男「あれ?エレベーター止まったな」幼女「……」(1000)


これは、ある1人の幼女とエレベーターに閉じ込められる物語


男「…あれ?」

突然の出来事に、思わず声を上げてしまう。

しばらく続いていた緩やかな落下感。
それは5階と4階の間で突然、ガクン――と止まった。


男「エレベーター止まったな…」

あれほどまでに明るかった室内の照明が消え、やがて薄っすらとした白熱球の明るみに変わった。

そして、コンビニ袋をぶら下げた俺の後ろには…

幼女「……」

小さな女の子。

彼女は不安げな表情をこちらに向けたまま、その場に立ち尽くしていた。


たぶん、こういう事態に備えてのものなのだろう。

非常用の照明の薄暗さに目が慣れるまで、そう時間はかからなかった。


幼女「……」

そして、同乗していた幼女。

エレベーターが停止したこの事態が理解できないようで、少し混乱している様子だった。

俺は近くにあった外部との連絡ができるインターホンを押したが、それは無反応だった。

どうやら、電源自体が止まっているらしい。


二畳ほどの狭い室内には、幼女と自分の2人きり。


幼女「……っ」

やがて幼女は怯えるように耳を塞ぎ、その場でしゃがみこんでしまった。

男「お、おい、大丈夫か?」

幼女「……」
思わず、声を掛けてしまう。
しかし彼女は耳を塞いだままなのか、俺の声すら聴こえていないようだ。

(……)

このまま、待つしかない…よな。


そう思うと、俺は近くの壁に背中をあずけ、その場に座り込んだ。


白熱球に照らされた室内。

その薄暗い空間で、ただ時間だけが過ぎていく。

男「……」

大分目が慣れてきた。
よく見えなかった所にも視界が行き届くようになった。

だからこそ、よく見える。

無数の汚れ。吐き捨てられた唾や痰の跡。タバコの吸い殻。

普段は気にしないのに、こういう時に限って不潔感がしみじみ伝わってくるようだった。


幼女「……」

そして、この空間に慣れてきたのか、幼女は辺りをキョロキョロと見回している。


男「おい」

幼女「…っ」

俺が声をかけると、彼女はびくっと身をすくませ――怯えるようにこちらを向いた。

男「大丈夫、しばらくしたら動くから…。それまで待ってな」


そう言うと、俺はコンビニ袋からがさがさという音をたてながらその袋を破ると
幼女に飴玉を一つ差し出した。

禁煙でもしようか、と考えた末に購入した飴玉だった。


幼女「……」

幼女はふるふると首を振った。

…要らない、ということだろうか。


男「そうか…」

仕方が無いので、俺はその飴玉を口に放り込んだ。

甘ったるいソーダ味。それを舌で転がしながら天井をみつめながら…

(いつ復旧すんだろうなあ…)

そんなことを考えていた。





幼女「…おじ…さん」

男「ん?」

エレベーターが停止してから30分くらい経過した頃だった。

これまで一度も喋らなかった幼女が、突然声を掛けてきた。


幼女「いつ…なおるの?」

男「何がだ?」

幼女「…えれべーたー」

男「んー、そうだなあ」

エレベーターが停止してから大分時間が経っているが、復旧する様子はなかった。

(携帯も家に置いてきてしまったしな…)

外部と連絡も取れないんじゃ、どうしようもなかった。

男「たぶん、2時間ぐらいじゃないかな?」

管理会社が駆けつけるまでの予想を見積もった時間。

(いや…)

もしこれが建物全体の停電によるものなら、もう少し早いかもしれない。
電源が復旧すれば、エレベーターも復旧するはずだった。


そして、数時間が経過した頃だった。


男「退屈だな…」

幼女「うん…」

会話とも呼べないやり取り。

お互い床に座り、無意味に時間だけを消費するだけだった。


男「……」

なんとなく、幼女の方に目を向けてみた。

桃色のパーカー。
しかしそれは子供が着るにしては、やや大きいように思えた。


幼女「な、なあに…?」

男「ん、あ、いや…」

ジロジロ見つめすぎたのか、幼女は恥ずかしそうに頬を赤らめてもじもじとした。

(かわいい子だな…)

俺は別にそっちの人間ではないが、しかしこの状況。
その気になれば力ずくで…。

なんて、馬鹿なことを思い浮かんでしまう。


幼女「……」

不穏さを感じたのか、彼女は怯えるように俺から少し距離を離した。

男「な、何もしねえよ」

幼女「……」


俺が、何か手を出すと疑っているのだろうか?

(まあいいや…)

俺は辺りをキョロキョロと見回した。

天井には換気扇が付いていた。
子供一人が通り抜けられそうなくらいの幅。


そして、監視カメラがあった。

これだけは別電源が使われているのか、緑のランプが光っていた。

つまり今でも動いているということで、この閉じ込められている状況が外部にも伝わっているということだ。


(しかし、いつになったら動くかな…)

停止してから何時間も経っている。

それでも、ただ待つしかなかった…。


白熱球に照らされた狭い部屋の中で、ただ時間だけが過ぎていく。


幼女「……」

男「……」

体感的には、もう夜だろうか?

空腹感から察して、もうかなり時間が経っているだろう。


男「腹…減ってないか?」

気付けば、そんなことを口にしていた。

子供からすれば、もうとっくに夕食を済ませている頃だろう。

俺は一食抜いても問題はないが、こいつはどうなんだろうか。


幼女「……」

彼女は、否定とも肯定とも言わなかった。

体操座りのまま、ただ俯いていた。


男「ほら」

俺は幼女に弁当を差し出した。

から揚げと焼肉の入ったそれなりに高い弁当。740円。


幼女「…ううん、いらない」

遠慮しているのか、彼女は幼い声でそう言った。

男「いや、お腹すいただろ? 食べていいぞ。俺はいらないからさ」

幼女「……」

それでも顔を横に振って、弁当を受け取ろうとしなかった。

男「…じゃあ、俺が食べちまうぞ?」

幼女「…うん」

こくんと小さく頷き、膝に顔を埋めてしまった。


(ま、いらないって言ってるんだから良いよな…)

そう思って、弁当の筒を破り蓋を開けようとすると…

幼女「ん…」

狭い室内に、腹の音が響いた。

空腹を示すような、漫画のみたいな展開だった。

男「やっぱり。…ほら」

恥ずかしそうに俯かせた幼女に対して、俺は弁当と箸を差し出した。


幼女「…いらない」

どうして最近の子供はこんなにも強情なのだろうか。
子供ならもっと素直でいればいいというのに。

幼女「いらないって言ってんだろ!」


男「そのまま餓死されても困る。ほら、食べな」

少し強引だったか、彼女に弁当を渡した。

幼女「……」

彼女はその弁当を渋々見つめていたが、しばらくすると弁当の蓋を開いた。

そして、小さな手つきで料理をつまんで行く。

男「飲み物あるぞ」

そう言って幼女にコーラを差し出した。

幼女「…ありがとう」





彼女が弁当を食べ終わるまで、かなりの時間を要した。
ぎこちない箸の運びで小さく摘んでは、それを口に入れて咀嚼する。


俺はタバコに火を付け、肺に煙を溜め込んだ。

薄暗い天井をぼんやりとみつめたまま、それに向けて紫煙を吐き出す。

幼女「…けほっ!」

室内に充満した煙が苦しいのか、幼女は控えめに咳を漏らした。

男「すまん、苦しかったか?」

そう言って俺は床にタバコの火を擦り付けた。
床に黒い染みができると、タバコの火はすぐに消えた。

幼女「…だいじょうぶです」

彼女は平気そうな顔をしているが、室内にはかなりの煙が充満していた。

天井には換気扇があるものの、動いていないため煙を十分に排出してくれるはずもなかった。

何吸ってんだよぉーーーーー


男「おまえの親父はタバコ吸わないのか?」

幼女「うん、パパ…おタバコ吸わない」

幼女は弁当を全てたいらげると、『ふぅ…』と息を吐いてリラックスした。

男「全部食ったのか…?」

幼女「うん」

よく食べたものだ。

たしか、肉ばかりのボリュームのあった弁当だったはず。
子供にとっては胸焼けの元なのではないだろうか。

そんなことを考えながらビニール袋からビールを取り出し、プルタブをあけると一口飲む。

(……)

エレベーターの中で酒を呑むなんて新鮮だな、と思った。

ビール飲んでトイレ行きたくなるフラグたったああアアアアアアアアアア


そして購入した裂きイカを取り出すと、包みを破る。

香ばしいイカの香りが、酒との相性が良さそうだった。

幼女「……」

彼女は興味を示すようにそれを見つめていた。

(なんだ…まだ食うのか? こいつは)

初めてみるような、そんな表情をしている。

男「…食うか?」

袋を渡すと、幼女は一つだけ摘んでぱくっと口に入れた。

幼女「……」

彼女は微妙な顔をした後「うん…」と呟き、それから裂きイカに手を伸ばすことはなかった。


夕食も摂り終え、そろそろ深夜に突入すると思えた頃だった。

幼女「……」

男「……」

もう丸一日、この狭いエレベーターの中で座り込んでいた。

大分、精神的にも辛くなってきた。

まだ幼い子供である彼女にとっても、この退屈な時間は苦痛だろう。


男「暇だな」

幼女「うん…」

そんな短い会話を交わし続けていた。
他人同士である2人とって、それしか喋ることが思い浮かばなかった。

幼女「童貞のくせにバカにしやがってよぉぉぉ!!何がヒマだよ!なんか芸しろオラァァァ」

幼女が近くにいるのに煙草吸うとか…ゲスの極みだな

>>66
もっと罵ってくれ

幼女はタバコに火を付け、肺に煙を溜め込んだ。

薄暗い天井をぼんやりとみつめたまま、それに向けて紫煙を吐き出す。

男「…けほっ!」


男「あのさ…、今日ここで寝泊りすることになるかもしれない」

先ほどの会話から少し経った後、俺は彼女にそう言った。

エレベーターの修復に手間取っているのかもしれない。

幼女「…うん」

恐らく察しはついていたのだろう。

このまま救助が来ないのでは、今日はここで寝ることになるのだろうと。

幼女「でも、どうやって…?」

男「……」

汚れた床を指差すと、幼女は不満そうな顔色を浮かべた。

男「しょ、しょうがないだろ」

幼女「……」

>>67
10年後

女友「あ、やっぱり屋上にいた!!アンタいい加減バレるよ」

女「ふぅー」

女友「もぉ~今時タバコなんて男子も嫌がるしモテないよ~?なんで吸い始めたんだか」

女「・・・・・・あいつの匂いがするから」


もう何ヶ月も清掃してないと思われるエレベーターの床。

幼女はそれを見つめたまま、何も言わなかった。

男「…ま、とりあえず俺は寝るぞ」

そう言って壁にもたれ掛かり、両手を組んで目を瞑った。

室内が薄暗いおかげもあり、睡魔に意識が浸食されていくのにそう時間はかからなかった。

しかし…。


幼女「……」

時折、横目でちらり――と見るたびに彼女はキョロキョロと辺りを見回し続けていた。

不潔感の漂う床の上で寝るのに、躊躇しているようだ。

悟空みたいに股間を枕にして寝ればいい

おしっこどうするんだろうな、
あそっか互いの口にいれればいいのか


(…しょうがない)

俺は上着を一枚脱ぐと、それを床に敷いてあげた。

男「ほら、ここに寝なよ」

たかが上着一枚だろうが、女児が布団代わりにするのに十分なスペースだった。

幼女「う、うん…」

そして、彼女はに靴を脱ぐと、丁寧に敷いた布団の横に置いた。

幼女「おじゃまします…」

そう言って俺の上着の上に尻を乗せ、小さい体を丸めた。

しばらくすると彼女の小さい寝息が聴こえてくる。


男「…おやすみ」

そうして、俺も眠りに就いた。

幼女のベッド代わりになるだろjk

男「ちょっと触るくらいなら・・・」



次の日、目を覚ますと薄暗い天井が視界に映った。

男「う…」

慣れない体勢で寝たせいか、首が痛む。

そして、体を起こすと――


幼女「ご、ごめんなさあい…」

彼女が手にしていたのは、俺が購入したお菓子の袋だった。

どうやら寝ている間に黙って食べたらしい。

男「いや、別にいいよ。食べてても」

そう言ってなんとなく辺りを見回した。

(まだ復旧してないのか…)

幼女「……」チラッ

幼女「ふー…やっと眠ったか…」バリバリー

幼女「…悪いな、俺は幼女なんかじゃねぇ」

幼女「……あんたの生活を24時間監視していた――探偵なんだ」

幼女「……よっと」ガコン

幼女「じゃあな。俺は上から脱出させてもらうよ」ヨジヨジ

幼女「……あんたのくれた弁当、旨かったぜ」


男「…ん?」

ふと、幼女の付近に何かが落ちているのに気付いた。

幼女「あ、これ…」

彼女が手にしたのは、漫画雑誌。

それを知ると、自分は頭を抱え込んだ。


俺がコンビニで購入したエロ漫画だった。

しかし、どうしてジャ○プの方にしなかったのか…。

男「…読んだのか」

幼女「う、うん…」

そう言って、彼女はこくり――と頷いた。
その表情は、いたって平穏で『内容はわからなかった』とでも言いたげな様子。


そのまま、何時間も経過した。

白熱球に照らされる二畳半の部屋。

その狭い中、復旧するのをただ待つようにように座り込んでいた。

しかしエレベーターの中は換気扇以外は密室状態。

外の様子もうかがえないため、朝なのか夜なのかすら分からない状態だった。


男「なあ、時計持ってないか?」

幼女「とけい?」

男「ああ」

彼女は腕時計も付けていないし、携帯も持っているようにも見えなかった。

かといって、自分も社会人ながら腕時計はつけていない。

むしろ、普段から持ち歩かないようにしていた。

理由は『時間に縛られている気がして、落ち着かない』なんて、下らないものだった。

幼女「アテクシ時間にはLooseなの」


(こんなことなら、素直に付けてりゃよかった…)

変な意地張らずに、と少し後悔。

男「ん?」

幼女「……」

彼女は、何やら落ち着かない様子だった。

頬を少し赤くさせ、ふとももをモジモジとさせている。


男「おい、気分でも悪いのか?」

幼女「……」

こんな狭い場所に長時間居続けたら、そりゃ気分が悪くなってもおかしくはない。

男「少し横になってたほうが…」

そういい掛けた直後、彼女は口を開いた。

幼女「……おしっこ」


(……)

おしっこ。

恐らく、昨日から我慢していたのだろう。

すっかり忘れていた。

いや、あるいは心のどこかで恐れていたのかもしれない。


男「あ、あ、トイレ…トイレね」

幼女「……」

幼女は顔を赤くしたまま、落ち着かない様子でいた。

よく考えれば、自分にも尿意があることに今更気付いた。

さて、どうしたものか…。

俺は周りを見回すが、こればかりはどうしようもないんじゃないか…と考えていた。

しかし、そこである物が目に入った。


室内の奥にある小さな扉。

たとえば、マンションから救急車で病院へと運ばれるとして、エレベーターに入れた際に担架の幅が足りないことがある。
これは、その僅かなスペースを確保するために使われているものだった。

その扉をあけると、奥行き30センチ程のスペースが見えた。

そして、幼女にこの中で用を足すように言うと

幼女「……」

さすがに無理があるのか、みるみると顔色を羞恥に変えた。

男「いや…別に我慢してても良いが、そのうち病気になるぞ?」

幼女「う…」

そのまえに、漏らしてしまうんじゃないだろうか。そんな風に思えた。


そして、彼女はしばらく考えこんだ末――その中に入って扉を閉めた。

????

ペットボトルは??


男「……」

水流が床をたたきつけるような、小さな音が室内に響き渡っていた。

そして扉から彼女の黄ばんだ液体がぽたぽたと垂れ、ほんの少し水溜りを作った。


音が止んでから少しすると、幼女が出てきた。

彼女が扉を閉める時、ほんの少し立ち上っている湯気のようなものがちらり、とみえた。

幼女「……」

恥ずかしそうに、こちらをじっと見つめる幼女。

男「あ、いや…お疲れさま」

なにがそうなのか自分でもよく分からないが、そんな言葉しか出てこなかった


(しかし、なぁ)

それよりも、自分の尿意をどうすればいいのか考えていた。


幼女「…?」

彼女が用を済ました扉の方を、ちらっ――と向く。

すると、彼女は体操座りをしたまま恥ずかしそうにうつむいた。

男「……」

さすがに…無理だよな。


そう思って俺はエレベーターの出口に近寄ると、力を込めて横に引いた。

すると、簡単に開くことができた。

さすがに…無理だよな。 ん?


男「ふぅ」

こういうのは、案外簡単に開くようにできている。

非常時に備えているのか、力を入れれば子供でも開くことができるのだ。


扉を少し開き、後ろを向く。

男「…えっと」

幼女「…っ?」

男「これから、ションベンするんだけど」

幼女「あっ…うん」


彼女は顔を手で隠すと、そのまま後ろを向いた。

飯食ってきます。30分くらい

支援


用を足している途中、下界から強い風が吹き上げ、降下する自分の小便が波打っていた。
ほんの少し下を見下ろすと、真っ暗で何もみえなかった。

(……)

よく見ると、内部にあるコンクリートの壁には、掴れそうな鉄骨がいくつかあった。

…頑張れば、下の階までよじ下りる事ができるかもしれない。

そんなことを考えている内に、排尿を終えた。






静謐な空間の中で、ただ時間だけを過ごしていた。

むわむわとした暑さが立ち上っている。
いったいいつになったら助けがくるのだろうか…。

(もしかしたら、このまま二度と)

幼女「あ、あの…」

そんな恐ろしい事を考えていると、幼女が声を掛けてきた。


男「? どうした」

幼女「あの、その…」

今度は何だろう? と思いつつも彼女の声に耳を傾ける。

幼女「…落ちない?」

男「…ん?」

質問の意味が分からなかった。

落ちない――とはどういうことだろうか。


男「…ああ、このエレベーターか?」

幼女「う、うん…」

彼女は不安げな表情をしていた。

エレベーターが落ちないかどうか、心配らしい。


男「大丈夫だよ、落ちても心配ない」

エレベーターの内部地下には、バネのような衝撃緩衝器があるはずだった。

もし落ちても、そのバネで衝突時のショックを和らげてくれるのだ。

それにブレーキの故障などでも、まず落ちる心配はない。

UCMPという保護装置のお陰でかごの状態を維持してくれているからだ。


幼女「ふぅーん…」

そのことを幼女に一通り説明するが、彼女はよく理解できていない様子だったが

安心ということだけは伝わったようだった。


幼女「なんでそんなに知ってるの?」

男「ああ、そうだな…」


男「俺の親父がさ…そういう仕事をしているんだ」

だから、俺もその道の職業に就くことになる。

そんな、単純な理由だった。

幼女「ふぅん…」

男「おまえのお父さんは何の仕事をしているんだ?」

幼女「お父さんはねえ、新幹線のパイロット!」

男「ほう…」

新幹線の運転士らしい。

そして、彼女は父親の様々なことを話してくれた。


男「お父さんのこと…好きか?」

幼女「うんっ!」


彼女は、笑顔でそう強く頷いた。

今まで見た中で一番輝いていて、一番子供らしい表情だった。


男「そうか…」

自分とは正反対だな、と思った。


かつて俺は、役者を目指していた。
沢山のオーティションにも受けたが、採用してもらえなかった。

だが、俺は諦めなかった。一生懸命、頑張り続けた。

でも…、
それでも親父は認めてくれなかった。

急に厨弐臭く為って参りました


男「おまえは…将来の夢とか、あるのか?」

幼女「将来のゆめ?」

男「ああ、なんかやりたいこととか無いのか?」

幼女「うーん…」


彼女は暫く考え込んだあと…、

幼女「…わからない」

そう言った。

男「そうか」


俺は今日までこの子を見続けてきて、一つ思ったことがある。

どこかでみたことあるような…、そんな事。

(まぁ、同じマンションに住んでいるんだしな…)

どこかですれ違っているのかもしれない、とそう思った。



次の日もエレベーターは復旧せず、ついに3日目に突入した。

その3日目というのも、ただの体感上の話。

(……)

実際の時間感覚が狂ってきているため、気分さえ悪くなってくるようだった。


男「……」

幼女「……」

そして、室内はひどいくらいに蒸し暑さが立ち上っていた。

換気扇が作動しない為だろう。

真夏というのもあるが、熱中症にもなりかねないほどの暑さだった。


幼女は、敷いてある上着の上で丸くなっている。

俺はビニール袋の中に手を入れた。

何か飲み物がないか、探していた。


先日幼女に渡したコーラはもう既に尽きている。

それ以外に水分が補給できるものは、何本かのビールと大量にある飴玉くらいだった。


男「大丈夫か?」

幼女「う…ん…」

彼女は飴玉を舐め続けていた。

もう何個食べたのか、忘れてしまうくらいの量を。

男は黒澤か成瀬だな

>>182
探偵に強盗

役者もEVも関係ないな


どうするか…。

(さすがに、ビールは飲めないよな…)

試しに、ビールを差し出して「飲むか?」と訊いてみたが彼女は

幼女「…飲めないよ」

と言い断られた。

昔、父親の酒を誤って飲んでしまったことがあると言った。
少々トラウマを植えつけられているらしい。

男「そうか…」

しかし、このままでは…な。
自分はともかく、この暑さでは彼女は熱中症になりかねないだろう。

俺は考えた末に、幼女に声を掛けると…

男「今すぐ服脱げ」

そう言った。

え?


幼女「え……?」


何を言っているの?

そんな風に、彼女の顔が不安に満ちた。


俺は彼女に説明をした。
この暑さで服を着ていたら死んでしまう、と。

幼女は顔を赤くし、「うん…」と俺の言う通りに従った。

後ろを向いて、彼女はぶかぶかのパーカーを脱いだ。

男「…よし」

すると、俺はビールのプルタブを開け

幼女「ひゃっ」

彼女の背中にビールをかけた。

男「…よし」

すると、俺はチャックを開け

幼女「ひゃっ」

彼女の背中にビールをかけた。


幼女「な、なにしてるの…?」

男「いいから」

そのまま、幼女の体にビールをかけ続けた。

幼女「……」

アルコールのは優れた低温物性があり、冷却効果がある。

たしか、そんなことを何処かで聞いた覚えがあった。


(しかし、この暑さじゃ…効果があるかどうか分からないが)

とりあえず、これで一時を凌ぐしかない。

室内には、酔ってしまうんじゃないかと思う程のアルコールの匂いが充満していた。

いったい、いつになったら助けがくるのだろうか…。


男「あ…」

幼女「どうしたの?」

しまった…。

エレベーターの床には、ビールの水溜りが出来ていた。

それが室内の半分を占めていることに、今更気付いた。

男「…いや、なんでもない」


彼女の寝床だった場所が、無くなってしまった。

(…しょうがない)

今夜は自分の元で寝かせるしかないだろう。




計画通り

体感時間=3日
実際の実際=1日とちょっと

じゃないの?



それから何時間かして、眠気が表れ始めた頃…。

恐らく外は夜になったのか、暑さは大分ましになっていた。

幼女「すぅ…」

エレベーターの元々狭い部屋の中――さらにその狭いスペースで、彼女を後ろから抱きかかえていた。

昼間のサウナのような暑さで、疲れてまったのだろう。

抱えられた幼女は、そのまま眠っているのか静かに寝息を立てている。


(……)

可愛らしい、天使のような寝顔だった。

俺は彼女の前髪をたくしあげると、おでこを優しく撫でてやった。


幼女「…すぅ」

男「……」

両親にも、友達にも会えなくて辛いことだろう。

こんな狭い部屋の中に閉じ込められて、精神的にもかなり辛いはずだ。

それでも泣かずにじっ耐えているこの子は、本当に強いんだと実感した。


(もし、このまま――)

仮に、このまま助けがこないのならば…

この扉をこじ開けて、無理やり脱出するしかないのだろうか?


ふとビニール袋の中を覗くと、残された食糧は…もう後わずかしかなかった。

幼女を二つの意味で食ってしまえば生き長らえるぞ

テッテッテ テテ、テテテー!
男「どこでもドア~」
幼女「さすがおじちゃん!そこにしびれる あこがれるぅ」


閉じ込められてから、4日が経った。

さすがに、自分も精神的に大分きている。

牢屋に閉じ込められた囚人というのは、こんな気持ちなのかもしれない。


男「ふー…」

エレベーターの扉を少し開け、タバコをふかす。

灰を落とす際に、なんとなく扉から下を見下ろしてみた。

しかし、下界は闇で覆われている。
(……)

恐怖感を煽るように、強い風が吹き上げてくる。

…ここから落ちたら、いったいどうなるのだろうか?

ふと、そんなことを考えてしまう。

4日wwwww


恐らくここは、4階か5階くらいの高さ。

落ちても死なないと思うが、まず骨折ま免れないだろう。


男「……」

扉から手を出し、ライターでコンクリートの壁を照らしてみた。

壁には鉄骨が何本かあり、足をかけられそうなものがいくつかある。

もしここから脱出するとしたら、どんなルートでいけるのだろうか?


そう思った俺は、扉を広く開け、ためしに手前の鉄骨に足を掛けてみた。

男「う……」

下からビュンビュンと吹き上げてくる風のせいで、バランスを保つのが難しい。

(やっぱり脱出は無理かなぁ…)

そう思って、鉄骨から足を離してエレベーターに戻ろうとしたその時…

男「――っ!」

幼女が腰にしがみついてきて、その場でバランスを崩した。

いつも!すぐそばにある!

幼女「フハハハハハハ!一緒に堕ちろォ!!!」


その瞬間、背筋にゾクッと寒気のようなものが伝い、体中から冷や汗のようなものが噴出した。

そのままバランスを崩した俺は、前のコンクリートに前屈みの状態になった。


男「……くっ」

目先の深い闇から吹き上げてくる風が前髪をなびかせる。

俺はエレベーターの扉につかまり――

男「はぁっ…はぁっ…」

なんとか元の体勢に戻ると、その場に倒れ崩れた。


男「なッ――何すんだ!この馬鹿!!」

幼女「…っ」


気付けば、俺は彼女に向かって怒鳴っていた。

幼女「その理由…本当はお前ももう気付いてるんじゃないのか?」

幼女「幻術だ・・・」


幼女「ひっ…ごめんなさいっ!」

彼女は頭を抱え、その場にしゃがみこんでうずくまった。


男「はぁ…はぁ…」

俺は出口の扉を閉めると、その場に座り込んだ。

今でも、足がガクガクと震えている。
未だに心臓の鼓動が鳴り止まない。かつてないほどに、体が震えていた。


幼女「…ぐすっ」

しばらくすると、幼女の泣き声が聴こえてきた。

幼女「心配するなよ。俺は死なねェ。死ねねェ」

未だに心臓の鼓動が鳴り止まない。かつてないほどに、体が震えていた。


幼女「…クスクス」

しばらくすると、幼女の笑い声が聴こえてきた。

幼女「…ぐすっ……あは…
   あはははははははははははははははははははははは」

幼女「アハッ!男さんなんて死ねばよかったんだよ!アハハ!」


男「お、おい…泣くなって」

幼女「うっ…うぁ…ぐすん」


確かに、怒鳴った自分が悪かったかもしれない。

さすがに、大人気ないことをしたと思った。


男「すまん…ほら、突然大きな声で怒鳴ってわるかったな」

幼女「……」


俺は、しばらく幼女の頭を撫で続けていた。



俺は、しばらく幼女の髪を抜き続けていた。

幼女「何キレてんの? 女心と秋の空って言うじゃない」

幼女「貴様が撫でているそれは――」


幼女「貴様の頭(かしら)だ…!」

>>270
中二臭いのはお前だよ


しばらく時間が経つと、幼女は泣き止んだ様子だった。

男「もう、大丈夫か?」

俺は幼女の頭をもう一度撫でてやる。

幼女「…うん」

目を擦り、もう完全に泣き止んだようだ。


男「なあ…なんであんな真似したんだ? 怒らないから言ってみ」

幼女「……」

しかし、彼女は何も答えずに黙ったままでいた。

(……)

俺は薄暗い天井を見上げながら、ただひたすらに救助を待ち続けていた。

>>273
いいじゃないよそのネタなんだから

男「もう、大丈夫か?」

俺は幼女の頭をもう一度撫でてやる。

幼女「…うん」

きらりと光り、もう完全にはげたようだ。

>>277
おまえには失望した

そういえば続きまだ?



腹の減りが治まらないまま、数時間が経った頃だった。

男「なあ」

幼女「…なぁに?」

男「もうしかしたら、エレベーターこのまま動かないかもしれない…」

幼女「……」

彼女の表情が、不安げに変わった。

男「あ、いや、脅かしてるわけじゃないんだ。ただ…」


俺達がこのエレベーターに閉じ込められているこの状況…

もしかしたら、誰も気付いていないんじゃないか?

そんな、恐ろしいことが思い浮かんでしまったのだ。

幼女の髪が生えないまま、数年間が経った頃だった。

男「なあ」

幼女「…なぁに?」

男「もしかしたら、お前の髪もう生えないかもしれない…」


当初は、監視カメラが稼動していることで安心していた。

それは外部との通信が出来ているから。

だが…もし仮に、これが何らか記録用のもので、外部との通信ができないものだとすれば…。


男「……」

思わず、ビニール袋の中を覗いた。

中には…カップ麺、ビール、漫画雑誌…それだけしか入ってなかった。


男「あのさ…」

幼女「…?」

俺は、彼脱出することになるかもしれないことを説明した。


幼女「……」

彼女は賛成も否定もしなかった…。

誰が脱出するって?


閉じ込められてから、もう何日くらいだったのだろうか。

もう、昼なのか夜なのかすら分からない。

そして、日が経つにつれ徐々に気分が悪くなってきた。


ペラリ――ペラリ――

幼女「くすくす…」

俺は、彼女の希望で、膝の上でジャ○プを読ませてあげていた。

俺がページをめくるたびに、幼女は笑いを漏らしていた。

男「面白いか?」

幼女「うん、あはは…」

ワン○ースを読み終えた後、ブ○ーチのページ飛ばし――ハン○ーハンターのページに移動する。

そしてジャ○ーを読み終えたあと、本をパタンと閉じた。


男「面白かったか?」

幼女「うん、おもしろかった…」


すると、幼女はお腹を鳴らした。

どうやら、腹が減ったらしい…が、ビニール袋の中身を覗くと…

(……)

残っていたのは、カップ麺とビール。

男「……」

俺は黙ってカップ麺のふたを剥がし、かちかちの麺を取り出した。

そして、それを真っ二つに割ると片方を幼女に渡した。

幼女「…、どうやって食べるの?」

男「えっと…」

俺は硬い麺を齧ると、服の上にボロボロと麺がこぼれていった。
それを見習って、幼女もボロボロと麺を齧っていった…。


最後の食料を食べ終えて、ぼーっと天井をみつめていると…

幼女「ねぇ…」

突然、幼女が声を掛けてきた。

男「…なんだ?」

幼女「なんだか…くらいよ」

男「え?」

幼女は天井を指してそう言言った。

言われてみれば確かに暗いような気がした。

(初日はもっと明るかった…よな?)

調べてみると、非常用の電球の明るさが弱まっていることに気付いた。

この室内が暗闇に包まれるのも時間の問題だろう。



――ここから脱出する。

俺はそう決意した後、幼女にそのことを説明した。

幼女「……」

黙って聞いている彼女の姿は、少しやつれているように見えた。

多分、俺も同じようにやつれているのかもしれない。

立ち上がるとき、体力が少し衰えているのを実感した。


男「ほら」

俺は、彼女にライターを差し出した。

幼女「……?」

しかし、何をするのか分かっていないようで、困惑の色を浮かべている。


男「こうやって点けるんだ」

手本にまわして点けてみせると、ジュボ――という音を立てながら火が点いた。

そして幼女にそれを渡し、その行為を何度か練習させた。


俺はエレベーターの出口に歩み寄ると、力を込めて扉を開いた。

しかし中々開かなかった。

(こんなに重かったけか…? この扉)

恐らくは、俺の体力が衰えているせいだろうか。

なんとか扉をこじ開けると、吹き上げてくる風が室内に入り込んできた。


まず幼女をおんぶして、その後ライターを点けさせる。

その明かりを頼りに、下の階へと滑り下り、ホールへとつながる扉を開けて脱出する。

成功する自信は、わずかなものだった。

(しかし…)

このままでは、俺達が飢え死ぬのもそう遠くはないように思えた。


幼女は慣れない手つきで点ける練習をした後、なんとか一発で火を点けられるようになった。

男「…よし、いくか。ほら乗れ」

幼女「うん…」

幼女を背負い、そのまま出口の元へと歩み寄った。


下を見下ろすと、瞬く間に深い闇が広がった。

男「絶対に腕離すなよ」

幼女「うん…っ」

首に掴る彼女の腕の力が、ギュッと強まった。


そして彼女にライターを点けるように指示する。

回す音を立てて、火が点くと周りが照らされた。


そして鉄骨に足をかけ――徐々に横へと移動していった。

男「……」

幼女「……」

下から吹き上げる風が、服の裾を揺らしている。

その時だった。

男「あ、おいっ…!」

ライターの火が消え、周りが暗闇に包まれた。


幼女「あっ…あっ…」

幼女は何度もライターの火を点けようとするが、吹き上げる風のせいで中々点かなかった。

周りが闇に包まれているため、何も見えない。

腕を支えている力も、やがてがくがくと震えだしていた。

男「早く点けろ!」

幼女「う、うん――あっ!」


しかし、彼女の持っていた手からライターが滑り落ち、数秒してから落ちる音が響いた。

辺りが真っ暗に染まり、視界が何も見えなくなる。

(まずいっ…)

手に染み出る汗で、危うく落ちそうな状態だった。


男「はっ、離すなよ!!絶対!!」

幼女「う、うんっ…!」

首にしがみ付く幼女の腕の力が、さらに強まるのを感じた。


そして、そのまま来た道を少しずつ戻り――エレベーターの中へと戻ってきた。

男「はぁっ…はぁっ」

顔中が汗まみれになり、その場でへたり込んだ。


幼女「ご…ごめんなさい…」

申し訳無さそうな顔をして、幼女は謝ってきた。

そして、やがて泣き出してしまった…。


男「…しょうがないよ」

幼い子供を泣き止ませるように、俺は彼女の背中をさすり続けていた。

しかし…、これで脱出する手段が無くなってしまった。

俺は、どうするか考えていた。
生き延びるための方法を必死に考えていた。

(いっそのこと、明かり無しで脱出してみるか…?)

いや、恐らく無理だろう。
あの時――ライターの火が消えたとき、俺はあまりの暗さに足がすくんで動けなかった。

動かそうとしたのに、どうしても動けなかった。

吹き上げてくる風がどうしても怖くて、がくがくと震え始めていたのだ。


男「……」

幼女「……」

そのまま数時間が経過し…、俺達は会話を交わさずただ黙り込んでいた。

精密に言えば、腹が減って喋る気すら起きなかった。

ライターも無くなった。食糧も尽きた。
残っているのは、タバコとビールと漫画雑誌だけ。


幼女「のど…かわいたぁ…」

ようやく口を開いたと思えば、彼女はそんなことを言い出した。

たしかに、よく考えてみればちゃんとした水分を摂ったのは初日のコーラだけであって

その後は飴玉だけで水分を補ってきたのだ。

その飴玉も、今では尽きてしまっていた…。


幼女「うぅ…」

本当に辛そうな顔だった。
今にも倒れてもおかしくないような、そういう類の顔色をしていた。

男「ビールならあるけど…」

そう言って、俺は幼女にビールを差し出した。

まさか飲まないよな…、そう思っていたのだが幼女はそれをすぐに手を伸ばし――プルタブを開けた。

そして、一気飲みをし…

幼女「っ…、うげぇ…」

床にぽたぽたを吐いてしまった。


男「お、おいっ…、無理するなって」

そう言いながら、俺は背中を摩ってやった。

幼女「う、うん…でも」

それでも、幼女は少しずつ飲んでいった。

その表情は、終始辛そうだった…。


そして、幼女はビールを一本飲み干した。

幼女「はぁ…はぁ…」

気分が悪くなったのか、その場で横になってしまった。

男「……」

もし、このビールが尽きたら…俺達はどうなるのだろうか?


俺は、思い出していた。

かつてテレビで見たことがあったのだ。大地震でマンションが崩れ、生埋めになった親子のことだ。

偶然近くにあった水の入ったペットボトルも尽き、飢えかけた親が取った最終手段。


自分の手の平をガラスで切り、その血を子供に飲ませていた。

…それで、その親子は無事生き延びた。


男「……」

気付けば、男は辺りを見回していた。
自分の肌を切れそうな何かを、必死に。

それでも、二畳程度しかないエレベーターの中にそんなものは見つからなかった。

IDが変わらない・・・だと・・・


幼女「……」

男「……」

そして、そのまま数日がたった。

互いにしゃべることもなくなり、幼女は仰向けになって呼吸だけをしていた。

この数日で、彼女は何度か過呼吸になったこともあった。

それは空腹やストレスによるものだと思う。

幼女「……」

酒だけで命を繋いでいたが、それが今ではもう無くなってしまっている。


(……)

顎に伸びたヒゲ。もう何日も剃っていない。

天井の非常用の白熱球。それは今にも切れかかっていた。

恐らくあと数日で、寿命を果たすだろう。

外の様子はどうなっているのだろうか、そんなことを考えながらただ床をみつめていた。

いつになったら、助けがくるのか…どうして誰も助けにこないのか…。

男は今も幼女の中で生き続けている

うんこどこでしてんだよ・・・


男「……」

そして、気付けば立ち上がっていた。

ガクガクと震えた足でなんとか体制を保ち、壁に背中を預ける。


男……抜け出そう」

かすれた声で、そう言った。

自分でも分かる程の、本当に弱々しい声だった。


(もし仮に落ちても…)

それでも良い。

死んでもいい――そんな気さえしてきた。


そして顔を向けた先には……こくん、と小さく頷く幼女の姿があった。

彼女の手を引っ張り立ち上がらせる。

>>383
そこに気付くとは・・・やはり天才か・・・

彼女はふらふらとした足取りで、自分の背中に歩きより、もたれかかるように男の背中にしがみ付いた。

幼女「…ん」

そして、幼女を背負う。

前におんぶしたときよりも、さらに軽くなっている気がした。

(……っ)

途端に、涙が溢れそうになった。

幼女「どうしたの…?」

しばらく背中を震わせていると、今にも消えかかりそうな声で幼女はそう言った。

男「…なんでも、ないよ」

そして、命一杯の力を振り絞り、エレベーターの扉を開けようとした。
しかし、開かない。ここ数日何も食べていないせいか、力が入らない。

男「ぐぅ…くそ…っ」

そして、非力な腕で、最後の力を振り絞って扉を開けると――

男「あ…れ…?」

扉を開けた途端、明かりが差し込んできた。

春厨はいいかげん諦めろ


男「これは…」

いくつもの照明が点灯していた。

メンテナンス時に使われる非常用のものだった。

何かの偶然か、それが点いていた。


(今なら……)

いけるかもしれない。明かりさえあればなんとかなる。

助かった……。


男「よし、いくぞ…」

幼女「うん…」

強い風が吹き上げる中――俺は鉄骨に一歩足を踏み入れた。

俺たちの戦いはこれからだ!!


幼女「……」

幼女の背中に掴る腕が、少し強まった。

まず、鉄骨に足をかけ…手を離し…隣の鉄骨につかまった。


そのまま滑り……下の階へと移動しようとした。

その時だった。


幼女「きゃ――っ!」

幼女のしがみ付いていた腕の力が緩み、深い闇の奥底へと落ちそうになり――

男「く…っ」

頭が真っ白に染まった。しかし、なんとか幼女の腕をつかんだ。

(ああ…駄目だ)

しかし、その反動で俺の体が傾き…

――もう駄目なんだ、と。

彼女の澄んだ瞳に映し出される、絶望して諦めた俺の顔。

それを見つめながら、そんなことを思った。

男「・・・そ そうか そうだよな・・・」

男「どうせ死ぬんだ」


もう、どうにもならないんだ、
どうしようもないんだと。

哀しさのような、悔しさのような気持ちに囚われながら…闇の中へと落ちていった。

最初はふわり…としたものに包まれると、それはすぐに強烈な落下感に変わる。


幼女「――――っ」


彼女は、言葉にもならないような声をあげていた。

吹き上げる風を切りながら、深い闇の中へと落ちていく俺達。


そして、俺は幼女を抱きしめていた。

最後まで彼女を救うことができなかった。

なら、自分が身代わりになってやればいい。そう考えた。

自分が幼女の下敷きになれば、彼女を助けられるかもしれない、と。


「…――」

地面に衝突するまであとどれくらいなのだろう。

死に間際のせいか、やけに長く感じられた。


辺りが暗い闇に包まれ、何もみえなくなった。

非常照明の届かない位置まで来た。


もうすぐ地面に衝突する。

男「……」

幼女「……っ」

しっかりと幼女を抱きかかえながら、
目を瞑り――そして…



男「――っ!!」

勢いよく目を開き、ガバッと起き上がった。

視界に映ったのは、見知らぬ部屋だった。


真っ白な天井――真っ白な部屋。

穏やかな風になびくカーテン。


男「……」

(もしかして…夢だったのか?)

しかし体に走る猛烈な痛みで、それは違うことが分かった。

自分の寝ているベッド…。視界に映る真っ白な部屋。

恐らく、ここはどこかの病院なのだろう。


ということは…、助かったのか?

声を出すことはできなかった。

なんとも言えない空腹感のせいでもあったが、電流のように走る激痛がそれを忘れさせてくれた。


曖昧な記憶を探って、すべてを思い出そうとする。

たしか、あのまま落下して…地面に衝突して…。

どう、なったというのだろう?


やがて看護婦やってきて、男が目を覚ましたという報告をしに行った。


そしてしばらく経った後、病室に刑事が入ってきた。





その刑事から、色々なことを聞いた。

何らかの故障でエレベーターが動かなかったこと。

人が閉じ込められている事を、管理側が知らなかったこと。


そのエレベーターの修復が困難な状況であったこと。

自分は転落して地面に衝突し、なんとか一命を取り留めたこと。

そして――



一人の女児が、遺体で発見されたこと。

気を失った俺の隣に、横たわっていたらしい。


男「……そん…な…」


どうしても、信じられなかった。

みるみる内に悔しさのような、哀しさのような渦巻いた感情が頭の中を浸食して行き、

気付けば自分は泣いていた。


どうして、こんな運命になってしまったのか。

どうして俺は、彼女を守れなかったのか…。

俯いたままでいると、刑事が後日また詳しく話したいと言った。






男「……え?」

数週間して退院した後、俺は刑事に部屋に連れられ、映像をみせられた。

あの閉じ込められていた時の、保存されていた監視カメラの記録だった。

その映像の内容が、どうしても理解できなかった。


男「なん…だ……これ」


映像に映っている自分の姿。“見えない誰か”と喋っている自分の姿。

何もない空間と何らかのやりとりをしている自分の姿。
何もない床にビールを撒き散らす自分の姿。
見えない何かを抱きしめるような自分の姿――。

背筋を伝って寒気のような、吐き気のような感覚が込み上げてきた。


(幻覚?――)

そんな馬鹿な話が?

いや、待て…、
エレベーターの地下内部へ衝突した後、遺体で発見された少女。

その子は一体、誰なのか?


男「…遺体で発見された少女は、一体誰なんですか…?」

刑事「男さん、その女の子の遺体についてですが」


『白骨化』


死亡推定時刻は、10年以上前。
先日発見された時には、もうその状態だったらしい。


「もう10年前以上前のことですが…」

 
 
その少女は、小学校の同級生らとマンションでかくれんぼをしていた。


しかし彼女は隠れたまま現れず――そのまま行方不明。

世間では神隠しだと騒がれ、未解決事件のまま。


男「……」

確かに、覚えていた。

10年ほど前、あの日…あのマンションにて、かくれんぼをしていたメンバー。

その中に、自分も交じっていたことを、俺は覚えている。

あの時は、俺がかくれんぼの鬼だった。

俺は全員を見つけ出した。しかし、彼女だけは…。彼女だけは夕方になっても姿を現すことはなかった。


その後、各自の親と学校の担任が駆けつけ、捜索に当たっていた。

それでも彼女はみつからないまま――。

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれはエロリSSを読んでいたと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにかホラーSSを読んでいた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    幻覚だとか催眠術だとか

   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


「それではお疲れ様でした。また後日改めて連絡します」


その日、みっちりと調書を取られた後、俺はようやく開放された。

署を出ると、辺りは夕暮れに包まれていた。

男「……」

夕日に照らされながら走り回る子供たちを尻目に、俺はぼんやりとしたままだった。


刑事の話によると、エレベーターが止まったのは何らかの故障だというが、その原因が分からなかったらしい。

ただ電源が落ち、いつまでも復旧しなかったとか。

そして、あの監視カメラ。本当は外部とつながっていたはずなのに、映像を受信できなかったらしい。

(……)

もしかしたら――あの子は…ずっと見つけてほしかったんじゃないか?

ふと、そんなことを思った。

あの日、かくれんぼの鬼だった自分に、見つけてほしかったんじゃないだろうか?

この10年間以上、あんな暗く深い闇の中で、誰にも見つけてもらえずに、いったい彼女はどんな気持ちで過ごしてきたのだろう。

こんな、変わり行く時代の中を――たった一人で。


男「……」

そして、自分を見つけてもらえて――彼女はそれで幸せだったのだろうか。

そんな事を考えながら、夕日を空を見上げて俺は歩き出した。

ふと目をやると、夕焼けの片隅に宵闇が現れ始めていた…。この世界の全てを覆い尽くそうとでもいうように。
俺はある日エレベーターに乗っている時、色んなことを考えている。
 
家族、友人、将来の夢…。

そして、長い間かくれんぼで見つけてもらえなかった1人の少女のこと。
 

あなたはエレベーターに乗っている時、どんなことを考えていますか?

                   -終わり-

>>516>>628
監視カメラの映像受信できなかったんじゃないの?
ある程度の時期までは映ってたけど、って事?

どちらにしてもビールかけてるシーンまでが映ってるなら弁当のシーンは当然映ってたんだよな?
SS自体は面白かったのに、オチに来てあまりにも矛盾しすぎてるぞ……

ピャー(`ェ´)ー!お疲れサマーっす。

読んでくれてありがとう、最後の最後で結構レスついて嬉しかったです。

>>661
正直スマソ。
急ぎだったkら、その辺色々と混乱してて生理できなかったわけだ…。

>>688
>監視カメラの映像受信できなかったんじゃないの?
ある程度の時期までは映ってたけど、って事?

こんなことすらわからんのだからgdgdにもみえよう

幼女のときは発見されなかったのになんで男は発見されたんだろう

ー何回ですか?-

男「あ、4階で…」

幼女「こんにちわ、おじちゃん!」



最近、同居人が増えた。

誤字脱字が多くてごめんなさい
はい、解説します。

>>703
元々映像は外部につながってたんだけど、幼女の霊的ななんたらでそれを阻止してたってわけです。

>>707
二回目に脱出試みた時に非常用のライトが点いていたのが伏線で、業者あたりが点検する前だった。
そんなんならもっと前から点検しろよ、と。

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