【ガルパン】身魂の操縦手 -冷泉 麻子- (62)

*一部独自解釈、設定有

*この作品はフィクションです
戦車の動作、性能等、実際のものと異なる場合があります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1488550209

コンッ

麻子「…」

コンッコンッ

麻子「…んぅ…」


ガンッ!ガンッ!

麻子「うぅん…何だ…」

沙織「起きろーっ!!」

麻子「うわっ!」

麻子「…な、なんだ、沙織か」

沙織「なんだとは何よぉ」

麻子「人がⅣ号で気持ちよく寝てるのに、何の用だ」

沙織「もー、放課後に紅白戦やるって言ってたじゃん!」

麻子「あぁ、そうだったか…」

沙織「ほら、しゃきっとする!みぽりん達もう来るから!」

麻子「うぅん…あと1時間…」

沙織「もー!!」

みほ「あ、沙織さん。もう来てたんだ」

優花里「お疲れ様です、武部殿っ!」

沙織「あ、みぽりん、ゆかりん。麻子が起きなくって…」

華「ふふ、沙織さんはいつも楽しそうですね」

沙織「…あれ、もしかして私、見世物にされてる…?」

麻子「ほら沙織、楽しいだろ。もうちょっと楽しんでていいぞ」

沙織「楽しくないから!ほらもう起きて!」


…また、いつもの戦車道が始まる

沙織が私を起こして、西住さんの指揮で私が戦車を動かして…

そんな、ちょっと眠いけど楽しい戦車道が、どこまでも続くと思っていたんだ

…だが、私の戦車道を待ち受けていたのは…




Girls und Panzer
 身魂の操縦手 -冷泉 麻子-

ドォォン!!

桂利奈「うわぁー!!」

ギギーッ
シュポッ

梓「すみません!ウサギチーム、三突にやられました!」

みほ「大丈夫ですか!?」

梓「はい、全員無事です!」

みほ「わかりました!」

優花里「これでこちらは残存2両、Bチームは3両ですか…少し厳しいですね」

沙織「みぽりん、どうする?」

みほ「三突を見失ってしまえば、また待ち伏せされる危険があります」

みほ「ウサギさんがやられた位置から推測して、まずは三突を叩きましょう」

みほ「おそらくこの地点…ですが、周りの木々がジャマで、上手く進めないかも…」

みほ「麻子さん、いけますか?」

麻子「まかせろ」

みほ「わかりました。では、この位置まで移動してください」

麻子「ほい」

ゴゴゴッ

沙織「麻子、よくこんなところ飛ばせるね…」

麻子「このくらいなら問題ない」

優花里「頼りにしてますよ、冷泉殿っ」


ゴオオッ


みほ「!これは…」

華「え?」

みほ「右後方からアヒルさんです!」


典子「あんこうチーム発見!根性で仕留めますっ!」

杏「あいよー。がんばえー」モグモグ


沙織「ど、どうしよ?このままじゃ三突とはさみうちに…」

みほ「…わかりました、右から迂回します。ここにレオポンさんを配置しているので、すれ違いざまに打ってもらいます」

ナカジマ「あー、こちらレオポン。アヒルさんの迎撃だね、了解ー」

みほ「麻子さん!」

麻子「ほい」


ガタガタ…


沙織「ちょ、だいぶ揺れてない!?」

華「麻子さん、大丈夫ですか?」

麻子「ん、まだ大丈夫…」


ガタタッ


典子「今!撃てーっ!!」

あけび「ハイッ!」


ドォォン!!


みほ「きゃあ!」

麻子「ぐっ!足元が…!」


ガタタッ

華「あっ…!麻子さん!!前!前っ!!」

麻子「えっ…!」

麻子「(大木…!ダメだ!間に合わなっ…!!)」

みほ「ぜ、全員、衝撃に備えっ…!!」


ギギーッ
ドカッ




沙織「きゃあ!」

優花里「うわっ!」

みほ「あ…わ、わ、うわぁあぁ!」

みほ「(あっ、お、落ちっ…!)」

華「みほさんっ!!」




ガッ

ドゴッ


ドサッ



沙織「うぅ…みんな、無事…?」

麻子「う…私はだいじょ…」

優花里「あ…に、西住殿は?」

華「…え?」

沙織「まさか、外にっ…」バッ


みほ「」


沙織「う、嘘…みぽりん!!」ガタッ

優花里「西住殿ぉっ!!」ガタタッ

麻子「あ…」


優花里「西住ど…」

ドロッ

沙織「え…?」

優花里「なっ、血…え…?」


優花里「あ…!」

沙織「み…みぽりん!!起きて!!みぽりんっ!!」

優花里「西住殿っ!!西住殿ぉ!!」ポロポロ

華「待ってください!!」

優花里「」ビクッ

華「…頭を打っているのであれば、むやみに動かすべきではありません」

華「額は出血しやすいだけです。まずは落ち着いてください」

沙織「は、華っ…」

華「沙織さん、全車両に訓練中止の連絡を。優花里さんは救急車を」

沙織「わ、わかった」

優花里「あ、りょ、了解、です」グスッ


・・・


沙織「…以上、通信終わります」

沙織「…ふぅ…」

麻子「…はぁっ…はぁっ…」

沙織「麻子?」

麻子「…わ、私が…私のせいで…西住、さん…」ガタガタ

沙織「麻子っ!」ギュッ

麻子「あ…さ、沙織…」

沙織「大丈夫だから。麻子のせいじゃないから。ね」

麻子「あ…」



ピーポーピーポー


優花里「あ、私が付き添います!」

沙織「落ち着いたら連絡してね」

優花里「はい、お任せください」


ブロロロロ…


沙織「…みぽりん…」

華「大丈夫ですよ、きっと。信じましょう」

沙織「うん…」

麻子「…」

沙織「麻子。大丈夫だから」

麻子「あ、あぁ…」

沙織「(…そっか…麻子、ご両親を事故で亡くしてるんだもんね)」

沙織「(これで大丈夫って言う方がムリかぁ…)」


~~~数十分後:大洗総合病院~~~



沙織「みぽりんっ!」ガチャッ

みほ「…あ、みんな」

華「みほさん」

麻子「…に、西住さん…」

みほ「わざわざ来てくれたんだ。ありがとう」

優花里「西住殿…西住殿ぉ…」グスグス

みほ「優花里さん、私はもう大丈夫だから」

沙織「大丈夫だったの?その、頭の包帯は…」

みほ「うん、ただの脳震盪だって。ちょっと額が切れちゃってたけど…」

華「そう、ですか…」

みほ「これから精密検査だけど、何ともなければすぐ退院できるから」

沙織「もー!キューポラから乗り出すの危ないっていっつも言ってるじゃん!」

みほ「ご、ごめんね」

沙織「…でも、よかった…本当に、大丈夫そう、で…ぅぇ…」グスッ

みほ「…本当にごめんなさい、心配かけちゃって…」


麻子「う…」

みほ「…麻子さん、私は大丈夫だったから」

みほ「ごめんね…」

麻子「そんな…私が、あんな事故を起こさなければ、こんなことには…」

麻子「…っ…!ごめん…ごめんなさい…西住さん…!」

みほ「ううん、いいの。大丈夫。」

みほ「あれは砲撃で体勢が悪くなっちゃってたし、仕方ないよ」

麻子「しかし、砲撃に気を取られて前方不注意だったのは間違いないんだ、あれは…」

沙織「もー、いいの!麻子!」

沙織「みぽりんがこう言ってるんだから、麻子もあんま気にしちゃダメだよ」

麻子「…あ、ああ…」

華「元気そうでよかった…では、そろそろお暇しましょうか」

優花里「そうですね。西住殿、しっかり休んでください」

みほ「うん。今日はホントにありがとう。また学校でね」

沙織「うん。またね」


~~~後日:大洗女子学園~~~




桃「えー、それでは、これより本日の訓練を開始するが…」

桃「その前に、今日から隊長の西住が訓練に復帰することとなった」

みほ「みなさん、長く留守にしてごめんなさい」

梓「西住隊長、無事でよかった…」グス

あゆみ「河嶋先輩、大泣きしてたもんねー」

桃「うるさいっ!」

杏「まーまー、河嶋も心配だったんだもんね」

桃「…会長まで…!」

桃「ああもう!とにかく、もう二度と心配をかけるんじゃないぞ!」

みほ「ふふ、ありがとうございます」

桃「…ゴホン、今回はまず、2チームに分けて紅白戦を行い、西住の体調を確認することとする」

桃「全員、準備しろ」

みほ「それではみなさん、お願いします」


=====


沙織「準備いいよ、みぽりん」

優花里「こちらも大丈夫です!」

華「…フフ、Ⅳ号を動かすのも、久しぶりですね」

麻子「こっちも大丈夫だ。いつでもいけるぞ」

みほ「了解です。他車両、用意できましたか?」

杏『あー、こちらBチーム。全車準備オッケーだよー』

みほ「わかりました」

みほ「…それでは、訓練開始します。パンツァー・フォー!」


沙織「…」

みほ「…?」

華「あら…?」

優花里「…?冷泉殿?」

麻子「…」

みほ「麻子さん?」

沙織「麻子?どうし…」

麻子「はぁっ…はっ…はっ…」ガタガタ

みほ「えっ…?麻子さん?」

麻子「に、にしずみ、さ…」ガタガタ

沙織「ちょっ…!どうしちゃったの!?麻子!!」

華「すごい汗…!」

麻子「ご、ごめ…ぁ…」フラッ

ドサ…

沙織「麻子!麻子ぉ!!」


~~~~大洗女子学園:保健室~~~~




麻子「…」

麻子「…ん…あれ…?」

沙織「…あ、起きた?」

みほ「麻子さん…」

麻子「ここは…保健室か?確か私は、さっきまで…」

沙織「うん…」

麻子「…っ…そうか、私は…」

麻子「…すまない、西住さん…」

みほ「ううん、私は何ともないの」

みほ「それより、麻子さんの方は…その、大丈夫?」

麻子「…ああ、今は、なんともない」

沙織「麻子…」


麻子「沙織も、すまなかったな。もう大丈夫だから…」

沙織「…やっぱり、この前の事故?」

麻子「ぐ…」

麻子「…こんな時にだけ、鋭いんだな」

沙織「だって、戦車に乗ったときは何ともないのに、みぽりんが乗ってからおかしかったんだもん」

沙織「私だって気づくよ…」

麻子「…そうか。そうだな…」

みほ「あの、麻子さん。私は大丈夫だったから…」

麻子「ああ、それはわかってる。わかってるつもりなんだ」

麻子「…だが、あの場所にいると、どうしても思い出してしまうんだ」

麻子「あの時、戦車で聞いた西住さんの悲鳴。何かが戦車にぶつかる、嫌な感覚」

麻子「それがずっと、頭から離れないんだ」

みほ「麻子さん…」

麻子「…西住さん…すまない」

麻子「…私はもう…戦車には、乗れない…」


沙織「…ま、麻子っ…」

麻子「沙織。すまない。私はもう…」

沙織「な、何言ってるのさ!これまで5人でやってきたじゃん!」

みほ「沙織さん…」

沙織「そんなの、ちょっと寝てれば忘れるって!ほら、1日くらい寝たいだけ寝てていいからさ!」

麻子「沙織…」

沙織「だって、私…」ポロポロ

沙織「うっ…うぇぇ…!」ポロポロ

みほ「…麻子さん…」

麻子「…」

みほ「…わかりました」

沙織「え…?」


みほ「麻子さん、Ⅳ号のマニュアルは?」

麻子「操縦席のポケットに…」

みほ「…」

沙織「ちょ、ちょっと、何言ってるの、みぽりん…?」

みほ「これ以上、麻子さんを無理に戦車に乗せるわけにはいきません」

みほ「操縦手は、別の人を探します」

沙織「…っ!みぽりんっ!!」

ガタタッ

みほ「…ごめんなさい…」

みほ「ごめん、なさい…」ポロポロ

沙織「あ…」

沙織「(…そっか。みぽりんも前は、戦車がイヤになって黒森峰から…)」

沙織「(…同じなんだ、みぽりんも、麻子も…)」

麻子「西住さん…ありがとう…」

みほ「…行きましょう、沙織さん」グスッ

沙織「あ、み、みぽりん…」

みほ「…さよなら、麻子さん…」

麻子「…あぁ」

麻子「さよならだ、西住さん…」


~~~~~~

とりあえず本日はここまで。後半推敲したら投下します

…ところで、こんな感じのヤツをあんこうチーム全員分書こうとしてたんですが、
装填手の秋山殿はともかく、通信手の見せ場がいくら考えても思いつきません…
ごめんね武部殿…

未婚の通信手はまだかな

>>25
それだっ!

…冗談はともかく、いろいろネタを出していただいてありがたい限りなんですが、
僕の戦車知識が絶望的なせいで書けそうにありませんがな…
実はというと、秋山殿編は6割くらい書けてます

後半も見直したので、時間があれば本日夜に投下させていただきます

準備できましたので、後半投下します


杏「…そっか、冷泉ちゃんが…」

みほ「…」

桃「今週末には、聖グロリアーナとの練習試合が計画されていますが…」

杏「断るのも悪いし、冷泉ちゃん抜きでなんとかするしかないね~」

みほ「…Ⅳ号の操縦手は、別の人を当たってみます」

柚子「…西住さん、大丈夫?」

みほ「私は、大丈夫です」

桃「し、しかし…」

杏「わかった。こっちでも探してみるね」

みほ「はい、ありがとうございます」

杏「んじゃ、週末はよろしく~」

みほ「はい、失礼します…」


バタン


桃「に、西住…」

杏「かぁしま、やめときなよ」

桃「ですが…」

杏「西住ちゃんは優しいからね」

杏「戦車に乗って、冷泉ちゃんがこれ以上傷つくのが耐えられないんでしょ」

柚子「西住さん、辛そうでしたね…」

杏「まぁ、私たちもはやることやろっか。いろいろ手続きやら済ませないとね」

柚子「でも、それじゃ冷泉さんは…」

杏「…正直、大丈夫だと思うけどなー」

桃「え?」

杏「西住ちゃんは優しすぎる。これ以上冷泉ちゃんにお節介するのはイヤだろーけど」

杏「…いるでしょ。西住ちゃんよりもっと冷泉ちゃんの近くにいて、もっとお節介な子がさ」

柚子「あ…」

杏「ま、あの子がなんとかしてくれるっしょ」


~~~戦車倉庫~~~




ガララッ

麻子「…」

麻子「…沙織、いるか?」

沙織「あ、麻子。来てくれたんだね」

麻子「ああ、親友の呼び出しだからな」

沙織「うん、ありがとう」

麻子「…それで、何の用だ?」

沙織「えへへ、じゃん!見てこれ!」

麻子「…そのヘルメットがどうかしたのか?」

沙織「自動車部から借りてきたの。これで、落っこちても大丈夫だよね?」

沙織「私がキューポラに立つから、麻子は…」

麻子「…何かと思えば、やっぱりその話か」


麻子「言ったろ。私はもう戦車には…」

沙織「いいから、いいから」

麻子「…っ」

バシッ

沙織「あっ…」

麻子「…っ…!やめてくれって、言ってるだろ…!」

麻子「私はもうダメなんだ!もう動かせないんだ!」

沙織「…麻子」

沙織「…麻子、言ったよね」

麻子「え?」

沙織「戦車に乗ると、みぽりんの悲鳴が、事故のことが頭から離れないって」

沙織「…みぽりんが戦車道で知ってほしかったのって、そんなことなの?」

麻子「…」


沙織「みぽりんが知ってほしかった戦車道って、そうじゃないの」

麻子「…」

沙織「麻子が優秀だとか、優秀じゃないとか、そんなことじゃないの」

麻子「…」

沙織「私、親友と一緒に戦車道がやりたいの。麻子」

麻子「…私は…」

沙織「…」

麻子「…私だって、本当は…やめたくないんだ…」ポロポロ

沙織「麻子。分かるよ。分かってるから」

麻子「っ…!う…!」ポロポロ


ガララッ


沙織「え…?」

みほ「…沙織さん、麻子さん…」

沙織「みぽりん…」

華「水臭いですよ、沙織さん」

優花里「Ⅳ号戦車は5人で動かすものじゃないですか」

沙織「華、ゆかりんも…」


みほ「…ごめんね、麻子さん」

みほ「あの時は、麻子さんの気持ちを分かったようなことを言って…」

みほ「本当は、麻子さんの気持ちを分かってなくて、諦めちゃって…」

麻子「そんな、西住さんは…」

みほ「…麻子さん。私、やっぱり麻子さんと一緒に戦車道を続けたい」

沙織「…麻子、ゆっくりでいいよ」

麻子「沙織…」

沙織「私たち、カウンセラーの先生じゃないから、こんなことわかんないし…」

沙織「でも、本当にゆっくり、麻子のペースでいいから、ちょっとずつ戦車に触ってみようよ」

沙織「最初は、操縦席に座って、それから、エンジンをかけて、操縦桿を握って…」

沙織「ちょっとでもイヤになったら、すぐにやめていいから」

麻子「…」

沙織「麻子。私…私たち、いつまでも付き合うから」

華「麻子さん」

優花里「冷泉殿っ!」

麻子「…っ…!」ポロポロ

麻子「沙織…みんな……」



~~~後日:大洗学園艦~~~




ダージリン「…ごきげんよう、杏さん」

杏「ごきげんよう、ダージリン様。また練習試合受けてくれて、ありがとね」

ダージリン「私の方こそ、感謝していますわ」

杏「んー?」

ダージリン「全国大会で優勝してからの大洗とは、1度戦ってみたいと思っていましたの」

杏「あー、そりゃ光栄だけどさー…」

ダージリン「何か?」

杏「今日はちょっと、期待通りの動きはできないかもねー」

ダージリン「みほさんのこと?」

杏「ありゃ、知ってたか」

杏「連絡はしてるけど、みんなまだ来てないんだ」

杏「そんでさ、Ⅳ号は準備でき次第動かしてもいいかな?」

ダージリン「私は構いませんわ」

杏「んー。あんがとね」

ダージリン「では、確認します。ルールは8対8の殲滅戦。場所は前回と同じ市街地付近…よろしくて?」

杏「ん、間違いないよ」

ダージリン「では、お互い良い試合にしましょう」


杏「はいはーい。注目ー。とりあえず、Ⅳ号はあとから動かして良いってさ」

カエサル「しかし、その間の隊長は誰が?」

杏「あ、そっか。んー…」

杏「まーせっかくだし、次期隊長候補の澤ちゃん、やってみる?」

梓「えぇ!?わ、私ですか!?」

みどり子「そうね。せっかくの練習試合だし、後進のことを考えるべきだわ」

典子「なるほど!スポーツも戦車も、後輩の育成は必要ですよね!」

梓「わ、私が…」

杏「やってくれるー?」

梓「…は、はい!みなさん、よろしくお願いします!」

あや「…西住先輩たち、どうしてるんだろう…」

左衛門座「しかし、今いない人のことを言っても仕方がない。この戦力でどうにかするしかあるまい」

エルヴィン「そうだな…」


~~~同時刻:大洗某所~~~


ゴゴゴ…

キキッ


麻子「…ふぅーっ…」

沙織「…麻子、大丈夫?」

麻子「…ああ、もう大丈夫だ」

華「試合開始まで、あと5分ですね…」

優花里「今、会長殿から連絡がありましたが、あとから参加でも構わないそうですよ」

みほ「ありがとう、優花里さん」

麻子「…西住さん、ちょっといいか?」

みほ「なに?」

麻子「…その…本当にすまなかった」

みほ「そんな…私がドジだから…」

麻子「いや、そのことじゃない。あの事故は仕方がない…とは言わないが、その後だ」


麻子「…長い間、迷惑をかけてしまったからな」

みほ「ううん、いいの。麻子さんが戦車を嫌いにならなくて、本当によかったと思ってるから」

麻子「沙織も、秋山さんも、五十鈴さんも、本当にありがとう」

沙織「ふふ、麻子にそんなまっすぐお礼を言われるの、何かくすぐったいな…」

華「いいんですよ、麻子さん」

優花里「私たち、友達じゃないですか」

麻子「ああ…」

沙織「…麻子、ずいぶん素直になったね」

麻子「そうか?」

沙織「フフ、普段からそれくらいだと良いんだけど」

麻子「沙織も、すまなかったな。面倒をかけて…」

沙織「麻子。もういいから。ね」

麻子「…あぁ」

みほ「…時間です、行きましょう」

沙織「もうちょっと遅刻気味だけどね…」

麻子「ちょっと飛ばすぞ、捕まってろ」


~~~大洗vs聖グロリアーナ:練習試合会場~~~



ドォーン!

みどり子「ごめんなさい!カモチームやられました!健闘を祈ります!」

梓「わ、わかりました!」

あゆみ「梓、状況は?」

梓「車両の数だと、現時点で4対6…それに、アヒルさんチームが追われてる」

あや「た、助けに行こうよ!」

梓「で、でも、ダージリンさんの戦車がさっきから見当たらないから、うかつに動いたら私たちまで…」


ドオォーン!


梓「あっ…!」

典子「すみません!アヒルチーム戦闘不能です!」

梓「あ…」

桂利奈「ど、どうする!?またやられちゃったよぉ!」

梓「(これで3対6…あんこうも入れれば4対6だけど、今残ってるのはカメさん、カバさんだけ…)」

梓「…やっぱり、無理だったのかな。私なんかに、西住隊長の代わりなんて…」


紗希「…」

桂利奈「…紗希?どうしたの?」

紗希「…Ⅳ号」

桂利奈「え?」



ゴゴゴゴ…!



梓「あ…!」

あゆみ「隊長っ!!」


みほ「…遅れてすみません、みなさん」

桃「お、遅いぞ西住!」

柚子「桃ちゃん、泣かないの」

桃「な、泣いてなぁい!」グスッ


みほ「状況は?」

梓「ここでアヒルさんチームがやられちゃいました…それから、こっちに2両、ここに1両…」

みほ「わかりました、ありがとうございます」

梓「あ、あの…」

みほ「え?」

梓「ごめんなさい、隊長…私、隊長らしいこと、何にもできなくて…」

みほ「ううん、大丈夫。私こそ、遅れてごめんなさい」

梓「すみません…お願いします!」

みほ「…麻子さん、とりあえずこの地点まで行けますか?そこでもう一度あたりを確認します」

麻子「わかった」


ゴゴゴ…!


杏「…ね。大丈夫って言ったでしょ?」

柚子「え?」

杏「さぁて、生まれ変わった冷泉ちゃんを見せてもらおっかな」


~~~あんこうチーム待機地点~~~~



ゴゴ…

麻子「…ここでいいか?」

みほ「はい、ありがとうございます」パラッ

みほ「ここでアヒルさんがやられたとすると、ダージリンさんはおそらく…」ブツブツ

麻子「…ん…?」

沙織「…麻子?」

麻子「…」

沙織「麻子?どうしたの?」

麻子「…」

沙織「麻子、もしかして寝てない?」

麻子「…」

沙織「ちょっと、麻子?どうし…」

麻子「…西住さん」

みほ「え?」

麻子「捕まってろ」


グッ
ブォォン!

沙織「きゃあ!」

ドォォン!!

沙織「えっ!?何?何!?」


アッサム「…あら、躱されるとは思いませんでしたわ」

優花里「な、今、どこから打たれたんですか!?」

麻子「左後方の路地から砲塔出してる。とりあえず距離取るぞ、隊長」

みほ「えぁ?は、はい!」

ゴゴゴゴッ

麻子「…!」

ギギーッ!!

優花里「うわぁっ!!」

ドォン!!

華「今度は前…!」

沙織「ウッソ!今、急停車しなかったら当たってたの?」

みほ「麻子さん、なんで今…!」

麻子「…さぁな」

みほ「え?」


ダージリン「…聞いたことがありますわ」

オレンジペコ「え?」

ダージリン「操縦手さん。あなた、戦車の操縦の最中に、手足の感覚がなくなったことは?」

操縦手「ええっ…?なんの話ですか?」

ダージリン「一流の操縦手は、戦車をあたかも自分の手足のように操ると言われているわ」

ダージリン「そして、自らの体の感覚がなくなり、自分の意識のまま、戦車を動かすことができると」

ダージリン「それこそ、自らの手足がそのまま戦車とつながっているように」

オレンジペコ「今のあんこうチームが、そのような状態だと?」

ダージリン「操縦手の感覚が極限まで研ぎ澄まされ、視覚だけではなく、あらゆる感覚からあたりを把握できると聞くわ」

ダージリン「砲弾や履帯の音、鉄や油の匂い、周りの戦車が動いたときの振動…」

ダージリン「それらのすべての情報を認識し、まるで自らの戦車を俯瞰で見下ろすような状態になると」

オレンジペコ「え…?まさか、先ほどのⅣ号の動きは?」

ダージリン「アッサムとその後の砲撃が回避されたのは、偶然でもオカルトでもないわ」

ダージリン「おそらく、履帯の音と地鳴りから戦車の位置を把握したのでしょう」

オレンジペコ「そんな、そんなことが…?」

ダージリン「…さぁ、どうかしらね」

ダージリン「ともかく、逃げられてしまったことは事実よ。次の手を打ちましょう」

オレンジペコ「…Ⅳ号、さらに市街地奥に入っていきます。どうしますか?」

ダージリン「追いましょう。2号車、3号車は西側、4号車は東側から回り込んで頂戴。私は正面から行きますわ」


麻子「……」

麻子「(感じる。いや、何も感じないというべきか)」

麻子「(自分の体が、Ⅳ号戦車の中に溶けていく)」

麻子「(…そうだ。この戦車は、私の脚だ。私の体そのものだ)」

麻子「(自分の体を動かすことに、何を恐れる必要がある)」


麻子「…!」

ブオッ


みほ「! 麻子さん!後ろ!」

ゴォォッ

ローズヒップ「今度は逃がしませんことよー!」

麻子「またか…」

ゴォッ


沙織「ちょ、麻子!この速度であれ曲がれるの!?」

麻子「問題ない。そこの電柱にシュルツェンをひっかけて旋回する」

優花里「えぇ!?」

麻子「西住さん、一度引っ込んでてくれ」

みほ「は、はい!」


ガッ
ギギギギギッ!!


みほ「きゃあ!」

ローズヒップ「えぁ!?あっ、ちょっ!げ、減速!減速ーっ!!」

ギィーッ! ドォォン!!
シュポッ

ローズヒップ「あぁー!申し訳ありません!ダージリン様ぁー!」


優花里「相変わらず、元気な方ですね…」

華「これで残り5両…これならなんとか…」

みほ「…っ!停車してください!」

ギギッ


麻子「…囲まれてる、か?」


ゴゴゴ…!

みほ「あれは…」

沙織「左に2両、右に1両、後方にも1両…正面は…」


ゴゴゴ…

ダージリン「…ごきげんよう、みほさん」

みほ「ダージリンさん…!」

華「完全に囲まれていますね…」

優花里「5対1…!」

麻子「どうする、西住さん」

ダージリン「…あなたが操縦手さん?」

麻子「…ああ」

ダージリン「…フフ、良いお友達を持ったのね、みほさん」

みほ「え?」

ダージリン「何でもありませんわ。始めましょう」


ダージリン「…ふぅ…」

オレンジペコ「ダージリン様?」

ダージリン「…紅茶、もう一度贈らなければならないかもしれないわね」

オレンジペコ「え?」

ダージリン「悔しいけれど…今日のⅣ号には、何回撃っても当たる気がしませんもの」



みほ「……作戦は、今お伝えした通りです。左側面から隙間を抜けて突破します」

みほ「その後、カバさんチームの前まで敵を誘導するので、そこで交戦しましょう」

優花里「あ、あの隙間を通すんですか!?」

華「ギリギリでⅣ号は通れそうですが…」

沙織「ずいぶん難しいこと言ってない?麻子、大丈夫?」


みほ「難しいのはわかってる、けど…麻子さん、やれますか?」

麻子「(信用、してくれるんだな。あんなことがあっても…)」

麻子「…問題ない。一度右にフェイントを入れて、すぐに左から抜ける。捕まってろ」

グッ

麻子「ふぅーっ…」


ゴゴゴッ


麻子「…行くぞ、Ⅳ号」


みほ「ではこれより、包囲網を突破します!」

みほ「―パンツァー・フォー!」





- 完 -


以上です。ありがとうございました

冷泉殿がトラウマを克服して覚醒する、って話にするのは決まってたんですが、
その辺の過程が死ぬほど難しかったので、だいぶ駆け足になってしまいました

本編サンダース戦でナオミ姉さんの砲撃に対し、西住殿の「停車!」の号令で回避していますが、
アレは西住流の第六感なんですかね…

前回と同様に、もう1レスだけ投下してHTML依頼を出してきます
今回は次のタイトルだけ予告しておきますね
それでは、ありがとうございました



 【 次 回 】

Girls und Panzer
 不惜身命の装填手 -秋山 優花里-

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