【艦これ】阿武隈「何気ない素敵な日常」 (28)

提督「ふう……取りあえず書類は一段落だな」

電「司令官、お疲れなのです。お茶を淹れてきたのです」

提督「ああ、いつもすまないな」

電「そんな、気にしないで欲しいのです。どうぞなのです」

提督「じゃあ頂くとしよう……うん、いつもながらおいしいよ。今日は玄米茶か」

電「阿武隈さんと相談して、ちょっと気分を変えてみたのです」

提督「そうか。なんだか新鮮だな。ありがとう」

電「お粗末様なのです」

提督「しかし、今日は良い天気だな」

電「はい、気持ちが良いのです」

提督「秋も深まり、もうじき冬か」

電「電はちょっと寒いのは苦手なのです」

提督「ははっ、同感だ。暑いのはそれなりに耐えられるが、寒いのは私も苦手だ」

提督「おっと、冬の海で頑張っている電達にそんなこと言ったら叱られてしまうかな」

電「そんなことくらいで叱ったりなんかしないのです。司令官はいじわるなのです」

提督「あはは、ごめんごめん」

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提督「しかし、こういう天気の良くて気持ちの良い日は外に出たくなるな」

電「そうですね、でも司令官もお疲れじゃないですか?」

提督「いやいや、これしきの仕事でへばったりはしないさ。心配してくれてありがとうな」

電「なら、良いんだけど……あっ」

提督「どうした、電?」

電「司令官、庭のあそこを見て欲しいのです」

提督「……ああ、なるほど。楽しそうだな」

電「なのです。みんな元気に遊んでいるのです」

提督「ふむ。ちょっと混ざってくるか?」

電「……いいの?」

提督「ああ、休養も時には必要だろう」

電「……司令官、ありがとうなのです!」

――鎮守府の庭。

朝霜「いっすいせん阿武隈かくごー!」

清霜「かくごー」

島風「かくごー!」

阿武隈「きゃっ! 三人とも手強くなったね! でもまだまだ簡単にはやられたりしないんだから!」

五月雨「阿武隈さん助太刀します! 五月雨だっていつまでもドジッ子じゃありませんからね!」

島風「速さだったら島風は誰にも負けないから! おねえちゃんいっくよー!」

暁「ケイドロはただの遊びじゃないわ。捕獲訓練の一環なのよ!」

雷「そうね。というわけで暁捕まえたー!」

暁「甘いわよ雷! そう簡単に捕まる暁じゃないわよ!」

朝霜「ちいっ! 三人がかりで捕まらないとかどんだけだよ!? 本気で逃げるとか阿武隈さん大人げねーぞ!」

清霜「大人げないぞー!」

島風「お姉ちゃんはっやーい!」

響「yapaaaaa!(ウラー!)」バッ!

阿武隈「きゃあ!? って響ちゃん!? ドロボウ側なのに、なんであたしの背中に張り付いてくるの!?」

響「もうすぐ秋が過ぎ、冬がやってくる。この寒く厳しい冬を乗り切るには、阿武隈さんの春の日向のような温かさが必要なんだ」

暁「なに言ってるのアンタ」

朝霜「隙ありーっ!」

清霜「ありー!」

阿武隈「ってきゃあああああ!?」

磯風「師匠ーっ!?」

島風「えへへ、おねーちゃん捕まえたよ!」

阿武隈「むう……捕まっちゃいました。三人ともすごいね、あたしビックリしました」

朝霜「まー、それほどでもないぜ!」

清霜「そうでしょ! 清霜すごいでしょ!」

島風「でも響ちゃん駄目だよ? おねーちゃんはちゃんと島風が捕まえるはずだったのに」

連装砲ちゃん『しまかぜちゃん、どんまい』

響「つい体が勝手に反応して……」

雷「響、それ小動物みたいよ。はいタッチ。響も逮捕ね」

響「!?」

暁「なんで不意打ちされたような反応してるのよ」

磯風「くっ、さすがの師匠(阿武隈)も四人がかりでは無理だったか……」

磯風「師匠! 師匠の無念はこの磯風が晴らしてみせる! さあ、警察共! この磯風がまとめて相手になってやるぞ! 師匠の弔い合戦だ!」

風雲「逃げなさいよ!?」

磯風「風雲、心配は無用! 姉弟子として、妹弟子に無様な姿は見せられないからな!」

風雲「そうじゃなくてルールをちゃんと把握しろって言ってるのよ! 後ろ後ろ! 島風達来てる!」

磯風「無粋な奴らめ……返り討ちだ!」

風雲「人の話をきけえええええ!」

山雲「あら~。みんな賑やかで楽しそうね~。とっても素敵ね~」

――数秒後。

清霜「……ばたん」

島風「……きゅー」

朝霜「……やられたー」

風雲「なんか知らないけど倒してるーっ!?」

暁「あーもう!? なんなのこれ!? ケイドロとか完全に無視してるわよね!?」

磯風「また磯風が武勲を立てたというのか……仇は取ったぞ、師匠」

磯風「だが、仇討ちをしたとしても師匠は戻ってこない……なんたることだ。くっ、この磯風が無力なばかりに!」

阿武隈「死んでないから、あたしちゃんと生きてるから」

磯風「師匠!? 天国から舞い降りてきたというのか!?」

阿武隈「舞い降りてきてません!」

響「阿武隈さんも、私と同じように不死鳥の通り名もあるよ」

阿武隈「ないからね!? 適当なこと言わないで響ちゃん!」

雷「『も』ってことは、他にも通り名があるのね!」

暁「それはそうよ! 阿武隈さんは、暁も見習う一人前のレディーなんだから!」

清霜「なるほど、阿武隈さんのその輪っかは天使の輪っかだったんですね!」

朝霜「ようやく気づいたのか清霜? おめえおっせーなー。みんなとっくに知ってるぜ」

清霜「がーん!?」

風雲「朝霜、あなたなにさらっと嘘教えてるのよ!?」

阿武隈「さっきからみんなあたしのことなんだと思ってるの!?」

山雲「んーとね、反応がいちいち楽しいお姉ちゃんかしら~?」

阿武隈「山雲ちゃん、それどういう意味かなぁー?」

響「そこまでだ。これ以上阿武隈さんで遊ぶようなら私が容赦しない」

「「「おまえが言うな!」」」

響「……うらー」ぽすっ

阿武隈「よしよし。もう、響ちゃんったらすぐ落ち込まないの」ぎゅー

雷「まったく、響ったら甘えん坊さんね」

暁「雷だってあまり人のこと言えないじゃない」

雷「むー。そんなことないわよ」

島風「響ちゃんずるーい! 島風も島風も!」

阿武隈「もう、仕方ないなあ島風ちゃんは」

島風「えへへ、お姉ちゃんあったかーい」

山雲「あら~。島風ちゃんも甘えん坊さんね~。でもちょっとうらやましいかもしれないわね~」

連装砲ちゃん『あぶくまさん、ぼくもぼくも!』

風雲「連装砲ちゃんもぎゅってしてもらいたいの!?」

雷「これが阿武隈さんの頼られオーラ……雷の想像以上だわ。でも雷だって負けないわ!」

暁「雷はなんで張り合ってるのよ」

電「みなさん楽しそうなのです。電も混ぜて欲しいのです」

阿武隈「あ、電ちゃん! もちろん! ほらこっちおいで!」

初霜「私も混ぜてもらってもいいですか?」

初春「ふむ。よければわらわも一緒させてもらおうぞ。霞も一緒に遊ばぬか?」

霞「あのねえ……私は別に」

電「電は霞ちゃんも一緒に遊びたいのです」

暁「ほら、霞もこっちに来なさいって」

磯風「そうだな、ほら霞も一緒に遊ぼうじゃないか」

霞「え、ちょっ……」

阿武隈「えへへ、ほら電ちゃん達も霞ちゃんとも一緒に遊びたいなって」

霞「はいはい、分かったわよ……もう」

電「霞ちゃん、一緒なのです!」

朝霜「おー、人数増えてきたな! これならいろいろできそうだぜ!」

清霜「サッカーしようよ! サッカー!」

山雲「サッカー? 楽しそうね~、とってもいいわね~」

電「電は阿武隈さんと一緒のチームが良いのです!」

朝霜「ちょっ、それ明らかに有利じゃねーか! ふざけんな電!」

暁「じゃあ司令官にも参加してもらえばいいわ!」

提督「うん? 私も参加させてもらってもいいのか?」

阿武隈「提督、最近お忙しいみたいですけど、大丈夫ですか?」

提督「なに、全然平気だ。よし、じゃあ私も参加するぞ!」

雷「それでこそ司令官ね!」

阿武隈「えへへ、それじゃあお願いしますね」

五月雨「これで連装砲ちゃんを入れて17人ですね!」

風雲「できれば偶数の方が良いわよね。誰か誘おうかしら」

響「ちょうど良い、あそこにいる人達を誘おう」

榛名「はい? 榛名に御用ですか?」

蒼龍「え? なになに?」

熊野「あら? 熊野に御用?」

島風「あのね、かくかくしかじか」

初春「まるまるうまうま」

電「なのです!」

榛名「なるほど、榛名もご一緒させて頂きます!」

蒼龍「オッケー! 私も本気出しちゃうぞー!」

熊野「サッカー……よく分かりませんが、今時のレディーの嗜みとしてスポーツも手を抜くわけには参りませんわ!」

霞「今ので分かったの貴方達!?」

五月雨「……?」首かしげ

響「……?」首かしげ

霞「なんでアンタらは私を見て、何言ってるんだろうみたいな顔してるのよ!?」

朝霜「よっしゃやるぞー! あたいはもちろんフォワードな!」

蒼龍「それじゃあ私達は余りがちなキーパーでもやりましょうか」

榛名「そうですね、榛名頑張ります!」

五月雨「提督や阿武隈さんたちも、手加減は無用ですよ! 五月雨、頑張っちゃいますから!」

阿武隈「うん、あたしも頑張るね」

清霜「よーし、清霜も頑張るから!」

清霜「朝霜パース!」

朝霜「ちょ、おまどこ蹴ってんだ!? そんな高いのシュートできるか!」

山雲「それじゃあ山雲がシュートするわね~。ってあら~? 届かないわね~そんなこともあるわね~」

風雲「せめて走ってから諦めなさいよ!? のんびり歩いていたら間に合うものも間に合わないわよ!」

霞「あーもうバカばっかり! 私がシュートするわ!」

初霜「私が守ります!」

霞「ちいっ!? 私からボール奪うとは初霜もやるじゃないの!」

初霜「暁さん! パスです!」

暁「真ん中ばかりにいないで、サイドから攻める……こういう視点ができてこそ一人前のレディーよね!」

響「暁であろうと、サイドは好きにはさせないよ」

熊野「響さん、熊野もいますわよ!」

暁「ふっ、引っかかったわね! 雷!」

雷「はーい、パスキャッチしたわ!」

五月雨「えーい!」

雷「きゃっ!? あれ、ボールはどこ!?」

阿武隈「雷ちゃん、ちゃんとボールは確保したよ! 島風ちゃん!」

島風「はーい! ふふー、島風にはだれも追いつけないよ!」

連装砲ちゃん『しまかぜちゃん!』

島風「連装砲ちゃん、いっくよー! 二人のツインシュート!」

榛名「ゴール前での勝手は! 榛名が! 許しません!」

島風「きゃあ!? 榛名さんはっやーい!」

電「こぼれ球……ねじ込むのです!」

榛名「あっ!? 電ちゃんの方にボールが行ってしまいました!」

電「電の本気を見るのです! 必殺の――北国シュートなのです!」

霞「北国ってどこから来たのよ、そのネーミング!?」

磯風「くっ、速い!?」

深雪「おおっと! この深雪さまを忘れてもらっちゃ困るぜ!」

蒼龍「ってええ!? 深雪ちゃん乱入!? そんなのあり!?」

深雪「くらえ電! 深雪さまのカウンターシュートだあああああっ!」

電「ふにゃああああ!?」

連装砲ちゃん『おおっと! いなづまくんふっとんだー!』

阿武隈「電ちゃーん!?」

暁「電ーっ!?」

初霜「蒼龍さん! ボールがこっちのゴールに向かってくるわ!」

蒼龍「あーもう滅茶苦茶じゃない! でも――止める! ええええい!」

雷「止めた!? あの速いシュートをキャッチするなんて、すごいわ蒼龍さん!」

響「さすが蒼龍さん。二航戦は伊達じゃない」

暁「ていうか深雪! アンタどう考えても反則じゃないの! いきなり割り込むんじゃないわよ!」

深雪「わりーわりー! 電、大丈夫か?」

電「なのですなのですすーぱーなのです……」

阿武隈「電ちゃん、しっかりして!」

風雲「大丈夫よ! 呼吸はしっかりしてるわ!」

五月雨「あわわわ……わ、私、救急箱持ってきますね!」

深雪「……じゃあ、私はこれで」

磯風「おまえは名取さんか」

――数分後。

電「電! 復活なのです!」

阿武隈「電ちゃん、大丈夫?」

電「心配掛けてごめんなさいなのです。電は大丈夫なのです」

深雪「あー。その、ごめんな電」

電「たいしたことないのです。気にしないで欲しいのです」

深雪「そっか……ありがとうな、電!」

熊野「それじゃあ、試合再開と行きましょうか」

霞「ちょっと待ちなさいよ、人数どうするのよ。深雪が入ったらまた奇数になっちゃうわよ」

熊野「あら、心配は無用ですわ」

霞「はあ?」

白露「サッカーでも一番を目指すよ! いっちばーん!」

時雨「いっちばーん」

若葉「若葉だ」

霞「増えてるーっ!?」

山雲「あら~? いつの間に来たのかしら~? 不思議ね~。でもそんなこともあるわよね~」

初春「ふむ、なら白露達の加入を祝して、一差し舞うとするかのう」

初春「わらわの舞! とくと見るがよいわ!」バッ!

提督「それじゃあ試合再開するぞー」ピー!

初春「スルーしないで欲しいのじゃ!?」

ピイッー!

提督「よーし、試合終了だ!」

朝霜「ちくしょー! 引き分けかー!」

清霜「もうちょっとだったのにー!」

榛名「榛名が無失点に抑えていれば……」

五月雨「なに言ってるんですか! 一点に抑えられたのは榛名さんのおかげです!」

白露「その通りだよ榛名さん! とりゃー!」バッ!

時雨「とりゃー」バッ!

榛名「きゃっ!? 白露さん、時雨さん!?」

時雨「榛名さん、良い背中だね」

榛名「えっ? えっ? そうですか? ……ありがとうございます?」

霞「あんたら急に榛名さんに飛び付いてんじゃないわよ、危ないじゃないの」

榛名「いえ……これは……素敵です! ちょっと重い感じもしますけれど、でも、頑張ります!」キラキラ!

霞「気に入ったの!?」

榛名「えーい!」くるくるー

白露「わー! 榛名さんすごいー!」

時雨「僕達二人でも余裕なんて、さすがだね」

山雲「白露ちゃんも時雨ちゃんも楽しそうね~。山雲もやって欲しいわ~」

響「……」うずうず

暁「響、あんたなにうずうずしてるのよ。まさか……」

響「うらー!」バッ!

阿武隈「やっぱりあたしに飛び付いてきたぁ!」

蒼龍「あはは、また阿武隈の背中に張り付いちゃったわね、響ちゃん」

暁「予想を裏切らないわねアンタ!」

清霜「うらー!」ダッ!

響「おっと、危ない」ヒラリ

阿武隈「ふえええ!? 清霜ちゃんまでぇ!?」

清霜「えへへ、阿武隈さんと合体! 戦艦清霜、華麗に誕生ーっ!」

阿武隈「もー、清霜ちゃん危ないから急に飛び付かないの」

清霜「はーい、ごめんなさい」

響「とっさに降りなければちょっと危なかったかもしれないね。信頼の名は伊達じゃない」ドヤッ

磯風「いきなり飛び付く時点で、信頼もなにもあったもんじゃないと思うが」

雷「でも阿武隈さんと清霜じゃあ、戦艦にはちょっと足りないかもね。重巡か軽巡くらいかしら?」

清霜「えー、残念」

電「軽巡? 電も阿武隈さんと同じ軽巡洋艦になれるのです?」キラキラ

深雪「なに言ってるんだ電」

清霜「なれらぁ!」

電「なのです!」

霞「なれるわけないでしょ!? 眼を覚ましなさい電!」

初霜「ふふっ、夢を追いかけるって素敵ですね。電にも夢が出来て良かったです」

風雲「そういう問題かしら……? なにか間違っているような……」

磯風「いや分からんぞ。熊野さんが重巡洋艦から航空巡洋艦になれたように、電さんが駆逐艦から軽巡洋艦になることもありえるかもしれないだろう?」

熊野「そもそも大きさが違いますわよ」

磯風「沢山食べて沢山訓練し、沢山寝れば大丈夫だ!」

霞「あーはいはい。そんなこと考えるのはアンタくらいよ」

島風「連装砲ちゃん、今日から島風も食べる量を増やそうかな?」

霞「もう一人いた!?」

蒼龍「あはは。少年少女よ、大志を抱けってね」

初霜「そうです! 電に対する応援歌を歌いましょう! ね、みなさん」

風雲「……は?」

初霜「私、第一水雷戦隊用の応援歌とかテーマソングを作ったんです!」キラキラ

霞「なにやっちゃってんのアンタ!?」

初春「ふむ。じゃが、他の人に一度見てもらってからとかの方がいいのではないのか?」

若葉「加賀さんに校正してもらったぞ」

風雲「なにやってるのよ一航戦ーっ!?」

響「加賀さんには太鼓判を押してもらったよ」

暁「響も一枚噛んでるの!? いつの間に!?」

初霜「というわけで輪形陣でお祝いしましょう!」

霞「あーもー! お姉ちゃんなんとかし――」

阿武隈「ふえ?」

霞「……あ」

響「……お姉ちゃん?」

霞「ちょ、待って今のなし、言い間違えただけ」

熊野「ふふっ、霞ちゃん。別にそんな恥ずかしがる必要ありませんわよ。阿武隈さんのこと、それだけ頼りにしていらっしゃるってことですわよね」

霞「違うわよ!」

阿武隈「えへへ、なーに、霞ちゃん?」

霞「アンタも満面の笑みですり寄ってくるんじゃないわよ!」

朝霜「阿武隈おねーちゃん、霞ね、甘いケーキたべたいのー。作って、霞のおねがーい」(裏声)

霞「――殺す」

朝霜「ちょ、おまガチ切れすんな! ごめん、悪かったって!」

阿武隈「うわあああああ!? 霞ちゃんストップ落ち着いて!」

電「なのです! 朝霜ちゃんも謝ってるから許してあげて欲しいのです!」

清霜「そうだよ霞ちゃん! ねっ!」

五月雨「あわわわわ……みんなケンカしちゃだめー!」

霞「そんなケーキをおねだりなんかするかああああぁ!」

――数日後。

霞「うわぁ……! これおいしい!」キラキラ

阿武隈「そう? 霞ちゃんが気に入ってくれたら、作った甲斐があります」

朝霜「結局食ってんのかよ!?」

提督「阿武隈の作ったものはおいしいからな。霞が気に入るのも当然だ」

初霜「おいしいですね、霞ちゃん」

霞「うん! ……ってなんで司令官が偉そうにしてるのよ」

阿武隈「えへへ、てーとくも作るの手伝ってくれたんだよ」

霞「うそっ!?」

響「なんだって!?」

熊野「ありえませんわ!」

蒼龍「ちょ、明日は槍が降るんじゃない!?」

赤城「大変です! 鎮守府全体に通達! 至急避難を! 急いで!」

提督「おいこらそこの者達。特に赤城と蒼龍、お前たちは私がたまに料理してること知ってるだろ」

蒼龍「あはは、冗談ですって冗談!」

赤城「くすっ。すみません、つい」

風雲「阿武隈さんだって忙しいんだし、一人じゃ作れないでしょ」

電「電達も手伝ったのです!」

阿武隈「最近ね、電ちゃんとか、風雲ちゃん、磯風ちゃんとか、神通もそうだし、いろんな人達とお料理してるんだ」

阿武隈「時間取れないこともあるけど、時々空いた時間に色々と手伝ってくれるんだよ」

霞「ふーん。やけに楽しそうね」

阿武隈「うん。楽しいよ」

霞「そう……その。わがまま聞いてくれて、ありがとう」

阿武隈「はい、どういたしまして」

朝霜「いやー、霞も随分しおらしくなったよなあ」

霞「なによ。ケンカなら買うけど」

朝霜「前言撤回、やっぱツンツンしてるわこいつ」

清霜「そーかなー。前から霞ちゃんは優しいけど」

初霜「ええ、そうですね。私もそう思います」

朝霜「そりゃお前たちに対してはな」

提督「おっと、お茶のお代わりはいるかな?」

赤城「そんな、提督がそのようなことをしなくとも――」

提督「いいんだよ、私が好きでやっているんだから」

霞「えっと。じゃあ、お願いしても良いのかしら?」

提督「ああ、任せておけ」

暁「司令官、暁が手伝うわ!」

雷「雷も手伝うわ! 任せて!」

提督「ああ、それじゃあお願いしようか」

暁「任せなさい!」

提督「待たせたな、みんな」

雷「はい! 阿武隈さん! 雷が頑張って淹れたんだから、しっかり飲んでね!」

阿武隈「うん、ありがとうね雷ちゃん」

電「ありがとう、なのです」

霞「……ありがと」

雷「どういたしまして!」

朝霜「……やっぱ変わったよな、霞」ボソッ

阿武隈「うん、霞ちゃんも前から優しいけど、最近、随分固さが取れた感じで嬉しいな」

朝霜「んー。そうだな。これも――のおかげかねぇ」

阿武隈「え? なになに?」

朝霜「いや。阿武隈さんと司令にありがとうってね。ただそんだけだよ」

阿武隈「え? ケーキおいしかった? ならあたしも嬉しいし、他の作ってくれたみんなも喜ぶと思います」

朝霜「えっと……まあいいや、阿武隈さんはそれで」

阿武隈「んー?」

電「阿武隈さんはやっぱりすごいのです!」キラキラ

阿武隈「ふえ? えっと、電ちゃんどうしたの? なんだか恥ずかしいんですけど」

提督「お疲れ様、阿武隈。疲れてないか?」

阿武隈「いえ、大丈夫です。好きでやってることですから。提督こそ、疲れてないですか?」

提督「いや、大丈夫だよ」

阿武隈「もう。てーとく、あまりごまかしてちゃ駄目ですよ。疲れているならしっかり休んでくださいね」

提督「む」

阿武隈「提督、あまり無理はしないでくださいね。あたしもみんなも、心配しちゃいますから」

提督「分かったよ。相変わらず阿武隈には敵わないな。阿武隈も無理はしないようにな」

阿武隈「はい、分かってます」

提督「よろしい。あまり無理するようなら五十鈴に説教してもらうからな」

阿武隈「もー! 提督ってば、あたし子供じゃないんですからね!」

提督「あはは、無茶しなければいいだけのことだ」

阿武隈「むー……そうですね、はい。ありがとう、提督」

清霜「よし! 今度はどうやって戦艦を目指そうかなー? ねえ榛名さん、なにかアイデアない? ねえ、なにかない? ねえねえ?」

榛名「え、えっと……榛名、少し困ります……」

電「清霜ちゃん、あまり無理言って榛名さんを困らせたら駄目なのです」

清霜「えー? ……そっかー。そうだよね。榛名さん、ごめんなさい」

榛名「いえ気にしないでください。電さん、ありがとうございます」

電「戦艦はサイズが違いすぎるのです。軽巡洋艦がいいのです!」

榛名「電さん!?」

響「電、そこまでにしておくんだ」

電「響ちゃん?」

響「軽巡洋艦になったら……電は今よりずっと大きくなる」

電「それは素晴らしいのです!」

響「だけど、阿武隈さんに肩車してもらったりすることはできなくなる」

電「なのです!?」

神通「!?」

霞「おいそこ。いきなり出てきてなにショック受けてんのよ」

響「それでもいいのかい?」

電「……電は……電はどうすれば」ガタガタ

暁「そこまで苦悩することなの!?」

雷「阿武隈さんの下で働くことも難しいかもね。駆逐艦じゃなくなるんだから」

電「!?」

暁「雷! 余計に電を悩ませることを言うんじゃないわよ!」

電「……でも、ずっと阿武隈さんに甘えっきりなのは嫌なのです。電は阿武隈さんみたいな水雷戦隊旗艦になりたいのです」

阿武隈「電ちゃん……」

電「でも、駆逐艦じゃ難しいのです……過去でも、駆逐艦じゃ小さくて旗艦としての司令部施設や要員を乗せることが出来なかったのです」

熊野「そうですわね……昔の艦だったときはともかく、今は艦娘なんですから、要員の問題はありませんわね」

蒼龍「だとすると、あとは通信機器とかの施設絡みですね……ん?」

阿武隈「そうだ! 駆逐艦で司令部施設積める子がちゃんといるじゃない! ねっ!」

電「あっ! そうなのです!」

霞「……え? 私?」

響「霞以外に誰がいるんだい?」

電「霞ちゃん! 電に司令部施設の装備と運用の仕方を教えて欲しいのです!」

霞「ちょ、いきなりそんなこと言われても困るわよ! 霞だって改二になったら自然に装備出来るようになったんだから! 使い方は勉強したけど!」

電「そうなのですか……残念なのです」

五月雨「でも、それなら電ちゃんも改二になったら出来るようになるかもしれませんよ?」

初霜「ちょっと難しいと思うわ……霞さんの『それ』は、あくまで礼号作戦で旗艦を務めた過去の経験がフィードバックされたものだから」

榛名「えーと……では、今その経験を積めば、もしかしたら可能性があるのでは?」

電「ふえ?」

榛名「熊野さんのような、過去に航空巡洋艦になった経験がなくとも、今そうなっている例もあるわけですから」

榛名「霞さんの実例がある以上、先ほどのような大きさの問題だけで全て駄目というわけではないみたいですし」

電「とすると、可能性があるのです?」

風雲「うーん、そう簡単にはいかないと思うけど……たしかに可能性はゼロじゃないわよね」

電「ありがとうなのです! 阿武隈さん、霞ちゃん! 電、頑張るのです!」

阿武隈「えへへ、あたしも協力するからね、電ちゃん」

霞「ちょっと、私は協力するなんて一言も――」

阿武隈「霞ちゃんも、良ければ協力してくれると嬉しいな」

霞「あ、アンタねえ……はあ、分かったわよ。阿武隈さんには大発運用を教えてもらった恩もあるし」

阿武隈「霞ちゃん、ありがとう!」ぎゅー

霞「いちいち引っ付いてくるんじゃないわよ。暑苦しい」

朝霜「顔がにやついているぜ霞」

霞「ぶっ飛ばすわよアンタ!」

阿武隈「霞ちゃん、良い子良い子」ナデナデ

霞「頭撫でないったら……もう」

霞「……なんで私を置いていったのよ。勝手に託して。もっと、いたかったのに」ボソッ

阿武隈「……霞ちゃん」

霞「……なんでもないわ、ただのグチ。言ったらスッキリしたわ……ありがと」

島風「いいないいな、霞ちゃん。ねえねえ、もうちょっとしたら島風に代わって!」

霞「今すぐ代わってもらっても良いわよ、別に」

雷「もう、霞ったら照れ屋さんなんだから」

霞「違うわよ! あーもう! 阿武隈さん、さっさと離して!」

響「……本当に離してしまってもいいのかい?」

霞「どういう意味よ!?」

電「霞ちゃん、よろしくなのです! 電も頑張るのです!」

霞「あーもう分かったって言ってるでしょ。電といい、阿武隈さんといい、どうしてこう無邪気に寄ってくるんだか」

榛名「霞さん、榛名も霞さんと仲良くしたいです!」

霞「はあ!?」

清霜「清霜も!」

五月雨「じゃあ私もお願いします!」

雷「雷も一緒なんだから!」

霞「ちょ、こら待ちなさいってば!」

磯風「それはもっと来いという振りだな?」

霞「違うわよこのボケ!」

響「了解した。信頼の名は伊達じゃない」

霞「アンタは信頼の名を返上してきなさい!」

熊野「この熊野もレディーとしてご一緒しますわ!」

霞「揃って近づいてくるんじゃないわよ!? 相変わらず、人の話聞かない奴ばっかりだわ! こうなったら――!」グイッ

阿武隈「ふえ?」

霞「必殺! 阿武隈さんガード!」

阿武隈「え!? ちょっと霞ちゃんあたしを盾にしないで!」

響「ハラショー」バッ!

蒼龍「阿武隈でもいっか! それみんなかかれー!」

朝霜「皆! 阿武隈さんを揉みくちゃの刑じゃー!」

神通「神通、行きます!」

山雲「あら~? 山雲も一緒でいいのかしら~?」

島風「えへへ、おねーちゃん!」

初春「今度こそわらわの舞を見せようぞ!」

阿武隈「きゃ、きゃああああああ!? 霞ちゃんの薄情者ーっ!?」

――ドタバタ! わしゃわしゃ

阿武隈「ふええええ! 髪をグチャグチャにしないでー!」

響「やっぱり阿武隈さんの背中は居心地がいいな」

電「響ちゃん、阿武隈さんに迷惑かけたら駄目なのです!」

提督「平和だな」

赤城「平和ですね」

風雲「そうね……あ、お茶おいし」

これで終わりです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

本作は下記の話の設定を引き継いでおります。
ですが、読まなくても本作を理解するのに支障はないと思います。

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乙なのです。

>>26-27
乙ありがとうございます! とても励みになります!

HTML依頼終わりました。また次回がありましたらよろしくお願い致します。

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