吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」 (254)



勇者「あなたはいつでもそうやって」色々酷いです。

ーー「そうだ、オレの名は」これは中断してます。

町娘「私が出会ったのは」


と言うのを書いたんですが、少し違う書き方をしたいので練習を兼ねて始めてみます。

時間が掛かるかも知れませんが読んでくれたら嬉しいです。



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【出会い】


魔界中の女性に手を出した変態魔王を倒し、城から出ようと城内を歩いていたら間の抜けた事に迷っちまった。


気にせずぶらぶらしていたら明らかに異様な気を放つ扉を発見、オレの体から溢れ出る冒険心で開けてみれば、


「やべえ、喉渇いて死にそう」


そこは砂漠だった。


全く訳が分からない。それに、どうやら此処は魔界じゃないらしい。


「あの、大丈夫ですか?」


人間、それも女、よくもまあ一人で砂漠を歩けるもんだ。つーか、大丈夫ですか? じゃねえよ。すっと水出せよ、すっとよぉ


「大丈夫に見えんのか? 早く水寄越せよ」


「くたばれ」



えっ? ちょっと待って、初対面でくたばれは無くない? これはマズい、かなり腹立つけどここは下手に出た方が良さそうだな。



「すいません。水を下さい、お願いします」


「はぁ…はい、どうぞ」


なにそれ? その仕方無く、頼まれたから渋々…的な。
友達に話し掛けようとして振り向いたら椅子に肘ぶつけて痺れたみたいな顔。腹立つわぁ……お前の人生滅茶苦茶にすんぞ


「すいません。ありがとうございます」


水飲んだ後でな!!


「ちょっ、ちょっと!! なに全部飲んでるんですか!!」


うるせえな、別にいいじゃねえか。このまま逃げても良いが、何処に行けば良いかさっぱり分かんねえ。



まあ水貰ったし? 礼の一つでもしてやろうと思わなくもない、オレは優しいからな。



「お前、名前は?」


「え? あ、町娘です」


普通ですね、などとは言わない。親からもらった名前をそんな風に言うのはダメだと思う。
例え、魔血武素女みたいな感じでも馬鹿にしたりしちゃいけない。最近随分増えたよな、そういうの。


町娘「あの……お名前は?」


ほう、中々見所のある娘だな。


「聞いちゃうかぁ、そこいらの連中とは比べる事すら許されないオレの名前を聞いちゃうかぁ」



町娘「えっ!! も、もしかして勇者様ですか!?」



期待したオレが馬鹿だった。何かあれば、すぐに勇者だの魔王だの、そんな時代は終わったんだよ。


終わったんだよ?


大体、もう古いんだよ。みんな新しいモノを求めてんだよ。
敢えて王道で……みたいなのあるけど、最近のは何か違う気がする、グラン○ィアとかは今でも好きだけど。


生まれ変わったら勇者か魔王かジャスティンがいいな……なんて、寝る前に思ってるけど。


「………だよ」


町娘「はい?」


たかが娘の分際で勇者との出会いを期待するとはなんて奴だ。きっと今のも聞こえていたのにわざと聞き返したに違いない。


底意地の悪そうな顔してるもん。



「吸血鬼だよ!!」



涙目になってるのは目に砂が入ったから…


期待を裏切る感じになり、恥ずかしさと切なさ、それが涙という世界で最も美しい宝石に変化して瞳から零れ落ちそうになっている訳では決して無い。


町娘「あっ…すいません。なんか期待し過ぎちゃったみたいで」


吸血鬼「いやいや、期待して良いよ!? お前が高望みし過ぎなんだよ!! 分相応で行こうぜ!?」


声張らないと泣きそう。ちゃんと誤魔化せてる? 大丈夫?


町娘「ごめんなさい」



やめてッ!! 本当に泣いちゃうから!!



町娘「あっ、もう行かないと」


ほら見ろ、勇者じゃないと分かるや否や颯爽と立ち去ろうとしてるよ。今にも泣きそうな吸血鬼を置いてけぼりにして。


吸血鬼「え? もう行くの?」


もう少しさあ、何かあってもいいんじゃないの? 何処から来たんですか? とかさあ。


別に一人は寂しい、ちょっと一緒に居て欲しい、とかじゃないからな。



町娘「はい、早く帰ってお父さんにお薬渡さないといけないので……」



そんな寂しい顔すんなよ。ごめんな、お前の事誤解してたわ。本当は良い子だって、優しい子だって信じてた。


おっぱいデカいし。


そうか、病に伏す父の為、たった一人で砂漠を…


吸血鬼「よし、送ってやるよ。魔物とか出んだろ?」


そして道中、変態魔王を遥かに凌駕したオレの力を見せてやる。


町娘「いいんですか!? ありがとうございます!!」


吸血鬼「いいっていいって。じゃあ、行くぞ!!」


町娘「はいっ」



笑顔は中々に可愛いなぁ……と、思いました。



続く



【道中】


町娘「きゃっ!! き、吸血鬼さん、魔物が」


やっと出やがった。


相手がちょっとだけ大きめのサソリなのは不満だが、お前等で我慢してやる。


吸血鬼「見せてやるよ、魔法ってヤツをな……ゾンビー!! からのザオリク!!」


我ながら良いセンスだ。すぐに派手な魔法使う奴がいる……オレって強いんだぜ!! って見せ付ける様な奴だ。



そんな真似は二流、三流のする事。そこら辺オレは違うんだよ、うん。



町娘「なんか、陰険ですね」


この雌……いや、怒ったら負けだ。コレの良さが分からないなら仕方無い。


吸血鬼「じゃあ分かったよ!! すっげえの見せてやるよ!!」


吸血鬼「召還、バハムート!! ハイどうぞ!!」


【メガフレア】


【この砂漠は元々緑豊かな土地だったんです。でもある時、バハムートの強大な魔法が降り注ぎました。その理由は今でも分かりません、ですがその所為で辺り一帯の地形、気候までもが変わってしまったんです。


 と、言われても納得してしまう程凄まじい破壊力】


【毒サソリを倒した!!】


町娘「す、凄いですね!!」


分かり易くキラキラしてんなあ、その顔が見たかったんだよ。そうなんだよ、オレは凄いんだよ。


吸血鬼「まっ、こんなモンだ」


町娘「でも、バハムートが凄いんであって吸血鬼さんは別に……」



吸血鬼「…………………」


これはもう、怒っていいよね。



続く


見てくれてる方ありがとうございます。

指摘、感想などありましたらお願いします。

>>1 の訂正


勇者「あなたはいつでもそうやって」色々酷いです。

ーー「そうだ、オレの名は」これは中断してます。

町娘「私が出会ったのは」

と言うのを書いたんですが、少し違う書き方をしたいので練習を 兼ねて始めてみます。

慣れない書き方なので完結まで時間が掛かるかも知れませんが読んでくれたら嬉しいです。

乙!
こういう書き方もいいね


>>13 >>14 ありがとうございます!!

>>15 そう言ってもらえると嬉しいです!! ありがとうございます。

少しですが投下します。



【私が出会った吸血鬼】


慣れてるとは言え、やっぱり暑いなぁ。父さんのお薬は私の住んでいる町には無いから月に一度隣町まで買いに行かなければならない。


隣町と言っても結構な距離があるから疲れるんだよね。


でもお薬のお陰で咳はしなくなったし良くなってる。けど食欲が無い、少しずつ痩せ細って行くのを見るのはとっても辛い。


お父さんが死んじゃったら、私は一人ぼっち……いや!! ダメダメ!! そんな事考えちゃダメだ、うん。


「はぁ…」


まだ家に着くには結構歩かなきゃならないなぁ、早く帰って休みたい。お父さんは大丈夫かな?



ん? なんか、なんか変な人が居る。



「やべえ、喉渇いて死にそう」


砂漠のど真ん中で半袖短パンのジャージ姿、この人は砂漠を舐めているんだろうか?


それとも、キメ細かい白い肌を自慢したいんだろうか?


私の持ってる水筒をチラチラ見ながら暑い暑いと連呼しているから何か事情があるのかも知れない。


取り敢えず、


「あの、大丈夫ですか?」


会話の導入って結構大事だよね。



「大丈夫に見えんのか? さっさと水寄越せ」



顔は良いが目つきが悪い、態度が悪い、そして厚かましい。私だって疲れてるのに、無理してこんな変人に話し掛けるんじゃなかった。


だから、


「くたばれ」


言ってしまった。でも、誤解しないで欲しい、私は普段こんなこと言わない。お父さんの事とか暑さとかでちょっぴりイライラしてただけなの。


でも、言い過ぎだよね。謝らないと


「すいません。水を下さい、お願いします」


土下座!? 変わり身早いな!! さっき迄の横柄な態度とは真逆だよ。


もしやこの人、土下座慣れしてるのでは? そう思ってしまう程綺麗な土下座だった。



なんか、イライラしてたのが馬鹿みたいに思えてきた。



「はぁ…はい、どうぞ」


と、思ったら、渡した水筒の水を全部飲み干した。ありがとうの一言も無い、一発くらい殴っても許される筈だ。


「おいお前、名前は?」


態度デカいなあ、何処の生まれだ? 貴族なのか?


私と同い年くらいだから十七、十八歳くらいな筈、親は何を教えて来たんだ……全くなってない。


私は礼儀正しくしよう。こんな人間になってはならない。


町娘「あ、えっと、町娘です」


「普っ通だな……」


バッチリ聞こえてるよ!! なんだこの人!!


どうせろくでもない人だろうから名前聞いた後で私もなんか言ってやろう。


「あの、お名前は?」



別に興味無いけどね!!



「ん? 聞いちゃう? そこら辺の連中とは比べる事すら許されないオレの名前聞いちゃう?」


うざいなぁ、どうせ貴族とかなんだろうな……ならば


「えっ!! も、もしかして勇者様ですか!?」


意地悪してやろう。


「吸血鬼だよ」


き、吸血鬼!? ほわぁ……一生に一度会えるかで言ったら、かなり珍しいよね?


だけど認めるのもなんか嫌だし、


町娘「はい?」


今一度、意地悪してやろう。



吸血鬼「吸血鬼だよ!!」



あっ、泣きそうになってる。なんか可愛いな……だからこそ!!


町娘「あっ…すいません。なんか期待し過ぎちゃったみたいで」


意地悪したい!!


吸血鬼「いやいや、期待して良いよ!? お前が高望みし過ぎなんだよ!! 分相応で行こうぜ!?」


これ以上やると本当に泣いちゃいそうだから止めておこう。


町娘「ごめんなさい」


それより、こんな人…じゃなくてこんな吸血鬼に構ってる暇は無いんだった。早く帰らないと


町娘「あっ、もう行かないと」


吸血鬼「え? もう行くの?」


凄い寂しそうな顔してる。でも急がなきゃならないし……って言うか直射日光ビシビシ浴びてるけど平気なのかな?



きっと平気なんだろうな…



町娘「はい、お父さんにお薬渡さないといけないので」


吸血鬼「よし、送ってやるよ。魔物とか出んだろ?」


えっ!? 急にどうしたんだろう? 実は結構優しい吸血鬼なのかな?


何か企んでる風にも見えないし、ここは素直に送ってもらおうかな。


町娘「いいんですか!? ありがとうございます!!」


吸血鬼「いいっていいって。じゃあ、行くぞ!!」


落ち込み易いけど立ち直りも早いんだ、立ち直りの早さは見習わないとな。


町娘「はいっ!!」


それに、こんなに楽しいのは久しぶりかも知れないなぁ……



続く



【吸血鬼さんの本気】



町娘「きゃっ!! き、吸血鬼さん、魔物が」


魔物なんて滅多に出ないのに、でも最近目撃情報が増えてるんだよね、怖いなぁ。


吸血鬼「見せてやるよ、魔法ってヤツをな……ゾンビー!! からのザオリク!!」


あれ? ちょっと期待してたのと違うかも、吸血鬼さんの事だからドガンって感じの派手な魔法を使うと思ってた。


それに、


町娘「なんか、陰険ですね」


吸血鬼「じゃあ分かったよ!! すっげえの見せてやるよ!!」



そんなにハードル上げて大丈夫なのかな? 取り敢えずちょっとだけ期待しておこう。



吸血鬼「召還、バハムート!! ハイどうぞ!!」


うわっ、凄くデカい!! ほあぁ…影で隠れちゃった!! あっ、ちょっと涼しい。


それより、本物のバハムートなの!? えっ、もしかして吸血鬼さんって凄いのかな?


【毒サソリを倒した!!】


町娘「す、凄いですね!!」


吸血鬼「まっ、こんなモンだ」


出たぁ!! ドヤ顔だぁ!! なんか腹立つなぁ……私には分かる、吸血鬼さんはきっと調子に乗せちゃダメなタイプだ。


そして、叱られて伸びるタイプな筈。


町娘「でも、バハムートが凄いんであって吸血鬼さんは別に……」


吸血鬼「…………………」


あっ、泣きそうになってる。メンタル弱いなあ…今度は素直に褒めてあげよう。



続く


読んでくれてる方、レスしてくれた方、ありがとうございます!!

指摘や感想などよろしくお願いします。


>>27 ありがとうございます!!

ちょっと書けたので投下します。



【決意】


吸血鬼「砂漠の町か、まんまだな」


町娘「町の名前にケチ付けないで下さいよ。あの、吸血鬼さん」


なんか急に寒くなってきた。いや、マジで寒い、顎がガチガチ言いそうなくらい寒い。


白湯飲みてえ、味噌汁飲みてえ。あ、母ちゃん心配してっかな…


吸血鬼「ん? なに?」


町娘「もう直ぐ完全に日も暮れてかなり寒くなるので、家で良ければ泊まりませんか?」



吸血鬼「えっ? いいの?」



町娘「はい、お父さんにお礼はちゃんとしなさいって言われてますから」


始めて会った人間がコイツで良かった。魔族にこんな事言える奴居るんだな。


吸血鬼「ありがとな、助かる」


町娘「ふぁっ? あ、はい」


びっくりしたぁ、いきなりお礼なんて言われたから変な声出ちゃった。


あ、寒くなってきた早くお家に入らないと拙い、吸血鬼さんガチガチ言ってるし。


町娘「ひ、冷えて来ましたね。急ぎましょう」



吸血鬼「?? おうっ」



町娘「ふぅっ、ただいま。遅くなってごめんね?」


娘父「いや、私は大丈夫だよ。あれ、其方の方は…」


吸血鬼「あ、砂漠で倒れていた所を娘さんに助けてもらった吸血鬼と申します」


はぁっ!? 全く、そんな言葉遣い出来るなら最初からそうして下さいよ。


町娘「その後、魔物から守ってもらったの。行く所もないみたいだし家に泊めようと思って、いいかな?」


娘父「勿論だよ。狭い家ですがゆっくりしていって下さい」


この親父、全然嫌な顔してねえ、優しさの塊だな。



娘が通りがかって良かったわ、今頃凍死しててもおかしくなかったからな。



吸血鬼「あ、はい。ありがとうございます」


町娘「お父さん、吸血鬼さん。今からご飯作るから待ってて」


あんなに歩いたのに、帰って来て直ぐに料理すんのか、すげえな。ん? 母ちゃんは居ねえのかな?


娘父「吸血鬼君」


吸血鬼「んぁ? はい、なんでしょう?」


娘父「娘を助けてくれてありがとう」


こんな人間に会えるなんてな、運全部使っちまったのかも知れねえ。つーかかなり苦しそうな顔してるな、病気か……ん!? 



待て待て、オレ魔法使えるよな? 余裕で治せんじゃん!!




吸血鬼「いや、お礼なんていいです。それより」


娘父「なんだい?」


治して良いですか? って聞くのも変だしな。取り敢えず


吸血鬼「常世の祈り」


【娘父の体力が全回復・バットステータスを治した】


娘父「あれ? 痛みが…消えた? これは、吸血鬼君が」


これで治らなかったらどうしようかと思ったぜ、治って良かった。


吸血鬼「あ、はい。治って良かったです」


娘父「………」


ん? おいおい、俯いちまったぞ!? オレ、何かしちゃったのか?


吸血鬼「あ、あの」


娘父「いや、嬉しくてね。娘がご飯を持ってきたらびっくりさせよう」



なんだそれ!! オレがびっくりしたわ!! 




吸血鬼「あの、お母さんはお仕事ですか」


あ、やべえ、明らかに顔が曇った。あぁ、聞いちゃいけない事だったか…どうすっかな。


娘父「ああ、うん。妻は仕事だよ。領主様の所でね」


何で辛そうな顔してんだ? 病気は治った。他になにかがあるのか?


この後、料理を持って来た娘が病気の治った親父さんに泣きながら抱きついたり、


親父さんが笑い泣きながらご飯食べたり、楽しい食事だった。



二人からは、何度もありがとうと言われた。



食後、はしゃぎ過ぎたのか、親父さんはすぐに眠ってしまった。


あんだけ喜んで貰えるとこっちまで嬉しくなるな。


だがオレには聞かなければならない事があった。聞かない方が良い、それはさっき親父さんの顔を見て分かってる。


あの時の親父さんの顔、病気を魔法で治すのとは話しが違う。


何とかしてやりたい。この親子の為に、何か……


町娘「吸血鬼さん? どうしたんですか?」


吸血鬼「娘、聞きたい事がある。お前の母ちゃんに何があった?」


娘、辛そうな顔させて悪いな。



聞いた所で何も出来ねえかも知れねえ、いや、絶対何とかしてみせる。



つーか何でオレはこんなに必死になってんだ? また、ありがとうって言って欲しいからか?


町娘「母さんは、この町の領主に無理矢理屋敷に……」


吸血鬼「分かった。もういい、悪かったな」


町娘「でも何でこんな事聞いたん


吸血鬼「ドルミナー」


町娘「えっ? は、うぅ…」


【町娘は眠ってしまった】


偽善だと言われても、英雄気取りと言われても、独善的とか、つーか何言われてもいいや。


誰かが言ってた。


そうだよ、







吸血鬼「人を助けるのに理由なんていらねぇんだよ」



続く


見てくれてる方、レスしてくれた方、ありがとうございます。

書きたい所まで書けたので此処で終了します。

指摘や感想などよろしくお願いします。

途中で町娘の心の声?が入った?
心の声をならどちらかわかりにくくなるな

最初みたいに片方なら片方のだけってして欲しい



>>38  ありがとうございます!!

はい、 >>30 >>31 に入れました。

どちらも書こうとしたら、とても中途半端になっちゃいました。

次回からそうします、ありがとうございます。



>>1です。投下します。



【醜き者・穢れ無き者】


やっぱ寒いな、さっき唯一開いていた店で服買ったけど、あんまり変わらねえな。


無一文だったが、オレの華麗な流し目でコロッと落としてやった。オレも罪な男だな、ん? 着いたみてえだな。


此処が領主の屋敷か、何か豪華に見せようと派手な物くっつけて建てたみたいな、なんつーか、悪趣味な屋敷だな。


領主ってのは王から任命された奴だよな、確か。


自分の統治する町の、しかも人の嫁さんを無理矢理連れて行くなんざ最低な野郎だ。


そんな奴を領主にしたこの国の王も大馬鹿野郎だ。



親父さんや娘みたいな思いをしてる奴が、他にも居るのかもしれねえ。



「なんだお前、こんな夜更けに何の用だ?」


兵士じゃねえな、チンピラか用心棒か何かか? 


それより、ぶっさいくな顔してんなあ、領主も不細工なんだろうな、きっと。


吸血鬼「ん、ああ。用っつうか、領主を殴りに来た」


オレは素直なんだよ。



いつも空を見上げて生きていたい、そう……思うから。




用心棒「んだと!? この野


あ? 誰が喋って良いって言った? オレは今、とってもご機嫌斜めだから気を付けろ。


吸血鬼「うっせえ。黙れ」


用心棒「ヒッ!!」


いい歳してんだから睨まれたくらいで漏らすなよ。


まあいいや、これ以上見つかるのは面倒だしな。さっさと塀を飛び越えて入るか。



ーーーーー

ーー


この町の新しい領主に任命され1ヶ月。


今ではこの町は儂の物だ。酒、女、金、全てが儂の物。


ふふ、誰も儂には逆らえん、皆が儂に服従しているのだ。


「はぁっ…っ」


今、儂に抱かれているこの女も儂の物。これほど美しい女は、たかが町民風情には勿体無い。



都合の良い事に亭主は病で稼ぎが無かった。そこに漬け込めば、実に容易いものだった。



領主「どうだ? あの亭主が死んだら儂の妻にならんか? 娘も養ってやるぞ、ん?」


女「さっさと終わらせて。あなたの妻になるくらいなら、死を選ぶわ」


領主「ふふっ、そうか、まあ良い」


気丈な女だ、だからこそ良い。無理矢理に組み伏せ、犯す。


愛する者を想い、儂への憎しみを噛み殺し、辱めを耐えるその表情。



それが堪らない。



ーーーーー

ーー


吐き気がする…この屋敷に連れて来られて二週間程経っただろうか?


その間、私は昼夜問わずこの男に何度も犯された。


の男が憎い、殺してやりたいと何度もそう思った。


だが私はこの男の前では一切の着衣を禁じられている。用心深い男なのだろう。


羞恥と度重なる陵辱。私が此処に居る限り、あの人と娘の命、生活は保証される。


悔しい。



そして憎いと言いながら、実際この男に頼らなければならない自分が情けない。



私は夫を、娘を愛してる。


だから、この領主に何をされようと、私の此の心は穢れはしない。


領主「どうだ? あの亭主が死んだら儂の妻にならんか? 娘も養ってやるぞ」


そして何時か必ず、愛する人と、愛する娘と、再び会えると信じている。


女「さっさと終わらせて。あなたの妻になるくらいなら、死を選ぶわ」


そう言った私の顔を見て、満足そうに、そして下卑た笑みを浮かべながら


領主「そうか、まあ良い」




私の中に精を放った。



ーーーーー

ーー


屋敷内の奴らは全員眠らせた、何回か殺した後だけど。


本当の裁きは町の者に任せよう、
奴等は痛みと憎しみをその身に受けなければならない。


捕らわれていた女達の痛みに比べれば可愛いもんだ。


それと驚いた事がある、女達は誰一人諦めちゃいなかった。誰一人、瞳に宿る光を失ってはいなかった。


この町の人々はきっと強く、気高い魂を持っている。


そんな美しい魂を持つ人々を、


穢れた欲望の捌け口にする領主、許す訳には行かねえ。



吸血鬼「待ってろよ……糞野郎」




続く


此処で終了です。

>>46 訂正 の男が憎い。 この男が憎い。

>>47 訂正 この領主に、 この男に、

読んでくれてる方、ありがとうございます。


乙です

乙です

>>50 >>51 >>52 ありがとうございます。

短いですが、投下します。



【裁く者】


領主「くくっ、ぐふふっ」


ねっとりと厭らしい笑みを浮かべながら、女の白く柔い尻をぐいと掴み、強く腰を打ち付ける。


女は唇を強く噛み締め、その唇からはじわりと血が滲んでいた。


領主に尻を向け、屈辱的な体位で犯されるのを、今の陵辱が終わるのを、ただ待っている。


領主「うっ、射精すぞ!!」


身体をぶるりと震わせると二度目の射精を行った。当然の如く、膣奥に放つ。


その行為は、この女は自分の物だと刻み付ける様だった。


領主「ぬふふ、まだ終わらんぞ? 全く、本当に良い女だ」



膣からそれを引き抜き、体位を変えて再び挿入する。

来やがったか!



女「……っ」


領主「ふひっ、そうだ。その顔をもっと見せろ」


三度目の行為を始めようとした時、突如、扉が内側に弾けた。


吸血鬼「…っ、おい…今すぐ離れろ」


犯された女を見た吸血鬼の表情は曇り、悲しみに満ちていた。だが、それは忽ち


領主「な、なんだ貴様は!!」


吸血鬼「黙れ。聞こえなかったか? 今すぐ離れろって言ってんだよ!!!」


憤怒へと変わる。



領主「ひっ、ひぃっ!!」



今、一体何が起きているのか何も分からぬまま、すぐさま女から離れると、勢い余ってベッドからどさりと落ちる。


吸血鬼「娘のお母さん、ですよね? 家に帰って下さい。二人共、待ってますから」


吸血鬼に彼女を憐れむ様子は無い。毅然と、彼女の瞳をしっかりと見つめ、そう告げる。


女「ええ、分かったわ。ありがとう」


下手な憐れみを向けられれば、自分は穢れたのだと感じていただろう。


だからこそ、吸血鬼の憐れみの無い真っ直ぐな瞳が、


貴女は穢れてなどいない。



そう言ってくれている様で、彼女にはそれが心地良かった。



吸血鬼「行ったな…おい、屑」


汚物でも見るような、


軽蔑と侮蔑を含ませた表情で、未だ床に転がる領主に近付いて行く。


領主「ひっ、くっ、来るな!!」


バタバタと手足を動かし、どうにか逃げようと試みるが逃げ場など最初から存在しない。



吸血鬼「お前は、オレが殺してやるよ。お前みたいな屑は意外と生き延びたりするからな」



何処までも冷え切った瞳には明確な殺意と怒りが籠もっている。


領主は底から恐怖し、震えた。


今までの行いと、先程までの快楽を思い出しながら、何故こうなってしまったかを考えるが検討も付かない。


領主「き、貴様は誰だ!! 何者だ!! まさか、城から派遣さ


吸血鬼「黙れ。今からお前には、そうだな……まあ、オレに殺してくれと懇願する位まで…」


吸血鬼の背後から禍々しい何かが湧き上がり、この部屋を覆って行く。


それは『魔』その物。


禍々しい力の渦が唸り、形を為し、ぐわと口を開ける。


吸血鬼「死に続けてもらう」


領主「な…なんだ、なんだそれは…ひっ!! 誰か!! 誰か助けてくれ!!」


領主は此処へ来てやっと理解した。
眼前の、大口を開けたそれは、自分を呑み込むつもりなのだと。



吸血鬼「幾ら叫んでも、誰もお前を助けには来ねえよ。いいか? お前は、今から、此処で、死ぬんだ」




続く


>>55 ありがとうございます!! 嬉しいです。

ちょっと書き方変えてみました。難しい。

読んでくれてる方、レスしてくれた方、ありがとうございます。

感想や指摘など、よろしくお願いします。

次回は今日中に投下します。



【懇願】


此処は何処だ? 気が付けば断崖絶壁。
一人、二人が立つのがやっとだ、そんな場所で、儂は椅子に座っていた。

身動きすれば即座に落ちるだろう。


何より広い。此処には儂しか居ないと言う事実を突き付けられている様だ。


見渡せば一面にどろりとした赤、そして身体に纏わりつく腐臭。底を見下ろすと、何かが、蠢いている。


そうか、此処は、地獄か。



一体何処で間違えた? 王に取り入り、領主の位を得た。儂の人生は盤石だった筈なのに。



なのに、なのに、何故この様な事になった? 突如やって来たあの男は何者だ?


目に付いたのは不気味さを覚える程青白い肌、そして儂を蔑む冷たい視線とは対照的な赤い瞳。


いや、それより、そんな事よりも、


領主「ぎッ!! ぎゃああああっ!!」


この苦痛、激痛は何時になれば終わる? 何をされているか分からない、見えない、次は何を壊される?


腹を内側から裂かれ、眼を潰され、爪を剥がされ、指を削られ、


もう、感じる事すら出来ぬ程、壊された筈。なのに何故、


領主「ひぎゃああああっ!!」



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛
い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛



儂が悪かった。誰か、誰でもいい。
助けてくれ。金も地位も、全てを捧げよう。だから、だから、この苦しみから、救ってくれ。


「底まで醜い。未だ、生を求めるか」


なんだ? 誰だ? 見えない、怖い。


「貴様の魂など、喰う気にもならん」


何だ? 何を言っている? 問おうにも、舌を抜かれて声を発する事が出来ない。


「闇に沈め、醜き者」


消えた? 何処に行った? 待ってくれ!! 独りにしないでくれ!!


無音……臭いも、痛みも何も感じない。儂は今、何処にいる?


領主「ひ、ひっひはははははは!!!」



暗い、何も聞こえない、分からない。
いや、最早分からなくとも良い。この思考が辛い、生きているのが辛い。消したい、消えたい、もう考えたくない。



領主「ひ、ひゅっ、ひゅう」


殺してくれ、早く楽にしてくれ、早く早早早く早早
く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く!!!


「……良いだろう」


ひ? ひはっ? か、神か? そうだ、神に違いない。神よ、儂に死を与えて下さるのですか?


「さあ、瞳を開き、発せよ。望みを告げよ」


なんだ? 明るい……明るい? 見える、見えるぞ!!
ん、此処は儂の部屋か? 戻って来たのか? いや、もうそんな事は良い、早く告げねば。


神よ、目の前の男に告げれば良いのですか? もしや、この青年は神の御使い……


分からない。それより早く、神の気が変わる前に、早く告げねば、


領主「どうか、どうか儂に、死をお与えて下さい」


吸血鬼「………」


おぉ、何と……何と美しい。女共に熱を上げていた自分が、ただ恥ずかしい。


そうか、この青年は……



続く


>>64 訂正 神よ、この男に  神よ、この青年に

また夜に投下します。読んでくれてる方、ありがとうございます。


>>62訂正 目に付いたのは不気味さを覚える程青白い肌、儂を蔑む冷たい視線とは対照的に、燃えるような赤い瞳を持つ青年。

読み返してはいるんですが、度々すいません。

乙です。
誤字脱字が気になるなら、あらかじめメモ帳かWordかなんかに下書きして、推敲してからコピペして投稿すりゃいいんじゃね?
とは言え、多少の誤字は脳内変換して読んでくれるさきっと


>>67 ありがとうございます!!

>>68 はい、きちんと全体を確認して誤字脱字の無いように気を付けます。ありがとうございます。

投下します。



【彼女が一番見たかった笑顔】


恥辱、陵辱の日々は、突如現れた青年によって幕を閉じた。私の他に囚われていた女性達も無事に逃げ出した様だ。


きっとあの青年が逃がしたのね。
貴族服を着ていたから、どこかの貴族なのかしら? 


肌は随分綺麗だったけれど、青白くて不健康そうだったわね。


青年が何者かは分からないけれど、
あの時の会話を思い返せば、ウチの娘の知り合いなのは間違い無いわよね。


もうすぐ我が家に着く、帰ったら娘に詳しい話しを聞かなきゃならないわね。



それより、あの人は元気かしら? 少し急ぎましょう。




ーーーーー


「ただいま!! 帰ったわよ!!」


返事がない……夜中だし寝てるわよね。ちょっと寂しいけど仕方無いわ。


でも、何で娘はテーブルで寝てるのかしら? このまま寝て明日になってから驚かせるのも良いけど


「娘!! こんな所で寝てたら風邪引くわよ!!」


町娘「う、ん? あ、母さん、ごめんなさい。吸血鬼さんに眠らされ…って母さん!? 帰って来たの!?」


娘母「ええ、ただいま。でも、夜中に大きい声出すのは止めなさい」


町娘「はい…じゃなくて、母さん。えぇっと」


娘母「ん? どうしたの?」


町娘「お帰りなさいっ」


全く、なに泣いてんのよ。こういう時は笑って出迎えなきゃダメでしょうに。


でも、やっと会えた。



娘母「ふふっ、ただいま。あっ……」


娘父「お帰り。待ってたよ、君を…ずっと待ってた」


いつも通りの優しい微笑みだった。


会いたかった。貴方をずっと想っていた。


だから、領主に犯されている時、絶望してしまいそうになっても諦めないでいられた。


それは、この人のお陰だろう。私の夫で、此の世界でたった一人、私が愛する男。


娘父「済まなかった」


娘母「……っ、貴方が謝る事なんてないわ!!」



なんで、なんで貴方が謝るの? 病に罹ったのは仕方の無い事。それに、悪いのは全てあの領主なのに。



確かに屋敷に捕らわれた日々を、辛くないと言えば、嘘になる。


でも、それよりも、あの領主に犯され陵辱された私を、貴方は……


娘父「そんな悲しい顔をしないでくれ。君が此処に帰ってきた、そして君が側にいる。私はそれだけで、幸せなんだから」


夫は微笑み、私をきつく抱き締めてそう言ってくれた。


愛する人の腕の中で、


屋敷の中での全ての出来事は、


今、この瞬間、本当の終わりを迎えたのだと実感する事が出来た。



続く



【私の居場所】


その後、母さんは私と父さんに、領主が自分に何をしていたかを隠さずに伝えた。


とても辛いだろうと思う……父さんは静かに話しを聞き、母さんを優しく抱き締めていた。


父さんは妊娠の心配をしていたが、母さんは、


娘母「大丈夫大丈夫。あの領主、種無しだから」


と、全く心配していなかった。領主自身がそれを認めていたらしい。


既婚者、子持ちの女性が多かったのは子供がいる幸せな家庭を壊したい、との事だった。



もう終わった事……だけど、やっぱり聞いていて気持ちの良い話しじゃない。



話は変わって、父さんから聞いた話しだけど、


母さんは昔から気が強くて負けず嫌い、男の人と喧嘩するのも当たり前で、よく男を泣かせてた


娘母「ねえ、あなたぁ」


娘父「ん、どうしたんだい?」


娘母「愛してるっ」


娘父「ははっ、ありがとう」


娘母「ねぇ、愛してる、って言ってくれないの?」



………らしい。今の会話を聞く限り、全く信じられない。



父さんはそんなに腕っ節は強くない、と言うか弱いだろう。性格は温厚で、喧嘩するような人じゃないし。


母さんは、父さんのそんな優しい所が大好きだって言ってたなあ…


娘父「愛してるよ」


娘母「ふふっ、ありがとっ」


うわっ、ちゅーしちゃった!! 娘居るのにちゅーしちゃった!!


娘母「ねえ娘、さっき言ってた吸血鬼君が父さんの病気を治してくれたのよね?」


町娘「へっ? う、うん。私に母さんの話しを聞いた後、私を眠らせて何処かに行っちゃったけど」



娘母「ふーむ。聞けば特徴も合致するし、私を助けたのはその吸血鬼君で間違い無いさそうね」



母さんによると貴族服を着ていて、肌が白くて、不健康そうな青年が助けてくれたらしい。


って言うか貴族服? 半袖短パンじゃくて?


まあ……十中八九、九分九厘、十人十色、吸血鬼さんなんだろうな。あっ、十人十色は違うか。


娘母「貴男、無理しないで? 休んでて良いのよ?」


娘父「私も待つよ。何せ、愛する妻を救ってくれた恩人だからね」


娘母「もうっ、私も、あ・い・し・て・るっ」


うわっ、もう見てらんないよ!! そのまま致すつもりか!? 父さんも少しは抵抗してよ!!


無理か…組み敷かれてるもんね。外に出ようかな? 寒いから嫌だな……



吸血鬼さん、今すぐ、一刻も早く、一生懸命走って帰って来て下さい。



続く



【流し目の真実】


私は看板娘、綺麗か可愛いで言えば……まあ、断然可愛い方かな?


それと、腰を痛めた父の代わりに武器防具から洋服まで、幅広く取り扱うこの店を切り盛りしてる孝行娘ですっ♪♪


何故か、町の皆からコスプレ屋さんと言われている。それはちょっとなぁ…とか言ったけど、


実は結構気に入ってる。


最近は色々あってお客さんが来ない、もう夜も更けて来たし、そろそろ店閉めないと


吸血鬼「服、どんなんでも良いから、服、服くれ」



と、思ったら、半袖短パン、寒さで顎がガチガチ言ってる同い年くらいの青年が入店。



肌が白い、と言うか青白くなってる、家出でもしたんだろうか?


看板娘「分かった。ちょっと待っててね」


仕方無い、可哀想だし私が服を選んで持ってきてやろう。


吸血鬼「ははは早めに頼む」


看板娘「はいはーい」


うーん、どれが良いだろ?



貴族服とか良いんじゃないかな。後は、このマントも付けよう。



看板娘「はい、どうぞ」


吸血鬼「ききき着替えてって良いか?」


看板娘「うん、いいよ」


近くで見ると本当に肌が綺麗、真っ白って言うか青白い。


そして特徴的な八重歯……って言うか牙!? 実は吸血鬼だったりして。


吸血鬼「よし、着替えた」


うわっ、すっげー似合ってる!!
こんなに貴族服似合う人初めて見た。実はどこぞの貴族かも知れない。
 


吸血鬼「んじゃ、ありがとな」




看板娘「あ、はい。ありがとうございました」


ん? 待て待て待て、何か忘れてる…あっ!!


看板娘「おい、金払えよ」


吸血鬼「……くっ、すいません!! 今持ち合わせが無くて…どうか、どうか」


即土下座!? この土下座、一朝一夕で身に付けられるモノじゃない。


並々ならぬ努力の賜物な筈……なんて綺麗なんだろう。


こんな土下座を決められたら、


看板娘「分かった。代金はその土下座で勘弁してあげるよ」


って言っちゃうのも仕方無いよね。


吸血鬼「ありがとうございます!! 自分、急いでるので!!」


おっ、鬼気迫るって感じだ。何か大事な用事でもあるのかな?


ただ、去り行く君に一言だけ言いたい。



看板娘「もう二度と来るなよー」



続く


此処で終了です。

読んでくれてる方、ありがとうございます。

多分明日も投下します。指摘、感想などよろしくお願いします。


早速間違えました、脳内変換よろしくお願いします。

酷い誤字脱字以外、訂正は控えます。

読んでくれてる方、本当にありがとうございます。


>>84 ありがとうございます!! 見てくれてる人がいて良かった…

投下します。



【深夜帰宅】


領主は始末した。


これで良い。例え領主の行いが発覚し、この国の奴等に差し出したとしても、死罪になるとは到底思えない。


いや、王が選んだとなれば隠蔽しようとするかも分からねえ。だが、もうその心配も無い。


領主を始末した後、ささっと城へ行き、すっと王の寝室へ忍び込んで頭にちょこっと細工してやったからな。



洗脳とかじゃないよ?



ちょっと性格良くしてあげただけだから、大丈夫大丈夫。


アホ面だったから顔も変えてやろうかと思ったけど、止めた。


後は、娘の家に戻るだけだ。


つーか、戻って良いのか? 娘を眠らせた後カッコ良く家を出たから、戻り辛いな……


何か恥ずかしくなってきた。
いやいや!! 悪いことした訳じゃねえし? 大丈夫だよな? な!?



………寒いし、行く所も無いし、戻ろう。うん、戻ろう。



ーーーーー


よし、着いたぞ、後は入るだけだ。こっそりひっそり入ろう。


レビテトで足音消して、バニシュは……いや、それだと完全な不法侵入だ。


堂々と、正面玄関から入ろう。


吸血鬼「戻りま


町娘「吸血鬼さんっ、待ってましたよ!!」


娘母「やっぱり、あなたが吸血鬼君だったのね」



娘父「寒かったろう? さあ、早く入りなさい」



なんだ? 皆、待っててくれたのか? 親父さんは病み上がりだし、母ちゃんに至ってはさっきまで……


それなのに、戻って来るかも分からん、得体の知れない魔族を待ってたのか?


吸血鬼「あ、はい。戻りました」


娘父「ただいま。で良いんだよ?」


優し過ぎんだろ!?
やべえ、何か泣きそう。こんなに感動したのは、真2の修正版を手に入れた時以来かもしれない。


つーか、何でこんなに優しく出来るんだよ。


娘母「ん? 吸血鬼君、どうかしたの?」


吸血鬼「えっ、いや。あの……ただいま」



「「「 お帰りなさい 」」」



これは、泣いても良いよな?



続く



【団欒】


その後、何度もありがとうと言われ、色々な事を話して、就寝。


娘の母ちゃんはすげえな、って言うか心が強いんだろう。


親父さんは菩薩級の優しさだし。娘は……うん、おっぱいがデカい。


そして、翌朝。


娘母「吸血鬼君、どう? 美味しい?」


吸血鬼「はい、すっげえ美味いです」


娘母「吸血鬼君は痩せぎすだから、もっと食べた方が良いわよ? 血色も悪いし」


血色が悪のは元々なんで勘弁してください。



娘父「うん、そうだね。育ち盛りなんだから、沢山食べないと」



吸血鬼「あ、はい。ありがとうございます」


町娘「吸血鬼さんが礼儀正しくてると、何か気持ち悪いですね?」


吸血鬼「……気持ち悪いとか言うなよ」


マジで傷付くから止めろ、キモいより気持ち悪いの方がダメージがデカいからね。


しかし、帰って来てからと言うもの娘のオレに対する態度が、


町娘「じゃあ、気味が悪いです」


態度が……


町娘「気色悪い」


なんなの!? その執拗な言葉の暴力!! お前、そんなにオレを泣かせたいわけ!?



親父さんも母ちゃんも、朗らかに笑ってないで暴言娘を注意してよ!!



町娘「私は喜色満面」


うっせえよ!! うわっ、すっげぇ腹立つ!! 何だその顔、グチャッてすんぞ!!


吸血鬼「ははっ、お前は可愛いなぁ」


町娘「ななな、何ですか急に////」


ほう……こいつ、褒めればころっと行くタイプだな。


黒髪ロングでお淑やか、一見しっかりしてそうで大人しいおっぱい娘、こんな娘が意外と簡単に身体許しちゃうんだよなぁ、将来が心配だ。


吸血鬼「もう、あれだな。眉目秀麗だな」


町娘「え、あっうぅ…////」


吸血鬼「見目麗しい簡単な女だな。尻軽娘か?」


町娘「えへへっ//// じゃない!! 誰が尻軽だ」



馬鹿め!! オレを泣かそうなんざ十九日早いんだよ!!



こんな感じで、母ちゃんの美味しい朝ご飯を食べた。


その後、町の人が来た。
玄関先で暫く話した後で、親父さんと母ちゃんは町の会議に出向く事になった。


きっと昨夜の件だろう。オレには、


娘父「吸血鬼君、君は娘と一緒に居てくれ」


娘母「暇なら買い物に行ったりしても良いからね」


と、言ってくれた。


魔族のオレを気に掛けての事だろう、と思う。


それに、昨日の今日じゃ町の人々も混乱しているだろうからな。


オレが行けばどうなるか分かったもんじゃない。



続く


読んでくれてる方、ありがとうございます!!

また夜に投下します。

血ィ吸えよ


>>95 嫌です。

>>96 ありがとうございます。


投下します。



【私と吸血鬼】


父さんと母さんが会議に出掛けて、今は吸血鬼さんと二人っきりだ。


あっ、そう言えば


町娘「吸血鬼さんは何で半袖短パンのジャージ姿で砂漠に転がってたんですか?」


吸血鬼「ん? ああ、魔王ぶっ倒したんだけどさ」


魔王倒したんだ……まあ、いいや。


吸血鬼「その後、城で迷っちまってさ。そんで、ふらふらしてたら変な扉見つけて、気になって開けてみたら砂漠に居た」



何で開けちゃうかなあ、きっと馬鹿なんだろうなあ。



町娘「その扉はどうなったんですか?」


吸血鬼「それがさぁ…消えちまってたんだよ」


だから砂漠にポツリと、寂しそうに体育座りしてたんだ。思い出すとちょっと笑えてくるな。


町娘「あの、吸血鬼さんは魔界から来たんですよね。どうやって帰るんですか?」


吸血鬼「全っ然、分かんねえ。どうすれば良いと思う?」



何て言ったら良いか分かんないけど、もう少し真剣に生きて下さい。



でも、もし吸血鬼さんがその扉を開けて砂漠に来なかったら……


父さんの病気は治ならかったし、母さんも家には戻って来れなかった。


町娘「あのっ、吸血鬼さん」


吸血鬼「ん? なに?」


痩せっぽっちで強そうに見えないし、


やる気無さそうな顔してるけど、出会ったその日に、両親を救ってくれた。



町娘「父さん、母さんを救ってくれて、ありがとうございます」


魔族って凄く怖くて、気紛れに人を襲う、そんな風に想像してた。


吸血鬼「……おうっ」


だけど、吸血鬼さんは不思議と怖くない……赤い瞳は魅入ってしまう程綺麗で、優しい光を放ってる。


私には目の前で照れ隠ししてる吸血鬼が、


何処にでも居る、同年代の、ちょっと不健康そうな青年にしか見えなかった。


続く



【知りたい】


町娘「吸血鬼って、どんな感じですか?」


吸血鬼「はぁ?」


町娘「ほら、夜な夜な血を求めて彷徨うとか、美女の血を好むとか、色々あるじゃないですか」


吸血鬼「ああ、ウチの曾祖父さんはそうだったみたいだな」


町娘「吸血鬼さんはどうなんですか?」


吸血鬼「うーん。オレはちょっとなあ」


町娘「まさか、吸血鬼なのに血が苦手とか」


吸血鬼「そんなんじゃねえよ。うんとだな、えーっと……ダメだ。説明すんの面倒臭い」


町娘「教えて下さいよ。長くてもちゃんと聞きますから、ね?」



吸血鬼「仕方ねえな、分かったよ」



大昔、


人間の生き血を飲むと強くなれると言う迷信を信じ、それを唯一実践した者がいた。


それが、オレの先祖。


そいつは魔界の王になる為、力を得る為、人間界に出て血を吸いまくった。そして事実、そいつは力を得た。


それが、吸血鬼と呼ばれる様になった所以。


その息子も、そのまた息子も、人間界に来ては血を吸い続けた。


力を欲し、快楽に溺れた。



世代を重ねれば重ねる程、そいつの子孫の力は増して行った。


何万人か何百万人の生き血を吸い、力を得た大馬鹿野郎。


オレは、そいつの血族の中でも、最も色濃い力を受け継いでいる存在。


血族連中には、誇りだの何だの言う奴がいるが、オレにはさっぱり理解出来ねえ。


オレは力なんかいらねえ。


事故であって、血を吸う為に人間界に来た訳じゃねえ。つーか基本的に、魔族は人間界に行ったら駄目だしな。



まあ、そんなに厳しく規制されてる訳ではないんだが。



町娘「あの、吸血鬼さん」


吸血鬼「ん? まだ途中なんだけど」


町娘「暇だし、買い物に行きません?」


吸血鬼「…………」



分かった…もう分かった。オレは二度と、二度とコイツに期待したりしない。



続く


此処で終了です。

読んでくれてる方、レスしてくれた方、ありがとうございます。

おっつ
おもしろいなコレ
吸血鬼が人間に名乗るならアーカードって名前が定番でっせ


これ前回のリメイク的な感じ?



【旅立つ前に】


みんな寝たな。そろそろ行くか、一応手紙書いておこう。


何もせずに居なくなったら、心配してオレを捜すだろう。


特に親父さんは優しいから、母ちゃんと二人で町の皆に呼び掛けたりすんだろうな……



本当に、優しい人達だから。



よし、行くか……っと、その前に、


町娘「すぅ……ぅん」


全く、無防備過ぎんだよ。血を吸われても文句言えねえぞ?


この髪に触れるのも、頬を撫でるのも、唇をなぞるのも、最初で最後。


ありがとな? お前に出会えて良かった。


チッ、そろそろ……離れねえと、拙いな。



吸血鬼「……アニ、ありがとう。もう、行くよ」



続く



【彼の理由】


吸血鬼「悪い、遅れた」


看板娘「遅い!!」


だから遅れたっていってんだろうが!! だが仕方ない、コイツには借りがあるからな。


吸血鬼「頼んでた物は?」


看板娘「はいはい」


鉄の国までは結構掛かる。


その為の旅支度をコイツに頼んだ。領主の屋敷から戴いた品を渡したら楽勝だった。



それに、口は悪いが結構イイ奴で、何も聞かずに承諾してくれた。



看板娘「あのさ、本当に行くの?」


吸血鬼「……ああ、行く」


看板娘「アニには伝えて…るワケないか」


友達だもんな、お前等。


アニと二人で買い物に行く時は、何も買わなくても、必ずコイツの店に寄っていた。


吸血鬼「色々あんだよ。もう行く」


看板娘「それで、いいの?」


吸血鬼「うっせえ。じゃあな」



看板娘「アンタ、何かから逃げてるだけなんじゃないの?」



吸血鬼「……っ、そうだよ!! でも、どうにも出来ねえんだ!! 何も知らねえくせに、知った様な口聞くんじゃねえよ!!」


オレだって離れたくねえよ、明日も明後日もアニと一緒に居てえよ。


オレが吸血鬼じゃ無かったら、アニの両親を救えなかった。


オレが吸血鬼じゃ無かったら、明日もアニと一緒に居られた。


糞ッ、分かんねえ。


吸血鬼って何なんだよ。オレは今まで、血を吸いたいなんて、思った事も無かったのに。


看板娘「ごめん。でも、アニの悲しい顔なんて見たくないからさ」



そんなの、オレだって見たくない。



看板娘「だから、アンタが町を出る理由、教えてくれない?」


吸血鬼「なんでだよ」


看板娘「納得したいから」


話した所で何も変わらない。


でも、理由を聞いたとしてもコイツには何も出来ない、ましてアニに教える事なんて絶対にしないだろう。


吸血鬼「お前も辛くなんぞ? それでも聞くか?」


看板娘「……聞かせて」



吸血鬼「そうか、分かった」



ーーーーー


私には何も出来ない。


アイツの話しを聞いて、一生懸命考えて、悩んで、辿り着いた結果は、それだった。


どうしようもなくて、悲しくなった。聞いている内に泣けてきて、


吸血鬼「何でお前が泣くんだよ」


なんて言われたけど、そんな話し聞いたら泣かないワケない。



だって、そんなの、救いが無さ過ぎるから。



アニと共に歩くアイツの顔は穏やかで、アニから吸血鬼だと聞いた時は本当にびっくりした。


吸血衝動。


それが、もう抗え無い所まで来てる、そう言ってた。


私は、この真実をアニに伝える事は出来ない。だからアイツは、私に話したんだろう。


こうしてアイツは、自分の救った町から…



姿を消した。



続く?

ちなみに吸血するとどうなんの?


>>122 アーカードなんて恐れ多くて使えない。図に乗るなよ、ヒューマン。とか言われそう。

>>123 最初はそのつもりでした。でも書き方変えたら何か段々と変わりました。


>>132 それは…ちょっと待って下さい。すいません。

調べましたが分からないので質問。吸血鬼って>>122が言うように、アーカードと名乗るのが普通なんですか?


あげてしまってすいません。ありがとうございました。

手塚のドンドラキュラって
アニメにもなったし結構有名だと思ってたけど、そうでも無いのか
そういやこれにもヘルシング教授が出てくるな



【偶然】


その後、私は吸血鬼さんが何処に向かったのか調べた。砂漠の国の、全ての町に行き、聞き込みをした。


だけど、そう簡単には行かなかった。

吸血鬼さんが旅人や、行商人と会話していたと言うのは聞いたが、何を話していたのかは分からない。


そして、その旅人や行商人はもう砂漠の国には居なかった。


挫けそうになった時、ある情報を得た。



それは父さんから告げられた。



町長として王様と話した時、
砂漠の国に最近増え始めた魔物の話しになったそうだ。


原因は隣国、鉄の国に突如出現した魔物を排出する門。


通称・魔召門。


もしかしたら、吸血鬼さんは鉄の国に向かったのかもしれない。


魔界と繋がる物に違いは無いのだから可能性はある。


けど、確証は無い。



迷っている私の背中を押してくれたのは、父さんと、母さんだった。



娘母「アニ、行きなさい。腑に落ちないんでしょ? あんな手紙残されて、ハイさようなら、なんて嫌なんでしょ?」


娘父「吸血…ルクレーシャス君にも事情があるだろう。家に帰るのは当然の事だ。けれど、私も少し気になるね…」


娘母「何より、私達はあの子に何一つお返ししてないわ。あれだけの恩を受けておいて返さないなんて、我が家の家訓に反するしね」


娘父「ははっ、確かにそうだね」



こんな風に、押される、と言うより押し出される形で、私は鉄の国に向かう事になった。



ーーーーー


看板娘「そう……」


町娘「だから、行くね。色々ありがとう」


捜しているの分かっていた。けど時間が経てば、諦めると思っていた。


全く、誰から聞いたか分からないけど、まさかアイツの行き先を突き止めてしまうなんて……


告げるべきか? アイツはアニの為に去ったと、どうしようもない事なのだと…


会った所で、アイツは間違い無く拒絶するだろう。


どうする? 此処で伝えれば、まだ間に合う。このまま行かせたら、


アイツがアニの為に悩み、決断した行為を無駄にするばかりか、何よりアニが悲しむ。最悪だ。




看板娘「……アニ、聞いて欲しい事があるの」



続く


>>141 知らなかった…手塚治虫は本当に色々な漫画を書いているんですね。

ありがとうございます。



【彼女の理由】


町娘「そっか、でも、やっぱり行かなきゃ」


やっぱり辛いよね。ごめんね、アニ……って


看板娘「へっ、えっ!?」


町娘「ユニス、話してくれてありがとう」


何か怖い顔してる、って言うかコレは、本気で怒ってる時の顔だ。


看板娘「あ、うん」


こうなったら止まらない。
アニが何に怒ってるのか分かんないけど、もう何言っても聞かないだろうなぁ。


町娘「じゃあ、行ってくる!!」



看板娘「あ、はい。行ってらっしゃい」



ーーーーー


馬鹿だ。大馬鹿だ。


辛い、苦しい、悲しい、怖い?


ふざけんな!!


何も言わずに出て行って、私や父さん母さんに、果ては町の皆にも心配かけて、




その理由が私を守る為!? 冗談じゃない。



身勝手、我が儘、自己中心、自己陶酔にも程がある。


私はどうなる?


私の、貴方を吸血鬼ではなく、


ルクレーシャス・クリストファー・ディーアを想う、私の気持ちはどうなる!?


私の血を吸いたければ吸えば良い、そうされたって、構わない。


だから必ず見つけ出して、百回ビンタして、泣くまで意地悪して、またビンタして、


その後で、


ありがとうって言うんだ。


首を洗って待ってろ、ルクレーシャス・クリストファー・ディーア。



続く


>>147 >>148 ありがとうございます。



【断罪】


私はある目的の為、諸国を旅している。まあ、ただの旅人だ。


話しは変わるが、


如何なる事があろうと、女性を傷付けるのは男として最低な行為だと思う。


しかし、


「人間のクセに、人間のクセに!!」


如何に美しい女性だろうと、目の前のソレがこの人間界に居る筈の無い、


「クソがぁぁぁっ!!」



人外ならば話しは別だ。



旅人「口の汚い女は嫌われるぞ? アイネイアス・ヒルデガード・エインズワーズ」


「黙れ!!」


旅人「黙るのは貴様だ。吸血鬼」


青白い肌、赤い瞳、牙、魔眼、変身能力、そして、人の生き血を啜る怪物。


例え女の吸血鬼であろうと、
あの青白く透き通る細腕で掴まれれば、私の腕など一瞬で持って行かれる。


その為、


女吸血鬼「両手両足引っこ抜いて、教会に飾ってやる!!」



距離を保ち、鞭で叩く。



女吸血鬼「ぎゃっ!! なんだ…熱いッ、身体がッ熱いぃ!!」


鞭と言っても、鞭全体に細かい棘が付いている。その棘は純銀で出来ている。


叩くと言うより、引っ掻くと言った方が近い。


ああ、鞭はもう一つある。
この鞭は普段使うには扱い辛いからね。そっちは普通の鞭だ。


女吸血鬼「ぐっ…あぎっ…」


だが幸運だった。この吸血鬼は、弱い。


大方、力を高める為、それか単純に美形の男性を誑かし、生き血を啜る為、


まあどちらにせよ、血を吸う事と、人が死ぬ事には変わりは無い。



女吸血鬼「地獄へ堕ちろ、クソ野郎」



クソ野郎? 女性にそんな事を言われたのは初めてだ。流石に傷付くな……


自分で言うのも何だが、中々に良い男だと思う。だから、この女吸血鬼を誘き出す事に成功した……筈だ。


それよりも、私はクソ野郎では無い。


旅人「私は今から君を殺す。殺さねばならない。君が殺した者達、そして残された家族の為に」


殺された者は、決して蘇りはしないのだから。


女吸血鬼「なんで、なんで人間なんかに…」


旅人「一応名乗っておこう。私の名は……」


私は吸血鬼を倒す、いや殺す為に、そして人々を守る為に旅をしている。



旅人「エイブラハム・ヴァン・ヘルシング」




続く


>>153 ありがとうございます。

いきなり話が変わったな

ハンターの大御所っつうか定番だよね

こんな流れも悪くない。乙。



【その男の名】


ある日、魔界の王が打ち倒され、同時に魔界から一人の男が姿を消した。


恐らく魔界最強の男。


魔界の王に一番近いとされた男。


そして、それ程の力を持ちながら、魔界の王座に興味すら無い男。


吸血鬼 ルクレーシャス・クリストファー・ディーア。



大ッ嫌いだけど、アタシが一番憧れている男だ。



アタシは、アイネイアス・ヒルデガード・エインズワーズ。


同じ吸血鬼の筈……なのに、なのに、何故、あの男と力の差がある?


アタシには変身も、魔法も、まして死者を甦らせる事なんて出来ない。


何故だ? 同じ血族でありながら、何故違う? 受け継いだ血が薄いからか?


だったら、だったら…


人間のみならず、魔界の強者の血を啜り、底辺から頂点へと上り詰めた、


始まりの男であり、吸血鬼の祖であり、伝説の男……



ブラッドリー・アナステシアス・ディーバ。



彼の様に、人間の血を吸えば良い。



そうすれば強くなれると信じて魔界から飛び出した。


そして人間界、雪の国と呼ばれるこの国で、アタシは人間の血を吸った。


なのに、アタシの力は変わらなかった。


幾ら吸っても何一つ変わらなかった…


何故だ? いや、吸血鬼とは何だ?


祖は魔女の血を吸い魔法を、変身能力を持つ者から変身を、


他にも様々な魔族と正々堂々と戦い、その特性を得たと言われている。



得た……得た? 違う、奪ったんだ。



血を吸う鬼、だから吸血鬼。


仮初めの名だ……血を吸うのが本質では無い。


力を奪う能力、力の略奪、それこそが本質。


そして、その力全てを受け継いだのが、魔界から消えた、あの男。


だが、アタシに奪う力は無い、人間の生命力すら奪えていないのだから。


そして、


「私の名は、エイブラハム・ヴァン・ヘルシング」


人間にすら、負けてしまったのだ。



「さらばだ、吸血鬼」



続く


>>159 勇者だとしっくり来ないかなと思い、そしたらこんな感じに…

>>160 格好いいですよね。

>>161 嬉しいです。ありがとうございます。

ああなるほど
これは前のスレで出したあれを深くしたやつか



【異変】


女吸血鬼を葬った後、雪の国王から新たな情報が入った。


まず、砂漠の国王が最近急増した魔物の対策を練ろうと、諸国王に会談を持ち掛けた。


砂漠の国王はそんなに熱心な人間では無い。言い方は悪いが、王の器では無いと酷評されていた。


だが、いざ会談に臨んだ所、砂漠の国王の性格が激変していたのだ。


その会談の最中、


己の欲望で町を支配していた領主を裁き、平和を齎した者の話しを聞いたと言う。



その男、名は分からないが、自らを吸血鬼だと名乗ったらしい。



この話は全て、砂漠の国王自身が発言し、その後、王は自らの落ち度を認め、諸国王にも詫びたとの事。


吸血鬼だと? 全く、ふざけた奴だ。


性格云々は魔眼、催眠の類だろう。


だが、おかしな点がある。


砂漠の国は堕落する所か、民にとって良い方向に変わっているのだ。


しかも、しかもだ。


一国を変えたその吸血鬼は、それだけの力を持ちながら、突如砂漠の国から消えたと言う。


だが、放っては置く訳には行かない。



断言出来る、吸血鬼は悪だ。



最悪の吸血鬼、始まりの男の伝承を、私は知っている。


ブラッドリー・アナステシアス・ディーバ。


この男の血族ならば、何としてでも討たねばならない。その血を絶たねばならない。


行く先に心当たりはある。


鉄の国に突如現れた、魔物を排出する門。


通称・魔召門、奴は其処に向かった筈だ。元々私も向かうつもりだったし丁度良い。


奴の血族なら、魔物を率いて国を落とす事も容易だろう。


例え私の考えと違っていても、吸血鬼には違いはない。


違いないのなら、吸血鬼だと言うのなら、行かなければならない。討たねばならない。



行こう、鉄の国へ。



続く


>>167 前のスレも読んでくれたとは、いやあ嬉しいです。

後少しで終わると思います。ありがとうございました。



】崩】
   【壊【


あの馬鹿、追って来てるな…


数日経ち、オレの身体の異変、アニに対する吸血衝動は強くなった。


離れているにも拘わらず、アニが近付いて来るのが分かる。


鉄の国には着いた。


だが未だに門には向かっていない、身体が欲している。


待っている、アニが来るのを、血が、自らやって来るのを……



糞ッ!! 頭がおかしくなりそうだ。



でも大丈夫だ。


あと数日待てば、アニは鉄の国へ着く。血を吸えば楽になれる、吸血衝動も収まる。


それで、良いじゃねえか。


違う!! そんなのは望んでねえ!!


動け、行け、門へ向かうんだ。


一人くらい、良いじゃねえか、人間なんて沢山沢山居るんだから。一人減ったって何も変わらねえよ。


違う!!


違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!


チガウ?


あ、頭ガ…割れそうだ。



誰か、オレを殺せ、殺せよ殺し てくれ誰で も良いからダレカ殺して頼む 殺せよ殺して せ よ頼む殺して頼 む殺せよ殺して殺せよ頼む殺して殺せよ頼む殺して殺せよ殺して殺せよ殺して殺せよ殺し て殺してくれ



ダレカオレヲコロシテクレ


ぐ、糞ったれ、負ケねエ、こんナんに負けてたまルか……


門へ行クんだ、這ってでモ…行ク…んだ。


アニ、オレは、お前ヲ、オマエノの血を…チガウチガ、オレハアニヲ



アニ、オマエノアいシてる……



ダカら…く、な


続く



【必然】


もう少しで鉄の国だ。もう少しで、会える。


運の良い事に、途中で出会った旅人さんの馬車に乗せて貰えた。


この人は魔召門に用があるみたいだった。


服装や体格、運んでいる物を見ると、魔物を討伐する為に派遣された人なのかも知れない。


旅人「お嬢さんは何故鉄の国に? 魔物が多いと言うのに」



町娘「大切な人をビンタしに行くんです」



旅人「ははっ、それは良い。君の様な娘にビンタされる男は幸せ者だ」


町娘「旅人さんは何故?」


旅人「私も同じ様な物さ、ビンタでは済みそうに無いだろうけどね」


顔色が、変わった? 何か、雰囲気が…


町娘「あ、あのっ


旅人「さあ、着いたよ。此処でお別れだ。私はこのまま魔召門へ向かう」


町娘「……あ、はい。ありがとうございした。あの、私、アニ・アルノルトって言います」


旅人「私は、エイブラハム・ヴァン・ヘルシングだ。早く彼の下に行ってあげなさい」


町娘「はいっ、お世話になりました」


早く、早く会いたい。



貴方になら、何をされたって構わないから…



続く


この辺で…明日の夜には完結してる筈です。

ありがとうございました。


続きまってるよ!



【疾走】


魔召門から程近い街で馬車から降りた私は、早速吸血鬼さんの情報を得る為、聞き込みを開始した。


この街に居ない可能性もある。


だからこそ、情報が欲しい。居ない場合はすぐに別の街や村、全てを捜し回るのだ。


貴族服、艶やかな黒髪、少し尖った耳、赤い瞳、青白く透き通った肌。


痩せぎす、不健康そうで、気怠げながら優しそうで端正な顔立ち。


年の頃は十八の青年。


これを何度も、色んな人に、足の肉刺が潰れるまで、聞きまくった。



そしてやっと情報を得た。


最後の宿屋で聞いた話しは、こういった物だった。


白髪の青年がぶつぶつ言いながら、出て行った。門へ向かうと呟いていたらしい。


身体的特徴に関しては、白髪であること以外、全て合致していた。


門とは、間違い無く、魔召門だろう。


本当に、もうすぐ会える。


そう思うと、安堵と共に緊張感が解け、


さっきまで全く気にならなかった足の痛みが、酷く痛み始めた。



けど、街の人のある会話で、その痛みは直ぐに消える事になる。



「砂漠の国から吸血鬼がやって来たらしいぜ」


「ああ、らしいな。砂漠の国王を魔法で変えちまったんだろ?」


「でもよ? その吸血鬼は町をろくでもない領主から救ったって言うじゃねえか」


「砂漠の国全体も良い方向に進んでる、最近会った砂漠の国の友人も、その吸血鬼に感謝していたよ」


「良い奴なのかもな……でも、雪の国から吸血鬼を[ピーーー]為に一人の男が来るらしいぜ?」


「ああ、確か名前は…」



「ヴァン・ヘルシング。エイブラハム・ヴァン・ヘルシングだろ?」



……えっ? あの旅人さんが? そんな、そんな事って…


「ああそう、それだそれ」


「その吸血鬼が良い奴でも[ピーーー]のか?」


「冬の国でも吸血鬼絡みで色々あったらしいからな……」


「なる程な、仕方、ねえか」


気付けば走っていた。もう痛みなど感じない。


もしかしたら、吸血鬼さんは、もう魔界に帰っているかも知れない。


寧ろ、そうであって欲しいとさえ思える程、



凄く嫌な感じがする。



「砂漠の国から吸血鬼がやって来たらしいぜ」


「ああ、らしいな。砂漠の国王を魔法で変えちまったんだろ?」


「でもよ? その吸血鬼は、砂漠の町をろくでもない領主から救ったって言うじゃねえか」


「砂漠の国全体も良い方向に進んでる、最近会った砂漠の国の友人も、その吸血鬼に感謝していたよ」


「良い奴なのかもな……でも、雪の国から吸血鬼を殺す為に一人の男が来るらしいぜ?」


「ああ、確か名前は…」



「ヴァン・ヘルシング。エイブラハム・ヴァン・ヘルシングだろ?」



……えっ? あの旅人さんが? そんな、そんな事って…


「ああそう、それだそれ」


「その吸血鬼が良い奴でも殺すのか?」


「冬の国でも吸血鬼絡みで色々あったらしいからな……」


「なる程な、仕方、ねえか」


気付けば走っていた。もう痛みなど感じない。


もしかしたら、吸血鬼さんは、もう魔界に帰っているかも知れない。


寧ろ、そうであって欲しいとさえ思える程、



凄く嫌な感じがする。



普通なら、旅人さんの心配をするんだろう。けど私は、吸血鬼さんの身を案じている。


白髪と聞いた時、頭を過ぎった事がある。


吸血鬼さんは、弱ってるのではないか?


吸血衝動に抗い続け、外見が変わる程に……


宿屋の店主にも、様子が変だったと聞いた。


もしかしたら、吸血鬼さんは……壊れてしまったのでは無いか?


町娘「……っ、はぁっ、はぁっ」


ダメだ!! 足を止めるな!! 走って走って走って走って、



早く、魔召門へ!!



続く



【信念】


魔召門に着いた私は装備を整えた。


ボウガン、銀の剣、銀の鞭、銀の短剣。


何故、吸血鬼に銀が有効なのか? それには諸説ある。


だが私が信じるのはたった一つ、始まりの男に唯一、傷を負わせた女性の伝承。


彼女は自身の村の皆が血を吸われ、倒れ伏して行く中、勇敢にも剣一つで彼に挑んだ。


彼は、彼女を怖れた。


彼女は、信じた。



この剣ならば必ず、悪しき吸血鬼を倒せると、信じて疑わなかった。



彼女の持つ、その剣は、村では古くから退魔の力を持つと言い伝えられていた剣だった。


そう、その剣は、銀で出来ていたのだ。


彼には、彼女のそれが、怖ろしくて堪らなかった。


長引く戦いの最中、やがて彼は信じてしまう。


本当に、その剣には、自身を滅ぼす力が在るのではないかと。


結果彼女は敗れ、血を吸われるのだが、彼女の信念、不撓不屈の心が…


世代を越えても消えぬ程の恐怖を、彼の血に刻み付けたのだ。


では、行こうか。


悪しき血脈を、絶ち切る為に……



続く



【邂逅】


此処に来てから何日経つ?


結局、門の前で身体が止まちまった。


魔物から魔獣クラスの奴まで、今も出て来るが、何故かオレを襲いはしなかった。


それに、理由は分かんねえが、


門の側では正気は保てるみてえだ。吸血衝動も、少しは抑えられる。


たが消えた訳じゃない。抑えられてるとは言え、今も尚、強くなっている。



アニの血が欲しいのは、変わらない。



愛らしい瞳、愛嬌のある顔立ち。


柔らそうな身体、ちょっと日に焼けた肌、黒髪で…猫みたいに口角の上がった唇。


いつも思い出すのは、アニの姿。アニの笑顔。


アニを想わない日は、無かった……


だが幸か不幸か、身体から力が抜けて動けねえ、アニを襲わずに済みそうだ。


後は、魔物討伐に来る奴にでも…って無理か、



この門を直接叩くとなれば、かなりの戦力が必要だろう。



単身で来る馬鹿など、居るわけが…


「どうした吸血鬼、随分と具合が悪そうだが」


ははっ…オレは、本当に運が良いみてえだな。


「うっせえ、貧血なんだ。おい、頼みがある」


「何だ? 言ってみろ。逃がしてくれ、血を吸わせろ、なら却下だ」


「逃げもしないし、血も吸わねえ、つーか吸いたくねえ。だから……」


大事な人を、失う前に、


「オレを、殺してくれ」



続く


名前ミスしました。すいません。
ブラッドリー・アナステシアス・『ディーバ』ではなく。

ブラッドリー・アナステシアス・『ディーア』です。


>>179 ありがとうございます。



【彼が示した物】


髪が白く染まっている、この吸血鬼、本当に血を吸っていない。


身体は弱るばかりか、身体にすら異変が起きる。


例えば、老化、力の低下、そして最も分かり易いのが髪の色だ。


何故、血を吸わなかった?


何故、其処まで耐えられる? 最早満足に動く事すら出来ないだろう。


その吸血鬼が口にした言葉が、


「オレを、殺してくれ」


何だ? それが吸血鬼の、



傲岸不遜、神出鬼没、変幻自在、怪力無双の吸血鬼が言う言葉か?



私は初めて吸血鬼に疑問を持った。


そして私は初めて、自ら名を聞いた。


「吸血鬼、貴様の名は?」


「聞いてなんになる? 自慢でもすんのか?」


まあ、確かに…私にも分からない。だが聞かなければならない。


「答えろ」


「答えれば、殺してくれんのか?」


全く、調子が狂う。おかしな奴だ。



「ああ、約束しよう」



「ルクレーシャス・クリストファー・ディーア」


……っ、何だと!! この、目の前で今にも息絶えそうな吸血鬼が、


始まりの男の末裔だと言うのか!?


俄には信じられん、


だが弱っているとは言え、奴の身体から溢れる圧倒的な『魔』が、何よりの証明。


まさか、こんな青年だったとは……


そして、こんな出会いになるとは……



苛烈極まりない、殺意を剥き出しにした闘いになると、そう思っていた。


「何だ? びびってんのか?」


「いや、少々驚いただけだ」


「なあ、お前の名前は? 一応聞いときてえ」


まさか吸血鬼に名を聞かれる日が来るとはな。全く、本当に、おかしな奴だ。


「エイブラハム・ヴァン・ヘルシング」


「ヘルシングか……なあ、約束したろ? さあヘルシング、オレを殺せ」



何故死を望む? それを聞くのは野暮か。



最強最低最悪の吸血鬼、


その末裔が何故、死を望む? だが、やるべき事に変わりはない。


「その前に一つ」


「何だよ?」


「ルクレーシャス・クリストファー・ディーアとして、お前は何故、死を望む?」


「……この世界で、一番大切な奴を、この手で殺したく無いからだ」


「そうか」


私は銀の剣を引き抜き、


「お前の様な吸血鬼が居たことを、私は、決して忘れはしない」


「そうかい、ありがとよ。エイブラハム・ヴァン・ヘルシング」


「さらばだ……ルクレーシャス・クリストファー・ディーア」



心臓に突き立てた。



続く



【彼の死】


息も絶え絶えに辿り着いた魔召門で、私が最初に目にしたのは、


旅人さんが、吸血鬼さんの胸に剣を突き立てる瞬間だった。


声が、出ない。足が、動かない。


目の前の現実を、私は何とか否定しようとしたけれど、


動かない吸血鬼さんの側で、


帽子を被り直し空を見上げ、



零れ落ちる何かを袖で拭う旅人さんの姿が、そうさせてくれなかった。


続く

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