【艦これ】磯風「師匠ーっ! これが磯風の三倍返しだあああぁ!」 (21)

※キャラ崩壊注意。

※設定的には下記の話を引き継いでいますが、読まなくても大丈夫だと思います。

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【艦これ】電「賑やかな鎮守府の日常なのです」
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457885766

深雪「うめー! 電の作るお菓子はうめえな!」

若葉「少し甘さ控えめだな。だが悪くない」

初霜「もう、深雪さんってば。お口に食べ残しがついてますよ、ほら」

深雪「おっと、初霜サンキュー! 電もありがとな!」

電「お口にあったようで、嬉しいのです」

若葉「感謝するぞ」

初霜「電、ありがとうございます」

電「あ、あの……そ、そう褒められると恥ずかしいのです」

深雪「なんだよ、感謝しているんだから素直に受け取れって! 私はうまいもん食えてハッピーになれたんだからさ!」

若葉「深雪の言う通りだ。とてもおいしかったぞ」

初霜「ええ、お二人が言う通り、おいしかったです」

電「そ、その……ありがとう」

深雪「んー? お礼を言ってるのはこっちなのに、なんで電がお礼言うんだ? 変な奴だなー」

若葉「深雪、電はただ謙遜(けんそん)しているだけだ」

深雪「そうなのか? 別にそんな懸賞する必要なんてないだろ? なあ?」

初霜「深雪さん、懸賞じゃありませんよ。謙遜です」

若葉「懸賞してどうする」

深雪「でもよー? なんで急にお菓子作ってくれたんだ? いや、深雪さまとしては嬉しいけどさ」

若葉「電がお菓子を作るのは、別に珍しくないだろう?」

深雪「まあ、そうかもしれないけどさ」

電「えっと、大した意味はないんだけど……日頃の感謝を込めてお返しをと思って」

深雪「え? 私なんか電に感謝されるようなことしたっけか?」

若葉「……そういえば、今日はホワイトデーというやつだったか。けど、若葉はバレンタインなんて電にあげてないぞ」

初霜「バレンタイン……ホワイトデー? 若葉、白い日ってどういう意味ですか?」

若葉「若葉も分からない」

深雪「おまえ意味知らずに言ってたのかよ!?」

初霜「深雪さん、ご存じなのですか?」

深雪「知らん!」

電「誇らしげに言われても困るのです!?」

若葉「待て。詳しくは知らないが、さっき少し触れたように概要は分かる。たしか……バレンタインはチョコをあげて……」

電「おおむね合ってるのです」

初霜「若葉、凄いです!」

若葉「ホワイトデーは……貰ったチョコの三倍のクッキーをあげる日だったはず……だ」

初霜「若葉、博識です!」

若葉「そう褒めるな。体がムズムズする」

電「いろいろとおかしいのです!?」

深雪「なに!? 私は電にチョコをあげてないぞ!? 0に3倍を掛けても0じゃないのか!?」

初霜「まさか……私達は知らないうちに寝ぼけて電にチョコレートをプレゼントしていたのでは……?」

若葉「なんてことだ……! 電は良い奴だからプレゼントしたくなるかもしれないが」

深雪「まさかこの深雪さま達が無意識にそんなことを……電、恐ろしい奴だぜ!」

電「なんでそんな結論になっちゃったのです!?」

電「違うのですーっ! チョコは貰ってないけど、日頃の感謝にって、深雪ちゃん達にお菓子を作っただけなのです!」

初霜「そ、そうだったんですね。すみません……つい変な勘違いをしてしまったわ」

深雪「まったく、電ってば紛らわしい奴だなぁ」

電「なんだか納得いかないのです……」

若葉「電は本当に律儀な子だな。だが、それも悪くない」

電「本当はもっと他のみんなにもあげたかったけど……」

初霜「都合の悪い方もいたんですね」

電「なのです。無理を言ったらお礼の意味がなくなっちゃうのです」

若葉「別に急ぐ必要もない。渡せなかった人には後でもいい。それに、こちらこそ電にはいつも世話になってる」

深雪「だな!」

初霜「ふふ、電。いつもありがとう」

電「だから……もう。えっと、ありがとう」

若葉「しかし、おいしかったな。子日や初春にも余ったのを少し分けて――」

――ドドドドドド! ガチャ!

磯風「電さんっ! 磯風を……この磯風を助けてくれ!」

電「なのです!?」

深雪「なんだなんだ!? 磯風どうしたんだ!?」

若葉「少し落ち着け。水だ、ゆっくり飲め」

磯風「それどころでは……いや、頂こう」

電「磯風ちゃん、大丈夫ですか?」

磯風「電さん……大丈夫では。いや、磯風自身は平気だが、状況は最悪だ」

初霜「磯風さん、一体どうしたのですか?」

磯風「ああ、聞いてくれ……この磯風、かつてない危機に立たされている」

深雪「もったいぶらずにさっさと話せよな」

磯風「深雪の言う通りだな、本題から話そう」

磯風「磯風は……師匠(阿武隈)に三倍返しをしなくてはいけないんだ!」カッ!

初霜「……」

若葉「……」

深雪「……」

電「……つまり、どういうことなのです?」

磯風「なにぃ!? 師匠の三倍だぞ!? 磯風の姉弟子である電さんが、この意味が分からないわけないだろう!?」

初霜「さっぱり分かりません」

若葉「若葉もだ」

深雪「深雪さまにもさっぱりだぜ」

妖精さん(はぁ~さっぱり、さっぱり)

磯風「ちょっと待て、今何か通り過ぎなかったか?」

若葉「気のせいだ」

磯風「いや、たしかに今妖精さんらしきものが――」

若葉「気のせいだ」

磯風「……まあいい。今は些細(ささい)なことを気にしている場合ではないな」

磯風「ならば順序立てて話そう。あれは一か月前。師匠、つまり阿武隈さんが司令に渡すチョコを作ることを、ためらっていた時のことだ」

初霜「そう言えば……電と磯風さんが、阿武隈さんに一緒にチョコを作ろうと誘ったのでしたね」

電「阿武隈さんがチョコを作る、いいきっかけになればと思っただけなのです」

若葉「結果的にチョコを作れることができたのだろう? 電と磯風は優しいな」

磯風「なに。師匠に受けた恩に比べれば、なんてことはない」

初霜「ああ、あの日がバレンタイン……? だったんですね」

深雪「でも、それがなんでピンチに繋がるんだ?」

磯風「そうだ、問題はここからなんだ!」

磯風「師匠は無事に司令にチョコを渡すことができた……それ自体は喜ばしいことだ」

磯風「だが。その後師匠はお礼にと、この磯風と電さんにもチョコをくれたんだ」

電「たしかに阿武隈さんからチョコを頂いたけど……」

磯風「ああ、あれはおいしかった……見た目も凝っていてかわいかった。更にこの磯風の好みをついた味でもあった」

磯風「ただ作るだけでなく、食べる相手に配慮したその手腕。さすが師匠と言わざるを得ない」

若葉「それがなにか問題なのか?」

磯風「問題も大問題だ。磯風は、谷風達――第十七駆逐隊や電さん、大和や矢矧へのチョコは用意していた」

磯風「だが、師匠に渡すチョコを用意し忘れていたのだ!」カッ!

初霜「……」

若葉「……」

磯風「ああ、なぜそんな大ポカをと呆れているか。無理もない」

若葉「いや全然」

初霜「むしろなぜそこまで大事に捉えているのか、疑問なのですけど」

磯風「今思えばなぜ用意しなかったのか。もしかしたら無意識の内に、師匠との料理の腕前の差を知るのを、恐れていたのかもしれない」

磯風「いや違う……! 磯風は師匠の期待に応えられないことを。そして師匠の教えを完全にものにできていないことを恐れていたのだ!」

磯風「この磯風とあろうものが……なんて無様な!」

若葉「おまえはなにを言っているんだ」

深雪「……そんなに気にすることか? 阿武隈さんのことだから、気にしないだろ。後で別の形で返せばいいじゃねーか」

磯風「しかし。その場でお返しできなかった以上、磯風はホワイトデーで、師匠にお返しをしなければならない」

磯風「しかも、どうやら聞いた話によると、ホワイトデーには3倍返しとやらが礼儀らしいではないか!」

若葉「やはりそうなのか?」

電「違うのです」

初霜「磯風さん。阿武隈さんはそこまで恐れるほどなんですか?」

磯風「いや。師匠は恐れなどというものとは程遠い」

磯風「ただ、この磯風が勝手に恐れているだけなのだ……!」

若葉「なぜそこまで」

磯風「そこまでか。いいだろう、語ろう。なぜ磯風が師匠をそこまで畏怖しているかということを」

電「そこでいきなり語るのです!?」

深雪「いや、聞いてないし!?」

~回想~

磯風「師匠……卵焼きとやらは、こんなにぐちゃぐちゃなものだったのか?」

阿武隈「えっと……違うと思うよ」

磯風「やはりか……どうしてだろうな」

阿武隈「慌てて乱暴にかき回し過ぎだよ。あと、油ももう少しちゃんと引かないと」

磯風「そうか……なかなか上手くはできないな」

阿武隈「でも……味はちゃんと出来てるよ。ほら、おいしい」

磯風「そんなバカな。そこまでぐちゃぐちゃで……あ」

阿武隈「ね、おいしいでしょ?」

磯風「……たしかに」

阿武隈「そうでしょそうでしょ? これも磯風ちゃんがちゃんと頑張った結果だよっ、ねっ!」

磯風「けど、見た目がこれでは」

阿武隈「もう、そんな一気に全部上手くなんてなかなかできないんだから」

阿武隈「ダメだったところを反省するのも大切だけど、上手くできたところもちゃんと抑えないと駄目だよ」

阿武隈「なんで自分は、ここは上手くできたんだろうって振り返るのも、成長には大切なことなんだから」

磯風「師匠……」

阿武隈「それに、自分が少しずつ成長していることを、自分で褒めてあげないと」

阿武隈「じゃないと、練習が苦痛になっちゃう。磯風ちゃんは、料理が上手くなりたくて、練習しているんだよね? 誰かに強制されてとかじゃなくて」

磯風「その通りだ。磯風は自分で料理が上手くなりたいから、師匠に指導をお願いしている」

阿武隈「なら、楽しんでやらなくちゃ。自分がやりたいことだもの。その方が絶対良いよ」

阿武隈「あたしも、磯風ちゃんと一緒に料理できて、楽しいよ。せっかくだから、磯風ちゃんにも楽しんでもらえると嬉しいな。えへへ」

磯風「師匠……」

阿武隈「焦っちゃダメだよ、磯風ちゃん。最初は誰だって一からのスタートなんだから」

阿武隈「ゆっくり、そして確実に。磯風ちゃんのできる範囲で、その中で頑張っていけばいいの」

阿武隈「ほら、まずはおいしくできたことを、自分で褒めてあげて?」

磯風「……まったく、師匠は。とことんお気楽だな」

阿武隈「むう。あたしはお気楽じゃありません!」

磯風「そこで本気で怒ってないところなんか、ますますお気楽だ」

阿武隈「もー。磯風ちゃんの意地悪ー」

磯風「すねないでください。貴方は子供ですか」

磯風(本当に……いちいち反応が子供のようだ)

磯風「さて、師匠。もう一回挑戦してもいいですか? この味付けは、今のうちに覚えておきたい」

阿武隈「もっちろん! あたしも頑張って教えるからねっ」

磯風(さっきまですねてたんじゃないのか。なぜそこでそこまで無邪気に返事してくるんだ)

磯風(子供のようで……その実、底抜けにお人好しで優しくて、心が広い人だ)

磯風「師匠。ありがとう。貴方のお陰で、料理が本当に好きになれそうだ」ぼそっ

阿武隈「んー? 磯風ちゃん、ごめん。なんて言ったの?」

磯風「秘密だ」

阿武隈「えー?」

~回想終了~

磯風「こうして磯風は師匠に料理の技術と楽しさを教わってきたが……まだ師匠の腕前に追いつくには程遠い……!」

磯風「それなのに、師匠の三倍だと? ホワイトデーは磯風に死地に赴けと言うのか!?」

深雪「いや死なないだろ」

若葉「というか、畏れる要素がどこにあったんだ」

初霜「磯風さん……! 磯風さんはそこまで思いつめていたんですね……!」

電「初霜ちゃんが感情移入しちゃったのです!?」

深雪「嘘だろおまえ!?」

初霜「磯風さんのバカーっ!」

バシーン!

磯風「げふっ!?」

電「平手が入ったのです!?」

深雪「なにやってんだおまえー!?」

初霜「死地に赴く!? 馬鹿言わないでください! そこまで思いつめる前に、なんで私達に相談してくれなかったんですか!」

若葉「いや今相談してるぞ」

磯風「しかし初霜! これは磯風の不覚が招いた個人的なことだ! 初霜達には関係ない!」

初霜「何言っているんですか! 私達は同じ一水戦の仲間でしょう!」

磯風「初霜……おまえ」

初霜「私達がそんなに頼りないですか!? もっと頼ってください! 磯風さんの苦悩は、私達みんなの苦悩です!」

電「……そうなのです。磯風ちゃん、電達も力になりたいのです。思いつめる前に、もっと電達を頼って欲しいな」

深雪「まあ難しいことは頭わりーからよくわかんねーけどさ。一人でウジウジするよりはマシだろ」

若葉「若葉だ」

磯風「……まったく。お前らも師匠に負けないくらいバカだな」

深雪「磯風には言われたくねーよ」

磯風「ふっ、違いない」

初霜「磯風さん。殴ってしまってすみません」

磯風「なに、お陰で気分が晴れた。礼を言うぞ」

磯風「あと若葉。なにかと『若葉だ』とだけ言っておけばいいと思うのは、どうかと思うぞ」

若葉「なん……だと?」

磯風「もう大丈夫だ初霜、若葉、深雪。そして電さん。答えは得た」

磯風「そもそも、現時点で磯風が師匠の三倍上を行くと言うこと自体が誤りだった」

磯風「現時点での、磯風の全身全霊を師匠にぶつけるのみ」

初霜「磯風さん……!」

磯風「そもそも師匠の教えを忘れていたんじゃないか。料理は、楽しまないとな」

電「その通りなのです!」

磯風「そうと決まれば時間が惜しい。さっそく作り始めなければな」

若葉「そうだ、それでいい。今の磯風の全力をぶつけてやれ」

磯風「ああ、そうさせてもらおう」

深雪「あ、深雪さまの分も忘れんなよー!」

電「もう、深雪ちゃんってば」

磯風「ははっ、もちろんだ。借りをそのままにするのは磯風の流儀ではない」

磯風「……さて、行こう。首を洗って待っていてくれ。師匠!」

若葉「そのセリフはどうかと思うぞ」

――その頃。

提督「すまない、赤城、由良。個人的な用事に付き合ってもらって」

赤城「いえ、構いませんよ」

由良「提督さんと阿武隈ちゃんのためだもの。なんてことないわ」

赤城「ええ。提督はもちろん、阿武隈さんや電さん達には日頃からお世話になっているのですから」

赤城「私達空母が安心して自分の役割に専念できるのも、彼女達の護衛があってのことです」

赤城「彼女達がいなければ、私達は無防備になってしまうのですから。とても空だけを気にしてはいられませんよ」

提督「それは赤城達が空を支配してくれているからだろう。だからこそ、阿武隈達も護衛に力を注ぐことができるんだ」

提督「けど、そう言ってくれると阿武隈達も喜ぶだろう。ありがとう」

赤城「いえ。こちらこそありがとうございます」

赤城「しかし、意外でしたね。提督は料理が得意でしたから、クッキーも上手にできるものかと思っていたのですが」

提督「はは、私ができるのはいわゆる男の料理だ。見た目や栄養バランスよりも、それなりに食えて量が多いのが重要だったからな」

由良「あら、そうだったんですね」

提督「まあずっと男連中と過ごしてきたからな。お菓子作りなんて縁がなかったよ」

提督「こうして作り方を教えてもらって、本当に助かった」

赤城「いえ。微力ですが、お力になれたのならそれでなりよりです」

提督「微力なんてとんでもないさ。由良もありがとう」

由良「ふふっ、どうしたしまして」

提督「しかし……形が少し不格好になってしまったな。折角教えてもらったのに申し訳ない」

赤城「それは教えた私の不手際でもありますから。提督もそこまで気にしてはいけませんよ」

由良「そうそう。あんまり変だと駄目かもしれないけど、そこまでじゃないんだし」

由良「あまり気にしちゃダメよ、提督さん?」

提督「そうかな?」

由良「ええ。それに、提督さんが一生懸命作ったものを、あの子が喜ばないわけないじゃない」

提督「そうだといいのだが……」

赤城「提督。そろそろ、阿武隈さんの元に行って渡してあげてください」

提督「ああ。このお礼はまた今度」

由良「ふふ、期待してますね提督さん」

赤城「そこまで気にしなくても構いませんよ。でも、楽しみにしていますね」

赤城「……提督は、柔らかくなりましたね」

由良「え?」

赤城「前から優しい方でしたが、以前はもっと固く、私達と一線を引いているところがありました」

赤城「私達に頼らずに、自分が鎮守府全員に対して、完全に平等で、正しい提督であるためにと……どこか無理があった気がします」

赤城「それが、今ではこうして私達を頼ってくれる。クッキーの作り方とか、ささいなことであるにしても」

由良「……そう、なのかな? それは、良い事だと赤城さんは思います?」

赤城「ええ、もちろん。そして、そうなったのは……阿武隈さんのお陰でしょうか」

由良「阿武隈ちゃんが?」

赤城「いい妹さんですね。さすが由良さんの妹さんだけにあります」

由良「ふふっ。由良はどうか分からないけど。阿武隈ちゃんは良い子に決まってるじゃないですか」

提督「阿武隈、ここにいたのか」

阿武隈「あっ、提督? ……どうかしましたか?」

提督「別に用事がなくても、阿武隈に会いに来たっていいだろう?」

阿武隈「えう!? あ、あの……はい」

提督「まあ、用事はあるんだが」

阿武隈「むう……てーとくぅ?」

提督「はは、悪い悪い。阿武隈にこれを渡したくて……その、あまり自慢できるものじゃないんだが」

阿武隈「え、これって……?」

提督「今日は3月14日だろう?」

阿武隈「てーとくがあたしに? で、でも先月既に提督は花をくれたじゃないですか」

提督「そうだけど、せっかく手作りでチョコをくれたんだ。個人的な想いだけど、こっちもなにか作って返したかったんだ」

提督「その……あまり練習する時間が取れなくて、少し不格好になってしまったが」

阿武隈「てーとくの手作り? ……ううん、そうやって作ってくれたってことが、すごく嬉しいです」

阿武隈「えへへへ、不格好なところがかわいいですねぇ。あたし的には、大事に頂きます」

提督「……なんだか、そこまで喜んでくれると、すごく恥ずかしいな」

阿武隈「ふえ? だって、すごく嬉しいに決まってるじゃないですか。えへへ……」

提督(……まったく。小さなことで、すごく喜んで。そんな調子で周りの人に人懐っこく接してきて、和ませる)

提督(私は、本当にこの子に助けられているな)

白露「……ねえ、時雨。あたし達、ここでこのまま見ていていいのかな?」

時雨「そう思うなら、さっさと退散すればいいじゃないか。最初に覗き見してたのは姉さんでしょ」

白露「だって部屋の中とかならともかく、人がいてもおかしくない港で渡し始めるんだもん! 悪気なくても見ちゃうじゃない! ねえ?」

時雨「まあ休日のこの時間、あまり人はいないからね。僕達がいたけど」

白露「そうだけど……ところで、時雨いつまでそれ食べてるの?」

時雨「海を見ながら外で食べる牛丼も、良いものだよ」

白露「おにぎりやサンドイッチならともかく、牛丼……はまだしも、どんぶりで盛った牛丼を外で食べないよ普通」

時雨「お腹は、いつか空くさ」

白露「たしかにお腹は空いてるけど!?」

時雨「食べるかい?」

白露「食べないって!? それ時雨の食べ掛けじゃない!?」

時雨「後悔しても知らないよ? 肉は、いつか減るさ」

白露「気に入ったのそのフレーズ!?」

ししょおーっ! ――ししょぉぉぉぉーっ!

白露「……ん?」

時雨「……あれは。磯風かな?」

白露「あんなに走ってきてどうしたんだろう……って、あのままじゃ二人の邪魔になっちゃうよ!?」

時雨「無粋だね。磯風、君には失望したよ」

磯風「師匠! この磯風、逃げも隠れもしない! ホワイトデーに正面からぶつかってみせる! それが例え無謀な行為であってもだ!」

磯風「受け取ってくれ! 師匠ーっ! これが磯風の三倍返しだあああぁ!」

白露「いっちばーん!」

ドコッ!

磯風「ぐわああああああっ!?」

白露「……また、白露が一番になってしまった」

磯風「……し、白露」

白露「なに、磯風?」

磯風「腕を上げたな……今のは、今までで最高のいっちばーん! だった……ガクッ」

時雨「……さすがだね。鹿屋の白露と呼ばれる日も近いかもしれないよ、姉さん」


その後、ちゃんと磯風のクッキーは阿武隈の元に無事渡りましたとさ。

これで終わりです。
ここまで読んで頂いた方、ありがとうございました。

乙なのです。

乙で

だ~いこんらん、だいこんらんですぞ~

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