青年『あいつが勇者なら俺は・・・』 (37)

王様「おお、そなたがこの世界に召喚された勇者か!」

勇者「…まぁ、そうみたいっすねー」

大臣(ずいぶんやる気のない勇者だな…)

王女(カッコ良いかも……)

王様「頼む勇者、この世界を救ってくれ」

勇者「えー…まぁ、救わなきゃ元の世界に戻れねーんだろうな。引き受けるよ、その話」

王様「そうか!! 魔王は強い! しかし、そなたならきっと倒してくれるじゃろう!!」

勇者「まぁ、期待はしないでおいてくれーい」

大臣「あんな飄々とした奴に世界の命運を任せて大丈夫でしょうか…」

王様「いやいや、態度のでかさは器のでかさ! きっと世界を救ってくれるはずだ!」ハッハッハ





青年「………」







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青年(あれ? 俺は!?)キョロキョロ

大臣「………ん? そなたは?」

青年「あ、えっと、あいつと一緒にこっちの世界に連れてこられた青年です」

王様「ほう! ではそなたも勇者であるか!?」

青年「そう……なの?」

大臣「鑑定士を呼べ!」




鑑定士「………ふむ、分かりました」

王様「この者も勇者かっ!?」

青年「………」ドキドキドキ




鑑定士「ただの異世界人ですね。魔力は高い方ですが、1000年に一度現れる勇者ほどでは…」

王様「それじゃあ、この者は何年に一度現れるレベルなのじゃ?」

鑑定士「………一年に一人ですかね?」

青年「」

城下町。

青年「………追い出された…」ガーン

青年(一緒に召喚されたとはいえ、勇者とは学年も違うし、話したこともないから逆に気は楽だけど…)

青年「……慰謝料代わりの金貨三枚…安すぎ」チャリ…

青年(ま、勇者が世界を救ってくれれば俺も一緒に帰れるだろ…)

青年「それまで、どうしようか…」

??「そこのあなた…」

青年「………?」

??「そう、あなたです」

青年(黒いローブの…老人?)

老人「あなた、この世界の者ではありませんな?」

青年「なっ、なぜそれを!?」

老人「ええ、分かります分かります。あなたから溢れる光はこの世界の者では到底適わない量です」

青年(なんだよ、俺だって力あるんじゃないか!)

老人「もしよろしければ、私にあなたのお力添えをさせていただきませんか?」

青年(こ、これは運命か!? 何も勇者だけが主役ってわけじゃないもんなっ!)

青年「ぜ、ぜひっ!」

老人「では……こちらです」クルッ

青年(うぉおおおお! がんばるぜぇえええ!!)






チンピラ「たったの金貨三枚かよっ!」ドガッ

青年「」ドサッ

老人「異世界の服を着ていたから期待してみれば…」ペッ

青年(………最悪だ)

チンピラ「……異世界の服なら金貨10枚にはなるんじゃね?」

老人「………」ニヤァ

青年「………くそ」

通行人「………」ジロジロ

青年「………」グスン

通行人「………」クスクス

青年(死にたい…///)

店主「俺の店の向かいで邪魔なんだよ!!」バサッ

青年「………あ」

店主「それやるからどっか行ってくれ!」

青年「………っ」タタタッ

青年(くそっくそっ…)ポロポロ

街外れ。

青年「………」グスッ

青年(なんだよこれ。漫画だったら、運命の出会いや奇跡の技で何かしら良い方向に向かうだろ…)

青年「………死にたい」

父親「あー、だいぶ遅くなったなぁ〜」

娘「早く帰らないとお母さんが心配するね」

父親「そうだな。でも、転ぶと痛いから気をつけて帰ろうな」

娘「はーい」

青年「………」






父親「た、頼むっ! 娘だけは!! 娘だけは助けてくれ!」

娘「おとーざぁん! だずけでぇ!」

青年(………あれ?)

父親「か、金か? 金ならある。だから見逃してくれ!」

娘「ごわいよー! うぇええええん!」

青年(なんで…?)




勇者「うっせーな。今楽にしてやるよ」ザシュッ

娘「」

父親「あっ、あぁ……あああぁああああ!!」ガクッ



青年「何やってんだよ!! 勇者ぁあああああ!!」




勇者「あー、えっと……お前、だれだっけ?」

青年「俺はお前と一緒にこの世界に飛ばされた青年だっ!」

勇者「そうだったのか? で、なんでそんな恰好してんの?」

青年「あ………いや、それは……」

勇者「まぁいいや。それよりお前、今……




俺の事呼び捨てにした?」ギロリ





青年「………っ!?」ビクッ

勇者「むかつくなぁ。お前、先輩に向かってその口のきき方はないんじゃないの?」

青年「…っ、こ、この世界に年上も下も関係ないだろ」

勇者「あー…そりゃそうだ。んじゃ、勇者様に向かってなんて口のきき方してんの?ん?」

青年「………なんで子供殺してんだよ」

勇者「……あー、お前、これ人間に見えんだ?」

青年「??」

父親「………」



勇者「こいつら奴隷だぜ?」ザシュッ



父親「………く、そ…」ドサッ

青年「ど、れい?」

勇者「そ、奴隷。俺ら異世界人は一般人より階級が一つ上、奴隷を殺したって罪にはなんねーんだぜ」ハハハ

青年「いや、いやいや、この世界ではそうかもしれないけど、俺らは日本人として…」

勇者「あー、もういいや。お前めんどい」クルッ

青年「………」

勇者「あーあ、新品の銀の剣が血で汚れちまった」グサッ

青年(死体の身体に!?)

勇者「これやるから、死体の処理しといてよ。明日パーティでここ通るし」

青年「………」

勇者「それじゃ、またどっかでな」ヒラヒラ




青年「………最悪だ」



奴隷の宿舎。

青年「………ここか」

青年(死体は埋めて来た…せめて荷物だけでも家族に…)

青年「………すみません」コンコン


妻「………あんっ」パンパン

奴隷1「………」パンパン


青年「………え?」

奴隷1「誰だよおめぇ」

妻「……順番あるんだから外で待ってちょうだい」

青年「は、はい」サッ

青年(な、なにが起きてるんだ!?)

奴隷2「兄ちゃん、順番待ちなら列の後ろにならんでくれ」

奴隷4「ここだよ」クイクイ

青年「はぁ…」

奴隷4「はぁ? じゃあ、兄ちゃんは異世界人なんかえ?」

青年「そうです…」

奴隷3「異世界人なら、こんなとこ来なくても…」

青年「それがこっちに召喚されてすぐに放置されて…」

奴隷3「それは大変さね…」

奴隷4「わしらで良かったら答えるから聞きたいことあるか?」

青年「……えっと、僕の知ってる奴隷って、誰か特定の貴族に所有されるイメージなんですけど」

奴隷3「あー、そんな時期もあったなぁ」

青年「時期?」

奴隷4「召喚術で異世界から有能な生き物や機械を呼び出せるようになってから、わしらは奴隷以下の存在になったんじゃ」

青年「じゃあ…」

奴隷3「今、奴隷と呼ばれるものは、ただの浮浪者。ゴミみたいな存在よ」

青年「そんな…」

妻「………さっき割り込んできた人。待ってたんだ」

青年「はい、大事な話があって…」

妻「何枚だい?」

青年「え?」

妻「銅貨何枚出せるのかって聞いてんだよ」

青年「銅貨…?」

妻「……まさか、石貨(せきか)で私とできると思ってるんじゃないだろうね?」

青年「い、いや、いやいやいやいや」ブンブン

妻「あんた、身なりの割に綺麗な顔立ちしてるから、銀貨くらいもってんじゃないのかい?」

青年「いや、そういう意味じゃなくて…」

妻「まぁいいや。お金は後でもらうからさっさとやるよ」パサッ

青年(人生初の女性の裸をこんなとこのおばさんで……最悪だ)ガクッ

妻「………?」

妻「………なんてこった」ハァ

青年「旦那さんは最後まで勇敢に「私の稼ぎが台無しじゃないの!」ガンッ

青年「はっ!?」

妻「あいつらには子供を売らせに行ってたんだよ!! それが……くそっ!」

青年「なっ……」

妻「………あんた、それ旦那の荷物かい?」

青年「はい」

妻「それ置いて出てってちょうだい」

青年「………はい」スッ

青年(くそ、礼もなしかよ…)

妻「……あ、そうだ」

青年「え?」

妻「私の裸見たんだ。チップ置いていきな」

青年「………無一文です」

妻「ちっ」

青年(………最悪だ)グスン

城下町。

青年「戻ってきたものの…」

青年(布一枚の男に優しくしてくれる人などいる訳もなく…)

通行人「………」ジロジロ

青年(裸の時と一緒…か)

青年「………腹減った」

??「大丈夫ですかぁ?」

青年「えっ?」

踊り子「きゃははっ、大丈夫ですかぁ?」

青年「……大丈夫に見えますか…」

踊り子「見えなーい☆きゃはははっ」

青年(…かなり酔っぱらってるな)

踊り子「ねぇ、これであんたのこと買ってあげようか?」チャリンッ

青年「金貨…?」

踊り子「私は気まぐれだから早く決めてー」

青年(買うって…用心棒とか……な訳ないよな)

踊り子「何戸惑ってんのよー。早く決めてよー」

青年(異世界に来て売春か……最悪の人生だな)チャリッ

踊り子「おっ? 取るってことは?」

青年「売りますよ。あなたに」

踊り子「にゃはは、まいどあり〜」

青年(まぁ、こんなきれいな人で童貞捨てられるなら……)

踊り子「さっ、いこっかー」

青年「は、はいっ」

闘技場

青年「えっと……ここは?」

踊り子「あに言ってんのよー。闘技場に決まってるじゃないー」

青年「えっ、えっ?」

青年(何? 買うってどういうこと???)

受付「あれー? 踊り子ちゃんまた来たのー?」

踊り子「だって〜、悔しいんだもんー」

受付「その子、身分は?」

踊り子「んー、知らない」キャハハ

受付「あなた、言葉は喋れる?」

青年「あ、はいっ」

受付「自分の身分についてわかる?」

青年「えっと……昨日こっちの世界にきたばかりで…」

受付「あー、野良の異世界人…」

踊り子「そうなの!? ラッキー!」

受付「そういうことなら、料金上がるけど大丈夫?」

踊り子「大丈夫大丈夫!」

青年「あ、あの…何がどうなって…」

踊り子「まぁまぁ、お姉さんにドンと任せなさい!」

青年「え、ええぇ……」

青年「異世界の兵器相手に何分生き延びることができるか??」

踊り子「そうそう、生き残れたら最高なんだけど、そんな実力ありそうもないし」

青年(死ぬ……前提かよ)

踊り子「五分以上がんばったら、ちゃんと墓は立ててあげるから」ニコッ

青年「………最悪だ」

踊り子「よぉし、昨日の負け分取り返すぞぉおおお!」

青年「…………で、俺の相手が、これ?」

ゾンビ「」ポタポタ

青年(見た目はゾンビみたいで弱そうだけど……)

踊り子「あんたのために武器まで買ってあげたんだから頑張りなさいよねー!!」

青年「武器って……ひのきのぼう…」


審判「試合開始!!」


青年「ちょっ、早くね!? 紹介とかないの!?」

審判「こんな無名試合はさっさと消化するんだよ」ケッ

青年「………」


ゾンビ「ぐぁぁぁ」ドタドタドタッ

青年「………ん?」サッ

ゾンビ「あぁぁぁ」バッ

青年(なんだこれ…遅い?)

青年「うわぁあああああ!!」ブンッ




———ゴシャッ。


ゾンビ「」

審判「………」ゴクリ

青年「……え、これで終わり?」

審判「しょ、勝者、青年!!」

ギャラリー「うぉおおおおお!!」

踊り子「やぁああん! 青年君サイコー!!」

青年「はっ、ははっ…」

踊り子「えぇ? もう出ないの?」

青年「お金分の働きはしたでしょ」

青年(利用されてたまるかっ)

踊り子「むぅん、…まぁ、負け分は取り返したし、許してあげるわ」ニコッ

青年「それにしても、あれは強い部類なの?」

踊り子「強いよー。昨日だけで30人以上食い殺してるからね」

青年「………」ゴクリ

踊り子「でも、青年君の方が100倍強かったね」

青年「そう……な「んなわけねーだろ」

青年「えっ」

勇者「よっ、久しぶり」

青年「……勇者」ギリッ

踊り子「誰?」



勇者「そんな睨むなよ。俺の補助魔法のおかげで助かったんだから」

青年「補助…魔法?」

勇者「そうそう。なんか上流階級しか教えてもらえない魔法でさ、俺勇者だからただで教えてもらっちゃったー」

青年「………」

踊り子「えぇええ!? あなた勇者なのぉ!?」

勇者「そうそう。すごいでしょ」

踊り子「すごいすごい! ねぇ、話聞かせてよー」

勇者「ああ、別にいいけど」

青年「………」

踊り子「じゃ、そういう訳で青年君、ばいばい」

勇者「じゃあな。あ、俺と同じ世界出身ならもっと身なりきちんとしろよな」チャリン

青年「………」

勇者「それはくれてやるよ」ハハハッ



青年(………くそっ)




店。

店主「ありがとうございましたー」

青年「………いっぱい買えた…」

青年(身なりは整えることができたけど……次はどうしよう)

青年「あ、あの…」

店主「はい、なんでしょう?」ニコニコ

青年「異世界人が多く集まる場所とかってありますか?」

店主「異世界人…ですか」

青年「もしくは、野良の異世界人を保護してくれるところとか…」

店主「うーん、それなら協会に行くしかないでしょう」

青年「協会?」

店主「はい、召喚関係を取り締まってるギルドですよ。国営の召喚ギルドは無理でしょうから、ここの角を右に曲がってすぐのギルドへ行ってみたらどうですか?」

青年「……はぁ」

店主「まぁ、一つ言っておくと、天下り集団のあいつらに過度な期待はしないことです」

青年「………分かりました」

召喚ギルド。

受付「はい、こちら召喚ギルドです」

青年「あの……こちらにくれば野良の異世界人を保護してくれるって…」

受付「はい、それではこちらの書類に記入をお願いします」

青年「はぁ…」ピラッ

青年(………)

青年「あの」

受付「はい?」

青年「読めないし、書けないんですけど」

青年(野良なんだから当たり前だろ!)

受付「でしたら、こちらでは保護できませんね」

青年「ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃあ記入できる野良がいるってことか!?」

受付「それはお答えできません」

青年「え……えぇ?」

受付「ほかのお客様もいらっしゃいますので、失礼ですが避けていただけますか?」

青年「………なんだこれ」

店主「まぁ、野良の保護なんて補助金もでない事はどこのギルドもやりたくないでしょうな」

青年「金…か」

店主「国から野良の保護に努めるよう指導があるため、受け皿を一応作って、実際には稼働させない。あいつらのやりそうなことです」

青年「………」

店主「私が言えるのはそんなとこです。店番がありますので失礼します」

青年「………はぁ」

公園

青年(手持ちは銀貨三枚…)チャリッ

青年(調べたら、一番安い宿屋で一泊銅貨5枚。銀貨1枚で銅貨10枚だから食事代も入れて少しはしのげる…)

青年「……どうしたら…」ハァ

青年(そういえば、上流階級にしか教えて貰えない魔法があるってことは、一般人でも使える魔法ってあるのかな…)

青年「とりあえず動くか…」

魔法ギルド。

・火・水・風の初級魔法 銅貨5枚
・火・水・風の中級魔法 銀貨2枚
・雷の初級魔法 銀貨1枚

青年「………安いな」

受付「どれにいたしますか?」

青年「たとえば火の初級魔法でどの程度の威力なの?」

受付「そうですね、藁に火を点けることができます」

青年「水は?」

受付「コップ一杯の水に渦を作ることができます」

青年「風は?」

受付「そよ風程度ですかね」

青年「……火の中級は?」

受付「人を火だるまにできる程度です」

青年(いきなり表現がきついなおい)

青年「水は?」

受付「コップ一杯の水を宙に浮かせて自由に操れます」

青年「風は?」

受付「人間の皮膚程度なら風で切り裂くことができます」

青年「ちなみに雷は?」

受付「強い静電気が発生します」

青年「………」

受付「ありがとうございましたー」

青年(結局火の中級魔法を買ってしまった…)

青年「まぁ、これなら最悪野宿できるしな…」

青年「………ところで、どうやって使うんだこれ?」

説明書【道具屋で別売りしている魔法の腕輪をご購入下さい】

青年「」

公園

青年(手持ちが銅貨三枚になってしまった…)

青年(威力のコントロールができないけど、無制限に使える赤の腕輪にしてみたけど…)

青年「実際、どの程度なのか…」カチャ

青年「お、おお?」

青年(な、なんか腕輪に力を吸い取られ…)

青年「とりゃぁっ!!」ゴォッ

青年「お、おう?」

青年(こ、これ、火だるまどころじゃなくね? 一瞬で消し炭にしてしまうぞ!?)

鑑定士『一年に一人の——』

青年(………平均よりは上ということか…)


青年は火の中級魔法を覚えた。


赤の腕輪「」パキッ

青年「えっ…」

通行人「あー、兄ちゃんそれ無制限ってうたい文句に惹かれて買ったでしょ」

青年「あ…はい」

通行人「どケチで有名な道具屋が無制限の品なんて売るわけないでしょ。一番壊れやすいよ、それ」

青年「え、ええ!?」

通行人「返品しようにも、使い方が悪いだの難癖つけられて結局泣き寝入りすることになるだろうね」

青年「そ、そんな…」

通行人「ま、後二回は使えるんじゃない?」

青年「………最悪だ」

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