芽衣子「やわらか、かため」 (39)


・並木芽衣子さんのSSです



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~事務所


モバP(※以下表記P)「……」カタカタカタ

芽衣子「……」ペラッ

P「……」カタカタカタ

芽衣子「……」チラッ

P「……」カタカタ…カタ

芽衣子「……」ジーッ

P「……はぁ」


芽衣子「プロデューサー」

P「ん……なんだ、並木。いたのか」

芽衣子「ずっと前からね。おつかれ?」

P「どうかな」

芽衣子「さっきからため息多いよ?」

P「そうか?」

芽衣子「私が来てから12回してる」

P「いちいちカウントしてたのかよ」

芽衣子「まぁーねー」


P「俺の仕事は見世物じゃないぞ」

芽衣子「気が散る?」

P「いや……そんなことはないけど」

芽衣子「私もじーって見てるわけじゃないからね」

P「知ってるよ」

芽衣子「集中しなよ」

P「……言うねぇ」


芽衣子「……それは半分冗談で」

P「半分もあるのか」

芽衣子「少しは休憩しようよ」

P「……」

芽衣子「ほら、私がお仕事手伝えるわけじゃないし、最近ずっとでしょ?」

P「まぁ……」

芽衣子「忙しいのはわかるけど、適度な休憩は大事だよ?」

P「……」


芽衣子「そうだ、コーヒー淹れようか。濃いめのブラックでいい?」

P「まだあるから大丈夫」

芽衣子「ほら、冷めてるからさ」

P「……話してていい休憩になったよ。ありがとう」

芽衣子「えー、全然できてないって……」

P「さー、再開再開」

芽衣子「むぅ~……」


* * *


~別の日、撮影スタジオ


< ハイ、オッケーデース

芽衣子「お疲れさまでしたー」

P「……」

芽衣子(あっ、プロデューサー見てくれてたんだ)


芽衣子「プロデューサー、どうだっ……」

P「……」

芽衣子「……あれ?」

P「……」

芽衣子「……もしもーし」

P「……」

芽衣子(寝てる)


P「……ん、終わったのか」

芽衣子「さっきね」

P「あぁ、お疲れさま」

芽衣子「ありがと。でも最後に疑問符をつけてそのまま返すね?」

P「俺は別に疲れては」

芽衣子「いつもより話すテンポが遅いのは寝起きだから?」

P「そんなところだ……くぁ……」


芽衣子「すっごいあくびだね」

P「寝起きだからな……」

芽衣子「着替えないとだし、その間に顔洗ってくる?」

P「そうだな……ついでに自販機でコーヒーでも買うよ」

芽衣子「運転は大丈夫?」

P「帰る準備ができるまで切り替えられる」

芽衣子「今日はこれで終わりだし、別に急がなくても」

P「俺の都合でアイドルの貴重な時間を減らすわけにはな」


芽衣子「安全が一番だよ? 私も車の運転はできるから」

P「さっきまで軽く寝てたんだ。問題ない」

芽衣子「でも」

P「ほら、メイクさん待たせてるだろ。行った行った」

芽衣子「……」


* * *


~さらに別の日、事務所


ガチャッ

芽衣子「つっかれた~お疲れさまでーす」

芽衣子「……あれ?」

芽衣子「プロデューサー? ちひろさーん?」

芽衣子「……」

芽衣子「誰もいないの珍しいなぁ」


芽衣子「プロデューサー、いないのー……」

芽衣子「あ」

P「……」

芽衣子(寝てる)


芽衣子「もうっ、ソファで寝ちゃって、スーツがシワになっちゃうよー」

P「……」

芽衣子「ぐっすりだ」

P「……」

芽衣子「んー……」

芽衣子「……」

芽衣子「そうだっ」ピコーン


* * *


P「ん……やべ、寝てた……」

芽衣子「あっ、おはよ、プロデューサー」

P「あぁ……並木、戻ってたのか……お疲れ……」

芽衣子「お疲れさま。プロデューサー?」

P「んー……なんだ……」

芽衣子「ちゃんと家で寝てる?」

P「寝てはいるよ……寝ては……」

芽衣子「寝ては、ねー」


P「はぁー……それにしても……なんかよく寝た感ある……」

芽衣子「そうなの? えへへ」

P「さすが高いソファ……無理言って買ってもらった甲斐があった……」

P「……ん?」

芽衣子「どうしたの?」

P「……」


P「うぉあっ!」ガバッ

芽衣子「わわっ、いきなり起き上がってどうしたの!?」

P「そりゃこっちのセリフだよ! な、なんでお前……えぇ?」

芽衣子「どーどー、落ち着いて落ち着いて」

P「はぁー、ふぅー……落ち着こう、落ち着くぞ……はぁー……」

芽衣子「そうそう、大きく吸ってー吐いてー」


P「ふぅー……うん」

芽衣子「落ち着いた」

P「落ち着きはした。落ち着きはしたけどな」

芽衣子「うん?」

P「並木」

芽衣子「芽衣子って呼ん」

P「並木」

芽衣子「……はぁい」


P「ソファで寝ていた俺がまず悪い。それは認める」

芽衣子「軽く休むくらいなら別にいいとおもうし、今ならみんなこたつ行くんじゃないかな」

P「……それは一度置いとけ」

芽衣子「はぁーい」

P「ただな……」

芽衣子「ただ?」


P「……膝枕は軽率にやっていいものじゃない」

芽衣子「減るもんじゃないのに?」

P「俺の精神がゴリッゴリすり減る」


P「これは前にも言った気がするな。並木はアイドルで、俺はプロデューサー」

芽衣子「そうだね」

P「距離感が大事。これも言ったな」

芽衣子「パートナーってのも聞いたよ」

P「仕事のな。仕事の、をちゃんと付けなさい」

芽衣子「細かいよー」

P「大事なところなんだから」


P「膝枕をする関係性って、例えばどういうもの?」

芽衣子「お母さんと子供とか。あとは……恋人同士だねっ」

P「そんなもんだな。さて、俺たちの関係は?」

芽衣子「……パートナー」

P「仕事の」

芽衣子「仕事のパートナーですぅ」

P「なんでふてくされた言い方なんだよ」

芽衣子「べぇっつにぃ」

P「まぁいいよ。並木があげたどちらにも該当しないな」

芽衣子「ソウデスネー」


P「万が一にもないけど、俺が膝枕をやってとお願いしたのならともかく、言った覚えはない」

芽衣子「もうっ、まわりくどいよー!」

P「大事なことだろうよ」

芽衣子「なんだか寝苦しそうに見えたのと、最近お疲れだろうしってことで膝枕したのっ! 私が勝手にー!」

P「そうか」

芽衣子「そうですー! こんなに嫌がれるとおもわなかったよ! ふんっだ!」


P「いや、嫌ってわけじゃなくて」

芽衣子「嫌じゃなかったからこんなに言う、普通!?」

P「そういう気の緩みが関係をだな」

芽衣子「私がやりたかったからやったの! はい、ごめんなさい! もうおしまいー!」

P「……」

芽衣子「知らないっ」プイッ

P「並木」

芽衣子「……」

P「……」


芽衣子「……」

P「……」

芽衣子「……」

P「並木」

芽衣子「……」プイッ

P「言いすぎたよ。ごめん」

芽衣子「……」


P「ただ、膝枕はやめてほしい。繰り返すようだけど、俺はプロデューサーで並木はアイドルなんだから」

芽衣子「……」

P「今は誰もいないけど、ちひろさんや他の子らもいるわけだし。こういうことはやるものじゃないよ」

芽衣子「……」

P「俺は君をトップアイドルにする責任がある」

芽衣子「……」

P「人の噂も七十五日とは言うけど、アイドルにそれは通用しない。最初の季節であっという間に広がって、終わりだ」

芽衣子「……」

P「あんまり言いたくはないけど……イメージ商売だからな、この業界は」


芽衣子「……うん」

P「わかってくれたか」

芽衣子「プロデューサーが真面目に私のこと考えてるんだなぁって」

P「うんうん」

芽衣子「ちょっと反省した。ごめんなさい」


芽衣子「でもね」

P「うん?」

芽衣子「プロデューサーの言い方にも問題あるとおもうよ!」

P「それは……そうだな、うん。ごめん」

芽衣子「芽衣子さん、許しません」ムスッ

P「えぇ……」

芽衣子「怒ってます」

P「いや、流れ的にここは終わるところじゃないの……」

芽衣子「流れとか知らなーい」

P「子供かよ……」

芽衣子「プロデューサーより年下だもん」


P「……じゃあなにやったら機嫌なおしてくれるんですか」

芽衣子「……膝枕」

P「……ごめん、どうも疲れて聞こえづらいみたいだから、もう一回」

芽衣子「膝枕してくれたらいいよ」

P「却下」

芽衣子「早っ!」


芽衣子「えー、いいじゃん! 減るもんじゃないのに!」

P「だーかーらー、俺の精神が大根おろしよりも勢いよく削れるんだよ!」

芽衣子「それは私が膝枕をしたときでしょ?」

P「逆も同じだよ!」

芽衣子「もー! 文句ばっかり!」

P「そっちはわがままばっかりだな!?」

芽衣子「私の頭をちょぉーっと30分くらいプロデューサーの太ももに置くだけじゃない? カンタンでしょ?」

P「猫を乗っけるのとわけが違うんだからな?」

芽衣子「どっちかというと犬っぽいんだっけ?」

P「そうだな、ラブラドールとかああいう系……じゃなくて!」


芽衣子「ほらほら、座って座って♪」ポンポン

P「いや、今は立っておきたい気分だから」

芽衣子「遠慮せず、どーぞどーぞ」

P「そろそろ仕事に戻るかー」

芽衣子「不公平! 私やったのに!」

P「だから頼んでないだろ!」

芽衣子「頭も撫でてあげたのに!」

P「うあぅっ! クソッ! なんで無抵抗だったんだ、俺は!」


芽衣子「あと膝枕って結構しんどいね」

P「人の頭は体重のおよそ10%って言われてるからな! あぁー、なんで俺は起きなかったんだよ!」

芽衣子「でもプロデューサーが求めるならいつでもウェルカム♪」

P「これから先、頼むことはないから! あぁ、ないね!」

芽衣子「2回も力強く言わなくても」

P「今日という日を一生後悔することになるよ!」

芽衣子「急に元気だね」

P「いや、疲れたわ」

芽衣子「まぁまぁソファどうぞ♪」

P「……はいはい」


* * *


P「……」

芽衣子「……」

P「……」

芽衣子「硬くてあんまり気持ちよくない」


P「よし、仕事戻ろう」

芽衣子「あー! 待って待って、そう、私硬めの枕が好きなんだよね! だからちょうどいいなー、えへ♪」

P「……15分な」

芽衣子「30分!」

P「……10分」

芽衣子「減ってるよ!?」


おわり

芽衣子さんの太もも絶対柔らかいから圧倒的な膝枕力があるとおもいます

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