男「今日は……○○店でファン感謝デーか」(525)
……今日も俺は、パチンコ店の自動ドアをくぐった。
俗に言う『スロプロ』というやつだ。
スロ雑誌なんかで雑誌の記事書いたり、一人旅で借金返したりする凄腕ってわけじゃない。
一匹狼ではあるが、細々と生きているって感じの……『社会の脱落者』ってやつかな……。
最近はホール(パチンコ店の事)の状況も悪くなり、稼ぐのが厳しくなりつつある。
同業者も日に日に見なくなり……なんて事はないが、顔を合わせる事は
少なくなっている気がする。
潮時かな。 ……いや、足を洗うって意味じゃない。
――生きるか、死ぬか、という意味で――
ピューン ピューン ピロピロ……
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男(……設定、入ってない感じだな)
男(…………)
男(やっぱり店長が代わって、ボッタクリ店になったみたいだ)
男(…………)
男(どうする?)
男(隣町まで足を伸ばすか?)
男(…………)
――隣町・駅前ホール――
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男(ふむ……悪くないな)
男(客層はジーサン、バーサン、オバチャン狙い……)
男(おっ……あいつは”k”)
”k”というのは、俺が勝手に名づけた同業者と思われるスロプロで
俺と同い年くらいか、ちょい上くらいの青年だ。 もちろん本名は知らない。
いつも黄色い服や何かを身につけてるので、きいろ→”k”と命名した。
ちなみに俺は、今年で24になる。
男(あいつが居るのなら安心だな……ライバルでもあるけど)
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男(よし、この台はいけそうだ)
―――――――――――
男「…………」 ピロピロピロ
男「…………」 ジャジャーン!
男「…………」 ピッピッロピー!
―――――――――――
男(……そろそろいいか)
男(設定、読みとは違ったかもしれないけど)
男(ヒキでなんとかなったな……) フウ…
男(さて、終わろう) スッ
男「交換、お願いします」
店員「はい、分かりました」 ジャラジャラジャラ……
店員「こちらがレシートになります」
男「どうも」
店員「ありがとうございました~」
男(さて……今日は何食うかな)
――ラーメン店・惑星――
イラッシャイマセー
男「チャーシューメン……」
男「……!」
k「あ……」
k「どうも……」
男「どうも……」
男「……」
男「ここ、いいですか?」
k「ええ、どうぞ」
”k”とは、何度も話したことがある。
お互い顔しか知らないが。
k「いつからこっちに?」
男「今日初めてですよ。 前から興味は持ってましたけど」
k「そうですか……という事は、あそこ……見切りをつけたんですか?」
男「その通りです。 店長代わってから全然ダメですね」
k「そうですよね……私もここに来たのは最近ですけど」
男「ここの所、新台がart機ばかりでうんざりしてます」
k「演出ばかり派手で、旨みが少ないですよね……」
”k”と他愛のない話をして、その日は帰った。
――翌日――
――男の住むアパートの一室――
男「ふあ……」
男「…………」 ボリボリ…
男「……さて」
男「今日もあの店に行くか」
コン コン
男「? はーい」
男「どなたですか?」
???「すみません、昨日隣の部屋に越してきた者ですけど……」
???「引越しのご挨拶に来ました」
男「ああ……それはご丁寧に……今開けます」
ガチャ…
???「あ、初めまして、私、隣に越してきた……」
男「」
???「」
男「お」
男「幼馴染……!?」
幼馴染「男……!?」
二人の時が止まる。
高校生の頃、俺は、
――幼馴染の告白を断っていた――
需要ないかな……。
時間的にしょうがなす。
昼くらいになれば、なにかしらあると思うよ。
おもろい、やれ
男「…………」
幼馴染「…………」
男「……その」
男「元気、だった?」
幼馴染「……まあ、ね」
男「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染「あ、あの、これ……」
男「え?」
幼馴染「引越しそば……の代わりの粗品」
男「あ、ああ……ありがとう」
幼馴染「…………」
幼馴染「じゃ……」
……パタン
男「……うはぁ~」
男(久しぶりに……緊張した……)
男(…………)
男(幼馴染……)
男(綺麗になったな)
男(…………)
男(あんなに綺麗なら、きっと……)
男(誰か……いい人がいるだろう)
男(…………)
男(みじめだ……)
幼馴染「…………」
幼馴染(……ウソ、でしょ?)
幼馴染(どうして男が居るのよ……)
幼馴染(どうして……!)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染(私は……)
幼馴染(…………)
幼馴染(もう、男の事なんて、何とも思っていない)
幼馴染(何とも……)
幼馴染(…………)
――隣町のホール(パチンコ店)――
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男(……正直、今日は何もしたくないけど)
男(明後日は給料日……その前に稼げるだけ稼いでおかないと)
ホール(パチンコ店)は、大抵、給料日前は、出やすくして客寄せする。
給料日後は、その逆に出にくくして、稼ぐ。
店ごとに差はあるが、優良店はこの開け幅が大きい。
それに、どの台が出るか?を見極めるのには
ある程度、『店』や『店長』の癖を見なければならないし
設定が良くても運が悪ければ、負ける事もある。
男(……それに、ここの客層は年配の人達ばかり)
男(この人達の勝ちを奪い過ぎない様にしなくては……)
男(目押しも快く受けよう)
年配層は技術(目押し等)も情報も未熟な事が多い。
ほとんどが『今日はこの台が出る様な気がする』という打ち方だ。
でも、ホール(パチンコ店)側としては、大きな収入源である彼らを引き寄せる為に
俺達、スロプロ等が『甘い』と思えるような設定を入れざるを得ない。
男(今月の払いを計算に入れて、少なくとも2~3万は勝ちたい所だが……)
男(ん?)
老人「…………」 ←なかなか揃えられない
男(…………)
老人「…………」 ←やっぱり揃えられない
男「あの……」
老人「む……?」
男「良かったら、揃えましょうか?」
老人「おお、すまんのう……よろしく頼むよ」
男「いえ……」 ピッ ピッ ピッ… ピッピッロピー!
男「はい。 良かったですね、ビックですよ」
老人「おお! 君は上手いね~ありがとう!」 ニコ
男「どういたしまして」 クス
―――――――――――
老人「さっきはありがとう」
老人「これ、飲んでくれ」つ(缶コーヒー)
男「どうもすみません。 いただきます」
老人「君の台も良さげだね~」
男「ええ……ツいてました」
老人「何かコツがあるのかい?」
男「ハハ、たまたまですよ」
老人「そうなのかい。 うらやましいね~」
男「お! 光ってますよ、行け行けランプ!」
老人「おおっ! ……ええと、頼めるかな?」
男「ええ、いいですよ」 ニコ
―――――――――――
男「……じゃあ、この辺で」
老人「おや? もう帰るのかい?」
男「もう21時ですよ?」
老人「おお、もうそんな時間だったか……」
老人「ところで、その台。 まだ出ると思うかい?」
男「う~ん……どうでしょう?」
男「時間的に、もう難しいと思いますが……まだ出るかもしれませんね」
老人「そうかい! じゃあ打ってみようかな?」
男「いいですよ」 ニコ
男「じゃあ、俺はもう帰ります」
その後、レシートを交換した俺は、老人が俺の台でビックを引いてるのを見かけて
それを揃えてから、店を後にした……。 お互い、笑顔だった。
――深夜――
――男の住むアパートの一室――
ガチャ……キィ……パタン カチリ☆(鍵閉め)
男「ふう……」
男「さて、風呂入って寝るか……」
男(遅い時間だから、静かに入らないと……)
男(…………)
男(幼馴染……)
男(もう寝てるだろうな)
――幼馴染の住むアパートの一室――
幼馴染(…………)
幼馴染(男……)
幼馴染(こんな時間に帰ってきた)
幼馴染(…………)
幼馴染(男……どんな仕事をしているんだろう?)
幼馴染(…………)
幼馴染(たまたま遅くなっただけかも……)
幼馴染(そうね、きっとそう)
幼馴染(男は、すっごく頭良かったし……)
幼馴染(…………)
男(けど……)
―――――――――――
幼馴染(でも……)
―――――――――――
男・幼馴染(どうして、こんなボロアパートに……?)
男(…………)
―――――――――――
幼馴染(…………)
―――――――――――
深く、追求しない方がいい。 そんな気がした。
そして、この時は、お互いが同じ事を考えていたなんて
想像もしていなかった。
今日はここまでです。レスありがとう、やる気出ます。
スレタイ、幼馴染「○○」にしとけばよかったかな……。
後、申し訳ないんですけど、のんびり書くつもりです。
乙ー
パチンコはしねぇけど期待してる
――翌日の朝――
――幼馴染の住むアパートの一室――
ピピピ……ピピピ……
幼馴染「ふあ……」
幼馴染「…………」
幼馴染「さて……起きないと」
時刻は午前6:00。
冬の今の時期、まだ真っ暗な時間だ。
幼馴染(今日からコンビニのバイトだもんね……)
幼馴染(さ、初日から遅刻なんてみっともない事出来ないぞ!)
幼馴染(頑張って起きる!) ガバッ!
幼馴染「うう~!! 寒い寒いっ!!」
――コンビニ――
幼馴染「よろしくお願いします!」
店長「はいよろしく~」
店長「それじゃあ仕事内容教えるね」
幼馴染「はい!」
店長(元気があっていいね)
―――――――――――
店長「――って感じかな?」
幼馴染「は、はい」
幼馴染(お、思ったより難しいかも……)
幼馴染(レジ打ちとか……出来るかな……?)
店長「それじゃ、分からない事があったら、私か女ちゃん(店員)に聞いてね?」
女「よろしく、幼馴染さん」
幼馴染「はい、よろしくお願いします、女さん」
女「それじゃさっそく品出しの作業始めようか?」
幼馴染「はい!」
女(……元気なのはいいけど、ちょっと鬱陶しいかも)
女(にしても、若い娘入れたわね……店長)
女(…………)
―――――――――――
女「じゃあ、そろそろお昼にしよっか? 幼馴染さん」
幼馴染「あ、はい」
女「えーっと、どうしよう? 先に行く?」
女「それとも店長が戻ってくるのを待って二人で行く?」
幼馴染「ええと……」
幼馴染(そうだ……私、ここの地理は、ほとんど知らないや)
幼馴染「じゃあ、今日は店長が戻ってきてから……お願いできますか?」
女「うん、いいよー」
女「近くにうどん屋さんと大衆食堂があるんだ」
女「どっちも安くて美味しいよ?」
幼馴染「へえ、そうなんですか」
女「今日は……うどん屋さんでいいかな?」
幼馴染「ええ、構わないですよ。 楽しみです」
―――――――――――
店長「おーい、お二人さん」
店長「すまないね、お昼、まだだろう? 行ってくるといい」
女「はーい」
女「じゃあ、行こっか? 幼馴染さん」
幼馴染「あ、はい、女さん。 じゃあ店長さん、行ってきます」
店長「ああ」
―――――――――――
――うどん屋・王様ガエル――
ラッシャーイ
女「あたし、月見うどん」
幼馴染「私は……天かすうどんを」
マイドー
幼馴染「ふう……」
女「疲れた?」
幼馴染「ええ、少し……」
女「まあ、初日だもんね」 クス
女「でも、最近はマシになった方よ?」
幼馴染「そうなんですか?」
女「少し前まで……三ヶ月くらいかな?」
女「近くのパチンコ店に行ってる客がすごい多かったんだ」
幼馴染「へえ……」
女「でも最近、そのパチンコ店の店長が代わったみたいでね」
女「すーっと人が寄り付かなくなったの」
幼馴染「わあ……」
女「ま、あたしは忙しくなくなって、ありがたかったけど……」
女「店長は頭抱えているわ」
幼馴染「……え」
幼馴染「じゃあ……どうして私、雇ってくれたんだろう?」
女「…………」
オマチドー
女「……ここだけの話」
女「男性の店員もたくさん居たんだけどね」
女「店長、一方的に給料下げる事を通告して」
女「ほとんどが辞めていったの……」
幼馴染「…………」
女「店長はそれを見越してたから、御の字だったけどね」
女「でも、抜けた穴は結構大きくて」
女「特に客の売れ筋なんかは、ほとんどバイトの情報が頼りだったから」
女「売上が前以上に落ち込んでるの……」
幼馴染「…………」
女「まあ、そんなわけで、単純に短絡的に」
女「可愛い女の子入れて売上アップを狙ってるのよ」
幼馴染「え」
幼馴染「えー……?」
女「…………」
女「あたしももう20代後半だし……」
女「いつ首を切られるか……」
幼馴染「…………」
幼馴染「大丈夫ですよ」
幼馴染「女さん、とっても綺麗です!」
女「ふふ、ありがとう、幼馴染さん」
女「でも……本当は仕事の内容とか、そういうのを評価して欲しいんだけどね」
幼馴染「…………」
聞きたくない『現実』を聞いてしまった気がした。
―――――――――――
店長「じゃあ今日は、これでオシマイ。 明日もよろしくね、幼馴染ちゃん」
店長「女ちゃんもお疲れ様」
幼馴染「はい、お疲れ様です」
女「お疲れ様ー」
テク テク テク…
女「ふう、疲れた……」
幼馴染「店長は、これから深夜帯を一人でやるんですか?」
女「まさか」 クス
女「深夜帯にあたし達と入れ替わりで入る、男性店員が二人居るの」
幼馴染「そうなんですか」
女「まあ2時間くらい差があるから、ほとんど顔を合わせた事がないけどね」
女「じゃあ、あたし、こっちだから……」
幼馴染「あ、はい。 お疲れ様でした、女さん」
女「うん。 また明日ね」
幼馴染「…………」
――幼馴染の住むアパートの一室――
幼馴染「ふう……ただいまー」
幼馴染「……と言っても誰も居ないけど」
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染(これからは、一人で生きていく)
幼馴染(そう決めたじゃない)
幼馴染(幼馴染……)
幼馴染(…………)
幼馴染(さ、お風呂に入って、ご飯食べて、もう寝よう)
幼馴染(明日も早いんだし、ね……)
――数日後――
――隣町のホール(パチンコ店)――
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男「…………」
男(……すごい)
俺は驚きを隠せなかった。 このホール(パチンコ店)は
開け・閉めの期間にこだわらず、毎日高設定(よく出る)台が必ず2~3台あるからだ。
男(……この不景気の時代にどうして……)
男(…………)
男(客層の好みが今の新台と完全に隔離してるから……?)
男(けど)
男(こんなあまり知らないメーカーの台ばかりで、よくこんな経営できるな)
男(今時完全告知のaタイプばっかりなんて……)
男(…………)
男(だからこそ、なのかもしれないな)
男(こんな知らないメーカーの台のaタイプ)
男(リプ外しの場所も自分で探さなきゃならないし)
男(ある意味ではスロプロ泣かせ、とも言える)
男(…………)
k「あ……」
男「お……」
k「どうも……」
男「どうも……」
k「…………」
k「どうです? ここ」
男「……驚いてますよ、正直」
k「ですよね」 クス
男「外しとか、わかります?」
k「皆目見当もつきません……」
男「ですよね……」
k「でも、面白いでしょ、ここ」
男「ハハ、確かに」
俺は”k”と話した後、その日は打たずに帰った。
高設定と思われる台は空いていたが、今月分のノルマは達成してたし
何よりも一般の人達の勝ちを奪い過ぎて目立たない為に。
だが、何もしないわけじゃない。
俺はネットカフェにおもむき、あの店にあった台のメーカーと
リプ外しの情報を探る事にした。
男(…………) カタカタ……
男(…………) カタカタ……
男(……これは……手ごわいな)
男(新興メーカーに……老舗の中小メーカー)
男(はっきり言ってほとんど情報が無いに等しい……)
男(…………) カタカタ……
男(だめか……hpはあるけど、リプ外しの情報はない)
男(……だけど)
男(過去の台のリプ外しの情報はある)
男(そこから推測するしかないな……)
――翌日――
――隣町のホール(パチンコ店)――
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男(……よし)
男(おそらく、これが今日の高設定台……)
男(今日は試したい事もあるし、この台で粘ってみるか)
リプ外しもそうだけど、大口子役も揃える事を怠ってはいけない。
この店の交換率は、今時珍しい等価交換……
簡単に言うと、このメダル一枚に20円の価値がある。
大口子役は、狙わないと揃わない上にメダル10枚も出る。
つまり、一回揃えるのを外すと、200円損する。
これが意外とバカに出来無い。
何しろ10回揃え損ねると、2000円も損する計算になる。
ここの客層は目押し等の技術が低い。
そういった「損」をしている事に気がついていないのが、ほとんどだ。
でも、だからこそ、店も高設定を入れやすくなる。
でも、やりすぎてはいけない。 あくまでも俺は、イレギュラーな存在だ。
ここのお客さんの勝ちを奪いすぎない様にしなくては……。
そして、この店に依存しない事も大切だ。
???(…………)
???(……!)
???(…………)
???(……へえ、上手いじゃない)
???(最近入ってきた黄色と同じ、同業者みたいね)
???(…………)
???(今日はこいつと勝負してみるかな?)
???(ふふふ……)
???(……名前)
???(何にしよう?)
???(…………) ピッピッ
???(…………) ピッピッ
???(……うん、この台、良さげね)
???(この台で行こう!)
―――――――――――
???(…………)
???(……!)
???(あいつ……リプ外ししてる!?)
???(このあたしでも、見つけるのに一ヶ月もかかったのに……!)
???(…………)
???(……くっ!)
―――――――――――
???(…………)
???(…………)
???(……ちっ)
???(だめだ……)
???(ワンビックの獲得枚数もddt(目押しの事だと思って)も)
???(隙がない……!)
???(黄色よりも腕は確かね……)
???(……すました顔して、相当の腕だわ……)
???(…………)
???(うん!)
???(あいつは”すまし”と呼ぼう!)
男(…………)
男(気のせい……かもしれないけど)
男(なんか、ポニテの女の子に見られてる様な……) ///
男(…………)
男(自意識過剰だよな)
男(多分……打ち方から同業者、かな……?)
男(…………)
男(まどマギに出てた、杏子みたいだから)
男(杏子と呼ぼう……)
―――――――――――
杏子「なあ……」
男「ん?」
杏子「もう帰るのかい?」
男「そうだけど」
杏子「じゃあその台、もらってもいいかい?」
男「ああ、どうぞ」
杏子「じゃ、ありがたくもらっとくよ。 悪いな」
男「いや……」
杏子「♪~」
男「…………」
男(本当に杏子みたいだな……)
杏子(…………)
杏子(…………)
杏子(それにしてもあいつ、どうして21時で上がるんだ?)
杏子(この台……間違いなく最高設定の出方だ)
杏子(プロなら閉店コースだろうに……)
杏子(…………)
杏子(何か……”すまし”に事情があるんだろうな)
杏子(…………)
杏子(さて、閉店まで頑張るか!)
―――――――――――
――数日後――
――隣町のホール(パチンコ店)――
杏子(…………) ピッピッ
杏子(…………) ピッピッ
杏子(……うん?)
杏子(”すまし”の奴、今日は来てるな)
杏子(こんなおいしい店、どうして毎日来ないんだろう?)
杏子(…………)
杏子(そういや、黄色もだ)
杏子(あいつも毎日居るわけじゃない)
杏子(…………)
――ラーメン店・惑星――
男「…………」 モグモグ
杏子「ねえ」
男「ん?」
杏子「ここ、いいかい?」
男「…………」
男「どうぞ」
杏子「ありがとう」 ススッ(着席)
男「…………」
杏子「あんた……ご同業だろ?」
男「……君もね」
杏子「ちょっと、聞きたい事があるんだけど……いいかな?」
男「どうぞ」
杏子「あんた……あれだけの腕がありながら」
杏子「どうして毎日、ここに来ないんだい?」
男「…………」
杏子「……ちょっと、立ち入った事、聞いたかな?」
男「……いや」
男「…………」
男「そうだな……別に俺に事情があるわけじゃないよ」
男「目立たない様にして、目を付けられないようにしてるだけさ」
杏子「……ふうん」
男「……そう言う君は、毎日あそこで稼いでいるのかい?」
杏子「ああ」
杏子「あんなおいしい店、そうは無いからね」
男「…………」
男「悪い事は言わない」
男「それは止めた方がいい」
杏子「はあ?」
男「特に君は、若い女の子だし……誰かに目をつけられたら」
男「どんな目に合わされるか……」
杏子「…………」
杏子「心配ないよ」
杏子「防犯グッズは常に複数持ってるし」
杏子「それに……」
男「…………」
杏子「ううん、何でも無い」
男「…………」
杏子「邪魔して悪かったね」
杏子「じゃ……」
男「……ああ」
男「…………」
男(何事もなければいいけど……)
――数日後の深夜――
杏子(へへへ~)
杏子(今日もプラス6万ちょい……)
杏子(あの店様様だね♪)
杏子(……ん?)
??「…………」
杏子(…………)
杏子(……こいつは、やばい……かも?)
杏子(…………) スッ…(スタンガン装備)
dqn「そこの可愛いお嬢ちゃん♡」
dqnⅡ「ヒヒヒ……」
dqnⅢ「へへへ……」
杏子「!!」
杏子(3人……!?)
dqn「こんな時間の一人歩きは……危ないぜ~?」
dqnⅡ「俺達が護衛してやんよ♡」
dqnⅢ「お礼は、お嬢ちゃんの持ってるお金全部と、体でいいぜ~? グヒヒヒ……」
バチバチッ!
杏子「てめえら……近づくんじゃねえ」
杏子「最大電力で心臓に直撃させるぞ……!」
dqn「へへへ……そんな物騒なもん、しまいなよ」
dqnⅡ「お~怖い怖い~」
dqnⅢ「うんじゃ、こっちも……本気出しますかっと……」 スッ…(鉄パイプ装備)
杏子「……ひっ」
……ダッ!
dqn「待ちなよ、お嬢ちゃん」
dqnⅡ「そっちはぁ」
dqnⅢ「行き止まりだよん」
杏子「……!」
どうして あたしは
いつもいつも こうなんだろう
杏子「このっ……!」 バッ!
dqn「おおっと!」 ヒョイッ
バシッ!
杏子「あぐっ!」
取り返しがつかなくなってから
何かに気がつく
こんな時ってさ ドラマとかじゃ
正義の味方 とまではいかなくても
杏子(アラームッ……! 警報ブザーをっ!)
dqnⅡ「あっま~い」 グッ!
杏子「ああっ……!」
誰かが助けに入るのが
王道だろ?
……助けてよ
杏子「いやああっ!」
ビリ ビリ ビリッ!
dqnⅢ「ウヒェへへwwwww」
この際、贅沢は言わないからさ
誰か、助けてよ
あたしが いったい何したって言うんだよ
dqn「うおほっ! いい気持ちぃっ!」
dqnⅡ「お? 見ろよ! 血ィ出てるぞwwwwww」
dqnⅢ「マジ!? 超レアもんwwwwwww」
どうして
誰も助けてくれないんだよ
dqn「うひょおおおっ!」
dqnⅡ「次次ッ! 次、俺ッ!」
dqnⅢ「うはwwwwwwwこいつ、30万くらい持ってるwwwwwww」
dqn「マジ!? 大収穫wwwwwww一人10万wwwwwww」
誰か 助けて
誰か 誰か 誰か
助けてよ!!
――翌日――
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男「……この台にするか」
―――――――――――
男「…………」 ピロピロピロ
男「…………」 ジャジャーン!
男「…………」 ピッピッロピー!
―――――――――――
男(21時……この辺にしとくか) スッ
男(…………)
男(そういや)
男(あの娘……杏子を見かけなかったな?)
男(…………)
男(まあいいか)
テク テク テク…
男「ううー! 寒っ!」
男「今日は一段と冷えるな……」
テク テク テク…
??「……ねえ」
男「ん?」
男「」
杏子「ハ……ハハハ……」
男「ど、どうしたんだ!? その姿!?」
杏子「……いいじゃない、そんな事、どうでも……」
杏子「で、さ……」
杏子「悪いんだけど……お金貸してくれないかな?」
杏子「出来れば……3万、くらい……」 フラッ……
男「…!」
――幼馴染の住むアパートの一室――
コン コン
幼馴染「? はーい?」
幼馴染(こんな遅くに……誰だろう?)
?「……遅くにごめん、幼馴染」
?「俺だ、男だ」
幼馴染「男? どうしたの?」
男「……ちょっと頼みがある。 開けてくれるか?」
幼馴染「う、うん……」
カチリ☆(開錠) ガチャ……
幼馴染「……!?」
幼馴染「…………」
男「…………」
男「……たぶん、聞きたい事がたくさんあるだろうけど」
男「今は、俺の頼みを聞いてくれ」
男「頼む、幼馴染……」
幼馴染「…………」
そこには
見知らぬボロボロの姿の女の子をおんぶしている
男が居た――
という所で本日は終了です。
なんか筆が進んじゃった。
期待 がんばって
しえん
イイハナシになりそう
―――――――――――
杏子「…………」
杏子「……う」
杏子「…………」
杏子「ここは……?」
杏子「…………」
杏子(体が……だるい……)
杏子(…………)
杏子(そうだ……あたし……”すまし”にお金借りようとして……)
杏子(…………)
杏子(そこからの記憶が……無い……)
杏子(…………)
杏子(……あたし……倒れたのかな……)
杏子(じゃあ……ここ……”すまし”の家……かな……?)
ガチャ……
???「ただいま……と」
杏子「……?」
杏子(あれ……? ”すまし”じゃない……)
杏子(誰なんだろう……)
???「あ……起こしちゃった?」
杏子「…………」 (頭を)フルフル
???「そう……うん、いいよ、そのまま寝てて?」
???「私は幼馴染って言うの。 良かったら、あなたの名前を教えてくれる?」
杏子「…………」
杏子「……スロ娘」
幼馴染「そう。 スロ娘さんね。 よろしくね、スロ娘さん」
スロ娘「……呼び捨てでいいよ」
幼馴染「そう?……じゃあ、スロ娘って言うね?」
スロ娘「……よろしく、幼馴染」
幼馴染「うん、よろしくね」 ニコ
スロ娘「…………」
スロ娘「ところで、”すまし”……じゃなくて」
スロ娘「たぶん……あたしを運んできたヤローが居たと思うんだけど……」
幼馴染「……うん。 男の事だね?」
スロ娘「男っていうのか……あいつ」
幼馴染「そう。 私は小さい頃からの付き合いでね」
スロ娘「恋人?」
幼馴染「……それを望んだ時もあったけど」
幼馴染「違うわ」
スロ娘「…………」
スロ娘(……きっと)
スロ娘(”すま……男と幼馴染……)
スロ娘(何か事情があるんだな)
幼馴染「…………」
スロ娘「……あ」
スロ娘「そういえば……この服……幼馴染が?」
幼馴染「……うん」
スロ娘「そう……」
スロ娘(と……いう事は)
スロ娘(あたしに、何があったのか……バレてるって事ね……)
スロ娘(…………)
スロ娘「うっ……ぐすっ……ひっく……」
幼馴染「! ……スロ娘」
幼馴染「…………」
コン コン
男「……幼馴染、例の女の子、目を覚ましたか?」
幼馴染「男……開いてるよ」
ガチャ
男「あ……起きてたのか」
スロ娘「…………」
男「ところで、名前は聞いたか?」
幼馴染「スロ娘だって……」
男「そうか……」
男「…………」 フウ…
男「スロ娘……起きてたのならちょうどいい」
男「聞きたい事と、やるべき事がある」
スロ娘「…………」
男「熱を出して、だるいとこ悪いが……病院へ行こう」
男「……早い内に処置した方がいい」
スロ娘「…………」
スロ娘「……あたし、健保に入ってない」
幼馴染「!?」
男「……そんな事だろうと思ったから、モグリで信頼できる医者に連絡してある」
幼馴染「!!?」
スロ娘「本当……?」
男「…………」
男「だが、ひとつ問題がある」
男「その医者はオッサンなんだ」
幼馴染「ちょ!?」
男「悪いが、俺は神様じゃない」
男「俺のできる最大限の努力はここまでだ」
幼馴染「……っ」
スロ娘「…………」
スロ娘「……わかった」
男「よし」
男「すまなかったな、幼馴染」
男「後は俺に任せてくれ」
幼馴染「……待ってよ」
幼馴染「ここまで来て、仲間外れは気分悪いわよ」
男「……事情は後で話すから」
幼馴染「嫌よ。 私、スロ娘に付き添うわ」
男「…………」
男「勝手にしろ」
―――――――――――
男「問題はないのか?」
闇医者「ああ」
闇医者「生理の周期を聞いたが、安全日の期間だ」
闇医者「膣内洗浄もしたし、まず安心だと思う」
男「そうか……」
闇医者「だがもし、生理が来ない様なら……また連れて来い」
男「わかった」
闇医者「じゃあ……キリのいい所で1万にしといてやる」
闇医者「薬代込みだ」
男「すまん、助かった。 ……ほら」
闇医者「毎度有り」
ガラガラ……
男「二人とも、待たせたな」
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
男「……疲れてるところ悪いが、スロ娘」
男「警察に被害届を出すから盗られたものを」
スロ娘「警察は止めて!」
幼馴染「スロ娘……!?」
スロ娘「お願いっ……!」
幼馴染「…………」
男「…………」
男「そうか……じゃあもう帰ろう」
男「……タクシー呼んでくる」
―――――――――――
男「おい、幼馴染」
幼馴染「何?」
男「どうしてスロ娘をお前の部屋に寝かせたんだ……」
幼馴染「……男性の男の部屋じゃ、気が休まらないからよ」
男「それはわかるが……」
幼馴染「安心して」
幼馴染「迷惑なんて感じてないから」
男「…………」
幼馴染「……でも」
幼馴染「事情を話して欲しい」
男「…………」
男「……わかった」
―――――――――――
幼馴染「スロ……プロ!?」
男「そうだ」
男「スロ娘は、同じ店で勝ち続けすぎて」
男「その金を狙われたんだ」
幼馴染「…………」
幼馴染「……こんな……若い女の子が……どうして」
男「そんな事情は知らない」
男「……この世界じゃ聞かないのがマナーだからな」
幼馴染「…………」
釘を刺された、と思った。
男……あなたも、どうしてスロプロなんてしてるの?
男は、資産家の御曹司だったはずなのに……。
男「…………」
……知られてしまった、か。
幼馴染……正直を言えば、君に知られたくなかった。
こんな……惨めな俺の姿を。
男「…………」
男「メシ……食うか?」
幼馴染「え?」
男「インスタントラーメンくらいなら、すぐ出来るけど」
幼馴染「……私がやるよ」
幼馴染「スロ娘の分も作りたいし」
男「……頼む」
幼馴染「う~ん……お粥でいい?」
男「……まあ病人がいるしな」
幼馴染「じゃ、決まり」
――翌日の朝――
――男のアパートの一室――
コン コン
幼馴染「男……男ー?」
男「……?」
男「ふあ……」 ボリボリ…
男「6:30……か」
ガチャ……
幼馴染「おはよう、男」
男「ん……」
幼馴染「じゃ、私、仕事に行ってくるね? 私の部屋、鍵は開いてるから」
男「ああ……スロ娘の事は任せてくれ」
幼馴染「夕方には戻るから」
――幼馴染の部屋――
スロ娘「…………」
スロ娘「……ん」
男「起きたか、スロ娘」
スロ娘「……”すまし”」
男「は? なんだ? すましって……?」
スロ娘「! あ、いや、何でも無い……」
男「…………」
男「ああ……あれか……俺をあだ名で呼んだのか」
スロ娘「…………」
スロ娘「そう言う男だって、あたしの事、なんか変なあだ名つけてたんだろ?」
男「……まあな」
スロ娘「なんて呼んでたんだよ?」
男「杏子だ」
スロ娘「……なんかまともすぎるね」
スロ娘「あたし、前カノにでも似てたのかい?」
男「うんにゃ、まどマギのキャラに似てた」
スロ娘「まどマギ?」
男「アニメだ」
スロ娘「うわ……キモいよ、あんた」
男「……悪かったな」
男「朝メシ、パンがあるけど……食うか?」
スロ娘「……うん」
スロ娘「…………」 モグモグ
男「そういや……」
男「すましってどういう意味だ?」
スロ娘「いつもすました顔でスロを打ってたから」
男「それで”すまし”か……納得」
スロ娘「じゃあ男は、黄色をなんて呼んでるの?」
男「あんまり変わらないな。 ”k”って呼んでる」
スロ娘「ああ……黄色だから”k”ね」
スロ娘「あいつ、なんでいつも黄色い物を身につけているんだろ?」
男「風水だよ、たぶん」
スロ娘「風水?」
男「なんか黄色いものには、お金を引き寄せる力があるって聞いた事がある」
スロ娘「へえ……それでいつも身につけてるのか」
男「ゲンは担ぎたいよな」 クス
スロ娘「そうだね」 クス
男「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「あの……さ」
男「…………」
スロ娘「今……持ち合わせが無いんだ」
スロ娘「でも、今回使ってくれたお金は、稼げる様になったら必ず返す!」
スロ娘「だから……少し待ってて」
男「…………」
男「……気にするな、と言っても無理か」
スロ娘「…………」
男「そうだな……」
男「…………」
男「あるヤローの話でもするか……」
スロ娘「……ヤロー?」
男「そいつはな……まあ言ってみれば、金持ちのボンボンだった」
スロ娘「…………」
男「何不自由なく育ち、将来も約束されていた」
男「……かに思われた」
スロ娘「…………」
男「そいつが大学生の頃」
男「両親が揃って事故死する」
スロ娘「……!」
男「一応成人してたけど、そいつには何の実績もない」
男「親の事業を受け継ぐには、経験が足りなかった」
スロ娘「…………」
男「だが、そいつには頼りになる伯父貴が居た」
男「そいつは、伯父貴の言うままに書類にサインし、やがては事業を受け継ぐ」
男「ハズだった」
スロ娘「…………」
男「……もう言わなくてもわかると思うけど」
男「そいつは伯父貴に騙された」
男「形としては、事業を含む全財産管理を伯父貴に『委任する』ものだったけど」
男「事実上……何もかもを奪われた」
スロ娘「…………」
男「そいつは……無力だった」
男「伯父貴を訴えようにも裁判費用がない」
男「まあ、仮に出来たとしても勝てるかどうか難しいけどな」
スロ娘「…………」
男「そいつは……そいつ個人が持っていた少々の金と」
男「その身一つで世間に放り出された」
スロ娘「…………」
男「そいつに頼れる所は、もう無かった」
男「知り合いはすべて伯父貴の息がかかってたし……」
男「何よりも『人』が信じられなくなっていた」
スロ娘「…………」
男「そいつは趣味でやっていたスロットで金を稼ごうとした」
男「これが割と上手くいって、なんとかなるって思えた」
スロ娘「…………」
男「……けど」
男「そいつは派手にやりすぎた」
男「他のスロプロや、稼いでいるのを目撃していたチンピラに」
男「寄ってたかってボコボコにされた」
スロ娘「……!」
男「…………」
男「焦っていたんだ……金さえあれば、全てなんとかなる」
男「日々の生活や、将来や、現実を少しでもいいものに出来ると思って……」
スロ娘「…………」
スロ娘「……だから」
スロ娘「あたしの面倒を見てくれたの?」
スロ娘「境遇が似ているあたしを……」
男「…………」
男「……さあな」
スロ娘「…………」
スロ娘「……あたしも」
スロ娘「ある女の子の話をしてもいいかい?」
男「……聞こう」
スロ娘「…………」
スロ娘「その娘はね……」
スロ娘「まあ、普通に育ってたかな」
男「…………」
スロ娘「両親はどっちも優しかったし……厳しいところもあったけど」
スロ娘「おおむね、いい環境だった」
男「…………」
スロ娘「その娘の父親は趣味……というか、筐体(きょうたい:スロ台の事)コレクターでね」
スロ娘「その娘は、小さい頃からいろんなスロットに触れる事が出来た」
男「…………」
スロ娘「……ところが」
スロ娘「その娘が高校生の頃、父親が病気で死んじまった……」
男「…………」
スロ娘「そこから坂道を転げ落ちるように、その娘の人生が一変する」
スロ娘「その娘の母親はしばらくして、ある中年と再婚した」
男「…………」
スロ娘「そいつが最低のクズ野郎でね……優しかったのは最初だけ」
スロ娘「再婚したすぐ後に仕事を辞めて、ヒモになりやがった」
スロ娘「……その娘とその母親は、そのクズの暴力に毎日怯える生活になった」
男「…………」
スロ娘「ある日」
スロ娘「その娘は、そんな暮らしにとうとう耐え切れなくなって」
スロ娘「そのクズを包丁で刺して、そこを飛び出した」
男「……!」
スロ娘「…………」
スロ娘「その娘には、ひとり良い友達がいた」
スロ娘「友達にお金を借りて、それを元手にスロで稼ぎ始めた」
男「…………」
スロ娘「……その娘は警察の目を恐れて」
スロ娘「友達にそっと金を返して……その街を後にした」
男「…………」
男「刺されたクズは、どうなった?」
スロ娘「さあね……」
男「…………」
スロ娘「その娘は……根無し草だった」
スロ娘「カプセルホテルやカラオケ、ネットカフェを転転として暮らすしかなかった……」
男(なるほど……それが荒稼ぎする理由か……)
スロ娘「…………」
スロ娘「これでおしまいだよ」
男「…………」
スロ娘「…………」
男「……そうか」
男「まあ……警察うんぬんは置いといて……」
男「現金の他に何を盗られた?」
スロ娘「……何もかもだよ」
スロ娘「防犯グッズに腕時計……後は……」
男「後は?」
スロ娘「あたしが調べた、あの店の台の情報を書き留めた手帳……かな」
男「……!」
スロ娘「それから……処女」
男「それは言わなくていい……」
スロ娘「いいよ……別に……大事にとってたってわけじゃないし」
スロ娘「いざとなりゃ……体を売ってやろうって思ってもいたから……」
男「…………」
男「……さて」
男「ちょっと出かけて来る……」 スクッ…
スロ娘「…………」
男「…………」
男「……スロ娘」
スロ娘「……ん?」
男「さっきの話の『あいつ』な」
スロ娘「うん……」
男「ボコられて死にかけた後……手を差し伸べてくれた人が居た」
スロ娘「……!」
男「そいつは、そのおかげで……なんとか今も生きている」
スロ娘「…………」
男「その時、そいつが言われた言葉を」
男「言っておく」
スロ娘「…………」
男「もうお前は」
男「ひとりじゃない」
スロ娘「!!」
男「幼馴染がな、腹が減ったら冷蔵庫のものを勝手に食ってくれってさ」
男「昼までには戻る。 じゃあな……」
パタン……
スロ娘「…………」
スロ娘「…………っ」
スロ娘「……ひぐっ……うっうっ……」
スロ娘「あううっ…………ぐすっ……ひぎっ……」 ポロポロッ…
スロ娘「……うあああっ……あうっ…………うっうっ……」 ポロポロッ…
スロ娘「ああああああっ……あっあっ……あああああああっ……っ!……」 ポロポロッ…
スロ娘「ひっくっ……ああああっ……うぐっ……ああああっ……」 ポロポロッ…
スロ娘「……ひぎっ……ああああっ……ぐっ……ああああっ……」 ポロポロッ…
スロ娘「ああああああああああああああああああああっ…………」 ポロポロッ…
スロ娘「ぐすっ………あうっ………ひぐっ……うっうっ……」 ポロポロッ…
――しばらく涙が――
――止まらなかった――
――コンビニ――
幼馴染「昨日は、突然すみませんでした……」
店長「いやいや……大事な人が病気になったら仕方ないよ」
店長「じゃ、今日も頑張ってね」
幼馴染「はい!」
テク テク テク…
幼馴染「女さんもすみませんでした……」
女「ううん、そんなに気にしなくていいよ、幼馴染さん」
女「さあ、仕事しましょ?」
幼馴染「はい!」
――バー・ヨシムネ――
カララ……ン
店主「あー悪いねー開店は夕方から……」
男「……飲みに来たわけじゃない」
店主「ほう……」
男「”副業”を頼みたい」
店主「内容によるが……ちいっと高くつくぜ?」
男「とりあえず聞いてくれ」
店主「ok、ok」
男「…………」
男「身元を洗って欲しい」
店主「名前は?」
男「スロ娘」
店主「どのくらい情報がある?」
男「……20才くらいの女の子で、高校生の時に父親を亡くした」
男「そして、ヒモになった養父を包丁で刺して逃亡生活をしている」
店主「他には?」
男「…………」
男「逃亡する際、友人に金を借りて、それを返している」
店主「他には?」
男「……これで終わりだ」
店主「ふむ……」
店主「こりゃ……難易度高めだね」
男「いくらかかる?」
店主「…………」
店主「いくら出せる?」
男「…………」
男「10万……てとこかな」
店主「話にならないな」
男「そうか……」
男「じゃ、もっと出せる様になったら、また来る」
店主「ああ。 待ってるよ」
カララ……ン
――隣町のホール(パチンコ店)――
男「…………」
男(……今のところ)
男(たいした変化は無いな)
男(…………)
男(…………)
男(”イナゴ”が出なければいいが……)
男(…………)
男(……帰るか)
――幼馴染のアパートの一室――
キィ……
スロ娘「あ、お帰り、男」
男「!?」 ドキッ
スロ娘「? どうかしたの?」
男「い、いや……」 ///
スロ娘「……?」
男「……スポーツドリンク、買ってきた」
スロ娘「ありがとう、男」
男「腹は減ってるか?」
スロ娘「うん」
男「飯にしよう」
スロ娘「美味しそう~」
男「ただのうどん、だけどな」
スロ娘「いただきます」
男「……いただきます」
ズルズル…
男「…………」
スロ娘「…………」
男「……食えなくはないな」
スロ娘「……そうだね」
男「……なんか、すまん」
スロ娘「ううん……食べられるだけ、ありがたいよ」
スロ娘「ありがとう、男」
男「あ、ああ……」 ///
―――――――――――
ガチャ
幼馴染「ただいまー」
男「幼馴染」
幼馴染「あ、男。 スロ娘は?」
男「薬が効いて眠ってる」
幼馴染「変な事してない?」
男「するか」
幼馴染「ふふ、ごめん」
男「……じゃ、俺、出かけてくる」
男「それから、これ」 スッ…
幼馴染「……何? このお金」
男「スロ娘の迷惑料」
幼馴染「…………」
男「言い方が悪かったな……なんて言うか」
男「感謝の気持ちと その他いろいろ」
男「……金で表現するべきじゃないけど」
男「幼馴染が好きに使ってくれたら、俺は嬉しい」
幼馴染「男……」
幼馴染「ん……わかった」
幼馴染「そういう事なら、もらっておくね?」
男「すまんな、幼馴染」
幼馴染「もういいよ」
男「じゃ、行ってくる」
幼馴染「うん! 行ってらっしゃい」
キィ……パタン
幼馴染「…………」
幼馴染(ふふっ)
幼馴染(行ってらっしゃい)
幼馴染(か……) ///
―――――――――――
スロ娘「…………」
スロ娘「ん……」
幼馴染「あ……起きた?」
スロ娘「幼馴染……」
幼馴染「どれどれ……? うん、熱もだいぶ下がったね」
スロ娘「…………」
幼馴染「お腹、空いてる?」
スロ娘「……ううん、まだ減ってない」
幼馴染「そっか……寝起きだもんね」
幼馴染「じゃあ、体を拭こうか?」
スロ娘「!?」
スロ娘「い、いや……自分で出来るよ」 ///
幼馴染「そう? じゃ、着替えとタオル、持ってくるね?」
スロ娘「う、うん」 ///
スロ娘「…………」 ///
幼馴染「はいこれ」
スロ娘「あ、ありがと……」 ///
幼馴染「私の服だから少し大きいと思うけど、インナーなら問題ないよね?」
スロ娘「うん」
幼馴染「それから湿らせたタオルと乾いたタオル」
スロ娘「じゃ、ありがたく使わせてもらうね」
――郊外のホール(パチンコ店)――
男(…………) ピロピロ
男(…………) ピロピロ
男(……ふう)
男(……ダメだな)
男(今日はここまでだ……) スクッ…
男(…………)
……世間では、パチプロやスロプロは
『打てば必ず勝つ』と思われているが、実際はそうじゃない。
あくまで、確率的に勝ちやすくしている、というだけだ。
例えば、スロで一箱出せば、等価交換でだいたい2万前後になるけど
投資額が1000円と1万9000円では勝ち分が大きく違う。
さらに、設定を読み違えて突き進んだら目も当てられない結果になりやすい。
どうやたって『運』という目に見えない敵に収入が左右されてしまうのだ。
男(今日は2万負け……)
男(自分で決めた投資限界額だけど)
男(もう少し打てば……という気持ちはやっぱりあるな)
男(…………)
男(少し早いし、飲んで帰るか……)
テク テク テク…
――居酒屋・オッス!番長――
ガラガラ… ラッシャーイ
男「ビール、生で」
ヘイ! 生一丁!
男「…………」
?「あれ~? 男くん?」
男「……え?」
男「! ……女さん」
女「久しぶり……元気そうね」
男「その節は、お世話になりました」
女「止めてよ、そんな他人行儀な言い方」 クスクス
女「……そっか。 あれから、もう2年になるのか」
女「過ぎてしまえば、あっという間ね」
男「女さんは、今もコンビニで?」
女「うん……でも最近、例のパチンコ店のボッタクリで」
女「お客がだいぶ減ったわ」
男「そうですか……」
女「私もいつ、首を切られるか……」
男「…………」
女「君は相変わらずスロットで?」
男「今時、大学中退者なんて何処も雇ってくれませんよ」
女「……世知辛い世の中よね」
女「今も一人?」
男「……ええ」
女「んー? 何? 今の間は?」
男「……ちょ、ちょっと、複雑な事情が……」
女「なによー。 命の恩人に隠し事は良くないぞー?」
男「……猫を拾いました」
女「…………」
女「牝?」
男「……そ、そうです」
女「おお! やるじゃない! そのままゴールインしちゃいなよ!」
男「……無理ですよ。 俺なんかじゃ」
女「…………」
女「まあ……現実問題、安定しない収入とか、いろいろ考えちゃうんだろうけど」
女「時には思うがまま、行動してもいいと思うけどな」
男「…………」
女「……もちろん決めるのは、あんただけど」
女「結婚とかって、勢いつけないと、なかなか出ないもんだし……」
女「その娘に私みたいになって欲しくないしね」
男「…………」
女「その娘、なんて名前?」
男「スロ娘です」
女「ふうん……拾ったって事は……家出娘?」
男「そんなとこですね」
男「実は……ヨシムネの”副業”に身元を洗ってもらうつもりです」
女「あそこは高すぎよ……仕事は確かだけど」
男「わかってます」
男「どうなっているのかわらないけど……」
男「帰るべき場所と家族が居るのなら、返してやりたいと思って」
女「…………」
女(自分がその『家族』になろうとは思わないんだね……相変わらず)
女「…………」 フウ…
女「じゃ、そろそろ私、帰るわ」
男「そうですか……」
女「おっちゃーん、おあいそー」
マイドー
女「……男くん」
男「はい?」
女「久しぶりに話せて嬉しかった」
男「俺もです」
女「でも……」
男「?」
女「ううん、何でも無い」
男「はあ……」
女「じゃ……またね」
男「あ、はい……また」
男「…………」
――幼馴染のアパートの一室――
幼馴染「はい、夕御飯だよ」
グツ グツ グツ…
スロ娘「うわぁ……美味しそうな鍋」
幼馴染「まあ、ただの水炊きだけどね……」
スロ娘「いただきます!」
幼馴染「いただきます」
ハム ハム
スロ娘「んまい!」
幼馴染「ふふ、良かった」
ムシャ ムシャ
スロ娘「本当に美味しいよ!」
スロ娘「昼、男にうどんを作ってもらったんだけど……」
スロ娘「比べ物にならない!」
幼馴染「うわ……男が作ったもの、よく食べられたね」
スロ娘「本人も『食えなくはない』って言ってたな」
幼馴染「高校生の頃、何度か作ってもらったけど……」
幼馴染「塩と砂糖を間違えるのは当たり前」
幼馴染「必ず何か、自分オリジナルのアレンジを加え様とするのよ」
スロ娘「例えば?」
幼馴染「コーンスープに和風の風味を入れる為にカツオ出汁を加えたり」
幼馴染「『テレビで見た』とか言って、味噌汁にあんこ餅入れたり……」
スロ娘「……酷いね、それ」
幼馴染「まあ、唯一の救いは、本人も自覚してるって所ね」
幼馴染「私は男に、何か作るのなら、とにかくマニュアル通りに作りなさいって」
幼馴染「口を酸っぱくして言ったわ」
スロ娘「それでどうにか、食えるものが作れる様になったと……」
幼馴染「みたいね」
幼馴染「私……男との付き合いは、高校で終わってるし」
幼馴染「それ以降の男の事は、知らないの」
スロ娘「…………」
スロ娘(そういえば……男と恋人でいたい時期もあったって言ってた)
スロ娘(……何があったんだろう)
スロ娘(…………)
スロ娘(っていうか、あたし……男の『その後の話』、知ってるんだ)
スロ娘(……言うべき?)
スロ娘(…………)
スロ娘(ううん……それは男が決めるべき事だよね)
幼馴染「…………」
幼馴染「男……何があったのかな?」
スロ娘「!」
幼馴染「スロ娘……知らない?」
スロ娘「…………」
スロ娘「そういうの……聞かないのがフツーだから……」
幼馴染「…………」
幼馴染「……そっか」
幼馴染「…………」
幼馴染「私……たぶん、二人に比べたら、大した事ないんだろうけど」
幼馴染「家を飛び出してきたんだ」
スロ娘「家出?」
幼馴染「そうね。 そうなるかな……」
スロ娘「…………」
スロ娘「理由を聞いてもいい?」
幼馴染「…………」
幼馴染「お見合いをさせられたの」
スロ娘「うん」
幼馴染「……いつかは、結婚しなきゃって思ってたけど」
幼馴染「私に黙って……騙して、お見合いをさせられたの」
スロ娘「…………」
幼馴染「両親は……私の為を思ってそうしたのかもしれない」
幼馴染「でも」
幼馴染「裏切られたって思ったわ……」
幼馴染「私の事、そんなに信用してくれてなかったのかって……」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染「……くだらない、かな?」
スロ娘「ううん……そんな事ない」
スロ娘「ただ……羨ましいって思った」
幼馴染「え……?」
スロ娘「幼馴染には、帰れるところが……失敗しても戻れるところがある」
スロ娘「あたしには……もう……そういうの、ないから」
幼馴染「…………」
コン コン
男「幼馴染、いいか?」
幼馴染「男? いいよ、入って」
ガチャ…
男「スロ娘、大丈夫か……って」
男「今、食事か」
スロ娘「お帰り、男」
幼馴染「男も食べる?」
男「すまん、飲んできた」
スロ娘「ずいぶん早いね? 今日はダメだったの?」
男「……まあな」
男「元気ならそれでいい。 じゃ……」
幼馴染「あ……うん」
幼馴染「お休み、男」
男「お休み、幼馴染、スロ娘」
スロ娘「お休み」
パタン…
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
グツ グツ グツ…
――男のアパートの一室――
男「ふう……」
男「さっぱりした……」
男「……さて、もう寝るか」
ゴソ ゴソ…
男「…………」
俺は、布団に入りながら、なかなか寝付けなかった。
いつもより早い時間だったし……それほど疲れてもいなかったし。
スロ娘「あ、お帰り、男」
どうしてか……スロ子のこの言葉が忘れられなかった。
男「…………」
男「もうお前は」
男「ひとりじゃない」
男「…………」
スロ娘に言ったあのセリフ……
もしかしたら、俺は……
――自分自身に言った言葉なのかもしれない、と思った――
本日はここまでです。
素晴らしいペースだ
支援
続きに期待
わちゃー。女の一人称間違えてるー。
女は『私』って言う事に脳内補完してください。
――数日後――
――コンビニ――
ピッ ピッ ピッ
幼馴染「こちら、3点で、1280円になります」
幼馴染「ありがとうございました」
幼馴染「いらっしゃいませ!」
女「幼馴染さん、ちょっとバックに下がるね?」
幼馴染「あ、はーい」
女「よろしくー」
幼馴染「お客様、お待たせしました」
ピッ ピッ
幼馴染「こちら、2点で、720円になります」
幼馴染「はい、1000円お預かりします……」
あれから、数日が過ぎた。
私と、スロ娘の奇妙な共同生活は、続いている。
考えてみれば不思議な事だった。
彼女は、見ず知らずの赤の他人……ただ、男の知り合い、というだけ。
……もちろん、放っておけないっていうのは一番の理由だと思う。
ううん……それは二番目かな……。
一番は、『お帰りなさい』って言ってくれるのが嬉しいから、かもしれない。
スロ娘の体は、もうだいぶ良くなっていた。
本当は『今日から稼ぐんだ!』と、ずいぶん息巻いていたけど
男にたしなめられて、私の部屋で留守番をしてる。 ふふっ。
――隣町のホール(パチンコ店)――
男(…………)
dqn「ひょー!! また、大当たりだぜぇー!!」
dqnⅡ「うめぇー! この店、マジチョーうめぇー!」
dqnⅢ「ヒャハハハッー! 今日もアスナちゃんと飲めるー!」
男(…………)
男(……恐れていた事が、起こった、か……)
dqnⅡ「ああん? おうこら、何見てんだよ?」
男「いえ……」
dqnⅢ「なになに~? シめられたいわけ~?」
dqnⅡ「その台もよさげじゃーん? 俺に譲れよ……オラァ!」
ガスッ……!
男「ぐっ……」 ドサッ……
dqn「おっ、コインごと譲ってくれんの~?」
dqnⅢ「チョー太っ腹wwwwww」
dqnⅡ「うんじゃ、もらうわ。 ありがたくなwwwwww」
男「…………」
―――――――――――
男「ふう……」
男「…………」
k「……災難でしたね」
男「あ……どうも」
k「…………」
k「この店……もうダメですね」
男「最悪の”イナゴ”ですから……」
k「……はあ」
k「…………」
k「あの……」
男「ん?」
k「つかぬ事を聞きますが……ええと」
k「ポニーテールの同業者の事、何か知ってますか?」
男「……!」
k「彼女が顔を見せなくなって、彼らが現れたものですから……」
男「…………」
男「……彼らがやったかどうか、わかりませんが」
男「いろいろ、盗られたそうです」
k「……!」
k「そう……ですか」
k「危ないな、とは思っていたんですが……」
男「……俺もですよ」
老人「はあ……」
老人「おや? 君は……」
男「あ……どうも」
老人「いつも、7を揃えてくれてありがとう」
男「いえ……」
老人「でも……もうここは、怖いねえ……」
男「…………」
老人「じゃあ……またね」
男「ええ……」
男「…………」
――夕方――
――コンビニ――
女「お疲れ様」
幼馴染「お疲れ様です」
女「それじゃ、また明日ね、幼馴染さん」
幼馴染「ええ、また明日!」
テク テク テク…
幼馴染「ふう……」
幼馴染「さて、今日は何を作ろうかな?」
幼馴染「…………」
幼馴染(……それにしても)
幼馴染(人間一人を養うのって……大変だな)
スロ娘とほんの数日過ごして……食べ物の減りが本当に早い事に気がついた。
単純に言えば、倍のスピードになったってだけなのに……
実際に体験して、本当に驚いた。
…………
私は、両親のありがたみを初めて知った気がした。
幼馴染(…………)
幼馴染(……私のしてる事は)
幼馴染(ただのわがまま、なのかな……)
幼馴染(…………)
幼馴染(……でも)
幼馴染(結婚とか、お見合いとかって……)
幼馴染(本人に内緒にしていい事じゃない)
幼馴染(…………)
幼馴染(私は……)
幼馴染(…………)
――幼馴染のアパートの一室――
ガチャ
幼馴染「ただいま~」
スロ娘「お帰り、幼馴染」
幼馴染「ふふっ、もうすっかり元気だね」
スロ娘「そうだよ! ……なのに男の奴」
幼馴染「まあまあ……それよりもお腹空いたでしょ?」
幼馴染「ご飯作るね」
スロ娘「……いつもごめん、作ってもらって」
幼馴染「いいのよ、私が好きでやってるんだし」
スロ娘「今日は何?」
幼馴染「カレーだよ」
スロ娘「うわぁ、楽しみ!」
幼馴染「ただし、甘口だけどね」
スロ娘「うん、別に構わないよ」
スロ娘「あたし、辛いの苦手だし」
幼馴染「そっか、なら良かった」
アハハ……
スロ娘「…………」
スロ娘「なんか、手伝える事、ある?」
幼馴染「え? ……う~ん、そうねえ」
幼馴染「じゃあ、ジャガイモの皮むきをしてくれる?」
スロ娘「うん!」
―――――――――――
幼馴染「いただきます」
スロ娘「いただきます」
ハム ハム…
スロ娘「美味しい!」
幼馴染「良かった」 クス
スロ娘「自分も手伝ったから、尚の事、美味しく感じる!」
幼馴染「そうだよね~。 それ、わかるな」
幼馴染「私は、作ったものを美味しいって言ってくれて、すごく嬉しいな」
スロ娘「そ、そう?」 ///
幼馴染「うん!」
スロ娘(…………)
スロ娘(……今度は、あたしが幼馴染に何か作ってあげたいな)
幼馴染「あ、そういえばさ、今日私が働いてるコンビニに……」
―――――――――――
スロ娘「へえ~……変わった人も居るもんだね」
幼馴染「女さん……ああ、年上の同僚の人なんだけど」
幼馴染「そういう人をたまに見かけるのが、楽しみの一つなんだって」
スロ娘「あんまり友達になりたくない感じだけどね、その人」
幼馴染「まあ……そうだけど」
幼馴染「おかげで、私一つ気がついた事があるの」
スロ娘「うん」
幼馴染「なんて言うか……」
幼馴染「今まで、コンビニを利用してて何とも思わなかったけど」
幼馴染「店員をやってみて、ああ、自分も結構見られて……ううん」
幼馴染「観察されてたのかな?って思えるようになった」
スロ娘「…………」
幼馴染「よく利用してくれてる常連さんや、たまにしか来ないけど特徴のある人とか」
幼馴染「いつも決まった物しか買わない人とか……本当にいろんな人がいるんだなって」
幼馴染「『体感』出来たの……」
スロ娘「…………」
幼馴染「ふふ、世間知らずだなって、思ったでしょ?」
スロ娘「! う、ううん、そんな事は……」
コン コン
男「幼馴染、入っていいか?」
幼馴染「あ、男。 いいよ、入って」
ガチャ……
幼馴染「お帰り、男」
スロ娘「お帰り~」
男「…………」
幼馴染「……?」
スロ娘「どうしたの? 男?」
男「い、いや……何でもない」 ///
幼馴染・スロ娘「???」
男「上がるぞ」
男「お、カレーか……」
幼馴染「うん。 男も食べる? 甘口だけど……」
男「甘口か。 ウ○ターソースある?」
幼馴染「あるよ」
スロ娘「何に使うの?」
幼馴染「カレーに入れるのよ。 辛味をつける為に」
スロ娘「うへぇ……そこまでしますか」
男「大人の口には、甘口じゃ物足りないんだよ」
スロ娘「どうせあたしは子供ですよーだ」
幼馴染「ふふっ、わさびとカラシがダメなくせに」
男「幼馴染っ!」 ///
スロ娘「へー、大人の口ねえ」 クスクス
男「くっ……」 ///
幼馴染「はい、男。 カレーとウ○ターソース」
男「ああ……」 カチャ…
スロ娘「男、行儀が悪いぞ。 ちゃんといただきますって言いなよ」
男「…………」
男「……いただきます」
スロ娘「うむ。 召し上がれ」
幼馴染「ふふふっ♪」
男(……肩身が狭い) モグモグ…
―――――――――――
男「ごちそうさま」
スロ娘「どういたしまして」
幼馴染「お粗末さま」
男「……幼馴染はわかるけど、どうしてスロ娘がどういたしまして、なんだ?」
スロ娘「そりゃあたしも作るの手伝ったから」
男「本当か?」
幼馴染「うん。 はっきり言って、男よりよっぽどいい仕事してくれたわ」
スロ娘「にひひ」 ///
男(…………)
男(真面目に肩身が狭い……) クスン…
男「まあ……メシ、ありがとう。 美味かった」
幼馴染「ううん。 そんなに気にする事じゃないよ」
男「代わりに、これ……」 ガサ…
男「俺が晩飯に、と思って買ってきたサンドイッチ」
男「良かったら腹が減った時に食ってくれ」
スロ娘「おー。 ありがたく貰っとくね」
幼馴染「別に男が食べてもいいんじゃない?」
男「…………」
男「いいんだ。 カレー美味かったし」
幼馴染「そう?」
男「さて……スロ娘」
男「ちょっと話がある」
スロ娘「え?」
男「今日……スロ娘がネグラにしている店に行ってきた」
スロ娘「……!」
男「…………」
男「結論から言う」
男「あの店は、諦めろ」
スロ娘「!!」
スロ娘「なんでだよ!?」
男「”イナゴ”が出た」
スロ娘「イナゴ……?」
幼馴染「害虫の?」
男「…………」
男(”イナゴ”を知らないのか……スロ娘)
男「…………」 フウ…
男「”イナゴ”っていうのは……徒党を組んだスロプロ集団の事だ」
スロ娘「え……?」
幼馴染「スロプロ……集団?」
男「あの店で見た奴の腕は、大した事のない連中だけど」
男「腕に限らず『集団』で稼ぎに来るのが厄介なんだ」
スロ娘「うん……」
幼馴染「…………」
男「まず……人数を集めると様々なメリットがある」
男「台の確保や、スロ台・店の情報集め……シングルでは出来無い役割分担……」
男「つまり、『分業』が出来るんだ」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「だが、デメリットもある」
男「稼いだ金の分配だ」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「これが非常に厄介でな……スロ娘は分かっていると思うが」
男「スロットは出る時と出ない時がある」
男「分業している分、頭で分かっていても、つい打ち子の人間に責任が転化されやすい」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「それ故に――」
男「稼げる時に根こそぎ稼ごうとしてしまう」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「もう言わなくても分かると思うが」
男「”イナゴ”に食い荒らされた店は、もう設定を甘くできない」
男「そいつらが居なくなるまでのチキンレースになり……」
男「結果として、一般の客が寄り付かなくなってしまう」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「まあ……そうじゃないプロ集団も居るかもしれないが……」
男「俺は見た事がないな」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
スロ娘「……冗談じゃない」
スロ娘「あたし、今からでも行って、稼いでくる!」
男「止めるんだ、スロ娘」
スロ娘「どうしてだよ!?」
男「……俺は顔を知らないけど」
男「お前を襲った連中かも知れないんだぞ?」
スロ娘「!!」
幼馴染「!!」
スロ娘「……あ」
スロ娘「あたしの手帳……!?」
男「…………」
スロ娘「盗られた、あたしの手帳を見て……あの店に……!?」
男「…………」
男「タイミング的に、な……」
スロ娘「……っ」
幼馴染「スロ娘……」
スロ娘「……んだよ、それ」
スロ娘「あたし……あの店の……台を調べ上げるのに」
スロ娘「一ヶ月もかかったのにっ!」
男「…………」
男「落ち着け、と言っても……無理、か……」
スロ娘「悔しいっ……悔しいよ……!」 ポロポロ…
スロ娘「あたし……あたし……ううっ……」 ポロポロ…
幼馴染「…………」
男「……これが、一つの店に依存する怖さだ、スロ娘」
スロ娘「……!」
男「”イナゴ”だけじゃない」
男「店長が代わったり、チェーン店なら経営方針の変更で」
男「突然、店の様相が代わったりする」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「そんな時に備えて、常に3~4店の優良店を把握しておくのが」
男「”プロ”なんだ」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
男「……すまん、偉そうな事を言ってしまったけど」
男「済んでしまった事は……もうどうしようもない」
男「これから気をつければいい、スロ娘」
スロ娘「…………」
男「それから、しばらくは俺が店を紹介してやる」
スロ娘「!」
男「そこで最近のスロ台の癖や仕様・特徴も教える」
スロ娘「男……」
男「まあ……俺に出来る事は、それくらいだがな……」
スロ娘「ううん……すごく助かるよ、男」
スロ娘「ありがとう!」 ニコ!
男「ハハハ……さっき泣いたカラスが、もう笑ったな」
スロ娘「えへへ……」 ///
ハハハ……
幼馴染「…………」
幼馴染(私は……なんて無力なんだろう……)
幼馴染(私の働くコンビニに……とも思ったけど……)
幼馴染(スロ娘が入ったら、女さんがどうなるか分からない……)
幼馴染(…………)
幼馴染(……すごいな、男)
幼馴染(…………)
――さらに数日後の深夜――
――繁華街の裏路地――
ギャハハハ……
dqn「どうよwwwwwもう一軒、行っとく?wwwww」
dqnⅡ「やべぇwwwwwもう俺の財布空っぽーwwwww」
dqnⅢ「明日もあの、おいしい店に集合~wwwww」
dqn「そういやよ、アスナちゃんとは、どうなったwwwww」
dqnⅢ「ガード硬すぎwwwww今日も5万も持ってかれたwwwww」
dqnⅢ「でも笑顔チョー好みwwwww」
dqnⅡ「俺はスグハちゃんwwwwwあの胸最高wwwwww」
dqn「それにしてもwwwwwまた美味しい子猫ちゃん落ちてねーかなwwwww」
dqnⅡ「あーわかるwwwwwやらせてくれた上にお金もたんまりくれたwwwww」
dqnⅢ「お前3連射したっけwwwww」
dqn「うっせwwwww溜まってたんだよwwwww」
dqnⅡ「でもマジウマかったwwwww」
dqnⅢ「思い出したら、俺の主砲バッキバキwwwww」
dqn「しまえwwwww」
dqnⅡ「ああwwwwwまた孕ませてぇwwwww」
dqnⅢ「俺もwwwww」
ギャハハハ……
コッ……コッ……コッ……
dqn「ん……?」
???「…………」
dqnⅡ「んだぁ? おっさん?」
dqnⅢ「邪魔だぜ、そんなとこ突っ立ってるとよぉ……」
そいつは……割と背の低い感じだったが、コートに身を包み、黒縁のメガネをかけ
そして……冷たく、張り詰めた空気をまとっていた。
だが……酔っていた事もあって、3人はそれに気がつかない。
コート「…………」
dqn「邪魔だっつてんだろ!」 ブンッ!
バキッ! ……――ッン、ドガァッ!!
dqnⅡ・Ⅲ「!!?」
何が起こったのか……2人にはわからなかった。
殴りかかったはずの仲間の一人の方が、軽く10mくらい吹き飛ばされてkoされたのだ。
……だが、本能的に感じる事は出来た。
コート「…………」
こいつは、ヤバイ、と……。
dqnⅡ「ひっ……!」 ダッ!
dqnⅢ「! ま、待てよ! 俺も……!」
バキッ!!
dqnⅢ「!!!」
dqnⅡ「」
黒服「…………」
いつの間にか……後ろには、コートの仲間と思われる
黒い背広を着た大柄な人物が立っていた。
どう見ても、カタギの人間とは思えなかった。
dqnⅢ「ひっ……!」
dqnⅢ「な、何なんだよ、あんたら……!」
dqnⅢ「お、俺達が、何したって、い、言うんだよ……!?」
コート「…………」
コート「……最近」
dqnⅢ「……!」 ビクンッ
コート「お兄さん方、えらく羽振りがいいじゃないか……」
コート「ちょっと俺にも教えてくれないか?」
コート「その方法を……」 ニヤリ…
dqnⅢ「……ひっ」
dqnⅢ「そ、それは……」
コート「んー……?」
dqnⅢ「そ、その……な、何日か前に」
dqnⅢ「ポニテの小娘から、いろいろ盗ったからだよ……」
コート「……ほう」
コート「それで?」
dqnⅢ「そ、それでも何も……結構たんまり持っていたってだけさ……」
コート「…………」
コート「それじゃあ、ないんだよな……俺の聞きたい事は……」
dqnⅢ「…………」
コート「お前ら……スロットで稼ぎまくってるじゃないか?」
dqnⅢ「……!」
コート「儲け話は……もっと共有すべきだと、俺は思うんだが……」
コート「なあっ!」
ゴスッ…!
dqnⅢ「ぐぅおえっ……!?」
なんて事のない一撃……に見えたそれは、とんでもなく重い一発だった。
コート「まあ……秘密にしたいのなら構わないけど……」
コート「お前の体がどこまで持つかな……?」
コート「クックックッ……」
dqnⅢ「ひっ……ひいいいっ……!」
dqnⅢ「さ、さっき話したポニテの小娘が、あの店の台を調べた手帳を持ってたんだよ!」
コート「……ほう」
コート「その手帳はどこにある?」
dqnⅢ「あ、あいつだ! dqnが持ってる!」
コート「そうか……なるほど」
dqnⅢ「い、命だけは……お助け……」 ガクブル…
コート「ん? ああ……安心しろ」
コート「お前らの命なんぞ興味ない……」
黒服「…………」
黒服「……ありました」つ(手帳)
コート「そうか……」
コート「ふんっ!」
ドゴッ…! ……ドサッ
dqnⅢ「」
コート「ふう……」
コート「(クロロホルムを)嗅がせとけ」
黒服「はい」
そう言うとコートは、懐から何かの小瓶を出した。
その小瓶の蓋を開け、スポイトで中身の薬品を吸うと
クロロホルムを吸わせた者から、その『目』に、それを垂らした。
ジュウウウゥゥゥッ……
―――――――――――
コート「…………」
コート「これで最後……と」
黒服「お疲れ様です」
コート「ふふ……お前もな」
黒服「いえ……これが手帳です」
コート「ふむ……」
コート「…………」 パラパラ…
コート「……ほう」
黒服「…………」
コート「これはすごい……よく調べたものだな」 パラパラ…
黒服「…………」
コート「人は見かけによらない、とは、よく言ったものだ……」
黒服「いかがなさいます?」
コート「ん?」
黒服「探しますか? この小娘を」
コート「……ふむ」
コート「まあ……捨てておいてもいいだろう」
コート「そろそろお仕置きがいるかな、と思っていたが」
コート「それは、あの3人がやってくれたようだしな……」
黒服「そうですか……」
コート「まあ、それに懲りず……店にやってきて稼ぎ出したら」
コート「容赦はしないがな」
黒服「…………」
コート「まったく……”イナゴ”め……」
コート「せっかくのオヤジの遊び場を食い荒らしやがって……」
黒服「ですが……不幸中の幸い、プロ共も居なくなりました」
コート「まあそうだな……」
コート「だが……あいつらは、分をわきまえた、『解っている』連中だった」
コート「最近は見かけなくなった『本物』のプロだ」
黒服「…………」
コート「経営者としては失格だが……」
コート「己の腕だけで生きているあいつらと、設定の読み合いをするのは」
コート「正直、嬉しく思っていた……」
黒服「…………」
コート「……さて、そろそろ帰るか」
黒服「そうですね」
コート「おっと……大事な物を忘れるところだった……」 スッ…
黒服「…………」
コート「待たせたな。 まあこれでモンタージュを作られる事もないし」
コート「スロットで稼ぐ事も出来ないし……」
コート「万が一、捕まったとしても傷害罪だ」
黒服「その時は私が……」
コート「……お前は、優しいねぇ」 クックックッ…
コッ……コッ……コッ……
コートの懐に再びしまわれた、その小瓶には
『 硫 酸 』 と書かれていた。
――数日後――
――コンビニ――
幼馴染「…………」
幼馴染「ふう……」
女「どうしたの? 幼馴染さん?」
幼馴染「! ……いえ」
女「悩み事?」
幼馴染「……そんなところです」
女「ふ~ん」
女「そういうのはさ……」
女「誰かに話すと、案外スッキリするものよ?」
幼馴染「…………」
女「私でよければ聞くけど?」
幼馴染「…………」
幼馴染「……えと」
幼馴染「じゃあ……お昼にでも」
女「うん! そうねえ……今日は大衆食堂にしよっか?」
幼馴染「はい」
――昼――
――大衆食堂・超黒男――
女「で? どうしたの?」
幼馴染「…………」
幼馴染「女さんは、自分が無力だな、って感じた事……ありますか?」
女「そんなのしょっちゅうよ」 フウ…
幼馴染「じゃあ……どうやって、その気持ちを切り替えているんですか?」
女「…………」
女(何か……抱え込んだのかしら?)
女「……う~ん、そうねぇ……」
女「その時、その時で……いろいろやったわ」
幼馴染「……いろいろ?」
女「ビール飲んだり、カラオケ行ったり……」
女「ストレス解消目的と同じ要領で対処してた」
幼馴染「…………」
女「……でも」
女「一個だけ……それじゃどうにもならないのがあった」
幼馴染「…………」
女「昔……」
女「年下なんだけど……私の方が好きになった人が居てね」
女「同じ部屋で暮らした事もあった……」
幼馴染「…………」
女「でもね」
女「ある日、分かっちゃったんだ」
幼馴染「…………」
女「その人の”心”に、私は入り込めないって……」
幼馴染「……!」
女「…………」
女「無力だったなー……私」
幼馴染「…………」
幼馴染「それで……どうなったんですか?」
女「…………」
女「……何も……出来なくなった」
幼馴染「……?」
女「それが分かってから、しばらく何も考えられず……」
女「しばらく、ほうけてたの……2日くらい」
幼馴染「え!?」
女「ふふふ……」
幼馴染「…………」
女「…………」
女「それでね、ちょっと恥ずかしいんだけど……我に返ったきっかけが」
女「グウゥゥッって鳴った、お腹の音だったのよ! 笑えるでしょ?」
幼馴染「は、はあ……」
女「アハハ……」
女「…………」
女「けど、その時にね……」
女「ああ、私はお腹が空いたって思ってる」
女「ご飯が食べたいって思ってる……」
女「これからも生きていたいって思ってる」
女「そう、考える事が出来たの」
幼馴染「…………」
女「それで、そう考える事が出来たらさー」
女「冷蔵庫にあった食べ物、ほお張りながら」
女「何よ! あんな奴! 最低の甲斐性無しじゃない!」
女「そんな悪口言いながら、絶対あいつよりいい人、見つけてやる!って息巻いたの!」
幼馴染「…………」 クスッ
女「あーもう、思い出したら、また腹が立ってきた!」
幼馴染「女さん……」
女「ふふふ……」
女「…………」
女「役に立ったかな?」
幼馴染「はい、とっても!」
女「そう……良かった」 クスッ
幼馴染(…………)
幼馴染(女さんに比べたら……私の悩みなんて、全然大した事ない)
幼馴染(私は……何も出来なくなる程、落ち込んでいない)
幼馴染(そして、立ち直る努力だってしていないわ……!)
幼馴染(私は……私の出来る事をやる)
幼馴染(答えは……きっとその内、見つかる)
幼馴染(それまでは、しっかりと前を向こう!)
幼馴染「…………」
幼馴染「ところで……」
女「ん?」
幼馴染「その……好きになった人は、今、どうしているんですか?」
女「ああ……フツーに元気にしてたわ」
女「この前、飲み屋で会ったばかりだし……」
幼馴染「え?」
女「そういえば……牝猫を拾ったって言ってたなー」
幼馴染「い、今も顔を付き合わせているんですか!?」
女「まさか」 クスクス
女「本当に偶然、たまたま会っただけよ……」
幼馴染「はあ……」
女(…………)
女(……そういえば)
女(まったく変わっていなかったな……)
女(良くも悪くも……ね)
――郊外のホール(パチンコ店)――
スロ娘「…………」 ピロピロ
スロ娘「…………」 ピロピロ
スロ娘「……ふう」
スロ娘(今日はこの辺にしとこう……)
スロ娘「すみませーん、交換、お願いしまーす」
店員「あ、はい」
―――――――――――
あたしが男にレクチャーを受け始めて、数日が経った。
……慣れていないart機に悪戦苦闘している。
男が言うには、スジは良いらしい。
それから、男と同じように、遅くとも21時で上がる癖をつけている。
あんな目に合ったんだから、簡単に出来ると思っていたけど……
習慣って恐ろしい。 つい、遅くまで打ってしまう……。
早く慣れなきゃ……自分の為にも。
スロ娘「…………」
スロ娘(……プラス8000円)
スロ娘(か……)
男のやり方は、だいたい理解している。
理にかなってるし、何よりも目立たない様に物凄い配慮がなされてる。
けど……
スロ娘「…………」
スロ娘(……なんか、細々やってるって感じ)
こんな事を考えてしまうのは……きっと
あたしが、まだまだ世の中の恐ろしさを理解していないからだ。
そう思いながらも……あたしは、釈然としなかった。
スロ娘「! ……男」
男「お……スロ娘」
男「どうだった?」
スロ娘「プラスだよ。 8000円だけど……」
男「そうか。 御の字だな」
スロ娘「男は?」
男「なんとか3000円浮いた」
スロ娘「そう……」
男「…………」
男「不満か?」
スロ娘「…………」
スロ娘「ううん……」
男「言っとくけど……あの店が異常だったんだ」
男「こんな不景気の時代、有る訳が無い……」
スロ娘「だから違うって」
男「じゃあ、何なんだ?」
スロ娘「…………」
スロ娘「上手く……言葉に出来ない」
男「…………」
――幼馴染のアパートの一室――
スロ娘「ただいまー」
幼馴染「あ、お帰り、スロ娘」
スロ娘「うん……」
幼馴染「……?」
―――――――――――
スロ娘「ごちそうさま」
幼馴染「ごちそうさま」
カチャ カチャ
スロ娘「あ、洗い物、あたしがする」
幼馴染「そう? じゃあ、お願いね」
スロ娘「ふう……」
幼馴染「お疲れ様、スロ娘」
スロ娘「ううん。 これくらい何でもないよ」 クス
幼馴染「はい、お茶」
スロ娘「ありがとう」
ズズズッ……
スロ娘「ふう……美味しい」
幼馴染「お風呂、沸いてるけど?」
スロ娘「ああ……入ろうかな」
スロ娘「幼馴染は?」
幼馴染「私は、もう入ったから」
スロ娘「そう……」
スロ娘「…………」
スロ娘「あの、さ……幼馴染」
幼馴染「うん?」
スロ娘「マナー違反だと思うけど……」
スロ娘「聞きたい事があるの」
幼馴染「……うん」
スロ娘「…………」
――知りたい――
スロ娘「幼馴染は……」
スロ娘「男と何があったの?」
幼馴染「!!」
――男の事、もっと知りたい――
本日はここまで。
乙
支援
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「……ごめん」
幼馴染「……!」
スロ娘「やっぱり今の、忘れて……」 スッ…
幼馴染「スロ娘……」
スロ娘「お風呂に行ってくる」
幼馴染「あ……うん」
幼馴染「…………」
―――――――――――
サアァァッ……
スロ娘「…………」
スロ娘(どうかしてる)
スロ娘(あたし……)
スロ娘(…………)
スロ娘(…………)
スロ娘(……はあ)
スロ娘(モヤモヤする……)
スロ娘(…………)
―――――――――――
スロ娘「出たよ」
幼馴染「あ、うん」
幼馴染「電気、髪、乾かした後、消してくれる?」
幼馴染「私、もう休むから……」
スロ娘「……うん、いいよ」
スロ娘「…………」
―――――――――――
スロ娘「じゃ、消すよ? 幼馴染」
幼馴染「…………」
スロ娘(……もう寝ちゃったか)
パチンッ……フッ……
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染「……スロ娘」
スロ娘「! ……起きてたの?」
幼馴染「うん……」
スロ娘「そう……何?」
幼馴染「…………」
幼馴染「さっきの話だけど……」
スロ娘「う、うん……」
幼馴染「…………」
幼馴染「私……男に告白して」
幼馴染「断られているの……」
スロ娘「……!」
スロ娘「…………」
スロ娘「そう……だったの……」
幼馴染「…………」
幼馴染「あの頃……高校生の頃だけど」
幼馴染「男はモテたんだ」
スロ娘「……まあ、割とイケメンだしな」
幼馴染「お金持ちだったけど……それを鼻にかけない人だったしね」
幼馴染「成績も優秀で、誰もが将来を有望視してたわ」
スロ娘「…………」
幼馴染「私……焦ってたの」
スロ娘「……え?」
幼馴染「男の周りには、いつも誰かしら可愛い女の子がいて……」
幼馴染「男は、誰に対しても分け隔てなく話してたし……」
幼馴染「告白してダメだった娘もたくさん居た」
スロ娘「へえ……」
幼馴染「…………」
幼馴染「そのせいもあってか……だんだん男と私の時間は少なくなっていって」
幼馴染「男の態度は、小さい頃からずっと変わらなかったけど……」
幼馴染「不安で不安でしょうがなかった」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染「私」
幼馴染「精一杯の勇気を振り絞って、告白した」
スロ娘「…………」
幼馴染「……私の告白を聞いた男は」
幼馴染「今まで見た事もなかった、落胆した表情で……」
幼馴染「『断る』って……」
スロ娘「……!」
幼馴染「…………」
スロ娘「……どうして?」
幼馴染「…………」
幼馴染「わからない」
スロ娘「…………」
幼馴染「理由は聞いていないの」
幼馴染「……恐ろしくて」
スロ娘「…………」
幼馴染「それからは、辛かったな」
幼馴染「告白を断られた事も大きいけど……」
幼馴染「私が知る限り……見た範囲で」
幼馴染「男は、笑わなくなったから……」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染「これでおしまい」
スロ娘「! ……う、うん、ありがとう……」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染(……スロ娘)
幼馴染(男の事、好きなんだね)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染(私の事は、もう気にしなくていいんだよ)
幼馴染(今の男なら……きっと……)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………っ)
幼馴染(…………ぅぅ) グスッ…
スロ娘(…………)
スロ娘(…………)
スロ娘(……幼馴染)
スロ娘(…………)
スロ娘(…………)
スロ娘(……男の事)
スロ娘(引きずっているんじゃないの……?)
スロ娘(…………)
スロ娘(だから)
スロ娘(お見合いが嫌だったんじゃなかったの?)
スロ娘(…………)
――翌日の早朝――
ピピピ……ピピピ……
幼馴染「…………」 カチッ
幼馴染「……ふあ」
幼馴染「あれ?」
スロ娘「おはよう、幼馴染」
幼馴染「おはよう、スロ娘」
幼馴染「どうしたの? こんなに早く……」
スロ娘「……なんか、目が覚めちゃって」
幼馴染「そう」
スロ娘「ほら、朝ごはん用意したんだ」
幼馴染「ふふ、ありがとう。 美味しそうなトーストだね」
―――――――――――
幼馴染「ごちそうさま」
スロ娘「ごちそうさま」
スロ娘「食器は置いといて。 あたし、洗っておくから」
幼馴染「そう? じゃあお願いするね、スロ娘」 クスッ
―――――――――――
幼馴染「じゃあ、行ってきます」
スロ娘「行ってらっしゃい」
パタン……
スロ娘「…………」
テク テク テク
??「あの、ちょっといいかしら?」
幼馴染「? あ、大家さん……」
大家「ここ最近見かけて気になっているんだけど……」
大家「あの女の子、誰なのかしら?」
幼馴染「あ……すみません」
幼馴染「あの娘、私の妹なんです」
大家「妹?」
幼馴染「はい」
大家「……それにしちゃ、あんまり似てないわね」
幼馴染「…………すみません」
幼馴染「私とあの娘……母親が違うんです」
大家「!」
幼馴染「…………」
大家「そう……」
大家「ごめんなさい、立ち入った事を聞いて」
幼馴染「いえ……」
大家「お仕事、頑張ってね」 ニコ
幼馴染「はい、ありがとうございます、大家さん」 ニコ
テク テク テク…
幼馴染「ふぅ~……緊張した……」
幼馴染(男に言われて練習したかいがあった……)
――男のアパートの一室――
バシャ……バシャ……
男「ふう……」 ゴシゴシ……
男「…………」
今日も朝が来た。 当たり前だけど……。
……そして、今、少し困った状況にあった。
男(……今週の収支)
男(マイナス2万2400円……)
男(…………) フウ…
……俺も人間だ。 こういう時、何かのせいにしたがる。
スロ娘の世話をしだしてから……勝ちが遠い。
頭では、確率の問題だ、と解っているのだが。
男「…………」
男(……本当に自分が嫌になる)
コン コン
スロ娘「男? 起きてる?」
男「! ……スロ娘? ああ、起きてるぞ」
ガチャ
スロ娘「おはよう、男」
男「ああ、おはよう」
スロ娘「今日は、どの店に行くの?」
男「そうだな……」
男「…………」
男「いや……今日は止めておく」
スロ娘「え?」
男「ここの所、成績が芳しくなくてな……」
男「”運”を貯めようと思って」
スロ娘「ああ……」
スロ娘「…………」
スロ娘「じゃあさ、どっか、出かけない?」
男「…………」
男「は?」
スロ娘「……ちょっと傷つく態度ね」
男「悪い……少し、驚いて」
スロ娘「まあいいけど」
スロ娘「あたしも気分転換したかったし……」
スロ娘「どう?」
男「…………」
――高台の公園――
スロ娘「う~ん……」 セノビ~
スロ娘「……ふう」
男「今ちょっと金欠だからな……こんな所ですまん」
スロ娘「いいよ、そんなの」 クスッ
スロ娘「お金無いのは同じだし……」
男「…………」
スロ娘「いい景色……天気もいいし」
スロ娘「平日の午前中だから人も少ないし」
スロ娘「景色の二人じめ、だね……」
男「……そうだな」
スロ娘「ふふふ……」
スロ娘「…………」
スロ娘「ねえ、男」
男「ん?」
スロ娘「幼馴染の事……どう、思ってる?」
男「!」
スロ娘「…………」
スロ娘「立ち入った事なのは……わかってる」
スロ娘「幼馴染から、小さい頃からの付き合いだって事も聞いた」
男「…………」
スロ娘「……あたしが言うのもなんだけどさ」
スロ娘「どうして男は、幼馴染との間に壁を作るの?」
男「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「あたし……男が『もう、ひとりじゃない』って言ってくれたの」
スロ娘「嬉しかった」
男「…………」
スロ娘「けど」
スロ娘「その男が、どうして幼馴染との間に壁を作るのか……」
スロ娘「知りたい」
男「…………」
男「…………」
スロ娘「…………」
男「…………」
スロ娘「…………」
男「……幼馴染の幸せの為だ」
スロ娘「え?」
男「見ろよ……今の俺を」
男「こんな、安定しない収入の人間が……彼女にふさわしいと思うか?」
スロ娘「…………」
スロ娘「……そういう事じゃないんだよ」
スロ娘「あたしが聞きたいのは……」
男「…………」
スロ娘「……あたしの勝手な思い込みかもしれないけど」
スロ娘「幼馴染……男の事、引きずってる」
男「……!」
スロ娘「…………」
スロ娘「もし……」
スロ娘「本当に幼馴染に気がないのなら……」
スロ娘「彼女に面と向かって言ってあげて」
男「…………」
スロ娘「そして……」
スロ娘「前に進ませてあげて」
男「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「何て言うかさ……」
スロ娘「幼馴染って、可愛いよね」
男「…………」
スロ娘「あたしね、負けたくないって思うんだ」
男「……?」
男「どういう意味だ?」
スロ娘「ふふふ、それは内緒です」
男「わけがわからないよ」
スロ娘「……なに? 突然、裏声で」
男「……気にするな」
スロ娘「まあ……あたしの言いたい事は、それだけ」
男「…………」
男「そう……か……」
スロ娘「…………」
スロ娘「ここの景色」
スロ娘「ホント、いい眺めだね」
男「だろ?」
スロ娘「けど……」
男「?」
スロ娘「どことなく……冷たく感じる」
男「…………」
スロ娘「さて!」 バッ!
スロ娘「あたし……ちょっとシノいで(稼いで)くる」
男「……そうか」
スロ娘「今日はパーラー”やまさ”に行こうと思うんだけど」
男「いいんじゃないか?」
スロ娘「そう? ”さみー”と迷ったんだけどね」
男「”ろでお”も捨てがたいな」
スロ娘「あー……あたし、あの店と相性良くないんだ……」
男「そうか……」
スロ娘「じゃあね、男」
男「ああ……」
男「…………」
男(……そういえば)
男(幼馴染……)
男(どうしてあんなボロアパートに越してきた?)
男(…………)
男(聞かない方がいい)
男(そう思っている)
男(…………)
スロ娘「幼馴染……男の事、引きずってる」
男(…………)
スロ娘「本当に幼馴染に気がないのなら……」
スロ娘「彼女に面と向かって言ってあげて」
男(…………)
スロ娘「前に進ませてあげて」
男(…………)
男(…………)
男(……どうして)
男(俺と幼馴染……出会ってしまったんだろう……)
男(…………)
男(出会わなければ……こんな思いをしなくて済んだのに……)
男(…………)
男(…………)
男(スロ娘の言う通りだ……)
男(ここの景色)
男(どことなく、冷たく感じる……)
―――――――――――
――夕方――
――幼馴染のアパートの一室――
ガチャ
幼馴染「ただいまー」
幼馴染「……って今日は居なかったか」
幼馴染「さて、今日のメニューは何にしよう?」
コン コン
幼馴染「? はーい?」
男「幼馴染、俺だけど……入っていいか?」
幼馴染「男……いいよ、入って」
幼馴染「どうしたの?」
男「…………」
男「少し、遅い時間だけど……歩かないか?」
幼馴染「…………」
幼馴染「え!?」
男「嫌ならいい」
幼馴染「そ、そんな事、言ってないでしょ!?」
幼馴染「行く行く! 行きます!」
男「そうか」
男「ありがとう」
幼馴染「…………」
テク テク テク…
幼馴染「…………」
男「…………」
幼馴染(……男、いったい、私にどんな話があるんだろう)
男「…………」
男「こうやって二人で歩くの」
男「懐かしいな……」
幼馴染「!?」
幼馴染「…………」
幼馴染「……うん」
男「…………」
男「……小さい頃から、こうやって、いつも左に」
男「幼馴染が居た」
幼馴染「…………」
幼馴染(……何? 何を言おうとしているの?)
幼馴染(男……)
男「…………」
男「あの時……俺は、一言で言うなら、自惚れていたんだ」
男「……だから」
男「幼馴染の告白を断った」
幼馴染「!?」
幼馴染「…………」
幼馴染「どういう……意味?」
男「…………」
男「俺の両親、事業が上手くいって成長し始めたのは」
男「俺が中学校入学の頃くらいだった」
幼馴染「…………」
男「そしたら……親戚が急に増えた」
男「それもやたらと、俺に、同い年くらいの自分の娘を紹介してくる」
男「その当時は、なんか恥ずかしいな、ってくらいで」
男「特に何とも思わなかったけど……」
男「高校生くらいになると、ああ、両親の遺産目当てか、と分かる様になった」
幼馴染「…………」
男「……それが分かってから」
男「俺に告白する女の子は……所詮、金目当てなんだろ?」
男「そう、考える様になったんだ」
幼馴染「……!」
幼馴染「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染「じゃあ……男は……私の告白も……」
男「…………」
男「幼馴染は……ずっと変わらずに居てくれると思ってた」
男「これから先もずっと……って」
幼馴染「…………」
幼馴染「……どうして、今頃になって」
幼馴染「そんな事言うのよ……」
男「……幼馴染」
幼馴染「どうしてあの時、言ってくれなかったのよ!?」
男「…………」
幼馴染「私っ……私はっ……ぐすっ……」 ポロッ
幼馴染「ずっと……ひぐっ…………ずっと……ずっと……」 ポロポロ…
幼馴染「男の……傍に居たいって……ひっく……ぐすっ……」 ポロポロ…
幼馴染「それだけ……ひぐっ……だったのに!……ぐすっ……」 ポロポロ…
男「…………」
男「ごめん……幼馴染」
―――――――――――
男「落ち着いたか?」
幼馴染「……うん」 ///
男「そうか」 クス
幼馴染「わ、笑わないでよっ」 ///
男「ふふ……すまん」
幼馴染「もう……」 ///
男「…………」
男「それで、な」
幼馴染「うん」
男「幼馴染は……どうしてここに引っ越してきたんだ?」
幼馴染「!!」
幼馴染「…………」
男「聞かせて……くれないか?」
幼馴染「…………」
幼馴染「ギブ・アンド・テイク」
男「へ?」
幼馴染「私も……男がどうしてここに居るのか」
幼馴染「知りたい」
男「…………」
男「……わかった」
幼馴染「交渉成立ね……」 クスッ
幼馴染「じゃあ、話すわ」
男「ああ……」
―――――――――――
幼馴染「そう……だった……の」
男「…………」
幼馴染「男のご両親……いい人達だったのに……」
男「…………」
幼馴染「…………」
男「……ところで」
幼馴染「うん?」
男「お見合いの相手って、どんな感じだった?」
幼馴染「!?」
幼馴染「…………」
幼馴染「……気になる?」
男「まあ……それなりに」
幼馴染「そう……」
幼馴染「まあ、割といい人ぽかったかな?」
男「…………」
幼馴染「中堅の企業で働いてるって聞いたっけ。 真面目な好青年って感じで……」
幼馴染「ガチガチに緊張してた」 クスッ
男「…………」
男「……どんな話をした?」
幼馴染「してないよ……」
男「え……?」
幼馴染「私、これお見合いじゃない!って気がついて」
幼馴染「両親が引き止めるのを振り切って帰ったから……」
男「…………」
男「そっか……」
幼馴染「…………」
幼馴染「……安心した?」
男「…………」
男「まあな」
男「幼馴染、変わってないな、と思って」
幼馴染「……何だか微妙に引っかかる言い方ね」
男「気のせいだ」
幼馴染「ふふふ……」
男「じゃ……そろそろ帰るか?」
幼馴染「うん……スロ娘も帰ってるかもしれないしね」
―――――――――――
ガチャ
幼馴染「ただいまー」
スロ娘「お帰り、幼馴染……と男?」
男「帰ってたか、スロ娘」
男「今日はどうだった?」
スロ娘「うん、プラス1万3000円」
男「うらやましいな……」
スロ娘「ニシシ……」
幼馴染「じゃあ、ご飯、作るね」
その日の夕食は、久しぶりに楽しかった。
同時に懐かしくもあった。
幼い頃は、こうやって幼馴染とその両親と、よく食卓を囲んでいたから。
もちろん、その逆もある。
幼馴染が、俺の家に来て俺の両親と食べていたりもしていた。
……本当にあの頃に戻った様な、賑やかな食事だった。
―――――――――――
幼馴染「じゃ、お休み、男」
男「ああ、お休み、幼馴染、スロ娘」
スロ娘「お休み、男!」
ガチャ……パタン
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
幼馴染「さて、私達もお風呂に入って休まないと」
スロ娘「そうだね」
スロ娘「…………」
スロ娘「男……」
スロ娘「何だか、元気になった」
幼馴染「うん」
スロ娘「…………」
スロ娘「……今は、ちょっと負けてるかな、あたし……」
幼馴染「……!」
スロ娘「でも、負けない」
幼馴染「……うん」
スロ娘「あたしは……男が好き」 ///
幼馴染「…………」
幼馴染「ふふ……こっちも負けないよ? スロ娘」
幼馴染「私も男の事が、好きだから……」 ///
その日、私とスロ娘は、お互いに男をめぐって
宣戦布告し合った。
どうして……かな? 不思議と、嫌な気持ちは無かった。
という所で本日は終了です。
次回からは、少し(修羅場的な意味で)ハードな展開になります。
いよいよか
――数日後――
――コンビニ――
キィ……
女「いらっしゃいませ」
女「って、男くん」
男「どうも、女さん」
女「もうここには来ないかと思ってた」
男「あの店には長らくお世話になってたし、久しぶりに様子を見てみようかと……」
女「な~んだ」
女「私に会いに来たんじゃないのか」 クスッ
男「からかわないでくださいよ……これ、お願いします」
女「はーい」 ピッ
女「こちら一点で、120円になります」
女「袋にお入れしますか?」
男「そのままで」
女「ありがとうございました~♪」
―――――――――――
幼馴染「あ、女さん、お待たせしました」
幼馴染「休憩に行ってください」
女「うん、幼馴染さん」
女「じゃ、ちょっと休憩してくるね♪」
幼馴染「……?」
幼馴染(何だか、いきなり機嫌が良くなった?)
――古巣のパチ屋――
ピューン ピューン ピロピロ……
男「…………」 ピッピッ
男「…………」 ピッピッ
男(……ま、期待はしていなかったけど)
男(やっぱりダメだな……ここ)
男(客付きもかなり減ってるし、店長が変わるか)
男(新装開店……もしくは同業他社が来るまで、どうにもならない)
男(よし、引き上げよう……)
?「ねえ、男くん」
男「え」
男「女さん……」
女「ちょっと……いいかな?」
男「はあ……」
―――――――――――
男「何です?」
女「……」
女「少し話したい事があるの」
女「今夜、時間……取れないかな?」
男「…………」
男「あの……」
男「特別な関係になりたい、とかいうのなら……」
女「違うわよ」
女「もう……それに関しては、区切り付けてるから」
男「…………」
男「……わかりました」
女「じゃあ、この前の居酒屋に……」
女「そうね……20時くらいでどう?」
男「ええ、いいですよ」
女「交渉成立ね」
女「じゃ、待ってるから」
男「…………」
男「いったい……何の話だろう?」
――20時――
――居酒屋・オッス!番長――
女「おーい! 男く~ん! ここ、ここ!」
男「お待たせしました、女さん」
女「いーよー、私もちびちびやってたし♪」
男「それで……話って?」
女「まあまあ、まずは一杯……」 スッ…
男「はあ……」
男「…………」 グビッ
女「うん、いい飲みっぷりだね♪」
男「…………」
女「おっちゃん、ビール追加で~」
女「つまみにから揚げもお願い~」
マイドー
男「…………」
女「……ふう」
女「最近、どう?」
男「ぼちぼちです」
女「そっか」
トク トク トク…
女「私、ね」
女「プロポーズされた」
男「!!」
女「んっふっふ~……驚いた?」
男「ええ……」
女「相手の人、誰だと思う?」
男「……見当もつきません」
女「なんとなんと、”ヨシムネ”のマスター!」
男「はあ!? あの50代くらいのハゲ親父の!?」
女「……の息子さん」
男「…………」
女「ぬっふっふ、またまた驚いた?」
男「……減った俺の寿命、返してください」
女「ドッキリ大成功ってとこね♪」 クスクス
男「それで……」
女「うん」
男「受けるつもりなんですか?」
女「……」
女「うん」
男「そうですか……おめでとうございます」
女「…………」
女「ま……そんなわけで、ゴールインするんだけど」
女「きっかけをくれた君には、伝えておこうって思ってね……」
男「? きっかけ?」
女「以前、男くん、ヨシムネの”副業”を使うつもりだって言ってたでしょ?」
男「ええ」
女「おせっかいだと思ったんだけど……」
女「私もお金を出すから、君の依頼を受けてやって欲しいって、頼みに行ったんだ」
男「!!」
女「その時に応対してくれたのが、彼だったの」
女「表向きは、時々マスターの手伝いをするバーテンダーなんだけど」
女「実質、ヨシムネの”副業”は、ほとんど彼が行ってる」
男「…………」
女「でね」
女「男くんの依頼……格安で引き受けてもいいって言ってくれたの」
男「…………」
女「どうする? 依頼、やってもらう?」
男「……ひとつ、聞いてもいいですか?」
女「うん」
男「まさかと思いますけど」
男「これの為に、身売りしたわけじゃ無いですよね?」
女「……自惚れんな」
女「私は、自分をそんなに安く見積もってないし」
女「極め付きの献身者でもない」
女「あくまで『親切』程度のつもりよ」
女「嫌なら断ればいい」
男「…………」
男「……すみませんでした」
女「わかればよろしい」
男「じゃあ、お願いします」
女「うん、そう伝えておくわ」
女「それから格安で受けるのは、これっきり」
女「その辺のケジメはつけるのよ?」
男「わかっています」
男「その方が俺としてもありがたい」
女「そ」
女「じゃ、これで私の話はおしまい」
女「どうする? 飲んでく?」
男「もう帰ります」
男「旦那さんが居るんだから、俺と飲んじゃマズイでしょ」 クス
女「ん……それもそうね。 じゃ、依頼が達成できたら連絡するわ」
男「わかりました」
―――――――――――
女「ふう……」
女「……ったく、平然としちゃって」
女「わかってたけどさー……もっと動揺して欲しかったなー」
女「…………」
女(でも)
女(男くん、なんか雰囲気、変わってたね)
女(スロ娘って娘……大切な存在になりつつあるのかな? ふふっ)
女(…………)
女(私の気持ちに嘘はない)
女(彼は、私の過去を知った上で、プロポーズしてくれた……)
女(あの人は、私を愛してくれてる)
女(自分の……人を見る目を信じよう)
女(…………)
女(けど、探偵業か……)
女(あくまで副業なんだけど)
女(どうして私の好きになる人って、収入の安定性に)
女(疑問符が付くことが多いんだろう……)
女(…………)
女(って、こんな事考えてちゃダメねぇ……はあ)
――幼馴染のアパートの一室――
コン コン
男「幼馴染、入っていいか?」
幼馴染「あ、男。 どうぞー」
ガチャ
男「あーお腹空いた」
スロ娘「……ん? うそ言うなよ、男」
スロ娘「お酒の匂いがする」
男「鋭いな? ビールをコップに二杯だけなんだけど」
幼馴染「食べて来なかったの?」
男「古い知り合いにバッタリ会ってな。 ノロケ話に嫌気がさして早めに切り上げたんだ」
幼馴染「ふうん、そうなの」
スロ娘「じゃ、ご飯用意するね!」
男「今日のメニューは?」
幼馴染「ちょっと手を抜いて、天ぷらそば」
男「ああ……立ち食いそばで売ってる持ち帰りの」
幼馴染「ごめんね」
男「全然構わない」
男「……少なくとも、幼馴染やスロ娘が作ってくれるだけで、ありがたいよ」
幼馴染「ふふっ」
スロ娘「こーら、なに雰囲気作ってるんだよー。 手伝えー」
アハハ……
――翌日――
――コンビニ――
キィ……
幼馴染「いらっしゃいませ」
幼馴染「あ……」
スロ娘「あ……」
スロ娘「幼馴染……ここのコンビニで働いてたの」
幼馴染「うん……」
幼馴染(職場で知り合いと顔を合わせるのって、奇妙な感じ……)
スロ娘「じゃあこれ、お願い」
幼馴染「はい……」 ピッ
幼馴染「こちら、一点で120円になります」
スロ娘「ほいほい」 チャリン
幼馴染「袋はお使いですか?」
スロ娘「ううん、このままで」
幼馴染「はい、120円ちょうどいただきます」
幼馴染「ありがとうございました」
スロ娘「じゃ、また今夜」
幼馴染「うん」
キィ……
幼馴染「ふう」
女「幼馴染さん、今の女の子、知り合い?」
幼馴染「はい、妹なんです」
女「へえ~妹さん……」
女(でも……あんまり似てない様な……)
幼馴染「ふふ、私達……母親が違うんです」
女「!」
女「そ、そう。 そうだったの……」
女(うわー……顔に出ちゃったのか)
女(それにしても意外。 幼馴染さん、複雑な家庭環境に生まれてたのね……)
女「可愛い娘ね」
幼馴染「ええ」 ニコ
幼馴染「ちなみにスロ娘って名前なんです」
女「え?」
幼馴染「? どうかしました?」
女「う、ううん……何でもないわ」
幼馴染「そうですか?」
女「ごめんなさい、驚かせて」
幼馴染「いえ……」
キィ……
幼馴染「あ……いらっしゃいませ」
女「いらっしゃいませー」
女(まさか……ねえ……)
―――――――――――
スロ娘「…………」 ピッ ピッ
スロ娘「…………」 ピッ ピッ
スロ娘(……うん、男の言う通り)
スロ娘(設定、入っていない感じ)
スロ娘(この店はダメだね)
スロ娘(本命の店の近くだから、様子を見に来たけど)
スロ娘(打つ価値ナシ……さっさと本命の店に行こう……) スッ…
スロ娘(…………)
スロ娘(幼馴染……しっかり働いてたな)
スロ娘(…………)
――夕方――
――コンビニ――
女「お疲れ様ー」
幼馴染「お疲れ様でした」
女「今日も頑張ったわねー」 セノビー
幼馴染「はい、女さん」
???「仕事、終わった? 幼馴染」
幼馴染「! スロ娘?」
スロ娘「へへへ……」
幼馴染「どうしたの?」
スロ娘「ううん、どうもしないよ」
スロ娘「今日はもう十分シノいだし……時間的に幼馴染の仕事が終わるかな?」
スロ娘「と思って」 ニコ
女(シノいだ!?)
幼馴染「あ、女さん。 この娘がスロ娘……私の妹です」
女「あ、うん……えと、こんにちは、スロ娘……ちゃん?」
スロ娘「どうも! 姉がお世話になってます」
女「ううん、こっちこそお世話になっているわ」
幼馴染「そんな、女さん……」 ///
女「ふふ、二人とも仲がいいのね」
女「ちょっと羨ましい」
スロ娘「ふふ、じゃそろそろ行こう? 幼馴染」
幼馴染「うん、スロ娘。 それじゃあ、失礼します、女さん」
女「あ、うん。 ごめんなさい、引き止めて」
女「また明日」
テク テク テク…
女「…………」
女(これは……もしかして、もしかする?)
女(…………)
女(だけど……)
女(幼馴染さんは、男くんを知っているのかしら?)
女(…………)
スロ娘「今日のメニューは何?」
幼馴染「今日はサンマを焼いて、味噌汁とたくあん、野菜サラダ……かな?」
スロ娘「じゃ、あたし、大根をおろすね!」
幼馴染「うん。 お願い」
スロ娘「ふふふ……」
スロ娘「…………」
スロ娘「幼馴染」
幼馴染「ん?」
スロ娘「仕事、大変?」
幼馴染「そうね……確かに大変、かな?」
スロ娘「…………」
幼馴染「でも……働くのは楽しいよ?」
スロ娘「……そう」
スロ娘「…………」
幼馴染「スロ娘もやってみたい?」
スロ娘「!!」
スロ娘「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「出来るかな? あたしに……」
幼馴染「大丈夫。 出来るよ」
スロ娘「…………」
幼馴染「住所と保証人は、私を使えばいいわ」
スロ娘「幼馴染……」
スロ娘「……ごめん」
スロ娘「あたし、陽の当たる場所には出られない……」
―――――――――――
スロ娘「警察は止めて!」
幼馴染「スロ娘……!?」
スロ娘「お願いっ……!」
―――――――――――
幼馴染「……あ」
幼馴染「ごめん……スロ娘」
スロ娘「ううん」
スロ娘「あたし……嬉しかったよ」
スロ娘「幼馴染が『出来る』って言ってくれた事」
幼馴染「スロ娘……」
――幼馴染のアパートの一室――
幼馴染・スロ娘・男「いただきます」
モグモグ…
男「美味いな」
幼馴染「でしょ? おまけに一匹99円なのよ」
男「安いのか?」
スロ娘「普段は半身で100円くらいする」
男「へえ?……そうなのか」 ズズッ…
幼馴染「男……その辺りの経済観念は、滅茶苦茶ね」
男「……材料は買っても食えなくなる事が多いんでな」
スロ娘「一人暮らしで自炊出来ないのは、大きなマイナスだなぁ」
男「ほっとけ」
ハハハ……
男「今日はどうだった?」
スロ娘「2万浮いたから、早めに切り上げた」
男「スロ娘……調子いいな」
男「俺はプラス5000円だ」
幼馴染「プラスになったのなら良いじゃない」 クス
男「そうは言うけど……ここの所、収支が安定しなくてな」
男「トータルでは、ちょっとヤバイ……」
幼馴染「そうなの? ……大変ね」
スロ娘「…………」
ゴチソウサマー
スロ娘「じゃ、洗い物はあたしに任せて」
幼馴染「いつも悪いね、スロ娘」
スロ娘「ううん」
男「…………」
男「幼馴染」
幼馴染「うん?」
男「今月……夕飯、世話になりっぱなしで申し訳ないんだけど」
男「金、ちょっと待っててくれ」
幼馴染「ううん、気にしないで、男」
幼馴染「私も好きでやっている事だから」 ニコ
男「…………」
―――――――――――
男「じゃ、お休み。 幼馴染、スロ娘」
幼馴染「お休み、男」
スロ娘「お休みー」
ガチャ……
男「…………」
男「はあ……情けねぇ」
男「…………」
男(でも……身辺調査の払いもあるし)
男(しょうがない事なんだけど……)
男(…………)
――翌日――
――男のアパートの一室――
コン コン
スロ娘「男ー? 起きてるー?」
ガチャ
男「起きてるよ」
スロ娘「じゃ、本日もシノギに行きますか」
男「ああ」
男「今日は、どこに行くつもりだ?」
スロ娘「”さみー”に行くつもり」
男「そうか……最近出来た店はどうだった?」
スロ娘「うーん……新装開店だから、まだよくわかんない」
スロ娘「けど、あたしのカンだと、ダメって気がする」
男「へえ? 何か根拠があるのか?」
スロ娘「だからカンだって」
スロ娘「根拠も何もないよ」
男「そういうのは俺にはないなー」
スロ娘「ははは」
スロ娘「…………」
スロ娘(楽しい、な)
スロ娘(何気なく、ただ話してるだけなのに)
スロ娘(…………)
スロ娘(何だか……幸せ)
スロ娘(…………)
スロ娘(この日が、この日常が)
スロ娘(ずうっと続いて欲しい)
スロ娘(男が居て、幼馴染が居て、あたしが居て……)
スロ娘(…………)
スロ娘(ふふっ) ///
男「おい、スロ娘」
スロ娘「!?」
スロ娘「な、何?」
男「”さみー”はそっちの道じゃないだろ?」
スロ娘「!」
スロ娘「ああ、うん! そうだね!」 ///
男「どうしたんだ?」
スロ娘「な、なんでもないよ!」 ///
スロ娘「ちょっと、ボーッとしただけ」 ///
男「大丈夫か?」
スロ娘「大丈夫だって! じゃあ!」 ///ダッ!
男「……?」
――数日後の夜――
――バー・ヨシムネ――
女「バーテンさん、調査が終わったって?」
バーテン「ああ、女さん……ええ、終わりました」
バーテン「が……」
女「…………」
女「どうしたの?」
バーテン「……いけませんね」
バーテン「依頼人、及び、依頼内容に感情を入れるな、が、鉄則なのに」
バーテン「また、親父に怒られそうです」
女「…………」
女「良くなかった……の?」
バーテン「正直言うと……」
女「…………」
バーテン「ここまで言っておいて何ですが……」
バーテン「あなたは、知らない方がいい」
女「…………」
女「……無理よ」
女「ここまで関わってしまったんだから」
バーテン「ですよね」
バーテン「そう言うと思いました」 クスッ
女「ふふっ……」
―――――――――――
女「…………」
女「バーテンさんの言うとおりね」
女「知らない方が良かったかも……」
バーテン「…………」
女「こんなにに重い話は、久しぶり……」
バーテン「女さん……」
女「ううん、バーテンさんは、私に警告してくれたわ」
女「気にしないで」
バーテン「…………」
女「さて……男くんに連絡しないと」
バーテン「僕も付き添いましょうか?」
女「あら? 心配?」
バーテン「そりゃ正直言うと……」 ///
女「うふふ、ヤキモチを焼かれるのって、ちょっと気分いいわね」 クス
バーテン「からかわないでください」 ///
女「ごめんなさい、バーテンさん」
女「でも……これは私の仕事よ」
バーテン「…………」
女「この調査報告書を届けたらすぐ帰るから」
女「待ってて」
バーテン「…………」
バーテン「わかりました」
――喫茶店――
男「あ、女さん。 ここです」
女「男くん、お待たせ」
女「あ……コーヒー、ブレンドで」
カシコマリマシター
女「さてと……」
男「…………」
女「……まず、先に依頼料の事を話すね?」
男「はい」
女「この調査報告書に詳細な明細書が入っているけど」
女「全部で12万少々よ」
男「分かりました」
女「待って」
男「?」
女「そうなんだけどね……あなたが最初に提示した10万でいいわ」
女「残りは私が払っておく」
男「え!? で、でも!」
女「好奇心に負けちゃってね……この内容を知ってしまったの、私」
男「……!」
女「その迷惑料だと思って」
男「…………」
オマタセシマシター
女「…………」 ズズッ
男「…………」
女「納得できない?」
男「いえ……というか、全額俺が払うのが筋ですよ、やっぱり」
女「それだと私が納得できないの」
男「…………」
女「…………」
男「わかりました」
男「じゃあ、これ……その10万です」 スッ…
女「ん……確かに受け取ったわ」
女「これ、領収書ね」
男「それじゃあ、俺はこれで……」
女「あ、もう少し話があるの」
男「……?」
女「単刀直入に聞くけど……」
女「男くん、幼馴染さんの事、知ってる?」
男「!?」
女「……知ってるみたいね」
男「どうして女さんが、幼馴染の事を知っているんですか?」
女「私の居るコンビニで働いててね……たまたま、スロ娘ちゃんが訪ねてきたの」
女「世間て、狭いわね」
男「…………」
女「…………」
女「男くんは……」
男「…………」
女「ううん……ここからは言うべきでも、聞くべきでもないわね」
女「ごめんなさい、忘れて」
男「…………」
男「じゃあ……もう行きます」
女「うん」
女「元気でね」
―――――――――――
女(……男くん)
女(ちゃんと自分の心と向き合うのよ)
女(その場の感情に流されてたら……)
女(あなたも、幼馴染さんも、スロ娘ちゃんも)
女(みんな傷つくだけになってしまう)
女(…………)
女(私……何もしてあげられない)
女(……無力だわ)
女(…………)
――男のアパートの一室――
男「…………」
男「…………」 パラ……
男「…………」
男「…………」 パラ……
男「…………」
男「……なんて事だ」
思わずつぶやく俺。
結論から言うと……スロ娘は、もう天涯孤独の身だって事が確定した。
彼女が事件を起こしたのは、約3年前。
だが、スロ娘のクズ養父を刺したのは、スロ娘ではなく
スロ娘の母親、という事になっている。
男(母親は養父を刺殺した後、首を吊って自殺……)
男(凶器の包丁に母親の指紋しか検出されなかった事と……)
男(母親の残した遺書から、彼女の犯行と警察は断定……)
男(一人娘のスロ娘の捜索は、犯行の断定と同時にほぼ打ち切り……)
男(……親族は居ないって事か……?)
男(…………)
男(…………)
俺は迷った。 このまま黙っておくべきだろうか?
だが、推測でしかないが、スロ娘の母親は、スロ娘をかばって
その罪を被ったのかもしれない……。
少なくとも、スロ娘はそう取るだろう。
でもスロ娘には、もう何の罪もない。 陽のあたる場所に出る事が出来る。
それは……知らせてやりたい。
男「…………」
男「どうすりゃいいんだよ……」
男「…………」 パラ……
男「……!」
男「…………」
男(これは……)
男(…………)
男(…………っ)
男(…………)
男(スロ娘……)
男(…………)
――翌日の朝――
――幼馴染のアパートの一室――
ガチャ ガチャ……カチリ☆
スロ娘「戸締り、オッケー」
コン コン
スロ娘「おーい、男ー?」
…………
スロ娘「返事がないな」
スロ娘「…………」
スロ娘「ま、たまには寝坊させてやるか」 クスッ
―――――――――――
男「くそっ、寝過ごした!」
男「午前中にスロ娘に伝えるつもりだったのに!」
男(……昨夜、なかなか寝付けなかった、とはいえ)
男(昼過ぎまで寝てしまうなんて……) ハア……
男(…………)
男(とにかく、済んでしまった事をウダウダ言っても始まらない)
男(…………)
男(今からスロ娘を探してもスレ違いそうだし……)
男(帰ってくるのを待ってた方が確実、か)
男(…………)
――コンビニ――
幼馴染「……あの、女さん?」
女「んん!? な、何、かな?」
幼馴染「私の顔に何かついてますか?」
幼馴染「さっきから、こっちをチラチラ見てるみたいですけど……」
女「ご、ごめんなさい、幼馴染さん」
女「そんな事はないし……悪気があるわけでもないの」
女「気にしないでっ」
幼馴染「はあ……」
幼馴染(変な女さん)
女(あーもう! 何やってるのよ! 私!) ///
――午後――
――幼馴染のアパートの一室――
カチリ☆ ガチャ……
スロ娘「ただいまー」
スロ娘「……って言っても、この時間じゃ幼馴染、まだ帰ってないよね」
コン コン
男「スロ娘、帰ったか?」
スロ娘「男? どうしたの?」
ガチャ
男「……少し、話したい事がある」
スロ娘「?」
スロ娘「…………」
スロ娘「何だか、深刻な話?」
男「……ああ」
スロ娘「…………」
スロ娘「今、お茶を入れるね」
―――――――――――
スロ娘「で? どんな話?」
男「…………」
男「まず」
男「先に謝っておく」
スロ娘「は?」
男「俺は勝手に……スロ娘の身元を調べた」
スロ娘「はあ!?」
男「お前の話を聞いて、もしかしたら」
男「大した事無く終わっているかもしれない、と思ってな……」
スロ娘「…………」
男「…………」
スロ娘「大した事……あったんだね?」
男「……ああ」
スロ娘「……っ」
男「…………」
スロ娘「……お母さんは」
スロ娘「お母さんは、元気にしてる?」
男「…………」
男「スロ娘のお母さんは……」
男「もう……この世に居ない」
スロ娘「!?」 ビクッ!
スロ娘「…………」
スロ娘「……今、なんて言ったの?」
男「スロ娘のお母さんは、もう、この世に居ない」
スロ娘「…………」
スロ娘「……うそ、だよね? 男……?」
男「詳細は、この封筒にある」
男「スロ娘のお母さんは、クズ養父を刺殺して」
男「自殺した」
スロ娘「うそだ!!」
スロ娘「あのクズは、あたしが! この手で! 刺し殺したんだ!」
男「…………」
男「たとえそれが真実だったとしても……」
男「お母さんは帰ってこない」
スロ娘「!!」
男「…………」
男「この中に、お母さんが残した遺書の内容が書かれている」
男「俺は……この調査結果をスロ娘に伝えるか迷ったが」
男「最終的にこの遺書を読んで……伝える事に決めた」
スロ娘「…………」
男「読んでやってくれ。 スロ娘のお母さんの最後のメッセージを」
スロ娘「!」
クズ夫は、この私、スロ母が殺しました。
日頃から、娘のスロ娘共々この夫の暴力に悩まされ
ついに耐え切れなくなり、事に及びました。
とはいえ、人を殺した罪の責任を取り、私の命を差し出します。
警察の皆様、お手数をおかけして申し訳ありません。
スロ娘、ごめんなさい。
お母さんがこんな最低人間に引っかかったばかりに
スロ娘にまで、しなくてもいい苦労をさせてしまった。
先に逝く、意気地無しのお母さんをどうか、許して……。
でも、これであなたは自由です。
どうか……幸せになってください。
スロ母
スロ娘「…………」
男「…………」
――まただ――
スロ娘「…………っ」
――どうして――
――あたしは、いつも――
スロ娘「……うっ……ぐっ……」
――取り返しがつかなくなってから――
――何かに気がつくんだろう?――
男「…………」
スロ娘「こんなっ……こんな事って……」
スロ娘「お母さんは……生きてるって……元気にやってるって……」
スロ娘「そう思ってたのに!!」 ポロッ
男「…………」
スロ娘「どうして――」
スロ娘「どうして黙っててくれなかったの!?」
スロ娘「それだったら……」
スロ娘「あたしは、お母さんが生きてるって」
スロ娘「そう思い続けられたのにっ……!」 ポロポロ…
男「……すまん」
スロ娘「ばかっ!……男のばかぁ……!」 ボロボロッ…
スロ娘「うっ……うっ……あああっ……ひぐっ……」 ボロボロッ…
スロ娘「うあああああっ……ひど、いっ……よっ!……!」 ボロボロッ…
スロ娘「こんな、のっ……て……ないよっ……あんまりだよっ……!」 ボロボロッ…
スロ娘「どうしてっ……どうして、あたし……あたしっ……ばっかりっ……!」 ボロボロッ…
スロ娘「あああああああああああああああああああああああああっ……!」 ボロボロッ…
スロ娘「もう……やだぁ……ひぐっ……あああっ……えっえっ……」 ボロボロッ…
男「…………」
ギュッ……
男「スロ娘のせいじゃない」
男「スロ娘の……せい……じゃ」 グスッ…
―――――――――――
テク テク テク
幼馴染「~♪」
幼馴染(ふふふ~、今日の夕飯は)
幼馴染(コロッケ~)
幼馴染(しかも揚げたてのアツアツ♪)
幼馴染(……まあ二人とも、いつ帰ってくるか解らないけど)
幼馴染(その代わり味噌汁は、いつでも温められるから大丈夫だよね)
幼馴染「~♪」
スロ娘「あたし……もう……ひとりぼっち……なんだね……」
男「幼馴染も、俺も、居るだろ?」
スロ娘「慰めなんていらない」
スロ娘「あたしには……もう何にも無い」
男「そんな事あるものか」
幼馴染(後は……漬物があったっけ)
幼馴染(箸休めはokね)
幼馴染(ってな事を考えている内に着いちゃった)
幼馴染「ただい……ん?」
幼馴染「…………」
幼馴染(話し声が聞こえる?)
スロ娘「……もういいよ、男」
スロ娘「離して」
男「放っておけるか」
男「こんなに震えてる」
幼馴染「――!」
スロ娘「…………」
スロ娘「だめだよ、こんなの」
スロ娘「こんなのは……よくない」
男「今は……構わない」
男「今は――」
幼馴染「…………」
――え?――
幼馴染(おと……こ?)
スロ娘「本当にいいの?」
スロ娘「男に甘えても……」
男「ああ……構わないさ」
男「気の済むまで付き合ってやる」
男「スロ娘」
幼馴染「…………」
幼馴染「……う……そ」
ドサッ
男・スロ娘「!?」
幼馴染「!!」
私は思わず、持っていた買い物袋を落としてしまった。
スロ娘「! ……幼馴染!?」 タッ
幼馴染「……!!」
ダッ!
ガチャ!
スロ娘「! この買い物袋……!」
スロ娘「幼馴染だ!」
男「!!」
私は……日の暮れた街へと走り出す。
夜のとばりの空気が、ほおをつたう涙をすぐに冷たくさせていた――。
という所で今日はここまでです。投下が遅くなってすみませんでした。
俺の幼馴染とスロ娘が修羅場すぎる
―――――――――――
タッ タッ タッ…
幼馴染「はあっはあっはあっ……」
スロ娘「本当にいいの?」
スロ娘「男に甘えても……」
幼馴染「はあっ……はあっ……」
男「ああ……構わないさ」
男「気の済むまで付き合ってやる」
幼馴染「…………っ」
幼馴染(…………)
幼馴染(……なによ……これ)
幼馴染(…………)
幼馴染(私……どうして……)
幼馴染(逃げたの……)
幼馴染(…………)
幼馴染(こうなる事だって……)
幼馴染(覚悟してたじゃない)
幼馴染(…………) グスッ
幼馴染(…………)
幼馴染(……っ)
幼馴染(…………)
幼馴染(私……)
幼馴染(バカみたい……)
幼馴染(……恋敵のスロ娘に寝床や食事まで与えて)
幼馴染(そのあげくに)
幼馴染(好きな人を……盗られるなんてっ)
幼馴染(お人好しにも程が……)
幼馴染(…………っ)
スロ娘「お帰り、幼馴染」
幼馴染「…………」
スロ娘「あたし……嬉しかったよ」
スロ娘「幼馴染が『出来る』って言ってくれた事」
幼馴染「…………」
スロ娘「……今は、ちょっと負けてるかな、あたし……」
スロ娘「でも、負けない」
スロ娘「あたしは……男が好き」 ///
幼馴染「……っ」
――違う――
――スロ娘が、憎いんじゃない――
幼馴染「……ぐっ……うっ……」 ポロポロッ
――ただ――
幼馴染「……あああああああっ!」 ポロポロ…
幼馴染「ひぐっ……あああっ! ……ひっくっ……っ!」 ポロポロ…
――自分が情けなくて、悲しいだけなんだ――
タッ タッ タッ
男「スロ娘! 居たか!?」
スロ娘「ダメ……! 見つからないっ!」
男「くそっ……!」
男「とにかく、もう少し遠くを探してみる!」
スロ娘「わかった! あたしは高台の方をあたってみる!」
ダッ!
スロ娘「はあっはあっはあっ……!」
スロ娘(幼馴染……!)
スロ娘(違う……! 違うの!)
スロ娘(お願いだから、早まらないでっ!)
男「はあっはあっはあっ……!」
男(幼馴染! どこだ!?)
男(……くそっ!)
男(…………)
男(……幼馴染が、行きそうな所)
男(…………)
男(……!)
男(そうだ! コンビニ!)
男(あそこで働いてる、女さんを訪ねたかもしれない!)
ダッ!
――コンビニ――
キィ!
男「はあっ、はあっ……!」
店長「!?」
男「はあ……はあ……」 キョロ キョロ
店長「……?」
男「す、すみません! あのっ」
店長「は、はい?」
男「ここで働いてる、幼馴染が来ませんでしたか!?」
店長「え? 幼馴染ちゃん?……君は?」
男「!! その、俺は、幼馴染とは小さい頃からの知り合いで……」
男「ちょっとした誤解があって……その……!」
男「そうだ! 俺、女さんの知り合いでもあるんです!」
店長「! 女ちゃんも……?」
店長「…………」
店長「まあ……どんな事情があるのか、知らないけど」
店長「二人とも定時に上がってそれっきり」
店長「ここには来てない」
男「! ……そう……ですか……」
男「…………」
男「……すみません、お騒がせしました」
店長「いや……」
―――――――――――
店長「…………」 ピッ ピッ ピッ…
店長「…………」 プルルルル……プルルルル……
店長「…………」 ガチャ
店長「ああ、女ちゃん……うん、お疲れ様」
店長「……いや、それがね……幼馴染ちゃんを訪ねてきた男性が……」
店長「!? ……うん……うん。 そうそう、そんな感じ」
店長「…………」
店長「いや、詳しくは聞いてないよ」
店長「……でも、何だか切羽詰ってた感じだったね」
店長「え?」
店長「…………」
店長「うん、気になって、かけてはみたんだけど……通じなかった」
店長「…………」
店長「そう……」
店長「それでちょっと聞きたいんだけど」
店長「幼馴染ちゃん、何か……良くない事に首を突っ込んでるのかい?」
店長「!? ああ……い、いや、それは言葉のあやで……悪気は……」
店長「と、とにかく、何でも無いならいいんだ。 それじゃあ……」 ブッ……ツー、ツー
店長「ふう……」
店長「……まったく」
店長「厄介事はゴメンだよ……」
女「…………」
女(……どうしよう)
女(やっぱり、あの時……)
女(…………)
女(ううん、今は、そんな事を言ってる場合じゃない!)
女(……とは言うものの)
女(何をすべきかしら?)
女(…………)
女(とにかく、男くんに連絡を取らないと!)
―――――――――――
女「男くん!」
男「! 女さん……」
男「すみません、心配かけて……」
女「ううん、そんな話は後!」
女「私も探すのを手伝うわ!」
男「助かります」
女「心当たりは、もう当たってみた?」
男「大抵のところは、もう……」
女「幼馴染さん、現金は持ってるの?」
男「いつも帰りがけに買い物をするので、少しは持ってると思います」
女「そう……」
女「じゃあ、カプセルホテルとかに泊まっている可能性も考えないと」
男「! そうですね! 手分けして当たってみましょう!」
―――――――――――
スロ娘「はあっはあっはあっ」
スロ娘(どこ? どこに居るの、幼馴染!)
スロ娘(違う)
スロ娘(違うの、幼馴染!)
スロ娘(あたしが……あたしが、いけないのっ!)
スロ娘(幼馴染っ……!) グスッ…
――高台の公園――
幼馴染「…………」
幼馴染「…………」
幼馴染(……夜景)
幼馴染(綺麗……)
幼馴染(…………)
幼馴染(……星も、たくさん見える)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染(……小さい頃は)
幼馴染(深く考えずにいられた)
幼馴染(ずうっと……男と一緒にいられるって)
幼馴染(根拠もなく、それがずっと続くって思っていられた)
幼馴染(…………)
幼馴染(いつから?)
幼馴染(そうじゃないって)
幼馴染(気がついたのは……)
幼馴染(…………)
幼馴染(……私は)
幼馴染(私の存在は……)
幼馴染(何だったんだろう……)
幼馴染(…………)
幼馴染(私なんか居なくなっても……)
幼馴染(男は……すぐ忘れちゃうのかな……)
幼馴染(…………)
幼馴染(このまま)
幼馴染(ここから……居なくなったら――)
幼馴染(…………)
幼馴染(楽に……なるかな?)
幼馴染(もう)
幼馴染(こんな辛い思いしなくて……)
幼馴染(済むのかな……?)
幼馴染(…………)
幼馴染(……私)
幼馴染(楽に……なりたい)
幼馴染(もう、辛い思い)
幼馴染(したくない……)
幼馴染(…………)
バッ……!
グウウウゥゥッ……!
幼馴染(!?)
幼馴染(…………)
幼馴染(何だ、お腹の音、か……)
幼馴染(……!) ハッ!?
女「それでね、ちょっと恥ずかしいんだけど……我に返ったきっかけが」
女「グウゥゥッって鳴った、お腹の音だったのよ! 笑えるでしょ?」
幼馴染(…………)
女「ああ、私はお腹が空いたって思ってる」
女「ご飯が食べたいって思ってる……」
女「これからも生きていたいって思ってる」
女「そう、考える事が出来たの」
幼馴染(…………)
幼馴染(…………)
幼馴染「……くふ」
幼馴染「ふふ……ふふふふっ」
幼馴染「あはははははっ」
幼馴染「はは……」
幼馴染「…………」
幼馴染(私……バカだな)
幼馴染(何考えてるのよ……ホントに)
幼馴染(…………)
幼馴染(そうよ……世の中に居る男性は)
幼馴染(男だけじゃない)
幼馴染(男、だけじゃ……)
幼馴染(…………)
幼馴染(…………) グスッ…
幼馴染(…………)
幼馴染(……どうしよう、かな)
幼馴染(…………)
タッ タッ タッ
スロ娘「!!」
スロ娘「お、幼馴染!!」
幼馴染「あ……スロ娘」
スロ娘「ダメ!」
ガバッ!
幼馴染「!?」
スロ娘「お願い! 話を聞いて!」
スロ娘「男は悪くないの! あたしが……あたしが悪いの!」
幼馴染「ちょ、ちょっと、スロ娘。 放して、痛い」
スロ娘「え……? 幼馴染……?」
幼馴染「…………」
幼馴染「……もう、バカな事は」
幼馴染「考えてないから」
スロ娘「幼馴染……」
―――――――――――
スロ娘「――っていう訳なの」
幼馴染「…………」
スロ娘「男は……悪くない」
スロ娘「あたしを……泣きじゃくる、あたしを」
スロ娘「放っておけなかっただけ……」
幼馴染「…………」
幼馴染「……そっか」
幼馴染「男、優しいものね」
スロ娘「…………」
スロ娘「……?」
スロ娘「幼馴染」
幼馴染「ん?」
スロ娘「それだけ?」
幼馴染「それだけ……って?」
スロ娘「もっと……こう、安心する、って言うか、ホッとするって思ってた」
幼馴染「してるよ」
スロ娘「…………」
スロ娘(……なんだろう?)
スロ娘(違和感がする……)
幼馴染「さ!」
幼馴染「男に連絡入れないと!」
幼馴染「きっと、心配してる」
スロ娘「う、うん」
スロ娘(…………)
男「……うん……うん」
男「そうか……わかった」 ピッ
女「見つかったの?」
男「ええ……心配かけてすみません」
女「そう……! 良かった……」 ホッ…
男「この埋め合わせは……」
女「それなら、ご飯奢ってよ」
男「え」
男「い、今……ですか?」
女「そう!」
男「…………」
――居酒屋・オッス!番長――
女「おっちゃーん、ビール追加ー」
マイドー
男「…………」
女「はははー! あ〜美味しー」
男「はあ……」
女「ほらほら、男くんも飲みなよ!」
男「……いただきます」
女「そーそー、飲みねぇ、食いねぇ!」
男「…………」 モグモグ…
女「……ふう」
男「…………」
女「私ねー、ちょっと後悔してるんだ」
男「後悔……ですか」
女「うん」
女「この前、調査報告書を渡す時に言いかけた事」
女「言っておけばよかった……って」
男「…………」
女「…………」
女「男くん」
男「はい」
女「あなたは……どうしたいの?」
男「え?」
女「……詳しくは聞かないけど」
女「幼馴染さんと、スロ娘ちゃん……」
女「どうするつもりなの?」
男「…………」
女「…………」
女「おっちゃーん、湯豆腐、追加でー」
マイドー
女「…………」
女「……いつだったか、勢いが大事、って言ったけど」
女「その場の感情で流されるのは、良くないわ」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「難しい事なのは、わかるけどね」
女「このままだと……また、同じ事が起こるかもしれない」
男「……!」
女「んぐっんぐっ」
女「ぷはぁー!」
女「ふう……」
男「…………」
女「…………」
女「決められない?」
男「え……?」
女「決められないのなら、棒倒しでも、アミダでも何でもいいから」
女「そういうので決めたら?」
男「……怒りますよ?」
女「ふん……私を含めて、3人もの女の子を振り回しておきながら」
女「よくそんな事が言えたものね」
男「……っ」
女「悔しい? 悪いけど同情なんてしないわ」
女「踏み出す事に躊躇して」
女「中途半端に壁を作っては、都合いい程度に依存する」
女「最低よ、今のあんた」
男「……っ!」 ガタッ!
女「…………」
男「…………」
男「俺、帰ります」
女「そう」
男「これ、ここの代金」 スッ…
男「釣りは取っといてください」
女「うん」
男「…………」
テク テク テク…
女「…………」
女「おっちゃーん、ビール追加ー」
マイドー
――幼馴染のアパートの一室――
コン コン
男「幼馴染、入っていいか?」
幼馴染「! 男……どうぞ」
ガチャ
男「…………」
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「……お、男、ご飯は……」
男「……済ませてきた」
男「それから、幼馴染の顔を見に来ただけだから」
スロ娘「そ、そう……」
幼馴染「…………」
男「…………」
男「幼馴染、訳は聞いたのか?」
幼馴染「うん」
男「……そうか」
男「じゃ、お休み」
幼馴染「うん、お休み」
スロ娘「…………」
スロ娘(おかしい……何かおかしいよ、幼馴染)
――男のアパートの一室――
男「…………」
女「決められないのなら、棒倒しでも、アミダでも何でもいいから」
女「そういうので決めたら?」
男「…………」
女「踏み出す事に躊躇して」
女「中途半端に壁を作っては、都合いい程度に依存する」
女「最低よ、今のあんた」
男(……くそっ!)
男(…………)
男(……否定出来無い)
男(…………)
男(俺は……二人に甘えていたのか)
男(…………)
男(幼馴染……スロ娘……)
男(…………)
男(俺は……)
男(…………)
――翌日の朝――
幼馴染「おはよう、スロ娘」
スロ娘「……おはよう、幼馴染」
幼馴染「朝ご飯、適当に食べてね」
幼馴染「じゃ、行ってきます」
スロ娘「……行ってらっしゃい」
ガチャ……パタン
スロ娘「…………」
……それから、数日が過ぎた。
明らかな変化として、男は、夕食を食べに来なくなった。
ううん……もう、ほとんど会話すらしてない。
そして、幼馴染もそれを気にしていない様子だった。
…………あたしは、言い知れない不安感ばかりが大きくなっていた。
――夕方――
――街の道端――
スロ娘「…………」
男「…………」
スロ娘「今日は、どうだった?」
男「2万浮いた」
スロ娘「良かったね」
スロ娘「あたし、今日、1万マイナスだよ……」
男「そうか……災難だったな」
スロ娘「うん……」
男「…………」
スロ娘「…………」
――幼馴染のアパートの一室――
スロ娘「ただいま」
幼馴染「お帰り」
幼馴染「夕御飯、今、作ってるから」
スロ娘「うん」
―――――――――――
幼馴染「ごちそうさま」
スロ娘「ごちそうさま」
カチャ カチャ…
スロ娘「あ……洗い物、あたしがする」
幼馴染「そう? じゃ、お願いね」
幼馴染「お休み」
スロ娘「お休み……」
パチン、フッ……
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「……幼馴染」
幼馴染「ん?」
スロ娘「いったい、どうしたの?」
幼馴染「……? 何の事?」
スロ娘「…………」
スロ娘「上手く……言えないけど」
スロ娘「最近の幼馴染、どこか、あきらめてる」
幼馴染「…………」
スロ娘「…………」
幼馴染「……かも、しれない」
スロ娘「!?」
幼馴染「何だか、ね」
幼馴染「疲れちゃった……」
スロ娘「…………」
幼馴染「今は……何も考えたくないの」
幼馴染「それだけ」
スロ娘「…………」
スロ娘(…………)
スロ娘(……あたしのせい?)
スロ娘(……ううん)
スロ娘(どう考えたって……あたしのせいだ)
スロ娘(…………)
スロ娘(あたし……何やっているんだろう)
スロ娘(…………)
スロ娘(あたし、幼馴染にも、男にも)
スロ娘(甘えすぎてたんだ……)
スロ娘(だから……)
スロ娘(…………)
あたしの中で、ある考えが浮かんだ。
―――――――――――
――数日後――
――某・事務所――
黒服「カシラ」
コート「こら」
コート「ここでは、店長と呼べと言っているだろう?」
黒服「……すみません、店長」
コート「ふ……まあいい」
コート「それで? いったい何の用だ?」
黒服「はい」
黒服「まず……これをご覧下さい」
コート「……? 監視カメラの映像か?」
コート「…………」
コート「…………」
コート「…………」
コート「……!」
コート「ほう……」
黒服「いかがなさいますか?」
コート「ふふふ……これは これは」
コート「相当酷い目に合わされただろうに……まだ懲りてないようだな」
コート「このポニテのお嬢さんは……」
本日は、ここまでです。
乙
何する気だ
続き楽しみっす!
投下、遅れてすみません。もう少し時間がかかりそうです……。
生存報告でした。
まってる
―――――――――――
――夜――
――幼馴染のアパートの一室――
スロ娘「ただいまー」
スロ娘「あれ? 男?」
男「おう、スロ娘」
幼馴染「お帰り、スロ娘」
スロ娘「…………」
スロ娘「何だか、久しぶりだね」
スロ娘「こうやって3人そろうの」
男「……ちょっと用事があってな」
幼馴染「大した事じゃないけどね」
スロ娘「ふーん」
スロ娘「ご飯、食べてく?」
男「いや、もう帰る」
幼馴染「…………」
スロ娘「そ」
男「……それじゃあな。 幼馴染、スロ娘」
幼馴染「うん、お休み、男」
スロ娘「お休み」
パタン…
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
スロ娘「用……って何だったの?」
幼馴染「ん……お金。 ここで食事してた時の」
スロ娘「ああ……」
幼馴染「じゃあ、私達も食事にしよっか?」
スロ娘「うん」
幼馴染「そういえば、今日はどうだったの?」
スロ娘「思ったより出た」
幼馴染「へえ。 良かったね」 ニコ
スロ娘「うん」
スロ娘「そうだ、今の内に幼馴染にお金、渡しておくよ」
幼馴染「え? いいよ、別に……」
スロ娘「受け取って、幼馴染。 払える内に渡しておきたい」
スロ娘「はい、幼馴染」 スッ
幼馴染「…………」
幼馴染「わかったわ、受け取っておくね」
スロ娘「うん」
幼馴染「じゃあ、ご飯にしましょう」
――数日後――
――隣町のホール(パチンコ店)――
スロ娘「…………」 ピッピッ
スロ娘「…………」 ピッピッ
スロ娘「……うん、この台、行けそう」
―――――――――――
スロ娘「…………」 ピロピロピロ
スロ娘「…………」 ジャジャーン!
スロ娘「…………」 ピッピッロピー!
―――――――――――
スロ娘「…………」
スロ娘(……そろそろ21時)
スロ娘(今日はこれで上がろう……) スッ
スロ娘(…………)
スロ娘(……それにしても)
スロ娘(勇気を出して、ここにまた来たけど……)
スロ娘(客は少し減ったものの……変わらず高設定が入ってる)
スロ娘(”イナゴ”の影響が、ほとんどない……)
スロ娘(…………)
スロ娘(どうして……?)
スロ娘(…………)
スロ娘(嫌な感じ……)
スロ娘(ここでシノぐのは、やっぱり良くない気がする)
スロ娘(…………)
スロ娘(でも)
スロ娘(ここほど出せる店を、他に知らない)
スロ娘(…………)
スロ娘(……今のあたしには、どうしてもお金がいる)
スロ娘(あたし自身の為に……)
スロ娘(…………)
――幼馴染のアパートの一室――
ガチャ
スロ娘「……ただいまー」
幼馴染「お帰り、スロ娘」
幼馴染「じゃ、ご飯にしようか?」
スロ娘「え……? 待っててくれたの?」
幼馴染「何となく待ってたら、時間が過ぎちゃったのよ」 クスッ
スロ娘「……ごめん」
スロ娘「今度から、遅くなりそうなら電話するね」
幼馴染「ふふっ、いいよ、そんなの気にしなくて」
幼馴染「でも、最近調子いいね? 今週は、ずっと遅いじゃない?」
スロ娘「う、うん。 ……続く時は続いちゃうもんだから」
幼馴染「じゃ、ご飯にするね!」
――さらに数日後――
――コンビニ――
女「…………」
幼馴染「……? 女さん?」
女「ん?」
幼馴染「どうかしたんですか?」
女「んー……」
女「上手く……言えないんだけど」
幼馴染「?」
女「幼馴染さん、雰囲気……変わったかな? と思って」
女(たぶん……悪い方向に)
幼馴染「そうですか?」
女「……スロ娘ちゃんと、何かあったの?」
幼馴染「……鋭いですね」
幼馴染「まあ……ちょっとした、ケンカみたいなものです」
女「そう……」
女(これ以上は、聞かない方が良さそうね……)
幼馴染「あ、いらっしゃいませ」
女「…………」
―――――――――――
女「お疲れ様でした」
店長「お疲れ様。 幼馴染ちゃんもお疲れ様」
幼馴染「お疲れ様です」
女「…………」
女「ねえ、幼馴染さん」
幼馴染「はい?」
女「私が奢るからさ、ちょっと……夕御飯に付き合ってくれない?」
幼馴染「え?」
女「ね、お願い!」
幼馴染「…………」
――居酒屋・オッス!番長――
女「おっちゃーん、ビールにつくね、ネギま、お願いー」
アイヨー!
女「悪いわね、突き合わせちゃって……」
女「どんどん頼んでよ」
幼馴染「は、はい」
幼馴染(こういう雰囲気のお店、初めて……)
幼馴染(男もこういう所で飲み食いしてるのかな……?)
幼馴染「ええと……ささみと若鶏をお願いします」
アイヨー!
女「ビールは?」
幼馴染「その……苦くて、飲めません」
女「そっか」
女「んぐっ、んぐっ」
女「ぷはー!」
幼馴染「…………」
女「ふう……」
幼馴染「…………」
女「幼馴染さん」
幼馴染「はい」
女「私、もうすぐ結婚するの」
幼馴染「!!」
幼馴染「そうなんですか……おめでとうございます」
女「…………」
女「……でもねー」
女「だんだん、怖くなってきたの」
女「マリッジブルーってやつ? ……結構おっかないものね」
幼馴染「…………」
女「ほんの少し前まで、幸せの扉の前に居るって思ってたのに」
女「リアルに迫ってくると、いろいろ考えちゃうんだな、これが……」
幼馴染「…………」
女「相手の人の収入とか、これからこの人に一生付き合っていくんだなー、とか」
女「向こうの親御さんと仲良く出来るのかなー、とか……」
ヘイ、オマチー
女「ありがと」
幼馴染「…………」
幼馴染「私には、良くわかりません。 そういうの……」
女「そう?」
女「……ここの所の幼馴染さん」
女「私と雰囲気が似てるな、と、思ってたんだけど」
幼馴染「…………」
女「…………」
女「以前……話したよね」
女「お腹の虫が鳴いて、立ち上がった時の事」
幼馴染「……はい」
女「その時の私」
女「全力でぶつかったわ」
女「そしてその結果だったの、アレ」
幼馴染「…………」
女「幼馴染さんは――」
女「ちゃんとぶつかった?」
幼馴染「!」
女「おっちゃーん、ネギま、追加ー」
アイヨー!
幼馴染「…………」
幼馴染「……どうして」
幼馴染「どうして、そんな事、言うんですか!」
女「…………」
女「……おせっかいなのは、わかってる」
女「でも」
女「今、言っておかないと……私自身も後悔してしまうと思ったから」
幼馴染「……っ」
女「諦めるのは簡単よ」
女「けど、きっと後悔する」
女「そして……こじらせると、ずうっと引きずってしまって」
女「前に進む事が、出来なくなってしまう」
幼馴染「…………」
女「私は……幼馴染さんにそんな風になって欲しくない」
女「幼馴染さん、いい娘だから」 ニコ
幼馴染「…………」
幼馴染「ちっとも”いい娘”なんかじゃないです、私……」
女「そう?」
幼馴染「……私は、逃げています」
幼馴染「スロ娘からも、男からも、自分の気持ちからも……」
女「うん……」
幼馴染「…………」
幼馴染「……まだ、間に合うと思いますか?」
女「ふふっ……それは、わからないわよ」
女「でもまあ……早い方がいいとは、思うかな?」
幼馴染「そうですね……」
幼馴染「…………」
幼馴染「すみません!」
幼馴染「私にも、ビ、ビールをください!」
アイヨー!
女「お?」
幼馴染「け、景気づけです!」
幼馴染「勢いをつけたいんです!」
女「うん! 私も付き合うわよー?」
女「でも、程ほどにね」
幼馴染「はい!」
――隣町のホール(パチンコ店)――
スロ娘(…………)
スロ娘(そろそろ21時ね)
スロ娘(……!) ジャジャーン!
スロ娘(あら……かかっちゃった)
スロ娘(しょうがない……)
スロ娘(…………)
スロ娘(……よし、これで終わ) ジャジャーン!
スロ娘(まさかの連チャン……)
スロ娘(くっ……!)
―――――――――――
スロ娘(最後の最後で6連チャンもするなんて……!)
スロ娘(すっかり遅くなった!)
スロ娘(急いで帰らないと……)
タッ タッ タッ
スロ娘(……!)
コッ コッ コッ…
スロ娘(誰か……付いてくる!?)
スロ娘(もっと……もっと明るい道を――)
スロ娘(!!)
ズイッ…
コート「…………」
振り返ると、後ろにも黒い服を着た、『いかにも』なヤローが立っていた。
挟まれた。 もう逃げ場はない……!
スロ娘「き」
コート「幼馴染」
スロ娘「!?」 ビクン!
コート「騒がないでもらおう」
コート「こちらとしても……穏便に済ませたいんでね」
スロ娘「…………」
コート「ん? ああ……どうして幼馴染の事を知っているのかって?」
コート「そりゃ君の後を付けたりして、いろいろ調べたからだ」
スロ娘「…………っ」
コート「月並みな言い方だが――」
コート「幼馴染とやらが大事なら、逆らうな」
コート「わかったな?」
スロ娘「…………」
スロ娘「…………」 コクッ
コート「それでいい」
コート「じゃ……」
コート「来てもらおうか?」
コート「スロ娘」
スロ娘「……」
―――――――――――
ガチャ ガチャ…… カチリ☆
幼馴染「たらいまぁ~……」 ///
幼馴染「……あるぇ?」 ///
幼馴染「スロ娘ぉ……居ないのぉ……?」 ///
幼馴染「…………」 ///
幼馴染「まあ……いいかぁ……んふふっ」 ///
幼馴染「ねむーい……」 ///ドサッ…
幼馴染「ぐう……」 ///
―――――――――――
?「――み……なじみ……」
男「幼馴染」
幼馴染「……ん?」
幼馴染「男……?」
男「……どうしたんだ、幼馴染。 鍵もかけずに」
男「しかも、こんなに酒の匂いをさせて……」
男「というか、お前、飲めたのか?」
幼馴染「……いーじゃない、別に」
幼馴染「私にだって、飲みたい時くらいありますよーだ」
男「…………」
男「……まあいい」
男「それよりも、スロ娘はどうしたんだ?」
幼馴染「え?」
幼馴染「まだ帰ってないの?」
男「…………」
男「あいつ……あれほど遅くなるな、と、言っておいたのに」
幼馴染「! ……もう、24時前!?」
男「…………」
男「今日どの店に行くか、聞いてないか?」
幼馴染「……ごめん」
男「そうか……」
男「じゃあ、その辺を少し探してくる」
男「幼馴染はここで待っていてくれ」
男「もし帰ってきたら、連絡してくれるとありがたい」
幼馴染「わかったわ」
男「じゃ……」
幼馴染「うん、男」
キィ……パタン
幼馴染「…………」
幼馴染「……大丈夫、だよね?」
幼馴染「スロ娘……」
――某・事務所――
コート「さて」
コート「……まあ、気持ちは分かるが」
コート「そう怯えるな」
スロ娘「……無理言わないでよ」
コート「ふむ。 それもごもっとも、か」
コート「とりあえず、そのソファーに座れ」
スロ娘「…………」 ストン
コート「黒服、何か温かい飲み物を……」
黒服「分かりました」
コート「コーヒーでいいかな? スロ娘」
スロ娘「…………」 コクッ
コート「よし」
コート「それじゃあ、本題に入ろうか」
スロ娘「…………」
コート「そうだな……まず」
コート「俺の疑問に答えてもらおう」
スロ娘「……疑問?」
コート「まあ……動機はどうでもいい」
コート「金が欲しくて、ウチのシマの店に来たのだろうから」
ポスッ…
スロ娘「!」
スロ娘「こ、これ……あたしの手帳!?」
コート「そうだ」
スロ娘「どうして……あんたが……?」
コート「盗ったんだよ。 お前さんを襲ったクズ共からな」
コート「最悪の”イナゴ”だったし……ちょいと焼きを入れた」
スロ娘「…………」
コート「おおっと。 言っとくが殺してはいない」
コート「コロシだとサツが本気を出すからな」
コン コン ガチャ…
黒服「おまたせしました」
コート「おっ、済まないね」
カチャ カチャ… ズズッ…
コート「ふふ、美味いよ、黒服」
黒服「ありがとうございます」
コート「さ、君も飲むといい。 温まる」
スロ娘「…………」
スロ娘「いただきます……」 ズズッ…
スロ娘「……ふう」
コート「ほう……」
コート「意外だな。 よくこちらの出したものを飲めたものだ」
スロ娘「……あたしに聞きたい事があるんだろ?」
スロ娘「だったら……この段階で睡眠薬は入れないだろうし」
スロ娘「それに、あたしはもう逃げられないし、ね」
コート「ふふ……驚いた」
コート「若いのに冷静で、肝も据わっている」
コート(ま……クスリは自白剤やら麻薬やら色々あるが……)
コート(この若さじゃ、その程度の予測が限界だろう)
スロ娘「それで? あたしに聞きたい事って?」
コート「そうそう。 そうだった」
コート「俺が聞きたい事は、だ」
コート「お前さんの書いた、この手帳」
コート「ウチの店の台や、設定の入れ方を良く調べ上げていた」
スロ娘「…………」
コート「それで、だ」
コート「俺としては……この手帳の攻略法が通じない様にやっていた」
コート「……だが」
スロ娘「…………」
コート「しばらく泳がせていたお前さんは」
コート「信じられないくらいの短期間で、ウチの店で出せる様になった」
スロ娘「…………」
コート「俺が知りたいのは、ただ一つ」
コート「何故だ?」
スロ娘「…………」
スロ娘「…………」
コート「…………」
スロ娘「……そうだね」
スロ娘「信じてもらえるかどうか、わからないけど……」
スロ娘「……まず、最初に言っておくよ?」
コート「ふむ?」
スロ娘「あの店の設定……あんたが入れてるのかどうかは、置いといて」
スロ娘「誰かが『一人で』入れているのは確かだって言える」
コート「! ……ほう?」
スロ娘「あたしのやり方は――」
スロ娘「主に常連の人間の動きなの」
コート「…………」
スロ娘「これは、スロを打っていたら、誰でも思う事だけどね」
スロ娘「よく、『あいつまた勝ってる』って思う奴が、必ず一人は居ると思う」
スロ娘「あたしが見るのは、そういう連中さ」
コート「…………」
スロ娘「そういう人達は、根拠も何もなく打っている事が多いけど」
スロ娘「店と相性がいい、とも言える」
スロ娘「もっと言えば……」
スロ娘「その店の設定を打っている『人間』と、相性が良いって事」
コート「!」
スロ娘「あたしは、そういった人間の台選びを参考にして」
スロ娘「店の設定の入れ方の癖を見ているんだ」
コート「…………」
スロ娘「そんな馬鹿な、って思われるかもしれないけど」
スロ娘「あたしは、あの店にまた行った時」
スロ娘「ある常連が変わらずに出しているのを見て」
スロ娘「ああ、設定を打っている人は変わらず、しかも一人のままなんだって」
スロ娘「判断できた」
コート「…………」
スロ娘「後は簡単だよ」
スロ娘「いつも通りの事をすればいい」
スロ娘「今回、短期間だったのは」
スロ娘「参考にする人間が、あらかじめ分かっていたから」
コート「…………」
コート「なんともはや……」
コート「にわかに信じられないが……筋は通っているな」
黒服「…………」
コート「参考までに聞いておくが」
コート「どうすれば、それを防げる?」
スロ娘「一番単純なのは」
スロ娘「設定を打つ人間を、不定期に変える事だと思う」
スロ娘「それだけで、あたしが今言った理屈の常連は」
スロ娘「出にくくなると思うから」
コート「なるほど」
コート「その通り、だな」
黒服「…………」
スロ娘「…………」 ズズッ…
スロ娘「それで……? あたしはどうなるのかな?」
コート「ふふふ……そうだな」
黒服「…………」
コート「黒服、このお嬢さんを丁重にお送りする。 車を用意しておけ」
黒服「わかりました」
スロ娘「……!?」
コート「驚くか? まあ、最後まで聞け」
コート「お前は、打ち筋が随分とプロらしくなっていた」
コート「いつも21時くらいで引き上げるし……」
スロ娘「…………」
コート「にもかかわらず」
コート「ここ数日は、毎日ウチの店に来て荒稼ぎしている」
コート「よほどの理由があるのだろう……」
スロ娘「…………」
コート「今回は、こちらの疑問に答えてくれたし」
コート「大目に見てやる。 もう二度と……」
コート「……いや、来たければ、また来ればいい」
コート「来たければ、な……」 ククク…
スロ娘「…………」 ゾク…
コート「以上だ。 機会があれば……また会おう」
コート「スロ娘」
スロ娘「…………」
―――――――――――
ピピピッ……ピピピッ……
幼馴染「! ……もしもし?」
男『俺だ、幼馴染』
男『スロ娘は帰ってきたか? 連絡は?』
幼馴染「ううん。 どっちもまだ……」
男『そうか……携帯も繋がらないまま、か』
男『最近のスロ娘、どんな様子だった?』
幼馴染「どんな……って言われても……」
幼馴染「ここの所、勝ちが続いているみたいで」
幼馴染「帰りが遅くなる事が多くなってる……って事ぐらいよ」
男『…………』
男『! ……まさか』
幼馴染「? 男?」
男『……何でも無い、幼馴染』
男『俺はもう少し、スロ娘を探してみる』
幼馴染「……わかった」
男『じゃ……』
ブッ…… ツー、ツー……
幼馴染「…………」
幼馴染「スロ娘……」
ブロロロ……キィ
幼馴染(? 自動車の音だ……)
幼馴染(今は……もう午前2時。 こんな深夜に珍しいわね)
幼馴染(まあ、普段は寝てる時間だし……こんな時間に働いている人が)
ガチャ…
スロ娘「……ただいま」
幼馴染「ス、スロ娘!?」
スロ娘「ごめん、幼馴染。 心配かけて……」
幼馴染「本当よ! 心配したんだから! 今、男だって……」
スロ娘「……何だか幼馴染、お酒臭いね?」
幼馴染「! そ、それは……」 ///
幼馴染「……って、それよりも事情を話してよ」
幼馴染「一体何があったの?」
ブロロロロロ……
黒服「…………」
黒服「……いいんですか?」
コート「ん?」
黒服「いつもなら、落とし前をつけさせる所だと思うのですが」
コート「そうだな……俺もそう思う」 クスッ
黒服「……?」
コート「まあ……ホンの気まぐれだ」
黒服「はあ……」
コート「納得できないか?」
黒服「いえ……出過ぎた質問でした」
コート「ふふ……理由をつけると、だ」
コート「放っておいても特に害にならないだろうし」
コート「なる様なら、その時に手を下せばいい。 ……それに」
黒服「? それに?」
コート「普段、悪い事ばかりしていると」
コート「たまには、いい事もしたくなるものさ」 フッ…
黒服「…………」
黒服「なるほど、納得しました」
コート「そうか……」
ブロロロロロ……
スロ娘「――って事があったの」
幼馴染「」
スロ娘「……ごめん、幼馴染」
スロ娘「あたしだけじゃなく……幼馴染にまで――」
幼馴染「……スロ娘」
スロ娘「うん?」
幼馴染「どうして?」
幼馴染「どうして、そんなにお金が欲しかったの?」
スロ娘「…………」
幼馴染「…………」
スロ娘「……あたし」
スロ娘「ここを出て行こうと思ったの」
幼馴染「……!?」
スロ娘「あたし……男の事が好き」
スロ娘「でも、幼馴染の事も好き」
幼馴染「……スロ娘」
スロ娘「けど」
スロ娘「今は、男も、幼馴染も、あたしも……」
スロ娘「みんなバラバラになっちゃった」
幼馴染「…………」
スロ娘「距離を取りたいって、思った」
スロ娘「そうしたら……何かが変わって……」
スロ娘「また……前みたいに……なれるんじゃないかって……」 グスッ…
幼馴染「…………」
違う
スロ娘も……私と同じように、ただ――
逃げたかったんだ……
目の前の現実から……辛さから……無力な自分から……
幼馴染「…………」
幼馴染「……そう」
幼馴染「ごめんね、スロ娘」
スロ娘「幼馴染は……悪くない……あたしが……」
ギュ
スロ娘「!!」
幼馴染「……スロ娘」
幼馴染「私、ね」
幼馴染「もう……逃げないよ」
幼馴染「男からも、スロ娘からも、自分からも」
スロ娘「! 幼馴染……」
幼馴染「だから……ここに居て」
幼馴染「出て行くにしても……突然居なくならないで」
幼馴染「お願い」
スロ娘「…………」
スロ娘「……うん……わかった…………約束……ぐすっ……する……」 ポロポロ…
スロ娘「…………うああっ…!…怖かった……とっても……怖かったよ……」 ポロポロ…
スロ娘「……おさな、なじ、みっ……!……うあああああっ……えっ…えっ……」 ポロポロ…
幼馴染「うん……うん……」
幼馴染「もう……大丈夫だから」
―――――――――――
幼馴染「あ……もしもし、男?」
幼馴染「うん……そう。 帰ってきたよ、スロ娘」
幼馴染「今? ……疲れて寝ちゃってる」
幼馴染「…………」
幼馴染「ふふっ、そうだね……人騒がせだね」
幼馴染「……でも」
幼馴染「私達は、スロ娘を責められないよ」
幼馴染「…………」
幼馴染「う~ん……ひと言じゃ説明できないな」
幼馴染「詳しくは帰ってから説明するよ」
幼馴染「……うん、それじゃ」
ピッ
幼馴染「…………」
幼馴染(…………)
幼馴染(……私、もう迷わない)
幼馴染(そして、もう逃げない)
幼馴染(男からも、スロ娘からも、自分自身の気持ちからも)
幼馴染(…………)
幼馴染(私は……)
――男が好き――
という所で、今日の投下は終了です。
お待たせして、すみませんでした。悪役、もう少し活躍させたかったなー。
いろいろ悩んだんですけど、こんな形になりました……。
それから、次回で最終回のつもりです。
おっつ!
いよいよかぁ
期待
幼馴染…
乙!
明日が楽しみ
――翌日の午前中――
――幼馴染のアパートの一室――
スロ娘「…………」
スロ娘「……ん」
男「起きたか、スロ娘」
スロ娘「! ……男」
男「朝メシ。 パンとコーヒーだけど、いるか?」
スロ娘「…………」
スロ娘「うん。 もらうよ」
スロ娘「ごちそうさまでした」
男「うむ」
男「さて……」
スロ娘「?」
男「お腹が膨れたところで、お説教タイムです」
スロ娘「はぁーい……」
―――――――――――
――コンビニ――
幼馴染「ふあ~……」
幼馴染「……むぅ」
女「……幼馴染さん、大丈夫?」
幼馴染「だ、大丈夫です……」
女「ごめんなさい、昨日お酒なんて飲ませたから」
幼馴染「いえ……自分の意志で飲んだんですから」
幼馴染「自業自得です」 クスッ
女「…………」
女(何? 雰囲気が、ガラッと変わったわね……)
――幼馴染のアパートの一室――
男「以上」
スロ娘「……」 ショボン…
男「今度こそ、本当に懲りておけよ」
スロ娘「わかってます」
男「…………」
男「じゃ、そろそろシノギに行きますか」
スロ娘「そうだね」
スロ娘「…………」
スロ娘「ねえ、男」
男「ん?」
スロ娘「明日ってさ、幼馴染……休日なんだよね?」
男「ああ、そう聞いてる」
スロ娘「…………」
スロ娘「じゃあさ、今日、あたしは休みたいんだけど……」
男「?」
スロ娘「男も付き合ってくれない?」
男「……え?」
スロ娘「お願い」
男「…………」
――高台の公園――
スロ娘「うーんっ……」 セノビー
男「…………」
男「おい、スロ娘。 こんな所で良かったのか?」
スロ娘「うん! 今日は暖かいし」
スロ娘「気分転換には、最高の景色だよ」
男「そうか……」
スロ娘「ふふふ」
男「…………」
男(……ったく。 能天気に笑っちゃって……)
男(こっちまで嬉しくなるじゃないか……) クス
スロ娘「…………」
スロ娘「…男」
男「ん?」
スロ娘「あたしね」
男「うん」
スロ娘「男の事が、好き」
男「うん」
男「……って!?」
スロ娘「んふふ」 ///
男「……あのな」
スロ娘「冗談なんかじゃ無いよ」
男「…………」
スロ娘「本気で、嘘偽りなく、ラブの意味で」
スロ娘「男の事が、好き」
男「…………」
スロ娘「……そうだね」
スロ娘「最初は、嬉しかったから、かな」
スロ娘「ボロボロで、行き場のない、あたしの面倒見てくれたし」
スロ娘「頼りがいのある人だな、って感じで」
男「…………」
スロ娘「でもさ」
スロ娘「だんだんと、欠点も見えてきた」
男「…………」
スロ娘「優柔不断で、壁を作るくせに」
スロ娘「どこか……寂しげで、構ってよオーラ出してた」
男「……おい」
スロ娘「ふふふ」
スロ娘「……それに気がついてから、かなー」
スロ娘「男の事、支えたいって思う様になったの」
男「…………」
スロ娘「あたしって生意気?」
男「少しな」
スロ娘「ふふふっ」
男「…………」
スロ娘「……で、ね」
スロ娘「男の気持ち、聞かせて欲しい」
スロ娘「はっきりとした言葉で、言って欲しい」
男「…………」
スロ娘「もう、覚悟も、あたしの気持ちも、整理できてる」
スロ娘「どんな結果になっても構わないし、受け取れるよ」
スロ娘「だから……お願い」
男「…………」
男「…………」
男「……ごめん、スロ娘」
スロ娘「…………」
スロ娘「……うん」
男「…………」
男「……でも、気持ちは嬉し――」
スロ娘「止めて」
男「…………」
スロ娘「さて」
スロ娘「ここからは男にとって、辛い時間になります」
男(……いや、もう、十分辛いんだけど)
スロ娘「どうしてあたしを振ったの?」
スロ娘「その理由を聞かせて」
男「!!」
男「え? ……いや……あの」
スロ娘「あたしが中古品だから?」
男「……!」
スロ娘「それとも」
スロ娘「人殺しだから?」
男「止めろ! スロ娘!」
スロ娘「どうしてよ……事実でしょ?」
男「そんな目で、俺はスロ娘を見ていない!」
男「そんな……自分を蔑む様な事を言うな!」
スロ娘「…………」
スロ娘「同じ事を、あんたに言うよ、男」
男「!!」
スロ娘「男の気持ち……もう、わかっていたんだよ」
スロ娘「……あたしのお母さんが、もうこの世に居ないって事を」
スロ娘「教えてくれた、あの日に、ね」
男「…………」
スロ娘「男は、あたしに同情してくれるけど」
スロ娘「心には、入れてくれな……」
スロ娘「ううん」
スロ娘「入り込む余地は、無いんだって」
男「…………」
スロ娘「男」
スロ娘「はっきり言ってあげる」
スロ娘「男は、別に」
スロ娘「ダメな奴でもない、世の中に後ろめる事もない」
スロ娘「立派に生きてるよ」
男「……スロ娘」
スロ娘「だから、自信を持って」
スロ娘「男の心の中に居る人に、男の気持ちを伝えてあげて」
スロ娘「そして……前を向いて」
男「…………」
男「……スロ娘」
スロ娘「うん」
男「…………」
男「ありがとう」
スロ娘「どういたしまして」
男「…………」
男「じゃ……行くかな」
スロ娘「今から?」
男「……まずいか?」
スロ娘「わかんないけど……今までの事を振り返って」
スロ娘「気持ちの整理をした方がいいと思う」
男「…………」
男「……そうだな」
男「きっと、スロ娘の言う通りだ」
男「少し考えてみる」
スロ娘「そう」
男「…………」
男「じゃ……」
スロ娘「うん……」
スロ娘「あたし、もうちょっとここの景色を見ていく」
男「ああ」
スロ娘「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「…………」
スロ娘「……やっぱり」
スロ娘「ダメだったね……」
スロ娘「…………」
スロ娘(まったく期待してなかったって言えば)
スロ娘(嘘になる)
スロ娘(…………)
スロ娘(でも……男の気持ちを無視して)
スロ娘(あたしの気持ちを押し付けたくない)
スロ娘(…………)
スロ娘(それが、あたしの正直な気持ち)
スロ娘「……っ」 ポロッ
スロ娘「………ぐっ……………あうっ……………ひっく………」 ポロポロ…
スロ娘「……ふぐっ………ううっ……うあっ………ああああっ…………っ……」 ポロポロ…
スロ娘「……ああああっ……!……ひっく…………おと、こっ………うあっ……」 ポロポロ…
スロ娘「あうっ……あうっ………ああああっ!…………えっ……えっ……えぐっ……」 ポロポロ…
スロ娘「……うあっ………ひぐっ……あうっ…………ううっ………ひっく……」 ポロポロ…
スロ娘「……ああああああああっ!……ひぐっ!…ああああっ…………ひっく……」 ポロポロ…
スロ娘「…うぎっ……あああああああああああっ……!」 ポロポロ…
スロ娘「……あああああああああっ!…えっ…えっ……あああああああああっ!」 ポロポロ…
辛い…… 痛い…… 苦しい……
でも
それは、本当に男の事が好きだった事の証
あたしは、男に出会えて
幼馴染と友達になれて
男の事を好きになった事を
良かったと思ってる
それは嘘じゃない
だけど、後悔もある
結果は分かっていた
気持ちを言わないで、曖昧にしていた方が
辛くも、痛くも、苦しくも無かった
けど……それだけ
進む事は、ない
ずうっと、そこに止まっているだけの……関係
それだけは嫌だった
だから、あたしは、全部吐き出す
男への気持ちも、幼馴染への友情も
よくわからない、あたしの心も
何もかもを……
――前を向くために――
―――――――――――
テク テク テク…
男「…………」
スロ娘「男は、別に」
スロ娘「ダメな奴でもない、世の中に後ろめる事もない」
スロ娘「立派に生きてるよ」
男(…………)
男(……こんな事、言われたの)
男(初めてだな)
スロ娘「だから、自信を持って」
スロ娘「男の心の中に居る人に、男の気持ちを伝えてあげて」
男(…………)
男(……スロ娘)
男(俺の心を知っていながら、告白して……すごいな)
女「ふん……私を含めて、3人もの女の子を振り回しておきながら」
女「よくそんな事が言えたものね」
男(……その通りです、女さん)
男(俺……やっと気がつきました)
男(俺は……)
男(幼馴染が……)
男(幼馴染の事が)
男(好きだ)
男(…………)
男(……でも)
男(…………)
男(……いや)
男(”でも”はナシだ)
男(自分の気持ちに素直になれ)
男(これ以上、自分を嫌いになるな)
男(スロ娘は……こんな俺の背中を押してくれたんだ)
男(絶対に無駄にしない……!)
―――――――――――
女「お疲れ様、幼馴染さん」
幼馴染「お疲れ様です、女さん……」
女「…………」
女「ねえ、幼馴染さん」
幼馴染「はい?」
女「少し、話さない?」
幼馴染「え? ……その」
女「ああ……飲み屋じゃないから」
女「喫茶店。 コーヒー奢るよ?」
イラッシャイマセー
幼馴染「それで……話って?」
女「うん……大した事じゃないんだけどね」
女「スロ娘ちゃんと、仲直り出来たのかな、と思って」
幼馴染「…………」
幼馴染「ええ、そうです。 仲直りできました」 ニコ
女「そう……良かった」
幼馴染「それから」
女「ん?」
幼馴染「本当の意味で、自分と……」
幼馴染「ううん」
幼馴染「いろいろな事と、向き合う事ができました」
女「そうなんだ……」
女(……何があったのか、知らないけど)
女(幼馴染さん、いい雰囲気になったものね)
幼馴染「…………」
幼馴染「私」
幼馴染「好きな人が、いるんです」
女「!」
幼馴染「……スロ娘とは」
幼馴染「その人をめぐって、ライバル関係で……」
女「ああ……」
女(まあ、そうだろうと思ってたけど)
女「その辺がケンカの理由?」
幼馴染「そんなところです」 クスッ
幼馴染「……でも」
幼馴染「私、やっと勇気が持てる様になりました」
女「……そっか」
女「伝えるんだね……その”好きな人”に」
幼馴染「ええ」
女「…………」
女「私、応援するよ、幼馴染さんの事」
幼馴染「ありがとうございます、女さん」
女「で? どんな人なの? その人って?」
幼馴染「あ、はい……その」
幼馴染「男とは、小さい頃からの付き合いで……」
幼馴染「あ、男って名前なんですけど――」
―――――――――――
幼馴染「――って感じで、今に至ります」
女「…………」
幼馴染「……? 女さん?」
女「ん? ああ、ごめんなさい」
女「ちゃんと聞いているから」 ニコ
幼馴染「はあ……」
女(……男の奴)
女(こんな過去があったのね……)
女(…………)
女(勝ち目なんて……最初から無かった)
女(って事、か……)
女(…………)
女「幼馴染さん」
幼馴染「はい?」
女「根拠も何もないけど……」
女「きっと上手く行くと思う」
幼馴染「! ……女さん」
女「頑張ってね、幼馴染さん」 ニコ
幼馴染「はい! 女さん!」 ニコ
―――――――――――
――幼馴染のアパートの一室――
ガチャ
幼馴染「ただいまー」
スロ娘「お帰り、幼馴染」
スロ娘「今日はちょっと遅かったね?」
幼馴染「ん? ああ、少し考え事してて……」
スロ娘「ふうん。 そうなの」
スロ娘「はい、ご飯。 出来てるよ」
幼馴染「ありがとう、スロ娘」
幼馴染「ごちそうさま」
スロ娘「ごちそうさま」
幼馴染「美味しかったよ、スロ娘」
幼馴染「料理の腕、上げたわね」
スロ娘「えへへー。 先生の腕がいいからね」
幼馴染「お、珍しく持ち上げてくれるじゃない」
アハハ……
スロ娘「……さて」 スクッ
幼馴染「ん?」
スロ娘「あたし、ちょっと外泊してくる」
幼馴染「!?」
スロ娘「ふふっ、安心して、幼馴染」
スロ娘「駅前にある、カプセルホテル。 あそこに泊まってくるつもり」
幼馴染「どうして……?」
スロ娘「…………」
スロ娘「今日、ちょっと色々あって、一人になりたいの……」
スロ娘「明日の夕方には帰るから」
幼馴染「スロ娘……」
スロ娘「だから、『さよなら』、じゃないよ?」
スロ娘「『また明日』だから」 ニコ
幼馴染「…………」
幼馴染「うん。 わかったわ、スロ娘」
幼馴染「また明日ね」 ニコ
―――――――――――
コン コン
男「幼馴染、いいか?」
幼馴染「どうぞー」
ガチャ…
幼馴染「どうしたの? 男」
男「…………」
男「……スロ娘は?」
幼馴染「…………」
幼馴染「……今日は、色々あったから」
幼馴染「一人になりたいって、駅前のカプセルホテルに……」
男「! ……そうか」
男「…………」
男「話がある」
幼馴染「うん」
男「明日……そうだな、午前中にでも」
男「高台の公園に行かないか?」
幼馴染「うん……いいよ」
男「そうか……」
男「じゃあ、明日、幼馴染」
幼馴染「うん、また明日、男。 お休み」
男「ああ、お休み、幼馴染」
――翌日――
――高台の公園――
幼馴染「うわぁ……いい景色」
男「ああ」
男「天気もいいしな」
幼馴染「うん! お洗濯日和のいい天気だね!」
男「そうだな」 クスッ
男「…………」
男「……幼馴染」
幼馴染「うん」
男「俺……」
男「昨日ここで、スロ娘に告白された」
幼馴染「……うん」
男「…………」
男「そして、俺はスロ娘を……フッ」
男「いや……」
男「スロ娘は、俺に振られてくれたんだ」
幼馴染「…………」
幼馴染「……そっか」
男「…………」
男「そのおかげで――」
男「俺……自分に向き合えた」
幼馴染「…………」
男「幼馴染」
幼馴染「うん」
男「俺、幼馴染の事が――」
男「好きだ」
幼馴染「…………」
幼馴染「嬉しいよ、男」
幼馴染「私も、男の事」
幼馴染「好き」
ギュ
幼馴染「大好き……」 ///
男「……幼馴染」 ///
男「…………」
幼馴染「…………」
男「許してくれるか?」
幼馴染「ん?」
男「あの時の……幼馴染が告白してきた時の俺の事を」
幼馴染「…………」
幼馴染「それは、難しい……かな?」
男「…………」
幼馴染「でも」
幼馴染「男が、どんな風に私の事を好きでいるのか」
幼馴染「話してくれたら、考えてあげる」
男「マジっすか……」
幼馴染「ほらほら、どうなの?」
男「う~ん……」
男「月並みだけど」
男「俺の傍に居て欲しいし」
男「幼馴染の傍に、ずっと居たいと思ったから……」
幼馴染「何よそれ」
幼馴染「私が告白した時の言葉、まんまじゃない」
男「……あと」
幼馴染「!」
男「辛い時……思い出すのは、いつも幼馴染の顔だった」 ///
幼馴染「……!」 ///ドキッ
幼馴染「ホント?」 ///
男「ああ……でも」 ///
幼馴染「でも?」
男「……俺にそんな資格はないって、今更何を考えているんだって」
男「そんな風に……自分を抑え続けてた」
幼馴染「…………」
幼馴染「男、座らない?」
男「ん? あ、ああ……」
ストン…
幼馴染「…………」
男「…………」
幼馴染「……男」
男「うん」
幼馴染「許すとか、許さないとかは……」
幼馴染「私には、もう無い」
男「…………」
幼馴染「あるのは、ね」
幼馴染「お互い……すれ違いが多かったんだな、って事」
男「……幼馴染」
幼馴染「あと……今は――」
幼馴染「ううん……これからは、前を向いて」
幼馴染「男と一緒に居たい」 ///
幼馴染「男と、生きて行きたいって」 ///
幼馴染「思ってる」 ///
男「ああ……」 ///
男「俺もだ、幼馴染……」 ///
幼馴染「……それから、ね。 約束して欲しい事があるの」
男「え?」
幼馴染「それは ”ただいま” と ”お帰り” を言う事」
男「…………」
男「俺、今まで言ってなかった?」
幼馴染「そうよ? ただの一回もね」
男「……すまん」
幼馴染「約束だよ?」
男「ああ、わかった幼馴染」
男「約束する」
あたしは、その日の夕方に帰ってきて
出迎えた2人の様子を見て、上手く行ったんだな、と
すぐにわかった。
……正直、嬉しくもあり、悔しくもあり、複雑な心境。
でも……
あたしは、ホッとしている、と思う。
それから、2年の月日が流れた。
あたしは、ようやく貯まったお金を元に、女さんのツテで
格安の下宿先を紹介してもらって、今は、そこでお世話になってる。
そして、寿退社した女さんのコンビニで働いていた。
もちろん、幼馴染と一緒に仕事している。
しもた改行ミスった。訂正↓
それから、2年の月日が流れた。
あたしは、ようやく貯まったお金を元に、女さんのツテで
格安の下宿先を紹介してもらって、今は、そこでお世話になってる。
そして、寿退社した女さんのコンビニで働いていた。
もちろん、幼馴染と一緒に仕事している。
男は、あれからすぐに、機械部品工場でバイトとして働らき始めた。
そして、幼馴染の両親に会いに行ったけど……
最初こそ、懐かしがってた幼馴染の両親は
就職もしていない男に、うちの娘はやれない、と
まったく取り合わなかったとか。
でも、そんな事で幼馴染の心は変わらなかったけどね。 ふふふ。
幼馴染は自分の部屋を引き払って、男と住むようになってた。
女さんは、旦那さんのバーテンさんと幸せそうにしていた。
そして、新しい家族が増えていた。
とっても可愛い男の子の赤ちゃん。
スロプロは……実を言うと、まだやってる。
まあ、男と同様、アフターファイブってやつで
仕事帰りにちょこっと、だけど……。
そうそう。 スロプロって言えば、あの儲かる店。
あそこで稼いで捕まって、何事もなく開放してくれたから
案外いい人?なのかと思ってたら……
「ちょいと焼き」を入れられた3人は
薬品を目に垂らされて、失明させられていた事がわかった。
……あたしは、あの街自体に近づかない様にしようと思った。
男と幼馴染は、いつも仲が良さそうだった。
だけど、危機が全く無かった訳じゃない。
一番酷かったのは……何と言っても男と女さんが
一時、同棲してたのが幼馴染にバレた時……。
まあ……過去の事とは言え、やる事はやってたのが
幼馴染には、我慢ならなかったみたい……。 当然……かな?
どうやって、その危機を乗り切ったのかって?
それは、女さんの旦那さんのバーテンさんが、一肌脱いでくれたから。
どんな風に説得したのかは知らないけど……。
幼馴染は、男を許したみたいだった。
……厳密には違うって彼女は言ってたけど。
どういう意味なのかなー……ちょっと怖い。
そして……
――男と幼馴染の部屋――
幼馴染「へえ! 告白されたんだ!」
スロ娘「う、うん……」 ///
幼馴染「で? どうするの? スロ娘?」
スロ娘「年下だし……正直、そんなに魅力を感じてないの……」
幼馴染「あらら……相手の男の子、可哀想に……」
スロ娘「……ど、どうしたらいいかな?」
幼馴染「ん?」
スロ娘「その……上手な断り方、とか……」
スロ娘「あれば、教えて欲しい、かな……」
幼馴染「…………」
幼馴染「……それは、私は教えられないよ」
スロ娘「…………」
幼馴染「それに、ね」
スロ娘「うん」
幼馴染「やっぱり、自分の気持ちを正直に言う事が一番だと思うな」
スロ娘「だ、だけど……それで、いろいろ……こう、気まずくなったりとかしたら」
幼馴染「スロ娘」
スロ娘「! ……う、うん」
幼馴染「……いい加減かもしれないけど」
幼馴染「それもきっと、いい思い出になるんじゃないかな?」
スロ娘「……そう、かな?」
幼馴染「スロ娘は、私と男が、すんなり上手く行った様に見えるの?」
スロ娘「!!」
スロ娘「…………」
スロ娘「そう……だね」
スロ娘「…………」
スロ娘「わかったよ、幼馴染」
スロ娘「明日……はっきりと自分の気持ちを言う」
幼馴染「うん! それがいいよ」
スロ娘「…………」
スロ娘「……それにしても」
スロ娘「すごい豪勢な夕食だね……」
スロ娘「美味しそう」
幼馴染「ふふふ、今日はスロ娘が来るってわかってたし……それに」 ///
スロ娘「……? それに?」
幼馴染「ううん、何でも無い」 ///
幼馴染「後で、男と一緒に驚いてもらうね!」 ///
スロ娘(……いったい何があるんだろう?)
幼馴染「……あ」
幼馴染「足音が聞こえてきた」
スロ娘「これ、男の足音なの?」
幼馴染「うん」
幼馴染「ほうら……もうすぐ玄関を開けるよ~」
幼馴染「3……、2……、1……」
スロ娘(幼馴染……ちょっとキモイ……)
幼馴染「ゼロ!」
ガチャ
男「ただいま、幼馴染」
幼馴染「お帰りなさい、男」
おしまい
お疲れ様でした。ラストはプロポーズとか?
これで終了です。皆さん、お付き合いありがとうございました。
意外と読んでくれてた人が多くて、驚いています。
最初から、幼馴染と男はくっつく予定でしたけど、スロ娘のヒロイン力が
幼馴染を食い始めて、途中どうしようと思ってました……。
なんか、あの夏っぽくなったかなー。
おつかれ
子供ができたのかな?
丁度いい時間にいた開いてよかった
名作をありがとう
作中の劇中歌もなかなかのセンスだったしw
おつ
>>512
描写はありませんでしたけど、二人の若い男女が
部屋の中でする事の……結果報告でしょうか。
ご想像におまかせします。
>>1
の違う作品がみたいw
>>514
ありがとうございます。実はbgm、めちゃくちゃ悩んで選曲したので
すごい嬉しいです。投下が遅れたのも、コレのせいだったりしますし……タハハ。
>>517
男「ヤンデレ症候群……ですか」医師「ええ」
男「ヤンデレ症候群……ですか」医師「ええ」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1351589006.html)
↑これ、タテ逃げを書いてます。
同タイトル、まとめサイト↓
あやめ速報
http://blog.livedoor.jp/ayamevip/archives/21066498.html
bookチャンネル
http://himasugiwaroenai.blog.fc2.com/blog-entry-317.html
どちらかといえば、まとめの方が読みやすいので、そちらをオススメします。
読みやすさならあやめ、ラストにbgmが入ってて、それの再生しやすさはbook……でしょうか。
幼馴染派ですか?
またなにか書いてくださいね。
>>520
……そういえば、幼馴染モノしか書いてない。
ときメモ2の陽ノ下光が一番好きなヒロインだし……
でもアルトネは、オリカが好きなんだけどなぁ。
次回作もいずれまた書きますね。……幼馴染かどうかは、わかりませんけど。
読んだことある作品だったw
迷ったけど、版権物も貼っておきます。
一夏「……? 鈴?」
一夏「……? 鈴?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1347889094.html)
一夏「久しぶりに鉄板に火を入れてみた」
一夏「久しぶりに鉄板に火を入れてみた」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1349137434.html)
↑は10レス目から自分です
シャル「うっ……ぐすっ……ひっく……」 ポロポロ…
シャル「うっ……ぐすっ……ひっく……」 ポロポロ… - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1353935270.html)
p4とisのクロス↓
一夏「is学園に第二の男性適性者が転校してきた!?」
一夏「IS学園に第二の男性適正者が、転校してきた!?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1342255475.html)
p4とまどマギのクロス↓
鳴上「ここは……見滝原駅、というのか」
鳴上「ここは……見滝原駅、というのか」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1355544372.html)
もう一個、異色のクロス
エンジェル伝説×is。立て逃げを書きました↓
山田「こ、この度、is学園に転校してきた北野誠一郎君です」
山田「こ、この度IS学園に転校してきた北野誠一郎君です」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1352035712.html)
これは多分どこにもまとめられていません。
他にも過去作ありますけど……三点リーダー使っていなかったり
いろいろ読みにくいと思うので、これくらいにしておきます……。
乙
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