キョン「つまり一体どういうことだってばよ?」
長門「あなたはこれから聖杯戦争に参加しなければならない」
キョン「あの・・・長門さん? 言ってる意味がちょっとよくわからないんだが・・・」
このスレは一回本家に立てて、さるさん喰らったりとかで未完のままスレ落ちしたSSです
完走するためにコッチで書かせていただきます
連投規制ないらしいのでマッハで書かせていただきます
古泉「ふむ・・・なるほど。つまり彼の手の甲に突然出来たイレズミは令呪というもので
聖杯戦争に参加する証・・と、こういうことですね長門さん」
長門「然り」
キョン「つまり俺はこれから現れるアサシンって霊体と共に他の6体の霊体を倒さないといけないってワケか」
長門「然り」
古泉「それで、その聖杯戦争に勝ち残れば何でも願いの叶う聖杯を手に出来ると・・・」
長門「然り」
キョン「おい長門・・・おまえ、ただ『然り』言いたいだけだろ」
長門「然り」ニヤッ
状況を説明しよう
---------俺の手に令呪とやらが現れたのはSOS団の活動が終了した直後だった
いつものように宇宙人、未来人、超能力者、普通の男子高校生とアホ一匹がダラーっと過ごすハズだった本日の団活
特に変わった事もなく、朝比奈さんが鶴屋さんと買い物の用事があるとの事で先に部室を後にし
ハルヒも暇そうにパソコンをひとしきりいじくり倒した後、「私も帰るね」とスタコラサッサといなくなり
俺と古泉の熱戦30分にも渡るチェスゲームもようやく終了し(勝敗結果はあえて伏せる)
「さぁ俺も帰るか」というセリフを吐いた直後に、手の甲の鈍い痛みと共に『その現象』が発生した------
と、いうワケだ
>>2
ほう…ならば我を興じさせてみろ雑種
>>5まぁたいしたSSじゃないので期待せず見ていただければ…
キョン「で、このバカバカしいイベントもまたハルヒがらみってワケか?」
長門「今回は涼宮ハルヒの能力とは関係ない。別世界からの干渉」
古泉「涼宮さんとは関係ないのですか?
・・・それにしてはずいぶんとピンポイントで我々の重要人物を巻き込んでいるように見えますが」
キョン「とにかく、こんなふざけたイベント俺は絶対やりたくないぞ?
わけのワカラン殺し合いに参加するなんて真っ平御免だ。毎回言ってるが俺は普通の平和な日常が好きなんだ」
古泉「長門さん。あなたの能力でその聖杯戦争とやらの参加をキャンセルすることは出来ないのですか?」
長門「今は無理。現在仕組みを解析中。それまでは頑張って」
キョン「頑張れって言われても何をどう頑張りゃいいんだよ・・・」
古泉「ふう・・・仕方ありませんね。長門さんが解決してくれるまで何とかするしかないでしょう
もしくは聖杯戦争のルールに則って途中離脱するか・・・フフ、いっそ死んでみてはいかがです?」
キョン「おい!! 冗談でも殴るぞ!!」
古泉「ンフッ。コレは失礼。・・・まぁ冗談は置いといて、どうやら我々であなたを守るしかなさそうですね
涼宮さんとは何も関係ない、こんな理不尽なイベントであなたに亡くなられては僕としても非常に困りますので」
キョン「・・・まぁいい。で、俺のサーヴァント・・・アサシンだっけ? それはいつ出てくるんだ?」
長門「もうすぐ。すでに魔方陣も書いてある」
キョン「用意周到だなオイ!!」
ペッカー
キョン「うおっ! まぶし!!」
長門の書いた魔方陣が光輝くと同時にそのアサシンと呼ばれるサーヴァントが俺たちの前に顕現した
それは俺達もよく知ってる見覚えのある顔
と、いうより俺にとっては忘れようにも忘れられない人物
それが俺たちの前に『復活』した
朝倉「-----お久しぶり」
キョン「あ・・・朝倉涼子!!」
長門「アサシンだから朝倉涼子」プククー
キョン「いやいやいや!! 全然笑えないし!! 朝倉とアサシンって『アサ』しか合ってないし!!
マジでコレ洒落になってないから!! 二重の意味で!!」
朝倉「でもアサシンって暗殺者って意味だからピッタリだと思わない? 私に」
キョン「いや、しかしだな朝倉・・・」
朝倉「アサ子って呼んで」
キョン「は?」
朝倉「アサシンの私だからアサ子って呼んで」
キョン「ふざけるなよ貴様」
朝倉「しかしまさか私もこんな形で復活するとは思わなかったわ。今度こそキッチリ殺してあげるからねキョン君」
キョン「!! まだそんな事考えているのか朝倉!?」
朝倉「当然でしょ?『あなたを殺して涼宮ハルヒの出方をみる』のが急進的な私の考えなんだし」
古泉「させませんよ。そんなこと」ザッ
長門「然り」ザッ
朝倉の前に颯爽と立ちふさがる二人。マジカッコいいぜお前等
朝倉「お久しぶりね長門さん。それと古泉君だっけ? 面と向かって話をしたのは初めてかしら?」
古泉「お噂はかねがね。長門さんと同じFTP端末ですよね? 情報統合思念体の」
キョン(あれ? FTP端末つったっけ? 確か古泉TPP端末とか前呼んでたような気がするが…まぁいいや)
長門「復活しようと所詮あなたは私のバックアップ。勝てる道理はない」
朝倉「あら? インターフェイスの大半を聖杯戦争の解析に使ってるのに? それで私に勝てるとでも?」
長門「・・・問題ない。解除すればいいだけ」
朝倉「フフ・・・いいのかしら? 解析を解除したらまた1から解析し直さないといけないんじゃない?
無駄骨になるわよ? かなりの労力使ってるのでしょう?」
長門「・・・」
朝倉「それに例え万全の状態だったとしても、今の私にはいつもの能力に加えてアサシンの力まで備わってるのよ?
この意味が解らないあなたでもないでしょう。長門さん?」
キョン「長門・・・」
古泉「フンモッフーッッ!!!」プルプルプル…
キョン「ど、どうした古泉!! 唐突に気持ち悪い奇声を上げて!!」
古泉「なぜか急に手の甲にニブい痛みが・・・」プルプル…
キョン「お、おい・・まさか」
ズズズ…
朝倉「あらあら? これは・・・」
長門「・・・この紋様はおそらくキャスターのマスターの令呪」
キョン「なっ・・・なんだってー!!!(AA略)」
古泉の手の甲にはひらがなで『きゃすたぁー』という文字がはっきり浮かんでいた
なるほど。確かにキャスターの文様だ
これでセイバーやランサーが出てこようもんなら
出てきた奴をサガットばりのタイガーアッパーカットで思いっきりぶん殴れる自信がある
キョン「まさかお前まで聖杯戦争とやらに参加する事になるとはな・・・」
古泉「ええ・・・僕もビックリですよ」
朝倉「フフ・・・これは面白い展開になってきたわね」
古泉「仕方ありません・・・どうやら僕もあなたを殺さなければならないようです
申し訳ありませんが自分も死にたくはないのでね!!」ギラッ!!
キョン「んひぃ!!」ビクゥ!!
古泉「ンフッ 冗談ですよ・・・しかしこれは困りましたね
てっきり今回もあなたのサポート役をやると思ってましたので、これは本当に意外でした」
キョン「お、おう・・そうだな(一瞬目がマジだと思ったが気のせいか・・)」ドキドキ…
長門(・・・ビビリ萌え)グッ
朝倉「今回の聖杯戦争はどうやら北高の生徒同士でやるみたいよ?」
キョン「な、なんだってー!!(AAry。
・・じゃ、じゃあもしかして、もしかすると朝比奈さんやら谷口やらと戦う可能性もあるって事か」
長門「然り」
古泉「それどころか涼宮さんにまで令呪が現れるかもしれません」
キョン「なっ!! そ、それは非常に、なんというか・・・ヤバイんじゃないか?」
古泉「ええ・・非常にマズイですね。・・・そうなれば本当にマズイです」
朝倉「ひとまず私は様子を見させてもらうわ
私が直接手を下さずとも、あなたをあっさり殺せるサーヴァントが現れるかもしれないし
ま、もっとも私一人だけでも確実に殺せる自信はあるんだけどね」
キョン「朝倉てめぇ・・・あくまでそれにこだわるか」
朝倉「私の聖杯への願いはあなたを殺すこと。以上。それ以外に願いはないわ」キリッ
キョン「・・・」
なんで俺のサーヴァントはよりにもよってコイツなんだ?
キャンセルは無理でも、せめて他のサーヴァントとチェンジできないのか?
これじゃ俺、勝っても負けても死亡フラグビンビンじゃねーか!!
古泉「キャスター…ですか。あまりいい印象はしませんね」
キョン「まぁfate/zeroとか見てればな・・・」
古泉「人を人とも思わぬ鬼畜外道のクラスがキャスターという印象ですので・・・」
キョン「そこはマスターであるおまえが制御するしかないだろな。俺の所みたいに最初から手遅れならアウトだが」
長門「そろそろ出る」
キョン「!! 来たか!」
ペッカー
朝倉が出てきた時と同じように部室に書かれた魔方陣が煌々と光り輝いた
そしてその中からキャスターと呼ばれる霊体が----------
・・・あれ? 出ない
誰も出てこないぞ? どゆこと?
古泉「おかしいですね」
キョン「うむ・・・もしかして魔方陣の故障か?」
長門「こっち」
キョン「!?」
後ろを振り返ると、すんごく嫌そうな顔の長門がそこにいた
何故か映画撮影の時に着てた魔法使いのあの衣装を身に纏って・・・
長門「・・・」ズーン
キョン「あ、あの・・・長門…さん? 何故そのような格好を?」
長門「・・・私がキャスター」ボソッ
キョン「え?」
長門「・・・どうやら私がキャスターのサーヴァント」
キョン「な、なんだってー!!(ry」
キョン「いやいやいや、ちょっと待て。それはいくらなんでも無理あるだろ。長門は朝倉と違って生きてるし」
朝倉「そう言えば今回は霊体でなくともサーヴァントとして参加出来るって、聖杯のおじさんが言ってたわよ?」
キョン「誰だよ聖杯のおじさんて!!・・つーかもうなんかgdgdだな。いい加減すぎだろ今回の聖杯戦争」
朝倉「設定には設定の都合ってものがあるのよキョン君。察しなさい」
古泉「ンフッ。とにかくこうなってしまった以上、仕方ありませんね
僕としてもあまり気は進みませんが、彼を守る者同士、一緒に頑張りましょう長門さん」
長門「・・・」チッ
古泉「・・・あれ? え?・・・あ、あの?・・長門さん?」
長門「・・・」
キョン「・・・こんな露骨に嫌な顔をする長門を見たのは初めてかもしれんな」
キョン(そんなに古泉がマスターなのが不満なのか・・・まぁ俺が同じ立場でも確かに嫌っちゃ嫌だが・・・)
朝倉「フフフ・・ますます私に運が向いてきたわね
これであなたは彼だけでなく古泉君まで守らなくちゃいけなくなったワケだけど長門さん
この状況になってもまだ私に勝てるつもりでいる気なのかしら?」
長門「・・・」
キョン(!! なるほど。それで長門は不満そうな顔を・・・)
古泉「おや? もしかして今回僕は彼のような『いらない人間』の側になってしまっている・・のでしょうか?」
キョン「おいちょっと待て古泉!!『いらない人間』ってなんだ!? おまえはいつもそんな目で俺を見てたのか!!」
古泉「ンフフ失敬・・とはいえ長門さんのお荷物になるということは僕としても大変心外なのですが・・」
朝倉「残念だったわね古泉君。ここが閉鎖空間だったのなら、あなたも戦力になるのでしょうけど」
長門「・・・」
朝倉「さて長門さん・・・荷物を二つ抱えての私との戦い。勝てるかどうかそろそろ試してみましょうか」
キョン「つーか思ったんだけどさ。令呪使って『自害せよ』って命令したらコイツ勝手に死ぬんじゃね?」
朝倉「!!」
長門「いいアイディア」
古泉「まさに『その発想はなかったわ』ですね。あなたにしては素晴らしい考えです。早速試してみては?」
朝倉「ええぇー!? 何それ・・ちょっ、ちょっと待ちなさいあなた達。それはちょっと卑怯すぎるわよ!!
第一あなたに私が殺せるのキョン君? それやっちゃうとあなた人殺しになるわよ?」
キョン「人殺しも何もおまえ今ただの霊体だろ?しかも俺を殺そうとしている悪質な」
朝倉「ぐぬぬ」
キョン「幽霊一匹消したところで良心の呵責は沸かんよなぁ」
朝倉「わ、私を今消すと面白くないわよ? 物語の進行的に!!」
キョン「そんなメタ的な事言われても知らん!! じゃあな朝倉元気でなー
『令呪をもって命ずる。アサシンのサーヴァント、朝倉涼子を-------』」
朝倉「わーわーわー!!ちょっ、ちょっとタンマタンマ!! お願いだからちょっと待って!!」アワアワ…
キョン「おいおいまさかの命乞いか? さっきまでの威勢はどうしたんだ朝倉さんよー?
こんなにキョドるとは可哀想すぎて、さすがの俺でも少し引くわ・・」
長門「統合思念体も草葉の陰で泣くレベル」
朝倉「ハァハァ・・や、やるわねキョン君。まさかあなたがココまで鬼畜外道な人間だとは思わなかったわ」
キョン「いや、俺はただ悪霊を成仏させようとしてるだけなんだが・・・」
朝倉「分かったわ。じゃあこうしましょ。取り引きよ
自害させる命令を止めるなら聖杯戦争が終わるまで、あなたの殺害は一旦中止します。コレでどう?」
キョン「いや『コレでどう?』じゃねーよ!! 結局俺を殺そうとしてるって事に変わりねーじゃねーか!!」
朝倉「あら? 意外といい条件だと思うけどなぁ。確かに私が消えたらキョン君だけは聖杯から解放されるでしょう
キョン君だけはね。けど長門さんは?」
キョン「!!」
朝倉「長門さんには『自害せよ』って方法は使えないわよね? 途中離脱する方法がない以上
他のサーヴァントやマスターから長門さんや古泉君が狙われるって事に変わりはないのよ?」
キョン、長門、古泉「・・・」
朝倉「古泉君がキャスターのマスターを降りるって言うなら古泉君まではこの戦いから降りる事は可能でしょう
だけど長門さんは聖杯戦争が終わるまでキャスターのサーヴァントのままなのよ?
その件についてはどうするつもり?」
キョン「そ・・それは・・・」
朝倉「フフフ・・・犠牲者を出すことなく聖杯戦争を終わらせたいんでしょ?
もし長門さんが私と組めば、その可能性が確実にアップすると思うけど・・ね? いい取引だとは思わない?」
キョン「・・・おい、どうするよ?」
古泉「確かにキャスターとアサシンが組めばメリットは大きいとは思いますが・・・」
朝倉「いまいち信用ならない? フフ・・別に信用する必要はないわよ。これはただのギブアンドテイク
消されるのを免れる代わりに一時的にあなた達に協力するってだけの話だから」
キョン「・・・」
朝倉「べ・別に『協力するフリをして殺す機会を伺う』とか、そういうんじゃないんだからね
私だって死にたいほどキョン君を殺したいってワケじゃないんだからね。勘違いしないでよね」
キョン「それを言うなら、せめてツンデレ風に照れ隠ししながら言ってくれ
セリフの裏から本音が思いっきり見えて普通に怖い」
朝倉「あら、そう。それは失敬♪」テヘペロッ
長門「」イラッ
キョン「・・・おまえはどう思う。長門?」
長門「・・他のサーヴァントの戦力がまだ不確定。朝倉涼子の力は役に立つ。使えるなら利用すべき」
古泉「そうですね・・どのみち朝倉さんを消せる切り札はこちら側が握ってることですし」
キョン「OK、わかった。そんじゃまぁ可哀想だから暫くは成仏させないでおいてやるか・・
でも少しでもおかしな真似してみろ? すぐに令呪使うからな。それだけは覚えとけよ?」
朝倉「ええ、わかったわ」
朝倉(フフ・・これでとりあえずは安心ね。時間さえあればいずれ私の望みを叶える芽も出てくるはず
私が直接手を下さずとも他のサーヴァントに殺される可能性もあるしね。暫くは様子を見させてもらおうかしら)
キョン「他のサーヴァントが不確定・・ねぇ。確かにどんなのが現れるのかワカランからなぁ」
古泉「ええ、おっしゃるとおりです
各サーヴァントがどういう強さで、どんな能力を所持しているのかが解らなければ対策のしようもありませんから
全てのサーヴァントが出揃うまではこちらから下手に動くのは止めておいたほうが懸命でしょう」
キョン「なぁ朝倉。お前聖杯のおじさんとやらから何か聞いてないか?」
朝倉「と、言うと?」
キョン「いやだから情報だよ情報。それぞれのサーヴァントの能力とか強さとか、そういうの聞いてないのか?」
朝倉「残念ながら」
キョン「仲間になった途端に使えんなおまえは」
朝倉「ちょっとそれどういう意味よ。そもそも仲間でなく一時的な協力かんけ・・・
あ、そういえば一個だけ。『バーサーカーにだけにはとにかく気をつけろ』とは言ってわね。たしか」
キョン「バーサーカーか・・・」
朝倉「ま、用心するに越したことはないけど、今の段階でアレコレ悩んでも仕方ないんじゃない?
そもそも聖杯戦争って最強のサーヴァントが必ずしも聖杯を取れるってワケでもないしね
例え誰それが強かろうとも私と長門さんで一緒に戦えば大抵の敵は問題ないと思うけど・・・ね、長門さん?」
長門「・・・」
朝倉「今は出揃うまで様子を見ましょ。対策を立てるのはそれからでも遅くはないわ」
キョン「やれやれ・・毎度の事ながら、今回の事案も骨が折れそうだな」
さて、キョン達一向が他のサーヴァントの件で気を揉んでたその頃
放課後の教室に忘れ物を取りに戻る一人の男がいた
谷口「WAWAWA忘れ物~♪」
例の如く教室に忘れ物を取りに来るこの男だが
今回彼がサーヴァント以外では最も悲惨な目に合うということは
今の段階では誰も知る由もなかった
谷口「谷口入りまーす。なんつって」ガラッ
谷口「んお!!なんじゃこりゃ!? ウチの教室になんか魔方陣の落書きがッ!! あとなんか手の甲が痛い!!」
朝倉「ああ、そういえば聖杯のおじさんが『街のそこら中に魔方陣書いとくね』って言ってたわねそういえば」
キョン「これもまた設定の都合上ってヤツか?」
朝倉「そういうことねキョン君。察しなさい」
古泉「と、いうことは意外と早くサーヴァントが出揃いそうですね」
キョン「まぁ長編SSでもないからなコレ。>>200くらいまでに完結するには巻きが入っても仕方なかろうて」
朝倉「メタ的な話は置いといて、早速ライダーのサーヴァントが近くで顕現するみたいよ?」
キョン「おお、早いなおい!」
ペッカー
谷口「うおっ!!まぶしっ!! ムッムスカ風に、目がッ!! 目がぁぁぁあああぁぁぁーーー!!」
谷口「ってふざけてる場合じゃねーよ!! って自分にノリツッコミしてる場合じゃねー!!」
???「俺を呼んだのはお前か?」
谷口「なっ!! ま、魔方陣から人が!?」
士「俺の名はディケイド。通りすがりの仮面ライダーだ」
谷口「ラ、ライダーの意味チゲエエエエええぇぇぇーーーーー!!!!!」
士「いや、合ってるぞ小僧。仮面ライダーの『ライダー』とは、つまり。そういう意味だ」
谷口「そういう意味じゃねーよ!!つーか、せめて二次元に限定しろよそこは!! なんで三次の人間が・・」
士「ソレよりおまえ。すでに聖杯のことを知ってる上でのツッコミをしてるが、それについてのツッコミはいいのか?」
谷口「あんたが現れた時点でもうそんな設定吹っ飛んじまったよ。設定の都合上省略って事にしといてくれ」
士「設定が吹っ飛ぶほどのツッコミをせざるを得なかった。というわけか・・ツッコミ役も大変だな」
谷口「おまえのせいだろが!! ああ・・・俺とライダーの出会いは、こんなはずじゃなかったのに・・
勢いでもうgdgdな感じに・・・」
士「要するに最新作のフォーゼのほうが良かった、と言いたいワケか?
フ・・・残念だったな。お前は見落としている。大事な事を
聖杯のおじさんはディケイド以降のライダーシリーズは見ていない!!」バーン
谷口「知らねーよ!! そんなディケイドお得意の説教風におっさんの都合説明してんじゃねー!!
思わず説教BGMが頭の中で流れちまったじゃねーか!! どうしてくれるんだよ!!
ああ・・俺のディケイドの思い出がどんどん台無しに・・・」
士「なるほど・・ここは『涼宮ハルヒ』の世界か」
谷口「もう帰れ!!」
キョン「アサシン、キャスター、ライダーのサーヴァントが出揃ったとすると・・・えーと」
古泉「残るサーヴァントは4体ですね。セイバー、ランサー、アーチャー、バーサーカーが未定です」
朝倉「まぁ残りもすぐに現れるでしょ。戦いの時は近いわよ」
キョン「そう言われてもな・・ん?電話だ」プリッキュア!プリッキュア!
キョン「はい、もしもし? ああ、朝比奈さん。どうしたんですか? え?ええ、はい
ええー!?な、なんですってーー!!!!? ・・・・はい、そうですか・・事情はわかりました
いえ、今回ハルヒは関係ないらしいです。説明は後でします。とにかくすぐ戻ってきてください
ええ、かなり危険です。とにかく・・ええ、お願いします。では待ってますので」ピッ
古泉「朝比奈さんがどうかされましたか?・・まさか」
キョン「ああ・・・朝比奈さんの手の甲にも呪文のような刺青が急に出たらしい」
古泉「そう、ですか・・彼女の手にも令呪が・・」
キョン「ああ、朝比奈さんだけは今回の件には関わらせたくはなかったのに・・クソッ」
朝倉「まぁあなたや古泉君さえ聖杯のマスターに選ばれるんだから
朝比奈さんが選ばれても当たり前というか妥当というか、何もおかしくはないわよねぇ・・・」
キョン「朝倉てめぇ・・他人事のように」
朝倉「あらあら、怒りの矛先をこちらに向けても困るわよ。聖杯に選ばれたって事実に変わりはないんだから
それより問題なのは朝比奈さんのサーヴァントが誰かってことじゃないの?」
長門「然り」
古泉「・・・顕現するクラスやサーヴァント自身の性格にもよるでしょうが
朝比奈さんのような人ではサーヴァントのマスターはろくに務まらない・・と、こう言いたいのですね」
朝倉「ええ、もしバーサーカーに当たったんなら制御するのは彼女の性格からしてかなり厳しいんじゃないかしら?」
キョン「・・・」
みくる「ふええ・・またわたし変な事件に巻き込まれちゃったんですかぁ・・やだよう。怖いよう」
半べそをかきながら、北高の部室に急いで戻るみくる
ふくよかな胸を揺らしながら小走りで走るそんな彼女の携帯に着信音が鳴った
みくる「あ!鶴屋さんからですぅ!」シンリャク!シンリャク!イカムスメ!キュッ!
鶴屋『あ、もしもしみくるー? 待ち合わせ時間とっくに過ぎてるんだけど、今どこにいるにょろかー?』
みくる「あ!!鶴屋さん!! ごごごごごめんなさい!! ちょっとわたし一緒に買い物行けそうにありません!!
ちょっと急な用事が出来ちゃって・・あの、その・・ホントごめんなさい!!」
鶴屋『n何ィィーー!? ちょっとどういう事っさみくる!!
スモークチーズ大量に買って、チーズフォンデュに漬けて食べまくる
『めがっさチーズ祭りにょろ』開催するって約束だったじゃないかー!!?』プンスカプンスカ!!
みくる「ご、ごめんなさいー!!」
みくる「ふええ・・・あたしだって鶴屋さんと一緒にチーズ祭りしたかったですけど・・・
でもでもでも、どうしても抜けられない急用ができちゃいまして・・・」シクシクシク…
鶴屋『ふぅ・・まぁ用事なら仕方ないっさ。『めがっさチーズ祭りにょろ』は後日延期ってことで・・・
それに私も病院行かなきゃなんないしさ・・・』
みくる「え?病院? つ、鶴屋さん怪我か何かしたんですか?」
鶴屋『いやぁ待ち合わせ場所で待ってた時、急に手の甲に痛み出てさー
なんだろと思って見てみると変な呪文みたいなアザ出来ちゃってるんだよねー
覚えないんだけど知らない内にどっかぶつけたのかなー?』
みくる「ええ!? それってわたしと同じ------」ブチッ
鶴屋「あれ? もしもし? みくる? みくるーー? あーらら、電話切れちゃったよ・・・
うーん・・・それにしてもこのアザ一体なんなのかねー?
まるで文字を3つ重ねたような呪文みたいなアザにょろが・・・」
ペッカー
鶴屋「うおっ!! まぶしっ!!
さっきから気になってた地面に書かれた魔方陣の落書きが急に光ったにょろ!!」
ズズズ…
鶴屋「!! ま、魔方陣の中から人が!!?」
みくる「あ!? あれ? 急に電話が切れちゃいました・・・で、電波の調子がおかしいのかな?
とっ、とにかく早くかけ直して鶴屋さんに危険なこと知らせないと!!」
ペッカー
みくる「きゃ!! こここ今度はなんなんですかー!?
なんか目の前の地面に書かれた悪魔召還する時のアレみたいな落書きから光がペカーって・・・」
グゴゴゴゴゴ・・・・・
???「俺を呼んだのはお前か。嬢ちゃん」
みくる「ひゃああああ!! ひっ人が地面から生えてき・・・・」アワワワワ…
ガッツ「そう怯えるな嬢ちゃん。俺の名はガッツ。黒い剣士、ベルセルクのガッツだ」
みくる「あああなた一体誰ですか!?なんで地面から生えて来たんですか!?なんでそんなに大きいんですかー!?」
いきなり現れた黒い鎧を身にまとう大男に涙を浮かべて混乱するみくる
ガッツ「やれやれ・・こんな娘が俺のマスターとはな・・・」
ため息混じりに今後の展開を憂いむガッツ
彼女の怯えるさまを見て、自分のお荷物になることはどう考えても明らかだった
さりとてマスターはマスター。聖杯戦争を共に戦わなければならない大事なパートナーである
ガッツ「安心しろ。俺はお前の敵じゃない」
彼女の警戒心を少しでも解こうとするかのように聖杯戦争の説明を始めるガッツ
ガッツ「----ってワケで、俺は共に戦う味方って事だ。あんたに危害を加える者じゃない。理解したかいお嬢ちゃん?」
みくる「ふええ・・・やだよう。怖いよう。キョン君助けて」フルフルフル…
ガッツ「ハァ・・やれやれ」
みくる「そそそそその聖杯戦争ってどうしてもやらなくちゃいけないんですかぁ?
わ、わたし絶対足手まといになると思うし、戦ってまで叶えたい願いなんてそもそもありませんし・・・」
ガッツ「まぁ令呪を他人に譲渡すればマスターを降りられるらしいが
渡すにしてもある程度の魔力がない者でないとな・・・」
みくる「ふええ・・・よりにもよってバーサーカーのマスターになるなんて・・・」グスングスン…
ガッツ「ん? いや、俺は『バーサーカー』でなく『セイバー』のサーバントだぞ?」
みくる「え!? だってさっき自分でベルセルクって・・・」
ガッツ「確かに周りからはベルセルクと呼ばれてて通称みたいになってるが、そもそも俺はただの剣士だ
ほら、証拠に宝具の『ドラゴン殺し』も持ってるだろ?」
みくる「ふええ・・・」
鶴屋「おーいみくるー!!」タッタッタッ
みくる「あ!! 鶴屋さん!!」パァァ
知り合いの登場でようやく顔に生気を取り戻すみくる
鶴屋「おお!!コイツがみくるのサーヴァントかい?いやーデッカイねー!」
みくる「え!? 鶴屋さん・・どうしてそれを?」
鶴屋「事情はウチのサーヴァントに聞いたよ。お互い厄介な出来事に巻き込まれたみたいだね
電話でみくるも『わたしと同じ----』って言ってたの思い出して、心配で見に来たってワケさ」
ガッツ「俺の名はガッツ。セイバーのサーヴァントだ」
鶴屋「みくるの親友の鶴屋にょろ!! 今は『アーチャー』のマスターでもあるにょろが・・」
みくる「鶴屋さんのサーヴァントはアーチャーですか」
鶴屋「なんかこの世界に来ても実体化が不安定なんで今も霊体化させてるけどね。相当強いよウチのアーチャーは」
ガッツ「ほう・・・それは楽しみだな。なんならいっそココで始めるか?」チャキ!!
みくる「ガッ!!ガッツさんやめてください!!」
鶴屋「かなり好戦的なサーヴァントにょろね。みくるの相棒は
あいにくだけどセイバー。いくら聖杯戦争とはいえ、私も親友と戦うつもりはないにょろよ?」
ガッツ「・・・そうか。まぁ致し方ない。俺も戦う意思のない少女に刃を向けるほど落ちぶれてはないのでな」ス…
みくる「ふええ・・・先が思いやられます・・・」
鶴屋「さて・・・これからどうしよっかみくる?」
みくる「とりあえず北高に戻ろうかなってしてたんですけど・・・キョン君達も事情は知ってるから」
鶴屋「おお!! 困った時のSOS団にょろね」
みくる「電話ではキョン君達の誰かもサーヴァントのマスターになってるような感じだったから
合流すればより安心だと思うんだけど・・・」
鶴屋「なるほどねー。じゃあとりあえず北高に戻りますかー」
北高に向かう女子高生二人と、黒い鎧を身に纏う全身傷だらけの大男
その三人の歩く奇妙な絵面を見て、すれ違いザマに訝しがる通行人達
通行人A「んひい!!」
通行人B「うお!!なっ?? チンドン屋?」
通行人C(ええー?何この人たち・・・)
ガッツ「・・・」ガシャーン、ガシャーン、ガシャーン
鶴屋「フンフフンフフーン♪」
みくる(ふええ・・は、恥ずかしいよぅ・・・)
朝倉「ん!? 遠くから感じるこの魔力は・・まさか?」
長門「アーチャーとセイバーのサーヴァント」
キョン「!! まさか朝比奈さんの・・・!?」
朝倉「距離的にどちらかがそうなんでしょうね。合流できる前に殺されなきゃいいけど」
キョン「な!!それはイカン!!マズイ!!助けに行かねば!! 行くぞ長門!!朝倉!!」プッリティーデーキュアキュッアー♪
朝比奈みくるを助けに立ち上がるキョンの携帯にまたもや着信音がなった
キョン「ったく、こんな忙しい時に・・・って朝比奈さんからだ!!」
キョン「あ!!朝比奈さん!!大丈夫ですか!? え!? ええ!? セイバーのマスターに!?
はい。はい。じゃあ今起きてる聖杯の事情はわかったって事ですね!? そうですか・・・
はい、そうです。こちらは自分と古泉がサーヴァントのマスターになってまして・・・ええ。ええ
ええー!? つっ!! 鶴屋さんまでマスターに!!?
はい。ええ・・そうですか。・・・わかりました。 では引き続き部室で待ってますので・・・では」ピッ
古泉「もしかして鶴屋さんまで巻き込まれたのですか?」
キョン「ああ、鶴屋さんはアーチャーのマスターらしい」
古泉「そうですか・・・では、とりあえずは安心そうですね。襲われても二人一緒ならまず死なないでしょうし・・」
キョン「だな。二体のサーヴァント相手に喧嘩を売るサーヴァントなんて居るわけないだろうからな」
古泉「ンフフ。それにしても朝比奈さんのサーヴァントがセイバーとはね・・・
てっきりバーサーカーのマスターにでもなるかと予想してたのですが・・・これはちょっと意外でした」
キョン「?? 何故そう思ったんだ古泉?」
古泉「そのほうが面白いじゃないですか」
キョン「おい、てめぇ」
古泉「いえ、勘違いしてほしくないのですが
僕の願望ではなく、今回の聖杯戦争の視点から見て『意外』だと言ってるのです
聖杯のおじさん…でしたっけ?
そのおじさんの傾向からして、面白さ優先でマスターを決めていると思ってましたので・・・」
朝倉「なるほどね。確かに今回の聖杯戦争のマスター選びはそんな感じよね
でなければ私のマスターにキョン君が選ばれるはずがないもの」
キョン「しょっぱなから自分のマスター殺そうとするサーヴァントなんて前代未聞だからな」
古泉「意外性といえば僕と長門さんのキャスター組もそうでしょう
まさか僕のサーヴァントが長門さんになるとは夢にも思いませんでしたし」
長門「ひどすぎ」
キョン「ああ、ホントひどいな今回の聖杯戦争」
古泉「さて・・となると、残るはランサーとバーサーカーのみですか
すでに顕現したライダーもマスターが誰かわからない以上、気になる所ではありますが」
朝倉「それなら私が調べてきましょうか。アサシンの私なら偵察はお手のもんだしね。 じゃあ行ってくるね」ピョン
キョン「おい!!窓から普通に飛び降りるんじゃない!!
まったく・・人間離れした行動を他の人に見られたらどうするんだあのバカ。常識ってもんを知らんのか」
古泉「宜しいのですか? 行かせてしまっても」
キョン「ん? どういう意味だ?」
古泉「何を企んでるかも判らない朝倉さんを自由にさせてよいのか、と聞いてるんです
あなたにとっての危険人物であるならば、きちんと傍に置いて監視すべきではなかったのか?と・・・」
キョン「あ、あー・・・言われてみれば確かにそうだな。つーかそういう忠告は朝倉が行く前に言ってくれ」
古泉「そうですね。これは失礼しました」
キョン「やれやれ仕方ない・・・じゃあ令呪を使って呼び戻すか。『令呪をもって命ずる。朝倉涼子を-------』」
令呪の力で朝倉を強制的に呼び戻そうとしたその時、
外から大声で叫びながらこの部室に走ってくる、今一番来て欲しくない最悪の奴が朝倉の代わりに戻ってきた
ハルヒ「ちょっと、ちょっと!! みんな聞いて聞いて聞いてーーーー!!!」ドドドドド!!
キョン「うお!! マズイ!! ハルヒが来る!!!!」
ハルヒ「ちょっとキョン!! 手の甲になんか呪文みたいな刺青出たーーーー!!!!」バーン!!
部室のドアを勢いよく蹴破ると同時に、目を爛々を輝かせながらそのセリフを吐くハルヒ
その言葉に、極寒のブリザードでもあてられたかように凍りつくキョン達一同
キョン「なん・・だと?」
長門「・・・」
古泉「・・・どうやら一番恐れていたことが起きてしまったようですね」
キョンはいつぞやの古泉の言葉を思い出していた
古泉『涼宮さんが超能力なんて日常に存在するのが当たり前だと思ったなら、世界は本当にそのようになります
物理法則がすべて捻じ曲がってしまいます
質量保存の法則も、熱力学の第二法則も、宇宙全体がメチャクチャになります』
------涼宮ハルヒには願望を実現する能力があるのだ
もし、聖杯戦争、魔術師のことをハルヒが知れば、世界はどうなってしまうのか?
キョンは想像するだけで寒気がしてきた
キョン「・・・マズイな」
古泉「ええ、非常に」
ハルヒ「いやーもーーホント私もびっくりよ!! ビックリ!!
帰る途中に手の甲が急に痛み出したと思ったら、変な呪文のようなアザが急に浮かび上がってきたのよ!!
見て見て!! ホラ!! 信じられる!? 何処にもぶつけてないのに急に現れたのよコレ!!
ねぇキョン!! これ偶然の出来事だと思う!? 違うわよね!?
普通のアザってこんな文字みたいな複雑な模様って絶対出来ないわよね!?」
目を爛々と輝かせながら自分の身に起きた出来事をまくし立てるように言葉で伝達するハルヒ
まるで親に欲しかった玩具をプレゼントされた子供のような笑顔満面の彼女の顔が
反比例してキョン達一向の不安を増大させていた
ハルヒにズイズイと言葉で攻め立てられながらも、キョンはどう誤魔化そうか脳細胞をフル回転していた
キョン「ハッ、ハルヒ!!と、とにかく落ち着け!!
もしかしたら知らない内にどこかにぶつけてアザが出来たかも知れないし
ひょっとして無意識に根性焼きをしたとか、そういう可能性も無きにしもあらずだろ!?
いいからまず落ち着け!な?」
ハルヒ「バカ!! 無意識に根性焼きとか、んなメンヘラっぽい事この私がするわけないじゃない!!
これは間違いなく私達SOS団が長年捜し求めていた超常現象の類なのよ!!
私の勘が告げてるわ!! これは絶対、何かの悪魔召還的儀式に巻き込まれたに違いないってね!!」
遠からずも当たってるだけにキョンはぐうの音も出なかった
ハルヒ「ん? なんで有希そんなアホみたいな格好してるの? それ映画撮った時に使った魔法使いの衣装よね?
それに、この部室の床に書いてある魔方陣・・・
あ!! キョン!! あんたその手の甲は!? え!! 古泉君にもあるじゃない!! 私と同じ奴!!!」
キョン「ぐお!! しまった!!」
思わず手を後ろに隠すが、時すでに遅し
ハルヒをどう騙くらかすか、という言い訳の文書作成にかまけてしまい
キョンは物的証拠を隠すという基本的配慮まで頭が回らなかったのだ
ハルヒ「・・・ちょっとキョン。どういうことか説明しなさい」
先ほどのハイテンションな表情から一転、ジト目でキョンをにらみつけるハルヒ
明らかにキョン達が何かを隠しているのがバレている表情だ
キョン「あ・・いや・・えーと」
古泉「もう正直に話しましょう。ここまでバレたら隠しきれるものではありませんよ」
キョンが振り返ると、観念したかのように溜息をつく古泉がそこにいた
古泉「------と、言うわけで、僕のサーヴァントには長門さん
彼のサーヴァントはカナダに引っ越してた朝倉さんが何故かパートナーとして召還されたというワケです
まぁその朝倉さんは今トイレに行っててここには居ませんが・・・」
ハルヒ「なんて素晴らしい戦争なの!!!」
声色に力のない古泉が聖杯戦争について、ひとしきりの説明を終えるのを待ってたかのように
堰を切って嬉しそうに机を叩き、そう叫ぶハルヒ
その笑顔は本当に心の底から嬉しそうで、あふれんばかりの喜びを太陽のように八方に放射していた
ハルヒ「ただでさえ面白い戦いに参加できるってのに、それに優勝したら何でも願いを叶えてくれるって
どんだけ気前がいいのよ、そのおっさん!!
聖杯!!? 魔術師!!? 英霊を戦わせる!!? 望む所よ!! 上等じゃない!!
ッカァアアアアアァァァァーーーーー!! 人生最大最高にやる気出てきたああああぁぁあぁーーーー!!!
こうなった以上、私達SOS団で絶対ゼッッタイ優勝するわよ!! いい? これは団長の絶対命令だからね!!」
キョン「おいハルヒ!! お前人の話を聞いてたか!!? なんだよ優勝って!?
これは高校野球でもポケモンバトルでもないんだぞ!? 戦争だ戦争!! ガチモンの殺し合いだ!!
少しはビビれよ!! 俺達で殺し合いしなきゃなんねーんだぞ!!? 意味わかってんのか!!?」
ハルヒ「じゃあ私のために死になさい。これは団長命令です」
キョン「ふ・ざ・け・る・な・よ」
ハルヒ「んでんでんで? 私のサーヴァントのクラスは何? もちろん私に見合った優秀なパートナーでしょうね?」
長門「この文様はランサー。槍使いのサーヴァント」
ハルヒ「槍使いキターーーー!!! 聞くかぎり、もうすでに強そうなオーラがビンビンじゃないの!!
だってランサーよランサー!! 予感がするわ、これは絶対一騎当千の強力な武将が来るに違いないんじゃない!?
青龍偃月刀も槍の範疇に入るなら中国武将がいいわね。三国志とかの!!
呂布とか、関羽とか、馬超とか、趙雲とか・・・そういうのが来る予感がするわ!!」
キョン「えらい大きく出たな。俺たちは身近な人しかサーヴァントになってねぇっつーのに・・・」
ハルヒ「そりゃあんた達凡人三下風情は所詮脇役なんだし、その辺から適当に選ばれても仕方ないわよ
主役を引き立てるにはその位で充分じゃないの?」
ハルヒ「先に言っとくけど全力でかかって来なさいよねアンタ達。私のランサーが圧勝しすぎてもつまんないから」
キョン「・・・へいへい」
キョン(やれやれ・・・まるでこのイベントは自分のためだけに用意されたって考えか
そして自分が最後まで勝ち残って当然という、自信まんまんなこの態度・・・
毎度の事ながら、よくもまぁそこまで自己中心的ポジティブ思考が成り立つもんだ
俺なんて一刻も早くこのふざけたイベントから抜け出した行ってのによ・・・)
長門「魔方陣から魔力が溢れてる。もう現れる」
ハルヒ「早速キターーーーー!!! うおおお呂布来ぉぉぉーーーーーい!!!!」
ペッカー
魔方陣から光が溢れ、いつものように中から人影が姿を現す
ハルヒ「おおぉ!! キタキタキタキ・・・・ え?」
そこには青いつなぎを着た男が、一緒に召喚された公園のベンチで片膝組んで座っていた
この世界に顕現したランサーはちょっとワルっぽい自動車修理工で、阿部高和という男だった
それは中国武将どころか、どこからどう見てもそこら辺にいる一般人にしか見えなかった
ハルヒ「・・・」
阿部「・・・」
重い空気にたまらず声をかけるキョン
キョン「・・・あ、いや、えーと。・・・・あの、どちらさまで?」
阿部「やらないか」
キョン「え?」
阿部「やらないか」
キョン「・・・」
ハルヒ「・・・誰?」
阿部「この俺・・・ランサーのサーヴァントを呼び出したのはアンタかい? マスター」
ハルヒ「いや、だから・・・誰? 呂布は?」
阿部「俺の名は阿部高和。大人気漫画『くそみそテクニック』の主人公だ。よろしくな」
ハルヒ「え? くそみ・・・? いやホントゴメン・・・・・誰?」
阿部「おいおい、こう見えて一部の界隈では知る人ぞ知る有名人なんだぜ?
その俺を知らないとは・・・フッ、さては嬢ちゃんアンタかなりのノンケだな?」
ハルヒ「・・・」
ハルヒ「ホントにコレ私のサーヴァント?」
長門「然り」
ハルヒ「ホントのホントにコレが私のランサーなの?」
長門「然り」
ハルヒ「」
ハルヒ「ちょっ・・・えええええええーーーーー!?
何コレ? 何コイツ? ただのオッサンじゃん!!!
あああああああああああああーーーーーー!! もう超やる気なくしたぁーーー!!!」
キョン「おいハルヒ!!さすがに本人の前で失礼だぞ!!!」
阿部「おいおい、確かに俺はアンタ等から見りゃ年上だが
オッサン呼ばわりされるほどの歳はまだとっちゃいないつもりだぜ? 嬢ちゃん」
ハルヒ「うるさいバカ!! そもそも槍すら持ってないじゃん!! ランサーのくせに!!
アンタこんなんで本当に戦う気あんの!?」
阿部「フッ、見くびられたものだな。この俺も・・・よし、いいだろう
そこまで疑うのなら仕方がない・・・いいぜ、見せてやるよ。俺の最強の槍をな」ジジジー
キョン「なっ!!何故おもむろにつなぎのジッパーを下ろす!!?」
阿部「そう、コレが俺の槍・・この聖杯戦争最強の宝具
『ゲイボルグ』改め『ゲイ掘る具』の正体だ!!」ズギューーン!!
キョン「ま!!まさかのチ○コが宝具だとおおおぉおぉおぉぉぉーーーーー!!!!?」
鼻につんざく異臭を放ち、ギンギンにそそり立つ宝具を前に
ハルヒを含め部室にいた全ての人間が声を失い蝋人形のように固まっていた
阿部「フフ・・・そこまで見とれるとさすがの俺でもこっ恥ずかしい気持ちになるじゃないか
どうだい? 惚れ惚れするほど美しいだろ?俺の宝具は?」
キョン「いやいやいや!! ものすっごく呆れてるんだよ!! いいからその汚物をとにかく閉まってくれ!!」
阿部「ところで少年、俺のキンタマを見てくれ。こいつをどう思う?」
古泉「すごく・・・大きいです・・・」
阿部「やらないか」
古泉「・・・やりません」
キョン「やらないのかよッッ!!!」(本日最大のツッコミ)
阿部「フ・・振られちまったな。まぁいいさ・・・今日はたっぷり時間もある
と、いうわけでだ・・・嬢ちゃん、これで俺がランサーって理解したかい?
これが勝利を約束された無双の一振り、聖杯戦争最強宝具『ゲイ掘る具』の正体だ」
ハルヒ「」
阿部「おいおい凄過ぎて声も出ないか・・・まぁ無理もない。この猛々しいマスラオを見れば誰だってな」
阿部「よかったな嬢ちゃん。俺がお前のサーヴァントで。これで聖杯はすでに手に入れたも同然
この最強の槍『ゲイ掘る具』と俺の超絶テクで全てのサーヴァントとマスターの菊の穴を俺の虜に------」
ハルヒ「令呪をもって命ずる『自害せよランサー』」
阿部「OK」ドシュ!!
ハルヒ「・・・」
長門「・・・」
古泉「・・・」
キョン「ホントひどいな今回の聖杯戦争」
ハルヒ「・・・」
キョン「・・・いや、しかしまぁ、その、なんだ・・・よ、良かったじゃないか
もしかしたら死ぬかもしれない戦いを事前に回避出来たんだから・・・な?」
古泉「そうですよ。むしろ幸運に思うべきです」
ハルヒ「・・・」
長門「これは仕方のない事」
キョン「そ、そうだぜハルヒ!! 仕方ねぇじゃねぇか!! 俺だって朝倉なんかと組まされたり
長門だって古泉なんかと無理矢理組まされたりしてるんだぜ!?
ヒドイのはお前だけじゃないって!! な!? 元気出せよ!!」
ハルヒ「・・・自分だけ見知らぬホモのおっさん掴まされたんだけど」
キョン「しょ、しょーがねぇだろ?自分で選べないんだからさ・・・そりゃ確率的にこういう事もたまにはあるって」
長門「タマキン見せられて『たまにはある』って・・・」プススススー
キョン「おい!! せっかく人が必死に慰めてんのに、その横で笑うんじゃない!!」
ハルヒ「・・・帰るね」
キョン「え? 最後まで見ていかないのか? 俺たちの戦いを」
ハルヒ「・・・さすがにそんな気分になれないわ。ゴメンだけどもう、どうでもいい。とにかくもう帰って寝たい…」
キョン「お、おう、そうか・・・まぁ、うん。そのほうがいいな」
ハルヒ「・・・じゃあ、がんばってね」
キョン「おう、お前も元気出せよ」
ハルヒ「・・・」バタン
力なくドアを閉め、この部室を後にするハルヒを目視で追ったキョンはようやく安堵し
最大の危機はひとまず去ったと大きく息を吐いた
古泉「僕にとっては別の意味で新たな危機が発生してるワケですがね・・・」
キョン「ん? どういう意味だ?」
古泉「・・・申し訳ありませんが、どうやらバイトに行かなければなりません
今回は史上類をみない程の超強力な閉鎖空間が大規模に発生しますので・・・」
キョン「あ。ああ・・そういう事か・・・」
キョン「なんか・・その・・・スマンな古泉」
古泉「いえ、これが僕に課せられた仕事ですから・・・」
キョン「・・・そうか。まぁその、なんだ・・・死ぬなよ?」
古泉「・・・僕としてもそのつもりですが、はてさて今回ばかりはどうなるか・・・
とりあえず全力で善処するとしか言いようがありませんね・・・では、申し訳ありませんが僕もコレで」
長門「」コクリ
キョン「ああ、こっちは俺たちに任せとけ」
ニコリといつもの微笑で会釈し、足取り重く部室のドアを閉める古泉
キョン「やれやれ・・・よくもまぁ、上から下から大変な出来事がこう次から次へと湧いてくるよなホント」
その内、気苦労で過労死してしまうんじゃないかとキョンは再び大きな溜息をついた
-------SOS団の部室からハルヒ、そして古泉が退室していたその頃
朝倉は忍者のように天井裏から、かつて自分も居たクラス
キョンやハルヒの在籍する1年5組の教室を覗き見していた
朝倉「何アレ・・何なの、あのサーヴァント・・・まるで3Dじゃない・・・」
朝倉はライダーが実写だと知り驚いていた
谷口「なぁー頼むから変身してみせてくれよライダー。せっかくの機会じゃないか
仮面ライドやらファイナルフォームライドやらを肉眼で俺に見せてくれよ」
士「断る。ライダーの力は貴様のオモチャじゃないと何度言わせれば気が済むんだ?」
谷口「そんなケチくさい事言うなよライダー。自分のサーヴァントの能力を把握するのもマスターの務めだろ?」
士「駄目だと言っている。戦いの時以外で変身する気は毛頭ない」
朝倉「・・・」
朝倉(なるほど・・・仮面ライダーを乗りこなすライダーね。興味深いわ
使いようによってはそこそこイケそうな感じもするけど、よりによってマスターがアホの谷口君じゃね・・・
残念だけど、このチームじゃ長門さんの敵にはならない・・・か)
長門をやけに過大評価してるようにも見えるが
朝倉はディケイド達に対し共闘を持ちかけるには値しない連中だと判断した
音も気配も立てず天井裏から消える朝倉
朝倉(そろそろ戻らないと流石に長門さん達に不審がられてしまうものね
まぁ私の本命は元からバーサーカーだし、もう少し様子を見ても問題ないでしょう)
朝倉「------と、いうわけでライダーのマスターは谷口君
ま、あの程度なら放っといても私達の脅威にはならないでしょう
谷口君なら何処かで勝手に野垂れ死んでも問題ないしね」
キョン「あの・・・朝倉さん? 一応アイツの友人と呼ばれる男がココに思いっきり座っているのですがね・・・」
朝倉「まさか谷口君とも共闘するつもりなの? これ以上お荷物を増やされるのは正直どうかと思うんだけど」
キョン「お荷物ってなんだよオイ!!・・・とにかく放っておくわけにもイカンだろう。一応友人なんだし」
朝倉「私が言うのも何だけど、友達選びは考えたほうがいいわよ
ああいう人って周りの足しか引っ張らないタイプだから、付き合えば付き合うほどろくな事にならないわよ」
キョン「まさに『おまえが言うな』だな。俺を殺そうとした奴が堂々と説教垂れるな
そもそも俺の周りにはろくな人間は一人もいない。安心しろ」
朝倉「・・鼻高々に断言する事じゃないわよそれ」
ほっとけとばかりにソッポを向くキョンであった
朝倉「まぁライダー組は後で回収するとして、私としては涼宮さんの話を詳しく聞きたいわね
ランサーを何故すぐに自害させたのか? とか、その辺を詳しく・・・」
キョン「止めてくれ。思い出しただけで吐き気がしてくる」
朝倉「フフフ・・・そんなにヒドかったの? 涼宮さんの落胆した表情、是非とも見たかったわ~」
キョン「ハルヒも現実に引き戻されたみたいで、今のところ世界に大きな改編は起きてないみたいだがな
代わりにとんでもない閉鎖空間が発生してるらしいが・・・」
朝倉「!!」ガタッ!
急に朝倉があらぬ方向に顔を向け警戒の態勢を取る。長門も同じ方向を注視していた
長門「・・・来る」
キョン「ん? どうした? ま、まさか!!」
朝倉「ええ、バーサーカーが召喚される気配がするわ。近いわよ?」
-------所変わって再びキョン達の教室
国木田「遅いよ谷口。いつまで忘れ物取りに・・・って何その3Dな人!!」
谷口「おお、スマン国木田。お前校門に待たせてたの忘れてたわ」
国木田「いやそんな事より、そのやけにリアルな人誰?」
谷口「ディケイドだよディケイド。おまえもTV見て知ってんだろ?」
国木田「え? 仮面ライダーの? ホントに?」
谷口「おう、モノホンの本物だぜ。カッケーだろ? 俺たちはこれから聖杯戦争に参加しなきゃならんのさ」
国木田「・・・なんだかよく分からないけど用事できたんなら先帰るね」
谷口「おい待てよ国木田。どうせおまえヒマなんだろ? 俺たちの戦う勇姿を見ていかないのか?」
国木田「いや、面倒事に首突っ込みたくないから止めとくよ・・・少しは興味あるけど
こういう時はろくな事が起きたためしが・・・って、手の甲がなんか痛い!!」
谷口「おお!! それ令呪だぜ!! ほら俺と同じ!! いや~まさかお前も聖杯戦争に参加するとはな・・・」
国木田「ええ!?何それ!? ちょ・・勝手に変なことに巻き込まないでよ!!」
谷口「いや、そんな事言われてもな。聖杯に選ばれたの俺のせいじゃねーし」
士「この文様はバーサーカーだな。かなり強力なクラスだぞ?」
谷口「うっひょー!! バーサーカーだってよ国木田!!お前もなかなか渋いサーヴァント来てんじゃん!!」
国木田「いや、ちょっ、勘弁してよ・・ホントこういうの困るから」
士「魔方陣から膨大な魔力がすでに溢れてる。もう現れるぞ」
ドッゴーン!!!
いつものように魔方陣が光り輝き、黒い人影がその姿を現したかと思ったその時
轟音と煙を吐き出しながら突如魔方陣が爆発した
谷口「ゲホゲホ! おい!! 何がどうなった!!?」
国木田「召喚に失敗・・・したの?」
士「いや、居るぞ」
谷口、国木田「!!」
爆煙が次第に薄れゆくと同時に
バーサーカーと呼ばれるサーヴァントの姿が徐々に明らかとなった
谷口「!! お、おい。こいつは・・・」
国木田「こ、これが・・僕の、バーサーカー・・・?」
そのサーヴァントは何もかもが異様だった
奇抜、不自然、違和感と表現したほうが正確かもしれない
まるで純真無垢な少年が突如、怪物や化物や妖怪変化に手づから身を落としたような
そんな感覚をその男は漂わせていた
その大柄な体躯に見合わぬピチピチの子供服を身に纏い
無表情ながらも迫力を備えた精悍なる顔つき
そして何より、頭から生えていた東京スカイツリーと見紛うばかりの逆立った髪の毛
それら全てが普通の人間とは違う別次元から来たという事を指し示していた
そして、その固定化されたような口元が開いたかと思うと、国木田たちに何かを囁いた
それは掠れるような小さい声だったが国木田たちには確かにこう聞こえたのである
「this way」---------と
国木田「ゴン・・さん?」
バーサーカーのサーヴァントとして現れたのはゴン=フリークスと呼ばれる12歳の少年だった
だが、それはとても12歳の年端には見えないマッチョな大男が国木田たちの眼前に立っていたのである
国木田「・・・」
谷口「スッゲェェーーー!!! スゲェよ国木田!! メチャクチャ強そうなサーヴァントじゃん!!
何この棒立ちしてるだけでのド迫力!! 超カッケェェーーー!!!」
士「おいおいおい・・・何なんだコレは。本当に人間か?」
口をポカンと開け、ただただ絶句する国木田
その国木田の背を叩き、宝くじでも大当りしたかのように大喜びする谷口
得体のしれない未知の深海魚を見るような目で訝しがるディケイド
国木田たちは三者三様に未だ微動だにせぬ筋肉隆々の怒髪天を凝視していた
ゴン「・・・」
谷口「さて、と・・・一応これでおまえも共に聖杯戦争を競い合うライバルって事になったワケだが
友達のよしみだ。しばらくの間、共闘しようぜ? お互い右も左も分からねぇ状態だろ?」
国木田「そもそも争う意味さえ解ってない状態だからねコッチは
なぜ戦ってまで聖杯とやらを奪い合うのか?とか是非ご教授して頂けるとありがたいんだけど・・・」
谷口「あー…まぁ、おまえのサーヴァントにゃ何を聞いてもウンともスンとも答えやしなさそうだしな
未だ『this way』以外一言も喋らねーし・・・いいぜ、いろいろ俺が教えてやるよ」
国木田「うん、すごく助かるよ谷口」
国木田「-------なるほどね。自分の願いを叶えてもらうために聖杯戦争を戦うってことか。ふーん・・・」
谷口「あんま興味ないって感じの反応だな。でもおまえも叶えたい願いっての何かしらあるんだろ?
『惚れてるあの娘をモノにしたい』とか『世界中の女からモテモテになりたい』とかよ」
国木田「ハハハ。やっぱり谷口の願いはそういう感じか。口に出さずとも容易に想像はついたけどね
・・・そうだね、そりゃあ僕も人間だからね。叶えたい願いの一つや二つ、当然あるよ
でも他の人と争ってまで叶えようとするのは流石にどうかな・・・僕は正直そこまで強欲にはなれないよ」
谷口「カーー!! ったく、こんな時までええカッコしいか?
時には己の欲望に忠実にならねーと自分の人生3割減で損するぞ国木田?」
国木田「君は欲望に忠実過ぎだけどね。まぁでもキライではないよ、その性格
・・・いいよわかった。共闘しようか谷口」
国木田「えーと・・・あの、そういうワケだからライダーとは仲良くして下さい、ね? ゴン、さん・・・」
ゴン「・・・」
谷口(・・・おいおい、人間の言葉ちゃんと通じてんのかコイツ?)ヒソヒソ…
国木田(うん。いや、大丈夫じゃないかな? 多分だけど・・・)ヒソヒソ…
谷口(ならいいんだけどよ。あの容姿で何も喋らねーってのは、さすがに不気味すぎだぜ)ヒソヒソ…
ゴン「・・・」
士「俺はディケイド。ライダーのクラスでこの世界に顕現した。暫くの間だが、宜しくなバーサーカー」
ゴンに歩み寄り手を差し伸べ、紳士的に握手を促すディケイド
それに対し、ゴンは言葉の代わりに『コレ』をもって返答とした
ボ
国木田「・・・え?」
『ボ』という、まるで分厚い鉄柱や丸太が振り回されたかのような風切り音の後に国木田たちが見た光景は
首から上が何処かに消し飛んでいたディケイドの姿であった
谷口「うっ、うわわッ!! うわぁああああああぁぁあああーーーーーーッッ!!!!!」
国木田「っっうぇええええええーーーーーー!!!?」
今起きた出来事が理解しきれず腰を抜かす二人
バーサーカーの攻撃。それはあまりにも唐突すぎたのだ
おそらくディケイドは自身が死んだことさえ気が付かなかったであろう
司令部を失ったその体は、まるで糸が切れた操り人形の如く
首から血しぶきをあげ崩れるようにその場に倒れこんだ
ゴン「・・・」
先程までどこか間の抜けた会話を交わしてた谷口と国木田のいる教室は同じ場所とは思えぬほど
ゴンの無慈悲な一撃によって地獄絵図と化したのである
あまりにも非現実的な出来事ゆえ、谷口はガラにもなく錯乱していた
谷口「ひっ、ひっ、あ、アタマ・・・ラ、ライダーの頭は何処だ? も、戻さなきゃ・・・」キョロキョロ
国木田「たッ谷口落ち着いて!! アンパンマンじゃあるまいし頭を戻してもライダーは生き返らないよ!!」
涙目になってディケイドの頭を探す谷口
だが、あたりを見回してもディケイドの頭部はあるはずがなかった
ゴンの蹴り上げた一撃はディケイドの頭に接触した直後
44マグナムの弾丸に当たったスイカのように、粉々に四散して床や天井に撒き散らされたのだから
パアアアアアアーー… 谷口「!!」
光の塵となって姿を消すディケイド
それを見た谷口はディケイドがもう元には戻らぬ事をようやく理解し、口を噛み締め拳を震わせ立ち上がった
谷口「・・・ちくしょう。よくも・・よくも俺のライダーを・・・・
バーサーカー・・・テメェの、・・・テメェの血は何色だぁーーーー!!!?」
錯乱した末の蛮勇なのか、無謀にもバーサーカーに殴りかかる何の能力も持たない普通の人間
それに対し、ゴンはまたもやコレをもって返答とした
ボ
谷口「ぐはぁ…!!」
それはディケイドに放った先程の一撃とは違い明らかに手加減した一撃だった
その証拠に谷口の体は四散せず、悶絶してはいたものの致命傷を与える威力ではなかった
ゴン「・・・」
だがこれは決して手心を見せたというワケではなく、ゴンは濁りきった目で侮蔑するように谷口を見ていた
ゴン「」ゴシャ!! バキ!! ドゴッ!! ガスッ!!
谷口「~~~~~~~ッ!!!」ピクピクピク…
すでに身動きの取れない谷口を執拗に何度も足蹴にするゴン
『なんの力もないタダの人間風情がサーヴァントである俺に襲い掛かるとは身の程知らずも甚だしい』
------こう考えていたのであろうか
自分に攻撃してきた愚かさを後悔させるため、ゴンは谷口を徹底的に痛めつけ
その軽薄さに対する制裁をじっくり加え続ける腹づもりだったのだ
ゴン「」ゴシャ!! バキ!! ドゴッ!! ガスッ!!
国木田「ゴ、ゴンさん!! もう・・・もう、やめたげてぇぇーーーー!!!」
ボ
国木田「ぐはぁ…!!」
突如行なったバーサーカーの攻撃
それは部室棟より魔力の揺らぎを注視していた長門と朝倉にも伝わった
朝倉「すごいわねバーサーカー・・・まさかここまでとは」
長門「然り」
キョン「おい、お前ら二人して何わかった気になってるんだ? ちゃんと俺にも説明しろ」
長門「・・・ライダーの霊圧が消えた」
キョン「なん・・だと? た、谷口が危ない!! 早く助けに行くぞ!! 長門!! 朝倉!!」
朝倉「無駄よ。バーサーカーがもしマスターを殺す気なら今から行っても間に合わないわ
それより自分達の心配をしたほうが身のためよ
私たちがバーサーカーの存在に気付いてるのと同様にコッチの存在にも気付かれてるハズだから・・・」
長門「朝倉涼子に同意する。早急に迎撃の態勢を整えるべき」
キョン「いや、しかし・・・」
朝倉「大丈夫よ。谷口君の性格はあなたもよく知ってるでしょ?
おそらく彼、ライダーが殺された時点でビビッて十中八九逃げてるわよ」
キョン「・・・だと、いいがな」
----------ゴンには叶えるべき願いがあった
元いた世界で大事な人を自らの未熟さで助けられなかった・・・
その罪を償うため、ゴンはどうしても聖杯を手に入れなければならなかったのだ
しかし実際にはその人は死んではおらず、彼は女の姿になって生きていたのだが・・・
ピトー戦の直後にこの世界に召喚され、その事実を知らない少年を一体誰が責められようか
ゴンはおそらくどのサーヴァントよりも強い意思でこの聖杯戦争に挑んでいたであろう
彼の願いに対する執念は並大抵のモノではなかった
『邪魔するものは例え女老人子供であろうと容赦はしない、どんな手を使おうとも必ず聖杯を勝ち取ってみせる』
そんな決意と覚悟でゴンはこの聖杯戦争に臨んでいるのだ
そう、全てはカイトを生き返らせるために-----------------
突如ゴンの体が光輝いた
ゴンは残りの敵の情報を事細かに知るため、念能力の『円』を八方へと放射状に展開した
その強力な閃光はゴンの体を中心に、一瞬にして半径5キロ圏内全てを覆い尽くしたのだった
教室棟から放たれた強烈な光は部室棟で様子を伺うキョン達にも降り注いだ
キョン「うお!!まぶし!!」
朝倉「クッ・・・これは」
長門「・・・」
キョン「な・・・なんだったんだ今の光は!?
何か教室棟のほうが光ったと思ったら、突然体の中を見透かされたような感覚に・・・」
長門「おそらくバーサーカーの能力の一種・・・ソナーのような索敵能力だと推測される」
朝倉「敵の情報を事前に詳しく収集したって事?
・・・なるほど、バーサーカーだからとて、考えなしで行動してるワケではないって事ね」
キョン「一筋縄では行かないってことか・・・」
長門「・・・コレでバーサーカーの危険度がさらに増した」
ガッツ達三人はすでに北高の正門近くまで戻って来ていた
みくる「ふええ・・・ななななんだったんですかね、今の閃光は?」
鶴屋「北高の校舎が光ったみたいにょろが・・・」
ガッツ「痛ッ!!!」
みくる「ど、どどどどどうしたんですかガッツさん!?」
鶴屋「あ!!首から血が出てるっさ!!」
よく見るとガッツの首にある紋章のような傷から血が滴り落ちている
その拭った血を己の目で確認したガッツは、苦々しい表情で手のひらを強く握り締める
ガッツ「・・・使徒だ。今の光を放った所に居る。それもとんでもなくヤバイのが・・・
・・・恐らくゴッドハンドかそれ以上の」
みくる「ええ? し、使徒? ゴッドハンド? わわわ、言ってる意味がわかりませぇん・・・
エヴァか何か出てくるんですか?」アワアワ…
ガッツ「行くぞ!! ついて来い!!」ダダッ!!
鶴屋「あ!! ちょ、ちょっと待つッさセイバー!!」ダダッ!!
みくる「わわわ。お、置いてかないで下さいー・・・」ダダッ!!
ガッツ(使徒がいる場所はバーサーカーの魔力が感じられた所と全く同じ位置・・・
まさか、人間ではなく使徒がサーヴァントとして顕現したという事か?
・・・人外であるというなら尚のこと、俺が倒さなければなるまい!)
ゴンは円を張り巡らせることにより、魔力のゆらぎでは感知できない詳細な情報を得ることが出来た
---------ランサーは自分がこの世界に顕現する前にすでに自害
ライダーは自身が手づから一撃で始末した
残る敵はセイバー、アーチャー、キャスター、アサシンの4体・・・
次は誰を標的にするか・・・ゴンは獲物を狙う直前の猛禽類のような目でさらに思案を巡らせた
---------別棟の一室にアサシン、キャスターの姿を確認。両名共に女性である
小柄な方の女性はキャスター、長身の方がアサシンか
両名は揃ってこちらの様子を伺ってるもよう
そばに居る男性はキャスター、アサシンいずれかのマスターか?
もう一方のマスターが居ないのは若干気にかかるが・・・
---------校門方向からセイバーのサーヴァントがこちらに向かってるのを確認
自分に意識を向けてるのがハッキリとわかる
この敵意から察するに、どうやら邂逅直後に戦いを仕掛ける腹づもりらしい・・・
その近くにいる女性二人の内、どちらかがセイバーのマスターだろう
一人はマスター、もう一人はサポート要員といった所であろうか?
---------アーチャーの姿が確認できない
索敵の範囲外だったのか、それとも霊体化して索敵できないのか・・・
いずれにせよ、逃げ隠れしている臆病な輩は後で始末しても問題ないだろう
ゴン「・・・」
まず仕留めるべきは今近場にいるサーバントと判断したゴン
それもココに向かってくる好戦的な黒い剣士に対しゴンは意識を集中した
ベルセルクとバーサーカーの激突が始まろうとしていた
ちと飯食ってくるので小休憩
だいたい30分~1時間後くらいに再開します
おまたせ
みくる「ガ、ガッツさん!ままま待ってください!!まずはキョン君達と先に合流を・・・」ハァハァ…
みくるの忠告を無視し校舎を駆け上がり、例の教室の前で立ち止まるガッツ
ガッツ「・・・」
鶴屋「よ、ようやく追いついた・・・あ! ココは!?」ハァハァ
みくる「キョ、キョン君や涼宮さん達のクラスです・・・」ハァハァ
ガッツ「・・・中に居る」
鶴屋、みくる「!!」
鶴屋「ココに居るにょろか? 化物が?」
ガッツ「覚悟はいいか? 入るぞ?」
みくる「ひ、ひえぇ・・・」ガタガタガタ
息を飲む二人を尻目に教室のドアを開けるガッツ
ガッツ「!!」
そこは既に普通の教室とは違う異様な光景を醸し出していた
教室内で竜巻でも発生したかのように無惨に壊された机や椅子
至るところに飛び散らかされた血痕
死にかけの谷口
教室の真ん中に描かれた魔法陣の上で立ちずむ筋肉隆々の大男と脇に抱えられ気絶した国木田
怒髪天をつくその髪の毛は、教室の高さでも足りずワサワサとムカデのように天井を這いずり回っていた
みくる「ひっ、ひえぇ・・・」ガタガタガタ
鶴屋「なっ・・なんなんさ、コレ・・・?」
ゴン「・・・」
ガッツ「貴様がやったのか? バーサーカー?」
みくる、鶴屋「!!」
ガッツの問いかけを無視し、禍々しいほどの殺気を依然放ち続けるゴン
その圧倒的存在感は、まるで人間の言葉が通じないかのように錯覚するほど化物じみていた
確かに人の姿をしているが、それを感じさせない、そう思わせる何かがこの男にはあったのである
鶴屋「こ、こいつが例のバーサーカー・・・」
そう、この「少年」こそ、この聖杯戦争最強にして最凶のサーヴァント
圧縮されし天賦の才
濃縮されし強さの体現
禍々しきチカラの結晶体
その化物こそバーサーカーのサーヴァント
ゴン=フリークス(12)なのである
ゴン「this way」
ゴン「forrow me」
そう言うとゴンは国木田を小脇に抱えたまま校舎から飛び降り校庭の中ほどまで移動した
そして誰も居ないステージの中央からゴンはガッツに降りてくるようアゴでクイっと促した
ガッツ「・・・なるほど、確かにココで戦うのは狭すぎる、か」
みくる「ふええ・・・ガッツさん。あ、あんなのと戦うんですか・・?」
不安そうにガッツを涙目で見つめるみくる
それを見たガッツはまるで父親が子供をあやすかのように優しくみくるの頭を撫で
ガッツ「大丈夫。勝ってみせるさ。なぁに、あんな化物との戦い、俺にとっちゃ日常茶飯事さ
いつもの事だ。何も変わりはしない。いつものように化物と戦って勝つ。それだけの事さ」
そう言うとガッツは後者から飛び降りゴンの元に歩みよる
鶴屋「私らも行くっさみくる!」
みくるの手を取り教室を後にする鶴屋とみくる
校舎を駆け下り玄関から出てみるとベルセルクとバーサーカーの戦闘は既に始まっていた
ゴア!! ゴア!! ブウン!!
ドラゴン殺しを手に取りゴンに斬りかかるガッツ
かなりの重量物であろう巨大な剣をまるで体の一部であるかのように鬼の形相で振り回すその姿は
まさしくベルセルクという名に相応しいものだった
その斬撃を国木田を抱えたまま無表情でヒラリヒラリとかわし続けるゴン
どちらも超人であり、どちらも化物である
すっかり日も落ちた闇夜の中で
白銀灯だけが煌々と照らし出すそのステージは、人が立ち入る余地などない壮絶な戦場と化していた
みくる「こ、これがサーヴァント同士の戦い・・・」
鶴屋「す、凄すぎるっさ」
ガッツ(なんだコイツ? なぜ攻撃して来ない?)
斬撃を避けるだけに徹しているゴンに違和感を覚えるガッツ
ガッツ(俺の力量を測っているのか? それともただ遊んでいるだけなのか?
いずれにせよ本気を出すまでもないって事か・・フン、みくびられたものだな、この俺も)ザシャア
一旦距離を置き連続攻撃を終了するガッツ
ガッツ(しかして不気味なのは未だに宝具を見せない事。そもそもコイツの宝具は一体何なんだ?)
ゴン「・・・」
ガッツ「!! そうか! わかったぞ!! コイツの宝具は----------」
再びゴンに斬りかかるガッツ
先程と同じようにヒラリとかわし続けるゴン
鶴屋「? 同じような攻撃をしていてもバーサーカーには通じないのに、何故セイバーはまた突っ込んだにょろ?」
みくる「それにさっきより攻撃の仕方が雑になっているような気がします。まるで体に当てる気がないような・・・」
鶴屋「!! そうか!わかったにょろ! セイバーはバーサーカーの体ではなく宝具を狙って攻撃してるにょろ!!」
みくる「え? 宝具? 言ってる意味が・・・あ、まさか!!」
鶴屋「そう!! バーサーカーの宝具は『髪の毛』あの異常に長い髪の毛にょろ!!」
ザシュ!! ザシュ!!
少しづつ髪を切り落とされていくゴン
やはり長すぎる髪の毛では、どうしてもガッツの斬撃スピードにはついていけず
30mはあったゴンの髪の毛は四分の一にまで削り落とされていた
ガッツ「どうしたバーサーカー!! 本気を出せ!! つるッぱげになるまで攻撃しないつもりか!?」ザシュ!! ザシュ!!
ゴン「・・・」
ボ
ガッツ「うおっ!!」
唐突に放たれた蹴りをかろうじて避けるガッツ
ガッツ「フ・・・たまらず反撃に出たか。そうこなくっちゃな」
ゴン「・・・」
ガッツにクルリと背を向け距離を置くゴン
そして小脇に抱えていた国木田を地面に寝かせつけゴンは両手を自由に使えるようにした
ゴン「・・・」コキッ コキッ
ガッツ「・・・なるほど、ようやく本気を出すみたいだな」
ガッツが言い終えるのを待っていたかのように
ゴンは己の内に潜むどす黒いオーラを火山から噴出するマグマの如く開放させた
ド ン !
もの凄いプレッシャーが北高の敷地内全てを覆い尽くす
キョン「うおおおお!? 今度は何だ!?・・・何か体が急に重たくなったようなこの圧力・・・!!」
朝倉「バーサーカーの魔力開放よ・・・それにしても強力すぎるわね。周りの大気まで震えてるじゃない」
まるで小さい地震が起きたかのように部室のガラス窓が小刻みにガタガタ震えてるのが確認できた
キョン「ま、魔力開放だと? 一体何が起こってるんだ!? ちゃんと説明しろ!!」
長門「・・・現在セイバーとバーサーカーが校庭にて戦闘中」
キョン「なっ!! なんだってー!!? マズイ!! 朝比奈さんが危ない!!
助けに行くぞ!! 長門!! 朝倉!!」ダダダッ
長門「然り」ダダッ
朝倉「チィ・・・(長門さんめ、余計な事を・・・)」ダダッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
みくる「あわわわわ・・・あ、あの人の体から黒い煙みたいな湯気が立ち上ってますけど
・・・な、なんなんですかコレェ?」
鶴屋「なんだか知んないけど、とてつもなくヤバイって事だけは解るっさ」
尋常ならざるオーラ。それは一般の人間にまで視覚化できるほどの質量であった
ガッツ「バーサーカー・・・まさかこれほどとは・・・」
ゴン「FIRST…COMES…ROCK…」ッキイイイイイイーーーーーン!!!!!
鶴屋「こ!! この呪文は・・!! マズイ!! 逃げるっさセイバー!!!」
ガッツ「いや!! 行ける!!」ダダッ
みくる「あ!! ガッツさん!!駄目!!」
「危険すぎる」と声をかけようとするみくるを気にもかけず、最速で駆け抜けるガッツ
ガッツ(むしろチカラを溜めてる今がチャンス!!
俺の斬撃が速いか、貴様が力を溜めるのが速いか・・・勝負だバーサーカー!!)
ブオ!!
ガッツの振り下ろすドラゴン殺しがゴンの体に触れるその刹那
僅かに・・・ほんの僅かに
ゴンの力が僅かに速く溜め終わってしまっていた・・・
ゴン「JAN・・KEN・・・!!」
ボ
ドッゴーン!!!
轟音と共に爆発する校庭。土煙が舞い上がり何が起こったのか確認する事ができない鶴屋とみくる
鶴屋「ゴホゴホ・・・い、一体なにが・・・」
みくる「ガッツさんは? ガッツさんは勝ったんですか?」
時間と共に次第に薄くなる砂塵
そこにはみくるの期待とは違う大男が無傷の姿でそこに立っていた
ゴン「this way」
みくる「あ・・・ああ・・そ、そんな・・・」ガクッ
鶴屋「あ、あのセイバーが肉片一つ残さず・・・消し飛ぶなんて・・・」
みくる「ふええん・・・お別れの挨拶も出来ないなんて・・こんなのってないです・・・あんまりですぅ」シクシク
鶴屋「し、信じられない・・・こ、こいつ、無傷どころか髪の毛の長さまで元の長さに戻ってる・・」
まさに化け物である
ゴン「・・・」ワサワサ
今の戦いの余韻を楽しむことも思いを馳せることもなく
バーサーカーの次の矛先はすでに次のターゲットに向けられていた
鶴屋「こっ!! こっちに歩いてくるにょろ!!」
ゴン「・・・」ザッザッ
近寄ってくるゴンの視線は間違いなく朝比奈みくるを捉えていた
みくる「ひいいい!!」
鶴屋「こっ!!こいつサーヴァントだけでなくセイバーのマスターまでキッチリトドメを刺すつもりにょろか!?」
みくる「あわわ・・・そ、そんな」
ゴン「this way」
バッ
みくる「え!?」
歩み近づく殺人鬼からみくるを守るため
両手を広げ震えながらもゴンの前に立ち塞がる少女がいた
鶴屋「悪いけどバーサーカー!! みくるは絶対に殺させないよ!!」
みくる「つ、鶴屋さん・・・」
鶴屋「大丈夫。みくるは私の大事な親友だ。だから---------」
『命に替えても守る』と心の内に決意した鶴屋は令呪の書かれた手を力強く振りかざし
精一杯の声で自分のサーヴァントを呼び出した
鶴屋「出でよ!! アーチャー!!」
ぱあああああああ・・!!
霊体化していたアーチャーが光を伴って姿を現す
みくる「!! コレが鶴屋さんのサーヴァント・・!?」
それはいかにも魔法少女というようなピンクを基調としたフリフリの衣装を身に纏う
可愛らしい少女の姿だった
鶴屋「まどか!!戦える!?」
まどか「ティヒヒ。うん、おかげさまで少しは体がこの世界に馴染んできたよ鶴屋さん」
みくる「こ、この娘が・・・アーチャー・・?」
鶴屋「そう、『鹿目まどか』。別世界で「円環の理」として存在してた魔法少女さ
この世界に来ても実体化が不安定だったから、今まで霊体化してたんだけど、この様子だと何とか戦えそうだね」
まどか「ウェヒヒヒヒ。いやぁ実体化するのは久々だったもんで・・・申し訳ないです」
まどか「あれが私の戦う相手・・・バーサーカーだね、鶴屋さん」
鶴屋「あのセイバーでさえ全く歯が立たなかった相手だけど、勝てるかい? まどか」
まどか「うん・・・やってみないと分からないけど、多分・・」
ゴン「・・・」
鶴屋「頼んだよまどか。・・・アイツは親友を泣かせた。絶対に許せない相手なんだ」
アーチャーのただならぬ雰囲気を感じたのか
まどかを仁王立ちで見据える怒髪天
まどか「他人のことは言えないけど、普通の霊体ではないよ。このサーヴァント・・・」
鶴屋「ああ、わかってるっさ」
まどか「人間というより、私と同じ『概念』に近い存在みたいだね・・・あ」
鶴屋「ん? どうしたまどか?」
まどか「鶴屋さん。私がこの世界に呼ばれた意味。ようやく分かったよ」
まどか「元の世界で願いをすでに叶えた私が聖杯戦争に呼ばれた理由、それは-------」
ボ
まどかの言葉をさえぎるかのように攻撃に入るゴン
先程の戦いとはうってかわって積極的である
ゴン「!!」
確かに蹴飛ばしたはずの少女がいない
消えた?と思われた少女は上空から雨のように矢を降り注いだ
それを直前で気付き、体に見合わぬ体裁きで全て避けきるゴン
まどか「うーん。流石にすぐには勝たせてくれないか」
ティヒヒと笑うまどかを見上げるゴン
ゴン「・・・」
まどか「さぁ、ジャンジャン行くよ」
光の矢を上空より放つまどかに対し、ソレを避け続けることしか出来ないゴンは苦戦を強いられていた
そう、ゴンは空を飛べないのである
鶴屋とみくるがアーチャーとバーサーカーの戦いを見守っている、そんな中
ようやくキョン達一行が校庭へと駆けつけた
キョン「あ!!朝比奈さん!!鶴屋さん!!大丈夫ですか!?」ハァハァ
みくる「あ! キョン君!!」
キョン「ハァハァ・・・ど、どうやら間に合ったようですね」
鶴屋「キョロスケに長門っち!! それにえーと・・・」
みくる「!!」
朝倉「朝倉涼子。キョン君のクラスメートよ
そんな事より凄い戦いね。あれが噂のバーサーカー?」
みくる「え?え? な、なんで朝倉さんがココに?」
キョン「俺のサーヴァントです。詳しい話は後でしますので、まずは状況の説明を・・・」
みくる「は、はい」
みくる「-------と、いうわけで、ガッツさ・・いえ、セイバーはすでにバーサーカーに倒されて
今は鶴屋さんのアーチャーが戦っています」
キョン「なるほど、無傷でセイバーを・・・」
朝倉「・・・」
みくる「ゴメンねキョン君・・・また私あまり役に立てなくて・・・」シュン…
キョン「そんな事ないですよ朝比奈さん。朝比奈さんがいつでも一生懸命なのは充分解ってますから
そう、落ち込まないでください」
長門「セイバーは強力。ただバーサーカーが別次元に強かっただけ。仕方のない事」
みくる「・・・はい」
朝倉「・・・どちらかというとバーサーカーが押されてるわね
遠距離・・・しかも手の届かない上空からの一方的な射撃はかなり厄介よ」
キョン「鶴屋さん。コレもしかして勝てるんじゃないですか?」
鶴屋「いや、相手はあのバーサーカーっさ。一筋縄で勝たせてくれる相手じゃないのはまどかも分かってるはず
ま、このまま反撃されず勝ってくれれば御の字だけどね」
ゴン「・・・」
戦況を打開すべく、とうとうゴンが行動を開始した
まどかが矢を打ち放つその間隙を縫い、ゴンはその恐るべき膂力でもって地面を蹴り
上空にいるまどか目掛けて突っ込んできた
まどか「え!?」
無論ゴンの脚力なら、まどかがいる高さまで届くのは造作もない事だろう
だが、いくらサーヴァントとはいえ実体化してる以上、地球の重力には逆らえないのである
飛び出した勢いと方角さえ分かれば落下予測地点とその軌道は計算せずとも小学生でも分かる事だ
格好の的として落ち際に狙撃されるのはどう考えても明らかだった
だからこそまどかは驚いたのである
まどか(・・・避け続けるのに耐えられなくなって突っ込んできた? やけになって? それとも何か策があるの?)
長考を与えてくれるほどの時間はなかった
ゴンが接触するより速く、まどかはゴンが飛んできたライン上から離脱しなければならなかった
ゴン「!!」ブオッ!!
むなしく虚空を切る拳
ゴンのジャンプするスピードは砲弾のように速かったが、いかんせん距離が長すぎたのだ
空中という自由の利かぬ場に自ら飛んできた哀れな獲物に、狩人の矢の切っ先が向けられた
重力の檻に閉じ込められたゴンに対し、まどかはすぐには矢を放たなかった
まどかは一抹の不安を抱えながらも、この格好の機を逃すまいと光の矢に自分の魔力を注ぎ込んでいた
ゴンに弾き返せないほどの、ありったけのエネルギーを
ゴン「・・・」
地球の引力に引き戻され放物線を描き地面に落下し始めるゴン
150mは跳んだであろうか。普通の人間なら即死確実の高さだが、ゴンはおそらく無傷で着地するであろう
空中で何事もなく無事に着地できれば、の話だが・・・
鶴屋「おお! スゴイ!!」
朝倉「あ、あれをバーサーカーにぶつけるつもりなの?」
矢というよりは光の槍と表現すべきほどの大きさにまで成長した高エネルギー体
打ち放てば、ゴンは身をねじって避ける事も、手や足を使って弾く事も叶わず光の塵となって消滅するであろう
まどか「これで終わりだよ、バーサーカー」
ワルプルギスの夜を一撃で屠ったまどかの矢がゴンに向かって放たれた
バシュウウウウーーーーン・・・
勢いよく放たれた光の矢はゴンの下数センチをかすめ大気を切り裂き、空の彼方へと消え去った
まどか「え!?」
驚愕するまどか
そう、当たらなかったのである
まどかが放った落下予測地点にはゴンの姿はなかったのだ
まどか「ぇええええええーーーー!????」
さらにまどかは驚愕した
浮くはずのないバーサーカーが注に浮いてたからである
ゴン「・・・」ババババババババババ
そう、ゴンはなんとヘリコプターの回転翼のように自分の髪の毛をブンブン振り回し
あろうことか、その高速回転によって生じた風圧と揚力でもって、空中に静止していたのであった
キョン「か、髪の毛振り回して空中ホバリングしただとぉおおおおーーーーーーー!!!???」
キョン「う、うそ・・・だろ?」
キョンは血の気が引くような思いでその光景を見ていた
みくる「ふえぇ・・・」バタン
鶴屋「あ! み、みくる!?」
あまりの恐怖に朝比奈みくるは気絶した
長門「理解不能、理解不能、理解不能」
朝倉「なんなのアレ? なんなのバーサーカー・・・これじゃ本当に本物のバケモノじゃない」ブルブルブル
あの朝倉でさえ身震いしてる
それはその場にいた全ての者の想像の範疇を超えていた
いや、いったい誰が想像できようか。この恐るべき光景を・・・
-----------後にキョンはこう述懐する
キョン「-------そう、普通は笑うわな。確かに端から見りゃ爆笑モンのギャグ漫画だろうさ
だが、だがな、その場にいた俺達にゃソレを笑い飛ばそうなんて気を起こす輩は誰一人としていなかったよ」
キョン「・・・いや、俺もな、ハルヒのおかげでさんざ色々な目にあってきたよ
でもな、あの時ほど恐怖の片鱗を味わった事は今までなかったぜ」
キョン「--------だって信じられるか!?
ピチピチの服を着た筋肉隆々の大男が腕を組んで魔法も超能力も使わず宝具の風圧だけで宙に浮いてんだぜ!!?
髪の毛を高速回転させながら!! 仁王立ちで!!」
キョン「・・・少なくともこの場にいた誰一人として、あのバーサーカーには勝てないと理解したよ
それほど凄い現象をあの化け物は顔色変えず平然とやってのけたのさ
そしてその時思ったよ。『ああ、俺達は間違いなくコイツに皆殺しにされるな』ってさ・・・」
ゴン「this way」
地面に降りろと下を指差し促すゴン
ソレに対しまどかは少しの間、思案した
まどか「・・・」
確かに上空での一方的な射撃というまどかのアドバンテージはこれで消滅した
しかしまだ空中での機動力は概念のチカラで浮くまどかの方が依然有利なのであった
だが、まどかはあえてゴンの指示する地上に降りた
決してゴンの迫力に気圧されたのではなく、あくまで自分の意思で
鶴屋「まどか!!」
まどか「・・・ゴメン鶴屋さん。でも思っちゃったんだ。この人とは掛け値なしで思いっきり戦いたいなって
あのヘリコプターみたいに飛んでる姿を見たら、何故かそう思っちゃったんだ・・・」
鶴屋「ま、まどか・・・」
まどか「ティヒヒ。私もそれほど好戦的じゃないんだけどね・・・でもやっぱ一人だけ安全地帯で戦うのは
やっぱりちょっとだけ卑怯すぎるよ・・・」
鶴屋「・・・」
鶴屋「・・・分かったよまどか。思いっきり戦いな。自分の好きなようにさ・・・」
まどか「うん・・・ありがとう鶴屋さん。わがまま言ってゴメンネ」
まどか「マミさん!! お願い!! チカラを貸して!!」バッ
まどかが手を上げ、そう叫ぶと
彼女の後ろにまるで見えない壁でもあるかのように、空中の平面上から数え切れない程のマスケット銃が姿を現した
ゴン「!?」
朝倉「あ!!あれはゲート・オブ・バビロン!!? まさか彼女も使えるとでもいうの!!?」
マスケット銃の銃口が怒髪天の化け物にセットされる
ゴン「・・・」
ゴン「FIRST…COMES…ROCK…」ッキイイイイイイーーーーーン!!!!!
チカラのうねりがゴンの右手に収束していく
鶴屋「!! この呪文は!セイバーを倒した時の・・・まどか!!気をつけて!!!」
まどか(大丈夫。鶴屋さん・・・分かってるよ。心配しないで)
まどか「ティロ!フィナーレ!!」
単発式の銃が一斉に撃鉄を落とし、銃口から無数の魔法の弾丸がゴン目掛けて発射された
ドッゴオオオオーーーーン!!!
ゴンが居た場所と同時に校舎の二階部分が破壊され、いつの間にかゴンがまどかの傍に瞬間移動していた
キョン「なっ!!」
ゴンはマスケット銃の弾幕を圧倒的スピードで横に避け
校舎の壁を蹴り一瞬にしてまどかの横に接近してみせたのだった
朝倉「!! (なんという身体能力!! 長門さんより速い!)」ゾゾ…
ゴンの鋭い眼光がまどかの視線を捕らえる
ゴン「JAN・・KEN・・・!!」
ボ
『ボ』という鈍い音で吹き飛んだのはまどかではなくゴンの右腕だった
ゴン「!!」
濁りきった目が驚きをもって振り返る
さやか「可愛い娘だと思った? 残念、さやかちゃんでした☆」テヘペロッ
ゴン「!?」
キョン「え!? 誰!!?」
まどかはなんとマスケット銃と共に一人の魔法少女を異世界から召喚していたのだった
さやか「へっへーん、どんなもんだい!? あたしの剣のあj・・・
ボ
さやか「ぐはぁ…!!」
まどか「さ、さやかちゃあーーーん!!!」
ゴンの蹴りがわき腹にめり込み、校庭の端まで吹き飛ばされた青い剣士
さやかはゴンに一太刀浴びせただけで気絶したまま光の塵となって元の世界へと帰っていった
まどか「さ、さやかちゃん・・・」
ボ
ゴンの蹴りを後方へ跳んでかわすまどか
空中で半回転して落ちながら弓矢の連続斉射を放つ
それを先程のようにヒラリと回避するゴン
ゴン「・・・」
お互いの距離が離れて間が空いたことで、無くなった右腕に手をあて気にするゴン
切断面から血と共にドス黒い魔力が漏れ出している
まどか「・・・利き腕を失った貴方にもう勝ち目はないよバーサーカー。・・・もう終わりにしよ?」
ゴン「・・・」ギリッ
まどかの言葉にゴンは耳を貸さなかった
------そう、終われる筈がなかった
ゴンの決意と覚悟はたかが右腕を失っただけで諦めきれるモノではなかったのだ
ゴンの心の内には燃え盛る炎のように揺るがぬ闘志が未だみなぎっていた
ゴン「・・・ッ!!」ギュリッ
ゴンは右腕の切断面にチカラを込め
その筋肉の収縮によって漏れ出る血と魔力を止めることに成功した
だが、漏れ出した魔力もさることながら
利き腕である右腕の損失はバーサーカーにとってかなりの痛手であった
例えアーチャーを倒したとしても、まだ魔力を温存しているキャスターとアサシンが無傷で後に控えているからである
ゴンの能面のように固められた表情が、ほんの僅かにあせりのこもった顔に変化してるように見えた
ゴン「・・・」
アーチャーとバーサーカーの戦いに幕が下ろされようとしていた
まどか「・・・」
悲しそうな顔でゴンを見つめていたまどかはそっと目を閉じ
何かを決意したような表情で、バーサーカーに視線を再び戻す
ぱああああああああ・・・
キョン「うお!! 何だ!!?」
突如、まどかの体が光に包まれたかと思うと
ピンクを基調としたフリフリの可愛らしい服から、純白のドレスのような神々しい衣装へと様変わりしていた
キョン「あ、アーチャーの服装が変化した・・・!?」
鶴屋「あ、あの姿はアルティメットまどか!?」
ゴン「!!」
ゴオオオーーー!!!
まどかを中心に膨大な魔力がトルネードのように解き放たれていく
朝倉「な、なんてヤツなのアーチャー・・・まだ切り札を隠し持っていたなんて・・・!!」
まどか(・・・私がこの世界に召喚された意味。それはバーサーカーの呪いを浄化するために・・・
って事なんだね・・・)
まどか「これで最後だよバーサーカー。私の本気を・・・全開全力を見せてあげる!!」
まどか(この世界でこの姿を維持するには鶴屋さんの魔力供給が持たない・・・
1分・・・いや、30秒で決着をつけないと)
まどかの矢が光輝くと
ゴンに空中でかわされた先程の矢と同等のエネルギーが一瞬で込められる
朝倉「エ、エネルギー蓄積を一瞬で!? チートすぎるわよアーチャー!!」
鶴屋「ま、まどか・・・」
ゴン「・・・」
ワルプルギスの夜を一撃で倒したまどかの矢が再びゴンに向かって放たれた
だが先程の空中とは違い、ゴンは現在足を地に付けていた
四肢で弾くことの出来ない高エネルギー体であっても地上ならば
ゴンの身体能力をもってすれば避ける事は充分可能なのである
物凄いスピードでゴンに迫り来る光の矢を、寸前で横に転がりながら避けるゴン
ゴン「!?」
かわしたハズの矢が進行を変えてユーターンで自分に再び襲い掛かってこようとするのを見て驚くゴン
キョン「ホ、ホーミング機能だとぉ!!?」
ゴンは自動追尾で自分に迫る光の矢を再び回避する
だが、またもやかわした矢はゴンを標的に向きを変えようとしていた
ゴン「・・・」
どうやらコレは自分に当たるまで延々と襲ってくるモノと判断したゴンは残された左手に力を凝縮させていく
ゴン「FIRST…COMES…ROCK…」ッキイイイイイイーーーーーン!!!!!
朝倉「ば!馬鹿な!!あれ程の高エネルギー体を撃ち落すつもりなの!!?
いくらバーサーカーでも無謀すぎるわ!!」
ゴン「JAN・・KEN・・・!!」
ボ
すさまじいエネルギー同士のぶつかりあいで行き場の失った力は光と熱に変換され爆発
そして土煙を舞い上げ霧散した
そこには光の矢を打ち消すことに成功したゴンの姿があった
ゴンの凝縮された一撃は、なんとワルプルギスさえ倒した高エネルギー体をも退けたのだった
キョン「マ、マジかよ・・・」
朝倉「す、すごすぎる・・・」
だが、表情にこそ出しはしなかったものの、ゴンも安堵の気持ちでいっぱいだったであろう
ゴンにとってもコレは一か八かの選択だったのだ
・・・賞賛すべきは、この一撃さえ布石としたまどかの思慮深さか
結果的にゴンはその賭けに打ち勝った、一瞬の気の緩みが命取りとなったのだが・・・
パァァァーーーーン
ゴン「!?」
ゴンが気がついた時には、既に自分の胸に穴が開いていた
ゆっくりとその場に倒れるゴン
乾いた発砲音の先を見ると、マスケット銃を手にしたまどかが悲しい顔で立っていた
まどかは光の矢を放った後、未だ発射されてないマスケット銃を拾い上げ
ゴンが動きを止めるのを静かに待っていたのだった
結末は何ともあっけなかった・・・
優秀なハンターであるゴンは、ピンク色の髪の小さな狩人にその胸をハントされたのだった
長門「これがホントのハンター×ハンター」
キョン「ティロ・フィナった・・・のか?」
朝倉「う、嘘でしょ・・? まさかバーサーカーがこんなにアッサリ終わるなんて・・・」
だがゴンは倒れたままピクリとも動かなかった
まどか「ふう・・・」ぱあああああああ・・・
まどかの礼装が元のフリフリした可愛らしい服装に戻っていく
鶴屋「ま、まどか・・・勝ったの?」
まどか「うん、マミさんの魔法の弾だからね。例え生きてたとしても回復するのは不可能だよ
可哀想だけど、バーサーカーはもう・・・」
鶴屋「そっか・・・ って、まどか!!後ろ!!!」
まどか「!?」
まどかが振り向くと物凄い形相のバーサーカーが息を荒らげ血を噴き出しながらブルブルと立っていた
まどか「な、なんで・・? 立てるハズが・・・」
ゴン「thithithissssssssssssssssssssss wwwwwwwwwwayyyyyyyyyyyy」ゴガガガガガ
とてつもなく強大なドス黒いオーラがゴンの周りから次々と放出されていく
その場で身を捻り、苦しそうにゴンはもがいていた
ゴン「ffffffffffforrrrrrrrrrrrrrrowwwww mmmememeemeeemmemeememeeeeeeeeee!!!!!!!!」グギゴガガ
キョン「オイオイこりゃ一体どうなってる!!?」
朝倉「こ、このデタラメな魔力開放・・・まさか、魔力回路の暴走!!?」
長門「・・自分の魔力をバーサーカー自身も御し切れていない。とても危険な状況
このままでは魔力崩壊を起こし、この町ごと爆発する」
鶴屋「!!」
キョン「な、なんだってーーー!!!?」
本来ならば立てるハズのない状況
それでもゴンの執念は諦めを選択する事を許さなかった
その歪みが魔力回路に暴走を引き起こし、崩壊寸前の今の状況に陥ったのである
ゴン「guguaoifaaojfafrfpfrojwpkrne;whfpqoiqqqqaclnslqaaaaaaa!!!!!!!!!!!」
朝倉「・・・身の丈に合わないチカラを手にした者の末路がこの姿、というワケね
敵ながらなんとも哀れだわバーサーカー・・・」
キョン「ど、どうすれば爆発を止められるんだ!? 長門!!」
長門「こうなった以上、爆発を止められるのは不可能。シールドを張ったとしても我々しか助からない」
朝倉「情報制御空間に閉じ込めたらどうかしら? もっとも私はバーサーカーと心中する気はないから絶対嫌だけど
フフ・・・長門さんならバーサーカーと心中しても構わないんじゃない?」
キョン「おい! 朝倉てめぇ!!」
朝倉「どうする長門さん? 決断は早いほうがいいわよ? もう彼、いつ爆発してもおかしくないから」
ゴン「alasjerhbvhfbvrfuwhnlnerpwiuhqwpeuidhdqoiudhioqwlooooooooo!!!!!!!!」
長門「・・・」
鶴屋「ま!! まどか!!! 何をする気!!?」
キョン「!?」
まどかは再び神々しいドレスのような衣装にいつの間にか変化していた
まどか「・・・鶴屋さん。ゴメン・・・鶴屋さんとのあの約束、守れそうにないや」ティヒヒ
鶴屋「!!」
鶴屋「ま、まどか・・・アンタまさか・・・」
まどか「ゴメンね。鶴屋さんの『みんなと仲良くチーズ祭りをする』って聖杯への願いは
そこに居るキャスターかアサシンに叶えてもらってくれるかな? 私はもう、叶えられそうにないから・・・」
まどか「ほんの少しの間だったけれど、久しぶりに生きてる人と会話が出来て・・・とても楽しかった
この世界に呼んでくれて、本当にありがとね。鶴屋さん・・・」
まどかはそう言い遺すとゴンに向かって飛んでいった
鶴屋「ま、まどかーーーーー!!!」
禍々しいチカラを放ちながら人の形が既に半分崩れているゴンの前に立つまどか
ゴン「vlnrgjehpiwjpfijhd;wodwhwd;djewoidje:fpwd:echer;ir/ef@eojh;xuehw;dihd」
アルティメットバージョンでなければ、その魔力放出に耐え切れず弾き飛ばされていたであろう
まどかは放出される膨大なオーラの圧力に耐えながらも優しい手でゴンの体を包み込んだ
----------俺は、俺は・・・!!大事な人を・・・カイトを生き返らせなきゃならない!!
こんな!! こんな所で負けるわけには・・・!!!
まどかの中に痛々しいほどのゴンの心の叫びが聞こえてくる
まどか「-------そう、そうだったんだ。君の全てが、君の思いが分かったよ・・・一人でここまで頑張ったんだね」
まどか「大丈夫。大丈夫だよ・・・貴方の大事な人は貴方の元の世界でしっかりと生きている
だから、もういいんだよ。これ以上自分を苦しめなくても」
ゴン「guoooooooo…!!!」
まどか「だから一緒に帰ろう。それぞれの世界に・・・」
二人がまばゆい光に包まれる
一旦その光が収束したかと思ったら次の瞬間
炎の球体にゴンとまどかは消えていった
鶴屋「ま、まどかあああああーーーーー!!!」
ドッゴオオオオーーーーン!!!
火球が圧縮された後、大爆発を起こし北高の校舎が轟音と共に炎に包まれた
鶴屋「ま、まどか・・・」
炎が消え去った校庭には、その痕と見られる大きなクレーターが出来上がっていた
キョン「相打ち・・・か」
鶴屋「うう・・・まどか・・・」グス
キョン「・・・鶴屋さん」
鶴屋の肩にそっと手を置き慰めるキョン
長門「・・・アーチャーは自らの身を挺して我々を庇ってくれた
彼女がバーサーカーを抑えてくれなければ我々も爆発に巻き込まれていた」
長門「最後まで自分より他人の身を案じた優しいサーヴァント
あなたは彼女のマスターであった事を誇りに思うべき」
長門の言葉に鶴屋は大粒の涙をこぼして、まどかとの別れを悲しんだ
北高の空は雲一つなく快晴で、自分の存在を主張するかのように満点の星一つ一つがキラキラと闇夜の中から
輝きを放っていた
その夜空を見上げ朝倉がつぶやく
朝倉「アーチャー、行ってしまったのね・・・円環の理に」
校庭に出来たクレーターを見つめる長門とキョン
キョン「・・・つらい戦いだったな」
長門「これが聖杯戦争・・・仕方のないこと」
キョン「ああ・・・わかっている。分かっているさ・・・だが、それでも・・・」
健気にも自分達の命を救ってくれた少女に対し、キョンは心の中で感謝の気持ちを述べると共に
聖杯戦争に対する怒りと憎悪がふつふつと湧いていた
長門「・・・」
キョンの苦々しいほどの複雑な表情を無言で見つめる長門
そして申し訳なさそうに長門は再び校庭に開いたクレーターに視線を戻した
こうしてアーチャーとバーサーカーとの戦いは悲しい幕引きによって終結したのだった
だがアーチャーとの別れを惜しむ間も余韻はキョンや長門に与えてはくれなかった
--------そう、聖杯戦争はまだ終わってはいなかったのだから
朝倉「そう、まだ終わりじゃないわよ」
長門「!!」バッ
突如、長門が身を翻したかと思うと
長門はキョン達の後ろにいた人物へ全神経を集中し、最大限の警戒態勢を取っていた
キョンが長門の突然の動作に気付き、その視線の先を追うと
いつものナイフを手にぶら下げ、冷たい笑みを浮かべる朝倉涼子がそこに立っていた
朝倉「この時を待っていたわ」
ブオッ
キョン「うおっぷ!!」
一陣の風が吹いたかと思いきや、そこは今まで居た夜の校庭とは違う別世界が広がっていた
キョン「なっ・・・!?」
キョン「コレは・・・閉鎖空間? いや違う。これは・・・」
長門「朝倉涼子の情報制御空間。でも・・・」
朝倉「フフフ・・そうよ。情報制御空間の上に固有結界を張らせてもらったわ
つまりこの空間は二重に外の世界と隔絶してるってこと」
キョン「・・・やはりお前のしわざか朝倉!! 一体なんの真似だ!?」
朝倉「余分なギャラリーは排除させてもらったわ。聖杯最後の戦いだもの、やっぱ思いっ切り暴れたいじゃない?」
キョンが見渡すとさっきまで横にいた鶴屋達の姿はなかった
キョン「朝倉・・・てめぇ」
朝倉「別に私と長門さん二人っきりで隔離しても良かったんだけどね
それだとちょっと味気なさすぎなので、あなただけは観客として立ち会ってもらう事にしたの
長門さんにとっても、私にとっても大事な人だからね」
朝倉「セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、バーサーカーの5騎はすでに脱落
残るサーヴァントはキャスターとアサシンのみとなったワケだけど・・・」
長門「・・・」
朝倉「モチロン今から私達がすべき事。しなければならない事、わかっているわよね長門さん?」
長門「然り」
キョン「!! おいまさかお前たち・・・」
朝倉「さぁ、戦いましょう長門さん。あなたと私、どちらが聖杯に相応しい器たるか、共に競い合いましょう」
なるほどなーSS書き手としては一旦投稿するのに向いてるんだなここ
>>144連投規制がないからね
キョン「ちょっと待て朝倉!!話が違うぞ!!聖杯戦争が終わるまで俺達に協力するって約束だったじゃないか!!」
朝倉「黙りなさいキョン君。邪魔するといくらあなたでも殺すわよ?」
キョン「殺すも何も最初からそれが目的じゃねーか!!
何をいまさら・・・おい長門!やっぱりコイツ裏切りやがった!!
俺が令呪を使って朝倉を消すまで守ってくれ!!」
朝倉「フフフ・・・残念だけど、その手はもう情報制御空間に閉じ込めた時点で使えないわよ?
この空間内は私のテリトリーだって事、忘れたのかしら?
令呪を使われる前に口を塞ぐ方法なんていくらでもあるの。あなたも知ってるでしょ?」
キョン「ぐっ・・・」
キョンは以前、情報制御空間内で朝倉に体を1ミリたりとも動けなくされた事を思い出していた
朝倉「でも安心して。長門さんとの決着をつけるまで私から殺すつもりはないから
ま、『邪魔しなければ』の条件つきだけどね・・・」
朝倉「フフ・・・本来ならばバーサーカーと手を組んで、あなた達を一人ずつ確実に始末する予定だったんだけど
とてもじゃないけど組める相手じゃなかったわアレ
マスターがあなたの親友の国木田君だったし、何より凶暴すぎて手に負えない感じだったものね」
キョン「・・・」
朝倉「でもまぁいいわ。彼は他のサーヴァントの露払いには十分に役に立ったもの
途中で無駄な魔力を消費せず、最後の戦いまで力を温存出来た事は私にとって僥倖だったわ」
ナイフを上に構える朝倉
朝倉「さぁいくわよ長門さん。少しは楽しませてくれるわよね」
情報制御空間の景色が朝倉の殺気と同調しグニャリと変化する
そして朝倉の後ろ二人分くらいの距離から、まるで見えない壁でもあるかのように
異界より数千本のナイフが垂直方向の平面空間からニョキニョキと生えてきた
長門「無限の剣撃・・・」
朝倉「フフフ・・・面白いでしょ?
魔術なんて使わなくても、私の情報制御下ならコレくらいは簡単に構築できるんだけどね
あえてアサシンの能力だけで構成しているのよコレ
ま、それでもアーチャーのゲート・オブ・バビロンとまではいかないけれど・・・」
朝倉「では、喰らいなさい長門さん。アーミーナイフの集中砲火というものをね!!」
数千本、いや数万本もの膨大な数の朝倉のナイフが弾丸のように長門に猛スピードで次々と襲い掛かった
ソレをシールドを伴う手捌きで一つ残らず高速で打ち落とす長門
超スピードで繰り広げられる攻防に、キョンは二度目の光景であるにもかかわらず
何が起きてるのか理解しきれなかった
朝倉「フフフ・・・やるわね長門さん。でも何処まで防ぎ切れるかしら」
長門「・・・!!」ガキィーン!!
シールドでガードしつつも時折くる重量感のある手応え
朝倉はアーミーナイフの雨に、より攻撃力の高い光の槍をさりげなく紛れ込ませて攻撃していたのだ
朝倉の猛攻に長門はかなり押されていた
キョン「長門!!」
長門「・・・大丈夫。あなたはじっとしてて」
朝倉「フフフ・・・キャスターの能力は使わないの長門さん? ソレとも使いたくても使えないのかしら?」
長門の宝具である魔法の杖『スターリングインフェルノ』は腰の後ろで依然眠ったままだった
取り出そうにも手が防御にかかりっきりでソレどころではなかった
朝倉「フフフ・・・当然他の事をさせない事を考慮しての剣圧だからね
前回の戦いで長門さんのデータは大方取れてるから
今の所予測は合ってるみたいだけど・・・どうかしら長門さん?
もっと物量を増やしたらそれでも防ぎ切れる? 例えばそうね、今の剣撃の量を2倍に増やしたら…とか」
長門「!?」
キョン「なっ!!」
朝倉が手を掲げた後
長門を中心にして45度の角度、朝倉から見て斜め横方向に同じ規模の剣の壁が構築された
朝倉「じゃ、そろそろ死になさい」
朝倉の容赦ない剣撃の十字砲火が一斉に火を吹いた
倍に増えた剣撃をシールドを伴った両手でさらに高速で動かし防ぐ長門
だが、二倍に増えたナイフの物量はさすがの長門でも防ぎ切れず
腕や足、体の横などの部分にナイフが通り過ぎた証の傷がどんどんできていく
キョン「長門!!」
長門「・・・ッ!(朝倉涼子の魔力は予想以上に強大。このままでは・・・)」
朝倉「フフ・・・やっぱりトドメはこれがいいかしら?」
朝倉の両手が光の鎗に変化し
瞬間、高速で長門を狙う
ダンッ!
長門が足を踏みしめると、周りの地面が土砂を巻き上げ火山から噴出する溶岩のように噴き上がった
土埃舞う光の鎗の先に長門はいなかった
朝倉「!!」
気付いた時には、長門は朝倉の後ろに高速で移動していた
脱出にかなりの無茶をしたのであろう。無数のナイフが長門の体のあちこちに突き刺さっていた
朝倉「・・・」
そのままの姿勢で振り向こうともしない朝倉の肩に手を置く長門
長門「終わった」
朝倉「あなたの三年あまりの人生が?」
以前と全く同じやりとり
ソレを見たキョンは長門が次に移る行動
そして長門が朝倉に勝利した事を確信したのだった
長門「--------情報連結解除、開始」
だが、朝倉は動じず冷たい笑顔を維持したままだった
朝倉「フフ・・・本当に凄いのね長門さん。防戦一方のあの状況から情報連結解除のコードまで作成するなんて
私にはとても真似の出来ない芸当だわ」
長門「!!」
驚愕の表情を見せる長門
とっさに後ろに飛び退き、朝倉との距離を取る
朝倉「・・・どうしたの長門さん? 情報連結の解除はしないのかしら?」
長門「エラー・・・情報連結の解除コードが弾かれた。認証できない」
瞬間、長門の体が朝倉によって固定化された
長門「!!」
冷たい笑みを浮かべ、身動きの取れない長門にゆっくりと振り向く朝倉
朝倉「フフフ・・・随分と派手に無駄なミスをしでかしちゃったわね長門さん
既に有機情報連結が解除されてるモノを一体どうやって解除する気?
私はあなたの手によってとっくの昔に情報連結を解除されてるのだから」
キョン「ど、どういう事だ朝倉!既に情報連結が解除されてるって・・・」
朝倉「クスクス・・・鈍いわねキョン君。忘れたの?
私は今、聖杯の力によってこの世界に顕現してるのよ」
キョン「・・・あ!」
朝倉「そ。今の私は情報統合思念体の制御下にないって事
生身でサーヴァントになった長門さんと違って、私は霊体を具現化してココにいるのよね」
長門「・・・」
朝倉「つまり長門さんは必死になって無駄なコードを作成してたってワケ。残念だったわね」
朝倉の手に持つアーミーナイフに力の渦が凝縮されていく
アサシンの宝具でもってトドメをさすつもりらしい
朝倉「優秀過ぎるインターフェイスというのも考えモノね長門さん
自分の力を過信しすぎたのがアダになるなんて、なんとも皮肉な話よね
キャスターの力を脱出した時に使っていれば、戦局も多少は違っていたでしょうに・・・」
朝倉「じゃ、今度こそ本当にさよならね。バイバイ長門さん」
長門「・・・!!」
地を蹴り依然動けぬ長門に向かって朝倉は高速で突進した
キョン「長門!!」
グサリ
突き出したナイフから朝倉はハッキリと肉に抉りこむ手ごたえを感じ取っていた
朝倉のナイフは心臓を一突きに貫き
ナイフの周りに込められていた力の渦がエネルギーの行き場を求め体の中を傷つけながら彷徨った後
背中から血と共に排出され空気中に拡散された
朝倉「!!」
朝倉の微笑みの表情がついに変化した
長門「なん・・で?」
長門も同様に驚愕の表情を見せた
朝倉と長門の間に居たのは先程まで棒立ちで二人の戦いを見守っていた男だったからだ
キョン「~~~ッ!!!」
さくっと読めるのは嬉しいが反応うすすぎるのは不安になるな
人数増えれば解消されるんかな?
まあキモイのりばっかってのも簡便だが
----------それは愚かな行為であった
聖杯戦争を終わらせる意味、長門は誰を守る為に必死に朝倉と戦ったのか・・・
それは全てを台無しにする行為だったのだ
何故その行為を行なったのかキョン自身にもわからなかった
無意識としか表現できない
『長門が危ない!!』そう思った時には既に無意識に体が動いていたのだ
気付いたときには、朝倉の目の前に両手を広げ長門を庇うようにキョンは立っていたのだった
朝倉がナイフを引き抜くと、キョンは後ろのめりに体を崩した
地面と接触する前に長門の両腕がキョンを抱きかかえる
朝倉は長門が刺された後の悶絶する姿が見たいがために
ナイフを刺した瞬間、長門にかけてた体の固定化を解除していたのだ
もっとも刺されたのは長門本人ではなかったのだが・・・
キョン「・・・」
キョンは長門を見て何か言いたそうな目をしていたが心臓がズタズタに壊され血液が全身に回らない為
口を動かす事は出来なかった
そのまま無言で目を閉じ意識を失うキョン
長門「!!」ガバッ
長門は朝倉がいる事など気にも止めずキョンの体に手を当て、必死で傷の修復を図っている
その様子を棒立ちで見守る朝倉
朝倉「・・・無駄よ。長門さんを仕留めるようとありったけの魔力を込めた一撃だもの、修復できるハズがないわ」
キョンの胸の傷口から黒い瘴気が吹き出ていた
長門「・・・」
それでも長門は必死で修復を図るが、キョンの体からは血の気が失せ、ドンドン全身が冷たくなっていく
結局、長門の努力も虚しく、キョンが目を開ける事はついになかった
キョンの手の甲から令呪が消え去り朝倉の体が次第に薄くなっていく
マスターであるキョンが亡くなった事でサーヴァントである朝倉もこの世にいられなくなったのだ
朝倉「私にもお別れが来たようね。まさかこんな結末になろうとは・・・
長門さんと決着を付けれなかったのは若干、心残りだけど・・・でもまぁいいわ
私の目的は達成したもの。文句はないわ」
朝倉「フフフ・・・私の勝ちかしらね長門さん? いくらあなたでも死者を蘇らせる事は出来ないわよね?
死んだ人間を蘇らせるなんて芸当、涼宮ハルヒでさえ出来るかどうかだもの・・・残念だったわね」
長門「・・・」
朝倉「悔しいでしょ長門さん。泣いてもいいのよ? この情報制御空間には私達しかいないんだから
私が消える前に滅多に見せない悲しみの表情でも見せてくれると嬉しいんだけど・・・」
だが、長門は大事な人を亡くしたとは思えないほど静かだった
普段から抑揚の乏しい彼女だが、それでも彼の死に、この落ち着き様はありえなかったのだ
朝倉「・・・」
その違和感に、朝倉は彼女が逆転の目を残してる事
それを長門自身が理解してる事を悟ったのだった
朝倉「・・・そう、気付いてるのね。・・・長門さん」
長門「然り」
朝倉「そっか・・・気付いてるんだ」
長門「・・・」コクッ
朝倉「・・・あーあ、今回も結局あたしの負けか。かなりいい線行ってたと思ったんだけどなぁー。ホント残念」
朝倉「おめでとう長門さん。良かったわね。また私から彼を守る事が出来て・・・」
朝倉「でも最後にコレだけは言っておくわ・・・私は必ずまた復活すると
何時になるか分からないけど、必ずまたあなた達の前に現れると断言するわ」
朝倉「・・・せいぜいその時まで彼や涼宮ハルヒ、他の人達と面白おかしく暮らす事ね
終わりが来るその時に悔いの残らないようにね・・・」
長門「・・・」
朝倉「じゃあね長門さん。また会いましょう」
クスクスと冷たい笑みを見せながら消えていく朝倉
長門はそれを無言の表情で見送った。普段見せない少し悲しげな表情で・・・
--------こうして聖杯戦争は最後まで生き残ったキャスターの勝利をもって終結したのであった
キョン「う・・・ん」
キョンは焦点の合わぬ目をうすボンヤリと開けた
意識がまだハッキリしない。しかし何故か体は心地いい
生前キョンはことさら善行を行ったつもりはないが
この心地良さから察するにどうやら今いる場所は少なくとも地獄ではなさそうだと判断した
長門「--------ココは私が作った情報制御空間」
意識の向こう側から聞き覚えのある声がした
キョン(? 長門? ああ、そうか・・・長門も天国に来たってことか・・・
まぁ何でも出来る長門の事だ。天国の一つや二つ行き来する事くらい不思議では・・・って、ちょっと待て!)
キョン「長門!!?」
長門の膝の上でキョンは完全に目が覚めた
長門「動かないで」
膝まくらから起き上がったキョンの頭に手を当て
後頭部を太ももに押し戻す長門
長門「まだ体の回復が完全ではない」
キョン「・・・」
既視感のあるだだっ広い砂漠の風景
その空間内には彼と彼女二人だけが世界から取り残された点のようにポツンと存在していた
キョン「・・・ココは天国じゃないのか?」
長門「ココは私の情報制御空間内。聖杯の汚染を極力避けるためココで聖杯を受け取った」
キョン「いや、ちょっと待て!!俺は生きてるのか!?てっきり朝倉に刺されて死んd・・・」
キョンはようやく理解した
キョン「・・・そうか長門、聖杯の願いはそういう事なんだな?」
長門「然り」
長門の願いは『彼を生き返らせる事』
ヒューマノイドインターフェイスの力でさえ無理な事でも聖杯の力ならば・・・
そして長門は聖杯に全てを託し彼の復活を願ったのだった
長門「・・・一つ聞きたい」
キョン「ん?」
長門「こうなる事を見越して朝倉涼子から私を・・・」
キョン「まさか、古泉じゃあるまいし俺はそこまで頭は回らねーよ
とっさの事さ。長門を助けたい思ったら、何故かお前の代わりに朝倉に刺されてたってだけの話だ」
長門「・・・そう」
すでに起き上がれるほどキョンの体は回復していた。だがそれでもキョンは長門の膝の上でしばしの休息をとった
谷口ランキングAマイナーの美少女、長門有希の膝の柔らかさを、この機会に思う存分堪能したいとか
キョンはそういう卑しい気持ちで動かないのではなかった
もっとも普段の彼であれば、そういうよこしまな気持ちも少しはあったであろうが、今の彼には皆無であった
感覚的にはそう、春の陽だまりの中、ウトウトと浅い眠りにつく前の子供と、それを優しく見守る母親のような
そんな穏やかな空気が二人の周りを包んでいた
キョン「・・・すまなかったな長門。朝倉との戦いに余計な水を差しちまった」
長門「いい」
長門「あなたが無事でいてくれた。・・・それでいい」
キョン「・・・そうかい」
キョン「・・・」
キョン「なぁ、長門」
長門「なに?」
キョン「・・ありがとな」
長門「・・・」
二人の間に長い沈黙が流れたが、それは決して気まずい空気ではなかった
それはとてもあたたかで穏やかな、本当に心地の良い一時であった
長門の繊細な髪がそよ風に煽られ優しく儚げに揺らいでいた
----------翌日
キョンは学校まで延々と続く坂道を、眠たそうな目をこすりながら登校していた
キョン「ふぁ~あ・・・ったく」
キョン(俺の通ってる高校は何でこうも登下校に高低差のある場所に設立したのかねぇ・・・
毎度毎朝プチ登山させられる学生の身にもなってみろってんだホント・・・)
愚痴を吐くキョンの視界に見える建物は昨日の死闘などまるでなかったのように
いつも通りの古ぼけた四階建ての校舎が無傷の姿でそこに立っていた
古泉「おや? これはこれは・・・登校時にあなたと鉢合わせするとは奇遇ですね」
キョンが横を向くと、めずらしく同じ時間に登校する古泉の姿があった
キョン「おお、古泉。やはり生きてたか。お前はゴキブリ並の生命力があると俺は信じてたよ
見た限りお化けや幽霊の類ではなさそうだしな」
古泉「ハハ・・開口一番のセリフがそれですか?僕はキッチリ生きてますよ。証拠にホラ、ちゃんと足も生えてますし」
キョン「・・・で、大丈夫だったのか? 閉鎖空間は」
古泉「我々組織の半数以上の負傷者が出ましたが、一晩かけて何とか神人を抑えることには成功しましたよ
おかげで寝不足と疲労で僕の体はクタクタですが・・・」
キョン「やっぱりお前はお前で大変だったんだな・・・ご苦労なこった」
古泉「あれほどの閉鎖空間は前代未聞でしたからね。よく死者が出なかったと不思議に思うくらいですよ」
キョン「不幸中の幸いってヤツか。とにかくお互い死人が出なくてよかったな。ま、俺は一回死んだけど」
古泉「え!? 死んだ!? 死んだって、あなたが!? 冗談ではなくて!?」
キョン「ん?知らなかったのか? てっきり組織で調べはついてるのかと思ったが・・・
(ま、考えてみれば確かに情報制御空間内での出来事は調べようがないわな)」
キョン「・・・なるほどね。それで『偶然』登校時間が俺と重なったってワケか」
古泉「はは、まさか。朝に少し仮眠を取ったら、たまたまこの時間に重なっただけです。買いかぶりすぎですよ」
キョン「フン、どうだかね」
古泉「・・・まぁ、どのみち登校しながらでは長く話せる状況ではないでしょう
聖杯の願いの結末や、あなたが一回死んだという話もじっくり聞きたいですし、ね・・・」
古泉「どうです? 話の続きは昼休みにいつもの食堂の屋外テーブルという事で・・・
差し支えなければ僕の方からお声掛けしますので、長門さん、朝比奈さんも交えていかがでしょう?」
キョン「ああ、別にかまわんよ」
古泉「ンフ・・・では後ほど。とにかく今は急ぎませんと遅刻してしまいますよ」ダダッ!
キョン「お!もうこんな時間か。やっべ!」ダダッ!
-------昨日の事の顛末について少し語ろう
聖杯戦争の後始末。北高の校舎や校庭等の修復は全部長門がやってくれた
半分チートないつもの能力に加え、この一件でキャスターの魔術能力まで保持しちまってるってんだから
お前はどんだけ不思議なチカラを身につければ気が済むんだと俺は冗談まじりに長門に言ってやったが
長門「チート大好き」
と、無表情に冗談を冗談で返す長門に、若干引いた俺は苦笑いしかできなかった・・・
その後、鶴屋さん達には申し訳ないが、長門に頼んで聖杯に関する出来事の記憶をいじらせてもらった
とくに鶴屋さんには助けてもらった恩もあるので、非常に心苦しかったのだが・・・
朝比奈さんとの協議で、謝罪と感謝の形は別の日に用意するとの事で
俺は心を鬼にして、長門に記憶の改変のゴーサインを出したのであった
そしてこの騒ぎに関する情報改変も抜かりなく終わらせた後、俺たちはようやく北高から帰れた・・・
-------というワケだ
まったく、最初から最後まで、とんでもなく酷いイベントだったぜ聖杯戦争ってヤツは
おかげで朝っぱらだと言うのに古泉と同じく寝不足だコンチクショー
そんな事を考えながら、階段を駆け上がりチャイムギリギリで自分の教室に滑り込むと・・・
ハルヒ「遅いわねキョン。夜更かしでもしてたのアンタ?」
息を切らせて教室のドアに手を付く俺にハルヒの視線がジットリと降り注いだ
ハルヒと目が合い、俺はガラにもなく少し緊張してしまった
記憶改変の時にはハルヒも入れてくれと頼んだ俺だが、長門は『無理』と即答したのを思い出したからだ
------------昨日
キョン「無理ってどういうことだよ長門?お前の力でも不可能って意味か?」
長門「統合思念体が許可しない。涼宮ハルヒが聖杯を知ってしまった以上、それを見守るのが思念体の大半の意見
私の権限では他の者の記憶は改変できても、涼宮ハルヒだけは見守るしかない。どう転ぶかは彼女次第・・・」
キョン「くそ!・・・明日にならなきゃワカランってことか」
----------今の所、とくに世界に変わった様子は見られないが
それでもハルヒの記憶が改変されてない以上、不安は拭いきれなかったのだ
キョン「・・・お、おっすハルヒ。元気だったか?」
俺は机に鞄を置き、ことさら努めて普段通りに話かけた
ハルヒ「・・・元気じゃないわね。昨日悪夢を見たから。見知らぬホモが何故か私を執拗に追い回す夢をね
おかげでちっとも寝れやしなかったのよ。今日ほど休もうと思った日もないわね」
キョン「え?」
ハルヒ「ん?何よ・・・あたしの顔になんかついてる?」
キョン「あ、いや、ハルヒ・・覚えてないのか? 昨日の出来事・・・」
ハルヒ「え?昨日?昨日は普通に学校来て団活して、帰ってテレビ見て寝た気がするけど…なんかあったっけ?」
キョン「あ!ああ、いや覚えてないなら何でもない!!こっちの話だ気にするな」
ハルヒ「? 気にするなって言われたら余計気になるじゃない。何か不思議なことでもあったの? ねぇ!!」
キョン「あ、いや…えーと、そう! 昨日部室で俺がスカシっ屁をしたのがバレたのかなぁーと思ってさ・・・」
ハルヒ「はぁ!? アンタまさか神聖なる我がSOS団の部室で、あろう事かスカシっ屁をかましたってーの?
信じらんない!! 団員を人知れず毒ガスで汚染するなんて!!
これはもう罰金どころじゃすまないわよキョン!! 死刑よ死刑!!
今日は放課後、部室でアンタの放屁裁判をコッテリ執り行うから・・覚悟しなさいよね!!」フンッ
キョン「うう、まずったー(もっと上手い言いワケ思いつかなかったのかよ俺…)」
キョン(それにしても、長門は記憶の改竄をしなかったハズなのに、ハルヒの記憶が勝手に改変されている・・
・・・一体、何がどうなってやがる?)
古泉「-------つまりこういう事です。涼宮さんはランサーのあまりのヒドさに現実逃避し
ついに自分で自分の記憶を無意識に書き換えてしまった・・・と、いうワケです
とくに誰かがこの期に乗じて彼女に介入したとか、そういうワケではありませんのでご安心ください」
キョン「それで、聖杯の記憶ごと自分自身で消したってワケか。せっかくの待ち望んだ不思議体験だってーのにな
さすがにちょっとだけハルヒに同情するぜ」
古泉「・・・ですが、そのおかげで世界が改変されずに我々がこうして平和にお茶を飲めるのです
一時は本当に終わったと嘆いていた我々組織も今はホっと胸をなでおろす気分ですよ」ズズー
長門「涼宮ハルヒが自分で選んで出した答えがこの結果。ならば我々は黙って受け入れるべき」
みくる「でも、意外と良識のほうが強かったんですねぇ涼宮さん。ちょっと見直しました」
キョン「いや、朝比奈さんはアレを見てないからそういうこと言えるんじゃないかと・・・
ランサーのヒドさは二度と自分も思い出したくない記憶ですし・・・」
古泉「うおっぷ!」グププ!
キョン「おい!今さっき食べたばかりの昼食を吐き戻そうとするんじゃない古泉!!トイレ行けトイレ!!」ガタッ
古泉「ハァハァ…だ、大丈夫です。ランサーが自分を見つめた時の野獣の目を思い出してしまったので、つい・・」
長門「PTSD・・・聖杯戦争の後遺症がこんな所にも・・・精神病院への通院をオススメする」
古泉「そ、それは・・・どうも」ウエップ
キョン(古泉の記憶は改変しないのかよ・・まぁ面白いからいいけど)
古泉「と、とりあえず話題を変えましょう。他の方の様子はどうなんですか?」
キョン「ん? ああ、バーサーカーのマスターだった国木田は今日もいつもと変わらない様子だったよ
バーサーカーに気絶させられた時のモノなのか、腹部にアザが何時の間にか出来ていて痛いとか騒いでたけど・・」
古泉「ライダーのマスターの谷口氏はどうされました?」
キョン「谷口は階段からド派手に転げ落ちたという事になって今も入院中だ
重症だが命に別状はないそうだから、後で国木田とお見舞いに行こうかって話になったよ」
みくる「え? 谷口君達の怪我は直さなかったんですか長門さん?」
長門「直そうにもバーサーカーの呪いにも似た魔力がジャマで治療することが出来なかった
バーサーカー・・・死してなお恐ろしいヤツ」
みくる「ふえぇ・・・」ガタガタガタ…
キョン「朝比奈さん、鶴屋さんの様子はどうでした?」
みくる「あ、はい。いつもと変わらず元気でしたよ。元気すぎて、逆にちょっと申し訳ないくらいですけど・・・」
キョン「・・・そうですか」
キョン「やはり例の謝罪の件は早めにしましょう。鶴屋さんを呼んで明日にでもしましょうか
団活の時、放屁裁判が終わった後にでも俺がハルヒにお願いしてみますよ」
古泉「ほ、放屁裁判?・・放屁裁判とは、いったい・・・?」
キョン「あ、いや、実はちょっと・・・カクカクシカジカで・・・」
古泉「な、なるほど・・・それはまた、面倒な言い訳を・・・」
キョン「う、うるせい、俺はお前と違って頭の回転がそれほど速くねーんだよ」
古泉「しかしあなたが朝倉さんに刺されて一回死んだ後、聖杯のチカラで生き返る事ができるとは・・・
いやはやなんとも聖杯とは神に匹敵する不思議なチカラを秘めているモノなのですね
体の具合はとくに何ともないのですか?」
キョン「ああ、昨日の後始末の件でちょっと寝不足なところ以外はまったくの健康体だよ。おかげさまでな」
古泉「フフフ・・・そうですか」
キョン「ん? なにか今、おかしいこと言ったか俺?」
古泉「あ、いえ。これで我等がSOS団には『普通の人間は誰も存在しなくなった』と、思いましてね
フフフ・・・宇宙人、未来人、超能力者に現人神、おまけにゾンビまで加わるとは・・・」
キョン「古泉・・・テメェ」
みくる「古泉君!! そ、その言い方はちょっと・・・」
古泉「おっと、失礼・・・そうですね、冗談が過ぎました。先程の言葉は謝罪の上、撤回させて頂きます
気分を害されたのなら、大変申し訳ありませんでした・・・」
キョン「・・・チッ。まぁ確かにゾンビっちゃあゾンビだわな。一回死んで生き返ってるんだからな
なんだったら後で『肉食わせろー』って部室で走り回ってやろうか?」
古泉「いえ・・・本当に申し訳ありませんでした」
キョン「・・・ったく、そんなにしょげると逆にコッチが申し訳ない気分になるだろが
この場合だとハルヒや谷口とかのがもっと辛辣なこと言うんだから別に気にすんなっつーの
毒舌に対する耐性はあいつらのせいでとっくについてんだからよ。自慢じゃないけどな」
キョン「さて、と。それぞれ聞きたいことは一通り済んだみたいだし、教室に戻るとするか」ガタッ
古泉「ええ、そろそろ昼休みの時間も終わりそうですしね」ガタッ
キョン「あ、放屁裁判の時はさりげなくフォローしてくれよ? いろいろと俺がつらいから・・・」
古泉「あれ? 毒舌への耐性は強いんじゃなかったでしたっけ?」
キョン「いわれなき放屁疑惑で弾劾裁判を受けるコッチの身にもなってから言ってくれよな。古泉君?」
古泉「フフ・・またもや失言でしたね。失礼しました」
みくる「だっ、大丈夫です!! キョン君はオナラもウ○コもしない清廉潔白な人って私わかってますから!!」フンフン!
キョン「い、いや・・・朝比奈さん? アイドルじゃあるまいし、自分は普通にオナラもウ○コもしますけど・・・」
みくる「え? ええー? そ・・・そうなんですかぁ(・・・ちょっとショックかも)」シューン
長門「ちなみに本日の彼の排泄物は何とも見事な一本糞。流すのにさえ一苦労な超大物・・・」スタタタタ…
キョン「な、なんでお前が俺の排便事情を知っている!? オイ逃げるな長門!! 長門ォォォォーー!!!!!」
放課後、いわれなき弾劾裁判を粛々と執り行なうハルヒの口撃に、ギリギリ心を屈せずなんとか耐え忍んだ俺は
早速、例の件をハルヒに頼むことにした
ハルヒ「はぁ!? 何よそれ? 要するに部室を貸し出せってこと? 冗談じゃないわ!!」
キョン「そんなこと言わずに頼む!! お前だってこういうの好きだろ!? カネは俺達だけで出すからさ」
ハルヒ「・・・まぁ団員の切なる頼みってんなら仕方ないわね・・無下に断れば団長への忠誠心も低下するし
でもアンタ達の私用で部室を貸すのは今回限りだからね!! キリないから!!!」
キョン「おお!! ありがとうハルヒ!! 助かるよ!」
ハルヒ「それと、あまりはしゃぎすぎて他の部室にまで迷惑をかけない事!! いいわね!!
まったく、団長の私がしっかりしないとハメを外しそうでホント困るんだから、まったく・・・」ブツブツ…
『普段から迷惑かけっぱなしの、お前のどの口がそんな事を言うんだ』と、思わずツッコミそうになったが
ハルヒの気分が変わっもしょうがないので、喉に出かかったそのセリフを俺は唾と一緒に無理矢理飲み込んだ・・・
そして、翌日-------------
鶴屋「ちょっと、ちょっと、もーなんなんさみくるー? そんなに腕を引っ張るなよー」
みくる「ふふふ・・・いいからいいから、早く来て下さい。キョン君達が首を長くして待ってますよ」グイグイ
鶴屋「今日のみくるはガラになく積極的にょろねー。一体何がしたいの・・・・って、コ、コレは・・・?」
みくる「そう、『チーズ祭り』ですよ鶴屋さん。私がキョン君達にチーズ祭りのことを話したら
普段から鶴屋さんにはお世話になってるからって、私たちで準備したんですよコレ」
SOS団の部室には、スモークチーズやチーズフォンデュ、カマンベールやチーズケーキなど
さまざまなチーズ食品が机の上に所狭しと用意されていたのだった
キョン「ま、まぁその、お礼というほどのモノではありませんが、たまにはこういうパーティーもいいかなって・・」
古泉「フフフ・・・ちょうど運良く僕の親戚にチーズ商を営む方がおりましてね・・・
交渉の結果、特別にこれだけの量を格安で購入する事ができました」
みくる「ふふ・・・驚きました? サプライズパーティーですよ。鶴屋さん」
鶴屋「み、みんな・・・」ジーン
ハルヒ「ささ、感動するのは後、後。さぁみんな!今日はとことん盛り上がるわよー!!」ヒャッフーイ!!
キョン「オイ!!昨日『あんまりはしゃぐな』と、ほざいた口は何処に行った!?団長様よ!!」
長門(・・・これで、アーチャーとの約束は一応果たした・・・まぁ、最初から約束した覚えはないけれど)
ハルヒ「有希ー。お皿取ってお皿ー」
長門「」コクリ
ハルヒ「さぁみんな、どんどん食べてってねー。残したら罰金だからね罰金。持ち帰りは私が許さないんだからね」
キョン「ったく、一銭もカネを出してないお前が勝手に仕切るなってーの」
ハルヒ「何言ってるのよ。この部室の使用許可を出したのは私。つまりこのパーティーは私が企画したも同然よ
食べる前から『すでに胸焼けしそうだー』とか愚痴を宣う敗北主義者に文句を言われる筋合いはないわね」
キョン「いや・・・さすがにコレだけの量を全部平らげるのは、いくらなんでも無理ってモンだろ」
ハルヒ「じゃあこうしましょ。『一番食べる量が少なかった者は一番多く食べた者のいう事を一つだけ聞く』
まあ、負けが決まりそうな人は食べる前からすでに検討はついてるけどねー・・・」チラチラ
キョン「くっ・・・(その発言は俺と朝比奈さんのどっちを指している!?)」
みくる「ひ、ひえぇぇー・・・」プルプルプル…
鶴屋「よーし、じゃあ一番は誰になるか勝負だハルにゃん!! 負けないにょろよー♪」
ハルヒ「ふっふっふっ・・・もちろん望むところよ。さぁ古泉君!!始まりの合図を!!」
古泉「了解しました団長閣下。それでは・・・レディー、ゴゥッッ!!!」ヒュバ!!
夕焼けの赤い空に目をやり、長門はふと朝倉の最後の言葉を思い出していた
朝倉『----------私が復活するその時まで、せいぜい彼や涼宮ハルヒ達と面白おかしく暮らすことね
終わりが来るその時に、せめて悔いの残らないように・・・』
長門「・・・」
例え何かが起こらずとも、終わりというのはいずれは必ず訪れるものである
時は経ち、やがて学校を卒業し、別れ、それぞれの道を歩むように・・・
こうしてる間も一歩一歩、時間は終わりの足音を一定に、そして着実に近づいているのであった
ハルヒ「有希ー? 外ばっか眺めてないで、あなたもチーズ食べなさーい。早くしないとビリになるわよー」モグモグ
長門「・・・」ス… 無言で部室の窓に背を向ける長門
長門(------------せめて、その時が来るまで、少しでも長くこの人たちと一緒に・・・)
長門「」ムシャシャシャシャ
ハルヒ「おお!いい食べっぷりね有希!それでこそ私の優秀たる団員ってモンよ!!」ムシャコラムシャコラ
鶴屋「長門っち、もしかしてチーズ好きにょろかー?」パクパクモグモグ
長門「・・そこそこ」ムグムグムグ
キョン「うえっぷ・・もう限界」ゲフゥ…
・・・ささやかながらも、このような小さな幸せが少しでも続けられるよう、心の中で密かに願う長門であった
---------------fin
>>1乙!
中々に愉しかったぞ!
以上です
>>2でも書いたとおり、人に見せるために書き溜めたのにお蔵入りするのはもったいないと思って
一旦途中まで本家に書いてスレ落ちしたのを最後まで書き切りました
>>177楽しめたのなら良かったです。ご読了ありがとうございました
また面白いネタでも考え付いたのなら次の作品もココで投下するかと思います
今、本家のほうは規制で書き込めませんので…
それでは…
ネタも豊富だったが交戦してくテンポが上手かった
夜にやればレス多かったな
>>179レスもらえるのは嬉しいけど、まず意味もなく荒らされるのが怖かったので
板が落ち着くまで待ちました
まぁ落ち着きすぎて寂しかったっちゃあ寂しかったですが…
ここで初めてのまともなSSかな
お疲れ様でしたー
文句は言ってねえだろ
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