モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9 (1000)

 それは、なんでもないようなとある日のこと。


 その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
 地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

 異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
 悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
 突然超能力に目覚めた人々が現れました。
 未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
 他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

 それから、それから――
 たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

 その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
 戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

 ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。


part1
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 - SSまとめ速報
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part2
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part2 - SSまとめ速報
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part3
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3 - SSまとめ速報
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part4
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part4 - SSまとめ速報
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part5
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part5 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1374845516/)



part6
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part 6 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376708094/)



part7
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379829326/)



part8
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384767152/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391265027

・「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドスレです。

  ・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
  ・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。


・投下したい人は捨てトリップでも構わないのでトリップ推奨。

  ・投下したいアイドルがいる場合、トリップ付きで誰を書くか宣言をしてください。
  ・予約時に @予約 トリップ にすると検索時に分かりやすい。
  ・宣言後、1週間以内に投下推奨。失踪した場合はまたそのアイドルがフリーになります。
  ・投下終了宣言もお忘れなく。途中で切れる時も言ってくれる嬉しいかなーって!
  ・既に書かれているアイドルを書く場合は予約不要。

・他の作者が書いた設定を引き継いで書くことを推奨。

・アイドルの重複はなし、既に書かれた設定で動かす事自体は可。

・次スレは>>980
    
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」まとめ@wiki
www57.atwiki.jp

☆このスレでよく出る共通ワード

『カース』
このスレの共通の雑魚敵。7つの大罪に対応した核を持った不定形の怪物。
自然発生したり、悪魔が使役したりする。

『カースドヒューマン』
カースの核に呪われた人間。対応した大罪によって性格が歪んでいるものもいる。

『七つの大罪』
魔界から脱走してきた悪魔たち。
それぞれ対応する罪と固有能力を持つ。『傲慢』と『怠惰』は退場済み

――――

☆現在進行中のイベント

『憤怒の街』
岡崎泰葉(憤怒のカースドヒューマン)が自身に取りついていた邪龍ティアマットにそそのかされ、とある街をカースによって完全に陸の孤島と化させた!
街の中は恐怖と理不尽な怒りに襲われ、多大な犠牲がでてしまっている。ヒーローたちは乗り込み、泰葉を撃破することができるのだろうか!?
はたして、邪龍ティアマットの真の目的とは!


『秋炎絢爛祭』
読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋……秋は実りの季節。
学生たちにとっての実りといえば、そう青春!
街を丸ごと巻き込んだ大規模な学園祭、秋炎絢爛祭が華やかに始まった!
……しかし、その絢爛豪華なお祭り騒ぎの裏では謎の影が……?


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」まとめ@wiki
http://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/1.html

すみません、残りレス数のこと考えてませんでした。

続きから投下します


「……なにみく?こんな寒空の中、私一人買い物に行かせて……貴女はこたつで、安息を楽しむつもりだったのかしら?」

 半ば強引に連れ出されたことに文句を言うみくだったが、それをのあは隣のみくを横目でじろりと見つめる。

「うっ……ぐぬぬ、しょうがないにゃ……」

「わかればいいのよ。まぁでも……晩御飯の献立、貴女に委ねてもいいわ」

「え!ほんとにゃ?じゃ、じゃあハンバーグがいいにゃ!」

 不満の残るみくの表情だったが、のあの一言で引っくり返したかのように笑顔に変わる。
 そんな二人のやり取りが微笑ましくて、アーニャは少し笑った。

 そのアーニャが無意識にしていた、雪のように解けて消えてしまいそうな儚い笑顔をのあは見逃さなかった。

「……では、私は少し、先を急ぐので。ダスヴィダーニヤ……さようなら、また今度です」

 そう言ってアーニャは二人に背を向けて、再び足を進めようとする。

「……待ちなさい」


 しかしその歩みはのあに肩を掴まれたことによって遮られる。
 そのまま強引にアーニャを振り向かせて、かわいらしい手袋に包まれたのあの両手によってアーニャの両頬は押さえつけられる。

「な!?なんですか、の……あ」

 のあはアーニャの顔を固定したまま、顔をずいと近づける。
 アーニャの眼前にはのあの顔が間近に迫り、その両目はアーニャの目を覗くようにぶれることはない。

「ど、どうしたのにゃのあチャン!?ひ、人前でそんなダイタンに……って、あれ?」

 みくから見ればのあが突然アーニャを引き止めて振り向きざまにキスしたように見える。
 しかしその顔が寸前で停止して間近で顔を観察していることにみくも気づいた。

「きゅ、急にいったいなんなんだにゃのあチャン?」

「ダー……まったくです。い、いったいどうしたんですか?のあ」

 アーニャに向けられるのあの視線。
 それは内面まで見透かされているようで、アーニャは居心地が悪かった。

「……違うわ。戻った……というより、やはり見えていない……のかしら?」


 のあはアーニャの眼前そのままで呟く。

「?……なんのことですか?」

 アーニャにはその言葉の意味がよくわからない。
 のあはアーニャが状況を理解できていないまま、顔を放す。

「……ここでは少し、凍えるわ。どこか……暖かいところに行きましょう」

「で、でも私には、用事が」

 のあは別の場所へアーニャを連れていくことを提案するが、アーニャにはその意図が全く分からない。

「みく……暖かい場所、近くに何かない?」

「え?あ、ああうん……。エトランゼならここから近いにゃ」

 みくも状況についていけてないようだが、とりあえずのあに聞かれたとおり答える。

「じゃあ……そこへ行くわ。ここだとやはり、寒い」

「アドナーカ……、でも……」

「貴女の用事なんて……知らないわ。早く……行かないと」

「い、行かないと?」

「さささ寒くててて、わた私が、機能がががが、ここ凍えててて、動かななな」

「ああ!のあチャンが寒さのあまりに、壊れたテレビのようになってるにゃ!」

「と、とりあえず、エトランゼまで行きましょう!」


***

「ただいまもどりましたー」

 ピィは手にコンビニの袋を携えてプロダクションの入り口から入ってくる。

「弁当はあったものを適当に選んできましたけどよかったですかね?」

 袋をプロダクションで待っていた者たちの前において、ピィは尋ねる。

「んー、チョイスはパッとしないけど悪くはないんじゃない?」

 目の前に置かれた袋の中身を周子は覗きながら言う。

「せっかくお前のために買ってきたのになんなんだその言いぐさは……」

「私はみなさんの分のお茶を淹れてきますね」

 周子の言い草にピィが不満を垂れる中、ちひろは立ち上がって給湯室の方へと向かう。

「ところでちひろさん、弁当代は経費で落ちますよね?」

 そんなちひろの背中にピィは声をかける。
 その質問に対してちひろは振り向いて不思議そうな顔をしている。


「え?」

「……え?い、いや経費で……」

「落ちると思ってるんですか?」

「そんな殺生な!?」

 弁当代が経費で落ちないので、思わぬ出費に頭を痛める少々薄給のピィ。
 それを気にせず周子と未央は袋から弁当を取り出している。

「私これー♪」

「んじゃああたしはこれ貰っちゃおー」

 ピィの買ってきたコンビニ弁当を我先にと選び、ついてきた割り箸と共に手元に持ってくる。

「ピィさんも出費なんか深く考えないで食べよう!あんまり悩まず楽観的に、ね♪」

「ぐぅ……、まぁいいか」

 ピィも袋から弁当を取り出して、ソファーにこれ以上の人数は手狭なので自分の机へと持っていく。
 そして椅子に座ると、ピィの背後から手が伸びてきてお茶の入った湯飲みが置かれた。


「どうも、ちひろさん」

「いえいえ」

 お盆に人数分のお茶を乗せて持ってきたちひろはそのままソファーへと座る。

「そう言えば楓さんは?」

 ピィは先ほどまでソファーで眠っていた楓の所在について聞く。

「ああ、仮眠室に運んでおきました。ここのままだと少し、楓さんにはうるさいかもしれませんからね」

 ちひろは仮眠室の方を指さしながらそう言う。

「そういえば、あの隊長が、というよりもデストロー……だっけ?

それがここに来ることさえできないとか言ってたけどどういうことなんだ?」

 ピィがコンビニに出かける前に未央がふとつぶやいた言葉。
 それを思い出したピィはその意味を尋ねた。

「んーとね、さっき話したけど『デストローは世界に介入できない』って言ったよね。

だったらこのプロダクションにも介入できるはずないじゃん」

 未央は当たり前のように言うが、他の3人はその意味がよくわからず、とりあえず首をかしげ箸を動かす。


「ぐ、ぐぬぬ……じゃ、じゃあこの私の名を言ってみろう!」

「ジャ○?」

「違うわ!」

 なんだかよくわからない3人だったがしぶしぶ未央の言う通りにする。

「本田未央ちゃん」

「未央ちゃん」

「午前五時の女王?」

「ちがっ……違わないけどそうじゃないよ!それとピィさんそのメタ発言は屋上モノだよ!」

 未央はそう言って弁当を机の上に置いて立ち上がる。

「こうなったら……ウィング、オープン!」

 そんな掛け声と同時に、未央の背中から6枚の純白の翼が出現する。

「みなさんこれをお忘れかー!この私、可憐な女子高生である本田未央はこの世での姿!

そう、その正体は天使の中の天使、天使オブ天使、熾天使ラファエルとはこの私のことだ―!」

「未央ちゃんちょっと眩しいから羽仕舞ってくれない?」

「ああ、そういえばそんな設定もあったな」

「あ、このから揚げしゅーこがもーらい!」


「反応薄くない!?

ピィさん設定とか言わないでよ!

それに周子さんそのから揚げ私のだよ!」

 机の上の弁当を急いで周子の手の届かないところへ移し、背の翼を仕舞う未央。
 そして無事であったご飯を一口口に入れて、咀嚼して飲み込む。

「んぐ……とにかく!私あのラファエルだよ!

世界的ネームバリューだってチョー高いんだからね!」

「まぁ確かにそうだな。それが何か関係があるのか?」

 未央は呼吸を落ち着かせて再びソファーに座りなおす。

「だってさ、この私ラファエルが降臨してるってだけでほとんど歴史的大ニュースのようなもんでしょ。

信心深い信者が知れば、このプロダクション自体潰して、強引にこの場所に教会立てたって普通不思議じゃない。

だから私が入り浸ってるこのプロダクションは、ある意味歴史的に、世界的に重要な場所のようなものだよね。

じゃあ当然、現在進行形で歴史の渦中であるこのプロダクションに、

デストローは壊すことはおろか、ここに訪問することはほぼ不可能ってことだよ」

 未央は箸にポテトサラダをつまんで、口へと運ぶ。


「じゃ、じゃあどういうことだってばよ?」

「結局よくわからないってこと。

正直私も本物のデストローなんて見たことないし、今回のことも聞いただけ。

百聞は一見に如かず。

正直私だけで結論を出すのは正直厳しいわけですよ。

でも強いて言うなら、その隊長って人は実はデストローじゃないんじゃないの?」

「いや……あたしにはデストローがどうだこうだってのはわかんないけどさ、

あたしが400年前に出会った槍男は、そのデストローのように常識を無視していたし、世界からも無視されていたよ。

同様に、あの隊長とかいう男も雰囲気だけならよく似ているし、

そして何よりちゃんと常識を破っていたよ」

 未央のいぶかしむような発言に対するように周子は言う。

「あの男は、楓さんの攻撃をただの念動壁、サイコキネシスだけで防いでいた。

それはふつうありえないことだよ。

楓さんのあの能力は風の刃だとかのただの物理的な刃とは違う、次元の一つ上の力。

本来正攻法の防御不可なあれを防ぐいだのは、事実だからね」

 通常防御不可のあの力を、強引に直接的な方法で防いだのは事実。
 そこにルールを無視した痕跡があるのは確かだった。


「ていうか、楓さんの能力ってそんなのだったのか?」

 ピィとちひろはこのことについては何も知らされておらず、今の情報は初めて知ったものだった。

「え?知らなかったの?」

「ま、まぁ多分楓さん自身も知らないことだし……。

ピィさん!ちひろさん!これは聞かなかったことで!」

 未央にこのことは口止めされる。

「な、なんでまた?」

「だってこれ以上楓さんに負担欠けるのはよくないでしょ」

「まぁ知らぬが仏ってやつだね。楓さんあの力に怯えてる節もあるから。

日常でちょっとしたことになら使えるけれど、人に向けて使うことを初めのころからかなり恐れてたからさ。

今回の暴走の件と、いくら自衛のためとはいえ能力を人に向けて使ったこと。

このこと覚えていたりすると、後のことが少し不安になるねー……」

 周子は、お茶を啜りながらそう言った。

「わ、わかりました……」

「ああ……わかったよ」

 二人は楓さんがこのプロダクションを訪れた時のことを思い出す。
 あの様子の楓さんを思い出せば、当然その力が思っていた以上に強力なものであるなんてことは言えないだろう。
 よって二人は黙秘することに承諾するしかなかった。


「さて、話は戻るけどね。

周子さんの話を聞く限りだと、ちゃんとデストローとしての力は発動していた。

でも普通ならここに来られるはずがない。

この矛盾、どういうことなの?」

 空になった弁当のトレーを机の上に置いて、未央は腕を組んで難しそうな顔をする。

「実際、ここがそこまで歴史的重要な場所じゃない、とか?」

 ピィが根本的な未央の推定を否定してみるが、未央はそれに対して首を横に振る。

「それは、あり得ないよ!

私の存在の世界への影響力は十分だし、それに周子さんだってそれなりに高名な妖怪でしょ?

それでさらにこの場所の運命力の集約はされているはず。

さらに私は意図的にこの場所を非戦地帯にだって働きかけてたんだよ!」

「ん?どういうことですか?非戦地帯って?」

 ちひろが未央の発言に疑問を問いかける。

「さっきの運命力の話の通り、世界には流れがあるの。

だからなるべく私の天聖気とかを使ってこの周辺のちょっとした争いやいざこざを未然に防いでいたわけ。

そうやって小さな『平穏』の流れを作り出して、この場所自体に争いの起きにくい『流れ』を片手間に作ってたんだよ。

デストローも世界に干渉できないうえに、そんな流れも作ってたから手なんか出せないはずなんだけどなぁ……」


 原点に返る不可解な点。
 さすがの未央でもこれに関してはさっぱりだった。

「結局あたしたちがあれこれ言おうと意味ないしどうでもいいんじゃない?

あの隊長の相手はアーニャがするんだし、ここに居たってできることなんて何にもないんだからさ」

 そこにこれまでの会話をすべて否定するような周子の言葉。
 周子はソファーに体重を預けて、目を瞑りながら言った。

「それよりも考えるのはこの後のことでしょ。

万が一アーニャが逃げ出したりしたら次狙われるのはあたしたちなんだよ。

今のうちに逃げる算段を考えた方がいいんじゃないの?」

 そっけない周子の言葉。
 ピィはその言い方にさすがに怒りを覚えたのか声を上げて反論する。

「周子!それはさすがに言い過ぎだ」

「でもほんとのところはどうなのさ。

ピィは腕吹っ飛ばされてるんだよ。

内心、あの男への恐怖は強いと思うけど……そこんところ、どうなの?」

 的確な周子の指摘
 それはピィにとっては図星であったし、きっと再び対峙することが有ったらきっと恐怖で体は振るえるだろう。


「……たしかにそうかもしれない。

でも、それでも俺は逃げも隠れもするつもりはない。

アーニャを信じてるからな」

「それはアーニャが隊長に、逃げずに殺されに行くってことを?」

「違うよ。アーニャがあの隊長を倒して帰ってくるってことをさ。

昔も今も、俺の信じてるヒーローは、最後には必ず勝つんだからな」

 ピィは迷いなく、そう言う。
 そんなピィを見て、周子はあきれたように溜息を吐く。

「全くよくもそんなことを真顔で言えるね。

じゃあさ、未央とちひろさんはどうするの?」


「わ、私はー……一応残るつもりですよ。私はここの事務員ですから、ここに居ることしかできないので」

「私はー……、んと……、さすがの私も、デストローを相手だと勝てないし……、

その上、超能力者だなんてもっと無理。

まだやるべきこといっぱいあるから、死ねないけどさ。

でも……ここで逃げたら女が廃る!ここに居るくらいしかできないけど、本田未央、ここに残留を希望します!」

 二人の意志を確認し、周子は少し笑う。

「全くほんとに、あきれる。

じゃああたしは帰るよ。お腹もいっぱいになったことだしね。ごちそうさま。

美玲と一緒に、暫くどこかに避難でもするよ」

 周子はそう言って、プロダクションの入り口の方へと歩いていく。

「周子」

 そんな周子の背にピィが名前を呼びかける。
 周子はそれでも振り向かない。

「お前はほんとにそれでいいのか?」

「いいわけないじゃん、馬鹿なの?

でもあたしは……振り向かないよ」

 結局本当に振り向かないまま周子は、プロダクションを後にした。


***

「私をこの程度の冷気で、動けなくなると思ったの?

……さすがに私もそこまでポンコツではないわ」

 つい先ほどまで唇を蒼くして、口を震わしていたのあだったのだが、エトランゼに着いた途端嘘のようにその表情は元のものへと戻った。

「な……のあ、騙しましたね!私を、ここに連れてくるための演技だったのですか!?」

 みくと二人でのあを連れていかれるエイリアンのごとく引き摺ってエトランゼに連れてきたアーニャだったが、何事もなかったかのようにふるまうのあを見てそれがここに連れてくるための口実であったことにようやく気付く。

(まぁ……あの感じだとホントウに寒くてポンコツ化してた可能性もなくないけどにゃ……)

 みくは内心そんなことをを考えるが、のあが無表情のまま視線を向けてくる。

「みく……今何か失礼なことを考えていなかった?」

「そ、そんなことないにゃあ……」

 まるで心を見透かすような眼で見つめられて視線を逸らすみく。
 結局真相は闇に飲まれてしまった。

「とにかく二人とも座りなさい。

なんでも注文してもいいわ」


 のあのその呼びかけにしぶしぶ二人とも、椅子に座る。
 3人が席に着いたのを確認したのか、チーフが近くに来た。

「まったく3人で押しかけてなんだっていうの?

幸い今はご主人様が少ないからよかったものの、ここは避寒地じゃないんだからね。

客としてきたんだから、ちゃんと何か注文してもらうよ」

 チーフは少し厄介者が来たかのような視線をしながら、3人の机の上にメニューを置く。

「……それくらい承知しているわ。

大丈夫、会計は全てみく持ちよ」

「なんでにゃあ!?

さっき『なんでも注文していい』って言ったののあチャンじゃないかにゃ!

なんでみくが払うことになってるにゃ!?」

「ああ、わかったよ。

まぁみく、払えなくてもちゃんとツケといてやるから安心しな」

「チーフも承知するんじゃないにゃ!」

「みく……すこしにゃあにゃあうるさいわ……。

ちゃんと他のお客さんもいるのだから、静かにしなさい」

「ひどくない!?」


 ぶさくさ言いながらもみくはメニューを手に取る。
 それに対して、アーニャは席に座ってから一言も話していない。

「アーニャ、何か頼まないの?」

 のあは黙ったままのアーニャに問いかける。

「……のあ、私は食事に来たわけでも、漫才を見に来たわけでもありません。

あなたが、何か話があるらしいから……今はここに留まっているだけです。

嘘をついてまで、ここに私を連れてきたのです。

言いたいことがあるならば……できるだけ、早く頼みます」

 アーニャは表情を変えずに言う。
 無表情同士の視線の交差は、そこだけ室内の気温を氷点下まで下げているようであった。

「……何を焦っているかは知らないわ。

でも、そんな体調では話もままならないわ」

「シトー?……どういうことですか?

話をそらさないで」

 話の本題に入らないのあに少し苛立つように言うアーニャであったが、それを小さな音が遮る。
 それは、アーニャのお腹から響くものであった。

「昼は、食べてないのでしょう?

……食事くらいは、とっておくべきだわ。

あなたの目的である何かのためにも」

 アーニャはお腹を押さえて少し目を伏せる。

「ダー……わかりました」


 これから挑む相手ならば万全でなければならない。アーニャは仕方なく自らの空腹に従う。

 その後は、のあとみくはすでに昼食を済ましていたので、ドリンクと軽食を頼んだ。
 そしてアーニャに食後のホットミルクが運ばれてきて、本来の話へと再び戻った。

「さて、空腹も満たされて少しは落ち着いたでしょう?

じゃあ……本来の話に戻りましょう」

「あいにくですが……私からは、話すことはありません。

二人がなにか気を回してくれたのはわかりますし……感謝はします。

……でも私は特には何もないです。

いつもどおりです」

「でも、それって自分で『今自分は何か問題を抱えています』って言ってるようなものにゃ。

みくはアーニャンとは友達だと思っているにゃ。

でもそう言うってことは、友達にも、話せないことなのかにゃ?」

 それに対してアーニャは沈黙。
 これに答えてしまえば、自分が問題を抱えていることを自分から肯定してしまうようなものだからだろう。


「……別に話す必要はないわ。

話してくれないことは、友人として一抹の寂しさを感じるけれども、

それも何か意味があってのことだろうから」

 沈黙するアーニャに代わってのあが会話を引き継ぐ。
 のあは相変わらず、その静かな瞳でアーニャの両の眼の奥を覗き込もうとしていた。

「でも、私はさっきあなたに会って、感じたことがある。

これは……私の言葉。あなたが沈黙するというのなら、あなたに私の言葉を遮る権利はないわ」

 まる忠告のように聞こえるその言葉だったが、アーニャはそれにも答えない。

「私は……かつてあなたに『見えていない』と言ったことがある。

それはアーニャにとっての、『目的』というものが見えていなかったからよ。

自らの意志の所在を明らかにしないまま行動するということは……まっとうな人ではありえない。

地に足がついていないようなものよ」

 幼児ですら、自らの行動原理を持っているのにもかかわらず、かつてのアーニャにはそれがなかった。
 それでも、そんなアーニャはその後、自らの意志で『目的』を示すことができた。
 そんな精神的な成長を、アーニャは先のカースとの戦いの中で経験したのだ。


「そう、あなたは見えている。

……今のアーニャ自身『目的』は見えているの。

でも、一つを見るというのは他を疎かにするということなのよ」

 のあの抽象的な言葉の意味をアーニャにはよくわからない。
 だがその一つ一つが、心のどこかに引っかかるような、不快感にも近い違和感を覚える。

「シトー……なんなんですか?わかりません、何を言いたいんですかのあは?」

 載積する理解できない言葉は、アーニャの頭をかき乱す。
 まるで図星を突かれるような、自らに突き刺さる言葉を的確に選んでくるのだ。

 まるで間違いを糾弾される子供の様で、それを認めたくなくてだだをこねる。
 そんな感じの苛立ちが目に見え始めても、のあは口を止めない。

「……これができない人は、いくらでもいる。

でもこれができないままというのは……ただ世の中が生き辛くなるだけなのよ。

あなたはここで一つ、理解しなければならない。

優しさの基準は、責任の基準は、あなた一人だけのものではないということを」

 しかし、まるで言葉を遮るように掌で机をたたきながらアーニャは立ち上がる。


 その音で、すこしうとうとし始めていたみくはびくりと体を震わせて目を覚ました。

「な、なに?敵襲かにゃ?」

「ヴァズヴラシエーニェエ……帰ります」

 逃げ出すようにアーニャは机の傍らに丸められていた注文票を握りしめて、レジに持っていく。

 チーフがそれを受け取って、レジを打つことによって値段を映し出した。

「いいの?話の途中なのに」

 チーフはアーニャに尋ねるが、ばつの悪そうな顔をしたまま何も言わない。

「まぁ……ゆっくり考えればいいさ。多分、少しデリケートな問題だからね……。はい、アーニャの分は1200円」

 金額を言い、手のひらをアーニャの前に差し出すが、アーニャは動かない。
 少し怪訝な顔をするチーフだったが、アーニャがゆっくりと財布を取り出すと同時に口を開いた。

「……ここのバイト、やめます」

「……は?何言ってんの?」

 チーフのわれ関せずという表情は明確に疑問を抱いた顔に変わる。


「……多分、もう帰ってこないかもしれないので」

 そう言って、ちょうど1200円をその掌に乗せて財布を閉じる。

 そして静かに、エトランゼの店の扉に手をかけた。

「ちょっと待て」

 扉を開く前に、少しドスの効いた声がアーニャの背に届く。
 そして肩を掴まれ、振り向かせられるとチーフの拳がアーニャの胸の前にあった。

「手のひら出して」

 アーニャはそれに従って掌をその拳の下で受け止めるように差し出すと、先ほど渡した1200円がアーニャの手の中に降ってきた。

「それは返す。それとみく、のあ、今日はアーニャのおごりだそうだ。よかったわね」

 その言葉にみくはぽかんとした表情を浮かべ、のあは少し笑う。

「チ、チーフ……これはどういう!?」


「あいにくだが今日の代金は強制的にツケにしておくよ。

ちゃんと後日、働いて返す。いいね。

それとバイトを辞めるときはひと月前に事前に言っておくこと。

さらにそんな顔しながらこの店やめるなんて言うのはもってのほか。

わかった?」

 そしてアーニャが手にかけていた扉をチーフは開く。
 さらにその背中を蹴って、強引に外へと追い出した。

 アーニャを追い出した後、チーフは近くの椅子に座る。

「まったくあたしには何が何だかよくわかんないよ……。

ところで勝手に追い出しちゃったけど、のあはまだ話の途中だったけどよかったの?」

「……いいのよ。

どうせ私が口で言ったところで、何かが変わるわけではないわ。

アーニャ自身が、実際にそれを理解しない限りね」

 のあはそう言って、手元にあった冷めたコーヒーを啜る。

「とはいっても、なんだかのあチャン回りくどすぎだにゃ」

「あら……、じゃあどういえばよかったのかしら?」


「うーんと……素直に『もっと周りを見渡せ』とでもいえばよかったんじゃないかにゃ?

……ふにゃあ」

 みくは一つあくびをして、眠たげな眼をこする。

「ふふ……まったく、自分のことを全く知らない私が人にこんな説教みたいな話をするなんて、

……少し、おかしいわね。

そういえば……私は初対面の人にたまに『ロボットみたいだ』って言われることがあるのだけれど、

……私って、機械なのかしら?」

「それは多分、あり得ないにゃあ。

だってそんなクールな顔して冷静なのに、意外とハートは熱いんだからにゃ」


***

 エトランゼから寒空の下に追い出されたアーニャは再びその扉を開くことなく帰路へと向かう。
 正直ばつが悪いのでアーニャ自身もあの場に戻ろうという気は自然とおきなかった。

 相も変わらず、雪はひらひらと降り注ぐ。
 振っている雪の量も大したものではなく、このまま降り続いたとしても積もることはないだろう。

 この儚く、美しくもあるささやかな雪を見上げる人を道中何度かいたがそれもアーニャの視界には入らない。

 そしてアーニャは立ち止まることなく足を進める。
 これまでに嫌というほど雪を経験してきたアーニャにとって、日本では初めての雪でも特に感慨深いものはなかった。

 その後、暫く歩いてエトランゼでの体の熱もかなり冷えたところで、ようやく見慣れた屋根を視界に入れる。
 アーニャの歩幅は自然と広くなり、少し急ぎ足になりながら女子寮へとたどり着いた。

「あら?アーニャちゃんじゃないですか。おかえりなさい♪」

「こんにちは……。アナスタシアさん、お久しぶりですね」

 そんないつか見たことあるような組み合わせ。
 女子寮の階段下には、鷹富士茄子と鷺沢文香がいた。

「プリヴェート……茄子、文香」

 先ほどのあに引き止められたアーニャにとって階段前で立ちふさがるこの二人がとても高い壁に見える。
 アーニャはなるべく心中を悟られぬように、二人の間を抜けようとする。


 何か引き止められるかと思っていたのだが、意外にすんなりと階段に足をかけることができた。
 そのままもう片方の足を踏み出し、階段を上がろうとする。

「アーニャちゃん」

 しかしやはり、引き止められる。
 優しい声色で名前を呼んだのは茄子。

 びくりと肩を小さく振るわせ、ゆっくりとアーニャは振り向く。
 そんなアーニャに茄子はにこりと微笑みかけてくる。

「きっとこれはあなたにとって、最大の試練になると思います。

でもね、アーニャちゃんなら大丈夫♪

だから私からはヒントを一つだけ。きっとアーニャちゃんもいろいろ迷っているけど思うけど、迷っているのはアーニャちゃんだけではないんですよ~。

事の真相はそこにあるはずですから、あとはアーニャちゃんの頑張り次第ですね!

では、あなたに幸運があらんことを♪」

 そう言って茄子は小さく手を振る。
 そして背を向けて、そのまま管理人室の方へと行ってしまった。


 残ったのは文香とアーニャだけ。
 文香は不思議そうな顔をしたまま茄子が言った方向に視線を追って行っていた。

「茄子さんの……今の言葉、どういうことなんでしょう?」

「……わかりません」

 実際アーニャにもよくわからなかった。
 もともと茄子は明るい人だが、何を考えているかわからない時も多々ある不思議な人だ。

 今の発言も、なぜかアーニャが置かれている状況を知った上での発言だということは理解できる。
 だがその内容はのあが言ったことと似ているようで、まるで違うことを話しているようだった。

 のあが指摘していたのは、アーニャからも自分自身のことだということはなんとなくわかった。
 それに対して茄子の言ったことは、別の誰かのことを言っているような、本当にヒントを言っているようなそんな不思議な感覚だった。

「ところで……初めて会った時のこと、覚えていますか?」

 結局茄子の言葉の意図はわからない。
 文香はここで話題を、数か月前にこの場所で会ったことについてに切り替える。

「ダー……ええ、覚えていますよ」

「シュレディンガーの猫の話をしたのを……覚えていますか?」

「ダー……なんとなく覚えています」

 アーニャはあの日のことを思い出す。
 箱の中の、生きていて死んでいる猫の話だ。


「前の時には、話が逸れましたが……あれが量子論を代表する話となっています」

「たしか……そんなことを言っていた気がしますね」

「けれど、実際にはこの箱の中の猫の話は、量子論を批判するためのたとえ話だったんです……。

それがいつの間にか……量子論の代表のように扱われている。

なんというか……皮肉めいてますよね」

 文香は遠くの景色、雪が絶え間なく視線を横切る空をちらりと見て、そして一息吐く。
 白い吐息は空へと昇っていき、すぐに空気と同化した。

「コペンハーゲン解釈によって、重なり合った状態のとある粒子……。

毒ガス発生装置は……この粒子が存在するかしないかによって作動するかしないかが決まります。

そしてこの粒子は……不思議なことに、見るか、見ないかによって、そこにあるか、無いかが決まるんです……」

「有り無しなんて……見ることで変わらないでしょう。

だって、目で見なくともそこにあるものはある……、目で見えなくても存在するものだってあるのですから」


「そこが、不思議なんです。

所詮私は……文学部なので詳しいことはわかりません。

簡単に、本に書いてあった受け売りです……。

でも……そこに二つの可能性があって、その自分が望む可能性を、自分の意志で引き寄せる。

あなたは前に……箱の中の猫を救うと、言いました。

そして……それは私にはできないことだと思っていました。

でも、ただ一歩……踏み出せばよかったんです。

ただ自分が望むように、見るだけでその猫を救うことはできたんです。

……そう思えるだけで、箱を開ける戸惑いは……軽くなりました」

 文香は微笑む。
 自分の悩んでいたことは、自分の意志でどうにでもなるということを知ったから。

「だから……これはちょっとした報告というか、意志表明です。

私は……もう少しだけ、前向きに事を、見ようと、考えようとします。

見方や考え方は、自由なのですから……それで世界が変わるなら、少しだけ」

 迷いが完全に消えたわけではない。
 でも、その迷いの先を見据えて、その澄んだ両目は前を向く。

以上です

スレ超えてしまいすみません

ピィ、ちひろさん、楓さん、周子、未央、のあさん、みくにゃん、茄子さん、文香さんお借りしました。

まだもうちょっと続きます

乙ですー
うん隊長やべえわwwwwwwww
勝てるのですかね、これは……続き待ってますー


では節分のお話、投下しますー

新スレなので、一応登場アイドル紹介的な

小日向美穂 … アイドルヒーローを目指す女子高生。持ってる刀を抜くとヒーロー「ひなたん星人」になる。
藤原肇    … 鬼の刀匠の孫娘。おじいちゃんの刀を配る為に人里にやってきた。小日向家に居候中。

では、投下ー



2月某日


美穂「うぅ……まだ外は寒いね」

肇「ええ、今日は早くお家に帰りましょう」

肇「身体を冷やして風邪をひいてしまってはいけませんから」

美穂「そうだね、プロデューサーくんも待ってるだろうし」

美穂「急いでお家に帰ってお風呂に入って……その後はこたつで温まりながらみかん食べたいな」

肇「ふふっ、美穂さん途中から願望になってますよ」

美穂「えへへっ」


イワッシャー


肇「っ!?!」 バッ

美穂「?」

美穂「どうしたの、肇ちゃん?」

肇「い、いえその……アレが……」

美穂「?」


鰯頭「……イワッシャー」


美穂「えっとイワッシャー…じゃなくって柊鰯かな?」

美穂「そっか。今日は2月3日、節分だから飾ってるお宅もあるんだね」

美穂「あっ……」

肇「……」

美穂(もしかすると……今日は肇ちゃんにとって大変な日なのかも)




鬼はーそとー! パラパラー

福はーうちー! パラパラー



美穂(節分…)

美穂(一般的には、季節の変わり目に生じる鬼を払うために、)

美穂(炒り豆を撒いたり食べたりする日本特有の行事です)


肇「毎年の事ではあるのですが……」

肇「鬼の血を引く私にとっては、恐ろしい風習ですね」

美穂「肇ちゃんも、やっぱりお豆苦手なのかな?」

肇「普通のお豆ならそんな事はないのですが」

肇「鬼を払うと言う思いの込められた物は……ちょっと痛いですね」

美穂「意外な弱点」

肇「何より心が傷つきます……」 ションボリ

美穂「うん、それは誰だってそうなんだろうけど……(狙って豆を投げつけられたら)」

肇「とにかく今日はいつも以上に、お外では角を隠すよう気をつけないといけませんね」

美穂「あっ、そうだよね」


美穂(……鬼の刀匠の孫娘である肇ちゃんの頭には、小さくて可愛い2本の鬼の角が生えています)

美穂(しかし、本人はそれを親しい人以外にはあまり見せようとしません)

美穂(以前、その理由を聞いてみたことがあります)


――

――

回想


美穂「そう言えば、肇ちゃん。ほとんどいつも頭に手拭いを巻いてるよね」

肇「はい。……似合いませんか?」

美穂「ううん、似合ってるよ。可愛い花柄だし、肇ちゃんらしくていいと思う」

肇「ふふっ、ありがとうございます」

美穂「でもそれをつけてると、トレードマークの角が見えなくなっちゃわないかなって」

肇「そうですね。ですが、それでいいんです。これは角を隠すために巻いていますから」

肇「人の世に余計な混乱を持ち込まないためにも、”人と違う事をかくすために”です」

美穂「あっ、やっぱりそうだったんだ」

美穂「そうじゃないかなとは、なんとなく思ってたけど……うーん」

肇「……?美穂さん?」

美穂「あっ……えっとね、そこまでして隠さなくても平気じゃないかなって思って…」

美穂「回りを見たら、もっと変わってる…って言っちゃったら失礼だけど」

美穂「ちょっと人とは違った個性を持ってる人達も大勢いるんだし」

美穂「……気を悪くしちゃったらごめんね?」

肇「いえ、構いませんよ。美穂さんが言う事もよくわかりますから」


肇「”あの日”を境に人の世の中は大きく変わったと聞いています」

肇「”あの日”から世界は、異世の住人が平然と道を歩いていても不思議ではないものになりましたから」

肇「例えば魔法使いさんであったり、カラクリ仕掛けのロボットさんであったり、獣人さんであったり」

肇「ふふっ、今ではちょっと人と違っているくらいは全然当たり前ですね」

美穂「うん。だからきっと肇ちゃんも角を隠したりしなくても大丈夫じゃないかなって、私は思ったんだけど」

肇「ええ、もちろん。美穂さん達のように……私の角の事も受け入れてくれる人達がいるのもよくわかっています」


肇「ですが、それでもやっぱり私は”鬼”なんです」

美穂「……肇ちゃん?」

肇「美穂さんは、私の……”鬼の角”を見てどう思いますか?」

美穂「えっと……可愛いと思うな」

肇「そうです、人は”鬼の角”を見て”怖い”と言うイメージを……」

肇「えっ」

美穂「あれ?えっと、小さくって可愛い角だと私は思うけど」

肇「……あ、あのっ……え、えっとからかわないでください。恥ずかしいです…」

美穂(……どうやら角を褒められるのはウィークポイントのようです)


肇「と、とにかくですね」

肇「猫の耳や天使の翼なんかとは違って、鬼の角は人によってはあまり良い印象を受けないものなんです」

美穂「うーん……そうなのかな?」

美穂「でも……確かに。ちょっと悲しいけど、一般的には”鬼”と言えば悪さをするってイメージがあるもんね」

美穂「肇ちゃんと出会ってからは、そうじゃないってわかったけれど」

肇「悲しいですが……きっと、そう思われることは仕方ないことなんです」

美穂「……肇ちゃん?」

肇「そうですね……せっかくだから話しておきたいと思います」

肇「”鬼”の事について」


肇「……美穂さん、”妖”と言う存在は人の畏怖から生まれます」

美穂「畏怖から?」

肇「はい。畏怖と言うのは……そうですね、例えるなら”暗闇の夜道が怖い”と言ったような気持ちなどですね」

肇「”暗闇”は怖い。とても人が及ばないもの」

肇「だってそこには、人知を超える”何か”が居る気がするから……」

肇「……そうして畏れる思いは信仰へと繋がって、やがて人々のイメージは形になります」

肇「そして産まれるのが、”妖”なんです」


肇「……人が恐れを抱く対象は様々です」

肇「獣に対してであったり、炎に対してであったり、人形に対してであったり……」

肇「学校の階段に対してであったり、夜道の公衆電話に対してであったり、ビデオテープに対してであったり……」

肇「今も昔も、自然も文明も関わらず人は何にでも恐れを抱きます」

肇「だから、私たちの国には様々の種類の妖が存在しているんです」

美穂「そうだったんだ……なんだか関心しちゃうお話だね」


美穂「でも、と言うことは……”妖”の一種である”鬼”も何かに対する畏怖から生まれたって事なのかな?」

肇「はい、その通りです。ずばり言ってしまいますと、」

肇「”鬼”は、”人の心、人の精神”に対する畏怖から生まれます」

美穂「……人の心に対する畏怖」

肇「人の思い、人の考え方、人の精神、それらが”とても人とは思えないものだ”と恐れを抱かれたとき、」

肇「そこに”鬼”が生まれるんです」

美穂「えっと……人の思いなのに、それが人とは思えないの?」

肇「そうですね。こう言うと、なんとなく変な話に聞こえるかもしれませんが」

肇「でも世の中では、普通にありえる事なんですよ」

肇「例えば、人を人と思わぬような残酷な行いをする人の事を」

肇「人は恐れて、”鬼畜”と呼んだりしますよね?」

美穂「あっ……そっか、なるほど」

美穂「残酷な事をしちゃうような心も人から生まれたものだけど……」

美穂「みんなそれを怖がるから……そこに鬼が生まれちゃうんだ」

肇「そう言うことです」

肇「もちろん、『残酷さ』ばかりが、恐れられる人の心と言う訳ではないのですけれどね」

肇「例えば、私のおじいちゃんは『刀に対する頑固なまでの情熱』を畏れられて鬼になったと聞いていますから」


肇「ですが、多くの場合は人に畏れられるほどの思いは負に偏っています」

肇「結局のところ……”鬼”は”人から外れている者”の事ですから」

肇「”人から外れている者”には、人の常識がわかりません」

肇「だから人の常識に反した行いをする、つまり悪さをする……」


肇「こう言う訳ですから……鬼に対して、負のイメージが定着してしまうのも仕方ないことなんです」

美穂「……肇ちゃん」

美穂「ごめんね、えっと……辛い話をさせちゃって」

肇「いえ、美穂さんが謝るようなことではありませんよ」

肇「大切な事ですから、話しておく機会ができてよかったです」

美穂「……あのね、肇ちゃん」

美穂「私は、少なくとも肇ちゃんの事を”怖い”とは思わないからね?」

肇「……ふふっ、ありがとうございます」

肇「私は大丈夫です。美穂さんの様に、受け入れてくれる人もちゃんと居るのがわかっていますから」

美穂「……うんっ」


――

――


美穂(以上が、回想です)

美穂(人から外れた人の思いから生まれる物、それが鬼)

美穂(獣人や天使が受け入れられる世の中になっても)

美穂(人から外れた存在であるところの鬼の事を、人はなかなか受け入れにくいのかもしれません)

美穂(だから肇ちゃんは、角を隠します)

美穂(……でもそれは寂しいな、せっかく可愛い角なのに)



鬼はーそとー! パラパラー

福はーうちー! パラパラー


肇「……」

美穂(うん……肇ちゃんの立場からしたら、これは堪えるよね……)

美穂(今年は、お家では豆まき無しかな?)

美穂(……)

美穂(でも……本当にそれが一番いいことなのかな……?)


――


美穂「ただいまー」

肇「ただいま帰りました」

美穂母「おかえりー」

美穂母「早速だけど、美穂。肇ちゃん。」


美穂母「豆まきするわよ!」


肇「……えっ」

美穂「お母さん!?」


母「大切な行事だから、ちゃんとやっておかないとね!」

母「今年も無病息災、家族の幸せを願ってね♪」

母「ほら、福豆。美穂も肇ちゃんもこれ持って」

母「プロデューサーくんはもう豆を撒く準備できてるわよ」

Pくん「もぐもぐ」

美穂「えっ、もう食べてるみたいだけど……」

美穂「ダメだよ、プロデューサーくん。豆を食べる数は年の数だけ……」

美穂「じゃなくって!お母さん、肇ちゃんは……」

母「肇ちゃんは福豆触れる?無理なら手袋があるけれど」

肇「えっ……えっと触るだけなら問題ありませんが……」

母「そう!じゃあ大丈夫ね!」


母「あ、そうそう。豆を撒くときの掛け声だけど、今年はこう」

母「福は内ー!鬼も内ー!」

美穂「!!」

肇「!!」


美穂「お母さん……」

母「……うふふっ、私も今年は豆撒きするかどうか迷ったんだけどね」

母「やっぱり毎年の家族の行事を疎かにするわけにもいかないでしょ」

母「今年は家族も増えたんだから」

肇「家族……」

母「預かってる形だけど、この家に居るなら肇ちゃんも家族です」

母「だったら仲間はずれになんて出来ないでしょ?」

母「『福は内、鬼も内』、調べたらこう言う節分の掛け声もあるそうじゃない」

母「これなら、鬼の血を引く肇ちゃんも一緒にできるわよね?」

肇「は、はいっ!そのっ、ありがとうございます!」

美穂(仲間はずれにせず、一緒に……そうですその手がありました)


美穂「ふふっ、肇ちゃんっ!」

肇「美穂さん!豆撒き、一緒にやりましょう!」

美穂「うんっ!やろう、一緒に!」


美穂(人から外れた人の思いから生まれた存在、”鬼”)

美穂(受け入れる事は、なかなか出来ないのかもしれません)

美穂(ですが互いに寄り合う気持ちがあれば、)

美穂(共に大切な日々を過ごす事は、きっと難しい事ではないはずです)


福は内、鬼も内。


おしまい




美穂「……」

肇「……」

Pくん「……」

美穂「……」 

肇「……」

Pくん「……」 

美穂「……」 もぐもぐ

肇「……」 もぐもぐ

Pくん「……」 もぐもぐ


美穂(ちなみに本日の夕飯は恵方巻でした)

美穂(今年の恵方は東北東よりやや右です)


おしまい




我が国に昔から語り継がれる、人知を超える異端の者達。
多種居る妖怪の中でも、すこぶる力強く、人型である者が多い。
多くの妖は、天や自然や文明に対する畏怖を根源にするのに対して、
鬼は、人間の思いや精神に対する畏怖がその存在の根幹であると言われる。
そのため、常に人の隣に居て、人を脅かし、人を守ってきた。
人が鬼に変異する例も多く、神になろうとして失敗した者の成れの果てであったり、
多くの民から呪われたために、呪いに身を包まれて変質した人間であったり、
ただ悪事や禁忌とされる行いを働き続けた結果、いつの間にか姿かたちが変質して鬼になったものもいる。
このように畏怖されるほどの人間の感情と言うのは、多くの場合は負の感情であり、
そのため鬼達も負の存在に近く、負の力の扱いに長けている。
神の領域に近づくため、自ら鬼となった変わった者達も居たとか



と言う訳で、節分と鬼のお話でした。
負のエネルギーを扱える鬼は、カースドヒューマンに近い存在であったりするのかなと思います。

乙です。やっぱPくんめっちゃ可愛い(確信)

穂乃香の話を投下します。

深い深い樹海の奥にある洞窟。そのなかにはとんでもないお宝が眠っている。しかし、その宝を守る番人が宝を死守しており、だれもお宝の内容を知らない……。

そんな伝説が世に知れ渡り十数年。宝の番人綾瀬穂乃香は洞窟の前で刀を振るっていた。

穂乃香の心中には数日前に来たあの男、そう言えば名前を聞いていなかったな、と思案する。

刀を振りながら物思いに更ける。

(私は、あの男に傷をつけることすら出来なかった……)

男のあの固い鎧を思いだし、倒すことが出来なかった悔しさに歯噛みする。腕には自信があったのだが……。

もしあの男が仲間を引き連れてやって来たら、次は勝てないだろう。

その為に、今は修行中である。

刀を振る腕を止め、息を吸う。そして、刀を構えた。ただし、刃の反対側、峰を向けている。

「綾瀬流剣術………」

これは穂乃香の父が編みだし、そしてもっとも得意とした技であった。

「刀代無双!」

ブオォン!と風を切り降り下ろした刀が大木に直撃する。

大木はミシッと音をたてたが、倒れなかった。

綾瀬流剣術『刀代無双』とは、簡単にいってしまえば「物凄い峰打ち」である。穂乃香の父がかつて戦った相手が、とても強固な盾を持っていたのだが、それを打ち破るために編み出したのがこの『刀代無双』だ。

父曰く、「切れないなら砕いてしまえ」とのこと。それを聞いたまだ幼かった穂乃香は、幾らなんでもむちゃくちゃだろう、と思ったが、今その技の修行をしているのだから笑える話だ。

(くっ……やはり私にはこの技の習得は無理なのか……?)

穂乃香は父と違い、細く、華奢であった。だから、力がない代わりに素早さを重視した戦い方をする。

穂乃香の父は豪腕の持ち主で、だからこそ『刀代無双』を使えたのだが……。

「はぁ……」

思わずため息をついた。頬を汗が伝うが、気にもしなかった。

刀を鞘に納める穂乃香。休憩をしようとした、その瞬間、

「!」

穂乃香の顔めがけてナイフが飛んできた。すぐさま刀を抜き、弾き落とす。

弾き飛ばされたナイフは空中をくるくると回転し、地面に刺さった。

「………」

切り株の側に置いといた二本目の刀を持ち、ナイフが飛んできた方向に目を向ける。

「あちゃ~弾かれちゃったか~。ついてないな~」

妙に間延びした声が聞こえた。声の主はナイフを拾い上げ、穂乃香に目を向ける。

「う~ん、流石、宝の番人さんだ。巷で化け物と呼ばれるだけのことはあるね~」

それは少女だった。年齢は穂乃香と同じか、年下。白いワンピースの上に左肩から右腰にかけて太いベルトが巻き付けられていた。透き通るような銀色の髪をツインテールにしている。右が赤、左が青のオッドアイが穂乃香を見つめる。

「……」

黙ったままの穂乃香に向かって、少女は話しかける。

「あれぇ~?なんで黙ってるの~?」

首をかしげ、左手の人差し指でこめかみを指す。

穂乃香は、少女ののんびりとした雰囲気の裏に隠された強い殺気を感じた。

この少女は、間違いなくただ者ではない。ナイフを投げる距離まで近づいたのなら、穂乃香がその存在に気づかないはずがない。しかし、穂乃香は気づかなかった。

「あなたは、何者ですか?」

刀を下ろすことはせず、少女に問う。

「ん~、宝が隠されてる場所に来たら、やることはひとつだと思うんだけどな~。まぁ、いいや。教えて上げる」

少女は左手の人差し指で、自分を指差し、言った。

「私の名前はシニストラだよ~。よろしくね、番人さん」

そのまま人差し指を穂乃香の背後に向ける。

「で、番人さんの後ろにいるのが、私のお姉ちゃん、デストラだよ~」

穂乃香の体に衝撃が走る。

弾かれたように後ろを振り向くと、そこには先程シニストラと名乗った少女と瓜二つの容姿の少女が、ナイフで穂乃香を向けていた。

大きく跳躍し避ける。

「………おい、シニストラ」

少女が、さっきまで穂乃香に話していた少女、シニストラに話しかける。

少女、デストラはシニストラと同じく銀色の髪をツインテールにしており、白いワンピースを着ていたが、シニストラとは違いベルトを右肩から左腰に掛けて巻き付けていた。左が赤、右が青のオッドアイが、シニストラを睨み付ける。

「貴様が余計なことをするから仕留められなかっただろうが!」

デストラの怒鳴り声に動じることなく、シニストラは飄々とした態度で答えた。

「いいジャ~ン。お姉ちゃん、強いんだし~」

反省する気が0の妹を見て諦めたのか、ため息をつくデストラ。

「……はぁ。貴様のような馬鹿が私の妹……。認めたくない……」

「あはは♪それは残念だね、お姉ちゃん?」

そんな二人のやり取りを、穂乃香は茫然としたようすで見ていた。

穂乃香は信じられなかった。自分の背後に音も気配もなく立った少女の存在が。

しかし、すぐに彼女は正気を取り戻した。

そして、

「綾瀬流剣術」

刀を構え、二人に突進した。先手必勝である。

「疾風怒刀!」

しかし、

「おっと」

「ふん」

瓜二つの姉妹は、穂乃香の不可視の剣技『疾風怒刀』を、いとも簡単に避けた。

「番人さ~ん、私たち今お話ししてたのに~。邪魔するなんて、空気読んでよね?」

「はっ、会話ならこいつを殺した後でいくらでもできる」

「そだね」

左手にナイフを持ったシニストラと、右手にナイフを持ったデストラが、穂乃香に向かって来た。

「!!」

それは信じられないほどのスピードだった。下手すれば穂乃香よりも早い。

二人の猛攻を防ぐのに穂乃香は精一杯だった。

「ほらほらほらほら!」

「はははははははは!!!受けるのが精一杯か!」

刀とナイフがぶつかり合い、火花が飛ぶ。

これは不味いと考えた穂乃香は、自分の早さを最大限に利用し、二人の背後に移動した。

そして、切る標的を失った二人の無防備な背中に『力戦奮刀』を繰り出し、

「っ!また!」

当たらなかった。二人が避けたのである。

「鬼さんこーちら♪」

「手のなる方へ!!」

穂乃香の左右を挟んだ二人の手に握られたナイフが、穂乃香の腕に突き刺さる。

「あぁ!!」

焼けるような痛みに思わず悲鳴を上げる。今までの敵は、殆んどが穂乃香に攻撃を当てることが出来なかった。だから、穂乃香は「傷を受ける」という経験を殆どしなかったのだ。

「あはははははは!!あぁ、だって~!かっこ悪~い」

シニストラの嘲笑が穂乃香の耳に届いた。

「ふふふふふふ、やはり宝の番人も、我らの敵ではなかったか」

顔のすぐ近くでデストラの声が聞こえる。

そのとき穂乃香の髪が引っ張られ無理矢理に顔を上げさせられた。

「さて、こいつの首を切り落とすかな」

その瞳の冷たさにぞくりとした。その一方で、自分もこんな目をしていたのかな、と至極どうでもいい考えが頭を掠めた。

「ねぇねぇ、そんなよわっちいのなんかほっといてさ~、早く宝を取りに行こうよ~」

シニストラの気の抜けた声が穂乃香の耳に突き刺さった。

「自分は強い」という絶対的なプライドを打ち砕かれ、穂乃香の心の底から怒りがわいてきた。

「……ざ……な」

「ん?なんかいったか?雑魚」

「ふざけるなああああ!!!」

刺されて血がだらだらと流れる腕に力を込めて刀をふる。

デストラはそれを避けた。そして冷たい瞳で穂乃香を見つめる。

「ふん、まだ動けるか」

「弱いのに無理しちゃって~。もういいじゃん、番人さんは十分頑張ったよ。もう諦めなよ」

二人の言葉の一つ一つが、穂乃香の心に突き刺さる。二人の持つナイフよりするどく、穂乃香の心に深い傷をつける。

「私が、弱いだと?!宝を取りに行くだと!?私が、今までどんな気持ちで、宝を守ってきたと思っている!?」

血を吐くような叫び声。それは長年穂乃香の心のそこに蓄積していた憤怒の叫びだった。

しかし、デストラもシニストラも、穂乃香の叫びに臆することはなかった。

「知るか」

「そんなこと私たちの知ったことじゃないよ」

この言葉に穂乃香は完全にキレた。いつもの冷静さは影を潜め、二人に突進する。

「……ふん、そのまま抵抗しなければ見逃してやろうとも考えていたのだがな」

「お馬鹿さんだね~♪」

穂乃香の二本の刀と、デストラとシニストラのナイフが交差する。

パキイィン、と音を立てて折れたのは穂乃香の刀だった。

その時、穂乃香は見た。折れた刀の刀身が、やけにゆっくりと地面に落下するのを。

そして悟った。こいつらは私より素早いのではない、私が遅くなっていたのだ、と。

だから私より早く動けるし、『疾風怒刀』もよけれたのだ。

おそらく、どちらかが能力者なのだろう。それで私が二人に追い付けなかったのだ。

そんな穂乃香の思考は、次の瞬間放たれた二人の持つ刃に切られたことで闇に落ちた。


ドサッ、と倒れる血まみれの番人。それを見下ろす二人の少女。

少女たちの体は返り血により真っ赤に染まっていた。

シニストラが、姉のデストラに顔を向ける。

同じくデストラも、妹のシニストラに顔を向けた。

二人は同時に口を開き、そして同時に言葉を発した。

「やったね♪」

「やったな」

しかし、まだ喜んではいられない。洞窟に目を向けた。

「さて、後は宝を奪うだけだな」

その時、二人の脳内に埋め込まれた通信装置を通じて声が聞こえた。

《デストラ?シニストラ?二人とも無事?怪我はない?》

心底心配そうな声が、二人の頭に響く。

《心配ないよ、マーノ姉さん》

安心しろと言わんばかりの調子でデストラ。先程とはまるで違う別人のような優しい声だった。

《怪我はないよ~、マーノ。だから安心してよ》

《よかった、私のために二人が怪我したらどうしようかと……》

《ははは、姉さんは心配性だな。私たち三人でいつも成功してきたじゃないか。今度も大丈夫だよ》

《それにマーノの加護もあったしね♪》

いま彼女たちと会話をしているもう一人の女性は、彼女たちの姉である。名はマーノといった。この洞窟から数メートル離れた場所にある木の影に凭れるようにして立っていた。

デストラとシニストラと同じく銀髪をツインテールにした、鮮やかな紫色の目の持ち主であった。

この三人の見た目がここまでそっくりなのは三人が三つ子の姉妹だからである。そして、フリーの傭兵でもある。

彼女も戦闘はできるが、今回はとある理由から援護に回ってほしいと二人の妹に言われて今回この場所で二人の援護をしていたのだ。そう、体感速度を遅くする能力は、彼女の持つ能力だったのだ。

《じゃ、私たちが宝を持ってくるから、マーノはそこで待っててね~》

《……その、ごめん》

妹たちに押し付けた事に罪悪感を感じ、謝ろうとしたマーノの声を、デストラの声が遮った。

《姉さん、どこに謝る必要がある?》

それに同調するようにシニストラ。

《そうだよ~。マーノと、姉さんの幸せは私の幸せでもあるんだから》

《そうだ。姉さんとシニストラのの幸せは私の幸せ。私とシニストラの幸せは姉さんの幸せでもある。私たち三人は、三人で一人。ずっとそうだったろ?》

三人に親はいない。自分の親がどんな人だったかは覚えていない。親もいなければ家もなかった。毎日毎日、餓えの苦しみに耐えてきた。

しかし寂しくはなかった。いつも姉妹と一緒にいたからだ。苦しみも、喜びも、分かち合って生きてきた。

フリーの傭兵になってからは、報酬で得た金で飢えに苦しむことは無くなった。それなりに幸せな日常を送っていた彼女たちだが、ある日長女のマーノが、依頼を受けて護衛した資産家の息子に求婚されたのだ。

マーノは喜んだ。そして、デストラとシニストラも喜んだ。しかし、マーノは不安でもあった。自分は、仕事とはいえ、人を何人も殺してきた。そして、資産家の息子はそれを知らない。知っているのはフリーの傭兵であるということだけだ。

そしてある日マーノはその事を打ち明けた。資産家の息子はそれを聞いて、嫌がる素振りは見せなかった。それどころか、「それでも愛してる」と、手を握ってくれた。何人も殺めてきた、この人殺しの手を、握って結婚しようといってくれた。

三人は幸せの絶頂に至った。

しかし、すぐにそれは崩れ去った。

資産家の息子が襲われて病院に搬送されたと聞き、三人揃って病院に飛んできたマーノが見たのは、死人のような目で譫言のように「バアル・ペオル」と呟く資産家の息子の姿だった。

マーノは呆然としてて医者の話を聞いていなかったが、あとでデストラから聞いた話によると、資産家の息子は怠惰のカースドヒューマンにされ、このようなことになったこと、そして、彼の体内にある怠惰の核を摘出することは、資産家の全財産をつぎ込んでも難しいと。

しかし後日、医者の話を聞いたところによると、彼の怠惰の核は腎臓に寄生しており、摘出するのはまだ簡単な方であるとのこと。ただ、カースドヒューマンの核の摘出は前代未聞で、未知の領域であり、簡単であるといっても成功する確率は小数点以下である。と、医者はいっていた。

しかし、それで諦める彼女たちではなかった。

その日から、どんな手を使ってても金を集めると決めた。それが今から五年前の一月一日であった。

そして、今日。ここに眠ると言われている宝を持ち帰れば、手術を受けられる。

そのために、彼女たちはここにいた。

そして、場所は洞窟の中。

いままで誰も踏み込むことができなかった前人未到の洞窟のなかを、二人は緊張の面持ちで進む。

この先に、宝がある。私たちは、私は、幸せになれる。これまでずっと幸せになりたいと願ってきた。それを叶えるための第一歩だ。

しばらく進むと、奇妙なものが見えた。

それは薄汚れた黄色い三角錐だった。それが逆さまになって地面に突き刺さっている。

「……これが宝?」

いつもののんびりとした調子はなりをひそめ、シニストラはデストラに聞いた。

「……いや、宝ならもっと奥の方にあるんじゃないか?まだここは洞窟の中腹だ。それにこれはどうみたって宝じゃないだろう」

「……そだね。でも何もなかったらこれもって帰ろう?」

「馬鹿、何を言うか。宝はある、無くては困る」

二人は洞窟の奥に進んだ……。

その頃、洞窟の前に倒れていた穂乃香にはまだ意識があった。

穂乃香は夢を見ていた。それは、走馬灯か、それとも悪夢か。恐らく後者だろう。

今まで自分が守るために殺してきた人々の顔が、浮かんでは消える。

穂乃香は心の奥底で、彼らを羨ましいと感じていた。使命に縛られた自分と違い、自由だった。だから、こんな場所までやって来て宝を奪うなどほざく余裕があるのだ。

命乞いをするのはまだ生きていたいと考えている証だ。穂乃香はもう、よくわからない宝を守ることに疲れていたのだ。

そして、命乞いをする人間を見るたびに、「自分には大切なものがあって、自由なのだ。お前とは違う」と言われてるような気がして、そのたびに怒りに任せて切り殺した。

最早、やってくる敵を殺して「自分は強い、負けない」と考える事が彼女の唯一のいきる意味となっていた。

しかし、それは先程すべて打ち砕かれた。

もう死にたかった。

穂乃香の目に微かに涙が浮かび、流れ落ちた。

そのまま意識を手放そうとした、その時、

「諦めるには、まだ、早いんじゃないかな?」

声が聞こえた。デストラとシニストラの声ではない。まったく別の声だった。男とも女ともつかない奇妙な声が穂乃香の頭上から降ってくる。

「ほら、これを使いなよ」

目の前になにかが落ちた。それは四つのカースの核だった。そして、一つの装置。それはベルトの形状をした装置。

「これはカースドライバー。そして、カースの核だよ。もしあなたに素質があれば、それはあなたの体にぴったり馴染むはずさ」

投下終了です。ハイブリットカースドヒューマンとカースドライダー関連のネタはメタネタスレから拝借しました。ご協力ありがとうございました。

イベント
・穂乃香、番人やめるってよ

お目汚し失礼しました

学園祭投下、いっきまーす

一応、時系列はこう判断しています

一日目
夕方…カースの雨→アンチメガネカース放流&AMC誕生→白兎vs聖來さん
その後AMCがヒーローにメガネ嫌悪の洗脳をする事案が発生
深夜…奈緒ちゃん帰還

二日目
朝…朝の会議で映像を流す予定だったが、白兎襲撃でそれどころじゃなくなる

これから投下

アイドルヒーロー同盟トップであるTPとAP、それに秘書が乗る車内は静かだった。

そこに、人工知能であるSPのボイスが、片耳の無線イヤホンから3人に送られてくる。

『TP様、提出された映像データに一度目を通して下さい』

「何の映像だ?」

『新種のカースの映像だそうです。会議の前に提出されましたが…申し訳ありません、それどころではなくなりましたので…』

TPのネクタイピンやAPのチョーカーや秘書の腕時計の中のマイクが音声を拾い、SPはその音声に反応して返答する。

合成音声との会話は滑らかで、まるでそこに居るようだ。

『勝手ながらこちらの映像は上層部メンバー全員に送信させていただきました。次回の会議の際に話し合う事になるかと』

「それは仕方のない事だ…見せなさい」

『かしこまりました』

車内のディスプレイに、AMCがヒーローを襲う映像が流れだした。

子供の姿をしたカースだ。

黒い服、黒い髪、そして少しだけ黒い肌。

レンズの様な不気味な瞳はにっこりとしていれば見えない。

少年の姿、少女の姿のそれは、ヒーローに襲い掛かっていた。

それは常人ならば少し情に訴えかけてくるものがあった。

「…子供型カースか…その姿で自爆とはなんとも気分が悪い」

『白に続き黒の核を持つカースです。会議中に襲撃した怪物の仲間と思わしき「黒」という名称と深くかかわっている筈です』

「ふむ…」

『また、これ以外にも目撃情報はあり、周辺の住民にこの子供に擬態したカースに警戒するよう呼びかけるつもりです。洗脳能力も持っているようですので』

「ああ、実行してくれ」

『お任せ下さい。それとTP様、要請が届いています』

「なにかね?」

『パップ様から秋炎絢爛祭にてライブを行うアイドルヒーローの増援要請が。既にクールP様からは二名を向かわせると連絡が入っておりますが…』

「…秋炎絢爛祭で被害が出たことはこちらも把握している。許可しよう。SP、念のため予定が空いている者をリストアップしなさい」

『了解しました』

今度はディスプレイに情報を映し出す。

「…TP様、予定が空いている者はそれなりに居ますが、ここはやはり実力が信頼できるアイドルヒーローも送りましょう。

RISA含め、彼女達は新人です。学園祭に行く人々の安心を保証するにはやはり有名アイドルヒーローの存在が手っ取り早いかと」

「そうだな、『RISA』のライブゲスト扱いで、更に二名…『ラビッツムーン』『ナチュラルラヴァース』はどうだ?予定は…レッスンか」

秘書の助言を受け、増援兼ゲストとして登場するアイドルを提案する。

『その二人は暫くレッスンでしたが、キャンセル可能。ライブもかなり先ですし疲労しているわけでもありません。データ上は問題ないですね』

「その二人なら緊急ゲストでも十分に観客を満足させることが可能でしょう。RISA達とはタイプも違いますから、彼女を完全に喰う事もないでしょうし」

「よし、873プロダクションに連絡を取って、可能なら行くように言ってくれ。返事がNOだったら別のアイドルを考える」

『お任せ下さい、連絡は子機にやらせておきます』

『…それともう一つお話が』

「ん?構わないが…」

『…例の海底都市の住人、ライラ様。クールP様のプロデュースによってアイドルヒーローとして所属しましたが…やはり不安要素です』

SPが語り出したのは、クールPにスカウトされた少女。ウェンディ族であるライラの事だった。

「異種族さえもアイドルヒーローとすれば懐の広さを見せることが出来る」などと言われ、上層部は言いくるめられたが、SPは意見があるようだった。

『可能性の話で申し訳ないですが…神の洪水計画を阻止するために海底都市の住人と戦う事になった時、彼女はどう動くのでしょうか。

彼女の技はお爺様直伝だと聞きました。そして彼女は修行の為に地上に来たと言っています。彼女は故郷から逃げて来たわけではありません。

…ライラ様が万が一あちらへ寝返った場合、アイドルヒーローの信用が傷つくだけではなく、その場の士気にも影響が出るでしょう』

「…なるほど、確かに全て筋が通っている…それで、その事について何か対策があるのか?」

『もちろんです』

「…物騒な事ではないだろうな?」

『ご安心を。海底都市からライラ様を寝取るだけです』

『ネトル!ネトル!』

APが抱えていたキンが言葉の意味も知らずに囃し立てる。

「…ねとる?」

「「!?」」

APはともかく、TPと秘書は動揺した。

――――

海底『ライラ!俺の事が好きじゃなかったのかよ!』

ライラ『…』

地上『無様だなぁ、海底都市サン?ライラちゃんはお前なんかよりこっちが好きなんだってよ!』

海底『ち、違う!!そんな事あるわけが…!』

地上『ほ~らライラちゃーん?アイスだよ~』

ライラ『…』ピクッ

海底『ら、ライラ!それに釣られちゃだめだ!』

地上『他にもたくさん、ライラちゃんが好きな物をあげようかなぁ~?おいしい物いっぱいだよー?』

ライラ『海底都市さん、私はもう…地上さんの事しか考えられないでございますよ…』

海底『な“ん”で“俺”じ“ゃ”ダ“メ”な“ん”だ“よ”ぉ“ぉ”ぉ“!!』

地上『どうだ悔しいかアハハハハハ…』

―――――

「oh…」

秘書の脳裏に訳の分からない映像が流れてくる。

空気を察したのか、少し気まずそうなSPのボイスが流れてきた。

『…説明しましょう。要約すればAPに彼女の監視をしていただきます。しかし、彼女にはお付きのロボがいる為、自然な形で』

「どういうことだ?」

『友人ですよ、友人。既に友情が芽生えている者もいるようですが、APには監視をするために彼女の友人になってもらいます』

「っ!?」

「…こう言っては何だが…人には適材適所という物があるだろう…?」

「AP様はなんというか…友人関係を構築するのは難しいのでは…」

APは青天の霹靂を受け、TPと秘書は困惑の色を隠せない。

『APが普段無口なのは改善すべきですから』

「…」

『AP…黙らないでください』

『ナオス!ナオス!』

「…」

APは視線を逸らそうとするがSPはこの場に居ないのでどうやっても視線を逸らせないので俯く。

しかし俯いても抱きかかえているキンが居たのでAPは諦めた。

『便宜上は世間知らずなライラ様の案内役…という形を取らせていただきます。女性同士ですのでライラ様とは比較的会話しやすいかと』

「…」

「そうか…」

『会話の際は自分が音声でサポートいたします。ライラ様には聞こえないでしょうし。そもそもAPがまともな話題を出せるとは思えませんし』

「そ、そうか…」

『もう少しコミュ障を治すというか、無口と威圧感を治すべきだと思うんですよ。TP様のボディガードとしても』

「ああ、私もわかります。AP様はもう少しコミュニケーションを取れるようになるべきです」

『秘書様の同意を得られて嬉しく思います』

「どうも」

『コミュショー!』

「こ、コミュ障………ま、マスター…」

「…確かに、若い女性同士で話せるようになってくれたら、私は嬉しく思う。もちろん戦闘とかそういうのではなく…こう、ヤングな感じの」

「マスター…!?」

APは四方から追い詰められつつあった。

『スーツじゃなく、もっと女性らしい格好などもすべきかと』

「そうですね、ライラ様と一緒に買い物にでも行かせてはどうでしょうか」

「…そうだな、悪くない」

『オフクー!』

「あ、あの、皆さま、えっとあの…そこまで必要ですか…?」

『もちろん』

「…」

彼女の目からただでさえ少ないハイライトが失せた気がした。

心の底から「監視をするのは賛成だが、そんな風に友人を装う必要はないだろう」と、声に出して言いたかった。

『監視諦めますか?コミュ障止めますか?』

「………」

「…嫌か?」

「わ……わかりました。やります」

『その言葉が聞きたかった。…ライラ様監視を開始するのはクールP様にこの事を伝達した後になります。早くて明日からですね』

「…手早いな」

『この展開を予測していたので』

「あ、貴方って人は…」

『サイテー!クズー!』

『えっ』

こうして、ライラ監視計画兼、APコミュ障改善計画が動き出した。

安部菜々と相葉夕美が所属する873プロダクションでは、TP直々に出された出動願いの件で二人が呼び出されていた。

「ええっ!同盟のトップから直々に秋炎絢爛祭のRISAちゃんのライブゲスト兼、増援要請ですか!?」

「す、すごい話…」

「ああ、こちらの事がちゃんと評価されているようだ。二人の意思も尊重したいから聞くが…受けるか?」

「もちろんです!学園祭って初めt…あわっ!えっとえっと…ウサミン星には学園祭が無いんですよ!JKなのに!」

「…ナナちゃんが受けるなら、私には断る理由はないかな?」

それぞれの返事を聞いて、満足そうに二人の担当Pは笑った。

「そうか、その返事が聞けて良かったよ。すぐにYESの返事を出そう。二人とも、ライブが始まる数時間前までは自由行動でいいからな」

「本当ですか!?」

「ああ、資料自体は来ているから、しっかり読んでくれ。俺は他の所にも用事があるからもう行くぞ。レッスンのキャンセルは向こうがしてくれるそうだ」

「「はいっ!」」

菜々はどこか嬉しそうだ。それを夕美はちゃんと察している。

「…夕美ちゃん!」

「どうしたの、ナナちゃん?」

「どうしたもこうしたも!最近オフ少ないですし、オフ替わりみたいなものですよこれ!」

両手で夕美の手をぎゅっと握って、菜々は夕美に微笑んだ。

「楽しみましょうね!ナナ、リンゴ飴食べたいんですよ!思い出になる気がするんです!」

「思い出…そうだね、私も飴食べたいかも。飴細工ってすごいんでしょ?」

「はい!一度見たことありますけど、あれすごいんですよ!学園祭でやってるみたいですし、行ってみましょうよ!」

思い出。その言葉の裏に、夕美は菜々の思いを垣間見ていた。

(…帰っちゃうのかな。ウサミン星に…まだ、決意って程ではないけれど)

いつになるかもわからない。けれど、いつか確実に来るだろう。…菜々が地球を旅立つ日が。そう予感させた。

…嬉しそうなのに、どこか寂しそうだと思ったから。

アイドル活動は忙しくて、楽しい。けれど、こんな『JKらしい』思い出はもうあまり作れないだろうから。

手を握り返して、夕美は菜々と一緒に学園祭へ向かいだした。

「クラリスお姉ちゃん、お祭り行ってくるー!リサお姉ちゃんのライブ見てくるねー!」

「はい、いってらっしゃい」

クラリスに手を振りながら、子供服とポシェットを付けて、ナニカは教会を飛び出した。

『…で、今日は主にアイドルヒーローのライブ見るのか』

「そうだよ、昨日はやってなかったの」

『ふーん』

今朝ちょっとアイドルヒーロー同盟のビルを襲ってきた白兎は、あまり面白くなさそうだ。

『つまり今日は混みそうダな、昨日みたいにいろいろ起きそうだ』

『いろいろ、か…』

「そんなにいっぱい事件なんてないって」

『人が多ければ動きやすいけど…事件なんてそこらじゅうにある物だぞ』

「そんなわけないってー」

のんきな事を言いながら、ナニカは学園祭に向かっていく。

色々考えない為には、楽しい事をするのが一番だから。

「涼さん、今日も学園祭のライブやるんだよね?」

「まぁ毎日だな。光栄なことだよ本当に…昨日は大変だったけど」

出かける支度をする涼に、あずきが眠り草を持ちながら近づいてきた。

「…眠り草、今日は涼さんが持ってく?」

「えっ」

『えっ』

あずきの口から眠り草の声が漏れた。涼が驚いた事に眠り草が動揺したらしい。

「…昨日と同じでいいんじゃないか?ていうか妖刀とかマーサが食いつくからできるだけ止めておきたいんだけど」

「うーんと…涼さんが持っていた方がいい気がするの。なんとなく」

「なんとなく、ねぇ…」

『拙者をつれていくでござるー』

「…」

『ごーざーるー』

「…」

『ミミミン!ミミミン!ウーサミン!』

「…」

『ピカピカ、ピッカ!』

「…」

『ホンキノセイノウハ、ジンルイヲリョウガシマス!』

「あー…!わかった、わかったからちょっと黙ってくれ」

『ハーイ』

「裏声止めろ」

「あのな…持って行くとしてもな、浮くだろ。あずきが持っていると和服と刀だからコスプレとかなんかだと思ってくれるだろうけどさ…」

「えーでも、最近は刀を持っている女の子のヒーローが…」

『小春bゲフンゲフン…刀持ちの侵略者系乙女ヒーロー、ひなたん星人でござるな!』

「うんうん、そういう子もいるみたいだから大丈夫じゃない?」

眠り草的にはあまり荒事に絡みたくないので、傲慢な刀である小春日和の名前は一応伏せておく。

『(下手に名前出したらフラグ立っちゃうでござる。やばーい☆)』

「ちょっと待て…小春なんちゃらってなんだ」

『それは内緒にすべきだと拙者の勘が』

「つまり知っているのか…」

「刀友達かな?」

「…どうなんだ?」

『ミンナニハ ナイショダヨ』

「裏声やめてよー!その声を出すことを強いられるアタシの身にもなってよーっ!もう!折るよ!」

『またまたーたとえあずき殿でも名刀である拙者を折る事など…』

「…一つ教えてやるけど、アレ見えるか?壁の傷跡」

台所の方を涼が指で示す。

『ん?あの台所の…天井から床まで伸びている傷跡でござるか?塞がってるでござるが…』

「そうだ。…あれやったの包丁持ったあずきだからな」

『アイエエエエエエ!?アズキ!?アズキナンデ!?』

「い、いえーい…ちなみに貫通したよ」

すこし気まずそうにあずきが続ける。

「弁償代は…まぁ何とかなったし、直ったし、貫通した先が外でさらに言えば夏だったからまだよかったものの…隣と貫通したらどうしようかと」

「お隣って確か古賀さんだっけ?」

「そうそう」

ちなみにそのさらに隣にはマリナたちが住む部屋がある。

刀の所有者である涼は狙われている立場なのだが…今の所遭遇すらしていない。

『(折られる☆…やばーい☆バキバキすぅ?)』

遭遇していない事に多少は貢献している筈の眠り草は話を聞いていないようだ。おそらく、人間だったら顔面蒼白であろう。

『涼殿!拙者あずき殿の周りでは暫くふざけないでござるぅ!!だから、今日くらいは連れて行って欲しいでござるー!!』

「お前、そこまで…」

「というか話がグルグルしているだけの様な気がするんだけど…」

『気のせい!』

「眠り草が話を逸らすからでしょーっ!もーっ!」

「…仕方ないな、今日くらい何とか持って行くよ」

『マジでござるか!?ひゃっほーう!』

「あずき、眠り草ってあずきを介さなければ黙ってるよな?」

「そうだね。…涼さんの頭の中に呼びかけてくるかもしれないけど」

「ああ…うるさくしないように命令でもした方がいいか?」

『黙ってる!拙者黙ってるから!なんか敵が来た時以外黙ってるから!』

「敵なんてカース以外居ないから大丈夫だろ…」

彼女は一応一般人だ。犯罪組織を敵にしているわけでもないし、罪を犯したわけでもない。

…ただの妖怪と同棲して、ついでに妖刀の持ち主に選ばれてしまっただけの女子大生だ。

『(ここで拙者が狙われているとか今更言ったら十中八九折られるでござる…まぁそんな遭遇する事なんてないだろうし、来たら大体わかるし…)』

『(…ん?そもそも拙者折れるのでござろうか。うーん…面倒くさいからどうでもいいやー)』

あずきから手放された眠り草は、どこかどうでもよさげに思考する。

『(拙者は今の生活で満足だし、お祭りって美人多いし…それに金持ちとか偉そうなのって嫌いなんだよねー)』

『(…まあ、なんとかなるでござるね。多分)』

涼が眠り草を入れた袋と、バッグを持つ。

「じゃあ、先に行ってるからな。仁奈ちゃんと歌鈴に迷惑かけるなよ?」

「わかってるよ!いってらっしゃーい!」

あずきは涼を手を振って見送った。

仁奈と歌鈴が来るまではまだ時間がある。それまで家の掃除でもしようかと、家に入りなおす。

すると入った瞬間、つけっぱなしだったテレビの画面が急に切り替わった。

『番組の途中ですが、ここでアイドルヒーロー同盟から臨時ニュースをお送りします』

「ん?」

『以下のエリアにて、人間に擬態するカースが目撃されました。近隣の住民は警戒してください』

テロップと共に、画面には目撃情報があった場所周辺の地域の地図が表示されている。

『刺激せず、発見次第連絡をお願いします。また、擬態したカースだと言い張って他人を傷つける人間を発見した場合も通報をお願いします』

『また、表示されているエリア以外にも潜んでいる可能性はあります。どこに住んでいても警戒は怠らず、関わらないようにしてください』

「人間に化けるカースかぁ…それにしても最近は物騒だなー」

掃除を忘れ、戸棚からせんべいを取り出しながら、あずきは数回繰り返されたそのニュースを見ていた。

以上です
学園祭二日目突☆入!
菜々さんと相葉ちゃんも行くことになりましたよ

イベント情報(二日目)
・安部菜々&相葉夕美も学園祭へ。RISAのライブのゲストとして登場する予定です。
・アイドルヒーロー同盟からAMCへの注意報が放送されました。しかしテレビや街頭モニターを見ていない場合、情報は伝わってない可能性が高いです。
・APとライラさんお友達計画(仮)始動…?
・本日、眠り草は涼さんが持っています



復帰がてらイベント関係無いG3の話を投下ー
時系列?学祭の後じゃないかな

その夜は、なぜか眠れなかった。
 目を閉じてもどこからか湧き上がってくる焦りが、あたしを現実につなぎ止める。
 1時間ほどベッドで横になっていたけれど、このままでは朝まで起きていることになりかねないと、諦めて体を起こす。

 台所に降りてホットミルクを飲んだけど、焦りは消えず、むしろ大きくなっていく。
 その感情に耐えられなくなって、あたしはパジャマのまま家から出た。



 家を出たあたしは足の向くままに歩き続け、気が付くとある場所にたどり着いていた。
 ――そこは、あたしたちが『わたし』になった場所だった。
 辺りを見ると二人もここに来ていた。

「あれ? 二人も来たんだ」

「うん、なんだか眠れなくて」

「あたしも、なんか『行かなきゃ』って感じがして」

『はぁい、お母様方こんばんは』

 二人と会話を始めた直後、頭の中に声が響く。
 聞き覚えのない声だったけど、なぜか自然とこれが『わたし』であることがわかった。

「あー、やっぱりAEがなんかしてたんだ」

『ええ、そろそろ外出しようと思って』

「わざわざ夜中に集めないでよ……」

 法子が一人で何か納得していたけど、あたしたちには何のことかさっぱり分からない。
 かな子と顔を見合わせ首を傾げたところで……腹痛があたしたちを襲った。

「ひ、ぎぃっ」

 突然のことにお腹を押さえて膝をつく。押さえた手に固くて尖ったものが当たっているのを感じてパジャマを捲ると、何かの――いや、あの日食べたいくつもの破片がお腹を突き破って出ていた。
 いくらかの出血と一緒に地面に落ちた破片から泥が吹き出し、移動していく。
 視線だけでそれを追うと、法子とかな子からも同様に破片が出てきたみたいで、三人分の破片が一ヶ所に集まると、泥の量が一気に増えて人ひとり分くらいの大きさになる。

『かな子お母様』

「うぅ……え、なに?」

『わたしの仔を頂戴』

「え、と……あ、あの核?」

『ええ、その通りよ。あるでしょう?』

 それに向かって、かな子がなぜか持ってきていたあの7色の核を出すと、核はひとりでに浮き上がってそれに飲み込まれていく。
 核を飲み込んだそれは2,3回脈打つと、女の人の姿になった。
 歳は20台半ばくらいかな、スラッと背が高めで、ウェーブのかかった茶髪が腰に届かない程度に伸びている。

 肌が泥だとか、真っ黒なんてこともなくて、整った顔もあってただの美人にしか見えない。
 顔の前で何度か試すように手を握ったり開いたりしたかと思うと、両手の間に白っぽい球体を生み出して……









――辺りが『清浄な光』に包まれた








「あづっあ!?」

 全身を弱火で炙られるような感覚にあたしたちは転げまわり、女の人は満足げに頷く。

『贅沢を言うとまだ不満な点はあるけども、まあ及第点ね』

『お母様方、これからわたしは出かけます』

『今しばらくの間はこれまで通りに過ごしても構わないわ』

『でも、いずれわたしのために動いてもらうことになるから覚えておいて』

 言うだけ言うと踵を返して立ち去ろうとしてしまう。

「ちょ、待って説明! 説明が足りない!」

 まだピリピリするのを我慢して、声を張り上げて呼び止める。

『あらみちるお母様、夜中に近所迷惑よ?』

『でも、まあ……確かにお母様方には色々と話しておくべきかしら?』

 そう言うと、お腹に指を沈めて左右に割り開く。
 そんなことしても泥くらいしか無いと思ったんだけど、予想に反してそこには……草原が広がっていた。

「……はい?」

 それをみたあたしたちは目が点になる。

『原罪の力で楽園……エデンの園を再現したの。わたしはここを命で満たしたいのよ』

『人に限らず、生き物は弱いわ。地上を埋め尽くす命のうち、どれだけが自らの重ねた罪と向き合って、背負っていけるというのかしら』

『だからこの楽園へ連れて行ってあげたいの』

『楽園のために原罪の力はほとんど使ってしまったけど、構わないわ』

『この楽園に行けばあらゆる罪から解放されて、解き放たれた罪をわたしが請け負うことでより大きな力が得られるのだもの』

『わたしはこの楽園で生きとし生けるものを包み込んで、導いて、神様に代わってしまおうと思うの』

 その後もあたしたちを置いてけぼりにして色々喋っていた筈だけど、それらはほとんど頭に入って来なかった。
 たしか最後のほうでやっとAE……Another Edenとか名乗ったっけ。それを聞いて法子が妙な顔をしたけど、なんだったんだろう。

――破片に突き破られたはずのお腹は、いつの間にか塞がっていた。

 全てを喰らう者
 暴食のカース
 能力:天聖気を扱う・天聖気無効・他不明
 All Eater/Another Eden
 法子の中で自我を得た『わたし』の自称
 『わたし』を食べることで始まった三人への侵食は、『わたし』に自我が芽生えることで終わりを迎えた
 割とその場のノリで名乗る名前を変えるが、AEというイニシャルには拘りがあるらしい

 自らの自我と共に生まれた原罪の核を『わたしの仔』と呼ぶ

 原罪を取り込んで体内にエデンの園のレプリカを創り、そこにあらゆる命を取り込んで神になり替わろうとしている。
 彼女にとって食事とは「楽園へ命を導く行為」であるため「生きたまま丸呑み」を好み、暴食でありながら一般的な食事への関心は殆どない。
 偽物とはいえ楽園そのものを内包することで天聖気を扱う能力を得た。また、この能力は原罪由来で得た後天的なものであり、これとは別に先天的な能力を持つ。


G3について備考
・AEの核の破片はまだ一つ二つG3の体内に残ってます
・核がごっそり減ったので侵食は軽減された
・AEから力を貰ってるので天聖気への耐性(ダメージを軽減する程度)を得た

投下終わり

久々に書くとキャラが動かなくて投げ出したくなる不具合

乙です
AEがダブルネーミングだったとは…
楽園がなんか罠にしかみえない

>>91
穂乃香さん…えげつない子になっちゃいまして…
これからどうなっちゃうのかな

>>116
菜々さんクルー
刀のコミュニティは基本問題児しか居なくてアレである

>>125
お久しぶりでー
また怖そうなのが出てきましたね。どこへお出かけするのだろう


皆さん乙です
ではでは投下しまー



前回までのあらすじ


桃華「それじゃあ、わたくしはフェイフェイさんと出かけてきますので」

扉 ガチャ バタン


UB「やれやれ、お嬢様は本気で君の力を利用するつもりで居るらしい
   しかしそれは私たちにとって僥倖。君の力の有用性は私もよくわかって…

裏切り「今眠いからちょっと黙ってて」

UB「……(´・ω・`)」


桃華と『裏切り』の核
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384767152/800-)



賑わう人々に華やぐ祭典。

その裏側で暗躍する者達がいる。



その内1人は、日の光も届かない真っ暗な影の中にて。



クールP「頼まれていた資料はこれでいいかい?」

チナミ「ええ、一通り目を通したけどなかなかね」

チナミ「流石は、同盟のプロデューサーヒーローと言ったところかしら」


悪業渦巻く魔界において、

さらに策謀の交錯する吸血鬼の大派閥”利用派”に属する二人の男女。

チナミとクールP、彼女達はとある資料の受け渡しをしていた。


チナミ「手間を取らせたわね」

クールP「僕自身が動いたわけではないですから構いませんよ」

チナミ「あら、そうだったの?」

クールP「スカウト活動の一環のためだと言えば、」

クールP「その程度の資料は割と簡単に取り寄せられますから」

チナミ「ふーん」

チナミ「まあ、あなたの手で作られてないって言うのなら逆に信用できそうかしら」

クールP「おっと、随分と辛辣な評価だね。僕はそんなに信頼されてないのかな?」

お互いに言いあって、そしてクツクツと笑い合う。

チナミ「ふふっ、信頼ね」

クールP「ええ、信頼ですよ」

裏切り裏切られが日常茶飯事の魔界の出身。

それもお互いに”利用派”吸血鬼。

チナミ(そんなもの、存在するはずなんてないのにね)

吸血鬼の仲間。”利用派”の仲間。

仲間と言うのは彼女にとって、ただの利害の一致でしかなく、

お互いに利用し利用される関係の事を言う。

だから、彼女は目の前の男の能力は信用していても、

その内面を”信頼”などはしていない。

きっと目の前の男もそうなのだろうと、考えているし。

そもそもこの世界には、真の意味での”信頼関係”などは存在していないのだろうとチナミは考えるのだった。



クールP「とりあえず、その資料の分のお代の請求はそのうちにさせていただきますよ」

チナミ「あら、エージェントと言う部隊の存在と、あの子がエージェントに所属してるって事を教えてあげたじゃない」

チナミ「その分でチャラでしょう?」

クールP「……相変らず図太いね」

チナミ「ふふん、お褒めの言葉ありがとう」

チナミ「だけど、あなたが動いて集めた情報って訳でもないんでしょ?」

チナミ「これで、チャラにしてあげるって言ってるんだから感謝して欲しいわよね」

クールP「……わかりました、ではそれはサービスと言う事にしておきましょう」

チナミ「うふふっ、助かるわ♪」

クールP「『秋炎絢爛祭』に集まる能力者たちの資料。せいぜい有効に使ってください」

チナミ「ええ、私の目的の為に利用させて貰うわよ」

クールP「それでは僕はこれで」

クールP「貴女のように美しい方と一緒に居て、誰かに誤解されてはいけませんから」

チナミ「その口の上手さが人気アイドルヒーローの秘訣なのかしらね。その甘い言葉に何人のファンが騙されたのかしら」

クールP「ふふっ、どうかな。せっかくですから貴女もアイドルはじめてみますか?」

チナミ「輝く舞台に立つのも悪くないかもね」

クールP「その時は、特別に僕がプロデュースしますよ」

チナミ「冗談」

それが最後と、女性が背中を向けると、

クールP「おや、残念」

男性もまた背を向けて、互いに光の射さない影の世界へと消えていくのだった。


――


アイドルヒーロー同盟はいつでも人材を求めている。

その人材とは、侵略者にも打ち勝つ事の出来る強く正しく美しい者。

同盟のプロデューサーたちはそんな人材捜し求めているのだ。

それは当然、たくさんの人々の集まるこの学園祭においても。


チナミ「つまりこのリストに載る人間は、何か特別な力をはっきりと持つ人間」

チナミ「同盟のプロデューサーのお眼鏡にもかなう優れた能力者なんかよね」

チナミ「つまり、私の眷族に新しく迎える優れた人間を探すのにも、」

チナミ「このリストは役立ってくれるということ」

チナミ「そうねぇ、とりあえずこの中で私が今一番気に入ってるのはこの子かしら」


Name: 新田美波
Sex: 女性
Age: 19
Birth: 7月27日
Job: 学生
Height: 165cm
Weight: 45kg
……
……


チナミ「……なんだかやたら詳しいプロフィールね」

チナミ「同盟ってこんな事まで調べてるのかしら……ストーカーじみてるじゃない…こわっ」

チナミ「おほん……ま、そんな事よりもこの子について……」

チナミ「容姿端麗、頭脳明晰、文武両道、温和勤勉」

チナミ「なるほど、アイドルに仕立て上げるにはこれ以上ないってくらい逸材じゃない」

チナミ「ただこの子自身が能力者と言う訳では無いみたい、戦うところを目撃されてる訳でもなし」



チナミ「だけど、そんなことより気になるのは彼女が連れているって言う銀色の蠍」

チナミ「・・・・・・クールの連れてるアラクネ・・・・・・だったかしら」

チナミ「と同じタイプの機械兵器か何かよね」

チナミ「なんだったかしら・・・・・・デウ?エク?」

チナミ「そう!エクス・マキナ!」


チナミが興味を持ったのは、ここ最近急激に増え始めた機械仕掛けの兵器たち。

いつ、だれが、どのような目的で作り出したのかもわかっていない正体不明の機械生命。


チナミ「派閥もサクライも『エクス・マキナ』の詳しい情報をほとんど持っていなかったはず」

チナミ「つまりこの子を操れたなら、彼らとの取引の材料にも使えると言う事」

チナミ「目撃情報から言えばこの子自身は戦いにはなれていない。与するのも容易なはずよね」

チナミ「……ふふふ、まず一人目は決まりね♪」

上機嫌に呟くと、手に持っていた紙束を魔法の炎で燃やし尽くす。

資料の内容はすべて覚えた。情報は頭の中に残っていればそれでいい。


「あっれ~、お姉さん1人ぃ?こんな所でなにしてるの~?」

チナミ「あら?」


丁度その時、数人の奇抜なファッションをした若者達がチナミに声を掛けてきた。

「こんな人通りのない日陰で真っ黒な傘なんか差しちゃってさぁ?かわってるねぇ」

「……よく見たらさぁ、お姉さんすっごく美人じゃん?やっば!激マブっしょ?!」

「ねぇねぇ、良かったら俺らと遊んじゃわない?1人で居るよりきっと楽しいよ?」

どうやら、俗に言うところのナンパのようだ。

チナミ(……それにしたってなんだか時代に取り残されちゃってる感じの子達よね)

チナミ「まあ、丁度良かったわ」

「ん?あれれ?お姉さん意外とノリ気?」

「いいよいいよ!俺たち実はここの学生なんだよねぇ」

「案内なら任せなよ、イイトコ連れっててあげるからサッ」


チナミ「ええ、道案内よろしく頼むわね」

彼女の瞳が妖しく光った。

 


―――

―――

―――


ドンッ

美波「きゃっ」

紗南「あっ、ごめんなさい……前ちゃんと見てなくて」

美波「ううん、いいのよ。そっちこそ怪我はないかな?」

紗南(綺麗な人)

紗南「え、えっと大丈夫です」

美波「そう?良かった!えっと…中学生の子かな?1人?もしかして迷子だったりとか?」

紗南「い、いえ!違います!そ、その……あ、あたしの事はお構いなく!」

美波「あっ、ちょっと」

紗南「ごめんなさいっ」


逃げるように紗南は、その場から足早に離れるのだった。


紗南「……」

紗南「……はぁ」

廊下を歩きながら三好紗南は溜息をつく。


紗南「やっぱり簡単には馴染めないよね……」


教習棟の廊下を歩きながら、紗南は呟く。

紗南のクラスが学園祭で催すヒーローショーまでの僅かな休憩時間。

今頃、クラスメイト達は思い思いに友達と過ごしているのだろう。


一方で、紗南は1人であった。


その原因は、学校のサボりすぎである。

三好紗南には色々な事情があって、学校に登校できなかった期間が長い。

そしてその間に、紗南を置いてクラスのコミュニティは固く結束力のあるものとなっていたらしく……

何事も無かったかのように彼らの絆の間に割り込むことなど、簡単にはできないのだった。


紗南「うわぁ、もう!見事なまでにぼっちだー!」

大きな声で愚痴る少女の姿に奇異の目を向ける者も居たが、一瞬ちらりと目を向けただけでただ通り過ぎていく。

紗南「友達も、勉強も置いてけぼりなんて!それもこれも『怠惰』と『強欲』のせいだっ!くそーっ!」

確かに彼女が学校に通えなかった原因のほとんどは『怠惰』と『強欲』の悪魔のせいだが、

勉強をサボりがちなのは元からである。



紗南「……はぁ」

紗南「……これが学園が舞台のゲームとかだったら」

紗南「クラスのまとめ役ーみたいな子が居て、なんとかしてくれたりするんだろうけど」

紗南のクラスにも、まとめ役と呼べるような、いつもクラスの中心となる人物はいる。

彼女は、まるでゲームに出てくる主人公のような少女。


紗南「南条光ちゃん……」

持ち前の明るさで周囲を照らしだす、光そのもののようなクラスメイト。


紗南「……なんか雰囲気変わってたよね」

紗南「前まであんなに、怖い目をしてたかな?」

紗南「あたし殺されるかと思っちゃったくらい……あはは、なんてね。そんな事あるわけないし」

冗談っぽく言ってみたが、疑念は晴れない。

やはりあの目は……何かが引っ掛かる。

今朝もクラスで顔を付き合わせたときに見せた、彼女の目。

その心の内に何か”よくないもの”を秘めているかのような目。


紗南「……敵意……なのかな」


紗南「……ありえない……って言い切れないところが辛いところなんだよね」

紗南「学園祭、みんな頑張ってるのに1日目はあたし完全にサボっちゃったし」


学園祭1日目。

三好紗南は、サボった。


いや、「サボった」と言ったが、決してそれは『怠惰』の気持ちからではなく、

とある元ヒーローの活動の手伝いをしたかったために、1日目の参加を諦める事に決めたのだが。


紗南「それでも光ちゃんは”正義感”が強いから、やっぱりそう言うの許さない系ヒーローかなぁ」

紗南「まあ、それに関しては自業自得であたしが全面的に悪いんだけどね、うん……」


一応は、昨日の欠席も病欠と言うことになっている。

おかげで本日もまだ調子悪いような演技をする事になってしまい、それはそれで大変なのだが仕方ない。


紗南「だとしてもあんな目ができちゃう光ちゃんじゃなかったと思うけど……」


しかし、やはり引っ掛かる。

どうしても気になって、考え込んでしまうのだった。



ドンッ!

「きゃっ」

紗南「あっ!ごめんなさいっ」

考え事をしていた為に、また誰かにぶつかってしまった。


「もう……」

ぶつかった相手は、紗南よりも小さく、綺麗な金髪で、お人形さんのような服を着ているが、

どこか印象が薄い眼鏡をかけた少女であった。


「……考え事もよろしいですけれど、歩くときはきちんと前を向くことですわ」

紗南「ご、ごめんなさい……」

「うふふっ、わかっていただければ結構ですわよ」

紗南(自分より年の低そうな子に説教されてしまった……)

紗南(て言うか……この声どこかで聞いたことがあるような?)


気のせいだろうか。記憶の片隅にこの少女の姿があるような気がした。


「どうかしましたの?」

紗南「う、ううんっ!なんでも!ほんとごめんね!それじゃあっ!」

なんとなく居たたまれなくなり、急いでその場を立ち去ることにする。


紗南「あ、そうだ。眼鏡はずした方がいいと思うよ」

紗南「ほら、眼鏡ってあまりいい印象無いからね!」

それだけ言い残して、紗南はその場を後にするのだった。


――

――

――


桃華「……」

桃華「……まったく、あの程度の洗脳を受け入れてしまうなんて信じられませんわね」

マジックアイテムである『眼鏡』を掛けた事によって、その存在の印象が薄くなった少女が呟く。

世界に名だたる櫻井財閥のご令嬢にして、『強欲』を司る悪魔マンモンである少女は、

その正体を隠してこの学園祭に紛れていた。


桃華「紗南さんにはわたくしの所有物である自覚が足りないのかしら?」

菲菲「んー、しょうがないんじゃないカナー」

『眼鏡』を掛けた美しいお人形さんのような少女のその傍らには、

同じく『眼鏡』を掛けた中華風衣装に身を包む少女が1人。

傍から見れば、ちぐはぐでへんてこな2人であったが、

しかし幸いと言うべきか通りがかる人々は、彼女達の容姿を気にしない。

マジックアイテムの効果のおかげもあるが、何より学園祭の空気がそれを許している。

多少見てくれが変わっていても、コスプレだと思われる範囲であろう。


菲菲「マンモンちゃんの”所有権の主張”なら、」

菲菲「確かにマンモンちゃんの所有物が、他の誰かの意のままに操られるのを防ぐことができるケド」

菲菲「眼鏡をよくないものと思わせるために蔓延してる風潮は、人から意志を奪うものとはちょっと違うからネー!」

計り知れぬ魔神は、容易く世間に浸透しつつある認識操作の性質を読み取り、

その暗示が三好紗南に通じてしまった訳を、事も無げに語る。

桃華「認識の付加は、意識の所有権云々以前の問題と言う事でしょうね。」

桃華「そんなことより……」

桃華「……」

そこまで言いかけて少女は急に、押し黙る。

桃華『……フェイフェイさん。わたくしの事はその名前で呼ばないでいただけますか』

そして口を開かないままに言葉を続けた。

『強欲の証』を通した、テレパシー。

初代『強欲』の悪魔と当代『強欲』の悪魔の間でのみ通じる脳内会話。


桃華『何度も言うようですけれど……本日はわたくし、お忍びで来てますから』

桃華『目立つような真似はしたくはありませんの』

余計な事は口に出すな。と言う事らしい。

菲菲『?……それじゃあなんて?』

桃華『桃華でよろしいですわ。櫻井桃華の名前も有名ではありますが、』

桃華『ありふれた名前でもありますから、どなたも気にも留めませんわよ』

桃華『少なくとも悪魔としての名前を出されるよりはずっとマシですから』

菲菲「桃華ちゃんだネっ!わかったヨっ!」

その事の重大さなどはどうでもいいのか、魔神はただ無邪気に答えた。




菲菲「それにしても桃華ちゃんが、外出に付いて来てくれる気になってくれたのは意外だったヨー」

桃華「あら、わたくしだってお散歩は好きですのよ?」


人々が行き交う中、廊下を歩きながら2人の会話は続く。

正体を隠すための『眼鏡』を掛けているおかげで、2人の存在に対して気に留める者はほとんどいない。

時々、”植えつけられた『眼鏡』に対する憎悪”故か、訝しげな視線を向けるものも居たが、

それくらいの注目は、2人にとっては取るに足らないものだ。


菲菲「でも、最近はずっと部屋に籠りきりだったよネ?」

桃華「好きで籠ってるわけではありませんわよ」

桃華『ただ…神の目を避ける為には仕方ないのですわ』

桃華『それに当代大罪の悪魔であるわたくしは、現魔王の定めた制度によって指名手配に近い状態ではありますし……』

桃華「……本当に窮屈なことですわね」

菲菲『それについてはふぇいふぇいも同意するヨー、悪魔なのに悪魔の自由を縛るなんて魔王は変な事考えるネ?』

菲菲「まあ、奪われた自由は勝ち取ればいいんじゃないカナ?」

にやりと魔神は力強く笑う。

桃華「うふふふっ、元よりそのつもりですわ♪」

答えるように、『強欲』なる少女もご機嫌に笑った。


菲菲「まあ、そんな事より今はお祭りダヨー!!」

菲菲「まずはどこに行こうカナ!どこに行こうカナ!?」

桃華「まったく……はしゃぎ過ぎではありませんの?」

菲菲「そんな事言っちゃってるけど、桃華ちゃんもうずうずしてるヨ?」

桃華「し、してませんわっ!」

菲菲「えぇ?そうカナー?」

桃華「……」

菲菲「?」

桃華(……まあ、久しぶりのお出かけですもの。少しくらい楽しんでも罰は当たりませんわよね?)

菲菲「桃華ちゃん?」

桃華「……うふっ♪フェイフェイさんも楽しむのは結構ですが、」

桃華『ちゃんと人間らしく振舞うのはお忘れなく』

菲菲「もちろん、わかってるヨ!」

桃華『力を行使するのは極力避けるようにするのもお願いしておきますわ』

菲菲「わかってるヨー!」

桃華『あと死神ちゃまも来ているようですから、関わらないようにお気をつけくださいね』

桃華『バレる事もないとは思いますが、その他の魔界関係者の存在にも気を配ってくださいまし』

桃華『それと財閥は敵が多いですから、不用意にお話に出すのも避けていただけるかしら』

桃華『同盟から来たヒーローが多く配置されているようですわね。彼らに怪しまれる行動も慎むよう頼んでおきますわ』

桃華『そうそう、眼鏡が嫌いなカースと言う妙な存在に絡まれることもあると思いますが、お気になさらないように』

桃華『それからそれから……』

菲菲「ちゅ、注文多くないカナ……?なんだかふぇいふぇいも自由を奪われてる気になってきたヨー……」


――


菲菲「うーん、焼きそば美味いネー!」

桃華「そうやって食べる物なんですの……?でもこれでは下品では……」

菲菲「でも美味しいヨ?何事も挑戦してみるものダヨ!」

菲菲「ただ、ふぇいふぇいならもっと上手く作る自信が……ってアレ?」

菲菲『そう言えば、どうして桃華ちゃんは、死神ちゃんがこの学園祭に来てるってわかったのカナ?』

菲菲『……と言うか、さっき来たばかりなのに学園全体の事を把握しすぎじゃ?』

ベンチに座り、屋台で買った焼きそばを食べながら、

魔神はなんとなく気になったことを、隣で焼きそば相手に悪戦苦闘している相方に尋ねる。

桃華『あら、お忘れですの?』

桃華『わたくしの能力は”所有権の主張”ですわよ』

桃華『道行く方々の”記憶”すらもわたくしの”所有物”ですわ』

『強欲』の悪魔である彼女は、あらゆる物事の”所有権”を主張できる。

命であれ、物であれ、『記憶』であっても全てが彼女の支配下。

桃華『ここに居る方々は、1日目も参加されていた方が多いようですから』

桃華『彼らの記憶が把握する限りの1日目の様子であれば、わたくしもまた知る事ができますのよ』

菲菲「そう言えばそんな能力もあった気がするネ?」

桃華「その忘れっぽい性格はどうにかなりませんの……?」

菲菲「取るに足りない事はあんまり記憶してないヨ!」

桃華「自慢げに言うことではありませんわっ!」

桃華(いえ、仮にも大罪の悪魔の能力を取るに足りない事と言ってしまえるのは自慢になるのでしょうが……)


――


桃華『記憶の所有権』

菲菲「もぐもぐ」

魔神はたこ焼きを頬張りながら、

隣で同じくたこ焼きを頬張る少女の話に耳を傾ける。

桃華『”他人の”記憶を、”わたくしの”記憶でもあると主張するだけの能力ですわ』

他人の記憶でありながら、それは彼女の記憶。

つまり彼女は好きな相手の記憶を閲覧することができる。

桃華『もちろん、真にわたくしのものとするならば、』

桃華『相手に向けて、”主張する”と言う手順を踏まなければいけませんけれど』

菲菲『”それはわたくしのものデスワ!”って感じダネ!』

桃華『……似てませんわ』

桃華『まあ、その手順も本当に力を持たない相手に対してはとことん省くことができますの』

桃華『それに今回は奪うわけではなく、横から閲覧させて頂いている程度』

桃華『これくらいならば、少し触れ合うだけでも充分に力を発揮できますのよ』

菲菲『そう言えば、さりげなくすれ違い様に通りすがりの人間に触ったりしてた気がするネ?』

桃華『うふ♪袖振り合うも多少の縁と言ったところですわね♪』

菲菲『……でもそれは力を持たない相手に対してだよネ?じゃあ例えばふぇいふぇいに対して力を使おうとしたら手順の省略はできないんダ?』

桃華『あら、フェイフェイさんが相手では、仮にどんな手順を踏んだとしても記憶を横から見させていただく事さえ不可能ですわよ』


桃華『わたくしの能力は”魂の大きさ”…言わばレベルに左右されるものですから』

桃華『引力に例えるとわかりやすいかもしれませんわ』

桃華『月が地球に引っ張られるように、地球が太陽に引っ張られるように』

桃華『あらゆる所有権は大きいものにこそ追従するもの』

桃華『ですからわたくしは自分より大きいものからは、その所有権を奪えませんの』

菲菲『ふーん、この辺りを歩いてる取るに足りない人間の所有物は簡単に奪えても』

菲菲『悪魔クラスが相手になると難しくなるのカナ?』

桃華『そう言うことですわね、人間の能力者クラスが相手でも』

桃華『今の様にすれ違っただけで、と言う訳にもいきませんわ』


菲菲「なるほどー、弱いものいじめな能力ダネっ!」

桃華「うふふふっ、お褒めの言葉と受け取っておきますわ♪」

彼女の力は弱いもの相手には一方的な蹂躙を可能とする能力。

しかし、裏を返せば強いものに対しては為す術がない。


――


そして、彼女の能力にはもう一つ弱点がある。


菲菲『それじゃあ、カース相手にはどうなのかな?』

桃華「……」

チュロスを片手に、何気なく尋ねた魔神の言葉、

同じくチュロスを手にもつ桃華の表情が一瞬強張る。

菲菲『やっぱりカースからは何も奪えないんダ?ううん、奪いたくないのカナ?』

桃華『……意外に核心を突きますわね』

桃華『ええ、その通りですわよ』


桃華『だって、”カースの穢れ”が”わたくしの穢れ”になるなんて耐えられませんもの♪』


彼女は、マイナスの所有権は主張しない。


――

――


桃華「とにかく、今回のわたくしの目的を果たすために、この能力は鍵になりますわ」

先ほど購入したアイスクリームを食べ終えた、悪魔の少女は語る。

菲菲「えっ……?」

桃華「どうしましたの?とぼけた顔をしまして?」

菲菲「ううん、ちゃんと目的があったんダネ?」

桃華「当然ですわ!目的をなくしてわたくしが動くことなんてありえませんのよっ!」

少女は大仰な身振りも合わせて、華麗に言い放つ。

彼女は『強欲』を司る悪魔。ただ遊んでいるような振る舞いは見せつつも、

その心のうちはいつでも欲望に忠実かつ強かである。


桃華『例の失敗作の監視に付けていたエージェントが一人。この学園祭での連絡を最後に居なくなっていますの』

櫻井財閥の当主が飼う”エージェント”と呼ばれる特殊能力者機関の人員が1人、

この学園祭の中で任務遂行中に失踪した。

その任務は、財閥が行った実験で生まれたカースの監視任務であったが、

どうやら彼は、その任務を最後までやり遂げる事はできなかったようだ。

また、監視していたカースも何者かに倒されてしまっている。


菲菲『その失敗作のついでにヒーローに倒されたんじゃないのかな?』

桃華『どなたに負けたとしても……そして死んだにしても』

桃華『エージェントの中でも優秀な方が、ここまで何も無かったかのように消息を絶つなんてありえませんわ…』

桃華『何よりあの方は、戦線からの離脱に特化した能力を持っていましたもの』

桃華『そんな方が跡形も無く消されてしまう?一体どうやって?』

桃華『わたくしは、彼の所有者として、彼の最後を調べなくてはいけませんわ』



菲菲『なるほど、つまり桃華ちゃんはその人がどこに行ったのかを探りたいんダネ?』

桃華『ええ、彼はともかく消失したカースの方に関しては必ず目撃者が居るはずですもの……』

桃華『今回、わたくしが来た目的はその目撃者達の記憶を探ること』

桃華「わたくしの所有物を奪った方々から……」

桃華「すべてを奪い返すためにですわよっ!」 ズバッ

菲菲「わあ!桃華ちゃんカッコイイヨー!」 パチパチ

桃華「うふっ♪」

桃華「さて、フェイフェイさん」

桃華「目撃者を探すためにも、わたくし達はこの学園をぐるりと回らなくてはいけませんわ」

桃華「こんなところでうかうかしてる場合ではありませんのよっ!」

菲菲「そうダネ!」

桃華「ふふっ、それでは次のお店に急ぎますわよっ!」

菲菲「ん?あれれ?」

桃華「どうしましたの?早くしませんとこの学園を回りきれませんわ」

菲菲(……やっぱり桃華ちゃんはしゃいでないカナ……?)


桃華「次はチョコバナナですのよー!うふふー♪」

菲菲「あ、待ってヨー!」


かくして、櫻井財閥は学園祭の裏側にて暗躍をはじめるのであった。


……暗躍するのだろうか?


おしまい


◆方針

桃華 … 通りすがる人々の記憶を探りながら学園祭を満喫中
菲菲 … とりあえず学園祭を満喫中
チナミ … 眷族候補探し中
紗南 … 不憫

財閥が学園祭で動き始めたお話
ちゃまは久しぶりの外出で超はしゃいでます
ただ自分の欲望を満たすために一生懸命です

乙乙ー
悩む肇ちゃんに荒ぶる穂乃香さんに画策する同盟上層部にいつの間にかすげえ危険な涼さん(ご近所さん的な意味で)に
覚醒するAEに結果的に学園に集まりまくる櫻井関係者にワクワクがとまらんぜ!

学園祭二日目で投下します
例によって改訂版アイドル設定もあるよ!


クールP「待たせたね」

学園内、アイドルヒーロー同盟の控え室として使われている教室にクールPが戻ってきた。

ライラ「お帰りなさいでございます」

爛「どこ行ってたんだ?」

今教室の中にいるのは、爛とライラ、クールP。

そして、戦闘外殻カンタローとマキナ・アラクネだけである。

クールP「ちょっと、チナミさんに頼まれててね。渡す物があったのさ」

爛「ふーん」

爛は興味無さそうに、机の上に腰を下ろした。

クールP「そういえば、シャルクさんとガルブさんは? 姿が見えないけれど」

爛「さっきスタッフに連れてかれてたぞ。会場設営の準備と、整理券の配布だってよ」

クールP「そういう事か。……あの二人、案外早く同盟に馴染んだね」

顔写真入りの社員証を得意げにぶら下げる二人の姿を思い出し、クールPは思わず苦笑する。

クールP「……おや、電話が……はい、クールPです。……はい、はい……」

壁にもたれかかりながら、クールPは電話の応対を続けた。

クールP「……なるほど。了解です。……はい、明日からですね、分かりました、はい。では」

通話を終了させたクールPは、やれやれといった表情でライラ達の方へ歩いてきた。

爛「同盟か?」

クールP「うん。明日からライラに案内がつくんだってさ」

ライラ「案内ですか?」

クールP「そう。地上に来て右も左も分からないだろうライラの事を思って……らしいけど」

爛「んなモン、俺たちだけでも出来るだろうに…………アレか、そいつは建前か」

クールP「恐らくはね。未だにウェンディ族への不安要素が拭えなくて、案内という名目で監視を……そんな所じゃないかな」

爛「んだよ、かえって動きづらくなってんじゃねえか」

毒づく爛に、クールPは余裕の態度で返してみせる。

クールP「今は焦って動く時じゃないって事さ。海底都市とケリをつけてから、改めて動けばいい」

爛「それもそうか。何なら、ライラはその時引っ込めとくってのもアリだな」

クールP「そうだね。同郷の士と戦うのは、やっぱり気が引けるんじゃないかい?」

二人の視線と言葉を受け、ライラは難しそうに首を傾げる。

ライラ「うーむむ……でもライラさん、お仕事なら頑張りますですよ」

クールP「……そうかい? まあでも、無理しないでいいからね」

クールPはそう言ってライラの頭をさすさすと撫でてやる。

爛「……で、案内には誰が来んだ?」

クールP「APだよ」

爛「ウゲッ……あの番犬女か……」

APの名を聞き、爛が顔を曇らせた。

ライラ「APさんというのは、どういう方でございますか?」

クールP「分かりやすく言えば『同盟トップの忠犬』だね」

ライラ「忠犬ですか?」

爛「ああ。よーするに俺らが一番警戒してる相手だ」

顔をしかめたまま、爛が窓の外に目を向ける。

爛「同盟の敵になるヤツはとにかく叩きのめす、そんな奴だ」

クールP「でもまあ、これはある意味チャンスだよ」

爛「チャンスぅ?」

クールP「そう。ライラが彼女と友達になって懐柔すれば、僕らは更に動きやすくなる」

ライラ「よく分かりませんが、ライラさんに全てがかかっていますですか?」

クールP「そういうこと。よろしく頼むよ?」

ライラ「はい、頑張りますです」

ライラに微笑んで見せると、クールPは爛に向き直った。

クールP「さて、爛。ライラは衣装合わせとか色々あるけど、君は自由時間だ」

爛「おっ、気がきいてんな?」

クールP「午前のステージはRISAと……ああ、ラビッツムーンとナチュラルラヴァースも来るそうだ」

爛「へーえ、安部先輩と相葉先輩がねえ。ちょっと学園に同盟の戦力割きすぎじゃねえか?」

クールP「初日に結構な騒動があったからね。警戒してるのさ」

爛「ま、そういう事ならしゃあねえか。俺は十二時までに戻ってくりゃあいいな?」

壁の時計をちらりとみやった爛は、傍にあった変装用の帽子とサングラスを装着した。

クールP「うん、楽しんで来るといいよ。菜々君や夕美君にあったらよろしくね」

爛「あいよー」

こちらを向かずに手だけ振りながら、爛は教室を後にした。

クールP「さて、ライラは衣装合わせだよ。いくつか用意したけど、気に入ったのはあるかな?」

ライラ「そうでございますねー」

ライラはしばらく、並べられた衣装とのにらめっこを続けた。

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エマ「おっちゃーん! コレ一個ちょーだい!」

マルメターノ「まいどあり!」

エマは屋台の男に小銭を手渡し、丸まったソーセージに豪快にかぶり付く。

エマ「うっまー!!」

サヤ「楽しそうねえ、エマったら」

マキノ「ええ、そうね。…………」

サヤへの返事もそこそこに、マキノは先ほどから周囲をせわしなく見回している。

サヤ「……どうかしたの?」

マキノ「みりあさん……今日は来ていないのかしら?」

サヤ「みりあ……ああ、昨日言ってた?」

エマ「もご、マリナさんが親代わりしてるって子だっけ?」

ソーセージをほお張ったまま、エマがこちらへ戻ってきた。

マキノ「飲み込みなさい。……ええ、そうよ。まあ、初日にあんな騒動に巻き込まれては……」

もうここには顔を出さないかもしれない。そう続けようとして、口をつぐむ。

彼女――赤城みりあは、脱走した親衛隊員マリナの重要な手掛かり。

それが潰えたなどと、自分から口に出すのは、どうしてもはばかられた。

エマ「んー。じゃあさ、あのマスク・ド・メガネってのを探したら?」

サヤ「あっ、そうねぇ。その子だったら来てるかも」

マスク・ド・メガネ――上条春菜。

眼鏡を愛し、眼鏡を護るべく、眼鏡と共に闘う眼鏡ヒーロー。

昨日、マキノはカースドヒューマンに襲撃されたところを、彼女に助けられた。

そしてその時、マキノは春菜に利用価値を見出していた。

マキノ「そうね……春菜さんなら、まだ来ている望みがあるかしら」

今のうちに積極的に接触し、協力的な態度をとっておけば、いずれ来たる時にこちらの要求を呑ませやすくなる。

マキノはそう考え、静かにうなずいた。

マキノ「……なら、今のうちに彼女に恩を売っておきましょうか」

サヤ「恩を?」

マキノ「ええ。二人とも、昨日の妙なカースを覚えているかしら」

エマ「ああ、昨日ぶっとばしたアイツらな!」

レンズのような形状の核を持ち、眼鏡への恨み言を口にする奇妙なカース。

眼鏡を恐れるナニカを思った黒兎が産み出した、アンチメガネカースだ。

マキノ「今朝の放送では、どうやら人型に化けた個体も現われたとか」

サヤ「そういえば、そんな臨時ニュースやってたわねえ」

マキノ「眼鏡を嫌うカース……少なからず、春菜さんとは敵対しているはずよ」

エマ「……あ、そっか! じゃあソイツらを倒しておけば……」

マキノ「ええ。多少なり春菜さんに恩を売れるのでは無いかしら」

マキノは微笑んで眼鏡をくい、と上げる。

サヤ「んふっ、なら善は急げね。手分けして例のカースを探しましょっか」

エマ「えっ、サヤもう体いいの?」

サヤ「ええ、カース相手なら多分ねぇ」

マキノ「オクトの調子もいい……分担する案に賛成ね。じゃあ、エマには学園内を探してもらおうかしら」

エマ「オッケー!」

マキノ「サヤは空から学園周辺を探索して。私は裏山を中心に学園の外を探すわ」

サヤ「分かったわぁ」

マキノ「13:00に一度中断して正門前で情報を交換しましょう。あと、危険を感じたらすぐに逃げること」

マキノが矢継ぎ早に繰り出す言葉に二人はただうなずく。

マキノ「春菜さんに会ったら私の友人だと言っておいて。これが写真よ」

マキノは二人に春菜の顔写真を手渡した。

サヤが地上のヒーロー資料を作る際に出た余りである。

エマ「おっし、やるよ! 行こっか、ルカ!」

『カララ』

地面からひょっこり顔を出すルカのヒレを一撫でし、エマの姿は人込みの中に消えていった。

サヤ「また後でね、マキノ。ペラちゃん、こっちよぉ」

『キリキリ』

サヤもまた、ペラを連れて人気の無い場所へと歩いていく。

マキノ「…………まあ、あと三日あるし、休暇はその時でいいわよね」

誰に向けて言うでもなく、マキノは自分にそう言い聞かせた。

マキノ「私たちも行くわよ、オクト」

『ゴロンゴロン』

光学迷彩を展開するオクトにそう言うと、マキノは裏山へ向けて歩を進めていった。

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京華学院正面。

賑やかな雰囲気に似つかわしくない、黒服とサングラスで身を固めた者達が立っていた。

隊員A「隊長、やっぱり例の小人、この学園周辺に目撃情報が集中してるみたいです」

隊員C「『すずみやさん』……いるんですかね?」

隊長「探してみない事には分からんな。念の為に言っておくが、本来の目的は星花お嬢様だ。忘れるなよ」

隊員D「ええ。『すずみやさん』はあくまでも手掛かりの一つ、ですよね」

彼らは涼宮家総裁の指示で動く涼宮星花捜索隊。

現在は涼宮星花及び、星花に似た姿の小人――仮称『すずみやさん』の行方を追っている。

〔メイド喫茶エトランゼ ☆秋炎絢爛祭出張店☆〕

そう書かれた看板であった。

隊長「…………」

隊長はその看板を見つめたまま、しばし固まった。

隊長(……メイド、メイドか…………考えれば、お嬢様は長い家出生活で元の生活が少しだけ恋しくなっているかもしれない)

隊長(そう、多数のメイドや執事に囲まれていたあの日々が……)

隊長(つまり、それを紛らわす為に「もうまがい物のメイドでもいいや」と考えているかもしれん……)

隊長(すなわち……お嬢様がこのメイド喫茶に来ている可能性は決して低くない!)

隊長(そうと決まれば早速エトランゼへ行こう! 断じて私がちょっとお茶したいわけではないがな!)

自分の中で長い長い自分への言い訳を終えた隊長は、足早に歩き出した。

が、周りが見えていなかったのか、右から歩いてきた女性とぶつかってしまった。

隊長「おっと……すまない、少し考え事をしていて」

瞳子「いえ、こちらこそごめんなさい」

隊長「すまなかった。では、私は少し急ぐので」

そう言って隊長は早足でその場を後にした。

瞳子「あっ……行っちゃった。……にしても」

瞳子はポケットから学園の地図を取り出して広げ、上下左右にクルクル回しながら眺めた。

瞳子「一学園内なんて限られた範囲じゃあの機械も詳しく表示されないし……困ったわね」

現在瞳子は、櫻井財閥のエージェントとして『鬼神の七振り』を探してこの秋炎絢爛祭を訪れている。

が、京華学院の広さを正直なめていた瞳子は、あっという間に迷ってしまったのだ。

瞳子「……夏美ちゃんや美優やレナも誘えば良かったかしら……」

エージェントの仕事ということを隠していればそれも可能だったか、と瞳子は後悔する。

せめてエージェントの同僚が来てはいないだろうか、とも考える。

実際に紗南やチナミなど、何人かのエージェントは今学園にいるのだが……。

瞳子「そう簡単に会えたら、苦労は無いわよね……」

爛「そうだ、アレ知ってるか?」

瞳子「アレって……何を?」

包み紙をクシャクシャにまるめ、ゴミ箱に向けて放り投げてから爛は続けた。

爛「俺の担当プロデューサーから面白い話聞いてな。眼鏡大好きカースと眼鏡大嫌いカースが出てきたらしい」

瞳子「……また奇妙なのが出てきたわね」

爛「サク……あんま大っぴらに言うのはまずいな。アイツ、カースの核集めてたろ?」

瞳子「ええ、私とマリナが七振り探しと並行して集めているけど」

爛「そういう特殊なヤツの核はどうなのかねー、と思ってよ」

瞳子「そういうこと。情報をありがとう、見つけたら回収しておくわね」

爛「おう。…………あっ」

ふと視線を瞳子から外した爛が、突然瞳子の陰へと隠れた。

瞳子「……どうしたの?」

爛「…………プリンセスだ」

爛がゆっくりと指差した先に居たのは、幼い少女と少しチャラ着いた印象の少年。

コハル「人がいっぱいですね~、プテ……えっと、翼おにいちゃん」

プテラ「はぐれちゃ駄目だよ、小春」

コハル「は~い。そういえば、何で今日は翼おにいちゃんだけなんですか~?」

プテラ「大牙(ティラノ)はここで今働いてるし、父さん(ブラキオ)は父さんで株? ってのやってるからね。
   よくわかんないけど、ちょっと目を離すだけで大損することもあるんだってさ」

コハル「よくわかんないです~」

プテラ「うん、僕も。あと、ヒョウくんは目立ちすぎちゃうからね」

古の竜のプリンセス・コハル(偽名・古賀小春)と、その従者の一人であるプテラマーシャル(偽名・古賀翼)だ。

瞳子「あの子が、例のプリンセス? ……なんだかそんな感じはしないわね」

爛「人間の姿は見せた事ねえし変装もしてるが……一応離れっか。じゃあな」

瞳子「ええ、またね。…………」

帽子を目深に被り、その場を早足で離れる爛を見送った瞳子。

自分の状況が一切好転していない事に気付くのは、この五秒後の事である。

続く

・エマ(地上人名・仙崎恵磨)

職業(種族)
ウェンディ族

属性
装着系変身ヒール

能力
アビスマイル装着による物質潜航能力
優れた身体能力

詳細説明
海皇宮親衛隊の一員。
急逝した母の代わりに親衛隊に入ったので、一部の人間から「七光り」と陰口を叩かれている。
本人もそれを気にはしているものの、大声を張り上げて喋る事であえて考えないようにしている。
しかし、第三者の目が無い時には偶に弱音を吐いたりもする。
相棒のルカを身に纏い「アビスマイル」に変身する。

関連アイドル
ヨリコ(上司)
カイ(同僚)

関連設定
ウェンディ族
海底都市
戦闘外殻

・ルカ
エマの相棒である戦闘外殻。外見はギターを背負った金属製のイルカ。
元々はエマの母親の相棒で、ギターは後からつけられた。
エマの母親にあわせて穏やかな性格になった為、現在エマには少々振り回され気味。

・アビスマイル
エマがルカを身に纏いウェイクアップした姿。
元々は装着者の美しい歌声で周囲の機器や相手の神経を狂わせる戦闘外殻だった。
しかしエマとの相性は最悪で、急遽複数の音波兵器を装着する応急処置を施した。

・サウンドビット
背中に格納した六基のスピーカーユニットを射出し、相手に全方向から音波を浴びせる。

・ブレイクソウル
ギター型音波兵器で相手に音波をストレートにぶつける。

・デストラクションアッパー
ギター型音波兵器で発した音波をスピーカーユニットで増幅し、一気にぶつける大技。

・マキノ(地上人名・八神マキノ)

職業(種族)
ウェンディ族

属性
装着変身系ヒール

能力
優れた身体能力

詳細説明
海皇宮親衛隊の一員。
「自分の命より大事なのは海皇だけ」を信条に、危険ならすぐに撤退する。
その為、一部の人間から「臆病者」と陰口を叩かれているが、本人は一切気にしていない。
相棒であるオクトを身に纏い「アビストーカー」に変身する。

関連アイドル
ヨリコ(上司)
カイ(元同僚)

関連設定
ウェンディ族
海底都市
戦闘外殻

・オクト
マキノの相棒である戦闘外殻。姿は巨大な金属製ミズダコ。
普段何を考えているか、相棒のマキノでさえ分からなく不気味。

・アビストーカー
マキノがオクトを身に纏いウェイクアップした姿。
光学明細や煙幕を搭載し、隠密・諜報・暗殺を得意とする。

・アサシンテンタクル
背中から展開した触手に仕込んだ針で相手を刺し殺す。

・ブラックミスト
腹部から黒い煙幕を噴射して敵をかく乱する。

・スーサイドボンバー
ミサイルとして発射も可能な自爆用爆弾。

・ハナ
アイが受領した戦闘外殻。姿は大型の金属製モンハナシャコ。
完成したばかりなので自我はまだ完成しきっていない。
ウェイクアップしなくても相当の戦闘力を持つ。

・アビスグラップル
アイがハナを纏いウェイクアップした姿。
身体能力が全体的に底上げされ、特に拳を振るスピードは時として音速を超える。

・ナイフ
以前からアイが愛用していたナイフ。拳のスピードアップで殺傷力がオリハルコンを切り裂けるほどに増した。


・イベント追加情報
爛が変装して出店をまわっています。

○マキノが裏山中心にみりあ、春菜、アンチメガネ
○エマが学園内で春菜、アンチメガネ
○サヤが上空から春菜、アンチメガネ
○捜索隊が学園外で星花、すずみやさん
○捜索隊長がエトランゼ(出張店)へ向かいながら星花、すずみやさん
○瞳子が学園内で鬼神の七振り、メガネ、アンチメガネ
をそれぞれ探しています。

コハルとプテラが学園祭を訪れています。

以上です
我ながら色々探しすぎだ今回……

マルメターノ、かわしまさん、何人か名前だけお借りしました

やらかした(絶望)
>>168>>169の間にこれ入ります↓

はあ、とため息をつく瞳子。

爛「……瞳子か?」

瞳子「へっ?」

突然、サングラスをかけた少女のような少年に後ろから話しかけられ、瞳子は思わず変な声を上げた。

瞳子「…………もしかして、ラプ……じゃない、爛?」

爛「当たり。どした、仕事か? 迷子か? 両方か?」

瞳子「……恥ずかしい話だけれど、両方よ」

瞳子は、同僚に会えた安堵と迷っている事を見透かされた羞恥のまじった複雑な表情を浮かべた。

瞳子「それより、爛はどうしてここに?」

爛「仕事だよ、アイドルヒーローの方だけどな。今は休憩中」

爛は言いながら手に持っていた食べかけのフライドチキンを骨ごと噛み千切る。

瞳子「そうだったの」

学園祭で短いの投下ー

 休憩時間の間にスタンプを埋めてしまおうと決めた美穂と肇の二人は、短時間で9ポイントを稼ぐべく高得点のスタンプを求めて学園内を回っていた。

美穂「たしかこの地区には3ポイントのスタンプを持った人が配置されてるはず……」

肇「あ、あれ……でしょうか」

 肇が指し示す方を確認すると、確かにスタンプカードを手にした人々が大行列を作っている。
 行列の向かう先を見ると休憩用の空きスペースに伸びているため、売店やトイレの行列というわけではないから、やっぱりこれはスタンプ待ちの列なのだろう。

美穂「これは……並んでる間に休憩終わっちゃうよね?」

肇「でしょうね……しかし、どうしてこんな行列ができるほどに賑わっているのでしょうか?」

美穂「確かに気になるかも……えっ」

 二人が列の伸びるその先、休憩所を覗くとそこには……

拓海「ラスト行くぞっ」

 カミカゼスーツのヘルメットだけを脱いだ拓海が居た。
 ピン、と拓海の右手から跳ね上げられたコインが失速し、やがて落下していくと……拓海の肩の辺りの高さでコインは忽然と姿を消し、代わりに握った拳が突き出される。

拓海「さあ、どっちだ」

金髪の少女「……ふぇ、フェイフェイさん」

中華服の少女「ンー、左手ダネ?」

拓海「当たりだ。ほら、スタンプ押すからカード出しな」

中華服「おねーさん結構速かったケド、あれじゃまだフェイフェイは騙せないヨー」

金髪「わたくしには全く見切れませんでしたの……」

中華服「桃華はもっと眼を鍛えるべきネー」

金髪「無理を言わないでくださいまし……」

 交流の一環で他校の生徒も番人をやるとは聞いていたが……

美穂(まさかアイドルヒーローが番人やってるなんて思わないよ……)

肇(拓海さん……大人の方が高校の出し物に参加してもよいのでしょうか……)

美穂「うう……できればお話とかしたいけど、時間無いし他のスタンプ探そうか」

肇「そうですね……移動しましょうか」

 二人は(特に美穂が)名残惜しそうにその場を後にした。

………………

…………

……

拓海「よーし次……お、久しぶりだな、憤怒の街以来か?」

友香「そう、なりますね。お久しぶりです拓海さん」

 行列を捌く拓海の前に現れたのは、以前憤怒の街で出会い、戦い、稽古し……そして共闘した少女だった。
 あの後何度か手合わせのために会おうとしたのだが、互いの都合がつかず今日まで再開が叶わなかった相手だ。
 自然と、拓海の顔に笑みが浮かぶ。

拓海「順番待ちの間で把握してると思うけど、一応ルールの説明するぞ」

拓海「アタシが跳ね上げたコインを左右どっちかの手でキャッチするから、どっちの手でとったか当ててもらう」

拓海「最大で5回やって、3回以上正解すればスタンプ3ポイントだ」

友香「分かりました」

拓海「じゃあ早速1回目いくぞ」

 宣言してコインを跳ね上げる。コインはやがて失速して落下を始め……

拓海「んなっ!?」

 目の高さまで落ちてきたところで友香が動いた。

友香「……右手、ですね」

拓海「……ちょっとこりゃズルいんじゃねーか?」

 拓海の左手は、友香が伸ばした右手を押さえており、右手で宙を握っている。
 確かに、この状況なら右手で確実だが……

友香「反則について何も言ってませんでしたよね?」

拓海「ぐっ……あー、くそ。正解でいい」

 苦々しげに右手を開くとコインが現れる。

拓海「2回目いくぞ」

友香「どうぞ」

 拓海の手からコインが離れ……直後に消える。

友香「!?」

拓海「『落ちてきたところをキャッチする』とは言ってないよな」

友香「うっ……ひ、左」

拓海「外れだ」

 右手を開いてコインを見せる。

拓海「3回目、いくぞ」

友香「……どうぞ」

 宣言はしたものの、一向にコインが浮き上がらない。
 二人は徐々に足を開いて腰を落とし、暫くしてようやくコインを跳ね上げると――




 二人の手が消えた。




 一部始終を見ていた客は後に語る。

「あの日あの時あの場所は、間違いなく戦場だった」

と――

おわり

拓海がスタンプの番人になったようです


美穂、肇、ちゃま、フェイフェイ、友香を借りました

本当はあいさんでやりたかったけどタイミング的に海底から引っ張ってくるの無理ゲーなんで友香を代役に立てた

復旧したので避難所投下分いきまー

・◆llXLnL0MGk当人
・◆Mq6wnrJFaM氏(旧・◆Nb6gZWlAdvRp氏)
・◆tsGpSwX8mo氏
以上の三名分でお送りします

・◆llXLnL0MGk当人分

肇「……ふう」

万年桜の下、肇は背負った荷物を下ろす。

肇「結構、減りましたね」

肇の祖父がこしらえた、カースの核を内蔵した妖刀『鬼神の七振り』。

肇の手で、あるいは肇の知らない所で、次々と持ち主が決まっていく。

日本一大食いな刀、『暴食』の「餓王丸」は、京の妖怪退治屋……脇山珠美へ。

日本一横暴な刀、『傲慢』の「小春日和」は、今は肇の友人となっているヒーローの少女……小日向美穂へ。

日本一欲張りな刀、『強欲』の「月灯」は、とある元アイドルヒーロー……水木聖來へ。

日本一自堕落な刀、『怠惰』の「逆刃刀・眠り草」は、付喪神の少女と同居する能力者の女性……松永涼へ。

いずれも、それぞれの持ち主によってその力を遺憾なく発揮している。

え、眠り草? ……うん、多分眠り草は眠り草なりに何かしらを発揮していると思われる。

未だ持ち主の現われない刀もあるが……。

肇「……でも、ようやく折り返し地点ですね」

にこっと微笑んで、肇はその場に腰を下ろした。

今日は勤め先であるメイド喫茶・エトランゼが休みであり、こうして散歩にやってきたわけである。

本当は美穂も誘いたかったのだが、あいにく友人である卯月や茜と予定が入っているという事だった。

それなら仕方ないと、一人で訪れたこの公園。

思えば、美穂と肇が最初に会ったのもこの場所だった。

お互いに初めて相手を見たのが寝顔という、奇妙な出会い方であった。

そんな事を考えていたら、だんだんとまぶたが重くなってくる。

万年桜の力なのか、この公園は一年中春先の昼下がりのような暖かい空気に包まれている。

肇「…………ふわぁ」

こんな絶好のお昼寝シチュエーションに耐えられるわけもなく、肇はあっさりその場で転寝をしてしまった。

その時にポケットから財布が転げ落ちたことなど、気付くはずも無く。

――――――――――――
――――――――
――――

――――
――――――――
――――――――――――

そしてこの公園に、もう一人訪れた者がいた。

アイ「……ここだけ暖かいな…………あの季節外れな桜の力かな?」

地下世界出身の傭兵アイと、彼女が連れる戦闘外殻のハナだ。

彼女がここを訪れた理由、それは……。

アイ「うん、ここなら近隣一帯を見渡せるな。さて…………」

周囲を見渡しながら、小高い丘を上っていくアイ。

平たく言ってしまえば、新居探しである。

アイは地上に活動拠点を持っていない。

今まではホテル暮らしで、カイ抹殺、及び奪還依頼を受けてからはたまに海底都市で寝床を提供されていた。

しかし、先日のタカラダ・トミゾの誘拐依頼。

あの一件で、ハナを常に連れるのはハナ自身にとって非常に危険であると考えた。

かと言って、ハナを預け、引き取りする為だけに海底都市と地上を往復するのも非効率的すぎる。

その為、依頼が無い時などにこうして、『ハナを安心して預けられる活動拠点』となりうる場所を探しているのだ。

アイ(……最初はただの道具としか思っていなかったが……ここまで情がうつるとは、自分でも驚きだね)

苦笑するアイは、やがて丘の頂上……万年桜の根元にたどり着いた。

アイ「おや?」

肇「すぅ……」

少女が一人、根元に座り込んで眠っている。

その足元に、彼女のものらしき財布が転げているのが見えた。

アイ「無用心な……」

アイはその財布を拾い上げ、一応彼女のものか確認する為に起こそうと肩に手を……。

アイ「む?」

その時、彼女の背中の荷物に気付いた。

アイ(模造刀……かな? ちょっと失礼……)

財布を彼女の膝上に置き、何かに促されるように内一本へと手を伸ばす。

手に取った刀の鞘には、茨の蔦が絡みついたような装飾が施されている。

少しだけ鞘から抜いてみると、まるで鋸のようなギザギザの刃が顔を覗かせた。

アイ(刃の色艶といい重量といい……模造刀では無いようだな)

??(そうよ)

アイ「ッ!?」

突然何者かから話しかけられ、アイは反射的に振り向いた。

しかし、そこには誰もいない。視線を落とせばハナがこちらを見上げるだけである。

『ギギン?』

アイ「……?」

怪訝そうに周りを見回し続けるアイ。しかし声の主の姿は見えず、声のみが聞こえてくる。

いや、聞こえるというよりは、脳に直接響いてくるような感じだ。

十代半ば頃の少女、といったような印象を受ける。

??(アタクシは正真正銘の真剣。模造刀なんかと一緒に……って、何をキョロキョロしてるの? ここよ、こ・こ)

この言葉で、アイは気付いた。

アイ(『アタクシは正真正銘の真剣』…………もしや、この刀が喋っているのか?)

??(ええ、そうよ)

アイ(驚いたな、長く傭兵をやってきたが、言葉を話す刀なんて物には初めて会ったよ)

アイは刀と脳内を通じて会話しながら、ゆっくりと刃を鞘に戻した。

茨姫(アタクシは茨姫っていうの。鬼才・藤原一心が魂を込めて作り上げた妖刀『鬼神の七振り』の一本よ)

アイ(鬼神の七振り? 君と似た物があと六本あるのかい?)

茨姫(ええ。アタクシは別名『日本一、嫉妬深い刀』っていうの)

アイ(妖刀……七……嫉妬……ははあ、大体分かった。君達はカースの……いや、呪いの力をその刀身に封じ込めているわけか)

茨姫(驚いた。それだけの情報であっという間に的中させちゃうなんて……アナタ賢いのね)

茨姫(それにすごく強そうだし……うふふ、気に入ったわ)

アイ(気に入った……とは?)

茨姫(アナタ、アタクシの持ち主になってちょうだいな)

アイ(私が……? いやしかし、君は本来彼女の物ではないのかい?)

アイが眠る少女の方をちらと横目で見やる。と、

肇「……あっ」

いつの間にか少女……肇は起きていて、こちらをじっと見つめていた。

肇「……よいしょ」

肇は財布をポケットに仕舞うと立ち上がり、こちらにゆっくり歩み寄ってきた。

アイ「あ、いやすまない。盗もうとしていたんじゃないんだ。ちょっと見せてもらっていただけで……」

アイの言い訳も聞かず、肇はなおもアイとの距離を詰め、茨姫の鞘をぎゅっと握った。

肇(……初めまして、藤原肇と申します)

アイ(えっ……あ、私はアイという。こっちは相棒のハナだ)

アイの脳内に、茨姫とは違う少女の声が響いてくる。

恐らくは、この肇という少女の声なのだろう。

肇(アイさん、ですね。茨姫と話されていたようでしたが……)

アイ(ああ。なんでも、私に持ち主になってほしい、と言うんだが……)

肇(そうなの?)

茨姫(ええ、そうよ。アタクシ、アイの事すごく気に入っちゃったの!)

肇(そう。……アイさん、茨姫の事を貰ってあげてくれませんか?)

アイ(……君は、この刀の製作者の家族なのだよね?)

肇(はい。藤原一心は私の祖父です)

アイ(いいのかい? 私は金で雇われる傭兵だ。依頼によっては、お祖父さんが打った大事な刀で悪事を働くかも……)

肇(大丈夫です。茨姫が気に入ったというのなら……あなたはきっと、根は優しい人なんでしょう)

アイ(…………っ、私が……かい?)

茨姫(ええ、アタクシ感じたの。アイの心の奥の奥、とても暖かかったから)

茨姫(きっと、とてもとても酷い事を頼まれたら、アイは難癖つけて断ると思うわ!)

アイ(…………買いかぶりすぎだよ、私は単なる傭兵。依頼を受ける基準は内容よりも報酬さ)

肇(いえ、そんな事はありません。鬼神の七振りは人間の感情を封じ込めて生まれた刀、人の心には敏感ですよ)

茨姫(眠り草ほどじゃないけど、アタクシも持ち主の心くらい見えるのよ?)

アイ(…………そうまで言うなら、受け取ろう。ただし、後悔する事になっても知らないよ?)

肇「ありがとうございます。ただ、後悔はしないと思います」

いつの間にか茨姫の鞘から手を離していた肇が、アイの前で初めてその口から言葉をつむいだ。

アイ「ふふ、なかなか言うじゃないか、肇君」

アイが微笑んで茨姫を腰のベルト穴に差した。

アイ「……そうだ、肇君。少しいいかな?」

肇「はい、なんでしょうか?」

アイ「この辺りに、その……何だ、セキュリティ的に信頼出来る宿泊所のような物を知らないかな?」

肇「……うーん、一応私のバイト先に、小さいけれど寝泊りするスペースがありますよ」

肇は少し考え込んでから発言した。

アイ「ほう、バイト先とは?」

肇「はい、エトランゼっていうメイド喫茶です」

アイ「め、メイド喫茶……?」

アイの脳裏に、メイド喫茶で働く自分の姿が浮かんだ。

~~

アイ『お帰りなさいませご主人様、ウフフッ☆』キャピッ

~~

アイ『アイぴょんはぁ、アンダーワールドからやってきた永遠の23歳なんでぇす♪』フリフリッ

~~

アイ『オムライスがもーっと美味しくなる魔法、かけちゃまーす(はぁと)』キュンキュンッ

~~

アイ『ハイご主人様、あーんミ★』アーン

~~

アイ『いってらっしゃいませ、アイはいつまでもお帰りをお待ちしておりますわ』メガネクイッ

~~

アイ「……も、申し訳ないが、そこは遠慮しようかな」

茨姫(あら、可愛いじゃない)

自分で言うのもなんだが、似合わなすぎる。

肇「そうですか……」

肇は少ししょんぼりした様子だ。

アイ「どうしたものか……」

二人が悩んでいると、遠くから肇に声をかける者がいた。

??「……ん? あれって…………おーい」

近寄ってきたのは、少し柄の悪そうな男。

アイは反射的に軽く身構えた。

肇「え……あ、あなたはあの時の……」

??「やっぱあん時のバンダナちゃんか。お陰で助かったぜ」

肇「いえ、お礼を言われる程の事はしていません」

П「そういや名前言ってなかったな。俺ぁПだ」

肇「そういえばそうですね。藤原肇です」

アイ「……肇君、彼は……?」

二人があまりにもにこやかに話しているので、アイは警戒を解いて肇に質問した。

肇「ええと、以前暴れていた、人の性格を反転させるカピバラ怪人の事はご存知ですか?」

アイ「ああ、話には聞いた事があるな」

宇宙からの刺客、ヘレンが送り出した二体の獣型怪人の片割れ、ハンテーン。

相棒のアバクーゾと共に好き勝手暴れていたが、最後は美穂――ひなたん星人の手によって討たれた。

その後、AIだけを抽出されて何処ぞの地底人が自動掃除機等に活用していることまでは、ごく一部の者しか知らないが。

肇「その騒ぎの時に、ちょっと縁がありまして」

アイ「そういうことか。私はアイだ、よろしく」

П「おう。改めて、俺はП。『女子寮』の管理人をやってる」

アイ「……女子寮?」

Пという男の言葉に、アイが食いついた。

アイ「質問させてもらうが、その女子寮とやら、セキュリティはいかほどかな?」

П「セキュリティ? ……あー、とりあえず神がいるな」

Пの脳裏に浮かぶのは、何故か自分の部屋で好き勝手しまくっている自称女神、鷹富士茄子の笑顔。

以前はよく怒りに任せて尻を引っ叩いたり抓ったりしていたが、最近は呆れてそんな気も起きない。

自然とため息が出そうになるが、ここは一応こらえる。

アイ「か、神…………まあ、こんな世界だから、そういう事も珍しくは無いか……無いのかな?」

肇「さ、さあ……どうなんでしょう?」

П「まあそんなわけで、セキュリティは万全……多分万全だ」

ほかに貧乏神とかもいたが、説明が面倒なんで省いておく。

アイ「ふむ……今部屋に空きは?」

П「ん、まだまだあるな。なんだ、入寮希望か?」

アイ「そうだね、入寮に制約などが無いのならお願いしたいけれど」

П「いいぜ。いくつか書いてもらうモンがあるから、ちょっと女子寮まで来てくれや」

そう言ってПは頭を掻きながら歩き出した。

アイ「了解した。……では肇君、茨姫をありがたくいただいていくよ」

アイは肇に小さく手を振り、Пの後についていった。

肇「はい。アイさんもお元気で」

肇もそれに手を振り返し、手元の荷物を見る。

また一本減り、更に軽くなった荷物。

それをしげしげと眺めていた肇は、やがてふふっと小さく微笑んだ。

――――――――――――
――――――――
――――

――――
――――――――
――――――――――――

数日後、とある廃工場。

黒服を着た異形の男達が、慌しく動き回っていた。

彼らは、宇宙の奴隷商人。この廃工場を拠点に、地球人を誘拐し続けていた。

そして、集まった地球人を今日、本星へ向けて出荷しようとしていたのだが……。

奴隷商人「急げ! 早く『商品』を運ぶんだ!」

奴隷商人「駄目だ! でけぇシャコに宇宙船のエンジンをやられた! もう飛べねぇ!!」

奴隷商人「な、何だと!?」

アイ「ふむ、ハナは上手くやったみたいだね」

奴隷商人「……!」

奴隷商人達の前に、茨姫を抜刀したアイが姿を現した。

奴隷商人「て、てめぇ……ヒーローか!?」

アイ「ふふ、ただの傭兵さ。ただとある資産家から『誘拐された娘を救出して欲しい』と頼まれただけの、ね」

アイが茨姫を一振りすると、茨姫の刃に付いていた血が一帯に飛び散った。

奴隷商人「ふ、ふざけやがっ……!?」

奴隷商人達が銃を構えるよりも早く、アイは茨姫を再び振るった。

茨姫の柄から生える蔦が鞭のように振るわれ、奴隷商人達の首を次々斬り落としていく。

特に表情を変える事も無く茨姫を鞘にしまうと柄の蔦が消え、茨姫の声が脳内に響いてきた。

茨姫(ね、ね、アイ。やっぱりアタクシが一番アイの役に立ってるでしょ?)

アイ(ふふ、それはどうかな。ハナもナイフも、私の大切な相棒だからね)

茨姫(もう、いぢわる。だったらアタクシ、もっと頑張ってアイの役に立っちゃうわ!)

アイ(頼りにしているよ、茨姫。さて、攫われたお嬢様を助けに……)

アイが廃工場の奥に歩を進めようとした時、後ろから三人分の足音が近づいてきた。

アイ「……誰かな?」

爛「全く知らねえってこたぁねえだろ? アイドルヒーローのラプターだ」

ライラ「同じくアビスカルでございますよー」

クールP「同じく、プロデューサーヒーローのクルエルハッターだよ」

振り向いたアイの前に立っていたのは、古賀爛――ラプトルバンディットとライラ、クールPだった。

アイ(……戦闘外殻?)

ライラの外見に少し引っかかったが、今はそれを気にしている場合ではない。

アイ「まあ、話には。で、ここに何の用かな? 奴隷商人ならたった今壊滅したよ」

アイはそう言って後方に倒れる首無しの死体達を指し示す。

クールP「なんだ、もう終わっていたのか。せっかくありさ先生にせっつかれて大急ぎで来たっていうのに」

クールPが帽子を目深に被りため息をつく。

ライラ「おお……生死体ははじめてでございます」

爛「そんなまじまじと見るモンでも……あん?」

ライラの頭をぺしぺしと叩いていた爛が、アイの腰に差してある刀を見つけた。

爛(あれは……)

アイ「私は傭兵でね。攫われた人々の解放を依頼されたのさ。まあ、これは同盟の手柄にしておいてあげるよ」

アイはくるりと踵を返し、改めて廃工場の奥へと歩いていった。

クールP「……僕達も行こう。今回の仕事は攫われた人々の解放までだからね」

クールPが早足でそれに続く。

ライラ「あっ、待ってほしいですよー」

ライラが駆け足でそれを追いかけた。

爛「…………」

爛はその場に立ち止まり、一人考えこんでいた。

爛(カースと似た気配の刀……アレがサクライの言ってやがった『鬼神の七振り』か?)

爛(随分ヤバそうなヤツが持ってやがんな……三人がかりでギリ勝てるか勝てねえか、ってトコか)

爛(傭兵ってんなら金を積みゃあ……いや、武器に拘るプロってのもいるしな……)

クールP「……? ラプター、行くよ?」

ライラ「急ぐですよー」

爛「お、おお。悪い悪いクルエル、スカル」

爛は二人に駆け寄りながら、考えに一つのけりをつけた。

爛(ま、七振りは俺の担当じゃねえし。メンドくせえから見つけなかった事にすっか)

続く

・茨姫
鬼神の七振りの一つで、『日本一嫉妬深い刀』
鞘には茨の蔦のような模様があしらわれている。
刀身は鋸のような細かい刃が無数についており、抜いた時だけ柄の先から伸縮自在の蔦が現れる。
自我を持ち、持ち主とのみ脳内を通じて会話出来る。
また自分の持ち主が他に多数の力を持っていると、
刀身の硬度や切れ味、蔦の射程などが上昇していく。
いばらきって言うと怒る。いばらぎって言っても怒る。

・イベント追加情報
アイが茨姫を受け取り、女子寮に入寮しました。

ラプター、クルエルハッター、アビスカルが奴隷商人を壊滅、人々を解放しました。
(表向きはそういう事になっています)


以上です
お借りだけで書くのは何か申し訳なく終了間際にうちのこをねじこむプレイング

肇、アイ、Пその他名前だけお借りしました

・◆Mq6wnrJFaM氏分

 少し離れたところで子供たちがはしゃいでいる。
 久しぶりに与えられた休暇、拓海は何をするでもなく辺りをぶらつき、目についた公園のベンチに腰を降ろしていた。
 いつカースが湧きだすともしれない物騒な世の中になってしまってはいたが、それでも目聡く平和な一時を見つけては遊ぶ子供を見ていると、自然と頬が緩む。

 そうしてしばらくぼうっとしていると、いつの間にやら隣に気配を感じた。

??「隣、いいかな?」

 返事を待たずに座った人物を一瞥すると、途端に拓海の表情は引き締まる。

拓海「げっ……生きてたのかよ、アイ」

アイ「酷い言い草だな、最後に会ってから一年と経ってないだろう」

拓海「てめえの職業考えろっての。で、今日は仕事は?」

アイ「もう少ししたらクライアントとの顔合わせだよ。それまで散策と洒落込んでいたら君を見かけたというわけだ」

拓海「もう普通に暮らしてりゃ一生分の蓄えはあるんじゃねーか? いつまで傭兵なんざ続けるんだよ」

アイ「さあ、どうだろうかな? 残高を気にしたことは無いからね。今の生き方が性に合っているし、五体満足なうちは続けるんじゃないかな」

拓海「アンタなら手足の1、2本くらい義肢にしてでも続けてそうなんだが」

アイ「ははっ、たしかにそうしてでも続けるかもしれないね」

拓海「物好きな奴だな」

アイ「借金してヒーローやってた人間には言われたくない言葉だね。そういう君はいつまで続けるんだい」

拓海「死ぬまで」

アイ「変わらないな」

拓海「変わらねーよ」

アイ「一匹狼はやめたのにかい?」

拓海「いや、それは事情がだな」

アイ「アイドルに怪我させたんだって? 君はそのうちやらかすと思っていたよ」

拓海「うっせ。そういやアンタは最近変わったこととかねーのかよ」

アイ「私かい? うーむ……ああ、そういえば最近ここらで活動する際の拠点を得たよ」

拓海「根無し草やめたのか、なんか意外だな」

アイ「私だって事情や心境が変わったりもするさ。……と、そろそろ頃合いかな、失礼させて貰うよ」

拓海「仕事は選べよ、あんま悪事に肩入れしてっと叩き潰すからな」

アイ「善処しよう、君と戦うのは骨が折れるからね」

拓海「どの口がほざきやがる……と、ちょっと待て」

アイ「ん、何かな?」

 立ち上がったアイを呼びとめ、何かを放る。
 受け取ってみると、それは500円硬貨だった。

拓海「いつかのコーヒー代、利子もつけとく」

アイ「おっと、これは嬉しい誤算というやつかな」

拓海「テメッ」

アイ「おお、こわいこわい。じゃあ、利子のお礼……というと妙な感じだが、一つ伝えておこうかな」

拓海「あん?」

アイ「実は最近海の底で警備の仕事をしていてね」

拓海「思いっきり敵対する気じゃねーか! ホントに骨折るぞ!?」

アイ「勘弁してくれ、仕事に障る」

拓海「ったく、覚悟しとけよ」

アイ「それは君の専売だろうに」

拓海「覚悟に特許なんざねーだろ」

アイ「それもそうだね。さて、今度こそ行かせてもらうよ」

拓海「次会ったら容赦しねーからな」

アイ「辛辣な知人だ」

拓海「悪事やめりゃこんなこといわねーよ」

アイ「無理な相談だな」

拓海「だろうな」

 アイが去っていくのを見届けた後、拓海はベンチにもたれかかる。

拓海「あー……なんか休みって気分じゃなくなっちまったし、帰って自主トレでもすっか」



 終わり

許可おりたら妄想が捗って結局本採用

書きあげてみると想定より仲良さそうな感じになっちゃったよ

というわけでアイさん借りました
アイさん人気だね

・◆tsGpSwX8mo氏分

暗い、暗い海底の底。肉眼で見えるものは何もなく、ただただ静かなこの海底に、いくつかの光が見えた。

それは、チョウチンアンコウを模したロボットから発せられる光だった。ざっと数えて5体はいるであろう。

その5体のロボットは何かを探すように海底をうろうろと動き回っていた。

その時、そのチョウチンアンコウ型ロボット、アングラとは明らかに別の機体が現れた。

刺々しい鎧に尾が生えた、まるで悪魔のような機械である。いや、この機械を、「機械」と呼ぶのは表現的に相応しくない。

これの名は、カースドアビス。海底都市の、新たな兵力である。

カースドアビス1号、アビスイービルは、アングラと同じく何かを探しているようだった。

虚ろな相貌が暗闇をにらむ。

そして、アングラのうち一体が、探し物を見つけ出した。

それを他の4機とアビスイービルにも伝える。

アングラ達の視線の先には、広大な海底遺跡があった。それも、ただの遺跡ではない。そこは、現在の海底都市を彷彿とさせる町のような遺跡だった。

ここはかつてアトランティスと呼ばれていた。今は海に沈んでいるが、昔はとても栄えた都市だったのだ。

アングラ達とアビスイービルは海底遺跡、アトランティスの内部に侵入しようとした。

しかし、突然、海底遺跡の内部から立ち上がる影が現れた。

それは銀色に輝く体を持った、戦闘外殻であった。

その名はアビスプラッシュ。この海底遺跡アトランティスの守護神である。

実のところ彼らの探し物とは、あのアビスプラッシュが守る秘宝なのだが……。

「グラー」

「グラァ!」

二体のアングラがアビスプラッシュに接近する。しかし、

「グ?!」

「グ/ラ/ァ!?」

アビスプラッシュの持つ槍によっていとも簡単に破壊されてしまう。

それを見て、アビスプラッシュに近づこうとするアビスイービル。

しかし、唐突に彼の脳内に埋め込まれた通信機に通信が入った。

撤退せよとのことである。

アビスイービルは残った3体のアングラを連れて、彼らの開発者のいる海底都市へと引き上げていった。

場所は代わり海底都市のドクターPの研究所。

彼は通信室のモニターに写し出された、遺跡とアビスプラッシュを見ていた。

「あら、2体やられちゃったわね」

その後ろで同じくモニターを眺めていた海竜の巫女。

「あぁ。あのロボット一体作るのにも金がかかるのによ。大損害だ、まったく」

ドクターPは吐き捨てるように言った。

しかし、彼はどうしても、あの海底遺跡に隠されている物がほしかったのだ。

「アビスプラッシュが守る秘宝、ヴリル……本当にあるのかしらね」

「なきゃ困るんだよ」

ヴリルとは、かつてアトランティスとして栄えていたあの海底遺跡に隠されていると言われているエネルギー物質のことである。

「あれさえあれば、戦闘外殻の能力を飛躍的に上げられる……」

ドクターPは玩具をねだる子供のような目で、言葉をはいた。

「でも今はアビスプラッシュが守ってて遺跡の中にはとても入れないんでしょう?」

「あぁ、問題はそこだ。……それにしても、アビスプラッシュ……無人で動ける戦闘外殻とは、是非捕獲して調べてみたい」

そう、あの戦闘外殻アビスプラッシュは中に人が入っていないのだ。なぜ無人で動けるのかは不明であるが。

「……そういえば無人の戦闘外殻といえば、アビスエンペラーが無人で動き出したそうじゃねえか、えぇ?」

それを聞くと巫女は苦々しげに顔をしかめてみせた。

「えぇ、そうよ。中には誰もいないはずなのに……おまけにあれは古の龍の魂がなければ動かない……」

ドクターPも顔をしかめた。

いや、ドクターPの場合は自分が興味を抱いていた戦闘外殻に逃げられたことが面白くないのだろう。

「ふん、なんにせよ早く見つけ出さねえとな」

「えぇ……」

海竜の巫女は苛立っていた。ただでさえ計画に狂いが出ているのに、これ以上何かあったら胃に穴が空きそうだ。

それに、この男も油断できない。もしかしたら不足の事態が起きて裏切るかも知れないのだ。

そこで、巫女はこの男の来歴を調べ弱味を握って、ドクターPが裏切らないよう手をうつことにしたのだった。

口を開く海竜の巫女。

「……あぁ、そういえば」

「あん?」

「あなた、エマの母親、ケイの事を知ってる?」

その名を聞いて反応するドクターP。

「あぁ。勿論だ」

「とても美しい歌声の持ち主だったそうね」

海竜の巫女は語り始めた。

「歌声だけじゃなく、人目見れば誰もが振り向くような美貌の持ち主であり、ヨリコ様からの信頼も厚かったとか」

ドクターPは名にも言わない。

「彼女とアビスマイルの相性は抜群であったそうね。親衛隊の中でもとても強い人だったとか」

「……」

やはり、何も言わない。

「でも、死んでしまったのよね」

続けてこういった。

「彼女を知る人から聞いたわ。あんなに元気だったのに突然死んでしまって」

ドクターPは無言である。いつもつけているホッケーマスクのせいで表情もわからない。

「一時期ケイは誰かに殺されたんだと言う噂もたったそうね」

海竜の巫女は言った。

「その噂は本当かもしれないわね。ねぇ、ひょっとして殺したのはあなたなんじゃないの?ドクターP」

「あぁそうだ」

ドクターPは否定しなかった。

「やっぱりね」

まるで世間話のようなやりとりだ。

ドクターPはマスクの下で低く笑った。

「くくくくく……。あいつは知ってしまったんだよ。戦闘外殻ヒュドラに使われている毒の秘密をよ…」

「それで口封じに?」

「あぁ」

そこでドクターPの笑い声は更に大きくなった。

「ふふふふふふふ!ひゃははははははは!!あの女の無様な死に顔!思い出すだけでも笑いが止まらねぇ!ぎゃはははははは!!」

ドクターPの笑い声はいつまでも響いた。

そして、唐突にその笑い声は止まる。

「わかってるだろうが……その事をばらすなよ?面倒なことになる」

海竜の巫女はニヤリと笑った。

アビスプラッシュ

鯨の戦闘外殻。
普通の戦闘外殻に比べ、一回り大きく、その身体は硬く、防御力も高い。
何より、その硬度を利用したタックルは破壊力バツグン。
また、右腕から圧縮された海水を放つことができる。

ヴリル

かつて古代に栄え、神の怒りにより沈められた王国≪アトランティス≫にあったとされるエネルギー物質。

アトランティスにあったとされるオリハルコン製の戦闘機の動力源として使用されていたといわれている。

オリハルコンの力を最大限に引き出し、無限の力を出すといわれている。

もし、これが現在で見つかり、戦闘外殻に使われたらどうなるか……それは誰もわからない。

ここまでです。

アビスプラッシュとヴリルはメタネタスレからお借りしました。ありがとうございました。

イベント情報
・アビスイービルの試験運用をしています
・エマママことケイを殺したのはドクターPのようです

お目汚し失礼します

#避難所分ここまで

多々買うことができるということはきっと幸せなことなのでしょう。
だから今回のあまりに早い登場も私はうれしいです。

     し あ わ せ


前回までのお話
前編 part8 >>440>>494
中編 part8 >>972~part9 >>37

後編、つまり完結編です。
一番量が多くなってしまったので投下に少々時間がかかると思います。

「本当に待ちくたびれた。

やっと……来たか」

 灰色の廃墟群はすでに生活感を感じさせない。
 数か月前まで人が住み、生活していた建物はあの日、日常を壊されて以来時を止めたままである。
 憤怒の街はすでに過去のものとなったとしても、復旧の手はまだ完全には届き切らない。

 そんな無機質な情景の中、雪降る白雲の下、一人の男は微動だにせず待ち続けていた。
 無言で待ち続けていた男の胸中はわからない。

 当然、対峙したアナスタシアにもその男が何を考え、ここへ来たのかわかるわけがなかった。

「アビェシヤーニェ……約束通り、来ました」

 アーニャは男を睨み付けるように言う。
 覚悟は万全であり、その手はすでに腰のナイフに掛かっている。

「おいおい、確かに俺は待ちくたびれたとは言ったがな、まだ始めるつもりはない。

まだ17時50分だ。十分前行動は殊勝だが、あいにく約束は18時だ。

約束通り、な」

 男は高級そうなシルバーの腕時計を見ながら言う。

「それとも……待ちくたびれたのは俺だけじゃなくお前もか?

白猫(ビエーリコート)」

 意地悪く口角を上げながら男は笑う。
 しかし男の軽口に対してもアーニャは表情を変えない。


「……ニェート、いえ、私はあなたを、待ってなどいません。

出来ればあなたの顔は、見たくなかった。

ヤー……私は、昔とは違う。でも……過去からは逃げれないのだから」

「よくわかっているじゃないか。

いくら改心して堅気に戻ろうとも、積み上げた過去は決して消えない。

俺がお前を追ってここに来たように、過去はいつまでも追ってくるのさ。

いくら逃げてもいずれは追いつかれ、その業からは逃げられはしないんだよ」

「だから……私は来たのです。

ヴィー……あなたが、私を脅さなかったとしても……あなたが私の前に現れた時点で決まっていたのです。

自分の過去とは、遅かれ早かれ蹴りをつける。

これが……私への罰であり、越えねば前に進めぬ壁なのですから」

 アーニャは腰からナイフを引き抜く。
 そして体の前に突き出し、男の直線上を射抜くように構えた。



「Давайте положить конец.…… Командующий(終わらせましょう……隊長)」


 視線は凶器のごとく鋭く、その男、隊長に突き刺される。
 だが隊長はその視線に動じることなく、相も変わらず意地悪い笑みを浮かべたままである。

「だからまだ気が早いぞ白猫。

臨戦態勢で、その上その眼光で俺に向かってくることは結構なことだがまだ早い。

ミッションスタートは一八○○ジャストだ。

先走りは死を招く。教えたはずだがな」

 隊長はアーニャから視線を外し、周りを見渡す。
 周囲には相変わらず廃墟群しか存在しない。

 アーニャは隊長から目を離さず、隊長の話を聞こうともしない様子だ。
 それを気にせず隊長は喋りだす。

「こんなしけた場所だが、過去にはそれなり賑わいがあった場所だ。

かつては、人が笑い、泣き、生活した場所だった。

そして『憤怒の街』については俺も伝聞でしか知らない。

俺が知っているのは一人の少女の憤怒が、この街を地獄の赤で染め上げたことくらいだ。

お前はこのことを知っているのか?この街で、何が起きていたのかを?」


 隊長はこの街で何があったのかを、アーニャに問いかける。
 しかしアーニャは隊長の言ったことさえ知らなかった。

 結局憤怒の街の根本的な原因については公に語られることはなかった。
 一般に公開された情報によると、現れた巨大なカースが原因だとされており、当然渦中にいなかったアーニャは真実を知ることはない。

 ただし裏では憤怒の街の情報は多くはないが出回っており、それなりの価値で取引もされている。
 この荒廃した街でかつて何があったのかを知りたいと思うものは後を絶たない。

「ここ来る前に、知り合いの情報屋が話していた情報だ。

一人のカースドヒューマンの少女の孤独と悲嘆から生まれた憤怒は、街を包む赤き炎となり、それはこの街の住人を死色の赤で染め上げた。

彼女の悲しみは、結果として多くの人間の悲しみを生んだのさ」

 まるで物語を語るように隊長は話す。
 その瞳の中には、まるでこの街が炎に包まれていたころを映しているかのようである。

「とはいっても、実のところこれは情報屋が気まぐれに語った話だ。

所詮ロハ話、真相はあてにはならん。

まぁこの話をしてお前に反応がないってことは、ガセか、お前が本当に何も知らないってことなんだろうな」

「……それが、どうかしましたか?」

 かつて自分が何もできなかった街の話。
 少し前のアーニャなら気になることではあったが、今のアーニャにとってこんな世間話はどうでもよかった。


「いやなんだ……せっかくこんな名所に来たんだ。

その話くらいしておかないと、ここでおっ死んだ人間どもに申し訳ないだろう?

これからもっと壊すことになるんだからよ」

 隊長は両腕を広げ、周囲をひけらかすようにする。
 周囲は無残な過去の残骸しかない。

 それをさらに壊しつくすことになるのは隊長が一番よくわかっていた。
 そしてそれが楽しみでしょうがないような笑みを、相も変わらず隊長は続けている。

「ん……ふと思ったんだがな」

 しかし隊長は何か一つ思いついたのか、街に向けていた視線をアーニャに戻す。

「この街を無残にしたのは人間の争いだ。

実際したのかカースかもしれないが、それでも引き金を引いたのは一人の少女で、

それに立ち向かったのも、ほとんどはヒーローだ。

カースドヒューマンも、ヒーローも人間なのさ。

街の住人も人間だし、たとえ人間でなくとも、『ヒト』らしい感情は持っているものがほとんどだ」


「ダー……。

たしかにそうです。人同士が争うのは……悲しいですね」

 アーニャはこの街の惨状を思い出して、悲しそうな顔をする。
 それに対して、隊長も悲しそうな形口で続けた。

「そう。人が争うのは悲しい。

話し合う言葉があるのに、伝え合う心があるのに争うのはやはり悲しいだろう。

だが」

 ここで一息、隊長は話を途切れさす。

「俺はあいにく化物だ。

人間の形をしているが、誰もが俺を、『化物』と呼ぶ。

『化物』のように見る。

そして俺は『化物』のように殺すのさ。

そこに言葉は必要ない」


 問いかけるような視線をアーニャに向け、一言。



「じゃあ、俺に育てられてきたお前は『人間』か?

銀色(シェリエーブリェナエ)、

俺はお前に、心など持たせるように育ててきてはいない。

妖精(フィエー)、

俺は、お前を、お前たちを化物のように育ててきた。

雪豹(シニェジュヌィバールス)、

日本には『蛙の子は蛙』という言葉がある。

氷河(リエードニク)、

ならばこの俺(ばけもの)に育てられたお前たちも同様に『化物』ではないかと思うのだが、

白猫(ビエーリコート)、

お前は、それでも『人間』か?」



 


「ヤー……私は……私は……」

 ただでさえ不安定であったアーニャの心をその言葉は再び揺さぶる。

 自分の名前を知ったのは数か月前。
 『アナスタシア』が生まれたのはほんの数か月前だということは、それまでの彼女は何だったのか?

 そもそも、今の彼女もはたして『人間』と言えるのだろうか?

 目の前の敵に集中して強引に精神の安定を図っていたアーニャにとってこの問いかけは弱点のごとく精神にダイレクトに届いた。
 自身の存在を揺らがすこの言葉は、少女に動揺を与える。


「改めて問おう。

お前は『人間』か?それとも『化物』か?」

「ッ……わたしはっ!!」

 隊長の言葉を聞きたくないために、動揺を振り切るためにアーニャは飛び出す。
 構えたナイフを突き立てるべくまっすぐ隊長に突進する。

「迷うか?

だが『人間』ならば迷わんぞ。

ならばここからは『化物』同士の戦いだ。

遠慮も躊躇もいらない。死者への弔問も念仏も必要、無いってことだ!!!」


 ごうと隊長の周囲に吹き荒れる強風。
 念動力によって引き起こされたその風は、周囲の朽ちかけの廃墟を軋ませる。

 アーニャの突進の勢いはその風によって少し緩む。
 だがその程度で足は止まらない。隊長を貫くべくさらに進もうとする。

「!……ぐ、これは」

 しかし足は進まない。

 いや足は動く。だが体は宙に浮き、足は地に着かず地面を蹴ることができなかった。
 そして首が引っ張られるような痛み。

 そう、頭は隊長の『腕』によって掴まれ、宙づりの状態になっていた。

「時刻は一八○○を超えた。

作戦開始だ。白猫」

 そして隊長は開いた掌を、思い切り握りしめる。
 それに連動するように念動力の『手』も空気と一緒にアーニャの頭を握りつぶした。

 頭を失ったアーニャの体は、どさりと地に足を着け倒れ伏せる。
 隊長は窮屈そうに締めていたネクタイを緩め、アーニャに背を向けた。


「全くこの程度か?能力を過信しすぎるな行ったはずだ……が!」

 発言の途中、隊長は気づいたように言葉を止めて、念動力を纏わせた拳を振り向きざまにふるう。

 その拳とナイフはぶつかり合い、金属同士がぶつかり合うような乾いた音が響いた。

「ク サジェリエーニュ……あいにく、能力を過信させていただきました、よ」

 隊長の振り向いた先には、すでに頭部を復活させたアーニャがナイフを突き立てるべくそこにいた。

「やはり……十分お前も『化物』だな!」

 楽しそうな声で隊長は言うと、ナイフとぶつかり合っている拳を、力のままに振り抜こうとする。
 それに気づいたアーニャは、振り抜かれればナイフの方が持たないことがわかっているので、すぐに手を引く。

 隊長は、アーニャがナイフを引いた後でもそのまま腕を振り抜き、空を切る。
 その隙を見逃さずアーニャはナイフでがら空きの胸へ突き立てようとした。

 しかし当然それも隊長のもう片方の腕で弾かれ、さらに蹴りをアーニャに入れようとする。
 アーニャはそれをバックステップで回避、荒れ果てたアスファルトに着地後、勢いのまま数センチ滑り下がる。

「こいつなら……どうだ!」

 隊長も、バックステップ時の無防備な滞空時間を無駄にしようとはしない。
 再び出現させた念動力の『腕』はアーニャを掴もうと正面から迫りくる。
 その『手』は人一人を掴んで、握りつぶすには余裕なほどの大きさである。


「……くっ」

 その『腕』によってせり押された空気は圧力となってアーニャに降りかかる。
 着地後にのんびりとしていればすぐに『手』につかまり、再び体はひき肉と化すだろう。

 いくら回復能力があろうと回数は有限である。
 初めに頭を潰されたのも本来なら手痛いほどの力の消費であり、まだろくに隊長にダメージを与えられていないのにこれ以上大規模な回復を使うのはまずい。
 かといって、ここで下手な回避に出れば攻撃の機会はさらに絶望的なものとなる。

 故にアーニャは右方前に体制を低くしながらタックルするように転がり込む。
 これによって『腕』の範囲から回避しつつ隊長への距離を再び詰めることができた。

 そして隊長の方へと地面を蹴り、右手のナイフを振り下ろす。
 隊長はそれも念動力を纏わせた左腕で防いだ。

 しかしアーニャもそれは予想通りで、さらに左手で腰に携えていたもう一本のナイフを引き抜き、隊長を縦に一閃するように振り上げた。

「ぐっ!?」

 新たな凶刃に隊長はわずかに反応が遅れる。
 急いで空いていた右腕に反発力を纏わせ防御に出るが、腕の力の入れ方が足りず左のナイフの一閃は隊長の右腕を弾いた。


 アーニャはこの千載一遇のチャンスを見逃さない。
 両のナイフを交互に、フェイントを入れつつ何回も振るう。

「УУУрааааааааааааааааааааааааа!!!!!!」

 アーニャの鬼気迫る掛け声とともに、上下に、左右に、千変自在の太刀筋が隊長を襲う。
 隊長も両腕で全て防いではいるが、その場からじりじりと後退させられていた。

 だが隊長は、相も変わらず楽しそうな笑みは変えず、それでいてアーニャの様子を観察するような余裕を見せた目をしていた。

「白猫、覚えているか?

初めてナイフを使っての訓練のことを」

 諭すような口調で隊長は目の前のアーニャに話しかける。
 しかしアーニャはそれを無視して、ナイフを振るい続けた。

「お前が8歳のときの8月のことだ。

CQCの基礎を教え終わり、ナイフを使っての戦闘訓練が始まった。

隊の中でも、お前はもっともナイフの扱いが苦手だった気がするな。

だが最後には、きっちりとそのスキルを完全にものにして、挙句の果てにはCQCではトップクラスの実力を持つようになっていた」

 隊長は懐かしむような眼をして、目の前で必死にナイフを振るうアーニャを見る。
 その姿と、かつてナイフの扱いに四苦八苦していた銀色(シェリエーブリェナエ)の姿が重なっていた。

「そして今、その師である俺の前で、俺の教えた戦い方をしているわけだ」


 ここで懐かしむような隊長の表情は、再び意地の悪い笑みに戻る。


「そう、俺が編み出したロシア式CQCだ!

たしかに実践を経て、ある程度は自己流に改編はされている。

実に百点、いや百二十点の戦闘だ!

だがそれでも、俺のオリジナルは越えられない!

ロシア式CQCは俺が自分のため編み出したCQCを、一般人用にデチューンしたものだ!

真のロシア式CQC、否、『俺式CQC』は俺が使ってこその真価を発揮するのだからなあ!!」


 隊長はアーニャの両方のナイフを、体から外の方向に向けて勢いよく弾く。
 すでに酷使していたナイフの刃はその衝撃で中ほどから折れてしまった。

 一瞬にして2本とも折られてしまったナイフを見てアーニャは驚愕の表情をする。
 隊長はその間にも、腿を上げひび割れたアスファルトに脚を振り下ろした。

 その震脚は、朽ち果てる寸前であった舗装されたアスファルトの息の根を完全に絶つ。
 隊長を中心に地面は蜘蛛の巣上にひび割れ、陥没した。

 地面の陥没により一瞬の浮遊感を感じたアーニャはその間身動きが取れない。
 その隙に隊長は振り下ろした脚を軸として回し蹴りを決める。
 弾丸のごとくの加速の付いた足裏は、アーニャのわき腹に完全に突き刺さり全身の骨を軋ませるほどの衝撃を与えながら吹き飛ばした。

「……かはっ!」

 アーニャは背後のビルに衝突することによってようやく吹き飛ばされた勢いが止まる。
 吹き飛ばされた際に刃のないナイフは手放してしまい、両手は空のままビルの壁にもたれ掛る。


 全身のいたるところの骨が今の一撃で折れており、アーニャは急いでそれを回復させる。
 それでも気を失いそうな激痛はアーニャの体を蝕んでいた。

 だが隊長は休ませてはくれない。
 先ほどの場所から地面を蹴ってアーニャの方へと跳び蹴りをかましてくる。

 かなりの距離が隊長とアーニャの間にあったにもかかわらず、隊長はアーニャのかなり手前で跳んでいた。
 それなのにもかかわらず、念動力の加速によって戦闘機のごとく隊長の体は低空飛行をしながら、両足をそろえてドロップキックの体制へと移行しながら突っ込んでくる。

 その勢いは先ほどの念動力のブーストの無かった回し蹴りとは比べ物にならない。
 直撃すれば新幹線に衝突するのと同じように、体は木っ端みじんに吹き飛ぶだろう。

 ほとんど本能の赴くまま、アーニャは横に飛び退く。
 そしてほぼ間髪入れずに隊長のドロップキックはアーニャを受け止めたビルへ突き刺さりそのビルも波紋状のひびを刻み、粉々に倒壊させた。

「よく避けたな」

 ビルの倒壊による瓦礫が降り注ぐ中、隊長は横に向いた体を念動力で起こし、そのまま宙に浮遊する。
 恐ろしいのはその浮遊が一切テレキネシスを使ったものではなく、サイコキネシスによる力の放出だけによる微妙な力加減で保たれていることだ。

 飛び退いた際に倒れた体をゆっくりと起こし、隊長を見るアーニャ。
 隊長はそんな地面に這いつくばっているアーニャを見下している。

「どうした?これで終わりか、白猫?」

 挑発するようなニュアンスを含め、隊長は言う。


 だがその時、アーニャと隊長を分断するように大きめの瓦礫が落ちてくる。
 それを見たアーニャは全身に天聖気を巡らせて、体を強引に動かす。

 堕ちてくる途中のビル壁は一枚の壁のような形を保っており、それに飛び乗るようにアーニャは跳ぶ。
 隊長は油断していたため、緩慢だった動きから急に素早く動き出したアーニャに反応が遅れた。
 隊長からはアーニャが一瞬落ちゆくビル壁の陰になり見失う。
 そしてアーニャを影に残したビル壁は落下方向を変えて地面と平行に近いように隊長の方へと跳んできた。

 おそらくアーニャがその壁を蹴り、隊長の方へと飛ばしてきたのだろう。
 その証拠にアーニャは壁を飛ばした方向とは逆の、反発した方向にバックステップのように飛んで行っていた。

「小賢しい真似を……」

 つまらなそうに隊長は跳んできたビル壁に拳を一発を叩き込む。
 それだけでビル壁は粉々に砕け、隊長の視界を遮っていた障害は消えた。

 しかしそのビル壁の向こうには予想外のものがあった。

「なに!?」

 すでにピンの抜かれたグレネードがビル壁に隠れて投げこまれていたのだ。
 グレネードは弾けるように視界を潰すほどの光と爆音を発生させる。

「スタン、グレネードか!」


 その目の前にいた隊長はそれの影響が直撃した。
 目をふさぎ、念動力で鼓膜をガードしたが、それでもひと時、完全に視覚と聴覚は奪われる。

 ビルは完全に倒壊し、辺りに砂埃を上げる。
 それが視界の悪さに拍車をかけ、隊長の視野が完全に回復するまでかなりの時間を要してしまった。

「……逃げたか」

 すでに辺りには隊長以外の人影は居ない。
 アーニャはこの場から完全に離脱しており、隊長は目標を見失ったのである。

「全く今度は鬼ごっこか……。

まぁ多分完全には、逃げてはいないだろう。

この街のどこかにいるはず……」

 その時、隊長は言葉を途中で止めて頭を押さえる。
 先ほどまでの余裕そうな表情とは違い、不快感を覚えたような苦々しい表情である。

「くそ……羽虫が邪魔してくるか。

正直、俺の余裕はないんだけどな……」

 周囲に放出していた念動力を解除して浮遊していた状態から地に足を着ける。
 苦虫をかみつぶしたような顔をしながら、隊長は文明の光などない闇に沈みつつある憤怒の街の中を進んだ。







 不快感を露わにしながら歩き出した隊長の一方、アーニャも疲労感を顔に滲ませながら廃墟の中を進む。
 相も変わらず雪は降り続いており、先ほどまで熱を帯びていたアーニャの体をクールダウンさせていた。

「正面から……戦うのは、失敗だったかもしれません……」

 重い足取りでアーニャは歩きながら呟く。
 隊長の強さは自身がよく知っているはずなのに、正直に正面から挑んだのは今思い返せば失敗だっただろう。
 だがその一方で、あの男に不意打ちが通用するとも思えないというのも頭の中に残る。
 
 アーニャは一度立ち止まり、後ろを振り返る。
 ゴーストタウンと化したこの街で、この幅の広い道路を歩くのは今はアーニャだけだった。
 当然振り向いても人影はない。

「とりあえずは……一旦撒けましたか」

 訓練で夜目はそれなりに聞くので、薄暗い街の中でそれなりに遠くまで見渡すことができた。
 とりあえず視界には人影が見えないので、緊張を一度解いて一息吐く。

 とはいってもあの隊長なのでいつ急襲されてもおかしくないことは念頭に置いておく。
 このまま道の真ん中を歩いていては、隊長が本気で追ってこればすぐに見つかってしまう。
 故に近くの比較的崩壊の少ない廃ビルに一度身を隠すことにした。

「おじゃまします……とはいっても誰もいるはずが、ありませんね」

 アーニャはそんなこと独りごちる。
 だが当然返事は帰ってくるわけがないし、それくらいはアーニャもわかっていた。


 入ったビルの中はかつて何かのオフィスだったらしく、かつての面影をそれなりに残していた。
 しかし辺りはほこりにまみれ、小さな瓦礫の破片が散乱していて生活感は皆無である。

 アーニャはそのまま奥へと進み、階段を見つけると上の階へと昇っていく。
 そしてできるだけ上の階を目指すと、最終的に4階まで到達し、それより上は崩落が激しく進むのは危険であった。

「ここに、しましょう」

 アーニャは4階へ入り、先ほど自身が通ってきた道路を見渡せる部屋へと入る。
 中は上の階が崩壊しているおかげで、大きめの瓦礫が散乱しており、ところどころに潰れたデスクが目についた。

 そのまま窓際、とはいってもすでにガラスは全て砕けており窓と言えるのかは定かではないがそこまで近づく。
 そしてその窓の下の壁にもたれかかるように、アーニャは座りこんだ。

「……全く本当に、化物です」

 先ほどのこと思い出して苦々しい表情をするアーニャ。
 自分はほぼすべての力を出し切っていたというのに、隊長はまだ余裕だという感じであった。

 実際隊長は戦闘狂の節もあり、あえて自分が追い込まれる状況に持っていくことがある。
 今回もそう言うようなチャンスがあったにもかかわらず、結局隊長に傷一つ付けることがかなわなかったのだ。

  『勝つ』と覚悟を決めてきたのにこのざまで、アーニャは自分が情けなくなってくる。
 先手はとられまいと構えていたはずなのに、あの隊長の言葉に心をかき乱され、そして無様な醜態をさらした。
 だがまだ諦めるわけではない。


 初手は完全な敗北だが、まだ手がないわけではないのだ。
 今までならば敗色濃い場合引くこともできたが、今回に関しては引くことは絶対にできない。

 『殺す』か『殺されるか』の二択しかない白猫としての最終任務(ラストミッション)。
 あの男との因果はここで幕を引くという意志はアーニャにとっては決して揺るぐことはない。

「そのためには……あと何ができるか」

 アーニャはコートを広げて、残りの装備を確認する。
 一つ一つ取り出して床に置き、数を確かめる。

「ノース……ナイフはあと3本に、スタンは2個、スモークが4個ですか……」

 初めから思ってはいたことだが、隊長を相手にするには心もとない。
 それでもこの状況で取りうる最善をするために、床に並べた装備を再びコートと腰に戻すそうとする。

「あっ……アー」

 しかし最後の一個のスモークグレネードを取ろうとしたが、手からこぼれてしまう。
 そしてかつての惨劇によってこの建物も傾いていたのか、その傾斜に沿って筒状のスモークは転がっていく。

 アーニャはそれを追って行くと、一つの瓦礫の山にぶつかってスモークは動きを止める。
 それを拾おうと、アーニャは瓦礫の前でかがんで手を伸ばした。


「……これは」

 スモークグレネードに手を伸ばしていたのはアーニャだけではなかった。
 もう一つの手がグレネードの手前で止まっている。

「コーシチ……骨、ですか」

 アーニャのものではないもう一つの手は別にアーニャのグレネードに手を伸ばしていたわけではない。
 その手はすでに白骨化しており、もはや動くことはないのだから。

 目の前の瓦礫の下には、一つの白骨死体があった。
 おそらくかつての騒動の際に振ってきた瓦礫の下敷きになりそのまま事切れたのだろう。

 どうにかして這い出ようとしたのだろう。
 カーペット敷きの床にひっかき傷が残っている。
 だが手遅れであったことも伺える。
 カーペットには血痕が残っており、すでに乾いて赤黒くなっている染みがその死体の下に広がっている。

 『憤怒の街』の際にほとんどの死体は回収されたらしいが、それでもカースに取りこまれたりしたことによりすでに死体が存在しない場合もあった。
 故にそう言った者は行方不明者として扱われ、今も見つかっていない犠牲者は少なくないのだ。

 そしてこの死体も、捜索の目から外れてしまい数か月放置されたのだろう。
 今の今まで誰の目に触れることなく、きっと避難した他の会社の人々からも見捨てられ絶望しながら死んでいったのだと想像できた。

 アーニャは無言のままグレネードを拾ってコートの中に仕舞う。
 そして隊長を迎え撃つための準備をしようとして死体に背を向けた。





「……?」




 アーニャは何の疑問も抱かずに、グレネードを懐に入れた。
 そのことに、ふと違和感を覚えてしまったのだ。

「ヤー……私は、いま何を感じたのですか?」

 気が付いてしまっては取り返しがつかない。
 アーニャは死体を見ても『何も感じなかったこと』に気づいてしまったのだ。
 これまでなら微塵もそんなことに違和感を覚えなかっただろう。

 だが普通の暮らしをして、普通の価値観を知ってしまったアーニャはその重大な違和感に気づいてしまった。

「パツィエムー……どうして、私は死体を見ても、何も感じないのですか?」

 アーニャは振り返りその死体を再び見る。
 だが瓦礫の隙間から覗く死体の空っぽの目を見ても何も感じないのだ。

 憐憫も、哀悼も、悲哀も、恐怖も、憤怒も何も感じない。
 そこに人間一人分の骨、カルシウムの塊がある程度の感想しかないのだ。


「……うっ、くうぅぅ……」

 そんな自分に吐き気を覚える。
 ごく一般的な人間が感じる感情が欠落しているということ。

「まるで……『化物』じゃないですか……」

 隊長の言った心をかき乱したあの言葉。
 必死に無視して、気にしなかったのに、自覚してしまえば後には引けない。

 これまでの自分の、アナスタシアとしての自分を自分で否定してしまったようなものだ。
 せっかくまともになれたと思ったのに、結局何も変わらなかったという証拠である。

 アーニャは吐き気で口元を押さえ、ふらふらと瓦礫に背を預ける。
 隣には何も言わない死者。
 先ほどまで何も感じなかったそれが、まるで自分を『化物』だと糾弾してくるようにアーニャは感じてしまう。

「……はぁー……はぁー」

 息を深く吐いて、ざわつく心を落ち着ける。
 それでも吐き気は収まらないし、頭の中はぐらぐらするのだ。
 これまで後回しにしてきたツケだとでもいうのかというほどに、アーニャの精神状態は不安定であった。


「ツケ……といえば」

 ツケと言えば、エトランゼで強引にツケさせられたのを思い出す。
 それと同時にのあの、あの言葉も。

「カヴォータ……誰かに……相談できていたなら、少しは違ったのでしょうか?」

 この孤独な空間でアーニャは寂しさを感じる。
 だが自分一人でケリをつけるを息巻いてきたのに、そんな泣き言は言ってられなかった。

「そうです……。泣き言なんて言えない、悩みなんて悩んで、いられない」

 せめて、今の目的だけは、完遂せねばならない。
 プロダクションのことを思い出しながら、自分のすべきことのためゆっくりと立ち上がった。

 だが結局また後回しにしていることを、アーニャは気づかない。






 







「~♪……~~♪~♪」

 息吹を感じさせない静かな街の中に一つの鼻歌。
 隊長は足取り軽く、アーニャを探しながら歩いていた。

 一旦は見失ったが、少し歩きながら痕跡を探しているとある地点から明確な痕跡を見つけることができた。

「誘っているな」

 アーニャに痕跡を残さない術を教えたのは隊長だ。
 それが途中からあらかさまな痕跡を残し始めているということは、ほぼ確実に罠である。

「なら乗ってやらないと」

 そして隊長がたどり着いたのは、アーニャの入った廃ビルであった。
 比較的きれいに原形を保っているその建物を隊長は見上げる。

「オーケイ、どんな小細工を巡らしてるかは知らないが、ちゃんと正面から行ってやる」

 そのまま隊長はビルの中へ入っていく。

 



 わけがなかった。

「正面からは正面からだが、一階から順番に行くとは言ってねぇよな!

RPGのダンジョンじゃあねぇ。本丸目がけて正面突破だ!」

 隊長は膝を曲げて、跳躍する。
 念動力によって加速され、体は一気に最上階まで跳びあがった。

 最上階であった5階はほぼ崩落しているため、大体4階と5階の間くらいの位置で隊長は拳を振りかぶる。
 そしてその拳の一撃は、原形を保っていたビルの外壁を砕いて大穴を開けた。

 そして悠々と、その大穴からビルの内部へと侵入する。

「さーて、どこだ白猫?鬼ごっこは終わりにしようぜ」

 崩壊するビル壁は粉じんを上げて視界は良好ではない。
 隊長はまたそれが収まるまで待っているつもりだったがなぜか一向に収まる気配が見えなかった。

「これは……スモークか!」

 先ほどの粉じんに乗じてアーニャはスモークを投げ込んでいたのだ。
 埃っぽいコンクリの粉じんに混じって、白煙が隊長の視界を妨げる。


「ああくそ、仕方ない!」

 隊長はいらついた声を上げる。
 それと同時に周囲に発生させた念動力は視界を遮る白煙をすべて吹き飛ばした。

「小賢しい……真似を!」

 隊長の開けた視界が目にしたのは、瓦礫の散乱した薄暗いオフィス。
 その中にはアーニャの姿は見えない。

「どこに……」

 目を凝らして、アーニャの位置を特定しようとする隊長。
 しかしその隊長が捉えたのは、数刻前に目にした放射される光源である。

「またか!」

 それはさらに隊長の苛立ちを逆なでする。
 隊長の前方少し先に置かれたスタングレネードはワイヤーか何かが取り付けられており、遠隔でピンを抜かれたらしい。
 その円筒は閃光を発し、爆音を散乱させる。故に再び隊長は耳と目を保護する体制を取らざるを得ない。

 だが視界を潰された隊長は何かを感じる。
 それはほぼ本能に近いものであったが、躊躇なく念動力を纏わせた右腕を振るう。

 そしてそれは正解であり、その腕には何かを弾く感覚が残った。

「そこかぁああああ!!!」

 右方から接近した凶刃。
 その方向にアーニャがいると確信した隊長は回復しない二感にもかかわらず、攻撃を受けた方向に広げた掌を向ける。
 そして、圧縮。


 それだけで隊長の右手側にあるビル3階から屋上までごっそりと空気が圧縮される。
 同時にその部分のビルも圧縮され、ビルはそぎ落とされたように粉々の瓦礫と共に欠損した。

 結果として、大規模な欠落を起こしたビルは崩壊の音を立て始める。
 まだ五感すべて回復しない隊長だが、ビルが崩壊を起こし始めているのは気が付いた。







 だが、背後に迫るナイフの刃には気づかない。

 一つ下の階に潜んでいたアーニャは手持ちの軍用ワイヤーを使いトラップを作動させていた。
 罠というには稚拙なものではあったが、ビル内という乱雑な環境が不自然さを覆い隠していたのだ。

 とはいっても手持ちのワイヤーの長さでは限界があるため、初めのスモークは下の階から隙を見て投げ込んだもの。
 そしてスタンとナイフについてはワイヤーでピンを抜くだけの簡単な仕組みである。
 ナイフは独自に改造し、スペツナズナイフに近いものになっており、刃の部分が射出される。
 スタングレネードで感覚を奪えば、そのナイフが人が握っているものかどうかをかく乱させられる可能性が高くなる。

 罠は一階と四階にアーニャはしかけた。
 アーニャはもともと四階から入ってくるという予想をしていたのだ。
 そして見事に的中し、油断していた隊長は罠に掛かり隙も見せた。

 千載一遇の機会、アーニャは隊長が突入してくる際にあけた穴を利用して上の階へと上がり、隊長の背後を取る。
 手にはナイフ。それを突き立てればアーニャの勝利である。


(……これで)

 少しあっけなさも感じるほどの終わり。
 自らが望んだ結末であり、ようやく難儀な因果を断ち切ることができる。

(……これで)

 ここで隊長を殺せば万事解決である。
 プロダクションへの脅威はなくなるのだ。

『化物』

 誰かが囁く。

『きっと何も感じず殺せる。化物だから』

 きっとこれは事実だろう。
 今までのように、何事もなく、何も殺せず殺せる。
 アーニャ自身がそれを理解していた。
 だがそれを今までは気にしていなかったのに、気にし始めたからこんな声が聞こえるのだ。

『きっと殺せる。白猫なら殺せる』

 きっとこれは忠告だろうか。
 いや、きっと悲鳴なのだ。


『きっと殺せる。化物なら殺せる』

 日常に身を置き、気づく。
 人の命の重みを。

(……嫌です)

 そして日常との差に気づくのだ。
 人の命を、軽く奪えた自分との差を。
 命に対して感情を持たないというその差こそが、アーニャにとっての『人』と『化物』の差だ。

 アーニャには人の命の重さを度外視した殺ししかできない。
 だがそれは『化物』だ。
 日常の『人』ではない。

(この人は……殺さなくてはならない。でも殺すには……完全に、化物になるしかない)

 脳裏にちらつくのは、荒らされた事務所、傷ついたピィ、気絶した楓。
 そして残虐な笑みをするこの男。

(……やっぱり、殺さないと)

 走馬灯のごとく引き伸ばされていた時間は終わりを告げようとしている。
 アーニャは、グリップを握る手に力を入れる。

(……殺す、殺す殺す殺す殺す!)










 だがナイフは隊長の背の直前で止まった。

「アドナーカ……でも、『化物』は……嫌です」

 ここで自覚してかつてのごとく殺すことは、自分が『化物』であると認めること。
 自分で認めてしまえば、きっと自分は一生『化物』であるという予感がしたのだ。

 そうなったら自分は、この街で、日常で生きてはいけないのだろうとアーニャは考える。
 『人間』に混じって、『化物』は過ごせないから。

 それはアーニャには耐えられなかった。

「どうして、止めた」

 ナイフを握ったまま手を止めているアーニャを、いつの間にか振り返った隊長が見下ろす。

「どうして、止めたあああーーー!!!」

 嫌悪と激情が混じったような表情で隊長は叫ぶ。
 隊長の握った拳は、そのままアーニャの腹へと突き刺さる。

 息がつまり、苦悶の表情を浮かべながらアーニャは拳の勢いで吹き飛ばされる。
 背後にはビルの開いた大穴。

 アーニャはナイフを手放し、四階の高さからまっさかさまに落ち、体は下の道路に叩き付けられる。
 上がる土煙。その中のアーニャの顔は見えない。

「どうして、その手を、止めたんだ……」

 隊長は苦々しそうな、複雑な表情をしながら呟く。

「お前も、俺から、遠ざかるのか……」

 悲しそうな、寂しそうな瞳。
 まるで寂しがりの子供のような表情をしながら、崩れゆくビルから白煙を見下ろす隊長。

 そしてビルは崩れ、上がる土煙の中から隊長は歩いて出てくる。
 先ほどまでアーニャのいた場所には、一つの円筒状のスプレーのようなものだけ。

「スモークグレネード……また、逃げるか」

 隊長は空を見上げる。
 夜の闇の中、幽かに見える雲の動き。
 それと変わらずひらひらと降り続ける雪だけしか見えない。





 








 一つの廃墟の中、膝を抱える少女が一人。
 その影に先ほどまでの覇気は無く、小さく震えている。

「……もう、私は、殺せない」

 『人間』が『殺す』とき。
 それは罪を背負うことだ。
 その重石は一生背負う物であり、背負うには相応の覚悟がいる。

 『化物』が『殺す』とき。
 それは当たり前で、普通のこと。
 そこに責任も、後悔もない。
 死者への念仏も、弔問も必要ない。

 彼女、アナスタシアは『人間』として生まれてしまったのだ。
 もはや『化物』の殺しはできない。

「でも……隊長を、殺さないと、またみんなを、傷つけてしまう」

 今にも泣きだしそうな、かろうじて絞り出した声。
 この状況のアーニャには思いつかない。


「……いや、でも」

 だが一つだけ、手を思い出す。
 結局、隊長の目的はアーニャであることを思い出したからだ。
 そしてこれは初めから考え付いていた手段の一つである。

「ヤー……私が、隊長に、殺されれば……いいんです」

 隊長の目的である裏切り者の始末。
 それさえ完了すれば、きっと表の世界であるプロダクションに隊長は手を出さないであろう。

「これなら……きっと」

 だがそれは、アーニャ自身が犠牲になること。
 それをプロダクションの皆は許さないだろう。

「少なくとも……シューコは別かも、しれませんが……。

そう思うと、シューコには申し訳ないことを、したかもしれませんね……。

あのような、ことを言わせてしまったのですから」

 脳裏に浮かぶ、たった数か月の思い出。
 それは唯一アーニャが『人間』として生きた記憶。


 一抹のさみしさを感じるが、もはやこれ以外に術はないとアーニャは考える。
 殺せない今、自分が死ぬしかないのだから。

「ドー スヴェダーニェ……さよなら、みんな」

 『化物』の自分でも誰かのために死ねるのなら、まだ救われる。
 振るえは止まる。
 これが本当の終わり。今度こそ終止符を打つ。

 アーニャは新たに覚悟して、立ち上がった。








『あーあー……聞こえるかー?アーニャ』





 立ち上がったところで響く、謎の声。
 それはアーニャのすぐ後ろからか、隣からか発せられる。

「シトー?……なんですか、これ?」

 突如聞こえる声にアーニャは困惑する。
 しかもその声が聞いたことのある声ならばなおさらである。

『おお!よかった。ちゃんと聞こえているな』

「なぜ今、晶葉の声が聞こえているのですか……まさか」


 晶葉はふふんと鼻を鳴らしながら自信満々に言う。

『そうだ!実はそのコー「これが、『ソーマトー』と呼ばれるものですね!」

 アーニャは晶葉の言葉を遮り一人で納得する。

「ヤー……私も、ここまで未練があったわけですね……。でも私は、止まりません。イズヴィニーチェ……晶葉」

『待て待て!よくわからんが早まるな!これは走馬灯でも幻聴でもない!』

 アーニャの言葉に応えてきた声でようやく違和感に気づく。

「シトー?……じゃあどういうことですか?晶葉」

『こちらはプロダクションの事務所だ。そのコートに備えられている通信機を通じて今会話をしているのだよ』

 アーニャはその声が本物であると気づき、その言葉の音源である首元辺りを見る。
 そこには小さなスピーカーのようなものがコートに埋め込まれていた。


『前にそのコートは戦闘用の特製コートとして渡したが、意外に街が平和だったせいで機能の説明の機会を失っていたのだ』

 少し残念そうな口調で話す晶葉。だがその裏では話したくて仕方ないような感情が見え隠れしている。

『だがどうやら緊急事態らしいから手短に言わせてもらう。この龍崎博士と共同で作ったこのコートだがな。

形状記憶繊維という特別な素材が使われていて少しくらい傷ついてもしばらくすれば元に戻るのだ。

細胞分裂に似た再生方法だからもしかしたらアーニャの能力で再生が促進されるかもしれない。だから試してみてくれ。

ある程度の防弾性や、運動性は龍崎博士の保証付だ。期待してくれ。

それと私の開発した戦闘支援ブレインが搭載されている。

とはいってもこれはどこまで役に立つかはわからないし、まだ情報不足で機能として稼働するにはもう少しそれを着て動いてみてくれないと無理だろう。

さらにその他もろもろの細かな機能がある。

共同制作だが私の技術の結晶だ!うまく活用してくれたまえ』

 晶葉はひとしきり喋って、一息つく。

『あいにく今の状況はピィから聞いただけだ。どれほどの問題なのかも私にはわからない。

だが私にできることはこれだけだ。だから……。

だから、ちゃんと帰って来たまえ。

そのコートのデータも取りきれてないし、まだまだ試したい実験は残っているのだからな』


 晶葉の声からは自身の無力を嘆く心と、アーニャを信じる心が伝わってくる。
 その『帰ってこい』の言葉はアーニャの決心を揺るがす。

『じゃあ次は……って押すんじゃない!お、おいコラ……愛海どさくさに紛れて!』

 耳元でバタバタとせわしない騒音が聞こえる。
 それに混じって様々な声が聞こえてきた。



『うひひひ……せっかくみんな集まってるんだし、揉んどかないと損ってもんでしょ』
『ちょっと愛海ちゃん、今はそんなこと……。ひゃあ、今度は私!?』
『おい次のマイクはウチがもらうぞ!』
『せんせぇ、かおるも喋ってみてもいい?』
『あっ!アタシだってマイクで何か喋りたいワ!』
『結局今どういう状況なの?』
『まぁ……応援か、何かですかね?』
『聞こえるー?こちら未央ー。アーニャは元気かな?』



 声を聴く限りプロダクションに関わりのある者がほとんど集まっているようである。

「どうして……みんなプロダクションにいるのですか?」


『ああ……なんというかあの後、偶然みんな集まっちゃてな』

 そんなアーニャの疑問に答えるようにピィの声が聞こえてくる。

『事務所が荒れてた事情を話したら話したで、みんなアーニャが帰ってくるまでは帰らないとか、面白そうとか言って帰ってくれないんだよ。

全く……まいったまいった』

「そんな……隊長が怖くないのですか!?

ィエーシリェ……もし、隊長が今プロダクションに向かったら、みんな殺されてしまいます!」

 アーニャは逃げるように言うが、ピィは笑いながら言う。

『まぁ確かにその場合、他のみんなはともかく俺は確実に殺されるだろうな。

でもそんな場合はあり得ないよ』

「……どうして、ですか?」

『アーニャはちゃんと隊長に勝って帰ってくるからさ。

それにアーニャがヒーローやりたいって言い出したんだから、俺がヒーロー信じなくてどうするんだってな』

「そんな……ことで」


『俺はもともと小さい頃、テレビとかでヒーローとか主人公とかに憧れてたけどさ、

結局そう言う柄でもないし、力もないから諦めたんだよ。そして『あの日』以後も変わりなくな。

でもアーニャ、お前は違う。アーニャなら俺のなれなかったヒーローになれるから。

俺の憧れたヒーローなら、俺は絶対信じれるんだよ』

 ピィやちひろたちの全面的な信頼。
 でもさっきアーニャは『帰ってこれない』ことを決心したのだ。
 それはアーニャが皆を裏切ってしまったことになる。

「アドナーカ……でも、私は隊長を殺せない。

じゃあ、私が死ぬしか解決手段はありません……。

だから……帰ってくるなんて」

『アーニャ……別にヒーローは悪を殺すんじゃないんだ。

悪を懲らしめ、時に改心させるんだ。

時に殺すことになるかもしれないけど、それだけじゃない。

俺の知ってるヒーローは、悪に立ち向かい、悪を倒し、そして帰ってくる。

だからあの隊長の強面の顔面に一発拳入れてお帰り願え。

そうすれば万事解決だからさ』

 ピィの独自のヒーロー観と楽観的な考え。
 普通ならばそれで解決するなんて思うのは到底無理だろう。
 でも、


「それで……終わるのですか?」

『ああ、アーニャならできる。

それだけの力を持っているはずだから』

 自分が死ぬしかプロダクションを守るすべがないと思われていた状況の中のこの言葉。
 皆のアーニャの帰りを望む声と合わせると、こんな無謀な解決方法でもどうにかなりそうな気がしてくる。

『だから、帰って来いよ。アーニャ』

 考えは、変わる。

「……ダー、わかりました。

悪に立ち向かい、悪を倒し、帰ってくる。

ヒーローならば、できることですね」

 アーニャは再び前を向く。
 今度こそ、隊長との決着を付けに。


『おーい、くれぐれも無茶はするな「ガーガガー……」

あれ「ガー……」しがおかしくなってるな?

こしょ「ガー」か?』

 晶葉の声がノイズと共に聞こえてくる。
 やはり何度も衝撃を受けたせいで、通信機が故障したのだろう。

『まぁ「ピー」いさ。ちゃんと帰ってくるんだぞ「ガガーピーブツンッ」』

 その言葉を最後に通信は切れる。

「……自分の意志だけではだめでも、周りの声は可能性をくれる。

一人で背負わないで、誰かと相談すれば……手段はいくらでもあるのですね。のあ」

 もはやアーニャは一人ではない。
 手持ちの武装はもはや尽きてはいたが、それ以上の武器を手に入れたから。

「イェショー ニェムノーガ……もう少し、もう少しだけがんばりましょう……」











「また小細工でもしてくるのかと思ったが、素直に出てくるとはどういう作戦だ?」

「ニェート……いえ、特に作戦なんてないです」

「これはまた……俺を嘗めているのか?」

「まさか……あいにく私に、そんな余裕はありません。それに嘗めているのは……あなたでしょう?」

「……あいにく俺はいつも全力だ」

「……何を言ってるんですか隊長?あなたは、もっと……型破りで、常識はずれで、、意味不明です。

それだというのに……今日は随分型に収まっている、感じですね」

「ほざけ、それで手も足も出ないのはどっちだ」

「ダー……そうですね。まったく、その通りです」

「ふん……じゃあこれは白旗でも上げに来たってことか?」

「…………ニェート。私は……勝ちに来ました」

「……よくもまぁ、な。勝算は?」

「……勝ちは、勝ち取るものですよ」

「……上等だ!」


 その声を合図に、向かい合った二人は地を蹴り飛び出す。

「УУУУУраааааааааааааааааааааааааァァァァァァアアアア!!!!!!」

「オオオォォオオォォOOOOOOhhhhhhhhhhhRRRaaaaaaaaaaaaaaァァァァァァァアアアアア!!!!!!」

 感情籠った叫びと共に両者ともに突き出した拳は正面から激突し、衝撃で空気はうねる。

 しかし隊長の拳の方が数段威力は上であった。
 耐え切れずアーニャの腕は骨の折れる音を響かせながら後方に吹き飛ぶようにのけぞる。

 だがアーニャは意も介さず、すぐに隊長の懐へと潜り込む。
 空いていた拳をすぐさま隊長の体に打ち込もうとするが、隊長はすぐにそれを腕で防いだ。

 アーニャはそれも気にせず、吹き飛ばされた方の腕をすでに完治させており、それで再び一撃入れる。
 それも防がれてしまうが、気にしない。
 そのままアーニャは隊長の目の前でインファイトをする。

 だがそれをずっと許すほど隊長も甘くはない。
 隊長を中心に嵐のような衝撃波が発生、アーニャはそのまま押し戻される。
 それでもアーニャは止まらない。すぐに接近しようとする。


 隊長は念動力の『手』を出現させてアーニャを捉えようとするが、それも躱される。
 躱した低い体勢から、足払いをアーニャは繰り出すが隊長はその場で飛んで避けた。
 そして隊長は重力に加え、上からかかる力を自身に加えて落下速度を速める。

「……ぐぅ!?」

 それだけでアーニャの足払いしてきた脚に着地し、その脚を粉砕する。
 このままでは移動もままらない上、追撃されると更なる不利になってしまう。
 残った脚と両腕を使い一歩分、その場から飛び退いた。

 だが隊長は『手』を使ってアーニャを追い立てる。

「なっ……」

 このまま一歩だけの飛び退きでは確実に捉えられてしまう
 半ば強引にだが、地面に着いた両の腕をばねにして、着地は全く考慮せずにさらに後方へと跳ぶ。
 それによって、その『手』はぎりぎりアーニャに届くことはなかった。

「もう、一丁!」

 だがその『手』とは別に新たに出現した『手』がアーニャの全身を左方から捉える。
 全身にかかる圧迫感。そして次の瞬間には全身が丸めたチリ紙のごとく圧縮される感覚と共に視界が真っ暗になる。

 それでも悠長にしてはいられない。
 ほぼノータイムで全身を再生させる。
 大幅な力の消費は、アーニャの意識を暗転させようとするが、気合いで耐える。
 脳が揺さぶられるような不快感は残るが、それでも止まれない。


「……まだ、まだ!」

 その後も、何度も隊長に挑んでいく。
 全身を天聖気で強化し、傷ついたのならばすぐに回復。
 それでも、腕は吹き飛ばされ、脚は砕け、内臓さえも何度も潰される。

 そしてそのたび、意識が飛びそうになりながらも体を再生させる。
 頭は吹き飛ばされようとも、全身の半分以上が欠損しようと、いくら即死級の攻撃を受けたとしても。
 治して直して復活(なお)して、そして立ち向かう。

(まだいける……まだいける。

一撃入れるまでは、何度でも、何度でもやって見せる)

 すでにアーニャのこれまで考えられていた限界回復量をゆうに超えていた。
 それでも何度も、体を再生させて、変わらぬ闘志で向っていく。

(どうして、こいつは止まらない?)

 逆にアーニャを殺して壊して吹き飛ばすたびに困惑していくのは隊長であった。
 これまでのアーニャならばこのような不毛なことはしなかった。
 だがこの無意味で、無謀な突撃をアーニャが繰り返すたびに隊長の疑念は膨らんでいくのだ。


「お前は……何がしたい!?

こんなこと俺は教えていないぞ!お前はいったい何を見ている白猫!?」

「私は……あなたに勝って、帰るんです!」

 それでもいずれ限界は来る。
 挑むたびに傷つき、それを回復させるたびに思考にはもやがかかり、脳は熱を帯びていく。
 視界は徐々にぼやけ、平衡感覚さえもおぼつかない。

「ま……だ、まだ……いけ、ます」

 全身の服はボロボロであり、コートの再生に回す力など残っていない。
 それでも立ち上がり、ふらふらと隊長に向かっていく。

「お前は……」

 もはや隊長は力さえ使っていない。
 攻撃しようとするたび、それを避け、軽い蹴りで押し戻すだけだ。

「どうしてそこまで」

「ヒーロー……は、勝たなくちゃ、いけないんです」

 そしてなおも向かってくる。
 隊長はそれに対して『手』で押しつぶす。

 それだけでアーニャの全身の骨を砕き、絶命へと至らせる。
 そしてそれでも、自らの体を回復させる。もはや生き地獄とも言ってもいいほどの苦行を何度も行うのだ。







 もはや限界であった。
 体には痛みはなくとも、疲労感で体は全く動かない。
 力の消耗によって意識さえも手放しそうで、瞳を閉じたら深い眠りについてしまいそうなのを必死にこらえる。

(まだ……もう少し……それでも)

 だが一回、瞬きをしてしまう。
 その瞬きは一気にアーニャをまどろみの中へと引き込んだ。

(駄目……です)











「お疲れ様ね。アーニャ」

 そんなアーニャにふと聞こえてきた一つの声。
 その女性の声は聞いたことがないのに、なんだか懐かしい感じがする。

 そしてその声ではっとなったアーニャは眼を開けるとそこにはさっきまでいた廃墟群の只中ではなかった。
 穏やかな日差しが差し込む林の中であり、眼前には真っ白な教会が存在している。

 そしてその前に立つ女性が一人。
 美しい黒髪を伸ばした女性はアーニャの方を見ながら微笑んでいる。

「……ここは?」

 そんなアーニャの疑問に女性は答える。

「ここは……夢の中、とでも言えばいいかな?」


 その言葉にアーニャの混乱している頭は現在の現実での状況を思い出す。

「そうです!んっ……」

 隊長との戦いの最中であることを口に出そうとするが、いつの間にか目のすぐ前にいる女性の人差指に口を押えられる。

「別に慌てなくていいわ。

少しくらいゆっくりしても、ここでは問題ないのよ」

 女性は優しい口調で言う。
 なぜかアーニャはそれに納得してしまった。

 アーニャは落ち着いてきたのか周りも見渡す。
 自分の夢の中であるはずなのにこの場所に覚えはない。でもなぜか懐かしさは覚えるのだ。
 穏やかな時間が流れており、気を許してしまえばずっとここでのんびりしていても苦でもないような感じである

「じゃあ……何から話そうかな?」

 目の前の女性は人差指を口元に充てて考えるしぐさをする。
 アーニャはそんな女性に質問を投げかけてみた。

「ヴィー……あなたは、なんなんですか?」


「私?えーっと私はなんていうのかしら?

あなたの守護霊とでも言えばいいか……それかあなたの監視とでも言えばいいのかな?

まぁともかく、ずっとアーニャのことを見守ってきたの」

「ヤー……私、を?」

 アーニャのことをずっと見守ってきたということは、これまでのことを知っているということである。
 この女性がどこまで信用できるのかわからないのにアーニャはなぜかすんなりと受け入れることができた。

「そう、ずっと。

監視っていうのは、アーニャに力を与えた人、まぁぶっちゃけちゃえばとある神さまなんだけどね。

その人から頼まれたの。アーニャの監視を。

まぁ私としてもその方が都合がよかったからいいんだけどさ」

「か……かみさま?」

 突然の暴露にアーニャは頭がついていかない。
 それでも女性は気にせず話を続ける。


「ていうか私あの人にアーニャのことを任せたのに何なの?

変な育て方するし、アーニャが家出したかと思えばそれを追ってくるしわけわかんないわまったく……」

 女性はなぜか勝手に誰かにぷりぷり怒っている。

「ああ、ごめんねつい愚痴みたいになっちゃって。

それで今回はね、きっとあなたは私のこと多分はじめましてなんだけど、実は今日でお別れなの」

「ど、どうして……ですか?」

 そして突然の別れの話。
 アーニャの頭はさらに混乱する。

「もうあなたに、監視は必要ないってことよ。

あなたがもう監視なんてしなくても十分やっていけるってことがわかったからね。

だから私は、あなたの力をあなたにすべて渡して、さよならするの」


 アーニャにはその別れの言葉がなぜか悲しい。
 この女性とは初対面なのに、ずいぶん長い付き合いの人との別れのように、なぜか涙が出てきた。

「ルヴァーチ?なんで……涙が?」

 そんな様子を見た女性は腕でアーニャを抱きしめる。

「ごめんね……。私ももっと一緒に居られれば良かったんだけど、私にも行かなくちゃならないところがあるから。

でも大丈夫。あなたにはいっぱいのお友達が、いるでしょう?」

 女性はアーニャの目をまっすぐ見ながら言う。

「あなたのことを応援してくれる人もいるけど、あなたのことを心配する人もいるってことを忘れちゃだめよ。

今日みたいな無茶は、そんな人たちのためにもほどほどにしなさい。わかった?」

 アーニャはその言葉が心にすっと入ってくるのがわかる。
 そして無言で肯いた。


「よしっ!じゃあ行ってきなさい。

最後に、えーっと、ご飯はちゃんと食べるのよ。それから病気には気を付けること。

それからひとさまには迷惑をかけないことと……それからそれから」

「……もう少し、落ち着いて話したらどうですか?」

 何を言おうかあたふたしている女性に対して、苦笑しながらアーニャは言う。

「……そうね。もうあなたは子供じゃないんだからね」

 アーニャのその言葉を聞いて、落ち着いたのか女性は微笑む。

「じゃあ最後に、お使いを一つ。

隊長さんに、『ごめんなさい。あなたの想いには答えられません』って伝えて。

私には愛する夫も、子供もいますから」

 別れの時間が近いのか、周囲の風景が光に溶けていくのがわかる。
 女性は抱いた手をほどいて立ち上がる。
 アーニャもその女性のように立ち上がった。

「ダー……わかりました。伝えます」

 そしてアーニャは女性に背を向ける。

「これで、お別れね。

いってらっしゃい。私の愛しいアナスタシア」

 女性はそう言って手を振る。
 アーニャは振り返り、微笑みながら言う。

「行ってきます。ママ」










 隊長は目を瞑って眠るアーニャを少し離れた位置から見下ろしている。

「俺にはわからない……結局いつまでも、手は届かないのか?」

 ふとつぶやく、そんな言葉。
 隊長にとって、手に届く位置にいるはずのアーニャがなぜか遠い。

「……結局、あなたは、なんなのでしょう?」

 そんな隊長にふと掛かる声。
 その声を聴いた隊長は再び、意地の悪い笑みになる。いや、そんな笑みを取り繕う。

「なんだ。もうギブアップかと思ってたぞ。

まだ俺を楽しませてくれるのか?」

 アーニャはゆっくりと立ち上がって、その言葉に対して首を横にを振る。

「……これで、終わりにしましょう。……あなたも、わたしも」


 アーニャの手の甲から、ポタリポタリと落ちる血液。
 それは地面に落ちて小さな赤い染みを作る。

「終わりだぁ?

終わらねぇよこれは。俺と、お前の関係はな」

「ニェート……もう、終わらせないと、いけないのです」

 アーニャは自身の掌を眼前に持ってくる。
 その掌には、トランプのダイヤのような形の赤く塗りつぶされた傷口。
 それを握りしめ、瞳の矛先を隊長へと向ける。

「Давайте положить конец.…… Командующий(終わらせましょう……隊長)」


 アーニャを中心に、広がる光。
 全身からほとばしる天聖気は可視化できるほどの閃光を生み出す。
 体外へと放出された天聖気は翼のような形を作り、高密度のエネルギーとして天へと延びた。

「特徴的な傷口、そのあふれ出る天聖気……。

まさか聖痕?じゃあお前は聖人ってことか?」

 ここで隊長は初めて合点の合ったような顔をする。



「なるほど、能力の仕組みはそいつか。

”復活”の天聖気、そういうことか。

『復活の少女(アナスタシア)』!!!」



 かつて救世主(メシア)が起こした奇跡の一つ。
 死後の復活。生き返り。その奇跡が彼女の中で”天聖気”として循環している。
 だからこそ、死んでも復活する。死なない、ではなくそのたびに生き返っているのだ。

 かつて隊長は『聖人』を相手に戦ったことがあった。
 だからこそ、このことを知っていたし、『聖人』の『聖痕解放』の弱点も知っている。

「そんなとっておきがあるとは、驚きだ!」


 隊長は両の手に対応した『手』を作り出し、アーニャへと飛ばす。
 だがその『手』はアーニャの手前でバリアに弾かれるように、掻き消える。

「さすがだ!……だが」

「ヴィー……あなたは、いつまで続けるのですか?」

 その言葉を聞いて隊長は攻撃の手を止める。
 そしてふと周りを見渡してみた。

 アーニャの光は夜の闇を照らし、降りゆく粉雪は光を反射させて輝いている。

「これは……」

 まさにそれは地上に振りゆく星屑の様。
 隊長はそれの一つに手を伸ばして、握りしめる。
 その手の中には雪の冷たさだけでなく、なぜか暖かさも感じた。

 これまでどんなに手を伸ばしても届かなかった星々。
 それは自分には絶対に手の届かないもであると思っていた。
 だが今、それはこんなにも近くにある。


「星は……こんなにも近くにあったのか。手を伸ばせば……届くほどに」


 隊長はぽつりと呟く。


「隊長……あなたが、欲しかったものは……」

 アーニャの声を聞いて、隊長は、少しの間目を閉じる。

 そして目を開けてアーニャの方へと向く。
 その瞳に映るのは、アーニャの姿。
 それと、かつて手の届かなかったあの女性の像。

 二つは重なり合って、隊長の前に立っている。

「そうだな……終わらせよう」

 全てを悟ったような、隊長の声。

「お前に、俺はもう必要ない。……いや、お前にとって俺は不要なのだろう」

 この星屑振りゆくゴーストタウンに響く地響き。
 隊長の後方にあった、比較的大きめのビルディングは振動と共に宙へとせり上がっていく。

「だが、ここでお前を素直に帰してやるほど、俺は諦めはよくないんでな!」

 隊長の周囲を渦巻く念動力。
 それは力の行使の余波であり、それが及ぼす対象は別である。
 目視した限りかなりの高さがあったと思われるビルは隊長の頭上を加速しながら天へと昇っていく。


「卒業試験だ、アナスタシア。

今から俺はあのビルを空に打ち上げて、その後加速させながら落とす。

あの質量を相応の速度を持って墜落させれば、さながら大質量の隕石と同等だ。

被害はこの憤怒の街だけでは済まないだろうな」

 挑戦的な口調でつづける隊長。
 アーニャはそれを黙ってみている。

「このどうにかして防ぐことができれば、お前の勝ち。好きにするがいいさ。

だが防げなかったとき、お前はどうする?

お前は死なずとも、無関係の人間は大勢死ぬだろう。

俺はそれに対して心が痛むことはない。俺は化物だからな。

さぁなんとかしてみろヒーロー!俺という障害を、乗り越えて見せろ!

アナスタシア!」

 その言葉と同時に隊長の体はサイコキネシスによって浮かび上がる。
 さらに余波による、念動力の暴風は小さな瓦礫や砂を巻き込んで竜巻のように隊長の周りを回り始めた。


「カニェーシュナ……もちろん、全部守ります。

……あなたを超えて、私は前に進みます!」

 アーニャを包む天聖気はさらに輝きを増す。


「言っておくが、ビルが摩擦によって質量が減衰するなんて期待はするなよ。

俺は、徹底的に、常識を壊してやる」


「なら……私は、徹底的に、常識を、日常を守ります!」


 言葉の明確な対立。
 それを合図に、アーニャは地を蹴り、隊長へと突撃する。


 隊長は、大量の『手』を生み出しあらゆる方向から、アーニャを掴んで圧死させようとする。
 しかし翼のような天聖気の放出はブースターのような役割を果たし、その勢いだけで『手』の弾幕を突破した。

 それに対して隊長も動揺を見せることなく拳に念動力を纏わせてアーニャを迎え撃つ。
 向かい合う両者の拳の応酬はぶつかり合い、衝撃の余波を生む。
 しかしそれでもお互いに決定打は与えられず、拳の弾丸が数秒間行き交う。

「こいつは、どうだ!」

 その膠着状態を裂きに破ったのは隊長であった。
 一歩後ろに下がって、念動力で地面に舗装されていたアスファルトを強引に板のように引きはがす。
 アーニャを挟むように立ちあがった二枚の石版は加速してアーニャを挟み撃ちにする。

 アーニャは両手の平を広げた状態でを板に向けて差し出す。
 高密度の天聖気を纏った両腕は、二枚の石版に圧迫されることなく貫いた。

「囮だ馬鹿め!」

 二枚の石版を貫通した穴から見えたのはさらに巨大な壁。
 隊長は石版によってアーニャの視界をふさいだ後に、二つのビルを念動力で引っこ抜いて石版の陰にしながら、さらに挟み撃ちにするようにしてきたのだ。

「これ、でも、まだ!」

 アーニャはそれも先ほどと同様に防ごうとする。
 しかし今度の質量は先ほどの比ではない。
 アーニャの何千倍もの物量が両側から圧殺しようと迫ってくるのだ。

 いくら『聖痕解放』で大幅な身体上昇と運動量ブーストしようとこれはさすがに無理である。
 アーニャはその両側からの攻撃に耐えきれず、押しつぶされた。


 勢いよく加速してアーニャを潰して衝突したビル同士は、その衝撃で粉々に砕ける。
 だが隊長もこれで終わりだとは思っていない。

 きっとあの瓦礫の雨の中から体をすぐさま再生させてこっちに向かってくるだろう。

 だがここで隊長はほぼ本能で、しゃがみ込む。
 先ほどまで自身の頭のあった場所には人体を一閃せんとローリングソバットが過ぎていく。

「こちら、です!」

 いつの間にか隊長の背後に回っていたアーニャの蹴り。
 この瞬間移動に隊長は疑問で脳を埋め尽くされながらも、すぐさま『手』を出現させる。

 アーニャはそれにすぐに捕まって、圧掌によって潰される。

「いったいどこから?」

 隊長が忌々しげにそう呟いた時、視界の端に動く影。
 それに反応して何とか防御態勢をとるが、念動力を纏うのは間に合わず、腕に強烈な衝撃が走る。

 そこでようやく何が起きていたのははっきりした。
 隊長が振り向いて目にしたのは、体を再生させながら拳を振るうアーニャの姿だったからだ。

「くっ……そうか。周囲には散布した天聖気で充満しているからか……」

 アーニャが放出させている天聖気によって、周囲は”復活”の天聖気で充満していた。
 故に全身が潰されて死んだとしても、その範囲内ならば好きな場所に再び自分を復活できるということだ。


「ふざけて、やがる……」

「……あなたに、言われたくはないです」

「だが……死なせなけりゃ、それは使えない!」

 今度は隊長から接近しインファイトへと持ち込む。

「殺さない程度に、削ればいいだけだ!」

 お互いの正面からの打ち合いの中で、隊長は念動力の刃を発生させる。
 鋭利な刃ほどに念動力を圧縮して精錬すると空間が歪み視覚でとらえやすくなるという弱点はあるがこの際気にしない。
 小さな刃は、アーニャの四肢を切断しようと迫る。

「こん、な、ことで!」

 その不意打ちレベルで織り込んできたその攻撃をぎりぎりアーニャは避ける。
 しかしそれは、隙を生んでしまう。
 避けた際の体の移動によって隊長の拳がアーニャの右肩に直撃した。

「ぐぅう……ああ!」

 その一撃によって肩の骨が砕ける音と共に、後ろへと吹き飛ばされる。

「ようやく、しっかり当たったな」

 拳を振り抜いて、隊長は少し満足そうな顔で吹き飛んでいくアーニャを見ている。
 アーニャは、骨を再生させつつ仰向けで吹き飛んでいる状態から体制を整える。
 そして地に足を着けて、後方に滑りながらブレーキをかけて吹き飛ばされた衝撃を殺した。

「この程度では……終わりません」


「あいにく……時間切れだ、アナスタシア」

 隊長はすぐにも向ってこようとするアーニャを制止して、人差指を上へと向ける。
 それにつられて上を見れば、そこに何があるのか自ずとわかった。

「あれは……」

 雪雲に遮られ全貌はわからないものの、轟音と共に何かが飛来してきている。
 そしてこの状況で落ちてくるものはただ一つ。

「さっき打ち上げたビルはそのまま大気圏を突破した後に、十分な距離を稼いだ後に再び加速しながらこの地球に飛来する。

ごちゃごちゃした細かい理屈は無視させてもらうが、威力を落とすつもりはない。

あれだけの質量を、摩擦で減少させることなく充分な速度を持って衝突させるんだ。

充分、戦術核兵器並の破壊力はでるだろうな」

 接近してくる音は次第に大きくなり、空気は震える。

「もうここまで来てしまえば俺を止めても、あの隕石もどきは止まらない。

地表との衝突を待つだけ。

さぁどうする?アナスタシア。

残された選択肢は、あれをお前が止めるしかないぞ」


 隊長のその声と共に巨大な火球が雪雲を貫いてくる。
 その衝撃によって空を覆っていた雲は吹き飛ばされ霧散した。

「当然……止めます!」

 隊長から視線を外してすぐに近くにあった廃ビルへと走る。
 全身からの天聖気の放出によって加速していき、アーニャはそのビルの壁を垂直に駆け上がった。

 そして屋上までたどり着き、上空を見る。
 保護するための念動力と、摩擦による炎が混じり合うビルは隕石というよりも、もはやミサイルに近い。
 それは目前まで迫っており、もう一刻の猶予もない。

「アプサリユートナ……絶対に、絶対に止めて、みせます!」

 その迫りくる火球に向かい両手を差し出し広げる。
 背の光翼はさらに大きくなり、羽ばたくようにうねる。
 それと同時に両手からは膨大な閃光を生み出しながら天聖気が放出された。

 そして膨大な力同士は衝突して、拮抗する。
 アーニャが足を着けているビルの屋上は、その衝撃に耐えきれず亀裂が走った。

「く……ううう……あああ!!!」

 アーニャはそれでもなお、押され始めていることに気づく。
 もはや自身の限界くらいの天聖気を出力していたが、それでも受け切るには足りないのだ。


 アーニャの手に出ていた『聖痕』は腕全域をすでに侵食し、力を行使するたびに尋常ではない速さで傷は広がっていく。
 『聖痕』が全身に行き渡った時、それが完全な時間切れである。

「まだ……行ける。限界なんて……超える、ものですから!」

 それでも、さらに力を振り絞った。
 全身から放出される光は輝きを増し、夜の闇で包まれる憤怒の街を照らす。

 体の『聖痕』はさらに進み、その傷口はずきずきと痛みを発する。
 体中は痛みでいっぱいで、疲労した精神は警告として頭痛やめまいで現れる。

「アドナーカ……それでも、ここで、ここで守れずに、誰がヒーローですか!」

 これを止めなければ、多くの犠牲者が出るのだ。
 ヒーローとしての矜持としてこれを止めて、隊長に勝ち、アーニャは帰るのだ。
 帰りを待つ皆の元へと。




「うううぅらああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 


 自身の力を出し切るための咆哮。
 巨大な閃光と共に、膨大な天聖気がエネルギーとして隕石と化したビルとぶつかり合う。
 それは墜落の威力を上回り、降りゆくビルは原形を保てず爆発させる。
 その際に太陽のごとくの爆風が憤怒の街の夜空に広がった。

 同時にアーニャの足場にしていたビルも耐えきれず崩壊を始める。
 天聖気の光とビルの爆光が収まるころにはそこら中に瓦礫の雨が降り始めた。

 アーニャの立っていたビルは崩れ去り、土煙を上げ中がどうなっているのかはわからない。

「やはり、防ぎ切ったか」

 隊長はアーニャが埋まっていると思われる土煙が上がるビルの倒壊跡をじっと見ている。
 その瞳の中に覇気はない。

「お前の勝ちだな。アナスタシア。

お前に俺は、必要ない」

 そして背を向けて、その場から去ろうと歩き出した。





 





 だがわずかに風を切る音に隊長はとっさに振り向く。

「これが……最後です!」

 そこには全身に『聖痕』が行き渡り、顔面まで血に濡らし、全身から血をまき散らしながらも、拳を振り上げたアーニャの姿だった。
 本来ならもはや限界。『聖痕』は全身に行き渡った時点で天聖気の供給はなくなり意識も保てるはずがないのだ。

 当然アーニャからは天聖気はほとんど感じられない。
 もはや力は出し切って完全に枯渇しているのが目に見えてわかる。

 それでも、アーニャは立ち上がり拳を振り上げる。

「一撃、入れて、終わり!」

 完全に不意を突かれた隊長は急いで防御態勢を取ろうとした。
 だがなぜか体は動かない。
 そのまま拳は隊長の頬に入り、アーニャはそれを今できる渾身の力で振り抜いた。


「ぐぅ、がはっ!」

 隊長はその衝撃で、叫び声を上げながら受け身も取れずにのけぞる。
 そして大の字の態勢で、空を見上げながらその場に倒れた。

 アーニャはそんな隊長を見下ろしながら、血濡れの顔で静かに言う。

「『ごめんなさい。あなたの想いには答えられません』……あなたへの、伝言です」

 その言葉を最後に、アーニャも糸が切れたようにぱたりと倒れた。
 それなのに隊長は、呆然としたまま空を見上げ続ける。

 空の雪雲はさっきの衝撃で散ってしまい、今見えるのは透き通る星空である。
 この街には今光がないので、街中で見るよりも星がよく見えた。

「まったく、最後に手痛い置き土産してきやがって……」

 隊長は夜空を望みながら呟く。
 脳裏に映るのは、あの女性と共に見たかつての星空。






――――――
――――――――
―――――――――――


 周囲には杉林で覆い尽くされている。
 地面はところどころに落ち葉の茶色が見えるがほとんどは雪によって白く染め上げられており、同様に木々も雪を被っている。

 そんな木々の間をある男は歩いていた。
 歩調は特に速くもなく、まるで当てがないように林の中を進んでいく。

 口から出た息は、外気に触れた瞬間白く染まる。
 それだけでこの場の寒さを物語る。

 男はふと、空を見上げる。
 薄い白い雲に覆われた空からは幽かに太陽が透けて見える。
 薄暗くはないが決して太陽ははっきりとは顔を見せない、そんな天気。
 まるで自らの目的をはっきりと持てない自分のようだと男は思った。

 そして再び歩き出す。
 ふらふらと、さながら幽鬼のように林の中を男は進んだ。


 そんなとき、ふと男の前方に開けた、広場のような場所を見つけた。
 そこにはさほど大きくない、それでも厳かな雰囲気は崩さない教会が見える。

 男はまるで引き寄せられるかのように、教会の方へと歩いていく。
 そして男は、近づいたことによって教会の壁にもたれかかる一つの人影を目にした。

 偶然、空を覆っていた白色の雲の間から太陽が一筋の光を差し込ませる。
 その光はその人影に当たるように差し込んだ。

 その人は光が周囲の雪に反射していたからかもしれないがキラキラと輝いて見える。
 男はその美しさに惹かれるように、ゆっくりと近づいていった。

 しかし、途中で枝を踏んだのかぱきりという音が鳴る。
 その音に気が付いたのかその人影、女性は男の方を向いた。

 女性は驚いた表情をしていたが、その音を鳴らした人物が人であることがわかると安心したかのように男に微笑みかけてくる。

「こんにちは。今日も寒いですね」

 その笑顔は男にとっては眩しくて見ていられないようなものであったのにもかかわらず、目を離すことができなかった。


***

 小さな一軒家の前の通りで男は、一人のコートのフードを深くかぶった別の男とすれ違う。
 そしてフードの男を去っていく。残った男の手のひらの中には一枚のメモ。

「二二○○任務開始……か」

 そこに書かれていたことを男は小さく読み上げる。

「あら、どうしたんです?

寒いのに、わざわざ外に出て。」

 背後の家から一人の女性が出てくる。
 それに気づいた男は慌ててメモをポケットにしまった。

「ああ……いえ、えーと……星を、見ていたんです」

 男は言い訳を適当に見繕って言う。
 少し不自然さが残っていたが、女性は気にしなかったようだ。
 そのまま女性は男の隣まで来る。

「ああ、確かにここら辺は都会に比べて、星がよく見えますからね」


「……ええ、そうですね。

あなたの方は、お子さんはいいのですか?」

「はい、主人が寝かしつけてくれてますので今は大丈夫です。

それにしてもジョンさんも大変ですね。バックパッカーで、北海道のこんな田舎まで来るなんて」

 女性はそう言った自由な旅に憧れているのか、少し目を輝かせながら言う。
 男はそれに苦笑しながら答えた。

「いえ……もう慣れっこなんで。

それにしても助かりましたよ。宿も見つからずに困っていたところに泊めていただけるなんて」

「困ったときはお互い様です。

あなたが作ってくれた料理、おいしかったですよ」

 女性は微笑みながら上目使いに言う。
 純粋な目で見られ男は少したじろぐが、その目を吸い込まれるように見つめる。

「いえ……僕は、まだまだですよ」


「謙遜しないでください。味にうるさい主人が絶賛していたんです。

私が嫉妬しちゃうくらいだわ」

 そんなことを言いながらも楽しそうな表情をする。
 彼女の笑顔を見て、これからすることを思い出して少し、悲しくなった。

「本当に、あなたと出会えてよかったわ。

あなたみたいな、とってもいい人に出会えて」

 女子は屈託のない笑顔を男に向けてくる。

「ええ……僕も、よかったです」

 はたしてその言葉は、会話をつなぐために言ったのか。
 いや、きっと今考えれば、あれは心からの本音だったのだろう。


***

 炎に包まれた教会の中、男と赤子を抱えた女性は向かい合う。
 すでに入り口は焼け落ちた柱によって塞がれていた。

「惜しいな。大したべっぴんさんだが、人妻とは……」

 男はできる限り無感情でそう言おうとする。

「本当に……あんたは、きれいだ」

 そんな男の呟きは燃え盛る炎の音にかき消される。
 女性は、もはや絶体絶命の状況だというのに、男に微笑んでいた。

「あなたの、あなたたちの目的はこの子でしょう?ならば頼みがあります」

 女性は男に依然柔らかい表情で言う。

「俺にそれを頼んで聞くと思っているのか?

お前の夫を殺し、この村さえも滅ぼした俺たちが最後の情けにお前の言うことを聞くとでも?」

 女性は抱いている赤子をぎゅっと抱きしめる。

「確かに、他の人たちは機械のように、冷徹な人ばかり。でもあなたは、きっと本当に優しい人なの」


「目の前で、お前の夫をミンチにした男にそれを言うか?あんたまるで聖女だよ。ほんとに聖女みたいだ。いらいらする」

 そんな男の言葉に対して、女性は微笑む。

「だって、あなたにしか頼めないでしょう?

わたしが望むのはこの子の幸せ。だからこの子を幸せに導いてあげて」

 女性はこんな状況でも静かに眠る赤子の顔を覗き込んだ。

「そしてできるなら、あなたにも幸せを……」

「……ふん、まぁ考えておいてやる」

 ぶっきらぼうに男は言う。だがその表情は炎の逆光によってよく見えない。
 その言葉に満足したのか自らの子を抱く腕を緩める。

「頼みますね。

この子の名は、アナスタシア」

 女性は腕の中の赤子をそっと男に差し出す。
 男は赤子を受け取って、その武骨な腕で抱いた。

「あなたなら大丈夫。

だってあなたは、いい人だもの」

 女性はその言葉を本当に輝くような笑顔で言う。

「俺は……」


 女性のその言葉に応えようと赤子を見ていた顔を上げる。
 だがその目に映るのは、焼け落ちた天井が、女性に今まさに落下せんという時だった。

「ありがとう」

 その言葉を残して、女性は炎に包まれ落ちてきた天井の下敷きになった。
 ずっと無表情だった男はそこで初めて、困惑のような、驚愕のような表情を浮かべた。

「任務……終了」

 男は感情を押し殺したような声で、その言葉を絞り出した。

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――――――――――
――――――――




 





 星空は依然変わりないのに、周囲は随分と変わった。
 結局隊長は、ずっと彼女の影を追い続けていたのだ。

「全く……。

子には振られ、親にも振られ、本当に散々だぜ……。

だが……なんだか、悪くない」

 隊長は星空を見上げながら、優しく微笑んだ。





 



 隊長はアーニャを背負いながら、静かな夜の街を歩く。
 アーニャの全身に回っていた『聖痕』による傷はすでに全て塞がっていた。
 憤怒の街とは違って、街灯に照らされており道は明るい。

「ようやく、終わったね」

 そんな帰り道の途中、一本の街灯の下で塩見周子は待っていた。

「なんだ女狐。こいつの迎えか?」

「まぁ……そんなところかな?」

 周子は耳と尾を出しており、いつでも臨戦態勢に入れることは伺える。
 だが殺気は発しておらず、あっけらかんとした態度であった。

「それにしてもよ、終始頭ン中のトラウマみたいな部分刺激してきたのはお前の仕業か?」

「あれ?気づいてた?

まぁちょっとしたそんな感じの妨害するしかアタシにはできなかったけどね」


 周子は二人が戦闘開始した直後から、遠隔で隊長に妨害を行ってきたのだ。

「全く……、ただでさえ脳内余裕なくて弱体化してたのにあれのせいで余計に脳みそが痛むんだよ……。

そのせいで最後一発貰っちまったしな」

「そう、アーニャの役に立てたのならそれはよかった」

 周子は満足そうにニヤリと笑う。
 それに対して隊長は苦い顔をするだけだった。

「ところであんたはどうして、『プロダクション』にたどり着けたの?

それについての疑問がまだ残ってるんだけど……」

 本来ならば『デストロー』が歴史に介入できないはずなのになぜか隊長は攻め入ることができた。
 それはなぜなのか。


「ああ……さっき言っただろ、脳内余裕ないって。

俺はずっと自分で自分のルールを無視し続けていただけさ。

『歴史に介入できない』っていう『デストロー』のルールをずっと破ってたんだよ。

だがこれは重大なルール違反だからな。まぁ俺そのものがルール違反のくせにそう言うのはおかしなことだが。

そのためにイルカみてーに脳内分割して、処理の半分以上をそれにずっと費やしてたんだよ。

言い訳みたいだがそのせいでめちゃくちゃ脳みそ使ってて本調子の20%も出せなかったのさ。

本来の俺なら日本を地図から消すくらい簡単にできるんだが、さすがに今の状態じゃああんた相手にするのも少し面倒そうだ」

 挑戦的な口調で隊長は言うが、周子はのらりくらりとその言葉をスルーする。

「そりゃ聞く限りほんとに勘弁だよ。

ところでその、『デストローのルール』を破ることっていつでもできるの?」

 ある意味気になるところはそれである。
 これがいつでも使えるならば、結局この男は脅威のままなのだから。


「いや……もう無理だ。

アナスタシアがいたから俺もこんな無茶ができたが、もう吹っ切れちまったしな。

今も、そしてこれからもそれをする意志は起きないだろうし、それを行使することもできないだろうさ。

これは俺のわがままだ。一度限りの表舞台。

あとは俺は裏方に徹するだけだ」

 それを聞いて周子は内心胸をなでおろす。
 本来運命とは巨大なものだ。いかに膨大な力を持っていても個人が簡単に自由にできる物じゃない。
 だからこそ、隊長の言葉は真実であることがわかる。

「それならよかったよ。

でも自覚はあったんだね。自分が『デストロー』だってこと。

『運命力』関連の異能は自覚がないことも多いはずなんだけど」

「ガキの頃からいろいろしてきたからな。

そのくせニュースにもなんないから自覚もするさ」

 やれやれと言ったように隊長は首を振る。


「まぁあれだけ派手に暴れても、周囲の街の人間誰一人気付かないんだから、『デストロー』ってのは大したもんだよ」

「まぁ今日ほどこの力を厄介に思った日はないけどな」

「でもそれだけする価値はあったということね」

「知るか。中途半端に苦労しただけだぜ」

「でもずいぶんと満足そうな顔してるじゃん」

「うるせえ。殺すぞ」

 隊長はじろりと周子をにらみながら背負っていたアーニャを降ろす。
 そのまま塀を背もたれにして眠っているアーニャを座らせた。

「だが多分あの中で俺の能力の恐ろしさについて一番知ってたのはお前じゃねえのか?

多分真っ先に逃げるんじゃないのかと思ったが、どうして残ってるんだよ」

 昼間の時点で周子は美玲と共に避難すると言っていた。
 だが今、周子はここに留まって隊長と向き合って会話しているのはどういうことなのか。


「まぁ避難しようとしたんだけどさ。

娘は『アーニャを置いて逃げるなんてできるか!ウチは残るぞ』って言って聞かないものだからさ。

しょうがないからプロダクションに残していったわけ」

 周子はそう言って笑っているが隊長は疑問に思う。

「お前みたいなやつの性格なら、娘だろうが置いて逃げそうな気がするんだがな?」

 そんな隊長の言葉に周子は目を丸くしてみた後、ため息を吐く。

「あんまり親を嘗めちゃあいけないよ。

娘が残るって言ってるのに、一人逃げられるわけない。

それにせめて娘には少しくらいかっこいいところ見せたいと思うのが親ってもんだよ」

「なるほど、それが……親ってものか」

 妙に納得したような言葉を残して隊長は周子に背を向ける。


「じゃあ俺はここらへんでさよならさせてもらう。

そこで寝てる小娘については、後は任せた」

「そう、これでまたこの街は平和になるね」

「まったくだな」

 憎まれ口を交わしながら、最後に隊長は振り向く。

「あいにく俺は子育て失敗した人間だ。

あんたは俺みたいになるんじゃねえぞ。俺のことは反面教師にでも思っとけ」

「言われなくとも、わかってるさ」

「それと、アナスタシアが起きたらこれを渡しておいてくれ」

 隊長はそう言ってボロボロになったスーツのポケットから一つの小さな記録媒体を取り出す。
 そして周子に向かって投げ、それは放物線を描きながら周子の手の中に納まった。

「これは?」

「15年前の任務資料だ。きっと知っておいた方がいいことが書かれているはずだ」

 それを聞いて周子は驚いたような顔をする。

「意外にあんた、いい人なんだね」

「ああ、よく言われるよ。

じゃあこれで正真正銘さよならだ。

もう二度と会うことは、無いだろうな。アナスタシアにもこれくらいは伝えておいてくれ」

 そして隊長は背後に向かって手を振りながら周子から離れていく。



 






 ふらふらと夜空を見上げながら隊長は歩く。
 周囲は住宅街の真っただ中で、人通りはまるでない。
 そしておもむろに、星空へと手を伸ばす。

「やっぱり手は届かねえな。

でも、ここから見えるだけでも十分か」

 機嫌がよさそうにニヤリと笑い、その大柄の男は一人夜の闇の中へと消えていった。






 


『本日の天気予報です。先日まで日本列島を覆っていた低気圧は北上を続け、全国的に晴れとなるでしょう』

「結局アーニャはすぐ行っちゃったわけですね。

なんだか少し急ぎすぎな気がしますけど」

「まぁ居ても立ってもいられなかったんでしょう。

多分すぐ帰ってくると思いますけどねー」

 プロダクションの中、ピィとちひろは相も変わらず自分のデスクに向かって自分の仕事を勤しんでいる。

「それにしても聞いてくださいよ!

プロダクションの口座にかなりの大金が振り込まれてたんですけど、やっぱりアーニャの隊長さんが振り込んだんですかね?

つ、使っても問題ないですよね。こんな事務所の修理代に使ってもおつりがくるぐらいの大金……。

ふふ、ふふふふ……。返してほしいって言っても、もう返しませんよ……」

「ちひろさん目の中お金のマークになってますよ」

「お、おやこれは失礼」

 ちひろが目をこすっているときに、ピィはふと窓の外を見る。
 空を見上げれば一筋の飛行機雲がかかっている。

 ピィはそれを一瞥し、指を組んで伸びをした。





 周囲には杉林で覆い尽くされている。
 地面は地面の茶色はほとんど見えないほど雪によって白く染め上げられており、同様に木々も雪を被っている。

 そんな木々の間をある少女は歩いていた。
 歩調は特に速くもなく、でもしっかりとした足取りで林の中を進んでいく。

 口から出た息は、外気に触れた瞬間白く染まる。
 それだけでこの場の寒さを物語った。

 少女はふと、空を見上げる。
 空は快晴。先日は雪がかなり降ったというのに今日は一変してすっきりとした空だ。

「……資料通りなら、この先ですね」

 そして再び歩き出す。
 まっすぐ、迷いなく少女は林の中を進んだ。

 そして、少女の前方に開けた、広場のような場所を見つけた。
 そこには忠行が敷き詰められているだけの広場、だがその中心は小さな丘のように盛り上がっているのが見える。

 少女はまるで引き寄せられるかのように、中心へと歩いていく。
 そしてしゃがみこんで、そこの雪を退けた。


「……これは」

 白色は残ってはいるが土によって茶色に汚れたもともと建物であっただろう瓦礫が山となっていた。
 そして少女はその瓦礫を退けていくと、とある錆びた金属が目に入る。

 それを完全に露出させると、それは少女の身の丈近い十字架であった。
 少女はそれを軽く撫で、目を閉じる。

「……ただいま」

 そして小さくつぶやく。

 少女は立ち上がり、満足したような表情で十字架に背を向ける。
 そのまま元来た道を少女はなぞるように歩き出した。

「……せっかく北海道まで、来たんです。

みんなにお土産でも買って、帰りましょう」



 

アナスタシア

職業 元ロシア特殊能力部隊隊員
属性 能力者
能力 ”復活”の天聖気、ロシア式CQC

詳細説明
言葉もしゃべれないほど幼いころからロシアの超能力者機関に拉致にされて育てられ、10歳より特殊能力部隊に入隊し、様々な任務をこなしてきた。
ロシアの孤島の任務の失敗で遠路はるばる日本まで漂流してくる。
いろいろあって特殊能力部隊をクビになったので、現在日本で女子寮に住んでいる。
あらゆる国の言葉をマスターしているが特に覚えが早かったのは日本語である。
しかしそれでもたまにロシア語は出てきてしまう。

『プロダクション』でヒーローをやっているがやはり同盟傘下ではないので知名度は低い。
メイド喫茶『エトランゼ』でバイトもしている。

ロシア式CQC
ロシアで生み出された超次元格闘術。これを編み出したのはアーニャの所属していた特殊能力部隊の隊長。
『P』隊長が自身の戦闘スタイルとして編み出したものを、普通の人間でも使えるように改変を加えたもの。
その強さはアーニャが回復は能力に頼ったもののカースを人間の力のみで倒すほど強力なものである。
おそロシア。

”復活”の天聖気
かつて救世主(メシア)が起こした奇跡の一つである死後の復活。生き返り。その奇跡が彼女の中で”天聖気”として循環している。『復活の少女(アナスタシア)』
かなり強力な力だが、固有能力である”復活”に力の大半が割かれているので天聖気としては基本能力による上昇幅は低い方で、纏うような使い方しかできない。
生き返らすということは死と隣り合わせであり、精神的にかなりの負担をかけるので、天聖気の枯渇以上に精神の消耗が大きい。
これまでの治療は細胞単位での”復活”をしている。
『聖人』として力を与えたのはとある主神である。




『天聖気』
天使や神聖な神さまが使う聖なる力であり、混じりけのない純粋な力。
魔力と根本的には同じだが、清らかな心の持ち主、または魔力濾過ができる場合にそれらをフィルターとして天聖気として蓄積される。
だだしそれとは別にエンジンのような出力機関が無いと、扱うには難度が高い。
・天聖気そのものが意味を持った力であり、その属性は個人によって違う。
・その属性によって、固有の能力を発揮する。
・『気』としての側面もあり、属性によって差はあるものの身体能力を向上できる。
・浄化の力があり、カースの核など魔的要素が強い部分を察知することができる。これも属性によって差がある。
・属性に依存するが、魔術のように『天聖術』を組むことができる。ただし扱うには相当の知識と技術、訓練が必要である。
『聖人』
力を与えた神と深くつながっている者。
基本的には普通の天聖気使いと差はないが、神から力を供給してもらうことができる『聖痕解放』が使える。
『聖痕解放』
力を与えた神と直接パイプをつなぐようなことであり、一時的に膨大な力を得ることができる。
繋がっている証として、個人差はあるが特徴的な傷、つまり『聖痕』が浮かび上がる。
しかし供給される膨大な天聖気は人間の身には余るため、体を崩壊させかねない。
『聖痕』はその目安のようなものでもあり、時間経過や膨大な天聖気を使うことで全身に広がり、回りきった時『聖痕解放』は強制解除される。
その後は気絶し、天聖気は空の状態になる。その際に失血死する可能性があるので注意が必要。
もう一度使うには、天聖気が回復しきった上で充分な休息が必要となる。


『P』隊長

職業 傭兵 元ロシア特殊能力部隊隊長
属性 超能力者
能力 サイコキネシス 『外法者』

詳細説明
傭兵であり、裏の世界で恐れられる舞台裏の征服者。
『外法者(デストロー)』の特性上歴史にならないので、流れる呼び名が定まらない。
例として、『コードネーム”P”』、『ハリケーン』、『局所天災』、『ルール破り』、『沈黙する全滅屋』、『眠らぬ黄昏』、『台無し男』、『盤を引っくり返す者』、『対面致死』、『正面から来る卑怯者』、『チートプレイヤー』、『理不尽傭兵』、『イレーザー』、『外側の殺し屋』、『アンフォーチュネイト』
15年前の任務の際にロシア政府から北海道での任務の依頼を受け、その直後に特殊能力部隊を設立して隊長となった。
隊長となった後もロシア政府だけでなく傭兵として様々な依頼を受けている。
ロシア政府としても飼いならせる存在ではないので内部の人間からも警戒されていた。

もともとロシア政府が拉致したアナスタシアの面倒を見るために部隊を設立。
そしてアナスタシアがいなくなった際に部隊の存在意義は失われたので自らの手で解散させた。
その際にロシア政府と揉めた結果、表立って語られていないが現在ロシア政府の内情はかなり悲惨なことになっている。
趣味は映画観賞。


『超能力』
最もポピュラーとされる異能であり、珍しくない程度の能力。
汎用性に富んでいて、使い方次第では日常生活の役に立つ。
念動力と言われるベクトル的な運動を起こすサイコキネシスと物を動かすテレキネシス、そのほかにも透視、予知、発火など多岐にわたる。

『外法者(Dest Law)』
血統とか、因果とか関係なくごく普通の一般家庭からでも突然生まれたりする怪物。
『運命力』が存在せず因果に縛られない存在で、『ルール』を無視できる。
欠点として世界に縛られない、つまり物語に関わることができない。
世界的に有名であったり、歴史に名を遺していたり、はたまたこれから世界にその存在を轟かせる人や、事柄には介入できない。世界に名を残せなず、強大な力を持っていてもモブにしかなれない。
歴史に介入できないということは無意識の嫌悪や時に強引な因果による妨害によって引き起こされる。
そしてその能力の性質上、自身がそれであると気づくことなく一生を終える場合も多い。

限界のない能力であり、『ルール』、『物理法則』だけでなく『制限』も破ることができる。
それによって自身の能力の限界『制限』を隊長は突破している。
能力の例として
・宇宙空間を装備なしでも自在に動ける。
・防御不能の攻撃でさえも防げる。
・物理的以外で即死する攻撃なども防げる。
・究極として『デストローのルール』そのものさえ破ることができる。



以上で終わりです。
プロダクションのメンバーお借りしました。

とりあえずアーニャ中心のお話はこれでひと段落です。
隊長については話の背景や名前くらいは出てきても表立って話に出ることはもうないでしょう。

乙です
アーニャと隊長さんのバトルが熱くて半端ない
プロダクションの雰囲気も本当にいい感じ
怪物と人間の差異も、ちょっと参考にしたいところ

というわけでこちらも投下
学園祭二日目ですよ

とある場所。資料室の、本棚から、一冊のノートが落ちた。

それは地球の文化をまとめた物らしく、落ちたページには童謡が書かれていた。

『地球の童謡 ・非常に興味深い

男の子はなにで出来ている?
カエルとカタツムリ、そして子犬の尻尾
そんなものでできているのさ

女の子はなにで出来ている?
お砂糖とスパイス、それに素敵な物をたくさん
そんなものでできているのさ

男の人はなにで出来ている?
溜息と流し目、そして嘘の涙
そんなものでできているのさ

女の人はなにで出来ている?
リボンとレース、それに甘い顔
そんなものでできているのさ』

それなりに有名なマザーグースの詞。そこにノートの主は何か書き足していたようだ

『怪物はなにで出来ている?
・・・・・・、・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・』

一部が破けて、そこはもう読み取れない。

厳重に閉ざされた資料室で、落ちたノートはそのページを開いたまま、誰にも触れられないままでいた。

裏山に一人、眼鏡をかけた女性が居た。

『だれかいますかー?いたー!』

その女性に、木の陰からひょこっと顔を出した小さな子供が駆け寄ってきた。

『ハロー?メガネのおねーさん、メガネはずそー?』

「…来たわね」

『?…ハロー?』

「あまり触らないでくれるかしら。オクト、光学迷彩解除」

『ゴロンゴロン』

触れようとしてきた子供の手を振り払い、女性は…マキノは近くで光学迷彩によって隠れていたオクトを呼び出す。

『…?』

「オリハルコン、セパレイション。…アビストーカー、ウェイクアップ」

戦闘外殻を纏ったマキノは、煙幕を噴射した。

『あ、あわ…あ…れ?』

子供の姿をしたカースがそれに怯んだ隙を逃さず、マキノは触手の針を腹部に音も無く突き刺した。

触手の先端に突き刺されたまま、そのカースは悲鳴を上げ始めた。

『おろして!おろして!痛い!痛いよぉ!助けてぇ!!』

「核は…両目ね」

『や、やめて!やめろ!死にたくない!死ぬのは!』

「…カースが何を言っているのかしら」

マキノがその悲鳴を無視して核を破壊しようとした瞬間、周囲から他のアンチメガネカースが集まってきた。

『ヨバレテキマシタゾ、メガネシスベシ!』

『ナカマニナニシテンダ、コノメガネ!』

『同志ー!煙いっぱい、大丈夫?』

通常個体が二体、AMCが一体。裏山にはそれほどの数が居ないのだろうか?

その三体がそれぞれ核からレーザーを放ち、攻撃を始めた。

「なるほど…一撃で仕留めないと面倒ね」

煙幕を撒いて、光学迷彩を使用しても、下手な鉄砲数うちゃ当たるとも言う。

光を放つレーザーだからこそ回避はある程度容易だが、一体を攻撃するたびにこれが繰り返されるのはなかなか危険で面倒だ。

『やだ!離して…あああああ!!』

「…!?」

乱入してきた三体に気を取られたその時、針に突き刺されたままのカースが前触れも無く、ボンッと音を立てて自爆した。

「自爆…」

『同志!メガネにやられた!?』

『メガネッコ、シスベシ!』

『メガネ、ハイジョ!』

その自爆によって、三体の方もヒートアップしているようだ。

「…」

三体が一気に煙幕の中のマキノに接近し、触手で攻撃をする。

…だが

『え?』『グオ…!?』『ガギャ…!?』

「あの程度の爆発で針は傷つかない…それにレーザー攻撃で既に核の場所は把握できていたのよ。隙を見せたわね」

その三体の核…合計四つに、四本の触手の先端の針が見事に突き刺さっていた。

「…まず4体。自爆までしてくるのは予想外ね」

カースが消滅したのを見届け、マキノは裏山を再び歩き始めた。

――

様々な思惑が飛び交う学園祭。小さな怪物、ナニカは学園の中を歩いていた。

そんな中、黒兎と白兎が、ナニカに抱きかかえられながら地味にテレパシーで会話していた。

『っべーわーマジっべーわー』

『…真面目に話せよ、なにがヤバいんだ』

『んー…アンチメガネカースが狩られてるっぽイんだよね、誰かは分からないけど』

『アイドルヒーローかもしれないな』

『あーそうダね、あとフリーのヒーローとかかも。増えている場所も確認できるけど、消えているのはあんまりいい気分じゃないヤ』

黒兎はアンチメガネカース達の行動や状態はある程度認識できる。その力によって、手下がどんどん消えていると分かるのだ。

その原因の一つにマキノ達が居た。マスクドメガネに恩を売る為、彼女達はアンチメガネカース狩りを始めていた。

それによって、黒兎がヤバイと感じ始めていたのだ。

『新作とか言っていたAMCもか?』

『いぇーす、普通の個体よりは被害は少ないけどサ、総数から見ればちょいとアタシの太い眉毛が垂れ下がるね。しょぼーんって』

『増やしすぎた弊害だな』

『返す言葉もナイなぁ、こっちは飛行機ジャックからの海外デビューまで皮算用していたのに…』

『ったく…海外デビューなんて考えていたのかこのバカは』

『あ、そレとAMCには自爆機能もあるからな、それも減ってる理由の一つだ』

『…なんでそんな事をさせるんだ?』

『変態ヲ焼くためだよ。最近物騒だかラね、子供相手に「孕ませたい」だのなんだの言う大人がいる時代だし』

『マジかよ世界終わってるな…って色欲に溺れればそうなるか』

『でもまさか変態以外への攻撃に自爆を使うとは思ってモいなかったよ。我が子が成長するのを見守る母親サンの気分?』

自らが信じる事の為に自爆特攻。それはある意味狂信特有の攻撃でもあった。

黒兎としては、我が子とも言えるアンチメガネカースは存在するだけでいい。人々の意識に刷り込む『風潮』をまき散すことが存在意義なのだ。

人々の意識へ刷り込む力は、本来ならばメガネへの反逆だけに留まる力ではない。それは自らの手を汚さずに社会さえ覆せる力。

黒兎の頭の考える能力がイカレていなければ、恐ろしい事になっていただろう。

狂信の波動にやられ『同志』となった者達は、『同志』であるアンチメガネカースを攻撃できない。

ましてや『始祖』である黒兎に刃向うなど、別の強力な力で守られてなければ不可能だ。

いざとなればアンチメガネカースたちの性質を塗り替え、全て別の狂信のカースへ生まれ変わらせればいい。

そうすれば『アンチメガネ』の風潮は消え、別の風潮が生まれ、改めて人々に染み込み始めるだろう。

その個体の認識とのズレがあればあるほど風潮は染み込みにくい。逆に言えば、無ければ染み込みやすい。

例えばメガネへの嫌悪などは、元から興味が無かったり、メガネよりもコンタクト派であれば染み込みやすい。

個体の認識との『ズレ』が無ければ…常に意識しているような認識でなければ、それが現実とかけ離れていても風潮は生まれるのだ。

そしてその風潮のアンテナとして、狂信のカースは存在している。むしろ存在しているだけでいい。

…だが黒兎の予想以上に、狂信のカースは狂っていたようだ。派手に自爆攻撃まで始めるのは誤算だった。

だがイカレた黒兎はその誤算すら歓迎する。

『止めさセる気なんて存在しない。自爆特攻されるような奴は所詮そういう奴ってこと。クズは制裁しないとね』

『んで、本来は何があったら自爆するのさ?』

『AMCの自爆は自分の意思もあるケド…恐怖を感じたらだ。「人間を模倣した感情」の一つ、恐怖がトリガーの一つだよ』

自爆のトリガーは二つあったのだ。一つは自らの意思、そして『恐怖』。

僅かながら人らしい仕草をするAMCは、恐怖という感情さえ感じる。それによって、恐怖が限界まで達した時、自爆するのだ。

模倣と言う事は、オリジナルが存在する。それは奈緒の記憶の奥底のトラウマだ。…そんな事だれも気付かないだろう。

痛みに泣き叫び、苦しみに怯え、死に恐怖を抱く。それが奥底で根付いている事に。

恐怖は恐ろしいトラウマと結びつき、AMCを発狂させる。…逆に言えば純粋な好意で触れ合えば。そういう事は起こらないのだろう。

その事は、黒兎さえ知らない。

『まぁ、お化け屋敷で一斉爆破とか笑えないからある程度は個体でコントロールできるようにはしてたんだけドね』

『ふーん、なんかに利用しようかと思ったのに』

『…協力するカ?』

『いざという時は頼るかもな、頼るつもりはないけど』

『おっけ、把握した。何してるかはシランけど』

『…言えと?』

『別ニー?言わないと思うし』

『ご名答。言うつもりねぇわ』

『『…』』

呪いとしての『狂信』はその根底に『理想』を秘めている。

呪いとしての『正義』はその言葉に『狂気』を隠している。

お互いにどこか似た性質の呪いは確実な違いを持っていた。

「ふたりとも、どしたの?」

「「んー?」」

若干ピリピリした空気が流れるが、二人をわさわさと振り回すナニカが二人に声をかけたことで終わった。

「黒ちゃん、白ちゃん、あっちのお店みよー?」

「「あいよー」」

ぶらぶらと振り回されながら、二体はまた何か思考する。



だれも見ていない静かな場所。中学生用の控室に一人、光がいた。

…いや、一人ではない。彼女の腕輪が変形し、ライトが姿を現す。

「光、随分と機嫌が悪いじゃないか、どうかしたのかい?」

「…ライト、そう見えた?」

「ああ、駄目じゃないか、正義のヒーローが不機嫌になっちゃ…せめて見ただけではわからないようにすべきだね。で、どうしたんだい?」

内容は分かっているのに、彼は光を煽る為に問う。

「紗南が…えっと、よく病欠で休んでる子なんだけど…」

「その子が病欠と言いながらも実はサボりなんじゃないかって思っているのかい?」

「うん。紗南はゲームをよくやってるし…屋上でゲームばかりして勉強をしていない時もあったらしいんだ!見た人がいる!」

…それは彼女がベルフェゴールに体を奪われていた時の話ではあるが、光の正義感と疑いを加速させる最高で最悪の材料だった。

「なるほど、ゲームが好きすぎて秩序を乱す…悪い子って事だ。しかも前科がある」

「うん、クラスのみんなが迷惑してると思う」

「そうだね、確かに迷惑だ。今のまま放置するわけにはいかないね、秩序を乱しているのだから」

「…秩序」

「そう…紗南って子は『嘘つき』で、『自分勝手』…つまり世界を乱す小さな悪の一人…」

ニタリとライトが口を歪ませても、光は彼をしっかり見ていない。心ここにあらず、と言ったところか。

そもそも彼女の本来の心は既に殆ど正義の呪いによって歪まされてしまっている。

「悪党…」

「そう!小さな悪は小さな英雄が倒さなくてはならない…そうは思わないかい?」

「…で、でも、紗南は…」

呪いに侵されていない理性が、ライトの囁きに逆らう。

(…おどろいた、催眠状態でまだ逆らうのか…強い。だけど…それだけに強い力を秘めている…!)

しかし、ライトはそれを嘲笑う様にその理性を壊しにかかった。

「何を言っているのさ…君は一般人だからって悪を放置するのかい?それとも、能力者じゃないからって理由で?」

「…それは」

「それは差別だよ。悪は全て平等に裁かれなくてはならない。殺人・テロ・窃盗・誘拐・暴力・隠蔽…全ては等しく悪なんだ」

ヒーローに頼る人が、ヒーローを愛する者が居ればいる程、正義の呪いは力を増していく。都合のいい考えの、呪いとしての正義が。

「しかも彼女ほどの小さな悪は、法によって裁かれることは絶対にない」

理想から力を得て、その理想を歪ませる。

呪いとしての正義が残すのは破滅のみ。正義の言葉は都合良く人の心へ入り込んでいく。

「僕らは裁かなくてはならない。今は小さな悪しか裁けなくても、いずれ全てを裁くことが出来る…僕は君を小さな英雄で終わらせない」

ニマァ…と邪悪に微笑みながら、小動物の姿をした呪いの剣は囁く。

「裁き…?」

「そう、そうだ…君は秩序を乱す輩を裁き、世界を安定させる。そんな剣になればいい…」

小さな翼で飛び、光の肩に乗ると、猫のような手が頬を撫でる。赤い瞳を妖しく輝かせながら。

「英雄は、悪を断じる事を戸惑ってはいけない。君が知るヒーロー達だってそうじゃないか」

「あ、アタシは…」

「だから…おや?」

控室に近づいてくる足音が、その言葉を止めた。

(…レイナ、だったっけ。気配は彼女の…なら、ほぼ確実にこの部屋に来るだろう)

足音が知っている人間のものだと判断すると、ライトは姿を腕輪へと変えた。

「…あ、あれ?ライト?どうしたんだ?」

光は途中からの記憶が曖昧になっていた。一種の催眠状態だったことが理由なのだろう。

その様子を全く気にせず、ライトは平気で嘘を吐く。

『ちょっと光はつかれているんじゃないかな?眠そうだったよ?…それに人が来る、僕は隠れなきゃいけないよ』

「そうかな…体力は自信あったんだけd…」

光が言葉を全て発する前に、扉がバンッと勢いよく開かれた。

扉を開いたのは、ライトの感じた通り、麗奈だった。

「光!アンタいつまでここにいるのよ!」

「あっごめんごめん、忘れ物しちゃって…探すのに時間かかっちゃったんだ」

「…その腕輪でも探していたの?」

「そ、そうなんだ!あはは…じゃあアタシもう行くから!!」

「ちょ、ちょっと光!待ちなさいよー!!」

麗奈の制止などまるで聞かずに、光は伸ばした手をすり抜けて逃げるように遠くへ行ってしまった。

「…あいつ、嘘が下手すぎるわ。…正義のヒーローがなに嘘なんてついてんのよ。おかしいじゃない」

伸ばした手が届くはずも無く、麗奈はその手を寂しげに下ろした。

(彼女の理性の抵抗があそこまでとはね、天使の力とやらの影響もあるのかな?)

ライトは光の理性と心の壊し方を念入りに考える。

(ああ、面倒だ…だけどまぁ、どうにかなるだろう)

正義の名のもとに、悪のレッテルを張られた者を殺す処刑人形。そんな存在を生み出すために、白い怪物は思考する。

(…女性、しかもこの年齢でこれほど素質のある素体は滅多に見つからないだろうから、慎重に行う必要がある。焦ってはいけない)

(まだ、時間はある…僕が失敗する事など許されないのだから)



「みー!」

「みみー?」

「みっみ!」

ユズにより蘭子と昼子の監視、それと万が一ぷちどるに遭遇したら守るように命令されているぷちユズトリオが仲良く飛んでいた。

風と操作と回復の魔術を宿す3体は、命令通り『悪魔たちに見つからないように』こっそり飛び回っていた。

見つからないように、操作魔術の黒い鎌を持つぷちユズが隠蔽魔術を使い、今の所それは難なく成功している。

『~♪』

『れでぃ』

「「「み?」」」

飛び回っていた3体は急停止する。近くの茂みの影から、銀色のユニコーンに乗ったぷちどるが飛び出してきたのだ。

お二方乙ー

なにこれ最終回?的なバトルで燃えた。
アーニャカッコイイな。
そして、もうなにがなんだかわからないけど二人ともすごいのはわかった(小並感

ライトの暗躍怖いよー!
そして、最後のプチ達に癒された。

じゃあ、久しぶりに投下します!

学園の裏山

少し広くスペースがある場所。

オトハ「……海の不協和音が強まってる。まるで悲しむように助けを求めるように。強い意志を持つ音が正常に戻そうとしてるけど……無事であることを」

そこに、沢山の小鳥や子猫などの動物達に囲まれてる自然の大精霊・オトハが呟く。

オトハ「そして……ナチュルマリンから迷いと恐怖の音色が聞こえる。けど、その音色の原因を取り除くことは私にはできない。」

手にはハープを持ち、心地の良い音楽を奏でさせる。

その音色を聞き、動物達はまるで居心地がいいかのように、大人しく聴き入っていた。

オトハ「自身で答えを見つける。この試練を乗り越え、海の民とお互いの音色を奏でさせ、美しい旋律を産むことができるかもしれない。」

まるで、神話や物語を語る吟遊詩人のように彼女はハープを奏でさせながら語る。

誰に聞かせてる訳でもない。

ただ、彼女は願っているだけ。

平和を。

自然と人との共存を。

海に平穏あらんことを。

オトハ「………そして」

『zzZ…メガネはだめぇ』

『おねむの時間なのぉ…zZZ』

動物達が集まってる中で紛れこんでいる黒い子供達ーーーAMC。

彼らは憎きメガネをこの世から排除するために裏山に来ていて、たまたま見つけたオトハを反メガネ派にしようと近づいたのだ。

だが、彼らは彼女の奏でる音色により眠りについてしまったのだ。

自然の安らぎの力が宿った音が≪狂信≫を眠らせおとなしくさせいる。

オトハ「……歪んだ音色が世界の音を濁らせ不協和音を産もうとしている……」

ポロン♪とハープを奏で、彼女は眠るAMCを見る。

オトハ「平和の旋律がこの場に奏でられることを」

優しく微笑みながら、ハープの音色は広場に響いていた。

一方、学園のとある場所は凄く盛り上がっていた。

屋外にある休憩スペース。

そこで行われてるのはスタンプラリーのイベントの一つ。早食い大会。

ルールはいたって単純。制限時間内にスタンプの番人より早く食べ終わること。

だが、大きな皿に山盛りに盛られた和菓子の山は見る人によってはエレベストに見える程の量。

そして、それを食す大食いに自信のおる巨漢達。

「もう……ダメだ」バタッ

「俺の胃袋は……宇宙d」ドサッ

だが、そんな強者達がまた一人。また一人と椅子から転げ落ちるように倒れ伏す。

菜帆「幸せですね~」

………ただ一人。番人…いや、≪悪魔≫を残して。

菜帆「美味しいですね~♪おかわりお願いしま~す♪」

『菜帆ちゃん。次の挑戦者が来るまでダメですよ~?代わりにさっき買ってきてもらったタコ焼き食べましょ~』

口から≪二つの声≫を出しながら、一日目と同じ露出の多い小悪魔な衣装を着ながら、タコ焼きに手を伸ばす女性。

ーーーまだ食うのかよ?

ーーーチャンスだろ?お前行けよ?

ーーーアホか!あの女10回以上挑戦を受けてるのに全部完食して合間に別の物食ってんのにペース落としてないんだぞ?

ーーーあ、ベルちゃんダヨー

ーーー私は何も見ていませんわ。行きましょう。フェイフェイさん

そんな野次馬の声を気にせずスタンプの番人は挑戦者を待つ。

悪魔を倒す救世主は現れるだろうか?

そして………その近くで。

加蓮「……いない。ここの場所じゃないのかな?」

≪ナニカ≫を探す少女。

加蓮「次はこっちにいこう」

彼女は果たして見つけられるだろうか?

加蓮「どこにいるの?■■ちゃん?」

自分が今言った名前もノイズが走ったようになっている少女を…

影はユラリと揺れている。

終わり

イベント情報追加

・乃々の覚醒のヒントらしき事をオトハさんが言ってます

・オトハさんが裏山でハープを奏でてるよ!その音色で動物達だけじゃなくAMCもおとなしくなってるよ!

・スタンプの番人・菜帆。和菓子の山早食いの挑戦者を待っている。勝ったらスタンプ5個分

・加蓮が■■を探してます。


以上です!

え?AMCが眠るのはおかしい?きっと自然の安らぎの力だよ(目逸らし

誰か番人を倒す挑戦者現れないかな?

声だけですがちゃまとフェイフェイお借りしました!

乙乙
アーニャと隊長の決戦にはかなり惹かれる
いいなあ、こんな文書きたいなあ

マキノやすずみやさんや捜索隊拾ってくれて超嬉しい(歓喜)
光がヤバイー! はやくしろレイナサマー!!

森久保パワーアップフラグきましたねこれは
あと菜帆ちゃん勝てそうにないんですがそれは

雑談でさんざん募集したあの企画導入部、投下しちゃうよー!
時系列はアイさんが茨姫手に入れた以降。だから下手したら年またいでるね


アイドルヒーロー同盟事務所内部の社員食堂。

その一角に、パップ、シロクマP、クールP、黒衣Pの姿があった。

黒衣P「……そういえば、そろそろAHFの時期か」

シロクマP「ああ、確かにそうですね。洋子ちゃん、出るんですか?」

黒衣P「いや、洋子にはまだ経験を積ませるべきだと思ってる」

クールP「AHF……ですか。資料でだけなら知っています」

二人の会話に、箸を止めたクールPとパップが口を挟む。

クールP「正式名称を『オールヒーローズフロンティア』、四年に一度開催されるアイドルヒーロー同盟の祭典ですね」

パップ「ああ、予選を勝ち上がった8人プラス敗者復活4人のアイドルヒーローによるトーナメント戦だったか?」

シロクマP「ええ。お二人は前大会時はまだ所属していませんでしたね」

黒衣P「何でも今回は、同盟外のヒーローも参加可能になるそうだ。スカウト活動の補助らしいが」

黒衣Pは味噌スープを平らげ、トレイに茶碗を置いた。

シロクマP「そして参加者増加を考慮して、予選の前に書類審査と簡単な面接を行うそうなんです」

焼き魚の身を丁寧にほぐし、シロクマPは言葉を切って口に運んだ。

クールP「ああ、その辺りも拝見しました。確か、予選に参加できるのは25人でしたっけ」

クールPはサラダのプチトマトを指先で少し転がし、ヘタを摘んで喰らい付く。

パップ「25人……そっから本戦にいけるのが、敗者復活含めても12人だろ? 随分狭い門だな……」

パップは丼のうどんをすすってから軽く驚嘆する。

シロクマP「お二人は、どうされるんですか?」

パップ「うーん……梨沙も時子もまだド新人だからな……名を売るチャンスではあるか」

クールP「プロデューサーヒーローは……除外でしたね。なら爛とライラだけでも」

黒衣P「既にHPで告知はしてある。一般参加者がどれだけ集まるかも楽しみだな」

四人のプロデューサーが談笑を続ける中、時は過ぎていく……。

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TV『オーゥルヒーローゥズ、フロンティーィアァッ!!』

TV『四年に一度のアイドルヒーローの祭典が、またやってきた!!』

TV『優勝賞金、一千万円!! さらに、今回から一般参加も解禁!!』

TV『前回王者、ラビッツムーンを破るのは……君だ!!』

TV『書類審査受付中!! 詳しくは、アイドルヒーロー同盟で検索!!』

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――電気店前。

カイ「……一千万円!?」

『キキン!!』

星花「これは……参加しないテはありませんわ!」

ストラディバリ『レディ』

亜季「早速、書店で紙とペンを買ってこなくては!」

ヴーン ヴーン

あずき(……あずきでも出られるかな? 賞金とって、涼さんに恩返しなーんて……)

あずき(よし、決めた! 名づけて、賞金大作戦!!)

有香(……やはり拓海さんも出場されるんでしょうか。だとしたら……)

有香(お手合わせの絶好の機会、早速エントリーを!)


――女子寮。

加蓮「一千万円って……すごい額だよね。アイさん出ないの?」

アイ「ん、あいにく仕事が入っていてね。そろそろ時間か、出かけてくる」

加蓮「いってらっしゃーい」

加蓮(ちょっと出てみたいかも。正体隠せば、大丈夫……かな?)


――小日向家。

美穂「あ、あのアイドルヒーローの皆さんとお手合わせできるの!? スゴイ!」

肇「出場されるのでしたら応援しますよ、美穂さん」

美穂「あ、ありがとう肇ちゃん! 私、頑張る!!」

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――カフェ・マルメターノ。

瞳子「賞金ねぇ……取れたら夏美ちゃん達と旅行にでも行こうかしら」

聖來「あ、瞳子さんも参加するんだ?」

瞳子「『も』って……聖來も?」

聖來「うん。ちょっと懐かしい顔に会えるかも、ってね」


巴「賞金はともかく、腕を磨くにはちょうど良さそうじゃな」

ほたる「うん、いい経験に……なる、よね」

乃々「じゃ、じゃあもりくぼは二人の応援に徹するんですけど……」

巴「いいや、こういうのはチームワークじゃ。乃々も出るぞ!」

乃々「むーりぃー……」


――カフェ・マルメターノ、地下。

夏樹「……いやまあ、確かに一番マシそうなのはアタシだろうけど……」

きらり「もうお名前考えたのー! 『パーボ・レアル』! うっきゃー! かっくいー☆」

奈緒「ここの営業が地味~に右肩下がりらしくてさ、夏樹、頑張ってくれ」

李衣菜「大丈夫大丈夫。髪下ろせばバレないよ、多分」

夏樹「あー……もうしょうがねえなー……」

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――プロダクション。

ちひろ「というわけで、アーニャちゃんが出場したいそうです」

アーニャ「ダー……賞金を取って、みんなに恩返ししたいです」

ピィ「まあ……スポーツ大会みたいなもんですから、そう危険はないでしょうけど」

ちひろ「アーニャちゃん! やるからには優勝目指して頑張ってね!」

アーニャ「チヒロさん、目がルーヴル(ロシア通貨)になってます」


――荒木家。

泉「……で、私がAHFに出ろって?」

比奈「頼めないっスかねえ? 賞金で職場改善を計りたいんスけど……新規でアシさん雇うとか」

泉「……いいけど、あんまり期待はしないでね?」

比奈「助かるっス!」

泉(……一応、変装とかした方がいいかな?)


――某オフィス。

男「……というわけで、ミス・東郷。我々の代表としてAHFに出場していただきたい」

アイ「構わないよ。報酬は優勝賞金の半額でいいね?」

男「は、半額ッ……!?」

アイ「実はよそからも同じ依頼を受けていてね。そちらの報酬が賞金の四割なんだ、これは困ったねぇ?」

男「ぐ、ぐうう……わ、分かりました。半額お支払いしましょう」

アイ「ふふ、毎度あり」

アイ(今回は、そうだな……簡単な偽名と、茨姫だけで大丈夫そうかな?)

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――同盟事務所。

梨沙「結局、皆出るのね」

爛「いや、斉藤先輩が出ねえらしいぜ」

時子「関係ないわ。頂点に最も相応しいのはこの私だもの」

拓海「言っとくがお前ら、予選で落ちたりすんなよ?」

夕美「心配ご無用。ね、菜々ちゃん?」

菜々「もっちろんですよ! ナナ、連覇目指して頑張っちゃいまーす、ブイッ☆」

ライラ「となると、ナナさんは前回13歳で優勝したでございますか。お見事でございますねー」

菜々「……………………」

夕美「……………………」

拓海「……………………」

時子「……………………」

爛「……………………」

梨沙「……………………」

ライラ「?」

拓海「……ライラ。菜々の年齢の話は……今後NGな」

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各所で、希望が、野心が芽生える。

住む家がほしい。

居候先に恩返ししたい。

憧れの人に会いたい。

修行をしたい。

隠れ家を守りたい。

ただ雇われて。

様々な思いを巻き込んで、今。

ヒーローの頂点を決める祭典が、幕を開ける。

続く

・オールヒーローズフロンティア(AHF)
四年に一度、アイドルヒーロー同盟主催で開催されるイベント。
知力体力時の運を競う予選を勝ち上がったアイドルヒーローによるトーナメント制の大会。
今回から同盟に所属していないヒーローも参加可能になった。
優勝者には多額の賞金(回によって若干変動あり)が贈られる。


・イベント追加情報
AHFのCMが流れはじめました。(参加者は既に決まってますごめんなさい)


以上です
いざ始めようとなったら予想以上の長丁場になりそう
ガンバリマス!(白目)

黒衣P、シロクマP、パップ、あずき、有香、加蓮、アイ、美穂、肇、聖來、
巴、ほたる、乃々、夏樹、きらり、李衣菜、奈緒、ちひろ、ピィ、アーニャ、
泉、比奈、梨沙、時子、拓海、夕美、菜々、名前だけ洋子お借りしました。
(大半は今後もお借りします)

酔っ払いのノリで、ろくすっぽ推敲もしないまま
書き上がった勢いのまま投下
後は野となれ山となれ

ピィ「いかん、飲み過ぎた……」

――基本的に、そう思った時にはもう色々と遅い。

――ぐらぐらと世界が揺れ、ただでさえぼやけた視界の焦点は定まらず、一箇所を見続けることすら困難だ。

――猛烈な吐き気が込み上げ、頭痛がぐわんぐわんと容赦なく苛み、

――『あぁ、これは明日まで残るな』と思うと更に憂鬱までが襲ってくる。

――足元が覚束ない。判断力が低下している。気分の昂ぶりと落ち込みの差が激しい。

――こんな状況だから酔っぱらいというのは何をしでかすのかわからない。自分自身でも。

――ただし、案外思考というのは冷静だったりするものだ。


――会計だってちゃんと済ませてから居酒屋を出たし――ちなみに次の日、

ぐしゃぐしゃになったお札が財布の中に乱暴に突っ込まれてたりする――、

――ひどく眠くて歩くことすら億劫だが、せめて家には帰らなければ、と。

――……そのくらいの常識というか良識くらいは残っているはずだと思うのだが、

――酔いつぶれたサラリーマンなんかが道端で眠りこけている姿を見るだに、

――ああ、酒というのは恐ろしいものだなと改めて感じる。

――あれはペースや量を間違えると圧倒的な力でもってこっちを屈服させにくるのだ。


ピィ「屈しニャい!!!」

――ほら、屋外なのに大声でこんな独り言とか叫んじゃう。

――酔っぱらいって嫌だねぇ、本当に。

ピィ「盛大なブーメラン」

――……虚しい。

――明日は仕事が休みだ。

――ということで、たまには飲みにでも行こうと思い、

――……本当は誰かを誘おうともしたのだが、随分遅い時間まで残業していたため俺以外誰も居なかった、

――ので、結局一人で晩酌をすることになり、

――別段、そのことに関して特に不満なんかは無かったのだが、

――それとは別に色々と……、自身の現状に思うところがあって、ついつい深酒をしてしまった。

――その結果が……、

ピィ「どっかに一億円落ちて無ぇかなぁ~!!」

――この面倒くさい酔っぱらいである。


ピィ「冷静に考えるとあれだよな」

ピィ「一億円とか何に使うんだろうな」

ピィ「一般ピーポーの俺なんかに高級志向とか無いし」

ピィ「今欲しい物だってたかだか数十万あれば全部揃えられるしなぁ」

ピィ「ただ一生遊んで暮らす、ってなると今度は一億じゃちょっと足らんなぁ」

ピィ「中途半端だな、一億円って」

――黙れ、お前に一億円の何がわかるんだ。

――……などと自身の発言に対して脳内でツッコミを入れ始めるようになると、

――いよいよ、ああ俺酔っ払ってるなぁ、なんてしみじみと自覚しだすのだが、

――依然、傍目からどのような奇異の視線を集めているか、なんてことにまでは考えが至らない。

ピィ「あぁ、電話とかすりゃよかったかな」

ピィ「楓さんなら『一緒にお酒を飲みませんか』とか言えば来てくれたかもしれないし」

ピィ「もし楓さんと飲めてたら、今日だってだいぶ楽しかったろうになぁ」

ピィ「あの人は本当、美人だし、それでいて面白いし、お酒好きで、一緒に飲むには最高の相手なんだけどなぁ」

ピィ「無理を言ってでもお願いすればよかったなぁ~」

ピィ「あぁ~、素敵だなぁ~楓さんは」

ピィ「焦がれるっ!! 結婚したいなぁ~!!」


ピィ「あぁ、ちひろさんだって俺の帰る一時間前までは一緒にいたんだしなぁ」

ピィ「すぐに連絡すればどこかでお茶でも飲みながらのんびりしてたかもしれないんだよなぁ」

ピィ「ちひろさん!」

ピィ「ちひろさんとお酒!」

ピィ「飲みたかったなぁ!」

ピィ「やー、ちひろさんだってよくよく見れば綺麗な人だもんなぁ」

ピィ「スタイルもいいしなぁ」

ピィ「ちょっとお金にがめついけど、おっぱい大きいしなぁ」

ピィ「事あるごとにぷるんっぷるん揺らしてくるんだもんなぁ」

ピィ「揉みたい!(直球)」

ピィ「藍子っ……」

ピィ「あぁぁぁあああ藍子ぉぉぉおおおぉぉぉ……!!」

ピィ「仕事終わりにもし事務所で飲んでたらさぁっ!! 藍子にさぁっ!!」

ピィ「藍子にお酒注いでもらいたいなぁああああああ……っっっ」

ピィ「その時の調子に合わせた丁度いい濃さのお酒を作ってくれるんだろうなぁ」

ピィ「『飲み過ぎたらダメですよっ!』ってうっすーいのを注いでくるんだろうなぁ」

ピィ「愛してるっっっ!!!」

ピィ「チューしたいよぉお!!」

ピィ「あっ、あいこっっ、藍子ぉぉぉおおおおおおお!!!!!」


ピィ「美玲いいぃぃぃぃぃ!!!!」

ピィ「どうせ周子に付き合わされてるんだろっ!!」

ピィ「酒飲みがどんだけ面倒くさいかわかってんだろおぉぉ!!」

ピィ「酔っぱらいとの付き合いを弁えた振る舞いをされたい!!」

ピィ「『まったく、今日だけだかんなっ!』って言われてぇえ!!」

ピィ「よしっ、今日だけ付き合えっ!!」

ピィ「俺と付き合ええええぇぇぇ!!!」

ピィ「美玲っ!」

ピィ「抱きしめたいなぁ! 美玲!!」

ピィ「みっおぉおおお!! 未央ぉぉぉおおお!!!」

ピィ「天使だかなんだかしらんがな!! エロい体しやがって!!」

ピィ「15歳だと!!?」

ピィ「エロい!!(確信)」

ピィ「ナイスバディ!!」

ピィ「抱きたい!!(直球)」

ピィ「エロい!!(5秒ぶり2度目)」

ピィ「……あーっ! 未央はいい子だよなぁ」

ピィ「ぶっちゃけ……、好きだぜ!!」


ピィ「周子っ……、周子ぉ……っ!」

ピィ「いい女だお前は……」

ピィ「本当っ、なんだ、いい女……」

ピィ「それでいて悪女……、悪女だよお前はぁ……」

ピィ「でもなぁ、どうしようもなくそこに惹かれるんだ……、周子ォー!!」

ピィ「手に入れたいなぁ!」

ピィ「俺のものにしたくなるんだ!! 周子ぉぉおおお!!!」

ピィ「アーニャッ!!」

ピィ「綺麗だなぁっ!! 惚れ惚れする!!」

ピィ「息を呑む程の白い肌!! 目を惹く美しさ!!」

ピィ「触りたい!!」

ピィ「あの肌に触りたいなぁー!!」

ピィ「撫で回したくなる!!」

ピィ「あ~~~~、にゃーーーーーーーーー!!!!!」


ピィ「紗理奈さんはもっと俺に優しくしてください(真顔)」

ピィ「俺のこと誘ってくるけど、絶対罠だもんなあれ……」

ピィ「近づいたら、バクッ! って食われる、きっと」

ピィ「……でも、エロいんだよなぁーー!」

ピィ「耐えるのが、しんどい!」

ピィ「負けそう」

ピィ「負けちゃおっかな?」

ピィ「負けちゃえー!」

ピィ「屈しニャい!!!(5分ぶり2度目)」

ピィ「晶葉っ! 晶葉ァ!!」

ピィ「可愛い!」

ピィ「ジト目可愛い!」

ピィ「ツンツンされるのが癖になる!!」

ピィ「あのツインテぴこぴこさせたい!!」

ピィ「あと!」

ピィ「ぶっちゃけ!」

ピィ「ぶっちゃけ!!」

ピィ「……っ」

ピィ「――調教したい(マジなトーンで)」

ピィ「……」

ピィ「うん、まぁ……、さすがにそれは(アカン)」


ピィ「師匠……、師匠なぁ……」

ピィ「愛海なぁー」

ピィ「黙ってれば可愛いんだけどなぁ……」

ピィ「本当……」

ピィ「あと」

ピィ「揉んでいいのはッッ!!!」

ピィ「揉まれる覚悟のあるやつだけだぞッッッ!!!!!」

ピィ「愛海ぃぃぃいいいいいい!!!!!!」

ピィ「覚悟はいいか!! 俺はできてる!!!!」


ピィ「千枝ちゃん、薫ちゃん、メアリー!!」

ピィ「君たちも全然イケる(意味深)ぜ!!」

ピィ「お巡りさん!! 俺です!!!」

――酔っぱらいの発言や回答などに正当性、合理性を求めてはいけない。

――論理的な思考とか、倫理観とか、思慮とか、配慮とか、遠慮とか、矜持とか、良心とか、恥とか、外聞とか、

――そういったフィルターは大体取っ払われていると思うといい。

――例えば『人類は地球の為に滅ぶべき種である』というような過激な思想を、僅かでも抱いたことのある人は少なくないだろう。

――が、それを真剣に語る人は少ない。

――思想、というか思考と発言の間に上記のフィルターが噛んでいる為である。

――――酔っぱらいにはそれが無いのだ。

――つまり、何というか、


――――ドン引きです……。


――いや、本当何だこのテンション。自分で自分の正気を疑うレベル。

――知り合いには絶対に見られたくない。

――というか知り合いじゃなくても見られたくない。

――周りに誰も居ないよな?

――と、にわかに冷静になってきた頭をゆらゆらさせながら辺りを見回す。

ピィ「よし、大丈夫だな」

――もうだいぶ夜も更けてきたからか、幸い人影は見当たらなかった。

――まぁ、気づかぬうちに誰かに目撃されてたりする可能性とか、

――大声で喋ってたから、見られずとも近くの人にはあの気持ち悪い発言を聞かれてた可能性があるが。

――そこまではどうしようもない。


ピィ「まぁいっか、なんかどうでもいいや」

――多分明日にはどうでもよくないことになってるんだろうが、

――それは明日の俺に任せよう。

ピィ「いやぁ、俺の周りには美少女がいっぱいいて楽しいなぁ」

ピィ「みんないい子だし、毎日彼女たちに会えるのが嬉しくてたまらないよ」

ピィ「あれ? 俺って幸せなんじゃね?」

ピィ「幸せやったー!」

ピィ「おすそ分けしたい!」

ピィ「おすそ分けしたいくらい幸せ!」

ピィ「よし、しよう! できないけど!」

ピィ「まぁ、仮にできるとしてー」

ピィ「誰にあげようかなぁ……」

ピィ「うーん」

ピィ「みんなだな、うん」

ピィ「みんなにあげたいなぁ、幸せ」

ピィ「俺の幸せみんなにあげたい!」

ピィ「だってみんな頑張ってるもんなぁ」

ピィ「俺より年下の子の方が多いのに」

ピィ「能力があったり」

ピィ「戦える力があったり」

ピィ「悩みがあったり」

ピィ「みんなそれぞれ抱えてるんだもんなぁ」

ピィ「それでもみんな笑顔だもんなぁ」

ピィ「俺なんて全然頑張ってないからなぁ」

ピィ「……」


ピィ「あー」

ピィ「何やってんだろうな俺」

ピィ「こんなになるまで酒飲んでる場合じゃないだろ」

ピィ「他にやるべきことがあるだろうに」

ピィ「俺は俺の仕事をしなきゃ」

ピィ「俺の仕事……」

ピィ「俺の仕事は、みんなのことを……」

――そうだ、何で今日こんなに飲んでいたのか思い出した。

――ヤケ酒だったんだ。

――俺はピィ。

――Pだ。

――プロデューサーだ。

――『プロダクション』のプロデューサーだ。

――『プロダクション』に所属するみんなのことをプロデュースするのが俺の仕事だ。

――俺の役目だ。


――だが、俺はその役目を果たせているんだろうか?

女性「あら、あなた、こんなところで寝ていたら襲われちゃうわよ」

ピィ「……んが………」

――寝ていたつもりは無かったのだが、

――何かと考えすぎた末、……まぁお酒が入っていたこともあり、

――落ち込んで電柱のそばでへたり込んでいたところ、急に誰かから声を掛けられた。


――誰だろうか。

――見たところ、知り合いではない。

――妙齢の女性、といった表現が実に似合う人だ。

――艶やかな雰囲気を纏った、いかにも『オトナの女性』。

――俺よりもいくつかは歳上だろう。

――素直に綺麗だと思う。

――……そのあまりの凄艶さに圧倒されてしまう程に。


女性「男だからって油断しちゃダメよ?」

女性「特にあなたみたいな色男は……、ね。ふふっ」

ピィ「ははは……、いやぁおねーさんみたいな人に襲ってもらえるなら大歓迎なんですけどねー」

――咄嗟に、冗談ともお世辞とも本音ともつかぬ軽口を叩いてしまった。


女性「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない」

女性「……でも、あなた少し飲み過ぎね」

――そんなどうでもいい下らない発言に、彼女は真面目に付き合ってくれた。

女性「すぐそこに私の店があるから寄って行くといいわ」

女性「今閉めたところなんだけど水くらいなら出すわよ」

――促されるまま、照明の落ちた店舗の中に足を踏み入れる。

――女性がパチンとスイッチを入れ、薄暗い明かりが店内を灯すと、

――そこには、オシャレな大人の雰囲気漂うバーが存在した。

女性「こういうのは初めてかしら?」

ピィ「……えぇ、まぁ」

女性「ふふ、素直でいいわね」

――二人きりとはいえ……、いや、だからこそか、

――少し、気後れしてしまう。

――彼女の言うとおり、バーという場所に来るのは初めての体験だった。


女性「そういえば自己紹介がまだだったわね」

礼子「私は望月礼子」

礼子「このバーのマスターをやっているわ」

礼子「といっても、今は殆ど別の子に任せているんだけどね」

――そう言って彼女、望月礼子さんは自己紹介をした。

礼子「ちなみに旧姓は高橋よ」

――……その情報は必要なのだろうか。

礼子「下の子がまだ小さくてここには中々来れないのだけど」

礼子「それでも、やっぱり私の店だから、って」

礼子「せめて月一回とか二回くらい、顔を出す程度のことはしているの」

礼子「今日はたまたま、その日だったのだけれども」

礼子「……ふふ、巡り合わせというのはわからないものね」

――グラスに水を汲みながら、礼子さんが小さく笑う。


ピィ「下の子……、ってことは他にもお子さんが?」

礼子「ええ、ちょっと歳は離れてるんだけど、もう一人女の子が上にね」

――ずけずけと気になったことを質問する俺に対して、礼子さんは特に気にした様子もなく、

――……若干、心なしか少し思うところがあるような表情を浮かべたようだったが、

――しかし誇らしげな表情で、そう答えた。

礼子「まだ下の子は、本当なら私が付きっきりで世話してあげなきゃいけないくらいの歳なんだけど」

礼子「それを上の子がね……」

礼子「『大丈夫、私がお世話をするから』って」

礼子「『お母さんはお仕事をしていいよ』って言ってくれるの」

礼子「ふふっ、……よく出来た子でしょ?」

礼子「自慢の娘なのよ」

礼子「私にはもったいないくらいに……、ね」

――……成る程、先ほどの神妙な表情にはそういった事情があったのか。

――と思うと、酒乱モードの俺はつい要らぬことを言ってしまいがちになるのだった。


ピィ「……もったいない、なんて事は無いと思いますよ」

礼子「あら、そうかしら?」

――礼子さんから水の入ったグラスを受け取り、それを一息に飲み干すとなおも俺は言葉を続けた。

ピィ「お子さんの話をしてた時の礼子さんの顔を見ればよくわかります」

ピィ「その子をとても大切に想っているんだな、という事が」

ピィ「今ちょっとお話を聞いただけで、その子も凄くいい子だと感じました」

ピィ「お母さん思いと、お子さん思いで」

ピィ「素敵な親子じゃないですか」

ピィ「きっと礼子さんがお母さんとして理想的だからこそ」

ピィ「お子さんも立派に育ったんだと思います」

ピィ「もったいない、なんて言ったらそれこそもったいないですよ」

ピィ「だいたい、俺みたいな面倒くさい酔っぱらいを介抱してくれるような人が悪い人なわけ無いです」

――ああ、俺今ものすごく偉そうなことを言ってる。

――管を巻きながら他人の家庭事情に口を挟んで、なにやってんだ。

――でも、仕方ないじゃないか。

――少し話しただけで、彼女がとても魅力的な人だとわかってしまった。

――そんな人が自分を卑下するような事を言うんだ。

――「それは違う」と声をあげたくもなる。

礼子「あなた……」

ピィ「……」

――いかん少しでしゃばりすぎた。

――いや、少しどころじゃないな。流石に気を悪くしただろうか?

礼子「思ってた以上に色男だったわね」

礼子「いい歳してちょっとときめいちゃったわ」

――どうやらそうではないらしい。

――余計なお世話だったろうかと心配していたが、ひとまず胸をなでおろす。


礼子「私が独り身だったらあなた、食べちゃってたかも」

ピィ「ハハハ……」

――食べられたかったなぁ。

礼子「まぁ、そうね。『もったいない』は失言だったわ」

礼子「確かにちょっと私らしくなかったわね……、って」

礼子「初対面のあなたにこんなことを言っても仕方ないか」

――どうやら元気を取り戻したらしい礼子さんは、ゆっくり頷きつつ……。

礼子「お礼、という訳では無いのだけど」

礼子「今度は、……あなたのお話を聞かせてもらえるかしら?」

ピィ「……へ?」

――思わぬ興味を俺に対して示し、

――話は想定外の方向へ向かっていくのであった。

礼子「見たところ、あなた……」

礼子「何か悩みを抱えているでしょう?」

礼子「隠していてもわかるわよ」

――ぐぬぬ……。

――これが年季の違い、というやつだろうか。

――……いや、それとも。

――彼女の視線から感じる、まるで心の内を見透かされているような……。

ピィ「ひょっとして、能力者……?」

礼子「ふふっ、たまに勘違いされるけど、答えはノーよ」

――違った。

――なんだか妙に恥ずかしい。


――つーか誰だ、俺に『能力者を見分ける才能がある』とか言ったのは。

――ああ、ちひろさんだ。あの守銭奴め。口からデマカセばかり言いおって

ちひろ『そんな設定(笑)もありましたね』

――黙れ俺の脳内ちひろ。揉むぞ。

礼子「女の勘と年の功ってやつよ」

礼子「あとはまぁ、ケイケンの差かしらね」

礼子「もっとも、あんな顔してたら私じゃなくても気づくと思うけど」

――礼子さんは妖艶な微笑を浮かべながら、さっきの読心の手品を明かしてくれた。


礼子「さ、出してスッキリしちゃいましょう」

――悩みをですよね。

礼子「それとも、私にだけさせるのかしら?」

――相談をですよね。

礼子「一人でデキないのなら、私が手伝ってあげるわよ」

――解決をですよね。

――実際、いくら冗談めかしてみたところで『悩みがある』ということに変わりはない。

――自分一人では解決できそうにない、というのも事実だ。

――それに、彼女の話を聞いてしまった手前、こっちも言わないとなんとなく不公平な気がする。

――というか、俺に悩みがある、と見抜いた上で先に自分の身の上話を切り出したということは、

――ひょっとすると、悩みを打ち明けやすくするための俺への配慮だったのだろうか。

――と思うと、この人になら相談してみてもいいかもしれないという気持ちが強くなってくる。

――ただの愚痴になってしまうかもしれないが、それでも聞いてもらいたい。


ピィ「俺は……」

ピィ「詳しくは言えませんが、能力者と関わる仕事をしています」

ピィ「能力者は女性が殆どで、俺より年下の子も少なくありません」

ピィ「皆どこにでもいるような普通の――若干の例外はあれど、そんな子たちです」

ピィ「能力がある、という事を除けばですが」

ピィ「俺の仕事は、いわばそんな『普通の能力者』を支援することです」

礼子「素敵なお仕事じゃない」

ピィ「はい、俺もそう思います」

ピィ「ただ、だからこそ……」

――ぐっとこみ上げてくる感情を堪えながら。

ピィ「……俺はちゃんと、こなせているんだろうか。と」

ピィ「俺には能力者の気持ちがわからないんです」

ピィ「いや、わからないって事は無いけれど」

ピィ「最終的な、本当の苦悩という部分……」

ピィ「そこを俺はわかってあげられない」

ピィ「何もしてあげられない」

ピィ「それが……、もどかしい」

――わかってあげられない、という思いは初めて楓さんに出会った時に抱いたものだ。

――念じただけで人を殺せる、というのはどういう感じなのだろうか、と。

――口が裂けても「その辛さ、わかります」とは言えなかった。

――今でもなんと言葉を掛けてあげればよかったのかわからない。


ピィ「もし俺にも特別な力があれば……」

――そう思わずにいられないことは、多々あった。

――辛い気持ちをわかってあげられるかもしれないのに。

――そして、

――――皆を守ってあげられるかもしれないのに。

――何度無力感を味わったかしれない。

――楓さんのこともそうだが。

――『憤怒』の街の時も。

――『プロダクション』が襲われた時だって。

――俺は、ただ見ていることしかできなかった。


――目の前でアーニャが無残に捻り潰されても、俺には何もできなかった。

――死ななかったから良いという話ではない。

――俺は大切なものを守れなかった。

――悔しかった。

――悲しかった。

――また同じような事が起こったら……、

――と思うと、今度は恐ろしくなってくる。


――誰も失いたくない。

――だが俺には何の力も無い。

――俺は……。

ピィ「……ダメだ、どうにも考えがまとまらない」

――酒のせいもあるのだろうが、感情がぐるぐると胸の中を渦巻いている。

――何に悩んでいたのか。

――どうすれば解決するのか。


――心のどこか奥底に、何だかんだ言ってヒーローへの憧れがあって、それを捨てきれていないのはわかる。

――誰かを守れる強い力が欲しいというのも本当だ。

――そして、それが叶わないという事も知っている。

――――だから、それは俺の役目じゃない。


――代わりに俺は皆に頼ることにしている。

――勝手にだが、アーニャに思いを託していたりもする。

――俺にできることは、そんな皆を支えてあげることだ。

ピィ「そう、俺はただ、今以上にもっと皆の力になりたいだけなんだ……」

――根幹にあるのは、とてもシンプルな気持ちだった。

礼子「優しいのね」

――静かに俺の話を聞いてくれていた礼子さんが、口を開いた。


礼子「あなたの……、ってそういえば名前を聞いていなかったわね」

ピィ「……一応、ピィと名乗っています」

礼子「コードネームか何かかしら?」

ピィ「事情がありまして」

――まぁその『事情』とやらを、俺もよく知らないのだが。


礼子「そうね……」

礼子「ピィのさっきの言葉をそっくり返すようだけれど」

礼子「あなたが職場の皆を大切に想う気持ち、凄く伝わってきたわ」

礼子「だからこそ皆の為に、って意気込むのはわかるけど」

礼子「気持ちが先走っちゃってるわね」

――指先で何かをすくい、舐めとるという意味深なジェスチャーを交えながら、

――礼子さんは続ける。

礼子「思い詰めすぎよ」

礼子「気負わなくても、ピィは今のままのピィでいればいいのよ」

礼子「あなたのような『真剣に自分に向かい合ってくれる人』がいるってだけで、」

礼子「その子たちはとても恵まれているし。きっと皆ピィを尊敬しているんじゃないかしら?」

――……そう、なんだろうか。


礼子「それでも納得いかない?」

礼子「――なら、そうね……」

礼子「ピィは、生きていく為に必要な事って何だと思う?」

ピィ「え?」

――唐突な質問に面食らってしまった。

――生きていく為に……?

ピィ「食事とか、睡眠とか……ってことですか?」

礼子「そうね」

礼子「じゃあ、それってどこでする事かしら?」

ピィ「……」

――礼子さんが何を言いたいのかわからない。

――この問答にどんな意味があるというのだろう。

ピィ「基本的には、自宅で……だと思いますけど」

礼子「どこでもできる、とはいえ、やっぱりベストはそこよね」

礼子「あなたはそんな場所になればいいのよ」

ピィ「……はい?」

――今なんて?


礼子「能力を持った子が、周りと違うことに悩んだり」

礼子「ちょっとした迫害を受けたりする事があるのは知ってるわ」

礼子「こう見えて、職業柄色々な人と接してきたから」

礼子「帰れる場所がある。心休まる場所がある。ゆっくり出来る場所がある」

礼子「何がなくとも、それさえあれば人はいくらだって頑張れる」

礼子「たった一言「おかえり」を言ってあげるだけでもいい」

礼子「それだけで、人は明日への活力を得られるものなのよ」

礼子「経験ないかしら?」

ピィ「どう、でしょう……」

礼子「ふふっ、気付いてないだけなのかもね、それが当たり前すぎて」

礼子「でも重要なことよ」

礼子「疲れてヘトヘトになって、帰り着いた場所に」

礼子「ただ「おかえりなさい」を言ってくれる人がいること」

礼子「それがどれほど心の支えになるかっていうこと」

礼子「あなたが」

礼子「あなたの居る場所が」

礼子「そんな場所になればいいのよ」

ピィ「俺が……?」

――『プロダクション』みんなの『帰る場所』に……?


礼子「思うに、もう既になっていると睨んでいるんだけど」

礼子「だからこそ『今のままでいい』って、そう言ったのよ」

ピィ「……」


――仮に、

――もし、

――本当に、俺がいることで……。

――俺が……、ただいるだけで。

――皆の、心の支えに……

――なってあげられて……、いるのだとしたら……。

――それは……。

――俺に……とっても………。

――……どれほど、幸福な………。

―――

――



志乃「お邪魔するわね」

周子「あー……、やっぱりいた」

――礼子の店に、新たに二人の客が訪れた。

礼子「あら、二人とも暫くぶりじゃない」

志乃「えぇ、久しぶりね」

周子「久しぶりー、っと……」

周子「本当は一杯やりたいところなんだけど」

周子「あたしはそっちの男に用があるんだよねぇ」

――周子は、カウンターで眠りこけているピィを見ると、

――苦笑いを浮かべ、そう言った。

礼子「あら周子、ピィと知り合いなの?」

周子「まぁね」

周子「ほら、ピィさーん、終電ですよー」

ピィ「……むにゃあ」

周子「ダメだこりゃ」

ピィ「しゅーこかー……」

周子「はいはい、しゅーこさんですよ」

――ピィは礼子の話を聞き終わると、気が抜けたのか睡魔に白旗を揚げ、

――だらしなくその快楽に身を委ねてしまったのだった。

ピィ「おれのしゅうーこぉー」

周子「お酒に飲まれてるようじゃまだまだだね、あたしはそんなに安くないの」

ピィ「ほしぃ……」zzz

周子「ほら、肩かして、家まで送るから」

ピィ「ぐー……」


礼子「あらあら」

志乃「あらあら」

周子「変な邪推禁止!」

周子『じゃ、この世話のやけるプロデューサーを送ってくから』

周子『もし帰ってきてまだ時間があったらその時に』


礼子「……って言ってたけど」

志乃「最近周子さんは彼にもお熱みたい」

志乃「まったく、何人好きな人が欲しいのかしら」

礼子「私も昔はよく彼女に言い寄られたわ」

礼子「懐かしいわね……」

志乃「彼にもあるのよ」

志乃「貴女のような素質が」

礼子「またその話?」

礼子「私にはそんなものは無いって言ってるのに」

志乃「それがあるのよ」

志乃「確かに能力ほど明確なものではないし」

志乃「見た目にわかるような物は何も無いけど」

志乃「でも、確実に……、ね」

礼子「わからないわね」

志乃「永く生きていると、何となくだけどわかるようになってくるのよ」

志乃「周子さんは『カリスマ』とか言ってたかしら」

礼子「まぁ、話半分に聞いておくわ」

志乃「ふふ……、貴女のそういうところ、好きよ」

礼子「好き、って言われるのは悪くないわね」

志乃「ふふ……」

礼子「ふふっ……」

志乃「私、貴女に会えて本当に良かったと思うわ」

礼子「なぁに急に?」

――志乃は、アルコールの注がれたグラスを礼子から受け取ると、

――唐突にそんなことを告げた。


志乃「私に人間の可能性を教えてくれたのは、当時、年端もいかない女の子達」

志乃「そして、そんな子たちにお節介を焼いてた一人の男性」

――懐かしむように、志乃が昔話を始める。

志乃「その後しばらく目的を失って、当てもなく彷徨っていた私に」

志乃「この星の娯楽を教えてくれて、更に交友関係を広めてくれたのが、怖ぁ~い狐さん」

――言いながら、小さく身を震わせるような仕草を取り、杯に口を付ける。

志乃「人を慈しむ事、思いやる事、支えてあげる事」

志乃「それがどんなに幸せなことか教えてくれたのは、私の自慢の娘」

――ここではない、どこか遠く。

――恐らくはその娘、ほたるへ注がれる愛しさをグラスに向け、一気に飲み干す。

志乃「でもね、一番はこれ」

――最後に、中身の空になった盃を小さく掲げ、礼子を見やる。

志乃「お酒」

志乃「今や私の一部と言っても差し支えないわ」

志乃「貴女が教えてくれたものよ」

――夜も更け、閉まったバーに二人。

――志乃と礼子。

――静かに語らい、優雅に談笑する。


――後に周子も加わり、女三人姦しく、それでいて大人の淑やかさで、

――明けるまでしっとりとした時間を過ごした。

――この日。

――悪事をもたらす超常の件数が極端に少なかった、ということが、

――彼女らの邂逅と深く関わっているかどうかは容易には知れない。

『カリスマ』

能力者、非能力者問わず、強く人を引きつける魅力を持つ人間にあるとされる素質。
人をまとめ上げ、信服させる才能に長けた人。
多くの人を支え、多くの人に支えられる人。
具体的にどう、という基準は無いが、ある程度強い力を持った者にならひと目でわかるものらしい。

巨大な組織の長にはこの『カリスマ』が備わっている事が多い。
例えば『プロダクション』の社長とか、サクライとか、TPとか、オーバーロードとか、ヨリコとか。
多分みんな『カリスマ』持ち。

望月礼子は静かに暮らしたいらしく、バーのマスター程度で収まっているが、本来ならもっと大きな器を持っている。

ピィにも備わっている物だが、彼は晩成形のためその真価が発揮されるのは20年か30年は経験を積んだ後である。
しかし『プロダクション』の皆を強く信頼し、同じように信頼される様は、仮にも彼が『カリスマ』持ちであることの表れでもある。

・以上です。

・志乃さん、周子をお借りしました。
若干、周子に関しては借りすぎてもはや借りパクの域だと感じる。

・そして勝手ながら礼子さんを拾わせて頂きました。
無能力者、非戦闘員、バーのマスターなどという設定を加えた上、
『カリスマ』持ちとかいう新たな設定を追加しました。

・『カリスマ』の設定に関しては
何も無いピィに、何かあげたかったっていうのもある。

・ウソみたいだろ。『プロダクション』襲撃前には既に書き始めてたんだぜ。これで……。
「年内に投下できればいいな……」とか。去年の末にのたまってたんだぜ……。
『ピィが礼子さんに悩みを聞いてもらう』というコンセプトは割りと以前からあったのだけど
「ピィの悩みって何よ?」という部分が難産難産アンド難産。
ついでに『プロダクション』襲撃事件があって、時系列をこれの前後どちらにしようか迷った部分も(責任転嫁)。

・他の人の書くピィがやたらイケメンだったりするのに対して
どうも俺が書くとヘタレになりがちなので、個人的な区切りというかケジメを付けるための回。
今後は多分、もう少し頼りがいのあるピィになる……、と思う。

・ピィは、バネPのようなイケメンな二枚目と、ぷちます!に代表されるような三枚目のPヘッド
……を足して2で割ったような性格をイメージしてます。あくまで個人的なイメージですが。

鳥を元に戻しておくれす

乙ー
前半の悪酔い吹いたww
ホントまさかシリアスな話になるとは……

個人的事情で一週間程度投下出来なくなりそうなので
AHFの参加者入場編だけ投下しまーす

三人ほどオリジナルキャラが出てきますがほぼ使い捨てです


――アイドルヒーロー同盟所有、特設スタジアム。

『さあ、いよいよ皆さんお待ちかね! 第三回、オールヒーローズフロンティア、いよいよ開幕ッです!!』

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・

『アイドルヒーローで、あるいはフリーのヒーローで、またまたあるいは能力者一般人で、一番強いのは誰だ!?』

『その答えが、この大会で! 明らかになります!!』

J『実況はワタクシ! アイドルヒーロー同盟の名物キャスターこと、J! そして解説にはアイドルヒーロー応援委員の……』

亜里沙『ありさ先生と……』

ウサコ『ウサコがお越しウサ~♪』

J『先生、ウサコちゃん。本日はよろしくお願いします』

亜里沙『はい、よろしくお願いしますね』

J『では早速ですが、300通を越える応募の中から、書類審査と面接を勝ち抜いた、25人の挑戦者に入場していただきましょう!』

ウサコ『1000通行かなかったウサ?』

J『き、きっと多くの人が怖くて二の足を踏んだんでしょう、多分! ではまず、我らがアイドルヒーロー達の入場です!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.01! みんなの心にウサミンウェーブ! 貫禄の前回覇者、ラビッッツムーーーーン!!』

ラビッツ『ウッサミーン、きゃはっ☆』

ウッサミーン!!!

エントリーNo.01 貫禄の前回覇者
ラビッツムーン
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「…そ、それなりにあるとは思いますよ?」
知力:「結構物知りですよ!これでもちゃんとJKですし!」
賞金の使い道:「うーん…やっぱり、健康面をもっとちゃんとしたいなーって」

J『うわあ! 登場しただけでスゴイ熱気ですね!』

亜里沙『立ち振る舞いに余裕すら感じるわね、流石は前回優勝者ってところかしら?』

ウサコ『前回の年齢を問い詰めてはいけないウサ。いいウサね?』

J『アッハイ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.02! 木々と歌い、花と踊る! 大自然の歌姫、ナチュラルッラヴァーーーース!!』

ナチュラル『頑張るよー!』

ウォォォォォォォ!!

エントリーNo.02 大自然の歌姫
ナチュラルラヴァース
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「うーん…そこそこ、かな?」
知力:「…植物の知識なら負けないよっ!」
賞金の使い道:「お金かぁ…貰ってから考えたいかも」

J『ああ、入場早々ラビッツムーンに駆け寄って……あ、これはハイタッチですね』

亜里沙『あの二人はプライベートでも仲が良いそうで。微笑ましいわねえ』

ウサコ『キマシな塔が建造されるウサー』

J『普通にお友達って見方しましょうよ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.03! ファンより多い舎弟希望者! 鋼の特攻隊長、カミカゼェェェーーーーッ!!』

カミカゼ『余計なお世話だッ!!』

アネゴーーーーーッ!!

エントリーNo.03 鋼の特攻隊長
カミカゼ
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「無いと思うか?」
知力:「が、学校には行ってる」
賞金の使い道:「フリーの頃に作った借金があってな……」

J『入場一発目の雄たけび、気合充分ですね!』

ウサコ『気合っていうか苦情っていうか、ウサ』

亜里沙『でも、慕ってくれる人が多いのはいい事よ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.04! 変なカースに襲われても俺は元気です! ヤイバーズのパワー担当、ヤイバァー・甲ォーーー!!』

甲『ッシャア!!』

イェエエエエエエエエ!!

エントリーNo.04 ヤイバーズのパワー担当
ヤイバー・甲
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「伊達にヤイバーズのパワー担当と言われてるわけじゃあねえ!」
知力:「そっちは相方にまかせっきりだな」
賞金の使い道:「ズバリ、ヤイバースーツのパワーアップとメガネの根絶だ!」

J『謎のカースに襲撃されてから治療に専念していたヤイバー・甲! 今ここに舞い戻りました!』

ウサコ『変な洗脳は解けてないウサ』

亜里沙『でも、それ以外は健康そのものね』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.05! ペンは剣よりミサイルより強し! ヤイバーズの頭脳、ヤイバァー・乙ゥーーー!!』

乙『リーダー大丈夫かよ……』

イェエエエエエエエエ!!

エントリーNo.05 ヤイバーズの頭脳
ヤイバー・乙
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「無いわけじゃないけど……リーダーと比べると流石に、な」
知力:「これでもヤイバーズの頭脳を自称してるんでな」
賞金の使い道:「リーダーを良い医者に診せてやりたい、マジで」

J『さあ、その知能でどんな戦いを見せてくれるのかヤイバー・乙!』

亜里沙『甲君を心配してるのが微笑ましいわねえ』

ウサコ『二人の担当Pは何故止めなかったウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.06! アイドルヒーロー最年少! ゴースト・人・エクスマキナの三重奏(トリニティ)、RIィィーSAァーーー!!』

RISA『いくわよっ!!』

RISAァァァアァァアァ!!

エントリーNo.06 ゴースト・人・エクスマキナの三重奏
RISA
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「自信あるに決まってるじゃない!」
知力:「……死ぬ気で勉強してきたから大丈夫よ…」
賞金の使い道:「パ…ちょっ!なにするのよ!ロリコンヘンタイ!ちょっと!コアさんも邪魔しないで!!!」

J『さあ、最年少アイドルヒーローが相棒のコアさんと一緒に堂々の入場です!』

亜里沙『子供ゆえの未熟さもあるけれど……子供ゆえのフレッシュさに期待したいわねえ』

ウサコ『ちなみにインタビュー中に急用が入った結果こう↑なったウサ』

J『そうですね、急用です』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.07! 新ジャンル:男の娘アイドルの最高峰! プリティフェイスに潜む牙、ラプタァァァーーー!!』

ラプター『全員ブッ飛ばす!!』

ランチャアアアアアアアアアン!!

エントリーNo.07 プリティフェイスに潜む牙
ラプター
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「アイドルヒーローだよ?あるに決まって……え?キャラ作らなくていい?」
知力:「こう見えて、頭の回転は速い方だぜ?」
賞金の使い道:「あー……取ってから考えるわ」

J『体格に似合わずのっしのっしと入場してきましたねー』

ウサコ『肉食恐竜ウサ。ウサコの天敵ウサ』

亜里沙『男の子なのに男性ファンの方が多いのねえ』

ウサコ『男は所詮ガワばっか見てるウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.08! 振るう拳はご飯の為に! 海底から来た大型新人、アビスカルゥゥーーー!!』

スカル『頑張りますよー』

ウォォォォォォォォォォ!!

エントリーNO.08 海底から来た大型新人
アビスカル
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「自信満々でございます」
知力:「お勉強中ですよ」
賞金の使い道:「アイスを沢山食べたいでございますですねー」

J『海底からやってきてなんやかんやでアイドルヒーローになったアビスカル! 期待が高まります!』

ウサコ『はしょりすぎウサ。全くわからないわ、だウサ』

亜里沙『鎧が自己修復するらしいから、長期戦には有利かしら』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.09! 全ての豚よ、私に跪け! 冷徹なる女王様、レポ・クラリアァァァーーー!!』

クラリア『ふふふ……』

オホーーーーーーーッ!!

エントリーNo.09 冷徹なる女王様
レポ・クラリア
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「私が他の者に劣るなどあり得ないわ!」
知力:「無知は罪よ。よく覚えておきなさい」
賞金の使い道:「この賞金を必要とするものたちの前で賞金を破り捨ててその反応を見たいわ!」

J『スゴイですね、言動挙動一つ一つがドSの塊ですよ』

ウサコ『ラプターと並んでファン層が歪んでるウサね』

亜里沙『賞金の使い道がものすごいわね。ちょっと優勝する様を見てみたいかも?』

J『……はい、アイドルヒーローからのエントリーは以上ですね』

ウサコ『え、9人しかいないウサ?』

J『はい。一般枠を広げた結果、こうなりました』

亜里沙「じゃあ、ここから先は一般枠の紹介ねえ」

J『そういうことになります。でははりきって参りましょう!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.10! 宇宙管理局からの刺客! 万里を見透かす百目の女、パァーボ・レアルゥゥゥーーー!!』

レアル『いや、百もねえよ……つか刺客って』

ヒュウウウウ!!

エントリーNo.10 万里を見透かす百目の女
パーボ・レアル
所属:宇宙管理局
体力:「まぁ、人並み以上にはあるな」
知力:「…一般知識は問題ない、はず。あと音楽?特にロックなら負ける気がしないね!」
賞金の使い道:「半分は使うとして…半分は貯金しておきたいかな、将来の事とか考えてさ」

J『一般枠一人目は宇宙管理局からの参加です! なお、一般枠の中でも希望者は、本名等一切を伏せさせていただいております!』

ウサコ『百目ってなんだかおっかないウサ』

亜里沙『うーん、予選の活躍ぶりを見てみないと、まだちょっと評価できないわねえ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.11! プロダクションを代表して出場! 闇夜に舞う白猫、アナスタシアァァァーーー!!』

アーニャ『アー、スターラッツァ……えと、頑張ります』

スペシーヴァアアアアア!!

エントリーNo.11 闇夜に舞う白猫
アナスタシア
所属:プロダクション
体力:「ダー……それなりに、自信のあるつもりです」
知力:「前職の時の知識はありますが、一般常識は少し、不安があります……」
賞金の使い道:「……生活費と、お世話になってるプロダクションに」

J『能力者支援団体プロダクションからロシアっ娘の参戦です!』

ウサコ『ぐぬぬ……ウサコに負けず劣らずの美少女ウサ……!』

亜里沙『身のこなし一つ一つに隙が見えなくて、期待できそうねえ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.12! 歩く自然災害・オブ・大空! 心優しきハリケーン、ナチュルゥスカイィィィーーー!!』

スカイ『え、えと……が、がんばります……』

イェエエエエエエエ!!

エントリーNo.12 心優しきハリケーン
ナチュルスカイ
所属:ナチュルスター
体力:「えっと…自信はないです」
知力:「勉強は得意です…」
賞金の使い道:「しn……いつもお世話になってる義母さんに感謝の気持ちで渡します」

J『今回ナチュルスターは三人揃ってのエントリーとなります!』

亜里沙『フリーヒーローの中ではトップクラスの有名人ねえ』

ウサコ『良くも悪くも、ほんとに有名ウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.13! 歩く自然災害・オブ・大海! 泣き虫大津波、ナチュルゥマリィィィーーーン!!』

マリン『うぅ……なんですかこの二つ名……いぢめですか……』

ムーリィィィィィィィィ!!

エントリーNo.13 泣き虫大津波
ナチュルマリン
所属:ナチュルスター
体力:「よく部活勧誘されてるですけど…変な期待はもたないでほしいんですけどぉ…」
知力:「悪くはないと思うんですけど…」
賞金の使い道:「そ、そんなことよりなんで登録されてるんですか?私は静かにひっそりと暮らしたいので、誰か代わりに出てくれませんか?賞金は全部あげますので……」

J『さあおずおずと入場してまいりました! そんな事を言ってももう手遅れだぞナチュルマリン!』

亜里沙『確か、癒しの術が使えるのよね。意外と長期戦向き?』

ウサコ『相手はジリ貧必至ウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.14! 歩く自然災害・オブ・大地! 任侠大地震、ナチュルゥアァァァーーース!!』

アース『やるからには勝つけえのお!!』

ウオォォォォォォォォォォォ!!

エントリーNo.14 任侠大地震
ナチュルアース
所属:ナチュルスター
体力:「体力なら自信あるけえのう!ウチの若い衆にも負けないんじゃ!」
知力:「べ、勉強は苦手じゃ…」
賞金の使い道:「その時に考えてみるんじゃ!」

J『さあナチュルスター最後の一人が入場です! 果たしてスタジアムはいつまで保つのか!?』

ウサコ『不穏な事言うなウサ!』

亜里沙『この子の言葉の端々の方がよっぽど不穏なような?』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.15! 海底からの反逆者! 地を泳ぐ白銀の騎士、アビスッナイトォォォーーー!!』

ナイト『よっろしくー!』

オオオオオオオオオオオオ!!

エントリーNo.15 地を泳ぐ白銀の騎士
アビスナイト
所属:フルメタル・トレイターズ
体力:「筋力はまあまあ普通……足は速い方かな!」
知力:「……の、ノーコメントで」
賞金の使い道:「家に住みたいなあ」

J『憤怒の街事件近辺から活躍が始まった、フルメタル・トレイターズのリーダーが登場です!!』

亜里沙『武器が遠近に対応しているから、柔軟な戦いに期待できるわねえ』

ウサコ『ってか海底人二人目ウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.16! 天空からの反逆者! ウェポンマスターサイボーグ、SCィィィー0ワーーーン!!』

01『参ります!』

ワァァァァァァァァァァァァ!!

エントリーNo.16 ウェポンマスターサイボーグ
SC-01
所属:フルメタル・トレイターズ
体力:「まあ、サイボーグなので自信はあります」
知力:「必要最低限の知識は持っているであります」
賞金の使い道:「家に住みたいです」

J『さあSC-01、相棒の小型戦闘機マイシスターと共に入場です!』

ウサコ『あの中銃器でいっぱいって何かおっかないウサ』

亜里沙『相手を殺しちゃいけないから、使える武器が限られちゃうわねえ。ちょっと不利かも』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.17! 地の果てからの反逆者! 艶やかに奏でる高貴な旋律、ノォーヴル・ディアブルゥゥーーー!!!』

ディアブル『ごきげんよう♪』

ヒョオオオオオオオオオオオ!!

エントリーNo.17 艶やかに奏でる高貴な旋律
ノーヴル・ディアブル
所属:フルメタル・トレイターズ
体力:「体力は自信がありません……」
知力:「こちらは、人並みだとは思いますわ」
賞金の使い道:「家に住みたいですわ」

J『さあ、こちらは使役する自動人形と共に入場してまいりました!』

亜里沙『まさに鉄壁のボディガードってところね』

ウサコ『っていうかフルメタルは賞金の使い道が切実すぎるウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.18! あのセイラが帰ってきた! 不死鳥が如きカムバッカー、水木ィー聖來ァァーーー!!』

聖來『あはは……アイドルヒーローに復帰ってわけじゃないけどね』

セイラアアアアアアアアアアアアアアア!!

エントリーNo,18 不死鳥が如きカムバッカー
水木聖來
所属:フリー
体力:「結構自信ありかな、元アイドルヒーローだし、ダンスも得意だからね!」
知力:「まあまあそこそこには?わんこ関係の知識ならかなり……ん?必要ない?」
賞金の使い道:「いつも協力してくれる子達の餌代になるかなぁ」

J『元アイドルヒーロー水木聖來! こうして公の場で戦うのは久しぶりであります!』

ウサコ『懐かしいウサー』

亜里沙『腕が鈍っていないか、お手並み拝見ね』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.19! 目指せ、優勝大作戦! 物理的オカルトパワー、桜ァァァー餡ーーー!!』

桜餡『頑張っちゃうから!』

イェエエエエエエエエエエ!!

エントリーNo.19 物理的オカルトパワー
桜餡
所属:フリー
体力:「体力は結構自信あったりするよ!」
知力:「…がんばるよー」
賞金の使い道:「え、えっと居候先に…ね!」

J『ヒーローではないけれど、居候先のお姉さんに恩返ししたいという桜餡! その健気さが審査員のハートを射抜きました!』

亜里沙『資料には、妖力を使えるってあるわねえ』

ウサコ『妖怪と人間のハーフとかかもしれないウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.20! 武器は、この身一つあればいい! アメイジング空手ガール、中野ォーーー有香ァァーーー!!』

有香『……押ォ忍ッ!!』

オオオオオオオオオッスウウ!!

エントリーNo.20 アメイジング空手ガール
中野有香
所属:フリー
体力:「押忍! 体力だけは誰にも負けないつもりです!」
知力:「勉強は……、苦手では無いですが」
賞金の使い道:「何か特訓が捗るような事に使えたら、って感じです」

J『幼い頃から空手を嗜み、更に能力まで得た中野有香! 文字通り丸腰で、どこまで勝ち進めるか!?』

亜里沙『こういうストレートな子って、個人的に応援したくなっちゃうわ』

ウサコ「中野……黒髪ツインテ……ウッ、頭がウサ……」

J『それ以上いけません!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.21! 燃える鎌は断罪の証! ブランク無用のベテラン魔法少女、エンジェリィィック、ファイアァーーー!!』

ファイア『……すこし引っかかるわね』

ウオオォォォォォォォォォォ!!

エントリーNo.21 ブランク無用のベテラン魔法少女
エンジェリックファイア
所属:フリー
体力:「伊達に変身して戦っていないわ」
知力:「……ジャンルにもよるけれど、少し苦手かしら」
賞金の使い道:「友達と旅行にでも行きたいわ」

J『やってきましたエンジェリックファイア! 超余談ですが、今回出場選手では最年長の25歳です』

ウサコ『わざわざ何でそんな事言ったウサ! 言うウサ! 何故ウサ!』

亜里沙『でも場数を踏んだベテランは強いから、ある意味大事な情報ねえ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.22! 私のプログラミングに狂いは無い! テクノロジーガール、オォーフィィーーース!!』

オーフィス『そんな事言ったこと無いけど……』

ウォォォォォォォォォォォォォ!!

エントリーNo.22 テクノロジーガール
オーフィス
所属:フリー
体力:「正直、自信はないかな……まっとうな手段なら、ね」
知力:「この時代の知識ならひととおり仕入れた……はず」
賞金の使い道:「生活費と、メンテナンス設備と……あと、他のアシ雇ってほしい」

J『普段は某漫画家のアシスタントをしているというオーフィス! 職場改善の為にと先生に泣きつかれたそうです!』

ウサコ『見た感じはフッツーの女の子ウサ』

亜里沙『左腕のキーボードが怪しいわねえ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.23! 今やお茶の間の人気者! 愛と正義のはにかみ侵略者、ひなたァァん星人ーーー!!』

ひなたん『賞金は、丸ごとつるっと私のものひなた☆』

ヒナタアアアアアアアアン!!

エントリーNo.23 愛と正義のはにかみ侵略者
ひなたん星人
所属:フリー
体力:「エネルギーが続く限りは戦えるひなた☆」
知力:「えっ、知力ですか?自信はないですけれど……ヒーロー関係のクイズとかなら得意かもです」
賞金の使い道:「うーん…たくさんの小説を買うとか、あ…でも読む時間が……えっと、それじゃあプレゼント代って事で」

J『カピバラ怪人騒動で一躍有名人となったひなたん星人! 刀を振り回して堂々の入場です!』

亜里沙『以前に会った事があるけれど、ああ見えてすごく芯が強い子なのよね』

ウサコ『実はウサコ一番のごひいきヒーローウサ!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.24! 依頼とあらば即・参上! クール&Coolな仕事人、マーセナリィィー・東郷ォーーー!!』

東郷『ふっ、よろしく頼むよ』

ホアァァァァァァァァァァァ!!

エントリーNo.24 クール&Coolな仕事人
マーセナリー・東郷
所属:フリー
体力:「そこそこ自信はあるよ。荒事には慣れているからね」
知識:「さあ、どうだろうね。一般教養程度なら心得ているが」
賞金の使い道:「無論興味は惹かれるが、今回私のやるべきことはそれではないのでね」

J『資料によればマーセナリー・東郷、某企業に依頼されて代理で出場した万屋とのことです』

亜里沙『スーツ姿にサングラスに日本刀……なんだか絵になるわねえ』

ウサコ『今回地味にポン刀使い多いウサ』

プシーーーーーッ

J『いよいよ最後! エントリーNo.25! 誰だ、一体何者だ!? 一切不明のアンノウン、カレェェンヴィィーーー!!』

カレンヴィー『……お、おー!』

ワアアアアアアアアアアア!!

エントリーNo.25 一切不明のアンノウン
カレンヴィー
所属:フリー
体力:「自信はないかな…昔から身体は弱かったし」
知力:「だ、大丈夫!九九はできるから!」
賞金の使い道:「特に使い道はないので、病院に寄付するかな?」

J『コンビニでバイトしている事以外頑なに喋ろうとしないカレンヴィー! 彼女は一体どこの誰なのか!?』

亜里沙『この子も普通の女の子に見えるけれど……?』

ウサコ『残念な子の香りがプンプンするウサ』

J『さあ! 予選への切符を勝ち取った25人のヒーローが今、この場に集合しました!』

ラビッツ「…………」

ナチュラル「…………」

カミカゼ「…………」

甲「…………」

乙「…………」

J『ここから本戦に勝ち進めるのは、わずかに8人!』

RISA「…………」

ラプター「…………」

スカル「…………」

クラリア「…………」

レアル「…………」

J『敗者復活枠を含めても、たった12人!』

アーニャ「…………」

スカイ「…………」

マリン「…………」

アース「…………」

ナイト「…………」

J『確立、5割以下! 半分以上が予選で敗退します!』

01「…………」

ディアブル「…………」

聖來「…………」

桜餡「…………」

有香「…………」

J『この狭き門をくぐりぬけ、本戦へ出場するのは誰なのか!?』

ファイア「…………」

オーフィス「…………」

ひなたん「…………」

東郷「…………」

カレンヴィー「…………」

J『ではいよいよ、予選…………!』

全員「…………」ゴクッ

J『……………………は、次回のお楽しみ!』

全員『ここで終わるんかい!?』

続く

はいここまで
みんなの二つ名考えるの楽しかった(恍惚)
もうAHF中はお借りの流れカットするよ!長いから!

学園祭時系列で投下しますですよ

「ふふんふんふんふっふ~ん♪」

街が学園祭一色になっている。道行く人たちは殆どが学園祭目当てだ。

『国内最大規模の学園祭』という事もあり、わざわざ地方から来る人もかなりいるらしい。

しかも、あのアイドルヒーロー同盟のアイドルまで出演するのだ。マスコミも注目するし、ファンは大喜びで集まってくる。

秋炎絢爛祭は一種の経済効果まで起こしている学園祭なのだ。

「ふふんふふんふんふんふふ~ん♪」

そんな中、カフェ・マルメターノは出張店も出すことなく通常通りの営業である。

きらりは開店前に鼻歌交じりでご機嫌そうに店の周囲の掃き掃除をしていた。

奈緒はまだ寝ているが取りあえず無事に帰ってきた。それが嬉しい。

「ふふんふふんふん♪」

「あっ…きらりさん?」

「にょ?…あーっ!千枝ちゃーん!お久しぶりだにぃ☆あいさつ代わりのはぐはぐー☆」

「わわわ…は、はい、お久しぶりです…きらりさん、あの…箒落としてますよ」

「あっ、お掃除しなきゃいけなかったにぃ!ごめんね箒さーん」

(び、びっくりしたぁ…)

きらりのいきなりのハグに驚きつつ、すぐに解放されて落ち着いたようだ。

「んーと、千枝ちゃんは…お祭に行く途中かな?」

「そうですよ、きらりさんはこのお店で働いていたんですか?」

「そーなの!ぱふぇがとーってもおいしーから、千枝ちゃんもいつか食べに来てー!あ!そーだ、これ邪魔にならないならどーぞぉ!」

きらりが制服であるエプロンのポケットから小さなチラシを取り出して千枝に渡した。

店の説明や地図に加えて『このチラシ一枚で1つのグループにドリンク一杯無料サービス』と書いてある。

「ええっと…このお店のチラシですか?」

「そーなの!し・か・も!サービス券にもなっちゃう☆これをねぇ、学園祭に行ったり~学園祭から帰ってきた人たちに配るんだゆ!」

「カフェ・マルメターノ…このお店って学園祭にお店は出さないんですか?」

「それがね、きらりはお店出したいんだけどぉ…もう結構お店あるみたいだから、出さない方がいいってリーダーちゃんがぁ…」

「あ、そう言われると確かにカフェって結構あったような気がします…」

「けど!お店に人が来てくれるとやっぱりうれしーから、こーやってチラシを配るんだにぃ☆」

出張店として開いたり、学生が開いている店…それぞれ趣は違うがカフェ自体はそれなりにある。

それだけではなく、食べ物や飲み物を販売している店も考慮すると、比較的普通なカフェ・マルメターノは集客が望めないと考えられた。

それでも学園祭に集まる人の量は膨大で、なんとしても呼び込みたいのが本音である。

このチラシは主にこの店の前を通る人々が、学園祭の帰りに騒がしくない、落ち着ける空間を求めて入店するのを狙っているのだ。

「千枝ちゃんも、お友達とか、ご近所さんとか…いろんな人と一緒に来て来て!」

「ご近所…あっ、もう行かなきゃ!きらりさん、チラシ貰っておきますね!」

「うん!きらり、頑張るから、千枝ちゃんも頑張ってー☆」

「はい!」

ブンブンと手を振って、きらりは千枝を見送ると、再び鼻歌と共に掃除を再開した。



学園祭のスタンプラリーは、難易度が高い程スタンプの量が多い。

だが、逆に言えばポイントが少ないが難易度が低い場所も結構あるのだ。

時間がない人達は高ポイントを狙い、そうでなくても個性的な物が多い高難易度の物はそれなりに人気がある。

だが、時間に余裕もあり、それほどチャレンジャー精神や野次馬根性もない人々は、コツコツ低ポイントをこなしていたりもする。

そんな人がここにも…スタンプラリーの1ポイントのスタンプが押される場所で、3人の少女が1人を待っていた。

内容はあっち向いてホイ。簡単なはずなのだが先ほどからずっと終わる気配がない。

何故なら番人はジャンケンでずっと勝っているのだが、挑戦者があっち向いてホイの時に粘りに粘って決着がついていないのである。

挑戦者は金髪で猫耳の獣人の少女。待っている3人のうち、一人は緑色の少し大きな袋を持っていてた。

そう、彼女達はハリケーンガールズだ。

「ケイー、まだ終わんないのかよー」

「……スタンプと言えばマリパ3のストーリーモードよね」

「ケイー!マーサが変な事言いだしたから早くぅー!」

「ほんとゴメン!まだ負けてないから、諦められない!」

急かす後ろの3人に謝罪し、ケイは再び番人と向かい合う。

「じゃあいきますよー」

「はいはい!」

「「じゃんけんポン!」」

「「あっちむいてホイ!」」

「あー負けました~」

「よっし!やっと勝てた~ほら、スタンプちょーだい」

「はいどうぞ、1ポイントです」

「よーし、これで3ポイント!あと6ポイント!」

「ケイ…1ポイントで時間使いすぎよ」

「番人の男の子も少し困っていたみたいだよ?勝ってホッとしてたし」

「だってさぁ、ジャンケンで勝てないんだよ!あっち向いてホイの時に粘るしかないじゃん!?ジャンケンで勝てばあっち向いてホイでは勝てるし!」

「ケイは動体視力良いよな、だからか?」

「そう!本気出せばテレビがコマ送りに見えるの!…目が疲れるけどね」

猫の獣人であるケイは、動体視力にそれなりの自信があるようだ。

「…でも動体視力が良い割にはジャンケンには勝てないのね」

「いや、あれはどうしようもなくない?下手すると後出しになるし」

「そもそも、十数連敗くらいする方がすごいと思うよ」

「確率どこ行ったって感じだったよな」

「あのね…ジャンケンの時、ジャンケンをしない方の腕は宙に浮いている場合はパーとチョキの時、微妙に動くの。個人差はあるけど」

「え、何それ知らなかった!」

「おーマジだ、右腕でパーとかチョキを出すと微妙に左手が動くな」

「…次からは、ジャンケンでも無双が出来そう!」

「いや、腕隠されたらどうするんだよ」

「がんばる」

「獣人の動体視力の無駄遣い…かも」

「そういえば猫耳の女の子がメイドカフェにいたねー。あのメイドカフェ、噂だと種類豊富みたいだよ」

「メイドの種類が豊富なメイドカフェ…なんかすごいな。何がって言われても答えられそうにないけど」

「アタシは『にゃあにゃあ、にゃんにゃん❤』な~んてしたくないけどね」

ケイが冗談交じりに上目遣いで猫のようにポーズしてみるも、すぐに本人が嫌そうな顔をして止めてしまった。

「うん、お前はそういう路線じゃないな。よーくわかる」

「ロックな猫と、メイドな猫、あなたはどっち?みたいな?セクシーなのキュートなのどっちが好きなの?なんちゃって~」

「…ちょっと古いわね」

「え~このネタ、アタシ達が小学校の…一年生ぐらいの時のでしょ?」

「十一年前じゃねーか!!」

「十分古いわね」

「えっ、古かった?」

不意に出てきた懐かしいネタに、4人は盛り上がる。

「…じゅ、じゅういちねん、ですか」

「…ナナちゃーん?」

「なんでもないですよー、ほらなんでもなーい…」

「あっ…ほ、ほら、もうすぐ楽屋戻っておかないといけない時間だよ!落ち込んでないで行こっ?」

「そうでした!いけませんね、楽屋代わりの教室にもどりましょう…!」

その声に変装して通りかかった某ウサミン星人が反応したが、幸いにもそれはあまり注目を集めなかったようだ。

今日のハリケーンガールズは…というか、メンバーのケイがスタンプ集めを楽しんでいた。

高得点の番人は、大抵は勝てる気がしないと判断し、地味にポイントを集める方針だ。

「あと6ポイントー…長いのか短いのかわかんないね」

「ケイの動体視力なら、あのカミカゼのコイントスもクリアできないか?3ポイントだしやってもいいと思うけど」

「いやー…できるかもしれないけどさ、あの女の子とカミカゼの激闘をちらっと見ちゃったら自信なくて」

あの激闘は、ハリケーンガールズも目撃していたのだ。…通り過ぎただけなので、結果は知らない。

「…あれは多分例外だろ。いけるって」

「そ、そうだよね!イケるよね!じゃあカミカゼがいたところまでいってみよー!」

「ねぇ、あそこ…5ポイントらしいけど…興味ない?」

「5ポイント!?」

「ほら、あそこ…人がいっぱい集まってるでしょ」

マーサが指で示した場所には、多くの見物人がいた。

「ああ、あそこか。人がやけに集まってるなぁと思ったらスタンプの番人だったのかよ」

「…見るだけ見て見ない?あれ観客の方が多いみたいだし」

「そーだね、見るだけ見て見よっか!」

人ごみに近づいていくと、それはどうやら早食い大会のようだ。

挑戦者はだんだんペースが落ちていくと言うのに、番人の山盛りのお菓子はヒョイヒョイ消えていく。

「なにあれ…あの女の子一人で早食い大会?」

「…まさか、さすがに数回ごとに交代してるだろ…?」

涼のその言葉に、ギャラリーの一人が話しかけてきた。

「…お嬢ちゃん達、俺はさっきからずっと見てるけどよ、この子…ずっーと交代せずに食いまくってるんだよ」

「え、えー…」

「…それで、勝った人はいるのか?」

「今の所いねえな。大食いに自信があった男たちが挑んでも、勝ったやつは一人も見ていない。とにかく、挑もうなんて思わない方がいいぞ」

「うん、言われなくても挑む気になれないから…」

「だよな~!」

そんなギャラリーの声を押しのけるように、一つの声が響いた。

「ふゥーハハハハハー!」

その声に、何故かギャラリーが道を開けるようにサーッと引いていく。

「アタシがこの5ポインんとに挑戦してやんよ!」

ドヤ顔で言い放ったのは黒髪に黒い肌、赤い瞳と太い眉。そして口元まで隠れる大きな黒いコート…怪しげな印象の少女だった。

「ふふん。大食い、早食い…アタシも自信ある系女子なンだよね♪」

妙なイントネーションでそう言い放ったのは黒兎の人間体…外見年齢は奈緒に近い姿だ。

ふわふわとしたツインテールを兎の耳のように揺らしながら、コートを脱いで椅子に掛け、彼女は席に座った。

「あら~次の挑戦者さんですか~?女の子は珍しいですね~」

『ちょっと待ってくださいね~このソーセージを食べたらお相手しますので~』

そう言いながら、小悪魔な衣装の少女と本格的に全身真っ黒な衣装の少女が皿に和菓子が盛られていくのをジッと見ている。

それが暴食の悪魔と狂信の長だというのは、殆どの者が知ることも無いだろう。

―…おい、大丈夫なのかあの子

―いやいや、止める暇が無かったんだよ!

―…意外と門番の子並に食える子なのかもしれん

―いやいや、そんなまさかぁ…

「…ルールの確認だけど、この和菓子を先に食べつくした方の勝ち…で、いいンだな?」

「そうですよ~大食いじゃなくて早食いですから~」

「おっけおっけ!こレくらい余裕だ♪」

『結構な自信がおありのようですね~ワクワクします~』

絶妙なバランスで山のように積まれた和菓子にキラキラギラギラと目を光らせる。

そして開始のコールが響いた。

「「いただきまーす!」」

目撃者は証言した。『始まった瞬間、そこに居たのは二人の少女ではなく悪魔と魔獣だった。…怖かった。自分まで食われると思った。』と。



5ポイントのスタンプが押された紙をポシェットに入れ、右手には白兎、左手には黒兎を持ち、ナニカがとてとて歩いていた。

「黒ちゃん頑張ったね、勝ったの嬉しいよ!」

「…もう一回やってイイ?」

「止めろ、これ以上目立つな。それにギリギリの勝利だったし…」

「ヘッ、判定勝ちでも最終的に勝てばよかろうなのダ!」

ドヤァ…とポーズを決めるが、ぬいぐるみなのでよく分からない。

「アタシも食べたかったなぁ、おまんじゅうとか…あっ、シュークリームが一番たべたい!」

「お前くらい小さいのがアレに勝てたら不自然だろ…そもそも黒が出るのすら反対だったんだ」

「なんでー?」

「目立つと後々支障が出るし、そもそも顔がアイツと同じだし…それにお前は加蓮に見つかってもいいのか?」

「!」

「あっ、その質問卑怯だゾ」

「アタシにだってやりたいことはあるんだ、そこんとこはっきりしてくれないと困る」

(アタシ的には消えてくれれば楽なんだけど、まだアタシはきっとナニカより弱いから)

言葉を選び、なるべくナニカが白兎の行動や言葉を気にしないように意思を伝える。

「お姉ちゃんは…見つけてくれるなら、アタシはそれでいいよ。見つけてくれなくても、アタシはそれでいいよ。それが、一番だと思うの」

ナニカはもう、会うか会わないか決断できない。会いたい思いと、会ったら起きるかもしれない悲劇への恐れが拮抗しているから。

「もうアイツはどうでもいいと?」

「違う!違うの…」

「ハいはイ、やメヤめ!人生に必要なのはC調と遊ビ心だって誰かが言ってたと思うぞ!」

「誰だよそれ言ったの。どう考えてもただの遊び人じゃないか」

「まぁまァ、白はやりたいことあるなラ単独行動してればいいじゃん。仁加はアタシにまかせて、好きにしてればいいだろ」

「…そうさせてもらおうかな」

「白ちゃんまた行っちゃうの?」

「アイツは一人が好きなの、ほっといていいヨ」

白兎は黒兎の発言を肯定したが、心の中では計画の崩壊を心配している。

黒兎もそれを察しつつ、自分は特に計画なんて立ててない、基本その場のノリなので自分が楽しければそれでいいかと思っている。

一日目同様に、一人になった白兎は思考する。

(不確定要素は排除するか訂正しなくてはならない。なら、アタシはどう動くべきか。力もまだ未完成なのだから、考えなくてはならない)

ライトによる浸食が思ったよりも進んでいない光、ナニカに『悪影響』を与える可能性がある加蓮。

両方とも下手に扱えばさらに状況が悪化する可能性すらある。

(気に食わないなぁ。どうしてこうも上手く事が運ばないのか…)

襲撃したアイドルヒーロー同盟に、そのきっかけとなった聖來。それらもある意味不確定要素だ。

(…不安定な世界は、こうも我々を苦しめる。それも悲しみ。規律に守られていない世界だから)

どれを利用し、どれを排除するか。そして今日も大なり小なり何か起きるであろうこの学園祭という混沌。

(今はまだ、全てを理解し観察しないといけない。参考にできそうな情報が少なすぎる。まずは…そうだな、ライトもいる事だし光からにしようか)

まるで機械の様に、あくまで冷静なつもりで白兎は判断する。

(あの女の周囲には、嫌な奴がいる気がする)

求めるのは知識と情報。足りないものはそれだけだと思っているから。

知識と情報で己が満たされた時、完成すると白兎は確信している。

だが、そうなっても彼女が永遠に理解できない事がある。

『誰かを好きになる必要があるのか?誰かと友情を育む必要があるのか?誰かを尊敬する必要があるのか?』

白兎は理解できない。ありとあらゆる人格を含めた『自ら』を唯一の頂点に立つ者として造られたと確信しているから。

生殖行為をする必要も、群れを作る必要も無い存在。だから理解できない。他の命が『アイ』という物を持っている事を。

『憎しみ』や『怒り』、『妬み』や『欲』は持っていても、『アイ』だけは理解できない。まるで最初から欠けて造られたように。

多くの色が混じりあった黒の中に生まれた唯一の白は他と混じりあう事を知らない。

混じりあう事を知らない白は、ただ他の色を塗りつぶす。白は白としか交わることが出来ないから。

それは誰かによって生命の頂点に立つ為に造られた人格であり、永久に『少女』として幸せになることの無い欠陥人格である。

以上です
ちょっとしたカフェの宣伝と悪魔VS野獣を衝動的に書いていた
彼女が黒の中の唯一の白である理由の話も今のうちに

情報
・カフェ・マルメターノ前では通行人にチラシを配っています。サービス券の期限は無いのでご自由にどうぞ。
・ナニカはもう彼女から隠れないし、逃げる気は無いようです。
・白兎単独行動中。光の周囲を観察する模様。

投下ー、投下しますー

魔法を使える女の子のお話を少々





それはとある冬の日のこと。それは寒い寒い日のことです。

小さな少女が1人、道を行く人たちに声を掛けていました。


「あのぉ……」

「……」

「……すみません」

「……」


女の子は一生懸命声を掛けますが、

通行人たちは見向きもしないか、一瞥もくれずに去っていきます。


「そこの人」

「……あ?」

「……ひっ、すすみません!な、なんでもないですっ!」

「……ちっ」


たまに反応してくれる人も居ましたが、結果は同じ事でした。


「……」

「……うぅ、寒いよぉ」

頭に大きなリボンをつけ、黒いローブを着込んだ少女は、

白い雪の降る空の下、一人ぼっちなのでした。



その女の子は魔法使いでした。

魔法使いと言っても御伽噺に出てくる様な華やかな魔法使いではありません。


「……”ほのおの魔法”とか使えたらよかったのになぁ」


呪文一つで、たちまち炎を生み出す。彼女はそんな魔法は使えませんでした。


「くしゅん……少しでもあたたかい場所を探さないと」


彼女に使えるのは”何かを探す魔法”。

尋ね人を探す魔法。失せ物を探す魔法。

探して見つける。ただそれだけ。とても地味な魔法でした。



「あたたかい場所を探す魔法は……」

女の子は懐から、袋を取り出し中を探ります。

そして何かの生き物の毛玉を見つけると、

両手で挟み込み、祈るように唱えました。


「えっとぉ……”暖かい場所を探してくださぁい”」

少女が言葉をつむぐと、スポンっ!とその手から毛玉が飛び出します。

それは微かに雪の積もる地面にふわりと着地すると、

まるで小さな生き物のように、ぴょこぴょこ跳ね回り、

そしてどこかへと向かい始めました。


「えへへ、これでだいじょーぶっ!えっへん!」

魔法の成功を確信し、女の子は胸を張ります。

毛玉に付いていけば、暖かい場所へと案内してくれるはずです。

ぴょんぴょん跳ねる毛玉を、とことこと付いていきます。


――


女の子は魔法使いのお家に生まれた子供でした。

お父さんも、お母さんも、お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、

そのお爺ちゃんも、そのお婆ちゃんも、みんなみんな魔法使い。

そんなお家に生まれた子供でした。


家族はみんな口を揃えて言いました。

「お家の外は怖いから、外に出てはいけないよ」といいました。

女の子は、その言いつけを守って外に出ることはありませんでした。

だから女の子は、外の事をちっとも知りませんでした。


ある日、外の世界から白いお姉さんがやってきました。


そして女の子は知りました。

外の世界にも、素敵なものがたくさんあるのだと知りました。



それからそれから女の子はさらに知ってしまいます。

外の世界には、カッコいいヒーローが、かわいいヒロインが、

たくさん居て、それぞれ活躍しているのだと知りました。


特別な力を持って、ど派手に大活躍して、みんなに認められるヒーロー。

そんな存在に女の子は憧れたのでした。


「わたしもお家の外の世界にいってみたい!」

日に日に思いは募ります。



そしてある日の夜、女の子はお家を飛び出しました!


家族は追いかけては来ませんでした。やはり、外の世界は怖いのでしょう。

”お父さんやお母さんにもできないことができたんだ!”

それが自信に繋がりました。えっへんと女の子は胸を張ります。


そうして彼女の大冒険がはじまったのです。


――


「もぉお!ちがうぅ!」

女の子はぷくーっと膨れて怒ります。


彼女が追いかけていた毛玉は、すぐ近くにあった住宅地の民家の前で立ち止まり、

その身を縮こまらせて、スッとドアポストの隙間からその家の中へと入っていったのでした。


「うぅ……確かにあたたかい場所だけど……くしゅんっ!」


魔法の毛玉は、あたたかい場所を求めて、どこかのだれかが住む家へと入っていきました。

ですが、そこに少女が入る事はできません。

他人様のお家に勝手に入れば、怒られてしまうからです。


「またふり出しだよぉ……」


少女の嘆きを尻目に、しんしんと雪は降り続くのでした。


――

――


――

――


芽衣子「っと言う訳でっ!!」

芽衣子「お誕生日おめでとうっ!さくらちゃんっ!」

さくら「えっへっへー!ありがとうございまぁすっ!」

芽衣子「はいっ、恒例の財閥からの花束!」

さくら「ありがとうございま……おぉ、重いですっ」

芽衣子「……今回もまあ…お誕生日祝いしてくれる人は少ないけれど」

さくら「やっぱり皆さん、忙しいんでしょうかぁ?」


芽衣子「と言うより、現行の時系列よりもう結構時間が経っちゃってて……学園祭も今日から4~6ヶ月ほど前の事だし……」

芽衣子「まあそんな感じだから……今現在もしっかり暇してそうな人が他に思い当たらないんだと思うな」

芽衣子「この頃にはエージェント抜けてる人も居ないとも限らないし」

さくら「芽衣子さんっ、すごいメタ発言ですよぉっ!」


芽衣子「まあまあそんな事より、今日はさくらちゃんのお祝いだよっ!」

芽衣子「来れない人たちの分も私がしっかりお祝いするからね!」

さくら「むむぅぅ……なんだか釈然としないところはありますけど……」

芽衣子「ほら桃のお誕生日ケーキも用意してるから、ねっ?」

さくら「……えへへー、まぁ、お誕生日だからいっかぁ♪」 

芽衣子(単純だけど、カワイイ)


芽衣子「私達からのお誕生日プレゼントはこれだよ♪はいっ!」

さくら「これはっ……!」

さくら「桜の飾りですか?」

芽衣子「そうっ!さくらちゃんピンクの物好きだったよね」

さくら「はいっ!大好きでぇすっ!えへへ」

さくら「でもこれ、何の飾りなんですか?髪飾り…?うーん」

芽衣子「それはね、杖の飾りだよ」

さくら「杖の……あっ!もしかして、『桜の杖』につける飾りですか?」

芽衣子「うん!身に付けるアクセサリーとかはさくらちゃんたくさん持ってたと思うけど」

芽衣子「『桜の杖』はシンプルな木の杖のままだったから、そっちに付けられる飾りは持ってないのかなって思ってね」

芽衣子「それもさくらちゃんの好きなピンクの飾りを選んでみたよ!……どうかな?」

さくら「芽衣子さん…」

さくら「あの!とっても!とーっても!嬉しいですっ!!」

さくら「本当に本当にありがとうございまぁすっ!!」

さくら「えへへー!」

芽衣子(うん、さくらちゃんはやっぱり満面の笑顔が一番カワイイ♪)



さくら「じゃーん!見てください芽衣子さん!」

桜の杖「…」 キラーン

芽衣子「おっ、早速つけたんだね」

さくら「かわいくなりましたよねぇ?」

芽衣子「うんうん、かわいいよー」

さくら「えっへっへー♪」

さくら「サクライさんにも自慢しますよぉ!」

芽衣子「そっかぁ、サクライさんも喜ぶんじゃないかなぁ」(あの人たぶんロリコンだし)

さくら「ですよねぇ!えへっ」

さくら「『桜の杖』は、サクライさんからのプレゼントでもあるので」

さくら「きっと喜んで貰えますよぉっ!」

芽衣子(純粋だなぁ……)

さくら「あ、そう言えば」

さくら「やっぱり花束の中に、サクライさんからのメッセージカードが入ってるんでしょうか?」

芽衣子「たぶん、入ってるんじゃないかな。私の時と一緒で」

さくら「えっとぉ……」

ゴソゴソ

さくら「ありましたっ!」

芽衣子「何が書いてるのかな?(ちょっと心配)」

さくら「さっそく見てみましょおっ!」


――

――


「花の種…」

雪の降る空の下。

女の子が毛玉の次に袋から取り出したのは、植物の種でした。


「お願いです、暖かい場所に連れて行ってくださぁい!」

毛玉の時と同じ様に祈りを込めて、魔法をかけます。


ふわりと、魔法の種は宙に浮かびます。


「お外に、あたたかい場所があれば……」


植物は暖かい空気と、土を好むもの。

これなら先ほどの毛玉の様に民家に入っていってしまう事は、たぶん無いはずです。


魔法の種は、少女の頭上をクルクルと回ると、

ゆっくりと、ある方向にむけて、動き始めました。

「!」


民家に入る様子はありません。

どうやら外にもあたたかい場所はあったようです。

「よぉしっ!」

少女は意気込んで、魔法の種を追いかけ始めます。


――


ところ代わって、

とある公園で、2人の男が話し合っていました。


「確かにこの枝は、昨日僕達が切り離したはずだったね」

「……ああ、間違いない。まったくもって摩訶不思議と言ったところか」


1人は、身形を整えたスーツ姿の若く見える金髪の男。

もう1人は、夜に溶ける黒いローブを着込み、大きな竜のお面を被った奇妙な男でした。


彼らの見上げる先には1本の、満開の桜の木。

とても、とても不思議な光景でした。

この日は、雪の振る寒い寒い日です。

他の木には、葉っぱ一つ残っていません。

それなのに、彼らの目の前にある1本の桜の木は、満開に咲き誇っているのでした。


「呪術師くん。君はどう考えるかな」

金髪の男が、竜のお面の男に問いかけます。

「我輩の目が確かなら、切り離した枝はまったく同一の物に見えるな」

「つまり?」

「……恐らくは時間が逆行しているのではないか?」


「ふむ……」

「この桜の木は、見ての通り

 花を吹き飛ばされても、枝を切られても、次の日には元通り。

 おそらくは進んだ時の流れと、同じだけ時の流れを逆行させる。

 そう言った類の呪いが掛かっているのではないか。」

「進む分だけ戻る。時の流れへの反抗か……しかし、どうして呪いと言いきれる?」

「ある地点からまったく進めなくなると言うのは、”祝福”ではなく”呪い”だろう?

 いわばこの木は、ただ一つ。世界から置いていかれている。

 この木自身はきっと何も知らない。時間を遡り続けるこの木は、記憶や思いを積み重ねることも無いのだから」

「……」

竜のお面を被った男の説明に、金髪の男は目を瞑って考え込んでしまいます。


「……『あの方』は世界の進展を好む。これでは望む物とは真逆だな」

「それは残念な事だな」


「……」

「だが、これはこれで使えることもあろう」

残念そうに頭を抱える金髪の男に、竜のお面の男は言います。


「この公園を包む春の如き気候は、間違いなくこの桜から発生しているもの。

 ”『満開』の桜”の持つ属性がそうさせているのだろうな。

 桜の木に掛けられているのは、”呪い”と呼べるものだが…

 同時にこれの及ぼす結果は一つの”奇跡”とも呼べる。」

「”奇跡”に転じる”呪い”……か」

「しかし……分からぬ事だらけであるのもまた事実ではある」

「そもそもこの”呪い”の始まりは何だったのか……かな?」

「ああ……とりあえず我輩としては……この木の枝や花を幾つか持ち帰って研究したいのだが」

「取り計らうよ。何か分かった事があれば教えてくれ。頼んだよ、呪術師くん」

「任された。サクライ殿」


「さて……?」

「ん……?」


話を終えた2人の元に、小さな光を纏った何かがふわふわと飛んできます。

それは、植物の種のようでした。


「……これは僕たちを狙った攻撃かな?」

「いや、……違うようだな」


「待ってぇぇ……」

光る種に送れて、小さな少女がよろよろと1人公園にやってきました。


「……人払いの術はかけたのだろう?」

「もちろん……だが、我輩の人払いの結界は、魔力を持たない人間の認識を多少誤魔化すだけのもの」

「つまり?」

「彼女はどうやら魔法使いのようだ。」

「ほう」

2人の興味が、やってきたばかりの小さな少女に注がれます。


「あ、この公園あたたかぁい……ほっ……あれ?」

女の子の方もまた、二人の男の視線に気づきました。



「……」

「……」

「あ、あの……」

魔法使いの女の子の前に立つのは、二人の男。

1人は奇妙な竜の仮面を被っているとてもあやしい男。

もう1人の金髪の男は身形は整っていましたが、その視線がとてもあやしい男でした。


「こんばんわ、小さなお嬢さん」

金髪の男から少女に声が掛けられました。

「こ、こんばんわ…」

「魔法使いの少女がどうして、こんな所に来たのかな?」

怯える少女に、男が尋ねます。

その顔には、ニッコリと笑顔が張り付いていました。

「あ、ああの……」

「ああ、そんなに怯えなくてもいい。僕は君に酷いことをするような人間ではないよ」

とても、とても優しい声で男は言います。


「……本当ですか?」

「もちろんだとも。君はきっと僕の敵ではない」

「?」

男のニヤついた口元から放たれる言葉の意味は、少女にはよくわかりませんでした。

「僕はサクライ。魔法使い君、君の名前を教えてくれるかな?」

「……さくらです。村松さくら」

「……そうか、さくら君。いい名前だ」

「えへへ」

なんだかわかりませんでしたが、とにかく褒められたようなので少女は笑います。


「ふふっ、僕達がこの場所で出会ったのは何かの縁かもしれないね」

「……?」

「おや?不思議そうな顔だね……?

 ……ああ、そうか。君はそこの花をまだ見ていなかったね

 なら、是非見ておくといい。悠久の時の呪いに囚われ…なお煌き咲き誇る、美しき花の姿を」


サクライと名乗った男が指差す方を見ると、

「わああっ!」

そこには雪の降る月夜に煌く、満開の桃色の華。


それは家を出て外の世界にやってきた魔法使いの少女が一番最初に見た、”素敵なもの”なのでした。

 


――


「はっはっは、そうか。さくら君はヒーロー達に憧れて家を出てきたのか

 なるほど、見かけによらずとても大胆で勇気のある行動だ」

「はいっ!外の世界には、カッコよくてカワイイヒーローがたくさん居るって聞いてましたからぁ!えへへ!」

「ああ、さくら君の言う通り。彼らの活躍こそまさしくこの時代の華だろう」

「ですよねぇっ!私もそんなそんな凄いヒーローみたいになりたくって!

 みんなに認められるカッコよくてカワイイ魔法使い!ちょーよくないですかっ?!」

「そうだね、素敵な目標だ」

「えっへっへー♪サクライさん話がわかるぅ♪」

すぐ傍にあったベンチに座って、さくらは自分の夢を話します。

いつの間にか、彼女のサクライに対する警戒はすっかり解かれていたのでした。


「しかし、その夢を叶えるのは……今の君には厳しいだろうね」

「えっ…?」


「君の扱う魔法は、おそらく戦闘向きではないね?」

「そ、そのぉ……」

「ははは、図星かな?さて、それではヒーローは務まらない。

 何より……君にはたった1人で生きていくことができるのかな?

 住む場所さえ無いのなら、夢を叶える以前に明日を食いつなぐ事さえ難しいよ」

「うぐぐぐぐ…………」

サクライと名乗った男の言う通りでした。

何の計画もなく飛び出てきたさくらには、お家も、お金も、知識も、何もありません。



「だから……君に必要なものは僕が用意しよう」

「えっ?」

彼はやはり、笑顔で言いました。

「住む家に、必要な資金、外で生きぬくための知識、魔術を学ぶ師……」

「ちょっと待てサクライ、最後のはもしや我輩のことではあるまいな?」

ずっと黙っていた竜のお面の男が口を挟みますが、サクライは無視して少女に語りかけます。


「それくらいのものなら財閥は簡単に用意できるさ」

「で、でも…」

「もちろん無理にとは言わないよ。

 だが、君さえよければ僕についてきて欲しい。さくら君」

「……」


「……あのっ、私はっ!」

それは少女が夢に近づくために、決意した瞬間でした。


――

――


さくら「えっとぉ」

さくら「『まずは誕生日おめでとう、さくら君』」

さくら「『さくら君の活躍は、どこに居ても僕の耳に入ってくる。本当によくやってくれていて感謝するよ』」

さくら「えっへっへー♪芽衣子さぁん!褒められてますよぉ!」

芽衣子「……そうだね」

芽衣子(どうしよう、チョロすぎて心配になってきちゃった……)

さくら「えっとぉ、『さくら君が外でちゃんと生活できていると聞いて、君のご両親もとても安心されているようだね』」

さくら「そっかぁ、お父さんとお母さんも……えへへー」

芽衣子「……?」

さくら「『後でご家族からの誕生日プレゼントも届くはずだから、受け取るといい』」

さくら「わぁっ!なんだろーっ!ちょー楽しみ!」

芽衣子「……」


芽衣子「……あれっ?」


芽衣子「あの、さくらちゃん?」

さくら「?、どうしました、芽衣子さん?」

芽衣子「さくらちゃんは家出中……なんだよね?」

さくら「そうですよぉ?」

芽衣子「それで……ご両親はさくらちゃんがここに居るの知ってるの?」

さくら「はい!手紙でやり取りもしてますし!」

芽衣子「て、手紙?……それは本物の?本当にご両親の書いた手紙?」

さくら「えっ?もちろんですよぉ!」

さくら「前にお家に帰ったときに、ちゃんと返事の手紙が届いたか確認もしましたしぃ!」

芽衣子「そっか、それなら……って、えっ??お、お家にも帰ってたの?」

さくら「はい!年末年始くらいはちゃんと実家に帰って」

さくら「ご家族に顔を見せておきなさいってサクライさんが言ってたのでぇ!」

芽衣子「……ぇぇぇ」

さくら「?」

芽衣子「もう一回だけ、確認するけど……家出中なんだよね?」

さくら「はいっ!」

芽衣子「……そっか。うん……わかった」

ピンポーン

さくら「あ、もしかしてお誕生日プレゼント届いたのかなぁ?ちょっと見てきます!」 トテトテトテ


芽衣子「……家出って何だろう」




さくら「えへへー♪やっぱりお家からでした!大きな箱が届きましたよぉ!」

芽衣子(普通に配達が届くなんて……この拠点の住所バレてるのかな?いや……もう私はツッコまないけどね)

芽衣子「……それにしても、なんだかものものしい箱だね」

さくら「早速開けてみましょお!パカッと!」


さくら「!!」

芽衣子「これはっ…!」

さくら「すごい!ちょーかわいい!!」

芽衣子「うん、さくらちゃんに似合いそうな服だね」

さくら「…………えへっ」

さくら「芽衣子さん、私のお家では衣装の贈り物はですね」

さくら「一人前の魔法使いに贈られるものなんですっ!」

芽衣子「……そっか、さくらちゃんの頑張り。本当に家族に認められてるんだね」

さくら「えっへへー♪」

さくら「今日の贈り物、本当に本当に嬉しかったです!」

芽衣子「ふふっ、良かったね、さくらちゃん!」

さくら「はぁい!」





芽衣子「でもさくらちゃんがこれを着て活躍するのは、ずっと先だろうね」

さくら「えっ」

芽衣子「ほら、現行の時系列が3月27日に追いつかないと」

さくら「……それより前に着たらダメですか?」

芽衣子「うん、ダメだよ?」

さくら「……ちょーっとくらいフライングして着ちゃってても」

芽衣子「ダメです」

さくら「細かい設定なんて無視したって

芽衣子「ダメ」



さくら「……そ、そんなぁああああああああ!」


おしまい


竜面の男

職業 妖術師 魔術師 エージェント 
属性 呪術使い
能力 妖術 魔術

大きな竜のお面を被った男。櫻井財閥の『エージェント』の1人。
『エージェント』の中では発言力の高い方であるらしく、サクライPとも対等であるかのように話す。
妖術と魔術の研究家。呪い(まじない)の探求者。
妖の身でも悪魔の身でも無いに関わらず、両方の術を学び取り入れ行使する。
人の身で両者の技術を高い精度で行使するために、肉体を大きく変形させているようだ。
財閥では悪魔研究部門の責任者でもあり、カースの研究や魔術使いの教育なども担当している。
さくらの魔術の師。彼女との師弟関係は意外と良好であったらしい。



『万年桜』 2

例え散っても萎れても、次の日には満開の花を咲かせ続ける桜の木。
とある呪術師は、木が経過した時間と同じだけ”時間を遡っている”と考えた。
云わば、この桜の木は時間が停止しているようなもの。
時の概念から切り離され、世界から切り離された存在であるらしい。
”不老不死”と言えば聞こえはいいが、それは記憶や思いを募らせることはできず、
周囲の変化にも気づかず、ただ同じ時を繰り返し続けているだけなのだろう。
櫻井財閥は、この木から枝や花を持ち帰る事はできた。
しかし、別たれた枝は”分身”と言う扱いであるようで、本物の枝が時の牢獄から脱する事はやはり無いらしい。

『ピンキッシュブライト』

さくらの誕生日にエージェントから贈られ、『桜の杖』に取り付けられた花飾り。桜の花がモチーフ。
ただの飾りではなく、『桜の杖』の力さらにを強化する力が備わっている。
『満開』の属性が強まり、さくらの放つ魔術は従来の倍以上の力を発揮するだろう。


『アデプトドレス』

さくらの誕生日に家族から贈られてきた一品。
さくらのために魔法を込めて織られた衣装で、どうやら彼女も一人前の魔法使いと認められたと言う事らしい。
ピンクを基調としていてでちょーかわいい服。
でも本筋のお話ではしばらく着られる事は無いはず。哀れ。


と言う訳で、さくらと桜とサクライのお話でした

3月27日は「桜の日」だそうです
そんな日なので万年桜の設定がちょいと重くなりました、何故か

そしてさくらの師である竜面の男、実はすごい裏設定がある……って事は全然なくて普通にモブいエージェントです。

さくらお誕生日おめでとー(でもパワーアップはしばらくお預け)

以上です。

エイプリルフールじゃなくてただの夢オチだとはゲフンゲフン……

ピィ、ちひろさん、マスクドメガネ
名前だけ菜々さんとブリュンヒルデお借りしました

乙です

皆さんおつー

>>454
文化祭の、人でごった返している感が出てていいね

千枝ちゃんのご近所……、あっ(察し) あっ(期待)

そして白いのも黒いのもなにやら物騒ですな

>>481
さくらちゃん誕生日おめ! (6日遅れ)
しかし本当に純粋な子だなぁ、チョロすぎて心配と言うめいこぅに同意見

サクライは金髪なのかーと思ったが、よく考えたらちゃまが金髪なんだから当然だよね
と今更ながら気づく

時系列に関しては、まぁ……
細かい事は気にしないでいいんじゃないかなーって(大雑把)

>>493
ハッピーエイプリルフール!
良かったじゃないか、いい夢見れたなピィ!

え、なに?
今後マジで新たな能力に目覚めて八面六臂の大活躍をする可能性?


        ,'        \   _..-‐i          /  そ 
.         ,' ..::::        i>イ-ュ .ノ            |  ん 
       ,'....:::.:::________ i、 T_ノ i             |  な 
      ,'-''"´r==-、__  `丶、  ,'     ,-――-、_.|  も 
       rヘ:::::/ ィ=rュ ゝソ r:::..ヾ<    /        l|  の  
      i ヘ ゙゙"、    ..::  /:rュ、ミ/   /   な     \
      i、ヽ,        、'‐ノ`  ト   /    い      .|フ r―
     ヾr-i     __..__ 、  ,'ノ   .|      よ      | ̄
     r-/ i    ゙、⌒゙^;  /    ヽ    :      |
     i:ヘ_  \      ̄  ./    <     .:     /
   /i.:::: `ー 、\ _.:::...._ /        \       /
__,-"/ /:::::...    `ヽ`ー‐"ノヽ        `ー――'
//、 | .|ミ      i  / ̄ /
i i ヘi! .| \::...    / /   /-、 ____
ヽi ヾ 丶 `   /  i_  /゙iヘ `ー-   `ヽ

ここで、唐突に思い浮かんだ小ネタを投下

ピィ「何故お金を取るのですか!?」

ちひろ「何ですか急に!」

――自身でも唐突だとは思うが、以前からの疑問を尋ねてみたくなった。

――ちひろさんが作るドリンクが有料な事についてだ。


ちひろ「はぁ……」

――ため息を付きながら、ちひろさんは空になったペットボトルを手にとると、

――ぐっ、と力を込めるような挙動を見せる。

――……と、みるみるうちにペットボトルの内側から液体が湧き出てきて、

――数秒も経たぬ間に容器を埋め尽くした。


――これこそが彼女の能力。

――『”瞬時に疲れを取り、元気を回復する液体”を作る』力。


――――今回の論点は、何故それが有料なのか、だ。

ちひろ「これは社長のアドバイスです」

――対して、ちひろさんは柄にも無く真面目に答えた。

ちひろ「どちらかと言えば、私もこの力を持て余していた口です」

ちひろ「それを社長に拾ってもらったんです」

――また社長か。

――思えば社長も不思議な人だ。


――なんといってもあの周子と既知の仲で。

――未央や紗理奈さんなどの実力者、

――……という実感はあまりわかないのだが、

――とはいえ、そんな二人にも一目置かれる存在だ。

――周子は『カリスマ』がどうとか言ってたか。

――とにかく、要はちょっと特別な人なのだそうだ。


――そんな社長が目をつけたのが、どうやらちひろさんらしい。

ちひろ「ピィさんもですけどね」

――……まぁ、その辺は話半分に聞いておこう。

ちひろ「……別に私は無料で提供してもいいんですよ」

ピィ「えっ!?」

ちひろ「なんですか!」

――き、驚天動地の事実だ……。


ちひろ「えぇっと……」

――ちひろさんが、手に持つペットボトルに詰まった液体を指して言う。

ちひろ「これは『とても素晴らしい』」

ちひろ「いえ、『とても凄まじい』飲料です」

ちひろ「飲めば、疲労回復、滋養強壮、精力増強」

ちひろ「あらゆる、病苦艱難を和らげる飲み物です」

――その効力は、俺もよく知るところである。


ちひろ「社長はこれを飲んで言ってくれました」

ちひろ「『素敵な力だ』と……」

――そう、あれはびっくりするほど疲れが取れるのだ。

ちひろ「ただし、『同時にこの力はいくらかの不利益を生む』とも言いました」

ちひろ「世の中に『栄養ドリンク』というものは数多く存在しますよね?」

ピィ「……えぇ」

――正直なところ、一つとしてその効能を感じたことは無いのだが……。


ちひろ「私のこの力は、その全てを凌駕します」

ちひろ「というか、ぶっちゃけその上を行ってます」

ちひろ「もし私が無償でこのドリンクを提供し出したら」

ちひろ「既存の栄養ドリンクがかなり割を食うことになります」

ピィ「確かに……」

――何となくではあるが、だんだん俺にも社長の意図が読めてきた。


ちひろ「この力、私にリスクは無いんですよ」

ちひろ「精製する際、別に疲れたりもしないし」

ちひろ「……まあ、知らないだけで実は寿命を縮めているとかじゃなければ」

――……何気に恐ろしいことを言う。

ちひろ「少し時間はかかるので量産は無理でも」

ちひろ「一日これに専念すれば、100本か200本は作れるんじゃないでしょうか?」

――それでも1本の効力を考えればとんでもない量だ。

ピィ「よく考えたらむしろ、法外な値段で売りつけてもいいレベルじゃ……」

ちひろ「それをしない私に感謝してくださいね」

――にっこりと可愛らしく微笑むその表情に、

――何故だろう、若干の恐怖を覚えるのは。


ちひろ「なにより『これにはお金を出すだけの価値がある』と社長が言ってくれたんです」

――もう一度、ちひろさんが今度は優しく微笑んで。

ちひろ「なので、気持ちばかりの100円を頂くことにしています」

――今思えば良心的なドリンクの価格。

――その値段の根拠を教えてくれた。

――なるほど。

――そうか、ただの銭ゲバじゃなかったのか。

――ちょっと反省だな。

ちひろ「だというのに巷では鬼だの悪魔だのちひろだの……」

ピィ「落ち着いてくださいちひろさん、ちひろまでは言ってません」

ちひろ「鬼や悪魔は言うんですか!!」

ちひろ「というか『ちひろまでは言ってません』ってなんですか!!」

ピィ「今度からは言わないようにしますから」

ちひろ「フォローの場所が違いませんか!?」

ピィ「天使!! 女神!! 藍子!!」

ちひろ「私は!?」

藍子(楽しそうだなぁ……)

・千川ちひろ

彼女の能力は『”瞬時に疲れを取り、元気を回復する液体”を作る』力。

液体は彼女の触れる『密閉された容器』の内側にしか精製することができない。

この際、容器の大小による精製時間の変化は無く、

500mlだろうと2Lだろうと等しく7秒程で満タンになる。

ただし、50ml以上の容器でなければ液体が湧いてこないという制限がある。

そしてその容量の多寡に関わらず、中身を全て飲み干すことで初めて効力を発揮する。

以上です。
やっつけ仕事な部分が多いので、グダグダ感が否めない。
『おまえは何を言ってるんだ』という理屈をゴリ押していくスタイル。

チッヒ何でお金取るのん?
という疑問にお答えするお話。
何かと腹黒扱いされるけど、いい人なんだよ!

・ちひろさんも社長に拾われたクチ
・ちひろさんがお金を取るのは社長のアドバイス
・ちひろさんの能力の詳細
……の3点の設定を思い付いたのでパパっと書き上げました。

乙ー

なんだ。やっぱりチヒロさんは天使だったか(ガチャガチャ

……あれ?けど、別のところでお金請求してたようn(ターン!

>>507

          { : : /: : : : : : : : : : : : : : :}  V: : : : : : : : :\ : :}
         /: :./: : : : :| : : : i}: : : : : : }   ∨:. : : : : : : : :.\}
.        〈: :}: : : : : :.j|:. : :.,j|: : : : ---- ミ∨: : : : : : :乂: : \
          ∨:. : :. : :斗: : 7 |: : : } :/     }:. : : : : : : : : :.丁
        /:.:{: : : :′| : / |: : /}/ _   :| : : : : : __: : {: :'
         {: :.{: : :.i| ノイ_ノ/   x≠ミ ノイ: ://´ィァY:∨
          乂:{: : :.i| x≠ミ         ノイ/ 〉-'/\',
            〉, : :小       ,              イ/
        /: :':.:.:.|圦                    {‐く、
          \:.': :| : :::.     r  ァ       {      <それはそれ、これはこれ
            }:.Ν: : :个            イ  {ァ、
.           八: : :ヽ ソ:〈   >    <   。si〔/∧
.            \ ⌒ヽノ   /{   。si〔    /∧

>>506 おつです
つまりドリンクはちひろさんのたいえ(ry
ジョボボボボ

さてエイプリルフールネタ前に一つ書き上がってたのでそれを投下します。
ただし今回オリキャラがかなり前面に出てきてしまいますがご了承ください。

あと時系列は正月からしばらく後のことです

 よくわからない複雑な機械が敷き詰められた薄暗い室内で、白衣を着た研究員がせわしくなく動きまわっている。
 そんな部屋の中を一望できるような少し高くなっているところから、イルミナPは研究員らを椅子に座りながら見下ろしていた。

「よくもまぁせっせと働くものですよ。まぁここにいる私も人のことは言えませんが……」

 脳裏に過るのはいまだに炬燵でぬくぬくしているであろう唯と智絵里。
 そして傷は癒えても、いまだに疼く肋骨の痛み。

 あの後、検査したところ肋骨が数本ヒビが入っていることが判明した。
 なんだかんだで魔法などを駆使して完治させたものの、もはやイルミナPはあの場にいることは耐えられなかった。
 あれから暫く経過したがすでに完治しているはずの肋骨は思い返すだけで軋むように感じてしまう。

「まぁ……ヒビだけで済んだので良しとしますか……」

 イルミナPは少し青い顔をしながらそうつぶやく。
 今回語られることはないが、その表情から数々の事故があったことを物語っていた。


「イルミナP様、会議の準備ができました」

 そんなイルミナPの元に一人の研究員が話しかけてくる。

「ああ、すまないな。研究員のはずなのにこんな雑用まがいなことを頼んでしまって」

「はぁ……。でも研究もほとんど終わって、装置の安定調整や点検だけなんで今のところは暇なんですけどね」

「たしかに……そうなんだがな」

「というか去年って何かしましたっけ?」

 思い返せばイルミナティもずいぶんと息の長い組織である。
 そして近年の活動はいっそう活発になってきたのだが、それはあくまで内部での話であった。

 研究などはずいぶんと捗ってはいるが、外部に向けての活動はからっきしの状況であるといっても過言ではなかったのだ。

「ああ……いまだに『妖精の秘宝』は捕獲できていないし、『接点』の確保だってできていない。

唯はやる気はあるのに目的から脱線しがちだし、智絵里はそもそも放浪していて働かない……。

挙句の果てにはイルミナティは世界一の秘密結社と言ってもいいが、その威光に群がる金の亡者どもが多いせいで、一枚岩じゃない……。

去年こそチャンスはあったはずなのに……結局何一つ進展してないじゃないか」


 反省してみれば見えてくる組織としての粗。
 『境界崩し』実行への道のりはまだまだ遠いことが露見してしまう。

「まぁイルミナティの目的の全容を知っている者自体が少ないのも問題なんですけどね。

知ってるのは、あんた方化物トリオと我々イルミナP直属研究員、あとはその他ごく一部ってくらいでしょうし」

「なんかお前私の部下のくせに対応雑になってない?」

「気のせいですよー」

「……まぁいいさ。それも含めて、今年は活動的な計画もちょうど立ててあったしな」

 そんな自信ありげなイルミナPを見て、その研究員は目を見開いて驚いた顔をする。

「童貞は積極性が欠けるって聞きますけど、いったいどうしたんですかイルミナP様?

まさか……ついに卒業したんですか?」

「……お前ケンカ売ってんのか?」

「滅相もないですよー」

「……ともかく、今からイルミナティ議会を始める」


 イルミナPはそう言って席を立ちあがり、近くにある『通信会議室』と書かれた扉の方へ向かっていく。

「ああ……やっぱり卒業してないんですね」

 そんな研究員の声を無視して、イルミナPは扉へ近づく。
 それは自動扉になっていたため、反応して横にスライドして室内への道を開けた。
 中は明りが存在せず、真っ暗である。
 にもかかわらずイルミナPは迷いなく、その中へと入っていった。

 そして天井に備え付けられた照明が光を放つことによって、その室内の全容がはっきりする。
 壁面にはモニターとスピーカーが大量に埋め込まれており、大量のテレビによって壁が構成されているような室内。
 モニターの中には、影になっていてはっきりとは見えないが人影が一画面につき一人づつ映っている。

 画面越しではあるが、その大量の人影からの視線が部屋中央に立つイルミナPに集中しているようであった。

「さて、今回の会議を始めましょうか」



***



 東京湾が埋立てられ経済特区ネオトーキョーができた後も、元々の都心は衰退したわけではない。
 かつてに比べれば人通りも少なくなったのかもしれないが、それでもずっと若者を引き付けてきたこの街の活気は単純な見た目では衰えてはいなかった。

 ネオトーキョーは金の臭いや、最新技術による人類の最先端という威光は存在している。
 だがその無機質な街は、ただの遊びを求める若者にとっては心地のいい場所ではなかったのかもしれない。

 故に身近な娯楽などはこれまで通りの東京に集まり、若者たちはそれに引き付けられるように集い、人の波を作るのだ。

「I didn't mean to hurt you~♪」

 そんなこの通りの脇には整列させたように所狭しと若者を引き付けるような店が立ち並ぶ。
 道は人は流動的に流動的に流れ、その中で立ち止まって派手な格好の店員や、陽気な外国人が自分の店へと客を呼び込もうとしていた。

「I sorry that I made you cry~♪I didn't want to hurt you~♪」

 通りの半ばには円形にくりぬかれたように開けた広場となっており中央には小奇麗な噴水が決して広くはないこの広場を占拠していた。
 そして通りの上流と下流の流れが交差するように広場で人のうねりを作っていた。

 そんな噴水の縁に座る一人の少女。
 まるで絵本の中にでてくるようなふりふりのゴシックドレスを身に包んだ少女は機嫌のよさそうに歌を口ずさむ。
 その少女の存在は異質であったものの、奇抜な者も珍しくはないこの通りでは、通行人にとってはちらりと目を引く程度で特別気にするものでもなかった。


「I'm just a jealous guy~♪」

 ちょうど太陽は彼女の真上に位置しており、その長い髪の毛が陰になって少女の表情は読み取ることができない。
 そんな少女が傍らの小さなポリ袋を物色して何かを取り出す。

 平たい紙袋から取り出したのは、この通りで流行っている大きめのクッキーだった。
 少女はそれを両手で持って、眼前でしばらく眺める。
 そしてその小さな口で、ぱくりと一口。
 しばらく口を上下に動かした後、チロリと舌を出して口の周りに付いたクッキーのかすを舐めとった。

「甘くておいしい。嫉妬しちゃうくらい甘いわぁー」

 少女の呟きは周囲の賑わいによって誰にも聞かれることはなかった。
 当然先ほどまでの口ずさむ歌声も、よっぽど近づかなければ聞こえないほどである。

「ここでゆっくり観光もいいけど、そろそろ探さないとねぇー」

 手元のクッキーを少し急いで口へと運ぶ。
 そしてリスのように口に溜め込んだ後に、こくんと喉を通って行った。


 少女が手に持っていたクッキーの入った紙袋をクシャリと雑に丸めて、入っていた袋に入れる。
 するとその少女を囲むように影が取り巻いて視界を暗くする。

 少女がその影の方を向けば、いつの間にか軽薄そうな男3人に囲まれていた。

「ねぇカノジョ。今一人?」

「よければ今から俺たちと遊びに行かない?」

「ところでそのカッコ何?コスプレ?」

 そんなテンプレセリフを吐いてくるナンパ男3人組を少女は噴水の縁に座ったまま見上げる。
 下心丸出しの下品な笑みを浮かべる男たちだったが、見上げた少女の瞳を見て少し後悔しそうになる。

「ん?どうしたのぉ?」

 ぱっちりと開かれた丸い瞳はまるで西洋人形のような愛らしさを感じさせるものである。
 しかしその眼光は泥を溶かした水のように濁っていて底を伺い知ることができない。

「お誘いは嬉しいけどぉー、私は少し用事があるのぉ」

 吸い込まれてしまいそうな瞳を見て一瞬たじろぐ3人だったが、なかなか愛らしい見た目をした少女である。
 ここで引くのは少々もったいない気がした。


「こ、こいつ少しやべえかもしれないけどこのまま行くか?」

「いや、メンヘラ女だったとしても適当にヤリ棄てちまえばいいだろ」

 少女の濁った瞳の前で、3人は小声で作戦会議をする。
 その様子は少女に丸見えだったが、内容までは聞かれていないだろう。
 そして結論としてそのままナンパを続行することにしたのだ。

 彼らにとって『少々頭のおかしい』女性と関わったことがないわけではないので今まで通りの対処法で問題ないと判断したのだ。
 それにこういった女は押しに弱いことが多い事も彼らは知っていた。

「そんな用事放っといてさ、俺たちと遊んだ方が楽しいよ」

「そうそう、楽しいところ連れて行ってあげるよ」

「で、でもぉー」

 一応困ったような返事をする少女だったがその表情はまんざらでもなさそうである。
 そしてにこりを口角を上げる。

 濁った瞳と相まってその狂気じみた笑みにナンパ男3人はすこし不穏な予感はしたが、この様子ならばあと一押しでこの少女は誘いに乗るだろうと判断。
 男たちはそのまま気にせず押していくことにする。


「さぁ、一緒に行こうぜ」

 一人が強引に少女の腕を掴んで引っ張ろうとする。
 だが少女はその引っ張った男の目を覗き込むように、笑みを伴ってじろりと見上げるのだ。

「あぁ、そんな強引さもいいですわぁ。本当に、嫉妬しちゃうぐらいにいいわぁ」

「ヒ、ヒッ……」

 そんな狂気を間近で向けられた男は思わずその握った腕を話してしまう。
 少女はその掴まれていた部分を名残惜しそうにもう片方の腕で撫でた。

「お、おい。いったいどうしたんだ?」


「おおーっと。待たせたっすね」

 狼狽する男たちであったが、そんな中に混ざるように一つの声がかけられる。

「いやー悪かったっすね遅れちゃって。時間もないしさっさと行くっすよ」

 突如現れた短髪の女は男たちを無視して、中心の少女の腕を引く。
 突然の乱入者にナンパ男は一瞬呆然と立ち尽くしていたが、少女が手を引かれて連れて行こうとするのを見てようやく我に返った。

「お、おいちょっと待てよ。その女は俺たちが目を付けてたんだ!勝手に連れてくんじゃねぇ!」


 男の一人が逃がさまいとドレスの少女の腕を掴もうとする。

「悪いっすけどアタシら急いでるんで、サヨナラ!」

「待てコラ!ってああ?」

 男が腕を掴もうと踏み出した脚は、なぜかコンクリの地面に沈んでいく。
 それどころか3人とも、急に浮遊感に襲われて背中に衝撃が走った。
 そして3人仲良く落とし穴の底で青空を見上げていたのだ。

「な、なんじゃこりゃ!?あのアマ何しやがった?」

 急いでナンパ男はその穴から這い出るが、そこにはすでに二人の姿はない。
 周りを見渡せばこの様子を携帯電話で写真を撮る人々と、自身の落ちた落書きのような落とし穴だけだった。




 





 少女の手を引いて駆け足であの場を離れた女は、この通りを出た辺りで立ち止まる。

「これくらい離れれば、もう追ってこないっすね」

 少し息を整えながら短髪の女は腕を引いて連れてきた少女の方を振り向く。
 なされるがままに連れてこられた少女は、状況が理解できていないのか少し落ち着きなさそうに周りをキョロキョロしていた。

「なんだか絡まれていたようだったんで、ついあのチンピラ連中撒いちゃったっすけどもしかして迷惑だったすか?」

 こちらの方を見ていない少女の顔を見ながら短髪の女は確認を取る。
 かけられた声によってようやく状況を理解したのか、少女は女の方を見てにこりと笑う。

「いえ、助かりましたよぉ。私も用事があったのでぇ、ちょっと困ってたんですぅー」

 気の抜けるような間延びした声で礼を言う少女。


「そうっすか。ならよかったっす」

 少女にとって女の行動は迷惑でなかったことを知り、安心したように女も笑う。

「さっき引っ張ってもらった時ぃ、あなたとってもかっこよかったですよぉ」

「それは照れるっすね」

 女は照れ臭そうに頭を掻く。

「えぇ、嫉妬しちゃうくらい、かっこよかったですよぉ」

「なんだか不思議な喋り方するっすね。なんだかアーティスティックっす」

「えへへ、そうですかぁ?」

「ええ、そうっすよぉ」

 女の方もわざと少女の喋り方を真似する。
 少女はそれに少し照れくさそうに笑った。


「ま、真似しないでくださいよぉー。あ、せっかくですからぁ、何かお礼をしなければならないですねぇ」

 思い出したように手をたたいた少女は、肩に掛けてあった小さなポシェットを小さな手で開いて覗き込む。

「いや、礼には及ばないっすよ。困ったときは助け合うものっすからね」

 しかし女は少女の申し出を丁重に断った。

「でもぉ……」

「んー……ならまた今度、アタシの絵を見に来てもらってもいいっすか?」

「絵……ですかぁ?」

 少女は不思議そうな顔をする。

「そうっす。キミもこれから用事があるみたいだし、アタシも用事があるから今からは無理だけど機会があればアタシの絵を見に来てほしいっす。

アタシはこの辺でストリートアート描いてるっすから、少し探せばきっとすぐ見つかると思うっすよ」

 女のその言葉に興味を持ったのか、三割増しの笑顔で少女は笑う。


「ストリートアート……。嫉妬しちゃうほど、興味がありますぅー」

「なんか不思議な言い回しっすね。よし、約束っすよ」

「うん、約束ねぇー」

 女が約束のしるしに手を差し出すと、少女はそれを両手でぎゅっと握りしめた。

「そう言えば、自己紹介がまだだったっすね。アタシは吉岡沙紀っていうモノっす。

よろしくっすね」

「えーっと、私はね」


***

「イルミナティの諸君。ごきげんようです。

大勢で顔を合わせるのは、数年前の会議を最後でしたっけ?

あの時は画面越しではなく実際に会うことができましたけど、あれ以降はそう言うわけにもいかなくなってしまいましたしね。

今回はこんな形の手狭な会議で申し訳ない」

『前置きはいい。統括司令殿よ。

だいたいあの『サクライ』に一杯喰わされた件は、貴様のミスではないか』

「それについては、釈明の余地もありません。

ですがあの失敗は、停滞していた我々にとっては決して悪くない失敗。

『サクライ』は確かに忌々しいですが、そういった意味では感謝をしていますよ」

『ふん、調子のいいことを……。

そう言うからには、あの失敗を取り戻す算段があるということなのだろう?』


「当然です」

『そう言ってはいるが、ずっとこれまで何の動きもなかったではないか!

その間にも『サクライ』だけでなく他の様々な組織も精力的に活動しているというのに、イルミナティは息をひそめたままだ!

言っておくが私はこの組織と共倒れする気はさらさらないぞ!』

『おい、少し黙っていろ若造が!』

「いえ、お気になさらず。

確かに我々イルミナティは『あの日』以降も息をひそめたまま、一般的には『過去の組織』のように振る舞ってきました。

まぁ『サクライ』あたりはそうは思っていないかもしれませんが、あくまでこれまでのは準備期間です。

計画を実行、とまでいきませんけどそろそろ我々も動き出すことにします」

『それは、本当か?』

「あなた方に嘘をついても私に得などありません。

私はあなた方を利用し、あなた方もイルミナティを利用しているんです。

そんな信頼を、裏切ったりはしませんよ」


『よくも言う。そうだ、確かに私はこの組織を利用している。

いや、利用せざるを得ないのだ。今のこの世界でこれまで通りやっていくのにはな』

「よくわかっていますね。

実際『できる』者ならば、こんな組織に頼らずとも自らの力で動くことができるのですから。

『サクライ』のように独力のみであそこまで財閥を大きくした者もいます。

それと同じように考え『あの日』以降にイルミナティの力の衰えを感じて、組織を去っていくものもいました。

だがあなた方は決して組織に残ったことが失敗ではない。

あなた方が『神』に至る日も、もう十分目の届く範囲内です」

『ふん……期待はしていい、ということだな?』

「ええ、もちろん」

『当然だ。金は出してやってるのだからな。

だが動き出すとは言ったが、具体的には何をするというのだ?』

「まずは『混沌』を起爆させます。

手始めはせいぜい小競り合いですが、種火は大きくしていくものですから」


***

「私の名前はぁ、インヴィディアって言うのぉ」

「なるほど、インヴィディアちゃんっすね。変わってるけど、なかなかかっこいい名前じゃないっすか」

「そう?照れるぅー」

 沙紀は少女、インヴィディアの笑顔を見ていて時間がかなり過ぎ去っていることにようやく気付いた。
 腕に巻かれた時計を見れば、かなりの時間が経過している。

「おおっと、アタシも用事があったのでした。ではまた会おうっすヴィディアちゃん!」

「あ、そうだぁー。最後に一ついぃー?」

「ん?なんっすか?」

 インヴィディアに背を向けて立ち去ろうとする沙紀は再び振り向く。



「エンヴィーって人に会いたいんだけどぉ、知ってますぅ?」


 沙紀にはあいにくその言葉には心当たりがなかった。
 そんな変わった名前の人がいれば忘れることはないので、確実に記憶にないだろう。

「すまないけど、知らないっすね。アタシの友人にも聞いてみるっすからもしもまた会った時にも見つかってなければ、情報があればその時教えるっすよ」

「そうなのぉ。ありがとう。それじゃあねぇー」

 小さな手を頭の上に上げて手を振るインヴィディア。
 沙紀はそれに答えるように手を振りながら駆け足で走り出した。

「それじゃあっすよ。それとイブキすまんっす。ちょっと遅れるっすよー!」


***

「イルミナP様会議お疲れ様ですー」

 会議室から出てきたイルミナPを出迎えたのは生意気な研究員であった。

「まったく、使える人間も多いが、金しか持っていない無能も多いからその相手をするのは疲れるよ」

「それにしても連中、いまだに自分たちが神になれるって信じてるんですかね?」

 研究員は外のコーヒーショップで買ってきたコーヒーをイルミナPの机に置く。
 イルミナPはその机の前に座って、コーヒーを手に取って働く研究員を見下ろした。

「そりゃそうだ。そんな見返りでもなければこの組織にいる意味なんてほとんどないでしょう。

まったく嘘をつくのは心苦しいなー」

「心にもないことを……。

だいたいさっきの会議中にも『嘘をついても得はない』キリッって言ってたのによくもまぁ」

「知るかよそんなこと。

まぁ私たちも利用する側なのだからアドバンテージは握っておかねばならないですしね」


「そうっすねー。

スポンサー様の金がなくちゃ給料も入ってこないですし」

 研究員はちゃっかり買ってあった自分の分のコーヒーを口に持っていく。
 イルミナPはそれを横目に見て何か言いたそうにしたが、そのまま心にとどめておくことにした。

「ところで会議で『種火』って言ってましたけど、いったい何したんです?」

「ああ、そろそろカオススポットの土壌作りでもしようと思いましてね。

先兵として『火蜥蜴(サラマンドラ)』を送り込みました。それとギルティ・トーチを一体」

 それを聞いた研究員は少し不安な顔をする。

「大丈夫っすか?手始めなのにその人選」

「種火としてはぴったりだろう?

それにあいつはカースドヒューマンだからずっと組織に繋ぎ止めておくのは厳しい。

ならばさっさと使ってしまった方がいいでしょう。帰ってこなくても問題ない駒、ですから」

「なんかそれ聞くとあの小娘が少し気の毒ですよ」

「まぁ今あの娘がご執心の『エンヴィー』をエサに使えばもう少し使えるかもしれませんけどね。

同じカースドヒューマン同士、何か感じる者でもあったんですかね?」

 イルミナPはそんな疑問を口にするが、研究員の方も首をかしげるだけである。

「さぁ?あのガキが何考えてるのかは僕にはわからないですけどね。

まぁともかく派手に暴れてもらえるならそれでいいんじゃないんっすか」


***

 あの通りからはさほど遠くない駅前の広場。
 そこの花壇の傍らの小さくインヴィディアは座っていた。

 口にはロリポップを銜えて上を見れば、大きめの駅と周囲にそびえる高いビル。そしてその間を縫うように見える青空だけだ。

「ちょっと探してみたけどぉ、結局見つからないわぁ。エンヴィー……」

 口に銜えていたロリポップを取り出し、残念そうにため息をつくインヴィディア。
 すっかり意気消沈してしまったのか先ほどまでの笑顔はすでに無かった。

『どうしたというのだ、小娘よ。ずいぶんと情けない顔をしているが?』

 そんなインヴィディアに話しかける低い声。
 地の底から響くような声はどこから発せられているのかわからない。

「トーチの分際で余計なこと言わないのぉー。どうせあなたには私の気持ちなんてわからないんだからぁー」

 発信源の不明な声に対してもインヴィディアは気にせずに答える。
 そして手に持ったマーブル色のロリポップを軽く振る。


『ふん、貴様のような小娘の考えなど高尚な吾輩にはわからんのは当然だ』

「身の自由がきかないのに高尚だなんてずいぶんな言いぐさだわぁー」

 低い声はそんなインヴィディアの言葉に忌々しそうに返す。

『吾輩もこんな首輪なんぞなければ好きにしておるわ。

ともかく、貴様はその『エンヴィー』とかいう者をまだ探すのか?』

「いんやぁー。愛しの『エンヴィー』探しはとりあえず仕事を終わらせてからにするぅー」

 低い声の疑問に対して、うって変わって楽しそうに応えるインヴィディア。
 手に持っていたロリポップを銜えなおし、座っていた花壇の縁から立ち上がる。

『だろうな。吾輩の封を開いたのだ。

どうせここいらで仕掛けるのだろう?』

「うん。○○駅で好きに暴れまわれっていうのがぁ、今回のお仕事だからねぇー」

『見たところここは××駅のようだが?』

「細かぁいことは気にしなぁーい」


 インヴィディアは広場の中心まで歩いていく。
 そして中心で立ち止まったインヴィディアはその濁った瞳でやはり楽しそうに周りを見渡すのだ。

 そんな様子を行き交う人々は気にも留めずに、各々の目的のために歩を進めている。
 インヴィディアの少し不可解な様子に誰も気に留めようともしていなかった。

『吾輩も、下賤な人間どもに吾輩の圧倒的な力を見せつけるのは嫌いではないからな。

あやつらの言いなりというのは少々癪に障るが、ここは吾輩も好きにやらせてもらおう』

「なんだかんだ言ってもぉー、あなたも乗り気だねぇ」

 インヴィディアは上品にゴシックドレスのスカートを少し持ち上げる。
 その芝居がかった動きと共にスカートの中から黒い影がいくつも落ちてきた。

「わたしはこの街大好きだわぁ。

便利で、物にあふれていて、それでいてとても綺麗。住んでる人も生き生きとしていてぇ、とても楽しそうだわぁ。

ほんと、嫉妬しちゃうくらい、大好きだわぁ」


 恍惚の表情でインヴィディアは誰に言い聞かせるわけでもなく喋る。
 スカートの中から出てきたのは、黒い蜥蜴であった。黒い泥で出来た蜥蜴。

 その蜥蜴たちはヒタヒタとインヴィディアの周りから散っていく。
 そしてその駅周辺のいたるところに張り付いた蜥蜴たちはまるで何かを待つようにその位置でじっと待つ。

「そんな私の嫉妬の炎がぁ、私の心と体を燃やすのよぉ。

とっても苦しいけどぉ、とっても気持ちいいのよぉ。

そうなるとね、私の大好きなものもぉ、その炎でその炎で燃やしたくなっちゃうのぉ」

 ニヤリと凶悪な笑顔を浮かべたインヴィディアはその大きな瞳をさらに大きく開く。
 すると彼女の体から紫の炎が噴き出した。

「Fireぁー」


 そんな間の抜けるような声を合図に、散った蜥蜴が閃光を放つ。

 ボンッ!

 巨大な爆発音とともに散った蜥蜴たちは周囲の建物と共に自爆を始めた。
 あちこちで上がる炎と煙、それと爆発に巻き込まれた者たちの悲鳴や叫びが辺りに響く。

「やっぱりこんな風景が一番好きだわぁー。

私の嫉妬の炎が周りを包んでぇ、私と同じになる瞬間がぁ一番なのぉ」

 平和な駅前は一瞬で地獄絵図へと変貌する。
 突然の爆破テロに人々は逃げ惑うだけだった。

『吾輩を作った者が貴様のことを『火蜥蜴(サラマンドラ)』と呼んでいたがなるほどな。

合点がいった』

「私はその呼び方あんまり好きじゃないんだけどねぇー。

私の名前は『羨望(インヴィディア)』よぉー」

 話している間にも新たな蜥蜴のカースは誕生し、自爆を繰り返す。
 この状況が続けばここら辺一帯が焦土と化すのは時間の問題だろう。


『吾輩もそろそろ動かせてもらおう。

貴様ばかり楽むのは癪だからな』

「そぉう?」

 インヴィディアは口に銜えていたロリポップを取り出して宙に放り投げる。
 するとそのロリポップから泥が流れ出すように出現し、一つの形をとった。

『やはり吾輩はこの高貴な姿でなくてはな』

 その姿は炎馬であった。
 たてがみは黄色と紫の炎が靡き、体躯は漆黒の泥で構成されていた。

「あなたもその姿、かっこいいわぁ。嫉妬しちゃうくらいねぇー」

『当然だ。吾輩の高貴なる姿をその目に焼き付けておくがいい。

だが言っておくが貴様と協力する気はないぞ。吾輩は好き勝手にやらせてもらう』


「わかってるわぁー。

お互いに適当にぃ、滅ぼしてぇ、お仕事を終わらせましょぉー」

”ヒヒヒィィーーーン!!!”

 炎馬は前足を上げていななきを響かせる。
 晴天はいつの間にか漆黒の雲に包まれており、いななきを合図にポツリポツリと黒い雨を降らせはじめる。

 黒い雨の水たまりから新たなカースが誕生し、獲物を追って進軍を開始した。

「そうだぁー。頼まれていたことを忘れていたわぁー。

イルミナPさんからぁー、宣戦布告の合図を任されていたのぉ。

誰も聞いてないだろうけどぉー、このインヴィディアがひとこと言わせていただきまぁーす。

『私たちイルミナティー。世界を泥水のごとくの混沌にぃー』

こんな感じかなぁ?」

 インヴィディアのその宣言は誰にも届いていなかったが、それと同時に新たな爆発が漆黒の狼煙を上げた。


 


インヴィディア
イルミナティに所属する嫉妬のカースドヒューマン。『火蜥蜴(サラマンドラ)』とも呼ばれる。
ヨーロッパの片田舎で死にかけていたところをイルミナティに保護されたため、その恩でイルミナティに協力している。
ただしインヴィディアの興味も他のことに移り始めいつ勝手な行動を起こすかわからなくなってきたので、切り捨てても問題ない戦力として、先兵で日本へ投入された。
燃え盛る嫉妬の炎が身を焦がすのを快楽として感じるという変わった精神構造を持っている。
そしてその嫉妬の炎を自在に操ったり、炎を封じ込めた蜥蜴のカースを爆弾として利用することができる。(トーチの炎とは全くの別物である)
最近は日本のエンヴィーにご執心で、勝手に改心したエンヴィーに嫉妬しながらも愛情を抱いている。

ギルティトーチ
違う属性のカースがまじりあうことでその感情波の位相差によって感情のエネルギーが増幅される。
その余剰のエネルギーは炎となって放出され空へと昇り、雨雲となってカースの雨を降らす。
その炎を纏う姿が松明の様であることから、ギルティトーチと名づけられた。通称『トーチ』
普通のカースよりも高い知性を持ち、流ちょうに話すことができる。
基本的にカースと同じく自らの感情のままに行動するが、イルミナティは『制御棒』を付けることでそれをコントロールしている。

炎馬のギルティトーチ
『傲慢』と『嫉妬』のギルティトーチ。黒いギャロップ
火を纏う馬の姿をしており、自由がきかないのに苛立っているものの、イルミナティの指示の通りに人間を襲うことに躊躇はない。
その姿のごとく素早く、炎で幻影を生み出すなど様々な攻撃を仕掛けてくる。


以上です。
吉岡沙紀ちゃんと名前だけサクライお借りしました。

イベント情報
・嫉妬のカースドヒューマン『インヴィディア』とギルティ・トーチがとある駅前で破壊工作を始めました。
・目標2体は基本的には別行動です。
・周囲はカース爆弾による爆発と大量に出現するカースによって混乱しています。

中ボスイベント的なのを想定しているのでトーチも、インヴィディアもロストしても何しても自由です。
少々オリキャラ色が強くなってしまいましたが、展開が自由にできる敵となるとこうなってしまいました。

なんかギリギリで投下しまー




とても静かな夜。

美しき彼女の庭園を彩る華達も寝静まる夜の事。

彼女のために用意された屋敷の中、彼女のためだけに用意された寝室で、

煌びやかで愛らしい桃色のネグリジェに身を包む少女は、絢爛な天蓋に囲われた寝台に1人座り、

眠い目を擦り、約束の時間が来るのを待っていた。

今日、一日の事を振り返りながら――


「今年も……素敵な、本当に素敵なお誕生日会でしたわ」

世界に名だたる財閥のご令嬢、その誕生を祝う記念パーティーは、本日華やかに行われた。

昨今きな臭い情勢などを踏まえ、来賓はごくごく選ばれた者だけに限り、密やかに行われた誕生会ではあったが……

その分、気を使うことは少なく、落ち着いた気持ちで祝いの席を過ごすことができたと思う。

「……お父様もあんなにお喜びになって」

クスクスと笑いながらその時の様子を思い返す。

最初こそ主催者として誰にも恥じぬ完璧な振る舞いをしていた彼であったが、

余興として上映された娘の成長記録の映像には、流石に感涙せずにはいられなかったようだ。

「ウフッ♪普段は見られない顔もたくさん見れましたわ」

いつもはまるで、心を細かく刻んでそれを切り貼りしたように、

要らない物は省いて、必要な感情だけを表に被り、その本音をはぐらかしてしまう彼女の父であったが、

この日ばかりは、ほんの少しは……彼の純粋な心の一面に触れられた気がする。


「お父様も……心から楽しまれていたのでしょうか」

財閥の頂点に立つ彼には、今日の祝いの席でさえ、その立場が付いて回る。

だから、パーティーをただ和やかな気持ちで過ごすことは難しかったのかもしれない。

けれど彼も、自身と同じ気持ちを共有していて欲しいと少女は願う。

「……愛されてますわよね、わたくしは……きっと」

少女は、今その手の内にある幸せを抱きしめるように呟いた。


「……もうすぐ12時になりますわね」

寝台の傍にある銀細工の時計の針は2本とも、その頂上を目指し駆け上がろうとしていた。

「……日付が変わる時間が来れば、魔法がとけると言ったところでしょうか?」

「うふふっ、まるで童話のお姫様みたいですのね」

時が来れば、与えられた”彼女だけの一日”はおしまい。

それが、少女と悪魔の約束なのだから。


エメラルドの瞳が見つめる先、時を告げる2つの針が交差する。

「……」

少女の目蓋が重くなり、スッと瞳は閉じられて……


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――






まどろみの中、彼女が目を開くと、

そこは太陽の光に溢れる美しい庭の中。

緑の草木が美しく栄え、芳しい花の香り漂う庭。

見渡すばかりに晴れ渡る青空に、聞こえる鳥達の歌声。


気がつけば、そんな庭園を一望できるテラスに設けられたテーブルの一席に、少女は座らせられていた。


「……いつ見ても、綺麗な場所ですわ」

ここに来るのは初めてではない。むしろ、彼女にとっては見慣れたとさえ言ってもいい。


『ここは貴女の心の内の一風景』

彼女の小さな呟きに答えるように、向かい合う席に座るもう1人の少女が口を開く。


『人の記憶とは、美化されるものですから……貴女が美しいと思うのは、当然のことですわ』

薔薇の様に赤いドレスを着た、少女と瓜二つの悪魔はそう述べた。

『強欲』の悪魔・マンモンは、いつものように気品に満ち溢れた姿で、落ち着き払いそこに居るのだった。

彼女は傍らにあったティーポットを手に持ち、テーブルの上の2杯のカップに熱い液体を注ぐ。

その一挙一動、全てが優雅。思わず万民が見惚れてしまうほどであろう。

『それでは紅茶でもいかが?』

彼女の小さな手から、可愛らしいカップが桃華に手渡される。

「ええ、いただきますわ」

少女は差し出された紅茶を受け取り、口をつけた。

「……おいしい」

香りも味も一級品。そのように感じるのは、やはりこれも美化された少女の記憶の所有物だからだろうか。



少女がこの心の内側の世界にやってくるのは、何度目になるかはわからない。

ただ深い眠りの中に堕ちて見る夢の様に、ここは居心地がよくとても安らぐ場所だった。

向かいに座る悪魔も、この穏やかな気持ちを共有しているのだろうか。


『心配しなくとも、あなたの心はわたくしの心』

『ここが心安らぐ場所であるのは、わたくしも同じですわ』

桃華が尋ねる前に、悪魔は答える。

声に出さずとも、少女の思いを察したらしい。

それもそうですわよね。と、少女はくすりと笑う。

彼女達は一心同体。

同じ顔で紅茶を飲む悪魔に、櫻井桃華の事が分からないはずがない。

彼女もまた同じく、”櫻井桃華”に違いないのだから。


「ですが、わたくしはマンモンではありませんわ」

『ええ、そう。それが”わたくし”と『わたくし』の違い』


今よりずっと前に、少女は悪魔と契約を交わした。

契約を交わしたと言っても、悪魔側が一方的に言い分を通し、勝手な取り決めの元にその魂を繋いだだけなので、

厳密には契約と呼ぶことさえできず、口約束にも似た正当性のまったくないものなのだが。

しかしその約束によって、少女にも利益が無かった訳ではなく、

第一、悪魔との契約の正当性など、どこの誰が保障しているものなのかもわかるはずもないので、

その契約が正しかったかどうかなどは、お互いにとってお茶請けにもならない題目の1つでしかない。


とにかく、その時の取り決めで、

少女はその魂の半分以上を悪魔に明け渡し、代わりにささやかな願いを叶えた。

得た物の価値を正確な天秤にかけたならば、あまりに比重が悪魔側に傾いていると言える。


しかし、魂を明け渡した少女自身はその事を後悔などはしていない。

願いは確かに叶った。そして、誰かから見ればもしかするととてもくだらないかもしれないそれは、

少女にとっては、全てを明け渡してでも叶えたかった願いなのだから。


ともあれ少女の向かいに座るのは、そのような経緯で『強欲《マンモン》』となった自身の魂。


心の中の、2人の少女はお互いに櫻井桃華。

けれど、強欲の悪魔『マンモン』は片方だけ。


『マンモン』であり櫻井桃華である少女には、もう1人の少女の事がよく分かる。

櫻井桃華でしか無い少女には、『悪魔』の事は、分からない。


「だから、わたくしは貴女の事を……もっと知りたいといつも思っているのですわよ?」

出来れば『彼女』の事を知りたいと思い、少女は向かいに座る『悪魔』に微笑んで見せるが、

『ウフっ♪やめておきなさいな、悪魔の心を除き見ようとすれば、その精神を完全に壊してしまう事になりますわ』

『悪魔』も同じ顔で同じように微笑んではぐらかすのであった。


「もう、笑って本心を隠そうとするのは、マンモンさんもお父様と一緒ですわねっ」

『あら、レディーは秘密が多いものですのよ?それに笑顔は高貴なる者の勤めですわ』

「むぅ……ですが、一方的にわたくしの事ばかり知られているのは不公平ですの」

『わたくし達の関係は元より不公平……いえ、この世界の全ては公平ではありませんの。

 ですが……平らな世界では無いからこそ、人はより高みを目指すことができるのでしょうね』

拗ねて見せても、『悪魔』にはやはり効果はないらしい。

この場所で2人でお茶をする時、少女はあの手この手で彼女の本心を引き出そうとするが、いつもなかなか上手くはいかないのだった。



「……」

『♪』

頭を捻って次の手を考える桃華。

その様子を見て、悪魔はくすくすと笑う。

毎度のやり取りであり、笑われるたびに少女はほんの少し面白くない気持ちになる。

けれど、それは居心地の悪いものではなく、嫌いなやり取りではなかった。

とは言え、なかなか彼女の本心を掴む糸口が見つけ出せないのはやはりつまらない。


「……そうですわ、マンモンさん」

なんとか彼女の鼻を明かす方法を……と、考えているうちに、ふと少女は思い立った。

『あら?改まりましてどうしましたの?』

「お誕生日プレゼント、ありがとうございましたわ」

『……』

彼女への『悪魔』からの贈り物。

そのお礼がまだだったと、思い出したのだった。

「今日と言う1日を”わたくし”に過ごさせてもらって、とても、感謝していますのよ」

『何かと思えば……その事ですの』

笑顔で礼を言った少女から、悪魔は視線を外す。


以前に、少女と悪魔は一つの約束事をしていた。

彼女の誕生日。その日の午前0時から、明くる日の午前0時まで。

その間だけは、『マンモン』ではなく、ただの”櫻井桃華”として過ごしたい。

桃華が言いだしたわけではないのだが、言わずとも『悪魔』は察し、それを叶えた。

そこには、『悪魔』側にはまったく利益がない。

『強欲の悪魔マンモン』の名を知る者が聞けば、

天地がひっくり返ったのでは?あるいは怪人ハンテーンにやられてしまったのか?

と騒いでしまうほどに、『強欲』なる悪魔らしからぬ行為であった。

とは言え、実際は騒ぐものなどいるはずもない。

この約束が滞りなく果たされたことを知る者はこの場に居る2人と、残りは彼女の父しか居ないし、

時に『強欲』の悪魔も優しさを見せることを知っている彼女達にとっては、特別に不思議過ぎる話ではないのである。



『気にすることなんてありませんわよ』

少女の礼の言葉に対して、悪魔は淡々と言葉を返した。

『ここのところ……気を揉む案件に、『わたくし』は頭を悩ませ心を割いてばかりでしたから』

『今日一日くらいは、心の内に籠っているのもよい休暇だったと思っていますわ』

『それに、何より』

『貴女はわたくしですもの』

『貴女の幸福はわたくしのもの』

『貴女が幸福を感じているのならば』

『うふふっ、わたくしもやはり幸せなのですから』

『悪魔』は、とても幸せそうに笑って言った。


「……」

櫻井桃華は、おそらくは誰よりもこの『悪魔』の性格を理解していた。

もちろん『マンモン』自身ではないから、その全てがちゃんとわかるわけではないのだが、

それでもこうして何度もやり取りをしたことで、彼女がどんな『悪魔』であるかをよく知っていた。

『強欲』で、我侭で、優雅で、大胆で、臆病で、弱くて、ほんの少しだけ優しい。そんな『彼女』を見てきた。


だが、それでも、『悪魔』の心の内まで見抜けるわけではない。

だからその言葉の嘘をすっぱりと見抜けるわけではない。

だけど、ただ、なんとなく、

今の言葉もやはり本心ではないような気がしたのだった。


「……」

『うふふ♪』

本心ではない……気がする。

気がしたというだけで、もしかすると気のせいかもしれない。

そのくらい何の根拠もない引っ掛かり。

さて、聞きだすべきか。せざるべきか。

こんな少女のもやもやした思いでさえも『悪魔』には手に取るようにわかっているはずだ。

だって『彼女』も、少女と同じく櫻井桃華なのだから。


「マンモンさんは……」

櫻井桃華の幸福を、確かに彼女は知っていて共有する事はできているだろう。

だが、『彼女』は本当に……

『どうしましたの?おっしゃりたい事があるならば、最後まで声に出しなさいな』

「……」



「いえ……」

「マンモンさんにはお誕生日はありますの?」

『あら?変えましたわね』

悪魔の言うとおり、少女は質問を変えた、それも当然お見通し。

「……わたくしだけお誕生日プレゼントを貰うのは不公平だとは思いませんか?」

「それにほら、今日という1日を”わたくし”だけが過ごしたのなら……」

「マンモンさんは祝われてはいないのではありませんの?」

彼女の誕生日。その日の午前0時から、明くる日の午前0時まで。

その間、『強欲《マンモン》』はと言えば、ずっとこの場所、櫻井桃華の心の奥底に居たのだから、

『彼女』が祝いの言葉を貰ってはいないと言う考えは、概ね正しい。


『……ふぅ、だから言いましたわ』

『わたくし達の関係は不公平なものなのですから、そんな事で気に病むことはありませんわよ』

『それに何度も言いますが、貴女のものはわたくしのもの。貴女が祝いの言葉を受け取ったのならわたくしも……』

また、彼女は誤魔化そうとしている。

また、”櫻井桃華”に話を摩り替えようとしている。

そうはさせてはなるものか。

「わたくしではなくっ!『あなた』の事が聞きたいのですわっ!」

だから、少女は声を出した。

『!』

声を張り上げた少女の叫びに、『悪魔』が思わずたじろぐ。


「っ……はしたなく声をあげてしまって申し訳ありませんわ……ですが」

『もう……どうして貴女の方が泣きそうになっていますの』

「っ!……マンモンさんが悪いのですわっ」

少女はギュッと目を瞑り、『彼女』から顔を背ける。

『ウフフッ♪ええ、悪いですわよ。だってわたくしは悪魔ですもの♪』

今にも泣きそうな震える声を聞いてでさえ、『悪魔』はとてもおかしそうに笑うのだった。

「……」

だから少女も期待はしていなかった。



『生憎、産まれた日の事は覚えてはいませんわね』

「!!」

少女の質問に、誤魔化しではない答えが返って来る事を。


「覚えては…いませんの?」

『ええ、わたくしの産まれた頃の魔界は、それはもう混沌としていましたから』

顔を背けていた少女は振り向いて、『彼女』の顔を見た。

『悪魔』は、すまし顔で、庭園の遠くの方を見つめている。

遠い、遠い昔の事を振り返っているのだろう。


『わたくしが産まれた頃、魔界は魔族と竜族との戦争の真っ只中』

『……わたくしはあの頃に産まれた他の悪魔達の多くがそうであったように』

『産まれ落ちた時から、道端のゴミも同然でしたわ』

「えっ……」

『戦乱の最中、未熟で弱い悪魔には当然ですが真っ当に生きる権利なんてものはありませんでしたから』

『混沌とした魔界では、親の顔なんて知らなくても普通のこと。だから、その誕生を祝う者なんているはずもなく』

『誰も覚えているはずなんてありませんのよ、ゴミの誕生日なんて』

『産まれた日なんてものはわたくしには存在しませんの』

『いつの間にか、ゴミ捨て場で死肉を漁る雛烏がそこに居た。ただそれだけでしたから』

「……」

その生い立ちを語る間も『彼女』は優雅に、笑っていた。


「そう……でしたの」

『あらあら……自分から聞き出したのに、なんて顔してますの』

少女の視界が薄くぼやける。

感情が抑えきれず、言われたとおりに酷い顔をしているのだろう事はわかっていた。

『変に同情なんてしなくていいですわよ、かつてのわたくしの境遇などは何処の世界にでもありふれたものなのですから』

「ええ……同情なんてしてしまえばマンモンさんに失礼ですものね」

悲しさを押し殺すように少女は強く微笑んだ。

『……わかっていればよろしいですわ』

その顔からまた視線を外し、『悪魔』はそっけなく返事をする。

「……」

『……』


『(……まったく余計な話をしてしまいましたわね)』

ここまで話すつもりはなかった。

少女の質問に対して、『悪魔』はいつものようにのらりくらりと適当にはぐらかすつもりだったのだが、

今日に限っては、少女の様子にどこかやり難さを感じてしまったために、

つい、らしからず過去を語るような事をしてしまった。

『(……まあいいですわ。このような気分になることもたまにはあるでしょう)』

『(それに、この話はこれでおしまいでしょうから)』

このような話を聞いてしまえば、少女もこれ以上おいそれとは『悪魔』の事情に深く踏み込もうとはしないだろう。

別に、『悪魔』の方も人間・櫻井桃華とのほんの少し煩わしい会話を嫌ってはいなかったのだが、

今回ばかりは、”話すほうも、聞くほうも辛いことだ。”などと、少女が勘違いして、

あれこれ聞き出そうとするのを控えてくれればいいと『悪魔』は考えていた。






「……それでは、お誕生日のお話はひとまず置いておいて……」

「魔界に居たころのマンモンさんは心からの贈り物を受け取ったことはありますの?」

しかし『悪魔』考えたようには事は運ばず。

『はあ……櫻井桃華。『わたくし』の話はさきほどの質問で終わりではありませんの?』

少女のあまりの切り替えの早さに、呆れたように『悪魔』は口をこぼした。

先ほどのような話を聞いてなお、『マンモン』自身の話をやめさせてくれる気は少女にはなかったらしい。

「いいではありませんのっ!わたくしは貴女の事をもっと知りたいのですわ!」

「もちろん、マンモンさんが本当に気が進まないお話ならわたくしもお聞きはしませんが」

「別に、そうではないのでしょう?」

「今日に限って話してくれたと言う事は、きっとそう言うことなのですわ♪」

先ほどまでの涙目はどこへやら。にこにこと少女は笑う。

随分と都合よく解釈してくれたものだ。

中途半端に出自について話してしまったのは、彼女にはどうやら逆効果だったようである。

『……はあ、あなたもよろしい根性をしてますわよね……うふふ♪まあ、そんなところも気に入ってはいるのですが』

愚痴りながらも、『悪魔』は楽しそうに笑った。



『心からの贈り物を受け取ったことがあるかでしたわね?』

「ええ、もちろんマンモンさんが奪ったものではなく……ちゃんとした贈り物ですわよ?」

『念を押さなくてもわかっていますわよ』

『強欲』の悪魔の力は所有権の支配。

あらゆる物を、『自分のもの』としてしまう凶悪なる奪取の力。

本気を出せば、”誰かの”心でさえも『自分の』心に変えてしまえるのだから、

彼女がその気になれば、他者にその全てを捧げさせることもできるだろう。

しかし少女が聞きたいのは、そのような方法で手にした物品の話ではない。

奪い取った物ではない、『マンモン』に贈られた純粋な贈り物の話を少女は聞きたいのだ。


『……わたくしも”大罪の悪魔”と言う立場に伸上るまでに、ご贈答の類は多く頂きましたが……』

『その中にも少なからず……打算も裏も無い贈り物も……なくはなかったと、記憶していますわ』

「そうですの……それなら、少し安心しましたわ♪」

曖昧で適当な『悪魔』の答えだったが、それを聞いて少女は安心したと顔をほころばせる。

『……何がですの?』

「贈り物をくださる方が居るのでしたら、つまりマンモンさんにも、ちゃんと味方が居たと言う事でしょう?」

『…………さあ、どうだったでしょうね』

「それくらいなら、はぐらかしてもわかりますわよ♪」

『…………』

やはり、どうにも今日はやり難い。と『悪魔』は頭を抱える。

いつもならば『悪魔』側が手玉に取っているはずなのだが、今宵は珍しく主導権を握られているようであった。



「では……マンモンさんがいただいた最初の贈り物を、わたくしが当てて見せましょうか?」

不意に少女が、提案した。

『…………そんな物がわかりますの?』

最初の贈り物。『悪魔』がはじめてもらったもの。

わかりようもないだろう。

少女は、『悪魔』の生きてきた世界を知らないし、生きてきた時代を知らない。

マンモンが彼女に話したこともないし、

そもそも『悪魔』自身、最初の贈り物なんて覚えてはいないのだから。


「うふふっ♪ええ、きっと間違いありませんわ」

『……聞かせてみなさいな』

しかし、妙に自信のありそうな少女の物言いに『悪魔』の興味が引かれる。


「……」

少しだけもったいつけてから、彼女は答える。

「”名前”ではありませんか?」

『……あら』

「当りでしょう?うふふっ♪」

我が意を得たりと少女は得意げに胸を張った。



「名前は……この国では多くの人たちが産まれた日に貰うものですわ」

「最初に貰うもの。大切な人に贈られる大切なもの」

「そんな素敵なものだから……マンモンさんの場合もきっと祝福に満ちたものだったと……わたくしは思いますのよ」

少女は自身の答えをそのように補足した。

なるほど。彼女の考えは、きっと人間達の間では正しいことなのだろう。

『あなたの言う通り……少なくとも、この国の多数の人間に限ってはそうなのでしょう』

『ですが櫻井桃華、『わたくし』が名前を頂いた経緯も同じくそうだったと言える根拠が弱いではなくて?』

だが、少女の考えは、杓子定規に悪魔にも通じる考えではない。

『名付けは……例えば”病気”や”災厄”のように恐怖する対象にも、呪うべき対象にだって行われるのですから』

むしろ、悪魔の名づけはそのような例の方が多いだろう。

『なのにどうして貴女は、『わたくし』が祝福されて名前を頂いたと思えるのかしら?』

だから、少女の妙な自信の裏打ちが『彼女』には気になった。


「そうですわね……そのように推測した手がかりもちゃんとあるにはあるのですが」

「……一番の根拠はやはり」

『やはり?』

「乙女の勘ですわね♪」

あっさりした理由であった。

『……ふふっ、そうですの。それならば仕方ありませんわね』

苦笑いがもれる。勘が根拠であるとはお粗末な話であったが、

しかしそれが外れてはいなかったのだから『悪魔』も笑うしかない。


『少し悔しいですが、貴女の想像通り……思い返せばわたくしの名前もまた……親愛なる方からの頂き物でしたわ』

「まあ♪」

『悪魔』の口から出た”親愛なる”と言う言葉に少女は驚き、興味を持つ。

「マンモンさんのおっしゃる親愛なる方と言うのは、どんなお方でしたの?」

わくわくした様子を隠さずに少女は尋ねた。


『……秘密ですわ♪』

「あら……それは教えていただけませんのね……」

『うふふっ♪レディーにはどうしても秘密にしておきたい過去の1つや2つありますのよ』

『知りたいなら、当ててみなさい。乙女の勘で』

皮肉っぽく『悪魔』はニヤつく。

「……もう……流石にそこまではわかるはずありませんわ」

『ふふふ♪』

残念そうに口を尖らせる少女の横顔を眺めて、『悪魔』はやはり愉快そうに笑うのだった。

―― 櫻井桃華、貴女の言うとおり

―― ゴミでしかなかった『わたくし』を拾ってくださり、育ててくださったあの方は

―― 確かに『わたくし』の味方で、『わたくし』を祝福してくださっていたのでしょう


―― ですが……


―― それ故に、あの方は……”先代強欲の悪魔”はその命を落すことになったのですわ

―― 『わたくし』を愛したが故に、『わたくし』に嵌められ、『わたくし』の罠に掛かり、『わたくし』の策に敗れた……


―― 先代は『わたくし』の味方でしたが、『わたくし』にとっては先代は敵でしたから

―― あの方を蹴落とさなければ、今の立場を……欲しかった物を手に入れられなかったのですもの


―― 今でも……思い返せますわ。『わたくし』に敗北し全てを奪われた先代の最後の凍りついた顔

―― そして……最後の言葉も


《 お前はそれで    か? 》




「では最後に、マンモンさんは今”幸せ”ですか?」

『……ふぅっ……なんですの、もう……。さっきは躊躇っていらしたのに、結局それも聞いてしまいますのね』

さきほど少女が躊躇い、変えてしまった質問。

それが、いまさら飛んできたので『悪魔』も戸惑う。

「うふ♪申し訳ありませんわ。ですが、やはりどうしても……聞いておきたかったものですから」

「今ならば、ちゃんと答えていただけそうですもの」

『……』

曇りの無いエメラルドの瞳がまっすぐと『悪魔』を見つめていた。

疑いの無い瞳。本当に話して貰えると思っているのだろう。やはり今日は喋りすぎていただろうか。



「……桃華はきっと幸福ですわ。たくさん愛してもらえて幸せですのよ♪」

「だから……わたくしは、『わたくし』にも幸せであって欲しいと思いますの」

『……”あって欲しい”ですか』

「ええ、”欲しい”ですわ♪うふふっ♪マンモンさんの影響か、わたくしもとても欲張りになってしまいましたわね」

にこやかに少女は言った。

『悪魔』には、少女の質問すべてに答える義理は無い。

だから、『悪魔』にはその質問から逃げることは容易ではあった。

容易なはずであったが、しかし……

『答えるまで、しつこく聞いてきそうですわね?』

「ええ、もちろんですわ♪」

その瞳から逃げるのは、とても難しい事でもあるような気がした。

『……なら仕方ありませんわね』

だから、意を決して悪魔は答える。

『幸せかどうか……難しい質問ですわ……』

「……」

『だって、もしかすると『わたくし』は』

『ずっと幸せになんてなれないのかもしれないのですから』



『櫻井桃華、『わたくし』は『強欲』ですわ』

『例え……幸せを感じられたとしても、すぐに足りなくなってしまいますの』

悪魔は語る。その心の内を。

『何を手に入れたとしても……欲望が尽きることは無く……』

『欲しかった玩具は……手に入れたそばから、まるで灰の様に変わってしまい指の間から零れ落ちていきますわ』

ふと、彼女達の庭を照らす日の光が覆い隠され空が曇り始めた。

気がつけば、鳥達の声はもう聞こえない。

庭を彩る緑は次々と枯れ朽ちて、花々はハラリと萎れ散ってしまう。

『時間の経過とともに、何もかもが物足りなくなってしまう』

『これが『わたくし』の絶望』

荒廃した園で、『悪魔』は語る。

「……」

少女は、黙って『悪魔』の言葉に耳を傾け続ける。



『……永久なる幸福』

『究極的に言わせていただくなら、わたくしの目的はそれですわ』

野心の炎に満ちた瞳が、庭園のずっと先を見据える。

だが、その瞳の奥の暗闇はどこか危うげで悲しい。


『決して風化はせず、されども不変でもなく』

『そのような世界の全てに、ずっとずっと『わたくし』を満たして続けて欲しい』

抑えきれない『欲望』を恒久的に満たしてくれる世界。

『強欲』はただそれを強く望む。


『……そう願うことが、悪いことですの?……望んでしまうことが、ダメな事?』

『ただ幸せになりたいと思うことが、罪と呼ばれるものでしょうか?』

生れ落ちてから、彼女はずっと貪欲に幸せを求めていた。

ずっとずっと、尽きることの無い幸せを。



「……いいえ、マンモンさん」

『悪魔』の言葉をずっと黙って聞いていた少女が口を開く。


「幸福になりたいと願うことは誰にでも許された権利ですわ」

「たとえそれを神様がお許しになられず、悪や罪とされるのだったとしても」

「わたくしは、その願いを心から祝福しますわ」

少女は、優しい声で、優しい瞳で、その願いを肯定した。

「マンモンさん、どうか貴女も幸せになってくださいまし」

「それが、わたくしの……桃華の願いですわ」

『……』

『……たまになら、本心からの言葉をつむいでも良いでしょう』

『本当に感謝していますわよ、櫻井桃華』

『悪魔』は目を閉じて、小さな声で呟いた。



「うふっ♪それはわたくしの台詞ですわよ」

「お父様のこと、本当に感謝しているのですからね」

しっかりとその小さな声を聞き遂げた少女も、『悪魔』に対して同じく礼を返す。

「マンモンさん、これからもお父様の夢のお手伝いを……よろしくおねがいしますわね」

『ええ……もちろんですわ』

「以前みたいに勝手に居なくなろうとしたら、嫌ですわよ?」

『うふふ、肝に銘じておきましょう』

心の内の世界で2人の少女はお互いに、ただただ笑い合った。


『ではそろそろ……『わたくし』は目覚めるとしますわ』

「ええ、それではマンモンさん。またこの場所でお会いいたしましょう」

「次の機会には、もう少しゆったりとお話ができればいいですわね?」

『それも構いませんが、この次の時には今日の様に質問攻めはご勘弁くださいまし』

「あら、残念ですがその約束はできませんわ♪」

『もう……充分ではありませんでしたの?本当に欲張りですわね』

「ふふっ、誰のせいでしょう?」

『……さあ、誰だったのかしら』


クスクスと笑う少女を背に、やはり笑いながら『悪魔』は席から立ち上がり、高く空を見上げた。


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


少女の瞳が再び、開かれた。

エメラルドの瞳には、暗い野心の炎が灯っている。

その目の見つめる先、銀細工の針が新しい時を刻み始めていた。


ネグリジェに身を包む少女は、寝台から立ち上がり、

天蓋の布をすり抜けて、部屋に備え付けられた窓へと向かう。


カーテンを少しだけ捲り、外を覗いた。

窓からは、寝静まる庭園を見渡すことができた。

そして、庭園の先にはずっとずっと世界が広がっているのだろう。


「……ふふっ」

眼下に広がる世界を見下ろし、彼女は今日も笑う。

「いずれ世界の全ては、わたくしのものですわ」


おしまい

マンモンちゃまと誕生日のお話でした
彼女にも色々あるようです

日付変わっちゃいましたけど桃華、誕生日おめでとー

本筋にそこまで絡まないけど学園祭二日目の時系列で投下
ついでに書き方を台本形式に戻してみるテスト

―学園祭があるこの期間は、意外と人気が少ない場所が多いようです。

―だから街では妙な事が起きてもそれほど騒ぎにならない事も。

―おや?どうやらなにか変な生き物がいるようですね。

―のっしのっしと歩く頭身の低い生き物は…どうやらぷちどるのようです。

??「…なぁー」

??「にょわ?」

??「なーお…」

―なんと人間ぐらいの大きさのぷちどるの上に、虎耳のぷちどるが乗っています。

―とても大きなぷちどるの名前は『きらきら』、虎耳のぷちどるの名前は『かみゃ』といいます。

かみゃ「なっなっ、なーお!」

―かみゃは大きなきらきらに乗せられて、目立つのが恥ずかしいようですね。

きらきら「はぴはぴ!」

かみゃ「ばかぁ!!」ジタバタ

―…どうやら降りようとしてもすぐに頭の上に戻されてしまうようです。

―それを遠巻きに見ている通行人A…いえ、通行人ではなく奈緒がいました。

奈緒(あれ…きらり?いや頭身がおかしいから別人か。…それにしてもデカいな、アレってきらりと同じくらいじゃないか?」

奈緒(…やっと潜入任務終わって休み貰ったからアニメでも借りて見ようと思ったのに…アレ、危険生物じゃないよな?)

―危険生物なら放置するわけにもいかず、じっと見る事しか出来ない状況に。

―他の通り過ぎる人々は普通に珍しいものを見た感じで、立ち止まる人は殆どいません。

奈緒(着ぐるみ?ぬいぐるみ?…いや、あれは生き物だよなぁ…上のちっちゃいのはあたしに似ている気がするのはなんでだろう)

奈緒(さて…さっきから上のが怒っているだけで暴れたりする様子はないけど…夏樹達に連絡すべきか?)

かみゃ「!」

奈緒「ん?」

―…目と目が合いました。

かみゃ「なっ!」スタッ

きらきら「にょ?」

かみゃ「な!」トトトト

―かみゃがきらきらの頭から腕をすり抜けるように降りて、奈緒に駆け寄ります。

奈緒「…な、なんだよ、あたしに用か?」

かみゃ「んな、なーお!」

奈緒「え、なんか他人のような気がしない?それはあたしも思ったけどさぁ…」

かみゃ「なーお、んなー」

奈緒「かみゃ…って名前なのか?」

かみゃ「みゃお!」

奈緒「そっか、あたしは奈緒。で、そっちのデカいのは?」

―奈緒に指で示されたきらきらは嬉しそうに駆け寄ります。

奈緒(ち、近寄ると思ってたよりデカイ…)

きらきら「にぃにぃ☆」

奈緒「きらきら…ますますきらりっぽいなー。デカすぎて妙な威圧感あるけど…危険じゃなさそうだし」

きらきら「はぴはぴ!」

かみゃ「なぁ!」

奈緒「そういえばお前らは、あたしの事怖くないのか?」

かみゃ「なーお」

奈緒「なんか感じるけど怖くない?…みくみたいな事言うんだな」

きらきら「にょにょわ!」

奈緒「そういうもんなのか?」

かみゃ「な!」

きらきら「にぃ!」

奈緒「よく分かんないなー…自分で自分の事が分からないのは…やっぱり変なのかな」ナデナデ

かみゃ「…んなぁー」

奈緒「かみゃは毛がふわふわしてるなぁ…えへへ、あったかい…」ナデナデ

かみゃ「みゃ、みゃ~あ…」ゴロゴロ

奈緒「ん…撫でられるの好きか?」

かみゃ「んなっ!なっ!なーっ!ばかぁ!」ポカポカ

奈緒「あはは、ごめんごめん」

きらきら「はぴはぴ!」

奈緒「はっ、はぁ?あたしも可愛いって…な、何言ってるんだよ!ばかっ!」

かみゃ「ばかぁ!」

きらきら「にょわわー☆」

奈緒「今の…誰も見てないよな…。ところでかみゃときらきらはどこから来たんだ?」

かみゃ「なー」

奈緒「わかんないのか…」

―ぷちどるたちはユズに作られた魔道生物です。

―でもぷちどるたちの殆どはそんな事知りません。本能のままに、気ままに生きています。

かみゃ「んなー」

きらきら「にぃ」

奈緒「だからいろいろな所を歩いてるのか…大変だな、お前たちも」ナデナデ

かみゃ「んなー…」ゴロゴロ

きらきら「にょわ!」

奈緒「きらきらも撫でて欲しいのか?…デカいからちょっとしゃがんで…そうそう」ナデナデ

きらきら「はっぴはっぴ☆」

奈緒「うちで引き取りたいけどなぁ…連れて帰っていいのかなぁ…どーしよ」

きらきら「にょわ…にょーわ!」

―その時、急にきらきらが上を手で示しました

―…どうやら何か伝えたいようです

奈緒「えっ、上から来るぞ?なにが…あっ!?」

??「――ねぇぇぇぇええええええええ!!?」

―上から何か落ちてきて…

―そのまま頭へゴチン!

??「ぐふっ…」

かみゃ「んな”あっ!?」

―なんと、運悪くかみゃの頭にぶつかってしまいました!

奈緒「げっ、ホントに上から来た!?…えーっと大丈夫か?」

かみゃ「な、なぁ…」

??「ね、ねぇ…」

―二匹とも倒れたまま虚ろな目で宙に手を伸ばし…

かみゃ「な、みゃ…ごふっ」ガクッ

??「ふ…ふふ…ぐふっ」ガクッ

―力尽きてしまいました

奈緒「…えっ…え?」

きらきら「にぃにぃ!にょわ!にょわー!」

奈緒「…は?水かけろって?こんな時に何言って…」

?「…ちょっといいかな」

奈緒「え?」

?「よっと」

―いきなり来た少女は、混乱している奈緒に返事もせずペットボトルの水を倒れた二匹にかけました。

かみゃ「なーお!」

??「ふふっ♪」

きらきら「はぴはぴ☆」

奈緒「…なん…だと?」

?「もう、どうしてほうじょーさんは出かける度にこうなるのかな…3時間も帰って来ないから探してみればこうなって…」

ほうじょーさん「?」

?「…水持ってきててよかったよ。今の虎耳の小人とか、ほかの人を巻き込んだら大変なんだから…」

かみゃ「なっ!なーお!」ペシペシ

?「えっ何?なんか気に障った?」

かみゃ「んなー、なーお!」

奈緒「…『猫じゃない、虎だ』だってさ」

かみゃ「なっ!」コクコク

?「もしかして、その言葉がわかるの?」

奈緒「あ…普通は分からないのか、そっか…」

きらきら「にぃ?」ポンポン

凛「なんかショック受けてるけど…とりあえず、私は凛。今落ちてきた小人…ほうじょーさんを探してたんだ。散歩に出る度に帰って来ないから」

ほうじょーさん「ふふっ♪」

凛「もう、妹も心配してたよ?」

ほうじょーさん「にかー」

凛「…そういえばそのねk…虎耳の小人、妹にそっくりだよね。正直あの二匹の方が姉妹っぽいと思うんだけど」

ほうじょーさん「…にかー」

奈緒「へぇ、この…えっと、ほうじょーさんって妹がいるのか。かみゃに似てるのか?」

凛「うん、ほうじょーさんの妹…みたいな子がいるんだ。でもなんかあの虎耳の子…かみゃのほうが似てると思う。特に眉毛」

かみゃ「なー!?」

凛「だって虎耳なくして一回り小さくすれば完全にあの子だし。あ…ちょっと待って、アンタも似てるよ。眉毛がそっくり」

奈緒「眉毛眉毛言うなっての!…ああ、そういえば名乗ってなかったな、あたし奈緒。で、その虎耳がかみゃ、大きいのがきらきらだ」

ほうじょーさん「…かみゃ!きら!」

かみゃ「なー!」

きらきら「にょわー!」

奈緒「仲良くなったか、よかったなー」

かみゃ「な!」

きらきら「はぴはぴ☆」

ほうじょーさん「ふふっ♪なお!りん!」

凛「いつの間にか名前言えるようになってる…あ、その大きいのも同じ種族なの?」

奈緒「知らないけど…そうなんじゃないか?頭身とかは同じだし」

凛「だってあの小人から見ればきらきらは10倍近くもある巨人みたいなものなんだよ?」

奈緒「まぁ…デカいよなぁ」

凛「…私達基準でも十分大きいしね。この子達相手に見上げる構図になるとは思ってなかったよ。知り合いの方が大きいとは思うけど」

きらきら「…にぃ、にぃ!」

奈緒「えっ水?今度は何だよ?」

きらきら「にょーにょ!」

奈緒「ふんふん…凛、水ってまだあるか?」

凛「うん、あるけど…使うの?」

奈緒「きらきらがかけて欲しいみたいなんだ」

凛「かければいいんだね、わかった」

―凛は言われた通りにきらきらに残った水をかけてみました

―するとどうでしょう、みるみるうちにきらきらは普通のぷちどるの倍のサイズまで小さくなったのです!

凛「…なんで?」

きらきら「にょわ、にぃ!」

奈緒「戻るときはお湯をかければいい?ら○まじゃねーか!」

かみゃ「なっ!」

凛「ホント、よく言葉がわかるよね」

奈緒「…多分、そういう能力っていうか、体質っていうか…気にしないでほしいな」

凛「気になるけど、そう言うなら…あっ、ほうじょーさん、妹が来たよ」

奈緒「ん?」

―奈緒が凛の視線を追うと、確かに声が聞こえてきます

こにか「おねえええええ!おねええええええ!」ダダダダダダ

ほうじょーさん「にかー!」

こにか「おねー!おねー!!」ギュー

ほうじょーさん「ふふっ」

かみゃ「なー?」

ほうじょーさん「にかー!」ニコニコ

―かみゃがこにかの事を尋ね、ほうじょーさんが説明しています

こにか「…おねー?」

ほうじょーさん「かみゃ!きらー!」

かみゃ「なーお!」

きらきら「にょわ☆」

こにか「なーの?きーの?」

ほうじょーさん「…ねぇ!にか、かみゃ、ふふっ♪」

―…ほうじょーさんは、こにかとかみゃの二人がそっくりだと言っているようですね

こにか「!…やーの!の!の!」シャー!

かみゃ「んなっ!?…なーお!なぁ!」シャー!

ほうじょーさん「…にか?かみゃ?…ね、ねぇ?」オロオロ

きらきら「むぇー?」

―こにかはどうやらかみゃの事が気に入らない様子。そしてかみゃもいきなり威嚇されて怒っているようです

―ほうじょーさんときらきらは困惑するばかり…

奈緒「…どうしてこうなった」

凛「もしかして、修羅場?」

奈緒「これが修羅場なのか…」

こにか「やーの!やーのぉ!!」ポカポカ

かみゃ「みゃ!なぁーお!!」ポカポカ

奈緒「…ちょっと止めてくる」

凛「大丈夫なの?」

奈緒「大丈夫だろ、多分…それに、怪我でもしたら可哀想だしさ」

かみゃ「ばかっ!!」ポカッ

こにか「ばーの!!」ポカッ

奈緒「ほら、二人ともちょっと落ち着けって…」

かみゃ「んみゃああ!!」ガブッ

こにか「みゃーの!!」ガブッ

奈緒「あだっ!?」

―気が立っている二匹の間に手を伸ばした奈緒に、なんと二匹は思い切り噛みついてきました!

奈緒「このっ!畜生、思ったより痛いな!」

凛「ちょ、ちょっと、大丈夫じゃ無さげだよ!?」

奈緒「この程度心配すんな!…同時に噛みついてきやがってこの…!地味に仲良いなお前ら!」

かみゃ&こにか「!!」パッ

―仲が良いと言われたのが嫌だったのか、かみゃもこにかも同時に口を開け、奈緒の腕から離れました。

奈緒「…まったく…喧嘩すんなよ、ほうじょーさんもきらきらも困ってるだろ?」

ほうじょーさん「なおー…」オロオロ

きらきら「にぃ…」

かみゃ「なー…」ショボン

こにか「…ふぇ、ふぇ…うぇぇぇん!!」

奈緒「泣くなって、ほうじょーさんは別にお前と姉妹じゃないなんて言ってないだろー?」

こにか「だーの、おねー、にーの…。…かーの、みゃーの、ちーの、おねー…」グスン

奈緒「あー…かみゃと姉妹になったらもう自分はほうじょーさんの妹じゃないって?」

こにか「そーの」コクン

凛(…よく分かるなぁ)

奈緒「心配するなって、本当にそれが心配ならほうじょーさん本人に聞けばいいだろ?まずはかみゃに謝ってからな」

こにか「…の」ペコリ

かみゃ「な、みゃお」ウンウン

―かみゃは許してくれるようですね

きらきら「にょわにょわ☆」

こにか「おねー!!」トトトトト

ほうじょーさん「にかー!!」テテテテテ

こにか「おねー!」ギュー

奈緒「よかったよかった」ウンウン

凛(訳が分からない)

―…めでたしめでたし、なのでしょうか…?

凛「…ところで噛まれた腕、平気?」

奈緒「あ、うん、大丈夫だよ」

凛「でも、多分そんな事は無いと思うけど、未知のウイルスとか持っている可能性も微妙にあるし…噛まれたところ、みせてよ」

奈緒「だ、だ、大丈夫だから!見せる程じゃないって!痛くなかったしさ!」

凛「…さっき思いきり『痛い』って言ったよね」

奈緒「あっ」

凛「腕、隠さないで見せてよ。…もしかして、左腕のギプスの下もなにかあるんじゃ…」

奈緒「あ…あーっ!あたしもう行かなきゃ行けない用事があったんだよなぁー!!…ってことで。じゃあな!!」

―凛が腕に手を伸ばした瞬間、奈緒はパッと距離をとってすぐさま逃げ出してしまいました。

―とにかく速く、飛ぶように去って行った奈緒を、凛は茫然と見ているだけでした。

凛「…あっ、逃げられた…そんなに見られたくない理由でもあったのかな…?」

かみゃ「なーお」

凛「この二匹は…奈緒の小人ってわけじゃないよね」

かみゃ「んな」コクリ

きらきら「にぃにぃ」コクコク

凛「…ウサミミの所に連れて行っても問題ないよね?」

ほうじょーさん「うさ!かみゃ、きら?」

こにか「かーの?」

凛「うん、二匹増えたところで別に問題ないよね。あそこ結構広いし。それに人数が増えれば、ほうじょーさんも外出控えてくれるかもだし」

ほうじょーさん「ふふっ♪」

凛「…控える気はないんだね。ともかく、これで6匹目…いや7?冷蔵庫にたまに出てくるイヴさんに似たのはカウント…しなくていいか。よし、みんな帰るよ」

かみゃ「なーお!」

こにか「はーの!」

きらきら「おにゃーしゃー☆」

ほうじょーさん「ねぇ♪」

―この後、散歩に出かけたほうじょーさんをこにかと迎えに行ったはずが、さらに謎生物を自ら2匹も連れてきた凛にウサミンPが頭を抱えるのは別のお話。

かみゃ
神谷奈緒に似たとっても照れ屋さんなぷちどる。鳴き声は『ばかっ!』『なーお』『んなー』。たまに『な』が『みゃ』になるようだ。
虎の耳と尻尾を持っている。猫と言うと怒る。でも撫でられるのは大好き。
割と虎らしく、食べる時等は肉食系。高いところによくいる。
基本的に飛ばないがたまに黒い翼や生物を出しているところが目撃されている。冬毛は通常の倍くらいもふもふしているらしい。

きらきら
諸星きらりに似たとっても大きなぷちどる。鳴き声は『にょわ』『にぃ』『はぴはぴ☆』等。
いつもは180cmくらいの大きさで、本人は自覚していないが妙な威圧感を放っている。
水をかけると普通のぷちどるの倍くらいの大きさまで小さくなる。お湯をかけると戻る。
大きいときは頭の上にほかのぷちどるを乗せるのが大好き。
かわいいものが大好きで、本当に気に入ったものは寝床まで連れていく習性がある。
滅多にしないが自分や仲間に危機が迫ると目からきらりんビームを放つ。

以上です
ぷちます!!放送記念だったりしなかったり
ほうじょーさん墜落の原因?多分カラスにでも突かれたんじゃないですかね…(適当)

情報
・ウサミンPの宇宙船にぷちどるが二匹追加されました
・頭をぶつけた衝撃か、ほうじょーさんが『にかー』以外にも二文字まで名前を言えるようになりました

皆々様乙乙ー

いやあ、XP終了は強敵でしたね(白目)
そんなわけでAHF第一予選始めます
よければヒーロー達と一緒に挑戦してみてください
一応まとめとか各設定とか読んでれば解ける……はず


J『なにやらステージ上で選手たちの雑談が始まっていますねー』

亜里沙『Jさんの前回の引きで、緊張感が壊されちゃったんじゃないかしら』

ウサコ『災い転じて福となしたウサ?』

~~~~

聖來「や、美穂ちゃんも出てたんだね。悪いけど一回刀しまってもらっていいかな?」

ひなたん「分かったナリ。……あ、せ、聖來さん! お久しぶりです!」カチャン

聖來「うん、久しぶり。美穂ちゃんが参加するのはちょっと意外だったかも」

美穂「え、えっと……アイドルヒーローの皆さんをお手合わせ出来ると思うと、いてもたってもいられず……」

聖來「ふふ、そっか。言っとくけど、当たっても手加減はしないからね?」

美穂「! の、望むところですっ!」

聖來「うん、いい目してるね。お互い頑張ろうね」

美穂「はいっ!」

東郷「失礼。君達のその刀……もしかして鬼神の七振りかな?」

聖來「マーセナリーさん……七振りの事知って……って、それ……」

東郷「ああ、私も一振りいただいていてね。『日本一、嫉妬深い刀』の茨姫さ」

美穂「わあ、綺麗……」

東郷「良ければ、七振りの持ち主同士少し話さないか?」

聖來「うん、私はいいよ」

美穂「は、はい! 是非!」

聖來(思わぬところで一本見つけちゃった。参加して正解だったかな♪)

~~

ラプター「……アイツだ、ファイア」

ファイア「あれが、鬼神の七振り……」

ラプター「大会中は奪えねえが……持ち主の顔覚えるだけでも今後の助けになる」

ファイア「そうね。……ところで、あなたのお連れは?」

ラプター「へ? ……あっ、いつの間にかあっち行ってやがる!」

ナイト「ライラちゃん久しぶりだねー!」

スカル「カ……おっとと、ナイトさんもお久しぶりでございます」

ナイト「貰った参加者リストにアビスカルって書いてあったから、まさか隊長が!? なんて思ったけど……」

スカル「今は修行中なのでございます。シャルクやガルブも一緒ですよー」

ナイト「そっかそっかー。じゃ、お互い頑張ろうね!」

スカル「もちろんでございますですよー」

~~

ディアブル「カミカゼさん、有香さん。お久しぶりですわ」

カミカゼ「ん? おお、お前か。ずいぶん思い切った変装だな」

有香「みちがえるようですよ、えっと……ディアブルさん」

01「どうもどうも、憤怒の街ではディアブルがお世話になったとか。改めて、SC-01であります」

カミカゼ「ああ、あん時に空から援護してくれてたのはアンタだったのか」

有香「お陰で助かりましたよ」

01「いえいえ。……バーニングダンサー殿とエボニーコロモ殿はいないようですな。お礼を言いたかったのですが……」

乙「ま、その内会えるんじゃね? な、リーダー……リーダー?」

甲「……そのゴーグルとペルソナ、メガネっぽいな……」

01「へ?」

乙「あ、ご、ごめん! ちょっとリーダー今メガネアレルギーでさ……!」

ディアブル「そ、それは……お大事に……?」

レアル「……なあ、あんた」

カレンヴィー「ん?」

レアル「……加蓮だろ」ボソボソ

カレンヴィー「え、な、な、何の事かなぁ~?」

レアル「……アタシだ、夏樹だよ」ボソボソ

カレンヴィー「え……えええっ!? 夏モガモガ」

レアル「馬鹿! 声がデカイ!」

カレンヴィー「ご、ごめん……」

レアル「全く……何でここにいるんだ?」

カレンヴィー「えっと…………好奇心?」

レアル「…………はぁー……とりあえず、あんまりグチャグチャになったりするなよ?」

カレンヴィー「わ、分かってるよそれくらい!」ムスッ

~~

RISA「……」

クラリア「何をキョロキョロしているの? 今回の優勝者ならここよ」

RISA「ちっがうわよ! ……パパ、やっぱり来てるわけないよね……」

ラビッツ「梨沙ちゃんのお父さん、忙しいんですか?」

RISA「うん、すっごく……」

ナチュラル「でも、せっかく娘が頑張るんだから、ちょっとくらい見にきてもいいのに」

RISA「…………」

クラリア「なら、あなたが輝いてパパを振り向かせてみれば?」

RISA「えっ……」

ラビッツ「と、時子ちゃ、さんが……」

ナチュラル「まともそうなことを……」

クラリア「決勝で私に敗れることで、大きな輝きを放てばいいのよ」

RISA「やっぱりそんなこったろうと思ったわよバカ!!」

マリン「うう……エンヴィーっぽい人とか親衛隊っぽい人とか強そうすぎる人とかいっぱいで……」

アース「腕が鳴るのう!」

マリン「胃がキリキリ鳴ってるんですけど……」

スカイ「ま、まあまあ。せっかく出たんだし、頑張ろう? ね?」

マリン「……ちょ、ちょっとだけ。ちょっとだけなら……がんばりますけど……」

スカイ「うん、頑張ろう」

アース「さ、ウチの相手は誰じゃ!?」

マリン「……まだ本戦始まってないですけど……」

~~

桜餡「…………」キョロキョロ

アーニャ「…………」キョロキョロ

オーフィス「あー……二人も、話せる相手いなくて余ってる感じ?」

桜餡「あ、うん……お恥ずかしながらね」

アーニャ「バイト仲間がいるんですが……話し込んでいて」

オーフィス「ああ……ねえ、良かったら大会の間だけでも友達にならない?」

桜餡「おお、いいねそういうの!」

アーニャ「ダー、賛成です」

オーフィス「決まりだね。私、本名は泉っていうの」ヒソヒソ

桜餡「あずきだよ、よろしくね」ヒソヒソ

アーニャ「気軽に、アーニャと呼んでください」ヒソヒソ

J『さあ、雑談はその辺りでおしまいにしていただきましょう!』

亜里沙『長いこと放ってたわねえ』

ウサコ『あわや放送事故ウサ』

アース『お、いよいよか!』

ナイト『ドンと来ーい!』

レアル『さあて……』

J『ただいまより、第一予選を開始します! 第一予選の内容は…………』

オーフィス『……』

東郷『……』

カレンヴィー『……』

J『……………………知力を競う、二択クイズです!!』

桜餡『……ク?』

有香『イ?』

ひなたん『ズ……?』

亜里沙『みなさん、足元をごらんくださーい♪』

甲『足元……おわっ、いつの間にかでっかく《A》と《○》が表示されてるぞ!?』

ラプター『こっち側は《B》と《×》だな……二択って、こういうことか?』

J『そう、これから正面の大ディスプレイに問題が表示されるので、正解だと思うほうへ移動して下さい!』

J『全10問で、シンキングタイムは一問10秒! 一問正解で10pt獲得できまーす!』

J『そして全問終了時のポイントを持ったまま、第二次予選に移動します! では、そろそろ始めますよ!』

ラビッツ『……!』

J『画面の前の皆さんも、一緒にお考え下さいね。それでは第一問!』

J《市内に存在する国内最大規模の大学院、京華学院。その敷地面積は東京ドーム約いくつ分?》

J《A:三つ分。B:四つ分。さあ、シンキングタイムスタートです!》

カレンヴィー『え、え、ええっ?』

アーニャ『トウキョウドーム……?』

ファイア『考えてる時間は無いわね。直感で……』

オーフィス(確か、データが……って、カンニングはまずいよね)

J『……はい、そこまでー!』

A:ラビッツ、ナチュラル、甲、RISA、アーニャ、スカイ、アース、01、聖來、桜餡、ファイア、カレンヴィー

B:カミカゼ、乙、ラプター、スカル、クラリア、レアル、マリン、ナイト、ディアブル、有香、オーフィス、ひなたん、東郷

J『結果はこうなりました』

亜里沙『ほぼ五分ねえ』

01『あ、あれ? お二人はそっちでありますか?』

ナイト『うん、なんとなくだけど……』

J『では、正解発表です! 正解は…………』






                      『B!』

カミカゼ『っおし!』

乙『ほら、言ったろリーダー』

RISA『え!? そんなにあった!?』

聖來『あちゃー、しくじった……』

J『正解者に10pt加算されます!』

10pt:カミカゼ
  :乙
  :ラプター
  :スカル
  :クラリア
  :レアル
  :マリン
  :ナイト
  :ディアブル
  :有香
  :オーフィス
  :ひなたん
  :東郷
――――――――
00pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :甲
  :RISA
  :アーニャ
  :スカイ
  :アース
  :01
  :聖來
  :桜餡
  :ファイア
  :カレンヴィー

J『さあ、次々参りましょう第二問!』

J《アイドルヒーロー同盟に所属するメカニック、原田美世の愛車である超☆特殊装甲車》

J《その最高速度は、150km/hである。○か、×か!?》

ひなたん『えっと……あ、そうなりそうなり』

桜餡『んー……?』

ラビッツ『どっちかなー……』

有香『恐らく……』

J『そこまでー!』

○:甲、乙、RISA、スカル、クオリア、アーニャ、スカイ、マリン、ナイト、01、有香、オーフィス、東郷、カレンヴィー

×:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、ラプター、レアル、アース、ディアブル、聖來、桜餡、ファイア、ひなたん

J『若干○が多いでしょうか』

亜里沙『そのくらい出してほしい、という願望込みかしらねえ』

スカイ『多分、それくらい……』

カミカゼ『へへっ……』

J『さあ、正解は……』






                      『×!』

J『本当の速度は、ご本人に答えていただきましょう! 原田美世さん、どうぞ!』

美世『本当は170km/h! ずっとずっと速いんだよー!』

J『はい、というわけで美世さんにお越しいただきました。美世さん、ありがとうございました』

美世『いえいえ、こちらこそ』

東郷『設問より遅いパターンじゃなく速いパターンだったか……』

J『正解者に10pt!』

20pt:カミカゼ
  :ラプター
  :レアル
  :ディアブル
  :ひなたん
――――――――
10pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :乙
  :スカル
  :クラリア
  :マリン
  :アース
  :ナイト
  :聖來
  :桜餡
  :有香
  :ファイア
  :オーフィス
  :東郷
――――――――
00pt:甲
  :RISA
  :アーニャ
  :スカイ
  :01
  :カレンヴィー

J『ドンドンいきましょう第三問!』

J《古くから日本の行く末を守ってきた四つの家系、四代名家。相原、榊原、西園寺、涼宮》

J《この内、軍事を司るのは? A:相原。B:榊原。さあ移動してください!》

RISA『えっと……え? こっち?』

レアル『確か、こっちだよな……』

ナイト『…………やっば……』

アース『……こっちじゃな!』

J『そこまで!』

A:ラビッツ、ナチュラル、甲、乙、RISA、ラプター、クラリア、レアル、スカイ、マリン、アース、01、ディアブル、
:有香、オーフィス、ひなたん、東郷

B:カミカゼ、スカル、アーニャ、ナイト、桜餡、ファイア、カレンヴィー

J『Aがかなり多いですね』

ウサコ『ぶっちゃけサービス問題ウサ』

ファイア(……政治とか経済とか、昔っから苦手なのよね……)

J『正解はこちら!』






                      『A!』

RISA『やった初得点!』

ラビッツ『ベアー檄でしたっけ? 懐かし……うぉっほん!!』

J『榊原は教育です。ちなみに、西園寺が経済で涼宮が政治ですね』

ナイト『二人ともごめん……もう片方が涼宮なら分かったんだけど……』

ディアブル『い、いえ、お気になさらず……』

J『正解者に10pt!』

30pt:ラプター
  :レアル
  :ディアブル
  :ひなたん
――――――――
20pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :カミカゼ
  :乙
  :クラリア
  :マリン
  :アース
  :聖來
  :オーフィス
  :東郷
――――――――
10pt:甲
  :RISA
  :スカル
  :スカイ
  :ナイト
  :01
  :桜餡
  :有香
  :ファイア
――――――――
00pt:アーニャ
  :カレンヴィー

J『ラプター、パーボ・レアル、ノーヴル・ディアブル、ひなたん星人は現在パーフェクトですね』

亜里沙『他のみんなも頑張ってね~♪』

J『続いて第四問!』

J《現在GDFの主戦力でもある、カースの泥の中でも推進力が減退しない特殊な銃弾》

J《その銃弾の名前は、『13.3mmウサミン弾』である。○か、×か!?》

乙『えー、そこまではわかんねえな……』

ラプター『……こりゃ勘だな』

アーニャ『……銃なら、ワカルワ、です』

カレンヴィー『うーん……?』

J『はいそこまでー!』

○:ラビッツ、ナチュラル、乙、RISA、ラプター、アース、ナイト、ディアブル、ファイア、オーフィス、ひなたん

×:カミカゼ、甲、スカル、クラリア、レアル、アーニャ、スカイ、マリン、01、聖來、桜餡、有香、東郷、カレンヴィー

J『微妙に×が多いですね』

ウサコ『本職GDFかよっぽどの武器マニアじゃなきゃ分かんないウサ』

甲『相棒が向こういくとすげえ不安だ……』

J『正解はこちら!』






                      『×!』

J『正しくは『12.7mmウサミン弾』でした』

桜餡『直感大的中ー!』

クラリア『また一歩頂点に近づいたわね』

ナチュラル(既に一問落としてるのは……黙ってた方がいいのかな?)

オーフィス『ああ、直径が違ったんだ……』

J『正解者に10pt!』

40pt:レアル
――――――――
30pt:カミカゼ
  :ラプター
  :クラリア
  :マリン
  :ディアブル
  :聖來
  :ひなたん
  :東郷
――――――――
20pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :甲
  :乙
  :スカル
  :スカイ
  :アース
  :01
  :桜餡
  :有香
  :オーフィス
――――――――
10pt:RISA
  :アーニャ
  :ナイト
  :ファイア
  :カレンヴィー

J『さあ、ここでパーボ・レアルが単独首位に躍り出ました!』

オォォー

レアル『な、なんか照れるな……』

ラプター『……ウサミン弾なのに間違えてんのか?』

ラビッツ『そんな事言われても!』

J『さあ、折り返し地点の第五問!』

J《市内に存在する、カフェ・マルメターノ。こちらは夜、不定期に別の顔を見せますが……》

J《その別の顔とは一体何? A:ワインバー。B:賭場》

レアル(何この個人的サービス問題)

ファイア『ようやくはっきり分かる問題が……』

スカイ『こ、子供には縁遠すぎる問題じゃないですか?』

RISA『そうよね、設問担当何考えてんのかしら……』

J『そこまでー!』

A:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、RISA、クラリア、レアル、スカイ、マリン、ディアブル、聖來、有香、ファイア、東郷

B:甲、乙、ラプター、スカル、アーニャ、アース、ナイト、01、桜餡、オーフィス、ひなたん、カレンヴィー

J『分かれましたねー』

亜里沙『子供組は本当に悩んでいたわねえ』

スカル『……ところでトバって何ですか?』

アース『マジか』

ひなたん『マジひなた?』

J『正解は……』






                      『A!』

J『ちなみに、この番組はカフェ・マルメターノその他諸々の提供でお送りしておりまーす』

東郷『大人の事情炸裂だね』

聖來『何かモヤモヤしちゃうね』

J『正解者に10pt!』

50pt:レアル
――――――――
40pt:カミカゼ
  :クラリア
  :マリン
  :ディアブル
  :聖來
  :東郷
――――――――
30pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :ラプター
  :スカイ
  :有香
  :ひなたん
――――――――
20pt:甲
  :乙
  :RISA
  :スカル
  :アース
  :01
  :桜餡
  :ファイア
  :オーフィス
――――――――
10pt:アーニャ
  :ナイト
  :カレンヴィー

J『依然パーボ・レアルが首位独走! 彼女を止めるヒーローはいるのか!?』

ナイト『ヤバイヤバイヤバイヤバイ……』

アーニャ『少し、まずいです……』

カレンヴィー『つ、次は正解しなきゃ……』

J『頑張って下さい! では第六問!』

J《アイドルヒーロー同盟とも協力関係にある何でも屋、イヴ非日常相談所》

J《所長、イヴ・サンタクロースのペットであるトナカイの名前はブリッツェンである。○か×か!?》

桜餡『む、無駄に響きがかっこいい……』

東郷『トナカイか……ふむ……』

アース(……チャンス問題じゃな!)

J『そこまでっ!』

○:ラビッツ、ナチュラル、乙、RISA、ラプター、アーニャ、スカイ、マリン、アース、桜餡、有香、カレンヴィー

×:カミカゼ、甲、スカル、クラリア、レアル、ナイト、01、ディアブル、聖來、ファイア、オーフィス、ひなたん、東郷

J『ちょっと面白い形になりましたねー、ナチュルスターが全員○でフルメタル・トレイターズが全員×です』

ウサコ『ナチュルスターの方はスゴイ自信ありげウサー』

J『正解は……』






                      『○!』

J『ちなみに、ブリッツェンとはドイツ語で『雷』という意味です』

甲『トナカイの名前にするような単語じゃねえだろ!』

ひなたん『そうナリ! 断固抗議するひなた!』

オーフィス『それ、飼い主に言ったほうが……多分無駄そうだけど』

J『正解者に10pt!』

50pt:レアル
  :マリン
――――――――
40pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :カミカゼ
  :ラプター
  :クラリア
  :スカイ
  :ディアブル
  :聖來
  :有香
  :東郷
――――――――
30pt:乙
  :RISA
  :アース
  :桜餡
  :ひなたん
――――――――
20pt:甲
  :スカル
  :アーニャ
  :01
  :ファイア
  :オーフィス
  :カレンヴィー
――――――――
10pt:ナイト

J『さあ! ナチュルマリンがパーボ・レアルに肩を並べたぁ!!』

ウォオー

マリン『えぅ……あんまり目立ちたくないんですけど……』

J『そして単独最下位のアビスナイト、まだまだチャンスはあります!』

ナイト『わざわざ言うなし!』

J『参りましょう第七問!』

J《秋炎絢爛際辺りから目撃例が出始めた、海底都市の戦闘外殻とはまた違った特性を持つ金属生命体、エクス・マキナ》

J《彼らが武器に変形した状態の名は? A:アームズ形態。B:ガイスト形態》

RISA(サービス問題いただき!)

東郷(……そういえば、美波君が蠍を連れていたな)

スカル『RISAさんについていきますです』

桜餡『……よし、こっち!』

J『そこまで!』

A:カミカゼ、甲、乙、レアル、スカイ、マリン、01、有香、ファイア、ひなたん、カレンヴィー

B:ラビッツ、ナチュラル、RISA、ラプター、スカル、クラリア、アーニャ、アース、ナイト、ディアブル、聖來、桜餡、
:オーフィス、東郷

J『かなりB寄りですね』

亜里沙『というか、一人現在進行形でエクス・マキナを連れてる子がいるのよねえ』

カレンヴィー『え? あ、本当だ!』

01『しまった……完全に見逃していたであります……!』

J『まあそんなわけで正解発表といきましょう!』






                      『B!』

カミカゼ『ちくしょう、凡ミスだ……』

レアル『入場アナウンスちゃんと聞いとけばよかったな……』

有香『緊張でそれどころではありませんでした……』

ウサコ『A側が凹みに凹みまくってるウサ』

J『それはさておき正解者に10pt!』

50pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :ラプター
  :クラリア
  :レアル
  :マリン
  :ディアブル
  :聖來
  :東郷
――――――――
40pt:カミカゼ
  :RISA
  :スカイ
  :アース
  :桜餡
  :有香
――――――――
30pt:乙
  :スカル
  :アーニャ
  :オーフィス
  :ひなたん
――――――――
20pt:甲
  :ナイト
  :01
  :ファイア
  :カレンヴィー

J『さあ、上位陣が混沌としてまいりました!』

ウサコ『そういえば、さっきからラビッツムーンとナチュラルラヴァースはずっと一緒に移動してるウサ』

亜里沙『本当に仲良しさんなのねえ』

J『では参りましょう第八問! いえ、第8問!』

ウサコ『何故言い直したウサ?』

J『八ではなく、8に相応しい問題をご用意しました!』

J《眼鏡を護り眼鏡を広める眼鏡ヒーロー、マスク・ド・メガネが持つ、88の眼鏡奥義。その中に、》

J《『メガネアイドルとしてデビューした後に引退し、優秀なメガネプロデューサーになる』というものがある。○か×か!?》

全員(…………いや、知らん…………)

甲『眼鏡、だぁ……!?』

J『さあ、全員よく分からずウロウロしております! ヤイバー・甲のみイライラしております!』

ウサコ『やめたれウサ』

J『はい。そこまでー!』

○:ラビッツ、カミカゼ、乙、スカル、レアル、アーニャ、スカイ、01、ディアブル、桜餡、有香、ファイア、カレンヴィー

×:ナチュラル、甲、RISA、ラプター、クラリア、マリン、アース、ナイト、聖來、オーフィス、ひなたん、東郷

J『おおっと! 問題のよく分からなさに、ラビッツムーンとナチュラルラヴァースの意見が初めて別れたぁ!!』

ナチュラル『いやもうこんなの分からないよ……』

聖來『っていうかこれはもう技なの……?』

J『正解はー……』






                      『○!』

全員『あるんかい!!』

亜里沙『あら、みんなの心が一つに』

東郷『そんないいもんじゃないぞ……』

乙『リーダー、落ち着け! な!?』

J『正解者に10pt!』

60pt:ラビッツ
  :レアル
  :ディアブル
――――――――
50pt:ナチュラル
  :カミカゼ
  :ラプター
  :クラリア
  :スカイ
  :マリン
  :聖來
  :桜餡
  :有香
  :東郷
――――――――
40pt:乙
  :RISA
  :スカル
  :アーニャ
  :アース
――――――――
30pt:01
  :ファイア
  :オーフィス
  :ひなたん
  :カレンヴィー
――――――――
20pt:甲
  :ナイト

J『ラビッツムーン、パーボ・レアル、ノーヴル・ディアブルが頭一つ抜け出たー!!』

ラビッツ『ぶっちゃけ勘でしたけどね……』

レアル『勘以外無理だろ、今の……』

ディアブル『というか、マスク・ド・メガネさんという方をご存知の方、ここに今いらっしゃらないのでは……』

J『続いて第九問!』

J《現在女子高生を中心に人気の屋台、通称マルメターノおじさん。その屋台のマスコットキャラの名前は?》

J《A:かわしまさん。B:わかるわさん。さあ移動してください!》

レアル(屋台までは、流石にな……)

ディアブル(そういえば、一度見かけた事が……)

ひなたん(これは分かったひなた!)

J『そこまで!』

A:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、RISA、アーニャ、スカイ、マリン、アース、ディアブル、桜餡、ひなたん、カレンヴィー

B:甲、乙、ラプター、スカル、クラリア、レアル、ナイト、01、聖來、有香、ファイア、オーフィス、東郷

J『結果はこのようになりました』

聖來『確か一度だけ見た時、わかるわ、って鳴いてたような……』

オーフィス『うん、確かにそう鳴いてた』

桜餡『えっ……まさかミスった……?』

J『正解はこちら!』






                      『A!』

亜里沙『鳴き声は『わかるわ』だけど、名前はあくまでかわしまさんなのね』

ウサコ『可愛さ的にウサコのライバルウサ』

アース(しかしホントに川島先生によく似とるの……)

クラリア『センスがなってないわね。私ならわかるわさんと名づけたわ』

J『正解者に10pt!』

70pt:ラビッツ
  :ディアブル
――――――――
60pt:ナチュラル
  :カミカゼ
  :レアル
  :スカイ
  :マリン
  :桜餡
――――――――
50pt:RISA
  :ラプター
  :クラリア
  :アーニャ
  :アース
  :聖來
  :有香
  :東郷
――――――――
40pt:乙
  :スカル
  :ひなたん
  :カレンヴィー
――――――――
30pt:01
  :ファイア
  :オーフィス
――――――――
20pt:甲
  :ナイト

J『さあ、いよいよ最終問題ですが……スペシャルターイム!!』

アーニャ『!?』

J『最終問題はなんと! 正解すると倍の20pt!!』

甲『おおっ!』

J『しかーし! 不正解だと逆に-20ptになってしまいます!!』

マリン『ぅえっ……』

カレンヴィー『テレビでよくあるやつだ』

オーフィス『これもテレビだけどね』

J『では、問題です!!』

J《海底都市所属の戦闘用アンドロイドの名前は、『イワッシャー』である。○か、×か?》

全員『…………えっ?』

J『さあ、お考えください!』

ラビッツ(……○ですよね? ライラちゃんが連れてる、あれのことですよね? うん、○です!)

ナチュラル(シャルクさんとガルブさんが名乗ってたもんね、『カスタムイワッシャー』って。○だ)

カミカゼ(引っ掛けか? にしちゃあ引っ掛ける要素が無い……まっすぐ○いっとくか)

甲(……一回闘ったが、『イワッシャー!』って言ってたよな。○!)

乙(これで得点二倍って、ちょっと美味しすぎるよな……まあ、○でいいだろ)

RISA(海底人二人とも○行ってるし、○よね、うん)

ラプター(なんだこりゃ? 設問ミスか……ま、ありがたく20ptいただくが。○だ、○)

ライラ(分かる問題でよかったです。○でございますね)

クラリア(大衆を同じ道を選ぶのは癪だけれど……真実が○である以上仕方ないわね)

レアル(そりゃ○……って待て、戦闘用? ……LPさんが安斎探偵事務所で取ってきた資料には…………あっ!!)

アーニャ(イ、ワッシャー……きっと、○です。……多分)

スカイ(○……だよね? イワシみたいな形してたし……)

マリン(わ、わざと間違えて予選落ちとか……でも、こんな問題でわざと間違える度胸無いんですけど……)

アース(名前は知らんが、確かに『イッシャー』とか『ワシャー』とか言うとったの。○じゃな!)

ナイト(○、○! 良かったぁ、0ptだけは避けられた~)

01(ふふ、とんだサービス問題でありますな。ずばり、○であります!)

ディアブル(流石に皆さん○に移動していますわね……これではスペシャルタイムの意味が無いような……?)

聖來(あー、あれね。マリナさんに話聞いてて良かった。○だよね)

桜餡(んー……わかんないけど、みんな○に行ってるから○だよね、多分)

有香(修行のために何度か戦いましたが……鳴き声から推測するに○でしょう!)

ファイア(運がいいわ、最後の最後で楽な問題に当たるなんて。○ね)

オーフィス(海底都市出身者が二人とも○に移動してる……○で間違い無さそうだね)

ひなたん(あのイワシさんとはさんざん戦ったナリ。○で間違いないひなた!)

東郷(少し簡単すぎる気も……考えすぎか。遭遇しない者にとっては分からない問題だからね。○だ)

カレンヴィー(分かんないなあ……みんな○に移動してるけど…………あれ、夏樹?)

J『はい、そこまでー……っと、おお、これは!?』

○:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、甲、乙、RISA、ラプター、スカル、クラリア、アーニャ、スカイ、マリン、アース、
 :ナイト、01、ディアブル、聖來、桜餡、有香、ファイア、オーフィス、ひなたん、東郷

×:レアル、カレンヴィー

J『未だかつて無い別れ方だ! パーボ・レアルとカレンヴィーを除いて、全員が○ッ!!』

ザワザワザワザワ

カミカゼ(夏樹あの馬鹿ッ! まさか知らねえのか!?)

ナイト(えっと、これで星花が二位……賞金ゲットにグッと近づいたね!)

カレンヴィー「ね、ねえ夏樹……」ヒソヒソ

レアル『………………』

J『……では! 泣いても笑っても最後の正解発表です!』

ラビッツ『…………』

甲『…………』

アース『…………』

オーフィス『…………』

J『正解は……』






                      『×!』

ナイト『…………へっ?』

桜餡『あ、あれ……?』

ラプター『……ア、アポ……?』

カレンヴィー『…………え、え、ええっ!?』

レアル『ふぅ……正解だったか』

カミカゼ『お、おいちょっと待て! どういうことだ!?』

クラリア『納得行く理由を答えてみなさい』

J『では解説は、アイドルヒーロー同盟事務員である、シャルクさんにお願いします!』

シャルク『どうも、ごしょうかいにあずかりました、シャルクともうします』

J『では、解説を』

シャルク『はい。たしかに、わたしやガルブらのそうしょうはイワッシャーです』

聖來『だったら……』

シャルク『しかし。イワッシャーはほんらいせんとうようではなく、ちあんいじようのアンドロイドなのです』

有香『な、なんと!? 治安維持!?』

東郷『アリなのか、それ……?』

シャルク『アリです』

ナチュラル『そ、そんなあ……』

01『しかしそうなると……確かに×が正解になります……ぐぬぬ』

J『はい、というわけで正解者に20pt! そして