男「最近、変な声が聞こえるんだけど」 (128)

男(意味がわからんぞ…どうして部屋にひとりぼっちなのに、声が聞こえんだ)


『ダヨネーソウダヨネー』『サイキンサー』


男「…しかも何か会話してるし」

男「何処だ…? どのへんから聞こえてくるんだ…?」ガサゴソ

男「………」ピタリ

ネズミ「きゃー! 人間よー!」

ネズミ「逃げろ逃げろー!」

男「…え?」

男「なに、これ。嘘だろ、オイ」

ネズミ『こっちだよ! こっちに逃げるんだよ!』ダダダ

男「……ネズミ喋っちゃってるじゃん!」


「ぎゃぁあああああ!! ネズミだぁああああああ!!」


男「うおっ!?」

妹「兄ちゃん! ね、ネズミが現れたですよ!! こーんなちっこいの! しかもいっぱい!!」

男「お、おお……ちょ、待ってくれ! 妹よ! な、なにかこいつら喋ってなかった…?」

妹「へ? しゃぶる?」

男「変な聞き間違いをするな。違う、そうじゃなくて…こう…会話してなかったか?」

妹「……してなかったけど、確認する?」ひょい

ネズミ『ぎゃああああ! この人間に捕まってるよぉおお!!』

男「ぎゃあああああ!! なに捕まえてんのお前ぇええ!」

妹「いやだって、捕まえなきゃ退治できないじゃん?」

男「男らしすぎる! ま、まあ都合いいけども…」

ネズミ『やだよぉおお!! 死にたくないよぉおお!!』ジタバタ

男「ほら、めっちゃ喋ってるよね?」

妹「………」

男「あれ? …聞こえない感じ?」

妹「うーんと、えいっ」ピン!

ネズミ『うっ…頭がよぉ…』

男「なにやってんの!? か、可哀想だろ!?」

妹「だ、だって…痛めつければ兄ちゃんが言ってるみたいに言葉しゃべるかなって…」

男「酷いことするなよ…! な、なにやってんだお前…!」

妹「やっぱ何も聞こえないよ? 兄ちゃん、本当に聞こえたの?」

ネズミ『………』

男「今は聞こえないな…多分、痛くてしゃべる気にもならないんだろ」

妹「ふーん」

男(いや待てよ、もしかしてこの声って…俺だけにしか聞こえてなかったりするのか?)

男「なんだよそれ…」

母「ねぇーアンタ達。さっきから何やってんの?」

男「おおう、お袋。実はさ、さっき──なにやってんのそれ?!」

母「え? …ネズミ退治だけど?」ずいっ

男「ひぃいいいい!! ね、ネズミっ……半分こじゃねえか……!」

ネズミ『ぎゃあああああ! ネズミさんがよぉおおおお!!!』

妹「あわわ! きゅ、急に暴れ始めたよこの子…!」

男「そりゃ暴れるよ! お仲間さんが無残な死に方だったら、恐怖でガクブルだよ!!」

ネズミ『おいおいおい…なんて姿なんだよぉ…ねずみさん…ねずみさんよぉ…』

男「くっ…そうだよなぁ…仲間がこんな惨たらしい死体になって戻ってきちまったら…!」

母「何いってんのこの子」

妹「なんかネズミの声が聞えるんだって」

男「こ、このネズミ殺し!! ネズミでなし!!」

母「あんまり意味わからないこと言わないでちょうだい…あ、お父さん」

父「何やってんだお前ら。ちょっとは静かに──おおおおお!? か、母さんネズミ凄いことになってるぞ!?」

母「うん。さっきやったところ」

父「ひぃぃいいい! ち、近づけるなっ! ちょ、やめ、オイ!! ホントやめて!!」

男「…ところで、どうするんだそのネズミ」

妹「飼おっかな?」

次の日 学校

男「…」


カラス『なぁーお前さぁ、今日はどのへんでご飯食うのぉ?』

カラス『あ、俺ぇ? そだなぁーとりあえず、近所の生ごみあさってみんよぉ!』


男「……っ」

男(──ネズミだけじゃねぇ! か、カラスの声もっ…聞こえてやがる!)

男(窓から見える二匹のカラスの声が…バッチリ日本語で…!)

男「しかも…なんで若者風なんだしゃべり方…」

男(ぐぁー何なんだよこれって、俺の頭おかしくなっちまったのか?)

男「……動物の声、聞こえてるのかな俺って…」

男(唐突すぎるだろ…なんの脈絡もなく、どうして声が聞えるように…)

カラス『ぎぁー! なんか黒いのきた!』

カラス『逃げろ逃げろ! 逃げろ逃げろぉ!』

男「…ん?」

男(なんだいきなりどうした……あれ、あの女子生徒って確か…)


女「………」


男(…学校で有名な無口な子じゃん。あんな場所でなにやってんだ)

女「……」ひょい

男「あれ、なんか拾った? んー、なんだあれ……猫?」

女「……」なでなで

男(動物好きなのか。あんま表情出さない感じだけど…)

女「……にゃー」

猫『えっへっへっ…嬢ちゃん、いーい胸してんじゃねえかぁ…』

男「……」

女「にゃんにゃん」

猫『おっ? なんだその声は、発情してんのか? おーよしよし、じゃあいっちょおっちゃんが一発決めてやろうじゃねえか』

男「……」ガタタ!

~~~

女「……」なでなで

猫『おっ? おっおっ? な、なかなかやるじゃねえか…そ、そんなところ撫でるなん、おっほ!』

男「やめろやめろー! この汚ったねぇセクハラ親父猫!!」

女「!」びくぅ!

猫『な、なんだ! なんだこの人間!!』

男「はぁ…はぁ…! お、おいお前…とりあえずその猫から離れろ…!」

女「………」

男「その、なんだ……説明は難しいが、とにかく! その猫は危険なんだ!」

女「?」

猫『な、なにを言ってやがるんだこのばか人間が…お、おれがセクハラだと! バカ言え!』

男「っ……」

猫『もうちょっとセクハラって言葉を調べてから出直して来いアホが!!』

男「……セクハラ以外になにがあるってんだよ!」

猫『はぁ~ん? お前みたいなガキに、わかったようなコト言われる筋合いなんてねぇーんだよボケェ!』

男「なんだとゴラッ…!」

女「…」じぃー

男「テメェはとっととそこら辺のメス猫とッ……あ、えっと、あは、あはは!」

女「…」じぃーー

猫『このクソ生意気なッ……あれ? まてよ、お前どうしておれの声…それにお前の声がわかるんだ…?』

男「………」

女「…貴方のペット?」

男&猫(喋った!!?)

男「ち、違う…そんなデブ猫俺のペットのなわけ無いだろ…」

猫『デブ猫言うなゴラ』

女「…そう」すっ

猫『えー? もうおしまいかよぉ~嬢ちゃん、今日はしっぽのとぅけ根トゥントゥンしてくれてないよぉ?』

男「お前はちょっと黙っとけ」

女「……」すたすた

男「って、待ってくれ! ちょ、何も言わずに去ろうとしないでくれ!」

女「なに」

男「えっと、その、あの~」

猫『おいガキ。ナンパならもうちっとマシな言い方あるもんだぜ』

男「うるせぇーな…っ」

猫『うへへへ』

女「…それで、なに」

男「いやっ…えっと、今日のこと……誰かに言わないでくれたら嬉しいなって…」

女「……」

男「ほ、ほら! 猫と喋ってるとか……変だろ? なっ?」

女「…わかった」コクリ

男「お、おおう」

女「じゃあ」

スタスタ

男「……はぁ~何言ってんだろ、俺」

猫『おいガキ』

男「なんだよデブ猫」

猫『ほぉーやっぱ聞こえてるんだなぁ。人間のくせして、猫様の声が聞こえんのかい』とてとて

男「……」

猫『今更なしにしようってのも無理な話だぞ』

男「…なんだよ、なんなんだよ…!」

猫『ガハハハ! こりゃ長生きしてみるもんだな! いやぁーガキよぉ、お前はアイツの事好きなのか?』

男「は?」

猫『あの嬢ちゃんだって。変にかまってやってよ、そうかそうか…』

男「おい、変な勘違いをするなよ。俺はただ、変態猫からの危機を助けてやっただけだっ」

猫『変態いうな! これは野良猫としてのサガなんだぜ!』

男「変態じゃねえか…」

猫『猫はそんなもんだ。人間がわかってねえだけでな、それよりも…なぁ、ちょっと話を聞いてくれよガキ』

男「…なんでだよ、俺はもう教室に戻る」

猫『なぁー悪いことは言わねぇ。ちっとはおっちゃんの話を聞いておくもんだぜ』

男「……一分だけだ」

猫『いっぷん? ちょいまち、人間さんのそういった、なんだ、じかん? みたいなのは猫にはわかんねぇんだよ』

男「……。ちょっとだけ聞いてやるって言ってんだよ」

猫『なるほどなぁ。おう、じゃあ聞いてくれよガキ』

男「大した話じゃなかったら怒るぞ」

猫『そんときは逃げるだけだ。舐めんなよ猫の脚力』

男「…話ってなんだ」

猫『おうよ。何時かはどうにかしたいって、おもってたんだけどよぉ…まあこれも運命ってやつかね』


猫『──あの嬢ちゃん、そろそろジサツするぞ』

男「…は? ジサツ…って、お前……」

猫『このジサツ、って言葉はおれが偶然知った言葉だ。まぁ知っている奴はそう居ねぇだろな』

猫『人間さんってのは、自分で自分の命ってやつを、なくしたり出来るんだろ?』

男「お、おい! まてよ、なんだよジサツって…それって……!?」

猫『そのまんまの意味じゃねーの? ガキ、わかんだろ?』

男「自殺、なのか?」

猫『おお、発音はそんな感じなのか。自殺、ねぇ』

男「いくら猫だって、んな冗談許されねえぞ!?」

猫『猫でもわかるよそれぐらい。おれら猫ってのは、自分から死ぬって、わからねーもんだからな』

猫『どんな惨めな生きたかでも、どんな可哀想な状況でも、おれら猫は必死に生き抜くからなぁ』

男「っ……なんで、わかったんだよ…あの子が自殺するって…」

猫『……最初は遊んでるのかと思ってたんだよ。ロープを首にかけて、飼い犬ごっとみたいにな』

男「それって……」

猫『ああ、首吊りってやつだろ? みたことあるよ、沢山な』

男「……」

猫『野良やってっと、いっぱい見るんだよ。そういった自殺する人間さんってやつをよぉ』

男「…そうか」

猫『だけどなぁ、まさかあの嬢ちゃんが…そんな首吊りってやつをやるつもりなんて、これっぽっちも思わなくてよぉ』

男「…やってたのか、首吊り…」

猫『何度かな。だけど、途中で諦めて止めるんだぜ』

男「……」

猫『あの嬢ちゃんにはえらく世話になっててな。食事もらったりよ、撫でてもらったり、部屋に泊めてもらったりよ』

猫『だけどなぁ、そんな嬢ちゃんが居なくなっちまうってのは。いささか猫であるおれでも、可哀想になっちまうんだぜ』

男「いなくなる…」

猫『こんなこと野良のおれにはどうしようも出来ねぇ。慰めるにも言葉は通じねえし、あっちの言葉もわかんねぇ』

男「……」

猫『なぁガキ。お前はこの事実を知って、おうおう、あの嬢ちゃんを放っておけるかい?』

男「…それはっ…」

猫『このままだと、死んじゃうんだぜ嬢ちゃん』

男「ッ……!」

猫『おまえが信じるか信じないか。それはおれにはどうでもいい、元からそうなるもんだって思ったからよ』

猫『あの嬢ちゃんが死ぬってのは、おれだけがしってる現実ってやつだからな』

男「だけど! 俺が……俺が知っちまったじゃねえか…っ」

猫『猫の言葉を聞いてただな。くっく、おいおい、人間様ってのはどうにもままならないなぁ』

猫『おい、ガキ。それでおまえさんはどうするんだい?』

男「どうするって、そりゃ…」

猫『このデブ猫いうことを、一から十まで信用すんのか?』

男「……」

猫『おれはどっちだって良いんだぜ。ただ、おまえには話が通じるから話しているだけなんだ』

男「…まずは俺が確かめる」

猫『お?』

男「確かにお前の言うとおり、たかが猫が言ってることだ。信用も出来ない」

男「…けれど、放っても置けない」

猫『ガハハ! さてはガキ、お人好しってやつだな?』

男「うっせ」

猫『いやこの場合だと、お猫好しってやつか。こりゃまた面倒くせぇなぁ!』

男「…自殺だなんて、そう簡単に…ハイそうですかって聞き入れられるかよ」

猫『期待してるぜ。なんせ、おれの数少ない食事をくれる人間様なんだからよぉ』

男(…とんでもねえことに巻き込まれちまったな。俺がどうにか出来るのかって、そんなのわからん)

男(問題自体が俺に解決できるものなのか?)

男「…自殺か」

~~~

男(とりあえず放課後になったが、あの女の後をつけてみよう)すっ

女「……」スタスタ

男「…どう見ても俺、不審者だよな」

猫『だなぁ』

男「うおおっ!? ね、猫!?」

猫『おぅ。さっきぶりだな!』

男「…なんだよ、付いてきたのか」

猫『おっちゃんは心配なんだよ。あんま頼りにならねえ奴に頼んじまったってな』

男「なんだその言い草は…」

猫『いいじゃん、ちょっとぐらい付き合わせろって。おっ? そうこういってるうちに、どっか行っちまったぜ?』

男「えっ? マジかよ! ……見失っちまっった…」

猫『ばかだなーおまえー』

男「うるせ! くそ、何処に言ったんだアイツ…」

猫『聞いてみればいいじゃね?』

男「…誰にだよ」

猫『ほれ。あそこに居る犬に』

男「犬にって…あの犬?」

犬『……』

猫『おう。あの人間さんに家畜のように飼われてる、哀れな生き物によぉ』

男「なんかペットに恨みでもあるのかよお前……だ、だけど聞いてみろってさ…」

犬『……』ぴく

男(…犬種は、ラブラドールって奴か)

男「あのよ、そこの犬……ちょっと俺の話し聞いてくれるか」

犬『ほぅ』

男「…なんだよ」

犬『人間。貴様の声がわかるぞ、音でもなく、音程でもなく、我と同じ仲間と同様に聞こえるぞ』

猫『なんだこのしゃべり方…』

男「そ、そっか。そんな人間も居るんだぜたまには…」

犬『左様か。ならば聞くこととはなんだ、我の耳は遠い……出来れば大きな声で頼む』

男「お、おう。あのな、さっきここを通った女の子のことなんだが…」

猫『耳が遠いんじゃ、目も見えてないんじゃね?』

男「うっさいな、ちょっと黙っとけ」

犬『おなご、か。ふむ、見たといえば見たな。見てないとも言えぬが』

猫『あーだめだこりゃ。ボケちゃってるよ。おっちゃんでもわかる、このジジ犬もうだめだ』

男「……髪が真っ黒で、こう、ぼんやりしてる感じの子なんだが」

犬『ああ、なるほど。我にたまに菓子をくれる人間か!』

男「菓子?」

犬『うむ。しょっぱくて、辛くて、犬の我には少し塩分がきつすぎるのだがな…欲望には勝てん。甘じて食べておる』

猫『その気持わかるわー』

男(もうやだこの会話)

男「その女の子なんだが、えーっと、どこにいったか分かるか?」

犬『探しておるのか? なるほどな、では早めに見つけてくれ』

男「え、どうして?」

犬『我は犬だ。人間とは違って、また異なった観点で物事を見つめることが出来る』

猫『早く本題に移れよ』

男「だぁーもうお前は黙っとけよっ」

犬『その人間。悲しんでおるぞ』

男「えっ?」

犬『顔がいつも泣いておるのだ。我に菓子をくれる時も、くれぬ時も…』

犬『…この道を通るとき、おなごは何時も悲しんだ匂いを発しておる』

男「そんなの、わかる……もんなのか」

犬『我は犬なり。ただ、それだけはわかるのだ』

男「………」

猫『テキトーなこと言ってんじゃねぇぞアホ犬』

犬『我は本当のことを言ったまでだ』

男「…そっか、ありがとな」ポンポン

犬『お役に立てたのなら、幸いだ』

猫『立ってないよな。何処に向かったのか、これぽっちも教えてくれなかったよな』

犬『ぐーぐー』

猫『おぉいい!!』

男「……。今日はもういいや、また明日に探そう」

猫『そんなんで大丈夫なのかよ? 嬢ちゃん、ぽっくり逝っちまうぜ?』

男「だ、大丈夫だ。ちゃんと探すし、明日には……」

男「……明日には、ちゃんと頑張る」

自宅

男「…悲しんだ顔している、か」

男(あの犬が言っていたこと、それに猫が言っていた…自殺の事)

男「はぁー……俺は、どうしたら良いんだよ……」

男(俺なんかが何か、出来るとでもいうのか? 自殺だぞ、自殺……)

カリカリカリカリ

男「…んな重い悩みなんて…俺にどうにか……ん?」

ネズミ『美味しいよぉ美味しいよぉ』

男「…なにやってんの、お前」

ネズミ『あー! にんげんさんだよ! にんげんさんにんげんさだよぉ!』

男「お、おう…お前、まさか妹が飼ってる奴か?」

ネズミ『どうもだよ! 人間さん、どうもだよお!』

男「…逃げ出したのか」

ネズミ『逃げ出した? なにいっているの人間さん、ぼくはぼくで、生きてるだけだよ?』

男「ま、まあそう感じるよな…」

ネズミ『人間さん人間さん。どうもぼくを助けてくれて、ありがとだよ!』

男「助け? いや、俺は別になにも…」

ネズミ『ぼくの仲間は半分こ、それに散り散りになっちゃって、ぼくだけが残ったんだよ』

ネズミ『それを助けてくれたのは、人間さん。あなただよ?』

男「…妹に水槽とか餌を用意したのは俺だけどさ」

ネズミ『ありがとだよ! ぼく、あのおうち広くて落ち着かないけれど、とっても暖かくて居心地いいんだよ!』

男「…そっか」

ネズミ『人間さん。なにか困ってるの?』

男「えっ?」

ネズミ『困ってる顔をしてるんだよ。ぼくはそれがとっても気になるんだよ』

男「…ネズミのくせして、人の顔色伺えるのか」

ネズミ『ぼくたちネズミは、人間さんの顔色伺って行きていけるから!』

男(なんという事実)

ネズミ『それで、困ってるの? 困っちゃってるの?』

男「まぁな。だけどネズミに心配されるほど、やわじゃないぜ俺は」

ネズミ『そうなんだねぇ。人間さんは強いんだよ、かっこいいんだよ!』

男「おう。そうだぜ、だからお前も…あんま妹に心配させるな。脱走なんかするんじゃないぞ」すっ

ネズミ『妹? あのぼくに餌をくれる優しい人間さん?』

男「そうとも。俺に感謝するだけじゃなくって、アイツにも感謝しとけよ」

ネズミ『人間さんが言うならそうするよ! だから、人間さん! たまにぼくにかまってね!』とててっ

男「…わかった。じゃあ水槽に戻すぞ」

ネズミ『うんだよ!』

男「……」

男(動物ってのは、こうも簡単に……感謝っていうか、助けられたって思うんだな)

男「俺は別に大したことなんて、してないのに」

男「…………」

男「動物か。人間だって、ネズミと同じ……動物なんだよな」

男「たかが言葉が通じないってだけで、たかが…会話ができないってだけで」

男「悩んでることも、考えてることも、人間とそう変わりない──」

男「───………」

男「そっか、会話か……」


次の日 昼休み


男「よお」

女「……」

男「ちょっといいか」

女「……」すっ

男「ま、待ってくれ!」がしっ

女「……」

女「なに」

男「えっとだなぁ…その…唐突にすまん! ちょっと一緒にごはん食べようぜ!?」

女「……」

男「っ…っ…!」

女「いい」コクリ

男(あ、良いんだ…! よ、よかったぁ!)

~~~

男(屋上か…あれ? 確か一般生徒立入禁止じゃなかったか?)

女「もっくもっく」

男「お、おお……カレーかよ…学校でカレーかよ…」

女「……」コクリ

男「…美味しそうだな、いや、匂いがきつそうだけども」

女「たべる?」

男「…少しだけ」

女「はい」すっ

男(えっ!? ちょ、直接!?)

女「たべないの?」

男「待ってくれ、ちょっと箸とか用意するから…!」

女「……」

男「お、お待たせ……じゃその頂きます…」

女「……」

男「美味しいな…」

女「そう」もぐもぐ

男(…待て! 確かに順調だが、なにかがおかしい! 乗せられるなペースを!)

男「そのよ、あのさ、女さん?」

女「なに」

男「……その、悩みとかある?」

女「?」

男(ぐぁー! もっと上手い聞き方ねぇーのかよ俺には!)

女「悩み?」

男「そ、そうだぜぇ…っ? なんか悩みとかないのかなーって、さ…」

女「……」

女「…教師も同じようなこと、聞いてきた」

男「え、あ、えっと…」

女「悩みがあるのかと、貴方と同じように」

男「…そっか、そうなのか」

女「そんなこと聞いてどうするの?」

男「えっ!? いや、その~どうするんだろ…?」

女「…そんなことしって、どうするの」

男「ワカリマセン…」

女「わたしは別に、悩んでなんかいない」

男「………」

女「こんな私がいる理由が必要なの?」

男「えっ?」

女「悩んでなきゃ、闇を抱えてなきゃ、こんな私がいちゃ駄目なの?」

男「えっと……」

女「…………」

すっ

女「ごちそうさま」

男「あ! も、もう食べちまったのか……!」

女「…」コクリ

すたすた

男「ちょ、待ってくれ! 女さん! 最後に1つだけ聞かせてくれ!」

女「……」

男「あの、そのっ……あんたは、えっと」

女「……」

男「…っ……ね、猫の…動物の声は聞こえたり出来るか!?」

女「……出来ない」

男「そ、そうか! やっぱりな!」

女「それがどうしたの?」

男「えっ!? えっと、あのっ! 実はだな! 俺は……俺は聞こえるんだ!!動物の声が!!」

女「動物の声が?」くるり

男「そ、そうだ! 聞こえちまうんだぜ!? どうだ凄くないか!?」

女「すごい」コクリ

男「だろ! だからさ、だからってなんだよ…そうじゃなくって…あの時の猫のこと覚えてるか!?」

女「デブ猫?」

男「そうデブ猫! その時、あの猫が言いやがったんだ…その、お前が……」

女「……」

男「……じ、じさ……」

女「……」

男「自殺…を……」

女「……」

男(は、はっきりと言え男! がんばれよ、ここで言わなくちゃ何時聞けるんだ!?)

男「ゴクリ……あの猫から聞いたんだ、お前がいつもやってることを……」

女「私が?」

男「お、おう。そのことを聞いて、俺は……お前に確かめたくなって、だな」

女「何を確かめるの」

男「……本当に、そのつもりがあるのかって」

女「……」

男「ほ、本当に……お前がその気があるのか、なんて聞きたくて」

女「…私には」

男「っ…」

女「──私には、ある。そのつもりが、あるの」

男「ッ…!じゃ、じゃあお前は…!」

女「私にはそうなる覚悟がある」

男「そうなる覚悟って……ち、違うだろ!? んな馬鹿な話があるかよ!?」

女「どうして貴方が決めつけられるの?」

男「だ、だってそれは!」

女「悪いこと?」

男「当たり前だろ! 悪いことだなんて、んなこと聞かなくても分かることじゃねえか…!」

女「…私には悪いことだなんて、思わない」

女「新しい自分に生まれ変わること。それが大切なんだって、思うから」

男「新しい自分…!?」

女「…」コクリ

男「んなっ……んなこと、俺が許さねえ!」

女「っ…」びくぅ!

男「馬鹿言うんじゃねぇ! お前が考えてることはただのガキ以下の考え方だ!」

男「そんなこと考えてるやつを放って置けるかよ! ああ、なんとでも思いやがれ! お人好しだよ俺は!」

女「な、なに…」

男「許さねえぞ、俺は絶対に…そんな簡単に無くしちまっていいもんなのかよ、テメーの命ってやつをよ!」

女「私は…ただ…」

男「俺はな、命を大切にしやがらねえ奴は大っ嫌いなんだ。どんなちいせえ命でも、頑張って生きてるんだよ、努力してんだよ!」

男「だけど現実はそう甘くないよなっ? 仕方なく殺しちまうことも、当たり前のように過ぎてくことも……簡単に見過ごせる!」

男「だけどっ……俺にはもう、安易に見過ごすことができなくなっちまってる…!」

女「……」

男「…お前が新しい自分ってのになりたいんなら、手伝ってやる」

女「えっ?」

がしっ

男「お前が望む限りのことをやってやる。だから、俺にまかせろ。というか任せてくれ!」

女「なにを…」

男「俺にはお前の声が聞こえてるぞ」

女「っ…!」

男「…周りはどうだか知らねえ。けどな! こうやってお前と会話出来ている!」

男「なら、会話しようぜ…もっと楽しんで生きようぜ…なっ?」

女「……」

男「どうだ、どう思った? 俺の言葉は…お前に伝わってくれたか?」

女「…私は自由になりたかった」

男「おう」

女「こんな場所がいやで、生きているところが不便で、なにもかも…無くしたかった」

女「その願いを……貴方は叶えてくれるの?」

女「望んでも……いいの?」

男「っ……お、おう! 頑張らせていただくぜ!?」

女「………」


女「──ありがと」にこっ


男「………お、おう…っ…」

女「…じゃあ貴方にだけ見せる」すっ

男「え、お、おう?」

女「これは誰にも見えたことはない事」

男(え、なんだ…マフラーを解いて…)

チャリ…

女「……見て」

男「………なんで首輪してんの?」

女「最近買ったの。お小遣いをためて」

男「……え?」

女「他にもいっぱいある。素敵な配色のやつとか、あとはロープのやつとか」

男「え、え、待って、え、ちょ、なにそれ」

女「私はずっと動物になりかった」

男「────」

女「こんな人間世界が窮屈で、退屈で、つまらなくて」

女「──動物みたいに自由に暮らしたかった」

男「…なに、いってるんですか、女さん」

女「けれど、認めてもいいんだよね」

女「──あなたがそう言ってくれたから」

男「………」

女「今晩九時に中央公園に来て」すっ

女「──首輪をつけて、待ってるから」ふりふり


きぃ パタン


男「………」

男「え、えー……」


~~~


猫『ぎゃーはっははははははは!!! な、なにそれ!? がははははは!!』

男「……何笑ってんだこの早とちりデブ猫!! お前のせいだなぁ!? お前の…!」

猫『なん、なんだそれ、マジかよ嬢ちゃん……こりゃたまげた根性持ってやがったわ…!』

男「じ、じじじ自殺も何も関係ねぇーじゃねえか!!」

猫『だなぁ、いやーよかったぜ。マジで、おっちゃんマジで安心したわ』

男「更なる問題が山積みだよこっちは!!」

猫『いーいじゃねえか。おいおい、めでたくペット購入おめでとう』

男「このっ…!」むぎゅっ

猫『ぎゃー! 急にしっぽつかむんじゃねー!』

男「はぁ…はぁ…で、でも……よかったのかこれで…?」

猫『ペロペロ…んあ?』

男「…確かに自殺じゃなくてよかったよ、お前が見てた首吊りってのも、その……首輪だったみたいだし」

猫『んだなぁ。しっかしまぁ、お前もよく頑張ったよ。嬢ちゃんもそうだが、ガキも大した根性じゃねえか』

男「……」

猫『それで、コンバンくじ? だったか? そんときどーんな格好で現れるんだろうなぁ、嬢ちゃんってば』

男「…うっ」

猫『裸だったりして』

男「や、やめろよ…そういうこと言うのやめろ…」

猫『だって動物になりたいんだろ? じゃあ服を着てるのおかしいじゃねーか、だろ?』

男「……」

猫『おーおー興奮しとるなぁー』

男「だぁーもう! ふざけるなよデブ猫!?」

猫『ふざけてねえって。猫さんも真面目に考えてるよ』

男「…ったく」

猫『んで、行くのか?』

男「行くよ。行くに決まってるだろ、あそこまでのこと言っちまったんだし…」

猫『ガハハ、こりゃ面白くなってきたなぁガキ』

男「…こっちはちっとも面白く無い」

猫『いいじゃねえか。楽しもうぜ今をよぉ、だってよ、おれの声が聞こえなかったら…』

猫『…あの嬢ちゃんは、もっとヤバイやつに唆されていたのかもしれないんだぜ?』

男「うっ」

猫『猫のおれからみても分かるぜ。ああいった人間さんってやつは、脆いもんだ』

猫『どこぞの馬の骨とも知らねえ奴が…あの可愛らしい嬢ちゃんを飼っちまうこともありえた話だろう』

男「………」

猫『ここはひとつ、頑張ってみようとは思わねえかい。ガキよぉ』

男「…わ、わかった。頑張ってみる」

猫『おう、頑張れ』

中央公園 

男「っ…っ……」そわそわ

男(そ、そろそろ九時だよな。うん、時間は待ち合わせ通り…)

男「本当に、来るのか?」

女「来てる」

男「ぎゃー!!」

女「こんばんわ」コクリ

男「はぁっ…はぁっ…び、びっくりさせんじゃねえ!」

女「ごめんなさい」

男「いや、別にっ………いいんだが、その、えっと~」

女「とりあえず」

男「えっ?」

女「はい、リード」

男「……」

女「……」シュルシュル…

男「あの、」

女「ここにつけて。この首輪に」くいっ

男「えっ!?」

女「はやく」

男「お、おおっ…」

カチャ

女「んっ」ぴくっ

男(なにこれ! はわわっ! なにこれ!?)

女「…どう?」

男「どう、って!? …その、びっくりです…!」

女「そう」

男(んー!? どうしたらいいの俺ってば!?)

女「さんぽ」

ちゃりちゃり…

女「いこっか?」

男「散歩ですか!? どこにですか!?」

女「…そこらへんを」

女「ぐるーってな感じで」

男「…あ、はい…」

女「……」てくてく

男「……」すたすた


ちゃり ちゃり…


男(首輪をつなぐ金具の音が、夜の公園に鳴り響く…)

女「やっぱり」

男「な、なにっ? どうしたっ?」

女「…四つん這いになったほうがいいかな?」

男「えっ!? だ、だめだだめだ! それはだめだ!」

女「だって、動物っぽくない…」

男「そりゃー……そうだけども……」

女「よいしょ」

男「…本当にやるのか…っ?」

女「うん」

すたすた…

男(なんだよこの光景…俺は何をしているんだ…俺は一体なにを彼女にさせているんだ…)

女「あ…」ぶるるっ

男「え、なにっ?」

女「……」

男「…な、なんですか?」

女「マーキングを…」

男「女子トイレに行って来ぉおおおおい!!!」

~~~~

男「はぁーあ……」

男(疲れた、疲れちゃったよ俺…たかが数分歩いただけでこの疲れよう…)

男「動物になりたいだなんて、何言ってんだあの子、いやマジで」

男(自由になりたいって、窮屈だから、退屈だからって…)

男「…だから動物になりたいって、思えるかフツー?」

女「ただいま」

男「お、おう。ちゃんと手を洗ったか」

女「ううん」フルフル

男「…なんでだよ」

女「どうせ四つん這いになるし、汚れるから」

男「なるほど。って、違う!」

女「……動物は手を洗わない」ブッスー

男「そりゃそうだけども!」

女「……手伝ってくれるんじゃなかったの」

男「ま、まあそう言ったけどさ」

女「じゃあどうしてこうじゃない、ああじゃない、なんて言うの」

男「……だって」

女「私は動物になりたいの」

女「…動物になって、自由に生きたい。だからこうやってなる準備をしている」

男「…思うんだけど、でも、これって動物じゃなくってペットの練習じゃ…」

女「えっ」

男「と、思ったんだけど。準備運動的には成功してると思う、大丈夫だ!」

女「…そっか」

男(よからぬ助言をしてしまうところだった!)

女「…何時になったら私は動物になることができるんだろう」

男「…。あのさ、どうして動物に……そんなにもなりたいんだよ、お前って」

女「自由になりたいから」

男「その自由って……なんなんだ? 動物になれば、ちゃんと自由になれるのか?」

女「…なれると、おもう」

男「自信なさ気だなぁ。いやま、自信あっても困るけど」

女「……」

男「俺もさ自由になったらいいなって、思うよ。あんなことも出来るんじゃないかって、いっぱい遊べるんじゃないかって」

男「でも…お前が考えてる自由ってのは、よくわからん。元々何考えてんだが、よくわからないし」

女「…私はつまらない」

男「…」

女「こんな私はつまらない。こんな世界で生きていくのに、なにも出来ない」

男(見方によっちゃ、面白いんだけどな。十分)

女「だから動物になるの。こうやって、首輪をつけて」

女「私は私で無くなる。人として完璧じゃ、なくなる」

男「人として?」

女「あなたはどう思う? 人は完璧だって、思う?」

男「…難しい質問だな」

女「私は思わない。人は完璧であろうと努力するけど、私は絶対に叶わないと思ってる」

女「──何処かで自分の弱さを忘れてない限り」

男「…なんかあんのか、色々と」

女「……」

男「はぁーあ、わっかんねーよ俺には……ちっともわからん」

男「けどさ、単純に悩みがあるんならそれは───」


グルルルルル


男「っ…なんだ…?」

野犬『おい、こっちに人間がいるぜ…』

野犬『マジかよ、こんな時間にいるなんてなぁ…』

男「なんだこいつら…」

女「っ…」ぎゅうううっ

男「心配すんな。大丈夫だって…」

女「こ、怖い」


野犬『どうする? 人間だぜ、返り討ちにあったら…』

野犬『こっちは十匹以上いるんだぜ? 大丈夫だろ、平気平気』


男「十匹以上居るのか…」

女「じゅう…ひき…っ?」

男「ああ、みたいだな…どうも俺達の事狙ってるみたいだ」

女「うそ…」ぎゅっ

男「なんだやけに俺冷静だな、声が聞えるからか? いや、待て! 女さん…掴んでる所申し訳ないんだが…!」

女「…?」

男「えっと、その! やけに腕に露骨な感触といいますかっ……えっと、コートの下……」

女「なにもきてないけど?」

男「馬鹿がお前は!!」


野犬『な、なんだ!? 声が聞こえたぞ!?』

野犬『に、人間の言葉分かるぞ!? なんだなんだ!?』


男「や、やべっ…興奮させちまったかっ?」

女「…興奮してるの?」

男「ああ、そうみたいだ…やべぇなどうする…!」

女「…」ドキドキ

男(俺にできることなんて、たかが動物の声が聞えるだけだしな…!)

女「興奮…どうして…私が着てないから…」

男「くそっ…仕方ねぇ…」

男「おい、ちょっと聞いてくれ」


野犬『なんだ、話しかけてきたぞ』

野犬『なんだなんだ』


女「…?」

男「あのよ、そんな張り切ってもらっても困るんだ」

男「こっちは大した準備も揃ってない。明日にまた良いもん持ってきてやるからさ、ここは一つ見逃してくれないか」

野犬『見逃す? ははっ、馬鹿言うんじゃねーよ』

野犬『こっちは腹が減ってしかたねーんだぜ』

女「見逃す…私の身体が見たいって、こと…?」

男「ちっ、まともにわかってくれねーことはわかってんよ」

女「だ、だって……そんなこと急に言われても……」

野犬『もうやっちまおうぜ! 腹が減った!』

野犬『そうだそうだ! やっちまおうぜ!!』

男「……仕方ねえな」

男(これはあんまり出したくなかったんだが……もうやるしかねえ!!)

男「じゃあこれでも──喰らえ!!!」

ブン!!

野犬『な、なんだ!? なにか投げてきたぞ!?』

野犬『これ…ドックフードだ! 美味しいやつだよ兄貴!!』

男「これでも食ってろ野犬共!! たんまり持ってきてあるぜ!? 頂けいやしんぼめ!!」

野犬『やべぇええええうめぇええよこれぇえええええ』

野犬『おいしぃよぉ……あにきっ…生まれてきてよかったなぁ……っ』

男(今回の為に、なにか必要になるかと想って買ってた奴…なんだけど、まさかこう役に立つとは)

男(……あんまりしたくねんだよ、無責任っていうか、野生の動物に餌やるのって、好きじゃないんだよ)

男「いいか、お前らよく聞け。確かに野生で生きるのは辛いことだ、大変なことだ!」

男「だけどな、こうやって人様に迷惑かけるのはやっちゃ行けねぇーことだ! わかるか!?」

野犬『すまねぇあんちゃん! 俺等が間違ってた!』

野犬『人間ってやつも、悪い奴ばっかじゃねーんだな!』

男「それは違う!」

野犬『えっ…?』

男「お前らの考えは間違ってない。人間は悪い奴ばっかりだ、俺も悪いやつだ!!」

男「お前らは生きていくのに餌を求める。明日は喰えないかもしれない、だけど今回食えたのは俺のおかげだ!」

男「だけどな……だけど、それは今日だけだ。お前らにあげられるのは、今日だけなんだ」

男「そんな奴はいいやつとは言わねえんだよ…」

野犬『あんちゃん…』

野犬『…いや、間違っちゃいねえ。俺らは生きていくのに飯を食う。だけど、あんちゃんは今日だけだ』

男「……」

野犬『だけど…いいじゃねえか』

男「えっ?」

野犬『今日は食えた。明日はわからねえ、けどな、今日は生きれたんだ。餌を食えて』

野犬『そんとき一瞬を生きられたのは、あんちゃん。あんたのおかげだぜ!』

男「お前ら……」

野犬『ありがとよあんちゃん! また暇があったら餌持ってきてくれ!』

野犬『おう! 今度娘に合わせてやっからよ!!』

このSSまとめへのコメント

1 :  さすらいのトム   2015年01月07日 (水) 15:11:45   ID: vNdSoUZ5

ナニコレ…続きが凄く気になる

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