男「ヤンデレ症候群……ですか」医師「ええ」(326)

男「……初耳ですね」

医師「それもそのはずです。最近、見つかったんですから」

男「……具体的な症状は?」

医師「恋心や好意を抱いてる人に対し、異常なまでの束縛、独占欲や露骨な愛情表現。更には嫉妬が暴走し、第三者の異性の関わりがあると知ると……」

男「知ると?」

医師「……血が流れることになるでしょうね」

男「っ…………せ、先生、幼馴染は……まさかそれに……」

医師「……残念ながら、患っています」

男「……な、治すには?」

医師「……症状があったように、ほぼ心理的で、尚且つ精神的なものばかり……それでいて、身体には正常そのもの。治す手立ては……ありません」

男「………そ、そんな」


こんな感じで幼馴染と男の周りで巻き起こる修羅場をオナシャス!


男「…………」

幼馴染「あ、男~」 シタタタ…

幼馴染「先生なんだって?」

男「う、うん。 (体には)問題ないって」

幼馴染「でしょー?」

幼馴染「だから言ったのに」

男「う、うん」

幼馴染「じゃ、帰ろ!」 グッ(腕くみ)

男「…………」


~男の家~

男「ただいま」

幼馴染「ただいま」


シーン……


男(俺の両親、今は居ない)

男(仕事の都合で二人共カナダに行ってる。 半年の予定だ)

男(元々、両親の受けは良かった幼馴染……)

男(俺一人になってからの幼馴染は、もの凄く積極的になった)

男(活発な方だったし、特に気にも止めていなかったが……)

男(家に泊まり込む様になってから、おかしな事が始まった)


幼馴染「じゃ、夕御飯作るね!」

男「ああ……」


男「…………」 カチャ…(携帯)

男「…………」 ピ……ピピ……

男(……今日も着信無し)

男(ありえないだろ……今日で一週間だ)

男(…………)

男(幼馴染が来てから……女からの連絡が一切無くなった……)

男(…………)

男(もちろん、偶然の可能性も捨てきれないが……)

男(しかし……もしやと思って、連れて行った病院の診断結果……)

男(…………)

幼馴染「男ー?」

男「! お、おう。 何だ? 幼馴染?」

幼馴染「お皿、出してくれる? 平たくて大きいやつ」

男「わかった」


カチャカチャ……

幼馴染「でさ、モブ子ったら~」

男「ごちそうさま」 ガタッ

幼馴染「え? 男、もういいの?」

男「うん……何だか疲れたのかな? もう眠くって……」

幼馴染「そっか。 わかった、洗い物しておくから、流しに置いておいて?」

男「ああ……悪いな、幼馴染」

幼馴染「ううん、じゃ、お休み、男!」 ニコ

男「お休み……」

テク テク テク…

幼馴染「…………」


男「はあ~……」 ドサッ…

男「…………」

男(正直……うぬぼれかもしれないけど、幼馴染は俺の事が好きなんだろうと思ってた)

男(これがまた、可愛いんだよな)

男(肩くらいの黒髪で、目がクリクリしてて、スタイルも悪くない)

男(胸はcカップ以上はありそうだし) ///

男(身長も俺より20cmくらい低くてちょうどいい)

男(…………)

男(ヤンデレかぁ……)

男(…………)

男(…………)

男(…………) ぐ~…zzz

―――――――――――


チュンチュン……

幼馴染「男ー! 朝だぞー!」

男「んあっ……」

男「ふあああああぁ……もう朝か」

幼馴染「ほらほら、シャキっとする!」 ウフフ

男「いてっ……背中、叩くなよ」

男「つーか、人の部屋に勝手に入るな」

幼馴染「何よー? 起きて来ない男が悪いんでしょ!」 ツン!

男「わかったわかった……悪かったよ」

幼馴染「ふむ。 わかればよろしい!」 ニコ

幼馴染「朝御飯、出来てるからね? 早く来てよ?」 トトト…

男「ほいほい……ってもう居ない」

男「朝から元気だなー」 フウ…


ハムハム……

男「朝はやっぱトーストだな」

幼馴染「作る方としてもありがたいメニューね♪」

幼馴染「あ、そうだ、男」

男「ん? 何?」

幼馴染「はいこれ。 ケータイ」 スッ

男「……!」

幼馴染「? どうしたの? 男の部屋で拾ったんだけど、渡すの忘れてたんだ」

幼馴染「ごめんね」 テへ

男「あ……ああ」

男「いや、こっちこそすまん」

男「ありがとう、幼馴染」 ニコ

幼馴染「どういたしまして!」 ///

幼馴染「じゃ、私、先に学校へ行くから!」 タタタッ

男「おー……」


ガヤガヤ……

男「…………」 ピッ……ピッ……ピッ……

男(特に異常はないな)

男(あの後、ポケットに入れてたと思ってたけど……)

男(うっかり落とした可能性がある)

男(…………)

男(ったく……こんな事なら病院になんて行くんじゃなかったぜ……)

男(…………) ハアッ…

?「どうしたの? 男くん?」


男「……あ、女ちゃん」

女「ため息なんてついて……高校生らしくないぞ♪」 クスッ

男「いや、大した事じゃないよ」

女「そう? ならいいんだけど……」

女「最近ケータイにかけても出てくれないし……連絡もないから」

女「嫌われたのかと思って……」

男「……ごめん」

男「ちょっと、色々あって……」


男(女ちゃん……同じクラスの同級生)

男(背中まである、長い黒髪が特徴の可愛い女の子だ)

男(同性からも好かれている、印象の良い娘で もちろんヤロー共の人気も高い)

男(そんな彼女だが、何故か浮いた話は全く聞かない)

男(誰か、心に決めた人でも居るのだろうか……?)


女「男くん?」

男「ハハハ……いや、ホントに何でもないから」

女「変な男くん。 じゃ、また後でね」 ニコ

男「ああ……」

男「…………」 フウッ

??「おい……男……」


男「おー、友か」

ガシッ (ヘッドロック)

友「ぬわーにが『友か』だ!」

友「朝から見せつけやがって。 このっ! このっ!」

男「ギブギブギブッ! つーか、何の話だよ!?」

友「てめ……! 自覚無しか!?」

友「くっそー! 何でこんな奴に! 女ちゃんや幼馴染ちゃんが気軽に声をかけるんだぁー!」

男「おめーは何、朝からサカってんだよ!」

友「うるせー! てめーに俺の気持ちはわからねえよ!」

男「ああ、わかんねぇよ! さっさとロック外せ!」

友「誰が外すか! フラグへし折るまでやってやるうっ!」


男(こいつは友)

男(高校入学した時に知り合った)

男(くせ毛の茶髪でチャラい印象があるが、そのまんま見た目通りチャラい)

男(常に女の子の目を意識して行動している)

男(その努力を別の方向に向ければいいのに……)


男「いいかげんにしろ! 友! マジで痛いって!」

友「ちっ! 仕方ねえ……」 パッ…

男「ふー……死ぬかと思った」

友「けどよぉ……お前はホントに幸せな立場なんだぞ?」

男「……幼馴染はともかく、女ちゃんは無いって」

友「ちくしょー! ヨユーかましやがってぇー!」 ドドド…

男「…………」

男「……あいつ何しに来たんだ」 ハア…


キーン コーン カーン コーン…

男「ふう……昼休みか」

幼馴染「男!」

男「……! 幼馴染」

幼馴染「ご挨拶ね。 どうかしたの?」

男「何でも無い。 昼飯だな? 中庭にでも行くか?」

幼馴染「いいね! 早く行こ!」 ニコ

男「ほいほい」



モグモグ……

男「うん、美味い」

幼馴染「でしょ?」 ンフフ


男「弁当、いつも悪いな」

幼馴染「いーのよ別に。 ついでよ、ついで」

男「わー、そっけねー」

幼馴染「まあ? そんな健気な私に、何かプレゼントとか してくれてもいいんですけど?」

男「露骨だな」

幼馴染「ニシシ。 女の子は打算的なの!」 クスッ

男「…………」

幼馴染「……男?」

男「ん? 何でもある」

幼馴染「何よそれ……」

男「真面目に、何かお礼とかした方がいいな、と思ったんだけど……」

男「幼馴染は何か欲しい物あるか?」

幼馴染「!?」 /// ドキッ


幼馴染「い……いきなり、言われても……」 ///

男(可愛いな……幼馴染) ///

男「正直、インスタントとコンビニ弁当のループを断ち切ってくれたし」

男「やっぱり労働に対する 対価は支払わないと」

幼馴染「……そう」

男「……?」

幼馴染「ううん、そういう事なら欲しい物、考えとく!」

男「言っとくけど高校生の財布の中身で、何とかなる物にしといてくれよ?」

幼馴染「男の財政事情くらい知ってるわよ」 フフ

男「さいですか」

幼馴染「あ、それでさ、話題変わるんだけど……」

―――――――――――


キーン コーン カーン コーン…

ガヤガヤ……

友「男ー」

男「なんだ首絞めジャック」

友「連れない事言うなよ、リア充」

男「誰がリア充だ」

友「オメーだよ、オメー」

友「子供の頃からの付き合いの可愛い女の子と、ひとつ屋根の下で寝起きする……」

友「これがリア充と言わずに何と言う!!」

男「ただの同居だろーが……で? 何か用か?」

友「久しぶりにカラオケにでも行かね? と思って」

男「悪ぃ……今日は食材の買い出しに行く予定」

友「なんだよ、もう尻に敷かれてんのか?」

男「俺は座布団じゃないっての。 それじゃ、また明日な」

友「ああ、またな」 ニッ!


テク テク テク…

男「!」

幼馴染「あ! 男!」

男「……どうした?」

幼馴染「? どうもしないよ? ただの偶然」

幼馴染「私は、これから部活だし……男は今帰り?」

男「ああ……」

幼馴染「そう! 買い出し、よろしくね!」 タタタタッ…

男「…………」

男(……気にしすぎ、だろ) ハア…


テク テク テク…

ガヤガヤ…

男(えーっと、白菜、キャベツに人参、ピーマン……)

男(……ピーマンは忘れた事にしておこう)

男(後は玉ねぎに豚肉……ウインナーでも可、か……)

男(おっと……お米も忘れずに、と……)

男(……ん? あれ?)

男(女ちゃんだ……珍しいな)

女「……あれ? 男くん?」

男「やあ、女ちゃん。 珍しいね、こんな所で会うなんて」

女「うん。 でも私、ここで結構買い物してるんだけどな」

男「そうなんだ」

女「男くんは……男くんも買い出し? すごい量だね」

男「今日はたまたま。 お米を買ったし」


ピピピ……ピピピ……

男「おっと……メールが」 カチャ(携帯オープン)

     re 幼馴染

     ごめーん、卵も買っといてー

男「…………」

女「男くん、幼馴染さんから?」

男「…………」

女「男くん?」

男「! あ、いや……うん、そう。 幼馴染から」

女「男くん、仲いいもんね」 クス

男「ハハハ……」

男(…………)

男(偶然……偶然だよな……)


男「じゃ、女ちゃん、俺はこれで」

女「うん! また明日!」


ガヤガヤ……


男「…………」

男「さて、玉子買わないと」

男「…………」

―――――――――――


ガチャ……キィ……パタン

男「ただいまー」

男「…………」

男「……? 幼馴染、まだ帰ってないのかな」

シャアァァァァァ……

男「ああ……シャワー浴びてんのか」

     コン コン

男「おーい、幼馴染ー」

???『! んー?』

男「言われたもの、買ってきたぞー。 台所に置いとくから」

???『んー』

男「じゃ、メシできたら言ってくれ。 俺、部屋に居るから」

???『んー』

テク テク テク…


男「…………」

男「……?」

男(おかしいな……何か違和感を感じたけど……)

男(まあいいか)

男(…………)

男(……そうだ) ピッポッパッ

プルルルル……プルルルル……ガチャ

友『うーっす、絶賛彼女募集中の友でーすっ☆』

男「すみません、間違えました」

友『おいおい、軽いジョークのわからない奴だな』

男「お前、それ、かかってきた電話 全てにやってるのか?」

友『親愛なる、お前にだけだよ☆』

男「……本題に入るわ」

友『おう! 何だよ?』


男「病院紹介しといてもらって何だけど……」

男「ヤブって事はないよな?」

友『おいおい……そんな事言われると、いくら俺でもブロークンハートになるぜ?』

友『どうしたんだ? 何かあったんだろ? 言ってみ?』

男「ああ……実はな……」


―――――――――――


男「つーワケなんだ……」

友『……ウッソ。 マジ信じらんね』

男「俺もだよ」

友『けど、あの病院は俺もかかった事あるし』

友『ネットの評価もかなり高いぜ?』

男「そうなのか?」

友『疑うなら病院の名前でググってみ? 検索でかかると思うから』


男「そうか……でも、本当に信じられないんだ」

男「幼馴染はいつも通りで、明るく可愛いし……」

友『んだよー、惚気かー?』

男「そうじゃないって」

友『へいへい。 さいですか……でもよー男』

男「ん?」


友『お前、幼馴染ちゃんの事……マジどう思ってんの?』


男「……!」

友『だんまりは無しだぜ?』

友『異性として見てんのかどうか、だけでもいい……』

友『聞かせてくれよ』

男「…………」


男「お、俺は……別に」 ///

友『……本当か?』

男「いや……そりゃ可愛いとは思ってる」 ///

友『女の子として?』

男「あ、ああ……」

友『……そうか』

男「……何だよ、友。 ずいぶん踏み込んで聞くじゃないか」

友『……そりゃそうだろ。 気になる娘がダチと同居してりゃ』

男「………………え?」

友『言わせてもらうけど、俺はマジだぜ? 本気と書いてマジ』

男「……いつからだよ」

友『入学式で見かけてからずっと』

友『ここだけの話、オメーに話しかけたのも幼馴染ちゃんの為だ!』 ドヤッ!

男「ぶっちゃけすぎだろ……」


男「……けど、友。 幼馴染は……」

友『カンケーねえよ』

男「…………」

友『ヤンデレ症候群? はあ? クソ食らえだっての!』

友『好きになった娘が、どんな病気かかえようとも……』

友『ハートで何とかする!』

友『それでいいじゃねーかよ』 ハハハ…

男「…………」

男(うらやましい……)

友『とにかくだ』

友『いずれ……頃合が来たら、俺は幼馴染ちゃんに告るぜ?』

男「……!」


友『……って言いながら、ビビってるけどな』

男「…………」

友『俺から言うのもおかしいけどさ、はっきりしておけよ? そのへんの気持ち』

男「…………そう……だな」

友『……他に何か用はあるか?』

男「いや……」

友『そうか。 じゃ、また明日、学校でな』

男「ああ」

ブッ……ツー……ツー……

男「…………」

男「自分の気持ち……か……」

―――――――――――


カチャカチャ…

男「ごちそうさま」

幼馴染「お粗末さまでした」

男「さて、風呂にでも行くかな」

幼馴染「どうぞー」

男「おー」


ザブン……


男「ふいー……生き返る~」

男「…………」

男(……そういや、ラノベやエロゲで ありがちな展開の)

男(ラッキースケベには、まだ遭遇しとらん……)

男(…………)

男(所詮フィクションだな……)


テク テク テク…

男「ふう……さっぱりした」

幼馴染「みたいね」 クス

男「…………」

男「……なあ、幼馴染」

幼馴染「ん?」

男「その、さ……緊張とか、しないのか?」

幼馴染「? 日本の夏?」

男「金○の夏……って、ちっがーう」

幼馴染「アハハ……ごめん」

幼馴染「……でも、それは無いかな」

男「一応俺もヤローなんだけど……」

幼馴染「お? 何々? ついに私の魅力にノックアウトされた?」

男「……もういい、寝るわ」

幼馴染「あ……」


幼馴染「…………」

幼馴染(どうしたんだろう……?)

幼馴染(あんな事聞いてくるなんて)

幼馴染(…………) ///

幼馴染(意識……されてるのかな? 私……) ///

幼馴染(……ううん) ///

幼馴染(意識してもらう為に、私はここに居る) ///

幼馴染(男が……望むのなら、え、えっちな事だって……) ///

幼馴染(~~~~~~!!) /// ジタバタ ジタバタ

幼馴染(…………) ///

幼馴染(だって……私は……) ///


幼馴染(男の事……好きだから――) ///




~翌日~

友「うーっす、おはよ」

男「おう、朝から元気だな」

友「まあそれが取り柄だからな!」 ニカッ!

男(……ちょっちウゼーけど)

男「そういや今日の英語の宿題、やってきたか?」

友「あー……そういや、そんなのあったな」

男「やってないのか?」

友「いや、そんな事は無い」

男「じゃあ後で見せてくれるか?」

友「2行だけでいいのなら」

男「そういうのは、やったとは言わないだろ!」

友「俺は学校で宿題をやる主義だ!」

男「それじゃ宿題にならねーだろーが……」


女「男くん」

男「あ、女ちゃん」

女「良かったら……これ使う?」 スッ…

男「! ……英語のノート。 いいの?」

女「うん。 でも、宿題はちゃんとやらないとダメだよ?」

男「……はい」

友「あー……女ちゃん、俺もいい?」

女「もちろんいいよ」 クスッ

男「あなたが神か……!」

友「女ちゃん、マジ天使……!」


キーン コーン カーン コーン…

男「女ちゃん、サンキュ。 助かった」 ニコ

女「どういたしまして」 クスッ

男「お礼に今度飯でも……」 ハッ!?

女「? 男くん?」

男「い、いや、何でも無い。 ともかく、ありがとう」 ハハハ…

女「……変な男くん」

男(やべえやべえ……もし幼馴染がこんな現場を見たら)

男(女ちゃんを巻き込んじまう! ……危ない所だった)

友「…………」


友「男~」

男「なんだ?」

友「ちょっち言いづらいんだけど……」

友「今日の昼、幼馴染ちゃんと食うのか?」

男「? ああ……」

友「頼む! 今日だけでいい!」

友「俺も同席させてくれねーかな!?」

男「え!?」

友「たぶん、お前はいい気持ちしないだろうけど……」

友「今の幼馴染ちゃんにとって、俺が、どの程度のラインに居るのか」

友「どうしても知りてーんだよ!!」

男「えー……」

友「頼む! 男!」

―――――――――――


男「……というわけで、連れてきた」

     ※注 友の目的は隠してあります。

友「ちぃーすっ! 幼馴染ちゃん!」

幼馴染「あ、うん……よろしくね、友くん」

男(予想はしてたけど……若干引いてるな、幼馴染……)

男「すまんな、幼馴染。 今日だけだから」

友(いきなり釘さしキター!)

幼馴染「ううん、たまにはいいよね、こういうのも」

     アハハ……


幼馴染「そうそう、昨日言い忘れてたけど」

幼馴染「男、ピーマンわざと買い忘れたでしょ?」

男「おまっ!? 今それを言うか!?」 ///

友「なになにー? 男キュンは、ピーマン食べられないんでちゅかー?」 クスクス

男「ぐっ……!」 ///

幼馴染「好き嫌いは、いけないよねー」 クスクス

男「お前だってグリーンピースとブロッコリーがダメじゃねーかよ!」

幼馴染「がっ!!」 ///

友「あ、俺もブロッコリーは苦手だよ、幼馴染ちゃん♪」 ナカマ ナカマ♪

幼馴染「……男、触れちゃいけない所にさわったわね」 ゴゴゴ…

友「およ?」


男「へっ……凄んだって怖かねーぞ」

幼馴染「あらそう……?」

幼馴染「じゃあ……明日からのお弁当の中身」

幼馴染「ピーマンのおかずにピーマン御飯のピーマン尽くしにしてあげるから」 ククク…

男「すんません! ちょーしに乗ってました! マジ勘弁してください、幼馴染様!」

友「陥落はやっ!」

幼馴染「解ればよろしい」 フフン♪

友(でも、こんな一面もあるのか……幼馴染ちゃん) ///

男「……ピーマンなんて食わなくても死にゃしないのに」 ボソ…

幼馴染「ん?」

男「なんでもございません!」


友「じゃあさ、逆に幼馴染ちゃんの好物って何なの?」

幼馴染「え? う~ん……ドーナツかな? 後、ケーキ!」

友「うんうん、やっぱ女の子は甘い物が好きなんだね~」

友(うし! 貴重な情報げっとぉ!) グッ!

男(焼き芋にスルメだろーが……)

友「ついでに男は?」

男「ついで言うな……唐揚げ、フライドチキンにフライドポテト」

友「揚げもんばっかだな……」

男「ほっとけ」

幼馴染(後、ラーメンだよね。 ネギたっぷりのメンマ抜き) ンフフ

友「おめーは? 友?」


友「よくぞ聞いてくれました!」

友「俺の好きな食いもんは、ホットケーキ!」

男「ガキかお前……」

友「ピーマン嫌いのお前に言われたくないな」

男「ぐぬぬ……」

幼馴染「へえ~。かけるものは? メイプルシロップ? それともハチミツ?」

友「もち、ハチミツ! メイプルはちょっと甘すぎるんだよなー」

幼馴染(私はメイプル派なんだけどなー……)

     ハハハ……


キーン コーン カーン コーン…

幼馴染「わっ!? もうこんな時間!?」

友「うへぇ……もう終わりかよ」

男「あっという間だったな……」

幼馴染「うん! 楽しかったね! 男! 友くん!」 ニコ

男「そうだな」 クス

友「それは光栄の至り……」

男「……似合ってねーぞ」

友「うるせー」 ///

幼馴染「あはは……」

―――――――――――


男「ふう……もう放課後か……」

友「おーい、男ー」

男「なんだ?」

友「一緒に帰らね?」

男「ああ、いいぞ」


テク テク テク…


友「そーいや幼馴染ちゃんは?」

男「部活。 合気道部なんだ」

友「へー、そうなのか」

友「…………」

友「なあ、男」

男「ん?」

友「幼馴染ちゃん、俺の事どう思っていると見た?」


男「…………」

男「……友達ってとこじゃね?」

友「…………」

友「……へっ」

友「お前、やさしーな……」 クスッ…

男「…………」

友「完璧に俺、アウトオブ眼中じゃねーかよ……ありゃ」

男「…………」

友「けどよ」

友「俺はあきらめねーぜ?」

男「…………」

男「……そっか」


男「…………」

友「……って言われても困るわな、フツー」 フフッ

友「だけどな……」

友「ヨユーコケるのも今の内だからな?」

男「どーいう意味だよ」

友「そのまんまさ。 ウサギとカメの童話」

男「俺がウサギってか?」

友「そゆこと」

男「…………」

男「俺がウサギ、ね……」


友「……っと」

友「じゃ、俺こっちだから」

男「ん? そうか……」

男「じゃあ、また明日」

友「おう! またな!」


タッ タッ タッ…


友「…………」

友「ったく、おやさしー事で……」

友「…………」

友「悪ぃけど、つけ込まさせてもらうぜ……男」

友「俺は……幼馴染ちゃんを手に入れる為に」


     ――手段を選ばねぇ――


―――――――――――

男(…………)

 ――お前、幼馴染ちゃんの事……マジどう思ってんの?――

男(俺は……)

 ――恋心や好意を抱いてる人に対し、異常なまでの束縛――
 ――独占欲や露骨な愛情表現。更には嫉妬が暴走し――

男「幼馴染の事……」

 ――第三者の異性の関わりがあると知ると――

男(…………)

 ――血が流れることになるでしょうね――

男(俺は……!)

 ――はっきりしておけよ? そのへんの気持ち――

男(…………っ)

―――――――――――


―――――――――――

男「ごちそうさま」

幼馴染「ごちそうさま」

カチャ カチャ…

男「…………」

男「なあ、幼馴染」

幼馴染「んー?」

男「ちょっと……話があるんだ」

幼馴染「……うん」

男「…………」

男「……えっと、な」

幼馴染「…………」


男「食事とか、いつもありがとう」

幼馴染「……うん」

男「えと……その…………俺」

幼馴染「…………」


男「幼馴染の事が、好きだ」 ///


幼馴染「……!」 ///

男「…………」 ///

幼馴染「…………」 ///

幼馴染「……嬉しい、男」 ///

幼馴染「私も男の事……」 ///


     ――大好きです――




     チュン チュンチュン…

幼馴染「男ー? 朝だよー」 ユサユサ

男「んー……」

男「……おはよう、幼馴染」

幼馴染「えへへ……」 ///

男「……? どうした? 幼馴染?」

男「顔が赤い……あ」

幼馴染「…………」 ///

男(そ、そうだった。 俺、昨日……) ///

幼馴染「……頭、はっきりした?」 ///

男「あ、ああ」 ///

幼馴染「フフッ……朝御飯、出来てるよ!」 ///


     モグモグ…

男「ごちそうさま」

幼馴染「ごちそうさま」

     カチャ カチャ… ジャー…

男「……ところでさ、幼馴染」

幼馴染「うん、何?」

男「俺達が付き合っている事……しばらく内緒にしておかないか?」

幼馴染「え……」

男「やっぱり、クラスの噂になるかも、だし」

男「幼馴染もそれは嫌だろ?」

幼馴染「…………」




クラスの噂……いや、そんなのはこじつけだ。
本当は、友の気持ちを知りながら 幼馴染へ告白した事に、罪悪感を抱いていたから。
それだけだった……。


いつか、友が幼馴染に告白して玉砕した時――
……俺達の友情は、終わるかもしれない。


幼馴染の病気を考慮して……俺が他の女の子に接触しなければ大丈夫。
最悪の事態にならないよう 最大限気を付ける。
後は……


幼馴染に病気の事を伝えるかどうか……それだけは、まだ迷っていた。





男「……ダメ、かな?」

幼馴染「…………」

幼馴染「ううん……」 フルフル

幼馴染「男が、そうしたいのなら」 ニコ

男「……すまない」

幼馴染「でも」

男「!」

幼馴染「浮気したら許さないからね……」 ゴゴゴ…

男「……ああ」

幼馴染「……ホントに許さないんだから」

     ギュッ…

幼馴染「!!」 ///

男「その時は……遠慮なく殺してくれ。 構わないから」

幼馴染「男……?」 ///


男「そ、それから……」 ///

男「こ、これ以上の行為は、しないつもりだから」 ///

男「今の状況だと、歯止め効かなくなりそうだし……」 ///

幼馴染「!! ……お、男のえっち!」 ///

     バッ!

幼馴染「わ、私、朝練あるから!」 ///

     ダダダッ…

男「…………」 ///

男(幼馴染……) ///

男(良い匂いだったなぁ……) ///


     タッ タッ タッ…

幼馴染「……ふう」


男「こ、これ以上の行為は、しないつもりだから」 ///

男「今の状況だと、歯止め、効かなくなりそうだし……」 ///


幼馴染「~~~~!」 ///

幼馴染(…………ヤバイ) ///

幼馴染(歯止め……) ///

幼馴染(私も効かないかも……) ///

幼馴染(~~~~!!) ///


―――――――――――

     ガヤガヤ…

男「よお、おはよう」

友「おう、おっはー」

女「おはよう、男くん」 ニコ

男「ああ、女ちゃん。 おはよう」 ニコ

男「珍しいね? 友に何か用でも?」

女「今日の日直の事でね」 クス

男「なるほど」

友「はは……嫌な日直仕事も花があれば、ちったぁマシってもんさ」

男「……?」

男(友……何だか元気がない? 日直だからか?)


友「男……そろそろ担任が来るころだぜ? 席に付いとけよ」

男「ああ、そうだな」

女「じゃあ、友くん。また後でね」

友「おー……」

男「…………」

男(腹でも壊したのかな……)

男(ま、いいか)


キーン コーン カーン コーン

幼馴染「男~」

男「おう、幼馴染」

男「じゃ、メシに行きますか」 ニコ

幼馴染「うん!」 ///


モグモグ…

男「…………」

幼馴染「どうしたの? 男?」

男「気のせいか……今日の弁当は、いつもより美味しいような……」

幼馴染「そりゃあ、愛情たっぷり入れたもん!」 ///

男(普段なら「いつもは手を抜いてやがったな」とか言う所だが)

男「そうか……ありがとうな、幼馴染」 ニコ

幼馴染「エへへ……」 ///


?「あ、男くん?」

男「! ……女ちゃん」

女「たまには外で食べようかな? と思って、出てきただけなの」

女「邪魔しちゃって ごめんなさい」 クスッ

男「あ、いや……」

     スタ スタ スタ…

幼馴染「…………」

幼馴染「今の……誰?」

男「! ……女ちゃん。 ただのクラスメイトだよ」

幼馴染「……本当?」


男「嘘ついてどうなるんだよ……」

幼馴染「それはそうだけど……」

幼馴染「何だか男……挙動不審だし」

幼馴染「女ちゃん?は可愛い人だったし……」

男「…………」

幼馴染「……男?」

男「悪ぃ……」

男「嫉妬する幼馴染も可愛いな、と思って」 ニコ

幼馴染「!!!」 ///

幼馴染「バ、バカ! そ、そんなんで、ごまかされないんだから……!」 ///

男「ハハハ……」


男「幼馴染のクラス、次の授業、何?」

幼馴染「現国」

男「よく眠れそうだな」 クス

幼馴染「寝ないよ……男は?」

男「体育。 跳び箱だったかな?」

幼馴染「ふうん。 私は苦手だな」

男「へえ? なんか意外」

幼馴染「跳び箱だけは、どうしてもダメなの……」 ハア…


ピッ   タタタッ ドン! シュタッ

友「あ~……かったりー」

男「メシの後の授業は、みんなそうだよ……」

友「まあ、そうだわな」

男「うし、俺の番か」

ピッ   タタタッ ドン! シュタッ


     グきッ ☆


男「おうふっ!!」

友「!? 男!」

男「……ったあ……着地の時に足首ヒネっちまった……」


友「先生~! 男が怪我したみたいなんで、保健室に連れて行きます」

体育教師「なに……ふむ、仕方ないな」

体育教師「よし、許可しよう」

友「ありがとうございます。 ほら、肩につかまれ、男」

男「すまん……友……いつつ……」

友「少し腫れてきたな……」


―――――――――――




保健医「これは、ちょっと酷いわね……」

保健医「体育の先生に、後の授業は無理だって言っておいてくれるかしら?」

友「わかりました」

友「じゃあな、男」

男「ああ……」

     ガラガラ……パタン

保健医「そこのベッドに横になって休んでいなさい」

保健医「折れてはいないと思うけど……松葉杖がいると思うから、取ってくるわ」

男「わかりました」

     ガラガラ……パタン


男「ふう……」

男「帰りに病院、行ったほうがいいかな……」

男「…………」

男「せっかくだし寝ておくか♪」


―――――――――――


?「……男くん。 男くん?」

男「……ん?」

男「あ、女ちゃん」

女「ふふ、おはよう」 クス

男「ふあっ……」

女「お寝坊さんね。 もう放課後だよ?」


男「そっか……すっかり眠り込んだみたいだ」

男「ところで女ちゃんは、どうしてここに?」

女「男くんの荷物を届けに来たの。 ほら」 ヒョイ

男「あ……俺のカバン。 わざわざごめん」

女「いいのよ。 どうせ学級日誌を職員室に届けに行くついでだったし」

男「あ、そうか。 日直だったけ……友は?」

女「いつの間にか居なくなってた。 たぶん、先に帰ったと思うわ」

男「あんにゃろ……」

女「大丈夫。 その事、ちゃんと日誌に書いておいたから」 ニコ

男「さすが女ちゃん」 クス

     ハハハ…


     ガラガラ!

幼馴染「男!」

男「! 幼馴染……」

幼馴染「だ、大丈夫!?」

男「大丈夫。 まだ痛むけど」

幼馴染「そ、そう……良かった」 グス…

女「えと……幼馴染さん?で、いいかしら?」

幼馴染「え? あ、はい……えと、女さん……でしたっけ?」

女「あ、男くんに聞いてたのね。 あらためまして、幼馴染さん。 女です」 ニコ

幼馴染「こちらこそ。 あらためまして、女さん……」

幼馴染「それで……どうしてここに?」

女「男くんの荷物を届けに来たの。 もう帰るところだから」 クス


女「じゃあね、男くん」

男「ああ、また明日」

幼馴染「…………」


     ガラガラ……パタン


男「じゃ、俺達も帰るか?」

幼馴染「……うん」

男「幼馴染、ちょっと肩を貸してくれるか?」

幼馴染「! ごめん、今手伝うから……」


―――――――――――




カチャ カチャ……

男「ごちそうさま」

幼馴染「……ごちそうさま」

幼馴染「…………」

男「……どうした? 幼馴染」

幼馴染「! うん……」

男「元気無いみたいだけど……」

幼馴染「…………」

男「……?」


幼馴染「……あのね、男」

男「うん」

幼馴染「こんな事言うと……変に思われるかもしれないけど」

幼馴染「あの人……女さん?」

幼馴染「……何か嫌な感じだった」

男「……!」

男(もう症状が悪化してる……!?)

幼馴染「あの人……私に笑いかけた時……」

幼馴染「まるで挑戦状を叩きつけてる様な目で睨んだの……」

幼馴染「ちょっと怖かった」

男「…………」


男「俺は、そう思わなかったけど……」

幼馴染「女の子にしかわからない世界よ」

男「そういうものか?」

幼馴染「…………」

幼馴染「信じてくれないんだ……」

男「そうは言ってないだろ」

幼馴染「もういい……私、寝る」 ガタッ…

男「あ……」

     トコ トコ トコ…

男「…………」

男「洗い物、やっておくか……」 ガタッ


男「ふう……」 ドサッ

男(…………)

男(幼馴染……)

男(やっぱり病気のせいで……?)

男(…………)

男(女の子の世界、か)

男(俺にわかるわけもないな……)

男(…………)

男(…………) zzz


幼馴染(…………)

幼馴染(…………)

幼馴染(やっぱり言うんじゃなかった……)

幼馴染(男……変に思ってただろうな……)

幼馴染(…………)

幼馴染(でも、ホントなんだもん)

幼馴染(…………)

幼馴染(それとも……ただ、嫉妬してるだけなのかな?)

幼馴染(…………)

幼馴染(なんか……やだな……)

幼馴染(…………) zzz

今日はここまでです。続きはまた後日に。


チュン チュン…

男「……おはよう」

幼馴染「! 男……おはよう」

幼馴染「今日は、起きれたんだね」

男「ああ、珍しく、な」 ポリポリ…

幼馴染「…………」

男「…………」

男「顔、洗ってくるわ」

幼馴染「う、うん」


モグモグ……

男「……ごちそうさま」

幼馴染「……ごちそうさま」

カチャ カチャ……

幼馴染「じゃ、私、先に行くから」

男「ああ……」

幼馴染「…………」

     トトト……

男「…………」

男「さて……洗い物しておかなくちゃ」


~学校~

男「ふう……」

友「よう、男。 元気ねーな?」

男「……だいぶマシになったけど、足が痛いからな」

友「あ……なるほど。 そういやそうだったな……」

男「つーか保健室まで、お前が連れてって……まあいいけど」

男「そう言う友も、腹痛は治ったのか?」

友「は? 何の話?」

男「昨日元気が無かったから、腹でも壊したのかと思ってよ」

友「……気のせいだろ」


友「つーか、何で腹痛なんだよ? お前の中で、俺はどういうキャラ付けなわけ?」

男「食い意地張ったチャラ男」

友「泣くよ? 俺、泣いちゃうよ?」


女「おはよう、男くん、友くん。 今日も仲良しね」 ニコ

男「ああ、女ちゃん。 おはよう」

友「おはよー」

女「男くん、足はどう?」

男「まだ痛いけど……だいぶマシ。 歩けるしね」

女「そう、良かった」


女「あ……包帯、ほどけてるね」

男「……ホントだ」

女「私が直してあげよっか?」

男「え!? いいよいいよ! 何か悪いし」

女「いいからいいから。 私こういうの得意なの」

     シュル シュル シュル…

男「へえ……手馴れてるね」

女「私のお父さん、お医者さんでね。 応急処置とかは一通り習ってるんだ」

女「はい! 出来上がり」 ニコ

男「おお……完璧。 ありがとう、女ちゃん」

女「どういたしまして」 クスッ

     テク テク テク…


友「俺も怪我してぇ……」

男「お前は動機が不順だ」

男「……気持ちはわかるけどな」

友「はあ……世の中、不公平だ……」


キーン コーン カーン コーン


男「そろそろ担任が来るぞ」

友「へいへい。 自分の席帰るわ」

     テク テク テク…


―――――――――――




     ガヤガヤ……

男「…………」

男(幼馴染……来ないな) グゥゥゥッ…

男(…………)

男(腹減った……)

     タタタッ

幼馴染「ごめん、男!」 ハア ハア…

男「お、来たか。 どうしたんだ? 幼馴染?」

幼馴染「ちょっと着替えに手間取っちゃって……」

男「着替え? 体操服からの?」

幼馴染(うっかりパンツの履く穴を間違えてて、トイレで直してた、なんて言えない……) ///

男「……幼馴染?」

幼馴染「い、いいから!」 ///


モグモグ…

男「うん、美味しい」

幼馴染「そう、良かった」 ニコ

幼馴染「足は痛む?」

男「痛みはあるけど、大丈夫」

幼馴染「ならいいんだけど……包帯は、ほどけてない?」

男「それも大丈夫。 女ちゃんが直して……」

男「あ」

幼馴染「…………」

男「い、いや自分でやろうとしたんだけど……」


幼馴染「う、うん……き、気にしてないから」

男「そ、そうか」

男「…………」

男「そういや、もうすぐ試験だな」

幼馴染「……話題、変えたかったのはわかるけど」

幼馴染「もう少し別の話、無かったの?」

男「すみません……」

幼馴染「まあ……いいけど」

幼馴染「男はしてるの? 試験勉強」

男「英語以外はそれなりに」


幼馴染「私も英語苦手だなぁ~」

男「日本語も難しいけどな」

幼馴染「数学の方がもっと難しいよ」

男「そう? 俺はわりと好き」

幼馴染「男は理数系、昔から得意だもんね」

男「幼馴染は音楽が得意だったな」

幼馴染「必須科目でないのが残念……」

     ハハハ……

幼馴染「今晩、何が食べたい?」

男「ピーマン以外なら何でも」

幼馴染「じゃあ、ピーマンの肉詰めにしよう」

男「いや、マジ勘弁してください!」

―――――――――――


日直「きりーつ、一同、れい」

     サヨウナラー

     ガヤガヤ……

友「さて、今日も一日終わったな」

男「そうだな」

友「久しぶりにゲーセン、行かね?」

男「ふむ……ま、たまには付き合うか。 いいぜ、友」

友「よし、決まりだ!」

友「駅前のいつもんトコでいいか?」

男「他に知らねーし」

     ハハハ……


     キュン……キュン…キュン……

男「やっぱここは落ち着くな」

友「ちょっとレトロな格ゲーがいいよな」

男「まったくだ」


―――――――――――


男「うえ!? もうこんな時間か……」

友「フフフ……諦めろ男。 もう無理だぜ? 対戦成績を五分に持っていくのは」

男「ちえっ……覚えてろ、友。 じゃあ今日は帰るわ」

友「ああ。 また明日な」

男「おう、また明日ー」


―――――――――――




男「うわぁ……日が暮れてる」

男「幼馴染、怒ってるだろうな……」

男「…………」

男「どうやって機嫌とろう?」 ウーム…

     ガチャ……

男「ただいまー。 ごめん、幼馴染、遅くなった……」

男「……ん?」


ラ ラ  ラ、ラ、ラ  ラ、ラ、ラ、ララ、ラ、ラ、ラ……




参考動画 ク○リの歌 ※注 長いです

http://www.youtube.com/watch?v=wz4eicbwsms



男(なんだ、風呂か……)

男(じゃ、今の内に自分の部屋に逃げておこう) シメシメ…


―――――――――――


     ガラッ!

幼馴染「こら! 男!」

男「うひゃ!?」

男「……な、何でございましょう? 幼馴染さん?」

幼馴染「…………」

幼馴染「御飯、出来てるよ♡」 ニコ♡

男「!? ……お、おう」

幼馴染「じゃ、待ってるからね♡」 スタ スタ スタ…

男「…………」

男「……てっきり怒られると思ったのに」


男「」

     ピーマンの肉詰め

男「…………」

幼馴染「…………」 ニコニコ

男「幼馴染さん……」

幼馴染「なあに?」 ニコニコ

     ガバッ!(土下座)

男「お願いです! いやもう、ホント、勘弁してください!」

幼馴染「んー? 別に私、怒ってないよー?」

幼馴染「でも、残さず食べてね♡」 ニコニコ

男「いやああああああああああああっ!」




俺はもう、恥も外聞もかなぐり捨てて謝り倒した。

……そこ、ピーマンぐらい食えよ、って言わない。

人には、ど―――――――――――しても!

受け入れられないモノが、3つや4つはあるもんだ。



30分後くらいかな? どうにか、あのおぞましい物体を下げてくれた幼馴染は

ハンバーグとサラダ、納豆と味噌汁を出してくれた。

この時のメシは本当に美味かった……。



その後は、風呂に入ってすぐに寝た……早く忘れたかったし……うう。

どうか夢の中ぐらいは、平穏でありますように……。




というところで、今日は終了です。
ここから先は、少々欝展開となりますので、ご注意を……。
それではまた、後日。


チュン チュン…

男「……朝、か……」

男「…………」

男「昨日はリアルで悪夢を見たっけ……」

男「…………」つ(時計)

男「……ずいぶん早く目を覚ましたな?」

男「そういや早くに寝たから、こんな時間に起きたのか……」

     ガバッ

男「たまには早起きするか!」

     トテ トテ トテ…


男(……幼馴染は、まだ起きてない)

男(うし! ここはひとつ、点数稼ぎに)

男(朝ごはんと弁当を作ろう!)


―――――――――――


幼馴染「…………」

幼馴染「……ん?」

幼馴染「…………」 クンクン…

幼馴染「いーにおい……」


     トテ トテ トテ…

幼馴染「……男、おはよう」

男「おう、おはよう、幼馴染」 ニコ

幼馴染「…………」

男「もうすぐ出来るからな。 スクランブルエッグ」

―――――――――――

男「ほい、お待たせ」 コト…

男「トーストもあるぞ?」

幼馴染「……ありがと」

幼馴染「…………」 ハム……モグモグ

幼馴染「うん、美味しい」


     コポポポ……

男「ほら、コーヒー」

幼馴染「うん」 ズズッ

幼馴染「ふう……」

男「さて、俺も食うかな」 ストン(着席)

幼馴染「…………」

幼馴染「…………男」

男「ん?」 モグモグ

幼馴染「昨日は……その、ごめん」

男「……いや、悪いのは俺の方だし、ちゃんと食事用意してくれたし」

幼馴染「…………」


男「少しは点数稼ぎしたいし」

幼馴染「それが本音ですか」

男「まあ、冗談はそのくらいにして……」

男「昨日は本当に悪かったよ。 反省した」

男「許してくれるか?」

幼馴染「…………」

幼馴染「ま、そんなに怒ってたわけじゃないし」

幼馴染「いいよ、男」 クスッ

男「ハハハ……」

幼馴染「でもピーマンは、食べれる様になってね?」

男「…………善処します」

―――――――――――


幼馴染「じゃ、先に行くね?」

男「ああ。 行ってらっしゃい」

幼馴染「行って来まーす!」

     パタン

男「…………」

男「さて、洗い物を片付けて、俺も行きますか!」

男「…………」

男(ヤンデレ症候群……)

男(今は……大丈夫なのかな……?)

男(…………)


~学校~

男「おはよう、友」

友「おう! 来たか、男!」

男「……機嫌良さそうだな」

友「ニシシシ……昨日はお前に圧勝したからな♪」

友「気持ちよく起きれたぜ!」

男「さいですか……」

友「今日もどうだ? 男? リターンマッチするか?」

男「いや……遠慮しとくよ」

友「んだよ、連れねーな」

男「俺は寝覚めが悪かったんでね」


女「おはよう、男くん、友くん」

男「ああ、おはよう、おん……!?」

友「え!? ちょっと女ちゃん、どうしたんだよ! その右腕!?」

女「エへへ……転んだ拍子に捻っちゃった」

男「そうか……災難だったね……」

友「つーか、利き腕はやべえなぁ……」

女「うん……まあでも、ただの捻挫だからすぐ治ると思うし」

男「何か困った事があれば言ってくれ。 手伝うから」

友「俺も及ばずながら、手伝うぜ?」

女「ありがとう……男くん、友くん」

女「その時は、頼りにさせてもらうわ」 ニコ


キーン コーン カーン コーン

友「やっと昼だ……」

友「おめーはいいよなぁ……毎日、幼馴染ちゃんの愛妻弁当、食えるんだもの」

男「今日は俺が作ったけどな」

友「へえ? お前、料理なんてできるの?」

男「たしなむ程度には」

友「でも、食ってみたいとは思わない不思議」

男「……なんか地味に腹立つな」

友「じゃあお前、俺の作った料理、食ってみたいと思う?」

男「微塵も思わねえ」

友「……言われると腹立つな」

男「だろ」


幼馴染「男~」

男「おう、幼馴染」

男「じゃ、行くか」

幼馴染「うん!」

     タッ タッ タッ…

友「…………けっ」

友「さぁーて……購買にでも行きますか」

     ピピピッ……ピピピッ……

友「…………」 ガチャ

友「……ああ、わかってる」

友「お前こそしくじんなよ?」 ピッ…

友「…………」


ハム……モグモグ……

幼馴染「うん、美味しい!」

男「……正直、幼馴染には負けてるな」

幼馴染「そお? 十分、美味しいけど」

男「多分あれだ、フタを開ける楽しみが無いからだ」

幼馴染「フタを開ける楽しみ?」

男「自分が作ってると、中身が何か、わかってるからな……」

幼馴染「ああ……そういう事」

幼馴染「私は、そういうのあんまり気にしないけど……」

幼馴染「誰かにお弁当を作ってもらえるのって嬉しいし」

幼馴染「自分が作ったお弁当を『美味しい』って言って食べてもらえるのも嬉しい」 ニコ


男「幼馴染らしいな」 クス

幼馴染「それって褒めてるの?」

男「もちろん」

幼馴染「…………」

幼馴染「……明日、休みだね」

男「週末だもんな」

幼馴染「よ、良かったら、さ……」

幼馴染「どこか行かない?」 ///

男「遊園地とか?」

幼馴染「うん。 そういうのでもいいし、公園を散歩、とかでもいい」 ///

幼馴染「男と付き合って初めて……二人きりで、どこかに行きたいの」 ///

男「幼馴染……」 ///


男「そういう事なら、何か考えてみるかな」

幼馴染「うん!」 ///

男「でも、家でも二人っきりだけど……?」

幼馴染「……!」 ///

幼馴染「お、男のえっち!」

男「なんでそうなる……あ」

男「……悪ぃ」 ///

幼馴染「…………」 ///

幼馴染(でも……男が、それを望むなら……) ///

幼馴染(私……) ///


―――――――――――




キーン コーン カーン コーン

男「さーて、今日も終わった。 帰るか……」

女「男くん、友くん」

男・友「ん?」

女「あの……突然なんだけど、ちょっと付き合ってもらえないかな?」

男「これから? ……どうしたの?」

女「実は……お母さんに買い物を頼まれたんだけど」

女「私、ついうっかり怪我してるのを忘れて、受けちゃたの……」

友「ありゃりゃ……今からでも断れねーの?」

女「それが……お母さん、携帯の電源切ってるみたいで……」

友「そっか……うーん、間が悪いなぁ……」

男「ん? 間が悪い?」


友「それがよ、学年主任に放課後、呼び出されてるんだわ」

男「お前、何やらかしたんだよ?」

友「俺が幽霊の部活顧問なんだわ」

友「部室の整理するから顔出せって……バックレたら担任にある事無い事ぶちまけるってよ」

男「……それもどうかと思うけど、お前も悪いな」

友「そんなわけで、俺、参加できない。 ……ごめん、女ちゃん」

女「ううん……私の方こそ、無理を言ってるんだから……気にしないで?」

友「じゃ、行ってくるわ」

     テク テク テク…

男「…………」

女「…………」


男「……えと、じゃあ行きますか?」

女「ごめんね、男くん……」

男「いいさ。 役に立てるならこっちも嬉しい」 ニコ

女「ありがとう」 ニコ

女「じゃあ、この前のスーパーに行きましょう?」

男「ああ」



―――――――――――





幼馴染「お疲れ様でしたー」

     オツカレー

幼馴染「ふう……」

     テク テク テク

?「あれ? 幼馴染ちゃん?」

幼馴染「えっ?」

友「や!」

幼馴染「えっと……友くん?」

幼馴染「どうしたの? 部活、してたっけ?」

友「いやぁ……それがさぁ……」


―――――――――――




幼馴染「それは友くんが悪いと思うな」

友「面目ありません……」

幼馴染「ふふ、ちゃんと部活は、やっておいた方がいいよ?」

友「ハハハ……」

友「ところで……、一緒に帰らない?」

幼馴染「えっ?」

友「だ、だめ、かな?」

幼馴染「…………」

幼馴染「……いいけど」

友「あ、ありがとう! 幼馴染ちゃん!」


友「へえ、これから買い出しか」

幼馴染「うん」

幼馴染「だって男に頼むと、ピーマン買って来ないし」

友「……男、嫌いなんだし、いいんじゃない?」

幼馴染「私が好きなんだもん」

友(ちょっと同情するわ……男)

幼馴染「ところで友くんは、道、いいの?」

友「幼馴染ちゃんさえ良ければ、家まで送るよ?」

幼馴染「え、えっと……さすがに遠慮しとく」

友「ハハハ……」


幼馴染「さて、スーパーに到着!」

友「俺も手伝おうか?」

幼馴染「え? ううん、いいよ、そんなに大した荷物じゃないし」

友「そっか……じゃあ、俺はここで」

友「またね、幼馴染ちゃん!」

幼馴染「うん、またね! 友くん」

     タッ タッ タッ…

幼馴染(さぁーて、今日のメニューは何にしよう?)

幼馴染(野菜炒めかな……それとも……)

幼馴染「」



幼馴染(男……それに女さん!?)





幼馴染(……何……してるの?)

幼馴染(あ……女さん、腕に包帯巻いてる)

幼馴染(…………)

幼馴染(きっと……頼まれたんだわ)

幼馴染(買い物を手伝ってって……)

幼馴染(…………)

幼馴染(…………でも)

幼馴染(何か……嫌!) ダッ!

     タッ タッ タッ…

友「…………」


友(…………さぁーて)

友(どうする? 男……)

友(幼馴染ちゃんをヤンデレ症候群と知ってるお前が)

友(今日の出来事を正直に話せるかな?)

友(見ものだな……クックックッ……)

友(…………)



―――――――――――





男「ただいまー」

幼馴染「……お帰り、男」

幼馴染「遅かったね」

男「ああ……また友に誘われてゲーセンに行って来た」

幼馴染「…………」

幼馴染「……そう」

男「…………幼馴染?」

幼馴染「何でも無い」

幼馴染「御飯、出来てるから」

男「あ、ああ……」

男(……?)


男「ごちそうさま」

幼馴染「ごちそうさま」

カチャ カチャ…

男「あ、洗い物は……」

幼馴染「いい。 私、やるから」

男「…………」

男「……どうしたんだ? 幼馴染……」

男「俺、何かしたか?」

幼馴染「…………別に」

男「…………」

男「……そうか。 じゃ、俺、風呂入ってもう休むわ。 お休み、幼馴染」

幼馴染「……お休み」


男「…………」

男(……まさか)

男(今日の事、知ってる?)

男(…………)

男(……だとしたら、マズかった?)

男(…………)

男(だけど……)

男(ヤンデレ症候群を悪化させるわけにもいかないし……)

男(…………)

男(…………)

男(…………くそ、どうすりゃ良かったんだよ……!)


幼馴染(…………)

幼馴染(…………)

幼馴染(……どうして)

幼馴染(こんなにショックなんだろう?)

幼馴染(…………)

幼馴染(そうだよ)

幼馴染(嘘付かれたのが……嫌だったんだ)

幼馴染(…………)

幼馴染(…………)

幼馴染(…………男) ジワッ…


~翌日~ ~休日の朝~

チュン…… チュンチュン

男「……ふあ」

男「おはよう、幼馴染……」

男「……うん?」

幼馴染「…………」

男「どうしたんだ? 幼馴染……」

男「こんな早くに、すっかり着替えて?」

幼馴染「…………」

男「ああ、あれか。 二人でどっかに行こうって……」

幼馴染「男」


男「ん?」

幼馴染「私……自分の家に戻る」

男「…………」

男「は?」

幼馴染「もうすぐ試験だし……勉強しないと」

男「え? は? いえ?」

幼馴染「男なら、ご飯くらいどうとでも出来るでしょ?」

幼馴染「じゃ、もう行くから……」

男「…………」

     キィ……パタン……

男「…………」

男「……え? え?」










 ――しばらく俺は――

 ――何が起こったのか、理解できないでいた――









今日はここまでです。




―――――――――――



男「…………」つ(カップ麺)

男「…………」 ペリペリペリ…

男「…………」 ズズッ……

男「…………」

男(……結局、幼馴染とまともに話せずじまい)

男(虚しく夕食をひとり、カップ麺すする事に……)

男(…………) ズズッ……

男(…………)

男(…………) ハア……


     ピピピ……ピピピ……

男(幼馴染!?) バッ!

男(…………友か) ピッ

男「……もしもし」

友『いよー! 絶賛彼女募集中の』

     ブッ

男「…………」

     ピピピ……ピピピ……

男「…………」 ピッ

友『酷ぇーじゃねーかよ! 男! いきなり切るなんて!』


男「……悪いけど、今、すげぇ機嫌が悪いんだ」

友『……んだよ? 幼馴染ちゃんとケンカでもしたのか?』

男「…………」

友『もしかして図星?』

男「用がないのなら切っていいか?」

友『わー! ちょい待ち!』

友『ま、まあそういう事とは露知らず……メシでも食いに行かね?』

男「唐突だな……けどパス。 今、カップ麺食ってるところだ」

友『そ、そうか……』

友『……なんつーか変な話だけど、元気出せよ、男』

男「……言われるまでもねーよ」

友『そっか……じゃあな』

     ブッ……ツー、ツー


男「…………」

男「あいつ……何しに……」

男「…………」

男「まあ……普段から下らない事で、よくかけてくる奴だったな」

―――――――――――

友「…………」

友「へへ……どうやら相当、落ち込んでるみたいだな」

友「ま……お前のせいじゃ無いけど……」

友「…………」

友「悪く思うなよ、男」



―――――――――――


男「ふあ……」

男「朝……か」

男「…………」

男(やべぇ……何もやる気が起きねぇ……)

男「…………」

男「……しっかりしろ、男」

男「別に死に別れたわけじゃないだろ……」

男「すぐ隣の家に居るじゃないか、幼馴染は」

男「…………」

男「……ハア」


男(休日二日目……)

男(何すっかな)

男(…………)

男(試験勉強でもするか)

     ピピピ……ピピピ……

男(また友か?)

男(……ん? 女ちゃん?)

男(珍しいな……) ピッ

男「もしもし」

女『あ、男くん?』


男「どうしたの? 女ちゃん。 珍しいね?」

女『えっ? これまでも何回か、かけていたんだけど……』

女『履歴……残ってない?』

男「……あ~、ごめん。 そういやそうだった……」

女『もう……酷いな、男くん』

男「で? 何か用なの?」

女『この間はありがとう。 すごく助かったわ』

男「なんでもないよ、あれくらい……」

女『でね、そのお礼……したいな、って思って』

男「えっ!? い、いや、いいよ、そんな……」

女『ああ、そんな大層なモノじゃないの。 友くんや幼馴染さんなんかも誘って』

女『私の家で、一緒にお昼でもどうかな?ってだけだから……』

男「そ、そうなんだ……」


男「えと……幼馴染の都合を聞いてからでいい?」

女『ええ、もちろん!』

男「じゃ、また後でかけるから……」

女『うん、待ってるね』

     ブッ……ツー ツー

男「…………」

男(とは言うものの……)

男(幼馴染……出てくれるかな……)


―――――――――――




幼馴染(…………)

幼馴染(ハア……)

幼馴染(何もやる気しない……)

幼馴染(…………)

幼馴染(男……今、何してるのかな?)

幼馴染(…………)

幼馴染(……結局)

幼馴染(男の事ばかり考えてる……)

幼馴染(…………)

幼馴染(…………)

幼馴染(男……どうして嘘ついたの……?)

幼馴染(…………)


     プルルル……プルルル……

幼馴染「……あ」

幼馴染「男だ……」

幼馴染「…………」

幼馴染「…………」 ピッ

幼馴染「……もしもし」

男『……! 幼馴染!』

男『良かった……出てくれたか』

幼馴染「…………」

幼馴染(男の声……久しぶりに聞いた気がする)

幼馴染(…………っ) ジワッ…

幼馴染(嬉しい……嬉しいよ……)


男『……幼馴染、元気か?』

幼馴染「……うん」

男『そっか……なんて言うか……久しぶりにお前の声聞けて、嬉しいよ』

幼馴染「男……」

幼馴染「……わ、わた」

男『それでさ、ちょっと話があるんだけど……』

幼馴染「う、うん……」

男『……まず、先に謝っておく。 ごめん、幼馴染』

幼馴染「え……」

男『俺……嘘ついてた』

幼馴染「!」


男『一昨日、遅くなったのは友とゲーセンに行ったからじゃない』

男『実は……怪我をした女ちゃんの買い物を手伝ってたんだ……』

幼馴染「…………」

幼馴染「うん……知ってた」

男『……え!?』

幼馴染「あの日、偶然友くんと帰る事になってね」

男『げ……』

幼馴染「私も買い物にスーパーに寄ったんだ」

幼馴染「そしたら……」

男『…………なんか、もう、ホントに、ごめん……』

幼馴染「ふんだ。 私、嘘つかれて、すっごく傷ついたんだからね?」

男『いや、もう、ホントにすみません……』


幼馴染「いいわ……正直に話して、謝ってくれたから許してあげる」

幼馴染「……でも、もう嘘つかないでよね?」

男『あ、ああ……』

幼馴染「ふふ……。 で? 用って何?」

男『それが……その、女ちゃんがその時のお礼がてらに、友や幼馴染も呼んで』

男『一緒にご飯食べないか?って……』

幼馴染「……!」

男『もちろん、幼馴染が嫌なら、俺も断るつもりだ』

男(……クラスじゃちょっと気まずくなるだろうけど)

幼馴染「…………」

幼馴染「ううん、私、行くわ」

男『え』


男『いいのか?』

幼馴染「なによ~? 私がそんなに心の狭い人間だと思うの?」

男『いやいやいや! そんな事は!』

幼馴染「じゃあ決まり! ふふふ~どんなご飯か、楽しみ!」

男『そ、そうか……』

男『じゃあ、準備が出来たら、俺の家まで来てくれ』

男『女ちゃんの家に一緒に行こう』

幼馴染「うん!」

男『じゃ、また後で』

幼馴染「また後でね!」 ピッ

     ツー……ツー……


幼馴染「…………」

幼馴染「女さんか……」

幼馴染(…………)

幼馴染(女さん、男の事、好きだよね……)

幼馴染(あの時のあなたの目は……絶対、私に対する『挑戦状』だった)

幼馴染(…………)

幼馴染(いいじゃない……受けて立つわ、その戦い)

幼馴染(たぶん、この食事もその一環……)

幼馴染(どんな考えがあるのか、わからないけど)

幼馴染(あえて、その誘いに乗ってあげる……!)

幼馴染(絶対に、負けないんだから!) グッ…!

―――――――――――


男「…………」

男(幼馴染……俺に嘘をつかれて、怒って)

男(……いや)

男(信頼を裏切られて、ショックだったんだな……)

男(…………)

男(…………けど)

男(ヤンデレ症候群……)


 ――治す手立ては……ありません――


男(……っ) ゾクッ…

男(…………)


男(……迷うな、俺)

男(何があっても……たとえ幼馴染に殺される事になろうとも)

男(それを受け入れるって、覚悟を決めたじゃないか)

男(…………)

男(…………)

男「ふう……」

男「さて、女ちゃんに電話を入れておくか……」



―――――――――――





     タッ タッ タッ

幼馴染「男、お待たせ!」

男「お、来たか。 幼馴染」

幼馴染「…………」

男「…………」

幼馴染・男(久しぶりに顔が見れた……) ///

男「じゃ、じゃあ、行こうか?」 ///

幼馴染「う、うん!」 ///

     テク テク テク

幼馴染「ところで、女さんの家って?」

男「意外と近い。 歩いて10分くらい」

男「考えてみれば俺達のよく行くスーパーで買い物してるって言ってたし……」

幼馴染「知らない内に、顔を合わせてるかもしれないね」

男「そうだな」


     ピンポーン

インターホン『はい?』

男「あ、えと……男です」

インターホン『ああ、男くんね? ちょっと待ってて……』 ブッ…

幼馴染「……結構大きなお家だね」

男「……庭が広いな」

     ガチャ

女「お待たせ、男くん、幼馴染さん」 ニコ

女「どうぞ、入って?」

男・幼馴染「お邪魔します」


友「よう! 男、幼馴染ちゃん!」

男「おう。 友」

幼馴染「こんにちは、友くん」

友(……男の奴。 もう幼馴染ちゃんと仲直りしたのか……)

女「さて、みんな揃った事だし、始めるね?」

男「おー……天ぷらだ」

幼馴染「豪勢ね~」

友「超美味そう~」

女「ちょっとお昼には重いかもしれないけど、揚げたてをご馳走したくて」

女「どうかな?」


男「うん、全然オッケーだよ。 好物だし」

幼馴染「私も!」

友「俺も!」

女「うふふ、良かった。 じゃ、まず何から行く?」

女「私、どんどん揚げていくから」

男「俺、エビ!」

幼馴染「私、ピーマン!」

友「お、幼馴染ちゃん? ピーマンは無さそうだけど?」

幼馴染「え~?」

女「ご、ごめんなさい、女さん。 ピーマンは無いわ……」

男「いや、女ちゃん、気にしないで。 ふつー天ぷらにピーマンは無いよ」

幼馴染「ぶー……じゃあ、獅子唐!」

友(どんだけピーマン好きなんだよ……)


女「あ、そうだ」

女「言い忘れてたけど、そこにいくつかの天つゆを用意しておいたから」

女「自分の好みに合わせて使ってね?」

男「ああ、わかった」

幼馴染「醤油ベースとゴマだし……へえ、こんなのもあるんだ」

友「おっ! このゴマだしのやつ、結構いける!」

     ワイノ ワイノ

男「ウ○ターソースはある?」

女「もちろん。 はい、どうぞ」

友「おっさんくせーな、男」

男「うるせー、好きなんだからいいだろ」


幼馴染「友くんはそれ、何つけて食べてるの?」

友「シンプル イズ ベストに、塩」

男「おめーの方が、おっさんくせーじゃねーかよ」

友「うるせー、ツウって言え。 ツウって」

幼馴染「アハハ」

     ワイノ ワイノ

男「そろそろ交代しようか? 女ちゃん」

女「え? いいよ、私は後で……」

友「遠慮すんなよ、女ちゃん。 こういうのは、みんなで食べるから美味いんだぜ?」

女「でも……」

幼馴染「いいからいいから。 私も手伝うよ、男」

男「おう、すまんな、幼馴染」

女「じゃあ、お願いするね?」


     ワイノ ワイノ

女「うん! 美味しい!」

女「男くん、天ぷら揚げるの上手ね!」

男「そう? 結構適当だけど」

友「どれどれ……」 パク

友「お! ホントだ、美味しく揚がってる」

幼馴染「でしょ? 以外に料理上手いの、男」

男「以外は余計だ」

女「ふふふ、好感度上がっちゃうな」

友「……俺も料理、覚えようかな」

     ワイノ ワイノ

友「ふい~……食った食った」

男「美味かったな」

幼馴染「でも揚げたてで、アツアツだったから口の中、火傷だらけ……」

女「ちょっと痛いね……美味しかったけど」 クスッ


幼馴染「あ、女さん。 その、お手洗いを貸してもらえる?」

女「ええ。 そこを出て……あ、いいわ、私が案内するから」

幼馴染「え? 場所さえ教えてくれたら……」

女「いいから。 ついて来て?」

幼馴染「うん」

     テク テク テク

男「あーねみー」

友「至福の時だなー」


―――――――――――




女「はい、ここよ」

幼馴染「ありがとう、女さん」

     ガチャ……キィ……パタン

幼馴染「ふう……」

     ※注 ドア越しです

女「…………」

女「…………」

女「ねえ、幼馴染さん」

幼馴染「ふいえ!? ……な、何、かな? 女さん」 ///

女「あなたは」

女「男くんと……」



女「キスした事……ある?」





幼馴染「!?」

女「…………」

女「ふふふ……」

女「私は、あるんだ……」



女「男くんと、キスした事」



幼馴染「!!?」 ビクン

女「保健室でね……」

女「男くんの唇、意外と柔らかいのよ?」

女「ふふふ……」 スタ スタ スタ…

幼馴染「…………」


―――――――――――

男「お、帰ってきたか、幼馴染」

幼馴染「……うん」

男「……?」

女「…………」

友「…………」

男「ええと、それじゃあそろそろ、片付けをしますか?」

女「あ、いいよ、男くん。 みんなは今日のゲストなんだし」

女「私がやるから」 ニコ

男「でも……」

友「そうだぜ、女ちゃん? ご馳走になってばかりじゃ気が引けるってもんさ」

女「そう?」


女「じゃあ……友くんだけ手伝ってくれる?」

男「え? なんで?」

女「なんだか、幼馴染さんの調子が悪そうだし……彼女に付き添ってあげて?」

幼馴染「!?」

男「……そうなのか? 幼馴染?」

幼馴染「え? あ……その……」 オロオロ…

男「……確かに、調子は悪そうだな」

友「俺の事は気にすんな。 この前は俺、女ちゃんの事、手伝ってやれなかったし」

男「じゃあ悪いけど……お言葉に甘えさせてもらうよ、女ちゃん、友」

女「うん! また学校でね、男くん」

友「またなー」

     テク テク テク…


友「…………」

女「…………」

友「上手くやったか?」

女「多分ね」

友「ククク……さぁて、どうしますかね? お優しい男くん?」

女「…………」

―――――――――――

男「大丈夫か? 幼馴染?」

幼馴染「うん……大丈夫、男」

男「なら、いいけど……」

     テク テク テク…


幼馴染「…………」

幼馴染「ねえ、男……」

男「うん?」

幼馴染「私……男の家に戻ってもいい?」

男「…………」

男「ああ、いいぜ?」 ニコ

幼馴染「ありがとう、男」 ホッ…

男「正直……ひとり寂しく食べるカップ麺は、美味くない」

幼馴染「私も久しぶりに両親と食べたんだけど……何故か違和感を感じちゃって……」

男「…………」

幼馴染「…………」

     アハハハ……


幼馴染「晩御飯、何にする?」

男「……今は何も思いつかないな」 ウプ…

幼馴染「軽いもの……あっさりした物がいいかな?」

男「あ~……確かにそうだな」

幼馴染「お茶漬けとか?」

男「いいね」

男「沢庵とか、漬物で食いたいかも」

幼馴染「じゃあ、それにしましょ♪」

     アハハハ……

幼馴染(…………)



―――――――――――


幼馴染「ごちそうさま」

男「ごちそうさま」

     カチャ カチャ…

幼馴染「あ、洗い物しておくから、お先にお風呂どうぞ」

男「ん? じゃあ、お先に」

幼馴染「うん」

     ザザーン……

男「ふうー……。 いい湯だ」

幼馴染『男~』

男「……!? え!? な、何!?」 ///


幼馴染『……石鹸、まだある?』

男「お? ……ああ、まだあるぞ」

幼馴染『そう。 ごめん、それだけだから』

男「お、おう……」

男「…………」

男「……びっくりした」

男(まあ……ちょっと妄想するなら)

男(お背中流しますか~? なんて……) ///

男(ぬっふっふっ……) ///


―――――――――――




男「幼馴染~。 風呂、空いたぞ」

幼馴染「あ、うん。 ありがと」

幼馴染「じゃ、入ってくるね」 ニコ

男「おー」

     トトトトト…

男「…………」

男「さて、後は寝るだけだな……」

男(…………)

男(今日は何事もなく、平穏に終わった……)

男(明日もこうだったらいいんだけど)

男(……ま、それは神知るかな)

     テク テク テク……

―――――――――――


男「……さぁーて、そろそろ眠るとしますか」

男「…………」 ゴソゴソ……

     コン コン

幼馴染『……男』

男「ん? どうした? 幼馴染?」

     ガチャ……キィ……

幼馴染「…………」

男「…………」

男「…………?」

男「どうした? 幼馴染?」




 ……幼馴染は、何も言わず俺の部屋に入ると、そのまま俺のベッドに入り込んだ。



男「」

幼馴染「…………」 ///

男「……お、幼馴染、さん?」 ///

幼馴染「…………」 ///



風呂上がりのパジャマ姿……幼馴染から石鹸とシャンプーの香りがただよってくる……。

俺の心臓が、動きを早めていく……。 

そして、彼女は、目を伏せながら、信じられない一言を言い放った。



幼馴染「…………」 ///

幼馴染「……男」 ///










幼馴染「私を……男のモノにして――」 ///









本日はここまで。投下が遅くなって、すみませんでした。
それでは、また後日。



―――――――――――


顔が熱い……胸の鼓動が、収まらない……。

私…………大きな決断をした。


保健室での出来事を確かめるよりも……

女さんが、これ以上男に何かをする前に行動をしたかった。


ただ……それだけだった。







………………………………。

本当はこんな事……望んでいない。

もっと、ゆっくりと、お互いの気持ちを確かめて、感じて……

それからにしたかった……。


……怖い。 心の準備も出来ないまま……私は、ここに居る。

何をするのか、どういう事なのかは、頭でわかってるのに……

男の事、好きなのに。 怖くて怖くて……仕方なかった……。





男「…………」 ///

男(……?)

男(幼馴染……震えてる?)


……何が、幼馴染にこれをさせたのか……わからない。

けど……


男「……幼馴染」

幼馴染「!」 ビクッ!

男「いったい、どうしたんだ?」

幼馴染「…………」

男「……おさな」 ハッ!?




 ――具体的な症状は?――



 ――恋心や行為を抱いてる人に対し、異常なまでの束縛――

 ――独占欲や露骨な愛情表現――


男(…………っ)

男(……やばい)

男(もう……相当に症状が悪化してるのか?)

幼馴染「…………」

男(…………) ゾクリ…

男(どうする?)

男(どうしたら……幼馴染を止められる!?)

男(どうしたら……!)


男(…………)

男(…………仮に)

男(このまま幼馴染を受け入れたら、どうなる?)

男(…………)

男(それは、俺への依存度を高める行為に他ならない)

男(……つまり、病気を進行させ)

男(嫉妬に狂った幼馴染が……誰かを……襲う可能性を)

男(高める、という事……!)


幼馴染「…………」


男(…………)

男(…………)

男(…………なんて事だ)

男(俺は……今の今まで……幼馴染が)

男(ヤンデレ症候群じゃないって……思い込もうとしていたんだ)

男(だからこそ……)

男(一番、病気を進行させない方法を)

男(意識的に避けてきた……)

男(…………)

男(…………)

男「幼馴染……」


幼馴染「…………」


男「もう……やめよう?」

幼馴染「……!!」

男「……その、気持ちは嬉しい」

男「でも……こんなのは、不自然だ」

幼馴染「…………」

男「だから……な?」



     ダッ!!



男「あっ!!」

男「…………」

男「…………」


男「……はぁー」

男「…………」

男(……超ギンギンだ)

男(情けねぇなぁ……)

男(…………)

男「あ――もう!! くそっ!!」



―――――――――――







翌日の朝、俺は朝寝坊した。

幼馴染が起こしに来なかったからだ。







そして、幼馴染は、もう居なかった。

学校に行ったから、じゃない。 彼女の持ち物も全部無くなっていた。

それは……もうここに、俺の家に戻る気が無い、と、いう事なのだろう。



もちろん、昼に幼馴染が来る事も無くなった。

……珍しく、友が何かを察して、それをツッこむ事は無かったが

逆にそれが辛くもあった……。







幸い、と言うか、すぐ試験期間に突入したので学校は昼で終わり。

正直、助かっていた。 ……幼馴染に遭遇する確率が少なくて済むからだ。



クラスが違うから、と言っても偶然には会ってしまう。

その時の幼馴染は……俺が嘘を着いた時と同じように

……いや、それ以上に、俺に失望した、という様な表情を見せた。



でも……これで良かったのかもしれない。

幼馴染が俺と仲良くなればなる程、彼女は……誰かを傷つける可能性が高まるのだから……。

そして……試験期間は終わり、試験休みに入った。

試験結果は……当然の事ながら、あまり期待できそうになかった。





―――――――――――

男「…………」

     ゴウン ゴウン

男(はあ……)

男(……今夜、何を食うかな)

男(…………)

     ピー、ピー、ピー

男「お……洗濯、終わったか」

男「……よいしょっと」

     カタン……スッ、スッ……

男(…………)


男(……すぐそこに幼馴染の家が見えるのにな)

男(目に見えない、分厚い壁がある様に思える……)

男(…………) パンパンッ

男(今日はいい天気だな……)

男(…………) スッ スッ

男(…………) パンパンッ

―――――――――――

男「…………」つ(コンビニ弁当)

男「いただきます」

男「…………」 モグモグ

男「…………」 モグモグ

男「……ごちそうさま」


男「はあ……」 ゴロン

男「…………」

男「…………」

男(幼馴染……何してるかな……)



 ――私を……男のモノにして――



男「…………」

男「…………はあ」

男「あ、やべ。 風呂沸かしてなかった!」 ガバッ



―――――――――――


幼馴染「…………」

幼馴染(……男、何してるかな?)

幼馴染(…………)

幼馴染(ちゃんと、食べてるかな……)

幼馴染(…………)



 ――もう……やめよう?――



幼馴染(…………)

幼馴染(…………男)

幼馴染(冷静だったな……)

幼馴染(…………)


幼馴染(…………)

幼馴染(……やっぱり小さい頃から一緒だと)

幼馴染(異性として見てもらえないのかな……)

幼馴染(…………)

幼馴染(…………) グスッ…

幼馴染「うっ………ヒクッ………うっ…うっ…」 ポロッ…

幼馴染「……ううっ………ぐっ………うっくっ……」 ポロッ…

幼馴染「私……頑張ったのに…………怖くて……も……」 ポロポロ…

幼馴染「……男な、らって、……私…………私……わ、たし……」 ポロポロ…

幼馴染「迷、惑だ……った?……魅力が……無か、った?……」 ポロポロ…

幼馴染「うあああっ……あっ……あっ……うっうっ……」 ポロポロ…

―――――――――――


~翌日~ ~休日の朝~

チュン…… チュンチュン



男「ふあああああっ……」

男「…………」 ポリポリ…

男「試験休みは明日でおしまい、か……」

男「……よっと」 スクッ

男「…………」

男「朝飯食ったら……どこかプラプラしますか」

男「…………」

男「とりあえず顔洗おう……」

     スタ スタ スタ…


男「ごちそうさま、と……」

男「さて、着替えますか」

男「…………」 サッ サッ

男「…………」

男「駅前いって……本屋行って……」

男「そうだ、久しぶりにゲームショップも覗いてみよう……」

男(……なんか、独り言が多くなったな……) ハア…

     ガチャ……キィ……パタン  カチリ☆

男「…………」 (幼馴染の家を)チラ

男「…………」

     テク テク テク…


~学校~

幼馴染「ふう……」

?「いよっ! 幼馴染ちゃん!」

幼馴染「……? 友くん」

友「今、部活?」

幼馴染「……ついさっき終わった」

友「そう。 じゃあさ、昼……、一緒しない?」

幼馴染「え……」

友「嫌ならいいけど……最近、男と何かあったんだろ?」

友「男の奴……元気ねーし。 話してくれねーし。 俺で良かったら、相談に乗るぜ?」

幼馴染「…………」

幼馴染「道着、着替えるから、ちょっと待っててくれる?」

友「モチのロンだぜ!」


~大衆食堂~

     イラッシャイマセー

友「俺、ラーメンね」

幼馴染「……私、鯖の味噌煮定食」

―――――――――――

友「で? 何があったの?」

幼馴染「…………」 モグモグ

幼馴染「……ケンカ」

友「そっか……」 ズルズル…

友「どっちが悪かったの?」

幼馴染「…………」 モグモグ

幼馴染「…………」


幼馴染「……男は、どうしてる?」

友「……元気無い、としか言い様がないな」

友「俺が知る限り最上級に」

幼馴染「…………」

友「…………」

友「…………」 ズルズル…

友「……気分転換にさ、どっか行かね?」

幼馴染「え?」

友「いきなり言われても困るだろうけど……デートとかって意味合いじゃなく」

友「散歩みたいな感じで、さ」

友「どう?」

幼馴染「…………」


―――――――――――

~駅前付近~

男「…………」

男(……本屋、潰れてやがる)

男(ここが無くなったら、知ってる本屋、隣町まで行かないと もう無い……)

男(世知辛い世の中だ……) ハア…

男(…………)

男(ゲームショップも閑散としてたし……ヤベェよなぁ……)

男(…………)

男「とにかく行ってみるか」

?「あら? 男くん?」


男「へ? あ……女ちゃん」

女「偶然ね。 男くんもショッピング?」

男「まあ、そんなとこ」

女「じゃあさ、デートしない?」

男「え!?」

女「あら何? その反応?」

男「い、いや……女ちゃんって、そんなキャラだっけ?」

女「あーら。 女の子って、時には大胆になるのよ?」

男「そ、そう、なんだ……」

女「で? お返事は?」

男「…………」

男「……まあ、俺でいいのなら」


女「うふふ、ありがとう!」

女「じゃあ……男くんは、どこに行くつもりだったの?」

男「これからゲームショップに行くつもりだけど」

女「ふうん。 じゃ、まずそこで」

男「女ちゃん、ゲームやるの?」

女「全然」

男「……それじゃ、楽しくないんじゃない?」

女「でも、興味はあるから」

男「そう……構わないのなら、いいけど……」

女「行きましょ、男くん!」 ニコ!


男「さあて……新作は、と……」

女「あ、これ知ってる。 アニマルの森って言うんだよね?」

男「ああ……テレビでガンガン宣伝してるしね」

女「それだけじゃないよ? 私の友達もやってる娘、結構いるし」

男「そうなんだ」

女「男くんは?」

男「三次元デスは持ってるけど、このゲームは持ってない」

女「私みたいな初心者でも出来るかな?」

男「それは……うーん、確かに初心者向きだけど……」

男「合うか合わないかは、人それぞれだし」

女「そっか……」

女「じゃあ男くん、私がこのゲーム買ったら、やり方を教えてくれたりする?」

男「……女ちゃんの友達に聞いた方がいいんじゃない?」


女「私は、男くんに教えて欲しいな」 ニコ

男(ヤベェ……なんか知らんけど、女ちゃん、すごい積極的だ……)

女「だめ?」

男「……そ、そんな事は無いけど」

女「そっか……そんなに嫌なのね……」

男「教えます、教えますとも!」

女「じゃあ、三次元デスと一緒に買う! 男くんも買って一緒にやろうよ!」

―――――――――――

男「……で、こうやって、少しづつ住みよい村にしていくんだ」 ピコピコ

女「最終的には、借金を返せばいいの?」 ピコピコ

男「それも目的なんだけど、のんびりプレイすればいいんだよ」 ピコピコ

女「ふうん」 ピコピコ


男「過去作では、あえて木を全部切り倒して」

男「ゴーストタウンみたいにして、ヒャッハー!してた奴もいたし」

女「……それは、ちょっとどうかと思うけど」

男「そういう楽しみ方も出来るって事だよ」

女「自由度が高いのね」

男「そういう事」

男「……あ、もうこんな時間か」

女「うわ……結局ゲームで、こんなに時間使っちゃった……」

男「それは考えない方がいいよ……」

男「さて……昼はうどん食ったし、晩は何するかな?」

女「…………」


女「……ね、男くん」

男「ん?」

女「私、作ってあげようか?」

男「……え?」

女「男くんの、夕御飯」 ///

男「…………」

男「…………」

男「……それは」

男「俺の家で……って事?」

女「……うん」 ///


男「…………」

男「……俺の家、両親が」

女「え?」



……この時の俺は、どうかしてた。 いや……それは言い訳かな。



女ちゃんは、時折電話をかけてきてたし、警戒心は無かった。

そして……何よりも幼馴染ととる夕飯が無くなって、誰かと食事する事に飢えていたのだと思う。



男「……いや、何でも無い……」

女「変な男くん」

男「じゃあ……頼めるかな?」



―――――――――――


友「……ごめん、こんな遅くまで連れ回して」

幼馴染「ううん……楽しかったよ、友くん」

友「そう言ってくれるとありがたいよ、幼馴染ちゃん」

友「…………」

友「男と仲直り……」

友「早く出来るといいね」

幼馴染「……うん」

友「…………」

友「……とにかく、男と話をしないとダメだぜ? 幼馴染ちゃん」


幼馴染「……うん。 友くんの言う通りだよ」

友「へへへ……」

友「おっと、俺こっちの道だ」

友「じゃあね、幼馴染ちゃん。 また学校で」

幼馴染「うん! また、学校で!」

     タッ タッ タッ…

友「…………」

友「…………」

友「…………」 ピッ ピッ ピッ

友「…………」 プルルルルル……プルルルルル……

友「…………」 ガチャ


友「……今、そっちに行ったぜ」

友「…………」

友「そうか……そいつはいいタイミングだったな」

友「…………」

友「ああ……ちゃんと言っておいたさ」

友「男と話すように、ってな」

友「しっかりやれよ? 大きな山場だし……じゃあな」

     ブッ…

友「…………」

友「…………へっ」

友「ちいっとばかし……胸が痛むね……」




―――――――――――


幼馴染「…………」

幼馴染「……男、またコンビニ弁当と インスタントのループかな?」

幼馴染「…………」

幼馴染「やっぱり、今の時期、鍋だよね」

幼馴染「……喜んでくれるかな? 男……」

幼馴染「…………」

幼馴染(正直……何を話したらいいのか解らないけど……)

幼馴染(でも……)

幼馴染(会わないと……話さないと……)

幼馴染(だめ、だよね……)


~男の家の前~

幼馴染「…………」 ドキドキ

幼馴染「……よ、よしっ」 グッ

     ピンポーン

幼馴染「…………」 ドキドキ

     ガチャ……

男「はーい、どなたですか……」

幼馴染「あっ、男!」

男「! ……幼馴染!」


私は、久しぶりの男の声と顔に高揚した。

その時の男の表情が、どんなモノかも考えずに浮かれていた――





女「男くーん? 誰だったのー?」







     ――その声を聞くまでは――








という所で本日は終了です。
もうすぐ伏線回収に入ります。それでは、また後日。


幼馴染「…………」

男「…………」



     ……女さん?



幼馴染「…………」

男「…………」



     男の家に……どうして居るの?





幼馴染「…………」

男「…………」



     いつから?



幼馴染「…………」

男「…………」



     そこは――





幼馴染「…………っ」

男「…………」



     私の居場所じゃないの?



幼馴染「…………」

男「…………」



     私の――





女「ねえ、男くん、誰なの……あ」

女「……幼馴染さん」

幼馴染「………っ!」

男「女ちゃん……!」

男「あ、あの、幼馴染! これは今日、たまた――」

     バシッ!!

男「ぐっ……!」



     私は……買ってきた鍋の材料を 男に投げつけた。

     そのショックで思わず尻餅をつく男……。



幼馴染「……」

     ダッ!!

男「…………」


     ガチャ、キィ、バタン!  …カチリ☆

幼馴染「…………」

幼馴染「……っ」 ウルッ

幼馴染「やだ……」

幼馴染「こんなの…………」 ポロッ

幼馴染「いやだよっ……!」

幼馴染「……うっ……うっ……うあっ……あああっ…………!」 ボロボロッ

幼馴染「うああああああああああああああああっ……!」 ボロボロッ

幼馴染「ひぐっ……ああああああああああああああああっ……!」 ボロボロッ

幼馴染「あんま、りだ、よっ……! ああああああああああああああああああっ……!」 ボロボロッ

幼馴染「うあっ……ひど、いっ……よっ……おと、こ……男おおおおっ……!」 ボロボロッ

幼馴染「あああああああああああああああああああああああっ……!」 ボロボロッ

―――――――――――


男「…………」

女「……あの、男、くん?」

男「…………」

女「男くん……」

男「…………」

男「……女ちゃん」

女「! う、うん」

男「せっかく、だけど……」

男「今日は帰ってくれるかな?」

女「…………」

女「……うん」




―――――――――――



男「……ハクション!」

男「うう……」 ブルッ……



玄関でほうけてた俺は、自分のクシャミで我に返った。

時計を見ると、21時を指している。



男「もうこんな時間か……鍵しておかないと……」

     ガチャ ガチャ… カチリ☆


男「…………」

男「…………」



その後は、何もやる気が起きず……そのまま自分の部屋のベットに潜り込んだ。

……なんか、頭痛ぇー……。 風邪、引いたかなぁ……。

…………。

もう……どうでもいいや……。



―――――――――――





男「ごほっ……ごほっ……」

男(…………ちょーだりー……)

男(…………)

男(……喉も痛ぇ)

男(…………)

男(…………)

男(熱……相当ある?)

男(…………)

男(…………)


男(…………)

男(何か……せめて、水分を取らないと……) ムク…

男「くっ…………」 フラッ…

男「ごほっ……ごほっ……」

男(……やべぇ……真面目に……)

男(冷蔵庫……こんなに遠かったっけ……)

男「ごほっ……ごほっ……」

     ドサッ……!

男「がっ…………ふ…………」

男(……っ)

男(…………)

男(…………)

男(……幼馴染)

男(…………)




そういや……ここの所、幼馴染の顔……見てないな。

………………。

どうして……俺、今、一人なんだろう……?

………………。

何で、こんなに静かなんだろう……?

………………。

どうして、俺は……こんなに頑張れないんだろう……?



男「…………」




今……何時かな……。

真っ暗だから、夜は明けてないみたいだけど……。

……寒い……寒いなぁ……。



…………。

幼馴染……どうしてるかな……。

………………会いたいな、幼馴染に……。

……………会いたい………。




―――――――――――




     ピピピ……ピピピ……



男「……!」

男「う……」 ヨロッ…

     ピピピ……ピピピ……

男「…………」

男(あ……携帯の着信音か……)

男(…………)

男(俺の部屋に置いてたっけ……誰からだろう……)

男(…………)


男(寒いな……)

男(…………)

男(夜が明けてる……)

     ヨロ ヨロッ…

男(熱……多少は下がったのかな……?)

男(……とにかく、何か……飲まないと……)

男(冗談じゃなく死んじまいそうだ……)

     ヨロ ヨロッ… ガチャ…

     グビッ グビッ グビッ…

男「……ふう」

男「ごほっ……ごほっ……」

男「…………」




―――――――――――



?「――くん! 男くん!!」

男「………?」

女「男くん!! よ、良かった……!」 ウルッ…

男「……女ちゃん?」

女「心配したんだから……! 男くん!」

男「…………」

男「……どうして、君が居るの?」

女「えっ? そ、その……携帯に何度かけても出ないし」

女「昨日……あんな事、あったし……」


男「…………」

男(……俺、玄関の鍵、締め忘れたっけ……?)

男「ともかく、ありがとう、女ちゃん」

男「助かったよ……」

女「! ううん……気にしないで。 それよりも病院行く?」

男「うん……行くよ。 まだ死にたくないし」

女「じゃあ、タクシーを呼ぶね?」

男「歩いていけるよ」

女「ダメよ、男くん。 高熱で倒れたんだから……」

女「とにかく、暖かい格好に着替えて出かけないと!」 バタバタ…

男「あ……女ちゃん……」

男(…………あれ? どうして?)




―――――――――――



     オダイジニー

女「良かった……ただの風邪で……」

男「(新型じゃない)インフルエンザだけどね」

女「もう……どっちにしても、危なかった事に変わりはないんだから」

女「今日は大人しく、あったかくして横になるのよ?」

男「わかってるよ」

女「でも……心配だから、今日くらいは付き添うわ」

男「え? い、いいよ。 そこまでしてくれなくても……」

女「こんな時まで遠慮しないで、男くん」 ニコ

男「…………」


―――――――――――

     カチャ カチャ

女「フー、フー……」

女「はい、あーん」

男「あ、あの……女ちゃん?」 ///

女「えへへ……いちど、やってみたかったの」 ///

女「……ダメ?」 ///

男「う……あ、あーん……モグモグ」 ///

女「どう?」

男「うん、美味しいよ、このお粥」

女「良かった……」 ///



―――――――――――


女「それじゃ、帰るね? 男くん」

男「ありがとう、女ちゃん」

男「本当に助かったよ……」

女「ううん、これくらい何でも無いよ、男くん」

男「……風邪、うつしたらごめん」

女「ああ、それは大丈夫。 私、予防接種、受けてるから」

男「そっか……安心した」

女「明日、男くんが休む事は、私から学校に伝えておくね?」

男「ああ、頼むよ」

女「じゃ、また明日。 学校終わったら様子を見に来るから……」

     ガチャ……キィ……パタン

男「…………」


男「……さて、戸締りをして、と……」

     カチリ☆

男「…………」

男(今日は大人しく、薬を飲んで寝ておこう)

男(調べるのは明日になってからだ……)

男(…………)

男(……だが)

男(もしかしたら……)

男(…………)


~翌日の学校~

     ガヤガヤ

友「……ずいぶんご機嫌だな?」

女「フフフ……まあね」

女「至福のひと時だったわ……」

友「…………」

女「そんなわけで、幼馴染は傷つているはずだから」

女「あなたにとって、絶好のチャンスよ?」

友「……言われなくてもわかってるよ」

女「上手く行くといいね。 健闘を祈ってるわ」

友「ああ」

女「それじゃあね、友くん♪」

友「…………」


キーン コーン カーン コーン

     ジャアネー カエルベー

友「…………」

友「……さて、行きますか、と」

     テク テク テク

―――――――――――

友「やあ、幼馴染ちゃん」

幼馴染「…………友くん」

友「…………」

友「……上手く、行かなかったの?」

幼馴染「…………」

友「…………」


友「な、なあ、幼馴染ちゃん」

友「面白い……つーか、笑える映画のチケットが手に入ったんだ」

友「別に俺と一緒に行かなくてもいい」

友「なんて言うか、気分転換に……どう?」

幼馴染「…………」

幼馴染「……今は、いい」

友「そ、そう……」

幼馴染「それじゃあね、友くん……」

友「……あ、ああ」

     テク テク テク…

友「…………」


友(…………)

友(しょげるなよ、俺……)

友(これから、だろ?)

友(これから……)

友(…………)

友(…………)

友(……っ)

友「くそっ!!」 ダッ!

     タッ タッ タッ…




―――――――――――



     ピンポーン

女「…………」

インターホン『はい?』

女「男くん、私、女です」

インターホン『ああ、女ちゃん。 ちょっと待ってて』 ブッ

     ガチャ

男「お待たせ」

女「ううん、元気そうで良かった」

男「どうぞ、入って」

女「お邪魔します」


男「明日は、学校に行けると思う」

女「もう一日くらい休んだら?」

男「それも考えたけど……幼馴染との誤解を早く解きたいし」

女「……そう」

女「うん、きっとそうだよね。 幼馴染さん……ちょっと様子がおかしかったものね」

男「…………」

女「そうだ、私、今日も男くんに、ご飯を作ってあげようと思っていたの」

女「またお粥とかどう?」

男「うん……頼めるかな? 助かるよ」

女「フフ、任せて!」


     カチャ カチャ

     グツ グツ グツ グツ…

女「これでよし、と……後はお塩を……」 カパッ

女「あれ」

女(お塩、切れてる……)

女(昨日はまだあったのに……)

女(ま、いっか)

女(買い置きの塩は、確かここに……)

     ゴソゴソ……

女(あった!)

女(まずはお塩をお粥に入れて) パッパッ

女(小瓶にお塩を足して、と……)


女「お待たせ、男くん」

男「ああ、ありがとう、女ちゃん」

男「うん、美味そうだ」

女「たーんと召し上がれ♪」

男「モグモグ……美味しい」

男「いいお嫁さんになるよ、女ちゃん」 ニコ

女「! えへへ……もう、やだなぁ、男くん」 ///

     アハハ……

男(…………)



―――――――――――


男「じゃあね、女ちゃん。 お粥ありがとう、本当に助かったよ」

女「ううん、大した事じゃないから。 気にしないで、男くん」

男「それじゃ、また明日」

女「うん、また明日、学校でね」

     キィ……パタン カチリ☆

男「…………」

男(……さて、どうするかな?)

男(…………)

男(……無駄かもしれないけど)

男(…………) ピッピッピッ

男(…………) プルルルルル……プルルルルル……

男(…………) プルルルルル……プルルルルル……

男(…………) プルルルルル……プルルルルル……


男(…………) ……ピッ

男(…………)

男(幼馴染……やっぱり出てくれないか……)

男(…………)

男(…………)

男(……もうおしまいかもしれないけど)

男(会って、話がしたいな)

男(…………)

という所で、今日は終わりです。続きは近い内に必ず。
どこぞの豚野郎みたいに三ヶ月後などではありませんので。
伏線の回収&最終回、となります。それでは、また。




それからの数日間……幼馴染との会話は無い。

学校に行けば、会う機会もあるが――

強引に行けば、逆効果になりそうで恐ろしかった。



あれから女ちゃんは、良く話かけてくる様になった。

良く言えば、フレンドリーに。 悪く言えば、馴れ馴れしく。

そして、何も言わない友。

明らかに……元気が無かった。





~学校~

     ガヤ ガヤ

友「よ、幼馴染ちゃん」

幼馴染「……友くん」

友「…………」

友「あの、さ……」

友「話したい事が、あるんだ」

幼馴染「……うん。 何?」

友「あー……その……」

友「ここじゃ話しにくいんだ……」 ///


幼馴染「……そう」

幼馴染「じゃあ……部活の後なら、時間あるけど……」

幼馴染「それでいい?」

友「お、おう! それでいいよ!」 ///

幼馴染「じゃ……」

     スタ スタ スタ…

友「あ……」

友「…………」



―――――――――――


友「…………」

友「…………」

友「…………」

友「!」

友「幼馴染ちゃん!」

幼馴染「……お待たせ」

友「いや、全然待ってないよ? ハハッ」

幼馴染「……そう」

幼馴染「それで? 話したい事って?」

友「あ、ああ……うん」 ///

友「……その……俺!」 ///




友「幼馴染ちゃんの事が、好きだ!」 ///



幼馴染「…………」

友「……男の事、引きずってるのわかってるけど、つ、付き合いたい!」 ///

幼馴染「…………」

友「…………」 ///

幼馴染「…………」

友「…………」 ///

幼馴染「…………」

友「……幼馴染ちゃん?」

幼馴染「……あ、うん……」

友「……へ、返事は?」


幼馴染「…………」

幼馴染「……いいよ、別に付き合っても」

友「……!」

幼馴染「…………」

友「…………」

幼馴染「…………」

友「……んだよ、それ」

幼馴染「……?」

友(そんな……投げやりな態度で……虚ろな目で……言われても)

幼馴染「……友くん?」


友「ああ、いや、何でも無い」

友「じゃ……また明日」

幼馴染「……うん」

友「…………っ」

     タッ タッ タッ…

幼馴染「…………」

幼馴染(……もう……どうでもいいや)


     タッ タッ タッ…

友「はあっはあっはあっ……」

友「……っだよ、これ」

友「わかってた事じゃねえかよ……」

友「しっかりしろよ、友……」

友「とにかく……okもらえたじゃねえか……」

友「これから幼馴染ちゃんを支えて……楽しい時間を……たく、さ、ん……」

友「……っ ……くっ…………ぐすっ……」 ポロッ

友「こ、これで……ひぐっ…………良かったんだろ…………うあっ……」 ボロボロッ…

友「憧れの……幼馴染ちゃん…………ぐすっ……お前の……彼女じゃねーかよ……」

友「うあっ……どうして…………こんなに…………嬉しくも何ともないんだよっ……!!」

友「どうしてこんなに悲しいんだよおおおおっ!!」 ボロボロッ…

友「うあっ……ああああああああああああああああっ…………」 ボロボロッ…

―――――――――――


友「…………」

友「…………」

友「……時間かけりゃ、いいじゃねーか」

友「そうすりゃ……いつか……」

友「…………」

友(……『いつか』って、いつだ?)

友(…………)

友(それまで……俺は……俺の心は)

友(耐えられるのか?)

友(…………)

友(……この、”罪悪感”に……)

友(…………)


~翌日の学校~

     ガヤ ガヤ

友「……や」

幼馴染「……友くん」

友「…………」

友「昼飯、一緒に食わね?」

幼馴染「…………」

幼馴染「……いいよ」

友「……そう」

友「じゃ、じゃあ、行こっか!」

幼馴染「……うん」


幼馴染「…………」 モグモグ

友「…………」 モグモグ

友「そういやさ、tvで見たんだけど……」

友「久々に面白い芸人が出てきてさ! 傑作だったんだ!」

友「そのギャグっていうのが……」

幼馴染「…………」 モグモグ

友「…………」

友「…………」 モグモグ

幼馴染「……ごちそうさま」

友「……ごちそうさま」

幼馴染「…………」

友「…………」


幼馴染「…………」

友「……なあ」

幼馴染「……うん?」

友「”幼馴染”って呼んでいいか?」

幼馴染「……!」

幼馴染「……うん。 いいよ、別に……」

友「……そう」

友「じゃあ……」



友「キスしてもいいか? ……幼馴染」





幼馴染「……え」

友「俺達、付き合ってるんだろ? それくらい、フツーするだろ?」

幼馴染「…………」

友「…………」

幼馴染「……いいよ」

友「……っ」

幼馴染「……友くんのしたい様にしたらいい」

幼馴染「私は……抵抗しないから」

友「…………」

幼馴染「…………」

友「……うだろ」

幼馴染「……?」

友「違うだろ!! それ!!」


幼馴染「…………」

友「嫌なんだろ!? 嫌なら嫌って言ってくれよ!!」

友「俺は……俺は……!」

友「こんなの、望んでいねーよ!!」

幼馴染「…………」

友「忘れられないんだろ!? 男の事!!」

友「今でも好きなんだろ!?」

友「はっきり言ってくれよ!!」

友「俺の事、嫌いだって!!」

幼馴染「…………」


幼馴染「…………」

幼馴染「嫌いじゃないよ、友くんの事」

友「……!」

幼馴染「…………」

幼馴染「……ただ」



幼馴染「何もかもが、どうでも良くなっただけ……」



友「!!」

幼馴染「それだけ……」

友「…………」

友「……そうかよ」

幼馴染「…………」


友(ちくしょう……)

友(ちくしょう、ちくしょう……)

友(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……)

友(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう)

友(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう)

友(ちくしょ――――――――――――――――――――――!!!)

     ダッ!!

幼馴染「…………」

―――――――――――


     ガヤガヤ

男「ああ、女ちゃん」

女「? 男くん、どうしたの?」

男「うん……実は」

男「大事な話があるんだ」

女「!!」 ///ドキッ

女「……だ、大事……って?」 ///

男「今は……ちょっと……」

男「だから、放課後……教室に残ってくれるかな?」

男「二人きりで話がしたい」

女「!!」 ///

女「う、うん! わかった……!」 ///

男「じゃ、放課後にね……」


女「…………」 ///

女(放課後……大事な話……二人きり……) ///

女(~~~~!!) ///

女(きっと……告白ね……) ///

女(嬉しい、男くん……) ///

女(エへへ……) ///


―――――――――――


キーン コーン カーン コーン

男「…………」

女「お待たせ、男くん」

男「あ、女ちゃん」

女「それで……何かな? わざわざ放課後に呼び出して、話って……」 ///

男「うん……」

女「…………」 ///ドキドキ

男「まず……風邪ひいた時はありがとう。 いろいろと助かったよ」

女「ううん、そんなの、大した事ないよ」 ///

男「それで……本題だけど」

女「う、うん」 ///




男「もう止めてくれ」



女「……え?」

男「…………」

女「や、止めてって……何を?」

男「ストーカー行為」

女「!?」

男「……最初は、ね」

男「友を疑ってた」

女「…………」

男「俺は風邪で休んだ日に、ネットで”ヤンデレ症候群”を調べてみたんだ」

男「病院の先生は、最近見つかったばかりの症例だって言ってたけど」

男「検索に全く引っかからないのは、どう考えてもおかしい」


男「そして、病院を紹介したのは友だから、あいつが怪しいと思った」

男「……でも」

女「…………」

男「病院の医師紹介名簿に」

男「君と同じ名字の医者がいた」

女「…………」

男「クリックしたら、ヤンデレ症候群を告げた医者だったよ……」

男「君のお父さんなんだろ? 以前、父親が医者だって言ってたしな」

女「…………」

男「そこで初めて、俺は女ちゃんが主犯じゃないのか?と思った」

男「友には悪いが……あいつに、こんな策を練る頭は無いだろうし」

女「…………」


女「……何を言ってるの? 男くん」

女「ストーカー? 私がそんな事してるわけ、無いじゃない」

男「……動機は」

男「俺と幼馴染を別れさせる事」

女「………っ」

男「第一段階として、幼馴染に対して俺に『不安感』を抱かせた」

男「携帯電話の履歴に女ちゃんのだけ残らないカラクリ」

女「…………」

男「まあ、単純だけど、女ちゃんは電話を『掛けなかった』だけだろ?」

男「まるで、幼馴染が履歴を消しているかの様に見せかける為に……」

男「女ちゃんは、俺に『電話を掛けてる』と言えばいいだけ」

女「…………」


男「それとも見せられるかい? 君の携帯の送信履歴」

女「……っ」

男「そして次に」

男「どうやって君の父親の医者を 丸め込んだのか解らないけど」

男「第二段階として、ヤンデレ症候群を告げ、俺に、幼馴染への『不信感』を抱かせる」

男「……まんまと騙されたよ」

男「まさか、本職の医者に真面目な顔してウソつかれるなんて」

男「思いもしなかった」

女「だ、だから……」

男「次に」


男「俺の家に盗聴器を仕掛ける」

女「……!」

男「これも風邪で休んだ日に、盗聴器バスター業者に連絡して調べてもらった」

女「…………」

男「……不思議だろうね」

男「じゃあ何故、今の今まで普通に盗聴出来たのか?」

女「…………」

男「君を油断させる為に、気がついた日、以降も」

男「俺が業者に頼んで、いつでも外せる状態で盗聴器を生かしておいたからだ」

女「…………」

男「…………」


女「ち……違う……私、じゃ……ない……」

女「お願い、信じて……! 男くん……!」

男「…………」

     パチ パチ パチ パチ パチ パチ……

男・女「!?」

友「……すげぇな、男」

友「よく見破ったもんだ」

女「!!」

男「…………」

女「あ、あなた、何を言って……!」

友「諦めろよ、女ちゃん……」

友「もう……男は騙せない」


友「ところで男、どこでおかしいって思った?」

友「こう言っちゃ何だが……俺は上手くやってるって、自分でも思ってたんだが」

男「……そうだな。 お前には完璧に騙された」

男「俺が最初に不審に思ったのは……」

男「風邪で倒れたあの日……女ちゃんに助けられた事だ」

女「…………」

男「家の戸締りは、したハズなのに……なぜ?」

男「そして、俺の服を取りに行くときに」

男「女ちゃんは、迷わず俺の着替えが入ってるタンスの引き出しを開けた」

女「…………」

男「だけど、あの時は熱で意識がもうろうとしていたから、確信が持てなかった」


男「だから俺は、トラップを仕掛けた」

友「トラップ?」

男「俺の家で女ちゃんに料理を作らせて、塩を使わせる事」

女「……!」

友「どういう意味だ?」

男「俺はわざと塩を切れさせ、反応を見たんだ」

男「普通は台所の棚とか引き出しに、買い置きの調味料を置いておくけど」

男「我が家では、冷蔵庫横の細長い箱に入ってる」

友「……なるほど。 内情を知らなきゃ見つけられそうにもねぇな」

男「女ちゃんは、俺に聞かずに見事、塩のありかを見つけていたよ」

女「そ、そんな……」


男「……それから、ずいぶん前だけど」

男「俺の家で風呂に入ってただろ? 女ちゃん」

女「!!」

友「……お前、何やってんだよ」

女「ち、違う! 私じゃない!」

女「き、きっと、幼馴染さんがシャワーを浴びてたんだよ!」

男「…………」

友「あ~あ……」

女「……!?」

男「どうして、『シャワーを浴びてる』なの?」

女「…………」

男「俺は『風呂に入ってた』と、言ったはずだけど?」

女「!!!!」


男「……それに、幼馴染は風呂に入ると、決まって歌を歌うんだ」

男「あの時感じた違和感はそれだった」

友「…………」

男「それに気がついた俺は、盗聴器を仕掛けられているかもしれないと思った」

男「あの時点で、相当俺をストーカーしていたんだな……」

女「…………」

友「諦めなよ……女ちゃん」

女「……いやよ」

友「おいおい……」


女「あの娘は、小さい頃から一緒に居るってだけの女の子じゃない……!」

女「男くんを『好き』って気持ちは、私の方がずっとずっと上なんだから!」

男「…………」

女「それなのに……」

女「それなのに……それなのにっ……それなのにっ!!」

女「あの娘は! いつもいつも、男くんの隣にいる!」

女「まるでそれが、当たり前の様に!!」

友「…………」

女「何なのよ! あの娘!! あまつさえ、私の男くんの家にまで押しかけて、誘惑して!」

女「どうして男くんは、それを受け入れてるのよ!!」

女「私でしょ!? 男くんが好きな女の子は!?」

女「私の事、いいお嫁さんになるって、言ってくれたじゃない!!」

女「私が男くんに相応しいのよ!!」

男「…………」


友「……なんつーか」

友「終わったな」

女「…………」

男「…………」

男「じゃ……俺、もう行くな」

男「多分、合鍵持っているんだろうけど」

男「今日、鍵を変える予定だから、別に返さなくてもいいよ、女ちゃん」

女「…………」

男「それから警告。 盗聴器は十分証拠品になる」

男「これ以上、ストーカー行為を続けるのなら警察に被害届を出す。 いいね?」

女「…………っ」

友「ああ、ちょい待ち、男」

男「ん?」


友「今更だけど……謝るわ」

友「悪かった、男……」

男「…………」

友「俺、さ」

友「幼馴染ちゃんのどこが好きなのかな?って」

友「改めて考えてみた」

男「…………」

友「俺――」

友「お前の事を見てる幼馴染ちゃんが、好きだったんだ」

友「クリクリした目で、ニコニコして、いつも可愛い笑顔で、お前を見ていた」

男「…………」

友「あの目を、笑顔を」

友「俺にも向けて欲しかった……」


友「ところがどうだ……」

友「幼馴染ちゃんが傷つく事も承知の上で、女ちゃんの策に乗って」

友「やっとの思いで手に入れた幼馴染ちゃんは」

友「まるで抜け殻の様だった……」

男「…………」

友「……何やってたんだろうな、俺……」

友「最初から、勝目なんて無かったんだ」

友「お前が、ヤンデレ症候群と知りつつ、幼馴染ちゃんに告白した時点で」

男「……!」

男「そうか……盗聴してた女ちゃんに聞いたのか」

友「幼馴染ちゃんが、お前に『男のモノにして』って頼んだのもな」


男「…………」

友「あの時は、女ちゃんと一緒に聞きながら、焦ったね」

友「確かに何かのアプローチをするだろうと思ってたけど」

友「あそこまでの暴挙に出るとは思わなかったから……」

男「…………」

友「そして、気づくべきだった」

友「幼馴染ちゃんのお前に対する、純粋な気持ちに、な……」

男「…………」

友「引き止めて悪かった。 これでオシマイだ、男」

男「……そうか」

友「それから、伝言」

男「? 伝言?」


友「幼馴染ちゃんには、俺から全部話してある」

男「!!」

友「……お前の家で『待ってる』ってさ」

男「そうか……ありがとう、友」

友「よせよ……フツー殴るところだぜ? ここは」

友「さあ、早く行ってやれ」

男「ああ……」

     タッ タッ タッ…

友「…………」

女「…………」


女「……っ!」 ギリッ

女「私っ……諦めない……!」

女「男くんは、私を試してるのよ……!」

女「私が、こんな事でへこたれる様なヤワな精神か、試してるのよ!」

女「男くんは、私の事が好きなんだから……!」

友「…………」

友「……なあ」

女「……何よ」

友「俺達、付き合わね?」

女「……は?」

女「何言ってるの? 気でも狂れたの? 気持ち悪いわよ……」

友「……今回の出来事で、男も、お前に対して、おんなじ事を思っただろうな」

女「……!」


友「それによ、女ちゃん」

友「お前、今回の計画が上手く行ったとして」

友「『ずうっと』本性を隠し通せると思っているのか?」

女「私は、何も隠していない!」

友「盗聴器仕掛けたのだって見抜かれたくせに……」

女「……ぐっ」

友「まだわかんねーのかよ?」

友「男は、はっきり『警告』と言ったんだ」

友「つまり」

友「お前の事を『敵』として認識してんだよ」

女「……!」


女「でも……でもっ……」

女「男くんは、私を……」

友「その辺にしとけ。 引き際を考えろ」

友「そしてお前の気持ちは、好きでも、恋愛感情でも、何でも無い」

友「自分を騙す為の、ただの『願望』だ」

女「……!!」

友「ま、俺も人の事、言えねーけど……」

女「…………」


女「……違う」

女「私が……男くんを好きな気持ちは……嘘じゃない……!」 ポロッ…

女「ぜったい…………ウソ……なんかじゃ…………ないっ……」

女「うあっ……あああああっ! ……男くんっ…………おと、こ、くんっ……!」 ポロポロ…

女「ホントにっ……すきっ……うぐっ……だったのっ……!」 ポロポロ…

女「ウソじゃ……ウ、ソなんかじゃ……ない、よう……! ひぐっ……」 ポロポロ…


友「…………」

友(それもわかっているさ……)

友(だから、うっかりバレる事を忘れ、鍵を使って、男に家に入ったんだろ?)

友(男を……心配して、な……)

友(……けど、黙っとくぜ、女ちゃん)

友(それが……女ちゃんの為だ……そして)








友(幼馴染ちゃんの為にも……な)






―――――――――――


     ガチャ…

男「……ただいま」

     トテ トテ トテ

幼馴染「男……」

幼馴染「……っ」

幼馴染「お帰り、男」 ニコ!

男「幼馴染……ただいま」 ニコ

幼馴染「えへへ……」 グスッ…

幼馴染「久しぶり、だね。 男」

男「ああ……本当にな」

男「すげー嬉しい」 ニコ


幼馴染「これが盗聴器……」

男「全部で4つ……どうやったのか、電話機の中にまであった」

幼馴染「うわ……」

男「もう電源は切ってる。 大丈夫だ」

幼馴染「…………」

幼馴染(……女さん、これからどう男と向き合って行くのかな……)

男「さて……幼馴染」

幼馴染「え?」

男「……ごめん」

幼馴染「…………」


男「結局、最初に病気の事を告げていれば……幼馴染に辛い思いをさせずに済んだのに……」

幼馴染「……ううん」

幼馴染「それは、私の事を考えての事だし……」

幼馴染「あの時……男は『殺してもいい』って言ってくれた」

男「…………」

幼馴染「言われた時は、訳がわからなかったけど……」

幼馴染「『覚悟』を決めて、私を受け入れてくれた、って事だよね?」 ///

男「…………」 ///

幼馴染「それだけで、私は嬉しい」 ///ニコ

男「幼馴染……」 ///

幼馴染「それに……」


幼馴染「謝らないといけないのは、私も、だよ」

男「……え?」

幼馴染「私……友くんから真相を聞くまで、男に私への気持ちは、もう無いって思ってたの……」

男「…………」

幼馴染「……目の前に突き出された事実だけを見て……」

幼馴染「男を信じられなくなって……絶望してた」

男「…………」

幼馴染「ごめんなさい、男」

幼馴染「何もかもが、どうでも良くなった私は……」

幼馴染「友くんの告白をokしたり、キスとかもどうぞって言っちゃった……」

男「…………」

男「はあ!?」


幼馴染「……本当にごめん……驚いた?」

男「衝撃の事実だよ……」

幼馴染「……ごめん」

男「もういい……つーか聞きたくない」

幼馴染「ああ、でも友くん、なんかいきなり怒り出して、何もしないで走り去っていったの」

幼馴染「すぐ帰ってきたけど」

男「……あいつの行動は、イミフだな」

幼馴染「その後、土下座しながら事情を話してくれたんだ……」

男「そっか……」

bgm

http://www.youtube.com/watch?v=xzlbnawpjds



男「…………」

     ガタッ

幼馴染「? 男?」

男「…………」

男「……ちょっと立ってくれるか?」 ///

幼馴染「! ……う、うん」 ///ガタッ

     ギュッ…

幼馴染「ん……」 ///

男「…………」 ///

男「……本当に久しぶりだな」 ///

幼馴染「うん……」 ///ギュッ…


男「幼馴染の匂いだ……」 ///

幼馴染「男の匂いがする……」 ///

男「俺……寂しかった……」

幼馴染「私も……」

男「幼馴染と食べる夕食、どんなに楽しかったか、身にしみた……」

幼馴染「ふふっ……時々喧嘩もするけどね」 クスッ

男「幼馴染……俺、幼馴染の事が」

男「好きだ」 ///

幼馴染「うん……私も、男の事」

幼馴染「大好き」 ///


     スッ……






……気持ちを確かめ合った俺と幼馴染は、その日、お互い初めての口づけを交わした。

彼女の唇は暖かく、柔らかだった。







友と女ちゃんは、『付き合って』いないそうだが、仲良さそうにしていた。

友は相変わらずチャラい態度で軽口を叩き、以前と変わらず俺と顔を付き合わせている。

……こいつの神経の図太さは、大いに尊敬してしまうな。

でも、さすがに幼馴染に対しては、バツが悪そうだった。



女ちゃんは、性格がだいぶ変わった。 ……いや、友に言わせれば、こっちが本性なのだとか。

平気で悪態をつき、同性の人気はダダ下がり。 

ヤローは、引く奴もいたけど別カテゴリーの人気が出ていたので差し引きゼロ、といったところか。

……けど、前より伸び伸びしている様にも思えた。







ある日、女ちゃんは、俺と幼馴染に謝罪に来た。 決まりが悪そうに。

付き添ってきた友と、何度も頭を下げ、謝る彼女。

そして、彼女自身の『ケジメ』をつける為に、と、密かに持っていた合鍵を返してくれた。



それ以降、女ちゃんとは話していない。 話そうとしても彼女は『聞く』だけだった。







そして、俺と幼馴染は相変わらずだった。

二人で夕食を摂り、二人でゲームしたり、二人でテレビ見て笑ったり

時々喧嘩したり……。 それを繰り返して、楽しく過ごしていた。





~数週間後~

     タッ タッ タッ

幼馴染「男! お待たせ!」

男「おう、幼馴染」

幼馴染「今日はどこに行くの?」

男「特に決めてない」

幼馴染「何よそれー。 最近手抜きじゃない?」

男「はは……すみません」

男「……でも」

幼馴染「でも?」

男「幼馴染と一緒なら、どこでも楽しいから」 ニコ

幼馴染「……っ」 ///

幼馴染「ふ、ふーんだ!」 ///

幼馴染「そんな殺し文句、聞き飽きたもーん!」 ///


男「機嫌直してくれよ……昼飯はおごるから」

幼馴染「……やだ。 夕飯も作ってくれなきゃ許してあげない」

男「わかったわかった……」

幼馴染「やった!」

幼馴染「男の手作り夕御飯~♪」

男(お茶漬けとかだったら怒るかな……やっぱ)

男「じゃ、そろそろ行くか。 駅前のブティックから行ってみる?」

幼馴染「それでいいよ。 うう~……今日も寒いね」

男「そうだな……つなぐ?」

幼馴染「うん!」 ///ニコ



 ――幼馴染の手は、小さくて、冷たくて、でも……とても愛しかった――



     おしまい


みなさんお疲れ様でした。これで終了です。

友と女が、あまり不幸になっていないじゃないか!と怒っている方も居るかと思いますが
女に友が、刺し殺されたりするのも考えたんですけど……
それだと幼馴染と男は、後味悪くなって、幸せになれそうになかったのでこうしました。

自分はスクイズのファンなので、そういうドロドロも書いてみようかな……とも思ったんですけどね。

結局、友は幼馴染にとって最後まで「どうでもいい」存在で、女も男にとって同様と言えます。
これだけ努力(間違った方向だけど)して
好意を寄せる相手に何とも思われてないのは、悲しいものです……。

最後に、遅い投下を待っててくれた人、ラストまで読んでくれた人、友に憤慨してくれた人

ありがとうございました!

おつ

なんか消化不良感があるのはヤンデレとは思えないほどあっさり解決したからかな……。

>>318
すまぬ……力量不足です。
後、ヤンデレ症候群は、女が医者にでっち上げさせた架空の病気扱いになってます。

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