並木芽衣子「休暇旅行」 (26)
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
※モバマスSS短編、めーこさんメイン
※本編に登場する地名等は全て架空のものです
※SS投稿は初めて
※さくさく投下します
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並木芽衣子「それにしても、藍子ちゃんと一緒に出かけるのって初めてだよねっ」
高森藍子「はい!一度でいいから芽衣子さんと一緒にお出かけしたいなあって思ってたんです」
藍子「ちょうどお休みも重なりましたし」
芽衣子「そうねっ!ホントに良かったわ♪」
芽衣子「一緒に出かけたいって話聞いて、どんな所に行こうか迷ったんだけど」
芽衣子「もう藍子ちゃんにピッタリ!って所があってね~」
藍子「それが地図にマルの書いてあるここですか?」
芽衣子「ええ、そうよ♪」
藍子「都会を離れてここまで来ると、景色がきれいですね!」
芽衣子「そうねぇ~、ここらへんまで来ると自然の風景が私たちを迎えてくれるって感じね」
藍子「きっと空気も澄んでて気持ちがいいんでしょうね、ちょっと窓を開けてみてもいいですか?」スクッカチッ
芽衣子「ええ、きっと気持ちい……」
ヒュゴオオオオオオオ
芽衣子「きゃあっ!!」
藍子「あわわ……!す、すみません!風が強かったみたいで……」
芽衣子「……ふう~、…………いいのよ、うふふ♪こういう驚きも旅の楽しみね」
芽衣子「まだまだ時間はかかるけど、駅に着いたらゆっくり空気を味わいましょ♪」
藍子「はいっ!ふふ♪」
芽衣子(それから私は藍子ちゃんとゆっくりおしゃべりしながら、電車での旅を楽しんでいた)
芽衣子(朝早くにきらびやかな都会を離れて、もう何時間が経ったのだろう)
芽衣子(何本も電車を乗り継いで、だんだんと乗客も減っていって)
芽衣子(今では私たちの他にふたりだけ)
芽衣子(ふと外を見上げると、ただただ広い空と、悠然とそびえる山脈に囲まれて)
芽衣子(取り立てて目立ったものもない)
芽衣子(なんだか、私たちのまわりが止まってしまっているような感覚)
芽衣子(あるいは、同じ風景を何度も繰り返している錯覚すら覚えてしまう)
芽衣子(電車だけが流れ、時すらも、もしかしたら止まっているのかも……)
藍子「…………さん、……芽衣子さん!」
芽衣子「……ん、んん?あれ、呼んだ?」
藍子「そろそろ駅に着きますよ!早く支度しましょう!」
芽衣子「えぇっ!?あ、ホントだ!!いっけない!」
「まもなく~猫ノ森~、猫ノ森です」
芽衣子「んん~~~!!空気がひんやししてて気持ちいいっ!!」
藍子「ええ、少し寒いですけど空気が澄んでますね」
芽衣子「そうね、太陽が出てるとはいえちょっと羽織ったほうがいいかも」
芽衣子「さあ、まずはホテルにチェックインしましょっ!こっちよ!」
藍子「はいっ!」
芽衣子(私たちはホテルに荷物を預け、散策がてら藍子ちゃんと行きたかったカフェに行くことにした)
芽衣子(まだ陽は高く照っている、少し肌寒い午後)
芽衣子「さあ、ここよ」
藍子「うわあ、おしゃれなお店!カフェ〈クルル・カリル〉……不思議な名前ですね」
芽衣子「口コミサイトにも載ってない、猫ノ森の観光案内にチョコンと載ってるだけだったの」
芽衣子「でもね、ほら!店の前にある黒猫の像がとってもカワイイの!」
藍子「あっ、ほんとう!ちっちゃくてかわいい~!」
芽衣子「それにね、お店の中にあるテラスがね……」イラッシャイマセー
藍子「うわあ~~!キレイなテラス!!」
芽衣子「でしょー!私もうこれに一目惚れってカンジでね!きっと藍子ちゃんも気にいってくれるって思ったんだ♪」
藍子「この石でできた床がオシャレですね、控えめなんだけど、どっしりしてるっていうか」
芽衣子「そうそう、これで春先になるとここの庭園の花々が一斉に咲いてすごいんだって!」
藍子「へえ~!じゃあもう一回来なくちゃ、ですね!」
芽衣子「さあっ、何を飲もうか♪」
「お待たせしました、当店オリジナルの〈クロネコブレンド〉ティーと苺のタルトです」コト
「こちら、ミルクとお砂糖です。ごゆっくりどうぞ」
芽衣子「あっ、ありがとうございます~」
藍子「う~ん、良い香りですね」
芽衣子「こっちのタルトも苺たっぷりでおいしそう♪」
藍子「では、いただきます」
芽衣子「いただきまーすっ」
芽衣子(それから、私は藍子ちゃんとのティータイムをゆったりと過ごした)
芽衣子(電車の中でもたっぷりお話ししたのに、まだまだ話題は尽きなくて)
芽衣子(お仕事の話から他のアイドルの子の話、そしてプロデューサーさんのこと……)
芽衣子(初恋の話も聞きたかったけど藍子ちゃんの顔が真っ赤になっちゃって……)
芽衣子(でも、私だってそういう話をしようとするとちょっと恥ずかしかったりして……)
芽衣子(そうして、私たちだけの時間が流れていく)
芽衣子(空も山々も、ただただそこにあるだけでじっと動かない)
芽衣子(周りから見れば……私たちの過ごしているこの午後は)
芽衣子(気の遠くなるような長い長い午後に感じたのかもしれない)
芽衣子(夕暮れ一歩手前あたりまで私たちは話しこんでしまっていた)
芽衣子(冷たい風にあおられて私たちは同時にくしゃみをして、ようやくカフェを後にした)
芽衣子(その夜……)
芽衣子(ホテルで藍子ちゃんとお風呂に晩御飯に、そしてまたおしゃべりに花を咲かせた後)
芽衣子(日の変わらないうちに私たちは眠りについて……)
……?
ここは、どこだろう
猫ノ森の駅?でも、周りには何もない
あのもの言わぬ山々も、さざめく木々も、小鳥のさえずりやその姿すらない
汽笛が鳴る
蒸気が吹きあがる音が聞こえる
どうやら汽車が来るようだ
でも、汽車の姿はどこにもない
姿は見えないけど、確かに到着したようだ
だってほら、乗客たちが次々に乗りこんでいく
乗客の姿は?……もちろん見えない
でも、見えない窓からたしかに私を手招いている
私は見えない汽車に乗り、汽車はどこへともなく出発した
それから、気の遠くなるような、長い長い時が過ぎたように感じた
宇宙がもう一回歴史を紡いだくらいの永劫の時が、列車の中で過ぎていった
そうして私たちを乗せた汽車は、どこかの駅に着いた
見えない乗客が降りていく
私も降りることにした
ここは、どこだろう
”ここには道標もなく なんの目印もない”
”それどころか 道もない”
”振り返れば 今わたしたちが出てきた駅も”
”どこにも見当たらない”
………
……
…
藍子「さっ、芽衣子さん!起きてください!!」
芽衣子「う、……ううん……うん?」
藍子「寝ぼけてますか?もうすぐ私たちの降りる駅ですよ!」
芽衣子「え……駅?あ、あれ?あれ!?もう帰ってたんだっけ私たち……?」
藍子「ふふっ♪やっぱり寝ぼけてますね。ちゃあんと猫ノ森で帰りの電車に乗ったじゃありませんか」
藍子「それにほら、このキーホルダー。帰りの駅の売店で買いましたよね?」
芽衣子「え……?あ、黒猫の……」
芽衣子(そうだ、私は今日のお昼に帰りの電車を待っているついでに……)
芽衣子(おみやげ屋さんでみんなの分のおみやげを買って……)
芽衣子(そのときにこの黒猫キーホルダーを見つけたんだっけ)
芽衣子(……ああ、そうか)
芽衣子(私は帰りの電車の中で……あの夢を…………?)
芽衣子「あれ……?」
藍子「?どうしました?」
芽衣子「私……いまどんな夢を見ていたんだっけ?」
翌日・CGプロ
藍子「さ、雪美ちゃんにこれあげるね」
佐城雪美「あ……ぬいぐるみ……ペロにそっくり………」
雪美「藍子……ありがとう……」
藍子「うふふ♪喜んでもらえて嬉しい!」
前川みく「藍子ちゃん!みくにも猫のおみやげはないのかにゃ!?」
藍子「はいはい、みくちゃんにはこれです♪」
みく「うにゃあ~~~♪」
高峯のあ「…………藍子」
藍子「はい、なんですかのあさん?」
のあ「これ………頂いてもいい?」
藍子「つけネコヒゲ……いいですよ!」
のあ「…………にゃん♪」
藍子(あれ?私たちいつあのネコヒゲ買ったんだろう?)
芽衣子「はいっ!プロデューサーさんにもプレゼントですよ!」
モバP「………♪…………♪」
芽衣子「んもー、プロデューサーさあん!!」
P「うわっ!……なんだ芽衣子か。お、その手に持ってるものはおみやげか?さんきゅっ」
芽衣子「まったく、何してたんですか?」
P「あ、ああ、ゴメンゴメン。ちょっと気が早いけど次のカバーアルバム用に選曲してたんだ」
芽衣子「ええっ!?またCDのお仕事が決まったんですか!?」
P「い、いや、もしそういう仕事を取れた時のための情報収集段階って感じで……」
芽衣子「なあんだ。……って、それただ個人的に音楽聴きたかっただけじゃないんですかあ?」
P「それもある」
芽衣子「……ちひろさーん」
P「やめて」
芽衣子「……で、何聞いてたんですか?」
P「ああ、ほら、みくがカバーした曲あるだろ?あの人の曲さ」
芽衣子「みくちゃんのカバー曲って……たしか、『しっぽのきもち』の?」
P「そうそう。765プロさんからのツテのおかげでね」
P「で、今聞いているのは……」
おわり
分かる人にはわかると思いますが
モチーフ(というかインスパイア先?)は谷山浩子「休暇旅行」(天空歌集)です
本編の一部に歌詞を引用しています
アルバムのトップナンバーなのにいきなり壮大な曲です
きっと藍子ちゃんのゆるふわ魔法もこんな感じなのでしょう
私はめーこさんの笑顔に浄化されたいです
では、HTML化なるものをやってきます
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