学校 ~校外清掃中~
男(くっそ寒い…)ブルブル…
男(けど、嘆いても仕方ないよな。こんもり枯れ葉も集めたし、後は捨てるだけ…)サッサッ
ひゅううう~~~
男「あっ! かき集めた枯れ葉たちが―――」バッ
「んばっっ!!??!」バッシャアアアアア!
男「あ……」ビクゥ
「………」
男「ブフゥッ! い、いや! 今のは別に、全然わざとじゃなくってだな…」
「フフフ。君には本当、毎度毎度と驚かされてばかりだ」
イケメン「また新たな突っ込みを編み出したんだね!」ニコ
男「なに言ってんのお前?」
イケメン「今日とて突っ込みもまたキレが良い…」ニヨニヨ
男(面倒くさい奴にみつかった……)
イケメン「……」じぃー
男「なに、その目。ていうか、めっちゃ頭に葉っぱ乗ってるけど」サッサッ
イケメン「うむ、ありがとう」パラパラ…
男「別にいいよ礼なんて。ある意味俺のせいだし」
イケメン「いやいやお礼はきちんと言わないと――まあ、それはそれとして」ぎゅっ
男「うわっ!? きゅ、急に腕掴むなよ!?」ビクッ
イケメン「どうしてオレを誘ってくれなかったの?」ニコ
男「はっ!?」
イケメン「清掃活動だよ! やるならオレにも声を掛けてくれたっていいだろうに…!」
男「いや、誘うも何もまったく関係ない奴を…」
イケメン「すぐそれ言う! すぐ男くんはオレを蔑ろにする!」ムキーッ
男「……こいつ面倒クサ……」ボソ
イケメン「聞こえてるぞー! ……いやね、聞いてよ、オレだって別に掃除を為たいわけじゃないんだ」
男「な、なんだよ。じゃあアレか、また俺がいるから参加したいって話か…?」チラ
イケメン「いや、別に君はまったく関係ないんだけど」キョロキョロ
男「ぐッ…だったら俺に責任あるみたいな言い方するなよ……ッ!」カァアア
イケメン「そんなコト言った? あ。居た、おーい! コッチだぞ~~!!」
女「――ホント飽きないわよね、アンタら。何? またホモ扱いして欲しいの?」
イケ友「なはは! ここに居たんかイケメ~~~~ン!」
男「イケ友に、女さん…」
女「……」じぃー
男「な、なにさ?」
女「い・つ・ま・で、……手を握り合ってるワケ?」
男「!? いや違ッ…コイツから握ってきたんだ! ちょ、離せコラッ、おいって!?」ぐぃー
イケ友「チッス! よお来たイケメン、人で足らなくてマジ困ってたんべ~~~!」グッ
イケメン「だろうね。見たところ二学年の十数人しか来てないみたいだし」グッ
男「無視するな!」ぐぐいー
イケ友「会長姉ちゃんも頑張って声かけてたけど、今回は時期が悪かったっしょ」ナハハ
イケメン「あの人も自分のことで大変だろうに。…まだ会長の後釜がいないそうだよ」
男「待って!? すっごい普通に世間話してるけど、そんな非力なの俺!?」グググッ
イケメン「おや?」キョトン
イケ友「あれ? 男ちゃん居たの? ちっこいからわからんかったわ」ウフフ
男「なんだことコノヤロー!!」
女「ハァ…もういいわ、時間の無駄ね。あっち掃除してるから、アタシ」スタスタスタ
男「あっ…もうもう! お前が余計なコトするからまた怒られたじゃないか!」
イケメン「作戦は成功したな…」フゥ
イケ友「あぁ、そのようだ」フッ
男「え…? どういうこと…?」ビクッ
イケ友「すまねェな男ちゃん。実は最初からずっと男ちゃんは見えていた、おれっちは嘘をついてたんだ」
男「その弁解は別にいらない…」
イケメン「君には黙っていたが、我々はとある目標のために行動を共に為ているのだ」
男「も、目標? 女さんを遠ざけてまでやりたいことなのか…?」
イケ友「モチのロンだぜ!? 野郎共にとって頑なに譲ることが出来ねえ道ってモンがあんのよさッ!」
イケメン「ああ、それはね」スッ
男「……っ」ゴクリ
イケメン「まさに男子高校生にとって夢のパンドラ……」
イケメン「──校外に捨てられた、エロい雑誌拾いだッ!!」カッッッ
~~~
「校外清掃活動」
「毎年度、恒例となっている冬期に行われる環境改善週間のイベント」
「あまり盛り上がりに欠ける催しだから、いつも参加生徒が少ないのも頷けるのだけれど」
会長「今年は非常に、その集まりが悪いの。笑っちゃうぐらいに」フフッ
イケメン「へえ、それでオレをわざわざ呼び出したのは参加しろって話?」
会長「………」
会長「勿論、それなりの報酬は用意するつもりだわ」
イケメン「結構だよ。元カレの好として出来れば話には乗ってあげたいが、何分、忙しい身でね」クル
会長「そう…」スッ
会長「どうやら、まだ男くんとの時間が大切なようね」
イケメン「……」ピタ
会長「ふふ。相変わらずね貴方。なりふり構わず突き進む悪癖は健在のよう」
イケメン「ふーん、それが? なに?」クル
会長「あら? ようやくまともに視線が合ったわ」クスクス
イケメン「…………」
会長「勘違いしないでちょうだい。過去、文化祭でやったことのような行為は望んでおりません」
会長「──一途に、そう一途に…」
会長「わたくしは、貴方に校外清掃活動へと参加してほしいだけなのよ」
イケメン「なぜ、そこまで参加して欲しいんだ?」
会長「裏文化祭、って言葉に聞き覚えがあるでしょう」
会長「表向きの一般公開とは違い、極秘裏に、各所隠蔽された店舗にて『嫌らしい同人誌』が発売される祭りのことを」
イケメン「知ってる。貴女だって主催者や、今年の責任者ともコンタクトを取ったはずでは?」
会長「勿論、来年からはそのような催しは一切禁ずることを約束させました」
会長「──ですが、残った異物は消滅しきれない…」グッ
イケメン「ふむ。つまり?」
会長「現在、約四十冊以上もの『やらしい同人誌』が校外周辺に隠されたと報告があったわ」
イケメン「ほほう。たったの四十冊とは、なんともまあ…」
イケメン「会長。よほど手の込んだ独裁ぶりで校内に残った本を回収したようだね、まさに圧制者だ」
会長「ふん。なんとでも言いなさい」
イケメン「なるほどね。会長の魔の手から逃れた同人誌、それを校外清掃活動として回収せよと」
イケメン「なら聞きたい。どうして貴女がやらないんだ?」
会長「……その質問、わたくしによく出来たわね……」ズモモモ
イケメン「……」
イケメン「そ、そんなに生徒会長の仕事忙しいの?」
会長「いっっっそがしいわよッ! 首が回らないってレベルじゃなくボルトで締められたぐらい回らないわよ!」クッ…
イケメン「後継者育成を怠るからだよ…」セイセイ
会長「育成ってなに!? 学生よわたくし!?」
会長「もう、いいわ! とにかく! 表立っての行動はやりずらい、時間もなければ人手も足りないの!」
会長「そういうの頼めるのって言えば貴方ぐらいしか居ないのよ…っ」
イケメン「オレか…」
会長「ねぇ…お願い、もし引き受けてくれるのなら、お、お礼として、私がなんだってしてあげるから…」チ、チラ
イケメン「別にいらないかなあ」
会長「そんなに興味惹かれない!?」
イケメン「特に…」
会長「ぐっっ! ええもお知ってるわよッ! だから違う報酬を用意しておきましたッ!」カァーッ
カララー!
イケメン「これは? USBメモリ?」スッ
会長「私が過去にまとめた、男くんが一年生頃の写真集。そのデータファイルよ」
イケメン「引き受けます」キリ
会長「さっさと行きなさいよもおもおもおーッ!」うえーん
~~~
イケメン(ということがありました、と正直に離したら没収されるので秘密にしとこう)ウンウン
男「…エロ本探し…」
イケ友「このあたりにあるんだって! それはもう沢山! 探すっきゃないっしょ!」
イケメン「ああ。このとおり、イケ友に助力を求めたら乗り気で参加してくれた」
男「イケ友好きそうだもんね…店で買うより、お宝探し的な感じで…」
イケ友「うぉぉー! やるぜー! 超やるぜー!」
イケメン「良い気迫だ。さて勿論、君も一緒にやってくれるよね?」ニコ
男「いや全然やる気ないけど。ていうか、……それよりも」じぃー
イケメン「な、なに?」
男「お前は、なんでそうもやる気なの?」ジトー
イケメン(やばい。報酬のことゲロってしまいたい…突っ込まれたい方に傾いてしまいそう…)ゾクゾク
男「何か隠してるだろ…?」
イケメン(だがッ! オレは目先の欲に負けない! きっと、きっと手に入れてみせるんだ…ッ)スッ
ポン
イケメン「秘密? 君に隠し事なんてあるわけない。ただオレは君と一緒にやりたいんだ、エロ本が探しをね」キラキラ
男「……」
男「べ、別にそーいうの興味なんてねーし…」テレテレ
イケメン(誤魔化しても無駄だよ。君が少しムッツリなのも、エロ本探しという青春単語に興味津々なのも知ってる)ニ"ゴリ"
男「ったく、仕方ねえな。お前がそうまで言うのならやぶさかでもないというか」
イケメン「そうなんだ~」ほのぼの
男「その生暖かい目線はなんだよッ!」
イケ友「シッ! 騒ぐんじゃありません! 隠密行動厳守だぜ、男ちゃん!」
男「あ、すみません…」
イケメン「さて、新たな同志を得られた我々に、目標達成も容易いはず──いざッ! 出陣!」
男「お、おー…イケ友「ブッッボォオォォオオオオオオッッ!!」ダダダダ
男「イケ友が一番うるさいよ! やめて法螺貝のモノマネ!」
~~~
男「つっても、そう簡単に探して見つかるモンなのか…エロ本なんて…」ガサガサ
イケメン「大丈夫。オレが仕入れた情報に間違いはないはずだ、例えばそう…」
ガサリ!
男「む…」ピク
イケメン(会長から予測ポイントは教わった。絶対じゃなくても幾つか回ればきっと見つかるはず!)グッ
イケメン「ほら、男くん! 見てごらん! この光景を──」ガサァア!
同級生「……ぐぬぬ、ちょっとだけ…少しだけ中身を──あ…」ビクッ
イケメン「……」
男「……」
同級生「ま、待てッ! 違ッ、これは違うんだお前ら! そう! たまたまだからこれはッ!」カァァ
イケメン「たまたまエロ本を見つけたら読んだと」
同級生「よッ、読んでねーよ! ちらりと覗いただけだよ!」
男「余計な嘘は誤解を深めるよ…」
同級生「嘘じゃないって言ってるだろう!? たまたまエロ本を見つけて、ちょっと開いて読んだだけって──」
「…え、同級生が…?」ガサリ
イケ友「──同級生がエロ本拾って読んでるって!? マジで!? 何処で見つけたん!?」
「え、金持ちで鼻持ちならない同級生がエロ本を読んで?」
「あの野郎、ウチでメイドさん囲ってるくせにエロ本読むのかよ!」
「金持ちのくせに。ああ、拾ったエロ本でしか興奮できないと、ぶっ飛んだ癖だな」
同級生「お前…ッ…お前ーッ!! ワザとか!? ワザと聞き間違えて大声出してんのか!?」ブンブンブン
イケ友「いや、おおおれっちはただ、どこでみつつつつけたかってぇ~~っ」ぐわんぐわん
男「だから言ったのに…」
イケメン「しかし、どれどれ。ふむ、これは本当にエロ本のようだ、実写みたいだし」ペラリ
男「よく抵抗もなく持てるな…相当汚いかもしれないのに…」
イケメン「ちゃんと手袋してるよ? 当たり前じゃないか、同級生くんじゃあるまいし」アハハー
同級生「いちいち僕をこき下ろさないと駄目なのかお前らは!?」
イケ友「おっほほー! ガチでエロ雑誌っすなぁ~! どうよ男ちゃん、好みの娘だれ?」
男「……」
イケ友「なんで黙るん?」キョトン
男「…エロ雑誌を見て好みな娘を言いたくはないんだけど…」
イケ友「なんでよ? ったく気にしすぎよ男ちゃんってばさ~っ!」ケラケラ
男「そ、そうかな…」
イケ友「べつに誰も男ちゃんを馬鹿にしないって。気軽にぶっちゃければいいだけのハナシ」
男「そっか…」テレ
イケ友「んじゃまずはおれっちな。ほれ、この娘とか超好み」ニッ
男「じゃ、じゃあ俺はその娘がちょっといいかも…」スッ…
イケメン「どれどれ? うーん、君にはちょっと重すぎるんじゃないかな? 物理的な意味で」ずぃ
同級生「は? この脳みそ空っぽそうなのが良いわけ? もっとオーラルに言ってよ、伝わらないから」ずぃ
イケ友「身長的にはアリか? いやなあ、男ちゃんはもっとキレイ系のほうがぴったしくるんだよな~」
男「待って。周りが親身すぎて逆に話しづらい」
同級生「っていうかオイッ! 結局はお前らも同じ穴のムジナじゃないか!」
イケ友「言ってなかったっけ?」キョトン
同級生「言ってないわ! ハハッ! この庶民共! エロ本一冊もろくに買えない残念階級めッ!」
男「立場的に一緒だよ俺ら…」ボソリ
同級生「やかましいッ!」カァァ
イケメン「仕方ない。こうなってしまえば彼にも協力を願うしか無いだろう」
イケ友「ほぇ? でももうエロ雑誌は見つけたぜ?」
イケメン「──俺が掴んだ情報では、あと十冊以上のエロ本があるそうだ」
イケ友「なぬッ!? そりゃおれっち達が総取りしなきゃ始まんねーな!!」キラキラキラ
男(元より何が始まっていたのだろう……)
同級生「ハァ? 君ら暇なんだな、ほんとアホらしい。高校生にもなってエロ本探しとか、超笑える」
イケ友「そういやなんで同級生は清掃活動に参加してんの?」キョトン
イケメン「今日提出だった、数学の課題を忘れたからだよ。しかも三回目らしい」
イケ友「アハハー! 馬鹿だな同級生、まったく高校生にもなってよ~!」ゲラゲラ
同級生「う、うるさいぞ馬鹿どもッ!!」カァァ
男「と、とにかく! なんだ、エロ本探しはまだ続けるってことなのか…?」
イケメン「勿論。……確かな手がかりを掴むまでは諦めきれないからね……」ニヤリ
男(絶対になんか企んでるなコイツ)
~~~
イケメン「さて。次はこの辺が怪しいとの噂を耳にしたんだ、探してみようじゃあないか」
イケ友「ほほ~! いっちょやったるわ! おりゃーっ!」ガササーッ
同級生「ていうか、コイツはどうしてやたらめったにエロ本落ち場に情強なんだよ」
男「変態だからじゃない?」
イケメン「情報通と呼びたまえ!」
イケ友「おぉ…?」スッ
男「ん? なにか見つけたのかイケ友?」ガサリ
イケ友「まあ、見つけたって言えば見つけた、と思うんだけど……」
ガサリ
イケ友「これどっかで見覚えがある感じなんだよな……」
男「どれどれ」スッ
『君とオレとの突っ込みランデブゥ~噂の彼はドMのツッコミ待ち!?~』
男「俺もなんだか既視感が物凄く湧いていくるタイトルだ…」ぞわぞわ
イケ友「ちょっち読んでみっかね」スッ
男「待ってッ!? 読んだらヤバイ感じ出てるじゃん…! 表紙の絵的な意味で…!」
イケ友「そお? 凄い綺麗な絵だと…」
男「表紙が男同士が裸で抱き合ってる時点でアウトだよね…!?」
イケ友「えッ!? これ男同士なん!? 確かに胸がねぇーようにも見えるかも…?」
男(ダメだ。この手の話題でイケ友とは分かち合えない、誰か他に…)キョロキョロ
女「──ってココに居た! ちょっと、あんた掃除サボってなにやってるワケ!?」ガサリ
男(一番きちゃだめな人来た~~~…)
女「真面目にやりなさいよ! こっちだってやりたくもない掃除をやってるんだから、って」チラ
女「その本…」
男「いやいやいやッ!? 違うよ!? これは偶然見つけただけであって!?」ダラダラダラ
女「お姉ちゃんの本じゃない。どうしたのそれ、どこで見つけたの?」
男「え…? お姉さんの、本なのか…?」
女「そうよ。へェ~懐かしいじゃない、随分前にこんな奴書いてたっけ~」パラリパラリ
男(そういう系を普通に読めるこの人は何者なのだろう…)
女「あ。この辺ベタ塗り忘れてるじゃない。ばかねお姉ちゃんってば、くすくす」(素)
イケメン「お前は…エロ本読んで何楽しそうに語ってるんだ…」ガサリ
女「へ? あっ……ばッ! バカね! 違うわよコレは!? エロ本じゃないし、全然違うし!!」
男(まったく同級生君と同じ反応…)
イケ友「でも表紙は裸っしょ?」
イケメン「エロ本じゃなかったらなんだって言うんだ」
女「こ、これは…ッ…そう、そうよ純文学よ!!」
男(純文学はどうなんだろう!?)ダラダラダラ
イケメン「見るからにエロ本にしか見えないが…」じぃー
イケ友「ほぇーそんなんあるんけ? 読んでみてよ、女っち」ホレホレ
女「えぇっ!? よ、読むの…? あたしが…? そんなの、だって…」チラ
男「……」フィ
女(たっ、助けなさいよ!? 無視するな!!)
男(無理だよ無理無理無理……)ブンブン
女「ぐッ…! 良いわよ! だったら読んでやったるわ! ほれぼれと心に刻みなさいよ!」カァァ
男(なんでこうも諦め悪い人ばっかりなんだ…)
女「モゴモゴ…『そんなに怖がらなくていい。ただオレは君と一緒にいたいだけ』…もにょみにょ…」
イケメン「声が小さいぞー」やいの
イケ友「やる気あんのか女っちー」やいの
女「うるっっさいわねッ!? そーまで言うならやったるわよバーカ! ヒュウウウウ───」スゥウウウ
男「ちょ、待っ…! それ先人と同じ過ちを…!?」バッ
女「ウウウウ、ヴぇッ!?」ズコッ!
女「…………………………」しーん
イケメン「今…」
イケ友「本から出たモジャっとした黒い物体を、女っち吸いこ…」
男「もしかしてゴ…」
女「…………………誰か嘘だといいなさいよ」
イケメン「いや、絶対に今、ゴ…」
女「嘘よウソウソウソッ! 絶ッ対にあり得ないから! そんな現実ってあり得ると思う!?」ブンブンブン
イケメン「す、すまない…ちょっと近寄らないでもらえると嬉しい…」スッ
女「唐突に距離を取り始めるのやめて!?」
イケ友「いや、流石っすわ、女っちともあればGすら胃の中にポンポン収めちまうのね…」
女「いつアンタの中でアタシの株があがってたワケ!? そんなリスペクトいらないんだけど!?」
男「いいツッコミしてるトコロ申し訳ないが…! まずは病院だと思う! 正直な話ガチでヤバイと思うから!」
女「びょ、病院…? やだ、そんなの、ヤダーッ! 笑われるじゃない! 虫食った女としてニュースに取り上げられるじゃない!」
イケメン「まあまあ。旅の恥はかき捨てとも言うじゃないか」ススス…
女「もっともらしいこといって一番距離取ってんじゃないアンタ!!」
同級生「おい、なにを一々と騒ぐことが起こるんだよ。そう騒いでると教師に見つかるぞ」ガサガサ
男「ど、同級生くん! ヤバイんだ、とにかく状況的に今まで一番アウトな事が起こってしまった!」
同級生「は、はあ? 君たちにの騒動でアウトじゃなかった事なんて無かっただろうに」
イケメン「実はね、女がさっき虫を食ったんだ」
イケ友「しかもG」
同級生「なんでそんなこと起こるの!?」
男「詳しい説明は後で! と、とにかく女さんを病院に運ばないと──」
女「そんな態度するならアンタも同じような目にッ、合わせてッ、やる、わよ…ッ…!?」ググググ
イケメン「ヒィッ!? おまっ、本を顔に近づけるなッ…本当にやめっ…ちょッ…力強っ…!?」グギギギ
男「──無理矢理にでも連れて行こう!! 犠牲者が増える前に!!」
イケ友「力仕事ならおれっちの出番だぜ。おっしゃー! いくべ女っち!」ダダー!
女「あん!?」ギラァッ
イケ友「へっ! おれっちはイケメンとは一味違うぜ、心して勝負するんだな!」
女「どーでもいいわよ! コイツのように、あたしと同じような立場になりゃすればどうだっていいのよ!」ビシィイ
イケメン「」チーン
男「やけっぱち過ぎる……」
同級生「このバカを早く止めてやれ……」
イケ友「ふふん。いい覚悟だ、それにおれっちも覚悟は決まったァー! 実は日頃の発破ぶりに感心してたおれっち! いざ勝負ゥー!」グァアア!!
女「…………」スッ
男(飛び出してきたイケ友に対し、女さんは冷静に本を取り出した…? 一体何を…)
女「……」パカリ
イケ友「おおおおおお!! ──え、なんで男同士でちんこ入れあってんの?」
女「ふんぬぅううーーーーッッ!!」ブン どっぱぁああああんっ!!!
男(勢い良く顔面にイッたーーーー!!!??)
ドサリ
イケ友「」チーン
男「い、イケ友ーーー!? まさかお前までやられてしまうなんて、こうなったら誰が皆を救えるんだ…っ」ワッ
同級生「いや男くんッ!? そんなノリで済ます場面なのか今!?」
女「次はあんた達の番よ……」ユラリ…
同級生「ひぃいいいっ!? 普通に考えて駄目だろう!? お前病院に行けよー!? なんで犠牲者増やすんだよ!?」
女「? あたしが不幸な目にあってるからよ…?」
同級生「サイコパスかよ! 思考回路がてんでおかしいよお前!?」
男「………」スッ
同級生「お、男くん…?」
男「ここは俺がどうにかしようと思う」
同級生「なっ、出来るわけがない! 君のようなちっぽけで非力な人間が…! あのトチ狂ったバケモノに…!」
女「誰がバケモノよ!!」
男「良いんだ。正直な話、こういう状況は慣れっこだから。対処法も何となく分かる」
同級生「ほ、本当に…?」ブルブル
男「ああ、本当だ。俺に任せて大丈夫。君には指一つとして触れさせやしないって約束する」
同級生「………」きゅーん
女「なにイチャイチャしてんのよキモチワルイ! ええ、そう! だったらその余裕綽々の顔にぶつけてやるわ!」ダダッ
同級生「ひぃいいっ!」バッッ
男「……すぅ……」
男「不良くぅーーーーーーーーーーん!!!!!」
──ダダダ──
女「……!? こ、この重圧感のある足音は…!?」バッ
男「…来てくれると思ったよ」
「ああ。お前からのお呼びなら何処へども」
不良「──待たせたな、何秒だ?」ズッシャアア
男「ごめん。そういうの測ってない」
不良「次から頼むぞ」
男「これからもやらないと思う…」
同級生「な、ななっ、どうしてコイツが……!? 都合よく現れて、しかも君の助けで…!?」
男「同級生くん。そういうのなんだよ、今の感じって」ニコリ
同級生「なんだいその悟りきった表情は!? この半年間でなにがあったの!?」
不良「ふむ。状況はイマイチ掴めないが…」
不良「…お前か、男の幸せを邪魔する存在は」スッ
女「チッ、面倒くさいやつが現れたわね。──けれどどうだっていい、邪魔するなら処理するだけよ」ジャリッ
不良「………」スッ
男「ふ、不良くん! 暴力は駄目だよ! とにかく穏便に女さんを沈静化させるんだ…!」
不良「わかった」コクリ
同級生「だ、だが野生動物みたいなオーラ醸し出す馬鹿に穏便に済ませるなんて無理だろ…!?」
女「ぐへへ…」じりじり
男「大丈夫! きっと不良くんなら成し遂げてみせる! だって彼は見た目は怖いけど、すごく優しい人なんだってことはッ!」バッ
不良「フンッッ!!」ボッッッ!!
女「おごぇッッ!!?」ドボッ!!
男&同級生「えぇッーーー!!!?」
女「……うっ……」パタリ
不良「ふむ。いい反応だった、これで…」チラ
同級生「暴力生徒…」ブルブル
不良「え? いや、待て」チラ
男「人殺し…」ブルブルブル
不良「違う。待ってくれ」
女「おぇっぷ!」ケロケロ…
男「あ…女さんが…」
同級生「! だ、出したぞ黒い物体! こ、これは…!?」
不良「なにやらビニール性の袋のようだな。それを誤って飲み込んだんだろう」
不良「……。ちゃんと教えてやれ、お腹空いてもビニールは食えないと」コクコク
男「あ、うん。ありがとう、でもごめん、いきなり腹部を殴るから殺意があったのかと…」
不良「そこまで疑われるのは少し不本意だ」
同級生「にしてもキレイに吐き出させたな…」
不良「弟が誤飲した時があってな。掃除機も間に合わなくて、以前に試したことがあった」
同級生「つか。あんたはテンプレツインテールが飲み込んでたって端から知ってたのか…?」
不良「? そういう流れじゃないのか?」
同級生「いったいなんの流れを把握してるんだお前ら!?」
男「と、ともかく一件落着だよ…」スッ
女「うぅっ…」
男「女さん、女さん、大丈夫? もう平気だよ、飲み込んだものは吐き出せたし、Gでもなかったよ」ホロリ
女「……今話しかけないで、状況わかるけど、そーいうの聞ける状態じゃない………」ズーン
男「そうだね…」グスン
同級生「はぁー……ほんっと、あれだわ、君らと関わると忙しなくて寿命縮むよ、ほんっと」ハァー…
不良「それで、ここで何をしてたんだ?」
同級生「……。もういい、僕帰る…」トボトボ
イケ友「うぐ! ハッ!? ここは…それに、おれっちは…負け、たのか…!?」ハッ
イケメン「どうやらそのようだ…」
男「イケ友に、イケメンも…」
不良「ど、どうしたんだ二人共?」
イケ友「……。なんかチンコの記憶しかねーな」
イケメン「オレもだ…」
不良「エッ!」バッ
男「うん、見せてないよ? 普通に考えて俺が見せるわけないよね?」
不良「お、お前のちんこが大きから驚いて気絶なのかと…」
男「どういう状況なのそれ!?」
女「ちんこちんこうるさいんだけどさっきから!?」
~~~
不良「気をつけて帰れよー」
イケ友「イケメンも男ちゃんも寄り道すんなよ~」
イケメン「ああ、君たちも帰ってちゃんと風呂にはいるように! 清潔が一番だ!」フリフリ
男「じゃ、じゃあまた明日…!」フリフリ
不良「また明日な!」
イケ友「おう! また明日!」
スタスタ
イケメン「……。さて、オレらも帰ろうか」ニコ
男「ん」コク
スタスタ
イケメン「いやはや。またまた大騒動になってしまったね、君と過ごすと飽きない日々だ」ニコニコ
男「大抵が周りが凄いんだけどね…俺はまったく関係ないし…」
イケメン「またまた。君がいるからこそ、みんながのびのびと自分らしさを出し切れるんだよ?」
男「俺に責任転嫁してるだけじゃんそれ…」
イケメン「酷いことをいうなぁ」スタスタ
クル
イケメン「その隣に、オレも一緒にいるんだけど?」ニッ
男「………」ぽけー
イケメン「一人だけで責任なんてもったいないこと、させるわけがない。オレも同じ責任を追わせてくれよ」
男「…ハッ、言うだけ簡単だよな」
イケメン「その通り。だから有言実行、君には充実した青春ライフを過ごさせると決めているんだから」
男「えーえー、楽しみにさせてもらいますとも。こっちに迷惑掛からん程度によろしくお願いますよ」
スタスタスタ
男「だから…」ピタ
イケメン「うん?」
男「また、見てればいいじゃん、俺のこと」
イケメン「ああ。お言葉に甘えさせて貰おうと思うよ」ニコ
第三十一話『俺の突っ込みはいつもの仲で』
気まぐれに更新
よろしくおねがいします ではではノシ
↓過去作
男「見られてない?」イケメン「…」じぃー
男「見られてない?」イケメン「…」じぃー - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1397382696/)
男「見てるよな」イケメン「もちろん」じぃー
男「見てるよな」イケメン「もちろん」じぃー - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1433912208/)
生徒会室
会長「校外清掃活動での成果、実にお見事だったわ」
会長「多くの悪しき書物を焼却できました。──だからこそ、その手腕を活かして挑んでもらいたい」スッ
会長「次なるミッション要請はコレよッ!!」バーン!
会長「『図書室ブラフカバー同人誌』!!」
イケメン「……」
イケ友「お~…会長ねえちゃんノリノリ…」
会長「先日、生徒会役員の一人から『図書室にカバーを偽造し同人誌を保管している』とのリークがあったわ」スッ…
イケメン「つまり?」
会長「図書委員会に手引するものが居る、と見て間違いないようね」
イケ友「ほうほう」
会長「しかしことを大事にしては本末転倒。また新たな保管場所に移されてはイタチごっこの繰り返し」フフッ
イケメン(思うに彼女、ちょっとこの流れを楽しんでないか…?)ヒソヒソ
イケ友(姉ちゃんスパイものの映画とか超すきだし…)ヒソヒソ
会長「なので! 今回も貴方に助力を願おうってわけなのよ、どう? やってくれるかしら?」ババッ
イケメン「うん。で、報酬は?」
イケ友「そのエロ同人誌はおれっち貰っちゃって良いんだよな!?」ニコニコ
会長「……。その乗り気、実に良し!!」
イケメン(変なノリで返された…)
会長「もう、つべこべ突っ込むのは諦めました。貴方達に頼んだ時点でこうなるのは分かってるの」
イケメン「そっか。貴女も色々と変わったようだね、うん、じゃあ報酬の話に移ってくれ」
会長「そう淡々と流されたら流石に傷つくのだけど!?」
イケ友「んふふ! 何やら姉ちゃんとイケメンが企んでると思いきや、すっげー楽しいことしてるじゃんかっ」
イケ友「おれっちらに任せとけって! コウミョーにエロ同人誌を回収してみせっからさ!」
会長「フン。良いでしょう、ならば今日の放課後にミッション開始よ」
イケメン「今回も貴女はまた首が回らない状態かい?」
会長「…だからちゃんと報酬も用意してます、ほらコレよ」カララー
イケメン「どうも」パシッ
イケ友「? なんなんソレ?」きょとん
イケメン「さあ? オレはよく知らないな、貰えるから貰ってるだけで特に中身ついては」ニコ
イケ友「そうなんかー」
会長(よくもまあそんな良い顔でウソをつけるわね…)
イケメン「さて。我々も心を鬼にして掛かろうじゃあないか、悪しき圧政の末端となり国民たちを脅かそう!」
イケ友「ぐへへ! やっちまおうぜ!」
えいえいおーっ!
会長(楽しそう…)
~~~~
イケメン「──とまあ、図書室に訪れたのは良いものの」
イケ友「………」ニッコニコ
イケメン「まずは言っておきたい。その髪型、なんなんだ?」
イケ友「そりゃ初図書室となればキッチリ七三分け目の優等生ヘアーで神キメっしょ! どうよっ?」キッチリー
イケメン「メガネはどこから?」
イケ友「同級生のカバンからハイシャクしてきた、アイツ眼が悪いのな~~」
イケメン「へぇ、すなわち準備万端ということか、実に良い心構えだイケ友」ウム
イケ友「あぁそうだろうイケメン!? これでおれっちも優等生のお仲間入りさんだぜ!?」キラリン
イケメン(人のもの勝手に取ってる時点で優等生も何もないが、突っ込まないほうが面白くなりそう)
イケ友「──知ってっか、イケメン。図書室にはアレが出るってさ」
イケメン「アレとは?」
イケ友「アレと言えばアレに決まってるっしょ。──ユウレイだよ、ユウレイ!!」
イケメン「またそんな小学生の噂みたいなこと…」フゥ
イケ友「信用してない感じ!? マージーで出るんだってよ! 夜な夜な室内を歩き回って獲物を探し回るって話よ!」
イケメン「今は夕方だ。人気は少ないがまだ明るいうちに出られたら困るよ」スタスタ
イケ友「んもぉーう! イケメンはすぐこれだ!」
イケメン「無駄に会話する暇があるなら、同人誌の捜索に割いたほうが良いだろうに──」ガララ
イケメン「──それともなんだい? 今更面倒になって辞めたい言い訳を…どうした?」
イケ友「……で、ででっ…そ、そこ…ででででッ!!?」ブルブルブル
イケメン「? でで? 何がどうしたんだ」チラ
「………」ギョロリッッ
イケメン「」
イケ友「ひぁ…」
「……おい……」ギョロギョロギョロ
イケメン&イケ友「喋っ……うっ、ぎゃあああああああああ!!!??」
男「──ッてうるさいわッ!! 分かるだろッ! ひと目見た瞬間に俺だってさァ!?」
イケメン「はぁ…はぁ…あれ? 男くん? なの、か?」
男「わかってなかったの!?」
イケ友「び、びっくりしたぁ~…おとこちゃんの霊かと思って心臓飛びかけた…っ」ドッドッドッ
男「勝手に人を殺すんじゃない!」
イケメン「なんだ君なら呼び掛けてくれたら良かったのに、無駄にびっくりしちゃったよ」
男「呼びかけて、叫ばれたんですけど…コッチは…」ずもももも
イケメン「せいせい。ん? 今日はどうしたんだい? 放課後は用事があるって話だったような…」
男「ここが用事先。図書室で掃除があるから手伝ってんの」クル
イケ友「はれ? 男ちゃんって図書委員会だっけか?」
男「違うよ、ただ手伝ってるだけ。前に委員の人に色々とお世話になったから自主的にやってる」
イケ友「ほぇ~偉いなぁおとこちゃんわ~」
イケメン「へぇ…自分から…」
男「んだよ、コッチじっと見つめて」ジロ
イケメン「んーん何でも。というか今日の男くんは何だか冷たいな~」ニコニコ
男「人の顔見て叫ばれたら嫌でも冷たくなるわ」スタスタ
イケ友「んでもアレは卑怯だとおれっち思いますよ? タイミング良すぎてマジビビリしちゃったし」
男「俺が悪いと言いたいのかイケ友は…! つか何、その格好は」
イケ友「気づいちゃった? 気づいちゃった系? なはは、どーよおれっち優等生しちゃってない?」
男「いや、それ同級生くんの眼鏡だよね? 後で怒られるよ、絶対に」
イケメン「………」
イケメン(彼の交友関係の幅が広がっていく。反響した波紋のように重なって、また重なって、次々に広がって…)
そのうち自分では目で負えない速さで伸びていく。
イケメン「…置いて行かないでほしいな」ボソ
男「ハァ? 何突っ立てんだよ、早く来いってイケメン」グイッ
イケメン「──……」
男「お前も図書室に用事あるんだろ? ドアの前で大声で喋ってたの聞こえてたんだぞ」くいくい
イケ友「行くぞイケメン! おれっち等は何し遂げねばならぬミッションに立ち向かわなければならぬ!」
男「ならぬ?」
イケメン「あ、いや、イケ友の言うことは気にしないで良い。勿論、掃除の邪魔にならない程度にお邪魔するよ」
男「……。普通に本借りて普通にすぐ出ていくってコトだよな?」
イケメン「そういったつもりだけど?」
男「お前が普通のこと言うとすごい意味深に感じるんだけど…」
イケメン「流石は男くん。やはりオレのことをよくわかってるな…」フムフム
男「やっぱなんかあんのかよ! ていうか少しは予想裏切ることぐらいやってみせろよ!」
イケ友「シィー! 今はもう図書室内だから静かに!」
男「しょっぱな開幕に叫び散らかしてたの誰か覚えてるよね?」
イケ友「おれっちは廊下だったからセーフ!!」ビシッ
男「全然アウトだよ!!」
男「ったく、もういい。コッチはやることあるんだ、用事済ませたらとっと帰れよ」フン
スタスタ
イケ友「あら~…男ちゃんってば冷たいぜ~…」
イケメン「いや、むしろ好都合。男くんがいないほうがコチラも動きやすいしな」
イケ友「おれっちは仲間が多いほうが好き…」
イケメン「少人数のほうがプロっぽくないか?」
イケ友「確かに!? さっそく行こうぜー!」ダダッ
イケメン(ちょろい)
~~~
イケメン(五冊の同人誌が隠蔽されている、という話だったが)
イケメン(本棚から闇雲に探すのは無駄…)チラ
イケ友「おらおらーっ!! どこだお宝同人誌ィー!!」(小声)
イケメン(ローラー作戦はイケ友に任せるとして、オレは少し頭を捻ってみよう)ウーム
イケメン「…お?」
男「………」(黙々)
イケメン(アレはもしは──表紙のカバー張り? 日焼けと痛みを防ぐための作業か、なるほど)スタスタ
イケメン「ねぇねぇ男くん?」ニコ
男「…やっぱり来たな」ハァ
イケメン「え?」
男「来ると思った、えーえー来ると思ったさ。お前なら絶対に俺のところにやってくるって」
イケメン「あ、いや、別に作業を邪魔するつもりは…」
男「嘘つくな」ジトー
イケメン(笑えるぐらいに信用性無いな、オレ…あぁ…でもえぐりこむような疑り深い目で…)ゾクゾク
男「なんなのその目…キモ…」
イケメン「あはは。大丈夫、本当に何もする気はないんだ、安心していい」ニコニコ
キャー イケメンくんじゃない、アレ? カッコイイー
男「ハァ…」チラ
男「あぁ、うん。邪魔しに来たんじゃないんだな、んでなにさ。俺になんか用?」
イケメン「…………」じぃー
男「…早く要件を言えよ」
イケメン「ん~…」スッ
男「なんだよ、やっぱり邪魔し───ちょ…? なんだよ急に隣りに座って…!?」ビク
イケメン「気が変わった。やはり少し君を見ていこうと思って」
男「意味がわからん…!!」
イケメン「良いじゃあないか。見た限りでは、特に重要なポジションじゃないんだろう?」
男「…見られてるとやり難いだろ」
イケメン「そう?」
男「……。あーもういい、勝手にしろ…」ボソボソ
イケメン「うん。勝手にしてる」ニコ
男「………」ビリー ビィイイ キュキュッ
イケメン「………」じぃー
男「ほんっと、変態だよな。お前って」
イケメン「だろうね、本当に」クスクス
「あの~……」ヒョコ
イケメン「?」
男「あ、ハイッ!? なんでしょうか?! なにか僕間違えましたかね!?」ビクゥッッッ
「あっ、違うの! そーいうのじゃなくて、えっと、その~…」チラチラ
イケメン(僕…)
男「あ……えっと、スミマセン、俺…ぁ…僕に用があるわけじゃなかったか…」ガタリ
「違う違う! そうじゃないの! ──今日のお礼を言うの、忘れてたから、言っておこうと思って」
男「え…」
「今日は本当にありがとう。人手が足りなくて参ってたんだ、みんな部活やら用事があるって集まってくれなくて…」
男「あ、いや、僕も特に用事がなかったというか…お世話になった人の為にやってるっていうか…」
「あー眼鏡部長のコト?」ニコニコ
男「ええっ!? な、なぜそれを…!?」
「そりゃわかるよー。だって眼鏡部長ったらいつも君のことばっかり話すんだもん」
男「そっ、そうなんスか、光栄ッス、アザッス」
「普段まったく喋らないのに、君のことになるとすっごくペラペラになるんだよ。私、初めて見たよ? あんな部長の顔」くすくす
男(照れる…)
「本当にありがとう。これ終わったら先生からジュース貰えるから、楽しみにしててね」ニコ
男「はい…」
「じゃあ、引き続きよろしくお願いします」スタスタ
男「………。ハァ~…びっくりした…」ストン
イケメン「そういう理由だったんだね」
男「まあな。まさかお礼を言われるとは思わなかったけど、あー驚いた」ビィー
イケメン「そうかな? 君はもっと色んな人から感謝されるべきだと思うけど」
男「はいはい。お前はいつだって俺に感謝、俺に感謝だよ、お礼満来だな」
イケメン「そうだね、オレは君に救われっぱなし、だからいつか、ちゃんと恩返しをしなくちゃなって思うよ」
男「んだからそれやめろって───」ピク
イケメン「うん? どうした?」
男「──なんでも、ない。気にするな」フィ
男(急に委員の人がお礼を言ってきたのって、そうか、コイツが隣りに座ってからだった)
男(正しくは【俺がコイツと会話をし始めてから】だ。…なんとなくわかる、俺、目がアレだから…距離置かれてたんだ…)ズーン
イケメン「……」
男(でもイケメンが喋りかけて、隣りに座ったから、平気だって大丈夫だって思われた…のかも知れん)
男(まったく分かってやってんのか、無自覚でやってのけたのか。どっちにしろアレだ、やっぱ凄いな、コイツは)チラ
イケメン「ねえ今度さ、一人称『僕』を使って突っ込んでくれない? すごい新感覚でキュンって来るかも」ワクワク
男「……だから喋らなきゃイケメンだと認めるのにな……」
イケメン「なんて?」
男「黙ってろ変態」ビッビッ
「あーーーっっ!? イケメンそりゃないべさ!? なーにサボって男ちゃんと駄弁ってるワケ!?」
イケメン「あっ」
男「コラ! イケ友! シィー! ここ図書室だぞ…!」ガタ
イケ友「おれっちだって男ちゃんと駄弁りたいぜ!? お袋との話もじっくり話し合っておきたいのに!」
イケメン「す、すまんイケ友……お袋? なんの話だ?」キョトン
男「いやいやなんでもないからっ! ──その話はイケメンの前でするなって散々言っただろイケ友…!!」ヒソヒソ
イケ友「あっ、いっけね! ごめんちゃい男チャン!」テヘペロ
男「謝り方も喧しいな!」
イケメン「男くん。君の指摘もなかなかに声が大きいよ?」
男「ぐッ…俺だって好きで大声出してるわけじゃあ…!」
イケ友「そうだイケメン、男ちゃんはおれっちの為を思って声を張ってんだ。その想い、おれっちはとても嬉しい!!」
男「ならもっと静かに嬉しがって!?」
イケメン「男くんの言うとおりだ。お前は少し、感情的すぎて声が大きくなりすぎる。もっとスマートに繊細にやりたまえ」
イケ友「んじゃどうやってやるんだ、教えてくれよイケメン」
イケメン「うむ。こうだ」
シュタァ… ススッ… シュバァ…
イケメン「──俺はお前にいつだって感謝してるよ」ポン フゥ~
男「いぃいぃいぃッ!?」ゾワゾワゾワーッ
イケメン「どうだ!! これがスマートな感謝の仕方だ! わかったか!?」バッッ
男「黙れ変態変態ッ! よくもまぁやってくれたなアホったれッ!」
イケメン「あれ? 要望に準じた素晴らしい方法だったと思うんだが…?」
男「何処がだよ! まったくだよ!」
イケ友「ま、まさか…そんな方法があったなんて…」わなわな…
男「この流れそろそろ終わってくんない!? つかやっぱりテメーら邪魔しにきたんじゃないか!」
イケメン「こうなってしまえばやむなし。イケ友、オレたちは降伏して静かにこの場を去ろうではないか」
イケ友「やぶさかでなしですな!」ウム
男「あ…! オイ…!」
イケメン「──じゃ、頑張ってね」フリフリ
イケ友「また明日帰ろうぜ~」フリフリ
男「……っ」ストン
男(あぁもうかき乱すだけかき乱して、去るのは一瞬)チラ
くすくす ねー いまの凄かったね~ くすくす
男(笑われてる…そりゃ丸聞こえだよな、というか面白かったのか今の会話って…)カァァ
男(にしてもイケメンたちは図書室に何のようがあって来たんだろ…)
イケ友「色々と見回ってみたけど、こりゃ埒が明かんぜ。数日にワケて探すハメになりそう」
イケメン「いや、実は隠蔽同人誌についてはおおよその検討がついている」ソッ…
イケ友「マジで? どこどこ?」ソッ…
イケメン「アレだ、委員達が座っている横の未防止の本の山だ」
イケメン「隠蔽行為が一ヶ月以内に行われた話なら、新刊で偽装された可能性が高い」
イケメン「──古い本は既に防止済み、なら、あの本の山の中にあるのだろう」
イケ友「…そりゃヤバくね? バレるのも時間の問題だぜ?」
イケメン「オレとしてはバレても全くかまわないんだが…」
イケ友「うーん、まあ会長姉ちゃん直々の頼み事だし、おれっちは家族は大切にする男だ」ウム
イケメン「ああ、報酬も貰ったしな。何より、発覚から遡られて報酬の件が男くんに知られるのはまずい…」
イケ友「なにがまずいん?」
イケメン「男くんの信頼をこれ以上落とすハメになる」
イケ友「もうすでに結構下がっちゃってんのか…」
イケメン「イケ友。ここからはオレだけでも動ける、…怖じ気付いたなら帰ってもいいぞ」
イケ友「ヘッ! バカ言えってイケメン! …おれっちは死ぬ時も一緒だぜい?」ヘヘッ
イケメン「その言葉を聞けて嬉しいよ、オレは。──では作戦内容を伝える、心して聞いてくれ」
~~~
男(あ。テープが切れた、えっと、どこにストック置いてあったっけ)キョロキョロ
男「……あ、あのぉ~…テープの換えって、へへっ…どこ、ありますかねェ…?」ニ、ニヘラァ
「ヒッ」
「うわあ!? ──あ、あっ、うん! それならコッチにある、から…うん…そっち…!」
男「ありッ、ありがとうございます」クル
男(良いんだ、うん。俺が悪かったよ、どう考えても聞き方おかしかったし、ぜんぜん平気だし)トボトボ
「──って、てててッ! おわーッッ!!?」ズンドコゴッシャーンン!!
男「え…?」
イケ友「痛つつ…ゲェー!? し、しまったぜぇ!? 転んで本の山崩しちまったよォー?!」ガビーン
男「ちょ、イケ友!? なにやってんだ…!?」
男(先に帰ってたと思ったら一体なにをして───)タタッ
「わっ、大丈夫? 怪我とか…」タタッ
「イケ友マジでおっちょこちょいすぎでしょー」タタッ
イケ友「ま、まさかなにもないトコロで転ぶとはな~このおれっちがな~」
「プッ! 何その棒読み、恥ずかしがってんの?」
「アハハ~! らしくな~い!」
ワイワイ ガヤガヤ
男「うっ…」タジ…
男(お、俺は黙って崩れた本の山を片付けておこう…)クル
イケメン「──大丈夫?」
「へぇっ!? あ、ハイッ!? だだだだいじょうれふ!?」
イケメン「結構くずれたね。アイツにはよく言い聞かせておくから、怒らないでやってほしい」ニコ
「はひ! わかりまひた!」カァァ
「わ、私も手伝おうっと~…」ガタリ
「あたしも~…」ガタ
がやがや わいわい
男「………………!」ハッ
男(し、しまった! 怖じ気ついてたら出遅れた! 一人、木偶の坊化している…!?)バッバッ
イケメン「いいよいいよ。友達がやったことだからオレが責任もって──」チラ
イケメン(くくく。作戦通りだ、君ならきっと率先してイケ友や崩れた本の元へ駆けつけるだろう)
イケメン(だがしかし! 委員はすべて女子! …集ってしまうと君は躊躇うと予想した)
男「………」オロオロ
イケメン(そして、この隙に…)チラ
イケ友「………」コク
イケメン(偽造された同人誌を探す。たまたま借りたかった本だと捏造すれば回収は簡単だ)キョロキョロ
イケ友「おあーっ!? こりゃまさか前から借りたかった『男なら誰でも作れる男料理本』ってやつじゃあねーですかねェ!?」
イケメン(来た! まずは一冊目…!)グッ
「へえ? 借りたかったら借りてってもいいけど?」
イケ友「マジで? うむむ。これで弟も喜ぶだろうよ、えっへへ。あんがとな~」ニヘラ
イケメン(オレの方もすかさず探し当てなければ…どこだ、どこにある…これとかはどうだ…?)ヒョイ
パラリ
イケメン「! おっとと、コレもしかしてペット紹介雑誌かな? 実は前から気になってたんだが…」
「あ…ど、どうぞ! 未防止ですけど、雑誌系統なら大丈夫なので…!」
イケメン「ありがとう」ニヤリ
イケメン(来た! これで二冊目、あと三冊! コツを掴めば簡単に見つけ出せられるぞ!)
男「…………」ぽつーん
イケメン(…ごめんよ、男くん。辛い立場に追いやったことは否めない、けれどオレ達は本気なんだ)
イケ友「つーかそれも借りたかったやつじゃね? おっほー! ここスゲーな! なぁなぁイケメン!」
イケメン(三冊目──おっとこれもそうか? ビンゴ! 今回の謝罪は先進誠意込めて後日、やらせてもらう)
イケメン(さあ、残り一冊! 見つけさえすれば男くんは救われる!)バッ
イケメン(待っててくれ男くん! この件が済んだからすぐさま君の元へ───)バッ
イケメン「──………」ピタ
男「あのっ!」ヒョイ
「あ…」スッ
男「お、おれっ! 俺も手伝い、ます! 見てるだけなのも、アレなんで!」ガクガクガク
「で、でも…」
男「平気ッス! 大丈夫ッス! あの、俺も、アイツらと…と、友達ィッ! なんでねッ!?」
「……。そっか、うん、ありがとう」ニコ
イケメン「……………」
イケ友(い、イケメン! このままじゃマズイやも! 残り一冊がまったくどこあっか分からん…ってか)ヒソヒソ
イケメン「……………」だばぁーー
イケ友「なんで静かに号泣してるん……?」
イケメン「信じられない。おとこくんが、オレのこと友達って、いや違う、あんな緊張しているのに彼は一人で前に…」サラサラ…
イケ友「そ、そうなんか…でも泣いてる場合じゃなっしょ? このままじゃ男ちゃんにバレちまうぜ…?」ヒソヒソ
イケメン「良い。バレてもいい」フルフル
イケ友「…ちょっとイケメンさん?」
イケメン「このまま彼の勇姿を見届けたい。だって後悔しそうだ、なにより見なかったことを一番に…」ブルブル
イケ友「…………。うん! ちょっと強引に行く、イケメン」グゥインッッ
イケメン「男くん頑張ったね──おごぇっ!?」
イケ友(手短に言う。見つけなきゃ結局は後悔する、そう言ったのは誰だった?)
イケメン(オレです…)グスッ
イケ友(なら冷静になってちょ。もう残り一冊だ、見つけるのはカンタン。余所見してる隙なし、わかったか?)
イケメン(はい…)コクコク…
イケ友(よっしゃ。つか、なんで敬語なん?)
イケメン(イケ友から本気目で怒られるの初めてだから…)
イケ友(そりゃ昔より今のイケメンの方が危なっかしいからなぁ)
イケメン「え?」
イケ友「いっけね。そーこーしてるウチに男ちゃんが拾い終わっちまう──男ちゃーん! あんがとー!」タタッ
男「い、いや俺は当たり前のことをしたまでで…」カァァ
イケ友「それが嬉しいんだってのー! このこの~!」うりうり
イケメン「…………」
イケ友「それにほら、イケメンも嬉しがってたぜ?」チラ
イケメン「!」
男「んぐっ……コイツは俺が何したって喜ぶ変態なんだよ、そういう奴なの」
イケメン「ふふ。ああ、そうともさ! 君が動いてくれるだけでもオレは歓喜するね!」
男「ああ…お前が普段、俺のことをどう見てるかより詳細にわかる発言だなァ…!」
イケメン「褒めてるんだよ?」
男「もっと普通に褒めろ! つか、今ってとくに褒められる場面でもないだろ!?」
イケ友「くっく、さて、おれっち等はもう一冊ぐらい借りていきたい気分なんだよなぁ~~」キョロキョロ
男「まだ? けっこう借りていくんだな」
イケメン「今日は久しぶりに図書室に訪れたから、これを機に色々と借りようと思って」キョロキョロ
イケメン(グッジョブだ、イケ友。これでより隠蔽同人誌を探しやすい状況になった!)
イケ友「コツがあるんよなぁ~『これだァ!』って直感するイメージっていうやつ?」
イケメン(まさしく、隠された同人誌はもはや我々にとって見れさえすれば分かる!)ぴくん!
イケメン「これだー!」
イケ友「これっしょー!」
男「ん? どれ?」
イケメン「このビシビシと感性に訴えかけてくる表紙と色合い。まさしく間違いな──」
イケ友「……………」ダラダラダラ
イケメン「あれ? ど、どうしたイケ友? いきなり固まって…」
イケ友「ん~…っと、まぁその、アレは…本当に、そーいったモンだとイケメン、思う?」スッ
イケメン(どうしたんだ急に? 互いにコレだと思ったのなら…)チラ
『おことのからだエゴ・サーチ!《かき分けるヒミツ☆教えてムーチョ》』
イケメン(なんだッ…この、隠蔽同人誌より切れ味ある表紙っぽいのは──ッ!!)
男「二人して固まって何やってんだ? どの本を借りたい感じ?」
イケメン「えと…そのぉ…」モジモジ
イケ友「やっぱ…そんなに、かなって…」チョンチョン
男「いや二人で『これだー!』言ってたじゃん、確かこの辺を指差して…」
イケメン「いいんだよぉ?! 男くんはオレたちなんかにかまってないでェ!?」ババッ
イケ友「そーそー!? 勝手におれらで見繕って借りちゃうからさー!?」
男「む。臨時だとしても図書委員としての権限もってるんだからな? 一応、貸出許可も出せるし」(使命感)
イケメン(い、何時になくやる気に満ちている…くそぅ、裏文化祭共め…なんて本に偽造したんだ…)
イケ友「どうにかして手に入れて──んぁ? ちょい待ち、気になることがあるんだけどさ?」
男「うん?」
イケ友「あの本のこと」ズビシッ
イケメン(直接言いに入った!?)
男「どの本? えっと『おとこのからだエゴ』……なんで今その本、気にする?」ジトーーーーー
イケ友「うぐッ、いやね? おれっち気になるんですよ、どうしてアレだけカバーしてねーのかなって」
「──キミたち、図書室のユウレイの話しってる?」
イケ友「お?」
イケメン「え? 幽霊?」
「そう。割りとこの学校じゃポピュラーな怪談話だけど、その本、実はマジモノなんだ」
男「と、図書委員副会長…!? あれって実話だったんですか!?」
「ええ。マジモンなのです」コクコク
イケメン「え、えと……つまいどういうことなのかな……?」
男「お前らが廊下で話してたやつだよ。過去に、漫画家を目指していた生徒が参考資料として本を借りようとしたんだ」
けれど題名があれで、表紙もアレときたもんだから、恥ずかしくて中々手に取れなかったらしい。
そのせいなのか分からないが、男の体がへんだと指摘され漫画家を断念。
そして残ったのは生霊めいた生徒のアノ本に対する執着心だけが残った……
男「つまり、あの本を借りようとすると幽霊が現れて脅してくるらしい」
「『それを借りるな。持っていくな』ってね」
イケ友「ひぇぇ…マジかよ…くわばらくわばら…」ナムナム
イケメン(すごくどうでもいい…)
イケメン(し、しかしッ! そうまでピンポイントにアノ本だと言うのなら──少し不可解な点が…)
イケ友「ど、どうするよイケメン? こうなったらアレだけ後に取りに行くってのもアリじゃ…」
イケメン「………」
イケ友「イケメン? どうしたん?」
イケメン「──やはり何処か、おかしい。オレたちはもしや、最初から思い違いをしていたんじゃ…」
イケメン(隠蔽行為が一ヶ月以内だからこそ、新刊で偽造の可能性が高かったハズだ)
イケメン(しかし『おことのからだエゴ・サーチ!《かき分けるヒミツ☆教えてムーチョ》』は噂違わぬ古本…!)
イケメン(アレが隠蔽同人誌だと確信している今、最初に前提にした条件が狂ってしまうことになる!)
男「おい。結局は借りていくのか、いかないのかハッキリしろって」
「…………」
イケメン(これは…)チ、チラ
「…………」ニコ
イケメン(これはもしや──我々はすでに踏み込んでしまっていたのでは……?)
「クスクス ねー見た?」
「見た見た。やっぱ生の生はちがうねーw」
「っはー…しんどい…」
イケメン(この人たち全員!! うっ、裏文化祭実行委員たちなのか────!!!)ズガァーーーン!
「イケメンくん」スッ
イケメン「ひぁいッ!?」ビックーン
「その本は【私たち】でも安易には貸出できない、けっこうレアなものなんだ」ニコニコ
イケメン(この物言い、まさか勘付かれたのか!?)
「君たちがどういう理由で本を借りに来たのか、ってこともなんとなーく理解しているつもり」チラ
イケメン「ご、ごくん…は、ははっ…その言い方だと、なにか脅されてる気がするんだが…?」
「そうかな? 私たちは穏便にことを済ませたいだけなんだよ」ニコ
イケメン「いや、オレたちこそ穏便にことを済ませようとしている…かの有名な生徒会長様がでる前に…」
「忘れてるようだけど、本の貸出には表紙裏に付けられた貸出カードに記入することが必須」
「じゃあやる気になってる彼に貸出仕事を任せるつもりだけれど、うん? どうする?」
イケメン「……………」ダラダラダラ
男「? さっきからヒソヒソ話して…」
「あ。もう借りていくからしいから男くん、受付任せちゃってもいいかな?」
男「え? は、はい! 任せて下さい…!」
イケメン(既に会長の指令は内部告発で本元にリークされていた、会長め、信頼度低すぎだろう…っ)
イケメン(──わざとだったんだ、オレたちに隠蔽同人紙をみつけさせ、男くんを手伝わせたのは──!)
イケメン(今日という、今を作り上げる為に! なんたる手腕と一枚岩加減! …敵わない、が)チラ
男「じゃあイケメンとイケ友。それこっちに貸してくれ」
イケ友「えっ!? ……あっ!? やっべ!? そーいう感じだったっけ!?」
男「そういう感じ?」キョトン
イケメン「……。ひとつ最後に問いたい、是非とも本音で答えて欲しい」
「ええ」
イケメン「男くんを委員の仕事に誘ったのは、本当にそのためだけの理由だったのか?」
男「ハァ? きゅ、急に何を聞いてんだお前……!」
イケメン「答えてくれ」
男「え…ど、どうしたんだよ…? ふ、副委員長も……」オロオロ
「それを聞いてどうするの?」
イケメン「答え次第じゃあ、そうだね、オレ個人の意見で言えば───悲しいかな、それにちょっと怒るかも知れない」
「…………」
イケメン「どうなんだい?」
「……。男くん」
男「はい…?」
「今日は手伝ってくれて本当にありがとう。男手ひとつあるだけで、やっぱり効率は段違いだったよ」
男「俺に出来たことなんて、そんなには…」
「ううん。君がここにいるだけで、みんなが助かったんだ。だって───」チラ
「──きみは眼鏡先輩の期待以上の仕事をこなしてくれたから、十分なんだよ」
男「えっ!!? あの人の期待以上だなんて……そんな…っ」テレテレ
イケメン(そっか、残念だよ。それが君の答えか)
「うん! これからも暇があったらでいいから、手伝ってもらってもいいかな?」
男「ウッス…」
ぱしっ
イケメン「え…」
「今日はコレだけでいいの? それともあの曰く付きの本、借りていっちゃう?」
イケメン「な、なぜ…?」
「私は図書委員会の副委員長。貸出受付係は、当然の仕事でしょう?」ニコ
イケ友「ホッ……」フゥ~
イケメン「だって君はああも言ってきたじゃないか…?」
「もちろん、そのつもりだった。この場にいる全員がね、ずっと君たちを待ち構えてた」
イケメン「……」ビクッ
「………」じぃー
「……」
「………」
イケメン(改めて思えば、本当にココは敵地なんだよな…)ゴクリ
「あの独裁ぶりで刈り取る圧制者。恨んでることも多いし、楽しんでる子もいると思う」
「──でも」
イケメン(でも?)
「男くんが、困ってるの見たくないって思っちゃったから」ニコ
イケメン「! ……ありがとう、いや、感謝するのはおかしいかもしれないが」
「いいんだよ。これからもわたしたち裏祭は極秘裏に続けていくし、受け継がれるほど歴史が伸びると思う」サラサラサラ…
イケメン(しかし今回を見逃すのなら歴史は更に…)
「でも、わたしたちは負けないよ。だから心してかかってきてね、イケメンくん」
イケメン「……。はい、肝に銘じます」ペコリ
「うん!」
男(この二人、いつの間にこんな仲良くなったのだろう……?)
「じゃあ貸出記入おしまいっと、男くん。今日はもういいよ、後はわたしたちで終わらせちゃうから」
男「いいんですか…?」
「うん、お友達と一緒に帰っていいよ」
男「……トモダチ……」
イケ友「ッハァ~! 一時はどうなるかと思ったが、よっしゃー! 男ちゃん帰ろうぜー!」
男「お、おう」
イケメン「……………」
男「おーい、イケメン。お前もほら、えっと、もう帰ろう? 副委員長も良いって言ってくれたし…」クイクイ
イケメン「……求められているんだ、ならば感謝の意として送らなければだろう」
男「へ? なにが?」キョトン
イケメン「男くん。ちょっとこっち向いて」ぐいっ
男「なっ、なんだよ? もう帰るってのにまだ何かある──」グル
イケメン「…………」スッ ギュウウウ
男「──ハァッッ!? おまっ!? なにやっ……!?」かぁあああ
イケメン「幽霊こわい…」キリッ
男「キメ顔でなに意味不明なこと言ってんの!?」
イケ友「なんなんイキナリそんなノリは!? ……え、居るの……幽霊そこ、いるの……?」ブルルゥ!
イケ友「男チャンたっけてやぁ!」ガバァッ
イケメン「ぐぉっ!?」
男「なんでイケ友までやるんだよぉー!?」
イケ友「だって男ちゃんの眼力なら勝っちまう可能性アリっしょ!?」
男「ないよッ! そこまで凄くないよ俺!」
男(こ、こんなバカ二人のノリを大衆の面前で…! あれだけ感謝してくれたのに! 迷惑がれちゃうだろ…!!)バッ
「キャーッ!! まさに想像以上、本当に男くんってば期待以上だった! また来てね!?」キャーッ
男(……えぇ……)
【副委員長のそれは今日一番のいい笑顔の感謝だった】
第三十二話『俺はちゃんと仕事をしていたでしょうか、という突っ込みはできない』
遅くなってすんませんんんんんn
がんまります
教室・授業中
同級生「……」カリカリ
コトン コロコロ…
同級生「ん?」ヒョイ
同級生(消しゴム? 誰か落としたのか? えっと~…)キョロキョロ
しーん
同級生「……あの」
しーーーーん
同級生(いや、誰かが落としたんだろコレ…!? なんで周り無反応なんだよ!?)
同級生「……チッ」
「ヒッ」
「…や、ヤバイって…言えってホラ…」
同級生「……………」スッ ゴソゴソ
「あぁ…」
「ポケットに隠された…だから言ったじゃんか…」
ヒソヒソ コソコソ ヒソヒソ
同級生「………」ツーン
~放課後~
男(さて、今日は誰との約束も入ってないし、大人しく帰ろうっと)ヒョイ
男(帰って何しようかな~…久しぶりにRPG系のゲームでも───)クル
「ちょっといいかな」
男「んぁ!? ──痛たた…いったい誰……?」チラ
同級生「チョット、ハナシ、キイテ」ずもももももももも
男「ヒィッ!? ……えっ!? どっ、同級生くん? だよ、ね……?」ビクゥッ
同級生「一般庶民では成りえないオーラを持った人間なんて…僕以外に居ないだろうに…」ドロドロ
男(いつもより金持ちキャラのキレがない…どうしたんだ一体…)
同級生「…今はヒマなのかい?」チラ
男「えっと、まあヒマといえばヒマなんだけど…一体全体どうしたの? なにかあった?」
同級生「…………」
男「な、悩み事なら聞くよ? 俺みたいな一般人が、そう、たいそれた助言なんてできやしないのかもだけど…」
男「話だけなら聞くし、同級生君のためなら、うん、俺も頑張るから」
同級生「もしや君は天使なのか…?」ぐすっ
男「ちょっと弱り過ぎじゃない同級生くん!?」
~校舎裏~
男「──消しゴムを、パクってしまったって?」
同級生「あぁ…その場の勢いに任せて、ほら、この通り…誰かの落とし物をポケットに入れてしまったんだ…」グス
男「それは…」
同級生「わかってる。言われなくてもわかってんるんだよ、…確かに腹がたったさ、けどね、今更ながら後悔が押し寄せてきてね…」ブルブル
男「それで俺に相談を…落とした本人に消しゴムを返してあげたい、そういうことなんだよね…?」
同級生「………」コクコク…
男(どうしよう。俺が想像した以上に───)
男(──めちゃくちゃハードルが高い相談事だった……!!)【他のクラスメイトと接点なし】
同級生「気軽に話せる相手なんていないし…そもそもいたら消しゴム返せてたし…」ズーン
男(いや、俺だって誰一人として普通に話せる人いない…)ズーン
同級生「ていうか誰の落とし物かどーかも分かっていなんだよね!? 誰に返せばいいのコレ!?」ギャーッ
男「あ、うん…やっぱりそう考えると座席周囲の誰かだと思うし、総当たりで望めばなんとか…」
同級生「それができてるなら既に返してるさッ!?」
男(ですよね…)
同級生「キミはほら、文化祭でクラスメイトとの交流があっただろう? だから僕よりもスムーズに事が進むと思ったんだ…」チラリ
男「……………」
同級生「だ、だよね…?」ぶるぶるぶる
男「……もっ! もちろん!? そのとおりだよ、うんッ! 大丈夫! 俺に任せてくれれば万事解決間違いないよ!」
男(──真っ赤なウソ! そんな交流とっくの昔におじゃんになりました! いまじゃ挨拶もろくにしてません!)ダラダラダラダラ
同級生「そっか…やっぱりね…」ホッ
男(で、でも彼を不安にさせることなんて出来ない…だってあの同級生くんに頼られたんだ…頑張らないとだろ…!)グッ
男「よし、わかったよ同級生くん。あとは俺に任せてくれていい、どうにかしてみせるよ」
同級生「ううっ…本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだよ…今度お礼に銀座デパ地下の高級シュークリームを送るよ…」
男「過剰な感謝はやめて! …だって俺達はほら、と、トモダチ…だし……ね?」
同級生「おとこくん……」キラキラキラ
男「うん! じゃあ消しゴムを返しに行こう!」ニコ
~~
男「とは言ったものの…」
がやがや キャイキャイ ワハハー! ナニソレー!
男(前から思ってたけど、うちのクラスってすっごい陽キャ多いよね…うん…知ってたけど、知ってたけどさ…)ブルブル
男「……」チラ
同級生 コソコソ
男(うっ……見られてる……こ、ここでひよってても埒が明かないッ! 覚悟を決めるんだ俺…! 同級生君のためにも!)ギュググ
男「あ、あのー…すみません、お話を聞いてもらっても…」
がやがやがや ワイワイ
男「そっ、その~~…」
ギャイギャイ! ギャハハー!
男「………」
クル スッ スタスタ…
同級生「えっと……それで、どうだった…?」
男「うん! 誰も落としてなかったみたい!」ニコ
同級生「いや嘘だろそれ!? 見てたよ! まったく相手にされてない所ずっと見てたよ! こっちは!」
男「スミマセン…」ションボリ
同級生「いやっ!? 違っ、責めたいわけじゃなく──ごめん、こっちこそ言い過ぎた……そりゃ無理だよな…うん…」チラ
男「お役に立てず面目ない…こういっちゃなんだけど、うん、だって違うんだもの…なんていうか…存在っていうのかな…」チラ
ギャハハー! ナニソレー! ダハハ!
男&同級生(こ、怖い……!!)ゾクゾク
男「──ど、どうして話してるだけで、ああまで盛り上がって笑えるんだ…!?」ヒソヒソ
同級生「他人の机に腰を掛けれる奴の頭ってどうなってるんだよ…!?」ヒソヒソ
男「…わからないよ、あの人達、本当に俺とおなじ高校生なのかな…?」
同級生「違うだろ? 脳内構造が異なってるどころか、衣食住も僕たちとは違うね、断言できるわ」コクコク
男「…っていうか、ごめん、同級生くん」
同級生「ど、どうしたんだい急に…」
男「実は俺、もうすでにクラスメイトとの交流なんてあってないようなものなんだ。とくに修学旅行を堺に」
同級生「そ、そうなの?」
男「うん。ぶっちゃけると五班以外の人たちと会話した記憶がいっさい無い」
同級生「それは……なんていうか、重症というべきか……僕が言えたぎりじゃあないけれど……」
男「どうしてだろうね…俺的に理由が一切わからないんだ…」
同級生(いや、修学旅行やエロ本探しの件で察しがつくけど…)
男「こうなったら仕方ないよ。こういったことがアホみたいに得意なアイツに任せるしか…」
「───それはダメだ!!」
このSSまとめへのコメント
続き期待
いつホモまでもホモ待ってますホモ
更新してたー!
続き期待
一ヶ月前に更新来てたー!!!!
続きかもん!!!