約4000字、暇つぶしにどうぞ。
ジャンル……アニメを見て思いついたギャグコメディ
この物語はフィクションです。現実のゲーム制作とは、これっぽっちも関係ありません。
とあるゲーム会社開発部
上司「……」
男 「……」
上司「……なんだこれは!?」
上司は目に見えて、イライラしている。
男「企画書っす」
上司「見ればわかる! ふざけているのか! 問題はコンセプトだ!」
男「金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーっす」
上司「貴様は何年ゲーム作っているんだ!」
男「十年ちょいっす」
上司「なら分かるだろう」
男「なにがっす? 主語を省いた会話を業務に用いるのは三流では?」
上司「くっ! いいだろう。はっきり言う!」
上司「こんなコンセプトの作品が売れるわけないだろう!!!」
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男「……なるほど」
男は突然、真面目な表情になる。
上司(顔つきが変わった!)
男「だが金髪ヒロインは、無限の可能性を秘めている」
上司「無限の可能性?」
男「過去のギャルゲーの歴史を振り返れば、たくさんの人気金髪ヒロインが登場する」
男「高貴なお姫様、高飛車なお嬢様、片言の留学生、イケイケギャル、そしてツンデレ幼馴染」
男「それら、すべてをこなす」
男「そんな金髪ヒロインに無限の可能性が無いといえるだろうか? いやそんなことはない」
男「金髪ヒロインを制する者こそが、ギャルゲーを制するのだ」
上司「……」
男 「……」
上司「カッコつけても、ダメなものはダメだ」
男 「え~、でもこの企画はやりたいっす」
上司「ダメだ」
男「絶対やりたい」
上司「……」
男 「……」
上司「いいだろう。何がダメなのかを具体的に説明してやる。貴様に分かるようにな」
上司「貴様は特撮が好きだったよな」
男「戦隊ヒーローとか大好きっす」
上司「なら戦隊ヒーローを例に説明してやる」
────
────────
戦隊ヒーロー達は窮地に立たされていた。ヒーロー達の攻撃が効かないのだ。
怪人「はっはっはっ無駄だ」
レッド「畜生! 負けるもんか!」
勇敢に敵に立ち向かう熱血漢のレッド。
ブルー「待て、レッド。ここは引くぞ」
冷静に分析するクールガイのブルー。
レッド「引くって逃げるってのか? 俺たちが戦わなかったら街の人々はどうなる!!!」
ピンク「やめて! 仲間同士で争わないで」
争いを止める紅一点のピンク。
イエロー「でもあんな敵どうすりゃいいんだよ」
思ったことをそのまま口にするお調子者のイエロー。
???「……ククク、そんなことで悪が倒せるものか」
レッド「お前は!?」
ブラック「今回だけは力を貸してやろう」
敵か味方か、謎のヒーローのブラック。
────────
────
上司「このようにイメージカラーとキャラクターの個性をリンクさせ、分かりやすくしているわけだ」
上司「貴様の企画はすべて同じイメージカラーで、キャラクターの個性を潰すのだ」
上司「三流以下の企画だよ」
男「……」
上司(大人しいな。言い過ぎたか?)
男「……上司さん」
男「上司さんも戦隊ヒーロー好きだったんっすね?」
上司「話聞けよ!!!」
上司「もう一度、説明するぞ。ちゃんと聞いとけよ!」
上司「いいか、お前の企画は全員レッドなんだよ!」
男「ぷっ、全員レッドって、みんな退場したみたいっすね」
上司「黙って聞け!!」
────
────────
怪人「はっはっはっ無駄だ」
レッドA「畜生! 負けるもんか!」
レッドB「そうだ! 逃げるわけにはいかない!」
レッドC「俺たちが戦わなかったら街の人々が!」
レッドD「俺の力を受けてみろ!」
レッドE「平和は俺が守る!」
レッド達「うぉ~!、突撃ぃぃ!!」
怪人「うわ?! おい?! 無駄だって言ってるだろ?!!」
レッド達「うぉ~!」
怪人「話を聞けよ!!! ちょ?! 待てよ?!!」
レッド達「うぉ~!」
────────
────
男「……」
上司「分かったか。みんな同じレッドだと話が広がらないのだ」
上司「ワンパターンなんだよ。いつも突撃なんだ」
上司「個性が同じなら、複数人も登場する意味がない。つまらないんだよ」
男「……」
上司(やっと、分かってくれたか)
男「……上司さん」
男「上司さんもレッドが一番好きなんすか?」
上司「貴様もワンパターンかよ!!!」
上司「いいか。俺はレッドが一番好きだから、レッドだけにしたんじゃない。例え話だ」
男「いやー、やっぱり戦隊ヒーローで一番カッコいいのはレッドっす。レッド最高」
上司「黙れ! レッドだけで喜ぶのは、貴様みたいなレッド信者だけだ!!」
上司「いいか! 貴様の企画も同じだ! 金髪キャラが好きなユーザーしか喜ばないんだよ!!」
上司「はぁはぁ」
男 「……」
上司「……」
男「気になったんすけど、この場合」
男「やっぱり乗り込むメカも赤い色してて、五体合体で真っ赤なロボットができるんじゃ」
上司「どうでもいいんだよ! そんなシャア専用なロボに乗り込む戦隊は!!」
社長「どうしたのかね? 上司くん」
上司「社長!? 何故ここに!?」
社長「女子トイレ等でないのなら、わが社のどこにいようがワシの勝手だ」
社長「それよりも、随分と大きな声を出していたね」
上司「! それは……」
社長「部下を大きな声で怒鳴りつけるのは、十分にハラスメント行為だよ」
上司「……申し訳ありません」
社長「それで何の話をしていたのかね? シャア専用だとか聞こえたが」
社長「ワシもガンダムは好きだが、仕事中に私語はいかんよ」
上司「いえ、それは例え話で……」
男「新企画の話をしていましたっす」
上司「貴様は黙っていろ!」
社長「上司くん。君が黙りたまえ」
社長「本来は社を預かる身として、ハラスメント行為には減俸等の処罰を下さないといけないのだよ」
上司「くっ……」
社長「それでどんな企画なのかね?」
上司「くだらない企画ですよ」
社長「上司くん。わが社の最終決定権は私にある。くだらない企画かどうかはワシが決める」
男(最終決定権って必殺技みたい。奥義!最終決定拳! いや剣でもいける?)
上司「……」
社長「さて話の続きだ。企画の内容は?」
男「金髪ヒロイン(だけ)のギャルゲーっす」
社長「金髪ヒロイン(の登場する)のギャルゲー?」
社長「別にいいじゃないか」
上司「社長!? 金髪ヒロイン(のみ)ですよ!?」
社長「上司くん。特定のユーザーの嗜好を否定するような発言はいけないな」
社長「金髪ヒロインの何がいけないのかね?」
社長「今の業界に求められているのは多種多様なニーズに答えることだ」
男(ニーズとニーソって似てる)
上司「社長はこの企画(金髪ヒロインのみ)に需要があると?」
社長「もちろんだよ。この企画(金髪ヒロイン登場)の需要は必ずある」
社長「良し分かった。ワシの権限でこの企画を進めよう。プロジェクトリーダーは男くんだ」
社長「上司くんは彼の指示に従い、サポートしてあげたまえ」
上司「本気なんですね?」
社長「本気だ。なに心配するな。進捗状況はワシも確認させてもらうよ」
社長「新しい時代は老人が作るものではないよ」
上司「……」
社長「……」
男(金髪ヒロインのニーソはやっぱり黒)
こうして金髪ヒロインのみ登場のギャルゲー制作が始まった。
数か月後 開発部
グラフィッカー「大変です! マップに各ヒロインの居場所をSDキャラで描写すると、誰が誰だか分かりません」
上司(それみろ、一目でキャラを見分けられるSDキャラの利点も、使えないではないか)
男「その表現方法はしなくていいと思うっす」
上司(馬鹿な!)
上司(それをしなかったら目当てのヒロインに会えるまで、リセットを繰り返す不毛な作業をプレイヤーに強いるだけだ)
上司(ありきたりな表現には、ありきたりになるだけの理由がある)
男「SDキャラアイコンにこだわる必要はないっす。このヒロインは陸上部だから、スパイクをアイコンにすればいいっす」
男「他のキャラもイメージアイテムをアイコンにして、その下にキャラ名を付けるっす」
上司「……」
学園設定担当「もう無理ですよ! 日本の学校なのに金髪ヒロインだらけなのは、おかしいと思います」
男「普段、赤髪ヒロインとか青髪ヒロインが登場するゲーム作っていて、なに弱気になってるっす」
男「リアリティが、ゲームの面白さに直結するわけじゃないっす」
男「しかし世界観にある程度の説得力は必要」
男「主人公が通う学園には、国際教養科がある設定を追加するっす」
男「重視すべきなのは、ヒロインの可愛さ」
男「ヒロインが可愛ければ、多少の粗は気にならないっす」
上司「……」
シナリオライター「どうしましょう!? 主人公の恋愛をサポートする黒髪サブヒロインだしたら」
シナリオライター「周りが金髪ヒロインばかりだから、メインヒロイン並みに目立ってます!」
男「なら隠しヒロインにするっす」
男「日本人に見えるけど実はクォーターで、地毛は金髪だけどコンプレックスで、黒髪に染めてた設定にするっす」
男「主人公は地毛が金髪という秘密を知ってしまい、さらにコンプレックスだった金髪を褒めるっす」
男「秘密の共有とコンプレックスの肯定から始まる隠しシナリオっす」
シナリオライター「そんな今からヒロイン追加なんて、納期に間に合いません」
男「……」
シナリオライター「……」
上司「……私が何とかしよう」
シナリオライター「上司さん!?」
上司「人員は他部署から、応援をもらう。これでなんとか納期に間に合うはずだ」
男「……」
男「……上司さん」
上司「勘違いするな。私は社長からの業務命令に従っているだけだ」
男「上司さんも金髪ヒロイン好きだったんっすね?」
上司「本当に勘違いするな!!!」
社長室
社長「ふ~」
秘書「お疲れ様です」
社長「まさか、我が社のスマホゲームに、不具合がでて炎上するとは」
社長「例の企画の進捗状況は?」
秘書「タイトルはまだ未定ですが、こちらが資料です」
社長「ふむふむ」
秘書「シナリオ及び原画作業は、ほぼ終了しています」
秘書「しかしスタッフにインフルエンザが流行り、着色作業に遅れが出ています」
社長は白黒の開発資料に目を通す。
社長「問題ない。これで進めるように伝えてくれ」
秘書「かしこまりました」
社員「しゃ、社長!」
突然、社長室に社員が入ってくる。
社長「どうした!?」
社員「ガチャの確率表記に誤りがあり、消費者センターを巻き込んで、返金騒ぎの大炎上です!!!」
社長「な~~に~~!!」
こうして社長は以後、企画の進捗状況を確認することなく、
金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーは発売された。
ギャルゲー発売後
どこかのゲームショップ
?「『きんいろメモリーズ』?」
?「とりあえず僕の好きなパッケージ裏を確認」
?「金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーなんてすごいなぁ」
またまた、とあるゲーム会社開発部
男「上司さん。新しい企画書っす」
上司「……見せろ」
男「タイトルはレッドオンリーコマンダーっす」
男「プレイヤーは司令官になって、レッドしかおらず突撃しかしないヒーロー達を導き、悪と戦う」
男「巨大化した怪人に対しても、猪突猛進で瞬く間に蹴散らされる」
男「だからドンドン、レッドを集めて、レッドを鍛える。レッドの通信対戦や交換もできる」
男「コンセプトはこんな感じっす」
上司「……」
男 「……」
上司「……レッドってなんだっけ?」
終わり
読んで頂きありがとうございました。
このゲーム『きんいろメモリーズ』が売れるかどうかは、想像に任せます。
ゲーマーズ絶賛放送中。
朗報。金髪ヒロインだらけのエ〇ゲ『金色ラブリッチェ』発表。
このSSをお読み頂いた方は金髪ヒロイン好きか、ギャルゲ好きに分類されるはず。
18歳以上かつ金髪ヒロイン好きの方は、発売を楽しみに待ちましょう。
18歳以下もしくはギャルゲ好きの方は、よろしければ私のラブコメ過去作でもどうぞ。違うトリですが。
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