ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」 (439)


クリスマスパーティ後 帰り道


ハルヒ「あー楽しかった!!! こんなに盛大に誕生日を祝われて喜ばない人なんていないわよね!」

キョン「誕生日を祝うなどという大義の元に、あのパーティを画策したわけじゃないだろうが」

鶴屋「それにしても……クク、まさか一樹くんの防弾ちょ、チョッキが……あーっはっは!!!」

朝比奈「つ、鶴屋さん笑い、すぎ、っ、ぷぷっ! ご、ごめんなさい古泉くん!」

古泉「…………いえ、いいんですよ。お気になさらず」

古泉「涼宮さんと彼の口から『あっ……』という声が漏れたのを聞いた時には、ああ、僕の生命もここまでなんだなと……」

キョン「バカっ! 古泉! 洒落にならんことを言うな!!!」バシッ!

古泉「洒落にならないことをしたのはあなたですよね!!? 『あと、2秒遅ければ危なかった……』的なことも呟いてましたよね!!?」

朝倉「まったく……聖夜ぐらい静かに過ごそうと思わないのかしらね……この人たちは」

長門「そのような思考回路は、彼らには存在しない」

ハルヒ「あれっ!!? ちょっとキョン!! あんたが当たったあたしのプレゼントの火星くん人形は……」

キョン「…………」ニコッ

ハルヒ「いやごまかせてないから!!! 笑ってごまかせる流れなんて実際は存在しないから!!!!」

キョン「彼は……火星へ帰ったのさ……自らの、故郷にな」フッ

ハルヒ「…………あんたが送り返しただけでしょうがぁぁあああ!!!!! せっかくあたしのありがたいプレゼントが当たってってのに!!」

キョン「ち、違う!! 本当はちゃんと部室の目につかないとこに飾って……」

ハルヒ「ならばよし!! ってなるわけないでしょ!!!? 目につかないとこに飾るって、それただ隠してるだけだから!!!!!」

キョン「……マーズかったか」ドヤッ!

鶴屋「ぷっ!」

ハルヒ「黙りなさい!!!! このアホキョン!!!」バシッッ!

朝倉「…………そうみたいね、やれやれ」ハァ

長門「そう」




























「………………………………………………………………」


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数日後


キョン「……んー、そうだな」

キョン「もう年末だし、掃除ついでに模様替えでもするかな」

キョン「俺的ビジョンでは……まず部屋を拡大してから―――」バン!!

キョン妹「キョンくん電話―!!!」

キョン「おう妹よ、ドアの開閉はもっと静かにな、某団長のようにドアを開けちゃいけないぞ」

キョン妹「キョンくん電話―!!!」

キョン「……エンドレスデンワ―!? ってボケてる場合じゃなく……誰から電話なんだ?」

キョン妹「キョンくん電話―!!!」

キョン「…………怖ぇよ、妹」スッ

キョン妹「アハハ!」ドタドタ

キョン「(なんなんだ一体……)」

キョン「あー、もしもし?」

「おっ、もしもし、久しぶりだなキョン、俺だ」

キョン「おー、お前か。うんうん、誰?」

「おいおい、卒業して約9か月経つとはいえ元クラスメイトの声を忘れるとは薄情じゃないか?」

キョン「悪いな、男の声から顔を想像する趣味なんてないんでな」

「いやいや、趣味とかそんなんじゃなくだな……俺だよ、中河だよ」

キョン「あー……財閥の?」

中河「そっちの中川さんじゃなくてだな、ていうか中学時代にそんな知り合いいないだろ? ほら、ラグビー部の」

キョン「…………あっ、プーさんか!! プーさんじゃないかお前! いやー久しぶりだなぁ」

中河「……いや、俺今初めて自分が『プーさん』なんて呼ばれてること知ったんだが……プチ衝撃だよ」


キョン「それで、サンダースが俺に何の用だ?」

中河「いやそれ本当の『プーさん』じゃねえか! あれか? 俺の風貌が熊に見えるからとかそういうあれか!?」

キョン「そんなことはどうでもいいんだよ、俺に何の用なんだ?」

中河「俺にとっちゃどうでもよくは……いや、まぁいいか」

中河「キョン、真面目に聞いてくれ。お前にしか言えないことがある」

キョン「俺とお前はそんなに仲の良い間柄じゃなかったと思うんだが……」

中河「ああ、中学時代はな。だが今に関しては10年来の親友の如くお前を頼るしかない」

キョン「よせよ、親友はそんなにいらないからよ」

中河「…………キョン、俺は先日お前を見た」

キョン「へー、いつ? どこでだ? 俺は黄色い熊なんてみてないが……」

中河「その時俺は別にそんなコスプレはしてなかったからな、いつかと言えば、そうそれはクリスマスイブだ」

中河「お前は確か北高だったよな? 北高の制服であの北高に続く坂から下ってくる団体にお前を見たんだ」

キョン「あ、なるほどあの日ね。それで、その日にお前はそんなとこでなにしてたんだよ?」

中河「ああ、俺は日課のランニング中だった、スポーツマンにとって自主練は欠かせない」

キョン「クリs……まぁ、遅くまでご苦労なこって」

中河「ただ、俺はお前を見たからお前に連絡を取ろうと思ったわけではない」

キョン「そりゃあな」

中河「……出会ってしまったんだよ、そう……俺の、天使に!!!!!」

キョン「…………なんだ、プーさんお前―――」

キョン「―――もう、死んでるのか」

中河「お迎え的な意味じゃねえから!!! こう、比喩的な表現だよ!!!! 分かんだろ!!!!?」

キョン「新年までに厄落とししとかねーとなぁ」

中河「気が早えーよ!!!! あと俺を厄扱いしてるんじゃねー!!!!」


中河「俺は出会ってしまった……俗説的に言う、運命の人とやらに!!!!!」

キョン「はぁ……」

中河「俺は別に運命の人や一目惚れなど、オカルトじみたもんは信じちゃいなかった……だが!!」

中河「俺が天使を見たのはいつだ? そう、聖夜!!!! これは、もう……運命だろ!!!?」

キョン「お前実はそういうオカルトじみたもの大好きだろ、こら」

中河「だが、だからといって俺は外見に惹かれたわけじゃないぞ? 俺は人の内面を知らずに人格を押し付けたりしない」

中河「俺は一目で内面を知った!!!! 知った上でおれは、自分の運命の天使に出会ったと、そう思ったんだ!!!」

中河「ぜひ声をかけてお近づきになろうと考えたが、気づいた時にはもうお前の団体(天使含む)はいなかった」

中河「どうやら天使に出会った衝撃で茫然としていたらしい。それほどまでのインパクトがあったということだ」

キョン「じゃあお前は誰に出会ったってんだ? 天使じゃ分からんぞ」

中河「名前は分からん。というかそれが知りたくてお前に連絡をとったんだ」

キョン「あの中の誰かが天使ね……ま、北高基準で言うなら朝比奈さんなんだが……」

キョン「じゃあ聞くが……性別は?」

中河「女だよ!!?!? いや、女以外ありえないだろ!!?!?!?」ガーーン!!

キョン「おーっとぉ? それはスポーツマンらしからぬ、差別的な発言と捉えられる恐れもありますよぉ?」

中河「くっ、ま、まぁ……同性愛を否定するよう聞こえたのなら、それは悪かった」

中河「だが、俺が天使と比喩するのは完全な女性だ、あと俺はノーマルだ」

キョン「そうか、じゃ古泉はなし、と……あと俺もノーマルだ」

中河「その情報は結構だが、髪は短かったぞ」

キョン「ほう」

中河「印象的には、可憐で薄幸な少女だ」

キョン「うむ」

中河「俺が勝手に名前を想像するなら……長門……有希子さん、ってところか!」ドンッ!!

キョン「ほとんど正解じゃねえか!!!! こえぇよ、プーさん!!!!!」


キョン「間違いない、お前が天使という少女は、長門。長門有希という名前の女性だ」

中河「おぉ! 長門、有希さん……というのか! あたらずととも遠からず、だな!」

キョン「いや、もう9割がた当たってるよ、どっからどう見ても正解のお隣さんの域は出ねえよ」

中河「雄大かつ、凡庸でもない。まさにイメージ通りの素晴らしい名前だ!!! うん、いい!!!」

キョン「名前をべた褒めしてどうする」

中河「確信した、俺は長門有希さんと結婚するために生まれてきたのだ」

キョン「あぁ、俺も確信したよ。こいつはほんまもんのアホだ、ってな」

中河「俺の天使、いや女神となりえる人はこの地球上を探しても彼女一人しかいない、それで―――」

キョン「中河、それはもう分かった(あと、本当は地球上を探しても長門はいないぞ)」

キョン「で、お前はそれを俺に伝えてどうする? それとも名前が知りたかっただけならもう切ってもいいだろ?」

中河「伝言、伝言を頼みたい」

キョン「伝言?」

中河「俺のこれからの人生計画と、俺の本気の愛、まとめて4000字以上のレポートに―――」

キョン「待て、待て待て待て。正気かプーさん?」

中河「正気の本気だ、俺は」

キョン「……」フーム

キョン「……名前も学校も分かったし本人に直接言うってのは?」

中河「それはできない、なぜなら俺は彼女の前に立つにはまだまだ未熟だからだ」

中河「その旨を伝えるために、キョン、お前に伝言を頼みたいということだ」

キョン「…………なるほどね、ふーん、そういうこと」

キョン「分かった、伝えておこう。ただし4000字以上云々は無しだ」

中河「恩に着るよキョン。心の友よ、結婚式には呼ばないが、あえて披露宴には呼ぶということで本気の友情を―――」

キョン「いらんいらん、いいからさっさと言え」

中河「アー、オホン。拝啓、長門有希様―――」

キョン「(……やれやれ)」


翌日 部室


キョン「よーっす」ガチャ

長門「……おはよう」

キョン「おう、長門だけか」

長門「……」コクリ

キョン「ちょうどいいのか、悪いのか……長門、俺はとある人物からお前宛に伝言を預かっている」

長門「……誰?」

キョン「俺の中学の時の同級生でな、プーさ、ええと、なんだっけ? そう、中河という奴だ」

長門「……財閥の」

キョン「じゃない方の。大したことのない方の中河」

長門「……そう」

キョン「そう、その中河から読んで聞いたら頭が痛くなる手紙を預かっているんだが……見る?」

長門「……読んでほしい」

キョン「俺が?」

長門「……そう」

キョン「……俺にも羞恥心というものがあるのだが」

長門「わたしには分からない」

キョン「……そう、じゃ読むよ。読んでいいんだろ?」

長門「かまわない」

キョン「へいへい、はぁ。じゃ読ませていただきますよ、っと」

キョン「えーっと、あった」ガサゴソ

キョン「『前略 萌え萌えキュン様 この度はいかが―――』ああ、これじゃないな」ポイッ

長門「そちらの方も、詳しく」ズイッ


キョン「『―――で、あるからして国債の返金は』……あれ? なんでこんな話になってんだ?」

長門「分からない、数分前から日本経済の話に発展した」

キョン「おかしい……プーさんの人生設計の話がいつのまにやら日本経済にまで……まぁ、とにかくだ」

キョン「前半部分は長門に向けてのメッセージだったわけだが……要約するとプロポーズであり、待っていてほしいとのことだ」

長門「待つ?」

キョン「自分が長門に釣り合う男になってから会いに来るんだとよ、だからこうして今は俺が代理で手紙を読む羽目になった」

長門「……そう」

キョン「……で、どうだった?」

長門「国債の信用度は低下の一途を辿っている、このままでは暴落の―――」

キョン「あ、そっちじゃなくてプロポーズの方」

長門「迂闊」

長門「…………メッセージは受けった。しかし、応じることはできない」

キョン「まぁ、そりゃそうだろうな、大体会ったこともないし」

長門「……しかし、日本経済の問題ならなんとかできないこともない」

キョン「うん、長門としてそっちが妙に気になってるみたいだな、うん。全然関係ねーことだけど」

長門「……わたしの自律行動がいつまで保つのかはわたし自身分からないことであるから」

キョン「…………そうか」

長門「……そう」

キョン「……ま、普通に考えてみりゃそうだわな、唐突に」バタン!

ハルヒ「おっはよー!!」
古泉「おはようございます」
朝比奈「お、お待たせしましたぁ!」

キョン「『長門のことが好きだ!!』なんて言やぁ…………あぁ?」

ハルヒ「」ヒクッ

古泉「おやおや」ピクッ

朝比奈「長門さんが好、ほえぇぇぇぇええぇえええええええええぇええええ!!?」

長門「……」


キョン「なんか面倒くさそうな空気に……」

ハルヒ「ハッ!! ちょ、ちょっとキョン!!? いいい、今なんて言ったかもう100回ぐらい叫んでみなさいっ!!!!」

キョン「あー!!!! ピザピザピザピザピザピザピザピザピザ!!!!!!」

ハルヒ「嘘つけ!! ピザなんて言ってなかったでしょーがぁ!!!!!」

キョン「じゃあここは!!?」ビシッ!!

ハルヒ「ヒ、ジッ!!? でもない!? え、待ってちょ、人体にそんな部分……え、ちょ、えぇっ!!?!?」

朝比奈「キョンくん長門さんキョンくん長門さんキョンくん長門さんキョンくん長門さんキョンくん長門さんキョンくん長門さんキョンくん長門さん」ブツブツ

古泉「あ、朝比奈さん……何処の世界へ行ってしまわれたのでしょう……」

キョン「まったく、朝比奈さんったらー」HAHAHA!!

ハルヒ「ちょっと!!!!」バン!!

ハルヒ「そんな強引なノリでごまかそうったってそうはいかないわよ!!!!!」

ハルヒ「あんた!!! 今有希になんて言ってたかもう一回言ってみなさい!!!!」

キョン「なんも言ってないっての!! なぁ長門?」

長門「『長門のことが好きだ!!』」

朝比奈「ぴゃぁぁああぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

古泉「うわっ……」ビクッ

キョン「長門さーーん!!!! 状況をややこしくしないでーっ!!? 『ナゲットのここが隙だ!!』とかでごまかしといてーっ!!!!?」

ハルヒ「いやそんなんでごまかせないわよ!!!!!! 鳥頭かあたしは!!!!!」


ハルヒ「『長門のことが好きだ!!』だぁ~?? あんた、団員である有希のことやーっぱりいやらしい目でみてたんでしょ!!!」

キョン「バカ言え!!! 俺は誰よりも長門のことを温かい目で見守ってきたつもりだ!!!!」

ハルヒ「出た出た、ストーカーって周りのこと見えてないから自分のやってることを正当化するのよねぇ」

キョン「くぉら!!! 勝手にストーカーの容疑までかけてんじゃねえ!! 待て! 一旦落ち着け、ちゃんと説明すっから……」

ハルヒ「フン!」

朝比奈「………………ゃん//////」ポッ

古泉「あのー、長門さん? なにやら想像力逞しい朝比奈さんを現世に召喚して欲しいのですが……」

長門「召喚術も降霊術も蘇生術も持ち合わせていない」

古泉「そうですか……」

キョン「ええとだな、まずは……そう、プーさんだ、プーさんについて説明しようか」

ハルヒ「プーさん? なんで急にサンダースのこと説明するのよ?」

キョン「サンダース言うなや……プーさんってのは俺の中学時代のクラスメイトであり、今回の勘違いの原因を作った張本人であり―――」

朝比奈「……ハッ!! きょ、キョンくんって、え、あ……その……」チラッ

ハルヒ「?」

朝比奈「えー……あ、そう! 中学校に通っていたんですかぁ?」

長門・古泉・キョン「「「…………」」」

朝比奈「え? あ、あれ?」ポン

ハルヒ「ダメよ……みくるちゃん。人には触れてほしくない過去の一つや二つあるんだから……」

ハルヒ「いくらキョンが元引きこもりに見えたからってそんな直接的に聞いちゃ……」

朝比奈「あっ!! ちがっ!! そ、そそそそ、そんなつもりじゃ!! あのっ!!」

キョン「朝比奈さぁん……俺ってそんなに陰気な野郎に見えます?」シクシク

朝比奈「あわわわ!!! ご、ごめんなさいキョンくん!!! そ、そんなつもりで聞いてな……うわぁあぁあん!!!!」

ハルヒ「ま、あたしは見えてたけど」

キョン「くぉらテメェハルヒ!!!」ビシッ!


キョン「ええと、まぁ、普通に中学には通ってましたよ、ええ、普通にね」

朝比奈「ご、ごめんなさい……」シュン

古泉「(朝比奈さんの質問の意図は、僕や長門さん彼には伝わっていますが)」

古泉「(涼宮さんがいる以上、迂闊な話は控えておいた方がいい、ということでしょう)」

ハルヒ「みくるちゃんだって他意はなかったのよ、許してあげて頂戴」

キョン「この場合他意がないのが正解なのか否かは分からんが……」

キョン「で、俺はそのクラスメイトの中河ことプーさんに言伝を頼まれた」

古泉「逆です逆、プーさんこと中河さんですよ」

キョン「それが……」ゴソゴソ

キョン「この手紙だ」スッ

ハルヒ「なになに……『この手紙を受けっとったあなた、1週間以内に5人にこの手紙を回さなければ身の不幸が―――」

キョン「たたた大変だぁ!!!!! は、ハルヒにパス!!!」ウワァア!!

ハルヒ「何時代の手紙だこれ!!!!!」ポイッ!!

朝比奈「ひ、ひえぇえええ!!」

古泉「なんでそのようなものを持ち歩いてるんですか……」

キョン「間違えた、こっちだ。あ、長門見せてもいいか?」

長門「……」コクリ

ハルヒ「お許しが出たところで……えーっと『拝啓、長門有希様―――」


ハルヒ「『―――このまま少子高齢化による経済衰退を辿る日本は……』え?」

朝比奈「あれ?」

古泉「何故か、途中から日本経済の話に……」

キョン「それは俺にも謎だ、意味が分からん、が前半部分を見ただろ?」

ハルヒ「え、っとこれってつまり、そのプー太郎さんからの」

キョン「プーさんな」

ハルヒ「有希へのラブレター……ってこと!?」

キョン「まぁ、そういうこった。書いたのは俺だけど」

ハルヒ・朝比奈「「!!?!?」」

キョン「いや、言われたことを書き写した的な意味でな……」

ハルヒ「ふむふむ……なるほど、事件の真相は掴めたわ!」

キョン「なにが事件か」

ハルヒ「つまりはあんたの元クラスメイトの告白をあんたが代理で行った、ってことよね?」

キョン「まぁ、そういうこったな」

ハルヒ「はービックリした!! てっきりあたしはキョンが自らを省みず有希に玉砕される5秒前かと……」

キョン「いらん心配をどうも、あとで呪いの手紙送ってやるから覚悟しとけこんちくしょう」

古泉「途中から脱線したのを除けば……中々に名文だと思いますよ?」

キョン「シラフでこれ書いてんだから迷文に違いねえよ」

朝比奈「でも、ラブレターだなんてロマンチックですよね、憧れちゃいます」

ハルヒ「あれ? みくるちゃんならラブレターの一つや二つぐらい当然もらったことあるものだと思うけど?」

キョン「バッカ野郎!! 朝比奈ファンクラブの掟としてそういう行為は厳禁とされてんだてやんでぇ!!」

ハルヒ「そ、そう……なんで江戸っ子?」


古泉「それで、長門さんの返事はもうお決まりになっているんですか?」

キョン「返事はさっき聞いたよ、待つことはできないってな」

ハルヒ「まぁそりゃそうよね、会ったこともない人と結婚とかそんな時代じゃないし」

長門「……」チョイチョイ

ハルヒ「ん? どしたの有希?」

長門「みせて」

ハルヒ「ん? あ、ラブレター? やっぱ気になるの? はい、どうぞ」スッ

長門「………………」

ハルヒ「(有希の好みのタイプってどんなのかしら? 一緒に本を読んでくれる人? はたまた大食いな人?)」

朝比奈「(いいなぁ、いいなぁ、ロマンチックだなぁ……ところで手紙に書いてたらぐびーって一体……?)」

古泉「(……勘ぐりたくはありませんが、なにか、引っ掛かりを感じますね。いやな勘が働いてるような……)」

キョン「……」

長門「待つことはできない」

キョン・ハルヒ「「うんうん」」

長門「しかし、会ってみてもいい」

キョン・ハルヒ「「」」

古泉「ま、まったく同じリアクションを……ッ!?」

長門「気になる」

朝比奈「な、長門さんをして気になるという中河さんとは一体……あと、らぐびーとは一体……?」ゴクリ


ハルヒ「ゆ、有希? 会ってみたいというのは、その……交際するってこと!!?」オロオロ

キョン「なっ、ならん!! ならんぞ!!! お父さんそういうのはまだ早いと思うぞ!!!」ドン!

古泉「お二人共落ち着いて、気が早いです。ただ、長門さんは手紙をくれた殿方に興味を示しただけじゃあありませんか」

長門「……そう」

朝比奈「素敵ですっ」

ハルヒ「…………!」

キョン「……んあー分かった! もう一回中河に連絡をとって、今日のことを話す」

キョン「長門の返事と、とりあえずは面を貸せってことを……」

古泉「長門さんはそんな野蛮なことは言ってません」

ハルヒ「ま、まぁ有希が会いたいって言うなら仕方ないわ、本人の意思を尊重すべき? なのかしら?」

ハルヒ「で、この話は一旦ここまで! 今日わざわざここに集まった目的を忘れちゃいけないわ!!」

キョン「なにするんですか団長様」

ハルヒ「大 掃 除 よ!!! 一年間この部室に世話になったんだし、年の暮れぐらいはきっちり掃除して―――」

キョン「……もう……ダス○ン呼んでおくから……部費で」

ハルヒ「…………」

キョン「…………」

朝比奈「…………」

古泉「…………」

長門「…………」

ハルヒ「…………じゃ、じゃあ」

ハルヒ「あけおめ?」

キョン「それは意味わからんし、気がはえーよ」 


ハルヒ「それじゃあ、掃除はダス○ンに任せて、今日は解散!!」

キョン「なにもしてないけどな、なにもしてないけど目に見えないダメージを受けた気分だ」

朝比奈「……だす○ん、いわば、メイドさん?」ゴクリ

古泉「あの、朝比奈さん? それは過大解釈のような……」

ハルヒ「あ、有希とみくるちゃん。あんた達はあたしと一緒に来なさい。行くところがあるの」

朝比奈「ふえっ?」

長門「……」

キョン「なんだそれ、俺らは行かなくていいのか?」

ハルヒ「女子会みたいなもんだから、あんたらはあんたらで野郎同士仲良くやってなさい」

キョン「いやすぎる」

古泉「んっふ」

ハルヒ「そういうことだから」

ハルヒ「それじゃ有希、みくるちゃん! 行くわよ、ついてきなさい!」

朝比奈「は、はぁい。あ、キョンくん古泉くん、さようならー」

長門「……」

古泉「……」

キョン「……さて」

古泉「喫茶店にでも?」

キョン「帰るか」クルッ

古泉「…………」

古泉「ツレませんねぇ」フッ


ハルヒ「……」

朝比奈「あ、あのぅ涼宮さん、行くってどこに……」

ハルヒ「……まず真っ先にこの情報を知らなきゃいけない人のところよ」

長門「……」

朝比奈「ま、まっさき……に?」

ハルヒ「有希! 確か今日ってお昼ぐらいから年末のセールやってるから……」

長門「恐らく、向うべき場所に、いる」

ハルヒ「そ、読み通りだわ」

朝比奈「え、え? い、一体どこに……?」

ハルヒ「……『スーパー平安時代!!』よ」

朝比奈「……あ、てことは」

ハルヒ「ええ、あたしたちが今一番会わなければいけない人は……戦場(そこ)にいるっ!!!」

ハルヒ「急ぐわよっ!! もう戦いは始まってるみたいだし、加勢に行くわよっ!!!」

朝比奈「ま、待ってぇ!! 待って涼宮さぁん、長門さぁん!」

長門「食材は―――待ってはくれない」ギラッ

朝比奈「捕食者の目っっっ!!!!! さ、さっきまでのラブラブコメコメの空気はどこに行ったんですかぁ!」

ハルヒ「そんな甘い空気は戦場には流れていないわよっ!!!! みくるちゃんも、本日付けでデビューさせようと思ってるんだから!」

朝比奈「あ、あああああの、わ、わたしが入ったらし、死ぬっていう……戦場に!!?」ガーン!!

ハルヒ「大丈夫、いろいろあってあなたは強くなったわ……今なら全治1年で済む―――」

朝比奈「済んでませんよ!!?!?!? そんな覚悟でスーパー行かなきゃいけないんですか!!?」

長門「朝比奈みくる」

朝比奈「なっ、長門さん?」

長門「わたしたちが行くのはスーパーなどではない――――――戦場」

朝比奈「うわぁぁああぁあああん!!!!!! わたしにはこのノリは辛いですぅうう!!!! だ、誰か助けてぇえええ!!!!!」


スーパー平安時代!!前


朝比奈「……ううぅ」

朝比奈「(け、結局わたしのデビューはおあづけってことになって、待機命令が出たけど……)」

朝比奈「(……よく、涼宮さんと長門さんはあの中に……)」ゴクリ

朝比奈「(本当に、死者が出ないことが驚きです……この時代のおば様たちは強いんですね)」

朝比奈「(なんて言ったら怒られちゃうかな?)」

朝比奈「あっ、涼宮さん!?」

ハルヒ「くっ、あ、あたしが最初か……」フラッ

朝比奈「涼宮さんよく無事で!」

ハルヒ「後から入って先に出てくるなんて……団長として情けないわ」

朝比奈「い、生きて帰ってこれただけでもすごいことですよ!!」

ハルヒ「フッ、そうかしら……あ、有希」

長門「…………」ユラァ

朝比奈「な、長門さんも無事で……」

長門「あの場所は危険、狂気と怒号が渦巻く異空間。長時間の滞在は心身に影響を及ぼす」

朝比奈「そんなに!!?!?」ガーーン!!

ハルヒ「その中に―――もう一時間近く、戦ってる猛者がいる」

長門「熱気と暴力の戦場を駆け巡り」

ハルヒ「求める商品を誰よりも早く入手し」

長門「限定品の取りこぼしは一つたりとも無い」

ハルヒ「全ての食材を愛し、愛される。食材に選ばれた人――――――その名は!!!!」ゴゴゴゴゴゴ


















朝倉「大漁♪大漁♪ 長門さんと涼宮さんが来てくれたおかげで欲しいもの全部買えちゃった!」


















ハルヒ「我らが大将!! ぁぁあすぅあああくぅるぁああありょぉぉぉぉぉぉこぉぉぉぉぉおぉぉおおお!!! いえーーーーーーーい!!!!!!」フッフー!

朝倉「えっ!? なにそのノリ!? あ、朝比奈先輩、これは一体……?」ビクッ!!

朝比奈「すいません……戦場を知らないわたしでは分かりかねます……」


朝倉宅


朝倉「来てくれたのは助かったけど、SOS団女性陣が揃ってどうしたのよ?」

ハルヒ「…………あたしたちは、朝倉さん。あなたに、ある衝撃的な情報を届けるためにここにやってきたの」

朝倉「衝撃……ハッ!! ま、まさか二日続けての……特売セール……!!?!?!?」ガーーン!!

ハルヒ「ごめん、朝倉さんにとってのその情報ほど魅力的ではないかもしれない、けど……」

ハルヒ「とっても驚くことだとは思う。いーい? 今から言うことは事実だからね? それだけは分かっておいて?」

長門「日本に一日5食制が導入された」キラーン!

朝倉「えっ!!?!?」ビックゥ!!

朝比奈「あ、それは嘘……」

ハルヒ「とりあえず有希は置いておいて、いえ、本当は有希が主役となるべき話なんだけど……」

朝倉「なに? 長門さんの、話?」

ハルヒ「…………っ、ごめんなさい。あたしの口から言うのは、無理みたい……っ!」

ハルヒ「みくるちゃん……お願いできるかしら?」

朝比奈「は、はい……いいですけど」

朝比奈「(なんで涼宮さんは一人シリアスに入ってるんだろう……?)」

朝倉「それで、長門さんの衝撃の話って言うのは……」

長門「…………」

朝比奈「あ、えーっとですね、長門さんがキョンくんから告白を受けたって話なんですけど……」

ハルヒ「えっ!!?!?」

朝比奈「あ、言い間違―――」















































朝倉「                は?                    」


























ハルヒ「ちょ、みくるちゃん!? やーねもう! ほ、ほらちゃんと言い間違いを訂正し―――」

朝倉「ちょっとちょっとちょっと? それって一体全体どういうことかしら? キョンくんが? 長門さんに?」ピキピキッ

朝比奈「ちちち、違うんです! 違います!!! 本当はただ言い間違えただけで!」

朝倉「長門さん? キョンくんになんて言われたの?」

長門「……『長門のことが好きだ!!』」

ハルヒ「だぁぁああああああ有希ぃいいいいいい!!!!!! 話をややこしくしないでぇえええええ!!!!!!」ガシッ!

朝比奈「そそそそうですよぉ!! 『ナゲットのここが隙だ!!』とでも言っておけばいいんですよぉ!!」

朝倉「なるほどなるほど、つまりはあれですか、キョンくんは長門さんに交際を申し込んだ、と……へぇ」

朝比奈「ち、違いますっっ!! あ、朝倉さん!! 長門さんはキョンくんからじゃなくキョンくんのお友達から告白されたんですっ!!」

朝倉「…………え? 谷口くん?」ヒキッ

朝比奈「あ、中学時代の……」

朝倉「あぁ……キョンくんに中学生時代があったのね……なんだ、キョンくんが長門さんに告白したんじゃないんですね」

ハルヒ・朝比奈「「……ホッ」」

朝倉「それで? 長門さんに告白をしたという殿方はどこに?」

ハルヒ「狩る気だ!!!」ガタッ!

朝倉「違う! どんな人か知りたいだけっ!! っと、ていうか長門さんはその、告白にどう返事したの?」

ハルヒ「なんかねー、その、中……プーさんって人がね」

朝倉「あたし! 手に職がない人はどうかと思うな!」ガタッ

ハルヒ「そのプーさんじゃないわよ、ただのあだ名。で、その人がまだ自分は有希と釣り合っていないから、待ってくれますか的なことを言ってて……」

長門「待つことはできない」

朝倉「あ、そうよねぇー。さすがに会ったこともない人のそんな突飛な発言を鵜呑みに―――」

長門「しかし、会ってみてもいい」

朝倉「」

朝比奈「(あ、キョンくんと涼宮さんとまったく同じリアクション)」クスッ

長門「気になる」

ハルヒ「……とのことでして」

朝倉「」

ハルヒ「…………聞こえてる? 生きてる?」ブンブン

ここまでー
続き物の5スレ目でやんすー


前スレ

ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」
ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」 - SSまとめ速報
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ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」
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ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」
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ハルヒ「キョン「TUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」
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ハルヒ原作ベースでやってます。よろしくどうぞ!

>>キョン「……マーズかったか」ドヤッ!
なんで俺こんなので笑っちゃったんだろう……

>>34
大丈夫だ、俺もそこで笑ったよ

20時までには投下―

舞ってる

とーかー


朝倉「」

ハルヒ「で、あたしは言ったわけよ! 『いやそれ肩から紐出るタイプのやつだから!!』ってね!」

朝比奈「ぷっ! あはははははっ!! す、涼宮さん笑わせないでくださいよぉ! あっはははは!!!」

長門「ユニーク」

ハルヒ「でっしょー! おっかしいったらないわ!! あはははっ!!!」

朝倉「」

朝倉「ハッ!! いやそれどんな時使うツッコミなのよ!!?!?」ビッシィ!!

ハルヒ「あ、ようやくお目覚めね朝倉さん。あなたの放心状態の間に話題は二転三転したのよ」

朝倉「そんなどうでもいい話題は置いといて!! 長門さん! あって、会ってみたいって言ったの!?」

長門「気になる」

朝倉「そっ、それは恋愛対象として、ってこと……っ!?」

長門「……今はまだ分からない。ただ、会った時どう思うかは分からない」

ハルヒ「つまり、なにも分からないということね」

朝倉「そんな……あのインドア派かつ、無関心系の長門さんが……よりにもよって見知らぬ異性に会いたい……だなんて……」

ハルヒ「まだ会うかどうかは決定してないわよ。向こう側の返事待ち……とは言っても返事は予想できるけど」

長門「これ」スッ

朝倉「? なにこれは?」

朝比奈「それ、長門さんがもらったラブレ―――」

朝倉「!!」バッ!!

朝倉「……………………」

ハルヒ「熟読してるわね」

朝倉「…………ちょっと!!!」

朝倉「バブル崩壊から現在までの諸問題の記載漏れがいくつかあるんだけど!!」プンプン!

ハルヒ・朝比奈「「いやそっちにツッコむの!!?!?!?」」ガーン!!


朝倉「まったく……なんでラブレターに日本経済の話が……」

ハルヒ「読んだ人全員がツッコむわよね、そこ」

朝倉「というか、会ったこともない人によくこんなラブレターを書けるわね、恥ずかしくないのかしら?」

ハルヒ「逆に会ったことないから恥ずかしいもなにもないでしょ」

朝倉「なるほど……ねぇ長門さん、もし、もし、もしもしもしもしだけど」

ハルヒ「電話かあんたは」

朝倉「もし、実際長門さんが、この……プーさん? に会って、その、なんて言うのかしら?」

朝倉「長門さんの……好み?(があるのかないのかは分からないけど)それに当てはまったら……どうするの?」

朝比奈「そ、それはもちろん!!」

長門「観察対象にする」

朝比奈「付き合……観察対象にするんですか!!?!? あ、まずは相手をよく知るところからってことですか!!!?」ガーーン!!

朝倉「(……長門さんにとっての好みは、興味の有無だったりするのかしら?)」

朝比奈「そ、その長門さん。普通に、付き合ったりとかは……」

長門「……互いの持つ情報を交換したりしたい」

朝比奈「…………連絡先交換のことですか!?」キュピーン!

朝倉「いや……普通にプーさんを構成する情報要素のことだと……」

ハルヒ「そりゃあれでしょ? ハチミツでしょ? 赤いベストでしょ? あと、ロビ―――」

朝倉「そのプーさんじゃないから。でも、そっか……そうよね」

朝倉「あくまで長門さんにとって彼は興味の対象であって、恋愛の対象ではない、ってことよね! あー、なんか安心したわ」

ハルヒ「おっと、朝倉さん。そう決めつけるのはちょっと早いんじゃないかしら?」

ハルヒ「あたしは恋愛に絡むオカルトとかは信じちゃいない、むしろ恋愛自体、一種の精神病とも思ってるけど」

朝倉「それはちょっとどうかと」

ハルヒ「一目惚れなんて言葉があるくらいだし、もし有希にとってそれほど魅力のある相手だった場合は……」

ハルヒ「仲人と姑の練習を……しといた方がいいわよっ!!!!」

朝倉「そんな練習ないわよっっ!!!!!! ていうか別にあたしお母さんじゃないし!!!」


朝比奈「ま、まぁ実際会ってみないと分からないこともありますし……」

ハルヒ「そうそう! あたしだって実際宇宙人や未来人に会ってみたら、あ、以外と大したことないのね! って思うかもしれないし!」

朝倉・朝比奈「「はは……(一通り驚いたあとに、本当にそう思いそう……)」」

ハルヒ「まっ、とりあえずは向こうからの連絡を待つってことで―――」pipipipi

朝倉「電話? 長門さん?」

ハルヒ「キョンからじゃない!? プーさんと連絡とれたとかっ!?」

長門「……」スッ

長門「…………そう」

朝比奈「……」ゴクリ

長門「…………そう」

朝倉「……」ゴクリ

長門「…………了解した」

長門「……ウーリャペ―――」

ハルヒ「有希!!その電話キョンよねっ!? ちょっとかわってくれる!!?」

長門「……」スッ

朝倉「(いや今長門さんが何言おうとしたのかすっごい気になるんだけどぉおおおおおお!!!??!?)」

ハルヒ「キョン!! プーさんと連絡取れたの!? え!? うん! そうそう!」

ハルヒ「それで! いつ……明日ぁ!? ちょっと急すぎない!!? うん、うん」

ハルヒ「まぁあたしは空いてるし、有希も行くならもうSOS団全員で行くけど、うん、いや、無理だから、うん!」

朝比奈「(何を断ったんだろう……)」

ハルヒ「それじゃ決定ね!! 詳しいことは今日中にみんなに連絡しなさい!! じゃ、オーバー!!」pi

朝倉「……」

朝比奈「……」

長門「……」

ハルヒ「……だって!」

朝倉「いやちゃんと説明してよ!!!」


ハルヒ「カクカクシカジカキョンモシカノウチ」

朝倉「なるほど……明日の試合に見に来てほしいと」

朝比奈「部活でかっこいいところをアピールするんですね!」フンス!

ハルヒ「有希、もちろん行くって返事したのよね!?」

長門「……」コクリ

ハルヒ「よし……ということであたしも行くわ!」

朝倉「どんなわけでっ!?」

朝比奈「あ、あのぅお邪魔でなければわたしも……」

ハルヒ「SOS団の非常事態はSOS団で解決するのが常なのよ!」

朝倉「別に非常事態ってわけじゃ……」

ハルヒ「でも朝倉さんも行くんでしょう?」

朝倉「行くけど? そりゃもう行っちゃうけど?」

ハルヒ「ノリノリ、ってか完全に保護者目線じゃない……」

朝倉「そりゃあ変な輩が長門さんに近づこうものなら止めてあげるのが優しさじゃない?」

ハルヒ「ふふん! 決まりね! もはやお馴染みのSOS団+αで明日、試合観戦にいくわよーっ!!」

朝比奈「お、おー!」

長門「……」

朝倉「(…………ふぅむ)」

朝比奈「涼宮さん、試合ってなんの試合何ですか?」

ハルヒ「えーと確か、アメ、アメ……アメリカと殺試合……」

朝比奈「ひえぇええぇええええぇぇぇええええぇぇぇええぇえええええ!?!!?!??!!!!?!??!!??」ブクブク

ハルヒ「つまり戦争よ!!! 言い換えれば!!!」

朝倉「それは絶対違うと思う!!! どんな曲解よ!!!!」


喫茶店


キョン「……また言うだけ言って切りやがった、やれやれ」ハァ

古泉「それで、僕の予想通りSOS団全員参加は決定しましたか?」

キョン「……お前の予想以上の、SOS団+αの参加が決定したようだ」

古泉「朝倉さんですか」

キョン「品定めでもするつもりか、アイツは」

古泉「にしても……どこにでも彗眼を持つ人はいらっしゃるみたいですね」

古泉「北高でも隠れた人気を誇る長門さんに目をつけるとは……お眼が高い」

キョン「チッ……プーさんの野郎。こんな抜け駆けじみた真似してると奥手な長門ファンクラブも黙っちゃいねえぞ」

キョン「得意技のネットでの誹謗中傷の標的に……」カタカタ

古泉「止してあげましょう。彼は好きな人に自分の気持ちを伝えただけなんですから」

キョン「伝えたのは俺だけどな、長門ファンクラブ会員ナンバー一桁の俺がな!」

古泉「朝比奈ファンクラブと掛け持ちしている方も……多そうですねぇ」

キョン「やれやれ……プーさんのせいで明日の休みがなくなっちまったじゃねえか」

古泉「……中河さんは、長門さんのどこに魅力を感じたんでしょうかね?」

キョン「……安っぽい言葉で言うなら全部、だろ。大体一目惚れっつぅのはそういうもんだろ」

古泉「そうですね、しかし、ただの一目惚れで説明するには、彼のとった行動は少し異常ではありませんか?」

キョン「一目惚れじゃなくても異常だろうよ、そんなに話したこともない奴に恋文の伝言を任せるなんざな」

古泉「内容も内容です。彼は今ではなく明らかに未来についての人生設計を考えていました」

キョン「日本経済の話に発展させるまでにな」

古泉「はっきり言わせてもらうと、一目惚れ『程度』でここまでの行動を起こすなんてありえないんですよ」

キョン「…………『程度』ねぇ」


キョン「そんなことはないだろう。精神論を語るつもりはないが、気合や気持ちというのは確かに存在する」

古泉「確かに、好きな人を思うあまり自分の能力以上の力を発揮することは稀にあるかもしれません」

キョン「稀によくあるよな」

古泉「例え、それが会ったことも話したこともない人でもね。憧れや羨望がまさにそれです」

古泉「長門さんに見合うため努力をする。殊勝な心がけじゃありませんか、ただ」







古泉「彼は長門さんと言う存在を見てはいない。いえ、見えてはいない、と言い換えましょうか」







キョン「……どういうこった。奴の目には特殊な錯覚でも働いているのか?」

古泉「そうではありません。ただ、彼は長門さんよりももっと魅力的な存在を感じた」

古泉「そう、僕たち人間なんかの知能では到底理解ができないようなものに、衝撃を受けたんですよ」

古泉「その衝撃を彼は恋と勘違いし、一目惚れだと銘打った……というわけですよ」

キョン「……」

古泉「僕から言わせてもらえば彼も特別な、おっと、珍しい力を持つ者の一人です、超能力……が一番言い得てるでしょうか?」

古泉「情報統合思念体を感じ取る超能力……それにより、彼は長門さんのバックの思念体を感じ、衝撃を受けた……」

キョン「……ふーん」

古泉「…………僕の推測に、なにか間違いがありますか? 長門さんには失礼かもしれませんが、これが僕の思いうる最も可能性の高い推測です」

キョン「…………いんや、俺もそうだと思うし、実際中河は今でも長門に恋をしてると勘違いしてるだろう」

キョン「長門の親玉の、情報統合思念体の威光とやらに充てられてな」

キョン「あ、俺は先日会いに行ったけど、別にアイツに惚れたとかそういうんじゃないからね!!」

古泉「会いに!!? アイツ!!? ツンデレ!!?!? その一言の情報量が凄まじいっ!!?!?」ガーーン!!


キョン「だがな、古泉。俺もお前にも言えることは『今はまだ』ってことだけだ」

古泉「今はまだ……?」

キョン「聞いたことあるだろ? 恋はいつだって突然にってな」

古泉「それは……つまり」

キョン「ま、長門も中河も互いに会ってない状態で話を進めてもなんにもなりゃしねーよ」

キョン「もしかしたら、俺とお前の推測がてんで的外れで、本当に一目惚れしただけかもしれないしな」

古泉「一目惚れであそこまでの行動を起こすとは……」

キョン「いるんだよなぁ、そういう奴……今までだって俺は結構見てきたぜ、そういう奴」

キョン「弟のために国家を敵にまわしたやつとか、飼い犬のためにウン十年の寿命を捨てたやつ」

古泉「……」

キョン「人の感情なんてそれこそ人の数だけ存在するんだからよ、いわば例外だらけで正解なんてないんだよ」

キョン「一目惚れ『程度』だなんてバカにしちゃいけねえよ、中河が長門のために世界を変えちまうぐらい行動を起こすかもしれないしな」

古泉「……そう、ですか」

キョン「…………まぁ、もし本当に長門と付き合おうってんならまず第一の課題に俺を倒せっていう課題を―――」

古泉「絶対に無理!!!!! それはさすがに無理難題すぎませんか!!?!? 太平洋でコンタクトレンズを探すよりも難しいですよ!!?」

キョン「そ、そんなに評価されてるのか? さ、さすがに太平洋でコンタクト探すよりかはチャンスあると思うんだが……人間だもの」

古泉「……そもそも、長門さんが誰かと付き合う、というビジョンが僕には浮かびませんが……」

キョン「長門を引き付けるやつなんてめったにいねえよ、ただし食べ物を除く」

キョン「ま、長門が中河に会えばすべて分かることさ、それじゃ、また明日な。支払いよろしく」

古泉「また明日……と、安いものですね、喫茶店代であなたの考えを聞かせてもらえるなら、ね」クスッ


『キョン、僕は恋をしたかもしれない』

『ほう、お前からそんな言葉を聞くとはな……で、相手は誰だ?』

『阪中さんちの忠犬に』

『人じゃないのかよ!! というか犬に恋愛感情が芽生えたのかお前は』

『ふむ、恋愛感情と言われると、その実、そうでないのかもしれない』

『ただ、あの忠犬を見ていると、無条件に無償の愛を注ぎたくなるんだ』

『……それはただ単に、愛というかは愛おしい、つまりはかわいがりたいと思ってるだけじゃ……』

『ああ、なるほど。これが愛おしいという気持ちなのか。僕自身、感情の理解が進んでいないみたいでね』

『さすがに犬に恋をするってことはない、と思いたいがな』

『にしてもよかったよ、君と阪中さんちの忠犬に向ける感情が同じではなくて』

『ん、それはつまり俺は愛おしいと思われる対象ではない、ということか?』

『その通り。僕は別に君を愛でたい、とかかわいがりたいとは思っちゃいない』

『好意的感情よりかは嫌悪的感情の方が勝っていると? 辛辣だな、おい』

『くつくつ、バカなことを言っちゃいけない。どこの世界に親友に嫌悪的な感情を抱くものがいる』

『愛憎という言葉があってだな……』

『説明しがたいけど……そうだね、僕が君に抱く感情……信頼や友愛……じゃなくて』

『……ううむ、どうやら僕の拙劣な感情と口では君との関係をうまく言語化できないようだ』

『いいんだよ、そんな俺たちの関係に詳しい感情の説明なんて』

『俺たちは【親友】だろ? それだけ分かってりゃ、別に好きであろうが嫌いあろうが、愛してようが憎かろうがなんだっていいさ』

『…………そういうものかな?』

『そういうモンそういうモン。小難しいことなんて考えなくていいのさ』

『……くつくつ、そうだね。そういうことにしておこう。あ、そうだキョン』

『ん?』

『僕はキョンのこと、どっちかといえば、嫌いで憎いと思うよりかは』

『―――好きで、愛していると思っているつもりだよ』

『……………………ワン』

ここまでーーー
聞きたいんだけど、今でもハルヒssのおすすめスレってあるの?

>>51
オススメか…

ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」

ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」キョン「退屈しないだろ?」

ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!!」キョン「暴走するなよ?」

ハルヒ「「キョンTUEEEEEE!!!!!!」キョン「消失してるぞ?」

この4つかな

>>51
ハルヒ「IBN5100を探しに行くわよ!」
ハルヒ「IBN5100を探しに行くわよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438088111/)

ハルヒ「IBN5100を探しに行くわよ!」後編
ハルヒ「IBN5100を探しに行くわよ!」後編 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440167272/)

>>51

キョン「例えば」

キョン「もしも」

キョン「長門って何でも知ってるよな」長門「そうでもない」

古泉「本当は?」ハルヒ「キョンを愛している」

今日中には投下―

思いの外早くに投下―


翌日


ハルヒ「…………」スタスタ

ハルヒ「(……よもや)」ピタッ

ハルヒ「(SOS団不思議探索外の今日の待ち合わせに、あたしが1時間半も前に来るとは思うまい!!!)」

ハルヒ「(勝った!! これであたしの完全勝利!!! 団長の威厳を取り戻したのよっ!!!)」

キョン「おー来た来た。早いじゃないかハルヒ」

朝比奈「あっ、おはようございます涼宮さん」

古泉「おはようございます」

長門「……」

ハルヒ「……そう思っていた時期が、あたしにもありました」

朝比奈「えっ? それってどういう……」

ハルヒ「なんで!!? なんであんたたちは待ち合わせに設定した時間よりもいつもありえないぐらい早くにいるの!!?」

ハルヒ「もしかしてあたしを除く四人で集合時間の変更とかを計画しちゃってたりするの!!?!?」

古泉「性分なんですよ」

朝比奈「じ、時間に余裕を持ちたくて」

長門「……遅れるわけにはいかないから」

キョン「実を言うと俺は既に二回寝過ごしちゃって今日という日を繰り返すのは三度目なわけで―――」

ハルヒ「もういいわ!!! さっさと行くわよ! さあ早く!!」

古泉「……とは言っても、皆さん随分早くお集まりになられたので、少々時間がありあまって……それに」

ハルヒ「なんなの!!? 本当になんなのこの無駄な待ち合わせ時間設定!!!!」

ハルヒ「逆に誰も時間守ってないことに該当するわよねこれ!!? 真面目すぎるのも時としてどうかと思うけど!!? ねえ!?」キーッ!!

キョン「朝から元気なこって……ああ、あとハルヒ。今日に限ってはお前は最後に来たわけじゃないぞ?」

ハルヒ「え?…………あ!」ピコーン

一時間後


朝倉「おはようー、みんな早いのねぇ、さすがはSOS団」

ハルヒ「…………ねぇ、みんな。あんたたちはいつもあたしを待つのにこのぐらい時間かけてるわけ?」

古泉・朝比奈「「はい」」

古泉「ですが、涼宮さんも集合するのは早い方なので、待つ時間はこれほどはありませんね」

朝倉「??」

ハルヒ「……その間、さっきみたいに『昨日の晩御飯なに食べた?』とか取り止めのない会話してるわけ?」

朝比奈「え、えぇまぁ」

古泉「(涼宮さんを待っているときは、少々込み入った話になることもありますけどね)」

ハルヒ「フゥー……じゃあ言わせてもらうわね? みんな……」

ハルヒ「無!!!!!!!!!!駄っ!!!!!!!!!!!!」バーーン!!

朝比奈「か、過去最大級に声を張ってますぅ!!」

ハルヒ「この一時間、なんの変化もなく!!! ただ朝倉さんを待ち続けただけ!!!!!」

朝倉「え? え!? い、一時間も前から!!? な、なんかごめんなさい……そんなルールがあったなんて」

ハルヒ「むしろこっちがごめんなさいね!!! なんか変な気を使わせて!!!! SOS団のこういうところに関してはあたしでさえおかしいと思う!!!」

ハルヒ「いや確かに朝倉さんの存在を思い出して最後に来たわけじゃないって浮かれてたけどね!!! 限度があるわ!!!! 一時間て!!!!」

ハルヒ「もっとルーズになりなさい!!!! もっと時間にルーズになっていいのよみんな!!!」

ハルヒ「あたしを待たせたっていいじゃない!!!! この現状を知っちゃった今、あたしは集合時間の何時間前に来なきゃいけないのよ!?!!?!?」

古泉「いえ、僕としましては先ほどのような時間も、のんびり過ごせて脳の目覚めにはちょうどいい、必要な時間なんですよ」

朝比奈「あ、わたしもです。始めはちょっとボーっとしてるけど、話してたら頭がスッキリするっていうか……」

ハルヒ「……まぁ、完全に無駄な時間と言うのは少し改めるわ……あなたたち二人に対してはね、ただ!!!」

長門「…………………………………………」

キョン「……zzZ……んがっ!?」

ハルヒ「この二人に関しては早く来て寝てるだけよね!!!? なら家で時間まで寝てた方がいいわよね!!?!?」

長門「………………眠っては、いない…………スリープ、モード」

ハルヒ「直訳でも寝てることになるわ!!!!!!!!! 有希!!? 今日はアンタが主役なんだからしっかりなさい!!?」ユッサユサ!!

長門「………………シャット…………ダウン」

ハルヒ「なんでさっきから電子機器なのよ!!!?!?」ガーーン!!!


古泉「では、全員そろったことですし……」

ハルヒ「行きましょ!!!! アメ、アメ……リ、フト!!!! そう! アメフトの試合! アメフトの試合を見るのよ今日は!!!!」

朝比奈「あめふと……」

古泉「アメリカンフットボール、その名の通りアメリカが起源であるラグビーに似たスポーツですね」

朝比奈「な、なるほど!(ら、らぐびー……)」

ハルヒ「はい!はい! あれでしょあれでしょ!! このポーズの……ルーティーンの!!!」スッ 

朝倉「それはラグビーの方……」

ハルヒ「 _(:зゝ∠)_ 」

朝倉「それルーティーンじゃなくて釈迦の入滅時のポーズだから!!!! そんな横たわる暇ないから!!!!!! ていうか誰が分かるのよ!!」ガーーン!!

ハルヒ「なあーんだ、でもアメフトとラグビーなんて一緒でしょ? 同じ楕円形のボール蹴って持って走るとことか」

古泉「素人目には同じに見えるかもしれませんが、実はルールからして全くの別物のようですよ?」

ハルヒ「ふーん、ま、見てみないことにはどうも分からないわね!! というわけでっ!!」

ハルヒ「せいっ!!!」バシッ!!

キョン「んふぁっ!!?!? あ…………おー、おー……なるほど……zzZ」

ハルヒ「なにに納得して二度寝してんだあんたは!!!!!!」バッシィイ!

キョン「痛っ!!!! やめろよ……モンロー」ウトウト

ハルヒ・朝倉「「マリリンのっっ!!?!?!?!?」」バシッ!! バシッ!!!

キョン「あ痛たーっ!!!!! あー!! いてーー!!!!! あーーー!!!!! おはよう!!!!!」

朝倉「流れで朝の挨拶を!? お、おはようキョンくん……」

キョン「ん、朝倉が来たってことは、全員揃ったってことだな、んじゃ行くか」

ハルヒ「ちょっと! さっきのモンローってあんたと一体どんな関―――」シュン!!!
































長門「……………………………………………………」ユラユラ

キョン「いっけね!」シュン!

キョン「本日の主役を置いてけぼりにしてた、起きろ長門、行くぞっ!?」

長門「…………………………」パチ

長門「……問題ない、起動完了」

キョン「よーしゃ! それじゃひとっとびー!」シュン!!


キョン「よっ」シュン!!

長門「……」シュン!!

朝倉「あ、来た」

ハルヒ「キョン!! 有希は今日の主役なのよ!? 忘れて瞬間移動するなんてどういうつもりよ!!?」

朝比奈「(…………瞬間移動に疑問を持たなくなるって不思議だなぁ)」

キョン「まぁまぁ、おかげで長門もバッチシ起きたし結果オーライじゃないか」

朝倉「なんのおかげよなんの」

古泉「試合開始まであと少しですね、今なら練習風景を拝見できるみたいです」

ハルヒ「もちろん、注目選手であるプー・サン選手を事前にチェックしておかなくちゃ!!!」

朝倉「どこの助っ人外国人よ。でも、確かにどんな人かは気になるわね……」ワクワク

朝比奈「本当に熊さんみたいな見た目なのかなぁ……」

キョン「よし、じゃ俺は温かい飲み物と食べ物でも買っていくから先席行っててくれ」

長門「わたしも行く」キラーン!

朝倉「あなたはこっちでしょ、あなたが気になるって言ったんだもの。しっかり目に焼き付けなさい」

長門「…………気になると言ったのはむしろこの男子校の学食のメニューのことであり、その調査のためわたしは―――」

朝倉「はいはい、そのちょっと本気っぽい言い訳はいいから。さっ! えー……プー太郎さんを見に行きましょっ!」

朝比奈「朝倉さん、それ違う」

古泉「代わりに僕が付き合いましょうか?」

キョン「お、悪いなー古泉。じゃあ頼むわ」

古泉「いえ、この程度ならお安い御用―――」

キョン「俺コーヒーと肉まんな、あとは適当に……朝比奈さんの飲みものは甘めのやつにな、それと長門もいるから飯は多めにな、じゃ先行ってるわー」スイー

古泉「はい」

古泉「………………あれ?」


ワーワー!!


ハルヒ「おーやってる!やってるー! 気合十分って感じね!」

朝倉「さて、と……プーさんこと中河くんはどれかなー?」

キョン「あれだな、白のユニフォームの82番」

ハルヒ「あれっ? あんた飲み物とか買いに行くって言ってなかった?」

キョン「古泉が行きたいんだと」

ハルヒ「ふーん」

朝比奈「ほぇー……本当に熊さんみたいに大きい人ですね」

朝倉「ふむふむ、確かに体は大きいけど結構俊敏に動いてるわ」

ハルヒ「パワー×スピード=破壊力っっ!!!!!!」ゴオッ!!

キョン「ドーピングにハチミツを使うと全身の毛が金色になるらしい」

朝倉「だからプーさんか!」バシッ!

ハルヒ「むしろサイ○人か!」バシッ!

キョン「痛ぇ……なんでプーさんぼかさない癖にそっちぼかすんだよ……版権的にゃ逆だろうに」

長門「……ハチミツ」

朝比奈「こ、古泉くんが何か買ってきてくれるみたいですから、それまで我慢してくださいぃ……」

ハルヒ「がっちがちに装備固めてるとこからして……立ち技オールオッケーと見た!!」

キョン「そんな総合格闘技的なルールはねーよ。大体あの装備は強すぎる自ら力を封じ込める役割をしてるだけだからな……」

ハルヒ「なにそれ!! かっこいいじゃない!!!」キラキラッ!

キョン「ふっ……ちなみにだが、俺のこの右腕にはかつて魔界の炎を喰らいつくしたとされる邪龍が巣食ってるんだぜ?」ジャラン

ハルヒ「……ん?」

キョン「……んーん、なんでもない」

古泉「……皆さん、飲み物と食べ物買ってきましたよ。お好きなものをどうぞ」

長門「そう、これが本来の目的―――ミッションコンプリート」スッ

朝倉「長門さ-ん!! 一目でも中河君見てあげて!!! ほら! もう少しで全身の毛が金色になるから!!! ね!!?」ワタワタ


朝比奈「あ、始まった」

ハルヒ「さっきから思ってたけど、なんで選手がまるごと出たり入ったり入れ替わったりするわけ?」

キョン「仕様だ」

ハルヒ「仕様かぁ……だったら仕方な……どんな仕様よ!!! ただそういうルールがあるってことでしょ!!! 説明しなさいよ!」

古泉「攻撃専門の選手と守備専門の選手に分かれるみたいですね、ちなみに、中河さんは攻撃専門のようですね」

朝倉「なるほど、その攻撃専門の積極性が、こんかいの騒動を招いた……と」フムフム

キョン「そんな関連性はない」

朝比奈「うわぁ……すごい迫力ですね」

ハルヒ「頭に血でも昇ってないと恐怖や痛みで試合にならなそうだわ、キョンこれやったことあるの?」

キョン「あるぞ、一回だけだけどな」

ハルヒ「へぇ、結果は?」

キョン「いや、それがな途中でケガしちまった無効試合になっちまったんだよ」

ハルヒ「なによそれ、せっかくでたのに残念ね。どこ怪我したの?」

キョン「どこって……頭、肋骨、肩甲骨、指、腕、尾骶骨、脛、膝、腱……」

ハルヒ「ちょっとちょっと! 思いの外大ダメージじゃない!! よく生きてたわねーあんた」

キョン「?? なんで俺なんだ? 俺は別にどこも怪我してないぞ?」

ハルヒ「え? でも怪我で無効試合って……まさか」

キョン「おぉ、相手チームのことだよ、それも全員。そんな一人が怪我したところで無効試合になるスポーツじゃねえってこれ」ケタケタ

ハルヒ「いやよく笑って言えたわねあんた!!!! たった一回だけ出た試合でそんだけの怪我人だすってあんた何!!? 死神!!?」

キョン「馬鹿野郎、誰も死んじゃいねえし殺しちゃいねえよ」

ハルヒ「当たり前よ!!!! 怖いわ!!!」


キョン「まぁ、ただ……」

ハルヒ「ただ?」

キョン「それだけ怪我人がでるスポーツだってことには、変わりねえがな」

長門「……」

ハルヒ「まぁ、それは確かに。あれだけ激しくぶつかってりゃあね」

朝倉「ふぅん……よくわからないわね、点数が入ってどっちが勝ってるかは分かるけど……」

ハルヒ「そうね、試合見ても戦況の優劣はあんまりピンとこないかしら」

キョン「なら古泉でも混ぜてみるか? 一発で一般人とやつらの違いが丸分かりだぞ?」

古泉「やめてください、死んでしまいます」

朝比奈「……さぶいっ」ブルッ

朝倉「あー確かに。あたしたちはジッとしてるから見てるだけじゃ寒いですよね」

ハルヒ「キョン! なんか暖かくなるものだして!!」

キョン「そうやってなんでもかんでも俺にいやぁ出てくると思うな、便利なものは人をダメにするんだぞ。誰がものだこら」

朝倉「一人で何言ってるのよ……」

キョン「寒けりゃマラソンでもおしくらまんじゅうでもしてろ、それで十分暖かくなるぞ」

ハルヒ「ケチ!」

朝比奈「うぅ……」ブルブル

キョン「さて、とは言っても俺も寒くなってきたし、おや朝比奈さん寒そうですね、それじゃ僕と相撲でもしませ―――へぶっ!!?」ドカッ!!!

ハルヒ「おしくらまーんじゅう!!!! 押されて死ぬなーーっ!!!!!!!」ドーーン!!

朝倉「それどんな危険なおしくらまんじゅう!!? 現に結構首へんな方向向いてる人いるけど!!?」

キョン「テメェ……おぉおおおしくるぅらぁああああまぁあああんじゅっっ!!!! 押されて死ねぇぇええええええええ!!!!!!」ドンッッ!!

朝倉「殺意をもってやる遊びではないっっ!!!!!!!」ガーーン!!

古泉「ふむ、あれがタイトエンドであれがぁああぁああああああぁああぁあああああああ!!?!?!?!?」ビッシャァアアア!!!

朝倉「古泉くーーん!!!! ほぼ唯一真面目に見てた古泉くーーん!!!! 古泉くんと中河くんの両者に悪い結果に!!!!!!」


古泉「」

キョン「ザオリク」パァア

古泉「……っつ、強烈な一撃でしたよ……あやうく死ぬところでした」

朝倉「……いや今不穏な呪文が聞こえたけど? もしかしてほんとに死んでなかった? 一回三途の川渡ってなかった?」

ハルヒ「はぁ! なんかだんだん温まってきたかも! やっぱ体を動かすのが一番だわ!!!」

朝比奈「おしくらまんじゅうでもこのレベルなのに、あっちの人達はすごい勢いでぶつかってますね」

キョン「……そう、だからこそ」

長門「――――――」

朝倉「―――……」







ドガッッ!!!!







キョン「―――こういう『事故』が起きるんですよ」

ハルヒ「あっ!!! カーネル!!!」

キョン「『サンダース』から派生したあだ名つけてんじゃねえよ。あーありゃ脳震盪は確実だ、試合は無理だな」

朝比奈「ひ、ひえぇ……け、怪我が! 怪我が!」

古泉「……どうやら一先ずは大丈夫の様です。意識はあり、質問の受け答えもしている。CTをとってみないことには安全とはいいがたいですが」

ハルヒ「なんか……残念ね、せっかく有希が見に来てくれたのに」

朝比奈「気づいてなかったのかなぁ……あまりこっちを見てたようにも見えませんでしたね」

長門「…………」

朝倉「……怪我を引きずらないことを祈るわ」

キョン「よぉし古泉!!! プーさんの代わりに出場してこいっ!!! 安心しろ!! もし死んでもさっきみたいに生き返らせてやるから!!」

古泉「丁重にお断りします!!!! 死ぬ危険があるのは『あそこ』だけで十分です!!! ん? さっきみたいに…………え?」

長門「……」


ハルヒ「やっぱり病院に行くみたいね」

朝比奈「お友達、無事だといいですね」

キョン「朝比奈さんのその言葉だけで、無事みたいなものですよ、ええ」

朝倉「どんな理屈よそれ」

古泉「となると……本来の目的である中河さんがいなくなった以上、これ以上この場にいるのは些か時間の無駄ということになりますね」

ハルヒ「そうね! この流れで言うと有希がプーさんのお見舞いに行くっていうゴールデンコンボで〆ね!!」

キョン「いやなコンボだな、病院に運ばれること必須かよそれ」

ハルヒ「そうと決まればさっそく病院に―――」

古泉「ですが、全員で押しかけては少し迷惑になりかねます。ここは長門さんと彼……あとは朝倉さんに行ってもらうことにしましょう」

朝倉「え、あ、あたしも? 長門さんとキョンくんは分かるけど……どうしてあたし?」

ハルヒ「そりゃ……ここぞとばかりにいびらなきゃなんの意味が……」

朝倉「だから姑じゃないってば!!! さすがにそんな不謹慎なことしたくないわよ!!!!」

古泉「まぁ、長門さんをよく知るお方としてお付き添いください。さて、涼宮さん我々の方は『例の計画』の最終段階の打ち合わせを……」コソッ

ハルヒ「!! そうだわ!! それがあったのよ!! ふふ、密に練ったこの計画は誰にもバレ―――」

キョン「おう、SOS団冬季合宿の方は任せたぞ、ちゃんと進めててくれよ」

ハルヒ「……………………」

古泉「……もちろん、彼に言ってなどいませんよ?」

ハルヒ「……く、くふふ……ば、馬鹿め! バレているのも作戦の内とも知らずに!」プルプル

朝比奈「(すっ、涼宮さんが涙目に……)」

朝倉「(なんの作戦の内なのよ……)」

古泉「……それでは、ご友人にお大事にとお伝えください。あと、病院の場所は……言う間でもありませんか」

キョン「おう、それじゃ行ってくる」

ハルヒ「有希! ちゃんと話してくるのよ!! それで後でちゃんと報告すること! 分かった!?」

長門「…………善処する」シュン!!

朝比奈「行っちゃった……あ、あのぅSOS団冬季合、い、いえ! 『例の計画』っていうのは……」

ハルヒ「…………キョンのばがぁぁあああああ!!!!! せっかく秘密裏に進めて驚かせてやろうって思ったのにぃ!!!」

古泉「そううまくは運んでくれませんね、計画も……恋路もね」

ここまでーー

怪我した箇所に『尾』って…………まさか人間相手じゃないのか?

あれっ?
俺の機種だと『てい』の漢字が表示されてないのか!?
ありがとう、お騒がせしましたすんません

メリクリ~今日中にはとうかー

とうかー


シュン!!


キョン「とーちゃっく!」

長門「…………」

朝倉「本当にあたしもついて来てよかったのかしら……?」

キョン「かまわんかまわん、なんならおでんでも見舞いの品にしてやれ」

朝倉「そこまで簡単につくれるものじゃないからね? じゃあ行きましょうか長門さん」

長門「……」

朝倉「…………あーキョンくん? もちろんあなたなら分かってると思うけど……その」

キョン「大丈夫大丈夫、『スーパー平安時代!!』年末大大大セールの情報……だろ? つかんでるよ」フッ!

朝倉「ホントっ!!?!?? ちょ、それってどこで……っってそうじゃなくて!!! そっちは後で聞くけど」

朝倉「中河くんの、長門さんに一目惚れの方よ」

キョン「プーさんのコシヒカリがなんだって?」

朝倉「キョンくんの脳内予測変換が異次元の域に達してるんだけど!!?」

キョン「まぁまぁ、とりあず見舞いに来たんだから目的を果たしに行こうぜ、いつまでも外にいちゃさみいしよ」

朝倉「それは……そうだけど」

キョン「よし、長門これ持ってけ。見舞いにはやっぱ花だろ」スッ

長門「……」

朝倉「…………椿はよしなさい!? 分かっててやってるわよねそれ!?」

キョン「じゃあ長門に似合いそうなこの百合の花を……」

朝倉「ダメ!!!」

キョン「鉢植え……」

朝倉「だからでダメだって!!! どんだけ相手に不幸を送りたいのよ!!!!!!」


病院内


キョン「……ここだ」

朝倉「ついに、長門さんとご対面ね」

長門「…………」

キョン「心の準備はいいか?」

長門「……」コクリ

朝倉「ま、待って! 朝倉さん、ちょっと動機が収まらない……あぁ」ドキドキ

キョン「なんでお前に心の準備が必要なんだよ」コンコン

朝倉「あぁ! 殺生な!!」

キョン「お前のその発言の方が病院のタブーじゃねえか」ガラッ

キョン「よぉプーさん、久しぶりだな。災難だったが、大丈夫か?」

中河「おぉ! キョン! 久しぶりだな!! いやこんなことになってしまって大変申し訳な……な!?」

キョン「おう、なんと今日はスペシャルゲストがお前の見舞いに来てくれているぞ」

中河「そ、そそそその方たたたたはも、もももしかして……」

長門「……」

キョン「そう! 朝倉涼子さんです!!!」バッ!

朝倉「えっ!? あたしっ!?」ビクッッ!

中河「えっ? 誰っっ??」

朝倉「でしょうねぇ!! あたしじゃないでしょキョンくん!! ほら!」

キョン「間違えた間違えた。あ、ちなみにこの方は長門の親しい友人だ」

朝倉「そ、そんな親しいだなんて……」テレテレ

キョン「(自称)」

朝倉「自他共に認める、よ!!!」

中河「は、はは賑やかな人だな、けどここは病院だから少し、ボリュームを……」

朝倉「や、やだ……普通に常識的な注意を受けてしまった……なんかショックだわ」ズーン

キョン「大分毒されてるな、コイツ」


中河「朝倉さん? お見舞いに来てくれてありがとう、で、で、その……もうお一方は……もしや」

キョン「いやさすがにウチの中学の校長なんて呼べねーよ、さすがに」ケラケラ

中河「そんな期待はしてねーよ!! ていうか別に来てくれてもありがたみねーわ!」

キョン「冗談は校長の頭だけにしといて……」

朝倉「頭を怪我した人にそれは冗談にならないと思う」

キョン「お待ちかね! かねてよりプーさんが会いたいと思っていた方に来ていただきました」

キョン「それは……長門有希さんでーーす!! どうぞー!!」パチパチパチ

中河「や、やはりっ!!! 長門さんがっ!!!!」バッ!

朝倉「正座っ!? ていうかこの人あたしにボリューム注意したのに騒がしいわね!!」

中河「お、俺中河です!!! 駐中国の中に中川じゃないほうの河で中河ですっ! 以後お見知りおきをっ!!」

朝倉「名前の紹介紛らわしいわね!!!! 自分の名前教えるの下手なの!? 中川つかうならそれで中説明したらいいわよね!?」

キョン「怒涛のツッコミだぁ……いい相棒を見つけたようだな、朝倉!」

朝倉「あたしの周りに相棒候補多すぎない!!? 言っとくけどあなたが筆頭なんだからねキョンくん!!」

キョン「お、おぉ……」

長門「長門有希」

中河「な、長門さん……」

朝倉「……ほら、長門さんも フードなんて被ってないでちゃんと顔みせなさい」スッ

長門「…………」スッ

中河「!! ま、紛れもない……長門さん!…………です、よね?」

キョン「……」

朝倉「……やっぱり」ボソッ

長門「……」


中河「…………」ジイィ

長門「…………」ジッ

中河「…………」ジィイ

長門「…………」ジッ

キョン「喧嘩前の不良みたいにメンチ切りあってんぞ、大丈夫か?」

朝倉「大丈夫よ、長門さんに敵う人間なんていないもの」フン!

キョン「その場合中河がだいじょばないことになるんだが……」

中河「……長門さん」

長門「なに」

中河「あの、クリスマスの日にキョン達と歩いていた?」

長門「そう」

中河「『スーパー平安時代!!』でよく買い物を……?」

長門「…………そう」

キョン「ちょっと言いよどんだけど、あれは?」

朝倉「だって長門さんがしてるのは買い物じゃなくて試食だもの」

キョン「あぁ……」

中河「……そう……です、か……」

長門「……そう」

朝倉「…………」

キョン「…………ところで中河はフライドチキンとハチミツどっちが好き?」

中河「えっ?」

朝倉「なにその質問!!?」ガーン!

中河「ハチミツだけど……栄養価高いし」

朝倉「答えるのね!!? やっぱプーさんだわこの人!!!」


中河「…………」ジィイ

長門「…………」ジッ

中河「……キョン、ちょっと、その……なんだ、お前と二人で話がしたい」

キョン「俺にそんな趣味はない!!!!! 帰るぞ長門!! 朝倉ぁ!!!!!」

中河「早とちりすぎるだろ!!!!! 普通に!! ちょっと話がしたいだけだ!!」

朝倉「……だったら、あたしたちは少し席を外しましょうか」

長門「……」コクリ

中河「せっかく来ていただいたのに……朝倉さんも長門さんも申し訳ない」

朝倉「……いいのよ、キョンくん話終わったら呼んでね」

キョン「俺も、助けを求める時は呼ばせてもらう」

中河「そんな事態にはならない、断じて」

朝倉「ふふ……積もる話もあるだろうし、ごゆっくり」ガラッ

長門「……」

中河「……よくできた娘さんだな」

キョン「ツッコミが?」

中河「あぁ……まぁ、それもだけど」

キョン「で、お前は念願の長門に会えたわけだが……その割には随分しおらしい反応だったじゃないか」

中河「ああ、自分でも驚いているところだよ…………あれは間違いなく長門さんなのに」

キョン「……なんだ、長門をなにか神々しい宇宙人とでも勘違いしてたっていうのかよ」

中河「ははっ、いくら俺の目が節穴でも女の子をそんな風には見間違えはしない」

キョン「……はっ、まったく、そうだろうな」


中河「……うまく言えない、うまくは言えないが」

中河「俺は、今の長門さんに、以前感じた衝撃のようなものを感じなかった」

キョン「ほう」

中河「もしかしたら、その衝撃自体が勘違いで、一目惚れなどではなかったのかも知れない」

キョン「……ま、会ってみてそう思うのは仕方ないのかもしれないが」

キョン「たった一回あっただけで、評価をそこまで変えるとなると、俺はお前の評価を変えなきゃならんことになるぞ」

中河「本当に、本当に申し訳ないと思っている……わざわざ試合にまで見に来ていただいて……」

中河「その試合ですら途中で退場して、今ここにお見舞いにまで来てもらってこんなことを言うのは……確かにどうかとは思う」

中河「全て俺の勘違いでした、なんて言やぁそりゃ困惑するだろうな……うん」

キョン「……それで、お前の考えた長門との人生計画とやらはどうするつもりだ?」

中河「……解消してもらおう。もちろん、長門さんにその気がなかったからとかではなく、俺の勝手な都合によるものとしてだ」

中河「長門さんにはすごく悪いことをした……俺の勝手な思い込みに振り回してしまって……贖罪の機会があるなら是非そうしたいぐらいだ」

キョン「やめとけ、長門はそんなことしてもらっても困るだけだ」

中河「だが!」

キョン「ま、今回のことは仕方なかったことにしとけよ」

キョン「俺らなんてまだまだガキなんだ、恋だの愛だのなんて自分の気持ちですら理解できてねえんだ」

キョン「感情を理解するより先に行動した結果がこういうことになっちまったのはしょうがねえ」

キョン「この経験を、恋愛経験だと思って次の機会に活かしていきゃいいんじゃねえの」

中河「…………キョン」

キョン「なんだよ」

中河「うまく言えないが……なにか、お前から深いメッセージを受け取った気がするぞ」

キョン「……ま、俺もお前と同じガキだから、説得力もクソもないんだけどな」

中河「けど、お前の言う通りだよ。俺の勘違いに長門さんを巻き込んだことに変わりはないが」

中河「長門さんにはきちっと話して、謝って、それで納得してもらえたら、この話はもう過去の話とするよ」

キョン「……そうか、なら長門を呼んでくるか」

中河「スゥー……よし、頼む」


ガラッ


朝倉「…………」

長門「…………」

朝倉「ま、予想通り、ってとこかしらね?」

長門「……」コクリ

朝倉「まぁ、長門さんなら別に本当に『そういう人』が現れてもおかしくはないけど……」

朝倉「今回は、こういうことになっちゃたわけね」

長門「そう」

朝倉「あたしたちの独断で中河くんの能力を消失させちゃったけど、よかったのかしら?」

長門「人間と情報思念体の意識レベルの差は歴然。このままでは日常生活に支障をきたす恐れがあった」

朝倉「確かにね、長門さんを見て放心するぐらいだからね」

朝倉「……だとすると、あたしにもその可能性が会ったってことかしら?」

長門「……たまたま、初めに目が止まったのがわたしというだけ、あなたに情報統合思念体を感じる可能性も十分にあった」

朝倉「……でも、あたしより先に中川くんの目を引いたのは長門さんだった、てことよね?」

長門「…………そう」

朝倉「おしいわね、もし本当に、それが一目惚れだったなら―――なんてね」

朝倉「さて、勘違いに気付いた彼はどういう行動をとるのか……」

長門「恐らく、今回の騒動の全ての破棄、なかったことにするつもり」

朝倉「それが妥当かしら、とんだお騒がせだったことになるけど……あーっと!」

朝倉「涼宮さんにどう説明したものかしら……? プーさんの勘違いでした! なんて言ったらプーさんに襲撃をかけかねないし……」

長門「…………」

朝倉「あ、こういうのはどう? 実は中河くんには許嫁の幼なじみがいるんだけど、それは政略結婚でそこの現れたのが長門さんで―――」

長門「…………そう」

キョン「いやいや、ねえだろ」シュン!

朝倉「わっ、キョンくん。ビックリしたぁ」

キョン「長門、中河がお呼びだ。 話したいことがあるんだとよ」

長門「…………そう」


ガラッ


キョン「ノックしてもしもーし」

朝倉「いやノックしてないし」

長門「…………」

キョン「連れてきたぞ、どうする? 俺たちは席を外すか?」

中河「いや、キョンにも朝倉さんにも聞いていてほしい」

キョン「……そうか」

朝倉「…………」

中河「…………長門さん」

長門「なに?」

中河「……まずは、謝らせてください。 すいませんでした!」

長門「…………」

中河「俺はあなたに恋をしたと、結婚したいと言いました……でも、それは俺の盛大な勘違いでした! 本当にすいません!」

長門「…………」

朝倉「(本人にも、それにあたしたちもいる状況でちゃんと言うんだ……こういうのは中々好印象ね)」

中河「恋愛にも疎いまだ子供の俺が、なにも考えず行動した結果がこんな皆さんに迷惑をかけることになってしまって……ただただ申し訳ないです!」

中河「あの……頭が痛くなるようなラブレターも、俺は何を勘違いしたか分かりませんが…………忘れてください!!!」

長門「分かった」

朝倉「(即答っ!? ここは、ちょっと迷うふりでもしたほうがいいんじゃないの長門さん!!)」

キョン「……だとさ、長門は別に怒っちゃいねえし、許す許さないもないあからこの話はこれで終わりだ」

キョン「それで……2人とも、いいんだろ?」

中河「……ああ」

長門「……」コクリ

朝倉「……」


キョン「それじゃあ、見舞いも済んだことだし、俺たちはもう帰るか」

中河「そうか、じゃあせめて見送りを……」ググッ

キョン「バカ言うな、見舞いにこられた奴に見送られちゃ世話ないぜ、ゆっくり安静にしてな」

中河「す、すまん……本当に迷惑ばかりを……」

朝倉「……中河くん、謝り過ぎるのは、自分を落とすことになるからあまりよくないわよ?」

中河「あ、朝倉さん……そう、ですね。すいませ、っ、はい」

キョン「…………」

長門「…………」

キョン「(長門、何か中河に言いたいことはないか? 何かの縁だろ、これも)」

キョン「(これきりかもしれないし、言いたいことがあったら言っておけ、後悔のないようにな)」

長門「(…………―――)」

キョン「(……なんて、言うまでもない、か)」

長門「…………」スタスタ

中河「あ……長門さん、その……いえ」

長門「……」スッ

中河「なわっ!?」

朝倉「まっ!」

キョン「ほぉ」

中河「なな、長門さん? な、なにを……?」

長門「頭は、もう痛くない? 首は?」

中河「だ、いっ、そ、双方ともに問題はないであります!」

キョン「軍人かお前は」


長門「……頭から着地していたので心配だった」

中河「そ、そんな……ご心配をおかけして……」

長門「……あなたの活躍を見れないのは残念だった」

中河「……はい」

長門「……しかし、勘違いであったとはいえ、好意を向けられるのは嫌ではなかった」

中河「!」

朝倉「長門さんが……」

キョン「……」

長門「……わたしも、あなたと同じように、感情? というものが理解できていない」

長門「……自分がどう感じているか、どう思っているか……明確には分からない」

長門「…………しかし――――――」























長門「――――――いずれ、"好き"という感情を理解できればいいと思う」


























朝倉「……」ポカーン

キョン「……」

中河「…………ぁ……」

長門「……あなたも、わたしも」

中河「……ぁ、わっ、そ、そうですね! お、おれ、じ、自分はまだまだ未熟ですが……その通りだと!」

キョン「うーわ、アイツマジかよ……まぁそうなるんだろうけどよ」

朝倉「……ハッ!! え? え? ま、まさか……!?」


長門「…………」

中河「…………」ドキドキ

長門「…………」

中河「…………長―――」ドキドキ

長門「お大事に―――」

中河「―――ぁ、はっ、はい!!!!」

長門「……」スタスタ

キョン「……」

朝倉「……」

中河「……」

長門「……」クルッ

長門「……頑張って」

中河「!!!! あ、あの!!!」

中河「しょ、精進します!! きっと!!!! "好き"という気持ちを理解できるようにもなります!! そしたら……っ!!」

中河「……また!!! またいつか!!!! 試合を見に来てもらえないでしょうか!!!!!!!」

朝倉「まっ!!!」

中河「凡小な俺だから、いつになるかは分かりませんが……また手紙を!!! 今度は招待状を書きます!!!」

キョン「また俺が読むのか? やれやれ」

中河「その時!! その招待状を受け取った時!!!! まだ俺のことを覚えていてくださったときは!!!」

長門「…………」

中河「是非!! 試合を見に!!! 来て、いただける、と……嬉しいで、す……ってあぁ!!」

中河「すいません! すいません!! 今、俺なにかすごく自分勝手なことを言っ、ああ!! 全然反省してないじゃねえか俺!!!」ウガァアア!!

朝倉「お、落ち着いて中河くん!! いいのよ! それでいいのよ中河くん!!! 多分!!!」アセアセ

長門「……」


キョン「……で、長門。返事は?」

中河「あっ、す、すいません! い、今の不躾なお願いとも言えぬ無様な物言いは忘れて―――」

朝倉「中河くん!! 必要以上の謙虚は自分を無下にするのと同義よ。正直な気持ちをごまかしちゃダメ」

朝倉「(……なんてあたしが言うようになるなんて笑っちゃいそうだけど)」

中河「す、すいませっ、はっ、はい教官!」

朝倉「だれが教官か」バシッ

長門「…………」

長門「見に行く」

中河「…………あ」

中河「ありがとうございます!! こ、今度は怪我なんぞで退場しないようみっちり鍛えて! それで……いいところをみせたいです!!!」

キョン「本当の熊よりでかくなってそうだな」

朝倉「もうそれ人超えてるわよ」

長門「……待ってる」

中河「~~~っはい!!!」

キョン「……よし、それじゃ帰るか」

朝倉「中河くん、あんまり長いこと女の子を待たせちゃダメよ?」

中河「はい!! 鍛錬して、すぐに招待しても恥ずかしくないぐらいの男になります!」

朝倉「そう……」

朝倉「……その後はあたしが相手になるけどね」ボソッ

キョン「ひえっ……」

中河「?」

キョン「ま、まぁ、あれだ……中河お大事にな」ガラッ

中河「おう! キョン! 朝倉さん! 長門さん!!! 本当にありがとうございました!」

朝倉「またねー」

中河「……長門さん」ペコッ

長門「…………―――」

長門「―――また」

ここまでーメリクリいぇい~

とうかー、これでヒトメボレLOVERは終了~


キョン「恋は盲目……か」スタスタ

朝倉「え? どういうこと」スタスタ

キョン「そのままの意味さ、恋は視界を狭くする」

キョン「情報統合なんちゃらの威光とやらを感じてた時、それを一目惚れと勘違いした中河は長門が見えてなかった」

キョン「で、いざその誤解が解けたとなると今度は本当に長門しか見えなくなったってことだ」

長門「……」

キョン「というよりも、初めから中河の奴は長門に惹かれてたとこもあったんだろ」

朝倉「それに関しては中々見る目があると言ってあげるけど……」

キョン「なんだ? 予想外の結末を迎えて朝倉はちと不満なのか?」

朝倉「そういうわけじゃ……ないけど」

キョン「どうする長門? 朝倉は中河の恋路に否定的なようだぞ?」

朝倉「ち、ちがっ、あのね長門さん!」ワタワタ

長門「……」

キョン「つまり、ご飯を作ってくれなくなる、ということだ」

長門「それは困る。断固として」

朝倉「ご飯に関する明確な意思の表れは早いわね!!!! ていうかそれはどんな理屈なのよ!!!」

長門「…………先ほどはああ言ったが」

長門「わたしの……自律行動がどのくらい保証されているかはわたしにも分からない」

長門「だから……約束に応じることは確実性を損なう」

朝倉「長門さん……」

キョン「と、いうことを中河には言ってないんだろ? てことは、長門自身少なからず試合に行ってもいいという考えがあるはずだ」

長門「……そう」

キョン「っていうことなら、そん時はどうぞ俺を頼ってくれ。遠い銀河の果ての情報なんちゃらからお前を連れてくることだってできるさ」

キョン「ま、そんなことになる前に中河が立派になってくれれば済むんだがな」

朝倉「……ふふっ、そうね」


キョン「じゃあこの辺でな、ハルヒへの報告はまた後日でいいだろう」

朝倉「ええ、それじゃあね、キョンくん」

キョン「あぁ、じゃあな」

長門「……」

朝倉「……あたしたちも帰りましょっか」

長門「……」コクリ

朝倉「……いやー、まさか誤解が解けても再告白されるなんてねー、さっすが長門さん」

長門「……そう」

朝倉「いや、そうって……そこはちょっと喧騒するところでしょ?」

長門「……そうでもない」

朝倉「ここで使うと否定の意味になっちゃうんだけど!?」ガーン!

長門「……言葉とは」

朝倉「え?」

長門「言葉とは、感情とは、想いとは……気持ちを考えるとは、なに?」

朝倉「……」

長門「相手を知る上で、稚拙なコミュニケーションでの疎通を行なう彼らが」

長門「高度な知能を持つ、情報統合思念体によってつくられたわたしよりも」

長門「…………心というものをよく知っている」

朝倉「…………案外、情報統合思念体が求めているものもそれだったりするのかもね」

長門「…………?」

朝倉「実態を持たない、高度な知的存在の求めた自律進化の可能性が」

朝倉「言語以外のコミュニケーションもままならない人間から得られるかも、って時点でちょっとおかしいけどね」クスッ

長門「……」

朝倉「ま、難しいこと考えるのはやめましょ。そういうのはいつもキョンくんが言ってるじゃない」

朝倉「『成長っていうのは経験もってするもんだ』的な? だからまぁ」

朝倉「……また、中河くんに会う時にでも一緒に勉強させてもらいましょう?」

長門「…………そう」

朝倉「…………今日はハンバーグにしちゃおっか!」

長門「賛成する、情報操作を駆使し一刻も早く自宅へ―――」

朝倉「はいはい、そんな焦らなくても晩御飯は逃げないわよー」


piriririririririri


キョン「あん? ケータイ? ハルヒ……じゃないな。中河? って誰だ……?」ハテ

キョン「…………あ、プーさんか! あいつも俺よろしく本名が忘れ去られる時があるからなぁ」pi

キョン「よう、中河。今日はどうだったよ?」

中河「おぉ、キョン!! 俺はお前になんと礼を言ったらいいのか……とにかく、多大なる恩をお前に感じている!!」

キョン「へーへー、そりゃよぉござんした」

中河「ただの勘違いの恋かと思っていたが……確信した!!! 今度こそ、本物の恋をしたと!!!!」

キョン「そうかよ、でもなんで急に長門に惹かれたんだよ。一旦は勘違いとか言ってたのに」

中河「愛だ!!!!」バン!

キョン「答えになってねぇ」

中河「つまりはあれだ!!あー……いや、言葉にはうまくできないが」

中河「長門さんの、その『心』が!! 俺に深く響いたのだ!!!!」

キョン「……心ねぇ」

中河「俺は外見や表面の印象で相手を好きになったりはしない。そりゃあ外見の好みのタイプはあるが」

キョン「ちなみに長門の外見は?」

中河「正直に言おう、どストライクであると!!!!」ダーン!!

キョン「ほほー、外見はどストライクなのに恋が勘違いと分かったら諦めるのか、潔いんだな」

中河「言っただろう、俺は相手の中身、つまりは『心』に惹かれたんだ」

中河「俺の間違いに怒ったりもせず、ただ真摯に俺からの気持ちを受け止めてくれた……」

中河「きっと長門さんは誰よりも相手のことを想うことができる女性だ!!! と思う!!!」

キョン「……なるほどね」

中河「……よし!! なんか滾ってきた気持ちを書におこそう!!!!! いまならいい文が書けそうだ!!!」

キョン「あの……また分け分からん文章を書いた場合は破り捨てるからな? ていうかもう自分で渡せよ、おい」

中河「魅惑のマイエンジェル、長門有希さ―――」

キョン「おい! 出だしからおかしいぞ!!!! おい!! カーネル!! こら!!!」


中河「ところで、気になってはいたんだが」

キョン「あん?」

中河「長門さんは違うとしてもう一人……朝倉さんといったか、あの人はつまり」

キョン「違うが」

中河「キョンの彼女なの……なんだ、違うのか」

キョン「そう見えたのか?」

中河「いや全然。よくてATMぐらいだと……」

キョン「どこで毒舌披露してんだお前……どっちかと言うとアッシーにされてるところはあるが」ボソッ

中河「ん? 何か言ったか?」

キョン「別に」

中河「まぁ、考えてみればそれもそうだな。キョンにあんなできた娘さんは似合わない!」

キョン「どういう意味だよ」

中河「お前にはもっと変な女が似合ってると言うんだ、えーと、なんと言ったか……ほら」

キョン「……あっ、『アイツ』かー……国木田やらお前やらが変な女というやつは」

中河「おーそうだ。多分お前の想像してる女と俺の想像してる女は一致してる。名を……」

キョン「何言ってんだ、『アイツ』とはそんな仲じゃないし、そもそも言うほど変なやつじゃない」

中河「いやいや、お前も大概だが、変なやつだったぞ? あの女は」

キョン「さらっと失礼なこと言ってんじゃねえ、道頓堀に沈めるぞこら」

中河「こう、よく言えば飄々としてる、悪くいえば何を考えているか分からないようなやつだったな」

キョン「お前達にはそう見えていたのか、俺からすりゃ普通に親しみやすいやつだったんだがな」

中河「そりゃお前がやつと仲が良かったからだ。しかし、キョンともなれば親しみやすさまで感じれるのか……」

キョン「ま、『アイツ』とは卒業以来会ってないし、どこぞの高校でみんなとよろしくやってるだろうよ」

中河「そうか、仲が良かったお前らにしては少々意外だが、出会い別れというのはそういうもんだろうな」

中河「俺が長門さんと出会えたように!! ああそう!! この世の運命とは如何にして―――」

キョン「色々とお大事にー」pi

キョン「……そういやすっかり忘れてたな『アイツ』のこと」

キョン「……ま、卒業してなにもない、ってのはそれまでの関係だったってことさ」

キョン「(……何世紀も続いてきた『佐々木』とは違ってな)」

キョン「…………んー、さて」

キョン「寝るか!!!! せっかくの冬休みだし!!! 俺結構今回頑張っちゃたしな!!! 寝よう!!!」ガバッ

キョン妹「(……キョンくんすごく元気そうなのに寝ちゃうんだ……頭おかしくなっちゃったのかなぁ?)」ンー?


side Suzumiya


ハルヒ「さてさてっ! 有希の方もめちゃくちゃ気になるところではあるんだけど……」

ハルヒ「SOS団としての活動も疎かにしちゃダメよねっ!!! というわけでっ!!!」

ハルヒ「『SOS団冬季合宿』についての作戦会議を始めたいと思います!!! はい拍手―!!」

古泉「よろしいかと」パチパチ

朝比奈「わ、わぁーい」パチパチ

ハルヒ「はい、よろしい! でね! みくるちゃん! あたしと古泉くんとで大まかな計画は進めてるわけ」

朝比奈「あ、そうなんですか」

ハルヒ「今日は細部のツメをきっちりしておきたいわけ!!!!」

朝比奈「な、なるほど……それで、その大まかな計画というのは……?」

ハルヒ「ふふ、みくるちゃん。夏の合宿での出来事を思い出して……」

朝比奈「夏……ひえっ!!? ま、まさか……!」

ハルヒ「そう、そのまさ―――」

朝比奈「わ、わ、忘れていた……と、トラウマが……ど、ドッキリ……お、お風呂…………おも―――」

ハルヒ「みくるちゃん、大丈夫。あたしにはなんのことかさっぱりだわ、ええ、ほんとよ? あたし何もオボエテナイ」

古泉「朝比奈さん、涼宮さんは合宿での僕が仕掛けた推理ショーのことを言っているんですよ」

朝比奈「あ、あの……ひ、ひえぇえええええ!!! け、圭一さんがぁあああ!!! し、しし死んでぇええええ!!!」

ハルヒ「……なんかみくるちゃんにとってトラウマの多い合宿だったようね、前回」

古泉「(彼は涼宮さんをターゲットにしていたようですが……朝比奈さんに予想外の火の粉が降りかかったようですね)」

朝比奈「ひぇえぇえええええ!!!!!!! チュパカブラがぁあああ!!!!!!」

ハルヒ「……そんなのいたっけ!!?!? あたし見てないけど!!!?!? みくるちゃんあなたどこでなにしてたの!!?!?」ガーーン!!


古泉「―――というわけです、なにか質問等はございませんか?」

ハルヒ「はい! 古泉くん!」

古泉「はい、涼宮さん」

ハルヒ「おやつは何円までですか!?」

古泉「涼宮さんの決定に従います」

ハルヒ「バナナはおやつに入りますか!?」

古泉「涼宮さんの認識によります」

ハルヒ「この合宿の立案者は誰ですか!?」

古泉「涼宮さんでしょう」

ハルヒ「故に、一番この合宿を楽しめるのは誰ですか!?」

古泉「もちろん、涼宮さんに他なりません」

ハルヒ「じゃあ最後に質問!! SOS団の団長と言えば!!」

古泉「唯一無二、涼宮ハルヒ団長しかありえませんね」

ハルヒ「~~~っ完っ璧ね!!! もうあたしからいうことはないわ!!!」

朝比奈「(こ、この最後の質問コーナーの意味は……)」

ハルヒ「というわけだからみくるちゃん!! この合宿の予習を欠かさずにしておかなくちゃダメよ!?」

朝比奈「よ、予習ですか……?」

ハルヒ「そ! 日々の積み重ねが、日常とは違ったところで力を発揮するんだから!!」

朝比奈「は、はぁ……」

ハルヒ「それじゃ今日は解散しましょ!! また後日、集まるつもりだからその時最終決定と」

ハルヒ「有希の報告、聞きましょ!!! それじゃ二人共、解散っ!!」

朝比奈「は、はぁい」

古泉「了解しました、さて僕達もそろそろ……」

朝比奈「……古泉くん、さっき質問し損ねたこと一つ聞いてもいいですか?」ボソッ

古泉「はい? なんでしょう?」

朝比奈「次の合宿では、わたしは何度、意識を失う場面がありますか?」

古泉「……え、ええと……はは、涼宮さ、いえ、彼次第、というところでしょう、ね」


朝倉「そう言えば、なんかSOS団の冬季合宿なるものの存在が仄めかされてたわね」

長門「恐らく、年末に開催されるもの」モグモグ

朝倉「師が走る位に忙しい時によくやるわね。まぁ、涼宮さんらしいと言えばそれまでだけど」

朝倉「まったく、大掃除とかで大変なのに……早めに済ましておかなきゃね」

長門「……くる?」

朝倉「あ…………はは、なんかもうあたし行く気になっちゃってるわ……SOS団じゃないのにね」

長門「しかし、彼女はあなたを随伴させる気でいる」

朝倉「……あたしが言うのもなんだけど、多分そのつもり、よね」

朝倉「…………なんだろう、半年前まではあたしがこんなに涼宮さんに接近するなんて思いもよらなかった」

朝倉「……いつのまにか、いつも、気づけば彼女に巻き込まれてる気がする……」

長門「それが涼宮ハルヒという存在」

朝倉「…………そしてそれを」

朝倉「悪くない……いいえ、『楽しい』と、確かに思っている自分がいる」

長門「……あなたにはそれが感じられる?」

朝倉「はっきりと断定はできない、けど……きっとこれが、有機生命体の持つ『感情』や『想い』……」

朝倉「……もしかすると、これが……」

朝倉「…………ねえ長門さん?」

長門「なに?」

朝倉「中河くんにまた試合を見に来てくれって言われた時、どう思った?」

長門「……………………」

朝倉「……言語化するなら『嬉しい』って思ったり……しなかった?」

長門「…………――――――」


































長門「――――――少しだけ」                              

朝倉「…………そ!」ニコッ

                                          ヒトメボレLOVER 完

ここまでー、次はあれか、猫よりも雪山症候群ですね

今日中には閑話投下ーー

とうかー


長門「これ」スッ

キョン「ん、おーついにできたのか! どれどれ」

ハルヒ「ん? なにそれ?」

キョン「これか? これはだな……」

長門「……自作したゲーム」

ハルヒ「ゲームぅ!!? 有希がつくったの!!?」

長門「……」コクリ

古泉「それはそれは、どんなものか興味がありますね」

朝比奈「長門さんすごぉい」

ハルヒ「なんでまたゲームなんか……ていうかなんでキョンは知ってたのよ?」

キョン「長門に頼まれたんだ、ゲームの作り方を教えてくれって」

長門「頼んだ」

ハルヒ「なんであんたゲームの作り方なんて知ってるのよ」

キョン「常識だろ」

ハルヒ「非常識よ、あたしが言うのもなんだけど」

朝比奈「(す、涼宮さんそんなところで自覚あるんだ……)」

古泉「それで、どのようなジャンルのゲームを作ったんですか?」

長門「……シミュレーションゲーム」

ハルヒ「なんのシミュレーション?」

キョン「恋愛」

ハルヒ・古泉「「え?」」

長門「恋愛シミュレーションゲーム」

朝比奈「えぇぇえええええええええええええええぇええええキタぁあああああぁあああああああああああ!!?!?!?」ガタッ

キョン「朝比奈さん、落ち着いて」


ハルヒ「恋愛シミュレーションゲームぅ!!? なんでまたそんなコアなものを……!?」

キョン「コアってことはないだろう、昔っからあるものだし」

古泉「しかし、意外ですね。長門さんがそのようなジャンルに興味があるとは……」

長門「彼のおすすめ」

ハルヒ「……」チラッ

キョン「ち、違う。長門の要望がコミュニケーションを学べるゲームがいいといったから……それに基づいてアドバイスしただけだこらぁあ! あぁ!?」

ハルヒ「なんで最終的にキレてんのよ。ふーん……恋愛シミュレーションゲームねぇ」

朝比奈「ま、まさかそれは誰々さんの実体験を元に―――!」ガタッ

長門「していない」

朝比奈「……」ショボーン

古泉「長門さん制作ともなると、市販のものと遜色ない出来になったのでは?」

キョン「それを今から確認するところだよ、起動、っと」カチッ

ハルヒ「ふむん、どれどれ……」




はるひ『あたしと恋愛しなさいっ!!! 765!!(制作会社)』




ハルヒ「なんか毎朝見慣れてる顔が出てきたんだけどぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!?!?!?!???」ガーン!!

長門「キャラクターデザインの参考にさせてもらった。安心して、実名は伏せてある」




はるひ『ちなみに、あたしは【涼宮ハルヒ】とはなんの関係もないんだからねっ!!!!』




ハルヒ「伏せきれてない!!!! むしろ自分から暴露しにいっちゃってるけど!!?!?!? ついでに言うと名前もそのまんまだし!!!」ガーン!!

長門「仕様」

ハルヒ「ダメでしょそんな仕様!!!! あらゆる権利を侵害してるわよこれぇ!!!!!」ビッシィ!!


古泉「やはりと言うか、結構凝ってますね」

朝比奈「すっごく綺麗な画面です」

キョン「そこらへんは持てる技術の全てを駆使したはずだ、な、長門」

長門「……」コクリ

ハルヒ「その持てる技術の全てを駆使して肖像権を遵守して欲しかったわ……」

キョン「まぁまぁ、それじゃヒロインを選んでいこうか」

ハルヒ「ちょ、ちょっと!! 【はるひ】を選んじゃダメよ!!? に、似てるからとかじゃなくなんとなくだから!!」

キョン「それは見てみないと分からんだろ、さぁどんなヒロインが……」カチ





はるひ『あんた、あたしに何か用? ない? ないんだったら気安く話しかけないで、目障りだから』

ミクル『あら? あなた新入生? よろしくぅ、わたしはこの学校の【クイーン】、覚えておいてね』

りょうこ『ちょっと! おでんは春夏秋冬いつでもオッケーな万能料理って言ってるでしょ!!?!?』




ハルヒ・朝比奈「「なんか全員みたことあるーーーっっ!!!!!!!!」」ガーン!

キョン「なるほど、メインヒロインはこの三人か……」

ハルヒ「ちょっと!!! これ明らかにみくるちゃんと朝倉さんよね!!? あたしに引き続き顔見知りしかいないわよねこれ!!?」

朝比奈「ふえぇ! わ、わたしこんな感じなんですかぁ? 長門さーん! わたし【クイーン】なんて言ったことないですよぉ!!」

古泉「……朝倉さんの自己紹介だけ、その、自己以外の主張が激しすぎるんですが……」

キョン「さて、どのヒロインにするか……」

ハルヒ「あんたこの惨状を見てさっきから結構冷静ね!!! なんとも思わないわけ!!?!?」

キョン「思わんね、何故なら二次元と三次元は別物だからっっ!!!」キラーン!

長門「全面的に同意」

ハルヒ「あんたら!!!!!!!」


はるひ『ふぅん、あんたあたしの言う事信じるんだ……』





ハルヒ「結局このキャラでやってるし……」

キョン「ま、どうせ全員分やるんだ。順番順番」

朝比奈「あ、あのぅ……長門さんモデルのキャラクターはいないんですか……?」

キョン「朝比奈さん、さすがに恋愛シミュレーションゲームに自分を投影したキャラをだすのは……」

長門「隠しキャラ」

ハルヒ・古泉・キョン「「「(いるんだ…………)」」」

朝比奈「なるほどぉ」




はるひ『あんた、あたしについてくるの? こないの? どっち?』




古泉「選択する分岐ルートですか」

キョン「ま、ここは当然『ついていく』……と」カチ




はるひ『……はぁ、所詮あんたもそういう人間ってわけね。見当違いだったわけね……つまらないわ』




朝比奈「あ、あれ? これって間違いだったんですか? 『ついていく』が正解だと……」

ハルヒ「ふふん、みくるちゃんこれはひっかけよひっかけ。このアホキョンは見事に引っかかったから有希の思惑通りね!!」ニヒヒ

キョン「………………」ギュォオォオオオオオオオオオ!!!!


はるひ『あんた、あたしについてくるの? こないの? どっち?』





古泉「選択する分岐ルートですか」

キョン「……『ついていかない』だな」カチ

ハルヒ・朝比奈「「えっ!?」」





はるひ『……そ。それじゃああんたとはこれでお別れね、それじゃ』





キョン「…………」

ハルヒ「あぁーバッドエンド、なにやってんのよキョン!! いまのは当然『ついていく』一択でしょうが!!」

朝比奈「キョンくん、それじゃあダメですよぉ……」

古泉「乙女心を理解するには、あなたには早すぎ、いや、遅すぎましたかね?」

キョン「……長門ぉ!!!! これは一体どういうことだぁあああ!!?!? おぉん!?!?!??」ガッ!

長門「……仕様」

キョン「バグだな!!? バグだなこれは!!? 認めん!! 認めんぞぉおおおおおお!!!!」

ハルヒ「別にあんたが選択ミスっただめでしょ、ま、いいわ。次みくるちゃんのキャラやりましょ!!」ワクワク

朝比奈「あぁ涼宮さん! じ、自分のキャラが終わったからってずるいですよぉ!」

キョン「くそぅ……くそぉ……両方バッドエンドとかねぇよ……うぅ」ポロポロ

古泉「泣くほど悔しかったんですか」


ハルヒ「さてさて、【ミクル】攻略といくわよー!」

朝比奈「うぅ、なんだか恥ずかしいです……」

古泉「出会いのシーンですね」





ミクル『あら? 新入生? ふふ、かわいいわね。 どう? お姉さんと一緒にちょっといいところでも―――』





ハルヒ「……はい、かしら?」

朝比奈「じゃなくてぇえぇえぇえええええぇええええええええええええぇぇえええええ!!!!!!!」

朝比奈「ななな長門さん!?!? これもう最初の二択でゲーム終わっちゃいません!!?!? というかわたしの顔でこんなこと言わせないでっ!!」

ハルヒ「R指定入りそうな展開ね……今思ったんだけど、これなんでフルボイスできてるの?」

長門「……わたし」

古泉「えっ?」

ハルヒ「ゆ、有希が全部アフレコしたの!!? これを!!? 有希が!!?」

長門「そう」

ハルヒ「そ、そう…………だったら尚更」カチ





ミクル『ふふっ、正直な子は好きよ。さあ、王子様? わたしをあのお城へ連れて行っ―――』





ハルヒ「この先の展開が気になる気になるっっ!!!!!!」ワクワク

朝比奈「わあぁあぁああああああぁああ!!!!! R指定!! R指定入っちゃうからぁあああ!!///」バタバタ

ハルヒ「わたしはいっこうに構わんっっっ!!!!!!!」ドンッ!!





ミクル『ふー、なんだか疲れちゃった。ねぇ、ちょっとあそこで休憩していかない?』

ミクル『やだ、終電逃しちゃった…………どこに泊まろうかな?』

ミクル『いいじゃない今日くらいは……自分に……正直になっても、ね?』





ハルヒ「……」

朝比奈「……」

ハルヒ「……あの、どれだけ『いいえ』を選んでも、事あるごとに既成事実つくろうとしてくるんだけど」

朝比奈「びええぇえぇぇえええぇええええん!!!! わ、わたっ、わたしは違うんですぅぅぅうううう!!!!」ガバッ!

古泉「選択肢の意味あるんですか?……これ、はいを選んだ時点でED迎えるんですが……」

長門「……問題ない」

朝比奈「問題しかないですよっっ!!!! 色々と!!!!」

長門「……」

キョン「随分、難航しているようだな、長門」

ハルヒ「あ、バッドエンドショックから立ち直った」

キョン「与えた本人が何言ってやがる」

ハルヒ「あ、あれはあたしじゃないし!!!」

長門「……しかし、『りょうこ』は自信がある」

キョン「ほう、とっておきというわけだな、ハルヒ代われ」

キョン「恋愛シミュレーションゲームの神と言われた俺が、まさに神技を見せてやる……覚悟しろ2D LADY!!!」

ハルヒ「ショックでぶっ飛んだのかしら?」

朝比奈「も、元々あんな感じですよ!! キョンくんはぁ!」

古泉「庇うにしろ乏しめるしろ、どちらにしても酷いですよ、朝比奈さん」






りょうこ『あ、いまから帰るの? ちょうどよかった、ねえ、スーパー寄ってくからちょっと手伝ってくれない?』





キョン「……無難だ」

ハルヒ「中々いい感じなんじゃない? よくわからないけど」

古泉「この世界の『りょうこ』さんもスーパーがお好きなようですね」

長門「モデルを忠実に再現した」

朝比奈「だったらわたしは……一体……」






りょうこ『なに作るかって? ふふっ、今日はー……おでん!! どう? 一緒に食べてく? 自信あるわよ? おでんに関しては!』





キョン「おぉ、着々といい関係になりつつあるな」

ハルヒ「……いや、なんか暗雲が立ち込めてきた気が……」

朝比奈「この後ご飯を食べた二人は……うふふっ」

古泉「すいません、暗雲にツッコんでいった方が少なくともここに一名いらっしゃるんですが」

長門「……それは、バグ」

キョン「修正して差し上げてくれ長門」




りょうこ『おでんの具で一番なにが好き勝かって? そんなの決められないわよ、みーんなおいしいんだもの!』

りょうこ『んー……強いて言えば……そう! おでんみたいな人ね! なくてはならない、みたいな!』

りょうこ『あたし……あなたのことが…………おでんよりも好きっっ!!!!!!』





キョン「…………うん」

キョン「イイハナシダッタナー」

ハルヒ「終始おでんの話題じゃないの!!!!! 最後おでんと比べて告白されてるんだけど!!?!? どんな告白よそれ!!!」

長門「彼女のおでんへの愛を上回った感動的?なラストシーン」

ハルヒ「たしかにおでんへの愛はヒシヒシと伝わったけど!!? 途中おでんのステマかと思って見てたけど!!?!?」

朝比奈「……でも、これも長門さんが声入れてるんですよね…………うふ」

キョン「まぁ、自信があるというだけあって、3人の中じゃ一番まともだったな」

ハルヒ・朝比奈「「…………」」

古泉「(沈黙が悲しい……)」

長門「……どう?」

古泉「確かに、ゲームとしてグラフィック、音声などのクオリティは高いですが……」

古泉「内容の方が、少し、我々にはまだ理解が早かったかもしれませんね」

長門「……そう」

ハルヒ「……あ、でもあたしあのシーン好きよ? あの『はるひがUMAの焼死体を見て宇宙行を決意するシーン』!!」

朝比奈「わ、わたしも! 『ミクルが主人公を優しく抱きしめるシーン』はすごい好きです! え、えっちなのはいけませんけど……」

古泉「それを言うなら僕も『りょうこがおでんを作るのを止めて、主人公の元へ走り出すシーン』は感動ものですね」

古泉「しっかり火を止めてから走り出すのが細かくできていると思いました」

キョン「まぁ、各々見どころはあったってこったな」

長門「……そう」




はるひ『……あたしが求めていたものはこういうものだったのかしら?』



長門「……」カチカチ

キョン「まぁ、処女作としては中々のもんじゃねーか?」カチカチ

長門「……そう」カチカチ

キョン「自覚している苦手なところは如実に表れてたりはしたけどな」カチカチ

長門「……感情表現のところ?」カチカチ

キョン「そうだな、もう少し勉強する必要があるな」カチカチ

長門「……そう」カチカチ

キョン「……それでも」カチカチ

キョン「俺はお前が自分からゲームを作りたいと言った時は」カチカチ

キョン「随分、『らしく』なったじゃねーか、と思ったもんだぜ?」カチカチ

長門「……『らしく』―――?」カチカチ




りょうこ『おでんパワーは誰にも負けないッッ!!!!!』ユーウィン!!




キョン「ああ、『らしく』、さ……それはともかく」

キョン「ッシャーーー!!! 勝った!! 勝ったでーー!!!!」

ハルヒ「いやなんで恋愛シミュレーションゲームでバトルできてんの!!?!? それ本当になんのゲーム!!?!?」

キョン「ばっか! ラブにファイトはつきものだろうが!!! みろ! 隠しコマンドでナイフも出てくるんだぞ!?」

ハルヒ「怖いわ!!!! ラブのファイトで凶器出しちゃダメでしょ!!? 一気に血なまぐさくなるわ!!!!」

朝比奈「あ、あのぅ……『ミクル』のコマンドの『偽乳ミサイル』って……あの」

古泉「おやおや、ゲームブームが到来しそうですね? なら、僕のボードゲームもブームにのって―――」

キョン・ハルヒ・朝比奈「「「それはない(ですぅ)」」」

古泉「……あっはは」

長門「…………」カチカチ






















ゆき『わたしの名前はゆき、あなたのことを教えて欲しい―――』


                                          長門有希の関心     完

ここまでー。射手座の日の代替版かな?

とーかー


長門「……」ザッザッ

朝倉「え? えー……おでん?」ザッザッ

古泉「では……こたつ」ザッザッ

朝比奈「うぅ……温泉んぅ」ザッザッ

ハルヒ「……肉まん!!」ザッザッ

キョン「えー……砂漠?」ザッザッ

ハルヒ「それは現実味がない!!! もっと身近なもので例を出しなさいよ!!!!」

キョン「とは言ってもなぁ……そもそもなんでこんなことしてんだっけ?」

長門「…………遭難中だがら」

ハルヒ「そーなんです!!!!」クワッ

キョン「うーわ……言っちまったよコイツ。禁断の洒落にもならんジョーク」

ハルヒ「だって事実そうじゃない!!! あたしたちはそーなんしちゃってるのよ!?!!!?」

朝比奈「ふぇぇええ……やっぱりそーなんですかぁ!?」

キョン・ハルヒ「「……」」

キョン「見ろハルヒ、これが天然で出せる朝比奈さんの長所だ」

ハルヒ「……今はそんなこと言ってる場合じゃない!!!!」

キョン「本日のお前が言うな、だな」

古泉「現在、我々は雪山での遭難中。寒さを耐え忍ぶため涼宮さんの発案で暖かくなる言葉を発言していくルールでした」

ハルヒ「説明ありがと!!! ただまったく暖かくならなければ麓も見えて来やしないけどね!!!」

朝倉「……もう一度聞くけど、涼宮さん?」

ハルヒ「なに!?」

朝倉「キョンくんに麓まで連れて行ってもらうっていうのは……」

ハルヒ「却 下 !! いーい!? 天下のSOS団団長が大自然の猛威なんかに屈するわけにはいかないの!!!」

朝倉「え、SOS団全員で大自然に打ち勝つってのは……」

キョン「なんか俺に負けた気がするからダメだって」

ハルヒ「なんかキョンに!!! そう!!! キョンの言う通り!!!! ていうかこの時点で負けてる気がするけど!!!」

キョン「お前のルールに則った場合、俺の戦績は勝ちしか記録されてねーよ、やれやれ」

朝倉「行き時はキョンくんタクシー使う気マンマンだったのに……」

キョン「タクシーいうな、ていうか最早あの人数じゃバスだよバス、どれだけ人を酷使するんだ」

長門「…………カレー」


ハルヒ「もーー!! とにかく!! 続行よ!!!! お湯!!!!」

朝比奈「す、ずずみやざぁん……なんか雑になってません?」グズッ

長門「…………」

古泉「……少し、いいですか?」

キョン「なんだよ」

朝倉「この異常事態のことでしょうよ」

キョン「あぁ、暖かくなるものを言っていくルールなのにもはやただ熱いだけのものを言って―――」

古泉「そちらの方ではありません。むしろそちらは通常運転です」

朝倉「どう考えてもこの吹雪に遭難の方でしょ? こんなことって……」

古泉「夏の嵐とは違い、涼宮さんはこの状況を望んではいません、つまり」

キョン「夏と同じく、嵐を望んでいる奴がいる、ということだ」

朝倉「それって……12月の改変世界を修正する際に会った……」

古泉「僕たちの敵対組織なるものの仕業……ということでしょうか?」

キョン「流れ的に」

朝倉・古泉「「流れ的に……」」

ハルヒ「あー!! こんなに人と会わずに遭難とかありえる!!? さっきまでワラワラ群れてたのに!!!」

朝比奈「うぅ……づるやざんのところは吹雪いてないどいいんでずか……」ズル

ハルヒ「あー鶴ちゃんの別荘に帰ってお風呂入りたいわお風呂!!! お風呂……ハッ! お湯!!」

キョン「なんでお湯に固執するんだよ、さっき言っただろうが。ていうか普通にお風呂でいいだろそこは」

朝倉「……まったく、いつもながら余裕かましてくれちゃってるわね」

古泉「しかし、彼の余裕が無くなれば、我々としても非常に危険な状態であることを意味します」

朝倉「余裕でいてくれるうちはまだなんとかなる……てことね」

古泉「さて、何故このような状況に追い込まれたのか……まぁ、追い込んだ張本人たちは分かってはいますが」

朝倉「ま、なるべきしてなった遭難……ってところもあるかしらね。まったく……」

長門「……」

朝倉「(あたしと長門さんの情報操作能力にジャミングをかけることができるとはね……相手方さんもやるじゃない)」

ハルヒ「あぁぁぁあぁああああああ!!!! なんで遭難なんかしてるのよっっ!!!!!」

キョン「話は涼宮ハルヒ生誕にまで遡る――――――あれは」

ハルヒ・朝倉「「それは遡り過ぎよ!!!?!?!!??!?」」ガーン!


2日前


キョン「『第二回 SOS団冬季合宿』~」

ハルヒ「では! ここで重大はっぴょ……が終了しましたー!!! いぇいー!!」

キョン「コイツ……雰囲気にあてられて浮かれてやがる……怒らない、とは」ゴクリ

朝倉「いやゴクリ、とか言ってる場合じゃなくて!!! キョンくん!!!!!」

朝比奈「キョンくーん!!!! 古泉くんが!! 古泉くんがぁ!!!!」

鶴屋「あはっ、あっははっはっはっは!! 一樹くん!!? いつ、一樹……ぐひゃっはっはあははあはは!!!!!」ゲラゲラ

古泉「」

キョン「あ、忘れてた……古泉、寝るな。重大発表だぞー」ビュン!!

古泉「ぐおっぅ!!?!?」グンッッ!!

朝比奈「うひゃぁあ!!」ビクッッ!!

朝倉「こ、古泉くんの体が何かに引き寄せられるが如く起立した……」

古泉「――――――っ!!!」

朝比奈「こ、古泉くん……?」

古泉「…………生きてる」

朝倉・朝比奈「「ですよね!!!!!!」」ガーン!!

ハルヒ「なんでクリスマスに引き続きそれを古泉くんの持ちネタみたいにしてんのよ」

キョン「な? 言ったろ? 防弾チョッキがあればなんでもできるんだ」

古泉「…………ハハ、ソウデスネ」

朝比奈「やめてあげてっ!!! もう古泉くんには怒る気力もツッこむ気力もないんです!!!」

朝倉「本当にイエスマン状態になっちゃってるわよ!!!!!!」

鶴屋「い、いっ、いつ、いつきっ、一樹くっ、ぐふっふわっっはっはっははははは!!!!!!」

朝比奈「鶴屋さん」

鶴屋「ごめん、みくる。笑いすぎたっさ。ほんとごめん」

朝倉「(こ、この二人の関係性は一体……朝比奈さんって一体……)」

ハルヒ「古泉くんも起きたところで!!!」

キョン「生き返ったんだよ」

古泉・朝比奈・朝倉「「「そうなの!!?!?!?!?」」」ガーン!!!

鶴屋「……ぐふっ!」

ハルヒ「合宿のことについて話したいと思いまーす!!!」


ハルヒ「えと、まずはそこにいるSOS団名誉顧問の鶴ちゃんなんだけどね」

キョン「いつの間にそんな役職が」

ハルヒ「なんと、その名誉顧問である鶴ちゃんが特別にSOS団の合宿ために!!」

ハルヒ「別荘を無料で利用させてもらえることにしてくれましたーっ!!!!」

鶴屋「いやいやっ!! どーも、どーも!」

朝倉「へぇー鶴屋さんって別荘とか持ってるほどのお金持ちなんですか」

朝比奈「水瀬グループや中川財閥と並ぶほどの企業勢力なんですよ」

朝倉「……へー?」キョトン

キョン「だからな? 朝倉、おでんでいうと卵、大根、牛スジに当たるのがこの三つの企業で―――」

朝倉「おでんの具に優劣なんてないわっっ!!!!!」クワッ!

キョン「面倒くさいな朝倉……」

ハルヒ「でねっ!! その合宿に前の森さんとか新川さんとかが来てお世話してくれるみたいなのよっ!!!」

キョン「多丸兄弟を『とか』とか言うな、こらっ」

鶴屋「ホントはね! いつもおやっさんが使ってるんだけど、今年は使わないからみんな来てよっ!!!

長門「……」モグモグ

ハルヒ「だそうだから! みんなで鶴ちゃんに甘えちゃおうってことで!!!」

ハルヒ「お世話になるわっ!! 鶴ちゃん!!」

鶴屋「あいあいさーっ!!! まかせておくれっハルにゃん!!!」

ハルヒ「というわけで二日後の合宿に向けた会議は終了として……」

朝倉「も、もう終わりなの? そ、それとあたしの参加は……」

ハルヒ「え? 不参加とかないでしょ? 会議まで出てるんだから」

朝倉「ま、まぁ……うん」

キョン「……」

ハルヒ「本日のメインは~……有希!! 有希有希有希有希~~有希よ!!!!」

長門「……雪」

ハルヒ「そうっ!! あなたよ! 有希! くわしーくサンダースとの話聞かせてもらうからね!!!」

朝倉「じゃなくて……雪、降ってきたわね」


ハルヒ「え!? そうなの!!? 一回間違いって言われてまた試合を見に来てって言われた!!?」

朝比奈「そそそそれって!! 本当の恋に気付いたとかとかとかぁ~~!!!?!? ですかぁ!!?!?」バンッ!

長門「……分からない」

鶴屋「うっひょー!! 有希にゃんモッテモテだねぇー!! あたしもファンクラブ入っちゃおうかなっ!!?」

キョン「恋愛は一種の精神病だかなんだか言ってた割に興味津々じゃないか」

朝倉「隣の芝は青く見えるんじゃない? ま、長門さんの恋愛ってものにも興味あるし」

キョン「…………そういうもんかね」チラッ

古泉「……あなたが見ていたのは窓の外の雪ですか? それとも……」

キョン「……お前の未来かもな」ボソッ

古泉「すいません、勘弁してください」

朝倉「雪が気になるの? 明後日には思う存分遊べるわよ」

キョン「雪……まぁ気になると言うか、なんと言うか……」

古泉「……あなたの目には、なにかよからぬものが映っておいでですか?」

キョン「いやぁ、まぁ……なんだ」

キョン「とりあえず古泉の死亡記録が伸びることはない――――――多分」

古泉「……あの、多分という言葉にも引っかかるんですが、記録という単語に恐怖を覚えるんですが……」

キョン「ま、合宿まではあと二日もあるんだ、英気を養っておこうぜ」

朝倉「合宿たって……合宿外のトコで疲れるようなモンじゃない」

キョン「だから、そのための英気だよ」

ハルヒ「ええっ!!? 朝倉さん有希とプーさんの間に入って三角関係になるってマジ!!?」

長門「マジ……?」

朝倉「いーやマジじゃないから!! 真面目な顔してマジじゃないから長門さん!!!!!」

キョン「……ま、案ずるより産むがやすしさ」


ハルヒ「と、いうわけで」

ハルヒ「やってきました合宿当日!!!」

キョン「おぉーやってきちゃったねぇ、あっという間だったねぇー」

朝倉「なにキャラなのそれ」

ハルヒ「みんなちゃんと集合してる!? 忘れ物はないっ!!?」

古泉「はい」

朝比奈「はぁい」

長門「……」コクリ

朝倉「はい」

鶴屋「おっけーい!」

キョン「おー」

キョン妹「おっけー!」

キョン「よし、これでおっけ……おぉおおぉおおお!!!?」

ハルヒ「あれ? なにその子」

長門「……妹」

朝比奈「なっ、長門さんの!?」

朝倉「えっ!?」ビクッッ!!

長門「彼の」

キョン「お前……何故ここに」

キョン妹「ふっふっふーぅ!! そーれーはー?」

キョン妹「あたしも旅行に連れて行ってもらいたいからでぇーーーす!!! それ以外に理由などなぁーーーい!!」

キョン「却下だ、家に帰ってなさい」シュン!!

キョン妹「わ―――」

ハルヒ「あっ、別に帰さなくてもよかったのに、アンタの妹ぐらいならそんな―――」

キョン妹「ほらーっ!! 団長さん? もこう言ってくれてるしーっ!!!」

朝比奈・古泉・朝倉・ハルヒ「「「「!!?!?!?!?!!??!?」」」」

キョン「……ハァ、もう抵抗するのは無駄だから好きにしろ」

キョン妹「わぁーい!」


ハルヒ「あなたキョンの妹なのよね!? もしかしてキョン直伝でトリックのタネとか知ってたりする!!?」ワクワク

朝倉「い、一瞬で帰ってきた? それともそもそも帰ってなかった……いやそれだと……」

キョン妹「んー? あたしわかんなーい。 あ、有希ちゃんだーっ! この前ふり―!!」ギュッ

長門「…………」ナデ

朝比奈「ふ、不思議な子ですね……」

キョン「すいません、鶴屋さん。面倒なのが増えてしまって」

鶴屋「んーんー! 子供は元気が良ければそれでいいのっさ! さあ張り切るにょろよ妹ちゃん!!」

キョン妹「あたし頑張ってはしゃぐ―!!!」ピョンピョン

古泉「……あなたの妹さんのことですが」

キョン「あぁ、我が家きっての暴君だ、この合宿……荒れるやもしれんぞ」

古泉「あなたの戸籍に兄妹は……」

キョン「こまけぇこたぁ(ry というか今更そんなことを俺に言われても……」

古泉「……そうですね、野暮、というか……言うまでもないことでした」

キョン・キョン「「まぁ、俺がもう一人増えたと思ってくれればいい」」

古泉「実際増えてるんですが!!?!?!? これ以上あなたの家系の割合を増やさないでください!!」

ハルヒ「ま、予想外の参加者がいたとはいえ、なんら問題ではないわ!! 全員揃ったことだし」

ハルヒ「そろそろ出発しちゃいましょーか!!!!」オー!

ハルヒ「……というわけで」

ハルヒ「キョン、よろしく」ポンッ

キョン「ばっか、おま、ほんっ、お前……バカ! 夏の時もいっただろうが! 旅行の道中こそメインイベントなんだって!」

古泉「さすがにそこまでは言いませんが……まぁ、公共の施設でのんびりいくのも、悪くないでしょう」

ここまでー

12時ぐらいにまでにはとうかー

とーかー


ハルヒ「つ! い! た!」

キョン妹「ついたーっっ!!!」ピョンピョン!

新川「お待ちしておりました、皆さま」

森「ようこそいらっしゃいました」

古泉「あらか―――」

キョン「やあ新川さん、森さん。お久しぶりです。鶴屋さん、こちらが我々のお世話をしてくれる執事の新川さんとメイドの森さんです」

鶴屋「うおっと!! 期待以上の完成度だねーっ!!! さすがはキョンくん……じゃなかった! 一樹くんの推薦だねっ!」

古泉「…………」

キョン妹「まぁまぁ、人生酸いも甘いもあるからねー。わーっ!! 本物のメイドさんだぁーっ!!」ポンッ

古泉「……痛感しています」

朝倉「(何者なのよこの子……)」

ハルヒ「久しぶりね二人共! 夏は少し遊び足りないかもと思ったけど、この冬で挽回するつもりだからよろしくね!」

新川・森「「承知いたしました」」ペコリ

長門「……」トントン

新川「おや? 何か御用ですかな?」

長門「…………ディナー、期待している」

新川「それはそれは……腕によりをかけてご用意させていただきます」

長門「…………」グッ

朝倉「ホント食欲が絡んだ時の長門さんは積極的ね」

キョン「アイディンティティだからな」

古泉「……それで―――」

キョン妹「それじゃあそこにある車で二台に分かれて別荘にいこーっ!! さー! いこーっ!!」ダダッ

鶴屋「むむっ、車まで競走かいっ!? 妹ちゃ……あちゃー!! もう着いちゃってる! もう着いちゃってたか―! いやー若いって素晴らしいっ!」

朝比奈「え……一瞬で、あんなに……?」

キョン「どした古泉? 元気ないぞ?」

古泉「……ええ、兄妹というものを、強く実感させていただいたまでですよ」

キョン・キョン妹「「???」」

朝倉「いやこっちが『?』よ!!!! 妹さんなんでこっちいるの!!?!? ありとあらゆる自然法則無視しすぎじゃない!!?!?」ガーン!


鶴屋別荘前


朝比奈「はぇー……おっきぃ……」

キョン妹「大きい!!!」

鶴屋「ふっふっふ、みくる自慢じゃないけどね、これは数ある別荘の中でも一番こじんまりしたやつなんだよーっ! まぁ自慢じゃないっけどねっ!!」

朝比奈「もぅー! わざとらしいですよぉ鶴屋さん!」

鶴屋「あっはっはー! ごめんごめん、でもこれぐらいの大きさの方が一番居心地がいいのさっ!!」

古泉「では、鶴屋さん。新川さんと森さんに中に入って準備をさせていただいてもよろしいですか?」

鶴屋「全然構わないよっ!!! じゃんじゃん進めちゃっておくれ!!!!」

新川・森「「御意に」」ペコ

キョン「朝倉……これで一番小さい別荘なんだってよ」

朝倉「すごいわよね、これでも夏に言った別荘並に大きいのに」

キョン「それに比べて俺はなんてちっぽけな存在なんだ……クッ!」

朝倉「……これほど言動と経歴が一致してない発現は珍しいわね」

ハルヒ「いい雰囲気のとこじゃないの! 鶴ちゃん! この別荘の名前は!!?」

鶴屋「ん!? んー……じゃあ『鶴屋さんちの別荘』で!!」

朝比奈「もぅ鶴屋さん、そのまますぎますよー。もっとこう『鶴の恩返しで建った家』とか……」

ハルヒ「みくるちゃん、それもなんか違うわよ。鶴ちゃんだから……『鶴れ家【かくれが】』とか!」

朝倉「こんな大きい別荘じゃ目立っちゃわない?」

キョン「おいおい、持ち主である鶴屋さんを尊重すべきだろ? 『鶴屋さんちの別荘』略して『ヤーさんの別荘』で決まりだろ」

朝倉「決まらないわよ!!?!? 今あげた中で一番失礼だからね!!?!? ていうか洒落にならないから!!! あと略すな!!!!!」

ハルヒ「あんた……雪山に埋められる覚悟はしといた方がいいかもね」

朝倉「だから『ヤーさん』に引っ張られないでってば!!!! お金持ちから色々連想しちゃうから!!!!!」

キョン妹「お城みたいだからー……『鶴○城』!!!!!!!」

朝倉「誰よっっ!!!! 小学生に焼酎の名前教えたのはっっ!!!! ていうか○の意味ないわよっっ!!」

キョン「落ち着け朝倉、鹿児島城のことを言っただけかもしれんだろ? むしろよく焼酎の方のツッコミが出てきたな……」

ハルヒ「キレッキレね!! 朝倉さん!」ポンッ

朝倉「嬉しくない!!!!」ババッ!


鶴屋「あー、キョンくん! ちょっといいかな?」

キョン妹「みくるちゃんとこがいい!」
キョン「こら、朝比奈さんの迷惑になるようなこと言うんじゃない」

鶴屋「実は部屋が結構いっぱいいっぱいでさ、妹ちゃんはキョンくんの部屋に……わぁお! 話が早い兄妹だねっ!!」

キョン・キョン妹「「恐れ入ります」」

朝倉「なんなのこの兄妹……」

朝比奈「あ、だったら全然わたしのとこに来てもらってもいいですよ」

キョン「マジですか? じゃあ遠慮なく……おい、俺は朝比奈さんのところで寝るから部屋汚すんじゃないぞ」

ハルヒ「あんたの方じゃねぇよ」ゴンッッ!

キョン「痛い、いつにもまして口も手も荒いよお前……」

キョン妹「わぁーい!! みくるちゃんと一緒だーっっ!!」

朝比奈「ふふっ、あんまり夜更かししちゃダメですよ?」ニコッ

キョン妹「今夜は寝かさないぞぉーっ!!」キャッキャ!

キョン「違う! 俺じゃない!!」

朝比奈・朝倉「「キョンくん!!!!」」バッ!

ハルヒ「弁解が早い!!!!」ガーン!

朝比奈「妹さんになんて言葉教えてるんですか!!! ダメですよキョンくん!!!!!」

朝倉「妹さんがああいう発言をするのは紛れもなくキョンくんの影響よ!! 今後は自分の言動を省みなさい!!」

キョン・キョン妹「「面目ない……」」ショボン

朝比奈「ああ! あの、妹さんを叱ったわけじゃなくてね! あぁ、うぅ……」

朝倉「だからなんなのこの兄妹……変なとこシンクロするのがムカつくわ」イラッ


スキー場


ハルヒ「それじゃスキーを始めていきたいと思いまーす!!! その前にスキー始めてだっていう人ー!」

朝比奈「はぁい」

長門「……」スッ

キョン「お前もだろ」

キョン妹「修学旅行でやったもん!」

キョン「修学旅行は来年だろうが、いつの話をしてんだ」

キョン妹「あ、間違えた! てへっ!」

朝倉「……なんなの?」

ハルヒ「それじゃ練習がてら簡単なコース滑りつつ、初心者を教えていこうかしら!!!」

キョン「いいか? まずこれはストックと言ってだな……」

キョン妹「いらないもの?」

キョン「いらないものをわざわざ最初から持たせるわけないだろう」

キョン妹「なるほどー、そういう文化かー」ヘー

長門「…………」モグ

朝倉「あっ! こら! 長門さん今雪食べたでしょ!!? 吐いて! お腹壊しちゃうから!!!」

長門「わたしは有希だから……大丈夫」

朝倉「どんな理由よ!!! もう! お腹減ったからってなんでもかんでも食べちゃダメよ!?」

鶴屋「そうそう! んでそのままスイ―っとね……おおぅ! うまいじゃないかっ!! みくるセンスあるよー」

朝比奈「わわっ、あっ、わぁ! すごい! 楽しい!」

鶴屋「で、そこでジャンプしながら回転だっ!!!!」

朝比奈「ええっ!!??!? 急に難易度上がってません!!?!?」

ハルヒ「……うーむ」

ハルヒ「いい感じね!!!!!」バーン!

古泉「……はい、『自由』が表現されていて良いかと」


ハルヒ「よーしよし! 有希もみくるちゃんも大分滑れるようになったわね! だけど……」

キョン「だからな? よく聞け? 仮にここを点Aとして運動の第一法則は―――」

キョン妹「なるほどなるほど、つまりこの先中国経済のバブルが弾けてしまうと日本経済に大きな影響が―――」

朝倉「教える方にも教えられる方にも問題がありすぎるっっ!!!!!!!」ガーン!!

ハルヒ「まずなんの話をしてんのよ、あんたたちは!!!!!」

キョン・キョン妹「「スキーの話だけど?」」

朝倉「スキーのスの字も話してなかったわよ!!!! まず両者で話通じてなかったし!!!!!」

キョン「違うんだ朝倉、俺は理論派だから物事を順序立てて説明してるんだ」

キョン妹「あたしは直感派だから体で覚える方が得意なんだーっ!」ニヘラ

ハルヒ「あんたたちの思惑がキレイにすれ違ってるんだけど!!?!? 兄妹らしからぬ意思疎通の無さ!!!!」

キョン・キョン妹「「いやぁ……面目ない」」

朝倉「そこだけシンクロしてもただムカつくだけだから!!!!」イラッ

古泉「しかし、このままの状態で最上級コースに連れていくのは少し危険かと……」

キョン「案ずるな、ちゃあんと埋めていってやるからな」パンパン

キョン妹「ちめたーい!!! 雪まみれー!!」

古泉・朝比奈「「……」」

キョン「……ふぅ、よしっ! 行こうぜーっ!!!!」

ハルヒ・朝倉「「この外道っっ!!!!」」ボガァ!!!

キョン「痛ってぇ!! 俺はただこの愚妹が迷惑をかけないようにと……」

キョン妹「めざせてっぺーん!!!!!」ピョーン!

朝倉「いつのまにか出てきてるし……なんなの?」

鶴屋「あっはっはー! 妹ちゃんは直感派かー! あたしと一緒だねっ!! よしっ! いっちょお姉さんと秘密の特訓でもやるかいっ!?」

キョン妹「特訓!? やるやるーっっ!!!」

鶴屋「てなわけでっ、妹ちゃんはあたしに任せてスキー楽しんでおいでよっ!」

ハルヒ「鶴ちゃん、いいの?」

鶴屋「いいってもんさ! さ、妹ちゃん! あたしの特訓は厳しいけどついてこれるかなー!?」

キョン妹「おおーっっ!!!! 特訓を終えた時、あたしは本物のスキーヤーになるっ!!!!」

朝比奈「あ、じゃああたしもまだ特訓しておこうか―――なっ!?」グイッ

ハルヒ「さっ! 鶴ちゃんが妹ちゃんを見ててくれるから! 感謝しながらあたしたちはスキーを楽しむわよっ!!!」

朝比奈「ふえぇ……」

朝倉「ま、そうなるわよね……」


朝比奈「ちゃ、ちゃんと滑れるかなぁ……」

ハルヒ「みくるちゃん、気合があればなんでもできるわ!!! ブレーキも気合よ気合!!」

朝倉「そんな根性論流行らないわよ」

古泉「僕もスキーは久しぶりですから、体が動くか心配ですね」

長門「……そう」モグモグ

朝倉「あ! また食べてる! ペッしなさいペッ! ていうか雪食べてそんなにおいしい!?」

長門「……そんなに」

朝倉「だったらやめればいいのに!!! やめればいいのに!!!!」ガーーン!!!

鶴屋「さあ妹ちゃん! なんの特訓から始める!? 雪合戦かい!? 塹壕堀りかいっ!?」

キョン妹「あ、その前にーちょっと待っててー!!!」

キョン妹「キョンくーーん!!!!!」ダキッ!

キョン「ふぐっ!! 痛い、なんだよ。お前は上には連れて行ってやれんぞ?」

キョン妹「んーんー、そうじゃなくて!」

キョン「……金か?」

キョン妹「それは今度でー……だからそうじゃなくて!」

ハルヒ・朝倉「「(なんか聞きたくないことを聞いてしまった……)」」

キョン妹「あのねーキョンくん」













キョン妹「気をつけていってきてねー!!」ニヘラ












キョン「…………おう」

キョン妹「いってらっしゃーい!!  お待たせっ!!! 特訓おねがいしまーす!!!」

鶴屋「おおぅ! 兄の帰還を案ずるとは出来た妹だねっ!! 妹ちゃん!! じゃ……まずは!」

キョン妹「だるまづくり!!? やるやる!!」

鶴屋「だるまづく……そうだっ!! それをやるんだよっ!! 妹ちゃん!! さあとりかかれーっ!!」

キョン妹「あいあいマム!!! どりゃぁぁぁああぁああああ!!!」

朝倉「いい妹さんじゃない」

キョン「……ああ、気の利くやつだよ、まったく」


ハルヒ「さあ競争するわよ競争!! 誰が一番早く滑れるか!!!」

朝倉「危ないからやめましょうよ、朝比奈先輩も長門さんも初めてなんだし」

ハルヒ「とかなんとか言ってぇ、朝倉さん、あたしに負けるのが怖いんだ。あーソウナンダ、ソウナンダ」

朝倉「…………はい?」

古泉「(ちょろいですね)」

朝比奈「(ちょろすぎます……)」

ハルヒ「だったらいーわよ無理しなくても、そっかそっかー、ま野球の時も大したことなかったもんねー」

朝倉「……随分大口叩くじゃない、いーわよ。そんなに勝負を望むならあたしが受けてた―――」

ハルヒ「よーいドン!!! っしゃ勝つわよー!!!!」シャーーー!!!

朝倉「んなっっ!!?!? 卑怯者!!! 恥知らず!!!! 正々堂々勝負しなさーい!!!!」シャーー!!!

朝比奈「……いっちゃいました」

キョン「これをあと何回繰り返すんだか……さて、じゃあ俺たちも」

古泉「ええ、滑りましょうか」

キョン「えぇ……俺はドッカンドッカンウケたいんだが……」

古泉「いつから漫才の話になったんですか……僕達も怪我をしない範囲で滑っていきましょう」

朝比奈「よ、よぅし……ゆっくりゆっくり……」スー

長門「……」

朝比奈「あ、長門さん同じ初心者同士一緒にゆっくり滑って―――」

長門「……」グルングルングワラグワラシュリリーン

朝比奈「…………デスヨネー」スー

キョン「…………」

古泉「…………あの」

キョン「なんだ?」

古泉「……あえて言いますけど、絶対押さないでくださいね?」

キョン「…………フッ」

キョン「任せろ!!!!」ドンッ!

古泉「任せれませんっ!!!!」スイーッ!!

キョン「あっ、野郎……隙をついてお約束をせずに……」

キョン「……お」

キョン「雪が……降ってきたか……」

キョン「……こりゃ、気をつけて滑らんとな」

寝る前までにとうかー

とーかー


ビュウゥウゥウゥウウゥウウウゥウウウウゥウ


朝比奈「う、うぅ……さむいです……」ブルブル

キョン「うぅ……ハルヒ、俺も仮病の陣痛が始まったし、吹雪いてもきたからもうそろそろ下ろうぜ?」

ハルヒ「なにからなにまでおかしい理由だけど……そうね、この吹雪じゃさすがに滑るのは危険ね」

古泉「…………」

朝倉「……古泉くん、なにか考え事かしら?」

古泉「……ええ。多分、朝倉さんと同じことを考えていますよ」

朝倉「えっ」

古泉「えっ?」

朝倉「……古泉くん、もしかして長門さんのことを―――」

古泉「前言撤回です。僕はこの状況に対する思考を進めていました」

長門「これは明らかな異常事態」ズッ

朝倉「長門さん、なんでそんなとこから……」

長門「雪から有希」

朝倉・古泉「「…………」」

古泉「……確かに、異常事態の様ですね」

朝倉「ちょっと! 古泉くん! 長門さんが異常事態みたいなタイミングで言わないでよ!」

キョン妹「アハハー!」

古泉「すいません。ちゃんと二つの意味でと加えるべきでしたね」

朝倉「だから別に長門さんが異常なんじゃ…………今、いるはずのない人物がこの場にいなかった?」

長門「気のせいであると思われる。今は異常事態、不可思の出来事もありえる」

朝倉「いや、素でやりかねない子だからね……」

キョン「アハハ!」

古泉「あの、そこで能天気に雪にまみれている方。できれば知恵を貸して欲しいんですが」

長門「呼んだ?」

古泉「……確かに、長門さんも雪にまみれてはいますが……有希だけに」

朝倉「ちょっと!!! 全体的に緊張感に欠けてない!!?!? ていうか古泉くんまでそっち側にいっちゃダメ!!!! 常識人が減る!!!!」ビッシィ!!


ハルヒ「みんな! 聞きなさい! 吹雪いてきたからそろそろ帰ろうと思うの!! はぐれるとマジやばいからしっかり固まって降りてくわよ!!」

朝倉「あのー……涼宮さん、ここに麓まで連れて行ってくれる便利なタクシーがあるけど……」

キョン「おい」

ハルヒ「ダ メ !! それはダメ!!!!」

キョン「なんでだよ、いつも、今回だって真っ先に別荘までキョンタクシー使おうとしてたくせに。ま、俺が言うのもなんだけど」

ハルヒ「そう! だからよ、だから! あたしはね、めずらしーくあんたの言うことにも一理あると思ったわけよ」

朝倉「珍しく?」

ハルヒ「そう、珍しく。言ったわよね? 道中を楽しめ、って」

ハルヒ「この状況を楽しめとは言わないけど、この状況に対抗、打破する力をつけるのも大事だと思うのよ! 不測の事態に備えてね!」

朝倉「(今がその不測の事態なんだけどなぁ……)」

ハルヒ「というわけで! ここはみんなで一致団結して麓まで目指すことにしましょ!!」

ハルヒ「といってもそんなに遠くはないでしょ! あたしの土地勘によれば吹雪でも10分ぐらいあれば降りれるわ!」

朝比奈「うぅ……お風呂入りだいでずぅ……」ズビ!

ハルヒ「さあみくるちゃん! お風呂に入りたくばまずその歩を進めるのよ!! さすれば大浴場に迎えられるわ!!!」

朝比奈「うぅ、大浴場……うぅ」

ハルヒ「さ! しゅっぱーつ!!!!」

朝倉「……キョンくんが厳しくするから変なトコで意地張っちゃったじゃない涼宮さん」

キョン「厳しくしねえとどこまでも堕落していくだろう、それにハルヒにゃまだまだ甘いと思ってるさ」

古泉「しかし、この芳しくない状況が続くのは……あまり良いことではないと思いますが」

キョン「そう思うんだったら」ザッ

キョン「さっさと団長についてってやろうぜ。朝比奈さんも長門ももう出発してるぞ」

ハルヒ「めっざせー!! おっふろーー!!!」ザッ

朝比奈「うぅ……お、おふろー!!」ザッ

長門「……」ザッ

古泉「……まぁ、団長について行くのが団員というものですかね」ザッ

朝倉「あたしは違うのになぁ……」ザッ


キョン「以上!! で、現在の遭難状況に至る!!!!」

ハルヒ「だっておかしいじゃない!!! もう何分歩いたと思ってんの!!? 山の一つや二つは越えてないと割にあわないわよ!!!」

朝比奈「も、もう歩げまぜぇん…………スピー……」

ハルヒ「みくるちゃーーーーーーん!!!!! ダメダメぇ!!! 寝たら死んじゃうわよー!!!!! 起きなさーい!!!」パチパチ

朝比奈「う、うぅ!……ハッ!! だ、大丈夫です! わたしは未来からきた未来人、わたしは未来からきた未来人」

ハルヒ「……キョン、みくるちゃんが壊れた」

キョン「心配するな、正常だ」

ハルヒ「これで!!? あんた結構みくるちゃんに失礼ね!!! どんだけ痛い子だと思ってんのよ!!!!」ガーーン!

キョン「そういう意味じゃないが……しかし、ずっと吹雪いてるな。前も見えんぞこれじゃあ」

長門「……」

朝倉「……ねえ、涼宮さん。どうやら本格的に迷っちゃってるみたいだし、もうタクシーを使―――」

ハルヒ「あっっ!!!!」

キョン「おいおい、デカい声出すな、びっくりして心臓が飛び出たぞ」ドクンドクン

朝倉「こらーーっっ!!!!!! そんなグロイものちゃんと規制かけなさいよーっっ!!!!!!」ダゴッ!

キョン「ぐっはぁぁぁあぁあああっっ!!!!! ちょ、し、心臓を直接……カハァッ!!!」

ハルヒ「ちょっと!!! あたしの発言が埋もれちゃったじゃない!」

古泉「雪にですか?」

朝倉「古泉くん、あたしに拳を使わせないでね?」

古泉「承知しました」

ハルヒ「だから流さないでってば!!!! あの―――」

キョン「ああっ!! 見ろォ!!!! 明かりだ!!! 人工的な明かりが見えるぞ!!! 助かったんだ俺たち!!!」ダダダッ!

ハルヒ「だからそれあたしが言いたかったことだってば!!! ていうか一人でダッシュすんな! 一番はあたしよ!」ダダッ!

朝比奈「お風呂っ!!? 行きます行きます行きまーーすっっ!!!!」ダダッ!

朝倉「ちょっとー!!! 明らか怪しいわよー!? 怪しいのに行くのー!!? おーいってばー!!!」


ハルヒ「こんな大きい洋館、いかに吹雪と言えどなんで今まで見えなかったのかしら? 明かりまでついてるのに」

朝比奈「お、お風呂お風呂お風呂ろろろろろろろ」ガタガタ

ハルヒ「とにもかくにも、みくるちゃんがこの状態だし、人助けしてもらおうかしら!」

朝倉「それしてもらう側のセリフじゃないわよね」

ハルヒ「ノックしてもしもーし!! ごめんくださーい! 誰かいませんかーっ!!!」

古泉「…………応答なし、ですね」

ハルヒ「でも困ってるときはお互いさまよね、キョン開けなさい」

朝倉「なんて唯我独尊な……」

キョン「ほい、開いたぞ」ガチャ

ハルヒ「……なんで中から出てくる!!?!?!?!? 誰が中から開けてって言ったの!!?!!???!?」ガーン!!

キョン「え、だって俺中にいたし……」

朝倉「いつから!!?!? いつからいたのよもう!!! なんかもう……なんかもう!!!!!」

キョン「お、落ち着けよ。中は誰もいないみたいだが、吹雪が止むまでお邪魔させてもらおう」

ハルヒ「そのつもりよ、さあ、みくるちゃん。建物よ、中あったかいから早く入りなさい」

朝比奈「うう……あぁ……あったかいなぁ…………スピー」

ハルヒ「みくるちゃーーーーーーん!!!!! 今寝るともう起きないような気がするから今は寝ちゃダメ―!!!!」パチンパチン!!

朝比奈「ピギャッ!!」

古泉「…………」

朝倉「また考え事? まさか長門さんのことじゃないわよね?」

古泉「……そのまさか、と言ったらどうします?」

朝倉「……どういうことかしら?」

古泉「……冗談ですよ、吹雪が凌げて余裕がでたので、つい、ね」

朝倉「……なら、いいんだけど」


ハルヒ「さて、それじゃああたしは誰かいないか探してくるわ」

キョン「おい、誰もいないと言っただろ? それにこの建物は広くて一人じゃ―――」

ハルヒ「広いからこそあんたが見れてないところとかあるかもしれないでしょ! とにかく後で文句とか言われたら嫌だから―――」

キョン「いや、だから……」

キョン・キョン・キョン...「「「「「ちゃんと一室一室隅々まで調べて誰もいなかったんだよ」」」」」ワラワラ

ハルヒ・朝倉「「なんかワラワラ湧いてきたーーっっ!!?!?!!!?!?」」ガーン!!

キョン「湧いてきたとは失礼な、全部俺だぞ」

ハルヒ「キモイ」

キョン「おま」

古泉「彼が気持ち悪いか否かは置いておくとして、この広い建物に誰もいないというのは、不自然ですね」

朝倉「明かりもついてたし、広い洋館だし使用人さんの一人や二人は残っててもおかしくないわよね」

ハルヒ「確かに……この館……不思議かも!!!」キュピーン!

キョン「その爛々とした目をやめたまえ。この非常時に出張版不思議探索なんてやってられんぞ」

ハルヒ「わ、わかってるわよ! でも誰もいないとなると全部事後承諾になっちゃうわね……」

古泉「緊急事態ですし、そこは仕方がないでしょう。事情を説明すれば持ち主の方も分かってくれるはずです」

ハルヒ「そうね! いざとなったらイリュージョンでごまかせばいいし!!」

キョン「世界中のイリュージョニストに謝れ、イリュージョンはそんな使い方しない」

ハルヒ「そうと決まれば風邪ひかない内にお風呂行きましょお風呂!! 冷えた体を温めなくちゃ!!!」

キョン「風呂なら大浴場があったぞ、男女別ではなかったが……」

古泉「では、レディーファーストでどうぞ。その間僕と彼はこの後の対策でも考えておきます」

ハルヒ「じゃ決まりね!! みくるちゃん、有希、朝倉さん!! 先、お風呂いただいちゃいましょ!!」

朝比奈「お風呂……お風呂……」ヨロヨロ

朝倉「血ならぬ、湯を求めるゾンビみたいになってきてるけど……大丈夫?」


野郎サイド


古泉「コーヒーでも飲みますか? それとも紅茶にしますか?」

キョン「ドクぺにしてくれ」

古泉「それは……あるかは分かりませんが」

キョン「あるよ、あると思って冷蔵庫をあけてみな」

古泉「……」ガチャ

古泉「……これは、たまたまこの館の持ち主が持ち合わせていた……ということでは、ないんでしょうね」

キョン「あぁ、ここは不思議な館、ハルヒもそう言ってたろ?」

古泉「では、僕たちは誘い込まれた、という形になるんでしょうか?」

キョン「誘いにノッてやったんだよ、お前も朝倉も怪しいことは事前に十全に分かってたんだから」

古泉「なるほど……でしたら、あなたにはもう、解決法が見えている、と」

キョン「毎度毎度の事件の際、俺にその確認をとってないか? お前」

古泉「いやぁ、そうすることで自分に余裕と安心を持とうとしているのですよ。あなたの返答はそうする効果があるので」

キョン「なるほど、えらく俺の発言とやらは人を安心させるアロマセラピー的な効果があるらしい」

古泉「ただプラス面にもマイナス面にも大きく影響するというだけですよ」

キョン「ほらな、もうお前に余裕が出てきてるじゃねえか」

古泉「これはこれは、一本とられましたね」

キョン「通算で何本とってることになるんだよ、ったく」

古泉「……さて、どうなさいますか?」

キョン「どうもこうも……」

キョン「まずは、レディーたちの風呂上りでも待つさ、雪山歩きで疲れたから休憩だ」

古泉「そんな悠長に構えていてもいいんですか?」

キョン「いーよー、どうせこの館の時間のずれでハルヒたちがここにくるのは俺たちの体感で6時間後ぐらいだしな」

古泉「え?」

キョン「Zzz……」


子猫ちゃんサイド


ハルヒ「お風呂だわっ!!!」ザブンッ!

朝比奈「お風呂ですっっ!!!!」ザバンッ!!

朝倉「ああもう、朝比奈先輩まで……」ザブ

長門「……」チャプン

ハルヒ「いやー! ちょうどここに大浴場のある捨て洋館があってよかったわねー!!」

朝倉「捨ててあるわけじゃないから、誰もいないだけで」

ハルヒ「でも暖房とか電気とかつけっぱなしだったわよ? これはもう夜逃げ確定だわ!!」

朝倉「まだ夕方だし、こんな吹雪の中夜逃げする根性をもった人が夜逃げなんてしないわよ」

ハルヒ「ま、なんでもいいわよ! えいっ」ピュッ!

朝倉「わっ! もう! 遊んでるば、あ、いじゃないでしょ!」ジャバーン!

ハルヒ「あっ、わっ! あははっ!! いやー! 体が温まると心まで温まるわね!!!」

朝比奈「ですぅ……ブクブク」

ハルヒ「みくるちゃーーーーーーん!!!!! お風呂で寝るのは普通にダメよ!!! 普通に!!! 危ないからぁ!!!!!」ザバッ!!

朝倉「……キョンくんと古泉くん。なにか打開策思いついてるのかしら?」

長門「…………彼らなら、この異常事態の原因まで掴んでいるだろう」

朝倉「ま、そうよね。とびっきりのチートがいますもんね」

長門「…………そう」

朝倉「……長門さん?」

長門「……」

ハルヒ「ちょ、有希ぃ! 朝倉さぁん!! こ、みっ、みくるちゃんがぁ!! みくるちゃんがぁ!!!!!」

朝倉「ちょっと静かに……朝比奈先輩がぁ!!!! 先輩がぁあうぅぉえ!!?!?!??」

ハルヒ「ちょ!! みく、みくる……ちゃ……朝倉ぁ!!!! どうすればいいのこれぇ!!?!?」

朝倉「あ、あああ、あたしに聞かれても!!! あ、朝比奈先輩!! 気を確かに!!! お気を確かに!!!!」

長門「…………」チャプチャプ

ここまでー。雪山からはアニメ化してないけどみんな原作知ってるのかな?

>>291
すんません原作の話です…
陰謀で出てきて何の回収もないのが気になって仕方なくて

昨日投下できなくてすません! 今夜中には必ず!!

>>303
なるほど、確かに放置され気味やね

おーしゃとーか!


ハルヒ「ふぃー! いいお風呂だったわー!! 一気に心も体もポッカポカよ!!!」

朝比奈「うーん……何故かお風呂の記憶があまり……」

朝倉「思い出さない方がいいですよ……」

長門「……」

ハルヒ「あがったわよーっ!! ってあれっ? 二人共寝ちゃってるじゃないの! もう、風邪ひいちゃうじゃないの」

朝比奈「キョンくーん、古泉くーん。起きて下さーい! お風呂あがりましたよーっ!」ユサユサ

古泉「……ん、おや。おはようございます。少し横になっていたら眠っていてしまってたようです」

ハルヒ「こんな短時間で寝ちゃうなんて余程疲れてたみたいね、まぁ気持ちは分かるけど」

古泉「……そう、ですね」

朝倉「……ちょっと、キョンくんも起きなさいよ。風邪ひくわよ」ユッサユサ

キョン「…………Zzz」

ハルヒ「完全に爆睡しちゃってるわね……」

「(あのねーっ!! キョンくんを起こす時はこう、ダーイブって感じで起こすといいんだよーっっ!!)」

ハルヒ・朝比奈・朝倉「「「!?!?!!!?!?」」」ビクッ

キョン「はいはいはーい!!! おはよーっおはよーっ!!!! いやぁー! いい朝だな!! さあ泳ぎに行くぞーっ!!」ガバッ

朝比奈「あ、起きた……」

ハルヒ「それよりも今、脳裏に今日を起こす方法を伝授されたような……ていうか寝ぼけてんのかボケてんのかどっちよあんた」

朝倉「(……なんなの?)」

ハルヒ「あたしたちはお風呂あがったからあんたたちも入ってきなさいよ」

古泉「それはありがたいんですが……実はもう、体の方は彼に乾かしてもらったあと部屋の暖房で温まったのですよ」

キョン「気色悪い言い方すんじゃねぇ!!!! だ、誰がお前と体を温め合ったんだよこの野郎!!!!」バンバン!!

古泉「そ、んっな! 誤解を生むような、っ! 言い換え方はっ! 止してください! ていうか発砲を止めて下さ、いっ! なんで発砲!!?!?」ガーン!

朝比奈「………………」ジイ

ハルヒ「みくるちゃん、ダメよ。他人の趣味にとやかく言うつもりはないけど、団内だから。団内だからそういうのはダメ。ね?」

朝倉「……なんなのこの団」


ハルヒ「はい! みくるちゃんこれ味見してみて!」

朝比奈「はぁい、あ、おいしい」

朝倉「なんか今およそ食べ物とは思えない色したもの朝比奈先輩に食べさせなかった? ねえ」

長門「…………」

古泉「よかったんでしょうか? 勝手にキッチンや食材まで使ってしまって……」

キョン「この際どこまでやろうが一緒だろ。建物を壊さん限りはセーフだセーフ」

古泉「さすがに、それよりももっと前の段階でアウトになると思うんですが……」

古泉「……オホン、それよりも気になることがあります」

キョン「なんだ?」

古泉「……長門さん、吹雪で遭難してからのあなたの様子が少しおかしい……僕の主観では、ですが」

長門「…………」

キョン「……」

古泉「簡単に申し上げますと、僕の目には長門さんが少し沈んでいる、疲れているように見えます」

古泉「常人ならそれも仕方ないとは思いますが……朝倉さんと比べてみても顕著でしたので……」

キョン「ほう……」

長門「……この空間は、わたしに負荷をかける」ボソッ

古泉「! 一体どんな? それは敵対組織である者からの妨―――」

ハルヒ「おまたせーっ!! サンドイッチつくったわよーっっ!!!」

長門「――――――……」ピクッ

古泉「!」

古泉「(今の些細な挙動……断続的に長門さんに負荷をかける状況が変化している、ということ……?)」

キョン「おっほー!! ちょうど洋館でこの時間でサンドイッチが食べたい気分だったんだよーっ!!」パクッ

古泉「(だとしたら……彼がそれをいつまでも見逃している、とは思えない。いかに彼と言えど、団員に手を出されて黙っているほど温厚ではないでしょう)」

ハルヒ「そんな気分、一生に一度もないと思うわ。まずこの状況が一生に一回ものだし!」

古泉「(もちろん、涼宮さんが長門さんがあのような状態になることを望みはしない……)」

朝倉「(だとしたら、この状況……矛盾と違和感が残る……)」

キョン「(サンドイッチうめーっ!!)」

古泉・朝倉「「考え事中にどうでもいいことを直接脳内に話さないで(ください)よっ!!!!!」」バンッ!!

ハルヒ・朝比奈「「!」」ビクッッ!


朝倉「これ、おいしいけど何か変わった味ね。涼宮さん何いれたの?」モグモグ

ハルヒ「ん? それイナゴ! 珍しいから入れてみたの!」

朝倉「えっ」ポロッ

ハルヒ「それよりも……有希! みくるちゃん! あんまり手が進んでないみたいだけどっ!?」

朝比奈「うえっ!!?」ビクッ

長門「……」

ハルヒ「じゃんじゃんあるからじゃんじゃん食べなさい!!! 腹が減っては戦が出来ぬよ!」

朝倉「なにと戦うのよ……」ガラガラガラ

朝比奈「(うぅ……本当に食材使ってよかったのかなぁ……)」モグ

古泉「(……やはり、いつもの健啖家ぶりが長門さんに見られない……それほど危機に瀕している、ということでしょうか)」

長門「…………」

キョン「まだ吹雪が止まないな、どうやらここで一夜明かさないといかんらしい。それよりこの具はなんだハルヒ?」

ハルヒ「それサソリ」

キョン「えっ」ポロッ

ハルヒ「そうね! こんだけでかい洋館なら寝るトコもいっぱいあるし、部屋も借りちゃいましょうか!!! なんかワクワクしてきた!」

朝倉「遭難中なのよ……一応。イナゴやらサソリやらあるからなんでもあるように思えるけど……ていうかなんでそんなの置いてるの?」

キョン「ペッ! ペッ! あったとしてそれを積極的に食材に使おうとするなよ……んじゃそろそろ寝室に移動するか?」

ハルヒ「……遊戯室、あると思わない?」キリッ

朝倉「さすがにそこまで余裕はかませない」

ハルヒ「デスワヨネー……気合い入れて寝るとしますか!!」

キョン「気合は抜いた方が眠りやすいと思うがな」


ハルヒ「なにもないにこしたことはないけど、一応なにかあった時のために、近くの部屋で固まっておきましょうか」

キョン「よし、そういうことなら俺は朝比奈さんの護衛にまわる、よって俺の寝室は朝比奈さんと同―――」

朝倉「キョンくん? 寝る前に寝言言っちゃダメよ?」

キョン「はい、アサクラさん」

朝比奈「起きたら吹雪がおさまってればいいですね……」

長門「…………」

キョン「案ずるより産むがやすし!! さあさ朝比奈さん、ベッドはこっちですよっ!!?!?!?」ゴチン!!

ハルヒ・朝倉「「黙って寝ろ!!!!」」

キョン「は、はひ……」シュウゥウゥウウウ

古泉「…………」

ハルヒ「それじゃみんな、おやすみ!」

朝比奈「おやすみなさぁい」

古泉「……おやすみなさい」

朝倉「おやすみなさい……」

長門「……」ユラッ

キョン「おやすー(;_;)/~~~」

ハルヒ「どうやって発音した今!!?」ガーン!

古泉「…………」

朝倉「…………」


ハルヒ「(しっかし、まさか吹雪くとはねー……山の天気は変わりやすいって本当なのね)」ゴロン

ハルヒ「(まぁ、これもめったにできない貴重な体験だからいいけど!)」ゴロゴロ

ハルヒ「(……心なしか有希が元気なさそうに見えたけどあれって―――)」

キョン「まだ起きてるのか?」スッ

ハルヒ「ふわっっあっっ!!?!?!??!??!?」ビックゥウ!!

キョン「あ、悪いな。驚かせて」

ハルヒ「キョ、キョキョキョキョヌヌヌヌヌヌヌ、キョンーーー!!?!?!??」

キョン「俺だが、どうしたそんなに慌てて」

ハルヒ「あわっ、あわわ、ってってなんかいないわよ!! 慌ててるわけではないわよ!!?!?」

キョン「そうか、熱でもあるのかと思ってビックリしたぞ」

ハルヒ「ねっ、熱なんて別にない……って!! そんなことよりなんであんたがここにいるのよ!!?」

キョン「なんでって……そりゃ団長を守るのが団員の役目だろ?」

ハルヒ「守っ、じゃなくて!! 別にあたしはあんたに守ってもらわなくたって……じゃない! 論点がずれた!」

ハルヒ「今別にあたしがあんたに守ってもらう状況じゃないじゃない!! 寝るだけなんだし!!」

キョン「心配なんだ」

ハルヒ「っっはぁあ!!?!??!?」

キョン「目を離したらハルヒが消えてしまいそうで……」

ハルヒ「ちょ、あんた何……あんたこそ、ねっ、熱でもあるんじゃないの!!?!?」

キョン「熱……あるとしたらそれはハルヒ、お前への熱だと思う」

ハルヒ「………………は?」

キョン「ああ、ハルヒ。なぜお前はハルヒなんだ……ああ、こんなにも近くに……」ス

ハルヒ「ちょ」

キョン「このまま、ずっと……いられたらいいのに……」

ハルヒ「」

キョン「……ハル――――――」













ハルヒ「気持ち悪いわぁぁぁああああああああああぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!」ドッゴォォオオオォオオ!!!













キョン「ヘブシッッ!!!!」ドッガーーン!!

ハルヒ「なにナニ何あんたぁ!!! いい、一体なんのつもりよ!!? ハッ!! もしやキョンの皮を被った偽物!!?」

キョン「誰が皮被りだっ!」ダッ!!

ハルヒ「あっ! 逃げるな! 待て!!!」ダッ!


バタン!!!!!!!


ハルヒ「あんた!! 逃げるなら首根っこひっ捕まえて……ってあれ?」

朝比奈「キョンくん!……あれ?」

朝倉「キョンくんっ……って、これって……?」

古泉「…………」

長門「……」

ハルヒ「み、みんなどうしてドアを開けて―――」

キョン「うっぉぉおおおおおおぉぉおおおお!!!! 待たんか!!!」バタン!

ハルヒ・朝倉・朝比奈「「「あ」」」

キョン「む? 消えたか、あれ? みんなおそろいでどうしヘッバァァアアブァアアア!!?!?!?!?」グッシャアア!

ハルヒ「あんた! なに考えてあんなことしたか言ってみなさい!! 正直に言えば一番浅い地獄で許してあげるわ!」

朝倉「よくもまぁぬけぬけと……キョンくん、なにをしようとしてたのかきっちりと説明してもらおうかしら?」

朝比奈「キョ、キョンくーん……//////」

キョン「り、理不尽だ……俺まだなにも状況が分かってないのに……」ボロ

朝倉「キョンくんが状況を分かってないわけないでしょ、みんなの反応を見る限り、同じことが起こってたみたいだし」

キョン「なにが起こったって言うんだよ?」

ハルヒ「あんたがあたしの部屋に入ってきたのよ、それも煩悩にまみれて!!」

キョン「そんなことはしてないが……他のみんなも?」

朝倉「ものすごい鼻息で侵入してきたわよ?」

朝比奈「キョンくんが……キョンくんがぁ……」

古泉「あなたが……その、普段からでは考えられないような……考えることもできる……? 行動を、ね?」

キョン「待て待て、みんなの言い分は分かったが俺が実際に部屋から出てくるところはみんな見てたじゃないか。あと古泉、気持ち悪いぞ」

ハルヒ「分身出来るじゃない」

キョン「…………あー」ポン

朝倉「なにその納得の仕方……いやな説得力だわ。長門さんのところにも、キョンくんが来たんでしょ?」

長門「……」

ハルヒ「そう言えばキョン、あんたのトコには誰がきて―――」




















長門「―――な―――――――――――」ユラッ



















長門「」トサッ

朝倉・朝比奈「「!!?!?!?」」

ハルヒ「有希っ!!?!? 有希!!!!!! 大丈夫!!? ちょっと! しっかりして!! 有希!!」

朝倉「長門さん!? 嘘でしょ……」

古泉「……ッ!!」チラッ

キョン「長門!? おい、長門!?」

古泉「…………!」

ハルヒ「みんな! ボーっとしてないで! 各々できることをする!! はい! 突っ立ってないで有希のためにできることをする!!」

朝比奈「ハッ!!! き、救急車!! 救急車呼ばなきゃ!!!」アワワ!!

ハルヒ「みくるちゃん! 落ち着いて! こんな吹雪の中救急車がこれるわけないじゃない! ほら、有希の足抱えてベッドに……」

キョン「くっ……今から長門の寝室のウイルスというウイルスを除去する!!!!! 消滅しろ病原菌共!!!!」

古泉「…………朝倉さん」

朝倉「! な、なに古泉くん?」

古泉「長門さんに氷枕や濡れタオルが必要でしょう? 探しに行くのを手伝ってもらえませんか?」

朝倉「! 分かったわ! とりあえず、キッチンの冷蔵庫を探しにいきましょ!」ダッ!

古泉「承知しました」ダッ!

ハルヒ「有希、どうしちゃったのよ……あなたが倒れるなんて……」

朝比奈「ううぅ……長門ざぁん……死んじゃダメですよぉ!」ズビ!

ハルヒ「縁起でもないこと言わないの、大丈夫だから! それに有希は多分―――」

キョン「ええい!! マイクロウイルス星人め!! 除菌の邪魔をするな!!」

ハルヒ「マ イ ク ロ ウ イ ル ス 星 人 ! ! ?」キラキラ

朝比奈「涼宮さん!!!!!! 緊急事態ですよ!!!! 緊急事態ぃいいぃいい!!!!!」ユサユサ


古泉「…………」タッタッタ

朝倉「……考えはまとまった?」

古泉「……いえ、まだ……ですが」

古泉「……恐らく、朝倉さんと同じく。不明瞭な点や違和感については、説明できますよ」

朝倉「さすが副団長ね」

古泉「……まず、この吹雪ですが。これは涼宮さんが望んだものではない。そして彼曰く敵対組織かの妨害である、と」

古泉「そして、仮に、その敵対組織からの妨害であるとして、それが原因で長門さんがあのような状態になってしまったのだとしたら」

朝倉「キョンくんが今まで言ってきた発言と行動が矛盾する……」

古泉「その通りです。平和主義者な彼ですが、団員である長門さんに危害を加えられて黙っているほど」

古泉「我々に対し薄情ではない、と僕は信じていますからね」

朝倉「だとしたら、この遭難を演出しているのは敵対組織なんかじゃない……?」

古泉「もし、仮に敵対組織がこの異常事態を引き起こしていないのであれば」

古泉「なおかつ、彼が未だなんの直接的なアクションをとらないとしたら……」

朝倉「この異常事態を引き起こしたのは……キョンくん? でもそれって……」

古泉「ええ、しかしここで矛盾です。これでは彼が長門さんを窮地に追い込んでいることになります」

朝倉「……許さん」ギギギ!!

古泉「朝倉さん、落ち着いて。結論にはまだ早いですよ」

古泉「今現在、長門さんも朝倉さんも情報操作能力に制限がかかっているはずです」

朝倉「ええ、残念ながら原因は分からないけど……けど、それは『相手』がそれほどの相手だって言うことよね?」

古泉「はい、ですから前科がある敵対組織、またはチート性能である彼……異常事態の原因はこの二者に絞られると思ったんですが……」

朝倉「どちらが黒幕だとしても、矛盾が残る……か」

古泉「! そしてどうやら……」

朝倉「え?」

古泉「謎が解けない限り、あの扉は開くつもりはないようですよ?」スッ










S あんた

A キョンくん

K 彼

A キョンくん

N ?な?








ここまでーーー!

3時までにはとうかー

とうかー


S あんた

A キョンくん

K あなた

A キョンくん

N ?な?











朝倉「なにこれ……入った時扉にこんなものなかったわよね?」

古泉「ええ。これは僕たちが入った後、何者かにより設置されたものとして考えていいでしょう」

朝倉「何者かって……」

古泉「それは彼であるのか、敵対組織であるのか、はたまたまだ見ぬ第三者なのか……」

古泉「ひょっとすると涼宮さんの遭難から脱したいという気持ちがこうして現れたのかもしれませんね」

朝倉「安易にこれが脱出のための暗号と考えるのも問題ね」

古泉「もしかすると暗号をといた瞬間この世界が無くなってしまう可能性も考えられます。しかし……」

朝倉「現状は……そんな悠長なこといって躊躇ってる場合じゃないわよね」

古泉「長門さんの容体がこれ以上悪化するようでしたら……覚悟を決めなければなりませんね」

朝倉「そうだけれど……古泉くん。あなたはもうこの謎が解けているの?」

古泉「いいえ、まだ思考中ですが……ある程度の予測はたっています」

朝倉「あたしも、おおよそだけど……これってキョンくんの―――」

ハルヒ「ちょっと!! 二人共! なにやってるのよ! 氷枕とりにいくのに時間かかり過ぎと思ってたら……こんなところで駄弁ってたのね!」

朝倉「え? まだそんなに時間はたってないんじゃ……」

古泉「彼曰く、この洋館は場所によって時間にズレがある、彼がそう言ってました」ボソッ

朝倉「……なるほどね、古泉くんたちが眠ってたのはそういうことだったのね」ボソッ

ハルヒ「なにをボソボソ話して……あらやだ! もしかしてお二人はそういう関係!?」

古泉・朝倉「「違います」」ハモリ

ハルヒ「……ちぇー」


ハルヒ「とにかく! 駄弁ってないで早く氷枕もってきて頂戴!! 有希のためを思うならね!!」

古泉「仰る通りです。すぐに手配を―――」

ハルヒ「って何そのパネル? 扉にくっついてるの」

朝倉「!! あっ、いやぁ、涼宮さんこれはね……」

ハルヒ「あんた……キョンくん、あなた……なにこれ? 呼称表?」

古泉「……涼宮さんもそう思われますか?」

ハルヒ「こんなの誰だってみれば分かるじゃない、Sがあたし、Aがみくるちゃんと朝倉さん、Kが古泉くんでNが有希」

ハルヒ「キョンに対する各々の呼び方みたいだけど……なにこれ? 謎々?」

古泉「そんなところです。ちなみに涼宮さんはこの長門さんのところの欠けている部分には何が入ると思われますか?」

ハルヒ「えーっと、有希だから……『あ』と『た』じゃない? 有希って大体二人称代名詞はあなたって言うし」

古泉「……そう、ですね」

ハルヒ「って! 謎々もいいけどそれは帰ってから存分に楽しめるんでしょ? まずは有希! 有希有希有希が最優先!!」

朝倉「……ええ、その通りね。すぐ氷枕と濡れタオルを持ってくわ。ついでにお粥か何か作ろうかしら?」

ハルヒ「できるなら頼むわね!! 有希が倒れるなんて予想もしてたからみんな動揺するのは仕方ないわよね」

朝倉「まったく……誰が予想できたんでしょうね……」

ハルヒ「じゃ、あたしは看病に戻るからあなたたちも有希を見舞ってあげるのよ」

古泉「ええ、もちろんです」

朝倉「なるべく早くするわ」

ハルヒ「それじゃ、お願いねー」

古泉「…………朝倉さん」

朝倉「……なに、古泉くん」

古泉「涼宮さんの回答……どう思われました?」

朝倉「…………確かに、外れてはいない、と思う……けど」

朝倉「……なにか、違う……引っ掛かりを感じるというか……」

古泉「……僕も、同感です」

古泉「……ですが、ここは一旦、長門さんのところに戻りましょう。話はそれからです」

朝倉「ええ、その方がいいわね……そうしましょう」


長門寝室


古泉「お待たせしました、濡れタオルと氷枕…………で、す」ポロッ

キョン「さあ! ハルヒ!! 朝比奈さん!! 一緒に!!!!」バッ!!

ハルヒ「アンダラミージャコレロレバンバラバン!!!」ドンドコドンドコ!!

朝比奈「あ、あんだら……みー……ばんばんばん!!!」ドンドコドンドコ!!

古泉「…………あの」

朝倉「……なにしてるの……あなたたち」

キョン「決まってるだろう!! 病は気から!!! 祈りで長門を病床から救うんだ!!!」

ハルヒ「トゥングァジーバリテステンドン!!!!」パラッパラ!

朝比奈「と、とぅんぐぁ……てんてんどん!!!!」パラッパラ!

朝倉「どこの民族よ!!!! 聞いたこともない言語発しながら踊るな!!!! むしろ祟ってるように見えるわよ!!!!」ビッシィ!!

ハルヒ「だってキョンが風邪にはこれが一番って……」ブスー

キョン「リドミー星人の一般的な風邪の治療方法だぞ?」

朝倉「いつから長門さんはリドミー星人とやらになったのよ!!?!?!?!?」ガーン!

古泉「祈りはともかく……少し、いいですか?」

キョン「む? 俺か?」

古泉「ええ、少しお話が……」チラッ

朝倉「……」コクッ

キョン「ハルヒ、古泉が二人きりで話があるそうだからちょっと出てくる、なにかあったら呼んでくれ」

朝比奈「……………………洋館で二人きり。なにも起きないは―――」

ハルヒ「既にみくるちゃんの身になにか起こってるような気がするけど? これは……」

キョン「それは…………任せる」

ハルヒ「丸投げッッ!!!??!?!?」ガーン!

朝倉「朝比奈先輩はこっちでなんとかしておくわ。そっちは、よろしくね」

古泉「……分かりました」


大広間 扉前


古泉「これです」

キョン「ほう、確かにこんなものはついてなかったな」

古泉「……どう思われますか?」

キョン「安直に考えりゃ脱出するための手段。深読みすれば閉じ込められる罠……ってとこか」

古泉「…………そうですか、では」

古泉「率直に聞きます。これは、あなたが仕組んだものですか?」

キョン「なぜそう思った?」

古泉「この結論に至る根拠はいくらかあるんですが……」

古泉「単純に、今この現状の長門さんをあなたが放置していることに違和感を感じているのです」

キョン「……違和感ね」

古泉「あなたがなんら行動をとらないことが、あなたがこの遭難を仕組んだことの他ならない根拠になっているんですよ」

キョン「……なるほどな。いくら俺でもここまで度のすぎた平和主義者ではねーってことか」

古泉「…………答えは?」

キョン「…………さあな、ただ一つ言えることは……」

キョン「長門の容体は、敵対組織によるものなんかじゃない。お前たちが考えるよりかは安全な状態だ」

古泉「……だから、行動をとらない、と」

キョン「どう捉えるかはお前に任せる。いくら安全な状態とは言え行動をとらない俺を非難するのもお前の自由だ」

古泉「……なにか理由があるんですね」

キョン「……あまり俺が干渉すべきことではないと思ってるからな」

古泉「僕たちだけで十分に対処できる問題だと?」

キョン「ああ、それぐらい俺はお前達を信用してる、ってことさ」

古泉「……期待をかけられているんでしょうか?」

キョン「…………さあな」

キョン「ま、引き続き謎解きを頑張ってくれ。時間ならまだあるほうだ、のんびりでもいいぞ」

古泉「……あなたが長門さんの安全を保障してくれるなら」

キョン「安全が保障できない状態で俺がここまで悠長にしてるのだとしたら?」

古泉「……軽蔑します」

キョン「安心したよ。常人の感性と、まだ俺が軽蔑されずに済むってことの確認ができてよ、じゃまかせたぜ。俺はまた除菌作業だ」ヒラヒラ

古泉「(…………彼の意図が読めない)」


朝倉「古泉くーん!」タッタッタ

古泉「おや、朝倉さん。長門さんの容体は……」

朝倉「ええ、静かに眠ってるからそこまで危ないってわけではないみたい」

古泉「……彼も、長門さんの容体は安全な状態であると言っていました」

朝倉「それって……やっぱりキョンくんがこれを仕組んだってことじゃ……」

古泉「……そう考えるのが最も自然で理にかなっている……それは分かるのですが」

古泉「僕個人として、彼がそのようなことをするはずがない……そう思っているんですよ。ましてや長門さんにあのようなことはね」

古泉「まぁ……感情的ではありますがね」

朝倉「感情的……ふぅん。そうなんだ……」

古泉「それはそうと……この扉の暗号ですが」

朝倉「確かにこれはあたしたちのキョンくんへの呼称で間違いないと思うわ。ますますキョンくんが黒幕っぽくなってきた」

古泉「それは同意です。『キョン』というワードが出てくる以上。なんらかの形で我々が関わっていると思います」

朝倉「涼宮さんが言った『あ』と『た』が入るって答え、確かに正解ではあるんだけど」

朝倉「あたしが引っかかったのはS、つまり涼宮さんのところね」

古泉「やはりそこですか」

朝倉「『あんた』、これは涼宮さんがキョンくんに使う二人称代名詞よね?」

朝倉「でも、涼宮さんはキョンくんのことを『キョン』って呼ぶ時があるわよね?」

朝倉「同じく、あたしや朝比奈さんも古泉くんと同じく『あなた』という二人称代名詞を使う時がある」

古泉「そう、涼宮さんの呼称に則るならば、朝倉さんや朝比奈さんも『あなた』という言葉が入っているべきだった」

古泉「しかし、『キョン』というワードにより、『代名詞』という統一ワードが損なわれた」

朝倉「新しい共通点を見つけなきゃいけない、ってことよね……この引っ掛かりが安易に空白を埋められないのよね」

古泉「仰る通り、安易に『あ』と『た』を入れることは、思考力の欠乏と言えるでしょうね」

朝倉「……涼宮さんに言っちゃおうかな」

古泉「……失言です。ご勘弁を」

朝倉「冗談よ」クスッ


古泉「しかし、彼への呼称という点では長門さんには『あなた』以外考えられそうにありませんね」

朝倉「Sに『キョン』という答えがない理由……この洋館での発言数とか?」

古泉「なるほど、ならばNに『あ』と『た』が入ってもなんら不自然ではない……ですが」

古泉「生憎、僕はこの洋館に着いてから長門さんの声を聞いていません。朝倉さんはどうですか?」

朝倉「あっ……あたしもお風呂で最低限の会話をしただけ……しかもその時確か『彼ら』ってキョンくんと古泉くんのこと呼んでた……」

古泉「ということは、この線はなさそうですね」

古泉「しかし、発言数……目につけるポイントは呼称だけでない……?」ブツブツ

朝倉「!? な、なにか古泉くんが熟考モードに入っちゃった!!? これは期待できるのかしら!?」

古泉「呼称……発言……共通点……二人称……」ブツブツ

古泉「この暗号が現れたのは少なくとも入って少し経った後……何かが変化したポイントは……仕組んだものであるのだとしたら……」ブツブツ

古泉「……共通点は呼称というわけでも二人称代名詞というわけでもない……?」ブツブツ

朝倉「ど、どう? 古泉くん? なにか分かった?」

古泉「もう少し……もう少しで何か……何か見落として……」ボソボソ

朝倉「え? 何言ってるのかよく聞こえなかったわ、もう一回言ってくれる?」

古泉「……いえ、もう少しで……聞こえなかっ――――――」
















長門『―――な―――――――――――』
















古泉「―――聞こえなかった」ピクッ

朝倉「え、ええごめんなさい。なんていったかよく……」

古泉「そう、聞こえなかったんですよ!」

朝倉「ごめんなさい!!!! なんていったかよく!!!!! 分からなくて!!!!!」

古泉「あ、朝倉さんのことではなくてですね」

朝倉「え、あ、そうなの? ごめんなさい」

古泉「……長門さんが倒れる寸前に発した言葉……おそらくそれがこの扉を開く鍵です!!!!」

朝倉「な、なんですってーーっ!!?!!? そ、それはどういう……」

古泉「ええ、僕の仮説を順に追って説明していきましょうか」

ここまでー!!!

今日が終わっちゃったけど、とーかー


古泉「まずはこのSとKの『あんた』と『あなた』」

古泉「基本的に二人称代名詞はその場にいる者を呼ぶときに使用します」

朝倉「ええ、だからこの場合キョンくんがいる時の呼称で統一してるって仮定したけど……」

古泉「それでは固有名詞と代名詞の差が説明できなくなってしまう」

古泉「では、偶然にも全員が彼を呼ぶ状況になる場合、それはどんな場合が当てはまるでしょう?」

朝倉「ん、キョンくんに限って言えば、まぁ何かやらかした時とか、ツッコミ待ちの時かしら?」

古泉「そうです。つまり彼が『何かをした時』それがこの暗号の発現ポイントなのですよ」

朝倉「なにかって……あっ」

古泉「そう、我々が同時に部屋から出てきた時、全員見ていたのは彼でしたよね?」

朝倉「……まさか、これって」










朝倉「…………第一声?」









古泉「その通りですよ。僕の仮説が正しければね」

古泉「これは皆さんが部屋から出た時の『第一声』を暗号としている」

朝倉「だから涼宮さんは『あんた』だったってことなのね」

古泉「ええ、統一性を欺瞞するために敢えて彼があのような演出をしたかは定かではありません、が」

古泉「これで一応は、暗号の説明がつく、はずです」

朝倉「となると、このNに当てはまるのは長門さんの第一声……」

古泉「…………朝倉さん」

朝倉「…………」

朝倉「聞こえなかったぁぁぁあああぁぁあぁぁぁああああああぁあぁああああ!!!!!」ガクッ

古泉「……そうです、それが、聞こえなかったんですよね」フゥ


朝倉「でも……あの時の会話から考えて…………うん」

朝倉「多分『あなた』でも何も違和感はないはずよ?」

古泉「確か……朝倉さんが長門さんの部屋には誰が現れたか、という質問でしたよね?」

朝倉「ええ、答える前にばたんきゅーしちゃったけど……」

古泉「…………『あなた』でも問題はない、か」

朝倉「うん、微かだけど『―――な』って聞こえたような気もするし」

古泉「『―――な』……固有名詞を指すのだとしたら『朝比奈みくる』朝比奈さんが入る可能性もあります」

朝倉「あっ、本当だわ……『―――な』だけじゃ選択肢に幅があり過ぎるわよね」

古泉「…………あれ?」

朝倉「? なに、古泉くん?」

古泉「慌てていて確認するのが遅れましたが……そもそも長門さんは何故倒れたのでしょう?」

朝倉「何故って……普通に風邪とか熱じゃない? あたしたちの情報操作能力は今何故か使えないし……」

古泉「もし、そうであってもあなた方宇宙人が地球のウイルスなどに屈するとは思い難いんですが……」

朝倉「まぁ普通にしてれば情報操作能力なしでも風邪や熱にはならないわ、でも今は状況が状況でしょ?」

朝倉「人間でいう、思い込み? ってやつで風邪に似た症状が発症するってのもないとは言い切れないわ」

古泉「思い込み……なるほど……」

朝倉「でもやっぱりキョンくんがなにもしないところから考えても、そこまで重態とは思いたくないけど……」

古泉「それは彼が保証してくれましたし、大丈夫とは思いま……」

朝倉「思いま……? あっ、もしかして閃いた? ピンときたの古泉くん!!? ガンバレ!!!!」

古泉「……………………!」



















古泉「長門さんは…………何も食べていない!!!!!!!!!!!!!!」バーン!!
















朝倉「何も食べていないって……どういうこと?」

古泉「そのままの意味ですよ!! 長門さんはこの洋館に来てから何も口にしていません!!」

朝倉「サンドイッチ食べてなかった?」

古泉「僕が見る限り、手にとってもいません!!!」

朝倉「雪は食べてたのに……で、それがどういう……」

古泉「分かりませんか? あの、長門さんがこの時間のズレが生じる空間で何も食べていないんですよ?」

古泉「一体彼女はどのくらい何も食べていないか……我々には想像がつきません」

朝倉「そりゃあまぁ、確かに心配にはなるけど……食べたくない気分だったんじゃない?」

古泉「食べたくない気分……確かに、長門さんはそれに近い考えをしていたでしょう」

朝倉「どうして分かるの?」

古泉「なぜなら……本日のディナー担当が新川さんだからです!!!!!!」

朝倉「……まさか……長門さん、そのためにお腹空かしてたってこと?」

古泉「空腹は最高のスパイス……長門さんはそれを実践しようとしてたんでしょう」

朝倉「我慢できず雪食べちゃってたけど?」

古泉「食べ物以外はノーカンです」

朝倉「あぁ、そう……ていうかそのルールは古泉くん考案じゃない!!?」

古泉「理由の方は憶測ではありますが、これで長門さんが倒れた原因がはっきりしました」

古泉「『空腹』……これに違いありません」

朝倉「……こんな短時間で倒れる程の?」

古泉「この洋館には時間のズレが生じる……長門さんが体感している時間がどれぐらいなのか、我々には見当が付きません」

朝倉「だとしても空腹で倒れるっていうのは……」

古泉「それは先ほど朝倉さんが教えてくれましたよ」

朝倉「えっ? 何を?」

古泉「思い込み、ですよ」


朝倉「えー……長門さんは自分が『倒れる程空腹』って思いこんじゃったから」

古泉「ええ、実際に倒れたわけです」

朝倉「…………アホじゃない?」

古泉「それは僕がですか? それとも……」

朝倉「それが間違いなら古泉くん、事実なら長門さんがアホよ」

古泉「では、長門さんにそうお伝えください」

朝倉「頼りになる自信ね」

古泉「僕の中で回答への一本の線が繋がったような気持ちです」

朝倉「それはよかったけど…………長門さん」

朝倉「……体調管理ぐらいちゃんとしないと……」ハァ

古泉「『空腹』というものが初めてで戸惑ったのでは? いつもは朝倉さんが料理を作ってくれているようですので」

朝倉「……自製させようかしら?」

古泉「それは二人で話し合ってください。そして恐らく、これで暗号の答えが分かりました」

朝倉「『倒れる程空腹』の時に『―――な』が入る言葉って……あれしかないわよね」

古泉「ええ、それは―――」

















長門「『お』な『か』……減った――――――」ユラッ

















古泉・朝倉「「おなか減った!」」

古泉「……間違いありません」

朝倉「これ以上完璧な答えは見つからないわ……悲しいけど」


朝倉「答えは分かった……けど、どうする?」

古泉「この暗号が、何かしらの消去プログラムである可能性も……なくはありません」

古泉「長門さんの安全が保障されている以上、無理はしない方がいいのかもしれません。しかし……」

古泉「我がSOS団の団長は、いつまでもこの館に閉じこもるのを良しとしないお方です」

朝倉「でしょうね、だったらさっさとこの暗号解くべきよね」

キョン「よっ、答えはでたか?」シュン!

朝倉・古泉「「!?」」ビクッ!

朝倉「驚かさないでよ……それで、これは結局キョンくんが仕組んだもののわけ?」

キョン「さーあ?」

朝倉「答えが出たのに教えてくれないの?」

キョン「まだ解いてないだろ?」

古泉「では、お望み通り……パネルに答えを入れさせていただきます」

キョン「い、挿れさせて……」ゴクッ

古泉「では」

朝倉「圧巻のスルーだわ。見習うべきよね」

古泉「『お』と『か』を……」スッ

キョン「ああっ!!?!!!?!?」バッ!!

古泉・朝倉「「!!?!?」」ビクッッ!!

古泉「な、なんですか!? 何か問題が……」

キョン「いや、別に……」

朝倉「……じゃ、じゃあ『お』と『か』を……」

キョン「…………っっ!!」ジイイィイィイ!!

朝倉「……そ、そんな食い殺さんばかりの目で見られても……」ゾワッ

古泉「こ、この行動になんの意味が……」


キョン「…………」ジイイ!!

朝倉「……古泉くん」

古泉「ええ、構っていては場は好転しません」

キョン「…………っ」ジイィイイ!!!

朝倉「…………スゥ」

朝倉「ええいままよ!!!!」ガッ!!

キョン「ああっっ!!!!!!!!」ビクッ!

古泉「お静かに!!!!!」バチッ

キョン「っ痛……痛いよ古泉……」ヒリヒリ

古泉「すいません……つい手が」

キョン「ついって……えぇ……」

朝倉「…………はめたわよ」

キョン「ああ、はまってるな」

朝倉「…………」

古泉「…………」

朝倉「…………で?」

キョン「で?」

朝倉「次のアクションは? 何か起こるでしょ普通」

キョン「?」

朝倉「いや『?』って顔されても……え? なんにもないの? 解いたのに?」

キョン「…………?」

古泉「……マジですか」

朝倉「も、もしかして本当にキョンくんじゃ……」

キョン「おめでとう、君たちは見事暗号を解いた。コングラチュレーション」

古泉・朝倉「「なにそのタイムラグ!!!?!?!!?!?」」ガーン!!!

キョン「いやだってこの館は時間のズレが……」

朝倉「今一緒にいるんだから関係ないでしょう―が!!!!!」バシッ!!

キョン「痛い!! なんかみんな俺に対して暴力的になってきてない? きてない?」

朝倉・古泉「「自業自得(よ)です」」

キョン「ひどい」


キョン「いやーそれにしても見事見事、よくこの謎を解いたな、感心感心」

朝倉「結局、キョンくんが黒幕だったってことね……なんだったのよこの誰に向けたものでもない演出は」

古泉「……もしかして、僕たちに向けたサプライズ、ですか?」

キョン「古泉」

古泉「はい」

キョン「好意的解釈をありがとう」ニコッ

古泉「あっ、違ったんですね。はい」

キョン「ま、初めから俺が仕組んだわけじゃないんだ、遭難もこの館も」

朝倉「やっぱり、あの連中の仕業……」

キョン「それで、まぁ大したことない妨害だったから利用させてもらおうかと思って」

古泉「大したことない? 長門さんや朝倉さんの能力を封じる妨害がですが?」

キョン「あ、それは俺の仕業。能力使われちゃ色々真相にすぐ辿り着いちゃうと思って」

朝倉「そんなあたしや長門さんを能力頼りしか手がないみたいな言い方して……あれ? 実際そうだったリ?」

古泉「それにしても……そもそも妨害を受ける必要はなかったんじゃないですか?」

朝倉「そうよ、別にドッキリサプライズがしたいなら鶴屋さんの別荘で……」

キョン「ま、そうしたいのはやまやまだったんだが……」

キョン「思いの外、『話』が長くなっちまってな」

朝倉「話……?」

古泉「……それが、我々をこの館に閉じ込めた理由……ですか?」

キョン「……ああ、だが。それももう終わったようだ」

キョン「というわけで……帰るぞ―――!」パチン!

朝倉・古泉「「え―――?」」


















シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


「さて……古泉達が謎を解いたようだし、そろそろ切り上げることにする」

「いつでも来ていいんですよ? あたしたちはあなたを歓迎します」

「無能なら不必要と言いたいところだが……まぁ、あんたなら何かの役には立つだろう」

「―――神算―――鬼謀」

「なに考えてんだこの宇宙人かぶれは……んで」

「お前達の言う『佐々木』ってやつは……まだ登場しないのか?」

「何度も言っているだろう。気になるなら僕たちの頭の中を覗けばいいだろうと」

「…………」

「何度やろうが決して覗けはしないだろうがな! あんたと同じような奇妙な『力』を使うようになったからな、あの変人は」

「……チッ、この巨乳フェチが。全部が全部プロテクトかかってると思って油断してんじゃねえぞ」

「」

「うわぁ……」

「―――偏―――好」

「あいつ……っ!!!」ギギギ

「(し、しかも否定しないんだ……)」

「……フー……まぁいい。やつはまだ、あんたの前に姿を現すのは早いと思ってるんだろう」

「……そーかよ」

「いずれ、きちんと『佐々木』さんを連れてあなたに会いに行きます。それよりも前に会いに来てもらってもいいですけど」

「それはどっちでもいいが……俺との話し合いの席を設けるためにSOS団及びその団員の活動を妨害するのはやめろ」

「そうでもしないと来てくれなさそうなんでな」フッ

「黙ってろ巨乳フェチ」

「…………っ!!!」ギギギ

「あ、それはごめんなさい。他にあなたに興味を示してもらう方法が思いつかなくて……」

「……危害を加えないということを最低ラインに設定してるようだが……」

「いつ俺の堪忍袋の緒が切れるかは分からんぞ? その時は」

「宇宙人も未来人も超能力者も、この時代、この星、この場所にいられなくしてやる」

「いいな?」ギロッ

「……っはい」ビリビリ

「―――ふふっ」ビリビリ

「……っ脅しのつもりか?」ビリビリ

「まだ大口叩けるのは結構だが、蛮勇は長生きできんぞ。 それじゃあな」シュン!

「…………こ、怖かった」ペタン

「フン、あんな過去人如きに……」

「―――巨乳―――フェチ」

「ぷっ!」

「黙らんか!!! この宇宙人が!!!!!!!」

ここまでーーーー、あと一回で多分雪山終わりまぁす

とうかー


サアアァァァアアア


古泉「―――……っ!!」

朝倉「―――っ戻った……?」

ハルヒ「アンドロメンドロデンドロビウ……えっ? あれっ?」

朝比奈「あ、あんたがめんどうでどんだけ……ほぇ!?」

長門「…………」スッ

キョン「長門、大丈夫か? 急に転んだみたいだが」

長門「問題ない」

ハルヒ「問題ないわけないでしょ!? 有希! あなたさっきまで寝込んで……」

朝比奈「そ、そうですよ! ベッドの上で……眠って……」

キョン「なんの話だ? 俺たちは雪山にスキーしにきたんだぞ?」

ハルヒ「そりゃそうだけど……でもさっきまであたしたち遭難してたわよね!!? ねぇみくるちゃん!?」

朝比奈「は、はい! た、確かに何度か昇天しかけた記憶が……あれ? 昇天」

古泉「……朝比奈さんの嫌な記憶はさておき、はて、僕も遭難に遭った記憶がありますね」

ハルヒ「でしょ!? ほら! やっぱり遭難して辿り着いた館で有希は倒れたのよ!!! いまだって倒れてたし!!」

朝倉「じゃあその館ってどこにあるの?」

ハルヒ「ここに!……はないけど、でも……ハッ!!」

ハルヒ「分かったわ!! 犯人はキョン!! あんたね!! あんたがこのミステリーを生み出したのね!!」

古泉・朝倉「「(まさかまさかの正解ーーっ!!?!?!?)」」ガーン!!

キョン「なんのことだか……大方、あれじゃないか? 集団催眠ってやつ」

ハルヒ「だからその集団催眠だったとしてそれをやったのはあんたでしょ? 余裕でできるじゃな―――」

キョン「ほい」パン!

ハルヒ・朝比奈「「ハッ!?!?!?」」

ハルヒ「……あれ? 今あたしは何を……?」

朝比奈「ほえぇ……? あれ? わたしは……あれ?」

キョン「これで一件落着だ」

朝倉「おっそろしく強引に終わらせたわね、それをできる力があるってのが怖いわ」

古泉「色々言いたいことはありますが……ともあれ」

古泉「元の世界に帰ってこれて、ようやく肩の荷が下りた気分ですよ」ハハ

朝倉「はぁ……ホントにね」


ハルヒ「んんー? おっかしいわね……あたしついさっきまで何考えてたのか分からなくなっちゃったわ」

朝比奈「わたしも……死と生の概念についての考えが一蹴されました……」

古泉「そんなこと考えてたんですか朝比奈さん……」

朝倉「長門さん、長門さん」チョイチョイ

長門「なに?」

朝倉「なに? じゃないわよ! すましてるけど体調の方は大丈夫なの? ホントにただお腹が減ってるだけなの!?」ボソボソ

長門「生命維持には何の問題もないレベル。ただ、ディナーのためならいかなる欠損も受け入れる覚悟」

朝倉「長門さん……合宿に行くたび食への執着心にバグが生じちゃってない?」

長門「これがありのまま」

朝倉「……そう」

長門「……迷惑をかけた」

朝倉「えっ? いや、迷惑とかじゃ……って寧ろそういう意味ならキョンくんに謝って欲しいんだけど」

キョン・キョン「「呼んだ??」」ズイッ

朝倉「二人も呼んでないわよ!!!!! ちょ、二人並んで立体視させようとしないでよ!! ていうか既に立体でしょうが!!!!」

キョン・キョン「「四次元へ昇華する時がきたのだ……」」パアァ

朝倉「立体視ってそういうことじゃないから!!! 一次元パワーアップさせるための方法とかじゃないから!!!」

長門「つまり、絵の料理ですら立体視を用いれば食すことが可能……?」

朝倉「長門さーーん!!! 帰ってきてくださーーい!!! いつもの聡明な長門さん帰ってきてくださーい!!!!」

ハルヒ「ところで……これってなんの集まりだっけ?」

古泉「ちょっとぉおお!!!? 記憶の改ざんが冗談じゃないレベルになってるんですが!!?!? やりすぎですよこれ!!!」


ハルヒ「う、うーん……ここきてからの記憶がちょいちょい抜けてる気がする……」

キョン「治してやったぞ」フン

古泉「当たり前ですよ。なんでちょっと偉そうにしてるんですか」

キョン「だって俺偉―――ハッ!!?」ピピーン!

キョン「くっ!!」シュン!

古泉「! 消え―――っ!?」

キョン妹「キョンくーーーーーーーーーん!!!!!!」バッ!!

朝倉「!!? な、なにもない虚空から妹さんが!!?!?」

キョン妹「おーーかーーえーーりーー!!!」シュン!

キョン「!!しまっ―――っ!!!?」

キョン妹「なさいっっっ!!!!!!」グッシャァァアア!!

キョン「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝!!!!!!!!!! いだいあぁぃぃいぃあぁぃいぁいいいいい!!!!!!」ベッチャァアア

ハルヒ・古泉・朝比奈「「「うわぁ……」」」

朝倉「なんなのこの兄妹……いやキョンくんは今更ともかく……妹さんって……」

キョン妹「スモー楽しかった!? 上から飛んできた!!? 誰が一番強かった!!?!?」キャッキャ!

キョン「おふぅ……妹よ、そこをどけ。そこは俺の腹の上だ」

キョン妹「あ、ごめんなさい」フギュ!

キョン「フギュゥ!! お、おう。腹を踏んで移動したのはこの際見逃してやる……だがしかし、お前に言っておくことがいくつかある?」

キョン妹「あーっ!! みくるちゃんだーーっっ!!!! さっきぶりーー!!」ギュッッ

朝比奈「うふふ、さっきぶりですねー」ギュ

キョン「まず俺たちがやってるのはスキーだスモーではないあとスキーは飛んだりしない滑って楽しむものなんだ楽しむものであって
    強さを比べるものではないから勝者はいない強いて言うならば誰が一番うまかったかだがそれはまぁ多分客観的に見て俺で間違いないだろう
    お兄ちゃん頑張ったよ偉い?んで迎えてくれるのはありがたいがニュー○イプ並の感知をもってしてもよけきれぬタックルを浴びせるのはやめろ死ぬ
    というより完全に殺しにきてるよなあれ断末魔の声でみんな引いてたもんそうそれ今朝比奈さんにやったぐらいのかるーいソフトなハグでいいんだよ
    なんだよやればできんじゃねーかしかもいいハグじゃねーかというわけでまぁ長々と話したがお前に言いたいことを一言にまとめると」

キョン妹「アハハ!!」

キョン「話聞けこのやろうっっ!!!!!!!!!!!!!!!」

朝倉「この兄にして、この妹あり……か」


鶴屋「やあやあやあ皆の衆!!! スキーは堪能できたかな?」

ハルヒ「鶴ちゃん!! おかげさまで!!! いやー! 思う存分滑れたわ!!!!」

古泉「(吹雪の記憶まで改竄したようですね、さすがです)」

ハルヒ「惜しむらくは古泉くんが滑る時常に内股だったことかしらねー、あれはギャップがひどかった。悪い意味で」

鶴屋「うっはー! マジ!? それは結構傑作だねっっ!!! あ、笑っちゃまずかなっ!?」

古泉「……………………」ジイ

キョン「わぁ! 無言の圧力を感じる。助けて! 朝倉さん!!」

朝倉「いやよ」

ハルヒ「あと朝倉さんが二日酔いとか言って吐いてたのも印象的ね。軽く引いたもん」

鶴屋「へー以外っ!! 委員長タイプだと思ってた朝にゃんが意外と悪だったなんてねー!!」

朝倉「さて、と……無言の圧力の次は物理的な圧力の出番よね」ゴゴゴゴゴ

古泉「微力ながら協力させてもらららららららららぁぁあぁあああ!!?!?!?」

キョン「ふん、微力以下ではないか古泉一樹!! どうしたその程度か!?」

朝倉「やめたげてよぉ!!! (マイナスイメージに記憶改竄したあげく)雪の上を後ろ回りさせるなんてひどすぎるっっ!!!!!!」

長門「呼んだ?」

朝倉「いいえ」

キョン「俺に立てつく方が悪い」ドン!

朝倉「すがすがしいまでに悪役ね。サイテー」

キョン「俺にも俺の事情があるんだよ、色々とな……古泉のこれも必要なことなんだ」

古泉「うわっ、っぷぁ!! ぐっ、っぉお、あえっ!? ペッ、っはぁ!! あぁ!!」ゴロゴロ

朝倉「…………全然不必要だと思う」

キョン「バレチャッタカ―っ!!!」

朝倉「早くやめたげてよぉ!!!」


キョン「ふぅ」スッキリ

古泉「」

朝倉「(長門さんといい、古泉くんといい……合宿時のテンプレが出来上がりつつある……)」  
 
鶴屋「満足いったならそろそろ別荘に戻るかい? あたしもちょーーっとだけ疲れたにょろ」


朝比奈「え? 鶴屋さんって……」

朝比奈「疲れるんですか?」ハテ

鶴屋「みくる~、あたしを宇宙人かなんかだと勘違いしてないかい?」

長門「呼ん―――」

朝倉「しっ! 長門さんしーっ!」

鶴屋「いやーあたしもタフな方だとは思うけど、若さって怖いにょろねー!! 妹ちゃん、バリバリ元気で凄かったっさ!!」

キョン妹「アハハ!!」

キョン「まだ能天気に走り回る元気があるのかアイツは……アホだな」

鶴屋「いや雪の上をあれだけ走り回れるのって普通に凄いっさ、マジで」

ハルヒ「ま、子供は風の子っていうしね! あたしだってあの年の頃はそりゃもう凄かったわよ?」

ハルヒ「校庭に落書きとかしちゃったもん、いやー懐かしいわー」シミジミ

キョン「なんでそんな唐突に黒歴史発表するんだよ、痛いよー、痛いよハルヒ」イテテテテ

ハルヒ「えっ? 黒、えっ? 黒歴史? えっ?」

鶴屋「というわけで、スキーに満足したなら別荘に戻るけど、いいかなっ?」

長門「異論はない、すぐにディナーに戻るべき」

朝倉「長門さん、戻るべき場所はディナーじゃなくて別荘よ」

長門「穿つ」

朝倉「何を!?」ガーン

長門「迂闊、言い間違い」

古泉「カハッ! ぼ、僕も……別荘に戻る方向で……お願いします」

キョン「しぶといなぁ、古泉。もいっかいやる?」

古泉「」

キョン「死んだふりしたよ、古泉」

ハルヒ「そうね! 別荘で何が待ってるかも楽しみだし」

ハルヒ「みんなーっ!!! 別荘に戻るわよーーーっっ!!!!!」 


ゾロゾロ


鶴屋「でさーっ妹ちゃんったら凄いんだよ!」

朝比奈「へー! それはすごいですね、わたしにはできそうにないです」

古泉「ハァ……ハァ……」ガクガク

キョン妹「古泉くん、大丈夫?」

ハルヒ「大丈夫よ妹ちゃん、うちの副団長をなめてもらっちゃ困るわ! 疲れたんなら古泉くんにおんぶしてもらいなさい」

古泉「えっ」

キョン妹「やたーっ!!」ピョーン

朝倉「やめたげてよぉ!」

キョン「よっ、調子はどうだ?」

長門「さっき答えた通り、問題ない」

キョン「そっか、そりゃよかった」

長門「…………」

キョン「……なんか悪かったな、腹が減ってんのにあんなトコ閉じ込めちまってて」

長門「……あなたにとって必要な時間」

キョン「……ああ、俺が作った勝手な時間のせいだよな」

長門「それは違う。その時間はきっとあなたにとっても、わたしにとっても、SOS団にとっても、必要な時間」

キョン「…………そうか?」

長門「……あなたがそう思えないなら、そうでないのかもしれない」

キョン「なんだそりゃ、長門にしては珍しく理にかなってないことを言うな」

長門「……ただ、わたしがそう信じているだけ。かもしれない」

キョン「…………そっか、SOS団にとって必要な時間か……」

長門「…………決まった?」

キョン「…………決まったって、何が?」

長門「あなたが、決めなければいけないことが」

キョン「……長門、お前は一流のメンタリストになれるぜ。この俺の考えていることが分かってるみたいだろうしな」

長門「あなただから……わたしが知っているあなただから、分かっただけ」

キョン「……それも、信頼関係ってやつだよな」

長門「…………」

キョン「……ま、いいさ。やつらもこの合宿中はもう手は出してこないだろう。存分に合宿を楽しめばいいさ、ディナーもな」

キョン「……そっからだよ、話は――――――って」

鶴屋「で、この地方の名産の山の幸が―――」

長門「興味深い」キラキラ

キョン「…………花より団子系女子、か」フッ

キョン「ていうか俺の話無視するやつ多すぎだろぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」




                                                           雪山症候群 完

ここまでー とりあえず雪山完 次はまたここで予告しますー

とーかー


『涼宮さん。実は僕は超能力者です。あなたに望まれてここにいる。』









『涼宮さん。わたし実は未来人なんです。涼宮さんに望まれたからここにいる。』









『涼宮ハルヒ。わたしは宇宙人。あなたが望んだからここにいる。』














ハルヒ「―――ッハッ!!?」ガバッ!!

ハルヒ「あ、あれ? ここ……あたしの部屋?」

ハルヒ「北高は……? みんなは……?」

ハルヒ「……嘘。 夢……だったってわけ? こんなリアルに……」

ハルヒ「……まぁでも考えてみればあたしにとって都合の良すぎる展開ではあったけど……」

ハルヒ「…………そっか、夢……なのね。夢……」

ハルヒ「……うーん……いや、でも……」






『じゃあさ、覚えてたらでいいんだ。あのさ――――――』





ハルヒ「…………」



『髪、短くしてみないか? 俺は髪、短い方が似合ってると思うぞ、ハルヒ』



ハルヒ「…………」サラッ

ハルヒ「………………別に、そういうわけじゃないし」


月曜日 教室


キョン「あっそ、とはまた愛想のない……せっかく褒めてやったのに」

ハルヒ「別に、褒めてなんて頼んでないし」

キョン「そーかい」

ハルヒ「そーよ、で」

ハルヒ「面白い夢のことなんだけど……」

キョン「おう、どした。 火星人や木星人と一緒に遊んだ夢でもみたか?」

ハルヒ「ん……まぁ当たらずとも遠からず、かしら」

キョン「なんだそりゃ」

ハルヒ「……ねぇキョン」

キョン「なんだ」

ハルヒ「もしあたしが未来から来た未来人って言ったら、笑う?」

キョン「……あたま大丈夫か?」

ハルヒ「あんたにだけは言われたくないわよ!! じゃああたしが宇宙人だ、って言ったら?」

キョン「ハルヒ、悪いことは言わない。今日は早退して家でゆっくり休んでた方がいい」

ハルヒ「なんでよ! あたしが意味わかんないこと言うのは今に始まったことじゃないでしょ!」

キョン「確かに、でも自分で言うんだな」

ハルヒ「多少なりとも自覚はあるもの。大真面目だけどね。それじゃああたしが超能力者だって言ったら―――」

キョン「保健委員は誰だ―っ!!? ここに重態の患者がいるぞーっ!! もしかしたら手遅れだ―っ!!!!」

ハルヒ「だからなんでよ!!?!!?!? 今に始まったことじゃないでしょうが!!!! あたしが言うのもなんだけど!! ねえ!!!!!」


放課後


ハルヒ「全く、失礼なやつね」スタスタ

キョン「ああ、全くだ」

ハルヒ「あんたよあんた。ま、あんたにまともな返答は期待してなかったけど」

キョン「ありとあらゆる組織が俺に注目しているというのに……くくく」

ハルヒ「はいはい、あんたに注目するならまだ地面の蟻眺めてた方がマシよ」

キョン「おい!! それは蟻に失礼だろ!!!」

ハルヒ「あんたは蟻以下の尊厳しか持ち合わせてなくていいの!?!?」

ハルヒ「っとにもう……まぁ聞きたいことがあるのはあんただけじゃないしね」ガチャ

ハルヒ「みんなーおまたせっ!」バン!

古泉「こんにちは、涼宮さん。おや」

朝比奈「こんにち、あっ涼宮さん髪……すっごい似合ってますよ!」

長門「……」ペラ

キョン「遅いぞハルヒ」

ハルヒ「うん、まずはみくるちゃんありがと。ま、これはイメチェンね、イメチェン。で」

ハルヒ「なんであんたがもういる!!?!? 一緒に部室に向かって歩いてたのは誰!!?!?」ガーン!

キョン・キョン「「俺だ」」

ハルヒ「二重にうるさいわ!! 意味のない分身はやめなさい!!!」

長門「彼なら今から5分前に既にここにいた」

ハルヒ「何意味のないことやってんのよ……あのね、今日はみんなに聞きたいことがあるのよ!」

古泉「聞きたいこと、ですか?」

ハルヒ「うん、単刀直入に聞くけど……」

ハルヒ「みんなって宇宙人だったり、未来人だったり、超能力者だったりする?」

古泉「おやおや……」

朝比奈「え!? え、えーっとぉ……」シドロモドロ

長門「……」


ハルヒ「みくるちゃん、あなたは確か……未来人、だったかしら?」

朝比奈「え、えええっとですね……ええっ? ナンノコトデスカ?」スイー

ハルヒ「目逸らさない」グイッ

朝比奈「ぴぎゃっ!!?」グキッ

古泉「今凄い音が……」

ハルヒ「…………」ジィイ

朝比奈「……ブクブク」

ハルヒ「……むぅ、メンタリストじゃないから分かんないわね。それにみくるちゃん目の焦点あってないし……」

キョン「泡噴いてるけど……朝比奈さん死んでないですよね? ね?」

ハルヒ「次っ! 古泉くん!! あなたはー……超能力者! そう! 超能力者なのよね!?」

古泉「ええ、その通りです」

ハルヒ「えっ? 認めちゃうの? ホントに?」

古泉「はい。というよりも僕は最初の自己紹介で彼に超能力タッグを組むと紹介していただいたのですが……」

キョン「へー」

古泉「へー、って……」

ハルヒ「ああ、そういう意味ね。違う違う古泉くん。それはイリュージョン的な意味じゃない。あたしが言ってんのはもっとこう……」

ハルヒ「エスパー……的なやつ!!」

古泉「おや、そうでしたか。そちらの方の能力は残念ながら持ち合わせてませんね」

キョン「エスパーとはなんぞや?」フワフワ

古泉「それですよ、ソレ」

ハルヒ「……ふぅん、そんじゃ有希は? 有希は確か宇宙人じゃ―――」

長門「ない」

ハルヒ「よねぇ……」

キョン「なんだその無条件な信頼」

ハルヒ「だって有希だもの」

朝比奈「…………ブクク」


ハルヒ「いやね、こんな質問するにも理由があってね」

ハルヒ「昨日の夜、夢であなたたちが各々、宇宙人だの未来人だの超能力者だの告白してきたのよ」

古泉「しかし、それは夢の話では?」

ハルヒ「そう、そうなんだけど……夢にしちゃ今までみたことないほどリアルなやつだったのよ」

キョン「寝ぼけてたんだろ」

ハルヒ「寝ぼけてたらこんな鮮明に昨日の夢のことなんて覚えてないわよ、ちゃんとあんたに言われたこと―――あ」

朝比奈「なになになんですか!!? 涼宮さんキョンくんに夢の中でなに言われたんですか!? ん!?」バッ!!

ハルヒ「きゅ、急にグイグイくるわねみくるちゃん……な、なんでもないわよ! 別に。あと首向いてる方向おかしいわよ?」

キョン「それはお前のせいだろうが」

ハルヒ「と、とにかく! みんなに覚えがないならそれでいいわ! 本当にただの夢だったってことだし」

朝比奈「で、で! 涼宮さんはその夢の中でキョンくんになんて―――」

ハルヒ「ホントグイグイくるわねみくるちゃん!! あとあたしじゃなくて有希の方見て話しても……」

長門「『亀って本当に万年生きるのか?』」

古泉「えっ」

ハルヒ「いや違う! そんなしょうもないこと言われてない! ていうかそのフレーズ自体一生に一度も使わない自信あるわ!!」

キョン「『増えるワカメ食べてからお湯飲んだらどうなるんだ?』」

ハルヒ「違うし知らんわ!!! ああもう! 夢の話はこれで終わり!! はい! 解決しました!」

ハルヒ「いつまでも夢の話してないでSOS団の今後の方針とかもっと重要な話があるじゃない」

朝比奈「えー……」

キョン「確かにな。それは俺のパンツのローテーション並に重要なことではある」

ハルヒ「どーでもいいわそんなもん!!!!」ビッシイ!!

キョン「えーっとちなみにハルヒのは……」

朝比奈「ひえっ!!?//////」ビクッ!

ハルヒ「~~~っこのっ!!!」バシィイ!!


キョン「とほほ……」ボロッ

古泉「リアクションが古いですし、なんで頬にビンタを喰らって両手両足にダメージが……」

ハルヒ「バカは放っておいて……ここらへんでSOS団の目的の再確認といきましょうか!!」

キョン「世界の恵まれない子供たちのために小さいながらも俺たちにできることを……」

ハルヒ「うん、それは確かに大事なことよ。でもこのSOS団は残念ながらそこまで高尚な団ではありません」

キョン「俗物め」

ハルヒ「うっさい! もちろんボランティア活動も出来る範囲で行うわよ、学校ではそういう体で通してるんだし」

古泉「『宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと』、ですよね」

ハルヒ「そう! その通り! ボッシュート!」ビシッ!

キョン「それ不正解って意味だぞ」

ハルヒ「いーい? SOS団はこの世の不思議を誰よりも追及する団体なの!」

ハルヒ「団員がその意識を欠落させてはダメ!! 一瞬たりとも、どんな不思議も見逃しちゃダメよ!!」

キョン「USB差し込む時って絶対反対になるよな、不思議だよな」ナー

朝比奈「あ、確かに……」

長門「摩訶不思議」

ハルヒ「そういうしょぼいのはいらない!!」バーン!

キョン「えぇ……」

ハルヒ「というわけで! SOS団は輝かしい未来に向かってこれからも前進し続けるのよ!!」

ハルヒ「分かったら返事!! 元気よくね!!」

キョン「へーい」

古泉「分かりました」

朝比奈「が、頑張ります!」

長門「善処する」

ハルヒ「よろしい! それじゃ今日も―――」

ハルヒ「張り切って不思議を探すわよ!!! おーーっ!!!!」

「「「おー」」」
「おえぇええぇええ……」

ハルヒ「誰だ今吐いた奴!!?!?!?!?」ガーン!


                                            
                                            涼宮ハルヒの帰還 完

ここまでー
時系列遡り、1スレ目のエピローグ的なやつです。
とりあえず、短編でした! 猫はどこ行った? は新スレ立てます、近日中。
よろしくお願いします

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