男「見てるよな」イケメン「もちろん」じぃー(504)

男「わー」

男(周りの景色がものすごいスピードで後方に流れていく…新幹線って凄いな…)ドキドキ

今現在、新幹線に乗って東京のとあるホテルへと向かっている。
本来の地元から遠く離れた場所で、何故新幹線なんかに乗っているかと言えば───

男(勿論、それは修学旅行だから)

男(高校二年の特大イベント。皆も浮かれ気分でこれからの三日間をどう過ごすか楽しみにしている…勿論俺も…)

男(沢山思い出を作ろう…こういったイベントは少し苦手だけど…うん、けどそれでも頑張るんだ)チラリ


不良「……」

同級生「……」ピコピコ


男(でも、なんだろうこの相席状況は……?)ダラダラ

男(し、仕方ないんだよな。だって二人は俺と一緒の…でも…)

男「うぅ…」チラチラ


不良「……」ズーン


男(大きい、大き過ぎる。180センチ以上あるぞこの人……)

男(で、でも! このまま変な空気のまま過ごすのはいい感じはしない、は、話しかけよう…!)

男「あ、あの!」

不良「……」チラ【学年一有名な不良】

男「えっえっと、そのぉ~……修学旅行楽しみ、だね…?」

不良「……」じぃー

男「っ? っ??」

不良「ああ」コクリ

男「だ、だよねーっ」

不良「……」フィ

男(……。あれ…いまので会話終わっちゃった…?)

不良「……」

男(嘘だろ…! もっと続くと思ったのに、俺がもっとハキハキ喋らなかったから駄目だったのか…っ?)

男「ゴ、ゴホン。あ、あの!」

同級生「あぁあーッ! クソッ! 失敗したじゃあないかキミのせいでッ!」チュンチュンチュン

男「な、なに…?」

同級生「急に大声を出すなよ一般庶民…ッ!」ガン!

同級生「──僕がもう少しでノーダメ&雑魚キャラ不殺クリアが出来たっていうのにさァ…!!」【学年一有名なお金持ち】

男「あ、えっと…ごめんなさい…」

同級生「はぁ、良いんだよそんなテンプレみたいな謝罪は。そうじゃなくて誠意を見せろよ誠意を、言葉じゃなくってちゃんとしたモノで表してくれよ」

男「じゃあこのポッキーあげるから…」

同級生「はぁっ? はぁあぁあぁあ? なにそれふざけてるのキミ? そうじゃないだろそういったことじゃないだろ!」

男「うっ」ビクゥ

同級生「あーあ、これだから高校生は嫌いなんだ…己の身分も弁えないでワーワーギャーギャーうるうさいのなんのって」

男「……」

同級生「あのねキミ。こういった時は謝罪の言葉を吐くんじゃなくって、モノで相手の顔色伺うんじゃなくってさ」

同級生「──もう金輪際僕の周り二メートル範囲無いでは無駄なお喋り及び大声を出さないと誓うんだよ、馬鹿だなぁ」

男(なんか凄いこと言い出したこの人)

同級生「分かった?」

男「で、でもそれじゃあ…その……同級生君とお喋りというか、会話ができないんじゃ…」

同級生「キミはつくづく物分かりが悪いね、要は僕に話しかけるなってコトだよ。後僕の気分を害するな、以上」プイ


ピコピコ


男「あ、ハイ…」

不良「……」

同級生「……」ピコピコ


男(……もう帰りたくなってきた…)


ウィーン


「ふぅ、やっぱりトイレは混んでるね。四車両後ろの奴を使うことになったよ…待たせたね、ごめんよ男君」スッ

男「あ…!」ぱぁああっ

「おや? どうしたんだい? ───そうか成る程、」

イケメン「さては、連れションってやつに行きたかったのかな?」

男「違うわっ」

イケメン「けれど難しいと思うよ。またここを通る時に人が並んでいたんだ、行くなら案内するけども」

男「だから違うっての…っ…それに別に案内も何も一本道だろうが…そうじゃなくって、」

イケメン「うん?」ニコ

男「……。お前、この状況わかってて俺を一人で残していっただろ?」

イケメン「もちろん!」

男「……」

イケメン「いやいや、あえてそうしたのさ。オレが居ない間に、二人と仲良くなったよね?」コソッ

男「全然だよっ…全くだよ…! 嫌だよこの空気…!」ボソボソ

イケメン「あれ、それは意外だな…逆にオレが居たらやり難いかと思って席を外したつもりなんだが…」

男「やめてくれよ…ただえさえどうしてこの二人が、俺らと同じ行動班なのかわからないんだからさ…っ」

イケメン「説明しなかったっけ?」

男「してない…全然してない…」

同級生「チッ」

男「っ?」ビクッ

同級生「……僕言ったよね? 僕の周りで無駄なお喋り及び騒ぐなってさァ…?」

男「あ、うっ…うん、ごめん…っ」

イケメン「おや。それは携帯ゲーム機、けど今そんなのを持ってたら…」

同級生「ハァ? なに説教するつもり?」

同級生「あーはいはい、居るよねーそういう他人の悪い所に一々突っかかってくる奴って、けど君には全くもって関係ないよね?」

イケメン「ん」

同級生「此方が何やろうが何しようが君に迷惑かかってないし、寧ろ静かにしてる分、君たちより周りにとって状況を鑑みてる」

イケメン「そうかもしれないね。けど、今はそれだと…」

同級生「ハイハイ、修学旅行楽しめないって奴でしょ? いーよそういうのは、君らだけでワイワイ楽しんどけば? 僕はこれが一番なの、だから黙れよ」

男「……」ダラダラダラ

イケメン「そっか。それは残念だ…」


教師「………」


同級生「え?」

イケメン「君の一番の楽しみが奪われしまうなんて…残念で仕方ないな…」ウンウン

~~~~

同級生「……ッチ」

イケメン「ねぇトランプでもしようか?」

男「お、おお…」

イケメン「ババ抜きでもする?」

男「…二人でババ抜きって、それ楽しいの?」

イケメン「やってみなくちゃわからいさ。けど、楽しくないだろうね」

男(だからそう言ってるだろ、いや、待て)

男「まさか、お前」

イケメン「あはは。ねぇ同級生君、ちょっと良いかい?」

同級生「やらない」

イケメン「いらない? 君のポケットから小銭が落ちたんだけど…いらないならオレがもらっておこう」ヒョイ

同級生「えっ? あ…っ…くっ…」カァァァ

男(ばっ、人で遊ぶなって!)

イケメン(ん? なにが?)

男(た、ただえさえいい印象持たれてない感じなんだからさ…!)

イケメン「そんなことないさ。一緒の班の仲間なんだよ? ふんふーん♪」

男「……。なぁイケメン、どうしてそんなにお前…同級生くんに対して…」

イケメン「うん? はい、これ君の手札」

男「え、あ、ありがとう。だからさ、そんなにも色々とちょっかいを──」チラリ


【オール・ジョーカー】


男(ああ、同級生くんだけじゃなかったな…)

イケメン「…」わくわく

男「変なネタ仕込むなよ…! 二十六枚全部ジョーカーとか、もうすでに上がりだよ!」ばしっ

イケメン「あはは。キミはほんっと良い突っ込みをする! んふふ!」

男「どんだけ金をかけたんだよコレ…ったく、もういい!」

男「あのさ、同級生くん」

同級生「……」シャカシャカ

男(もうなんか一人の空間に入ろうとしている! また教師に見つかったら没収されそうなものを…くっそ、負けてなるものか…っ)

男「おーいっ! ねぇってば! 聞こえてますかっ!」

同級生「……」

男「なんていうか、その…!」

同級生「……」

男(なんか恥ずかしくなってきた。俺の姿は見えてるはずなんだけど、なんだか一人で押し問答してるだけな気分だ…)

男「で、出来れば話を聞いて欲しいんだけど…修学旅行でウォークマンなんて…」


教師「どうかしましたか男君。先生を呼ぶなら呼びかけるんじゃなくって、ちゃんと席にまで呼びに…」スッ


男&同級生「!?」ビクッ

イケメン「…………フッ、ククッ、ンフフッ…」プルプル

教師「没収です」

同級生「あっ! クソッ──お前らァ……!!」

男「ひぃっ」

イケメン「まぁまぁそんなに怒らなくても良いじゃないか。後で返してもらえるさ、それよりも、一緒にトランプでもどうだい?」

同級生「あ”ぁ”?」

男「な、なんでもないですごめんなさい…コイツ馬鹿なんで言ってること無視してください…」

イケメン「ひどいよっ! おとこくんっ!」プンプン

男「なんも酷くないだろ!」

同級生「……チッ、ババ抜きは三人でやったって何も楽しくないじゃないか」

男(あれ案外乗り気だ…でも同級生くんの言う通り確かに四人ぐらいは欲しい…)

チ、チラリ

不良「……」ズン

男(…誘う、のか?)


同級生「へっ」ドヤリ


男(な、なるほど。自分を誘いたきゃ不良くんを誘ってみろと、そう言ってるんだ)

イケメン「なぁ君、一緒にトランプでもどうだい?」

同級生&男「……!!」

不良「……」じぃー

同級生&男「……っ」ドキドキ


不良「やる」コックリ


イケメン「おーいいね、これで四人目だ。人数としては申し分ないじゃないか?」

同級生「あ、ああ…いいんじゃないか…」

男「…う、うん」

イケメン「あと、ただやるのも面白く無いから──ババが残った人は罰ゲーム、自分の秘密をバラすことにしよう」

同級生「はぁっ!?」

イケメン「おや? ダメかな、じゃあ不良君は?」

不良「良いぞ」

同級生「…ぇえ…」

男(良いんだ…途端にこのゲーム恐ろしくなってきたんだけど…)

同級生&男(絶対に勝たないようにしよう…)

イケメン「じゃあこの新しいトランプで──あれ、ごめん、ちゃんとしたトランプ持ってくるの忘れた…」

男「えっ? あんなろくでもないギャグを仕込んでるから…っ」

イケメン「ろくでもないって。まぁ確かに君の言う通りでもあるけど…うーん…」

同級生「な、なんだよ! は、ははっ! トランプがないなら最初から僕を誘うなよなぁ!」

イケメン「ん。そうだ、じゃあ代わりに違う遊びをしよう! 君は何がしたい?」

不良「……」

男(なぜはじめにそっち聞いた!?)

同級生「っ…っ…」ドキドキ

男(一体なんて答えるんだ!? 力関係を表すために…腕相撲とか…?)ドキドキ

不良「………」


不良「しりとり、かな」


男(しりとり!?)

【結局しりとりで決まりました】

男「り、りんご」

イケメン「ごまドレッシング」

同級生「…グミ」

イケメン「へぇー同級生君グミが好きなんだ」

同級生「…なんだよ文句でもあるわけ?」

イケメン「違うよ、なんだか女の子みたいなのが好きなんだなぁってね」

同級生「馬鹿にしてるならやめるけど、君から言い出したんだろ、縛ってしりとりは」

イケメン「そうともさ。これもまた青春のため──これからの三日間を過ごすために必要不可欠なんだ…だよね?」

男「…俺に聞くなよ…」

同級生「ったく」

不良「……」

イケメン「じゃあ次は君だよ。しりとりは自分が好きなモノで答えるんだ」

男(な、なんて答えるんだろう不良君は…み、みで始まる好きなものの言葉──皆殺しとか…!?)

不良「……。みかん」

同級生「………!」

男「!?」

イケメン「……」

男(──ぎゃ、ギャグかっ!? 突っ込み待ち…なのか!?)【友人関係の悪影響】

不良「あ…」カァァァ

男(あ、照れてる! 素だったんだ今の…)

同級生「……」ガクガク

男(も、もしやこれは腹いせに殴られてしまう展開になるんじゃ…不良というものは暴力で地位を決めるというし…)

イケメン「じゃあ次は男君の番だよ?」

男(おまっお前ぇえええ!!)

男「い、いやっ……だって、その…オワッチャッタ…て言うか…ソノ…」

イケメン「いやいや、んが付いたら負けだなんて誰も言ってないさ。ほら、このまえ一緒にやったゲームで…」

男「え…? ああ、あのゾンビを倒す奴───『ンデス』だっけ…?」

イケメン「そうそうあのデカイ奴だね。じゃあ次はオレの番だ、えーと」

不良「…!」パァァア

男(あ! すごい嬉しそうだ! 俺も続けられて嬉しいよ…!)

同級生「待て。そのゲームやったことあるの?」

男「えっ? あ、うん…初代からやってたけど…」

同級生「へーまだ生まれてない頃の奴をやるなんて、いい趣味をしてるじゃあないか。実は僕もやったことがあるんだよ、奇遇だね」

男「そ、そうなの? じゃあその…例えば…シリーズでは何が好きだったりするかな…って」

同級生「勿論初代から最新作まで通して大好きさ。世間では色々と言われては居るけれど、
    あんなのはろくにキチンとプレイをしていないファンがこぼしているだけであって、
    そのゲームに対する愛が足りないよ愛が。結局のところ、自分が一番好きな部分を継承されなかったこ
    とにたいしての憤慨しているだけであって、自分の思い通りならないゲーム会社への不満をぶつけたいだけ
    だね。その点で言うと僕は違う、れっきとした第一ファンだ。全編通してそれぞれの面白さを見出し、このシリーズだ
    から面白いと受け取るんじゃなくって、この単一のゲームの何処が面白いと…」

男「お、おお…?」

同級生「ムフー。いいね、しかも好きなものに『ンデス』を上げる所に好感を持てるじゃあないか、君はいい趣味をしているよ」

男(言えない、無理やり導き出した答えなんだって言えない)

イケメン「え…? 男君、あんな醜いデカい怪物で腰に死体を何体もぶら下げてる奴が好みなのかい…?」

男「お前がリードさせたんだろッ」

数分後


同級生「棚町薫」

不良「…ルイーダの酒場」

男「ば、バレッド…」

イケメン「ドレインキッス」

男(いつの間にかゲーム単語縛りになってしまった…)

男(けど、なんだかちょっといい雰囲気になってきた、気がするかもしれない)

同級生「ルイーダの酒場か、ふふふ」

不良「………」

男(さっきまでのわだかまりというか、ギスギスとした空気が今はもう無い。皆楽しんでしりとりを続けてるんだ、主に同級生くんが)

男(ハッ! まさかだけど、もしかしてコレを狙ってイケメンの奴……嘘だろ、そこまで計算して…)

イケメン「うん? どうしたんだい?」

男「…あ、いや別に…ナニモナイケド…」

男(…考えててくれたんだ、ちゃんと皆で楽しもうって事を。俺だけじゃなかったんだよな、だって、うん、修学旅行だし……それに、)


『──君はオレの親友だからね』


男「えへへ」ニヨニヨ

同級生「? どうしたんだい君、次は君の番だよ?」

男「あ、うん…ごめん…! えっと、次は──」


イケ友「ふがっ!? うぉおー……超寝てたぜ…っ…ずびび、はぁーよく寝た…」


男「あ…やっと起きたんだイケ友」

イケメン「寝過ぎだよ、幾らなんでも」

イケ友「いやー実は昨日緊張&楽しみ過ぎて寝られなかったんよ。いやはや、面目ないぜぇ───それでウトウトしながら聞いてたけどよ、お前らって」

イケ友「すっげーゲーム好きなのな! 好きなもの縛りでゲームだけあげるなんて……特に同級生っち! お前オタクってやつ!?」


オタクって奴!? おたくってやつー おたくってやつぅー…


「え? 同級生君オタクなの?」

「へぇー意外だわ、アイツオタクだったんだ」

「秋葉原いくんだろうな」

「なにメイド好きだって!? 同級生のやつ!? くっそー…家で絶対にリアルメイド囲ってやがるくせに…!!」


同級生「───………」ぼっ

男「えぇぇッ! ば、ばかイケ友…っ!」

同級生「ッ……! お前…ッ!!」キッ

男「えっ!? 俺…!?」

同級生「さっき僕の顔を見てニヤニヤしてたのは──端から僕にこういった状況へと陥れる作戦だったんだな…っ!? くそ、ふざけやがって!」カァアアア

男「えええええっ!? ち、ちがっ」

同級生「くっ…ぐすっ…バカにしやがって…っ…やっと趣味を話せるとも、だちが……ううっ!! この一般庶民が…!!」ダダッ

男「同級生君!?」

イケ友「あれぇー? どうして行っちゃったん? オレも混ぜて欲しかったんに…」

男「……」ズーン

男「…見てるよな」

イケメン「もちろん」

イケメン「ブホォ! フフッ…クッ…流石、だよっ…一歩、彼と仲良くなれたってこと……おめで、あはははは!」

男「……」

不良「しりとりは?」


【到着するまで同級生君は戻ってきませんでした】

第十六話『俺の突っ込み開始』

前作
男「見られてない?」イケメン「…」じぃー

毎週水曜日更新したいと思います
よろしくお願いします ではではノシ

ホテル 大広間 

男「美味しい…」

男(確かニュースでもやってたな、ここのホテルのランチは美味しいって雑誌にも何度か取り上げられてるって)

男「…どうやったら作れるんだろう、もふもふ…」

イケ友「おっとこちゃーん」

男「ん?」

イケ友「やっほ! ちょいとお隣お邪魔するぜぇ、よいしょっと」

男「どうしたの急に? お皿なんか持ってきて…」

イケ友「ピーマン食べれるか?」

男「食べれるけど…」

イケ友「んーじゃあ食べてくれお願いっ! 一生のお願いだから! 本当にっ!」ぱしっ

男「一生のお願いって…別に普通に頂くけど、うん」ヒョイ

イケ友「おおーっ! さっすが男ちゃん! ヒュー!」

男(ピーマン苦手なんだろうか…意外だな、好き嫌いとかあんまりなさそうなイメージだったんだけど)

イケ友「あっはは。なになにその顔は、ん? おれっちに苦手な物があるのがそんなに珍しいって感じ?」

男「むごぉっ!? げほっ…こほっ…むふっ…ぐふぅっ…」

イケ友「お、おお? どした急に?」サスサス

イケ友「え、実は男ちゃんもピーマン苦手だったりするのか? む、無理しなくていいんだからな!? そういう所あるから男ちゃん…」

男「けほっ、そういう所って何さ」

イケ友「え? うーん、そういう所はそういう所じゃないの?」

男「……。イケ友はよくわかんないよな、色々と」

イケ友「えっなに急に!? やめて、ちょ、おれっちそんな不思議キャラ目指してないけどー!」

男「俺からみたら十分、不思議さんだよ」

イケ友「なん…だって…?」ワナワナ


ワイワイガヤガヤ


イケメン(楽しそう)ぼぉー

イケメン「……。ンンッ! ちょっといいかな男君?」

男「え、なに?」

イケメン「実はね、オレ人参が苦手なんだ。できれば変わりに食べてもらってもいいかなぁ~なんて…」ニコニコ

男「あのな、お前まで何だよ俺は残飯処理じゃないんだぞ」

イケメン「まさか、そんなことこれっぽっちも思ってないさ。ただ代わりに食べてくれると嬉しいなって、ほらその変わりといったら何だけど、」

イケメン「君が苦手なものをオレが食べてあげるから。何か苦手なもの入ってないかい?」

男「えっ? あ、いやっ……ちょっと蓮根が苦手だけど…」

イケメン「ほーそうなんだ、じゃあ蓮根と人参を交換しよう」ヒョイ

男「え、あ、良いの? あ、ありがとイケメン」ヒョイ


イケ友「え? イケメン、人参好きっしょ? なに言ってんの?」


男「───……」じぃー

イケメン(なっ、イケ友なにを言って…うぉぉっ…男君の瞳から光が消えた…っ)ゾクゾク

男「お前、また何か企んで…」じっ

イケメン「な、なにを言うんだイケ友! オレが何時、人参が好きだなんて言ったっ?」

イケ友「聞いてねーけども、以前パクパク人参食ってる姿は見てるけど?」

男「………」スッ モグモグ

イケメン「ちょっと待ってくれ男君っ! そんな無表情に食事を再開しないでくれないかな…っ?」

男「………」モグモグ

イケメン「違うよ! 決して今のは何か君にやってほしかったわけじゃあなく……普通に、そのっ…うーん…」

男「普通に?」

イケメン「き、君と苦手なものを交換したかったんだ……嘘をついたのは事実だ、人参は嫌いじゃあない」

男「……」

イケメン「そもそも苦手な物があんまり無いほうなんだ。けど、君とイケ友が楽しそうに交換してるのを見て…良いなって、思ったんだよ、ごめん…」

男「ふーん…」モグモグ

イケメン「………」シュン

男「別に…そういうことなら…」テレ

イケメン「あ、あれ? 良いの…? 交換、してくれるのかい…?」

男「い、いいよ別に。こっちは蓮根苦手なのは事実だし……食べてくれるなら有り難いし」

イケメン「男くん…ありがとう、感謝するよ。じゃあコレどうぞ」ヒョイ

男「ああ、うん。というか別に人参苦手じゃないなら貰っても…」

【レンコン】ポト

男「……」

男「おい」

イケメン「うん?」ニコニコ

男「やっぱりそういうことだったんだな…っ! なにが交換したいだよ、ほらみろやっぱり!」

イケメン「え…? ハッ!? しまった無意識にボケて…!!」

男「無意識っ!? くそぉなんだよもぉ、いいよばか! 食べてやるよ…っ…モグモグ

イケメン「う、うん…ありがとう…」

イケ友「やっぱ仲良いよなーお前らって、なはは」

男「何処がだよっ! 俺苦しめられてるじゃん…ううっ…」シクシク

イケメン「………」


不良「おい」ずいっ


男「ひゃい!?」

不良「……」じぃー

男「な、なになん、なにがなんですかッ?」ドッドッドッ

不良「……」ヒョイ ポト

男(えっ、お肉くれた…?)

不良「おっきくなれよ」ポンポン

男「?…あ、ありがとう…??」ナデナデ

不良「モグモグ」コクリ

イケ友「おぉー…? なになになに、男ちゃん不良ちんともう仲良くなったワケ? おっ? さっすがだわー憧れるわー」

男「い、今のそういう風に捉えていいものなのか…?」ヒソヒソ

イケ友「おっきくなれよ言われたじゃんか。なのでして、おれっちももーっとお筋肉が大きくなりたいので、不良ちんお肉くだせーな?」

不良「だめだ」がっがっがっ

イケ友「じゃあじゃがいも一つ」

不良「やらん」モグモグモグ

イケ友「ちぇーっケチんぼめっ!」


「フン。庶民共は限られた資源を分けあって、己の境遇の惨めさを慰め合っているんだな、ハッ! 実にお粗末な光景だねっ」

同級生「見てらんないよ小っ恥ずかしくて嫌になる。キミ達はもっと気高く生きようと心がけることすら出来ないのかなぁ」

男「同級生君…」

イケ友「おっ? さっきまでしかめっ面だったのによーやっと喋りだしたなぁ、なはは、寂しくなったん?」

同級生「グッ! …おっとー?、何気安く話しかけているんだいキミたち。新幹線での契約は依然として継続中なのだから、忘れてもらったら困るよ」

男「あ、うん…ごめん…」

イケ友「ケイヤク? つか話しかけてきたのそっちじゃんなー!」

同級生「一々煩いぞ! そこの筋肉ダルマ!」

同級生「ふぅ、まぁそうであってもだ、キミが心から反省しているのだというのなら、うん、許してあげなくもないけどねぇ」

男「えっ? ほ、本当に?」

同級生「ああ勿論だとも。僕だって鬼じゃあない、キミがとある条件を是非にと飲んでくれるのなら…こっちとしてもやぶさかでないよ、うん」

男「条件?」

同級生「そうとも。その条件とは──」

イケ友「つかなんでずっとデザート残してるん? いらないならおれっちもーらいっ」ぱくっ

同級生「だぁーもうキミは一々構ってきてうばあぁあぁあぁあぁあ!!? おまっ、おまえっ…!? なにしてくれちゃってんのぉっ!?」

イケ友「え…食べ終わってんのに何時までたってもシュークリーム食べてないから…いらないかと…」

同級生「そうじゃあ無いだろ、そういうことじゃあないだろォ!? 僕はわざとデザートを残してたの! わざとだよわざとッ!」

イケ友「えっ…もしかしておれっちに食べさせてくれるために…!?」

同級生「お・ま・えに、じゃないッ! 本当にネジが足りてないやつだなッ! 頭のなかまで筋肉が詰まってるんじゃあ無いのかキミはぁっ!?」

イケ友「ありがとう、テヘヘ」テレテレ

同級生「褒めてなぁーいッッ!!」


教師「おーいコラB組煩いぞ。黙って食べろー」


同級生「はっ……がっ、ぐぅぅうっ…」ギリギリ

イケ友「はいはいはーい、すんませんっしたー」

同級生「くそぅ…くそぅぅっ……」

チョンチョン

同級生「っ……!」

男「あ、あのさ同級生君…」

同級生「話しかけるなって言っただろ、さっきの条件は無しだよもうっ」

男「う、えっと、ごめん。間違いなら怒ってもいいし……勘違いだったら素直に謝るけれど…」ヒョイ

男「もしかしてイチゴ味が苦手だったりする、のかなって。ほら、俺のシュークリームはバニラ味だから」

同級生「………。な、なわけないだろっそんなことは無いわけも、なきにしもあらずというか…」カァァァ

男「そっか、よかった合ってたみたいで。ほら、あげるよシュークリーム」

同級生「なっ──何が望みだ、金か? 金なのか?」

男「なんで金なのさ、そうじゃなくって。さっき言ってくれたよね? 許してくれるって」

同級生「………」

男「俺はさ、もっとこの班の皆で楽しく修学旅行を楽しみたいと思ってるんだけど、やっぱり同級生君とおしゃべりしたいから」

男「シュークリーム一個で仲直りできるなら、喜んで同級生くんに上げるって」ニコ

同級生「…変わったやつだな、キミは」

男「そ、そう?」

同級生「ああ、変わってるよ。堂々と恥ずかしげもなく『みんなで仲良く修学旅行をしたいーっ』なんて頭空っぽな女子がいいそうな事を本気で言ってるじゃあないか」

男(う…なんとも返答しにくいことを…)

同級生「…それに」

男「……?」

同級生「っ~~~……僕みたいな奴に、」ぷいっ

同級生「よく言えるよな、そんなこと」ボソボソ


男「……」ニコニコ

同級生「な、なんだよ急に笑って…! というか眼つきが怖いんだよキミ! 本当は嘲笑っているんじゃあないのかそれって!?」


わいわい がやがや


イケメン「…………」ポツーン




~~~ロビー付近の廊下~~~



女「はぁっ…はぁっ……」たったったっ

女「はぁーっ、疲れた。まったくなんなのよーまったく、急にメールで呼び出すなんていい度胸してるじゃない」

「………」

女「なに無視してくれちゃってんのよ。こっち向きなさいよ、ほら……ちょっとっ!」ぐいっ



イケメン「」ズモモモモモモモモモモ


女「うぇっ!? な、なんなのよその顔とオーラ…!? な、何かあったワケ!?」

イケメン「… …… … ……」ボソボソボソボソ

女「は、はぁっ? ちょっと声小さすぎ──なに? 聞こえないんだけどっ? なーにっ?」

イケメン「……… … …… ……」ボソボソボソボソ

女「おとこ、男君と、うまくおかずを交換できなかった? うんうん、それがショックを傷ついてる……?」

イケメン「……」コクリ

女「……。一つ言っていいかしら?」

イケメン「……」

女「心ッ底ッどーでもいいんですけど、死ねば?」

イケメン「……」ズモモモモモモモモモモボコッボコッドデデデデデデデデュルデュル

女「はぁ~っ本当になんなのよ、アンタって奴はもっと重大なことかと思って急いできたアタシがバカみたいじゃない…」

イケメン「ばっっ──お前はなぁああんにも分かってないぞ!? オレはなぁ、本当にどうしようもなくてっ」

イケメン「普通にやろうとしたんだ、けど身体が勝手に動いてやってしまっていた、どうしようもなくて、必死に改善策を考えてみたけど」

女「みたけど?」

イケメン「………今こうなってる…」

女「それで色々と考えてたら不安になってあたしに連絡したと、そういうワケね?」

イケメン「うん…」コクコク

女「イジイジするなっ! みっともない! アンタのファンが今のアンタを見たら幻滅どころじゃないわよ、ったく」

イケメン「女」

女「なによ」

イケメン「っ……お願いします、どうか相談、相談に乗ってくれ…!」

女「……。へェーアンタがそう言っちゃうの、あたしが相談した告白の件の時にあれだけ言い放ったアンタがぁ? へっえ~?」

イケメン「助けてください」ズサッ

女「ちっ、ちょっとぉー!? なにアンタ躊躇いなく土下座してるワケッ!? や、やめ、やめなさいよあんぽんたんっ!」ぐいぐいっ


「ちょっと修羅場じゃないのアレ…」

「あんなイケメンな子に土下座させるなんて、あの子やるわね~」

女「ッ~~~ほんっとやめなさいよアンタ……っ!」カァアアア

イケメン「土下座だってなんだってする、オレは本気だ」

女「っ…」

イケメン「あの時は本当に悪かったと思ってる。だが、前にしか頼れる奴が居ないんだ……」ギュッ

イケメン「──オレにはお前しか居ないんだよ! お願いだ見捨てないでくれッ!」オーイオイオイ


「ひゅー♪ 泣き土下座~ぁ」

「凄い必死ね彼氏…どう出るのかしら彼女の方は…」


女「あ、あああんたねぇっ! もうちょっと言葉を選ぶこと出来なわけェ…!!」ピクピク

イケメン「正直言ったまでだ!」

女「あっそうですかッ! じゃあまずは土下座をやめなさい! それから話を聞いてあげるからッ!」

イケメン「駄目だ、お前がちゃんと了解してくれるまでやめない」ぎゅー


「それにしてもいい土下座ね、アレ」

「どう修羅場だと見る? 彼氏が浮気して彼女にバレたとか?」

女「だぁあああもうっ! いい加減にしなさいよねあんぽんたんっ!」

イケメン「うっ…」

女「どーしてアンタと男の奴のことでこうも迷惑かからなくちゃいけないわけッ!?」


シーン


女「……?」チ、チラリ


「え、うっそ…男ってつまり彼氏を……男性に盗られたんだ…」

「そりぁ…うん……どんまい、としか…」


女「」

イケメン「いやだぁーっオレはいやなんだぁーっ男君と離れ離れになるの嫌だーっ」

女「っ~~~! もうこっち来いド変態野郎ッ!!」グイッ ズンズンズン

自動販売機前

女「はぁ~~~~~~っ」グッタリ

イケメン「それでどうなんだ、相談に乗ってくれるのか…?」

女「…良いわよ、分かった分かった乗ってあげる」

イケメン「あ、ありがとう! 感謝する…本当にっ…本当に…っ」

女(……。コイツがこんなに必死なの初めて見るわね、そもそも変態から相談されるのって初めてじゃないかしら)

女(しまった、少し邪険に扱いすぎたかしら。この変態相手だとついきつくあたっちゃうのよね……うん、気をつけよう)ウンウン

女「ゴホン。それで、アンタは一体なにがあってそうも悩んでるワケ?」

イケメン「……。気づいたのは修学旅行に入ってからだった、どうも男君との会話に違和感を感じたんだ…」

女「修学旅行からって……今日からじゃない、なんでまた急にそんなコトになったのよ」

イケメン「わからない」

女「わからないって…じゃ、じゃあちょっと今日一日なにがあったか教えなさい。そこから原因が何処か見つけてみましょ」

イケメン「おお、確か今日一日は……」


回想



イケメン「なぁ男君。ジュースを買ってきてあげるよ、なにがいい?」

男「いい。お前だって絶対に違うの買ってくるじゃん」

イケメン「あ、それ美味しそうだね。食べていい?」

男「駄目。これお前嫌いだったろ、食べてから文句言うつもりだろ」


イケメン「うわあー! 見てみて、凄い人だかりだよ!」

男「…それお前の周りに集ってる女子だから…」ボソボソ


イケメン「大きい部屋だね。これならゆっくり皆で寝れるに違いないね」

男「お前の部屋は隣だ」


イケメン「よし、入浴の時間だ。じゃあ行こう男く──あれ? 男君は?」

【先に行ってる 男より】



回想 終


女「アンタ普通に嫌われてない…?」

イケメン「えぇえぇッ!? ち、ちがっこれは何時もどおりなんだ! オレと男くんの何時もどおりの青春ライフの…っ!」

女「はぁーーーー……ねぇアンタがどんなことを眼つき悪男とで築いてるのかは知らないわ、けどね」

女「あたしからしたら、どう聞いても嫌われてるわよ」

イケメン「」ガーン

女「まぁ、でも」

イケメン「…っ?」

女「確かにアンタの言う通り、嫌われてる様に見えるけど。ううん、認めるのも癪だけど……それがアンタとアイツの仲だって、ことは思わなくもない…かも知れない」

イケメン「だろ!? そうなんだよ、これが男君の素晴らしさというのかなぁ~誰も持ち得ない彼だけが才能として授かった部分というかぁ」ホクホク

女「じゃあなんでよ」

イケメン「えっ?」

女「どうしてアンタは悩んでるワケ? 何時も踊りアンタが望む青春? ってやつになってるんでしょ、だったらどうして───」

女「──そうも悩んでつらい思いをしてるのよ、理に適ってないじゃない」

イケメン「…噛み合わないんだ、空気が」

女「……」

イケメン「ふと思いつきで彼に話しかけた時──それと同時にオレの我儘が飛び出してしまう…ボケたいという気持ちが…」

女(駄目だ駄目だ…突っ込むな…真面目な顔して何言ってんだコイツなんて言っちゃダメよあたし…)

イケメン「オレは普通に彼と会話したいだけなのに…」

女「それを、どうにかしたいけど方法が分からないってコト?」

イケメン「ああ、そうだ。それがわからない……本当はわかるはずなんだ、わからなくちゃ駄目なんだよオレは……だって、オレは契約したんだ」

イケメン「彼のことでわからないことがあるなんて、それじゃあオレはどうしたらいい、駄目だろ、彼が求めてるのは……そんなオレじゃない…」


女「こら!」ぐいっ


イケメン「っ…」ビクッ

女「アンタ今、同じ顔してるわよ」

イケメン「え…?」

女「アイツと同じ顔してるわ。文化祭の時、眼つき悪男があたしに相談した時に──してた表情と一緒」

イケメン「男君と?」

女「馬鹿みたいにハの字に曲がったまゆの角度までおんなじね、良い? よーく聞きなさいよあんぽんたん」


女「変態、あんた忘れたの? あの図書室で聞いたアイツの言葉。よく思い出してみなさいよ!」


イケメン「図書室で…聞いた言葉…」

女「アンタが狸寝入りしてまで聞き惚れてた言葉よ! 憶えてるでしょ!」




『──コイツのお陰、なんだろうな…』


イケメン「ああ、憶えてる」

女「でしょーが何うじうじうじうじ悩んでるワケ? ばっかみたい、ほんっとばっかみたい」

イケメン「………」

女「ようは考え過ぎなのよ。違和感が何よ、気が取られるのが何よ。なんでそんな意味の分からないモンに囚われちゃうワケ?」

女「アンタはもう最初から答えを手に入れてるじゃない。ちゃんとアイツから、きちんともらえてるじゃないの!」

イケメン「──……」

女「そういうコトよ、あんぽんたん。アンタが間違ってるの、アンタの考えが駄目なわけ──はぁまったく…こんなこと言えるのはアタシぐらいでしょ、ほんっと」

イケメン「そうだな、確かに異性では女ぐらいだ…うん、そうだ」コクリ

女「…なによ」

イケメン「感謝してるんだ。本当に女が幼馴染で良かった、心からそう思ってるよ」ニコリ

女「気持ち悪ッ!」ゾゾゾ

イケメン「…うん、本当に女ぐらいだよそう言えるのは…」

女「わかったのなら、さっさと行って来なさい。悩むのはここまで、ハッキリキッパリスッキリさせなさいよ」

イケメン「ああ。ハッキリキッパリスッキリさせる、ありがとう───相談してよかったよ、本当にありがとうな」

女「良いわよ別に、フン」

イケメン「ん。じゃあこれは女に伝えておかないと駄目だな──えっと、実は男君に言ったんだ」

女「? 何を? …ま、まさかす、好きだってことを…っ!?」

イケメン「違う違う。そうじゃなくって──うん、まあ……なんていうか、こっ恥ずかしいことなんだが…」


イケメン「キミはオレの親友だよって、オレは言えたんだ」


女「……。はぁ? それが何?」

イケメン「いや、単なる確認なんだ。オレ自身の問題であって──何も関係ないと思ってる、実の所──」

イケメン「──この思いが原因じゃないかと思ってたんだが……女の言葉で違うと思えたよ」

女「あっそ。なら良かったわ」

イケメン「ああ、それじゃあわざわざ呼び出してすまなかった。女のほうも用があればオレを呼び出していいぞ」フリフリ

女「それはいいことを聞いたわ。アンタのこと部屋に呼びたがってる女子共たくさんいるんだから、覚悟しておきなさいよね」

イケメン「なんと、それは覚悟しておく。じゃあ、またな」

女「……」

女「ねぇ! 変態!」

イケメン「?」くる

女「……。なんでもないわよ! 変態は変態同士末永く仲良くしてなさいっ! あんぽんたん!」


たったったっ


女「…はぁ」トン

女「違和感を感じる、か」ボソッ

女(バカね変態、考え過ぎよ。そうやって昔から大雑把に突き進むくせに、細かいところばっか気にして……自滅するんじゃない)

女「…頼んだわよ男、アンタぐらいなんだから…ちゃんとアイツを分かってあげられたのは…」



パチパチパチ



女「ぇ?」

感動したわ…なんて、なんて良い子なの…」パチパチ

「お姉さんたち、貴方達の会話が『少し』聞こえちゃったの…ごめんなさい…許さなくたっていい、けど、聞いて欲しいの…」パチパチ

女「っ…?」

「…まさか彼氏の新しい恋を応援するなんてっ……大人だわ、凄いわ、違和感なんて関係ない! 末永く仲良くだなんて…!」

「普通言えないわ! ……ううん、本当に思う心があれば言えるのよね…そうよね、大人になるって残酷ね…っ」ホロリ

女「え、いやっちがっ」ブンブン

「はい、これ名刺よ──私達とある雑誌で……コラム枠のネタを探していたの……貴方達のことを書かせてもらってもいいかしら…?」

「是非とも書かせてほしいわ! いえ、むしろ貴女に書いてほしいわ!」

女「ちょ、ちょっと待って下さい! いやいや! えっ!? ちょっと、」

「さあ詳しい話を聞かせて! 勿論お給料も出るわ!」

「さあさあさあ! お願い!」

女「えええっ!?」


【後に二人が女姉の知り合いだと判明し、後日関係のない男を巻き込んで騒動となったのは──また別のお話】


第十七話『あたしに突っ込む度胸はなかった』

来週の水曜日に現れます。

ではではノシ

ホテル 三人部屋


男「うんん、んっんー…」

イケ友「んごご」

もぞもぞ もぞっ

同級生「…ん」ゴソリ

同級生(どうやら寝たようだな、ったく。夜遅くまでわいわい騒ぎやがって)


数時間前


男『ゴクゴク』

イケ友『なぁなぁ男ちゃん、好きな女子誰?』

男『ぶはぁっ!? え、なに急に…?』

イケ友『急にじゃないっしょー? 定番よ定番、修学旅行と言ったらこれだろー?』

男『……そ、そうなの?』

イケ友『もちのロンよ。なぁイケメン~?』

イケメン『え? あ、ああ…うん、そうだな』

イケ友『そういうこって、んじゃまずは同級生からお願いします!』

同級生『…オイ、どうして僕からなんだよおかしいだろうが。まず始めに聞いたやつから聞き出せよ』

イケ友『え? 同級生は好きな奴居ないの…? 高校生にもなって…?』

同級生『だ、騙されないぞっ! 煽っても僕はボロを出さないからな…っ』

イケ友『なはは』

同級生『ったく、というーかそこの二人、部屋は隣だろ。どうしてこっちに来るんだよ狭いんだよ』

不良『もぐもぐ』

イケメン『イケ友はいるのか?』

イケ友『あーおれっちは無し。この前別れちゃったから居ないのよ』

男『お、おお…居たんだイケ友…彼女…』

イケ友『ちょーっ! なになに、こんなおれっちじゃ居るわけ無いと思ってたわけっ?』

男『あ、いやっ───そうじゃなくって、その』

男『居たら居たで、その……少しは教えてくれても良かったんじゃないかなぁって……ご、ごめん、変なコト言ってるよな俺…』ポリポリ

イケ友『……。んーもぉう男ちゃんってば何々っ?! 知りたかったん!? オレのこともっと知りたかったん?! んんっ!?』ナデナデナデナデ

男『ちょ、ちょっと髪をぐしゃぐしゃにするなっ…! 違う! そういうことじゃないっ!』

同級生『どうして君らは揃って僕の話を一切合切聞こうとしないんだぁあっ!? オイ!! 邪魔なんだよじゃーまっ! 大人しく部屋にもどっ』

不良『……』ズイッ

同級生『ぉぉぉぅ…』

不良『そこの茶菓子もらっていいか』

同級生『ド、ドウゾ』

不良『ああ。ぼりっ! ガリゴリボリボリボリボリ』

同級生『………』

イケ友『んでんでんで、男ちゃんは誰っ?』

男『だ、だから好きな人なんて』

イケメン『うむ、女だと見たがどうだろう?』

男『えぇー…』

イケメン『凄い表情だね…』

男『いやっ! ちがっそういうことじゃなくって、色々と───迷惑をかけたことしか覚えがないから…そういう目線で見たら逆に失礼だろ…っ?』

同級生『…はぁ~』


回想 終

同級生(良くもまぁ下らない下世話なトークで何時間も盛り上がれるものだよ、ったく)むくり

同級生「…どうであれそろそろ行動に移さないと、」


同級生(教師が待機している部屋に──僕のゲームとウォークマンを取り返しに行く…!!)


同級生「アレがないとこれからの二日間、どうやって過ごせばいいのかまったくわからないからね」

同級生「……。何も悲しくはないぞ、下らないモノは全部無しだ。高貴なる僕には全くもって不必要なものばかりなんだ───」

同級生「よし、早速ながらアイフォンに保存しておいた敷地内の地図を……」


ぱしっ ぽーんっ  カタリ!


同級生「あっ!? な、誰かに弾き飛ばされた──!?」チラリ

イケ友「ぐぉぉぉおおっ」ムニャムニャ


同級生(お前ぇえーーーーー!! な、んでどうして僕のベッドの上で寝ているんだ! いつの間に潜り込んで、というか寝ているのか!? これっ!?)

イケ友「すやすや」

同級生「寝てる…なんたる寝相の悪さだ…信じられない…普段どうやってコイツは安眠している…」

同級生(クソッ! コイツに構っている暇なんて無いんだ、こっちは大事な要件を済ませないといけないというのに──)

同級生(何処だ…僕のアイフォンは何処に飛ばされた…? 暗くて良く見えな、)ぐいっ


同級生「えっむぐぅっ!?」ギチギチギチギチギチ

イケ友「んんん~」ギュウウウウウウウウウウウウウウウ


同級生(腰が折れっ! 折れる折れる折れるっ!)パンパンパン

イケ友「ムヒッ…タップしたな…お前の負けだぜ…母ちゃん…ムフフ…」

同級生「はぁ…はぁ…くっ! この筋肉ダルマが何度僕の邪魔をすれば気が済むんだよっ!」げしっ

イケ友「おぐっ」ゴロン

同級生(クソクソクソ…だいぶ体力を奪われてしまった───あんまり体力に自信が無いんだぞ…っ…こんな所で無駄に消費して…くそっ…)ソワソワ

イケ友「むにゃ」ガッシィィィ

同級生「オィィィィ…ッ…んっ……いい加減にしろよッ…本当に本当にッ…はぁっはぁっ…何度僕の邪魔をすればっ──」ギチィ

同級生「こ、これは!?」

同級生(寝間着の体操服をしっかり掴まれて──駄目だタップしても離さない! やぶれっ、オイ破れるじゃあないか!)ギチギチギチ

するんっ すぽん!

同級生「はぁっ…はぁっ…あ……抜けれた…? そ、そうか体操服を脱げば簡単に抜け出せれるのか──よし、じゃあズボンの方も…」スルン

同級生(よし! このまま着替えを用意して、)ガクン

同級生(うぁ! 足が引っかかって転っ!?)

カチリ! パッ!

同級生「電気が着いた…? はぁ…はぁ…」チラリ


「……ど、どうして…?」


同級生「はぁ…はぁ…っ?」



男「どうして…ベッドの上でイケ友に覆いかぶさってる、んだ…?」



同級生「っ」サァー

同級生「ま、待てッ! 違うんだ! はぁ…はぁ…キミはとんでもない勘違いをしている…ッ! 状況をうまく飲み込めないのはわかるが、んくっ」

男「どうして息が荒いの…?」

同級生「ちっがーう! これはその、ぬぎ、脱ぎ捨てることになったからであって──」

男「あ、ああ…うん…脱ぐってことはそういうことだもん、な……そ、そうだよな……」ポリポリ

同級生「あってるけど違う! まずは落ち着いて僕の話を聞いてくれ! もとはコイツが僕のベッドの中に入り込んで来たからなんだよ…!」ビシッ

男「それで我慢できずに…?」

同級生「ちょっとぉ!? 勘ぐり過ぎだぞキミィ! 違う違う違う…っ! 最後まで僕の話しを聞いて───」

男「……ん…」ぶるるっ

男「あ、うん。わかった、もしかしたら俺の勘違いかもしれない。けれどちょっと話を聞くのは後で…でもいいかな」スタ…

同級生「何処に行くんだっ!?」

男「ど、何処に行くわけでもないから! そもそも起きた理由は、」

同級生「まっ待ってくれ! ちゃんと僕の話を聞いてくれ! お願いだっ───」ダダッ


ズルッ! 


同級生(あ───落としていたアイフォンを───踏んで、転け───)がっ

男「うわっ!?」


ズッダン!バキン!


同級生「あ、痛たた…」

男「あ…」

同級生「…え…?」

男「これ嘘、トイレのノブが折れた…」

同級生「あ、ああ…そうみたいだね」

男「……」ぶるるっ

同級生「…もしかして、トイレに行きたかったのか?」

男「……」コクリ

同級生「じゃ、じゃあ今からでも外に出て公共トイレに…」

男「……」

同級生「…?」

男「無理かもしれない…」ギュウウウ

同級生「えええっ!? む、無理だなんてそんなワケないだろっ? も、持つに決まってるだろ…?」

男「……」ズーン

同級生「黙らないで! な、なぁっ? だ、大丈夫だって高校生にもなって漏らすことなんてあり得ないだろ…っ」

男「漏らす…高校生にもなって…?」ポロポロ

同級生「泣くなよ! 泣かないで本当にっ! あ、ああああっ……くそ、なんなんだよもうっ!」すっ

男「え…」

同級生「行くぞっ! 我慢できないならおぶってでも何でもしてトイレにいかせてやるから! ほら背中に乗るんだよっ!」

男「ど、どうして…」

同級生「どうしても何も、キミを困らせたのは僕だろうが! だから他人は大嫌いなんだ、関わるだけで色んな迷惑ごとが振りかかる───」

同級生「──それにキミには、しゅ、シュークリームの……恩がある。イチイチ後でお返しを強請られても面倒なんだよ…!」ぐいっ

男「あ……」

同級生(うぐっ! 重い…っ…けれど背負えない重さじゃないっ、このまま部屋を出て廊下のつきあたりにある──トイレに行けばいいだけだ…っ)スタスタ

男「ありがとう…同級生君…」ぎゅっ

同級生「礼は間に合ってから言ってくれよなッ! ──よし見廻りの教師も居ない、今なら…」スタ…

男「あ…待ってこのドアはオートロックだから…っ……んぐぅっ!?」ガッ

同級生「うわぁっ!?」ドサッ

男「はぁっ…よかった、間に合った…飛び降りて手を刺し込まないと間に合わなかったよ…」

同級生「だ、大丈夫かい!? ケガは…!? それに、今の衝撃は流石に…!」

男「う、うん。もう我慢も出来そうにない…それに今の同級生君の格好、その状態だと出回るの駄目だと思う…から」

同級生「あ! 僕、半裸のままだった…!」

男「うん。だから、着替えに行ってきて、俺はこのまま何とか──それでも我慢してトイレに行ってみるから、よい…しょっ…と…ッ」ぐぐぐ

同級生「………っ」

同級生「…駄目だッ」がしっ

男「うぇっ?」

同級生「このまま一人で行かせられるわけないだろ、ふざけるなよ! 格好なんかつけやがって、僕の姿のことなんて今はどうだっていいんだよっ」

男「うわぁっ! ちょッ…急に持ちッ……もれ………………」プルプル

同級生「我慢しろッ!」

キィ…


イケメン(そういえば男君の寝顔を撮るの忘れてた…イケ友を起こしてドアを開けてもらうか)ガチャッ

「だめ、だよ…こんなこと…っ…うぅっ…」

「それぐらい高校生なら普通だッ! 僕の気持ちも考えてみろ!」


イケメン「おや? 何故だろう廊下から男君の声が、」チラリ


男「嫌だ嫌だ…ッ…流石にこのまま抱えられたまんまじゃ…っ」【顔を真赤にしてお姫様抱っこ状態】

同級生「今更怖気付くなよ…っ…僕だって怖いさ、けれど我慢できない…はぁはぁっ…だろ…?」【半裸】


イケメン「」ぴきーん


男「こんなことしたって…っ! だめ、だめだってば…っ…き、気持ちは嬉しいけど…!」プイッ

同級生「嬉しいなら黙って抱えられとくんだよ! あ、こら暴れるんじゃないっ! 静かに!」ぐぐっ

男「むぐぐっ」

同級生「き、キミがおとなしくしてれば…はぁはぁ…事はスムーズに進むんだ、はぁ…はぁ…」

男「むぐ…」コ、コクリ

同級生「よし…はぁはぁ…最初から、そう素直に頷いておけばよかったんだよ…!」スッ

男「ううっ……ごめん、ごめんなさい…っ」ブルブル

イケメン「……」

イケメン「……───」


イケメン「─────」グルグルグルグルグルグル


【この時、彼の脳内では溢れかえらん程の男との思い出が走馬灯のように流れては消えていった──】


男「…っ…っ…っ」ぎゅううっ

同級生「よし、このまままっすぐ廊下を進んで……んっ!?」ババッ

同級生(今後ろから変な気配が──なんだ!? 一体急にどうしたって…………)




イケメン「…」ドドドドドドドドドドドドド!!



同級生「なん、」

男「ふぇ? あれ、今イケメンの姿…」

同級生「に、逃げるぞ……あれは凄い怒ってる……説明して納得してもらえる自信がないレベルで切れてる…!」

イケメン「…」ドッッッ!!!!

同級生「き、来たッ!! 凄い顔で来てるッ!」ダダッ

男「え、え、なにが起こって、」

同級生「そんなこと僕が知りたいよッ!」

イケメン「…」ドドドドドドドドドド

同級生「クソックソッ…一体なんだって言うんだ…! はぁっ…はぁっ…!」

男「うっ…」

同級生「やっぱり、助けるんじゃなかった、変な気を起こすんじゃなかったやっぱり一人で過ごすほうが全然気楽で十分だッ!」

男「…ごめん」

同級生「あぁッ? なんだよ急に謝ってさァ!? もういいよ僕は半裸でションベン漏らしそうになってる同級生抱えて、」

同級生「ブチギレてるやつから逃げてるっていうのにさァーあ! 今更謝ったってどォーだっていいさァ! アッハハハハ!」


同級生「───だから最後までとことんやってやるよ、ふざけるな、舐めるなよ、この同級生をたかが一般高校生だと思うなーッ!」


男「……」

同級生「はぁっ…はぁっ…本当に嫌な役回りだ、ったく…!」

男「…同級生君…」

同級生「あんッ!?」

男「上手く状況を掴めないけれど……ありがとう、同級生くんのこと俺は勘違いしてたみたいだ」

同級生「…どうしたんだよ、急に」

男「ごめん、ぶっちゃっけるともっと卑屈で嫌な感じの人だと思ってた」

同級生「…そりゃどーも、そう思われても仕方ないと思ってるよっ」

男「ふふっ」

同級生「なんなのさッ」

男「──そういう風に自分の部分を認めてる所、俺は凄いと思う。本当に、凄いと思ってる」

同級生「はぁっ?」

男「だから───」


男「イケメンお座りッ!!!」

イケメン「っ!」ひょこん!


同級生「…は?」

男「だから、助けてもらった後は……出来ればその、色々ともっと話をしよう」

同級生「……」

男「うん。俺は君と仲良くなりたい、修学旅行をおもいっきり楽しみたい。皆で仲良くわいわいって感じで…」

男「だめ、かな?」

同級生「……」

同級生「…君は、本当に【あの】男君なのか…?」

男「えっ?」

同級生「っ……今は良い、ほら付いたぞトイレに行ってくるんだよ!」トン

男「あ、ああ、うん。ありがとう」たたっ

同級生「礼は良いから早く!」

男「う、うん! 待ってて、直ぐに戻ってくるから」フリフリ

同級生「っ……」


たったったっ


同級生「…なんなんだよ、全く…ッ」ギリ



                                           『──だめ、かな?』

同級生「…………」


イケメン「わん」ヘッヘッヘッ


同級生「……なんなんだよ本当に…ッ!」ブルブルブル


イケ友「ふわぁ~ココに居たん~イケメン~? なんかさ、起きたら枕元に同級生の体操服があって──……んあ?」


同級生「あっ! おまっ! オートロック───」

同級生「鍵は持ってるんだろうなっ!?」

イケ友「ふぇぇぇ…鍵…?」ゴシゴシ

同級生「持ってないだろうなわかってたよこんちくしょう!」

男「うわぁあぁあ! 間違って女子トイレに入っちゃった…! うっ…駄目だもう動けない…っ」パタリ

イケメン「わんわん!」

イケ友「んんー? ふわぁっ…眠いおやすみなさい…」スヤスヤ

男「や、やめろイケメン……今は面白がってる時じゃない…も、もれっ」

イケメン「わぅーん!」

イケ友「ぐーぐー」


同級生(何なんだコイツラは…嫌だ嫌だ絶対にこの班で後二日間も修学旅行を過ごさなきゃならないなんて…)

同級生「……」

同級生「…………はっ!?」くるっ



教師「B組五班……こんな所で何を遊んでいる……?」



同級生「」



【この後、一時間説教されました】


第十八話『僕はもうこの班は嫌だと突っ込みを入れたい』

仕事が予想以上にヤバイですごめんなさい
余裕を持って水木金の内に投下しますごめんなさい

ではでは来週にノシ

とある女子部屋


女「はぁっ? 何よ急に? 今ちょっと考え事してるんだから」

女友「だからぁ誤魔化さなくても良いじゃない、ね?」

女「あん?」

女友「女さんがいつまでたってもご正直にぶっちゃけないんだからさ、私の方から直々に聞いてあげてんの」

女友「女。彼氏出来ただろ?」

女「は? なにそれ? そんなワケ無いでしょうが」

女友「意味わかんなくはないだろー。周りの女子たちも言ってるよ? 「女ってば絶対にオトコできたよねー」って」

女「どこのどいつかフルネームで教えなさい。殴りに行くから」

女友「まあまあ。ここはひとまず認めていく形で行こうよ」

女「…アンタ本当は居ないってわかってて聞いてる?」

女友「あはは。ん~? まぁ、あーんな超絶完璧イケメン君と長年幼なじみな癖に、まったくもって浮いた話が一切無い女だしね」

女友「それに一部の女子からは「あの子はもしかして男に興味が無い…?」と疑われてもいるよ、おもに後輩から」

女「なにそれ!?」

女友「そんな風に疑われるのが嫌ならさっさとイケメン君とくっつけばいいのに」

女「あのさ、何度言わせれば分かるのかしら。アイツとは何でもないの、これっぽっちも何でもないの」

女友「じゃあなんだって言うのさ、イケメン君とは」

女「……。アイツはもう…なんていうのかな。うまく言い切れないけど…一言で言うのなら…」

女「付き合うぐらいなら自殺を選ぶと思う」

女友「あははー女って本当にイケメン君のこと嫌ってるよねぇーどういうこったい!」

女「さんざん周りに説明して疲れたわよ、その話題は…」

女友「じゃあ話題を変えるけど、女の周りに気になる男子ぐらいいるだろー? 勿論イケメン君意外でさっ」ニヤニヤ

女「気になる男子…?」

女友「うんうん」


女「……」

女「…………?」


女友「う、うん。いくらニブチンの女でもよ、こういう所いけてるなーかっこいいなぁー好きになっちゃいそうだなーとか思うことあるよね?」

女「た、例えばどういう所をそう思ったらいいワケ…? 男子の魅力ってなに…?」

女友「いや聞くなよ」

女「わっかんないわよっ! そんなコト一々気にしたことなんて今まで無いし!」

女友「あんた本当に花の高校生…? 今どき小学生だってもっとマシな恋愛感性持ってるよ…?」

女「う、うるさいわよ! アンタに言われなくても思うところもあるんだから…っ」

女友「思う所? 女、もしかして最近誰かに告られた?」

女「えっ!? なっ…なわけないじゃないっ!? ばっかじゃないの!? 冗談は休み休み言いなさいよ!」ビクゥ

女友(分かりやすすぎる)

女「うぐっ」カァァァ

女友「へぇ~ほぉおぉおぉおー! いつなのっ? いつよいつ? 相手は誰? 一体誰よ? んっ?」ニヤニヤ

女「………同じクラスの…堅物君だけど…っ」モニョモニョ

女友「えええー! うっそマジで?! けっこう人気男子じゃん! んで返事はなんてっ!?」ワクワク

女「へ、返事? えっと返事は…」

女「変態って言われた、かな?」ポリポリ

女友「変態!?…変態なんで!?」

女「い、色々とあったのよそん時はっ! ごちゃごちゃになっちゃって、まぁとりあえずお断りを入れたわ…うん…」

女友「どう色々あったら変態言われるのよ…しかもちゃっかりお断り入れてるし…わけわからん…」

女「アタシもよくわかんないわよ…告白自体初めてだったし…あれはあれで良かったとか悪かったとか判断付かないし…」

女友(少なくとも良いものじゃねえよねソレ…言ったら落ち込みそうだから言わないけど…)

女友「じゃ、じゃあ思いつく限りでいいから、なんかひとつぐらい胸ドキドキするようなシチュエーションあるっしょ?」

女「………。実は堅物くんから告白される前に、違う男子から告白されそうになって」

女友(おおっ? もしやその男子生徒の為に断ったのかっ?)ドキン

女「けど告白自体勘違いで、結局、その男子が鼻血出してぶっ倒れたから保健室まで運んだ…」

女友「あんたまさか殴ったのか?」

女「いやドアをぶつけちゃた…血がドロドロ出てて死んじゃうかもってどきどきしたわ…」

女友「そういったドキドキ談じゃないってば!!」

女「うぐっ」

女友「ねぇ何か女ってば昔よりも疎くなってきてない? 色恋沙汰に無知になってきてるっていうか」

女「なによそれ、不安になること言わないでよ」

女友「不安に思えって。つか、前はもっとマシだったような気がしないでもないんだけど」

女「………」

女友「もしかして、誰か好きになった、とか? だから周りの男子に興味がなくなった、とか?」チ、チラリ

女「──……」


女「それは無い」ブンブン


女友「…。ちょっと待ってなにその反応、逆にあやしすぎるんですけど」

女「無いってば、嘘ついてないし変に勘ぐり過ぎだから。てーいうかもう寝たいんだけど、眠たいんだけど」ポスン

女友「なに隠してるんだー教えろーこのやろー」ぐいぐい

女「あーあーうるさいなーもぉー…」モゾリ

女「別に誰も好きになってもないし、そんな、余裕ないっていうか…あ、あいつらとか…色々と心配なことが山積みで自分のこと見てるヒマがないっていうか…」

女友「意味がわからんゾー!」

女「だぁー!! うっさいわねボケッ! 」


マネージャー「ねぇねぇ女友。こっち来て恋話咲かせようぜ!」

金髪「好きなやつ居る?  彼氏出来た? 恋話恋話!」


女友「え? あーうん、恋話かぁ…」

女(どいつもこいつも…きゃんきゃん男に餓えてやかましい…顔つき合わせたらその話題しか出てこいない…)グググ

女友「彼氏なんていないって~そういう自分はどうなの?」

マネ「えへへ~居るわけ無いだろ~?」

金髪「舐めるなよこん畜生~居たら女子共と一緒にこの部屋でのんびりしとらんわぁ~」

女友「でっすよねぇ~!」


「「「あははは!!」」」


女(もう寝よう…おやすみ…)

マネ「それにしてもさ、隣のクラス。B組はいいよね、マジ男子かっこいいの多すぎだよー」

金髪「それな、クラス編成考えた奴恨む恨み倒す、偏り過ぎじゃない色々と?」

女友「ほぇー考えたこともなかった、けど、うちにも居るじゃん」

金髪「え、だれ? 堅物君とか?」

マネ「ないない。かっこいいけど、あの口調無い。この前とか消しゴム拾ってあげたんだけど、」

マネ「──その親切ありがたき所存。なんて真顔で言ってたもん、唖然とする前に鼻水噴き出しそうになったもん」

女友「その天然系が癒やし、なんて言ってたのは何処のどいつだよ」

金髪「お前だよお前」

マネ「言ってないし! …あれ? 言ってた? いーや言ってません、今は違います!」

女友「いやもう語るな…無様だよ…消しゴム拾ってあげてちゃっかり印象残そうとしていた奴がなにも言うな…」

マネ「うぉぉぉぉ頭のいいヤツはキライだぞぉぉぉぉ」

金髪「ハイ! この話はお終いな、次にB組を語ろう。うむ、誰が一番かっこいいと思う?」


マネ「イケメン君」

女友「イケメン君」


金髪「あははは! …いやちょっと、話し終わっちゃうからな。もっと視野っていうか男子層広めて語るべきだって」

マネ「他なんて言われても…」

女友「まぁイケ友君とか? 喋りやすいし、一緒にいて楽しいし」

金髪「あぁわかるかも、喋ってて安心? 出来るみたいな?」

マネ「うぇーそう? 部活で居るとき煩くてヤダ、あの筋肉」

女友「そーいやバスケ部、マネージャーさんだったか」

マネ「そうなのだぜ。まぁ殆どイケ友は部活なんて来てないけど、イケメン君もねぇ~なんでか部活やめちゃったからねぇ~うぐぐっ」

金髪「部活女子全員が嘆いてたよ。我ら癒しのお姿を拝める日は来ぬとな…」

女友「あ、またイケメン君の話になってる。もっと居ないのー?」

金髪「不良君とか?」

マネ「あーあの身体でっかい人…怖いよね」

女友「まぁ…時代遅れっていうか…」

金髪「え? みんなそんな感じ?」

マネ「ほほーぅ、金髪さんや。もしやすると惚れほれですかな?」

女友「コラーッ! おいどんは音楽一本で喰ってくとかほざいてただろーッ!」

金髪「ちょ、待てって。なに怒ってんの、確かに見た目は凄い恐いけどな、…ここだけの話」ヒソッ


金髪「メチャクチャ歌が上手い」


マネ「ほぇー! そうなの? 意外っちゃ意外かもー」

女友「何で知ってるの?」

金髪「以前に軽音部に来たんだ。なんて言ってたかなー確か『ここなら歌っても問題無いと聞いた』とか何とか」

マネ「なにそれかっこいい」

女友「歌える舞台を求め、彷徨い、行き着いた軽音部の戸を叩く彼…そして奏で始める二人のピュアLOVEメロディ…」

金髪「一々恋愛絡みにしたがるなお前…別に軽音部に入るつもりで来たわけじゃなかったよ、不良くんは」

マネ「ほぇ? じゃあ何しに来たのけ?」

金髪「だから歌いに。自分一人しか部室居なかったから、特に気にせず勝手に歌えば? 放っておいたらさ」

女友「何歌ったの? 洋楽?」


金髪「いや、子守唄だった…」


女友「は?」

マネ「cowmowauxi-tang?」

金髪「知ってる単語で無理矢理それっぽくするな…つか、めちゃ上手いのよ子守唄…超ビビったわ…」

女友「え、えっと歌った後は?」

金髪「…結局最後まで歌いきって、上手さに唖然としてた自分にペコリ頭下げて帰っていった」

マネ「わー! 礼儀正しい!」

金髪「そこなのか? 一番思う所はそこなのか?」

女友「よ、よくわからんなー怖い人から不気味な人にウチの中で変わりつつあるんだけど…」

金髪「いや、一度聞いてみるべきだって。歌声すっげー今でも耳に残ってる、すごかったね」

金髪「それに好きになっちゃう人もいるみたいよ、ほら、クラスの……」

女友「え、誰々?! アンタ!?」

金髪「違う、担任」

女友「…聞きたくなかったそれ…」

マネ「どこで仕入れた情報なのさ…」

金髪「え、知らないの皆? イベント時とか熱い視線で見てる所よく見かけられるらしいけど」

女友「…嫁ぎ遅れは怖い、なに考えてるか分からん…」

マネ「恐いのでじゃ次、同級生君は?」

金髪「一票。かっこいい」

女友「確かにかっこいいけど、付き合い悪くないかね? 前にカラオケ誘ったら露骨に嫌そうな顔されたし」

マネ「いいじゃんつれない所。あんなんだけど、前に選択授業で消しゴム拾ってあげた時にね」

金髪「アンタ消しゴム拾いすぎだろ」

女友「抜け目ないなお前」

マネ「ハイこれ落としたよって渡したら、」


同級生『…さんきゅ』テレ


マネ「って、照れてたぬへへ」

金髪「分からないでもないけど、アンタの気持ち悪い笑みがなんか癪に障るわ」

女友「ギャップって奴ね。あーはいはい、ちょろいですなぁ妖怪消しゴム拾いさん」

マネ「伊達にマネでボール拾ってません!」



わいの! わいの!



女「ちょっとアンタ達」もそり

女友「んぁー? どったの?」

女「もう何時だと思ってるのよ、寝ないの? 明日早いんだから…」

マネ「何いってんだい! まだまだこれからじゃよ! 寝るなんてもったいなさすぎ!」

金髪「ガッツだよガッツ! 女! 気力さえあれば徹夜なんて何のそのだ!」

女「いや…徹夜とかしたくないし…」ゴシゴシ

女友「眠いなら先に寝てていいよ、別に。あんたはほら、計画表とか任せっきりだったし、この班で一番の苦労者だからね」

金髪「そういやそうだったわ。ごめん、疲れてるなら無理して付きわなくていいよ?」

マネ「おぉー…」

女「そう。じゃあ先に寝させてもらう…ふわぁ~…あ、そういえばいい忘れてたけれど……」モスゾ

女「明日に泊まる旅館の時…アイツ、イケメンの奴が部屋に来るかもだから……その時はよろしくぅ……すや…」



「「「!?」」」



女友「ちょ、今なんつったッ? え、誰が来るって? えっ?」

金髪「い、いけ、イケメ…!?」

マネ「何だってぇええええええええ!?」


女「…寝させてくれるんじゃなかったの…」ポヤ

女友「んな重大なコト何寝る直前にぶっちゃけるんだよ! おばか!」

金髪「やばいやばいって…それやばすぎでしょ…お、押しかけてくるわよッ…バレたら女子共が問答無用にアタシたちの部屋に…ッ!」

マネ「あわわわわあわわわわわわ」

女「別にいいじゃない、アンタ達だって来て欲しかったんでしょ? だから約束取り付けてやったんだから…」スピヨスピヨ

女友「ぬわぁあああああああ! き、キンチョーしてきちゃった! 大丈夫かな…っ? 色々と大丈夫かな…!?」

マネ「何するべきだと思う!? トランプ!? ウノ!?」

金髪「ここは思い切って枕投げとかどうですか…?」

女 スヤスヤ

女友「いやね、うん。今から考えこんでも仕方ないよ、うん。やっべ、このままだと興奮しすぎて寝れないわ」

金髪「たしかに。よく考えればイケメン君だけじゃなくって、イケメン君の班の全員が来るのか…また歌とか聞けっかな…」

マネ「あぁーイケ友来るか、メンドくさい…」

女友「けれどもですよ、だけれどもですよ。んふふっ」

金髪「不覚にも多少ながら緊張している…」

マネ「滅茶苦茶震えてるよ、全力で今から緊張してるよチミ」ツンツン

女友「……。そういやさ、イケメン君の班で思い出したんだけども」

マネ「どしたどした」

女友「ほら居るじゃん。なんつーか影の薄い男子、名前なんて言ったっけか…えーと…?」

金髪「誰? 名前思い出せないほど影が薄いの?」

マネ「あーっ! わかった、今年の文化祭でイケメン君と実行委員会やってた奴っしょ!」

女友「それそれ、名前わかる?」

金髪「あー……」

マネ「え、えっとぉー……ぬぅーん……うん? うーん…?」

女「…男」ボソ

女友「そうそう! そうだった男君だわ! はいはいはい、今アハ体験来てるよ!」

金髪「居たっけそんな奴? つかまだ寝てないのか女」

マネ「んでさ、それがどったの女友ちん?」

女友「いや、別に何にもないけれど……なんかさ、やたら最近目に入るなぁっと思って」

金髪「そうか? 名前自体思い出せないプラス顔の作りすら微妙なんだけど」

マネ「まぁ確かに見かけることが多い気がする…なんでだろ…?」


女「………」モゾリ

女友「あ。わかった、わかったわ。よくイケメン君とつるんでるからだ、きっと」ポン

金髪「えマジ? 居たっけ?」

マネ「どうだったかなぁー部活で見かけなくなって、イケメン君の周りを見る機会がなくなっててなぁー」

女友「確かイケメン君が部活やめたのって、その男君とつるみ始めてからじゃない?」

金髪「わからん」

マネ「かも…?」

女友「なんか色々と思い出してきた。一時期噂にもなってたじゃん。ほらほら、イケメン君が男君と付き合ってるんじゃないかって」

金髪「その噂ってその二人だったのか…それは聞いたことある、ホモじゃないのって」

マネ「うん。屋上で「お前が必要なんだ!」って叫んでだとかでしょ? へー男君がそうだったんだ、ほぉー」

女「……」ゴロゴロゴロ

金髪「でもただの噂じゃない。誰も本当に信じちゃいない感じだったし、私もすぐに忘れてたわ」

マネ「イケメン君がホモだったら、ショックを受けてぶっ倒れる奴らが沢山出るぜ」グヘヘ

女友「逆にキャーキャー騒ぐ奴らも居たけどな…あれ? どした女? こっちに転がって来てさ」

女「…あたしは気にせず話を続けなさいよ」

女友「いや寝なってば。それともナニ気になるわけ?」

マネ「めっずらすぃーな女。男子の話題に食いついてくるなんてなぁ」パタパタパタ

女「違うわよ、アンタ達が何時までたっても喧しいから恨みったらしく見つめ続けてやろうという魂胆よ」ジィー

金髪「なんかやることが地味で逆にクルなそれ」

マネ「女のジト目可愛いよんふんふっ」

女「……、それで?」

女友「あん? なにさ?」

女「話はそれだけ? もう続きは無いの?」

金髪「いや別に…膨らむような話題でもなかったしなぁ…」

マネ「おぅ」

女友「えらい食いついてくるね女、あーもしかしてぇっ?」ニヤニヤ

女「えっ?」

女友「あーは言っても、やっぱりイケメン君の話題は聞き逃せないとか言うやつですかなっ?」

金髪「やっぱりか…」

マネ「だぁああもう! ハッキリしようぜ女! …どうなの? やっぱりイケメン君と影で付き合ってるんじゃないの?」

女「……。やっぱりやっぱりうるさい、あんぽんたん共」ゴロゴロゴロ

女友「あ。戻っていった、逃げたな」

マネ「私達は何時だって疑い続けるからなぁー! うぉー!」

金髪「あ、そういえば」

女友「どした?」

マネ「うむむ?」



「ひとつ思い出したことがあるわ、知り合いの子が言ってたんだけどさ」

「その男子だっけ、何だか結構一部の女子では相当……なんつーの、ウザがられてるみたいよ」


女友「どした急に膨らんだよ、顔を知らないのにえらく詳しいじゃないの」

マネ「えぇーなにそれ、そういった話題ききたくないんだけどー」

金髪「違う違う。私だって、今話題に上がってる男子とその聞いた男子が同じだと思わなかっただけ、今になってやっと該当しただけだっての」

女友「認めよう。では詳しく話しなさい、気分が悪くなるような話題なら自己判断で聞き逃すよーに」

マネ「ぬぉお…どうしよっかなぁ…」


「んまぁ、その知り合いが言うにはね。さっき女友が言ってた部活の件や、それに文化祭の時もそうだったらしいんだけど───」

「──変にイケメン君が周りを避けているフシがあるそうなのよ、全くわからんけども」

女友「そりゃま変な感じだな」

マネ「それがどったの? なにか問題があるわけなのかい?」


「あるんじゃない? まぁつまりはその避けている──ことが付き合いが悪くなったと取れるとして、」

「その原因が、その男子にあるんじゃないかと。皆は疑っているわけなのよ、実際に部活もやめて放課後はフリーなわけだ」

「でも誰も後のイケメン君のことを詳しく知らないでいる。唯一知ってるのが──どうも男君だっけか、その男子につきっきりだってコト」


女友「うむ…」

マネ「やはり彼はホモだったのか…?」

金髪「一部、そう疑ってる奴も居るみたいだ。けれど「イケメン君やっさしぃークラスで馴染めない子を付きっきりっでなじませようとするなんてー」とか」

金髪「──案外そう思ってる子が多かったらしくて、直にそういった流れも無くなって、何時もどおりのイケメン君に戻ると踏んでいたのだけれど、」

女友「ま、今も仲良いかんじだわな」

マネ「一緒の班になるぐらいだしね」

金髪「そう。そこ、終わると思ってたイケメン君の優しさが何時になっても終わらない。寧ろ逆に勢いがまして、しかも、だ」


「──逆にその男子が、イケメン君と一緒にいようとしている光景が見かけられるようになった」

女友「なにそれ、それが気味の悪い女子共の逆鱗に触れたってやつ? 嫉妬ってやつ?」

マネ「だぁあああやっぱ聞かなきゃよかったぁあああああ」バタバタバタ

金髪「けど本当に一部の女子は本気で、その男子を疎ましく感じてるらしい。もうドロッドロ、悪臭たっぷり」

女友「おぉおぉお…怖いわ鳥肌立っちゃった…」

マネ「ナンマイダブナンマイダブ」スリスリスリ

金髪「ん、やっぱ話さなきゃ良かったなコレ。明日どういった顔してその男子と顔を合わせればいいのかわからなくなったよ! えへへ!」

女友「あ! てめーさては自分だけそういった感じになるの嫌だったから、私達に話しやがったな!」

マネ「なん…だと…?」

金髪「ええ、そうともいいますなぁ、ええ、ええ。…ふっざけんな巻き込むに決まってんじゃん! アタシだけそんなんとか可哀想でしょ!」

女友「可哀想じゃない! 全然可哀想じゃないな! ブァーカ!」

「なんちゅーことを…なんつーことをしてくれちゃったんだチミィ…!!」



「その話、本当なワケ?」



金髪「…え?」

女「だからその噂」

金髪「い、いや噂だしな? 別に本当じゃないかもしれないし…」

女「……」

金髪「えっと…」

女友「どうしたのさ女? 急に起き上がって、なに? …怒ってんの?」

マネ「えっ? えっ? なんでなんで? な、なんで女が怒るの…?」

女「黙って」

マネ「あ、ごめん…なさい…」シュン

女「それで? 誰かは聞かないでおくからその噂、何をどういったことが広まってるの?」

金髪「聞いてどうする、あたしは面倒事嫌だぞ…っ? 巻き込むんだったら絶対に話さない、絶対にだっ」

女「…その口は歌うためだけのものじゃないんでしょ、金髪」

金髪「うぐっ…わ、わかった言うってば…なんだよ急にギスギスして──だからその、なんていうのかな、」




『あの男子、人前でろくに会話できないクセに実行委員会とかなってるんだけど』

 『しかもメイド服着て校内うろつきまわってたらしいよ? きも…』

 『なんなのアイツ? 少しイケメン君から優しくされたからって、マジで友達にとかになったつもりでいるワケ?』


『たまーにジロジロこっち見てる時があるんだけどさ、あの眼つき絶対に私たちのこと頭のなかでアレやコレしてるって、寒気がするし…』


『この前駅前のゲーセンでさ、アニメの人形抱えて笑ってたんだよ…ほんっとイケメン君から離れてほしいわ、変な影響受けてほしくないし』


『キモい癖にでしゃばるなっての。黙って静かに本でも読んでろよ…』


               『最近とか酷いよね、アイツ。自分が周りからどう思われてるのか知ってんの?』

                                        『アッハハ! 分かってないでしょ絶対ぃ~! バカそうだもん!』



          『あんなのに付きまとわれているイケメン君が可愛そうだよ~マヂでさ~』




                                          『どうしたら自分の身分弁えることわかるかな? 靴でも隠そっか? クスクス』



             『───ホントにさ、アイツって誰にとっても要らない存在だよね?』

女「………」


金髪「…あの、女…?」

女「ありがと、言いたくないこと話してくれて。感謝する」

金髪「いや、その別に…」

マネ「うっ、あ、あのあの! そんなに気にしなくたって、いいじゃないのかなって…確かにイケメン君のことだけど、直接的には関係ないし…その…っ」

女友「そ、そうそう。幼馴染だからってさ、気にし過ぎだってば」

金髪「それはそうだと思う…」


女「ッッ──違う、だから違うって言ってるじゃない!!」


マネ「ひっあっ!」

女「どうしてアンタ達は何時までたっても…ッ…あーだこーだアイツの事をあたしに関連付けようとして、面倒臭い面倒臭いッ! アイツはあたしに関係ないッ!」

女「ズケズケ性懲りもなく否定しても否定しても言いやがって…ッ! 何にも分かってないくせに、なにもアイツのッ…!」ブルブル

女友「お、落ち着きなって女…! 急にどうしたっていうのさ…っ?」

女「良いから聞きなアホどもッ! 良いッ? よーく耳の穴かっぽじって聞きなさいよ! 苦労してるのは嫌がってたのは全部逆よ逆! ばーかっ!」

女「変態に付きまとわれて、私からホモ扱いされても! いやいやその話題は今は置いといて…だから! その! それでもアイツはどうにかしようって頑張って努力をしてたんだから!」ガーッ

女「キモいのは変態の方じゃない! 優しくされて調子に乗ったのは全部アイツの方よ! 馬鹿なのも身分をわきまえてないのも全部全部あっちじゃない…!」

女「本当のことをわかろうとしてないくせにっ! 自分から関わろうと、自分から歩み寄ろうとしないで──傍から見たことだけを知って聞いてわかったようなコトを言って…!!」

女「何が誰にとっても要らない存在、よ…ッ……そういったアンタより百倍、数千倍、数兆倍は価値を持ってるわよ…ッ腐れクズ脳内共が…っ」


くるっ すたすたッ


女友「ちょっとお待ちーぃ! はいはいはい、どこにいこうとしてるのかなー?」がしっ

金髪「行けっ! 妖怪消しゴム拾い!」

マネ「うぬぉー!」グググ

女「はなし、なっさいッ…!! アンタ達…ッ…放しなさいって…ばっ…!」ギリギリギリギリ

金髪「本当にお前おっそろしいなっ! なんだその行動力! 怖いわ! 約束したこと即座に破り捨てようとしてるから!」

マネ「行くな行くな~っ!」

女友「落ち着けってばっ! どこに行くって言うんだ!? 片っ端から噂の元を聞きまわるってか!? 無理無理やめろ!」

女「っ…わからない、わよ…! やってみなくちゃそんなことわからないじゃない! だからッ!」

女友「いやわかるって、そんなこと! だってアンタは無関係じゃんっ!」

女「──………」ピタ…

金髪「そう、だって。一度冷静になって考えてみな…」

マネ「そ、そうだぞ…? 原因が私が言ったことなら…土下座しても謝るからさ…?」

女「……、何よ無関係だなんて…っ」

女友「無関係は無関係だってば。なに、それとも関係があるってワケ?」

女「だから…ッ!」

女友「自分で言ったんでしょ、イケメン君は自分にはまったく関係がないって。なのにどうして面倒事を背負い込もうとしてるの?」

女「…っ…」

女友「それとも他に別の理由がある? イケメン君も関係なくって、気持ちの悪い悪口を聞き出そうという野次馬根性でもなくって───」


女友「──どんなことよりも、譲れない理由が女にはあるっていうワケ?」


金髪「……女…」

マネ「…ううっ…」

女友「あるなら放すわ。納得させるほどの理由ならね、うち達が頷ける理由なら放す」

金髪「ちょ、ちょっと本気で言ってんのそれ…!?」

マネ「だ、ダメだって絶対に…!」

女「……わよ…」

女友「何…?」


女「分からないわよあんぽんたんっ! あたしだってどうして怒ってるのかわからない! けど、けれど…!」

女「他人がわかったように文句を垂らすのが気に食わない! だって、それは…!」ギュッ


女「あたしが、やることなんだから…絶対に他人なんかに言わせたりしない、突っ込ませたりなんか、させない…」


女友「……」

金髪「女…お前…」

マネ「……」

女「だから、あたしは…!!」

女友「うんっ! そっか! じゃあかくほーっ!」がばぁ

金髪「よし! おりゃー!」

マネ「納得できるわけねええだろぉおおおおお」

女「えっちょッ? コラーッ! なによ認めてくれるんじゃ、やめ放しなさいよコラーーーーーーーーー!!!」


ベランダ


女「…」チーン

女友「落ち着いた?」

女「…すごく身体中が痛い、明日歩けないかもしれない…」ボソボソ

女友「自業自得だっつの。あんなに暴れたんじゃ手加減なんてできやしないって」コトリ

女「ありがと」カシュッ

女友「どーいたしまして。んで、冷静になった所で今のご感想は?」

女「…すごく皆に謝りたい…」ズーン

女友「よろしい。いやー凄いねぇあんた、まさに燃える闘士轟々っていうの? あっははー!」

女「ううっ…なんであたしってばこんなんなんだろ…っ…昔から何も変わってない…本当に駄目な奴…」

友「ごくごく、ぷはーっ! そう? 私はダメだとは思わないけど、うん」

女「どうしてよ、こんな頭のおかしい奴…」

女友「確かに女は一度決めたら暴走気味になるけどさ、中学時代からそうだったけれど…でもダメだって否定はしない」

女友「だってアンタは他人のために怒れるやつじゃない。自分だけじゃなくって、他の人の為に行動できる奴だから」

女「……」

女友「そういった性格に、救われてる人も居るとおもうわけですよ。好かれる要因になると思うわけですよねって、だっはぁ臭いこと言った…消臭剤はどこだろー?」

女「ぷ、なによそれ。ホントあんぽんたんね、居るわけないじゃないそんなの」

女友「おっ? 信じてないなこのヤロウ、ま! 信じてもらっても困るけどね、調子に乗られたら今度こそ女を止められる自信ないしさ」

女「うん、信じない。こんなあたしは本当に駄目なやつだと思ってるもの、いつかちゃんと考えて行動できるように……あたしは頑張るんだから」

女友「それは、」

女「ん?」

女友「誰のために?」

女「………」


ヒュウウウ…ザワワ…


女「──さぁ? 誰のためだろうね」サァアアァア


女友「……。さっきの女の横顔、なんかめっさエロかったんだけど」プイッ

女「ぶほぉッッ!? ケホッ、はぁっっ!!??」

女友「私が男だったら…うん…今ここで告ってたやもしれんね…」カァアア

女「と、とんでもないこと言い出したわねアンタ!? まだ暴れたこと根に持ってる!?」

女友「あはは、まぁいい意味で言えば女性の顔、大人の女、みたいな?」

女「なーんの…ッ…フォローにもなってないし…ッ!」

女友「そお? 良いなー大人の女エロいなー」

女「やめなさいってコラッ! 変なこというとあの二人が調子に乗って───」

女友「ハイハイ、わかってますって──んお? なんだろ声がしない?」

女「え? あ、確かに声がするような…ちょうど真下の部屋?」


『B組五班、ベランダで一時間正座』

        『うぇー! 地面コンクリートっすよ! 足が凍死するぅぅううう!』

『冷たい!? つめ、つめた! 冷たい! 僕は嫌だ! 絶対に嫌だ! というか体操服着させろアホ教師ッ!』

                 『どうして…オレはどうしてあそこで犬に…テンパってたとしてもあれはない…なぜ犬に…』


女「……」ポカーン

女友「…五班って、確かイケメン君の所の…」

『しょうが無いよ、部屋を飛び出して騒いでたのは俺らなんだから…』


女「!」


『ごめんね、俺がトイレに行こうとしなかったら、こんな事にはならなかったのに』


女「………」ギュッ


『何言ってんだ男ちゃん! つか起こしてくれれば全力で背負って連れてってやったぜ!』

『元はと言えばその、ドアノブを外してしまった僕が悪いだろうが! ハンッ! カッコつけるな漏らしかけたクセに!』

『犬に……えっ? ああ、うむ! 男君はまったく悪くない!』

『煩いぞアホどもッ! まったく今日一日騒ぎすぎだ五班ッ! 一番目を配ってた不良のやつが一番大人しいとはまったく情けない…ッ!』


『そっか。あはは、ありがと皆』



女「…あんぽんたん」ニコ

女友(おーおー、こりゃまた良い表情なことで)ニヤニヤ

女友(アンタは何時だって誰かのために怒ることが出来るけれど、他人である誰かのために行動できるけれど、)

女友「──たった一人のためになった時、いい顔するんだねほんっと」

女「うん? なんか言った?」

女友「んにゃーなにも、いっひひ」


窓越し 室内


「うーん、はぁ」

「ゴクゴク」

金髪「アタシ達も恋するかぁ」

マネ「ぷはぁ、そうだねぇ」

金髪「良いなぁ…うんうん、すごく良い…」

マネ「そうですねぇ~」ほのぼの


【女を除き全員が『男君とラブラブなのかー』という意見で固まりました】


第十九話『あたしのツッコミ未満』

ではまた来週にではではノシ

ディズニーランド


イケメン「はぁ…」

イケ友「お? どしたよイケメン、ため息なんかついて」

イケメン「ああ、少し昨日の疲れが残ってるみたいだ。気にしないでくれ」フリフリ

イケ友「なはは、確かになぁ! あの教師ってば一時間正座とか言ったくせにさぁ、説教含めて二時間ぐらいやらされたもんな?」

イケメン「ん。実に大変だった、まぁ今になって思えばそれもまた…」


「青春だっていいたいのかよ、相変わらずだな…」


イケメン「はは、そうだよ当たり前じゃないか。これも全て、君が送るべき青春ってわけなのさ、有り難いことにね」

男「お前ってホントに凄いやつだよ、尊敬する、ホントにさ」

イケメン「おや? 君が素直にオレのことを褒めてくれるなんて珍しい」

男「馬鹿にしてるんだけど…」

イケ友「ちょっちお二人さん。列が動き始めたぜ、動くぞ動くぞー」スタスタ

イケメン「お。やっと動き始めたね、ホラ男くんも…」

くいっ

イケメン「おっとと、どうしたんだい?」

男「…」じっ

イケメン「うん?」

男「昨日のこと…」

イケメン「うん、それがどうしたの?」

男「だ、だからその、お前まで巻き込んで謝りたい気持ちがあるわけで…その、」チラッ

男「…辛かったら言えよ。無理して強がらなくていいから、休憩したいときは…モゴモゴ…俺、付いていくし…」

イケメン「……。それは頼もしいね。でも、その場合はオレと君とで二人っきりで班を抜け出すことになるわけだけど?」

男「な、なんか妙に含めた言い方をするなよなっ! い、良いの! そういう時はそういう時で、いいんだよっ」ぱっ

スタスタ

イケメン(別に男君まったく悪くないのになぁ。勝手に犬になったのはオレのほうなんだし)

イケメン「でも…」

イケメン(なんだろう──今のはとても良かった、なにか自然に彼と会話が出来た気がする)

イケメン(やっぱり色々と考え過ぎるんだよな、オレは。わかってることなんだけど、自分じゃどうしようもない…犬になるぐらいだもんな…)ズーン


~~~~

男「………」

イケ友「すっげー並んでんなぁ、こりゃ乗れる時は三十分後どころじゃ無いぜぇ男ちゃん」

男「………」

イケ友「男ちゃん? どったの?」

男「なぁイケ友。気のせいなら良いんだけど、ちょっとイケメンの様子へん…な気がする」

イケ友「そりゃ昨日二時間説教だったもんよ、おれっちだっておつかれベイベーだって」

男「うん…まぁ…そういうことなら、それで納得できるんだけど…なんか、微妙に納得できなくて」

イケ友「どーいう所が?」

男「えっと例えば…気づいたら俺のこと見てたり、視線があったら気まずそうに反らしたり…」

男「あとは会話してる時に、一瞬苦しそうな顔したような気がしたり、よくわからなくてさ、うん」

イケ友「ほほぉーそれでそれで、男ちゃんは気になってるワケっすかー」

男「イケ友も気になったりしない? 俺だけかな、気になってるのは…」

イケ友「うーーーーん、おれっちそゆとこ疎いもんでなぁ。ま、男ちゃんならどうにかすると思ってるけれど」

イケ友「うむむ。思うに、それ恋じゃね?」キリリ

男「……」

男「は?」

イケ友「気づいてたら見てました。視線があったら逸らされました。会話してたら苦しそうにする……男ちゃん、おれっちそれ恋だと思う」

男「イケ友良いかな、少し、いや長く俺の話を素直に聞いてもらってもいいかな」ズィッ

イケ友「ちょ、ちょーまって! ごめん、謝るから、怒らない怒らない。おうおう、男ちゃんが言いたいこともよーくわかるっしょ!」

男「なら言うなよそんなこと…ッ」

イケ友「けどよ、おれっちそんな態度をする女子とか───それから関係が進んで付き合っちゃう奴ら何人か知ってるぜ?」

男「うん、だからそれ女子の話だから! というか、それ経験談? 前に付き合ってたっていう人との…」

イケ友「違う違う。そんな甘っちょろいつきあいかたしてたら、お袋に殺されるっての」

男「こ、ころっ?」

イケ友「まー今はおれっちの話は置いといて、男ちゃん。気になるなら、ここはハッキリとさせちまおうぜ」

男「またイケ友は簡単に言うよ…」

イケ友「な~に言ってんだっての。言えたことをやっちまう男ちゃんが、難しいわけないじゃんか」

男「…前から思ってたけど、イケ友は俺のこと信頼し過ぎだと思う」

イケ友「男ちゃん、親友を信頼しない奴は親友じゃないからな。し過ぎてなんぼだっての」

男「お、おう。そうだよな、うん」

イケ友「勿論さっきの恋ってのも冗談よ。でも、気になってることは十分本当のことなんだぜ、なら、ハッキリ違うってさ」ポン

イケ友「…男ちゃんにならすぐわかるってもんっしょ!」ナデナデ

~~~~

男(なんて言われたけれど、まぁ変なのことは確かなんだ。こ、恋かどうかはともかく…)チラリ

イケメン「……」

男(ちゃんと確認するために話を聞こう。うん、だって俺はし、親友なんだしなっ)ガバッ

男「な、なぁイケメン!」

イケメン「なんだい?」ニコ

男「その、お前に聞きたいことっ…あるんだけど良いかっ? い、良いよなっ?」

イケメン「随分必死だね。もちろん良いけど、なにかな?」

男「その…えっと…お前、最近…俺に対してちょっとよそよそしくない…かなって、思うんだけど」

イケメン「……そ、そんな風に見えた、かな?」

男(えっ…そこで焦るんだ…やっぱり何か俺に対して思う所があるのか…?)ビクビク

イケメン「べ、別になにもないさ。ほら、今日は昨日の説教で疲れているだけで…」

男「違う…俺が言いたいのは修学旅行からの話で、今日だけの話じゃない…」

イケメン「そうだったかなっ? そんなことないと思うけれど、だって新幹線でも楽しくしりとりもしたじゃないか」

男「……」

イケメン「君の気にし過ぎだと思うよ。けれど君がそう思っているのなら、オレとしても──」スッ

イケメン「──ちゃんと、しないとな。君に心配させないように」ニコ

男「…やめろって」

イケメン「え?」

男「その顔、何か隠してる時だろ…また何か俺に言わないでおくつもりだろ…」

イケメン「そんなワケ…」

男「お前やっぱり…何か隠してるんだな。俺にも言えないぐらいのこと……」

イケメン「男君…」

男「それは…っ……それはやっぱり…!!」


男(それはやっぱり『恋』してるのか…っ…!?)ギュッ


男「っ…っ…どういうことなんだ…わからない、わからないって…」ゴニョゴニョ

イケメン「………。はぁー本当に……君に対して隠し事は出来ないな」

男「えっ!? あ、うんうん…っ! 隠し事はやめてくれって、いうか、そのっ」

イケメン「そうだな、隠し事なんてやっては駄目だ。特に君に対して──一番やっちゃいけないことなのに」

男「おぉおぉ…っ?」

男(ま、待って! これは違うんじゃないかっ!? お、俺にじゃなくって単純にコイツが女子の一人に恋をしてるから…ちょっとナイーブになってるとか…!)

男(そ、そうだよ普通に考えてそうじゃん。普通に、普通に考えろ…焦るんじゃない…焦るのは悪い癖だ…)

男「そ、それじゃあ教えてくれるんだよなっ? 正直に言ってくれるんだよな…?」

イケメン「うん、勿論だよ。君から訊かれてしまえば答えるしかない、だって君のことなんだからね」

男「えっ? 俺のことって…」

イケメン「ごめんよ、一人でどうにか整理をつけるつもりだったんだ。君のことを思うと正直に言えなくてね…」

男「想うと…正直に言えなくて…!?」

イケメン「ああ、こうなってしまえば覚悟して君に言わなくちゃいけない。本当の気持ちを、どうして君に対して少しよそよそしいか…その理由を」

男「まっ…待って…っ」あわあわ

イケメン「いや待てないよ、オレとしても君から聞いてくれて有り難いんだ。今この瞬間を逃してしまえば、もう二度と君には言えないかもしれない」ズイッ


イケメン「聞いてくれ、君とオレにとって今後の関係に──十分影響があるかもしれないから」

男「ッ~~~~!? ちょっと、待って、ここで…? 言うの…?」キョロキョロ

イケメン「駄目かい?」

男「駄目だろ! 駄目に決まってるじゃん! そん、なの……色々と、駄目だって…」カァァアア

イケメン「そっか、君が駄目ならオレも諦めるよ」スッ

男「…! 待って、待ってくれ! 違う、そうじゃなくって、あぁあもうっ! なんなんだよまったく…!」ブンブン

イケメン「?」

男「っ~~~~……だ…」ボソッ

イケメン「うん? なんだい?」

男「ここじゃ…やだだから誰も居ない…所で…お前の話を聞きたい…」ポソポソ

イケメン「………」

男「…だめ?」チラリ

イケメン「うん、君がそう望むならそうしよう、すまないイケ友。オレら二人はこれから列を抜けるよ」

イケ友「ん? よくわからんがおっけー! んじゃ出口あたりで待っててちょ!」びしっ

イケメン「わかった、後で来る二人にも伝えておいてくれ。それじゃあ行こうか、男君」

男「……」こ、こくっ

近くのベンチ


男「っ……っ……っ……」ドッドッドッ

イケメン「この辺なら見知った顔もないし、話しやすいかな」ストン

男(俺はどうしたら俺はどうしたら俺はどうしたら)グルグル

イケメン「ほら、男君も座りなよ」ポンポン

男「ふぇっ!? あ、ハイ…!!」

イケメン「? どうしてそんなに離れて座るんだ?」

男「だっ、だって!! いや気にするな! うん!」

イケメン「……。それじゃ話しにくいよ、よいしょっと」スッ ストン

男「っ~~~~!!」ビクゥ

イケメン「これでよし、うわぁっ!? ちょ、ちょっと顔が真っ赤だぞ…!? 急にどうしたっていうんだ…!?」

男「…気にするなっ…」ギュッ

イケメン「気にするよ…すごく気にするよ、そうだ何か飲み物を買ってこよう。何が飲みたいか要望は?」

男「なんでもいいです…っ」

イケメン「ん。了解、じゃあ買ってくるよ、待っててくれ」スタスタ

男「はぁ~っ」グテー

男(なにやってんだろ。何を緊張してるんだ、何をまた焦っているんだ…)


わかってる、こんなの俺の早とちりだって。

アイツが俺に対して、何か、言わなくちゃいけないことをがあることは、全然違うことなんだって。


男「何度同じ勘違いをすれば気が済むんだよ…」


アイツはただの友達で、それでいて親友で。

今まで沢山の事をイケメンと一緒に過ごしてきたけれど、大変なことも楽しいこともあったけれど。


男「…アイツは親友、だろ」


アイツが俺に恋…してるなんて、馬鹿らしい勘違いをしている俺が本当に殴りたい。

そもそも何故勘違いできるのか、少しでも疑ってしまうのか。そんなの、ああ、考えなくても分かってしまう俺が居る。


男「そりゃホモだホモだ言われてるからな…うん、まぁ…」

「ねぇーねぇー次はあれに乗ろうよ、ねぇー」

「はいよ、お前って本当に乗り物大好きだよなぁ」


男(恋、かぁ)


楽しい学校生活。

友達も親友も出来て、文化祭も修学旅行も充実した青春を過ごしているのは、決して気のせいじゃないだろう。

今の俺は誰から見ても十分だと言い切れるぐらいに、最高の青春だ。


男「……アイツは、好きなやつ居るのかな」


あれだけモテモテのアイツが、たった一人の人間を好きだと言い切れる。

気になるようで、知ってしまうのがどこか怖く感じるのは──何故なんだろう。


男「………」

イケメン「やぁおまたせ、コーラで良かったかな?」

男「お、おう。ありがと」

イケメン「どう致しまして、ん。どうやら顔色は良くなってるみたいだね、びっくりしたよ」

男「ごめん。なんか一気に落ち着いたから、その、変に心配させた」

イケメン「良いよ大丈夫。これからオレの話を聞いてもらうんだ、もしかしたら、また君の表情を曇らせてしまうかもしれない」

男「……。なんか変なこと言わないよな?」

イケメン「勿論変なことだよ。オレが君に対して変なこと言わなかったことがあるかい?」

男「不安になるようなことを言うなよ…」

イケメン「ははっ、大丈夫だよ。オレは何処か安心してるんだ、君言ってしまえば…この悩みも結局は解決できるんだとね」

イケメン「今まではそうだったんだ。なら、今からもそうなんだろう。君はそういった人間だから、オレもまた素直に相談できるんだ」

男「そりゃ光栄だ…まぁ突っ込みだけが俺の取り柄…みたいだし」

イケメン「いいや、それは違うよ。君は沢山の魅力に溢れてる、それを君自信が気づいてないだけだよ」

男「いちいち褒めるなよ…! それで、言いたいことってなにさ、ごくごく」

イケメン「………。君は好きな人はいるかい?」

男「ぶふぅっ!? げほっこほっ!」

イケメン「おや、面白い反応だ。昨日はどうやら上手く誤魔化されたかな」

男「ま、待て…お前急に何言って…い、居ないっての…!」

イケメン「本当に? なら良かった、これから言おうとしていることは──そういったことに関係してくるからね」

男「関係…してきちゃうの…?」

イケメン「ああ、そうだよ。君には言わなくちゃいけない、この抱えた気持ちはどういった言葉をつければいいのかわからなかった…」

イケメン「一生懸命考えたさ。あれこれ理由づけして必死に答えを探した。そしたら少しだけわかった気がするんだ」

男「なにが分かったって言うんだよ…」


イケメン「うん。君がオレ以外の人と会話してると、なんだか気に喰わないんだ」


男「へ? はい? それ、どういう意味…?」

イケメン「君が違う人と楽しそうにしてるとね、思わず関わりたくなる。君が知らない所で楽しいことをしていると、ムキになって入り込もうとする」

イケメン「どうやらオレはね。オレが関与してない時間を過ごす君を、なんだか認めたくないんだ、どうしてだろうか」

男「そ、そんなの、俺にわかるわけ…」

イケメン「本当かい? このオレの言葉を聞いて、君は何一つ思うことはなかった?」

男「…まぁ変な感じだったとは思うけど…」

イケメン「多分、オレのおかしい所はそこに起因してると思うんだ。なにかの理由でオレはそうやってムキになってしまう…」

男「う、うん」

イケメン「イケ友でも、女でも、それに保健室の先生。会長さんでも起こらなかった、こんな気持ちは降って湧かなかった」

男「…修学旅行から、ってこと?」

イケメン「そうだね、そうなると思う。色々と思うことはあるけれど、一番の理由としては、」スッ


イケメン「君の魅力が、周りにも知られてしまったことかな」


男「…なんだ、それ」

イケメン「ああ、うん、それが一番納得できる気がする。オレは嫉妬してるんだ、嫉妬だ、ああ、本当にみっともないな…オレは…くくっ」

イケメン「君のことをわかったように関わってくる連中を見てると……心中穏やかじゃない、ざわざわだ」

男「……」

イケメン「君は君だ。決してオレのモノじゃない、わかってるさ。けどね、みっともないぐらいにオレは不安になってしまう」

イケメン「君が何時かオレのそばを離れていって、誰も知らない所で、オレさえも気づけないことを知って、君だけが新しい人間関係を作って…」

イケメン「──それが凄く怖いんだ、生きていく中でずっとなんてものは無いよ。当たり前の話なのに、それでも、結局は…」

男「……」

イケメン「この気持ちに合う言葉を、オレはずっと探してる。候補はいくつかあるけれど、出来れば客観的に、いや、どうしても君の口から聞きたい」


イケメン「親友の君から、ぴったりと合う言葉を聞かせて欲しい。オレはどうしてこうなっているんだろうか?」

男「それって、」

イケメン「うん」

男「こっ…こここっ…」

イケメン(にわとり?)

男(どうしてもどうやって考えても…こ、『恋してる』ことにしかならないんじゃないんですかーっ?!)プイッ

イケメン「?」

男(いや違うッ! コイツは本気で聞いてるんだ、これがどういったことなのか──本気でわかってない、のか…?)チラリ

イケメン「……」ニコニコ

男「あ、あのさ」ポリポリ

イケメン「ああ、なんだい?」

男「そ、それって…自分で何か思うことは、ないのか…?」

イケメン「思うこと? ふむ、例えば?」

男「なんかその、変じゃないのかなって…」

イケメン「あたりまえだよ、こんなのどう考えてもふつうのコトじゃ無い。だって君のことを見てると心臓が高鳴るんだ、」

イケメン「それに君と修学旅行で過ごせる三泊四日…楽しみでしょうが無いし、期待で胸が膨らんで仕方ないよ」

男「ちょッ…ちょっと待って…! それ以上言うな、言わないでください…ッ!」ブンブン

イケメン「そっか…まだいい足りないんだけどな…」シュン

男「お、お前の気持ちはわかった…っ…無論俺としてもちゃんと答えたいのは答えたい、本当にそう思ってるっ」

イケメン「ありがとう」

男「けど、だな…うん、けどだ。…お前は知らなくちゃいけない、と思う。色々と駄目なことがあるって、わからなくちゃ…駄目だとおもう」

イケメン「ほう?」

男「そうだな、えっと、そうだ! 試しに俺がお前に言ってみようとおもう言葉がある、それを言われた時どうおもうかで、わかることもあるとおもうんだ」

イケメン「えらく遠回しにしてきたね。良いよ、とことん付き合うさ」ウンウン

男(よ、よし! ここで如何に『男同士でやってしまってはいけないこと』を言うんだ…大丈夫、この考えは間違ってない、はず)

男「ゴホン! えっと、お前に一つ言いたいことがある──それは、」

イケメン「それは?」


男「あ、あっと、えっとだな、うん、しょのっ! お前は気づいてなかったかもだけど…ああ、ううっ…」

男「以前からイケメンのこと……」チラッ


男「か、かっこいいな…って思ってた、凄くイイなって、うん」

イケメン「………」

男「だから、えっと、ああもぉっ! どうだぁっ? どんな感じだったっ!? 嫌だと思っただろ…!?」

イケメン「ちょっとキュンとした…」

男「ぇえええええっ!? あれっ!? 嘘だろ…!?」

イケメン「な、なるほど…そうか、そういうことだったのか、もしかしてオレって君のことが───」ハッ!

男「待てッ! 違うそうじゃない! 今のはぁ…失敗だっ…! 納得するな絶対にだ!」

イケメン「お、おお。君がそう断言するなら…うん…」コ、コクコク

男(俺は何をやってるんだ、変に納得させるのは駄目。な、ならもっと違う言葉を…っ)グッ

男「い、言いたいこと二つ目!」

イケメン「一つじゃなかったんだね」

男「茶々を入れるな! えっと、その……俺はお前と友達だよな、し、親友だよなっ?」

イケメン「そうだね」

男「なら、そこまで嫉妬するのは…おかしいと思ったりするのは、わかるよな…?」

イケメン「ああ、そうだと思う。だから君に答えを聞いたんだ、どうなんだろうねって」

男「……、なら俺はお前が他の人と会話してると、結構辛いよ」

男「楽しそうに会話してると、なんだかこっちは楽しくない。もっと俺となら楽しく喋れるのに…とか思ったり、する」カァアア

男「そんな俺って…気持ち悪くないか…?」

イケメン「全然」

男「ぬぉぉっ…」

イケメン「むしろ嬉しいよ、ありがとう」

男「ぐぅぅうっ」

イケメン「ハッ! ということはやっぱり、オレは君のことが───」

男「だぁーもう違うって言ってるだろ! 違う違う…違うって…っ…もうもうどうしたら良いんだよ…っ」

男「仕方ない、じゃあ次に…」

イケメン「うん?」

男「──この前、というか昨日のことなんだけど。正座された原因の廊下で騒いでた時に…」

男「実は同級生君にさ、裸で迫られそうになって───」


イケメン「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ


男「──たりしたんだけど、実は勘違いだったー!」

イケメン「そっか、やっぱりアレは勘違いだったんだね。良かったよ、あっ! この感情はもしや…やっぱりどう考えても君に恋……」


がたたっ!


イケメン「男君…?」

男「わかった、わかったよイケメン。それじゃあ決定的なことをお前にッ…言ってやる…!」ズビシッ

イケメン「決定的なこと?」

男「ああ! そうだよ! これはもうどうしようもないぐらい後に引けない言葉だ…! も、勿論嘘だぞ! けれど言ってしまえば…っ」

男「──何か一つ、大切なことをなくしてしまうぐらい…簡単に言っちゃ駄目な、言葉なんだ」

イケメン「なるほど、わかったよ。その言葉をどう受け取るかで──オレの気持ちがハッキリとわかるんだね」

男「そ、その通り! わかってるじゃん……なら、言うぞ」

イケメン「どうぞ」

男「っ……あ、あのなっ…イケメン、実はお前に言わなくちゃイケない言葉があるんだ。それは周りからは絶対に認められないモノで…」

男「今までの関係を壊すかもしれない、けれど、言わなくちゃって…」

男「ちゃんと言わないとこれからも一緒に過ごせないっていうか…」

男(なに俺はここまで前置き長くしてるんだ…っ…なんかそれっぽくなっちゃうだろ! ああ、もうハッキリと言え!)

イケメン「ああ、なんだい?」

男「俺は…俺は…っ」ぐぐっ


男「ずっと前からお前のこと…イケメンのこと…好き、です…っ」ギュッ


女「あ、やっぱり男じゃない。ここで何をして、ぇ───」

男「」ビックゥゥウウ


女「──……………………………」

男「あっ…えっと…その理由があるんだ…」スッ

女「…」ソロリ

男「無言で去ろうとしないで! 本当! 本当だって理由あるから! ちゃんと説明できるから!」

女「良い、大丈夫、ホラ修学旅行とか、出来るカップルわかるし、うん」

男「全然わかってない! い、イケメンなんか言ってやって! 違うって言ってやって!」バッ

イケメン「よろしくお願いします」シュピッ!

男「お前ぇえええええええ」

イケメン「なるほどね、これが一つの『言葉』って訳か。心に響いたよ、まさか君の気持ちを乗せて教えてくれるなんて…オレは本当に嬉しい…」ギュッ

イケメン「この感情は『好き』って言葉で説明できるんだね! 男くんオレも大好きだよ!」ぎゅっ

男「やめっ、はなせっ! ちょ、お前本当にいいかんげにしろ…ッ! 今回ばっかりはマジで誤解されるー!!」

イケメン「照れ隠しも可愛いよ」ニヨニヨ

男「照れてないわッ!」

女「じゃ、あたしもう行くから」スタスタスタスタ

男「あ、待ってぇえええ! 違うからー!!」

イケメン「──ぷっ…あっはっはっはっ…! くっくっくっ、本当に君は優しいよ、それに面白い」スッ

男「え…っ? な、なんだよ…!」

イケメン「ありがとう、スッキリした。これでもかってぐらいに十分に爽快だ、本当に君に相談してよかったよ」

イケメン「冗談だよ。さっきまでの言葉は全部、君をからかうために言っただけだ」

男「…え、冗談…?」

イケメン「当たり前さ、君がオレの相談で頑張って『言っちゃ駄目なこと』を言ってくれたのは…端からは分かってたさ」

イケメン「けどね、我慢できなくてさ、ふふっ、君が一生懸命にオレのためにやってくれてることを…どうしても長くさせたくてね」

男「お前…ッ…お前お前…っ!」ぽすぽすぽすっ

イケメン「ごめん、ごめんよ本当に。あはは、でもね、相談内容は本当だよ」

男「っ……本当に俺が誰かと喋ってると、し、嫉妬してるのか…っ?」

イケメン「嫉妬かどうかはわからない。確かに面白く無いとは思うけれど、それが君だけを独占したいとか…無論、好きなんだと思える要因だとは思えないな」

イケメン「──だって信頼しているからね、君はオレを放って何処かへ行かないことは。心から信用してるんだ」

男「…っ…なんだよ、それっ」

イケメン「だって単にボケ癖が酷くなっただけだと思ってるしね、今回の悩みもさ」

男「マジでなんだよそれぇー!」

イケメン「いいやこれでも、結構舞い上がってるんだ。上手く言葉が見つからない、君には多く謝罪をしなくちゃいけないと思ってるんだけど…」

イケメン「…嬉しいんだ、本当に。嬉しくて嬉しくて、君は本当に優しいよ。ちゃんと相談に乗ってくれて…ああ、親友になれてよかった、心からそう思う」

男「全然説明になってない…! ど、どうするんだよ! お前がなぁ! 一人で納得できたとしても! お、女さんがあんな感じにしちまって…!」

イケメン「そっちも大丈夫。女がここを通りかかったのは偶然じゃない」すっ

男「え…?」


~~~


『スプラッシュマウンテンの近くの売店辺りに居たら、通りかかってくれ』

女「…変なメール送ってきたと思ったら、ったく」ピッ

女「なんつー場面に出くわせてくれちゃってんのよ、まったく。いい加減にしろっての」フン

女(ま。なにをどー言った感じで納得したかは分からないけれど、ちゃんと解決できたのね)

女「良かった良かった、これで問題なく修学旅行過ごせるわね───」チラリ


イケメン「…」ニコニコ

男「っ~~───……──!」


女「…あんぽんたん共。アンタたちの話を聞いてたの、あたしだけじゃないわよ」くるっ



数時間後


イケ友「うっはぁー! 楽しかったなぁー!」

同級生「疲れた…本当にキミは疲れ知らずだな…僕はもうヘトヘトだ…」

イケ友「そういうなっての同級生! ほら、一緒に乗ったスプラッシュマウンテンの落ちるときの写真見せてやるから…」チラリ

男「え、どれどれ……ブホォッ!!」ピクピク

イケメン「へぇーそういったものもあるんだね……ブフゥッ!!」サッ

同級生「!? なんだそれ僕だってその写真のこと初耳だが!? 見せろ見せろーっ! ギャーッッ!?」

男「こ、こういった…なんだっけ…ぷひっ…漫画見たことあるよ俺…ブフッ…」

イケメン「あぁ確か『楳図かずお 』さんだね…まんまじゃないか…同級生くぶほぉぉおっ」

同級生「ぐぅぅぅぅうう笑い過ぎだぞきみらッ!? 怖かったんだよ! 恐ろしくって仕方なかったんだよっ!!」カァアア

男「ご、ごめん、でもこれ出来過ぎててヤバイからさ、けほこほっ」

同級生「馬鹿にしてるだろ!」

イケ友「うんにゃ同級生、おれっちは馬鹿にしないぜ。マジ羨ましい、こんな顔おれっち出来無い、後でやり方教えて?」

同級生「教えるかバーカ! 筋肉!」

イケメン「ここに来て予想だにしない衝撃があるとは…それにしても不良君、写真に写ってる君の顔は至って冷静だね」

不良「……」

イケメン「楽しかったかい?」

不良「ああ」コクリ

イケメン「そっか、それは『君の願いを聞いておいて正解』だったね」

不良「……」

男(? なんの話だろ…?)

イケ友「なんにせよっすわ、楽しい時間はあっという間に終わっちまうなー」

同級生「終わって結構だこんな時間…」

男「うう…」

同級生「だぁーもう! 一々君は気にするよな僕の発言をッ! 高校生だろうが、しっかり建前を聞き分けろ!」

男「え、じゃ、じゃあ同級生くんも楽しかったってこと…?」

同級生「うっ…だ、誰もそんなこと言ってないだろ…っ」


イケ友&男「「ほんとにぃ~?」」ニヤニヤ


同級生「ばっっばかにするなーっ! 筋肉ダルマはともかく君までそんな…っ! もうこんな班知らんッ! 勝手に一人で帰るからなッ!」ズンズンズン

イケ友「まあまあ落ち着いて同級生、いやどーちゃん! どーちゃんさん! お待ちになってー!」

男(ハッ!? お、思わずイケ友のノリに乗ってしまった…!)

イケメン「くすくす、じゃあ帰ろうか男くん」

男「やってしまった…」

イケメン「そういったノリの君も素敵だよ?」

男「うう…どんどん周りの奴らに影響されておかしくなってる気がする…」

男(前までは人の顔色伺って、発言するタイミングを何時だって心配してたのに…)

ポン

男「ぇ」

不良「…」ナデナデ

男「……」

不良「…」ナデナデ

男「…あ、あの…?」

不良「撫でやすい位置に頭があるな」ポンポン

男(そんな理由で撫でられてるの俺!?)


「おーい、男ちゃん置いていっちまうぞー?」


男「え! あ、本当だ…! ほ、ほら行こうよ不良く…不良君!?」キョロキョロ

男(あれ!? もう遠くの皆の所にいる! いつの間に…!!)タッタッタッ

ニコニコ

男(あれ、なんだろ、急に表情が笑って───)

男(あぁ、そっか、俺今すごく───)

男(──楽しいんだ、なんにも無いときに気づいてしまうぐらいに。ただ一緒に皆で帰ろうとしてるだけなのに、それが普通のこと過ぎて、)


何も起こらなくても楽しい。

みんなと居る時間がある、ただそれだけで笑ってしまうんだ。

笑うことは至ってシンプルに──嬉しい事だと分かる。


男「あは、あははっ」


そっか、俺って笑ってもいいんだよな。誰の許可も要らないし、それが認められる場所に俺は居るんだ。

たったそれだけ。何も凄いことなんて無くて、別に誰も気にすることもない。けど、それが俺は凄く嬉しい。


嬉しいんだ、だから笑うんだ。


男「……」


さらにもう一歩前へと駆け出す。みんながいる場所へと、空はすでに夕暮れに染まりつつある。

さあ帰ろう、みんなで泊まる所へ。またもう一度騒がしく、そして賑やかに残された時間を共に過ごすためにも───

~~~~~~~~

~~~~~~~~



男「………あれ?」ポツーン

男「よ、よし、落ち着け俺…」


チラリ


男「………。うん、ここどこ?」

男「みんなどこー!? えっ!? 嘘だろマジでこんなことありえるの…!?」



男(やばい……乗る電車間違えた………)



【迷子になりました】



第二十話『俺の嘘の突っ込み』

また来週お会いしましょう ではではノシ

ガヤガヤガヤ ザワザワザワ


男「…アノ…」スッ

男「スミマセ…」スッ

男「………」スッ…


男(ヤバイ、全然道が分からない! それに人が歩くの早いっ!)ダラダラ

男「こ、声すら聞いてもらえない…」

男(どうすればいいんだ…俺ちゃんと戻れるのか…?)

男(こういった時一体、俺は何を頼ればいい、何もわからない…)チラリ


【迷子センター】


男「………」

男「それだけは絶対に嫌だッ!!」だだっ

男(あ! そうだ、携帯でみんなに助けを呼べば良いだけじゃん!)ゴソ

『イケメン』ピッ

男「……」ピタ


イケメン『えっ!? 迷子だって!? わかった今すぐ迎えに行くよ!』

イケメン『今、何処にいるんだ? 東口に居るんだね、わかった!』

イケメン『くくく、あの数分前の電話から何処に向かったか分かるかい…? なんと西口だよ! オレを探してご覧!』


男(素直に助けにこない未来が想像できる…あの野郎は想像上でもダメだな、他にしよう…)

『同級生くん』ピッ

男(昨日一応、交換しておいて良かった。彼ならきっと)ホワンホワン

同級生『ハァ? 高校生にもなって迷子とか、ハッ! 君って脳神経成長してるの?』

男「とか言いつつ、探してくれたりして…」

同級生『い、いま君は何処に居るんだ? ぼ、僕は…なんというか…迷子になんてなってないんだからなっ!?』

男「……」

男(どうして妄想の中で彼は迷子になっているんだろう…ごめん同級生君…)

男「あーッ!? どうしよう、もう素直に教師に電話したほうが良いかな…っ!?」

男(こっぴどく怒られるだろうけど、今の状況より断然マシだ…)ピッ

『イケ友』

男「イケ友…」

男(イケ友なら助けに来てくれる、かな。偶に厳しい事を言うから、ちゃんと一人で帰って来いと言いそうだ…)


イケ友『男ちゃーん? 迷子とか超ウケるっしょ!』

イケ友『つか不真面目てーの? 旅行つっても集団行動なんだし、勝手なことしちゃダメだろ?』

イケ友『最後まで諦めず、ちゃんと努力して帰って来るんだぜ! おーけぇー?』


男「うん、きっとそう言うに違いない」コク

男(やれる男を目指すんだ。ここでヘタれてたら、何も始まらないんだ)スッ

男「ならちゃんと頑張ろう。諦めるにはまだ早いよな、イケ友」


イケ友「なにが?」ヒョコ


男「ぎゃああああああああああああッッ!?」

イケ友「ウッス! 男ちゃん、ここに居たかぁ!」

男「えっ、なんっ、ちょ!」ブンブンブン

イケ友「ん?」

男「な、なんでイケ友がここに…?」

イケ友「そりゃ男ちゃん探しに来たんよ? 東京詳しいの、班の中でおれっちだけだし」キョトン

男「え…」

イケ友「いやぁ大変だったぜ? 迷子一人探すのに苦労すっとは思わんかったわー」

男「そ、そっか、ごめん…歩き疲れただろうし…」ポリ

イケ友「あー違う違う、それは大丈夫よ。おれっち体鍛えてるし、そうじゃなく」


イケメン『うわぁああオレも探しにいく、オレも連れてけぇええ』


イケ友「イケメンを説得するのが疲れた」

男「いやっ本当にごめんなさい…っ!」ペコーッ

イケ友「なはは! まぁ男ちゃんが無事ならイケメンも納得するっしょ、ちと電話してくるなぁ」スタスタ

男「う、うん」こくこく

男(なんにせよ、イケ友が探しに来てくれたんだよな…)ギュッ

男(迷惑、かけてしまった。どう思ってるんだろう俺のこと、怒ってないかな)チラリ

男「ん?」ピクン

イケ友「うっす、男ちゃん見っけた。やっぱ逆の方に乗って、でかい駅で降りてた」

男(…今気づいたけど、あの腕に掛かってる大量の袋はなんだ…? ぶ、『豚まん』の袋…?)

イケ友「なっはっはっ! いやぁ、やっぱ一人で出歩くと自由でいいわぁ!」モグモグ

男(すっごい楽しんでた! 想像していたイケ友より甘ちゃんだよ!)

イケ友「そんな怒るなってイケメン~! ういうい、ちゃんと帰ってきます、ハイ」ピッ


イケ友「うっし報告おわり! んじゃ帰るか、男ちゃん!」

男「うん…色々と言いたいけど、探しに来てくれて本当にありがとう…」ズゥン

イケ友「気にすんなって」フリフリ

男「でも…」

イケ友「親友が困ってるのに放っておくほうが出来ねえよ、そだろ男ちゃん?」

男「…イケ友は相変わらず凄いな、尊敬するよ」

男(豚まん食ってるけど…)

イケ友「もぐもぐ、ん? 男ちゃんも食いたい感じ? 良いぞ、ホレ」ぐいっ

男「え、い、いや良いよ俺はっ」

イケ友「遠慮すんなって。ずっと歩きまわって寒かったっしょ、食えば暖まるべ」モグモグ

男「……」ゴクン

男「じゃ、じゃあ一個だけ」

イケ友「おうよ、食え食え」ニカ

男(後でお金を払おう…確かにお腹が空いてるし、食べとけば元気出るかも知れない…)モグ


じゅわ


男「…っ…」びくん

男(美味し、けど! 違うなんか、これは、やばい、俺ちょっと泣きそうになってる…!)ブルルッ

男(食べた瞬間、一気に安心したというか、予想以上に俺…一人で居るのが心細かったんだ…)

男「ふっ、ぐっ…ぁ…あり、がと…イケ友…なんか暖かく、なってきた…」

イケ友「おー? なら良かったぜ! 遠慮せずどんどん食え、いっぱいあるからな!」

男「あ、ありがと。でも一個で十分なんだ、俺は…」グスッ

イケ友「そんなコト言うなって男ちゃん」

男「う、うん。でもね?」

イケ友「男ちゃん」

男「……?」

イケ友「食べてくれないと、おれっちが困る」

男「え、なんで?」キョトン


イケ友「電車代がない、豚まん買いすぎて」


男「……」

イケ友「お金貸してって言い難い、食ってくれんと」コクコク

男「お前なにやってんの!?」

イケ友「なははーっ! めんごめんごー!」

男「遊び過ぎというか、探しに来てくれたから色々と言いづらいッ! 良いよ貸すよ! 後これ豚まん代っ!」パシン

イケ友「やったー!」

電車内

ガタンゴトン ガタンゴトン


イケ友「──イケメンの奴がさ、そりゃ見たこと無いぐらい取り乱してな」

男「そうなんだ…」

イケ友「班のみんな、そりゃ驚きよ。女っちも騒ぎ聞きつけて飛び出してきてな」クスクス

男「うっ、女さんにも迷惑が…」

イケ友「取り敢えず教師にバレないよう、少人数で探すことをイケメンに納得させたんよ」

イケ友「以前、東京に住んでたおれっちがてき、テキ肉?」

男「適任?」

イケ友「そうそれ。つまりはそうやって、おれっちだけが探しに来たワケ」

男「そっか。本当にみんなに迷惑をかけて、俺は一体何をしてるんだろ…」シュン

イケ友「なはは」

男「…イケ友は、怒ってないの…?」

イケ友「男ちゃんを? なんで怒るん?」キョトン

男「修学旅行で、みんなで行動するときに気を抜いて迷子になった…」

男「集団行動を乱したんだ。怒られると思って当然じゃん…」

イケ友「おれっち楽しんだけど? 男ちゃん探すついでに、一人で全力で!」フンス

男「いや、それはまあ、あれじゃんか。ちゃんと目的があって、一人で楽しんでるわけだし」

イケ友「んー」ポリポリ

男「だから…」

イケ友「良いじゃん別に、迷惑かけても」

男「え?」

イケ友「どーせ怒るのは女っちか同級生ぐらいっしょ、そいでも、無事なのがみんな嬉しいと思うわけよ」

イケ友「反省すんのも大事だけどな。結局は楽しむのが一番だぜ、男ちゃんよ」

男「……」

イケ友「普段から迷惑をかけなさ過ぎっつーか、男ちゃんはもっと周りに迷惑をかけていいと俺っちは思う」

イケ友「気にするのが、そんな気配りできる男ちゃんこそがかっこいいし、すげーと思うけどさ」

イケ友「…たまには迷惑かけるぐらい、楽しいと思いまくるのも良いと思うぜ、うん」

男「イケ友…」

男「……」

男「いや俺、普段から周りに迷惑かけてない…?」

イケ友「あー…」

男「女さんにとか、文化祭もそうだし、昨日の説教も…」ずーん

イケ友「確かにな」コク

男(今回も迷惑をかけた…だめじゃん俺…)ホロリ

イケ友「でも楽しかったっしょ?」ニカ

男「た、楽しかった?」

イケ友「大体、男ちゃんが周りに迷惑かけてる時って、すっげーわくわくすっこと多いと思わん?」

男「……」

イケ友「迷惑かけるつーか、そういう状況になっちまった時? アレ、おれっち楽しいと思うんよ」


ガタンゴトン… ぷしゅー


イケ友「俺っちは、男ちゃんと一緒に居ると青春してるって思う」

男「……」

イケ友「親友になれてホント良かったと思ってる、だから」ギュッ

男「わわっ」

イケ友「もうちっと、遊ぼうぜ」ニッ

男「えぇっ!?」ぐいっ


~~~


男(ここ何処だ…)ビクビク

イケ友「男ちゃん! これとか似合いそう!」バッ

男「へっ!?」

イケ友「見て見てネックレス! この露店のやつ!」

男「う、うん、良く分からないけどかっこいいとは思う」

イケ友「やっぱ男ちゃんとは趣味合うわ~」

男「で、買うの?」

イケ友「金ないけど?」キョトン

男「……、それ本当に俺に似合ってる?」

イケ友「断言する、超似合ってる」コクコク

男「すみません。これ幾らですか」

イケ友「おー…」

男「…何となく、イケ友が言いたいことは分かった」

イケ友「んお?」

男「俺、もっと楽しんで良いんだよな」チ、チラリ

イケ友「……」ニッ

男「なら自由に、少しだけ、ワガママに遊んで…みる、今日だけ」ボソボソ

イケ友「今日だけとか言わずにさ~もっとわがままに生きて良いんだぜ~」

男「お、俺にはそれぐらいが丁度いいんだよ! 適度がベスト!」

イケ友「うむうむ」コクコク

男「絶対に分かってないで頷いてるだろ…」

イケ友「うんにゃ、自由人としてアドバイス送りたいと思うぐらいわかってるぜ」キラリン

男「本当に…? じゃあ試しにアドバイスくれよ、自由人の先輩として」

イケ友「おお? 良いのけ? だったら、はじめに」

スッ パシン

イケ友「この店で買うぐらいなら、もっといい店で買おう。品質はそっちが良いから」

男「自由人過ぎないっ!? 確かに良いアドバイスかもだけど!」

イケ友「こーいう店で売ってるのってすぐ壊れるからな」コクコク

店員「……」に”ごっ

男「黙って! 黙ってついて来いもう!」ぐいっ

イケ友「なははー!」

~~~

男「ふわぁー……」キラキラ

イケ友「スクランブル交差点な、人がすごい勢いで流れては消えるところ」

男「な、なぁっ? 彼処の店はどうして古いままなんだっ?」ブンブンブン

イケ友「さー?」

男「じゃあじゃあ、あの高いビルはなんのビル?」ワクワク

イケ友「うぉー! あの宣伝トラック初めて見たー! 写メ写メ!」パシャパシャ

男(先輩、自由すぎるよ)

男(いいやもう、一人で自由に楽しもう…それこそ自由に遊ぶってやつだ…)

男「イケ友、今から黙って俺に着いて来て」

イケ友「いいぜ!」

~~~

男「もう少しで取れそう…」ウィーン カシャ

イケ友「おー」

男「よし! ぬいぐるみゲット!」ガタン

~~~

男「この新刊何時出るんだろ…」キョロキョロ

イケ友「ジャンプジャンプ…」

男(あ。修学旅行終わりに出るんだ、やった)

~~~

イケ友「思ったんだけど、男ちゃん」

男「ん?」

イケ友「別に修学旅行中にやらなくて良くね? 何時も通りだったけど…」

男「………」ずーん

イケ友(ど、どうやら傷つけてしまったらしい…なんて不器用な男ちゃん…)ホロリ

男「俺は自由に遊ぶことも出来ないのか…そんなバカなのか…」

イケ友(親友として、自由人の先輩として、なんとかしてあげるべきっしょ!)

イケ友「よし男ちゃん! ここはおれっち任せるべ!」

男「なにか案が…?」

イケ友「うーん、そだなぁ」キョロキョロ

男(なるべく期待しない方向で捉えていよう…さっきの事もあるし…)

イケ友「! これっきゃ無いな、むしろコレをするべきだぜ!」

男「な、なに?」

イケ友「ナンパ☆」


数十分後


男「……」ポツーン

男(嘘だろ…! なんか一人でこんな人混みに取り残された! イケ友女の子とどっか行ったし!)

男(案に乗った俺も俺だけど…これじゃ迷子の時と変わらない…何処だよここ…)ビクビク

男「うう…変な期待をせずに、素直にみんなところ帰るべきだった…」シクシク


「あら。君は」


男「…え?」


~~~


イケ友(まいったぜ。強引に連れて行かれるから、男ちゃん置いて行っちまった…)キョロキョロ

イケ友「あと少しで、よく分からん絵を買わされそうになるし、あれ? ココらへんだったよな?」キョロ


『そ、そうだったんですか』

『ええ、ええ、そうなの!』


イケ友(む! おれっちのセンサーに反応アリ! なんと! 男ちゃんが綺麗な女性と喫茶店に居る!)ビクン

イケ友「や、やるじゃん男ちゃん…なんやかんやでナンパを成功しちゃってた感じ…!?」コソコソ

イケ友(こっそり会話を聞いてみよう…)ワクワク

イケ友(窓際の席だから、聞き耳立てればなんとか…)コソリ


男『し、しかしですね!? そんなに俺のことを、その、知りたいと言われても…!?』

『そんなに怖がらなくても良いのよ、大人の私に任せて!』


イケ友(あれ違う!? これもしかして、男ちゃん逆ナンされた!?)


男『お、親にも報告したいですし…』


イケ友(真面目すぎるよ男ちゃん! 綺麗だし良い人そうだし、イケるいける!)


『あ、それは大丈夫。ちゃんと電話もするし、親御さんも困らせないから』


イケ友(ほらみろやっぱり! 凄いいい人! ナンパ程度で超真面目!)


男『でも…っ』

『あとお金も出るわよ! 君の頑張り次第で!』ニコ


イケ友「──男ちゃんやっぱダメだ!! それ乗るなッ!!」カランカラーン

~~~

「またねー! 良い返事待ってるわよー!」ブンブン


男「あはは…」フリフリ

イケ友「へ、編集部の人だったん…? おれっちも名刺もらったけど…」

男「う、うん。よく分からないけど、女さんと繋がりがあるみたいでさ。さっき話しかけられた」

イケ友「はぇー…」

男「はぁ、びっくりした。こんな見知らぬ場所で他人に話しかけられるのって、やっぱ恐いな」ボソリ

イケ友「あ、ごめん男ちゃん置いていっちまって…」

男「んーん、良いんだ。またもう一度探しに来てくれた、それだけで俺は嬉しいし」フリ

イケ友(男ちゃん…)キラキラ

男「さ、もう今日は帰ろう。みんなに謝りに、そして楽しかったと自慢してやろうよ」ニコ

イケ友「おう!」


~~~

【残金が足りません】ビー!


男「……」ゴソゴソ

イケ友「……」


【10円一個】パカリ


男「……」チラリ

イケ友「……」ピッ


【限界電力を超えました、電源を落とします】シュン


イケ友「男ちゃんは?」

男「俺、携帯持ってきてない」ぶんぶん


イケ友「……」チラリ

男「……」チラリ


【迷子センター】

~~~

男「なぁ、イケ友」

イケ友「ん」

男「俺、怒られないかな。ぬいぐるみに、ネックレス持ってるけど」

イケ友「あと新刊に豚まんの袋な」コクコク

男「…怒られるよな、これ」

イケ友「うん…」

男「でも自由に楽しかったし…あれだよね…?」

イケ友「うん…でも…」

イケ友「…怒られるのは、嫌だよな」

男「だね…」


【案の定こっぴどく怒られました】



第二十一話『俺の消えた突っ込み』

遅れてすみませんでした、本当に。

頑張りたいと思います、ではではノシ

【一方、学校の図書室では】


眼鏡「……」ピク

『主人公が幼馴染と約束を取り付け、それをクラスメイトに尾行される』サラサラサラ

眼鏡「……」コクコク

眼鏡「……」ポワァンポワァン



男『え!? とうとう幼馴染と主人公とで話が進んじゃうんですか!?』

男『俺それ超楽しみです! 是非、ネタに浮かんだだけじゃなく本編に載せて下さい!』ニコニコ



眼鏡「……」フッ


チッチッチッチッ


眼鏡「……」キョロキョロ

眼鏡「…?」

~~~

会長「なぜ私に男君のことで訊きに来るのよ…」

眼鏡「……」じぃー

会長(まったく心情が読めない)タジ

会長「忘れたのかしら? 二年生は今、修学旅行中の時期でしょう」

眼鏡「!」

会長「ですから、図書室に来ない理由はそれしかありません」

眼鏡「……」コクコクッ

会長「聞いた所によると、貴方は、高校生でありながら作家業しているらしいわね」

会長「ふっ…少し見なおしたわ、同級生にこのような才のある人間がいるなんて…」フフフ


会長「何か困ったことがあるのなら、三年連続生徒会長を務めた! このわたくしが面倒見てもよくってよ!」バッ


シーン


会長「…最近、こんなんばっかし…」シュン


~~~

眼鏡「♪」ルンルン

眼鏡「…!」ビクン


『あのね眼鏡さん、担当者として言わなくちゃ駄目なので言っちゃいますけど』

『固定のファン層だけを狙ったネタを投下し続ける、それは需要供給を満たした正当な方法かもしれませんよ?』

『でもね、そろそろ店じまいというか。風呂敷を広げるのならそれ相当の畳む為のネタを仕込んでもらわんと困るんですよ、ええ』


眼鏡「……」ずーん

眼鏡「っ……」


ゴソゴソ ピッポッパ トゥルルルルルル ガチャ


『はぁい、もしもしぃ? あらあら、眼鏡くんどうしたの?』

眼鏡「っ…っ…」

『その感じ、もしかして、あれかな? 作家としてのお悩みの雰囲気?』

眼鏡「!」

『うふふ。眼鏡くんと違ってプロじゃないけれど、一応は作品を世に送り出す一人だもの~わかるわ~』

眼鏡「っ…っ…!」コクコク

『でもねぇ、色々と話を聞いてあげたいけれど今は少し忙しくて~』

眼鏡「?」

『親族の紹介でね? お見合い中なの~』

眼鏡「!?」

『だから詳しい話は──あら、電話の相手気になります? うふふ、ナイショですよ♪』

眼鏡「…っ…」アタフタ

『そうですねぇ~言うなればわたしと電話の彼は、過去に大切なモノ(同人誌)を見せ合った…』


ブツン!!


眼鏡「はぁ…はぁ…」

眼鏡「……」


『──先生!! 俺はいつだって、先生の作品が大好きです!』


眼鏡「……」シュン

~~~

会長「何ですって? 男君の電話番号が知りたい?」

眼鏡「……」コクコク

会長「また現れて何事かと思えば…」

眼鏡「……」ペコリ

会長「残念ながら、わたくしは彼の番号は知りません」

会長「ゴホン、ですが。知ってる人を紹介する、何てことはやれないこともなくてよ」チ、チラリ

眼鏡「!」パァァァ

会長「ふふふ、でしょうでしょう。これがわたくし、三年連続! 生徒会長の! 実力!」

眼鏡「……」ぱちぱちぱち

眼鏡「……」スッ クイクイッ

会長「なに、その早く寄こせという手つきは…正直すぎて腹が立つわね…」

会長「ま、まあ良いわ。取り敢えず保健室の先生に聞いてご覧なさい、知っている可能性が高いから」

眼鏡「?」

会長「あら、知らなかったのかしら。彼、一年の頃は殆ど保健室に入り浸っていたという噂、教師の間では有名な話よ」

眼鏡「………」

会長「保健室登校、とは違ったものだったらしいけれど。それでも怪しい関係じゃないかと疑われていたみたいね…」クス

会長「──けれど、わたくし生徒会長が見過ごすわけがないでしょう」

会長「噂が広まる以前から! 察知し、事前に裏取りをし『不純異性行為』ではなかったと把握していたわたくしの実力!」


会長「褒めてくださってもよろしくってよ!」クルッ


シーン


会長「…ぐすっ…」ぷるぷるぷる


~~~


先生「はぁい、どしたの? 怪我? 仮病?」

眼鏡「……」

先生「もう授業終わってるし、メンドだから病院行っちゃったほうが先生も楽なんだけどなぁ」

眼鏡「……」ズィ

先生「んんー? 近いなぁ、なんだか距離が近いなぁ、んんー?」

眼鏡「……」じー

先生「なんだか先生、分かってきちゃったよ。この手のボーイはあれだね、男くんが関わってるね」

眼鏡「……」コク

先生「やっぱりだよ。あの子の周りは濃いキャラの子ばっかりだ、うんうん」

眼鏡「……」スッ

先生「距離戻してくれてありがと。んで、何の用? 電話番号知りたい感じ?」

眼鏡「…、……!?」ビクン

先生「わーい、とっても新鮮な反応だ。最近は男君も、イケメン君も手慣れちゃってさぁ」

眼鏡「……」ジリジリ

先生「なんで警戒態勢取るのかな?」

眼鏡「……」ビクンッ

先生「まあ先生気にしないけどね。とにかく彼の電話番号が欲しいなら、これどうぞ」スッ

眼鏡「……」

先生「水をあげて、お花たちに」

眼鏡「…………」

シャアアア

眼鏡「……」ズーン

先生(素直な子だ、にしても上級生とは男君の交友関係広がってるなぁ)ホノボノ

先生(実に気になるね。どんなボーイか試してみるかな、答えてくれたらだけど)

先生「ねえキミ、男くんとはどんな関係なの?」

眼鏡「!」

眼鏡「…~~っ…」テレ

先生(んッ?)

眼鏡「ゴニョゴニョ…モニョ…」

先生「んん、ちょっと聞こえないなぁ、なんて? ん?」ソソソ

眼鏡「モソモソ…モソ…」

先生「うん…うん…大切な、自分のファンの一人…?」

眼鏡「…っ…」コクコク

先生(ごめん、全然意味がわからない。しかし教師として分かったふりをしよう…)

先生「そ、そうなんだ。へぇ、凄いじゃん」

眼鏡「……」コ、コク

先生(しかしファンと来たか。男君、キミは一体どこに向かって成長してるんだろう)

先生(確かに、この眼鏡君は美形だよ。スラっと背が高くてモテるだろうね、まったく喋らないけど)

先生(こういった子が好みだったのかな…本人は否定してるけど絶対にその気あるもんな彼…とうとう認めたか…)

先生「ねえねえ、キミは大切なファンの一人だと言ったけれどさ」

眼鏡「……」コク

先生「するとなんだい、他にも君のファンは大勢いるってことかな?」

眼鏡「……」コクコク

先生「ほほー、ファンレターなんて貰っちゃったり?」

先生(流石にからかわれてる可能性も…)

眼鏡「フンスゥ」ゴソゴソ

先生「なんかいっぱい出てきた! 胸元から!」

眼鏡「……」コクコク!

先生「そ、その手紙全部…?」

眼鏡「!」こっくり!

先生(やばい、本当にファンが居やがるよ、字体を見るにガールやボーイ軒並み揃ってるぜ…)

眼鏡「……」ニコニコ

先生「いつも持ってるんだね、そう簡単に取り出せるなら」

眼鏡「……」コク

先生「そっか。大切なファンの手紙ならそうなる、のかなぁ?」ポリポリ

先生「あ、それじゃあその中に男君のファンレターもあるんだ?」

眼鏡「!」ビクン

眼鏡「……」シュン

先生「あれ? ないの?」

眼鏡「……」コク…

先生「ん? おっかしいなぁ…そういったことにのめり込むと、絶対に送ると思うけどなぁ…」

眼鏡「……」シュン

先生(あ、でも送りにくいか。イケメン君が居るし嫉妬しちゃうよね、そういうのって)ポン

先生「──男君にも、それなりに理由があるのさ。ファンレターを送れない、そんな理由がね」ニコ

先生(それとなく伝えておこう。これぞ教師、生徒の人間関係をうまく誤魔化していく)

眼鏡「……」

眼鏡「……っ!?」びくん


『保健室登校、とは違ったものだったらしいけれど。それでも怪しい関係じゃないかと疑われていたみたいね…』


眼鏡「っ…」わなわな


男『俺、この作品が大好きなんです! 先生も読んで下さい!』

先生『駄目だよ男君。こういったサブカルチャー突っ走って最先端で立ち往生しちゃってるみたいな作品なんて読んじゃ』パシン

男『あ…』

先生『君にはもっと頭の良くなるような、そんな気がするような、そんな気分に酔えるような自己啓発系を読みなさい』

男『で、でも』

先生『読んでくれたら、先生を好きにしてもいいから』

男『先生! 大好きです! 絶対にファンレターなんかも送りません! 取り敢えず好きなふりでもしときます!』


ポワァンポワァン


眼鏡「ッ……!」ギュッ

眼鏡「……」ギラギラギラ

先生(あれ? なにやら彼の琴線に触れちゃった?)ニ、ニコニコ

眼鏡「……」ゴソゴソ

先生(また何やら胸元から取り出そうとしてる…)


『君に恋して三千里走ったけど本当の大事な人は海から覗いてた!?〈Ⅵ〉』スッ…


先生「ナニコレ?」

眼鏡「……」コクコク

先生(ホワイ? 読め、と? 何故に急にこれを読めと…?)パラパラパラ

先生「うーん、先生こういったジャンル読まないからなぁ。よくわかんないよ、色々と」

眼鏡「……ッ!」

先生(何故か、やっぱり! と表情されてる気がする)

眼鏡「ッ!? …! っ!?」バッバッバッ

先生「う、うん。急激にアグレッシブにジェスチャーされてもね…」

眼鏡「…!?」

先生(待てよ。彼の意図を読み取るんだ私、喋ってくれりゃー分かる話だけど)

先生(隠された意味を読み解く…何だろう…私は一体何を見逃してるのかな…)チラ

先生「あっ! も、もしかして私…勘違いを…?」

先生「そんな、こと。でもあり得る、のかな」ワナワナ


先生(──君はもしかして、まだ…男君と友達じゃない…!?)


眼鏡「?」

先生(知り合いだと認めたけど確かに! まだ友達だとは言われてない!)

眼鏡「…?」

先生(し、しまった…保健教師としてヘマを…ファンじゃなく、彼は男君と友達になりたいわけだ…)チラ

先生(急に本を取り出したのも、その意図を伝えるため。彼はこの本をきっかけに、そうか友達に…)ほろり

眼鏡「…っ?」

先生「ご、ごめんね…先生は間違ってたよ…」

眼鏡「!」パァァァ

先生「うん、うん、私は教師という立場に胡座をかいてたんだ。これからは、ちゃんと考えるよう気をつけるよ…」

眼鏡「!!」コクコク

先生「うん、だからね。修学旅行から彼が戻ってきたら…」ニコ

先生「先生と男君と君と、三人で一緒にナカヨクしょう!」

眼鏡「………!?」

先生「大丈夫。先生は慣れてるから、二人の仲を取り持つ用に…ちゃんとやってあげるから」

眼鏡「!? …ッ!?」

先生「心配はいらないよ。オトナの私に任せて…ね?」

眼鏡「ッ」ザザザザ

先生(んッ!? 距離を取られた、マズイ、既に警戒されてる! このままじゃ保健教師としての名が廃るッ)バッ

眼鏡「っ…っ…っ」ドキドキ

先生「お、落ち着いて。確かに私は図々しいことを言ったよ、でも先生は考えを改めたいんだ…!」

眼鏡「…っ?」

先生「信用出来ないのなら、ほら、今からでも彼の電話番号を教えよう!」ササッ

眼鏡「……」

先生「彼に訊いてみればいい! 私がどんな人間か、そうすれば納得するだろうから…!!」

ぴっぽっぱっ

眼鏡「……」トゥルル

ガチャ

眼鏡「…!」パァァァ

『も、もしもし…先生ですか…?』

眼鏡「…っ…ぅ…ぁ…」ワタワタ

『ぐす、ごめんなさい! 先生、俺…なんて馬鹿なことをしたのか…っ』

眼鏡「…?」

『高校生にもなって、こんなっ、こっぴどく怒られ、ました』

『もうやっぱり先生の保健室で大人しくしてたほうが、いいのかもしれません。本当に、ごめんなさい…』

眼鏡「…ぁ…」

『…もう自分の好きな事で生きるのはやめようと思います…当分…』

眼鏡「!?」

『あ、えっと、よわきなこといってすみません! 違うくて、そのっ』

『ごめんなさい、また、かけ直します…ッ』ブツン

眼鏡「…………」ボーゼン

先生「どうだったかな?」

眼鏡「───」ボロボロボロ

先生「……」サー

眼鏡「ぅっ…ぁっ…」ポロポロ

先生「ちょッ、あれッ? なんでないちゃうッ!?  んな先生のこと酷く言ってたかなぁッ!?」

眼鏡「っ…」フルフル

先生「え…」

眼鏡「…」グス


『先生は、きっと本当に、彼にとって大切な人なんだと思います』サラサラ


先生「眼鏡君…」

眼鏡「…」ニコ

先生(意味がわからないから口で言ってよ…)

眼鏡「……」ゴシゴシ

眼鏡「……」スタスタ

先生「えっ? か、帰っちゃうの?」

眼鏡「……」コク

スッ


──彼を、よろしく、お願いします。


眼鏡「……」ペコリ

先生「あ、うん。でもね、彼はきっと君とも仲良くしたいと思ってるはずで──」

眼鏡「……」フルフル

先生「ま、待ちなさい。やっぱり教師としてきちんと、君の話を訊いておくべきだと…」


ガララ!


会長「先生ぇー! わ、わたくし、うわぁー! イケメンに電話したらっ、また無視されてぇ…!」ぐすぐす

先生「あ、会長さん」

会長「ふぇぇ…なんでこうも私、蔑ろにされなくちゃ…きゃああああ!? なんで貴方がいるのッ!?」

眼鏡「……」

会長「ハッ!? そ、そうだった私がここに来るよう言ったんだっけ…」

先生「ん? あれ、彼のこと知ってるの?」

会長「え、ええ、ぐす、勿論です」ゴシ

先生「なら丁度いいかも知れないね…」ホッ

会長「どうかされたんですか?」

先生「う、うん。どうやら彼は男君と知り合いみたいなんだけど、どうもややこしい状況みたいで…」チラ

眼鏡「……」シュン

会長「ややこしい状況…?」

会長「──あ、貴方もしや…!? 等々、前会長がお書きになった本で目覚めて…!?」

眼鏡「!?」

会長「そ、それで電話番号を知りたいと!?」

眼鏡「!!」ブンブンブンブン

会長「な、なんという…」

先生「? どういうコト?」

会長「私としたことが、三年連続生徒会長を務めた私が…そのような!」

会長「己のファンだということでッ! 彼を手籠めにしようと、私を利用したってことなのねッ!!」ウワァー 

眼鏡「………」ボーゼン

会長「私を弄んでそんなに楽しいの…?」プルプル

先生「なんですって…!?」パシン

先生(この感じ、あれだよ、会長さんも眼鏡君のファンで、彼はファンを片っ端から食べちゃう子だったんだ…)ブルブル

先生「君は…」

眼鏡「っ…!?」ブンブン

先生「ッ…いや、そうであっても君のことを信じるよ先生は! 決してそうであっても、きちんと認めてあげる!」

眼鏡「!?」ブンブンブンブンッ

先生「けれど、私もちゃんと君を信じるために確認を取るよ…」ピッ

眼鏡「っ?」

先生「私は前会長の電話番号を知ってるんだ、彼女に、君のことを訊いてみようと思う。どうも知り合いみたいだしね…」

プルルル

『もしもし? あらあらまあまあ、先生ですか? お久しぶりです~』

先生「ごめんね急に電話しちゃって。実は在学している眼鏡君のことについて訊きたいことが…」

『彼のことを知ってるんですか? そうですねぇ、じゃあ彼に伝えて欲しいことがあるのでまず頼んでも良いですか?』

先生「え、あ、うん、イイケド」

『ありがとうございます。実はですね、彼との関係がちょっと相手先に伝わっちゃったらしくて~』


『あはは。お見合い駄目になっちゃいました★ と、伝えてくれたら嬉しいです~』


先生「……」カタン

眼鏡「……」

先生「…ごめん…無理かも…信じられないかも君のこと…」シュン

眼鏡「……………」

会長「ひっぐ…ぐすっ…ぐしゅ…」

『センセぇー? あの、聞こえてますかー?』


【『恋愛相談室in保健室、始まります』】



第二十二話『先生と先生のツッコミ不足』

修学旅行先 旅館一室

同級生「あー疲れた、柄にもないことをしたよ、まったく」コキ

同級生(それにしても…)チラリ


イケメン「シクシクシクシク」

不良「もっしゃもっしゃもっしゃ」


同級生(ディズニーからの帰り男くんが迷子なり、そして旅館に戻ってきたわけだが)

同級生(何だこの空気…面倒くさいなぁ本当に…)

同級生「な、なあ君…」

イケメン「ばんべずがぁ…?」

同級生「う…いや、なんでもない…」

イケメン「ヴい」コク

同級生(顔面ぐちゃぐちゃ過ぎる…どんだけ彼のことが心配なんだよ…)

同級生「……」

同級生(あ。そうだ、ディズニーで買ったお土産などで話題を作ろうじゃあないか)ポンガサゴソガサゴソ

同級生「なあ君、コレ見てくれよ。両親のためにかったお土産なんだけどね」スッ

イケメン「…?」グス

同級生「ここのキャラ見てみなよ! ハッハッ! 何だか男君見えないかい? この目つき悪さ具合がさ!」ハッハー

イケメン「あ…見え、る…」フルフル

同級生「だろうだろう? くっく、まさに生きる理想の目付きの悪さだよねぇ彼って奴は…」

イケメン「ぶぅばぁあああっ! おとこぐぅうううう!!」バシンッッ

同級生「わぁーーっ!?」

イケメン「こんな所に居たんだね…探したんだよッ…勝手にどっか行っちゃ駄目じゃないか…ッ」ギュウウウ

同級生「き、君は一体何を言って…」

イケメン「おどごぐぅん…」

同級生(これは何を言ってもどう表現しても…アレだ…酷い、としか…もう色々と手遅れだなコイツ…)


不良「…」モシャモシャ


同級生「ちょ、ちょっとさ、彼はこのまま放っておいて良いのか? 色々と危ないと思うんだが…」

不良「…」チラ

同級生(う…気軽に話しかけてしまったが…未だコイツは苦手だ…)ビク

不良「好きにさせとけ」

イケメン「ぐゅゅゅ」

同級生「…好きにさせた結果がコレじゃあないのか?」

不良「…」

不良「確かにな、それもあるかも知れん」コク

同級生「お、おお! だろうっ? 一応、教師の見回り等も警戒しておく必要があるじゃないか」

同級生「この面を見られたら事情を聞かれる可能性もある、少しはまともにさせておかないと」チラ

不良「飲み物持ってるか?」

同級生「へ? あ、ああ、飲みかけのやつなら…」

不良「それでいい」

同級生(な、なんだ。何をするつもりなんだ…? ま、まさか気付けとしてぶっかけるのかッ!?)ドキドキ

不良「……」パキュ

不良「ごっきゅごっきゅごっきゅ、ありがとな」スッ

同級生「ってオイ! 飲むのかよ君は!」

不良「?」

同級生「何かするんじゃないのかよ! 普通に飲んじゃうって君さァ…!」

不良「だって喉乾いてて…」

同級生「タイミング図ってくれないかなぁ!? ここで聞かれたら打開策だと思っちゃうだろ!?」

不良「す、すまん」

同級生(やっぱ当てにならんなコイツは! 勝手に一人で考えよう、しかし水をぶっかけるのはいい手かも知れん)

同級生「水は…風呂場で桶に貯めれば…」

不良「待ってくれ。挽回したい」スッ

同級生「な、何? 何だ急に…?」ビクッ

不良「これでも力には自慢がある」

同級生「良くわからんアピールは要らないよッ! 何ッ? つまりは手伝いたいってことかっ?」

不良「ああ」コク

同級生(最初からそう言ってくれよ、いまいち会話が噛み合わん。ったく…)

同級生「取り敢えず、コイツの体たらくぶりを直すために…水をぶっかけようと思う」スタスタ

不良「なるほど」

同級生「まずは桶に水を溜めてだな…」

不良「フン」ブゥゥゥオオオオンッ

同級生「わぁああ!? なにやってんだ君ッ!?」

不良「コイツを持ち上げたんだが…?」キョトン

イケメン「ぐぇぇぇ」

同級生「なんでッ!?」

不良「水を掛けるなら風呂場に連れて行ったほうが良いかと…」

同級生「なるほど道理に適ってる! でももっと優しく! やさしく、持ち上げてくれ…!」

不良「不器用なんだ…すまん…」ペコリ

イケメン「ごぇぇ」ギュウウウン

同級生「だぁーーーッ!? 死んじゃう死んじゃう! 離さないと腰骨折れて死んじゃう!」

不良「お、おお…」

同級生「はぁ…はぁ…わ、わかった、余計な事はせずに大人しく運んでくれよな、頼む…」

不良「ああ」コク

同級生「はぁ~~、何なんだよまったく…」

同級生(案外広いな風呂場、流石に旅館なだけはある…あった、これに水を溜めてと)キュッキュッ

同級生「あれ…水が出ない…?」

不良「なに?」

同級生「ハッ! そういえば教師が言っていた、修学旅行でここら一体が水道制限が掛かってると…!」

不良「どうしてだ?」

同級生「…生徒共に余計な水道代を喰わせない為に、学校側が予め旅館側と話をつけて置いてるんだ」

不良「ああ、つまり俺らみたいな奴らを警戒してか。笑えるな」クック

同級生「ぜんっぜん笑えねぇよッ! ちょっとは悲観しろッ!」

同級生(なら、どうしたら良い…ッ?  違う方法を考えるか、いや、どうせなら他のものを使って…)キョロ

不良「思ったんだが」

同級生「うん?」

不良「別に水じゃなくても良いだろ。叩いて正気にすれば良い」

同級生「いや、うん、そうだろうけどね、やめろ叩くな! 絶対に良くないことになるッ!」バッ

不良「力には自信があるぞ?」

同級生「アンタは自分のメリットしか頭に無いのかよ!? さっき言った不器用のデメリット思いだせよッ!」

不良「ハッ!? ……殺してしまうかも知れん…」

同級生「殺しちゃうんだ…つ、つまりはそう…余計なことはするな、頼む…」

不良「ああ」コクリ

イケメン「あああ…男君…男君……っ」

同級生(一体僕はなにをしているんだろう、本当に、しかし順当に修学旅行を終わらせるためだ、深く考えるな)スッ

同級生「わかった。最初の方法で行動していこう、ここでブレては駄目だ」

不良「だが水がないぞ?」

同級生「他のもので代用する。さっきの飲み物にしろ何にしろ、水気なら何だって良い」

不良「…すまん全部飲んでしまった」

同級生「うん知ってる! だから他のものを探すんだよ、ほら早く!」

不良「ああ」

同級生(とは言っても、探して見つかるものだろうか)

不良「あったぞ」ヒョコ

同級生「なに!? 本当か!?」

不良「これだ」

【ホットドック ソース】

同級生「…コレ、しかなかったのか…?」

不良「あ、ああ」コク

同級生「いや、しかし、だけどな、これっぽっちの量じゃ…」

不良「その点は安心しろ」ズラララ

同級生「いっぱいある!? なんでッ!?」

不良「フリーなモノを沢山もらってきた…後で食べようかと…」

同級生「す、吸うの?」

不良「ああ」

同級生「凄いな…」

不良「……」テレ

同級生「褒めてねーよバーカッ!」バッ

不良「え…」

同級生(しかしいいものを手に入れた! これを桶に全部開けて、開けて、開けて、)ブニュニュニュニュ

同級生「よし! 結構溜まったな、後はこれをぶっかければ…!」

同級生「……」プ~~~ン

同級生(良い、のか? このソースくっさいモノをぶっかけて、それはそれで大惨事じゃあないか…?)

同級生「や、やっぱりやめようか…駄目な気がしてきた…」

不良「自信がないか? 任せろ。俺がやってやる」ガッ

同級生「ばっ!!? ちがっ、ちょっと!?」


ばしゃーーーーー!


同級生「あーーーーーーっっっ!!?」


ぶわぁ! コポコポ… ドロドロ… 


同級生「…ぁ…」

不良「……」

同級生「お前…」

不良「一つ聞きたい、これで本当に良かったのか…?」

同級生「どう考えても良くないよねぇ!? わかるだろ、ためらったじゃん俺! なにやってんのっ!?」

不良「すまん…」

同級生「あーもうッ! どうすんだよこの状況!? とんでもないことになって…!」


イケメン「ッ…ッッ……ブッ…ブボッ…」びくんびくん


不良「マズイぞ、息が出来ていない」

同級生「えっ」

不良「綺麗に鼻と、口内にソースが絡まって詰まってる。取り除かないと死ぬぞ」

同級生「えぇーッ!?」

不良「とりあえずタオルだ。拭きとるぞ、早く持って来い」

同級生「わ、わかった」ダダッ

不良「あったかっ?」

同級生「据え置きがあった! コレを使ってくれ!!」バッ

不良「ああ」ぱしっ

ぐいぐいぐい

不良「……」ゴシゴシ

同級生「どうだ? だ、大丈夫そうか…?」

不良「任せろ」

同級生「お、おう」ドキドキ

同級生(何だ、なんの気の利かない唐変木だと思えばやるじゃあないか)

不良「水があればもっと効率がいいんだがな…」フキフキ

同級生「! じゃ、じゃあひとっ走りして自販機に──」


『なぁ、やめようぜ。あいつ誘うの、絶対に場の空気悪くなるって』

『いつも自慢ばっかだもんな』

『それしか無いんだなきっと、他人と関わる話題ってのがさー』


同級生「……」

同級生「フン」 スタスタ

不良「? どこに行くんだ?」

同級生「はい? いやいや君には関係ないだろ?」

同級生「僕の勝手じゃないか、君は黙って犯した過ちに対処しとけばいいじゃあないか」

不良「……」

同級生「分かったんだよ、よくよく考えれば僕は関係ないよね? 最悪だよ、まったくもって時間の無駄無駄」

同級生「という訳で僕は、そこら辺をぶらついて来る」

同級生「晩ごはんの時間までには帰ってくるよ。じゃーねー」


ガチャ キィ


同級生「…」チラ

不良「……」

同級生(なんだよ、その目。何か言えばいいだろ、何故言わない)チッ


パタン


不良「……」

「う、うーん」

不良「起きたか」

イケメン「あ、うん…やっぱり起きるよね…この状況で起きざる負えないよね…」

不良「もうすぐ拭き終わる。大人しくしとけ」フキフキ

イケメン「え、あ、うん」

不良「……」ゴシゴシ

イケメン(なんだろうこの状況…とっても不思議…)

イケメン「そのね、勘違いしないで欲しいんだ、彼のことを」

不良「?」

イケメン「同級生くんだよ。彼は少しばかり素直になれない不器用な子でね」

不良「詳しいな」

イケメン「言えるほど仲は良くないよ。ただ彼は…ふふっ…」クスクス

不良「どうした?」

イケメン「いやなに、似てるんだよ。彼の不器用さが、あの彼の不器用さにね」クス

不良「……」

イケメン「だから単純に表面上で彼という人間を受け取ってほしくないと言いたいんだ」

不良「そうか」

イケメン「…君ならきっと分かってくれると思ってるよ、俺は信じてる。この班のメンバー全員をね」

不良「……」

イケメン「ああ、やっと理想の青春のカタチが近づけたんだ…」

イケメン「やっとだ。やっと、これで俺は───」

不良「お前が」

イケメン「え、うん?」

不良「お前がどんな理由でこの修学旅行でのメンバーを選んだのか、それは、」

不良「きっと男のためなんだろう」

イケメン「うん、そうだよ?」キョトン

不良(即答か)

イケメン「?」

不良「いや、それ自体に文句はない。ただ一つだけお前に言いたいことがある、良いか?」

イケメン「どうぞ…?」

不良「感謝している」

イケメン「え?」

不良「どんな理由があってもメンバーに誘ってくれたことに、俺は素直に感謝している」

イケメン「…うん」

不良「こんな図体でこの面構えだ」

不良「性格も口調も、人から好かれるような人間じゃないことも、わかってるつもりだ」

イケメン「……」

不良「感情の起伏があまり外に出ない、といえば聞こえがいいかもな」フッ

イケメン「そうだね」クス

不良「ああ、だから敢えてお前には言葉にして伝えておく」


不良「誘ってくれてありがとう。こんなに楽しいのは…久しぶりだ…」


イケメン「言ってもオレの勝手だよ?」

不良「分かりやすいほうが俺は好きなんだ」

イケメン「なるほど」

不良「それに」

イケメン「うん?」

不良「あいつ。あのボンボンも別に勘違いしてないぞ、実に分かりやすいからな」

イケメン「……。くっく、それは失礼したよ。余計なお世話を言ってしまったようだ」

不良「そこまで鈍感じゃない」

イケメン「なら安心した。これからも彼も、そして俺らとも付き合ってくれたら嬉しい」スッ

不良「良いのか?」

イケメン「分かりやすい言葉が欲しいのなら言うけど、そもそも嫌だったらメンバーに誘ってないさ」

不良「そうか、そうだろうな」スッ


ギュッ


イケメン「ようこそ青春へ、君もまた俺の身勝手に付き合ってくれたら嬉しいよ」

不良「…不器用だが力には自信がある、手助けに、なればいいが」


ガチャ!


「あ~あ、なんだよまったく! おいおい聞いてくれよ! さっき教師に見つかって部屋にもどれって言われてさぁ~!?」


イケメン「お」

不良「帰ってきたな」

同級生「だから仕方なく帰ってきたよ、これっぽっちも帰ってきたくなかったんだけどね! それについでに──」


イケメン「やあ」

不良「……」


同級生「何、風呂場で二人して、手繋いでんの」

イケメン「ちょっとした約束を」

不良「秘密だ」

同級生「なにそれ!? え、なにっ、すっごく気になるんだけどねぇーえ!? よく分からなさが特にっ!」

イケメン「あはは。いやいや、気にしないでくれよ。あとその手に持ってるのは何だい?」

不良「ペットボトル? 水か?」

同級生「うぇっ!? あ、おぉおぉ~…そ、そうだけどっ? 何、これは僕のだぞッ?」ササッ

イケメン「へーそうなんだー」

不良「飲むのか」

同級生「飲むんだよ! 飲むから買ってきたんじゃないか!」

イケメン「五本ぐらいあるのに?」

同級生「だっ、がッ、あーッ! 飲んでやるさ飲みきってやるさねーェ!」カシュ

同級生「ごっごっごっごっごっごっ」

同級生「ごぱぁ!」ゲブルゥゴボシャバシャバシャ…

イケメン「ぶふぅ!」サッ

同級生「ゲフ…ゴホゴホッ…!!」

不良「おまえ馬鹿だろ?」

同級生「ぶるばあい!」

イケメン「いやいや…本当に君は何というか、不器用な人だね…っ」

同級生「くっ…なんだ、まったく君らは揃いも揃ってあれかなァー? この僕が君らを思ってペットボトルを買ってきたと思ってるのかなぁ!?」

同級生「あー! そうだともそうだとも! 庶民どもに、この高貴な僕からお恵みだよ! さぁ感謝して受け取るが良いッ!」

イケメン「なるほど。それが新しい落としどころか、不屈のキャラ意地の精神、勉強になるね」

不良「? なんでメモってるんだ?」

イケメン「男君とのボケで使えると思って」

不良「勉強熱心だな」コクコク

同級生「訊けよッ!! 人の話を!!」

~~~

同級生「う…臭…」バシャバシャ

不良「もっと広範囲にかけろ」ゴシゴシ

同級生「や、やってるじゃないか! ちゃんとまんべんなく!」バシャ

イケメン「さっきから首元にしか、水があたってなけど…」

不良「……」じぃー

同級生「うッ! む、難しいんですぅー! 庶民と違って僕はシャワーですからー! こんなんムズいんですー!」

不良「庶民も大体シャワーだぞ」ゴシゴシ

同級生「やかましいっ」

イケメン「いや、オレは応援してるよ。君の鋼のような金持ちキャラ維持力は、尊敬に値するからね!」キラキラ

同級生「絶対に馬鹿にしてるよなそれ!?」

同級生「くそッ…いちいち僕のことを馬鹿にしやがってお前ら…ッ! これでも喰らいやがれ!」ギュッ


バッシャー!!!


イケメン「わぁー!? 冷たァー!?」

不良「お前…」びっしょり

同級生「え、あ…ちょっと濡らすつもりだったんだけど…」

イケメン「……」

不良「……」

同級生「っ~~ハ、ハン! やっぱり庶民はみすぼらしく濡れッぱしが実に似合ってブばぁっ!?」バッシャー

イケメン「よしっ」

同級生「ッ…ッ…お前…ッ…!」プルプル

イケメン「こう見えてオレは負けず嫌いでね」キラリ

同級生「あぁ…そうかいッ…だったら僕も人に自慢できるぐらいに負けず嫌いでねェ…!」


不良「……」キョロキョロ

不良「コレでいいか」


同級生「望むところだよかかって来いバカヤロー! 以前から君のことは気に食わなかった、んぶっ」ぺしゃっ

イケメン「お?」

不良「……シャンプーだ」シュッコシュッコ

同級生「ば、馬鹿野郎…勿体なことをするんじゃ…っ」

不良「金持ちが言うセリフじゃないな」

イケメン「そんな…もう終わってしまうのかい…」

同級生「ば、馬鹿野郎…勿体なことをするんじゃ…っ」

不良「金持ちが言うセリフじゃないな」

イケメン「そんな…もう終わってしまうのかい、君のキャラ設定…」


ブツン


同級生「もうまとめてかかってこぉーいッ! ぐっちゃぐちゃにしてくれるッ!!」がっ シュポシュポシュポ!

イケメン「わー!!」

不良「甘いな」スッ

同級生「だらァァアアアア!!」


ドッタンバッタン シュポシュポシュポ! ビュルルルルr!





ガチャ キィ


男「…ただいま…」しょんぼり

友「ただいまー!」

男「はぁ…ほとほと疲れた…」

友「およ? みんなどこ行ったん?」

男「お風呂場から声が聞こえるから、多分、そこにいるんだと思うよ」スタスタ


ドッタンバッタン


友「えらく騒がしいの」

男「なにやってるんだろう? とにかく、今までのことを謝らないと」

男「なあ皆、ただいま。あのね心配かけて本当にごめ……」


キィ…


同級生「あンッ!?」【押し倒されて顔面真っ白な液体でドロドロ】

不良「……」【覆いかぶさって無言でかけ続けてる】

イケメン「お?」【首から上がまっちゃ色】


男「………」

【そっとドアを締めた後、意外に友もドン引きしてたのが印象的でした】


第二十三話『突っ込みは必要なんだなって』

友→イケ友

訂正

旅館ロビー

女「アンタ等ねぇ! ほんっとマジでなにやってるワケ!?」

男「すみませんでした…」

女「どれだけ周りに迷惑かけたか分かってないでしょ!? 戻ってくるまで教師やら、クラスメイトに言い訳をしたか…!」

イケメン「まあまあ。落ち付けって女、彼だってちゃんと分かってるし反省もしているよ」

女「黙ってなさい! このウンコッッっ!!!」

イケメン「うん…こ…?」

女「ったく、本当にしょうがない人間よねあんたらは……!」

男「本当にごめん! 心配かけて、本当に…」

女「ばっ!!? し、心配なんてするワケないじゃない! ばっかじゃないの!?」

男「あ、え、うん、ごめん…!」

女「こっちは迷惑がかかってんの! これっぽっちも心配なんてしてないんだから、わかってんのっ? わかるなら返事をする! 早く!」

男「は、はい!」

女「…うむ」コク

同級生「どーでも良いけどさ、気になるから聞くけど。なんで他クラスの委員長が出しゃばってきてるんだ?」

女「へっ?」

同級生「わざわざロビーに呼び出して怒鳴りつけてくるし、こっちは掃除やらでかまってる暇がないんだけど」

女「かまっ!?」

イケ友「待つんだ同級生! これにはふかーいふかーい理由があるだっての!」

女「そ、そうよ! ちゃんと理由があるのよ! 言ってやりなさいアホ筋肉!」

イケ友「だって男ちゃんは女っちの所有物だから!」

女「」

イケメン「何ッ!? それはどういうことだ初耳だぞッ!?」

イケ友「え、だって前に屋上で…血だらけの男ちゃんを抱えて…」

男「なに言ってんの…? 何時の話だそれ…?」

イケ友「……、あれ? 何時の話だっけ?」

男「なんで忘れてるのに言い切っちゃったの!?」

イケ友「う、うーん。何時だったか女っちが告られた時だったような…?」

イケメン「過去のことはどうだっていい! それより所有物とは何だ、何故きみはそれをオレに教えなかったのぉ!?」

男「し、知らないよそんなこと! 初耳だからこっちも!」

同級生「ほんっとお前らは僕を無視するよなッ! こっちの話を聞けよッ!」


スタスタ


不良「ん。どうした」

男「あ、不良くん…えっと、ただいまって言うか…」

不良「……」

男「ご、ごめんね。勝手に一人で居なくなったことも、遅れて帰ってきたのに散々遊び尽くしたような格好で…」

不良「別にかまわん」スッ

男「んっ」

不良「おかえり」なでなで

男「…た、ただいま…」

女「ちょっとッ!」ぐいっ

男「うわっ」

女「あたしを放っておくんじゃない! 良いっ? とにかく背負った苦労は凄かったワケよ!」

男「う、うん。それに関してはお礼も言いたいし、何かお返しができたら良いんだけど…」

女「へぇー、じゃあ返してって言ったら返してくれるんだ」

男「え? あ、うん!」

女「……」

イケメン「何かあるのか?」

女「今考えてる」

イケメン「覚悟するんだ男君。女はきっと凄いことを言い出すぞ、はるかに想像を超えるやつだ」

男「えっ!?」

女「黙ってなさい変態!」

女「──わかった、考えた。何をして欲しいか思い付きました」

イケ友「楽しいことだったらおれっちもやる!」

同級生「…帰っていいか、僕」

不良「……」


女「耳をよ~くかっぽじって聴きなさい目つき悪男ぉー! 今からあたしを、」

女「──もてなしなさい、誠意を持ってちゃんとね!!」

旅館 一室

女「あたしはね。散々周りに振り回されて疲れてるワケよ」

男「はい…」モミモミ

女「肩は凝るし、脚はむくむし、体重増えたし疲労で倦怠感半端無いし」

イケメン「太ったのか?」モミモミ

女「うっさい! だから非常に疲れてるわけ、大変なワケ、誰かにいたわって欲しい訳!」

男「そうなんだ…」

女「ちょっと、もうちょっと右! そこ痛いから!」

男「はい!」


同級生(まるで女王様だなコイツ…)

女「そこの黒髪ボンボン!」

同級生「く、くろかみ…ボ…!?」

女「あたし、喉が渇いたから飲み物買ってきて。いますぐ、早くね」

同級生「はぁ? 何いってんの君ぃ…?」

女「何? 文句あんの?」

同級生「あのね、君らのノリはある程度把握したつもりだよ。けどねぇウザったらしい展開に巻き込まれるのは、」

女「ねぇ知ってる? さっきね、異臭騒ぎで教師が色々と聞きまわってること」

同級生「へ?」

女「それ、アンタらでしょ。知ってるのよ、どーせ無駄に暴れまわってそうなった」

同級生「むぐッ」

女「──ウザい展開に巻き込まれたくない? くっく、もう既に遅いのよ黒髪ボンボン…」ニヤニヤ

女「ちなみに異臭騒ぎの情報撹乱をしたのはあ・た・し、よ」

同級生「っ~~…!」

女「コーラね、ゼロのやつ。さあ、行きなさい」

同級生「……っっ…」バッ


スタスタ バタン


女「フン! にしても変態、よくアイツを班に入れようと思ったわね」

イケメン「うん? なんで?」

女「知らないわけじゃないでしょ」

イケメン「さぁてね、オレにはよくわからないよ」

女「…そ、別に面倒くさいことにならなきゃどーだっていいけど」

男「なに? なんの話?」

イケメン「同級生くんのことさ。彼は色々と問題が合ってね、君は知らないかもだけど」

男「問題…」

女「アンタ本当に色々と抜けてるわよね。聞いた話じゃ、話しかけるまであたしの顔も知らなかったらしいじゃない」

男「イケメン…」

イケメン「おいおい、何でも疑い過ぎだよ。オレじゃない言ったのは」

イケ友「おれっちですよー☆」

男「何で言ったんだよ…」

イケ友「んー? 確か生徒会長、前姉ちゃんの顔を知らないって話題から?」

イケメン「へ? もしかして文化祭準備で会うまで顔も覚えてなかったのか?」

女「あんた…あんな有名な人間を会うまで覚えてなかったとか…」

男「い、いやいや、だって俺、一年の頃は殆ど周りに興味がなくて…っ」

女「興味が無いって、じゃあ一年の頃はなにやってたのよ。クラスに居なかったとか言うの?」

男「うっ!」

イケ友「いや、いたっしょ? おぼえてるもんおれっち、男ちゃんがクラスに居たの!」

女「ほらみなさい。興味が無いとか、どっかのアニメキャラみたいなセリフよく吐けたわね」

イケメン「ちょ、ちょっと、ふたりともさ。良いから落ち着くんだ、ね?」

女「なによ?」

イケメン「あんまり訊くのもよくない話題っていうかね…うん…」

男「………」ズーン

イケ友「なんで落ち込んでるん?」

男「いや色々と思い出してた…いやーあの頃はずっと保健室で勉強してたかなぁー」


男「教室に居ても授業中は良いとして、休憩時間に独りで過ごすのがデフォになって…」

男「ある日。トイレに行って帰ってきたら誰もいなくて、びっくりして、教室から窓の外を見たら…」

男「生徒全員が避難訓練で出払った後だと気づいた時は、もうね、色々とね、うんうん…」


イケ友「男ちゃん…」ポロポロ

女「な、なんでよ! それはアンタが担任の話を聞いてないのが悪いんでしょ…!?」

男「担任の報告は俺が風邪で休んでる時だったらしい。そして、スピーカー故障した際の避難訓練でね」

男「伝言での放送だったらしいよ。うん、凄いよね、みんなで協力すれば速やかに避難できるんだ…」

男「…そして友達が出来ない奴は、助からないんだ…」

女「うっ…なんかごめん…」

男「良い、良いんだ、もう昔のことだから。全然、気にしてないし」

イケ友「ウォォオオー! おれっちは何故! その時! 駆け付けなかったんだウォォオオー!」

イケメン「大丈夫だよ男君。どんな避難訓練だってオレは必ず伝えるよ、トイレだって一緒に行ってあげるよ…」

男「ありがとうイケ友。あとイケメン、お前はなんか違う」


ガチャ


不良「帰ったぞ」

女「…お?」

不良「これで良かったか。頼まれたものは」ガサリ

女「どれどれ、ひぃーふぅーみぃー。数も合ってる、ありがと。アンタも食べる?」

不良「良いのか」

女「食べたきゃどーぞ、別に好きにつまんで良いわよ」

不良「ん…ありがとな…」

女(あら、案外普通に笑うのねコイツ──)

不良「よいしょっと」ムンズガッサー

女「ちょコラーーーーーッ!!!」

不良「なんだ?」もっしゃもっしゃ

女「食い過ぎよッ! 明らかにつまむ範疇超えちゃってるじゃない!」

イケ友「あ! 不良っち流石にそりゃねーべ!」

女「そ、そうよ言ってやりなさいアホ筋肉! 一体誰のお金で買ったと…」

イケ友「おれっちのぶんは!?」

女「だぁああああ!! 元からあたしんのよぉおおおお!」

同級生「──ったく、買ってきたぞテンプレツインテール」ガチャ

同級生「このへん売ってなくて旅館街まで出向いてしまったんだぞ、このお返しはきちんと、あっ」コケ ゴトリ! ゴロゴロゴロ ぼこぼこぼこぼこ…

女「あーーーーーーっっ!!」

同級生「あ、ごめ…」

女「何してくれちゃってんのよ黒髪ボンボン!! あんたって何の役にも立たないクズねまったく!」

同級生「ばっ! そ、そこまで言われる筋合いはないだろ!? 飲めるものは飲めるんだ、買ってきたんだこれを飲め!」ぐいっ

女「ちょ、やめっ、それ絶対ぶっしゅーなるやつでしょ!?」ぺしっ

同級生「開けなくちゃわかんないだろーが!」

女「見りゃ分かるわよ馬鹿! もう中身パンパンじゃない! ばーかばーか!」

同級生「なに、このっ…! お節介女! 口悪! テンプレツンデレ!」

女「なにをーーーーーー!!!???」

不良「元気だな、お前ら」モシャモシャ

女「アンタは何くってんのよ!」

同級生「あ! なんだこれ差別か!? 僕にはまったく返しなんぞくれないで、ほんっと性格悪いな!」

女「プッツーン来ましたよ今の…へぇ~…性格悪いとか言っちゃう、へぇ~~~…」


イケメン「流石だね。昔からすぐに女のやつは、人と仲良くなれる才能の持ち主だった」

男「仲良くなってるのかコレ…俺には険悪ムードにしか…にしてもトントン拍子に事が悪くなっていくな…」

~~~

女「…もういいっ! ここに居るほうがよっぽど疲れる! もう帰る!」

イケメン「肩を揉んでしかしてないぞ?」

女「じゃあどーして来る以前より疲れてんのよあたしは…っ」

男(気の毒に…)

女「でも、最後にひとつだけ」チラリ

男「っ?」

女「あんた、どうして直ぐに連絡しなかったのよ」

男「あ、えっと…」

女「……」

女「どーせ連絡入れたら迷惑がかかるとか思って、そんな意味のないこと考えてた。違う?」

男「ご、ご明察です」

女「ばっかじゃないの? あんたね、探してる身になって考えなさいよ」

女「──いつまでも一人よがりに浸ってるんじゃない、見てて、すごく腹が立つから」

男「……、ありがと」

女「ハン! なんで感謝するのよ、馬鹿ね」プイッ

女「…今度はちゃんと、避難訓練の時だって探すわよ…」ボソリ

男「え?」

女「何でもない! はぁあーっ! 疲れた、いやになる」スタスタ

女「あともう一つ。今日の晩飯終わって、就寝時間前に来る約束ちゃーんとおぼえてるんでしょうね?」

イケ友「え? なにそれ?」

男「?」

女「変態、あんたまさか…」

イケメン「……忘れてた、男君の件ですっかり…」ダラダラダラ

女「まったく、本当にどうしようもない奴ねあんたは…」

同級生「何だ、何かあるのか?」

女「コイツと約束取り付けてたのよ。今日、あたしの班の部屋に遊びに来るようにね」

同級生「くっそ面倒だな」

女「アンタは来なくていいわよ、邪魔だし、居たら居たで居るだけで疲れれそう」シッシ

同級生「お、おい、この女は僕に殴って欲しいのか…? そうなのか…っ?」ひくひく

女「でも、まぁ、あれよね」

女「無理して付き合わなくても平気よ。今日は色々とあったし、疲れてるでしょうしね」

イケメン「すまない。相談に乗ってくれたのに、こちらが無碍にして…」

女「変にかしこまるな変態。裏があるかと疑っちゃうから」

イケメン「なるほどな…、じゃあ疲れてるから嫌だ!」

男「お前、最初から最後まで、本当にどうなんだそれ」

女「コイツのコレはもう慣れたものよ。でもね、今回のことは殆どアンタの責任よ目つき悪男」

男「えっ? お、俺なのか…?」

女「そう。相談事も含め、今日の迷子事件もアンタのことじゃない」

男(相談事ってなんだ)チラ

イケメン「……」ニ、ニコ

男「はぁ、うん、確かに俺が色々と原因になってるみたいだし、なんだろう、最終的に何をしたら良いんだろうか…」


「好きに考えたら良い」


男「えっ?」

不良「…」

男「不良くん…?」

不良「好きにしたら良い。お前が、望むもので皆納得するはずだ」

男「それは、どういう意味で…」

イケメン「ん。まあね、オレは男君がイイよって言えば全然構わないよ」

イケ友「楽しいことだったら付いて行くぜおとこちゃん!」

不良「勿論、俺もだ」コク

男「皆…」

男「…なんか色々と迷惑かけてばっかであれだけど、女さん」

女「ん」

男「い、行ってもいいなら俺たち行くよ。部屋に遊びにさ」

女「そ。ならそれでイイんじゃない」

男「ん…」テレ

イケ友「ちょいちょいちょい! 今からすっごく楽しみじゃん! なにする? ウノ? 七並べ?」

イケメン「ちょっと季節外れの怪談話をしようじゃないか。不良君、そういうの詳しくないかい?」

不良「良くしってるな。今年の夏に婆ちゃんの家であった実話のことを語るか」

女「え、ちょっとマジな奴はやめてよね…マジで言ってんのよっ? 何その顔! 恐いんだけど!」

男「……」

男(あ。今、すごく来てる)


青春ってコトバが胸にぽつんと浮かんでる。

ああ、これが、人と何かするってことなのか。


男「…えへへ」


ぐいっ


男「わわっ」

「ちょっと来て」

男「え…?」


すたすた すた

男「ど、どうした?」

女「…気をつけなさい」

男「何を?」

女「アイツよ」くいっ


同級生「………」ポケー


男「同級生くんが? え、何を気をつけるって?」

女「単刀直入に言っとくわ。アイツ、以前に事件を起こしてるのよ」

男「事件…?」

女「『カッター振り回し事件』。有名な話よ、けど、あんたは知らないんでしょ結局は」



 全然知らない。


女「良い? 変態のやつがどーいうつもりなのかは知らない、あの仮面怪人を煽ったぐらいなんだから…」

女「考えなしにやってるとは思えない。けど、……アイツだってわからないこともある」

男「………」

 俺には何を言ってるのかさっぱりだった。

 同級生くんは同級生くんで、何を、一体何を気をつければ良いのかという。


女「聞かれてるのよ。あんたらの会話を、あのディズニーランドでやってたほ、ホモっぽい会話を」

女「それを、どう悪用するのかわかったもんじゃない。アイツは、信用しちゃいけないタイプの人間よ」

女「聞いてる? あんたはただえさえ敵というか、色んな奴から疎まれてるんだから。だから気をつけるのよ、わかってる?」


男「……う、うん」

女「本当にわかった? ちゃんと理解して頷いてるワケ?」

男「わ、わかってる…ちゃんと、わかってるって…」


ガタリ!


男「っ!」ビクン

同級生「……」スタスタ

チラリ

同級生「ちょっと外の空気を吸ってくる、別に遠出はしないよ」

男「う、うん! わかってる!」コクコク

同級生「……」


同級生「……ね、…君の…」


男「えっ?」

同級生「じゃ、これで」ガチャン バタン

男(今…)


確かにそっと呟いたのは、そんなコトバ。



『気持ち悪いね。君の取り巻き』


男「……」

女「…良い? これが最終警告よ、目つき悪男」

彼女の瞳は本当に真剣だった。

真面目に彼を、同級生君を、敵視しているのだという証明にも感じて。


女「今後も普通に過ごしたいのなら、アイツに構うな。関わるな、以上よ」

男「…っ」

女「もうコレ以上は言わない。言うだけアンタを困らせるだけだろうし、正直に言って、あんまり関わりたくもない」

男「…うん、迷惑はかけれないし…」

女「違うわよ」

男「違う?」

女「あたしはこっちじゃない。あっちよ、もっと醜くてどうしようもないクズ共のほうに対処しなきゃいけないの」

男「……?」

女「こっちはアイツが、変態の方がどーにかするでしょ。あたしは嫌でも幼なじみだから、わかるものはわかっちゃうの」

女「目つき悪男」


女「無事に修学旅行を終えたきゃ、アイツに関わるな」





第二十四話『セイシュンへのツッコミ』

同級生「……」


【ここで、とある一人の生徒を解説しようと思う】


【彼は学年の中でも、全学年の中でも、随一のお金持ちの生徒である】


同級生「君、ばかっぽい顔してるよね」


【あと口が悪い】

~~~

同級生(女子の部屋に遊びに行くとか、超めんどくさいなぁ)


【本来、彼のような口を開けば罵詈雑言。歩けば避けられ、集えば煙たがれるので】

【意図せずして嫌われる。なんてことはザラなことだった】


同級生「ねぇ、男君」


【そして彼自身も重々理解していた。己が、きっと他人からは疎まれているのだと】

男「ひっ!」

同級生「…ひぃ?」


【これから天涯孤独で生き続ける。己が信じるものは一人でいい、それは自分】

【と、本気で思っていた。思っていたのだ、この修学旅行を迎えるまでは】


男「な、何でもないよ。それでっ? 何の用事っ?」

同級生「……」

同級生「いや、別に、何でもないけど」


【ハッキリと言おう。往々にして彼はとある属性にカテゴライズされる】

【それは…】


同級生(な、なんだ…変な感じだな…彼に悪いことでもしたかな…)タジ



【チョロいのだ。すげーチョロいやつなのだ】

【新幹線でやったしりとりも超楽しかったし、ディズニーランドでは人生最高潮でエンジョイしていた】

【実のところ。この五班に誘われた時も滅茶苦茶嬉しがっていた】

【男からお詫びに貰ったシュークリームなんて、未だに頭のなかで味をおぼえてる】


同級生(…また、悪いこと言っちまったかな、僕)


【あと、仲良く喋れたかもって思えた人の態度に敏感だったり】

【信じられないぐらい、笑えるぐらい、こんなの絶滅危惧種だろって指を刺されるぐらいに】


同級生(…謝れるかな、でもな、僕って謝ろうとすると…何故か怒っちゃうんだよな…)


【チョロい】

【このチョロさ、今の今まで他人に悪用されなかったのかと心配になるレベルだが】

【それは大丈夫だった。持ち前の『天然口悪さ』によって難なくカバー】


同級生「チッ、君ってさ。言わないでおくつもりだったけど、さっきから肉まんの口臭酷いよ?」

同級生(だぁーーーーー!! やっちまったぁーーーーーー!!)

男「えっ!? あ、ごめん…なさい…」シュン

同級生「別に謝ってほしいとか言ってないけど?」

男「…う、うん」

同級生(違う! 別に謝ってほしくない、間違いだったんだと言いたいんだ僕は!)ぷるぷる


【このザマだった】

【こんなんだから友達一人も出来ない。両親はこの不器用さにそっと涙を零すのだ】

【しかしながら、この同級生はある意味、性格が曲がらず成長をしてこれた】

【未だに『人を信用できる』という真っ白な心を捨てずに要られたのだ】


同級生(どうして僕って、こんなん、なんだろう…)


【俯瞰的に見た自己評価。きっとそれが最初の一歩を誤らさせた】


【人から嫌われている。金持ちだから鼻にかかる。喋り方が腹立つ。存在がウザい、云々】


【色々と考えたのだ。事実あってるのだが、それでも自己評価を過大に低く見つめ過ぎた】




【他人と自分。そこから生まれる『会話ルート』を強く省みすぎたのだろう】



同級生(まぁ、何時もこんな感じだよな。いつの間にか嫌われて、避けられる。いつも通りじゃないか)


【言っていいことだと思った】

【この言葉は相手には伝わると思っていた。笑って冗談で済むと思っていた】

【…けど合わなかった。自分と相手は違う人だった、そう、気付かされた】


【だから嫌われた。だから避けられた。だから───】



同級生「…もういい、僕はもう行くよ」



【考えるほどドツボに嵌っていく。抜けだせない、答えのない自己否定は永遠と苦しめるばかり】

【彼はつくづく不器用な人間。標準となるモノも経験できず、だからこそ無垢で、曲がっていて、そしてチョロい】

【一度優しくされたら、またもう一度可能性を見てしまう】


同級生(こんな僕に話しかけてくれたのは、きっと修学旅行での高揚での一種の気の迷いだったんだろう)


【そして打ちし枯れる。多大に膨らませた想像でネガティブに物事を捉えきる】

【総合して彼の印象である『高慢ちきでウザいやつ』は形成されていた】


【口が悪くて】

        【想いを伝えるのが不器用で】

                          【すぐに気を許して近づいて】





         【現実に絶望する】




同級生(やっぱ修学旅行って辛いな。もういいや、オンラインでボイチャで罵り合ったほうが楽だわ)

旅館 ロビー


同級生(誰が女子の部屋になんて行くもんかよ)ピッ

ガタン

同級生「…行ったってどうせ、厄介者にされて無視アンド無視だろ」ゴクゴク

同級生「……」

同級生(所詮は庶民どもの一瞬の快楽。みーんなでワイワイ盛り上がって? 今がエンジョイできれば皆ハッピーって奴?)

同級生(ここにつまらなそうにジュース飲んでる奴がいるのにってさ! ははっ! 楽しいってか!)

同級生「あー、腹が立つ」


ブン  …カランコロン


同級生「フン」スタスタ


「…駄目だよ、ポイ捨ては」


同級生「っ!?」

男「……」

同級生(な、何故君がここに…まさか僕を追いかけてきてくれたのか…?)

同級生(いやいや、んなワケないだろ。違う違う、そうやってすぐに信用するから馬鹿を見る)ぶんぶんぶん

同級生「…なんだよ、別に君には関係ないだろ」

男「関係は、あると、思う。だって同じ学校だし…今の君の格好はスクールジャージだから」

男「その姿で悪目立ちすることは、つまり、その…駄目なわけであって、うん」

同級生「………」

男「…そんな感じ、です」

同級生「ですって、君ね。例えそうだったとしても咎められる必要なんてこれっぽっちも───」

男「同級生君」じっ

同級生「…な、なんだよ?」たじ

男「ひ、ひろ、拾うんだ……この空き缶を拾ってゴミ箱に捨てよう、お願いだから」

同級生「……」

同級生「はぁ? なんで君の指図に従わなきゃイケナイわけ? そんな気になるんだったら勝手に君が拾って捨てといてよ、まったく」ハァ

男「……」

同級生「そうやって優等生気取りたいのなら、僕じゃなく、他の人間を使って優越感に浸ってくれないかな」ずいっ

男「う…っ」

同級生「良い迷惑なんだよ。僕の言ってること、ちゃんと理解できるかな?」ジッ


【彼は己の価値観を省みることによって、他人がどの程度の圧力で押し負けるのかを把握していた】

【隠さない本音。圧の強い声。攻め立てる言葉】

【如何に人を傷つけ遠ざけるのか。仲良くなるための手段を学ばずに、遠ざけるためだけに特化した彼だけが持ち得た特技】


同級生(こんなんばっかだ。こんなんばっかり、僕は得意になっていく)ズキ

同級生(なんて無様な奴だ。分かってるんだ、でも、心が理解しない。いつもの逃げ道にどうしても走ってしまう)

同級生(──人なんて拒絶を吐けば離れてく。知ってるんだ、いや、それしか僕は……ははっ…)


【柄にもなく、ありがとう。なんて彼は思った。こんな僕に一瞬でも…話しかけてくれて、とか、なんとか】


同級生(一時の挑戦意欲だって良い。僕は少しは嬉しかったよ、なんて、ね)

同級生(どうにもらしくなく、弱音ばかり吐くな僕は。いかんいかん、修学旅行という雰囲気は普段の僕の性根さえ腐らせるか…)

同級生「あー、結構だから。返事とかいらないし、返事を聞くこと自体が不愉快だもんでね」

同級生「だからいい機会だし、敢えて上乗せして言っておくよ。あのね、これ以上僕に関わらないでくれるかな?」

同級生「気持ち悪いんだよね。本気で嫌悪感を感じるんだ、その、仲良くしてますよーとか言う雰囲気がさ」

同級生「君はどこまで信じきっているのかな? その感じる想いが、感情が、いつまで続くと信じきれているのかな?」

同級生「君らは楽しければそれでイイかもしれない。でもね、それを端から見てて茶番にしか見えないんだ、茶番だよ茶番」

同級生「刹那的な快楽の為に、なんの意味のない囲いを作り、無駄で無意味な時間を浪費していく」

同級生「正直に言って馬鹿みたいだよね。僕は見てて驚愕するよ、なにがそんなに楽しいんだい?」



同級生「教えてくれよ男くん。君が感じている、今、という感情をどうか僕に教えてほしいものだよ」


同級生「そんな記憶の端にしか残らない、人生の糧にすらならない、将来仕事につけば懐古程度の慰めモノで」



同級生「───君はどうして、そんなにも幸せそうな表情が出来るのかな」

女子の部屋

女「なんで止めなかったのよぉーーーーー!!!」

イケメン「……」ニコニコ

女「ばっかじゃないの!? あ、あんたねぇ…? どー考えたって悪いことにしかならんでしょうが!」ガー

イケメン「深く疑い過ぎだよ、お前は」

女「なに、よ。それ、アンタだって知ってるでしょうが…!」

イケメン「同級生くんのこと? あれは至ってシンプルな『勘違い』だって。周りが大げさに噂を膨らませてるだけだ」

イケメン「事件の真相は何の悪意もない、ただの事故なんだよ」

女「はぁっ? な、なんでそんなことアンタが知って、」

女「……もしかして『使った』の?」

イケメン「さて、何の事だろうか? オレは状況を詳しく知ってそうな人に『詳しく』『正しく』『先入観を無し』にして」

イケメン「『カッター振り回し事件』の内容を訊いただけさ」

イケメン「思ってた通り、ただの事故だった。あれは野球部の打ったボールが窓ガラスを割って──」

イケメン「美術室の作品を薙ぎ倒しただけ。そして、近くにいた生徒がガラスで手を切り、」

イケメン「そしてまた、近くにいた同級生くんがペーパーナイフを運悪く持っていた。ただ、それだけなんだよ」

女「…、で? それがどーして黒髪ボンボンのせいだってことになったのよ」

イケメン「ああ、逆に女に問おう」



イケメン「どうして彼が悪いことをしたがると、【それっぽい奴】だと思えたんだ?」



女「…っ!」ビクッ

イケメン「それは見た目のせいか? 口調の悪さから? 態度にでる機嫌の悪さからか?」

イケメン「──確かにそれは、同級生くんの癖なのかもしれない」

イケメン「でもね、彼だって楽しむんだよ。笑うんだよ、そしてちゃんと怒るんだ」

イケメン「この修学旅行で沢山彼のことを知れた。いっぱい、彼の本音っぽいことを聞けた」


イケメン「きちんと、自分を見て欲しいと。そんな風に普通に願ったりする人間だとオレは思うんだ」


女「……」

イケメン「くく、そんなたいそれた話じゃないさ。彼だって悩んでた、ただそれだけ。オレはそれを分かった、ただそれだけだ」

女「…似てたのね、あんたと」プイッ

イケメン「やめてくれよ、オレの問題はオレの問題だ。彼と同じにしちゃ、彼に失礼だからね」

女「…そ」

イケメン「もう少しだけ、彼の本音をオレは知りたいと思ってる。彼という要因は、きっとこれからの青春に必要不可欠なんだ」

イケメン「楽しい楽しい学校生活…」

イケメン「──その『カタチ』を作り上げるために、大切な一人なんだよ」

女「ばっかみたい。あんた、本気で目つき悪男に言ったこと実現させるつもり?」

イケメン「勿論。それが、彼にお返しできる唯一の方法だからね」

女「……アンタもさ、ちょっとというか、だいぶ変わってるわよね。本気で今そう思った」

イケメン「オレは馬鹿だからな。知ってるだろう、お前ならさ」

女「だから突っ込みが必要だって?」

イケメン「そう。だけど同級生くんはオレと違って馬鹿じゃない」

イケメン「オレには突っ込みが必要だった。けれど、彼に別のものが必要だと思えるんだ」

女「だから、目つき悪男を放っておいて見送ったワケ?」

イケメン「……」コクリ

女「難しい話をしてるつもりでしょうけど、簡単にいえば、アンタ滅茶苦茶よ?」

イケメン「ああ、知ってるよ。けど期待して何が悪い?」

イケメン「──皆で仲良く、楽しく、修学旅行を終わらせたい。それの何処が悪い?」

女「人は人よ。そう簡単に和解なんて出来やしないわ」

イケメン「まるで会長みたいな事を言う。お前らしくないな、女」

女「うっさいわね…っ」

イケメン「…駄目かな、信じちゃイケナイかな」


彼が、本気で仲良くなりたいと願い、叶えようとすることを。


イケメン「オレは知りたいよ。彼の【本気】ってやつを」

女「…期待しすぎでしょ」

イケメン「彼は期待に応え続けてくれたが? 忘れたのかい、彼の凄さを」

女「………」むぐっ

イケメン「オレはとっくに救われてるんだ。この想いが信者だと馬鹿にされても、笑って流せれる自信だってある」



イケメン「──オレは馬鹿なんだ、最初から、最後までね」



女「…よく、わからないけど」

女「アンタが修学旅行が始まる前から、何か企んでたってやつがコレなわけよね」

イケメン「…」コク

女「正直に言うわ。ちょっと腹が立ってる、良いように周りを使いすぎ」

イケメン「…くっく、いいやつだよ女は。本当に言いたいこと言ってくれる」

女「目つき悪男、」

女「男が可哀想じゃない。アイツは本気で仲良くしようって考えてるのに、アンタの手の裏なんてさ」

イケメン「……」

女「だからね、変態」

女「──あたしは心底、願う。アンタの思惑がとんでもない方向に転がることを、これでもかって願うわ」

イケメン「オレだって迎える結末は分かってないさ。ただ、こうであってほしいと願うだけだよ」

女「言ってやるわ変態。あんたがそう思えるのは、男のやつが凄いんだって思ってるからこその発言よね」

女「…そうなってほしい先があるから、って。だったらアタシもアタシで、アイツの凄さを認めて言ってあげる」

イケメン「…? なにを?」

女「男が凄いってこと。あんたは救われたと感謝してるようだけど、…一人の友達としてわかってないみたいだから」

イケメン「………………」ビク

女「アイツ、きっとアンタの想像を超える事をするわよ」



女「──男の友達であるアタシが! 言ってあげるんだから! 絶対にそうなる!」



~~~


同級生「そんな記憶の端にしか残らない、人生の糧にすらならない、将来仕事につけば懐古程度の慰めモノで」

同級生「───君はどうして、そんなにも幸せそうな表情が出来るのかな」

男「……っ…」

同級生「答えられないのかい? ハッ、だったら良いよ訊いたりしないさ」

同級生(良いように言っちまったねまったく。性懲りもなく、謝れば良いものの)チラ


男「………」


同級生「もう、いいや。じゃ、さようなら」スッ


「待ってくれ!」


同級生「…ぇ…」

男「あ、あの、やっぱり俺は言わなくちゃ駄目なんだって、思うから…!」

同級生「ぇ、ぁ、へ、へぇ~~…じゃあ言ってくれるんだ?」

男「う、うん」コク


男「──俺ぇ! べ、別にイケメンのことスキじゃないよ…っ!?」

同級生「……え、何言って、」

男「だからねっ!?  気持ち悪いって思われるのもわかる! けどさっ? 仲良くしてる雰囲気は決してこ、恋人とかじゃなく…!」

男「嫌悪感感じちゃっても! そ、それはアイツが悪いっていうか! イケメンの奴がキモいって言うか!?」

同級生「? ?? っ!?」

男「え、えと、だからさ! 俺は違うの! ホモじゃないの!」

同級生「え、うん…」

男「何だその返事! わかってないでしょ…!! 絶対…!!」

同級生「い、いやっ! わかってる、よ…?」

男「全然わかってないわかってない! だって気持ち悪いって思ってるだから! もう既に相思相愛とか思ってるから気持ち悪いんでしょ!?」

同級生「んっ!?」

男「さっきいつまで続くとか思ってんの? とか言ってたじゃん! 刹那的な快楽のためにとかさぁー!」

男「俺だって思うよ無意味だよ! あ、アイツと恋人同士になっちゃったとかなーんの意味もない時間の浪費だよねぇーーーってさぁー!?」

同級生「……………」

男「だから教えるよ! 俺は、ホモじゃない! 全然違う! ただそれだけ言いたい! お願い信じて!」ペコォー

同級生「……」

男「……」ブルブル


同級生「…思ってない、ケド?」

男「本当にっ!?」バッ

同級生「あ、うん。ちょっと待って、少し頭の整理をさせてくれ、ん? あれ? ん~~~?」

男「…っ…っ…」

同級生「どうしてこんな会話してるんだ、僕達?」

男「えっ!? 同級生くんが振ってきたじゃん!!」

同級生「いや、僕はただ単に君の態度が気に食わないなって…」

男「そこだぁー! そこ! お、俺は至って普通に接してたよね!? あ、アイツの前で不自然な態度してたかな!?」

同級生「そ、そりゃまぁ…ニコニコと…楽しそうに…」

男「そんな馬鹿なッ!」ダンッ

同級生「あと、変にイケメンの顔色伺って…心配そうにしてたりとか…そういうのが気持ち悪いというか…」

男「うぐゅゅ~~~っ…ああいうのって駄目なのかよっ…そう見えちゃうのかよぉぉ…っ」カァァァア

同級生「う、うん…もう一つ言うなら、君が迷子になって心配しすぎてぼろぼろ泣いてたアイツも気持ち悪かった、ていうか…」

男「えっ! な、泣いてたの…?」バッ

同級生(あ。そういった青春的な反応も腹立つな…)

男「っ~~…今もぉっ…思ったでしょおぉお…気持ち悪いってぇぇ…っ」ブルブルブルブル

同級生「あ、ああ! まーね! そうだとも、気持ち悪いさ! だ、だからなんだよ文句あるわけ!?」

男「あるに決まってるよね!? 嫌だよ! 否定したいよ、こちとらそう思われながら修学旅行過ごしたくないんだよ!」

同級生「ハッ! 良いんだよ言い訳は、ホモだ何だ、冗談しちゃたちが悪すぎて笑えないんだよ!」

男「そりゃ笑えないね! 俺だって笑えない!」

同級生「君は一体何がしたいんだ? 僕に説教かい? それとも無駄な会話を続けさせにきたのかな?」

男「一切無駄ななんて無いね! もう必死だよこっちは! あーもーいい!」バッ


男「同級生くん! 良いから訊いて、最後まで訊いて!!!」


同級生「…な、なにさ」

男「俺がここにきたのは…! ちゃんと、君と会話がしたかったから来たんだ…!」

同級生(…うそをつけ、さっきはビビって何も言わなかった癖に)

同級生(浮ついた学生気分で修学旅行を満喫したいだけ、出来てない仲間はずれな人間を救ってあげたーい程度なんだろうが)



『そっか、よかった合ってたみたいで。ほら、あげるよシュークリーム』

『なっ──何が望みだ、金か? 金なのか?』


『俺はさ、もっとこの班の皆で楽しく修学旅行を楽しみたいと思ってるんだけど、やっぱり同級生君とおしゃべりしたいから』

『シュークリーム一個で仲直りできるなら、喜んで同級生くんに上げるって』



同級生「…要らないんだよ、そんなの」

男「えっ?」

同級生「会話なんて、言葉なんて、気持ちなんて。どうして一々気にして生きなきゃいけないんだよ」

同級生「どうして最初から出来ないやつだと思われて、気を使われなきゃいけないんだよ」



『ごめん、ぶっちゃっけるともっと卑屈で嫌な感じの人だと思ってた』

『…そりゃどーも、そう思われても仕方ないと思ってるよっ』


『──そういう風に自分の部分を認めてる所、俺は凄いと思う。本当に、凄いと思ってる』


同級生「他人なんて所詮他人だろうが。気に食わないから拒絶する、そこに何の躊躇いもない」

同級生「僕は僕で良いんだよ。そう、自分で認めてる。そうやって一人で完結しとくよ!」

同級生「君も! 他の奴らも全然僕には関係がない!」

同級生「いちいち構ってくるんじゃない!」

同級生「もう僕のことは放っておいてくれよ…!!」バッ



男「…あぁ、やっぱり【そっち】か」ニコ

同級生「…っ…な、なに…?」

男「うん。良かった本当に、同級生くんが俺が思った通りの人で」

同級生「なに、を言ってるんだ君は…」

男「あ、うん。あのね、別に俺ってホモだと疑われるとか、問いただしに来たワケじゃないんだ」


男「同級生君。…一緒に行こうよ、女子の部屋に」


同級生「は、はぁ? な、なんで僕が行かなくちゃいけないんだよ…っ」

男「……」

男「怒らないで聞いてくれたら嬉しい。今から、俺が思ったことを言うから」

同級生「………」ポカン

男「女子の部屋に言ったら周りを困らせる。だから、行きたくない」

同級生「…! ち、違う! それは君の勘違いだろ…! そうやって直ぐに人をわかったように言う奴大っ嫌いなんだよねェ…!」

男「凄いと思ってる。理解して否定を言える人は尊敬できるし、かっこ良く思える」

同級生「は、はぁっ? 違うって言ってるじゃないか! 馬鹿にしてると本気で怒るぞ…!?」

男「…怒れない。だから怒ったフリで拒絶する、口調が悪くなって喧嘩腰になる」

同級生「はぁ…はぁ…っ」

男「まだ言えるよ、多分…同級生くんが言うことに、俺は言い返せれると思ってる」

同級生「…どういう、つもりだよ…っ」

男「一緒、なんだ。思ってることと、言ってること。どうして違っちゃうのかなって」

同級生「!」

男「その間違いって、同級生君さ」


喉の奥がきゅうって、絞られる感じするよね。


男「それに、」


首の周りが冷たくなって、脳天から氷水を掛けられるような苦しさを感じたりしないかな。


同級生「…なんで」

男「俺もだよ、そうなっちゃうんだ」

男「つまんないことで意地を張って、また無駄なことを言い返して遠ざける」

男「俺の場合。それがそのうち、無言と無反応がデフォになってたりしてたんだ。なんの興味を持たなければ、苦しい思いなんてしなくなるって」

同級生「……」

男「だから分かるんだ。ごめん、わかったような事をいってる奴は君は嫌いだろうと思う」

男「けどね、言いたいんだ」


きっと、それは少しのことで。


男「案外、すんなりと言えるもんだよ。今まで言えなかったのはきっと、」


人生を楽しめる理由が見つからなかったから。


男「たったそれだけ。たったそれだけで変われるんだ、同級生君」


青春はきっとそばにある。


男「──シュークリーム、さっき買ってきたんだ。食べようよ、一緒に」

同級生「……」

男「…う、うん」

同級生「君は…きっとお人好しだと、周りから馬鹿にされるタイプの人間なんだろうね…」

男「言われたことあるよ、いっぱい」

同級生「素直に行き過ぎて辛くなかったかい」

男「もちろん」

同級生「…優しさが裏切られて、辛かったことはあるだろう」

男「そりゃたくさんね」

同級生「仲良くしたいと願うことも、全然、叶えなくなってきて」

同級生「頼る人も、頼ってくれていいと言った人も、みんな拒絶したこともあるのかな」

男「……」コク

同級生「ハッ! …ばかみたいだ、なんで君は笑って過ごせてる」


男「それを含めて青春だって、思えたからだよ」

同級生「…青春…」

男「うん!」

同級生「………」

男「食べる? ちゃんと嫌いな物は外してきたよ、ほら」


男「バニラ味。食べようよ、同級生君」


~~~


イケ友「おそいな~おとこちゃーん…」

女「…大丈夫なの?」

イケメン「お前が言うんじゃない。あれだけハッキリと言っておいて、ったく」

女「そ、そうは言ったって心配じゃない…! これだけ遅いとなんかあったのかって!」

イケメン「ふん。オレの予想で良いのなら、オレ程度の友達で良いのなら答えてあげてもいいが?」

女「ぐ…変に気にしてるわねコイツ…じゃ、良いわよそれで、今はどうなってんのか当ててみなさいよ!」

イケメン「フフン、ではご説明させていただこう」

イケメン「男君はきっと、女から言われたホモっぽい会話を気にして同級生くんを追いかけていった」

女「へっ?」

イケメン「あははー勿論知っていたのだよー聞かれていたことも、そして、お前が男君にいうこともな!」

女「コイツ…」

イケメン「だがね、きっと同級生くんも話題に乗っていけずに取り敢えず否定をするんだ」

イケメン「──そこからまた始まるボケ&ツッコミ、これにハズレは無し! 一発で仲良くなっちゃう寸法さ!」

女「…なんか腹立つわね、本当にそうなってそうで」

イケメン「だろうだろう。男くんでわからないことは、殆ど無いぞ!」

イケ友「ふーん…」ポケー

女「気持ち悪いわねほんっとに…」

イケ友「ねぇねぇ女っち」

女「ん、なによ?」

イケ友「あれ、男ちゃんじゃね?」ぴっ

女「え、何よ? もう部屋に居るの?」

イケ友「あ、すまね。おれっちの耳だけが拾ってたわ、ドアの外に居るべ!」

女「なにそれキモ! どうなってんのよ聴力!」

イケメン「あ、本当だ…そんな気配がするな…」

女「きんもぉおおおお!」

不良「どっちでもいい。開けるぞ、入れない様子ならな」スタスタ


ガチャ


不良「……」スタスタ

女「本当に二人だった? あたしの班の子じゃなく?」

不良「ああ、男と同級生だった」チラ


「…た、ただいま」


イケメン「おかえり男君! それで彼はどうした───」

男「…ここに、居るけど」ポリポリ

同級生「……」ギュウウウ


イケ友「およ? どったの、男ちゃんの腕なんか掴んで?」

男「それが…」チラ

同級生「う、うるさいな、僕の勝手だろ…」プイッ

イケ友「おぉぉうっ?」

男「ずっとこんな感じで…離れてくれないっていうか、あのね、もう皆居るしそろそろ…?」

同級生「…だ、駄目だ、緊張する…から…今にも…」ボソボソボソ

男「え、あ、うん…逃げ出して暴言吐きそうだから、掴ませておけって…?」

同級生「っ……っ…っ…」かぁぁぁ

男「──だ、そうです、ハイ」



イケメン「………」ぽかん

【デレました。】


第二十五話『セイシュンへのナカマイリ』

女子の部屋

イケ友「なあなあ男ちゃん! トランプしようぜトランプ!」

男「良いよ。じゃあ俺が切ってから皆に配るから…」

ぐいっ

男「……」

同級生「……」グイグイ

男「あの、同級生くんっ?」

同級生「……なにさ……」ボソリ

男「手を離してもらわないとカードを切れないって言うか…」

同級生「……」ぎゅっ

男「あー…うん、えっとイケ友? ごめん、俺の代わりに切ってくれないかな…?」

イケ友「お、おう」

男「ありがと」

同級生「……」

男「あのさ、同級生くん…そろそろ落ち着いてきた…?」ボソリ

同級生「……り…り…」

男「えっ? な、何?」

同級生「……無理無理無理だから、絶対に離せるワケないだろ、離したら話すぞ、滅茶苦茶暴言言っちゃうんだからな……っ」

男(顔が超必死…)

同級生「…っ…っ…」

男「その、俺としても無理をさせてまで居させるつもり無いからねっ?」

同級生「……」チラ

男「駄目そうなら駄目で良いんだってば…」

同級生「…君が、言ったんじゃあないか。来た方がいいと、居た方が良いと」

男「えっ?」

同級生「なら居なくちゃ駄目じゃないか、逃げちゃ、なにも……変われない、だろ」

男「同級生くん…」

同級生「信じ、たいと思ってる…君が僕に言ってくれたことを…こんな僕を真面目に理解して、言ってくれたことを…」ブルブル

同級生「───なら、最後まで頑張らせてくれ…っ」ギュッ

男「……」

男「うん、わかった」ニコ

同級生「……あ、ありがとぅ…ござい、ます…」

男「取りあえず、敬語は取りあえずやめようよ…」

同級生「…はい…」ブルブル

男(駄目だ、俺の声が聞こえてない。必死に耐えてるんだ、この状況を…)


~~~


女「凄いわね…」ハァ

女(人の雰囲気ってああまで変わるモンなのね…びっくり…)


イケメン「」ずもももももももも


女「アンタもアンタで悪人顔過ぎるわよ、ちょっとは気をつかえっての」

イケメン「あ、おおっ、うっ、…少し呼吸が止まってた気がする…」

女「んで? この状況は至ってアンタの望んだとおりの結果になってるのかしら?」

イケメン「………」

女「まぁ顔見てりゃ分かるケド、くっく、どーしたのかしら? もしかしてもしかして~? あたしの言った方の結果だったのかしらっ?」

イケメン「……正直に言う」

イケメン「予想以上だった。彼がここまで男君に……これっぽっちも思ってなかった、と言える」

女「あっそ。なら、どーするわけ?」

イケメン「……」

女「ま、別に悪いコトじゃないしね。否定はしたけど皆仲良くわいわいってのも、悪い話じゃないし」

女「あんたがどんな結果を望んでいたのかは知らないけど、とにかく、後であたしの班の連中も来るし…」

がし

女「? なによ、離しなさいってば」

イケメン「待ってくれ」

女「何を?」

イケメン「…やばいんだ」

女「…何が?」


ぶるぶるぶるぶる

イケメン「───身体の、震えが、止まらない」

女「はっ?」

イケメン「どう、しよう。まずい、この感じはもの凄くまずい、アレだよ! 女!」

女「な、なによっ? なにがどうしたってっ?」

イケメン「昨日の不安が、ぶりかえしてきてる…! やばい、これは予感だが絶対に当たる予感だ…!」

イケメン「なにもかも───なにもかも、だ。やることなすこと全て空回りして、失敗する流れだ、わかるんだよ女、この雰囲気が…っ」ガクガク

女「一体何を言ってんのアンタ…? 大丈夫…?」

イケメン「あ…ああ、大丈夫だと思う、オレはちゃんと相談して、彼に納得してもらって、慰めてもらって、ディズニーランドでちゃんと…」

女「よ、よくわかんないけど、気になってるんだったら話しかけてきたら良いじゃない…」

イケメン「……」

女「この前の馬鹿みたいな相談事だったら、目つき悪男に言えばすむ話でしょ?」

イケメン「そう、思うけどな。だけど…いや…悩んでいたって仕方ない、よな」

イケメン「ちょっと彼と話してくる。ああ、これできっと平気なはずだ…」


ふらふら…

女(急にどうしたっていうのよ、あいつ)

女(…修学旅行から変に、目つき悪男のこと気にし過ぎよね。以前まではわりかし自然体で居たと思ってたのに)

不良「どうした?」

女「はい? ああ、アンタか。別になんでもないわよ」フリフリ

不良「そうか。イケメンの奴がどうかしたのかと思ったが。俺の気にし過ぎか」

女「! …アンタもそう思う?」

不良「ん、まあな」

女(こんな知り合って間もない奴に言われるほどか…)

~~~

イケ友「ん~~~? んんっ! これっしょ!」ぱしっ

男「残念だったね、それババ」

イケ友「どぅあああああっ!!?? マジかよくっそぉおおお!!」ごろろー

男「あはは、じゃあ次は同級生君のを俺が───」

同級生「……」スッ

男「同級生くん!? 自分の手札を俺に見せちゃ駄目だよ!?」

同級生「だ、だって見せなきゃ君が勝てないじゃないか…」

男「そんなに勝ちに拘ってないから! 駄目だってば…っ…ちゃんとババ抜きをしようよ…!」

同級生「ううっ…駄目な僕で申し訳ない…っ」うっうっ

男「どうして泣くのさ…泣かないで頑張ろうよ、さっきは順調にトランプ出来てたじゃん。急にどうしたっていうの…?」

同級生「…こういうのは、悪いんだな」

男「えっ?」

同級生「君が楽しそうに、コイツとババ抜きをしていたのを見てたら…」

同級生「…ぼ、僕もだな…楽しませて、あげたらなって、思ったんだよ…」

男「…あ…」

男(まさかアレは、手札を俺に見せたのは───)

男(同級生くんの、ギャグ、だったのか…? そんなの全然わからないよ! めっちゃ真顔だったのに!)

同級生「……」ズーン

男(落ち込んでる! すっごい落ち込んじゃってる! やばいやばい、ちゃんとフォローをしないと…っ)


イケメン「な、なあ男くーん…?」

男「っ…ちょっとお前は黙ってて!」バッ

イケメン「え」

男「むむむ」

イケメン「いやっ! その、ねっ? ちょっと君と話しておきたいことがあるっていうか、」ソワソワ

男「…後にしろって」

イケメン「後じゃ駄目なんだ…! 今、今じゃないとオレは…!」

男「だぁーうるさい! 今は同級生くんのことを考えてんだよ! 黙ってろ!」カッ


イケメン「」

同級生「!」ぱぁぁぁあ


男「あ…ご、ごめん…急に大きな声を出して…びっくりしたよね…?」

同級生「いや、フフッ、良いんだよ、別に、フフフッ」

男(何故に嬉しそう?)

同級生「…そうか、コレが想われるって奴か…なるほどなるほど…」ほくほく

イケメン「」

イケメン「っ!!」カッ

イケメン「──溺れるな…この感情は既にオレは克服している…ッ!」ぎゅっ


女(あ。持ち直した)ポリポリ

不良(持ち直したな)ぼりぼり


イケメン「男くん」きりっ

男「な、何だよさっきから。どうしたイケメン、もしかしてお前もトランプやりたいの…?」

イケメン「勿論やりたいよ。けどね、その前にちゃんと君に言っておかなくちゃいけないことがあるんだ」

男「言っておかなくちゃ、いけないこと? なんだそれ?」

イケメン「……」チラ

同級生「っ!」びくっ

イケメン「彼と仲直りできたんだね」

男「え、お、おう? まぁその通りだけど…」

イケメン「そっか。それは良かったよ、君が彼を心配していたことをオレは知っていたからね───」

イケメン「───君の望みが叶えられたようで、オレとしても凄く嬉しいよ。やっぱり君は凄いやつだ、友達でよかったよ」ニコ

男「………」

イケメン「うんうん」ニコニコ


女(褒めて入り込もうとしてるわけか…)

不良(良い手だ、しかしどうなるか…)


男「いや、待って」

男「なんで俺が同級生くんと仲が悪くなってるって知ってんの?」

イケメン「え?」

男「俺は確かお前には、居なくなった同級生くんを探しに行くって言っただけだよな」

イケメン「あ…」

男「じゃあどうして『仲直りできた』と分かった風に言えたんだ────」ハッ

イケメン「……」だらだらだらだら

男「お前…」

イケメン「ち、違うんだ、その想像はそう! 君の勘違いなんだ…っ」

男「……………………」じぃー

イケメン「う、うん…っ…決してオレが影で何かをしてたとか…そういうことはね、全くね…無いっていうか…」ソロー

男「イケ友」

イケ友「あいよー?」

男「イケ友なら、知ってて知らないふりをして、本当にダメだった時に言ってくれる奴だと俺は思ってる」

イケ友「ん」コク

男「そこで訊きたいんだ。これ、イケメンのやつ許していいか?」

イケ友「なははー! ちょい難しい質問よなぁ、おれっちメンドイの嫌いだし。正直喧嘩になるなら、放っておきたい感じっすな」

男「うん。それで?」

イケ友「男ちゃん」


イケ友「男ちゃんが許せねーって言うんだったら、おれっちも味方だ。ぶっちゃけやり過ぎだぜ、イケメン」


イケメン「……うっ…」

同級生「…っ…? な、なんで不穏な空気になってるんだ…?」わたわた

男「同級生くんは良いんだよ、気にしないで。全部悪いのはコイツだから、全くもってね」

イケメン「………」シュン

イケメン「…男くん…っ」

男「…俺は本気で仲良くしようって思ってた」ボソリ

男「それが全部さ、お前が考えた通りのストーリーって奴なら嫌な気分になる」


男「怒るぞ、イケメン」


イケメン「────」


ゾクゾクゾクゾクッ


イケメン「───……ごめん、なさい」


~~~


女「はい、おかえり」

不良「おかえり」


イケメン「」チーン

女「こっぴどく叱られたわねぇ、見てて悲惨だったわよ」

不良「だな」

イケメン「へへ…もうダメだぁ…オレは誰にも見てもらえねえやつだぁ…」

女「いい気味ね。少し調子に乗りすぎたって、謝れば許してもらえたかもしれないのに」

イケメン「……」

女「わざわざ争いごとになる切っ掛けを、アンタが作るから悪いんじゃない。同じ班に無理やりさせて、ばっかみたい」

イケメン「…それが、正しいと思えたからだ」

女「友達として? 違うわよ、そんなのまったく友達なんかじゃない」


女「同じ立場で考えて、同じ歩幅で、同じ道を一緒に歩いて行くのが友達ってヤツよ」


イケメン「……」

女「勝手に先に歩いてって、道を作ってあげちゃってる奴が友達? 寝言は寝て言いなさい、変態」

イケメン「…何が悪かったんだ、いつも通りやったつもりだった、彼の為を思ってやったんだ…」

イケメン「彼の望む青春のために、これまで幾つものことをやってのけた。確かにバレてしまっては怒られると思ってたが…」

イケメン「…どうしてだろう、どうしてオレはここまで…」

不良「……」

不良「悪いと思うのは罪悪感があるからだろう」

イケメン「え?」

不良「俺を班に入れた切っ掛けもまた、男の為だったとお前は言ったな」

不良「悪いことじゃない。だから俺を誘ったのだろうし、その時もまた罪悪感がなかったに違いない」

不良「ここまでやり切れるお前のことだ。これまでも数多くの事をやってのけたのだと思う、だがなイケメン」

イケメン「…うん」

不良「今は辛いんだろう。だからボロが出た、お前の考えに罅が入った」

不良「怒られても良い。アイツのためだったからと、支えていた考えは今では通用しない。今のお前の中では、だ」

イケメン「…どうして?」


不良「言っただろ、女が。今のお前は、男と同じ立場で居たいと思ってるはずだ」


イケメン「…同じ立場…」

不良「相手の幸せばかり考えるな。自分の幸せも考えろ、じゃないと一方的な押し付けは…友達じゃない、嫌われる要因だ」

女(…滅茶苦茶語られてる…不良に諭さられてるわよコイツ…)

イケメン「それは、違うよ不良くん。彼と一緒にいられるだけで、オレは幸せなんだよ…」ギュッ

イケメン「だったら! オレとしては頑張らくちゃいけないじゃないか…!」

不良「…それは、」


不良「友達か?」


イケメン「…ッ…」

不良「思い出があるなら、」

イケメン「…っ…?」

不良「お前が頑張るための思い出があるのなら、それを思い出せ」

イケメン「どういう…」

不良「少し、間違っただけだ。まだ間に合う、お前は【まだ】間に合うはずだ」

イケメン「…………」

不良「もう一度言う。思い出せ、お前はどうしてアイツと一緒にいたいと願ったんだ?」

イケメン「オレは…」

ぎゅっ

イケメン「…何時かちゃんと珈琲を…一緒に笑いながら…飲みたいと…」

女「……」

イケメン「そんな、そんな友達となって、彼と同じ空間で…っ」

不良「……」



イケメン「───ただ、一緒に居たいだけなんだっ」



不良「ん」コク

女「ま、ちゃんと納得できたんなら謝んなさい。色々とごちゃごちゃするぐらいなら、正直にぶっちゃけたほうが楽よ変態」

イケメン「…ああ、そうだな」


ガチャ


女友「たっだいまー!」

金髪「あー疲れた…」

マネ「よっしゃあああああ! いっぱい靴がある! キテるだろー? きてるだろぉおおおお」

女「やっと帰ってきたバカたち…一体何処まで買い物に行ってたのよ!」

女友「いやねー参っちゃうよ、ほんっと。迷子になるとはこれっぽっちも思ってなくてさぁ~」

金髪「マネが悪い」

マネ「えぇ~ウチですのぉ? 金髪ちゃんだって女友だって、ウチの言うこと信じたじゃない!」プンスカ


ガサリ


イケメン「…それは?」

女友「ああ、これ? 皆におみやげだよー、おわぁー!? イケメンくぅんがいるぅーーー!!」

金髪「今頃かよ…」

マネ「イケメン君何か欲しいのある? いっぱいあるよ。お菓子とかージュースとかーあとあとはぁ~」ゴソゴソ

イケメン「あ…」

イケメン「そ、それが欲しい!」

マネ「およ?」

イケメン「す、すまないが、それをもらってもいいかなっ?」

マネ「これっすか? これは確か珈琲…」

イケメン「あ、ありがとう!」ぱしっ

マネ「あっ」

イケメン(後は彼に──)


イケメン「男くん!」


男「……」ツーン

イケメン「ご、ごめん本当に……君を利用したような風に思われても仕方ないと思う…でも、信じて欲しい、オレはちゃんと…っ」

イケメン「君と…友達で居たいんだ。その気持は嘘じゃない、本気でそう願ってるんだ…!」

男「……」

イケメン「オレはね、男くん」


イケメン「あの日飲めなかった珈琲を、君と一緒に飲みたいだけなんだっ!」


男「…珈琲?」

イケメン「い、今から全部語っても多分語りきれない…でもわかってほしい、たったそれだけの想いだけで…こんな無茶をしてしまった…」

男「……」

イケメン「だから、ただ一つだけ言いたい」

イケメン「ごめん。仲直りしたい、許して……欲しい、この通りだ」


ぺこり


イケメン「…この珈琲を受け取ってくれ…」ギュッ







ぱし




男「……」

イケメン「おと、男くんっ!?」バッ

男「…飲めばちゃんと反省するんだろうな」

イケメン「す、するする! ちゃんとする!」

男「反省だけじゃないぞ。同級生くんにも謝るんだ、あと周りを巻き込んだことを謝ること」

イケメン「やります! 絶対に謝ります!」


女友「どういう状況なの…?」

女「馬鹿やってんのよ、男ってそーいうもんでしょ」

金髪(女が言えるセリフじゃないよな…)

マネ「ん~~…良いのかなぁ…?」


男「そうか。じゃあ、…まぁ、許してやらんでもない、かな」カシュッ

イケメン「ありがとう…ありがとう…!」

男「最初からみんなで仲良くしたいから、手伝ってくれって言えば良かっただろ。ソレぐらいで済む話だったじゃんか」

ゴクゴクゴク

男「ぷはぁ、違うか?」

イケメン「その通りです!」

男「うん。だからさ、変に俺に対して隠し事するのはやめろ」ゴクゴク

ぷはぁ

イケメン「すみませんでした…っ」

男「……」ゴクゴク

同級生「ん、これって、この銘柄どっかで…」

イケ友「あり? ちょい待ち男ちゃん、それ…」

男「ぷはぁーっ!」


男「ひっく」


男「…お前が秘密主義で、誰に対しても本音を言わないは知ってるよ」ボソリ

イケメン「…ごめんね」

男「でもさ、俺は違うって言ったじゃん。俺はちゃん見てやるって、言ってやるって、突っ込んでやるってさ!」

イケメン「……?」

男「俺は…俺は…悲しかったんだよ、悔しかったんだよ、俺はやってやるって言ってんのに…どぉしてお前が…っ」

男「ふぇぇ…」

イケメン「男くん…?」

男「俺ぇ…ちゃんとイケメンのこと見てたのにさぁ…なんでだよぉ…どうして信じてくれないの…?」ひっくひっく

マネ「あちゃー、やっぱこうなるのか…」

女「え? なに? どうなってんのこれ?」

マネ「あれ、珈琲だけど一応アルコール入ってんだ。ちっとばかしだけど」テヘペロ

女「なにやってんのアンタ!?」

マネ「止めたよ~? でもイケメン君が持ってっちゃうからぁ…」

女「そもそも買ってくんな!!」


男「うっ…うっうっ…」ぽろぽろ

イケメン「男君、そんなことを思ってたなんて、本当にすまない。オレはちゃんとこれから…」

イケメン「ちゃんと! 君と一緒の歩幅で歩いて行くって決めた! もう同じアパートでも住もうか!」

男「───………」


男「ほんとっ?」でれぇ

イケメン「え、うん! あれ、突っ込みが来ると思ってた…」

男「じゃあじゃあ、俺がご飯作るから、お前がお風呂とか洗って、もちろんトイレもだぞっ?」ニコニコ

イケメン「…もしかして、酔ってる?」

男「んー? わかんにゃい!」


【デレデレタイム、続きます。】


第二十六話『お酒は二十歳を過ぎてからというツッコミは野暮』

イケメン「──……」

男「にへへ」

イケメン「お、男くん大丈夫なのかいっ?」

男「なんだよ、大丈夫に決まってるだろ? 馬鹿なこと言うなーイケメンはなー」ニッコニコ

イケメン(見たこともない満面な笑みで返された…)

イケメン「と、取り敢えずだ!」

イケメン「…取り敢えずどうしたらいい?」

女「あ、あたしに聞かないでよ!? 飲ませたアンタが悪いんじゃない!」

イケメン「そ、そう言ったってオレにだってどうしようも…!」


イケ友「まずは水っしょ」

不良「だな」


イケメン「へ?」

イケ友「水飲ませてアルコールを胃の中で薄めるのが一番じゃね?」

不良「同級生が買いだめしていたやつがあるだろ。ソレを持ってくる」

イケメン「…なんだか偉く慣れてるな、酔っぱらいの対処に」

イケ友「なはは。そりゃ飲んで──いや、なんでもない! とにかく普段おとなしい奴が酔っ払うととんでもねーことしっちゃうこともあるし」

イケメン「…なんだか偉く慣れてるな、酔っぱらいの対処に」

イケ友「なはは。そりゃ飲んで──いや、なんでもない!」

不良「……。とにかく持ってくるぞ」スタスタ

女(普段から飲んでるわねコイツ等)

イケ友「とにかく普段おとなしい奴が酔っ払うととんでもねーことしっちゃうこともあるし、まずは落ち着かせようぜ」

イケメン「わ、わかった。イケ友の言葉に従おう…」


男「ふぁ~…身体がふわふわする…」


イケメン(大丈夫だろうか…)

女「アンタたちも何か飲み物買って来なさい。取り敢えず身体に良さそうな奴!」

女友「うぇ~あちしのせいじゃないのにぃ~」

金髪「…お前の金で出せよ、マネ」

マネ「えー!? なんでだよぉーー!!!」

女「ごちゃごちゃ抜かすんじゃない! 早く行って来なさいあんぽんたん共!」

イケ友「イケメンイケメン、ちょい良いか?」

イケメン「ど、どうした? オレで何かすることがあったら何でもするが…っ?」

イケ友「うむ。じゃあ男ちゃんが暴れないよう、ちょっち話しかけてくれね?」

イケメン「暴れるのか!?」

イケ友「さっきも言ったけど、大人しい奴が酔っ払っちまうと派手に騒ぐことが多いんよ。教師に見つかったらヤバイっしょ?」

イケメン「話しかけるだけで、良いのか?」

イケ友「モチのロン。イケメンなら余裕っしょ、そーいうの」ニッ

イケメン「…わかった、頑張ってみる」


スタスタ


イケメン「男くん…」

男「ふぁい?」とろぉん

イケメン「その、なんていうかな、そうだ! 修学旅行は楽しめてるかいっ?」

男「……」ぽやぁー

イケメン「高校生で最初で最後の修学旅行だ。できれば君にとって最高の旅行で有って欲しいとオレは思って───」

ぎゅっ

イケメン「うっひゃいっ?!」

男「…もちろんだって、イケメン」ギュッ

イケメン「ど、どどどぉっ、どうして、腕を掴んで、んっ!?」

男「俺、凄い楽しんでるよ。こんなにも楽しいって思えるの、初めてだって言いたいぐらい…びっくりするほど楽しいんだ…」

イケメン「あ、えっ、あ、うんっ!」

男「それも全て、お前のお陰、なんだろうなって」かぁぁ

イケメン「───……」

男「ありがとぉー…そう何度だって言いたい、お前にありがとうって…言いたいんだ俺は…」じぃー

イケメン「………」

イケメン「……っ……」カァァァ

イケメン「そ、そうなんだ……それは本当に良かった、というか…その、うん…っ」

男「イケメン…」

イケメン「はい!」

男「イケメンはちゃんと、楽しんでる? 俺みたいに、一緒にたのしいって言える?」

イケメン「も、もちろんだとも! 当たり前さ! 思いっきし楽しんでるよ!?」

男「……」じぃー

イケメン「っ…っ……っ…」ドキドキドキ

男「そっか」にへぇ


男「えへへ、そっかそっか! んふふ、そっか!」にぱー


イケメン「………」

イケメン「フンッッッ!!」バッ

男「あっ!」

イケメン「急に腕を放してゴメンよ、少しばかり急用を思い出したんだ。悪気はない、許してくれ!」ダダッ

男「……?」


ダダダダッ


イケメン「……」スッ

女「な、なによ此方に戻ってきて…目つき悪男は落ち着いたわけ…?」

イケメン「一つ言おう、オレのほうがやばかった」ダクダクダク

女「あんた…本当にどうしようもないわね…」

イケメン「し、仕方ないだろ!? 彼処まで彼が素直にッ、なってしまえばオレがどんだけ嬉しいと思う!?」ダバー

女「知るか変態! だぁーもう良いわよ! アンタじゃ任せらんないわ、あたしが行ってくる!」バッ


~~~


女「ちょっと目つき悪男」

男「ぁ…ぇ…?」

女「ちょ、ちょっとあんた本気で大丈夫なワケっ? 目が虚ろじゃないの…! とにかく座りなさいよ!」

男「う、うん、何だか身体がふわふわして…地に足がついてないような気分…」ストン

女(完全に酔ってるわね。どーせなら一発、頬にぶちかまして正気に戻したほうが早いんじゃないかしら)ストン


スッ


男「う…ん…」コテン

女「ひゃぁああーーーーー!!!???」ビックゥウゥゥゥ

男「あ…ごめん…ちょっとふらふらして…まだ寄りかかってても良いかな…」ぽやぁ

女「あっ、えっあっ!? う、うん…っ! 別にっ、イイケドッ?」

男「…ありがと、優しいね女さん」クスクス

女(何笑ってんのよ! というか距離が近い! んぐゅゅゆゆゆ~…ッ)

男「あの、さ。女さん」

女「殴っちゃダメ殴っちゃダメ──え、な、何よ?」

男「一つだけ言ってもいいかな、ちょっとしたことなんだけどね」

女「え、あ、うんっ?」

男「……」ニコ

女「…?」

男「髪、綺麗だねやっぱり」

女「へっ?」

男「以前から思ってたんだー…凄くサラサラしてて、なんだろう、陽の光で光ってる時もあって…」

男「ずっと、ずっとずっと、前から──言えたら良いなって、思ってた」

女「あっ…うっ…なに、よっ…それっ…」パクパクパク

男「だから、綺麗だなぁって。触ってみても良い?」

女「ばっっっ!!? さわっ、触るぅー!? んなこと許すわけないでしょあんぽんたん!」

男「あ…」ビクッ

女「…あ…」

男「そっか、ごめん…俺って変な事言ってたよな…」

女「そ、そうよ! まったく変態みたいなこと言って、あたしを辱めたいだけじゃ───」チラ


イケメン「……」じぃー

イケ友「……」じぃー


女(なによその目はぁ! 酔っ払い相手に容赦無いな、みたいな感じ!)

女「ぐっ…」

男「……」ションボリ

女(で、でも、確かにコイツが素直に何かしたいって、初めて聞いた気がしないでもない、けどっ)ぎゅっ

女「……じゃ、じゃあ、あれよ…っ」ボソボソ

男「え?」

女「ちょ…ちょっとだけ、なら別に…構わないっていうか、あたしも許せるっていうか…」プイッ

男「良いの? 触って、も?」

女「良いって言ってるじゃない! け、けどっ……ちょっとだけ、よ?」

男「うん! ありがとう!」

女「ばっ!? か、感謝なんて要らないわよ別にっ! いや! 違くて、そうよ! ありがたく思いなさい! ええ存分に!」

イケメン(滅茶苦茶だな言い分、聞こえないふりしとくけど)

男「じゃあお言葉に甘えて…」

女「ぁ…うっ…!」


スッ


男「………」さわさわ

女「あっ」ぴくん

男「……」ナデナデ

女「ひっ、あっ、んっ! んん~~~っ!」ギュウウウウ

男「……」きゅっ

女「ひぁああああ!? っ…っ…っ…ど、どうよ…? な、なんか分かったことでもあったのかしら…ッ?」ブルブルブル

女(──あ、しまった、こういう時ってコイツ馬鹿正直に答えるんじゃなかったっけ──)ハッ

女(きっととんでもないことを抜かし始めるわッ! その前に止めッ)

男「なんていうか、その」

男「好きだな、この感触。って思った」ニコ

女「──……」ぼっ

女「あ、あれっ? あたし、ちょっと何だろえっ!? なんで顔が真っ赤になるわけ!? そんな感想で!?」カァァァ

男「好きだよー…」ニヘラ

女「ばっ!! うぅうぅ~っ…!! 端的に言うんじゃにゃいッ…! 髪が、好きって言いなさいよ…ッ!」

男「髪も好きだよ?」

女「…も?」

男「だって、そんな女さんが好きだから」

女「……」ぽかーん

男「えへへ」

ぎゅぐぐぐぐぐッ

女(は、はは、わかって、る、わかってるのよ、髪だって、勘違いだって、でもッ!)ばっ

イケメン「ん? ちょ、待て! 女! 殴るんじゃな───」

女「あんぽんたぁーん! もう止められるわけ無いじゃ───」シュバアアアア


ガララ


不良「ただいま。さっき廊下に、喘ぎ声が響き渡ってたぞ。誰だやってるやつは」

女「たぁああああああああいッッッ!!」ブォン!

不良「ふむぐぅっ」ドスン ゴトリ…

女「はぁ…はぁ…な、なんとか行き先を修正したわ…っ」

イケメン「不良君! ふりょうくぅうううんんんん!!」

不良「」チーン


~~~


女「やばいわね…理由が付けられないヤバさがあったわ、これ」

イケメン「だろう。やすやすと近づけば、ものの見事に刈り取られるぞ。精神を」

イケ友「ちょちょちょ、男ちゃんに水のませよーぜっ?」

女「……。じゃあアンタが行って来なさいよ、アンタならきっと平気よ」

イケメン「あ、確かにな。イケ友ならすんなり飲ませられるんじゃないか、オレ等は不良くんの様態を見てるから」

イケ友「あのよ、ただ単に水飲ませるだけだぜ? 何をそこまで怯えてんだ…?」

女「るさいわねッ! いっちょ前に常識気取ってるんじゃないわよアホ!」

イケ友「お~…わからんけども、んじゃおれっちが行けばいいわけな」


すたすた


イケ友「男ちゃん男ちゃん」ツンツン

男「んー?」グビグビ

イケ友「おっとと、そりゃもう飲んじゃいけないぜ。コッチ飲みな、こっちのやつ」スッ

男「…なんで?」

イケ友「今はいいかも知れんけどな、そのうち気持ち悪くなるんよ。だったら水を飲んでたほうがいいっしょ?」

男「…やだ」

イケ友「おれっちもやだ」

男「…イケ友はそうやってすぐ、自分の意見を押し通す」むっすり

イケ友「そりゃおれっちが正しいことを言ってるからだ」

男「じゃあ、何時もイケ友は正しいのか?」

イケ友「少なくとも今はそーじゃんか。男ちゃん、ほれ大人しく見ず飲んどけって」

男「………」

イケ友「ん」スッ

男「………」

イケ友「よし、わかった。じゃあ無理やり飲ます」パキュ

男「んっ! むぐぐ、んん~~~ッ!!」ジタバタ

イケ友「ほれほれ~この筋肉ちゃんに敵うかな男ちゃんわ~無理だろうなぁ~おれっち強いもんなぁ~」ぐりぐりぐり

男「むぃいいぃいいっ」

イケ友「おらーーーー!!!」ジャボジャボジャボ

男「や!」


カン! バッシャー!


イケ友「あ、酒が!? ちょ、くそー…かかっちまった…」ポタポタ

イケ友「髪がびっしょりだぜ…あ、男ちゃん無事だったか?」ポタポタ

男「……」じぃー

イケ友「お。良かったな、ほとんどおれっちにかかってたみたいで。うしうし」ぽたり

男「んっ」ぺと

イケ友「おっと、ほっぺたに付いちまったか。すぐ拭いてやるから待っててちょ」ゴソゴソ

男「イケともぉー…」

イケ友「おう?」


ペロ

男「」

イケ友「髪がびっしょりだぜ…あ、男ちゃん無事だったか?」ポタポタ

男「……」じぃー

イケ友「お。良かったな、ほとんどおれっちにかかってたみたいで。うしうし」ぽたり

男「んっ」ぺと

イケ友「おっと、ほっぺたに付いちまったか。すぐ拭いてやるから待っててちょ」ゴソゴソ

男「イケともぉー…」

イケ友「おう?」


ペロ


男「えへへ」ニマー

イケ友「ちょ、男ちゃんそれおれっちの髪から…!」

男「ううん、気にしない、それに汚くないよ。それとやっぱりこっちのが美味しいね」ニコニコ

男「──ね、まだ飲み足りないから、イケ友も飲もうよ……、ね?」

イケ友「………………」ポタポタ

イケ友「…飲んでも良いか、別に…」ボソリ

男「本当にっ?」

イケ友「え? あ、いやっ! な、なはは! 冗談っつの! じょーだん! 馬鹿言うんじゃねーってば!」

男「…飲まないの?」

イケ友「へっ?」

男「…飲みたくない、の?」

イケ友「………」ドキ


男「俺は飲みたいよ。イケ友と一緒に、さ」


イケ友「───………」メキッ ぶしゅうううう


~~~


イケ友「…マケタ…」ズーン

女「何に負けたのよあんたは…」

イケ友「なんかすげー惹かれちまった、とんでもないぐらいに一緒に飲みたいって思っちまったぁ~…このおれっちが…いともたやすくぅ…」

イケメン「なんか口説かれてるみたいになってたな、イケ友」

女「そ、それでどーすんのよこの状況…」

イケメン「どうするかと聞かれてもな…」

イケ友「しくしく」

イケメン(別に心配するほど騒ぐ様子もないから、放っておいてもいい感じではある、が)

イケメン「なあ、思うんだが。このまま遠くから彼を見守るって作戦もアリなんじゃないか───」チラ



男「……」じぃー

同級生「……」じぃー



イケメン「あの二人はマズくないかっ!?」

女「へっ? あっ! わ、忘れてた! ぜんぜん気配させないからどっか行ってたのかと…!」

イケメン「よくわからないが…っ…とにかく一番危険性が高い組わせに感じる…っ」

女「あんたが止めてきなさいよ変態! あ、あたしは嫌だからね近づくの!?」ぐいぐい

イケメン「ええっ!? お、オレが…!?」

女「友達なんでしょ並び立ちたいんでしょ!? だったら責任持って立ち向かいなさいよー!」

イケメン「お前だって友達とか何とか行ってたじゃないか…!」ぐいぐい

女「あ、あんたちょっ、コラッ!? なに急に弱気になってるワケ!? 何時もみたいにアホ面引っさげて突っ込んできなさいってば!!」


男「同級生くん」ストン

同級生「…な、なにさ」


イケ友「は、話しかけちゃったぜ!? どーするんよ!? 止めるんか、止めるんならおれっち飛び出すぜ!?」

イケメン「ぐぉぉ…っ」


男「えへへ」にぱー

同級生「き、君さ、気づいてないかもだけど…酔っ払ってるよね?」

男「へ? むふふ、酔っ払ってる?」

同級生「そう。酔ってるんだよ、それは…」

同級生「そのお酒を飲んだせいで、君は普段より笑うようになってるんだ」

男「……?」ポケー

同級生「…ほら」スッ

ぴと

男「うひゃっ」ビク

同級生「冷たいだろ、僕の手。君の顔が真っ赤だから、真っ赤になるぐらい熱いから、冷たく感じるんだ」

男「…つめたい…」

同級生「うん。そう、冷たい」コクコク

男「…うん、確かにつめたいね…」コテン

同級生「別に、今の君が悪いなんて言わないよ。そうやって楽しそうにしている君を見てると、…一度信じようと思ってしまったから」

同級生「見ててこっちも楽しい気分になる。悪い気はしないさ、けどね」


同級生「──それを端から見て、なにもしないで側にいることは、僕には出来ないね」


男「どういうこと…?」

同級生「ん。そら立って、酔っていても真っ直ぐ立つぐらいは出来るだろう」ぐいっ

男「う、うん」

同級生「一体、何処まで買いに出かけたか分からないけれど──一度、どっかの馬鹿に買い出しに行かされたから、」

同級生「自販機が何処にあるかぐらいは知ってるさ。一緒に、買いに行こうか」

男「………」ぼぉー

同級生「外は寒いから、ほら上から羽織るもの探そう」


すたすた


イケメン「…ぁ、…ちょっと待ってくれ!」

同級生「何?」

イケメン「えと、その、今の状態の彼を外に連れだすのは…っ」

同級生「そうだろうな、でもそれが何?」

イケメン「いや、だから」


同級生「──飲ませたのは、お前だろ」


イケメン「…っ」

同級生「原因は全てお前の責任だけ、僕には全く関係ないじゃあないか。例え教師に見つかっても、お前を理由に切り抜けるよ」

イケメン「し、しかし、それだと女の班にも迷惑がかかるし、それに…」

同級生「……。くだらない言い訳を聞かせるために僕を止めたわけ? ハッキリ言わせてもらうけど、お前邪魔だよ」

イケメン「…邪魔、…?」

同級生「そお、邪魔」スッ



同級生「───【冗談】も休み休み言え、ボケ野郎」ボソ


イケメン「……っ……!」

同級生「さ、行こうか。自分たちの部屋に行けばマフラーぐらい見つかるだろ」

男「………」

同級生「ん、どうした?」

男「………」じぃー

同級生「?」チラ


イケメン「…」ギュッ


同級生「気にしないで良いって。さっき言った通り、コイツが全部悪いんだからな」

同級生「勝手に無理やり飲ませて、酔わせて、なのに一度困ったら放っておく」

同級生「どーにも癇に障る。コイツの語る全てに身勝手な感情がプンプンと臭う」

同級生「…一々、周りを巻き込まなきゃ物事を解決できないのかね」チッ

イケメン「…だったら、君がしていることはどうなんだ」

同級生「…何?」

イケメン「君が、今からやろうとしてることは周りに迷惑をかける行為だ。他人を巻き込んでいるだろう」

同級生「ハッ! 今度は責任転嫁かい? やめてくれよ、僕がしているのは人助けだ。馬鹿騒ぎじゃない」

イケメン「オレも押し付けるつもりはない。ただ、君がやらなくても他がやる。やらなくてもいい無駄な行為じゃないか」

同級生「おいおい正当化だけはご立派に申し立ててくるじゃあないか。一つ言わせてもらうが、君って何様なの? この班の王様なの?」

イケメン「状況をしる一人として、原因の発端として、一番良い落とし所に持って行きたいだけだ」

同級生「それが傲慢だって言ってんだよこっちはァ…! わからなのかな、あぁわからないから言えるんだろうね、そう平然とさ!」

イケメン「ああ、それが良い答えだと思ってるからね。君がここから男君を連れだすことは、なによりも駄目なことだと素直に思えてる」

同級生「何が? 一番彼のことを心配しているのなら、一番手っ取り早い方法で解決するほうが何よりも先決じゃないか?」

イケメン「そうだね。一番彼を心配しているのは、と、身勝手に物事を捉えてる人間よりは『周りを見ている』つもりだよ」

同級生「へぇ、そうなんだね。凄いね、尊敬しちゃうよ。──だから彼に嫌われて、怒られるんだろうよ、君という人間は」

イケメン「……何?」ぴく

同級生「ははっ! なんだい、君みたいな人畜無害を装ってる人間でも───ちゃんと人前でキレそうになるんだねェ」

同級生「みっともない。少しは、自分を鑑みることも出来ないのかなぁ?」

イケメン「…………」


イケメン「───【とりあえず】【こっちを】【向いてよ同級生君】」


男「……」ピク

同級生「…なんだよ」チラ

イケメン「ありがとう。それじゃあ、【今から君は】【オレと一緒に】…」


男「……」じぃー


イケメン「【この部屋から居な】……な、なんだい男くん?」

男「なにが?」

イケメン「えっ、いやっ、…そのオレのことを見てるから…」

男「………」

男「なんで、そんなこと言うんだろうなって」

イケメン「へっ?」

男「──どうして、二人で何処か行こうなんて言ったんだろうなって」

イケメン「っ……!」

イケメン(うそ、だ、凄い、一瞬でバレた。また【体質】を使おうと思ってたことを…)

イケメン(すぐに突っ込んできた…ああ…本当にキミは…でも…それでも…)


イケメン(オレは君の安全を優先に考える! ここはどうやってでも部屋から出さないようにする!)バッ


イケメン「ごめんね。とにかく同級生くんと二人で会話したいと思ってるんだ、だから」

男「やだ」ひしっ

イケメン「とりあえず──うぇいっ!?」

男「なんで、また俺を置いてどっか行こうとするんだよ。違うだろ、そんなの修学旅行じゃないだろ」

男「楽しく過ごすんだ。そうじゃなきゃ嫌だ、嫌だから離さない」ぎゅうう

イケメン(すっごい見つめられちゃってれる! わぁーどうしよう!)

同級生「あのさ、男君さ。君は酔っ払ってるから…」

男「…それが?」

同級生「どっちにしろこのままじゃいけないだろうから、とにかく…」

男「同級生くんも俺をほうっておくんだ」

同級生「ち、違う! そうじゃなくって、」

男「───俺はみんなで、ここに居る」

同級生「う…」

男「二人だけでどっか行こうとするんじゃない。行くなら行くで、俺も連れいてけ!」

イケメン「う、うーん…?」

男「なんで悩むんだ!? うっ…や、やっぱり俺がいたら邪魔なのか…っ?」

イケメン「ち、違うよっ? そうじゃなくってだねっ?」

男「そっか、だったら連れてって?」にぱっ

イケメン「んーーーッ?」

イケメン「だ、だからねっ? 男君…!」

同級生「僕が言いたいのはそうじゃなく…!」

男「なんだよなんだよ二人して…っ」ぷくー


女「…はぁ、なんだか面倒くさくなっちゃった」

イケ友「……」

女「どーしてすぐに、コイツ等は面倒な展開にするのかしら…ん?」

イケ友「ぷはっ」

女「ちょっと、アホ、あんた何やってんの…?」

イケ友「おれっちは、負けないんだぜ」ボソリ

女「はっ?」

イケ友「親友のピンチには駆けつけるのが男ってもんよ! だがしかァーしッ!」

イケ友「俺っちは今のおとこちゃんが苦手であるッ! 正直めちゃくちゃ悔しい! だからッ!」スッ

イケ友「…お酒の力を借ります」コク

女「馬鹿なんじゃないの!?」

イケ友「くっくっくっ、女っち。そりゃおれっちにとって褒め言葉よ!」ビシッ

女「ちょ、なにっ、本当に飲んじゃったわけ…っ?」

イケ友「おーよ! 不良っちとな!」

不良「意外とイケるな…」ゴクゴク

女「ちょっとーーーー!!!」

イケ友「んだから、ちょっくら行ってくるぜ!」だだっ

女「ばっ!!!? あ、本当に何やって…!!」


イケ友「三人とも待ちやがれってんだい!!」

男「むっ? イケ友まで俺に何か言いに来たのか…!?」

イケ友「おーよ! あったりまえよ! 男ちゃん、おれっちは言いたいことがある!」ビッシイイイ

男「あーなんだよ! 言ってみな!」

イケ友「ひっく、あのなぁ! 男ちゃん!」


イケ友「男ちゃんはおれっちの親友だ! 誰にも渡さん、絶対にだ!」

女「ちょ、アホ、あんた何言って…」

イケ友「事実だ! 苦手なままであることは親友のおれっちには許せんのだからな!」

イケ友「おれっちはこく、こくこく」

男「克服だぁー!」

イケ友「そうそれ! 克服! するためにおとこちゃんと二人っきりになる! ならざるを得ないのだ!」ぐいっ

男「な、なんだとぉ~…?」

イケ友「素直についてきてもらうぜ、男ちゃん」ぐいっ

イケ友「…今ならもっと素直に語り合えるって、思えるんだよ。おれっち」ニヘヘ

男「イケ友…」

イケメン「ま、待ってくれ! そんな場合じゃ…」

イケ友「うるさい! イケメンは黙っちょれぇ~よぉ…おれっちは例えイケメン相手でも、譲れねぇんだ」

同級生「…君はバカなのか?」

イケ友「おーともおれっちはバカだ! だもんで、頑張んなきゃどーしようもねーの! うん!」

男「イケ友はバカじゃないよ! すっごくカッコいいよ!」

イケ友「お、男ちゃあん…ありがと…うへへ…」

男「にへへ」

同級生「あぁーちょっと待って、本当にバカが関わると面倒くさくなるな。今は男君のことを、」

イケメン「……」

同級生「…お前からもう少し言ってあげたらどうなんだ。このままじゃ、」

イケメン「そーいうことならまだオレを許してくれるのかって話を続けたいんだけど!?」

同級生「ちょっとキミィー!?」


がちゃっ


女友「あー疲れた、なんだか色々と別に買っちゃったけど良いよねー女ぁー?」

金髪「あれ、なんだか雰囲気おかくないか…?」

マネ「どーしたの? 女ちゃん?」

女「あ。アンタ達帰ってきたのね、…この面倒くさい時に」

マネ「? どったの?」

女「…どったのも何も、見た通りのことよ。いちいち説明するのも面倒臭い」

マネ「………」


イケ友「だぁーっから! 今は男ちゃんはオレのモンなのッ!! 離イケメーーーン!!」

同級生「どうしてそうなるんだぁッ!? そうじゃなくッ、今は僕と男君が一緒に部屋に戻ってだなァ…!?」

イケメン「うぇぇ…男くぅん…オレは本当にきみぃ…許してもらってるって思って良いのかなぁ…っ…?」


マネ「…………あ、」

女「あー滅茶苦茶ねコレ…」


がしっ


マネ「女ちゃん」キリ

女「な、なによ急に…?」

マネ「───駄目だよ! そーやってのんびりやってちゃ、出し抜かれちゃうよ!」

女「はっ?」

マネ「いくら性別が一緒だからって! そーやって余裕に構えてても、何も始まらないんだから!」

女「…何言ってるのアンタ?」

女友「ちょっとマネっち。あんたね、幾らなんでもそういう時じゃないって思うんだけど、私も」

金髪「そーだぞ」


男「うむ。皆が言いたいことはわかった、けど、ここは女さんの一言も欲しいと思う!」


女「んっ!?」

男「女さん。俺一人じゃ決めていい問題じゃない、だってこれは大切な(修学旅行)ことなんだ…」

女「ばっ、あたしを巻き込むんじゃないわよ…!? あ、あたしは何も関係ないじゃない…!?」

男「…それは違うよ」

男「女さんも俺にとって、大切な(友)人じゃないか!」

女「」

マネ「ほらぁーーー!!」

金髪「なん、だと…」

女友「そーいう展開だったの!? 修羅場ってたの!? 取り合いだった感じに発展しちゃったの!?」

金髪「これがお酒の力か…どうするんだ女?」

女「ばっかじゃないの!? そんなワケっ、ちょっとあんたら一旦正気に戻って説明しなさいよー!!


同級生「…おい、今更他人のフリなんてするんじゃない」

女「へ…」

イケ友「そぉーだぜ! 女っちも一緒にこく、こくこく、告白しよぉーぜ!」

女「ばッか…っ」

イケメン「ひっぐ…ひっぐ…結局オレはまた仲間はずれかぁ…」

女「ちょ、なんで、待ちなさいってば! あたしそんなこと、思って…!」

男「女さん」スッ


男「───だって、好きだから、一緒に居たいって思うのは変じゃないよね?」ニコ


女「……………」

マネ「わぁぁ…」かぁぁ

女友「こ、告白されッ、女ー! お前ぇー!」

金髪「本命は女なのか!? どーなるんだ!?」


女(早く家に帰りたい) 


【修学旅行最終局面、始まります】


第二十七話『もうツッコミなんて誰も居ない』

残り3話です 宜しくお願いします

ではではノシ

同級生「だから」

同級生「僕が言いたいのは一刻も早く、彼の状態を戻すことであって───」


男「きゃっきゃっ」

イケ友「きゃっきゃっ」


同級生「聞けよッ! 僕の話をさぁーーー!!?」ダン!

男「うーーん、だって同級生君は同じ話ばっかでさぁ…」

イケ友「正直かったるいっすわ」

同級生「かったるいってなんだかったるいって!? 僕は真面目に状況を鑑みてるだけで…ッ!?」

イケメン「………」

同級生「オイ! お前だってそうだじゃあないのか!? ほら、こいつらに言ってやってくれ……」


イケメン「…イケ友はいいなぁ…オレもお酒を飲めば仲間入りできるのかなぁ…」ボソボソボソボソ


同級生「だぁーーー!! なんなんだよコイツラはぁーーー!!」ガシガシガシガシ

女友「うぉぉ…各有名な方たちが私達の部屋で騒いでおられるぜぇ…」

金髪「う、うん。まさに圧巻だな…」

マネ「じゃ、女ちゃん。混ざりにいこっか?」にぱー

女「だ、だからねェ? あたしはまったくもって関係ないのよあんぽんたん!」

女友「はいはい。もーわかってるって、正直になりな。うんうん」

女「何よその反応!? まったくわかってないじゃない!!」

金髪「とにかく、どーするんだ。このままじゃどうにもならんだろ」

マネ「…女ちゃん」

女「うっ、何よっ? あたしは絶対になにもしないんだからね…ッ?」

マネ「そんな事言わないで! ぜったいぜったい、大丈夫だから! 女ちゃんはすっごく可愛いよ!」

女「いらないわよそんなフォロー!」

マネ「強情なんだから…そんなにウチ達が勘違いしてるって言いたいの!? じゃあ、聞いてちゃうんだから!」だだっ

女「ちょ…ちゃんと聞いてきなさいよ!? 絶対によ!?」


マネ「…ねえねえ、イケ友?」

イケ友「およ? マネっちじゃんか、どったの?」

マネ「おーよ、オメーに訊きたいことがあるんだってばよ」

イケ友「なんだってばよ?」


マネ「──今って、皆で男君をめぐって取り合ってる最中なんだよね?」


イケ友「………」

イケ友「そうだぜっ!」ビッシイイイ


マネ「ほらやっぱりぃーーーー!」バッ

女「よく聞こえなかったけど質問相手間違ってることはわかったわよッ!!」

マネ「何ぃー? イケ友のやつがバカだって言いたいのかぁー?」

女「あーバカよバカの中のバカよねコイツは! お酒も飲んで格段に上がっちゃってるわよ、馬鹿さ下限が!」


わーわーきゃーきゃー


男「……ん?」スッ

男(なんだ、頭が凄く痛い、けど。俺って今まで何をしてたんだっけ…)フルフル

男「記憶がなくなってる気が…」


同級生「一番最初に僕に訊くべきだろ!? 一番まともな状況だってわかるだろー!」

マネ「あ、いや…同級生くんは…ちょっと…」スス

イケ友「わかるわかる。同級生って、喋ってると全然こっちの目を見ないもんなぁー!」

同級生「ばっ…! み、見るわ! ちゃんと見るわ!」

イケメン「……………」ずもももももも

女「だーから何であたしのこと無視して話進めちゃうわけ!? つか、アンタもさっさと正気に戻りなさいよ!」げしっ

女友「おーやれやれー」

金髪「次はフックだー」


男(え、ナニコレ?)

男「い、いつの間にこんな混沌として…え、なんだこれ!?」

男(これお酒じゃん! お、俺ってば何でお酒の缶なんて握って…!)

男「あ、あの…」スッ

同級生「だからッ! ───あっ…」ぴくっ

男(こ、この状況がどういうことなのかまずは訊きたい! 同級生君ならちゃんと答えてくれると…)

同級生「…やっぱり君は僕を選んでくれたんだね」

男「へぇっ?」

同級生「うん、わかってさ。君だってこんな馬鹿連中とつるむのは辛いって……僕は知ってたさ」キラキラキラ

男「え、なにっ、どういう、ことっ?」

同級生「さぁ、早く僕と一緒に部屋に行こうか!」バッ

男「んんーー!?」


イケ友「待ちやがれってんだ!」ババッ


男「あ、イケ友…!」

イケ友「…おれっちを差し置いて、勝手に男ちゃんを連れて行くんじゃねえ。おとこちゃんはおれっちのモンだぜ!?」

男「イケ友ぉッ!?」

同級生「何を馬鹿なことを…」チッ

男「そ、そうだって…いきなり変なことを言い出すなって…」

同級生「君に、男くんを任せられるわけ無いだろ。自分のほうが相応しいってぐらい言ったらどうなんだ!?」

男「どういうこと!? それってどういうこと!?」

男(わけがわからない! どうして皆で俺をのことをっ…取り合って、というかっ…なんなんだコレ!?)キョロキョロ


イケメン「……」ドロロドロドロドロ


男(あ…一応、状況を知ってるだろうけど話しかけたら絶対に面倒臭い状態になる奴だ…あの表情…)

イケメン「…今、オレの顔をみて面倒臭いって思ったよね…」ボソ

男「わあああーーー!!? いつのまっ、急に後ろに立つんじゃないっ!」バッ

イケメン「ひっぐ、そうやっていっつもオレは一人ぼっちさ…ううっ…オレだって頑張ってるんだよぉ…」ぐしぐし

男「…よくわからんが、なんで泣いてんのお前…?」

イケメン「…男君が…」ボソリ


イケメン「男くんがオレを差し置いて、みんなばーーーか構うからだよぉ~…! おーいおいおい、ぐしっ」

男「………」

イケメン「オレも男くんと何時も通りに仲良くしたいよぉ…ぐびぐび…ぷはぁ…」ヒック

男「お前…何飲んでる、の、それ…?」

イケメン「ぇ、おさけ?」

男「………………」


マネ「先を越されちゃってる!」

女「やだやだ行きたくないあの状況にあたしを巻き込まないで…!」ブンブンブンブン

女友「いーから行って来いって! もうよくわかんないけど絶対に行かないと後悔する感じっての!? あるじゃん!?」

金髪「行ってくるんだ! どうせ男は抱きつけば一発だって! ほら早く!」

女「やっ、ちょ、やだっ! やめ───」


ドン スタ、スタスタ…


男「あ…」

女「っ…! いや、何というか、そのっ」

女友「お、おおっ…なんだ結構いい雰囲気かもしだすじゃんか…っ」ドキドキ

金髪「う、うむうむ。あの子なら不器用に暴言吐きながらも、言う時は言うやつだ…」

マネ「どーなるの!? どーなっちゃうの!!? 最後には『あたしを選びなさいよ!』ぐらいは言って…!」


男「おっ、えっと、女さん…?」

女「あ、うっ、いっ、だっ───死ねあんぽんたん!!」

男「!!?」


三人(これは酷い)

女「あっ!? ち、違っ、そうじゃなくって…!」アタフタ


マネ「で、でも出そうだよツンデレ部分が…!?」


女「あぁ、あああっ、なんって言うか! そのっ! 流石に死ねは酷いと、思うから…っ」チラ

男「う、うん、何かあったんだろうって思うんだけど…俺としても何が何だか…」

女「へっ? あ、あんたもしかして…正気に戻ったの…?」

男「…うん、実はその通りでございまして…」ポリポリ

女「…………」

女「なら話は早いじゃない! こっちに来なさいよ!」ぐいっ

男「えっ!?」

女「あんた達! これを見なさいよ! これで万事解決じゃない!」ババーン

男「えっ…あ、あのっ…ちょっと…っ」カァァァ


同級生「……何が解決なんだ?」

イケ友「あーーーっ!! おれっちよりも先に女っちがぁーーーー!!」

イケメン「いいなぁ…仲良く腕を組んで…オレもしたいなぁ…!」


女「へっ?」


マネ「きゃーーーー! 超大胆! もう私のモノだっつー表明っすねコレはぁッ!」

女友「女の初彼氏を祝して!」

金髪「かんぱーい!」カン

女「ちょっと馬鹿! ちがっ、よく見なさいよこれぅおー!!」

同級生「チッ、君は性悪と思っていたがここまでか…」

イケ友「なんでなんで!? どーやったん女っちぃっ? おれっちにも教えてくれよぉ~~~」

女「うっさいバカども!」

男「……」

女「ほ、ほら! そうよそうじゃない! あんたがまともなことを言えばどーやったって収まるのよ! この状況が!」どんっ

男「うわったた!」

男「っ…………」びくっ

じぃー

男(すっごい周りから見られてる…! なんだ、どうしてこうなってるんだ、一体何を言わなくちゃダメなんだ……!?)

男「あ、あの………」

男「ん……?」チラ


不良「」ちーん


男「不良くん!? どうしちゃったのそれ!?」

男「なんで白目向いて倒れてるんだ…っ?」

不良「ぐっ……な、なんだ急に腹部に衝撃を受けてから……」

男「殴られたの!? だ、誰に…?」


イケ友「……」すっ

イケメン「………」すっ

同級生「………」すっ


女「ここぞとかばかりにその協調性! アンタ達マジで殴り倒すわよ!!?」


金髪「や、やばい止めろー!」

女友「私達がいない間に実力行使とはやるじゃねーか女ぁー!」

マネ「一発で仕留めたの? 拳で男くん取り合ってたの!?」


男「ふ、不良くん…」

不良「ん、どうした。元に戻ったのか、良かったな」ぽんぽん

男「あ…え…もしかして、俺ってやっぱり酔っ払ってたんだ…?」

不良「ああ、色々と大変だったぞ。ほら、買ってた水だ、飲め」

男「……不良くん……」

不良「それにちゃんと周りにも謝ったほうがいいぞ、早いほうがいい」

男「あ、うんっ! わかった、じゃあみんなにも───」


くるっ


女「いつまでウジウジウジウジしてんのよ変態ッッ!!」

イケ友「ばっ、ちが! こっちじゃないって女っちぃーーーーー!!」

同級生「わー! ばか、やめろぉおおおおお!!! 俺のスマフォがぁああああああ!!」

イケメン「…ぐすっ…」ぐったぁり



男「」

不良「ああ、色々と大変だったぞ。ほら、買ってた水だ、飲め」

男「……不良くん……」

不良「それにちゃんと周りにも謝ったほうがいいぞ、早いほうがいい」

男「あ、うんっ! わかった、じゃあみんなにも───」


くるっ


女「いつまでウジウジウジウジしてんのよ変態ッッ!!」

イケ友「ばっ、ちが! こっちじゃないって女っちぃーーーーー!!」

同級生「わー! ばか、やめろぉおおおおお!!! 俺のスマフォがぁああああああ!!」

イケメン「…ぐすっ…」ぐったぁり


くるっ


男「───は、後でいいや。今は不良くんと一緒に居るね!」

不良「ん。お前がそういうのなら、別に良いが……なんだ、どうしてお前らオレを見る? どうした?」

【とりあえず二人で部屋を出ました】


男「───つまりは俺が酔っ払って皆で、介抱してくれてたってコト?」

不良「多分な。何故か、途中で喘ぎ声が聞こえた気がするんだが……それは気のせいだろ」

男「まぁ、その、結局は俺がまた周りに迷惑をかけたってことになるのかな、これって」

不良「言い方が悪くなるが、その通りで間違いない」

男(あぁあぁっ! 嫌だ嫌だ…ッ! なんでこうも続けてやってしまうんだよ俺はぁ…ッ!)

不良「………」スッ


ぽんぽん


不良「別に気にすることはないと思うがな」

男「えっ?」

不良「なんやかんやあったが、最終的にはみんな楽しんでるように思えた」

不良「お前一人が抱え込む必要なんて無い。ちゃんと謝れば、それだけでいい」

男「……不良くん…」

男「その、ありがとって、いうか……ごめん、色々と迷惑をかけて……」

不良「……」なでなで

男「思うに一番迷惑をかけてしまったってのは、不良くんじゃないかと俺は思うわけで…」

不良「……」なでなで

男「うん…」

不良「……」なでなで

男「ちょっと聞いてる俺の話!?」

不良「いや、撫でやすい位置に頭があるから…」

男「とりあえずやめて! しかも全然理由になってないし!」

不良「急に大きな声を出すと具合の悪さがぶり返すぞ」

男「そんなっ、こと……っ…うぁ……」ふらり

不良「ほらな」

ひょぉい

男「うぐぉぉっ?」

不良「軽いな。飯はちゃんと食べてるのか、お前」

男「なん、ちょっと!!? なんで抱え上げる必要あった!? 高い高い怖い!!」

不良「イケメンの奴もそうだったが、ここ最近の奴らは軽すぎる。飯を食べろ、飯を」

男「た、食べてるよ…!」

不良「嘘だな。どうせありあわせのものしか、食べてないんだろう」

男「い、良いんだよ別に。俺だって体重とか身長とか、気にしてなんかいないし…」

不良「それも嘘だ」

男「断言するんじゃない…っ」

不良「ん。そうか、なら謝る」ぺこり

男「ならいいけど…」

男(あれ? なんで不良くんに謝ってもらってんの俺?)

不良「丁度いい。このまま便所まで運ぶか、男、顔を洗うぞ」すたすたすた

男「へぇっ? あっ! このままっ? えぇー!?」

不良「問題ない。力には自信がある」

男「そういう問題じゃないよねぇ! マジで連れていかれっ、みんなに謝るって言ってた奴はー!?」

すたすたすたすた

がちゃ きぃ…


「…ど…」


マネ「ど、どどどどど、どうしよぉーーーーー!!!?」

マネ「つ、連れて行かれちゃった!? 抱えられて、連れて行かれてッ、お姫様抱っこでぇー!?」

金髪「ま、待て落ち着けマネ!」

女友「そうやで。ここまできて、そう勘違いもしてられんぞよ?」

マネ「だってだってぇ! アレは流石にやばすぎないかなぁ!?」ブンブンブンブン

金髪「ただ単に運んでるだけだろ? もういいって、部屋の中のみんなとも誤解は解けたし…」


女友「いや、待って…不良くんとは誤解とけて無くね…?」


マネ&金髪「!!!?」

女友「ひ、一人だけガチの人が居らっしゃったんじゃなかろーかと、思う今日このごろ……うそうそ! 無いってそんなコト!」

金髪「不良くんがマジで男くんのこと好きだってこと!? や、やめろおおお! ありえんことを言うなぁー!」

マネ「思いの外ショックそうな金髪ちゃん…可哀想に…」ほろり

金髪「だ、黙れあほたれ! 今はそんなこと言ってる場合か!?」

マネ「う、うん、思うに不良くんは『男くんがとられる状況が許せなかった』とみた」

女友「そ、それで二人きりになろうと連れて行ったってことになるのかね…?」

金髪「……それヤバくないか?」

マネ「でもまって! 流石に勘違いってこともある! まだあるよ! 絶対に勘違い的な奴!」

女友「ど、どうするよ? 部屋の皆にも言っておく?」

金髪「い、いや駄目だ、またとんでもない展開になる気がする……」


マネ「───うち達だけで行こう」


女友「ばっか! もしマジでうっふーんあっはーん、な展開だったらどーするのさぁ!?」

金髪「ううっ…いやだよぉ…」

マネ「大丈夫! 男くんだって男だよ!? 嫌だったり無理やりだったりしたら、ちゃんと断れるさ!」

女友「でも軽々抱えられて、連れて行かれたけど……?」

マネ「……………」

金髪「あー! もういいっ! 私が行きたくなってきた! ぜってぇーあり得ねえからね! 逢引とか! 確かめてやるもんねー!」だだだだっ

女友「あぁっ! 馬鹿が飛び出していった…! 追いかけるぞマネ!」

マネ「う、うん!」 


~~~


女友「はぁ…はぁ…あ、やっと見つけた…っ」

マネ「息切れし過ぎだよ女友ちゃん、運動部入ったら?」

女友「だまらっしゃい! つか、金髪ってば何固まってんの?」

金髪「…イレに入っていった…」

マネ「えっ?」


金髪「───男子トイレに二人して入っていったッ!」ギュッ


マネ「なっっ、何ぃーーーーー!!?」

金髪「うぁ…」ポロポロポロ

マネ「うん…うん…そっか、そうだったんだね…辛かったね…大丈夫だよ…」ナデナデ

女友「いや、普通だから。連れションとかよくやってるじゃん男子」

金髪「ばかやろうッ! お姫様抱っこだぞッ!? そこで男子トイレだぞーッ!?」

女友「……この想像豊かなド変態を、マネ、抑えておいて」

マネ「らじゃー!」

女友(いちいち皆騒ぎ過ぎなんだよね。まったく、部屋での出来事も一発で誤解なんだってわかったしさ)

女友(そろそろ面倒くさくなってきたし、女の方にことが転がればって思って静観してたのがまずっちゃったよねコレは)

女友(今はとりあえず適当に聞き耳立てて、聞こえた会話を伝えればいっか。それで誤解は解けるっしょ)

そーっ

女友「どれどれ…」


『…不良君、終わった?』


女友(ほら、やっぱり普通の会話っぽいのを…)


『いや、もう少しで、うっ……』

『駄目だ。イケそうにない……』


女友「ほぇっ?」

『そ、そうはいっても…』

『ああ、もうちょっと力を込めてくれ…そうそう、良い、腰当たりを…んっ…』

『はぁはぁ…こ、こお…んっ、んっ…』

『はぁっ…うぐっ…そう、それでいい…っ』


女友「───……」スッ

マネ「金髪ちゃんってば大丈夫だってばー! あ、どうだった?」

女友「ヤバイ」

マネ「へっ?」

女友「…ヤッテルかも…」ぼそり

マネ「……………え?」

女友「しれない、っていうか、真っ最中っていうか……その……」ぷいっ

マネ「お、女友ちゃん? さっきから何を言ってるのかよくわかんないよ~?」

女友「……じゃあ聴いてきなよ、マネも聞けばわかるよ……」ずーん

マネ「どーいうことだってば? なんなのさ、まったくぅ」スッ

『あっ! どぉっ? 今の良い感じにっ、あぁっ……!?』

『うっ…ふぅ…』

『だ、大丈夫? い、痛くなかった……?』

『大丈夫だ。それよりも嫌じゃないのか、やってもらってる方としては気が引けるんだが…』

『ううん、むしろこっちが気が引けてるよ。ちゃんとやれてるのかって、んっんっ』

『うっ』

『ここ? ここが良い? んっ! んっ!』

『……ああ、その裏側当たりを…』


マネ「っ…っ…っ…」ぱくぱくぱくぱく

女友「そ、そうだろ? これって、どう聞いても…」

マネ「超舐めてあげてる!!!」

女友「舐める!!? どーいうことぉー!? や、やったあとにっ……舐めてあげ、てるの…? 良いのそれって衛生面的にッ!!?」

マネ「ぴゃああああああ!! どうしようどうしようどうしよう…!?」

女友「お、落ち着けマネ! もうここまで来たら、自分たちが関わっていい領域じゃない! 去ろう! もう去ろうよ!」

金髪「…待て」ガシッ

女友「金髪!? あ、あんたいつの間に正気に…!?」

金髪「何時だって正気さ。私はまだ確かめてない、どうしていきなりここまで発展したんだ?」

マネ「あ…」

金髪「彼は、男君は、まだ不良くんと出会って間もないはずだろ。きっと勘違い、のはずなんだ」


ズリ ズリズリ…


金髪「───直接、見て、確かめてくる」


マネ「それは流石に危ないよ!!」

女友「そ、そうだぞ!? い、色々と危ないぞぉー…!?」

金髪「覚悟はとうに決まってるよ。ここまで来たんだ、だったら100%にしとくべきなのさァ…!」


金髪「この想いが終わっていいのかとね!!」だだっ


女友「ば、バカヤロぉーーーー!!!」

金髪(終わっちゃなんかいないッ! だって未だに始まっても居ないから!)バッ


金髪「───どういうことか、確かめてもらうぞっ!!」



~数分前・男子トイレ~


不良「うぷっ」

不良「──────」キラキラキラキラキラ…


男「わあああっ!!? ちょ、いきなり吐い…ッ!?」

不良「ぎもぢわるぃ」

男「ど、どうしたの急に?!」

不良「……多分、お前を担いだ時に、酒が回ったんだと思う……」

男「の、飲んでたのかよ」

不良「うぶっ!」ササッ

男「ちょっと、本当に大丈夫なのか……っ?」サスサス

不良「…そのまま擦っててくれ」

男「う、うん」さすさす

不良「うっ───」


(何かが溢れ弾け飛ぶ音)


男「…沢山出たね…」

不良「すまん、今日は色々と食べ、過ぎた…女の奴からもらった菓子とか…他にも…」

男「あ、うん。ごめん、俺も変な感想言っちゃって…」さすさす

不良「…………」

男「あ。不良君、終わった?」

不良「いや、もう少しで、うっ……駄目だ。イケそうにない……」

男「そ、そうはいっても…」さすさす

不良「もうちょっと力を込めてくれ…そのほうが全部出やすい…そうそう、いい、、腰辺りを…」

男「はぁはぁ…こ、こお…んっ、んっ…」さっす! さす!

不良「はぁっ…うぐっ…そう、それでいい…っ」

キラキラキラキラキラ

男(あ。たくさん出た、ココらへんが丁度いい感じなのか)さすさす

不良「ぜーっ…ぜーっ…」

男「今の良い感じに───」

つるっ! どすっ!

男「あぁっ……!? だ、大丈夫? 痛くなかった……?」

不良「うっ…ふぅ…大丈夫だ。それよりも嫌じゃないのか、やってもらうって方としては気がひけるんだが…」

男「ううん、むしろこっちが気が引けてるよ。ちゃんとやれてるのかって、んっんっ」さすさす

男(───あれ? なんだろ、以前にこんなことがあったような気が…)


『…かっこいいな、君は』

『素直が一番だぜ』


男(大分昔に、それも小学生ぐらいの頃に、同じように誰かの背中を、)

男「……?」さすさす

不良「うっ」

男「あ、ここ? ココが良い?」

不良「……ああ、その裏側あたりを…肩のところの…うん…そこでお願いします…」

男「あ、あのさ。不良くん、ちょっと良いかな」

不良「ん…」

男「なんかさ、昔に俺ってこーいうこと経験したことあるんだよね…」

男「誰かの背中を撫でてる。そんな記憶がちょっとだけ思い出したんだ、…だからかな」

男「あんまり嫌じゃないんだ。不良くんをこうやって看病してる今って、そんなに苦痛に思ってない」

不良「………」

男「あ、いや、急に変なこと言ったよな。ごめん、ていうか、その」ポリポリ

男(しかもちょいちょい、素の話し方出てるしな。気づかれる前に直しておこう…)

不良「……男」

男「あ、うん? なに?」

不良「………」じっ

男「?」キョトン

不良「…オレは、」

男「あ…」ドキ

不良「……」じっ

男「な、何?」


不良「うっぷ」でろー


男「うわあああ!? ちょっと、体操服にかかってるかかってる!」

不良「一番の波が来た……」

男「じゃあ便器の方を向いて! 垂れ流しだから今っ!」ぐいぐいっ


金髪「とぅあー!!」ばっ


男「と、とりあえず体操服は脱いだほうがいいのかも…あ…っ」ぬぎっ

不良「下も脱ぐな…」ぬぎっ


金髪「」ピシィッ


男「えぇー!? なん、ちょっと、えっ!!?」

金髪(そっか。現実って、そうなっちゃうんだな───)フラリ ドッシャアアア…

男「倒れたーっ!?」

不良「ん。なんだ、どうした…?」

男「なんいうかっ! その、急に女子が入ってきて…ッ!?」


男子トイレ 外


マネ「倒れたような音が聞こえたよ!?」

女友「うぐぐ…どうしたものか…」

マネ「い、一応確認しに行ったほうがいいんじゃないかなぁ…!?」

女友「で、でも男子トイレだって! そんな安々とあの馬鹿みたいに入れるわけがないよ!」


女「アンタ達、男子トイレの前で何やってんの…?」


マネ&女友「だぁあああーーーーーッッ!!?」

女「変態ども…」スッ

マネ「ち、違うよ? そうじゃないんだよ…っ?」わたわた

女友「どっどうして女がここに…!?」

女「アンタたちの帰りが遅いから探しに来たのよ。そしたら、なにやってるワケ……?」

マネ「そ、それは…っ」

女「はぁ、まぁ色々と理由があるのかも知れないわよ。けどね、誤解される場所で騒いでる方も悪いって分かりなさいよね」

マネ「お、女ぁ~…!」

女「ん。で、金髪はどこいったの?」

マネ「えっと…男子トイレの中…?」

女「実行済み!? ばっか、疑うも何も既にやっちゃってるじゃないのよっ!?」

女友「ち、違うんだ女! 金髪のやつがトチ狂って突っ込んじゃってさぁ…!」

女「何やってんの本当に…ッ」


『うわあああ!? 急に女子が入ってきて…ッ!?』


女「この声…目つき悪男?」

マネ「駄目だよ! 絶対に入っちゃ駄目!」

女「えっ? で、でも説明しに行かなくちゃ駄目じゃないの…!」

女友「…駄目だッ! 特に女は絶対に入っちゃ駄目、絶対にだ!」ばっ

女「えっ? ど、どうしてよ?」

女友「どうしても! しかし、どーしても入りたいって言うんだったら───」

女友「金髪は見捨てる」コク

女「あんた本当に酷いやつね!」

マネ「わ、私も同意見ですっ」

女「ちょっと!? あんたたち本当に友達なわけ!? 良いっ?」

女「男子トイレ覗くために組んでるんだったらちゃんと責任とり合いなさいよっ!」


同級生「…何を言ってるんだ…?」


女「ぱぁああああーーーー!!?」ビックゥゥウウゥ

同級生「全然帰ってこないかと思えば…お前ら…」ススス

女「ばっっ!? ち、違う! 覗こうとしてたのはこいつらよ…っ!?」

女友「違うっていってんでしょーが!」

マネ「違う違う違うぅー!!」

女「変な事をいいふらすんだったら、腹に一発入れるわよ黒髪ボンボン…!!」

同級生「…いや、どうでもいいけど。今は君らにかまってる暇無いんだよ」

女「えっ?」


イケメン「うっぷぅ」

イケ友「しっかりしろー」


同級生「急に具合が悪くなったから、男子トイレに来たんだ。良いからそこを退いてくれないかなぁ?」しっしっ

女「あ、そうなの…」

マネ「ま、待って…ッ」がしっ

女「な、なによ?」

女友「うん、普通に考えて今は駄目でしょ…」ダラダラダラ

女「あーっ!? そっか! 駄目よ他のトイレに行きなさいよ!」

同級生「はぁ?」

イケメン「あ…女…男くんは見つかったかい…?」ヘロヘロ

イケ友「ちゃっちゃと吐かせてスッキリさせたいんよ、ちょっち退いてくれんかね?」

女(やば、どうしよう、このままじゃ金髪の醜態が晒されちゃうことに…っ)

バッ!

女「もういいっ! あ、あたしが責任をもって見てくるわよーーーっ!!」ダダッ

同級生「え、お前っ!?」

女友「女ぁーーー!?」

女(何も見ないでッ、即座に金髪を個室に連れ込む! 説明は全部後に済ませる!)バッ

女「金髪ぅー!?  あんた一体なにしてんのよ────」


男「だ、大丈夫かな…?」(半裸)

金髪「」ゆさゆさ

不良「おい。起きろ、このまま寝るんじゃない」(パンツ一丁)


女「ぎゃああああああああーーーー!!!??」

男「うわぁあああああああーーーー!!??!!」


不良「ん?」

女「あ、あんたたた、アンタ達! 半裸で金髪っ囲って、鬼畜馬鹿あんぽんたん!!」

男「えっ!? どういうコト───違う!! それはまったくもって違う!!」

不良「女までどうしたっていうんだ…」スッ

女「ばーーーー!!! こっちくるんじゃにゃい!! いやぁーーー!!」ズササササ

男「不良くん!! 今は説明だよ説明!! 余計なことをしないで!」

不良「余計なことってなんだ?」

男「見たまんまのことだよ! とりあえずズボン! ズボンを履いて!」

不良「ん…そうか…でもいきなり男子トイレに入ってきたこいつらが悪いんじゃ…」

女「う、うるさいわね! こっちだって理由があって来たんであって、というかっ、どーいうことよ説明しなさい!」

男「せ、説明しろと言われても…! すごく何が何だかわからないから説明しにくいよね…!?」

不良「うっ…履きにくいな…おっと…?」コロン

男「ぇ」


ドサリ ばたん

不良「…あ、すまん…男…」

男「あ、うん…」

イケメン「ど、どういたって言うんだ!? 中から男君の声が…!?」バッ

イケ友「ちょ、イケメン! 急に走ったら余計具合が悪くなって…!」バッ


不良「ん?」

男「あ」


イケメン「…………裸で二人して、なにやってるの………?」


男「ぇ…ぁ…ち、違う…!」

イケメン「何が?」

男「普通に考えろ! なんかあったんだと! わかるだろお前ならさー!?」

イケメン「……、でも確かに、」

マネ「…あ、あー! や、やっぱり二人して抱き合ってる…!?」

女友「や、やっぱり乳繰り合ってたんだ…!? さっき聞こえた声はやっぱそうだったんだ…!?」

イケメン「……………………どういうこと男君?」

男「───もうわけがわかんないよ! 俺だって意味がわかんないのにどーやって説明しろって言うんだ!?」

イケメン「……」ぽろぽろ

男「泣くなよ!? 泣きたいのはこっちだってば!」ぽろぽろ

女「ばっ!? お、男二人で急に泣かないでよ…!?」


不良「だ、大丈夫か…?」なでなで

男「う、うん…」グスッ

イケメン「うぇぇ…男君が男君がぁ…オレ以外の人とぉ~…っ」ぐしぐし


女友「き、金髪…お前はよく頑張ったよ…」ヨシヨシ

マネ「あ、アタシたちはズッ友だからね…っ」

金髪「」


イケ友「……。なんかこのトイレめっちゃ臭、つか、…おれっちもちょっと具合が悪くなって来て……」うぷっ


キラキラキラキラキラ

女「きゃあーーー!? ちょっとアンタ大丈夫なの!?」

イケ友「ムリッス」キラキラキラキラキラ

不良「うっぷ!」

男「あ…」

不良「つられたかもしれ、ない、最後の奴が、うっ」キラキラキラキラキラ

男「ひっく、ちょっと、本当にだいじょ、うっぷ、ぇぁっ、そっか俺も具合が悪、」キラキラキラキラキラ

女「ちょっとー!?」

イケメン「キラキラキラキラキラ」

女「わーっ!?」


同級生「お、おい…さっきから皆で何を騒いでるんだ…?」そろーっ


女「あ…」

同級生「おい大丈夫か!? なんだこの状況っていうかっ、なんだこの臭い、おぇっ、うっ─────」キラキラキラキラキラ…

女「………………………」

女「………ど、どうしよう…」


「こらぁー!? 近隣の部屋から苦情があったから来てみればお前らぁー!?」ズンズンズン

「腹部に暴力を振るうなどと、女子の怒鳴り声が聞こえたらしいぞ!? お前たち一体トイレで何をして────」



不良「もうでない…」グッタリ

男「ひっぐ…ぐす…」

イケメン「おろろろろろろ…」

イケ友「…」ズーン

同級生「……………」ぐてー



「───……全員な、殴ったの?」


女(もうホントに帰りたい)


第二十八話『やっぱりお酒は二十歳を過ぎてからが正しいツッコミ』

残り二話です

次は女ちゃんヒロイン ノシ

次の日 朝

金髪「…すごい顔だな」

女「あぁ…? あ、うん、なんか今言った…? ちょっと頭がボーッとしてるから待ってて…んんッ!!」パァンパン

金髪「ま、まあ分から無くもないけど。昨日は散々だったし、…記憶がほぼ無いし」

女「ん、まーね。アンタが一番状況をかき乱してたって言っても過言じゃないわよ、アレは」

金髪「マジスンマセン」

女「反省しなさいよ。はぁ~あ、結局今日で修学旅行はお終いかぁー」

女(何とも騒がしい修学旅行だった。何かしら破茶目茶なことが起こるって思ってたけれど)

女(想像する以上にヒドいもんだったわね…うん…一生忘れなさそう…)ずーん

マネ「チィース! 朝から温泉入れるっちゃあ豪華なご身分ですなぁ!」ガララ

女友「シッ! 黙って隠れて入りに言ったんだから静かにしなさい馬鹿!」

女「お帰り」

マネ「んふっふー、たっだいまー! ひょいっ!」ぼふぅ

女「ちょっと…!」

マネ「おふぅとぉんきもちぃぃ~」モフ

女「ったく、それで? 途中で見に行ったんでしょ男子部屋の方に」

女友「案外みんなピンピンしてた、やっぱ男子は強い」

女「ふーん。…目つき悪男も?」

マネ「やっぱ気になっちゃうー?」

女「そりゃ気になるでしょうが…一番酔っ払って乱れて、暴れた後の次の日なんだから…」

マネ「元気そうだったよん。むしろこっちのこと心配しててくれた感じだったかな、目が怖かったけど」

女友「目が怖ったな、うん」

女「イケメンの奴は?」

マネ「カッコ良かった」

女友「カッコ良かった」

女「よくもまぁ昨日の廃れっぷりを見ておいて変わらないわよねアンタ等は…」

マネ「幻滅したとか思ってるの? ナイナイ! むしろ意外な一面が見れて超うれぴーって感じ?」

女友「どっちしたって遠い存在には変わらんぜよ、なぁ? 金髪ぅー?」

金髪「…こっちに話題を振るな」

女友「んもぉーう! 気にしすぎ! 不良くんだって謝ってたよ? 倒れた時に支えられなくてごめん、ってさ」

金髪「んにゃっ!? そ、そうなのかぁー…う、うむ…」

マネ「うひゅひゅ」

女友「ぐひゅひゅ」

金髪「そっ、そんな目で見るんじゃねェ!!」


女(…馬鹿みたいに騒いで、悲惨な状況になって、次の日もまた騒ぎ出す)

女(ほんっと元気よねコイツ等。それとも、私が変に冷めてるのかしら。…いやいや、そうじゃないはずよね)


マネ「どったの? 女ちゃん、急に思いつめた顔してー?」

女「え? いや、なんでもないけど。そんな顔してた?」

マネ「うん」

女友「…具合悪い?」

女「全然、悪くないけど…なんだろ、でも確かに…」

金髪「確かに? どうした?」

女「…………」


数時間後  旅館 おみやげ屋

女(お母さんには簪に、お父さんには湯のみでいっか。あとはお姉ちゃんには…)キョロキョロ


【全国擬人化作戦! 『東京都くん~ツーブロック黒縁眼鏡~』キーホルダー】


女(あ…確かこれ欲しいって言ってた気がする…)スッ

男「これかな…」スッ


ぴと


女「…」

男「え、」


女「だぁああああああああいっ!!?」ビックゥウウウウン ズササァーッッ!

男「わっ!?」

女「はぁはぁ…な、にっ、何なの急にアンタはァ!? びっくりさせるんじゃないわよ! はぁーッ、死ぬかと思った…」ドキドキ

男「お、驚き過ぎじゃないか幾らなんでも…こっちも危うく心臓が止まりかけた…」ドキドキ

女「なッ何でよ! なんで目つき悪男がここに居るわけ!?」

男「普通にお土産買いに来てるだけなんけど…?」

女「いっ、要らないでしょ別に! アンタには必要ないわよこんなお土産なんてッ!」

男「う、うん、待ってね、勢いで言ってるんだろうけど、それじゃあお店のひとに悪い印象与えるから…っ!」

女「ぐっ……、わかったわ、うん、ちょっと落ち着く…」

男「ん、ん」ポリポリ

女(何を急に現れて、しかもこのタイミングとか出来過ぎてるじゃない)チラリ

男「あの、さ」

女「な、なによ…」

男「ここで言うのも、あれかなぁって思うけども。まぁ会ってしまったから言ってしまうけれど…」

女「…ごちゃごちゃ言ってないでハッキリ言いなさいよ」

男「う、うす! 昨日のことッ! その~…また色々と迷惑かけたんだなって、絶対にそうだと思うから」

男「改めて謝っておきたい。本当に、ごめんなさい」ペコリ

女「……」

女「もう散々謝ったじゃない。あれもこれも、ぜーんぶ聴き飽きたわよ」プイ

男「そうだろうと思う。けどもう一度だけ謝らせてくれ、この通り」

女「……良いわよ、別に」

男「本当に?」

女「本当よ。何時も通りの展開だったじゃない、変態が色々企てて、アンタが巻き込まれてあたしも散々な目にあって」


それで、結局は終わってしまう。

あの変態が言っていた『青春』って形で収拾がつくのだ。


女(──何、変な感じ…今…)

男「そっか。そうだよな、いつも通りって奴か。うん」

女「…うん」

男「………。お土産選んでた感じ?」

女「えっ? まぁそんな感じだけど、というかさ」ジトー

男「?」

女「なんでアンタが『東京都くん』を買おうとしてたワケ? 何? やっぱホモなの?」

男「なんでそうなるっ!? 違う違う! なにそれ…! コレを選んだけでそう勘ぐられるのは酷くないか…!?」

女「このキャラって今、お姉ちゃんたちみたいな人たちに結構人気なのよ。知らないの?」

男「ふ、普通に東京名物なんだろうなって…東京都限定ものを、親に買っていこうかと思ってただけなのに…!!」

女「親て…目つき悪男の親も、こんな若々しいキーホルダー貰っても絶対に喜ばないわよ…」

男「ぐっ…今度は普通に駄目だしもされてる…!」

女「ぷっ、あははっ」

男「え、な、なに? どうしたの急に?」

女「いやね、なんだろ。アンタって本当に不器用よね、昨日の件も含めてさ」ゴシゴシ

女「いーわ。ちょっと付き合ってあげる、お土産選びをね」

男「え、良いの?」

女「ドンと女さんに任せなさい! まああたしの主観がモロに入っちゃうけど、それでイイならね」

男「滅相もない! 物凄く助かる!」

女「そ。ならあっちなんてどーかしら? お土産と言ったら温泉まんじゅうもかかせないし、定番押さえて東京ばな奈は?」

男「な、なるほどぉ…」

~~~

女(今気づいたけど、コイツ)

男「…やっぱ女子の意見があったら全然違うなぁ」

女(親にお土産って言ってて、なんで一人用だけなんだろうって気になってたけど)

男「ん? どうかした女さん?」

女「えっ!? いや、なんでもないっていうか───その、アレかしらね! やっぱり!」

男「へ? 何が?」キョトン

女「…………………………」

男「お、女さん?」

女「……駄目だわ、やっぱあたしはとことん駄目な女だわ…」ずーん

男「何が!? 本当に急にどうしたっていうのさ!?」

女「…凄く、気になってるのよ…どうしても誤魔化して知らんぷりすればいいのに…」

女「なんでこーも感情的になって、表情に出ちゃうのかしら…ううっ…ごめん、目つき悪男…」

男「えーっと、その、何がなんだかわからない俺にとっては謝られてしまうと非常に困るわけで…」

女「……親」

男「うん?」

女「独り、なの? さっきからお土産が、一人用モノばっかりだったから、その」チラ

男「…えっと、」ポリポリ

男「まあね、うん。俺が小さい時に父親が事故で死んじゃってるんだ。だから一人用、女さんの言うとおり」

女「…そうなんだ、ごめん」

男「ちょっと謝らないで、女さん。別に気にしてないし、…まさかお土産からそう訊かれるとは思ってなかったけれど」

女「違う、謝らなきゃダメじゃない。こーいったことは言っちゃ駄目なのよ、言ったら……ダメじゃない」

男「……」

男「女さんってさ、前にイケメンの祖母さんのことを話してくれたじゃんか」

女「え、あ、うん…?」

男「あの時、俺に言ってくれた言葉おぼえてる?」

女「……」フルフル


『今のあたしだって自己嫌悪半端ないもの。変態が言うべきことじゃない、こういうことって』


女(言ってたっけ、確かに)

男「あの言葉、実は俺はすげーなってずっと思ってたんだ」

女「へっ!? な、なんでよ!? 普通のことじゃないのよアレは…!」

男「そう、普通のことだと思う。けれど『それを本気で言える人』はどれくらい居るんだろう」

男「勝手な解釈だけど、間違ってたら全然怒ってくれていいし、ただ俺が思ったことを言うとね…」

男「かっこいい。凄く格好良かった、とにかく女さんって人は凄い人なんだなって…素直に感じた」

女「…ほ、褒め過ぎじゃないの…」

男「そう? あはは、まだ少し酔が冷めてないかもしれない。でも、今回のことでより一層そう思ったんだ」

男「──女さんは、ちゃんと本気で申し訳ないと思える人なんだって」


ざわついた。

心の奥を覗かれたのだと、ふと、全ての感情が冷めていく感覚。


女「…」


身勝手な解釈だと彼は言ってくれた。多分、ここで怒ったらちゃんと謝ってくれるんだろう。

そんな私を過大評価するなと。自分は感情を制御出来ない、ちっぽけな人間なのに。


──でも、ここで怒らないとしたら? 私は彼に『   』ともし言えたのなら?


女「…ぁ…」


ありえない、言えるわけがない。そんな自分を一瞬でも想像したことに嫌悪感が沸く。

『  』を言えるぐらいなら、あたしはとっくに変われているはずだ。

こんな暴走女ではなくて、もっとお淑やかな女子として君臨しているはずだから。


女(こんな考えの時点で底が知れてるわよね)

男「…その、怒っていいから。変な事を言ったのは自覚してるし、つか、また正直にぶっちゃけたから怒られる覚悟なんだけど」

女「っ! そ、そうよこんの目つき悪男! あんぽんたん! まったく何度同じことを言わせれば気が済むわけ!」

女「そう思われることは悪い気はしない! けどね? こっちは謝りたくて謝ってるワケ! それを評価されても、馬鹿にされてるとしか思えないわよ!」

男「は、はいっ!」

女「だから────」



だから?



女「──……」

男「…、……? 女さん?」


だから、何? だから、だからだから、それが何だって?

女「だ、だから…っ」


言葉が中々繋がらない。滞って大渋滞を起こして、きゅっと奥に固まったまま。


だから。


私は彼に何を言いたいのだろう? だから、の後に何を零したいのだろう?


女「ぁ…うっ…」

男「女さん?」


嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。こうまでして自分は自分を制御出来ないのか。

言いたいことを言って、暴れたい時に暴れて、…言って欲しくないであろう事まで我慢できずに。


終いには、言いたいこともちゃんと理解できずにガチガチに固まってしまうのだ。


女「……」


理性も品性もお淑やかさの欠片もない、あたし。ああ、本当にダメな自分は最後までみっともない。

男「あのー…」

女「……ッッ」

唐突に逃げ出したくなった。もはやこれまで、訳もわからず暴れてしまっては男に迷惑しかかからない。


女「そ、その、あれだってば目つき悪男、本当にゴメン、つか怒る場面でもないし、謝ってたしあたし」


手に持ったままであったカゴを床に置く。もう全部起き去っていく、あとで店員に謝らなければ。

些か乱暴に床へと置かれたかごの中で、数々のお土産が衝撃に揺れ動く。


女「……っ…」


その中にはあたしの両親へのお土産と、お姉ちゃんのお土産があった。

たくさんあった。それはもう時間をかけて選んだのだから、たくさんの家族の為に選んだのだから。


女「ごめん、帰る」


息が止まりかけた。踵を返して、その場から去ろう。

ああ、もう本当に、あたしという人間はどうしようもなくって、みっともなくって、本当に───

~~~

女友「…具合悪い?」

女「全然、悪くないけど…なんだろ、でも確かに…」

金髪「確かに? どうした?」

女「…………」



女「…なんだか満足できなかった、って思ってる。そりゃ満足できるほどに計画通りに進められたけど」

女友「ああ、あの呪いの呪文みたいに書かれた計画表ね。完璧だったわ、アレ」

マネ「印刷したら真っ黒だったもんね。字が潰れて」

女「うっさい。けどね、なんだろ、上手く言葉に出来ないのよ。本当にふわふわした感じで…」

金髪「……あのコトだろ」

女「え?」

金髪「男くんの噂だって。あれから色々と聞きまわってみたけど、最後まで主犯がわからなかった」

女「……」

女友「その話はもう忘れよ? なーんも楽しくないじゃん?」

マネ「…気になったままなん?」

女「それは、まあ、そうなんだろうけど」

女友「んだよーまだ他に何かあるとでもいうのかー? やめろよー厄介事は一つじゃなくて、ゼロが一番だぞー」

女「……」

女(どんなに足掻いたって噂は噂。出処を探ろうにも途方にもない時間がかかる、そんな無駄なことしたって無意味だ)


でも、だから、


女「……」

金髪「女」

金髪「今日中に男君と話してみればいいよ。多分、納得できるから」

女「納得…? え、納得ってなによ…?」

金髪「わたしはそう思う。なんだろう、似てるんだよそれって。そう言われたら女は怒るだろうけど」

女「…? なにが?」

金髪「う、ぐっ、ま、まぁ正直に言うぞ…? けれどお前らはダメだ! 絶対に!」

マネ&女友「えーッ!?」

女「………」

金髪「い、いいか? 絶対に怒るなよ、わたしだって恥ずかしい! けれど正直に言う、それが代償だと思ってくれ…っ」コソコソ

女「う、うん…」


コソリ


『──好きな人のためだったら、何処へだって、何だって一緒にしたい、だから男子トイレだって入れるもんだぞ』



女「………はぁッッッ!!?」

金髪「だぁー!? ほら怒るなって言っただろー!!」

女「だからってアンタちょっと…ッ! なにっ、待って、はぁあああ?! あたしがアイツの事を好──」

マネ「なになになになに!?」

女友「どゆことどゆことどゆこと!?」

女「ぐっ…!! 絶対にアンタ等には話さないわよあんぽんたん!!」

金髪「ほぉーらな! 怒った! でも絶対に秘密だからなぁー!」

マネ「な、なんなんだよぉまったくもぉ~…」

女「…ッ…ちょっとぉ!? さっきの発言はマジで犯罪ものだったけど、あ・え・て! スルーしとくわ!」

金髪「う、うんうんうん…」コクコクコク

女「……、本気でそう、思ってるワケ?」

金髪「わ、わたしにはそう見える! 女があそこまで暴れて、でも結局解決できなくて…っ」

金髪「今になっても諦められないのは……それでいても、同時に諦めたいって思ってるのは……」

女「…っ…」

金髪「──結局、それが想いだからだろ」


~~~


女(納得なんて出来やしない。結局最後まで自分のわがままだった、むしろそれが確実にわかっちゃったわよ!)

女(ああ、嫌だ、どうしてもっと効率よく生きられないのかしら。人の問題に怒って、見過ごせなくて、スルーできなくて、)


だから、だから、


女「…もう嫌」


駆け出した足を真っ直ぐに、全てを置き去りにして走る。全ての想いを投げ捨てて、えいやっと捨て切った。

女(あたしは、何時、こんなあたしから変われるのだろう)


だから、……だから、


女(このまま消えて失くなりたい──)


男「待って!」

女「──……!」


ぎゅっと、握られた手。予想以上に固くて、男っぽい手が掴んでいた。


男「……」

女「……」

男「あ! えっと、そのー…」

女「…なによ、離しなさいよ、痛いのよ」

男「えっ!? ごめ、うっ、い───嫌だ! この手はっ! 離さないっ!」

女「ふぇ?」

男「お、おおお、男として、駄目な気がする! から、うんっ、絶対に離しちゃいけない気が、するんだ…っ!」ぎゅっ

女「なっ、ななにを!? 言ってるのよアンタは…!?」カァァ

男「わからない! もうなんで掴んじゃったんだろうってテンパってる! でも、でもだ!」

男「どうしても、離しちゃ駄目なんだ! だって、お土産を……」

女「お土産…?」

男「お土産…お土産、そう、お土産! まだ最後のやつを選んでもらってないんだし!」

女「はあ…?」

男「まだあるんだって! 女さんが言ったじゃんか、自分に任せろって! だから最後までちゃんと手伝ってもらう!」

女「も、もう勝手に選んでなさいよっ! 良いから離しなさいってば! この…っ! 殴るわよ!?」

男「殴られても良い!」

女「あー本気なのね!? じゃあ殴ったるわよ一発で仕留めるっ!」ギュグググ

男「でもその前にこれをーーーッッ!!」


ババッ!


女「……ぇ」

男「こ、この髪留めを見て欲しい…! ど、どうかな…? これだけはちゃんと教えてほしいんだ、良いか、悪いかで良いから…」ち、ちらり

女「…かわいい」ぽそり

男「本当に!?」

女「えっ、あっ!? なによ急に!? こんなこと言ったって誤魔化されないわよ!?」

男「誤魔化すも何も、その感想を貰えれば満足だって。女さん、ほら…」


スッ


男「とっても、似合うから」

女「………」

男「あぁ良かった。これはちゃんと相手にそった買い物だったんだ、良かった~」ホッ

女「これを、あたしに?」

男「うん。後で買い物を手伝ってくれたお礼とか、今までの謝罪とか、…昔の謝罪とか謝罪とか」ズーン

男「それを込めてあげようと思ってたんだけど…途中で表情変わって、帰ろうとしたし…」

女「………」

男「何か俺したかもしれない! と滅茶苦茶怖くなってしまいましてね、ええ、すみません…強引だったと思います」ぱっ

男「…あれ?」ぐいぐい

女「………」

男「お、女さん? 手がちょっと……離せないというか…?」ぐいぐい

女「でも、こんなかわいいの、あたし、似合わないってば…」

男「? え? すごく似合ってるよ? だから買おうと思ったんだし」

男「───今の女さんに凄く似合ってるから」

女「……」


溢れだす。これでもかと抑え切れないぐらい溢れだす想い、感情、果てのない高鳴り。


女「あ…っ…」かぁぁぁ


どうしよう、これって本気であれなのかしら。

今の今までの感情が子供の駄々みたいにしょうもなくみえるぐらいに、

今の感情の制御の仕方、わからない。


女「…あ、あり」


だから、だから、かろうじて誤魔化してみせるのだ。

絶対に言いたくない言葉。【今】、という自分は本気で大っ嫌いだった。

誰かは格好いいと言ってくれた、誰かはセンスの持ち主だと言ってくれた。


でも、【今】のあたしは一度だって自分を認められなかった。

だから言ってくれた人たちに返す言葉も、どれもこれも、否定な単語ばかり。


変われない。どんなに望んだって【今】のあたしは絶対に認められない。



『今の女さんに凄く似合ってるから』



感情が反転する。全ては逆の方へと向かっていって、あたしの両手から離れていってしまった。


制御なんて、出来やしない。


だから、私は本当は言いたかったのだ。こんなあたしを認めてくれる、その人達に。

だから、この言葉を感謝の印として送りたかったのだ。


女「…ありがとう、おとこ」

信じちゃいけない言葉。口にしては駄目な言葉。


──でも、ここで怒らないとしたら? あたしは彼に『ありがとう』ともし言えたのなら?


ああ、そんなのは結局簡単なことだった。



男「うん!」



この笑顔を、あたしはもう一度見たいと思っていたのだから。


女「……」ぎゅっ

男「それじゃあ、その買ってくるけど。女さんも買い物済ませたの?」

女「ん。これから済ませる、一緒に行きましょおとこ」

男「え? あ、う、うん…わかった…?」

女「なによ?」

男「い、いや、なんだか雰囲気が…いや、なんでもないけど」

女「そ。ならイイケド」ぷいっ

男「……?」

女(見られて、ないわよね? 今の顔、絶対に真っ赤だもん、見られたら死ねる、死ぬ覚悟決まる)スタスタスタ


どっかの変態が言っていた。

これからの物語は『青春』で始まって『青春』で終わるのだと。

だがしかし、あたしは少しだけ、その青春とは違う物語を想像できた。


女「……」ドキドキ


いまだ離せないでいる、それとなーく繋いだままの手と手。

気づくまで後数秒、恥ずかしがって振りほどくコイツ、さも今気づきましたと怒るあたし。

どっちだろう。でもどっちでもいい、そんな面倒臭いことをやってみたい。


この恥ずかしくて、熱くて、固くて、それでいて──甘い、感覚にあたしは見るのだ。



女「…青春、やったろーじゃないの」


何処へだって、あたしは一緒に行ってやる。

第二十九話『青春への新しい青春≪つっこみ≫』


次がラスト
今月中に現れます ノシ

イケメン「忘れ物はないか? イケ友、君が一番心配なのだけれど」

イケ友「まかせんしゃい! バッチシそろってキャリーに入れ込んだぜ!」

男「あれ? このパンツは誰のー?」ヒラヒラ

イケ友「きゃー! おれっちのだわ! 男ちゃんのえぅっちぃー!」

男「えっ!? い、良いから早くしまいなよ!」

イケメン「……」

男「おい。自分もここで忘れ物を装えば、ツッコミもらえるとか思ってないだろーな」

イケメン「へへっ」

男「笑うな!」


同級生「ふわぁ~、何? まだ君ら準備終わってないの?」ガチャ

イケ友「丁度終わったところよ。同級生もうんこおわった?」

同級生「き、君ねぇ~…よくもまぁ言ってくれるよ、違うから、小さいほうだから」

不良「そうか。じゃ、気兼ねなく出来るな」ガチャ

同級生「え」

男「そういや、イケメンはお土産買った?」

イケメン「勿論さ。親と元部活動エンバーに色々とね」

男「ふーん…」

イケメン「君は? まぁ大きく膨らんだカバンを見れば、わかるけれど」

男「ん? ま、まあな…」テレ

イケメン「? どうして照れるんだそこで?」

男「んんっ!? な、なんでもないってのッ! うんッ!」ババッ

イケメン「……」じぃー

男「…なんでもないって…」プイッ

男(言えるわけがない。女さんと一緒に小一時間、ずっと変なテンションで盛り上がりながら選んだってこと)


女『これだけキチンと選べば、お母さんだって喜ぶんじゃない? えっへへー』


男(凄く気になる。なんだあの急激に距離が縮まった感じ…うぐぐぅ…誰かに相談したい、言いたいけれど、むぐぐ)ギュウウ

イケメン(なんだろう? 急にそっぽ向いて、お腹を押さえるなんて、あっ!)

イケメン「我慢してるのか?」

男「えっ!? な、なんのことだよ!?」

イケメン「ははっ、誤魔化しても無駄だよ。オレにはきちーんと見破ってしまってるのさ」

男「なん…だと…」

イケメン「大丈夫。確かに言いずらいかもしれないが、みんな気にしたりしないよ」

男「ほ、本当に? 馬鹿にしたり…しない…よな?」

イケメン「もちろん」

男「じゃ、じゃあその…実は一時間前…」

イケメン「一時間も我慢してたの!? それはっ、なんだろう! 些か我慢強すぎるよ!」

男「うん? まぁ、色々と変に盛り上がってしまって…」

イケメン「そ、そりゃそれだけ我慢すれば…盛り上がるだろうね…」

イケメン(だからお腹を押さえてたのか…なるほど…)ゴクリ

イケメン「じゃ、じゃあ悠長に話してる暇なんてないだろうに! ほら、早く行ってきなよ!」

男「ふぇぇっ!? もう周りに言っちゃうの!? も、もう少し心の準備が必要で…っ」

同級生「どうしたんだ?」

イケ友「どったの急に騒ぎ始めて?」

イケメン「ふたりとも! 男君がいやに頑固者なんだ! 説得してくれ! きっとこのままじゃ…っ」

イケメン「人の目も気にせず…ッ…全てをぶちまけてしまうかもしれない…!!」

男「ぶち撒けねーよ! 何いってんのお前はぁ!?」

イケメン「一時間も我慢してたらあり得る話だろ…?」

男「が、我慢我慢って…さっきからちょっと聞き捨て為らないんだが、何なんだよそれ…!」

男「俺は別に、…良いんだよ…気のせいかもしれないし…単なる俺の勘違いかもだし…」

イケメン「勘違いってことは無いと思うけど…!」

男「もうなんだって良いんだよ! あーもう、お前に感づかれると本当に面倒なことになる…っ」

イケメン「うぐ…君は本当に…で、でも本当に本当に我慢の限界が来たらどうするのさ…?」

男「えっ? そ、それはっ、その~…」

男「…お、女さんに少し、聞いてみるかな?」ポリポリ

イケメン「アイツに主導権握られてるの!?」

イケメン(ここでまさかの女のやつが出てきた! 男くんのトイレ管理を…っ…アイツ何やってんの…!?)

男「ばっ! バカ言え! お、俺だってやるときゃやるんだ、だから、…ちゃんと言い切ってみせる、と思う」

男「うん、いけるな、多分だけど、言えるんだよ俺は…」テレテレ

イケメン(しかもちょっと照れてるし!! いつの間にだよ! いつからそんな関係なのさ!)

男「な、なんだよ? そんな目で見て…」

イケメン「だ、だってそう思うだろっ? そ、そんないかがわしいことになってるなんて…! しかもマニアック!」

男「マニアック? いや、待て、なんだそれ、俺は一緒にお土産を選んだだけであって…!」

イケメン「我慢を強要されつつ!? 公共の場所で…!?」

男「うぐっ、言い方が悪いだろ! お、俺が気まずそうにしてるのを女さんが楽しんでるみたいな言い方…!」

イケメン「そりゃそうだろう! それが狙いだもの!」

男(えっ? そうなの?)【女友達&彼女経験なし】

男(じゃ、じゃあ急に近づいてきたりしたのも、失言しても笑って済ませてくれたのも全部、狙ってやってたってこと?)

男「戸惑う俺を高みの見物で楽しんでた………?」

イケメン「お願いだよ男くぅーん! 目を覚ましておくれ! 何の弱みを握られたのかわからないが、出来ることがあったらオレがなんとかするから!」

男「………。そう、だよな、お前は幼馴染だし、俺だって……本当のことを知りたいし…」

男「電話、そうだ電話をしよう。今から女さんの携帯にかけて聞いてみたい」

イケメン「男君…!」


イケ友「んー、よく分からんけども。とにかく女っちに電話したいんなら、ほれ」ヒョイ

男「え、準備してくれてたの?」

イケ友「話の流れ的にな! ワンプッシュで繋がるぜ、男ちゃん」

男「う、うん」ゴクリ

ぴっ! prrrrrrrrr

『はい? もしもしアホ? 何を急に?』

男「あの…もしもし…」

『……、なんで目つき悪男が出てるわけ?』

男「その、実はイケ友から携帯を借りてて…今になって思えば女さんの番号知らないなって…」

『あれ? そうだったっけ? そっか、なら今度教えるわ』

男「お、おぉう…」

イケ友「今更だけどイケメン、これ何で電話したん?」

イケメン「雌雄を決する時なのさ、そうそれは下克上と呼ぶんだ」

イケ友「なぬ!? よくわからんがとにかく男ちゃん頑張れって感じだよな!?」

イケメン「その通り!」


『…なんかそっち騒がしいわね。また馬鹿やってるんじゃないでしょーね』

男「あ、あのさ女さん!」

『な、なによっ?』

男「実は女さんに聞きたいことがあるんだ、だから、素直に本当のことを言って欲しいなって、思う」

『急になによ…?』

男「…さっきのお土産屋でのことなんだけど」

『……!!』


~~~

『さっきのお土産屋でのことなんだけど』

女(……!! 嘘、なにちょっとやめ、嘘っ!?)カアアア

女(もおこんなすぐさま訊かれちゃう!? た、確かに色々とやり過ぎたなって今では、悶々としてたけど…!!)


マネ「?」ヒョコ


女「っ」

女(お、落ち着きなさい、あたし。ここで慌てればコッチのバカどもに勘付かれちゃうわ)

女(冷静に冷静に…あたしは至って普通でクールに聞き遂げるのよ、どんなことを言われても)フゥー

女「そっ、それが何よっ? なにか問題でもあったワケっ?」ヒクヒクヒク

『問題、というか。俺が思ったことだから変に捉え過ぎてるなんて言っちゃえばお終いなんだろうケドも…』

女「っ…っ…っ…」ドッドッドドッドッ

『女さん』

女「…う、うん…!」ゴクリ

『なんか…さっきまでの女さんって、その色々と変だったなと、思うわけで…』

女「変!? 変ってなによ、ちょっとどういうコトよ!?」


女友「んん?」


女「うぐっ、うじうじ言ってないでハッキリ言いなさいハッキリと…!」

『だ、だからさ! 距離が近くても怒らないって言うか、気にしないで話し続けてくれるっていうか…っ』

女「うっ」かぁぁぁ

『でも、それって、…つまり女さん的に言わせれば…』

女(い、言わせればぁ!?)

『──俺をからかってる、のかなあって…』

女「………」

女(からかってる? へ? なにそれ、どういう…)

女(ハァッッ!? あ、あたしが余裕綽々でアンタを相手取って高慢ちきな駆け引き気取ってるって言いたい訳!?)

女「んなっ、ワケ…ッ…待ちなさい、こういった話はアンタ一人じゃたどり着けるわけがないわ…!」

『うぐっ!』

女「その反応…やっぱり変態が要らない入れ知恵した訳ね!? ちょっと変わりなさいそいつと!」

女(妙に察しが良い展開だと思えばやっぱりこれだわ! 文句行ってやる!)

『…オレだが』

女「ちょっと変態!? あ、あんたねぇ…!? 目つき悪男にヘンなこと言わないでくれる……!?」

『何を言う。そっちが変なことを正そうとしているだけだ、状況をおかしくしたのはお前のほうだろう!』

女「はぁ? 何を言って…」


マネ「ねえさっきから誰と電話してんのー?」

女友「その感じ。イケメン君っしょ? えっへへー、アンタの態度はわかりやすいんだよねー! かわってちょ!」ブンドリ


女「あっ! ちょっとやめなさいよ!」

女友「あ! イケメンくん? 昨日は本当に───」

『お前には心底失望した! 男くんのべ……べ、便意を管理するのが、趣味になったとは謂いも知らなかったぞ!?』

女友「──………」

『今更誤魔化してもオレは騙せ無いからな! 男君から聞いたぞ、お土産屋でか、彼が便意に困ってる姿を悦として眺めていたとな…!』

女友「」ガクガクガクガク

女「ちょ、何よその反応…?」

女友「…ひ、人の愛情表現は人それぞれだと思うわけですから私的にも特に言うことなんて無きしにもあらずというか…っ」ポロポロ

女「なに泣いてるのアンタ!?」

女友「うわーん! 知らないうちに女が金髪みたいにド変態になってたよー!」がばぁ だきぃ!

マネ「えっ?」

女「はぁッッ!? 本気で何言ってるワケ!?」

金髪「…本当に何を言ってるんだお前は…」

マネ「女友っちがここまで取り乱すなんて…女ちゃん!? 一体どうしたっていうんだい!?」

女「あたしが知りたいわよそんなモン! 電話返しなさいよまったく!」バッ

女「ちょっと変態? さっきのもう一度言ってくれない?」

『何!? 羞恥心を堪えて言ったというのに、お前はもう一度オレに言わせようってのか!?』

女「アンタまじで何言ったの!?」

『くそっ…幼馴染のオレでさえ快楽の対象として見てるのか…!』

女(全然先が見えない会話なんだけど…)

『ならもう良い! そっちがその気ならオレにだって考えがある! 良いか、心して聞け…!』

『そう出るなら断固拒否、今後はオレが男君の管理をする! へへ、どうだまいったか女…!』

女「は? 一体急になにを…」

『男子トイレまで最終的に見張れるのはオレだけだ、ハァーハハッ! ざまみ──ごはぁ!?』バタリ

女「……。ご苦労、修学旅行前の約束守れたようね」

『お騒がせした…そっちの誤解解消は出来れば女さんに頼む…』

女「あんたも大変ね。いや、こっちも大変だけど」

『まぁうん、取り敢えずごめん。じゃあこれで』ピッ

女「はぁ~、アンタもぴーぴー泣いてないで立ち上がんなさいよ! まったく!」

女(──にしても心配なってきた、最終日に問題ごと起こさないでよアイツ等ってば)


~~~

同級生「今にして思えば、この修学旅行はコイツのポンコツ具合を知れるいい機会だった」

イケメン「ポンコツ…」

男「いや間違ってないから」

イケ友「最終日だからってひねり出し過ぎだぜ、まだやりきれなかった感じ?」

男「なわけない、絶対に。一番楽しんでたのコイツじゃん…」

イケメン「オレ個人としてはお酒のせいで記憶が殆どないワケで…」

同級生「なおさらたちが悪いなポンコツ」

同級生「はぁー、もういいや。最終日まで付き合ってたらこっちまでアホになりそうだ」ガチャ

男「あ。…どこいくの?」

同級生「販売機、コーヒー飲んでくる」

男「そっか…」

同級生「……。何してるんだよ、君も来るんだよ」ジィー

男「え? お、俺も?」

同級生「当たり前だろ、先に行ってるからな」スタスタ

男「えぇちょっと!? 勝手に言って勝手に行くなよ…!」


自動販売機前


同級生「微糖と」ピッ ガタコローン

男「はぁ…はぁ…同級生君、足、早いね…」

同級生「まあね。足長いし、君チッコイし」カシュッ

男「ちっこい言うな。はぁー走り疲れた、俺も何か飲もう。ん? コレ、お釣り入ったままだけど…」

同級生「そのまま買えば?」

男「……。いいよ別に、俺は俺の金で買う」ピッ チャリーン

同級生「ハッ! ありありと目に見えた偽善どーもアリガトー」

男「な、なんとでも言ってくれ。自然に装うとか無理だし、でもやりたくなかったし」ピッ


ゴローン


男「というか、そうやって試すのやめてくれない? 遠慮しても無遠慮でも、良い印象ないじゃん」

同級生「…何いってんの、そんな僕であったからこそ、君が青春に誘ったんだろ」

同級生「意地の悪ぅーくて金持ちで鼻につく、何やらせても目についてウザったい」ハッ

同級生「──なのに今更否定? ほらもう未知の青春とやらの底が見えた、君がいう楽しい時間ってのは何時始まるのかなぁ?」クク

男「……」カシュッ


男「うん。だから否定する、君のこと」


同級生「………何?」

男「俺が気に食わないなら言うよ。だってそれが俺の【役割】みたいなモンだし」

男「…今はそれしか知らないけど、俺だってまだ、皆で楽しい時間は慣れてない。やれることを、やるだけなんだ」

同級生「ふん。君の主張は何時だって正しいの? 他人にとって認められるものだと?」

同級生「それは独りよがりで独善的だね。子供の言い訳のほうがまだ社会的だ」スッ

男「あのさ、同級生君って調子に乗ると硬い口調になるよね」

同級生「ッ、くっ…何を急に…っ?」チャポッ

男「いやぁ、見てると懐かしなぁって。一年前の俺見てるようで…」

同級生「そ、そんな憐れんだ目で僕を見るな! 失礼だぞッ! 失敬な! 君と僕は違う! 全然!」

男「またその話ぶり返す?」

同級生「むぐ…っ」

男「あのね、別に俺の言葉なんて信じなくていいよ。言いたいことを言う、それだけなんだし」

男「それを否定するのも同級生君、きみの勝手で良いんじゃないの?」

同級生「…否定…」

男「仲良しこよしなんて望んじゃいないよ。嫌なら嫌でいい、…無理して付き合うほうが、よっぽどだ」

男「──楽しいことをしている時の否定しあいは、結構、幸せだと思うよ」ニッ

同級生「…君は笑うんだな、本当に」フィ

男「え?」

同級生「知らない顔だ。…知らなくて当然か、一年前とは違うんだもんな」ボソリ

同級生(──凄いな、あの時の保健室で見た彼が【こんな風】にまで変わってしまうんだから)

~~


同級生『センセー、授業ダルいんで眠りにきましたー』ガラリ

『……』

同級生『あれ、先生居ないのか? ねぇそこの君、何か聞いていない?』

『……』スッ

同級生(──キモ、目暗っ、……【本当に生きてるのかコイツ?】)ゾク


~~

男「同級生君?」

同級生「…勝手に同情して、勝手に重ねてたのは僕の方だ」

同級生「ハハッ! 青春ねェー本当に充実できる楽しい日々が過ごせるのなら、まるで魔法の言葉のようだ」

男「俺も最初はそう思ってた。でもね、これが案外信じてもいいかなって思えるんだ」

同級「ほお? その根拠は?」

男「うん。それはね──はい、これ交換しよう同級生君」スッ

同級生「は? なぜ君が買ったモノと僕のを?」

男「それ微糖だよね? ろくに確認せず買ったと予想するけど、俺のはココアだ」

同級生「……本当だ」チャポッ

男「だから交換。俺は微糖でも行けるし、同級生君は甘いほうが好きと見た」


男「──そして、こんなコト言えるようになるのはきっと、青春だからだよ。たぶんね」


同級生「…………、」ギュッ

同級生「はは、くせーセリフだ…」スッ

男「…知ってる、超恥ずかしい…」カァァ

同級生「でも、言いたくなる否定ってか。そりゃ魔法だって思っちまうなぁ、うん…」

スッ

同級生「なら取引だ。僕なりに青春にならって動いてみよう、それが僕に出来る最大限の譲歩だと思え」

男「……俺の回りは取引だらけだな」

同級生「なにか不満でも?」

男「滅相もない。同級生くんが俺と友だちになってくれるって言うのなら、大賛成だ」スッ

同級生「僕と友達なんてさぁ、ポンコツもそうだが、君も相当なアホだな。類は友を呼ぶとは本当だったか、でも」スッ


カツン


同級生「せいぜい利用してやるよ、青春の糧とやらにね」ニッ

男「…此方こそ、頑張って否定し『尽くして』みせるよ」ニッ


~~~


同級生「このまま僕は辺りを見回ってくるよ。君は部屋で帰宅準備をしたらいい」

男「え、俺もついて行くけど…」

同級生「いいよ邪魔くさい。そこまで許したつもりはない、僕のプライベートあっての関係性だ」キッパリ

男(つっけんどんだけど、凄く共感できる…ここはイケメンとか他の連中とはない親近感…)

同級生「君も楽しいからってベッタリくっつきあうの程々に。…昔の君のほうが幾分知的な雰囲気だったぞ」

男「それ、遠回しに自分を褒めてる感じ?」

同級生「馬鹿な! 当時の君と僕を一緒にするんじゃあないッ! マジで…! …本当にだぞっ?」

男「段々と傷ついてきてるんですが…」しょんぼり

同級生「わ、悪く行ったつもりは無いんだけどね…!? ……いや、悪いか。と、とにかくだ!」

同級生「僕は一人で行動したいんだ。後は勝手に一人で青春探しでもしてくればいい、それだけだっ!」バッ

男「あ…」

男(行ってしまった。というか青春探しって…別にそんな目標掲げてるわけじゃないんだけど…)ポリポリ


廊下


男「ん?」

イケ友「おっ? 男ちゃーん、どったのこんな場所で」

男「そっちこそ廊下で何してんの? またお土産でも?」

イケ友「うんにゃお土産は無し。兄妹全員分買うお金ないどころか持ち運べる自信がない」ブンブン

男「想像以上に大変なことになってる! む、無理してでも買っていったほうがいいんじゃ…」

イケ友「んー、持ち運びはやれなくもない。バスの隣席が辛いだけだ、けど金の問題がなぁー」

男「お金ぐらいなら俺が貸すけど…」

イケ友「ちょいちょーい、既に電車賃借りっぱなしじゃんか。ばっか良いんだっての~」ヘラヘラ

イケ友「兄妹も別に無理して買ってくんなと言ってたし、それで良いんよ。それで」

男(本当に良いのかそれで…最初で最後の修学旅行…思い出とか、色々とあるはずなのに…)

イケ友「………」ジッ

男「ん? 何、こっち見つめて…?」

イケ友「またおれっちのことで悩んでくれてんの?」ニッ

男「へいっ!? いやっ、そのっ別に悩むとかそこまでのことは…っ」

イケ友「またまた。男ちゃんはすーぐ人のことで悩んじまうなぁ、良いやつだ良い奴、うりうり~」グリグリ

男「うぉぉ…」ぐわんぐわん

イケ友「お土産に金使えねーのは楽しめた証拠だ。つまり、修学旅行で楽しめたって意味にもなるってのよ」

イケ友「つーワケで、お土産はねえけどお土産話はたっくさんあるってコト! 十分、それで十分」

男「あ、ああそういう考えも出来るのか」

男「……。ならもうちょっと思い出づくりする? お土産話、増やしたりしよっか?」

イケ友「おっ? 何それ楽しそう! ここで、今のタイミングで!? 何作るんよ男ちゃん!?」

男「そうまで期待されても…」タジ

イケ友「カァー! 男ちゃんならきっと三日間以上の思い出今から作り出せそうだわ~!」

男「いやに期待しすぎ! どっから湧いてくるんだその信頼度…!」

イケ友「だってよぉ、──ま、今は良いや。んで? どうするよ? なにしちゃうよこっから?」ワクワク

男(変に期待されまくってる、何かいい案は。イケ友が喜びそうなコト…思い出にガッツリ残りそうな、)

男「あ。そういや」

イケ友「うん?」ニコニコ


レストラン


男「やっぱりあった。ここも旅館内に施設があって、雑誌にも乗るぐらい有名らしいんだ」

イケ友「おぉ…」キラキラ

男「って、先日一緒にな、ナンパしたお姉さんが言ってた…」

イケ友「雑誌編集者の人だろ? ダッハー、男ちゃんってば即時結婚だわー!」

男「即時即決」

イケ友「そうともいうー! じゃあじゃあ、早速入ろうぜ? 勿論、教師にバレないようにな!」だだっ

イケ友「って待て、おれっち金ねーですよ?」ピタリ

男「そこでお姉さんの話が意味出て来る。…ほれ、これを見よ」ゴソリ

イケ友「な、なんだと…そりゃどこをどうみたってお食事券…!?」

男「断ったんだけど貰ってしまった。お話きかせてくれたお礼にだって、それにここビュッフェスタイルらしい」

イケ友「ビュ…?」

男「食べ放題ってこと。これなら存分に楽しめるよ、きっとね」


~~~

イケ友「んまァ~~~~いいいっ!! な、ななななんだコレェ!? 肉汁のシャワーが口で弾けるぜ!?」

男「美味ェ…人生損してた、こんな旨いサラダなんてあるのかよ…」

イケ友「うさぎさんかチミはっ! 肉を食べなさい肉を!」モシャモシャ

男「食べてるよ食べてる。でも昨日の夜と朝に出された定食より味に違いがあるのは何故だ…」

イケ友「もごもご。提供する区間がちげーんだろな、一般客は旅館でここはオリジナル」つんつん

イケ友「扱ってる食材違けりゃ職人すらちげーだろうよ。ナハハ、裏で喧嘩とか起こってそう」

男「ふーん。随分詳しいね、イケ友」

イケ友「よくぞ聞いてくれた。このイケ友、食に関しちゃ何時もより数百倍のやる気が出ちまうのさ!」

男「ふーん…」モグモグ

イケ友「ありィ? そこまで驚かれなかった感じ…? 結構頭良さ気なこと言ったつもりだけど」

男「え? あ、うん、まあね。文化祭の時のイケ友、だって凄かったじゃん
  食品管理に保存方法、あと残量計算とかポンポンやってたし。あーこういう仕事向いてるんだなぁ、と」

イケ友「おうっ?」

男「それに勿論、クレープにたこ焼きも完璧だった。つまり、イケ友のかっこよさは既に知ってましたと」

イケ友「………」ぽけー

イケ友「んん~~、まいったなこりゃ」ポリ

男「どしたの?」

イケ友「おれっち褒められるの超好きだけど、思わぬ方向からぶっちゃけられるとテレるわ」ブニー

男「ぶふっ!? ちょ、照れ隠しなのか知らんが変顔で誤魔化すなよ…!」フキフキ

イケ友「お、おお、でも本当になぁーなんだろうなぁー」フキフキ

男「何が…? まだあるわけ?」

イケ友「なんで男ちゃん、男なの?」

男「…………」

男「は?」

イケ友「なんつーかね、ふと兄妹のこと思い出しながら飯食ってたらお袋が頭浮かんじまってよ」

イケ友「よく言うんだよおれっちに。──オンナ作るんならまず『褒め上手』を捕まえろ」

イケ友「次に『舌の価値が一緒のやつ』で、もうひとつが『自分の意見を言える根性』みたいな?」

男「う、うん…」

イケ友「んで最後が『私に似たオンナ捕まえるな』だ。どうだ、ヤバくねおれっちのお袋?」ニシシ

男「ひ、人んちの家庭事情に感想言うのはアレだけど…相変わらず凄いね、お母さん」

イケ友「そりゃ数十回再婚するぐらいだしな。考えてるコト含め言うこともヤバイだろうよ、んでもってさっきの事な」

イケ友「色々と考えてみた結果、男ちゃんがベストマッチしててマジビビってる」もぐもぐ

男「平然と語ってるけど、お、俺どーみたって男だしわかってる?」

イケ友「もちのロン。でもあれなんだよなぁ、修学旅行中に彼女と別れたって言ったじゃんおれっち」

男(そういやそんなこと言ってたな…)

イケ友「あれ、お袋にこっぴどく叱られたせいなんよ。頭からばっさり、彼女泣いて帰っちゃったし」ぴこぴこ

男「そりゃひでぇ! そこまで介入してくんのお母さん!?」

イケ友「してくんの。だからおれっちも意地になって、お袋に認められるカノジョ見つけようとしててー」

イケ友「今のところ惨敗。超腹が立つし、見る目無ぇとふざけたこと言われる始末だし。くぁー思い出しただけで腹立つしィ!」

イケ友「──そういやおとこちゃん、まだメイド服持ってる?」キョトン

男「もっと必死に頑張れ馬鹿ッ!!」

イケ友「わー理解がはやいなーおとこちゃんは~~」ウフフ

男「嫌な予感したらこれだよ…ッ! まったく、イケ友はお母さんに認められなきゃカノジョ一人も作れないのかっ?」

イケ友「わ! カッコ良いこと言ってくれちゃってまあ、…まあたしかにな。おれっちらしくもねェ」

男(そんな関係性持ったことがない俺がいうセリフじゃないけどね…)ドンヨリ

イケ友「でもよ、彼女作りなんて結局最初からお袋ギャフンと言わせる為の手段つーか? 最善策てーか?」

男「動機が感情移入しにくいなほんっとに…だからちゃんとしたいい子が、見つからないんじゃないの?」

イケ友「…え?」

男「だから、目的がいい子と付き合うじゃないから見破られてるんじゃないのかって話で──」

イケ友「──その通りかも知れん、思えば背負投された時も言われてたわ…」

男「本当に凄いなお母さん…」


『テメーそりゃ前に別れたバカの再婚相手の娘じゃねーか、塩もってこーーい!!!』


男「本当に凄いなお母さん…!!」

イケ友「別れた夫の再婚相手の娘までフツー把握してるかよカッケーなオイ! とかしか思ってなかったけど…」

イケ友「思えばそれは、おれっちが見境ないせいで起こったことなのかも知れん…」わなわな

男「ごめん、全然わからない普通じゃなさ過ぎて」ブンブン

イケ友「ん。だったらやっぱおとこちゃんだな、決まり」

男「もっと分からない展開になってきてない!? はぁっ!? 何が決まったの今!?」

イケ友「いや一種の賭けよ。ぶっちゃけぶん殴られる覚悟でおとこちゃん紹介してみたい」ジッ

男「ま、待てバカ! おいおバカ! もうバカバカ言ってやるよバカバカ!」

イケ友「大丈夫大丈夫! もしあっち手え出してきた本気で対抗して投げっぱなしジャーマンすっから!」

男「何が大丈夫だ馬鹿野郎! ものっそ家族喧嘩なってるじゃんそれ!」

イケ友「日常茶飯事だっつのよい。ね、ね? お願いおとこちゃん、本当にお願い、一生のお願いだから…ね?」

男「っ~~~…な、なんだよそれ…一生のお願いとかここで使うんじゃないよ…っ」

イケ友「ちゃんとイケメンに内緒にしとくから!」パンッ

男「いらんわそんな秘密! …いやっ、でも面倒になりそうなんでこの会話自体秘密にしておいて…」

イケ友「では了承と受け取っても?」

男「なわけあるかーっ!」ガァー

イケ友「やっぱダメかー! てへ! でもよ、ちょっとワンチャン狙っても良い?」ゴソゴソ

男「ワンチャンってなんだ…」

イケ友「やっぱダメかー! てへ! でもよ、ちょっとワンチャン狙っても良い?」ゴソゴソ

男「ワンチャンってなんだ…」

イケ友「今かお袋に写メ送るから、大丈夫、手元らへんだけ。それでどう感想来るかみてみたい」ワクワク

男「うっ…微妙にやってみたい感が湧いてしまった…」

イケ友「いざとなったら冗談でしたーって、お袋に言うし。そんときゃ鼓膜潰されるぐらいで済むっしょ」ニッ

男「ごめんやっぱ止めたい…! 凄く止めたいけどなんだその笑顔…!」

イケ友「へーきへーき、そこまでおれっちヤワじゃない。丁度おとこちゃんジャージだし、一応は誤魔化せられるな」

男「…うぐ…っ」ピロローン

イケ友「えーと、文面は『この子どうよ?』っと」ぽちっ

男「本当に大丈夫なのか…? 人によっちゃ指の形ですぐに分かるって話だけど…」

ポヒュッ!

イケ友「お。もう返事来た、めずらしー。どれどれ…」


『それカルディーのフォロミールドレッシングか? 女子力たけーなオイ』


イケ友「…、ですってよ?」

男「サラダに食いついてるじゃん…それに微妙に俺が男だってバレてる感ないコレ…?」

イケ友「そお? おれっちには分からんが、一応は褒めてると思う返事だと…」

ボヒュッ

男「また返事だ。どれどれ──」


『気に入った。今度作れてこいアホ息子』


男「──ん……?」

イケ友「ほぉー! すっげすっげ! 嘘だろ!? お袋から誘ってきやがったぜ!?」

男「…え、待って、なに、決まったの? もう今いくこと決まったの…!?」

イケ友「全然バレてないって男ちゃん! こりゃ顔合わせたとき、ククク…いい顔がみれそォーだぜェ…!」

男「待てって! こっちの都合ってのも考えて…!」

『よし。仕事に都合つけて無理やり休み作った、
修学旅行終わって二週間後、必ず連れて行こい』

男「超逃げられなくなった! 本当に行動力アリすぎだよお母さん!!」

イケ友「もち来てくれるよなおとこちゃん? くふふ、いやー良い親友もったもんだぜおれっちぃ~」

男「…親友…」

イケ友「そーそー、男ちゃんならきっとどーにかしてくれるって思ってるし」

男「…だから、どっか湧いてくるその厚い信頼度は」

イケ友「そりゃもちろん」

イケ友「──おれっちがイチバンって思ったやつに、期待しないわけがねーっしょ?」ニッ

男(ハッ!? 騙されるな乗せられるな俺! 調子良い事言われて納得しかけるんじゃないっ)ブンブン

男(…でも)チラ

イケ友「うっし。アッチが乗り気ならおれっちもやる気出さねえとな! どうっすかなー?」

男(まあ、イケ友のためと思えばそうでもないかな)ニコ

イケ友「こうなったら女っち巻き込んで完全女装で立ち向かうってのもアリ?」

男「……やっぱりやめたくなってきた……」


~~~


イケ友「ケップ。あーくったくった、もうなにも入らん」

男「よく食うな本当に…」

イケ友「高校生が飯食わなくてどうするよ? ナハハ、男ちゃんもたーくさんたべて大きくなれよー?」

男「言われなくても大きくなる。これでも今年だけで三センチぐらいは、」


不良「ん? ここに居たのかお前ら」のそり


男「ヒッ!? ──あ、不良君か」

不良「ヒッてお前…」

イケ友「不良ちんどったのここで? なんか用事ったの?」

不良「いや、ココらへんでいい匂いしてたから彷徨いてた。特に要はない」

男(野良犬みたい…)

不良「お前らは? なんだか良い匂いさせてるな、羨ましい」クンクン

男「ちょっ、か、嗅がないで…! なんかこわい! 圧迫感すさまじい!」

イケ友「男ちゃんと秘密のお食事よい! ナハハ! 羨ましいっしょ!」

不良「食事か。──もう具合は良くなったんだな、たくさん食べれたか?」スッ

男「えっ? あ、うん、そりゃ一晩経ったし平気だけど」

不良「ん」なでなで

男「うぉおおぉおおぉおっ!?」ぐにょんぐにょん

男「ち、縮む縮んじゃうから! やめて本当にやめろッ!」ばしっ

不良「元気だな。いいスナップだ」

男「このタイミングで褒めるのおかしくない!? ったく、そういや不良君はお土産買った?」

不良「弟と妹に買った」ウン

男「あ、兄妹居るんだ。へー…って、イケ友のやつは?」

不良「そっち向かって走っていったな。ポケモンが居たとかなんとか」

男「本当に自由だなイケ友は…迷子になったりしないのかな…」

不良「大丈夫だろ。お前みたいに突然失踪することはない」

男「…ヘイ…」ションボヨリ

不良「……! い、いやっ、別に悪く言った、つもりはなくてだなっ、うん」

男「いや本当のことだしな…正直に行ってくれたほうがまだ気が楽になる…」

不良「そうか…」

男「……。なんというか、本当に不良君には色々と迷惑かけた修学旅行だった気がする、かな」

不良「ん? そうか? 俺的には十分楽しかった、特に不満もないし。ああでも…」

不良「あと一つすませておきたかったことはある。単なるやり残しだけどな」

男「やり残し? 修学旅行中に済ませておきたかってこと?」

不良「ああ。そもそもそれが修学旅行に行く理由だった」

男「すげー大事じゃないかそれ!? ど、どうにかなる手立てはつきそう…?」

不良「さあな。なればいいが、俺だけの都合で済ませて良いものか悩んでもいる」

不良「…なあ男。お前は今が楽しいか?」

男「唐突で漠然とした質問だねそれ…た、楽しいけどそれが?」

不良「満足してるか?」

男「満足…なにをして満足は人によるだろうけど、まあ俺的には十分満足してると思う」

男「仲のいいメンバーで、楽しい時間を過ごして、わーわー盛り上がって…」

男「色々問題もあったけど、最後はちゃんと思い出として語れる。…それは俺の満足だって言えるかも」

不良「………」

不良「そうか。なら俺も満足だ、これ心置きなく修学旅行を楽しめた」スタスタ

男「……。ちょ、ちょっと!? なにが今のなにが満足できましたか!?」

不良「? 俺はお前が満足してれば満足なんだが?」

男「なんだが? じゃないけど! 俺の満足度がどう不良くんに関わってくるわけ…!?」

不良「今年で小学生になる弟がいる。コイツがまた口が悪いときた」

不良「弟いわく、俺は人の気持を察するのが苦手な唐変木らしい」

男「すっごいバッサリ行くねおとうとくん…」

不良「たまに泣かされることもあるな」

男「殺傷能力ありすぎる…」

不良「でも俺もそうおもう。だから今回の修学旅行は気をつけてた、三日間も他人と過ごすんだ」

不良「なにヘマしたっておかしくない。常に気を張って、考えてから行動することを心掛けてた」

男「…それで?」

不良「初めに誰を思えばいいのか考えた。そしたらお前を見てすぐにピンときた」

不良「あ、コイツすぐに泣くなって。守らないと餓死するって」

男「断言する。いやしたい、餓死はないから!」

不良「チッコイくせにちょろちょろ動き回ってる印象だったから…」オロオロ

男「餌ぐらい自分で取れるから! …そういう話でもないし! 次いって次!」

不良「お、おお、つまり、なんだ。まあお前の行動をよく見て、考えて、フォローしたいなって考えてたわけだ」

男「そうすれば満足行く修学旅行が過ごせるからって…?」

不良「そうなる。俺はとにかく普通に過ごしたかった、班のメンバーに迷惑をかけたくなかったんだ」

男「不良くん…」

不良「まあこの見た目だからな。勘違いされても仕方ない、でも一々説明しても面倒だろ? だからフォローに回ったわけだ」

不良「──それで、最終日にお前が満足したって言葉を聞けたら……俺には十分過ぎる報酬だ」

男「……。でも、どうして俺だったんだ。餓死云々は置いといても理由は他にあるんじゃ…?」

不良「そりゃある」

男「それは?」

不良「ああ、お前が好きだから」

男「ぶぅううっ!?」ブフゥーッッ

不良「詳しく言うなら、男と不良の会話が好きだ」

男「それもよくわかんないね!?」

不良「そうか? そう思ってる連中も俺以外にも居ると思うが…」

男「な、なにが好きだっていうのさ…っ? あんな奴と俺の会話がって…!?」

男「そうすれば満足行く修学旅行が過ごせるからって…?」

不良「そうなる。俺はとにかく普通に過ごしたかった、班のメンバーに迷惑をかけたくなかったんだ」

男「不良くん…」

不良「まあこの見た目だからな。勘違いされても仕方ない、でも一々説明しても面倒だろ? だからフォローに回ったわけだ」

不良「──それで、最終日にお前が満足したって言葉を聞けたら……俺には十分過ぎる報酬だ」

男「……。でも、どうして俺だったんだ。餓死云々は置いといても理由は他にあるんじゃ…?」

不良「そりゃある」

男「それは?」

不良「ああ、お前が好きだから」

男「ぶぅううっ!?」ブフゥーッッ

不良「詳しく言うなら、男とイケメンの会話が好きだ」

男「それもよくわかんないね!?」

不良「そうか? そう思ってる連中も俺以外にも居ると思うが…」

男「な、なにが好きだっていうのさ…っ? あんな奴と俺の会話がって…!?」

不良「単純に楽しいだろ」

男「え?」

不良「お前らの会話は「今を楽しんでる」って感じがひしひし伝わってきて、側にいるだけで楽しいんだ」

不良「だから俺はそれを守りたいと思った。不仲になりそうなら仲裁に入ることも厭わんぞ」

男「…………」

不良「どうした?」

男「…はっきりいっていい?」

不良「どうぞ」スッ

男「変な人…」

不良「ふむ。弟以外に面と向かって言われるのは初めてだな」

男「耐久力が段違い過ぎる…」

不良「それに自覚ありだ。俺も変だとは思ってる、けどそう思ってお前を護ろうと思った。結果、満足の言葉を聞けて俺も満足してる」

不良「ああ、聞いてみたかったんだが、たまに見せるコントみたいな掛け合いは台本があるのか?」

男「あるわけないでしょ…」

不良「そうか。なおさら気に入った」

スッ

不良「言いたいことは十分言えた。残り少ない貴重な時間を使わせてすまなかったな、男」

男「えっ、いや、別にそこまでのことは…」

不良「今後はいくら酒に飲まれても喧嘩はするな。まあ喧嘩しても俺が仲裁に入るから問題はないが…」

不良「……。いかんな、また変なことをいいそうだ」クル

男「あ、不良くんっ」

不良「楽しかったよ、この三日間。全てお前とイケメン、他の班のメンバーのお陰だと思ってる」フリ

男「……」

不良「じゃあな」

男「──俺も、楽しかったから!」

不良「……」ピク

男「みんなと修学旅行を過ごせて、楽しくワイワイ盛り上がって、…そりゃ騒動もあって大変だったけど…」

男「…それでも…」

男「俺は! 不良くんがいたから、今回の修学旅行は楽しかったって…心からそう思ってる…!」

不良「……」チラ

男「…本当だよ?」

不良「くっく、そうか」

男「う、うん」コクコクコク

不良「気に入ってもらえて何よりだ。頑張ったかいがあったもんだな、俺も」


スタスタ


不良「【またな】、男」フリフリ

男「っ……うん!」ブンブン


~~~


男「なにやってんのお前?」

イケメン「ふふふ。実は君が帰ってくるのを待ってたんだ」

男「…」キョロ

男「正直に言えよ。オートロックで締め出されたんだろ」

イケメン「あはは。そんな察しのいい男くんはちょっとキライだなあ」ニコヤカ

男「そんな正直に話さない意地っ張りなお前もキライだよ…」

イケメン「鍵は?」

男「イケ友が持ってる。多分、あと数十分帰ってこない」

イケメン「そっか。うーん、なら二人で何処か暇を潰そうか? 食事なんてどう? 広場に美味しそうなレストランがあってさ」

男「さっきイケ友と行ってきた」

イケメン「えぇっ!? 誘ってくれてもいいだろうに……じゃあジュースで買いにいく?」

男「それも同級生くんとやった」

イケメン「なぜ誘わないの!?」

男「誘ってどーするよ、また喧嘩でも始めるか?」

イケメン「ぐぬぬ。じゃあ今回の修学旅行の思い出を語り合ってみるとかは…?」チラ

男「………」

イケメン「ゴ、ゴクリ」

男「さっき不良くんとやった」

イケメン「隙がまったくないなあ!!」

イケメン「とほほ…見事に流れから置いて行かれてるオレ…酔っ払ってからてんでいいことなしだよ…」ヨヨヨ

男「……」ストン

イケメン「うん? どうしたんだい、急に座り込んで?」

男「…別に」フィ

イケメン「?」

男「……」

イケメン「………」ススス ストン

男「…っ…」

イケメン「何を考えてるのかな?」じぃー

男「だ、だから別に! ……別にいらないだろ、お前には」

イケメン「なにを?」キョトン

男「そういった話題とか、食事とか、ジュースとか……必要ないじゃん、そういうの」

男「無くても話せるじゃん、俺とお前は」

イケメン「……」

イケメン「うん。そうだね」

男「っっ……っ…あぁーッ! もうッ! 変な空気だなオイ!?」

イケメン「急にキレられても」のほほん

男「のほほんとすなっ! あのな、いいかっ? 今回ばっかりはほんとぉおおおに大変だったよッ!」

イケメン「そうそう。そうだね、いつもどーりの青春だったねえー」

男「まった青春青春って…!」

イケメン「──楽しかっただろ?」

男「うッ」ビクッ

イケメン「オレは楽しかった。だから君も楽しかったはずだ、間違いない。これに至っては自信がある」

男「な、なんなんだよその自身は…」

イケメン「ん? そりゃあもちろん…」

イケメン「…君の虜だから、君のことを分からないでどうするんだ。親友失格だよ、それじゃあね」

男「虜って単語必要でした今の!?」

イケメン「親友って言葉は必要でいいの?」

男「ばっっ! …ひつようだろ、それは…」モゴモゴ

イケメン「ふふふ。それは嬉しい限り、あの醜態を見られてなお親友ポジに居られるとは」

男「…本当に反省してんのかテメーは」

イケメン「日々、反省の限りだよ。未だ君のツッコミを上手く引き出せない身としてはね」

男「まったく反省してないな!」

イケメン「ねえ男君。ひとつ、いいかい」

男「なんだよ…っ?」

イケメン「オレはこの修学旅行は結構、賭けだったんだ。なにせ不安要素が二人も居た」

男「二人? …同級生くんと不良くん?」

イケメン「ああ。出来る限り考えて考えて、不都合なき修学旅行を過ごせるよう気を配ったつもりだ」

男「………」

イケメン「それで聞きたいことはね、」


グイッ


男「──ちょっと口閉じろ、イケメン」

イケメン「むぐ」

男「……」

イケメン「………、んー」グググ

男「なんでそうなるッ!」パァアンッ!

イケメン「ふえっへへ、なあに?」ニマニマ

男「変態め…叩かれるのが目的だったか…! そうじゃなくッ、いいんだっての言わなくても!」ブゥンッ

イケメン「どういうこと?」

男「一々言わなくても良いって、なんかむしろ、そういうこと…あまりお前の口から聞きたくないって思う」

イケメン「…どうして?」

男「素直じゃない」

イケメン「オレは素直だよ。少なくとも君の前では」

男「いーや、素直じゃない。お前は意地っ張りで傲慢で、変態の変態で、変態だから」

イケメン「わー変態要素だらけー」

男「事実を語ったまで」

男「…聞きたくないって思うのは、お前がなんか「言い訳」してるように聞こえて、嫌だ」

イケメン「言い訳…? 一体なんの言い訳を? まったくそんなつもりなんて…」

男「──お前、本当に楽しかったのか?」

イケメン「勿論だよ」

男「嘘だな」

イケメン「アハハ。何を変なことを、アレだけ騒いで好き勝手やったのに楽しくないわけがない」

男「それも、嘘だ」

イケメン「えらく断言するじゃないか」

男「するとも。お前だから俺は断言する、他の連中には言えないぐらいはっきり行ってやる」

イケメン「なにを?」

男「…やり残したこと、あるだろ」

イケメン「…………」

男「なんかそんな、気がする。個人的にやりたいことやれてない、そんな雰囲気してるもん」

イケメン「はっ」

イケメン「…こりゃすごい」

男「な、なんだよ? また認めないつもりかっ?」

イケメン「んーん、そんなつもりは最初からないよ。オレは君にウソはつかない、決してね」

イケメン「だから君が言うやり残しはオレ自身、考えたこともないし思ってもなかった」

イケメン「実に充実した修学旅行だったと公言できるほどに、だ」

男「認めてねえじゃねえか…」

イケメン「そう、認められない。オレは君という他人の言葉を認められる根拠がない」

イケメン「…でも、そうだね、どういったらいいんだろうね…」

男「?」

イケメン「…君がやり残したことがある、と言われた瞬間に…そういわれた瞬間にだ…」

イケメン「オレの中でやり残したことがあるって、認めてしまった。生まれてしまった、が…正しいかもしれない…」

男「はあ? そんな面倒くさいこと一々考えてるのお前…?」

イケメン「オレも戸惑ってるよ。でも、くっく、そうだね。君らしいといえば君らしい」クスクス

男「俺らしいって何…?」

イケメン「君が掛け替えのない人ってことかな?」

男「一歩も理解が進まない解説どうもありがとう」

イケメン「そう思う?」

男「掛け値なしにそう思う」

イケメン「……」

男「…なんだよ」

イケメン「いや、なに、ただ改めて思っただけさ。……本当に君と親友になれて良かった」

男「変なヤツ」

イケメン「ああ、そうだね。オレは変なやつなんだ、何時までたっても」

男「……、なあ」

イケメン「うん? なに?」ニッ

男「………」

男「寒いから、もっと近寄ってくれよ」

イケメン「………、はい?」

男「ここ、廊下」

イケメン「知ってるけど……?」

男「風通り良すぎて肌寒いから、もっとこっちよってくれ」

イケメン「……」きょとん

男「なんだよ」

イケメン「寄っていい? 近づいていい? …オレの方から君の方へ?」

男「い、いちいち確認取るんじゃねーよ」


そそそそ ぴと


イケメン「…温かいです」

男「…うん」

イケメン「…」

男「…」

イケメン「…どゆこと?」

男「こっ!」ケホッ

イケメン「ん?」

男「こっ、こーいうのが好きなのかと思って…お前が…求めてるものってのがこーいうのかなって…」ゲホゴホッ

イケメン「…………………」

イケメン「はっきりいう。君は少し、女や女姉さんの影響を受け過ぎてると思う」

男「ばっっ!!? ち、違うしィーー!? なにっ、なにっ言っちゃってくれてんのお前!?」

イケメン「セイセイ」

男「じゃ、じゃー離れるし!? 俺だって野郎同士くっつきあってんの醜い思ってるしー!」ババッ


グイッ


男「な、なんだよっ?」

イケメン「ごめん。嘘ついた、オレはイヤじゃないよ」

男「……な、んだよ」ストン

イケメン「うれしいってこと」

男「…っ…っ」モゴモゴ

イケメン「君がオレに気を使ってくれたことがね、そこんところがとても嬉しいってワケですよ、男さんや」

男「べ、別に思ってねーし…」

イケメン(口にしてたけどね)クス

イケメン「……、こーいうの求めてたのかな、オレ」

男「なにが…?」

イケメン「君と一緒にくっつき合ってるコトとか。この修学旅行での心残りとか」

男「ふ、ふん、だったら変態だなお前は」

イケメン「ああ、オレは変わらず変態だよ。馬鹿で変態で、けれど……なんか違うんだ、こーいうのはさ」

男「ちがう?」

イケメン「君とオレが肩を並べて、ましてや肩をくっつきあって、暖を取ってる姿なんて想像になんかなかった。予定、なんてなかった」

イケメン「……オレはもっと、君に尽くして尽くして、真っ白になるまで燃え尽きるつもりだったんだ」

男「怖……」

イケメン「くく、だろうね。でも本気だったんだよ、オレは本気でそう思ってた」

男「…なんか違うのか?」

イケメン「違うね」

イケメン「だって、違うじゃないか。こんなこと、オレが望んでたことと全く違ってる」

イケメン「君が……君だけが楽しい思いをしてくれれば、それだけで良いのにさ、まさかそんな……」

イケメン「………、オレまで楽しくなってしまうつもりなんて、なかったのに」

男「……なにそれ?」

イケメン(あ、怒りそう)ギュッ

男「お前、なにそれ、一番今回でお前の発言で腹が立つんだけど」

イケメン「…ごめん」

男「謝るとか! …謝るとか、なんだよ、お前」

イケメン「いやぁ~その、だってさ? 改めて思うと君に迷惑かけっぱなしだったし!」

イケメン「お酒とか色々と! もうもう数え切れないぐらい───どうしようもない、オレだったから」

男「良いって言ってるじゃん、俺が」

イケメン「だって!!」

イケメン「……今回の修学旅行、それが狙いだったけれど、もう、オレなんて必要ないかも、とか───」


バチン!


イケメン「──うぴょいっ!?」ブニッ

男「………」ギュウウ

イケメン「おひょほふん…?」

男「ふざけんな、マジふざけんなよ、そんなワケねーだろ」

イケメン「………」

男「そんなこと、言うなよ。必要ないとか、常日頃から青春青春って! 馬鹿みたいに言ってるヤツが!」

男「……一番言っちゃいけないこと、なんで、…しかも、俺に言うんだよ…!」

イケメン「……ひょめん……」

男「謝んなばか!」ギュッ

イケメン「うぼぶっ」

男「それこそ良いわけだろ! 上手く行かなかった、だからそんなコトいって誤魔化してる!」

男「──お前は、お前じゃん。俺の、友達で親友じゃん、イケメンは!」

イケメン「………」

男「暗いヤツ! 俺以上にみみっちいやつ! ばかみたい、しょーもない野郎だまったく!」ブゥンッ!

イケメン「ウッ」コキッ

男「…そーいうの、本当にやめたほうがいいよ、お前」

イケメン「あはは。大丈夫、こーいうの出せるの君だけだから」

男「甘えんな」

イケメン「…甘えたいんだけどな、オレは」

男「なにそれ? 俺は嫌だね、勝手にやってろ。そして勝手に自滅してろバカチンめが」

男「グチが言いたいなら俺以外にやってくれ。…あぁ重たいな! 何がとは言わないが、空気がさ!」

イケメン「…うん」

男「ほんとーに、お前のこと今回でよーく知れたよ。俺以上にポンコツだわ、俺、今回の修学旅行超頑張ったわ」

男「いやね? 色々と誰かさんのお膳立てがあったとしてもだ」

男「………」じぃー

イケメン「……?」チラ

男「言ってやるよ、バカ」


男「全部全部、お前の為だよ。俺が頑張ったのは」


イケメン「え?」

男「俺はお前の為に頑張った。皆で仲良く、誰でも仲良く、クセーことも言ったし柄にもないことくっちゃべったよ」

男「今思い出してもさぶいぼ出るぐらい。それもこれも、イケメン。お前のためだったよ!」

男「どーせお前がよからぬこと考えて、企てて、画策して、それを一心に身に受けましたとも!」

男「でも結局! 俺はどーーーーせ楽しかったさ! お前の思い通り、存分に修学旅行を楽しんださ!」

男「それが! お前が用意してくれた青春だって思ってたから! 頑張ったんだよ!」

イケメン「……………」

男「それが、お前が、俺を、おっ、思ってやってくれたこと、だって思った、から…」

イケメン「ぇ、あ、でも、オレの予想以上の事態になったどころか迷惑をかけた記憶しかないんだけど…」

男「ばっ、なにっ、お前ぇっ!」ガシッ

イケメン「うぶぃっ!?」

男「──そ、それが青春ってもんじゃろがい!」

イケメン「へ、へいっ!?」

男「いつだって予想通り突き進むとかありえんだろ!? なにっ、お前っ、ほんとぉおおにばかだなあ!?」

男「なんで俺に対していつも弱気なワケ!? あり得ん、信じられない、……このやろー!!」グニグニグニ

イケメン「うぉおぉおぉおぉおっ!?」ぐにぃんぐにぃん

男「予定通り進まなくて良いだろべつに! お前は天才ですか!? カミサマですか!? 違いますよね!?」

イケメン「ひっ…ひひゃいまふ!」

男「だろうがよ! ───ですので、この話はオシマイ! お前は俺以上のバカでアホだったという結論で終わる!」ブゥウウンッ

イケメン「も、ものすごく…なんというかゴリ押し感を受けたような気が…」

男「まだ納得いかねーのかよ」

イケメン「…甘えていいのなら」

男「………」ジッ

イケメン「う、うん……」


ぐいっ


イケメン「うわっ!」

男「来い」グイグイ

イケメン「え、あっ、えっ? ど、何処行くつもり!?」

男「やり残したことあるんだろ。だったらやりにいく、全部だ」グイグイ

イケメン「全部って……」スタ、スタスタ

男「お前が納得するまで、俺は諦めない」

イケメン「男くん…」

男「……なんだよ、一人で意固地になりやがって」

イケメン「………」スタスタ

男「お前が言ったんだろ。周りは関係ないって」

イケメン「……!」ピク


男「──俺のことだけで悩めよ、バカ」ボソリ


イケメン「………っ……」ブルル

イケメン「…ぁ……」

イケメン「……………………」


イケメン「───ああ、そうだね」

男「…おう」

~~~

イケ友「うわっ! なにそれ? 新婚初夜?」

男「……第一印象、それ?」

イケメン「…………」モジモジ

イケ友「一通りポケモン捕まえて、いざ部屋に戻ってみれば二人並んで手を繋いでよ……」

男「俺は、悪くない」

イケ友「む。男ちゃん、ちょっと怒り気味?」

イケメン「い、いや、違うんだイケ友。コレも全てオレが…」

イケ友「んお?」

男「シャーーーー!!!」

イケメン「ひっ」

男「……。何も聞くな、とにかく俺がやりたくてやってる、それだけだ」

イケ友「おうよ。何が何だか全くわからんが、男ちゃん。とくとアンタの覚悟をおれっち、見届けたぜ」キラリン

男「流石だよ、流石イケ友だ」

イケ友「おうともさ! ……でも女っちとか、他の連中が来たときははずそう? な? よからなぬ展開見えてるし」

男「ダメだ」

イケメン「!?」

イケ友「ダメときたもんだ!」カァー

男「コイツが納得するまで、修学旅行が楽しいと思えるまで離さない。イケ友、これは意地だよ。もう理屈や理由なんて無い」

イケメン「だ、だからオレはもう散々言っただろう!? 君とホテル内どころか外まで出回って満足したと!」

男「で?」

イケ友「ひぇー……なに怒らせたんイケメン? ここまで鉄壁男ちゃん初めて見るわ~……」ひゃー

同級生「ただいまー」

イケ友「お! 同級生、ちょいちょい。こっちきてみ、面白いこと起こってるから」クイクイ

同級生「あん? なにまた面倒事起こしてるワケ? まったく、君らって恐れ知らずっていうか馬鹿っていうか、」

同級生「……なにやってんの?」

男「手を繋いでる」

同級生「ど、どうして?」

イケ友「なんか互いに納得するまで離さねーんだって!」

同級生「………」じぃー

男「…」ムス

イケメン「…」ポリポリ…

同級生「好きにさせとけば? 僕、全然関係ないし」

イケメン「ちょ、ちょっと待って! どうか頼もうす! お、お助けを!」

同級生「嫌だね。もう君らの好き勝手に巻き込まれるの懲り懲りなの、金輪際御免被りたいの」

イケメン「ううっ…」

同級生「ハン! いい気味だネ、実に清々しい気分だ! 君の情けないポンコツ顔見るたびに気が晴れていくってね!」


男「……青春……」ボソリ


同級生「ッ!!?」ビクッ

男「……へぇ、もう、しないんだ……」ボソボソ

イケメン「え…? なに? 今なんて言ったんだ…?」

同級生「…………」ダラダラダラ

イケ友「同級生?」

同級生「お、恐れ入ったなぁ…まさか…脅してるってこと、ないよね? 今の…?」

男「……」ツーン

同級生(脅されてる! 確実に脅されてる!)

~~~

不良「ただいま。……、どういう状況なんだこれ?」

イケメン「……」

男「……」

同級生「……」


不良「みんなして手を繋いで…」

イケ友「それが、おれっちもわからんのよ……」

不良「これ、オレたちも混ざるべきなのか?」

イケ友「おれっち等は良いってさ。なんか楽しんでるから別に構わんと」

不良「ふーん……」

不良「……会話はしないのか?」

イケメン「えっ?」

不良「どうせなら会話してくれるともっと楽しいんだが」

同級生(この光景を目にして楽しもうとしてんの…?)

イケメン「か、会話と言っても…彼のほうが何も喋ってくれないからね…」チラ

不良「どうして?」チラ

不良「お前が一番楽しいのは、イケメンと喋ってるときだと思ってたが」

男「………っ…」プイッ カァァァ

イケメン「ぉぉぉ」キラキラキラ

不良「素直になれ」

男「──ち、ちがう! 今は俺のこと考えてる場合ちがう!」バッ

不良「ん?」

男「コイツだってば! コイツが最終日に、こんな終わりかけの時に、楽しくなかったかもとか言い出したから…!」

不良「へぇ」

イケ友「そうなん? イケメンが?」

同級生「はっ! そりゃそーだろうよ、さんざんかき回したコイツが楽しんでどう、んぎゃっ!? 痛い痛い痛い!?」ギュムゥウウウウ

男「少し黙ってて」

同級生「ハイ…」

イケ友「ひよわー同級生くん超ひよわー」プークスクス

同級生「うっさい筋肉ダルマ!!」

不良「やり直したことでも?」

イケメン「うっ…それがオレ自身、検討もつかないんだ…その事自体も気に食わないみたいで…」ションボリ

不良「フム」

イケメン「思うに一致団結とか、みんなでワイワイとか、色々とやりきったつもりだったんだけどね…」

不良「俺もそう思うが…」

男「……」

不良「男が納得行ってないなら、違うんだろ」

同級生「そ、それで? 僕らは一体なにをすればクリアになるんだよ…」

同級生「さっさとやりかけの帰宅準備を済ませたいんだけど……」

イケ友「そうよな。だって帰るまでが修学旅行だっつーもんな!」

不良「……それだ」

イケメン「え?」

不良「つまり、まだ帰ってもないのに満足してるイケメンに対して、男は納得してないんだ!!」

同級生「ハァ~? そんなトンチみたいな解決方法がまかり通るわけ、」チラ


男「……ぁ……」キラキラキラ


イケ友「正解っぽいっすな、うん」

同級生「君さァ!? ほんっっっっっと当時に比べてアホになったよねェ!? 返して! あの時の怯え返してくれよ!」

男「なっ、何に対して怒ってんの同級生君!?」

イケメン「り、理由はわかった。けれどオレは何をするべきなんだろう…?」

不良「? なぜ俺に訊く? 答えは隣りにいるだろ」


イケメン「……!」バッ

男「……っ……」ビクッ


イケメン「そう、だったね。そうだとも、オレはまだ満足しちゃダメだった、と思う」

男「い、いやっ……俺だってイマイチどうして怒ってるか分かってなかったし……」

イケメン「良い、良いんだ。だからオレは、なにをするべきだと思う? 君と、皆と、この修学旅行が終わるまでに」

男「…お前が考えるべきことだろ」

イケメン「オレが…」

男「あ、ああ、だって俺から聞かれて思ったんだろ。まだあるって、やりたいことがあるって」

男「ならお前が提案しなきゃ、みんなにさ」

イケメン「……」

男「大丈夫。駄目だったら俺がちゃんと『突っ込む』から」ニッ

イケメン「ぁ…」

男「きちんとやりたいこと言ってみろって」

イケメン「…ありがとう」


イケメン「──では、今一番やりたいことを思い浮かべました!!」バッ


不良「おぉー」パチパチ

イケ友「おぉー」パチパチ

同級生「面倒なことはやめてくれよ…僕らもう帰るんだから…」ズーン

イケメン「ふふん、大丈夫。パッとやってサッと終わる、簡単なゲームだから」

男「ゲーム…?」

不良「用意するものは?」

イケメン「特になし! というか最初から用意してたんだけどね───」ササッ

バッ!!

同級生「……は?」

男「なんで、割り箸?」

イケ友「なんか食うの?」

イケメン「ふふっふー、違うんだなコレが。男同士でやっても楽しくないかとお蔵入りしたネタなんだが」スッ

同級生「待て、待てよオイ! どう考えたって今やることじゃないだろ、それは!?」

不良「?」

イケメン「では、みんな。一斉にこれを引いてくれ」

イケ友「ほい」ヒュッ

不良「おう」スッ

男「う、うん」グッ

同級生「待て待て待て待て! や、やめろ!」

イケメン「じゃあ同級生君は残った一本だね」ギュッ

同級生「オイーーー!!?」

イケメン「じゃあ行くよ? いっせーのーせ、で引くんだ。せーの、」


「王様だーれだ!」

数十分後 高速バス停


女「……」カタカタカタ

女友「やかましい! えぇい! なにをそんなにせわしなく!」

女「妙に気になるのよ…性懲りもなく最後の最後まで面倒事起こしてそうで…」タンタンタン

金髪「もう散々暴れただろ…」

マネ「ねー」キャッキャッ

女「えーそうよ、まったくもってその通り」

女「でも、あたしは信用出来ないわ。なにが起ころうとも、なんとしてでも止めるの、絶対に」

金髪「それで何時でも飛び出せるようカタカタやってんのか…」

マネ「凄いね…女ちゃん…」

女友「もう可哀想な域に入っちゃってんな…」

女「なんとでも言えばいい! もう周囲からトンデモ一味の仲間入りだって思われてるの知ってるんだから!」ガーッ

女友「そーもいかんじゃろい。こっちだって班全員揃わんと教師にドヤされるわ」

女「ぐ…だ、だったらもういい! 引っ張り出してくる!」ダダッ

マネ「ええっ!? あと五分で出発しちゃうよ!?」

ダダダダ


女「他の連中はとっくに揃ってるのに、バカな男どもは、どーして時間通り動かないのかしら!?」キキュッ

女「──ちょっとアンタ達!? いつまでぐーたらしてるつもりよっ!!?」

バァーーン


同級生「ひぃいーんっ」

女「うわっ!? …な、なにアンタ泣いてんのよ…!?」

同級生「おわっ!? バッ、……ノックぐらいしろバカ!」カァァア

女「は、はあ? 一体なにをして、その格好なに……? ツインテール……?」

同級生「やらされたんだよ! こっちも好きでやってるわけじゃない!」

女「ど、どういうことよ……」チ、チラリ


不良「どうだ?」グィン(上半身裸でマッスルポーズ)

男「き、きれてるぞー…」

イケ友「いやいや此方も…」ゴゥィン(上記通り)

男「す、すごーい…」

女「なに、やってんのよアンタたちは……」ドンビキ

男「あ、女さん…いや、もろもろ事情があって…」

女「いや、聞きたくない。絶対に聞きたくない、それよりも! もうバスの時間迫ってるんだけど!? 変態はどこ!?」キョロキョロ


「ここさ」ガチャッ


女「! ちょっと変態! 呑気にトイレ入ってるヒマない────」バッ


イケメン「すまないね。こればっかりは王様の命令だから、さ」(裸)

女「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!?」


イケ友「おわっ!? ちょ、それは思い切り良すぎないイケメン!? じょ、女子を目の前にしてなんたる堂々っぷり……」ゴクリ

不良「卑怯だぞー」

女「なんっ、なななっ、ばっっっ! なにしてんのよそれーーーーーーーーーー!!!??」ガタタタッ

イケメン「なにを恥ずかしがる。幼少期、同じ一つの浴槽に入った仲だろうに」フッ

女「何時の話よバカタレーー!!!」

男「お前……本当に、どうなんだそれ……」ドンビキ

イケメン「君の命令だろう? それを準じたまでだ、オレはね」スッ

男「あ、うん、王様ゲームを把握してなかった俺が変な命令したのが悪かったけど……」

同級生「フツーは何番と何番、ポッキーゲームしろとかだろうに! ってかおまっ、なんで裸……!?」

イケメン「ふふっ」クイッ スッ シュパァアアア

同級生「変態だ…! 一糸まとわぬ変態だ…!」

不良「しかし、身体を使って笑わせろ。って命令も案外難しい」

イケ友「今のトコロ滑ってんの同級生ぐらい?」

同級生「それはそれで納得行かない!」

イケ友「んだってぇ~ツインテしただけとか、超ダサいっていうか~おれっちなんてメイド服切るのに~」クイッ

不良「こういうのは成り切らないと一番滑るぞ」ムゥキン

同級生「う、うっさいわ! 筋肉トーテムポール共!!」


女「いやいやいやぁーーーー!!」ギュウウウウ

男「うわっ!? ちょ、ちょっとイケメン!やりすぎだって、女さんが困ってるから!」

イケメン「命令は命令だ。止めさせたければ、もう一度王となってオレを止め給え」

男「お前ほんっとすっごいな! 幼馴染でも女子相手に容赦なさ過ぎる!」

女「なによぉコレぇ~…どうにかしなさいよおとこぉ~…っ」グスッ

男「泣いちゃったんだけど……!」

イケメン「はあ、まったく。こっちも本気でやってるんだ、不躾に乗り込んできた女が悪いだろうに」フゥ

女「──ハァッッ!? あたしが悪いっていうの!? ふっっざけんな変態がっっ!!?」ガバァッ

男「そこ復活しちゃうんだ!?」

女「こちとら誰かさんのため思って乗り込んできてあ・げ・た・の・よ!!」

イケメン「はて? その誰かさんとやらはお前に頼んでいたんだのだろうか?」

女「いい度胸ね、ぶっ潰すわ。そのぶら下がってるヤツ不必要でしょ、ホモには要らないものね!!!」グワァッ

男「待って!! 復活は嬉しいけど思い切りが良すぎて、絵面的にヤバイ!!」ガシッ

不良「待て。なんだ、もう優勝者は決まったのか? 納得がいかないぞ、こっちは」ずいっ

イケ友「誰が結局笑わせたん?」ずいっ

同級生「ってバスの時間ヤバイじゃあないか!? オイ!! なんでさっさと言わないんだ!?」ずいっ

女「やかましい女装筋肉馬鹿丸出し変態集団共!!!」

男「究極にまとめられたツッコミありがとう…!!」


~~~

女「さっさと着替える! アンタとアンタは服着る! ──アンタはまず服を着ろ!!」


ドッタンバッタン

女「はぁ~…最後の最後で、どうして王様ゲーム初めちゃうのよ……」

男「ど、どうにもイケメンがやり残したことらしくて……」

女「男同士で? 王様ゲーム? はっ、頭トチ狂ってるんじゃないのアンタ等」

男「面目ない…」

女「…どーせこうなると思ってたわよ」

男「…うん、まあね」

女「んで。満足できそうなの、今回の青春とやらは」

男「え? あ、うん、俺は超満足してる。けれどイケメンのやつが意固地でさ…」

女「………」

男「女さん?」

女「馬鹿ね。アイツはもうとっくに誰よりも素直よ。特にアンタの前じゃ」

男「……え?」

女「満足してるなら、それで満足してたはず。アイツはそれ以上、望まない変態だもの」

男「…えっと」

女「そうじゃないなら、そうじゃないって今更いい出したなら、…余計なことを変態に誰かが言ったワケ」

男「それは、だって、アイツが自分は要らないかもとか言い出したから…」

女「甘えてんのよ」

男「…甘えてる?」

女「……あーッ! 腹立つ、なによそれ、他人の恋路聞かされてるみたいで超耳がキモチワルイ!」

女「まったく、やだ~まだ満足したくなぁ~い。だってだってぇ、最後の最後まで一緒に二人で~…とか!」

女「そりゃノロケかッ!!」

男「ノロケ……」

女「はい、この面白くないからオシマイ! ──そこのアンタ! お菓子食うの今やること!?」ビシイイイ

男(じゃあ、なんだ、アイツは別に本気で悩んでた訳じゃない?)

女「……」じぃー

男「うっ」

女「覚悟しなさいよ。きっと、今のままの関係が続くわけなんてありえないんだから」

男「…そう、かな」

女「そうなの。皆これ以上を望むから、……きっと楽しいのよ」プイッ


同級生「オイ!? 君はなぜ僕の土産食べてるんだ!?」

不良「待て。誤解だ、オレじゃない」モグモグ

同級生「うそへたくそかっ!」バシィンッ!

イケメン「───今のいいスナップ音は誰だい!? 男君!?」バッ

イケ友「おれっちだ!!」ビッシィイイイイ

イケメン「見るからに嘘だな! よし、不良君。どちらが叩かれていい音を鳴らせるか勝負だ」

不良「勝負なら仕方ないな」

同級生「乗るなーァ!!」


男「…………」

女「…寂しくなった?」

男「えっ!? な、なんでっ?」

女「だって、そんな顔してたから」

男「し、してないしてない! どうして俺が寂しくなるんだよ…!」

女「そう、ならいいわ。くすくす、少しでも感じることがあったら相談しなさい」

男「相談? お、女さんに?」

女「そーよ。アンタは一応、友達なんだから。悩みぐらい聞いてあげるわよ、あたしみたいな奴でいいならね」クル

スタスタ

女「……じゃ、またね。おとこ」フリフリ

パタン

女「…………」ボッ

女(もう、二度とあんなしたり顔で意味深なセリフを吐いたりしない…! はっずかしいわねもうもうもーうっ!)ダダッ


男「………」

男「…やっぱり格好いいな、うん」

イケメン「呼んだ?」

男「呼んでない。少なくとも今回で、お前は一番格を落としたよ。カッコよさで言えば」

同級生「ポンコツが調子に乗らないでくれる?」スタスタ

イケ友「うーん、ちょっとばし、おれっちも……なんていうか、女子に裸ってのは引いたっていうか……」スタスタ

不良「あぁ…またお前らの漫才を聴き逃した…もっかい話してくれ…」

イケメン「ふっ、色々と言われ放題だが……どうだろう? なにか弁解でも言ったほうがいいかな?」

男「ごめん。俺は最初出会ったときから気持ち悪いの知ってるし、弁解もクソもないと思う」

イケメン「ごもっともだ!」

男「調子づくタイミングおかしいよな?」

不良「………」フンスフンスゥ

男「な、なんで楽しそう?」

不良「やっとしっかり聞けたから」テカテカ

同級生「ほら、バス乗り遅れるよ。君はちっこいんだから、歩幅僕らの三分の一なんだから」

男「それは馬鹿にしすぎ!!」

イケ友「おっとこちゃんはもっと飯くわねーとなぁ!」ぐぃんっ

男「おわぁっ!?」ヒョイ

イケ友「不良っち荷物持ってー同級生は迷子にならんよう先導してー」

不良「合点承知」

同級生「えぇ…こんな奇行団の先行を務めるのかよ…」

イケメン「──さて、王子様。それでは向かいましょうか」スッ

男「た、高い…ちょっと王子様ってなんだっ?」

イケ友「おれっち馬!?」

不良「じゃあオレは従者か」

同級生「ちょっと待て! この、僕を、差し置いて!? 君が王子様!? 納得がいかないぞ!?」

イケメン「だって王様ゲーム終わってないだろう?」

同級生「…っ…じゃ、じゃあバスの中でまたゲームし直すぞ! そして王の座に返り咲く!!」

男「え、いやっ、さっきのゲームなんて有耶無耶になったんじゃ……」

イケメン「なにを言ってるんだ? 今、この時を持って、我々は王の要求を差し出したというのに」

男「……え?」

イケ友「ははっ、とっくにもう終わってんじゃんなー? おとこちゃん!」ニッ

男「ど、どういう…」

不良「自分の顔触ってみろ」

同級生「……フン」クス

サワ

男(……あ、もしかして俺、ずっと笑ってた……?)

イケメン「はてさて」

男「……な、なんだよ」カァァ

イケメン「オレは満足だ。君は?」

男「……何度も言わせるなよ、とっくに満足だ…!」

イケメン「そっか」


イケメン「……そっか、良かった」グッ



イケ友「じゃいくぜぇえええええ!! GO!GO!GO!」ギュィーン

男「うわぁっ!?」

同級生「ばっ!? そっちじゃないコッチだ!」

不良「いい匂いがする……」フラフラ

同級生「バカタレぇー!!! フラフラとあるき回るんじゃない!」グィイイイ


イケメン「ははっ」

男「……くくっ」

第三十話『突っ込みは、キミとオレとお前と俺で』

無事に終わらせられて良かった…

支援等楽しみにしててくれた人に、寿命差し上げたいほど感謝
出来ればまた次回を書きたいから待っててくれたら嬉しいです…!!

一応このスレではオシマイということで…!!


ではではノシ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年11月06日 (月) 23:16:12   ID: dFQ5VlnM

次スレないかなー壁|ω・`)チラッ
おもろかったから続かないかなー

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