モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part5(1000)

 それは、なんでもないようなとある日のこと。


 その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
 地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

 異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
 悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
 突然超能力に目覚めた人々が現れました。
 未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
 他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

 それから、それから――
 たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

 その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
 戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

 ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。

part1
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371380011/)

part2
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371988572/)

part3
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372607434/)

part4
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373517140/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1374845516

・「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドスレです。

  ・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
  ・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。


・投下したい人は捨てトリップでも構わないのでトリップ推奨。

  ・投下したいアイドルがいる場合、トリップ付きで誰を書くか宣言をしてください。
  ・予約時に @予約 トリップ にすると検索時に分かりやすい。
  ・宣言後、1週間以内に投下推奨。失踪した場合はまたそのアイドルがフリーになります。
  ・投下終了宣言もお忘れなく。途中で切れる時も言ってくれる嬉しいかなーって!
  ・既に書かれているアイドルを書く場合は予約不要。

・他の作者が書いた設定を引き継いで書くことを推奨。

・アイドルの重複はなし、既に書かれた設定で動かす事自体は可。

・次スレは>>950
    
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」まとめ@wiki
http://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/1.html?pc_mode=1

☆このスレでよく出る共通ワード

『カース』
このスレの共通の雑魚敵。7つの大罪に対応した核を持った不定形の怪物。
自然発生したり、悪魔が使役したりする。

『カースドヒューマン』
カースの核に呪われた人間。対応した大罪によって性格が歪んでいるものもいる。

『七つの大罪』
魔界から脱走してきた悪魔たち。
それぞれ対応する罪と固有能力を持つ。『傲慢』と『怠惰』は退場済み

――――

☆現在進行中のイベント

『憤怒の街』
岡崎泰葉(憤怒のカースドヒューマン)が自身に取りついていた邪龍ティアマットにそそのかされ、とある街をカースによって完全に陸の孤島と化させた!
街の中は恐怖と理不尽な怒りに襲われ、多大な犠牲がでてしまっている。ヒーローたちは乗り込み、泰葉を撃破することができるのだろうか!?
はたして、邪龍ティアマットの真の目的とは!


『嘘つきと本音』
宇宙レベルの超犯罪者、ヘレンが生み出した怪人『アバクーゾ』と『ハンテーン』
この2匹はそれぞれアルパカとカピバラに似た外見をしており、戦闘能力はほとんどない。
しかしアバクーゾには打撃が、ハンテーンには斬撃が効かない上に、名前の通り『相手の隠し事を大声で叫ばせる』能力と『性格を反転させる』能力があるのだ!
受けるダメージは精神的!? ヒーローたちの心の安寧はいかに!

part5に最初に投下しちゃうぜー
突っ込みどころもりだくさんかもしれないけど深く考えたらダメだぞ


前回までのあらすじ

妖刀『小春日和』を抜くと、
『ひなたん星人』になってしまう少女・小日向美穂は、
街に現れた怪人ハンテーンの反転薬のせいで、
刀を抜いてない時でも常時、『ひなたん星人』になってしまうのだったひなた!
小日向美穂の運命や如何に!

参考
(美穂と『小春日和』)
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373517140/155-183)
(ひなたん星人とハンテーン)
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373517140/507-519)


『万年桜』の公園は今日もあたたかな日差しが心地よい。

そして公園にある、いつもの特等席では

いつもの様に彼女が日向ぼっこをしていました。


美穂「すやすや・・・・・・」 コクリコクリ


美穂「ふふっ、煩わしい太陽め・・・・・・いつか堕とすナリ・・・・・・すやすや」 コクリコクリ


・・・・・・やっぱ、いつもと違うわこれ。



さて、そんな彼女の元に近づいてくる足音が一つ


「やはり、ここに居ましたか」


美穂「ん・・・?誰ひなた?」


目を開けて顔を向けると、そこに立っていたのは、

背中に4本の筒の様な袋を背負い、

腰に1本の刀を差した一人の少女だった。


肇「すみません、起こしてしまいましたね。」


肇「はじめまして、小日向美穂さん。」

肇「それと、久しぶりだね。『小春日和』。」


少女は、美穂と刀、両方に挨拶をしたが、

された方は、しっくりこないようで。


美穂「・・・・・・なんだか変な感じナリ」

美穂「”私”からすれば知ってるのに知らない人ひなた」


小日向美穂と『小春日和』、その両方でありながら、

両方でない『ひなたん星人』にとっては奇妙な感覚であった。


肇「あっ、そうですね。なら・・・・・・少し言い換えます。」


肇「はじめまして、ひなたん星人さん。」

肇「ご存知かもしれませんが、刀匠・藤原一心の孫娘、藤原肇です。」


美穂「うん♪今度はティンと来たひなたっ☆」

美穂「私はあなたも知ってのとおり、愛と正義のはにかみ侵略者ひなたん星人ナリ♪」


そんな変な挨拶を交し合って、

小日向美穂は藤原肇と出合ったのだった。


肇「隣、座ってもいいですか?」

美穂「どうぞどうぞひなたっ、あなたなら大歓迎ナリ☆」

肇「ふふっ、ありがとうございます。では、失礼して」


美穂の座るベンチの反対側に、ちょこんと肇が座る。


美穂「ここが、この公園の中で一番日差しが気持ちいいひなた♪」

肇「そうですね、この場所では春の暖かさがいつでも感じられるようです。」


しばし、『万年桜』の公園の暖かさに浸る二人。


美穂「・・・・・・。」

肇「・・・・・・。」


美穂「・・・・・・」 コクリコクリ

肇「・・・・・・」 ウツラウツラ


美穂「・・・・・・すやすや」

肇「すぅ・・・・・・」


肇「はっ!本題に入る前に寝てしまうところだった!」

美穂「ふぇ?」


閑話休題


肇「その様子ですと、美穂さんは」

肇「あ、いえひなたん星人さんは、もう出会ってるんですよね。」

肇「近頃、世間を騒がせる怪人達に。」


肇は話を始める。

ここ最近、巷を騒がせる悪党ニ匹について。

一匹は、人の秘密を暴くアルパカ獣人。

一匹は、人の心を裏返すカピバラ獣人。


美穂「『ハンテーン』と『アバクーゾ』ナリ」

肇「名前もご存知でしたか」

美穂「これでも私は勉強熱心ひなたっ☆」

美穂「特に一度負かされた子の事はしっかり覚えてるナリ」

負けず嫌いと言うか、執念深いと言うか

『傲慢』の刀から生まれた人格らしくはある。

肇「負かされた、ですか・・・。」

肇の顔が曇ったのを、ひなたん星人は見逃さない。


美穂「・・・・・・私が負けたって聞いて、ちょっと残念ナリ?」

肇「あ、いえ。そう言うことでは。」

美穂「私に失礼とか思わなくていいひなた」


肇「・・・・・・すみません。ただ『小春日和』に斬れないものがあるなんて思ってなかったから。」


彼女にとって『鬼神の七振り』は、自慢のお爺ちゃんの最高傑作。

特に『小春日和』は、負のエネルギーの力を借り比喩無く鉄骨すら両断できる優れた刀なのだ。

『ハンテーン』と呼ばれる怪人が、斬撃に対して強い耐性を持つとは噂で聞いていたが、

まさか『鬼神の七振り』ですら斬れないとは思ってもいなかった。


肇「少しだけ悔しいですね。」

美穂「私も同じ気持ちナリ」

肇の気持ちを聞いて、ひなたん星人も答える。


美穂「だけど」

そう言うと、ひなたん星人は立ち上がって刀を抜き、肇の目の前に掲げた。

肇「・・・・・・。」

肇は掲げられた刀をまじまじと見つめる。

『ハンテーン』の超硬度の毛の鎧に強く撃ち付けたにも関わらず、

『小春日和』には刃こぼれ一つ無く、美しいままであった。

美穂「『小春日和』はやっぱり日本一の刀ナリ☆」

ひなたん星人は刀から生まれた人格である事を考えれば、自画自賛ともとれるのだが。


美穂「肇ちゃんのためにも、次こそは勝ってみせるひなたっ♪」 キャピーン

そして、なぜかここでキメポーズ

肇「ふふっ、ありがとう。ひなたん星人さん。」

しかしながら、ひなたん星人の言葉で、肇は元気を取り戻したようだ。


美穂「次は勝つ!そのためにももっと強くなりたいひなたっ!」

肇「もっと強くですか・・・・・・。」

肇は少し考える素振をする。


肇「実は私が、今回美穂さんのところに来たのは『アバクーゾ』の方を退治して貰うつもりで来たんです」

美穂「まあ、私ならそっちの怪人は完封できるナリ」


精神攻撃を無効化するひなたん星人には彼らの攻撃は効かず、

斬撃耐性も無いアバクーゾの方であれば、逃げ足にさえ追いつけばどうとでも料理できる相手であったりする。


肇「だから『ハンテーン』の方は他の方に任せても・・・・・・と思っていたのですが」

美穂「それはひなたん星人のプライドが許さないナリっ☆」

肇「ふふっ、そうですか」

ひなたん星人の頼もしい即答に、つい笑ってしまう肇だった。

美穂「何かおかしかったひなた?」

肇「いえ、私も同感です。『鬼神の七振り』は日本一の刀だって証明したいですから。」

肇「負けっぱなしは嫌ですね!」

負けず嫌いなのは鬼の孫娘も同じであったようだ。


美穂「・・・・・・何か策があるひなた?」

肇「策と呼べるものはないですが・・・・・・強くなれる手立てはあるかもしれません。」

肇もベンチから立ち上がり、少し離れた場所まで歩く。

そして真剣な目で、美穂に向かい合う。

肇「ひなたん星人さん」

美穂「?」


肇「私と戦ってみてくれませんか。」


美穂「・・・・・・」

美穂「ふっふっふ」

美穂「あ~っはっはっはっは!」


美穂「いや、どうしてそうなるひなたっ!」


ひなたん星人珍しく突っ込みをする。


肇「すみません、説明が足りなかったですね。」

肇「単刀直入に言えば、『小春日和』と美穂さんの事を知るためです。」

肇「『小春日和』は持てば日本一の剣士と同等の技術を発揮できる刀。」

肇「ですが、それが限界だとは私は思いません。」


日本一の剣士と同等が『小春日和』の到達点ではない、と肇は言う。

『鬼神の七振り』は”その先”を目指すための刀なのだから。


美穂「・・・・・・私が100%実力を発揮してないってことナリ?」

肇「いえ、そうは言いませんよ。」

肇「ただ、その先・・・・・・つまり120%を発揮できるんじゃないかって事ですね。」

美穂「なるほど、単色片面大アップひなた♪」

それは違う。


肇「だから、ひなたん星人さんがその域まで到達できる実力を持つのか、この目で見てみたい。」

肇「そのための模擬戦みたいなものですよ。」

肇は腰の刀の柄をつかむ。

美穂「なるほど、ひなた」

その様子を見て、ひなたん星人も答える。


美穂「まあ、そこまで言われたなら」

美穂「ひなたん星人の真の実力を見せない訳にはいかないナリっ!」


ひなたん星人は『小春日和』を構える。


肇「ふふっ、ありがとうございます。」

肇もまた刀を抜いた。


美穂「・・・・・・。」

美穂「てっきり、『鬼神の七振り』を使うのかと思ってたナリ。」

肇の刀を見て、ひなたん星人は呟いた。

こうして刀を抜いて向かい合っても、『鬼神の七振り』特有の核の共鳴の様なものを感じない。

それはつまり、肇が手に持つ刀には『カースの核』が取り付けられていないと言う事だ。

肇「この刀は、祖父の刀ではなく、私が打った”ごく普通の妖刀”ですよ。」

肇「いつまでも刀匠”見習い”で居るわけにはいきませんから。」

肇「これは『鬼神の七振り』にも負けないつもりで打った、私のための刀。」


成り立ちが似ているためか、その刀の佇まいは『小春日和』に似ていた。

見た目は『小春日和』と同じく、ごく普通の日本刀。

しかし『緊張感のある静けさ』を彷彿させる『小春日和』に対して、

その刀は、自然と一体となる様な『穏やかな静けさ』を思わせた。


肇「名前は『桜花夜話』と言います。」


美穂「ふふっ、いい名前ひなたっ」


肇「・・・・・・。」

美穂「・・・・・・。」


それっきり二人は口を閉じ、

『万年桜』の公園が静けさに包まれる。

刀を抜いて向き合う少女達の様子を、何事かと見に来た野次馬達も、

その穏やかながら、真剣な場の空気に飲まれ、騒ぐ事もなく、静かに成り行きを見守っていた。

鳥や虫の鳴き声すら聞こえない。

ただ、『万年桜』の花が風に揺れ、散ってゆく音だけが、その場にはあった。


先に静寂を破ったのは鬼の少女。


肇「鬼匠・藤原一心の孫娘!藤原肇!参ります!」


美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!かかってくるナリ!」


お互いに高らかに名乗りあい、

『刀使い』対『刀使い』の模擬戦が始った。


開始と同時に肇が動く。

両手で『桜花夜話』を持ち、正面に構えながらの突撃。

肇「やあっ!」

わずかな歩数で美穂まで近づくと、

ほんの少し飛び掛る様に、上段から斬りかかる。

しかし当然の様に、その一撃は『小春日和』によって受け止められ、

かん高い、金属音が響き、肇の体は押し飛ばされた。

美穂「甘いナリっ!ラブリージャスティスっ・・・・・・」

そして続けざまに美穂の攻撃が、体勢を崩し膝を突いた肇を襲う。

美穂「ひなたんみねうち!!」

まさか模擬戦で命をとるわけにもいかないので、

流石のひなたん星人もひなたんビームやひなたんフラッシュは自重しました。


ガィン!

っと、金属音が響く。

美穂「!」

肇「っ!」

例えみねうちだとしても、彼女の攻撃はすべて日本一の技術をもって行われる攻撃。

しかし、なんと肇は体勢が崩れた状態からその攻撃を刀で受け、防いでいた!


ひなたん星人は後退し、わずかに距離をとって尋ねる。

美穂「短い間に、私の必殺技が二回も防がれるなんて自信無くしそうナリ。」

美穂「けれど今の一撃、普通の人なら反応が間に合うはずなんてないひなた。」

肇「ええ、そうでしょうね。何しろ日本一の一撃ですから。」


再び構え直した肇は答える。

先ほどの攻撃、常人ならば反応が間に合うはずが無い。

”常人”ならばだ。


肇「”鬼心伝心”」

肇「鬼のまじないの一つです。簡単に言えば自己暗示のようなものですが。」

肇「相対する相手の心、技、体の動きを読み取り、自信の動きをそれに合わせる。」

肇「それによって、相手の技量をそのまま自分の身体に反映することができると言う術です。」

肇「つまり、ひなたん星人さんが日本一の剣士なら、私も日本一の剣士と言う事ですよ。」


同じく日本一の剣の技術を持つならば、日本一の攻撃を受ける事ができると言う理屈だ。


美穂「ふふふ、思わぬ強敵の登場ひなたっ!」

肇「ひなたん星人さん、私は100%以上の力が見たいって言いました。」

肇「手加減して倒せると思わないで下さいね。」

美穂「わかってるナリ!楽しくなってきたひなたっ☆」


とは言え、『桜花夜話』を構える肇の手は震えていた。

肇「少し手が痺れてしまいましたね。」

肇「すぅー・・・・・・はぁー・・・・・・」


深呼吸をただ一度。

すると刃先の震えがピタリと止まる。


美穂「それも、鬼のまじないひなた?」

肇「いえ、単なる精神統一ですよ。」


それだけで手の振るえは止まった。

止まりはしたが、


美穂「一撃受けて手が痺れちゃうなら、そう何度も防げる訳じゃあないひなたっ☆」

肇「さあ。それは、どうでしょうね。」


鬼のまじないによって使い手の技量が同等になっていたとしても、

『小春日和』による負のエネルギーの身体能力ブーストで、

その攻撃力が強化されているひなたん星人と、

鬼の孫とは言え、生身の肇では力の差が歴然である。

故にひなたん星人の攻撃を一度受けただけで、肇の手は痺れてしまったのだ。

何度も連続で攻撃を受ければ、刀を持てなくなるだろう。

ならばこの勝負は後、数撃で決まる。

そんな風に、ひなたん星人は判断していた。



しかし、それは間違いであった

いや、この時点で気づいておくべきだったのだ。


所有者に歴然たる力の差がありながら、

『桜花夜話』が『小春日和』の攻撃を受ける事ができたこと。


一度目の剣劇では突撃してきた肇の身体を押し飛ばす事が出来たのに、

二度目の剣劇では彼女から攻撃したにも関わらず受けられたこと。


それらの事実が指し示す、『桜花夜話』の能力に気づくべきであった。


再び、肇は両手で刀を持ち、

ひなたん星人に向けて突撃する。

先ほどと同じ攻撃。

美穂「ワンパターンナリ・・・・・・」

同じ攻撃ならば、対処法も変わらない。

またはじき返して、隙が出来た所を返り討ちにするだけだ。

今度は手加減もしない。


肇「やあっ!」

そして肇は少し飛び掛る様に斬りかかり。

キィイン!

美穂「っ!?!」

美穂(強い!?)


さっきとほとんど変わらない所作からの攻撃は、

明らかに先ほどよりも、重い一撃であった。

ひなたん星人は『小春日和』で受けて、その攻撃をはじき返すつもりであったが、

重くなったその攻撃をはじき返す事が出来ず、鍔迫り合いとなる。


美穂「くっ、どう言う事ひな・・・たぁっ!」

まさかの事態に、ひなたん星人は少し焦るが

身体と刃先を上手くずらし、攻撃に転じようとする。

しかし肇はその攻撃が来る前にすぐさま後ろに飛びのいた。


両者の間に再び距離ができる。


肇「如何ですか?真価を発揮した『桜花夜話』は。」

少しだけ自慢げに肇は言う。

美穂「思わず焦ったひなた。急に力が強くなるなんて・・・・・・今度はどんな手品を使ったナリ?」

肇「ふふっ、この子のおかげですよ。」

ひなたん星人に問いかけられて、肇は素直に種明かしを始めた。


肇「『桜花夜話』は対話する刀です。」

美穂「対話?お喋りするひなた?」

肇「いえ。まあ、人と同じ様に喋る刀も知ってはいますが。」


肇「『桜花夜話』にとっての対話とは、すなわち”打ち合い”です。」

美穂「打ち合い・・・・・・あっ!!」

”打ち合い”と聞いて彼女は気づく。

美穂「じゃ、じゃあ二度も突撃してきたのはわざとだったひなたっ!?」

肇「はい、ひなたん星人さんは『小春日和』が作った人格であるなら」

肇「単調な攻撃はかわさずに受けるだろう。と思ってましたから。」

美穂「うぅぅ・・・・・・引っ掛かったナリっ・・・・・・。」

肇「ふふっ。」

『傲慢』の刀から生まれた人格が、やや自信過剰である事は知っていた。

『鬼神の七振り』のことはよく知っている肇だから出来るちょっとしたズルである。


肇「『桜花夜話』は打ち合った対象の事を良く知り、理解しようとする刀。」

肇「そうしてその相手と対等であろうとする刀。」

肇「故に”対話する刀”なんです。」


打ち合った相手の力を分析し、刃と所有者の力を相手と対等になるまで引き上げる。

それが、肇の打った妖刀『桜花夜話』の特性。


肇「『桜花夜話』は、既に三度も、『小春日和』と打ち合いました。」

肇「だからこの子は、『小春日和』の力の事をよく理解しています。」

肇「そして、その力と対等であろうとしたのですよ。」

美穂「・・・・・・だから最初より力が増したひなた。」


三度の”対話”を経て、

『桜花夜話』はその切れ味も攻撃力も、『小春日和』に追いついたのだ。

先ほどの競合いが拮抗したのも当然である。


肇「さて、ひなたん星人さん」

肇「私の技術は”鬼心伝心”によって、あなたと同等で、」

肇「今や『桜花夜話』の力は『小春日和』と対等です。」


肇「これにて技術も力も、同等にして対等。」

肇「なら私達が100%同士で戦ったら、引き分けしかあり得ませんね。」

どこか面白そうに、現在の状態を肇は語る。


美穂「ふっふっふ」

美穂「あーっはっはっはっはっは!」


ひなたん星人もまた面白そうに笑った。


美穂「なるほど、言いたいことはわかったひなた。」

美穂「つまり、今より強い自分を・・・・・・120%を引き出せないと勝てないって事ナリ!」


肇「そう言うことですね、ここからが本番ですよ。」

美穂「そうみたいナリ!」

美穂「この勝負、肇ちゃんのためにも勝ってみせるひなたっ☆」

肇「ふふっ、期待しています。」


肇「・・・・・・。」

美穂「・・・・・・。」

会話を止めて、みたび、真剣に向き合う二人。

今度は肇がいきなり突撃してくる事もなかった。


肇「・・・・・・。」

美穂「・・・・・・。」


『万年桜』の公園は今日もあたたかな日差しが心地よい。


肇「・・・・・・。」

美穂「・・・・・・。」


辺りには、鳥や虫の鳴き声すら聞こえない。


肇「・・・・・・。」


美穂「・・・・・・。」


向き合うのは、どちらも刃こぼれ一つ無く、美しい妖刀。




肇「・・・・・・。」


美穂「・・・・・・。」



一陣の風が吹き、『万年桜』の花が大きく揺れた。

桜の花が散る。


それが合図だった。


肇「やああっ!」

美穂「はぁあっ!」

どちらからともなく目の前の相手に疾風の様に近づき、

キィイン!

打ち合う。

ガァン!

打ち合う。

キン!カァン!キィイン!

打ち合う、打ち合う、打ち合う。


そして、その次に来た肇の一撃を、

美穂は翻すように身をかわし、その脇から剣撃を放つ。

しかし、それを予期していたかのように肇はすぐ体勢を整えなおすと、

『桜花夜話』の刃先を近づく美穂に対して向ける。

喉元に迫る刀を美穂は、わずかに首を動かしてかわすと、すぐさま後退。

つづく肇の追撃を、『小春日和』で受け止めた。

その実力は確かに拮抗している。

再び、打ち合いが始まる。


キィイン!

――金属音を聞きながらひなたん星人は考える。

美穂(どうすれば、どうすれば勝てるひなたっ!)


――技術も力も同じ、ならば何かを掴めなければ勝てる相手ではない。


カァン!

――肇は100%の実力のその先、120%の力を引き出せるはずと言っていた。


ガィィン!

――そもそも”私”の・・・・・・『小春日和』の力とは何だろうか。


――持てば、日本一の剣士と同等の技術を発揮できる。

――もう一つ、負のエネルギーを纏い、切れ味と身体能力を強化できる。


――この二つ。

――120%の実力を引き出すとすれば、

――日本一の剣士を超える技術を発揮するか、

――負のエネルギーを増量し、さらに切れ味と身体能力を磨き上げるか。


キィイン!


――あ、いや待って。

――たしかもう一つ、『小春日和』には能力があったはず。


――人格を作り上げる。


――もしかしてそれが、120%を発揮する鍵なのだろうか?


カカァン!


――いや、流石に違うような気がする。

――そもそも”人格を作り上げる”のは、横暴たる刀である『小春日和』が、

――人間の肉体を使いやすくするためだ。

――”私”の実力とは関係ないはず・・・・・・。


キリィン!


――今にして思えば、一本の刀に対してバラバラの能力だ。

――日本一の剣士としての技術を発揮する。

――負のエネルギーを纏い攻撃力を上げる。

――刀が支配する人格を作り上げる。


――本当にバラバラなのだろうか。

――それらは、一本に繋がっては、いないのだろうか。


――日本一の剣士としての技術を発揮しているのは、

――”私”と言う人格だ。

――人格とは

――人の成長によって、つまりは経験によって形成されるものだから、


――逆に”私”と言う人格が無理やり形成された事で、

――それを形作るところの、”あるはず無い経験”が生まれると言う事があったはずだ。

――日本一の剣士としての技術は、

――”私”と言う人格を作るために、偽造された小日向美穂の経験の一つなのだ。


――少なくともこの2つは繋がっている。

――ならもう1つは?

――負のエネルギーを纏い攻撃力を上げる。

――これもまた、”私”と言う人格を形作っている”偽造された経験”の1つによるものではないのか?


美穂(集めた負のエネルギーを纏って刀の切れ味と、身体能力を上げる)

美穂(今まで意識して使ってなかったけど)

美穂(これもひなたん星人の人格が持つ、技術の一つなのだとしたら)


美穂「試してみる価値はあるナリっ☆」

肇「何をっ!」

ガィイン!

ひなたん星人は、肇の一撃を受けると、その身体を引いた。


ただしそれは足を後ろに動かしての後退ではなく、

肇「えっ!?」

身体の向きや足の位置はそのままに、滑るような後退。

人の動作ではあり得ない、魔法の様な動き。

美穂「思えば、今までも身体能力が上がっただけじゃ説明できない動きもしてきたひなたっ!」

美穂「だから、こんな動きだってできるはずナリっ!」

肇の刀は空振りする。

慌てて前方に倒れようとする身体を止め、そのまま突きに転じようとする。

しかし、ほとんど体勢を変えずに移動したために、ひなたん星人の次の動作はあまりに早かった。

ひなたん星人の振り下ろしが頭上に迫っている事を察知して、

肇は攻撃に転じるのをやめ、その一撃を『桜花夜話』で受け止めることにした。



『小春日和』の一撃が負のエネルギーを纏う。


しかし、それはこれまでの様にただ切れ味の向上のために、

刀身に力を纏わせただけではない。

刀身に流れる負のエネルギーの流れを操作し、渦巻く様に回転させる。


螺旋の流れは、蓄えられたその力を増幅し、

『小春日和』からは、これまでのどの一撃よりも、錬度の高い斬撃が放たれる。


美穂「くまモォオン!!」


カァアアン!!

肇「あっ!!」


螺旋の一撃を防ごうとした『桜花夜話』が、

その力に耐え切れずに、弾き飛ばされ、そして折れてしまった。


頭上に迫る一撃は、肇の頭に届くわずか数センチのところピタッと止まる。


美穂「・・・・・・。」

肇「・・・・・・。」


カツン、と

折られた『桜花夜話』の先端が、地面に落ちた。


美穂「・・・・・・ひなたん星人の大勝利ナリっ♪」

肇「ええ、参りました。」


わぁあ!と野次馬達から歓声が上がる。

パチパチパチパチ、と大きな拍手が沸いたのであった。

――

――

――


それから野次馬達が帰ると、

『万年桜』の公園は普段と変わらない暖かな場所へと姿を戻す。

アレほど沸いた野次馬達も、肇が促すと素直に帰っていった。

何かの”鬼のまじない”を使ったのだろう。


美穂「ごめんなさいひなた、折るつもりは無かったナリ。」


少し頭を下げながら、先ほど拾った『桜花夜話』の先端を手渡すひなたん星人。


肇「いえ、あなたが謝ることじゃないですよ。」

肇「『桜花夜話』が折れてしまったのは、私の未熟さ故ですから。」

肇「・・・・・・まだまだ日本一には遠いですね、励まないと。」

『桜花夜話』を見つめて、決意するように呟く肇。


肇「まあそれに、ひなたん星人さんが何かを掴めたのなら」

肇「きっとこの子が折れたことも無駄にはなりません。」


美穂「うん、『小春日和』の特性は負のエネルギーを纏わせて、身体能力や切れ味を強化することじゃなくって。」

美穂「負のエネルギーを、自分の力として扱える人格を作り出すことが、その特性だったひなたっ☆」


ひなたん星人は自身の能力の真価について知った。

刀が集めた負のエネルギーを自在に操る技術。

負のエネルギーを肉体に纏わせ、強化するのも、刀身に纏わせ、切れ味を向上させるのも。

どちらもその技術の一部に過ぎなかった。

しかし、負のエネルギーを使って出来ることはそれだけではない。

負のエネルギーをうまく放出することで、体勢を変えないままに移動できる魔法の様な機動。

負のエネルギーをただ刀身に纏わせるだけでなく、螺旋を描くことで、さらなる攻撃力を得ること。

その様な事もできるのだと、知った。

それは確かな成長であった。


肇「ひなたん星人さんの負のエネルギーを扱い方は、」

肇「私達、鬼や妖怪が”妖力”と呼ばれる力を扱うのに似ています。」

肇「『小春日和』はおじいちゃん・・・・・・祖父が作った刀だからでしょうね。」

美穂「私の前で、今更言いなおしても仕方ないひなた」

肇「こ、こほん!・・・・・・そう言うわけですので」

肇「扱い方を極めれば、きっと天狗の如き一足跳びや空中浮遊、なんかも出来るはずですよ。」

肇は負のエネルギーの扱い方のその先について語る。

美穂「・・・・・・もしかして、私が強くなる方法。戦う前からだいたいわかってたナリ?」

肇「ふふっ、おぼろげではありましたが」

美穂「最初から教えてくれれば、こんな事しなくて済んだひなたっ」

ひなたん星人の突っ込みはもっともだ。


肇「しかしそれでは、美穂さんの事も、ひなたん星人さんの事もわかりませんから。」

肇「模擬戦を通すことで、私達は心を合わせて対話していたんですよ。」

肇「『桜花夜話』と同じく、相手の事を知って理解するために。」

彼女の使う”鬼心伝心”も、妖刀『桜花夜話』の持つ特性も、

戦うための力と言う訳ではなく、相手の事を知って通じ合わせるための力であった。


肇「それに私の刀が、おじいちゃんの刀にどこまで通じるか試してもみたかったので」

美穂「ちゃっかりしてるひなた・・・・・・。」


美穂「けれど、ありがとうナリ!」

ひなたん星人は微笑み、礼を言う。


美穂「肇ちゃんのおかげで力の使い方もわかって強くなれたひなたっ☆」

美穂「あ、そうナリ!」

彼女はその場でクルリと一回転して、

美穂「ひなたん☆ドレスチェンジ!」 シャピーン


肇「えっ」

急にキメポーズをする美穂の姿に驚く肇。

次の瞬間、美穂の衣装が変わる。

黒色を基調とし、フリフリしたアイドル系の衣装である。


美穂「負のエネルギーを形にして衣装を作ってみたナリ♪」

美穂「ずっと生身で戦ってたから、防御力の方に不安があったひなた」

美穂「けれど、これなら例えカースの攻撃に当たっても安心ひなたっ☆」

美穂「それにヒーローと言えばカワイイ衣装が基本ナリ♪」

美穂「元が負のエネルギーだから、黒色がメインになるのはちょっと残念だけどひなた」

ひなたん星人はご機嫌に語る。

対する肇は空いた口が塞がらなかった。

美穂「・・・・・・似合ってないひなた?」

肇の反応に心配そうに尋ねるひなたん星人。

肇「いえいえ!そんな事は!可愛いと思いますよ。」

美穂「えへへ、良かったナリ☆」

肇「ただ、既にそこまで使いこなすとは・・・・・・。」

美穂「一度やり方がわかってしまえば、このくらいは意外と簡単ナリ」

肇(才能なのかな、『小春日和』に選ばれるだけあって)


美穂「さて!」

そして彼女は気合を入れた声で宣言する。

美穂「この勢いで!カピバラさん達を侵略しに行くなり!!」


今回のことで、ひなたん星人は強くなった。

新たに習得した力を使えば、彼らの逃げ足に追いつくことも

斬撃耐性だって貫くことも、できるかもしれない。

ならば今こそ、引導を渡す時!!


美穂「と、言いたいところだけどひなた」

ひなたん星人は衣装の変身を解き、『小春日和』を鞘に収めた。


美穂「流石に、刀のバッテリーが少なくなってきたナリ。」

美穂「しばらくはカース狩りに勤しむひなたっ☆」

ハンテーンや肇との戦闘では負のエネルギーを供給できず、

かつ、蓄えていたエネルギーも慣れていない使い方をしたのだ。

ほとんど枯渇していても仕方ない。

しばらくの間はカースを狩って、負のエネルギーを集める必要がある。

その間、ハンテーンたちへのリベンジはお預けであろう。


美穂「肇ちゃんはこの後どうするひなた?」

肇「そうですね・・・・・・」

ひなたん星人に問われた肇は少し考えて、

肇「あっ、いい機会ですから少し試させて貰ってもいいですか?」

美穂「試すって?また何をするつもりナリ?」

肇「ふふっ、すぐにわかりますよ。」

肇「ひなたん星人さん、こちらを向いてください。」

美穂「?」

言われたとおり、ひなたん星人は肇に向き合う。


肇は両手を広げて、

パンッ

と、ひなたん星人の目の前で手拍子を打った。

美穂「っ?!」

少女は驚く。

美穂「えっ、あ、あの?急に?どう言う事?」

肇「ふむ、では改めて言わせてください。」


肇「はじめまして、”小日向美穂さん”。」

美穂「あ、は、はははじめましてっ!肇ちゃん!・・・・・・って、あれ、私・・・・・・?」


どうやら、反転状態であったひなたん星人の人格は引っ込み、

小日向美穂としての人格が戻ってきたようだ。


肇「鬼のまじないの一つで、”鬼手快晴”と言います。」

肇「目の前で手拍子を打って、驚かせる事で一度相手の心を無にして」

肇「心の靄を晴らし、精神状態を回復させる、と言う術です。」

肇「ハンテーンによる反転状態に効くかはわかりませんでしたが、うまくいったみたいですね。」

美穂「鬼のまじないってそう言うのもあるんだね。」


美穂「でも・・・・・・、本当によかったぁ・・・・・・」

どこか安心したように、へたり込む美穂。


美穂「このまま、ずっとひなたん星人のまま過ごすことになるのかと思うと怖くて」


美穂「ああっ、で、でもどうしよう!!お父さんにもお母さんにもあの姿見られちゃってるしっ!」

美穂「学校はカピバラさん達の騒ぎがあったから、休みになったからいいけれどっ」

美穂「うぅぅ・・・・・・家族に顔を合わせるのも恥ずかしいよぉお」

美穂「と言うか、さっきも大勢の人に見られてたよね・・・・・あの中に学校の友達いたらどうしよぉ」

安心したのも束の間で、顔を抑えてうずくまるのであった。


パタリ

美穂「えっ?」


そんな時、急に肇が倒れた。


美穂「は、肇ちゃん!?肇ちゃん!!」

美穂「大丈夫!?しっかりして!」


倒れた肇にすぐさま駆け寄る美穂。

美穂が肇ちゃんと呼ぶのは、ひなたん星人の時に親しげに会話した記憶が残っているからだろう。


肇「うっ・・・・・・お腹が。」

美穂「えっ、お腹が痛むの!?」

美穂「も、もしかしてさっき戦った時に、変に攻撃しちゃったからじゃあっ・・・・・・」

肇が倒れてしまったのは、自分が攻撃したせいなのかもしれない、と思った美穂。


肇「お腹が空きました・・・・・・」

美穂「・・・・・・えっ?」

しかし、そういう事では無かったようだ。


肇「少し妖力を使いすぎましたね・・・・・・」

”鬼心伝心”の常時発動によって、『小春日和』の技量に付いていくのは相当に負担が掛かる。

その上、『桜花夜話』もまた、肇の妖力を使ってその特性を発動する妖刀なのだから、

本人はおくびにも出さなかったが、大量の妖力を消費していたのだろう。


肇「・・・・・ご飯を食べて、ちょっと眠らないと・・・・・・」

美穂「あの・・・・・・良かったら私の家で、ご飯食べる?」

美穂「私の家、ここからすぐだから、ね?」

肇「・・・・・・いいんですか?」

美穂「うん、もちろんだよ!肇ちゃんにはお世話になったし、」

美穂「こんなのじゃあ足りないかもしれないけど、お礼もかねてっ!」

肇「そんなことは・・・・・・ないですよ。」

肇「ありがたくいただかせてもらいます。」

美穂「うんっ♪」


そんな訳で美穂の家で、二人は遅めのお昼ご飯を食べて、お昼寝する事になりました。


おしまい。


『小春日和』

『鬼神の七振り』の1本で、日本一、横暴な刀。
黒一色に三輪の菊が描かれた鞘には、見た目には地味でごく普通の刀が納まっている。
『傲慢』であるため、プライドが高く、所有者は『小春日和』自身が選ぶ。
所有者の中に新たな人格を作り上げる刀。
作り上げられた人格は、日本一の剣豪と同等の技術、
そして己の持つ負のエネルギーを自在に操る技術を発揮する。
刀によって作られた人格は、他の精神攻撃をシャットアウトできるのも特徴。
カースを斬れば斬るほど、刀に負のエネルギーが溜まる。
これにより、作られた人格が扱える負のエネルギーは増えるのでより強くなるが、
扱いきれない負のエネルギーは人格の暴走に繋がるので、浄化の鞘に収めないまま長時間の使用は望ましくない。


『桜花夜話』

肇が腰に携えた刀。
肇が打った、肇のための刀。
肇曰くごく普通の妖刀。ごく普通の妖刀って何だ。
『小春日和』に似せて作っており、鞘は黒一色に桜の花びらを散らしたデザイン。
カースの核こそ埋め込まれていないが、『鬼神の七振り』に負けないつもりで作り上げられた妖刀で、
負のエネルギーの代わりに、肇の持つ妖力を使ってその特性を発揮する。
対等に対話する刀。
打ち合う度に相手の力を覚え、学習し、花開くように錬度が上昇する特性を持つ。
対刀を想定した刀。
数撃打ち合えば、相手の力100%に対して100%の力で返す事が出来る。


『妖術:鬼心伝心』

肇が習得している鬼のまじないの一つ。
自己暗示によって対象の技量をそのまま自分の技量にしてしまう術。
対象と同等の技術を発揮できるが、素の筋力や、魔術や妖術等の特殊な力まではコピーできない。
戦闘に使う場合は、相手の癖や弱点までコピーしてしまうため、
”自分自身の事をよく知っている者”が相手だと不利がついてしまう事に注意。


『妖術:鬼手快晴』

肇が習得している鬼のまじないの一つ。
対象の目の前で手拍子を叩き、混乱や催眠などの精神異常ステータスを解く術。
成功率はその精神に掛かっている術の強力さに依存する。


《鬼神の七振り》 …… さり気なく1本減って4本になってます、誰かの手に渡ったようです
《ハンテーンの毛の鎧》 …… 斬撃耐性マジ半端ないな
《模擬戦》 …… 模擬戦とか言って、バリバリ真剣使っての決闘なんですけど。通報はやめてあげてください。
《ひなたんみねうち》 …… 一応は不殺の一撃、いやでも普通にみねうちでも痛いよっ!
《負のエネルギー》 …… 人の負の感情から生まれる謎エネルギー。何せカースを形成してるエネルギーだから万能なんだよ。


◆方針
ひなたん星人 …… 『小春日和』の切れ味が上昇。魔法の様な動作が可能に。ドレス着用で防御力も上がりました。
藤原肇 …… この後は、妖術『鬼手回生』を使って、ハンテーンの催眠を解いて回るようです。
小日向美穂 …… せっかく回復したけど、『ひなたん星人』にしばらくカース狩りに連れまわされそうです。


ハンテーンにリベンジするぜ、みたいな流れだけど
目的はひなたん星人の強化でした、これからの戦いにひなたんが付いて行く為にも凄い斬撃だけじゃあね?

刀持ってる女の子同士のチャンバラはロマン
よ、妖刀同士だから問題なくできるんだよ!深く考えたらダメだよ!

乙ー

ひなたん星人が強化したー
そして、消えた一本は誰の手に?

投下しますー

スパイクPと海皇宮などの設定をお借りします

ここは海底都市。

そこの中央に鎮座してある海皇宮。

スパイクP「畜生!カイめ!!」

イライラした様子で、出てくるスパイクPの姿があった。

任務の失敗の報告をし、処分を受ける覚悟でいたが、引き続き地上先行破壊工作の任とアビスナイトの命を遂行するように言われたのだ。

だが、かつての同僚にいいようにやられたあげく、見逃されたのだ。そちらの方が腹立たしい。






??「イライラしているのね。わかるわ」







チッと舌打ちをして、その声の主の方を向いた。

そこには、白いローブを身に纏い、フードを深くかぶり、顔の半分まで隠してる女性がいた。

海龍の巫女。海皇が一時期、体調を悪くした時に、素姓もしれないこの女が来た。そして、海皇の体調がすぐによくなり、信頼を得て、海皇直属の部下として従えているのだ。

コイツは気に食わない……そう思うスパイクPだった。

スパイクP「………海龍の巫女か。なんのようだ?」

巫女「私が気に入らないのね。わかるわ。けど、海皇様の命をうけてコレを渡しに来たのよ。」

そう言うと、先の戦いで破壊された筈の巨大な金属のウニ…バイオが現れた。

スパイクP「なっ!?お前どうやって…」

スパイクPは驚愕した。いくら戦闘外殻でも粉々に砕けては、自動修復をする事はできない筈、できたとしてもこんな短時間で完全に治る筈はないのだから。

巫女「それは秘密よ」

そう口元を微笑みを作る巫女。

何処か胡散臭い。それに海皇が地上侵略に乗り出したのも、この女が海皇の直属の部下になってしばらくたってからだ。

だが、それを疑問に思うものは海皇宮にいなかった。

……まるで、何か不思議な力が働いてるかのように。

スパイクP「ちっ……用は済んだんだろ?なら、俺は地上へ行く」

巫女「ふふ、待ちなさい。貴方にもう一つ海皇様から命をうけてるわ」

スパイクP「なに?」

立ち去ろうとする、スパイクPを呼び止めると、巫女は何やら地図みたいのを渡す。

地図にはどこかの土地がかかれてあり、赤い印が4つ書かれていた。

巫女「地上を海に沈める≪神の洪水≫計画。それに必要なノアの方舟の封印をしてる結界の起点よ」

スパイクP「……つまり、俺がそこへ行き、結界の起点を破壊すればいいのか?」

巫女「ええ。コレが成功すれば海皇様もお喜びするわ」

その言葉にスパイクPは苛立ち気に舌打ちすると、地図を乱暴にしまい、バイオを連れ去っていった。

巫女「計画は上手く行ってるわね」

誰もいない広場にて、海龍の巫女はフードをはずした。その顔は、地上にいる筈のレヴィアタンいや川島瑞樹だった。

だが、その身体は地上人のものではなく、ウェンディ族のものだ。

瑞樹(海皇も今は私の操り人形。海皇宮全体に呪詛を張り巡らせるのもあと少し。海皇の異変には気づかないように細工はしてるわ。それが当たり前だと錯覚するように)

もっとも、あのカイって少女は偶然にも効果がなく、海皇の異変に気づいてしまったのだが……それは些細な問題だ。彼女は海皇がおかしいと感じただけで、自分についてはまだ疑問視していない。まあ、時間の問題でもあるが。

瑞樹「ノアの方舟が復活すれば≪神の洪水の再現≫を実効しようと、ノアの方舟のプログラムが作動するわ。そしたら地上を海にしようとするウェンディ族と地上を守る人間達の戦いが始まる。海皇にはノアの方舟に乗せて全面指揮をやらせないといけないわね。そして、海皇宮に誰もいなくなれば……ふふ。」










        わ    か    る    わ      










瑞樹「さて、地上にいる本体に連絡しないと」

口元を三日月のように歪ませながら、川島瑞樹は海皇宮へ戻る。

ジワリジワリと混乱が世界へと、蛇のように近づいて来る。


終わり

≪神の洪水計画≫

ノアの方舟を使い、≪神の洪水の再現≫を実効するプログラムを発動させて、地上を海に沈め、第二の故郷に変えようとする計画。

海皇が海皇親衛隊などの者達にその計画を進めるよう命令している。

……だが、それは海龍の巫女が海皇に提案したもの。果たしてその目的が本当にそれなのか怪しい。


・情報

レヴィアタン(分身?)が海龍の巫女として、海皇を呪詛で操っています。

海皇宮になんらかの仕掛けをほどこしています。何か大変な事をするつもりです。

スパイクPにノアの方舟を封印してる結界の起点を壊すように命令が出されました。

スパイクPのバイオが復活しました。もしかしたら川島さんが何かバイオに細工してるかも?

以上です。

矛盾点あったらお願いします。

なお、バイオに何か仕掛けてるかは現時点では決めていません。
カースの核とか仕込んだら面白そうかな?とは思いましたけど勝手にやったらまずいかな?と思いました。

海龍の巫女の正体を一発で見抜いた人がいたら天才だ

GDFとプロダクション関連書けたので投下します
ピィがちょっとキャラ崩壊しちゃってるかもしれない…ごめんなさい


──諸々の勢力が憤怒の街に乗り込んでいるその頃──

GDFの三人は協力要請をした『プロダクション』の事務所へと向かっていた。
その道中、司令から通信が入った。

椿「作戦の変更?」

詩織「なんでまた……」

司令『作戦区域上空に、大型の飛行能力を有したカースが確認されたのだ』

司令『我々の防衛線にまで出張ってきて、軽微ではあるが損害も出ている』

椿「飛行能力って……厄介ですね」

司令『飛行能力に加え、体表が硬い鱗状の物質で覆われており、我々が現状持ち得る火器のいずれも大した効果が無かった』

司令『知っての通り、現地では電子機器の類は謎のジャミングを受け使えない』

司令『航空機はおろか、ミサイル等の誘導兵器も使い物にならないのだ』

司令『奴を撃破するまでは、一般人を伴って街に侵入するなど危険すぎる』

志保「そうは言っても、どうするんですか?」


司令は一呼吸置いた後に本題を切り出した。

司令『現在開発中の新兵器を以って、飛行型カースの撃破を試みる』

司令『君達には、その新兵器の護衛を頼みたい』

詩織「(また新兵器ね……)」

志保「(護衛……か……)」

椿「了解しました」


椿「という訳で、我々の街への突入は一時中止となります」

『プロダクション』に着いた三人は、内部の人間に憤怒の街の状況を説明する。

椿「折角ご協力頂けるという事でしたが……もうしばらくお待ち下さい」

椿の話を聞いて、『プロダクション』のメンバーは安堵したような、何も出来ないことが無念であるような、複雑な表情を浮かべた。

椿「それでは、我々は別件の任務がありますので、一旦失礼します」

ピィ「待ってください」

ピィ「私も、あなた方に同行させてもらえませんか?」

椿「えっ?」

ちひろ「ピィさん、何を!?」

突然のピィの提案に、GDFの三人も『プロダクション』のメンバーも目を丸くする。

ピィ「私は『プロダクション』の……彼女達の身を預かる者として、あなた方の実力を知っておく必要があります」

ピィ「あの街に皆を連れていって果たして無事で済むのか、見極めさせてください」

ちひろ「ピィさん、危険ですよ!」

ピィ「……」

椿「……少々お待ちください」


椿「どうします? あの街に突入するよりはずっと安全な任務ですけど」

詩織「彼の言い分は筋は通っているけれど……」

志保「いいんじゃないですか? 信用されていないみたいで癪ですけど」

椿「それはしょうがないですよ、先日の爆弾投下以来、世間からの風当たりは強くなっていますし」

詩織「……」

椿「ここらへんでちゃんと仕事をしているところを見せて、信頼を回復しないと……」

詩織「……二人とも、本部の許可が取れたわ」

志保「いつの間に!? 仕事速いですね!」

椿「本部の許可が出たなら大丈夫ですね」


椿「お待たせしました、上に許可は取りましたので、そちらの……えっと」

ピィ「ピィです」

椿「(ピィ……? ピィって何!?)ピィさんの同行を認めます」

ピィ「それはよかった……どうぞ、よろしくお願いしますね」

藍子「ピィさん……気を付けてくださいね?」

ピィ「ああ、ありがとうな……行ってくるよ」


GDFの三人とピィは、憤怒の街郊外の山中を走る高速道路の上に来ていた。
ここからは憤怒の街が一望できるらしい。
ちなみに、道路は封鎖されているため一般の自動車は見当たらない。

椿「私達の任務は、もうじきここへ到着する新兵器の護衛になります」

ピィ「新兵器?」

椿「その新兵器を使って、先ほど説明した、あの街にいる大型のカースを撃破するのです」

志保「あ、噂をすれば来ましたよ」

志保の目線の先には、はしご車のような大型の車両があった。
はしごの代わりに四角い筒状の物体が積んである。


ピィ「あれが……新兵器……ですか?」

ピィ「(新兵器って……例の爆弾みたいに周りに凄い被害出したりするような物じゃないだろうな)」

志保「えっと……一般向けに公開予定の資料によると……O型レールキャノン」

志保「正式名称『オミクロン型電磁加速砲(試作)およびその運搬システム』って書いてありますね」

志保「『電気の力で弾を飛ばして攻撃するよ!』『性能諸元は機密ミ☆』……だそうです」

詩織「機密って……なんだか大仰ね……」

椿「折角だから、写真撮っておこうかな」

志保「そんなの撮ったら怒られるんじゃないですか?」

詩織「撮った画像はウィキリ○クスにアップしましょう……」

椿「それ私がやったってバレバレじゃないですか!」ヤダー

ピィ「(この人達なんか全体的にノリが軽いけど、大丈夫か……?)」


志保「あ、そうだ」

志保「一応この兵器機密扱いなんで、ここで見たことは忘れちゃってくださいね」

ピィ「え?」

椿「まあ、形式的な物です、あんまり気にしなくて大丈夫ですよ」

ピィ「あ、はい……」

ピィ「(大丈夫なものかよ……適当過ぎるだろう)」


「あんたらが護衛をしてくれるっていう連中だな、よろしく頼むぜ」

四人の近くまで来た車両から、新兵器のオペレーターと思われる隊員が顔を出す。

「全く運が良いぜ? コイツのお披露目に立ち会えるなんてな!」

椿「この新兵器の活躍如何によって、あの街の奪還作戦の趨勢が決まりますからね」

志保「頑張ってください!」

「おう、期待していてくれよ!」

ピィ「(……やっぱり、いまいち緊張感に欠ける)」


ピィ「(それにしても)」

ピィ「(新兵器っていう響きは、なんかワクワクしてくるな)」

ピィ「(でも、この車? が新兵器って言われてもなあ)」ジーッ

ピィ「(もっとこう……なんというか、アヴァンギャルドなヤツを期待してたけど)」ウーン


ピィ「(ん……あの三人随分と大人しくなったな……何やってるんだ?)」チラッ




椿「んー、やっぱり市販の切り餅はこんな物ですかね」モグモグ

志保「えー? 杵つきと違いがあんまりわからないんですけど」モチモチ

詩織「……」ウニョーン




ピィ「」


ピィ「あんたら何食ってんですかァー!!」

椿「え? お餅ですけど、食べます?」

ピィ「いや、"何を"食べてるのかっていうんじゃなくて!」

ピィ「何で今そんなん食ってるのかって!!」

椿「いやあ、カビが生えちゃいそうだったので、処理しておこうかなーと」

志保「カセットコンロ持ってきて正解でしたね!」

詩織「んぐ……っ!?」

ピィ「えー……」


ピィ「というか、あの車の護衛をするんでしょう?」

あまりの適当っぷりに、ピィは口を尖らせて三人に詰め寄る。

ピィ「そんな体たらくで、いざっていう時大丈夫なんですか?」

椿「うーん……あの車を護衛してほしいっていうのは、実は建前なんですよ」

ピィ「……建前?」

椿「実際は、GDF機甲部隊の示威行為っていうか……」

椿「さっき乗員の人が『お披露目』って言ってましたよね? まさしくその通りなんです」

ピィ「……?」


志保「ピィさんは、GDFの戦車とかが戦っているところ、見たことありますか?」

ピィ「戦車……? そもそも、そんなもの持ってるんですか?」

椿「やっぱり、一般の人からするとそういう反応になりますよね」

志保「戦車とか装甲車とか、そういう兵器も保持してはいるんですけど」

志保「大抵GDFが出動する場所って人の多い街中じゃないですか」

ピィ「はぁ……」

志保「だから、戦車なんかを派遣してドンパチやると、むしろ被害が拡大しちゃうんです」

椿「要するに、機甲部隊は滅多に出番が無いってことですね」

椿「税金泥棒だとか揶揄されることも多い集団なので、こういう任務があると張り切っちゃうんですよ」

志保「だからって、ほとんど見せつけるためだけに私達を呼びつけてくるのは面倒臭いですけどねー」

椿「まあ、それなりに頼りにはなりますけど」

志保「って、こんなこと外部の人に言う事じゃないですね」アハハ

ピィ「……」

ピィ「(なんだかよく分からんが、要するに俺達がここにいる必要は無いって事?)」


その頃はしご車の中では、数人の隊員が装置の確認をしていた。

「本部、現地に到着しました、これより発射体制に入ります」

司令『本部了解だ』

司令『今回使用する兵器だが、冷却装置が未完成につき、発射出来るのは一度きりとなる』

司令『しくじるなよ』

「了解!」

「砲身の展開、開始します」

「マイクロフュージョンバッテリーからの電力供給、異常無し」

「エネルギー充填開始」

「今のところは問題は無いな」



ピィ「(まだ攻撃始めないのかなあ……ダレてきたぞ)」

ピィがそんなことを考えていると、車両の方から「ガシン」と金属を打ち合わせたような機械的な音が連続して聞こえてきた。

ピィ「(うわっ!? 何事だ?)」

驚いて音のした方を向くと、車両に積まれた筒状の物体から二本の板が伸びていくのが見える。
続いて、甲高いモーター音のようなものが響いてきた。

ピィ「(なんだあれ……変形した?)」

志保「おっ、そろそろ撃つみたいですね」

志保「あれは発射体勢に入った感じですよ!」

椿「ピィさんにこれ、渡しておきますね」

ピィ「これは……耳当て?」

ピィの訝しむような視線に椿が答える。

椿「発射音で耳を傷めたら困りますから」

ピィ「(少し物々しくなってきたな)」

椿「詩織ちゃん、目標は確認できました?」

椿は、双眼鏡で憤怒の街を監視していた詩織に尋ねた。

詩織「ええ、ここからでも見えるわ」

この場所から憤怒の街の中心部までは20㎞程の距離がある。
その中心部のビル群の一棟の屋上に、目標の飛行型──『憤怒の翼竜』は居た。

詩織「アレ、結構大きいわね……」


同じ頃、車両の中の隊員達も赤外線カメラで目標の映像を眺めていた。

「暴れ疲れて羽根休めってか? ……呑気なもんだ」

「まあ、こちらにとっては好都合だがな」

理由は分からないが、目標はここ暫く動く気配が無い。
攻撃をするなら絶好の機会だ。

「発射準備完了しました、本部の指示を待ちます」

司令『いいぞ! 我々を地べたを這いつくばる者と侮るとどうなるか、敵に教えてやれ!』

「了解!」

「目標、敵飛行型! 諸元入力完了!」

「レールキャノン、発射!」



突然、辺りに眩い閃光と共に耳当ての上からでも響く衝撃音が轟く。

ピィ「うおっ、まぶしっ」

ピィ「って……え……あれ?」

何が起こったのかと、ピィは辺りを見回すが静寂に包まれている。
いつの間にやら、車両から発生していたモーター音は聞こえなくなっていた。

ピィ「今……撃ったんですか?」

椿「はい、撃ちましたよ……詩織ちゃん、どうですか?」

ピィ「(えっ……弾とか、何にも見えなかったぞ)」

椿が双眼鏡を覗いて着弾観測をしていた詩織に尋ねる。

詩織「命中はしたわ……したけど……」



「弾道が少し逸れた! 撃破ならず!」

「クソッ! 砲身の調整が未完全だったか!」

司令『我々に二の矢は無い、諦めろ』

浮足立つ隊員を司令が諌める。

司令『あの忌々しい飛行型を叩き落としてやったんだ、十分な成果だ』

司令『後は現地の地上部隊に任せればいい』

「……」

司令『作戦は成功だ、帰還しろ』

「了解しました」


志保「あ、引き揚げるみたいですね」

椿「私達も戻りましょうか」

椿「今度こそあの街へ突入するために計画を練らないと……」

詩織「まだ、あの飛行型も倒せたわけではないけれどね……」

志保「私達が着く頃には退治されてるといいですねー」

ピィ「……」


ピィ「(あんなすごい大砲をぶっ放されても、顔色一つ変えないとは……)」

ピィ「(こういう事に慣れてるっていうことなんだろうな……)」

ピィ「(うちの事務所のメンバーともそう歳が離れていなさそうな子達が……やっぱり世界が違うな)」

ピィのGDFの三人に対する第一印象はアテにならない連中というようなものだったが、少し心境に変化があったらしい。


ピィ「(俺にとっては訳のわからない出来事ばかりだったが、日々戦い続ける彼女達にとってはこれが日常なんだろう……)」

ピィ「(これなら……『プロダクション』の皆を任せても大丈夫かもしれないな)」

ピィは、年頃の少女よろしく談笑をしながら帰途につく三人の背中に、なんとなく頼りになりそうだという感想を抱くのだった。


※レールキャノン[オミクロン型電磁加速砲]

対カース用装備第二弾、いわゆる電磁投射砲と呼ばれる類の兵器。
例によって異星人の技術が多く使われている(具体的には、電源に小型核融合電池と砲身部分にウサミニウム)。
射出された弾頭は凄まじい飛翔速度を誇る。40kmくらいまでなら発射とほぼ同時に着弾するくらい。
未だ試作品の域を出ないので、正式採用と配備はまだまだ先になりそう。



イベント情報

・GDFの新兵器により『憤怒の翼竜』を地上に落としました。
・弾は掠っただけなので与えたダメージ自体は少ない模様。
・翼が再生し、再び飛び立つ前に畳みかけることが出来ればあるいは?
・新兵器はまだ試作段階なので、憤怒の街の攻略が終わるまでは再使用は無さそうです。
・『プロダクション』のメンバーとGDFが顔合わせを済ませました。今後協力して行動することがあるかも知れません。

投下終わりです
今までの設定だけ出してた部分をちょっとだけ回収

GDFの信頼回復とか言ってた癖に、いつのまにかむしろイメージダウンになるような姿を見せつけてたけど…
翼竜に関しては、倒しきれずに飛び立っちゃうっていうのもまた一興(モンハン感)

乙です
尻尾切らなきゃ(使命感)
…夕美ちゃんの肉食動物トラップを落とし穴みたいな使い方ができそうな気がしてきた

動物違う…植物だった。寝起きはアカンね
ウワナンダコノショクブツヤメロ…ウワー

ラブリーチカ投下

【魔法少女ラブリーチカ】
十数年前に放送され、5シリーズ約200話放送され続けた魔法少女アニメ。
横山千佳という少女が愛の力でラブリーチカに変身し、仲間たちと共に悪の魔物を倒すストーリー。
杖と魔法以外にも剣や弓や槍を使う他、挙句の果てには格闘戦まで行い、「迷走しすぎて逆にカッコいい」魔法少女と言われる。
社会現象的なブームを起こし、現在も魔法少女アニメと言えばこれをあげる人も多い。
決め台詞は「正義の味方ラブリーチカが、愛の力でオシオキしちゃう!」

憤怒の街。そこはありとあらゆる人間が怒りに飲まれていった街。

しかし、人間以外の憤怒の力によってとある力が目覚めようとしていた。

『あたし…なんで捨てられたの…?』

ごみ捨て場に捨てられたフィギュアから、悲しみの声がわずかに漏れる。

そのフィギアは『魔法少女ラブリーチカ・ラブリーフォーム☆限定復活生産版』。

昔作られたフィギュアの再生産版で、かなりの数のオタクたちが予約戦争を起こしたとか起こしていないとか言われる代物である。

とある隠れオタクだった男性が哀れにもオタク嫌いの妻にばれて捨てられた物の一つが、そのフィギュアだった。

かなり大切に扱って貰っていたそのフィギュアには魂のようなものが宿っていた。

けれど付喪神になれるほど年期が入ってるわけでもなく、意識も消滅しかけていた…はずだった。

街が怒りに飲まれたのだ。

それに伴ってフィギュアの魂の怒りも共鳴するように膨らんでゆく。

周りにあった様々なごみ捨て場の玩具達もフィギュアに共鳴するように動き出した。

『捨てられた』『悲しい』『許せない』

魂とは言えない虚ろなものが、フィギュアの魂に縋り付く様に集まってくる。

消えかけていた魂がその感情を拾い集めて、やがてそれは大きくなった。

そこに、精霊の癒しの雨が降り注ぐ。

癒しの力と怒りの力が反発しお互いに打ち消そうとする。

…そして強いエネルギーが発生した。

激しい真っ赤な光を放って、捨てられた玩具とフィギュアの集合体が生まれた。

「あたしは横山千佳…ラブリーチカ…」

フィギュアのように硬質ではない衣装。自由に動く関節。風に吹かれて揺れる髪。

『原作の設定通り』127cmの少女がそこにいた。

『憎たらしい憎たらしい!自分を捨てた人間が憎たらしい!』

「でも千佳は正義の味方だよ、みんなを守らないと…」

ブローチの宝石が黒と赤、交互に光り、そのたびに声が若干変化する。

『正義ぃ?じゃあこの怒りを誰にぶつければいいの!?』

「悪い魔物をやっつければいいよ…」

『ムリだよ!魔物なんているわけがない!』

「いるよ、あたし今までいっぱい倒してきたもん…」

「魔法少女ラブリーチカ」と『フィギュアとしてのラブリーチカ』が、混ざり合うことなく微妙なバランスで混在していたのだ。

魔法少女は現実を知らない。自分が創作上の存在だと知らない。

けれどフィギュアは知っている。自分が捨てられた物だと知っている。

ごみ捨て場から、カースが暴れまわっているのが見えた。

「あ、魔物…退治しないと!」

『…じゃあ戦えば?あたしは引っ込んでるから。』

声が一つ消え、意識がはっきりしてくる。

「わかった!ラブリーステッキ!フライングモード!」

ハートのついた杖から翼が生え、それに跨る。そのままカースのすぐそばまで飛び、旋回する。

「悪い魔物め!正義の味方ラブリーチカが、愛の力でオシオキしちゃう!」

『ウルセエエエエエエ!』

カースが殴り掛かるも速いスピードで飛ぶ彼女を捕えることはできない。

「ラブリースマッシュ!」

杖から飛び降りるとカースに殴りかかる。そのまま宙返りをして距離を取る。

「ラブリーチカ必殺!ラブスプラッシュ!」

杖を構えると、赤い液体がもの凄い勢いでカースに向かって飛んでいった。

『設定通り』ならば、その液体は愛の力が凝縮された浄化の水。

…けれど現実は違う。その赤は愛の色ではなく怒りという負の感情の色。

だから浄化などできるわけがない。その力はただ破壊する事しか出来ない。

『ギャアアアアアアア!!』

しかし水という形をとっているからか、カースに吸収されることはなかった。核を砕き、カースは消滅する。

しかし、憤怒の街であるこの場所ではカースはどんどん湧いてくる。

千佳を敵だと認識したようで、少し遠くにいたカースもこっちにやって来た。

「こ、こんなにいっぱい!?」

杖に跨り一旦離脱しようとするが、飛んできた蝙蝠型のカースに叩き落とされてしまう。

地面に叩き付けられた彼女に一斉にカースが襲い掛かる。

「…あ、たし…」

しかし、ブローチが黒く輝いたと思うと、真っ赤な光が千佳を包み込んだ。

その光でカースたちは弾かれてしまう。

『なんでこんな理不尽な目に合わないといけないの!イラつく!』

衣装の白い部分が真っ黒に染まり、見た目からして悪の魔法少女の外見になる。

『出てきて!オコダーヨ!あたしの怒りをぶつけて!』

すぐにごみ捨て場に走り、適当な品を手に取る。

『オコダヨー!』

手に取ったのはプラスチックの箱のオルゴール。そこに怒りの力が注がれ、巨大化して魔物になった。

『オコー!』

オルゴールの魔物が叫ぶと、ハンドルが回り、音楽が流れ始める。

『グギャ!?』『キキィ!?』

カースが苦しみ出す。そういうイメージで作ったのだから当たり前だと千佳はフフンと笑った。

『グギィィィィ!』

しかし苦しみの中でも飛び掛かってくる狼型カース。

『ブロック!』

しかし千佳の目の前にカラフルなブロックが現れ、防御する。

こんな技、原作にははない。自分の存在を理解している千佳は、自分が生まれる過程で協力してくれた玩具の力によって、玩具も武器としても使えるのだ。

『ラースチカ必殺!ラースインパクト!』

空中に真っ赤なエネルギー弾が大量に浮かび上がり、カース達の体を無慈悲に打ち抜いてゆく。

『トドメだよ!』

千佳の頭上にさらに巨大なエネルギー弾が浮かび上がり、そのままカースを一網打尽にした。

「…!」

煙が晴れると黒い衣装は白に戻っていた。

『オコダーヨ!』

「別の魔物…!」

『オッコ!』

カースがいなくなっている理由は分からないが、目の前の魔物を倒さないといけないと判断した。

「ラブリーソード!」

杖が光り、剣の形になる。

「ラブリーチカ必殺!ラブ一文字切り!」

そのままオコダーヨに向かって走り、切り捨てた。

『オーコー…』

「これが愛の力!」

剣が杖に戻ると同時に、オコダーヨは爆散した。

「…あたしの中に誰かいる…」

虚ろな意識の中、会話した記憶がある。自分の中に誰かがいる。それも悪い子がいる。

「どうしよう…おうちに帰らなきゃ…」

ここは千佳の知らない街。

家に帰りたい。どうしようもなく怖いから。

…でも中の子は『帰る場所なんてない』って言っている。

否定したいけど何故かできない。その言葉の理由を知ってしまえば泣いてしまいそうだから。

「ラブリーステッキ、フライングモード…」

杖に跨ると、逃げるようにその街から去って行った。

その日を境に、各地でラブリーチカが目撃され主にネットで『二次元キター!』『俺の嫁が画面から出てこない不具合』等と大騒ぎになっている。

…そしてそれと同時に各地でオコダーヨという魔物も現れている。…現在関連性は不明。

横山千佳(ラブリーチカ・ラースチカ)
職業:正義の魔法少女・悪の魔法少女
属性:元フィギュアの魔法少女
能力:怒りのエネルギーによるマジカル攻撃(ラースチカのみオコダーヨの使役とおもちゃの現実化)

昔の大人気アニメのヒロインのフィギュアが憤怒の街の怒りのエネルギーと、精霊の癒しのエネルギーを同時に浴びて生まれた存在。
正義の心と怒りの心を持っており、ある程度の怒りを抱えるとラースチカに変身してしまう。
ラブリーチカの心は自覚していないが全ての攻撃は怒りのエネルギーで行われており、ラースチカも能力を使い続けているとラブリーチカに戻る。
ラブリーチカは自分がフィギュアという自覚はなく、自分の心の中に悪い自分がいるとなんとなく察しているものの、どうすることもできずにいる。
ラースチカは捨てられたフィギュアとしての意思が強く、人間に強い恨みを抱いている。
おもちゃの現実化は召喚的能力。ブロックを召喚したり、相手を樽に閉じ込めて剣を刺したり、戦隊ヒーローの技を再現出来たり割とシャレにならない威力。
しかし強い能力を使うとラブリーチカに戻ってしまうのでラースチカはそこまで積極的ではない。

オコダーヨ
ラースチカが何か捨てられた物に怒りのエネルギーを注いで生まれる巨大な魔物。
…○リキュアの雑魚敵的な存在。
ラースチカの命令は聞くが、ラブリーチカは敵とみなす。
大きさも能力も個体によってバラバラである。
普段はラースチカに生み出されては護衛をしたり、別行動で人を襲撃したりする。

以上です
トイストーリーがモデルだったのに…ある程度書いてから気付く「これロ○ルパン○ちゃんだ…」

各地を家を探しながら彷徨っています。敵としても味方としてもどうぞ

おつー

何気に無機物から生まれたキャラって初めて?

>>93
あずき「」

キサラギも映画見に行くぐらいだからね、きらりと魔法少女みてても不思議じゃないよ!

そう考えるといろいろ影響与えてそう…ラースチカを皆はどう思うのだろうか

怒りの感情排除したらすごい弱体化と魂の危機ありそうだしこのままうまく扱える人がひろってあげなきゃ……
つくもがみの先輩なりある程度以上の年齢の能力持ちなら優しく……できる?

>>107
つ「涼さん&あずき」
いざとなれば能力使えば…

…財閥はやっぱりロリコンなのか…
芽衣子さんはテレポートで夏樹は空間の穴だけどそれぞれ短所長所あるんだよなぁ

つまり「ガシッと捕まえてお持ち帰りー!と思ったら運べませんでした!」ということもあり得るのか…
あずきは…ラブリーチカが無理なら無理だろう

夏樹は視界の範囲内なら座標指定不要・複数発動可能、遠距離は座標指定必要だけど穴さえあけてしまえば何でも通せるからなぁ
…遠距離だと結構な体力消費があるし、芽衣子さんほど遠くにはいけないけどね

ラブリーロードローラーとかラブリーソバットとかもあるんだろうか
あるんだろうな、見たい

>>117,118
そのチョイスはなんだww
…まあそれでもスタッフの迷走ということにすれば許される気がする…
本当にラブとかラブリーってつければ許される感
「ラブリーソードは囮だよ!」とかとかいろいろパロディできそうな娘です

             /)
           ///)

          /,.=゙''"/   
   /     i f ,.r='"-‐'つ____こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |

     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /

ネバーディスペア投下します

憤怒の街。そこから溢れてくるカースをGDFや様々な団体は防衛チームを派遣し、被害を最低限に抑えるべく戦っていた。

カースは基本的には道に沿って移動するがもちろん例外はいる。ネバーディスペアはそんなカースを討伐していた。

「とりゃあ!」

封鎖された線路を進んでいたカースの最後の一体の核を奈緒が破壊する。

「夏樹、次はどこだ?」

「ちょっと待て…本部からのデータ座標データを確認…行くぞ!」

夏樹の視界には複数のユニットからの映像と様々なデータが見える。

かなりの量のカースが防衛されてない場所を移動しているのだがそれもかなり数が減っているようだった。

夏樹が穴を生み出し、4人はそこに入っていく。

次の場所にいたカースは普通のカースに獣型数体。それとデカブツとしか言いようのない大型カースがいた。

「開幕ぅ~!W★きらりん☆ビーム、極太ばーん!!」

穴から出てすぐにきらりが広範囲にビームを放つ。

広範囲故に威力は低いが、弱いカースは消滅し、強いカースもひるんでしまう。

さらに奈緒が先陣を切って飛び込み、様々な生物の爪と牙を泥に投影。羽のようにそれを背中や手足に生やして乱舞するようにカースを切り裂く。

その乱舞から逃れたカースに李衣菜が電撃で攻撃。そして一瞬見えた核を逃さず夏樹がレーザーで貫き、きらりもビームを放った。動きの鈍い大型は後回しだ。

しかし、それすら逃れた素早い獣型カースが夏樹に飛び掛かった。

「なつきちっ!」

「っ!」

押し倒されるが右腕が微妙に動くと服の袖を切り裂いて刃物が飛び出し、それでそのカースの頭部を切り裂いた。

核は頭部には無かったようだが、それにより一瞬拘束が緩んだ隙に脚部と同化している靴の裏からジェットのように炎が噴き出し、空中に逃れた。

そして夏樹の周囲を浮かぶユニットからレーザーが6方向に飛び、穴が大量に出現した。

6本のレーザーが計算されたように穴を経由して縦横無尽に弾幕のように飛び交い、空中で自由の利かない彼女を狙ってきた複数のカースを打ち抜く。

そしてその大量の穴を消すと、別の穴からバズーカを取り出し、真下の大型カースに打ち込むと当たり所が良かったのかそれはあっけなく爆散した。

それと同時に夏樹の真上に穴が出現し、反動を利用して空中と地面を繋げたその穴からまるで地下から飛び出したかのように現れ見事に着地した。

それはまるでちょっとした曲芸のようでもあった。

「きらりんもみじぱわー☆!夏樹ちゃん、だいじょーぶー!?」

核が打ち抜かれなかったカースは奈緒と李衣菜の攻撃で消滅。近寄ってきたカースはきらりにビンタされて消滅した。

「問題ないよ。」

「なつきちー…ゴメンね?」

「そっちに逃がしちまった…!」

ここにいたカースは全滅したようで、李衣菜と奈緒も駆け寄ってくる。

「大丈夫だって…。ん、連絡だ。」

視界に映るデータにLPからの連絡が来たことを知らせるサインが表示された。

「……デカい波は収まったらしい。一時休憩だそうだ。」

「了解…さすがに指令入ってからずっと休みなしだったもんね…」

再び穴を生み出し、ネバーディスペアは隠れ家に戻って行った。

隠れ家にはLPや管理局の技師たちが待ち構えていた。

軽い食事の後、地下室で李衣菜の充電と冷却用液体の補充と血液代わりの帯電液のチェック、夏樹の四肢とユニットの手入れ、様々な事を済ませておく。

ウサミン星人の中でもあの研究所のメンバーはマッドサイエンティストの部類らしく、その技術はかなりウサミンの科学から離れている。

オカルトチックな蘇生液・帯電液・究極生命体や安全な機械の四肢等も作り上げてしまうほどには生への執念があったようだ。

そしてそのレシピや理論書・計画書・設計図は管理局で保管されている。それによって常にベストな状態を保てるというわけだ。

「しかし、また一枚盛大に駄目にしたなぁ…これは縫っても目立つよなぁ…」

袖がすっぱり切れている上着を持って奈緒が呟く。

「構造上仕方ないだろ…全く、何で腕に刃付けたんだか…」

右腕と両足の整備中の為、夏樹が車椅子に乗った状態でため息をつく。

「まあまあ…さっきのなつきちすごくロックだったよ?」

いつものどこかぎこちない笑顔で充電中の李衣菜が褒めているのか慰めなのかわからない発言をする。

曰く、表情筋が上手く動かないそうだ。たしかに声と表情があっていない時は結構ある。

「…はいはい。」

「あ、馬鹿にした!?」

「いつも通りだなぁ…」

そんな二人を奈緒が少しほほえましそうに見ていた。

そこに地下室の扉を開けてきらりが入ってきた。

「みんなー!リーダーちゃんからキャンディもらってきたよー!」

きらりが袋を持って皆に差し出す。

「お、サンキュ。コーラ味ある?」

「じゃああたしイチゴ。」

「はいは~い☆あ、あとねーリーダーちゃんが夏樹ちゃんに多めに渡してって!とーぶんとっとけだって!」

「…糖分か。」

六つの目を持つ夏樹は視界が広い。常に全体を見渡せる程に。

慣れているとはいえそれはやはり脳に少なからず負担はあるし、視界が広い故に戦闘中最も思考を巡らせているのは夏樹だ。

それにこの中で最も人に近いのも夏樹だ。疲れ知らずの他の3人とは違い一般人よりも遥かに疲れにくいとはいえ疲労する。

…LPはそんな彼女を気遣っているのだろう。

「…ありがたく頂いておくよ。…そういえば次の出撃時間とかは聞いてないのか?」

「あ!…きらりってばうっかりさーん☆えっとねーあと30分で全部のメンテナンスが終わるから~そこから調子見てさらに15分後に出撃だって!」

「私の充電もその頃には終わるよー」

「じゃああたし達は上に戻ってるよ。用事がないのにあまり長居するのもなんだしな。行こっかきらり。」

「わかった~!ねぇねぇ何しようっか?アニメ見るぅ?」

「一話ぐらいしか見れないんじゃ…」

二人が地下室から出ていくのを確認してから李衣菜が呟いた。

「…無茶しちゃだめだよ?」

「なっ…なんで急にそんなこと…」

「だって無茶しそうな顔してたから。…なつきち、悔しいだろうなって思っただけ。」

「…」

街の悲惨さを知っているのに機械の体と言う理由で入れない悔しさ。それは確かにあった。

…それにカミカゼ…拓海が街に突入したのだ。彼女も頑張っているのに自分はここで休んでいていいのか。そう思ってしまったのだ。

「…カミカゼの技術が私達にもあればよかったかな…?…でもさ、行けない悔しさもわかるけど…なつきちが無茶してどうするの…死んだらどうするの?」

淡々と、『らしくない』様子で言葉を発していく。けれどどこか迫真としていて。

「…ゴメン。」

「あ、こっちこそゴメン!」

ハッとなって慌てて李衣菜も謝る。

「いいって。アタシ達にはアタシ達なりに、最善を尽くす。なんか憑き物が取れた感じだ。ハハハ、拓海や美世に知られたら笑われるかもな。」

「うん、ありがちだけど…やっと笑ったね」

「…本当にありがちだな。」

「でも笑えるでしょ。良い事だよ?…絶望して無いってことだから!『正義の味方』が辛気臭い顔してどうするの!」

やっぱりぎこちない笑顔で李衣菜が言う。

「…じゃあだりーも…って、おわっ!」

「なつきち!」

左手を伸ばそうとしてバランスを崩してしまう。車椅子から落ちたところを李衣菜が受け止めた。

「今は足と右手無いでしょ…素でやった?」

「…素だった。」

「もう…かっこ悪いよ?」

「あ、サンキュ。」

李衣菜が夏樹を持ち上げて車椅子に座らせる。

「取りあえず今くらい休もう?また戦うんだから。」

「そうだな。…拓海達を信じてこっちは帰る場所を守らないとな!」

ネバーディスペア…『絶望するなかれ』。哀れな境遇の少女たちは、自らの心にこの言葉を焼き付けて生きている。

最善を尽くし、一人でも多くの人にとっての『正義の味方』として生きるべく。

一人でも多くの人の心を絶望から守るべく。

以上です。ネバーディスペアは裏方の裏方だよ!まあ全然交流して無いって訳ではない…はず
今回はなつきちメインでした。メンバーで一番頭使ってるし一応司令塔けど少々大雑把だよ!メンバーがアレだから仕方ないね!

乙ー

もみじぱわー……ナニソレコワイ

あ、投下しますー

憤怒の街が見える場所。

そこに三人の少女達---ナチュルスターがいた。

癒しの雨を降らせてからずっと彼女達はピクリとも動かず立ったまま、空に向かい、力を送り、雨を降らし続けていた。

はたから見たら死んでるのかと疑ってしまう程だ。

だけど、よく耳を澄ますと呼吸をする音が聞こえる。

何故、この状態で彼女達は生きてるのか?

それは、ナチュルアースこと村上巴。彼女がいるからこそ飲まず食わず寝ずに癒しの雨を降らし続けていられるのだ。

彼女が植物が大地に根をはるように水やエネルギーを吸収し、それを二人に分け与え、この状態を持続させていのだ。

だが、逆に言えば、今の彼女達は無防備なのである。

彼女達をここで倒せば、この癒しの雨も止んでしまうだ。

だから……

『コノアメハテメーラノシワザカァォァ!!』

『ナグルゾ!?ナグルゾ!?ナグルゾ!!!ゴラァァァァア!!!!』

『ハラパンシテヤル!!!』

憤怒の街から出てるカース達が意識もなく癒しの雨を降らせてる装置となってる彼女達を狙うの自然だ。

憤怒のカース達は群がり、今にも彼女達を始末しようと動き出していた。







???「動けない人を狙うなんて許しておけません!」








ズカァァァァン!!!

『!?』

その轟音と共群がっていたカースの一部が吹っ飛ばされていった。

残ったカース達が一斉にそっちを見ると、そこに一人の人影がいた。

琴歌「そのような卑劣な行為。この私が許してはおけません」

ナOZ≪ドロシー≫適合者。西園寺琴歌

彼女は両足を銀色に輝くハイヒールを履いたような異形に変化させていた。

『フザケンナァァァァァ!!!』

『ブッコロガシテヤル!!!』

『ゴォォォォォオトゥゥゥゥゥゥヘェェェェェル!!!!』

琴歌「ですから、私がお相手いたします!」

突撃するカースの軍団に向かい、琴歌は地面を蹴り上げ、空を舞い、踊るように蹴散らしに行った。

そこから少し離れた場所。

志乃「あの娘に頼んで良かったわ。ほたるちゃん達は無事のようね」

周子「まったく、どこであんな子見つけてきたの?」

そこに柊志乃と塩見周子はいた。

琴歌がカースの軍団を相手にしているのを見ていた。

志乃「たまたまよ。けど、あの娘一人じゃ厳しいかもしれないわね」

周子「そうだね。あたし達も加勢する?」

見れば、カースは次々と倒されて行くが、どこからともなく湧いて来るカース。

いくら弱い不定形のカースとはいえ、ああもどんどんあらわれていってキリがない。

志乃「多分、あの街の周辺の何処かにカースが産み出される場所があるはずよ」

周子「あたし達はそこを壊しにいくわけね」

志乃「ふふ、そういうこと。けど、周子さんはここにいて?一応ほたるちゃんたちを守ってくれそうな人達に手紙と電話をしておいたから多分大丈夫だけど、万が一はお願いするわ」

そういいながら持っていたワインをグラスに注ぎグイッと飲んだ。

周子「はぁ……志乃さんにはアーニャの事で貸しがあるからいいんだけど」

溜息をはきながら、いつもの調子の彼女に少し呆れていた。

志乃「じゃあ、行ってくるわね」

周子「いってらっしゃい」

だけど、彼女は大丈夫だろうという安心感があり、周子は志乃の心配はしていなかった。

まるで、買い物にいくかのように歩き始める彼女を、普通に見送った。

周子「志乃さんの実力見たかったんだけどねー。まあ、仕方ないかな」

そういいながら、周子は再びカースの軍団からナチュルスターを守る琴歌を見守る事にした。


終わり

イベント情報追加

・癒しの雨を降らしてるナチュルスターを倒そうとカースの軍団が発生しました。

・西園寺琴歌が防衛しています。

・周子さんがそれを見守っています。ピンチになったら助けてくれるよ

・志乃さんがナチュルスターを守ってくれそうな人に電話や手紙を送りました。守ってくれる方募集です。

・志乃さんが外のカースの軍団を産み出してる場所を探しています。

乙です
…丁度タイミングがいいからネバーディスペアが行っても…
…志乃さんなら宇宙管理局に連絡取れそうな気がするから問題ないだろうし

以上です。

ナチュルスターがずっとあの状態ならそれを邪魔するカースがいると思いこうなりました

ナチュルスター防衛してくれる方募集しています。謎の電話や手紙が来て助けに来たや志乃さんと知り合いで頼まれたとか適当に理由つけちゃって大丈夫です

そして……ナチュルスターは一体何になろうとしてるんだ…(困惑

乙にゃん

志乃さんの謎の女っぷりの上昇が止まらない!

ネバーディスペアは苦労してても表じゃネガティブキャンペーンくらったりもしてそうだなぁ、なんて思ったり
救援要請と聞いて思わず書き上げたもの投下

 美しい、薄い桃のかかった髪をたなびかせて少女が空を駆ける。
 まとわりつこうとする真っ黒な呪いの泥へ銀の閃光を走らせ散らすと、中心の赤い核を蹴りぬいた。

琴歌「きりがありませんね……卑怯ですよ! もうっ!」

 正義に目覚め、義憤に燃えている――というわけでもないが。彼女には戦う理由がある。
 少なくとも、目の前で起きている理不尽が。起きようとしている不条理が許せない。

 彼女は世間知らずのお嬢様だった。蝶よ花よと育てられ、動かない両足を周りの人の助けによって乗り越えられてきただけの、お嬢様だった。
 そんな彼女は、ある日さらわれて自由に動く銀の脚と、戦うための技術を教えられる。
 未知の知識、未知の世界。怖いと思う気持ちと同時に持っていたのは、それに対する探究心。

 浚われてしまった悲しみも、どうすればいいのかわからない不安も。
 初めて知った感覚へ高まる鼓動にはかなわなかった。大丈夫だと、思えていたから。

 その中で、友人もできた。同じ悩みを持って、相談して、悪さをするだなんて!
 まるでお話の中の『悪い子』みたいだなんてことを思い、それすら楽しく思えていた。

 無事に脱走してから、はぐれてしまったのは困ったけれど。きっとみんなは大丈夫だと彼女は信じている。
 それは、彼女が能天気だから勝手に思っていることなのかもしれない。――それでも。

 彼女、西園寺琴歌は世間知らずのお嬢様だ。
 それでも、人のために戦うことを。人のことを思う心を。知らないわけではないのだ。

琴歌「えぇいっ!」

 琴歌の銀の脚が宙を蹴り、追いすがる黒い獣を引きはがした。
 そのまま半回転し、今度は天を蹴ると一気に突き刺すように急降下をして地面へと叩きつける。
 どうやら核も砕けたようで、そのまま獣は動かなくなって溶けていった。

 この場で、動けないでいる少女たちへ呪いが降りかからないようにと。
 怪物たちを銀の脚でもって琴歌が調伏していく。

琴歌「でもっ……少し…………」

 際限なく押し寄せる黒波に、琴歌は額に流れる汗をぬぐった。
 OZ≪ドロシー≫は自己修復機能があり、彼女自身の超高速移動を可能にはしている。

 圧倒的な速さでもってカースとカースの間を潜り抜け、蹴り、叩く。
 その速度は不定形の泥のカースならば追いすがることすら不可能だ
 強力な脚力でもって蹴り飛ばせば、一撃の元で葬ることだってできる。

 彼女にとって、10や20の並のカースならば相手にならないだろう。
 ならば50なら。100なら。1000なら――無限に湧き出るかのように押し寄せる呪いが、琴歌を襲おうとする。

 このままでは、キリがない。そう判断した琴歌は自らの脚を一撫でして逡巡する。

琴歌「ドロシー……使うべき、なんでしょうか……私は……」

 彼女の銀の脚、OZ。金属生命体である『それ』には、隠された力がある。

 ――隠された、というのは正確ではないかもしれない。ただ、とても。

琴歌「使いたく……ないのですけれど……」

 とてもとても怖い力。彼女の探求心も、友人のお気楽さも、豪胆さも。
 全員がなんとなく、嫌だ。そう思ってしまった、その力。

琴歌「……まだ、大丈夫。いけます、ね?」

 誰に聞かせるわけでもなくそう呟いて、琴歌はまた銀の閃光へと姿を変える。
 黒い津波に穴が開き、ふたつみっつと切り裂かれた。

 降りかかる呪いの泥が落ちるよりも速く。次の獣を蹴り、打ち倒す。
 カースたちには決して追いつかれないようにと滑るように地面を移動して――

 ――その足が、固まってしまう。

琴歌「―――ッ!?」

 核を砕き損ねたカースの泥が、別のカースと反応して強烈に足を締め上げていた。
 すぐさま逆の脚で蹴り脱出を図るが、ほんの一瞬止まった隙を逃さずに、津波は彼女を飲み込まんと迫る。

 その光景に彼女は思わず目を瞑ってしまい、身体に走るであろう衝撃に身構えた。




 ――だが。その衝撃は想像よりもずっとあたたかく。
 まるで、誰かに抱かれているかのような錯覚をおこしてしまうほど優しかった。



琴歌「……?」

 恐る恐る目を開けてみれば、目の前にあるのは怪物の泥ではなく人の顔。
 とてもセンスがいいとは言えないような仮面を付けた、スーツ姿の男だった。

店長「間一髪か……大丈夫か、君?」

琴歌「え、あ、はい……ありがとうございます……っ、後ろ!」

 男の背後から泥が迫る。とっさに蹴りあげようと思うも、この体勢ではできない。
 しかし、焦る琴歌が男を逃がそうとするよりも早く。光の矢が泥を貫いた。

琴歌「まぁ……!」

 光が飛んできた方向へと目をやれば、そこに立っているのは美しく可愛らしい衣装に身を包んだ2人の女性。
 琴歌が感心する中、1人は剣を宙から生み出してあたりのカースを次々に切り捨てていく。

美優「シビルマスクさん、危ないですよ! もうっ」

 もう1人は琴歌の方へと駆け足で寄り、男へと注意を促す。
 シビルマスクと呼ばれた男のほうは余裕ありげに笑うとこう返した。

店長「2人の合体技ならあれぐらいは倒せるし、普通の人には影響はないのはわかってたさ。だけどもしもがあったら危ないだろ?」

美優「そうですけど……無理はしないでくださいね」

店長「わかってる。でも、頑張ってる子供たちもいるんだ……大人が意地をみせなくてどうする」

 シビルマスクが懐から何かを取り出す。
 雷の走る、聖獣の角。友の証でもあるそれは、主張するかのように小さな火花を光らせた。

美優「……そうですね。あなたは?」

琴歌「え? 私は……」

 急に話を振られて、琴歌が慌てたように立ち上がる。

琴歌「あ……」

 琴歌は、自分の脚にまた力が戻ってくるのを感じた。
 ドロシーを解放しないでも、このまま自分自身の力で守れるのだと。
 不思議と、先ほどまで襲ってきていた疲労感もない。

店長「大丈夫か? 無理はしないほうがいい」

琴歌「……いえ! 私、いま! とても……とっても、元気になりました!」

 銀の脚の輝きが増す。彼女の顔には再び笑顔が戻る。

店長「う、うん?」

琴歌「ありがとうございます、みなさん! 私、西園寺琴歌と申します!」

 底抜けに明るい声で琴歌が自己紹介をし始める。
 思わず近くにいた2人はめんくらってしまったようだ。

店長「これはこれはご丁寧に……」

美優「店長っ!」

 カインドの咎めるセリフに、シビルマスクがはっとした様子で恰好をつけなおす。

店長「っと……あぁ。琴歌ちゃんか……俺はシビルマスク。2人は……カインドと、グレイスだ。よろしく」

琴歌「はいっ! よろしくお願いします! 私の特技は――」

 タン、と足音だけを残して琴歌が消え、グレイスが相手をしていた巨大なカースを砕く。
 あまりの威力にグレイスも驚き、その顔をみて琴歌はまた笑った。

琴歌「ダンス、です♪」

レナ「……ヒュー♪ いいわね、いけてる。オールナイトは平気かしら?」

琴歌「さぁ、わかりません。私、夜更かしはいけないことだと聞いていたので!」

 心底嬉しそうに琴歌が目を輝かせる。
 興味津々といった様子で、共に戦う人がいる嬉しさで。

以上、琴歌のところに『魔法少女』組が到着しました
……店長のポジションが美味しすぎる気がする! 妬ましい!

乙ぃ
キャーテンチョー!!

投下します
あいさんとまとめWiki内掲示板で妄想されていた戦闘外殻『アビスティング』をお借りします


――海底都市の中心部、海皇宮。

兵士「海皇様、失礼しまぁす」

海皇の自室に、一人の少女が入ってきた。

海皇「……ヨリコ、で大丈夫ですよ。サヤ」

海皇と呼ばれた少女は、モノクルを指でクイ、と押し上げてぎこちなく微笑んだ。

サヤ「うふっ、申し訳ございませぇん、ヨリコ様」

ヨリコ「はい、よろしい。それで、何か御用でしたか?」

サヤ「はぁい、例のお客様が到着しましたよぉ」

ヨリコ「ああ、そうでしたか。では、お通しして下さい」

サヤ「はぁい、どおぞぉ☆」

サヤが扉を開けると、一人の女性が部屋に入ってきた。

黒い短髪で、首には奇妙なゴーグルをぶら下げている。

ヨリコ「ようこそ。海底都市の居心地はいかがでしょうか、アイ様?」

招かれたのは、アンダーワールド出身の傭兵、アイ。

アイ「まあ、悪くはないね。それより早速本題に入ろうか、ヨリコさん?」

懐から取り出したナイフを指でクルクルと弄びながら、アイが言う。

ヨリコ「そうですね。……資料を」

サヤ「はぁい、こちらでぇす」

アイはサヤから手渡された資料に目を通す。

アイ「……カイ。海皇宮親衛隊七番。戦闘外殻アビスナイト。現在離反中。……なるほど、彼女の抹殺を?」

ヨリコ「……はい。本当は戻ってきて欲しいのですが……もうそれも叶わないようなので」

言いながら、ヨリコは視線を落とす。

アイ「……何やら事情がありそうだが、こちらとしては報酬さえ貰えれば構わないよ」


ヨリコ「ありがとうございます。その報酬ですが……こちらを」

ヨリコが手元の小箱を開けると、真っ白な珠が一つ入っていた。大きさは野球ボールほどだろうか。

ヨリコ「この近辺にのみ少数生息する、巨大な真珠貝から採取したものです」

アイはそれを手に取りまじまじと眺めると、にぃ、と口元を歪めた。

アイ「ふむ、それでは今回の依頼、受けさせてもらおうかな」

ヨリコ「ありがとうございます。それでは、アイ様へこちらから餞別を一つ……」

ヨリコが指をパチンと鳴らすと、部屋の隅から巨大なシャコが姿を現した。

アイ「……驚いた。海底都市で流行りのペットかな?」

ヨリコ「いえ、これは戦闘外殻『アビスグラップル』。完成したばかりの最新作です」

『ギギギンギン!』

ヨリコの紹介を受け、シャコが勇ましく腕を振り上げる。

アイ「これは、私の腕が疑われているのかな?」

ヨリコ「そうではありません。いわば保険です。手前味噌ですが、戦闘外殻は強大な力を持つので……」

アイ「戦闘外殻には戦闘外殻……というわけか。ふっ、いいだろう、貰えるものは貰っておくよ」

アイはそう言ってシャコの頭を一撫でする。

ヨリコ「その子の名前はハナと言います。たまにでも呼んであげて下さいね」

アイ「了解した。では、失礼するよ」

ヨリコ「はい、吉報をお待ちしています」

アイはそのままハナを連れて退室した。


サヤ「……ヨリコ様ぁ」

途中からずっと黙っていたサヤが不意に口を開く。

ヨリコ「どうしました、サヤ?」

サヤ「何でサヤ達親衛隊がいるのにぃ、わざわざ傭兵なんか呼んだんですかぁ?」

ヨリコ「……来たるべき時の為に、自前の戦力は温存するものです」

サヤ「んー、でもでもぉ、サヤ達訓練ばっかりじゃ退屈ですぅ」

ヨリコ「では、サヤに仕事を与えましょう」

ヨリコがモノクルを指で押し上げる。

ヨリコ「現在地上は様々な組織が混在しているようです。そこでサヤ。
   貴女は地上人に敵対する組織に接触し、協力を得て下さい。交渉内容は一任します」

サヤ「了解しましたぁ、んふっ!おいで、ペラちゃん☆」

サヤの呼びかけに応じ、金属製のアカエイが空中を泳いできた。

『キリキリキリ』

サヤ「でわぁ、いってきまぁす」

サヤとペラが部屋から出て行った。

ヨリコ「…………ふぅ」

ヨリコは大きく息を吐くと、そのままベッドに身を投げた。

ヨリコ(巫女さんは私用だとかで外していますし、一眠りさせてもらいましょう……)

ヨリコはぐっすりと眠りについていった。

続く

設定変更

・海皇

職業(種族)
ウェンディ族

属性
国家指導者

能力
不明。

詳細説明
海底都市を治める十七代目の海皇。
歴代でも類を見ない程温厚だと言われていたが、
ある日を境に豹変、地上人全滅と地上制覇に乗り出す。

関連アイドル(?)
カイ(元部下)
スパイクP(部下)



・ヨリコ(地上人名・古澤頼子)

職業(種族)
ウェンディ族

属性
国家指導者

能力
不明

詳細説明
史上最年少で海皇の座を継承した少女。
未熟な為、側近や海龍の巫女(レヴィアタン=川島瑞樹)の補佐を得ながら政治を行っている。
病を取り払った恩からか、巫女には厚く信頼を寄せている。
また地上の美術品への関心が深く、たまにこっそり収集の為地上に出て来たりもする。

関連アイドル
カイ(元部下)
スパイクP(部下)
サヤ(部下)
アイ(雇用)
瑞樹(直属部下)

・サヤ(地上人名・松原早耶)

職業(種族)
ウェンディ族

属性
装着変身系ヒール

能力
アビスティング装着による飛行能力
優れた身体能力

詳細説明
ウェンディ族の少女。海皇宮親衛隊の一員。
年が近いこともあってかヨリコの話し相手になることも多い。
ペラを身に纏い飛行能力を有する「アビスティング」に変身する。

・ペラ
サヤが連れる戦闘外殻。姿は1,5メートルほどの金属製アカエイ。
サヤにぺったりお甘えるが、サヤ以外には決して懐かない。
尾には複数の薬品を封入したカプセルが仕込んである。

・アビスティング
サヤがペラを纏いウェイクアップした姿。
空中を飛び回りながら相手をエストックで突き刺す高機動戦が得意。
・べノムエストック・パライズ
相手の筋肉を痺れさせる薬品を撃ち込む。サヤ曰く「ビリビリモード」
・べノムエストック・ポイズン
猛毒の薬品を撃ち込む。サヤ曰く「ジワジワモード」
・べノムエストック・チャーム
相手の思考・判断力を奪う薬品を撃ち込み、一時的に意のままに操る。心の強い者には無効。サヤ曰く「メロメロモード」

・ハナ
アイが受領した戦闘外殻。姿は2メートルほどある金属製モンハナシャコ。
完成したばかりなので自我はまだ完成しきっていない。
ウェイクアップしなくても相当の戦闘力を持つ。

・アビスグラップル
アイがハナを纏いウェイクアップした姿。
身体能力が全体的に底上げされ、特に拳を振るスピードは時として音速を超える。
・ナイフ
以前からアイが愛用していたナイフ。拳のスピードアップで殺傷力がオリハルコンを切り裂けるほどに増した。

・イベント追加情報
アイが戦闘外殻ハナを連れ、カイ抹殺に動き出しました。

サヤが各敵組織に接触を試みるようです。受け入れるも突っぱねるもご自由に。

海龍の巫女=レヴィアタンが出てこないのは深い意味はありません。

以上です
クライアントが逝去したあいさんに何か仕事をーと考えた結果こうなりました
もし他にあいさん考えてた方いらっしゃれば……依頼掛け持ちな感じで?
ハナは使っても使わなくてもいいです、何ならバラして売ってもw

おつおつ
あいさんやとわれたか……海皇頼子は正気自体は失ってない?

>>196
正気を保たせながら「地上は侵略するもの」という認識を脳に植え付けられた
端的に言ってしまえば「騙されてる」状態を想定しています

乙乙
変身ヒール、ヴィランっていいよね

しかし手を組めそうな組織って……どこだ?

リン「こんにちは、今貴方の宇宙船の中に居るの」

ヘレン「!?」

メリンさん……ふふっ

リン「ねえ、どういう仕組みなのかバラさせて?」

スパイクP「!?(俺の勘が言ってる…コイツはヤバイ……早く逃げろとっ!!)」

海皇親衛隊が逆に狙われる気がする

なんかリンに追われるスパイクPの姿が脳裏に浮かんだ

投下しちゃうぜー


前回までのあらすじ

「カピバラを仕留めるのはしばらくお預けナリ」

参考
>>5 (美穂と肇)


『続いてはこのコーナー!』

『《直撃!アナタの街のヒーロー!》』


『本日はなんと!元アイドルヒーローで!』
『現在はフリーのヒーローとしてご活躍されている!セイラさんに来ていただいてます!』

『テレビの前の皆こんにちはっ、セイラだよ。』


『お久しぶりです、セイラさん。』

『本当に久しぶりだねえ』


『アイドルヒーロー時代はこの番組にもよく来ていただいたのを覚えてます。』
『あ、いま丁度その頃の映像も流れてますね。』

『わぁ、懐かしいなぁ・・・ってちょっと!こんな映像まで残ってるんですか?』


『セイラさんがアイドルヒーローを止められた時は、世間でも結構話題になりましたよね。』
『フリーのヒーローに転身される何かきっかけみたいな物はあったのでしょうか?』

『うーん、理由と言うと、やっぱり・・・・・・心境の変化ですかね』


『心境の変化ですか(笑)』

『心境の変化です(笑)。』
『最近は特にですけど、ヒーローの活躍の場はどんどん増えてますよね。』
『だから色々挑戦してみたくなって、アイドルヒーローのままだと出来ないちょっと無茶な事もやりたかったと言うか。』


『事務所には怒られませんでした?』

『めちゃくちゃ怒られました(笑)』

――会場笑――


『でも、その時のプロデューサーには今の活動も応援して貰えてるんですよ。』
『フリーになっても付いてきてくれるファンも居たりして、それが今は励みになってます』

――

美穂「そっかぁ、セイラさん。アイドルやめても、ずっとヒーローやってたんだ。」


カリスマアイドルヒーロー、セイラ。

以前はテレビでもよく見かけ、彼女の事は美穂も応援していた。

アイドルヒーローをやめると聞いた時は、すごく残念だったものだ。


美穂「・・・・・・アイドルヒーローかぁ。」


お昼のTV番組を見ながら、美穂は考える。

アイドルヒーローと言うものについて。


アイドルヒーロー、歌って踊って戦える女の子の憧れ。

蝶のように可憐に舞い、重機関砲のように豪快に敵を討つ。

その愛らしい勇姿に、誰もが好感を抱き、勇気を貰う。


彼女達のまばゆい笑顔は、この時代において人々の希望の象徴なのだ。


卯月ちゃんの話では、アイドルヒーローは、

近年の小学生~高校生までの将来の夢のアンケートで、ずっと堂々の1位に輝いてるらしい。


美穂「アイドル・・・・・・なってみたいなぁ」


それは美穂にとっても同じで、ずっとずっと憧れていたことだった。


美穂は手元にあった『小春日和』を、引き寄せて、

ギュッと抱きしめる。

美穂「ヒヨちゃんなら、アイドルヒーローもきっと上手くできるんだろうね。」


ヒヨちゃんとは『小春日和』のことである。

日和からとってヒヨちゃんだ。

ちなみに美穂にとっての、ヒヨちゃんとは、

彼女の中の『小春日和』から生まれた人格、『ひなたん星人』の事も指している。


ヒヨちゃんこと、『ひなたん星人』は小日向美穂の”ヒーローに憧れる意思”をベースに作られた人格だ。

色んな面で、過剰な性格ではあるが、そんな彼女ならうまくアイドルヒーローだってできるであろう。


美穂「・・・・・・。」

美穂「えいっ」


唐突に『小春日和』を抜いてみる美穂。

瞬間、彼女は華麗な衣装に包まれ、

その表情は笑顔・・・・・・と言うか獰猛な笑みに変わる。


美穂「はーっはっはっはっはっはっ!」

美穂「愛と正義のはにかみ侵略者ひなたん星人!!」

美穂「この街はまるごとつるっとぜーんぶ!私の」


「美穂ー!!お昼から大きな声で騒がないのっ!!!」

美穂「ひっ!ご、ごめんなさいナリっ!」

別室から聞こえたお叱りの声に慌てて刀を納めるひなたん星人。

けど、叱る母の声の方が絶対声大きかったと思う。


美穂「怒られちゃったね。」

美穂のアホ毛が申し訳無さそうに少し萎れる。


反転状態で家に帰った時は、娘の乱心にさぞ面喰った両親であったが、今では随分と慣れたものだ。


『小春日和』と美穂の関係にしても、肇が小日向家に来た日に説明を終えてしまっている。

娘が(半ば強制的に)ヒーローとして活動してると聞いて、心配した両親であったが、

美穂が前からアイドルヒーローに憧れていたのも知っていたし、肇の説得もあってか、どうにか納得してもらえたようであった。

こんな物騒な時代であるし、年頃の娘が何も自衛手段を持ってないよりは、むしろ安全ではないかといったところだ。


ところで肇の話だが、

現在、彼女は小日向家に居候中に身である。

「肇さんは今はどちらにお住まいに?」と美穂の家族と談笑中に聞かれ、

「すぐ近くの川原ですよ。」と普通に答えたのには、一瞬、場が凍りついた。

ずっと鬼の里暮らしてきた肇は、時折、世間様と言うものと考え方がズレてる事がある。

本人曰く、鬼のまじないと後は水場があれば、何処でも快適に過ごせるらしいが。

でも流石に年頃の娘が野宿はアカンやろ・・・・・・。


と言う訳で、不憫に思った小日向夫妻に空いていた部屋を貸してもらい、

そこを拠点に現在バイト探し中であった。


今朝も「今日こそ、お仕事見つけてきます!」と気合を入れて出掛けていったのを思い出す。

「今日こそ」と強調していたのが、なんだか不吉だが。


美穂「肇ちゃん、真面目なのにどうしてお仕事見つからないんだろうね?」

「さぁ?」と言わんばかりに、彼女のアホ毛も?マークを浮かべた。


再びテレビを見入る美穂。


『セイラさんにとって、アイドルヒーローとはどのようなものでしたか?』

『そうですねぇ、ヒーローの活動を見世物にする事には若干の批判の声もあるみたいですが、
 でも、その反面メディアを通して、多くの人にヒーロー活動を見てもらう事で、

 「あなたの傍には、あなたの笑顔を守ってくれる人がこんなにもたくさんいる。」
 そんな大事な事を伝えられる素敵な職業だったと思います。』


TVの前でうんうん、と頷く美穂。


『いやあ、カッコイイですねぇ』

『もう、茶化さないで下さい(笑)』

――会場笑――

『しかし我々もまた、こうしてヒーロー達の活躍を放送することで、
 皆さんを守る人たちの事を伝える、ささやかなお手伝いできることを誇りに思っていますよ。

 おっと、お時間が来てしまったようですね。
 《直撃!アナタの街のヒーロー!》のコーナー、本日はセイラさんにお越し頂きました。』

『次のコーナーは《ウサコと亜里沙のヒーロー指南教室!》ですよ。チャンネルはそのまま!』



美穂「セイラさんみたいにカッコイイ、アイドルヒーローになれたらなぁ。」

再び呟く美穂。

美穂「だけど・・・・・・うーん。」


難しい顔で悩み始める美穂。


そんな時、アホ毛がぴこぴこ動き始める。


美穂「カースの気配?近所かな?」

『小春日和』が近くにカースの気配を感じ取ったようだ。

『ひなたん星人』の出動である。


美穂「お母さん、ちょっと出かけて来る!」

「気をつけるのよー。」


――省略――



美穂「あ~っはっはっはっはっは!」

カース『ダレダ!?』

美穂「私は愛と正義とのはにかみ侵略者ひなたん星人ナリ!」

美穂「この街はまるごとつるっとぜ~んぶ(略



――省略――



美穂「ラブリージャスティスひなたんクライシスッ!!」

カース『ギエピー!』



――省略――



美穂「は~はっはっはっはっは!これにて一件落着ナリ♪」

美穂「今日もまるごとつるっとぜ~んぶ!守ってみせたひなたっ☆」 キャピピーン



―以上、本日もひなたん星人、大☆活☆躍!!!―




カースを退治した少女は刀を納める。

「ひなたん星人ありがとー!」

美穂「・・・・・・ど、どどういたしまして!」

このやり取りも慣れたが、

やはりまだ恥かしさは如何ともしがたく

そそくさとその場を去る美穂であった。


家路を辿る美穂。

その表情は芳しくない。

美穂「・・・・・・はぁ。」

無意識に溜息が漏れてしまう。


現在、彼女にはある悩みがあった。


自分の持つ力についての悩みだ。


目を瞑り、少し俯いてずっと考え込むようにしながら、とぼとぼと歩く。



そんな風だったから、

背後で大きな影が盛り上がろうとしているのにも、気づかなかったのかもしれない。

アホ毛が忙しなく揺れ動くが、それでも美穂は気づかない。


影から大きな手が生まれ、

美穂に迫り、


パァァン、と鋭い銃声が響く。


美穂「えっ?」


その音で、後ろを振り向いた彼女は、

巨大なドス黒い獣が崩れ落ちる姿をみて、

ようやく自分が、カースに狙われていた事に気づいた。


「ダメだよ?ヒーローが油断してたら。」


「それに、表情が暗いのもよくないかな。」


見た事も無い銃を手に持った、女性が声を掛けて来た。

どうやら彼女が美穂を助けてくれたらしい。

美穂「あ、ありがとうございま・・・・・・えっ。」


美穂「ええっ!?!」


自分の事を助けてくれた人を見て二度、驚く美穂。


美穂「う、うそ!?」


信じられないことであった。

そのくらい”まさか”の奇跡。


美穂「せ、セイラさん?!」


聖來「あっ、しまった。」


テレビの中でしか見ることの無かった憧れの人が、目の前に居た。


聖來「咄嗟の事だったから、ついウッカリしてたよー。」


銃を撃つために、頭にずらしていたサングラスを掛けなおす聖來。

途端に彼女の存在感が薄くなる。


聖來「普段は、こんな風に正体を隠して活動してるの。」


サングラス一つで隠せる正体などあったものかと、普通なら思うところだが。

実際に、彼女の顔がおぼろげになっているので、

どうやら普通のサングラスではない、そう言う類のアイテムらしい。


聖來「けれど、まあバレちゃったから意味無いけどね。」

そう言って、元カリスマアイドルヒーローは悪戯っぽく笑った。


美穂「え、えええええと、せ、セイラさんがど、どどどどどうしてここんなとところに?!」

聖來(どうしよう。何言ってるか全然分からない・・・・・・。)

聖來「そうだね、一旦落ち着こっか。ちょっと付いてきてくれるかな?」


――

――

美穂の家のすぐ近く。毎度おなじみ、『万年桜』の公園。いつものベンチ。


聖來に手を引かれ、訳も分からずほいほい付いて来た美穂であった。

憧れの(元)アイドルヒーローに、ここまで少し強引に連れてこられ、

心臓は弾けて何処かに飛んでいってしまいそうなくらいドキドキしている。


聖來「急にごめんね。時間大丈夫だったかな?」

美穂「えっ?!あっ、ひゃいっ!大丈夫ですっ!?」

聖來「コーヒーとお茶、どっちがいい?」

美穂「お、おおおおひゃで!」

美穂(噛んじゃった・・・・・・)

聖來「お茶ね。はい。」


聖來は手に持っていた、ペットボトルを片方、美穂に手渡す。

そこの自販機で購入したものだ。

美穂「あ、ああありがとうございます!」

聖來「いいよ気にしなくて。それよりまだ硬いね?ほらほら、飲んで飲んで。」

美穂「い、いただきますっ!」


促されて、んくっ、んくっと、聖來から貰ったお茶を飲む。

美穂「ぷはっ」

聖來「いい飲みっぷりだね。」


美穂(お茶を飲んで、なんだか落ち着けた気がする)

今ならきっと、ちゃんと喋れるだろう。

美穂(よしっ!)


美穂「あ、あああああのっ、せせセイラさんっ!」

美穂(はい、全然ダメでした。)


美穂「えっと!あの!その!ご、ごめんなさい!」

美穂「な、なんだか混乱のあまり頭の中がそのっ!うまくまとまらなくって!」

聖來「じゃあ、深呼吸してみよっか。」

美穂「すぅー・・・・・・すぅー・・・・・・すぅー」

聖來「待って、それ息吸いすぎだから!吐いて吐いて!」

美穂「はっ、はぁー!」

今度こそ本当に落ち着けたと思う、たぶん


美穂「あ、あの!ずずっと憧れてて!!ファンでしたっ!!」

聖來「そっか、嬉しいな。ありがとっ♪」

美穂(よ、良かった、言えたぁ!)


美穂「って違っ!そうじゃなくてっ!」

美穂「あ、いや、違うくはないんですけどっ!ファンなのは本当ですっ!」

美穂「な、何言ってるんだろ、私っ?!」

美穂「え、えっと、せ、セイラさんはどうしてここに居るんですか!?」

美穂「さ、さっきまでテレビに映ってたのに!」

聖來「ん?」


美穂の言葉に少しだけ考えて、気づく聖來。


聖來「あっ!あははっ!あの番組は収録だよ」

美穂「えっ?あっ!!そ、そうですよねっ」

美穂もまた、自分がおかしな事を言った事に気づいて顔を赤らめるのだった。


聖來「ふふっ、面白い子だね」

美穂「わ、私、さ、さっきからおかしな事ばっかり言ってますよね・・・・・・。」

美穂(うぅ・・・・・・絶対変な子だと思われてる・・・・・・。)

こちらをみて、クスクス笑う聖來の様子に、美穂は不安になってしまう。

聖來「あ、気を悪くしちゃったならごめんね。」

聖來「ただ普段は、ずっと可愛らしい子なんだなって思っちゃって。」

聖來「ヒーローやってる時の豪胆さからは想像できないくらい。」

美穂「か、かかか可愛いってそんな、わ、私なんて・・・・・・。」

そこまで言いかけて気づく。


美穂「えっ?ひーろーやってるときの?」



美穂「も、もしかしてセイラさん・・・・・・わ、わたしの事知って?」

聖來「うん、よく知ってるよ。”愛と正義のはにかみ侵略者、ひなたん星人”。」

聖來「私は今回、この辺りにはお仕事で来たんだけど。」

聖來「現地で活躍してるヒーローの事はちゃんと調べて・・・・・・。」


美穂「う、ううう、うわぁあああああああああああああああ!!」

聖來「!?」

聖來「えっ、ど、どうしたの?!」

唐突に叫び悶え始める美穂。

美穂(知られてたっ、知られちゃってたぁっ!)

美穂(あ、憧れの人に私の・・・・・・”ひなたん星人”のこと知られちゃってたよぉ!)

美穂(あの何処に出しても恥ずかしいような電波っぽい私の事ずっと見られてたんだ)

美穂(ああ・・・・・・もうダメだ・・・・・・セイラさんだけじゃなくってきっとみんな私の事知ってるよ・・・・・・)

美穂「うぅ・・・・・・熊本に帰るぅ・・・・・・」

半泣きになりながら美穂は、ベンチの下に蹲って隠れてしまった。

聖來「えっ、く、熊本?お家この辺りじゃなかったのかな・・・・・・?」


聖來「そんな所に入ったら、服汚れちゃうよ?」

ベンチの下からは彼女のアホ毛だけがピコピコとはみ出ている。


聖來「・・・・・・なんだかのっぴきならない事情がありそうだね。」

聖來「さっき暗そうな表情をしてたのもその辺りが関係してるのかな?」

美穂「そ、それはその・・・・・・うぅ・・・・・・」

聖來「えーっと、お名前聞いてもいい?」

美穂「・・・・・・。」

美穂「・・・・・・み、美穂です。小日向美穂。」

聖來「ありがと、美穂ちゃんは知ってると思うけど、」

聖來「アタシはセイラ、水木聖來だよ。」

聖來「アタシでよければ、美穂ちゃんの悩み事聞かせてもらってもいいかな?」

掛けていたサングラスを外して、美穂の隠れるベンチの傍でしゃがみ込み

アイドルヒーローらしい笑顔を向けて、彼女は問いかけた。

聖來「恥ずかしかったら、そのままでもいいから、ね?」

美穂「・・・・・・セイラさん」


――

――

聖來「あっ、もぉ~、よしよし!可愛いなぁ、この子は~!」

犬「わふっ!わふっ!」

聖來「いい子だねぇ、わんわん♪」

聖來「なんだかごめんね。サングラス外しちゃうといつもこうで。」

美穂「い、いえ、その、だ、大丈夫です。」


公園のベンチの周りには、何処からともなくたくさんの犬が集まってきていた。

理屈はわからないが彼女は正体を隠してないと、周りに動物が集まってくるらしい。

そう言えばアイドルヒーロー時代も、動物達と連携して活躍していた事が多くあった気がする。


聖來の周りに集まってきた犬達が、ベンチの下に居る美穂に興味を示し、変なところを嗅いだり舐めてきたりしそうだったので、

結局、美穂は恥ずかしさを抑えて、その場所から出てくる事となったのだった。


聖來「それにしても、刀を持てば性格が変わっちゃうか。」

美穂「性格と言うか・・・・・・人格が変わっちゃうと言うか・・・・・・。」


今は二人、ベンチに座って、

美穂が、自身の身に起きたこれまでを全て話し終えたところだった。

日本一、横暴な刀『小春日和』と、美穂の内にある人格『ひなたん星人』について。


聖來「なら美穂ちゃんの悩みって言うのは。」

聖來「”刀に無理やりヒーローをやらされて困ってる”ってところ。」

美穂「・・・・・・。」

聖來「じゃなくって、逆かな?」

美穂「えっ。」


聖來「”刀の力を使って、ヒーローをやってる事に後ろめたさみたいなものを感じてる”とか。」

聖來「”自分の力は借り物なのに”なんて思ってたり?」

美穂「・・・・・・。」

美穂「・・・・・・・すごいな。わかっちゃうんですね。」

聖來「んー、そうだね。それなりにこの業界に身を置いてたからかな?」

聖來「結構、ヒーローには自分の力に悩んでる子って言うのは多いし。」

聖來「美穂ちゃんみたいに、刀って言う形で、自分の体とは切り離された力を持ってると、」

聖來「特に自身の力とは意識しづらいだろうから。」

美穂「・・・・・・。」

美穂「私、アイドルヒーローに憧れてるんです。」

悩みを言い当てられて、少女はぽつりと語り始める。


美穂「テレビで見る菜々ちゃんや、セイラさんみたいにたくさんの人を守るために戦えて、」

美穂「みんなに向けて、心が暖かくなる様な笑顔ができたら、きっと素敵だなって。」

美穂「そんな風に思ってて。」

美穂「だから漠然と、強くなれたらいいなって思ってたんですけど。」


そして少女の願いは、その刀を手にする事で叶った。


美穂「最初、ヒヨちゃん・・・・・・『小春日和』を手にした時は戸惑いましたけど。」

美穂「本当はそれ以上に嬉しかったんです。」

美穂「確かに、ヒヨちゃんの性格は少し恥ずかしくはありましたけど」

美穂「でも、この力があれば、私でも誰かを守る事が出来るんだって思ったら嬉しくて。」

美穂「だけど・・・・・・。」


だけれど、その力は『小春日和』の力であって、”小日向美穂”の力じゃない。

『小春日和』は、『小春日和』を扱える人格を作り出す刀。

ならば、別に、誰が持つ事になっても良かったんじゃないか。


美穂「私なんかが、本当に使っていい力なのかなって。」

美穂「もし私が、この力でアイドルヒーローを目指したら、」

美穂「それはズルい事なんじゃないかなって。」


聖來「なるほどね。たまたま自分が選ばれたって事が、どうしても納得できてないって訳だ。」

聖來「だから刀を・・・・・・つまり自分の力じゃない力を使って、ヒーローをしている事が、後ろめたい。」

美穂「・・・・・・。」


聖來「悩めることはいいことだけどね。」

聖來「本当にそれが正しい事なのか、ちゃんと考えて、悩んで」

聖來「答えを出せるなら、それはとってもいい事だよ。」

美穂「・・・・・・はい。」


聖來「けど、悩みすぎて暗い顔で足を止めちゃうのは、アイドルとしてもヒーローとしてもよくないかな。」

聖來「だから、そうだね。特別に先輩から一つ、参考意見をあげよう♪」

美穂「参考意見ですか?」

聖來「そうそう。元アイドルヒーローとしてのアタシの考え。気楽に聞いててくれればいいよ。」


傍に寄ってくる犬達を撫でながら、聖來は語る。


聖來「ヒーローがズルくても、いいんじゃないかな。」


聖來「こんな事言うと幻滅しちゃうかもだけど。」

聖來「美穂ちゃんが憧れてる、私もズルい事たくさんしてるよ。」

聖來「アイドルとして、ヒーローとして人に誇れないようなズルいこと。」

聖來「あ、今のオフレコでね!」

美穂「・・・・・・セイラさんもですか?」

聖來「うん、そうだよ。」

美穂「とてもそうは見えないですよ。」

聖來「そう?なら私のアイドルとしてのイメージ戦略が成功してるのかな?」

そう言って、彼女はおどけて笑ってみせた。


聖來「けど、美穂ちゃんにはそう見えてるだけで、本当は違うんだ。」

聖來「情けないことに”カリスマアイドルヒーロー”なんて偽りの仮面みたいなもので。」

聖來「その正体は等身大の、ズルくて嘘つきなただの人間だよ。」


美穂「そんなっ!そんな事はないです!」

美穂「だって、私ずっと見てました!セイラさん、本当にたくさんの人を助けてて!」

美穂「私もそんなセイラさんの姿にそのっ!勇気を貰ってました!」

聖來「ふふっ、ありがと!美穂ちゃん、こんなアタシに憧れてくれてっ。」


聖來「アタシはね、美穂ちゃんみたいに応援してくれる人達がいるから、」

聖來「ズルくて、嘘つきなアタシでも、本当のヒーローみたいになれるかもって思えるんだっ!」


聖來「だから、美穂ちゃんもさ。」

聖來「本当は強くなかったとしても、ヒーローをやったっていいんじゃないかな?」

聖來「ズルくてもアイドル目指したっていいって、アタシは思うな。」

美穂「・・・・・・ズルくてもアイドルヒーロー目指してもいいんですか?」

聖來「うん。」

聖來「綺麗なだけがアイドルじゃない、正しいだけがヒーローじゃない。」

聖來「少しくらい不恰好で弱くて後ろめたくて嘘つきだったとしても、」

聖來「最後は人を笑顔にできるならそれでいいんじゃない?」


聖來「きっと、それでも応援してくれる人はたくさん居るよ。」

聖來「この地域では、ひなたん星人はよく評価されてるし、」

聖來「ひなたん星人に助けられたって人も多いよ。ファンだって言ってた人も居たし。」

美穂「う、嬉しいけど・・・・・・複雑な気分です。」


美穂「それにやっぱりそれも”ヒヨちゃん”のおかげで」

美穂「私自身は何も・・・・・・出来てないです。」


ここ最近のヒーローとしての活躍は、”小日向美穂”ではなく”ひなたん星人”のおかげだ。

”彼女”と私は違う、そんな風に考えてしまう。

だって、私は そんなに強くない。


聖來「うーん、美穂ちゃんに足りないのは自信なのかな。」


聖來「うん、それじゃあ、こうしようか」

聖來「アタシが応援してあげよう♪」

美穂「えっ?」

聖來「ひなたん星人じゃない、他ならぬ美穂ちゃんの事をアタシが応援するから。」

聖來「だから、美穂ちゃんは、もっと胸張ってズルしちゃえ!」


美穂(ああ、きっとこの人は本当に・・・・・・私が憧れる根っからのヒーローなんだ。)

美穂「セイラさん、ありがとうございます。」

美穂「セイラさんに応援してもらえるなら、ちょっとだけ自信が持てそうです。」

聖來「うーん、ちょっとだけかぁ」

美穂「あっ、いやっ、そ、そのっ!すごく自信持てますっ!!」


聖來「まあ急に自信持てって言われても困るよね。」

聖來「何かきっかけは必要かな。」

聖來「あ、そうだ。」

彼女は何か思いついたようだ。


聖來「美穂ちゃんはアイドルヒーロー目指してるみたいだけど。」

聖來「戦えるだけじゃダメなんだよ。」

聖來「アイドルなんだから歌って踊れなきゃね。」

美穂「そうですよね。人の前で歌ったり・・・・・・踊ったり・・・・・・」

美穂「あ、あぁ、そ、想像しただけで緊張してきましたっ。」

聖來「その刀は歌い方や踊り方は教えてくれた?」

美穂「えっ、それは・・・・・・知らないです。」


『小春日和』は刀。戦うための力だ。

刀や負のエネルギーの扱い方は知っていても、

まさか、歌い方や踊り方を知ってるはずはない。


聖來「じゃあ、それを美穂ちゃんの力にしようよ。」

美穂「私の・・・力に?」

聖來「うん、それなら刀の人格に負い目を感じずにアイドルヒーローを目指せるんじゃない?」

聖來「美穂ちゃんも自信がつくよね。」

美穂「あっ、確かにそうかも・・・・・・。」


言われて見れば、今まで戦って人々を守れる強さに拘りすぎていたのかもしれない。

歌って踊って希望を振りまく。それもアイドルヒーローの一面なのだ。

もし、それが出来たなら・・・・・・


美穂「セイラさん!私にも何かできるような気がしてきましたっ!」

聖來「うんうん♪いい返事だね!」

美穂「あっ、でも、歌い方や踊り方はどこで習えばいいのかな・・・・・・。」

聖來「美穂ちゃん、そのための私だよ?」

美穂「えっ?」


聖來「歌い方や踊り方は、アタシがコーチして、レッスンしてあげるっ!」

美穂「えっ?」



美穂「ええぇえええええええっ!?」


美穂「せ、せせせせせセイラさんがっ、わ、私に!?レレレッスン!?」

聖來「あれ、いい感じに打ち解けたかなって思ってたけど、対応が逆戻りしちゃった?」

そりゃあそうだ。いきなり何を言い出したのか、この人は。


美穂「だだ、だってセイラさん、おおお、お仕事はっ!?」

聖來「今、やってるお仕事は探し物なんだけど、期限は無いからゆっくりやっていけばいいし。」

聖來「それに後任のアイドルヒーロー候補を育てるのもお仕事みたいなものだよ。」

聖來「あっ、それとも普段はあまり時間取れないのかな?」

美穂「と、とと取れます!取らせてくださいっ!!」

憧れの(元)アイドルヒーローが自らコーチしてくれると言うのに、時間がとれない理由が無い。


美穂「で、でも・・・・・セイラさん、どうして私にそこまでしてくれるんですか?」

聖來「うーん、そうだね。」

聖來「最初は、この地域で精力的に活動してるひなたん星人って子の事が気になって。」

聖來「その子が暗い顔して歩いてたから放って置けなくて、声を掛けたのだけど。」

聖來「話してみて、この子ならきっといいアイドルヒーローになれるって思ったからかな。」

聖來「気に入っちゃったんだ、美穂ちゃんの事。」

彼女は随分と美穂の事を買っていたようであった。

美穂「あ、あああ、あううぅ」

美穂は赤面しすぎて、彼女自身もう訳分からない事になっている。

聖來「これから、よろしくね!美穂ちゃん!」

美穂「よよよよよろしくお願いしますっ!」


こうして、小日向美穂は水木聖來に導かれ、アイドルヒーローを目指すことになったのだった。


――

美穂「ただいまー。」

「おかえりー、遅かったわねー。」

「もうすぐご飯できるから、先座ってなさい。」

美穂「手伝う?」

「いいわよ、今日は肇ちゃんが手伝ってくれたもの。」

肇「お帰りなさい、美穂さん。」

美穂「肇ちゃんも帰ってたんだ。どうだった?バイトの面接。」

肇「そ、それはその・・・・・・表情が固いと言われて。」

そう言って肇は目を反らす。

美穂(ダメだったんだ・・・・・・。)


肇「美穂さんは機嫌よさそうですね。何かいいことありました?」

美穂「えっ、か、顔に出てるかな?」

肇「はい、美穂さんは結構わかりやすいですよ。」

美穂「う、うぅ、なんか恥ずかしいなあ。」

指摘されると余計に顔が赤くなってしまう。


美穂「えっとね、今日は憧れの人に会ったの。」

肇「憧れの方ですか?」

美穂「元アイドルヒーローのセイラさんって人。」

肇「セイラさん・・・・・・。」

その名前を聞いて、肇も少し思うところがあるようだ。

美穂「あっ、肇ちゃんも知ってた?」

肇「いえ、その方なのかはわかりませんが、」

肇「少し前におじいちゃんの刀を渡した人も、セイラと言う方でしたね。」

美穂「えっ。おじいちゃんの刀って・・・・・・ヒヨちゃんと同じ?」

肇「ええ、『鬼神の七振り』の一本で、日本一、欲張りな刀です。」


元アイドルヒーロー、水木聖來。

彼女は『鬼神の七振り』を所有しているのだろうか。


おしまい

水木聖來

所属:フリーのヒーロー
属性:元カリスマアイドルヒーロー
能力:動物(主にわんこ)の使役、鬼神の七振りを所持?

元アイドルヒーローの女性。現在はフリーのヒーローとして活躍している。
チャレンジ精神旺盛な性格で、アイドルヒーローをはじめたのも、フリーのヒーローに転身したのも、
その辺りの性格に由来する。一度決めたら思い切りが良い。
彼女の戦闘スタイルは多様。挑戦的な性格から色んなやり方を試してみたくなるらしい。
そのため、近距離、遠距離に関わらず、多くの戦い方、武装の心得がある。
彼女独特の手法は、その能力『カリスマ』による動物達の使役。
使役と言っても、完全操作ができる訳ではなく、彼女に魅せられ寄ってきた動物に頼み事ができる程度。
動物達の意思を無視することはできないし、そもそも意思も知恵も希薄な虫などには通じない。
現在はとある人物の依頼で、ある物を捜索しているようだ。


『カリスマ』

能力と言うよりは生まれ持った体質。他者を惹きつける超自然的ななにか。
ただし聖來のそれは、人々に対するものではなく、人外に対するもの。
人間ではない意思持つモノに好かれやすい。
具体的には、普通に立っているだけで、周りにたくさんの犬が寄ってくるなど。
動物はもちろんだが、場合によっては精霊や妖怪、悪魔や神様まで惹きつけてしまうことがある。
『正体隠しのサングラス』はこの効果を抑えることができるため、聖來は普段から愛用している。


《ヒヨちゃん》 …… 美穂が『小春日和』および『ひなたん星人』の事を呼ぶ時のあだ名。
《美穂のアホ毛》 …… いつの間にか侵食されてた。
《肇ちゃんのバイト探し》 …… 悉くバイト断られてるのは肌身離さず持ってる刀のせいだと思う。
《熊本》 …… 美穂の心の故郷。
《鬼神の七振り》 …… 聖來さんが持ってるようです?

セイラさんの戦闘スタイルは器用に色々できるけど、それぞれエキスパートにはおよばない赤魔導師系のイメージだよ。

乙ー
聖來さん……カリスマか。英霊みたいでかっこいい
いいお姉さんだなぁ

……ひなたん星人アイドルヒーローって、どの状態で人前に立つんだろう?
戦うとき以外ずっと美穂のままだったら、それはそれでファン層が面白いことになりそうだけど

乙ー

ありさ天帝とウサコちゃんが本編にさりげなく出てるのには吹いたwwww

ひなたん星人がリベリオンするフラグがたったところで
イベント進行

 こんがりと焼けたトーストの表面へとバターがひとさじ落とされた。

 熱によって溶けて黄金色の輝きを残してしみこんでいく。表面がコーティングされ、美しいきらめきへと包まれた。

 音を立ててふたつに割れば、自らの熱を主張すべくあまく温かなパンの香りが湯気と共に立ち上る。


 別の皿にはカリカリになるまで焼かれたベーコンと、白と黄色の鮮やかな目玉焼きが盛られている。

 少し強めに主張するベーコンを、やわらかな玉子が寄り添うことによって受け止めようとしているかのようだ。


 また、鮮やかな緑のサラダも目を惹く。

 ドレッシングなどは特にかけられてはいないようではあるが、

 きちんと全体の調和を持って料理として完成されたそれは、ともすれば殺風景になる食卓の彩も受け持っている。


 そんな朝食をとりつつ、ヘレンはふと思い出したように口を開いた。


ヘレン「………精神操作、ね」

マシン「……いかがいたしましたか、マム」


 そばで待機していたマシンがその言葉を拾って意味を問う。

 会話は聞き手がいて初めて成り立つ。ヘレンは自己で完結しうることは特に口にはしない。

 ならば、これは聞き手を求める呼びかけなのだと彼は知っている。

ヘレン「ハンテーンとアバクーゾ……あの2匹に仕込んだ能力と薬品の話よ」

マシン「本音……秘密を暴き、心を折るもの。反転……本人の意思や思想を改変し、別人と化させるもの、ですか」

ヘレン「えぇ。それに対しての個体差……なかなかに興味深い結果になったわ」


 パンを噛みきり、コーヒーを口に運びつつヘレンが言う。

 今回襲った人間たちのアクションや、暴いた秘密についての統計データを空中にウィンドウを開いて呼び出した。


マシン「……ハンテーンは好意を持って近寄ってきたものが触って敵対心を持ち、悪態をつくパターンが多いですね」

ヘレン「能力を持たない、確固たる信念も持たない。そういった相手にはその結果になるようね」

マシン「一般的な、どちらかといえば道徳といった感情まで制御しているようにも見られます。ヒーローにも効果があるのでは?」

ヘレン「そうであるのならば、楽なのだけど。次よ」


 滑るようにして別のウィンドウがマシンの前へと現れる。

 先ほどまで見ていたデータに比べて、個体差が激しいものについて詳しく書かれているようだ。

ヘレン「明確に敵対して、ハンテーンなどへ意識が向いたものへの効果。いわゆるヒーローへの効果ね」

マシン「……先ほどまでに比べて、変化が多彩です。口調の変化や精神的な拠り所の反転などもあるようです」

ヘレン「そう。強く意識を持った状態で反転すれば、通常よりも大きく変わる。ただし」

マシン「――ただし。先ほどの一般人とは違い芯の部分までの変化が見受けられません」

ヘレン「……そう。いい子ね。続けなさい」


 ヘレンの言葉をマシンが継ぎ、満足気にヘレンは目を閉じた。


マシン「……気弱な善人が強気な善人になる、など。本質は変わっておらず、かえって厄介になったものもいるようです」

ヘレン「つまり。現時点でこちらを単品で運用しても大きな混乱は起こせないわ」

マシン「イエス、マム」

ヘレン「次はアバクーゾ。こちらもそうね……」


 先ほどまでのウインドウが一旦消え、別のウインドウが現れる。

 一般人の本音、秘密。ヒーローの本音、秘密などまちまちだ。


マシン「……さらにばらけています。暴いた本音によっては本人以外が被害を被ったりもしているようですが」

ヘレン「おそらく、隠したいことをさらけ出す……その深度、なのでしょう。推論はあまり好まないのだけど」


 ヘレンが肩をすくめて息を吐く。お手上げの意思というよりもあきれているかのような動作だ。


マシン「その時の相手の警戒度にもよるようですが……あまり、大きすぎることを暴けはしないようでもあります」

ヘレン「そういうことね。どちらも相手の本質を暴き、裏返すには至らなかった……」

マシン「本人にとっては手痛いものであろうと、それによって失墜などを狙うには不十分です」

ヘレン「えぇ。よくわかってるわね」

 ヘレンは顎へと手をやり、少し考えるようなそぶりをする。

 どうあれ、この星の生物たちを狂わせるには不確定で不明瞭なデータが多すぎるようだ。


マシン「あの2匹はいかがしましょうか」

ヘレン「……データは集まったわ。回収の準備をしなさい」

マシン「イエス、マム」

ヘレン「………フッ、問題ないわ」


 しかし、彼女は宇宙レベル。その個体差を生み出す『感情』へと興味は移っていく。

 地上の生物を襲う怪物『カース』のデータも収拾も含めて、あの2匹はなかなかの働きをみせた。

 帰ってきたら、マシンの焼いたパンの一切れぐらいはやろう。そう考えて彼女は再び朝食をとることを再開した。




ヘレン「――マシン。ソイソースがないわ」

マシン「イエス、マム」

 ……回収は、少し遅れそうではあるが。

!イベント情報

『嘘つきと本音』イベントの怪人、アバクーゾとハンテーンの回収準備が始まりました
10日をリミットとして、それを超過した場合倒されていなければヘレンがこの2匹を回収します

怪人たちの撃破が解禁されました。倒したい方はWiki内掲示板にて一報ください

以上、撃破解禁のお知らせとヘレンの優雅な企みレベル2でした

ヘレンさんは宇宙レベルなので醤油だけじゃなくてケチャップやソース、何もかけないなどをその時の気分で変えます。あしからず

乙ー

ヘレンさん流石宇宙レベル

ようし書けた
投下しまー、長文注意


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??「次元超越体、第65535次世界へ接近中!」

??「入電! 第18782次世界の連合艦隊、次元超越体の拠点へ進軍を開始しました!」

??「第37564次世界のスーパーロボット軍団も発進しました!」

??「それでも一部の次元超越体は第65535次世界へ到達する可能性が高いな……SC-01は出せるか?」

??「はい、マイシスターと共に待機状態に入っています」

??「よし、SC-01を第65535次世界へ転送! 座標はSF-92-60-85!」

??「了解! 転送、開始します!」

??「SC-01、任務だ。第65535次世界へ転送後、出現しうる次元超越体を迎撃せよ。尚、
   第65535次世界は平行世界への理解が浅い。よって現地の住人との過剰接触は認められない」

??『……復唱。第65535次世界へ転送、次元超越を迎撃。住人との過剰接触は不可』

??『任務了解。SC-01、発進します』

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――憤怒の街。

辛うじて生き延びていた幼い兄妹が、街中を逃げ回っていた。

妹「お兄ちゃん、もう疲れた……」

兄「頑張れ! もうすぐヒーローが来てくれるかも知れないんだぞ!」

たった一筋の希望を求めて、ただただ、逃げ回っていた。しかし、

『ウォラアアアア!コンノクソガキャアアアアアアア!!』

『イッピキノコラズクチクシテヤル!』

『ヤッテヤル!ヤッテヤルゾォ!!』

逃げた先に、大量のカース。絶対絶命だ。

妹「お、お兄ちゃん……」

兄「あ、あああ……」

『カースノハンゲキハコレカラダァ!!』

一体のカースが兄妹に向けて拳を振り下ろす。

兄妹「「ひぐっ!?」」



バチッ



グギャアアアアアア!?』

振り下ろされたカースの拳は、突如現れた光の柱によって弾き返された。

兄「えっ……えっ……!?」

妹「何……何これ……」

やがて柱が消え、その位置にはメカニカルな衣装を身に纏った女性が立っていた。


??「……転送完了。第65535次世界と確認。座標、SF-92-60-85と……ん? ……転送座標のズレを確認。
   バグでありましょうか……」

女性は突っ立ったままブツブツと呟いている。

やがて顔を上げ、目の前の異形に気がつく。

『テンメェナニモンダァァ!?』

??「……検索完了。『カース』第65535次世界にのみ出現する謎多き存在……」

兄「あっ、あの……」

兄が女性に話しかける。

??「……あなた方は……民間人、でありますか?」

兄「えっ、う、うん……ねえ、お姉さんは……ヒーロー……なの?」

兄の問いに、女性は静かに首を振る。

??「いえ、私はヒーローではありません。しかし……」

女性が指をパキンと鳴らすと、何も無かった上空に突如飛行機が現れた。

??「異形に襲われる民間人を見殺しにしろという指令は受けていないであります。……マイシスター!」

女性の号令に従い、飛行機から黒い塊が二つ投下された。

女性が手に取ったそれは、大型のライフルとガトリング砲だった。

??「シュート!」

ガトリング砲は勢いよく弾丸を吐き出し、一体のカースを蜂の巣にしていく。

『ガァッ!? パ、パワーガチガイスギルゥ!!』

そして露出した核に女性は懐から取り出したナイフを一本投げ込む。

ナイフは見事核に突き刺さり、カースが一体消滅した。

『ウ、ウワアアアアアアアアアア!!』


『カースハモウ!ジンルイナンカニマケナイィ!!』

もう一体のカースのパンチを大ジャンプでかわすと、すかさずライフルを構えて三発発射した。

全く同じ箇所に三回撃ち込まれた弾丸は、玉突き事故のように核の目前まで迫った。

??「もう一発……!」

もう一度ジャンプし、先に撃ち込んだ弾丸の尻目掛けてもう一発。

次々に押し出された弾丸が、ついにカースの核を撃ち抜いた。

『ナンノセイカモ……エラレマセンデシタァァァァァァア!!』

『ウウウウ、ウオアアアアアアアア!!』

残ったカースが泥を飛ばして攻撃してくる。

??「マイシスター!」

女性の号令で飛行機から投下された巨大な鉄板が、泥を防ぐ盾になった。

??「マイシスター、もう一度!」

次に飛行機から投下されたのは、巨大なバズーカ。

??「ふっ!」

鉄板を足場に大ジャンプすると、女性はカースに向けてバズーカを発射した。

『グワアアアアアアアアアアアア!!!』

爆風で泥が吹き飛び、核がむき出しになる。

着地した女性はバズーカを地面に置くと、懐から拳銃を取り出した。

??「フィニッシュ、であります」

拳銃から発射された弾丸は、カースの核を一撃で砕いた。

『ギャギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』


付近のカースが全滅した事を確認すると、女性は兄妹に向き直る。

??「今のうちに安全な所へ避難を。建物の中ならまだ外よりは安全でしょう」

妹「う、うん!」

兄「ありがとう、お姉ちゃん!」

兄妹の避難を確認した女性に、一つ、迫る影があった。

??「……カース、いえ、この反応は……」

偽泰葉「……何者ですか、あなたは」

現れたのは、『憤怒』のカースドヒューマン、岡崎泰葉。――の、偽者だった。

??「あなた方とは過剰接触を避けるよう指示されているので、お答えできません」

偽泰葉「ならそこをどいてくださいよ。過剰接触はいけないんで……しょうっ!?」

言いながら近くのコンクリート片を投げつける泰葉。しかし、女性はそれを片手ではしと受け止めた。

??「私がどけば、あの民間人達を殺すつもりでしょう」

偽泰葉「そうですよ。それがどうかしました…かァッ!?」

今度は停めてあった自動車を投げつけた。しかし、自動車は女性の目の前で真っ二つになって崩れた。

偽泰葉「!?」

女性の手には、刃状の光を放ち続ける筒が、いつの間にか握られていた。恐らくはこれで両断したのだろう。

??「ならば捨て置けません。こちらにも事情がありますので、戦闘力だけ奪わせていただきます」

そう、彼女は来たるべき任務の為に、少しでも弾薬を温存しておかなければならないのだ。

それを、先ほどの戦闘で少々消費してしまった。猶予はあまり無い。

偽泰葉「そうですか。出来るといいですね……ふぅんっ!」


??「マイシスター、回収!」

泰葉が飛び込んで来ると同時に、飛行機がバズーカやガトリング、ライフルを上空から回収した。

偽泰葉「はぁぁぁ!」

泰葉の拳をガードで受け止める女性。

??(これは……常人の力ではないであります。先ほどの怪力を見ても、やはり……ならば!)

女性はガードしていない手で光の刃を振るい、泰葉の左腕を斬りおとした。

偽泰葉「しまっ……!?」

地面に落ちた左腕が、黒い泥となって消える。

偽泰葉「チィッ! ここでやられては面白くありません、見逃してあげますよ、腹立たしい!!」

捨て台詞を吐いて、泰葉はどこかへ去った。

光の刃を収納した女性は、左腕の腕時計のような機械を展開しはじめた。

??「……司令室、応答願います」

亜季「こちらSC-01、大和亜季。司令室、応答願います」

司令室『こちら司令室。SC-01、いや亜季。無事に転送出来たようだな』

亜季「転送直後、カースとの交戦で一部弾薬を消耗しました。補充を要請するであります」

司令室『分かった。マイシスターの弾薬データをアップデートしておこう』

亜季「感謝します。それともう一つ。転送された座標が元の位置とずれているようであります」

司令室『何? それはすまない、後で確認しておく。とりあえず亜季は次元超越体に警戒しておいてくれ』

亜季「了解。通信を終了するであります」

機械を閉じると、亜季は背中から機械の翼を展開し、街の外へと向かった。

翼から少量上がる黒煙にも気付かずに。

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カイ「いやー、なんとか塩と水分けてもらえて助かったよ。ね、ホージロー」

『キンキン』

山道を歩くのは、ウェンディ族の反逆者カイと、その相棒ホージロー。

追っ手が自分を狙うのなら、巻き込まれる人間がいない場所にいればいい。

そう考えたカイはこうして人気の少ない場所を移動し、たまに民家で塩と水を分けてもらっていた。

カイ「……ヨリコ様、どうしちゃったんだろ」

少し俯き、寂しそうにかつての主の名を口にした。その時、

??「うわわわわああああああああ!」

カイ「!?」

『キン!?』

突然、どこからともなく声がした。それも相当焦ったような。

周囲を見渡しても声の主は見えない。

カイ「あ、あれ……? どこ……?」

??「そこの人ー! どいて下さいー!!」

声はどんどん近づいてくる。

『キキィンキン!』

カイ「えっ、上? ……」

??「うわああー!!」

見上げたカイの目に映った光景は、まさに『親方、空から女の人が!』状態であった。

カイ「えっ、ちょっ、待っ」

ごつっ

カイ・??「「ふぎゃっ!」」

二人は互いの顔面に直撃し、そのままぶっ倒れてしまった。

『キン!キンキンキン!?キキン!?』

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やがて目を覚ましたカイは、落ちてきた女性、亜季と話していた。

亜季「海中に住むウェンディ族、でありますか……資料には無いでありますな」

カイ「んー、イマイチよく分からないんだけどさ、平行世界って何?」

亜季は「自分はこことは別の平行世界からやってきた戦闘サイボーグだ」と言っていた。

しかし、その肝心の平行世界をカイは知らなかったのだ。

亜季「うーん、分かりやすく申し上げますと。全ての物事には無限に近い、いくつもの可能性があります」

カイ「ふんふん」

亜季「例えばカイ殿がウェンディ族から離反しない可能性、ウェンディ族が地上人と友好的に接触した可能性、
  そもそもウェンディ族が生まれない可能性……それらの可能性を体現した世界が平行世界であります」

カイ「……じゃあ、平行世界ってすごいたくさんあるんだね」

亜季「ええ。我々はこの世界を第65535次世界と呼んでいます。これでも番号はまだまだ若い方でありますよ」

カイ「ろ、ろくまん……そ、それで、次元超越体……だっけ、それをやっつける為に亜季さんは来た、と」

予想外に大きな数字が出てきて面食らうも、カイは気になっていた部分を確認する。

亜季「そうです。次元の壁を容易く越え、世界そのものを食らう化け物。それが今、この第65535次世界に迫っているのであります」

カイ「そんな化け物が……ん? でもそれ、話しちゃって大丈夫なの? 過剰接触は確か……」

亜季「それはお互い様でありますよ。カイ殿も他人を巻き込めないと言いながら、私に話してくれたではありませんか」

カイ「あ……そっか……」

亜季「……カイ殿は、これからもお一人……いえ、ホージロー殿とお二人だけで戦うおつもりですか?」

カイ「えっ……う、うん、そうだね……ウェンディ族の問題なわけだし……」

トーンを落として答えるカイの肩を、亜季がはしと掴む。

カイ「わっ……亜季さん?」

亜季「それは違うであります。カイ殿を始末したウェンディ族は、地上人を凶刃にかけようとするでしょう。
  それは最早、ウェンディ族だけの問題では無いのであります」

カイ「…………そう、だね……突然の事で混乱してて、そんな簡単な事も分からなくなってた……」

亜季「人々を巻き込みたくなければ、自分の手で護り、戦えばいい話であります」

カイ「……うん、そうだね。ありがとう、亜季さん。吹っ切れたよ」

亜季「亜季、でいいでありますよ。こんなにお互いの内をさらけ出して話した私たちはもう、トモダチでしょうから」

カイ「うん、分かった。じゃあ、あたしの事もカイでいいよ、亜季」

亜季「了解であります、カイ」

二人が笑いあい、固く握手したその直後。

ピピピッ ピピピッ

カイ「わわっ、何?」

『キン?』

亜季「司令室からの通信であります。失礼……はい、こちら第65535次世界、SC-01、大和亜季」

亜季は腕時計を展開し、通信を開始する。

司令室『亜季、緊急だ。第18782次世界の連合艦隊、第37564次世界のスーパーロボット軍団、
   ならびに第00999次世界の魔法騎士部隊、第01549次世界の武装ニンジャ隊等の活躍により、
   次元超越体のマザーを削除確認。各世界で活動する次元超越体も次々消滅している。我々の勝利だ!』

亜季「な、なんと! では、私は……」

司令室『ああ、お前の任務は終了した。ただちに帰還してくれ』

亜季「了か……あっ」

言葉を切り、亜季はふとカイの方を見やる。


カイ「……あたしは大丈夫だから、亜季は帰りなよ」

『キン……』

カイはそう言って、寂しげに笑っていた。

亜季「…………」

司令室『どうした、亜季?』

少しの逡巡のすえ、亜季が口を開く。

亜季「……申し訳在りませんが、帰還任務よりも優先すべき事案が発生した為、命令を拒否します!」

司令室『……なっ、なにぃ!?』

カイ「……亜季……?」

突然の発言に、司令室もカイも呆気に取られる。

司令室『お、おい亜季! どういう事だ! 何なんだ、優先すべき事案とは!』

亜季「それは…………それは、トモダチのお手伝いであります。では、通信を終了します」

にこっと笑って、亜季は強引に通信を終了させた。

カイ「亜季……いいの?」

心配そうにたずねるカイに、亜季はまた笑って答えてみせた。

亜季「私の仕事は終わりました。有給休暇とでも思って、もう少しこの第65535次世界に滞在するであります。なにより……」

カイ「……なにより?」

亜季「トモダチが困っていれば、手伝うのは当たり前でしょう?」

カイ「……!! ありがとう、亜季!」

『キッキン!』

亜季「これからもよろしくお願いするであります、カイ、ホージロー!」

カイ「うん!」

二人は手を取り合うと、仲良く歩き出していった。

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??「通信、途絶えました」

??「…………見れば分かる」

??「どうしますか? 今ならまだ強引にこちらへ転送させることも出来ますが」

??「……いや、好きにさせてやれ。あ、マイシスターの弾薬データアップデートは定期的にな」

??「はっ、了解しました」

??「…………見たかよ、通信切れる直前」

??「何を……でしょうか」

??「あいつ、俺たちに初めて笑顔見せやがった」

??「……そういえば」

??「それほど魅力的なモンを見つけたんだろ。無理矢理引き離すのも酷だ」

??「そう……ですね」

??「よし、全員! 亜季の無事を祈って敬礼!」

??「「「「はっ!!」」」」

続く

・大和亜季

職業(?)
戦闘サイボーグ

属性
サイボーグヒーロー

能力
多数の火器を使用した複合戦闘術

詳細説明
平行世界の平和を管理する機関から第65535次世界へ転送された戦闘サイボーグ。
到着してほどなく任務がなくなってしまい、トモダチになったカイの手助けをすると決める。
サイボーグは半分人間なので普通にお腹が減ったり体調不良になったりもする。

関連アイドル
カイ(トモダチ)

関連設定
マイシスター
次元超越体

・マイシスター
亜季をアシストする小型のステルス無人輸送飛行機。
亜季の指示に応じて搭載してある火器は武具を投下、回収する。
普通自動車くらいの大きさで、内部に人間が乗り込むことは不可能。
スパ○ボDのブラン○ュネージュをイメージしてもらうと分かりやすい。

・次元超越体
次元の壁を乗り越えて世界そのものを食らう化け物。
ヒーローたちが戦う第65535次世界にも魔の手を伸ばそうとしたが、
各世界連合軍の活躍でマザーが討たれ、完全に全滅した。まあ出オチ。

・イベント追加情報
偽泰葉の一体が損傷、逃走しました。しかし戦闘力はそこまで下がっていません。

カイが亜季と合流、山奥引きこもりをやめました。

以上です
カイくんに友達を作りたかったんです
どうした軍曹言葉遣いが変だぞしてないか心配……
では失礼しました

乙です
丁度書き上げたので嘘つきと本音イベント時間軸でアバクーゾ討伐投下

ナニカは街を歩く。切り離した生物たちの記憶を読み取って、それらしい建物を見つけたのだ。

今いた場所からは少し遠くて、結構歩く必要があったのだけど。

記憶を読み取ると…たとえばシスターが落としたカップの破片が猫に当たっていたり、刀で切り合う女の子たちがいたりで余計な情報も多い。

そういえばシスターは不自然にカップの事を許されていた気がする。猫に謝ってくれたから良い人なんだろうが…能力者なのだろうか。

(神様なんていないのに、シスターをしているのは可哀想かな。…関係ないけど)

神様がいない事なんて、自分の存在が証明しているようなものだ。

泣いても叫んでも祈っても助けてもくれないし、死なせてもくれなかったのに…どうして神など信じられるものか。

まだ『奈緒』を救ったきらりを神と言っていた方が信憑性はある。自分は未だに苦しいけれど。

浄化で救われたのは核による浸食の苦しみだけ。そして奈緒が地獄のような過去を自分からも仲間からも隠そうとした結果が自分だ。

ナニカは神なんて信じていなかった。実際に神はいるというのに。

今行くべき場所はただ一つ。だから何も気にしないで歩いた。

「…ここ?」

そここそが探していた『じょしりょう』だった。

「お部屋いっぱいあるなぁ…」

取りあえず外をグルグル回ってみたが、さすがに部屋までは分からない。

「あのー」

暫く立ち往生していると女子寮の中から女の人が出てきた。

「…だれ?」

「ここの女子寮に住んでいる茄子です♪ずっとウロウロしてたみたいですけど…何か用事があるのかなぁと思って…。」

茄子はすでにナニカが人ではない何かと見抜いていた。しかし別に暴れようとしているわけでもないのでこうして話をしている。

「あたしね、お姉ちゃんに会いにきたのー。加蓮お姉ちゃん。」

「あらあら…妹さん?…でも加蓮ちゃんは今出かけていますから…どうしましょう。」

そんな人外の存在があの少女と血で繋がっているとは思えないが、お姉ちゃんと呼ぶほどの仲なのだから悪い関係ではないのだろう。

…実際は『血』で繋がってはいるのだが。

それに何故か茄子の脳内では『ドーレミーファーソラシドー♪』と音楽が流れてきてほのぼのとしたのもあった。…別におつかいではない。

「…お姉ちゃんのお部屋はどこなのー?」

「加蓮ちゃんの部屋はあそこですね。でも鍵はないですよね?」

茄子は特に警戒することも無く加蓮の部屋を示してくれた。

「ないよ…でも部屋は覚えたよ。だから大丈夫!」

「そうですか、それはよかった♪」

ナニカがにっこり笑う。と茄子も笑った。

「また来るから…お姉ちゃんには黙っててね?」

「…ああ!サプライズなんですね!そういうことなら♪」

「よかったぁ!…えっと、茄子お姉ちゃん、ありがとー!」

「どういたしまして♪」

ブンブンと手を振って、ナニカは女子寮から離れていった。

『またいつか必ず来る』と、そう言って去って行った。

加蓮はアバクーゾの被害を受けてしばらく立ち直れないでいたが、やっとの事で立ち直り、行く途中だったバイト先へ急いでいた。

怪人騒ぎのせいで多少の遅刻は大丈夫だと、店長が言ってくれたのがありがたい。

…さらに付近では多眼の怪物がでたという話もあるし、ここの治安が少し不安になる。

―     ?

「え…?」

微かに声が聞こえた気がする。自分に向けた声が。

どうしてそう思ったのかもわからない。けれどそうだと確信する自分がいて。

気味が悪いわけでもなく、ただそれが当然で。

振り返った視界の端に、かすかに黒い何かが見えた気がした。

「ま、待って!」

路地裏に曲がって行ったそれを思わず追いかけてしまう。

路地裏に入ると黒いスカートらしきものは見えるのに、追いかけても絶妙なタイミングでそれ以外は見えない。

「会ったことあるよね!?逃げないで!お願い!」

どこで会ったのか、どういう姿なのかも微かな記憶が覚えていると言っているのに、全く思い出せない。だから、会いたい。

しかし、だんだん距離は離れていくばかりだった。

足音だけを頼りに追いかける。本当にどうして追いかけたいのかもわからなくなってきた。

走って走って、角を曲がって…

「うわっ!」「きゃあっ!」

「ご、ごめんなさい…って奈緒!?」

誰かとぶつかってしまった。…と思ったらそれは知り合い。

「あ、えっと、加蓮…どうしてここに?」

「人を探してて…こっちに来なかった?」

「…どんな人を探してたのか聞かないと答えようがないだろ?」

「黒い服…なんだけど…」

「ゴメン、知らないや。」

「…そっか。なら仕方ないかな…見失っちゃった。奈緒はどうしてここに?それに今日は髪型違うね?」

「え?…怪人騒ぎがあっただろ?それを探してたんだ。…髪形はさっき解けただけ。」

「大変だね…ってバイト行かないと!ゴメンもう行くね!」

「うん、またな!」

慌てて去って行った加蓮に手を振る。…完全に言ったことを確認すると、寂しそうに呟いた。

「まさか会うとは思ってなかったの…ゴメンね、逃げちゃって…。」

「加蓮…お姉ちゃん、まだダメ。今はダメ。思い出しちゃうから。…夢はまだ夢のままがいいよ。まだ不完全だもん。」

しかし、それと同時に狂気的な笑みも浮かべた。

「キシシ…でもね、夢の世界が現実になったら、いつでも会えるからね!それまで待ってて…!絶対に迎えに行くから…!」

自分の存在が異端であると決して認めようとしない。

「あたしとお姉ちゃんだけじゃないよ。みんな一緒だから…お友達いっぱいできるから!今までの分、いっぱい愛してくれるから!」

ナニカはあまりに世間知らず。いつか自分が行う行動が正義だと信じている。根拠も何もないというのに。

…それが全てに対する侵略など、これっぽっちも思っていない。

「…んー奈緒が目を覚ましそう…?うーん…どうしようかな…」

奈緒の意識が目覚めた時に腕や耳が人の物に戻っていたらさすがにまだ目覚めていない能力にも気付くだろう。だから今はいつもの奈緒の状態に戻してある。

『お兄ちゃん達』『お姉ちゃん達』も、夢の中で加蓮との会話の邪魔にならないようにしてはいるが…

彼らが認識できる筈の加蓮と会話できない事を不審に思う可能性もある。彼らに気付かれた程度なら問題はないが、万が一と言うこともある。

奈緒を屈服させて、自分が彼女を支配する側になる。…だから奈緒が少しでも本来の能力に気付いてはいけない。

そしてそうすれば加蓮が安全な状態のまま力を使用できる状態に持ち込める。奈緒の事など知った事ではない。

…だから、本来は下位の存在である自分が勝利する、最高の機会を虎視眈々と狙う。

「面倒だし…もう寝よーっと。どうせ奈緒が起きれば起きても寝てもまた夢の中…」

夢の悪夢は慣れてしまった。痛みも苦しみも毎日与えられれば慣れる。

それにどうしようもなく苦しくても、加蓮に会えるなら…耐えられる。

大好きなあの人は優しい人。今までの罪を償おうとしている。嫉妬している姿も素敵だ。

きっとそのまま生き続ければ…罪の分以上の善行だって積めるはず。ナニカはそう確信していた。

絶望的な事に…死ぬことはできないけど。

「あーば、くぞー!」

「いい加減、降参したらどうだぁ!」

そんな事を考えていると、路地裏の狭い道を、もふもふな怪人と空を飛ぶ女の人が追いかけっこしながら通り過ぎた。

空中には鋏が舞っている。時折鋏がもふもふの毛を切り、ハゲができている。

そして切られた毛がふわふわ舞ってナニカの顔にぶつかった。

「くちゅん!」

『…あたし、怖い…お姉ちゃんに拒絶されるのが怖いよ…』

「…」

意識しないで出た言葉。…彼女の本音。

…拒絶される理由は思いつく。化け物である事や、(認めたくないけど)奈緒から生まれた人格であること。

…そしていつか行う計画。優しいあの人はきっと拒絶するだろう。でも止めることはできない。夢を叶えたいから。

「…怖くない。拒絶なんて怖くない…。…お姉ちゃんの為でもあるんだから…!」

言葉の上に嘘と虚勢と言い訳を塗る。素直なはずのナニカさえ、素直になれない時もある。

自分の正義は正しい。間違いなはずなんてない。…でも怖いものは怖い。それだけ。

「もう!…ムカツクなぁあのもふもふ…!」

寝ようと思ったけれど、止めよう。あの怪人に一発食らわせないとイライラで眠れなさそうだ。

ぐちゃぐちゃと体を変えるとさっきの二人を追いかけ始めた。

アバクーゾは全力で涼から逃げていた。逃げ足には自信があったが、相手が空中を浮いて追いかけているからか距離は変わらない。

それに鋏で毛を切られつつあることが尚更恐怖を煽る。

そんな追いかけっこの途中、路地裏の上から道を塞ぐように泥が降ってきた。スライムのように形をある程度保ちながら。

「あば!?」

思わぬ奇襲にアバクーゾは立ち止まる。

「っ!『止まれ!』」

涼も靴に命令を出して急停止するとその泥のてっぺんから髪を乱した少女が『生えて』きた。…貞子のように。

「あばばばばば!?」

「!」

「お姉さん…お逃げなさい…なんてねー」

ノイズがかかった声でまるで動揺の歌詞のようなセリフを言い放つ。

「に、逃げろ…?」

涼は目の前のコレが何者かわからなかった。一瞬この怪人の仲間かとも思ったが、様子から察するに違う。

「あたしは…んっとえっと…ジャスティスちゃんだよ!キシシ、もふもふめ…お前のせいで何人の人が迷惑したのかなー?」

明らかに適当に思いついた名前を言い放つ。…見た目から言えば悪のモンスターだろうと突っ込みたくなる。

さらに、少女以外にも触手やら動物の頭やらが生えてくる。もっとモンスターらしい見た目になっている。

もっと言えば乱れた髪の毛の隙間から見える真っ赤な瞳がピカピカ光って不気味だ。

「…お姉さん、本当に帰った方がいいよー?」

少女の下のスライムのような体が横に割れる…いや、口を開いたようにしか見えなかった。

「これからごはんなのー。」

「あばぁ!?」

「はぁ!?」

食われる。この化け物に食われる!

涼もアバクーゾもそう確信した。

「…お前の事…忘れないからな…」

涼はそのまま後ろに全力ダッシュした。

「あばくぞー!?」

軟体動物のような触手が逃げようとしたアバクーゾを捕える。

『ママとパパのところに帰りたいの…』

「…!」

本音が漏れるが耳を塞ぐ。聞きたくもない言葉だから。

「もう!死んじゃえ!」

下半身の怪物が大きく口を駆けてアバクーゾを丸呑みした。

口に甘い味が広がる。

体のどこから食べても口に食べた味が伝わってくる仕組みだから。

無意識の認識操作で生物の体液等を甘く感じるようにしてなければおかしくなってしまいそうだ。

中でそれが溶けていく。吸収して、いらない部分が泥から吐き出される。

…しかし、本音薬は効果を発揮していた。

『拒絶しないで』

『受け入れて』

『認めて』

『愛して』

それが誰に向けられた言葉なのか、ナニカにもわからない。

『辛いよ』

『苦しいよ』

『死にたいよ』

いつの間にか涙が流れていた。

『誰でもいいからあたしを殺して』

『助けて…あたしが世界を壊す前に…!』

本音薬を吸収しすぎて、もう誰の言葉かもわからない。

黒い泥が崩れ、普通の少女の姿に戻る。

「…」

体を組み替えていつもの奈緒の姿になる。…誰もいない。言葉を聞いていた者は誰もいない。

「…あたしはそんな事なんて思ってない!あたしは間違ってない!」

「奈緒も起きるしもう寝るもん!…ばか。」

誰かに向けられたわけでもない言葉が路地裏に少し響いた。

「ん…ここは…どこだ?」

奈緒はどこかもわからない路地裏で目を覚ました。

…別に体に異常はないようだ。

「…さっきのはテレポートさせる能力持ちの怪人だったのか…?」

全く違う推論を立てて起き上る。

「ってきらり!きらりをまた探さないと…!」

何も知らないまま、何にも気付かないまま、奈緒は街の中へ駆けて行った。

『ご主人様が寝てた間になんか知らないけど新しいのがきたねー』

『寝てる間に食べたのでしょう…アルパカでしょうか?でもハゲてますね』

『まあいいや。いらっしゃいませよろこんでー君も体がもう無いから僕らの一部になるんだー』

『雄みたいですね…まあ歓迎しますよ。』

「あば…?」

『やったね、やったね、おめでとう!』

『君は生き続けるのです…我々の中で…』

以上です。ナニカは無神論者ちゃん
アバクーゾは僕らの心の中に…割と悲惨な最期だね!

憤怒の翼竜で投下するよー!

裕美「轟音がしたから様子見に行っただけなのに……」

裕美のすぐ横を憤怒の翼竜のカース弾が通り過ぎる。

裕美「な、なんでこんなのが空から落ちてくるのっ!?」

『氷よ!寄り集まりて塊になれっ!』

翼竜はその氷塊を苦もなくその鱗で弾く。

裕美「か、硬い…!?」

翼の破れた翼竜は二本脚で暴れ回りカース弾を吐き出す。

裕美「普通地上に落ちたら一気に戦力低下とかそういのじゃないかな!?」

『っ、雷よ!穿って!』

苦し紛れにペン先から放った小さな稲妻が走って翼竜の脚に突き刺さる。

すると翼竜が目に見えて苦しみだす。

裕美「あ、あれ?翼竜の脚に鱗が剥がれて傷が…これって弱点…?」

そう思ったのも束の間、翼竜自体が脚の修復に力を回したのか、傷の付いた場所が鱗で覆われて行く。

裕美「…どうしようこれ…」

翼竜は絶え間なくカース弾を放ちながら突進してくる。

裕美「え、えと……!?」

『…も、元ある形に戻れ! 』

『繋がりあえっ!』

目の前には通行禁止の立て札が現れる。

何やってるんだろう私、と思うがもう引けない。

裕美「ぴ、ぴっぴー!通行禁止ーっ!」

全くの躊躇なく放たれたカース弾によって通行禁止の立て札が再び瓦礫へと戻る。

裕美「…だよねーっ…!」

現実は非常である。

裕美「しょうがないよねこれ…」

最終手段というより精神的衛生上やりたくないこと。

『氷よ!寄り集まりて塊になれっ!』

裕美「きょ、強行突破っ!」

目の前に器用に氷塊が浮かぶように調整して盾にしながら前進する。
カース球を浴びる度に氷塊がガリゴリと削れていくのが感覚で分かる。

裕美「…そんなに持ちそうにないかな、『風よっ!』」

ふわりと風が裕美を巻き込みながら翼竜の方向へと激しく吹き荒れる。
吹き荒れる風の方向、翼竜の片翼へと思い切り飛び込む。

裕美「少し小さくなって貰うよっ!」

裕美のペン先が輝き出す。
魚肉ソーセージカッターなどという不憫な名前の与えられた切れ味だけはピカイチの魔法。
翼竜の片翼を根本からボールペンでなぞる。
すると翼竜の翼がズルりと削げ落ちる。

裕美「やっぱり翼に核があるなんて都合のいいことはないよね…」

ぶくぶくと翼竜の翼があった場所が蠢き、再生をしようとする。

裕美「もう片方も切り落とさないと厳しいかな…?」

裕美はポケットから羊皮紙と羽ペンを取り出しながら呟く。

――魔術管理人ユズは契約を行い、使い魔を託す。確実な信頼者 関裕美へ

裕美「お願いっ!ぷちちゃんっ!」

『みーっ!』

現れたのは紅の鎌を持つぷちちゃん。
ぷちちゃんは目の前まで迫ったきたカース弾を焼き尽くす。

裕美「…緑のぷちちゃんは風で赤のぷちちゃんは炎なのかなぁ…」

裕美「でも今回は炎なら都合がいいかもっ…!」

裕美「よ、よしっ、片翼の修復が終わる前にもう片翼も切り落とさなくちゃ…」

裕美「…ぷちちゃん、お願いね?」

『みみ、みぃーっ!』

多分、任せてくださいっ!と言っているのだろうと思った裕美は駆け出す。
突如飛び出した裕美を翼竜が口を大きく広げカース弾を放つ態勢に入る。

『みっ!』

大口を広げた翼竜の口元で小規模の爆発が起きる。

裕美「…定点で爆発…ぷちちゃん凄いなぁ…」

『水流よっ!』

すかさず仰け反った翼竜の首を水流で押し出し、残ったもう一方の翼を曝け出す。

裕美「せーのっ!」

翼竜の残った翼の下まで潜り込んでボールペンで翼の根本をなぞる。
憤怒の翼竜の怨嗟の声と共にもう片方の翼が地に落ちる。

裕美「…大分ちっちゃくなったね、これならいけるかな?」

両翼をもぎ取られ巨大なトカゲと化してしまった翼竜は激しく吼える。

裕美「ぷちちゃん、暫くの間守ってくれるかな?」

『みみ~♪』

裕美「あはっ、自信満々だねっ」

『み~!』

裕美「よし行くよっ!」

『氷よ!大いなる我が力に従い、全てを覆い隠せ!アイシクルケージ!』

辛うじて翼をもがれた翼竜を閉じ込めるだけの大きさの氷の檻。
もちろん氷の強度もお察しだし、数分あれば砕かれるだろう。

裕美「一番得意な魔法で行くよっ!」

裕美は足元に転がっていた瓦礫から一欠片摘み上げると翼竜目掛けて放る。

『元ある形に戻れ! 』

すると翼竜の上空で裕美が放った欠片を中心に辺り周辺から瓦礫の粒が、塊が見る見るうちに集まる。

裕美「細かい欠片は無視でいいから重くて硬いのを中心に…!」

翼竜の上空には荒削りではあるが中小サイズのビルが出来上がっていた。

裕美「ぷちちゃん、ゴー!」

『みぃ~♪』

ちびちゃんは炎を巻き上げ氷の檻ごと翼竜を焼き尽くす。

裕美「い、いくよっ!」

『繋がりあえっ!』

瓦礫たちが繋がり合い、完全にビルの形を為して重力に従って氷の檻の真上に堕ちてくる。
そして炎により半ば溶かされた氷の檻を容易く砕き、憤怒の翼竜を容赦なく押し潰す。



裕美「…倒せたかな?」

目の前の半壊したビルの下からは泥は完全に消え去っていた。

裕美「…なんだろう、自分で直して自分で壊すって…最初から壊れてたとはいえ直したほうがいいのかな…」

『みーっ!』

紅い鎌のぷちちゃんの体が薄っすらと透明になる。

裕美「…うん、お疲れ様」

『みみっ!みー!』

裕美「…この街の騒動が終わってから…?、う、うん…頑張るよ」

なんとなくぷちユズの言いたいことが分かるようになった裕美であった。

終わりです。
ぷちユズちゃんがKAWAII。
まさか修復魔法で戦う日が来るとは思わなかった。
裕美ちゃんの受難は続く。

イベント情報
・憤怒の翼竜が圧死しました
・使い魔譲与の契約書が残りが水のぷちユズ一枚。

乙乙

翼竜倒した! まさか裕美ちゃんがやるとは思ってなかったんで意外
器用貧乏って言われながらも強力な近接切断と、壊れた街を利用した大魔翌力使わなくてすむ環境がそろったおかげもあるのかな
ただ、残りのぷちユズが1枚なのが怖い。もしも押忍にゃんと遭遇とかしようものなら……

乙ー

裕美ちゃん頑張ってるね!

そういえばイヴさんや裕美ちゃんがナチュルスターの今の状態知ったら無理しすぎってお説教タイムにはいっちゃうのかな?

修正
>>306
△ちびちゃんは炎を巻き上げ氷の檻ごと翼竜を焼き尽くす。

○ぷちちゃんは炎を巻き上げ氷の檻ごと翼竜を焼き尽くす。

>>310
現状新魔術覚えてもMP足りないのでスケールダウンor発動しない→結局魔法メイン
という弱キャラ道を突き進んでいます。
>>311
身内第一の人だから今の状態見られたら怒られる可能性大。

ちょっと投下します

女「神父様、私明日試験で...不安なんです...」

神父「なるほど...そうですか...」

女「神父様...」

神父「『覚悟』を決めましょう。明日試験があるのは変えられない。それならば...」


━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━

女「ありがとうございました、神父様」

神父「いえいえ。貴女に神のご加護がありますように」


バタン


クラリス「神父様、そろそろ昼食にしましょう」

神父「お、もうそんな時間か」

クラリス「さあ、いただきましょう」

神父「おう、いただきます」

クラリス「いただきます」

クラリス「神父様、最近天使様に会いました」

神父「ほう、そりゃすごいな」

クラリス「驚かれないのですか?」

神父「今更天使ごときじゃおどろかんよ」

クラリス「そうですか...でも、その天使様はどこか変でした」

神父「ほう、変か...実は天使でもなんでもなかったりしてな」

クラリス「そ、そんなことはないと思いますわ」

神父「そうか、まあ先に飯食べよう。冷める」




神父「そういえば、最近は能力を変に使ってないだろうな?」

クラリス「......」

神父「おい」

クラリス「神父様、懺悔をさせてください」

神父「おい」

クラリス「神父様の目覚まし時計を三十分早めたことをお許しください!」

神父「あれやったのお前か」

クラリス「神父様に何故能力が効かないのか確かめるために...」

神父「おかげで、二度寝するには微妙に短く、起きてるには微妙に長い三十分だったぞ」

クラリス「何故神父様には私の能力が効かないのかしら...もしかして、神様を信じていないとか」

神父「そんなわけあるか。俺はこれでも神父だからな、信心はあると思ってるぞ。よし、ごちそうさま」

クラリス「ごちそうさまでした」

神父「あ、この後人来るからな」

クラリス「わかりました」

━━━━━━━━━

ピンポーン

神父「お、きたきた」


「ちわっす!」

「へー、教会なんて初めてだ」

「あ、私が責任者の...」


クラリス「神父様、その方たちは一体誰でしょうか」

神父「ああ、この人たちはリフォーム業者だ。この教会も外見は繕ってきたが、流石に中となるとどうしようもなくてな」

クラリス「それで改修をするのですね?」

神父「そうだ。あと部屋が二三増えるぞ」

クラリス「それはすごいですね。ですけどその間私たちはどこで過ごせば...」

神父「あっ」

教会が大きくなりました
人を匿うことができるようになりました(危害を加えなければ人外も可)最大三人
いないとうそをついてくれと言われればつきます
匿ったことに対して、クラリスたちは許されるので、ばれた場合も被害はありません
遠慮なくおいでください
必要に応じて追っ手の車の燃料をとるくらいはします
でも日本には山の国境はないけど



クラリスの口調全然覚えてない

今から投下します

周子「問題は無さそうかなー」

――『憤怒の街』から少し離れた場所。

――塩見周子の視線の先に、

――『浄化の雨』を降らせている間、動けずにいるナチュルスターと、

――彼女たちを、迫り来るカースから護衛している能力者たちの姿があった。

――周子は、更に別の場所からそれを見守り、

――何かあったときにいつでも助太刀できるようスタンバイしながら、

――後進の奮戦を眺めていた。


周子(人数も増えたし、連携も上手くなってきてる)

周子(志乃さんが大本を潰してくれたおかげで、体力も保ちそうだから)

周子(心配の必要は無い、かな)

――協力し合い、善戦する様に頼もしさを感じ、

――自分の出る幕は無さそうだ、

――と、安心すると同時に、

――あまりにも危なげのないこの状況に、

周子「暇だなー……」

――若干の退屈を持て余していた。

――周子は、志乃にこの場を任されているが、

――事態がどんどん好転していき、

――もう、悪い方には転がりそうにないとなると、

――ただ、ぼーっと見ていてもつまらないし、

――いつまでもここに留まっている必要も無いだろう。

――と、考え始めていた。


――どこであろうと、有事にはすぐさま駆けつけられる。

――ならば、何もせずにいるよりは、

――彼らの手伝いをした方が有意義であろう。

――無論、裏方に徹しながら、だが。

周子「アレをやるか」

――周子の瞳が、

――閉じられた地獄の釜……、

――カースの湧き出ていた箇所から、

――ナチュルスター達のいる場所まで、

――ずらりと列を成し、

――行軍するカースの群れを捉える。


――現状、

――アレを全滅させば勝利条件達成、

――といったところだ。


――つまり、アレをいくらか片付ければ、

――あの場で戦う彼らの負担を、

――ある程度は軽減できるだろう。

周子「さて……」

――と、軽く伸びをして、

――それでは行くか、となった時に、

――ふと、

周子「そっか、一人か」

――そんなことに気付いた。


――私情を挟んだ戦いなど、だいぶ長いことしていなかった。

――歳を取るごとに、荒事などはだんだん面倒になってしまい、

――今や、自分から争いを仕掛けることなど殆ど無い。

――基本的には、誰かのサポートなり、助力なり、

――他の人について戦うことが多くなった。

――だから、なんとなく不思議な感覚だった。

――久しぶりに、

――誰を手伝うでもなく、

――自分から、一人で、自身の裁量で、

――この力を振るう。

――と、いうことが。

周子「相手はカース……」

――周子の瞳に、

――妖しい光が灯る。


周子「じゃあ」

周子「たまには……、いいよね?」

――ゾッとするほど、冷たい声だった。

――その唇は邪悪に歪み、

――周子の纏う空気が、

――どす黒いものに変質する。


――今日、

――周子の目に留まってしまったカースは、

――運が無い。

――この辺一帯のカース達は、

――煩わしい『雨』を降らせている存在に気づき、

――その者の息の根を止めんと、

――群れを成し、行軍している。

――そんな中、

――いくらかのカースが、列を外れ、

――ふらふらどこかへと、

――まるで誘われるように彷徨いだした。

――その数はどんどん増えていき、

――皆、てんでバラバラの方向へ向かうようでいて、

――最終的に、とある一箇所へと集まっていった。

――ビルや、高速道路などの建築物に阻まれ、

――若干、周りから見えづらくなっている場所。

――そこに、

――周子が居た。

――周子を取り囲むように、

――大量のカースがひしめいていた。

――皆一様に押し黙り、

――ゆらゆらと、その場でうつろに揺れている。

――周子の力によって、催眠のかかったような状態になり、

――正気を失っているのだ。

――それは、

――パァンっ!

――と、周子が大きく手を叩くと、

――一斉に取り戻され、

――各々、しばらくは現状に戸惑いを見せたものの、

――すぐに目の前の少女へと『憤怒』の罵声を浴びせかけ、

――圧倒的な物量で押し潰さんと襲いかかり、

――そして……。

周子「悪いけど……」

――ピタリと止まった。

――カース達の動きを止めたのは、

――『恐怖』であった。

――本来、カースの抱き得る感情は、

――七つの大罪、それぞれに該当するどれか一つであり、

――彼らの場合は『憤怒』だ。

――それ以外の感情は一切持たず、

――ただひたすら『憤怒』の激情のままに行動する。

――そのカースが、今『恐怖』を抱いていた。

――――目の前の少女にだ。


周子「今日は」

――初めて訪れた感情に戸惑い、

――それが何なのかわからず、

――動ける筈なのに動けぬことに混乱し、

――わけもわからぬまま、

――より、『恐怖』の深みへとはまっていく。

周子「愉しませてもらうよ」

――瞬間、

――目に見えぬ、

――何かおぞましいものが、

――この場を覆った。


――暗く、

――昏く、

――どこまでも深い、

――闇。

――ぽっかりと開いた、

――穴。

――地獄の底の、

――更に奥、

――何も見えぬ陰を、

――上から塗りつぶす程の、

――漆黒。

――望む望まぬに関わらず、

――覗きこんでしまった、

――深淵。

――その時気付く、

――深淵もまた、

――こちらを覗いていることに……。

――その場全てのカースが震えだす。

――許容を超えた『恐怖』が、更に膨れ上がり、

――周りを伝播して、飽和状態になった。

――そして、たった一言、


カース「―――――コワイ」


――と、誰かが呟いたのをきっかけに、

カース「ウ……、ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

カース「イヤダアアアアアアアアアアアアアアアァアァアア!!!!!!!!!!」

カース「タスケテェェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」

カース「ヒィィィィイイイイイイィイィィィィイイイイィィイイ!!!!!!!」

――パニックが起こった。

――皆が皆、

――我先にと逃げ惑う。

――周りを押しのけ、踏みつけ、転ばしながら、

――自分だけは、と、

――必死になってもがく。

――周りは建物も多いため、

――中には、物陰に隠れる者もあった。


――それらを眺めると、

――周子は、ニィ……、と口角を吊り上げる。

――背筋の凍るほど恐ろしい、

――妖艶な笑みであった。

周子「一匹も逃さないよ……♪」

――周子は、

――左右、道なりに逃げ出したカースへ、

――両手を広げ、

――掌をそれぞれへと向ける。

――その瞬間、

――カースたちは、

――不可視の糸に絡まれたような錯覚を覚えた。

――それも、

――死人の髪の毛から作られた、

――怨念の宿る糸、

――触れることすら忌避される、

――身の毛もよだつような何か。


――覆っているのだ、

――逃げているのに、

――捕まっているのだ。

――あまりの絶望に、

――逃げることを止めた者も現れた。

――今度は、

――開いた掌を、

――ぐっ、と握ると、

――逃げるカースが尽く、

――動きを止めた。

――否、

――止められた。

――絡まった糸が、

――とうとう、身体を締めあげ、

――呪いのように、

――ピクリとも動けなくなる。


――この時点で、

――人であれば、

――恐怖のあまり、既に死んでしまう者が現れる頃だが、

――不幸なことに、

――カースは、死なない。

――死ねないのだ。

――そして、

――そのまま肘を内側に曲げる。

――すると、カースたちが動き出した、

――周子の方へ、

――ズルズルと、

――引きずられるように。


カース「イヤダァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

カース「ハナシテエェェエエエエエエエェェェェエエエエエ!!!!!!!!!!!!!」

カース「コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ!!!!!!!!!!!!」

――自分の元へと寄ってくるカースを、

――嗜虐の篭った瞳で、

――周子が眺める。

――そこに、

――確たる怜悧の色が残っている、

――ということが、

――一層、恐ろしかった。

――一方、

――隠れる事を選んだカースたちは、

――見つからぬよう、息を潜め、

――止まらぬ震えを何とか抑えつけながら、

――周りへと注意を払っていた。


――外の様子を伺いたかったが、

――身体を遮蔽物から出した途端、

――”アレ”に見つかってしまいそうで、

――あまりにも恐ろしく、

――ただ、小さく縮こまる他無かった。

カース「ギィィィィイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!」

――そんな彼らの元へ、

カース「ヤメテエエエェェエエエエエエエエエェエエエエエエ!!!!!!!」

――仲間の悲鳴が、

カース「ア゙ア゙アア゙アア゙アア゙ァ゙ァァアア゙ア゙アァ゙アアアアア!!!!!!!」

――届いてきた、

カース「ゴメンナサイィイィィイイイイイィイィィィイイイイ!!!!!!!!!!」

――何か、

カース「ユ゙ル゙ジデェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」

――よくわからないが、

カース「グル゙ジイ゙ィィイィイイイイイイィィイイィイイイイイ!!!!!!!!!!」

――おぞましい事が、

カース「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!!!!!!!!!!」

――行われている、

カース「ダズゲデェエエエェエエエエエェェェェエェェエエエエエ!!!!!!!!!」

――らしい。

――何が起きているのかは不明だが、

――見つかれば、

――捕まれば、

――自分も同じ目に遭う。

――嫌だ。

――ゴメンだ。

――誰か、助けて。

――ヒーローはいないのか。

――今なら神だって信じる。

――楽に死ねるなら、悪魔でもいい。

――怖くて堪らない。

――恐ろしくて仕方ない。

――救いは無いのか。

――誰か。

――誰か。

――気がつけば、

――いつの間にか外は静かになっていた。

――一体どうなったのだろうか。


――周りの状況を確認することも、

――何もせず、この場に留まり続けることも、

――どちらも恐ろしく、

――気が変になってしまいそうで、

――迷った挙句、

――少しだけ覗いてみることにした。


――結果から言うと、

――”何も無くなっていた”。

――仲間のカースも、

――あの恐ろしい存在も、

――どこにも見当たらない。

――別の場所に行ったのだろうか。

――そんな希望的観測は、


「見ぃつけた……♪」


――死の抱擁によって、

――握りつぶされた。

―――
――


周子「はぁぁ~……」

――泥にまみれ、

――恍惚の表情を浮かべながら、

――周子が、桃色の吐息を吐く。

――カースを、一体残らず狩り尽くし、

――意地悪く弄んだことで、悦に浸っている。

――指先に付着した泥を舐めとり、

――口に含むと、舌の上で転がし、

――艶かしく嚥下する。

――カースの身体は、核も泥も呪いの塊だ。

――ただの人間にとっては危険極まりないが、

――周子にとっては、極上の甘露であった。

周子「あーあ、はしたない……」

――”甘露”にまみれた自分の姿を見て、

――少しはしゃぎ過ぎた、と、

――反省しながら、

――そう独りごちた。


――くるり、と、

――その場で華麗にターンを決めると、

――全身に付着した泥が、

――綺麗に全て剥がれ落ちる。

周子「よし」

――周子は九尾の狐である。

――九尾の狐といえば、悪女と相場が決まっている。

――例に漏れず、彼女もそうだ。

――角が取れ、丸くなったとはいえ、

――魂の根っこの部分は、やはり”悪”なのだ。

――生まれ持っての”悪”。

――それも、”邪悪”と言っていいほどの、

――ドス黒く、おぞましいもの。

――他人を嬲り、痛めつけることに快楽を覚え、

――怯える者を追い詰め、恐怖に慄く様を嗤う。

――この街の惨状を見て、

――『悪くないが、まだまだ可愛らしいものだ』、

――『国が傾くわけでもあるまいし』、

――と、”まだ足りぬ”と判断する。

――周子本人も、悪趣味だと感じている。

――だから、普段は隠している。

――そもそも、周子程にもなれば、

――自身の感情の制御など造作もない。

――趣味を我慢することなど、

――1年だろうと、10年だろうと、100年だろうと、

――容易に耐えられる。


――今回はたまたま、

――場所とタイミングと相手が良かった。

――周りに誰もおらず、

――倒すことに躊躇の無いカースを、

――一人で始末する。

――我慢する必要の無い状況だ。

――となれば当然、

――する。

――解禁。

――思えば、

――志乃は、気を使ってくれたのだろうか。

――普段できないことをする場を設けてくれたのかもしれない。

――どうせ隠し事などしても仕方の無い相手だが、

――それでも、やはりこの姿は見られたくない。

――だから、あえて何も言わず、

――この場に一人残して、

――単独、行動に移った、

――……というのは考えすぎだろうか。

周子「しっかし、こんな姿、人に見せられないなー……」

――志乃に見られれば、

――相変わらずいい趣味してるわね、

――と、皮肉を言われる程度で済むだろうが、

――もし、

――美玲に見られたら、

――『プロダクション』の皆に見られたら、

――と、考える。

――恐れを抱くだろうか。

――軽蔑するだろうか。

――もし、

――紗枝に見られたら……、

――どんな表情を浮かべるだろう。

――周子の胸に、

――チクリとした小さな痛みが去来する。

――根が”悪”だとして、

――しかし、

――美玲を拾い育て、

――娘のように愛で。

――紗枝を気にかけ、

――想いを寄せる。

――その優しい気持ちも、

――本物だ。


――人を虐め、愉しむ、

――暗い悦びを知っている。

――同時に、

――人を愛し、慈しむ

――暖かい喜びも知っている。

――一概に、

――彼女を、悪人だの善人だのと、

――色眼鏡を掛けて見るべきではない。

志乃「あら、少し片付けてくれたのね」

周子「うわっ、と」

――スッ、とその場から湧いて出たように、

――唐突に志乃が現れた。

――まったく、雲のように掴めない人だ、

――と、周子は改めて思う。

志乃「それにしても、相変わらずいい趣味してるわね」

周子「う……」

――想定していた皮肉の内容と、

――一言一句違わぬ台詞だ。

――読心術か何かではあるまいか、と邪推してしまう。

志乃「まったく……」

志乃「周子さん、怖い人だわ、貴女って本当に」

周子「……それはお互い様だと思うよ、志乃さん」

志乃「あら、酷いわね」

――『憤怒の街』の少し外。

――恐ろしい程に強い力を持つ二人。

――揃って、ただ縁の下の力持ちに徹し、

――静かに佇みながら、成り行きを見守る。

――この二人なら、あるいは、

――本気で解決に乗り出せば、

――大きな進展もありえるかもしれない。

――ともすれば、

――あっさり全てが解決するかもしれない。

――しかし、

――それはしない。

――強い力を持つ者ほど、

――それを安易に行使することは無い。

――今日の周子だって、

――ただの戯れで、

――本気の10分の1も出していないのだ。

志乃「さて、それじゃあ、あの子たちの所へ戻りましょうか」

周子「そだね」

――いつの時代も、

――問題事を解決するのは若い力だ。

――周子と志乃の二人は、

――若者たちに期待を託し、

――力強く支えながら、

――いつか、事が終わるのを、

――ただ、待つのみ。

以上です

しおみーは、ただ強いだけじゃなく
恐ろしさとおぞましさを伴った強さも持ちあわせているんじゃなかろうかと
しおみーに清廉潔白なイメージを抱いている人がいたら申し訳ない
カース相手なら、まぁいっかと思い、ド外道になってしまった

乙ー

ナニコレコワイ

保護者ズはどれも恐ろしいな…

乙!

やばいな、強者の貫禄が溢れてるよ周子……

そして、続けて投下させていただきますね


「………まったく、やってくれるわね」

先ほどまで憤怒の翼竜と魔法使いが激闘を繰り広げていた瓦礫の山に、のあの姿はあった。

憤怒の翼竜が地に落ちたのは分かっていたが、その場所はのあが居たビルからは死角となっており攻撃できずに居た。

仕方なく、見える範囲で仲間の捜索と各所に散らばる者達の支援をしていたが、一際大きな轟音が鳴り響いた事が気になり降りてきたのだった。

そして、目的の場所で見た光景は大量の瓦礫の山と何者かが交戦した跡―――翼竜の姿は消えていた。

「……そう、誰かは知らないけど倒したようね」

ならば、自分は自分の目的を果たすだけだ。

「ゼンブコワシテヤンヨ!!」

「ショートヨリロングガウエダロガオラア!!」

ぞろぞろと、四方からカースが集いだしてきた……あれだけ大きな音がしたのだから仕方ない。

―――内心、少し失敗したと思ったが切り替える。

上でいくら探しても見つからなかったのだから、次にとるべきは大きな変化があった場所に居てみること。

たとえ目的の人物で無くても、騒ぎに引き寄せられるものは必ず居るはずである………敵か味方かは問わず。


《Weapon:コロナ・グレネードランチャー》

《Weapon:ピルム・アサルトライフル》

《Arm:ブレード内蔵ミスリル・ガントレット》

《Leg:特殊機動装甲[白兎]》

「―――オープンコンバット」

右手には状況を問わず安定した性能を発揮するアサルトライフル、左手には取り回しが良く威力も申し分ないグレネードランチャー。

更に脚部には立体的な立ち回りを可能とする白兎に両腕には肘までを覆う、魔力耐性が高い銀色のブレード内蔵型ガントレット。

それらの装備を一息に装着すると同時に跳躍、容赦なくグレネードを放ち先制を取る。

「ハァ!?ジダイハツインテナンダヨオオオ!!」

それを合図にしたように、カースの中でも機動力の高い鳥型と狼型が突出してくる。

だが、それを冷静にアサルトライフルで撃ち落とし飛び跳ねまわる。

「バカジャネ?ヤッパポニテダロガヨオ!!」

ユニコーン型が数体到着し、そのまま突撃の構えを見せる。

更に狼型が連携するように数体で集まりだす。

「……良い的よ?」

そこにグレネードを打ち込む、時には瓦礫の山に打ち込み崩し埋める。

それでも生き残ったカースに対してはライフルで対処、更に常に動きを止めることなく撹乱する。

「ドリルコソガシコウダロ!!」

「クルクルサイコー!!」

しかし、徐々に徐々にカースの数は増えていく。

「………思ったより辛いわね…」

瓦礫と、まだ原型をとどめている建物を足がかりに白兎の跳躍力でカースより上空をキープし続けながら、爆撃と射撃を繰り返す。

泥のカースも混ざり始めるが、他のカース諸共爆撃で吹き飛ばす。

追い縋ってくる鳥型を撃ち落とし時には強烈な蹴りを叩きつける。












『―――貴女、邪魔です』

「……っ!?」






そんな状況を維持していた矢先、いきなり巨大な瓦礫が飛んできたのをギリギリで回避する。

しかし地に足をつけた瞬間に数体のカースが飛びかかり、それを回避するために跳躍。

『逃がしはしませんよ!』

「くっ…」

そこを狙い撃ちするかのように再び瓦礫の投擲、回避と迎撃はできるが今度は鳥型カースの突撃により反撃に移れない。

謎の投擲とカースによる攻撃、間断なく連続で攻めら周囲を包囲され、少しづつ追い詰められていく。

『ちょこまかと腹立たしいですねッ!!』

「……厄介ね、本当に!」

更に問題なのが、明らかにカースの動きが良くなっている事だ。

おそらくは、この声の主―――少し離れた位置で瓦礫を投げつけてくる少女、岡崎泰葉………そのドッペルゲンガー―――が指示を出しているのだ。

なんとか猛攻を凌ぎライフルを向けるが、すぐそばのカースが盾になるように割り込む。

構わず銃弾を叩き込むが、次の瞬間にはカースの背後から巻き込むのを構わず瓦礫が投げつけられる。

それを回避した先にはユニコーン型の突進、勢いを殺さずに蹴り飛ばしてすぐに跳躍。

縦横無尽に動き回りながら、反撃の糸口を探す。

『行きなさい!』

「…しまっ!?」

何度目かもわからない繰り返し、壁を蹴り地面を蹴り車を蹴り、そして積みあがった瓦礫の山に足を着けた瞬間に足元からトカゲ型が飛び出てきた。

とっさにライフルを盾にし、左手のランチャーを捨てガントレットの刃を出してライフルに噛み付いているトカゲの首を切り落とす。

しかし、そのときには待ち構えていたように複数の狼型が襲い掛かろうと飛び込んできていた。

「―――ヒーロー登場だにゃ!」

同時に、何故か空から一人の少女が降ってくるとそのまま狼型を一体切り裂く。

《Weapon:高収束型デュアルマシンガン》

「…ふふ、遅いわね」

「主役は遅れてくるものにゃ!」

いつものように軽口を叩きあい、いつものようにしなやかな動きを見せながらさらに一体カースを切り裂くネコ耳少女、みく。

そしてみくに背を預けながらライフルを捨て、飛び込んできた狼型を切り払いのあは新たな装備を召喚する。

「…厄介なのがいるわよ」

「そっちは大丈夫にゃ、つよーい味方が行ったからみく達はこいつらに集中するにゃ!」

「……そう」

そう言って、のあはカースの群れに向き合う。

「…さぁ、仕切りなおしよ」

―――少し離れた瓦礫の山。





みくと二人でのあを探しだした愛梨は、今、瓦礫を投げ込んでいた存在と対峙していた。

『………なんでですか』

「………泰葉…ちゃん…?」

目の前には片腕を失っているこの街の王、岡崎泰葉、その偽者。

それを前にして、十時愛梨は半ば信じられないといった顔をしていた。

―――それは、まだ愛梨がアイドルであった頃に幾度か話したことがある顔であった。

『…なんで、貴女がここにいるんですか?』

「………泰葉ちゃんこそ…ううん、泰葉ちゃんだけど……泰葉ちゃんじゃない」

『イラつく…本当にムカつく…なんで今になってまた貴女が出てくるんですか!』

片腕になってもなお余りある力を振るい、愛梨に殴りかかる。

それを四肢に風を纏い、更には魔力で作った風の槍で受け止める。

まだ良く分からないが、みくと二人でのあを探し回り、やっと見つけたと思ったら辺りはカースだらけ。

そのカースを従えているような少女を見つけた二人は、みくがのあを助けに行く間に愛梨が謎の人物を撃破するという話をすぐに決めた。

そして、その人物がきっと、この街の惨状と何か関係があると思えた。

だからこそ、かつて見知った顔であっても愛梨は戦うことにした―――何が起きているのか、さらに知るためにも。

「一体、なにがあったの!」

『貴女には分かりませんよ!絶対に!!』

裏拳を槍で弾き、続けざまに来た回し蹴りを受け流すようにいなす。

『だいたいなんで、そんな力を貴女が持ってるんですか!!本当に腹立たしい!!』

「そんなの…!」

横払いに槍を叩きつけるが凄まじい力で蹴られ弾かれる。

しかし槍をそのまま霧散させ、腕に纏わせた暴風を泰葉に叩きつけようとするがこれも右腕で払われる。

『貴女さえ、貴女さえ居なければ!!』

「くぅぅっ!?」

ズダンッっと凄まじい音を立てながら、泰葉が踏み込んだ瓦礫の地面から大量の粉塵が巻き上がる。

それに意識と視界を一瞬取られた直後、こんどは首元を狙って腕が伸びてきたのを紙一重で避ける。

「どうしてそこまで……これなら!!」

『なっ!?』

両腕の風を束ねて解放、強烈な突風と化して一気に偽泰葉ごと粉塵を吹き飛ばす。

さらに再び風の槍を作り出して追撃する。

『このッ!!』

「邪魔!」

そこに今までそばで待機していたカースが割り込んでくるが槍を突き刺し解放、真空の刃が内側からカースを切り刻む。

間髪居れずに続けて小型の竜巻を作り出し、偽泰葉に向けて放つと同時に偽泰葉が瓦礫を投げつけ、竜巻が瓦礫を巻き上げる。

『ちっ、それな―――っ!!?』

「そこ!!」

偽泰葉が何かする前に、風と一体化して背後に回り槍を叩きつける。

完全に不意を突かれた偽泰葉だったが、それでも倒れるまでにはいかなかった。

しかし、直撃を受けた隙を逃さずに愛梨は右腕に風を集めて叩きつけ、偽泰葉は軽く吹っ飛ばされてかろうじて残っていた建物の外壁に叩きつけられた。

『ぐぅ……はぁ…はぁ……』

「…………………」

『…う……本当に、ムカつき…ますね………なんで、消えてくれないんですか…』

「……どうして、こんなことに」

『…貴女が、それを言いますか……貴女さえ居なければ、私は……「私」は…』

短いながら、激闘を制した愛梨は問いかける。

そして、敗者である偽泰葉は身を起こす事もせずに言葉を吐き出していた。

『……叶うはずもない夢を、見なくて済んだのに……』

「…………」

『だから………「私」は貴女を、確かに一度……―――――…』

「………え…?」

その体が黒く変色し、ドロドロと溶け出していく。

『……会えばいいですよ…「私」に……何があったか、知りたければ、ですけど……ね……』

そうして、半ば呆然とした愛梨の目の前で、岡崎泰葉のドッペルは溶けて消えたのだった。












―――「確かに一度……殺したのに…」―――そう言葉を残して。









「………どうかしたの?」

「……ごめんなさい、やらなきゃならない事が、できちゃった」

少しして、集まったカースを全滅させたみくとのあが愛梨の所に来ていた。

「……はぁ、しかたないにゃあ」

「……手伝うわ…いえ、言わないで…友達だもの、当たり前のことよ」

「…ありがとう……二人とも」

そうして三人は、その場を後にする。

自分の身に起こった、アイドルを辞めるきっかけになった一つの事件、その真実を知るために、岡崎泰葉という少女に何があったのかを知るために、愛梨はその姿を探し始めるのだった。





続く?

・のあの装備

「Weapon:ピルム・アサルトライフル」
→バランスよく、尚且つ高水準に性能が纏め上げられた黒いアサルトライフル。
状況を問わず使い勝手が良いため、目まぐるしく状況が変わる戦場でも安心して使える。

《Arm:ブレード内蔵ミスリル・ガントレット》
魔力耐性を持つミスリル銀を使い、大型ナイフほどのブレードを収納しているガントレット。
防御にも攻撃にも使える装備ではあるが、精密さを求められる銃器にとは少々相性が悪い。



・イベント情報
1.最後の偽先輩が撃破されました!
2.愛梨とみくがのあと合流しました!
3.愛梨が本物の泰葉を探し始めました。

投下終了、とうとう偽先輩全滅だよ!

これからどうなるか…

ということで、いつもながらお目汚し失礼しました。

乙乙です
先輩の過去に一体何が……?

>>408
周子さん狐にした本人がえらく怖がっているようです(恍惚)
昔はやんちゃしてたんだろうなーとは思ってましたが想像以上でとっても魅力的

鎮守府に引き籠ってないでそろそろ何か書かなくちゃ……

乙乙!
まさか愛梨をこう絡めてくるとは思わなかった。

>>430
ありす「提督が鎮守府に着任しました」

間中美里と伊集院惠投下します

なに?よく分からない?
大丈夫、俺にも分からない


遍く生物の存在を拒絶する深淵の世界──宇宙。
未だ人智の及ばないその漆黒の空間を、まるで自分の縄張りだとでも主張するかのように我が物顔で航行する宇宙船の一団があった。

宵の闇に包まれたかのような暗闇の中にあってなお、自らの偉容を誇示するかのように輝く白亜の船体は、
まさしく宇宙連合の誇る航宙艦のものだった。

提督「ついに追いつめたぞビアッジョ一家め……」

提督「宇宙連合軍特務艦隊の名に懸けて、今日こそお縄をくれてやるわ!」

船団の中で一際大きい船の艦橋では、司令官と思しき人物が鼻息を荒くしていた。
これらの艦隊は、どうやら捕り物の為に出張ってきたらしい。

見る者を威圧する鋭角的なフォルムと、船体の随所に配された砲が、
それらの船が戦闘用に作られた物であることを物語っている。

「各艦、隊列を解除……包囲陣形を取りつつ目標に接近中」

提督「うむ、上首尾だ」

提督「連中には、これまで辛酸を嘗めさせられ続けてきたからな、心して掛かれ!」

彼らはその進路を数多の漂流物が集まる宇宙の流刑地──暗礁宙域へと向けるのだった。




件の艦隊の目的地である暗礁宙域に、息を潜めるように停泊している一隻の宇宙船があった。
提督が必ず捕らえてやると息巻いていた相手……ビアッジョ一家の母船、プリマヴェーラ号である。

ビアッジョ一家──夢と希望とロマンを求めて大宇宙を飛び回る冒険家の二人組だ。
冒険のついでに、行く先々で困っている人々が居ればそれを助けるというヒーローのような事もしている。

また、諸々の事情により宇宙連合に追われるお尋ね者でもある。


「ミサト、起きて!」

一家の片割れメグミが、艦橋のデスクに突っ伏して寝ている相棒のミサトを揺り起す。

ミサト「ふぁ~? メグミちゃん……なぁに?」

メグミ「もう、休む時は休眠チャンバーでって何度も言ってるじゃないの」

メグミがため息交じりにたしなめる。
とは言っても、言って聞かせるのは半ば諦めているのだが。

ミサト「ここが落ち着くんだからいいでしょー」

メグミ「まあいいけど……お客さんよ」

ミサト「お客さん……?」

ミサトはボーっとした頭で今まで突っ伏していたデスクに備え付けられたコンソールを操作し、中空に浮かぶ半透明のディスプレイに映像を流す。
するとそこに、数隻の宇宙船が映し出された。


ミサト「お客さんて、連合軍じゃない」

メグミ「私達を捕らえに来たんでしょうね……P子、敵の編成は?」

P子「クルーザー四隻、バトルシップ一隻を確認……識別ID照合……以前に接触した艦隊に間違いありません」

母船の頭脳である最新型の人工知能が、接近している艦隊の情報を分析する。

P子「これまでのデータより、当艦隊を敵性と判断します」

ミサト「ここも見つかっちゃったのかぁ……しつっこいなぁもう」

メグミ「しかしまた、随分と豪勢ね」

P子「敵バトルシップから通信が入っています」

メグミ「繋いで」


艦橋の中で一番大きいメインモニターに、純白の軍服に身を包んだ厳めしい風貌の男が映し出される。
男は威厳を込めた口調で告げた。

『こちらは、宇宙連合軍第213特務艦隊である……宇宙犯罪者のビアッジョ一家に告ぐ』

『貴様達は完全に包囲されている、直ちに武装を解除し、投降しろ』

ミサト「お断りしますぅ」

『なっ……おいっ! まて──』プツッ

わざわざ通信に出ておいてけんもほろろにあしらう。
……完全におちょくっている。


ミサト「それにしても、こんなに近づかれるまで気付かなかったのぉ?」

ミサトが当然の疑問を口にした。
本来、航宙艦程の質量を持った物体であれば接近を許す前にセンサー類が捉えるはずだ。

P子「敵艦隊は高度なクローキングデバイスを使用していた模様」

P子「ある程度の距離に近づくまで、こちらの持つあらゆるセンサー類から秘匿されていました」

メグミ「艦隊ごと覆えるほど遮蔽スクリーンを発生させるなんて、なかなかやるわね」

敵はどうやら新兵器を投入してきたらしい。
P子の分析結果を聞いて二人は思案する。

ミサト「新装備を持ち出してきた上にこの戦力って……」

メグミ「よほど私達を捕らえたくて仕方ないみたいね」

ミサト「やっぱり……P子ちゃんが目的かなぁ」

P子「それでしたら、私を明け渡せば、お咎めも軽く済むのではないでしょうか」

メグミ「まさか! そんな事の為にあなたを手放す訳ないでしょう」

ミサト「そうそう、P子ちゃんはもう私達の仲間なんだからねぇ」

P子「仲間……ですか」


メグミ「まあそれはそれとして、どう切り抜ける? ……取れる手段は多くないけれど」

ミサト「これはもうしょうがないかなぁ……P子ちゃん、ジャンプの用意お願い、無目標で」

ミサトの発言にメグミが顔をしかめる。

メグミ「……本気? 宇宙の何処へ飛ばされるか分からないのよ?」

ミサト「そうは言ってもぉ、通常航行で逃げようにも囲まれちゃってるし」

ミサト「どうせここから飛べる範囲のポータルは抑えられてるだろうし」

ミサト「他に手は無いよぉ」

メグミ「……まあいいわ、あなたに任せる」

空間跳躍──いわゆるワープを使って逃げた場合、飛べる範囲が限られているためすぐに座標を特定されて追い付かれてしまう。
そこで、行先を指定せずに空間跳躍を行う事で座標を特定されることは無くなるのだが……
行先を指定しないという事は、宇宙の果てに飛ばされそのまま戻って来られないなんてこともあるため、
真っ当な神経を持った者であれば取り得ない手段である。


「目標、ジャンプ準備に入った模様です」

提督「ふん、周辺のポータルは全て掌握済み、何処へ逃げようと袋のネズミだ」

「……っ!?」

「目標のジャンプ進路、近隣の何れのポータルも対象としていません!」

提督「何だと……? まさか、ポータレスジャンプか? まだ理論が出来上がったばかりの技術のはずだ」

「いえ……これは……無目標ジャンプです!」

提督「バカな!? 自殺行為だぞ!」

提督「このままでは拿捕は困難だ……科学者連中からは"アレ"を取り戻すよう言われているが……」

提督「この際沈めてしまって構わん! 絶対に奴らを逃がすな!」

提督が席を立ち荒々しく声を上げる。

「提督……よろしいのですか?」

提督「そう何度も奴らを逃していては、連合軍の沽券に関わるのだ! 全砲門開け、砲撃戦用意!」

提督「僚艦に通達、各個に攻撃を開始せよ!」



ミサト「あ、撃ってきた」

ミサト達が空間跳躍の準備に入ったのを確認すると、退路を断つように動いていた敵の艦隊が一斉に砲撃を開始した。
青白い光弾が雨あられと降り注ぐ。

ミサト「もっと動力にエネルギー回せない? これじゃ避け続けるのも難しいよぉ」

P子「これ以上はジャンプドライブへのエネルギー供給が滞ります」

そのうちの一発が直撃してしまう。

ミサト「うわっ……損傷はぁ?」

P子「ありません、当艦装備のフォトニック・レゾナンス・シールドはクルーザークラスの主砲であれば五発は耐えられます」

メグミ「上等よ」

敵艦の放った光弾は、船体にそれが直撃する瞬間に四散した。
いわゆる、電磁バリア的な物で防いだのだ。


「命中弾確認! ……これは?」

「目標は強力なフォースフィールドで覆われている模様」

「僚艦の砲撃では有効打を与えられません!」

通信士の報告を聞いて提督が歯噛みする。

提督「小癪な……マスドライバー用意!」

「マスドライバー、用意!」

しかし、どうやらまだ奥の手が残していたらしい。



P子「……敵戦艦に動きがあります」

空間跳躍に必要なエネルギーを蓄積しつつ敵の砲撃を回避し続けるという芸当をこなしていると、P子が何かに反応した。

P子は各種センサーから取り入れた情報をイメージ化してモニターに映す。
その画像から、敵の旗艦と思しき戦艦から長大な棒状の物体が伸びているのが分かった。

ミサト「なにこれぇ……」

メグミ「これは……マスドライバーね」

ミサト「マスドライバー? それって正規軍の装備じゃないよねぇ?」

マスドライバーは本来、短距離の貨物輸送に使われる装置である。
超高速で物体を射出し、それを目的地で回収するという仕組みだ。
しかし、例えば撃ち出す物を荷物から砲弾に変えれば、それは兵器にも転用できてしまう。

メグミ「大方、作業用艦艇あたりから徴用したんでしょう」

P子「宇宙連合の戦闘協定では、実体弾を用いる質量兵器の使用は自粛されているはずですが……」

連合は宇宙ゴミ問題の観点から、空間戦闘の際に弾丸を飛ばして攻撃する運動エネルギー兵器の使用を控えるといったことを公言している。
つまり、連合軍と事を構える場合は、主兵装であるビーム兵器の対策だけしていれば盤石なのだが……

メグミ「お尋ね者相手には何でもアリってことね」

ミサト「あれはさすがにもらったらマズイかなぁ」

P子「残念ながら、当艦のシールドは実弾兵器の防御には不適格です」

"控える"と言っているだけであって、"使わない"とは言っていないという事だ。
耐弾性を疎かにしていた事が裏目に出てしまった。


ミサト「ん……何か光ったねぇ」

敵戦艦はメインカメラの光学望遠を最大にしても距離が開きすぎて豆粒ほどにしか見えないのだが、その周囲に紫電が閃くのが見えた。
次の瞬間、表面がプラズマ化しかかった大質量の砲弾が船体を掠める。

ミサト「あぶなっ……こんなの、もし民間船なんかに当たったらひとたまりないよぉ?」

メグミ「言って聞かせられる相手ならいいんだけど」

ミサト「ジャンプ可能になるまであとどれくらい?」

P子「ジャンプドライブへのエネルギー供給率は現在70%、あと30秒程でジャンプ可能です」

メグミ「30秒……もう一射くらいは来そうね」

ミサト「あの弾、亜光速に近い速度で飛んでくるから、見てから避けるのは無理だねぇ」

メグミ「外れることを祈る……なんて、らしくないかしらね」

敵艦を見やると、またもや船体の周囲を青白い電光が迸るのが見てとれた。

メグミ「って言ってる間に、もう奴さん次弾の装填は済んだみたいよ」

ミサト「これで当たらなかったら、オメデトウってところねぇ」

敵艦の周囲が一際明るく光ると、船体に凄まじい衝撃が走り、損傷を知らせる警報音がけたたましく鳴り響く。

メグミ「当たった……っ!?」

P子「右舷に命中弾、損傷は不明です」

ミサト「とりあえず逃げよぉ」

P子「ジャンプドライブへのエネルギー供給100%……ジャンプ、開始します」


ミサト「うぅ……なんとか生きてるみたいね……」

メグミ「追手は……振り切ったか」

P子「周辺宙域に連合軍の反応はありません」


ミサト「ここは……どこらへんかなぁ」

P子「現在地は、天の川銀河の中の太陽系と呼ばれる星系です」

P子「管理局の支部が存在しますが、連合軍の支配下には無いようです」

ミサト「どこよそれ……ちゃんと帰れるかなぁ」

P子「……ジャンプドライブの機能に異常が発生しています、恐らく先程の砲撃に因るものと思われます」

P子「正常に機能させるためには修理が必要です」

ミサト「えぇー……どうしよう」

空間跳躍が使えないとなると、元いた宇宙へ帰るのに数十万光年を通常航行で移動することになる。
それは流石に現実的ではない。

メグミ「P子、この星系に文明は存在する?」

ある程度発展した文明があれば、そこで得られる部品から母船の修理も出来るかもしれない。

P子「はい、当星系第三惑星の地球という星に文明を確認できます」

メグミ「地球……? 地球ねぇ」

メグミが地球という言葉に反応する。

ミサト「ん? 何か知ってるの?」

メグミ「噂話を耳にした程度なんだけど……」

そう切り出すと、噂話の内容を語り始めた。


メグミ「ミサトはウサミン星の内乱については知ってるかしら?」

ミサト「一応ねぇ、ここ最近起きた中じゃかなり大きな出来事だし」

メグミ「ウサミン星の内乱は、その『地球』からもたらされた『おたから』が原因らしいのよ」

ミサト「……おたから?」

メグミ「詳しい事は分からないけど、ウサミン星の観察員が地球から、ある『おたから』を持ち帰ったらしいの」

メグミ「その途端、大人しかったウサミン星人達がその『おたから』を巡って内輪揉めを始めたって話よ」

ミサト「おたからっていうより、なんかヤバそうな物ねぇ……それ」

メグミ「それが一体どういうものなのかはさっぱりだけど……」

メグミ「あの機械みたいに冷徹だったウサミン星人が躍起になって奪い合うくらいの物だから」

メグミ「きっと、途方もない価値があるものなんでしょうね」

ミサト「ふぅん……」

ウサミン星人の極端な管理社会……全体主義はかなり有名だ。
そのウサミン星人を狂わせるほどの価値のある物とは、一体何なのか。

情報の出所も定かではない信憑性もへったくれも無い怪しい噂だが、
おたからという響きは冒険家である二人にとってはこの上なく魅力的に聞こえた。


ミサト「じゃあさ、とりあえずその地球って星に行ってみよう」

ミサト「おたからってどんな物なのか気になるし、どっちみちジャンプドライブの修理をしないと帰れないし」

メグミ「そうね……P子、進路を地球へ」

P子「了解しました」



命懸けの博打によって連合軍の追撃を振り切ったビアッジョ一家は、母船の修理も兼ねてその進路を地球へと向ける。
果たして彼女達は元居た宇宙へ帰る事が出来るのか? そして、地球に存在するというおたからの正体とは?

宇宙冒険家の新たな旅が今始まる……

ミサト

職業:宇宙冒険家

ビアッジョ一家の一人。
一家の母船であるプリマヴェーラ号の艦載機、フェリーチェのパイロットも務める
間延びしたような喋り方が特徴。


メグミ

職業:宇宙冒険家

ビアッジョ一家の一人。
物知りで賢いため、他人との交渉やらを務める。
基本母船からは出ない。


※ビアッジョ一家

七つの銀河を股に掛ける宇宙冒険家の二人組。
宇宙連合からは体制に反発するアウトローという扱いを受けているが、専ら義賊的な活動がメイン。
植民惑星に圧制を敷く宇宙連合の悪代官や、弱きを食い物にする宇宙海賊に真っ向から喧嘩を売ってきたため敵は多い。

現在は、母船の修理と、とある噂話の調査のため地球に立ち寄っている。


※P子

色々あってビアッジョ一家が宇宙連合の研究施設から盗み出した新鋭人工知能。
火器管制からセンサー類の監視からオートパイロット時の操船から……あらゆる仕事をなんでもこなす。
普段は母船のメインフレームに組み込まれているが、特殊な記録媒体に移して持ち運ぶこともできる。

二人との関係?も良好なため、一家の所有物と言うよりは三人目のメンバーというようなポジション。


※宇宙連合軍

多数の艦隊を有する宇宙連合の主兵力。
宇宙海賊や宇宙怪獣と日夜戦い続ける大宇宙の保安官。
規模が大きすぎるためその全貌は不明。
ちなみに、艦艇の主兵装は電磁収束プラズマ砲だとかイオンパルスビーム砲だとかそんなん。


※航宙艦

ある程度の大きさと航続距離と武装を持った宇宙船の総称。
作った種族の規格にもよるが、大きさは全長100m程度から100㎞以上あるものまでピンキリ。
ビアッジョ一家の母船プリマヴェーラ号は全長200m程のコルベットクラス。

投下終了です


・スペースオペラっぽい物が書きたかった(硬派なSFじゃなくて適当な感じで)
・異星人勢力を掘り下げたかった
・旅好き二人を登場させてめいこぅと絡ませて、いつか宇宙に拉致したい

って考えてたらこんなんなった
いつか敵性宇宙人襲来イベントやるんだ…!

調子乗って長くなってしまった感はあるが投下します。



前回までのあらすじ

『カピバラさんを斬撃耐性ごとぶった斬る日が来たナリ』


参考
>>5 (美穂と肇)






生まれてからずっと、聞こえていた信号が一つ途絶えた。



 


――アレから何度も生存確認信号を送ったが、

――結局のところ、返事は一度も返ってこなかった。


ハンテーン「はん・・・・・・。」

――やられちまったんだな、兄弟。


ハンテーン「・・・・・・。」

――おれは臆病だから、仇をとってやるなんて事はできないけどよ。


ハンテーン「・・・・・・。」

――俺達の生まれた理由・・・・・・《マムからの指令》は果たして見せるぜ。

――ヒーロー達を混乱に陥れて、データを集めて送って、


――そして、マムの元に無事帰る。


ハンテーン「・・・・・・。」


――お前に出来なかった最後の使命を果たすことが、お前に出来る唯一の弔いになる気がするからよ。


ハンテーン「てぇぇん!!!」


――ゆっくり眠りな、兄弟。



GDF隊員B「アイツ、なんか悲しそうな声で鳴きましたね。」

GDF隊員C「昨日見た感動巨編の内容でも思い出してるんじゃねぇか。」


ハンテーン「はんっ!」

――おっと、つい柄にもなく感傷に浸っちまったぜ。


隊員A「動くなよ!怪人!」

隊員A「お前は既に包囲されている!大人しく投降しろ!」


ハンテーン「はーん?」


しかし実際、もう潮時であろうとはハンテーン自身感じていたことだ。

活動を始めてから知名度は鰻登り。

今やちょっとした有名人・・・・・・いや、有名カピバラだ。


有名になって得した事はない。

ラブリーでキュートな姿を見て集まってくる、女子供はもはや居なくなり。

気づけば筋肉隆々の軍隊員に囲まれていた。

どうせ集まるならカワイイ方がいいに決まってる。


ハンテーン「ふはぁぁん。」


隊員B「・・・・・あいつ欠伸してません?」

隊員A「舐められてるな。」


隊員A「どうやら、こちらの言葉は通じないらしいな。」

隊員A「捕獲作戦開始するぞ。」

隊員A「総員、ゴム弾用意。」


今回の怪人騒動にとりあえず用意した武装。

防御力が高く、刃物は通じないと言う噂から、害獣駆除用の銃を使うことになりました。

ゴム弾と侮ることなかれ。囲まれて撃たれるとめちゃくちゃ痛いぞ。


隊員A「撃て!」

ハンテーンに向けて、ゴム弾の雨が放たれる。


ハンテーン「はんてんっ!」

ハンテーンは全身の毛並みを硬質化し、迫り来る銃弾を防御。

銃弾に対する耐性は、斬撃耐性と違って特にはないが、

元々ハンテーンの毛はめちゃ硬いのだ。

流石にプラズマバスターはどうにもならないが、このくらいの銃弾の雨なら防いでみせる。


そしてさらに、

ハンテーン「てぇん!」

隊員F「うわっ、こいつ、いつのまに近づいて!」


ハンテーンの逃げ足はめちゃ速い。

短い手足のずんぐりした体系からどうやって出るのか分からないスピードを出すのもあるが、

なにより判断力と瞬発力が、一味違う。


逃げ足が速い、と言うのはそれ即ち、

人の隙を突くのが上手い、と言う事なのだ。


毛並みを硬質化させ、銃弾の雨を潜り抜けながら、

包囲網の甘い部分を見つけ出し、ささっと近づく。

そしてプスリと、まずは一発。

彼らは発射される毛針対策にシールドを持っていたが、

不意を突き、近づいて指す分にはあんまり関係ない。


隊員F「地球の未来なんかどうでもいいわーいっ!」 ポーイ


隊員D「お、おい!陣形を崩すなっ!」

一人が仕事を投げ出せば、誰かがフォローせざるを得ない。

どうしてもそこには隙が出来てしまい、さらにプスリとやっちゃう。


隊員D「仕事とか正直やってられんよね・・・・・・印税生活とか目指したい」 ガクッ


隊員J「なんだなんだ」

隊員K「何が起こってる?」

後は芋蔓式だ。

ハンテーン「はん♪はん♪」

まあまあ、反転針どうぞ


隊員J「ひゃっはー!世界を混沌に落してやる!」 ズダダダダ

隊員K「汚物は消毒だぁぁぁあ!!」 ズダダダダ


隊員A「お、おい!!こっちに向けて撃つんじゃない!!」


正義感に溢れ、仕事熱心。平和を愛して、人を愛する。


そんな彼らが反転してしまえばこんな感じだ。

その場はあっと言う間に混乱の渦に飲まれる。


ここまで包囲網が崩れてしまえば、彼らの持っているシールドも特に効果を発揮しないだろう。

ダメ押しに反転針の毛弾を周囲に撒き散らすように発射する。


隊員H「この世に煩悩は不要だと悟った。」

隊員M「これが気持ちいいのか?んん?」

隊員S「もっと踏んでください!もっと踏んでください!」


ハンテーン「♪」


その混乱を尻目に、カピバラ怪人は短い足で器用にスキップしながら逃げ去るのだった。


隊員A「ま、待て!!逃がすな!追え!!追えー!!」

ハンテーン「はんっ!」

待てと言われて待つ怪人がいるものかっ!

ここは退散させて貰うぜ、あばよ、とっつぁ~ん。



 「 は ~ は っ は っ は っ は っ は ! ! 」


そんな時、突如響いた高笑い。


ハンテーン「!?」

隊員A「!?」

ハンテーンにとってどこかで聞いた高笑い。


ハンテーン「はんっ!? はぁん?!」


どこだ!どこにいる!!

左か!  右か!?


いや!!


隊員A「上だっ!!」


傍に建っていた建物の屋上、

そこには漆黒のアイドル衣装に身を包み、美しき刀を手に持った一人の少女が立っていた!


美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!」

美穂「ひなたん星人ナリっ!!」

美穂「この街はまるごとつるっと!ぜ~んぶ!私のものひなたっ☆」 シュパァァン!


美穂「トウっ!」

おなじみの台詞とキメポーズを決めたあと、地上に飛び降りるひなたん星人!

そしてスタッ、っと見事に着地!


と言うか結局降りてくるなら、屋上に立ってる必要なかっただろ。


美穂「ついにカピバラさん発見ナリっ☆」

ハンテーン「はん、てーん・・・・・・。」

またお前かよ、とでも言いたそうなカピバラ怪人。


以前、戦った時は、

ハンテーンの毛ばりは、ひなたん星人には通じず。

ひなたん星人の斬撃は、ハンテーンには通じず。


お互い、相手の攻撃は通じないのに有効打はない。

居留守VS新聞勧誘の如き、不毛な戦いを繰り広げた因縁の相手だ。


美穂「だけど、あれから私はつよくなったひなたっ☆」

美穂「そして今日こそ一刀両断にしてみせるナリっ♪」 キュピーン

可愛くポーズを決めて、バイオレンスな宣言をしてみせる少女。


ハンテーン「・・・・・・。」

思わず呆れてしまうハンテーン。

これまでの地上の活動で、ハンテーンが学んだことは幾つかあるが、

その内の一つがこれだ。

”この星のヒーローと呼ばれる奴らはとにかくしつこい”


ハンテーン「はん・・・・・・。」

ハンテーンにとって、この少女は相手にするだけ無駄な敵。

ならば、さっさと逃げるに限る。


しかし、このひなたん星人とか言う少女、前回逃げられた反省もあってか、

なかなかハンテーンに逃げる隙を伺わせない。


逃走と言うのはスタートダッシュが肝心だ。

相手の虚を突き、走り出したならば。それだけで追いつくのは難しくなる。

逆に言えば、獲物が逃げてしまう事を警戒している捕食者の前で、

何も考えずただ走り出すのは愚作なのだ。


シマウマは、自身を狙うライオンから逃げ出す瞬間と言うのを必ず見極めている。

その駆け引きが出来なければ、弱肉強食のサバンナを生き残ることなどできないのだから。


まあ、別にハンテーンはサバンナ出身でもなんでもないが。


美穂「今日の私は最初からクライマックスナリっ!」


ひなたん星人は刀を構え、

そして、その刀を引くようにして身を下げた。

美穂「ラブリージャスティスっ・・・・・・」


――ここだ。


ハンテーンの直感が言う。


攻撃の瞬間と言うのは、別の行動に転じるのが最も難しくなる瞬間。

それも相手は体を少し後ろに下げたのだ。

ならば、”追いかける動作を行うのが難しくなる”のは道理と言うもの。


ハンテーンはすぐさま身を翻して駆け出した。


美穂「ひなたんスターシューターッ!!」


そんな彼の頭を何かがかすめ、

自慢の毛並みが抉れるようにハゲた。


ハンテーン「ははは、ははは~ん!?!?」


――お、俺の毛がハゲただと?!

――なんだ、なにをしたんだ。この女。

ハンテーンは思わず振り返る。


少女は先ほどの位置から、ほとんど動いておらず、

ただ刀を突き出した状態で止まっていた。

美穂「あっ、外してしまったナリ。」

美穂「やっぱり、慣れてない攻撃はむずかしいひなたっ☆」 テヘッ


隊員A「私は見ていたからわかるっ!」

隊員A「今のは突き技!!」

隊員A「刀を突き出し、放たれる突撃だったっ!!」


ハンテーン「は、はん!?」

お前が解説するのかよ、と言う突っ込みは置いておいて、

それはおかしいと思うハンテーン。

突に特化している槍などならまだしも、

刀と言うのは短い、リーチがない。

ひなたん星人の体格はごく普通の少女のものだ。

少女の手から刀で突きを放ったとして、その攻撃距離はたかが知れている。


どう考えたってハンテーンが逃走をはかり、離れた分の距離が埋まるはずがない。

そう、明らかに攻撃が届く距離ではない。


隊員A「だが、ただの突き技ではなかったっ!」

隊員A「漫画では、剣士が飛ぶ斬撃なんてものを放つ事があるがっ!」

隊員A「今のはまさしくそれに類する技っ!!」

隊員A「飛ぶ斬撃ならぬ、飛ぶ突き技だったっ!!!」


ハンテーン「は、ははん!?!」

そんな、バカな。


美穂「ラブリージャスティスひなたんスターシューターっ!!」

驚いてる間に第二撃が放たれる。


突きの動作から放たれるは、螺旋に回転する漆黒のエネルギーの塊。

負のエネルギーを放出する技術、そして負のエネルギーを形にする技術の応用技!

負のエネルギーを纏いし刀の突きから放たれるは高速回転する弾丸!!


ハンテーン「は!?ははんっ!?」

間一髪、第二撃を回避する。もう一瞬遅ければ危なかった。


今回、ひなたん星人が放つ新必殺技であるところの、

ラブリージャスティスひなたんスターシューターは

突撃か射撃に属するもの。

それ故に斬撃耐性を無効化し、ハンテーンの毛の鎧を貫くことが出来たのだ。


ハンテーン「はははん!!はんてはんててん!!」


え?聞いてない?

一刀両断宣言しておいて刺突かよって?ドンマイ。


ハンテーン「はんてんんんん!!」

こうなれば、自棄だ。

とばかりに、ハンテーンは何も考えず走り出し逃走を開始する。


美穂「待つひなたっ!」

そしてそれを、追いかけるひなたん星人!!


そんな怪人とひなたん星人の様子をみて、

周囲でパニックに陥っていたGDF隊員達も立ち上がりはじめた!


隊員P「みんな、ひなたん星人が来てくれたぞ!」

隊員I「ひなたん星人を援護するんだ!」

隊員G「ひなたんっ!ひなたんっ!」


ハンテーン「!ははんっ!」


カピバラ怪人はニヤリと笑う。

ハンテーンには爪や牙の様な攻撃的な力はないし、

後ろの少女には、ハンテーンの反転針は効かない。

しかしイコール攻撃できない、と言うわけではなかったようだ。


駆けつけてくれたヒーローの援護をしようと、

再び立ち上がったGDF隊員たちに反転針を射出する。


隊員P「ひなたん星人は我々の敵だっ!!」

隊員I「ひなたん星人を撃てっ!!」

隊員G「ひなたんっ!ひなたんっ!」

反転針が刺さった、彼らの狙いがハンテーンからひなたん星人に変わる。


ハンテーン「ははーん♪」


うまくいったようだ。

こいつらはきっと足止めに使えるだろう。


彼はこれまで何度も反転薬を撃ってきた事で、その特性をおおよそ理解していた。

どう言う人物に、どの程度撃てば、どのくらい反転するのか。

そのサンプルを得たことで、このように都合のいい程度に反転させる事ができるようになった。

この期間の間に、ひなたん星人が成長したのと同じ様に、

ハンテーンもまた成長していたのだ。


ひなたん星人の前に、反転させられてしまったGDFの隊員が立ちふさがる。


隊員A「お、お前達やめるんだっ!!」


隊員P「撃てええぇぇ!!」

隊員I「うひょぉおおお!!」

隊員G「ぶひぃいいいい!!」


弾丸の雨が少女に降り注ぐ。

美穂「効かないナリッ!」

だが、ひなたん星人もまた、ハンテーンと同じく銃弾の雨を物ともしない。

彼女の着るアイドル衣装風の、負のエネルギーの鎧だって、

ハンテーンの毛の鎧に負けないくらいに丈夫なのだから。

肌が露出してる部分への銃弾は、『小春日和』を使って防ぐ。


美穂「・・・・・・ラブリージャスティスっ」

銃弾の雨をあびながら呟く少女。


美穂「ひなたんみねうちっ!!」


放たれた技は、彼女の必殺技の一つである”不殺の一撃”


隊員P、I、G「あひぃいいん!」 バタリ


瞬く間に立ち塞がった隊員達を全員気絶させてしまう。

ちなみに、ひなたん星人が負のエネルギーの扱いを覚えた事で、

この技もより洗練されており、

”本当に痛くなく、体に傷痕も残さずに、相手を気絶させるだけのみねうち”が可能になりました。

その証拠にほら、見てください。


隊員P「幸せだ・・・・・・。」

隊員I「きもちよかっ・・・た・・・。」

隊員G「ぶ、ぶひひ・・・・・・。」

彼らの幸せそうな表情を。


ハンテーン「はんてーん♪」


だが、そんなやり取りの隙にハンテーンは遥か先の方まで逃げてしまったようだ。

彼らを足止めに使う、カピバラ怪人の作戦は見事に成功してしまったらしい。


ハンテーン「てーん♪てーん♪」


――なんだ、他愛無い。

――突き技を習得して来た事には少し焦ったが。

――なんて事はない。攻撃の当たらない位置まで逃げてしまえばそれで終わりだ。


のっしのっしと、だが痛快な速度でハンテーンは道路を走る。

もう、あの少女とは数百メートルは距離を離したはずだ。

ここまで離れてしまえば、もうハンテーンの速さに追いつくことも出来ないだろう。


ハンテーン「ははん♪」


走ってるうちにたどり着いたT字路

ハンテーンが、そこを右に曲がると、




目の前には刀を持った少女が構えていた。


美穂「ラブリージャスティスっ」

ハンテーン「ははん!?!」


突然現れたひなたん星人に、飛び上がって驚くハンテーン。


追いつかれるどころの話ではない。

なんと待ち伏せされていた。


美穂「ひなたんスターシューター!!!」

ハンテーン「てぇんっ!?」


またも間一髪かわす、どうにか急所は外したハンテーンだが、

しかし右肩部分の毛の鎧がごっそり持っていかれた。


ハンテーン「はんてんっ!!」

どうやって先回りできたのか、まるで理解には及ばないが、

とにかく目の前に居る少女から逃げなくてはと、

慌てて身を反転させて、元来た道を戻るハンテーン。

スタコラサッサと走り去る。


背後から漆黒の弾丸が飛んできて、

それが掠める度に毛の鎧が削られるが気にしてはいられない。


とにかく一心不乱にハンテーンは走る。

――こんな所で倒れるわけにはいかない。

――俺はマムの元に無事帰らねばならないのだ。

――そうだ、友にできなかった使命を、果すためにも!


全力で走り抜けて、

しばらくすれば、後ろから、漆黒の弾丸が飛んでこなくなった。

誰かが追ってきてる様子も無い。


今度こそ逃げ切れたのか?


ハンテーン「は、はぁん・・・・・・。」


少し安堵しながら、

そこの曲がり角を曲がれば、



やはり、刀を持った少女が先回りしていた。

美穂「ラブリージャスティスッ!」


ハンテーン「てぇえんっ!!」

――もうやだ、こいつ。


美穂「ひなたんスターシューターっ!!」


今度はモロに左上腕部に突き技がヒットしてしまう。

穿たれた風穴は大きく、こうなれば左腕は使い物にならないだろう。


ハンテーン「はんてんっ!」


だが足が動くならば、逃げることに支障はない。

腕が取れても問題ない、この身は半分機械のようなものだ。


すぐさま来た道を引き返す、

後ろから飛んでくる漆黒の弾丸は、本能でギリギリかわして

急所に当たりそうな物はなんとか外す。

しかし、完全にはかわしきれず掠める弾丸によって、またも毛の鎧は剥ぎ取られてしまった。


ハンテーン「はんてんっ・・・・・・。」

ここまで来れば、少女の狙いにも気づくと言うもの。

あの刀使いは、こちらの消耗を狙っている。


こちらの心臓部に刺突が一発でも当たればそれで終わり。


そして、かわされても、その攻撃が毛の鎧にかすめさえすれば良い。

回転する刺突の弾丸はハンテーンの毛を巻き込むように剥いでしまう。

つまりその部分の斬撃耐性が剥ぎ取られてしまうのだ。


一度の攻撃で、剥ぎ取られる鎧はわずかでも、

この攻撃がずっと続き、ハンテーンの毛の大部分がハゲてしまった時は、

ハンテーンは本当に一刀両断にされてしまうだろう。


少女の斬撃は、先ほどから放たれている刺突のように溜めの動作は一切なく、

その正確性も、攻撃力も、刺突よりずっと上だ。

ハンテーンの瞬発力でもかわすことはできないだろう。


ハンテーンに残された道は二つ。

飛んでくる刺突をかわせずに、急所となる部分を穿たれ倒れるか。

このまま毛の鎧を剥ぎ取られ続け、最後に鬼神の如き斬撃を身に受けて真っ二つにされるか。

二つに一つ。

そうなるまで追い詰められてしまった。



しかし、どうしてだ。

どうして、少女はハンテーンを先回りできたのだ。

ハンテーンは逃げる時、街に張巡らされた道をランダムにジグザグに走り回っている。

だから追いかける側は少しでも距離を取られて、

一度でもハンテーンを見失えば追跡は不可能なはずだ。


だと言うのに、あの少女は先回りしていた。

まるでハンテーンの逃げる位置、方向を完全に予測しているようだった。

未来予知能力でもない持っていない限り、そんな事できるはずがない。

――


リン「未来の予知なんて、たぶん出来ないけれど」

リン「データがあれば、予測なら結構簡単にできるんだよね。天気予報みたいに。」

そう言って端末を操作するリン。

その端末の画面には、ハンテーンの現在の位置情報がリアルタイムに送られてきている。


リン「二丁目の通りを曲がったね。」

リン「じゃあ、次は△×町交差点かな。」

肇「・・・・・・機械と言うのは凄いですね。これほど正確に位置を特定してしまえるなんて。」

機械音痴の肇にはリンのやってる事が、まるで魔法の様に見える。

リン「そう?肇が能力使ってやってる事の方が凄いと思うよ。」

肇「故郷では誰でも出来た事なので、あまり実感はないのですが。」


そう言って、目を瞑る肇。


肇(美穂さん、次は△×町交差点です。)


神通力による、口にする言葉を必要としない、伝達術。

俗に言う”テレパシー”を使って、美穂にハンテーンの向かった先を伝える。


美穂(わかったひなたっ☆すぐに向かうナリ!)


そして肇は目を開く。

肇「はい、伝え終わりましたよ。」

リン「便利だね、それ。」


鬼の孫娘とテクノロジストの少女が出会った経緯はほんの少し前にさかのぼる。


ハンテーンの足取りを追う形で、洗脳を解いて回っていた肇は、

その途中、同じくしてハンテーンを追う少女、リンに出会った。


ハンテーンを斬るために追っているのだが

騒ぎを聞きつけ、駆けつけても既に逃げられた後で、

なかなか追いつけず、困っている。と言った肇に対して、


リン「へえ、じゃあ、それ手伝ったら斬った後の怪人の残骸は貰ってもいい?」


と、言った事から共闘が成立したのだった。


リン(本当は無傷がいいけど、私一人だと捕まえるのも大変だし、)

リン(斬撃耐性を持つ怪人を斬りたがっている。って言うのも興味深かったしね。)


リンは以前、ハンテーンに襲われた際に、抜け目無く発信機を取り付けており、

その協力を得たおかげで、肇達はスムーズに逃走する前のハンテーンを発見することができた。

そして、今もハンテーンを追い詰めるために協力してもらっている訳である。


リン「それにしても、面白い刀だよね。」

リン「カースの核を浄化もしないままに、加工して妖刀の材料にしちゃうなんてね。」

浄化後の核を使ってなら、似たような、感情エネルギーを利用する武器は作ったことがあるリンではあるが。

リン「どうなってるのかな?」

肇(この人、目が怖いなぁ・・・・・・。)

彼女の眼鏡の奥の眼光はやけにギラギラしている。

なんだか狙われているのは、ハンテーンだけでないような気がした肇であった。


――


美穂「あ~はっはっはっはっは!!」


肇から送られてきた情報を元に、

ひなたん星人はハンテーンの向かおうとしている先に、急ぐ。


もしこれが、

平坦な、例えば陸上競技場などで行われる、追いかけっこであったならば、

ひなたん星人がハンテーンに追いつくことは難しかっただろう。

なにしろハンテーンの足は速い。とにかく速い。

ただしそれは”地上で”の話だ。


地上を走るハンテーンが街の中を逃げ回る場合、

その逃走ルートを道路の上と言うフィールドに限定されてしまう。


その一方で、ひなたん星人は、


美穂「ひなたんスカイハイ☆」


車の走る道路や家屋をジャンプで飛び越える。


美穂「ひなたんムーンウォーク!」


垂直に聳え立つ建物の壁に、足をつけて疾走する。


美穂「ひなたんカワイイポーズ♪」 シャーン!


電柱の上の様な、高く狭い足場の上でもバランスを崩さずポーズを決めてしまう。


などなど、まるで忍者のように縦横無尽かつ立体的な機動によって、

街の至るところにある障害物を跳び越えていく。


移動速度ではなく、機動力の差で、

二次元的な移動力と、三次元的な移動力の差で、

それに加えて、リン達からの情報によって、

ひなたん星人は、ハンテーンよりも先回りする事ができていたのだ。


指定の交差点にたどり着いた、ひなたん星人は『小春日和』を構える。


何も知らないハンテーンは、予想通りその場所にのこのことやってきた。

ハンテーン「ははん!?」

美穂「ラブリージャスティスひなたんスターシューター!」


ラブリージャスティスひなたんスターシューターは今度はハンテーンの胴体にヒットする。

何度も放っているうちに、徐々に精度が上がってきたようだ。


ハンテーン「はんっ・・・・・・てんっ!!」


手痛い一撃を受けながらも、歯を食いしばって、何とか持ちこたえたハンテーンは、

再び振り返り、逃走を開始する。

だが、その足取りはおぼつかない。

どうやら、これまでの攻撃の積み重ねで、随分消耗してしまったらしい。


こうなってしまえば、もう狩られるのも時間の問題であろう。


――情けねえ

――本当に情けねえ

――俺はこんなにも弱い

――マムから与えられた能力も最大限に活かすことさえできず、

――終には、先に倒れた相棒に果たしてみせると誓った、

――最後の指令さえ達成できそうにない。

――ここで俺が倒れてしまえば、

――マムからの期待も、相棒への誓いも、裏切ることになってしまうと言うのに。


背後から飛んでくる漆黒の突きは一向に止みそうにない。

全力で走っても距離が開いていないのだ。


――ああ、どうして俺はこんなにも

――臆病で、弱くて、情けねえんだ


そう思えた事が逆転の目であった。

ここしばらくの活動で、調子に乗っていたハンテーンが、

追い詰められることで、自分の弱さを改めて自覚したこと。

自分が強くないと、知ることが、可能性を生み出した。


ハンテーン「ははん」


乾いた笑いを漏らすように鳴くハンテーン。

一か八か、そんな賭けであるが、

どうやらもう、このくらいしか手はないらしい。


外れ掛けていた左腕の毛を逆立て、

それを右腕で取り外すハンテーン。


取り外した左腕を、自分の胸倉、

胴体に空いてしまった穴の部分に持っていき、


ハンテーン「はんっ!」


そして勢い良く突き刺した


――


リン「?」

リン「止まった?」

ハンテーンの位置情報が変わらない。

どうやら逃走をやめて、立ち止まっているらしい。


リン「・・・・・・やけになった訳じゃ無さそうだね。」

リン「肇、ひなたん星人からの連絡は?」

肇「・・・・・・。」

肇「様子がおかしいみたいですね。」

肇「全身の毛が逆立って、今までとはまるで別人。」

肇「いえ、別カピバラの様な雰囲気になってるそうで・・・・・・。」


『 テ ェ エ エ エ エ エ エ ン! ! !』


リン「!」

肇「・・・・・・凶暴な雄たけび、ここに居ても聞こえるなんて。」

リン「逃げてばかりの臆病な怪人が、凶暴にか・・・・・・。」

リン「って事は、”自分自身を反転させた”のかな。」


――


『ハァァァアアアアアアアンッ!!』


怪人ハンテーンは半分機械で出来ているような存在であったが、

もう半分はと言うと、作られた怪物であるとは言え、血が通う生物である。

血が通っていると言う事は薬が効く。


フグが自分の毒にやられてしまうようなマヌケな事がないようにと、

外皮は反転針が刺さらないようになっていたし、

口腔や呼吸器などから薬が流れ込むことも無い様に作られてはいたが、

胴に穿たれた穴から注入することで、無理やり反転薬を体の中に流し込んだのだ。


そして、ハンテーンは狙い通り、

己の性質を都合よく反転させることができた。


臆病でこすく、弱くて情けない怪人は

凶暴で、粗暴で、獰猛で、勇猛な怪人と化した。


穏やかだったカピバラは

友の死を、あるいは自分の弱さを、きっかけとして怒りに目覚めた

      スーパー
さしずめ、”超”ハンテーンと言ったところであろう。


超ハンテーン『テェエエエン!!』

雄たけびと共に振るった怪人の右腕は、建物をプリンのように抉る。

美穂「な・・・・・・なんて怪力ひなたっ」


突如として、強暴に化した怪人の姿に、民衆達は慌てて逃げ出す。


反転薬は精神の性質を反転させる薬品。故にハンテーンは凶暴化した。

そしてさらに、

ハンテーンが0から作られた人造生物であるがためか、

その精神の変化は肉体の変化にも及んだ。

わざわざ取り除かれていた、攻撃性を作り出すため、

ハンテーンの細胞は自らを活性化させ、機械部分は自らに凶悪な改造を施し、より戦闘向きな肉体へと作り変えたのだ。

さらには、


超ハンテーン『テェン!!』 モワッ

マッスルポーズをとると同時にハゲていた毛の鎧が復活する。


美穂「なん・・・・・・だと・・・・・・・ナリ」


地道に剥いだ毛の鎧が瞬時に復活した事で、ひなたん星人はショックを受ける。

戦闘向きに作り変えられた肉体が瞬時に毛の鎧の再生を可能とした。

その上、その硬化能力と、斬撃耐性は変わらずに健在。


攻撃力と防御力、”超”ハンテーンはそれらを両立した形態なのだ!


超ハンテーン『ハンッ!テンッ!』


戦闘準備は整ったとばかりに、ハンテーンはひなたん星人に向き合う。

ムキムキになってしまった肉体は、これまでよりもずっと体が大きくなっていた。


美穂「かわいさゼロナリ・・・・・・・。」


超ハンテーン『ハンテェェェン!!』

その巨体が、タックルの姿勢でひなたん星人に走り出す!

これまでの形態よりも少し速度は落ちたようだが、

それでも、その巨体からは想像できない速度で迫ってきた!


美穂「ラブリージャスティスぅっ!」


しかし、的が大きくなって向かってくると言うならば、迎え撃つまで!


美穂「ひなたんスターシュータァア!!」


黒い螺旋の突きが、超ハンテーンを貫こうと差し迫る!

が、その一撃は

ハンテーン『テェンッ!!』

超ハンテーンの毛の鎧に弾かれた!


美穂「う、うそナリっ!?」


慌てて上空に飛び退くひなたん星人。

ほんのわずかに遅れて、ひなたん星人の立っていた場所にハンテーンが突っ込んできた!

その勢いのままに、たまたま後ろに放置されていたトラックに突っ込むハンテーン。

ゴォオオウン!と大きな音が鳴り、トラックは大きくひしゃげ、突き飛ばされる。


超ハンテーン『テェェン・・・・・・』

のそりと、起き上がる超ハンテーン。

彼の逆立つ毛は凶暴化の影響によって、さらに硬度に磨きがかかったらしい。

突きの一撃も弾き、トラックにぶつかっても平気。

もはや『斬撃耐性』などと言う生ぬるいものではなく、『物理耐性』とでも呼ぶべきであろう。


美穂「・・・・・・。」


この時のために習得した『ひなたんスターシューター』はもう通用しない。

凶暴化した超ハンテーンにはあらゆる物理攻撃が通じなくなっていた。

しかし、それでも別に絶望的な状況と言うわけではなかった。


ひなたん星人はここで戦わずに逃げれば良いのだ。


幾らか速度が落ちた超ハンテーンからであれば、

立体的な機動力によって、ひなたん星人は容易に逃げ去ることができるであろう。


『反転薬』の効果は無限ではない。

待っていればそのうち、薬の効力は消えるのだ。

超ハンテーンは、その時が来るまで力任せに暴れ回り、

薬の効果が切れたと同時に、勝手に疲弊によって倒れるだろう。

そうなれば、ひなたん星人の勝利である。


美穂「けど、そんなかっこ悪い事はできないナリ。」

美穂「だいたい、ここでカピバラさんを放って私が逃げたら、」

美穂「誰がこの街を守るひなたっ」


ここで、ひなたん星人が去れば、

超ハンテーンはただ暴れ回り、周囲の建物を破壊し続けるだろう。


美穂「それじゃあ守ったことにならないナリっ!」


超ハンテーンの背後に着地した、ひなたん星人は高らかに告げる。


美穂「私は愛と正義のはにかみ侵略者!ひたなん星人ナリっ!」

美穂「この街は、まるごとつるっとぜんぶ私のものひなたっ!」

美穂「他の誰にも、たとえカピバラさんにも好き勝手に壊させることはできないナリ!」


超ハンテーン『ハァァァァン!!!!』


超ハンテーンはひなたん星人に振り向き、再び突進を行う。


超硬度と超速度から行われる突進。

その破壊力は、先ほどトラックが破壊されたのを見ての通りだ。


ひなたん星人は今度は避けない。

『小春日和』を両手で構え、その攻撃を待ち構える。


超ハンテーンの巨体がひなたん星人に襲い掛かる。

大量の負のエネルギーを『小春日和』に纏わせ、

少女を押し潰そうと前進してくる頭にぶつける様にして、

ひなたん星人は超ハンテーンの突進を受け止めた。


美穂「きついナリっ!」

あまりの衝撃に歯を食いしばるひなたん星人。


巨大カピバラの突進の勢いは止まらない。

刀を支える体が折れてしまわないように、吹き飛ばされてしまわないように、

全身にこれまで集めた負のエネルギーを流し巡らせる。


それでもひなたん星人の身体は押し出され、支える足が道路をズザザと削る。

数メートルほど押されたところで、なんとか巨体の前進は止まった。


超ハンテーン『ハァァァァアアアン!!』


――

『ハァァァァアアアン!!』


遠くから、怪物の雄たけびが聞こえる。


リン「さっき凄い音してたけど・・・・・・ひなたん星人は大丈夫かな。」

肇「美穂さん、ご無事で!」


肇とリンは、ひなたん星人がハンテーンと戦う現場へと急ぐ。

何かできるかはわからないが、それでも駆けつけなければ、と気持ちがはやる。


肇「まさか『ラブリージャスティスひなたんスターシューター』(突き技)も効かないなんて・・・・・・」

リン「その長い名前、何とかならなかったの?」


ひなたん星人からのテレパシーで、肇達はおおよその現状は理解していた。

ハンテーンが凶暴化して、ひなたん星人の切り札が効かなくなったこともだ。


肇「突きの一撃に代わる、何か良い方法があれば・・・・・・。」

リン「・・・・・・。」

リン「私としては、あまりやって欲しくない手だけど、そうも言ってられないよね。」

リン「あの毛の鎧、弱点があるよ。」

リン「ひなたん星人に、その弱点を突けるかどうかはわからないけど。」

肇「・・・・・・聞かせてもらってもいいですか?」


――


超ハンテーン『ハァァアアン!!』


超ハンテーンは雄たけびとともに、飛び上がって少女から離れる。

そしてまた、突進の姿勢で駆け出した。


しかし、今度はひなたん星人とは逆方向にだ。


美穂「ま、待つひなたっ!」


このまま逃げて、別の場所で暴れるつもりか。

と思ったが、その心配はどうやら杞憂であったらしい。


超ハンテーン『テンッ!!』


適度に距離を開けた超ハンテーンは、手ごろな電柱を右腕で掴むと、

それを支点に、クルリと時計回りに半回転、身体の向きを反転させる。


そうやって、助走距離を増やし、

突進の勢いを増加させて、再びひなたん星人へと向かってきた。


美穂「・・・・・・来るナリ。」


そんな時だ。

肇(美穂さんっ!)

肇から伝達術による言伝が届く。

ハンテーンの毛の鎧の弱点が、ひなたん星人に伝えられた。


――

肇(と、言う訳です。出来そうですか?)

美穂(何事もチャレンジひなたっ☆)

肇(頼もしいですが、あまり無茶はしないでくださいね。)

美穂(わかってるナリ、けど、後は目の前の戦いに集中するひなたっ)

美穂(肇ちゃんは結果を楽しみにして、応援していて欲しいひなたっ☆)

肇(・・・・・・はい。健闘を祈ってます。)


伝達術による通信を終え、肇は目を開く。

肇「弱点は伝えました。後は美穂さん次第です。」

リン「心配なのは、それを実行するのに、核に蓄えられてる負の感情エネルギーが足りるかだよね。」

リン「『ラブリージャスティスひなたんスターシューター』(突き技)を何発も連射してたけど、」

リン「アレを一発使うのにも、かなりエネルギーを消費するよね?」

リン「おまけに超人的な身体能力を発揮するのにも、使うだろうし・・・・・・。」

リン「カースを狩って集めてたって言うエネルギーだけじゃ足りないんじゃない?」

カースの核の感情エネルギーについて独自に研究し、

そのエネルギーの利用を考え付いたリンならではの、気がかりであった。

肇「それについては大丈夫だと思いますよ。」

肇「『小春日和』が使用できる負のエネルギーはカースを狩って、蓄えたエネルギーだけじゃありませんから。」

――


少女は刀を構え、目を瞑り集中する。

目前には今にも彼女をぺちゃんこに潰そうと、強暴な破壊の塊が迫ってきているのだが、

それでも少女は静かに、その感覚を研ぎ澄ませる。

この街に満ちる、負の感情を拾い集めるために


美穂「実は今日の私、結構無茶してるひなた」

美穂「せっかくカースを狩って集めた負のエネルギーはもうほとんど使っちゃったナリ」

美穂「だけど、まだ全然戦えるひなた」

美穂「カピバラさんには、どうしてかわかるナリ?」


独り言の様でもあり、迫ってくる怪物に言い聞かせるようでもあり、

そんな風に、彼女は言葉を呟く。


美穂「これから私が使うのは、この街に満ちる負のエネルギー。」

美穂「人に隠したいこと、触れられたくない弱さを知られてしまう怖さだとか。」

美穂「本当に伝えたいことを曲げられて、間違った事をさせられてしまう苦しさだとか。」


『小春日和』に埋め込まれた核は、そんな数多のマイナス感情を拾い上げ、自分の力とする。


美穂「カピバラさん、あなた達のせいで、まだ街には、たくさん悲しい感情があって」

美穂「その心から聞こえる悲痛な声が」

少女の身体からは、黄色いオーラが吹き上がっている。


超ハンテーン『ハンテェェエン!!!』

鉄の塊の如き、怪物の突進がひなたん星人にぶつかろうとする。


美穂「私を強くするひなたっ!!!」

『小春日和』がその突進を受け止めた。


超ハンテーン『テンッ!!?』


動かない。

超ハンテーンの凶暴性をただ勢いよく、真っ直ぐに込めただけの凄まじい破壊の衝動。

その巨大な衝撃を、刀一本で受け止めたはずの少女は

ただの1ミリも突き動かされることはなく、

超ハンテーン突進の勢いは完全に殺されていた。

その事実に超ハンテーンは脅威を覚える。

さらに、

美穂「ラブリージャスティスひなたんフラッシュっ!!」


そのまま刀を少し振り上げ、振り下ろす所作から放たれる、必殺の斬撃。


当然、超ハンテーンの毛の鎧は斬撃を無効化する。

が、

超ハンテーン『ハングァッ!?』


斬撃とともに、零距離からの負のエネルギーの放出が行われ、

毛の鎧を貫くまでには至らなかったが、その衝撃が超ハンテーンの頭を揺らす。


超ハンテーン『て、テェェンッ・・・・・・』


物理耐性の毛の鎧を持つ超ハンテーンであっても、

今の一撃には思わず怯む。

ほんの僅か怯んだだけで、その身体は無傷だ。


だが、その一瞬の間に、少女は、街に満ちる負の感情から、

次の一撃のための、

最後のトドメの一撃のための、

斬撃を無効化する怪物を一刀両断にするための、


黒く燃え上がる力を練り上げる。


美穂「本当はこう言うのは『戟王丸』の領分なんだろうけど、ひなた」

美穂「でも、私だってカピバラさん達には怒ってるナリ」


美穂「そして、この”怒りの炎撃”は、」

美穂「街のみんなの思い、そのものひなたっ!」


彼女が手に握る、『小春日和』からは黒い炎が立ち昇る。


超ハンテーン『テ、テェエン!?』


負の感情から練り上げられ、刀が纏うエネルギーは、

まるで本物の炎の如く、熱く、迸る、感情のエネルギー。

そして、その刀が振るわれる。


美穂「ラブリージャスティスひなたんインフェルノぉおっ!!」


怯む超ハンテーンに、業火の如き、横薙ぎの斬撃が放たれた。

超ハンテーンの毛の鎧は刀の纏うエネルギーに触れた途端に燃やし尽くされ、

露になった、胴体に『小春日和』の刃が食い込む。


そのまま、刀は毛の鎧をバチバチと焼き切りながら、

胴体を左から右になぞり、そして再び、逆側から刀身が露になる。


刀がその胴体を、斬り抜けたのだ。


『小春日和』は、見事に超ハンテーンを真っ二つにした。


超ハンテーン『はん・・・・・・』

全身が燃え盛り、上半身と下半身が、別たれた超ハンテーンは、

超ハンテーン『てぇん・・・・・・』

そのまま崩れるように倒れ、


ドォオオオオオン!と爆散した。

爆発を背景に少女の高笑いが響く


美穂「は~はっはっはっはっ!!」

美穂「ひなたん星人の大勝利ナリッ♪」


――

――


――マム


――マム、指令を果せず、ごめんなさい。


――それと、アバクーゾ


――すまねえな、俺もやられちまったよ。


――やっぱり弱虫は弱虫のままなのかもしれないな。


――けど、悔いはねえさ。


――やれることはやりきったしな。


――待ってろ、兄弟。いまそっちに・・・・・・


「行かせないひなたっ☆」


――はん?


ハンテーン「はっ?!」


カピバラ獣人は目を覚ました。

――目を覚ましただと?

――なんだ、これは?一体どう言う状況だ?


美穂「うわっ、本当に目覚めたひなたっ」

肇「その状態でも生きてるなんて、摩訶不思議ですね・・・・・・。」

リン「まあ、ロボットって言うかサイボーグみたいなものだからね。」


ハンテーンはあの爆発の中、なんと奇跡的に生きていた。

元々、人造生物かつ、大半が機械でできた怪人。

故に普通の生物が死ぬような状況でも、おおよそ大丈夫ではあるが、


美穂「流石に生首で生きてるのはドン引きナリ・・・・・・。」

ハンテーン「てっ、てぇんっ」 ガビーン


体はほとんど爆散してしまったため、残ったのはその首ひとつである。


ハンテーン「はんっ」

しかし生きていただけでも運が良かったのだろう。

もしかしたらマムの元に無事・・・・・・ではないが帰る事もできるかもしれない。

頭が生きてるなら通信機能も生きてるはずだ。

早速、マムに現状を報告しようとして


リン「あ、通信機能なら取り外してるから。何処に連絡しようとしたのかは知らないけど。」

ハンテーン「はぁんっ?!」

いきなり希望を挫かれた


と言うか、頭の中の通信機構をどうやって外したのだ、この眼鏡。


肇「アレは・・・・・・ちょっとした衝撃映像でしたね。」

美穂「しばらくハンバーグは控えたいナリ・・・・・・。」

ハンテーン「てぇんっ!?」

二人の反応を見るに、唯一残った頭部さえ、意識が無い間にヤバい弄られ方をされていたようだ。


リン「それにしても、燃える斬撃が出来るなんてね。」

リンは感心したように呟く。

リン「油に引火して、胴体部分が爆発しちゃったのは残念だけど。」

リン「その刀の能力を見れただけでも、お釣りが来ちゃうかな。」

そう言って彼女は微笑んだ。


リン「・・・・・・本当にどうなってるんだろうね、それ」

少女の表情が捕食者のそれに変わる。

美穂「ひっ」

美穂「こ、怖いひなたっ、肇ちゃん守ってひなたっ」

肇「えっ、ちょっ、ちょっと美穂さん、私の後ろに隠れないで」

ある意味『小春日和』そのものであるひなたん星人には、彼女は恐怖の対象であろう。

肇でさえ冷や汗がずっと出ている。おじいちゃんの刀を分解(バラ)されてはたまらない。


リン「ふふっ、冗談だよ。」

美穂「な、なんだ冗談ひなたっ」

リン「いずれ機会があれば、”よく”見せて欲しいとは思ってるけどね。」

美穂「ひっ!」

カピバラさんよりこっちの方がよっぽど怖い。

リン「今日のところはコレで我慢しておくよ。」

ハンテーン「はんてん・・・・・・」 ←コレ


リン「そろそろ騒ぎを聞きつけた人が集まって来そうだし、私は帰るね。」

リン「今日はありがと、またね。肇、ひなたん星人。」

美穂「こ、こちらこそありがとうナリ。」

肇「い、いずれまた」


そうして、テクノロジストの少女は、カピバラの生首を袋に入れて去って行った。

リン「帰ったら、まずは・・・・・・して・・・・・・次は・・・・・・・まで・・・弄って・・・」

ハンテーン「はぁん!?はぁーん!!」


肇「行ってしまいましたね・・・・・・。」

美穂「カピバラさん・・・・・・生き残れた事が必ずしも幸せな事とは限らないナリ。」

何処からかドナドナの音楽さえ聞こえてくる気がする。

二人はハンテーンの行末を祈り、暫し合掌するのだった。


美穂「・・・・・・まあ、どうにか最初の目的は果たせたナリ。」

肇「ひなたん星人さんのリベンジ、そして『鬼神の七振り』による斬撃耐性の突破。」

肇「最後の局面、負のエネルギーに炎の如き性質を持たせる技術。」

肇「本当に、お見事でした。」

美穂「あの怪人達に対する”怒り”が街に満ちていたおかげなり☆」


周囲に満ちる負の感情エネルギーから性質を得て、斬撃に他の『属性』を付加する術。

それもまた、負のエネルギーの扱いに長ける人格を作りだす、『小春日和』の真価の一つであった。


美穂「けど、二つ目の目的は『戟王丸』の方が楽だったナリ?」

なんとなく思いついた疑問を口にするひなたん星人。

肇「確かに『戟王丸』のあれは斬撃や打撃と言った次元にはありませんからね。」

何しろ『戟王丸』から放たれるのは怒りエネルギーによる超極太ビームである。

肇「しかし、それではひなたん星人さんのリベンジにはなりませんし、」

肇「ハンテーンをあそこまで追い詰める事ができたのは『小春日和』だからこそですよ。」

肇「もっと誇ってもいいと思いますよ、美穂さん。」

美穂「そうナリ?えへへ♪」


肇「それに、『戟王丸』は街中で振るうのはあまり向いてませんからね。」

肇「周囲に被害を出しすぎてしまいます。」

美穂「・・・・・・周囲に被害って言うなら、今回の戦闘は結構出してる気がするひなた。」


ハンテーンを追い詰める時に、撃ったラブリージャスティスひなたんスターシューターは、

人には当たらないようにしていたが、避けられた突きが壁くらいは粉砕してるし。

特に超ハンテーンと戦ったここ一帯は、ひしゃげたトラックをはじめに破損が大きい。



美穂「う~ん、これはどうするナリ?」

肇「・・・・・・後始末が大変そうですね。」


隊員A「それは我々に任せてもらおう。」

彼女達の後ろから、一人の男がやって来て言った。


隊員A「随分遠くまで怪人は逃げたのだね、ようやくここに辿り付けたよ。」

肇「あなたは」

美穂「かまs・・・・・・かませ犬さん!」

隊員A「どうして一度言いなおそうとした事をそのまま口にしたっ!」

美穂「いや、よく考えたらどこの組織の誰だか知らないナリ」

隊員A「それでも、もう少し言い方があるだろう。」

美穂「じゃあ解説役さん?」

隊員A「大して変わってない!」

美穂「でもいい解説だったナリ」

隊員A「こう言う立場に付いていると、自然とヒーローの活躍を解説する事も多くなってな・・・・・・。」

肇「苦労されてるんですね。」

隊員A「・・・・・・話を進めても良いかな?」


隊員A「怪人は爆散してしまったのだな。」

美穂「あっ、うん、そうナリ。」

肇(首だけ持って帰った人が居るとは言えませんよね。)

隊員A「そうか、状況を見るに君達が退治してくれたのだろう?」

隊員A「それにそちらの子は、能力を使い私達に掛かった”反転”を解いてくれた。」

美穂「肇ちゃん、そんな事してたナリ?」

肇「美穂さんがハンテーンを追ってる間、何もしてないのも、と思ったので」

隊員A「本当に感謝する。ありがとう。」

隊員A「後始末の事は、我々GDFに任せてくれ。」

肇「いいんですか?」

隊員A「もちろんだ、これくらいの仕事はさせてくれよな。」

美穂「かませ犬さん・・・・・・」

隊員A「今、GDFだって言ったよね。」


肇「では、これにて今回の怪人騒ぎも一件落着と言ったところでしょうか。」

美穂「じゃあ、いつものやるひなたっ☆」

そう言って、少女は刀を頭上に掲げる。

美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!」

美穂「今回もまるごとつるっとぜ~んぶ!守ってみせたひなたっ☆」 キャピピーン


そして最後に勝利の決めポーズ。


美穂「めでたしめでたしナリ♪」


――

――


『ニューヒーローひなたん星人、カピバラ獣人撃破でお手柄!』

                     ―とある地方新聞 朝刊より―



美穂「全然めでたくなかったっ・・・・・!!」


肇「美穂さんがハンテーンを追ってる姿撮られてたんですね。」 モグモグ

美穂が頭を抱え、肇がパンを齧る。そんな小日向家の朝の風景であった。

肇「あ、こっちの写真。カワイイポーズですね。」 ムシャムシャ

美穂(なんで、そんなポーズしたんだろ、私・・・・・・)

美穂「あぁぁ、どうしよう・・・・・・!」

美穂「こんなの絶対クラスのみんなに知られてるよ!もう隠しようがないっ!」

美穂「肇ちゃん・・・・・ど、どうにかならないかな?」

肇「・・・・・・残念ですが」

美穂「おかーさん・・・・・・私、もう学校やめてもいいかな・・・・・・」

「なに言ってるの、アイドルヒーローになるんでしょ。胸張って行ってきなさい。」

美穂「うぅぅ、ダメッ!恥ずかしいっ!」


今回の騒動、小日向美穂のアイドルヒーローへの道、その一歩となったようですが、

やはり本人は、まだ自分の中の人格を受け入れがたいようです。


美穂「熊本に帰るぅう!」


おしまい


ハンテーンの毛が燃えるなら、火炎斬りを放てば良いじゃない。ってお話でした。

言い忘れたけどリンちゃんお借りしましたー
ところで、リンちゃんの魔法銃が無かったら、鬼神の七振りは作られなかったんだよね。
つまり小日向ちゃんが今こんな事になってるのはリンちゃんのせいだね!

乙ー

ハンテーン……強く生きろ……(;ω;)ゞ
そしてリンちゃんコワイ((((;゚Д゚)))))))

おつー

ギャグイベントのはずなのに、ものすごく熱いラストだ

みやびぃ投下します

満月が浮かぶ静かな夜。

日が出てる時は、子供達が元気に遊ぶ賑やかな公園も、夜になれば人気もない場所へと変貌する。

月明りと街灯に照らされ、遊具も不気味に輝いていた。

そんな公園のとある一角。

突然、空間が歪み始め、そこに宇宙船らしきモノが突然姿を現した。

???「やっと、人がいなくなったねぇー。みやびぃ船の中だけで退屈だったよぉ」

『ミヤビ。声が大きいです。周りの住民に気づかれたら大騒ぎです。ソレに今は夜と言う時間でこの星の住民は一部眠りにつくのです。だから起こしてはいけません』

中から出て来たのは、耳当ての部分が音符の形をしたヘッドフォンを装着した美しくも可愛らしい女性だった。

そして、そのヘッドフォンから声が聞こえる。

その声の主は目の前にいる宇宙船≪ノーティラス≫。それに搭載されてる制御用AIからだ。

≪ノーティラス≫の言葉にミヤビと呼ばれた女性は頬を膨らませていた。

ミヤビ「わかってるよぉ。ママにもお話で何回も聞かされてるから、地球の事くらいちゃんと理解してるよぉ。ママの故郷なんだから」

そういいながら、両手を広げながら無邪気な笑顔で言う。

ミヤビ「ママが言ってたんだぁ!この星には悲しい事もいっぱいあるけど、それも同じくらいに笑顔が溢れてるってぇ。だから、いつか帰りたいってねぇ。それにママの友達や家族に会いたいってみやびぃに寂しそうに言うのぉ」

『確かに≪博士≫はこの星から拉致されてしまいました。宇宙犯罪組織に研究員として働かされ、様々な兵器を作り上げました。だからこそ、私やミヤビも生まれたのです』

彼女は人間でも宇宙人でもない。
宇宙犯罪組織。彼等によって作られた≪兵器≫なのだ。

あらゆる技術を詰め込み、相手が油断しやすいように可愛らしい女性の姿をした惑星殲滅目的の殺戮プログラム≪アンゴルモア≫を搭載したアンドロイド。

正確には、ミヤビがママと呼ぶ女性。地球から拉致された月宮博士により作られた。

彼女は宇宙犯罪組織の言いなりで、様々な研究をし、色々なモノを発明した。

星を喰らうモノやOZやカースなどの危険指定されてる存在の兵器の利用の研究。

銃や爆弾といった武器類はもちろん。戦艦やロボットなどの兵器。人工AIが搭載された人型の兵器だって作った。
はては、ウィルスなどの生物兵器の作製にも参加していた。

それらが、色んな星で犯罪や戦争の道具として使われてるのを知りながら……

ミヤビ「そうだねぇ。それには感謝してるよぉ?けど、ママはミヤビ達の為に……」

『ミヤビ。≪博士≫は重傷を負いましたが、まだ生きているんです。私も今最大限の医療措置をおこなってほとんどの傷は治しました。あとは意識を目覚めるのを待つだけです」

ミヤビ「………うん」

だが、月宮博士は耐えきれなくなったのだ。

自分が作ったモノで沢山の命が奪われてる事。

……なにより、ミヤビや≪ノーティラス≫のような意思ある兵器を娘や息子のように思っているのだ。

娘や息子に罪を犯させるのを願う母親はいるか?いや、いない。

だから、月宮博士は決意したのだ。残ってるミヤビと≪ノーティラス≫を宇宙犯罪組織から抜け出させるのを………

自分の命が奪われようとも。

今、月宮博士は意識不明の重体だ。

≪ノーティラス≫の医務室で、医療機器に繋がれながら、死んでるように眠っている。

ミヤビ「地球なら、きっとママも起きてくれるはずだよねぇ?」

『私にはわからないです。ですが、望みはあると思います』

宇宙船のドアが閉まり、宇宙船が歪み消えていく。

ミヤビ「とりあえずお医者さんかママの友達を探しにいこうねよぉ」

そう言いながら、ミヤビはヘッドフォンに軽く触ると、着ている服が地球人が着るような服へと変わっていく。

『もし、追っ手や危険指定対象にあったら無理はしないようにしてくださいよ?≪アンゴルモア≫は今プロテクトをかけてありますが、万が一、暴走したら大事故に発展します。ですので、装備も地球で使用して問題のない殺傷能力が低いのを出せるようにしていますので』

ミヤビ「わかってるよぉ~♪」

産みの親の故郷を歩き回る事に、嬉しさを感じながら、月宮博士を救う為、彼女は歩きだした。


終わり

ミヤビ(人間名・月宮 雅)

職業・脱走者兼放浪者

属性・人型兵器のアンドロイド

能力
≪現在ミヤビの装備品≫

プラズマブラスター≪紫電≫(非殺傷目的)ナイフ型超振動刃≪ファング≫(機械類やカースなどには使う)・バリアジャケット・ヘッドフォン型通信機


≪現在使えるミヤビの内臓システム≫

実像ホログラム装置・重力制御装置・物質転送装置≪限定範囲指定≫・殺戮プログラム≪アンゴルモア≫(封印されてる為使えない)


宇宙犯罪組織の命令により、月宮博士が開発した惑星殲滅目的の殺戮兵器。

本来なら殺戮プログラム≪アンゴルモア≫により、ただ無機質に人を殺し星を滅ぼす為の兵器だったが、月宮博士が人間のように考え成長させる為に開発した自立AIを取り付けた事により月宮博士をママと呼び慕っている。

その為、彼女が喜ばない殺戮を良しとはしない。

その為、自らの意思で≪アンゴルモア≫にプロテクトをかけている。その為、ほとんどの装置が作動しないようになっている。

中身はターミネーターのような骨組みになっているが、見た目や性格は人間のようで、一見見分けもつかない。皮膚も髪質も似たように作られている。

彼女が着ているバリアジャケットは様々な服に変化する事ができ、着ているモノに薄いバリアをはり、受けるダメージを減らすことができる。


現在は、宇宙犯罪組織を脱走し、月宮博士を治してくれる医者と月宮博士の友達を探している。

・宇宙船≪ノーティラス≫

中はかなり広く格納庫とか医務室などの部屋がある。
一見武装されてないように見えるが、転送装置により、様々な兵器を出現させ、迎撃できるようになっている。
その他にも、ステルス機能などのシステムがある。

この船は人工AIにより、管轄されており、ミヤビのヘッドフォンを通していつでも通信している。

船内では、実像ホログラムを使って男の姿を作り出し、それで動いたり、喋ったりする。

現在はとある公園内に着陸して、ステルス機能により擬態している。

中にいる月宮博士を治療中。



・月宮博士

ミヤビや≪ノーティラス≫の産みの親。地球人の女性である。

昔、天才科学者と呼ばれていたが、宇宙人に拉致され、宇宙犯罪組織の為に数多くの兵器を作った。

自分が作った兵器により、沢山の命が奪われてる事に、ついに心を痛め、ミヤビ達と一緒に宇宙犯罪組織から脱走した。

その際、重傷を負い、意識不明の重体。

以上です。

そういえば人型破壊兵器っていないなって思い作りました


装備とか使える機能は追加しても大丈夫です

なんか矛盾点とかありましたら指摘お願いします

おつー、宇宙がどんどん広がるな

??「乃々ちゃんの癒seaの力…ふふっ」

久々のアーニャ投下します
時系列的には漂着した少し後なので、憤怒の街以前になります

アーニャSRおめでとう
水着アーニャ欲しいけど私には無理です

「というわけで、貴女の部屋はここになります。でこれが鍵です」

アナスタシアはとあるアパートの一室の前で女性からその部屋のものであろう鍵を手渡されていた。

アーニャ「ダー、わかりました。よろしくおねがいします」

「こちらこそ、よろしくおねがいしますね」

女性はアーニャに微笑みながら言う。

「では私はこれで。私は代理ですから、本当の管理人さんは都合がついたら紹介しますね~。ちなみになかなか面倒くさい人ですから覚悟しておいてください♪」

女性はアーニャに背を向けて階段を下りて行こうとしたが階段を下る音が途中で止まった。

「あらあら?文香さんじゃあありませんか。こんにちは~」

「……どうも、こんにちは。茄子さん」

アーニャはその会話が聞こえてきた階段へ覗くように顔を出した。
そこには先ほどの代理管理人、鷹富士茄子ともう一人、瞳まで伸びた前髪にゆったりした服を着た女性が階段半ばくらいにいた。

下の方にいた、文香と呼ばれた女性がアーニャの存在に気づいたのか、隠れて視線の先が読みにくい目をアーニャの方へと向けた。

文香「……あの人は」

茄子「今日から入居したアナスタシアちゃんですよ」

茄子はアーニャの方へと視線を向けながら言う。
角から顔だけ出しているというのは失礼なのでアーニャは階段を下りていき茄子のとなりまで来る。

アーニャ「……オーチン プリヤートナ……あ、はじめまして、アナスタシアです」

文香「……はじめまして?鷺沢文香です」

なぜか軽く首をかしげながら自己紹介を文香はする。
それにアーニャも少し疑問に思い軽く首をかしげる。
なぜかお互いに首をかしげている状況に茄子も微笑みながらもつられて首をかしげる。

すこし沈黙が続いたがそれを茄子が破る。

茄子「そういえば文香さん今日はどういった用事ですか?Пさんは今日は出かけてるんですけど」

文香「……いえ、今日は大した用事ではないんです。ちょっとしたことなんで……」

文香は手に持った紙袋を少し前に出す。

文香「……羊羹です。Пさんと一緒に食べてください。ああ……アナスタシアさんにも分けてあげてください」

茄子「これはどうも~。で用事というのは?」

文香「アナスタシアさんには申し訳ないのですが……できれば二人で話したいのです」

茄子「わかりました♪え~と、じゃあアーニャちゃんは……」

文香「いえ、少しアナスタシアさんとも話をしてみたいので。……これから、予定がないのなら少し、待っていてくれますか?」

アーニャ「ダー……問題ないです。待ってますね」

茄子「わかりました。じゃあ管理人室へ行きましょうか~」

茄子は文香の手を引いて階段を下りていく。
アーニャはその後に続いて階段を下りていき地面に着いたところで立ち止まり、そこで待つことにした。
二人は一階の管理人室へと入っていった。

その後、5分も経たないうちに文香は出てきた。
扉からは茄子が顔をのぞかせてアーニャに手を振っている。

文香「……お待たせしました。せっかくなのでこの辺りを少し歩きながら、話しませんか?」

アーニャ「ニェート……いいえ、ほとんど待ってませんよ。じゃあ、少し歩きましょう」

二人は話をするはずだったのになぜか無言のまま街の中を歩いていく。
人通りが全くないわけではないが、ちらほらと見かける人が静かに歩いている。

文香「あ……ここでさっきの羊羹を買ったんです。ここの和菓子……おいしいんですよ」

とある和菓子屋の前で文香が沈黙を破る。

アーニャ「なるほど……覚えておきましょう」

そう言いながら軽く店内を覗き込むアーニャを文香はじっと見ている。

文香「日本には……慣れましたか?」

それを聞いたアーニャはすこし警戒しながら和菓子屋の店内から文香の方へ振り向いた。
文香はアーニャから視線を外しそのまま歩を進める。
アーニャは文香の少し後を着いていく。

アーニャ「ヤー……私が、日本に来て間もないことを、知っているのですか?」

文香「……新しい入居者だとか、日本語に慣れていないとかで、予想はできるでしょう?」

アーニャ「ニェート……いえ、それに、初対面の外国人に、『日本に慣れたか?』などとは、あまり聞かないでしょう。……しばらく付き合いがあった後に、聞くことのはずです」

文香は立ち止まって後ろにいたアーニャの方へと振り返る。

文香「……さすがですね。……確かに、私は、貴女を知っています。いえ、識っている……ですね」

アーニャ「知っている?」

文香「……ええ、貴女は私を知らないでしょうけど、私は貴女を識っているんです」

その言葉にアーニャはさらに警戒する。

文香「……ああ、身構えないでください。私に……敵意はないです。あなたを知っている理由は、頼まれたからなんです」

アーニャ「ブィール スプロースィヌ?……頼まれた?」

文香「……はい、あなたについて調べるように頼まれたのです」

アーニャ「……いったい……誰に?」

文香「……塩見周子さん、ご存知ですよね」

その名前が出てきて、アーニャは納得がいったのか警戒を少し解く。
その様子に文香も安心したのか少し息を吐いた。

アーニャ「周子さんに、頼まれたのですか?」

文香「……正確には、周子さんが、ある人に頼んで、その人が私に頼んだのです。……私は叔父の古書店の手伝いをしているのですが、そこにたまにお客としてやってくる人なんです」

アーニャ「……なるほど、そういうことだったのですか。プラシチー……すみませんでした」

文香「……いえ、気にしないでください」

アーニャは警戒を解いて、文香の隣まで行く。
文香もそのまま歩き出し、横並びで再び進みだした。

アーニャ「ところで……どうやって私のことを調べたのですか?話を聞く限りではただの古書店員が調べられるようなことではない気がするのですが」

文香はちらりとアーニャの目を見た後に、肩にかけていた地味な色合いのショルダーバッグから一冊の本を取り出した。

文香「……これを、見てみてください」

文香はその本をアーニャに手渡す。
言われたとおりにアーニャは本を開くが、怪訝な顔をして、パラパラとページをめくっていき、そのまま背表紙までたどり着いてしまった。

アーニャ「パストーィ……白紙ですね。落丁ではないでしょうし。……よく見れば表紙にも何も書かれていない。本であるのに、文字が見当たりません」

アーニャはその本をそのまま文香に返す。
受け取った文香はその本を半ばあたりから開く。

文香「……私には、いろいろなことが書いてあるのが見えます。この本は……私だけが読めるのです」

文香はその本を先ほどまでしまってあったバッグに戻す。

文香「……アカシックレコード、というものを……ご存知ですか?」

アーニャ「ニェ ズナーユ……わからないです。教養には疎いもので」

文香「……ざっくりと言ってしまえば、この世のすべてが書かれているんです。アカシックレコードには、この世、いや、すべての世のことがそこには記されています。すべての人の歴史が、一字一句、過去から未来。……神羅万象、一切合財、書かれている。らしいものです」

アーニャ「……らしい、ですか?」

文香「……はい。実際に試したことはないので。要するに私は、そのアカシックレコードの読み手なのです。これを使って、アナスタシアさんについての過去を、すべて調べさせてもらいました」

それを聞いたアーニャは苦い顔をする。

アーニャ「……私自身でさえ、知らないことまでも含めて、自分を知られるというのは、余り心地のいい物ではありません」

文香「それについては……謝罪します」

文香は足を止めてアーニャの方を向いて頭を下げる。

アーニャ「ニェ ヴァルヌーィチェシ……気にしないでください。そのおかげで、私が得られたものもあったので」

文香「……そう言ってくれるのであれば、こんな力をもった私でも、救われます」

アーニャは文香が頭を上げたのを確認した後、再び歩き出す。
それに続いて文香も半歩後ろを歩き出した。

アーニャ「……そういえば、そのアカシック、レコードというのは、何でも知れるのですか?」

文香「はい……、多分世界の終わりから、今日のあなたの朝食まで、すべて識ることができると思います」

アーニャ「ンー……では、今日私と出会うことも、知っていたのですか?」

文香「いえ……私は、未来は読まないので……今日出会ったことは、本当に偶然です。いや、偶然ではないのかもしれないけれど……」

アーニャ「未来は……読まない?便利そうな力なのに……なぜ?」

文香の前を歩くアーニャに、後ろの様子はわからない。
並び茂る街路樹の影は二人を飲み込んでいる。

文香「……アナスタシアさんは、シュレディンガーの猫、というのを知っていますか?」

アーニャ「コート……猫なら知っていますが……」

文香「……猫を知らない人を探す方が大変ですよ。シュレディンガーの猫というのは物理学者のシュレディンガーが提唱した量子論における思考実験です。……最近では関係ないところで有名ですね」

アーニャ「……難しそうな言葉ですね」

アーニャはよくわかっていないようだが、文香は続ける。

文香「……要するに、箱の中に猫と、50%で発動する致死性の毒ガス発生装置を一緒に入れておくのです。その時、箱の中の猫は生きているか死んでいるか、という実験なのです」

アーニャ「なんだか……科学っぽくないですね」

文香「思考実験ですからね。……アナスタシアさん、箱の中の猫は生きているでしょうか?死んでいるでしょうか?」

アーニャ「それは……透明な箱でない限り、開けるまで、わかりません」

文香「……そうですね。箱を開けるまでは猫は、生きているかもしれないし、死んでいるかもしれない。どちらの可能性もあるわけです。……本来ならばここから量子論についての考え方に進んでいくのですが、今は少し、違う使い方をします」

突然、建物の間から二匹の猫が飛び出してきた。その猫はアーニャの後方へ向かって走って行った。
アーニャはそれを目で追うと、後ろにいた文香の目と合う。
文香は合った目を外して歩きは止めずにそのままアーニャの前へと出た。
気が付けば猫はもう姿が見えなくなっていた。

文香「……アナスタシアさんは、箱の中の猫には、生きていてほしいですか?死んでいてほしいですか?」

アーニャは振り向いた顔を戻して、少し顔を下に向けながら、歩き出す。

アーニャ「……私は、生きていてほしいです。私が言えることかは、わかりませんが」

文香「そうですか……つまり私は、その箱を開けずに、開けるという動作を行わずに、猫が生きているのか死んでいるのかを判断できるというわけです」

前を歩いていても、後ろを歩いていても、文香の表情はアーニャには見えない。

文香「……だからこそ見ないのです。未来は。結果をはっきりさせるよりも……私は、生きている可能性のままの方が、好きですから。……いや、正確には、猫が死んでいた場合のことを考えると、箱の中身を見るのが怖くなるからだと思います。……可能性にすがるのは建前です。私は……ただ怖いのですよ」

雲の動きでひと時太陽が遮られる。
雲が退いたとき、ちょうど街路樹の途切れた場所にいたアーニャは差し込む光をまぶしく感じる。
それに対して、そのことに気づかずに文香は街路樹の下で足を止めない。

アーニャ「ィエーシェ……なら、怖いのなら、その本を、捨ててしまえばよくないですか?」

そんなアーニャの言葉に文香は振り向いて、ずっと一直線だった口角を少しだけ上げた。

文香「……もう試しました。でもこの本は燃えませんし、勝手に手元に戻ってきます。それに、この本に怖いという感情だけを抱いているわけではないです。……自分に関係のない過去を読むのは、悪趣味だと思うかもしれませんが、少し楽しいですし、たまに役に立ったりしますしね。あなたの名前を知ったように」

アーニャ「ヤー……私の……名前」

文香「私のこの本が……あなたの可能性になれたと思うことは、少しばかり、傲慢ですかね?」

文香は少し自虐的に言う。

続いてきた街路樹は途切れて日は真上に上ってきていることがわかる。

アーニャ「ニェート……そんなことは、絶対にないです。私は、あなたに感謝しています」

文香「……それは、うれしいですね。ですが、あの人、志乃さんになら、あなたのことを調べる手段は他にあったはずだと思います。それなのに、私に頼んでくれた。……だから、期待に応えたくなった。感謝されたくて、あなたのことを調べたと思います。それでも」

アーニャ「……そこまでです。それは自然なことです。……スパシーバ、ありがとう。この言葉はあなたがもらっていい言葉ですよ」

その言葉に文香は少しだけ目を見開いて、沈黙する。
そして、目にかかった前髪を軽く上げて

文香「……どういたしまして」

目を合わせてしっかりとした笑顔でそう言った。

しかしその直後、人の本能に警戒を語り掛けるようなサイレンがあたりに鳴り響く。

文香「……緊急避難勧告の、サイレンですね。近くで何かあったのかもしれません。避難場所へ行きましょう」

文香はアーニャの手を取って、避難場所へと向かおうとする。
しかし、アーニャは動こうとはしない。

アーニャ「……私には、柄じゃないかもしれません。でも、私でも箱の中の猫を救うことはできるかもしれません」

それを聞いて文香はアーニャから手を放す。
そしてショルダーバッグに入っていた白紙の本を取り出した。

文香「……その可能性が、あなたの最善の可能性であることを、私は祈ります。……場所は二つ先の交差点を右に曲がった次の交差点の通り。複数体のカースがいます」

アーニャ「……ありがとう、ございます」

文香「……では、気を付けて」

その言葉を背に受けてアーニャは走り出した。
部隊当時で100メートル8秒フラットをたたき出した脚によって文香との距離は空いていく。
そして交差点を右折したところで文香からはアーニャが見えなくなった。






突如現れたカースによって、その通りは恐怖に包まれていた。

『モットヨコセコラアァァーーーー!!!』

カースは周囲の店を破壊し、店内のものを触手で掠め取って次々吸収していく。
人々はカースに背を向けるようにして逃げていく。

「ああっ!」

しかし小さな女の子が転んでしまい、膝をすりむいてしまったのかその場で泣き出してしまった。
その様子に気づいたのかカースが女の子に近づいていく。
それに続いてその子の母親らしき人が少し離れた後方で、娘が止まっていることにようやく気付いた。
母親は娘の元へと向かおうとするが気づいたのが遅く、距離が空いている。カースがたどり着く方が確実に速いだろう。

カースが女の子の目の前まで来てそのままのみ込もうとする。
女の子は泣き叫びながら目をつむってのまれるのを待つだけだった。

しかしその瞬間、アーニャが転がり込むようにその間に入って女の子を抱え上げてカースから離れていく。
そしてそのまま母親の元までたどり着いた。

アーニャ「フシエー フ パリヤートキエ……もう、大丈夫」

アーニャはそう言って女の子の擦りむいた膝に手を当てると、その傷は一瞬で治った。

「ああっ、ありがとうございます!」

母親は女の子を抱きながら礼を言う。

アーニャ「……早く逃げてください。ここは私が食い止めるので」

その言葉を聞いて母親は女の子の手を引いて逃げていく。
カースも逃げていくのに気付いたのか追おうとするが、そこにアーニャが立ちふさがった。

アーニャ「……ここを通りたければ、私を倒していけ、です」

『フ、フザケンジャネエゾオラァーーー!』

カースは触手をアーニャに向かって放つ。
しかしアーニャはその向かってくる触手に向かって走り出してその間を縫うように前進していく。

アーニャ「この間のより……速くもないし、威力もないです」

あっという間にカースの懐までたどり着いて、カースの核を掴み取るためにカースへと手を差し込んだ。

『オマエモオレノモノニシテヤロウカァーー!』

しかしアーニャの手には手ごたえは感じずに、逆に腕を引き込まれていく。
それを感じ取ったアーニャは腕を引き抜いて、カースに背を向け後ろへと下がろうとする。

カースは伸ばしていた触手でアーニャを捕まえようとするがそれさえも、紙一重で避けられる。
本体もアーニャを追っていくが、カースが追ってくるのを確認したアーニャは近くにあった電柱に向かって走る。

そしてそのまま電柱を駆け上がり、ある程度の高さから宙返りをしながら、カースに前後があるのかは謎だが、カースの背後に着地した。
カースはアーニャが頭上を通って行ったことに反応ができずにそのまま電柱へと衝突した。

アーニャ「……核は、真ん中にあるとは限らないのですか。なら」

アーニャは転がっていたカースの攻撃によって壊されたと思われるパイプ状のガードレールの破片を手に取った。

アーニャ「これで……十分です」

『コシャクナマネヲテメェーーー!』

電柱にぶつかっていたカースが再びアーニャに触手を伸ばしてくる。
しかしアーニャはその触手さえ躱して、よけきれない触手は手に持っていたガードレールで弾いた。

その衝撃でガードレールは少し歪むがそれを気にせず、がら空きであるカースの懐まで接近。

アーニャ「……甘い」

手に持ったガードレールで切り裂くというよりも、暴力的に、強引にカースの体を引き裂いた。

『クソガァ―――!』

それでもカースはすぐにその裂かれた断面を修復して元に戻ろうとするが

アーニャ「……だから、遅いです」

体を引き裂かれたことによって内部の核がその断面の浅いところに露出したのをアーニャは見逃さなかった。
そこに鋭い蹴りを入れて、脚を振リ抜く。
そのままカースの核はヒビが入り、ガラス球を砕くようにあっけなく崩壊した。

アーニャは手に持ったガードレールを放り棄てる。
それを合図にカースの泥の体は崩れるように消えていった。

アーニャ「……まさか、律儀に待っていたんですか?」

カースの残骸の方からアーニャは振り向くと、そこにはさらに複数体のカースがいた。

アーニャ「……数は多いと、少し、厳しいかもしれませんね」

そう言いながらもアーニャはカースの方へと行こうとしたが

アーニャ「シトー?……なんですか、これは?」

気が付くと足元には黒い水たまりが広がっていた。その水たまりは粘性を帯びていて、アーニャの足をしっかりと捕えている。
そして水たまりが膨らんでいく。

『メンドクセェ……ダカラズットマッテタゼー……」

アーニャ「……下水に、潜んでいたとは」

動けないアーニャに影がかかる。
それに気づいたアーニャは上方を見ると2体のカースがこちらに向かって飛び上がってきていた。

アーニャ「……くっ、跳ぶとか、聞いてませんよ」

そのカースはそのまま動けないアーニャにのしかかり体内へと取りこむ。

アーニャ(どうにか、脱出しないと……)

しかし完全に不意を突かれ、さらに殺傷能力を伴わない捕縛する攻撃は圧倒的に相性が悪かった。
前のように殺傷能力に特化している方がアーニャの能力を最大に発揮できるからだ。

アーニャは思考を巡らせるが、カースの体を構成する泥は動きを奪う。
さらに呼吸もできないので脳に酸素も行き渡らなくなり、思考が鈍る。

アーニャ(……こんな、ところで……)

もはや絶体絶命かと思われた。




がしかし突如アーニャを捕縛していたカースが塵となった。
アーニャの体は傷ついたアスファルトに落ちる。
酸素が足らず意識が朦朧とする中、誰かの話し声が聞こえる。

「核が中の人の影になってなくてよかったわ」

「まったくバイトの帰りに迷惑な奴らだにゃ」

「……ええ、今日は迎えに行って正解だったわ。こうも数が多いとさすがに一人じゃ大変でしょうしね」

「さて、お腹も空いてきたことだし、さっさと片付けて帰るにゃあ」

「ちなみに今日の晩御飯は、魚よ」

「え……ひどくない」

そんな声を聴きながら、アーニャは気を失った。

以上です

シェアワスレなのに続きます。どういうことなんですかこれ。

次回あの3人組、ついに集結、みたいな

乙ー

志乃さん、文香ちゃんに頼んだのかー。交流広いな
そして、あの三人組が集結だと?いったいにゃんにゃんだ?

乙!

いつか必ずやろうと思ってたことが…!(歓喜)

ごめんよたくみん、間に合わなかった……
投下

拓海「無事かー」

炎P「あ、姉御だ!」

電気P「そろそろ俺たちを連れて行ってくれる番ですよね!」

氷P「いい加減ここにカンヅメにされるのは嫌なんですよ!」

拓海「いい歳した野郎共が情けねえこと言ってるんじゃねえよ」

美世「少ないですけど、今回も食料品を持ってきましたー」

DrP「何度もすみません」

子供達「今日もウサミン星のお話してー」
   「遊んでー」
   「お日さまが射さないからお花の元気が無いの……」

菜々「いいですよー、今日は……って痛い、痛い! お話か遊ぶか片方にしてくださいー!」

夕美「あ、本当ね……じゃあ、お姉ちゃんと一緒にお花に元気を分けてあげよっか」

 合流を果たした後、拓海たちは病院を拠点として生存者の救出と物資の配送を繰り返していた。
 病院から運び出せない患者が居る為全員を連れ出す訳にはいかないのが心苦しいが、ここにいる人々と触れ合う時間が活力を生む。

美世「ネネちゃん大丈夫? 無理してない?」

ネネ「はい、雨と檻のおかげで休憩出来てますから大丈夫ですよ」

拓海「取り急ぎ連れ出さなきゃならん奴は大体送り終えたし、そろそろ解決に向けて動くからな、今回は救出無しだ。
   分かったら黙れボンクラ共」

氷P「ボンクラは酷い!」

炎P「言い返せないけど! 言い返せないけど!」

電気P「見返してやる! イブさん、稽古を!」

イブ「はいはーい、じゃあまず雷に慣れてもらいますー♪」

電気P「え、ちょ、まっあばばばば」

炎P「電気P-!!」

氷P「無茶しやがって……」

拓海「そういうわけだし、美世は今回待機でいいだろ?」

美世「いやー、ついてくよ。ずっと隠れてて連絡取れてない生存者とか居るかもしれないでしょ。
   誰か怪我しても撤退楽になるし」

拓海「お前が怪我すんなよ?」

美世「一番怪我する人が何言ってんの」

拓海「アタシはいいんだよ、そういう役回りなんだから」

菜々「も、もう出発しますから! 続きは次回に……離してぇー!」

夕美「これできっとお花も元気になるから。また会いに来るからいい子にしててね」

子供達「やだー!」
   「もっと遊んで!」
   「うん、いい子にしてる! お姉ちゃん、またね!」

ネネ「皆さん、お怪我などなさらないよう気を付けてくださいね」

―――――――――――――

 病院を出たカミカゼたちは攻略マップを頼りに街を進む。

菜々「それにしても……」

 菜々がかわしたカースへカミカゼがカウンター気味に拳をぶち込む。

カミカゼ「どうした?」

 カミカゼに迫るカースをシールドが阻む。

菜々「すっかり元に戻っちゃいましたね」

 怯んだカースを蹴り飛ばす。

カミカゼ「あー、合流して気が緩んじまったかな」

 挟撃を仕掛けたカース達が蔦に絡めとられる。

夕美「じゃあもう一回別行動とってみる?」

 身動きを封じられたカースに各々止めを刺す。

カミカゼ「変身の度にか? やってらんねえって」

 車を守りながらの行軍も、合流してからは雑談交じりにこなせる。
 わざわざ手間とリスクを負って烈風となる必要はなかった。

美世「次の交差点右ねー」

 美世の指示で先行してカースを駆除し道を確保する。
 律儀に左車線を走る美世が曲がるのを待っていると――ドゴッ!――と衝撃音が響き、車が横滑りして交差点を通り過ぎていった。

三人「「「美世(ちゃん、さん)!?」」」

 駆け戻って確認すると、車は電柱にぶつかって停止していた。
 僅かにへこんでしまったドアを強引に開けて美世の様子を伺うと、幸いにも外傷は額に切り傷が見える程度だった。
 そして美世がいた方を見ると……そこには赤いオーラを放つ少女が居た。

 立ち上るオーラは時折一所に纏まると結実して核となり、カースを生む。
 しかし生まれ出でたカースの体は雨によって直ちに溶け流され、露出した核は少女によって踏み砕かれる。
 カミカゼは少女に近寄ると、掴み掛からんばかりの勢いで問いかける。

カミカゼ「テメェがやったのか!?」

??「……コロス」

 少女は問いに答えず、乱雑に腕を振るう。

カミカゼ「ぐ、が!?」

 その一撃を受けて、カミカゼは吹き飛ばされた。
 吹き飛んだ先にあったガードレールが大きくひしゃげる。

菜々「拓海さん!」

カミカゼ「来るな……」

 カミカゼは、加勢しようとした二人を制止する。

カミカゼ「お前らがこいつの攻撃を食らったらひとたまりもねえ。アタシが相手するから援護に徹してくれ」

 立ち上がり、二人に背を向けて少女に向かう。
 少女は自分の周りに湧くカースを相手にして、こちらのことは眼中にないようだ。

夕美「一人じゃ無茶よ!」

菜々「それに、今なら逃げれるんじゃ……」

カミカゼ「……泣いてたんだよ」

菜々「はい?」

カミカゼ「あいつ、殴りかかってくるとき確かに泣いてたんだよ。
     今だって、雨で分かりにくいが涙流しながらカース殴ってやがる……
     いつからああなってんのか知らねえけど、服だってボロボロのドロドロだ。

     美世に手出しされてついカッとなっちまったけどよ、よく見りゃあいつもきっと被害者なんだ。
     だったらヒーローとして、捨て置くわけにはいかないだろ」

夕美「怪我をした親友より怪我させた他人を気遣うの?」

カミカゼ「美世だって多少の怪我は覚悟の上でここにいるんだ。命に別状なさそうならヒーローとしての役目を優先しねえと、後で美世に文句言われちまう。
     ただ、援護ついでに美世がこれ以上怪我しないよう守ってくれ」

夕美「……呆れるくらいに筋金入りのヒーローね。分かったわ、美世ちゃんは任せて」

菜々「傷一つ増やさせませんからね!」

カミカゼ「おう、任せた。……さて、待たせたな。今からお前の涙を止めてやる。
     ただし、とびっきりの荒療治だから覚悟しろよ!」

 言い終えると同時に少女へと急接近する。
 少女はカミカゼの接近に気付くと、カースの相手を中断し腕を水平に薙ぐ。
 カミカゼは身をかがめて腕の下をくぐり、伸びあがる勢いで跳び膝蹴りを放つ。

??「コロス!」

 少女は上体をそらして蹴りをかわし、脚を掴んで地に叩きつける。
 アスファルトを割って生えた植物がクッションとなるが、それでも受けきれない衝撃に、肺の中の空気が吐き出される。

カミカゼ「か、はっ」

菜々「拓海さん! 危ない!」

 菜々が放った射撃が少女の足元を穿つ。
 バランスを崩し、追撃に放たれていた踵はカミカゼを外してアスファルトを砕く。
 少女の脚を蹴って転ばせつつ、転がって距離を取り立ち上がる。

カミカゼ「悪い、助かった!」

夕美「いきなりやられかけてどうするの! しっかりして!」

カミカゼ「ああ耳にいてえ」

 少女も立ち上がる。どうやら今のやり取りで完全にこちらを敵と認識したようだ、周囲に湧き始めたカースには目もくれずにカミカゼに向かってくる。
 迎え撃つカミカゼは右拳を振りかぶると、何の変哲もない大振りなストレートを放つ。

菜々「言われたそばからそんな単純な攻撃を!?」

 少女は易々と拳を掴むと、カミカゼを引き倒そうと力を込める。
 カミカゼはバランスを崩し、少女に後頭部を晒す形で倒れこんだかに見えたが――

??「コロ……ッ!?」

 カミカゼはそこからさらに体を捻り、左肘が少女の頬に突き刺さった。
 思わぬ衝撃に手を離し、たたらを踏む。
 体勢を整えたカミカゼの拳が腹に入る。

??「グ、ウァ……」

 少女の体がくの字に折れる。

カミカゼ「へっ、一丁あが、りィ!?」

 カミカゼの腹に少女の頭がめり込んだ。

カミカゼ「やってくれるじゃねえか!」

 拳鎚で少女の背を叩く。

??「コロス、コロスコロスゥ!」

 すぐさま跳ね起きた少女はカミカゼの横面を蹴る。
 カミカゼはかわさず蹴りを受けると、脛に拳を叩きこんだ。
 そして続けざまに放った拳は少女の肩を捉えたが、少女は伸びきったカミカゼの肘を殴る。

――それからしばらく、ノーガードの殴り合いが続いた―― 

 少女は至る個所に青あざを作り、カミカゼの装甲は剥がれ回路が露出している。
 双方とも肩で息をしているが、一向に倒れる気配は無い。
 援護を任された二人は任を忘れ、息を呑んでその様子を見守る。

??「コ、ロ、ス……!」

 勝負を決めに来た少女が渾身の蹴りを放つ。
 大振りなそれは十全ならばともかく、疲弊したカミカゼがかわせるものではなかった。
 蹴りがカミカゼのわき腹を抉るように喰いこみ、カミカゼの体が傾ぐ。

 しかし、倒れない。

カミカゼ「……それで、全力か? じゃあ、次はアタシの番だな」

 拳を握り、カミカゼが構える。

カミカゼ「歯ァ喰いしばれ!」

 カミカゼが放った会心の一撃は、疲れ果ててなおその勢いを失わず、回避する間も与えずに少女の頬に入った。
 少女は水平に吹き飛び、ビルを突きぬけてようやく止まる。
 ……流石に意識を失ったようだ、立ち上がる気配は無かった。

カミカゼ「さぁて……病院戻るか……」

 カミカゼもその場に崩れ落ち、菜々と夕美は慌てて倒れた二人に駆け寄った。

        了


――次回予告はお休みします――

しゅーりょー
バトル書けねぇー

イベント情報
・有香は しょうきに もどった ?
・カミカゼ中破、病院にて修理


カミカゼが結構壊れるほどとか押すにゃん強い…殴りあいはやっぱりいいね

…ちょっと蛇足かもしれないけど相葉ちゃんは「?よ」より「?だよ」の方がらしいかも

>>556
うあー急いで書いたからボロが…開き直ってしっかり推敲すりゃよかった

乙ー

殴り合いいいですねー。まさに青春

押忍にゃんは正気に戻ったのか?けど、癒しの雨でも治らないって事はカースドヒューマン化してる可能性も……

おつー

生身で装甲を纏った相手をボロボロにするとか押忍にゃん強すぎィ!
誰だこんな設定つけたの!(目逸らし)

>>560
現在の押忍にゃんは、言ってしまえば正気を失うレベルでブチ切れてるだけなので
ただ、場所が悪かったという不運が重なってこうなっているという
まぁ、『雨』の影響を受けてコレ、ということは
よっぽどの『憤怒』に燃えていたのでしょう

乙乙乙
瑞樹「こ、これは乙じゃなくて嫉妬の邪龍なんだからね! 変な勘違いしないでよね!」
カミカゼパワーアップフラグでしょうかもしや!?
そしてにゃんにゃんにゃんが揃ったか……何が始まるんです?

それはそうと投下します


――海皇宮。

サヤ『申し訳ありません、ヨリコ様ぁ。他勢力の協力要請を得られませんでしたぁ』

サヤからの通信を聞いた海皇ヨリコは、静かに頷いてみせた。

ヨリコ「ええ、そうだろうと思っていました」

サヤ『ええっ!? 失敗するって分かってサヤを行かせたんですかぁ!?』

驚きを隠せない様子のサヤに、ヨリコが説明を始める。

ヨリコ「私達の目的は、地上を海に沈める事。もうこれだけで大半の組織にはこちらに協力する
   メリットはありません。それどころか脅威であるとさえ考えるでしょう」

サヤ『じゃ、じゃあ危険なんじゃ……』

ヨリコ「サヤ。あなたは会談中、または会談の前後に海水を浴びましたか?」

サヤ『えっ、はい……会談前に必ず……』

ヨリコ「その光景は十中八九相手に見られています。それはウェンディ族の弱点が露見した事を意味します。つまり」

サヤ『つまり……?』

ヨリコは一度言葉を切り、モノクルを掛けなおして続けた。

ヨリコ「彼らから見てウェンディ族は『弱点が分かりきっている上に少数勢力、いつでも叩ける取るに足らない相手』
   ……となるでしょう。まあ、思い切った賭けでしたが」

サヤ『あっ……あれ? 少数勢力というのは……』

ヨリコ「『大事な会談に一人で現れる、それほどに人員不足な組織』ということです」

サヤ『なるほどぉ』

ヨリコ「後は彼らのマークが外れている間にこちらの準備を進めるだけです。万一攻めてこられても、
   海はこちらのホームグラウンド。敗れる道理はありません」

そう言ってヨリコは穏やかな笑みを浮かべた。

サヤ『んふっ、やっぱりヨリコ様は策士ですねぇ。では、サヤは帰還いたしまぁす』

ヨリコ「その前にサヤ。護衛に付けたイワッシャーが見えないようですが……」

途端にサヤがバツの悪そうな顔をした。

サヤ『あ、あーえっとですねぇ……実はさっきカースに遭遇しまして……』

ヨリコ「カースに? 破壊されたのですか?」

サヤ『あ、いえ……なんというか、その……取り込まれてしまって……』

ヨリコ「…………」

予想外の報告に、ヨリコも開いた口が塞がらない。

辛うじて、どうにか言葉を搾り出す。

ヨリコ「……カースドヒューマンならぬ、カースドイワッシャーという訳ですか……」

――――――――――――
――――――――
――――

――――
――――――――
――――――――――――

さて、当のカースドイワッシャー(以下Cイワッシャー)はと言うと。

Cイワッシャー「ワーッシャッシャッシャッシャ! モウアノオンナニツキシタガウヒツヨウモネエ!
       カースサイコー! オレサマガイチバンダアッシャッシャシャシャシャシャ!!」

カースに取り込まれたことで『傲慢』の感情を得て、暴れまわっていた。

目から放たれるビームの威力も数段増し、停車してあったトラックを瞬く間に蒸発させてしまった。

Cイワッシャー「ッシャッシャッシャッシャッシャ! チカラッテノハタマンネエゼェェェ!!」

街の人々は既に避難が完了している。多くのヒーローは『憤怒の街』にいる。

故に今、街はCイワッシャーのなすがままになっているのである。

しかし、そんなCイワッシャーの前に一人の女性が立ちふさがった。

??「……ふう、とっくに引退決め込んでたのにね」

Cイワッシャー「アァン? ナンナンダテメエハ」

瞳子「私は服部瞳子。といっても、名を知りたい訳ではなさそうね」

ふう、と息を吐いて瞳子は手のひらを空に掲げた。

瞳子「……フレイムアップ、リライザブル」

瞳子の手のひらに、黒い火の玉が浮かぶ。

その火の玉は瞳子の周囲を駆け巡り、体を包んでいく。

程なくして火の玉が消えると、瞳子の服装はガラッと様変わりしていた。

黒く、熱く、禍々しくも可愛らしいドレス姿。


瞳子「……魔法少女、エンジェリックファイア」

そう、彼女は三船美優達と同じ、魔法少女だったのだ。

となれば、次に待っているのは……

瞳子「……にひっ☆」

敵に背を向け右手を腰に、振り向きざまに子供のような悪戯っぽい笑み。

魔法少女恒例のオート名乗りアクション(キャンセル不可)である。

瞳子「……これはどうにかならないものかしら」

Cイワッシャー「……オユーギヤッテンジャネンダゾォォー!」

痺れをきらしたCイワッシャーがビームを乱射してくる。

瞳子「それはこちらも同じよ……!」

瞳子ことファイアはそのビームを華麗に掻い潜り、Cイワッシャーに接近する。

瞳子「はぁっ!」

ファイアの掌底がCイワッシャーの腹にめり込む。

Cイワッシャー「ゴブッ!? オッ、オレサマ二タテツクナァ! オレサマガイチバン!! ナンバー!!
       ワンナンダヨォォォォォォォ!!」

Cイワッシャーは激昂したように腕を振り回す。

しかし、ファイアはそれを悉く回避する。

瞳子「……回避に余裕が無い。やっぱり十年単位のブランクは大きいわね」

しまいには回避しながら反省会を始めてしまった。

Cイワッシャー「マダオワッテネエゾォォォォォォォォォ!!!」

腕を振り回しながらも、Cイワッシャーの目が輝きを増す。ビームを最大までチャージしている証だ。

瞳子「隙ありっ……!」

一瞬の隙をついて、ファイアの回し蹴りがCイワッシャーの側頭部を捉えた。


Cイワッシャー「シャギッ……!?」

瞳子「まだまだよ!」

更に続けて回し蹴りが二発、三発、四発。

衝撃に耐えかねたCイワッシャーはとうとう真横へ吹っ飛んでいった。

Cイワッシャー「ギ、ギギギギギ……ギ!?」

どうにか起き上がるCイワッシャー。その目に映ったものは。

瞳子「……ファイアズムサイズ……!」

身の丈ほど長大な、黒い、炎でできた大鎌。

それを構え、一直線に突進してくるファイアの姿だった。

Cイワッシャー「ヒッ、ヒィィィィィ!!」

Cイワッシャーは慌ててビームを乱射する。

しかしファイアはそれをジグザグに避けながら、なおもCイワッシャーを目指す。

そしてその鎌がついに――

瞳子「……グッバイ」

Cイワッシャー「シ//ャ」

――Cイワッシャーの首を捉え、のど仏の核もろとも両断した。

爆発を背に、静かに変身を解く瞳子。

瞳子「……引退は撤回ね」

誰に言うでもなく呟くと、瞳子は歩き出した。

瞳子「美優達は今どうしているかしら……」

ひとまず、かつての仲間達と合流するために。

仲間の魔力を感じる場所――憤怒の街へ。

続く?

・服部瞳子/エンジェリックファイア

職業
不明

属性
魔法少女

能力
魔法少女への変身及び魔法の行使

詳細説明
かつて三船美優/エンジェリックカインドと共に戦った魔法少女たちの一人。
最初は「悪者やっつけるためならちょっとくらい街壊れてもいいよねっ」という思想を持ち、
美優達とはどちらかといえば対立し、単独で敵と戦うことも多かった。
やがて戦いを重ねるうちにお互いの心を通わせ、真の仲間となった。
いわゆる追加戦士枠で、彼女だけ使う力が光でなく炎だったり、変身掛け声が違うのもお約束。

・カースドイワッシャー
カースに取り込まれたイワッシャーが、その核を埋め込まれた姿。
カースの属性を基にした自我が芽生え、戦闘力も向上する。

・イベント追加情報
海底都市が各組織への協力要請を中止、暗躍を始めました。

瞳子が憤怒の街へ移動を開始しました。
え、いまさら間に合うのかって? わしゃ知らん。

以上です
どうにかしたい、戦闘シーンが一方的な展開になりがち病!

早速瞳子さんの出番らしいですよ!(早い)

雪菜が箒へと『部分変身』させた雷のワンドで空を飛ぶ練習をしていた時だった。

雪菜「…な、なんですかこれは…?」

穿たれた建物。

砕かれた道路。

雪菜「…一体どうなって…」

雪菜の真下に建っていた建物に光線の様な物が直撃する。


雪菜「なっ!?」

爆音。

巻き上がる瓦礫。

Cイワッシャー『イワッシャァァァ!』

目の前には見たこともないロボットが。

雪菜「…あなたが『これ』をやったんですか?」

Cイワッシャー『シャッシャッシャー!』

ロボットは答えの変わりに再び光線を吐き出す。

雪菜「そうですかぁ…」

雪菜はぎゅっと箒を握りしめると地上に降り立つ。

雪菜「あなたの中から真っ黒なものを感じます……」

かつて雪菜の中にあったものほどではないが目の前のロボットからは似たようなものを感じた。

雪菜「…これ以上被害を出す前にあなたを破壊しますねぇ♪」

雪菜の初めての戦い。

悪魔であった時に戦ったあらゆる敵よりも格下だと自分に言い聞かせる。

雪菜「さぁ…行きますよぉ…!」

雪菜の箒がみるみるうちに姿を変えていく。

イヴ愛用の箒から死神の鎌へと。

『付与!雷の加護よ!』

鎌は普段纏っている雷に加えて付与の雷を浴びて、より激しくスパークする。

Cイワッシャー『シャ!?』

『風よっ!』

雪菜の足元から猛烈な風が吹き出し雪菜を弾き飛ばす。

雪菜「え、えいっ!」

風の勢いそのままに鎌を大きく振りかぶる。

Cイワッシャー『シャシャー!』

ロボットは大きくバックステップする。

雪菜「…あうっ!?」

振りかぶった鎌が上手く振れずにつまずき、よろめく。

雪菜「だ、駄目ですねぇ…裕美ちゃんはよくこんな器用なこと出来ますねぇ…」

裕美ちゃんが風魔法に乗って飛び回っていたのを思い出して苦笑いを浮かべる。

Cイワッシャー「シャッシャッシァー!」

私の情けない姿を見て魚型のロボットも若干調子に乗っているように見えます。

雪菜「もうちょっと使いやすい武器のほうがいいんでしょうか?」

雪菜がそんなことを考えていた時だった。


『ファイアズムサイズ』


瞳子「どんな武器だって使いこなすのに時間が掛かるものよ?」

目の前のロボットの横スレスレを炎の鎌が通り過ぎ爆音を上げる。

瞳子「でも、貴女は不思議な武器を使ってるのね?」

まさか箒を鎌に変えたあたりから見ていたのでしょうか。

瞳子「それなら貴女にあった戦闘スタイルを考えた方がいいと思うわよ?」

雪菜「…自分にあった戦闘スタイルですか…」

瞳子「えぇ、さぁ、やってみるといいわ」

彼女が一歩横にずれると怒りの感情を露わにしたロボット。

Cイワッシャー『シャァァァァァ!』

雪菜「…」

両手で構えていた死神の鎌を裕美ちゃんのボールペンへと変える。

『雷よ!穿って!』

とても杖には見えない物から放たれた雷の閃光が不意打ち気味に真っ直ぐロボットへと向かっていく。

Cイワッシャー『シャァァァァァァ!』

雷の閃光とロボットの光線がぶつかり合い、猛烈な光が弾ける。

雪菜「…行きますっ!」

今度はボールペンを箒へと変え、私はそれにまたがる。
箒は人一人分の高さを維持しながらロボットに向かって飛んでいく。

魔力の放出をやめた雷が撃ち負け、ロボットの光線が既に誰もいない空間を貫く。

Cイワッシャー『シャ!?』

その時私は、驚愕するロボットの真上に居た。

その時既に箒は死神の鎌へと姿を変えていた。
死神の鎌は重力に従って刃を下にして落ちていく。

『付与!雷の加護よ!』


雷を纏った鎌がロボットを貫いた。




瞳子「そう、大鎌は重心の調節と杖術みたいに扱うことも出来ることを覚えておいて?」

雪菜「こうでしょうか?」

半円状に鎌を振ったり、鎌の重さに逆らわずに振る練習をしてみる。

瞳子「ふふ、やれば出来るじゃない、雪菜ちゃん…だったかしら?」

雪菜「あ、ありがとうございます…瞳子さん…」

自己紹介を終えた雪菜は大鎌の扱いを瞳子に教わっていた。

瞳子「…さて、私はこれから憤怒の街に行かなくちゃだからこれで失礼するわね?」

雪菜「…憤怒の街…ですかぁ…」

雪菜「もしも二人組の魔法使いに出会ったら、宜しく伝えてください」

瞳子「魔法使い?」

雪菜「私がお世話になってる方たちなんです♪」

瞳子「そう、会ったら伝えておくわ。」

雪菜「さて、私はそろそろ帰りますね♪」


雪菜「…帰らないとブリッツェンに心配掛けちゃいますから♪」

死神の鎌を箒へと変えた新米魔法使いは微笑みを浮かべ飛んでいった。

終わり。
雪菜は色々な武器を見て再現する度に戦法が増えてくけど必ずしも扱えるとは限らないんだよね…。
ということで鎌の修行パートでした。
そう考えると元祖ルシファーって強い。

書き上げた星花さん投下ー
あいさんお借りします


??「何故なのですか? 何故わたくしだけが……」

とある大きな屋敷の一室で、少女が執事風の男に詰め寄る。

執事「それは危険だからでございます。旦那様も奥様も、星花お嬢様の事を思えばこそ……」

星花「危険なのはみな同じでしょう? それなのにわたくしだけ安全に護られているというのは、
  納得いきませんわ。わたくしにも、戦うための力はありますのに……」

執事「ご自愛下さい、星花お嬢様。確かに貴女様は戦えます。しかし、だからといって必ずしも
  戦う必要は無いのでございます。GDF、アイドルヒーロー同盟、ナチュルスター等……
  既に戦っている者は大勢おります。お嬢様が危険を冒す必要なございません」

やがて星花は俯き、力なく呟く。

星花「……わかりましたわ」

執事「ご理解いただけてなによりでございます。では、お夕飯の準備が整いましたら、まだお呼びに伺います」

そう言って執事は部屋から出て行った。

星花「…………ごめんなさい、お父様、お母様」

執事が部屋から離れていくのを足音で確認した星花は、ケースからバイオリンを取り出した。

星花「星花は……悪い子になります」

星花がバイオリンを構え、演奏を始める。

すると、部屋の隅に鎮座してある大きな鉄の人形が、鈍い音を立てながら動き出した。

星花「……ストラディバリ、開演。……では、お願いいたしますね、ストラディバリ」

ストラディバリ『レディ』

ストラディバリと呼ばれた人形は握りこぶしを作り、壁に向けて叩き付けた。

轟音と共に壁は崩れ去り、大きな穴がぽっかりと開いている。

星花「ありがとうございます。では、ストラディバリ。わたくしを連れ出して下さいな」

ストラディバリ『レディ』

ストラディバリは星花をヒョイと抱き上げ、壁の穴から飛び降りた。

そして着地の寸前、ストラディバリは機械音と共に姿を変えた。

その姿は、さながら神話に登場するユニコーンのように見える。

星花「家出……ですわね。ドキドキしますわ……行きましょう、ストラディバリ」

ストラディバリ『レディ』

星花が手綱を握ると、ストラディバリは夕日が沈む方角に向けて走り出した。

――――――――――――
――――――――
――――

――――
――――――――
――――――――――――

夕暮れの街をカイと亜季、そしてホージローが歩いていた。

亜季「この世界は、異形な者に対して異様に寛容でありますな」

カイ「そうだね、隠してたホージローが見つかったときはどうなるかと思ったけど……」


通行人『あ、サメのロボット』

通行人『ほんとだ』


亜季「……で、終わりでしたなぁ」

『キンキン』

苦笑する亜季にホージローが答える。

サイボーグである亜季は、今は普通の人間と変わらない姿をしている。

カイ「まあ、隠さなくていいのは気が楽だよね。亜季のマイシスターも案外平気だったり?」

亜季「そうかもしれませんな。さて…………ッ!」

亜季が不意に足を止める。

カイ「……亜季?」

亜季「静かに。……殺意が」

カイ「!?」

二人の視線の先には、アンダーワールドの傭兵、アイがいた。

引き連れているのは、鋼鉄のシャコ、ハナ。

カイ「戦闘外殻!? 何なのあんた!」

アイ「私は傭兵さ。君を抹殺するよう依頼されていてね」

アイはニィッと口元を歪ませ、ハナに号令をかけた。

アイ「いこうか、ハナ。オリハルコン、セパレイション」

一瞬出遅れながらも、カイも同じくホージローに呼びかける。

カイ「こっちも、ホージロー! オリハルコン、セパレイション!」

亜季「続きます! SC-01、バトルターン!」

亜季も戦闘形態へと移行する。

アイ「アビスグラップル、ウェイクアップ」

カイ「アビスナイト、ウェイクアァップ! 先手必勝ぉ!」

カイが地面を蹴ってアイに殴りかかる。しかし、

アイ「おや」

カイの拳はいとも簡単にいなされてしまった。

次の瞬間、アイの膝がカイの腹に突き刺さる。

カイ「ぐふっ!?」

亜季「カイ!? マイシスター!」

マイシスターから亜季に投下されたのは、ハンドサイズのレールガン。

パシュン、パシュンという音と共に発射されたレールガンは、どちらもアイに容易く避けられる。

アイ「邪魔をしないでもらえるかい?」

亜季はレールガンを盾に、アイから投げつけられたナイフを防ぐ。

亜季「トモダチを傷つける輩を放ってはおけません! マイシスター!」

続いて大型のガトリングガンが二丁。

亜季「カイ、潜って下さい!」

カイ「う、うん!」

カイが地面に潜ると同時に、亜季はガトリングガンを乱射した。

アイ「……ふっ!」

ギャギャギャギャギャ、と耳をつんざくような音が辺りに響いた。

そして弾を撃ち切った亜季は、驚きの声を上げた。

亜季「ッ、馬鹿な!?」

目の前には、無傷で立つアイ。

そして、真っ二つに両断されて足元に転がる大量の弾丸だった。

亜季(あれだけの弾丸を……ナイフ二本で切り払ったというのでありますか!?)

アイ「……余計な体力は使いたくないんだがね」

じり、じり、とアイが詰め寄る。その背後から、

ザザザザザザザザザザザザザザ……ボンッ

カイ「シャーク・バイトォッッ!!」

潜ったままだったカイが、助走と共に飛び出してきた。

アイ「むっ……」

カイ(もらった! 向こうはこっちにたった今気付いた。対応するより早く、顎を閉じられ……)

ごしゃっ

次の瞬間、カイも亜季も目を疑った。

カイの目に映るのは、視界いっぱいに広がるコンクリート。

そして、亜季の目にはアイに組み伏せられ、地面に叩きつけられるカイの姿が映っていた。

カイ(そんな! あの速度で反応された!?)

亜季「っ、カイ!」

亜季はカイを助けるべく、ビームソードを構え翼を展開し突進する。

アイ「……ふっ」

しかしアイはビームソードを難なくかわし、逆に亜季の横腹に回し蹴りを叩き込んだ。

亜季「ぐぅっ!」

アイ「さて、邪魔が入ったが……これで依頼達成だね」

アイはカイに馬乗りになると、ナイフを構えた。

カイ「くっ……!」

亜季「か、カイっ!」










??「オーラロケットパンチですわ!」

??『レディ』





アイ「ぐぁっ……! な、何だ!?」

油断しきっていたアイの背に、鋼鉄の巨大な「腕」が直撃した。

カイ「えっ……?」

亜季「今のは……?」

アイ「この二人も知らない……何者だ、君は?」

アイは腕が飛んできた方向へ問いかける。

その先には、バイオリンを構えた少女と、腕を飛ばしたであろう鉄の人形が立っていた。

星花「わたくしは涼宮星花と申します。こちらはストラディバリ」

ストラディバリ『レディ』

星花の演奏にあわせ、ストラディバリが軽くお辞儀をする。

アイ「……それで、その星花さんが何の様かな。こちらにはこちらの事情があるんだがねぇ……!」

星花「こちらにもこちらの事情がございます。無碍に人命を奪おうとする貴女を、捨て置けません!」

アイの威嚇にも一切怯まず、星花は毅然と答える。

アイ「そうか。なら少し痛い目を見てもらおうか……」

アイがナイフを構えなおし、星花に飛び掛る。しかし、星花は物怖じすることなく演奏を始めた。

星花「オーラストリング!」

ストラディバリ『レディ』

ストラディバリがアイへ手のひらを向ける。と、

アイ「っ!? ……右腕が動かない……!? 何だこれは……!」

星花「オーラの糸で貴女を縛っています。もう一度!」

ストラディバリ『レディ』

いつの間にか戻ってきた右手からもオーラの糸を放ち、アイの左腕を封じる。

アイ「しまった……! 何故だ、今確かに右腕を縛る糸を切り裂いた筈……」

星花「お生憎様ですが、わたくしのオーラはそう簡単には切れません! ストラディバリ、オーラバレット!」

ストラディバリ『レディ』

ストラディバリの頭部に空いた二つの穴からエネルギー弾が連続して放たれる。

アイ「ぐぅぅぅぅっ!?」

カイ「……あっ、アームズチェンジ! ハンマーヘッドシャークアームズ!」

呆気に取られていたカイだったが、ふと我に返り、アイへの砲撃を開始した。

亜季「……っ、わ、私も!」

亜季も懐から取り出した拳銃で砲撃に加わる。

アイ「ぐっ……………ぅぁああああああああっ!!」

十字砲火を受けていたアイが、突然咆哮と共に体の自由を取り戻した。

星花「わたくしのオーラストリングを引きちぎった!?」

アイ「はぁっ……はぁっ……ふん、ここまで消耗するとはね。どうやら出直すしかないようだ」

アイは歯軋りをしながらそう言うと、カイに向き直る。

アイ「他の依頼もあるから、しばらく君たちの前には現れないよ。…………次は仕留める」

吐き捨てたアイとハナは突如現れた水柱の中に消えた。

星花「……ふう。ありがとう、ストラディバリ」

ストラディバリ『レディ』

片膝をついたストラディバリの頭を、星花は優しく撫でてやる。

カイ「ね、ねえ……助けてくれたのは感謝するけど……」

亜季「あなたは……何者ですか?」

星花「……?」

――――――――――――
――――――――
――――

――――
――――――――
――――――――――――

星花「海底都市に平行世界……まだまだ世界は不思議に満ちていますわね」

三人とホージロー、マイシスター、ストラディバリは、近くの公園に移動していた。

カイ「生命の力、オーラを操る能力と……」

亜季「バイオリンを通してオーラを注ぎ動かす人形……でありますか」

星花「はい。この力を皆様の為に役立てたいのです」

カイ「そのために家出を……?」

亜季「ずいぶんと思い切ったのですな……」

目の前のか細いお嬢様からは想像もつかないバイタリティ溢れる行動に、二人とも驚きを隠せない。

星花「はい。それで、ご相談なのですが……わたくしを、お二人に同行させていただけませんか?」

亜季「うーむ……私としては問題ありませんが……カイは?」

カイ「うん、あたしもいいと思うよ。それにほら」

『キキキキンキィン、キッキンキン』

ヴーン ヴーン

ストラディバリ『レディ』

カイが指差した先では、ホージローとマイシスターとストラディバリの三体が仲良く談笑(?)していた。

カイ「あっちはあっちでもう打ち解けたみたいだし」

星花「ふふ、そうですわね」

亜季「え、あれ打ち解けてるのですか? あれっ、分からない私が異常なんでありますか?」

カイ「それは置いといて。ともかく歓迎するよ、星花」

星花「ありがとうございます、カイさん、亜季さん。それで、このチームはなんというお名前ですの?」

カイ「名前?」

亜季「……そういえば考えた事も無かったでありますな」

星花「お名前を持ってヒーローチームとして活動した方が、色々面倒も無くなるのではないでしょうか」

カイ「そうだね。じゃあ考えようか」

星花の提案に乗り、三人はチーム名について考えた。

そして数十分後。

カイ「よし、これで決まりかな。あたしは同胞に反旗を翻した」

亜季「私は上官の命令に逆らった」

星花「わたくしはお家から家出をした」

亜季「そしてみな鋼の相棒を連れて戦う」

星花「故に、『鋼鉄の反逆者達』……」

カイ「名づけて、『フルメタル・トレイターズ』!!」

この日、新たなヒーローチームが産声を上げた。

続く

・涼宮星花

職業
家出少女

属性
お嬢様

能力
オーラ、及びオーラを用いてのストラディバリの操作

詳細説明
大財閥涼宮家の一人娘。
「あの日」以降人間の生命の力であるオーラを操る能力に目覚め、自分が戦うための力であるストラディバリを作らせた。
しかしいざ完成すると、本気にしていなかった両親から反対をくらい、ストラディバリ諸共部屋に閉じ込められる。
そしてある日ついに思い立ち、家出を決行。
道中助太刀したカイや亜季とチーム「フルメタル・トレイターズ」を結成する。
バイオリンが得意で穏やかながら、悪を許せず義憤に燃える弾丸お嬢様。

関連アイドル
カイ(仲間)
亜季(仲間)

関連設定
ストラディバリ

・ストラディバリ
星花の指示で涼宮家の総力を挙げて造られた戦闘人形。
星花がバイオリンを介してオーラを送り込む事で、簡単ながら自立行動が可能。
しかし細かい動作や臨機応変な行動となると、星花の指示が必要になる。
また、ユニコーンを模した高速移動形態への変形も可能。
オーラは自動回復するが、あまり短時間に連続使用すると星花がひどい疲労状態に陥ってしまう。
・オーラロケットパンチ
圧縮したオーラで前腕を発射する技。
・オーラストリング
オーラを練った糸で相手の動きを封じる。見た目以上に頑丈。
・オーラバレット
頭部から少量のオーラで出来た弾丸を連射する技。

・フルメタル・トレイターズ
詳細不明の新鋭ヒーローチーム。
カイ、ホージロー、亜季、マイシスター、星花、ストラディバリの六人(?)を正式メンバーとする。
メインとなる三人が反逆の経験者(裏切り、命令違反、家出)である事と、
鋼のボディを持つパートナーを連れている事から『鋼鉄の反逆者達』を英訳して名前がついた。
「敵が現れたら市民に被害が出る前にさっさと倒す」という信条で行動している。
拠点やバック組織などを持たない、完全フリーとして動いている。

・イベント追加情報
ヒーローチーム「フルメタル・ストレイターズ」が結成されました。

一人娘突然の家出に涼宮財閥は現在てんやわんや中のようです。

以上です
傭兵という便利キャラあいさんの使用権を一回フリーにしようとしたらなんかかませ臭く……
悪意は無いんです、あいさんと全国のあいさんPの皆さんごめんなさい

誤植ありました

× ヒーローチーム「フルメタル・ストレイターズ」が結成されました。

○ ヒーローチーム「フルメタル・トレイターズ」が結成されました。

乙です
こういうはぐれ者チームもステキ
3人とも全く育った環境が違うから会話が面白そう

2対1だと圧倒。
3対1で、かつ不意打ち食らっても、しっかり逃げ出せるあいさんマジ強い

投下します


~前回までのあらすじ~


 その日、櫻井財閥党首サクライPは、驚くべき街の声を耳にした。

 子供「櫻井財閥なんてだっせーよなっ!」
 子供「ユズちゃんが一番可愛いよな!」
 子供「財閥なんていらないよっ!」
 子供「帰ってユズちゃん応援しようぜっ!」

 サクライP「・・・・・・なんて事だ。」

 立つんだ!サクライP!

 サクライP(どう考えても桃華の方が可愛い)

――



サクライP「初代の強欲の悪魔でございますか?」

桃華「ええ、それをこれから叩き起こしに行きますわ。」


世界の果て、人々が忘れてしまったある遺跡。

その様な場所に『強欲』の親子は来ていた。


桃華「まったく、久しぶりにPちゃまと会えましたと言いますのに」

桃華「ゆっくりとお茶を飲むこともできませんのね。」

桃華「長期休暇を利用してのハワイ旅行の予定も急遽中止になりましたし・・・・・・。」

サクライP「私の不徳が致すところです。申し訳ございません。」

桃華「いいのですわ、Pちゃま。これも仕方の無いことですもの。」


財閥を立て直す為に、サクライPは各地を駈けずり回り、

未だに完全に財閥の信頼を取り戻すには至っていないものの、

この頃はサクライPにもある程度、時間に余裕はできたようだ。

しかし、その隙間の時間、

本来であれば、娘とゆっくりお茶でも飲みながら過ごすための時間を、

このような場所で迎えることになったのは、『強欲』の悪魔の要望のためである。


桃華「この鬱憤は、そのうち死神ちゃまに何か仕掛けて晴らすとして・・・・・・」

桃華「落ち着いたらまた屋敷で一緒に紅茶を飲みましょう、お父様♪」

サクライP「勿論だよ。桃華。」


遺跡の階段を下りながら、強欲の悪魔は語る。


桃華「正確には、あの方を初代強欲の悪魔、」

桃華「あるいは初代マンモンと呼ぶのは、少し違いますわね。」

桃華「何しろ”強欲の悪魔”と言う役職が成立したのは、いささか複雑な経緯がありましたもの。」

桃華「まあ、その辺りのお話は今回は省かせていただきますわ。」


目の前には岩で出来た扉。

強欲の悪魔が軽く手を触れるだけでそれは大きく開いた。


桃華「彼女の名前は”アモン”」

桃華「その意味は”計り知れぬ者”。」

桃華「かつての魔界では、最強の悪魔の一角と恐れられていた存在。」

サクライP「・・・・・・そのような者がこの地上の遺跡に眠っているのですか?」

桃華「経緯はわかりませんが、そのようですわ。」

サクライP「よくこれまでに他の勢力に・・・・・・特に『イルミナティ』に見つかりませんでしたね。」

桃華「”強欲の証”を持つ者にだけ理解できる感覚ですわ。」

桃華「それに、この遺跡に漂う魔力の濃度は、あまりにも自然ですから。」

桃華「彼女達も見落としたのでしょう。」

桃華「とても”計り知れぬ者”が眠っているとは思えないほど、」

桃華「この場所には何も無いとしか思えないほど、」

桃華「それほどまでに、静かな魔力の流れですわね。」


何かを祀る祭壇のような広間を横切るように、強欲の親子は歩く。

『ゲッゲッゲ』

『ギャッギャッギャ』

親子の回りには、数体の小型の蝙蝠のような『強欲』のカースがバタバタと飛び回り、

その煌びやかな眼光で、辺りをサーチライトの様に照らしていた。

言うまでも無く、マンモンの配下のカースである。


サクライP「どうか足元にはお気をつけ下さい。」

桃華「ウフ、心配してくださるのね♪では、手を引いてくださるかしら。」

サクライP「お安い御用です。」


サクライは娘のシルクのような手を取り、

エスコートするように、彼女が躓かないように、石造りの道を歩むのに付き添う。


迷路の様な通路に出てきた。

道は数多に枝分かれし、右も左も、北も南もわからない。

桃華「Pちゃま、そっちですわ。」

そんな通路を、まるで通い慣れた道であるかのように、

『強欲』の悪魔は行く先を、次々と決めていく。


桃華「”アモン”は”神喰い”と呼ばれる、神と同化して吸収する力を持っていたと聞きますわ。」

桃華「海王神、太陽神、豊穣神、あらゆる神々を手中にし、己の力へと変えた。」

桃華「『強欲』なる”計り知れぬ者”」

サクライP「なるほど、神すら食らうもの。」

サクライP「財閥のこれからの計画には必要となるコマ、と言う訳でしょうか。」

桃華「・・・・・・。」

桃華「残念ですけれども、”計り知れぬ者”をコマにできるほどの力は、わたくしにはありませんわ・・・・・・。」


『強欲』の悪魔の力は、相手とのレベル差とも言うべき”魂の格の違い”が非常に強く影響する。

”計り知れぬ者”はその名の通り、霊格の高さが凄まじく、計り知れない。レベルの上限が見えないのだ。

多才なスキルを持つマンモンの如何なる能力も、そのほとんどがアモンには通用しないだろう。


サクライP「・・・・・・では、その悪魔を目覚めさせるのは、大きなリスクを負う事になりますね。」

桃華「ええ、出来れば渡りたくはない危ない橋ですわ。」


桃華「ですが、これからの時代。きっと”計り知れぬ者”の力は必要となりますわ。」

桃華「そして、あの方を起こすのなら今しかあり得ませんのよ。」

桃華「皮肉にも今はどの陣営も、わたくしや財閥に対しては無警戒ですもの。」

桃華「失墜した財閥よりも、他に脅威は山ほどありますから。」

桃華「私達がここに居ることも、誰が知ることも無いはずですわ。」


桃華「ああ、次はこっちですわよ」

迷路の途中、何も無いように見える壁を指差す桃華。

サクライPは桃華の手を引き、疑問にも思わず壁に向かって進み、

その壁をすり抜けた。


進入した先は殺風景な小さな部屋。

部屋の中心には直径にして2mほどの、円形のくぼみがある


サクライPと桃華はその上に立った。

途端に世界の上下が反転する。

二人は先ほど立っていた床の下に立っていた。

小さな部屋の下に広がっていたのは、真っ黒な空間。

上下が反転したときに、カース達を連れて来れなかったため、

灯りは一つもない。

だが強欲の親子はお互いを視覚的に認識することができた。

真っ黒な空間でありながら、暗闇ではないようだ。

桃華「ここからは異界、あの方の領域のようですわね。」


『強欲』の悪魔は真っ黒な空間に歩を進める。サクライもそれに続いた。

桃華「アモンを起こして、その協力を仰ぐ。」

桃華「いえ、協力を仰げなくとも良いですわ。」

桃華「あの方が再び復活すれば、神々も天使もその存在に恐れをなす。」

桃華「そうして脅威の目をそちらに向けさせることができれば良いですの。」

サクライP「囮作戦のようなものですね。」

桃華「ただ、そのためには、今回、わたくし達は”計り知れぬ者”の前から生き残れなければなりませんわ。」


しばらく歩むと、黒い空間に無数の目が現れる。

それは大きかったり、小さかったり、近かったり、遠かったりした。

中空に浮かぶ無数の目はギョロギョロと二人を見ている。


サクライP「これは?」

桃華「あの方の集めた神々の目ですわね。こちらを観察しているだけですわ。」

桃華「危害を加える事はないですから、心配することはありませんわよ。」


二人は気にする事無く、異空間を進む。


歩みに合わせて、景色が幾度と無く変わる。

砂の舞う砂漠。

風香る豊かな大草原。

怒り荒れ狂う海の上。

突き抜ける様な天空に浮かぶ雲の道。

地上の何処の国とも違う都市。

凍てつく氷の山脈。

灼熱の地獄の様な渓谷。


桃華「あの方に取り込まれ、同化した神々の記憶が作り出す景色ですわ。」

サクライP「次々と景色が変わる様は、幻想的でございますね。」


景色が幾度と変わろうとも、二人を観察する目は、

まるで空に浮かぶ星の様に位置も変えずに付いてきていた。


そして再び真っ黒な空間に辿りつく。

真っ黒な空間には、大小様々な目の星が浮かび、

それはまるで宇宙空間の様にも見えた。


桃華「もう間もなくですわ。」

”計り知れぬ者”が近いと”強欲の証”が、

反応するのを感じて、『強欲』の悪魔は呟いた。

桃華「そうそう。Pちゃま、わたくしが彼女の前で生き残れる確率は」

桃華「せいぜい10%程度だと思っているとよろしいですわよ。」

サクライP「ああ、なるほど。それで私もここに呼ばれたのですね。」

アモンを起こすだけなら、サクライPがここまで共に来る必要などない。

なら、彼が呼ばれた理由はと言えば、

桃華「ええ、だってPちゃま。」

桃華「わたくしが死んでしまった時、傍に居られないのは嫌でしょう?」

サクライP「御心遣い、感謝いたします。」


そして、真っ黒な宇宙に、一つに扉が現れる。

二人はその扉の前に立った。


桃華「さて、ここからが10%の賭けですわ。」

桃華「Pちゃま、10%を引ける自信はありまして?」

サクライP「当然でございます。全ては貴女様のために。」

桃華「ウフ♪いいお返事ですわ、Pちゃま♪」



桃華「・・・・・・。」


桃華「それでは、開けますわよ。」


『強欲』の悪魔は扉の前に立つ。


それと同時に『強欲』の証である、彼女の翼が現れ、


証に反応して、扉に開放の魔方陣が描かれる。


桃華「我は”強欲”を司る大悪魔マンモン。」

桃華「我が命を聞き、悠久の時を閉ざす扉、王への道を開くが良い。」


ギィっと音を立てて、扉が開く。

真っ黒な宇宙空間に光が洩れる。


扉の奥には、円柱状の部屋があり、中央には玉座。

玉座には一人の少女が座っていた。


俯く少女の顔は伺えない。

眠っているのだろうか。


桃華「”計り知れぬ者”よ。」


部屋に入った『強欲』の悪魔が少女に呼びかける。


桃華「お迎えに上がりましたわ。」


『強欲』の悪魔の言葉を聞いてだろうか、


玉座の少女が立ち上がった。


ゴクリとサクライPが息を呑む。


”計り知れぬ者”と呼ばれた少女は


顔を上げて、口を開く。




菲菲「どもー!マンモンちゃん!」

菲菲「”計り知れぬ者”アモンこと、ふぇいふぇいだヨー!」



桃華「・・・・・・・。」

サクライP「・・・・・・・。」


菲菲「?」


桃華「・・・・・・・。」

サクライP「・・・・・・・。」


菲菲「・・・・・・・。」


桃華「すみません、お部屋を間違えたみたいですわ。」

バタン。

と扉が閉められた。


――

遺跡の入り口

来た道を引き返したが、途中に他には特にそれっぽい扉は無かったので、

『強欲』の親子はここまで戻ってきたのでした。


桃華「無駄足でしたわね。」

サクライP「”強欲の証”にも勘違いはあると言う事でしょう。仕方ないことです。」

桃華「そうですわね。今回の事は諦めて、他の方法を取ることにしましょう。」

桃華「そう言えば、カースドウェポン計画の方はどうなっていますの?」

サクライP「既に、エージェントを送り込んでおります。」

桃華「流石、Pちゃまですわ。製作の方も順調に材料が集まっているようですし、」

桃華「問題はと言えば、」


菲菲「ちょっ、ちょっと待つヨー!!」

桃華「あら、貴女も出てきましたの?」

菲菲「なんで扉閉めたネ!!ふぇいふぇいに用があったはずダヨー!!」

桃華「ごめんなさい、人違いで寝ているところを起こしてしまいまして・・・・・・。」

菲菲「人違いじゃないヨ!ふぇいふぇいが”計り知れぬ者”ダヨー!」

桃華「わたくし、アモンと呼ばれる方を探してますの。貴女、お名前は?」

菲菲「ふぇいふぇ・・・・・・じゃなかった、アモンダヨー。」

桃華「やはり人違いでしたわ。おほほ、それでは御機嫌よう。」

菲菲「アモンって言ってるヨ!!帰ろうとするのやめるネ!!」


桃華「・・・・・・まあ確かに状況から言えば、」

桃華「認めたくはありませんが、貴女がアモンなのでしょう。認めたくはありませんが」

菲菲「なんで2回言ったヨ。」

桃華「ですが、その纏う魔力は何なんですの?」

桃華「悪魔としてそれなりに強力ではあるみたいですけれど、」

桃華「とても最強の悪魔の一角と呼ばれていたとは思えませんわ。」

菲菲「ずっと寝てたから、体が鈍っちゃったみたいダネ!」

桃華「あと、一人称ふぇいふぇいなのはどうしてですの?」

菲菲「地上では楊菲菲って名乗ってるヨ!!」

桃華「喋り方とか全体的に中国人っぽいのはどう言った理由がありますの?」

菲菲「中国じゃなくって香港ダヨー!」

桃華「一緒じゃありませんのっ!!」

菲菲「あまり知られてないことだけど、アモンの出身地は実は香港なんダヨー」

桃華「もう少し嘘っぽくないマシな理由はありませんのっ!?」

桃華「だいたい貴女10%チケットで引けるSRどころか、むしろハズレっぽい雰囲気が出てますのよっ!」

菲菲「ひ、ひどいヨー!そこまで言う事無いネ!ふぇいふぇいが何したヨー!」


サクライP「マンモン様。」

桃華「はっ!おほん、失礼しましたわ、少し取り乱してしまいました。」

桃華「なら、フェイフェイさんがアモンであると言う、何か証拠は見せて頂けますの?」

菲菲「それなら、ふぇいふぇいの能力を見せるヨー!」

桃華「アモンの能力と言えば、他の神々を喰らい同化したと言う」

桃華「”神喰い”ですの?」

”計り知れぬ者”を名乗った少女は首を振る。

菲菲「ふぇいふぇいと同化した神は、神とは呼べなくなって、堕天使って事になるネ!」

菲菲「だから能力名は”天使喰い”ダヨー!」


『天使喰い』

神や天使またはそれに順ずる者を喰らい、そのまま自身の力に変えてしまう『強欲』なる力。


菲菲「あっ、でもこの場には対象にできるのはマンモンちゃんだけダネ!」

桃華「ふざけないでくださ・・・・・・っ!?」

桃華(な、なんですのっ!今の悪寒は!)


目の前の、アモンを名乗る少女に変わった様子は無い。

表情が変わった訳でもない。纏う魔力が変わった訳でもない。

ただの言葉のやり取り、冗談交じりの言葉だけであるはずなのに、

何故、『強欲』の悪魔である自分が恐怖しているのだ。


彼女が”計り知れぬ者”だと言う根拠は何も無い。

『天使喰い』と言う能力を持っていると決まったわけではない。

なのに、どうして自分が食われてしまう未来を鮮明に想像できてしまったのだ。


菲菲「それじゃあ、さっそく」

サクライP「マンモン様っ!」

桃華「はっ!お、お待ちになって!」

サクライPの呼びかけで、我に返った『強欲』の悪魔は、慌てて少女を制止した。

菲菲「どうしたのカナ?」

それに少女が応じたのを見て、ほっと胸をなでおろす。

桃華(助かりましたわ、Pちゃま。)

サクライP(いいえ、この程度の事。守ったうちにも入りません。)


桃華「こほん、フェイフェイさん。わたくしを食べても美味しくありませんわよ。」

菲菲「そんな事ないヨ!きっと美味しいから、もっと自信持ってもいいと思うネ!」

桃華「そんな自信は持ちたくありませんわっ!!」

サクライP「・・・・・・・。」

桃華「Pちゃま、何ですの。その”話のわかる方”を見つけたような目は。」

サクライP「いえ、どうかお気になさらず。」


桃華「・・・・・・仕方ありませんわね。」

桃華「フェイフェイさん、わたくしは貴女をアモンであると信用しますわ。」

サクライP「よろしいのですか?」

桃華「・・・・・・先ほどの予感、私が殺されて食べられてしまう様な予感。」

桃華「あの予感はどうしようもなく本物である気がしますもの。」

菲菲「だから、ふぇいふぇいが”計り知れぬ者”だってずっと言ってるヨー!」

菲菲「それに殺すわけじゃないヨ!ふぇいふぇいが食べたモノはふぇいふぇいの中で息づくネ!」

菲菲「マンモンちゃんもふぇいふぇいの力として存在している事が出来たヨー。」

桃華「・・・・・・。」

その無邪気な言葉を聞いて、

やはりこの存在を目覚めさせたのは間違いだったのでは、と『強欲』の悪魔は後悔しそうになる。


桃華(らしくありませんわね。)

桃華(目覚めさせてしまったものは目覚めさせてしまったもの。)

桃華(引き返せないのなら、割り切って行動しなければなりませんわ。)

桃華(それに、わたくしはいずれ全てを手に入れる『強欲』なる悪魔。)

桃華(たとえ”計り知れぬ者”でも、必ず手中に収めて見せますわっ!)


菲菲「ところで、ふぇいふぇいを起こしたのは結局、何の用だったヨー?」

桃華「用があるといえばありますし、無いと言えば無いのですけれど、」

桃華「これからの時代に、貴女の力が必要になると、わたくしは考えたのですわ。」

桃華「”計り知れぬ者”アモン、どうかわたくし達に手を貸してはいただけませんか?」

彼女にしては、非常に珍しい、純粋な頼み事であった。

菲菲「・・・・・・。」


計り知れぬ魔神は、しばらく考えてから口を開いた。


菲菲「マンモンちゃんは、魔界出身の仲間だカラ、何かあった時は手伝ってもいいヨー。」

桃華「本当ですのっ!?」

菲菲「だけど、代わりにふぇいふぇいの手伝いもして欲しいナっ!」

桃華「フェイフェイさんの手伝いですの?」


菲菲「一つ目は、今の地上の事を教えて欲しいヨ!」

菲菲「ずっと寝てたから、ふぇいふぇいにはわからない事だらけネ!」

桃華「それはお安い御用ですわ。この世界の事、財閥の知る隅から隅までお伝えいたしますわよ♪」

と、言いつつ全てを教える気は無いのだが。


菲菲「二つ目は、昔の友達を探すのを手伝って欲しいヨ!」

桃華「・・・・・・昔の友達?」

流石にその要求は訝しむ。彼女にとって昔の友達と言うのは、何時の時代の友達だと言うのだろう。


菲菲「マンモンちゃんも知ってると思うヨ!」

菲菲「ふぇいふぇいの昔の友達。」

菲菲「それはルシフェルちゃんの事ダヨー!」

桃華「ルシフェル・・・・・・?」


ルシフェル、よく聞き覚えのある傲慢の悪魔の名前だ。

しかし、死神ユズに敗れたルシファーの方ではなく。

初代『強欲』の悪魔とも呼ばれるアモンの親友なのだから、

それは、初代『傲慢』の悪魔の方なのであろう。


桃華(初代ルシファーは全能なる神にニ度挑み、敗れてからは消息不明のはずですわ。)

桃華「初代『傲慢』の悪魔である彼女が生きていると言いますの?」

菲菲「生きているも何も、今地上に居るはずダヨ?」

桃華「なっ!?」

サクライP「なんと。」

寝耳に水の情報。後ろで黙って聞いていた、サクライPまでもが驚く。

菲菲「何処に居るかはわからないけど、ふぇいふぇいには何となくわかるヨー。」

彼女の感覚だけが情報源であるが、他ならぬ彼女が言うのであれば、信憑性は高い。

サクライP「おそらくは、いえ確実に『イルミナティ』でしょうね。」

桃華「妙な勢力だとは思ってましたけれど、随分な大物が裏に居たではありませんの。」


サクライP「如何致しましょう。」

サクライPは問う。今後の『イルミナティ』に対する接し方をだ。

桃華「・・・・・・できるだけ関わるのは控えるべきですわね。」

桃華「少なくとも、現在の財閥の計画を成し遂げ、新たな力を獲得するまでは・・・・・・ですのよ。」


菲菲「ちょっと待つヨー!」

菲菲「その、いるみなてぃにルシフェルちゃんが居るなら、関わって貰わないとふぇいふぇい困るヨー!」

計り知れぬ魔神は、今の会話で、だいたいの事は察したらしい。

桃華(わたくしとしては、この方が『イルミナティ』に接触するのも控えて欲しいのですけれど。)

桃華「フェイフェイさんの都合もわかりますけれど、」

桃華「『イルミナティ』はどちらかと言えば裏で暗躍されている組織ですから、」

桃華「こちらから接触してのルシフェルの捜索は、どちらにしても難しいと思いますわ。」

菲菲「うーん、困ったネー。」

桃華「彼女達が表に出てきたとき、何か情報を掴めたなら提供いたしますわ。」

桃華「わたくし達にはそこまでしか出来ませんけれど、それでもよろしくて?」

菲菲「そうダネ、じゃあふぇいふぇいの手伝いはそれでいいヨー!」

あっさりと彼女が譲歩して、

桃華「それでは、これからよろしくお願いいたしますわ。」

菲菲「こっちこそよろしくダヨー!」

『強欲』なる悪魔達は手を取り合ったのだった。


――


その後、父が次の仕事に向かうまでのわずかな時間、親子は語り合う。


桃華「まったく、わたくし達の野望には、何かと障害が多すぎますわ。」

桃華「目的が世界の全てでは当然かもしれませんわね。」

サクライP「今もなお、広がり続ける世界の全てを手に入れる。」

サクライP「人の手には、途方も無い夢の様にも思えます。」

サクライP「ですが、だからこそ私はそこまで手を伸ばしたい。」

桃華「ウフ♪珍しく語りますわね、Pちゃま。」

サクライP「・・・・・・近頃は、こうして貴女様と語らう時間すら取れず申し訳なく思います。」

桃華「Pちゃまが頑張ってることは、わかってますのよ?」

桃華「だからこう言った時間は時々でもいいのですわ♪」

桃華「この次の機会には、ゆっくりとお茶でも飲みながら、これからのお話でもしましょう?」


おしまい


楊菲菲/アモン

職業:悪魔、魔神
属性:計り知れぬ者
能力:『天使喰い』

かつては強大すぎる力を持っていた神々の王であった魔神。”計り知れぬ者”。
しかし親友のルシフェルの反乱を手伝ったために、魔界に追放される。
魔界に堕ちた際、力の大部分を失ったが、それでも当時の魔界最強の一角だったようだ。
そんな彼女が地上で寝ていた理由は不明。長く寝ていたことで、残った力もさらに大部分失ったらしい。

魔界でも屈指の優しい娘で、魔界出身者は全員仲間だと思ってる節さえある。
そんな娘なので、この混沌とした地上で魔界出身者が不自由なく生活できているかがこの頃の気がかり。
現在の目的は、来るべきの時のために力を取り戻しながら、かつての親友ルシフェルの捜索。

起こしてもらった事と、仮の拠点を提供して貰った恩があるので、櫻井桃華の要望があれば多少の協力はする。
とは言え、特に現在の『強欲』の悪魔に肩入れしている訳ではなく、そもそも魔界出身者にはだいたい協力的。
現在は財閥を拠点にしているが、かなり自由に行動しているようだ。

地上では楊菲菲を名乗る。全体的に中華風な理由は一身上の都合。


『天使喰い』

計り知れぬ者アモンの能力。後に『強欲』なる力と呼ばれる。
神々、天使、悪魔などを喰らい、その力を一切の劣化無くまるっとそのまま自分の力へと変える。
全盛期はこの力で、海王神、豊穣神、太陽神を吸収し、強大な力を得たとか。
”臆病な天使”を食べたと言う伝説もある。
今ではそれほど強大な力は飲み込めないが、下級の神程度ならむしゃむしゃ食べる。
神霊に対する特攻能力であるため、霊体が彼女に捕まると抵抗する術が無い。
肉体を持つ者に対しては、その肉体に憑依した霊魂や、霊的存在に由来する力、だけを取り込む事ができるが、
肉体本来の魂に対しては害を与えることができず、
霊体に対して発動した時より抵抗されやすいため、成功率が著しく下がる。


『計り知れぬ者/隠された者』

アモンは”計り知れぬ者/隠された者”と言う意味を持つ名前。
彼女は自然体に存在する能力を有する。強大な力を周囲に溶け込ませ隠す才能。
あまりに当然の様にそこに居るため、どれほど観察眼に優れた者でも、
あどけない仕種を見せる彼女の、その本来の実力を見極めるのは難しい。


◆方針
櫻井桃華 … 財閥は新しい力の獲得に向けて頑張る
楊菲菲 … ルシフェル探しつつも、自由行動


神様対策どうにかしておきたい
→アモンさんが神を取り込む力を持ってたらしい、コレだ
→神を取り込む・・・神を食べる・・・天使食べる・・・天使食い・・・
→フェイフェイダヨー!

と言うお話でした。
でもフェイフェイでシリアスな事する気はあまり無いヨー

破棄宣言はご自由に、なはず
了解なの


イベント『嘘つきと本音』
〆M@s

 無事に朝食を終え、ヘレンたちはハンテーンたちの回収準備を始めた。
 帰還命令を出し、指定した場所へと来るのを待つ。

 たどり着きさえすれば、一瞬にして船内へと引き込めるように。
 労う意味での食事。ケガがあればそこを修復できるよう、さらに強化の準備も進めている。
 直接彼らの元へと向かうことをしないのは、その自信の表れか。

ヘレン「準備は?」

マシン「順調です、マム。彼らには帰還命令を出しました……アバクーゾは追われているようですね」

 アバクーゾからの返信は救難信号のようだ。
 視界データをリンクしてみれば秘密を暴かれたらしき女が憤怒の表情を浮かべて空を駆け、アバクーゾを追いかけている。

 表示ディスプレイを拡大し、ヘレンにも分かるようにとマシンが操作すると画面が目の前へと移動する。
 しばらくその光景を眺めていたヘレンだったが毛を刈られつつも攻撃を避けられているのを確認すると、ディスプレイを閉じた。

ヘレン「ふむ……問題ないわ」

マシン「かしこまりました、マム」

 ヘレンが「問題ない」と判断したのにはいくつか理由がある。

 ひとつは既に回収の準備ができていて、目的の地点へ到着さえできればいいということ。

 致命傷を受けるほどの強烈なダメージはなく、毛を刈られてこそいるがそれは新たなサンプルを集める程度の意味しかない。
 アバクーゾ自身の速度もあり、ギリギリではあるが間に合うだろうという判断が下された。


 ふたつめは追いかけている女の能力が強力とは言えないこと。

 どうやら物質を操作する能力のようだが、アバクーゾとてヘレン特性の怪人。
 あの程度の破壊力ならば完全に破壊されてしまうことはない。

 転送するときに追いすがっている人間を連れてきてしまう可能性も無きにしも非ずであっても、
 どうとでも始末できる荷物がついてこようと問題はないというのも、理由の一つだ。

 ――だが、その判断は謎の乱入者によって崩される。

 ヘレンがハンテーンの確認のために画面を切り替えようとしたとき。
 アバクーゾの視界カメラに黒い『なにか』が降って来た。



 それは黒く、まるで呪いの泥にそっくりで。



 それは暗く、まるで夜の闇にそっくりで。



 それは昏く、まるで――




 何も知らないまま、何も見ようとしないまま。
 ――目を塞いだ風景にそっくりだった。

 その泥の中から『なにか』が生えてくる。


 少女のようだが、シルエットは不自然で。
 目は不自然に赤く光り、笑う口は左右に裂けて恐怖を煽る。

 黒く暗い泥の表面には次々に様々な生物の瞳が、口が、腕が、脚が生えていく。
 見ているだけで恐怖を掻き立てられるようなおぞましい姿へと姿が変わる。

 その『なにか』はアバクーゾを追いかけていた女へとわざとおどけた声をかけ、消えるように促した。

マシン「マム、想定外の事態です。これは……マム?」

ヘレン「……」


 アバクーゾが捕らえられ、ズルズルとその巨大な口へと引きずりこまれていく。
 マシンがヘレンの指示を仰ごうとするも、ヘレンはただ無表情でそれを見つめているだけだった。

 噛み砕かれ、啜られる音。

『拒絶しないで』

 アバクーゾの反応が急速に消失していく。

『受け入れて』

 たとえアバクーゾ自身が破壊されつくそうと、データを送り続けるはずの計器がエラーを吐く。

『認めて』

 視界データは完全に消え、真っ黒な暗闇だけが送られる。

『あいして』

 音声データが劣化し、嘆きの声がかすれていく。

『つ…いよ』

 ヘレンの表情は変わらない。

『くるし…よ』

 ただ、減っていくデータを1つとして見逃さないように目を通している。

『しに………』

 そして、送られてくるデータも、アバクーゾの反応も。

『……から……たしを………』

 ――完全に、消失した。

ヘレン「……この星に、こんなテクノロジーが? ありえない」

マシン「………」

 残されたデータすべてにバックアップを取り、ヘレンが忌々しげにつぶやく。
 マシンはただそのそばに立ち、彼女の次の言葉を待った。

 話す必要があるのならば、話すのだろう。
 そう彼は知っていたから。

 しばらくの沈黙が流れる。ハンテーンへの帰還命令は無事届いたようで、リターンがあった。

ヘレン「……ねぇ、あなた」

マシン「イエス、マム」

 その反応を受けて、ヘレンが口を開く。
 ぽつりと、つぶやくように。彼へと投げかけるように。

ヘレン「あれが何か……理解はできた?」

マシン「……データに一致するものはありませんでした。カースに近い性質かと思いましたが、しかし生物的すぎます」

ヘレン「そう……流石に賢いわ。あれは別物……生物の範疇を越えた、ね」

 ヘレンがこめかみを指で叩く。
 大きくため息をつき、いらだちを隠さない。

 主人のあまりにも珍しい行動に、マシンも困惑する。
 彼女はいつも堂々と、そして楽しげに生きているはずだと思ったからだ。

ヘレン「ベースはこの星の生物……地球人かしら。美しくないわ」

 だから、彼は聞くことに徹した。主人の全てを受け止めるのが自身の役割であると理解していたから。

ヘレン「私は、私自身の手でもって創造した存在しか信用しない」

マシン「……」

ヘレン「あなたも、そう。そして、私が生み出したものへ枷をつけることはしない」

ヘレン「私の命令だけを聞く、機械人」

 彼女が作ったものは、決して従うことを無理強いされるわけではない。
 そして、行動に対して一切の制限は設けられない。

 たとえば、音声でもって動く『コワスーゾ』がヘレンを殴れたように。
 コワスーゾ自身は完全に機械で作られた体と簡易なプログラムで動いていたため自我はなかったが。

ヘレン「彼らだって、進化するのならば。私は喜んで反逆を受け入れる」

 その想定を超えることをいつでもヘレンは望んでいる。
 彼女自身の手で、彼女を越えることが可能な存在が生まれることを。

ヘレン「生物を。この手でゼロから作り上げる……それもまた、面白い」

 機械の素体と思考プログラム。タンパク質で肉付けされた二匹。
 可愛らしい見た目と、単純な使命。それを果たそうとするのはプログラムからか、それとも。

ヘレン「でも……アレは違う」

マシン「……違う、とは?」

 ヘレンがまた、大きなため息を吐いたのを見てマシンが聞く。
 それを望んでいるように見え、そうすべきだと『思考』したからだ。

ヘレン「あれに込められた望みは、生き物の範疇を超えている。私であろうと、生み出さないモノ」

マシン「マムに不可能があるとは思えません」

 ヘレンらしからぬ言葉にマシンは即座に反論する。
 それを受けてヘレンは微笑み、そのボディを一撫でした。

ヘレン「落ち着きなさい……生み出すのは、私であってはならないの。終わらない存在、永遠ということはね……」

マシン「永遠……とは、なんでしょう」

ヘレン「……永遠とは、不変であるということ……それほどつまらないものは存在しない」

 飲み込まれる直前に必死に送ったのであろうデータ。
 消えてしまった『いのち』の遺したもの。

 それを見つめ、ヘレンがまたひとつため息を吐く。

マシン「マム……?」

ヘレン「……あれは、もともとあるものを繋げて作ったメビウスの輪」

 理解させるための言葉か、それとも整理のための独り言か。
 判断しかねるトーンでヘレンが呟く。

ヘレン「そんな歪なものを。なんの意味もなく生み出す……本当に、美しくない」

マシン「……」

ヘレン「奪い、繋ぐ。積み木遊びと同じね。いずれ崩れて滅びる」

ヘレン「……既に、生み出したもの達は滅んだはず。『制御』に失敗でもしてね」

ヘレン「永遠など、そんなもの。私が望むのは――」

 そこまでヘレンが言ったところで、ハンテーンからの救難信号が届く。
 ディスプレイに映し出されたのは、一度撃退し引き分けたはずの少女からの一撃で装甲を抉られる映像だった。

マシン「これは……刺突。斬撃ではなく、抉ることにより機動力と防御力を下げることを目的としているようです」

 状況を分析し、マシンが言う。ヘレンはただディスプレイを見つめている。

マシン「いかがしましょうか、マム。どうやら逃走経路を予測されているようです」

ヘレン「……いいえ。このままでいいわ」

 逃走ルートの変更、提案。強制回収などの手段をあえて選ばず、ヘレンは静観を決めた。
 その指示にマシンはただ従い、追い詰められていくハンテーンの様子とデータを計測し続ける。

 何度目かのやり取りがすぎ、ハンテーンの左腕はもげる寸前。
 胴体へと手痛い一撃を受けて動きはさらに鈍り、それでも必死に逃げようとあがいている。

ヘレン「……私の望むもの。それは決して永遠であってはならない」

 速度も落ち、逃げ場はない。
 終わりだろうか、とマシンが判断し今回のデータのまとめに入ろうとしたときヘレンが呟いた。

 ハンテーンは自らの外れかけた腕を逆立て、外して――


 ――その胸へと突き立てた。

マシン「これは……?」

 送られてくるデータがことごとく反転していく。
 色調も、音声も、正常なものとは言えない。データ内容にエラーが交じる

ヘレン「それがあなたの感情。いいわ、ハンテーン……いきなさい」

 本来存在しないはずの凶暴性。本来ありえないはずの勇猛さ。
 目的を同じくしていた友の『死』を受け止め、悲しみ、怒り、自ら思考してたどり着いた『戦う』という選択肢。

ヘレン「私が望むものは……永遠などではないわ。そうでなくては、面白くない」

 ヘレンが楽しそうに笑う。
 子供のように無邪気で、狂ったように恐ろしく。

ヘレン「生み出したもの自身の進化。それこそが私の望むもの……永遠などでは、決してない」

 その声を聴きながら、エラーを受けるデータのバグをとりマシンはハンテーンの最期の戦いをすべて記録し始めた。
 毛の鎧も想定していたものよりも遥かに早く再生し、鋼よりも硬く体を守っている。
 パワーはその体に見合ったものではなく、長く運用すればそのまま滅びてしまうだろう。

 それでも、ハンテーンは戦う。自己生存の命令を無視し、帰還の命令に背いて。





 ――結果から言えば、ハンテーンは負けた。
 進化し、強化し、狂化し。そのパワーと能力では圧倒的に有利であったはずの相手に。

 油断ではない。確実にしとめようとしたうえで、負けたのだ。
 感情をエネルギーにする刀と少女に。街に渦巻く嘆きを束ねた一撃でもって、怒りを受けて。

ヘレン「……そう。やはりこの星は面白い」

 データをまとめ、ヘレンが呟く。

 ハンテーンは想定されていた能力以上を発揮した。
 その力を引き出した少女は、さらにそれ以上の能力でもってハンテーンを撃退した。

 想定外に想定外が重なるということ。それこそが彼女が望むこと。
 何もかもが変わらない永遠ではなく、何もかもが変わり続けること。

 先へと進む、進化の奇跡。

 その可能性をこの星に見たヘレンは、ハンテーンの生体反応が完全に消失するのを確認してからモニタを切った。


 ――気まぐれで訪れた星だが、面白い。

 彼女自身の指示とはいえ、彼女への忠誠を誓う機械人による支配者への殴打。
 彼女が作り上げた、非戦闘用の生物型怪人自身の自己進化。

 自身の作り上げた宇宙レベルの存在が、さらに上の高みへと昇る感覚。
 この星ならば、あるいは生み出せるのかもしれない、と彼女は思った。

ヘレン「そう……永遠ではなく、完全。永久ではなく、完璧。全てを超え続ける存在……」

 そのつぶやきを、マシンはただ聞いていた。

 彼の創造主が望むものが生み出されることがどういう意味なのか。
 それを思考しながら。

!イベント情報

 『嘘つきと本音』の全行程が終了しました。
  ハンテーンとアバクーゾは完全にロストし、ヘレンには確認できなくなっています。

 ヘレンが究極生命体である『なにか』の存在を知りました。
  その存在のあり方と生み出したものへ嫌悪を向けているようです。

 ハンテーンの自己進化によって新しいデータが生み出されました。
  地上へとさらに興味を持ち、適当な怪人や機械人を送り込んだりもするようになるようです。

以上、イベント終了でしたーん

ギャグイベントだと思ったら〆がかっこいいのと恐ろしいので、ヘレンさんも思わずシリアスし始めてた

乙です!

ヘレンさんマジ宇宙レベル
彼らは頑張ったよね、お疲れ様でした!

乙です!

ハンテーン、アバクーゾ…よくやったよ本当に
ヘレンさんもかっこよすぎるし、これからも注目だな。

さて、勢いだけで書き上げた雪乃さんをgdgd注意ですが投下します。


『―――続いてのニュースです。今現在も緊迫している、通称「憤怒の街」について新たな動きがあったと見られます』

憤怒の街から、そう遠くない別の街。

その街の小さな通りにある一つの店、「アンティークショップ・ヘルメス」。

周りの建物から比べると少々古臭いつくりに見える店構えであり、尚且つ決まった日に開店している事は少ないため相当な物好きが店を開いているのであろう、というのが周辺住民の考えであった。

しかしそんな店構えに反して店長たる人物は若く、またそろえている品物も不思議な物ばかりであるためリピーターも一定人数存在している。

そんなアンティークショップの中庭に、店主である彼女の姿はあった。

「……ふぅ、今日も美味しいですわね」

グラマラスな肢体を強調するようなコルセットにスカート、そしてそれとは少々合わない銀細工の腕輪や首飾り・チェーンに繋がれた数々のアクセサリー類。

しかし、片手に紅茶が注がれたカップを持つその姿はどこか中世の上流貴族を思わせる気品に溢れている。

一口飲んだカップをテーブルに置き、傍らに置いてあった携帯端末を覗き込む。


「……ふふ、星花も変わらないですわね。一度決めたことは絶対に曲げようとしない……確かにそういう子ですわ」

そこには、一般人ではまず知り得ることのできない情報。

―――日本有数の財閥である涼宮財閥、その当主の一人娘が家出したという旨の文が表示されていた。

「まぁ、変わらないという点ではあの子も同じですわね」

更に視線をテーブルの向かい側―――ほんの数刻前まで飲み手が居たであろうティーカップへと移す。

「何も知らない様でいながら、それでいて核心は見逃さない。間違いなくあの子も『榊原』の血筋なのでしょう」

置いた紅茶を再び手に取り一口。

それはいつの日からか奇妙な護衛を連れて歩いて、そして先刻友人の所に行くと言って別れた少女の事を思う。

「……本当なら、もう一人……『西園寺』であるあの子も居るはずでしたのに……やはり、見つかりませんわね」


もう一啜り。

若干、顔に陰りを覗かせながら思うは、彼女たちと同じ『名家』である一人の少女の存在。

そして、更にもう一人。

「桃華も、どうやら今は違うらしいですわね…あの子とはいいお茶の話ができましたのに」

『西園寺』に取って代わった『櫻井』の令嬢にも思いを寄せる。

「皆が皆、それぞれの目的のために動いていますのね…」

クイッと、中身を全て飲み干したカップをテーブルに置く。

「ならば、私もまた動くべきなのでしょうね……そのためには」

すっと、席を立ち店内に戻る彼女。

「『相原』としてではなく、『雪乃』として私自身が戦う力があるか、今一度確かめねばなりませんわね」

そうして彼女―――相原雪乃は、そのままにわかに騒々しくなっていた店の外へと出て行った。

―――店外、大通り。


「ニクイ…ネタマシイ……アンナヤツガオレヨリモ…」

そこには、一つの呪いが現れていた。

その内から負の叫び声を放ち、赴くままに害なす黒い呪い。

逃げ出す人々には目もくれず、ただただ破壊だけを繰り返す存在。

「ごきげんよう、嫉妬の呪い様」

「アァン?……ナンダオマエ」

そこに、まるで旧知の友人にでも挨拶するかのように雪乃が声をかけた。

「私、相原雪乃と申します……これから貴方様を討つ者の名ですわ」

「フザケヤガッテ……ヤッテミロヨオオ!」

そして次に発するは、毅然とした挑発。

それを受けたカースは激情に身を任せるように震い上がり、雪乃に襲いかかる。

「…参ります!……破滅の枝―――《レーヴァテイン》よ!」

同時に、雪乃は数あるアクセサリーの中から一つを手に取りその名を呼ぶ。

次の瞬間には、僅かな赤い閃光と共に周囲一帯の気温を一瞬ではね上げるような熱量を持った、振るうだけで陽炎さえ生じる深紅のランスが雪乃の手に握られていた。

「クライヤガレ!」

泥の腕を振り回し、なぎ払おうとするのを雪乃はあえて正面からランスで受け止める。

普通ならば軽く弾き飛ばされても不思議ではない一撃を、しかし雪乃はしっかりと受けきっていた。

「《メギンギョルド》……装着者に怪力を授ける帯…これなら充分ですわね」

「ナンダト…」

「さぁ、次は私の番ですわ!」

受け止めていた腕を、ひと思いに押し返しがら空きの胴体にランスを叩きつける。

それだけではなく、ランス自身が灼熱の炎を纏って触れたそばから焦がし、カースの体を灰に変えていく。

「ナニシヤガル!」

「逃がしは致しませんわ!」

慌てたようにカースが暴れ、雪乃を引き剥がす。

しかし一旦離れてもすぐに、今度は真っ直ぐに突き刺す。

それだけで、ランスは触れた瞬間に灰塵えと変えながらカースの内部へと入り込む。

「チョウシニ……ノッテンジャネェゾ!」

「!こんなこともできるのですね…」

そこに、業を煮やした様にカースの体から槍のように幾つもの触手が飛び出す。

それを避けながら雪乃は冷静に一旦距離をとり、

「ならば、私も次の手をお見せしましょう」


「ならば、私も次の手をお見せしましょう」

ガキンッと音を立て、ランスが二つに割れ下がると共に内側から刃が飛び出る。

再びガキンッと音が鳴った時には、ランスは両刃の長剣へと変わっていた。

「焼き切らせていただきますわ!」

「ナンダトォ!?」

その長剣を、明らかに届かない距離で振り下ろすと同時にその軌跡をなぞる様に炎の刃が出現、カースの触手を切り裂きながら本体の一部をまた灰へと変える。

「動作は良好、違和感も無し…行けますわね」

一つ一つ、確認するように確かめながらも確実にカースを追い詰める。

既にカースの体の半分は灰となって風に飛ばされ、残った半分から飛び出す触手にも動きのキレはなくなっていた。

「そろそろ幕引きと致しましょう…私の傑作の力、見せて差し上げますわ!」

ガキンッと、更に音を立てたかと思えば今度は刃とランスであった部分が更に別れ、内側から紅い宝石のようなものが現れる。

そしてそれを中心に、先端に集まるように別れた部分がスライドして固定。

再度音を立てた時には、剣から灼熱の炎を放つ杖へと姿を変えていた。

「破滅の枝……とある神話に語られるその形は、槍とも剣とも杖とも言われておりますわ」

「オレガ、コンナモノデェエ!!」

「ですから私は思いましたの。ならばそれは、そのすべての形を持っていたのではないかと」

カースに話しかけるように、雪乃は言葉を紡ぐ。

カースはそれを挑発と捉えたのか、それともこの後に起こる事態を予感したのか一気に触手を張り巡らせ襲いかかる。

「一点集中の槍、指向性の剣、そしてこれが最後の…」

杖を地面に叩きつける。

ただそれだけの動作で灼熱の炎が立ち上り、壁となって触手を阻む。

「―――放出の杖、ですわ!」

「バカn―――………」

一閃、炎の壁が膨れ上がりさながら洪水のようにカースを飲み込んだ。

―――カースは、最期の言葉を発することなく塵へと姿を変えたのだった。


「ふぅ……年甲斐もなく熱くなってしまいましたわね」

レーヴァテインをアクセサリーに戻し、自らの行動を多少反省する。

―――戦場となった大通りは、あちこちが焼き焦げたり信号が溶けたりしてしまっていた。

「……まぁ、このくらいならばすぐに直せると考えておきましょう」

しかし深く考えるのはやめ、ゆったりと自らの店に戻ることにする。

「…ふふ、それに、家の反対を押し切ってまで作った甲斐はありましたわ」

今でも鮮明に感じ取れる炎の感触、雪乃自身が最高傑作とまで言い切った一品―――レーヴァテイン。

そして、それを作成した雪乃の正体、それは………

「…さぁ『軍事』の『相原』の本気、そして『錬金術師』である私自身の力、これからは存分に振るいましょう」

日本が誇る『四大名家』の一角、軍事を司る相原家の当主にして稀代の錬金術師でもある相原雪乃が、行動を開始する瞬間であった。

続く?

「アンティークショップ『ヘルメス』」
相原雪乃が自らの作品を世に送り出す事が目的で開いた店。
作品といっても、主に観賞用・日常雑貨のマジックアイテムがほとんどである。
ただし店の奥には強力な物もあり、さらには錬金術の工房まで存在する。
決まった日に営業していなく、ほぼ趣味でやってる店でもある。

「四大名家」
相原・榊原・西園寺・涼宮の四つの家系のこと、古くから日本の行く末を守ってきた。
それぞれが軍事・教育・経済・政治を司っていたが、ある日西園寺が櫻井に取って代わられた。
それによってパワーバランスが崩れており、一時期は軍事以外は全て櫻井が手に入れてしまっていた。
現在は、櫻井が弱体化した隙をついてなんとかパワーバランスを回復させることに成功している。

「錬金術」
古くは化学の基盤ともなった、れっきとした学問。
現代では魔術・魔法と一部混同・融合されており、主にマジックアイテムを生み出す手段となっている。
しかし、それでも錬金術の最終目標とも言われる「賢者の石」の製作を成し遂げたものは存在しないらしい。
ちなみに結構材料費がかさむため、錬金術一本で食べていける人物はあまりいないとか。

「レーヴァテイン」
元々は北欧に語られる神話に出てくるアイテム。
その名は「破滅の枝」を意味する。
槍とも剣とも杖とも伝えられるが、雪乃は作成した際にこの三形態全てに切り替えられるようにした。
雪乃が作成したマジックアイテムの中でも最上級の出来であり、本人曰く「傑作」とのこと。
ちなみに制作費用は最低でも空母が一隻作れるレベルとかなんとか。

「メギンギョルズ」
北欧神話に語り継がれるアイテムの一つ。
元々は装着者に怪力を授ける帯であり、雪乃はそれを参考に紐として作った。
実は結構余ってたりする。

相原雪乃
職業:相原家当主、兼「アンティークショップ『ヘルメス』」店主。
属性:錬金術師
詳細説明
日本を古くから支えてきた「四大名家」の家系である相原家の若き当主。
その年齢に反して、政治的・外交的手腕は目を見張るものがある。
また、相原家は主に「軍事」を統括する家系であり直接的な力を持つ分他の名家とは一線を画している。
その力は軍事関係だけで見れば国内に留まらずアジア地域、下手したら欧米諸国にさえ強い影響力をもっている。
実はサクライPが世界制覇目前まで行きながらも後一歩届かなかった遠因でもあるとかなんとか。
また有能な錬金術師でもあり、ことマジックアイテムの作成にかけては希代の天才とも呼ばれている。

情報
・アンティークショップ『ヘルメス』が登場しました、色々置いてあって売ってますよ!


という訳で投下終了です…なんか凄い事になったな…
とりあえず今まで温めてきたネタやらなんやらを一気に詰め込んでみました;

ちなみに時間軸はだいたい憤怒の街で翼竜が空から叩き落とされたぐらいです。

それではおめ汚し失礼しました。

おっつおっつばっちし☆
四代名家か……Cuがお嬢様って公式に言われるだけあるよなぁと思った

錬金術ってそういえばいそうでいなかったし、マジックアイテムは能力ない人たちや燃費悪い人たちの助けにもなりそう
西園寺さんとこの子、結構ポンコツ入ってるけど家は本当に大丈夫なのか……

>>692
名前が融合されてますよー

>>693
すまぬ…すまぬ…
電車でうとうとしながら予約はアカンね…

乙乙

財閥とのあれこれでテンション高まってきたな

予想以上に長くなった肝試しイベント導入SSはっじまるよー

「ハァ…ハァ…」

深夜。殆ど人も生物も寝静まった時間。着ぐるみのウサギの耳を揺らしながら、小さな少女が歩いていた。

彼女は仁奈。彼女は真夜中に里を抜け出し、森を超えて街へ向かっていた。

…もちろん徒歩で。実際の小さな少女なら無理だろうが、彼女は一応妖怪だ。疲労してはいたが全く無理というわけでもない。

実際、こっそり鈴帆に会いに行ったことは数回ほどある。後でこってり怒られるのだが。

しかし、今回の目的は鈴帆に会いに行くことではない。

「重い…ですよ…」

…それに、彼女の体は普段よりもまるで誰かもう一人をおんぶしてる様に重くなっていた。

割と近くにあった憤怒の街から里を守る為にカースが来ないようにしていた為、あまりにも厄をため込みすぎていたのだ。

「でも…いかないと…」

頭に響き渡るのは誰かの声。

『聞コエルカ我ガ『核』トナル者ヨ…我ガ『力』ノ所ヘ行クノダ…サモナクバ貴様ノ大切ナ人間ヲ殺シテヤル…』

大切な人はたくさんいる。みんながいなくなるのは嫌だ。だから声が導くままに街へ向かって仁奈は歩いていた。

そしてあずきもまた、奇妙な声に言われるがままに街を彷徨っていた。

『核』と会わなければ大切な人を殺すと言われたのだ。

「…あれ?」

広い広場に出ると、ウサギの耳を揺らして小さな女の子がふらふらと歩いていた。

「ハァ…お…ねぇ…ハァ…さん…」

「だ、大丈夫!?」

時間帯・虚ろな目・荒れている呼吸・千鳥足のような足取り。何もかもが明らかにおかしい。

「おもい…ハァ…です…よ…」

すぐに駆け寄り体を支えようとしたが、あまりにもその体は冷たく、そして重かった。

予想外の重さに動揺し、手が滑る。そして仁奈は地面に倒れた。

「おねえさん…仁奈から…逃げてくだせー…」

「え?…!」

仁奈がその言葉を発したのと同時に、地面に仁奈が沈み出した。まるでその部分だけが沼になってしまったかのように。

そして仁奈の中の厄が、黒い波紋となって広がっていった。

「は、早く引き上げないと…!」

「ダメです…逃げて…くだせー…」

仁奈の警告を聞かずにあずきは仁奈の手を掴んだ。

「…え?あ…れ…力が…ぬけ…て…」

仁奈の厄に引きずられるようにあずきの妖力も波紋となって広がってしまう。

『ククク…フハハハハ!核ト力ガ一カ所ニ集マッタ!』

黒い靄のような何かが、二人に近づいてくる。

『コノ世界デ再ビ我ガ頂点ニ立ツ!』

「こないで!何をする気なの!」

あずきが仁奈を庇うように抱きしめる。

『フフフ…力ヲ失ッタ我ハ消滅寸前ダガ…厄を溜メタ土地神ヲ核トシテ、復活スルダケノ事。何モ恐レル事ハナイ…!』

「い、いや…!」

仁奈はもうすでに意識を失っている。怯えるあずきに容赦なく靄のような腕がゆっくり近づいてくる。

「き、急急如律令!」

『!?』

背後から、光を纏った矢が放たれ、黒い靄は慌てて避ける。

そこにいたのは巫女服の少女。巫女服と似た色合いの小さな腰巾着を付けていて、矢筒を背負い、弓を黒い靄に向けていた。

『キサマ!道明寺ノ娘カ!』

「ふぇ!?は、はい!道明寺歌鈴です!」

『ソンナ事ハ聞イテイナイ!何故ココニ来タ!貴様ノ様ナへっぽこガ、ドノヨウナ手段デ来タ!』

怒りを露わにして黒い靄が少女…歌鈴に問いかける。

「そそ、そのー…私、貴方を倒したと思ったらこの辺りにいて…!」

『コノへっぽこ巫女ガアアアア!!何故ダ!我ノ転移術ハ完璧ダッタハズダ!』

「すみませんっ…術を発動した後…時に足を滑らせて近寄りすぎたみたいで…!」

『モウヨイ!邪魔ヲサレルマエニ力ヲ取戻シテヤル!』

「あっ!さ、させません!鬼魔駆逐 急々如律令!」

腰巾着から折り鶴を取り出し、式神として使役し飛ばす。続けて矢筒から破魔矢を取り出し、光を纏わせて放った。

折り紙の式神は自らが燃えない炎を纏い、矢は魔を打ち破る光を纏って真っ直ぐに飛んでいく。

『邪魔ヲスルナ!』

靄は矢を回避しようとするが、式神の力で少々強引に矢の軌道を変える。

「力を失った貴方なら…わわわ、私でも…っ!」

少し頼りなさげではあるが、しっかりとした意思を持った声で叫ぶ。

「急々如律令 奉導誓願可 不成就也!」

矢の周りを飛行していた折り鶴の炎がさらに輝きを増す。

「燃え上がれ、業火!」

矢の光も白から赤に変わる。

「お願い!」

叫ぶと同時に先ほどのスピードよりも速く赤い光が走った。

そして黒い靄を貫き、あっという間に火だるまになった。

『グオオオオオオオオオオオ!』

「やった!できた!…あっ式神集合!」

敵が完全に燃え尽きたのを確認して、巾着に式神をしまう。

「大丈夫ですかー!ってきゃあ!」

そしてあずき達に駆け寄ってきたが盛大に転んでしまう。

「そっちこそ大丈夫!?」

「いたた…ご、ごめんなさい…えっと、ととと取りあえず引き上げないと…!」

先程とは違い、普通の重さになった仁奈を引き上げる。本人が言うにはもう大丈夫らしい。

「…そういえばなんで巫女服を着てるの?」

「コスプレでごぜーますか?」

「えっ…えっと…実はですね…」

彼女が言うには、黒い靄の本当の姿…大妖怪の討伐を行っていた部隊の一人だったのだが、止めを刺す時に空間移動に巻き込まれてしまったらしい。

「…つまり別世界の人間さんってこと?」

「多分そうなんでしょうね…私の住んでいた場所では少なくともこんなに夜はぴかぴかしていませんよぉ…」

その言葉を聞いて思わずあずきは辺りを見渡す。

「…あれーおかしいなーあたしの知ってる街はこんなに禍々しいところだったっけー?」

全体的に街が薄暗くなっている。霧が漂い、暗闇が強く自己主張している。

「こえーですよ…」

仁奈が思わず二人に抱き着く。

「か、かなりの広範囲が祟り場になってますね…」

少し震えた声で歌鈴が説明する。

「祟り場?」

「妖気で汚染された、妖怪や悪霊が活発になる環境です…清めの符をあちこちに貼れば戻ると思いますけど…その、私ここら辺よく分からなくて…」

「ならあずきにお任せ!あずきが…えっと名前なんだっけ?」

「私、えっと、ど、道明寺歌鈴です!」

「よーし歌鈴ちゃん護衛大作戦!つまり、プロジェクトKを始動しちゃうよ!」

「なんだかかっけーでごぜーます!仁奈もやるです!」

「仁奈ちゃんもじゃあ行こうか?」

「はい!お迎えが来るまで一緒でごぜーますよ!」

妖気が満ちているからか、二人のテンションがやけに高い。

(だ、大丈夫かな…ダメ、後ろ向きになっちゃだめよ歌鈴!)

空を見れば、もうすぐ夜が明けようとしていた。

人々が何も知らないまま朝が来た。

涼はいつも通りの時間に目を覚ましていた。夏休みだからそこまで時間に悩まされることも無い。

「あずき?」

ふと、あずきがいない事に気付く。…部屋がやけにがらんとしている気がした。

カーテンを開けて、窓の外を見る。

「…は?」

霧が街を覆い尽くしていた。…それに、なんと言えばいいのだろう、不気味な感じがする。

…今の景色と何故かあずきがいないことが関係ある気がしてきた。

「…そうだニュース!こんな異常気象なんだし…!」

急いでリモコンのボタンを押す。

…しかし、映っているのは砂嵐だけだった。

嫌な予感がして携帯を見ると予想どおり圏外。

「まんまホラーじゃん…。」

部屋を漁って武器になりそうなものを探す。こんな時にあのバカはどこに行ったのやら。

…いろいろ探した結果、アパートに入居した時になぜか前の入居者が物置に入れっぱなしだったバールくらいしかないようだ。

あずきがいれば物を強化できるから割と適当な物でもよかったのだが…。

大きめのバックのすぐに取り出せる位置に入れる。他のは応急処置用の薬や包帯等だ。危険な予感しかしないから念のために。

玄関を開けて鍵をかけて、アパートから飛び出した。

「でろでろば~!」

「ぎゃあああああああ!」

「きゃははは!」

いきなり出てきた一つ目妖怪に悲鳴を上げる。

…割と前途多難の様だ。

「…死神長様から連絡がありまして、異常な妖気が溢れかえっているこの周辺に、複数の死神が派遣されたようです。」

ユズが布団をかぶって震えている蘭子と昼子に告げる。

「忌々しき霊魂どもが、神に仕える農夫の軍によって魔の地へ還る刻か…!」

「幽霊とか妖怪とか、死神さんたちが魔界に連れて帰ってくれるんですかぁ!」

(ヤバイなぁ姫様がなに言ってるのか全然わからない…)

妖気にそこまで関係がない魔族でも少なからず影響を受ける者もいる。…昼子は訳の分からないテンションになっているようだ。

「…えー死神が狩るのは悪霊とか地縛霊ですね。どちらも何らかの理由で狩り損ねた魂が何かに執着した成れの果てですからねぇ…妖怪は専門外です。」

「死神でもあまりに弱ってたり、呪われた魂は下手に狩れません。でも今なら意思が強く、それなりの魂になってる筈です。呪われた魂は専門家が来るそうですし。」

「…それに悪霊はタチが悪いんですよ。普段はそこまで力がないから騒ぎになることも少ないのですが、生者の魂を道連れにしようとしてきますから。」

「…神崎家には一応結界貼りましたけど…あたしも助っ人として行かなきゃならないんですよ。…大丈夫ですか?」

「魔力を司る選ばれし風よ!我を地獄の釜へ置いて行くというのか!」

「そんなぁ!ユズさん!こんな怖いところに置いていかないでください!」

「…てへっ☆」

ペロっと舌を出してごまかすと、ユズは逃げるように出て行ってしまった。

「ユズさあああああああああああああああああん!」

蘭子の悲鳴は霧と闇に飲まれただけだった。

道明寺歌鈴
職業:巫女
属性:平行世界のヘッポコ巫女
能力:破魔矢による退魔、式神操作、符の作成・使用

平行世界の妖怪が人類の敵となっている世界からうっかりやってきてしまった少女。それでも悪い妖怪しか退治しようとはしない。
大妖怪の転移術に巻き込まれたが、大妖怪よりも後の時間の世界にほんの少し前に来たばかり。
現代よりも科学がかなり発展していない世界から来たらしい。
まだまだひよっこ巫女なのだが、潜在能力を買われ、さらに家の名誉の為に怪我を負った両親の代わりに精鋭部隊にねじ込まれた。
破魔矢は魔に対して強力な威力を持っており、光を纏って飛ぶ。
矢は矢筒にいつの間にか補充されているらしい。先が尖っていないので、魔の者以外にはほぼ無効。
式神は基本的に折り紙で作ったものを使役する。炎を纏わせることも可能。
腰巾着は見た目よりも多めに物が入る術がかかった物。母親の手作りでとても大切にしている。中身は今のところ式神と符と携帯用の筆のみ。
筆に力を込めて墨なしで符を作ることができ、簡単な封印や浄化などができる。和紙を必要とするがある程度のストックはある模様。
取りあえず今は元の世界に帰る方法も探さないといけないと思っている。
呪文は「急々如律令」って言わせておけばいいってばっちゃが(ry

イベント「真夏の肝試し大作戦!」
・あずきの妖力と仁奈の厄がかなりの広範囲にばらまかれ、祟り場となりました。霧が漂い、全体的に暗い風景に…
・妖気で汚染された負のエネルギーにより魔族、妖怪、幽霊、精霊の類のテンションがおかしくなりやすく、一部は暴走してしまったようです
・妖気が満ちている為カースは生まれず小さな妖怪が生まれている模様
・基本的に妖怪は軽い悪戯程度の被害が多いですが、悪霊には気を付けて。…魂を連れていかれないように…ね?
・モブ死神とユズがこの機会に悪霊を狩る為、それなりに徘徊しています。運が良ければ助けてもらえるかも
・テレビ、電話等が使えない状態です。他に何が使えないかは不明
・歌鈴・あずき・仁奈が清めの符を貼って回っています。手伝うのも妨害するのもお好きにどうぞ
・涼さんがあずきを捜索中です
・また、人間の運気がかなりダウンしています。お気をつけて…

以上です
こんな感じでいいかな…?(ビクビク)
イベント名は某アイス店のアレが元ネタダヨー
とにかく怖がるアイドルが見たいんだ!(集中線)

乙です
宝か…亜子ちゃんが欲しがりそうだ…絶対番人倒せないけど
闘刀衆もSAMURAIって感じでいいねぇ

せっかくなので出たばかりの雪乃さんとか色々混ぜこぜしてみた。

摩訶不思議な品物を扱うお店があるらしい。


昔アコから聞いた話だ。
私も最初はとんだ与太話だと笑い飛ばしていたが『現物』を見て驚いた。

それはなんてことない木製の丸椅子だった。
しかし、その丸椅子は不思議なことに『芽吹く』丸椅子だった。

あの時の衝撃は忘れない。
訝しむ私をニヤニヤとした笑みを浮かべて見ていたアコ。
私がその丸椅子に恐る恐る腰掛けてみた。
すると、私の座った丸椅子の脚が台座を貫き、私の背中に沿うように、成長した。
成長した椅子の脚から枝葉が広がり背もたれになり、まるで樹木そのものが椅子となったのではないかと錯覚してしまうほどだった。

驚いた私が椅子から慌てて立ち上がると成長した枝葉も伸びた椅子の脚も静かに引っ込んでいった。

アコがスカベンジングによって入手した椅子だが、結局、私がアコから買い取ることになって不思議な椅子は私の愛用品になっている。

リン「結局お店の情報コミコミで結構持っていかれちゃったけどね…」

春菜「…それでこれからそのお店に行くんですよね?」

リン「行くんだけど…なんで春菜がついてくるの?」

春菜「…不思議な眼鏡とか魔法の眼鏡とかもありそうじゃないですか!」

リン「いや、無い……どうだろう?」

正直あまり自信はない。
その前にそのお店がもしも一見様お断りなお店だったら入れないかもしれない。

春菜「ふふふ、期待が持てますね!」

私はスマートフォンをタップしてカピバラを模したアイコンに触れる。

リン「ハンテーン、道はこっちで合ってる?」

『てーん!てーん!』(この先300m先みたいだぞ)

私のスマートフォンからハンテーンの鳴き声と共に翻訳が表示される。

春菜「それにしてもなんでカピバラの頭の中身、全部移しちゃったんです?」

スマートフォンに映るデフォルメされたカピバラをじっと見つめる春菜。

リン「いや、最初は生首のまま『製作室』に置いてたんだけどさ…」

春菜「置いてたんだけど……?」

リン「朝起きたら私の研究用のメー君の友達に囲まれててピンチだったからハンテーンの
   メモリーを全部PCに移動してスマートフォンで呼び出せる様にしてみたんだ」

春菜「メー君の友達ってことは害はないんじゃない?」

リン「…そう思う?」

春菜「…?」

リン「最近、イワシ型のロボットが街で暴れてるって話聞いたことあるでしょ?」

春菜「…ありますねぇ」

リン「……も、もし…もしも戦うことがあったらサンプルが欲しいなぁ……?」

春菜「…もっとメー君の友達が世界中にもっと増えないでしょうかね?」

リン「…これは地上のカース浄化に貢献してるだけだよね」

春菜「…もちろんですよ♪」

私と春菜の間で契約が成立した瞬間だった。

リン「……話逸れたね、そのイワシ型のロボットなんだけど、カースで汚染された個体が居るみたいなんだ」

春菜「…まさかメー君を使って私の眼鏡もパワーアップ出来るんじゃ……!」

春菜「マスク・ド・メガネ with メー君!?」

リン「…いや、そっちの実験もしたいんだけど今はそうじゃなくて……」

春菜、眼鏡が関わると恐ろしく脳の回転早くなるなぁ…。

リン「無機物にもカースが干渉出来るってことは春菜の言うとおりメー君たちも例外じゃないみたいで……」

春菜「ですよね、ですよねっ!」

リン「ハンテーンをそのまま『研究所』に置いてたら眼鏡のカースに半ばズブズブって……」

あの時のハンテーンの首の絶望に満ちた表情は忘れられない。頭だけになった時以来だろうか。

リン「慌てて救出したから平気だったんだけど…」

『はんてーん!』(あのジワジワと自我が削られていく感覚は忘れられない)

リン「ボディも大破してたし首だけじゃ活動停止しちゃうからデータ化したんだ」

『てーん!』(その点は感謝してるよ)

そう言ってデフォルメされたカピバラは背中を向けてスマートフォンの画面から去っていく。

春菜「居なくなっちゃいましたけど」

春菜はカピバラが画面から消えたのを見て不思議そうな顔をしている。

リン「…ハンテーンの思考とかは何も弄ってないからね」

リン「それにハンテーンがこれ以上のナビゲートは不要だって思ったんじゃない?」

ハンテーンをデータ化する時に気づいたが、ハンテーンの意思には元から何の枷も施されていなかった。
ならば製作者の意思を無視する訳にはいかない。
私が枷を追加してしまうことは製作者への侮辱にほかならないからだ。

リン「だから今回その不思議なお店に行くのもハンテーンの新しいボディの製作ヒントになればいいなって……」

まぁ本当の目的は別にあるのだが。

春菜「わぁ!『アンティークショップ ヘルメス』このお店じゃないですか?」

うん、聞いてないね。
カランとベルの音を鳴らして春菜はヘルメスに入っていく。
春菜に続いてお店に入っていくことにする。

リン「…これは…」

驚いた。
ヘルメスに一歩足を踏み入れた瞬間気づく。

この感覚。
この『違和感』私は知っている。
清潔に保たれ、洋風な雰囲気が漂う店内で感じる『違和感』。
これの『違和感』は一体なんだ。

春菜「お洒落なお店ですねぇ」

一足先に入った春菜は燭台付きの鏡に見入っている。


雪乃「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」

ひと目で分かるような気品を漂わせた女の人が店の奥からゆったりと歩いてくる。

リン「いえ、今日は……」

今更になって気づく。
気付かされる。
このお店の『違和感』の正体に。

リン『魔力……?』

確証は無い。
けれど似ている。
ボールペン型の杖の持ち主と、その師匠、イヴ・サンタクロースから感じたものと。
このお店のアンティークを見た時に感じたものと懐にある魔法のビー玉を使う時に感じるもの。

雪乃「…普通のお客様ではないみたいですね?」

どちらにせよ試してみれば分かることだ。

リン「これを」

私は懐から殆ど中身を使い果たしてしまった巾着を取り出し、彼女に手渡す。

彼女は巾着の紐を緩め、中を見る。

雪乃「…なるほど、面白いものをお持ちのようですね、こちらへどうぞ」

彼女は店の奥、大きなテーブルを指差す。

リン「うん、ありがとう」

リン「春菜、行くよ?」



春菜「凄いですよ!これ、お皿の中で馬がくるくる走り回ってますよ!」

リン「うわっ、どうなってるのこれ!?」

ただの模様かと思っていた一頭の馬のシルエット。
しかし、皿の縁に沿ってシルエットが駆けていく。

雪乃「私の作った少し不思議なお皿です♪」

雪乃「ふふ、楽しんで頂けてるみたいで嬉しいですわ」

リン「…一体どうなってるんだか全く分からないよ」

さっきからワクワクが止まらない。

雪乃「自己紹介が遅れましたね、私がアンティークショップ『ヘルメス』、店長の相原雪乃ですわ」

春菜「上条春菜です、とりあえず眼鏡いかがですかっ!」

雪乃「め、眼鏡……?」

リン「…春菜、雪乃さんを困らせない」

リン「私は…しぶ…やっぱりリンでいいです…」

私、苗字なんて滅多なことじゃ使わないしなぁ。

そんなことよりこの皿の秘密や、雪乃さんについて、聞きたいことは山ほどあった。
雪乃さんはビー玉を天井に翳しては別の色のビー玉を摘んで同じ事を繰り返しいる。

雪乃「これは……魔力が完全に密封されてますね…面白いマジックアイテムですわ♪」

リン「…魔法のビー玉色ごとに別の魔法が込めてあります」

リン「一度開放すると無色透明のただのガラス玉に戻っちゃうんですけど…」

雪乃「限りなく錬金術寄りの魔法ですね、付与の力の発展形なのでしょうか?」

リン「…錬金術…?」

魔法や魔術……あと眼鏡があるのだから今更驚かないけど…。
……いや、ほんと、眼鏡があるからなぁ……。
研究しても未だに全然分からないし。

雪乃「…失礼しました、少し夢中になってしまいましたわ」

リン「錬金術師さんなんだね?」

雪乃「えぇ、ここにある不思議な品物全て私の作品ですわ」

リン「…見つけた」

春菜「錬金術師が作る究極の眼鏡……!」

違う、そうじゃない。

リン「春菜、ステイ」

春菜「きゅうん……って私犬じゃないですよっ!?」

リン「知り合いへのお土産にしようと思ってるんだけど魔力と相性の良い装飾品とかってある?」

待ってましたとばかりに雪乃さんが微笑む。

雪乃「魔力と仰ってるということは…」

リン「うん、魔法使い、今ちょっと出払ってるみたいだけど便利だから
   この魔法のビー玉を追加で貰うんだけど手ぶらじゃなんだなと思って」

雪乃「このマジックアイテムの製作者なら面白いものが使えそうですわね♪」

リン「…面白いもの…?」

そう言って彼女は棚の上に飾ってあったものから装飾の一切無い銀の指輪を取り出す。

雪乃「この指輪は魔力を持つ装着者の最も得意とする力が強化されます」

雪乃「このマジックアイテムの製作者なら一体何が強化されるんだか興味は無いですか?」

リン「…これ、貰おうかな?」

これは面白そうだ。

雪乃「ふふ、お買い上げ有難う御座います♪」




雪乃「とても有意義な時間でしたわ」

リン「錬金術の話、面白かった」

雪乃「次いらっしゃる時はご連絡頂ければお茶菓子を用意しておきますわ」

雪乃「ゆっくりお話しましょう♪」

リン「うん」

春菜「うぅ、何の話してたんだかちんぷんかんぷんなんですけど……」

リン「春菜、帰ったらメー君とマスク・ド・メガネの強化実験しようか?」

春菜「…ふふふ、来てしまいましたか…私の時代!いえ、眼鏡の時代!」

……春菜、切り替え早いね。

――その頃の裕美

裕美「一番得意な魔法で行くよっ!」

裕美は足元に転がっていた瓦礫から一欠片摘み上げると翼竜目掛けて放る。

『元ある形に戻れ! 』

すると翼竜の上空で裕美が放った欠片を中心に辺り周辺から瓦礫の粒が、塊が見る見るうちに集まる。

裕美「細かい欠片は無視でいいから重くて硬いのを中心に…!」

翼竜の上空には荒削りではあるが中小サイズのビルが出来上がっていた。

――


一体裕美の最も得意とし、強化される力とは一体何なのか!

終わりです。

錬金術師来たらいいなー!
来たらいいなー!って思ってたら書いてくれたので嬉しい。
凛ちゃんが歓喜して飛びつきそうとか言った人、当たり前のように飛びつきました。
あと裕美ちゃんが斜め上の方向で強化されそうです。

がむしゃらに書いてたらもうこんな時間
よし、投下してすっきりしてから寝よう

直接名前が出ているわけでは在りませんが、実質リンちゃんと肇ちゃんをお借りしています。
時系列は「嘘つきと本音」開始直後くらいです。


――海皇宮。

サヤ「ヨリコ様ぁ、ただいま戻りましたぁ」

ヨリコ「ああ、いい所に帰ってきてくれましたサヤ」

サヤが帰還報告の為に海皇の自室を訪れると、携帯端末を片手にヨリコが出迎えた。

サヤ「どうかしたんですかぁ?」

ヨリコ「ええ。帰ってきて早々ですが、至急サヤに頼みたい仕事があるのです」

携帯端末を手放す事無く、ヨリコは少し興奮した面持ちで続ける。

ヨリコ「少し私用で地上へ行くので、護衛をお願いしたいのです。留守中の事は、参謀達に任せてあります」

サヤ「はぁ……」

ヨリコ「では、お願いしますね」

言うが速いか、ヨリコはテーブルの上にいくつか置いてある小箱の内一つを引っつかんで部屋を出て行った。

サヤ「……はぁ、まぁた地上の美術品ですか?」

足早についていきながら、半ば呆れ顔でサヤは尋ねる。

ヨリコ「はい。前々から目をつけていた品が、とうとうオークションに出品されるという情報があったのです」

海皇ヨリコは最近、地上の美術品に凝っている。最早部屋を埋め尽くさんレベルで。

持ってきた小箱の中身は、大方、あの傭兵への報酬と同じ大真珠だろう。

地上の通貨に換金して、オークションの軍資金にするつもりらしい。

ヨリコ「前回に出品された時は惜しくも手に入らなかったので、今度こそは……」

サヤ「……うふっ」

ヨリコ「……どうかしましたか?」

サヤ「いいえぇ?」

いつものヨリコからは想像もつかない、無邪気な表情。

こういう時ばかりは、「真面目で心優しい海皇」から、「年頃の女の子ヨリコ」に戻るのだ。

そのギャップに、思わずサヤは吹き出してしまった。

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地上。

質屋から大量の札束入りトランクケースを引きずって出てきたのは、ヨリコだった。

しかしいつもの海皇としての正装ではない。地上人のファッションを研究し、完全に溶け込んでいる。

それは隣を歩くサヤも同様で、今の二人は完全に地上人古澤頼子と松原沙耶となっていた。

ヨリコ「さあ、急ぎましょうサヤ。オークションが始まってしまいます」

サヤ「まだ一時間ありますよぉ。っていうかぁ、お荷物ならサヤがお持ちしますよぉ?」

ヨリコ「いえ、護衛を頼んだのは私のワガママです。このくらいは自分でしないと」

さっきからそう言って聞かないヨリコは、とうとうオークション会場までトランクケースを放さなかった。

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進行『さあこちらの品、十万からどうぞ!』

モブ達「十一万!」「十一万五千!」「十二万!」

ヨリコ「十五万!」 オォー

モブ富豪「……三十万!」 オオオー!?

ヨリコ「なっ……く、四十万!」

モブ達「四十一万!」「四十五万!」「五十万!」

モブ富豪「……六十万!」 ウオオオオオ!!

ヨリコ「むむ……」

サヤ「ヨリコ様ぁ、諦めませんか?」

ヨリコ「なんの! 八十万!」 ザワザワザワザワ

モブ達「……」「……」「八十……五万!」

モブ富豪「……ふん、百万!」 ウワアアアアアア!!!

ヨリコ「ぐ、うううう……二百万!」 オオオオオオオッッ!!!

モブ富豪「なにぃ!? ……三百万!」 オ、オオオ・・・

ヨリコ「四百万!」 ・・・・・・

モブ富豪「五百万!」 ・・・・・・ゴクリ

ヨリコ「…………」 ・・・・・・オ?

進行『五百万! ……ありませんか? ありませんか?』

モブ富豪「ふん……勢いに任せて危うく原価以上の額で買わされる所だっt」

ヨリコ「七百二十万!!」 ・・・エッ?

モブ富豪「なっ、なにぃぃぃ!?」

進行『……………………はい、105番の方、七百二十万で落札です! おめでとうございます!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・

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サヤ「……ヨリコ様ぁ、やっぱり大損ですよぉ? ちょっと周りから聞こえたんですけどそのお皿、
  よくても五百万チョイの価値だって……」

オークション会場からの帰り道、戦利品が入った桐箱を大事そうに抱えるヨリコにサヤが苦言を呈する。

ヨリコ「損とか得とかではありません。私はこの絵皿が欲しかったのですから」

しかし、目当ての物を手に入れたヨリコにとって、その忠告は最早無意味であった。

サヤ「あんなにあった地上のお金も、今や七万六千五百円……」

ヨリコ「私にとってはそれほどの価値があったのですよ。ん、少し休憩しましょうか」

そう言ってヨリコは公園内のベンチに歩み寄る。ベンチには既に先客がいるようだ。

ヨリコ「お隣、失礼してもよろしいです……か……」

カイ「あ、はい、大丈夫で……す……」

サヤ「もう、ちょっとヨリコ様ぁ。ごめんなさぁい、ご迷惑……を……」

三人がその場で凍りついた。目の前にいるのは、本来、こんな場所で会うはずのない人物。

ヨリコ・サヤ「「カイ!?」」

カイ「ヨリコ様!? サヤ!?」

ヨリコ「ど、ど、どうしてここに……」

カイ「い、いや、ヨリコ様こそ……」

サヤ「はぁ……美術品オークションの帰りなのぉ」

サヤの言葉を聞いたカイは、ふとヨリコが抱える荷物を見やる。

カイ「ああ……あはは、相変わらずお好きなんですね、ヨリコ様」

昔の事を思い出してか、思わず吹き出してしまうカイ。

ヨリコ「ふふ……ええ、今日はいい物が手に入りました」

つられてヨリコも口元を押さえてクスッと笑う。

サヤ「……で、カイはどぉして?」

カイ「あ、うん……ちょっと肌乾いてきちゃって……今友達が塩探してくれてて……」

言われてみれば、カイの表情は少しばかり陰っているように見える。

ヨリコ「いけない……サヤ、私の海水の予備を早く!」

サヤ「えっ、でもカイって今敵……」

ヨリコ「いいから早く!」

サヤ「はっ、はい!」

サヤから海水入りの小瓶を受け取ったヨリコは、それをカイの頭上で開封した。

ヨリコ「……カイ、平気ですか?」

やがてカイの顔に精気が戻り、ヨリコもよく知るカイの表情が戻ってきた。

カイ「あ、ありがとうございますヨリコ様。あたしなんかの為にわざわざ予備を……」

ヨリコ「袂を分かったとしても、苦しむ同族を放ってはおけません」

カイ「ヨリコ様……」

サヤ「…………」

少しの沈黙が三人の間を支配した。

亜季「カイー! 塩を分けてもらえたでありますよー!」

『キンキンキン!』

星花「お水もありますわ!」

ストラディバリ『レディ』

カイ「あ、皆……ありがと。でももう大丈夫になっちゃった」

塩と水を持ってきた仲間たちは、ケロッとしているカイと見知らぬ少女二人を交互に見比べた。

ヨリコ「カイのお仲間の方ですね。私、海底都市の指導者をしております、海皇ヨリコと申します」

亜季「……へ?」

うやうやしくお辞儀をするヨリコに、亜季は目を丸くした。一方、

星花「これはご丁寧に。わたくしは涼宮星花と申します。こちらはストラディバリ」

ストラディバリ『レディ』

星花とストラディバリは丁寧に挨拶を返した。

亜季「いや、あの、海皇って敵の、あれ? え? こんなフレンドリーなんでありますか?」

サヤ「ヨリコ様とカイは仲が良かったから。あ、親衛隊のサヤでぇす。相棒のペラちゃん」

『キリキリキリキリ』

空中を泳ぐ鉄のアカエイを指差しながら、サヤがウインクしてみせる。

亜季「あ、えっと、大和亜季です。上を飛んでるのは相棒のマイシスターであります」

互いに自己紹介が終わったところで、ヨリコが静かに切り出した。

ヨリコ「……カイ、やはりこちらに戻ってくる気はありませんか?」

カイ「……ヨリコ様が、地上侵攻を取りやめて下さるなら、喜んで」

それを聞いて、ヨリコは悲しそうに首を振る。

ヨリコ「……残念ですが、それは出来ません」

カイ「……何故……ですか……?」

ヨリコ「何故かは私にも分かりません……ですが、どうあってもそれはならないのです」

亜季「…………」

星花「…………」

サヤ「…………」

『…………』

『…………』

ヴン・・・

ストラディバリ『…………』

二人以外は、余計な口出しをするまいと、その様子を黙って見守っている。

カイ「……分かりました。なら……」

カイの言葉が、長い沈黙を切り裂いた。

カイ「改めて宣言します。ヨリコ様がお考えを改めて下さるまで、あたしは刺客を叩き続けます」

ヨリコ「……そうですか。……残念です、カイ。もう会えないかも知れないのですね……」

カイ「あたしも……残念です」

ヨリコ「…………」

カイ「…………」

再び、長い沈黙が訪れた。

ストラディバリ『…………』

ヴン・・・

『…………』

『…………』

サヤ「…………」

星花「…………」

??「あば?」

亜季「……………………ん? あば……?」

誰だ今の、と言わんばかりの勢いで全員が振り返る。

??「あっばー!」

星花「きゃあ!?」

サヤ「ち、地上の生き物ぉ!?」

現れたのは、宇宙レベル犯罪者、ヘレンによって送り込まれた怪人、アバクーゾだった。

アバクーゾ「あばくぞー!」

ヨリコ「…………可愛い」

星花「確かに……撫でてもよろしいですか?」

言いながら恐る恐る頭を撫でる星花。と、次の瞬間。

星花「たまには野宿でなく、ふかふかのベッドで眠りたいですわー! ……あ、あら? わたくしは今何を……?」

アバクーゾの体毛に仕込まれた本音薬が作用に、星花の隠れた本音を引き出したのだ。

カイ「星花……ごめんね」

亜季「私たちが不甲斐ないばかりに……」

ストラディバリ『レディ……』

星花「ち、違いますわ! 今のはきっと何かの間違いで……」

サヤ「なんだか危険そうですね、ヨリコ様、近寄らないように……あら?」

サヤが手で制した先には、既にヨリコの姿は無かった。

ヨリコ「し、失礼しますね……」

ヨリコは既にアバクーゾの頭を撫でる体勢に入っていた。

サヤ「よ、ヨリコ様ぁ!?」

サヤの叫びもむなしく、ヨリコはわしゃっとアバクーゾの頭を撫でた。そして、




ヨリコ「地上侵攻だなんて……本当はしたくない……!」



カイ「え……?」

ヨリコの口から、信じられない言葉が飛び出した。

サヤ「今の……は……?」

星花「もし、あれが撫でて本音を吐露してしまう生物だとすれば……」

亜季「今のが……海皇殿の本音……?」

みな、呆然と立ち尽くす。

しかし、一番それを信じられないのは、他ならぬヨリコ自身だった。

ヨリコ「……今の……言葉が……私の、本音……? 嘘……でしょう?」

アバクーゾ「あっばー♪」

この事態を引き起こした当人(獣?)は、空気を読まずに愉快そうな声を上げてその場を去る。

ヨリコ「…………サヤ、帰りましょう」

しばらく黙って震えていたヨリコだったが、突然気を取り直し、きびすを返した。

サヤ「あっ、は、はい! おいで、ペラちゃん」

『キリキリ』

カイ「よ、ヨリコ様! 待っ……」

カイの制止の言葉も聞かず、ヨリコ、サヤ、ペラは、目の前に出現した水柱の中へ姿を消した。

カイ「ヨリコ……様……」

亜季「カイ…………その、上手く言えませんが……私たちがついているであります」

『キィン……』

星花「辛いのであれば、いつでも胸をお貸ししますわ。ね?」

ヴーン・・・

ストラディバリ「……レディ」

カイ「みんな………………ありがとぉ……うっ、うぐっ……ぐずっ……」

その日、カイは泣き疲れて眠るまで、ずっと星花の胸の中で泣きじゃくっていた。

かつて憧れた相手との、あまりに辛い別れを、押し殺すかのように。

余談ではあるが、あのアバクーゾはこの日以降、鬼の孫娘や地底のテクノロジスト等を筆頭に、加速度的に被害を広げていったという。

続く

・イベント追加情報
アバクーゾの本音薬により、レヴィアタンのヨリコへの催眠が少し揺らぎました?

以上です
やりたいこと詰め込んだらこうなった、後悔はしていない

あと最初に言い忘れたのでここで
雪乃さん穂乃香さんリンちゃんお三方乙でした

みやびぃと月宮博関連でちょっと投下

設定お借りしてます


博士「(ん……あの娘……)」

龍崎博士は日用品の買い出しに街へと出てきていた。
目的を果たすために方々を回っていたところ、ふと対面から歩いてくる一人の少女が目についた。

後になって思い返してみると、何か感じるものがあったのだと言えるかも知れない。
だが、その時は本当に偶然目に留まっただけだった。

博士はすれ違いざまにちらと横目で少女を見る。
するとその顔に驚愕の色が浮かんだ。
……正確には、彼女が身に着けていた『ヘッドフォン』を見て。

博士「き、君! そのヘッドフォンは、一体!?」

「えっ!?」

往来のど真ん中で、少女の肩を掴み問いただす。
普段は割と落ち着いた振る舞いを見せる博士だが、今は周囲の目を気にする余裕もない程に冷静さを欠いていた。

博士「この刻印は……月宮博士の……」

彼の興奮の原因は、少女の身に着けたヘッドフォンに、行方が知れなくなって久しい知人の『証』を見出したためだった。

「(見紛う筈もない……これは間違いなく彼女の制作物だ)」

龍崎博士と、彼がこのヘッドフォンを制作したと考える人物──月宮博士は、かつては科学者として共に切磋琢磨してきた仲であった。
月宮博士と短くない時間を過ごしてきた龍崎博士は、彼女が自分の気に入った制作物に特別な印を施すことを知っていた。
そして、その印がこのヘッドフォンにも刻まれているのを見つけたのだった。

博士「(しかしなぜ、今になって彼女に由来する物が出てきた……?)」

月宮博士が謎の失踪を遂げて以来、龍崎博士はあらゆる手段を尽くしてその行方を調べたが、一切の手掛かりは見つからなかった。
警察や関係機関も捜索を打ち切り、高名な科学者であった彼女も世間からその存在が忘れられて久しい。
しかし長い年月を経て、降って湧いたように彼女の存在を伝える品とその所有者が現れたのはどういう事なのか。


「ちょっ、ちょっと! おじさん、なんなの!?」

少女の拒絶の反応で我に返る。
周囲を行く人々も怪訝そうな顔を向けている。
博士は、無思慮な行動を取ってしまったと少し後悔した。

博士「あ……す、すまない! 驚かせてしまったね」

見ず知らずの少女に掴みかかるという、国家権力の世話になりかねない行為だったが、
長年探し続けてきた知人の行方を知れるかもしれない機会を逃す訳にはいかなかったのだ。

博士「私は、こういう者だ」

博士は白衣の内ポケットから名刺を取り出すと、それを目の前の少女に渡した。
受け取った少女は訝しむような目で名刺と博士の顔を交互に見ている。

博士「君は……"月宮博士"という人を……知ってはいないかい?」

博士は努めて冷静に、核心を突く質問を突きつける。
目の前の少女が月宮博士の失踪に関わっているとすれば、突然の問いに何かしらのボロを出すはずだ。

「っ!!」

質問を受けた少女は驚いたような、あるいは安堵したかのような複雑な表情を見せた。
博士の読み通り、何某かの情報を持っているとみて間違いは無さそうだ。
しかし、次にその口から出た言葉は、博士の予想の範疇を大きく飛び出たものだった。


「おじさん、ママの事知ってるの?」

博士「ま、ママぁ!?」

予想外の言葉に思わず素っ頓狂な声を上げる。

月宮博士に子供が居たなどという話は聞いたことが無い。
となれば、失踪中に出来た子供という線が強いが、それにしては甚だ大きすぎる。

博士「ママというのは……一体……?」

「月宮博士は、みやびぃのママなの!」

博士「……彼女は、今何処に?」

「おじさん……ママに会いたいの?」

少女が月宮博士を『ママ』と呼ぶことも気になるが、まずは彼女の所在を確かめる事の方が先決だ。

「──どう思う? ……うん……わかった」

博士の言葉を受けた自らをみやびぃと呼ぶ少女は、ヘッドフォンに手をやり誰かと話をしているようだった。
やがてそれが終わると、博士に向き直り口を開いた。

「ママの所へ案内するから、ついてきて」


月宮博士の居場所へと案内されている間、雅から(少女は月宮雅と名乗った)事の顛末を聞かされた龍崎博士は、
あまりの出来事に言葉を失ってしまっていた。

悪逆非道な宇宙人……少女に偽装された殺戮兵器……それを作り出した月宮博士。
あまりにも荒唐無稽な話だったが、月宮博士の失踪に関して辻褄は合っていた。

博士「(宇宙人に連れ去られていたとは……通りで見つからないわけだ)」

月宮博士は、彼女を連れ去った連中──宇宙犯罪組織から逃れる際重傷を負い、以来意識が戻らないという。
共に逃れてきた雅は、月宮博士の生まれ故郷である地球に来れば、
あるいは彼女の目を覚ますことが出来るかもしれないと思い立ちやって来たのだという。

龍崎博士はこの"母親"想いの少女の為にも、そして、月宮博士の友人としても、何とかしてやりたいと思うのだった。



ミヤビ「着いたよぉ」

雅に案内されて辿りついた場所は、住宅地の中にある何の変哲もない公園だった。

博士「(ここが……? 何もないじゃないか)」

ミヤビ「こっちこっち」

雅は躊躇うことなく草木をかきわけ雑木林の中へと入っていく、博士も言われるがままそれについていく。

ミヤビ「うん、誰にも見られてない……準備オッケーだよぉ♪」

雅の言葉が途切れると同時に眩い光に包まれ、博士は強い光量に反射的に目を閉じる。
次に目を開けた時には辺りの景色が一変していた。

博士「ここは……?」

周囲を見渡してみたところ、どうやら建物の中に居るらしい。
壁や天井や床は金属の様な材質で出来ている。

ミヤビ「ここはみやびぃたちが乗ってきた宇宙船『ノーティラス』の中だよぉ」

ミヤビ「これもママが作ったんだ♪」

博士「宇宙船……そうか、なるほど……」

どうやら、先の公園から転送装置の類によって瞬間的に移動してきたらしい。
異星の技術であるならば、理解しがたい現象が起こっても原理はどうであれ得心が行く。

ミヤビ「ママはこっちで寝てるの……みてあげて?」

常に爛漫であった少女が、顔色を曇らせ遠慮がちに言う。
その様子に博士は嫌な予感を募らせる。

博士「ああ……わかったよ」


医務室へと通された龍崎博士は、円筒状の──地球の物で例えるなら、日焼けマシンの様な医療装置の中に横たわる月宮博士と対面した。
少しやつれて見えるが、その面差しは別れた当時より変わっておらず、一目で本人だと分かった。

博士「もう、すっかり諦めていたというのに……」

博士が、誰にともなく呟く。

博士「また……君に会うことができるとは……」

装置の透明なカバーの縁をそっと撫でる。
しかし、中の月宮博士は全く反応しない。

博士「折角会えたというのに……これではな……」

博士は泣き笑いのような表情を浮かべ、自嘲気味に呟く。

ミヤビ「ねえおじさん、ママは、起きられそう?」

雅から尋ねられて我に返る。

月宮博士の意識が戻らないからといって、死んでいるわけではない。
まだ何か打つ手があるかもしれないし、そもそもそれを調べるために呼ばれたのだ。

博士「あ、ああ……診てみよう」


月宮博士の様子を一通り確認してみるも、目立った外傷は見られなかった。
となると、意識が戻らないのは内臓器官や脳の損傷が原因だろうか。

次に、船内のAIから寄越された医療装置の処置の結果に目を通してみる。
しかし、体内の透過写真や心拍数・脈拍数や脳波、血液中の物質等のデータを調べてみても、
適切な治療が施されたのだろう、やはり異常は見られなかった。

博士「身体の方は重傷を負っていたとは思えない程にまで回復しているようだが……」

雅から聞かされていた話から推測していた状況とは大きく異なり、月宮博士の身体は健常者のそれと違わないものだった。
それでも意識が戻らないとなると、もはや原因を特定するのは困難だ。

医学は齧った程度の畑違いだったが、それでも現代医療では手の施しようが無い事が分かった。
そもそも、地球の技術水準を大きく上回る異星の医療技術でさえ匙を投げる事態なのだ。

博士「残念だが、地球の医学で助けることは出来そうにない」

ミヤビ「そんなぁ……」

博士「だが、まだ諦めるには早い」

助けることが出来そうにないというのは、あくまで"医学的に"分析した結果である。
地球には、ともすれば奇跡とも呼べるような現象を起こすことの出来る『能力者』が大勢存在している。
彼らの中には、あるいは彼女の意識を呼び覚ます能力を持った者も居るかもしれない。


博士「私の知り合いに連絡してみよう」

ミヤビ「知り合い……?」

博士「ああ、科学では解明できない事象を引き起こす者達だ」

博士「彼らなら、もしかすると月宮博士を助ける事が出来るかもしれない」

ミヤビ「本当に!?」

雅が思わず顔を綻ばせるが、博士はすぐにそれを否定する。

博士「しかし、可能性があるというだけだ……上手くいくかはわからない」

ミヤビ「うぅ……」

落胆する雅の様子を気にしないようにしながら、博士は言葉を続ける。

博士「この宇宙船が秘匿されていたところを見るに、あまり存在を知られたくは無いのだろう?」

博士「彼らに協力を仰ぐとなると、この宇宙船もある程度人の目につくことになるかもしれない」

博士「私からは信頼できる者達だと言っておくが……どうするかは君の判断に委ねるよ」

多くの人間に存在が知られるという事は、情報の漏れるリスクが高まるという事を意味している。
そうなると、宇宙犯罪組織の追手に勘付かれる危険もある……それはなるべく避けたい事態だった。

ミヤビ「……それでも」

博士の言わんとしている事を理解した雅は、俯きながらも意を決したような口調で答える。

ミヤビ「それでもみやびぃは、ママを助けたい!」

ミヤビ「例え上手くいくか分からなくても……悪い奴らに見つかる事になっても……!」

博士「そうか……分かった」

博士「我々が諦めなければ……月宮博士は助かると信じていれば、きっと上手くいくだろう」

雅の覚悟を受け取った博士は、馴染みの能力者組織『プロダクション』へと電話をかけるのだった。

投下終了です
月宮博士の意識が戻らない原因はよく分からないけど、能力者ならなんとかしてくれるんじゃないかな?っていう

書いてる最中に博士っていう文字がゲシュタルト崩壊起こしかけた

イベント「真夏の肝試し大作戦!」
設定お借りして投下します


前回までのあらすじ

『斬っても斬ってもカピバラ』

参考
>>452 (美穂と超ハンテーン)
>>700 (真夏の肝試し大作戦!)


私にとって今回の事はそれは一大事だった。


昼間でも、外が夜みたいに薄暗い事だとか

テレビが付かなくなったとか、

電話が使えなくなったとか、

家の外の道で妖怪が騒いでるらしいだとか、


そんな事よりも重大な事だ。


肇ちゃんが倒れた。


肇「うぅ・・・・・・・あぅ・・・・・・。」

美穂「肇ちゃん・・・・・・。」


急に倒れたから、今はお布団で寝てもらってる。

病院には電話が繋がらないので、

お父さんが近所のお医者さんを呼んでくると言っていた。

たぶん今頃出かける準備をしているところだと思う。


肇「うぅ・・・・・・。」


前にも妖力の枯渇と空腹で倒れた事はあったけど

今回はそうじゃないのは、すぐにわかった。

だって、苦しみ方が全然違う。


美穂「今朝、起きてきた時は何ともなかったのに・・・・・・。」


いや、何ともなかったはずがない。

きっと、前倒れた時みたいに、何でもない顔で無理してたんだ。


肇「うぁ・・・・・・。」

美穂「どうして・・・・・・」


気づいてあげられなかったのかな。



ぴんぽーん


そんな時だ。

玄関の呼び鈴が鳴った。

美穂「・・・・・・・?こんな時にお客さん?」


玄関でお母さん達が話し合っているのが聞こえる。

一体誰だろう?


そんな風に思っていると、足音がつかつかと

私達の居る客間に近づいてきて、

「どうぞ。」

と、お母さんが外からドアを開けた。


スラリと長身の和服を着た男の人が部屋に入ってきた。

知らない人だ。

だけど、すぐに肇ちゃんの関係者なんだなってわかった。

その男の人の頭には長い、曲がりくねった角があったから。


「やれやれ、こんな事になっているだろうとは思っていたよ。」

「美穂さんの父君が、出かけてしまう前に来れて良かった良かった。」

「何しろ、外には妖怪悪霊共がうじゃうじゃ居る。人間が不用意に外に出るのはあまりよくない。」

「まあ、おかげで私がここまで来る道を堂々と歩いていても、誰にも不思議がられる事はなかったのだが。」


美穂「あ、ああの、ど、どちら様ですか?」


「ああ、いや失礼。申し遅れた。」

「はじめまして、こんにちは。美穂さん。」

「私は、肇の父だ。」


その人は肇ちゃんのお父さんだった。


藤原父「娘が世話になっている身でありながら、不躾なお願いで大変恐縮なのだが、」

藤原父「ほんの少しの間だけ、お母君は部屋の外で待っていて頂けないだろうか。」

藤原父「少し、肇と大事な話がしたい。」


その頼み事にお母さんは少しだけ難しい顔をしたけれど、

すぐに了承して、

「美穂。」

と、私にも部屋の外に出るように促した。


藤原父「ああ、いや。美穂さんはそのままで。彼女はきっと知っておきたい話でしょう。」


お母さんはやっぱり難しい顔をして、

少しだけ考えた後に、私の方を見た。

私が頷くと、軽く溜息をついたけれど、黙ってドアを閉めてくれた。

客間の中に居るのは、私と肇ちゃん、そして肇ちゃんのお父さんの3人だけだ。


それを確認して、肇ちゃんのお父さんが話を始める。


藤原父「さて、まずは美穂さんに、肇が倒れた理由から説明しようかな。」


藤原父「原因は今外で起こっている事と、そして刀にある。」

藤原父「『鬼神の七振り』、私の父が作り上げた、妖刀七本。」

藤原父「『小春日和』を持つ美穂さんも知ってのとおり、」

藤原父「この刀達は周囲から負のエネルギーを吸い上げる。」


どうして、この人は私が『小春日和』を持っていることを知っているのだろう。

と言うか、名乗る前から私の名前も知っていた。


藤原父「それについては、肇から何度か便りがあったのでな。」

美穂「えっ、今、私喋ってました!?」

藤原父「すまないが、心の声を聞かせてもらった。」


聞こえちゃうの、これ?


藤原父「聞こうとしてるのではなく、聞こえてしまうものなのだ。」

藤原父「私は肇よりも二倍鬼に近いからな。体質的なものだ。」

藤原父「悪気はまったくないので、許して欲しい。」


そう言われても、心の声まで聞かれてしまうのはなんだかむず痒い。


藤原父「話を続けよう。」

藤原父「今現在、この街は祟り場の影響下に入っていてな。」

美穂「祟り場?」

藤原父「すまない、聞きなれぬ言葉であったな。」

藤原父「何らかの原因で特定地域の妖気が爆発的に増幅して出来る領域でな。」

藤原父「このような人里で、ここまで広範囲に祟り場が出来ることは珍しい事なのだが・・・・・・。」

私達が知らない間に、なんだか外はすごく大変な事になっていたらしい。

藤原父「なんにせよ、おかげで妖気に汚染された負のエネルギーが大気に満ちているのだ。」

藤原父「それが周囲から負のエネルギーを吸う、刀達に良くない・・・・・・。」

藤原父「いや、良すぎる影響を与えてしまうのだ。」

美穂「良すぎる影響ですか?」

そう言えば、今朝からヒヨちゃんはすごく元気な気がする。

カピバラさんと戦った時に、負のエネルギーをたくさん使ちゃったせいで、

最近は少し弱っていたのだけど。


藤原父「例えば『戟王丸』」

藤原父「日本一、キレるこの刀は周囲から常に『怒り』のエネルギーを吸い取っている。」

藤原父「祟り場の影響下ではな、その吸い取る速度が凄まじく速い。」

藤原父「鞘に収めて一週間で溜まる分の怒りが、わずか一日で溜まるほどにな。」

藤原父「負のエネルギーを汚染する妖力の影響でだ。妖刀であるが故の相乗効果と言う奴だな。」

藤原父「浄化の鞘による負のエネルギーの浄化速度などは、もはや焼け石に水であろう。」


淡々と、肇ちゃんのお父さんは話しているが、

つまりそれは、


美穂「刀の感情を制御できない・・・・・・。」

藤原父「そうだ。負の感情を吸いすぎれば、刀に取り付けられた核が暴走してしまう。」

藤原父「まあ、刀が一本であるならばどうにか制御できるだろう。」

藤原父「しかし、肇は、数本の刀を所有している。」

藤原父「祟り場の影響下でこれらの刀、全ての面倒を見切るのははっきり言って不可能に近い。」


藤原父「ならば、肇はどうしたか。」

胸がざわめく。嫌な予感がする。

藤原父「刀に流れるはずの、負のエネルギーを自らが引き受けたのだ。」


美穂「えっ、そんな事したらっ・・・・・・」

今にも叫びそうになったけど、肇ちゃんが傍で眠っている事を思い出して、グッと堪えた。

そんな事してしまえば、どうなってしまうのかまではわからない。でも、すごく無茶しているのはわかった。

藤原父「引き受けているのは妖力に近い負のエネルギーだ、肇にもそれほど悪い影響は与えないよ。」

藤原父「それに、その判断はおおむね正しい。おかげで刀達を暴走させずにすんだ。」

美穂「悪い影響は与えないって言うなら・・・・・・じゃあ、なんで肇ちゃんは倒れたんですか?」

私の知りたかった事にようやく答えが出る。

藤原父「妖力の溜め込みすぎだ。」


藤原父「妖力の枯渇を空腹とするならば、食べすぎて苦しんでいるようなものだな。」

藤原父「極端な子だ、まったく。」

藤原父「さて、美穂さん。ここまで聞いて何か質問はあるかな?」

美穂「・・・・・・。」

美穂「あのっ」

質問と言う訳ではないが、

ただ冷然と話し続けた彼に、私は一言だけ言いたかった。

美穂「肇ちゃんの事、心配じゃ無いんですか・・・・・・?」

美穂「肇ちゃん・・・・・・こんなに苦しんでてっ」

私の言葉に彼は少しだけ驚いた顔をした、

けれどすぐ真面目な顔になって

藤原父「・・・・・・勿論心配だとも。だからここまで駆けつけたんだ。」

そう言ってくれた。


藤原父「もし私が冷然と話している様に見えたなら、それは慌てる必要が無い事を知っていたからだ。」

美穂「えっ?」

藤原父「ちゃんと解決策がある。すぐに良くなるのだ、この症状は。」

美穂「あ、あれ?そうなんですか?!」

もしかしたら、とんちんかんな事を聞いてしまったのかもしれない。

藤原父「けど、そうだな。私にとっては大したこと無い症状に見えていても」

藤原父「知らない美穂さんにとっては一大事だった。そこには気づけなかったな。すまない、謝ろう。」

美穂「い、いえ!わ、私の方こそ、な、なんか失礼な事言っちゃってすみません・・・・・・。」

美穂「あっ!そ、それより解決策があるなら、肇ちゃんを!」

藤原父「そうだな、美穂さんへの説明も終えたし、寝ぼすけを起こすとしよう。」

そう言って、肇ちゃんのお父さんは、

寝ている肇ちゃんのところに近づいて、腰を下ろし、

肇ちゃんの頬をペチペチと叩きながら言った。

藤原父「ほら、起きたまへよ。肇。」

美穂「あ、あの、もう少し優しく起こせませんか?」

藤原父「これでも優しくやっている。」

この人は鬼なんだろうか、あっ、鬼だった。


肇「う、うーん。むにゃ・・・・・・あ、あれ?お父さん?」

藤原父「気がついたか?」

肇「・・・・・・?でも、ここ美穂さんのお家・・・・・・・あ、そっか夢か・・・・・・ふにゃ。」

藤原父「ニ度寝は感心しないぞ。」

そう言って再びぺちぺち頬を叩く。

鬼なのかな、この人。あっ、鬼だ。

肇ちゃんが今度こそ起きる。

肇「えっ・・・・・・嘘?本当にお父さん?でもなんで?」

藤原父「お前が倒れたから、お邪魔させていただいてるのだ。」

肇「あっ・・・・・・そっか。私、妖力を・・・・・・。」

藤原父「溜め込みすぎた妖力を少しだけ叩き出した。」

藤原父「しばらくは大丈夫だろう。」

どうやら、頬を叩いていたのはそのためだったらしい。

淡々と振舞っているけど、ちゃんと肇ちゃんのために行動してくれてるとわかって、安心する。

美穂「肇ちゃん、おはよう。」

肇「あっ・・・・・・えっと、おはようございます、美穂さん。」

そして、ちゃんと返事がかえってきてくれたのが、何より嬉しい。


藤原父「しかし、まったく妖力の貯めすぎで倒れるものなどそうは居ないぞ。」

肇「うっ・・・・・・。」

肇ちゃんがすごくばつの悪そうな顔をした。

私が、肇ちゃんのお父さんの言葉の意味を考えていると、

藤原父「美穂さん、溜め込みすぎた力は使えば良いのだ。」

彼自身から説明してくれた。そっか、心が読めるんだった。

藤原父「何だって消費するのは大して難しいことではない。」

うーん、お金みたいな感覚なのかな?

貯めるのは難しいけれど、使っちゃうのは簡単みたいな?

藤原父「だから普通なら、自分自身が倒れてしまうまで妖力を溜め込むことはまず無いのだ。」


じゃあ、どうして肇ちゃんはそうなってしまったのだろう。

藤原父「一つは、刀達に流れる妖力を引き受けた事で、肇に流れる妖力の供給量が莫大になってしまったこと。」

藤原父「消費するのは簡単だが、急に供給量が膨れ上がると使い切るのは大変だからな。」

お金で例えるなら、

急にお小遣いが十倍になったら何に使っていいのかわからなくなるのと同じ、かな?

うーん、ちょっと違う気もする。

藤原父「まあ、これだけならば、大した問題ではないのだ。」

藤原父「妖力をしっかり使っていれば、倒れるまでの事にはならないだろう。」


藤原父「問題はもう一つ、肇は溜まった妖力を一切使おうとしなかったことだ。」

美穂「えっ?」

藤原父「普段よりも数倍に供給量の増えた妖力を、少しも使おうとしなければ、それは倒れるだろうな。」

肇「お父さんっ・・・・・・。」

知られたくない秘密を知られてしまったみたいに、

肇ちゃんはちょっと怒りながら、言った。

美穂「肇ちゃん、どうして?」

だから、私は肇ちゃんに向き合って、肇ちゃん自身に聞くことにした。

肇「それは・・・その・・・。」

肇ちゃんが目をそらして、言いにくそうにしている。

なんだか珍しい光景で、不謹慎だけど、ちょっと可愛い仕種だと思った。

藤原父「美穂さん達に、迷惑をかけたくなかったのだろう。」

肇「お、お父さんっ!」

なかなか肇ちゃんが理由を話さなかったので、結局、彼が答えを出したのだった。


美穂「迷惑だなんて・・・・・・どうして?」

藤原父「祟り場において、妖術の行使と言うのはな。」

藤原父「我々にとってなかなか、どうしようもなく抗い難い一種の高揚感を生むのだ。」

藤原父「具体的に言えば、感情が昂ぶり、テンションが上がって、色々とやり過ぎてしまう。」

藤原父「そして、それは妖力を使えば使うほどに顕著だ。」

藤原父「どうしても近くに居る人間には、多少の、良くない影響を与えてしまうだろうな。」

肇ちゃんは、妖力を使う事で、私達に危害が及ぶことを気にしていたらしい。


藤原父「だが、かと言って、肇は美穂さん達から離れることも出来なかった。」

藤原父「祟り場と言うのは妖怪にとっては良い場であっても、人間にとっては運気を下げる領域でな。」

藤原父「ああ、今思えばそれも悪かったのかもしれない。肇は一対三で人間に近い側だからな。」

藤原父「とにかく、そう言うわけで美穂さん達にも、どんな危険が及ぶかわからない。」


藤原父「付くべきか離れるべきか迷い、付いて我慢しようと決めて、結果倒れてしまったと言う訳だ。」

美穂「それじゃあ、肇ちゃんが倒れちゃったのは私のせい?」

肇「それは違いますっ!」

私の言葉は、肇ちゃんに強く否定された。


藤原父「そう、肇の言うとおり。美穂さん達のせいではない。」

藤原父「今回の失敗は、肇の判断の誤りに他ならない。」

藤原父「迷惑を掛けたくなくてやった行動で、結果、迷惑を掛けてしまっているのだからな。」

肇「うっ・・・・・・・。」

痛いところを付かれたようだ。

藤原父「そして、このままでは同じ失敗を繰り返し、またすぐに倒れてしまうだろうな。」

藤原父「頑固者のお前はまた、我慢しようとするのだろう。」

肇「うぐっ・・・・・・・。」

しかも図星らしい。

美穂「肇ちゃん、私達の事を思ってくれるのは嬉しいし、」

美穂「それを迷惑だなんて私は思えないけど、でも無理しちゃダメだよ。」

肇「・・・・・・ですが」

それでも、肇ちゃんにも譲れないところはあるみたいだった。


藤原父「まあ、今回の件、肇一人では落とし所を決めるのはなかなか難しいことだ。」

藤原父「祟り場の発生などは、想定外の緊急事態であるしな。」

藤原父「そこで私が、この板挟みの問題を解決するために、急遽駆けつけたのだ。」

肇「解決?お父さんが?」

藤原父「ああ、そうだ。」

つまりは肇ちゃんの事が心配で飛んできてくれたのだろう。

そんな彼が、肇ちゃんを悩ます問題の解決策を話し始めた。


藤原父「まずは、肇の持つ、『鬼神の七振り』だが。」

藤原父「私が預かろう。」

肇「えっ。」

藤原父「いや、お前の使命を奪おうと言う訳ではない。刀の使い手を探すのはお前の役目だ。」

藤原父「だが、何も全ての使い手が見つかるまで無休で探す事も無いだろう。」

藤原父「いい機会だ、少し休め。」


肇「休むって言っても・・・・・・。」

藤原父「発生した祟り場を収束させようと活動している者達が居る。この事体もじきに収まる。」

藤原父「それまでの間だ。」

祟り場が発生している間、肇ちゃんには刀の使い手探しを休暇させるつもりらしい。

藤原父「刀を持っていなければ、刀に流れる妖力をお前が引き受ける必要も無い。」

藤原父「つまり、これで一つ目の問題は解決だ。」


肇「でも、それだとお父さんが。」

藤原父「私が刀の面倒を見切れぬのではと心配しているのか?」

藤原父「なら、それは要らぬ心配だな。伊達に人と鬼の世、半々の道を歩んで来てはおらんつもりだ。」

藤原父「刀達の面倒くらい見切って見せるとも。」

藤原父「それに私はお前の二倍鬼だ。つまりお前の二倍は凄いし、二倍は無茶できるぞ。」

その言葉に、肇ちゃんはムッとした。

また珍しい表情を見れたな。

肇「でも私は、お父さんより一倍半、人としては凄いよ。」

肇ちゃんが対抗して言う。

こんな肇ちゃんが見れるなんて思わなかった。

藤原父「そうだな、だから祟り場での不運の影響も、私はお前の三分の二ですむ。」

言い返す言葉がないのか、肇ちゃんはさらにむぅーっとした。

美穂「ふふっ」

そのやり取りをみて私は思わず笑ってしまった。

それに気づいた肇ちゃんは少しだけ顔を赤らめていた。


藤原父「さて、もう一つの問題の方だが、」

藤原父「刀が無くても、貯めてしまった妖力が無くなる訳ではないし、吐き出さねば同じ事だ。」

藤原父「そこで、」

まさか、また叩き出すのだろうか。

藤原父「いやいや私はそこまで鬼畜ではない。」

藤原父「流石に娘を何度も叩くのは人として心が痛むよ。」

藤原父「だから別の方法、もっと簡単な解決法だ。」


藤原父「肇、外で遊んでくるといい。」

肇「えっ。」

美穂「えっ。」

なんだか想像していたよりすごく簡単な解決法だった。

あ、でも今外は確か、

藤原父「そう、妖怪悪霊どもがうじゃうじゃいる。」

藤原父「しかし、私達にとってはお祭り騒ぎのようなもの。」

藤原父「そんな中で遊ぶのは楽しいぞ。」

藤原父「肇もお祭りは好きだっただろう?”おじいちゃん”がよく連れて行ったものだったな。」

肇「お祭りは確かに好きだけど・・・・・・。」

美穂「えっと遊ぶだけで、肇ちゃんの中に溜まってる妖力がどうにかなるんですか?」

藤原父「ああ、言ってみればストレスの発散のようなものだ。」

藤原父「外の連中がドンちゃん騒ぎしているのも、そのような理由もある。」

藤原父「妖力が漲って仕方ないから、その力を存分に使って楽しんでいる訳だな。」


藤原父「だから肇も、その妖力を使って存分に遊んでくればいい。」

肇「でも、私がこの家を空けてしまったら・・・・・・。」

私達家族に、どんな危険があるのかわからない。

肇ちゃんはそれを心配しているのだろう。


藤原父「ああ、そうそう。遊びに行くのは美穂さんも一緒だぞ。」

美穂「えっ。」

肇「えっ。」

急にお鉢が回ってきた。

美穂「えっと、それはどう言う理由で?」

藤原父「決まっている、『小春日和』も漲って仕方ないはずだからだ。」

そう言えば、肇ちゃんの事で気が回っていなかったけど、

私の刀、ヒヨちゃんも、今日はずっと元気を持て余しているんだった。

確かに、このまま引きこもっていると不味いのかも。


藤原父「安心したまへ。美穂さんが外に出ても、危険はずっと低い。」

藤原父「この環境は『小春日和』にとっては、得意な環境。水を得た魚だ。」

藤原父「故に、肇の妖力の行使で、美穂さんに危険を及ぼす事もない。『小春日和』が守ってくれる。」

藤原父「妖怪悪霊共が襲ってきたとしても、お前達二人ならどうとでもなる。」

藤原父「むしろ襲ってきた妖怪達とも、一緒に遊ぶつもりで楽しめばいい。」


藤原父「この家の事なら心配するな。私が残っているからな。」

藤原父「美穂さんの父君、母君とも、大人同士、親同士、積もる話もある。」

藤原父「肇が世話になっているお礼もしなければならないだろう。」


藤原父「では、そう言うわけだ。」

一通り解決策を話し終えた彼は、立ち上がった。


藤原父「私はここまでの経緯を、美穂さんの父君、母君に説明してくるとしよう。」

藤原父「二人とも、”夏休み”と”夏祭り”。存分に楽しんで来い。」

そう言い残すと、私達の返事も待たずに、部屋に置いていた刀達を持って、客間から出て行った。


肇「な、なんだかすみません・・・・・・勝手な父で。」

美穂「ううん。ちゃんと肇ちゃんの悩みも、私の心配も全部解決してくれたよ。」

美穂「良いお父さんだね。」

肇「そ、そうかな?」

肇ちゃんは、照れたように笑った。


美穂「肇ちゃん、もう体は大丈夫?苦しくはない?」

肇「大丈夫と言うか、体の調子はもうずっといいです。」

肇「ご心配を掛けてしまい、すみません。」

美穂「ううん、いいよ。でも悩みがあったら、これからは相談して欲しいな。」

肇「・・・・・・はい。ありがとうございます、美穂さん。」

肇「ふふっ、なんだか、今日の美穂さんはすごくヒーローって感じですね。」

美穂「えっ、あ、そ、そうかな?」

美穂「けっ、結局、私自身は何にもできてない気がするけど。」

肇「いえ、美穂さんに心配して貰えて、私はすごく嬉しかったですよ。」

美穂「なっ、なんか照れくさいな。」

でも、人の悩みを聞こうとするなんて、今まで出来なかったかも。

ちょっとセイラさんっぽかったかな。あの人に近づけてるなら、ヒーローっぽくなれてる?

そうだったらいいなあ、って思う。


美穂「えっと・・・・・・それじゃあ、肇ちゃんも大丈夫みたいだし。」

美穂「一緒に遊びに?行こっか?」

肇「はい、是非。お供させていただきます。」

薄暗い街の外には、何が待ち受けてるのかわからないけど、

とりあえず楽しんでみようかなって思います。肇ちゃんと一緒に。


おしまい


藤原父

職業:鬼の刀鍛冶の息子。肇の父。
属性:鬼と人のハーフ
能力:妖術、神通力。

藤原肇の父。鬼と人間のハーフ。娘の窮地に駆けつけた。
妖怪と人間の間を生きているためか、誰に対しても遠慮なく要求するタイプ。
たぶん出番このイベントだけ。


◆方針
小日向美穂・藤原肇 → 妖怪が跋扈する街の外に、特に目的もなく遊びに出るみたいです。


肇ちゃんにとってはちょっと悪い要素が重なってた。
そんなピンチにお父さんが襲来してきたお話でした。
『鬼神の七振り』はこのイベントの間だけ、お父さんに預けてます。

乙乙!
二人が外に出てきたか…ヒヒヒ…。
アイデアが湧いてきた。

肝試しを投下。




雪菜「なんだか今日は霧が酷いですねぇ…」

空高く飛ぶ箒から雪菜はふと地上を見下ろす。

そこには立派な唐傘が元気に一本脚で飛び跳ねていた。

……唐傘お化けでしょうか?

雪菜「……はい?」

意味が分からない。

歌鈴「そこまでですっ、唐傘お化けさん!」

突如一人の少女が飛び出してくる。

歌鈴「急々如律令っ!」

彼女の手から放たれた護符が唐傘お化けに張り付き、唐傘お化けは煙のように消えていく。

雪菜「なんだかとっても楽しそうなことしてますねぇ♪」

どうやら辺りで何かイベントをやっているらしい。

私、井村雪菜はそう結論づけた。

雪菜「さっきの巫女の方みたいに妖怪退治のふりをしてみましょうか…?」

でもそれじゃ面白くない気がします。

雪菜「…面白いことを思いつきましたっ♪」

せっかくだから私にしか出来ないことをしましょう♪

私は人目に付かない所に降りて準備を始めます。

雪菜「…雷のワンドはちょっと邪魔ですねぇ」

かつて見た死神の真似をしてロッドを缶バッチに変えてポケットに放り込む。

服装も普段着に変身させます。

よし、準備完了ですね。




先ほど見かけた巫女服の彼女は壁に何かを貼り付けていた。

歌鈴「…これでこの一帯は大丈夫ですね」

…それでは行きますっ♪

雪菜「たっ、助けてくださいっ!」

私は彼女に向かって駆けて行きます。

雪菜「お、お化けがっ…!?」

歌鈴「大丈夫ですかっ!?」

全身を大げさすぎるほど震わせながら彼女に抱きつき、その巫女服の胸に顔を押し付けます。

歌鈴「だ、大丈夫ですよっ!護符の力でこの辺りは浄化されましたから!」

取り乱したふりをする私を彼女は一生懸命慰めます。

雪菜「嘘ですっ、さっきも恐ろしいお化けが……」

歌鈴「もし出てきても私が倒しちゃいますっ!」

雪菜「本当ですか…、信じてもいいんですか……?」

歌鈴「も、もちろんですっ」

雪菜「……そうですかぁ…」

私は顔を押し付けていた彼女の巫女服から顔を離す。

そしてゆっくりと顔を上げる。

『私、とっても怖くってぇ………』

歌鈴「…へ?」


顔を上げた私の顔には何も無かった。

口も、鼻も、目も無く、ただひたすらにまっさらだった。

『もしも……』


『もしもとぉっても怖い化け物が居たらやっつけてくださいねぇ?』

まさしくその姿は『のっぺらぼう』だろう。

歌鈴「……」

雪菜「…あれ?」

雪菜「……あの…?」

歌鈴「……」

反応が無い。手のひらを目の前でひらひらと振ってみる。

歌鈴「はっ!?」

気がついたみたいです。

歌鈴「きゅ、きゅうきゅっ!?」

歌鈴「急急如律令!」

ペタリと何かが額に貼り付けられる。

どうやら退治されたらしいです。パタリと地面に横になります。

雪菜「…ぐわぁー!」

歌鈴「と、とても恐ろしい妖怪でした……」

彼女の足音が遠ざかるのを聞いてから起き上がった方が良さそうです。




どうやら私、このイベント向いてるみたいです。

先ほどの巫女服の方が居なくなった後ゆっくりと立ち上がり、変身を解くと道の先から話し声が聞こえます。

次のターゲットが現れたようです。

今度は缶バッチを箒に変えて霧に紛れて空に舞い上がります。


美穂「…うぅ…なんだか気味が悪いね…」

肇「体の調子自体は良いんですけどね、妖力が溢れてますから」

二人…ですね、二人の服装や顔、言葉遣いをじっくりと観察します。

雪菜「…なんで一人刀を下げてるんでしょう?」

…何かの小道具なんでしょうか?


雪菜「次はあれでいってみましょうかぁ♪」

普段使うにはあまりにもややこしいしあんまり長時間やりたくないですけど今回は無礼講です♪

そうと決まれば、彼女たちを先回りしてそこでスタンバイしましょう♪

美穂「…でも肇ちゃんのお父さん、妖力の発散って言ってたけど何をすればいいんだろうね?」

肇「正確にはお祭り騒ぎですからね、はしゃぎ回れってことだと思います」

美穂「あはは、なるほどって……あれっ…?」

肇「…なっ!?」


美穂?「……」

美穂「わ、私……!?」

美穂?「こんばんは、私、知ってるかな?」

美穂「何を……?」


美穂?『ドッペルゲンガー』

美穂?「私とおんなじ顔を見た人って私を見た後にすぐ死んじゃうんだって?」

…なーんてっ♪

肇「…美穂さん、『小春日和』を…」

美穂「へっ、う、うんっ!?」

彼女がぎらりと光を放つ日本刀を引き抜く。

え……?それ、偽物ですよね…?

美穂「力が漲ってしょうがなかったひなたっ☆」

…はい?

なんだか急にキャラ変わりました?

……もしかして私もこれやる空気なんでしょうか。

彼女に倣って日本刀を引き抜きます。

美穂?「えっ、重い!?この刀、本物!?、ひ、ひなたっ★」


美穂「お次は~!ひなたん☆ドレスチェンジ!」

決めポーズと同時に彼女の衣装が黒を基調としたフリフリのドレスに変わる。

美穂?「えっ!?」

どうなってるんですかそれ。

美穂?「ひ、ひなたん★ドレスチェンジッ!」

目の前の彼女の衣装を再現出来るだけ再現して変身します。

美穂「むむ、どうなってるナリ!?」

むしろ、私が聞きたいです。

突如彼女が半身を引くようにして構える。

美穂「ラブリージャスティス……」

あ、これ死ぬ。

直感的に感じて引きぬいた刀を箒へと変え、それにしがみついて横に思いっきり飛びます。

美穂「ひなたんスターシューターッ!!」

ザンッ!

と物凄い音がしたと思えば私の立っていた場所に鋭い突きで穿たれた穴が空いていました。

美穂?「はいっ!?」

バレないうちに箒を刀へ戻しておきます。

美穂「なかなかやるナリね!」

美穂?「そ、そっちこそなかなかやるひなたっ★」

冷や汗ダクダクです。

美穂「ふふふ、同じ技を撃ってきても私は驚かないひなたっ☆」

無理です。

なんだか色々ヤバい気がします。

美穂?「オ、オリジナルにはない超必殺技を見せるひなたっ★」

……逃げなくちゃ。

美穂?「ラブリージャスティス……」

美穂「『夜桜夜話』とのことを思い出すナリ!」

ごめんなさい、何のことだかさっぱりです。

美穂?「ひなたんサンダー!」

美穂?『…雷よ』ボソッ

私と彼女の間に雷が弾ける。

美穂「ま、眩しいナリッ!?」


美穂?「け、決着は取っといてやるナリ!」

思いっきり捨てゼリフだ。


刀を箒に変えて、私は空へ逃走した。

終わりです。

雪菜さんを死なない程度に不憫な目にあわせてあげてください。

イベント情報

・勘違いした雪菜が変身能力で出会った人を脅かして回ってます

乙乙!

ネバーディスペアしっちゃかめっちゃかじゃないですかやったー!
想像以上のカオスの予感。

遅れながらお二方乙ー

雪菜ちゃん。それは違う本物や

そして、ネバーディスペアーの暴走っぷりwwww
……あれ?加蓮も可笑しくなってる気が…

「うぅっ、ゲホッゲホッ」

父が苦しそうに咳をした。その背中を穂乃香はさすってやる。

背中をさすりながら、穂乃香は思った。

お父さん。

死なないで。

私を一人にしないで。

だが、そんな穂乃香の本音はついぞ口に出せなかった。

「最後に穂乃香、聞いてくれ。お前は…………」

そこで穂乃香の意識は覚醒した。

周囲に人の気配を察したからだ。

穂乃香が視線を向けると、そこには眼鏡をかけた穂乃香と同じくらいの年の女の子がいた。

「あ、人だ!」

その女の子は穂乃香を見ると、穂乃香の元へ駆け寄った。

「どうも、こんにちは!アタシはアコっていうもんです」

アコという名前らしい少女は、元気な声で自己紹介をした。

「は、はぁ……」

困惑気味の穂乃香をよそに、アコは元気な声を出す。

「えぇっと、アタシはこの樹海にあるっていう宝を探してやって来たんやけど、きみ、何処にあるか知らない?」

またか。

穂乃香は内心ため息をついた。

こいつも噂に引かれてやって来たバカの一人というわけか。

どういうわけか、ここにある宝の情報がどこからか漏れていたらしい。

それだけならまだよかった。ただの昔話ですんだのだ。

だが、時代が時代だ。昔話を信じてやって来るものもいるのだろう。

やって来るものも、倍以上に増えた。父の代には人など全然来なかったのに。

それでも、穂乃香が全員切って森から生還者を出さなかったおかげで、最近は人が来なかったのだが、時間の経過とともにまた人が来るようになる。

「いやぁ、本当に苦労したでぇ。だだっ広い森の中を一人であるいて。その上化け物がいるなんて噂もあるし。でもよかった、化け物なんていなかったし、いたのはあんた一人だけ……ん?もしもーし?聞いとんのかー?」

一人で喋るアコに向かっていう。

「宝ならありますよ」

「ほんまに?!」

アコが身を乗り出すように聞いてきた。

「ええ。この洞窟の奥に」

「ほんまに?!」

アコは気が動転しているのか、同じことを二回言った。

「ありがとう、そんじゃ、行ってくるわ」

スキップでもしそうな陽気さで、アコは洞窟に入ろうとした。

だが、それは宝の番人が許さない。

「綾瀬流『力戦奮刀』!」

刀を一本だけ抜いた穂乃香はアコに向かって刀をつき出す。

『疾風怒刀』が高速で移動し敵を切り刻む技なら、「力戦奮刀」は高速で突進し敵を貫く技だ。

この技で、アコの体に風穴を開ける……はずだった。

運良くアコが石を躓き、派手に転んだのだ。

「いったぁ!」

と声をあげるアコの頭上すれすれを、番人の刀が通過する。

「へ?」

アコが上を向くと、そこには次の技の構えをとる穂乃香の姿があった。

「ひ、ひええええええぇ!!!」

アコは、そのまま目にも止まらぬスピードで逃げ去っていった。

「くっ」

穂乃香が視線を向けた先にはもう、アコの姿はなかった。

「………逃がしたか」

穂乃香が敵を取り逃がすなどはじめてだ。

追いかけようか。いや、やめよう。追っている途中で誰かが宝のもとに言ってしまったらと思うと、穂乃香は動くことはできなかった。

穂乃香は刀を鞘に納めると、切り株の上に座り直した。

座って、穂乃香は思案する。

あの子も、この前来た奴等も、今まで来た奴等も、本当に哀れなものだ。

一族のものにも良くわかっていないものを取りに来て死ぬような目に遭うなんて。

そうして、穂乃香は再び眠りについた。

ちなみに、アコがこの誰一人として生きては帰れなかった樹海の、初の生還者となった。

宝 文字通り『とんでもない』お宝。これが世に放たれれば大変なことになるらしい。この宝がなんなのか、もはや綾瀬一族にもわかるものはいない。

綾瀬流剣術 速さに重点をおいた剣術。極めればその速度は音速の域に達するという。

綾瀬一族 代々宝を守ってきた一族。もはや、宝がなにか知るものはいないが、遺伝子に『宝を守る』使命が刻まれているため、だれもこの使命に抗うことはできない。

これで投下終了です。
宝が何なのかは自分でも良くわかりません。あと、アコのしゃべり方に違和感があったらすいません。

乙ー

アコちゃん強運すぎるww

神が残した古代の遺産の一つ封印された系かな?
方舟や初代リヴァイアサンみたいな?
パンドラの箱や聖柩みたいな?

乙乙乙ー

井村さん不憫ながら楽しんでるからいいと思います、楽しめば勝ち組さ!
ひなたん星人も楽しそうで何よりです。危うく小日向ちゃん殺人罪?た、楽しめば勝ち組さ!

一時でもだりーな感情戻って良かったなーと、感情ってマジロック
アバクーゾも今回は口調だけだけど元気やってそうで?何よりです

アコちゃんまじ強運
宝の中身はどんなでも、綾瀬さんがいずれ使命から開放されればいいなと

投下するヨー

前回までのあらすじ

『扉の向こうはffdy』

参考
>>625 (桃華と菲菲)
>>700 (真夏の肝試し大作戦!)


「騒げ騒げ!ケーケッケッケッケ!」

「祭りじゃ!祭りじゃあ!」

騒ぐ妖怪達。


「ユルセナイユルサナイユルサレナイ」

「マタコロサレルナラコロサレルマエニコロス」

蔓延る悪霊。


「おっと、悪霊はっけーん!」

「んじゃ、まあ狩りに行きますか!」

派遣された死神たち。


どこもかしこも暗くて賑やかな祟り場のお祭り会場を、

上空から観察する者が一人。



菲菲「居るネ、居るネ、居るネ、居るネ!!」

菲菲「みんなみんな、ふぇいふぇいの大好物ダヨー!!」

飢えた魔神が一体、迷い込んできていたようだ。


アモンはかつての力を取り戻すために、目覚めてから幾つも霊魂を食べてきた。

しかし、それらは大して力を持たない野良悪魔や野良悪霊で、

力を取り戻すためには、足しにもならない質と量であった。


だから今回、魔神がこの場所にやってきたのは、強い霊力を探してのことだ。

強い霊力を食らえば、より大きな力を得ることができる。

感知した霊力に、ちょっぴり期待して飛んで来てみれば、

そこには期待以上のものがズラリとあった。


居るわ、居るわ、の霊魂の山。

力に漲る妖怪達は、活きのよい新鮮な素材。

呪いを蓄えた悪霊達は、熟成された旨み成分の塊。

死神達に至っては、宮廷料理に匹敵する素晴らしいご馳走だ。


菲菲「まるで満漢全席ダネー!」

目覚めたばかり、力を取り戻したい菲菲にとって、

此度の祟り場は、あまりに都合が良すぎるほど、

彼女のために用意されたとしか思えない至高の料亭であった。


桃華『フェイフェイさん、そんな所で何をしてますの?』


魔神に『強欲』の悪魔から、通信が入る。

『強欲』の証は、元はアモンの力の一端から切り離された物であったらしい。

その縁を通じて、彼女達は互いの居場所を知ることができ、どこに居ても会話する事が出来た。

もっとも、四六時中話し合うほど仲良しと言うほどでもないので、

この通信会話を使用するのは、もっぱら何か事件があった時の連絡手段程度にである。


菲菲「ふぇいふぇい、イイ所見つけたヨー!」

菲菲「力を取り戻すのに打ってつけの場所ダヨー!」

桃華『?』

桃華『ああ、そうでしたわね。』

桃華『たしかタタリ?何でしたかしら?今頃、世間を騒がせてると言う。』

『強欲』の悪魔は、今回の事件にはあまり興味はないらしい。

桃華『ただ財閥としては、わたくし達に都合が悪いことが起きないように願うばかりですわ。』


桃華『それはそうと、フェイフェイさん。』

桃華『その辺りは、死神ちゃまと、お姫様の拠点があるのですわ。』


ところで『強欲』の悪魔、神崎家の位置はしっかり把握している。

”ベルフェゴールの記憶”にあった神崎蘭子の情報からである。

そんな場所にアモンが向かっていたので気になり、連絡した次第だ。


桃華『お姫様の方は別にどうでもいいのですけれど、』

桃華『死神ちゃま・・・・・・魔力管理人であるユズちゃま。こちらは曲者ですのよ。』

菲菲「今代のルシファーと、ベルフェゴールを倒した子だったカナ?」

菲菲「うん、強い事はイイことダヨー!」

魔界は力こそが全て。

そんな魔界で一時期は最強の一角やってた彼女的には、

強いイコール正義である。強ければ何をしても良い。強者こそがルールだ。

ちなみに彼女、魔界時代は調停者をやっていた。

優しい彼女は魔族同士で争うのは良くないと思っており、

小競合いがあれば、顔を出しては争いを止めていたのだ。もちろん力づくで。


桃華『・・・・・・まあ、わたくしも死神ちゃまの実力は認めてますわ。』

桃華『そして、そんな強い死神ちゃまが、フェイフェイさんのいる辺りを徘徊してるかもしれませんのよ。』

桃華『貴女に限って、万が一と言う事は無いとは思いますけれど、』

桃華『一応注意のために、連絡させて頂いたのですわ。』


桃華『・・・・・・。』

桃華『と言うか、よくよく考えたら確実に徘徊してますわよね。』

桃華『悪霊が多く集まっていると言う話ですし、死神ちゃまも当然駆り出されてるはずですわ。』

桃華『・・・・・・。』


菲菲「?」

菲菲「どうしたヨー?」

急に黙り込みはじめた『強欲』の悪魔を、魔神は気にする。


桃華『いえ、この機会に何か・・・・・・と思ったのですけれど』

桃華『やはり、そちらの事はそちらにお任せしますわ。』

どうやら何か悪巧みを考えていたらしい。

桃華『とにかく、そちらで活動されるなら死神ちゃまの動向には十分ご注意くださいな。』

菲菲「心配無用ダヨー!もし襲われても逆にふぇいふぇいが食べちゃうヨー!」

桃華(わたくしとしては、それも困るのですけれど)

計り知れぬ者が魔力管理人の力を手に入れるなど、考えるだけで恐ろしい。


桃華『まあ、貴女が少しでも力を取り戻せる事を祈ってますわ。』

それを最後に、通信はパッタリと止まった。


菲菲「それじゃあ、ふぇいふぇいも力を取り戻すために行動開始ネ!」

目指すは霊力の集まる場所。

薄暗い町の中、一際賑やかで、明かりの灯るあの辺り。

そこには求める馳走がたくさんあるはずだ。

菲菲「見ているだけでお腹が鳴りそうダヨー。」

美味しそうな匂いもする。

早く喰らいたい。



そうして飢えた魔神が、

妖怪たちの祭りの会場に降り立つのだった。



菲菲「うまー!!」


菲菲「コレすごく美味しいネ!!食が進むヨー!」

「へっへっへ、そこまで褒められると作った甲斐があるってもんだぜ。」

菲菲「オデンだったカナ!?本当に美味しいヨ!」

「おかわりもあるぜ。」

「こっちにはヤキソバもあるでよ。」

菲菲「そっちも食べるヨー!」


テンション上げすぎた妖怪たちによる祭り騒ぎ、

なにやら調子に乗って屋台まで引っ張ってきた奴らがいるらしい。

そんな所にのこのこやって来た魔神。

本来の目的も忘れて、屋台巡りをしていた。


菲菲「ん?本来の目的って何だったネ?」

「こっち食材余ってるな」

「せっかくだ、嬢ちゃん、何か料理するかい?」

菲菲「!」


菲菲「だったら、ふぇいふぇいチャーハン作るヨ!!」

かくして妖怪達に、特製魔神炒飯が振舞われることになる。


おしまい


『特製魔神炒飯』

菲菲の作った計り知れない美味さのチャーハン。
とても戦闘力の高いチャーハンで、
この炒飯と戦って打ち勝てる強者で無いと食べる事は許されない。
隠し味はたっぷりハート、オカワリもたくさんあるヨー


◆方針
楊菲菲 … チャーハン作るヨ!

菲菲が襲来してきた話。
菲菲が力取り戻すには都合良すぎる場所だよね。
来ない理由が無い。
だが妙なテンションになって、シリアスにはならない。
でも気が向いたらちょっとくらいはボスっぽいこともしてくれるのかもしれない。

乙ー

フェイフェイwwお祭りww

ちょっと内容被るかもしれませんが投下します

祟り場となった街。

そこを歩いてる少女--海老原菜帆とその少女に憑いてる悪魔ベルゼブブは、異変に反応にしながらも、持っている両手にもってるアイスクリームを交互に舐めていた。

菜帆「なんだな賑やかですね~」

ベル「そうですね~。妖怪がいっぱい現れて、なんか魔界を思い出しちゃいます~」

一人の身体で、交互に喋りながら辺りを見回す。

周りをみれば、人間を驚かそうと妖怪達があっちこっち動き回っている。

魔族と妖怪は違うものだが、なんだか親しみを感じるようだ。

ベル「それにしても何だか久しぶりにやりたくなってきますね~」

菜帆「何がですか~?」

アイスを交互にペロペロ舐めながら菜帆は不思議そうに聞いた。

一方のベルゼブブはなんだかウズウズしたような感じの声で楽しそうに答えた。

ベル「決まってるじゃないですか~?パーティーを開くんですよ~!」

菜帆「パーティーですか~?」

キョトンとしながら、首を傾げた。

ベル「はい!こういう時は美味しい物を用意して、皆で騒ぐのがいいと思いますし~」

菜帆「いいですね~」

結局は何か食べたいだけなのでは、とツッコミたくなるが彼女達は楽しそうに会話をしていた。

『パーティー?お祭りか?宴か?』

『宴か!?宴か!?』

『ヒャッハー!祭りじゃあ!!』

二人の会話を聞いていたのか、周りの妖怪達も騒ぎ始めた。

妖怪はお祭りが大好きだ。もちろん、楽しいからってのもあるが、人に溶け込み堂々と騒げるからってのもある。

だから、パーティーをやるって聞けば、イタズラをそっちのけ、こんなにも集まってくる。

菜帆「みなさん、はしゃいじゃってますね~」

ベル「妖怪はお祭り騒ぎが好きなんですよ~」









???「それってお酒も飲めるかしら?」







ベル「!?」

菜帆「えっ?」

いきなり、自分達の背後から声が聞こえ、慌てて振り向いた。

そこには、いつの間にかワインボトルとグラスを持った女性--柊志乃が立っていた。

気配もせず、足音さえも立てず、まるで何処から湧いて出たかのように現れた彼女はグラスに入ったワインを飲みながら微笑む。

志乃「うふふ、パーティーだからお酒も飲めるわよね?」

ベル「もちろんですよ~(なんなんでしょ~?コレは?)」

菜帆「わ、私はお酒飲めないですけど~。それでもいいでしょうか~?」

志乃「大丈夫よ。ちゃんとジュースも用意しておくわ」

そう言うと、いつの間にか志乃は近くの公園を指差した。

すると、さっきまでなかったはずなのに、お酒の瓶やらジュースやらが沢山おかれていた。

ベル「すごいですね~。なら私達も用意しないと~」

菜帆「はい~~」

志乃がいつの間にか飲み物を用意したのを見て、ベルと菜帆はその公園に入ると、しゃがみこんだ。

ベル「久しぶりに行きますよ~~」

そう言うと菜帆の身体から四つの虫のような異形の腕が生えると、地面に触れ、魔力を地面に注ぎ始める。

ベル「来い!豊穣の晩餐」

すると、公園一体に様々な料理が現れ始めた。

『酒だ!肉だ!!』

『食べ放題?飲み放題?』

『今日は無礼講じゃぁぁあ!!』

志乃「流石ね。さて、周子さんも誘おうかしら」ゴクゴク

ベル「疲れた……」

菜帆「お疲れ様です~。私達も食べません?」

酒と料理が用意され、妖怪達は我先にと公園に入っていく。

さあ、宴の始まりだ。

人も人外も皆、楽しめ。

今宵は無礼講。思う存分楽しもう。

イベント情報追加

ベルちゃんと菜帆と志乃が公園で宴を開いたよ!

お酒も料理もあるよ!


・豊穣晩餐
ベルゼブブの能力の一つ。
自分が食べた事あるものを、地面から植物のように産み出す能力。
余り戦闘に役に立たない上に、こういうお祭り騒ぎのとには役に立つ。
味も全て本物。

以上です。

まさか、途中で電話がかかってくるとは……途中、遅くなってすいません…

志乃とベルちゃんで宴をひらきたかったんや

乙!
タイミングが合ったらふぇいふぇいもそっち行ったヨー

乙乙!

この流れを見てたら、いつの間にか書き上げていたので勢いで投下します。

今回はベルと菜帆と志乃さんをお借りしますね!





「…久しぶりに、心地いいくらいに混沌としてますねぇ♪」

「えぇ、もちろんですよぉ♪こんなに楽しそうなこと、行かないなんて損です♪」

「さぁ、行きましょうか王子様♪……舞踏会が終わるまで、踊り続けるのも一興ですよ………むふ、むふふ♪」


―――とある公園。

霧に包まれた街は冷めることを知らぬように熱狂さを増していた。

そこかしこで妖怪たちが雄叫びを挙げ、悪霊達は己の思いを張り上げ、それらを狩る死神たちの中にさえ自分を抑えきれなくなる者も少なからずいた。

解決に向けてひた走る者、ただ単純にこの状況を楽しむ者、静かに暮らしたいと願う者もこの状況に乗じて自らの欲望を満たそうとする者も居た。

しかし、それら全ては遅かれ早かれ狂乱の宴へと巻き込まれる。

そうして出来上がった、幾つかの『宴会場』。

酒と料理と、歓声と熱気と。

暴食の悪魔と謎の女性が作り上げた公園の宴会場は、特に盛況を極めていた。

「もぐもぐ、みなさん楽しんでますね~」

『よっぽど溜め込んでたみたいですね~、でもこういうのいいと思いません?』

「すごくいいと思いますよ~、んく」

「うふふ…あなたたちも良く食べるわね」

『そういうあなたも、いっぱいのんでますね~…美味しいですか?』

「…飲んでみる?」

「え、遠慮します~…」

『菜帆ちゃんにはまだ早いかもですね~♪』

「ベルちゃんのいじわる~……はむはむ」

「ふふ……あら?」

「ん~?どうかしましたか~?」

他愛のない会話を繰り返しながら過ごしていた公園の宴会場の立役者達であったが、その一人である志乃がとある変化に気づく。

「おいおい、あっちでなんか面白い事してるじゃねーか!」

「お、本当だな!」

「かー!俺もなんか持ってくればよかったぜ!」

周りを見れば、変化に気づいた妖怪達が思い思いの言葉を言っていた。

そんな者達の視線の先、公園に設けられたそこそこ広い小山の上。






―――そこには、一人の人物が舞っていた。






白と黒のフリルが付いたドレスに紅いゴシック調の帽子を深めにかぶり、その下から覗く顔には微笑を浮かべる蒼白色の仮面。

腕全体をすっぽり覆う黒い手袋に包まれた手には純白の剣が握られており、小山を舞台に流れるような剣舞を披露していた。

そうして少し眺めていると、どこからともなく三本の黒い剣が現れる。

それと同時にすっと剣舞が止まる。

観客たちが何が起きるんだと思った矢先―――三本の黒い剣が荒々しく動き始