妊婦の女「君は?」少年「この病院の幽霊……かな?」(52)

女「へえ……」

少年「信じてくれるの?」

女「まあカーテンすりぬけて入ってきたしね」

女「というか、たぶん幻覚だし」

少年「幻覚とお話ししようとおもうなんておもしろいね」

女「そうね。あなたが『アイツ』に似てたからかもね」

少年「『アイツ』って?夫のこと?」

女「まあ夫じゃないけど……思い浮かべてるような人であってるよ」

少年「へえー。好きな人に似てる幻覚を見るなんてオアツだね」

女「……で、君は何してるの?」

少年「さまよってる」

女「さまよってるねえ……」

少年「こうやって病院を徘徊して患者の様子を見てるんだ」

女「……見てる、って君は患者に干渉できないでしょう?」

少年「うん、たまに君みたいに見える人もいるんだけど」

女「はあ」

少年「色んな人の生や死を見て時間をつぶしてるんだ」

女「………………」

女「君ってもしかして死神みたいなの?だったらどっか行ってよね」

少年「確かに僕と話をして最期は亡くなった人もいるけどさあ」

少年「ここ病院だし。しかも結構危ない人がいれられる」

女「まあね」

少年「僕のせい、とは言えないでしょ?」

女「なんで病院に?」

少年「わからない。僕が誰なのかもなんでここにいたのかも」

少年「この病院の敷地から出られないし……何か関係があるのかもしれないけど」

女「ふうん……」

女「まあ私は家族いないしこの病室私だけだし」

少年「わかった。また来るよ」

女「違う。話し相手になってやってもいいって言ってんの」

少年「あー…………」

女「子供ってあんまり好きじゃないし」

少年「妊婦さんがそんなこと言うんだね……」

女「何も問題ないっての」

別の日
***
女「それで、私以外にはどんな人と話してきたの?」

少年「うーん、色々だね。事故や末期ガン、帝王切開した人もいたし……」

女「……そんなに多く君が見える人がいたんだね」

少年「っても1年に一人いるかいないかってところだけど」

女「(いつからここにいるんだろう)」

少年「それに退院するとみんな僕が見えなくなっちゃうみたいなんだよね」

女「……なるほど」

女「……君も独りぼっちだったんだ」ボソッ

少年「ん?」

女「なんでもないよ」

女「じゃあ何か面白い話しなさいよ」

少年「面白い話……かあ。それじゃ、この前まで入院してた人との話をするね」

***
男「……幽霊!?」

少年「たぶん」

男「だっはー!そりゃユカイだな!」

少年「そう?大体僕が見えた人は『あーもう死ぬんだー』とか言い出すのに」

男「俺、子供のころから幽霊と友達になりたいって思ってたからさ」

少年「そうなんだ。まさかこんなところでなれるなんてね」

男「お墓で幽霊探したなー」

少年「ちょっと引いたよ」

男「おいおい……」

少年「また来るね。そろそろ看護師さんが来るんだ」

男「お前そんなことまでわかるのか?」

少年「まかせといてよ。それじゃあまたね」

男「じゃあなー!また絶対こいよ!」

***
男「ゴホッゴホッ」

少年「やあ」スッ

男「おお、ガキじゃねえか」

少年「その言い方やめない?」

男「いいじゃねえか。お前だって自分の名前がわからないんだからよー」

少年「そうなんだけどさ」

男「……」

少年「あまり調子がよくないみたいだね」

男「ああ。一応、治る病気ではあるらしいんだけどよー」

少年「……大丈夫だよ」

男「はなっから心配してないからお前も心配すんな!」

***
少年「へえ、彼女いるんだ。意外」

男「意外とは失礼だなーオイ」

少年「だってしゃべり方変だし、なんか暑苦しいよ」

男「……彼女にもよく言われるよ」

少年「それで、彼女とは最近どうなの?ここにいちゃあんまり会えないでしょ」

男「ああ。そうなんだ」

少年「早く退院できるといいね」

男「……」

少年「どうしたの?」

男「俺、死んでもいいけどアイツに好きだって言ってから死にたいな」

少年「なんだかこの前と威勢が違うじゃん。どうしたのさ」

男「いや、もしものことだ!もしも!」

少年「きっとかなうよ」

***
男「……ゴホッ」

少年「大丈夫?」

男「ああ……」

少年「この前より顔色悪くなってるね」

男「ああ……そうらしいな……」

少年「……」

男「……今度」

男「今度、外出の許可が出たんだ」

少年「……大丈夫なの?」

男「おいおい、まずは『おめでとう!』だろーが」

男「……好きだって伝えてくるよ」

少年「うん」

男「…………あとお前にしか言えないから言っておく」

数か月後
***
少年「…………」

少年「やあ」スッ

少年「…………」

少年「他の部屋に移ったのかな」

少年「…………さようなら」

***
女「って終わり!?」

少年「うん」

女「じゃあその男に何があったのかもどうなったのかもなんにもわかんないじゃん」

少年「まあ僕は敷地の外には出られないしね」

女「それで『お前には言っておく』ってのは?」

少年「それが忘れちゃって」

女「……なんかセコいね」

少年「まあまあ」

女「今度は楽しめるようなの持ってきてよ」

少年「努力します」

・・・
少年「やあ」

女「あら、久しぶりね」

少年「そうだっけ?」

女「来たってことは何か話をしてくれるんでしょ?」

少年「まあね」

女「そこ座りなよ。座ると楽なのかは知らないけど」


青年「それで、具合はどうなの?」

少女「うん、今はとっても楽なの。はやく外で遊びたいなぁ!」ニコニコ

青年「そっかそっか……よかった」

少女「そんなに心配しなくていいの。それよりお兄ちゃんビデオは?」

青年「うん、持ってきたよ。はい」スッ

少女「ありがとう!……あ、ございます」

青年「いいよ、ずっと病室で暇だもんね」

少女「見終わったらまた返すね!」

青年「うん、いつでもいいからね」

・・・
少女母「いつもごめんね?」

青年「そんな、気にしないでください。それに部活動もあって毎日行けてるわけじゃないですし……」

母「でも……あのこ友達いないからとっても嬉しいと思うわ。めんどくさいかもしれないけどまた来てくれるかしら?」

青年「めんどくさいだなんてとんでもないですよ。それでは」



少年「やあやあ」

青年「君か……」

少年「そんなに毛嫌いしなくてもいいと思うんだけどなあ」

青年「死ぬかもしれないあの娘のところに訪ねてて死んだ人をいつも見てるんだ。うれしいわけないでしょ」

少年「そういうものなのかな?」

青年「僕はもう帰るから。ほっといてくれ」

少年「久々に人と話せたのに残念だなあ」シュッ

青年「それで、9回の裏ランナー一塁で僕に打順が回ってきてね」

少女「えぇっ!0-1のピンチで!?」

青年「うん、すごく緊張したよ」

少女「それでそれで!?」

青年「9回だから相手チームも一番のピッチャーを出してきててねすごく球が速いんだ」

少女「大変なの!お兄ちゃん打てたの??」

青年「それが、最初の2球は簡単に空振りしちゃったよ」

少女「うぅぅぅ……」

青年「でも、3球目からだんだん球が見えるようになってきたんだ。それでファールで粘りにねばった」

少女「……」ゴクリ

青年「それで迎えた10球目!相手のピッチャーが投げるときに『あっ!』って言う顔をしたんだ」

少女「どういうことなの?」

青年「失投、つまりえっと……ちょっと球が弱くなっちゃったんだ」

少女「チャンスなの!」

青年「うん、思いっきり振った。そしたらみるみるボールは飛んで行って……ホームランだ!」

少女「すごい!逆転勝利だよお兄ちゃん!」

青年「……うん、それで昨日はこれなかったんだ」

少女「おつかれさまでした」ペコッ

青年「はは、ありがとう」

・・・
少年「やあ」

青年「……はあ」

少年「まあそんな顔しないで、あの娘が見たらびっくりするよ?」

青年「それで、なにさ?」

少年「いやあ、すごい活躍だったんだねえと思ってさ。おめでとうを言いに来たんだ」

青年「……なんだか君は僕のことを見透かしてるみたいでなんか嫌だよ」

少年「僕はこの敷地からは出られないんだから君の何を知ってるっていうのさ」

青年「・・・・・・」

青年「彼女、移植が必要なんだ」

少年「らしいね」

青年「見つかるかもわからないし……って何言ってるんだ。帰る」

少年「つれないなー」

・・・
青年「どうだった?」

少女「とってもおもしろかったの!でも……」

青年「でも?」

少女「ハッピーエンドの映画がいいな……あ、今度からでいいの」

青年「あー……そっかそうだよね、ごめん」

少女「ああ、謝らないで……」

青年「……」

青年「そうだ、今度は僕が一番好きな映画持ってくるよ」

少女「ほんと?わかった!お願いします」ペコ


青年「そろそろ冬になりそうだね」

少女「そうだねー。冬は寒いし無理してこなくていいよ」

青年「ううん、来るよ」

少女「んー…コホッ…わかった」

青年「少女も寒くなるから風邪とか気を付けてね?」

少女「コホッコホッ……」

青年「大丈夫!?」

少女「……うん、大丈夫なの」


少女「お兄ちゃん来ないの……」

少女「きっと野球がんばってるんだよねコホッコホッ」

少女「一番好きな映画、楽しみだなー」

少女「一回見たけど持ってきてくれたビデオ見よっと」ピッ

少女「……」

少女「…………火垂るの墓は……怖いからやっぱり見れない」ブツッ

少女「コホッコホッ……」

少女「コホッ………コホッ………」

青年「やあ」

少女「おにいちゃん!」

青年「ごめんね、そのー……修学旅行があったんだ」

少女「旅行?」

青年「うん、ほらこれお土産だよ」

少女「わぁい!ありがとう!……ございます」

青年「年上だからって敬語使わなくていいってば」

少女「んー……私も中学校に行けたら先輩にこんなふうに話したのかなって」

青年「……そうだね」

少女「これはなあに?」

青年「神戸プリンだよ。お医者さんにもいいって言われたから食べたいときに食べて」

少女「うん!」ニコニコニコ

青年「…………」

季節戻って秋
部員A「先輩、これしまっといてくださいね」

青年「あ、ああ……」

部員B「惜しかったですねー!先輩!ベンチ入れなくって」

部員A「バカ!惜しくねえだろ!」

ハハハハハハハ

青年「……」

部長「おい、手開いてるなら部員のマッサージしてやれ」

青年「あ、今ちょっと仕事が……」

部長「てめえ……3年でベンチ入れなかったからって断るのはどうなんだよ」

青年「ちがっ、違うんです!本当に仕事」

青年「……行っちゃったよ」

青年「……すっかり遅くなっちゃった」

青年「今日は行けそうにないな……ごめん」

青年「もう学校にも誰もいないな」

青年「こんな部室も学校も全部無くなっちゃえばいいのに……」

青年「……はあ、バカらしい。はやく帰ろう」タッタッタ

友達「おーい!」

青年「あ、友君……まだいたんだね」

友「おいおい、ひどいじゃん!同じベンチ外として仲良くしようや」

青年「ぼ、僕帰るよ」

友「おお、じゃあ一緒に帰ろうぜー」


友「な?いいだろ?一緒に行こうぜ!」

青年「ごめん……泊まりはやめとくよ」

友「まじかよ……ノリ悪いなあ。だから後輩になめられるんじゃねーの?」

青年「……うう」

友「なんつってな!冗談だ冗談!」

青年「………くよ」

友「え?」

青年「僕も友君の家に泊まりに行くよ」

友「よっしゃー!さすがだぜ!」

青年「……はは」

・・・
友「あーなんかゲームも飽きてきたなあ」

クラスメイト「だなー」

青年「ははは……」

友「お前なんかないの?」

青年「あ、えっと……映画なら、あるよ」

友「映画?」

青年「うん、一番好きなんだ」

友「んまあなんでもいいけど見てみようぜ」ピッ

・・・
少女「お兄ちゃん?」

青年「……あっ、ごめんごめんボーっとしてた」

少女「疲れてるの?」

青年「うん……ちょっと寝れなくて……あ、そうだ」

少女「?」

青年「一番好きな、僕が一番好きな映画を持ってきたんだ」

少女「やった!」

青年「でも少女ちゃんが楽しめるかはわかんないけど……」

青年「彼らも……おもしろくないって」

少女「きっとおもしろいよ!」

青年「……」

少女「お兄ちゃんが言うんだもん!ありがとう」ニコッ

・・・
青年「……いるんでしょ?」

少年「やあやあ」

青年「いつも入口で待ち伏せてるよね」

少年「んーまあ僕にとってはそこは出口でも入口でも無いからなー出れないし」

青年「もう僕はここには来ない。ここで待つのはやめるんだね」

少年「ふぅん……」

青年「……なんだよ」

少年「ずっと嫌ってたくせに僕にご丁寧に来ないから待たなくていいよーなんて言うんだなあって」

青年「…………帰る」

少年「あ!それと」

少年「あちゃ……行っちゃった」


少年「君はもう一度来るよ、たぶん」

翌週
友「で、どうすんだ?」

青年「中高一貫だから普通ならこのまま高校で部活続けるんだろうけど……僕はいいや」

友「……そうか、残念だな」

青年「僕、医者になりたいんだ。ちょっと真面目に勉強することにする」

友「おう、頑張れよ!」

青年「うん!」



・・・
少女「お兄ちゃん来ないなあ……」

少女「映画おもしろかったよって言いたいのに……」

部員A「そんじゃ先輩これもよろしくおねがいしまーっす」ドサッ

部員B「後でマッサージお願いしますー」

部員C「悪いんだけどこれ洗濯しといてくんね?」バサッ

青年「わかったよ……」

・・・
青年「だいぶ暗くなってきたな……」

青年「でも、もうあそこには行かないって決めたから……」

青年「気にしなくていいな……時間」

青年「・・・・・・・」

青年「友君、面白い人だなあって思ってたけどあの映画の良さがわからないなんてあきれるよ」

青年「病気っていう壁を乗り越えて無事二人は結ばれて……」

青年「少女ちゃん、気付いてくれたかな……僕の気持ち」

青年「知る由もないけど……」

青年「いっぱい嘘ついちゃったな……謝りたかったけど……嫌われたくない」

青年「嘘がバレるくらいならこの気持ちのまま終わりたいんだ……」

青年「少女ちゃん、ドナー見つかるかな」

青年「……いや、そういうの含めてもう考えないって決めたんだ」

青年「少女のお母さんにもずっと行くように頼まれてたけど……」

青年「少女ちゃんがだんだん悪くなっていくところなんて見たくない……」

青年「…………」

青年「(本当にこれで良いのかな?)」

青年「…………」

青年「……あ、そうだまだ仕事があるんだ」

青年「全部僕に仕事押しつけやがって……」

青年「友にはやらせないのに……」

青年「……部室もユニフォームも全部燃えちゃえばいいのに……」

青年「……いいのに……?」

青年「こんなところにライターが……?」

青年「…………」

青年「……よし、ユニフォームちょっとだけ燃やしてやろう」ニヤッ

青年「そこにバケツもあるし」

青年「……とりあえず仕事全部終わらせようかな?散らかってる……」

青年「まあいいや、燃やすんだ」

青年「……わあ」シュボッ

青年「きれいだ……」

青年「よし、これを……裾につけて……」ジリジリ

青年「……煙が出てきたぞ……」ジリジリ

青年「もうちょっとだけ燃やそう……」ボボ…

青年「すごい……きっとこれ見たらおどろくだろな……」

青年「・・・・・・・・・・・・・・」

青年「そろそろ……やめなきゃな……」ジボボ


青年「よし…やめよう」シュッ

青年「バケツバケ……うわぁっ!」がくっ

青年「(散らかってた荷物にひっかかった!)」ドテッ

ぐらぐら

青年「ああっ、ロッカーが……」

ドーン!

青年「うああああ、痛いぃぃいいいい!!」

青年「脚が……挟まれた……うううう……」

青年「ちゃんと片づけてれ……ああ!」

青年「も、燃えてる……服が……散らばってた服が!」

青年「落ち着け・・・・・・落ち着いて、ここから……出る……」

青年「うー!!うー!」

青年「だめだ!重たい……」

青年「僕は力がないから……」

青年「誰か呼ぶしか無い…?」

青年「こんな時間に誰かいるのかな?それにこれ見たらきっとすごく怒る……」

青年「自分で頑張って出て火を消さなきゃ……」グイイイ

青年「だめだ……出られないよ……」

青年「熱い……熱いぃぃいいいああああああ!!!」

青年「(もう部屋にまで火がうつってる……)」

青年「だれかあああああああああああああ」

青年「(ああ……もうだめなのかな)」

青年「(僕なんにも悪いことしてないのに……)」

青年「どうしてこんな目に……」

青年「あついよお……だれかあ……」

・・・
少女「…………それで手術室から出てきた女の子に男の子が『おつかれさま』って言うの……」

少年「へぇー!」

少女「あなたも見る?」

少年「ううん、僕は長い間同じところに座ってるのが嫌だからさ」

少女「そうなの……」

母「少女!」

少女「え?」

母「大変よ!この病院に青年君が緊急搬送されてきたんですって!」

青年「…………」

医者「意識はどうだ!」

看護師「早く手術室準備してください!」

看護婦「道開けてください!」

カラカラカラカラ

少女「……」

少年「手術だってさ。うまくいったら『おつかれさま』って言わなきゃね」

少女「……」

青年「…………」

医者「意識はどうだ!」

看護師「早く手術室準備してください!」

看護婦「道開けてください!」

カラカラカラカラ

少女「……」

少年「手術だってさ。うまくいったら『おつかれさま』って言わなきゃね」

少女「……」

アカン、眠気の限界や
自分でもgdgdになってるのがわかるぞ
保守ありがとう。まさか保守されてると思ってなかった

少年「どうしたの?」

少女「心配なの」

少年「ああー、そっか。そうだよね」

少女「でもきっと大丈夫なの……」

少女「ハッピーエンドで終わるって……あの映画でも」

少年「まあ今日はこんな時間だし寝なよ。僕があの人のこと見ておいてあげるから」

少女「……わかった」ショボン

少年「はい、おやすみおやすみ」

***

少女「……」

少女「気になって眠れないの……」



少年「よっこいしょっと」

少女「あ、あ、えっと」

少年「あの人の手術ならちょうど今終わったよ」

少女「え!」パァー

少年「お兄ちゃん死んじゃったよ。おつかれさまだねー」

少女「え・・・・・・・・・・・・・・・・・?え?」

少女「うそ!絶対うそ!」

少年「って言われてもなあ……」

少女「んっ」タタタタ

少年「え……まさか手術室いくつもり?」

***

少女「!」

医者「………」スタスタ

少女「(おにいちゃんを手術室に運んでた人なの)」

少女「お、おにいちゃんは?」

医者「君……ちゃんと部屋で寝てなきゃいけないだろう……」スタスタ

少女「…………」


***
看護婦「本当に……見るんだね?」

少女「はい」

看護婦「体中焼け焦げてるんだ……本当にショックなものだと思うよ?」

少女「はい」

少女「……最後にお別れさせてください」

少女「おわ……」

少女「…………うっ、ううっ」

看護婦「…………わかった」

少女「あ、りがとう、ございます」

少女「お兄ちゃん」

青年「」

少女「……ほんとにお兄ちゃんなの……?」

青年「」

少女「……お兄ちゃん」

青年「」

少女「あの映画、おもしろかったよ」

青年「」

少女「・・・・・・・・ねえ、」

青年「」

少女「あの・・・・・・映画・・・・・・・・いつ・・・・・」

青年「」

少女「・・・・・・・・返したら・・・・・・いい・・・・・かなあ・・・・・・・・?」

少女「わたし、あの映画の人たちみたいに頑張って病気治すよ……」

青年「」

少女「難しくてなんであそこで男の人が女の人を抱きしめてたのかわかんないけど」

青年「」

少女「今は、わたし、おにいちゃんを抱きしめたい……」

青年「」

少女「だから……」

青年「」

少女「おにいちゃんも……はやく」

青年「」

少女「ううう……うう…………」

青年「」

***
女「それで?」

少年「え?終わりだけど?」

女「男の子は災難だったわね……色んな意味で」

少年「うんうん」

女「女の子にも気持ちは伝わってないみたいだし」

女「映画も返せないし、嘘はつきっぱなし……」

少年「そりゃ死んだんだからあたりまえじゃん」

女「……で、女の子は?ドナーみつかったの?」

少年「ううん、あのあと2年くらいで死んじゃった」

女「やっぱりあんた……近づいたら死ぬとかじゃないの?」

支援ありがとう
なんか思いついてココが残ってたらまた書きに来ます
一応第一部完ってことで

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