ユミル「遠くて近い」(18)

ミカサ「おはよう、クリスタ、ユミル」

クリスタ「おはよう、ミカサ。って近い。すごく近い。生暖かい」

ユミル「近すぎだろ、離れろ」グイグイ

ミカサ「縮めてみた」

ユミル「何をだ」

ミカサ「距離を」

ユミル「私が聞いてんのは、それじゃない」

ミカサ「?」クビカシゲ

クリスタ「どうして、あんなに近付いたの?」

ミカサ「距離を把握するために」

ユミル「だーかーらー。あーエレンか?」

ミカサ「そう、かも知れない」

クリスタ「曖昧だね」

ミカサ「私はどうやらエレンに近すぎたようで、近づくなと言われた」ションボリ

クリスタ「年頃だから仕方ないと言えば、仕方ないんじゃないかな?」

ユミル「やっぱエレンじゃねぇか」

クリスタ「それで、人との距離を測っているの?」

ミカサ「そう」コクリ

ユミル「アルミン大先生か」

ミカサ「そう」コクリ

ユミル「大体分かった。ただ、何で私らなんだ?」

ミカサ「クリスタとユミルとは話せる方で、何より、付き合ってくれそうだから」

ユミル「面倒くせぇー」

クリスタ「私に出来る事なら何でも言ってね!」リョウテガシッ

ミカサ「お願いする」

ユミル「安請け合いすんなよ・・・」

クリスタ「困っているのなら、お互い様でしょ!?」カッ!

ユミル「困ってんのは、死に急ぎ野郎だ。私には関係ない」

ミカサ「お願いする」ゴゴゴゴゴ

ユミル「ちけぇし、顔こえぇよ!」

クリスタ「それで、距離を測っているみたいだけど、それって物理的なものだけなの?」

ミカサ「どういうこと?」

ユミル「甲斐甲斐しく介護するだけでいいのか?」

ミカサ「介護じゃない。手助け」キリッ

ユミル「大体な、お前はあいつに構いすぎるんだ」

クリスタ「ユミルが言えないような…」

ユミル「私はいいんだ」

ミカサ「何故?」

ユミル「嫌がってないだろ? なー」グリグリ

クリスタ「やめてよユミル! もー、髪の毛ぐしゃぐしゃ…」ナオシナオシ

ミカサ「嫌がってる」

ユミル「怒っちゃいるが、啖呵は切ってない」

ミカサ「はっ! たしかに。口では文句を言いながら、嬉しそうにも見えた」

クリスタ「こういうのあんまりなかったから…。でも、嫌な時は本当に嫌って怒るよ?」

ユミル「それに、お前らの場合は男と女だ。そっからして微妙な関係になるわけだ」

ミカサ「エレンは家族」

ユミル「家族でベタベタすんのもやだろ」

クリスタ「それも含めて、エレンはくっつかれたら恥ずかしいと思うよ」

ミカサ「何故?」

ユミル「おっぱい押し付けられたら、た」

クリスタ「ユミル!」

ミカサ「た、何?」キョトン

クリスタ「いいの、ミカサは気にしないで」

ユミル「主席様はそういうことも知らない、と」

ミカサ「だから、家族。そうはならない」キリッ

ユミル「…重病だが、どうする?」

クリスタ「とりあえず、ミカサの言う距離を測ってみようよ」

ミカサ「そうするべき」ニジリ

クリスタ「近い。すっごく近い。転けそう」

ミカサ「それは大変」ギュー

ユミル「何でそうなった!」

ミカサ「転けたら危ない」ギュー

クリスタ「ユミル、ユミル! 大変、大変!」

ユミル「何だよ。早く離れろよ」

クリスタ「すっごい気持ちいい!」フカフカ

ユミル「大変に変態だ」ハァー

クリスタ「もっと硬いと思ってた」パフパフ

ミカサ「現在、強化中」

クリスタ「ダメよ!」パフパフ

ミカサ「何故?」

ユミル「腹筋お化けの最後の砦を壊しちゃいかんだろ」

クリスタ「それに、筋肉ばかりが力じゃないんだからね!」パフパフ

ミカサ「それも一理ある。でも、何で胸を」

ユミル「女らしい所も一つは残しとけ」

クリスタ「ミカサは女の子だよ。とっても可愛いよ」パフパフ

ユミル「へいへい、そうですねー。で、お前はいつまで顔埋めてんだ」

クリスタ「やみつきになりそう」パフパフ

ユミル「そんなのよりこっちに来い!」バッ!

クリスタ「えっ」

ユミル「お前じゃねぇ!」ベシッ!

ミカサ「来いって言うから来た」

ユミル「何なんだ、何なんだお前は。何がしたいんだ」

ミカサ「距離を測ってみた」

クリスタ「・・・心の?」

ミカサ「ノリに乗ってみるのも、必要」

クリスタ「ミカサなりのジョークなわけね」

ミカサ「そう」コクリ

ユミル「ノリに乗るのはいいし、ノッてやったが無表情で来るな。せめて笑え」

ミカサ「」ニ゙ゴリ゙

ユミル「私が悪かった」

クリスタ「心の距離は、難しいよね」

ユミル「お前がにっこり笑ってりゃ、一気に縮まる」

クリスタ「そんなことないよ」

ミカサ「クリスタが笑うと暖かくなる」

クリスタ「ほんと?」

ユミル「だからって、安売りすんなよ」

クリスタ「別に安売りはしてないけど…」

ミカサ「クリスタハカワイイカラー」

ユミル「遠い! 遠すぎる! 戻って来い!」

ミカサ「戻った」シュタ

クリスタ「いきなり走るから止められなかったよ」

ミカサ「距離を測っている」

ユミル「もういい」

ミカサ「最近はエレンとの距離を測りかねている」

クリスタ「心の?」

ミカサ「」コクリ

ユミル「環境が変わっちまったからな、そりゃ仕方ねぇよ」

ミカサ「離れていくようで、寂しい」

クリスタ「でも、心の奥では繋がっているから、そんなに寂しがらなくても大丈夫だよ」

ミカサ「分かってる。だけど、数年前まではいつも一緒だった」ションボリ

ユミル「あのなー、家族って言っても、恋人が出来たり結婚したりすれば離れるんだ」

クリスタ「今はそれの練習みたいなものだと思ったら、どうかな」

ミカサ「エレンは私と一緒にいないと早死する」

ユミル「かも知れないが、四六時中一緒にはいられない」

クリスタ「くっつきたいのも分かるよ。でもね、エレンにはエレンの考えがあって、その距離を測らないと」

ミカサ「心の?」

ユミル「物理的にもだ」

ミカサ「…難しい」

クリスタ「簡単なことでいいんだよ。例えば今日の朝食は私たちと食べる、とかね」ウィンク

ミカサ「それとどういった関係が?」

ユミル「距離を測るためにあえて距離を広げる。遠くから見たら見えるもんと見えないもんもある」

ミカサ「分かった。やってみる。さしあたって、いい?」

クリスタ「勿論だよ! 付き合うって言ったでしょ? ね、ユミル」

ユミル「しゃーねぇーなー、付き合ってやるか。で、何くれんの?」

クリスタ「ユミル!」

ユミル「冗談だ。本気に取るなよ」

ミカサ「冗談か本気か分かりにくい」

ユミル「お前らが分からなすぎるんだ」

ミカサ「距離を測っているの?」

ユミル「……する必要がないだろ」

ミカサ「ユミルの距離感も難しい」

クリスタ「そんなことないよ。口が悪いだけで、本当は優しいんだから」

ユミル「女神様にそう言われちゃ、毒気も抜けちまうな。ま、飯でも食いに行こうや」

ミカサ「………」

-移動中-


ミカサ「ユミルは」

ユミル「あ?」

ミカサ「クリスタが大事」

ユミル「当たり前だ。愛してんぜ」

ミカサ「だけど、何かを恐れている」

ユミル「…」

ミカサ「私も分かるような気がする」

ユミル「お前のそれと私のそれは違う」

ミカサ「違わない。失うことは怖い」

クリスタ「ユミルー! ミカサー! ハヤクハヤクー!」 カタテブンブン

ミカサ「すぐに行く!」シュタ

クリスタ「ハヤッ! チカッ!」
ミカサ「ゼンハイソゲ」 キリッ

ユミル「……」

ユミル(言えない、言いたくない。聞きたい、聞けない)

ユミル(そんなものがたくさんあって、誰しもが距離を測り合ってる)

ユミル(私も、クリスタも、ミカサだってそうだ)

ユミル(それでも、信じて欲しいと思うのは、勝手なんだろうな)

ユミル(自分で壁を作ったくせに、もっと自分を見てくれ、なんて虫が良すぎるだろうけど)

ユミル(いつか壁は壊れるんだろうか。壊してしまうんだろうか。それとも壊される?)

ユミル(その時、クリスタは笑っているかな)


クリスタ「ユミルー!」

ユミル「そんなに急かすなって」


ユミル(遠くて近い、この距離で)


おわり

バカやってるこの三人が書きたかっただけなんですが、最後がちょっとしんみりしてしまった。

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