【ガルパン】博愛の通信手 -武部 沙織- (39)
*一部独自解釈、設定有
*この作品はフィクションです
戦車の動作、性能等、実際のものと異なる場合があります
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~~プラウダ高校・演習場~~
ピーポー…
ピーポー…
カチューシャ「…!クラーラ!クラーラ!!」
クラーラ「ぁ…ぅ…!」
カチューシャ「嫌ぁ!!いやあぁ!!」
ノンナ「カチューシャ!落ち着いて!」
カチューシャ「だって…!私、私が!あぁぁぁ!!」
ノンナ「カチューシャ!」
クラーラ「あ…ぅ…カチュ…さま…」
ノンナ「クラーラ、今は喋らないで」
クラーラ「ぅ…」ガクッ
カチューシャ「あ…!あぁ!!いやああああ!!」
ピーポー…
キキッ
プラウダ生「救急車来ました!」
プラウダ生「私が付き添います!」
ノンナ「はい、お願いします」
救急隊員「…えー、頭部から出血、左腕の骨折…はい、はい。タンカを。ええ」
救急隊員「了解」
プラウダ生「副隊長はカチューシャ様を!」
ノンナ「ええ」
カチューシャ「あ…私…私が…!あぁああ…」ガクガク
ノンナ「カチューシャ」ギュッ
カチューシャ「あ…ノンナ…あぁ…」
ノンナ「…っ…」ギュッ
~~~~~~~
ノンナ「…はい、はい。わかりました」
ノンナ「ええ。今日は解散にします。それでは」ピッ
ノンナ「…」
カチューシャ「…」
ノンナ「カチューシャ」
カチューシャ「え…」
ノンナ「クラーラ、とりあえず命に別状はないようです」
ノンナ「ただ、当分の間は入院が必要だと…」
カチューシャ「あぁ…」
ノンナ「カチューシャ。貴女のせいではありません」
カチューシャ「…でも、私が…」
カチューシャ「私が、あんなことを言ったから…」
カチューシャ「あんな…あんな戦車に近寄っちゃいけなかったのよ…!」
ノンナ「カチューシャ…」
カチューシャ「ニーナも…アリーナも…クラーラまで、私のせいで…!」ガタガタ
ノンナ「カチューシャ!」ギュッ
カチューシャ「次は…次はきっと、私たちよ…!」
Girls und Panzer
博愛の通信手 -武部 沙織-
ザワザワ…
桃「…えー、では、本日の訓練はここまで!」
オツカレサマデシター
沙織「はぁー、疲れたぁー…」
優花里「今日は一段とハードでしたねぇ…」
華「そうですね…来週のプラウダとの練習試合もありますから」
桃「…あー、そうだ。そのことなんだが…」
みほ「河嶋先輩?」
桃「プラウダとの練習試合、中止になりそうだ」
みほ「え? 中止?」
優花里「…あ、あの、どういうことですか?」
杏「あー、そっか。みんなにはまだ連絡してなかったね」
杏「ちょっと前に、カチューシャから連絡があってね」
沙織「へぇ、カチューシャさんから…珍しいかな?」
麻子「そうだな。確か練習試合を申し込んできたのはプラウダからだったはずだ」
優花里「次こそは勝つって意気込んでいましたからね」
杏「向こうがちょっとゴタゴタしてるみたいでねー」
みほ「…あの、何があったんですか?」
杏「あー…その…」
みほ「?」
柚子「…会長、西住さんには…」
杏「…うん、そうだね。じゃあ隊長チーム…あんこうだけには伝えておこうかな」
~~~~
杏「…えっと、どこまで話したっけ?」
華「練習試合が中止になる、とは伺いましたが…」
杏「そっか」
優花里「…あの、プラウダで一体何が…?」
杏「…先週くらいから、かな」
杏「今、プラウダの戦車道は休止…というか、プラウダでは戦車道が禁止されてる」
みほ「えっ…?」
杏「まぁ、そんな状態じゃ練習試合も何もないよね」
麻子「…プラウダと言えば、黒森峰とも並ぶ強豪校だ。その戦車道が禁止とは…」
沙織「な、なんでそんな…?」
杏「さぁねー。私もそこまでは聞いてないんだ」
杏「まぁ、ちょっとワケありっぽい感じではあったけどね」
華「はぁ…」
杏「ちょっと前に、泣きそうな声で電話かかってきてさ」
杏「ワケは言えないけど、練習試合を中止してほしいって言うのと、戦車道が休止状態ってことだけ伝えらえれてね」
杏「…まぁ、隊長の西住ちゃんには伝えておいてもいいかなと思ってさ」
みほ「…」
沙織「…みぽりん?」
みほ「えっ、な、何?」
沙織「気になるんなら、行ってみようよ」
みほ「い、行くって…」
沙織「カチューシャさん達が心配なんでしょ?プラウダまで行ってみない?」
みほ「それは…」
優花里「お供しますよ、西住殿」
麻子「まぁ、私も気になるからな」
華「ええ。私も同じ気持ちですよ、みほさん」
みほ「…ありがとう、みんな」
杏「んじゃ、決まりね。かぁしま、手配よろしくー」
桃「はっ」
~~~~
カチュ―シャ「…ごちそうさま」
ノンナ「はい、お粗末様でした」
カチューシャ「…今日は、ミホーシャ達が来るんだったかしら」
ノンナ「ええ。もうすぐですね」
カチューシャ「…たぶん、あの事よね…」
ノンナ「…えぇ」
カチューシャ「ねぇ、やっぱり、帰ってもらった方が…」
ノンナ「カチューシャ…」
カチューシャ「ミホーシャ達を、巻き込みたくないもの」
カチューシャ「これは、私たちだけで解決しなきゃ…」
ノンナ「ですが…」
カチューシャ「…ううん、私だけじゃ、どうにもならなかったものね…」
カチューシャ「でも…」
プルルルル…
ガチャッ
ノンナ「はい」
ノンナ「…えぇ、はい。では、向かいます」ガチャッ
カチューシャ「…行きましょうか」
ノンナ「…えぇ」
~~~~
みほ「カチューシャさん、ノンナさん。お久しぶりです」
カチューシャ「えぇ、よく来たわね、ミホーシャ」
ノンナ「ご無沙汰しております、みほさん」
沙織「…(やっぱり、何か元気なさそうだなぁ、カチューシャさん…)」
優花里「本当に、戦車は動いていないようですね」
カチューシャ「…えぇ、今はね」
みほ「あの…教えてくれませんか?一体何があったのか…」
カチューシャ「…その…」
みほ「あ…ごめんなさい、言いにくいですよね…」
カチューシャ「違うの。でも…」
ノンナ「…カチューシャ、私が…」
カチューシャ「ううん、大丈夫よ」
カチューシャ「…立ち話もなんだし、応接室に行きましょ」
~~~~
カチューシャ「…発端は、2カ月くらい前だったかしら」
華「2か月前というと…大学選抜戦のすぐ後くらいでしょうか?」
カチューシャ「ええ。そのくらいよ」
カチューシャ「ねぇ、『幽霊戦車』って知ってる…?」
麻子「お、おばけ…?」
みほ「…いえ、私は聞いたことがありませんけど…」
カチューシャ「…これよ」スッ
優花里「この写真は…これ、T-34ですよね?」
カチューシャ「そうよ。それで、ここを見てほしいの」
華「…このエンブレムは…擦れていますが、何かのお花でしょうか?」
カチューシャ「ええ。このエンブレムの車両が『幽霊戦車』と呼ばれているわ」
沙織「これが、今回のことと何か関係あるんですか?」
カチューシャ「プラウダ高校の戦車道に、言い伝えられているの」
カチューシャ「この『幽霊戦車』には近づくなって」
みほ「幽霊って、どういうことですか…?」
カチューシャ「今から…20年前だったかしら」
カチューシャ「…戦車道の練習中に、この戦車の乗員が亡くなる事件があったのよ」
みほ「えっ…」
カチューシャ「一人で居残り練習をしていた時に、エンジンのトラブルで、戦車が動かなくなって…」
カチューシャ「外に出て調べていた時に、崖崩れに巻き込まれて…」
沙織「…」
華「…」
カチューシャ「この車両を使っていた生徒は、誰よりも遅くまで練習していたらしいわ」
カチューシャ「そのころのプラウダはまだ強豪って呼ばれる前で、あまり戦車道の履修者もいなくて」
カチューシャ「それで、居残りで練習をしていて…周りに監督する人もいなくて…」
麻子「…な、なるほど…それで幽霊戦車か…」
沙織「あれ、麻子大丈夫?」
麻子「あ、あぁ」
カチューシャ「その子、当時はあまり目立たない子だったみたいで」
カチューシャ「誰からも気にかけてもらえなくて…それが悔しくて、ずっと居残りで練習をしていたそうよ」
優花里「…なんだか、少しだけ気持ちが分かる気がします…」
みほ「優花里さん?」
優花里「私も…ずっと、一人だったことがありますから」
カチューシャ「…もう、大体わかったかしら。この戦車に、怨念が憑りついているって言われているわ」
カチューシャ「現にその後、この戦車に乗った人間がケガをしたり、急に病気にかかったりするケースがあったそうよ」
華「…怨念、ですか…そういったことがあれば、信じるしかありませんね」
カチューシャ「それで…」
カチューシャ「…ぁ…あぁ…」ガタガタ
みほ「か、カチューシャさん!?」
沙織「ちょっ、大丈夫ですか!?」
ノンナ「…カチューシャ、あとは私が」
カチューシャ「…い、いいの。私に言わせて」
みほ「…」
カチューシャ「私が…私のせいなの…」
カチューシャ「私が…無責任にこの戦車を動かしたから…」
みほ「…!」
カチューシャ「この戦車、レギュレーションに違反しない範囲で、改良が加えられているの」
カチューシャ「本来のT-34よりも、かなりスペックが良くなっているハズよ」
カチューシャ「…だから、試しに動かしたのよ。この前…」
みほ「…この戦車の危険性は…」
カチューシャ「もちろん、みんな知っていたわ。だから、私も最初は一人で動かすつもりだった」
カチューシャ「でも、みんなが一緒についてきてくれて…」
カチューシャ「あの時いたのは、ノンナ、クラーラ、アリーナ、ニーナ…それから私だったわね」
沙織「…それで、その後は…?」
カチューシャ「…最初に事件が起きたのは、この前の模擬戦の時よ」
カチューシャ「アリーナの戦車からフラッグが出ていたんだけど…」
カチューシャ「その時、正面にいた戦車が勝手に発砲したせいで、アリーナの戦車に当たって、降りようとしていたアリーナが車外に…」
みほ「…」
カチューシャ「もちろん、撃った砲手は引き金に触れていないと言ってたわ」
カチューシャ「その時、戦車が勝手に動いて…」
優花里「そんな…そんなこと…」
カチューシャ「…ニーナは、戦車の整備中に機材が倒れてきて…」
カチューシャ「それに、もう私たちだけじゃないの」
華「どういうことですか…?」
カチューシャ「ノンナがこの前、別の戦車に乗っていた時に、また勝手に砲撃が…」
カチューシャ「それで前の戦車の履帯が壊れて、坂から滑り落ちて…」
麻子「そんなことが…」
カチューシャ「もう、私たちが戦車にかかわると、誰かが不幸になるのよ…」
カチューシャ「それに、クラーラは……」
カチューシャ「…っ…! うっ…!」
・・・
数日前
クラーラ『カチューシャ様』
カチューシャ『クラーラ?』
クラーラ『…もう一度、あの戦車に乗っていただけませんか?』
カチューシャ『な、何を言い出すのよ、クラーラ!?』
クラーラ『私が相手になります。カチューシャ様』
カチューシャ『だ、ダメよ!もうあれは動かせないわ!それに、貴女も今は戦車にかかわっちゃダメ!』
クラーラ『…カチューシャ様。このままでは何も変わらないんです』
クラーラ『あの戦車の怨念を振り払うには、あの戦車に白旗を立てなければならないと、私は考えています』
クラーラ『…正々堂々と、正当な勝負の結果としてです』
カチューシャ『…また、余計な日本語を覚えたわね…』
クラーラ『その相手は、プラウダの総帥であるカチューシャ様でなければならないのです』
クラーラ『これは私のためでも、カチューシャ様のためでも、それにプラウダ戦車道のためでもあります』
クラーラ『お願いです。同志カチューシャ』
カチューシャ『……わかったわ』
・・・
カチューシャ「それで…私の砲撃が当たった後、私の戦車のブレーキが利かなくなって…」
カチュ―シャ「クラーラの戦車が、崖まで押されて、逃げるのが間に合わなくて…」
カチューシャ「それで…うっ…!うわぁぁぁっ…!あぁぁ…!!」ボロボロ
ノンナ「カチューシャ!」ギュッ
みほ「カチューシャさん…」
カチュ―シャ「ごめんなさい…ごめんなさい…!」ボロボロ
ノンナ「…申し訳ありません、皆さん。今日はお引き取りを…」
優花里「は、はい」
ノンナ「学園の食堂と、空き部屋の手配ができておりますので、よろしければ…」
華「すみません、わざわざ…」
ノンナ「いえ…」
沙織「…」スッ
麻子「…沙織…?」
沙織「ノンナさん」
ノンナ「はい…?」
沙織「私たちのことも、頼ってくださいね」
ノンナ「沙織さん?」
沙織「ノンナさんだって、怖いんですよね」
ノンナ「そんな…私は…」
沙織「カチューシャさんのこと、お願いします」
ノンナ「…沙織さん…」
沙織「とりあえず、ノンナさんに任せよっか。行こ、みぽりん」
みほ「あ…失礼します」
ガチャッ
バタン…
ノンナ「…」
カチューシャ「ぐすっ…ノンナ…」
ノンナ「…」ギュッ
~~~~
華「…ふぅ、ごちそうさまでした」
優花里「プラウダの学食は美味しいですねぇ…体が温まります」
麻子「ん…」
優花里「…あの、武部殿」
沙織「ん?なに?」
優花里「その…先ほどの、ノンナさんへの言葉は、どういうことでしょうか?」
沙織「うん…だって、もうカチューシャさんには、ノンナさんしか頼る人がいないみたいだし…」
沙織「ノンナさんは、誰にも頼れないのかなぁ…って思ったら、つい…」
みほ「…そう、だよね…」
優花里「武部殿…」
麻子「…それで、どうするつもりだ?」
沙織「ん?」
麻子「まさか、このまま放って帰るわけにもいかないだろう」
みほ「うん。このままじゃカチューシャさんもノンナさんも、プラウダの皆さんも、戦車道が嫌いになっちゃう」
みほ「私…もう、戦車道で悲しむ人を見たくない」
華「…そうですね…みほさんも、以前は…」
みほ「…うん」
優花里「でも、どうすればいいんでしょうか…」
華「私たちでは、除霊なんてできそうにありませんし…」
麻子「目的がある分、大学選抜に勝つ方がまだ楽かもしれないな」
沙織「…なんで、こうなっちゃうのかなぁ…」
みほ「沙織さん?」
沙織「なんで、誰かを傷つけちゃうんだろう…」
沙織「もし、その戦車に、死んじゃった子の意思みたいなのがあるとしてさ」
沙織「…こうやって、周りの人を傷つけることが、本当にやりたいことなのかな…って」
麻子「…沙織…言おうとしてることはわかるが…」
沙織「うん、ごめんね…今更私がこんなこと言っても、何にもならないのはわかるんだけど…」
華「…いえ、私たちにもできることが、きっとあるはずですから」
沙織「…うん、そうだよ。そうだよね」
~~~
2日後
みほ「…みんな、おはよう」
優花里「おはようございます、西住殿っ」
麻子「ぐぅー…」
沙織「ほら麻子!みぽりん来たから!」
スタスタ
カチューシャ「揃ってるわね」
ノンナ「おはようございます、みなさん」
みほ「カチューシャさん、ノンナさん」
カチューシャ「…」
華「カチューシャさん?」
カチューシャ「あ、今日はね、ちょっと話があって…」
みほ「例の戦車の事ですか?」
カチューシャ「ええ。そのことなんだけど…」
カチューシャ「…あの戦車のことは、もう気にしなくていいわ」
優花里「はぁ…」
みほ「気にしなくていいって…どういう意味ですか?」
カチューシャ「実は昨日、私とノンナと…一部の生徒で戦車を動かしたんだけどね」
カチューシャ「…しばらくの間乗っていても、結局何も起こらなかったのよ」
みほ「…え?昨日ですか?」
カチューシャ「ええ」
華「それじゃ、今までのは…」
カチューシャ「さぁ…悪い偶然だったんじゃないかしら?」
麻子「…」
カチューシャ「いろいろ試したわ。アリーナやクラーラがケガをした状況を再現したり…」
カチューシャ「でも、結局何も起きなかったのよ」
優花里「それは…」
カチューシャ「ノンナ」
ノンナ「はい。ニーナやアリーナのケガも治りましたし、クラーラも状態は良くなっているそうです」
カチューシャ「そういうことだから、結局私たちの考えすぎだったのかもしれないわね」
みほ「そうだったんですか…」
沙織「…それ、本当ですか?」
カチューシャ「…ええ、本当よ」
みほ「それじゃあ…」
カチューシャ「わざわざ心配してプラウダまで来てもらって、悪かったわね」
みほ「いえ、そういうことでしたら…」
カチューシャ「そういうことだから、この話はもう解決したわ。ノンナ」
ノンナ「はい。わざわざ来ていただいたのですから、お土産にでも…こちら、プラウダの林檎です」
華「これは丁寧に…大洗で頂きますね」
ノンナ「はい」
みほ「…カチューシャさん、本当に大丈夫ですか?」
カチューシャ「…ええ。大丈夫よ。ミホーシャこそ、手間をかけさせたわね」
みほ「いえ。カチューシャさんが元気になってくれて、良かったです」
沙織「(…ホントに…ホントに、これで終わったのかな…)」
沙織「(…やだ…何だろう、このモヤモヤした感じ…)」
優花里「…では、私たちは帰りますか?」
みほ「うん。それじゃ、明日の朝に出発かな?」
カチューシャ「…明日はちょっと都合が悪いから、見送りはできないけど…」
カチューシャ「それじゃ、これでお別れね」
みほ「はい。それじゃあ、また」
カチューシャ「…ええ。また…」
カチューシャ「…いつか、必ず会いましょう」
みほ「はい」
ノンナ「…みほさん、沙織さん」
沙織「ノンナさん…」
ノンナ「本当に…ありがとうございました」
みほ「いえ…私たちは、何も…」
ノンナ「言葉をかけていただけただけで、励みになりますから」
沙織「ノンナさん…カチューシャさんも、本当に大丈夫ですか?」
ノンナ「はい。私たちは、もう問題ありませんから」
沙織「でも、ごめんなさい。ホントに何にもしてなくて、お土産だけもらっちゃって…」
ノンナ「沙織さん。良いんですよ」
ノンナ「…もう、済んだことですから」
沙織「…?」
ノンナ「では、失礼しますね。お元気で」
みほ「は、はいっ。それでは」
~~~
- 同日:夜 -
カチューシャ「…ノンナ」
ノンナ「はい、カチューシャ」
カチューシャ「消灯時間は過ぎたかしら?」
ノンナ「…はい、15分前に消灯時間です」
カチューシャ「見回りは?」
ノンナ「完了しています。今、外にいるのは私たちだけでしょう」
カチュ―シャ「そう」
ノンナ「はい、問題ありません」
カチューシャ「…ねぇ、ノンナ」
ノンナ「はい」
カチューシャ「ノンナまで、来ることはないのよ…?私だけ…」
ノンナ「私も当事者ですから。それに…」
ノンナ「…カチューシャ。私はずっと、貴女と運命を共にすると決めています」
カチューシャ「…お礼なんて言わないわよ」
ノンナ「はい。当然ですから」
カチューシャ「ふふっ…」
ノンナ「…時間です。同志カチューシャ」
カチューシャ「ええ。行きましょう」
~~~~~~
- 同時刻 -
沙織「じゃあ、私の部屋ここだから」
みほ「うん、また明日ね、沙織さん」
沙織「おやすみー」
バタン
沙織「ふぅ…」ゴロン
沙織「(…本当に、これで終わったのかな…)」
沙織「(確かに、カチューシャさんもノンナさんも、大丈夫だって言ってたけど…)」
沙織「(…何だろ…何が引っかかってるんだろ…?)」
カチューシャ『…いつか、必ず会いましょう』
沙織「(なんで、あんな言い方…)」
ノンナ『沙織さん。良いんですよ』
ノンナ『…もう、済んだことですから』
沙織「(なんであんなこと…)」
沙織「(済んだことって、何が…?どういう意味…?)」
沙織「(変な言い方って言うか…何だろ…?)」
沙織「(あの時のノンナさん…何か安心したような顔だったけど…)」
沙織「(この事件が終わってホッとしてるって言うより…もっと別の何か…)」
沙織「(何か…私たちにお別れを言って…それで…)」
沙織「…っ!!」ガバッ
沙織「まさか…」
ピッピッ
沙織「…もしもし、みぽりん?」
沙織「ごめん、急いでゆかりんに連絡してくれる?私は華と麻子に連絡するから」
沙織「プラウダの戦車倉庫前に集まってほしいの」
~~~~~~
みほ「…沙織さんっ!」
沙織「みぽりん!」
優花里「武部殿、どうしたんですか…?こんなに慌てて…」
沙織「ちょっと、確かめたいことがあって…」
麻子「私たちを集めたのは、何か意味があるのか?」
華「もしかして、戦車を動かすつもりですか?」
沙織「そうなるかもしれないから…」
みほ「…?」
沙織「えっと、あと…あ、いたいた。おーい!」
プラウダ生「…あ、大洗の…武部さん。どうしたんです?こんな時間に…」
沙織「ごめんなさい。ちょっと、例の幽霊戦車を見せてほしくて…」
麻子「こんな時間にか?」
沙織「うん。どうしても今じゃないとダメだから…」
優花里「どういうことですか?」
プラウダ生「それでしたらここですね。今シャッター開けますから」ピッ
ガラガラ…
プラウダ生「…あれ?」
華「何もありませんが…」
プラウダ生「おかしいなぁ…戸締りした時にはここにあったはずなんだけども…」
みほ「沙織さん、これって…」
沙織「…うん。そうだと思う」
麻子「…なるほど、話が見えたぞ」
優花里「え?」
みほ「…たぶん、今の幽霊戦車は、カチューシャさんとノンナさんが乗っています」
優花里「え…!ちょ、どういうことですか!?」
みほ「私も、もっと早く気付くべきだったのに…」
沙織「みぽりん、今は良いから」
みほ「うん」
華「もしかして…」
みほ「はい。たぶん昼間話していたことは、ほとんど真実ではありません」
みほ「本当は何も解決していなくて…でも、このままじゃまた被害が出るし、プラウダの戦車道はずっとこのままになってしまいます」
みほ「だから、二人はあの戦車と一緒に、プラウダから去ることを選んだんです」
優花里「えっ…」
みほ「それで解決するかはわからないけど…」
みほ「…でも、カチューシャさんとノンナさんは、これしか方法がないと思って…」
みほ「それに…カチューシャさんは、プラウダにいることがもう耐えられないんだと思うから…」
華「そんな…」
沙織「…追いかけよう、みぽりん!まだ間に合うよ!」
みほ「…うんっ」
プラウダ生「あの…?」
みほ「…すみません、戦車を1台貸してもらえませんか?」
プラウダ生「は、はいっ」
みほ「麻子さん」
麻子「今、マニュアル読んでる。たぶん大丈夫だ」
優花里「西住殿、こっちに履帯の後がありますよ!あっちの門から出て行ったと思います!」
みほ「ありがとう、優花里さん」
麻子「…ここからだと…こっちを抜ければ先回りできるかもしれない。ちょっと急ぐぞ」
みほ「お願いします、麻子さん」
沙織「…必ず助けようね、みぽりん」
みほ「…うん!」
プラウダ生「戦車準備できました!」
みほ「…行きます!パンツァー・フォー!」
~~~
キュラキュラ…
ノンナ「カチューシャ。そろそろ、運転を変わりましょうか」
カチューシャ「ううん、平気よ」
ノンナ「…」
カチューシャ「…やっぱり、楽しいわね。ただ、こうして戦車を動かしているだけなのに」
ノンナ「カチューシャ…」
カチュ―シャ「ううん。もう決めたもの。この戦車はウチで保管するわ」
カチューシャ「それで、私はもう戦車にかかわらないから。それで、この話はおしまいよね」
ノンナ「…」
カチュ―シャ「…?」
ノンナ「カチューシャ?」
カチューシャ「…あれ…プラウダの戦車じゃない?」
ノンナ「え?」
キュラキュラ…
みほ「…カチューシャさん!」
カチューシャ「え…ミホーシャ!?なんで…?」
麻子「やっぱりここだったか。カチューシャさんの家に向かうつもりだったんだな」
華「失礼ですが、カチューシャさんの家はプラウダの方に教えていただきました」
優花里「冷泉殿のショートカットがなければ、追い付けませんでしたね…」
カチューシャ「…」
みほ「カチューシャさん…みんな、心配しますよ。帰りましょう」
カチューシャ「…なんで…」
みほ「え?」
カチューシャ「…なんで……何で、何しに来たのよ…」
カチューシャ「…っ…!もう、関わってほしくないの!迷惑なのよ!!」
カチューシャ「もう放っておいてよ!なんで!」ボロボロ
沙織「カチューシャさん…」
みほ「…本当はやめたくないんですよね、カチューシャさん」
カチューシャ「っ…」
みほ「絶対に助けるって、みんなで決めたんです」
みほ「今はまだ、力になれないですけど…きっと助けますから」
みほ「無責任な言葉で、ごめんなさい…でも、そんなに自分だけを責めないでください」
カチューシャ「…」
沙織「カチューシャさん…ね、いったんプラウダに戻って…」
…カタッ…
みほ「…!! 麻子さんっ!! 左後方! 下がってください!!」
麻子「んっ」グイッ
ドォォン!!
沙織「きゃあっ!!」
優花里「うわっ!」
カチューシャ「え…!?」
華「今…撃たれたんでしょうか?」
みほ「大丈夫ですか?」
麻子「何とか躱せたみたいだな」
ノンナ「…」
カチューシャ「ノ、ノンナ!?なんで撃っ…」
ノンナ「…カチューシャは、関わるなと言ったんです」
みほ「ノンナさん…?」
ノンナ「ごめんなさい、みほさん。それでも、私はカチューシャの意思に従うだけです」
ノンナ「…そこを通して貰います」グッ
カチューシャ「ノンナ…」
ノンナ「カチューシャ、操縦を」
カチューシャ「…っ…!ケガしても知らないから…!ミホーシャ…!」グッ
みほ「カチューシャさん…どうして…!」
カチューシャ「私はもう決めたの!もう、私はプラウダにはいられないのよ!」
カチューシャ「なんで…なんで認めてくれないの!?なんで分かってくれないのよ!!」
沙織「…っ!!」
カチューシャ『その子、当時はあまり目立たない子だったみたいで』
カチューシャ『誰からも気にかけてもらえなくて…それが悔しくて、ずっと居残りで練習をしていたそうよ』
沙織「…そっか」
華「沙織さん?」
沙織「わかったよ、みぽりん」
みほ「え?」
沙織「そっか…なんで気づかなかったんだろう」
沙織「それだけのことだったんだ…」
優花里「武部殿…?」
沙織「麻子、ごめん、ちょっと降りるね」
麻子「沙織?どこに…?」
沙織「…ね、みんな」
沙織「これから、私がすることは…絶対に止めないで欲しいの」
華「…わかりました」
麻子「沙織…?何をするつもりだ…?」
沙織「よっ…と」スタッ
カチューシャ「…え…?沙織…?」
ノンナ「沙織さん…?戦車から降りて、何を…?」
沙織「…大丈夫、大丈夫だから…ね」
…ギギッ
カチューシャ「…え…?」
ノンナ「カチューシャ?」
キュラキュラ…
ノンナ「カチューシャ?戦車が前進していますが…?」
カチューシャ「えっ…うそっ、私、何も…!」
ゴゴゴゴ…!
優花里「…に、西住殿…あの戦車、武部殿の方に…」
みほ「えっ…?」
ゴオォッ
沙織「…」
カチューシャ「えっ…!な、なんでっ!うそっ!」
ノンナ「カチューシャ!ブレーキを!」
カチューシャ「いやぁ!!止まって!止まってよぉ!!」ガチャガチャ
ゴォォッ
沙織「…」
麻子「さ、沙織っ!!何やってるんだ!逃げろ!」
華「…麻子さん、いけません」
麻子「離せ!離してくれ!!沙織がっ…!」
華「…信じましょう、沙織さんを」
ゴォォッ
沙織「(…大丈夫、大丈夫だよね)」
沙織「…いいよ、おいで」
ゴォッ
カチューシャ「いやあ!!いやああああぁぁ!!」ガチャガチャ
麻子「沙織っ!沙織ぃっ!!」
…ギイィィィィー……!!
ギィィ…
……
…
沙織「…」
麻子「…え…?」
カチューシャ「…止まった…の…?」
沙織「…ずっと…ずっと一人にしちゃったよね、ごめんね」
沙織「あなたがずっと一人で頑張ってたこと、私には伝わったから」
沙織「…もう、休んで良いんだよ」
麻子「…沙織…?」
カチューシャ「え…?」
沙織「(ずっと一人で頑張ってて…)」
沙織「(きっと、誰かに認めてほしかったんだよね)」
沙織「(だから、あんなこと…)」
カタカタ…
カタ…
カチューシャ「え…?な、何の音…?」
ノンナ「沙織さん…?」
みほ「…沙織さん…今、何が…」
沙織「…みぽりん、カチューシャさん」
沙織「終わったよ…全部…」
~~数週間後~~
大洗vsプラウダ 練習試合当日
審判「…では、両校隊長、副隊長、前へ!」
ザッ
みほ「…」
カチューシャ「よく来たわね、ミホーシャ!」
ノンナ「ご無沙汰しております、みほさん」
カチューシャ「怖気づかずに来たことは褒めてあげるわ」
カチューシャ「でも、今日は容赦しないから!全国大会の時の借りは返させてもらうわよ!」
みほ「はい!よろしくお願いします!」
・・・
麻子「…それで、聞いたか?」
沙織「何が?」
麻子「あの日以来、例の戦車絡みの事件は全く起きていないそうだ」
華「まぁ…」
麻子「それに、カチューシャさんやノンナさんも、何事もなく戦車を動かせていると言っていた」
優花里「例の戦車はどうなったんでしょうか?」
麻子「たぶん問題ないが、また倉庫で保管するそうだ。今度こそ誰も触らないように管理すると」
華「そうでしたか、それなら安心ですね」
麻子「クラーラさんも、ニーナさんやアリーナさんもケガは完治したようだ」
華「ええ。本当に良かったです」
桃「全く、何だあいつらは!西住達が助けてやったというのに、礼の一つもせんのか!」
杏「まーまー、いいじゃんかぁしま。いつも通りのカチューシャだし」
みほ「…はい。私もそう思います」
みほ「カチューシャさんもノンナさんも、前みたいに元気になって、ホントに良かったですから」
桃「ま、まぁ、西住がそれでいいというなら…」
みほ「それに…」
桃「ん?」
カチューシャ「…」スタスタ
カチューシャ「…」クルッ
沙織「?」
カチューシャ「…」ペコッ
沙織「…ふふっ」
みほ「…それに、感謝の形は、言葉だけじゃないと思いますから」
桃「ど、どういう意味だ?」
杏「ほらほらかぁしま、行くよー」
みほ「…皆さん、今日はプラウダと練習試合になります」
みほ「ですが、これまでの練習の成果を発揮して、落ち着いて戦いましょう」
みほ「それでは、頑張っていきましょう!パンツァー・フォー!」
- 完 -
以上です、ありがとうございました。
ちょっと無理やりなシナリオになっちゃいましたが、なんとかあんこう4人分書けてホッとしてます。
黒森峰戦の「行ってあげなよ」から僕の中の沙織株がストップ高なので、沙織さん主役は意地でも書きたいところでした。
車長編は思いつけば書きたいです。
おまけ:没ネタ供養しました。よろしければこちらもお願いします。
・【ガルパン】みほ「ちょっと真面目な短編集です!」
【ガルパン】みほ「ちょっと真面目な短編集です!」 - SSまとめ速報
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