勇者「魔王捕まえた」(285)

代行

勇者「さてどうしたものか」


 ドバタン! ザッ!


剣士「魔王ッ!」

魔王「ほう、人間か。随分と荒々しい入場だな、扉が壊れたらどうする」

剣士「その時は豪勢な焚火にしてあげるから安心なさい。今は自分の命の心配をすべきね」

魔王「女のくせにずいぶんと勇ましいことだ。我輩の軍勢を退けてここまで来たその実力、気に入ったぞ」

剣士「わたしはあんたのその悪趣味な仮面が気に入らないわ。それも火にくべてあげる」

魔王「一応のこと話し合いの席は設けておいたのだが」

剣士「不要」

魔王「まあ、そうだろうな」

剣士「先に勇者がここに来たはずよ。あの子はどこ?」

魔王「見当はついているのだろう?」

剣士「っ……」チャキ

魔王「いいだろう、許可する。かかってこい」


剣士「ちぇぇぇぇぃやッ!」ジャッ!

魔王「ふっ」ヂィン

剣士(……!?)バックステップ

魔王「どうした、もう終わりか?」

剣士「……さすが、魔王といったところかしら。勇者にも防げないわたしの全力を簡単にいなすなんて」

魔王「……」

剣士「技量は勇者以上……いえ、そんなチャチな籠手で受け流すなんて常識の埒外だわ」


魔王「来ないのか? なら我輩の方から行くぞ」スッ

剣士(――!? 気配が、消えた? 目の前にいるのに!)

魔王「ふ、破ッ!」ズ――ドン!


 バキャァ――!


剣士(ッ――鎧が!)

魔王「それだけで済むと思うか?」

剣士「ぅがふ!」ガク

魔王「"貫拳"、了」


剣士(強い……だめ、意識が)

魔王「ここまで来れたことに対する敬意だ。命までは取らん」

剣士「……!」

魔王「去れ」

剣士「……めるな」

魔王「?」

剣士「舐めるなぁ!」ビッ!

魔王「投剣!?」


 ガッ!


魔王「くっ……」

剣士(浅い……仮面に阻まれた)


 パキ……


剣士(でもまあ、死ぬ前にこのいけすかない仮面野郎の素顔が見れるだけでも良しと――)


 ポロ カラン カラン……


剣士「え……?」

?「……」

剣士「そんな、嘘……」

?「ええと」

剣士「……勇者?」

勇者「……久しぶり」





 title:勇者「魔王捕まえた」




剣士「……で?」

勇者「……」

剣士「どういうことかしら?」

勇者「……仮面の機能で声を変えてたんだ」

剣士「そういうことじゃないでしょ、一体なんであなたが魔王のフリなんか」

勇者「……」


剣士「それに剣はどうしたの」

勇者「ああ、あれか、折れたよ」

剣士「……折れた?」

勇者「魔王城の門番とやり合ったときに」

剣士「そ、それでどうやって城内を進んだのよ?」

勇者「あれ、言ってなかったか? 俺、剣より拳の方が得意なんだよ。
   どうも道具は自分の身体に馴染まない」

剣士「拳の方がって……それでわたしと剣で渡り合ってたっていうの!?」

勇者「いや、剣も得意は得意だよ? でも剣は実際君の方が強いじゃないか」

剣士「……」


剣士「ま、まあいいわ。最初の質問に戻るわよ」

勇者「なんで魔王のフリを、か」

剣士「まさかあなた魔王軍に寝返ったの?」

勇者「そうだと言ったら?」

剣士「ここで殺す」

勇者「物騒だ」

剣士「わたしは並みの覚悟で家を飛び出してきたわけじゃないの。
   たとえ相手があなたでも容赦なく斬るわ」

勇者「君らしい」


勇者「でも、幸か不幸か俺は魔王軍に寝返ったってわけじゃない」

剣士「本当?」

勇者「本当だよ。だからその殺気に満ちた剣を下ろしてほしい」

剣士「……ほっとした」

勇者「それが本心みたいで俺としてもうれしいよ」

剣士「それで?」

勇者「ああ。実は俺、魔王を捕まえたんだ」

剣士「そう……え? 今なんて」

勇者「俺は、魔王を、捕まえることに、成功したんだ」

剣士「……」

剣士「えっ」


<牢屋>


 ギィィィィィ……


勇者「ここだ」

「! ここから出せ!」ドン!

剣士「……」

勇者「こいつが魔王だ」

剣士「……この坊やが?」

魔王「誰が坊やですか!」

剣士「あなただけど」

魔王「撤回しなさい! ぼくはこれでも魔界を統べる魔王なんですよ!」

勇者「だそうだ」


剣士「見たところ十四歳ほどってところかしら。でも魔族は見た目では……」

勇者「いや、こいつは見たまんまだ」

魔王「確かに十四ですが! それでもぼくは魔王です!」

剣士「敬えってことかしら」

魔王「ひれ伏せってことです!」

剣士「威厳ないわね、敬語のせいかしら」

魔王「敬語は癖です! 仕方ないでしょう、そう躾けられてきたんですから!」

剣士「知らないわよ」


剣士「それで、勇者? もしかしてと思うんだけど」

勇者「何だ?」

剣士「この子がかわいそうで殺害を放棄したってこと?」

勇者「確かに可愛いが違うな」

剣士「……そっちの趣味?」

勇者「違うな」

剣士「わたしそういうのはちょっと……」

勇者「違うな」

魔王「そっちの趣味ってなんですか?」

勇者「お前は知らなくていいよ」


勇者「同情もある。でもこいつを捕まえたのは別に理由があるよ」

剣士「聞かせて」

勇者「俺は平和主義者なんだ」

剣士「初耳ね」

勇者「変かな?」

剣士「いいえ。似合わないってだけ」

勇者「まあそうだよな、暗殺技能者だし」

剣士「……?」

勇者「あ、いや、いいんだ」


勇者「ともかく俺は平和主義者だ。無益な殺生は好まない」

剣士「相手は魔王よ?」

勇者「今更魔族一人殺すのにためらいがあるわけじゃないさ。いやこいつの場合あるけど」

魔王「……」

剣士「生け捕りにして帝国に移送するってこと?」

勇者「もっとたくさん殺すことになるのは嫌だってことさ」

剣士「もっとたくさん?」


勇者「いいか、魔王は魔界をまとめる長だ」

剣士「ええ」

勇者「それが突如なくなったらどうなる?」

剣士「魔界はばらばらになるわね」

勇者「それから?」

剣士「魔族の結束がもろくなったところで人間側が見逃すはずないわ。即座に総力戦ね」

勇者「そういうこと」

剣士「総力戦が嫌なわけ? 人間が負けるとでも?」

勇者「事はそう簡単じゃないさ。
   窮鼠猫をかむ、と言うくらいだし、魔界の抵抗はそれはそれは豪華なことになる」

剣士「それでも帝国の騎士軍は負けないわ」

勇者「勝つまでの犠牲はどうなるんだ?」

剣士「それは……」


勇者「俺はさらに先を考える」

剣士「先?」

勇者「敵を失った巨大な国がどうなるのか、さ」

剣士「……」

勇者「帝国は最近になって統一に成功した国だ。
   元は大小様々な国だったものの集合体で、表面上は穏やかだが、軋轢は並大抵のものではなかった。
   酷いもんだぞ? とりこまれた国の末路ってのはな。いや、奴隷とかそういうのはないんだが。
   だが似たようなものだ」

剣士「もし……魔族の根絶に成功してしまったら」

勇者「平和になる。わけじゃない。わかるだろ?
   何かの間違いで百年安泰もあり得ないでもないけど」

剣士「……」


剣士「あなたは、それを防ぐために?」

勇者「そうだな、そういうことになる。
   人間同士で血の浴びせっこはごめんこうむりたい」

剣士「……」

勇者「俺は手の届く範囲でしか物事を動かせない。
   これが身の丈に合わないことだってのはわかる。
   俺は厳密には勇者じゃないし、こう見えて臆病だ
   でもやる」

剣士「勇者じゃない?」

勇者「それはまあ、後々話すよ」


勇者「そういうわけだ。邪魔しないでほしい」

剣士「勇者、わたしは」

勇者「できれば手伝ってほしい」

剣士「OK、その言葉がほしかったのよ」

勇者「……ありがとう」

魔王「勝手に話をまとめないでください!」

剣士「あら」


魔王「ぼくは魔王だ、誰にも邪魔させない! 必ず人間を根絶やしにしてみせます!」

勇者「お前が友好的ならもう言うことなしだったのに、とは思うよ」

魔王「ふざけないでください! 父さんは人間に殺された。兄さんたちもだ!」

勇者「先代魔王はこいつの父親だったそうだ。
   いや厳密には兄たちが魔王の座についたそうだから先代じゃないんだが、すぐに戦で死んでこいつにお鉢が回ってきた」

剣士「そんなに簡単に死ぬもんなの? 魔王でしょう?」

勇者「こちらの王と違って、魔族は長が先陣を切って戦うことが多い。
   勇敢さが王の資質だとかで」

魔王「それを人間どもは利用したんです!」

剣士「利用?」

勇者「単に狙いやすいところに出てきた的に一斉射撃を加えただけだけどな」

魔王「魔族の誇りを汚した!」

勇者「言うな。人間にも人間の戦い方があるんだ」


魔王「この後に及んで言い逃れなんて」

勇者「お前は怒りに我を忘れているのか」

魔王「何を!」

勇者「見えなくなったんだな。あの頃と違って」

魔王「訳のわからないことを言わないでください!」

剣士(何かしら?)


勇者「ともかく、俺はお前を殺す気はないよ」

魔王「ぼくにはあります!」

勇者「止めはしない。だが、できないなら同じことだ」

魔王「この首輪さえなければ……」

剣士「首輪?」

勇者「魔封じだ。こいつ、まだ未発達なせいか、魔術以外にとびぬけた才はなかった。
   だから魔術を封じてやればこうやって閉じ込めておける」

魔王「くっ……」

剣士「なるほどね」

勇者「そういうわけだ、大人しくしてるんだな」


<城内>


勇者「じゃあ、剣士はこの部屋で寝てくれ」

剣士「ありがとう」

勇者「それじゃ、俺は」

剣士「待って」

勇者「ん?」

剣士「ちょっと確認したいんだけど」

勇者「うん」

剣士「わたしたちは仲間よね?」

勇者「相棒だよ」

剣士「わたしを置いて魔王城に乗り込んだのは、なぜ?」

勇者「どう思う?」

剣士「信頼されてなかったって思う」


勇者「信頼」

剣士「大事よ」

勇者「事はもっと単純だな。俺は君に危険な思いをしてほしくなかった。これまでも、これからも」

剣士「それが信頼してないっていうのよ」

勇者「そうかな」

剣士「だいたい、あなたわたしより年下のくせして生意気。もっとお姉さんを頼りなさい」

勇者「これからは存分に頼るよ」

剣士「まったく……」

勇者「おやすみ」

剣士「ええ、おやすみ」


 ガチャ バタン



 コソ……

「……」

「よし。敵は部屋に入りましたわね。とりあえずは一安心ですわ」

「さて、こちらを直接叩くのもいいですが」

「あの人間、隙が全くありません」

「わたしの力では悔しいですが、きっと返り討ちでしょう」

「ならば時間を待って、魔王さまのところへ!」


<牢屋>


魔王「……疲れました」

魔王「もう声もかれちゃいましたし、体当たりしたせいで肩も痛いですし……」

魔王「……ぼくはもうここから出られないんでしょうか」


 ギィィィィィィ……


魔王「……!」

「魔王さま……!」

魔王「メイドさん!」

メイド「お久しぶりです魔王さま!
    わたくし、心から無事を祈っておりましたわ!」


魔王「助けに来てくれたのですか?」

メイド「はい!」

魔王「でも、牢屋の鍵は勇者が……」

メイド「魔王さま、吸血鬼の力を侮ってはいけませんわ。
    こんな牢屋の鍵くらいちょちょいと処理できます」

魔王「吸血鬼の力と鍵開けって関係あるのでしょうか?」

メイド「ふふ、細かいことは気にしてはいけませんわ」

魔王「と、とにかくお願いします!」

「そこまでだ」

メイド「っ……!」

魔王「勇者!」


勇者「鍵開けができるやつがいたのか。これは迂闊だったな」

メイド「なぜあなたがここに!」

勇者「いや、俺が魔王を捕まえてもう五日だ。そろそろ余計なことする奴がいるんじゃないかというただの予想だよ」

メイド「くっ……」

勇者「早いうちに厄介な奴のあぶり出しができて良かった。止めさせてもらおうか」


メイド(どうする……? 相手は魔王さまを降した人間)

メイド(わたくしの力では間違いなく敵わないでしょう)

メイド(ならば)バッ!

勇者「!」


 ガチャン!


メイド「魔王さま、早く外へ!」

勇者「ノーラグで開錠か!」


魔王「おおおおおおおお!」バッ!

勇者「くっ! "崩拳"!」シュッ!

魔王「がふッ!」ガクン

メイド(魔王さま!)

メイド「ですがこのタイミングでわたくしの攻撃はかわせない!」ヒュッ!

勇者(まず――)

「ふっ――!」ブン!


 バキィ!


メイド「きゃああああああ!?」ドサァ

死んだw
メイドオワタw


「大丈夫?」

勇者「助かったよ剣士」

剣士「言ったでしょ、もっと頼りなさいって」

勇者「悪い、忘れてた」

剣士「もう。で、この娘は?」

勇者「この城のメイドらしい。吸血鬼とか言っていたな。
   特技は開錠のようだ」

剣士「厄介ね」

勇者「だな」


勇者「こいつも牢屋に放り込んでおきたいけど」

剣士「開錠が魔術じゃなくて特技なら意味ないわね。殺すか腕折る?」

勇者「気が進まないな」

剣士「そうよね……」

勇者「よし仕方ない」

剣士「どうするの?」

勇者「俺の奴隷にする」

剣士「えっ」

支援


勇者「というのは冗談で」

剣士「驚きと疑問と殺意が同時に湧いてどうしようかと思ったわ」

勇者「四六時中こいつを監視できるようにしようと思う」

剣士「つまり?」

勇者「俺専属のメイドにする」

剣士「ちょっと」

勇者「他に良い手は?」

剣士「ないけど」

勇者「ならいいよな」

剣士「なんだか気にいらないわ」

メイド「うう……」

勇者「目が覚めたか」

上条「じゃあ、最後は尻を出せ!!」

さやか「は、はい・・・」

上条「クンカクンカ」

さやか「きゃあ!!」

上条「クサッ!!」

さやか「え・・・」

上条「お前、ちゃんと、尻拭いてるのか?」

さやか「ギクッ・・・」


メイド「この……」

勇者「諦めた方がいい。この二対一は絶望的だよ」

メイド「う……」

勇者「というわけで、君は今夜から俺の専属メイドだ。よろしく」

メイド「え゛?」

勇者「じゃあ行こうか」

剣士「どこへよ?」

勇者「寝室だよ?」

剣士「な!? 一緒の部屋で寝るっていうの!?」

勇者「そういえばベッド一つしかなかったな」

剣士「寝るときはわたしが見張るから!」

勇者「そうか? じゃあ頼む」

メイド(ええと……)


メイド「そ、そうですわ、魔王さま!」

魔王「」グッタリ

メイド「魔王さまー!?」

勇者「あ、悪い、思わず崩拳ぶちこんだから多分起きないぞ」

剣士「崩拳?」

勇者「すごいパンチ」

剣士「そ、そう……」

勇者「とりあえず魔王は牢屋に放り込んで、じゃあさっさと寝ようか」ガシ

メイド「いやー! 魔王さまー!」ズルズル

     ・
     ・
     ・

上条「じゃあ、最後は尻を出せ!!」

さやか「は、はい・・・」

上条「クンカクンカ」

さやか「きゃあ!!」

上条「クサッ!!」

さやか「え・・・」

上条「お前、ちゃんと、尻拭いてるのか?」

さやか「ギクッ・・・」


<帝国>


騎士軍元帥「陛下、お待たせして申し訳ありません。本日も陛下におかれましては――」

皇帝「元帥か。挨拶はよい」

元帥「は」

皇帝「単刀直入に聞こう。魔界侵攻の具合はどうだ?」

元帥「ありていに申しあげまして……芳しくありません」

皇帝「そうか……。"勇者"からの連絡は?」

元帥「二十日前に途切れたきりです」

皇帝「……」

元帥「もともと勇者計画は失敗を前提としております、どうか気を落とさぬよう」

皇帝「分かっておる」


元帥「ですが、代わりといいますか良い報せがございます」

皇帝「何だ?」

元帥「魔術士計画の土台が整いました。それほどしないうちに実戦投入ができるかと」

皇帝「それはまことか?」

元帥「神に誓って申し上げます。我々は皇帝陛下に輝かしき勝利を献上すると」

皇帝「期待しているぞ」

元帥「は!」


<魔界>


鬼人族長「思うことがある」

鬼人従者「何でしょう?」

鬼人族長「なぜ我らは耐えねばならぬのだろう」

鬼人従者「……」

鬼人族長「魔王さまは確かに大器のお方だ。しかし……」

鬼人従者「族長」

鬼人族長「すまぬ」

鬼人従者「……もしものときは私があなた様を支えましょう」

鬼人族長「……すまぬ」


勇者「おはよう」

メイド「……」ムス

剣士「……」グッタリ

勇者「どうした?」

メイド「……」プイ

剣士「きついわ……」

勇者「よくわからないけど、大変だったんだな」

剣士「この娘、夜通し暴れてたのよ……
   ベッドに縛り付けてもすぐ抜け出しちゃうし、最終的には気絶させたけど」

勇者「ほほう」

メイド「ふんっ」


勇者「まあいいか、朝食を頼む」

メイド「いやですわ」

勇者「魔王がどうなってもいいのか?」

メイド「うぐ……」

勇者「さっさと用意を始めてくれ」

メイド「わかりましたー」ブス


メイド「どうぞ」

勇者「質素だな」

剣士「パンとスープだけ……」

メイド「あなた方にはこれで十分ですわ」

勇者「贅沢は言わないよ」パク

剣士「まあ、仕方ないわね」

勇者「あ、スープは飲まないように」

剣士「何でよ?」

勇者「毒」

メイド「……!」


メイド「な、なんで……」

勇者「本当に入ってたのか」

メイド「え?」

剣士「カマかけたのね」

勇者「いや、変な確信はあったけど、まさか当たるとは」

剣士「残念ね」

メイド「ぐぬぬ……」


     ・
     ・
     ・


剣士「ねえ勇者、思ったんだけれど」

勇者「何だ?」

剣士「わたしたち、実は結構危険なんじゃ」

メイド「今頃気付いたんですの?」ジト

勇者「ここは敵陣の真っただ中なんだぞ」

剣士「……魔王が捕まってることは魔界中に知れ渡ってるの?」

勇者「いいや、この城の中だけで情報は止めてある。
   情報を漏らすようなことがあったら魔王の命はないってな」

剣士「そんなの……」

勇者「まあ、そんなに長くはもたないだろうよ。早々に手を打つ必要がある」

剣士「何かいい手はあるの?」

勇者「いいや」

剣士「え?」


勇者「俺は手の届く範囲でしか物事を動かせない。だから、ここはできることだけやるさ」

剣士「できることって?」

勇者「例えば」

魔族近衛兵「喰らえ!」ジャッ!

勇者「"貫拳"」シュッ!

魔族近衛兵「がっ!」ドサリ

本文「は、反撃しただと!?」

勇者「自分の身を必死に守ることぐらいかな」スッ

剣士「……」ポカン

本文「く、くそ!」バッ!

勇者「"爆拳"!」


     ・
     ・
     ・


剣士「あれから五日……」

剣士「とてもじゃないけど生き延びられる気がしなくなってきたわ……」

剣士「昼間は襲撃に気を張り詰め、夜はメイドが暴れる……」

剣士「……眠い」

勇者「おはよう」

剣士「わたしはまだ寝てたい」

勇者「それがそうもいかなくなってきたみたいだ」

剣士「どういうこと?」


勇者「メイド、説明してやってくれ」

メイド「はぁ、なんでわたくしが……
    ええとですね、簡単に言いますと人間たちが攻めてきましたの」

剣士「騎士軍?」

メイド「本腰を入れてきたわけではなさそうですわ。
    でもやはり帝国の最高軍事力、こちらも相応の用意をしなければ立ち向かえません」

剣士「まさか……」

勇者「いや、俺たちの事がバレたとかそういうことはなさそうだ。ほとんど勘だが」

剣士「そう……あとどれくらいで衝突するの?」

メイド「騎士軍の移動速度からして、危険域に入るまであと二日程でしょうか。
    わたくしたちも迎え撃つ準備をしなくてはなりませんわ」


剣士「どうするの勇者?」

勇者「魔王軍で応戦する」

剣士「魔族があなたの言うことを聞くの?」

勇者「この前の仮面とローブで魔族のふりをすることはできるよ。
   後は魔王の剣でもひっさげて、魔王の右腕とでも称すれば多分」

剣士「わたしも行くわ」

勇者「申し出はうれしいけど、一応魔王と魔王城の番をする人員はほしい」

剣士「そんな」

勇者「剣士。その仕事はもしかしたら戦よりも大事かもしれないんだ」

剣士「……」

勇者「信頼してる」

剣士「……分かったわ」


勇者「メイド」

メイド「なんですの?」

勇者「至急魔王軍の手配を頼む。戦闘力はおいといて集団行動が得意な奴を集めてくれ」

メイド「……仕方ないですわね」

勇者「あと、君も来るんだ」

メイド「は?」

勇者「君も来るんだ」

メイド「ええ!? そんな、わたくしは魔王さまのおそばに」

勇者「それが困るんだ。君が魔王城にいては剣士の苦労が半端ないよ」

メイド「いやですわいやですわ!」

勇者「剣士、ちょっと魔王に崩拳を……」

メイド「行きます! 行かせてください!」

勇者「それでいいよ」


剣士「ねえ勇者」

勇者「何だ?」

剣士「無事帰ってきなさいよ」

勇者「分かってる」

剣士「約束だからね」

勇者「分かってるよ。それじゃ行ってくる」


 ツカツカ ツカツカ……


剣士「……」


<二日後.平原.天幕の前>


メイド「……そろそろですわね」

勇者仮面「うむ」

メイド「あの地平に見えるのが騎士軍でしょうか」

勇仮「どうであろうな」

メイド「……」

勇仮「む、どうしたのだ?」

メイド「そのしゃべり方何とかなりませんの?」ヒソヒソ

勇仮「威厳はあるに越したことはないだろ?」ヒソヒソ

メイド「確かに魔族はそういったものを尊びますが……」ヒソヒソ

勇仮「ならほっといてくれ」ヒソヒソ

メイド「……」


勇仮「さて、今回配置した魔王軍の内訳を教えてほしい」

メイド「……ええと、あなたが所望されたのはとにかく集団行動が得意な魔族でしたわね?」

勇仮「うむ。武勲を焦るような種族では困る」

メイド「ということで獣人のコボルト族がメインとなっております」



コボルト剣士「ワオーン!」

コボルト弓兵「グルル……」

本文「ぅらぁぁぁいセイ! セセセセセイ!」



メイド「と、このように」

勇仮「うむ、よろしい」


勇仮「では指揮官を集めてくれ、作戦を発表するぞ」

メイド「話し合うのではなく?」

勇仮「今までの騎士軍と魔王軍の戦を見てればわかる。魔王軍はろくな戦術を持っておらん」

メイド「……魔族を馬鹿にしますか?」

勇仮「違う。それでも、また圧倒的物量差がありながら互角に戦っている魔族を褒めておるのさ」

メイド「……」

勇仮「ともかくだ、我輩の戦略に従ってもらう必要がある。今回は必ず勝たねばならん」

メイド「なぜ?」

勇仮「信頼を得るためだな」


<天幕>


勇仮「――以上で説明を終わる。何か質問はあるか?」

コボルト第一部隊指揮官「……お前は何者だ?」

勇仮「ぬ、自己紹介はしたはずだが?」

コボルト第一部隊指揮官「新たに魔王さまの右腕として側近となった仮面人、だったか。
                確かに証として魔王さまの剣を帯びている。
                だが、俺はそんなこと今日初めて知ったぞ」

勇仮「なにぶん急な就任だったものでな、各部族への通達が遅れたのだ」

コボルト第一部隊指揮官「……」

勇仮「すまぬとは思う。お主らを軽んじたのではないことだけは信じてほしい」

コボルト第一部隊指揮官「……ふん」


勇仮「他には?」

コボルト第二部隊指揮官「俺からも一つ。先ほどの作戦だが、なぜそんな回りくどい事をする?
                我ら魔族の力をもってすれば簡単に――」

勇仮「簡単に、何だ? 相手はあの騎士軍であるぞ?」

コボルト第二部隊指揮官「だが! 俺たちは小細工は好まぬ!」

勇仮「小細工かどうかは単なる視点の違いでしかない。
   それに相手はあの騎士軍だ。今回敗北すれば立て直すのは難しい。
   我輩らは今は勝たねばならん」

コボルト第二部隊指揮官「……」

勇仮「すまぬがここは魔王さまの名に免じて呑み込んでくれ」


勇仮「他にも質問を受け付けたいところだが、そろそろお出ましのようだな」

メイド「来ました! 騎士軍です!」

勇仮「今回竜族や鬼人族、その他単純に力の強い者たちで軍を構成しなかったのは理由がある」

「理由?」

勇仮「うむ、君たちには可能性がある。ただ単に強力でないゆえの決戦力がな」


     ・
     ・
     ・



 ザワザワ ザワザワ……


メイド「うう、緊張感でピリピリしますわ……」

勇仮「ふははは、睨み合ったままというのはなかなかスリルがあるな!」

メイド(性格……)

メイド「と、ところで、本当に勝算はありますの?」ヒソヒソ

勇仮「あるに決まってるだろ」ヒソヒソ

メイド「言っちゃあなんですが、コボルト達の実力は大したことありませんわよ?
    せいぜい人間二人分といったところです」

勇仮「今回の騎士軍の規模はおおよそ一万二千だったか」

メイド「こちらは半分の六千ですわ」

勇仮「ならぴったしだな」

メイド「……正気ですか?」

勇仮「本気だ」


勇仮「そろそろ頃合いだな」

コボルト伝令兵「騎士軍が前進の構えを見せております」

勇仮「うむ! では指揮官に作戦実行を伝えよ!」


 オオオオオオオオオオオオオオオオオ!



メイド「作戦ってなんですの?」

勇仮「一つずつ解説していこうか」

メイド「はあ……」

勇仮「まず陣形だが」

メイド「はい」

勇仮「騎士軍は見ての通り横陣だ。
   読んで字のごとく横に広い陣だな。最も基本的な陣形だと思う」

メイド「そうですわね。わたくしたちも同じですわ」

勇仮「いいや似ているがちょっと違う」

メイド「え?」


勇仮「よく見てみるといい。何かおかしな点に気付かないか?」

メイド「ええと……右側の方が人数が多いですわね」

勇仮「その通り」

メイド「何か意味ありますの?」

勇仮「これは斜行陣という陣形だよ」

メイド「斜行陣?」

勇仮「その陣形の極意は……まあ見てれば分かる」

本文「ここから先はにわか知識とファンタジー戦術だよ! 信じたら各方面から笑われるから注意してね!
    本文さんとのお約束だよ!」


コボルト指揮官「移動開始ぃぃぃぃ!」

メイド「な、なんですの?」


 ザッザッザッザッザッ……


メイド「え!? 騎士軍がこっちに向かってくるのに、左側に移動し始めましたわよ!?
    これでは道を空けてるようなものではありませんか!」

勇仮「いや違う」

メイド「何を冷静に! 魔王軍の背後、つまり私たちの守りががら空きになりますわ!」

勇仮「違う」


メイド「いやー! わたくしは逃げますわ―!」

勇仮「おっと」ガシ

メイド「放してくださいましー!」

勇仮「よく見るんだ」

メイド「え?」

勇仮「ほら」

メイド「騎士軍が前進をやめて同じく左側に動き始めた?」

勇仮「あちらから見て右側だ」

メイド「な、なんで?」

勇仮「騎士軍の前衛はファランクス隊だ。右手に武器を持ち左手に盾を持つ。大体はな」

メイド「それが何か関係あるんですか?」

勇仮「一番右側には守りがない。だからそこを突かれると弱いんだ。
   逆にいえば最も強い兵士たちが右側にいることにもなるが」

メイド「だから右側を守るように動く……」

勇仮「そうだ」



 ザッザッザッザッザッザッ……


メイド「で、でも、こちらも相手も動くなら、永遠に左に移動し続けるんですの?」

勇仮「さすがにそれはない」

メイド「では?」

勇仮「まあ見てれば分かる。上手くいけば、だけど」

メイド「……?」

勇仮「……」



 ザッザッザッザッザッザッザッ……


勇仮「……」


 ザッザッザッザッザッザッザッ……


勇仮「……来た」

メイド「え?」


勇仮「今だ! 前進せよ!」


 ――オオオオオオオオオオオオオオッ!


メイド「なに? なに? なんですのー!?」


 ザッザッザッザッザッザッ……


勇仮「右翼を先行させよ! 突撃だ!」

メイド「そ、そんな無茶ですわ!」

勇仮「いいや」

メイド「だって……」

メイド「!」


 ――オオオオオオオオオオオオオオオ!


 キィン! カン! ガキン! ドシュ!


メイド「騎士軍が……割れた?」

勇仮「あれだけ急いで移動したんだ、当然隙間ができるさ」

メイド「つまりこういうことですか?
    "横への移動が急すぎて、陣形が乱れた"!」

勇仮「当たりだ」

メイド「そこへ魔王軍、数の多い右側が突撃したから」

勇仮「騎士軍の陣が分断されたんだな」

メイド「でも、こちらだってその危険があったのでは?」

勇仮「何のために集団行動が得意な魔族を集めたと思ってるんだ?」

メイド「あっ」


メイド「な、なるほど」

勇仮「陣ってのは横や後ろが弱いもの。
   あとは魔族の得意な乱戦でかき乱してくれればいい」

メイド「じゃ、じゃあ!」

勇仮「ああ、もう勝ったようなもんだな」

メイド「や、やったっ」

勇仮「でもまあ」


 ――ギャアアアアアアアアアアア!


メイド「!」ビク!

勇仮「やっぱり相手もただでは倒れないよな……」


メイド「なんですの!?」

勇仮「相手の方が数段上なんだよ……」

メイド「読まれていたんですか!?」

勇仮「いや、相手も油断してたんだろう。だからこそ弓射隊を使わず近接戦闘で片付けようとしたんだ。
   だから俺たちにも勝機はあった。でも……」


 カッ ズゥゥゥゥゥゥン!


メイド「……!」

勇仮「中央突破したコボルト兵が狙われてる……」


メイド「な、なんで……」

勇仮「呼びの兵力を背後に用意しておいたんだろうな。
   それならば突破されても迎撃できる」


 カッ ドゴォォォォォッ!


メイド「あれは魔術ですの!?」

勇仮「人間側の魔術だな。血陣魔術だ」

メイド「名前しか知らないです」

勇仮「人間は魔族と違って造作もなく魔術を行使するなんてできない。
   それでも何とか模索して編み出されたのが血陣魔術なんだ」


 ――カッ ズガァァァァァン!


メイド「っ……ここまで余波が!」

勇仮「血を使って魔法陣を描画する!
   血は生命力の源だから術式を使ってそれを引き出す!」


 ――カッ ドゴォォォォォォォォ!


勇仮「特徴として、速射性はないが時間をかけられるぶん精密で強力な魔術を使えるんだ!
   戦向きだな!」

メイド「よく聞こえませんでしたわー!」


メイド「対策! 対策は!?」

勇仮「乱戦に持ち込めばやむはずだ。味方にも当たるからな」

メイド「……やみましたわね」

勇仮「これでこちらが有利のはず……多分」

メイド「もっと自信を持って言ってくださいまし……怖いですわ……」

勇仮「仕方ないよ、俺は本来ただの暗殺技能者にすぎないし。
   手の届く範囲で精一杯なんだ」

メイド「……」


メイド「あ……でも」

勇仮「……」

メイド「あれは退却ではありませんか?」

勇仮「どうだろうな。騎士軍はこちらよりも数段上手だ。
   遅滞行動かも」

メイド「痴態行動……?」

勇仮「ああ、ええと、まあいいや。こちらも魔王軍を戦場から離脱させよう」

メイド「みんな言うこと聞いてくれるでしょうか?」

勇仮「……コボルトさんたちの知性を信じよう」

報告。八時から書けなくなる
落ちたらSS速報で


<魔王城>


剣士「……」

剣士「そろそろ衝突している頃かしら?」

剣士「……」

剣士「心配だわ、やっぱりついていった方がよかったんじゃ」

剣士「だってあの子、なんだかんだ言ってまだ十八よ。
   魔王軍をだまくらかして大規模戦闘なんて……」

剣士「……案外できてそうな気がするのが怖いけど」


剣士「まあ、正直に白状すると微妙に暇なのよね」

剣士「何だか魔王城もひっそりしちゃってるし」

剣士「今まであんなにピリピリしてたのが嘘みたい」

剣士「まるで嵐の前の静けさね」

剣士「……いけないわ、独り言が多すぎる」

剣士「でも暇なわけよ」


剣士「だからと言って寝るわけにもいかないし」

剣士「……」


 ――……ズゥゥゥン


剣士「……?」

剣士「何かしら?」


<牢屋>


 ――モクモクモク……


魔王「フゥ――フゥ――……」

魔王「ッ」クワ!

魔王「見たましたか、ぼくの力を!」

魔王「こんなチャチな首輪でどうにかできる程甘くありませんッッ!」

魔王「待ってなさい、勇者に剣士! ぼくを閉じ込めたこと、後悔させてあげます!」


<廊下>


剣士「こっちからだったわよね」

魔王「勇者ぁぁぁぁぁ!」

剣士「!」ビク!


 ――ドン!


魔王「わぁ!」ドスン

剣士「きゃっ」ドサ

魔王「……」

剣士「……」


剣士「魔王?」ムクリ

魔王「剣士ィ!」ガバ!

剣士「さんをつけなさい」

魔王「剣士さんッ!」

剣士「よろしい。……あなたどうやって牢屋出たの? それに首輪は?」

魔王「舐めないで下さい! あんなもので魔王を閉じ込めておけるなんて、そんな認識が間違いなんです!」

剣士「どうやってか分からないけど、抜け出したのは事実ね」


剣士「あの首輪、予備はあるのかしら?」

魔王「また閉じ込める気ですね!?」

剣士「当然でしょ。わたしは勇者の相棒よ」

魔王「そうはいきません! "炎牙"!」ゴゥッ!

剣士「魔術っ……」バックステップ

魔王「喰らいなさい、“雷爪”!」ジャッ!

剣士「っと……」ヒョイ

魔王「ちょこまかとっ……」


剣士「ふッ!」ズダン!

魔王(踏み込み――速すぎる!)

剣士「やッ!」ビッ!

魔王「わわ!」ヨケ

剣士「もう一丁!」

魔王「え、“炎牙”!」ボッ!

剣士「っと……」ササッ!


剣士「……」

魔王「く……」

剣士「どうやらわたしの方に分がありそうね」

魔王「そんなこと……」

剣士「いいえ、わたしの方が速い、鋭い」

魔王「そんなこと……!」

剣士「いいことを教えてあげる。わたし、魔術の両断も得意なの」

魔王「! そ、そんなの嘘だ!」

剣士「本当だったらどうする? あなたは魔術を撃った瞬間に真っ二つよ」

魔王「っ……」


魔王「そ、それでも……でも……」

剣士(この子は未熟。たとえ魔術が達者に扱えようと、心はまだ子供)

魔王「そんなハッタリなんて!」

剣士「試してみれば? わたしは子供を斬るなんて気が進まないけど」

剣士(だから、どうしようったって必要以上に警戒してしまう、力んでしまう)

魔王「う、うう」

剣士(たとえ真っ赤な嘘でもね)

魔王「え、“炎――」

剣士「遅い!」

剣士(そんなに力んでは遅すぎる!)ブン!


 ――ヒュンヒュンヒュンヒュン!


魔王「う、うわぁぁあッ!」

剣士(必殺の距離! 投擲した剣は!)

魔王「ギャッ!」ドスン!

剣士(目標を確実に貫く!)

魔王「あ……あ……」ヘナヘナ

剣士「頭の横、紙一枚ってとこかしら。良かったわね外れて」

魔王「あ、あう、あう……」

剣士(まあ外したんだけど)

魔王「」ガク

剣士「あらら、気絶しちゃったわ」


魔王「」ブクブク……

剣士「気絶して泡吹く人って本当にいるのね」

剣士「さて、予備の首輪を探して、この子を――あら?」

剣士「……」

剣士(指が酷く傷ついてる……)

剣士「……首輪を取るときに、かしら」

剣士「……」

剣士「まったくあの子もこの子も……」

剣士「仕方ないわね、もう」

訂正

剣士(指が酷く傷ついてる……)

剣士(この子の指、酷く傷ついてる……)





『――友達になってください!』




<牢屋>


魔王「――……う、ううん」

魔王「!」ハッ!

魔王「ここは!」ガバ

魔王「……う、ううううう!」

魔王「また牢屋ですかぁっ!」

魔王「もう嫌だ……」ガックシ……

魔王「……あれ?」

魔王(指に包帯が巻いてある……)

魔王「誰が……」

魔王(剣士さん?)

魔王「……そんな馬鹿な」

魔王「……???」


<数日後.魔王城>


勇者「ふー、終わった終わった……」

メイド「ただいま帰りましたー……」

剣士「おかえり」

勇者「ああ、ただいま……」

剣士「ずいぶん疲れてるわね」

勇者「大規模戦闘はそんなもんさ。俺もう当分は戦いたくない……」

メイド「わたくしも……」

剣士「あらあら珍しい」


剣士「食事にする? わたしじゃろくなもの作れないけど」

勇者「他のメイドは……もれなく毒を盛りそうだしなあ。
   じゃあお願いしていいかな?」

メイド「わたくしはお風呂ですわー……」フラフラ

剣士「あれなら今日は夜の心配はしなくてもよさそうね」

勇者「大人しいものだったよ。夜も襲われなかったし」

剣士「襲われ……そう」

勇者「寝顔も可愛いもんだった」

剣士「え?」ピタ

勇者「……おっと」

剣士「どういうことかしら?」

勇者「どう思う?」

剣士「たたっ斬りたい」


 ――ギャアアアアアアア!


メイド「いやですわ、こんなところでも悲鳴が聞こえるなんて……はぁ」ヌギヌギ……

ここで第一部完、みたいな
わずかにあった書き溜めが底をついたので、ちょっと休憩兼ねて書き溜め

>>245
乙!
第二部からはもう制作でやればいいと思う
煽りとかじゃなくて、パート分けして保守を最初から視野に入れているのならば落ちにくい板で
まったり投下してみたらどうだろうか?

>>249
なるほど、それがいい
これ以上保守してもらうのも心苦しい
じゃあ、ちょっと立ててきます
二部からはnipでってことで
アドバイスthx


ご協力ありがとうございやした

言うの忘れてた気がしたので。支援・保守ありがとうございやした

ほぅ

_::.;;;|_;:.._|__:._|____|_.| i ..|

;::_|___|√__:.:|:..__|__,;;'~   |   〉
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;._::.,|___|__と「;;<w[と).|i  .|    :..     雑談スレなんだぜぇ……
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ted!..|;;.__;;;|_::._|〆ノ `J\r' ̄|    ::.:

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