※劇場版ネタバレ注意
沙織「そうなのよみぽりん。もし使っていない枕があったら、少しだけ貸してもらえないかなぁ」
みほ「うん。予備の枕があるからそれで良ければ……でも麻子さん、確か枕には拘りがあったはずじゃ」
麻子「ああ、眠りの質が違うんだ」
麻子「借りる側がこんなことを言うのもなんだが、西住さんの枕が合うかは使ってみないとわからない」
優花里「しかしそんな大切な枕をどうしてクリーニングに?」
麻子「今朝意識が朦朧としているときにちゃぶ台をひっくり返してお茶をかけてしまった」
みほ「ええっ危ないよ。どこも怪我してない?」
麻子「問題ない」
沙織「なんというか今日までこういう失敗がなかったのがある意味奇跡だよねー…」
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みほ「じゃあ今からうちに戻って持ってくるからちょっと待っていてね」
優花里「では私も念のため他のチームのみなさんと交渉していくつか借りてこようと思います」
華「幸い今日は一日チームごとの自主練習ですから、みなさんの枕を一通り試す時間はありそうですね」
優花里「ええ。なにせ明日までは大学選抜との試合を戦った戦車たちの休養日ですからね」
沙織「でもその代わり、この間の試合についてのレポートを明日までに提出しなきゃいけないんだよね…」
華「麻子さんはどの程度進みましたか?」
麻子「私はもう書き終わったから問題はない。今日はお言葉に甘えてみんなの枕をゆっくり吟味したいと思う」
沙織「あ、手伝ってはくれないのね…」
――数十分後
優花里「というわけで各チームから枕を借りてくることができました」
華「ひとくちに枕といっても愛用者の方の個性が表れるものですね」
みほ「はい麻子さん。これわたしの枕ね」
麻子「ありがとう。では早速試してみよう……zzz」
沙織「そんなにすぐ寝つけるのに眠りの質なんて気にする必要あるのかな」
優花里「睡眠は重要ですからね。ご本人に納得していただくのが一番です」
麻子「……う……ん」スヤスヤ
華「寝言でしょうか」
みほ「どんな夢を見てるのかな」
優花里「それでは私達はレポートを書きながら麻子殿のお目覚めを待ちましょう」
~~みほの枕~~
麻子「ここは…電気街か? ビルの壁面になぜか大洗女子のポスターがデカデカと……」
オタA「デュフッ!? あなたはもしやガルパンの冷泉麻子さんですな」
麻子「え?」
オタB「お忍びでござるか」
オタC「マジかわいい。天使かな?」
オタD「秋山殿推しだけど劇場版の冷泉殿もかわいかったなぁ」
麻子「な、なんだか妙なことに…」ガクブル
ボコ「待てお前ら! そんな気持ち悪い物腰でかわいい女の子に話しかけてんじゃねえぞ」
オタA「あ? テメェこの町でよくそんな口を効けるな」
ボコ「お前らみたいな豚野郎なんか、おいらがやっつけてやる!」
オタB「上等だ。かかってこい」
ボコ「おりゃああああ――あふっ」
オタA「この野郎ボロ雑巾のくせして生意気なんだよ」バキッ
オタB「みぽりんに毎晩ギューってされてるとか羨ましすぎなんだよクソが」ドカッ
オタC「万死に値する」グシャッ
オタD「秋山殿ぺろぺろ」メキッ
ボコ「お、おぼえてろ……よ…」ガクッ
みほ「うわーんボコが氏んじゃったよー!」
まほ「みほ……かわいそうに。私の胸を貸そう」
みほ「うう、ボコ……あなたがいなくなったら、わたしこれから誰を抱っこして寝ればいいの?」
まほ「安心しろみほ。今夜からはわたしが一緒だ。心ゆくまでギューってしていいんだぞ」ナデナデ
みほ「お姉ちゃん……大好き///」ギュー
~~~~~~~
優花里「あ、起きられましたよ。おはようございます」
みほ「おはよう麻子さん。よく眠れた?」
麻子「変な夢を見た」ムクリ
みほ「そうなんだ…。わたしの枕が合わなかったのかな?」
麻子「すまない。でも西住さんがお姉さんと仲が良いことはよくわかった」
みほ「ちょっ、や、やだなあ麻子さんたら…///」
沙織「ねえ麻子、あの試合のことでちょっと聞きたいんだけど、遊園地の迷路でさ――」
麻子「次は一年生の枕で寝よう……zzz」
沙織「あ、起きてすぐ寝るのね」
~~梓の枕~~
実況『さあワールドカップ決勝。なでしこジャパンはアメリカを相手に0対1と1点ビハインド』
実況『ここまでなかなかチャンスを作れないまま後半アディショナルタイムを迎えました!』
梓「みんな、これがきっと最後のチャンス。何としてでもこのボールをゴール前まで繋ぐよ!」
優季「でも相手はディフェンスをがっちり固めて守りきる態勢だよ」
桂利奈「パワープレイも効きそうにないし…」
あや「どうしよう…」
あゆみ(みんなごめん。わたしが前半のあのフリーキックを止めていれば……)
ケイ「さあみんな、目安時間まであと30秒。落ち着いて守りきるわよ!」
ナオミ・アリサ「「イエスマム!」」
麻子「今度はサッカー選手になった夢か……ん?」
実況『おっとここで日本の丸山がボールを持った!』
実況『速い! 変幻自在のドリブルでアメリカディフェンスを次々と切り裂いていく!』
紗希「……」ヒュンヒュン
アリサ「な、何なのこの動きは!?」
ナオミ「素早いだけでなく、間合いがまったく読めない…!」
優季「すごい! 紗希ちゃん天才!」
あゆみ「ん? ドルブルする紗希の視線の先にいるのはまさか……」
ウサギさんチーム「「「「「ちょうちょ!!」」」」」
梓「揺らめくちょうちょを純粋に追いかける動きが、相手をかく乱してるのね!」
ケイ「Why!?」
あや「いっけえええええ!!」
実況『ディフェンスラインを突破した丸山、そのままキーパーと1対1だ!』
紗希「あ、ちょうちょが行っちゃう……」ポンッ
実況『ここで丸山、左にパスを送った! その先にはフリーで駆け上がっていた味方がいる!』
梓「ちょうちょを追うためにボールを手放してそのままピッチを去っていった!?」
あや「でも絶妙なタイミングのパスだよ。相手はキーパーも含めて誰も対応できてない!」
桂利奈「あとはこれを無人のゴールに押し込むだけ…」
あゆみ「お願い……決めて……」
ウサギさんチーム「「「「「河嶋先輩!!!」」」」」
桃「どおりゃああああああああああ!!!!」
ばい~ん
実況『なんということだ! 河嶋のシュートはメインスタンド二階席に飛び込み観客の顔面を直撃ーっ!』
ローズヒップ「」
アッサム「静かになりましたね」
ダージリン「フットボールといえばこんな言葉を知ってる? ライオンに追われたウサギは肉離れしない」
オレンジペコ「犬も歩けば棒に当たることならよくわかりました」
~~~~~~~
麻子「これもダメだな」ヒョコ
沙織「ねえねえ、本当にレポート手伝ってくれないの?」
麻子「手伝わない。変な夢が続いたからちゃんと寝かせてくれ」
沙織「あっそう。じゃあ次はこれを」
麻子「おうよ…zzz」
華(まるで流れ作業ですね)
~~典子の枕~~
実況『さあ火の鳥ニッポン、オリンピック決勝アメリカとの大一番!』
実況『フルセットまでもつれ込んだ接戦は13対14でアメリカのマッチポイントを迎えました!』
実況『ここで日本、冷泉に代わってワンポイントブロッカー五十鈴を投入します!』
華「任せてください、麻子さん」タッチ
麻子「お、おう…(私がバレー選手というのはさすがに無理があったか)」タッチ
ナオミ「このサーブを決めれば、私達が優勝だ…」スッ
麻子(この人確かさっきもフリーキック決めてたな。ていうか向こうのチームみんな日本人だろう)
典子「いいかみんな。厳しい練習は今日のために積んできたんだ。ここですべてを出し尽くそう!」
妙子・あけび・忍・華・桃「「「「「はいっ!」」」」」
実況『アメリカ代表、ナオミが必殺サーブを放つ! これは強烈だ!』
典子「くっ」バシッ
実況『しかし日本、キャプテン磯辺が食らいついた!』
忍「キャプテン……そうだ。私達はまだ終わっちゃいない!」バシッ
妙子「ここで……何としてでも同点に…」
実況『ふわっと上がったボールは河嶋の元に!』
華「河嶋さん…!」
あけび「お願い…!」
桃「うおおおおおおおおもらったああああああああ!!!」
ばい~ん
~~~~~~~
麻子「おはよう」ムクリ
優花里「おはようございます。今回はお早いお目覚めですね」
麻子「渾身のスパイクが空高く飛んでいくのが見えた瞬間、いたたまれなくなって目覚めた」
華「よくわかりませんが、また変わった夢をご覧になったようですね」
麻子「ああ。ある意味悪夢だった」
みほ「それじゃあ次は自動車部のナカジマさんから借りてきた枕を……」
麻子「もうスポーツ系はたくさんだ。別のにしてくれないか」
沙織「じゃあ……はいこれ。まったく、一体どんな夢を見たんだか」
麻子「zzz…」
~~ねこにゃーの枕~~
ナレーション『時は西暦30XX年、世界は混沌の闇に包まれ、人々の希望は失われようとしていた……』
ノンナ(姉)「私のかわいい妹カチューシャ……どうかあなただけでも生き延びて」ガクッ
カチューシャ(妹)「ダメよお姉ちゃん、目を開けてよ!」ウルウル
エリカ「フッ、憐れだこと」
カチューシャ「あ、あなたは……」
エリカ「私は闇の女王エリカ。恩知らずの横暴な妹に苦しむ世界中の姉たちを救済しているの」スッ
カチューシャ「何をする気? お姉ちゃんを連れて行かないで!」
エリカ「勘違いされては困る。彼女は私の元で救われるのよ」パァァ
ノンナ「エ、エリカ……さま…」ボヤー
エリカ「かわいそうに。非力な妹を守るために、幼い頃から神経をすり減らして来たのね…」
エリカ「でももう大丈夫。私があなたを苦しみの螺旋から解放してあげるわ」ナデナデ
ノンナ「嗚呼、エリカ様……その慈悲深い心はまさに青く美しきドナウ川……」ウットリ
カチューシャ「お姉ちゃん! そんな奴の言葉を聞いちゃダメ!」
ノンナ「あなた誰……? 私は偉大なるエリカ様のしもべ……妹などいない」
カチューシャ「そ、そんな……どうして…」ガクッ
エリカ「フッ、恨むのなら、姉に依存し迷惑をかけ続けた貴様自身を恨むことね。ハハハハッ」
???「そこまでです!!」
エリカ「誰だ!」
みほ「自分勝手な理由で尊い姉妹の絆を引き裂くなんて、私達が許しません!」
エリカ「お、お前達は……!」
みほ「愛と正義と希望を胸に大地を駆ける魔砲戦士――」
みほ・優花里・沙織・華・麻子「「「「「パンツァー・ファイブ!」」」」」シャキーン
麻子(か、体が勝手にポーズを……ていうか何だこのカラフルでヒラヒラな衣装は……)
カチューシャ「パンツァー・ファイブ、お姉ちゃんを助けて!」
沙織「大丈夫。わたしたちに任せて」
優花里「さあ、いっちょ行きますか!」
みほ「マジカルミラクル・アハトアハト!(注:呪文)」キラキラー
エリカ「くっ、しまった……動けない!」
みほ「相手は予想以上に重厚な闇のオーラを纏っています……華さん」スッ
華「ええ。みなさんの希望のエネルギーをすべて私に預けてください。確実に撃破してみせます」
ナレーション『さあ、テレビの前のみんなもパンツァー・ファイブを応援しよう!』
カチューシャ「がんばれー! パンツァー・ファイブー!!」
沙織「今だよみんな!」
みほ・優花里・沙織・華・麻子「「「「「夜空に煌めけ、マジカルファイア!!」」」」」
ドガァーーン!!
エリカ「闇の力が抜けていく……これが世界に新たな光を導く希望の力だというの……?」パァァ
エリカ「私は理不尽な目に遭う姉たちを救いたかった。そう、最初はただそれだけだった…」
みほ「確かに、妹だからってお姉ちゃんを頼りすぎるのは良くないと思います…」
みほ「でもその一方で妹は、大好きなお姉ちゃんの幸せを誰よりも強く祈っているものです」
みほ「お姉ちゃんが笑ってくれるのが嬉しいから、つい甘えてしまうこともあるんです」
エリカ「どうやら私は少々頑なすぎたみたいね……」
カチューシャ「お姉ちゃん!」ダッ
ノンナ「カチューシャ……ごめんなさい、私はあなたを……」ダッ
沙織「良かった。これで一件落着ね」
華「仲の良い姉妹にも笑顔が戻って本当に良かったです」
麻子(終わったか……なんだかんだで明るい夢だったな)
カチューシャ「ねえお姉ちゃん、良い子にするからどこにも行かないでね」ギュッ
ノンナ「当然ですよ。カチューシャ……」
ノンナ「もう、あなたを離さない」ニヤァ
麻子(……は?)
優花里「こ、これは…!? 空間が歪んでいきます!」 ゴゴゴゴゴ…
みほ「魔砲が一切通じない……何が起きてるの?」
ノンナ「ようやくわかりました。この荒廃した世界で私が抱いたあらゆる感情……」
ノンナ「それらはすべて愛しい妹カチューシャのためにありました」
ノンナ「しかし世界はあまりにも醜い。今後も彼女にこんな世界を見せ続けるくらいなら……」
ノンナ「彼女が幸せに生きられる世界を新たに構築する方がいい」
ノンナ「そう……私のカチューシャへの愛は全宇宙を包み、この世に新たな理をもたらすのです」
~~~~~~~
麻子「お、おはよう…」ゲンナリ
華「おはようございます。少々うなされていたご様子でしたが、大丈夫ですか?」
麻子「朝の子供向けアニメを見ていたと思ったらガッツリ深夜アニメだった」
沙織「いくらなんでも奇抜な夢を見すぎじゃない?」
麻子「枕のせいだ」
沙織「そんなに言うなら真面目な人の枕を使えばいいでしょ。はいこれ」サッ
麻子「んー……zzz」
~~そど子の枕~~
警官(おかっぱ)「手を上げろ! 跪け!」
逃亡犯(おかっぱ)「な、なんだよ……俺はたかだか一分会社に遅刻しただけじゃないか!」
警官(おかっぱ)「たかだかだと? この社会において遅刻がいかに重罪かは、貴様も知っているはずだ」
逃亡犯(おかっぱ)「こんな……こんな法律、間違っている!」
警官(おかっぱ)「果たしてそうかな。そんな風に考える人間などこの社会には存在しない。なぜなら――」
警官(おかっぱ)「そんな考えを抱いた時点で、この世に生きていた記録ごと抹消されるからだ」ジャカッ
ダァン!
――こうして偉大なる風紀委員ビッグミドリコに見守られ、今日もこの社会は平和を保っています
~~~~~~~
麻子「何が真面目な人の枕だ。今までで一番やばい夢だったぞ」
優花里「う~ん……ここまですべてお気に召しませんか」
みほ「残る枕はあと五つね」
華「カバさんチームは全員が枕を持ち寄られたんですね」
麻子「あいつらの枕か……今度は戦場にでも駆り出されるのだろうか。気が進まん」
沙織「そう言わずに一つくらい試してみなさいよ。ほら」
麻子「ちょ、顔に押しつけるな……zzz」
~~カエサルの枕~~
カルパッチョ「おお、たかちゃん……あなたはなぜたかちゃんなの」イチャイチャ
カエサル「ああ、ひなちゃん……あなたはなぜひなちゃんなんだ」イチャイチャ
エルヴィン「オペラ座の中心で愛を叫ぶか。もはや演劇の範疇を越えているな」
左衛門左「燃え盛る炎はもう誰にも止められそうにない」
おりょう「宴の準備ぜよ!」
ペパロニ「こうしちゃいられない。姐さん、法律変えて式場を予約しに行きましょう!」
アンチョビ「いいけどとりあえずパスタ茹でてからね」
~~~~~~~
優花里「おはようございます。歴史情緒溢れた夢でしたか?」
麻子「おはよう……戦場ではなかったが、別の熱い炎が燃えていた」
麻子「ん? クリーニング屋からメールが届いていた。枕を受け取りに行かないと」
沙織「えっ、即日中に返してもらえるものだったの?」
麻子「追加料金を払って優先的に洗ってもらっていたんだ。一日足らずで仕上がるとは思っていなかったが」
麻子「みんなには色々と苦労をかけてしまったが、枕問題はこれで解決した。ありがとう」
みほ「それじゃあこれからクリーニング屋さんに――」
麻子「zzz……」
沙織「って、レシート握ったまま河嶋さんの枕で寝ちゃってるじゃん! もうー」
華「ですがこのレシートさえ持参すれば麻子さんご本人でなくても受け取れるのではないでしょうか」
みほ「ならわたしたちで麻子さんの枕を受け取りに行こっか」
沙織「みんなで行くならついでにケーキ屋さんに寄って帰ろうよ」
優花里「いいですね。そうと決まれば早速出かけましょう」
~~桃の枕~~
ゴオオオオ……
文科省眼鏡「フハハハハ! 大洗女子学園の諸君、大見得を切っておいてこの有り様とは滑稽だな」
文科省眼鏡「いくら実質高校選抜とはいえ格上である大学選抜に勝てる見込みなどなかったのだ!」
まほ「くっ……各校の主力が集まってもまったく歯が立たないなんて」ヨロ…
ダージリン「みほさんが練った難攻不落の作戦を正面からあっさり蹂躙するとは…予想以上ね」フラ…
カチューシャ「ノンナ、みんな、しっかりして! うわああああん!」
ケイ「特殊カーボンさえ貫かれるなんて……この惨状が、私達の愛した戦車道が選んだ答えだっていうの…」
アンチョビ「」
ミカ「人生はときに向き合い難い理不尽を提示するとはいえ、これはあまりに残酷だ…」
絹代「我々はただ、信じた道を突き進んだだけなのに……無念です」
みほ「わたしのせいだ……わたしのせいで、みんなも、学園も……」
???「まだ終わっちゃいなぁぁーーい!!」
みほ「こ、この声は……!」
優花里「そ、そしてこの走行音は……!」
全員「「カメさんチームのヘッツァー!!」」
杏「待たせちゃってごめんね~。ちょっくらパーシングを10両ほどぶっこわしてきたもんだからさ」
文科省眼鏡「馬鹿なッ……まだ画面には1対28と……!?」
ドドドドドーーン!!
まほ「時間差での着弾!? それも別々の地点にいる10両を一斉に……」
ダージリン「忘れていたわ。こんな芸当ができる砲手は、戦車道界広しともただ一人――」
桃「大洗女子諸君、諦めるのはまだ早い。この私がいる限り、絶望は訪れない!」
みほ「河嶋さん……」パァァ
桃「よっと」 ドカーン!!
ケイ「空中に空砲を……?」
みほ「いいえ。これは河嶋さんの特技の一つ――癒しの煙です」
アンチョビ「おおっ……力がみなぎってくる……」
ノンナ「カチューシャ、よくぞご無事で…」
クラーラ「カチューシャ様…」
カチューシャ「みんな……助かったのね。良かった…」
桃「さあ。ここまで仲間をオモチャにされてタダで済ますつもりはないぞ」
桃「覚悟しろ大学選抜!!」カッ
ルミ「何……このオーラは!? 今までの奴らとは桁が違う」
アズミ「手元が震える……私が高校生を相手に怯えているとでもいうの?」
メグミ「ヘッツァーの砲手は無名の選手だったはず……彼女は一体何者なの?」
柚子「こっちは準備万端だよ桃ちゃん」
杏「思う存分やっちゃいな河嶋~」
桃「轟音と共に頭に叩き込むがいい。これが、大洗女子学園の魂だ!!」バッ
ドガガガガガガガガガガガガガ……
実況『残存車両確認――大洗1、大学選抜0。よって、大洗女子学園の勝利!!』
ルミ「なっ、遥か向こうにいる車両も含めて18両を一気に仕留めたっていうの?」
アズミ「こちらが攻撃する暇さえ与えずこれほどの速さと精度で……」
メグミ「そんな、私達が手も足も出ないなんて」
愛里寿「こ、怖い……おうちに帰りたい…」ガクブル
文科省眼鏡「ば、かな…」ヘナァ
みほ「河嶋さん、ありがとう。わたし河嶋さんの後輩でいられて、本当に幸せです!」
まほ「河嶋くん。君はとても勇敢だった。心から尊敬し、そして仲間として君を誇りに思う」
ダージリン「能ある鷹は爪を隠す――この諺はどうやら、あなたのためにあるようね」
カチューシャ「ノンナたちを助けてくれてありがとうモモーシャ!」
ケイ「Congratulations モモ。あなたは大洗の歴史に輝くレジェンドになったのよ」
アンチョビ「よーし乾杯しよう。ピザ窯持ってこーい!」
観客「「も・も・ちゃん! も・も・ちゃん!」」
柚子「やったね。さすが桃ちゃん!」
杏「なかなかできることじゃねえな」
桃「い、いやあ……えへへへへへ。ぐへへへへへへ」
~~~~~~~
麻子「……」ムクリ
麻子(河嶋さん……なんかかわいそうになってきた)
麻子(みんな明るく振る舞っているように見えるが、深層心理では何かしら悩んでるのかな)
麻子(これからはもう少し、優しく接してみるか。特に河嶋さんには…)
麻子「って、やけに静かだな。ん?」
みほ・沙織・華・優花里「zzz」スヤスヤ
メモ
〈麻子が寝てたからみんなでクリーニング屋に行って枕受け取ってきたよ。
お駄賃代わりとして、その寝心地の良さをみんなで体験することにしまーす 沙織〉
麻子「一つの枕を四人でシェアして寝ている。なんてことだ」
麻子「性能なんて普通の枕と大して違わないのに。違う点があるとすれば――」
~~麻子の枕~~
麻子父「みなさんどうぞゆっくりくつろいでいってくださいね」
麻子母「今日はわけあってお茶ならいくらでも出せるから、お代わりが必要ならいつでも声をかけてね」
四人「「「「あ、ありがとうございます……」」」」
優花里(それにしても驚きです。こちらは本当に麻子殿のご両親なんですよね)
沙織(うん。それにこの家も、小さい頃に遊びに行ったときとまったく同じだよ)
華(四人で同じ夢の中にいる上にお会いしたことのない人と出逢うなんて、やはりこの現象は――)
みほ「あの……少し質問させていただいても構いませんか」
みほ「わたしたちは今こうしてお二人とお話していますが、これは夢なんでしょうか。それとも……」
麻子父「ああ。ただの夢だよ。怪奇現象の類いではない」
華「どういうことでしょうか」
麻子母「私達は麻子の深層心理が作り出した〈夢〉そのもの……とでも言えばいいのかしら」
麻子父「本物の私達は既にこの世を去っているからね。ここにあるのはすべて、麻子の記憶の産物だ」
麻子父「みなさんの前にいる私達は死者の霊魂ではなく、あくまで麻子の記憶の中にいる存在なんだ」
優花里「つまりここは、愛用の枕に麻子さんの深層心理が反映された世界……ということですか」
麻子母「ええ。だから空の上にいる本物の私達とここにいる私達は少し違う存在なの」
華「麻子さん、やはり深層心理ではご両親のことを……」
沙織「あの……ここが麻子の心が生んだ世界なら、お二人は麻子と夢の中で会うこともあったんですよね」
麻子母「ええ。そのとおりよ沙織ちゃん。麻子と私達はこれまでに夢の中で何度も会っているわ」
麻子父「といっても本当の意味で再会できたわけではないから、心苦しいけどね……」
沙織「そう、ですよね……」
麻子母「でもね沙織ちゃん、最近の麻子は本当に楽しそうなの」
麻子母「夢の中で私達に会うたびに、みんなとの日々をあの子なりの言葉で語ってくれるのよ」
麻子父「私達を亡くしてから悲しい顔をすることの多かった麻子が、こんなに元気になってくれた…」
麻子父「みなさんには本当に、感謝の言葉しかないよ。本当にありがとう」
みほ「いいえ。お礼を言いたいのはわたしたちの方です」
優花里「そうです。我々が麻子さんとお友達になれたのも、ご両親の存在あってのことです」
華「夢の中とはいえこうしてお話できる機会を持てて嬉しいです。ありがとうございます」
麻子父「みなさん……あの子は本当に、素晴らしい友人に出逢えたんだな」
麻子母「ええ。みんな、これからもどうかあの子のことをよろしくね」
沙織「任せてください。わたしたち五人は、これからもずーっと友達ですから」
優花里「はい!」
華「もちろんです!」
みほ「麻子さんと出逢ってから、わたしたちはたくさんのものを得ました。全部素敵な宝物です」
みほ「だからこれからも麻子さんと一緒に、素敵な宝物をたくさん見つけていこうと思います」
麻子父「そうだ、私達からも改めて……全国大会優勝、そして大学選抜との試合の勝利、おめでとう」
麻子母「これからも怪我のないように気をつけて、力を合わせて頑張ってね」
みほ「はい。……それじゃあわたしたち、そろそろ帰ります。麻子さんが待っていますから」
優花里「不思議な体験でしたけど、お会いできて嬉しかったです。今日は本当にありがとうございました」
沙織「本物のお二人には、いつかうんとおばあちゃんになってからみんなで会いに行きますね」
華「お茶のお代わりはそのときに…」
麻子母「ええ。どうか元気でね」
~~~~~~~
麻子「お……みんな起きたか」
沙織「えへへ、おはよう麻子ぉ~」ナデナデ
麻子「なんだ急にベタベタするな気持ち悪い……」
華「麻子さん、私達はこれからもずっとお友達ですよ」ニコッ
優花里「今風の言い方にするとズッ友ですね!」
麻子「みんなどうしたんだ。変な夢でも見たのか?」
みほ「うん、でも素敵な夢。勝手に枕借りてごめんね麻子さん。これからもこの枕大切にしてね」ニコニコ
麻子「西住さんまで……そんなことよりせっかく買ってきたケーキが温くなるぞ。早く食べよう」
沙織「やだもー麻子ったらわたしたちが起きるまで食べずに待っててくれたの? 優しい~」ナデナデ
麻子「うぅ~離れろぉ。離れないとレポート手伝ってやらないぞ」
優花里「おお! 麻子殿レポートを手伝ってくれるんですか?」
華「麻子さんがいれば百人力です。では今日中に仕上げて明日は五人でどこかに出かけませんか」
みほ「あっ、ならわたしまたボコミュージアムに行きたいなぁ」
ワイワイ…
麻子「甘い……だが、こういうのも悪くないか」モグモグ
おわり
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