モバP「芽衣子アフター」 (95)

モバマスの並木芽衣子ちゃん(22)のSSです。

よろしければお付き合いください。

ある日の昼下がり。
夏から秋の様相を呈してきた過ごしやすい空気に包まれうとうとしながら、午後の仕事に取り掛かる。


P「・・・・・・・・・」カタカタカタ

P「・・・・・・・・・」カタカタカタ ッターン



P「・・・・・・」カタカ タ カ タン



P(・・・・・・・・・ねむ)ウトウト


ちひろ「・・・・・・お疲れなら休んで構いませんよ??」


P「・・・あぁ、ちひろさん。でも、流石に報告書くらいはなんとか早くまとめないと・・・」

ちひろ「そんな『時差ボケしてまーす』って書いてあるような顔で言われても困ります」

ちひろ「・・・というか、昨日帰って来て、今日出せなんて言う訳ないじゃないですか」ハァ

ちひろ「まぁ旅行みたいなものだったとはいえ仕事で行っていたわけですから、この際有給でも使ってゆっくりするのもいいんじゃないですか??」


P「それならなおさら心置きなく過ごすために仕事は片付けとかないと・・・」


ちひろ「・・・・・・もう勝手にしてください。倒れても知りませんからね」ハァ


P「・・・・・・」


ちひろ「・・・・・・まぁ。報告書上げてくれるなら、これでも飲んでパパっとやっちゃってください」スタドリ ヒョーイ


P「ありがとうございます。ちひろさん」



ちひろ「あ、ちなみに天引きですからね。それ」ウィンク


P(鬼!!悪魔!!ちひろ!!)

--------約2時間後-------

P「・・・・・・ふぅ。こんなもんかな」

ちひろ「あら、意外と早く済みましたね」

P「向こうでちょこっとずつ消化してましたからね」

ちひろ「・・・・・・そんなことだろうと思いました。さ、終わったんでしたら今日のところはもう引き上げてください」シッシッ


ちひろ(事務所にいたら、また仕事抱えようとするだろうし)


P「・・・・・・お言葉に甘えさせてもらいます」

ちひろ「あ、帰る前に。有給どれくらい取りますか??」

P「あれ、冗談じゃなかったんですか??」

ちひろ「ガチですよ。というか、多分向こう数日はデスクワークはありませんよ」

ちひろ「営業なんかは適当に他の人で回すんで、気にしないでいいです」

ちひろ「まぁ、この数日で英気を養ってきてくださいってことで」


P「あー・・・、それでしたら3日でお願いします」

ちひろ「了解です。間違ってもここに来たり仕事に手をつけようとしちゃダメですからね」ピシッ

P「・・・・・・気をつけます」

ちひろ(・・・・・・このワーカーホリックめ)


ちひろ「何か予定的なものはあるんですか??これやりたいみたいな」

P「・・・・・・んー、家でゴロゴロしてるんじゃないですか」

ちひろ「えっ、Pさんそんなことできるんですか」マガオ

P(・・・・・・・・・)

 
 
 
P「・・・・・・ここ最近、してないですね。あはは」




ちひろ「はい決定です。あなたはこの三日間事務所と自宅に居ちゃダメです」


P「そりゃ横暴過ぎます!!」

ちひろ「黙らっしゃい!!どうせ家に居ても『あぁ、そういえばこんな仕事もまだやり残してたなぁ』とか思うに決まってるんだから、旅行か何か行けばいいんですよ」


ちひろ「一人旅だとあまり意味無さそうなんで、誰か誘って行ってらっしゃい。はい決定!!」


P「」

P「・・・そんな急に言われても、誘える人いないんですけど」


ちひろ(・・・・・・この朴念仁め。あなたに私を鬼や悪魔と罵る資格はありませんよーだ)フンッ

 
 
ちひろ「向こう数日仕事入ってない子がいますから、その子と一緒に行ってくるのがいいんじゃないかと」



P「そんな子ウチにいるんですか??みんなそこそこ売れてるから、そんなことは--------」




P「・・・・・・あ」


ちひろ「旅行好きですから、きっと喜んでくれますよ。・・・芽衣子ちゃん」

 
--------P宅にて--------

P(ライブツアーの疲れを取るためわざわざオフにしたのに、そこで旅行に誘うのはどうなんだ??)

P(そもそもプライベートでアイドルと旅行って業界的には完全AUTOなんじゃないでしょうか)

P(それを強要してくるちひろちゃんマジ悪魔!!でも家に居たら何か大きな力によってそれを知られるような気がする!!)



P(・・・・・・一応誘うだけ誘ってみるか。流石にこの2週間一緒にいた奴と、その上もう一回旅行に行こうとは思わないだろ)


P(・・・・・・でも、断られたらちょっとショック受ける気もする)




P「・・・・・・・・・だぁぁぁぁ!!俺は思春期青春真っ盛りの高校生か!!さくっと誘って、あっさり断られる!!以上!!」

 
P「えっと、『ライブツアーお疲れ様。ちひろさんに暇を言い渡されたから、明日か明後日暇ならどこかに出掛けないか??』。・・・・・・こんなもんでいいか」ポチポチ



P「・・・・・・送信、っと」ピッ




P(・・・・・・・・・)

P(・・・・・・ここ最近ずっと一緒にいたんだぞ??何を今更意識してるんだ)フゥ



P(・・・・・・・・・)

  
--------芽衣子宅にて--------

芽衣子「・・・・・・ん、んぅ」ムクリ


芽衣子(・・・・・・・・・帰って来て、そのまま寝ちゃってたのかぁ)



芽衣子「・・・ふー。旅行は好きだけど、このおうち帰って来て落ち着きを感じるのもいいもんだよねぇ」


芽衣子(・・・・・・時差ボケでほとんど一日中寝てただけだけど)


芽衣子「夕ご飯には・・・・・・ちょっと早いかな」

芽衣子「・・・・・・お風呂入って、さっぱりしよ」ノソノソ

 
 
芽衣子(・・・・・・ライブツアー、楽しかったなぁ)ジャーッ


芽衣子(ドイツってのも、なんか旅行みたいで。ライブも雰囲気良かったし)ワシャワシャ


芽衣子(・・・・・・ずっと、Pさんと一緒だったし)
ゴシゴシ

芽衣子(・・・もう少し、お仕事以外の時間とかあったら、良かったのになぁ)ザパーッ



芽衣子「・・・まぁ、今更言っても仕方ないかっ。またオフ明けたら頑張っていかないといけないからね」チャポン





芽衣子「・・・・・・・・・」



芽衣子「・・・・・・・・・」



芽衣子「はぁ・・・」

 
お風呂から上がって携帯をチェックすると、メールが何件か届いていた。


芽衣子(まず・・・、春菜ちゃんからだ。・・・・・・ふふっ。あたしに似合うメガネかー。今度一緒にショッピング行こうね、っと)


芽衣子(次は、風香ちゃん。・・・メイドの極意??え、あ、まだキャラ抜けきってないの!?・・・・・・えっと、それはメイド長のあいさんが一番詳しいよ、っと。・・・これ、あいさん怒るかな)



芽衣子(最後は・・・・・・)



芽衣子(・・・・・・えっ??)ビクッ

 
 
芽衣子「・・・P、さん??」



芽衣子(・・・なんだろ。何かあったのかな)



芽衣子「・・・え、これって・・・・・・。あ、明日ぁ!?流石に急すぎ!!でも明後日なら明日準備すれば、・・・大丈夫、かな??」


芽衣子「・・・・・・これって、どういうのなんだろ。ツアーの反省会、とかなのかな。・・・それとも--------」


芽衣子(・・・・・・その、仕事関係なしの、プライベートのやつ、なのかな)



芽衣子(なんて返信しよう・・・。と、とりあえず『明後日なら大丈夫だよ!!どこに行くか決まってるの??』っと)

芽衣子(流石にプライベートなんですか、なんて聞けないし・・・。これでいいよね)モンモン

芽衣子(・・・・・・でも、暇をもらったって書いてあるし、仕事は関係ないのかな)モンモン

 
 
芽衣子「・・・・・・うぅー!!」


芽衣子(なんでこんなドキドキしてんのよ、あたしはぁ!!)

芽衣子(・・・ドイツまで行って、ほとんど仕事のことばっか考えてたような人だよ??どうせ今回も----)ポワワワ



--------P「ライブツアーの反響がすごいぞ。よくやったな、芽衣子!!」

--------P「実はな、今後の活動方針は----」

--------P「あ、聞いてくれ。前言ってた旅行番組にお前が採用されたぞ!!」


芽衣子(・・・・・・とか、そんな感じになるし。きっと)


芽衣子「・・・・・・早く返信来ないかな」

芽衣子(・・・・・・というか、今、Pさんもう仕事は終わってるってことなんだよね??)

芽衣子(・・・次返信来たら、電話しちゃおうかな)

 
--------P宅にて--------

P「・・・・・・」ソワソワ

P(・・・・・・)アプリ ポチー

P「・・・・・・」チラッ



P「・・・・・・っ!!」ピロリン






P「・・・・・・明後日なら、平気、だと・・・??」


P(これって、行くってことなのか??)

P(ホッとしたようなそうでないよな、なんだかよく分からない気分だ・・・)


P「・・・どこに行くか、かぁ。全然考えてなかった」


P「どこか、よさげな場所なんてあるか・・・??」

 
P「・・・・・・・・・あ」ティン


P(これなら、そこまで変じゃないかな。・・・・・・大丈夫だよ、な??)


P「・・・『芽衣子が良ければ、前約束してた地元の案内して欲しいな』。これで、いいだろ。・・・・・・多分」ポチポチ ソウシンチュウ



P(・・・・・・別に、変な意味で誘ったんじゃないぞ。地元を案内してくれるって約束してくれてたから、そのお言葉に甘えただけだ)



P(・・・誰に言い訳してんだか、俺は)ピリリリリ ピリリリリ




P「って、うぉぉ!?で、電話??」


P(誰からだ??このタイミングだと・・・・・・、まさか)ポチッ

P「・・・・・・もしもし」

----芽衣子「も、もしもし。Pさん??あたし」


P「・・・いきなり電話掛かってきて、驚いたよ」

----芽衣子「なんか、メールだとまどろっこしくて。時間、平気??」

P「あぁ。今の俺はちひろさんに仕事を没収された、プータローだからな」

----芽衣子「ふふっ。なにそれ」

P「・・・でさ、明後日。その、なんだ。・・・平気なのか??」

----芽衣子「・・・・・・うん。大丈夫だよ。流石に、明日はちょっと急過ぎで無理だけど」

P「・・・・・・あのさ、誘っておいてなんだけど、しんどかったら無理しなくていいぞ??」


----芽衣子「む。それどういうこと??私が無理してPさんに付き合ってるってこと??」

P「あー、いや。ツアー明けのオフでさ。疲れが残ってるのに連れ回すのは申し訳ないから」

 
 
----芽衣子「・・・・・・ちゃんと、準備して来てよ??」


P「・・・はい??」

----芽衣子「・・・・・・本気でPさんのこと連れ回すから。万全の準備して来てね」

P「・・・・・・はい」

----芽衣子「・・・うん。よろしい」


----芽衣子「とは言っても、正直あんま案内できるとこないんだよね。田舎だし」

P「そうなのか」

----芽衣子「どうする。日帰りにする??どっかに一泊する??ウチでもいいけど」

P「いや、実家に泊まらせてもらうのは流石に申し訳ないから、遠慮させてもらうよ」

P「・・・・・・車で行くとしたら、どうなんだろう。あまり無いなら日帰りでもいい気がするな」

----芽衣子「そうだねー。むしろ道中のが楽しいかもねー」

 
  

 
P「和歌山まで時間掛かるだろうから、明日の夜出発とかでもいいか??」

----芽衣子「私はいいけど、事故とか起こさないでよ??」

P「・・・・・・善処します」

----芽衣子「善処じゃダメ。天地神明に誓って」

P「・・・・・・ちひろさんに誓って」


----芽衣子「・・・・・・うん。それでいいや」


P「まぁ、案内楽しみにしてるから。今日明日はちゃんと身体休めといてくれ」

----芽衣子「うん。分かってる。Pさんも、ね」

P「ん。了解」

 
----芽衣子「・・・・・・Pさん」

P「ん??どうした??」

----芽衣子「ありがと。約束、覚えててくれたんだね」

P「・・・あぁ。ドイツでも言われたし、出会った頃にもそんなこと言ってたなーって思ったからな」

----芽衣子「そう考えると、私たち結構付き合い長いのかもね」

P「確かにな。仕事がなーい!!なんて嘆いてた頃が懐かしいな」

----芽衣子「ふふっ。そうだね。それが今じゃ海外でライブできるんだから、世の中分からないもんだよね」

P「まだまだ、これからだよ」

 
----芽衣子「海外の次は、宇宙旅行でもしちゃうってこと??」

P「・・・・・・流石にそれは難しいかなぁ」

----芽衣子「私としては、もう少しお洒落な宇宙服があれば考えてもいいかなっ」

P「当分先の話になりそうだな、それは・・・」


----芽衣子「まぁそんな先の話は置いといて。・・・明後日。いや、明日か。楽しみにしてるからね」

P「うん。それじゃおやすみ」

----芽衣子「・・・Pさんもやっぱり時差ボケなんだ??」

P「あぁ。もう限界だ。睡魔に勝てん」

----芽衣子「うん。それじゃあね。おやすみ、Pさん」

 
 
P(・・・結局、約束してしまった)


P(・・・・・・ツアーに比べたら短いけれど、また芽衣子と二人きりだ)

P(・・・・・・しかも今度は、仕事じゃない)


P(・・・・・・これじゃ、まるで--------)



P(・・・・・・いやいや。それはダメだ流石に)ブンブン


P(・・・確かに、芽衣子といる時間は余計な気を使わなくて済むし、いつも楽しげで柔らかな雰囲気の彼女はそばにいて癒されることも多い)


P(・・・・・・けど、それ以上は、ダメだ。あんな子が彼女になんてなったら、きっと俺はドツボに嵌る自信がある。間違いない)



P(・・・・・・寝よ。あれこれ考えるのは、明日で、いいや)….zzzz

めいこうかわいい

 
--------翌日、夜、とある駅前にて--------


P(・・・この辺に、いるはずなんだけど・・・・・・。お、いたいた)

ロータリーのスペースに車を停め、芽衣子に声を掛けるために車を降りる。


P「おーい、芽衣子ー」ノシ

芽衣子「あ、Pさん。集合時間5分前に着いてるなんて、流石だね」

P「それを言うなら芽衣子だってそうじゃないか。待たせちゃったか??」

芽衣子「うーん。まぁぼちぼちかなー」

P「うっ、ごめん・・・」

芽衣子「ウソウソ。そんな待ってないから、気にしないで!!」


会話を続けながら、芽衣子を助手席へ促す。
この車の使用者にタバコを吸う人はいないが、一応消臭は済ませておいた。
・・・・・・気にならなければいいんだけれど。

 
芽衣子「・・・Pさんってこういう車乗ってるんだね」

P「いや、実家の車借りて来ただけなんだけどな」

芽衣子「・・・Pさんだってギョーカイ人なんだから、もっとカッコイイ車乗んなきゃダメだよー??」


P「・・・・・・心にもないことを言うのは、この口かー??」ホッペ ムニー

芽衣子「うぇぇー、ごめんなはーい」


芽衣子「・・・なんか、Pさんらしい車だよね。この車」

P「・・・・・・褒め言葉として、受け取っておくよ」

芽衣子「うん」


P「・・・出発するか」ブロロン ブロロン

芽衣子「レッツ、ゴー!!Pさん飛ばしていこっ」

P「・・・高速入ったら、な」

  
芽衣子「・・・・・・」ウツラ ウツラ

P「・・・・・・」

芽衣子「・・・・・・・・・はっ」

P「・・・・・・別に、寝てていいぞ??」

芽衣子「ううん!!だいじょぶ!!大丈夫だから!!」

P「・・・なら、いいんだけど」



芽衣子(・・・・・・昨日悶々としてて寝れなかったなんて、言える訳ないよ・・・)



P「・・・・・・大分走ったな。そろそろ一回休憩挟んどこうか」

芽衣子「うん。もう少しでパーキングエリアあるみたいだから、そこ入ろっ」

次のデートは10分前待っていよう

最寄りのパーキングエリアに入った。
多少の明かりと、人の気配。

想像と違ったのは、あまり駐車スペースが残っていなかったことぐらいだろうか。


P「・・・夜のパーキングエリアって、独特の雰囲気あるよな」

芽衣子「あー確かに。暗くてちょっと怖いけど、ワクワクするよね!!」


P「そうなんだよなー。・・・・・・っと、ちょっと失礼」

芽衣子(・・・・・・っ)


駐車のために、シートベルトの後ろに手を回される。
近くにある横顔が目に入った。

芽衣子(・・・・・・駐車する時にドキッとするっていうのは、こういうことなんだね)

 
芽衣子「おぉっ。一発で駐車するなんて、やるね。Pさん」

P「昔から、結構上手いんだ。駐車は」

芽衣子「私はちょっと苦手なんだよね・・・。こう、曲がりがついてこない感じが」

P「まぁぶつけず止められればいいんじゃないか??」



P「俺はトイレ行ってちょっと腹に入れるけど、芽衣子はどうする??」

芽衣子「・・・・・・スタイル気にするのが仕事のアイドルに、Pさんは夜食なんか勧めちゃうんだ??ふぅん・・・」ジトッ

P「・・・ごめん。配慮が足んなかったな」

芽衣子「でも、ちょっとお腹空いたし、何か食べようかなー」ケロリ

P(・・・・・・さっきの批難は何だったんだ・・・)

芽衣子「まぁまぁ。細かいことは気にしないで。それじゃ、ちょっと待っててね」

P「ん。そこらへんにいるから」

 
お手洗いと、夜食を済ませて、車内に戻る。
お互いコーヒーを飲んで、眠気対策もバッチリだ。

芽衣子「・・・・・・ふー、おいしかったね」

P「ん。そうだなー。腹ごしらえも済んだし、行くか」

芽衣子「あ、そうだ。ねぇPさん」

P「ん??」

芽衣子「次の休憩まで、私が運転していい??」

P「・・・・・・だ、大丈夫なのか??」

芽衣子「・・・・・・車、少ないし。多分、平気だと、思うよ??」

P(目が泳いでるし・・・。不安だ・・・・・・)

芽衣子「・・・だってさ、ずっと運転してたらPさん疲れちゃうでしょ」


P「・・・・・・ありがとう。お言葉に甘えようかな」

芽衣子「・・・うん。頑張るから、全速力で!!」

P「安全運転で、な??」

芽衣子「・・・はぁい」

 
芽衣子「・・・・・・」ブロロン ブロロン

P(・・・・・・意外と、大丈夫かも)

P(もともと高速ってのは走りやすくできてるもんだ)

P(追い越しとか考えず走ってれば、普通困ることはない)

芽衣子「・・・・・・・・・」

P(・・・・・・めっちゃ緊張してたけど、ちょっと余裕もできてきたみたいだ)


芽衣子「・・・私ね」

P「うん??」

芽衣子「『免許取ったら、小旅行が気軽にできる!!』って思って取ったんだ」

P「まぁ、確かに」

 
芽衣子「・・・でもさ。最近まで、私の免許は身分証明にしか使われてこなかったわけ。Pさんにスカウトされちゃったから」

P「・・・・・・なんか、ごめん」

芽衣子「あ、責めてる訳じゃなくって。だから、それが今できて、ちょっと嬉しいなって言いたかったの」

P「・・・今度から、そういう仕事も検討してみるよ」

芽衣子「うん。お願いね!!美世ちゃんとかピッタリだと思うから」

P(・・・・・・芽衣子と美世、か。二人とも元気があって華があって、いい感じにまとまりそうだ)



芽衣子(・・・・・・しまった。自分で仕事の話振ってどうするのよ・・・)

芽衣子「あっ、そうだ。後で今のちひろさんに言っちゃお。助手席で仕事の話してましたー、って」

P「なっ!!もともと芽衣子が言い出したんだろ??それは勘弁してくれ・・・」

芽衣子「んー。どうしよっかなー」

 
芽衣子「・・・・・・一個お願い聞いてくれたら、水に流してあげる」

P「できる範囲のことにしてくれよ??」

芽衣子「・・・・・・うん」




芽衣子「・・・・・・Pさん」



芽衣子「・・・・・・・・・私の、私の・・・」ドキドキ



芽衣子(・・・・・・・・・お、女は度胸だ!!頑張れ、私!!)




芽衣子「・・・・・・駐車、手伝って??」



P「・・・・・・お、おう」

芽衣子(・・・・・・・・・私の、意気地なしめ)ハァ

 
芽衣子「えっと、この右のとこでいいんだよね??」

P「うん。左と前は俺が見とくから、右すらないように曲がりながらゆっくりバックな」

芽衣子「ら、らじゃー」

P「焦らなくていいからなー。前は平気だぞ」

芽衣子「右は・・・・・・多分、大丈夫」

P「そろそろハンドル真っ直ぐにして、そうそう、それでバック」

芽衣子「・・・お、おぉ。何だか上手くいった!!」

P「上手いじゃないか。やったな」


芽衣子「へへっ。ありがとっ、Pさん!!」イェーイ

 
それから、休憩を挟みながら交互に運転を代わりながら走ること数時間。
朝日を見上げるようになる時間に、目的地に到着した。

山がちな地形と、緑豊かな風景が目に入る。

芽衣子「・・・わ、懐かしい景色!!」

P「のどかでいいところだな」

芽衣子「・・・・・・んー、この辺りで観光できそうなとこだと、洞窟と温泉とかかな。どう??Pさん」

P「へぇ、洞窟なんてあるんだ。行ってみようか」



P「空気がひんやりしてて気持ちいいな」キョロキョロ

芽衣子「でしょー。なんかゲームで探検してるみたいだよね、ここ」

P(地下、洞窟、探検・・・。あのダンジョンは二度と攻略したくないなぁ・・・)

 
P「ふー、いい湯だったな」

芽衣子「そうだねー。お肌もツヤツヤで言うこと無しかなっ!!」ペカー

P「・・・意外と芽衣子って髪長いんだな」

芽衣子「あー・・・、今はウェーブかかってないからそう見えるのかもね。Pさん的にはどっちがいいと思う??」

P「贅沢な質問だな・・・。普段のふわふわした髪型は芽衣子らしさが出てていいと思うし、そういう髪型はこう、ちょっと大人びて見えていいと思う」

芽衣子「・・・そっか。つまりいつもは私、子供っぽいってことなんだね」フーン

P「あ、こら拗ねるな!!別にそうは言ってないだろ!!」

芽衣子「・・・別にいいですよーだ」ツーン

P(・・・・・・そんなかわいくむくれられても困るんだけどなぁ)

 
芽衣子「・・・・・・Pさん。あのね、まだ時間あるよね??」

P「おう。別に急ぎじゃないからな」

芽衣子「・・・ここからさ、ウチ、そんな遠くないんだよね」

芽衣子「・・・・・・お母さんに話したらさ、是非挨拶させてって言ってて」




芽衣子「・・・だからさ、その、ウチ・・・・・・来ない??」ウワメヅカイ





P「」



P(・・・・・・こんな顔されて、断れる男がいようか(反語))

ご家族への挨拶ですね分かります

 
芽衣子父「おぉ、君がPくんか!!」

芽衣子母「娘がお世話になっております。でも、聞いてた通り格k--------」



芽衣子「だぁぁぁぁ!!言わんくていいからそんなことは!!それより、何で、お父さんもう酔ってるの!?」


芽衣子の実家に着いて、玄関を開けるやいなや、二人に出迎えられた。
しかも様子を見るに、父親の方はもう既に酔いが回っているようだ。


芽衣子母「あなたが帰ってくるって聞いて舞い上がっちゃって・・・」

芽衣子父「しかも、こんないい男を捕まえて来たんだからな!!」

芽衣子「あぁもー!!そんなんじゃないって言ってるでしょ!?大体そういうのダメだから、職業的に!!」

芽衣子母「でも、一緒に旅行はしちゃうんでしょ??」

芽衣子「そ、それは・・・」///

芽衣子父「こないだなんてドイツに2週間も行っていたみたいじゃないか??婚前りょ--------」


芽衣子「お母さん!!この酔っ払い黙らせて!!」

 
玄関での出迎えが終わると、今での夕食となった。
一応車で来たためアルコールは飲まないつもりだったのだが----


芽衣子母「まぁまぁ一杯どうぞ」

P「いや、今日車で来ているので・・・」

芽衣子母「あら、今日は泊まっていかれないの??てっきり・・・・・・」


芽衣子「え、私日帰りって言ったよね??」

芽衣子母「別に明日仕事があるなら別だけど、そうでないならあなたもゆっくりしていきなさいな」

芽衣子父「さぁPくん、一杯グーっと行ってくれ!!」


P(・・・これ飲んだら引き返せないぞ。・・・いろんな意味で)

P「・・・・・・・・・いただきます」ゴクッ

芽衣子父「おぉ、いい飲みっぷりだ!!」

 
芽衣子「ちょ、Pさん・・・」

芽衣子母「あんたも観念しなさい。・・・・・・ちゃんと泊まれる準備はしてあるから」

芽衣子「・・・はぁ??」

芽衣子母「・・・・・・今日くっついちゃなさいよ、まだなんでしょ??」ボソッ

芽衣子「ちょっ、母さん、何言ってんの!?」

芽衣子母「どんな人かと心配してたけど、いい人そうじゃないの」ケラケラ

芽衣子「それは、そうだけど・・・・・・」

芽衣子母「ガッとやってチュッと吸って・・・・・・」

芽衣子「はぁ!?もう、ちょっと、母さんも酔ってるの!?」

芽衣子母「いーえ、全然」


芽衣子(そっちのがタチ悪いよ、もう!!)

 
芽衣子父「・・・で、どうですか。ウチの芽衣子は」

P「いつも明るくて、仕事にも一生懸命で、本当にいい子ですよ」

芽衣子父「いやいや、そういうことではなくてですな」


P「あー・・・、えっと」

P(外堀が!!俺の外堀ちゃんのライフが!!)ダラダラ


芽衣子父「まぁ職業柄とはいえ数多くの美女才女を間近で見てきたPくんなら、選り取りみどりでしょうがな」


P「いやそんな!!確かに周りのアイドルのみんなは魅力的ですが!!自分の方がそれに釣り合う程のものではないもので・・・・・・」

芽衣子父「・・・それは、そんな男に支えられている芽衣子もまた、大したことないと。そういうことですかな??」


P「そんなことはありません!!絶対に!!自分は、彼女をプロデュースできることを、その、誇りに思ってますから!!」

 
芽衣子父「・・・きっと、芽衣子もそう思ってますよ」


P「・・・・・・っ」




芽衣子父「・・・・・・芽衣子がウチに男を連れて来るのは初めてですがね。きっとアレはアレなりにいろいろ考えて、連れて来たと思うのですよ」


芽衣子父「・・・親バカかと思われると思いますが、芽衣子にだって多少は人を見る目があるでしょう」


芽衣子父「ですから、まぁそう自分を卑下しないでください。・・・芽衣子のためにも、Pくん自身のためにも」


P「・・・・・・ありがとう、ございます」

P(・・・・・・やばい、酒のせいか、涙腺が緩んでる)ウルウル

 
 
芽衣子母「二人とも相当酔ってるのかしらね。本人がすぐそこにいるのに」ニヤニヤ



芽衣子「・・・・・・っ」///


芽衣子母「・・・ついでの戯言だけどね。私も父さんも、心配してたのよ。あなたのこと」

芽衣子「・・・・・・え??」

芽衣子母「ろくに男と付き合ったこともないのに『アイドルになってくる!!』なんて行って飛び出して行って」

芽衣子母「都会のヘンな男に引っかかるんじゃないかとか、芸能界のことはよくわからないけど、そういうゴタゴタに巻き込まれちゃうんじゃないかとか・・・ね」


芽衣子母「・・・アンタ、ちょっと抜けてるとこあるからね」

 
芽衣子母「・・・・・・でも、良かったじゃないの。いい人に巡り会えて」


芽衣子母「心から信頼できる人に出会えるなんて、そう何度も無いわよ」



芽衣子母「どういう付き合いになるかはアンタとPさん次第だけどね。大事にしなきゃダメよ??そういう出会いは」



芽衣子「・・・・・・っ!!言われなくっても、わかってるよぉっ!!」フイッ


顔を逸らしたのは、いろいろ口うるさいから腹が立ったからだ。

本当に、それだけだ。


芽衣子「・・・・・・ちょっと、外の空気浴びてくる」スタスタ


芽衣子母「・・・はいはい。いってらっしゃい」ガチャッ バタン

 
芽衣子父「----おぉ、それでは彼女もPくんの事務所に所属してるんですか??」

P「えぇ。彼女はウチを代表すると言ってもいいアイドルですね」


芽衣子父「いやぁ、あの歌や雰囲気もさることながら、あのギャップがツボに入ってしまって!!」

P「そこが彼女の強みというか、個性ですからね」


芽衣子父「して、どちらがPくんには魅力的ですかな??」

P「そりゃもちろん芽衣子ですよ。活躍の場所はちょっと違いますけど、彼女に負けないほどの力を持ってますから」

芽衣子父「はっはっは!!そこまで言ってもらえる、とは、嬉しい、限りですなぁ・・・」グッタリ


P「ちょっ、お父さん。大丈夫ですか!?」

芽衣子父「・・・まだ、君に、お父さんと呼ばれる筋合いはないぞー・・・」

 
芽衣子母「あぁ、ごめんなさいね。この人弱いくせに飲んじゃうから」

P「いえ。いろいろ話せて良かったです」

芽衣子母「ありがとう。この人のことは任せて頂戴。それより、外にいる芽衣子を迎えに行ってあげてくれないかしら」

P(・・・・・・あれ。ホントだ。いつの間にか、芽衣子がいなくなってる)


P(・・・いや、むしろ。いつまでいたんだ??)タラー


P(・・・・・・よく覚えてないけど、とんでもないこと口走ってた気がするぞ??)ダラダラ



芽衣子母「多分出て左行ったとこにある川の土手にでもいると思うから、よろしくね」


P「は、はい」

 
芽衣子「・・・・・・酔ってるからって、いろいろ口走りすぎだよ。父さんも、母さんも、・・・・・・Pさん、も」ハァ

家のすぐそばの土手に腰を下ろす。
昔から、考え事をするのはいつもここだ。


夏場は足を水に浸けて、考え事をしていた。
水の流れが、自分の考えをスッキリさせてくれる気がしていたからだ。

流石にこの季節ではそうはしないが、水の流れを見ているだけでもそういった感じを覚えることができる。


芽衣子「・・・・・・Pさん、と、かぁ・・・」


芽衣子(一緒にいて、すごく落ち着くよね。ツアー中も、ずっと一緒だったけど、全然しんどくなかった)


芽衣子(・・・・・・あんな感じでいろんなとこ行けたら、楽しいんだろうなぁ)


芽衣子(こないだみたいにお仕事でも、今みたいにプライベートでも)

芽衣子(・・・でも、ダメだ。私、きっと甘えちゃうんだろうなぁ。Pさん、優しいから)


芽衣子(・・・・・・甘えてばっかで、支えられないだろうし。そしたら、いつかPさんの方が疲れちゃう、よね)


芽衣子(・・・Pさんだったら、ホントに選り取りみどりだもんね。別に、私じゃなくても、素敵な女の子、いっぱいいるもんね)



芽衣子(・・・・・・ダメだなぁ。こんな悩むなんて、らしくないのにな。私も、酔ってるの、かな)


芽衣子(・・・・・・・・・P、さん)




P「あ、ホントにいた」



芽衣子「っ!?ぴ、Pさん!?」ビックゥゥゥ!!

 
P「うぉっ!?ご、ごめん。驚かせちゃったか」


芽衣子「あ、いや、うん。ちょっと、考え事してただけだから」

P「・・・隣、いいか」ストン


芽衣子「・・・・・・うん」



P「・・・・・・本当に、いいところだな。ここ」

芽衣子「・・・・・・え??」

P「のどかで、穏やかで、来てよかったよ」

芽衣子「・・・ウチの中で、散々お父さんと騒いでたくせに」

P「あ、あー。聞いてたのか」ポリポリ

芽衣子「あの距離で、聞こえないわけないでしょ!!聞いてるこっちが恥ずかしかったんだから!!」

 
P「う、ごめん・・・。でも、酒の勢いとは言え、嘘は言ってないから」

P「・・・・・・お前は、自慢のアイドルだよ。本当に」



芽衣子「・・・・・・・・・私も、お酒の勢いで言わせてもらうよ??」フゥ


芽衣子「・・・・・・アイドル、だけ??Pさんにとって、私は、担当のアイドルって、事務所の同僚って、それだけの存在??」


芽衣子「御法度って分かってるけど、言うから。私が、一緒に旅行したいって、実家に挨拶来て欲しいって言ったのは--------」




芽衣子「・・・・・・Pさんが、好きだから、なんだよ??」


P「・・・・・・」

 
芽衣子「・・・ごめんね、困っちゃうよね。こんなこと、言われても」


芽衣子「あーあ。ホントは言わないつもりだったんだけどな。やっぱりお酒って怖いね。これからは気を付けないと」


芽衣子「・・・・・・まぁ、酔ってる時の話だし。忘れて、くれて・・・っ、いいから」


芽衣子「・・・ごめん。先戻るね」ガシッ


戻ろうと立ち上がろうとしたが、隣のプロデューサーに腕を掴まれてしまった。
軽く尻餅を付きそうになったが、それ以上に自分の中で不満が爆発する。


P「・・・・・・ズルいだろ。言い逃げなんて」

芽衣子「・・・っ!!ズルいのは、Pさんじゃない!!」


芽衣子「これまで一緒にいたけど、ほとんど仕事の話ばっかだったよね??でも、他の子の手前、仕方ないかなって思ってたよ!!」


芽衣子「でも!!こないだのツアーの時だって、二人で、ちょっと旅行みたいだなって思ってたのに!!でも、仕事の話しかしなかったのに!!」



芽衣子「・・・今になって、お酒飲んで、あんな風に言うなんて、ズルいよ・・・・・・っ」

  
P「・・・・・・今日、芽衣子のお父さんとお母さんに会って、気づいたんだ。覚悟が足らなかったって」


P「・・・・・・二人とも、覚悟を持って芽衣子を俺に預けてくれているのに、俺はそれに対して、不誠実だったなって思った」

P「仕事柄ダメとか、業界が許さないとか言って、お前とも、お前を支える人とも向き合えてなかった。・・・・・・ホント、今までごめんな」


芽衣子「・・・・・・P、さん」


P「俺は一人じゃ何もできないんだ。なにせ裏方だからな。表舞台に立つ奴がいないと、ただの冴えないサラリーマンだ」


P「そのくせ一人でなんでもやってける程、器用でもエネルギッシュでもないんだ。情けないことに」


彼女の肩に手を回して、優しくこっちに向くように促す。
月明かりの中で、目を少し赤く腫らした芽衣子と視線が重なった。


P「・・・・・・芽衣子。好きだ。大好きだ」


P「だから、これからも、お前のこと支えさせて欲しい。・・・俺のこと、支えて欲しい」



P「・・・・・・だから、これからも、俺と一緒に、いて欲しい」

 
芽衣子「・・・・・・酔ってるからって言い過ぎだよ。いろいろ」フィッ

P「お互い様だろ、そんなの」

芽衣子「・・・・・・・・・私、支えになれる程、強くないよ??」

P「そばで笑っててくれれば、それでいいんだ。俺はお前のファン第3号なんだからな」



芽衣子「・・・なんで3なの??・・・・・・・・・あっ」

P「あぁ。きっとその人たちは、お前が生まれた時から、お前のファンだった人たちだからな」

P「でも、お前を大切に思う気持ちは負けてないからな。勘違いするなよ??」



芽衣子「・・・そんな恥ずかしい台詞、よく言えるね」

P「全く、酒の力は恐ろしいもんだな」

芽衣子「あははっ。ホントにね!!・・・・・・ホント、怖かったよ」ギュッ

P「うん。今までごめんな。これからは、逃げたりしないから」ギュウッ

 
 
芽衣子「・・・ホントに??」


P「あぁ。本当だぞ」

芽衣子「・・・・・・なら、ちゅー」



P「・・・・・・は??」




芽衣子「・・・・・・ちゅーしてくれたら、許してあげる」///


P「」


P「」



P(謝罪を要求されたと思ったら、キスをせがまれたでござる)

P(な、なにを言ってるか--------)

 
 
芽衣子「・・・・・・うそつき」ジトッ


P「え、いや。・・・キスって、・・・キスだよね??鱚じゃないよね??」


芽衣子「・・・あ、ほっぺとかダメだからね。ちゃんと誠意見せてよ??社会人なら、誠意の大切さわかるよね??」ズイッ


P(あぁぁぁ、顔近い!!甘い匂いするし!!唇すごく柔らかそうだし!!頭がフットーしちゃうよぉ!!)


芽衣子「・・・・・・初めてなんだから、ちゃんと、してよね」

P「・・・・・・っ」


P(・・・・・・そうだ、腹括ってるのは、お父さんお母さんだけじゃないんだ)

 
P「・・・・・・芽衣子。目、閉じて」


芽衣子「・・・ん。おでこも、ダメだからね」

P(・・・ちょっと、震えてる。気温のせい、とかじゃないよな)


P(・・・・・・時間掛かっちゃって、ごめんな。もう、離さないからな)




P(・・・・・・芽衣子。大好きだ)チュッ



芽衣子(・・・うぁ。今、しちゃったんだよね??男の人も、やらかいんだ・・・)ポー



芽衣子「・・・・・・しちゃった、ね」

P「・・・・・・しちゃった、な」

俺「……しちゃった、ぜ」

 
 
芽衣子「・・・もう一回って言ったら、怒る??」///



P「・・・・・・怒らない。けど、しない」


芽衣子「・・・な、なんで??やだった??」

P「・・・抑え、利かなくなりそうだから」

芽衣子「・・・・・・あ」



P(酒の酔いもあって、ホントに理性が吹き飛びかけてる)

P(これ以上キスなんてしたら、間違いなく間違いが起こる)




P「・・・・・・ごめん」

芽衣子「・・・う、ううん。あ!!そ、そろそろ戻らないと!!遅いとお母さんうるさいだろうし!!」

P「そ、そうだな!!そろそろ、体も冷えて来ちゃうもんな!!」

芽衣子「うん!!帰ろ!!」

 
芽衣子母「あら、お帰りなさい」


芽衣子「・・・ただいま」

P「遅くなってすみません」

二人で家に帰ると、最初と同じように芽衣子のお母さんが玄関で待ってくれていた。
・・・なにやら少しにやけているのが気になるが。


芽衣子母「ごめんなさい。迷っちゃいました??」

P「いえ、おっしゃった場所にいましたけど・・・」



芽衣子(・・・ちょっ、Pさん・・・・・・!!)

芽衣子母「随分二人ともお顔が赤いようですけど、酔いが回ってらっしゃるのかしらね??それとも--------」

芽衣子「そ、そう!!風に当たってたら余計に酔いが回っちゃって!!」

P「そ、そうなんですよ。やっぱり身体が冷えると良くないみたいですね!!」

 
芽衣子母「そうですね。あんまり長い時間外にいると、身体が冷えてしまいますもんね。ふふふっ」


芽衣子母「・・・そのまま寝るのもよくないでしょうし、二人とも”身体を温めた”方がいいんじゃないかしら??」


P「」
芽衣子「」


芽衣子母「あら、どうしたの??二人とも??」

芽衣子「お、お母さん!!いくらなんでも、そんなこと・・・っ!!」///



芽衣子母「あら、アンタ、お風呂も入らず寝るつもり??」





芽衣子「・・・え、お風、呂??・・・・・・あ」

芽衣子母「・・・・・・芽衣子??なn----」



P「・・・あ。いや、僕たちここに来る前に温泉に入ってきたんです!!だから、大丈夫かなって!!そうだよな、芽衣子??」アセアセ

芽衣子「あ、うん!!そうだよ!!だから、平気だよ!!」


芽衣子母「あら、一緒に温泉なんて。そうだったの。それじゃ着替えて寝るだけでいいかしらね」


芽衣子「う、うん」

芽衣子母「Pさんは着替え持ってらっしゃるの??ウチの主人のをよければ使ってくださいな」

P「いえ、一応持ってきてるので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

芽衣子「それじゃ、私着替えてくるね」トテトテ

芽衣子母「はいはい。私はもう寝るから。芽衣子もPさんも、おやすみなさい」


芽衣子「おやすみー」

P「おやすみなさい」




P「さて、俺も着替えようかな」ガサゴソ


P(・・・・・・あれ、そういえば、俺どこで寝ればいいんだろう??)

P「・・・・・・ん??」ドタドタッ



芽衣子「お母さん!?どこ!?」

P「ちょっ、慌ててどうした??」


芽衣子「ぅあ・・・っ。P、さん」///


芽衣子「ど、どうしたもこうしたもないよ!!わ、私の部屋に・・・っ!!」///

 

芽衣子母「ちょっと芽衣子、夜中なんだから、騒がしくしないで頂戴」


芽衣子「ちょっとお母さん!!アレどういうこと!?」

芽衣子母「・・・アレじゃ、分からないんだけど」ハテ

芽衣子「とぼけないでよ!!なんで、私の部屋に、ふ、布団が・・・」


芽衣子母「あ。それは、あなたたちの帰りが遅かったから準備しておいたんだけど」



芽衣子「そういうことじゃなくって!!なんで、その、布団が並んでるの!?」///




P「ファッ!?」



P(ま、まさか、today's俺の寝床は・・・・・・)

芽衣子母「空き部屋がないんだからしょうがないじゃない」


芽衣子「しょうがなくないでしょ!?客間が空いてるはずでしょ!?」

芽衣子母「お父さんが寝てるから、ダメよあそこは。お酒飲んだ日はいびきがうるさくって」


芽衣子「何のための客間よ!!」

芽衣子母「あ、芽衣子がいやなら、普段お父さんが寝てるところでPさんに寝てもらうのでもいいけど」



芽衣子「な、なぁっ・・・・・・!!」///


芽衣子母「Pさん的には、どっちがいい??私は喜んで歓迎するけど」



芽衣子(ぐっ・・・・・・!!なんなのなんなのこの状況は!?)

芽衣子(私の部屋に来るのは恥ずかしいけど、お母さんと一緒に寝るのはなんとなくすっごくやだ!!)

  
P「え、あの・・・。迷惑だと思うので、こたつで寝かせてもらうというのは」

芽衣子母「せっかくのお客さんをそんな風にもてなせないわ」


芽衣子(なら客間を空けて!!お願いだから!!)


芽衣子母「それに、迷惑なんて”私は”全然思ってないから、どうぞ遠慮せずに」チラッ



芽衣子「・・・・・・っ!!・・・わ、私だって」

P「・・・め、芽衣子さん??」


芽衣子「・・・迷惑なんかじゃ、ないから!!むしろ喜んで歓迎するから!!Pさんは、私の部屋で寝るから!!はい決定!!」



P「・・・・・・お、おい芽衣子・・・??」


P(この感じ、ついこないだもあったぞ!?)



ちひろ「・・・・・・っくしゅっ!!うぅ、風邪かな・・・」

  
芽衣子「・・・・・・着替えたら、来て。それじゃ」トテトテ

芽衣子母「あら残念。でも、そこまで言われたら仕方ないわね」



芽衣子(お母さんの手のひらの上で転がされた気がするよ・・・・・・。うぅ・・・)


芽衣子母「・・・私は本当にもう寝るけど、もう一度言っておくわよ??」



芽衣子母「夜中なんだから、”あまり騒がしくしない”ようにね??それじゃ、おやすみなさい」ニッコォ




そそくさと着替えを済ませ、寝る支度を整えた。
そう後は寝るだけ。寝るだけ。


P(・・・・・・部屋に入ったら、寝るだけ。寝る。ねる。ねるねるねるね--------)コンコン


芽衣子「・・・どうぞ」


P「おじゃま、します・・・」ガチャリ

  
P(・・・うわ、ほのかに、さっきと同じ匂いがする。これが、芽衣子の、部屋なんだ)

P(そ、それに・・・・・・)



P(・・・パジャマ姿の芽衣子が、かわいい・・・・・・っ!!)

P(布団の上にちょこんと座る芽衣子の殺人的なかわいさ・・・っ!!圧倒的、圧倒的なふわふわ感・・・っ!!)

P(オレンジのちょっとダボっとしたパジャマが、犯罪的に似合っている・・・っ!!)



芽衣子「・・・・・・そんなジロジロ見るの、デリカシーないよ!!」///


P「ご、ごめん!!そうだな!!いやな思いさせちゃって、ごめん」

  
芽衣子(・・・・・・どうしよ。見られるのは恥ずかしかっただけど、嫌じゃ、なかった)

芽衣子(・・・アイドルだから??見られるのが、仕事だから、なのかな・・・)


芽衣子(・・・・・・ううん、違うよね。Pさんだから、嫌じゃないんだよ、ね)



P「・・・もう夜も遅いし、寝ようか」


芽衣子「・・・・・・うん。そうだね」

芽衣子「それじゃ、電気、消すね??」


P「・・・・・・うん。おやすみ、芽衣子」

芽衣子「・・・おやすみなさい、Pさん」パチン



----------
初めの導入に(22)とある通り、そういうことです。
そういうのNGって方いたら、ブラバお願いします。

むしろ(22)だから期待してる

  
結局並べた布団にお互い包まることになった。
気恥かしさから、どちらからともなく背中を向けて横になってしまう。


芽衣子(・・・・・・どうしよ、寝方が、わかんなくなっちゃった・・・)

芽衣子(心臓の鼓動って、こんなにいつもはうるさくないのに)ドキッ ドキッ

芽衣子(目を瞑ってれば、5分くらいで寝付けるのに)ソワソワ


芽衣子(・・・・・・隣に、Pさんがいるだけで、こんなに違うなんて)

芽衣子(・・・Pさんが、いるんだよね。背中の向こう側に)


芽衣子(・・・・・・もう、寝ちゃったのかな。わかんないや)

芽衣子(・・・・・・ついさっき、キス、しちゃったんだよね)ポー


芽衣子(・・・・・・私は、もう眠った。薄目は開けてるけど、もう寝てる)


芽衣子(・・・だから、ちょっと寝返りを打っても、別に平気。うん。平気)


芽衣子(・・・・・・寝返り、打つだけだから。ホントに、それだけ)




ごろん。不自然じゃないくらいの速さで、不自然じゃないくらいの動きで、身体の向きを180°反転させる。

少し、彼との距離が詰まる。それだけ。



・・・・・・それだけのはずだったのだが。

  
芽衣子(・・・・・・な、なんで)


芽衣子(・・・同じタイミングで、寝返り打つとか聞いてない!!聞いてないよ!!)///


思ったより距離が詰まってしまい、寝た振りを忘れてはっきり目を見開いてしまう。
そして、そうなったのは、何もひとりだけではなかったようだ。

はっきりとは見えないけど、一瞬目を見開いたように見えた。



芽衣子(・・・・・・Pさんも、起きてる、の??)


芽衣子(・・・わかんない。わかんないけど、これって・・・・・・)



ふと、向かいにいる男の顔の一部が目に入る。
月明かりしか部屋に入らないため暗がりだが、いやにはっきり見えた気がした。

  
--------『・・・もう一回って言ったら、怒る??』


芽衣子(・・・・・・なに、考えてるの、私は。寝るだけって、言ったじゃない)


芽衣子(・・・でも、あの時、ふわって、したよね。すごく、安心できたよね)


芽衣子(・・・・・・寝てる、よね。疲れてるもんね、Pさん)


芽衣子(・・・一回。一回だけ。そしたら、寝よう)


芽衣子(・・・・・・いいよね??さっきはPさんからだったもんね??私からしても、許してくれるよね??)


布団の中をゆっくり移動して、隣の布団に少しだけ侵入する。

 
芽衣子(・・・・・・P、さん)

芽衣子(・・・こっちのお布団も、あったかいな。これ、Pさんの、暖かさなんだよね)



芽衣子(・・・・・・P、さん。一回だけ、だから。・・・許してね)チュッ


芽衣子(・・・・・・頭、じんってする・・・。これ、すごい・・・)チュゥゥッ


芽衣子(・・・一回だけ、だから。もうちょっとだけ、もうちょっと、だけ・・・)チュッ



芽衣子(・・・・・・ん。・・・ふぁ。どうしよ、止めたく、ない)

芽衣子(・・・でも、Pさん、きっと起きちゃうから。・・・・・・おしまいに、しよ)チュッ



芽衣子「・・・・・・ん、はぁ・・・っ」///



芽衣子(・・・・・・戻ろ)

 
・・・だけど、それが達成されることはなく。

なぜなら。


芽衣子「・・・・・・P、さん??」ガシッ


布団の中から伸びる二本の腕で、彼の布団の中に再び引き摺り込まれてしまったからだ。



P「・・・俺、言ったよな??」グイッ

芽衣子(え、いつから、起きてたの??)


P「これ以上したら、抑え利かないって」

芽衣子(・・・・・・もしかして、ホントに、寝返りの時から-------)



P「その上、布団の中に入り込んでくるなんて、わかってるんだよな??」

はよはよ

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