エルフ「もう、共には生きられない」 (60)


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吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」

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青年「ああ、認めるよ……」

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と言うのを書きました。


よろしくお願いします。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1369661900



魔者と赤国の戦争は、魔者側の勝利で幕を閉じた。


戦後、武器、技術は失われ、全ての者達に新たな時が訪れた。


赤国の研究所によって造られた種族を含めた


人間・魔者・獣人・エルフ・ドワーフ。


これら五つの種族は悲劇を繰り返さぬ為、


目を逸らさず、互いを認め、共に歩み出した。


しかし七十年後、大陸全土を未曾有の大災害が襲う。


大陸に住む者半数以上が、大災害によって命を落とした。


生き残った者達の中には、


それは穢れを浄化するべく起こった。


これは神の意思なのだと、そう信じる者も居た。



こうして、


それまでの諸々が消え去り、本当の意味で、新たな時が動き出した。


荒廃した土地で生きる事を余儀無くされた者達。


彼等は種族関係無く、生きる為、生き残る為に手を取り合った。


だが二十年、四十年…徐々に生活が安定して行き、


人口は増え、遂に一つの集落では収まりが付かなくなる。


百数十年が経つ頃、人間と他四種族は居住地域を分けた。


この頃は種族関係は良好、


交易も盛んで、多くの者が互いの住む地域を行き来していた。



………それから数百年………


皆は、


犯した罪を忘れ、


先人が築き上げた絆を忘れ、


気高く、誇り高く戦った、彼等の意志も忘れ去られた。





……過ちは、再び繰り返されようとしていた。





【魔の者】


「あぁ眠い…何匹斬りゃあ良いんだよ」


コイツ等、殺しても食えねえんだよな。


魔物、大災害後に現れた罪の証し。


俺達にとっちゃあ本当に迷惑な奴等だ。口に出したら区別が付かねえ。


……ったく、ご先祖サマは人の為に戦って、人として戦って、戦争に勝ったってのに、


何で未だに蔑称で呼ばれなきゃなれねえんだよ。


魔人って呼ぶ奴も少しは居るけどよ、でも元は人間なんだよな?


まあ、いいや。


周りから見れば確かにヒトじゃねえだろう、瞳は紅いし、滅茶滅茶強い……


けど、だから何だってんだよ。


あぁダメだ…うるせぇ、アタマん中がうるせぇ。そんでもって面倒臭い。



何が、


我々より貴方達は優れている、魔物討伐は頼みますぅ……だよ。


ふざけんなボケが、お前等ヒトは変わらねえな。


ジジイに聞いた昔話じゃ、多くの人間は魔者に協力したとかって聞いたのに。


「つまんねえよなぁ」


早く帰って寝たい、別にこの森で寝ても良い。


けど寝てる間に魔物に噛まれたら痛いからな、


さっさと…ん? 誰だアイツ?


初めて見る奴だな。ヒトか? 人間か?


ココに魔物が出る事ぐらい知ってる筈だ。しかも武器も持たずに…馬鹿かアイツ?



「……っ、オイ!! 逃げろ!!」




【恥】


「はぁ…」


本当に情けない。


人間には力が無いからと、魔人に魔物を押し付けて……


たかが数百年で、ヒトの罪が消えたとでも思っているのだろうか?


現在、大災害前の歴史は、伝説やお伽話の様に扱われている。


まるで過去など存在しなかったかの様に…


人間は、時の流れと共に、過去の過ちから目を背けた。


今や人間と他四種族の絆など形だけで、交流も少ない。


大陸は大災害で隆起した山脈により、南北に分断されている。


南側に人間を含めた五つの種族が暮らしているのだが、


近頃は北側に移住する案も出始ているらしい。



人間は他種族の意思を無視して開拓、発展を目指している。


発展を目指す、それは良いだろう。


でも、他四種族に断りもなく開拓を始めるのは無礼にも程がある。


彼等は自然を愛し、自然と共に生きている。


それを無視して自分達の未来だけを考えてるなんて、


同じ人間として恥ずかしい。


だから僕は変えたい、証明したい。


別段、腕が立つ訳でも何でも無いけど、どうにかしたい。


「種族は違っても共に歩めると、彼の英雄は証明した…なのに、今はこの有り様か」


いや、諦めるな。祖父も父も、種族は違えど共に歩めると説いてきた。


その為か、僕は変わり者扱いされているけど、そんなのは一切気にしてない。


僕は、一人の人間として、現在を変えたい。



【不注意】


「あれ? 森……」


考え事をしている内に森に着いてしまった。この森には魔物が出るから近付くなと言われているのに…


「ん? あれは…」


赤い制服…大戦の最中、魔の者達が着用していたと言われる物に似ている。


随分着崩してはいるけど間違い無い、彼は魔人だ。


この森の魔物は彼が一人刈っているのか…魔人の中でもかなりの強者に違いないだろう。


何やらだらけているけど、あんな大剣を振り回したのだから疲れて当然か。


まるで分厚い板の様だ。僕一人くらいなら、少し屈めば隠れる事も出来るだろう。



此処に来て彼を見つけたのも何かの縁、人間としてきちんと御礼を言わないと…


『オイ!! 逃げろ!!』


彼は振り向き様に叫んだ。明らかに僕に向けた言葉だ。


瞬時に状況を理解した僕は振り返らず走った。


「はぁっ…はぁっ…危なかった」


……何かが、後頭部を掠めた。


この、独特の重圧、そして背筋が凍る様な感覚、これは間違い無く、


「「 ググ…ヴルル 」」


「魔物……」


どの生物にも該当しない異形の獣、怪物。



「「 ハッハッ…ググルゥ 」」


動けない、足が竦む、彼はこんな怪物と……


魔物は凶悪な爪を掲げ、僕に振り下ろそうとしたが、



「くたばれ、バケモノ」



僕の横を、正に、目に追えぬ速度ですり抜けた彼の一振りで、


「「 ギェアぁ!! 」」


一撃で絶命した。


「この、クソ馬鹿野郎!! 何でココに来た!! 近付くなって言われてんだろうが!!」


歳は僕と同じ位かな?


うなじまで伸びた癖の無い黒髪、そして赤い瞳、


端正な顔立ちだが気怠げで、目の下には隈がある。


見るからに不健康そうだ。きちんと食べているのだろうか?


「オイ!! 聞いてんのか? あ?」


「え? ああ、ごめん。少し考え事をしてた」


まるでチンピラの様な話し方だ。でも悪い人では、無い。



【自己紹介】


「なる程な……で、考え事しながら歩いてたらココに来たのか? この森には魔物が出るって知ってんだろうが、バカじゃねえの?」


「それは……ごめん。でも助かったよ。ありがとう」


悪態に反論する事も無く、童顔の青年は柔和に微笑み手を握った。


その所作に違和感は全く無く、馴れ馴れしさや厭らしさも無い、純粋なものだった。


避ける間も無く手を掴まれた魔者の青年は、


「いいのか? 怖い魔者に手を握り潰されちまうぞ?」


と、脅かすが


「種族が違うから怖い? そんなのは怖れる理由にはならない」


間を置かずに告げられたその言葉を聞き、満更でもなさそうな顔で、頭をぼりぼりと掻いた。


「なあ…お前の名前は? ああ、オレはブラッズな」


「僕はリナト。よろしく、ブラッズ」


こうして、種族の違う、二人の青年は出会った。


行間あけすぎ?



【名を継ぐ者】


「ブラッドリーよ、お主は最近、頻繁に人間と会っているそうだな?」


「わりぃのかよ?」


「いや、儂とて人間は皆愚かな者だとは思っておらんよ。じゃが、次代のロイと呼ばれるお主には、少し考えて貰わねば困る」


「ロイ、ね。そりゃあ俺だって尊敬してるさ」


「うむ、我々魔の者の中で白髪なのはお主だけ、そして一族の中で最も優れた力を持っている」


「それだけで英雄の名を押し付けられるのは、確かに気持ちの良いものでは無いだろう」


「だからお主は髪を染めた。じゃがな、皆は信じて止まぬのだ。英雄の再来を」


「よく俺みてえな奴に期待出来るな、まして英雄なんざ、なろうと思ってなれるもんじゃねえだろうが」



「いくらお主が愚か者を演じようと、分かる者には分かる」


「そう思いたきゃ思ってりゃいいさ。でも俺はロイじゃない、俺は俺だ」


「いずれ問われる時が来る……儂もそう長くない。出来るなら、全ての者が幸せに生きて欲しい」


「じゃが儂は、お主の祖父として、一族の希望などと言う荷を背負わせたのは、済まないと思っとるよ」


「いいさ、ジジイは良くやっ


「馬鹿者!! お爺ちゃんと呼べ!! 孫に蔑ろにされる爺や婆の気持ちを少しは考えんか!!」


「ああ、悪かったよ。爺ちゃん」



「良し。ならば行くが良い。友が待っておるのだろう?」


「……ありがとな、爺ちゃん。じゃあ、行ってくる」


儂等は大戦の遺物、人間の中に嫌う者が居るのは厳然たる事実。


彼等にとっては、犯した罪を突き付けられている様に感じるじゃろう。


なんと身勝手極まりない理屈だ。


魔獣を刈り、平和を齎した我等が祖に武器を向けた時と、何ら変わらんではないか。


だが、未来は在る。


新しい世代、新しい時代、新しい絆…


この鬱々とした今を変える者は、必ず現れる。



【同い年】


「なんだリネット、また来たのか。アタシ以外に友達いないのか?」


そう言ったのは、ドワーフの女性。


すらりとした長身で浅黒い肌、


背中に届く赤茶の長髪を後ろで結び、袖無しの作業着を着用、手には鉄槌。


男勝りで気の強い感が顔に出ていて、溌剌とした女性だ。


「カティアだって、私以外に友達居ないくせに」


此方は白いローブを着たエルフの女性。


白い肌、肩にかかるふわりとした金髪、


背は標準なのだろうが、身体の一部は標準以上に発達している。


子犬のような人懐っこい顔立ちで、男女問わず否応無く庇護欲をそそられるだろう。


>>13 見やすいかな、と思って…自分はこんな感じで書いてます。

今日は終了します。ありがとうございました。

乙です

自分はこの書き方好きですよ


>>24 ありがとうございます、嬉しいです。

前に書いた物より時間がかかりそうですが、

一日に一話二話は書いて行こうと思ってます。ありがとうございました。



【描く者】


「わりぃ、遅れた。ちょっと爺ちゃんと話してた」


「いいよ、僕もさっき着いたばかりだし平気」


あれから俺達は、森の入り口付近ににある大岩に座りながら話す様になった。


コイツと話すのは楽しい。


俺には難しい事は分かんねえけど、コイツは何かをやり遂げる…そう思った。


「僕は今を変えたいんだ」


開拓やら何やらで、人間と他四種族の間はピリピリしてんのに、


こんな事を、真っ直ぐに言えるヤツだからな。

また夜に更新します。ありがとうございました。

毎度の事だが、今回も楽しみに読ませてもらう



【年頃】


「ねえカティア、最近ブラッズ見ないね?」


「ん? ああ…あいつは人間と会ってるらしいぞ?」


「に、人間かあ…怖いなぁ。昔怖い目に遭ったし」


「助けてくれたのも人間なんだろ?」


「それは、そうだけど…怖いよ」


私に乱暴しようとした人達……あの目は、未だに忘れられない。


「ブラッズは元々人間が嫌いだったしな…何かがあったんだろうな」


「可愛い女の人を助けた、とか?」


「そうかもな」


>>31 ありがとうございます。

今日はこの辺で終了します。ありがとうございました。



【探索隊】


下山中の探索隊、その中の二人が何やら言い合っている。


「隊長、本当に良いのですか!? この事が王に知れれば!!」


「がははっ、安心しろ!! 失うのはオレの首だけだ。まあバレたら、の話しだけどな」


顎髭を伸ばした熊のような大男、豪快に笑う彼が探索隊の隊長。


「しかし、あんな青臭い理想を聞いて引き下がるなんて、隊長らしくありません」


恐らく隊内で最年少であろう隊員は、納得出来ない様だ。


「そんな事は無いぞ? あの小僧は面を外したな?」


「ええ、外しました。まして名を名乗るなど馬鹿としか……我々が王に告げればどうなるか、分からない筈は無いのに」


当然、反乱分子と見なされるだろう。だが、その青年はそれを承知で面を外した。


「其処だ。あの小僧は理想の為に命を懸ける男」


>>48 ありがとうございます。

また夜に更新すると思います。ありがとうございました。



【芯】


戦闘は何とか避ける事が出来た。


探索隊の人達は、それ程忠義がある風でも無かったし。


それに、今の国に疑問を持っているのも見て分かった。


彼等の心は、揺れている筈だ。


「……いっ!? 痛い痛い!!」


「我慢して下さい。消毒と止血をきちんとしなければ、後に酷い事になります」


「怒ってるの?」


「当たり前です!! それにリナト殿、貴方は甘過ぎます!! 今からでも遅くはありません、彼等は始末すべきです!!」


本来ならそうすべきだろう。でも、それじゃあ駄目なんだ。


「大丈夫だよ。彼等は僕の名を出したりはしない」

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