ハルヒ「そう思って油断してる手掛かりを不意打ちで見つけてやるのよっ!!」ババッ!!

キョン「手掛かりに不意なんて……ハルヒ、その気持ちはありがたいが、もう少し大人し目でいこう」

ハルヒ「そう?」

キョン「じゃないとおれがもたん」

ハルヒ「だらしないわねぇ。まぁあんたが倒れたりしたら本末転倒だしね」

佐々木「時間はあるさ。より確実な方法を探していくことにしよう」


佐々木「そういうわけで今日は解散だ。明日より回帰手段について情報を集めていくとしよう」

朝比奈「が、がんばりますっ!」

古泉「精一杯頑張らせていただきます」

ハルヒ「あたしも色々準備しとかないとねっ!!」

キョン「ああ。頼んだぜ」

長門「…………」

キョン「ん? どうした長門?」

ハルヒ「さっ! そうと決まれば英気を養うために今日はさっさと帰―――」

長門「あなたはどこへ帰る?」

ハルヒ「―――る??」

キョン「どこって、そりゃあ」

佐々木「僕の家しかないだろう。元はキョンの家だし」バンッ

ハルヒ・朝比奈「「えええええぇぇぇぇええぇぇっ!!?!?!?!?」」

朝比奈「わわ、若いだだ、男女が一つ屋根の下……!!?」

キョン「佐々木。まだまだ俺たちは若いらしいぜ」

佐々木「未熟という意味ではなんら間違いはないさ」

ハルヒ「間違い!!? あんたたち間違いって何!!? なんの間違いが起きるの!!?」

キョン「落ち着けって。二人共、ただ寝床と飯を供給してもらう場所を借りるだけだ」

佐々木「おっと、人を家政婦扱いしてもらっては困る。もちろん、キミにも手伝ってもらうよ?」

朝比奈「し、し、新婚生活……!?」アワワ!

キョン「ややこしくするなよ」

佐々木「これは失礼」

お、キョンTUEEEやんけ!

ハルヒSS少ないから頑張ってくれ


キョン「あーだこーだ言っても、他に泊まるところもないだろう? 事情を話すわけにもいかんし」

ハルヒ「……ハッ! ゆ、有希の家は!? 確か有希の家って親御さんは海外に行ってるわよね!?」

長門「……」コクリ

佐々木「あぁ。有希さんのご迷惑でなければ、構わないけど」

ハルヒ「……勝った!」グッ!

キョン「何にだよ」

長門「……ただし、推奨はできない」

キョン「そりゃ当然だ」

長門「わたし個人は問題ない。しかし」

佐々木「朝倉さんだね」

長門「そう。定期的に家に来る」

キョン「どこの世界でもお母さんなわけだ。朝倉にバレるわけにゃいかんしな」

長門「すまない」

キョン「謝ることはないさ。元々行くべき場所に行くだけだ」

ハルヒ「ぬぐぐ……仕方ないわね!! 二人共!! 絶対変なコトしちゃダメなんだからね!!」

朝比奈「へ、変なコト……!!」ゴクリ

ハルヒ「そう! 例を挙げるとするならこんなコトよ―――!!」キュピーン!

ハルヒ「くらいなさい!! 『ラッキースケ―――!」バッ!!

佐々木「故意にやってる時点でラッキーもなにもないよね」トンッ

ハルヒ「あひゅぅ……」トサッ

朝比奈「く、首トン……!」

古泉「漫画の世界ですね……」

佐々木「みんなも、キョンが僕に何かしようものならこれで撃退するから安心してもらいたい」

キョン「俺は常に怯えてなきゃならんわけか?」


朝比奈「それじゃあ、わたしたちはこっちですから」

長門「また明日」

古泉「では、よい夜を」

キョン「キモイこと言ってんじゃねえ」

佐々木「じゃあみんな、また明日。一樹くんはハルヒさんを頼んだよ」

ハルヒ「むぅー……新婚……ぶぅ……」

キョン「……後遺症とか残らねえだろうな?」

佐々木「…………まさか」

キョン「間っ!」ガーン!

古泉「しかと任されました。お宅までおぶっていきますよ。それでは」

朝比奈「さようなら」ペコリ

佐々木「ええ、さようなら」

キョン「……んじゃ、行くか」

佐々木「ああ、そうしよう」

キョン「…………」スタスタ

佐々木「…………」

キョン「…………あー、佐々木よ」

佐々木「悪かったね」

キョン「あ?」

佐々木「キミをこんな事態にしてしまって。僕の責任だ」

キョン「なんでお前が謝るんだよ。責任? なに言ってんだ?」

佐々木「…………」


佐々木「真面目な話をしようか」

キョン「俺はいつだって真面目だぜ」

佐々木「真面目に」

キョン「……はい」

佐々木「……この世界にいる間にさ」

佐々木「僕はある仮説を立てたんだ」

キョン「仮説?」

佐々木「僕と、そしてキミの力に関する仮説さ」

キョン「……」

佐々木「なんだって今更と思うだろう? そんなコト平安時代から散々やってきたじゃないかと」

キョン「……頭を―――」

佐々木「覗かなくたって分かるさ。顔にかいてあるんだから」

キョン「……」ゴシゴシ

佐々木「そしてこの仮説は今更じゃなく、今だからこそできる仮説なんだよ。キョン」

キョン「今だから……?」

佐々木「ああ。何故、今になって僕という『器』からハルヒさんに『力』が移ったのか」

キョン「正確には違っただろう。『器』はハルヒとは別にいて、それはやはりお前だった」

佐々木「そうだね。本来、今代の『器』も今まで通り僕だったのかもしれない」

佐々木「ただ、杯から水が零れるように、漏れ出した『力』は行き場を求めた」

キョン「それがハルヒ……あ? まてまて佐々木」

佐々木「どうかしたかい?」

キョン「その漏れ出した『力』の行き場がハルヒってのはまぁ分かる」

キョン「だがなぜ『力』が漏れ出した? それってつまりは……」

佐々木「……ああ。過去と比べて間違いなく『力』は増幅している」

佐々木「今まで通り、僕一人では御しきれないほどにね」


キョン「…………」

佐々木「尤も、『力』は僕とハルヒさんに分断されていたのだから増幅している『力』にキミが気づかないのも無理はない」

佐々木「そもそも、これは単なる一仮定の一内容に過ぎない」

キョン「……向こうの世界の佐々木が同じ考えをしている可能性は?」

佐々木「ない」

キョン「……」

佐々木「とは言い切れない。世界は違えど、なんてったって僕だからね」

キョン「……なるほど。ハルヒは『力』を奪ったってよりかは、拾った感じになるのかね」

佐々木「…………」

キョン「まぁ、この仮説が正しいのか間違っているのか今の俺には到底―――」

佐々木「キョン」

キョン「ん? なんだ?」

佐々木「仮説の本題は……また別にあるんだ」

キョン「本題? 『力』が増幅した影響でハルヒに『力』が宿ったっていう仮説じゃないのか?」

佐々木「最初に言っただろう? 僕と」スッ

佐々木「キミの力に関する仮説だと。今のままではキミの力にはなんら関係のない話のままだ」

キョン「そりゃそうだろうよ。そもそもオレの力とお前たちの『力』には何の関係も―――」






佐々木「その全てを覆す―――仮定があると言ったら?」






キョン「――――――」

佐々木「……そんな顔をされると困るな。ただの仮定、四方山話程度に受けとめてくれるとありがたい」

キョン「……このタイミングでそりゃないぜ佐々木よ。信じろと言っているようなもんだ」

佐々木「あぁ……間が悪いのは僕の短所さ。ま、話の続きは」

佐々木「食事の後でも構わないだろう」ガチャ

佐々木「おかえり。キョン」ニコッ

キョン「……ただいま」

ここまで!!
とても、とても長い間お待たせしております!! すいません!
ただこの先もスローペースな投下になりますゆえ、どうかご了承ください
完走目指して頑張るので!!

>>94
頑張ります!!
>>102
ですよね! ss増えてくれることを望みます

待ってました!

マッテタ 乙

スローターでも大丈夫大丈夫。
今の管理人やる気ナッシングだから何ヵ月でも残り。
せやからゆっくりまったりのんびりでもええから完結してくれたらええんや。


こっちは待っとるから大丈夫やで

ただひたすらに復活に感謝

乙です
続きをのんびり待ってる


これからも楽しみにしとるで

19時半より投下しますー

>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114
ありがとうございます! 楽しんでいただければ幸いです

とうかー


β


古泉「―――……」

古泉「……っ」パチ


目覚メタカ? 随分疲弊シテイルヨウダナ


古泉「……」ズキズキ


マァ、無理モナイ。アレダケ能力ヲ使用シ続ケタノハ今マデニ無イダロウ?


古泉「……」ピクッ


一刻一刻ト、オ前ノ限界ハ近ヅイテイルノダ
ソノ無駄ナ足掻キニヨッテ


古泉「……あなたも飽きない人だ」

古泉「何時までも僕を監視し続けるつもりですか? 僕のこの身が朽ちるという時まで」


ソノ通リダ


古泉「でしたら、少しは口を閉じることを覚えた方がいい。あぁ、閉じる口があるのかは存じませんが」

古泉「あなたの声を聞くたび、否が応でも体が熱されるのでね。早く僕に消えてほしいのであればそれは逆効果ですよ」


ハハハ。ドウシタ? 懇願カ? 頼ムカラ黙ッテクレト?


古泉「……」


何故オ前ノ言ウコトニ従ワネバナラナイ? オ前ガ―――


古泉「(…………集中)」スゥ


古泉「(闇雲に能力を使ったところで何の解決にもならないことは分かった)」

古泉「(漸く頭も冷えてきた頃合い……思考の時間だ)」

古泉「(長門さんは、朝比奈さんは……彼は無事でしょうか?)」

古泉「(そして……涼宮さんは……)」

古泉「(…………ここは佐々木さんによって飛ばされた空間)」

古泉「(もしかするとこの閉鎖空間自体彼女か作り出した可能性が……?)」

古泉「(……いや、寧ろそれならば僕の能力すら封じるような空間に―――)」


無駄ダ


古泉「っっ!!?」


集中シヨウガ必ズオ前二声ハ届ク
死神ノ足音ノヨウニナ


古泉「…………」


イクラ思考ヲ張リ巡ラセヨウトモ
行キツク先二脱出ノ答エハナイ


古泉「……その割に、随分と必死に邪魔をしてくるんですね」

古泉「まるで何かを考えさせないようにしているかのようだ」


ハハハ。ソノ希望的観測ガ間違イダッタト知ル時ノオ前ノ顔ガ楽シミダ


古泉「鏡でご自分の顔を見なさった方がさぞ愉快ですよ」

古泉「(……)」

古泉「『……さて』」













朝比奈「あなた……お名前は?」

みくる「……みくる。朝比奈みくる」












朝比奈「(……やっぱり!!)」ズーン!

みくる「……?」シクシク

朝比奈「(まさか自分自身に話しかけちゃうなんて重大な禁則事項……いや!)」

朝比奈「既定事項! きっと既定事項ですからぁ!」

みくる「きてい、じこう??」

朝比奈「あっ! いえいえ! なんでもないのよ」

みくる「……グスッ」

朝比奈「ほ、ほら! もう泣かないで、そこのベンチに座りましょう?」

みくる「……」シクシク

朝比奈「(ど、どうしよう……わたしってこんなよく泣く子でしたっけ?)」

朝比奈「…………!」

朝比奈「みくるちゃん! 見て!」

みくる「……?」

朝比奈「愛の戦うウェイトレス!!」ババッ!!

朝比奈「SOSだいだい!!! 参上!!!」ババンッッ!!

みくる「…………」

朝比奈「(あ、あれーっ!? わ、笑わない!!? 鶴屋さんは爆笑してたのに!?)」

朝比奈「(戦隊ものは子供受けの鉄板って涼宮さんが言ってたのにぃ……)」

みくる「…………」

朝比奈「…………」プルプル

みくる「…………あのね」

朝比奈「! うんうん!」


みくる「いっつもね、わたしがお話するとね、みんなに笑われちゃうの」

朝比奈「……うん」

みくる「わたしね、おっちょこちょいとかドジなのは自分でもよく分かってるの」

みくる「でもきっとね、大人になるころにはそういうのもなおってると思うの」

朝比奈「………………………………うん」

みくる「だからね。わたしね、そんな完ぺきな大人になったらね、やりたいことがあるの」

朝比奈「うん」

みくる「でも……で、でもね」ヒック

朝比奈「! み、みくるちゃん!?」ビクッ

みくる「み、みくるがぇ、お話するとね、み、みんながぁ……」ウルウル

朝比奈「ストップ! ストップ! みくるちゃん! まって、まって!!」

みくる「う、ぅ……うぅー……!」

朝比奈「あわわわわ……!」バッ!

朝比奈「あ、愛の戦うウェイトレス!! SOSだいだい!!! 参上!!!」ババンッ!

みくる「…………」

朝比奈「(よかった……泣くのはストップしてくれたのはいいけど……)」

みくる「…………」

朝比奈「(なんでこれやると真顔になるのかなぁ……?)」

みくる「……」スッ

朝比奈「ぼ、防犯ブザー!? こ、この時代で!? って、ダメダメ!! 不審者じゃないですからやめてぇー!」


みくる「……グスッ」

朝比奈「(……やっぱり、間違いないわよね)」

朝比奈「(あぁ……だとしたらやっぱりこれは既定事項だったのかも……)」

みくる「……ヒクッ」

朝比奈「大丈夫?」

朝比奈「(子どもの頃は泣いてばかりだったなぁ……あれ? 今もそんなに変わらない気が……)」

朝比奈「(その度に誰かに慰められて……そういえば今日は慰めてくれた友達が見当たらないなぁ)」

朝比奈「(だから、ここでどんな話をしたかなんて覚えてない、けど……)」

みくる「……」ゴシゴシ

朝比奈「……えっと、お友達に……からかわれたりした、のかな?」

みくる「……なんで、分かるのぉ?」

朝比奈「えへへ、なんとなくそう思ったの」

みくる「お姉ちゃん……ちょうのうりょくしゃ?」

朝比奈「えーっと、それは別の人かなぁ」

みくる「?」

朝比奈「あ、なんでもないです! えっと……どうして、からかわれたか聞いてもいい?」

みくる「…………」

朝比奈「……言いたくないことかも知れないけど、誰かに話すと楽になるかも知れないよ?」

みくる「……だって」

朝比奈「笑わないよ」

みくる「!? なんで言おうとしたことが分かるの?」

朝比奈「あはは、なんでかなぁ。なんでだろう」

朝比奈「(子供の頃は、言う度に笑われて泣いてたからなぁ……)」

朝比奈「(……あれ? 佐々木さんがわたしをここに連れてきたのって―――)」


ギィイイィィイイイィイイィイン!!!


長門「…………」ズザザッ!!

周防「―――無様ね」フワッ

長門「…………」バッ!!

周防「……無駄―――」パリンッ!

長門「…………」

周防「終わり―――かしら? あっけないわね―――」

周防「ところで―――何故、インターフェースがここにいるの?」

長門「…………」

周防「あなたの役割は―――観測―――のはず」

周防「なにが起きようと―――ただ傍観するのみ」

長門「……あなたが決めることではない」バッ!

周防「―――疑問なのよ……あなたのような―――インターフェースが何故そんなことをするのか」ヒラリ

周防「この星の環境が? 情報が? 人間が? 何がそうさせたの?」

周防「それとも、あなた自身のエゴ?」

長門「…………」

周防「ああ……もしかしてあなた……自分は不変であると思ってるの? あはは」

周防「自分自身の行動になんの疑問も持たないなんて、それしか考えられないわよね」

周防「あ、はは、ははは! 愉快、だわ! 壊そうと思ってたのに、とっくに壊れてるなんて!」

長門「…………なにも知らないあなたが」シュッ!!

周防「は、はは―――それじゃ―――」クルッ!













長門「わたしを語――――――」

周防「潰れなさい―――」












ドンッッッッッッッッッ!!!!!





ここまでー
あんまり進まなくてごめんなさい。
書きたいものが増えると寄り道ばかりになってしまいます

なるほど…朝比奈(小)でも(一部が)(大)なんですね
ちょっと朝比奈(小)を探しに逝ってくる

とうかしまー


β


佐々木「……キョン」トントントン

キョン「どうした我が親友」

佐々木「キミには玉ねぎを切ってもらうようお願いしたはずだが……」

キョン「おう。されたはずだ」

佐々木「何故切った玉ねぎが見当たらないんだい?」

キョン「そればっかりは俺にはどうしようも……」

佐々木「まったく、力を失ったかと思えば……また奇跡的なドジを起こすものだねキミは」ゴソゴソ

キョン「ドジ、ってわけじゃ……ホントにどっかいっちまって……まぁ、また切り直せばいいんだろ?」

佐々木「切ったものがこちらに」スッ

キョン「料理番組かよ! ていうかオレが切った玉ねぎ隠したのお前じゃねえだろうな!」

佐々木「さあ手を休めている場合じゃないよ。次はニンジンの処理を頼もうかな」

キョン「無限神刀流の餌食にしてくれる……」チャキ

佐々木「居合術の練習台にニンジンを選ぶのはどうかと思うよ」

キョン「というより佐々木よ、わざわざオレに手伝わせないでお前がチョチョイとふにゃあっと作ればいいんじゃ?」

佐々木「ふわっとした表現だね。キョン、料理は手間暇さ。時間をかけた分だけおいしくなるんだ」

佐々木「それに、こうして台所に二人して立つなんて昔を思い出さないかい?」

キョン「記憶の捏造をするんじゃねえ。そもそもお前が料理してるトコすら見たことねえよ」

佐々木「くつくつ。さすがは親友、よく見てるじゃないか」

キョン「今さらお前にメシマズ設定なぞいらんぞ」

佐々木「それはできてからのお楽しみ。おっと、キョンそこのドドリア取ってくれるかい?」

キョン「何に使う気ですかこのドドリアさんを!!? 作ってんのカレーだよな!!?」


佐々木「召し上がれ」

キョン「……死なない?」

佐々木「おもしろいジョークだねキョン。それに、その時はその時さ」

キョン「どの時だよ。恐ろしいことサラッと言うんじゃねえ」

佐々木「さあさ」

キョン「……いただきます」パクッ

キョン「っ、こ、これはぁぁあああああああ!!!!?!?」ビビビ!!

佐々木・キョン「「普通だ」」

佐々木「ってキミは言うだろうね」

キョン「はいはい。顔にかいてあるってんだろ」パクパク

佐々木「顔には『おいしい』って書いてあるけど、キミならそう言うと思ってた」

キョン「……ったく」

佐々木「それじゃ僕も、いただきます」パクッ

キョン「モグモグ……オホン、あー佐々木。最近学校はどうなんだ? うん?」

佐々木「どうしたい急に? 年頃の娘を持つ父親のようなこと言って」

キョン「別に。母さん、お茶」

佐々木「誰に言ってるんだい、それ」

佐々木「学校か。楽しいよ、彼女たちのおかげでね」

キョン「普段は何してるんだ? 不思議探索か?」

佐々木「もちろんそれもやってるけど、最近は有希さんが古本巡りに嵌ってね、みんなで―――」


佐々木「―――それで見事、みくるさんが有希さんを下して初代北高スピリチュアルガールに就任したってわけさ」

キョン「…………えっと、なんの話だっけ?」

佐々木「キミが聞いたんじゃないか。普段学校でなにしてるのかと」

キョン「いや、そうなんだけど。いつのまにスピリチュアルガールトーナメント始まってた??」

キョン「ていうかスピリチュアルガールてなに?」

佐々木「さ、この話はこれくらいにして……真面目な話の続きをしようか。二人共食べ終えたところだし」

キョン「めっちゃ気になるところで話切られた……」

佐々木「ちなみに三位は国木田くんだ」

キョン「ガールの定義!!!!」ガーン!

佐々木「全てを覆す仮定があると言ったね?」

キョン「おぉう……急にシリアス……切り替えの早さが尋常じゃねえな」

佐々木「長い話にはならないよ。コーヒーでいいかい?」

キョン「あぁ、キャラメル巻きアートニンニクマシマシで頼む」

佐々木「ホントに出したら飲み干せるんだね??」

キョン「アメリカンで頼む」

佐々木「はい」パチンッ!

キョン「えぇ……手間暇は?」

佐々木「どうせインスタントさ。そこまで味を求めてるわけじゃないしね」

キョン「まぁいいけどよ……で、真面目な話の続きは?」ズズ

佐々木「あぁ。まぁ、長い話でもないし、仮定の話なんだけど……」

佐々木「あのさ――――――」


佐々木「――――――以上。僕の仮定は終わりさ」

キョン「……………………」

佐々木「どう反応していいか分からないって顔してるね」

キョン「……誰が見てもそうなんだろうな、今のオレは」

佐々木「相づちもそこそこに聞いてくれてたけど、この仮定を聞いてキミはどう思う?」

キョン「……どう、か」

キョン「もちろん、ありえねえ話じゃねえさ。可能性という話なら」

キョン「実際、似たような話をしたことがあるはずだ。室町ぐらいだったか?」

キョン「だが、再度その話を話すにあたってお前は根拠を提示してきた」

キョン「その根拠ってのが……まぁ、どうにも、事実であってもおかしくはないぐらいのもんだ」

佐々木「そう思うかい?」

キョン「まあな。ただこの仮定が真実だったとして、それをどうすればいいのかは分からねえ」

佐々木「どうする必要もないよ。キミはキミのしたいようにすればいい」

キョン「今この状況じゃなんにもできないがな」

佐々木「……その通りだ。だから本当は今ここで僕が話す必要もなかった」

佐々木「でも生憎、間の悪い人間みたいでね、今キミに伝えておきたかった」

キョン「ん。分かったよ。覚えておく」

佐々木「さ、キョンお風呂が沸いてるよ。お先にどうぞ」

キョン「えっ!? 一緒に入るんじゃないのか!!?」ガタッ

佐々木「水着でいいなら……いいよ?」

キョン「冗談だよ」ケッ

佐々木「くつくつ。もちろんさ」


キョン「ふぅー……はぁ」

キョン「ひっさしぶりの風呂の感じがする……やっぱいいもんだなぁ」

キョン「……ばばんばばんばんばん♪」


アイヤイヤサッサ!


キョン「…………佐々木?」ザバァ!

キョン「……まさかまさか」チャプ

キョン「………………」

キョン「(分かってる……分かってるさ)」

キョン「(ここでオレが何をどう焦ろうと、向こうの世界に手早く帰れることにはならねえ)」

キョン「(ゆっくり、時間をかけてでも、絶対に、正確に、元の、世界に……)」

キョン「…………」ブクブク

佐々木「死んじゃうよ?」

キョン「ブッハァアッ!!? さ、佐々木!!?」キョロキョロ

キョン「……幻覚? いやあいつなら多分マジできてたんだろう……悪趣味なやつだ」

キョン「(……大丈夫、大丈夫だ……あいつらを信じろ)」

キョン「(向こうの世界でも、こっちの世界でも頼りになるやつらだ。信じろ)」

キョン「ふぅ……」ジャバジャバ

キョン「…………いい湯だ」


キョン「…………」ボー

佐々木「随分疲れてるようだね?」

キョン「佐々木……風呂上がったのか」

佐々木「背中を流してもらおうと待ってたのに、来ないじゃないか」

キョン「悪いな。久しぶりに……結構疲れてる、みたいだ」ウツラウツラ

佐々木「早く休むといい。キミが体を壊しては元も子もない」

キョン「ああ……そうする」

佐々木「それと明日の学校だけどキミも来た方がいい。部室で資料を読み込んで……」

キョン「…………」

佐々木「キョン?」

キョン「……んあ? 大丈夫、大丈夫……」

佐々木「寝室はもとのキミの部屋を使うと……」

キョン「…………zzz」スピー

佐々木「……やれやれ。手のかかる親友だ」

キョン「…………」スピー

佐々木「……」ナデ

キョン「…………んん」

佐々木「……」

キョン「……ぐぅ」スピー

佐々木「……おやすみなさい。キョン」パチン

ここまでー

もしかして今回が完結編?

>>143
神のみぞ知る、というわけで……

今日中に投下しますー

短いけどとーかー


α

部室


ヤスミ「こんな感じで……どうでしょうか!?」

朝比奈「……」ボー

ヤスミ「朝比奈先輩?」

朝比奈「あっ、ご、ごめんなさい! ボーっとしちゃって……うん。大分お茶汲みが上手になりましたね!」

ヤスミ「本当ですか!? うれしいっ! では先輩方に振舞わせていただきますっ!」タタタッ!

ヤスミ「どうぞ!」コト

長門「……」ペラ

ヤスミ「失礼します!」コト

古泉「おや、どうも」ニコッ

ヤスミ「はい! 先輩っ!」コト

キョン「なぁヤスミン」

ヤスミ「スヤァ……ってなんでですか! 誰がヤスミンですか!?」

朝比奈「(ヤスミン……かわいい)」キュン

キョン「ちょいと前にお前に言いかけたことなんだが―――」

ヤスミ「あーっと!! それにしても団長がいらっしゃらないですね! そうだ! 今の内に試験のウォーミングアップしてきますね!」ババッ!

ヤスミ「ではっ! 少し失礼しますねっっ!! すぐに戻ってきますので!!」ドビューン!

朝比奈・長門・古泉「「「……」」」

キョン「……なんっったる」

キョン「分かりやすい反応。あいつ、どうしても自分の口から何かを話す気はないらしい」

長門「彼女から自身が涼宮ハルヒの無意識であると語られることは不可能」

キョン「分かってるよ。そりゃヤスミだって自覚してねえんだろうからな」

古泉「だとすれば、彼女自身は『渡橋ヤスミ』という存在をどう認識しているのか……ですか」

キョン「頭ん中覗ければ楽なんだがなぁ」


キョン「あいつ、ハルヒと一緒に戻ってくる気だな」ズズ

朝比奈「涼宮さんの前で話すわけにもいきませんしね」

古泉「そういえば、涼宮さんは掃除当番ですか?」

キョン「いや、進路の件で担任に呼び出されてたよ。説教されるに値するモンを書いてたんだろうよ」

朝比奈「進路……進路かぁ」

古泉「ちなみに、朝比奈さんは進学希望でしたよね?」

朝比奈「はい、一応ですけど。いつまでこの時空間にいれるのかは分からないから……」

キョン「受験勉強かぁ……嫌だなぁ」

長門「あなたには似つかわしくない言葉」ペラ

古泉「長門さんの仰る通りですよ。全知であるあなたがそのようなことでお悩みになるとは……」

キョン「これでも普段は一学生の気分で過ごしてるんだよ。今のは全学生の気持ちの総意だ」

古泉「左様ですか」

キョン「左様だ」


ダダダダダダダダダダダダッッ!!!


古泉「おや、この足音は」

長門「南西、距離30、二人」ペラッ


バタンッ!!


ハルヒ・ヤスミ「「ゴォォォオオオオオオオル!!!」」

キョン「はいよーいドン!! さあ走って走って回れ右!!」ピッピッ!

ハルヒ「ちょ、今ゴールし、お、追い出そうとすんなっ!」

ヤスミ「同着! 同着でしたよね!? 第三十次試験は引き分けですかっ!!?」

キョン「ビデオ判定にうつる。その間競技者は競技のやり直しを」

ハルヒ「ビデオ判定の意味は!!?!?」ガーン!


ハルヒ「あたし考えました!!」

キョン「おぉーついにか」パチパチ

ヤスミ「おぉー」パチパチ

ハルヒ「まだなんも言ってないでしょうに!! ようやく頭使い始めたみたいな拍手やめなさい!」

ハルヒ「たった今ヤスミちゃんの第三十次試験が終了したじゃない? あ、結果は合格よ」

ヤスミ「やったー!」ピョン!

ハルヒ「というわけで! ここのところ入団試験でストップしてた不思議探索をやろうと思うの!」

キョン「どういうわけだよ」

ハルヒ「察しが悪いわねぇ。第三十次試験を突破したということは不思議探索同行の許可がでるってことじゃないの!」

古泉「つまり、此度の不思議探索はヤスミさんを交えての不思議探索ということでしょうか」

ハルヒ「その通りよ古泉くん!! 5ポイントあげる!」

古泉「恐れ入ります」

ヤスミ「不思議探索ですか!? すごい! 楽しそうですっ! フフ!」

キョン「そんな楽しいもんじゃないぞ。ただ徒に貴重な時間をしょ―――」

ヤスミ「あっ! もしかしてそれも試験の内だったりするのではっ!?」

ハルヒ「! いーいことに気が付いたわねっ! ヤスミちゃん、ズバリその通りよ!!」

キョン「今思いついた顔してる」

ハルヒ「不思議探索はSOS団のメイン活動といっても過言じゃないものだからね! しっかり研修してちょうだい!」

ハルヒ「言わば試験外試験みたいなものだから、心して挑むように!! オーケー!?」

ヤスミ「承知しました!! 全身全霊を持って挑む所存です!!」

ハルヒ「みんなも!! 今度の不思議探索こそ! SOS団史上最大の不思議を見つけるつもりで挑むのよっ!!」

キョン「異世界人でも見つけろってか」

古泉「ご冗談を」


ハルヒ「久しぶりだからねー! どこ回ろうかしら? みくるちゃん行きたいとこある!?」

朝比奈「えーっと、そうですね……あっ、そろそろ新しいお茶に挑戦しようと思ってて……」

長門「固体の?」

朝比奈「液体ですよ!? そういう新しさじゃないですよぅ!」


ワイワイ


古泉「久しぶりですね。あんなにやっていた不思議探索も」

キョン「このぐらいのペースで十分だろ。なにが見つかるでもなし」

古泉「ええ、仰る通りです。あなたの言う通り、何も見つかってはいません」

キョン「佐々木か? そりゃまたご苦労なことだが、多分見つかりっこないぜ?」

古泉「ご心配なく。これが『機関』の仕事ですので」

キョン「そうかい。もし俺が見つけたら教えてやるよ」

古泉「むしろ大本命です」

キョン「他力本願がモットーの組織だっけ??」

古泉「冗談ですよ。しかし、あなたが見つけられなければ僕たちにも見つけることはできないでしょう」

古泉「それでも、暗躍こそが『機関』の存在意義ですから」

古泉「日々、影ながら尽力させていただきますよ」

キョン「分かってるよ。ま、一先ずは佐々木よかこっちだろ。なぁ―――」クルッ

ハルヒ「そうね! じゃ午前はみんなで回って……それでいいかしら―――」クルッ






キョン・ハルヒ「「ヤスミ(ちゃん!)」」






ハルヒ「あれ? ヤスミちゃんは? もう帰っちゃった?」

朝比奈「えっ? いつの間に……?」

長門「…………」

古泉「誰も気づきませんでしたね。あなたも?」

キョン「……ああ。ったく先輩に挨拶もなしに帰るとはな」

キョン「どこ行ったんだか……―――」


藤原「…………」

橘「っ……!!」ゴクリ

佐々木「おやおや……」

















ヤスミ「こんにちはっ! フフ!」

















佐々木「……『誰』かな? キミは」

ここまでー

十時までには投下しますー

とうかー


β


キョン「……zzz」

佐々木「おはようキョン。朝だよ」ガチャ

キョン「…………zzz」

佐々木「さあ起きて顔を洗って朝ごはんを食べよう。健康的な生活は朝食からだよ」

キョン「………………zzz」

佐々木「はて、気のせいかどんどん睡眠が深くなっているような?」

キョン「……………………zzz」

佐々木「これは困った。こういう時どうすればキミは起きるんだったかな? ああ、そうだ確か―――」ピコーン

キョン「グッモーニン佐々木!! 目玉焼きか卵焼きかで激論する準備は出来てるか!?」シュバッ!

佐々木「おはようキョン。自主的に目覚めてくれて助かるよ。朝食は目玉焼きにトーストだけど」

キョン「ならば醤油、ソース、ケチャップ、マスタード、わさびからしにマヨネーズ……何派閥かについて―――」

佐々木「全部かけておいたからよく味わってくれたまえ。先に降りてるよ」

キョン「おぉ…………ふぁー」

キョン「…………さて、二度寝二度―――」ノソノソ

佐々木「ちなみに」シュン!

キョン「」ビクッ

佐々木「仏の顔も三度までと言うけれど、生憎、僕は神でもなければ仏でもない」ギッ

佐々木「怒るのは疲れるからあまりしないが……さてキョン」

佐々木「一緒に朝ごはんを食べようか」ニコッ

キョン「……い、いぇすマム」


キョン「いただきます」モグ

佐々木「召し上がれ」

キョン「……朝食は4年に1度派なんだがなぁ」

佐々木「世界規模のお祭りかな? 健康のためにも毎日食べた方がいいよ」

キョン「んー」モグモグ

佐々木「キョン。言った通り、僕たちはいつも通り学校に行かなきゃならない。緊急事態で悪いけど」

キョン「ああ、行くべきだろう。こっちの世界だって生活はあるんだし」

キョン「それに俺のは緊急であって緊急じゃない。時間に縛られてないんだから急ぐこともない」

佐々木「ホントは急ぎたいんだけどね。まぁキミの言う通り、僕たちは一応学生で学業が本業だからね」

キョン「……」ジィ

佐々木「もちろん僕だってそうさ。その何か言いたげな目はなにかな?」

キョン「……イイエナンデモ」

佐々木「で、キミはそのまま文芸部室に向かってほしい。鍵は開けておくから」

キョン「んで、お前らが調べてくれた元の世界への戻り方的資料を呼んでおけばいいんだろ」

佐々木「何かしらのヒントになる可能性が少しでもあると思う」

キョン「ああ、そうさせてもらう」

佐々木「ハルヒさんと一樹くんも学校が終われば来てくれるから」

キョン「はいよ。部室で待っておくさ。ごちそうさま」カタッ

佐々木「はい、お粗末様」

キョン「さって、学校に……大変だ佐々木、俺の制服がねぇ!!」

佐々木「はい」パチン!

キョン「お、おおぅ……」パッ

キョン「……もう少し、こう、能力の情緒とかさぁ」

佐々木「着せ○えカメラ~」

キョン「やめい!!」


佐々木「待つんだキョン」

キョン「ん? どうした? 学校へ行くんだろ?」

佐々木「そうだけど、いくら制服を着ているとはいえキミが僕と歩くのはまずい」

佐々木「僕のクラスメイトからすればキミはクラスどころか学校にさえ在籍しない生徒なんだからね」

佐々木「もし鉢合わせてしまってはいけないだろう?」

キョン「あー、そりゃ確かに」

佐々木「だから―――」

キョン「んじゃ佐々木、先に行ってくれ。10分したら俺も出るよ。そうすりゃ俺らは知り合いだとばれないだろ」

キョン「俺が一人で制服着て歩いてても怪しむやつなんていないだろうしな」

佐々木「………………」

キョン「部室の鍵は開けてくれてるみたいだから俺はそのまま部室に……佐々木?」

佐々木「…………というわけで、僕と並んで登校するのは非常にまずいわけだ」

キョン「ああ、分かったって。だから先に歩いてってくれよ。なんなら俺が先に行くか?」

佐々木「……その方法も悪くはないけど」

キョン「あん?」

佐々木「もっといい方法がある。手を出してくれキョン」

キョン「? ほらよ」スッ

佐々木「……では、行くとしようか」ギュッ

キョン「あ、お前まさか―――」

佐々木「ご名答―――」シュン!


キョン「っと」パッ

佐々木「こうすれば、誰の目に触れることなく部室に着ける」パッ

キョン「いや、そうだし楽で合理的で効率的だけどさぁ……あれ? 何の文句もないぞ?」アレレ

キョン「別に俺は歩いていってもよかったんだぜ? 可能性としちゃ低いがなにかしらのヒントでも目に付くかもだしな」

佐々木「それは……すまなかった。配慮に欠けていたね」

佐々木「明日からはそうしよう。それじゃ僕は教室へ行くよ。あと―――」


佐々木「キミはもう少し心情というものを―――」
ハルヒ「おっはよぉおぉおおおぉおぉおおお!!」バタンッ!


佐々木「……」

キョン「…………はい?」

ハルヒ「あ! やっぱりいたわね!! ふふん予想通りよ!!」

ハルヒ「そうだキョン! あんたミラに変なコトしてないでしょうね!! してたら……あとで教えなさい!!」グルル!

キョン「ええと……」チラ

佐々木「……ハルヒさん? 部活の時間はまだだし、あなたの学校はここじゃないはずだよ?」

ハルヒ「学校? 勉強? そんなものより大事なことが今目の前にあんでしょうが!!」

キョン「おれ?」

ハルヒ「癪だけどね!! あたしの中の優先順位は学校なんかよりコイツなの!」

佐々木「だから学校にも行かず、いち早く部室に来たと?」

ハルヒ「ピンポーン! それ正解!」

佐々木「まったく……まぁ、それじゃあキョン」

佐々木「頼んだよ」バタン

キョン「…………ハッ! まさかあいつこうなることを知ってて直接部室に俺を……ッ!?」

ハルヒ「さー! 始めるわよ手掛かり探し!!」


キョン「昨日も言ったじゃねえか。別にそんな焦んなくたっていいって。大体お前は―――」ガミガミ

ハルヒ「うるさいうるさい! あたしが決めたことに口出すなっ!! あたしはあたしのしたいことをするの!」ギャーギャー!

キョン「……はぁー。それで、お前はどうやって忍び込んだんだよ」

ハルヒ「どうやってって……そりゃ秘密の抜け穴使ってきたわよ? え? あんたもしかして知らないの!?」

キョン「どこの魔法魔術学校だよ。北高生も知らないことなんでお前が知ってんだよ」

ハルヒ「校内探検してたら偶然108個の抜け穴見つけたのよ」

キョン「それもう欠陥学校じゃねえか。どうなってんだ一体」

ハルヒ「もう! グダグダ喋ってる時間が勿体ないわ!! なんのために学校サボったと思ってんのよ!」

キョン「本当になんのために……分かった分かった。じゃ、取り掛かろうぜ。資料ってのはどいつだ?」

ハルヒ「ミラ! お願い!」


パッ!


キョン「おおぅ、どこからともなく机に紙の山が出現した……というかこんなことに能力使ってんのか」

ハルヒ「有効活用しなくちゃ! 団員は団長の手足となって働きなさい!」

キョン「佐々木が聞きゃなんていうか…………おい、ハルヒ」ピラッ

ハルヒ「何よ? なにか手掛かりになるような情報があったの?」

キョン「この紙の山……お前の個人情報―――」

ハルヒ「ミラ!! 覚えてなさいっっ!!! あんたも見んなっ!!」ババッ!

佐々木「(奥の棚の上から4段目までが全部そうだよ)」

キョン・ハルヒ「「(こいつ……直接脳内にッ!!?)」」

佐々木「(キミたち、なにを今更)」


キョン「ジョン・タイターにトンネル効果、サン・ジェルマン伯爵ね……」ペラペラ

ハルヒ「オカルト研究会なんて言ったらぶっ飛ばすから」

キョン「分かってるよ。しかしまぁ、よく集めたもんだ」

ハルヒ「まあね。とは言っても正直あんまり役に立つとは思えないけど」

キョン「読んでみんことには分からんさ。何しろこっちの世界は元の世界とは……お?」

ハルヒ「なになに!? なんか変なのあった!?」

キョン「いや、多分そんな変なもんでもないぞ。ほら」

ハルヒ「『激録!! 鶴屋房右衛門の秘密に迫る』……ああ、これ鶴屋さんの先祖の人ね。これがどうかした?」

キョン「いんや、なんでも」

キョン「(房右衛門は佐々木の子だが……鶴屋さんがいるってことはそういうことなんだろうな)」

ハルヒ「あれだけの豪邸を建てるだけの富を残した人だかんね。きっと常人とは違う何かを持ってたに違いないわ!」

キョン「いやぁ、むしろあいつは極端に運が良かっただけというか、なんというか……」

ハルヒ「これはっ!? キョン! 『異世界転生!! 世界の歩き方!!』」

キョン「ラノベじゃねーか。それをどう活かせというんだ」

ハルヒ「ミラもあんたもそんな感じの設定じゃない」

キョン「おっす、俺はキョン。至って普通の高校生に見えるがその実なんと、奇妙奇天烈な力を持つ―――」

ハルヒ「バカなことやってないで役に立ちそうな情報探しなさいよ」

キョン「この野郎」

ハルヒ「…………」ペラペラ

キョン「…………」ペラッ

ハルヒ「…………似てた!!?」バッ!!

キョン「あ? なにがだよ?」

ハルヒ「有希の真似ー!! どう? どう?」

キョン「バカなことやってんのは誰なんだよ。集中してくれ」














            「今度こそ―――永遠にさよなら。僕の親友」












佐々木「…………ん」

橘「あ、はい。ここで大丈夫です。えっ? は、はい。彼女は眠ってるだけですので……あと領収書を……」

藤原「おい。おい」

佐々木「……ついたのかい?」

藤原「本当に眠っていたのか? 気が緩んでるんじゃないのか?」

佐々木「すまないね、ついうとうとと。慣れないものだ、『力』の無い体というのも」ノビー

橘「九曜さんは……」

佐々木「まだのようだね。その内ひょっこり顔を出すだろう」

藤原「……」

佐々木「さて」

ハルヒ「…………」スー

佐々木「眠り姫をお城へと運び込むとしよう」

藤原「……ああ」

佐々木「じゃあ橘さん。案内をよろしく頼むよ」

橘「はい。じゃあ、お二人共手を……」

佐々木「……」

佐々木「(キョン。今キミはどこにいるのかな?)」

佐々木「(急がなければキミの望まぬバッドエンドまではもうすぐだよ)」

橘「行きます」ズッ

藤原「む……」ズズッ

佐々木「(……さあ、キョン―――)」


















佐々木「(―――僕の期待を超えられるかい)」

















ここまでー

楽しみにしてるから

>>182
ありがとうございます!

というわけで、19時半より投下しますー

とうかー


α

pipipipipipipipipipipipipipipi


キョン「ん」パチ

キョン「目覚まし通りに目が覚めるとは……我ながら驚きだ」

キョン「さてさて、と……」ノビー

キョン「不思議探索か、やれやれ」












キョン「っと」シュン!

キョン「おやまぁ珍しい。集合時間2時間前だってのに誰も来ちゃいねえぞ」

キョン「…………ん? なんか言ってることがおかしい気が―――」

ヤスミ「先輩っ!! おはようございますっ!!」ヒョコ!

キョン「……ヤスミ。俺の背後に立つな、命の保証はないぞ」

ヤスミ「フフ。ビックリするかと思って! 先輩、随分来るのがお早いんですね!」

キョン「SOS団の悪しき風習さ。直にぞろぞろ集まってくる」

キョン「それに、お前だってもう来てるじゃないか」

ヤスミ「あたしは今日という日が楽しみで楽しみで!! つい早く来ちゃいました!!」

キョン「つい、ってレベルじゃねえと思うが……ふぅ」ドサッ

ヤスミ「おとなりいいですか!?」

キョン「勝ってにしろ」

ヤスミ「失礼しますっ!」ストンッ!

キョン「…………」

ヤスミ「いやあ、それにしてもいい天気ですね先輩っ! こんなに雲がない日なんて珍しいっ!」

キョン「ヤスミ」

ヤスミ「はいっ! なんでしょう先輩っ!!」













キョン「お前は誰だ?」

ヤスミ「……あたしはわたぁしですよ、先輩っ!」












キョン「そうじゃなくてだな……」

ヤスミ「あっ! 古泉先輩っ! おはようございます!!」シュバッ!

古泉「やあ、どうも。お二人共随分早―――」

キョン「間が悪ぃ」ドンッ!

古泉「空気砲ッッッッ!!?!?」ドゴォォォオ!!

キョン「安心しろ…………安心しろ」

古泉「そ、こは……峰打ちだ。とかじゃ、ないん……ですかね……いや、十分、ダメージを負いましたが……」カハッ!

キョン「根拠のない安心もたまにゃ必要さ」

古泉「今じゃないですよね……」

朝比奈「おはようござ、古泉くんが!!??!? ボロボロ!!」

長門「見慣れたもの」スッ

朝比奈「それも……そうですけど……」

古泉「………………」

キョン「男はァ、泣きたい時こそ~笑うもンだァ~~!!」デデン!

ヤスミ「わあっ! ナイス歌声!!」イヨッ!

古泉「……笑うしかないですね」


キョン「治れったら治れ!!」パアァ

古泉「……本当に治るのはありがたいのですが、釈然としない治療法ですね」

キョン「文句言うな。爪剥ぐぞ」

古泉「悪魔ですか」

ハルヒ「みんなおっはよー!! 集合時間1時間半前! うん、みんな揃ってるわね!!」

朝比奈「(もう涼宮さんは、わたしたちより早く来ようという気はなくしてしまったみたいです。十分早いですが)」シミジミ

ハルヒ「じゃ言った通り、今日は午前はみんなで回りましょう! 午後はくじ引きで!!」

キョン「結局どこ回るんだ? どこでもいいのか、了解」

ハルヒ「どこでも―――そう、そうよ」

ヤスミ「面白い会話ですね!」

朝比奈「そ、そうかなぁ……?」

ハルヒ「そんじゃ行くわよー! ついてきなさいっ!!」オー!

ヤスミ「おーっ!」

キョン「空の旅をお求めの方はこちらでーす。ビーフオアチキンでーす」

ヤスミ「わあぁ!!」タタタッ!

長門「……」スタスタ

ハルヒ「そこ! 団体行動を乱すな!! 有希! 食べ物につられない!! なにが空の旅よ!!! まったく!! みんな!!」

ハルヒ「結局、雲の上には乗れるのか乗れないのか確かめるわよ!!」オー!

ヤスミ「おーっ!」

キョン「じゃねえよ。誘惑に流されてんのはお前も同じじゃねえか」

朝比奈「?? 普通に乗れますよね??」

古泉「……えーっと。この時代では無理かと……」


ハルヒ「ついたわよっ!」

朝比奈「ここって……」

古泉「懐かしいですね。野球場ですか」

ハルヒ「そっ! かつてSOS団が野球というスポーツ生み出し、世界に広めた場所よ!!」フフン!

ヤスミ「なっ!!!??!?!? まっ!!?!?!?」ガーン!

朝比奈「えっ!!!?!?!?? ええっ!!?!!?」ガガーン!

キョン「約二名ほど信じてるから、得意顔で大ウソつくな」

ハルヒ「惜しくも優勝を逃しちゃったのは心残りだけどねー!」

キョン「古泉、誰のせいで負けたんだっけ? 誰がホームラン打ったのにアウトになって初戦で負けたんだっけ??」

古泉「……さあ、あまり昔のことは覚えてませんので」シラッ

キョン「さっき懐かしいとかほざいてたじゃねえか」

ハルヒ「もっかいぐらいホームランかっ飛ばしたいわねー!!」

キョン「コイツはコイツでいい記憶だけ覚えてやがる」

ヤスミ「あたし、やきゅうやったことないから是非やってみたいですっ!」

ハルヒ「決まりね!! 今年もエントリーして今年こそ優勝するわよ!!」

古泉「では、練習できるグランド押さえておきましょうかね」

ハルヒ・キョン「「専用グラウンド持ってる野球好きの?」」

ヤスミ「???」

古泉「んっふ」

ハルヒ「あはははっ! 別荘持ってる知り合いがいるくらいだもんね!! 今更よね!」

キョン・キョン「「慣れって怖いなぁ」」

長門「同意」ペラ


ハルヒ「ここよ!!」

ヤスミ「池!?」

古泉「池です」

朝比奈「池ですね」

長門「池」

キョン「池だァ!」

ヤスミ「ここが何か?」

ハルヒ「ふっふっふ、ここはね……SOS団が制作した世界的に大ヒットした映画のロケ地の一つなのよ!!!」

ヤスミ「えぇぇぇえええぇぇぇええぇぇええぇぇええええ!!?!?」

キョン「狭い世界だな」

ハルヒ「あの有名シーン、『ミクルビーム』が出たのもここなのよ!!!」

ヤスミ「あの『ミクルビーム』がここで!!?!?」

キョン「絶対知らないだろヤスミ。あの、とか言ってんじゃねえ」

ハルヒ「懐かしついでにみくるちゃん、撃っちゃいなさい」ニコッ

朝比奈「えぇぇぇえええぇぇぇええぇぇええぇぇええええ!!?!?」

キョン「ヤスミとまったく同じリアクションをなさってるじゃねえか。無茶ぶりは止せ」

ハルヒ「無茶じゃないわよ。ねーみくるちゃん。はい、いくわよ3.2.1!」

朝比奈「えっ、わっ、あっ、み、『ミクルビーム』!!」カッ!

古泉「えっ、何でこっち見―――」



ドォオオォオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!



ヤスミ「わあっ!! すごい!!! すごすぎますっ!!」パチパチ!

ハルヒ「さっすがみくるちゃん!! 主演女優なだけあるわ!!」

朝比奈「ふええぇええぇええっ!! 何で!? 何で出るの!!?!?」ビエェエン!!

キョン「儚い命が今散ったがな」

古泉「か、勝手に散らさないでください……ありがとうございます長門さん」ケホッ

長門「平気」ホーホゥフフォー!!

古泉「マジカルステッキ……悪い魔法使いユキ様様ですね」


ハルヒ「あれ!!」

朝比奈「鶴屋さん、あっ、鶴屋山……」

ヤスミ「大きい山ですよねー。こんな大きな山持ってる人って一体どんな人なんだろう……」

ハルヒ「なんと! この山はSOS団の名誉顧問である鶴ちゃんのお家のものなのよ!!!」

ヤスミ「っ!!?!!? っ、で、ですがこれ以上はもう驚きませんよっ!!」グッ!

ハルヒ「で、さっきからずっと横にある壁。この内側が全部鶴ちゃんの家」

ヤスミ「ひいぃいいぃいぃいぃいいぃぃいぃぃいい!!!!」ガタガタ!

キョン「どういうリアクションだよ、まあ無理もないが」

古泉「まさに大豪邸ですからね」

ハルヒ「で、ここが入口。つーるーちゃん! あーそーぼ!!」

朝比奈「あはは、まさかそれで鶴屋さんが出てくるわけ……」

鶴屋「呼んだ?」ニョロ

朝比奈「キュウ……」パタン

古泉「朝比奈さーん!!!」ガシッ!

ハルヒ「鶴ちゃん!! 一緒に遊びましょ!! 不思議探索中なのよ!!」

鶴屋「やっ、ハルにゃん! むむむっ、そうしたいのはやまやまなんだけど、これからちょいと行くとこあってねぇ、ん?」

ヤスミ「どうも! あたし、ヤスミと申します! 鶴屋先輩っ!」

ハルヒ「紹介するわ! この子が噂の、SOS団新入団員候補のヤスミちゃんよ!」

鶴屋「ほほう! この子がハルにゃんの遺志を継ぐものだねっ! うんうん! いい目をしているっさ!」

ヤスミ「ありがとうございます!」

鶴屋「これで未来のSOS団も安定ですなぁ!」ハッハッハ!

ハルヒ「いやいや! 鶴屋家ほどじゃございませんよ!」ホッホッホ!

キョン「あたりまえだろが」


ハルヒ「っと、もうこんな時間ね。そろそろお昼にしましょうか!」

キョン「おいおいハルヒ。ツッコミが遅れたが、こりゃなんだ? 到底不思議探しとは言えんぞ」

ハルヒ「はぁ~……ったくあんたは察しの悪い。古泉くん、説明したげて」

古泉「おそらく涼宮さんはヤスミさんにSOS団に縁のある場を案内し、SOS団の歴史を知ってもらおうとしたのではありませんか?」

ハルヒ「それよ! まさにそう!! 古泉くん、さすがよ!」

古泉「光栄です」

ヤスミ「なるほどです! ご配慮いただき、ありがとうございます!」

キョン「わざわざ実際に回らんでも……腹減った。早く飯を食おうぜ」

長門「こっち」スタスタ

ハルヒ「有希の歩き出しが早いっ!! いいお店知ってるの? あたしの気分的にはあっさりより―――」

古泉「長門さんおすすめともなると期待できますね」

朝比奈「まってくださぁーい!」

キョン「大食いチャレンジ専門店とかじゃねえだろうな」

ヤスミ「頑張ります!」フンス!

キョン「いらんやる気を出すな」

ヤスミ「あっ、そうだ! 先輩先輩っ!」

キョン「なんだ後輩」

ヤスミ「ヤスミですっ! 午後は確かペアで行動するんでしたよね?」

キョン「そうなのか? いつもは2人組3人組だが、今日は6人だからそうなるのかもな」

ヤスミ「だったら! もし、くじ引きであたしと一緒になったら―――!」



















キョン「違う」

ヤスミ「それってデートですよね!!?」

















ヤスミ「否定が早い!!」ガーン!

キョン「嫌な予感しかしねえからだよ。ったく」

ここまでー!

四時ごろ投下―

投下―


β


ハルヒ「ダメだわー!! 有益な情報が見つかんなーい!!」

キョン「んな簡単に見つかるかよ」ペラ

ハルヒ「……」ムスッ

キョン「ふむふむ……」ペラ

ハルヒ「!」ピコーン

ハルヒ「そうだわっ!」ガタッ!

キョン「なんだ急に。忙しいやつだな」

ハルヒ「アレよアレ! 何かを見つけるってなったらアレしかないじゃない!!」

キョン「探偵○イトスクープ?」

ハルヒ「違うわよ!! もっと身近な、SOS団と言えば! みたいなのあるじゃない!」

キョン「……不思議探索?」

ハルヒ「ピンポーン!! 大正解!! はなまるあげるわよ!!」

キョン「……ハルヒ、別に不思議探索が嫌とか言う訳じゃねえが、そんな当てもなくブラブラすんのはな―――」

佐々木『話は聞かせてもらった』ブォン!

キョン「うわっ! んだこれ、ホログラム?? 何してんだお前」

ハルヒ「ね、ね! ミラも良いと思うでしょ? てかむしろ真っ先にすべきだったのよ!!」

佐々木『ハルヒさんの言ってることはさておき』

ハルヒ「おかないでよ!!!」

佐々木『キョン、なにも当てもなくブラブラとするだけが不思議探索じゃないよ』

キョン「当てがあるとでも?」

佐々木『ないこともないさ』

キョン「ほんとかよ……まぁ、いいんだけどよ」

ハルヒ「決まり!! それじゃ早速計画を立てなきゃ!!」

佐々木『それじゃ僕は授gおnnn戻どどどどdddddd』ザザッ!

キョン「うぉっ!! 佐々木がバグったぞ!!? どうなってんだこれ!?」

ハルヒ「その状態の時はたまにあるわ、気にしなくていいわよ」

キョン「慣れすぎだろ……」


放課後


古泉「失礼します。遅くなりました」ガチャ

朝比奈「あっ、古泉くん。今お茶入れますね」

長門「おかわり」

ハルヒ「遅いわよ古泉くん! 世界記録を出すつもりで走って来るのよ!」

キョン「学校サボったやつが偉そうに」

古泉「吃驚しましたよ。急に『今日休む!』と連絡が来たものですから」

ハルヒ「優先順位が違うのよ!」フフン!

古泉「それで、今は一体どのような話に?」

佐々木「一樹くん、次の休日に不思議探索をする運びとなったよ」

古泉「ほう、不思議探索ですか。なるほど」

キョン「ある程度資料を読ませてもらったんだが、正直ピンとくるモンは無かった」

ハルヒ「で、あるならば! きっと外界に何かしらのヒントが隠されてるのよ!! ゲームでは大体そうじゃない!?」

キョン「ゲーム扱いすんじゃねえ」

佐々木「で、どこに行こうかと会議していたところさ」

ハルヒ「あたしの直感ではね!! 駅の地下50mぐらいにね! 異空間に繋がるでっかいでっかい穴―――」

佐々木「それは今度確かめさせてあげるよ。なんなら今、直接見てきてもらってもいいかい?」スッ!

ハルヒ「うっ……う~ん……うぅ……い、いや、遠慮しとくわ」

キョン「探求と常識の天秤で、常識が勝ったみたいだな」

佐々木「キョン、行きたい場所はキミが決めるといい」

キョン「俺がか?」

佐々木「なに、難しく考えなくていい。何かを探し出そうと思わず、キミの足の赴く方へ行けばいい」

佐々木「きっとそこに、キミの求める答えが…………あったりなかったりするだろうから」

キョン「えらいフワッとしてんな、おい」


ハルヒ「あたし的にはね、この辺が怪しいと思うのよ!!」

朝比奈「公園の近くですか?」

古泉「なにかお心当たりでも?」

ハルヒ「風の噂じゃ幽霊が出たとかなんとか言われてた時期があったのよ!!」

朝比奈「ひぃっ!!」

古泉「ほう、それはそれは」

長門「興味深い」



ワイワイ



キョン「賑やかなこって」

佐々木「懐かしいだろう?」

キョン「……まあな」

佐々木「安心していいよ。キミはきっと元の世界へ帰れる」

キョン「あん? その根拠は?」

佐々木「僕の勘さ」

キョン「……そりゃいいな」ハッ

佐々木「だろう?」

ハルヒ「キョーン! 一応あんたの行きたいとこについてってあげるけど、あたし的おすすめポイントも教えといてあげるわ!!」

キョン「ったく、あまりめちゃくちゃなトコ勧めんじゃねえぞ」

佐々木「……願わくば、この光景をずっと見ていたかったけど―――」

キョン「このボーリング場、バッティングセンター、雀荘ってお前がただやりたいだけだろ」

ハルヒ「まさかバレるなんて!! 侮りがたし!!!」

キョン「当たり前だろうが」

佐々木「―――そういうわけにも、いかないんだろうね」













佐々木「ほう。ここが僕の、いや涼宮さんの閉鎖空間かい」












佐々木「なんというか、味気の無い空間だね」

橘「佐々木さんの閉鎖空間であってますよ」

佐々木「確かに、この味気の無さは涼宮さんより僕らしいね」

佐々木「しかし橘さん、今僕にはこの閉鎖空間を発現させる『力』は残っていないんだよ?」

橘「あたしが侵入することができるのは佐々木さんの閉鎖空間だけだからです」

佐々木「ふぅん……」

藤原「どちらでもいいことだ。計画の邪魔が入らない空間であるならばな」

ハルヒ「……スー」

橘「そうです。さあ、いきましょう佐々木さん」

佐々木「あぁ、そうだね」

藤原「部室というのはどこに―――」

橘「ええ、こっちに―――」

佐々木「…………まずは」クルッ






ズズズッ!






藤原・橘「「ッ!!??!?!?!?」」

佐々木「くつくつ……こうなる、か」


α






キョン「何故っ、こうなる……!?」






ハルヒ「いつまで言ってんのよ。それとも何? 有希に大食い負けたことの方を言ってんの?」

長門「いい試合だった」

朝比奈「キョンくん、しっかりエスコートしてあげてくださいね」クスッ

古泉「紳士のマナーですからね」

ハルヒ「ちょっとちょっと二人共!! 別にデートって訳じゃ無いかんね!! 今更だけどそこんトコ分かってる?」

古泉・朝比奈「「もちろんです」」

ハルヒ「……ならいいけど。キョン! あんたも目的は不思議探索にあることを忘れちゃダメよ!! それと!」

ハルヒ「ヤスミちゃんもよ!!」ビッシィ!





ヤスミ「はいっ! もちろんですっ! 必ずや!!!」





ヤスミ「不思議を見つけて参りますっ!!」ニヘラッ

ハルヒ「……めちゃ顔が緩んでるけど」

ヤスミ「ハッ! し、失礼しました! 今一度気を引き締めて、決してデートなどではないことを……フフ」ニヘラッ

朝比奈「かわいいなぁ!」

ハルヒ「不安だわ……いくらクジで2人組になったからって……3人組にすべきだったかしら?」

古泉「まあまあ、少なくとも彼はこの状況に浮かれているようには見えませんから」

ヤスミ「先輩先輩っ! どこ行きますか!? どこに不思議があると思いますっ!?」グイグイ!

キョン「だ、だってく、クジがよ……く、くく、クジ……クジがぁ」ガタガタ!

ハルヒ「因果応報!!?!? 回り回ってあんたがクジをトラウマになってんじゃないの!!!!!」ガガーン!

長門「懐かしい」


ハルヒ「そんじゃ午後4時に駅前集合ね!! みんな遅れちゃダメよ!」

ハルヒ「特にあんたたち二人!!」ビシッ!

ヤスミ「はいっ! 決して遅れずに戻ってきます! ね、先輩っ」

キョン「俺、門限午後3時だし、適当に帰っ―――」グイッ!

ヤスミ「それじゃあ行ってきます! 先輩方!!」

ハルヒ「う、うん。気をつけてね」

ヤスミ「ではっ!」ダッ!

キョン「おぉおぉおぉお離せ離せ、自分で歩―――」

ヤスミ「わあっ! あっちこっちから面白そうな気配がしますねっ、先輩!」

ハルヒ「……大丈夫かしら?」ソワソワ

長門「問題ない。我々も行くべき」

朝比奈「そうですよ。キョンくんと一緒ですし」

古泉「むしろそれは不安要素のような……ですがまぁ、杞憂でしょう」

ハルヒ「……それもそうねっ! じゃ行くわよ有希っ! みくるちゃん、古泉くん! また後でねっ!」

長門「また」

古泉「はい、ではまた後で」

朝比奈「また後でー」

古泉「では、僕たちも行きましょ―――」



ドガーン!!! ワー! センパーイ!



朝比奈「……」

古泉「……一刻も早く、この周辺から脱しましょうか」


キョン「げほっ、いきなり何の爆発に巻き込まれたんだ俺は……」

ヤスミ「あっ、そうだ!」クルリンッ!

キョン「だから言ったんだ。嫌な予感がす―――」

ヤスミ「先輩っ、どうですか? あたし?」パッ!

キョン「……どう、とはなんだ?」

ヤスミ「今日のあたしを見て、ですよ! 私服ですよ私服!」

キョン「ん、ああ……」

キョン「春っぽい」バーン!

ヤスミ「やったー!! 先輩に褒めてもらえましたっ!」ワーイ!

キョン「今のって褒め言葉なのか?」

ヤスミ「何を隠そう、この服装のテーマが春なんですから!」

キョン「へー、そりゃどうでもいいこって」

ヤスミ「さっ、先輩行きましょう!!」

キョン「どっか行きたいとこでもあんのかよ?」

ヤスミ「特にはっ! ただブラブラとするのもいいじゃないですかっ!」

キョン「ハルヒが聞いたらなんて言うかね……」

ヤスミ「こっちですっ! 行きますよせんぱーい!!」タッタッタ!

キョン「ま、いいか……」

ヤスミ「早く早くー!!」タッタッタ!

キョン「前見て走れ」シュン!

ヤスミ「あうっ!」ドンッ!

ここまでー

19時までにはとうかー

とうかー


α


ヤスミ「はい先輩あーん!」

キョン子「あーん」アー

ヤスミ「あー……どちら様っ!!?」ガーン!

キョン子「ングング……キョン子だが?」

ヤスミ「初めまして!? あわわ、6人目の先輩でしたかっ!?」

キョン子「幻の6人目さ」

キョン「ところで」スッ

ヤスミ「きょ、キョン子先輩っ!!?」ゴシゴシ

キョン「キョン子はお帰りになられた。んでヤスミ、俺たちゃ一体何してる?」

ヤスミ「スイーツを食べてますっ! 食後のスウィーツ!」

キョン「悪かったな。whatじゃなくwhyだった。何故こんなことをしてる?」スッ

ヤスミ「あーっ! あたしのイチゴがー!」

キョン「さっきは食わせてきたくせに」モグモグ

ヤスミ「……何故こんなことをしてるか、ですか?」

キョン「ハルヒにゃ、決してデートじゃないからと釘を刺されただろう」

ヤスミ「はい! ですからこれはデートじゃないですよ?? デートじゃなくてですね……」

ヤスミ「………………」

キョン「ヤス―――」

ヤスミ「いえ、やっぱりこれはデートですっ! そう、デートと言えば『あーん』じゃないですか!?」

キョン「ああん? なんだ急に開き直って―――お?」グイッ

ヤスミ「行きましょう先輩っ! 時間は有限ですっ! お支払いは済ませておきましたっ!」ダダダッ!

キョン「お、悪いな」ズズズッ

ヤスミ「先輩の財布から!!」

キョン「スられておいたのさっ!!」バァーン!


ヤスミ「ええっと……どこに行きましょうか!? 遊園地、動物園、水族館……」ウーン

キョン「アホ。仮にも不思議探索中だということを忘れんなよ。それに」

キョン「何故デートにこだわる。いや、何故俺にこだわるんだ、お前は」

ヤスミ「分かりませんか?」

キョン「ああ、分からん」

ヤスミ「フフ。それは先輩が先輩だからですよ」

キョン「どういう意味だよ」

ヤスミ「そのままの意味です!」

キョン「……やれやれ」パチン



パアアアァァッッ



ヤスミ「う、わぁ…………!!!?」

キョン「どうだ? 満天の夜空に輝く星、宙を遊泳する魚群に、走り回る動物たち」

ヤスミ「すごい……素敵、これも先輩が……!?」

キョン「まっ、こんなこともできる程度の力さ」

ヤスミ「綺麗……すごいです先輩っ」

キョン「……そりゃよかった。それじゃあよ、この素敵な空間で―――」

キョン「少し話そうぜ、ヤスミ」

ヤスミ「…………いいですよっ、先輩」


キョン「あれがオーロックス。あっちはドードー、ティラノサウルスに二ホンオオカミ」

ヤスミ「絶滅した動物に恐竜まで!!? よくご存じなんですね!」

キョン「俺はまぁ、実際に見てきたしな」

ヤスミ「あー……」

キョン「というか、そうか。特にお前に俺のことを話したことはなかったな」

キョン「勝手に俺のことを知ってるもんだと思ってたからさ」

ヤスミ「そうですね。先輩から先輩のこと聞いたことはないです」

キョン「でも、お前は俺を知ってる」

ヤスミ「……ええ、知ってます」

キョン「それは、お前が…………」

ヤスミ「……」

キョン「…………『涼宮ハルヒ』だからか?」

ヤスミ「…………」

キョン「…………」

ヤスミ「……フフ。何言ってるんですか先輩。『あたしはわたぁし』です」

ヤスミ「団長ではないですよ」

キョン「……そうか」

ヤスミ「そうですっ」

キョン「…………」

ヤスミ「あ、メガロドンですかね!? あれ!」


ヤスミ「あれがデネブでアルタイル……ベガは……」エート

キョン「……ヤスミ。俺はさ」

ヤスミ「はい」

キョン「元々、自分が特別な人間なんだ。って思いこんでた」

キョン「こんなことできる力を持つやつなんて他にいなかったからな」

ヤスミ「はい」

キョン「同時に、特別であるが故に俺は1人なんだ、って考えていたんだ」

キョン「誰にも理解されない、繋がりを持たない世界にとっての不純物。それが俺」

キョン「だが、そんな考えを吹き飛ばす存在が現れた。そいつの名は……」

キョン「佐々木」

ヤスミ「……」

キョン「俺と同じような『力』を持ち、なんらそれを特別でないと言い切った」

キョン「変なやつだ。一言で言えばな。けど、俺はそいつに救われた」

ヤスミ「……」

キョン「結局のところ、寂しかったんだろうな。自分で勝手に1人なんて思いこんでおいて」

キョン「自分自身を特別じゃないと思えるようになってからは、そりゃ気が楽だった」

キョン「周りの人間と同じように、生きてることを楽しんでいいんだ。それだけを楽しめたんだ」

キョン「そして、佐々木と共に長い永い時を歩み―――別れ」

ヤスミ「……」

キョン「涼宮ハルヒに、SOS団に出会えたんだ」


キョン「面白い連中だろ? SOS団のやつらは」

ヤスミ「……フフ。それはもう、とっても!」

キョン「だろ。あいつらと馬鹿やってんのは楽しいんだよ」

キョン「超能力者だろうが宇宙人だろうが未来人だろうが、『力』を持ってようがなかろうが……」

キョン「万人を受け入れ、巻き込み、どでかい迷惑をかけつつ、楽しませてくれる存在。それが」

キョン「涼宮ハルヒだ」

ヤスミ「…………」

キョン「何を長々俺の人生を語ってんだと思ってるかもしれないが、ヤスミ」

ヤスミ「はい」

キョン「お前が誰であろうと……ハルヒに関係あろうとなかろうと」

キョン「お前を受け入れてくれる存在はここにいる」

ヤスミ「………………」

キョン「……俺が的外れなこと言ってんなら忘れてくれ。何しろお前の考えは読めんからな」

キョン「ただ、俺から見てお前はそういう風に見えたってことだけは、確かだ」

ヤスミ「……はい! ありがたきお言葉! 肝に銘じておきますっ!」

キョン「……」ポンッ

ヤスミ「わ! なんですか先輩っ!?」

キョン「……悪いな―――」スッ


『あ―しは――――な――す!』

『―――そ―――ほど―――』



『―――だから―――を―――!』



『―――だ。―――そうは―――い』




『でも!―――は――――――う!?』






『―――違―――キミは―――……おっと』






『話し過ぎるのもよくないかな。そうだろう?』

『えっ?』












『親友』プツンッ


キョン「―――……」

ヤスミ「……?」

キョン「…………あいつめ」

ヤスミ「あの、先輩?? あたしの頭に手を当てて何を……わっ!」

キョン「なんでもねえよ」ワシャワシャ

ヤスミ「わっ、わっ、わっ! なでなでタイムですか!? あたしを犬か何かだと思ってませんか!?」

キョン「鳥の巣頭だとは思ってた」

ヤスミ「ひどいっっ!!」ガーン!

キョン「さって、古今東西数多の生き物を堪能したことだし」スッ

キョン「次は、遊園地だっけか?」パチンッ!



パアアアァァッッ



ヤスミ「! すごいっ、すごいっ!! 先輩っ! なんでもできるんですねっ!!」

キョン「なんでもってわけじゃない。俺は俺がしたいことをするだけさ」

ヤスミ「じゃあじゃあ! ジェットコースター!! あれっ! 乗りたいです!!」

キョン「いいぜ。ただし、現存するコースターを遥かに凌ぐシロモノだが覚悟は出来てるか?」

ヤスミ「もちろんっ! 恐れをなしていては何も始まりませんっ!!」

キョン「大した度胸だな。んじゃ行くか」

ヤスミ「はいっ! それと、先輩」

キョン「うん?」

ヤスミ「一通り、この遊園地を楽しんだら……今度は」

ヤスミ「……最後は、あたしがとっても素敵な場所に連れて行ってあげますね!!」ニコッ!

キョン「…………そりゃあ楽しみだ」ニッ

ヤスミ「じゃ、とりあえず! ジェットコースター乗り場までワープをお願いしますっ!!」

キョン「おうヤスミ。どこでそんなこと覚えた? 何宮ハルヒに教わったんだ? え??」

ここまでー

短め、投下しますー


β


朝比奈「えっ? キョンくんの方の世界でも機関誌をつくったんですかぁ?」

キョン「まあ、一応文芸部の部屋借りてるので」

ハルヒ「へー! あたしたちも書いたわよ! 章ごとに担当をかえて長編小説を作ったの! 見る? はい!」

キョン「章ごとにって、それまとまりつくのか? どれどれタイトルは……」

キョン「『異世界開拓~俺が魔王になって文明形成!?~』……っ!!?!?!?!?」ガガーーン!

ハルヒ「なに驚いてるのよ? さては名作の予感に気圧されたわね!?」ニヤッ

長門「コアなファンも多く、ファンの総称を『開拓者』と言う」

キョン「知ってるよ!!!!!! こっちの世界でも!!?!?? どういう時空の歪み!!?!?」ガーン!






キョン「……うーむ」

古泉「おや、長考ですか? えらく早い段階ですね」

キョン「いや違うんだよ。古泉、おれは向こうの世界でもお前とこうしてボードゲームをしたりするが」

古泉「はい」

キョン「ここまで長く決着がつかなかったことはないんだ。それに違和感がなー」

古泉「まだ5手目ですよ!!? 将棋で5手で決着つくことなんてありますか!!?!?」

キョン「たぶん盤外戦術も影響してると思う」シュッシュッ!

古泉「場外乱闘!!?」ガーン! 


ハルヒ「だーかーら! ミラはねー―――!」

佐々木「やれやれ、ハルヒさん。あのね―――」

キョン「あの二人はしょっちゅうあんな感じですか?

朝比奈「ええと、まぁ……はい。あ、でもでも! 仲が悪いとかじゃないんですよ!」

キョン「じゃ一体なんであんな言い合いを……」

ハルヒ「絶対チャイナ服似合うって!! スリットから見える足とか激やばなはずよ!! だから着なさい!!! 団長命令よ!」

佐々木「ハルヒさん。団長は僕だし、似合うからといって無意味に服を着替えることもないよ」

キョン「(似合うことは否定しないのか……)」

ハルヒ「意味? 意味ならあるわよ!!」

佐々木「どんな?」

ハルヒ「あたしの眼福!!」フンス!

キョン「……いつもこんなしょうもない言い合いを?」

朝比奈「あはは……ええと、はい」






ハルヒ「いよいよ明日は不思議探索ね!! みんな! 準備はできてる!?」

キョン「遠足かよ。なんの準備がいるんだよ」

ハルヒ「心の準備に決まってるじゃない!! 何が起こるか分かんないんだから!!」

朝比奈「な、なにか起こるんですか?」

ハルヒ「なにかよなにか!! ねっ、ミラもそう思うでしょ!!?」

佐々木「そうだね。起こるといいね」

キョン「適当か」

佐々木「そうでもないさ」

キョン「……?」

ハルヒ「ってわけで! 明日の不思議探索、集合場所に時間通り集合!! 遅刻したら!」

ハルヒ「罰金だかんね!!!」


pipipipipipipipipipipipipipi


キョン「……zzz」

佐々木「おはようキョン、朝だよ。そして今日は待ちに待った不思議探索の日だ」

キョン「…………んぅ」

佐々木「さあ起きて仕度をしよう。集合場所へ遅刻した人は罰金というのは重々承知だろう」

キョン「……おぉ」

佐々木「やれやれ、困ったなぁ。いつまで経っても朝が弱いのは治らないらしいね」

キョン「…………z」

佐々木「起ーきーよーう、キョン。僕はキミの幼なじみでもお母さんでもないんだよ?」ユサユサ

キョン「……んん」

佐々木「親友ではあるけどね。っと、キョン。そろそろ独り言にも飽きてしまったよ」

佐々木「聞き上手なキミの相づちでもないと、これ以上舌も回りそうにない」

キョン「…………ぐぅ」

佐々木「……断眠法という言葉を知っているかい?」

キョン「」ピクッ

佐々木「眠るたびに寝坊するならいっそ初めから寝なければ―――」

キョン「……おはようございます」

佐々木「やあ。おはようキョン。目覚めはいかが?」

キョン「あぁ。夢見心地から一転、悪夢、もとい悪魔の囁きが聞こえたもんで目覚めはいいぜ」

佐々木「それは結構。さ、着替えて降りてくるといい。朝ごはんの仕度は終えてあるよ」

キョン「ありがとうお母さん」ボケー

佐々木「くつくつ。世話の焼ける親友だ」


キョン「いただきまぁす」

佐々木「召し上がれ」

キョン「…………」モグモグ

佐々木「さてキョン。いよいよ不思議探索当日と相成ったわけだけど……」

キョン「いよいよって程でもないだろう。そう都合よく何かが見つかるわけないさ」

佐々木「それはどうだろうか」

キョン「なに?」

佐々木「だってそうだろう? このインポッシブルな状況下でわざわざ確率論を信じることもない」

キョン「確率論なんかじゃない。むしろ、こんな状況下まで追い込まれていてそう易々と打破できるような―――」

佐々木「だからこそ、さ」

キョン「あん?」

佐々木「一見、脱出不可能な、絶体絶命な、背水の陣のようで、実は完全敗北をしてるのかもしれない」

佐々木「そんな状況下だからこそ、さ」

キョン「……俺が寝ボケてるだけかもしれんが、急になにを言い出すんだ佐々木。さっぱり分からん」

佐々木「ただの逆張りなんかじゃないよ。いいかい? 向こうの僕が僕と同じ考えをしているなら」

佐々木「キミが逆転できる一手はきっとこのタイミングで打てるようにしているはずなんだ」

佐々木「僕がそう望むように、『僕』はそう望むのだろう」

キョン「なんの確証が……僕は僕だからとかいうんじゃねえんだろうな?」

佐々木「おや親友。力は失ったんじゃなかったのかい? もしくは新たな力に目覚めでもしたかい?」

キョン「なに言ってやがる……で、ようするにお前はこう言いたいわけだ」

キョン「今日の不思議探索でおれは元の世界に帰れる。自分だったらそういう風にシナリオをつくる、と」

佐々木「どこの世界だって、ヒーローはそういうものなんだよ」

キョン「誰がヒーローだよ。おかわり」ズイッ

佐々木「はいはい。たんと召し上がれ」


キョン「お前だって、そう易々と元の世界に帰る方法は見つからない的なこと言ってたじゃねえか」スタスタ

佐々木「言ったね。もちろんそれも本心さ。向こうの世界にキミがいたんじゃなにかと都合が悪いらしいからね」スタスタ

佐々木「けどまぁ、どうやら耐えられなかったらしい」

キョン「なにがだよ」

佐々木「キミのいない世界にさ。キョン」

キョン「誰がだ」

佐々木「僕さ。おっと向こうの世界の僕だけどね」

キョン「…………な」

佐々木「何故わかると言いたそうだけど、別に分かっているわけじゃない。確証もない。ただ」

佐々木「そんな気がするだけさ」

キョン「…………そうかよ」

佐々木「当てにするもしないもキミの自由さ。僕としては、もっとキミといたかったとも思ってるしね」

キョン「……なんて答えりゃいいんだよ」

佐々木「くつくつ。さあね。なんと言って欲しいんだろうね」

佐々木「なにを望むんだろうね、僕は」

キョン「……自分でも分からんようなことを俺に聞くな」

佐々木「……違いない。悪かったね、おかしなことを聞いてしまって」

キョン「別に。昔っからお前は変な奴だっただろう」

佐々木「おや。キミがそれを言うかい?」

キョン「どういう意味だ。ったく……」


キョン「お」

古泉「おはようございます」

朝比奈「おはよう、キョンくん、ミラさん」

佐々木「おはよう、みくるさん、一樹くん、有希さん」

キョン「おっす」

長門「……」コクリ

キョン「んで、ハルヒはまだか。まだ集合時間には余裕があるが」

古泉「直に来るでしょう。時間には正確な人ですから」

朝比奈「キョンくん。手掛かり、見つかるといいですね」ニコッ

キョン「……そうですね。簡単にはいかないと思いますが」チラッ

佐々木「いらっしゃったみたいだよ」スッ

ハルヒ「おーい! みんな揃ってるー!!?」ダダダッ!!

キョン「んな遠くから大声で……恥を知れっ恥を!!!!」クワッ!

古泉「あなたもですよね、それ」

ハルヒ「時間1分前!! セーフ!!!」ザザッ!

ハルヒ「待たせたわねっ!! じゃさっそく行くわよっ!! ついてきなさいっ!!」

佐々木「待ったハルヒさん。今日の先導役はあなたじゃないだろう?」

ハルヒ「あらっ? そうだったわね、それじゃキョン!! あたしのアドバイスした通りの場所に行くわよっ!」

キョン「バッティングセンターやら雀荘になど行かんぞ。ま、とりあえず」

キョン「ブラブラ行くとするか」

ハルヒ「SOS団!! しゅっぱーーつ!」

古泉・長門・朝比奈・佐々木「「「「ファイヤー」」」」

キョン「なんか知らんやつでた!?!!?」ガーン!

ここまでー

投下しますー


β


キョン「そーれ、じゃん」

ハルヒ「けん!」

佐々木「ぽん」

キョン「佐々木の勝ちだな。てことでここは右だ」スタスタ

古泉「これでミラさん5勝、涼宮さん1勝、であなたが未だ勝ち無しですね」

朝比奈「ミラさん強いですねー」

ハルヒ「……ねえ」

キョン「どうした?」

ハルヒ「どうした? じゃないわよ! 今は何する時間だと思ってんの!!?」

キョン「不思議探索だろ? お前がアイデアを出したんじゃないか」

ハルヒ「その通り! 不思議探索よ! 間違っても分岐路の度にじゃんけんでいく方角を決めるゲームなんかじゃないわ!」

キョン「ブラブラするって言ったじゃないか」

ハルヒ「しすぎぃ!!!」ダンダン!

長門「落ち着いて」

佐々木「そうさハルヒさん、落ち着いて。この行動をとる理由があるのさ」

ハルヒ「理由? なによそれ」

キョン・佐々木「「楽しい」」

ハルヒ「ふざけんな!!」ガオォ!

朝比奈「ひえぇっ!!」

佐々木「やれやれ、まいったな。キョン、ハルヒさんを納得させるだけの理由を探してくれ」

キョン「適当に珍しいモンでもあてがえばいいんじゃないか?」

ハルヒ「動物にエサ与えるような感覚で言うな!!」


ハルヒ「おいっしいじゃないのこれ!」

長門「美味」モグモグ

佐々木「喫茶店でケーキを食べたら機嫌が良くなるんだから」

キョン「あながちエサ与えてんのと変わんねえな」

ハルヒ「それとは別!! キョン、今日はあんたが行きたいとこ行く予定だから黙ってついてきたけどね!」

キョン「黙ってなかったよな? 古泉」

古泉「どうでしょう」

ハルヒ「この後もこんな感じなら、いよいよあたしの堪忍袋の緒が切れるわよっ!!」

キョン「そんなモンを持ち合わせていたことが驚きだ」

ハルヒ「ミラっ! あんたからも言ってやんなさい! なにか手掛かりになりそうなものがありそうなトコに行け、って!」

佐々木「例えば?」

ハルヒ「海、川、山!!! 都会から離れた大自然の中に不思議は潜むのよっ!!!」

キョン「なんだそりゃ……いつも都会でやってる不思議探索は一体なにを探し…………」



キョン「…………あ」



古泉「どうかされましたか?」

ハルヒ「なによキョン、フリーズして」

キョン「いや…………待てよ…………」

朝比奈「き、キョンくん??」

長門「…………」モグモグ

キョン「ハルヒ…………さっき言ったこともっかい言ってくれ」

ハルヒ「『ごちになりまーす!』?」

キョン「そんなこと一言も言ってなかっただろうが!!!! 情報改変するんじゃねえ!!!」


キョン「どこに行きゃ手掛かりがあるって言ったんだ?」

ハルヒ「ボーリング場、バッティングセンター、雀荘?」

キョン「海、川、山!!! お前はそう言ったんだよ!! 大自然に不思議が潜むとかな!」

ハルヒ「い、言ったけどそれがどうしたのよ。あ、言っとくけどあたしがただ遊びたいだけじゃ―――」

長門「山」

朝比奈・ハルヒ「「えっ?」」

長門「山ならある」

キョン「あぁ、すぐそこにな」ピッ

ハルヒ「そこ、って……鶴屋山のこと??」

キョン「お前の言う通りならそこに不思議が潜んでんだろう?」

ハルヒ「え、あ、まぁ、そういうことになる、わね?」

キョン「登ろう」

ハルヒ「えっ!?」

キョン「そこに山があるなら、登るのだ」

ハルヒ「どこの登山家!!? ちょ、ちょ! 言っといてなんだけど、ホントに!? マジで!?」

キョン「マジだ、大マジだ。行くぞっ、ついてこい!」ザッザ!

ハルヒ「えぇええええ!!? ちょっと! 山の何があんたをそこまでさせるのよ!!? おーい!!」

朝比奈「や、山に登るんですかぁ!? わたし今日ヒール……」

古泉「何か覚えがあるのでしょうかね、彼には」

佐々木「……さあね」


キョン「ふっ、ふっ……」ズンズン!

ハルヒ「ふっ、へばってんじゃない? キョン?」ズンズン!

キョン「ぬかせ、まだまだ!」ズズンズン!

ハルヒ「こんのっ……!」ズズンズン!

古泉「お二方、少しペースが早……聞こえてませんね」

朝比奈「ふっ、ふぅ、ひぃ、ひぁ……!」

長門「頑張って」

佐々木「……」

キョン「……」ズンズン!

ハルヒ「んぐぐ……!」ズンズン!

キョン「ここっぽい」ピタッ

ハルヒ「んぎゃお!」ドツン!

古泉「やっと止まったみたいですよ」

朝比奈「ひ、ひえぇ……」

ハルヒ「き、急に止まんないれよ! 鼻打っちゃったじゃない!」

キョン「ここだ……」

ハルヒ「ここ? 少し開けたスペースだけどここに何が……あ」

佐々木「面白い形の石があるね。まるで―――何かを埋めた目印みたいに」

キョン「…………」


ハルヒ「確かに、ここ掘れば何か面白いモノが……みくるちゃん! 掘りなさい!」

朝比奈「ええっ!? す、素手でですかぁ!?」

古泉「シャベルか何かを持ってくるべきでしたね」

ハルヒ「古泉くん」

古泉「はい」

ハルヒ「スコップ、でしょ?」

古泉「これはこれは、失礼しました」

ハルヒ「で、キョーン! 結局あんたがここに来たかったのはこの岩が目的だったってわけ!?」

キョン「……」

ハルヒ「ねーってば!」

キョン「……この山の持ち主は誰だか知ってるか?」

ハルヒ「? そんなのつるちゃん家に決まってるじゃない。鶴屋山なんだし」

キョン「じゃいつから保有しているか知っているか?」

ハルヒ「さあ? 結構昔からなんでしょうけど……それがどうしたのよ?」

キョン「元禄時代ぐらいさ。当時の鶴屋家当主、鶴屋房右衛門の代から保有してる」

キョン「そして、鶴屋房右衛門の母親は……佐々木だ」

ハルヒ・朝比奈「「え˝˝っ˝っ!!?!?」」

キョン「俺のいた世界ではな。なにその汚い発音」

佐々木「……」


ハルヒ「あ、そうよね。あんたらは生まれ変わりとか何億年も生きてる系だもんね」

朝比奈「あ、新しすぎるジャンル……」

古泉「それで、話しの続きは?」

キョン「ああ。この山は房右衛門が家督を継いだ時に俺が買ってやったモンなんだが」

ハルヒ・朝比奈「「えっ˝˝っ˝っ!!?!?」」

長門「それはもういい」

キョン「ありがとう長門。まぁ、それも俺がいた世界での話なんだが、あーつまり何が言いたいってのはだな……」

佐々木「『激録!! 鶴屋房右衛門の秘密に迫る』。キミが思い出したのはこれだろう?」

ハルヒ「ん……あーっ! 資料で集めた時の雑誌のやつね!」ハイハイ

佐々木「キミはこれを見た時にある引っ掛かりを感じた。それが房右衛門の存在さ」

古泉「……なるほど。房右衛門氏はミラさんのご子息。つまりミラさんがいない世界には存在しえない」

長門「時空の連続性の証明?」

佐々木「に、近いね。山は鶴屋家所有のものなのに、この世界にキョンはいないんだから」

朝比奈「??? ??? ? ???」

ハルヒ「安心しなさいみくるちゃん。あたしもそんな感じだから」ポン

キョン「房右衛門が存在し、山を保有し、そしてこの岩だ」

佐々木「位相違いと言うところだね。この場は並行世界に保持されている」

古泉「………………なるほど。世界の基準点ということ、ですか」

ハルヒ・朝比奈「「なんで分かるの!!?!?!?」」ガーン!!

ハルヒ「も、もっと簡単に言いなさい!? キョン、つまり!!?」

キョン「つまり」

キョン「この岩の下に、房右衛門の埋めた何かが、この世界にもあるってこった」

佐々木「そして」

佐々木「それが元の世界に戻るための手掛かりになりうるかもしれないということさ」

ハルヒ「………………ほ」

朝比奈「ほ?」

ハルヒ「掘るわよーーーーーっっ!!!!!!」


ハルヒ「いけー!! キョン! 古泉くん!!」

朝比奈「が、がんばってー」

長門「……」

キョン「掘るわよ、って言った本人は掘らねえのかよ、ったく」ザクザク

古泉「まあまあ、ミラさんにシャ……スコップを出していただいたからいいではありませんか」ザクザク

キョン「あ? シャベルだろ??」

古泉「……すいません」

佐々木「どうだい? なにか出てきそうかい?」

キョン「佐々木、アドバイスなら受け付けるぜ」

佐々木「そうかい? ならもう30㎝ほど左を掘ってみればなにか見つかるかもしれないね」

キョン「だってよ古泉」

古泉「はい……」ザクザク

キョン「しっかしよ、佐々木」ザクザク

佐々木「うん?」

キョン「結局お前はどこまで知っていて」

古泉「……」ザクザク

キョン「俺に―――」



キィン!



ハルヒ・朝比奈「「!!!」」

古泉「これは……っ」

キョン「どうして欲しかったんだろう……な?」

佐々木「…………くつくつ。さあね」


ハルヒ「キョン! キョン!! 今の音!!」ガシッ!

長門「金属音」

キョン「ああ……ありやがったぜ、ちくしょう」ガシッ

ハルヒ「なにそれ? 何の延べ棒? 金じゃなさそうだけど」

キョン「こいつは……鶴屋さんの先祖が埋めた逆転アイテムさ。何の延べ棒かは知らん」

キョン「向こうの世界では埋めたまんまだったが……どうやら」

佐々木「起死回生を図るために必要なピースだったというわけだ」

キョン「ああ、未来の人間が指令によって俺からコイツを遠ざけていた理由が分かったぜ」

キョン「掘り起こすべきでない、ここになければならないモノだったんだ」

長門「世界の、基準点として?」

キョン「ああ、その通りだ。おそらく、こいつが持つ情報は『絶対の座標軸』」

キョン「ある地点から、どの時間、どの平面上にも、こいつは同一の場所に存在する」

古泉「ということは、これを使えば……」

キョン「元の世界に戻れるかもしれん」

朝比奈「や、やった!」

キョン「もちろん、それをやるのは……」

ハルヒ「ミラっ!!! できるの!!? いいえ、やり遂げなさい!!!」

佐々木「……ああ、可能さ」

ハルヒ・朝比奈「「やった!!」」

佐々木「ただし」

佐々木「今度こそ、この世界は消失することになる。それでもいいのならね」


キョン「おい、そりゃどういう―――」

ハルヒ「かまわないわ! やっちゃいなさい!!」

キョン「おい、お前、ハルヒ……」

長門「いい」

朝比奈「お願いします! ミラさん」

古泉「本懐を遂げられるのであれば、何の支障もありませんよ」

キョン「お前ら……なんで……」

佐々木「…………揃いも揃って即答かい。くつくつ、せめて理由ぐらいは伝えさせてくれるとありがたい」

ハルヒ「簡潔にね」

佐々木「ありがとう。さっきも言った通り、その謎の延べ棒を使ってキョンを元の世界に戻すことは可能だ」

佐々木「しかし、向こうの世界にキョン単体で回帰させることはできない。なぜなら」

キョン「……今の俺に力がないから、か」

佐々木「その通り。感覚的な意味合いが強いんだけど、今のキョンを1人で時空跳躍させることはかなり危険だ」

古泉「つまり。あなたもついて行く……ということでしょうか」

ハルヒ「ミラ……」

佐々木「……僕がこの世界を離れれば、時空間保持のバランスが瞬く間に崩れ」

佐々木「世界は崩壊する。確実にね」

ハルヒ・朝比奈・長門・古泉「「「「……」」」」

佐々木「……キョンの悪運に賭けて1人で向こうの世界に帰ってもらうのも選択肢の1つではある」

キョン「よし、それでいこう。おれは昔っから悪運が強くてな。むしろそれだけで生きて―――」

ハルヒ「ミラ、何度も言わせないでちょうだい」

ハルヒ「かまわないわ! やっちゃいないさい!! そんで」

ハルヒ「向こうの世界までしっかりキョンを送り届けること!! それが最期の団長命令よ!!」

キョン「…………ハルヒ」

佐々木「…………しかと、受け賜わったよ。団長」


佐々木「ではキョン、その延べ棒を……」

キョン「待ってくれ。何故、お前たちはそうまでしてくれる? 自分たちの存在すら失うことになるんだぞ!?」

ハルヒ「これも前に言わなかったかしら? あたしが存在する事実があれば『あたし』がどこにいようと関係ないってこと」

ハルヒ「元の世界にあたしがいるってなら、それが涼宮ハルヒ。それがあたしよ! 分かった??」

キョン「そんなこと……朝比奈さん、長門、古泉! 誰か反対する奴はいないのか?」

古泉「団長に賛成です」

長門「右に同じ」

朝比奈「わたしも賛成です」

キョン「な、なんでだよ……?」

古泉「逆に聞きますが、あなたの世界の我々は涼宮さんの意に反したことはありましたか?」

長門「そうでなくとも、これはわたし自身の意志」

朝比奈「行ってあげてください。キョンくん、いろんな人があなたを待ってる」

キョン「…………っ」

ハルヒ「ほら、ちゃっちゃと行きなさい! ミラ! あとはよろしくね!」ドンッ!

キョン「うおぁっ!」グラッ

佐々木「任されたよ」ガシッ!

ハルヒ「じゃあね!! キョン! あんたといたのは1週間程だったけど、楽しかったわよ!」ニッ!

キョン「ハルヒ……」

長門「楽しかった」

古泉「ええ。とてもとても」

朝比奈「ありがとう、キョンくん」

キョン「長門、古泉、朝比奈さん…………」


佐々木「それじゃ行くよキョン―――みんなも、さようなら」

ハルヒ「あんたに言うことはないわ!…………っ、じゃあね!」クルッ!

朝比奈「す、涼宮ざぁん……ミラさん色々ありがどうございまじだ!」ビエェエン!

古泉「大変刺激的な日々をどうもありがとうございました」

長門「……行ってらっしゃい」

佐々木「ああ……ありがとう!」

キョン「……お、おれやっぱ1人で行った方が」

佐々木「離れないでくれよ。時間断層に落ちたくないならね」ギュ

ハルヒ「あ、キョン!!! 言い忘れてたけど!!」

キョン「っなんだ!?」

ハルヒ「あたしの言ったこと、忘れてないでしょうね!!?!?」

キョン「…………」






ハルヒ『……あんたは、元の世界のあたしをなにがなんでも助けなさい!』






キョン「…………っ!」

キョン「任せとけ!!!!」

ハルヒ「よろしい!! なら行ってきなさい!!!」

佐々木「行くよ――――――」パアァッ

キョン「あ――――――」

ハルヒ「――――――ばいばい、ジョン」












シュン!!!!

ここまでーーー

今日中にはとうかー

とうかー


β



古泉「(…………)」


立チ上ガルチカラスラ失ッタカ?


古泉「(…………)」


思考スル意味スラ忘レタカ?


古泉「(…………)


ナラバ古泉一樹―――オ前ハ


古泉「…………っ!?」ズキ

古泉「(頭痛……? それも、強烈な……!)」ズキズキ


ココマデノヨウダナ


古泉「っ、何……を」


ナニモシテハイナイ。オ前ガ適応シテキタノダ
コノ無間ノ世界二


古泉「っ!!」ズキッ!


変ワル時ガキタノダ


古泉「ぐっ……!」


オ前トイウ存在ガ―――


古泉「―――コンナ風二ナ」

古泉「っっっ!!?!?」


古泉「っ、誰ッ……だッ!」

古泉「誰? オ前自身ダ。古泉一樹」

古泉「!!?」

古泉「オ前ノ心ノ深淵ニ潜ム闇」

古泉「紛レモナイ。コノ空間ノ創造主ハオ前ダ」

古泉「……ッ!!」ズキズキ

古泉「オ前ハ俺デアリ、俺モオ前デアルノダ。ダブルフェイスニハオ似合イダロウ」

古泉「アノ誠実ナ副団長ノ内面ハ、コンナニモドス黒イモノデアルト」

古泉「……ぐぅっ!!」ズキズキ

古泉「オ前ガ必死ニ思考シテイタコトモ筒抜ケダ。俺ハオ前自身デアルノダカラ」

古泉「思考ヲ邪魔スルコトモ造作ナイ。気ヅイテイタカ?」

古泉「ふぅっ……ふっッ!」ズキッ!

古泉「オ前ハコノ空間ニイル間、今ノヨウニ一人デ会話ヲシテイタコトニ」

古泉「始メカラ俺ナドイナイ。古泉一樹、オ前ハオ前自身ノ闇ト相対シテイタノダ」

古泉「ソシテソノ根底ニ存在スルノハ」

古泉「うぅ…………っ!」

古泉「常日頃ノ笑顔ノ下ニ隠シテイルノハ―――」

古泉「重ク、醜イ、負ガ混ジリアッタ感情」

古泉「はぁ……はぁっ!」ズキズキ

古泉「涼宮ハルヒヘノ―――恨ミダ」


古泉「当然ノコトダ。何故望ミモシテイナイノニ、世界ノタメニ、死ト隣アワセノ世界デ戦ワナケレバナラナイ?」

古泉「楽シクモナイ茶番劇ヲ演出セネバナラナイ?」

古泉「誰ノ意志デ古泉一樹トイウ人間ハ、コンナ不条理ニ巻キ込マレテイル?」

古泉「他ナラヌ―――涼宮ハルヒノセイデハナイカ」

古泉「っ……っ!!」ズキズキ!

古泉「全テヲ肯定スル副団長ヲ演ジルノハ苦痛ダッタカ?」

古泉「恨ミノ対象ノスグ側ニ居続ケルノハ地獄ダッタカ?」

古泉「本音ヲ隠シテ日々ヲ過ゴスノハ惨絶ダッタカ?」

古泉「ソノ原因デアル涼宮ハルヒニ消エテ欲シイト感ジテイタカ?」

古泉「…………っ」

古泉「オ前ノ本心ハイツデモソウ感ジテイタハズダ」

古泉「コノ運命ヲ呪イ、呪縛カラノ解放ヲ求メタ、オ前ノ願イガ」

古泉「今、コノ世界デ叶オウトシテイル。喜バシイコトダ」

古泉「……うっッ!!」ズキズキ!

古泉「モウナニモ考エル必要モナイ」

古泉「タダヒタスラニ、憎悪ノ炎ヲ」

古泉「怨嗟ノ濁流ヲ、憤激ノ波濤ヲ」

古泉「増幅サセ続ケロ。コノ空間デ」

古泉「ソノ身ガ朽チヨウトモ―――呪エ」

古泉「――――――っ」

古泉「涼宮ハルヒガイナケレバ……涼宮ハルヒサエイナケレバ……」

古泉「涼宮ハルヒガ……イナケレバ……ッ!!」

古泉「ソウダ。ソレデイイ」

古泉「涼宮、ハルヒガ……―――」












『さっすが副団長!! 団長の考えてることよくわかってるじゃない!!』



『うん、中々いいものを持っているわね古泉くん! これなら主演俳優賞を十分狙えるわ!!』



『人間、二つぐらい同時に行動ができるのよ!! 走りながら探しながら考える!! アーユーレディ!?』












古泉「涼宮さんが……いてくれたから……っ!!!」ズキィッ!


古泉「ナニ……?」

古泉「涼宮さんが……いてくれたから……僕は……あの場にいることができた」ズキズキ

古泉「涼宮ハルヒサエイナケレバ、オ前ハ身ヲ危険ニ曝すコトナク平和ナ日々ヲ過ゴセタハズダ」

古泉「涼宮さんがいてくれたから……僕はかけがえのない仲間に出会えた」

古泉「失ッタモノハ数エキレナイ」

古泉「それ以上に、得たものは大きい」ズキッ

古泉「望ミモシナイ戦場ニ呼ビ出サレテマデ欲シカッタモノカ?」

古泉「……先ほどからっ、僕の本心などと……」

古泉「あなたが勝手に……僕を語らないでいただきたい……っ!」

古泉「僕の……望みを叶えてくれたお方こそ、涼宮ハルヒさん……その人なのですよ」

古泉「涼宮ハルヒノ自己満足ノタメニ作ラレタ存在。ソレガオ前タチ超能力者ダ」

古泉「ええ……思い出しましたよ。あなたのおかげで」

古泉「古泉一樹という、人間のルーツを!」

古泉「ナンダト?」

古泉「知ったかぶりも……程々にしたほうがいい……僕は、涼宮さんに選んでいただいたのです」ズキッ!

古泉「この世界を救う、英雄としての大役を……大義を与えてもらった!」

古泉「世界中を探しても見つからない。僕と、僕の仲間たちだけに任された役目」

古泉「この役目だけは……例え世界が変わろうとも……どれだけの不条理に苛まれようとも……っ!」






古泉「『彼』にだって譲ることはできない、僕の誇りですッッ!!!」






古泉「はぁ……はぁ……」

古泉「誇リ……? 違ウ。オ前ガシテイルコトハ、タダノ思考停止ダ。単純作業ノゴミ掃除デシカナイ」

古泉「……的外れもいいところですね。僕は時間場所限定の超能力者……」

古泉「ハァ……ハァ……なってみたかったんですよ。僕だって―――」



古泉「―――『主人公』ってやつにね」



古泉「『主人公』ダト……?」

古泉「世界のために戦うなんて、さながら物語の『主人公』でしか体験できないようなことですよ」

古泉「少年なら……誰しも一度は志す夢ですよ」

古泉「下ラナイ。夢ナドトイウ幼稚ナ幻想デ、オ前は身ヲ滅ボスノダ。今ココデナ」

古泉「そんな夢という幼稚な幻想を叶えるために」

古泉「人は人生を賭ける」

古泉「結果ガコレダ。オ前はココデ朽チテ死ヌ。誰ニモ知ラレズ孤独ニナ」

古泉「生憎ですが、このような憂鬱とした空間の相手は手馴れているんですよ」

古泉「なんせ僕は……閉鎖空間のプロなので」ボウッ!

古泉「無駄ダ。現実世界ヘ戻ルタメノトリガーハ存在シナイ」

古泉「存在スルノハ無。地ノ果テマデ続ク闇ダケダ」

古泉「ふむ。あなたの言う通りなら、僕がこの空間から出る術はない、と」

古泉「では、僕も人生を賭けて……身を滅ぼしてみるとしましょうか」ゴオッ!!

古泉「オ前……ナニヲスルツモリダ……マテ、ナニヲ、考エテイル……イヤ」

古泉「ナゼ、オ前ノ考エガ読メナイノダ!?」

古泉「ああ、そう言えばあなたは僕自身であるが故に、僕の思考を読み取ることができましたね」

古泉「度々僕の思考を遮るかのように語りかけ、思考の進行を阻止しようとした」

古泉「ならば僕かとるべき行動は簡単。並列思考ですよ。あなたが読み取ったのは僕の片方の思考」

古泉「カ、片側?」

古泉「そしてもう一つ。本命の思考を並列に進めていただけの話」

古泉「へ、並列思考ダト!? 馬鹿ナ!? ソノ程度ノ事デ思考ヲ読ミ漏ラスナドッ!」

古泉「その程度がどの程度かは分かりませんが……考えが甘かったようですね」

古泉「ほぼ無意識下で別の思考を進める『程度』SOS団の副団長なら当然のスキルですよ」

古泉「『こんな風にね』」


古泉「まぁ、閉心術とでも言い換えましょうかね。元々、彼に思考を読まれないようにするための対策なんですけどね」

古泉「僕自身である、あなたにはどうやら有効だったみたいですね」

古泉「……ッ!」

古泉「ナラバ! チカラヅクダ!! 消エロ!! 古泉一樹!!!」ズッ!!!!!

古泉「くっ……!?!??」ズキ!

古泉「コノママ、オ前ノ意識ヲ……!」

古泉「……いや、無駄ですよ」ズキズキ!

古泉「僕の心の弱さがあなたを生み出してしまった……ならばすべきことは一つ」

古泉「闘魂注入です。燃ゆる火球を我が身へ転ず」ドンッ!

古泉「ナンダト……?」

古泉「SOS団に属する以上、煌々と燃える『魂』を団員は皆持ち合わせています」

古泉「……今一度、僕にもその『魂』を」ボッ!!

古泉「馬鹿ナ!? 自殺スルツモリカ!?」

古泉「自殺? とんでもない。神人という明確な敵がいない以上、僕の敵はあなただけ……いや、僕自身だ」

古泉「そして決して僕は死ぬつもりなんかはない。戻るだけです、SOS団のいる日常へ―――」

古泉「ヨセ!! 待テ!! マタアンナ世界ニ戻ルトイウノカ!!? 待―――!」












古泉「―――僕が望んだ……非日常≪にちじょう≫へッッッ!!!!」












古泉「この紅蓮の魂と共にッッッッッッ!!!!!!!」ゴオッッッッ!!!!!












パリイィィィイン!!!!!!!!!


藤原「部室というのはどこに―――」

橘「ええ、こっちに―――」

佐々木「…………まずは」クルッ






ズズズッ!






藤原・橘「「ッ!!??!?!?!?」」

佐々木「くつくつ……こうなる、か」


















古泉「涼宮さんを―――返していただきましょうか」ザッッ!


佐々木「おかえり、古泉くん。キミが一番乗りのようだよ」

古泉「ええ佐々木さん。あなたのおかげで色々と思い出せましたよ」

佐々木「そりゃよかった。よく戻ってこれたものだ。感心するよ」

古泉「お褒めの言葉は結構ですよ。そこの未来人さん、背負っている我らが団長を離していただきたい」

藤原「……それはできない相談だな」

古泉「でしたら―――力づくでも」ボウッ!!

藤原「っ!!?」

佐々木「そうか、ここは閉鎖空間。能力が使えるのは当然という訳だね」

古泉「あまり手荒なことはしたくありません。大人しく―――」






橘「行ってください。佐々木さん、藤原さん」






藤原「橘……」

佐々木「……任せてもいいかい? 橘さん」

橘「はい。あたしも後で必ず行きますので」

佐々木「じゃあ、ここは橘さんに任せて行くとしよう。藤原くん」

藤原「……ああ。頼んだぞ、橘」

古泉「お待ちください。言う通りにしていただけないのなら本当に―――!」






バァアアン!!!!!





古泉「っ!!?!?」

藤原「(っ、橘の周りに衝撃波? あんなことができたのか、あいつ!)」

佐々木「心強いじゃないか。さ、いまのうちだ藤原くん」スタスタ

藤原「あ、ああ」スタスタ

橘「どうしたんです? 力づくで止めるんじゃなかったんですか?」

古泉「……橘さん。そこをどいてください」

橘「力づくでどうぞ」ニコッ


古泉「……」

橘「行ってしまいましたよ。佐々木さんと藤原さんは。追わなくていいんですか?」

古泉「……追わせていただきますよ。あなたを倒してでも」

古泉「かつての親友を倒してでも、守りたいものができましたから」

橘「っ……そうですか。だけど、あたしにだって……やらなきゃいけないことがあるっ!」パチンッ!



ズズズッ!



古泉「……増援ですか」

橘「ええ。きっと、心のどこかではこうなるって分かってたような気がする」

橘「あなたとは、一度面と向かって戦わなきゃいけないって!」

古泉「だからこそのこの用意周到ですか……」

橘「戦略ですよ。戦いにおいて、数的優位は必須!!」

橘「……残念ですが、ここで倒されてください。一樹くん」

古泉「……数的優位ですか。確かに、姫を守る屈強な騎士が大勢いて驚いていますよ」

橘「(姫……)」ドキッ

古泉「ですが―――」






ズズズッッ!!


新川「間に合ったみたいですな」

多丸「よくぞ帰ってきた。一樹くん」

裕「さすがはSOS団の副団長」

森「当然ですよ。信じていましたから」









古泉「僕にも、少数精鋭のヒーローがついていますので」ニコッ









橘「っ~~~いけっ! いけっ!! みんな潰してやってください!!」

新川「腕が鳴りますな」ボキボキ

多丸「やりすぎないようにね」

裕「それを言うなら……」

森「シュウゥウゥ……」ゴゴゴゴゴゴ!!

古泉「森さん? 森さん?? 森さん!!? その、あまりやり過ぎない方向で……」

裕「森さんに言うべきじゃないかな」

新川・多丸「「確かに」」

ここまでー
期間空いてすいません

お待たせしております。
必死こいて書いてきますので近日中に投下します

まってる

>>327
ありがとうございます。
必死に書いてきましたんで投下します。


β


みくる「ほんとに笑わない?」

朝比奈「笑わないよ」

みくる「…………みくる」

みくる「みくる……大人になったらね……」

朝比奈「……」

みくる「……あのね」モジモジ












朝比奈「涼宮ハルヒさんに会ってみたいのよね?」












みくる「!!?!?!? ど、どうして分かるの!!? や、やっぱり、ちょうのうりょく……」

朝比奈「うふふ。超能力ではないけど、分かっちゃうんだ。だって……」

朝比奈「あたしも……そうだったから」

みくる「お姉ちゃんも、会ってみたいの!?」

朝比奈「……うん。会いたいよ」


みくる「あのねあのね! 涼宮ハルヒちゃんはね! すごいんだよ!?」

みくる「じかんへいめんりろん……ていうのを作った人でね! それでね!」

朝比奈「(あぁ……やっぱり涼宮さん。あなたはすごい人です)」

朝比奈「(遠い未来の、年端もいかない少女でも、その名を知っている)」

みくる「先生がね、言ってたの! みくるたちがこうして学校に行って、べんきょうして、遊んで」

みくる「まいにち過ごせているのは、涼宮ハルヒちゃんがいたからこそなんだ、って!」

朝比奈「……うん。そうね」

朝比奈「(涼宮さんによって時間平面理論の基礎が構築されなければ、この未来はなかった……)」

朝比奈「(大袈裟かも知れないけど、確かに未来がこの形で存在しているのは涼宮さんのおかげ……か)」

みくる「もう、もう、すごいっ! すごすぎて……すごい!!」

みくる「時々からかわれたり、ドジって言われたりもするけど、それでもね!」

みくる「みくるがこうしてまいにち楽しく過ごせてるのは、涼宮ハルヒちゃんがいてくれたからって思うとね!」

みくる「すごい! すごい!! ありがとう! って思うの!」

朝比奈「ありがとう……?」

みくる「うん!」

みくる「こんなに楽しいまいにちをありがとう、って! おれいを言いたいの!!」

朝比奈「それが…………あなたの、夢?」

みくる「ゆめ……? ゆめなのかなぁ? 分かんない」

朝比奈「それが、涼宮ハルヒさんに会いたい理由?」

みくる「りゆう……りゆう??」

朝比奈「それを、涼宮ハルヒさんに伝えて……伝えたら、どうするの?」

みくる「??? どうするの?」 

朝比奈「どう……するんだろう?」


みくる「うーん……? うーーん????」

朝比奈「あっ、ごごごめんね! なんか難しいこと言っちゃって……」

みくる「ありがとう、って言うでしょ。それで、言ったら……うーーん?」

朝比奈「(わたしが、過去に行って涼宮さんに接触した理由……)」

みくる「えーっと……」

朝比奈「(わたしが、子どもの頃から涼宮さんに会いたいと思っていた理由)」

みくる「…………」

朝比奈「(わたしが、また過去に戻りたいと思う理由―――)」












みくる「ありがとう、って言いたいだけ。それだけだよ?」












朝比奈「…………」

みくる「むずかしいことは分からないけど、みくるはそうしたいだけっ!」

みくる「その後どうするかとかは、うーん……いっしょに遊んでくれたらうれしいなぁ」

朝比奈「…………」

みくる「でもそのためにはいっぱいべんきょうしないと、って先生も言ってて―――」

朝比奈「……それ、だけ」

みくる「んー?」

朝比奈「そう、そうだわっ。たった、それだけ。わたしの、原点にあった想いはそんな簡単なことだったんだ」


みくる「お姉ちゃん?」

朝比奈「あっ、ごめんね……でも、ありがとう」

みくる「ありがとう? どうして?」

朝比奈「わたしが忘れていた大切なことを、あなたが思い出させてくれたの」

みくる「大切なこと?」

朝比奈「うん。わたしはね、あなたより少し大人だけど、実は全然ダメダメでドジばっかりなんだぁ」

みくる「それは大人らしくないと思う……」

朝比奈「ふふっ、そうね。だから、失敗するたびわたしはなんでここにいるんだろう。何をしているんだろう」

朝比奈「そんな風にダメな方向に考えちゃってたのね」

みくる「……みくるもそんな風に考えることあるかも」

朝比奈「……でもね。思い出せたんだ」

朝比奈「しなきゃダメなことに埋もれて、隠れて、見えなくなっていたけど……やっと出てきてくれた」

朝比奈「わたしの……したかったことが!」

みくる「よかったね! お姉ちゃんはなにがしたいの??」

朝比奈「それはね、あなたと一緒」

みくる「みくると? 涼宮ハルヒちゃんに会って『ありがとう』って言いたいの? お姉ちゃんも!?」

朝比奈「そう。それはとっても大事なことだと思い出したから」

朝比奈「わたしが抱いていた、明確なわたしの意志だから」

みくる「おんなじだね! みくると!」ニコッ!

朝比奈「……ええ、おんなじね」ニコ


朝比奈「みくるちゃん。お姉ちゃんはそろそろ帰らなきゃダメになっちゃった」

みくる「そうなの? お家に帰るの?」

朝比奈「ええ、お家同然の場所に戻らなきゃダメなの」

みくる「そうなんだ。みくるもママにおそくなっちゃダメ! って言われてる……」

朝比奈「それじゃみくるちゃんも帰らなきゃね」

みくる「うん……お姉ちゃん、またあっておはなししてくれる?」

朝比奈「……もちろん! 今度はもっといっぱいおしゃべりしようね?」

みくる「! うん! ぜったい! ぜったいだよ!」

朝比奈「ええ。だから今日はもう帰ろうね? ママが心配するといけないから。気をつけてね?」

みくる「うん! お姉ちゃんもきをつけて!」

朝比奈「ありがとう。それじゃあ―――」






朝比奈・みくる「「またね!」」






朝比奈「…………行っちゃった、か」

朝比奈「……バレてないよね?? あの子にわたしが未来の朝比奈みくるってバレてないよね!!?」ドキドキ

朝比奈「バレてたら怒られるかなぁ……というか無断でこの時間軸にいることもダメなんじゃ……」ブツブツ

朝比奈「じゃないじゃない! せっかくわたしがしたいことを思い出せたんだから!!」

朝比奈「過去に、帰るんだ」

朝比奈「TPDDを使えるようにしてもらおうと『ハカセ』のところに行くつもりだったけど……」

朝比奈「…………頼ってばかりじゃ、ダメ!」

朝比奈「不完全かもしれないけど、やるしかない……大丈夫、絶対できる」

朝比奈「もう一つの、時空間移動方法で……ッ!」

朝比奈「スゥ…………行きます」

朝比奈「(ばいばい、昔のわたし……)」

朝比奈「(わたし……頑張るから――――――ッ!!)」






シュン!



















『よくできました。みくるちゃん』


















朝比奈「ふぇ? 誰―――!?」パッ!

朝比奈「って!」トサッ!

朝比奈「ここは……北高! 部室棟の入り口! 時間軸は……合ってる!! 帰って、これた!!?」

朝比奈「……や、やったぁ」ヘロヘロ

朝比奈「あ、安心したら力が……だ、ダメダメ! まだ何も……って」

朝比奈「北高は北高だけど、これって……あの時みたいな閉鎖空間?」

朝比奈「な、なにがなんだか……ま、まずはみんなと―――!」












藤原「おい、これはどうなってる?」

佐々木「くつくつ、キミの言葉でいう既定事項ってやつじゃないのかい?」












朝比奈「ッ!! っさ、佐々木さん!! 涼宮さん!!?!?」

藤原「僕もいるぞ」

佐々木「御機嫌よう、朝比奈さん。懐かしの故郷は如何だったかな?」

朝比奈「み、みなさんを何処へやったんですか!? そ、それに涼宮さんに何を……!」

佐々木「それについては心配ない。古泉くんは先ほど帰ってきていたし、今は橘さんと思い出話でも繰り広げているだろう」

佐々木「長門さんは九曜さんと遊んでいるし、涼宮さんはご覧の通り。ただ眠っているだけさ」

ハルヒ「スー、スー」

朝比奈「きょ、キョンくんは!!?」

佐々木「……さあ? 彼のことだ。どうせ直に姿を現すさ」

朝比奈「っ!」


朝比奈「涼宮さんを、解放してくださいっ!」

佐々木「どうする藤原くん? 彼女はああ言っているが」

藤原「……どうするもなにもない。僕たちの目的を遂げるまでだ」ザッ!

朝比奈「と、とと止まってください! わわっ! ぶ、部室までは行かせませんっ!」ワタワタ

藤原「朝比奈みくるに戦闘能力はない。なんの障害にも成りはしない。無視すればいい」スタスタ

佐々木「それは良かった。僕はあのような可憐な少女に手を挙げる藤原くんを見たくはなかったからね」スタスタ

藤原「ふん」

朝比奈「あ、あわ。あわわ! あっ! み、ミクルビーム!!」シーン

藤原「……」

佐々木「……うわぁー」ヨロロ

朝比奈「びえぇぇええええん!!! 出てほしい時には出ないんですかぁー!!!」

藤原「……酷い茶番だ。おい、朝比奈みくる、そこをどけ」

朝比奈「ど、どきませぇん!!!」ガシッ!

藤原「お、おいっ! 離せ! 邪魔だ! 足にしがみつくな!!」

佐々木「はて。橘さんがキミのことを何かのフェチと言っていたな。えっと確か―――」

藤原「佐々木ァ!! 余計なことを思い出そうとする前に、引きはがすのを手伝え!!」

佐々木「はいはい」

朝比奈「は、離しません!!!」グイイィ!

佐々木「悪いとは思ってるよ、朝比奈さん。ただ、僕らにも為すべきことがあるんだ」ググッ

藤原「お、おいあまり手荒にはするなよ!? 優しめに、かと言って時間をかけすぎるのはだな」クドクド

佐々木「……藤原くん。涼宮さんは僕に任せた方が朝比奈さんの拘束は解きやすいだろう」

藤原「あ? え?」

佐々木「よ、っと。さあさ、両手の自由は得たしキミの思うように朝比奈さんを振りほどきたまえ」

朝比奈「は、な、し、ま、せ、んーー!!!!」ギュウ!!

藤原「い、いやもう涼宮ハルヒは佐々木が肩を貸してるから、そっちに―――」

朝比奈「うっ、うぅ……涼宮さんんん!! うぅ!」ギュウ!

藤原「…………」


藤原「佐々木。この様子だ、先に行け」

佐々木「それはいいけど。キミに朝比奈さんが振りほどけるのかい?」

藤原「いざとなればTPDDを使えばいい。あまり手荒にはしたくはないがな」

藤原「予定通りにコトが進まないのには慣れているからな」

佐々木「……任せたよ。キミはキミの。僕は僕のすべきことを為せばいい」

藤原「……ふっ、その通りだ」

佐々木「それじゃ、先に行ってるよ。よ、っと涼宮さんが軽くて助かったよ」スタスタ

藤原「…………おい」

朝比奈「うぅ! うぅぅぅうううぅうう!! 涼宮さん!!!」ギュウ!!

藤原「涼宮ハルヒはもう佐々木と……聞いてはいないか」

朝比奈「絶対、絶対行かせません……ッ!!」ギュウ

藤原「……悪いが、そろそろ足が悪くなりそうだ。ここで眠ってくれ」スッ

朝比奈「ぅうぅぅううぅうううぅうううううううう!!!!」

藤原「……すまな――――――」












朝比奈(大)「女の子にそんな酷いことしちゃダメじゃない」ガシッ!












藤原「っぁあぁぁあぁぁあああぁああぁあああ!!?!!??!?」ビックゥ!!

朝比奈「涼宮さ、っっ!!? な、何!? えっ、えっ!?」

朝比奈(大)「……久しぶり、みくるちゃん。わたしが誰だか分かるかな?」

朝比奈「えっ? えっ、何、だ、誰……って、え?」

藤原「は、離せ!! ふ、二人共取りあえず離してくれぇええええ!!!!」

朝比奈「あ、あの時の……お姉、ちゃん。てことは、未来の……わたし!?」

朝比奈(大)「よくできました。みくるちゃん」

朝比奈(大)「こんな風にあなたの前に姿を現すなんて、本来ならありえない事態なのよ?」

朝比奈「お、お、お姉ちゃぁああん!!」ダキッ!

朝比奈(大)「あらあら。こんな時に」フフッ

藤原「あんたらで『お姉ちゃん』なんて呼ぶとややこしいし、ていうかそもそも『それ』は誰のセリフだと思ってんだぁあああ!!?!?」

ここまでー

本日中にとうかーー

とうかー!


β


佐々木「やれやれ、悪い予感はよく当たるものだね」

佐々木「藤原くんがあんなに慌てて……ん、それは常日頃からかな?」

ハルヒ「スー……」

佐々木「涼宮さん。あなたの団員は皆、強い意志をお持ちのようだ」

佐々木「なにがなんでも、あなたを助けるという意志をね」

ハルヒ「……グゥ」

佐々木「さて、部室は二階だったかな―――と」












周防「――――――」












佐々木「おや、九曜さん。おかえり」

周防「―――」

佐々木「長門さんはどうなったんだい? 振り切ってきたのか、それとも……」

周防「―――」

佐々木「参ったな。『力』がないものだから九曜さんとのコミュニケーションは言葉に頼るしかないのだけど……」

周防「―――」コソッ

佐々木「ん? もう一度言ってくれるかい?」

周防「―――……」

周防「CR―――ISI―――S」ヴォン

佐々木「おや……消えてしまった。ホログラムだったのか」

佐々木「にしてもクライシス、か……助けにいきたいけど、今の僕では足手まといにもなりはしないな」

佐々木「……まったく、SOS団にはいい人材が多いものだ」

佐々木「これも、あなたの人望が為せることなのかな、涼宮さん?」

ハルヒ「……クー」



















周防「潰れなさい―――」


















長門「(SELECT シリアルコード FROW データベース 展開:ERROR)」

長門「(Pausing Interva Seconds Between Display:ERROR)」

長門「(DEFEND BY:ERROR)」

長門「(CODE:ERROR ERROR ERROR)」

長門「(Unknown/Unknown/Unknown)」

長門「(パーソナルネーム 長門有希 機能停止 0.002秒前)」

長門「(――――――active/emergency)」

長門「―――すまな」ゴオッッッ!!!!











ドンッッッッッッッッッ!!!!!


周防「―――……」

周防「―――他律性の―――インターフェースが―――何故?」


















朝倉「随分と好き勝手やってくれたわね。敵性宇宙人」ドン!


















周防「制御空間―――構成プログラム―――再生処理」

長門「朝倉、涼子……?」

朝倉「長門さん、遅くなってごめんね。ギリギリ間に合ってよかったわ」

長門「何故、あなたがここに……? 待機命令が出ていたはず」

朝倉「……ふふ。長門さんも昆布頭の宇宙人と同じこと聞くのね」クスッ

周防「―――」ピクッ

朝倉「何故あたしがここにいるかって? 決まってるじゃない」

朝倉「あたしの意志が、ここに行くべきだと判断したからよ」

朝倉「待機命令? 聞いちゃいられないわよ、そんなバカみたいな命令」

朝倉「無口で大食いな宇宙人と、そのお仲間のピンチだって言うなら―――」

朝倉「駆けつけてやるのが、道理ってもんでしょうが」バン!

周防「―――理解―――不能」


周防「―――……現況更新―――再選択―――」

朝倉「長門さんも長門さんでエマージェンシーコールが遅すぎるし。機能停止の0.0018秒前って」

長門「ギリギリだった」

朝倉「もう……。それで、みんなの現状は理解してる?」

長門「……していない。『佐々木』によって何処か別の空間、あるいは時間に転移させられた」

朝倉「なら安心して長門さん。来る途中に確認したわ。古泉くんと朝比奈先輩、ちゃんと帰ってきてるわよ」

長門「………………そう」

朝倉「……いつからそんな分かりやすくなったんだか」クスッ

長門「……彼と涼宮ハルヒは?」

朝倉「キョンくんは……まだ分からないわ。涼宮さんは北高を中心に発生してる閉鎖空間内」

朝倉「佐々木さんと一緒にいるわ。もう時間の問題で何かを始める気よ。急いだ方がいいわ」

長門「……そう」

朝倉「にしても長門さん。らしくないわね、いくらあの謎の宇宙人が相手でもここまで追いつめられるかしら?」

長門「直前に『佐々木』による情報操作能力への干渉、リソース制限のようなモノを仕掛けられた」

朝倉「なるほどね。弱体化させられてたってわけか」

周防「―――……―――……」

朝倉「となると……こっちもパワーアップするとしますか!」ニッ

長門「パワーアップ?」

朝倉「まさかまた使うことになるとは思わなかったし、正直あまり使いたくはない力だけど……」

朝倉「長門さん。――――――」

長門「…………承知した」

朝倉「おっけー! それじゃ……行くわよっ!!!」ザッ!

長門「……」ザッ!

周防「解析―――完了―――mode=extarmination」













長門「パーソナルネーム・朝倉涼子の同期禁止処理の解除を申請」
朝倉「パーソナルネーム・長門有希の同期禁止処理の解除を申請」












長門・朝倉「「解除コード――――――Protect SOS」」








周防「―――」ゴオォォオオッ!!!












ガッキィイィイイイィイン!!!


周防「―――危険性…………未知数?」ズザザッッ!!

朝倉「―――なぁんだ。二人共、解除コードが一緒だったのね。やっぱり息が合うわね、長門さん」

長門「解除コードを申請する際の状況を予想し、それをコードにしただけ」

朝倉「あはは、確かにね。SOS団が文字通りSOSを求めてるってんなら―――」

長門「わたしたちにできることは―――それを守護すること」

周防「―――同期可能にしたところで―――」ギギギ

朝倉「あら、ご存じない? 使い方によってこれがどれだけのアドバンテージになるのかを」

朝倉「『先を知る』ということがどれだけの利になるのかを」

朝倉「禁止せざるを得ないほどに強大な力だったということが分かってないのかしら?」ザッッ!

長門「…………」

周防「……環境対応―――属性変更―――refinement」ギギギ!

朝倉「行って、長門さん。ここからはあたしがやる」

長門「二人で対応した方が確実」

朝倉「一人で十分よ。それよりも今、長門さんが本当に行きたいところへ行って」

長門「行かない。まずは周防九曜の無効化を―――」グイッ!

朝倉「今! 長門さんを待ってる人たちが!! あなたの大切な仲間がどこにいるか分かるでしょ!?」

長門「………………」

朝倉「だったら!! その場に少しでも早く駆け付けるのがあなたの役目!! SOS団団員の使命でしょ!」

長門「………………」コクリ

朝倉「そして! あなたは本心はどうなの!? ここで宇宙人対宇宙人の頂点決戦でもしたいの!!? それともっ!!」

朝倉「涼宮さんをっ、SOS団のみんなを助けたいんじゃないの!!!?!?!?」


















長門「………………助けたい」


朝倉「……分かったら行きなさい。大丈夫よ、たったいまパワーアップしたもの。二日目のおでん的な」

長門「……それはよく分からない。けど」

長門「……朝倉涼子」

朝倉「うん」

長門「―――任せる」トンッ

朝倉「―――任されたっ!!」

周防「茶番ね―――」バッ!!

朝倉「行って!! 長門さん!! ここはあなたの一番の友人に任せなさい!!」バシィ!!

長門「…………」ビューーン!!

朝倉「なんか言ってって!!?!?」ガーン!

周防「―――くだ―――らない」

朝倉「……ま、確かにね。効率とか合理的とか考えたらここで速攻二人で始末した方が確実よ?」グググ

朝倉「けどね、そういうのを全部無視した『想い』ってものが、今の長門さんを一刻も早く彼らのもとに向かわせた」

朝倉「情報統合思念体が求めたものが『それ』なのかは分からないけど」

朝倉「長門さんが理解したかったのは、きっと『それ』なんだと思うのよ」

周防「―――なに―――よ―――それ」

朝倉「あなたには分からないわよ。感情表現が長門さんより下手なんだもの」

周防「不要―――それに……この空間からは出られないわよ」

周防「空間構成因子を持続的に変移するようにした……もう、出ることも入ることも―――不か」

朝倉「だから、言ってるじゃない」

長門「…………」ゴオオォォッッ!!!

朝倉「今の長門さんは―――そんなもんじゃ止められないって!!」












バッキィィィイィイイィィィイイン!!!!!!!


朝倉「……行ってらっしゃい。長門さん」

周防「――――――」

朝倉「あら、不測の事態に戸惑ってるのかしら?? どう? 予想外の展開っていうのは」

周防「長々と―――なに? さっきから……うるさい。ノイズ」パシッ!

朝倉「……でもま、結局あんたの言う通りくだらないことなのは違わないと思うわ」

朝倉「だからあたしはここで、あんたなんかの相手してるわけだしね」

周防「―――……」

朝倉「一番の友人だなんだ言ったけど、友人ごっこなんて別に望んじゃいなかったわよ」

朝倉「観察対象にここまで深く干渉することもね」

朝倉「…………なんて、ま、なんだかんだそうは言っても―――」

朝倉「『こんなトコ』にいるってことは、そういうコトなんでしょうね」ニヤッ!

周防「――――――」

朝倉「あの迷惑集団のために、一肌も二肌も脱いであげるとしようじゃない!」

朝倉「キョンくん! さっさと帰ってきなさい! この貸しは『スーパー平安時代!!』でキッチリ返してもらうわよ!」

周防「――――――

朝倉「さーて、それじゃ」バッ!












朝倉「病的なまでに猟奇的……元・急進派、朝倉涼子の本気魅せてあげるわ」クスッ




周防「―――煩わしい―――囀りね」













『ばいばい、ジョン』












キョン「――――――っ」












キョン「っ!!?」ガバッ!!

佐々木「目が覚めたかい。キョン」

キョン「佐々木……ここは、この世界は……?」

佐々木「ああ。キミが元いた世界さ。ちゃんと帰ってこれたようだ」

佐々木「空間座標もこの通り。鶴屋山のこの場所で間違いない」

佐々木「時間軸もキミがこの世界から消失した時間からそこまで経過していないはずさ」

佐々木「見事、キミの読みは当たったようだ。流石としか言いようがないね」

キョン「そう、か……帰って、これたんだな……」

キョン「あいつらの……おかげだな」

佐々木「……悲観的になる必要は微塵もないよ。これが、向こうの世界のSOS団が望んだ最高の形なんだから」

佐々木「キミを元の世界へ帰す……SOS団は完璧に成し遂げたんだ」

キョン「…………ああ、分かってるさ。次は俺の番だ」

キョン「ハルヒをなにがなんでも助け出す。約束だからな」

佐々木「ああ。それがいい。それでこそキミだ」

キョン「よし、ならさっさと行動だ。力がないから分からんが……」

キョン「なんとなーく、北高から嫌な雰囲気をビリビリと感じるぜ」

佐々木「正解だ。今現在北高を中心に閉鎖空間が発生している。その内部に涼宮さんはいる」

佐々木「この世界の僕と一緒にね。SOS団の皆もそれぞれ涼宮さん救出に奔走している」

キョン「てことはとりあえずは皆無事なんだな? 安心したぜ」

佐々木「次はキミが彼らを安心させる番だ」

キョン「ああ。さっそく北高へ乗り込むとしようぜ、佐々木!」

佐々木「いや」

キョン「………………え? この流れで??」


佐々木「少し待とうよ、キョン」

キョン「何故だ? この世界に帰ってきた以上、もう時間に余裕はないんだぞ?」

佐々木「キミの言っていることは正しい。しかし、今のキミが北高へ向かったところで何ができる?」

キョン「そりゃ…………」

佐々木「勿論、涼宮さん救出のために僕も最善の力を出すつもりさ。でも」

佐々木「まだ足りない。それだけじゃ、キミの本懐を遂げることはできない」

キョン「じゃあ、ここで指加えてSOS団の皆がハルヒを救出してくれるのを待ってろって言うのか?」ギリッ

佐々木「違うさ。キミが待つのはそれじゃない」

キョン「あぁ?」

佐々木「キミの帰りを、最も待っていた人さ」

キョン「俺の帰りを最も待っていた―――っ!?」

佐々木「噂をすれば……キョン」

佐々木「キミを起こしに来たみたいだよ―――」ニコッ















キョン妹「キョンくーーーーん!!!!! 起きてぇぇえええええ!!!!」ビューーン!!
















キョン「いや起きてる!!もう起きてる!! てか今の状態の俺ヤバいからマジ! マジで―――」

キョン妹「とうっ!!!」ドスッ!!

キョン「ふぐぅ……っ!!」ドサッ!

佐々木「おや、逆に眠ってしまったのかい。キョン」


キョン「お前……マジで……なぁ……っ」ヒューヒュー

キョン妹「えへへー! 惜しかったね! キョンくん!」

キョン「……何が? めちゃくちゃ怖ぇこと言ってないかお前」

キョン妹「あー! それよりもキョンくん! ダメじゃない!!」プンプン!

キョン「ダメ? なにがだよ?」

キョン妹「帰ってきたら言うことあるでしょ!!」

キョン「え? あー……ただいま?」

キョン妹「……おかえり! キョンくん!!」ギュゥウ!!

キョン「いぎぎぎぎぎぃ!!! 強い強いぞ妹ぉ!!」

佐々木「感動の再開だね。麗しきかな」

キョン「明後日の方向見ながら言ってんじゃねえ……!」

キョン妹「キョンくんが帰ってくるまでずっと鬼ごっこしてたんだから!」

キョン「鬼ごっこ……あぁ、連中とか。なんにせよ、無事でよかった」

キョン妹「あれじゃ100年経っても捕まらないけどね!」フフン!

キョン「そりゃ心強いこって」

キョン妹「でも……なんだか疲れちゃったかな」

キョン「…………」

佐々木「…………」

キョン妹「特に、キョンくんは最近毎日楽しいことして、それに時々ついてったりしてたから」

キョン妹「わたしも、ハルにゃん達と遊んでる時はすっごく楽しかった!!!」

キョン「……そりゃよかった」

キョン妹「うん! だからね、ありがとうキョンくん!」

キョン妹「わたしはもう、十分楽しんだよ! だから、今度はわたしが帰る番だよ!」

キョン「…………ああ、ありがとよ」

キョン妹「ハルにゃんのこと、ちゃんと助けてあげてね!」

キョン「ああ……任せろ!」

キョン妹「それじゃあ―――」












キョン妹「ただいま―――キョンくん」パアァ

キョン「……ああ、おかえり―――」 












ここまでー

とうかー


β


キョン「…………」

佐々木「……戻ったんだね」

キョン「……ああ。妹は……いや」

キョン「もう一人のおれと呼ぶべき、力のバックアップは今、帰属した」

佐々木「ただのバックアップなんかじゃないだろう。キミの妹さんはきっちりと役目を果たした」

佐々木「キミがこの世界に戻ってくることを疑わず、力を失ったキミの最後の希望の役割を持ち」

佐々木「こうして、キミに還り……希望を絶えさせなかった」

キョン「…………分かっているさ。単に予備の力としての存在なんかじゃない」

キョン「……孤独を紛らわせるためのバックアップだったはずが、いつの間にか妹になっていやがった」

キョン「あいつがおれだったなんて忘れていたほどに、あいつはおれの妹だった」

佐々木「……そうかい」

キョン「今だって……目を閉じればあいつの声が聞こえる気がするよ」

キョン妹『キコエルー!? キョンクーン!!』

キョン「ふっ……ここからって時に幻聴なんて笑えないよな」

佐々木「いや、キョン。すまない、僕にも聞こえているんだけど」

キョン「………………え?」

キョン妹『アハハー!! セマーイ! ヤッパリダシテー!』

キョン「こ、こいつッ……!! な、なぜまだ妹としての意識がある!?」

佐々木「……長い間、妹として染み込んだ意識はそう簡単にはなくならないのかもね」

キョン「おいおい冗談じゃねえぞ。これ、いつかおれの体がこいつに乗っ取られちまうんじゃ……」

キョン妹『! ソノテガアッタカ!!』

キョン「ッ!? ぬかったッ!?」

佐々木「くつくつ、その様子なら寂しくなることもないだろうよ」

佐々木「……安心したよ」


キョン「くっ……無駄に悩みが増えちまったが……まあいい」

キョン「どれ……」グッグッ

佐々木「どうだい? 力の具合は?」

キョン「……まっ、良くて5割ってところか」

佐々木「5割か……」

キョン「なに、問題ない。今、こっちの佐々木は『力』を持っていない」

キョン「これだけ使えりゃ十分だ。さぁ、佐々木、急ぐぞ」

佐々木「……待ってくれ、キョン」

キョン「……まだあるのか? 悪いが佐々木、これ以上は―――」

佐々木「キミを万全の状態にまで戻す。向かうのはそれからだ」

キョン「……おい、それは一体どういう―――」

佐々木「すぐに済む。時間は取らないさ。キョン、僕に手を合わせてくれ」スッ

キョン「…………待て」

佐々木「待っているのはキミだろう? さぁ、キョン早く手を出すんだ」

キョン「何を考えている佐々木? お前、なんで……」

佐々木「……これしか方法はない、と言い切るには早計だけど」

佐々木「時間がないこともまた事実だ。限られた時間での最大の効果はこの方法しかない」

キョン「…………」

佐々木「キョン、キミに―――」


















佐々木「僕の『力』を……全てを、受け取ってもらう」


佐々木「それなら……万全の、いやもしかしたらそれ以上の力になると……思いたいね」

キョン「……何故だ。そこまでする必要はないと言っているじゃないか」

佐々木「準備をしすぎるなんてことはないよ。常に不足の事態を想定し、できることはやっておくべきだ」

キョン「……すべきことじゃない。お前の『力』が……存在が消えてしまう事なんて!」

佐々木「消えなどしないさ。決して」

佐々木「キミという存在と同化するだけ。まるっきりゼロになるわけじゃない」

キョン「……そもそも、お前の『力』を受け取れるなんてこと―――」

佐々木「仮定の話を覚えているかい?」

キョン「―――ッ!」

佐々木「それに……それ抜きにしても、キミにできないとは思えないよ。キョンも分かっているはずだ」

キョン「……」

佐々木「キミは僕の親友だからね。余すトコなくきっちり受け止めてくれよ」

キョン「佐々木……」

佐々木「くつくつ……同じ世界に僕は二人もいらないよ。僕だってドッペルゲンガーを拝みたくはないしね」

佐々木「だから、この世界の僕のことはすべて任せる。大丈夫さ、信じてる」

キョン「…………」

佐々木「親友がバカをやっているなら、止めてやるのも親友の仕事だろう?」

キョン「…………ああ」

佐々木「頼んだよ親友。後はキミの中から見させてもらうことにするよ」

キョン「……ああ!」

佐々木「くつくつ、いい返事だ」

佐々木「さぁ……手を合わせて」スッ

キョン「…………」ピタッ

佐々木「…………ああ」

佐々木「やっと―――」パアァ

佐々木「―――キミとまた、一緒だ」ニコッ

キョン「……佐々木ッッ―――!!!!」






ドンッッッッ!!!!







周防「――――――?」ピクッ

朝倉「ッ、これ……この感じ……まさか!」






長門「…………………………おかえり」ゴオォッ!






藤原「ちっ、いい加減―――ッ!!?」

朝比奈(大)「…………よかった」ホッ

朝比奈「ふえっっっ!? も、もしかしてこれって……!」






橘「囲んでください!! あの、一番ヤバイメイドさ―――! さ、佐々木さ……いや、違う……?」

古泉「…………お待ちしていましたよ」












ハルヒ「…………ん」

佐々木「おや、涼宮さん。お目覚めかな? できれば、部室につくまでは眠っていてくれると助かるよ」


キョン「―――……」シュウゥゥ!

キョン「…………」

キョン「…………」グッグッ

キョン「万全……以上だぜ。佐々木、妹よ」

キョン「……ありがとう」

キョン「けど……お前らの存在が……」クッ






キョン妹『ヤッタネ! キョンクン!』

佐々木『さぁ、頑張り給えよ親友』






キョン「…………なんか体の中がうるさい」

佐々木『おっと、妹さん。キョンの集中が乱れるといけないから静かにしていようか』

キョン妹『ハーイ!』

佐々木『僕と向こうで遊んでいよう。静かにね』

キョン妹『ワーイ!』

キョン「向こうってどこだよ。めちゃくちゃ気になるだろうが」

キョン「マジでおれの妄想から成る幻聴とかだったら勘弁してくれよ……ったく」

キョン「まぁ……誰かがいてくれて心強いってのは確かだ」フッ

キョン「……待ってろハルヒ。すぐに―――行くからよッ!」シュン!!












ガサッ

「…………主よ。やはり、あなたであったか」


α


ヤスミ「はー! 楽しい! いえ、楽しすぎましたっ!!」

キョン「遊びつくしたな。この『キョンくんワンダーランド』を」ククク

ヤスミ「そんな名前だったんですねっ!? プチ衝撃ですっ!」

キョン「それで、まだ乗りたいアトラクションでもあるか? それとも……」

ヤスミ「いえっ! 仰る通り遊びつくしましたっ!! すっっっごく楽しかったです!!」

キョン「そうか。そりゃよかっ―――」

ヤスミ「ですので! 次は宣言通り、あたしがとっても素敵な場所へ連れて行ってあげますっ!」

キョン「そりゃいいが、そんなにハードルをあげて大丈夫か?」

ヤスミ「大丈夫です! きっと先輩も喜んでもらえると思いますっ!」

キョン「へー、そりゃ……楽しみだ」

ヤスミ「フフ、では向かうとしましょうか!」

キョン「おう、んじゃ夢の国とはおさらばだ」パチンッ!

ヤスミ「あぁー! 名残惜しいですが……仕方ないですねっ! また……」

ヤスミ「また…………」

キョン「……ああ、連れて行ってやるよ。また、何度でも」

ヤスミ「! それは……それはとっても嬉しいです!! 是非っ、また!」

キョン「ああ、約束だ」

ヤスミ「はいっ! 約束!! ちゃんと守ってくださいね!!」

キョン「当然だ」

ヤスミ「……それじゃ、行きましょうか」

キョン「ワープで行くか?」

ヤスミ「いえ! お散歩しながら行きましょう!」

キョン「団活の集合時間に間に合うか?」

ヤスミ「あっ! え、っと……その、多分、大丈夫……だと」

キョン「……まっ、間に合わなけりゃその時考えりゃいいか」

ヤスミ「! ありがとうございますっ! それじゃ先輩っ! こっちです!」タタタッ!

キョン「……やれやれ」


ヤスミ「フフ、ねぇ先輩。先輩はSOS団のどんなところが好きなんですか?」スタスタ

キョン「なんだ藪から棒に。そのおれがSOS団を好きである前提の質問は?」スタスタ

ヤスミ「違うんですか?」

キョン「…………理由なんかねえよ」

キョン「おれが居たいと思える場所がSOS団だ。それだけさ」

ヤスミ「……ひゅー」

キョン「冷やかしてんじゃねえよ」

ヤスミ「いやいや! 滅相もないですっ! なんというか、すごい、信頼関係だなぁ、って!!」

キョン「そうか?」

ヤスミ「理由なんてない。ただ、この人たちと一緒にいたいだけ……」

ヤスミ「こう、言葉を交わさずとも互いが互いを理解しあえる関係……みたいな?」

キョン「(確かに言葉を交わす必要はないっちゃないが)」

ヤスミ「そうそう、こんな風に直接脳内に……脳内にっっ!?」

キョン「どうしてそんなことを聞くんだ?」

ヤスミ「いやぁ、なんとなくですよっ! 特に深い意味はありませんっ!」

キョン「そうかよ」

ヤスミ「ですっ! でも、羨ましいなぁそんな関係……」

キョン「お前も入ってくりゃいい。入団テストをとっとと終わらせてな」

ヤスミ「……フフ。そうですねっ!」

キョン「最後らへんにゃSOS団ガチンコタイマン5連戦があるだろうから、頑張れよ」

ヤスミ「そんな武闘派集団でしたっけ!!?」ガーン!


キョン「んで……今おれたちが向かってる場所だが」

キョン「どうやらおれの知っている場所っぽいんだが……」

ヤスミ「おやっ! 聡明な先輩は何かに気付かれましたかっ!!?」

キョン「いや、なんというか……この登り慣れた坂道の先にあるのは一つしかないというか」

ヤスミ「流石!! 名探偵ですか!?」

キョン「妙だな……当たり前のことを言っただけなのにこの反応」

ヤスミ「そう! 先輩の推理通り、今からあたしたちが行くのは―――!」

ヤスミ「SOS団の本拠地、文芸部室ですっっ!!!」

キョン「…………」エー

ヤスミ「なんですかっ!? その微妙に嫌そうな顔は!?」

キョン「……素敵な場所って言ってたじゃねえか」

ヤスミ「とっても素敵じゃないですか!! 先輩だって居たいと思える場所って言ってたじゃないですかっ!」

キョン「それとこれとは……ってか本当になんで部室だよ。今更部室で不思議探しか?」

キョン「ま、確かにあの空間は異空間化してよく分からんモンで溢れ―――」

ヤスミ「先輩っ」

キョン「―――お?」

ヤスミ「行きましょうっ!」ニコッ

キョン「……だから、なぜ部室なのかの説明をだな」

ヤスミ「行けば分かりますよ。きっと!」

キョン「……分かったよ。行けばいいんだろ」

ヤスミ「はいっ! それできっと―――」

ヤスミ「先輩の知りたいことが全て分かるはずですから!」

キョン「…………ほう」

ここまでー!
随分読みにくく、ややこしくなっていると思います……すいません

一年強……誠に申し訳ございませんでした!


β


ガチャ


佐々木「ふぅ、やっと着いたよ。涼宮さん、ここがあなたの定位置だろう?」トサッ

ハルヒ「…………」

佐々木「……くつくつ、団長席がよく似合うこと。さすがは団長様だ」

佐々木「さて……始めようか」

佐々木「返してもらいます……その『力』を―――」スッ












パシィッ!!











佐々木「――――――おや。私と違って……」

ハルヒ「……何、してんのよあんた」

佐々木「随分芝居が上手ですね。狸寝入りしていたとは……おはよう涼宮さん。いつから目を覚ましていたの?」

ハルヒ「生憎、たった今目覚めたとこよ。あまり良い目覚めとは言えないみたいだけどね」

佐々木「それはお互い様。できればあなたが眠っている間に全てを終わらせたかった」

ハルヒ「…………」


佐々木「さて、どうしたものでしょう……お茶でも淹れましょうか?」

ハルヒ「……有希は、みくるちゃんは、古泉くんは」

ハルヒ「キョンは……どうしたのよ!!?」

佐々木「団員思いの、心優しい団長のようでキョンが羨ましいです」

佐々木「安心してください。彼らは無事です。今も恐らくこの場に向かっているはずです」

ハルヒ「…………」

佐々木「ええ、信用いただかなくとも直に分かります。もうすぐ側まできてる」

佐々木「だから急がないと……」

ハルヒ「……あんたたちの目的はあたしだってことは分かったわ」

ハルヒ「でもその理由が分からない。あたしに何の用があるってわけ? SOS団の団長の座でも狙う暗躍組織かなにか?」

佐々木「まさか。そんな大それたこと、わたしたちにはできません」

佐々木「ただ、あなたが持っているものをお返し願いたいだけです」

ハルヒ「あたしの持ってるもの……? あんたに返すようなモノなんて持っていないわよ!」

佐々木「……いいえ。あなたが知らないだけで持っているんです」

佐々木「この世界全てに関わるほどの、大きな『力』を……」

ハルヒ「……それ、って」

ハルヒ「やっぱりSOS団の団長の座―――!!」バッ!!

佐々木「ではなく」

佐々木「意図的か無意識かは判りませんが、あなたが認識をせず巻き起こった不可思議な出来事……」

佐々木「その全ての原因……涼宮さん。それがあなた」

佐々木「あなたの持つ『力』が起こしたものなのです。といっても自覚はないでしょう」

ハルヒ「…………?」


佐々木「……理解できない。いや、無意識のうちに認識しないようにしているのでしょうね」

佐々木「この世界の根幹に触れることから、あなたは無意識に逃げている」

佐々木「……気づいてはいけないことから」

ハルヒ「……何のことよ」

佐々木「……全てですよ」

佐々木「こうなるのも、あなたが望んだ結果でしょう? 涼宮さん」

佐々木「いや、こうなるのも、というよりは―――」

ハルヒ「長々とうるさいわね!! 結局! あんたは何が言いたくて何がしたいわけ!? プロレス? 上等よ! かかってきなさい!」バッ!

佐々木「……分かりました。一瞬で終わらせましょう。あなたとわたしが触れれば……」スッ

佐々木「それで、終わり―――さあ」

ハルヒ「どぉおりゃぁぁああああああ!!!」ダッ!

佐々木「『力』を……返―――」


















ガチャ


α


ヤスミ「るんっ、るんっ♪」

キョン「ご機嫌だな、いい加減部室棟の階段も登り慣れたろ」

ヤスミ「いえいえっ! 我らがSOS団の部室に向かう足取りはいつでも軽快なものですよっ!」

ヤスミ「たとえ100キロの重しを背負おうと、その歩みを止めることはありませんっ♪」

キョン「そうか」スッ

ヤスミ「っッ!!?」ズシッ

キョン「今から重力5倍な。果たして軽快な足取りは維持できるかな?」ククク

ヤスミ「なっ、なぜそんなことを……ハッ! わ、分かりました先輩……入団試験、ですねっ!?」グググ!!

キョン「たぶんどこの軍隊でも採用してねえよ。そんな試験」

ヤスミ「さ、さすがはSOS団……この重力下でいつも過ごされていたとは……っ!」

キョン「色んな意味で重たい受け止め方するなぁ、お前は」

ヤスミ「ならっ! 絶対、突破してみっ……あれっ? 軽くなった……重力5倍に早くも適応できた!!?」パアァ

キョン「水を差すようで悪いが、既に重力は元通りだ。そうまでして部室に行きたいならもう止めねえよ」ハァ

ヤスミ「嫌がらせっ!? 嫌がらせだったんですか!? もーっ! 素敵な場所って言ってるんですからやめて下さい!!」

キョン「へいへい。もうしねえよ…………多分」

ヤスミ「絶対ですっ!!」

キョン「へいへい」

ヤスミ「まったく! こまった先輩です!」

キョン「困らせられてるのはどっちだと思ってんだ」

ヤスミ「団長、ですかね?」

キョン「……強く否定はできないな。俺の普段の行動を振り返ると」


ヤスミ「ここですっ!」ジャン!

キョン「知ってるよ。今更過ぎるだろう」

ヤスミ「いやー! 何度見ても荘厳で雰囲気のある扉ですよねっ!」

キョン「それは部室棟を設計した人に対する最大の賛辞だが、どうみても普通の扉だ」

キョン「で、入り口についたわけだが……中に誰かいたりするのか? なんかのサプライズがあるんだよな?」

ヤスミ「フフ。どうでしょう? 逆に扉を開けて誰がいたら嬉しいですか!?」

キョン「……そうだなぁ」

キョン「俺」フフ

ヤスミ「なんか怖い!!! どういう思考回路でその答えに!!?」ヒィッ!

キョン・キョン「「いやなんか新鮮だろ? 自分と出会うってさ」」

ヤスミ「今!! 今先輩と先輩がいますけどっ!!!?? 不自然な新鮮さ!!」

キョン「まぁ……誰でもいいさ。誰もいなくてもいいが」

ヤスミ「そうですか?」

キョン「素敵なことになるんだろ? それならいい」スッ

ヤスミ「―――はいっ! きっと!!」

キョン「……やれやれ」


















ガチャ


β


古泉「帰ってきたようですね……彼が!」

新川「いやはや、流石と言うほかありませんな」

圭一「ふっ、二人共……っ!」グッググ!

裕「悠長に話す前に、も、森さんを止めるのを手伝ってくれ!! このままじゃ相手に死者がでるッ!!」ググッ!

森「フゥウウゥウゥウ……!!!」シィィィイイ!!

新川「……仕方ありますまい。ここは私共が引き受けます。先に行きなさい、彼女のもとへ」

裕「は、早くっ……!」

古泉「しかし、ああなった森さんを止めるのは4人がかりでないと危険です」



橘「あれ? もはやこっちは敵と見なされてない……?」

橘「チャ、チャンスですよ皆さん! さあ、起きて! 起き……頑張りましょう!!?」



裕「ッ、構わ、ないよッ! それよりも……」グググ!!

圭一「心配なんだろう? 団長のことが。早く行ってあげなさい」ググッ!

古泉「…………」












バリンッ!!


長門「……侵入完了」シュタッ!

古泉「っ!? 長門さん!! ご無事でしたか!!……よかった」

長門「あなたも……無事でよかった」

古泉「……ええ、お互いにね」

長門「……彼が」

古泉「ええ、戻ってきたようです。そしておそらく向かうべき場所は一つ」

長門「部室」

森「…………長門さん」

裕・圭一「「喋ったっ!?!?」」ビクッ!

森「古泉を……よろしくお願い致します」

古泉「森さん……」

長門「……任せて」ガシッ

古泉「……え?」

長門「振り落とされないで」ドンッ!!

古泉「ちょ―――」グンッッ!

新川「……儚い残像ですな」

裕「急加速が過ぎるね長門さん」

森「さあ。古泉が抜けた分、さらに気を引き締めてください。相手の戦力は強大です」

圭一「もう向こうさんは瀕死のような……というより過剰戦力はこっちだね」












橘「うわあぁあん!!!  ものすごいスピードで一樹くんの残像が見えたぁあ!!?」

橘「こっちには戦える戦力はもう…………グスン」

橘「佐々木さん、藤原さん、すいませんーー!! 突破されちゃいましたぁあ!!」ウワァアン!












森「……では仕上げですね」ポキポキ

裕「まだやるの!?」ガーン!

ここまでー
間が空きすぎて申し訳ないです。
超不定期投下は変わらないので、何卒よろしくお願い致します。


β






キョン「(長門、朝比奈さん、古泉……皆既に北高に)」シュ―――

キョン「(―――すぐに行くッ!)」―――ン

キョン「ッ―――!!」ビタッッ!!

キョン「北高到着! んで閉鎖空間か……ふん!」ガシッ!

キョン「うおぉお……ッ!!!」グググ!!

キョン「閉鎖空間ッ……入らせろッ!!」グイィ!






シュパッッ!






キョン「神人がいねえ……また亜種の閉鎖空間か……!」

キョン「ハルヒっ! どこだっ! 部室か!?」

キョン「待てよ佐々木、まだ間に合えよ……ッ!」

キョン「終わらせるんじゃねえぞ―――!」シュン!


古泉「くっ! ッ! うわッ!」ガッシィ!

長門「……落ちないで」ビュンッッ!!

古泉「そ、そう思われるのでしたらす、少し速度を落と―――!」

長門「あれは」ビタッッ!

古泉「それは急すぎッッ!!?!?」ズザザッッ!!

長門「朝比奈みくる。同じく異時間同位体」






藤原「ッ、離せッ! 僕は為すべきことが―――!」

朝比奈(大)「女の子に向かってそんな口の利き方しちゃダメでしょ!」

藤原「お、女の子なんて齢じゃ……」

朝比奈(大)「……それ禁則事項よ?」グイッ

藤原「ぐうっ!?」

朝比奈「あ、あの! お姉ちゃん、やりすぎは……あの!」

朝比奈(大)「みくるちゃん、わたしはこの人と大事なお話があるの」グイーッ

藤原「……ッ!ッ!」

朝比奈「ギブアップ寸前のような……」

朝比奈(大)「あなたは行かなくちゃ行けないでしょ? だから、行きなさい」

朝比奈(大)「……素敵な素敵な、団員たちと」クスッ

朝比奈「えっ―――?」グイッッ!

長門「―――」チラッ

朝比奈(大)「お願いします。長門さん」

長門「―――任された」ビュン!!

朝比奈「ええぇえええええぇぇぇええぇえええええ!!?!?」ギューン!

朝比奈(大)「頑張って、みくるちゃん。長門さん。あと……」

古泉「――――――」

朝比奈(大)「何故か既に瀕死だった古泉くん……」

藤原「………………ッ」プルプル

朝比奈(大)「あら? 何故かこっちにも瀕死の人が」パッ

藤原「……ど、どの口が……」ガクッ


朝比奈「ななな、長門さん!! よかった! 無事だったったたた」ギュウ!

長門「あなたも。今は喋らない方がいい。掴まっていて」タタタッ!

朝比奈「で、でも、古泉くんが……こんなボロボロにされて……」ヒック

古泉「……」

長門「これは………………」

長門「……彼は勇敢だった」

朝比奈「びえぇえぇえええん!! こっ、古泉くぅううぅん!!」

古泉「……ハッ!? ま、まだっ! まだ生きていますから!! 大丈夫ですから!」

朝比奈「ひえっ!? し、死んだはずの古泉くんが喋っ……」

古泉「死亡認定が早い!!!」ガーン!

朝比奈「キュウ……」

古泉「朝比奈さーーん!!! 長門さんの両脇はどちらか気絶しなきゃいけないルールなんですか!!?」

長門「そんな風にした覚えはない」

朝比奈「……ハッ! だ、だめっ! 涼宮さんを助けにきたんだからこんなところで気絶なんて」ブンブン

古泉「……随分と、頼もしくなられたようですね。僅かな間に」

長門「それはあなたも」

古泉「そうでしょうか?」

長門「うまくは言えない。しかし、言語化するなら……」

長門「……しぶとい?」

古泉「……え? あれ? 悪口ですか?」

長門「情報の伝達に齟齬が発生した」


古泉「この階段の先に……っ!」

朝比奈「涼宮さん……」

長門「彼がもう先に―――」ダッ!!






キョン「―――着いたッ!」シュン!

キョン「……ふー―――!」



『頑張って! キョンくん!!』
『任せたよ、キョン』



キョン「―――ッ!!」ガシッ!












キョン「―――ハルヒ!!!!!!」












ガチャ













キョン「「あっ?」」












グニャァアァン












キョン「――――――ッ!!?」


キョン「―――はっ!?」

佐々木「―――……なるほど。おかえり、と言ったところかな。キョン」

ハルヒ「あっ? えっ? あれっ? あっ、キョン……キョン!!?」

キョン「こりゃ…………そうか、やっぱり」

キョン「そういうことかよ――――――ヤスミ」

ヤスミ「…………フフ。素敵でしょう?」






ハルヒ「キョン! あんた今まで一体どこに……いや、ヤスミちゃんと不思議探索に……ヤスミちゃん? あれ?」

ハルヒ「あたしなんで部室……えっ? ちょっと、これ、どういう……時間が……??」

佐々木「やあキョン、間に合ったみたいだね。やはりキミは僕の予想通り、この世界に戻ってきた」

キョン「かなり苦労させられたし、お前にも助けられて、俺はここにいる」

佐々木「くつくつ、どこの世界でも僕はキミの親友だからね。親友を助けないやつがどこにいる」

キョン「その親友に苦労させられたんだがな」

ハルヒ「ね、ねぇキョン……ちょっとあたし、おかしいかも……頭の中が、変」

キョン「あぁ、俺もだよ。どういう理屈か説明しづらいが、俺たちの記憶に2つの世界の記憶が混じっていやがる」

キョン「そしてそのどちらともが、確かに正しい記憶だ。だからこそ、理解ができないんだろう」

ハルヒ「そ、そうよ……あたしは有希と不思議探索してて、でもこの部室であの人と……」

佐々木「言わばα世界線とβ世界線。この2つの記憶がキョンが扉を開けた時に繋がり一つとなった」

佐々木「そして今、β世界線で『力』を失ったままの僕が存在し、同時に」

佐々木「α世界線にしか存在していなかった『彼女』もここにいる」



ヤスミ「……」



佐々木「よって、どちらの世界線とも言えない新たな世界線が誕生したことになるね」

ハルヒ「ヤスミ、ちゃん……あなた、一体……」

ハルヒ「何者、なの……?」

ヤスミ「……やだなぁ、団長」

ヤスミ「あたしはわたぁしですよ。ずっと」

ハルヒ「そうじゃ、なくって……」

ヤスミ「…………」


ビシイッッ!!!!!



ハルヒ「きゃっ!? なに!? 亀裂の入った音が……」

キョン「時空間にも影響が出ているんだ。直に時間振動が起きるぞ」

佐々木「やれやれ、随分とややこしい状況になったものだ。キョン、キミの想定通りかい?」

キョン「こっちのセリフだ。佐々木、どこまで思い描いていた?」

佐々木「少なくとも……この場に『彼女』がいるような場面は想定していなかったよ」

ヤスミ「……」

キョン「誰にとってもイレギュラーだったってことだ。ヤスミ、この一連の黒幕はお前みたいだぞ」

ヤスミ「役者不足ですよっ。あたしはそんなんじゃありません。ただのSOS団の入団希望者です」

ハルヒ「そもそも、一体これはなんの―――」






古泉・朝比奈「「涼宮さんっっ!!!」」






ハルヒ「みくるちゃん! 古泉くん!! 有希!!!」

長門「間に合った……」

朝比奈「よかった、よかったですぅ……!」

古泉「本当に……よかった」

キョン「皆……よく……本当に……ッ!!」

キョン「……ありがとうと言いたいところだが、長門。両脇に抱えている二人を下ろしてやらんと締まりがない」

ハルヒ「確かに。気にはなってた」

長門「迂闊」スッ

古泉「これは失礼いたしました」

朝比奈「わわっ、ご、ごめんなさい。そう言えばそうでした」

佐々木「……本当に面白い人たちだね」


佐々木「どうやら、僕の友人たちは置いてけぼりにされたらしい」

キョン「ここはSOS団のホームだ。分が悪い」

ハルヒ「ちょっと! さっきから置いてけぼりなのはあたしよ! キョン! みんな揃ったんだし訳を―――!」

キョン「こいつは俺の親友で、現状敵。以上だ」

ハルヒ「簡略的すぎるっ!! 全然意味が分からないわよっ!!」ガーン!

朝比奈「あれ? 古泉くんと不思議探索してたわたしは……あれ?」

ハルヒ「そう、それよみくるちゃん! あたしもその疑問について詳しく聞きたいのよ!」

古泉「同じく僕もですが……涼宮さん。どうやら悠長な時間は残されてはいないようです」






ビシビシィッ!!






朝比奈「ひっ!」ビクッ!

ハルヒ「また……っ!」

長門「世界線の統合に加え、涼宮ハルヒに帰属しつつある『力』が制御できていない」ボソッ

キョン「さらにここは閉鎖空間。不安定すぎるな」

キョン「佐々木。どうやら勝負はついたようだ。お前の仲間はここにいない。『力』も残っていない」

佐々木「……」

キョン「観念するんだ。お前たちの計画は失敗だ」

佐々木「……くつくつ」

キョン「長門、俺はこれから空間制御に移る。この世界を崩壊させないためにな。サポートを頼む」

長門「了解した」

古泉「涼宮さんもこちらへ。なるべく彼の近くに……」

ハルヒ「う、うん。ヤスミちゃんあなたも―――」

佐々木「何を言うかと思えば―――」

















佐々木「仲間なら、キミが連れてきてくれたじゃないか。キョン」

ヤスミ「――――」












佐々木「いやむしろ、キミを連れてきたと言うべきかな? なんとも嬉しい誤算だ」

キョン「――――――なっ」

朝比奈「えっ―――う、そ」

古泉「まさか……っ!」

長門「……」

ハルヒ「…………ヤスミちゃん?」

ヤスミ「……ごめんなさい。先輩方」

キョン「ヤスミ……そうか…………お前は」

ヤスミ「……」

キョン「勘違いしていたのか……お前は……―――」



















キョン「『佐々木』……だったのか」

















ここまでー
ということで、皆さまもうしばらくお付き合いをお願い致します。

本日も投下しますー

投下―


ヤスミ「…………」

朝比奈「そ、んな……だって、ヤスミちゃん……え?」

長門「下がって」

古泉「(……涼宮さんではなく、『佐々木』さんの意志……それが、彼女の正体……ッ!)」

古泉「(だから『力』の消失したβ世界線ではなく、α世界線にのみ出現した……!)」

キョン「……おいおい、ヤスミ。えらく素敵なサプライズをしてくれんじゃねーか」

キョン「俺はてっきり我らが団長を救うべく、お前がここまで案内してくれたもんだと、一人感涙にむせぶところだったんだがなぁ」

ヤスミ「…………」

ハルヒ「ヤ、ヤスミちゃん? つ、つまりあなたはどっちの味方……なの??」

ヤスミ「……あたしは……あたしは―――!」

佐々木「何者でもない。僕のバックアップさ。キョン、キミは分かるだろう?」

佐々木「こうした保険を張っておく意味を」

キョン「……ああ、似たもの同士だもんな俺たち。そのうち情が湧いて知らねえぞ」ソウダソウダー!

ハルヒ「!? い、今どこからともなく妹ちゃんの声が!?」

佐々木「現にこうして、僕は九死に一生を得た。このバックアップは今涼宮さんに『力』を吸収されていない」

佐々木「僕にとっての切り札さ」

朝比奈「切り札……ヤスミちゃん……」

キョン「大役であることには変わりねえらしい。大出世じゃねえかヤスミ」

古泉「(願わくば、我々にとっての希望でいてほしかったですが……)」

ヤスミ「…………」


佐々木「さて、仕切り直しだ。バックアップでこそあるが、なんら僕の『力』に変わりはない」

佐々木「またキミたちにはどこか遠くへ飛んでもらおうか」

ヤスミ「……」

キョン「そうはさせん。もう懲り懲りさ」

佐々木「そうかい? 滅多にない貴重な体験だと思うけどね」

佐々木「可愛がってくれたバックアップにやられるなら―――」

キョン「そいつはもう、バックアップじゃねえだろ」

ヤスミ「……!」

佐々木「うん?」

キョン「知ってるだろ? そいつの名前は渡橋ヤスミ。カタカナ発音で呼ぶと喜ぶ」

長門「比類なきポテンシャルを持ち」

朝比奈「と、とってもかわいくて!」

古泉「我々の愛すべき後輩」

ハルヒ「……SOS団入団候補生の渡橋ヤスミちゃんよ」

ヤスミ「……せ、先輩方」

ハルヒ「……いいわ、ヤスミちゃん。あなたがどちらの味方で何者だろうと……」

ハルヒ「あたしが目をつけた有望な入団希望者であることに違いはないんだからっ!!」

ハルヒ「まだ入団試験は終わっていないんだから、途中でホッポリ出したらただじゃおかないわよっ!」

ヤスミ「…………ッ!」

佐々木「……この短期間で随分と信頼を得たようだね。羨ましいことこの上ないよ」


ビシビシッ!!



古泉「(いつまで閉鎖空間が持つか……!)」

ハルヒ「ヤスミちゃん! さっ! 次の入団試験があるんだから! こっちに来なさいっ!!」

キョン「ヤスミ。お前がどうしたいかはお前で決めろ」

ヤスミ「…………」

キョン「どういう判断をしようが、俺たちはお前を見捨てない」

ヤスミ「…………あたし、は」

佐々木「……」フゥ

ヤスミ「……あたしは―――!!」












佐々木「いいや。それは僕が決めることだ―――」ポン












ヤスミ「――――――!」ブワッ!

佐々木「ラスボスの座は渡さないよ」

キョン・ハルヒ「「ヤス―――!!」」

長門「――――――」ガシッ

佐々木「さあ。勝負はここからさっ」カッ!!






ドゴォォォオォオオオオン!!!


新川「ッ……!! 皆さま今のはっ!」

森「部室の方から爆発音……古泉」

圭一「敵対勢力の無効化は完了した。僕らも増援に……」

裕「あれ? あのリーダーらしき泣きわめいていた子は……?」

森「逃げ……いや、いち早くあちらへ向かったのでしょう」

新川「ならば我々も……」

森「いえ、私たちはここで待ちましょう」

圭一「なぜだ? 少しでも力になれるなら……」

裕「兄貴、こっちがとやかく言う必要はもうないんじゃないかな?」

新川「……なるほど。後は彼らの、若人たちの時代、というわけですかな」

圭一「……年寄りが口を出さずとも、なんとかしてくれる。と信じることが大切、か」

森「まぁ……私はまだ若人といっても過言では―――」

新川・圭一・裕「「「いやいやいや……」」」

森「……ふふ」ポキッ






藤原「―――ハッ!!? な、なんだ!? 爆発!?」

朝比奈(大)「あら、気が付いた? そろそろ膝が痺れ―――きゃっ」

藤原「!!!?!?!?!?? なな、なななっ、なに、なにを!!?」ババッ!

朝比奈(大)「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃったかもね」

藤原「くっ、こんなことをしている場合じゃ……佐々木っ!」ダッ!

朝比奈(大)「どうしても」

藤原「……っ!?」ピタッ

朝比奈(大)「どうしても……あなたは未来を変えなくてはならないの?」

朝比奈(大)「数多の規則を破ってでも……」

藤原「………………そうだ」

藤原「……あなただって、分かっているはずだ……!!」

朝比奈(大)「失われた過去は……人は……二度と戻ってこないのよ」

藤原「…………それでも僕はあなたを取り戻す」

藤原「―――姉さん」ダッ!

朝比奈(大)「…………」


朝倉「ッ、くっ……!!」ガキィン! ギィイン!

周防「……―――」ガキッ! ドカッ!!

朝倉「チッ……ジリ貧……だけどそれでいい!」

周防「―――……」

朝倉「あとはキョンくん……さっさと決着―――!!」

周防「―――始まった……」

朝倉「なに? この嫌な感じ……閉鎖空間の方から……」

周防「―――約定を―――果たす」

朝倉「行かさないわよ。この制御空間下で好きな真似はさせない」

周防「―――無駄よ」クスッ

朝倉「とか言ってさっきから出れていないじゃ―――!」フフン

周防「―――」シュン!

朝倉「あれぇーー!!?!? ちょ、なんで!!?」エェェ!?

朝倉「くっ……天蓋領域、の力じゃないわね。外部からの干渉……」パアァ

朝倉「涼宮……いや佐々木、さんの方か! ごめん長門さん!!」

朝倉「あたしもすぐに向か―――」



「行くんですか?」



朝倉「……止める気?」

喜緑「いいえ。それはわたしの役割ではないので」

朝倉「あっそ。じゃあ好きにさせてもらうわ」スッ

喜緑「……変わりましたね」

朝倉「……現状を変えたいのなら、自分から変わらなきゃだめって気づいただけよ」ダンッ!!

喜緑「それが、統合思念体の意思……なのかしら?」


ドゴォォォオォオオオオン!!!






キョン「―――ッ、無事か!? みんな!」ギュッ!

ハルヒ「なっ、なんとか……って、は、離しなさいよ! 守ってくれたことには、その、あれだけど」ゴニョニョ

朝比奈「……っ!」キュピーン!

古泉「あなたと長門さんのおかげでどうにか……朝比奈さん。恋の波動を感じないでください」

長門「対象を補足。窓の外」

ハルヒ「てかなんなのあの爆発!? 部室が粉々……っ、ヤスミちゃん! ヤスミちゃんは!!?」

キョン「安心しろ、無事だ。とは言っても既に俺らの知るヤスミではないかもな」






ヤスミ「――――――」コオォ!
佐々木「さて、どうしたものか……」フワァ






キョン「ど派手な演出しやがって……」

ハルヒ「う、浮いてる……キョン。あんたの親友になればイリュージョンができるように―――」

キョン「ちげーよ。とりあえず、全部説明はあとだ。一つだけ言っておくと、向こうはお前を狙っている」

ハルヒ「言ってたわね……SOS団団長の座をなんとしても、って!」ギリッ!

キョン「……それホントに言ってた?」

古泉「ヤスミさんの意識は今、佐々木さんの制御下にある、ということでしょうか?」

キョン「だろうな、微妙に発光してるし。およそ今のヤスミに言葉が通じるとは思えん」

朝比奈「ヤスミちゃん……」

長門「……」


ヤスミ「――――――」

キョン「おい、部室めちゃくちゃにしやがって……この状況からどうするつもりだよ」

佐々木「あとで直してあげるよ。『力』が全て僕の元に還ればね」

キョン「させると思うなよ」

佐々木「してみせるさ」






橘・藤原「「佐々木(さんっ)!!!」」バッ!!






朝比奈・古泉「「ッ!!」」バッ!!

佐々木「遅ればせながら、僕のお仲間も到着だ。これで挟み撃ちの状況となるね」

キョン「役者が揃ってきたじゃねーか……」

佐々木「あとは……」

ヤスミ「―――」スッ!

周防「―――……」ブゥン!

長門「あれは……」

キョン「勢ぞろい、ってか」

佐々木「周防さん。さっきのエマージェンシーに答えられず申し訳ない。大丈夫だったかい?」

周防「―――対応済み―――問題ない」

佐々木「それはよかった。さて……」

佐々木「最終決戦だ。死に物狂いで『力』を取らせてもらう」

キョン「やってみろ。絶対に阻止してやるよ」

ハルヒ「…………っ」グッ!












佐々木「いくぞ、親友―――」
キョン「こいよ、親友―――」

ここまでー


お久しぶりです。少しだけ投下させて頂きます。


ハルヒ「~~~~っ!! 決着つけたげるからさっさとこっち降りてきなさいよ!!」

キョン「慌てるなハルヒ、といいたいところだが……」



ビシビシッ



朝比奈「ひぃいぃ!!」ガシィ!

長門「……」

キョン「そうも言ってられんのも事実だ。古泉」

古泉「はい、なんでしょう。失礼ながらそちらを向くことはできませんが」



橘「め、目を離さないでくださいよ、キョニュ、藤原さん」ジリジリ

藤原「言われなくても……おい、貴様今何と言いかけた??」



古泉「……面白いコントが行われていますので」

キョン「そいつはいい。しっかり目に収めとけ。後で脳内データを焼き回ししてやる」

古泉「ご冗談を」

キョン「……お前の直感で、この閉鎖空間はあとどれぐらい持つ?」

古泉「……10分、といったところでしょうか」

キョン「……信じるぜ。閉鎖空間のエキスパートの直感をよ」

ハルヒ「10分経つと……どうなっちゃうの??」

古泉「おそらく、この世界が崩壊します。運が良ければ崩壊によって元の世界に戻れます」

朝比奈「う、運が悪かったら……?」

キョン「古泉が……死んでしまいます!」

ハルヒ「ええっ!!?」

長門「無念」

古泉「僕だけなんですか!!?!?」ガーン!!



橘・藤原「「(こんな状況で漫才を……??)」」ゾクッ


ビキキッッ!!


キョン「それで、そんな状況下における、SOS団の勝利条件ってのはなんだ?」

古泉「運任せ、ではなく、確実に元の世界に戻ることです」

キョン「その手段は?」

長門「『力』の鬩ぎ合いを鎮静化させること」

キョン「つまりどうすりゃいんだ?」

朝比奈「え、え?? え、っと……涼宮さんの『力』と佐々、ヤスミちゃんの『力』の影響で時空間に大きな負担がかかってるから……」

ハルヒ「まどろっこしい!!!! 言わずとも分かるわよ!!」

ハルヒ「食うか、食われるか!!! でしょ!!」

キョン「話が早い」

ハルヒ「さっきからあっちが言ってるように、要はなんかこう……綱引き!! 綱引きみたいなもんなのよ!! きっと」

ハルヒ「あたしの『力』が引っ張られたら負け、逆にあたしがあの子の『力』を引っ張ったら勝ち!!!」

ハルヒ「ただそれだけでしょ!!!」

佐々木「ご明察。して、『力』の引っ張り方までは知ってるのかな?」

ハルヒ「知るか!!! こういうもんはフィーリングよ、フィーリング!! 為せば成るのよ!!!」

佐々木「全く……飽きさせないね、貴女は」

佐々木「……九曜さん」

周防「――――――」

佐々木「道を、開けてくれ」

周防「―――容易い」パアァ!!

長門「―――させない」シュン!

キョン「長門!!」

ハルヒ「有希!! 落っこちちゃ―――!!」






ドオオォオオォオオン!!!!


パラパラ……



キョン「何回爆破すりゃ気が……! ハルヒっ! 下がれっ!!!」バッ!

ハルヒ「ケホ……有希、っっつ!!?」

ヤスミ「―――」シュッッ!!

キョン「よう、ヤスミ。うちの団長はおさわり厳禁だぜ」ガシィ!

ハルヒ「変なように言うな!」

ヤスミ「―――」グググッ

キョン「っ、おいおい……ヘチマ系男子と力比べか? 後悔するなよ?」グググッ

ハルヒ「あんた弱そうじゃないの!! っ、有希とあいつらは……!?」






佐々木「よもやだね、九曜さん。攻撃をいなされた挙句……」

周防「――――――」ギリギリ!

長門「……」ギギギ!!

佐々木「わたしたちの喉元に白刃を突き立てられるとは。さすがは長門さんだ」

周防「―――何故」

長門「情報操作に対する対応が甘い。朝倉涼子との戦闘で既に認識できないバグが仕込まれている」

長門「朝倉涼子の……最期の情報操作」グッ!

佐々木「九曜さん、朝倉さんは……」

周防「―――機能停止には―――していない」

長門「………………そう」


ハルヒ「有希……」ホッ

キョン「長門が直撃を反らしてくれたんだ……ハルヒ!」

ハルヒ「な、なに!?」

キョン「よく聞け。こっからはお前とヤスミの勝負だ」グググ

ヤスミ「―――」グググ

ハルヒ「……ヤスミちゃん」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!



古泉「くっ……まったく。部室をこれ以上滅茶苦茶するのはやめて頂きたいですね」

朝比奈「あぁっ! マサラチャイセットが!!」

橘「古泉……いや一樹くん」

朝比奈「一樹……くん? 確か幼なじみって……」キュピーン

古泉「朝比奈さん、押さえて」

橘「もう……やめて下さい。涼宮さんを諭してください」

藤原「橘京子の言う通りだ。話が通じるのならもう、無駄な争いは無用だ」

古泉「散々急襲してきたのはどちらでしょう? ここに来て話し合いとはどういう心づもりで?」

藤原「誰も破滅なんて望んじゃいない。このまま『力』が不安定では未来は、ない」

橘「お願いします! 一樹くん、どうか……どうか」

古泉「……」

朝比奈「古泉くん……」

古泉「……思想。信念。目的。極端に違う我々が相容れなかったことがこの現状です」

古泉「何かを変えたかった。己が望む未来に向かって悩み、そして争い……」

藤原「……」

古泉「これが……誰が望んだ結果と言えますか。世界の崩壊をも在りうる状況を」

橘「誰も……望んでなんかいません」

橘「でも、まだ……間に合います! 『力』を統合すれば!!」

橘「世界は守られるんです!! だから、だから!!」

古泉「だからこそ、それは涼宮さんが持つべきだ、と。我々は思うのです。そう―――」

古泉・藤原「「平行線だ(!!)」」

藤原「っ!!?!?」

古泉「と言われようとも。例え世界がどのようになろうとも。最後まで」

古泉「SOS団は団長を信じるのですよ」


藤原「どうしても涼宮ハルヒにつく、ということなんだな」

古泉「語るに及びません」

朝比奈「と、当然です!」

藤原「……ふー。分かった。あぁ当然だ。譲れないからこその今だ」

朝比奈「……」

藤原「断固として譲れないもののために行動した。ならば……」

橘「ならば……?」ゴクリ

藤原「……あとは好きにするがいいさ」ドサッ

橘「…………えええぇええぇっ!!? ふ、藤原さん!!? 座りこまないでっ!」

古泉「ほう……」

橘「藤原さんっ! どうして!? あなたは未来を……っ!」

藤原「橘京子。僕はもう傍観者だ。言った通り好きにしろ。とは言っても……」



ゴォオォオォオオオオオオオォオ!!!



橘「……」

藤原「ハッ、あの状況に食ってかかる意気があるならな」

橘「そんな……どうして、ここにきて……あなたが一番佐々木さんを……」

藤原「あぁ、利用しようとしていた。だが、もういい」

藤原「僕の望んでいた未来にいてほしかった人とは……―――」

朝比奈「……?」

藤原「―――……もう、いいんだ」

橘「~~~っ!!」


橘「このヘタレ!! 意気地なし!! 根性無し!! バカぁっ!!!」

藤原「……なんとでも言うがいいさ」フッ

橘「巨乳フェチ!!!」

朝比奈「えっ」

藤原「貴様ぁ!! 言っていいことと悪いことがあるだろう!!」スクッ

橘「なんとでも言っていいと言ったのはあなたです!! それに、もうあなたは関係者じゃありません!!」

橘「見損損損損ないました!! 土壇場で、こんな……」

藤原「……悪かったな」

橘「っ、謝らないでっ!!! もう、もう! なにが、なんだか……!」

古泉「あなたも、もう抵抗は―――」

橘「あぁぁああああぁああああああ!!!」

古泉・朝比奈「「」」ビクッ!

藤原「お、おい。橘?」

橘「ハッッッ!!!!」ハッケイッッ!!!



ゴオォッッッ!!



古泉「ゴハァッッッっ!!?!?」ドゴオオッッ!

朝比奈「古泉くん!!?!? み、鳩尾!!? 鳩尾に衝撃波!? ちょ、超能力……?」

橘「佐々木……さ、ん」フラッ

藤原「……」ガシッ

古泉「っ……フー、フー……彼のかわいがりに日々耐えてたおかげで、なんとか意識を飛ばさずに済みましたよ」

朝比奈「(超能力?? 素の耐久力……?)」

藤原「……橘京子、目覚める頃には終わっている。それが誰が望んだ結果かは分からんがな」

古泉「現状は……誰が望んだかは分かりませんが……結果として残るのは決まっています」

古泉「―――涼宮さんが望んだとおりになるだけです」

ここまでーー
また書きますね

ありがとう!!
今日投下しますね!!


ヤスミ「……」グググッ!

キョン「手四つ……まだ恋人ごっこがしたいか、ヤスミよ」グググ

ヤスミ「……―――」グッ!

キョン「―――……何が死に物狂いだよ」ググッ!

ハルヒ「キョン! あたしとヤスミちゃんの勝負って……」

キョン「……いいか、ハルヒ。さっきも言っていたように『力』の引っ張り合いだ」

キョン「ヤスミはお前に任せる。俺はこの後ヤスミを離し、長門の援護で佐々木に向かう」

ハルヒ「っ……」コクリ

キョン「俺がヤスミを離した瞬間、こいつはお前と接触し、お前の『力』を奪うつもりだ」

キョン「『力』を奪われたら負けだ。絶対に勝て」

ハルヒ「力が入んなくなるってこと?」

キョン「物理的なモンじゃない。お前の中にあるその『力』は」

キョン「SOS団の原動力となる『力』……」

キョン「"魂"みたいなもんだ」

ハルヒ「!!」

キョン「そんな大事なモン、入団候補生に渡すにゃまだ早いだろ?」

ハルヒ「……当然っ! あたしがいる限り渡してやんないわよっ!」

キョン「その意気だ」


キョン「それで、引っ張り合いの具体的な方法なんかは、俺は知らん」

ハルヒ「さっきも言ったわよ!! フィーリングでなんとかなる!」

キョン「そうだ……フィーリングでなんとかしろ」

ハルヒ「気合のぶつけ合いでしょ!? そういうのは団長に任せときなさい!」

キョン「……頼んだぞ、ハルヒ!」

ヤスミ「……」ググッ!

キョン「じゃあ予定通りに……いくぞ?」

ハルヒ「……こいっ!」

キョン「……せーの!」

ハルヒ「っ!!?!?」バッ!

キョン「って言ったら離すぞ?」

ハルヒ「こんな時にまぎらわしいことすんな!!!!! お約束じゃないわよ!!」

キョン「冗談だ。肩の力は抜いていけ」

ハルヒ「アホキョン。分かってるわよ」フッ

キョン「……」ジッ

ハルヒ「? っ何よ!? こっち見ないで前向きなさい! それとも作戦中止?」

キョン「……いーや、なんでも……それじゃいくぞ」

ハルヒ「……こいっ!」

キョン「……」スゥ

キョン・ハルヒ「「せーの!!!」」






バッ!!!!


周防「……」ギギギ!

長門「……どいて」ギギギ!

佐々木「猛者同士の鍔迫り合い。こうも迫力があるとはね」

長門「……傷つきたくなければ投降を」

周防「―――あなたたち―――こそ」

佐々木「……くつくつ」

長門「……可笑しい?」

佐々木「あぁ、すまない。嘲笑の意味はないよ」

佐々木「長門さん。もう僕の相手をする必要はない」

佐々木「彼が動く」

長門「……」

周防「―――不毛」

佐々木「だね。決着はこちらではなく涼宮さんの方でつく」

佐々木「あと数十秒さ」

長門「……」

佐々木「……少しだけ、独り言でも話そうか」

周防「―――不要」

佐々木「まぁ独り言だ。聞き流しても構わないよ」

長門「……」


佐々木「前にも言ったけど、やはりキョンは周りの人に恵まれているね」

佐々木「あぁ、九曜さん。無論、僕もあなたたちに恵まれた」

佐々木「九曜さん、橘さん、藤原くん。皆がいたからここまで出来た」

佐々木「藤原くんにはきつく当たってしまった時もあったなぁ。今思えば申しわけないよ」

周防「―――」

佐々木「……何時の時代だって僕たちは親友で、二人だった」

佐々木「それが今や、互いの周りには人がいて、親友は消えた」

佐々木「周りの人は増えたのに、何故かな。キミがいないと……」

佐々木「不思議と……寂しいものだよ」

佐々木「……いや、不思議なことなどないか」

佐々木「それほど、キミは僕にとって大きな存在だったんだ」

佐々木「……ありがとう」

長門「……まるで、どちらが勝利するか知っているような口振り」

佐々木「……もちろんだとも。長門さんの同期でもまだ見えない未来を」

佐々木「僕は……いや―――」

佐々木「―――僕たちは知っている」

長門「……それは」

周防「―――何故」

佐々木「……長門さん。彼にこう伝えてくれるかい?」

佐々木「――――――」






ギュン!!



キョン「(勝負はすぐにつく!! この一瞬であいつのところへ……!!)」

キョン「(こんなことしでかしたんだ。とっちめてやるから覚悟しろよ!)」

佐々木『許してやってくれキョン。この世界の僕を』

キョン「(佐々木……)」

佐々木『僕に変わって僕が詫びるよ。くつくつ、ややこしいね』

佐々木『……長い永い一瞬だ。これが走馬燈ってやつかな』

キョン「(俺の体の中で縁起でもねえこと言うんじゃねえ)」

佐々木『おっと失礼』

佐々木『……ありがとう』

キョン「(……なんだ、急に)」

佐々木『いや、なんとなく、さ』

佐々木『なんとなく、この世界の僕が呟いてそうだな、と』

キョン「(……聞こえてこねえよ)」

佐々木『だから代わりに言っておくのさ』

キョン「(直接言え。って言っておけ)」

佐々木『それを直接言いなよ。っと、こんなやりとりですら懐かしいと思うよ』

佐々木『……ねえキョン』

キョン「(待て、もうつく。あとで聞いてやる)」

キョン「(あとで聞いてやるから……今は―――)」

佐々木『――――――』


バッ!!



ハルヒ「(! きたっ! 突っ込んできた!! どうする!!?)」

ハルヒ「(フィーリングって言っちゃったけどフィーリングって何!? どうすればいいの!!)」

ハルヒ「(がっぷり四つ? いや仮にも女子高生……見栄えが良くない)」

ハルヒ「(……今の時間、すっごい長く感じる。こんなにごちゃごちゃ考える時間なんてないのに)」

ハルヒ「(……そうよ。こんなごちゃごちゃ考えずに、こんな時―――)」

ハルヒ「頭はこうやって―――!!」ググッ!!

ヤスミ「……」バッ!!

ハルヒ「―――使うのよ!!!!!」ズツキッッッッ!!!!!!!

ヤスミ「……」バッ!












ガンッッッ!!!!!!












ハルヒ「――――――ハッ!!」

ハルヒ「ここどこっ!? あれ? あたし確か……」

ヤスミ「フフ……団長!」

ハルヒ「……あ! ヤスミちゃん!!」


ハルヒ「や、ヤスミちゃん? あなた意識が戻ったの?」

ヤスミ「はい! といっても、ここでは、ですが……」

ハルヒ「そう! ここよ! ここどこ!? 壊れかけの部室から何もないトコに来ちゃったけど……」

ハルヒ「ついにあたしの中の瞬間移動が目覚めたの!!?」

ヤスミ「お言葉ですが、残念がらそうではありません」

ヤスミ「ここは、意識の中……まぁ、夢の世界? みたいな?」

ハルヒ「浦安の?」

ヤスミ「ち、違いますっ!! 精神世界的な、なにかです!」

ヤスミ「『力』を持つ者同士がこれる場所……らしいです」

ハルヒ「あやふやね」

ハルヒ「それで、ここにきたのはここであなたと『力』の引っ張り合いっこするためかしら?」

ヤスミ「フフ。そうしてもいいですけど」

ヤスミ「次に現実世界に戻る時には全部終わっているので、その必要はないかもですっ!」

ハルヒ「えっ!?」

ヤスミ「というわけなので。特にすることはありません」

ハルヒ「ちょ、ちょちょ! あたしキョンと結構熱いやりとりしてきたけど……なにもしないの!?」

ハルヒ「ま、まさか……お前はすでに死んでいる状態……!?」アワワ

ヤスミ「……」

ハルヒ「ヤスミちゃん!!? あなたは敵!? 味方!!? どっち!?」

ヤスミ「……どっちでしょう?」

ハルヒ「味方! がいいわ!! 絶対!」

ヤスミ「……フフ」


ヤスミ「やっぱり。団長はすごいですっ!」

ハルヒ「どしたのよ急に」

ヤスミ「急なんかじゃありません。ずっとずっとずーっと思ってたことです」

ヤスミ「こんな素敵な団長がいる……いいなぁSOS団って」

ヤスミ「あたしもここにいたい、って……」

ハルヒ「入団するのよ。あなたも。さっさと選抜試験を突破してね」

ハルヒ「なんなら今からやってもいいわ!」

ヤスミ「是非、そうしたいです。でも……」

ヤスミ「団長もご理解されていると思いますが、あたしは『あたし』です」

ハルヒ「あぁ、バックアップ? だとかなんとか言ってたけど……気にしないわよ、そんなの」

ハルヒ「あなたはヤスミちゃんでしょ?」

ヤスミ「……あたしは、本来は存在していない虚構の存在」

ヤスミ「いずれ、消えゆく存在なのです」

ハルヒ「いずれっていつよ? あたしだっていつまでも生きてるわけじゃないわよ。ここからの帰り方も分かんないし」

ヤスミ「そうですね。いずれというのは」

ヤスミ「この世界から元の世界に戻った時です」

ハルヒ「!!?!?」


ハルヒ「なっ、なんで……」

ヤスミ「あたしは『力』……どちらが勝とうと、あたしは『力』に帰属する」

ヤスミ「そういう存在なんです」

ハルヒ「ダメっ! ダメよそんなの!! そんなの……悲しすぎるっ!」

ヤスミ「……優しいなぁ。そんな団長で良かった」

ヤスミ「でも、あたしはなにも悲しくはありません。だって、みなさんに出会えて、団員のように扱っていただいて」

ヤスミ「楽しかったから」

ハルヒ「どうすれば……どうすればヤスミちゃんが消えないで済むの!?」

ヤスミ「……」フルフル

ハルヒ「そんな……っ」

ヤスミ「……ありがとうございます」

ハルヒ「……」

ヤスミ「あたしのために……そこまで想っていただいて」

ヤスミ「そろそろ、時間です」

ヤスミ「団長、元の世界に戻ったら、一つ伝えておいてもらっていいですか?」

ヤスミ「先輩に――――――」

ハルヒ「……そんなの、自分で言いなさい」

ハルヒ「自分の口で!! ここから出て!! ちゃんと言いなさいよっ!!」

ヤスミ「……頼みましたよっ! 団長!」ジジッ!!

ハルヒ「ヤスミちゃ―――!!」

ここまでーー

お久しぶりです。
2023年度の投下を夕方よりおこないます……
残りはあと数回の投下で終わりそうなのですが、それがいつになるやら……
申し訳ございません

投下します!


ハルヒ・ヤスミ「「!!?!?」」ゴッチン!!!

ハルヒ・ヤスミ「「あいたーーーーっっ!!!!!」」

ハルヒ「~~~っ!! ヤスミちゃ───! あれ、部室……ヤスミちゃん!!」

ヤスミ「いてて……あれ、団長……? あれ?? あたし、なんで、どうして……」

ハルヒ「っ!!」ガシッ!

ヤスミ「わっ!?!? だ、団長!?」

ハルヒ「よかった……なんでか分かんないけど、ちゃんとヤスミちゃんはここにいるじゃない!!」

ヤスミ「どうして、あたし……っ!?」

ハルヒ「意識の中?? にいたのはどうやら一瞬みたいね。体感時間はそこそこだったのに」

ハルヒ「ただ、帰ってきてよかったかどうかは」



ビシビシビシビシビシッ!!!!



ハルヒ「この部室にいる限りは保証されないみたいね……!」

朝比奈「す、涼宮さん! ヤスミちゃん!! す、すごい音がしましたけど、大丈夫ですか!!?」

ハルヒ「ええ……変な世界にスリップしてたけど、頭突きの勢いが強すぎたのかしらね!」ズキズキ

古泉「空間の崩壊が───ヤスミさん。あなたの『力』は……」

ヤスミ「……あたしの『力』はもう───」

ハルヒ「……??」

朝比奈「みっ、みなさん伏せてぇぇえええ!!」






バキバキバキッッ!!!!!


橘「───っ」

藤原「……『力』が統合された」

藤原「この閉鎖空間も間もなく崩壊する。橘、連れて行って欲しいならそのまま眠っていろ」

橘「(………………佐々、木、さ)」ボヤー

藤原「佐々木、僕たちはここまでだ。最後まで付き合えず申し訳ない」

藤原「お前が望んだ結末なのかは分かりかねるが、崩壊した後のことは───」

藤原「未来で知ることにするさ───さよなら」



朝比奈「──────危ない!!」



藤原「姉さん」






ガッシャァアアァアァアアアアン!!!






朝比奈「こ、古泉くくくんんんん!! あ、あの人達のところに瓦礫が……落ちて!!」

古泉「いえ、彼らは窮地を脱したようです。時空間移動でしょうか、潰される瞬間に姿が消えるのを確認しました」

朝比奈「よかった……! いえ! ま、まだよくなかったです!! わ、わたしたちも早く!」

古泉「ええ、涼宮さん! 彼は!?」

ハルヒ「……浮いているわ」

古泉「浮い、何故!!?」

ハルヒ「佐々木……さんのところに飛んでいって……あそこ」

ハルヒ「有希と一緒に、あの───」

ハルヒ「光の粒子を抱えてる」

ヤスミ「───っ!」

古泉「あれは……まさか」

朝比奈「……そんな」

ハルヒ「……キョン」


数分前



キョン「佐々木いいぃいいぃぃぃぃいいい!!!!!」ギュン!!

長門「待って」バッ

周防「──────止」シュン!

キョン「長門っ! 大丈夫か!? 怪我は!? 周防!? どこに行きやがった!?」

長門「落ち着いて。わたしは問題ない。そして、終わった」

キョン「終わった?……そういうことかよ」






キョン「勝ち逃げか、親友」

佐々木「この状況のどこが勝ちか教えて欲しいよ、親友」






キョン「……」

佐々木「……」

長門「(体が粒子化し情報結合も解除されている。個体としての意識があるのがありえないレベル)」

長門「(直に……完全消失となる)」

キョン「部室をこんなに滅茶苦茶にして、SOS団の新入部員にスパイを送り込んで、それで今は光って消えようとしています、だと?」

キョン「意味不明すぎるだろうが。待ってろよ、全てを超越した『完全体─パーフェクトフォルム─ オールマックスベストキョン MARKⅡver3.α Jr.』にかかればこんなもん……」

佐々木「よしてくれキョン」スッ

キョン「なぜだ」ピタッ

佐々木「今のキミにとって全てをやり直し、なかったことにするなんて造作もないことだろう」

佐々木「消えゆく僕を再生させ、閉鎖空間の崩壊を止め、もとの世界に戻る。なんなら、消失世界すら戻すことも可能かな?」


キョン「可能さ。火急の件の親友の暴走を止めた後に全部対応するつもりさ。だから───」

佐々木「もう、いいんだ。もういいんだよ、キョン」

キョン「なにがもういいんだ、だ! なにもよくねえよ。久しぶり現れたかと思いきや、訳分からんこと言いながら、訳分からんことしやがって!」

キョン「未だに目的が不明なんだよ。ハルヒの『力』を奪い、『力』を統合させるのは手段だろ?」

佐々木「……」

キョン「杜撰な計画を立てて、ちょっかい出しては失敗して……これじゃお遊びじゃねえか。ズッコケ敵対組織なんてつくりやがって」

キョン「お前たちは……お前は何をしたかったんだよ?」

佐々木「……気づいていなかったのかい?」

キョン「お前に世界征服とか、人類支配みたいな野望があるわけでもなしに、わざわざ手を離れた『力』を再度持ってどうするんだよ」

キョン「こんな『力』に拘るなんて、らしくないんだよ、佐々木」

佐々木「…………くつくつ。あぁ、そうだね。いや、恥ずかしい」

佐々木「大昔に、キミに教えてあげたのは、他ならぬ僕だというのにね」

キョン「あぁ?」

佐々木「『力』なんて特別でもなく、この世に特別な人間なんかいない」

キョン「それがどうした。忘れちゃいねえよ。おれの力なんざ別に───」

佐々木「いいや、忘れていたのはキミじゃない……僕さ」

佐々木「『力』こそ、キミと僕とを結ぶ特別な繋がりだと、そう思ってしまっていたんだよ」

キョン「は……お前……」

佐々木「『力』を統合させるのは目的であってるよ。そして目的は達成された」

佐々木「残念ながら、器こそ違うけれどね」


ビキッビキッ!!!



長門「───時間がない」ボソッ

キョン「あぁ、分かってる!! 佐々木! その話はこの後詳しく1週間は聞かせろ!! だから───!」

佐々木「1週間と言わず、1年でも100年でも10000年でも、その先もずっと……ずっとキミといたかった」

キョン「あぁ! 気の済むまで一緒にいてやる!! だから自分から消えようとするな!」

佐々木「キミといるためには、どうしても『力』を完璧な状態で持たなければならなかった」

キョン「いらねえよ! 別にそんなもんなくても、俺は……俺は!」

佐々木「これからのキミに相応しいのは、僕じゃない。涼宮ハルヒさんだよ」

佐々木「僕はもう用済み───」

キョン「ふざけるな! 俺の前で俺の親友を用済みなんて言うんじゃねえ!!」

佐々木「……過去の女」

長門「」ピクッ

キョン「親友!!! 親友な!!! 誤解を招く言い方するんじゃねえ!」

佐々木「くつくつ……あの楽しかった日々を思い出すよ。尤も、思い出す必要のない程、鮮明に想い続けているんだけどね」

佐々木「……さて、そろそろだ。意外と長々と話せてよかったよ」パアァ

キョン「おい! 待て!! そんな長々と話してまだ話足りないんだろ!? まだまだ聞いてやるから早く───」ガシッ!

キョン「……長門?」

長門「…………」

キョン「な、長門。すまん、時間がないのは分かってるが、手を離してくれないと佐々木を───」

長門「あなたが彼女の親友であるなら」







長門「親友の意思を尊重してあげてほしいと、わたしは思う」


キョン「……長、門……お前」

長門「親友……友人という関係を正しく理解しているか、まだわたしには確証がない。でも」

長門「あなたや朝倉涼子、そして涼宮ハルヒが同様に何かを選択した時は、わたしもその意思を尊重したいと思う」

長門「これは思念体の意志などではなく、わたし個人の意思」

キョン「……」

佐々木「……くつくつ。長門さんの言う通りさ」

佐々木「最後の最後まで、僕はキミの隣にいたくて『力』を求め、行動を起こした」

佐々木「結果はこのザマ。協力者である橘さん、九曜さん、藤原くんには申し訳ないよ」

キョン「…………それだけか? それだけのために行動を起こしたのか?」

佐々木「勿論、そ───」

キョン「違うだろ? 分かるさ、親友だからな。そこはなんにも変わっちゃいない」

キョン「お前が自分自身のためだけに、ここまで行動するやつじゃないことぐらい」

佐々木「…………」

キョン「気を使いすぎなんだよ、お前は……」

佐々木「……困ったね。やっぱりキミは僕の親友だった」

キョン「……佐々木」

佐々木「──────」スッ












佐々木「涼宮ハルヒさんをよろしく頼むよ、親友」ニコッ












パアァアァア


キョン「…………」

長門「……情報連結の完全解除を確認。および、彼女に観測されていた『力』は───」












ハルヒ「キョン!!!!!」












長門「───涼宮ハルヒに帰属した」

キョン「……そうか」

キョン「だが……まだ終わっていない」ドクン

キョン「この閉鎖空間を……ん?」

ヤスミ「───」

キョン「ヤスミ?? 『力』を失ったはずのあいつがなんで……あぁ」

キョン「結局、お前も俺と同じってことかよ」ハハ

ハルヒ「キョン!!! 何がどうなったかは今聞かないけど!」

ハルヒ「早くこっち降りてきなさい!! で、瓦礫を防いでちょうだい!!」

キョン「そこは古泉の男の見せ所だろー」

古泉「いえ、結構もうボロボロで……」

朝比奈「ふえぇ!!! キョンくーん!!」

長門「空間の崩壊まで5分を切った」

キョン「……やれやれ」

ハルヒ「キョン!!!!」







キョン・ハルヒ「「とっとと元の世界に戻るわよ!!!」」






キョン「スィーっと、みんな無事か?」スタッ

ハルヒ「五体満足よ!! 有希、怪我してない?」

古泉「なんとか持ちこたえてます、長門さんお怪我は?」

朝比奈「だ、大丈夫です。長門さん、大丈夫でしたか?」

長門「問題ない。無事で何より」

キョン「俺の心配がないのは何故か。SNSで聞いてみよう」スッ

ハルヒ「あんたの心配するのも、SNSで聞くのも時間の無駄よ!!」

キョン「やれやれ……ヤスミ」

ヤスミ「っ!!」ビクッ!!

キョン「お前は……」

ヤスミ「~~~っ、す、すみま───」

キョン「動画配信とか、広報の役割とかどうだ? 中々向いているかと思うが」

ヤスミ「───っはぇ? えっ、えっ!?」

ハルヒ「むっ、中々鋭い案を出すじゃないの……SOS団団長の左脳という役割より良いわね」フム

キョン「なんだそのキモいポジション」

古泉「僕のボードゲームエキサイティングプレーヤーより良いかと」

キョン「本人の心持次第じゃねーか」

長門「作者の気持ち代弁者より、良い」

キョン「限定的すぎるぞ。確かに作者の気持ちを読み取るのは難しいけども」

朝比奈「わたしの妹よりも……うーん、うーん……」

キョン「そこは兼任できそうですね。よし、それでいきましょう」

朝比奈「!! やったぁ!!」

ハルヒ「あまっ!! みくるちゃんに甘いわよ!! だったら左脳も兼任させなさい!」

キョン「それは副団長である古泉に兼任させよう」

古泉「えっ」

ハルヒ「古泉くんは右脳を既に兼任してるでしょうが!!」

古泉「えっ」



ワイワイギャーギャー!!!



ヤスミ「…………なにこれ」


ヤスミ「……??? え、えっと、あの、その。み、皆さん……」

キョン「おっと、大事なテーマではあるが、今決めることでもないな」

ハルヒ「そうね。さっさと部室、いや校内から脱出しなきゃ!!」

キョン「とりあえず、SOS団入団後のヤスミの役割案は保留ということで」

朝比奈・古泉・長門「「「異議なし」」」

ヤスミ「えっ! えっ!? ええっ!!?」

ヤスミ「じゃ、じゃなくて、まずあたし皆さんに謝罪をしなければ───!」

ハルヒ「謝罪ぃ!? なんの謝罪よ? 光って部室壊しちゃったこと? そんなのたまにキョンがやるから気にしないわよ」

ヤスミ「……なにやってるんですか先輩」

キョン「人間そういう時もあろうが」

古泉「なしにしていただけると今後助かります」

ヤスミ「そ、そうじゃなくて!! いえ、それもですけど……」

ヤスミ「……あたし。こんなに良くしていただいた皆さんに隠し事や嘘ついたりして……」

ヤスミ「こんな危険なことに巻き込んでしまって……本当に、本当に───!」




ハルヒ「ありがとうね!!」




ヤスミ「申し───あえっ!?」

ハルヒ「いやまあ、全部が全部ヤスミちゃん由来かどうかは知らないけど、こんな不思議な体験できたのはあなたのおかげよ!」

ハルヒ「人が飛んだり、光ったり、爆発したり、なんか精神世界に行ったり。いやーもう訳分かんないわよ!!」

ハルヒ「で、これって結局どういうトリックなの? どこまでが本当?」ン?

ヤスミ「……」ポカーン

キョン「……あーヤスミ? とりあえず、団長は今回のことを気にしてないし、勿論俺らも気にしてない」

朝比奈「(隠し事に関しては……)」

長門「(わたしたちも同じく)」

古泉「(それに、我々由来のトラブルも少なからずありますしね)」

キョン「元は佐々木のバックパップだったかも知れないが、今のお前は渡橋ヤスミだ。それ以上でも以下でもない」

キョン「そのヤスミが、SOS団の入団を望むというなら、SOS団は快く受け入れる、って話だ」

キョン「今の状況とか、今までやってきたこととか、そんなもん関係ない。どうとでもなる」

キョン「だから、今後の身の振りに関しては、ヤスミ自身が選択しろ」

ヤスミ「……あたしが」


ガララッッ!!!!



ハルヒ「!? 崩れてきたっ!!」

キョン「あー、古泉」

古泉「仕方ない、ですねっ!!」ボッッ!!



ドガアァッァアアアアアン!!



古泉「みなさん、お怪我は??」パラパラ

ハルヒ「っ、すっご!! 古泉くん! いつの間にファイヤーボール出せるようになったの!?」

ハルヒ「ん? 赤い、ボール? 古泉くん……なんか前にも同じことあったような」ハテ

古泉「ちょっと! ばれない様にフォローをお願いしますよ! 以前の閉鎖空間のことを思い出してしま───」ボソッ

キョン「映画のあれだろ? レッドバルーンいっちゃん」

ハルヒ「それだわっ! なんか既視感あったのよね!」

古泉「……」ズーン

長門「トラウマ」

朝比奈「こ、古泉くん、元気出して!」

古泉「……えぇ、大丈夫ですよ。なんとか」

朝比奈「(ギリギリなんだ……)」

古泉「……っ」ピクッ

キョン「お」

古泉「……今更ですか、最後の足掻きと言わんばかりに」

古泉「───神人」






ォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオ!!!!

ここまでーー
いつもいつも遅くてすみません……
ただ、何年経っても見て頂いて、レスをくれる方がいることが本当にありがたいです
だったらはよ書けと言われれば、ぐうの音も出ませんが……まだお付き合いいただければ幸いです!
いつもありがとうございます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年06月24日 (日) 04:16:48   ID: FUWevPZx

更新を待ちわびてます!

2 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 00:45:28   ID: S:6r6x9T

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