鬼娘「はよくたばれ人間」 剣士「……ん」(77)

ピーヒョロロロ…

剣士「……」スタスタ

ヒョロロ・・・ガサガサッ

剣士「……む」

ガサッ ガサガサガサ……

剣士「……」スタスタ

……ガサッ

剣士「……」

バサァッ

鬼娘「くたばれ人間!」バッ

鬼娘「このっ! このぉっ!」バッ バッ

剣士「……」スッ スイッ

鬼娘「どうしてっ 当らんのだぁっ!」ババババ

剣士「……」スィィッ…

鬼娘「くそっ このっ こん畜生!」ズバッ バッ

剣士「……」ピタッ

鬼娘「あん?何だよ急に止まって…」

剣士「…遅い」ボソッ

鬼娘「あぁん!?」カッチーン

剣士「……」フッ

鬼娘「てめー!笑ったな?笑ったなこの野郎!」シュバッ ババッ

剣士「……」スッ スッ

―――――――――

鬼娘「……はぁ はぁっ」ゼーゼー

剣士「……ぬるい」

鬼娘「この…やろっ…」ゼーヒュー

剣士「……疲れたか」

鬼娘「まだ…まだぁ…っ!」

剣士「そうか」

鬼娘「ぐっ…余裕ぶっこきやがって」ギッ

剣士「……」

鬼娘「なんで…お前はそんな平然と…してられんだよ…」

剣士「伊達に鍛えてはいない」

鬼娘「……ちくしょう…畜生…」

剣士「……」

鬼娘「いつか…ぜってーぶっ殺してやるからな…」

剣士「……」

鬼娘「……」ゼーゼー



鬼娘

剣士「……」ジー

鬼娘「……」ゼーハー

剣士「……」ジトー

鬼娘「……」ハーハー

剣士「……」ジー

鬼娘「……」ヒューヒュー

剣士「…手を」

鬼娘「いらねえ!誰がお前の手なんか!」ババッ

剣士「……そうか」

鬼娘「いつか殺してやる、絶対殺してやるからな」

剣士「……そうか」

鬼娘「親父の…いや、俺たちの同胞の仇を絶対取ってるからな!」

剣士「……ああ」

鬼娘「ちっ…動揺もしねえとは、斬り殺し過ぎて感覚麻痺してんのか?」

剣士「……そうかもな」

鬼娘「仕事だもんな!俺たちみたいな化物を殺すのがなぁ!」

剣士「…そうだな」

鬼娘「今日の所は引きあげる、勝てそうもないからな」

剣士「……ん」

鬼娘「でも、次は絶対殺してやる」ギッ

剣士「……ああ」

鬼娘「ちょっとは動揺しろよ」

剣士「…こりゃ、厳しいな」

鬼娘「…くそっ」

剣士「……ん」

鬼娘「…じゃあな」

剣士「…鬼の子」

鬼娘「なんだよ、下らない用だったら怒るぞ」

剣士「…強くなったな」

鬼娘「……だから、なんだよ」ガサガサッ

剣士「……」

ガサガサッ ガサッ…

剣士「……」

……ガサ…

剣士「……」

ピーヒョロロロー…

剣士「……ん」

ヒョロロー…

剣士「……」スタスタスタ

ザザァァァ…

――――――

――町

ガヤガヤガヤ ガヤガヤ

剣士「……団子か」ストン

女将「はいよー!」

剣士「団子を三串、茶をくれ」

女将「今お持ちしますんで、ちょいとお待ちを」

剣士「ああ」

ガヤガヤガヤ

童子「あ、お侍さんだよおっかぁ!」

母親「こら、ジロジロ人を見るもんじゃありません!」

童子「はーい」

ガヤガヤガヤ

ガヤガヤガヤ

商人A「ふいー…疲れたねえ」

商人B「ちったぁ痩せたらどうだい」

商人A「いやいや、つい美味い物を見ると口がね?」

商人B「贅沢な悩みだよそりゃ」

商人A「まったくだ!」

商人B「今日はお前さんの奢りで食わせてもらおうかねえ」

商人A「馬鹿言え、きちんと割り勘だよ」

商人B「いいじゃないかいこのぐらい……」

ガヤガヤガヤ

ガヤガヤ ガヤガヤガヤ

剣士「……」

ガヤガヤ 

剣士「…む」

ガヤガヤガヤ

剣士「……珍しいな」

友「お前こそ、珍しい事もあるもんだな」

剣士「気まぐれだ」

友「お前が気まぐれにこんな街に?冗談も程々に言え」

剣士「……むぅ」

友「女将、私も団子と茶をこいつと同じ分だ!」

女将「あいよー!」

友「隣、良いよな」

剣士「好きにしろ」

友「相変わらず冗談の利かぬ奴だ」

剣士「悪かったな」

友「ははは、お前の利点でもあるからな」

剣士「…そうか」

友「それで、何があった」

剣士「なにも」

友「大方大分”くる”事があったんだろ」

剣士「……」

友「そうなんだな」

剣士「……む」

友「お前は分かりにくいようで分かりやすい」

剣士「これでも、隠してはいる」

友「逆効果だ」

剣士「…むむむ」

女将「団子上がりましたー!」

剣士「おう」

友「ありがたい、食うか」

剣士「……」モッチャモッチャモッチャ

友(食う姿は小動物なんだよな…こいつは)

剣士「……ん?」モッチモッチモッチ

友「なんでもない」

剣士「……」ゴックン

友「それで、なにがあった」

剣士「…黙秘だ」

友「女か?」

剣士「……」

友「金か?」

剣士「……」

友「…化物か?」

剣士「……」ピクッ

友「やはり、そうか」

剣士「……なぜばれる」

友「ばればれだ」

剣士「まあ、そんなところか」モグモグモグモグ

友「ふむ…」

剣士「……」モッシャモッシャモッシャ

友「なあ、我が友」

剣士「……」ムシャムシャムシャ

友「……」モグモグ

剣士「……」マグマグマグマグ

友「……」ゴクゴク

剣士「……」ゴクリ

友「……」ムシャムシャ

剣士「…なんだ」

友(タイミングが悪すぎだ馬鹿)ムシャムシャ

剣士「それで、お前がここに来た用事は何だ?」

友「ばれていたか」

剣士「こんな人ごみで会うなぞ、意図的他あるまい」

友「……なあ、お前は戻ってくる気はないか?」

剣士「くどい、その気は毛頭ない」

友「なぜだ」

剣士「説明したはずだ、自分には合っていないと」

友「嘘が分かりやすいのは、お前の利点だな」

剣士「……」

友「何の不満があった?」

剣士「何も」

友「『化物殺しの鬼札』と呼ばれただろう、名声もあったし力もあっただろう、お前は」

剣士「そんなものに興味は無い」

友「ならばあの時、あの時まで嬉々として化物を俺と共に斬り殺していたお前は」

剣士「くどい」

友「なぜだ!なぜ貴様は我々から離れた!」

剣士「黙れ」

友「共に志を持っていただろう!『化物を一匹残らず屠りつくす』と誓っていただろう!」

剣士「黙れっ!」カッ

友「…う…ぐ…」

剣士「もうあそこに戻る気はない、これ以上は言わん」

友「……」

剣士「……」モグモグモグ

友「……」コクコク

剣士「…ごちそうさま」

女将「ああ、御代は――」

友「私が払おう」チャラ

剣士「お前…」

友「不愉快にさせた詫びだ」

剣士「……」(納得していないのか、まだ)

友「……」

女将「毎度あり!」

剣士「……」スタスタ

友「…じゃあな、俺はこの後任務がある」

剣士「…そうか」

友「ああ」スタスタスタ

剣士「……またくるだろうな」

ガヤガヤガヤ

剣士「縁を切れば、はっきりとそう言えばもう接触はしてくるまい」

剣士「……」

剣士「…出来んな」

剣士「あれでも、私の無二の友だ」

剣士「…甘えは剣を曇らせる、か」

剣士「私の剣は、錆付いているだろうな」

――――――

ピーヒョロロロロ…

鬼娘「ちっくしょぉ…あいつを殺せないよ…」

河童娘「またやられたのん?」

鬼娘「……うん」

河童娘「こりないねえ」

鬼娘「だって、あいつは親父の仇なんだし」

河童娘「それって親父さんより強くならないと勝てないんじゃないの?」

鬼娘「う……」

鬼娘「ともかく、ともかく私は力をつけねばならん」

河童娘「頑張ってねー」

鬼娘「……ああ、必ず」

河童娘(重傷だなぁ)

鬼娘「まずは当てる事からだ、鬼の一撃を受けては無事で済むまいて」シュッ シュッ

―――――

剣士「……」ザッザッ

ザカザカッ

剣士「……む」

鬼娘「ちぇすとぉぉぉっ!」

剣士「……」スイッ

鬼娘「おわっ!?」ドシャッ

剣士「……」

鬼娘「……」ドロドロ

剣士「……」

鬼娘「…なんか言えよ」

剣士「……」

鬼娘「…なんか言えよ!」

剣士「…無様」

鬼娘「―――っ!手前っ!」カァァッ

剣士「だが」

鬼娘「あぁん!?」

剣士「奇襲は、悪くない」

鬼娘「……お、おう…」

剣士「だがその気配はバレバレ」

鬼娘「褒めてるのか貶してるのかどっちかにしろよ!」

剣士「……ふ」

鬼娘「ちっ…今日も、負けたな」

剣士「負けるのは嫌か」

鬼娘「嫌に決まっている!」バッ

剣士「……そうか」

鬼娘「お前は仇だ、親父の仇だ、友の仇で、仲間の仇だ!」

剣士「…ああ、そうだ」

鬼娘「俺はおまえを倒すんだ、倒してやるんだ!」

剣士「……」

鬼娘「今日は、引く」

剣士「そうか」

鬼娘「だが次は…必ず殺す」

剣士「そうか」

鬼娘「絶対だぞ!」ガサガサ

剣士「おい」

鬼娘「なんだよ!?」

剣士「…体に、気をつけろよ」

鬼娘「……お前、馬鹿じゃねえの?」ガサッ

剣士「…馬鹿、か」

チチチチチ… チチチ…

剣士「……」

――友「お前はとんでもない馬鹿だ、手に入れたものをすべて捨ておって」

剣士「……」

――鬼娘「馬鹿じゃねえの?」

剣士「……」

――「お主は、馬鹿じゃのぉ!」

剣士「…馬鹿、か」

―――――

鬼娘「くっ…服が泥だらけに」

河童娘「まーたやられたん?」

鬼娘「渾身の一撃を避けられて」

河童娘「どしゃって?」

鬼娘「……ああ」

河童娘「まるで阿呆じゃの」

鬼娘「…むぅ」

河童娘「いい加減肩の力抜いたらどうなん?」

鬼娘「肩の力を抜けば強くなるのか?」

河童娘「気負い過ぎだよ、鬼ちゃん」

鬼娘「そうだ、俺は仲間全員の気を負ってる」

河童娘「鬼ちゃんは……いや、いいよ」

鬼娘「気負ってるんだ、だからあいつを殺さなきゃならないんだ…」

河童娘「……そっか」

鬼娘「もう、鬼は俺しか居ないんだよ」

河童娘「鬼ちゃんの仲間は皆殺されちゃったんだ」

鬼娘「ああ、あいつにな」ギリッ

河童娘「鬼ちゃんはそれを見たの?」

鬼娘「実際に殺している所は見てないけど、あいつがあの場に居た」

河童娘「偶然かもしれんやん」

鬼娘「断じてそれは無い」

河童娘「どして?」

鬼娘「あいつが言ったんだ…『俺がやった』って」

河童娘「ふむ」

鬼娘「あいつは一族の仇だ、最後の鬼である俺が討たなきゃいけないんだ」

河童娘「…鬼ちゃん」

鬼娘「なんだ」

河童娘「無理しないでね」

鬼娘「勿論だ」

河童娘(今も無理してるなんて、言えないよ…)

鬼娘「さて、私は修行してくるよ」

河童娘「うん、いってらっしゃい」

――――――
――――― 十数年前

鬼娘「とーちゃん!とーちゃん」トタトタ

鬼父「おお、こっち来い娘よ!」ガバァッ

鬼娘「とーちゃん!」バッ

鬼父「おーおー…大きくなりやがって、このぉ!」

鬼娘「ふふん、日ごろのしゅぎょーの成果よ!」

鬼父「そうかそうか…うんうん!」

鬼娘「えへへ…」テレテレ

鬼父「どうだ娘よ、最近は」

鬼娘「うん、おっかぁも元気だよ?」

鬼父「あいつは病弱でな…心配していたが、杞憂だったか」

鬼娘「あとでね、折紙教えてもらうの!」

鬼父「そっかぁ、女の子らしいなぁ」

鬼娘「もう!私は女なんだからね!」

鬼父「そうだなぁ、娘だもんなぁ」

鬼娘「おっかぁもね、私は女なんだかららしくしなさいって」

鬼父「んだけどなぁ、お前は鬼なんだから力をつけてもいいんだぞ?」

鬼娘「勿論じーさまに稽古をつけてもらってるよ?」

鬼父「じーさまに!?」

鬼娘「どしたの?」

鬼父「酷い事されてねえか?」

鬼娘「ううん?全然」

鬼父(よかった…やはり儂の時とは違うか、手加減はされている様だな)

鬼娘「たまに『ひもなしばんじー』ってのをやらされるけど」

鬼父(手加減、されてんのかなぁ…)

鬼娘「そのおかげでね、もう最近では負けないんだから!」

鬼父「そっかそっか…んじゃ、あとで儂と戦うか?」

鬼娘「いいの!?」

鬼父「いいともいいとも…忙しゅうてまともに遊んでやれんしなぁ、偶にはな」

鬼娘「やったぁ!おっかぁに知らせて来るね!」

鬼父「んだ、んだ、そうして来い」

鬼娘「約束だからね!」タッタッタ…

鬼父「……あの子もなぁ、大きくなりやがってなぁ」

鬼A「童子様!」

鬼父「おん?」

鬼A「ご報告申し上げます!山の麓にて不審な人間を発見しました!」

鬼父「……ほぉ?」

鬼A「現在警戒態勢が敷かれていまして、中々の手練れの模様です!」

鬼父「なるほど、なるほどなぁ」

鬼A「いかがなされますか童子様…いえ、頭領!」

鬼父「……あの子との約束は破りたくなかったんだがなぁ…」

――――

鬼娘「おっかぁ!」ピョイン

鬼母「んだ?」

鬼娘「今日な、とーちゃんと戦うんだぞ!」

鬼母「戦うって…お父ちゃんと?」

鬼娘「うん!普段遊んでやれないからだってさ!」

鬼母「あれまぁ…お父ちゃんったら…」

鬼娘「だからな、おっかぁも一緒に――」

鬼B「頼もう!頼もう!」

鬼母「はて?」

鬼B「童子様より伝令!伝令であります!」

鬼娘「…お父ちゃんから?」

鬼B「はい、山に侵入者有とのことで外に出ないようにと」

鬼娘「えーっ!?お父ちゃんとの約束は!?」

鬼B「申し訳ありませんが…危険なので、外には行かせられませぬ」

鬼母「分かりました」

鬼B「はい、それでは」タッタッタ…

鬼娘「……うーっ…」

鬼母「しょうがないのよ、みんなあなたの事が大事なの」

鬼娘「おかーちゃんも?」

鬼母「うんうん」

鬼娘「おとーちゃんも?」

鬼母「そうよ、あなたがどこか行っていいと思ってる人なんて一人もいないの」

鬼娘「…そっか」

鬼母「そうよ、だから今はね?」

鬼娘「…うん」

――――

剣士「……」

鬼A「止まれ、ここから先は鬼の――」

剣士「…ふん」ザシュッ

鬼A「りょ――う――っ」ドサッ

剣士「……」ザッザッ

ザワッ ザザァッ…

トマレ! トマレェッ!

剣士「……」ズバッ

グァァッ! コノヤロウ!

剣士「……」ザクッ ザシュッ

オガァァッ キュウエンヲヨベェッ!

剣士「……」ズバシュッ

ギャァァァァァッ!

剣士「…他愛無し」

ピーヒョロロロォッ

剣士「…む」スイッ

ザザッ ザザザァッ

剣士「…来たか」チャキッ

鬼父「応、来たぞ」

剣士「その首貰い受ける」ギリィッ

鬼父「まあ待て、誰に言われた」

剣士「理由は無い、貴様らが物の怪である以上、俺が斬り殺すまでだ」

鬼父「交す口は無し、か」

剣士「殺しに来たのだ、当然」

鬼父「ならば、その逆もだろうな?」ギョロッ

剣士「――っ!?」ビリッ

鬼父「殺しに来たのであれば、殺されることも然り、それを分かっておろうな?」

剣士「……」

鬼父「…よもや、その覚悟も無しにのうのうと『殺す』と? 片腹痛いッッ!」ゴゥッ

剣士「…元より……」

鬼父「んんっ?」

剣士「元より、そのつもりよ」ギラリ

鬼父「…成程、その意気やよし!」

剣士「されば、いざ」ググ

鬼父「いざいざ!」グッ…

――――――

ドォォォンッ!!

鬼娘「ひっ!?」ビクッ

鬼母「始まったわね」

鬼娘「…とーちゃんと?」

鬼母「お父さんはね、皆を護るために戦ってるのよ」

鬼娘「…うん、そっか」

鬼母「そうなよ、うんうん」

ドォォンッ!! ドゴォンッ!!

鬼娘「私も、とーちゃんみたいに強くなりたいなぁ」

鬼母「ん? なんで?」

鬼娘「そうしたら、かーちゃんもとーちゃんも護れるから!」

鬼母「そっか…娘が優しくてお母さんは幸せだよ」キュッ

鬼娘「えへへっ、私は優しいより強くなりたいんだけどね」

鬼母「もう、そんな事言わないの」

鬼娘「ふふーん」

――――

鬼娘「……ん」ガバッ

河童娘「あ、起きた?」

鬼娘「ああ、うん」

河童娘「随分にやけてたけど、どしたの?」

鬼娘「…昔の夢を見たんだ」

河童娘「…そっか」

鬼娘「親父が居て、お袋が居て」

河童娘「……」

鬼娘「…やっぱり、あいつは私の手で…っ!」

河童娘(……それでいいのかな?)

鬼娘「いってくるよ」ザッ

河童娘(復讐心だけで動いて…それでいいのかなあ…)

―――

剣士「……」クイッ

剣士「……」ザカザカ

剣士「……む?」

鬼娘「よぉ」

剣士「また、勝負か」

鬼娘「そーだよ、今日こそ殺してやる」

剣士「…是非も無し」

剣士「……来い」シャカッ

鬼娘「そのつもりよぉ!」ダダッ

剣士(突撃? そんなものが通るとでも…)

鬼娘「ところがどっこい 通るんだなぁ、これが」シュンッ

剣士(! 疾いっ…!)ババッ

鬼娘「おっ らぁぁ!」ブゥンッ

剣士「…っ」シュンッ

鬼娘「てめっ よけてんじゃ ねぇっ!」ブンブンブンッ

剣士「当って 死ねと…っ?」

鬼娘「応! 死んじまえ! お前なんて死んじまえ!」ギロリッ

剣士「…そうか」

鬼娘(…気が変わった?)ビクッ

剣士「鬼の子よ、一つ言っておこう」シャキンッ

鬼娘(なんだ? 何が来るっ…!?)ゾゾワッ

剣士「人を殺すと言えるのは」バウンッ

鬼娘「跳躍――――っ!?」

剣士「『死ぬ覚悟のある者だけ』、だ」



ズダァンッ

―――――

―――

女将「あらまぁ、剣士さん今日はお連れで? こんな虚無僧さん吊れて」

剣士「ああ、こんななりだが…事情あってな、顔を見せる訳にはいかん」

鬼娘「……」

剣士「団子を二人前頼もうか」

女将「あいよー!」スタスタ

剣士「……」

鬼娘「……」

剣士「…なにか、言ったらどうだ?」

鬼娘「なんで、こんな格好をさせるんだよ」

剣士「お前の顔を晒させる訳にはいかん、一応このあたりではお尋ね者だろう?」

鬼娘「そんなことじゃねえよっ!」バンッ

剣士「静かにしろ」ギロッ

鬼娘「お…おう…」タジタジ

剣士「……」

鬼娘「…おい」

剣士「なんだ」

鬼娘「お前、なんで私を殺さなかった」

剣士「……」

鬼娘「っち…黙秘かよ」

剣士「…話す事も無い」

鬼娘「てめえっ!」グイッ

剣士「……」ジロリ

鬼娘「……」ギリギリ

女将「…あの? お客さん?」

鬼娘「はぇっ!?」

剣士「そこに置いておいてくれ」

女将「は、はいなー?」トンッ

剣士「すまんな」

剣士「食ったらどうだ、毒は入ってないぞ」

鬼娘「…っち」モグモグ

剣士「……」モグモグ

鬼娘「…なぁ」モキュモキュ

剣士「なんだ」モムモム

鬼娘「百歩譲って殺さなかった理由は言わんでいいが、どうして私をこうして団子屋に誘っている?」

剣士「……」

鬼娘「お前にとって私は殺しに来る敵だろう? なぁ、ならばなんで」

剣士「美味いからだ」

鬼娘「…は?」

剣士「ここの団子、美味いからだ」

鬼娘「…もういい、お前に聞いたのが悪かった」

剣士「だろうな」

鬼娘「……なぁ」モグモグ

剣士「ん」モグモグ

鬼娘「お前は、私達のことどう思ってるんだ」モグモグ

剣士「……どう?」

鬼娘「お前が対妖で名を馳せた凄腕って事は、知ってる」

剣士「買いかぶりすぎだ」

鬼娘「黙れよ」

剣士「ひどいな」

鬼娘「だけど……」

剣士「……」

鬼娘「お前にとって俺らは何だ? 憎むべき存在? それともただの糧か?」

剣士「……ここの団子、美味い」

鬼娘「はぐらかすぐらいならっ」ビュヒュッ

剣士「お」ヒョイッ

鬼娘「いっそ黙れよぉっ!!」ヒュンッ

剣士「そっちが、聞いてきたんだろうが」サッ

鬼娘「くそっ!」

鬼娘「不愉快だ、やっぱりお前は俺の敵だ」バッ

剣士「と言いつつも、団子は食うんだな」

鬼娘「団子に恨みは無い」

剣士「……ああ」

鬼娘「やっぱり、いつか必ずお前を殺すぞ」

剣士「……そう、か」

鬼娘「ちっ…」ザッ ザッ

剣士「……」

女将「あの、お連れ様のお勘定は」

剣士「俺が払う」

女将「あ、そうですかー それでは」

剣士「これで」チャラッ

女将「毎度ありー!」

剣士「……ああ」

ザザァァァ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年01月07日 (火) 10:23:42   ID: IhoMdvz7

うるわっへぇえ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom