AM9:25
10月中旬、都内スタジオの会議室・・・ そこに、机の上で腕を組み、その上にあごを乗せてむっつりとした顔で押し黙っている女性がいた。
3日前の3回戦ラーメン勝負で現場実況を務めたアナウンサー福与恒子である。
恒子「ああ、もう、めんどくさいな・・・」
ガチャッ
恒子「あっ、村吉さん・・・ に野依プロ!」
のよりん「……おはよう!!」プンスコ=3
みさき「・・・福与さん・・、おはよう。 まだ福与さんだけ?」
恒子「うん。 早くして欲しいよねっ! 私、昨日の夜にいきなり連絡もらったんだよ?」
みさき「私もだよ。 なんか、準決勝の試合形式、少し変更するらしいね」
恒子「全く、そーゆーのは余裕をもって伝えてほしいよね! 3回戦終了してから変更するなんて、大丈夫なのかな?」
のよりん「……眠い!」プンスコ=3=3
バタンッ
はやり「いえーいおっはよーっ!☆ 世界を明るく照らす女神! はやりんの登場だよーんっ!!」ハヤヤッ!
みさき「み、瑞原プロ… おはようございます」ペコリ
のよりん「暑苦しい・・・奴!」プンスコリン=3
恒子「はやりさん! 私たちほかの仕事もあって忙しいんですけど!」
はやり「いけずぅ~☆ 恒子ちゃん! こんなにも、朝日は美しく・・・ 世界もはやりも光り輝いているというのに・・・! 何をプリプリしてるの?
怒ってばっかりじゃ小ジワが増えるにょ~ん♪☆」
恒子「・・・準決勝の試合、変更点があるからってわざわざ来たんですけど・・・?」イライラ
みさき「また何か変な仕掛けとかするんですか?」
のよりん「…黒ネコ…?!」プンスコ=3=3
はやり「ちがうよんっ!☆ そんな大した変更じゃないよ。 えっとねー・・・」
ガチャッ
健夜「はやりちゃん、説明は私がするよ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420487199
・1作目→久「麻雀部限定、全国大食い選手権」
久「麻雀部限定、全国大食い選手権」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399305486/)
・2作目→優希「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(予選)」
優希「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(予選)」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399551723/)
・3作目→はやり「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(1回戦)だぞっ☆」
はやり「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(1回戦)だぞっ☆」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401369950/)
・4作目→のよりん「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(2回戦)…!!」プンスコ=3=3
のよりん「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(2回戦)…!!」プンスコ=3=3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403857666/)
・5作目(前作)→恒子「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(3回戦)っだぁぁーっ!!」
恒子「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(3回戦)っだぁぁーっ!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408157047/)
・インターハイ終了後の10月、出場校のメンバーが再び東京に集まり、大食い大会に参加しています。
・大食い競技の模様はテレビで生中継しています。
・前回の3回戦(ラーメン勝負)を勝ち抜いた6名↓(記録の良かった順)
①南大阪姫松高校2年 愛宕絹恵
②長野清澄高校1年 片岡優希
③奈良阿知賀女子学院高等部1年 高鴨穏乃
④南北海道有珠山高校3年 獅子原爽
⑤鹿児島永水女子高等部1年 滝見春
⑥西東京白糸台高校3年 宮永照
・空腹感、または逆に強制的な満腹感や胸焼けを感じる可能性があるのでご注意下さい。
・かなり大量のキャラが現れます
・遅筆です。よろしければお付き合いください
恒子「すこやん!」
咏「小鍛治さん、話すのは全員そろってからの方がよくね? 知らんけど」フリフリ
健夜「あ、うん… えーっとまだいないのは・・・」
ガチャッ
えり「す…すいません、ちょっとトイレ行ってました」
咏「おはようえりちゃん。 ふふっ、これで全員そろったねぃ」ニヤ
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同時刻・鹿児島県霧島神宮境内
初美「・・・はあ・・、はいてもはいてもなくなりませんねー」サッサッ
巴「本当だね。 昨夜の台風、ほんとすごかったもんね…」サッサッサッ
初美「10月のこの時期に台風直撃なんて、全くツイてないですよー。 なんなんですかこの落ち葉と小枝とドングリの山はー?」
巴「しょうがないでしょ。 自然の神様には逆らえないんだから。 ブツブツ言ってないでもっと早く手を動かしてよはっちゃん」
チリンチリーン
郵便屋「おや、精が出るねえ! 速達の手紙が来てるよー」
巴[あ、はーい。 いつもご苦労様です。 誰宛てかな…?」
郵便屋「春ちゃんだよっ! 日曜にやってた大食いのテレビ見たよ! 準決勝もガンバレッて伝えてなー」チリンチリーン
初美「それ先週も来てたやつですよねー。 東京までの航空券が入った…」
巴「うん、同じやつだと思うけど・・・ なんか今回ちょっと分厚いな。 春ちゃんに渡してくるね」テトテト
遅くなりました。 準決勝の投下を開始します。
団体戦ということは前スレで伝えてありましたが、単純な3対3にはなりません。
おいおいすこやんかはやりんに試合形式の説明をしてもらいます。
みなさん元旦の「大食い世界一決定戦」は観ましたか? ギャル曽根さんが6年ぶりに復帰してましたね。
ちゃんとつながるか分かんないけど動画はってみます。↓
https://www.youtube.com/redirect?q=http%3A%2F%2Fyoutu.be%2FWA7qgSvSgqw&redir_token=3EtNFke6TSWYR-CD3YTUOVkRB9N8MTQyMDU3NjY5NUAxNDIwNDkwMjk1
今日の夜にもう少し書きます。
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~同日AM8:10、長野清澄高校通学路~
優希「のどちゃん、おっはよーだじぇ――っ!」ガバッ
和「キャッ 優希…!」
優希「うむm… 1ヶ月くらい前にもんだ時よりも明らかにボリューミー…! まだ大きくなるとは、けしからんじぇのどっぱい!!」
和「・・・胸に話しかけるのはやめなさい優希・・」
咲「おはよう優希ちゃん、いつにも増してゴキゲンだね」
優希「出たなリンシャンマシーンMk-Ⅱ号・・・! おぬしにのどっぱいは渡さないじょ!」
和「私の胸が優希のモノだなんてそんなオカルトありえません」
優希「じゃあ咲ちゃんのモノなのか?」
和「YES! I am!!」(誰のモノでもありません!!)
優希「じぇ・・・」
和「あ」
咲(言う事と考えてる事逆にしないでよぉ・・・///)
ポトッ
咲「あっ、ゆ、優希ちゃん何か落ちたよ」
優希「じょ? お、おう忘れるとこだったじぇ… 今日は二人にこの密書を渡したくてな…」ピラ
咲「これ・・・ ああ、大食い大会に行くための航空券・・・」
優希「そうだじぇ。 この優希サマがまたみんなを東京に連れてってあげるじぇ! 今度こそは私の無敵ぶりを世に知らしめてやるじぇ・・・」
和「・・・優希、この券、羽田行きじゃありませんよ」ピラ
優希「なぬ?」
咲「あっほんとだ… えっ? これ・・・」
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~同日AM8:45、北海道有珠山高校~
爽「Zzzzzzzzzz・・・・」グゴーグゴー
誓子「爽、そろそろ起きなさいよ。 HR始まるわよ」ユサユサ
爽「・・・ぐふっふふぅ・・、こりゃなかなかいいおもちだぜ・・・」ムニャムニャ
誓子「・・・・覇!」ズビシッ!
爽「おぅふっ!!」
誓子「目ぇ覚めたかしら…? って、何このヨダレの池! 早くふいて!!」ゾーキン
誓子「あぅ・・・ すまんのう」フキフキ
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~同日AM8:45、北海道有珠山高校~
爽「Zzzzzzzzzz・・・・」グゴーグゴー
誓子「爽、そろそろ起きなさいよ。 HR始まるわよ」ユサユサ
爽「・・・ぐふっふふぅ・・、こりゃなかなかいいおもちだぜ・・・」ムニャムニャ
誓子「・・・・覇!」ズビシッ!
爽「おぅふっ!!」
誓子「目ぇ覚めたかしら…? って、何このヨダレの池! 早くふいて!!」ゾーキン
爽「あぅ・・・ すまんのう」フキフキ
誓子「爽あんたいつまでもそんな調子だと卒業できないかもしれ・・・ 何、そのポッケの封筒?」
爽「あ、これ… 昨日届いた、大食い大会の航空券…」
誓子「あんたそんな大事な物学校に持ってきて無くしたらどうすんのっ! …ん? 航空券じゃないわよこれ」
爽「は?」
誓子「…函館から盛岡への長距離バスチケット… 何よ次は盛岡で大食いやるの?」
爽「・・・さあ?」
誓子「去年車道用青函トンネルが開通したのよね。 私、飛行機以外で本州行くの初めてだな…」
爽「ああ、そう・・・ Zzzzzz・・」
誓子「 お き な さ いっ !! 」ツネリー
爽「ぬななななななななななぁっ! 死にゅ死にゅ死にゅ!!」
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~同日AM10:35、奈良阿知賀女子学院~
穏乃「憧ぉ! 盛岡だって!!」ズダダダ
憧「ああそう! 盛岡なんだ!! ・・・って、何よいきなり盛岡って。 なんのこと?」
穏乃「大食いだよっ! 準決勝、東京じゃなくて盛岡でやるんだって!」
憧「・・・なんでまたそんな遠いとこで・・?」
穏乃「うーん… 分かんない! 食材で盛岡ラーメンとか岩手ラーメンとかみちのくラーメンとか出るんじゃない?」
憧「…あんた3日前にあんだけラーメン食べといて、まだラーメン食べる気?」
灼「盛岡… わんこそば… 盛岡冷麺…」ヌッ
穏乃「わっ、灼さん!」
憧「灼の言う通りね。 多分、岩手の郷土料理とか特産品が食材で出るのよ。 そうだとしたらわんこそばは鉄板でしょうね」
穏乃「うーむ・・・ わんこそば・・・か」
憧「しず、お蕎麦は好きでしょ? ラーメンと同じ麺類だし」
穏乃「そうだね。 好きなんだけど、私小学生の時に一回盛岡でわんこそば食べたことあるんだ」
憧「へえ。 どのくらい食べれたの?」
穏乃「んー・・・ よく分かんないけど、お盆2段・・・ あれって大人2人前くらいだったのかな。 わんこそばって、どんだけ食べても値段一緒だから、お腹パンパンになるまで食べようと思ってたんだけど… なんかちょっと食べづらくてさ…」
憧「食べづらい?」
灼「わんこそばは、自分のペースで食べられな…」
穏乃「そうなんです。 横にお店の人がついてくれてお椀にそばを入れてってくれるんだけど… なんかその人が気になっちゃってさ、落ち着いて食べられないんだよね… それで満腹になる前にやめちゃったんだ」
憧「ふうん… じゃあ少し研究して対策練っといた方がいいかもしれないわね。 ・・・で、その封筒は?」
穏乃「あ、これ? 昨日届いた盛岡行きの飛行機のチケットと… あと、なんか、手紙も」ピラ
憧「どれどれ。 …えーっと、“準決勝の試合形式変更について”…?」
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~同日PM0:40、南大阪姫松高校食堂~
恭子「へえっ、盛岡ねえ… 遠いですね」
絹恵「はぐはぐもぐもぐわっしわっしがっつがっっつ」=3
洋榎「そうなんや。 まあ飛行機でひとっとびやから別にええんやけどな」
絹恵「ずるっ ぞずずっっ! ハフハフずぞぞずぅっっ!!」=3
由子「寒いかもしれないのよー」
絹恵「あんぐっ はむっ! フゥ~ はぐまぐむっしゃあばっ!」=3
漫「防寒対策しっかりしてかないとですね」
絹恵「ムグモッシュ モギュモギュモギュ… むぐあっぐ ゴックンッ!」=3
恭子「・・・絹ちゃん、あんたの話しとるんやけど、聞いとる?」
絹恵「あっ、 モフモム 聞いて ングング! ます ムグマッグ! よ」
恭子「あいかわらず絹ちゃんはよお食べるな・・・」
由子「から揚げ定食大盛りに味噌ラーメン大盛り、それと学食裏メニューのカツ丼三倍盛りを同時に食べてるのよー」
洋榎「しかも絹は休み時間に早弁もしとるんやで」
漫「エンゲル係数ハンパないですね…」
絹恵「私、大食いの大会に出るようになって、さらに食べることの喜びに目覚めたみたいなんです」モグモグモグ
洋榎「ほんまやな。 明らかに1~2ヶ月前より食事の量増えとるで」
恭子「ただでさえぎょーさん食べるのに・・・ これ以上強なったら鬼に金棒やな」
漫「でも、準決勝は随分特殊なルールで試合をやるみたいですね」
由子「今までと全然違うのよー」
洋榎「確かにな… 3対3の団体戦をやるってのは聞いとったけど、試合は、先鋒戦から大将戦までの全五回で、基本1対1のタイマンやけど中堅戦のみは2対2のタッグ戦…」
漫「食材は全部で6種類って言うとったけど、それが5種類に変更… 各試合時間は『25分』…」
恭子「その25分を1人2回やるから、6人それぞれが2種類の食材で50分間の大食いをやることになる… でもこれ、書類読んでも、オーダーをどう決めるかとか最終的に誰が落っこちることになるんかとか、よう分からんのよね」ペラッ
由子「とにかく“作戦”と“運”が、勝敗にかなり影響するみたいなのよー」
漫「個々の実力通りの結果にはならへんかもしれないってことですよね」
洋榎「そやな。 麻雀も運の要素は大きいしな。 まあ、どんなルールやろうと絹が負けることはないやろうけどな!」
恭子「何しろ“大食い界のリーサル・ウェポン”ですからね…」
絹恵「ごはんおかわりしてきます」ステステ
本日ここまでです。
書き込みありがとうございます。
また土曜か日曜から続き書いていきます。
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~同日PM3:50、西東京白糸台高校麻雀部部室~
いちご『バニラ風味のふんわりした食感!』
照「……」ジーッ
いちご『素朴な生地が懐かしい! 「ケーキドーナツ」シリーズ3種が期間限定で復活なんじゃーっ!!』
照「………」ジーッ
いちご『ほんのりした生地の甘さを楽しめる“ホームカット”・・・!』
いちご『雪のような白さのホワイトココナッツがまぶしてある“プレミアムココナッツ”・・・!!』
いちご『カリカリとした食感がサイコーの黄金のドーナツ、“ゴールデンバタークランチ”・・・!!!』
照「…………」ヨダレダラダラーッ
いちご『考慮しとらん美味しさに、あなたも悶絶必至なんじゃ! さあ、早く行かないとちゃちゃのんが全部食べちゃうぞっ!♪』パクッ
淡「テルー、スマホのTVで何見てんの? あ、佐々野さんのドーナツのCM! かわいいよねこれ!」
照「淡!!」
淡「は、はい!?」
照「私、どうしてもやらなきゃいけないことができた。 もう帰るから、菫に伝えといて」
淡「は、はあぁ・・・??」
ガチャッ
菫「すまない遅くなった。 ・・・ん? 照お前どこに行くんだ」
照「のっぴきならない用事ができた。 今日はもう帰る」
菫「…ふざけるな。 一体何の用事だ」ガシッ
照「放してっ! ドーナツが私を呼んでるんだよおぉっ!」
菫「おい誠子! 照が逃げないようにしばりつけてくれ!」
誠子「イェッサー!」
照「誠子! 来るなら本気のコークスクリューブロー出すよ…!!」ゴゴゴゴゴ・・・
菫「おい尭深! お茶飲んでないでお前も手伝え! 全員でこのバカを取り押さえろっ!!」
ギャー ギャー ジタバタ
照「鬼! 悪魔! 高三にもなって魔法少女好きの中二野郎!!」グルグルマキ
菫「まったく… せっかく左手の骨もくっついてきたというのに、またケガしても知らんぞ…?」
照「あっ!! 思い出した。 昨日私のおじいちゃんが車にひかれて死んだんだった。 お葬式行かなきゃだから放してよぉっ!」=3
菫「・・・お前・・、お菓子のためなら本当に人も殺しかねないな… ん? なんだこの封筒は」スッ
淡「あっそれ、さっきテルが暴れてた時にポッケから落ちたやつだよ」
菫「む…? 岩手への航空券…? 今度の大食いは盛岡でやるみたいだな」
淡「へー! じゃあ、今週末はみんなでタダで旅行に行けるじゃん!」
誠子「券以外にも手紙が入ってますね… “準決勝の試合形式変更について”… 試合のスタイルが今までとかなり違うみたいですね」ピラッ
菫「ふむ… 団体戦をやるというのは聞いていたが… 3対3に分かれて、全五回の大食いの試合を行う… 先鋒、次鋒といったオーダーは、食材が発表された時にチーム内で相談して決める…」
淡「つまり、五種類の食材の中から、自分のトクイなモノを二つ選べるってことだよね? じゃあテルーはまたスイーツ食べれるかもね!」
菫「いやいや、スイーツは二回戦であれだけ色んなのを食べたんだからもう出ないだろう・・・」
誠子「…そうとも限らないと思いますよ。 だって、二回戦のスイーツは全部プリンとかケーキとかの“洋菓子”だったじゃないですか」
淡「あ、そうだね。 じゃあ・・・」
尭深「お団子とかおしるこ… “和菓子”が出る可能性はある…」ズズッ
菫「確かにそうだな。 おい照、また甘い物試合で食べられるかもしれ・・・ なあ!?」
ロープ「」ドロン~~~
淡「あはは… 私たちが話してるスキにロープほどいて逃げちゃったね…」
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~時間巻き戻り、同日AM9:35、都内スタジオ会議室~
健夜「・・・・という形式で、準決勝は行おうと思うんですが…」
恒子「……」
えり「……」
みさき「…あの、言いにくいんですけど、かなり“運”が勝敗を左右しますよね… 選手たちが不公平感を感じるんではないでしょうか…?」
健夜「うん、それはあるだろうね。 でも、“団体戦”を行うためには、ある程度の不公平はどうしようもないんだよ…」
はやり「大丈夫だよ村吉さん!☆ もし選手たちがガタガタ文句言い出したとしても、はやりがダマらせてあげるから!♪」
えり「…うーん複雑ですね…… それに、かなりの長丁場になりますね。 25分×5とインターバル10分×4… 合わせて165分、2時間45分の闘いですか…」
恒子「うん、長いねぇ。 番組のボルテージ最後までもつのかな…?」
健夜「大丈夫。 今回は生放送じゃなくてあとで映像を編集するから、常にボルテージの高い状態を維持する必要はないから… アナウンサーのみんなは、ポイントポイントで試合が盛り上がるようにうまく流れを作って下さい」
恒子「スタジオの実況&解説はずっと固定で、現場の実況&解説は試合ごとに交代する…。 えーっとコンビは、今まで通りの私&すこやん、針生さん&三尋木プロ、村吉さん&野依プロでいいんですよね?」
咏「いや、そのことだけどねぃ、今回みさきちゃんだけは現場を抜けてスタジオの実況をやって欲しいんだよ」
みさき「え、ええ・・・? あの、じゃあ、野依プロと組むのはどなたが・・・」
はやり「ふふんっ! それは私がやるよっ!☆」
みさき「えっ瑞原プロが…?」
恒子「はやりさんと野依プロが組むんですか? ・・・大丈夫ですか?」
はやり「? 何心配してるの! はやりと理沙ちゃんはもう10年以上のつき合いがあるマブダチなんだぞっ!☆」ガシッ
のよりん「…たれチチ! さわるなっ!」プンスコ=3
みさき「あの… 野依プロってその… 口下手なとこあるじゃないですか… 瑞原プロは、どのようにして連携を…?」
はやり「だっから心配いらないって! はやりと理沙ちゃんくらいのレベルになると、もう言葉はいらないんだYO!☆ 雀力で会話できるからへーキへーキ♪ ねっ!すこやん♪」
健夜「えっ? う、うん…?」
みさき「・・・えーっとそれでは、私と組むスタジオの解説の方はどなたが…?」
咏「あ、それは心配いらんよ。 大食いのプロの人が来るからねぃ」
みさき「プロ・・・?」
健夜「いや、日本の大食いにはプロはないけど… でも、現役バリバリの本物のフードファイターの人が来て解説してくれるんだよ」
咏「忙しい人だから事前の顔合わせには来れないんだけどね。 プロフィールだけ渡しとくから、みさきちゃん当日は頼むよん♪」ピラッ
みさき「・・・初対面の方といきなり3時間近くも実況やるんですか、私・・・」
咏「大丈夫だって! みさきちゃんなら何の問題もない! 美人だけど気さくで真面目で普通なかんじの人だから、みさきちゃんならウマが合うと思うよ」
みさき「は、はあ・・・」
咏(…本当は、外部の人にはやりちゃんみたいな痛い子当てるわけにいかないから、みさきちゃんと交代したんだけどね…)
本日ここまでです。
また明日続き書いていきます。
おつー
明日ってことは下手に展開想像書かない方がよさげだねぃ
照の行き先、外部の解説どうなる
>>34
照は部活をサボってミスドの期間限定ドーナツを食べに行きました…
外部解説者はもうちょっとで出てきます。
投下します。
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~この週の土曜日、10月下旬、準決勝当日PM3:45、いわて花巻空港到着ロビー~
漫「うぅ、さぶっっ!」
洋榎「ほんまやな。 大阪に比べてかなり空気がヒンヤリしとるわ」
恭子「コート持ってきて正解でしたね…」
優希「あ、キヌちゃ―――ん! こっちだじょ――おっ!」オーイ
絹恵「優希ちゃん! 久しぶりぃ! あ、それに清澄の皆さん…」
久「こんにちは絹恵さん。 これで5校全部揃ったわね」
洋榎「ん? 5校? 6校ちゃうんか」
久「有珠山だけは近いから、バスで盛岡駅まで来てそこからワゴンで会場に向かうみたいよ」
優希「キヌちゃん聞いたか? 準決勝はチーム戦だじょっ!」
絹恵「う、うん。 それは先週にも説明があったけど、これから会場に着いたら抽選をして3人のチームを二つつくるみたいだね」
優希「キヌちゃん! おぬしをこの優希将軍率いる大食いタコスチームの参謀に任命するじぇ!」
洋榎「キヌと片岡が組んだらもう勝ち確定やろ。 試合にならないんちゃうか?」
久「さあ… それはどうかしらね」
洋榎「なんや久。 キヌと片岡は先週の3回戦、圧倒的と言ってもいいくらいの強さで1・2位だったんやで?」
久「洋榎、あなたももう4回も実戦を観戦しているんだから、この“大食い”という競技がどういう性質のものなのか、多少は分かってきたでしょ?」
洋榎「 なんやと・・・? 」
久「絹恵さんは確かに強いわよ。 予選、1回戦、3回戦と、4回の試合のうち3回でトップを取っているんだから。 純粋な大食いの総合力なら一番実力があるのかもしれない」
久「でも、大食い競技、特にこの準決勝は、実力があれば必ず勝てるというものではないんじゃないかしら?」
洋榎「…確かに2回戦だけはキヌもだいぶ苦戦して6位やったけどな……」
久「大食いは、食材との相性が勝敗を決する重要なファクターになるのよね。 それに、選手それぞれのスタイルも違うじゃない」
洋榎「スタイル?」
久「例えば、もし食べにくい食材のスプリント勝負になったら、絹恵さんは優希にはまず勝てないと思うし、阿知賀の高鴨さんや有珠山の獅子原さん相手でもけっこう危ないんじゃないかしら」
洋榎「……」
久「何しろ、今回は試合時間が25分・・・ これは絹恵さんにとっては不利かもしれないわよね。 絹恵さんだけじゃないわ。 今までほとんどピンチに陥ることなく安定して勝ち上がってきた永水の滝見さんも、今回はヤバいんじゃないかしらね」
初美「ん~? なんか全く要領を得ない話が聞こえてきましたね~」
久「あら、薄墨さん。 私何か間違ったこと言ったかしら?」
初美「間違いも間違い、大間違いですよ! 6人の中でまだ一度も“限界”を見せていないのははるるだけなんですからねー。 25分とはいっても、それが2回、つまり合計50分という今までで一番長い試合になるわけですから、これは間違いなくはるるのワンマンショーになってしまいますよー」
久「あらそう? 滝見さんの底力は認めるけど、今回ばかりはらっくらく~に勝ち上がる、というのは難しいと思うけど?」
初美「ふん、言ってればいいですよー。 試合が終わった時、はるるの強さに震え上がるがいいですよー」
霞「あらあら、はっちゃんったらまた他の学校の子につっかかってるわねえ」
巴「主役は相変わらず我関せずでマイペースですけどね・・・」チラ
春「……」コクトウポリポリ
ナ、ナンダアレ・・・? ナニアノヒトタチ・・・?
ナニカノイベント? ウケルw シャメトラナキャ!
ヤベエww ハラガイテエェwww
小蒔「おや? なんだか騒がしいですね… 何事でしょうか?」
到着ロビーの出口の方に人だかりができ、そこからとてつもなく異様な格好の4人組が歩いてくる・・・
まこ「な、なんじゃありゃあ・・・??」
由子「の、のよー…?!」
憧「えっ? まさか・・・」
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ・・・!!
咲「はわわわわ・・・??」
淡「ちょ、ちょっと、これマジ?」
宥「さ、さ、寒いいぃ・・・!!」ブルブルブル
ザッ!
はやり「ヤッホーみんな!☆ 青春してるぅ? みちのく岩手にようこそぉ―――っっ!!」ハヤッ
5校のチームメンバーは全員、はやりの呼び掛けには応えず、身じろぎもできずに固まっていた。
そこには、頭部全体がおそばをのせた巨大なお椀になってしまっていて、顔だけヒョコッと外に出ているはやり・・・
同じように頭全体が一味唐辛子のビンになってしまっているのよりん・・・
そして、巨大なかきあげ型の着ぐるみで全身を包んでいる健夜・・・
さらに、背中からヤマアラシのようにネギを何十本も生やしている恒子がいたのだ。
穏乃「は、はやり、さん・・・? 何ですか、その格好・・・」
はやり「見れば分かるでしょ! 私たちは岩手のゆるキャラグランプリに輝いた『わんこ四姉妹』だよ~~~んっっ!!☆」ハヤヤッ
はやり「自己紹介イッちゃうよんっ♪ 私は、四姉妹の長女! わんこそばの“そばっち”だYO!☆ そして、こっちが次女の・・・」サッ
のよりん「一味、唐辛子の… “からっち”!」プンスコ=3=3
健夜「さ、三女の、海鮮かきあげの“あげっち”…///」モッサモッサ
恒子「いぇーい! 私が末っ子の薬味ネギ“ねぎっち”だよおっ!」ドヤッ
一同「「「………」」」
漫「ぶっ!!」=3
絹恵「す、漫ちゃん…」
漫「あかん、もうガマンできひんwwww」ゲラゲラ
はやり「んん~? 何を笑っているのかなぁ? シツレーな子にはお仕置きしちゃうよっ! Go! “からっち”!!☆」
のよりん「…了解!」パカッ
洋榎「うぇっ? 頭のどでかいビンのフタが開いたで!!」
のよりん「うぃひ、ぷひひひひひひひぃぃっ!」ガシッ
漫「わっ! な、何するんですか?!」
のよりん「からしあたっくぅ…! 死ね!」アタマブンブン
漫「あじゃっ!? わじゃじゃあっ!!」
由子「頭のビンの穴から唐辛子が出てきてるのよー!」
漫「ぐああっ! 目が! 目があ―――――ッッ!!」
久「・・・大丈夫なのかしらこの番組・・・・」
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ーーーー
~PM4:05、盛岡市内スタジオのトイレ~
みさき「・・・そろそろ、空港の選手たちがバスに乗った頃かな…?」チラリ
洗面台で手を洗って鏡でサッと化粧を整えたみさきは、腕時計で時間を確認した。
みさき「はあ・・・ 瑞原プロも理沙ちゃんも、カメラがついてくからって、本当にあんな格好で迎えに行くなんて… 私なら絶対無理だな…」
みさき「えーっと、スタジオでの顔合わせは4:15・・・ 解説のフードファイターの人も来たかな?」スタスタ
ガチャッ
?「わっ! あ、す、すみません…」
みさき「あっ、ごめんなさいこちらこそ…」
トイレから出たみさきは、廊下を歩いていた小柄な女性とぶつかりそうになってしまったのである。
みさき「すみません私がいきなり出てきたから…」
?「いえ、大丈夫です。 私もボーッとしてました」
みさき「・・・? あのぅ、もしかして、あなた・・・」
?「は?」
みさき「大食い選手権の、解説の方ですか?」
?「あ、はい。 今回解説役として声をかけて頂いた三宅智子です」ニコッ
みさき「そ、そうでしたか。 初めまして。 私、今日一緒に仕事をさせて頂くアナウンサーの村吉みさきといいます。 よろしくお願いします」ペコリ
三宅「あっ、そうなんですか? よろしくお願いしまーす!」
みさき「…」
咏からもらった三宅のプロフィールには、彼女の身長と体重も記されていた。 152cm、39kg・・・
しかし、今みさきの目の前にいる本人は、そのプロフィールよりもさらに小柄に見えた。
みさき「あの… 体細いですね… 現在日本で五指には入る実力派のフードファイターだとお聞きしてますが・・・」
三宅「えっええ…? そうですねえ、まあ強い人たちけっこう引退しちゃいましたからねえ…」
みさき「お若く見えますけど… もう10年近くのキャリアがあるベテランなんですよね」
三宅「そうですね。 デビューはギャル曽根さんとほとんど一緒なので、もう10年くらいになりますね」
みさき「…こういった、大食い競技の解説はされたことあるんですか?」
三宅「うーん・・・ バラエティ番組の大食い対決の解説は何度かあるんですけど、こういう、本格的な競技試合の解説は初めてです」
みさき「そうですか。 あの、私も、大食いのスタジオでの実況は初めてなので、ちょっと不慣れだと思うんですが… いろいろ、専門的なお話聞かせて下さい」
三宅「あ、はーい。 女子高生限定の大食い大会が開かれるなんて、いい時代になりましたね! 今日はとっても楽しみです♪ よろしくお願いします!」
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~PM4:30、盛岡市アイスアリーナ内多目的室~
ガヤガヤ ザワザワ
洋榎「…けっこう広い会場でやるんやなー… ここ、多分インハイ会場と同じくらいのデカさやで」
絹恵「うん、でも、アイスアリーナって、フィギュアスケートとかやるとこじゃないのかな?」
恭子「11月から3月まではスケートリンクとして使うみたいやね。 でもそれ以外の期間は普通にスポーツの試合とか、コンサートとか開いてるみたいやで」
由子「あっ、かきあげが台に上ったのよー」
漫「やっと、試合形式の詳しい説明始まるんやな」カオヒリヒリ
健夜「はーい! みんな静かにして下さいね。 今回の競技についての説明をしますよ」
爽「わ?! 何かと思ったら小鍛治プロ! 何ですかそのコスプレ。 タワシ?」
健夜「ち、ちがう・・・/// かきあげなんだよこれ…///」
洋榎「めっさ気になるわその格好・・・ 説明の時くらい脱いでもらえないんですか?」
健夜「…テレビが入ってる間は脱げないんだよ… もう慣れてよこれに…」
咲「先週は優希ちゃんたちがコスプレしたけど、今回は大人の人たちがするんですね…」
まこ「仕事とはいえ… ありゃ同情するのう…」
健夜「先週も少し話したし、航空券と一緒に競技についての説明書も送ったから、大体分かると思うんだけど、一応一から説明するね」
健夜「準決勝は、3対3に分かれての団体戦です」
健夜「このあとここで抽選を行い、選手6名それぞれがAかBかのチームに分かれるわけです」
健夜「そして、行う試合は全五回。 1対1の対決ですが、中堅戦のみは2対2となります」
健夜「えーっと、例えば、Aに愛宕さん、片岡さん、高鴨さんが入って、Bに獅子原さん、滝見さん、宮永さんが入ったとして、適当にオーダーを組んで図示すると・・・ こんなかんじになります」
<A> <B>
先鋒 絹恵 VS 爽
次鋒 優希 VS 春
中堅 穏乃&絹恵 VS 照&爽
副将 優希 VS 春
大将 穏乃 VS 照
憧「ふんふん、なるほどね…」
健夜「食材は各試合によって異なります。 つまり全部で五種類の食材が出てくるわけです」
健夜「食材は各試合の開始直前まで秘密です。 そして、食材が発表された時に、チーム内の3人で誰が闘うかを相談して決めて下さい。 つまり、オーダーは事前に決めるわけではないのです」
健夜「各試合の時間は25分。 全員、それを2回やりますので、2種類の食材で合計50分間の大食い対決をするわけです」
健夜「勝敗は、25分の中で、その食材をより多く食べた方が勝ちとなります。 引き分けはありません。 必ず優劣をつけます。 そして、より早く『三勝』したチームが勝ちとなるのです」
穏乃「あの、すいません、中堅戦の2対2というのは、2人の合計量を競うんですか?」
健夜「そうだね、その通りです。 極端な話、高鴨さんが全く食べなくても、愛宕さんが一人で宮永さんと獅子原さんの食べた合計量より多く食べたら、中堅戦はAチームの勝ちです」
健夜「あっ、それと似たようなことで、例えば片岡さんが2回とも全く食べなくて二敗しても、残りの愛宕さんと高鴨さんが三勝してくれれば、Aチームが勝つので片岡さんも決勝に進めます」
ザワザワ ザワザワッ
洋榎「全く食べなくても勝てる、やと・・・?」
久、「…うん、確かにこのルールだとそういうことになるわね」
健夜「勿論それは“仮”の話です。 ここに残っている6人の戦士が、試合で全く食べないなどということは有り得ないですが、これは25分が“2回”の試合です。 1回目の対戦で『あ、これは勝てない』と思ったら、そこで食べるのをやめても構わないのです」
健夜「1敗してしまうのはあきらめておかわりを拒否し、体力を温存して2回目の対戦に賭ける、という行為は“作戦”として認めることにしています」
健夜「Aチームがもし先鋒、次鋒、中堅と3連勝してチームとしての勝敗が決定しても、そのあとの副将、大将戦を行わないわけではありません」
健夜「皆さん知っての通り、決勝に進むのは5人・・・ つまり、脱落は一人だけで、その脱落者は『負けたチームの3人の中で、二回の大食いで最も相手に差をつけられた人』が脱落することになります」
憧「ん…? ちょ、ちょっと待って下さい」
健夜「はい、新子さん」
憧「その“差”というのは、量、つまり食材の重さのことですよね?」
健夜「そうですよ」
憧「えーっとじゃあ、5種類の食材で、量を稼ぎやすい食材と稼ぎにくい食材があったとしても、その食材の差の合計を出して比べるんですか?」
健夜「・・・そうです。 つまり今回は色々と“運”や“作戦”が勝敗を左右する闘いなのです」
洋榎「…なんや、どういうことや?」
恭子「えーっと、例えば、“煮干し”と“カレーライス”の大食いがあるとするじゃないですか」
洋榎「はあ? 煮干し…?」
恭子「例えばの話ですよ。 それで、私がカレーライスで400gの差で相手に負けるとするじゃないですか」
洋榎「ふんふん」
恭子「そんで、主将は煮干しの大食いで390gの差で負けるとするじゃないですか」
洋榎「煮干しの大食いで390g差って・・・ ものすごい差やな」
恭子「そうですよね。 しかし、ルールでは、脱落するのは差が10g多い私になるわけです」
洋榎「ん・・・? ああ、そういうことかいな。 つまり恭子の方がずっと接戦だったのに、大差をつけられたうちが残って恭子は脱落するってことか。 随分ややこしいな!」
恭子「まあ、どんな食材が出てくるか分からないので、そういうことを考える必要があるのかないのか分からないですけどね… ただ、量の差がつきにくい“煮干し”系食材で負けるより、量の差がつきやすい“カレーライス”系食材で負けると致命傷になりやすいのは確かですね」
健夜「試合と試合の間には10分間のインターバルが入ります。 今回は総試合時間が大変長いので、自分の試合時間以外、つまりインターバルの間かチームメイトの試合の間は、『トイレ』に行っても構いません」
健夜「本来大食い競技の試合の最中にトイレに行くのは御法度ですが、ここまで戦い抜いてきたあなた方が『不正』を行うことは絶対にないという信頼のもと、準決勝だけは特別に許可します」
健夜「重要なことの説明は大体これで終わりですね… あとは、今まで行ってきた試合と同じルールだと思って下さい。 何か質問ある人いる?」
一同「「「「「「…………」」」」」」
健夜「ふふっ、みんなまだ頭こんがらがってるよね… このあとPM5:00にまたここで試合についての質問を受け付けるから、その時までに聞きたいことまとめといてね。 試合はPM6:00ちょうどから始めます」
健夜「ぶっちゃけ、私でも、このルール下での試合がどんなものになるのか予想がつきません。 ・・・何か非常事態が起こることもあるかもしれない」
健夜「ただ、一番大事なことは、試合形式やルール云々ではなくて、どんな時も食材への愛と感謝と尊敬の気持ちを忘れずに、対戦相手をリスペクトして誠心誠意の大食いができるか、です」
健夜「この準決勝に残った6人のえりすぐりの食闘士なら、必ず清々しい真剣勝負と素敵なチームプレーを見せてくれると信じています」
健夜「では、いよいよチームを決めますね。 はやりちゃん、お願い!」
はやり「はーいっ!☆ それじゃ、選手の6人は、これからこの私の頭のお椀から出てる6本のおそばを引いて下さい! このおそばはクルクル巻かれたくじになっていて、中が見えないようになっているから、引いてもすぐには見ないでねっ!☆」オソバアタマー
はやり「そして全員引き終わったら、一斉にくじを開示してもらうよっ! じゃ、3回戦の順位の順番で引きに来てっ! まずは愛宕さんからー☆」
選手たちは、絹恵、優希、穏乃、爽、春、照の順ではやりの頭からそばを引き抜き、席に戻った。
はやり「よっしみんなOKだね!☆ じゃ、一斉にくじを開いて、私たちに見せて下さいっ! どうぞぉぉ―――っっ!!」
6人はそばくじを開き、立ち上がってそれを掲げてみせた。
絹恵 A
優希 B
穏乃 A
爽 A
春 B
照 B
本日ここまでです。
Aチーム(絹恵・穏乃・爽)、Bチーム(優希・春・照)のチーム名をどうするか迷っています。
>>1は「グレーティスト・スリー」とか「タコスと愉快な仲間たち」とかしか思い浮かばないので、もし良かったら、チーム名の案を書き込んで頂けるととっても嬉しいです。
このあとの質問会で選手たちに質問させたいことももしあったら書き込んで下さい。
三宅智子さんはみさきと解説をするだけなので、選手と関わることはありません。 一応本人の承諾は得ています。
また明日、チーム名発表、質問会、サポート体制発表などを経て、試合開始直前まで書けたらいいなと思います。
乙・・・ってちょっと待て。本人の承諾を得ているって実際にこの三宅さんに交渉したってこと?
乙なのよ
チーム名難しいな見事を個性がバラけてるし
A案
チーム丑寅
・3人の出身地を繋げると北東を指す矢印みたいになる&鬼門だとはるるに封じられそう
・4つの胃袋をもつ牛の容量と虎の強さを併せ持つイメージ
B案
シャイニングスターズ(あわあわ命名)
・本人は不動、或いはマイペースを貫き周りを惑わす→恒星のイメージと照の名を掛けて
リアルと二次を混ぜるとかないわあ
もう咲で書く意味ないじゃんこれ
>>55
三宅さんは、女性としてはギャル曽根ともえあずの次くらいに知名度の高い大食いタレントですが、本職は飲食業です。
銀座の「みやけ家」という食事処&居酒屋の店長さんなので、ゴハンを食べに行った時に聞いてみたところ「全然いいですよ」と言ってもらえたので。
本来は全部咲キャラでやるべきなのかもですが、初期設定上あらゆる食材についての専門的な解説ができるのはすこやんと咏さん(とのよりん)しかいなくて、すこやんと咏さんは1・2回戦でスタジオの解説をしてるし、今回はどうしても現場に出て欲しかったので、外部で探しました。
ちなみにみやけ家のゴハンはハンパなく美味しいです。
>>56
ありがとうなのよー!
引き続きチーム名募集します。 もし何かあったら書き込みしてくれると嬉しいです。 今日は20時くらいから続き書いていきます。
>>57
すまない。でも今回はこれでいくね。
オオオオ・・・ ヘエエエ・・・・ ウーン、コレハ・・・
優希「じぇ… キヌちゃんと一緒になれなかったじょ…」
春「……」
照(・・・やった。 片岡さんと滝見さん… 前に照魔鏡で確認した二人の胃力は15と16…! この6人の中では間違いなく二人ともトップレベル…)
照(しかも片岡さんは爆発的なスピードもある… そんで、食材でお菓子が出てきたら、私が行けばいいし… やべっ、これって磐石じゃね?ww)
爽(ふーん…、片岡と滝見欲しかったけど、愛宕がチームメイトならまあ勝てるかな)
穏乃(トップ率№1の愛宕さんとスピードスターの獅子原さん…! うおおっ! サイコーのメンバーじゃん! …燃えてきたあぁぁぁっっ!!)
絹恵(…うーん、優希ちゃん欲しかったな… でも、獅子原さんも高鴨さんもかなりスピードあるし、それぞれの得意分野を生かしていけば・・・)
健夜「では、これよりAチームの3校メンバー15名とBチームの3校メンバー15名で分かれて、別室に移動してもらいます。 そこでみんなで相談して、試合形式やルールに対する質問内容をまとめておいて下さい」
健夜「あっそれと、『Aチーム』、『Bチーム』では面白くないですから、チームの名前も決めてきて下さい。 あんまり長い名前はやめてね」
健夜「このあと5時からまたここでみんなで質疑応答会をして、そのあと再びA室、B室に分かれて『作戦タイム』をとります。 そして、選手の皆さんも応援の皆さんも5:45に試合会場に入り、5:50にいよいよ先鋒戦の食材が発表されます」
健夜「そこで、試合開始2分前までに3人のうちの誰が先鋒戦にエントリーするかを教えて下さい。 そして、PM6:00より、1対1の先鋒戦がスタートするという流れになります」
健夜「では皆さん、スタッフの指示に従ってA室、B室に移動して下さい。 あ、えっとね、今回各チームにはみんなをフォローする『専属スタッフ』が2名ずつつきます。 Aチームには臼沢塞さんとエイスリン・ウィッシュアートさん。Bチームには鹿倉胡桃さんと姉帯豊音さんです」
塞「みんなご苦労様。 じゃ、移動するから姫松、阿知賀、有珠山のメンバーは全員ついてきてね」
エイスリン「イソゲ! イソゲ!!」=3
塞「ちょ、ちょっとエイスリン! そっち逆の方向よ!」
・
・
・
~移動後、B室~
久「あはは、岩手だからもしかして、と思ってたけどやっぱり出てきたわね。 今日は小瀬川さんはいないの?」
胡桃「シロはどうしてもスタッフやりたがらなくってね。 今は歯医者に行ってるよ」
豊音「シロは負けちゃったけど、またみんなに会えてチョー感激だよー!」
久「さてと、今4:45・・・。 急いでこのやたら複雑な試合形式についての疑問点を洗い出して、チーム名を決めないとね。 15人もいるから、司会者が必要よね。 私がやってもいいかしら?」
菫「竹井は学生議会長をやっているんだろう? こういうのはやはり経験の豊富な人が担当するのが一番だ」
霞「うふふ、よろしくお願いするわ~」
久「じゃ、先にチーム名決めちゃいましょう。 いくつか案を出して、その中から選手の3人が一番いいと思ったものを選べばいいわよね。 あ、咲、あなた書記やってくれる?」
咲「えっ? あ、はい!」
~A室~
恭子「…では、司会者は私がやりますね。 チームの名前、何か案ありますか?」
漫「末原先輩、ここ岩手なんですから、“みちのくボンバーズ”とかどうですか?」
爽「“打倒はやりんズ”でいんじゃね」
恭子「・・・いや、選手たち3人の特色を表してるような名前がいいと思うんやけど…」
玄「それなら、“おもちと2枚のマナ板たち”がいいと思いますのだ!」=3
玄「あ、いや、“OMOCHI come true!”なんてのもいいんじゃないですか?」
恭子「……」
~B室~
優希「“神に選ばれしタコスの血族”なんてどうだじぇ?」
久「真面目に考えなさいよ優希。 テレビで放映されるのよ?」
淡「あのー、“シャイニング・スターズ”ってどーですかぁ?」
久「“シャイニング・スターズ”・・・ 光り輝く星々ってことね。 どうしてその名前がいいの?」
淡「えーっと、私、3人には苦しいことがあっても最後まで自分を貫き通して闘って欲しいなーって思ってて… それで、何物にも左右されず変わらない星と掛け合わせて…」
菫「淡、お前、“シャイニング”は照、“スターズ”は大星の星だから、お前と照の名前をくっつけただけじゃないのか?」
淡「むっ! ち、ちがうよぉ!」=3
久「うーん、どうしようかしらね」
咲「あの、私、淡ちゃんの考えた名前すごくいいと思います」
久「咲?」
咲「だって・・・ 3人の名前って、全部『光』を感じさせる名前じゃないですか」
咲「滝見さんなら、『春の陽光』とかよく言うし、優希ちゃんなら『希望の光』とかよく言うし、おねえちゃんは勿論なにかを『明るく照らす』っていう意味があるし・・・」
咲「だから、3人が星みたいにもっとたくさん光り輝くように、ていう意味を込められるし、とってもいいと思うんです」
久「ふーんなるほどね。 そうね、なかなかいいかもしれないわね。 じゃ、選手たちに異論がなければ“シャイニング・スターズ”で決定でいいかしら?」
照「うん、カッコいいと思う」
春「…異議なし」
優希「“シャイニング・タコス”はダメか?」
久「ダメに決まってるでしょ!」
~A室~
玄「“マナ板の上に咲いたおもち”! これで決定ですのだ!」
恭子「・・・ほ、ほかに何かない・・・?」
洋榎「うーん、3人の特色を表現するんなら、まず一人ずつ特徴を洗い出してみいひんか?」
憧「そうですね。 えーっと、シズあんたはとりあえず… やっぱ、“山”…?」
穏乃「そ、そうだね、私っていったらまず“山”かな」
誓子「爽あなたは、えーっと…」
爽「私は勿論、“ライオン”だろ。 あ、百獣の王だから“キング”でもいいな」
洋榎「それじゃあキヌは・・・、やっぱ“サッカー”か…?」
恭子「山とライオンとサッカー…ねえ・・・」
由暉子「あの、それじゃあ、“キング・チョモランマ・キッカーズ”なんてどうですか?」
恭子「え? “キング・チョモランマ・キッカーズ”…?」
洋榎「…なんかわけ分からんけど強そうやな…」
由暉子「意味は、『チョモランマのような超大盛りでも蹴散らしてしまう、キングの如きフードファイターたち』ってことなんですけど… ど、どうですか? カッコいいですよね?」wktk
恭子「う、うんうん、とりあえずそれでいいよねみんな? 試合についての質問についても考えなあかんし!」
恭子(ここで決めんと本当に松実妹に名前つけられてまうわ…)ハアハア
・
・
・
~PM5:00、再び多目的室集合~
健夜「…はい、両チームともチーム名書いた紙出したね? えーっと、Aチームが“キング・チョモランマ・キッカーズ”で、Bチームが“シャイニング・スターズ”・・・ うんうん、けっこういいんじゃない?」
健夜「じゃ、早速質疑応答会を始めます。 まず、えーっとなんだっけ…、 シャイニング・スターズの方からは何か質問ある?」
久「はい、一つだけお願いします。 競技の“五種類の食材”についてなんですけど・・・」
健夜「うん」
久「わざわざここ、盛岡で試合を行うということは、やはりその五種類は“岩手にゆかりのある食べ物”なんですか?」
健夜「……」
健夜「やっぱりそこついてきたね・・・ そうですね、答えは“YES”です。 五種類全てが、岩手の郷土料理や特産品で統一されています」
健夜「ただし、知名度の高い物が必ず出るとは限らないからね。 選手たちは、どんな食材が出てきても対応できるように、心構えをつくっておいた方がいいと思いますよ」
健夜「えーっと、チョモランマチームの方はどうですか?」
恭子「…はい、それじゃあこちらも一つだけ…」スッ
恭子「3対3の団体戦を行うわけですけど、この対決には、“控えの選手”というのがいないじゃないですか」
健夜「…うん、そうだね」
恭子「でも、大食いは非常にハードな競技… それに何が起こるか分からない。 もし、誰かが試合続行不能になった場合はどうなるんですか?」
健夜「いい質問だね… そう、選手たちの体を守るためですから、ドクターストップやリタイアが起こる可能性は十分にあります」
健夜「その場合は、その選手が2回目の大食いの時だったら、リタイアした時点での記録が25分間で食した量ということになります。 そして、誰かがリタイアしても、その試合は止めません。 相手は、一人になっても基本最後まで食べ続けて下さい」
健夜「そして、もし1回目の大食いでリタイアしてしまった場合は・・・ その場合は2回目の大食いは自動的に不戦敗となります。 そして、大将戦を中止して副将戦までの試合となります。 そこでもし勝敗が2対2になったら・・・って、そんな細かいことまでは今話さなくていいよね」
健夜「では、質問タイムは終了です! また、それぞれのチームの控え室に戻って、時間までみっちり作戦を立てたり、チーム内での親睦を深めたりなどして下さいね」
・
・
・
~移動後、シャイニング・スター室~
久「・・・“作戦”を立てる前に、まず確認しなくちゃいけないことがあるわ」
霞「確認? 何をかしら?」
久「それは・・・、照さん、優希、春、の3人は、今日、チームの勝利のためなら自分の手の内を全てさらけ出してもいいのかってことよ」
照「・・・!!?」
優希「え…?」
春「……」
久「それは、つまり・・・」
久「“明日の決勝なんかどうでもいい”と割り切って、この準決勝をチームのために全力で闘えるのかっていうことよ」
もう少し書きたかったのですが、本日ここまでです。
ぐだぐだ説明ばかりでごめんなさい。 でも、やっぱり試合前に競技の全体像をハッキリさせとかないといけないので…
また土曜から続き書いていきます。
それぞれに主張はあるんだと思うけど喧嘩腰なのはやめようぜ。
>>1も途中で相手しない方がいいよ。
ここは議論戦わせる場ではないでしょ?
自分で言い訳って言ってる通り、下手な言い訳は余計な反発を生むだけ。
このスレが終わるまで補足も含めて一方的な発信でいいよ。
終わったら回答でも議論でも何でもしたらいい。
なのでこれにもレスはいらない。
個人的には、、、
SSって想像をいろいろ広げられるんだから誰かが言ってたようにdisらないのであれば好きにしていいと思う。
ごめんなさい、>>84の人の言う通りにさせて頂きたいので、書き込みはできれば全てなしにして下さい。
勝手ながら、準決勝終了(たぶん5週間後)まで、投下のみを行います。
よろしくお願いします。
優希「・・・どういうことだじぇ?部長・・・ 私は今日も明日も全力で食べるだけだじょ?」
久「優希、やっぱりあなた何も考えてないみたいね。 いいわ。 例をあげて話してあげる」
久「例えば優希… この準決勝の先鋒戦、仮に“タコス”が食材として出てきた場合、シャイニングチームとしては当然あなたがエントリーすることになるわよね」
優希「当然だじぇ」
久「その場合、どんな展開になると思う?」
優希「…? 誰が相手でも、このタコスの申し子優希サマが圧勝するに決まってるじぇ!」
久「ええ、そうなるでしょうね。 私の予測では、多分相手は1・2個食べたところで優希に絶対勝てないことを悟って手を止めると思うわ。 そうしたらあなたどうする?」
優希「相手が食べようと食べなかろうと関係ないじぇ。 私は25分間全力でタコスを食べるだけだじょ」
久「ふうん。 じゃあその時、そんな優希を見て、後ろの照さんと春はどう思うかしら?」
優希「・・・??」
久「いい?優希。 この団体戦は、“三勝”すれば勝ちなの。 そして、1gの差でも1000gの差でも同じ“一勝”なのよ」
優希「じぇ・・・?」
久「…相手が手を止めてるのに、一人でひたすらがつがつタコスをほおばるあなたを見て、照さんと春はきっとハラハラするでしょうね。 “あの子、1回目の大食いであんなに食べたら、2回目の大食いが入らなくなるんじゃないか?”って」
優希「……」
久「もし私が優希の立場だったら、相手が手を止めたら2個くらいだけ差をつけて、自分も手を止めるわ。 そして、できる限り体力を温存して一勝をもぎ取り、2回目の大食いに備えるわね」
優希「うーん… そ、そうか…」
久「ねえ照さんに春、あなたたちもそう思うでしょ?」
照「う、うん…。 私もそんなこと考えてなかったけど、確かに、そういう状況になったら、、片岡さんにはできるだけ僅差で勝って欲しいと思うと思う」
照「そこでなるべく楽に一勝をして、2回目でも勝ってくれたら、片岡さんだけで二勝… そうなれば確かに気持ち的にかなり楽」
久「春あなたは?」
春「…私は 片岡さんが どんな食べ方をしても…気にしない。 好きなように…食べれば それでいいと 思う」
久「えぇ? あらら」ズルッ
春「でも」
春「私自身は、団体戦で ある以上…」
春「常に チームの ために… 最善を尽く…す」
久「そ、そう… じゃ、じゃあちょっと話を変えるけど、あなたたちは、この団体戦でなんとしてでも勝ちたい? それとも、別にチームとして負けても、自分が脱落しないで決勝に行けさえすればそれでいい?」
照「え…?」
春「……」
優希「じょっ?」
菫「お、おい竹井… それは少し意地悪な質問過ぎるんじゃないか…?」
久「弘世さん。 私、この団体戦は、生半可な覚悟で勝てる闘いじゃないと思うの」
和「…つまり部長の言いたいことは、自分自身がリスクを背負ってでも、全力でチームの勝利のために闘うのか、それとも、チームが仮に負けても決勝には行けるように“保険をかけて”闘うのか、ということですよね?」
久「ええ、その通りね。 自分個人の成績が悪くなればチームで負けた時に脱落してしまうからね」
照「・・・みくびるな」ゴオッ
久「!??」
照「チームが負けても、自分は決勝に行けるようになんて闘いは私は絶対にしない。 必ずチームとして勝利し、片岡さんと滝見さんを連れて私は決勝に行く」ゴゴゴゴゴ・・・
菫「何が“私が決勝に連れて行く”だ。 “精一杯頑張りますので私を決勝に連れて行ってください”の間違いじゃないのか…?」
照「う、うん… そうかもしれないけど… でも、このチームが負けるくらいなら、私は決勝に行けなくて構わない」
優希「私も、チャンピオンと同じだじぇっ! チームとして負けてるのに決勝進出なんて、クソくらえだじょおっ!」
春「…右に 同じ…」
久「ふふっ、分かったわ。 それなら・・・」
久「あなたたちの“手の内”全て教えてくれるかしら」ニヤリ
・
・
・
~チョモランマチーム控え室~
恭子「…じゃ、3人とも“全力でチームの勝利を取りに行く”“チームとして負けたら、明日の決勝には行けないと仮定して闘う”ということで本当にいいんやな?」
絹恵「はい」
穏乃「もちろんです!」
爽「イエス・オフコース」
恭子「それと… 1回目の対戦でカレーライスみたいな量を稼ぎやすい食材が出てきたら、基本絹ちゃんがエントリーする… そして、カタくてのどを通りにくかったり、弾力があったり激辛やったりとかの食材が出てきたら、獅子原さんがエントリーする…」
恭子「麺類や甘味が出てきた場合は高鴨さんがエントリーする… 量を稼ぎやすい食材でもし負けると、重量差が多くなって、チームが仮に負けた時は脱落する可能性が高くなるけど、そこはええんやな、絹ちゃん」
絹恵「チームの負け=私の負けだと思って臨みますからそんなことどうでもいいです。 それに、私は1対1では絶対に負けませんから!」
洋榎「じゃあ恭子、食材のことも気になるけど、次はまずオーダーのパターンについてある程度考えておこうや」
恭子「そうですね。 このルールだと、オーダーのパターンは・・・」カキカキ
①
先 A
次 B
中 C・A
副 B
大 C
②
先 A
次 B
中 C・A
副 C
大 B
③
先 A
次 B
中 C・B
副 A
大 C
④
先 A
次 B
中 C・B
副 C
大 A
⑤
先 A
次 B
中 A・B
副 C
大 C
⑥
先 A
次 A
中 B・C
副 B
大 C ※チームで最初に出るのがA、2番目がB、3番目がCとした場合
恭子「この6パターンということになりますね」
洋榎「んん…? どのパターンが一番ええんやろ。 キヌたちはどう思う?」
絹恵「いや、これはやっぱり①だよ、おねーちゃん」
穏乃「①ですかね、やっぱり…」
爽「連チャンがねーのは①だけだからな、やっぱ①がいいんじゃね?」
由子「全員一致で①なのよー」
絹恵「いや、場合によっては誰かが1時間20分以上休むことができる②や③、あるいは④もいいかもしれないですけど… 連チャンってマジでキツいと思うんですよね」
爽「連チャンはありえねーだろ… 下手すりゃトイレに行く時間もねーよ」
穏乃「25分全力で食べて、10分だけ休憩してまた25分全力で食べるなんて、考えたくもないですね…」
恭子「うーん… じゃあ、できる限り①のパターンで行けるようにして、食材との相性とかで①以外のパターンにする時でも、リスクの高そうな⑤と⑥は避けるようにしよう」
恭子「あとは… みんなそれぞれ、苦手な食材とかはあるんか?」
絹恵「私は甘いのと… 油っこいのもできれば避けたいですね」
穏乃「海鮮物… 特にナマモノが苦手なんです」
爽「……」
恭子「獅子原さんは?」
爽「…ごめん、私、『そば』が食べられないんだ」
絹恵「えっ、おそばが?」
爽「アレルギーがあるんだよ… 小さい頃からそばだけはダメで、小学生の時まちがってそば粉が入ったマンジュウ食べてブッ倒れたことがあるんだ」
恭子「・・・ちょっと、それヤバいかもしれんね。 『わんこそば』は岩手の郷土料理の代名詞だから、出てくる可能性はかなり高いはず…」
成香「でも… 『知名度の高い物が出るとは限らない』って言ってましたから、出ない可能性もあるんじゃないでしょうか…?」
憧「いや、さすがに、わんこそばはどっかで出てくると思っておいた方がいいんじゃないかしら」
洋榎「そやな。 問題はどこで出てくるかや… 先鋒か次鋒でとっとと出てくれればええけど、中堅以降で出てきたらチーム全体のリズムが狂う可能性があるな…」
恭子「とにかく…獅子原さんにはそばが出ないうちになるべく早くエントリーしてもらって、試合を消化した方がええかもしれませんね」
・
・
・
~シャイニングチーム控え室~
照「・・・これが、照魔鏡で見た片岡さんと滝見さん、それと私の大食いに関しての力だよ…」カキカキ
優希「じょおお…?」
春「……」
<照魔鏡データ>
・片岡優希
胃力 15
アゴ力 11
忍耐力 6
のど力 15
オカルト力 6
・滝見春
胃力 16
アゴ力 7
忍耐力 8
のど力 7
オカルト力 12
・宮永照
胃力 10
アゴ力 10
忍耐力 10
のど力 10
オカルト力 10
優希「・・・この数の合計が大食いの実力になるのか? えーっとそれなら、私が53で、春ちゃんは50… チャンピオンも50だから、私が一番多いな! すなわち我最強!!」フフン
照「うーん… もちろん数が大きければ強いんだけど、違う能力の数値を合計してもあんまり意味ないかも。 これは、その人の実力とともに大食いのスタイルを現しているものだから」
初美「各選手の大食い能力を、カテゴリー別に把握なんて・・・ こんな手の内を隠していたですか、チャンピオンは――」
久「うん、これは本当にすごいわね。 自分の力と、チームメイトの力を詳細に把握しておけるっていうのは大きいわ。 ねえ、それじゃあ相手チームの3人の力はどうなの?」
照「・・・えーっと、あの3人はまだ照魔鏡で見たことがない」
久「じゃあ、試合前にあの3人も鏡で確認して私たちに教えてくれる? 相手チームの個々の能力を正確に把握できれば、オーダーを組む時にも役立つし作戦を立てやすいわ」
照「う、うん…」
「ちょっとお待ち下さい」
初美「・・・姫様?」
小蒔「宮永さんの… 相手の能力を推し量ることができるというのは、とても素晴らしい力ですが、この団体戦でそれを使って、情報を共用する…というのは、少し安易ではないでしょうか?」
一同「「「………」」」
小蒔「もちろん反則などではありませんが、相手の能力をのぞいて完全に把握した上で作戦を立てる・・・ 皆さんは、そのような闘いがしたいですか?」
小蒔「競技に取り組む以上、勝ちを目指すのは当然ですが、なんといってもその競技を楽しまないといけないと思います。 自チームの能力を把握して共有するのはよしとしても、相手チームの能力まで把握したら…楽しさが減るのではないかと思うのですが、いかがでしょう」
久「・・・そうね。 神代さんの言う通りね。 照さんの力を借りてそこまでやるのは確かにやり過ぎだったわ。 照魔鏡は照さん個人で使うぶんにはいいけど、私たちがそれを共有するのはやめましょう」
まこ「ええんじゃないかそれで」
霞「私もそれでいいと思うわ~」
照「……」
照(なんだか、私が悪いコみたいな雰囲気になってんじゃねえかよおぉ! 神代さんだって神様降ろして闘ったりとか、すごいチートじゃんか・・・)
久「さて、他にもみんなが知っておくべき情報はあるのかしら。 春、あなたは?」
春「私は… イザとなったら… …… …」ゴニョゴニョゴニョ
久「えぇっ?! そんな事できるの?」
照「…だからオカルト力、私よりも上なんだ……」
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・
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~チョモランマチーム控え室~
洋榎「闘い方についての基本的なスタンスは、もうまとまったな」
恭子「…そうですね。 選手それぞれは、2回目の大食いはとにかく細かいことを考えずに、全力で闘って勝ちを目指せば良いですが… 1回目の大食いはやはり制限がありますね」
洋榎「そやな。 ただ勝つだけやなく、『相手の体力をできる限り削る』『僅差で勝って、なるべく自分の体力は温存する』といったことも達成できるように闘わなあかん」
恭子「間違いなくギリギリの闘いになるでしょうからね。 誰か一人が1gの差で負けたのが原因でチームが敗退する…ということも有り得ます。 やれる事は全てやっておいた方がいいです」
誓子「末原さん、岩手の郷土料理と特産品のリスト、大体まとまりましたよ」ピラッ
恭子「あ、ありがとな。 えーっと、わんこそばにきじそば、南部せんべい、いものこ汁、ずんだもち、しだみだんご、豆腐田楽、盛岡じゃじゃ麺に盛岡冷麺・・・ いろいろあんなぁ」
絹恵「末原先輩、冷麺を大食いするとなると、多分体の“冷え”を抑えるのがポイントになると思います」
恭子「うん、そやろな。 漫ちゃん、念のため今からコンビニ行って、使い捨てホッカイロと、膝掛けみたいな物もあったら買うてきてや」
漫「了解です!」
憧「末原さん、私わんこそばの食べ方について少し研究してきたんです。 獅子原さん以外の二人に少しイメージトレーニングさせたいんですけど…」
恭子「おおほんま? じゃあ、絹ちゃんと高鴨さんは新子さんの指導でエアーわんこそば食べてもらおう」
恭子「よし・・・ じゃあ残りの時間は、手の空いてる人たちで手分けして、予想される食材の特徴や、食べ方で気をつけることとかを調べておけばええな。 15人一丸となって、勝ちを取りに行くでぇ!」
一同「「「「「オ―――――――――ッッ!!」」」」」
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~シャイニングチーム控え室~
PM5:40
ガチャッ
胡桃「そろそろ時間だよ。 みんな、会場に入る準備してね」
菫「おい照、お前選手たちの中では一番の年長者なんだ。 士気をあげるためにも、出陣の前に何か意気込みを語ったらどうだ?」
照「えっ うん・・・ よし、それじゃあ!」
照「私たち3人は・・・」
照「これから、光り輝く恒星の三姉妹になるッッ!!」
照「そう・・・ 私たちは運命を共にした“三連星”だっ!」
照「大食いのバトルステージで・・・ みんなで、最高に輝いてみせようよっ! いくよォ!」ガシッ
優希「おうっ!」ガシッ
春「……」ガシッ
照「シャイニング・スターズ・・・!!」
照・優希・春「「「ファイトォォォ―――――――ッッッ!!!」」」
誠子「…三連星って確か玉砕するんでしたよね」ドムドムドム
菫「・・・・黙ってろ、誠子・・・」
~チョモランマチーム控え室~
絹恵「皆さん本当にありがとうございます… 私たちのためにこんな大勢の人たちが動いてくれて…」
恭子「絹ちゃんそれは違うで。 これは3対3というよりは15対15の総力戦なんや。 協力するのは当然や」
洋榎「そやな。 何があっても、うちらが全力でサポートしたるからな! キヌ、最後にもう一回アレやったれや」
絹恵「う、うんおねーちゃん。 じゃ、獅子原さんお願いします!」
爽「よっしゃイクぜ・・・っ! キング!」
穏乃「チョモランマ!!」
絹恵「キッカーズ・・・!!!」
爽「私たちはぁ!」
穏乃「3人で!!」
絹恵「一つの胃袋や!!! 絶対に勝つぞおぉぉぉ―――――――っっ!!」
爽・穏乃・絹恵「オ―――――――――ッッッ!!!」
由子「3人で一つの胃袋って… リアルに想像するとキモいのよー」
漫「キングギドラのイメージですね」
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~盛岡市内スタジオ~
PM5:42
みさき「皆さんこんにちは。 2週間前より始まりました全国高等学校大食い選手権、本日は準決勝の模様をここ、みちのく岩手のスタジオよりお送りして参ります」
みさき「実況は私村吉みさき、解説は大食いタレントで実業家の三宅智子さんです。 三宅さん、今日はよろしくお願いします」
三宅「はい、こちらこそよろしくお願いします」
みさき「三宅さんは日本の現役フードファイターの中でも指折りの実力を持ってらっしゃるそうですが・・・ こちらのプロフィールに色々記録が載っているのですが、その中に、餃子100個をわずか6分で食べてしまったというのがあるんですが… これは、その、60分の間違いではない……のですか?」
三宅「あ… かなり前の話ですね。 両国にある餃子会館というお店なんですけど、番組の都合で急かされて、60分以内に食べれば無料になる餃子100個を6分で食べましたね。 あの時はそのあと、他の出演者の方が残したのも食べたので、150個近く食べたと思いますよ」
みさき「…体は大変細いのですが…… 昔からそんなにたくさん召し上がるんですか?」
三宅「はい、子どもの頃から周りより多く食べてました。 やっぱり体質みたいですね。 お医者さんの話では、私は食事量を減らすとかえって太ってしまうそうです」
みさき「他には… 最近の話では、去年行われた大食いの世界大会の日本予選で、カレーライスを、は、8.5kg以上食べたとありますが・・・?」
三宅「あ、はい、おいしかったので。 でもあの時はもっとたくさん食べられたんですけど、周りにライバルというか、張り合う人がいなかったので、あんまり伸びなかったんですよね」
みさき「え、ええ・・・? で、ではどのくらい食べればおなかイッパイになるんですか?」
三宅「大会でおなかイッパイになったことは一度もないですね。 胃袋の調整でバイキングを食べに行く時は、限界まで食べますけど… 10kg近く、9.5kgくらい食べます」
みさき「9.5kg・・・!? あのぅ、体重の約1/4を食べるという計算になりますけど・・・??」
三宅「はい、まあ、そうなりますね。 自分でも重いですから」
みさき「・・・体どうかしちゃわないですか?」
三宅「ぜんぜん大丈夫ですよ。 妊婦さんみたいにおなかポッコリしちゃいますけどね♪」
みさき(・・・9.5kgの赤ちゃんなんて、双子でもありえないって・・・ ん?)
その時、番組スタッフがみさきにこっそり近づき、何かメモを渡した。
メモ(三宅に自分のことをしゃべらせないで! 選手たちが全然大したことないように見えちゃうからぁっ!)
みさき「……」
みさき「・・・えーっと、あの、それでは、この準決勝の見所についてお伺いしたいのですが…」
三宅「そうですねえ… まず、『25分間×2の大食い』というのは、非常に珍しいですね。 大食いは基本45分か60分。 短いもので30分とか、15分や10分を刻んでいくというものもありますが、25分というのはほとんど聞いたことがありません。 なんでこんな試合時間になったんですか?」
みさき「えーっとですね、選手たちは今までずっと45分で闘ってきたんですが、明日の決勝の60分間の闘いに向けて、試合時間を少し長くしたんです。 それで、50分を2で割って、25分間×2という形になったそうです」
三宅「そうですか… でも、はっきり言ってこれは“選手たちをいじめたいのか?”と思ってしまうほど厳しい闘いですね」
みさき「えっ、そうですか? 間にインターバルもありますけど…」
三宅「45分なら、常に全力で食べる必要はありませんから、ある程度余裕をもって闘うことができます。 しかし、25分という時間の中で実力の拮抗している相手を上回るには、食材にもよりますけど、ほとんど最初から最後まで全力で食べないといけないと思うんです。
いくらインターバルがあるとはいえ、そんなのを2回も行えば、恐らくほぼ全ての選手が体力的にも精神的にも追い詰められることになると思いますよ」
みさき「なるほど… では、今回は2チームに分かれての団体戦という形をとっているわけですが、どのようなことが勝敗を決めるポイントになると思いますか?」
三宅「そうですね。 3人いるわけですから、それぞれが得意な分野を発揮して闘えるようにすることと、相手を意識しすぎないことではないかと思います」
みさき「意識?」
三宅「この大食いは、記録伸ばしの闘いではなくて、ただ“相手を上回ること”だけが要求されている闘いですよね。 ですから、相手の量やペースをチェックするのは当然必要になってきますが、相手を意識しすぎると自分のペースで食べることができなくなります」
三宅「張り合い過ぎて、自転車レースみたいに追いついたり追い抜かれたり、といったことを繰り返すような闘いになると、必要以上に体力と精神力を消耗して共倒れになることもあるかもしれません」
三宅「それと… 団体戦のため、選手たちは今までの大食いでは感じたことのない凄まじいプレッシャーとも闘わなくてはいけなくなるでしょうね」
みさき「…自分が負けたら、チーム全体の負けになるかもしれない、というプレッシャーでしょうか…?」
三宅「そうです。 ・・・私の経験なんですけど、去年ニューヨークで行われた大食いの国別団体戦世界大会の決勝で、私は『ここで自分が勝てば、日本が優勝できる』という状況に立たされたんです」
三宅「・・・結局私はそこで僅差で負けてしまい、そのあとの人も負けてしまって、日本は優勝をあと一歩のところでアメリカに持っていかれてしまったんですよ…」
三宅「食材が苦手のステーキだったというのもあるんですけど、今にして思えば、その時のプレッシャーが、自分の体も胃袋もこわばらせていたんではないかと思います」
三宅「この準決勝も、いかにして、そういったプレッシャーや責任感に“押し潰される”のではなく、自分の力にできるかどうかが大切になってくると思います」
みさき「なるほど…」
三宅「展開としては、先鋒戦と次鋒戦はスピード勝負、そして中堅戦以降は大食いの底力が試される非常に過酷な闘いになっていくでしょうね」
みさき「ありがとうございました。 えーでは、会場の方で、先ほど選手たちのスタンバイが終了したようですので、実況をバトンタッチしたいと思います。 現場には今、牌のおねえさんの瑞原はやりプロが行っております! 瑞原プロ―――!!」
~盛岡市アイスアリーナ~
PM5:45
はやり『はいはーい!!☆ 村吉さんありがとーっ! みんなのアイドルHAYARIだよーっ!!☆』キャルーンッ
はやり『こちらは盛岡市アイスアリーナのメインフロアー! これからいよいよ、大食い選手権準決勝の模様をお伝えしちゃうぞっ!☆』
のよりん「………」プンスコ!=3
はやり『えー現在、フロアー中央の大食いバトルフィールドをはさんで、選手と応援の子たちが座っていますね。 15人対15人で向かい合う形で、これからみんなでラグビーの試合でもやるかのようににらみ合っていますっ!☆』
はやり『準決勝は、6人を3人2チームに分けた団体戦!☆ それでわ、各チームの紹介からイッちゃうよぉっ!♪』ハヤッ
はやり『はい! ジャジャーンッ! まずは! 姫松高校愛宕絹恵! 阿知賀女子学院高鴨穏乃! 有珠山高校獅子原爽!による「キング・チョモランマ・キッカーズ」だあぁっ!☆』
のよりん「キングコング!オッパイボンバーイェー!!」プンスコリン=3
はやり『野依プロもコーフンを隠しきれない、そうそうたるメンツですね!☆』
はやり『ここまで、なんとトップ率75%という数字を叩き出している大阪の食べるアルマゲドン愛宕さんに、誰よりも熱く清々しい食闘ぶりで私たちを魅了してきた奈良の小さな大食いモンスター高鴨穏乃!☆』
はやり『そして、普段は誰よりもやる気なさそ~にしているクセに、本気を出すと鬼神の如き強さで他を圧倒する北海道のライオンキング獅子原爽! 今日はみんなどんな食闘ぶりを魅せてくれるのか、はやりも楽しみなんだぞっ!☆』
はやり『続いてぇ!』
はやり『対抗するはこちら! 清澄高校片岡優希! 永水女子高校滝見春! 白糸台高校宮永照! による「シャイニング・スターズ」だよおぉっ!☆』
のよりん「ヘイ! ヘイ! ヘイ! ヘイ! ♪
えす!ゆーぴーいーあ~る えすてぃーえあ~るSuperStar!
えす!ゆーぴーいーあ~る えすてぃーえあ~るSuperStar! ♪
レッツゴー! ゴーゴーゴーレッツゴー!!
ゴーゴー! グォーグォーグォーレッツゴーテュウィン!!♪」ズンドコズンドコ=3=3
はやり『理沙ちゃん! プロ野球応援歌のスーパースターは多分関係ないぞっ!☆』
はやり『さーて、「シャイニング・スターズ」は、お皿やドンブリまで食べちゃいそうな吸引力でここまで常に上位をキープしてきた長野の人間ポンプ片岡さんに、精密機械のように淡々と食材を蒸発させていく恐るべき鹿児島のブラックホール、滝見春!☆』
はやり『そして、試合中に勝手にアイス食べたり竜巻起こしたりして、はやりの神経をブチ切れさせてくれた東京のポンコツ大食い大魔王、宮永照! 今日は真面目に食べないとはやりの激おこプンプン丸炸裂させちゃうからねっ!☆』
はやり『続いて、スタッフの紹介だよっ!☆ まずはチョモランマチームの専属スタッフ、宮守女子の臼沢塞さんにエイスリン・ウィッシュアートさん!』
塞「私たちが精一杯サポートするからね。 よろしくお願いします」
エイスリン「ヨロシクッ!」=3
はやり『シャイニングチームの方の専属スタッフは鹿倉胡桃さんと姉帯豊音さんのデコボココンビ!☆』
胡桃「マナーに則ってしっかり闘ってね」
豊音「私もちょーガンバッちゃうよーっ!」
はやり『んでもって! みんなの体を守ってくれる専属ドクターは毎度おなじみの三箇牧高校荒川憩さんだよっ!☆』
憩「準決勝は今まで以上にしんどいで。 無理のしすぎは厳禁な!」
<準決勝 サポート体制>
・実況 村吉みさき ・解説 三宅智子
・現場実況 瑞原はやり 針生えり 福与恒子
・現場解説 野依理沙 三尋木咏 小鍛治健夜
・専属スタッフ 臼沢塞 エイスリン・ウィッシュアート(チョモランマ)
鹿倉胡桃 姉帯豊音(シャイニング)
・専属ドクター 荒川憩
PM5:50
はやり『でわでわでわぁっ! いっよいよ先鋒戦の「食材」を発表しちゃうよぉっ!』
はやり『準決勝で用意された食材五種は全てここ、みちのく岩手の特産品! さぁ、一品目は一体なんなんでしょーかぁっ!』ポチッ
はやりがリモコンのスイッチを押すと、会場観客席上部の大画面に、円筒形の食材が映し出された。
絹恵「な・・・!」
優希「むぅ・・・?」
穏乃「おっお・・・!」
爽「へえ・・・」
春「これ…は……」
照「おいしそう…!」
はやり『そう! 岩手といえば三陸海岸! そして、世界三大漁場の一つである三陸沖でゲットしてきたとれっとれの新鮮な魚介類!! 先鋒戦で食してもらうのは、これらの魚介類をフンダンに使った超極上の一品・・・
“海鮮太巻き寿司”だあぁ―――――――っっ!!☆』
オオオオオ・・・ ザワザワ ガヤガヤ ザワザワザワ・・・・
はやり『ふふふ~ん、おいしそうでしょ? この太巻きには、三陸海岸の大船渡や釜石といった一級漁港で水揚げされた新鮮なカジキマグロ、秋サケ、カワハギなどのお魚がたっぷり入っているんだよっ!☆ それを、観光客にも地元の人にも大人気の盛岡市の回らないお寿司屋さんの老舗「横綱寿司」の職人さんが握った香り高い本物の極上品!!』
はやり『選手たちにはこれを、恵方巻きのように一本まるごとでワイルドにかぶりついてもらうのだっ!☆』
はやり『勝負は、会場中央のバトルフィールドで行われる1対1のガチンコ大食いデュエル!☆ この、ちょうどタタミ二畳分くらいの広さの正方形のテーブルで、選手たちはお互いに“向かい合って”食してもらいます!』
はやり『この神聖なる大食いバトルフィールドに入ることができるのは、私と野依プロと、選手2名と配膳などをする専属スタッフ4名、そして、各チームから選出されたそれぞれ2名のサポーター、つまり合計12名!☆』
はやり『サポーターの子は、選手のコップにドリンクをついだり、汗をふいてあげたりおしぼりを用意したりといった選手の世話をしてあげていいんだけど、食材にさわることはできない、つまり食べやすくカットしてあげたり食べさせてあげたりとかはNGだからねっ!☆』
はやり『でわぁ! チョモランマもシャイニングも、デュエルエントリーする選手と、サポーター2名を応援の子たちの中から選出して下さいっ!☆』
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~スタジオ実況室~
みさき「先鋒戦の食材は“海鮮太巻き寿司”・・・ 三宅さん、これはどう見られますか?」
三宅「いやあ・・・ いいモン食べすぎですよね……」
みさき「は?」
三宅「あの太巻き、一本いくらするんでしょうね。 あんな高級そうなものが食材だなんて、羨ましい限りです」
みさき「あ、大丈夫ですよ。 こちらにもあとであの太巻きを持ってきてくれることになってますから」
三宅「え、そうなんですか? やったぁ♪ 昔はあんなにいいモノが大食いで出ることは滅多になかったんですよ。 村吉さん、ちょっと聞いて下さいよ!」
みさき「は、はい?」
三宅「私がデビューした頃の大食いでは、ひたすらもずく食べさせられたりとか、食パン一斤まるごととか、キャベツの千切りだけとか、そんな大食いの試合があったんですよ」
みさき「キャ、キャベツの千切り…? それだけ食べるんですか?」
三宅「そうですよ! トンカツがつけ合わせでついてましたけど、それは記録には含まれないんです。 まあキャベツは私じゃなくて、私の友人が出た大会での話なんですけどね」
みさき「…この大会でキャベツの千切り出したら、暴動が起きるかもしれませんね」
みさき「えーっと、大食いする食材としては、この“海鮮太巻き”はどうなんでしょうか」
三宅「うーん、ふわっと握ってある江戸前寿司と違って、太巻きはスノコを使って強く握り込んでありますからね。 酢飯が圧縮されてて、若干食べにくいかもしれません。 具も、カワハギは生ではけっこう弾力がありますから、スルスルのどを通っていくというわけにはいかないでしょうね」
みさき「なるほど。 では、25分という短めの時間もありますし、各チームでは、スピードに自信のある選手がエントリーしてくるでしょうか」
三宅「おそらくそうでしょう。 この先鋒戦、両チームともなんとしてでも勝っておきたいでしょうから… あ、あと、太巻きの“海苔”・・・ これがちょっとクセモノなんですよね・・・」
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~シャイニングチーム~
優希「私! 私がいくじぇえええっ!!」=3
久「ちょっと落ち着きなさいよ優希… まあでも、ここはやっぱり優希かしらね。 春は後半の追い上げと持久力が持ち味でスピードはないから、中堅以降でエントリーした方がいいだろうし…」
照「私も太巻き食べたいけど、25分勝負なら多分片岡さんが上」
優希「決まりだっじぇええっ!! 太巻き100本くらい食べてやるじょ!」
久「はいはい。 じゃあ、エントリーは優希で、サポーターとして、まずは咲と和、行ってくれるかしら」
咲「あ、はい!」
和「まかせて下さい」
久「優希が油断して余裕ブッこいたり、逆に余計に食べ過ぎたりしないように見てあげてね。 それと優希、あなた一回戦でアゴを痛めたこと覚えてるわよね? 太巻きはそこまで食べにくくはないと思うけど、気をつけるのよ」
優希「もちろんだじぇ。 同じテツは踏まないじょ!」
~チョモランマチーム~
恭子「海鮮太巻きか… 海鮮物苦手の穏乃ちゃんはナシとして、誰が行く…?」
洋榎「向こうは多分片岡が出てくるやろな。 ここはやっぱりキヌか? 今まで、スイーツ勝負以外ではキヌは片岡に負けてないんやからな。 どや? キヌ」
絹恵「うーん・・・」
絹恵は1対1なら誰にも負けないつもりでいたが、優希があの大口で太巻きを吸い込んでいく様を想像すると、さすがに少し怖くなってきた。
洋榎「キヌは予選で握り寿司3.6kgをかなり余裕残して食っとるもんな。 苦手ではないやろ?」
絹恵「うんそうやね、私が行く。 優希ちゃんと決着をつけてくるよ」
恭子「先鋒戦の勝敗はチーム全体の士気を左右するやろうからな… 頼んだで、絹ちゃん」
絹恵「…はい!」
「あのさ、私に行かせてくれねーかな」
恭子「え…? 獅子原、さん?」
洋榎「大丈夫なんか? お前確か… 今までの勝負で片岡を上回っていたことは一度もあらへんよな?」
爽「んー… まあね。 でも速く食べるのはわりと得意だからさ」
揺杏「待てよ爽・・・ スピードなら片岡も相当あるぜ?」
爽「そうだけどさ、25分でのガチ勝負なら私も負けねーと思うんだよな。 あ、そのかわりさ、ソレ、ちょっと貸してくんね?」
恭子「は、何? これ・・・?」
洋榎「そんなもん一体何に使うんや?」
爽「ふふ… 見てのお楽しみだよ… ちょっとトイレ行ってくるから、エントリー私にしといてね」スタスタスタ
PM5:55
はやり『はやっ!☆ 両チームとも、エントリーする選手が決まったみたいだね! ただ今、選手、専属スタッフ、サポーターの子たちが大食いバトルフィールドに入場してきました!☆』
優希「…おぬしが相手か…… 公衆の面前で赤っ恥かかせてやるから覚悟するがいいじぇ…」ズモモモモ・・・
爽「言ってろよ。 太巻きと一緒におめーも料理して食ってやるからさ」ゴオオオオ・・・
優希・爽「「・・・・・・・」」バチバチバチバチ
はやり『にらみ合ってるにらみ合ってるぅ!♪ 二人とも肝が座ってるねぇ! 現在、アリーナの観客席には大勢の大食いファンがつめかけ、ほぼ満席となっています! しかし、こんな大観衆に注目されてるというのに、片岡選手も獅子原選手も全く物怖じしてないっ! さすがはここまで勝ち抜いてきた食闘士だねっ!☆』
セーラ「おーうお前らしっかり食えよー!」
いちご「これはすごい闘いになりそうなんじゃー!」
美幸「私もあそこに座りたかったよ、もー!」
煌「私たちを魅了してくれる、すばらな食べっぷりを見せて欲しいですね!」
はやり『おやおや、観客席に、ここまでの試合で負けちゃった子たちの姿がチラホラ見えるねぇ。 みんなよっぽどヒマなんだねぇっ!☆』
はやり『その観客席の上部には、試合の様子を映し出す巨大モニターが設置してありますっ!☆ このバトルフィールドには複数のカメラが設置されていて、選手たちを真正面、真上、真横、ななめ上など様々な角度からバッチリとらえて、あの大画面にリアルタイムで映し出すってわけだよっ!☆』
憧「インハイの麻雀試合会場に似てるわね」
穏乃「そうだね、つくりも雰囲気もそっくりだ」
灼「雀卓が食卓になって…、麻雀の代わりに大食いをやるってわけだね…」
はやり『さあ、今、試合直前の選手の表情が… んん? は、はやややややぁ?』
モニター画面の方に振り返ったはやりは珍しく顔をこわばらせた。 その画面には、食卓に着席した獅子原爽の顔が大映しにされていた。
そして・・・ その、爽の鼻の穴から、まるでひじきのような鼻毛が飛び出していたのである。
はやり『え、あ、い・・・? ぶっ ぶぁっははははははははははぁぁっっ!!ww 獅子原さん! あんた鼻毛出てるよっ!』
爽「?!!」
はやり『すごいすごーいっ!☆ 獅子原選手! そのかわいらしい鼻孔から毛糸みたいに太い鼻毛をとび出させていますっ! さっすがー!☆ 公衆の面前でバッチリ鼻毛見せてくれるなんて、北海道の豪傑はやっぱり一味ちがうんだねーっ!ww☆』
のよりん「ゴーモーッ!!」プンスコ=3
爽「うるせーな。 わざと出してんだよ。 イケてんだろ? この鼻毛の出具合い。 なあ片岡?」
優希「じぇ…」
成香「あ、あわわわわ・・・ 爽さん・・・」
誓子「成香! 私ダッシュで鼻毛切りバサミ持ってくるから、あのバカの口を塞いどいてぇ!」スタタタッ
はやり『チームメイトの本内さんと桧森さん大慌て! これは意外と、サポーターの子たち大変かもしれないねっ!☆』
揺杏「あいつ… また一つ伝説つくりやがったな……」
由暉子「・・・・」
久「…ある意味一番ヤバい人が相手になっちゃったわね…」
まこ「優希の奴、あやつのペースに飲まれなきゃええがのう…」
PM5:57
~スタジオ・実況室~
みさき「シャイニングチームの方からは片岡優希選手、チョモランマチームの方からは獅子原爽選手が先鋒戦にエントリーしました。 三宅さん、この対戦カードはどう見られますか?」
三宅「そうですね… 予選から3回戦まで、全ての試合の映像を見させてもらいましたが、両方ともかなりスピードのある選手ですよね。 多分、ほぼ互角の闘いになるんじゃないでしょうか」
みさき「そうですか。 しかし、ここまで獅子原選手は片岡選手を上回ったことは食材の違った予選以外では一度もありませんよ? これは“片岡有利”という声も多いようですが・・・」
三宅「うーん… 実は私も、地力は片岡選手の方が上なんじゃないかと思ってるんですけど、獅子原選手は、予選で握り寿司3kgを15分足らずで食べていますからね…」
三宅「“寿司3kg15分”というのは、明らかに常人のレベルを超えています。 あの時の爆発力を見せれば、獅子原選手にも勝機があると思いますよ」
PM5:58
~試合会場~
はやり『獅子原選手の鼻毛もカット終了!☆ 今、専属スタッフによって、黒光りする見事な太巻きがお寿司用の木ゲタにのせられて運ばれてきましたっ!』
はやり『この太巻き、直径5cmで長さは14cm、重量は一本250gありますっ! これを、選手たちには基本手づかみでかぶりついて食べてもらうよっ!☆』
はやり『一応、キッチンバサミとおはしも用意してあるけど、カットは自分でやってね! 太巻きが崩れたりしても、全部きれいに食べなきゃいけないからそこは注意するんだゾッ!☆』
はやり『つけ合わせとして赤皿貝のおみそ汁もつくけど、これは食べても記録には関係ないからねっ☆』
はやり『であでわ、解説の野依プロ! この先鋒戦の見所は、どのあたりかなぁっ?』
のよりん「・・・ ぜ ん ぶっ !!」プンスコリン=3=3
はやり『だよねっ!☆ よっし! バトルフィールドでは両選手ともに制服の袖をまくりあげ、やる気マンマン! いよいよ先鋒戦、はっじめちゃうよぉっ!!☆』
はやり『みんなぁ! “最高の大食い”を見たいかぁ―――っ?』
一同「「「「「「「オオオォォォ―――――――――ッッ!!!」」」」」」」
はやり『長野のメガ・マウス・モンスター“片岡優希”!』
はやり『北海道の荒ぶる大食いライオン“獅子原爽”!』
はやり『ここは天下分け目の関ヶ原! みちのく岩手太巻きの乱!! 究極の大食いデュエルをここに開始しちゃうぞおっ! 勝つのは一体どっちなんだぁっ!』
はやり『でわ! 全国高等学校大食い選手権準決勝! “決闘! みちのく岩手郷土料理五番勝負ッッ!!”』
はやり『“シャイニング・スターズ”VS“キング・チョモランマ・キッカーズ”・・・!!』
はやり『25分でイッちゃうよぉっ!☆ 先鋒戦! “かぶりつけ! 極上海鮮太巻き勝負”・・・・!!』
はやり『…いよおぉぉ―――――――いっっっ!!!……』
一同「「「「「「「・・・・・!!!」」」」」」」ゴクッ
はやり『ッスッタァァ―――――――トゥオオオオオォォ―――――ッッッ!!!☆ だよっ!』ハヤッ
タイコ「 ドドーン!! 」
優希・爽「「 い た だ き ま す !! 」」バチンッ!
はやり『食欲で地球を揺らせぇっ!☆ 女子高生たちよぉぉっっ!!』
PM6:00(試合開始0分)
優希・爽「「 いただきます!! 」」バチンッ
はやり『ついに始まりましたぁっ!☆ 片岡選手、獅子原選手ともに腕まくりして喜色満面! 木ゲタの上の一本目の太巻きをガッシとつかみましたっ!』
はやり『そして小皿の醤油をチョンチョンとつけて、口に運びま… うひゃあああっ?!』
優希「・・・・」ンアーッ
優希がその巨大食料吸引口の封印を解除し、まるで異次元への入り口を広げるかのように、口を左右上下に開く・・・
一瞬、優希の口内の様子が大画面に大映しにされ、観客席から「ヒッ!」という悲鳴があがった。
・・・グァバッ チィヨオオォッッ!!=3=3
はやり『どぅっへええぇっ!』
優希「…んぐ、はぐっ んにゅむにゅまにゅ……」モグモグモグ
はやり『はやややぁ? 片岡選手、まるでパックマンみたいに口を開けたかと思ったら、ものすごい勢いで太巻きにかじりつきましたぁっ!☆ 一口で太巻きの1/3… いや、半分近くが消滅したかな? まったくなんてお口だYO!!』
優希「まにゅもにゅふにゅふにゅ・・・ …んんんぅ! ううう うっまいっっじぇえええええええ―――っっっ!!!」キュンキュンキュイウィーン
はやり『でっしょでしょでしょーっっ!!☆ この太巻き、中身はマグロ、秋サケ、海老、イタヤ貝、カワハギ、数の子、きゅうり、厚焼き玉子、大葉、と超具沢山! これらの具と酢飯と海苔がお口の中でトロけて、絶妙のハーモニーを奏でちゃうんだぞっ!☆』
優希「あふぃええ・・・ うますぎるじぇ・・・」トローン
はやり『片岡さん本当に幸せそうに食べるねぇっ!☆ さてさて、対する獅子原さんはどーかな~? ん? ムムムム・・・??』
爽「………」ハムハムハムハムハムハム
はやり『…こりゃまたヘンな食べ方してるねぇっ☆ 獅子原選手、太巻きを口に対して少しななめにして… まるで横笛を吹くようなかんじで両手で持って、クルクル回転させながら食べてますっ!』
優希「んばっくうっ! んぐんぐ、もっしゃもっしゃ・・・」=3
はやり『片岡さんは大口を開けてのバキューム食い… それに対して、獅子原さんは太巻きを回しながらのトルネード食い… 獅子原さんって咬筋力すごいから、バックバック食べるのかと思ってたけど違うんだね。 ねえ獅子原さん、なんでそんな食べ方してるの?☆』
爽「・・・口の中にたくさん入れると私は噛みづらいんで… こまめに少しずつ口に入れて、噛んですぐ落とすかんじですね」ハムハム
はやり『ふーん…? でも回さなくても良くない?』
優希「おかわりだじぇえっ!」スターン!
はやり『オッ! 先に一個目完食は片岡選手! えーっと、1分20秒で1本食べたね。さすがに速いね! 長さ14cmもある太巻きをモノともしません!』
パチパチパチパチパチパチ カタオカサンファイトー! ソノチョウシデスヨー!
はやり『シャイニングチームの方から拍手と歓声があがりますっ!☆』
胡桃「はい、片岡さん2本目。 ちゃんとしっかり噛んで食べるんだよ」トン
豊音「片岡さーん、赤皿貝のお味噌汁も持ってきたよー!」ホワアアン
優希「おおう? なんだこの得も言われぬ香りは・・・!」
優希「…ずっず、ずうっずぅ……」=3
優希「!? ほひぃっ!」
優希「んっまいじぇえぇっ! このみそ汁うますぎだじぇえっっ!!」=3=3
はやり『そりゃそうだよっ! 三陸海岸の漁師さんイチオシの高級赤皿貝でダシをとったおみそ汁だからねっ! そんじょそこらの凡百のミソ汁とはワケがちがうよっ!☆』
はやり『赤皿貝は見た目ホタテにそっくりなんだけど、味もうま味もホタテを凌ぐと言われてるんだぞっ! 太巻きは少し冷た目の食材だから、お腹を冷やさないように時々みそ汁で体を温めてねっ!☆』
優希「あひぃ・・・ このミソ汁と太巻きの相性は最高だじょっ! これはイイじぇえっ! この試合は当たりだじょおっっ!!」=3
爽「おかわり下さーい」タンッ
はやり『おっと! 獅子原選手も一本目完食! 15秒くらい遅れちゃったかな? でもそれでもかなり速いねっ!』
パチパチパチパチパチパチ シシハラアセランデエエデー シッカリツイテケー!
はやり『チョモランマチームの方からも拍手と激励の言葉!☆ はやや! それに対して、獅子原選手食べながら左手を上げて親指を立てて応えます! 何気取ってんでしょうかねえっ!』
~スタジオ実況室~
みさき「両選手とも一本目を完食しました。 三宅さん、序盤の立ち上がりはいかがでしょうか?」
三宅「はい、食べ方がとても対照的ですね・・・ それにしても片岡選手は、ホントに口がおっきぃですねぇ。 口腔内もかなり広いみたいですね」
みさき「口腔内?」
三宅「直径が5cmもある太巻きを真正面から思い切りほおばったら、普通の人は口の中がパンパンになっちゃって舌が動かせなくなります。 でも片岡選手は全く問題なく咀嚼してるみたいですね… アレはかなりのアドバンテージになりますよ」
みさき「獅子原選手のあの独特の食べ方は…?」
三宅「あれは、串物とか、棒状の物の大食いでたまに見ることのできる“トルネード&ハムスター食い”です」
みさき「トルネード&ハムスター・・・?」
三宅「えっとですね、ハムスター食いは、大口でほおばって食べるのの真逆の食べ方です。 ハムスターというよりか、キツツキがつっつくようなかんじでこまめに食材をかじり取っていくんです」
三宅「たとえば、イカとかタコの丸焼きとか、弾力のある物を大食いする際、大きくかじりついて食べると咀嚼するのに手間取ってしまいます。 そして唾液も余計に分泌されて、時間も体力も浪費して満腹中枢も刺激されて、なかなか食べ進められなくなっちゃうんです」
三宅「そういったことを防ぐために、ハムスター食いは、サッとかじってサッと咀嚼してサッと飲み込む、というのをテンポ良く繰り返して食べるわけです。 ま、私は普段はやらないですけどね」
みさき「なるほど… では、手で回転させているのはなぜでしょうか?」
三宅「アレはですね・・・ 頭を動かさずに、食材を常に噛みやすい位置に動かしているんです」
三宅「あの太巻き… 食べてみれば分かりますが、あんな風にかぶりついて食べるには、普通、外側から海苔を2枚同時に噛みちぎらないといけません。
海苔はパリパリに乾燥していればわりと簡単にサクッと噛み切れますけど、少し湿ると弾力…というか少し粘りが出てくるんですよね」
三宅「それを2枚同時となると、なかなか噛み切れずに何度もアゴを動かしたり、引っ張ったりしなくちゃいけなくなります」
三宅「獅子原選手は、太巻きを回転させて常にななめに噛み切ることで、海苔がダブルにならないようにしています。 あれなら、太巻きでもけっこうサクサクスムーズに噛み切っていきやすいと思いますよ」
~試合会場~
優希「おかわりだじぇいっ!」=3
はやり『またもや片岡選手の元気のいい声!☆ 早くも3本目の太巻きに入りますね。 時間は2分50秒! 大画面下の皿数計数表インジケーターに、“2”の数が表示されましたっ!』
爽「おーい片岡、もう少しゆっくり食べてもいいんだぜ?」ハムハム
優希「……ふんっ、私を惑わそうとしてもムダだじぇ! そっちこそ、勝てないと分かったらサッサとリタイアしていいんだじょ?」フフン
はやり『獅子原選手、早速言葉攻めだっ!☆ でもでも! 片岡選手、そんな獅子原選手を鼻で笑って、全く相手にせず食べ進めます!』
咲「優希ちゃんその調子だよ。 頑張ってね!」コポコポコポ
優希「おうまかせろっ! むふふ・・・ 咲ちゃんにお茶をついでもらえるなんて、なんかエラくなったみたいだじょ!」
和「優希、アゴを痛めることがないように気をつけるんですよ」
優希「はんむっ! むぐまぐまっちょむっちゅ」=3
はやり『いやあ・・・ ほんとにまあ、見とれちゃうほどおっきいお口だねぇー… それにしても! 片岡さんって意外と食べてるところセクシーだね! ツヤツヤと黒光りしてる、おっきくて長くてふと~いアレを、口いっぱいにほおばる様は… まるで、まるで・・・!☆///』ハアハアハア
のよりん「シィャラップはやり! ハレンチ!!///」フロントチョーク=3=3
はやり『あひっ?! ちょ、ちょっと理沙ちゃん首はやめ・・・ あばっ もげじゅふぁぎfgtyr@#>&$ま*”¥!!』=3=3
胡桃「うるさいそこ! 食べてるとこでプロレスしない!!」
豊音「わっ! 危ないよ―!!」
和「の、野依プロ落ち着いて下さい!」
誓子「ちょ、ちょっと放し… わっ な、なんですかこのバカ力!?」
洋榎「何をやっとるんやあいつらは…」
由子「スタッフとサポーターの子たちが必死に止めに入ってるのよー・・・」
爽「ったくさわがしーな、ほらおかわりですよ」タン
はやり『ハアハア・・・ 絞め落とされるとこだったよ・・・ えーっと、獅子原さんも3本目の太巻きに入ったね! 時間は4分ジャスト! さらに遅れたねえ… って、これは片岡さんが速過ぎるんだね』
はやり『二人とも速いけど、木ゲタには米粒一つ残さずにキレーに食べてるね! さすがはここまで残ってきた食闘士だよっ! よしよし!☆』
はやり『さーて、そんじゃお味の方についてもコメントもらっちゃおうかな?☆ 片岡さんどーよこのFUTOMAKIは!』
優希「マグロとサケに脂がたっぷりノッててタマらんじょおっ! 美味しすぎて死にそうだじぇっ!」マグムグ
はやり『なるほどぉっ! 獅子原さんはぁ?』
爽「ヤバいです。 美味しすぎてもらしそうです」ハムハム
はやり『・・・ちょっと桧森しゃん! おまるだYO! おまる買ってこないとまずいよこれはぁっ!☆』
優希「おっかわりだじょおっ!♪」
はやり『速い速い片岡選手! 獅子原選手もかなり速く食べてるけど、とにかくこの小型大食いロケットKATAOKAの勢いがすごすぎますっ! 開始4分35秒、ついに4本目の太巻きに突入!』
はやり『ここまで大体1分半で1本のペースで食べてるってことだよね? このままイッたら、終了時には4kgの太巻きを食べることになっちゃうよ!』
優希「はんぐっ! まぐもぐ もっちょむっちゅぅ!」
爽「ハムハムがつがつ! ハグもしゃハムハム!」
はやり『二人とも完全に本気出してるねぇっ!☆ まるで早送りしてるみたいな食べ方になってるよっ! 試合はまもなく開始5分ん! 25分間の太巻きスピード対決!! 生粋のスピードファイター同士の意地と意地がぶつかり合いますっ!!☆』
<5分経過時点完食皿数>
優希(シャイニング) 3皿・750g
爽(チョモランマ) 2皿・500g
開始5分
~シャイニング応援席~
菫「さすがは片岡だな。あの獅子原相手にどんどん差をつけていく」
照「片岡さんの“のど力”は本当にハンパないからね。 完全に魔物級」
久「太巻きってごはんが圧縮されてるし、具にも弾力があるのがあるみたいだから心配したけど、アゴへの負担もそこまでじゃないみたいね」
初美「片岡さんもなかなかやりますねー。 ま、はるるの前座にはちょうどいいんじゃないですかー?」
春「……」ポリポリポリ
巴「春ちゃん… そろそろ黒糖やめとこうよ…」
~チョモランマ応援席~
洋榎「・・・やっぱり少し差がついてきたな。 恭子、ぶっちゃけ獅子原に勝ち目はあるんか?」
恭子「うーん… 獅子原さんは、予選では確かに尋常じゃない速さで3kgの握り寿司を15分足らずで食べてますが、そのあとは駅弁3.2kgを44分23秒… スイーツは45分いっぱいかけて約3.5kg… ラーメンも45分で約3.5kg… やはり数字だけ見ると片岡には見劣りしますね」
憧「でも… 駅弁勝負の中盤戦は、小鍛治プロが『獅子原選手が圧倒的に強かった』って話してましたよ?」
洋榎「あれは、周りがタコやイカの弾力に手こずっとっただけやろ? ここでもあの咬筋力の強さを生かせるなら、もっと速く食えるやろ」
憧「…そうですね」
恭子「いやでも、時間は25分やからな。 獅子原にも勝機はあると思いますよ。 私の計算では、そろそろ、片岡は・・・」
開始7分
~バトルフィールド~
優希「はい! おかわりだじぇ!」
はやり『長野の大食いロケット、太巻き5本目に突入!☆ 20秒くらい前に獅子原さんが4本目に入ったばかりだから、1本近くの差をつけたけど・・・ さすがに、スタート時よりはスピード落ちてきたみたいだね』
はやり『どーお片岡さん、ちょっとあきてきた?』
優希「…ん? いや、まだまだおいしいじょ。 …でも、ちょっとタコスが食べたくなってきたじぇ」ムグムグ
はやり『ふーん、はやりは実況すんのあきてきたなぁーっ! なんか関係ない質問しよーっと☆ ねえ、片岡さんって彼女いるの?』
優希「ファ!!?」
はやり『ほらほら、テレビ見てる人は、選手の日常にもキョーミがあるからさぁっ!☆』
優希「・・・このミラクル美少女優希サマをつかまえて何を言ってるんだじぇ… 彼女にも彼氏にも全く困ってないじょっ! そこにいるのどちゃんも私のワイフの一人だじぇ」
はやり『なぬ? そなの?』ハヤッ
和「断じて違います。 SOA」
はやり『片岡さーん? 真っ向否定されてるけど』
優希「むっふふふ… のどちゃんは照れてるだけだじょ… 今日も、朝のアイサツであの豊満なのどっぱいを揉んでやったんだじょ?」ワキワキ
和「ゆ、優希…!///」
はやり『へーっ!☆ いいねっ! 青春してるねぇ! 獅子原さんはそこんとこどんなかんじなのよ?』
爽「彼女なら今20人くらいいますよ。 あっ、なんだったらはやりさんも私のハーレムに入ります? 入ればもれなく私のこのゴールドフィンガーを味わえ・・・」ワキワキワキ
はやり『フン!』ドゴムッ
爽「ばべふっ!?」=3
はやり『チョーシこいてんじゃないよーん!☆ はやりの天然記念物おもちをさわろうなんて100億光年早いYO!!』
~スタジオ実況室~
みさき「片岡選手、獅子原選手にまるまる一本近くの差をつけたようですね」
三宅「私もそうなんですけど、モグモグ、片岡選手は生粋の先行逃げ切りタイプみたいですから… ムグマグモグ、逆に、序盤でもしある程度のリードをつくれなかったら、モグマグモッキュ、勝つのが大変難しくなりますよ、モギュモギュバクバク」
みさき「なるほど… しかしその片岡選手も、ペースが若干落ちてきたようです」
三宅「先行逃げ切りタイプは、やっぱりスタートダッシュの1~3皿目あたりが一番速いですね。 いくら胃袋に余裕があっても、単品勝負では最初が一番“美味しい”ですから、序盤が必然的に速くなります。
そのあとは、やはり少しずつ“飽き”が入ってきますから、ペースは落ちるのが自然なんです」
三宅「ですから、このあとの中盤、終盤を、ペースをさほど落とさずに食べていければ… 片岡選手の勝率はグンと上がると思いますよ」
みさき「そうですか… あれ? ここにあった試食用の太巻き3本… あれ、あれ、どこに行ったんでしょう??」
三宅「え? 私もう食べちゃいましたよ。 おかわりはまだですか?」
みさき「は?!」
みさき「・・・中盤、終盤で、獅子原選手が片岡選手をまくることができるかどうか…が、見所となりそうですね」
三宅「はい・・・ モグモグ、でも、なんか獅子原選手・・・ さっきからどうも、ハムアム、マッギュモグ、様子がおかしいんですよね・・・ムグモッシュモギュマグモギュモギュ…」
みさき「…え?」
~バトルフィールド~
この時・・・ 爽のわずかな異変に最も早く気付いていたのは、三宅ではなく、側で見ていた桧森誓子であった。
爽「はむはむ、もっしゅむっしゅ…はぐもぐっ!」ハアハアハア
誓子「……」
誓子(…爽、なんかヘンね… 額から脂汗が滲んで、全然おさまらない… さっきはやりさんにみぞおちにワンパンもらったせいだと思ってたけど、それだけじゃないみたい… 熱い食材でもないのに、どうしたのかしら…?)
爽「…おかわり下さい」タン
はやり『獅子原選手も4皿完食で5本目に突入!☆』
優希「おかわりだじょっ!」タン
はやり『おっとでも、片岡選手はその5本目を食べ終わって6本目に入りました! 今ちょうど差が一皿分になってるね。 でも、二人ともやっぱ少~しペース落ちてきてるねっ! ほらほらガンバレッ!!♪』
<10分経過時点完食皿数>
片岡優希(シャイニング) 5皿・1250g
獅子原爽(チョモランマ) 4皿・1000g
開始10分
シシハラサンファイトォーッ! ユウキ! コッカラガショウブジャゾーッ!
スバラデス! フタリトモガンバッテクダサーイ! モー! ワタシモオナカスイテキタヨー!!
はやり『それなりに盛り上がっております全国高等学校大食い選手権の準決勝先鋒戦太巻き勝負! さーて時間はただ今開始10分を過ぎましたねっ! 早いもんで試合時間はあと15分しかないわけですねっ!☆』
はやり『今んとこシャイニングチームの片岡選手が獅子原選手相手にちょうど1皿差、つまり約250gの差をつけて食べ進めています!☆ 野依プロ! ここからの展開はどー見られますかぁ?』
のよりん「Σ!? ……ッ!!」=3
はやり『理沙ちゃんはこのあと試合どーなると思う?』
のよりん「…シ、シ、シ……!」プルプル=3=3
はやり『シ? オシッコなら別に行ってきてもいいよ?☆』
のよりん「シシハラ! 獅子原なんかヘン!!」プンスコ=3=3
はやり『え? あの子は別にいつでも変・・・ って、あれれ?』
誓子「……」アセフキフキ
はやり『はやや? 桧森さんどうしたの?☆』
誓子「いや、その… なんだかこの人やたら汗かき始めたので、ちょっと拭いてあげてるんですけど…」
爽「ハムハムマグモグッ…!」ハアハアアセアセ
はやり『あれ、本当だね。 獅子原さんなんなのその汗?』
爽「・・・すいませんちょっと放っといてもらえますか」ハアハア=3
はやり『!! わかった! エッチなこと考えてコーフンしてそんな汗かいてんでしょっ!☆ もーう困った子だねっ!』
爽「ち、ちがいますよ…」ハアハア
優希「………」
優希は、爽のかいている不自然な汗には見覚えがあった。 そう・・・ 今までの過酷な大食いバトルの中で、ライバルたちが終盤になるとかいていたあの汗である。
優希(あれは… 満腹が近づくと、暑くなくても出てくる変な汗だじぇ…)
優希(…でもそれはおかしいじょ…… 1kgかそこらで、コイツが満腹になるワケないじょ…?)
優希(もしかして… どこか体調が悪いのか?)
~シャイニングチーム応援席~
照「・・・獅子原さんどうしたんだろう、なんであんな汗かいてるのかな」
久「体の調子がどこか悪いのかしら」
憩「呼ばれた気がしましたよ~ぅ」ニュッ
照「憩… 別に呼んでないよ」
憩「ツレないこと言わんといてやー。 うちにもちょっとしゃべらせてーなぁ」
憩「獅子原さんのかいてる汗は、暑い時に体温調節のために出る『温熱性発汗』とは違う汗かもしれへんな」
久「…いわゆる“冷や汗”かしら」
憩「そや。 みんなも、緊張した時や怖い時なんかに冷や汗が出た経験はあるやろーぅ? 医学的にはそれは『精神性発汗』ゆうて、温熱性とは発汗のメカニズムが違うんや。 そして、精神性発汗は、低血糖症とか血流の滞りなんかの体の不調によっても引き起こされるんやで」
照「獅子原さんの汗も体調不良が原因なのかな」
憩「気温が高いわけでもないし、熱い食材を食べとるわけでもないんやから、冷や汗の可能性は高いと思うで。 精神性発汗は、体や心に何らかのストレスが加えられた時に、自律神経が身を守ろうとして起こす生体反応なんや」
憩「緊張や恐怖といった精神的な苦痛だけでなく、体の痛みや、過剰な満腹感や胸焼けなんかも、冷や汗を引き起こすストレスになるんや」
久「…いくらなんでもこんな序盤で満腹になるわけないわよね…… のどにつまったとか、胸焼けとか、あるいはやっぱり食事とは関係のない体の不調があるのかもしれないわね」
憩「そやね。 今は大汗かきながらもまだ元気に食べとるでええけど、あれ以上おかしな症状が進行したら、うちはリタイア進めに行かなあかんね」
久(…ふふふ…… もしそうなれば、優希の体力を温存したまま楽に一勝を取れるわ…)クククククww
~スタジオ実況室~
爽『むぐっ… あぐっ… ハムハムアムハム…』ハアハアハア=3
みさき「・・・獅子原選手の様子がどうもおかしいですね。 苦しそうに、汗をかき始めましたが、これは…?」
三宅「うーんヘンですねえ。 満腹に近くなると、熱い食材じゃなくてもあんな風に汗をかく事はありますけど…」
みさき「準決勝まで来ている大食い戦士が、これくらいで満腹にはなりませんよね」
三宅「そうですね。 もしかしたら、太巻きの中に獅子原選手の“苦手な食材”が入っているのかもしれませんね」
みさき「苦手な食材?」
三宅「想像してみて下さい。 嫌いで嫌いで仕方がない食べ物を、無理に食べ続けることを・・・ それをやると、体や脳に負荷がかかって、暑くもないのに汗が吹き出してくることがあるんです」
みさき「はあ、なるほど…」
三宅「もし苦手な食材とか、体調の不良といったことがあの汗の原因なら、獅子原選手は、食べるのをやめた方がいいかもしれませんね。 ここは勝ちをあきらめて無理をせず体力を温存し、2回目の大食いにかけた方がいいかもしれません」
~バトルフィールド~
優希「おかわりだじぇ」タン
はやり『片岡選手6皿目完食!☆ まずは太巻き1.5kgを胃袋に収めました! …でも今の6個目食べきるのに3分近く時間かかってるねぇ』
爽「…おかわりっす」ハアハアハア
はやり『獅子原選手はここで5皿目完食! 片岡さんのペースが落ちてきてるから、ここ追い上げるチャンスなんだけどなー☆ 獅子原さんもペース下がってきちゃったねぇ。 大汗かきながら、必死に片岡さんに喰らいついてるかんじです』
のよりん「汗! すごい! ナニコレ!!」ペタペタ
爽「さ、さわらんで下さい!」ハアハアダラダラ
優希「……」モキュモキュモキュ・・・
優希「有珠山の… おぬしどこか体調が悪いのか…?」
爽「…あ? なんのこと?」ハアハア
優希「隠しても無駄だじぇ。 …しかし、ここは非常なる勝負の場・・・ 情けはかけないじょ。 ここで引導を渡してやるじぇ…」ゴソゴソ
はやり『はや? 片岡選手、自分のリュックから、何やら2本のペットボトルを取り出しました!☆』
洋榎「お・・・ あれは・・・!?」
恭子「くそっ、やっぱり出してきましたね…」
優希が取り出したペットボトル・・・ 1リットルの大きい方には半透明の液体・・・ そして500mlの小さい方には、オレンジ色の妖しげな粉末・・・
はやり『あ、それ先週使ってたやつだねっ! たしか・・・』
優希「むふふっ そうだじぇ… この優希サマの秘密兵器・・・」ゴゴゴゴゴ・・・
優希「“タコスジュース”だじぇっ!!」
優希「…」コポコポコポ
はやり『えーっとそれ、タコスをフリーズドライ加工した物なんだよね? それをミロみたいにコップに入れて、上からスポーツドリンク・・・ うわっグロッ! 変なオレンジ色ー!!☆』=3
優希「…タコスの偉大さが分からぬとは、あわれな奴だじぇ……」クルクルクル
はやり『タコスジュースをはしで攪拌して・・・』
優希「むふ… 有珠山の… 闇のうつつを見せてやるじぇ・・・」
爽「……」
優希「 ぐびっ ぐびっ ぐびっ ぐびっ…!」ゴクゴクゴク
はやり『コップ一杯を一気に飲み干しちゃったよっ!!☆』
優希「ぷっはああああああぁぁっっ!!」トンッ
優希「うむぅぅぅ・・・・・・・!!」ドクン、ドクン、ドクン、ドクンッ・・・・!
はやり『はやややや・・・?』
優希「ッムアアアッ!!」ギンッ!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリッッッ!!
一同「「「「「「「!??」」」」」」」
プッシュウウウウウウウウウウウゥゥ~~~~~ッッ・・・・・!!!
優希「・・・タコス・フルフィルメント・コンプリート・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
優希「タコスぢから充填完了ォォ!! 食っべるじょおおおっっ!!」ブワアアッ!
優希「むっはああああああああああぁぁぁぁっっっ!!!」ガッ
優希「BAKKKUUUUUU!! MAGUMOGU! HAGUHAGU MANYUMONYUMUNYUNYUNYUNYUNYUNYUNYUUUUUUUUU!!!」=3=3
はやり『うっひゃああああっっ!!☆ 長野の大食いロケットついにその本領を発揮ィ! 胃袋に火をつけて怪獣のように食べ始めましたぁぁっっ!!』
爽「……」
洋榎「・・・えーっと、次鋒以降で3勝するための作戦考えとこか…」
恭子「そうですね…」
優希「おっかわりだじぇえええええいぃっっ!!」スターンッ!
はやり『キタキタキタ!☆ 片岡選手7皿目を完食ぅ! ここに来てまた最初と同じ… いや、それ以上のスピードで食べ始めましたよぉっ!☆』
和(優希が本気を出し始めましたね… 3皿くらい差がついたら、2回目の大食いのためにも、いったん止めてあげた方がいいですね…)
爽「はぐもぐっ ハムアム・・・」アセダラダラ
誓子(爽・・・ あなた、もしかしてその汗って・・・・)
<15分経過時点完食皿数>
片岡優希(シャイニング) 7皿・1750g
獅子原爽(チョモランマ) 5皿・1250g
開始15分
「「「「「「 ゆーうーきぃ! ゆーうーきぃ! ゆーうーきぃ! ゆーうーきぃっ! 」」」」」」パンッ パンッ パンッ パンッ!
はやり『シャイニングチームから沸き起こるゆーきコール!☆ 声援を追い風にして、長野の人間ポンプがGANGAN太巻きを吸い込んでいきますっっ!!』
優希「にゃはは、なんか気持ちいいじぇえww」ムシャムシャマニュモニュ
爽「はむあむ、 ハアハア… むっぐあっぐ、 ハアハアハア…」アセダラダラ
はやり『一方、獅子原選手は顔から大量の汗を滴らせながら、眉間にシワを寄せ、かなり苦しそうに太巻きをかじってるね! チョモランマチーム、先ほどまでは声援を送っていたけど、今や押し黙って完全にお通夜モード!☆ “は~あ、なんであんな奴先鋒にしたんだろ?”ていう空気が漂ってるのが見えるようだぞっ!♪』
爽「ああくっそ・・・、 キッツ・・・!」ハアハアムシャモシャ
優希「ふふん、そろそろあきらめた方がいいじょ! もうおぬしに勝ち目はないじぇ!ww」ガツガツムッシャバック
はやり『片岡選手いいねぇ!☆ もうちょいで2kgに到達するというのに、満面の笑顔でおいしそーに食べてます! でも獅子原選手の方は、小首をかしげ、“こんなはずじゃねーのにな”って顔で、にっちもさっちもいかない様子! 獅子原さんには、あのかわいい片岡さんの笑顔が恐ろしいデビル・フェイスに見えるかもねっ!☆』
~スタジオ実況室~
みさき「片岡選手が、再び凄まじい勢いで食べ始めました… 差がどんどん開いていってますね」
三宅「・・・すごいスパートですねえ。 私もいろんなバケモノのような選手を見てきましたが、あんなデタラメなペースアップはあまり見たことないですね。 現在、現役世界最強とも言われているアメリカの大食い異次元女王、モリー・スカイラー選手のスパートを彷彿とさせます」
みさき「あの妖しげなオレンジ色のドリンクを飲んでから、突如人が変わったように勢いづきましたが…?」
三宅「自分オリジナルのドリンクを用意してくる選手はけっこういますけどね… リンゴジュースとか、ミルクティーとか、自分で調合した砂糖水とか… そんなモノをあおりながら鬼食いをするお化けのような人間が実在するんですけど、片岡選手も、見た目の可憐さとは裏腹に中身は完全にモンスターみたいですね」
みさき「…もはや勝負は決した、という空気が現場では流れているようですが……」
三宅「そうですね… 獅子原選手は、あの汗だけでなく、前傾姿勢でヒジをついて食べるようになったことや、咀嚼回数やお茶を口に運ぶ回数が増えていることや表情など、限界が近い時の兆候がいろいろ現れていますから・・・
アレが演技とはちょっと思えないですし、片岡選手にとんでもないミスでも起きない限りは、このまま勝負が決する可能性が高いと思います」
~バトルフィールド~
優希「おっかわりだじぇえぇいっ!!」スターンッ!
はやり『ヤッチャいましたぁっ!☆ 片岡選手、開始16分05秒で8皿を完食、これでついに2kgに到達だぁっ! 獅子原選手の倍速で食べてるねっ!!☆』
はやり『そんでもって今、完全に2皿以上の差がつきましたね☆ ある程度量がある食材の大食いでは、“2皿差”がついてしまうと、追い抜くのはかなり難しいとされていますっ!』
爽「…おかわり」ハアハア
はやり『獅子原選手、約10秒遅れて、やっと6皿目を完食ぅ! ヒイハア言いながらがんばって食べてるけど、残りもう9分しか時間ないし・・・ こりゃどー見ても無理ゲーだぜっ! 獅子原ァッ!!☆』パヤヤッ
誓子「……」アセフキフキ
はやり『サポーターの桧森さんがかいがいしく獅子原選手の顔の汗を拭いてあげていますが、そのあたたかい友情も、ここまで差が開いてはもはや空しく見えちゃいますねっ!☆』
誓子(爽… あなたやっぱり…これ、“冷や汗”なんかじゃなくって…)フキフキフキ・・・
その時、
爽「うぶっ」ゲホッ!
誓子「?!」
はやり『おっと? 追いつめられた獅子原選手、ちょっとムセちゃったみたいだねっ!☆ 吐き出したりしないように気をつけてよっ!』
爽「ゲホッ、 ゴホッ グホッ・・・」ゲホゲホ
誓子「さ、爽ちょっと大丈夫?」サスサス
咳き込んでいる爽の背中をさする誓子・・・ しかし、
誓子「ん? あれ?」ガサッ ガササッ
誓子の右手に、肌や布とは明らかに違うガサガサとした紙のような感触が伝わってきたのである。
誓子「…爽、あんた、これ……」
爽「…」パチッ
誓子「…!!」
爽は、優希に見られないように、誓子に向かってこっそり片目を閉じてみせた。
幼い頃から一緒にいて、爽のことを最もよく知っている誓子は、この時、爽の考えてることや状況が全て分かった。
誓子(・・・ まったく… 本当に人をおちょくるのが好きな人ね…)ハア
爽(……)
爽(もうちょい… もうちょいだけこのペースだ…)
爽(7分だ… 7分あれば、まだまくれる可能性はある…!)
爽(…これだけヘバッてる演技を見せてきたんだ… どこかで、必ず片岡が気を抜く瞬間が来るはず…)
爽(そこで… 一気にスパートをかける・・・!!)
爽(それまで… それまで、もう少しだけ大人しくしてろよな…?)
爽(私の中の・・・・・)ガルルルルル・・・
優希「はいぃ! おっかわりだっじぇえぇぃっっ!!」スターンッ!
はやり『片岡選手! グロッキーの獅子原選手を尻目に、情け容赦なく木ゲタを積み重ねていきますっ! 17分40秒、ついに9皿目を完食で、両者の差は二皿半にまで広がっちゃいましたぁっ!☆』
和「優希!」
優希「じぇ?」
和「…部長に言われたでしょう。 少しペースを落としましょう。 ここからは、獅子原さんと同じくらいの速さでいいですよ」
優希「…そうだったじぇ…… このあと、2回目の大食いもあるんだったな…」フッ
爽「!!」
爽(…今だっ!!!)カッ!
爽「……」スッ
はやり『はや? 獅子原選手、おもむろに立ち上がって・・・』
爽「・・・ん」プチッ
はやり『…?? ブラウスの下から背中に両手つっこんだかと思ったら、またイスに座りました… …ねえ獅子原さん、今何やったの?』
爽「…服キツイから、ブラのホックをはずしたんですよ…」
はやり『・・・・ えーっと、ごめん、もう一回言ってくれる?』
爽「 ブ ラ ジ ャ ア の ホ ッ ク を は ず し た ん だ よ っ っ ! ! 」ゼッキョウ
誓子「」
成香「」
揺杏「」
由暉子「」
優希「・・・・・」アゼン
はやり『っだっはははははははははははははははぁっっっ!!! キツイからブラをはずしたの? これはオドロキだぁっ! そんなペッタンコのくせにブラなんかつけてたなんて! もーう獅子原さん! はやりをあんまり笑わせないでよっっ!!☆www』ボインボイーン
爽「……」
しかし・・・ この時爽がはずしたものは、ブラのホックだけではなかった。 ここまでずっとおさえこんでいた、自らの体内の猛り狂う獣・・・
それをつなぎ止めていた鎖をも、はずしていたのである。
爽「ふう… ほんじゃまあ、食べますかね」スウウウウ・・・
カッ
優希「!!?」ビクッ
爽「」ハムハムモキュモキュモグモグハムハムガツガツマグマグングングムニュマニュ
はやり『・・・ん? あれ…? 何これ。 獅子原さんが… あれえ? 食べ始めたねえ。 ・・・何これなんでこんな速いの』
爽「おかわり」タンッ
はやり『えっ は…? 太巻き半分くらいあったのに、アッという間に消えた… えーっと? 獅子原選手7皿完食…』
爽「」ハムハムアムハムモキュモッキュガツガツ
優希「・・・?」ポケーッ
和「ゆ、優希! 食べ始めて下さい! ぜ、全力で!!」
優希「じぇ、じぇえ…?」モキュモキュ
はやり『・・・えーっと、ワケ分かんない状況になってきたよっ!☆ もう止まっちゃうんじゃないかと思えた獅子原選手が、突然猛スパート!! それを見て、ちょっと手を止めていた片岡選手も慌てて食べ始めましたが・・・ これ、明らかに獅子原さんのが速いよ?!』
爽「おかわり」トンッ
はやり『え、ええ・・・? 19分25秒、獅子原選手8皿完食! マジかこれ? 今の一本、1分かかってないよ…?』
優希「お、おかわりだじぇ!」タンッ
はやり『片岡選手は10皿完食! んー、でもさっきよりはやっぱペース落ちてきてるね。 少しずつ差をつめられてるねこれ…』
爽「」ハムハムハムハムムグムグモグモグ
優希「じぇ、じぇ・・・? お、おぬし! 体調が悪いんじゃなかったのか? なんなんだじぇその汗は?!」モキュモキュモキュ
爽「…は? これ? まだ分かんねーの? フェイクだよ」ハムハムハム
優希「・・・フェイク?」モキュモキュ
爽「ふん… こういうことだ……よっ!」ガサガサッ バリバリバリッ
ボトボトボトッ ボトォ・・・・
優希「・・・これは・・?」
爽はまたブラウスの下から背中や腹に手をつっこみ、何かをむしり取って、床にバラまいた。
・・・それは、白い“貼るホッカイロ”の袋だった。
<20分経過時点完食皿数>
片岡優希(シャイニング) 10皿・2500g
獅子原爽(チョモランマ) 8皿・2000g
開始20分
爽「ハムハムモキュモキュバクガツアムモニュ!」
優希「アンムバックモッグマッグムッグムッグアングファッック!」=3
はやり『大変なことになってきたよっ!☆ 今、試合時間は残り5分切ったけど、ここに来て両選手のアドレナリンが大噴火!! 凄まじいにらみ合い食いが始まりましたぁっ!』
洋榎「あいつ・・・ 試合前に、漫が買うてきてたホッカイロ貸せなんてゆーから、風邪でもひいとるんかと思ったが・・・」
恭子「相手を油断させるために使ってたみたいですね。 …トイレに行った時に、全部服の下に貼り付けてたんですね……」
爽「おかわり!」タンッ
優希「じぇ!!?」ブッ!
優希「……!」ゴホゴホッ ゴホッ
はやり『終盤に入ってからの、獅子原選手の驚異的な追い上げっ!☆ 開始20分30秒、9皿目を完食ですっ! それを見てビックリしたのか、今度は片岡選手がムセてるよっ!』
和「ゆ、優希大丈夫ですか?」サスサス
咲「優希ちゃん慌てちゃダメだよ…」サスサス
優希「だ、大丈夫だじぇ・・・ ちょ、ちょっとティッシュを貸してくれ…」
優希「」チーン=3
優希「……」ネバー・・・
優希(鼻の穴から米粒が出てきたじょ・・・)
はやり『まったく一体何が起きてるんでしょーかぁ?☆ さすがのはやりももうワケ分かんないよっ! ここは理沙ちゃん! 解説おねがいぃ!☆』
のよりん「Σ! ・・・?! ・・・」プンスコ=3
はやり『獅子原さん猛然と追い上げてきたけど! 今から逆転なんてできるのかなぁ?』
のよりん「…! エ、エルドレッド、エルドレッド… ホーm…!♪」=3
みさき(あああ、瑞原プロ! 理沙ちゃんあんまり追いつめると放送事故になりますよおぉっ!)ハラハラ
はやり『・・・えーっと、理沙ちゃんは確かこの辺に、押すと30秒くらいだけよくしゃべるようになるツボがあるんだよねー…』ゴソゴソ
のよりんの後ろから、背中をまさぐるはやり…
のよりん「な、何する!? エッチ!!」プンスコリン=3
はやり『逃がさないよん♪ エイッ!』ポチッ
のよりん「・・・・あー・・・、 驚きましたね。 獅子原選手、終盤まで体力を温存しながら、スパートをかけるタイミングを見計らっていたようですね。 体調が悪いように見せかけて相手を油断させる作戦だったのでしょう。
ここからは、最後まで集中してミスなく食べ続ける精神力の闘いですね… まだけっこうリードしてますから、残り時間を考えると私は片岡選手の方が若干有利だと思いますが」ペラペラペラ
はやり『ほーうなるほどなるほど、なるほどぉ~☆』
みさき(・・・・・)
優希(……)ムグムグムグ
優希(鼻の通りみちにまだごはんがあるみたいで気持ち悪いじょ…)
優希(それに… アゴがだるくなって… お魚や海苔がうまく噛み千切れなくなってきたじょ…?)ハムアムハム
優希(こ、このままじゃまくられるかもしれないじょ…! ここは…)サッ
はやり『ん…? 片岡選手、テーブルにセットされていたキッチンバサミに手を伸ばしましたね・・・』
和(ゆ、優希…? この終盤で食べ方を変えるのですか…?)
優希「…」ンションショ
はやり『んん~? 片岡選手、輪切りにカットして食べやすくする作戦みたいだねっ!☆』
優希「じぇ、じぇえ・・・? バラバラになってしまったじょ…? このハサミ切れ味が悪すぎるじょっ! 私に対する陰謀か?」=3
はやり『ハサミに当たってんじゃねぇーよ! 片岡さんが不器用すぎるんだよっ!☆』
爽「おかわり」トンッ
はやり『おっと、そうこうしてるうちに獅子原選手ついに10皿目完食! 皿数では並んじゃったよっ! ほらほら片岡さん文句言ってる場合じゃないよ? 食べなきゃ!』
胡桃「片岡さんほらスプーン! バラけたのはこれでかき集めて食べなさい!」
優希「じぇ、じぇえ…」アタフタ
~シャイニングチーム~
まこ「あかん。 優希の奴完全に動揺しとるな…」
久「完全にしてやられたわね・・・ こちらが、相手のペースを見て手をゆるめることまで見通した上で、それを逆手に取られたってことね…」
菫「…しかし、残り時間はもう3分を切ってる。 まだリードしてるんだから、獅子原のことなど気にせずガムシャラに食べれば……」
照「うん… そうだけど、目の前であんな勢いで食べられたら、気にしないわけにいかないよ… 片岡さんは、多分“自分より速く食べる人間”を、今初めて見たんだと思う… アレはプライドも傷つくよ」
~バトルフィールド~
優希「お… おかわりだじぇ!」
はやり『先行している片岡選手11皿を完食ぅ!☆ でも、余計なことやってたせいで遅れたねっ! 時間はあと2分ちょいしかないけど、後ろから猛り狂ったライオンが迫ってきていますっ! このまま逃げ切ることはできるのかなぁ?』
豊音「片岡さん12皿目だよっ! ガンバッて!!」トンッ
優希(んぶ… ちょっとこの太巻きデカくないか?)
淡「片岡さんあとちょっとだよっ! 大丈夫イケるよぉっっ!!」
まこ「優希ぃ! 食べることだけに集中せぇ!」
初美「何やってるですか、負けたら許さないですよー!」
はやり『シャイニングチームから激励の声援が飛びますっ!☆ でもさっきの余裕シャクシャクの声援とは全然ちがうねっ! 殺伐とした雰囲気が漂っちゃってるよっ!』
洋榎「獅子原ァ! 行けるで! 片岡のヤツ泡くっとるでっ!」
穏乃「獅子原さんイッケエエエエエエエエエエエェェッッ!!」=3
由暉子「爽さん抜けますっ! もうちょっとで抜けますよぉっ!!」
はやり『逆にさっきはお通夜モードだったチョモランマチーム!☆ 獅子原選手の追い上げに大コーフン! ガゼン応援にも熱が入ってきたぞぉっ!!』
爽「おかわりっ!」トンッ
はやり『わっ! キチャッたよっ!☆ 獅子原選手も11皿を完食! 差が、15秒…? 20秒くらいまで縮まってるよっ! 残り時間はあと2分切りましたっ! 一体どっちが勝つんだよっ!』
和「優希ぃっ! 獅子原さんもペースは先ほどより落ちてきています。 慌てずに集中して食べるのです!」
優希(・・・・・)ガツガツハムハム
優希(な、何が起きているんだじぇ…? さっきまであんなに差があったのに… どうして私が追いつめられているんだじぇ?)
優希(こ… こんなフザケた奴に私が負けるわけないじょおっ!)ガッ
和「ゆ…優希? 聞いているのですか?」
はやり『さあ、今、大画面では食卓の真上からの二人の映像を映し出していますっ!☆ うーん…? まだちょっとだけ片岡さんが先行してるかな? でも獅子原さんもう少しで追いつきそうだぁっ!』
優希(も、もう少しで追いつかれる…?)ハアハアモグモグ
その時だった。
優希「 アンムッ ハムハムハム… 」
優希「う!?」ングッ!
優希「・・・・・? う…」ゴクゴクゴク
まこ「ん…? ゆ、優希の奴どうしたんじゃ?」
久「急に手を止めてお茶を飲んで… のどにつまったのかしら?」
憩「いや… もしかしたらアレは海苔がのどに“はりついた”のかもしれへんな…」
久「…え?」
優希「・・・??」
優希(の、のどがイガイガして気持ち悪いじょ…?! お茶を飲んでも取れない…)
優希(く…くそっ、もうちょいで食べ終わるのに… 痛くて飲み込むのがスムーズにいかないじょっ!)ングング
爽「… おかわり」トンッ
優希「う!?」
はやり『いっ? つ、ついに抜いたぁっ!☆ 開始24分20秒ォ! ここで初めてチョモランマチームの獅子原選手がリードを奪いましたぁっ!!』
爽「ハグッ アムッ んぐんぐ…」
爽「…」ピタリ
はやり『お…?☆ そして獅子原選手、2口ほど太巻きをかじって、手を止め…ましたね?』
爽「…」ジーッ
はやり『そして… 太巻きを持ったまま、正面の片岡選手をジィーッと見ています…』
優希(…な、なんだじぇ…?)チラッ
爽と優希の視線が食卓の上で交錯する・・・
爽「…」ニタアアア・・・
優希「!?」
はやり『うわあ… 獅子原選手、先行したとたん、手を止めてニタニタ笑ってるよっ! これは… 勝利を確信しての余裕の笑いなのかな?』
優希「・・・」
優希「お、お、お・・・・っ」
優希「 お ん の れ え え え え え え ぇ ぇ ッ ッ ! ! 」ブワアッ ブチブチブチィッ!
はやり『でえっ? 片岡選手の髪が逆立って、左右の髪留めが切れてフッ飛んだよぉっ!』
優希「んぐっ …はぐっ …むぐ、もぐがつっ!」=3
はやり『そして、鬼ばばみたいになって必死に太巻きにかじりつきますが… もう時間がありませんっ! カウントダウン!!』
はやり『 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 … ! 』
タイコ「ドンドンド―――――ン!!」
はやり『終了ですっ!☆』
開始25分(PM6:25)
はやり『先鋒戦しゅうりょ―――うっっ!!☆ って、あれ!?』
優希「」ングアーッ
咲「ダ、ダメ! 優希ちゃん!」ガバッ
和「優希! 終わり! 終わりです! やめなさいっ!!」ガバッ
はやり『・・・終了しても太巻きをかじろうとした片岡選手を、サポーターの子たちが必死に止めました・・・』
はやり『片岡さん、残念だけど、勝負は終わったよっ!』
はやり『先鋒戦、太巻き勝負・・・ ここに決着ゥ!!☆』
はやり『最初の、熾烈な大食いデュエルを制した勝者は・・・・・』
はやり『“キング・チョモランマ・キッカーズ”の獅子原爽選手ぅぅっっ!!』
はやり『完全無欠と思われたビッグ・マウス・モンスターの首を、荒ぶる大食いライオンが召しとったァァッッ!!!』
<先鋒戦最終結果>
× 片岡優希(シャイニング・スターズ) 11皿と220g・2970g
○ 獅子原爽(キング・チョモランマ・キッカーズ) 12皿と50g・3050g
優希「は… はなせぇ! 私はまだ食べられるじょっ!」ジタバタ
和「ゆうきぃ!」パチーンッ!
優希「・・・・・」ヒリヒリ
はやり『は、はやや…』
のよりん「暴力! 反対!!」プンスコ=3
和「勝敗はもう決まったのです。 見苦しいことはやめなさい」
優希「……じぇ、じぇええぇぇ………」ポロポロポロポロ
和「優希、しっかりして下さい。 まだ団体戦としての試合は終わってないんですよ?」
優希「うう… の、のどちゃん… 私、くやしいじょおおおぉ……」ポロポロポロ
和「…私のせいですね…… ごめんなさい優希。 私も獅子原さんの力を見誤っていました… でも、その悔しさは次の対戦にぶつけましょう。 さあ、戻りますよ…」スッ
~チョモランマチーム~
爽「…ただいま」
洋榎「獅子原ァ! ようやったァ! 見直したでっ!」バシーン!
爽「うぼえっ」
絹恵「あの優希ちゃん相手に、スピード勝負で競り勝つなんて、本当にすごいですよ…」
爽「いや、べつに… 片岡なんか大したことねーよ…」
誓子「あんたねぇ… 他校の人に褒められてる時くらい素直になりなさいよ!」
穏乃「あの、でも… どうしてあんな終盤になるまで、本気を出さなかったんですか?」
漫「ほんまや。 見てるこっちはハラハラしっぱなしでしたよ」
爽「…終盤で追い上げてまくった方がイケてんだろ? だからわざと前半は手を抜いてたんだよ…」
「いや、そらちがうやろ、獅子原」
絹恵「・・・末原先輩?」
恭子「もう勝ったんやから隠す必要ないやろ? 獅子原あんたは… あの方法でしか、片岡に勝つ手段はなかったんや」
爽「……」
由子「どういうことなのよー?」
恭子「獅子原あんたは、初めに“25分間の大食いを、片岡とまともに闘り合っては勝ち目が薄い”と考えたんやろ? だから、片岡がその実力を十分に発揮できないようにする方法を色々考えたんやろ」
恭子「まず前半は7割程度の力しか出さずに、体力を温存しつつ、相手の油断を誘う… さらに、ホッカイロを仕込んで体調不良に見せかけたり限界が近いかのような演技をして、相手の気がゆるむように仕向けたんや」
憧「2回目の大食いがあるから、1回目の大食いはなるべく楽して勝ちたい… と、誰もが思っている。 そこに、つけ込んだんですよね」
恭子「そうや。 そして、相手が油断しとる時に、突如爆発的なスパートをかけて、相手を動揺させてミスを誘う… その作戦が見事にハマッたわけやな」
爽「・・・さーね、知らねーよ。 私ちょっと着替えたいから、またトイレ行ってくるね」スタスタ
爽「……」スタスタスタ
爽(…ギリギリだった…… マジ勝ててよかったぜ…)ハアハア
爽(片岡に勝つには、賭けに出るしかなかった… 最初から最後まで片岡が本気だったら、まず勝てなかったろーな…)
爽(ふう… 疲れた… 胃もけっこういっぱいだし、体力もだいぶ削られ… あ…れ……?)フラフラフラ
ガシッ
爽「…!?」
揺杏「ヨロけてんじゃねーよ、大丈夫か?」
爽「…誰に言ってんの?」
揺杏「…ふん。 褒められるような闘い方じゃあなかったけどさ、よく頑張ったじゃねーか。 私もちょっと見直したぜ」
爽「・・・何キモいこと言ってんだよ、バーロー…」
揺杏「着替えたら控え室で少し休めよ。 肩貸すか?」
爽「揺杏の肩は高すぎだから使えねーよ。 オンブしてよ…」
揺杏「はいはい、素直が一番だぜ!」ヨイショ
~シャイニングチーム~
優希「ご、ごめんみんな… 勝てなかったじぇえ……」ポロポロポロ
久「いや… 私の指示もいけなかったわ… 獅子原さんがあそこまでしたたかな人だったなんてね… そこを考慮できていなかったのは私のミスでもあるわ」
菫「この準決勝… 想像以上に闘い方が難しいな… しかしやられたものは仕方ない。 ここはきっちり反省して、次の闘いに生かしていくしかないだろう」
優希「う、うう・・・」ポロポロポロ
初美「はあー… 髪留めが取れて、頭ボサボサですよー? もう少しでスーパーサイ○人に変身できたのに、惜しかったですねー」
霞(はっちゃん! 空気読みなさい!)ツネリー
初美「おぼげええええええええぇっ!!」=3
春「…どんまい」ポリポリポリ・・・
巴「は、はるちゃん次出るかもしれないんだからいい加減黒糖は…」
憩「片岡さん… あんた、のどに違和感があるんやないか?」
優希「じぇ…?」
優希「そっそうだじぇ・・・ 最後のほうで、のどに何かがへばりついたようなかんじになって、息苦しいし、イガイガして気持ち悪いんだじぇ・・・ お茶を飲んでも、全然取れないんだじょ…」
憩「やっぱりな… のどの奥の方に、海苔が張り付いてしまってるんや。 慌てて食べると稀にそういうことがあるんや」
久「海苔がのどにつまるの…? そんなの聞いたことないわよ」
憩「のどに物が詰まって耳鼻咽喉科にやって来る患者さんで、最も多い食べ物は、『こんにゃく』と『もち』… そして、タコの吸盤と『海苔』なんやで」
憩「焼き海苔を菓子がわりにパリパリ食べとったら、海苔の破片がのどにピタッとくっついて、呼吸困難で救急車で運ばれたなんちゅう嘘みたいな本当の話もあるんやで」
優希「ど、どうすれば取れるんだじぇ…? このままじゃ、2回目の対戦に響いてしまうじょ…」
憩「海苔はやっかいやで… 張り付いたらそうそう離れへんから、少しずつ溶けて無くなるまで、一週間くらいかかることもあるんや」
優希「そ、そんな・・・?」
憩「ふふーん! でも、ここにスーパードクターKeiがいる事が、不幸中の幸いってやつやで! 海苔のつまりには、コレを使うんや」ポンッ
優希「じぇ…?」
まこ「これは… 食パン?」
憩「そや。 食パンを口いっぱいに頬張ってから、一気にゴクッとやれば、大体取れるで」
優希「……」ムグムグムグ
淡「す、すご… 八つ切りの食パンが2枚口の中に入っちゃった…」
優希「ギュゴックゥンッ!」=3
優希「…」
憩「どや?」
優希「・・・スッキリしたじょお! ・・・・よし、 私は・・・ 寝る!」
久「は、はあ…?」
優希「眠って、胃袋の太巻きを全部消化するじょ! 出番になったら起こしてくれっ! オヤスミだじぇっ!」バタンッ Zzzzz…
まこ「・・・さすが優希じゃ… 寝て起きれば、もう負けたことなんぞ忘れちょるな…」
~スタジオ実況室~
みさき「…準決勝先鋒戦は、獅子原爽選手が驚異的な追い上げを見せ、勝利…! まずは“キング・チョモランマ・キッカーズ”に一勝が入りました」
三宅「驚きましたね… 獅子原選手、あんな終盤まで、チャンスを伺っていたんですね。 私もすっかり騙されてしまいました」
みさき「限界が近いかのように見せかけて油断を誘い、一気にまくってしまいました… これは獅子原選手の作戦勝ち、といったところでしょうか」
三宅「はい…そういったことなんでしょうね… しかし面白いですね。 このルールだと、こんな相手を欺くような闘い方も十分功を奏するんですね。 私のライバルの庄○さんとかも、トラッシュトークで周りを惑わせたり、変な格好で食べて人をイラつかせようとしたりとかしますけどね…」
みさき「次鋒戦以降も、持っている実力以外の要素が勝敗を左右する場面が出てくるかもしれませんね」
三宅「そうですね。 でも、やっぱり“大食い”って、こうして競技として行っていても、普通のスポーツとはちょっと違うものなのかもしれないですね」
みさき「…どういうことですか?」
三宅「強さや技術を試し合い、競い合うという事だけでなく… なんというか、“イベント”というか“お祭り”というか… 『食』のスバラしさをみんなで確認し合う、讃え合うという場でもあると思うんです」
みさき「『食』のスバラしさ…ですか」
三宅「はい。 私が大食いの大会に出る時は、対戦相手はもちろん打ち倒すべき“敵”でもあるんですけど、それ以上に、そこにステキな“食の空間”をつくり出すための“仲間”でもあると思ってるんです」
みさき「……」
三宅「ただのお食事会や食べ比べなんかじゃなくって、もっともっと徹底的にみんなで“食”に向かい合う行為こそが“大食い”なんじゃないかな… だから、勝敗にこだわるのも大事ですけど、いかにして食べるか、いかにして大食いを楽しむか、苦しくてもツラくても最後まで真剣に“食”に向き合えるか、といった“経過”も、非常に重要なものなんです」
三宅「あと四試合ありますが、選手たちには、勝ちをシビアに追い求める熱い“闘い”とともに、ステキな“食の空間”をつくり出してくれることを期待したいですね・・・」
PM6:30
~試合会場~
ザワザワ ガヤガヤ ザワザワザワ
えり『皆さん、先鋒戦お疲れ様でした! キング・チョモランマ・キッカーズの一勝で迎えた次鋒戦… ここからは、実況は私針生えり、そして解説は、皆さんおなじみ、三尋木咏プロでお送りして参ります』
咏「どーもー、よろしくねぃ」フリフリ
えり『それでは早速、次鋒戦の“食材”を発表いたしましょう! ご覧下さい、こちらです!』ポチッ
洋榎「あ・・・?」
憧「う・・・!」
灼「ぐっ、これは・・・」
誓子「…あちゃあ……」
大画面に、そのまるっこい黄緑色の食材が現れると・・・
一勝したことでリラックスした雰囲気になっていた、チョモランマチームのメンバーたちの顔が一瞬にして凍りついたようにこわばった。
恭子「くっそ・・・ 来たか・・・! “甘味”!!」
照「…」ニヤアアアア・・・
~スタジオ実況室~
みさき「…準決勝先鋒戦は、獅子原爽選手が驚異的な追い上げを見せ、勝利…! まずは“キング・チョモランマ・キッカーズ”に一勝が入りました」
三宅「驚きましたね… 獅子原選手、あんな終盤まで、チャンスを伺っていたんですね。 私もすっかり騙されてしまいました」
みさき「限界が近いかのように見せかけて油断を誘い、一気にまくってしまいました… これは獅子原選手の作戦勝ち、といったところでしょうか」
三宅「はい…そういったことなんでしょうね… しかし面白いですね。 このルールだと、こんな相手を欺くような闘い方も十分功を奏するんですね。 私のライバルの正○さんとかも、トラッシュトークで周りを惑わせたり、変な格好で食べて人をイラつかせようとしたりとかしますけどね…」
みさき「次鋒戦以降も、持っている実力以外の要素が勝敗を左右する場面が出てくるかもしれませんね」
三宅「そうですね。 でも、やっぱり“大食い”って、こうして競技として行っていても、普通のスポーツとはちょっと違うものなのかもしれないですね」
みさき「…どういうことですか?」
三宅「強さや技術を試し合い、競い合うという事だけでなく… なんというか、“イベント”というか“お祭り”というか… 『食』のスバラしさをみんなで確認し合う、讃え合うという場でもあると思うんです」
みさき「『食』のスバラしさ…ですか」
三宅「はい。 私が大食いの大会に出る時は、対戦相手はもちろん打ち倒すべき“敵”でもあるんですけど、それ以上に、そこにステキな“食の空間”をつくり出すための“仲間”でもあると思ってるんです」
みさき「……」
三宅「ただのお食事会や食べ比べなんかじゃなくって、もっともっと徹底的にみんなで“食”に向かい合う行為こそが“大食い”なんじゃないかな… だから、勝敗にこだわるのも大事ですけど、いかにして食べるか、いかにして大食いを楽しむか、苦しくてもツラくても最後まで真剣に“食”に向き合えるか、といった“経過”も、非常に重要なものなんです」
三宅「あと四試合ありますが、選手たちには、勝ちをシビアに追い求める熱い“闘い”とともに、ステキな“食の空間”をつくり出してくれることを期待したいですね・・・」
すみません今週土曜からまた続き書きます。
今ちょっと投下します。
えり『おや? チョモランマチームの方のメンバーは皆「ゲッ!」というような表情になり・・・ 一敗して余裕のない筈のシャイニングチームのメンバーは皆、安心し切ったようなニコニコ顔になりましたね・・・』
えり『すごいですね、コレが何か、両チームとも分かるんですね! そう… コレは、一般には仙台市の名物とされることが多いですが、山形や福島、秋田や岩手の南部でも販売され、家庭でもよく手作りして食べられている伝統的な和菓子、“ずんだ餅”です!!』
オオオオオ・・・ ザワザワザワ ズンダモチ? オイシソー!
えり『ずんだ餅とは、枝豆を茹で、薄皮を剥いてすり潰し、塩と砂糖を混ぜて作った“ずんだ”という餡を餅にまぶしたもの・・・ 独特の色合いと甘い風味、まろやかな口あたりに加え、枝豆パワー満点の健康食品としても注目されています』
えり『“ずんだ”の語源は、豆を潰す意味の「豆打(ずだ)」が訛ったもの。 仙台藩伊達正宗公の陣中で、太刀で枝豆をすり潰したことが起源とも言われ、その由来から「陣太刀」が変化し「ずんだ」になったとする説もあります』
えり『きれいな薄緑色がとても鮮やかで目にも美味しく、ふわりと香るやさしい味は、何百年も前から食通や甘味好きの舌をうならせ、その胃袋をガッチリとつかんで放しません!』
えり『さらにお餅は、餅の里として知られる一関特産の厳選されたもち米「黄金餅」を使用。 のどのつまりを防止するために、今回はうるち米の粉、つまり上新粉を配合して粘りをやや抑えてあります。
次鋒戦では、この岩手伝統の極上の銘菓を心ゆくまで楽しんで下さい!』
~シャイニングチーム~
淡「やったねテルー! 得意のお菓子じゃん!」
照「ずんだ餅の食べ放題… ぐふふふぅ… 盛岡まで来た甲斐があったよ…」ニタニタ
菫「名前は聞いたことあるが… 私は食べたことがないな。 照はあるのか?」
照「中学生の時、麻雀の大会で仙台に遠征した時に初めて食べた。 普通のオハギの3倍は美味しい。 “こんな美味しいモノがあるのか?!”って目玉が飛び出るよホントに」
尭深「ずんだ餅の魅力は、なんといっても、枝豆の餡の甘さと香りと独特の風味・・・ お茶のお供としても最適」ズズズ・・・
咲「…あの、えーっと、おねえちゃんが出ることで決定、みたいな雰囲気になってるけど、それでいいんですか? 滝見さんも甘味は強いですよね?」
春「… 待ってる。 お先に どうぞ…」ポリポリ
初美「さすがのはるるも、甘味勝負ではチャンピオンに一歩ゆずるしかないですねー」
久「決まりね… サポーターの二人はどうする?」
菫「そうだな… 尭深と誠子、ついてやってくれ。 暴走しないように監視してくれな」
照「ぐふふぅ… 手加減しなくていいんだよね?ww」
菫「…いや照。 甘味では確かにお前が一番強いだろうが、油断は禁物だぞ。 大食いは何が起こるか分からない。 誰が相手で出てくるか分からないが、格下相手でも慎重に、全力で叩き潰せ」
誠子「あの、それに… 今回は二回戦の時と違って単品勝負ですよね。 いくら宮永先輩でも、途中で“飽き”がくるんじゃないですか…?」
照「うーん… そうだね。 そうだ、淡と菫、悪いけど味変用に○○○と△△△、買ってきてくれない?」
淡「は? ○○○と△△△…?」
菫「…それが味変アイテムなのか?」
~チョモランマチーム~
穏乃「じゃ、私が行くってことでいいんですよね」
恭子「……」
憧「……」
誓子「……」
洋榎「…高鴨、確かに甘味食材が出た場合はお前が行くことになっとったが… 本当にいいんか?」
穏乃「? 何がですか?」
洋榎「お前も二回戦のスイーツ勝負での、チャンピオンのデタラメな強さは見たやろ? あんなんと一対一で本気で闘うんか?」
穏乃「…勿論です。 私、家が和菓子屋やってるんです。 和菓子なら小さい頃から食べ慣れてますからね! 誰にも負けるつもりはありませんよ!!」
漫「和菓子屋の娘?」
由子「初耳なのよー」
憧「予選の前に、そのことちょっと紹介されてましたよ… シズのお店でも、期間限定で出してたことあるわよね? ずんだ餅」
穏乃「うん、お盆の頃にね。 ずんだ餡は普通のアンコに比べて保存が効かないから扱いづらいんだよね… 持ち帰りのお客さんには必ず保冷剤入れて渡してた」
恭子「・・・なあ、穏乃ちゃん。 ここは、もう一回獅子原に行ってもろたらどうやろ?」
穏乃「え?」
穏乃「獅子原さんの連チャンってことですか? ど、どうしてそんな…」
恭子「次鋒戦は捨てるんや」
穏乃「!?」
恭子「甘味食材での、チャンピオンの強さは完全に異次元のものや… あんなのと、無理に闘り合う必要はないで。 ここは既に一勝している獅子原に捨て駒として行ってもらうんや」
穏乃「……」
恭子「そして、穏乃ちゃんと絹ちゃんは体力を温存し、中堅戦以降で確実に二勝をとる… 一勝一敗になってまうけど、既に二回の大食いを経ている相手よりは有利な筈や」
漫「末原先輩、そのパターンのオーダーはリスクが高いって、自分で言ってませんでした?」
誓子「いや、私も末原さんの言う通りにした方がいいと思います。 爽にここで出てもらえば、中堅以降で出てくる可能性大の“わんこそば”についての懸念を無くすこともできるし…」
恭子「獅子原に出てもらえば、相手は肩透かしを食ったような気分になるやろうな。 これは“三勝”すれば勝てるチーム戦… 逆に言えば、二回までは負けてもええんや。 分の悪い勝負を本気で闘う必要はない…」
穏乃「末原さん…」
恭子「ん?」
穏乃「・・・あなた程の人が、そんな消極的な作戦を立てるなんて…! 見損ないましたよ!!」
憧「シズ! 何言ってんのよ! これはチーム戦なのよ?」
穏乃「負けるつもりで闘うなんて!」カッ
穏乃「そんなバカバカしいことがあるか! そんなのが勝負だと言えるんですか?!」
恭子「…穏乃ちゃん、私は“チームの勝利”というただ一つの目的を達成するために、どうすれば一番良いかを考えてるだけや」
穏乃「…! 獅子原さんに捨て駒を任せるだなんて… 私はそんなの絶対イヤですよ!」
爽「いや、別に私は続けて出てもいいけど」ズイッ
誓子「わっ、爽… あんた控え室に休みに行ったんじゃなかったの?」
爽「…私が連チャンする可能性もあるなと思って戻ってきたんだよ… でもさぁ、さっきから、わりぃーけど、外野がゴチャゴチャ言い過ぎなんじゃねーの?」
洋榎「が、外野…?」
爽「応援してくれたり、いろいろ手伝ったり協力してくれるのはすげーありがたいけどさ、“食べる”のは私たち3人だろ?」
爽「なーんか、私が次鋒も行くのが一番いい、みたいな雰囲気になってるけど、最終的なオーダーの決定権は私たち3人にあるんじゃねーのか?」
誓子「さ、爽…! あなた何を言って…」
恭子「いや… 獅子原の言う通りや」
恭子「実際に闘うんは、あんたら3人だけなんやからな。 私たち12人は、あくまでサポーターで、アイデアを出したり、補助したりといったこと以上のことはできひん。 選手たち3人が決定したことを、くつがえそうとするつもりはないで」
爽「…私はどっちでもいいぜ? 高鴨が出るんでも私が出るんでも… 愛宕、お前さっきからずっと黙ってるけど、どう考えてんだよ?」
絹恵「……」
絹恵「私は…」
絹恵「正直、あの食材では、チャンピオンに勝てる気がしいひん…」
絹恵「そして…、穏乃ちゃんでも、勝てる確率は低いと思う…」
穏乃「……」
絹恵「でも、見てみたい」
恭子「え?」
洋榎「見たいって… 何をや?」
絹恵「あの甘味大魔王、宮永照が・・・」
絹恵「“甘味で負ける”ところを・・・!」
穏乃「…!」
絹恵「それができる人がおるとしたら… やっぱり、穏乃ちゃんしかいないと思う」
絹恵「…でも、チームの勝利のためには、次鋒戦は捨てた方がいいっていう末原先輩の考えも分かるし、私も、二敗してもいいから、確実に三勝をとって勝ちたい」
穏乃「…」
絹恵「穏乃ちゃん」
穏乃「はい」
絹恵「“勝算”は… あるんか?」
穏乃「あります!!」クワッ
憧「そ、即答…?」
絹恵「…そっか…… 末原先輩」
恭子「うん?」
絹恵「私たち“キング・チョモランマ・キッカーズ”の代表として、次鋒戦を闘うのは・・・」
絹恵「 高鴨穏乃です 」
恭子「・・・分かった。 それなら私たちも、穏乃ちゃんの胃袋に全てを賭けるで… でも穏乃ちゃん、チャンピオン相手に、具体的にはどんな対策を立ててるんや?」
穏乃「た、対策ですか…? えーっと…、チャンピオンが甘味に異常に強いのは分かってます。 でも・・・」
穏乃「私だって、成長してます! 昨日よりも今日、今朝より今のほうが、強い!! ・・・と、思う」
穏乃「チャンピオンがどんなに強くても、惑わされずに食べ続けて、最後には絶対に勝ってみせます」
穏乃「それに、和菓子のことならよく分かってますからね! 憧、悪いけど、ダッシュで味変用の×××、買ってきてくれない?」
憧「…×××ね。分かったわ、すぐ行ってくる!」タッ
絹恵「穏乃ちゃん、サポーターの二人はどうするんや?」
穏乃「そうですね… 玄さんと…宥さん! お願いできますか?」
玄「了解ですのだ」
宥「うん… でも、穏乃ちゃん、無理しないでね…」フルフル
穏乃「…大丈夫ですよ、宥さん。 チャンピオンは…、私の、倒すべき相手なんです! 絶対勝ちますから…! そして、私が、みんなを決勝に連れて行きます!!」ボッ
PM6:31
~試合会場~
ガヤガヤ ザワザワザワ・・・・
照「じゃ、行ってくるね」
咲「…おねえちゃん! 優希ちゃんのカタキ… とってきてね!」
照「…もちろん。 何も心配しなくていいよ」
穏乃「玄さん、宥さん、出陣です! 行きましょう!」
玄「……気が乗らない… おもちはおもちでもおもち違いですのだ…」ボソボソ
宥「玄ちゃん!」オシリツネリー
玄「うひゃはひゃわわわぁ…」
穏乃「? 玄さん?」
えり『さあ… 両チームとも、エントリーする選手が決まったようですね。 今…シャイニングチームからは宮永照選手、チョモランマチームからは高鴨穏乃選手が、サポーターと共にバトルフィールドに入場してきました!』
咏「ふーん… 両チームとも切り札を切ってきたねぃ。 お互い、この次鋒戦を本気で取りにくるつもりか…」ニヤ
えり『え?』
咏「いや、何でもないよん♪」
穏乃「チャンピオン! よろしくお願いします!!」ペッコリン
照「ここは麻雀やるとこじゃないんだから、チャンピオンはやめてよ… 一緒に楽しく、たくさん食べようね」ニコッ
穏乃「はい! でも…私は負けませんからね!」
照「負けられないのはこっちも同じ。 悪いけど、勝たせてもらうよ」
えり『さあ、これは… 二回戦のスイーツ勝負の1位と3位の対決ということになりましたね』
咏「そうだねぃ。 いい勝負になりそうだね」
えり『では早速、食材を用意したいと思います。 スタッフの皆さん、お願いします!』
えりの合図で、塞と胡桃が、ずんだ餅を載せた“お盆”を持ってフィールドに入場する…
菫「な!?」
咲「えっ? 何あれ・・・」
巴「ひぇ… すっご…」
胡桃「……」ヨイショヨイショ
塞「うぅ、おっもいなぁ…」ヨイショヨイショ
洋榎「なんやあれ、山…?」
由子「黄緑色のお山がお盆に載ってるのよー」
誓子「…あれを一気に食べるんでしょうかね…?」
えり『ふふっ、食材の登場と同時に、両チームから驚きの声があがります。 それもその筈… 選手たちに今回食してもらうのは、ずんだ餅の“お盆盛り”…!』
えり『その数なんと80個! この、ずんだ餅のメガ盛りに挑戦してもらうのです!』
えり『ずんだ餅は一個40gですので、総重量はこれだけで3.2kgあります! 完全に人の顔が隠れてしまうほどの巨大な翡翠色の山… 次鋒戦は、二人の勝負と共に、“果たしてこの山を食べ切ることができるのか?”ということも見所となりそうです』
えり『両チームとも甘味に強い選手を出してきましたが… どうでしょう? 選手たちはこの山を踏破することができるでしょうか?』
咏「ん? いや、そりゃわっかんねーな、いやはやサッパリ」
えり『…えー、こちらに二回戦のスイーツ勝負の資料があるんですが、宮永照選手は「チョコショートケーキワンホールまるごと」までのスイーツ6種3.25kgを、わずか17分半で食べていますが・・・?』
咏「うーん、まあねぇ。 ただ、一つ言えることは、今回はあの時よりも格段に食材の難易度が高いってことだね。 二回戦の時はプリンやパフェなんかの非常に食べやすい食材もあったけど、今回はひたすら咀嚼が必要な“餅”だからね… それに単品勝負だから飽きもくるし、宮永ちゃんでも完食できるかは微妙なとこなんじゃね?」シランケド
えり『そうですか… ずんだもち80個… これは、コンビニのあんまんが一個約110gですので、それに換算すると約29個ということになります。 2個も食べれば満足できるあんまんを29個… 確かに、人間が食べれる量とは思えませんね』
咏「このずんだ餅も、いくら美味しくても5個も食べればもういらないっしょ。 2~30個も食べたら普通の人は腹パンクだろね」
えり『サザエさんの祖先とされる江戸時代の武士、磯野藻屑源素太皆(いそのもくずみなもとのすたみな)は、お彼岸におはぎを38個も食べて殿様に褒められたそうです』
えり『これの元ネタは「唐茄子屋政談」という落語の中の「安倍川餅を38個食べやがった」というくだりからだろうと考えられていますが、江戸時代には、実際に大食い大会が各地で開かれ、史実として記録にも残っています』
えり『特に有名なのが、文化14年、西暦1817年に江戸両国は柳橋の「万八楼」で催された大食い大会… それを記した文献には、まんじゅう50個、うぐいす餅80個、せんべい200枚など、にわかには信じ難いような記録も載っているのですが、それらに勝るとも劣らない、“ずんだ餅80個”・・・!』
えり『もしこれを時間内に完食できたなら、その選手は、200年前の伝説のフードファイターと肩を並べることにもなるわけです!』
PM6:32
~実況スタジオ~
みさき「次鋒戦、選手たちの前に運ばれて来たのは、なんとお餅の山・・・ ずんだ餅80個、総重量3.2kgです! どうでしょう、三宅さんなら何分で完食できますか?」
三宅「え、私ですか? いや… これは無理ですね。ムリムリ、25分ではまず無理です」
みさき「え? 10kg近く容量があるのに、無理なんですか?」
三宅「…甘い物は好きですけど、大食いになると苦手なんですよ… 甘いのだけじゃないです。 私けっこう苦手食材多いんですよ。 カタい物、熱いモノ、苦いモノ、酸っぱい物、激辛の物… 全部苦手です」
みさき「へえ… 完全無欠のフードファイターかと思いましたが、弱点もあるんですね…」
三宅「アレが3.2kgのカレーライスなら食べるのに10分もかからないですけどね。 大食いは、食材の違いによって、殆ど別次元の勝負になることもあるんです」
三宅「特に甘味は強力に満腹中枢を刺激する食材ですし、そうそう速く食べられるモノではありませんよ? 私が出る大会でも甘味はけっこう定番ですけど、一回戦とか二回戦とかの序盤で出るのに制限時間はいつも60分です」
三宅「もし私があんなの出されて25分で食べろなんて言われたら、『は? マジですか? 冗談きついですよふざけんな』って怒りますね、多分」
みさき「そ、そうですか… 日本有数の現役フードファイターでも食べきれないと言うずんだ餅の山… これには選手たちも顔を引きつらせてい・・・ ? あれえ??」
PM6:33
~バトルフィールド~
穏乃「………」キラキラキラ
えり『た、高鴨選手、ものすごい目でずんだ餅を見つめています! 山に穴をあけるつもりでしょうか?』
咏「…すごい目だねぃ。 少女マンガのキラキラの目よりも輝いてるね」
穏乃「く、玄さん玄さん! 山、山ですよ山! こ、こんな美味しそうな山を登れるなんて・・・ ううぅ、私、幸せモンだぁ!」ウキーッ
玄「し、穏乃ちゃん落ち着くのですのだ…」
宥「…ん? はわわ? なんか…すごいポカポカしてきたよー?」アッタカーイ
玄「え? …本当だ、なんか暑くなってきた… なにこれ…? って、穏乃ちゃん、めっちゃ体熱いよ! ど、どうしたの?」
穏乃「……」ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
玄「穏乃ちゃん! 体がスチームみたいに熱くなってるよ! だ、大丈夫?」
穏乃「ふう、ふううぅ・・・! 燃えてきたああ!! 大丈夫です! 体の新陳代謝が活発になってきてるだけですからぁ!!」ゴオオオオオオオオ・・・・・
えり『高鴨選手すさまじい気合いです! あのずんだ餅の山を前に、全く物怖じしていません! なにか… 体が発熱しているようですね。 オーラのようなものすら見えそうです!』
穏乃「ふうっふうう…! て…照さん! 楽しみですね! こんなすごい山を一緒にのぼれ・・・ !? うぎょえええええぇっっ??!」
全身火の玉のようになっていた穏乃・・・
しかし、正面の照の様子を一目見た瞬間、驚きのあまり、その目の炎は完全に鎮火してしまった。
穏乃「ちょ、ちょ、ちょっと照さん… な、なんですかソレ…?」
照「……」ダラダラダラーリ
えり『うわあ!? な、なんていうことでしょう… 宮永選手、ものすごい量のヨダレでテーブルの上に池を… いや! これはもはや湖です! 富士山の横に山中湖をつくっています!!』
咏「…ばっちぃ湖だねぃ。 こりゃ富士山の世界遺産登録、剥奪されんじゃね?ww」
誠子「ちょっと… 宮永先輩! 自分で拭いて下さいよ?」ゾーキン
照「あ、ありがと誠子… ううぅ… どうしてもヨダレが止まらない… 早く食べたい…」フキフキ
穏乃「……」
咲「お、おねえちゃん…/// こ、ここテレビじゃカットされますよね?」
久「何言ってんのよ。テレビなんてこういうとこばっかり喜んで映すものなのよ。 多分いろんな角度から繰り返し放映されるわね」
菫「くっそ… また頭が痛くなってきた…」ズキズキ
PM6:34
えり『会場へお越しの皆様・・・ 次鋒戦開始まで、あと一分を切りました。 一度、お静かにお願いします!』
ザワザワザワ・・・ シ―――ン・・・・・
えり「ふう・・・」スウウウウッ
えり「よしっ!」クワッ!
えり『皆さん! ある、一人の少女と… ある一人の少女が対峙し、“どちらが優れているか”を決めることになった時・・・』
えり『一体、どんな方法が、最も適しているのでしょうか…?』
えり『腕力… 殴り合いで優劣を決めるべきでしょうか? 否! そのような表面的な“強さ”など、ここでは何の意味もありません…!』
えり『古来より平和の象徴とされてきた少女たち… 人を傷つける力で優劣を競うワケがありません! 少女たちの真の強さというのは、もっと他のところにある筈です!』
えり『では… “知力”で勝負をするべきでしょうか…? いいえ、人の知力というのはそれぞれで質もベクトルも異なります。 人としての“価値”を決める時、そのようなつかみ所のないもので勝負をするなど、愚の骨頂というものです!』
えり『ならば… 女性ならば、“見た目の美しさ”で勝負をするべきでしょうか…? …ふふっ、はははははっ! 見た目なんて…人の個性のごく一部を表現しているモノでしかありません! そんなモノ、ここでは全くの無価値なのです!!』
えり『では… 対峙した二人の少女は、一体何をして優劣を決めたらいいのでしょうか…?』
えり『…そうです。 ここにいる皆さんならもうお分かりですね。 二人の少女の優劣を決める時、最も優れた方法というのは・・・』
えり『“大食い”をすることなのです!!』カッ
えり『なぜかって…? それは、“食”とはすなわち、“生”そのもの・・・ “食べる力”というのは、“生命力”そのものだからです!!』
えり『私たちはみんな、食べることで命を食らい、その多くの命を受け継いで生きています』
えり『より多く食らうということは、より多くの生命、エネルギーをその身に蓄えるという行為にほかなりません』
えり『暴力も、腕力も、知力も、権力も、経済力も、そして、雀力すらも… ここでは全て、何の意味もありません! このバトルフィールドにおいては、どんな力も等しく価値がないのです!』
えり『ここで価値があるのは、ただ一つ・・・ そう、“食べる力”のみです!』
えり『ここで競われるものは、“どちらがより多く食べられるか”だけ・・・ ただそれだけ! ここは、お互いの生命力をぶつけ合う場所なのです!!』
えり『“甘味の神に最も愛された女”、“お菓子を食べるために作られた体”、“甘味大食いの象徴”、“お菓子ある所に宮永照あり”などなど、様々な異名どころかワケの分からない格言まで作られてしまっている甘味界の最凶の大食い大魔王、宮永照・・・!』
えり『そして、深山幽谷に潜む伝説の甘味モンスター… その小さな体に宇宙の如き無限のポテンシャルを秘めた清廉潔白なる大食い勇者、高鴨穏乃・・・!』
えり『この二人の少女の、どちらが“優れて”いるのか…? どちらの“生命力”の方が上なのか…?』
えり『それが、これから! このバトルフィールドの上で決まるのです! 皆さん、その瞬間を目撃しましょう!!』
えり『では! “シャイニング・スターズ”VS“キング・チョモランマ・キッカーズ”の次鋒戦! 「駆けのぼれ! 翡翠ずんだ富士勝負!!」・・・!』
えり『25分でまいりますっ! ・・・いよおぉぉ―――――い……っっ!!』ザッ
一同「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」ゴクンッ
えり『っはっじめええええぇぇぇ―――――――いっっっ!!!』ブオオンッ!
タイコ「 ドドーン!! 」
照・穏乃「「 い た だ き ま す ! ! 」」バチンッ!
えり『生命の火を燃やして食らえっっ!! 女子高生たちよおぉぉっっ!!!』
長くなり過ぎてしまうので、前半と後半に分けることにしました。
次スレ→えり「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(準決勝・後半)です!」
えり「麻雀部限定、全国高等学校大食い選手権(準決勝・後半)です!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423976214/)
4週間前に、「5週間後に終わる予定」と書きましたが、お察しの通り、とても終わりません。
3月中には終わるかなと思っています。
遅筆・見通しの甘さについてはご容赦を。
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