娘「エルフと一秒でも長く居たい」 (77)

これはハーフエルフの少年と彼に育てられた人間の娘の話

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○街角

娘友「あーあ、なんで登校日なんてあるのかな。 害悪いがいの何物でもないわ」

娘「ほんと、特に授業があるわけでもないのにね」

娘友「あんたは朝から告白とお誘いだらけだったわね」

娘「ほんと、いい迷惑だわ」

娘友「いっそ誰かと付き合ってみれば? そうすれば収まるでしょ」

娘「……以前試したことがあるけど、それはそれで面倒なのよ」

娘友「そうなんだ、誰と付き合ったの?」

娘「男子」

娘友「へょ!! なにそれ、初耳よ」

娘「そりゃ聞かれなかったもの」

娘友「どうなったの、なんでわかれたの、どこまでいったの、キリキリ白状しやがれ! てやんでぇいべらんめぇ!!」

娘「誰よあなた。 そうはいっても5,6年くらい前の話だから」

娘友「なんだ結構前なのね。 で、どこまでいったの?」

娘「どこまでって、何なにもないわよ」

娘友「じゃあなんでわかれたのよ」

娘「んー? よく覚えてないわ、確かあいつが言い出したハズよ。 これ以上付き合えないって」

娘友「そーなの!?  以外~、でも付き合ったことがあるならもしかして娘は男子のことをまだす、すす好きなん? 好きやねん?」

娘「……(暑さで脳がやられたのかしら?)あいつのは弟みたいなものよ、今も昔もね」

娘友「ふーん、ホントー?」

娘「なによ」

娘友「あたしたちの友情に誓って嘘偽りはないわね」

娘「嘘をつく必要がないわね」

娘友「本当に本当? だって男子君って……」

娘「あーもー、しつこいわね。 友達やめようかしら」

娘友「わー、そんなこと言わねぇでくだせぇお代官様。 もうちょっと男子君の情報をおしえてぷりーず」

\いいかげんにしなさい/ \まだだまだおわらんよ/

女騎士「この炎天下に元気だな、君達わ」

女騎士があらわれた。

娘友「アレー! 女騎士さんなんでこんなところに!?」

娘「女騎士さん。 お久しぶりです」

娘友「王女は元気?」

女騎士「あぁ、元気すぎて困る」

娘「今日はなんでこの町に?」

女騎士「いちおう任務でね。 ところでここの分隊長が近くの喫茶店に居ると聞いたけど何処か知らないか?」

娘「あぁ、それなら」

○少年エルフの喫茶店

男「ふー、こんな日に巡回なんてやってられないな」

少年エルフ「そんなこと言ってまたサボって。 また副隊長に怒られない?」

男「いいのいいの、俺がいたらあいつらもサボれないだろ。 部下の息抜きにもなるからいいんだ」

カランカラン

女騎士「ほーう、そんな気楽なものなのかここでの巡回警備は?」

男「げぇ、女騎士!?」

女騎士「なにが!? 『げぇ!』だ、この無責任男が!!」ブオン

女騎士の右ストレートが唸る。

男「おふっ……、マジか、本物だ」

女騎士「貴様のせいで私がどれほど苦労してるかわかるかこの野郎! あんなアホ王女の子守なんだぞ、ああ!?」フンズケ

男「だったら結婚でもなんでもして、とっとと辞めれば良いじゃないか」

女騎士「だ~れ~の~せいでこうなったと思ってるんだ! お前のような無責任なことが出来るか、ちくしょう!! なんでこんな奴に……」ケリケリ

少年エルフ「……あ、あの女騎士さん!?」

女騎士「おやエルフ君? そうか飲食業だったな、ここが君の店か奇遇だな。 少し待ってくれないかこの無責任男を始末したら説明するから」

娘友「あらー、凄いことになってるわね」ニヨニヨ

娘「過去になにかあったのかしら」

少年エルフ「あ、いらっしゃい。 娘もおかえり」

娘「男と女騎士って知り合いだったの?」

少年エルフ「僕も知らないけど……、いくらなんでもそろそろ止めないと」

女騎士「いやいや手出し無用だ。 こいつは近衛兵の役を私に押付けて引退した無責任極まるオトコだからな、性根を叩き直してやらなければ」

娘友「へぇー、本当にそれだけですか? オトコとオンナのアレやコレは無かったんですか?」ニヨニヨ

女騎士「な、ななな何もないぞ!? 騎士団の同期、それだけだ! そうだろう男!」ブンブン

男「ゲフンゲフン。 そうだな、ただの同期だな」ガクンガクン

女騎士「よくもぬけぬけと! ちくしょう!!」ギュオン

男「どう言えと!? ぶへらっ」

娘「なんてキレイなコークスクリュー」

娘友「いやまったく」

少年エルフ「で……でも、男が引退したのは……その、女が……」

女騎士「あぁ……、知っている。 今のは私の八つ当たりだったな。 すまない許してくれエルフ君」

少年エルフ「あ、うん。 わかってくれたら」ホッ

男「謝る相手が違わないですか騎士殿?」ボロッ

女騎士「だまれ、エルフ君の顔に免じて許してやる、今日の所はな」

男「今日のところって、あと何日分ありますか?」

女騎士「知りたいのか?」ゴゴゴ

男「いえ、全然」



男「で、要件はなんだ? まさか俺を殴りに来ただけじゃないよな」

女騎士「殴ったのは分隊長がお前だったからだ。 まったく、巡回中だからとさんざん探したあげくサボタージュ中とは、だいたいお前は昔から……」

男「今度は説教か? どうした機嫌悪いな、アノ日か?」

女騎士「アホ! 違うわ」

少年エルフ「あのとりあえずこれどうぞ。 飲むと落ち着きます」

女騎士「あぁすまない、騒ぎ過ぎだな」

男「殴り過ぎだよ」

女騎士「……まぁいい。 要件を言おう」

女騎士「最近妙な事件が増えたと思わないか?」

男「そうだな、最近は動物の狂暴化や魔物の異常発生。 他にも例のゴブリン騒動やらで大忙しだよ」

女騎士「王都としてはあれは異常発生した奇形の猿の群ということになっている。 ただこちらでも奇妙な事件や事故が相次いでいる。 怪しい商品、都市伝説、残忍な犯行、そしてこの前は化物に王女を誘拐されかけた」

男「あぁ、エルフが世話になったそうだな。 ありがとう」

女騎士「いや、いい……。 それでだ、ある方がこれらの事は関連があるのではと調べ始めたのだ」

娘「あー、王女ね」

娘友「この前、電話したけど"世直し"がマイブームらしいわ」

男「あの子はああ見えて賢いし正義感も強いからな」

女騎士「伏せる意味ないじゃないかバカ。 まぁその王女なんだが私にある場所を調べてこいとおっしゃたのだ」

男「どこだ?」

女騎士「これを見てくれ」バサッ

女騎士「これを見てくれ」バサッ

少年エルフ「このあたりの地図だね」

娘友「この日付は? あちこちにあるけど」

女騎士「これは周辺の妙な事件と発生した場所と日付だ」

男「ほう、なるほどな」

少年エルフ「なに? どういうこと?」

娘「日を追うごとに広がってるわね、放射状に」

女騎士「そう、ある場所を中心にして事件が日毎に増加、拡散しているんだ」

男「この一番古い日付はあれか」

女騎士「そう、お前が最初に報告してきたゴブリン襲撃事件だ。 そしてこの中心に当たる場所に何があるのか? それを調べるのが今回の私の任務だ」

男「ここはおそらく山向こうの森だな、何もないはずだが」

女騎士「あぁ、勘違いならいいんだがそれを確かめないと王女は納得しないだろう」

男「そうだ」

女騎士「さて、調査のためにお前の隊から最適な人材を要求する、いいな」

男「まぁいいが、なんでお前一人だけなんだ?」

女騎士「……王女はこのことを王や兵長にも申し入れたが聞き入れてもらえなかったのだ。 だから独断で私に調べてこいとおっしゃったのだ」

男「そりゃあご苦労なことで」

女騎士「だから誰のせいだと! しかし最近の事件には私も気になるから同意したのだ」

男「よくあの王女が来なかったな、自分で調べると言い出すだろう?」

女騎士「さすがもと世話係だな、諦めさせるのに苦労したぞ」

男「やっぱりか。 ふーむ、こんな山奥案内が必要だな。 ここらの山に一番詳しいのは……エルフ、お前だったよな」

少年エルフ「そうだね、そうなるかな」

女騎士「エルフ君がか?」

少年エルフ「うん、薬草やハーブを採りにいくのに結構行ってるから」

女騎士「そうか助かる、だったら明日の朝に出発しよう」

男「わかった、こちらからも二人出すから」

娘「パパ、わたしも」

少年エルフ「ダメだよ、娘は留守番」

娘「なんでよ」

少年エルフ「ただの調査なんだから。 課題もあるでしょ?」

娘「課題は終わってるわ、それにまたゴブリンとかが出たら」

少年エルフ「女騎士さんたちと行くから大丈夫だよ」

娘「それでも私はパパが心配で」

少年エルフ「娘、……僕は子供じゃないんだ」

娘「わかってる、でも」

少年エルフ「大丈夫だって言ってるじゃない!!」

娘「」

男「エルフ?」

少年エルフ「ごめん怒鳴って、でも本当にただの調査なんだから。 ここで留守番してて。 ね、お願いだから」

女騎士「エルフ君は君を危険な目に会わせたくたいのだ、わかってやりたまえ」

娘「……わかったわ」

○翌日、山道入口

馬に乗った女騎士たちが山道にさしかかる。

男「ようやく、入り口に入ったな。 エルフ疲れてないか」

少年エルフ「大丈夫だよ。 この先は道が細くなるからゆっくりいってね」

女兵士「はーい」

女騎士「……今更だが。 なんでよりによって男が来ているんだ」

男「俺だって最初は副隊長ともう1人と思ったけどよ」

女兵士「先輩たちは『山に入ってはいけない病』だそうです、変わった病気ですよねー」

男「そうしたら副隊長は『私では女兵士は扱いかねます』ときやがった」

女兵士「なんででしょうかね、わたし副隊長に嫌われてます? あ、鹿だ鹿がいますよ! 捕まえますか晩御飯にしましょうよ」

男「まてまてまて、余計な荷物を増やすな。 それにそんなに食ったら無駄に持ってきたドーナツも入らなくなるだろう」

女兵士「うーん、そうですね。 仕方ないですぅ」

女騎士「……お前も苦労してるんだな」

◯山道

女騎士「これで最後だ!」ズバッ

大トカゲを倒した。

男「だいぶ登ってきたな、魔物もぞろぞろ出てきてるし、道もないし」

女兵士「たいちょー、そろそろ休憩しましょ美味しいドーナツ食べましょ」

男「お前なピクニックじゃないんだ。 エルフ、あたりに魔物の気配はないか?」

少年エルフ「うん、……近くにはもう居ないよ。 ただ……」

男「どうした? 気分が悪いのか」

少年エルフ「……(娘、ついてきてないよね?)ううん、なんでもないよ。 行こうこっち泉があるから休憩にしよう」

男「おう」



娘と男子が馬に乗っている。

ピコーンピコーン

娘「この先で休憩してるみたいね。 私たちもここで休みましょう」カチ

男子「おまえ、どこでそんなものを? エルフさんについてるのかそれ?」

娘「プレゼントしたアミュレットに友からもらった発信機を組み込んであるのよ」

男子「それエルフさんは知ってるのか?」

娘「もちろん知らないわよ、アンタいわないでよ」

男子「……しかし」

娘「こないだ誘拐されかけて心配なのよ。 パパは子供じゃないっていうけど、周りはそうは思わないわ」

男子「だからってそれはないんじゃないか?」

娘「仕方ないじゃない、見える距離からじゃパパが気づいちゃうし。 それにちょっとイヤな予感もするのよ」

男子「本当か?」

◯泉のほとり

女兵士「ん~美味しぃ。 自然の中でたべるとまた格別ですね」モグモグ

男「どこで食べても同じだろ」

女騎士「よくこんなところ知ってたな。 こんなところまで薬草採りにくるのか?」

少年エルフ「ううん、ここらでは採らないよ。 ただ僕はこの辺で育ったから」

女騎士「そうか、どうりで」

男「エルフ、もしかしてイヤだったか? この山に来るのは?」

少年エルフ「……ごめん、もう整理はできたと思ってたけど。 ちょっと怖いよ」

女騎士「なにかあったのか?」

少年エルフ「この辺は父さんと母さんで暮らしてんだ。 でも母さんは大事な用事で出ていって、その後父さんも亡くなったんだ」

女騎士「すまない、余計なことを聞いてしまい」

男「ここの案内を頼んだのはは無理な願いだったか?」

少年エルフ「ううん、違うよ。 もう大丈夫って思ってたから。 でも、やっぱりここに来ると思い出しちゃって、父さんが死んじゃった時を……」

女兵士「……うぅぅ、エルフざん苦労しだんでずねぇ」ウルウルモグモグ

男「お前は泣くのか食うのかどっちかにしろ」

女兵士「ずびまぜん」

少年エルフ「ふふ、ありがとう」

女騎士「……この森にはエルフ族が居るのか?」

少年エルフ「そうだね、多分いるんじゃないかな」

女騎士「多分とは?」

少年エルフ「母さん以外のエルフ族は……ほとんど知らないんだ。 彼らがどこで暮らしてるかも知らない」

女騎士「もしかして、このところの異変はエルフ族が原因なんだろうか?」

少年エルフ「わからないよ」

男「どっちみち行ってみないことには」

女兵士「エルフ族かぁ、襲って来たりしませんよね?」

少年エルフ「……」

女騎士「それも行かないとわからないか」

少年エルフ「……うん」

男「エルフ、俺がいるし女騎士も腕は確かだ、頼りないが女兵士も居る。 何が出てきても大丈夫だ、安心しろ」

少年エルフ「うん。 ありがとう」



娘「動きだしたわ、私たちも休憩はおわりね」

男子「よし、後ろに乗ってくれ」

娘「また? アンタデカいから前が全然みえないのよ、手綱を私に代わりなさいよ」

男子「……断固として断る。 俺の馬だからな」

娘「もう仕方ないわね」ヒョイ

ムニュ

男子「……(こうも警戒されないのは俺が一人前のオトコとして認められてないんだろうな)」トオイメ

パカパカ

娘「まったく、アンタは馬だけ貸してくれたらよかったのに」

男子「そうもいかん、お前ひとり行かせるなんて俺には無理だ。 それに何度もいうが俺の馬だからな」

娘「ハイハイそーですか、次は私を前にしなさいよ」

男子「無理だ……俺には我慢できそうにない」

娘「昔からそういうところ頑固ね。 オトコってのはどうしてこう馬が好きなのかしら」

男子「好きとか嫌いではなく騎士の務めだ」

娘「そんなんだと彼女できないわよ」

男子「むぅ……。 俺が一人前になったら考える」

娘「またそれ? いちいちそんなの気にしてるのアンタだけよ。 だいたいアンタの言う『一人前』ってなんなのよ」

男子「それは……その(お前がオトコとして認めてくれるか)……まだ言えん」

娘「なによ、素直じゃないわね(昔は素直で可愛かったのになぁ)」

男子「すまん」

○深い森

少年エルフ「ここから先は僕も行ったことないんだ。 気をつけて」

男「わかった、大丈夫か? 疲れてないか?」

少年エルフ「ありがとう。 ただなんだか妙な空気なんだ」

女兵士「なに? 幽霊ですか?」

少年エルフ「ち、違うよ。 悪い感じはしないからそういうのとは違うと思うけど、なんだか違和感があるんだ」

女騎士「とにかく油断せずに行こう」

フォオオオ



ピコーンピ―ップツン

娘「あ!? 急いで! 反応がなくなったわ」

男子「なんだ? 故障か?」

娘「わからないわ、とにかく最後の反応のところまでいって、この先よ早く」

男子「あまり近づくと気づかれるんじゃ」

娘「いいから、行って!」

○深い森

男「陽射しは無いがのどが渇くな」

女騎士「お前は昔から飲みすぎなんだ。 ほら、すこし軽くしてくれ」ちゃぷん

男「助かる」ゴクゴク

女兵士「ところで聞いちゃいますけど、女騎士さんってたいちょーと付き合っていたんですか?」

男「」ブハッ! 女騎士「ななな、何をいいんだすだね君は!?」

\うわぁ、冷たい/ \ゲフッ、スマン。 ゴホ/

女兵士「えー、だって先輩たちが『昔のオンナが来た』とか『年貢の納め時だな』って言ってて……」

女騎士「違う、ただの騎士団時代の同期だ」

男「あいつら、あとでぶっ飛ばそう」

パカパカ

女騎士「コホン、えーところで君。 これは例えだがアイツのような奴はやめておいた方がいいぞ」

女兵士「むぅ、なんでですか?」

女騎士「あれは無責任だし変なところ頑固だ、妙な約束はしっかり守るくせに規律は守らないしな」

女兵士「そうですねー、この間も副隊長に叱られてました」

女騎士「へぇ、なにがあったんだ?」

女兵士「実はですねー、ごにょごにょ」

女騎士「相変わらずだな、訓練生の時もこんなことが……ボソボソ」

男「オマエラ、せめて他所でやれよ」

少年エルフ「そうだねー、男は子供の頃からそういうところあってねー」←幼馴染

女騎士「ほう、なんだ?」

女兵士「ききたいききたい」

男「誰か助けてください……」トオイメ



ピコンピコン

娘「止まって、変だわ」

男子「どうした?」

娘「また反応が出たけど、見てよコレ」

男子「なんだこれ止まってる? それに『ここ』じゃないか?」

娘「そうよ、これなら追いついているはずなのに」

男子「しかし、こんな短時間に追いつける距離じゃなかったぞ」

娘「そうよ、だから変だって。 ……おかしい、なにかがおかしいわ」



少年エルフ「……?(なんだろう妙な視線を感じるけど)」

男「深い森だな、そろそろ野宿する場所も探さないとな」

女兵士「それにしても静かですねー」

女騎士「たしかに、しばらく魔物も出てきていないしな」

少年エルフ「なんだろう、違和感があるんだけど……。 あ、この先に誰か居るよ」

男「エルフ族か?」

少年エルフ「……そんなどうやって」



男「なんでお前たちがこんな所にいるんだ!?」

男子「父上こそどうして背後から!? ずっと先に行っていたはずでは」

少年エルフ「娘! やっぱりついてきてたんだね」

娘「ごめんなさい、でもここから帰れなんて言わないよね?」

少年エルフ「ん~~、もう。 仕方ないなぁ」

女騎士「しかしどうやって先回りを?」

娘「それね。 多分だけど、……男子あんたこの先まで馬で走ってみて」

男子「ん? 何故だ」

娘「いいから、早く」

男子「お、おう」

男子は馬で駆け出した。

パカラパカラッ

女騎士「こんな所で単独行動は……」

娘「いいから、後ろに注意して」

女兵士「うしろ?」

パカラパカラ

男子が後ろからあらわれた。

男子「うおぉお!? どうやって先回りしたんだ」

娘「やっぱり、ここループしてるわね」

少年エルフ「それで違和感があったんだ」

男「なるほど、なにかの結界とか魔法とかか」

女騎士「それこそエルフ族とか、か?」

男「かもしれんな」

女兵士「えー怖いですねー、帰りましょうよ」

男「ビビるな、大したことない」

女兵士「でも無限ループって怖くないですかぁ?」

※今週はここまで

○夜、迷いの森

女兵士「なんだかキャンプみたいですねー」

少年エルフ「ホントだねー」

\ワイワイ/

男「あいつらはお気楽でいいなぁ」

女騎士「大丈夫か? こんな所で野営とは」

男「幸い魔物は出てこないみたいだし、朝になるまで動けんよ」

娘「それでも交代で見張りをたてないと」

男「そうだな、俺と女騎士と女兵士、娘達はちゃんと休んでくれ」

男子「俺もやります」

男「……お前も休んでおけ、疲れただろう」

男子「いえ、大丈夫です。 やらせてください」

男「……わかった、お前は最後でいいか?」

男子「ハイ」

少年エルフ「ご飯できたよー」

女兵士「わたしたちの自信作ですよー、はやく食べましょ」

男「お前はつまみ食いしてただけじゃないのか?」

女兵士「ち、違いますよ。 毒見と味見とテイスティングです!」

男「全部食ってるじゃねーか」



たき火が辺りを照らしている。

パチパチ

男「……(静かだ、みんなよく寝てるな)」

男子「ぐーぐー」

娘「すーすー」

少年エルフ「すやすや」

女騎士「……」

女兵士「すぴーすぴー……ぅふひ」

男「……(ニヤケやがって、どんな夢みてるんだか)」

男「……(子供っぽい女兵士と大人っぽい少年エルフ。 ふむ、エルフは世話好きだしな)」

男「……(しかしそうなると娘は、……男子か。 まぁ尻に敷かれるな)」

男「ふっ……(そうしたら、女騎士。 こいつだけ余ってやがる。 ざまぁ)」くっくっく

男「……(いや、俺もか。 ……暇だと余計なことばかり考えてしまうな)」



男「……女騎士、起きろ。 交代してくれ」ぺチペチ

女騎士「貴様!」ブオン

女騎士の寝起きアッパー。

男「あぶな!? 落ち着け、交代だ」

女騎士「ぁ。 ああ、そうだったなすまない」カァア

男「さて、寝るか。 後は任せた」パタ

女騎士「まて! その、少し話さないか」

男「……なんだ、説教か?」ムクリ

女騎士「いや……その……」

男「?」

男子「ぐー」

女騎士「うん、そうだ。 男子君も立派になったな」

男「まぁ、腕はそこそこ立つようになったが。 ……まだまだ未熟だ」

女騎士「そうか? もう立派な騎士になれるぞ」

男「……お前まさか、……そんな年下が趣味だったのか!?」

女騎士「な!? 違うわバカ! そうじゃなくて、女さんが亡くなって随分経ったな」

男「……あぁ、そうだな。 こいつもこんなにデカくなったしな」

女騎士「だから、もう男子君も手がかからなくなったしだな。 その……もういいんじゃないか?」

男「なにをだ?」

女騎士「いや、その……お前がまだ女さんの事を想ってるのならそれはそれで構わない。 いや私は構うのだが構わない。 そうではなくてだな、いつまでもそのままというわけにはいかないのではないか? つまりだな……」ごにょごにょ

男「……どうした、なんだ? らしくないぞハッキリいえよ」

女騎士「そのだからだな……私はお前のこ……こ……」

男「うん?」

女騎士「こ、近衛兵に戻らないか!」



男「なんだ、仕事か」

女騎士「……ッ……ッ!(違うそうじゃない!)」アウアウ

男「俺は今の方が気楽で合ってるよ。 それともアレか、俺に王女のお守を返上したいのか?」

女騎士「いや、いまのはちがくてな。 いいか、よく聞けコノヤロウ!」カアアア

男「なんだどうした? 顔真っ赤だぞ」

プワーン

女騎士「大じょうぶだ、いいか。 わたしはな、……おまえのこと……ぉふ」バタン

女騎士は眠ってしまった。

男「おい、どうした大丈夫か。 お前が見張りの番だぞ、寝るな!」

プワワーン

男「ぬぅう……(なんだ? この甘ったるい匂いは)」パタン

男は眠ってしまった。

???「やっとネタ。 こいつらナニしにきた?」

???「こいつエルフ族か?」

???「こいつも絵のオンナだ、なんで絵のオンナがここに居る?」

???「こいつらナニモノ?」

???「シラベル、ゆめみでシラベル」



???「このオトコ、健気だ。うう」

???「このオトコ、、オンナの敵だな」

???「あぁ、甘いもの食べたくなった」

???「このオンナは苦労してる」

???「絵のオンナはこのコドモのコドモ?」

???「このエルフ族のコドモは、どうかな」

◯少年エルフの夢、山の家

少年エルフ「おとうさん、おかえり? オバさんのところいってたの?」

父「あぁ、そろそろお前にも薬草取りを手伝ってもらわないとな」

少年エルフ「たくさんおぼえたんだよ、おかあさんにも教えてもらったし」

母エルフ「このこったら」

◯ある夜

ドア越しに母エルフが誰かと話している。

母エルフ「……わかりました。 すぐ行きますから少しだけ時間を」

エルフ族男「わかりました、しかしお早目に」

少年エルフ「おかあさん?」ムク

父「どうした?」ムクリ

母エルフ「あなた、エルフ、ごめんなさい起こしてしまって。 エルフ族の大事な用事で私は行かないといけなくなったの」

父「戻れるのか?」

母エルフ「……ええ、きっと。 ……エルフ」ぎゅう

母エルフは少年エルフを抱きしめる。

少年エルフ「おかあさん?」

エルフ族男「そろそろ行きましょう」

母エルフ「……はい」



父「なぜこんなことを!? あいつはどうなったんだ教えてくれ!!」

エルフ族男「貴様らのような人間がいるから姫様はあのような目に "風刃"!」ズババッ

風の刃が父を襲う。

父「うわああ」

少年エルフ「お父さん!?」

エルフ族男「こんな汚らわしい子供まで生ませおって」

父「やめろ。 その子まで巻き込むな」

エルフ族男「ふん、狩る価値もない。 子供ともども狼にでも食われるがいい」



少年エルフ「あぁ、おとうさんすぐに傷薬を」

父「エルフ、妹の……オバのところへ行くんだ」

少年エルフ「お父さんもいっしょにだよね、この傷を治したらいっしょに……」

父「いいか、この傷では俺は助からないんだ。 このままここにいたら、危ないんだ。 ほら獣除けだ」パラパラ

少年エルフ「そんなお母さんも戻ってないのに、お父さんも一緒にきてよ」ポロポロ

父「この出血では助からないし獣除けも効果はない、わかってくれ。 さぁ行くんだ、走れ!」

狼が集まってきた。

ぐるるぐるる

少年エルフ「あぁ」ガクガク

父「ほら走るんだ」ドン

父は少年エルフを突き飛ばした。 狼どもが父に襲い掛かる!

父「走れ! 町まで走るんだ! ぐああ!」

◯迷いの森、早朝

少年エルフ「お父さんお父さん!!」

娘「パパ!?」

男「エルフ!? なんだ、どうした!?」

少年エルフ「父さん……母さん……。 ううう」ポロポロ

娘「またあの夢ね。 パパ、落ち着いて。 私が居るわ」ぎゅう

少年エルフ「ううう、ううう」ポロポロ

女兵士「大丈夫ですか?」

娘「えぇ、起こしてしまってごめんなさい」

女騎士「な!? なんだ貴様らは!!」

男「今度はなんだ?」

男子「父上! 小人が小人がいます!」

小人A「お前、姫様の子供だな」

少年エルフ「姫……お母さんのこと?」

小人B「そうだ、おいらたちはエルフ姫さまに仕えている」

娘「つかえるって、ここに居るの!?」

小人C「そうだ、絵のオンナよ」

男「絵のオンナ?」

小人A「ついてこい、会わせよう」

小人B「教えよう」

小人C「時間あまりない」

◯枯れ木の森

女騎士「この森はなんなのだ? エルフ族の森か?」

小人A「昔はエルフ族の森だった」

男「今は違うのか?」

小人B「そうだもうエルフ族はいない、姫さまだけになった」

少年エルフ「どうしてそんなことに」

小人A「昔のことだ、人間の兵隊がエルフ族の森に攻めてきた」

女騎士「兵隊が? こんな山奥に出兵した話なんて聞いたことはないが」

男「隣国の兵隊じゃないのか? 戦争中ならありえる話だ」

小人B「エルフ族は姫さまの森の術でようやく追い払うことができたが半分くらいはやられてしまった」

少年エルフ「生き残った人たちは、お母さんはどうなったの?」

小人C「森になって消耗した姫様はそのまま眠りについた。 そして残されたエルフ族は少しずつオカシクなっていった」

娘「おかしくって?」

小人A「残ったエルフ族は森に入る人間を襲うようになった」

少年エルフ「……」 娘「……パパ」きゅ

小人B「何年も何年姫様は眠った。 そのせいでエルフ族は何年も何年も人間を憎んだ」

小人C「憎しみで、どんどんオカシクなった」

小人A「ようやく姫様が目覚めて森から戻ったがそのやつれた姿を見たエルフ族は人間の村を襲うのを決めたのだ」

少年エルフ「エルフ族が人間の村を!?」

男「しかし、この数十年エルフ族と争った記録はないが」

小人B「襲ったのは近くのこの村だからだ」

少年エルフ「ここって?」

◯滅びた村

男「こんな所に村があったとは」

小人A「ここがエルフ族が滅ぼした村だ」

女騎士「……あの山、この地形。 ここが王女が言った目的地だ」

女兵士「こんな寂しいところになにかあるんでしょうか?」

小人C「おい、絵のオンナ。 こっちだ、お前の絵がある」

娘「……こっち?」

○崩れ落ちた教会跡

壁に娘によく似た壁画が描かれている

少年エルフ「……この絵」

男「……よく似てるな」

女兵士「なぜ娘さんの絵がここに?」

小人A「そうだそうだ。 なんで、お前の絵がある?」

娘「そうなのね、……ここに私の一族が暮らしていたのね」

男子「娘はこの村の生き残り……」

女兵士「じゃあ、この絵は? 誰なんです」

女騎士「おそらく一族の偉人か祖先なんだろう。 いくらなんでもこの絵は古すぎる、娘君のはずはない」

男「そんなとこだろうな。 しかし娘が生き残りだとするとここが襲われたのは」

少年エルフ「あの日、娘と会った16年前に……」

娘「……」



男「エルフ族はこの村を襲った後どうしたんだ? 姫様はどうしているんだ?」

小人A「エルフ族がこの村を滅ぼすと恐ろしいモノが出てきた」

娘「村から、恐ろしいモノ?」

小人B「思い出すだけで恐ろしい」ブルブル

小人C「あれにエルフ族は滅ぼされてしまった」ブルブル

少年エルフ「ねぇ、母さんは? ここに居るの?」

小人A「姫様いる。 もっと奥に居る」

小人B「そうだ、時間ない。 早く」

小人C「いそげいそげ」

○滅びた村、最奥の祭壇

女騎士「これはなんだ? 墓か?」

男「墓というより……なにかの祭壇か?」

小人A「ここから恐ろしいモノ出てきた」

女兵士「ここから……、深い穴ですねーなにが出てきたんです?」

小人B「よくわからない、とにかく恐ろしかった」

娘「あんな小さな村にこんな大きな祭壇、……邪教でもしてたのかしら」

少年エルフ「……それは無いと思うよ。 ここすごく清らかだ、何かの聖地なんだと思う」

男「だったらなぜ恐ろしいモノが?」

少年エルフ「推察だけど。 閉じこめていたのかもしれない、何か悪いものを」

小人C「お前達、いそげ。 姫様この先」

○朽ちかけた大樹

小人A「ここだ、姫様今は眠っている」

小人B「姫様姫さまー」

小人C「姫様の子どもをおつれしましたー」

小人達は大樹に向かって呼びかけている。

男「どうした? エルフ族の姫様はどこだ?」

小人A「どこって、ここに居る。 目の前」

娘「それって……」

少年エルフ「目の前って、この木が? お母さん!?」

小人B「そうだ姫様は森の術使いすぎたので森になって休んでいる」

少年エルフ「そんな!? お母さんおかあさーん」

朽ちかけた大樹「」

娘「パパ……」

男「エルフ……」

少年エルフ「やっと見つけたのに! 会えたのに! 話せないの!? 僕には娘っていう子供もできたんだよ、なのになんでこんなことに!? どうしてこんなにボロボロなの!? ねぇ!!」

小人C「それは……」

???「グゥオオオオオオオオォォン」

男「なんだ!? 今の音は」

女騎士「獣か?」

小人A「奴だ! とうとうきた!!」

娘「ヤツって?」

小人B「よくわからない、逃げろ! 人間ではアレに勝てない」

少年エルフ「でも、母さんが」

朽ちかけた大樹「」ゴゴゴゴ

女兵士「……木が、動いてる」

男子「うわぁ!? まわりの木も!?」

辺りの木々はトレントとなり一斉に歩き始めた。

小人C「姫様、森になってアレと闘う。 アレと闘うため森のまま」



???「グオオオオォォン」

小人A「奴がきた」

女兵士「なにあれ!?」

男「なんだありゃ龍か!?」

木々をなぎ倒して目玉のある大きな芋虫があらわれた

一つ目ワーム「グオオオオォン」

女騎士「芋虫ぃ!?」

少年エルフ「なにあれ!? なんて禍々しい、怖い」ブルブル

小人B「アレがいるとまわりの動物もおかしくなる、恐ろしい」ブルブル

娘「ここ最近の事件はアレが原因のようね」

ゴゴゴ

トレント達が一つ目ワームに襲い掛かる

男「すげぇ、まさしく"生きる森"だな」

一つ目ワーム「グオオ!」

大樹トレント「」

バキバキバキ

小人C「だめだ、姫さまは何度何度も止めたけど、最近ではアレの方が傷が癒えるのが早い、最近はずっと早い」

小人A「このままでは姫さまが持たない」

ブオオオオオオオォ

一つ目ワームは激しいほのおを吹いた!

トレント達「」ボォオオ

一つ目ワームのなぎ払い!

大樹トレント「」ドォオオン

大樹トレントは吹き飛ばされ動かなくなってしまった。

少年エルフ「あぁ! おかあさーん」

男「なんて奴だ、虫のくせに」

女騎士「我々も加勢するぞ!」

男「仕方ないな、お前ら怪我するなよ」

女兵士「はい、たいちょー」

娘「私たちも」

男子「おう」

少年エルフ「みんな気を付けて!」

小人A「やめろ、人間ではかなわない」



一つ目ワーム「グオオオォン」

男「よく見ろ、デカいだけあって簡単に見きれる」ズバッ

女騎士「フン、デカいだけだな」ザシュッ

女兵士「まってくださーい」コケ

一つ目ワームははげしい炎を吐き出した!

ゴオオオオオォオ

娘「危ない!」

少年エルフ「"守風"」

風の盾が炎を遮る

女兵士「ひゃわわ」

一つ目ワームのなぎ払い

男子「危ない!」

男子は女兵士をかばった

ドォオオン

男子「ぐぅ」

少年エルフ「大丈夫! "治癒"」

男子「危なかったです」

女兵士「あ、ありがとう」

女騎士「あれでよく死ななかったな!?」

男「よくやった」

娘「やってくれたわね"落雷"」

ピカッガラガガラガラッ!! ドドーン

一つ目ワーム「グオオオオオオオオオオオオ」



女騎士「よし、もう一息だ奴も弱ってきたぞ」

女騎士は切りかかった。

一つ目ワーム「……」ピカァア

一つ目ワームの瞳があやしく光る!

女騎士「ぐっ!?」

男「どうした?」

ザシュッ!

男「う……ゴホ」

女騎士が男を斬りつけた。

女兵士「たいちょー!?」

女騎士「……」ズババッ

女騎士は男子に襲いかかる!

男子「なんだ? どうして!?」カキンカキン

娘「何かされたのね」

女騎士は混乱している。

男子「ぐぅ……うう、ガハ」

男子は斬りつけられて動けない

少年エルフ「すぐに治癒を……」

一つ目ワームのなぎ払いが少年エルフを襲う

娘「パパっ!?」

女兵士「えいっ」

女兵士は少年エルフをかばった、しかし吹き飛ばされる!

女兵士「きゃあ」

娘「こいつ、頭もまわるのね。 貴方もいい加減に目をさまして!」

娘は女騎士に当身をくらわした。

女騎士「うっ……」ガク

女騎士は気絶した。

少年エルフ「大丈夫!?」

女兵士「大丈夫じゃないですけど、早くたいちょーたちを……」

娘「……もう怒ったわよ "雷撃"」

ビリビリビリビリッ!!

男「やったか……」

少年エルフ「しゃべっちゃだめ(重傷だ……すぐには完治出来ない)」

一つ目ワーム「グオオオオオォン」

娘「そんな!? なんで!?」

男子「あいつ……傷がふさがっていく、再生しているのか」

小人A「だからいった人間では勝てない!」

娘「貴方たち、まだいたのね。 どうすればアレを倒せるの?」

小人B「アレは怒り悲しみ苦しみを喰う、姫様は森になって感情がないから勝てたのだ」

小人C「逃げろ!! 襲ってくる」

一つ目ワームのなぎ払い!!

男「ぐふっ」

男は気絶した。

男子「ぐぁ」

男子はは気絶した。

女兵士「キャア」

女兵士はは気絶した。

少年エルフ「うわぁ」

娘「あぁああっ」



少年エルフ「……そんな、どうしたら」

娘「コイツ……強い」

一つ目ワームのなぎ払い!

大樹トレント「」バキン

大樹トレントが攻撃を受け止めた。

少年エルフ「おかあさん!?」

娘「まだ動けたのね」

一つ目ワームの連続攻撃

バキンバキン、メキメキメキ!

大樹トレントは砕け散った!

小人A「姫様ーー!?」

小人B「もうだめだぁ!」

小人C「おしまいだぁ!」

少年エルフ「あ……おかあさん!? おかあさーーん!!」

少年エルフの悲しみが一つ目ワームに吸収され、さらに巨大化していく。

少年エルフ「あああああああああああ、うわああああああああああああああああああああああぁぁ」ボロボロボロ

娘「……このままじゃ、パパごめん。 "睡眠"」

少年エルフ「あぁ、あ……」カクン

少年エルフは眠ってしまった。



娘「ぐっ、なんて大きさ。 勝てない……」

一つ目ワーム「グオオオオオオン」

娘「……あの目、アレを潰せば逃げれるかも……これが最後の力よ稲妻斬り!!」ズバァッ

ドドォーン

娘「……しまった」

目玉をはずしてしまった、一つ目ワームの傷が再生していく。

娘(……あぁ、勝てない。 パパ)

一つ目ワームは大きく息を吸い込んだ。

娘(みんな助からない、ここで死ぬのね、私も……パパも……。 だとしても)

娘は少年エルフを振り返った。

少年エルフ「すーすー」

娘は一つ目ワームに向き直り剣を構えた。

娘「……それでもパパを守る! 私はエルフと一秒でも長く居たい!!」

一つ目ワームの激しい炎!!

娘(……あぁ、エルフ。 ありがとう、一緒に居てくれてわたしは……)

娘が激しい炎に包まれる。

ピカァ! ヒュボボボボボ

突如光がさし炎をかき消していく。

娘「これは!?」

娘の剣が暖かな光を放っている。

娘「この光、雷撃とは違う……なに?」

一つ目ワーム「グオオオオオ」

一つ目ワームのなぎ払い!

ドジュウウウウウゥ、ボボン!!

一つ目ワーム「グオ!!??」

光がワームの体を弾き飛ばした!

娘「……(この光、これなら)これだったら! 届く!!」

娘は輝く剣を投げつけた!

一つ目ワーム「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

一つ目ワームの目玉に剣が刺さり光が炸裂する!

シュゴオオオオオオオ!!

一つ目ワームは光に焼き尽くされた、一つ目ワームを倒した。

小人A「すごい!」

小人B「お前人間なのにアレをやっつけた」

小人C「お礼にお前達の傷治す、ゆっくり休め」

娘「ふ、ふふ。 そうさせてもらうわ」バタ

娘は気を失った。

○後日、町の詰所

女騎士が馬で王都に戻る準備をしている

女騎士「それで小人達は確かに言ったんだな?」

娘「えぇ、あの虫はアレが飛び去った時に落ちた目玉だけなんだって。 飛び去った何かがまだいるのよ」

女騎士「こんなこと一体どうやって報告すればいいのか」

男「まあ、まともにとりあわないよな普通は。 まぁ王女なら大丈夫だ」

女騎士「王女ならっていやな予感がするが、報告しないわけにもいかないしな。 では世話になったな」

男「ああ、またな」

女騎士「……その、その傷はすまなかった。 この詫びはいずれだな……」

男「気にするな、オンナに斬られるのは慣れている」

女兵士「えー!? たいちょーそんな趣味が!?」

男「アホ、お前の訓練だろうが!」

女兵士「あ、そっかー」

女騎士「ではそろそろ……」

男「おう」

少年エルフ「気を付けてね」

女騎士「あぁ、エルフ君も達者でな」

パカパカ

女騎士は去って行った。

○少年エルフの喫茶店

少年エルフ「……」ぼー

娘「パパ? パーパ(またぼうっとしてる)」

ぎぅうう

少年エルフ「あっ!? ちょっとやめてよ」カァアア

娘「だめよ、パパに置いていかれて寂しかったもの。 その埋め合わせよ」ぎゅう

少年エルフ「暑いよ」カアア

娘「ダメよ我慢して」ナデナデ

少年エルフ「仕方ないなぁ、娘がいると一人でいる時間もないじゃないか」

娘「そうよ、私はパパを一人にさせないの。 何があってもね、わかった?」

少年エルフ「もー、わかったよ。 だから離れて」

娘「だーめっ」かぷっ

少年エルフ「ひゃっ!? ちょっと耳を食べないでって!」

娘「だってクセなんだもの」

○王都、王女の部屋

第七王女「なるほど、そんなことがあったのか」

女騎士「……信じるんですか?」

第七王女「当たり前じゃ予想はできていたからの」

女騎士「予想が出来ていた!? どこまで」

第七王女「わらわが見つけた古文書によれば、400年程前に勇者が魔王を倒した折に首を持ち帰ったとある」

女騎士「魔王の首!?」

第七王女「そうじゃ、はじめ王都に首塚を建てたそうじゃが、住民の反対運動で取り壊されたのじゃ」

女騎士「反対運動って、ごみ処理施設じゃあるまいに」

第七王女「案外似たようなものだったのかもしれんな、別の理由もあったかもしれんが。 そうして首の行方は分からなくなっておったのじゃが。 ここに古い地図がある、お主が調査にでてから見つけたものじゃが」

女騎士「またどこからこんなものを……盗んでませんよね?」

第七王女「ちがうちがう、無期限で借りてるだけじゃ」

女騎士「……ちゃんと返してくださいよ。 で、これがなんですか?」

第七王女「ここに村があるじゃろう……しかしのちの時代の地図には記されておらんのじゃ」

女騎士「この村……私が見てきた廃墟ですね」

第七王女「さて、これらのことをまとめると一つの結論に至るな」

女騎士「……言わないでくださいよ」

第七王女「隠された村に封印されていた魔王が復活したのじゃ!!」ババーン

女騎士「……(アイタタタタ、いっちゃったよこの人)」

第七王女「なんじゃその顔は? まぁ心苦しいのはわかるが安心せい」

女騎士「別のことで心苦しいんですよ。 で、なにが安心せい、ですか?」

第七王女「わらわが王族として、勇者の子孫としての務めを果たすからじゃ」

女騎士「おやめください、果たさないでください」

第七王女「わらわはここに、二代目勇者を襲名することを宣言するのじゃ!」ドヤァ

女騎士「……魔王につづいて勇者……正気ですか」

第七王女「当たり前じゃ! さっそく兄上に報告じゃ、行くぞ」

女騎士「やめてください、王が別の意味で心配されますから。 こら、まてアホ王女!」

第七王女「ふふふ、わらわの戦いはこれからなのじゃ!」

――おわり――

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