鳴上「ここは……見滝原駅、というのか」(676)




p4とまどマギのクロスです。

※注意事項

 (1) 基本的にまどマギのストーリーに沿って展開します。 
 (2) p4(ps2版)に関しては、多少ネタバレがあります。
 (3) 登場するのは、ゲームクリア時のハイスペック能力を持ったアニメ版番長、と思ってください。
 (4) >>1は、まどマギをアニメでしか知らない。(しかも前半うろ覚え)

以上です。





―――――――――――




     ――それでも――

     ――私は――






     ――わたしは!――





     ……カシャン!!




―――――――――――




 俺の名は、鳴上 悠。
家の事情で1年ほど八十稲羽、という所にいた。

 そこで俺は、奇妙な殺人事件に巻き込まれ、『ペルソナ』という力を使い
その難事件と世界の崩壊を防いだ。 出会った、心強い仲間達と共に……。

 今は両親の元に戻り、普通の高校3年生として平穏に暮らしている。


 ――そして、ある日――


 ここは見滝原町。 俺の住む街の 隣の町だ。
普段は立ち寄ったりしないのだが、学校の帰り、うっかり電車で寝過ごしてしまい
見滝原駅に降り立った。

 特に用があった訳ではない。
ほんの気まぐれで、何の気になしに好奇心から、その町を探索してみようと思った。

 ……夕日がとても綺麗だった事を覚えている。







 こんな所に本屋がある。 こっちには こ洒落たレストラン。
片側二車線の大通りに、大きな看板がある。

     『この先、10キロにジュネス見滝原店 ジュネスは、毎日が お客様デー!』
     『エブリディ ヤングライフ ジュ・ネ・ス♪』

 ジュネスは、この町にもある様だ。 そして、気が付いたら日が暮れていた……。



 ――俺は、再び――


鳴上「そろそろ帰るか」

鳴上「……この路地裏を通れば、近道になるかな?」


 ――奇妙な戦いに 巻き込まれるのだった――





―――――――――――


鳴上「…………」

鳴上(おかしい)

鳴上(さっきから同じ様な所を グルグル回っている……)

鳴上(…………)

鳴上(………それにこの感覚)

鳴上(似ている……)

鳴上(テレビの中の世界に……)

鳴上(…………)

鳴上(まさか、な……)


     ォォオオオオオォォンッ……

鳴上「!!……なんだ?」

鳴上「…………」

鳴上「!?」

鳴上(な!? か、体が、引っ張られる!!) グググッ!

鳴上(!!?)

鳴上(足元に、何か居る!!)

鳴上「くっ!!」

鳴上(気付くのが遅れた……!)

鳴上(顔以外を黒い何かに 羽交い絞めに……!)

鳴上「は、はなせ!」

     ズル…ズル…ズル…


鳴上「どこに……連れて行くつもりだ!?」

鳴上「…………」

鳴上「だんまりか……」

     キヒヒヒヒ……

鳴上「…!」

鳴上(本体……か!?)

鳴上(見た目は、かわいい猫のマスコットキャラの様だが……)

鳴上(グリズリーくらいでかいし)

鳴上(何よりも黒くて、腕が4本もある…!)

     キヒッ… キヒッ… キヒヒヒヒ……


鳴上(…………)

鳴上(やるしかない)

鳴上(出来る事は、限られているが……)

鳴上(…………頼む!) グッ……!



     ペ     ル     ソ     ナ     !!



鳴上「!! イザナギだ!!」

鳴上(信じられんが……ペルソナが出た!)

鳴上「イザナギ! 俺の拘束をといてくれ!」

     ズババッ!


     ギィィィィッ!!

鳴上「よし!」 ダダッ!

鳴上「イザナギ!!」 ジオ!!

     バリ バリッ!!

     ギィイアアアァァァ!!

鳴上「止めだ!」

     ズバァッ!!

     ギアアアアアアッ……!!

     シュウウウウウン……

鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ…」

鳴上(この消滅の仕方……やはり、シャドウか?)

鳴上(……!)


鳴上「あの妙な空間が、消えていく……」

鳴上「…………」

鳴上「…………」

鳴上「完全に消えた……」

鳴上「…………」

鳴上「…………そうだ」

鳴上「ペルソナ!」

     シーン……

鳴上「…………」

鳴上「いったい……なんだと言うんだ?」


     コン  コロンコロン コロン……

鳴上「……ん?」

鳴上「これは……?」 スッ…

鳴上「…………」

鳴上(黒い……宝石?)

鳴上(…………)

鳴上(何かの手掛かりに なるかもしれない)

鳴上(もって行こう……)

     タッ タッ タッ……


 ――見滝原市・某所――



??「……あら!?」

???「……ん!?」

??「理由はわからないけど……魔女の反応が、消えたわね」

???「この町に、君の他に魔法少女って居たっけ?」

??「私の知る限りでは、居ないわ」

???「ふむ……気になるね。 調べてみる?」

??「…………」

??「いえ、止めておきましょう」

??「事情を知らない娘が、たまたま、という可能性もあるし」

???「それもそうだね、巴マミ」

マミ「帰りましょ、qべえ」

qべえ「ああ」


 ――夜――

 ――鳴上の部屋――



鳴上「…………」

鳴上(どうすればいいかな……?)

鳴上(…………)

鳴上(そうだ!! ベルベット・ルーム!!) ガバッ!

鳴上(イゴール達なら、何かわかるかもしれない!)

     スチャ (携帯オープン)

鳴上(…………)

鳴上(…………あ)

鳴上(そういえば……マーガレットから連絡はあったけど……)

鳴上(俺は、電話番号を知らない……) ガックシ……


     ピピピ……ピピピ……

鳴上「!」 …ガチャ

鳴上「……もしもし」

??????「お久しぶり、マーガレットです」

鳴上「マーガレット!?」

鳴上「良かった、聞きたい事がある」

マーガレット「それは、こちらもです……が」

マーガレット「まず、あなたに何があったのか、教えてくれないかしら?」

鳴上「わかった」

―――――――――――


―――――――――――

鳴上「……というわけだ」

マーガレット「…………」

鳴上「……マーガレット?」

マーガレット「すみません、私の手に余る事柄の様です」

マーガレット「我が主、イゴールにお電話、代わります」

鳴上「ああ……」

イゴール「……お久しぶりですな。 息災でしたか?」

鳴上「……イゴール、挨拶はいい。 何が起きているのか、教えてくれ」


イゴール「ふむ……と、申されましても今回の事象は」

イゴール「我々にとっても初めてのケース……」

イゴール「お客様のお話をお聞きした限りでは……正直、皆目見当も付きません」

鳴上「……!!」

イゴール「ただ……」

鳴上「……ただ?」

イゴール「あなた様は、もしかしたら、何かの大きな因果の渦に」

イゴール「巻き込まれたのかもしれません……」

鳴上「因果の渦?」

イゴール「正確には、お客様の持つ『ワイルド』の力が、引き寄せられた可能性が……」

鳴上「…………」


イゴール「いずれにしても、解らぬ事が多すぎる……」

イゴール「こちらでもお調べいたしますので、しばしお時間を頂けますかな?」

鳴上「……わかった」

イゴール「何か掴めましたら、すぐに連絡しましょう」

イゴール「それでは……失礼いたします」

鳴上「ああ、待っている……」

     プッ… ツー…… ツー……

鳴上「…………」

鳴上「…………あ」

鳴上(電話番号、聞くのを忘れた……)


 ――翌日の朝――

 ――見滝原中学校――



     ガヤ ガヤ

まどか「おはよう! さやかちゃん!」 ニコ

さやか「うーっす、おはよ、まどか!」 ニコ

仁美「おはようございます、まどかさん、さやかさん」 ニコ

さやか「おはよ、仁美」 ニコ

まどか「おはよう」 ニコ

さやか「ところでさ、仁美……英語の宿題、やってる?」 テへへ…

まどか「さやかちゃん……」

仁美「はいはい、教室でノートを見せますから」

さやか「ありがと~! 仁美、様様だよう……」 ウルウル…


 ――教室――



さやか「さーて! 宿題、さっさっと終わらせるよー!」

まどか(まる写しじゃ宿題の意味がないよう……さやかちゃん)

仁美「ところでまどかさん。 最近、流行っている噂の事……ご存知ですか?」

まどか「えっ……?」

さやか「あー、あたしそれ知ってる。 行方不明になったと思ったら」

さやか「自殺してたって事件、増えてるんだってさ」

まどか「ええっ!?」

仁美「おおむね間違いじゃありませんけど……」

仁美「噂では、自殺した人達は直前に路地裏とか、暗い所で目撃されているんです」

仁美「それも……わざわざ見せ付ける様に」

さやか「後、死んじゃった人はみんな、全く死ぬ要素がないんだって……」

さやか「怖いよね~、まどか」

まどか「もう……朝から気分がブルーだよ、さやかちゃん……」


 ――夕方――

 ――見滝原駅・駅前――



鳴上「…………」

鳴上(とりあえず、また来てしまった)

鳴上(目撃されてもいい様に、八十神高校の制服とクマのメガネを装備したが)

鳴上(何故か落ち着くな……)

鳴上(…………)

鳴上(とにかく、もう一度あの現場へ行ってみよう)


鳴上(……ここだ)

鳴上(ふむ……)

鳴上(…………)

鳴上(やはり、痕跡はどこにも無いな……)

鳴上(…………)

鳴上(シャドウは、人間の負の感情が、具現化した存在だった)

鳴上(もしかしたら、何らかの事象が絡んでいて)

鳴上(この街全体が、テレビの中の様に……)

鳴上(…………)

鳴上(まさか、な……)



―――――――――――


鳴上(…………)

鳴上(……結局、収穫は無し、か)

鳴上(駅を中心にこの辺りを調べてみたが)

鳴上(何の変てつもない、普通の街だ……)

鳴上(…………)

鳴上(疲れた……) ふうっ…

鳴上(そろそろ帰ろう……)

   キュゥゥンッ……!

鳴上(!!)

鳴上「この感覚は!?」


鳴上(……間違いない)

鳴上(理由は、わからないが)

鳴上(この間のシャドウと似た、異質な空間をはっきり感じる……!)

鳴上(どうする?)

鳴上(…………)

鳴上(……まずは、様子を見るか?)

鳴上(…………)

鳴上(だが、俺のよく知るシャドウも)

鳴上(この前のシャドウも)

鳴上(問答無用で襲いかかってきた……)

鳴上(…………)


鳴上(…………)

鳴上(一般人にとっては、危険な存在)

鳴上(……やはり、倒しておくべきか)

     ギュウウウウウンッ!!

鳴上(!?)

鳴上(くっ!! 無理やり異空間に取り込まれた!!)

鳴上「……だったら、やる事は一つだ!」

鳴上「イザナギ!」

     グバッ!!  ギィエエエエエエッ!!

―――――――――――


―――――――――――

鳴上「…………」

鳴上(結局、倒してしまった……)

鳴上(そして手掛かりも掴めないまま……)

鳴上(後は、この謎の黒い宝石)

鳴上(…………)

鳴上(今日のところは、引き上げるか……)

     ピピピ…… ピピピ……

鳴上「! 携帯が……」 ガチャ…

鳴上「もしもし?」


イゴール「ごきげん、いかがですかな? お客様……」

鳴上「イゴール! ……何か掴めたのか?」

イゴール「左様でございます」

鳴上「話してくれ」

イゴール「もちろん、お話しします……が」

鳴上「……?」

イゴール「悪いニュースと、もっと悪いニュースしか、ございません」

鳴上「……!」

イゴール「よろしいですかな?」

鳴上「……ああ」


イゴール「まず……お客様が遭遇なされた、シャドウに似た生物らしきもの」

イゴール「ほぼ、シャドウと断定なされてもよろしいでしょう」

鳴上「……? ほぼ?」

イゴール「シャドウとは、人の心から生み出された感情の一部……」

イゴール「そういう意味では、同質の存在と言えるモノですな」

鳴上「なるほど……」

イゴール「さて……ここからが『悪い』ニュースになります」

鳴上「…………」 ゴクッ…

イゴール「今、お客様が居らっしゃる町……」

イゴール「説明が難しいのですが……信じられない様な規模の因果が、集まっております」

鳴上「因果が……集まる?」


イゴール「例えて言うならば……」

イゴール「何もない平野に、山の様に水が集まっておるのです」

鳴上「…………」

鳴上「……つまり、通常では有り得ない『何か』が、起こっている、と?」

イゴール「左様でございます……」

鳴上「…………」

鳴上「ここでのシャドウは、それが原因で?」

イゴール「……調べてみた所、お客様の遭遇された『シャドウ』と同じ様な現象は」

イゴール「その場所だけでなく、日本……いえ、世界中で確認されております」

鳴上「!!?」


鳴上「…………」

鳴上「少し話を戻すが……」

鳴上「さっき言っていた『因果』が集まると、どんな不都合があるんだ?」

イゴール「先ほどの例えを使いますが……」

イゴール「原因不明でエベレストくらいの山の形をした水が、突然、一気に流れ出したら」

イゴール「その周辺は、どうなりますかな?」

鳴上「…………なるほど」

鳴上「で? 実際の危険性は、どのくらいある?」

イゴール「わかりません……しかし」

イゴール「八十稲羽での事柄を考慮しますと……」

イゴール「全世界が危険にさらされている……かもしれません」

鳴上「…………」


鳴上「それで? もっと悪いニュースは?」

イゴール「……それは、お客様も感じていらっしゃるのではないでしょうか?」

イゴール「もう、逃れられぬ運命に捕らわれている、という事に……」

鳴上「…………」

鳴上「つまり、この町に立ち寄らない様にしても」

鳴上「関わってしまう、という事か……」

イゴール「左様でございます」

鳴上「そうか……」


イゴール「ですが、お客様」

イゴール「こちらも、出来うる限りのサポートを」

イゴール「お約束いたします」

鳴上「それは助かる……」

イゴール「それでは、ごきげんよう……」 プッ…

     ツー… ツー…

鳴上「…………」

鳴上「…………あ」

鳴上「また、電話番号聞くの忘れた……」


 ――数日後の夜――

 ――見滝原町・廃ビル付近――



     ヒタ…ヒタ…ヒタ…

鳴上「…………」

鳴上(どうも様子がおかしいから、あの女の後をつけてみたが……)

鳴上(当たり……か?)

鳴上(…………)

鳴上(だが、あの異空間を感じない……)

鳴上(……もどかしいな)

鳴上(…………!?)

鳴上(あの女、何をしている!?)

鳴上(あんな高い場所で靴を揃えて……)

鳴上(!! しまった!!) ダッ!!


??「ふんっ!」 シュルルルルルルッ!!

     パシッ!

鳴上(!!?)

鳴上「……な!?」

???「ほっ、良かった。 さすがマミさん!」

???「…って、え? だ、誰!?」

マミ「安心して。 この女性は、錯乱状態だっただけだから」

マミ「でも、出来れば、今見た事を忘れてくださらないかしら?」

マミ「色男さん?」

鳴上「…………」


鳴上(…………) ゴソゴソ…

鳴上「すまないが、忘れる事は出来無い」

鳴上「俺も……無関係では無いから」



     鳴上の手の平には、謎の黒い宝石があった。



マミ「!!?」

マミ「グリーフシード!?」

マミ「…………」

マミ「……あなたは、どこでこれを?」

鳴上「……そうか。 これはグリーフシード、と言うのか……」

マミ「…………」

鳴上「ともかく、話がしたい。 どこか……いい場所を知らないか?」


 ――巴マミの部屋――



鳴上(…………)

鳴上(いきなり女の子の部屋に 連れてこられるとは、思わなかった……)

鳴上(そこはかとなく緊張するな……)

マミ「お待たせしました。 紅茶をどうぞ」

鳴上「すまない。 気を使わせたな」

マミ「いえ……」

マミ「二人共、自己紹介は済ませた?」

さやか「はい、マミさん」

まどか「ええと、こ、こちらは鳴上 悠さんです。 マミさん」

マミ「鳴上 悠さん、ですね。 私は巴マミ、と申します。 ”マミ”と呼んでください」

鳴上「わかった」


マミ「では、さっそくですが……鳴上さんの事情をお話しいただけますか?」

鳴上「ああ……」

鳴上「まず、俺は訳あって、一年ほど前に八十稲羽、という所に居た……」

―――――――――――
鳴上、事情を話中
―――――――――――

鳴上「……というわけで、今に至る」

マミ・さや・まど「」

さやか「マヨナカテレビ? ペルソナ? どんなsfだよ!?」

まどか「さやかちゃん……。 私達の事も、そんなに違わないと思うけど……」

マミ「……聞きたい事はありますけど、先に私達の事情もお話します」


―――――――――――
マミ、事情を話中
―――――――――――

マミ「というわけです。 おいで、qべえ」

qべえ「やれやれ、やっと僕の出番かい?」 チョコン

鳴上「…………」

鳴上(こいつがqべえ……)

鳴上(どんな願いも叶える代わりに 魔女と戦う事を契約させる生命体……)

鳴上(…………)

鳴上「……俺の言うシャドウは、魔女と呼ばれているのか」

qべえ「僕も驚いたよ。 まさかそんな事象があるなんて」

qべえ「しかも人間の精神が具現化して襲いかかるなんて、実に興味深い」


鳴上「qべえ、魔女はシャドウと良く似た特性を持っている」

鳴上「つまり、八十稲羽と同じように、どこかに親玉が居るんじゃないだろうか?」

qべえ「どうだろうね……否定は出来ないけど、可能性は薄いと思うよ」

qべえ「僕達は、随分長い間、魔女を見てきたけど……」

qべえ「共闘しているのを見た事がないからね」

鳴上「そうか……」

鳴上「なら、魔女の目的は何だ? 何の為に人を襲う?」

qべえ「それは成長する為さ」

qべえ「魔女や魔女から生まれた使い魔は、人を食らう事でどんどん成長する」

qべえ「使い魔はやがて魔女に。 魔女は、より強力な魔女へと、ね」

鳴上「…………」


さやか「あたし、鳴上さんのペルソナってのを見たいな」

まどか「私も!」

鳴上「……見せてやりたいのは、やまやまだが……今は無理だ」

マミ「? どうして、ですか?」

鳴上「簡単に言うと、テレビの中、限定の技だと思ってくれ」

マミ「あら? じゃあどうやって魔女を?」

鳴上「それなんだが……魔女の作り出す異空間……結界と言っていたな?」

鳴上「そこでなら、何故かペルソナを発動出来るんだ……」

さやか「へ~」

まどか「じゃあ、テレビの中には入れるんですか?」

鳴上「ああ、今、やって見せよう」 スクッ


鳴上「…………」 スッ…

     ズ……ブウウウウウウンッ……

マミ・さや・まど「!!!」

さやか「み、右手が!?」

まどか「ど、どうなってるの!? な、なんか、波紋みたいなのが出てるし……」

qべえ「なるほど……これは、疑いようが無いね」

qべえ(……面白い。 実に興味深い)

マミ「じゃあ……鳴上さんは、『けがれ』をどうやって浄化しているんですか?」

鳴上「? 『けがれ』?」

マミ「私達、魔法少女は、その証にソウルジェム、という物を持っています」 スッ…

鳴上「……ソウルジェム。 この卵の様な形の宝石が……」


マミ「そして、魔法を使うたびに少しづつ黒く、濁っていく……それが『けがれ』」

鳴上「…………」

マミ「それをキレイにする……厳密には、取り除くのが、このグリーフシード」

鳴上「魔女を倒した時に出る、黒い宝石にそんな力があったのか……」

マミ「今は、それほど必要じゃないので、実演は許してください」

マミ「ちなみにやり方は、ソウルジェムにグリーフシードを当てるだけです」

鳴上「なるほど……」

さやか「で? 鳴上さんもグリーフシードを使うの?」

鳴上「いや……」

まどか「じゃあ、どうやって『けがれ』を?」


鳴上「何もしていない。 と言うか、『けがれ』自体が無い」

さやか「えっ!?」

まどか「ほ、本当ですか!?」

鳴上「ああ。 まあ、ペルソナを使った日は、ものすごく疲れるが」

鳴上「それくらいだな」

マミ「私達からすると、凄くうらやましいですね」

鳴上「その代わり、現実世界でペルソナは使えない」

さやか「でもさ、マミさん! 心強い味方が出来たね!」

マミ「まだよ、鹿目さん。 ……鳴上さん、私達に協力してもらえますか?」

鳴上「もちろんだ。 こちらこそ、よろしく頼む」 ニコ

     キャー! ヤッター! ヨカッタネー マミサン!
     モウ/// カノメサン!///   ヨロシクネー、ナルカミサン…
     …………


 ――巴マミの自宅前――



???(…………)

???(あれは……誰なの?)

???(…………)

???(今回、初めて見る人物ね……)

???(何を話しているのか、知りたい所だけど……)

???(私のやる事は変わらない)

???(邪魔をする様なら……消えてもらう) スッ

     タッ タッ タッ…


 ――数日後の昼――

 ――見滝原中学校・教室――



まどか「さやかちゃん、お昼どこで食べよっか?」

さやか「う~ん…。 そうねえ」

???「ちょっと、いいかしら?」

さやか「ん? ……何か用? 転校生」

まどか「さ、さやかちゃん……! ごめんね、ほむらちゃん……」

ほむら「いいのよ、まどか。 それより聞きたい事があるの」

ほむら「この前見かけた、高校生くらいの男は何なの? qべえの知り合い?」

さやか「うるさいな! それより何で、そんな事知ってんのよ! ストーカーでもしてんの!?」

ほむら「うるさいのはあなたよ。 それに私はまどかと話してるの」

ほむら「少し黙っててくれる?」


まどか「ほ、ほむらちゃん……あの、また今度話すね?」

まどか「さやかちゃん、行こっか?」

さやか「うん、行こっ! まどか」

     タッ タッ タッ…

ほむら「…………」

ほむら(美樹 さやか……)

ほむら(あなたは、また、私の邪魔をする……)

ほむら(…………)

ほむら「……いつもの事だけどね」 ボソッ…


 ――放課後――

 ――市街地――



鳴上「二人は、魔法少女じゃ無いのか?」

さやか「うん、そーだよ」

まどか「qべえは、なって欲しいって、言ってくれるんだけどね」

まどか「マミさんが、よく考えてからにしなさいって……」

さやか「たった一つの願いだからね~」

まどか「そうだ、鳴上さんは願いが叶うなら、どんな願いを叶えたい?」

鳴上「………難しいな」

鳴上「すぐには、答えられそうもない」


さやか「だよね。 あたしらも色々悩んでるんだ」

さやか「もういっその事、美味しいケーキを食べたい! とかでもいーんじゃない?」

さやか「なんて思った事もあったっけ」 クスクス

まどか「私は……願い事よりも、誰かの為に、何かの為に頑張ってるマミさんに」

まどか「憧れているんだけどね」 テへへ……

鳴上「…………」

鳴上「真面目な話、二人は魔法少女にならない方が、いいかもしれない」

さや・まど「えっ!?」

さやか「……どういう意味?」

鳴上「そのままの意味だ」


鳴上「ああ、別段二人を蔑んでいるわけじゃない」

鳴上「……何かが、引っかかるんだ」

鳴上「あの、qべえという存在に」

さやか「何が? 魔法少女に勧誘しているだけでしょ?」

まどか「ふわふわしてて、可愛いし」 ///

鳴上「…………」

鳴上「!!」

鳴上「あれは……!?」

さやか「グリーフシード!? 羽化しかかってる!!」

鳴上「二人共、マミに知らせに行ってくれ!」

鳴上「ここは、俺が引き受ける!」

まどか「は、はい! 鳴上さんも気をつけて!」 ダッ!

さやか「すぐ連れてくるから!」 ダッ!


     ブアアアアアッ!

鳴上(さっそく結界に引き込まれた……!)

鳴上「イザナギ!!」 ジオ!!

     バリバリバリッ!!

鳴上「……くっ! 数が多い!」

鳴上「イザナギ!!」 ズバッ! ズバッ!

鳴上(倒してもグリーフシードを落とさない……)

鳴上(わかっていたが……こいつらは、ただの使い魔!)

     ケケケケケケッ……

鳴上「本体は……魔女は、どこに居る!?」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=ph0g7carmhu



 ――見滝原中学校――



マミ「あなたに話す事は、何もないわ」

ほむら「…………」

ほむら「…………そう」

マミ「それよりも言わなかったかしら?」

マミ「あなたには、もう二度と会いたくないって」

ほむら「…………」

     タタタタタッ!

さやか「マミさん!」 はあっ はあっ

まどか「鳴上さんが……!」 はあっ はあっ

マミ「!?」

ほむら「………!?」


 ――お菓子の魔女の結界内――



     タッ タッ タッ…

マミ「……あなた、どこまでついてくるつもり?」

ほむら「もちろん魔女の所までよ」

マミ「邪魔するつもり?」

ほむら「場合によってはね」

     キュッ……

マミ「悪いけど、あなたを拘束させてもらうわ」

     ギュルルルルッ!

ほむら「…………」

まどか「!? マミさん!」


さやか「いいんだよ、まどか。 むしろ、これくらいしなきゃダメだよ」

さやか「こいつには、ね」

まどか「で、でも……!」

マミ「行きましょ、美樹さん、鹿目さん」

さやか「ほら、行くよ! まどか!」

     タッ タッ タッ…

まどか「あ! まってよ! マミさん! さやかちゃん!」

まどか「…………」 オロオロ…

まどか「……ほむらちゃん」

まどか「ごめん!」 ダッ!

     タッ タッ タッ…

ほむら「…………」


 ――お菓子の魔女の結界内・最深部――



     ダンッ! ドゴッ! バキッ!

鳴上「グハッ!!」 ドサッ…

鳴上「…はあっ…はあっ」

鳴上「イザナギッ!!」 ジオ!

     バリ バリッ!

鳴上「くそっ……!」

鳴上(この魔女……生まれたてのハズなのに…)

鳴上(強いっ!!)


鳴上(魔女は、生まれてからの経験よりも、才能の方が優先される)

鳴上(そんな所か……?)

鳴上(正直、油断したな……)

鳴上(魔女を何体か倒してた事で……おごりがあったに違いない)

鳴上(……!!)

     バゴォッ!!

鳴上「あがぁっ!!」 ドサッ!

鳴上「くっ……イ、イザナ…」

マミ「鳴上さんっ!!」 シュルルルルルッ!!

鳴上「!」


鳴上「すまない、マミ……助かった……」 はあ… はあ…

マミ「いえ。 こちらこそ二人を助けてもらって、ありがとう」 クスッ

さやか「鳴上さん……」

まどか「こ、こんなにボロボロに……」

鳴上「……大丈夫だ、見た目ほど酷いケガじゃない」

さやか「いーから! ほら、つかまって!」

まどか「じゃ、私はこっちを……鳴上さん、つかまって」

鳴上「いや本当にだいじょ……」

     ズルズルズル……

マミ「…さて、ここからは、私が相手よ!」 バッ!


鳴上「……!」

鳴上「これが……魔法少女の戦いか……!」

さやか「いっけー! マミさん!」

まどか「すごい…! 今日のマミさん、いつもよりすっごく強いよ!」

さやか「うん、本当にすごい!」

鳴上「…………」

鳴上「…………!?」

鳴上(なんだ…? このざらついた感覚は?)

鳴上(…………何かが)

鳴上(やばい…!)


     ドウッ! ドウドウッ!

マミ(鳴上さんを……よくも!)

マミ(魔女と戦う、大切な仲間……)

マミ(そして、美樹さんと鹿目さんも、魔法少女になってくれるかもしれない人……)

マミ(私の後ろには、大切な人達がいる!)

マミ(もう……何も怖くない!)

マミ「一気に決めるわよ!」

     ジャキン!

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

     ドォンッ!! ドガァッ!!

さやか「やったあ!」

まどか「さすがマミさん!」


鳴上(!!?)

鳴上(違う!? 本体を捉えていない!?)

     ダッ!!

さや・まど「!! 鳴上さん!?」

マミ「これでおわ――」

     グワッ!!

さやか「えっ!?」

まどか「倒した魔女から何かが!?」

マミ「……!!」

鳴上(くっ!! 間に合え!!)

鳴上「イザナギッ!!」


     ガブウッ…!!

鳴上「がああああああああああああああああああああっ!!!!!」

     モギュ モギュ

マミ「ひいっ…!!」

さやか「鳴上さんのペルソナが!!」

まどか「いやああああああああああああああ!!」

鳴上「マ、マミ……!」

マミ「!?」

鳴上「い、今から、電撃の魔法を…奴の内部に放つ!」

鳴上「それで、ひ、怯んだ所を……さっきので、もう一度決めろ!」

マミ「あ…は、はい!」


鳴上「……イザナギッ!!」 ジオッ!

     バリ バリッ!!

     ギュエエエエエエエエッ!! ペッ!

鳴上「グハッ!!」 ドサッ…

マミ「ティロ・フィナーレ!」

     ドォンッ!! ボグンッ!!

     …ズルンッ!!

さやか「うえっ!? 脱皮!?」

まどか「マミさんっ!!」

マミ「くっ! こうなったら根比べよ!」

マミ「ティロ・フィナーレ!」


―――――――――――


マミ「はあっはあっはあっはあっ…」

さやか「こ、今度こそ、やった…?」

まどか「……も、もう、動かない、よね?」

マミ「…………」

     シュウウウウウン……

さやか「!!」

まどか「結界が、晴れていく……!!」

マミ「……何とか……倒せたわね……」

マミ「くっ……」 クラッ…

さやか「マ、マミさん!」

まどか「そうだ、鳴上さんも!」


さやか「鳴上さん! 大丈夫!?」

鳴上「う……く……」

さやか「よかった…! 生きてる!」

まどか「マミさん、つかまって…」

マミ「いえ……私はいいわ。 私よりも鳴上さんを……」

???「……お困りの様ね」

さや・マミ・まど「!!?」

さやか「あ、あんたは!?」

マミ「……ど、どうやって……私の拘束を……?」

まどか「なんだっていい! ほむらちゃん、お願い!」

まどか「力を貸して!」


 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ……」

イゴール「これも、お久しぶりですな……お客様」

イゴール「…………」

イゴール「……ええ、その通り。 現実のあなた様は、眠っておられます」

イゴール「さて……今回お呼び立てしたのは、重要な事が判明しまして」

イゴール「それをお伝えする為でございます……」

イゴール「まさか、節目の年を超えられたお客様に、この様な事象が起きるとは……」

イゴール「さすがは……”ワイルド”の持ち主、という所でしょうか……」

イゴール「おお、これは失礼……」

イゴール「話が、それてしまいましたな」


イゴール「それでは、本題に入ります……」

イゴール「まず……以前にお話した、因果の渦……」

イゴール「お客様は、もはや逃れられぬ運命となりましたが」

イゴール「それは、あなたの身近に存在しております……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……ご心配めされるな、お客様」

イゴール「別段シャドウの様に、御身に襲いかかる訳ではございません」

イゴール「むしろ……複雑に絡み合う因果を解き」

イゴール「正しき道を指し示すだけの力を、あなた様は秘めておられるのです……」


イゴール「ふむ? …………そうですな」

イゴール「ひとつだけ、ヒントを差し上げましょう……」

イゴール「お客様は、この困難に立ち向かう為に」

イゴール「この地においても新たなコミュを形成しなくては、ならないでしょう……」

イゴール「いかな”ワイルド”の力を持ってしても」

イゴール「人との繋がりをないがしろにしては……あなた様の望む未来は」

イゴール「おそらく……手に入りますまい……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……、もっと解りやすく言うのならば……」

イゴール「お客様は、八十稲羽でおやりになられた事を」

イゴール「ここでも行えば、よろしいのです……」


イゴール「おお……そろそろ、お目覚めの時刻の様ですな」

イゴール「最後に」

イゴール「ペルソナカードですが……」

イゴール「今回に限り、無償で提供いたしましょう」

イゴール「今から、お客様のお集めになられたカードは」

イゴール「どんな物でもご自由にお使いください……」

イゴール「ふふふ……」

イゴール「サポートが遅れてしまった、せめてものお詫びでございます」

イゴール「それでは……またお会いいたしましょう……」



―――――――――――


―――――――――――


鳴上「…………」

鳴上「…………うっ」

鳴上「……ここは?」



 ――深夜――

 ――巴マミの部屋――

鳴上「…………」

鳴上(以前来た、マミの部屋か……)

鳴上(…………)

鳴上(……なんで俺は、ベッドで寝て)

鳴上(他のみんなは、床の上で寝てるんだ……)

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=wffsubplpdk&feature=relmfu



鳴上(? あれは……マミか?)

鳴上(ベランダに出て、何をしている?)

鳴上「…………」

     カラカラカラ……

マミ「!?」 ビクッ!

鳴上「……すまない、驚かせてしまったか」

マミ「あ……鳴上さん。 良かった……気がついて……」

鳴上「ベッド……俺が使って良かったのか?」

マミ「気にしないでください。 あなたは、私の命の恩人なのですから……」 クスッ


鳴上「…………」

鳴上「言いたくなければ、もう聞かないが……何か、考え事でも?」

マミ「…………」

マミ「鳴上さん」

鳴上「うん?」

マミ「鳴上さんは……戦う事が、怖くないんですか?」

鳴上「もちろん怖い」

マミ「……え?」

鳴上「いつだってビビってる。 今やってる攻撃が通じなかったらどうしよう、とか」

鳴上「この敵の攻撃を食らったら、死ぬかなぁ……恐ろしいなぁ……とか」

鳴上「仲間が居なくなったら……とてつもなく寂しくて嫌だな、とか……」


マミ「…………」

マミ「なんだか、意外ですね」 クスッ…

鳴上「……俺は、『ペルソナ』という力が使えるだけの」

鳴上「ただの高校生だからな」 クスッ

マミ「…………」

マミ「鳴上さんは……どうして自分が、こんな目に合わなければならないの?」

マミ「と、考えた事はありますか?」

鳴上「ある」

鳴上「八十稲羽で死にかけた時は、いつも考えていた……」

マミ「……逃げよう、と考えた事は?」

鳴上「……!」


マミ「きっと……鳴上さんは、美樹さんや鹿目さんから」

マミ「私の過大評価を聞いたのでしょうけど……」

マミ「私は……そんなに強くない」

マミ「魔法少女になったのだって……死ぬ事が怖かったから」

マミ「魔女と戦う事を望んで……ここに居る訳じゃない……!」

マミ「もう……怖いのは……いや……」 グスッ…

鳴上「…………」

鳴上「いいんじゃないかな」

マミ「!?」


鳴上「マミは、十分頑張った……」

鳴上「魔法少女を辞められなくても、魔法を使わずに平穏に暮らす事は出来る」

鳴上「ずっと一人で戦って来たマミを、誰も責めたりはしない」

鳴上「後は……俺に任せばいい」 ニコ

マミ「…………」 ドキッ ///

マミ「…………」

マミ「……どうして鳴上さんは、戦おうとするんですか?」

マミ「さっき、怖いって言っていたのに……」

鳴上「……それは、恐怖心だけじゃ無いから」

マミ「………え?」


鳴上「ペルソナがあっても 死ぬ事はあるだろう」

鳴上「でも、どうして魔女は存在するのか知りたいし」

鳴上「魔女による被害も防ぎたい」

鳴上「それに……」

マミ「それに?」

鳴上「単純に『逃げたくない』という気持ちもある」

マミ「!!」

鳴上「誰にだって何かを選択する自由がある」

鳴上「よく、あの時こうしておけば、こんな事にならずにすんだ、と言って」

鳴上「他人を責める奴がいるが……」

鳴上「それは結果を知ったから、言えるに過ぎない」

鳴上「選択をした時点で、結果を知っている奴はどこにも居ない」

鳴上「予測や予想は出来ても……な」

マミ「…………」


マミ「私は……」

鳴上「…………」

マミ「……私にもあります」

マミ「逃げたくないって気持ち」

マミ「でも私は……戦いが怖い……死ぬ事が怖い……」

鳴上「…………」

鳴上「それでいいんだ、マミ。 弱音を吐くこともまた、人間には必要だ」

鳴上「俺で良ければいつでも聞くし、俺の弱音も出来れば聞いてくれ」 クス

マミ「鳴上さん……ありがとう」 ///


マミ(……どうしてだろう?)

マミ(ついさっきまで、私は魔女と戦う恐怖に怯え)

マミ(そんな自分が、たまらなく情けなくて……嫌だったのに)

マミ(そんな自分も私を形作る一つなんだって)

マミ(そんな風に思える様になってる……)

マミ(…………)

マミ(きっと、これから先も怖い思いをするでしょうね……)

マミ(でも)

マミ(それを隠さなくてもいい……)

マミ(怖いなら、怖いって……言えばいい)

マミ(恥ずかしがる事も、引け目を感じる必要も無い)

マミ(私は私……巴マミなんだから)


マミ「……あ、そうだ」

鳴上「?」

マミ「グリーフシード、使う所をお見せしますね」 ニコ

鳴上「確か……ソウルジェムに当てるんだったな」

マミ「はい、その通りで……あら?」

     ヒィイイン……

マミ「こ、これは……!?」

鳴上「? どうした?」

マミ「そ、それが……」

マミ「あんなに魔法を使ったのに……ソウルジェムが全然『けがれ』ていないんです」

マミ「それに、こんな風に綺麗に光輝く事も初めてで……


鳴上「体は大丈夫か?」

マミ「ええ……特には……」

マミ(むしろ調子がいいかしら……?)

鳴上「……qべえに聞くしかないか」

マミ「そうですね……」

マミ「…………」

マミ「あ、あの……」 ///

鳴上「ん?」

マミ「よ、良かったら……」 ///



マミ「名前で呼んでも……いいでしょうか?」 ///




キリがいいのでこの辺で……。


 ――翌朝――

 ――巴マミの部屋――



マミ「おはよう、鹿目さん、美樹さん」

さやか「ん~……おはよ~……マミさん」

まどか「おはようございます、マミさん」

ほむら「……おはよう、まどか」

さやか「って、あんたも居たの」

ほむら「ご挨拶ね。 昨日は、この男の傷を直したり、運ぶの手伝ったりしてあげたのに」

鳴上「……それはすまなかった」

マミ「まあまあ……みんな、喧嘩しないで」

マミ「それに、暁美さん……昨日はごめんなさい。 そして、ありがとう。 本当に助かったわ」


ほむら「………?」

ほむら(巴マミの様子……ずいぶん、変わった様な……?)

ほむら「……もういいわ。 それよりも、そろそろ教えてくれないかしら?」

ほむら「この男の事を」

マミ「わかってるわ。 ちょうど朝食の準備も終わったし」

マミ「食べながら話すわね?」

―――――――――――
マミ、事情説明中
―――――――――――

マミ「と、いうわけなの……」

ほむら「」

ほむら(……ペルソナ!? シャドウ!? いったい、何が起こってるの!?)

ほむら(今まで全く居なかったのに……どうして今回出てきたの……!?)


マミ「……信じられないのは、無理もないわね……」

マミ「じゃあ、悠さん。 あれを見せてあげてもらえないかしら?」

鳴上「わかった」 スッ…(テレビに近づく)

さやか(……あれ?)

まどか(今、マミさん、悠さんって……)

     ズッ……ブウウウウウウンッ……

ほむら「!!?」 ギョッ!

マミ「どう? これで信じてくれるかしら?」

ほむら「…………」

ほむら「……確かに、疑い様は無さそうね」


ほむら「事情はわかったわ」

ほむら「とりあえず、敵ではなさそうって事も……」 スッ…

まどか「あれ? ほむらちゃん? どこに行くの?」

ほむら「……あなた達こそ、そんなにゆっくりしてていいの?」

ほむら「今日も学校があるのだけど?」

まど・さや「」

さやか「ああああああ!! 忘れてたぁ!!」

まどか「どどどどどど、どうしよう!! 思いっきり、無断外泊しちゃった!!」

マミ「悠さんは、大丈夫?」

鳴上「基本、放任主義。 それにこの町に来る時は」

鳴上「『友達の家に泊まるかも』と、事前に言ってある」

マミ「ぬかりは無い様ですね」 クス

鳴上(……とはいえ、今日は確実に遅刻だな)


 ――昼休み――

 ――見滝原中学校・教室――



     ※注 二人はお弁当を広げております

まどか「…………」 ハア…

さやか「…………」 ハア…

まどか「……怒られた? さやかちゃん」

さやか「……もう言わないで……まどか」

さやか「マミさんが、電話しといてくれなかったら……」

さやか「あたしの頭の形は、変わってたよ……」

まどか「私もママのあんな怖い顔、初めて見たよう……」


まどか「うん、そうだね……鳴上さんも居る事だし」

さやか「……!!」

さやか「そうそう、まどか。 マミさんが鳴上さんの事」

さやか「悠さんって呼んでたの、気づいた?」

まどか「!! そうそう! 私も気になった!」

まどか「何か、いきなりだったよね? あれ!」

     アハハ……


―――――――――――


 ――夕方――

 ――見滝原総合病院・病室――



さやか「……っていうわけでさ、何の曲か当てると驚かれるんだよね~」

恭介「…………」

恭介「………さやかは、さ」

さやか「ん?」

恭介「僕をいじめて……楽しいの?」

さやか「!? ……な、何言ってるのさ?」

恭介「僕に音楽を聴かせて……」

恭介「もう二度と……弾く事が出来無い音楽を聴かせて……!」

さやか「!!?」


恭介「こんな……動かない腕なんて!!」

     (携帯cdプレイヤーを) グシャッ!!

さやか「やっ……!? ダメッ!! 止めてよ恭介!!」

さやか「大丈夫だよ……。 リハビリ頑張れば、きっと……!」

恭介「もう……無理なんだ」

恭介「先生直々に言われたんだ……現代医学をもってしても……」

恭介「僕の左手は動かないって……!」 グスッ…

さやか「…………っ!」

恭介「それこそ……奇跡か魔法でもない限り」

恭介「二度とバイオリンを弾く事は、出来ないだろうって……」

さやか「……!!」


さやか(奇跡か魔法……)

     ヒュウウウウウッ……

さやか「…………」

さやか「……あるよ」

恭介「…………」

さやか「奇跡も、魔法も……」



さやか「あるんだよ……!」



恭介「…………」




ほむら「あなた達は、魔法少女になっては、ダメよ」



鳴上「真面目な話、二人は、魔法少女にならない方がいいかもしれない」

鳴上「……何かが、引っかかるんだ」

鳴上「あの、qべえという存在に」



さやか(…………)

さやか(あの転校生は、ともかく……)

さやか(鳴上さんは……どうしてあんな事を……?)

さやか(でも……あたしは……あたしは!) グッ…!


 ――巴マミの部屋――



     ストン

qべえ「やあ、巴マミ。 遅くなってゴメン」

マミ「珍しいわね。 いつもは呼べばすぐ来るのに……」

qべえ「僕にだって、外せない用事くらいあるよ」

qべえ「それで? 聞きたい事って何かな?」

マミ「これについて聞きたいの」 コト…

     ヒィイインッ……

qべえ「……!?」

qべえ「…………」

qべえ「……いったい何があったんだい?」

マミ「それを聞きたいのは、こっちなんだけど……」


qべえ「体調に変化は?」

マミ「全くないわ」

qべえ「そう……」

qべえ(こんな状態のソウルジェムは、初めて見る)

qべえ(強いて言うのなら……比較的、安定した心理の時に見られる現象に似ているけど)

qべえ(ここまで澄み切った状態のソウルジェムは、見た事が無い……)

qべえ(ましてや、『けがれ』が全く無い事など、有り得ない……!)

qべえ(何が巴マミに起こったんだ?)

マミ「……qべえ?」


qべえ「ん? ああ、ごめん。 ……初めてのケースだけど」

qべえ「君のソウルジェムは、とても安定した状態になっている」

qべえ「つまり、心理的にとても落ち着いている、という事で……」

     ピピピ…… ピピピ……

マミ「あ……、qべえ、ちょっと待ってね」 ガチャ

マミ「もしもし?」

まどか『あ!? マミさん!?』

まどか『良かった…! つながって……』

マミ「鹿目さん? どうしたの?」


まどか『今、駅前のツリー広場なんですけど……仁美ちゃんが……』

まどか『友達の様子がおかしくて……きゃあ!』 ブッ!!

     ツー… ツー…

マミ「!? 鹿目さん!? 鹿目さん!?」

qべえ「……魔女かい?」

マミ「ええ、どうやらそうみたい」

マミ「しかも、鹿目さんの友人が魔女に操られているみたいね……」

マミ「急いで行かないと!」


 ――夜――

 ――古びた工場――



まどか「仁美ちゃん! しっかりして!」

仁美「うふふふふふあはははははは」

まどか(ダメッ…! 魔女の口づけのせいで、どうにもならない……!)

まどか(マミさん! 鳴上さん! 早くきて!)

仁美「まどかさぁん……」 ユラァ……

まどか「ひいっ…!」 ダダッ!

     バタンッ! カチン(鍵閉め)

まどか「はあっはあっ……これで、なんとか……」

     イヒヒヒヒヒッ…!

まどか「!? やっ……!」


まどか(……! 結界に引き込まれたっ……!)

     ギリギリギリギリッ!!

まどか「ひぎっ!? あああああああああっ……!!!」

     シャキン! シャキン! シャキン!

???「……はあっ!」

     ズババッ!

まどか「……!?」

まどか「さやかちゃん!?」


―――――――――――


―――――――――――


まどか「はあっはあっはあっ……」

さやか「大丈夫? まどか?」

まどか「だ、大丈夫……だけど……、さやかちゃん」

まどか「魔法少女に……なったの?」

さやか「てへへ……まあ、ね」

まどか「どうして……? マミさんも 鳴上さんも 居るのに……」

さやか「……できたから」

まどか「え?」

さやか「どうしても叶えたい願いが、できちゃったから……」

まどか「さやかちゃん……」


さやか「それにさ、まどかも仁美も、助けられたんだし」

さやか「結果オーライだよ!」 ニャハハ…

まどか「…………」

     タッ タッ タッ

マミ「確か……この辺で魔女の反応が……え?」

さやか「あ、マミさん!」

マミ「美樹さん! その姿は……!」

さやか「そうです! はれて魔法少女になりました!」

マミ「そうなの……」

さやか「や、やだなあ。 もっと喜んでくださいよ!」


マミ「そ…そうよね。 ごめんなさい、私ったら……」

まどか「……あ、そうだ! 鳴上さんに電話入れておかないと……」

まどか「きっと、心配してる」

マミ「そうね……私が連絡しておくわ」

まどか「え? いいんですか?」

マミ「ええ、ちょっと伝えなきゃならない事もあるし」

まどか「わかりました。 お願いします」

さやか「じゃ、帰ろう! まどか!」

まどか「うん、さやかちゃん!」

さやか「あ、仁美も忘れずに連れて行かないと……よっと」 おんぶ

まどか「気がつくまで、まだ かかりそうだね……」

     テク テク テク…


ほむら「…………」

ほむら「美樹さやか……」

ほむら「あなたは……また、まどかを苦しめるのね……」 ギリッ…!

ほむら「…………」

ほむら(でも……巴マミは、生きている)

ほむら(もしかしたら、美樹さやかも……あの男、鳴上 悠が……)

ほむら(…………)

ほむら(何を馬鹿な……) 頭フルフル

ほむら(たった一人の男が、加わっただけで)

ほむら(すべて、上手くいくわけがない……)

     タッ タッ タッ…


 ――鉄塔の上――



??「――で? どうしてあたしを呼んだんだい?」

qべえ「ちょっとね。 魔法少女の一人にイレギュラーが生じたんだ」

??「イレギュラー?」

qべえ「今は、凄く安定しているんだけど……」

qべえ「今後どうなるか、予測がつかない」

??「なるほど……それであたしの出番ってわけだ」

??「……けど、後二人も魔法少女が居るのは、どういう事だい?」

qべえ「一人は急だったけど、今日なったばかりの魔法少女だよ」

qべえ「そして、彼女もまた、なりたてで不安定だ」


qべえ「もう一人は、謎が多い娘でね……」

qべえ「そうだね、こっちもイレギュラーと言える存在だ」

??「ふ~ん。 なかなか面白そうだけど……三人も相手になるのは勘弁して欲しいね」

qべえ「大丈夫だよ」

qべえ「謎の多いイレギュラーは、我関せず、といった感じだ」

qべえ「共闘は、おそらくしないだろう」

??「ふん……あたしと同じで一匹狼かい」

??「まあいい。 ここの狩場は良さげだ。 あたしのモノになるのは悪くないね」

qべえ「一応言っておくけど、あまり派手に暴れないでくれよ?」 ニコ

??「ああ……わかってるよ。 ただし、あたし流のやり方でやるけど、な……」 クックックッ…


 ――放課後――

 ――見滝原町・河川敷公園――



まどか「えっと、さやかちゃん。 調子はどうかな?」

さやか「ん? すこぶるいいよ!」 ニコ

まどか「そう。 なら、いいんだけど」 ニコ

さやか「……なんか、ね。 あたし嬉しいんだ」

さやか「魔法少女になって、マミさんや鳴上さんの手伝いが出来るって事が」

さやか「すごく嬉しい」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「……あたしって、バカだからさー」

さやか「誰かを助けられたり、誰かの役に立つ事なんて、無いと思ってた」

まどか(! ……さやかちゃん、私と同じ事を……)


さやか「だから、今、やる気マンマンなんだ~」 ニコ

さやか「……マミさんと鳴上さんには、『慎重』になれって言われてるんだけどね」 テへへ…

まどか「フフッ、わかる気がするかも」

さやか「お? 言ったなー、まどか!」 ウリャウリャ

まどか「きゃーん! ごめん、さやかちゃん!」 クスグルノヤメテー

     アハハハ……

ほむら(…………)

ほむら(…………)

ほむら(くっ……美樹さやか) ギリッ


 ――夕方――

 ――見滝原総合病院・屋上――



     ※注 恭介は車椅子

恭介「……さやか、どうしたの? こんな所に連れてきて」

さやか「いいから いいから。 まあ、全快前祝いって事で……」

恭介「?」

     パチパチパチ……

恭介「!? お父さん!? それに、お母さんに病院の先生方……」

恭介・父「先生にお前の病状を聞いて……散々迷ったが……」

恭介・父「本当に捨てなくて良かった……」 スッ…

恭介「!!!」

恭介「僕の……バイオリン……」


さやか「……恭介、弾いてみてよ?」

恭介「……さやか」

恭介「…………」

     ♪~ ♪~ ♪~

恭介・母「……ああ」 グスッ…

恭介・父「……良かった、本当に」 グスッ…

     ♪~ ♪~ ♪~

さやか(…………)

さやか(……そうだよ、これでいいんだよ)

さやか(あたしのやった事は、間違いじゃない)

さやか(あたし……今、最高に幸せだよ……) グスッ…


 ――数日後の夜――

 ――ビル群の裏路地――



     キヒャヒャヒャ!

さやか「このぉ! 逃げるな!」 ブンブン!

まどか「さやかちゃん!」

鳴上「俺がペルソナで足を止める!」

鳴上「ティターニア!」 マハガル!

     ヒュゴオオオッ!

マミ「上手い! 止めよ! ティロ・フィナーレ!」 ドオンッ!

     ガキィンッ!!

マミ「!?」


さやか「な、何!?」

     キィン! カァンッ!!

まどか「ああ……」

鳴上「逃げられた……」

マミ「……結界が晴れていく」

さやか「もう! 何なのよ、今の!? もう少しだったのに!!」



??「そりゃ、こっちのセリフだっつーの」



まどか「!? だ、誰!?」


     ヒュ――ン……ストン

??「あたしは、佐倉 杏子。 見ての通り、魔法少女だ」

杏子「それよりも何だい? 何で使い魔を狩ってんのさ?」

杏子「何人か食わせて魔女化させないと、グリーフシードを落とさないだろ」

杏子「もったいない事するんじゃねーよ」

一同「!?」

さやか「……あんた、何言ってんのよ」

さやか「そんな事出来るわけ無いじゃない!!」

杏子「はあ? 何、正義感ぶってんのさ」

杏子「あたし達は、体張って魔女を退治してるんだ……」

杏子「魔法は、タダで出来る事じゃないんだよ!!」


鳴上(!?)

鳴上(…………)

鳴上(……そうか、今、わかった)

鳴上(あの時)

鳴上(qべえの何に引っかかっていたのか……!)

鳴上(…………)

鳴上(もし、俺の推測が当たっているとしたら……)

鳴上(…………)

鳴上(くっ……どうすればいい……?)


さやか「このおっ!!」 ゴウッ!

     ガキィ!

杏子「はっ! いきなり何すんのさ!?」

杏子「この程度の力で、あたしにケンカを売ろうってのかい!?」

杏子「上等だよ!」

     ブンッ! ガゴォッ!!

さやか「…ああっ!!」 ダンッ!

杏子「そらそら! どうした!?」

     シュルルルルルッ!!


杏子「!?」

さやか「!?」

マミ「二人共、止めなさい!」

マミ「魔法少女同士が戦っても、無意味よ!」

杏子「…………」

さやか「…………」

杏子「……ちっ、わかった。 悪かった。 これで終わっとくよ」

さやか「……あたしも悪かったわ」

マミ「……拘束を解くけど、もう飛びかかっちゃダメよ」

      シュルルルルルッ……

まどか「……ほっ。 良かった」

鳴上「…………」


鳴上「……まどか」

まどか「え!? は、はい…?」

鳴上「魔法少女には、絶対になるな……」

まどか「!?」 ビクン!

鳴上「……今、理由は言えないが……頼む」

まどか「……は、はあ」

鳴上「さあ、俺達も行こう」

まどか「…………」

まどか(いったい……どういう事?)

まどか(あんな怖い表情の鳴上さん……初めて見た)


 ――巴マミの部屋――



さやか「ったく! 何なのよ! あいつ!」

マミ「美樹さん、落ち着いて」

さやか「でも、マミさん!」

鳴上「落ち着け、さやか」

さやか「ぐ……むう」

まどか(鳴上さんの一言は、効果大だなぁ……)

マミ「……残念だけど、彼女の意見も一理あるわ」

さやか「マミさん!?」

マミ「ソウルジェムの『けがれ』は、グリーフシードでしか取り除けない……」

マミ「そして、それは、魔女のみが持っている」

マミ「その事実は……変え様がないわ……」

さやか「……………………」


さやか(……どうしてだよ、マミさん)

さやか(何で、あんな奴の肩を持つの……)



鳴上「それから……マミ?」

マミ「はい、悠さん」

マミ「後……今日わかった事を、みんなに伝えておきますね」

さやか「え?」

まどか「わかった事?」

マミ「まず、これを見てくれる?」 コト…

     ヒィイインッ……

さやか「わあ……これって、マミさんのソウルジェム?」

まどか「なんて言うか……凄く綺麗」


さやか「……あれ!?」

まどか「どうしたの? さやかちゃん?」

さやか「うん……」 ゴソゴソ… コト…

さやか「これ、あたしのソウルジェム」

まどか「……少し、くすんでるね?」

さやか「まどか、今日あたし達は、魔法をたくさん使った……」

まどか「うん」

さやか「なのに……どうして、マミさんのソウルジェムは、少しも『けがれ』ていないの?」

まどか「……あ!!」


マミ「そう……qべえにも聞いてみたんだけど」

マミ「理由は、全くわからないの」

マミ「qべえは私の心が、とても安定している状態だと言っていたわ」

鳴上「そして、今日、本来は『けがれ』るはずのソウルジェムが」

鳴上「全然『けがれ』ない、という事が確認された……」

鳴上「もちろん、何故かはわからない」

さやか「…………」

まどか「…………」

鳴上「……だが、俺は一つ、思い当たる事がある」

さや・まど「えっ!?」


鳴上「……みんなも見ているだろう」

鳴上「俺は、ペルソナを使いながら、全くグリーフシードを必要としない」

マミ・まど・さや「!!!」

まどか「じゃ、じゃあ、マミさんもペルソナ使いに!?」

鳴上「いや、たぶんそうじゃない」

鳴上「魔法少女も、ペルソナも、根源の力は、心だ」

鳴上「だが、発動の仕方や仕組みが違う……」

鳴上「例えるなら、同じ火薬を使いながら 花火とダイナマイトは全く別物」

鳴上「そんな所だろう」


鳴上「でも、火薬自体が、ダイナマイト用のモノから 花火用の物へと変化したのなら」

鳴上「ありえない事では、無いかもしれない……」

鳴上「もちろん推測でしかないがな」

さやか「…………」

さやか(……なにそれ)

さやか(どうして、マミさんだけ……)

マミ「それから捕捉するけど……魔法を無限に使える様になったわけでも無いの」

マミ「これも悠さんのペルソナ能力に近いんだけど……」

マミ「魔法をある程度使うと、凄く疲れる様になったわ」

まどか「そうなんですか……。 痛し痒しって、感じですね」


鳴上「……それから、この事はqべえに内緒に……」

     ストン…

qべえ「僕が、どうかしたのかい?」

鳴上「…………」

マミ「……qべえ」

qべえ「ひどいな、鳴上 悠。 僕に隠し事かな?」

鳴上「……その様子だと、聞いていたみたいだな」

qべえ「やれやれ……何だか、君には嫌われた様だね」

qべえ「その目は、まるで暁美ほむらの目に似ているよ」

鳴上「……!」

鳴上(……そうか、彼女も俺と同様に、あの事に気づいたのかもしれないな……)

まどか(鳴上さん……)


鳴上「……さて」 スクッ…

鳴上「そろそろ遅い時間だ」

鳴上「さやかと まどかを 送っていこう」

さやか「えっ?」 ///

まどか「は、はい?」 ///

鳴上「qべえは、ここに残るのか?」

qべえ「まあね。 巴マミの話も聞きたいし」

鳴上「そうか。 それじゃ、二人共、行こうか?」

まどか「わ、わざわざ、すみません……」 ///

さやか「エへへ……。 な、なんか照れるね」 ///

鳴上「じゃ……マミ、お休み」

マミ「はい、お休みなさい、悠さん」


 ――路上――



     テク テク テク…

鳴上「すまないな、二人共。 ダシに使って」

まどか「いえ……」

さやか「まあ、そんな事だろうって思ったけどね~」

鳴上「だが、実を言うと、少し頼みたい事がある」

まどか「頼み、ですか?」

さやか「どんな事?」

鳴上「暁美ほむらと、会って話がしたい」

鳴上「場所と時間はそちらに任せるから、と伝えてくれないだろうか?」

まど・さや「!?」


さやか「…………」

さやか「鳴上さん、いったいあの転校生に何の用が?」

鳴上「……今は話せない。 結論を出す為に、少しでも情報が欲しい」

鳴上「それだけだ」

まどか(…………)

まどか(私に魔法少女になるな、と言った事と関係があるのかな……)



さやか(……なんか、嫌だな)

さやか(あたし達に隠し事なんて、止めてよ……鳴上さん)



まどか「わかりました、鳴上さん。 ほむらちゃんに伝えておきますね」

鳴上「頼む」


 ――さやかの部屋――



さやか「…………」

さやか「…………はあ」

さやか(何か、気分悪いな……)

さやか(せっかく魔法少女になったのに)

さやか(あたしだけ、舞い上がってたみたい……)

さやか(…………)

さやか(せっかく、やる気になってたのになぁ……)

さやか(…………)

さやか「…………はあ」


 ――翌日・休日の午前中――

 ――ゲームセンター――



     タン タン タタン!

杏子「よっ ほっ ふっ」

     タタン タタン タン!

杏子「よう。 何かあたしに用かい?」

ほむら「…………」

     タン! タタン タン

ほむら「私に、協力して欲しいの」

杏子「へえ? けど、あたしのやり方 知ってんだろ?」

     タン! (ゲーム終了)

杏子「見返りは何だい?」


ほむら「この町のテリトリーを 全部あげるわ」

杏子「ほー。 そいつは太っ腹だね」

杏子「で? あたしは、何をすればいいんだい?」

ほむら「それは後で、私の家で説明するけど……約束して欲しい事があるの」

ほむら「今からしばらく、『何もしない事』を、ね」

杏子「はあ? 魔女退治もかい?」

ほむら「それは構わない。 私が言っているのは」

ほむら「美樹さやか達の事よ」

杏子「……ちょっかい出すなって事かい」

ほむら「そうよ」


杏子「…………」

杏子「まあ、言いたい事はわかった」

杏子「その詳しい話ってのは、いつするんだい?」

ほむら「三日後、ここで待ってて。 迎えに行くから」

杏子「オッケー、オッケー。 わかったよ」

     チャリン☆ ゲーム・スタート!

ほむら「…………」

ほむら(これで……何とかなればいいけど)



杏子(はっ……あのムカつく青いのが、大事なのかぁ?)

杏子(ちょっかい出すなって言われると……出したくなるんだよねぇ……) クックックッ…


 ――夕方――

 ――見滝原総合病院――



     テク テク テク…

さやか(えへへ……恭介、この新しいcdプレイヤー、気に入ってくれるかな?)

さやか(きっと、喜んでくれるよね) ///

     ガラッ

さやか「恭介……!」

さやか「…………あれ?」

さやか「…………」

さやか「どうして……居ないの?」


看護師「あら? あなたは……?」

さやか「あっ……その……この病室の上条 恭介くんは……?」

看護師「ああ、上条さんならお昼頃、親御さんと退院されましたよ?」

さやか「えっ……? そう……なんですか?」

看護師「ええ。 少しでも早く、帰りたかったみたいで……」



さやか「…………」

さやか(恭介……。 退院するって、一言あってもいいじゃない……)

さやか(なんか、ちょっとショックだな……)


 ――夜――

 ――上条宅前――



さやか(…………)

さやか(……迷惑だったのかな?)

さやか(…………)

さやか(ううん、そんな事ない!)

さやか(余計な事は考えるな、さやか!)

さやか(と、とにかく、今日はcdプレイヤーを渡して、帰ろう! うん!)

     ♪~ ♪~ ♪~

さやか(………あ)

さやか(…………)

さやか(バイオリンの音……)


さやか(…………)

さやか(…………そっか)

さやか(恭介……思い切りバイオリンを弾きたかったんだ)

     ♪~ ♪~ ♪~

さやか(…………)

さやか(……そうだよね)

さやか(病室じゃ出来ないもんね……)

さやか(ふふっ……そのせいで、あたし、忘れられちゃったのか)

さやか(相変わらず、音楽バカなんだから……)

さやか(邪魔しない様に今日は帰ろっと) クスッ




??「こんな所で何してんのさ? お前」



さやか「!?」

さやか「……あんたは」

杏子「あんたじゃねーよ。 佐倉 杏子だ。 忘れんな」

さやか「……何の用?」

杏子「べっつにー。 今だったら二人っきりだし」

杏子「この前の続き、サシで出来るけど?」

杏子「文句あんだろ? あたしに。 遠慮なくかかってきなよ?」 ニヤニヤ

さやか「…………」


杏子「そういやあんたさー、願い事……この家の男の体、治すのに使ったんだって?」

杏子「バッカじゃないの?」 ケラケラ……

さやか「なっ……!」

杏子「だってそうだろ?」

杏子「他人の為に、たった一つしかない願いを使っちまったなんて」

杏子「バカ以外の何者でもないじゃないか」

さやか「あんた……!!」 ギリッ!

杏子「どうやら、やる気になったみたいだね……」

杏子「来なよ。 ここじゃ、てめーもまずいだろ?」

杏子「人の居ない所で、派手にやろうじゃない……」 クックックッ……


 ――交差陸橋上――



杏子「さぁーて……おっぱじめようじゃないか……」

     キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)

さやか「後悔させてやる……!!」 スッ…

???「待ちなさい、二人共」

杏子・さやか「!!?」

杏子「あ、あんたは……」

ほむら「約束したはずだけど? 美樹さやか達には、手を出すな、と」

杏子「うるせーよ。 あたしは、あたしのやりたいよーにしたいんだよ!」

ほむら「…そう。 なら」

杏子「!?」


ほむら「佐倉 杏子。 私が、あなたの代わりに 美樹さやかと戦うわ」

杏子「はあ!? なんでそうなるんだよ!?」

さやか「……あーもう! めんどくさい!」

さやか「いいよ……二人共、相手してやる!!」 スッ…



???「ダメ!! さやかちゃん!!」 バッ!



さやか「!? まどか!?」

さやか「返して! あたしのソウルジェム!!」

まどか「ごめん……さやかちゃん……!」


まどか「えいっ!!」 ブンッ

     ポイッ…… (走ってるトラックの荷台に) ポトッ

さやか「ああっ……!?」

杏子「おいおい……」

ほむら「!!!!」 ダッ!!



さやか「まどか! なんて事するのよ!?」

まどか「ごめん、さやかちゃん。 こうでもしないと……止められないって……思って」

さやか「だからって、いきなりソウルジェムを 捨て…る……事、は……」

さやか「な…………」 ドサッ……

まどか「えっ? さやか……ちゃん?」

杏子「!!? おいっ!?」 グッ!


杏子「…………!」

杏子「どういう……事だよ?」

杏子「こいつ、死んでんじゃねーか!」

まどか「…………ええっ!?」

さやか「」

まどか「……うそ、だよね? さやかちゃん?」

まどか「何とか言ってよ!?」

さやか「」

まどか「起きてよ! さやかちゃん!!」

???「やれやれ……なんて事をするんだい。 鹿目まどか」

まどか「qべえ!?」


qべえ「どうして美樹さやかを捨てたんだい?」

qべえ「ダメだよ、そんな事しちゃ」

まどか「……何、言ってるの……qべえ?」

杏子「…………」

     ガシッ!!

杏子「……どういう事か、説明してもらおうか?」

杏子「なんでこいつは、死んでんだよ!?」

qべえ「だから、それは美樹さやかじゃない」

qべえ「単なる抜け殻だ」

qべえ「本人の意識はソウルジェムにあり、その効果範囲は約100m前後……」

qべえ「それ以上離れると、こうなるんだよ」

まどか「わけわかんないよ! qべえ」


qべえ「僕達はね、君達の言う、『魂』を肉体から分離できるんだ」

qべえ「それが、ソウルジェム」

qべえ「第一、魂が肉体と一緒だと、急所を突かれただけで魂ごと意識は消えてしまう」

qべえ「君達で言う『死』だ」

qべえ「でも、意識をソウルジェムに移す事で、心臓を刺されようが頭を割られようが」

qべえ「魔法で治す事が可能だ」

qべえ「魔女との過酷な戦いの為に、これは大いに役に立つだろう?」

qべえ「感謝こそされ、非難される事では無いと思うけど?」

杏子「ふざけんな、てめえ……!」

杏子「じゃあ、なんで黙ってたんだよ!!」

qべえ「聞かれなかったからさ」

まどか・杏子「……!!」


     コト……(さやかの前に ソウルジェムを置いた)

ほむら「ふう……」

まどか「!!」

まどか「ほむらちゃん……?」

     ピクンッ……

まどか「!! さやかちゃん!?」

杏子「……!」



さやか「………?」

さやか「あれ?」

さやか「あたし……どうしたの?」



―――――――――――


さやか「…………」

ほむら「……という事よ。 わかったかしら?」

まどか「ごめん……さやかちゃん、本当にごめんなさいっ……!」 グスッ…

さやか「…………っ」 ダッ!

     タッ タッ タッ…

まどか「!! さやかちゃん!!」

ほむら「待ちなさい、まどか」

まどか「で、でもっ!!」

ほむら「あなたが行っても どうにもならないわ。 それよりも……」


ほむら「これでわかったでしょう? 私が魔法少女になるな、と言った意味が」

まどか「…………うん」

ほむら「だったら、もうqべえには関わらない事ね」

まどか「…………そう、だね」

まどか「鳴上さんにも言われてるし……」

ほむら「!?」

ほむら「…………」

ほむら「……まどか、あの男に何を言われたの?」

まどか「ほむらちゃんと同じだよ」

まどか「魔法少女になるなって……」

ほむら「…………」


ほむら「まどか、今、彼と連絡が取れるかしら?」

まどか「え? う、うん……」

まどか「でも……どうしたの? 急に……」

まどか「学校じゃ、全然そっけなかったのに……」

ほむら「気が変わっただけよ」

ほむら「それに……」

まどか「それに?」

ほむら「……ううん、何でも無い」

ほむら(もしかしたら……彼は、知っているのかもしれない)

ほむら(それを確かめないと……)


 ――深夜――

 ――暁美ほむらの家――



鳴上「………お邪魔します」

ほむら「堅苦しい挨拶はいいわ」

ほむら「早く入って」

鳴上「…………」

鳴上(……殺風景、と言うか、殺伐としている、と言うか)

鳴上(おおよそ女の子の部屋とは 思えないな……)



ほむら「早速だけど……」

ほむら「あなたは、どこまで知っているのかしら?」

鳴上「……その前に、qべえは居るのか?」


ほむら「ふう……用心深いみたいね」

ほむら「それなら安心して。 まどかに頼んで、巴マミに見てもらってるわ」

ほむら「信用できないなら、彼女達に電話してみるといい」

鳴上「そうか……そうさせてもらう」 カチャ…(携帯オープン)

ほむら「…………」

―――――――――――
鳴上、確認中……
―――――――――――

鳴上「……よし、確認した」

鳴上「それじゃあ……さっきの質問に答えよう」

ほむら「…………」


鳴上「まず、俺は『知っている』わけではない」

鳴上「いくつかのキーワードから、一つの仮説を考えただけだ」

ほむら「仮説……」

鳴上「俺の知る『シャドウ』と『魔女』は、非常によく似た存在だと、ある筋から聞いた」

鳴上「シャドウとは、人の『負の意識』が具現化したもの……」

鳴上「それによく似ているのならば、魔女もまた」

鳴上「『人の負の意識』から生まれたのでは、ないだろうか?」

鳴上「と……」

ほむら「…………」


鳴上「そして、qべえの言葉が、ずっと引っかかっていた……」

ほむら「…………」



qべえ「使い魔はやがて魔女に。 魔女は、より強力な魔女へと、ね」



鳴上「きっかけは、佐倉 杏子の この一言だ」

ほむら「…………」



杏子「魔法は、タダで出来る事じゃないんだよ!!」



鳴上「qべえの言葉で引っかかっていたのは、『最初の魔女』の説明が無かった事」

鳴上「そして、ソウルジェムに溜まって行く『けがれ』の存在」

鳴上「さらに俺の知る、『シャドウ』の具現の仕方……」


鳴上「そこから導き出した俺の推測は……『けがれ』を溜め込みすぎた魔法少女は」



鳴上「やがて、『魔女』になるんじゃないのか? という事だ……」



ほむら「…………」

鳴上「…………」

ほむら「…………」

鳴上「…………」

ほむら「…………あなたは」

鳴上「……?」


ほむら「まどかに魔法少女になるな、と、言ってくれたそうね?」

鳴上「……ああ」

ほむら「それに感謝して、答えるわ」

鳴上「…………」

ほむら「ええ、その通りよ」

鳴上「………!」

ほむら「驚いたわ。 推測とは言え、よく気がついたわね」

鳴上「確証は無かった。 だが……」

ほむら「だが?」

鳴上「これを……魔法少女に伝えるべきかどうか……迷っている」

ほむら「……!」


ほむら「…………」

ほむら「どうして迷うの? 理由を聞いてもいいかしら?」

鳴上「魔法少女が、化物になるかもしれない」

鳴上「その恐怖感から、魔法少女同士で殺し合いが始まる可能性を考えた……」

ほむら「じゃあ、何故、私には包み隠さず話したの?」

鳴上「君は、まどか達に前々から、『魔法少女になるな』と言い続けてたからだ」

鳴上「……事情を知っていたから、そういう結論に達したのだろう?」

ほむら「…………」

ほむら(……どうしよう)

ほむら(この人なら、あるいは……!)


鳴上「…………」

鳴上「……さて」 スクッ…

鳴上「そろそろ帰る」

ほむら「えっ?」

鳴上「終電の時間だ」

ほむら「ああ……そ、そうね」

鳴上「…………でも」

ほむら「?」

鳴上「俺が信頼に足る人物だと、判断出来たら」

鳴上「また呼んでくれ」 ニコ

ほむら「……!!」 ドキッ

鳴上「じゃ……」


ほむら「…………」

ほむら(な、何よ、あいつ……)

ほむら(人の心を、見透かして……!)

ほむら(…………)

ほむら(…………)

ほむら(……でも、不思議と嫌じゃなかった……)

ほむら(鳴上 悠……)

ほむら(…………) ///

今日はここまで。
キャラ崩壊……すまぬ……すまぬ……>>1の解釈では、こう見えてるのです……。
こらえてくだされ……。

p1、p2、p3、やった事ないからです……。
にわかですまぬ……こらえてくだされ……。

追い付いた
俺は期待している

>>157
ありがとう。正直エタらそうと思ってた……豆腐メンタルな俺。
続けるわ。


 ――翌日の朝――

 ――美樹さやかの部屋――



さやか(…………)

さやか(はは……笑っちゃうよね……)

さやか(魔法少女になって喜んでいたのに)

さやか(こんな体にされていた、なんて……)

さやか(…………)

さやか(今日、学校休んじゃって……心配してるだろうな)

さやか(まどか……)


??《いつまでも しょぼくれてんじゃねーぞ、ボンクラ》

さやか(……!?)

さやか(魔法のテレパシー……) スクッ…

     テト テト テト…… シャッ…(カーテンオープン)

さやか(!!?)

さやか(あいつは……)

杏子《話がある……。 ちょいとツラ貸しな》 クイッ…

さやか(…………)

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=ykbftajatq0&feature=related



 ――午後――

 ――郊外の路地――



     テク テク テク…

さやか「…………」

さやか「……こんな所まで連れてきて、一体何の用?」

杏子「あんたさぁ……やっぱりショックなわけ?」

杏子「昨日の事」

さやか「そりゃあね……。 あんたもそうなんでしょ?」

杏子「……まあね」


 ――廃墟の家屋――



さやか(…………)

さやか(……なに? ここ……)

さやか(教会……かな?)

さやか(火事にでもあったみたい……)



杏子「りんご、食うかい?」 ヒュッ

さやか「…………」 パシッ

さやか「…………」

     ポイッ…… コロ コロ コロ

杏子「!!」

さやか「いらな…」

     グイッ!!


杏子「てめぇ! くいものを粗末にすんじゃねーよ! 殺すぞ…!」

さやか「ぐっ!?」

杏子「…………」

杏子「…………ちっ」 パッ…

さやか「………っは」

杏子「……まあいい」 リンゴ拾い ゴシゴシ…

杏子「本題に入ろうか」

さやか「…………」


杏子「あんたさぁ……なんで自分は、こんな目に会ってるの?って思ってるのかい?」

さやか「……別に。 でもあんたは、自業自得でしょ?」

杏子「そうさ……その通り」

杏子「そしてお前も、自業自得にしちまえばいいのさ」

さやか「……!?」

杏子「だから、あたしは自分の為に魔法を使ってる」

杏子「そうすれば、何が起こっても自分のせいに出来る」

杏子「他人の為に魔法を使って酷い目に合えば……」

杏子「誰かを恨まずにいられなくなる……」

さやか「…………」


杏子「……あたしの父親はね」

杏子「ここの神父だったんだ」

さやか「…………」

杏子「純粋な人でね……」

杏子「毎日、新聞を見ては、ため息をついて胸を痛めている様な人だった」

さやか「…………」

杏子「ある日、オヤジは、世の中を良い方向に変えようと思って」

杏子「毎日、説法を説いた」

杏子「実現されたら、そりゃ素晴らしいって感じの話でね」

杏子「あたしは、そんなオヤジが誇らしかった」

さやか「…………」


杏子「……でも」

杏子「世間て奴は、そんなオヤジに冷たかった」

杏子「まあ、説法に独自の解釈を加えて、教義に無い事まで唱え始めたんだ」

杏子「今なら、バカな事をしてたってわかるよ……」

さやか「…………」

杏子「それからは辛かったね……」

杏子「教会に足を運ぶ人はどんどん減り」

杏子「あたし達家族は、毎日の食事にも事欠く有様になった」

さやか「…………」


杏子「あたしは……ただ、悔しかった」

杏子「オヤジは間違ってない」

杏子「話さえ聞いてくれれば、それがわかってもらえる」

杏子「あたしは、そう思って」

杏子「オヤジの説法に人が集まりますように、と、qべえに祈りを捧げた」

さやか「……!」

杏子「それからは、教会にわんさか人が押し寄せてきた」

杏子「オヤジは嬉しそうだった」

杏子「魔女と戦いつつも それを見て、あたしは幸せだった」

さやか「…………」


杏子「けど、ある日」

杏子「オヤジに、願い事を叶えて魔法少女になった事がバレた」

さやか「……!」

杏子「その日から、オヤジは変わった」

杏子「毎日酒を飲んで、家族に当たり散らし」

杏子「あたしを魔女の手先と罵った……」

さやか「…………」

杏子「……最後は惨めなもんさ」

杏子「家族をその手にかけて、教会に放火し……本人も自殺」

杏子「あたし一人、生き残っちまった……」

さやか「…………」


杏子「覚えときな」

杏子「誰かの為に祈った幸せの分だけ」

杏子「誰かに不幸が訪れる」

杏子「そうやって、差し引きゼロにして」

杏子「世の中ってのは、バランスを保っているんだ」

杏子「それを身をもって体験したんだよ、あたしは、ね……」

さやか「…………」

杏子「いちいち誰かの不幸を見て傷ついてたら」

杏子「あんた、その内、潰れちまうよ?」

杏子「悪い事は、言わないからさー」

杏子「もっと気楽に生きてみなよ、あたしみたいに……」

さやか「…………」


さやか「…………」

さやか「なんであたしに、そんな話をすんのさ?」

さやか「あんた、自分勝手に生きてるんでしょ?」

さやか「なのに……あたしの事、気にかけるなんて……おかしいじゃない」

杏子「……なんでだろうね?」

杏子「…………」

杏子「あんたを見てたら」

杏子「なんとなく……放っておけなくなった」

杏子「ってとこかな?」

さやか「…………」


さやか「…………」

さやか「心配……してくれるんだ」

杏子「…………」

さやか「……あんたの事、誤解してた」

さやか「言いたい事もわかるし、なるほどって思える所も多かった」

さやか「ありがとう」 ニコ

杏子「!……じゃ、じゃあ!」

さやか「でも」

杏子「……!」

さやか「あたしは……自分の願いが、間違いだとは思ってない」

杏子「…………」


さやか「あたしは……あたしの思い描く魔法少女を目指して」

さやか「これからも頑張っていく。 もちろん、見返りなんていらない」

さやか「この力は、使い方次第でいくらでも世の中の役に立てるって事を」

さやか「証明してみせる……!」

杏子「!! あ、あんたね……!」

さやか「そういやさ、そのリンゴ」

さやか「どうやって手に入れたの?」

杏子「!!」

杏子「…………っ」

さやか「…………」

さやか「やっぱり、言えないんだ……」 フウッ…


さやか「それじゃあ帰るね、あたし……」 スッ…

     テク テク テク…

杏子「……ちょ! 待ちなよ!」

さやか「もう話は済んだでしょ?」

さやか「あたしは、あたしのやり方でやる」

さやか「それが嫌だって言うのなら、遠慮なく力ずくで止めたらいい」

さやか「たとえそれで、あたしが死ぬ事になっても」

さやか「あんたを恨んだりしないからさ……」

杏子「!!!」

     ……………………

杏子「…………」

杏子「バカヤローが……!」


     テク テク テク

???「いいのかい? あんな事言って?」

さやか「!!?」

さやか「……今更、よく、あたしの前に来れたね」

さやか「qべえ!!」

qべえ「? 何を怒ってるのさ?」

さやか「ふざけないで! 人をこんな体にしておいて……!」

qべえ「君は、魔法少女になってでも、叶えたい望みがあったじゃないか」

qべえ「それは間違いなく、成就されただろう?」

さやか「…………っ!」


qべえ「断言するよ。 たとえ君が一生をかけて、あの少年に付いていたとしても」

qべえ「彼の手は、二度と動く事は無かっただろう」

qべえ「十分な奇跡と言える対価じゃないかな?」

さやか「…………」

qべえ「まあ、確かに、魔法少女の説明について、省略した部分はあったけどね」

さやか「この……!」

qべえ「もう少し、捕捉説明をしようかい?」

さやか「!? ……まだ、何かあるの!?」

qべえ「そうとも」


qべえ「君のソウルジェムを貸してくれるかな?」

さやか「……あたしを殺す気?」

qべえ「君を殺して、僕に何の得があるのさ?」

qべえ「そんな事しないよ。 約束する」

さやか「…………」

     コトッ…

さやか「……これでいいの?」

qべえ「うん。 じゃあ……始める前に言っておくけど」

qべえ「君は、戦い、というモノを甘く見ている」

qべえ「魔法少女として、魔女と戦うという事は、それはとても過酷な事なんだ……」 スッ…

     キィイイイイインッ!


さやか「……ぐっ!?!??!?!」

さやか「ああああああっ!!!!」 ドサッ…!

さやか(痛いっ……! 痛い痛い痛い痛いっ!!!)

さやか(痛いっ!!!)

qべえ「仮に、だけど、君のお腹に槍が刺さったら、どんな痛みを感じるか」

qべえ「痛覚神経を刺激してみたんだ」

さやか「ぐっ……ああっ! ……ひっ……」

qべえ「どうだい?」

qべえ「ただの一発でも動けなくなるだろう?」 スッ…

     シュウウウウウン……

さやか「くうっ!……はあっはあっはあっ……」


qべえ「これで分かったかい?」

qべえ「君が戦いで感じてた痛みは、随分と緩和されてたんだ」

qべえ「そして、その気になれば、痛みを完全に消す事だって出来る」

qべえ「まあ、そうしちゃうと動きが鈍くなってしまうから」

qべえ「あまりおススメしないけどね……」

さやか「…………」

さやか(……こんな事で……負けない)

さやか(あたしは……)

さやか(立派な、魔法少女になるんだから……!)


 ――翌日の朝――

 ――通学路――



     テク テク テク

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん!」

仁美「おはよう、さやかさん」 ニコ

さやか「ああ、おはよう。 まどか、仁美」 ニコ

仁美「昨日は、どうされたんですか?」

さやか「へへへ……ちょっと、風邪っぽいな~って。 それだけだよ、仁美」

仁美「まあ……そうだったんですか」

まどか「…………」


 《テレパシー中》

さやか《安心して、まどか》

さやか《そりゃ、ショックだったけどさ……》

さやか《あたしは、元気だから!》 ニコ

まどか(さやかちゃん……)


仁美「! あれは…!」

まどか「えっ? どうしたの? 仁美ちゃん?」

仁美「ほら、あそこ……」

さやか「……!!」

さやか「恭…介……?」

仁美「上条くん……もう退院されたんですね……」

仁美「良かった……」


さやか(…………)

さやか(恭介……どうして?)

さやか(あたし、何も聞いてないよ……?)

さやか(どうして、今日登校するって)

さやか(言ってくれなかったの……?)

さやか(どうして……!)


 ――見滝原中学校・教室――



さやか「…………」

まどか「……どうしたの? さやかちゃん?」

さやか「え!? ううん、何でも無い……けど」

仁美「せっかく上条君、登校して来たんですから……声をかけられては?」

さやか「い、いやぁ……今は、遠慮しとこう……かな? ははは……」

まどか(…………)

仁美(変な さやかさん……)


仁美(…………)

仁美(……そうですわ)

仁美(もしかしたら、今がチャンスなのかも……)

仁美(…………)

仁美「あの……さやかさん」

さやか「ん? 何? 仁美?」

仁美「よろしければ……放課後、お時間、頂けませんか?」

さやか「うん。 いいけど……」

仁美「ありがとうございます」 ニコ

さやか(いったい、なんだろう?)


 ――放課後――

 ――ジュネス見滝原店・ファストフード店内――



さやか「…で、何の用? 仁美」

仁美「……はい、相談事がありまして」

さやか「相談? 何の?」

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「!!」

仁美「…………」

仁美「私……ずっと以前から、上条君の事をお慕いしておりました」

さやか「へ…へえ~。 そ、そうなんだ……」

さやか「仁美が、恭介の事を……ねぇ……」


仁美「……さやかさんは、上条君と幼馴染だそうですが」

仁美「特別な感情を抱いておりませんか?」

さやか「!? あ、あたし!? い、いや、そのっ……」

さやか「あ、あたしは……確かに恭介と幼馴染だけど……まあ、腐れ縁って言うか……」 ///

仁美「…………」

仁美「さやかさん」

さやか「う!? うん……」

仁美「私、真剣です……でも」

仁美「さやかさんには、上条君をずっと見てきた……長い時間がお有りです」

仁美「ですので……」

仁美「あなたには、先に告白する権利があると思うのです」

さやか「…………」

仁美「…………」


仁美「私、明日の放課後に、上条君に告白します」

さやか「……!」

仁美「それまでに、どうか、決断してください……」

仁美「それでは……私はこれで……」 スクッ…

さやか「あ…………」

さやか「……………………」

さやか「…………仁美」

さやか「……………………」


 ――夕方――

 ――さやかのマンション・ロビー付近――



さやか「あ……」

さやか「……まどか」

まどか「えへへ……来ちゃった」

さやか「…………」

まどか「今日も行くのかな? 魔女を倒しに……」

さやか「……うん」

まどか「私……何の役にも立てないけど……さやかちゃんの傍に居たい」

まどか「ついて行っても、構わないかな?」

さやか「………まどか」


さやか「…………」

さやか「まどか……あたし、ね」

まどか「うん」

さやか「マミさんや 鳴上さんみたいな……」

さやか「ううん……それ以上にカッコイイ魔法少女になろうって」

さやか「決めたんだ……」

まどか「うん」

さやか「……でも、さ」

さやか「今日……仁美が恭介に告白するって聞いて」

さやか「仁美の事……助けなきゃ良かったって……」

さやか「少し……考えちゃった……」

まどか「…!」


さやか「はは……正義の味方、失格、だね……」

まどか「……さやかちゃん」

さやか「…………ひぐっ……」 ポロッ…

さやか「どうしよう……まどかぁ………」 ポロッ…

さやか「このままじゃ……仁美に……恭介を………」 ポロポロ…

さやか「盗られちゃうよぉ……ううっ……ひっく……」 ポロポロ…

まどか「さやかちゃん……」

さやか「でも……あたし………何も出来無いっ……何もっ……」 ポロポロ…

さやか「だって………あたし、死んでるんだもん……ゾンビなんだもん………!」 ポロポロ…

さやか「抱きしめて、なんて……言えないっ……」 ポロポロ…

さやか「キスして、なんて……言えないよっ………!」 ポロポロ…

さやか「まどかぁ……わああああああああああああああああっ………」 ボロボロッ…

まどか「…………」


 ――10分後――



鳴上「済まない……遅くなっ」

鳴上「………何かあったのか?」

まどか「あ……鳴上さん」

まどか「ううん……何でも無いです」

さやか「…………」 グスッ…

鳴上「…………」


まどか「それよりも、今日、マミさんは?」

鳴上「今日は、魔女の数が多い」

鳴上「単独行動は危険だが……今日は、さやかに付いてやってくれと頼まれた」

鳴上「qべえも付いているし、危険と判断したら自分も無理しないで逃げるそうだ」

まどか「そうですか……」

まどか「さやかちゃん、鳴上さんも居てくれるって。 今日も頑張ろうね」

さやか「うん……あたし、頑張るね。 まどか」

鳴上「…………」


 ――夜――

 ――建設途中のビル・上階付近――



     シャグッ… ムシャ ムシャ…

杏子「……………………」

     ヒュウン…… ストン

杏子「……! ああ、あんたかい……」

ほむら「珍しいわね。 あなたがこんな所で手も出さずに」

ほむら「結界の外から、魔女退治をアイス食べながら見ているだけなんて……」

杏子「……たまには、そんな気分の時もあるさ……」

ほむら「私との約束をすっぽかしたのもそれが理由?」

杏子「あ……そういやそうだったな。 悪かったよ……」

     バチッ…! バチッ…!

ほむら・杏子「……!!」


杏子「ちっ……! あいつ、何やってんだ! 手こずりやがって……!」

杏子「あのペルソナ、とか言う妙な技を使うヤローがついていながら」

杏子「このザマかよ……!」

ほむら「…………」

ほむら(鳴上 悠……)

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=qxo6xorpvdk&feature=g-vrec



 ――魔女の結界内――



まどか「さやかちゃん!!」

さやか「……はあああああああああっ!!」 ダッ!!

鳴上「さやか! むやみに突っ込むな!」

鳴上(くっ…! どうしたんだ、さやかの奴……!)

鳴上(さっきから無謀に向かって行くばかりだ!)

     ドスッ! ヒュバババッ! ドスッ! ドスッ!

さやか「……!……!」

まどか「きゃああああっ!?」

鳴上「!! さやか! 一旦下がれ!」

鳴上「……くそっ!!」 ダッ!


さやか「……こないでよ、鳴上さん……」

さやか「あたしは、大丈夫だからさ……」

鳴上「!?」

鳴上(あんな状態で……触手に胸と腹を串刺しにされて……)

鳴上(平気なのか……!?)

鳴上(…………)

鳴上(…………いや)

鳴上(そんなわけがない!!)

鳴上「パールバティ!」 ディアラハン!!(回復魔法)


さやか「…………余計な事しないでよ」

さやか「平気だって、言ってるでしょ……!」 ダダッ!

まどか・鳴上「……!?」

さやか「はああああああああああああっ!!」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!

     (魔女の反撃) ヒュン ドスッ! ドスッ!

まどか「ひいっ……!」

鳴上「…………!」


さやか「…………」

さやか「…………ふ」

さやか「ふふっ……あはっ………」








さやか「アハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!












鳴上「…………!?」






さやか「……ホントだ……」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!







さやか「その気になれば、痛みなんて……」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!








さやか「簡単に消せるじゃない!!」 グワッ!







     ザシュッ!!







まどか「……もう……止めて。 さやかちゃん……!」




―――――――――――



杏子「……終わったのかい? ボンクラ……」

さやか「…………」

さやか「何だ……あんた、わざわざ見に来たの?」

さやか「暇人だね……」 (魔法少女解除)

さやか「……っと?」 フラッ…

まどか「!! さやかちゃん!」 ガシッ

鳴上「…………」


さやか「……ごめん、まどか」

まどか「ううん、いいよ。 ほら、私につかまって?」

さやか「……鳴上さん。 悪いけど、グリーフシード……回収しといてくれないかな?」

鳴上「…………わかった」

さやか「じゃ……また今度ね」

鳴上「…………」


杏子「……あんた…ええと、鳴上?とか言ってたな? ちょっといいかい?」

鳴上「ああ……」

杏子「今日のあいつ……さやかは、どんな戦いをしてたんだい?」

鳴上「…………」

鳴上「アレは、戦いと呼べるものではない」

杏子「……!」

鳴上「ただ闇雲に 突っ込んで行っているだけだ……」

杏子「……そうかい」

鳴上「…………」


杏子「……なあ」

鳴上「?」

杏子「あんたからさ……あいつに、さやかに、何か言ってやってくれないか?」

鳴上「…………」

杏子「このままじゃあいつ……間違いなく潰れちまう」

杏子「でも、あたしの言葉じゃ……さやかは聞き入れてくれなかった……」

杏子「……無駄かもしれないけど……頼む」

鳴上「…………」

鳴上「もちろん、そのつもりだ」


 ――深夜の雨天――

 ――人けの無いバス停のベンチ――



     サアアアアアアア……

まどか「…………」

さやか「…………」

まどか「……さやかちゃん」

さやか「……ん?」

まどか「今日みたいな戦い方は……もうしないで」

さやか「…………」

さやか「しょうがないんだよ……あたしって魔法少女になり立てだし」

さやか「マミさんや 鳴上さん みたいに才能もないし……」

まどか「だからって、あんな戦い方 無いよう……!」


さやか「……大丈夫だよ。 痛みは、魔法で無くしてるから……」

まどか「そんな事ないよ!!」

まどか「見るからにさやかちゃん、痛そうだったよ……!!」

さやか「…………」 イラッ…

さやか「……何よ、それ?」

さやか「あんたに、あたしの何がわかるって言うの……?」

まどか「!? ……さやか…ちゃん?」

さやか「痛そう? ハッ……魔法少女でもない まどかに言われたって」

さやか「何の説得力もないっての……」

まどか「……!」


さやか「…………」

さやか「そういやさぁ……」

さやか「まどかも魔法少女に なれるんだよね?」

さやか「だったら、今すぐqべえ呼んでなって見せてよ……」

さやか「あたしの代わりに……魔法少女になって見せてよ!!」

まどか「……ひいっ…!」 グスッ…

さやか「…………」

さやか「……ふん」

さやか「あたし……もう行くわ……」 スクッ…

さやか「バイバイ、まどか……」

     バシャッ バシャッ バシャッ…

まどか(…グスッ……さやかちゃん……)


     バシャッ バシャッ バシャッ…

さやか(……あたし、何を言ったの?)

さやか(いつも傍に居てくれて、優しい一番の親友に……)

さやか(まどかに……何を言ったの!?)

さやか(あたし……最低だ……!)

さやか(あたし……あたし……!)

     バシャッ バシャッ バシャッ…

本日はこの辺で……。まどマギ本編をなぞってるだけじゃないか!
と、思われてるかもしれませんが、この次くらいから変化がありますので。


 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ……」

イゴール「度々、済みませぬな……」

イゴール「はい……今回も、現実のあなたは眠っておられます……」

イゴール「それでは、本題に入りましょう……よろしいですかな?」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……結構」

イゴール「今回の旅路も、かなりの佳境に入られましたが……」

イゴール「正直な所、いかがでございましょうか?」

イゴール「…………」

イゴール「ほう……随分と、お悩みの様でございますな……」


イゴール「様々な道が見えている分、かえってどれを進めば良いのか……」

イゴール「確かに……迷い所でございますな……」

イゴール「…………」

イゴール「ヒント?」

イゴール「ふふふ……それはもう、すでにお伝えしているはずです……」

イゴール「…………」

イゴール「左様でございます……」

イゴール「お客様は、八十稲羽でなされた事を ここでも行えば良いのです……」

イゴール「ふふふ……いささか、おしゃべりが過ぎましたかな?」


イゴール「それから、ささやかながら……」

イゴール「お客様の旅路に役立てられれば、と」

イゴール「武器を用意しておきました……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……残念ながら請求させて頂きます……」

イゴール「申し訳ありません……少々手間が掛かりましてな……」

イゴール「しかし、必ず、お役に立つ事でしょう」

イゴール「…………」

イゴール「おお……そろそろ、お目覚めの時刻でございますな」


イゴール「最後に」

イゴール「現在、お客様は、重要な分岐点におられます」

イゴール「その事だけは、お忘れなきよう……」

イゴール「それでは、いずれまた……」


―――――――――――

 ――朝――

 ――鳴上の部屋――



鳴上「…………」

鳴上「……ふあっ」

鳴上「……ん?」

鳴上「何だ? この長細い箱?」


     ゴソ ゴソ…

鳴上「!!」

鳴上「こ、これは!?」

     スラァ…

鳴上「…………」

鳴上(神々しい剣だな……)

鳴上「お? 取説がある……何々?」

     名前 神剣グラム   代金 78200円(税込)

鳴上「…………」

鳴上(地味に結構、痛いな……)

鳴上(おまけにどうやって持ち運ぼう……?)


 ――翌日の午前中――

 ――見滝原中学校・教室――



まどか(さやかちゃん……今日は、お休み)

まどか(学校で会えると思ったのに……)

まどか(……………………)

まどか(……どうして私……昨日、さやかちゃんの事)

まどか(追い掛けなかったんだろう……)

まどか(追いかけなきゃいけなかったハズなのに……)

まどか(…………)

まどか(とにかく、放課後、さやかちゃん家に会いに行こう……)


 ――放課後――

 ――さやかのマンション・ロビー付近――



     インターホン オン状態

まどか「えっ!?」

まどか「さやかちゃん、昨夜から戻ってないんですか!?」

まどか「…………」

まどか「はい……はい……」

まどか「わかりました、見かけたら、必ず連絡します」

     ピッ…

まどか「…………」

まどか「さやかちゃん……探さなきゃ!」

     タッ タッ タッ…


 ――河川敷公園――



     テク テク テク…

恭介「…………」

恭介「志筑(しづき)さん」

仁美「はい?」

恭介「志筑(しづき)さんって、帰り道、こっちだっけ?」

恭介「今まで、一度も姿を見た事が無いんだけど……」

仁美「…………」

仁美「そうですわね……」

仁美「確かに、帰り道は上条君と逆方向ですわ」 ニコ

恭介「……?」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=ohwa2janl6w&feature=relmfu



 ――河川敷公園・ものかげ――



さやか「…………」

さやか(…………どうして)

さやか(恭介、そんな笑顔なの……?)

さやか(そんな顔……あたし、見た事無いよ?)

さやか(…………)

さやか(なんで……仁美なの……?)

さやか(どうして……あたしじゃ無いの……?)

さやか(どうして……なんで……どうして……)


 ――深夜――

 ――廃屋付近――



     フラ フラ フラ…

??「さやか…」

さやか「……?」

さやか「ああ……鳴上さん」

さやか「よくここが、わかったね……?」

鳴上「…………」

鳴上「さやか、少し話がしたい」

鳴上「来てくれないか?」


さやか「……嫌よ」

鳴上「……どうしてだ?」

さやか「鳴上さんも感じるでしょ?」

さやか「あそこに……使い魔が居るの……」

さやか「倒さなきゃ……」

鳴上「マミに頼めばいい」

さやか「ダメよ……あたしが倒す」

さやか「絶対、あたしが倒すんだから……!」



鳴上(…………)

鳴上(…………だめだ。 何があったのか、わからないが)

鳴上(聞く耳を持ってない……)


鳴上(…………)

鳴上(かなり……危険だが、これしか方法を思いつかないな……)

鳴上(覚悟を決めよう……!)



鳴上「おい、化物」



     ピクンッ



さやか「…………」

さやか「……そんな安い挑発には乗らないよ、鳴上さん」


鳴上「そうか……さすがは、化物だな」

鳴上「人間の言葉も解らなくなったか、化物」

さやか「…………」

鳴上「どうした、化物?」

鳴上「さっさと上に行って化物同士、殺し合って来い」

さやか「…………」 ギリッ

鳴上「ほら、さっさと行って来い、化物」

さやか「……あんた、わかってんの?」

さやか「あんたのペルソナ能力は、魔女の結界内でしか使えないんでしょ?」

さやか「あたしを怒らせない方が、良いと思うけど?」

鳴上「あいにくと、お前程度の化物に遅れを取る程」

鳴上「俺は落ちぶれてはいない、化物」


さやか「……そう」

さやか「本当かどうか」

さやか「確かめてあげるわ……」 スッ…

     キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)

さやか「……さすがに丸腰だと気が引けるわね」

さやか「あたしの剣、貸してあげようか?」

鳴上「必要ない」

鳴上「お前程度の化物、これで十分だ」 ガララッ…

さやか「……何それ? そんな錆びた鉄の棒でいいっての?」

さやか「それとも、負けた時の言い訳にでもするつもり?」

鳴上「御託はいい……」 スッ

鳴上「かかってこい、化物」


さやか「…………」 ギリッ…!

さやか「はあっ!」 ダッ!

     ガキィッ!!

さやか「!!」

     ボコンッ!

さやか「あぐっ!?」 ズザッ…

鳴上「…………」

さやか(……何? 今の!?)

さやか(剣が受け流されたと思ったら、背中に一撃、入れられた……!)

鳴上「…………」


鳴上「どうした? もう お終いか?」

鳴上「化物…」

さやか「……!!」

さやか「だあああああっ!!」 ダダッ!!

     ヒュウッ! バキッ!! ドガッ!!

     ブンッ! バゴオッ!! ゴガッ!!

さやか「くうっ……!」

鳴上「…………」

さやか「はああああああっ!!」 ゴウッ!

     ギィインッ! ボグッ!! ゲシッ!!

     カァンッ! ドガァッ!! バグンッ!!


杏子「……!?」

杏子「おいっ!! 何やってんだ!! てめぇ!!」

鳴上「……手を出すな」 ゴゴゴ…

杏子「!!?」 ビクンッ!

杏子(な……なんだってんだ!?)

杏子(あ、あいつは、人間なんだろ!?)

杏子(しかも……ペルソナ、とか言う妙な技は、使えないはず……)

杏子(なのに……)

杏子(なんで足が、すくむんだよ!)


鳴上(よし、思った通り……)

鳴上(さやかは痛みを無くしているから)

鳴上(それに対する恐怖は全く無い……)

鳴上(だが、それゆえに動きは単純で短調だ)

鳴上(攻撃を読んで、受け流しつつカウンターを入れる……)

鳴上(これを繰り返せばいい……)

鳴上(後は)

鳴上(さやかの根気と、俺の体力……どちらが最後まで持つか……)

鳴上(勝負だ! さやか!) キッ!


さやか「はあっはあっ……」 ダッ!



さやか(なんであたし……鳴上さんに向かって)

さやか(攻撃してるんだろう?)



鳴上「どうした……? それで終わりか?」

鳴上「化物」



さやか(そうだ……それが……嫌なんだ)

さやか(ただ……嫌なんだ)



さやか「……ああああああああああっ!!」 ゴウッ!


さやか(あたしは……決めたよね?)

さやか(正義の味方になるって……)

さやか(この力を正しく使うって……)



さやか「やあああああああああああっ」 ゴウッ!!



さやか(あたし……何……してるの?)

さやか(これは、正しい事なの……?)



さやか「はあっはあっはあっ……」 



さやか(違う……)


さやか(違う……違う……)

さやか(違うっ……!)



鳴上「化物」

鳴上「化物!」

鳴上「化物!!」



さやか(違うっ!!!)


     カラ…ラ…ランッ……

鳴上「……!」

杏子(さやか……剣を放した……)



さやか「……………ひっく………」

さやか「もう……止めて……!」 (魔法少女解除)

さやか「話でも お説教でも 何でも聞くから……」

さやか「あたしを……化物って……呼ばないで……」

さやか「お願いっ……グスッ……ひっく……」



鳴上「…………」


さやか「違うっ……あたし……化物じゃないっ……!」 ポロポロ…

さやか「化物なんかじゃ……ないよ……!」 ポロポロ…



鳴上「…………」

鳴上「……落ち着け、さやか」

鳴上「考えても見ろ……」

鳴上「鉄の棒一本で息一つ乱さず、魔法少女と渡り合える俺の方こそ」

鳴上「化物だ……」 カランッ…



杏子「…………」


―――――――――――




杏子「……任せても大丈夫かい?」

鳴上「まだ、スタートラインに立っただけだが……」

鳴上「勝算がないわけじゃない」

杏子「ふうん……」

杏子「…………」

杏子「じゃ……あたしは帰るわ」

杏子「……またな、さやか」



さやか「…………」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=cup-hgudf3k&feature=relmfu



 ――夜明け前――

 ――さやかのマンション・屋上――



さやか「…………」

鳴上「…………」

さやか「……ねえ?」

鳴上「……ん?」

さやか「こんな所に連れてきて、何のつもり?」

さやか「ひょっとして……エロい事とかするの?」

鳴上「中学生に興味はないな」

さやか「うわ……地味にムカつく……」


さやか「…………」

鳴上「…………」

さやか「……ねえ」

鳴上「……ん?」

さやか「話があるんじゃなかったの?」

鳴上「聞く耳は、あるのか?」

さやか「…………」

さやか「……内容によるかな」

鳴上「そうか……」


鳴上「…………」

鳴上「さやかは、ここから見える景色って」

鳴上「どのくらいの広さがあると思う?」

さやか「は? なんなの? 突然?」

鳴上「いいから。 大体で構わない、答えてくれ」

さやか「……10キロ四方くらい?」

鳴上「……人間の目で見える範囲は」

鳴上「障害物が無ければ、大体80キロ前後と言われている」

さやか「へ~……」

鳴上「ここは少し高い位置にあるから……実際は、もう少し広いだろうな」

さやか「ふうん……で?」


鳴上「この見える範囲の景色の中に」

鳴上「さやかの救える人間は、どれだけ居るだろう?」

さやか「!!」

鳴上「まさかと思うが……」

鳴上「全部、救ってやるつもりだったのか?」

さやか「…………」

鳴上「…………そうか」

さやか「あたし、何も言ってない」

鳴上「そうだな……」 クスッ…


鳴上「さやかは、転校した事はあるか?」

さやか「……ない」

鳴上「そうか……」

鳴上「俺は2回程」

さやか「ふうん……それで?」

鳴上「俺は、2回ともいい友人に恵まれたが……」

鳴上「どこか打算的に付き合っている奴もいる……」

さやか「…………」

鳴上「教科書を貸してくれた奴に、たまに昼飯をおごったりした」

鳴上「もちろん逆も然り」

さやか「それってフツーじゃない」


鳴上「でも教科書を貸して『ありがとう』の一言もない奴に」

鳴上「『また貸してやろう』という気持ちに、俺はなれないな……」

さやか「……!」

鳴上「これは小さいけど、打算的だろ?」

さやか「…………」

鳴上「よく、人知れず川の清掃とかやっている奴が居るけど……」

鳴上「やっぱり誰かに褒めてもらいたい、と思っているんじゃないかな?」

鳴上「もちろん、否定も肯定もしない」

鳴上「でも……俺は人って、そういうものだ、と思っている」

さやか「…………」


鳴上「…………」

鳴上「……そろそろだな」

さやか「……何が?」

鳴上「日の出さ」 クスッ

さやか「うっわっ……クサイ演出……」

鳴上「そうか……じゃあ見なくてもいい」

鳴上「俺だけで見る」

さやか「……誰も見ないなんて、言ってない」

鳴上「…………」

さやか「…………」

鳴上「…………お」

さやか「…………わあ」


さやか「綺麗……」

鳴上「…………」

鳴上「さやか」

さやか「ん?」

鳴上「今、つぶやいた言葉は、さやかの何が言わせた?」

さやか「……え? あたしの……?」

鳴上「さやかの魔法少女の部分か? それとも他の何かか?」

さやか「…………?」

さやか「魔法少女な訳ないじゃん……」

さやか「そんなのあたしが……あたしの心が、そう思ったから……」

さやか「!!」

鳴上「…………」


さやか(…………)

さやか(そっか……あたしは、ちゃんとあたしだったんだ……)

さやか(魔法少女の力も……このゾンビの体も……)

さやか(勝手に何かするわけじゃない)

さやか(どんなに嫌っていようとも、あたしを形作る一部でしかない……)

さやか(あたしはあたし……美樹さやか)

さやか(この景色を綺麗だって言える)

さやか(人間の心を持っている、美樹さやか……!)

さやか「……くっ…フフフッ…」

さやか「アハハハハッ……!」

鳴上「…………」


さやか「…………」

さやか「……ホントに綺麗」 クスッ

鳴上「……そうだな」 クスッ

さやか「…………」

さやか「太陽ってすごいね……」

鳴上「ん?」

さやか「ここから見える景色だけじゃなく……」

さやか「もっと広い地域全体に居る人達に、分け隔てなく同じ光を与えてる……」

さやか「ううん……人間達だけじゃない」

さやか「生きとし生ける物すべてを、照らしてる……!」

さやか「それも……何の見返りもないのに」

鳴上「そうだな……」


さやか「……自分は、こんなにちっぽけな存在なのに」

さやか「絶対になれない、太陽になろうとしてたんだ……」

さやか「……あたしって、ホント、バカ……」

鳴上「…………」

さやか「…………」

さやか「えっと……ありがとう」

鳴上「いや……礼はいい」

鳴上「大した事はしていないし……いろいろ酷い事も言った」

鳴上「おまけに鉄の棒で殴っているし……すまなかった」

さやか「アハハ……そういやそうだね」


さやか「…………」

さやか「じゃあ、さ……」 ///

鳴上「ん?」

さやか「すっごい、わがままなんだけど……」 ///

さやか「あたしもマミさんみたいに……あなたの事」 ///



さやか「悠って……呼んじゃダメ……かな?」 ///





 ――次の日(と言うか、今日)の朝――

 ――見滝原中学校・教室――



さやか「おはよ! まどか!」

まどか「!!」

まどか「さやかちゃん!!」

まどか「昨日、さやかちゃん家 訪ねたら、一昨日から帰っていないって……!」

まどか「私、心配で心配で……!」 ウルウル

さやか「……うん、ゴメン。 本当にゴメン、まどか」

まどか「ううん、謝るのは私の方だよ……」

さやか「もういいから、まどか。 お互い様って事にしとこう? ね!」 ニコ

まどか「!……うん!」 ニコ

さやか「それよりも……なってないよね? 魔法少女に……」

まどか「えっ? う、うん。 なってない」


さやか「んー? なんか怪しい……」

さやか「吐け! 正直に吐くんだ! ネタは上がっている!」 ウリャウリャ!

まどか「きゃーん! ごめん! ホントは、なりかけましたぁ!」 クスグルノヤメテー!

さやか「えっ!?」

まどか「はあ、はあ……そ、その、危ない所を ほむらちゃんに……」

さやか「……そっか」

さやか(そういや……あたしが、魔法少女になる前から、ずっと)

さやか(魔法少女になるなって、言ってたっけ……)


 ――休憩時間――



さやか「おーい、転校生……じゃなかった」

さやか「……ほむら」

ほむら「!?」

ほむら「……な、何かしら?」

さやか「まどかの事、ありがとう」 ニコ

ほむら「!!?」 ///

さやか「ほむらが、今までどんな気持ちで」

さやか「あたし達が魔法少女になるのを止めてたのか」

さやか「ようやく、わかったよ……」

ほむら「…………!」 ///


さやか「今までゴメン。 本当にゴメン」

さやか「今更……こんな事言われても、きっと困るだろうけど……」

さやか「良かったらお昼、一緒に食べない?」

ほむら「!!?!?」 ///

ほむら「…………」 ///

さやか「やっぱ……ダメ?」

ほむら「……ええ……悪いけど……」

さやか「……そっか」

さやか「それじゃ、またね!」 タッ

ほむら「……あ……うん」

ほむら「また……」


さやか「あ、仁美」

仁美「あ……さやかさん」

さやか「…………」

さやか「あのね、仁美。 頼みがあるの……」

仁美「はい……?」

さやか「一日だけ……ううん、今日の放課後だけでもいい」

さやか「恭介と、話をさせて欲しいの……」

仁美「!!」

仁美「そ、それは……!」

さやか「お願い、仁美。 あたし自身のけじめを付ける為に……」

さやか「お願い……!」

仁美「…………」


 ――夕方――

 ――上条宅・恭介の部屋――



さやか「うわぁ……久しぶりだね、恭介の部屋……」

恭介「そう? そういえば病院で、けっこう一緒だったから」

恭介「久しぶりって思わなかった……」

さやか「……そっか」

さやか「…………」

恭介「それで? 話って?」

さやか「!……あ、うん」

さやか「えっと、ね……」


さやか「…………」

さやか「あのね、今からちょっと信じがたい行動をするけど……」

さやか「最後まで見て欲しいんだ……いいかな?」

恭介「うん」

さやか「じゃあ……このハサミ、ちょっと貸してね?」

恭介「いいよ」

さやか「…………」 スッ…

     ザクッ!!

恭介「!?」

恭介「さやか! 手! 左手が!!」

さやか「……大丈夫。 見てて」 ズッ…

恭介「だ、大丈夫って……!?」


     シュウウウッ…

恭介「」

恭介「……き、傷が……!?」

さやか「…………」

さやか「驚いた? ……ううん、普通は驚くよね」

恭介「……手品、かい?」

さやか「信じてくれないかもしれないけど」

さやか「魔法なんだ。 これ…」

     キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)

恭介「!!?」


さやか「どう? かっこいいでしょ?」 フフン♪

恭介「…………」

恭介「……いったい、何が何だか……」

さやか「あたしがどうやって魔法少女になったか……」

さやか「今から説明するね……」

―――――――――――
さやか、説明中
―――――――――――

恭介「……へえ、そのqべえという奴に……」

さやか「うん……どんな願いも、ひとつだけ叶える代わりに、ね」

恭介「ふうん……すごいね」

恭介「じゃあ、さやかはどんな」


―――――――――――
さやか「……あるよ」

さやか「奇跡も、魔法も……」

さやか「あるんだよ……!」
―――――――――――



恭介「!!!!!!!!!!!!」



さやか「…………」

恭介「…………ま」

恭介「まさか……」


さやか「……うん。 そうだよ」

恭介「どうして……!?」

さやか「…………」

さやか「それを……聞いちゃう、か……」

恭介「……?」

さやか「いい? 一回しか、言わないからね?」

恭介「あ、ああ……」

さやか「恭介の事が……好きだから」 ///

恭介「!!!」

さやか「…………」

恭介「…………」


恭介「じゃあ……」

恭介「さやかは……僕のために人間をやめて、魔法少女になって」

恭介「魔女と戦っているの……!?」

さやか「…………」

さやか「ねえ、恭介」

恭介「……うん」

さやか「あたしは……たぶん卑怯な事をしている」

さやか「恭介の怪我を、命懸けで直してやったんだから責任取れ!って感じで……」

恭介「…………」

さやか「……でも、ね」

さやか「知って欲しかったんだ」

さやか「あたしのすべてを……」




さやか「……嫌な所も含めて、ぜーんぶ」



恭介「…………」

さやか「でね、あたし今日、ここに来たのは……聞きたい事があるからなんだ」

さやか「だけど……答えがどうであれ、恭介の今日のあたしとの記憶は」

さやか「魔法で消すつもりなの……」

恭介「……!」

恭介「……どうして?」

さやか「きっと……恭介にとって重荷になると思うから……」

恭介「…………」


さやか「じゃあ、聞くね?」

恭介「……うん」

さやか「恭介は……あたしの事をどう思ってる?」

さやか「一人の女の子として……どう、見てるかな?」

恭介「えっ!?」

さやか「……あたしは出来る限り、自分をさらけ出した」

さやか「どんな事でもいい。 どんな悪口でも構わない」

さやか「……大好きな、恭介の口から……正直な気持ちを聞いておきたいの」

恭介「…………」

恭介「……さやか」

さやか「うん」

恭介「僕は……君の事を――」



―――――――――――


 ――夜――

 ――さやかの部屋――



さやか「……………………」

さやか(恭介……正直な気持ちをありがとう……)

さやか(これで……あたしは、やっと)

さやか(前を向ける。 前に進める)

さやか(恭介…………)

さやか(仁美と……仲良くね……) ホロリ


 ――翌日の朝――

 ――見滝原中学校・教室――



さやか「おはよう、仁美」

仁美「!……さやかさん。 お、おはようございます」

さやか「…………」

さやか「ありがと、仁美」

仁美「……!」

さやか「恭介と仲良くしてあげてね」 ニコ

仁美「は、はい」 ///

さやか「じゃ……」

仁美「…………」

仁美「さやかさん……」


まどか「…………」

まどか「おはよう、さやかちゃん」

さやか「おはよう、まどか」

まどか「…………」

さやか「? どうかした? あたしの顔に何かついてる?」

まどか「ううん……そうじゃないの。 ただ……」

さやか「ただ?」

まどか「すっごく良い顔してるなぁ……と思って」 クスッ

さやか「へ!? そ、そう!? な、なんか照れるな」 ///

まどか(フフッ……とっても素敵だよ、さやかちゃん)


 ――放課後――

 ――ゲームセンター――



ほむら「こんにちは」

杏子「んー? ああ……お前か……」

杏子「って……!?」

さやか「や!」

杏子「さやか……どうしてここに?」

さやか「ほむらが、杏子に会いに行くって聞いたから」

さやか「ちょっと無理言って、付いて来たんだ」

ほむら「…………」

杏子「……で、何の用さ?」


さやか「ううん……大した用事じゃないよ」

さやか「ただ、もう一度会って、お礼が言いたかったんだ」

さやか「いろいろ、ありがとう杏子」 ニコ

杏子「…………」

杏子(な、なんだ? この前とは、別人じゃないか……)

杏子(あいつ……何をしたんだ?)

杏子「……別にいいさ。 元気になったみたいで良かったな」

さやか「うん。 今度さ、魔法の事とか色々と教えてね! じゃ、これで帰るね? ほむら」

ほむら「ええ……」

杏子「…………」


杏子「なあ」

ほむら「何かしら」

杏子「あいつ……本当にさやかか?」

ほむら「間違いなく彼女よ」

杏子「いくらなんでも変わりすぎだろ……」

ほむら「私も戸惑ってるわ……」


杏子「……で? おめーの話ってのは?」

ほむら「それなんだけど……もう少し時間をくれないかしら?」

杏子「何かあったのかい?」

ほむら「ええ……。 とりあえず、また三日後にここで会えないかしら?」

杏子「ああ、いつでもいいよ。 あたしは大抵ここにいるから」

ほむら「じゃ……また三日後に」

杏子「おー……」


 ――夜――

 ――巴マミの部屋――



マミ「いらっしゃい、悠さん」

鳴上「お邪魔します」

マミ「遠慮は、無用ですよ」 クスッ

まどか「あ、いらっしゃい、鳴上さん」

さやか「はい、このケーキ、悠の分ね」

マミ・まどか「!?」

さやか「ん? どうしたの? 二人共?」


マミ「み、美樹さん? いくらなんでも、なれなれしすぎるんじゃ……」

まどか「そ、そうだよ、さやかちゃん……」

さやか「ちゃんと悠にオッケーもらったよ?」

さやか「ねえ? 悠!」 ニコ!

鳴上「…ああ」

マミ・まどか(……若干、嫌がってる?)

鳴上「それはともかく、急にみんなで集まろうって……一体何があったんだ?」

さやか「あー、それなんだけど……」

鳴上「提案したのは、さやかか」

さやか「簡単に言うと……あたしもマミったんだ」 コト…


     ヒィイインッ…

鳴上・マミ・まど「!!!!」

まどか「ほ、ホントだ! さやかちゃんのソウルジェム、凄く綺麗……!」

マミ「……所で、美樹さん。 その、『マミった』……って?」

さやか「ああ、マミさん状態になった、を略したの。 わかりやすいでしょ?」

マミ「……ええと。 出来れば止めてくれないかしら?」

マミ「何故か背筋が寒くなるの……」 ブルブル…

さやか「えー? そうなんですか? じゃあ……p状態?」

鳴上「……今度は、ペルソナ状態を略したのか?」

さやか「さっすが悠! 冴えてるね~!」 ニャハハ

まどか(なんか……お腹壊してるみたい)

マミ(私は、アレ以外なら何でもいいわ……)


マミ「で? 今日、私達を集めたのは、これの報告をしたかったからなの?」

さやか「うん。 それともう一つ」

さやか「あたしやマミさんがp状態になったのは」

さやか「やっぱり、悠のおかげだと思うんだ……」

鳴上「……そんな事はな」

さやか「あるよ! 絶対!」

鳴上「!?」 ビクッ

さやか「……上手く、言えないんだけど」

さやか「あたしは、悠と話をして、すっごく心が軽くなった」

さやか「それが……p状態になるきっかけだと思ってる」

まどか「…………」

マミ「……私もそれ、わかる気がする」

まどか「! マミさん……」


鳴上「ちょっと待ってくれ」

鳴上「持ち上げてもらって恐縮だが……p状態が『いい事』と決まったわけじゃないんだぞ?」

さやか「ぐっ……で、でも……!」

マミ「『悪い状態』、と、決まったわけでもないんじゃないかしら?」

鳴上「……!」

マミ「現に、あれから私は、すこぶる調子がいいですしね」 クスッ

マミ「何よりも、グリーフシードの確保を考えなくて済むだけでも」

マミ「大きなメリットだと思います」

さやか「そーそー! さっすがマミさん!」

鳴上「…………」


さやか「でね、あたし、悠に頼みたいんだ」

鳴上「……聞こう」

さやか「良かったら……杏子と ほむらにも」

さやか「話をしてあげてくれないかな?」

鳴上「…………」

さやか「この際、p状態がどうとか言うよりも」

さやか「単純にあの二人の悩みを聞いて欲しいんだ……」

鳴上「…………」

さやか「……そして、あたしじゃたぶん無理だと思う」

さやか「あたしが、杏子の差し出した手を振り払ってしまった様に……」

さやか「でも……悠なら、きっと……!」

鳴上「…………」


鳴上「……必ずいい結果になるとは、限らないぞ?」

さやか「! 悠!」

鳴上「それに、みんなにも協力してもらいたい」

鳴上「頼めるか?」

さやか「もちろんだよ!」

まどか「うん! 私に出来る事なら!」

マミ「大丈夫、上手く行きますよ」 クス

鳴上「そうか……心強いな」

鳴上「頼りにさせてもらおう」 クスッ

今日はここまでです。すみません……マーラ様の出番は、ありませんです。

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=6chrbp1pegm&feature=relmfu



 ――翌日・休日の朝――

 ――廃墟の教会――



     コン コン……

杏子「!? 誰だ!?」

??「……突然すまん。 俺だ。 鳴上 悠」

杏子「!? どうしてここが……?」

鳴上「さやかに聞いて来た」

杏子「! さやかが……」

鳴上「ああ」


杏子「それで? 何の用だい?」

鳴上「俺とデートしないか?」

杏子「はあっ!?」 ///

杏子「い、いきなり、何を言ってんだ!!」 ///

杏子「か、体か!? 体が目当てか!?」 ///

鳴上「……何故そうなる」

鳴上「さやかが、杏子を心配していた」

鳴上「彼女の話を聞いて、塞ぎ込んでいる様だから」

鳴上「気分転換に外にでも連れ出そうと思ったんだ」

杏子「…………」


杏子「余計なお世話だよ」

杏子「あたしは、これまで一人でやってこれた」

杏子「だから大丈夫だ。 なりたての魔法少女に心配される様なヘマはしない」

杏子「悪いけど……帰ってくれ」

鳴上「そうか……」

鳴上「じゃあ、ここからはビジネスの話だ」

杏子「……びじねす???」

鳴上「お前には貸しがある」

杏子「何の話だよ」

鳴上「杏子は、俺に言ったな? さやかを頼むって」

杏子「ぐっ……!! け、けどあれは……!」


鳴上「俺は『無償で』とは、言ってない」

杏子「……っ!」

鳴上「…………」

杏子「…………」

杏子「……あんたって、見かけによらず黒いね」

鳴上「多少は、人生経験積んだからな」

杏子「わかった、負けたよ。 付き合ってやろうじゃない」

鳴上「そうか」

杏子「その代わりあんたの事、悠って呼ぶからね……」

鳴上「ああ、構わない。 さやかにも そう呼ばれているしな」

杏子「……イヤミも通じねぇのかよ」


 ――午前中――

 ――遊園地――



杏子「……遊園地か」

鳴上「定番のデート・スポットだ」

杏子「何のひねりもねーな」

鳴上「ほっとけ」

鳴上「ここまで来たら、楽しまないと損だぞ?」

杏子「……それもそうだね」

杏子「何から乗る?」


鳴上「……いきなりジェットコースターか」

杏子「おやぁ? 悠くんは苦手なのかなぁ?」 ニヤニヤ

鳴上「杏子こそ、ちびるなよ?」

杏子「だ、誰がちびるか!!」 ///

鳴上「それだけ元気なら問題ないな」

杏子(……調子狂うなぁ)


―――――――――――


杏子「……おえっぷ」

鳴上「大丈夫か?」

杏子「だ、大丈夫だ……」

杏子(……こ、こんなハズじゃ……)


鳴上「ほら、水を持って来た」

杏子「……ああ、もらうよ……おえっぷ……」

     ゴクッ ゴクッ…

杏子「……ふう」

     ママー! アレ二ノロー? ハイハイ

     コラッ ハシルンジャナイ! パパ…ゴメンナサイ…

杏子「…………」

鳴上「…………」

杏子(……そっか、今日は休日だったな)

杏子(通りで家族連れが多いわけだ……)


鳴上「…………」

鳴上「次は何に乗る?」

杏子「……そーだな」

杏子「カートがいい。 カートに乗ろう!」

鳴上「わかった」


―――――――――――


鳴上(くっ……思った以上に乗りづらい) モゾモゾ…

杏子「…………」

杏子「…………プッ」

杏子「アハハハッ!」

鳴上「……何が可笑しい?」


杏子「ワリィ ワリィ……」

杏子「だってさぁ、今の悠……」

杏子「真面目な顔して、小さいおマルに無理やり座ってるみたいで……」

杏子「プッ、アハハハハッ!」

鳴上(くっ……陽介には、絶対見られたくないな……) ///

杏子「あー……笑った笑った!」

杏子「んじゃ、乗るとするか」

杏子「せっかくだし、競争しない? アイスかけて」

鳴上「……俺、体重的にメチャクチャ不利じゃないか?」

杏子「あー聞こえなーい」 ブロロロ……

鳴上「! ま、待て!」 ブロロロ……


杏子「あたしの勝ちィ!」 ウヒヒヒ…

鳴上「ひ、卑怯な……!」

杏子「うっせーな。 こまけーこたぁいいだろ?」

杏子「じゃあ、約束のアイスな! あたしバニラと チョコと ストロベリーのトリプルで」

鳴上「……遠慮がないな」

杏子「勝負に負けたのは、事実だろ? どうしても嫌って言うのなら……」

杏子「メリーゴーランドに単独で乗れば、勘弁してやるけど?」

鳴上「誰がやるか……バニラと チョコと ラズベリーのトリプルだったな」

杏子「ストロベリー! 間違えんな!」


杏子「ニッシッシッ。 いいね、楽しくなってきたよ!」 ペロペロ

鳴上「それは何より」 ペロペロ

杏子「うし! これ食ったら昼飯にしようぜ!」

鳴上「どんな腹をしてるんだ……」

杏子「甘い物は、別腹なんだよ」

鳴上「普通は食った後に言うセリフだ、それは……」

杏子「魔法少女は、とにかく腹が減るものなんだっつーの!」

鳴上「わかったわかった……」


鳴上「杏子は、お子様ランチか?」

杏子「……死にてーのか?」

鳴上「冗談だ」

杏子「おめーの冗談は、解りづれーよ」

鳴上「じゃあ、真面目な話、何にする?」

杏子「そうだね……」

杏子「ハンバーグ・サラダセットに、コンポタスープ」

杏子「フィッシュフライバーガー×2に、ポテトlサイズ」

杏子「後、チキンフライ×6に、サラダバーガーと、イチゴシェイク」

鳴上「…………」

鳴上「……冗談、だよな?」

杏子「何がさ?」


     ☆チーン☆  アリガトウ ゴザイマシター

杏子「あー、食った食った! ご馳走さん!」 ケプッ

杏子「タダだと思うと、余計に旨く思えるわー(棒)」 ニヤニヤ

鳴上「…………」

鳴上(クマに勝るとも劣らない、食いっぷりだった……) クスン…

杏子「で? 次、何する?」

鳴上「……乗り物は、食事の後だから避けたいな」

杏子「そうだね」

鳴上「ミラーハウスは どうだ?」

杏子「ああ、いいよ」


杏子「ほえ~、思った以上に不思議な感じがするね~」

鳴上「おい、杏子。 先に進みs」 ゴインッ☆

鳴上「……っ!!」

杏子「アハハハハッ!」

杏子「何やってんのさ! 悠!」

杏子「あたしは、先に行くよー」 スタ スタ スタ…

鳴上「ま、待て! 杏子…」 ガンッ☆

鳴上「おうっ!!」


―――――――――――


杏子(は~あ。 何やってんだか……)

     コンッ フエ~ン!! ママー!

     アラアラ… イタイノ イタイノ… トンデケー!

杏子(…………)

     ホウラ… パパノテヲ ハナスンジャ ナイゾ?

     ハーイ! パパ!

杏子(…………)

     キャハハ… ウフフ…


―――――――――――


鳴上「……やっと追いついた」 フウ…

鳴上「? どうした? 杏子」

杏子「…………」

杏子「……帰る」

鳴上「え? どうしたんだ? 急に?」

杏子「うるせえっ!! 帰るっつったら、帰るんだよ!!」 ダッ!!

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」

鳴上「……ふう」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=ykbftajatq0&feature=related



 ――数時間後の深夜――

 ――郊外の路地――



     テク テク テク…

杏子(…………)

杏子(……何で)

杏子(あたしは、あそこに向かっているんだろう……?)

杏子(あいつ……鳴上 悠が、居るかもしれないのに……)

杏子(…………)

杏子(フフ……そんなわけない)

杏子(これだけ、ほとぼりを冷ましたんだ……)

杏子(とっくに愛想を尽かして、帰っているさ……) クスッ…


 ――廃墟の教会――



     ギィィィィッ……

??「…お帰り」

杏子「!!?!?」 ビクッ!

杏子「…………」

杏子「……悠」

 ――どうして――

鳴上「腹、減ってるだろう?」

鳴上「コンビニ弁当……冷めてしまったけど、一緒に食べないか?」


杏子「…………っ」

 ――ここに居るの?――

鳴上「杏子?」

杏子「……聞こえてるよ」

杏子「物好きだね……あんた」

杏子「こんな時間まで あたしを待ってたなんて……」

鳴上「他に杏子が居そうな場所を知らないし」

鳴上「正直……来なかったらどうしよう、と思っていた所だ」 クスッ…

杏子「……フ」

杏子「アハハハ……!」


※注 照明に燭台(教会にあったもの)&ローソク(コンビニで買ってきた)を使用してます。

     モグ モグ モグ…

杏子「……ごちそうさま」

鳴上「ごちそうさま」

杏子「…………」

杏子「……ねえ」

鳴上「ん?」

杏子「あんた……さやかから、話を聞いたって言ってたけど」

杏子「あたしの家族の事も聞いたのかい?」

鳴上「……ああ」


杏子「そうかい……。 お節介だね」

鳴上「さやかは悪くない……」

鳴上「さやかの身を案じて心配していた、杏子と同じだ」

杏子「そう……だよ、な」

杏子「…………」

杏子「さやか……見違える程、元気になってたね」

鳴上「ああ……」

鳴上「?」

杏子「…………」


鳴上「……気のせい、かもしれないが」

鳴上「さやかが元気になったのを喜んでいないのか?」

杏子「…………」

杏子「半々……ってとこかな」

鳴上「半々?」

杏子「もちろん嬉しいさ……元気になったのは」

杏子「……でも」

杏子「なんて言うか……『同じ仲間』じゃ無くなった」

杏子「立ち直った、さやかを見て……そう感じてね」

鳴上「…………」


杏子「ほら、あたしと境遇が似てる所、あるだろ?」

杏子「誰かの為に祈った願いで、不幸になる所とかさ……」

鳴上「…………」

杏子「それだけに見ていられなかった」

杏子「あたしと同じ様にやれば……少なくとも 損はしなくなる」

杏子「あたしは……」




杏子「さやかにも、そんな風にして欲しかった」



鳴上「…………」

杏子「…………」

杏子「……だけど」

杏子「悠と話をしたさやかは、別人か?と思うほど、明るく元気になっていた」

杏子「……認めたくなかった」

鳴上「…………」


鳴上「何をだ?」

杏子「えっ?」

鳴上「『何』を認めたくなかったんだ?」

杏子「!!」

鳴上「…………」

杏子「……あ……そ、それは……」

杏子「…………」

鳴上「杏子」

杏子「……!」 ビクッ

鳴上「手を つながないか?」


杏子「…………は?」

杏子「ど、どさくさにまぎれて何を……!」

鳴上「嫌ならいい。 でも……」

鳴上「今の杏子を見て、そう思った」 スッ…

杏子「…………」

     どうして……かな?

     たぶん、この手を握ったら……あたしは

     泣いてしまうって、わかってた



     でも……それに逆らう事が

     出来なかった……


杏子「…………」

     ギュッ……!

杏子「…………」

鳴上「…………」

杏子「……大きいな、悠の手」

鳴上「…………」

杏子「それに……」

杏子「暖かくて……」

杏子「……………………っ」 グスッ…

鳴上「…………」


杏子「……うっ………ぐっ………ヒック……」 ポロポロ

杏子「……ひぐっ………ううっ………ああ……」 ポロポロ

杏子「………お、父さん……のっ………手、みたい……だよっ」 ポロポロ

杏子「うあああっ……お、父さんっ……! お父さんっ……!」 ポロポロ

杏子「……あ、あだしっ……! あたしはっ………ああああっ………!」 ポロポロ

鳴上「…………」




     ……悠は、泣きじゃくるあたしを

     そっと 抱きしめてくれた



     「今まで、よく頑張ったな」



     そんな優しい言葉と共に…







     あたしは……悠の体温を感じながら

     泣いて、泣いて、ただ……泣いて

     いつの間にか眠っていた……



     こんなに安心して 眠りについたのは

     いつ以来だろう?

     ……ううん

     もしかしたら、生まれて初めてかもしれない……







     あたしは、夢を見た

     今はもう、現実で見る事の出来無い

     家族の夢だった



     どれくらい前だったのか……

     お父さんと お母さんと 妹で

     近くの公園に行った時の

     思い出……







     ……どうして、忘れていたんだろう?

     そうだよ

     あの頃、食うのにも困ってた

     あたしら家族にも

     楽しい思い出はあった



     でも……

     たった一人になってからは ずっと

     悪夢ばかり見ていた……







     父さんは、いつもあたしを罵倒して

     時には、棒か何かで殴って

     そんなあたしを あたしが見ていた

     奇妙で……恐ろしい夢……



     でもあたしは、それが当然だって思っていた

     それが償いだ、とも思っていた



     だけど……それは違う

     そうやって罰を受ければ

     家族に対して、何かしている気になっていた……

     それだけだ







     あたしは気がついた

     今でもこうやって、この廃墟に 時々泊まるのは

     償いとか 過去を忘れない為 とかじゃない



     あたしは……家族を探していたんだ



     もう会えないはずの

     暖かい家族のぬくもりを

     見つけようと 彷徨っていたんだ……







     お母さん……

     お父さん……

     そして、まだ幼かった あたしの妹……



     ごめんね



     こんなに傍に居てくれたのに

     気づくのが遅くなって



     ごめんなさい……





 ――朝――



杏子「う、うーん……」 セノビー…

杏子「ふう…………」



鳴上「…………」

鳴上「……う?」

杏子「お? ……起きたかい? 悠」

鳴上「ん? ……杏子?」

杏子「おはよう、悠!」 ニコ

鳴上「……おはよう、杏子」

杏子「なんつーかさぁ」


杏子「今更、って感じだけど……」

杏子「礼を言っとくよ」

杏子「ありがとう、悠」 ニコ

鳴上「…………」

鳴上「どういたしまして」 クスッ


杏子「……あの言葉」

鳴上「?」

杏子「ここで、『お帰り』って言ってくれたの」

杏子「嬉しかった……」 ///

鳴上「それは何より……」


杏子「あれのおかげで……あたしが『何』を求めていたのか」

杏子「何をしていたのか、よーく、わかったよ」

鳴上「ほう……それは何だ?」

杏子「そいつァ 言えねぇなぁ」 ハッハッハッ

鳴上「…………」

杏子「でも……」 スッ…(胸に手を当てる)



杏子「それは……ここにあったよ」 ニコ



鳴上「……そうか」 クスッ


 ――昼――

 ――巴マミの部屋――



杏子「お邪魔しまーす」

さやか「!! 杏子!」

杏子「ニシシ…さやか、心配かけちまったな」

さやか「ううん……本当は、あたしが何かしてあげたかったんだけど……」

杏子「わかってるって……さやか」

杏子「そして、さやかの判断は、正しい」

杏子「たぶん……さやかの話だったら、あたしは聞く耳を持たなかったと思う」

さやか「……杏子」

杏子「さぁ、湿っぽい話は、これくらいにしよーぜ!」

杏子「あたしは、佐倉 杏子! みんな、よろしくな!」


マミ「はい、佐倉さん」

まどか「うん! よろしくね! 杏子ちゃん!」

さやか「よろしく! 杏子!」

鳴上「よろしくな、杏子」

杏子「ウヒヒ…! な、なんか照れくさいね、こういうの」 ///

さやか「あ! ところで杏子」

杏子「ん?」

さやか「あんたのソウルジェム、どうなった?」

杏子「え? ソウルジェム?」

杏子「んなもん、何も変わってるわけな」 ゴソ ゴソ…

     ヒィイインッ……!


杏子「」

さやか「やった! p状態!」

杏子「お、おいおい!? 何だよ、これ!? 解る様に説明しろ!」

―――――――――――
p状態 説明中
―――――――――――

杏子「へえ! つー事は、グリーフシードは、もう要らねえのか…」

さやか「そう! このp状態ならね!」 (自分のソウルジェムを掲げながら) ドヤッ!

杏子「…………」

まどか「? どうかしたの? 杏子ちゃん?」


杏子「い、いや……な、何つーか……」 ///

鳴上「?」

杏子「も、もしかして、マミも さやかも」 ///



杏子「……悠と寝たのか?」 ///



鳴上「」

さやか「!?」

マミ「!?」

まどか「?」


マミ「………………悠さん?」 ゴゴゴ……

さやか「………………悠?」 ゴゴゴ……

鳴上「ご、誤解だ!」

さやか「あんた……中学生には興味ないって言ってたよね?」

さやか「あたしと日の出を見ながら……」 ゴゴゴ……

鳴上「ひ、火に油を注ぐなっ」

マミ「あらぁ……美樹さんとは、そんなロマンチックな事を……」

マミ「私とは、ベランダでお話しただけなのに……」 ゴゴゴ……

鳴上「だ、だから」

杏子「ふうん……何だか叩けば、ホコリがたくさん出てきそうだね……」

杏子「ちょいと説明してもらおうかい?」 ニヤニヤ

鳴上「お前は、楽しんでるだろ!?」

まどか(みんな……怖い) ビクビク

今日はここまでです……。後、ガチで風邪ひいてました……。
人生初となる白い車を召喚。点滴スゲエェェェ!って思いました。
みなさんも風邪には気をつけましょう……。


 ――翌日の放課後――

 ――ゲームセンター――



     テク テク テク…

ほむら「!?」

ほむら「……何をしているの?」

ほむら「鳴上 悠……」

鳴上「戦場のきずn」

ほむら「ゲームじゃなくて」

鳴上「冗談だ」

ほむら「…………」


ほむら「……私は、佐倉 杏子に 会いに来たのだけれど?」

鳴上「代理だ」

鳴上「……いや、もっとはっきり言うと、みんなの代表としてここに来た」

ほむら「……!」

鳴上「みんなからの言伝(ことづて)がある」



さやか「頼りないかもしれないけど……あたしは、ほむらの味方だよ!」

マミ「暁美さん……私、あなたの信頼を得たい。 チャンスをもらえないかしら?」

杏子「何、抱えてんのか知らねーけど、あたしに話せる程度なら、心配ねーよ。 何とかなる!」

まどか「ほむらちゃん。 私、話を聞くだけなら出来るよ? だから……」

まどか「話したくなったら、いつでも来てね。 私……待ってるから」



ほむら「!!!!!!!!」


鳴上「…………」

鳴上「……話して、くれるか?」

ほむら「……ええ」

ほむら「わかったわ」



ほむら(……どうして、なの)

ほむら(たった一人、この男 鳴上 悠が、加わっただけで)

ほむら(私が……どんなに望んでも出来なかった……)

ほむら(みんなの協力が得られるなんて……)

ほむら(…………)


 ――夕方――

 ――暁美ほむらの部屋――



鳴上「お邪魔します」

ほむら「どうぞ」

鳴上「…………」

ほむら「? どうしたの?」

鳴上「いや……何でも無い」

鳴上(前回は、『堅苦しい挨拶』とか言われたのに……)


ほむら「…………」

鳴上「…………」

鳴上(そうか……どう話すか、その事で頭が一杯なのか)

ほむら「…………」

ほむら「そうね……まず、最初に」

ほむら「目的を言っておくわ」

鳴上「目的?」

ほむら「ええ……私の目的。 それは……」

ほむら「鹿目まどかを魔法少女にしないで、『ワルプルギスの夜』に勝つ事」

鳴上「『ワルプルギスの夜』?」

ほむら「そう……後、約一週間後に現れる災厄」

ほむら「史上最強・最悪の魔女……」

鳴上「……!」


鳴上「…………」

鳴上「質問しても?」

ほむら「ええ、どうぞ」

鳴上「何故、それが……『ワルプルギスの夜』の出現が、予測できる?」

ほむら「…………」

ほむら「私は……私の使う魔法は」

ほむら「『時間』よ」

鳴上「……? 未来を見てきたのか?」

ほむら「違う」

ほむら「私は……『ワルプルギスの夜』が、出現するまでの一ヶ月間を」

ほむら「数え切れないくらい繰り返してるの……」

鳴上「……!!」


鳴上「…………」

鳴上「さっき言った、目的の為か?」

ほむら「ええ……」

鳴上「まどか一人の為に……」

ほむら「…………」

ほむら「最初の……まどかと初めて出会った頃の私は」

ほむら「病気が治ったばかりで、ふさぎ込みがちだった……」

ほむら「そんな私の手を引いて、友達になってくれたのが……まどかだった」

鳴上「…………」




 ……それからの話は、ほむらの壮絶な戦いの日々だった。

自身も魔法少女になり、まどかを助けられると思っていたが、ワルプルギスの夜に敗北する。

そこから、終りの見えない ほむらの旅が始まった。







 最初は、マミ達にqべえの危険性を伝えようとしたり、出来うる限り協力を得ようとした。

だが、結果は芳しくなく……魔法少女がやがて魔女になるのを知っただけで

殺し合いを始めたり、自殺したり、気が狂ったりしたりして、魔女化する者が続出した。

 ほむらは、その度にまどかに救われたり、魔法少女を倒して生きながらえて

同じ時間を繰り返していた……。

 何度も何度も……。





鳴上「…………」

ほむら「一番……手を焼いたのは、美樹さやか」

ほむら「私は、美樹さやかが願い事をしない様に努力したわ」

ほむら「でも、どうやっても彼女は魔法少女になり」

ほむら「魔女化する確率が高かった……!」

鳴上「…………」

ほむら「私は……彼女達に頼る事を諦めた」

 ――もう誰にも頼らない――

ほむら「……ある時間軸で、魔女化する寸前のまどかを……私は、この手にかけた」

 ――たとえ、どんな犠牲を払おうとも――

ほむら「その時、私は誓った」

 ――私、ひとりで、まどかを――

ほむら「絶対に救う、こんな結末を変えてみせる……と」


鳴上「…………」

鳴上「……俺もそうなのか?」

ほむら「え?」

鳴上「俺も、『ワルプルギスの夜』に、負けているのか?」

ほむら「いいえ」

ほむら「あなたとは、この時間軸で初めて出会った……」

鳴上「! ……そうなのか?」

ほむら「ええ」

鳴上「…………」




???「そういう事だったのか」



ほむ・鳴上「!!?」

ほむら「……qべえ」

ほむら「いえ……」

ほむら「インキュベーター!!」

qべえ「……その名前で呼ばれるのも久しぶりだ」

鳴上「インキュベーター……孵卵器(ふらんき)、か」

鳴上「まさに、名は体を表す、だな」

ほむら(! そんな意味だったの!?)

qべえ「君は博学だね、鳴上 悠」 ニコ

qべえ「地球に最初に降り立った地域に、ピッタリの言葉があったんでね」

qべえ「使わせてもらってるんだ」


鳴上「ちょうどいい、qべえ。 お前の口から聞きたい事がある」

qべえ「何かな?」

鳴上「お前の……お前達の目的は何だ?」

qべえ「宇宙の為だよ」

鳴上「宇宙?」

qべえ「君は、エントロピー、という言葉を知っているかい?」

鳴上「……熱力学の不可逆性の事か?」

qべえ「さすがだね」

qべえ「まあ、暁美ほむらも居る事だし、簡単に説明を加えると」

qべえ「木を燃やして得られる熱エネルギーは、木を育てるエネルギーよりも少なくて」

qべえ「釣り合いが、取れてないという事さ」

ほむら「…………」


qべえ「宇宙中の生命体が、宇宙のエネルギーを使い続けて」

qべえ「この宇宙のエネルギーは、目減りする一方だ」

qべえ「だから僕達は、エントロピーを凌駕するエネルギーを探し求めた」

qべえ「それが……僕達には無くて」

qべえ「君達の持つ、『感情エネルギー』だ」

鳴上「…………」

qべえ「特に、第二次成長期に当たる、暁美ほむらの様な」

qべえ「『少女』の『感情エネルギー』は」

qべえ「量・質、共に、魔女化する瞬間、最高・最大に高められる」

鳴上・ほむ「……!」

qべえ「そして、そのエネルギーを回収するのが、ボク達」

qべえ「インキュベーターの役目なのさ」


ほむら「……この!」 ジャキン!(拳銃を取り出す)

鳴上「止めろ、ほむら」

qべえ「やれやれ……助かるよ、鳴上 悠」

鳴上「殺すなら、質問が終わってからにしてくれ」

ほむら「…………」

qべえ「前言撤回だね」

鳴上「何の為にそんな事をする?」

qべえ「やがては、君達人類も文明が発達し、進化して僕達の仲間入りを果たす」

qべえ「その時になって、空っぽの宇宙を手渡されても困るだろう?」

qべえ「だから、これは君達にとっても有意義な事なんだ」

鳴上「…………」


ほむら「……もう、殺ってもいいかしら?」

鳴上「最後の質問だ」

qべえ「何だい?」

鳴上「お前が、まどかに固執する理由は、何だ?」

ほむら「……!!」

qべえ「それはね、まどかが、ものすごい資質を持っているからだよ」

qべえ「通常では、有り得ない程巨大で、最初は僕も信じられなかった」

qべえ「けど……」 (ほむらを) チラッ

ほむら「…………」

qべえ「その謎は、ついさっき解けた」 ニコ

鳴上「どういう事だ?」


qべえ「暁美ほむらは、何度も何度も時間を逆行する事で」

qべえ「知らない内に、まどか自身へ因果を集めてしまったんだ」

鳴上「……!!」

鳴上(因果……だと!?)

ほむら「…………っ」

qべえ「感謝するよ、暁美ほむら」

qべえ「まどかは、歴代最強の魔法少女となるだろう」

qべえ「そして、それは同時に」

qべえ「『ワルプルギスの夜』をも遥かに凌駕する」

qべえ「史上最悪の魔女の誕生も意味する」

鳴上「…………」

ほむら「…………」


qべえ「僕達は、まどかが魔女化したら かつて、経験した事のない」

qべえ「とてつもない量と質の『感情エネルギー』を得る事ができる」

qべえ「でも、まどかや、この星の犠牲は無駄にはならない」

qべえ「何故なら――」

     ドオゥウン! ドオゥウン! ドオゥウン!

ほむら「はあっはあっはあっ……」

qべえ「」

鳴上「…………」

     トトン…

???「……やれやれ」

鳴上「!?」


ほむら「…………」

qべえ「無駄な事は、止めてくれないかな? 暁美ほむら」

     ムシャ ムシャ ムシャ…

qべえ「キュップイ……スペアは、たくさんあるけど」

qべえ「面倒くさいんだ」

鳴上「…………」

ほむら「…………」

qべえ「さて、鳴上 悠。 まだ聞きたい事は、あるかい?」

鳴上「…………」

鳴上「……今は、無いな」

qべえ「そうかい? じゃあ僕は、これでおいとまさせてもらうよ?」 トトッ…


鳴上「…………」

鳴上「ほむら」

ほむら「…………」

鳴上「今、qべえの言った事は、本当か?」

ほむら「……ええ」

ほむら「ひとつ前の時間軸でも同じ事を言っていたわ」

鳴上「そうか……」


鳴上(…………)

鳴上(もし、俺の推測が正しければ……)

鳴上(だが、これを今、ほむらに伝えるのはマズイ……)

鳴上(…………何でもいい)

鳴上(彼女に、希望となる『何か』を示してからでないと)

鳴上(…………)


 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ」

イゴール「はい……例によって、現実のお客様は 眠っておられます」

イゴール「本日、わざわざお呼び立てしたのは……」

イゴール「お客様に、お礼を言う為でございます」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……左様でございますな」

イゴール「確かに、わたくしめもあなた様を利用している、と言えるでしょう……」

イゴール「しかし……」

イゴール「この予測を遥かに超えた事象に対処なさっているお客様を」

イゴール「利用している『だけ』ではない事も、また事実でございます……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……結構」


イゴール「さて、お客様の傍に存在する『因果の渦』……」

イゴール「その所在と、理由が判明いたしましたな」

イゴール「おかげ様で……」

イゴール「わたくし共にもやるべき事と、方向性が見えてまいりました……」

イゴール「本日は、そのお礼を言いたかったのでございます」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……そうでございますな」

イゴール「わたくし共は……『あるべきものの道』を『見て』いるのでございます」

イゴール「おっと……これ以上は、どうかご容赦を……」


イゴール「ふふふ……それにしても、素晴らしい」

イゴール「お客様の類まれなる、その”ワイルド”の力……」

イゴール「もしかしたら……」

イゴール「引き寄せたのは、『因果』の方では無く」

イゴール「あなた様が、『因果』を引きつけたのやもしれませぬな……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……これは失礼」

イゴール「……おや? そろそろ、お目覚めの時刻でございますかな?」


イゴール「最後にひとつ、お客様に ご忠告を申し上げましょう……」

イゴール「お客様は……」

イゴール「何かをお忘れでは、ございませぬかな?」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……」

イゴール「それはもう、教えておりましょう?」

イゴール「そう……」

イゴール「八十稲羽でおやりになられた事を、ここでも行えばよろしいのです」

イゴール「ふふふ……それでは、いずれまた……」

今日は短いですが、この辺で……。
ほむほむ編はちと長いです。


 ――翌日の放課後――

 ――巴マミの部屋――



鳴上「――というわけだ」

マミ「…………」

さやか「…………」

杏子「…………」

まどか「…………」


さやか「……はあ。 なんて言うか、もう大抵の事では驚かないって思ってたのに……」

杏子「魔法少女は、いずれ魔女に……か」

マミ「…………」

まどか「マミさん……。 大丈夫?」

マミ「大丈夫なんかじゃないわ」

鳴上「……!」

マミ「恐ろしくて怖くて……心の底から震えてる」

さやか「マミさん……」

マミ「みんなは、平気なの? 怖くないのかしら?」


さやか「……あたしは、もう、この体自体がって思ってるし……それに」

さやか「なんとなく……薄々、そうかな? とは思ってた」

さやか「でも、そうだとしても、あたしはあたしだよって言える」

杏子「あたしも そんな感じかな」

杏子「悠がいつだったか、言ってただろ? 魔女は『シャドウ』に似ているって」

杏子「つまりは、魔法少女の誰もが持ってる暗い部分が、暴走しちまうって事だ」

杏子「それを抑えるのに、今までは、グリーフシードが必要だった」

杏子「でも、今は」

マミ「p状態……ね?」

さやか「そう! つまり、他の魔法少女達も、p状態になれば」

杏子「魔女には、ならなくなる!」

マミ「ふふ……そうよね。 きっとそうだわ」 クスッ

     ハハハ…


まどか「…………」

鳴上「まどか」

まどか「!? は、はい!?」

鳴上「さっきから静かだけど……どうした?」

まどか「…………」

まどか「鳴上さんは、時々……意地悪ですね」

鳴上「……それなりに自覚はしている」

まどか「…………」

まどか「……じゃあ、付き添ってもらえませんか?」

まどか「私一人で……会わないといけないのは、分かってます」

まどか「けど…………ダメ……上手く言葉に出来無い」

鳴上・マミ・さや・杏子「…………」


さやか「……根拠も何も無いけどさ」

さやか「きっと上手くいくよ、まどか」

杏子「ああ……何でかな? あたしもそう思ってんだ」

杏子「理屈じゃない。 上手くいくって、確信に近いほどそう感じるんだ」

マミ「私達にとって、p状態のキッカケが悠さんだった様に……」

マミ「きっと暁美さんは、あなたが鍵になると思うわ」

鳴上「まどかは以前、自分には、何の力も、価値もないと言っていたな?」

鳴上「今でも、そう思うか?」

まどか「…………」

まどか「……やっぱり、鳴上さんは、意地悪ですね」 クスッ


 ――夜――

 ――暁美ほむらの部屋――



ほむら「…………」

まどか「…………」

鳴上「というわけで、包み隠さず全員に話した」

ほむら「…………」

鳴上「みんな……それぞれで受け止めてくれた」

鳴上「ほむらの……長く、辛い戦いと葛藤も……」

ほむら「…………」

まどか「…………」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=whlsptrw_-e&feature=related



鳴上「……じゃ、俺は席を外す」

鳴上「終わったら、携帯で連絡してくれ」

     パタン…

ほむら「…………」

まどか「…………」

ほむら「…………きっと」

まどか「……!」

ほむら「混乱、してるでしょうね……」

まどか「…………」

ほむら「今のあなたにとって……私は」

ほむら「少し前に転校してきた、クラスメイトに過ぎない」

まどか「…………」


まどか「……うん。 確かに、そうだね」

ほむら「…………」

まどか「今の私は、ほむらちゃんの事を何にも知らない」

ほむら「…………」

まどか「……でも」

まどか「鳴上さんに話を聞いて、真っ先に思ったのは……」

まどか「ありがとう と ごめんなさい を ほむらちゃんに言いたいって事……」

ほむら「! いいえ! まどかは、何も悪くない!」

ほむら「私が……私が、それを望んだから――」

     ギュッ…

ほむら「!!!!!」


まどか「ごめんね、ほむらちゃん。 ありがとうね、ほむらちゃん」

まどか「私のわがままな、お願いを聞いてくれて」

まどか「ずっと、ずっと、私を救おうと頑張ってくれて……」

ほむら「まどか……」

まどか「ほむらちゃんは、私の大切なお友達、だよ?」

まどか「だから……」

まどか「全部、言って」

まどか「ほむらちゃんが、私にしてくれた事、言いたかった事」

まどか「抱えてた事、出来なかった事……」

まどか「そして……ほむらちゃんの事、聞きたい」

ほむら「……!」


まどか「話して……くれるかな? ほむらちゃん」 ニコ

ほむら「…………」 ジワッ…

ほむら「まど…かぁ……」

ほむら「……ひぐっ………くっ……………」 ポロッ…

ほむら「まどかぁ……! まどかぁあああああっ……!!」 ポロポロ

まどか「…………うん」 ギュッ…

ほむら「私は……自分の意、志で……ぐっ……今まで……」 ポロポロ

ほむら「でも……時間を逆上る度に……ヒック……まどかと私の時間は……ズレていって……」

ほむら「私っ……私っ! ……寂しかった……!」 ポロポロ

ほむら「まどかは……ぐっ…………こんなに近くに居るのにっ…………!」 ポロポロ

ほむら「こんなに……優しいのに……! あああああああっ……」 ポロポロ

まどか「……うん……うん」 ポロポロ




     ……それから、ほむらちゃんは、いろんな話をしてくれた

     初めて私に出会った時の事……

     魔法少女の私の事……

     ほむらちゃんが、魔法少女になった時の事……



     ほむらちゃんが見て来た、いろんな私の事……

     その度に、言いたくても言えなかった事……

     その度に、何をして来たのかも……







     そして、ほむらちゃん自身の事……



     後は……『今の』私の事を

     ほむらちゃんに話した

     たぶん……ほむらちゃんにとって、知ってる事ばかりだと思うけど

     『今の』私の気持ちや、想いを知って欲しかった







     ほむらちゃんは、黙って私の話を聞いてくれた

     とっても優しい笑顔で……




     ありがとう、ほむらちゃん

     



 ――暁美ほむらの家近くの公園のベンチ――



鳴上(…………)

鳴上(そろそろ、2時間、か……)

鳴上(…………)

鳴上(忘れられたかな?) クスッ

鳴上(…………)

鳴上(…………)

鳴上(そうだ……) カチャ…(携帯オープン)

     ピッピッピッ……トゥルルルルル……トゥルルルルル……

     ガチャ


鳴上「もしもし?」

??『おっ? 悠? 悠か?』

鳴上「久しぶり、陽介」

花村『おうっ! 本当に久しぶりだな、悠!』

鳴上「今、いいか?」

花村『ああ、いいぜ。 どうしたんだ? 突然?』

鳴上「ハハ……特に用ってワケじゃないんだ」

鳴上「どうしているかな……と、思って」

花村『嬉しいコト、言ってくれるじゃねーか! 相棒!』

鳴上「みんな変わりないか?」

花村『そうだな、俺と里中が赤点取りすぎて』

花村『卒業がやべぇって事以外は、変わってないぜ!』

鳴上「ハハハ……」


花村『そういやよ、最近、妙な事があってな』

鳴上「妙な事?」

花村『クマが、テレビの中で、お前の気配を一瞬感じたって言ってたんだ』

花村『もしかしたら悠、テレビの中へ入ったのか?』

鳴上「!!……あ、ああ、その……」

鳴上「ついうっかり、転んだ拍子にテレビ画面に触ってしまってな……」

鳴上「幸い、画面が小さくて落ちる事は無かったんだが」

花村『おいおい、あぶねーな! ジュネスのあの場所以外は、洒落にならねーんだぞ?』

鳴上「以後、気を付ける様にしている」

花村『だな。 つーか、俺達も気をつけねーとな!』

鳴上「ハハハ……」


花村『……で? どうしたんだよ? 相棒?』

鳴上「えっ?」

花村『何かあったんだろ?』

鳴上「……!」

花村『言ってくれよ、悠。 俺は……いや、俺達は』

花村『いつだって、お前の力になるぜ?』

鳴上「陽介……」

鳴上「…………」


鳴上(……どうする?)

鳴上(きっと、みんな……力になってくれるだろう)

鳴上(…………)



鳴上「……いや、本当に何でも無いんだ」

鳴上「なんとなく、声が聞きたくなってな」

鳴上「それだけなんだ……」

花村『……そうか』

花村『まあ、それならそれでいいんだけど、な』

鳴上「心配してくれて ありがとう」

花村『よせよ……そんなの当たり前の事だろ?』

鳴上「フフッ……そうだな」


鳴上「じゃ、また連絡する」

花村『ああ……いつでもいいぜ!』

花村『今度は、俺からもかける。 またな、悠』

鳴上「ああ、またな、陽介」

     プッ…… ツー…… ツー……

鳴上「…………」

鳴上「…………陽介」

鳴上「悪いけど、お前達には次の時間軸での希望になってもらう」

鳴上「だから……今回は許してくれ……陽介」


 ――数時間後の深夜――

 ――暁美ほむらの部屋――



鳴上「すまないな……疲れているだろうに」

ほむら「ううん……そんな事はない」

ほむら「あなたには、返しきれない大きな恩が出来た……」

ほむら「いつでも歓迎する」 ニコ

鳴上「……まだ、根本的な事は、終わってない」

鳴上「それに……これから話す事は、ほむらにとって」

鳴上「少々、辛い事でもある……」

ほむら「……わかったわ」


鳴上「まず、確認するが……俺が出てきたのは、今回が初めてなんだな?」

ほむら「ええ……」

鳴上「そして……時間を逆上る度に、因果がまどかに集まっていく」

鳴上「間違いないな?」

ほむら「その通りよ」

鳴上「ここからは、俺の想像なんだが……大きくなった因果の渦は」

鳴上「俺の様な特異能力者を……引き寄せる特性が、あるのかもしれない」

ほむら「……!!」

ほむら「ま、まさか……」

鳴上「まだある。 もし、仮に、この時間軸でも決着がつかず」

鳴上「時間の逆行を繰り返していけば、また新しい人物が加わるかもしれない」

ほむら「!!!」


鳴上「単なる想像だけどな……」

ほむら「……いえ、前の時間軸でqべえが言っていた」

ほむら「まどかの素質は、その気になれば神にも等しい願いを叶えられるって……」

ほむら「際限なく大きくなるのであれば……有り得ない話じゃ無いかもしれない」

鳴上「…………」

鳴上「……で、だ」

鳴上「今の内に、時間の逆行を前提にした話をしておこうと思う」

ほむら「え?」

鳴上「これを……」 スッ…

鳴上「俺の自宅の住所と、キーワードを書いておいた」

ほむら「!? キーワード?」


鳴上「住所が解りにくいのなら、俺が案内しよう」

鳴上「キーワードは、ほむらに会う以前の俺にも信じてもらう為のモノだ」

鳴上「俺にしか……俺だけが知っている言葉だ」

鳴上「これを言えば、次の時間軸でスムーズに俺の協力を得られるだろう」 ニコ

ほむら「!!!!」

ほむら「……ああ、そうだわ、その手があった……!」

ほむら「どうして、それに気がつかなかったんだろう……!?」

鳴上「そして、言わなくても わかっていると思うが」

鳴上「みんなにもキーワードを聞くといい」

鳴上「きっと、みんなも次の時間軸でスムーズに仲間になってくれる」

ほむら「ええ! もちろん!」


ほむら「……所で、この『スカアハが至高』って、どういう意味?」

鳴上「き、気にするな。 俺にだけ、わかればいい」

ほむら「……?」

鳴上「それから、もちろんの事だが、この時間軸でも全力を尽くす」

鳴上「ほむらは、明日にでもみんなを集めて」

鳴上「『ワルプルギスの夜』と繰り広げてきた、これまでの戦いを教えてくれ」

鳴上「出来る限りの対策を考えよう」

ほむら「わかったわ」


 ――翌日の放課後――

 ――巴マミの部屋――



ほむら「……えと、よ、よろしく」 ///

マミ「はい、よろしくね、暁美さん」 ニコ

さやか「へへっ、よろしく、ほむら!」 ニコ!

鳴上「よろしく、ほむら」 ニコ

杏子「おう、よろしくな、ほむら」 ニコ!

まどか「ほむらちゃん、よろしくね」 ニコ

ほむら「~~~~~~っ」 ///


さやか「あっ、そうだ。 忘れない内に これ、渡しとくね」 スッ…

ほむら「えっ?」

さやか「例のキーワード」

ほむら「ああ……」

杏子「そうだな、あたしも渡しとく」 スッ…

マミ「私も」 スッ…

まどか「私も渡しておくね、ほむらちゃん」 スッ…

ほむら「うん、まどか」


さやか「所で、ほむら。 ソウルジェムは、どうなった?」

ほむら「? ソウルジェム? 変わりないけど……」 ゴソゴソ…

     コト……

マミ「あら……」

まどか「ホントだ……」

杏子「そっか……」

さやか「残念……」

ほむら「ちょ、ちょっと、残念ってどういう意味よ?」

     三人 スッ…

     ヒィイインッ……!

ほむら「」

ほむら「な、何? これ!? 説明して!?」


ほむら「p状態……」

さやか「うん。 悠は、いい事かどうか、わからないって言ってるけどね」

まどか「でも、グリーフシードは必要無くなったし」

マミ「p状態以降、体の調子はとても良いのよね」

杏子「それにしてもp状態のキッカケって何なのかな?」 チラ

鳴上「……どうして俺を見る?」

杏子「いやぁ……やっぱり、悠と寝ないとダメなのかなぁ、と思って」 ニヤニヤ

ほむら「」

鳴上「は、話を蒸し返すな!」

ほむら「……ケダモノ」

鳴上「断じて違う!」


鳴上「ほ、本題に入るぞ」

鳴上「ほむら、『ワルプルギスの夜』との、これまでの戦いを教えてくれ」

ほむら「……わかったわ」

ほむら「結論から言うと……私が出来うる、最大の攻撃でも奴には歯が立たなかったわ」

さやか「具体的には?」

ほむら「そうね……」

ほむら「ひとつ前の時間軸での話だけど」

ほむら「スティンガーや、ガソリン満載のタンクローリー、果てはsm-3を使って」

ほむら「ある地点まで奴を誘導……」

ほむら「そこで、tnt爆弾1000トンを食らわせたんだけど、ほとんど効果がなかった……」

鳴上「……マジか?」


まどか「鳴上さん、今の話、わかるの?」

マミ「専門用語が多すぎて、全然意味が……」

鳴上「誘導に使ったモノは、省く」

鳴上「最後のtnt爆弾の破壊力は……単純計算だが」

鳴上「広島型原爆に匹敵する破壊力のハズだ」

杏子「げっ!?」

さやか「ひ、広島型原爆って……!」

マミ「核兵器並の破壊力でも倒せない魔女、と、いう事!?」

まどか「そ、そんな……!」


鳴上「……よく絶望しなかったな」

ほむら「……しかけたわ」

ほむら「でも、その時……まどかが」



ほむら(……!!) ビクンッ

ほむら(…………そうだ、私は)

ほむら(私は……!)



まどか「……? ほむらちゃん?」

ほむら「!? ……ううん、何でも無い、まどか」

まどか「そう?」

鳴上「…………」


ほむら「……ごめんなさい、話を続けるわ」

ほむら「もうダメかも、って思った時」

ほむら「まどかは、魔法少女に……」

まどか「…………」

杏子「…………」

マミ「…………」

さやか「…………」

ほむら「それを見た私は……時間を巻き戻した」

鳴上「…………」

鳴上「強敵、だな……」


ほむら「それから、もう一つ、言っておかないといけない事がある」

ほむら「あなたに……鳴上 悠にとって、とても不利な事が……」

鳴上「……! 何だ?」

ほむら「『ワルプルギスの夜』は、『結界』を使わずに現実に具現化する……!」

鳴上「……!!」

さやか「え? という事は、つまり?」

杏子「悠は……」

マミ「ペルソナ能力を……」

まどか「使う事が、出来ないって事?」

鳴上「…………」


鳴上「……そうか」

鳴上「だが、絶望するのはまだ早い」

鳴上「少なくとも、事前に情報がある事は、いい事だ」

さやか「で、でも、どうすんのさ!? 悠!」

鳴上「考えろ」

鳴上「今の自分の能力と向き合い、何が出来るのか?」

鳴上「何をすべきなのか? を……」

さやか・杏子・ほむら・マミ・まどか「…………」

鳴上「そうだな……」

鳴上「例えば、俺の考えだが」


鳴上「少し過大評価だが、俺は並の人間よりは強い」

鳴上「武器にもよるが、何とか魔女とも渡り合える」

鳴上「対『ワルプルギスの夜』戦では、主戦力に成りえないが……」

鳴上「サポートなら、あるいは……」

さやか・杏子・ほむら・マミ・まどか「…………」

鳴上「それから、ほむら」

ほむら「ええ、何?」

鳴上「さっきのtnt爆弾だが……もっと集める事は、可能か?」

鳴上「いや、それよりも『ワルプルギスの夜』の弱点は、どこなのか調べたのか?」

ほむら「……!」

鳴上「どうやって集めたのかわからないが、俺に手伝えるのなら手伝うし」

鳴上「ほむらの気づけなかった、『何か』に気づく可能性だってある」


鳴上「俺が言いたいのは、そういう事だ」

さやか「……うん、そうだね」

さやか「それに、ほむらの話だと」

さやか「その戦いにあたし達、魔法少女全員参加するのは、今回が初めて……!」

杏子「いい事言うじゃねーか、さやか」

杏子「てぃーえぬ……なんたらよりも、よっぽど強力だと証明してみせるぜ、ほむら!」

マミ「そうよね……。 一人一人の力は、頼りなくとも」

マミ「束ねれば、きっと……!」

ほむら「…………」

ほむら「ええ、きっと変えられる」

ほむら「私達全員で戦えば、必ず……!」

まどか「ほむらちゃん……」


 ――次の日・休日の午前中――

 ――鳴上の部屋――



     ピンポーン

鳴上「!……宅配か?」

鳴上「は~い」 テク テク

     覗き穴 覗き

鳴上「……!」

     ガチャ…

鳴上「ほむら……」

ほむら「こんにちは……」


鳴上「何かあったのか?」

ほむら「いいえ」

ほむら「住所の確認をしたかったの」

鳴上「ああ……」

ほむら「それじゃ……」 クルッ

鳴上「待て。 せっかくだ、一緒に散歩でもしないか?」

ほむら「……あなたと?」

鳴上「嫌ならいい」

ほむら「…………」

ほむら「何もしないでしょうね?」

鳴上「頼むからそれ、引っ張らないでくれ……」


 ――河川敷付近――



ほむら「…………」

鳴上「今日は、いい天気だな」

ほむら「そうね」

鳴上「…………」

鳴上「俺は、知らなかったな」

ほむら「……? 何の事?」

鳴上「この川の向こう側が、見滝原、という名前の町だった事」

ほむら「そう……」

鳴上「今回の事件が無ければ、一生知らずに過ごしたかもしれないな……」

ほむら「…………」


鳴上「ほむらは、そういう事って無いのか?」

ほむら「…………」

ほむら「鳴上 悠」

鳴上「うん?」

ほむら「あなたの……その奥歯にモノが引っ掛かった様な言い方」

ほむら「好きじゃないわ」

鳴上「…………そうか」

ほむら「だから、はっきり言って」

鳴上「…………」

鳴上「わかった」




鳴上「ほむらは、まどかを憎んだ事は、あるか?」



ほむら「……っ!!」

鳴上「…………」

鳴上「……図星、か」

ほむら「…………」

ほむら「……どうして」

ほむら「どうして、そう思ったの?」

鳴上「何となく、としか言えないな……」

ほむら「……そう」

鳴上「だけど、ほむら」

ほむら「…………」


鳴上「日本語には『二律背反』という言葉がある」

鳴上「別段、恥ずかしい事でも何でも無い」

鳴上「誰でも持っているし……抱えている葛藤だ」

ほむら「…………」

ほむら「あなたも……?」

鳴上「もちろんだ」

鳴上「例えば……美樹さやか」

鳴上「……正直言うと、いきなり呼び捨てにされた時は、カチンと来た」

ほむら「…………」


鳴上「だけど同時に、彼女らしい、とも思った」

鳴上「誰に対しても明け透けで、裏表が無く、常に対等で居ようとする」

鳴上「それが、彼女なのだと……いや」

鳴上「美樹さやかを形作る、一部なのだと思ってる」

ほむら「……!!」

ほむら「一部……」

鳴上「…………」

鳴上「ほむらは賢い」

鳴上「もう……俺の言いたい事は、わかっただろう?」

ほむら「…………」

ほむら「……ええ」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=kd3xeqn6bl4&feature=relmfu



 ――午後――

 ――見滝原・河川敷――



     タッ タッ タッ タッ

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「まどか……」

まどか「どうしたの? 急に会いたいって……」

ほむら「うん……」

ほむら「…………」

ほむら「まどか、私、ね……」

まどか「うん」

ほむら「……まだ……言ってない気持ちがあった」

まどか「そうなの?」


ほむら「まどか、私は……」

ほむら「私は……!」

まどか「…………」



ほむら「心のどこかで、あなたを……恨んでいる……」



まどか「……!」

ほむら「……あの時、まどかを救うって誓ったのに」

ほむら「どんなに同じ時間を繰り返しても構わないって決めたのに……」


ほむら「私は……いつもいつも思い通りにならない苛立ちを」

ほむら「まどかに……ぶつけていた……」

まどか「…………」

ほむら「魔法少女にならないで、という私の頼みを聞いてくれないまどかに」

ほむら「私は……憤りと憎しみを抱く様になっていたの……」

まどか「…………」

ほむら「ひとつ前の時間軸で、あなたは私を含めた魔法少女すべてを救おうと」

ほむら「途方もない願い事をした」

まどか「…………」

ほむら「でもそれは……私の望む結果にならない」

ほむら「とんでもない願い事だった……」

まどか「…………」


ほむら「…………」

まどか「…………」

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「……うん」

まどか「それでいいんだよ」 ニコ

ほむら「!?」

まどか「鳴上さんがね……こんな事言ってた」

まどか「私は、自分には 何の力も、価値もないって言ってたけど」

まどか「今もそうなのか?って……」

ほむら「…………」


まどか「私は……そんな立場になって初めて」

まどか「力や価値を持つのって、楽でも、いい事でも何でもないって」

まどか「やっとわかった……」

ほむら「…………」

まどか「だから……ほむらちゃんの話を聞いて、大変なんだろうって」

まどか「わかったつもりになって……でも、実は全然わかってなくて……」

ほむら「…………」

まどか「それは……私の想像を超えた物凄い事だったんだって……」

まどか「今、感じる事が出来た」

ほむら「まどか……」


まどか「もちろん、それがほむらちゃんの意見じゃ……」

まどか「ううん」

まどか「ほむらちゃん全部が、そう言ってるわけじゃ無い事も」

まどか「わかってるから」 ニコ

ほむら「まどかぁ……」 ウルッ…

まどか「……私もね、あるんだ。 そういう気持ち」

ほむら「! ……まどかも?」

まどか「うん……」

ほむら「……言ってくれる?」

まどか「わかってる……でも」

まどか「とっても…………怖いね」

ほむら「…………」


まどか「じゃあ……言うね?」

ほむら「うん」

まどか「私は……何もかもを抱え込んで、一人で何とかしようとしてる」

まどか「ほむらちゃんが嫌いだった……」

ほむら「……!!」

まどか「私を第一に考えてくれているけど……他の人達を……」

まどか「さやかちゃん達を、ないがしろにしていたのも嫌だった」

ほむら「…………」

まどか「もちろん、その理由も理解してる」

まどか「でも……私は、そんなほむらちゃんが、嫌いだった……」

ほむら「…………」


ほむら「まどか」

まどか「うん……」

ほむら「ありがとう、本当の気持ちを教えてくれて」

ほむら「……でも、やっぱり……ちょっとショックかな」

まどか「私も、だよ……」



まどか・ほむら「…………」



ほむら「けどね」

まどか「うん」

ほむら「何だか、嬉しい」 ニコ

まどか「私も」 ニコ

     アハハハ……


ほむら「…………」

ほむら「みんなも こんな風に色々隠しているのかな……」

まどか「うん、きっとそうだね」

まどか「自分の暗い所をさらけ出すなんて……普通しないと思う」

ほむら「それを見せる事の出来る人を 見つけ出す事も……」

まどか「ふふ……それは、どうかな?」

ほむら「えっ?」

まどか「きっかけさえあれば……みんなもきっと」

ほむら「…………」

ほむら「うん。 きっと、そうね……!」


 ――翌日の朝――

 ――巴マミの部屋――



さやか「おめでとう、ほむら!」

ほむら「あ、ありがとう」 ///

マミ「これで全員、めでたくp状態ね」

杏子「幸先いいじゃねーか!」

鳴上「……前にも言ったが」

杏子「せっかくのいい雰囲気に、水を差すなよ、悠」


まどか「……でも」

まどか「やっぱり、私だけ何もしないのは、気が引けちゃうな……」

ほむら「まどか……」

マミ「鹿目さん、その気持ちだけ もらっておくわ」

さやか「そーだよ、qべえの誘惑に負けない」

さやか「それが、まどかのやるべき事なんだから!」

杏子「そーそー。 しっかりしてくれよ?」

まどか「うん……わかってるよ、杏子ちゃん」 ニコ

鳴上「…………」


鳴上「まどか」

まどか「はい?」

鳴上「一つ、頼まれてくれないか?」

まどか「え!? わ、私に!?」

鳴上「ああ……」

まどか「どんな事、ですか?」

鳴上「ご飯を作って欲しい」

まどか「……え?」

マミ・さや・ほむ・杏子「…………」


鳴上「……きっと決戦の後」

鳴上「みんな、ヘトヘトになると思うんだ」

鳴上「だから、メニューは任せるけど、軽くつまめる物が欲しい」

鳴上「頼めるだろうか?」 ニコ

まどか「…………」

杏子「あたしは甘い物がいいなー」

さやか「あたしは、悠と同じ物がいい!」

マミ「そうですね、確かにお腹は空くでしょうね」 クス

ほむら「わ、私は、まどかの作る物なら何でもいい」 ///

まどか「みんな……」

まどか「…………」


まどか「責任、重大ですね」 クスッ

鳴上「必ず、まどかのご飯を食べる」

鳴上「全員の分を用意して、待っていてくれ」

さやか「楽しみにしてるね! まどか!」

まどか「うん!」

杏子「作れないなら、ミ○ドのドーナツ10個でもいいぜ?」 ニシシ

マミ「もう……佐倉さん、鹿目さんに失礼よ?」 クスッ

ほむら(まどかの手料理、まどかの手料理……) ///

     アハハハ……

まどか(……とは言うものの)

まどか(お料理なんてママに任せっきりだよう……)

まどか(どうしよう……) アセ アセ


 ――見滝原市・某所――



??「…………」

qべえ「彼女かい?」

qべえ2「そうだよ」

qべえ「わざわざ済まないね。 これで多分、何とかなると思うよ」

qべえ2「じゃあ僕はもう行くよ? 自分の受け持つ地域も心配だしね」

qべえ「ああ。 後は任せてくれ」

     トトト……

??「…………」

qべえ「…………」


qべえ「まだ、話す事は出来るかい?」

??「…………」

qべえ「もう自我は無いのかな?」

??「…………」

qべえ「やれやれ……これじゃわからないな」

qべえ(まあ、自我があろうが無かろうが)

qべえ(彼女が魔女化するのは、もう時間の問題)

qべえ(歴代最強の魔法少女だけに、その力は凄まじいだろう)

qべえ(まさにうってつけだ)

qべえ(鹿目まどか)

qべえ(君の危機感を煽る相手としてね)

という所で本日は終了です。
次からは、いよいよワルプルギスの夜との決戦が始まります。

鹿目の家事もとい、料理はパパがやってるのでは?
原作でも混ぜるな危険の洗剤の説明してたのがママなのには違和感あると思ったけど。
ともあれ乙。

>>423
ご指摘、ありがとうございます。ホントだ、ウィキに専業主『夫』とありました。

>>417の修正。


まどか「責任、重大ですね」 クスッ

鳴上「必ず、まどかのご飯を食べる」

鳴上「全員の分を用意して、待っていてくれ」

さやか「楽しみにしてるね! まどか!」

まどか「うん!」

杏子「作れないなら、ミ○ドのドーナツ10個でもいいぜ?」 ニシシ

マミ「もう……佐倉さん、鹿目さんに失礼よ?」 クスッ

ほむら(まどかの手料理、まどかの手料理……) ///

     アハハハ……

まどか(……とは言うものの)

まどか(お料理なんてパパに任せっきりだよう……)

まどか(どうしよう……) アセ アセ

後、残りの部分の確認と修正をしますので、少々お待ちください……。

わちゃー……他にも間違いがないか確認したら
>>88>>89の間が抜けてる……誤爆った時のやつかな……
↓が間に入ります。


まどか「今日はどうしよっか?」

さやか「しばらくは大人しくしとこうよ、まどか」

さやか「それに……あたし今日、用事あるし」



まどか(あ……そっか。 今日は病院の日だったね)

まどか(交通事故で左半身に大怪我を負った上条 恭介くん……)

まどか(さやかちゃん、幼馴染だったし……すっごく心配してたな)

まどか(でも、今は順調に回復してきたって聞いてる)

まどか(良かったよね、さやかちゃん……)

それでは、再開します。


 ――決戦の日の朝――

 ――見滝原駅・改札口付近――



     ビュオオオオオッ……

鳴上「…………」

鳴上「! ……みんな」

杏子「よう!」

さやか「まってたよ、悠!」

マミ「お迎えに来ました、悠さん」 ニコ

ほむら「頑張りましょう」

ほむら「……悠」 ///


杏子・マミ・さや「!!」

鳴上「…………」

ほむら「い、いいでしょ!? 別に!?」 ///

ほむら「みんなも、そう呼んでるし!!」 ///

鳴上「……ああ、構わない」

鳴上「よろしくな、ほむら」 ニコ

ほむら「……ええ」 ///モジモジ

杏子・マミ・さや(ライバルが、また一人増えた……?)


     テク テク テク…

マミ「……ところで、悠さん」

マミ「その荷物は何ですか?」

さやか「釣竿?」

鳴上「まさか……」 クスッ

鳴上「俺の切り札の……武器だ」 スッ…

     キラン…!

杏子「へえ! なんか凄そうな剣だね」

ほむら「神々しい、と言うか……ちなみに名前ってあるのかしら?」

鳴上「神剣グラム、という名前だ」


さやか「おおー……神剣、かぁ」

杏子「どうやって手に入れたんだ?」

鳴上「買った。 7万8200円(税込)もした……」

ほむら「一気にありがたみが無くなるわね……」

鳴上「代償で俺の財布は、北極になったんだぞ……」 シクシク…

マミ「げ、元気を出してください、悠さん」




 ――ワルプルギスの夜・出現ポイント付近――



ほむら「…………」

ほむら「……来る!」


 ほむらの その言葉を皮切りに 異常現象が起こり始める。

まるでマスコットキャラの様な、小さな使い魔が足元を走り抜けた。

一匹だけではない。 何匹も何匹も……。

 続いて緑色の象の群れ。 赤いものも居る。

まるでパレードの様に着飾ったそれは、悠々と歩いて行く。

 そして……






     5……、4……、3……、2……、1……








杏子「うっ!? おおおおっ……!」

さやか「これが……ワルプルギスの夜……!」

マミ「史上最悪の……そして、超ド級の魔女……!」

ほむら「今度こそ、決着を付ける!」

ほむら「まどかの……ううん、ここに居る頼もしい仲間と」

ほむら「私を想ってくれる、みんなの為に!!」

杏子「よく言った! ほむら!」

さやか「さやかちゃんも、その期待に答えて見せるよ!」

マミ「頑張りましょう、みんな!」

鳴上「…………」


鳴上(……この感覚)

鳴上(確かに、『結界』の概念は無かったが……)

鳴上(似ている)

鳴上(魔女の結界内の『空気』に……!)

鳴上(…………)

鳴上(……試してみるか)


マミ「? どうかしました? 悠さん」

鳴上「…………」 グッ…



     ペ  ル  ソ  ナ!!



杏子「!?」

さやか「イ、イザナギ!?」

ほむら「ペルソナ能力が……使える!?」

マミ「ど、どうして……!?」

鳴上「……俺にもわからない」

鳴上「でも……今は、そんな事はどうでもいい」

鳴上「これで俺も、役に立てる……!」


ほむら「ええ、そうね。 あてにしてるわ、悠」 ニコ

さやか「ニシシ……何? もしかして今のあたし達って、最強?」 ニカッ

杏子「へへ……案外、神様ってのは、居るのかもな!」 ニコ

マミ「みんな、油断は禁物よ? 気持ちは分かるけど」 クス

鳴上「そうだな、マミ」 クスッ

鳴上「みんな、作戦通り行こう。 ただし、俺も前線に加わる」

鳴上「代わりに、さやか。 ポジションを下げて、マミのサポートに回ってくれないか?」

さやか「えー!! ……って言いたい所だけど」

さやか「あたしの能力を考えたら、それがベストっぽいね……」

さやか「わかったよ! 悠!」

さやか「マミさんの事は、任せて!」

鳴上「頼んだぞ、さやか」


 ――見滝原市・市民会館・避難所――



ラジオ「……現在、瞬間最大風速は40mを超えており、首都圏は厳戒態勢を……」

まどか「…………」

     トトン…

qべえ「やあ、鹿目まどか」

まどか「! ……qべえ」

qべえ「僕がここに来た理由は、わかっているかい?」

まどか「魔法少女になれって言うんでしょ?」

qべえ「正解だよ、まどか」 ニコ


まどか「でも……無駄足だと思うけどな」

qべえ「どうしてさ?」

まどか「みんなは、必ず帰ってくるから」 ニコ

まどか「ワルプルギスの夜に勝ってね」

qべえ「……その根拠は、どこにあるんだい?」

まどか「う~ん、そうだね……」

まどか「たぶん、qべえにはわからないと……ううん」

まどか「わかってもらえないと思う」 クスッ

qべえ「……そうかい」

qべえ「でも、願い事を叶えたくなったら、いつでも呼んでね?」

qべえ「待ってるから!」 ニコ

     トトト…


詢子「まどかー? こんな所で何やってんのさ?」

まどか「ママ」

詢子「ところで昨日、山ほど食材買い込んで料理したいって」

詢子「急にどうしたんだい? 5、6人分は、あるよね? あれ」

まどか「ウェヒヒ……結局、ほとんどパパに手伝ってもらっちゃったね……」

詢子「それはいいんだけど……パパを説得するのは、一苦労だったわ」

まどか「ママにも迷惑かけちゃったな……」 ハア…

詢子「誰の為に作ったのかなぁ~? ママにこっそり教えなよ☆」

まどか「ふふ……大切な友達の為、だよ?」

詢子「友達ィ~? なあんだ……てっきり、大食らいの男の子でも居るのかと思った」

まどか「一人居るけどね、男の人」 クスッ


詢子「お!? ついに、まどかも色気づいたかぁ~?」 ウリウリ☆

まどか「そ、そんなんじゃ、無いから」 ///

まどか(ミステリアスで、ちょっといいなって思うけど……) ///

詢子「…………」

詢子「……もしかしたら、その『男の人』のせい、なのかな?」

まどか「え? 何が?」

詢子「最近、さ」

詢子「まどか、落ち着いた感じになったから……」

まどか「…………」


詢子「ほんの少し前まで、何か悩んでたっぽいのに」

詢子「今のあんた、すっごく吹っ切れた顔をしてる」

詢子「いい意味でね」 クス

まどか「…………」

まどか「……自分じゃわからないな、そういうの」

まどか「でも」

まどか「もしかしたら、そうかもしれない」

まどか「きっと、あの人は、私にそういう『きっかけ』をくれたんだと思う……」 ニコ

まどか「……ううん」

まどか「私だけじゃなく、私にとって大切な友達全てに……!」

詢子「…………」

詢子「……なんて言うか、ママもその人に会ってみたいな」

まどか「!? えっ!?」


詢子「だって……愛娘の成長を促してくれたんだし」

詢子「個人的興味もあるかなぁ~?」 フフッ

まどか「ママ……絶対、面白がってるでしょ……」

詢子「そりぁあね!」 ヌフフ!

詢子「だからさ、ここはひとつ、女同士の話って事で」

詢子「話せる範囲でいいから……ママに教えてくれないかな? まどか?」

まどか「…………」

まどか「うん、わかったよ、ママ」

まどか「上手く話せるか、わからないけど……」

まどか「でも、家族の中では、私達だけの秘密だからね?」

詢子「おう! どんとこい、まどか!」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=iame1gnvgh8&feature=related




―――――――――――


鳴上「タムリン!!」

     シュバババババッ!!

鳴上「杏子!」

杏子「ああっ! 任せなっ!!」

     ヒュバッ!!  ガキィィィィンッ!!

杏子「ちっ……! ここも違うっぽいな!」

ほむら「! 杏子! 反撃が来るわ!」

杏子「!!」

     ヒュゴウッ!!

杏子「うひゃあっ! 危ねぇ!!」

杏子「すまねぇ、ほむら! 助かった!」


ほむら「礼はいい! 次が来るわ!」

杏子「……! 空気読めよ! ワルプルちゃんよう!!」 回避!

鳴上「スカアハ!!」 ガルダイン!!(単体攻撃 最大風魔法)

     ゴオオオオオオオオオッ!!

杏子「サンキュー! 悠!」

杏子「おりゃああああああああああああああっ!!」

     ガギィンッ!!

鳴上「……ここも違うか!」

杏子「奴の弱点は、どこだ!?」

ほむら「今のところ、あの逆さになった、真下の頭部が一番攻撃が効いている感じだけど!?」


鳴上「わかっている……だが、どうも胡散臭い」

鳴上「兵法には弱点をワザとさらして、そこを攻めさせ」

鳴上「罠にはめる戦法がある!」

杏子「だから逆に硬そうな、歯車の部分を探ってるのか……」

ほむら「でも、残念だけど有効そうな打撃は与えてられていない!」

鳴上「それもわかっている!」

     ヒュゴウッ!!

杏子「どうする!? もうすぐ、ほむらの爆破ポイントだぜ!?」

鳴上「はあっ!!」

     ガキンッ! キィンッ!!

鳴上「くっ! ワルプルギスの夜から出る使い魔達も厄介だ……!!」

鳴上「やむを得ん……! 確証を得られなかったが……」

鳴上「イチかバチか、歯車の方を弱点と考えて、行動する!!」


杏子「わかった! 悠!」

ほむら「あなたの判断を信じる!」

鳴上「たああっ!!」

     ゴキンッ! ズバァ!

鳴上「ポイントに達したら、合図を!!」

ほむら「わかった!」

杏子「それまで……凌いでみせるぜぇ!!」

杏子「だあああああっ!!」


―――――――――――




さやか「……まだ? 合図は?」

さやか「杏子、ほむら、悠……!!」

マミ「落ち着いて、美樹さん……」

マミ「今は、自分の役割に集中するのよ……!」 グッ…!

さやか「……くっ!」

さやか「はあっ!」

     シャキン! シャキン!

さやか「どうやら、気づかれたみたいです! マミさん!」

マミ「ええ……お願いね、美樹さん!」

さやか「任せてください! マミさん! たああっ!!」

     シャキン! シャキン!

さやか(あたしはここで、無防備になるマミさんの身を全力で守る!!)

さやか「はあっ!!」


鳴上「よし!」

鳴上「ほむら、合図を!!」

ほむら「わかったわ!」 シュバッ!



     パンッ! ヒュルルルルッ……(信号弾)



さやか「!!」

さやか「マミさん!」

マミ「ええ……わかってるわ!!」

マミ「弱点は歯車側……!!」

     バッ!!


鳴上「杏子! 撤退する!」

杏子「わかってる! しんがりは任せな!」

ほむら「待って! 二人とも私と手をつないで!!」

鳴上・杏子「え!?」

ほむら「いいから早く!!」

     スッ……

ほむら(…………)

ほむら(私は考えた……)

ほむら(時間を止めるのは有効だけど、魔力の消費が激しいし止めている時間も短い……)

ほむら(何とか出来ないか、と……。 でも)

ほむら(時間の流れをせき止めるのではなく……遅くするだけならば)

ほむら(魔力の消費を抑えられる上に、長い間、その状態でいられる事に気がついた!!)


     ピシ……ン

鳴上・杏子「!!」

ほむら「さ、二人とも! 手を離さないようにして、ここから離れるわよ!」

鳴上「……すごいな」

杏子「妙な気分だ……周りがゆっくり動いてる」

ほむら「説明は後回し! 急がないと、私達も爆破に巻き込まれるわ!」

鳴上「わかった!」

杏子「マミ……! 後は頼むぜ……!」

―――――――――――

マミ「はあああああああああああああああっ!!!」

     シュルッ シュルッ シュルルルルルルルルッ!!

マミ「グッ……! クッ……!!」 ギリッ……!


マミ「さすがに……大人しく……私のリボンに……捕まってくれないみたいね……!!」

マミ「でも……!!」


マミ(私は考えた……!)

マミ(どうやってリボンの強度を増大させるか……!)

マミ(その答えは、ワイヤー条により合わせる事……!)

マミ(魔力の消費は激しくなるけど、爆破の瞬間まで持てばいい!!)

マミ(さあ、ワルプルギスの夜!! 大人しく、爆炎の洗礼を受けなさい!!)

     シュルッ シュルッ シュルルルルルルルルッ!!

さやか「はあっ!!」

     ザシュ! ズバッ!

さやか「くっ……!!」

     シャキン! シャキン!! ズババッ!!


さやか(数が多い!!)

     ドスッ!

マミ「あぐっ!」

さやか「マミさん!!」

マミ「……大丈夫! あなたに教えてもらった、無痛の魔法があるから!」

マミ「最悪、ソウルジェムと頭が無事なら、なんとかなる!」

さやか「……!!」

さやか「すみません、マミさん!!」 ズバッ! ズバッ!

マミ「いいのよ……後で、ちゃんと直してくれれば……」 ドクッ ドクッ

さやか「もちろんです!! はあっ!!」 ズバッ! ズバッ!


さやか(あたしに杏子くらいの力があれば……!)

さやか(……ううん、無い物をねだってもしょうがない!)

さやか(あたしは、今のあたしに出来る事を、全力でやる!)

さやか(他の事は、考えない! もっと集中するのよ! さやか!)

さやか「はあああああああああああっ!!」

―――――――――――

鳴上「はあっ!」

     ズバッ! ズバッ!

杏子「てやぁあああああああああっ!!」

     ジャキン! ジャキン!

杏子「そろそろいいんじゃねえのか!? ほむら!!」

ほむら「もう少しよ!」

鳴上「だが、マミの拘束も長くは持たないぞ!!」


ほむら「くっ……!!」 タタタタタッ!

ほむら「仕方ない……もう少し離れたかったけど、起爆するわ!」

ほむら「いい!? おそらく、ものすごい爆風が来るわ! 覚悟して!」

鳴上「それは、俺が引き受ける! やってくれ!!」

ほむら「喰らいなさい! ワルプルギスの夜!!」

ほむら「すべての労力をつぎ込んで集めた……!!」



     tnt爆弾1500トンを!!



ほむら「起爆!!」 カチッ!








           カッ!!










     ドオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!












鳴上「ルシファー!!」 物理攻撃無効!!

鳴上「二人とも、俺の傍へ!!」

杏子「言われなくても!!」 ダダッ!

ほむら「くっ……!!」 ダダッ!




     ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!




マミ「くっ……あああああああああああああっ!!」

さやか「!! マミさん!!!」

さやか「もうリボンを放して!!」

マミ「いいえ……!! ギリギリまで、あいつを……!!」

マミ「ああああああああああああっ!!!」




     オオオォォォッ………………



さやか「はあ、はあ、はあ……」

さやか「マミさん、今怪我を治しますから……!」



さやか(あたしの祈りは、恭介の怪我の治癒だった)

さやか(qべえは言っていた……魔法少女の魔法は、捧げた祈りによって大きく個性が出る、と)

さやか(だったらあたしは、これからも願う……!)

さやか(救いたいと思う人の怪我の治癒を!!) グッ!

さやか(それが、あたしの出来る事!!)

     ヒィイイイン……!!


鳴上「ルシファー!!」 コンセイトレイト!

杏子「や、やったか!?」

ほむら「…………」

ほむら「……!!」

ほむら「あれを!!」



     ゴゴゴゴゴゴ……



杏子「うへぇ……!」

鳴上「……実際、この目でみると驚愕するな」

ほむら「でも、ここまでは予想の範囲内よ、悠」


鳴上「わかっている……!」 グッ…!

杏子「頼んだぜ、悠!」

ほむら「やって……!」

鳴上「……はああああああっ!!」

鳴上「ルシファー!!」






     ブ フ ダ イ ン !!(単体攻撃、最大氷結魔法)










     ガキキキキィン!!



杏子「うっひょー!!」

ほむら「見事に……凍っていく!!」

鳴上「物理の法則が通じるかわからないが」

鳴上「超高温からの超低温攻撃……! これで奴の歯車はもろくなるはず!!」

鳴上「杏子!!」

杏子「おうっ! 任せな!!」 ヒュン!


杏子(……あたしは、小難しい理屈なんてわからない)

杏子(とてもじゃないが、悠やほむらの様な考えなんて浮かばない……)

杏子(けど)

杏子(あたしには、経験がある)

杏子(魔法少女として培ってきた、技とスピード……)

杏子(それらは……誰にも負けない自信がある!!)

杏子(だからあたしは、それらを磨く事が、自分の出来る事だと思った!!)

杏子「はあああああああああああああああああああああっ!!」 ジャキン!!

     ゴウッ!!

杏子「砕け散れええええええええええええええっ!!」




     ガギィンンッ!!






杏子「なっ……!?」

鳴上「……!!」

ほむら「!! 杏子!! 避けて!!」

杏子「!? し、しまっ――」



     ドガァア!!



杏子「あああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

ほむら「杏子ぉ!!!」

鳴上「俺が行く! ほむら! 援護を!!」

ほむら「わかったわ!!」 スチャ(地対空ロケット弾スティンガー)


鳴上「イシュタル!!」 メシアライザー!!(味方全員の完全回復)

杏子「……っ!」

杏子「す、すまねえ……悠」

鳴上「いや、こっちこそ済まない……」

鳴上「歯車は……弱点じゃ無かったのかもしれない」

杏子「待ってくれ、悠」

杏子「それがさ、完全じゃなかったけど……手応えはあったんだ」

鳴上「!?」

杏子「大丈夫。 ちゃんとダメージは食らってる」

杏子「奴も決して楽な戦いじゃ無いはずだ!」 ニコ!

鳴上「杏子……」

鳴上「そうだな……!」 ニコ!




     ドゴオッ!  バゴオッ!



鳴上「くっ……!」

杏子「これくらいの苦戦は予想出来てるさ! はあっ!」

     シャキン! シャキン!

ほむら「そうよ! 悠!」

ほむら「まだまだ、これからよ!」

     タタタタタッ!!

鳴上「ああ……その通りだ!」

鳴上「……ベルゼブブ!!」 イノセントタック!!

     シュバァアアアンッ!!


杏子「どうだ!?」

     ゴゴゴゴゴゴ……

鳴上「あまり効いてないか……!」

ほむら「それでも……!」 ジャキン!(バズーカ砲)

     ドォン!!   ドガァッ!!

ほむら「全く効いてないわけじゃない!」

杏子「おうさ! とことん同じ所を……」 ススッ…

     シャキン! シャキン!

杏子「責め続ける!!」

鳴上「杏子……よし!」

鳴上「ベルゼブブ!!」 イノセントタック!!




―――――――――――



鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ……!」

鳴上「ルシファー!!」



     ブ フ ダ イ ン !!(単体攻撃、最大氷結魔法)



     ガキィンンンンッ!!





鳴上「ベルゼブブ!!」



     ア ギ ダ イ ン !!(単体攻撃、最大火炎魔法)



     ゴオオオオオオオッ!!



鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ……!」

鳴上(これで6発目……!)

杏子「はあっはあっはあっ……! おりゃああああああああっ!!」

ほむら「援護するわ!」 タタタタタッ!



     ガギィン!! ゴガアッ!!



杏子「いけるぜえええええっ!! 悠!!」


鳴上「ベルゼブブ!!」 イノセントタック!!

     シュバァアアアンッ!!

ほむら「!! 歯車が……!」

杏子「少し欠けたな!」

鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ……!」

鳴上(だが……こちらの疲弊も激しい……!)

杏子「はあっはあっはあっ……」

ほむら「ゼエッ……ゼエッ……」

鳴上(……最後まで……もつか……!?)



     オオオオオオオオオオンッ!!





鳴上「!?」

杏子「ワルプルギスの夜から……!?」

ほむら「何かが出た……!!」

     キャハハハハハ

ほむら「!! 使い魔!?」 タタタタタッ!

杏子「ちっ……!」 シャキン! シャキン!

杏子「嘘だろ……! あの黒い点々、全部そうなのかよ!!」

鳴上「くっ……スカアハ!」 マハブフダイン!!(全体攻撃、最大氷結魔法)

     ヒャアアアアアッ……

鳴上「……! 焼け石に水か……!」

杏子「悠! 雑魚はあたしらに任せな!」 シャキン! シャキン!

ほむら「あなたは、ワルプルギスの夜に攻撃し続けて!!」 タタタタタッ!


鳴上「し、しかし!」

杏子「悠のペルソナが、一番効果ありそうなんだよ!!」 シャキン! シャキン!

ほむら「でも援護は出来ない! 危ないのは、みんな同じよ!!」 タタタタタッ!

鳴上「……!」

鳴上「くっ……ルシ」



     ヒュゴオッ!!



鳴上「!! し、しまっ――」


??「ふん!」

     シュルルルッ! パシッ!

鳴上「!! マミか!?」

マミ「遅れてすみません、悠さん!」

さやか「さかちゃんも居るよ!」 ズバッ! ズバッ!

杏子「さやか! おせーじゃねーかよ!」 シャキン! シャキン!

さやか「正義の味方は、遅れてくるものなの!!」 ズバッ!ズバッ!

杏子「ハハッ! ちげーねえな!」 シャキン! シャキン!

ほむら「みんな! 雑魚を悠に近づけさせないように全力で援護して!」 (m16)リロード

マミ「任せて! 明美さん!」 ドンッ! ドンッ!

さやか「わかった! ほむら!」 ズバッ!ズバッ!

杏子「ワルプルギスの夜は、任せたぜ! 悠!!」 シャキン! シャキン!

鳴上「……わかった!」

鳴上「ルシファー!!」





     ブ フ ダ イ ン !!(単体攻撃、最大氷結魔法)



     ガキィンンンンッ!!




―――――――――――






     トトン……

qべえ(…………)

qべえ(鹿目まどか……)

qべえ(家族の元から離れようとしない)

qべえ(やれやれ……)

qべえ(これじゃあ、話しかける事も出来やしない) フウ…

qべえ(…………)

qべえ(今まさに、鳴上 悠達が、死にかけているというのに……)

qべえ(その根拠の無い自信は、どこから来るんだい?)

qべえ(…………)

qべえ(まあいい)

qべえ(彼らがどうなろうとも)

qべえ(それは些細な事だ)


qべえ(何しろ)

qべえ(鳴上 悠以外の魔法少女達の魔女化で手に入る、感情エネルギーの総量より)

qべえ(君一人から得られる感情エネルギーの方が、はるかに大きいからね)

qべえ(…………)

qべえ(さて、もうすぐここに、ワルプルギスの夜はやってくるだろう)

qべえ(その時まで――)

qべえ(ゆっくり待たせてもらう事にさせてもらうよ)

qべえ(鹿目まどか)


―――――――――――



鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」

鳴上「ル、ルシファー……!」




     シーン……




鳴上「……ぐっ!?」

鳴上(つ、ついにガス欠か……!!)

さやか(……!!)

ほむら(悠……!)

杏子(ちいっ……!)

マミ(悠さん!!)


鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」

さやか「はあっ……はあっ……」

マミ「はあっはあっはあっ……」

ほむら「ゼエッ……ゼエッ……」

杏子「はあっ……はあっ……」





     ゴゴゴゴゴゴゴ……





鳴上「くっ……! みんな! 今度は杏子を援護するんだ!」


杏子「!」

ほむら「わかったわ!」

さやか「頼んだよ、杏子!」

マミ「ワルプルギスの夜までの、道を作るわ!」

杏子「ああ……! 任された!!」 ヒュン!



杏子「はああああああああああああっ!!」





―――――――――――


     キャハハハハハ     オホホ  ホホホホ

     ウフフフフフフ    ヒハハハハハ

鳴上「ぐはっ!!」 ドサッ!

杏子「悠!!」

さやか「あたしが行く! 杏子は攻撃を続けて!!」

杏子「くっ……ソッタレえええええっ!!」 ヒュン!!

     ヒハハハハハ

      キャハハハハハ     オホホ  ホホホホ

              ウフフフフフフ 

マミ「ああああああっ!!!」 ドサッ!

ほむら「マミ!!」 タタタタタッ!


鳴上「ま、まだまだ……!」 ヨロッ…

さやか「悠、待ってて。 今、怪我を……!」

     ヒハハハハハ

      キャハハハハハ     オホホ  ホホホホ

              ウフフフフフフ 

     キャハハハハハ     オホホ  ホホホホ

     ウフフフフフフ    ヒハハハハハ

鳴上「があああああああああっ!」

さやか「きゃああああああああっ!!」

杏子「悠!! さやかぁっ!」

ほむら「!! 杏子! 前!!」

杏子「!!」




     ドガァアアッ!!



杏子「ぐあああああっ!!」

ほむら「杏子!!」



鳴上「ぐっ……くっ……」

さやか「うっ……くうっ……」

マミ「………あ…………が…」

杏子「く……そぉ……」

ほむら「み、みんな……」


鳴上「…………」 ヨロ…

鳴上「……ほ、ほむら」 チラ

ほむら「……!!」

ほむら(悠……今の目配せ……)

ほむら(…………っ)

ほむら(時間の逆行を……しろって事!?)

鳴上(…………正直、ここまで力の差があるとは思わなかった)

鳴上(だが……)

鳴上(ここでの敗北や、この時間軸での経験は)

鳴上(次に生かせるはずだ……ほむら) ニコッ

ほむら(……っ!!)

ほむら(…………)




     ――私は――



     ドガッ!

鳴上「ぐはっ!」

鳴上「……はあっ!」 ズバッ!

ほむら「悠!」

杏子「……ほむら」 ヨロッ…

ほむら「! 杏子……」

杏子「すまねぇな……どうやら……ここまでみたいだ……」

ほむら「きょ、杏子……!」




     ――時間の逆行を――



杏子「今なら、ほむらの気持ち……わかる……でも……頼まれてくれ」

杏子「次の時間軸でも……あたし……意地張って、じゃじゃ馬で……寂しがり屋だろうけど」

杏子「また、仲良くなろうな……!」 ニコ

ほむら「……や」

さやか「……ほむら」

ほむら「! さやか……!」

さやか「そんな顔しないでよ……あたし、ほむらの事がわかって嬉しかった」

さやか「次の時間軸でも……たぶんバカなあたしが、苦労をかけるけど……」

さやか「一緒に……お昼しようね!」 ニコ

ほむら「や……やめて……」




     ――初めて――



マミ「暁美さん……」

ほむら「! マ、マミ……さん……」

マミ「フフ……さん付けなんて……くすぐったい」 クスッ

ほむら「…………」

マミ「ごめんなさい……あなたに、また過酷な運命を背負わせてしまう事を……」

ほむら「……っ」 (首を)フルフル

マミ「次の時間軸……私もあなたの事を覚えていられればいいのに……」

マミ「でも……また一緒に、お茶会を楽しみましょうね」 ニコ

ほむら「っ! ……っ!」 グスッ…




     ――嫌だと思った――



ほむら「……うっ……ぐすっ……ひっく……」 ポロポロ…

ほむら「やだぁ……こんなの……いやだぁ……私……わた、し……!」 ポロポロ…

ほむら「せっかく……仲、良く……なれ、たの……に」 ポロポロ…

ほむら「また……無かった事に、なって……やり、直して……」 ポロポロ…

ほむら「まどかと……同、じ……様に……時間が……ぐすっ……ズレて……」 ポロポロ…

ほむら「わた、し……私!……また……ひとりに……」 ポロポロ…

ほむら「ひとりに、なりたくないよっ……!!」 ポロポロ…



ほむら「この時間で過ごした出来事を、みんなを、無くしたくないっ!」 ポロポロ…





鳴上「…………ほむら」

ほむら「何か……何か、方法を探しましょう! 悠!」

ほむら「以前、悠が言ってたみたいに、一人一人が出来る事を考えて」

ほむら「そうすれば、きっと……きっと――」

杏子「ほむら……」

杏子「見ろよ……ワルプルギスの夜を」

ほむら「…………」

さやか「あいつ……もうあたし達には目もくれずに……」

さやか「避難所に向かい始めてる……」

ほむら「…………」


マミ「今の私達にはもう……止める術がない……」

ほむら「…………っ」

鳴上「……済まない、ほむら」

ほむら「…………」 ポロポロ…

ほむら「うっ……ううっ……」 ポロポロ…

ほむら「うううっ……うっうっ……ううううっ!!」 ポロポロ…

ほむら「ううう―――――――――――っ!!」 ポロポロ…


     スッ……











     ガ  ル  ダ  イ  ン  !!(単体攻撃 最大風魔法)









     ヒァアアアアアアアアアアァァァッ!!










鳴上「!!!?」

ほむら「え!?」

杏子「い、今のって……!?」

さやか「ペルソナの……魔法だよね!?」

マミ「いったい、誰が!?」






??「……水くせーじゃねーかよ」






鳴上「!!」









??「相棒!」








bgm
http://www.youtube.com/watch?v=tzfl6swhmxi&feature=related



鳴上「陽介!?」

花村「話は後だ! 悠!」

花村「あの化け物を倒せばいい。 そうだな?」

鳴上「あ、ああ! そうだ、陽介!」

花村「ようし、りせ! アナライズ、頼むぜ!」

りせ「アイアイサー!! ヒミコ!!」 アナライズ中……


さやか「悠、誰なの!?」

鳴上「安心しろ……」

鳴上「以前話した、八十稲羽で出来た」

鳴上「心強い仲間達だ!」

魔法少女ズ「!!!!!」


りせ「見えたよ! 花村先輩!」

花村「うし! 弱点はどこだ!?」

りせ「一見すると、あの逆さになってる下の頭だけど」

りせ「あれはフェイク!」


鳴上「!!」

魔法少女ズ「!!」


りせ「歯車の部分から目に見えない、特殊な薄い膜が何十層も出てて」

りせ「それが弱点を防御してるわ!!」

花村「了解だ! まずは歯車をぶっ潰せばいいんだな?」

りせ「その通りだけど、歯車の中心点……ど真ん中にある軸を攻撃すると、もっと効果的だよ!」


花村「よっしゃ! みんな、聞いたな!?」

完二「おう! しっかりとなぁ! タケミカヅチ!!」 イノセントタック!

里中「完二くん、あたしも手伝うよ! トモエ!」 ゴッドハンド!

クマ「援護は任せるクマー! キントキドウジ!」 マハブフダイン!(全体攻撃 最大氷結魔法)



     ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!



     ヒァアアアアアアアアアアァァァッ!!



直斗「雑魚は任せてください! スクナヒコナ!」 メギドラオン!(全体攻撃 最大無属性魔法)

天城「鳴上くん、それに他の娘の怪我も、今、治すね? コノハノサクヤ!」 メシアライザー!

鳴上「すまない、天城」

天城「どういたしまして!」 フフフ♪


さやか「! す、すごい……! 怪我が治った!」

杏子「悠のペルソナ見てていつも思うけど……チートだよなぁ」

マミ「まあまあ……助かっているのは事実だし」

マミ「それに本来は、現実世界で使えない能力なのよ?」 ニコ

杏子「そういや、そんな事言ってたな」 ニコ

さやか「くうううっ! 燃える展開だね! ほむら!」 ニコ

ほむら「…………」

さやか「ほむら?」

ほむら「……良かった」

杏子「……ほむら」

マミ「暁美さん……」


ほむら「時間を戻らなくて……本当に……良かった……!」 ポロポロ…

さやか「……へへ」

杏子「ああ……そうだな、ほむら」

マミ「本当に……」 グスッ…

鳴上「…………」

鳴上「……水を差すようで悪いが……みんな」

鳴上「まだ終わったわけじゃない」

ほむら「ええ……! わかってる、悠!」

杏子「どうする? 今のあたし達じゃ役に立てそうにもないし……」

さやか「そうだ! ほむら! ほむらの持ってる武器を貸してくれない? それなら……」

ほむら「そうしたいけど……もう残弾が、ほとんど残ってない」

ほむら「このm16のマガジン4つしか……」


マミ「……どうすれば」

鳴上「休む事だ」

ほむら「え?」

鳴上「今は俺の仲間達を信じて、休んで、少しでも精神力を回復させる」

鳴上「これがベストじゃないだろうか?」

魔法少女ズ「…………」


天城「それなら鳴上くん」

鳴上「天城……」

天城「これを使って!」つ(やそぜんざい)(胡椒博士neo)(盆ジュース)

鳴上「…………」


鳴上「……他に無かったのか?」

天城「い、言いたい事はわかるけど……急ぎだったし……我慢して!」

天城「じゃ!」

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」

さやか「悠? どうしたの?」

杏子「何だ? その大量の缶ジュース?」

マミ「変わった銘柄のジュースですね?」

鳴上「あー……」

鳴上「理由はわからないんだが……これを飲むと、何故か精神力が少し回復する」

杏子「へえ! そりゃあいい! ちょうど喉も渇いてたしな! んじゃさっそく……」 グビグビ…

鳴上「あ」


杏子「……!?」

杏子「ぶふぉっ!!」

さやか「きょ、杏子!?」

杏子「ゲホゲホッ……! なんじゃこりゃあ!? クッソマズイ!!」

ほむら「……え?」

マミ「…………」

鳴上「…………」

鳴上「……良薬、口に苦し、ということわざもある」

鳴上「覚悟を決めて飲むぞ……!」 プシュッ…

杏子「うええっ……マジかよぉ……」

ほむ・さや・マミ(えー…………)


花村「行くぜ! 化物! ジライヤ!」 ブレイブザッパー!

完二「……ちいっ! ホントに効いてんのかよ!?」

りせ「それは大丈夫! すでに、かなりのダメージをあの歯車は受けてる!」

直斗「さすが鳴上先輩……!」

里中「りせちゃんのアナライズ無しで、それを見抜いてたなんて……」

クマ「センセイに不可能は無いクマ!」

天城「コノハノサクヤ!」 マハラギダイン!! (全体攻撃 最大火炎魔法)


     ゴオオオオオオオッ!!


     ヒァアアアアアアアアアアァァァッ!!


天城「みんな、油断禁物だよ!」

里中「ごめん、雪子! トモエ!」 ゴッドハンド!!


花村「ようし! 燃えてきたぜ!」

クマ「みんな! 援護するクマ! キントキドウジ!」 マハタルカジャ!(味方全体攻撃力up)

完二「よっしゃ! タケミカヅチ!」 イノセントタック!

里中「もう一丁! トモエ!」 ゴッドハンド!

直斗「雑魚はお任せを! スクナヒコナ!」 メギドラオン!(全体攻撃 最大無属性魔法)

天城「私も手伝う! コノハノサクヤ!」 マハラギダイン!(全体攻撃 最大火炎魔法)

りせ「いけいけ! ゴーゴー!」


     ヒハハハハハ

      キャハハハハハ     オホホ  ホホホホ

              ウフフフフフフ 

     キャハハハハハ     オホホ  ホホホホ

     ウフフフフフフ    ヒハハハハハ


花村「!?」

直斗「新手!?」

完二「ちっ……! キリがねえ!」

クマ「クマも雑魚掃除に加わるクマ!」

りせ「!! うそ……!! こんな事って……!」

里中「どうしたの!? りせちゃん!」

りせ「ふわふわ浮いてるあのビルが……こっちに向かってくる!!」

天城「なんですって!?」

花村「冗談じゃねえ! 防げねえぞ、あんなの! みんな散らばれ!」

クマ「りせちゃん! クマにつかまるクマ!」


花村「うわあああああああああっ!」

クマ「オヨヨ――!!」

りせ「きゃああああっ!!」

里中「ひゃああああっ!!」

天城「!! 千枝っ!!」

直斗「里中先輩!!」

     バッ!!

完二「直斗っ!? ダメだ! もう間に合わ……!」

完二「直斗―――――――――――!!」



     ドゴォオオオオッ!!





完二「…………」

完二「……クソがぁああああっ!!」

花村「待て、完二!」

完二「放してくれよ! 花村先輩!!」

花村「痛て! 暴れんな、完二! あれを見ろっての!」

完二「え?」

完二「!!」


さやか「ふう……ギリギリだったね!」

里中「あ、ありがとう……」

直斗「……すみません、助かりました」

さやか「ふふ、どういたしまして!」


完二「な、直斗……! よ、良かった……」 グスッ

花村「へへ……泣いてんじゃねーよ、完二」

完二「!! な、泣いてなんか……!」 ///

花村「それに、まだ終わっていない」

花村「戦いは、まだまだこれからだ……」

花村「そうだろ?」

花村「相棒!」


鳴上「……そうだな、陽介」 ニコ

花村「指示を頼めるか?」

鳴上「わかった」


鳴上「まず、雑魚は俺と魔法少女達で何とかする」

鳴上「陽介達は、ワルプ……あの化物への攻撃に専念してくれ」

花村(ま、魔法少女……!?)

花村「わ、わかった!」

花村「背中は預けたぜ、悠!」

鳴上「任せろ」

杏子「悠! またゾロゾロ使い魔が出てきたよ!」

花村「悠って……おいおい、えらい仲良しだな」

鳴上「……詳しくは、終わったら話す」

花村「……なんか聞きたくない気もするが、その通りだな」

花村「よし! 行くぜ、みんな! ペルソナで総攻撃だ!!」

p4組「おおー!!」


鳴上「俺達は、陽介の援護に徹する!」

鳴上「ここが踏ん張りどころだ!」

杏子「わかってるって!」

マミ「任せてください、悠さん」

ほむら「……さっきのジュースのお礼も言いたいし」 ウプ…

さやか「……文句って素直に言いなよ。 同感だけど」

鳴上「だが、飛ばすなよ、みんな。 慎重に行け!」

魔法少女ズ「もちろん!」



―――――――――――







時間にしたら、どのくらいだろう?

俺達は、ワルプルギスの夜と戦い続け、終わりが無いのではないか?

と思えるほどだった。



実際ワルプルギスの夜は、使い魔をこれでもか、というほど出してきたし

ワルプルギスの夜自身の攻撃も、少しも衰えを見せなかったからだ。



だが……それでも俺達は、攻撃を続けた。

誰かの為に。 何かの為に。 信じる者の為に……!







―――――――――――



花村「はあっはあっはあっ……!」

花村「りせ……! どうだ!?」

りせ「もう少し……もう少しなのに!!」

りせ「歯車の中心軸は、崩壊しかかってるっ!!」

りせ「後一撃……! 大きな一撃、一発でなんとか出来るの!!」

完二「ぜえっぜえっ……クソがぁっ」

クマ「く、クマ~ん……」

里中「まだよ……! あたしは、まだやれるっ……!」

天城「私も……まだ…………頑張れるっ……!」

直斗「いざとなったら……生身でかじりついてやりますよ……!」


さやか「はあっはあっはあっ……」

杏子「ちくしょう……! 何とか、ならねえのかよっ……」

マミ「くっ……」

ほむら「もう……使える武器は……使い果たして……」

鳴上「…………」



イゴール「お客様は……」

イゴール「何かをお忘れでは、ございませぬかな?」



鳴上「…………」




 ――何故か――

 ――いつ言われたのか――

 ――俺は、イゴールの言葉を思い出した――



鳴上「…………」

鳴上(何だ……? 俺は、何を忘れている?)

鳴上(…………)

鳴上(集められるだけの戦力は、ここに集結している……)

鳴上(ほかのどこに、力が残っていると言うんだ……)




イゴール「八十稲羽でおやりになられた事を、ここでも行えばよろしいのです」



鳴上「…………」

鳴上「……まさか」

鳴上「…………」

鳴上(出来るのか……? 今の俺に……?)

鳴上(…………)

鳴上(……いや)

鳴上(出来るか? じゃない)

鳴上(やるんだ!!)


鳴上「……陽介」

花村「ん?」

鳴上「時間を……時間を少し稼いでくれ」

花村「…………」

鳴上「正直……出来るかどうか、わからない」

鳴上「だが」

鳴上「必ず、成功させる!」

花村「…………」

花村「へっ……待ってたぜ、お前がそう言ってくれるのを」

花村「その言葉一つで、俺は……俺達は――」

花村「繋がってるって、思えるってもんだ、相棒!」


花村「ようし! みんな!」

花村「疲れているところ悪いが……」

花村「悠が、『時間を稼いでくれ』ってさ!」

完二「!!」

クマ「セ、センセイ!!」

直斗「鳴上先輩……」

りせ「悠先輩……!」

里中「その言葉……」

天城「待ってたよ! 鳴上くん!」

鳴上「……みんな」


花村「! ……ペルソナも喜んでるみてーだな」

花村「スサノオ!」

完二「ロクテンマオウ!」

里中「スズカゴンゲン!」

直斗「ヤマトタケル!」

天城「アマテラス!」

クマ「いきり立ってきたクマー! カムイ!」

りせ「カンゼオン!」


さやか「……!?」

杏子「ペルソナチェンジ!?」

ほむら「形状が変わった!?」

マミ「もう、何がなんだか……」


里中「後は任せたよ! 鳴上くん!」

天城「私、信じてるから……!」

完二「あのヤローを抑えときます!」

直斗「頼りにしてます!」

りせ「悠先輩、愛してる!」

クマ「センセイ! ガツンと一発、お願いするクマー!」

花村「美味しいとこ……」

花村「もってけ――!」



魔法少女ズ(一人、どさくさに紛れて何言ってるの……) イラッ


     スッ……

鳴上「…………」



     俺は、静かに目を閉じた。



鳴上「…………」



     意識を集中させ



鳴上「…………」



     イザナミと戦った時の事を思い出す。





鳴上「…………」



     何故、俺は真実を求める?



鳴上「…………」



     何故、戦う?



鳴上「…………」



     何故、ここに居る?





鳴上「…………」 クスッ



     俺は、何故か笑った。



鳴上「……!」

鳴上(聞こえる……)

鳴上(…………)

鳴上(……これは、誰の声だ?)

鳴上(…………)

鳴上(……!)


鳴上(……そうか)

鳴上(お前なのか)

鳴上(ワルプルギスの夜……)

鳴上(…………)

鳴上(…………)

鳴上(お前も……qべえにそそのかされ)

鳴上(願いを叶え、魔法少女になり……)

鳴上(その……成れの果てだったのか)

鳴上(…………)

鳴上(…………)


鳴上(…………)

鳴上(そうか……)

鳴上(それが、お前の叶えた願い……か)

鳴上(…………)

鳴上(すまない……それは出来無い)

鳴上(…………)

鳴上(いや……礼を言うのは、俺の方だ)

鳴上(ありがとう)






     カ  ッ  !!





     ペ    ル    ソ    ナ    !!







花村「!?」

里中「何あれ!?」

天城「初めて見る……ペルソナ!」

りせ「す、凄い……! あたしのペルソナでも計測不能!!」

完二「よっしゃ!! 一発、お願いしますぜ!!」

クマ「センセイー!! 頼んだクマ!!」

直斗「行ってください!!」


ほむら「お願い! 悠!!」

杏子「やっちまえ!!」

マミ「頼みます!!」

さやか「行け―――――――――――!!」


     スッ

鳴上「……伊邪那岐大神」

鳴上「頼む!!」 グッ……!!





     幾    万    の    真    言




     ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!




     ズガァアアアアアアンッ!!






花村「よっしゃあ!!!」

里中「さっすが、鳴上くん!!」

天城「これでようやく、終わったね!」

りせ「アハハハ……ん?」

完二「? どうした? りせ?」

クマ「あ……クマのペルソナが……!」

直斗「ペルソナが、消えてゆく……」

直斗「そうか、あの化物が倒された事で、異常な空間状態が元に戻ったから……」


ほむら「!!!!」

ほむら「み、みんな!!」

ほむら「ビルが……そっちに向かってくる!!」

p4組「!!?」


花村「ちぃ!! みんな、ずらかれ!!」

里中「で、でも、どこに!?」

天城「どこでもいい!! 早く!!」

完二「くそったれ!! 最後の最後に足掻きやがって!!」

直斗「ペルソナさえ使えれば……!!」

クマ「クマー!! 何とか出来るクマに!!」

りせ「悠先輩も早く逃げて―――――――――――!!」


ほむら「……だめ! 悠の仲間は……もう間に合わない!!」

ほむら「私に、魔力さえあれば……! 時間を……」

ほむら(…………)

ほむら(くっ……! それでも人数が多すぎて、無理だわ!)

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=6pab68iur3e&feature=relmfu



鳴上「ぐっ……、よ、陽介!!」 ヨロッ……

杏子「悠!? 待ちな! あたしが行くよ!!」

さやか「!! ダメだよ!! 二人とも!! もう……もう、間に合わない!!」

杏子「じゃあ、どうすんだよ!? このまま見捨てるのかよ!?」

     ジャキン!!

鳴上「!!」

ほむら「マミ!?」

マミ「私のティロ・フィナーレなら……何とか砕けるかもしれない!!」

マミ「砕けなくとも、少しでも勢いを殺せれば……!!」

杏子「その手があったか!!」

さやか「待って、マミさん!!」

さやか「あたしの……残りカスみたいな魔力だけど……使って!!」 スッ…


杏子「おう! そうだな、あたしのも使ってくれ!!」 スッ…

マミ「二人とも……」

ほむら「巴マミ、私の……ううん、時間逆行の魔力も含めて、使って!」 スッ…



 ――私に、もう迷いは無かった――

 ――時間逆行の魔力――

 ――それは、時間を逆上らないと戻らない、特殊なもの――

 ――つまり――

 ――それを別の用途で使ってしまば、二度と、時間の逆行が出来無い、という事――





ほむら(私は、覚悟を決めた! どんな結果になろうとも……)

ほむら(この世界で……みんなで紡(つむ)いだ、この世界で、生きていく!!)



マミ「暁美さん……ふふ、責任重大ね」

杏子「頼むぜ、マミ!」 (魔法少女解除)

さやか「大丈夫、きっと上手くいきます!」 (魔法少女解除)

鳴上「頼む……マミ」

鳴上「みんなを……大切な仲間を、救ってくれ……!」

マミ「はい! 悠さん!! ……ティロ・フィナーレ!!」



     ドォオオオオオオオオンッ!!



ほむら(お願い……!!) (魔法少女解除)







     ???『大丈夫』 クスッ






ほむら「!?」








     …………キュンッ!!












     バゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!















杏子「よっしゃあああああっ!!」

さやか「やったああああっ!! さっすが、マミさん!!」

鳴上「ありがとう、マミ……!!」

マミ「い、いえ……!」 (魔法少女解除)

マミ(全力だったけど……正直、あんなに破壊力があるなんて思わなかった……)

マミ(考えてた以上にあのビルは、もろくなってたのね)



ほむら「…………」


ほむら(みんな、気がついてない。 あの悠でさえも……)

ほむら(でも)

ほむら(私には……わかった)

ほむら(あれは…………、まどか……!)



     ひとつ前の時間軸のまどかだ……!



ほむら「……うううっ……ぐすっ……」 ポロッ

ほむら「うああああああっ……まどかっ……」 ポロポロ…

ほむら「まどかあああああ……ぐすっ…………ひっく……」 ポロポロ…

ほむら「あり、が、とっ…………ありがとう、まどかっ……ぐすっ……」 ポロポロ…

ほむら「まどかああああっ…………あっ……あっ……ひぐっ……」 ポロポロ…

ほむら「わたし……わた、しっ、……ああああっ……ひっく……」 ポロポロ…


杏子「ほむら……」 グスッ

さやか「良かったね、ほむら……」 グスッ

鳴上「ほむらの長い旅が、今、終わったんだ」

鳴上「そっとしておこう……」

マミ「そうですね……」 グスッ


花村「おお――い! 悠!!」

完二「最後のなんスか!? すごかった!!」

里中「もしかしてそっちの女の子の力? やるじゃん!」

天城「魔法少女? とか言ってたけど……」

鳴上「……話すと長くなる。 ペルソナの別系統の力だ、と思ってくれ」


     タッ タッ タッ

りせ「悠せんぱ~い♡」 抱きっ

魔法少女ズ「!!!」

鳴上「り、りせ……」

りせ「んもう、恥ずかしがっちゃって、悠先輩、可愛い♡」

直斗「久慈川さん……」

クマ「りせちゃん、クマにもぷりーず」


さやか「……久慈川……りせ……?」

さやか「…………」

さやか「あ――!」

杏子「ど、どうしたんだよ!? さやか!?」

さやか「ほら! りせちーだよ! 一年くらい前に休業宣言して最近復帰した!」


マミ「……あ!!」

ほむら・杏子(……だれ?)

さやか「すごーい! 悠、芸能人と知り合いなんだ!」

さやか「サイン、もらおうよ!」

マミ(わ、私、かなみん派なんだけど……黙っておこう) ///

りせ「……って、さっきから何? この娘達?」

りせ「悠先輩を、気安く呼び捨てにしないでよね」

さやか「……うわ、感じ悪っ」

杏子「いいじゃねーかよ、別に。 本人に許可はもらってるし」

りせ「……悠先輩、本当?」

鳴上「あ、ああ……」


りせ「! ……じゃ、じゃあ、あたしも……悠って呼んでいい?」 ///

里中「ちょっ、ちょっと! どさくさに紛れて何を」 ///

天城「わ、私も呼んでいい?」 ///

里中「! ゆ、雪子!?」

直斗(……ぼ、僕は後で頼もう) ///


花村「…………」

花村「……そういやさ、悠」

鳴上「ん?」



     バキッ!



鳴上「ぐっ……!」 ドサッ…!


一同「!!!」


里中「ちょ、ちょっと! 花村! 何してるのよ!?」

天城「鳴上くん!」

杏子「てめえ! 何しやがる!?」

花村「少し黙ってろ、お前ら……」

一同「…………」

鳴上「…………」

花村「どうして俺が殴ったか、わかるか? 悠……」

鳴上「…………」

花村「電話があった時、俺は聞いたな? 『何かあったのか?』って……」

鳴上「…………」


花村「お前の事だ……俺達を巻き込みたくなかった。 そんな所だろう?」

鳴上「…………」

花村「ショックだったぜ……」

花村「俺達は、悠の信頼を得るに足りる人間じゃなかったのか?って……」

鳴上「……!」

花村「案の定、こんな大事に巻き込まれていやがった」

花村「どうして黙ってた?」

花村「お前は、俺達に気を使ってくれたのかもしれない」

花村「でも……」

花村「上手く言えねーけど、裏切られた気分だった」

鳴上「…………」


鳴上「すまない、陽介……」

鳴上「俺が悪かった、許してくれ」

花村「……へっ、わかってくれたなら、それでいい」

花村「だが次は、こんなもんじゃ済ませねえからな?」

鳴上「わかった、陽介。 次は正直に話す」

一同「ホッ……」

花村「んじゃ、この話はおしまいだ」

花村「つーか悠! お前、ここでもフラグ建築しやがったな!?」

花村「何だよ!? この将来有望そうな女の子達は!?」

花村「うらやましい!!」

魔法少女ズ「…………」


杏子(……顔はそんなに悪くねーのに)

さやか(なんて言うか……)

マミ(残念な性格……)

ほむら(がっかりイケメンね……)


鳴上「ところで、どうやってここに来たんだ?」

花村「天気が悪くなってたから危なかったけど、電車を乗り継いでな」

直斗「まず、先輩の家に向かいました」

里中「そしたら鳴上くんの親御さんに、最近、見滝原によく行ってるって聞いてね」

りせ「業界人に報道の知り合いがいるんだけど」

りせ「このところ、見滝原市じゃ行方不明事件が相次いでいたって聞いてたから……」

天城「これは何かある、って思ったの」

クマ「でも電車が止まって、センセイの家から歩いてきたから、ちょっと時間がかかったクマ」


完二「したら、ドンパチ始まってるじゃねースか」

完二「おまけにペルソナ能力まで使ってるのがわかったし」

花村「ギリギリだっだけど……ホント、間に合ってよかったぜ」

鳴上「そうだったのか……」

鳴上「ありがとう、陽介、それにみんなも。 使った交通費は貸しにしといてくれ」

鳴上「必ず返す」

花村「いいって事よ……気にすんな」

花村「ここに居る誰もが、そんな事は気にしてねーから」

クマ「ぷぷぷ~! ぜーんぶ、りせちゃんに払ってもらったクマ!」

花村「おま! それを言ったら台無しじゃねーかよ!!」


魔法少女ズ(残念度が半端ない……)


完二「それにしても、ひと仕事終えた後だから、腹減ってねえスか?」

完二「開いてるコンビニ探して、何か食いたいっス」

里中「いいね! 出来れば飲食店に行きたい!」

天城「私は、お風呂に行きたいかな……」

りせ「あたしも~」

直斗「僕もです」

クマ「ぬほっ! クマがお背中流すクマ~!」

里中「ちょーしにのんな!」 バゴッ!

クマ「あごばっ!!」

花村「ははっ……悠もどうだ? そっちの娘達も一緒に」

鳴上「楽しそうだな」 クスッ

鳴上「でもすまない、陽介。 先約があるんだ」


花村「そうか……」

鳴上「だけど必ず近いうちに、みんなでご飯を食べよう」

花村「ああ、待ってるぜ!」

花村「じゃあな! そっちの魔法少女?の娘達も!」

杏子「ああ、またな。 助かったよ!」

ほむら「ありがとう!」

マミ「いつか、必ずお礼に行きます!」

さやか「何かあったら、今度はあたし達が力になるね!」

鳴上「またな、陽介」

花村「ああ!」


鳴上「…………」

鳴上「……さて、俺達も行くか」

さやか「うん!」

マミ「鹿目さんのご飯、楽しみですね」

杏子「ニシシ……! どんなメシ、作ったかな?」

ほむら「…………」

ほむら(……まどか)


ほむら(…………)

ほむら(いったい、どうやって……? ううん……そんな事、どうでもいい)

ほむら(私……あなたを忘れない)

ほむら(今まで繰り返して、多くの時間軸で出会ってきた)

ほむら(あなたと共に……)

ほむら(私は、忘れないから……!)



 ――まどか、ありがとう――







俺達は、避難所に向かった。

戦い始めた時とは打って変わって、晴れ渡った空の下……

笑顔で待つ、少女の姿が見えた。


俺達は、ボロボロの姿だった。

でも、少女は、そんな事お構いなしに ほむら達に飛びつき

抱き合って喜び合う。


そんな彼女達を、俺はただ――

目を細めて見ていた。





???『…………』

???『ほむらちゃん』

???『そっちの私と仲良くね』

???『そして……数多の時間と空間を超えて』

???『いつかまた会おうね……』

???『大丈夫』

???『いつか、きっと会えるから……』 ニコ

???『…………』

???『それまで、ほんのちょっと……お別れだね』

???『…………』

???『じゃあ、またね』

???『ほむらちゃん』







     ――私の最高の友達――








qべえ「…………」

qべえ「やれやれ、まさか本当にワルプルギスの夜まで倒してしまうなんて」

qべえ「でも」

qべえ「僕は……僕達は諦めないよ、まどかを」

qべえ「まあ、次の手を打つまでは、しばらく間が空くけど」

qべえ「それまでは……」

qべえ「ゆっくり休んでるといい」

qべえ「…………」

qべえ「さて……次はどんな手を打つかな?」

     トトト……

という所で今日は終了です。
蛇足かもしれませんが、もうちょっと続きます。


 ――見滝原・市民会館・避難所――



一同「おおー!」

鳴上「美味しそうだな」

まどか「正直言うと……ほとんどパパに作ってもらいました……」

杏子「んじゃさっそく……」 ヒョイパク

杏子「ん! んまい!」

マミ「お行儀が悪いですよ、佐倉さん」

詢子「ふふ、別にいいのよ。 今日だけは無礼講!」

詢子「さ、みんな食べて食べて」

一同「はーい!」

鳴上「いただきます」

     ワイノ ワイノ


詢子「…………」 ジー

鳴上「…………」

詢子「…………」 ジー

鳴上「…………」

鳴上(どうしよう……すごい見られてる)

詢子「……君が、鳴上 悠くん……かぁ」

鳴上「は、はい……」

詢子(何だか、不思議な雰囲気を持ってる男の子だなぁ……)

まどか「ところで、ママ。 パパとタツヤは?」

詢子「ああ、警報も解除されたし、タツヤがおうちに帰りたいって、ぐずりだしてね……」

詢子「先に帰ってもらったんだ」

まどか「そうなんだ……」


ほむら「美味しいわ、まどか」 シミジミ

まどか「ウェヒヒ……」

まどか(それはパパが作ったから揚げ……)

まどか「鳴上さん、どうですか?」

鳴上「美味い、まどか」 ニコ

まどか「えへへ……」 ///

さやか「…………」

さやか(……あたしも料理覚えようかな) チラ

鳴上「……?」

マミ(今度は、私もお弁当を作ってみよう) ///

詢子(……天然ジゴロね。 まどか……こりゃ苦労するよ……)


杏子「…………」

杏子「…………っ」 ポロッ

さやか「!? 杏子!? どうしたの!?」

杏子「い、いや……何でも無いんだ」 ///

杏子「……ただ、こうやってみんなで食べるの……なんかいいなって思ったら」

杏子「勝手に……こう、ポロっと……」 ///

さやか「杏子……」

ほむら「…………」

マミ「…………」

杏子「あーもう! 湿っぽいのは無し!」 ///

杏子「もう、どんどん食う!」 ///

まどか「うん、どんどん食べて、杏子ちゃん」 クスッ


鳴上「…………」 モグモグ

まどか「……あの、鳴上さん」

鳴上「? どうした?」

まどか「…………」

まどか「相談したい事があるんです」

鳴上「…………」

まどか「後で時間をもらえますか?」

鳴上「…………」

鳴上「わかった」


 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ」

イゴール「お疲れ様でしたな、お客様……」

イゴール「む……?」

イゴール「…………」

イゴール「ほう……それはまた、大きな事を頼まれましたな」

イゴール「神にも等しい力を持つ願い……」

イゴール「いやはや……わたくしめにもどうなるのか、予測できませぬな……」

イゴール「ただ……」

イゴール「一つ言えるのは」


イゴール「その願いは、世の理(ことわり)を書き換える様なものであります」

イゴール「…………」

イゴール「左様でございますな」

イゴール「…………」

イゴール「…………」

イゴール「なるほど」

イゴール「しかしながら――」

イゴール「いかに止めようとしても……その鍵を握るのは、お客様ではございませぬ」

イゴール「おっと……これは言いすぎてしまいましたな?」

イゴール「わたくしめからは、これ以上言う事は出来ませぬ」

イゴール「…………」

イゴール「すみませぬな……」


イゴール「ですが……」

イゴール「お客様は、類まれなる”ワイルド”の持ち主」

イゴール「今回の事象にも見事に対応なされました……」

イゴール「……そういえば、八十稲羽では」

イゴール「一度歩みを止め、過去を振り返った事がありましたが……」

イゴール「今回もそれに類する事が、必要なのやもしれません」

イゴール「…………」

イゴール「おお……そろそろお目覚めの時刻の様ですな」

イゴール「それでは、最後になりますが」

イゴール「お客様の選ぶ道に多くの幸あらん事を……」

―――――――――――


 ――数日後の夜――

 ――巴マミの部屋――



鳴上「qべえ」

     トトン……

qべえ「やあ、鳴上 悠」

qべえ「僕に用があるんだって?」

qべえ「一体何かな?」

鳴上「…………」

鳴上「時間が欲しい」

qべえ「時間?」

鳴上「そうだ」


鳴上「俺たちに対する、お前達インキュベーターからの無干渉の時間が欲しい」

qべえ「…………」

qべえ「理由を聞いてもいいかな?」

鳴上「……まどかが」

鳴上「願い事をしたい、と俺に相談を持ちかけた」

qべえ「!?」

鳴上「…………」

qべえ「…………」

qべえ「なるほど」

qべえ「君はまどかに、何か入れ知恵したいのか」

鳴上「…………」


qべえ「わかったよ、鳴上 悠」

qべえ「ただし、一ヶ月とか、一年とかは、無理だよ?」

鳴上「3日でいい。 今から72時間」

qべえ「3日? たったそれだけでいいのかい?」

鳴上「それでいい」

qべえ「…………」

鳴上「…………」

qべえ「わかった。 じゃあ今から72時間」

qべえ「君達に干渉しない事にしよう」

鳴上「不十分だ」

鳴上「『観察』も無しにしてくれ」

qべえ「……わかった」


qべえ「話はそれだけかい?」

鳴上「そうだ」

qべえ「そうかい」

qべえ「じゃあ僕はこれで失礼させてもらうよ」

     トトト……

鳴上「…………」

鳴上「ふう……」

鳴上「ありがとう、マミ」

マミ「いえ……」

マミ「でも、いいんですか? 悠さん」

鳴上「…………」

鳴上「正直、わからないが……決めるのは、まどかだ」


マミ「いえ、そうじゃなくて、qべえを信用していいんですか? という意味で……」

鳴上「それは問題ない」

鳴上「インキュベーターは俺達を『少々知恵のある下等生物』としか見ていない」

鳴上「お手並み拝見、ぐらいにしか感じていないだろう」

鳴上「だから約束は守る。 魔法少女の契約と同様にな」

マミ「…………」

マミ「暁美さん……納得してくれるかしら」

鳴上「…………」

鳴上「難問だな」


 ――翌日の休日・午前中――

 ――巴マミの部屋――



鳴上「みんな、すまないな」

杏子「いや、別に構わないよ、悠」

ほむら「あなたの頼みなら、多少無茶でも聞くわ」

さやか「それで? 話って?」

鳴上「ああ……それなんだが……まどか」

まどか「…………」

まどか「私、qべえに願い事をしようと思うの」

杏子・さや・ほむ「!?」


ほむら「まど――」

まどか「ほむらちゃん、最後まで聞いて……」

まどか「お願いだから」

ほむら「…………」

まどか「……私ね」

まどか「ずうっと考えてた」

まどか「避難所に居る時に」

さやか「…………」

まどか「みんなばっかり戦って、傷ついて、それでも戦って……」

まどか「私一人だけ戦わないのは……やっぱり嫌だなって……」

杏子「…………」


まどか「だから私」

まどか「みんなを……ううん、全ての魔法少女を救う、願いを叶えられないかって」

まどか「考え続けたの」

マミ「…………」

まどか「でも……これでいいのか、やっぱり自信なくて」

まどか「そこで鳴上さんに相談してみたんだ」

まどか「そしたら――」

鳴上「そこからは、俺から話そう」

鳴上「……正直、無茶苦茶な願い事だった」

鳴上「たぶん……ほむらの知っている内容だと思う」


ほむら「過去、現在、未来、全宇宙に存在する魔女を」

ほむら「生まれる前に自分の手で消し去りたい……かしら?」

まどか「!!」

鳴上「……それが以前話していた、とんでもない願い事、か……」

ほむら「ええ……。 それで? まどかは、どんな願い事を?」

まどか「……ウェヒヒ……」

鳴上「一言一句、間違いなくそれだ」

ほむら「…………」 ハア…

杏子「それで? その願いを叶えたまどかは、どうなったんだ?」

ほむら「……わからないの」

ほむら「その時のqべえの慌てぶりから、とんでもない願い事なのは確かで」

ほむら「まどかは……『まどか』で居られなくなる……みたいな事を言ってたわ」

さやか「それで時間の逆行を……」

ほむら「その通りよ」


ほむら「…………」

ほむら「今日、みんなでここに集まったのは」

ほむら「その願い事を決める為なの?」

鳴上「……いや」

鳴上「実を言えば、もう素案は出来ている」

ほむら「!!」

鳴上「だが……まどかが願い事をするにあたり」

鳴上「皆に納得してもらおうと思ったんだ」

ほむら「…………」

杏子「つまり、あたしらを説得しようってわけか」

さやか(もっと言えば、ほむらに、ね……)


ほむら「……話を聞くわ、悠」

鳴上「……みんなも聞いてくれるか?」

杏子「ああ」

さやか「もちろん」

まどか「が、頑張ります」

マミ「お手柔らかに、悠さん」

鳴上「よし……それじゃあまず……」 コホン



鳴上「諸君、正義の話をしよう!」



一同「…………」 キョトン

鳴上(いかん……外した……) ///

鳴上(みんなマイ○ル・サ○デルを知らないのか……) ///


ほむら「……なんなの?」

鳴上「つ、続けるぞ」 ///

鳴上「……ある仮定の話だが」

鳴上「『君』は、一人で飛行機に乗っていた」

鳴上「ところが、その飛行機は、事故で不時着を余儀なくされてしまう」

鳴上「乗っていた乗客・乗員は『君』を含めて3人しか生存できなかった」

一同「…………」

鳴上「『君』は奇跡的に擦り傷程度で済んだが」

鳴上「他の二人は怪我をしていた」

一同「…………」


鳴上「飛行機の不時着した場所は、ステップ地帯の様な場所で」

鳴上「雑草こそ生い茂っているが、食べられそうなものは見当たらない」

一同「…………」

鳴上「最初こそ生き残った三人は、残った機内食などで飢えをしのいで救助を待っていたが」

鳴上「やがてその食料も腐ってしまい、水も乏しくなってきた」

一同「…………」

鳴上「そんな時」

鳴上「怪我をした内の一人の様子が悪化し始めた」

鳴上「……それを見て、もう一人が『君』に、こう、ささやく」

     『こいつ、食っちまおうぜ』

一同「!!」

鳴上「だが……それを怪我の悪化した方に聞かれてしまった」

鳴上「そいつは、泣きながら『自分を食わないでくれ!』と、君に頼む」


一同「…………」

鳴上「ちなみに」

鳴上「容態の悪化してない方は、食べる気満々なので」

鳴上「『君』が目を離した隙に何をするか、わからない」

鳴上「けが人を襲うかもしれないし、もしかしたら『君』にも襲いかかるかもしれない」

鳴上「だが、真正面から戦えば怪我の事もあって、間違いなく勝てるだろう」

一同「…………」

鳴上「そして、容態の悪化した方は、確かに苦しそうだが」

鳴上「意識もあり、今すぐ死ぬ、という訳でも無さそうだった」

一同「…………」


鳴上「さて、『君』はどう決断する?」

鳴上「怪我の軽い方の言うとおりにする?」

鳴上「それとも」

鳴上「容態の悪化した方を守る?」

鳴上「または、他に何かいい手があるのなら、それを実行する?」

杏子「…………」

杏子「ちょっと聞いてもいいかい?」

鳴上「かまわない」

杏子「生き残った三人の性別は?」

鳴上「どちらでもありだ。 ただし、全員同じ性別、と仮定してくれ」

さやか「救助は来そうなの?」

鳴上「残念ながら、わからない。 ただ、三人は、こないかもしれない、と思い始めてる」

さやか「絶望的ね……」


ほむら「飛行機に積まれてる無線は使えないの?」

鳴上「不時着時に飛行機の電子機器は、全て壊れた」

ほむら「ラジオは?」

鳴上「三人とも聞いた事もない言語で何か言っている」

ほむら「…………」

マミ「三人の体力は、どのくらい持ちそうなんですか?」

鳴上「三人とも医者じゃないので詳しくわからないが」

鳴上「容態の悪化した怪我人は2~3日くらい?」

鳴上「『君』を含めた残りの二人は、食料と水さえあれば生きられそうだ」

鳴上「ただ、その食料は尽き、水もあとわずかしか無い」

マミ「……本当に絶望的」


鳴上「少しまとめよう」

鳴上「まず、『君』は、五体満足で一番体力がある」

鳴上「次に、怪我の悪化した方は死にかけているが、『自分を食うな、殺すな』と」

鳴上「泣きながら懇願している」

鳴上「最後に、怪我をしているが、それなりに動ける方は」

鳴上「怪我の悪化した方を食う気満々で、邪魔をする様なら『君』にも襲いかかるかもしれない」

鳴上「体力的に決断は早くした方がいいだろう」

鳴上「さて」

鳴上「『君』は、こんな時どうすれはいい?」

杏子「そんなの決まってる」

杏子「食う気満々の怪我の軽い方を殺して食う!」

鳴上「ほう……」

鳴上「怪我の悪化した方は、数日も生きられないかもしれないのにか?」


杏子「だって、自分の身の安全のためでもあるし、そうするのがベストだろ?」

鳴上「なるほど」

鳴上「杏子は自分の身の安全を考慮に入れて、人を殺す事を『正義』とするのか」

杏子「そ、そんな言い方ないだろ!?」

杏子「じゃあ、悪化した怪我人を殺して食えばいいのかよ!?」

マミ「待って、佐倉さん」

マミ「それは短絡的な発想よ」

杏子「…………」

マミ「私だったら……」

マミ「怪我の軽い方を動けない様に拘束して」

マミ「しばらく様子を見ます」

鳴上「怪我の悪化した方が死んだ時はどうする?」


マミ「……埋葬します」

鳴上「それだと数日持たずに全員死ぬ事になる」

マミ「それでも、人として、人間として、立派な最後を……」

鳴上「それに付き合わされる怪我の軽い方は、さぞ迷惑だろうな?」

マミ「! そ、それは……!」

鳴上「マミは『拘束して』と言った」

鳴上「死に際までマミの理屈を強要する事が」

鳴上「マミの『正義』なのか?」

マミ「…………」

さやか「……じゃあ、どうすれば」

ほむら「助けを呼びに行けば、いいんじゃないのかしら?」

さやか「その手があった!」


鳴上「どうやって?」

ほむら「……歩いて?」

鳴上「最初に言ったが、ステップ地帯のど真ん中で」

鳴上「周りは草だらけで街はおろか集落すら、目で見える範囲にない」

ほむら「…………」

鳴上「それに」

鳴上「怪我人はどうする?」

ほむら「!」

鳴上「怪我の悪化した方は元より、もう一人も歩く事が出来ても」

鳴上「確実に命を縮める事になる」

ほむら「…………」


鳴上「言わなくてもわかってると思うが……」

鳴上「怪我人だけを残した場合、一人がもう一人を食う事になる」

ほむら「…………」

杏子「どうすりゃいいんだよ、悠」

杏子「結局、最初から無理ゲーじゃねーかよ」

マミ「正解は何ですか?」

さやか「教えてよ、悠」

ほむら「私も知りたい」

鳴上「…………」

鳴上「まどか」

まどか「……はい」

鳴上「まどかは、どう思う?」

まどか「…………」


まどか「私は……」

まどか「三人が、三人とも、生き残れる方法を探します」

鳴上「その方法とは?」

まどか「……わかりません」

鳴上「…………」

まどか「でも、私は……三人とも生きられる方法を探し続けます!」

ほむら「まどか……」

マミ「…………」

さやか「…………」

杏子「…………」

鳴上「…………」


鳴上「……そうか」

鳴上「…………」

鳴上「qべえなら、どうすると思う?」

一同「?」

ほむら「……そもそも、こんな仮定に意味なんてないって」

ほむら「取り合わないと思うわ」

鳴上「そうだな」 クスッ

鳴上「じゃあ、俺の推測だけど……もし、qべえがこの『君』だった場合」

鳴上「おそらく、怪我人を二人とも殺すだろう」

一同「…………」

鳴上「最初に殺すのは、元気な怪我人」

鳴上「もちろん悪化した怪我人に食わせる事なく、死ぬのを待ち……」

鳴上「食料が尽きても生きているのなら殺して食う」


まどか「止めて!」

鳴上「…………」

鳴上「だが、『効率』だけを考えれば、最も救助される可能性が高くなる」

鳴上「そういう方法をqべえは取るだろう」

一同「…………」

杏子「……で? 結局、悠は何が言いたいんだよ?」

杏子「人を嫌な気持ちにさせたかったのか?」

鳴上「それは、明日までの宿題にしておく」

さやか「い!? し、宿題!?」

鳴上「みんなで、それぞれ考えてみてくれ」

鳴上「もちろん誰かに聞くもよし、ここに居るみんなで相談するのも構わない」

鳴上「『何か』の形で答えを出してみてくれ」



―――――――――――


さやか「……う~ん」

さやか「よくわからないな~」

杏子「あたしもこういうの苦手だ……」

マミ「私は……きっと、悠さんに深い考えがあるんだと思うわ」

ほむら「だとしても、抽象的すぎる」

まどか「……qべえを引き合いに出したのには、意味があるのかな?」

さやか「あるんじゃない? 実際、効率がどうとか言ってたし」

杏子「あたしは、改めてqべえが気持ち悪いって思ったけどな」

ほむら「……確かにそうね」

まどか「…………」


まどか「ねえ、みんな」

ほむら「どうしたの? まどか」

まどか「qべえが私達に……ううん、地球人にやっている事って」

まどか「悪い事なんだよね?」

杏子「あったりまえじゃん!」

マミ「魔法少女になるという事が、どういう意味かを詳しく教えないし」

さやか「魔法少女の成れの果てが『魔女』だって事も隠してた!」

ほむら「宇宙のためとか言われても納得できないわ」

まどか「…………」

まどか「じゃあ」

まどか「私達はどうなの?」


ほむら「え……?」

まどか「私達は、ふだん牛や豚、鶏の肉を食べてるよね?」

まどか「当たり前の様に」

さやか「……けど、それとこれは違う話じゃない?」

まどか「どこが違うの? 家畜は私達より知性が劣って、美味しいというだけで」

まどか「私達に食べられてる」

まどか「qべえのやってる事と何が違うの?」

さやか「…………」

マミ「……それだわ」

まどか「え?」

マミ「たぶん、悠さんは……私達とqべえとの『違い』を見つけて欲しかったんじゃないかしら?」

一同「!!」


杏子「……だとしても、難しい問題だな」

さやか「最初の『君』の問題と同じくね」

マミ「みんな、悠さんは、はっきりとした『答え』を求めたわけじゃないわ」

マミ「『何か』の形で、と言ってた」

ほむら「まるで禅問答ね……」 フウ…

まどか「…………」

まどか「私達とqべえ達との、違い……」

まどか「それは……?」


―――――――――――




 ――翌日の夕方――

 ――巴マミの部屋――



鳴上「お邪魔します」

鳴上「それから、ゲストを連れてきた」

??「ええと……改めまして、魔法少女の皆さん」

??「白鐘 直斗です。 直斗、で構いません」

鳴上「今回の願い事の件で、ブレーンになってもらってる」

魔法少女ズ「よろしく」

鳴上「それで……昨日の話なんだが……」

鳴上「答えは出ただろうか?」

魔法少女ズ「…………」

まどか「あの、鳴上さん」

鳴上「うん?」


まどか「昨日の……飛行機の事なんですが」

まどか「もう少し聞いてもいいですか?」

鳴上「構わない」

まどか「じゃあ……まず、飛行機の状態を教えてください」

鳴上「……飛行機の状態、とは?」

まどか「そうですね……」

まどか「どんな風に『壊れて』いるのか……特に、『火災』があったのかどうか」

まどか「それから、乗客が何人乗っていたのかも、知りたいです」

鳴上「……!」

まどか「…………」


鳴上「……火災は起きていない」

鳴上「不時着の際、翼がモゲたりしたが、胴体部はダメージが少ない」

鳴上「次に乗客だが、100人乗れる飛行機で、座席は半分ほど埋まっていた」

杏子「!」

さやか「いけそうだね!」

マミ「鹿目さんの言う通りでしたね」 クスッ

ほむら「さ、まどか」

まどか「うん、ほむらちゃん」

鳴上「…………」

まどか「鳴上さん、私が『君』の立場なら」

まどか「亡くなった乗客の荷物を調べます!」

まどか「乗客の荷物から、日持ちのしそうな食料品がないかを!」

鳴上「……なるほど」


鳴上「よくそれに気がついたな」 ニコ

まどか「!!」

杏子「うし! 正解みてーだな!」

さやか「すごいよ、まどか!」

鳴上「だが」

マミ「え?」

ほむら「……だが?」

鳴上「それだと、やはり一時凌ぎにしかならないし、それに……想像すると恐ろしいが」

鳴上「亡くなった乗客は『腐っている』だろう……」

鳴上「そんな中を這いずり回らなければならない」

魔法少女ズ「…………」


鳴上「でも、着眼点は正しい」

鳴上「人を食うか、食わないかの前に、何ができるか?」

鳴上「何をすべきか?」

鳴上「よく考えたな、みんな」

杏子「……う~ん。 それでもまだまだって感じだな。 あたし達……」

さやか「ちなみに、悠は、どんな答えを出したの?」

鳴上「俺はまず、『君』はどうして『助かった』のか?に疑問を感じて質問した」

鳴上「その過程で、飛行機の胴体がほぼ無事なのを確認して」

鳴上「まどかと同じように乗客の荷物を調べる事にしたんだ」

まどか「ふわぁ……さすがだなぁ」

鳴上「ただし、俺が探したのは『携帯電話』だ」

魔法少女ズ「!!!」


ほむら「……なるほど。 確実、かつ、怪我人達に救助が来る、という」

ほむら「『希望』を持たせたかったのね」

鳴上「その通りだ、ほむら」

鳴上「……まあ、いずれにしてもバッテリーが切れてて使い物にならない」

鳴上「というオチがついたがな」

杏子「なんだよそれ!」

鳴上「まあ怒るな、杏子」

鳴上「昨日、杏子が言った通り『無理ゲー』なんだ。 これは」

鳴上「他にもサバイバル技術で水を作ったり、何とかしようとしたんだが」

鳴上「どの道を選んでも、どこかにしこりが残る結果になる」

魔法少女ズ「…………」


マミ「それじゃあ、悠さん」

マミ「私……考えてみたんです」

マミ「どうして悠さんは、こんな話をしたのか?と……」

鳴上「…………」

マミ「悠さんは、私達『人間』とqべえ達との違いを」

マミ「見つけて欲しかったんじゃないか……と思ったんです」

マミ「合っているでしょうか?」

鳴上「…………」

鳴上「この話で俺が言いたかった事は……」

さやか「事は?」

鳴上「この世界は、『残酷』なんだ、という事だ」

魔法少女ズ「!?」


鳴上「……酷な言い方だが、ほむら」

ほむら「…………」

鳴上「今回、まどかを含めた、魔法少女全員とここに居る事が出来たが」

鳴上「『明日』はわからない」

ほむら「……!」

鳴上「特に魔女退治をやっている限り、危険性は格段に増大する」

鳴上「次の魔女退治で……誰かがここに居なくなるかもしれない」

ほむら「…………っ」

鳴上「……まどか」

まどか「!? は、はい!」


鳴上「まどかに頼まれて俺が考えた願い事は」

鳴上「まどかの望み、すべてを叶えているわけじゃない」

鳴上「……どうしてそうしたか、わかるか?」

まどか「……!?」

まどか「…………」

まどか「……!」

まどか「それは……」

まどか「この世界が『残酷』だから……ですか?」

鳴上「そうだ」

鳴上「先の話に戻るが……」

鳴上「この世界は、誰もが『君』の立場でいられるわけじゃない」

魔法少女ズ「……!!」


鳴上「もしかしたらこの先、軽い怪我人の立場になるかもしれないし」

鳴上「症状の悪化した怪我人かもしれないし、そもそも墜落の際に死ぬ乗客の一人かもしれない」

鳴上「さらに言えば、人は、生まれた瞬間」

鳴上「不平等の確定した、『残酷』な世界に生きる事を強いられてもいる、と言える」

魔法少女ズ「…………」

鳴上「…………」

杏子「……上手く、言葉に出来ないけど」

杏子「あたし、悠の言いたい事……なんとなくわかる」

さやか「……あたしも」

マミ「私もです……」


ほむら「でも……待って、悠」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「この世界は……確かに『残酷』だわ」

ほむら「それに『理不尽』と『非情』を付けてもいい」

鳴上「…………」

ほむら「けど……」

ほむら「多くの時間を繰り返して来た私にはわかる」

ほむら「どうしようもないと思ってた世界も、みんなも」

ほむら「今、ここに居る事が嬉しい、と思うのは……思えるのは」

ほむら「この世界は『残酷』なだけじゃないって、やっと理解できたから……!」

まどか「ほむらちゃん……!」

鳴上「…………」

鳴上「そうか……」


鳴上「みんな、話が長くなってしまったが」

鳴上「別に俺の考えに従って欲しいわけじゃない」

鳴上「それぞれが、それぞれで、『何か』を感じてくれたなら、それでいい」

鳴上「そして、疑問に思ったら遠慮なく聞いてくれ」

杏子(……たぶん無いと思うけどな)

さやか(正直……重い話だったし)

マミ(これで暁美さんは、納得してくれたのかしら?)

ほむら「…………」

ほむら「じゃあ……そろそろ、悠の考えた願い事を話してもらえるかしら?」

まどか「お願いします、鳴上さん」

鳴上「わかった」



―――――――――――


鳴上「――というのが、俺の考えだ」

魔法少女ズ「…………」

直斗「qべえが、どういう対処をするのか未知数です……」

直斗「ぜひ、qべえに詳しい、ほむらさんの意見を聞かせてください」

ほむら「……ごめんなさい、見当もつかないわ」

ほむら「それに……その……なんて言うか」

ほむら「こんな国際条約みたいな願い事を聞いてくれるのか、どうか……」

直斗「やはりそうですか……」

鳴上「ぶっつけ本番で試すしかないか……」

杏子「……なんつーか」

さやか「ケムにまかれた気分にさせられるね……」


まどか「…………」

鳴上「……どうだろう? まどか」

鳴上「よくわからないのなら、どうしてこうなったのか説明する」

まどか「……そうですね、お願いします」

まどか「でも、その前に、ひとつ聞いてもいいですか?」

鳴上「構わない」

まどか「えと……鳴上さんは、私達とqべえは」

まどか「どこが違うと思いますか?」

鳴上「違い?」

まどか「ええと……私達人間は、家畜の肉を食べていますけど」

まどか「qべえのやっている事の違いってありますか?」


鳴上「……そうだな」

鳴上「やっている行為『そのもの』に違いは無いかな」

まどか「…………」

鳴上「だが、qべえには『いただきます』がない」

まどか「……は?」

鳴上「これは日本人に限るかもしれないが……」

鳴上「感情を無くしたqべえ達に『感謝の気持ち』は無いだろうし」

鳴上「それに『いただきます』自体を無駄な行為だと言うだろう」

まどか「…………」

まどか「でも……もし、牛や豚に人間並みの知能があって」

まどか「自分達を食べないで、と言われたら……私達人間は食べるのを止めますか?」

鳴上「それだ、まどか」

まどか「え?」


鳴上「qべえは、今、まどかの言った様な事『事体』を考えない」

まどか「!!」

鳴上「それこそが、qべえと、俺達人間の、大きな『違い』だ」

鳴上「まどか」 ニコ

まどか「…………」

まどか「そうですね」

まどか「鳴上さん」 ニコ


 ――翌日の夜――

 ――巴マミの部屋――



     トトン…

qべえ「やあ、鳴上 悠。 それに鹿目まどか」

qべえ「ん? それに他のみんなも居るね?」

杏子「あたし達は、ただのギャラリーさ」

さやか「別に邪魔はしないよ、qべえ」

マミ「鹿目さんは、自分の意志で願い事をすると決めたし……」

ほむら「見届けるだけなら構わないでしょ?」

qべえ(……なんだい? この落ち着きようは?)

qべえ「まあ、邪魔をしないのなら、僕は別に構わないけどね」

qべえ「……じゃあ、始めてもいいのかな?」

まどか「うん、qべえ」

鳴上「…………」


qべえ「じゃあ始めるよ」

qべえ「鹿目まどか」

qべえ「君は願い事があるそうだが、その願いは君の魂を差し出す価値のあるものかい?」

まどか「うん」

qべえ「ならば言ってごらん、まどか」

qべえ「その魂を対価にしてでも叶えたい願い事を」

qべえ「そして――」

qべえ「契約して魔法少女に」

まどか「うん」

qべえ「どんな願い事かな?」

まどか「私の願い事は――」


まどか「まず、願い事にあたり、条件として次の文言を含むものとする」

qべえ「……え?」

まどか「1、この願いに際し」

まどか「対象者は、今現在、宇宙に居る全ての魔法少女と」

まどか「私を含めた、これからなる全ての魔法少女とする」

qべえ「……」

まどか「2、また、これからなる魔法少女には、願い事の内容を魔法少女になった瞬間に」

まどか「完全なる告知がなされる事を常とする」

qべえ「……」


まどか「…………」 スーハースーハー

まどか「私の願いは」

まどか「魔法少女は、いつでも自分の好きな時に自分の意志で」

まどか「どんなに濁りきったソウルジェムであろうとも」

まどか「その魔法少女自身の魔法少女になる『資質』を対価に」

まどか「精神的、肉体的、後遺症の無い状態で」

まどか「元の生命体に戻れる様になる事を願う!」

鳴上(……よし、とりあえず言い切った)

qべえ「……」

qべえ「え!?」

qべえ「ちょ、ちょっと待って!」

qべえ「それじゃあ僕達は、願い事の叶え損――」



     ヒィイイイン……!


まどか「ひぐっ!?」

まどか「ぐっ……くっ……」

まどか「……ああっ!!」

杏子「ソウルジェムだ!」

さやか「……叶った……のね」

マミ「……信じられない」

ほむら「……これで、みんな望んた時に」

マミ・さや・杏子・ほむ「人間に戻れる……!」

qべえ「」

qべえ「……」


qべえ「……おめでとう、まどか」

qべえ「君の願いは、エントロピーを凌駕した」

qべえ「……はあ」

ほむら「まどか!」

まどか「ほむらちゃん!」

さやか「ありがとう、まどか!」

杏子「悠、ありがとう!」

マミ「これで私達、救われます!」

鳴上「……だといいんだが」

杏子「……相変わらず水を差すなよ、悠」


qべえ「…………」

qべえ「やれやれ、してやられたよ、鳴上 悠」

鳴上「……こういう時、お前に感情があれば」

鳴上「心の内が探れるんだがな」

qべえ「……」

鳴上「まあそれも含めて」

鳴上「俺と二人で話をしないか?」

鳴上「聞きたい事がある。 インキュベーター」

qべえ「…………」

qべえ「それもいいかもね」


 ――鳴上の部屋――



qべえ「それで? 僕に話って何かな?」

鳴上「…………」

鳴上「……そうだな」

鳴上「まず、先に礼を言っておく」

qべえ「何の事だい?」

鳴上「3日の約束を守ってくれた事だ」

qべえ「ああ……そんな事は、別に気にしなくてもいい」

qべえ「当然の事を したまでだ」


鳴上「それじゃあ本題に入るが……幾つか、聞きたい事がある」

qべえ「奇遇だね。 僕もだよ」

鳴上「……qべえが俺に?」

qべえ「そうさ。 良かったら、先に聞いてもいいかい?」

鳴上「……構わない」

qべえ「じゃあ、単刀直入に聞くよ?」

qべえ「君は何故、鹿目まどかに、真実を教えなかったんだい?」

qべえ「あの願いは、おそらく君の入れ知恵なんだろ?」

qべえ「あそこまで踏み込んだ内容を言えるのなら……」

qべえ「もっと有利な条件を言えたはずだ」


鳴上「…………」

鳴上「一番の理由は……」

鳴上「質量保存の法則に基づく、まどかへの被害を防ぐためだ」

qべえ「……!」

鳴上「あの願いの文言で言うのなら……」

鳴上「例えば、【精神的、肉体的、後遺症の無い様に】という部分」

鳴上「本当は【契約前の元の姿に】だった」

qべえ「…………」

鳴上「だが、それでは、記憶や資質も戻ってしまうと、俺は考えた」

鳴上「つまり、またqべえ達に魔法少女にされてしまう可能性を……な」

鳴上「そして、それは無限ループの因果が願いを叶えた、まどかに集約させる事になり」

鳴上「まどか一人にとてつもない量の負のエネルギーを背負わせてしまう……」

qべえ「…………」


鳴上「……違うか?」

qべえ「続けて」

鳴上「…………」

鳴上「だから、俺は、あの文言にした」

鳴上「ああすれば、その行為に対する代償は、望んだ個人に行くのではないか?」

鳴上「と、推測した」

qべえ「…………」

qべえ「どうしてそう思った? そして、その代償とは?」


鳴上「ソウルジェムだ」

qべえ「……!」

鳴上「ソウルジェムは、魔法少女ごとに色が違う」

鳴上「それはつまり個性がある、という事」

鳴上「魔法少女になる為に何らかの、一定の異なる資質がいる、という事」

鳴上「でなければ、皆、同じ色になるか、虹色にならないとおかしい」

qべえ「…………」

鳴上「……そして、人間に……元の生命体に、後遺症なく戻る【対価】として」

鳴上「その【資質】を失うのならば……」

鳴上「【どれほど濁りきったソウルジェムであろうとも】という条件をクリアできる」

鳴上「そう、考えたんだ……」

qべえ「…………」


qべえ「……驚いたよ、鳴上 悠」

qべえ「数少ない情報を元に、よくそこまでの考察が出来たね」

鳴上「…………」

qべえ「正解だ。 鹿目まどかの願いによって、元の生命体に戻った魔法少女達は」

qべえ「もう二度と、魔法少女になれないだろう……」

qべえ「おかげでボク達は仕事が、やりにくくなった」

qべえ「おまけに、この願いは、魔法少女に『きっかけ』を与えるだけなので」

qべえ「鹿目まどかに因果は絡まない」

qべえ「彼女が魔女化しても僕達が予測したほどのエネルギーは」

qべえ「たぶん得る事は出来ないだろうね……」

鳴上「…………」


qべえ「だけど……この内容では、魔法少女の魔女化は完全に防げない」

qべえ「まどかは【宇宙に居る全ての魔法少女と自分を含めた、これからなる全ての魔法少女】を」

qべえ「対象にしたけど」

qべえ「もうすでになっている魔法少女は【元の生命体に戻れる事】を知る機会は少ない」

qべえ「それに死に際を間違う者だって居るだろう」

qべえ「しかも、魔法少女は地球だけに居るワケじゃないしね」

qべえ「まどかなら、すべての魔法少女を救おうとするだろうに……」

鳴上「…………」

鳴上「qべえ」

qべえ「何だい?」


鳴上「お前は、最初に俺にたずねたな?」

鳴上「『何故、鹿目まどかに真実を話さなかった?』と……」

qべえ「うん」

鳴上「俺は、今、話した内容を」

鳴上「偽り無く、すべて話している」

qべえ「!?」

鳴上「その上で、あの願いを彼女は願ったんだ」

qべえ「…………」

qべえ「どうやって、彼女を説得したんだい?」

qべえ「しかも、たったの3日で?」

鳴上「…………」


鳴上「世界の……いや、お前風に言えば宇宙の法則を」

鳴上「俺のやり方で伝えた……」

鳴上「それだけだ」

qべえ「…………」

鳴上「詳しく話してもいいが、感情の無いお前達には」

鳴上「きっと理解出来ないだろう」

qべえ「……だろうね」

qべえ「念の為に聞くけど まどかは、最初」

qべえ「どんな内容の願いを叶えようとしたんだい?」

鳴上「…………」


鳴上「過去、現在、未来、全宇宙に存在する魔女を」

鳴上「生まれる前に自分の手で消し去りたい……だ」



qべえ「!!?」

qべえ「な、なんて願いだ!」

qべえ「そんな願い、時間干渉なんてレベルじゃない!」

qべえ「宇宙『そのもの』に対する反逆だ!」

鳴上「俺も驚いた」

鳴上「まあ…叶うかどうかは、難しいと思うけどな」

qべえ「当たり前だよ! そんな願いが叶ったら」

qべえ「まさに神の所業だ!」


qべえ「…………」

qべえ「君には、本当に驚かされる」

qべえ「君が、まどかに提案した願いは、彼女の妥協があったとはいえ」

qべえ「ほぼ、まどかの希望を叶えている」

qべえ「それも宇宙のルールを変えないで、だ」

qべえ「見事、と言わせてもらうよ」

鳴上「そう言ってもらっても嬉しくはないが、まどかと他の少女達の為だ」

鳴上「ルールの『書き換え』と『書き足し』は、似ている様で大きく違う」

鳴上「俺は少し、それを知っていた。 それだけにすぎない」

鳴上「そして、これからの魔法少女達は、ルールを知らない多くの魔法少女達に会いに行き」

鳴上「人間に……元の生命体に戻れる事を伝え続けるだろう」

qべえ「……君は、そこまで考えていたのか。 恐るべき慧眼(けいがん)だよ」


qべえ「……それで? 君が僕に聞きたい事って何だい?」

鳴上「そうだな……まず」

鳴上「インキュベーターは、感情を『無くした』のか? 『無くなった』のか?」

qべえ「それはわからない。 長い年月の内に消えてしまったと言われている」

鳴上「…………」

鳴上「では、もう一つ」

鳴上「インキュベーターには、『上位種』の生命体が存在しているか?」

qべえ「…………」

qべえ「どうして、そんな事を聞くんだい?」

鳴上「その前に、質問に答ええくれ」

qべえ「……イエスだ」


鳴上「…………」

鳴上「……そうか」

qべえ「それが、どうかしたのかい?」

鳴上「…………」

鳴上「……以前、お前は宇宙のエネルギーが、不足しつつあって」

鳴上「エントロピーを超える、感情エネルギーを集め」

鳴上「それで宇宙の補完をしている、と言っていたな?」

qべえ「ああ」

鳴上「そしてそれは俺達、後から来る知的生命体の為だ、とも言っていたな?」

qべえ「そうだとも」


鳴上「それだと 矛盾が生じるんだ」

qべえ「…?」

鳴上「インキュベーターに感情が無いのなら、何故、俺達の事を気遣う?」

鳴上「何故、先の未来を案じ、俺達、下等生物の」

鳴上「『同情』をする?」

鳴上「人間の個人個人が、どうなろうが知った事では無い、お前達が」

鳴上「何故、人間という『種』に関して『だけ』同情的なのか?」

qべえ「…………」

鳴上「だから、俺は想像した」

鳴上「インキュベーターは、ただの使いパシリで」

鳴上「命令を出す『何か』の存在を……」

qべえ「…………」


qべえ「……で? 君の想像は、どんなものだい?」

鳴上「命令を下す存在は、感情があって、かつ、エネルギーを欲している」

鳴上「表向きは『宇宙の存続』という崇高な目的の為に、だ」

鳴上「だが……俺の推測は、こうだ」

qべえ「…………」

鳴上「宇宙に関する話はデタラメで、単純に家畜的な要素で」

鳴上「俺達を見ている……と」

qべえ「…………」


鳴上「そう考えると、合理的な説明が 出来る」

鳴上「人間という『種』に絶滅されては、エネルギーが手に入らない」

鳴上「それはインキュベーターと『上位種』にとって都合が悪い」

鳴上「何故か?」

鳴上「単純に 『上位種』と、お前達の文明を支えるエネルギーが、欲しいからだ」

qべえ「…………」

鳴上「感情のある俺達にだって、『畜産資源』という言葉がある」

鳴上「感情を無くした存在のお前達が」

鳴上「枯れ果てた宇宙に残される種の存在を憂うハズがない」

鳴上「それが……俺の推論だ」

qべえ「…………」


qべえ「……なかなか面白い推論だね」

qべえ「でも」

qべえ「それが正しいとして」

qべえ「自分が消される可能性を考えなかったのかい?」

鳴上「…………」

鳴上「確信に近い推測で」

鳴上「それは無い、と思っている」

qべえ「ほう?」

鳴上「……俺のやっている事は、所詮」

鳴上「家畜が、超える事の出来無い柵の中から」

鳴上「『こうやって俺達を食っているのだろう?』と言っているだけだからな」

qべえ「さすがだね」


qべえ「それじゃ、そろそろ僕は おいとまさせてもらうよ」 タッ…

鳴上「待て」

qべえ「やれやれ……まだ何か聞きたいのかい?」

鳴上「もう一つ、くだらない推測をした」

qべえ「ふうん?」

鳴上「最初に話した、『質量保存の法則』」

鳴上「感情エネルギー『だけ』、例外なのは変じゃないだろうか?」

qべえ「…………」


鳴上「仮に、このまま俺達から感情エネルギーを吸い続けたとして」

鳴上「いつか……俺達、人間という『種』から」

鳴上「感情エネルギーが、無くなるんじゃないのか?」

qべえ「…………」

鳴上「そして」

鳴上「お前達、インキュベーターは」

鳴上「『上位種』に感情エネルギーを吸われ続けた」

鳴上「成れの果て、じゃないのか?」

qべえ「!!?」

qべえ「な………」


鳴上「どうした? qべえ」

qべえ「……バカバカしい」

qべえ「本当にくだらない推測だね」

鳴上「だからこそ、俺は聞いたんだ」

鳴上「お前達は感情を『無くした』のか 『無くなった』のか」

qべえ「…!!」

鳴上「どうやらお前達は」

鳴上「『上位種』の与えられた情報を鵜呑みにしていた様だな」

qべえ「…………っ」

鳴上「…………」


鳴上「引き止めて悪かったな」

鳴上「これで終わりだ」

qべえ「…………」

qべえ「そうかい」

qべえ「鳴上 悠……」

qべえ「なかなか興味深い話だったよ」

qべえ「…………」

qべえ「でも、出来るなら」

qべえ「もう君とは会いたくないね」

鳴上「そうか……」

鳴上「褒め言葉として 受け取っておこう」

bgm
http://www.youtube.com/watch?v=3e8g7vious0&feature=related





その日、まどかは魔法少女になった。

俺の考えた、魔法少女の『希望』となるかもしれない願いを叶えて。







その日以降も俺は、彼女達と魔女退治に協力している。

だが、まどかの力は凄まじく、大抵の魔女は一撃でカタが着くほどだ。

qべえの言うとおり、おそらく歴代最強の魔法少女だろう。



しかし、それは俺とまどかだけの秘密だった。

普段は力をセーブして戦い、いざという時に力を発揮する、という演出をしている。

……まあ、みんな薄々気がついているけど、それをまどかに内緒にしていたりする。

何故か、みんな俺と秘密を共有したいようだ……。







俺の方は、約束していた陽介達との食事会を楽しんだりした。

もちろん、魔法少女の話をした。 皆、一様に驚いていた。

だけどみんな(特にクマは)協力を申し出てくれた。

きっと、魔法少女達も喜んでくれるだろう。



その後で、魔法少女達とも一緒に陽介達と食事会を開いた。

規模的に相当賑やかになったが、みんな楽しんでくれたようだ。

特に女子は、相当意気投合したみたいで何だかわからないが、『協定』を結んだそうだ。

……どうも俺絡みらしいが、詳しくは知らない。







そういえば、まどかのソウルジェムは最初からp状態だった。

まどかにとって、今回の一件そのものがそうさせたのだと思うが……詳しくはわからない。

p状態も含めて。



イゴールには、もう連絡がつかなくなった。

聞きたい事はたくさんあったのだが……話せないのでは、どうしようもない……。

この7万8200円(税込)の神剣グラムをどうするのか、真剣に悩んでいる。



最近は……qべえ達が次に何をするか、よく考えてしまう。

俺がqべえの立場なら……何をするだろうか?







まず、魔法少女になった者に、『魔法少女』の素晴らしさを伝える。

そして人間(元の生命体)に戻れるが、二度と魔法少女に戻れないとデメリットを強調するだろう。

もちろん聞かれない限り『魔女化』の話はしない。



実際、魔女化の話をなり立ての魔法少女に教えるのは困難だ。

ほむらがそれを一番理解しているだろう……今後の課題は、その辺りになりそうだな。







それからもう一つ……考え過ぎかもしれないが、魔法『少年』の可能性。

qべえ達が、感情エネルギーを取るために『少女』を選んだのは、より『効率的』だからだろう。

だが、魔法少女は魔女化の可能性がかなり低くなり、感情エネルギーの回収は困難になった。



それを考えれば、今後は魔法少年にシフトするかもしれない。

魔法少年に関しては、何の障害もないのだから。

……余計な事だが、魔法少年の魔女化に当たる呼称は何になるかな?

魔男……じゃ間抜けだし、魔獣とか魔法使い?になるのだろうか……。



ともかく、今は様子を見るしかなかった……。





 ――数日後の夜――

 ――見滝原市・某所――



里中「これが魔女との戦いかぁ……」

天城「本当にマヨナカテレビに迷い込んだみたいだったね、千枝」

里中「まあ、あたしらは『ワルプルギスの夜』っていう、とんでもないのが初戦だったけどね」

鳴上「すまないな、二人とも」

鳴上「せっかく休日に訪ねてきてくれたのに……」

里中「いいっていいって! 気にしないの、悠くん!」 ///

天城「そうだよ、悠くん」 ///

天城「役に立てたのなら、嬉しいから、私達」 ///

鳴上「いずれ埋め合わせするから」 ニコ

里中・天城「~~~~!!」 ///


さやか「……ちょっと悠」

ほむら「私達の存在も忘れないでくれる?」

まどか「ほ、ほむらちゃん」

マミ「まあまあ……私達は後でゆっくり話せますし」 ニコ

里中・天城(可愛くない皮肉の言い方……) グヌヌ

杏子「それにしてもさやか」

杏子「今日見せた必殺技、かっこよかったな」

さやか「ああ、『さやかストラッシュ』の事?」

杏子「そう、それ。 剣を逆手に持つやつ」


さやか「大地を斬り、海を斬り、空を斬る……そして!」

さやか「すべてを斬るのが、『さやかストラッシュ』!!」

杏子「そうそう! その前口上が最高にかっこいい!」 ///

さやか「ニシシ……!」 ///

マミ(中二病全開ね……実際中二だけど)

まどか(いいなぁ……さやかちゃん)

ほむら(……私はついていけない)

天城「?」

里中・鳴上(さやか……何の漫画読んだか、丸解り……)


里中「そういえばさ、杏子は、みんなと同じ中学に通う事になったんだって?」

杏子「え!? あ、ああ……」 ///

杏子「まだちょっと……色々ついていけない所もあるけど」 ///

天城「ふふっ、気にする事ないよ、杏子ちゃん」

天城「八十稲羽に転校してきた頃の悠くんも、ちょっと戸惑ってた所あったし」

杏子「へえ? そうなの? 悠?」

鳴上「…………」

鳴上「その頃の俺は」

鳴上「心貧しく、ちぐはぐな伝達力で、世間知らずな上に」

鳴上「意気地無しの腑抜けだったからな……」

里中「ゆ、雪子は、そこまで言ってないじゃん!!」

魔法少女ズ(……何があったの? 八十稲羽で……)


詢子「……あら? 鳴上くん? まどか?」

鳴上「あ……まどかのお母さん」

まどか「ママ!」

詢子「偶然ね~。 っていうか……」

詢子「こんなにたくさんの女の子に囲まれて、すごいわね……」

まどか「ま、ママ……みんな、今帰るところだから」 ///

詢子「ん~? ママは別にゆっくりでも構わないわよ~?」 ニヤニヤ

詢子「もういっその事、鳴上くんに『大人』にしてもらったら~?」 ニヤニヤ

まどか「ん?」




まどか「それなら、(精神的な意味で)もう『大人』にしてもらったよ、ママ!」 ///ニコ!



鳴上「」

里中「」

天城「」

さやか「」

杏子「」

マミ「」

ほむら「…………」

詢子「…………」


詢子「えと……」

詢子「責任は取ってもらえるのかしら? 鳴上くん?」

鳴上「べ、弁解を! 弁解をさせてくd」

里中「……悠くん?」 ゴゴゴ……

天城「悠くん」 ゴゴゴ……

さやか「悠……」 ゴゴゴ……

杏子「まあ……その……悠?」 ゴゴゴ……

マミ「悠さん……」 ゴゴゴ……


鳴上「」


まどか「え? え!?」

まどか「ど、どうしたの!? みんな!?」

ほむら「……まあいいから」


まどか「私のせい……なのかな?」

ほむら「きっかけはね」

ほむら「でも……時には、これくらいの目に会うべきだと思う」

ほむら「悠は」

まどか「…………」

詢子「私もそう思うなー」

詢子「大事な愛娘をキズモノにされたくないし~」

まどか「えっと……どうしたらいいのかな……?」 オロオロ

ほむら「とりあえず、見ておけばいいと思う」

まどか「えー……?」




その後、悠さんがどうなったのか……数日後には、普通にみんな話してたけど……

さやかちゃんは、何か約束をしたって言ってた。

他のみんなもそうらしい。 いったい何の約束だろう?



それからも私達は魔女退治を続けていた。

……いずれ、悠さんの言う通り、この中の誰かが、突然居なくなるのかもしれない。

それは……きっと、とっても悲しい事だろう……それこそ自分の身を引き裂かれるくらいに。

でも

それが『悲しい』と思えるのは、『楽しい』時間を一緒に過ごしたからだと思う。

だから私は……人は……悲しくない方法を取りたがるのだと思う。







qべえは、そんな人の心を利用している。

だから……私は……qべえが許せないって感じるんだ。



それを悠さんは教えてくれた。

ううん……これで合っているのかわからないし、悠さんにたずねても……

きっと、「そうか」と言って、笑うだけなんじゃないかな?と思う。 ふふっ。







私は、みんなといろんな話をした。 みんな真剣に聞いてくれた。

時々、ケンカしたりもするけど……私は、みんな大好き。



だから、自信を持って、こう、言える。











     ――もう何があっても、くじけない――






     おしまい

皆さん、お付き合いありがとうございました。 これで終了です。
楽しんでいただけたのなら、幸いです。読んでくれた人、ありがとう。

それから>>157さん、ありがとうございました。
あなたがいなければ、このssを完走する事は出来なかったと思います。
心から感謝します!本当にありがとう!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月18日 (水) 00:37:43   ID: jgVO_KhE

めちゃくちゃ面白かったです。
<1さんありがとう

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