妹「魔法少女らしいよ」兄「俺が?」 (217)

妹「そこに落ちてる水色の魔法のステッキが今そう言ったよ」

兄「音が出るオモチャでしょ」

水色ステッキ「オモチャではない」

妹「ほら! しゃべってるよ!」

兄「無線機能があるオモチャでしょ」

水色のステッキ「これなら信じてくれるかな?」フワッ

妹「ほらほら! ちょっと浮いたよ!」

兄「宙に浮く機能があるオモチャでしょ」

妹「なんでそこまでオモチャだと思いたがるの?!」

妹「そんなオモチャないから」

兄「って事は……本物の魔法のステッキ……?」

水色ステッキ「その通り。私は魔法の国からやってきた妖精」

兄「……おいおいおい! これ超凄い物じゃん! 魔法なんて本当にあったんだ!」

水色ステッキ「私は今、この世界にやってきたばかりで力を失ってしまっているんだ」

水色ステッキ「そのため、今の私はこの魔法のステッキの外に出る事はできない」

水色ステッキ「だから君達に力を貸してほしいと思っているのだが」

兄「あ。さっきコンビニで買ったアイスが溶けちゃうし家に帰ってから話を聞こうよ」

妹「魔法を見た驚きよりアイスを優先しよった」

水色ステッキ「待ってくれ。もう魔力が持たないんだ。ここで話させてくれ」

兄「いいけど」

水色ステッキ「私は君達を魔法少女に変身させる事ができる」

水色ステッキ「君達ふたりには、魔法少女になってもらって私を手伝ってほしい」

妹「魔法少女かぁ~」

兄「さっきから俺も含めて魔法少女って言ってるけど、俺も魔法少女になれるの?」

水色ステッキ「もちろんなれる。君達兄妹は魔法少女になれる基準を満たしているからな」

兄「えっ。俺、少でも女でもないんだけど。最低限の基準すら満たしてなくない?」

水色ステッキ「この世界の基準ではそうかもしれないが、我々魔法の国の基準だと君は適正者なんだ」

兄「魔法の国の基準が見えない」

妹「それで何を手伝えばいいの?」

水色ステッキ「この世界には、私以外にもステッキの妖精が来ているんだ」

水色ステッキ「私は皆を集めて元の世界に戻らなければいけない。君達にそれを手伝ってほしいんだ」

兄「うーん……イマイチあんたらの事情が見えない」

妹「どうやったら魔法少女に変身できるの?」

水色ステッキ「……情けない話だが、今の私は力を失っていて、君達を変身させられないんだ」

水色ステッキ「だが、もう数日もす……魔力……回復……から……」

妹「あれ? もしもし? もしもーし!」

水色ステッキ「あ……メだ……魔……切れ…………」

兄「おーい?」

水色ステッキ「……」

妹「しゃべらなくなっちゃった……」

兄「電波が悪いのかな」

妹「携帯電話じゃないんだから。とりあえず持って帰ろう」ヒョイ

妹「おーすごい。それっぽいよお兄ちゃん。水色でハート付いててかわいい」

兄「俺にも見せて」

妹「いいよ。はい」

兄「へー。よく出来てるなー……ん?」

女怪人「……あなたがステッキの持ち主ね」ザッ

兄「えっ、何この黒マントの人」

女怪人「痛い目を見たくなければ、大人しくそのステッキを渡しなさい」

兄「痛い格好の人が話しかけてきた」

妹「コスプレイヤーの人かな」

女怪人「もし渡さないのなら、力ずくで奪う事になるわよ」

妹「昼間っから黒い服に黒いブーツに内側が赤色の黒マント……だいぶ恥ずかしいね」

兄「何気に結構深いスリット入ってるし、おっぱいでかいからOK」

妹「そこ基準なんだ」

女怪人「……聞いてる?」

兄「Gくらいありそう」

妹「いや、あれだけ胸が開いてる服でもね、意外と盛れたりするんだよ」

女怪人「……」

女怪人「……あなたがステッキの持ち主ね」

女怪人「痛い目を見たくなければ、大人しくそのステッキを渡しなさい」

女怪人「もし渡さないのなら、力ずくで奪う事になるわよ」

兄「同じ事を2回も言って来たよこの人」

女怪人「聞いてたの?! 聞いてたうえでさっきの会話?!」

女怪人「なめられたものね。だったらそのステッキ、力ずくで奪わせてもらうわ!」バサァ

兄「なっ、何を……うわっ!」

妹「お兄ちゃん!」

女怪人「とうっ」ガシッ

兄「えっ普通にステッキを引っ張ってきた」

女怪人「ふぬぬぬぬうううう!」グググ

兄「こんなナチュラルに力ずくで奪いに来るの?!」グググ

女怪人「ふうおおおおおおお!」グググ

兄「むぐぐぐ……」グググ

妹「お兄ちゃん頑張って! オーエスオーエス!」

兄「あ、あいつ、ステッキのハートが付いてる方をつかんでるから引っ張る力が安定してる……」グググ

女怪人「ふぬぬぬぬぬ……」グググ

妹「……」グイ

女怪人「えっ?! ちょっ、何?!」グググ

妹「……」グイグイ

女怪人「痛い痛い! 私の指を一本ずつ変な方向に曲げないで!」グググ

女怪人「きゃっ!」スポンッ

兄「うおっ」ドテッ

女怪人「あいたた……」

兄「いてて……」

妹「お兄ちゃん大丈夫? ステッキは?」

兄「ああ。ステッキは守ったよ」

女怪人「……仕方ない、こうなったら私の真の実力を見せてあげる」

女怪人「私を怒らせた事を後悔するといいわ!」ズズズ

兄「なんだなんだ?」

妹「見て! あの女の人の周りに、黒いモヤのような物が出てきたよ?!」

女怪人「闇よ! その男を覆い隠しなさい!」ズオォォォォォ

兄「うわっ! 黒いモヤが急に広がってきた!」

妹「お兄ちゃん?! お兄ちゃーん!」


ズオォォォォォ……


妹「嘘……」

妹「お兄ちゃんと女の人が……消えちゃった……」

兄「なっ……なんだこれ?! 周りが真っ暗になった?!」

兄「どうなってるんだこれ?! 妹、どこだ、どこにいるんだ!」

兄「くそっ、そこにいる恥ずかしい格好の女の人以外、何も見えないぞ……!」

女怪人「驚いたかしら? これが私の能力。その名も……」

女怪人「……」

女怪人「……ここは私の『空間』よ。あなたはもはや逃げられないわ」

兄「能力の名前考えてなかったんだ」

女怪人「こっ……ここから逃げたければステッキを渡すことね」

兄「渡さないと言ったら?」

女怪人「当然、力ずくで奪わせてもらうだけよ」

女怪人「覚悟しなさい!」バサァ

女怪人「とうっ」ガシッ

兄「えっまた普通にステッキを引っ張ってきた」

女怪人「ふぬぬぬぬうううう!」グググ

兄「結構凄そうな能力持ってるのに、ここはアナログなの?!」グググ

女怪人「ふううううあああああー!」ググググ

兄「ふおおおおおおー!」ググググ

女怪人「うううううんんんんんー!」グググググ

兄「土曜の昼間から何やってるんだろう俺」グググググ

女怪人「はあ、はあ……ふうううーん!」グググググ

兄「……さっき引っ張られた時から薄々気付いてたけど」グググググ

女怪人「んん……んんんんんー!」グググググ

兄「えいっ」グイッ

女怪人「きゃっ!」ドテッ

兄「この人意外と弱い」

女怪人「はあ、はあ……やるわね……はあ、はあ」

兄「高校時代ボードゲーム部だった俺に負けるって相当弱いと思うんだけど」

女怪人「はあ、はあ……」

兄「顔真っ赤になってるし」

女怪人「……将棋、とか……」

兄「え?」

女怪人「……将棋とか……コマを打つ時とか……腕が鍛えられるじゃん……」

兄「すさまじい角度から言い訳してきた」

兄「そもそも他に魔法とか使えないの?」

女怪人「……」

兄「使えないんだ……」

女怪人「……疲れた……もう無理」ガクッ


サァァー


兄「うわ、闇が一気に晴れた」

妹「お兄ちゃんがいなくなっちゃった……」

妹「あんな魔法を使える相手だし、大変な目に遭ってるかも」

妹「どうしよう、お兄ちゃんを助けないと! あ、でもステッキ……」

妹「うわー! 私どうすればいいの?!」


少年の声「……君のお兄さんがステッキを持ってるんだね?」


妹「……誰?」

薄桃色の猫「こんにちわ」

妹「わっ、ピンク色の子猫?! 二本足で立ってしゃべってる!」

薄桃色の猫「僕と一緒にお兄さんを助けに行こう。君にはこのステッキを貸してあげるよ」

妹「あっ、これさっきのステッキと似てる! ピンク色! このステッキは何?」

薄桃色の猫「これは僕のステッキさ」

妹「あなたのステッキ?」

薄桃色の猫「そう。すでに聞いたかもしれないが、ステッキにはそれぞれ妖精が付いているのさ」

妹「じゃあ、あなたがこのステッキの妖精ってこと?」

薄桃色の猫「そうさ。おっと自己紹介がまだだったね」

薄桃色の猫「僕は魔法のステッキの妖精、ロップさ。よろしくね」

妹「ステッキの妖精? ロップ?」

妹「おおー、なんか魔法少女ものっぽくなってきた!」

ロップ「ちなみにフルネームは、御像ロップ(ごぞうろっぷ)だよ」

妹「ごっ、ごぞうろっぷ……」

ロップ「幸い僕は力を取り戻してるから、今なら君を魔法少女に変身させられるよ」

妹「変身すると何が起きるの?」

ロップ「ビームとか撃てるようになるよ」

妹「凄いざっくりした説明」

ロップ「それから、身体能力が格段に高くなる。ちょっとやそっとの敵には負けないよ」

妹「ビームよりそっちを先に説明すべきじゃないの?」

ロップ「試しに変身してみるかい?」

妹「あのー……魔法少女に変身するとさあ、何かこう……デメリットみたいなのってあったりする?」

ロップ「デメリット?」

妹「普通の人間に戻れなくなったりとか……」

ロップ「ああ、大丈夫。魔法少女は一時的なものに過ぎない。変身が解けたらただの人間に戻るよ」

妹「そうなんだ、よかった」

ロップ「あ。でも、変身する時に着ている服が物凄い勢いで破れ飛ぶから注意して」

妹「ええーっ」

妹「変身する時に裸になるのはなんとなく予想してたけど、そんな豪快な感じで裸になるの?!」

ロップ「大丈夫さ。全身が光り輝くから、裸が見えたりしないよ」

妹「いやでも、服がもったいないよ……それに服が破れるなら変身が解けた時に結局裸になるじゃん」

ロップ「裸にはならないよ。破れ飛ぶのは服のソデの部分だけだから」

妹「服のソデだけ?!」

ロップ「魔法にも限界があるんだよ」

妹「そんな限定的な部分に限界が来るの?!」

ロップ「変身してみるかい?」

妹「ちょ、ちょっと待って! 破れても大丈夫な服に着替えてくる!」



女怪人「私の能力、微妙に時空を歪めるみたいで」

女怪人「闇の空間の中を少し動いただけで離れた場所に移動しちゃうみたいなのよ……」

兄「ええーっ」

兄「じゃあこの森がどこの森なのかは分からない訳?」

女怪人「うん……」

兄「あ、でも向こうに見えるビルは見覚えあるな。たぶんうちの近所だ」

女怪人「そうなの? じゃああのビルに向かって進めばこの森を抜けれるの?」

兄「いや、あの方向は途中が崖になってるから無理」

兄「こっちの道から川に出て、川を下っていくしかないな」

女怪人「こっちの道って……ヤブにしか見えないけど」

兄「よし行くか」

女怪人「ちょ、ちょっと……」

兄「ようやく川に出たな」

女怪人「暑い……疲れた……なんか植物の種が服に付きまくったんだけど」

兄「ファンタジーな格好なのにくっつき虫だらけとか」

兄「……そういえばあんた、なんでこのステッキ欲しがってるわけ?」

女怪人「私のボスに、そのステッキを奪うように言われたのよ」

兄「ボス? あんたもしかして、何かそういう組織みたいなのの一員なの?」

女怪人「ええ。悪の秘密結社『世界征服したいです隊』の一員よ」

兄「組織名に『です』付けちゃったよ。しかも最後に『隊』付けちゃったよ」

兄「九州の方言みたいになっちゃったよ」

女怪人「ボスも『なんかダサい』って言ってた」

兄「せっかく夢を追いかけてるんだから、もっとかっこいい名前付けようよ」

女怪人「そうねー……何かいい名前ないかしら?」

兄「うーん……あ、新聞の切れ端が落ちてる」

兄「ドイツサッカーでシュヴァインシュタイガーが先制点」

女怪人「シュヴァインシュタイガーって名前、なんかかっこいいわね」

兄「じゃあシュヴァインシュタイガーで」

女怪人「ボスに言ってみる」


※シュヴァインシュタイガー(Schweinsteiger) 意味:豚小屋

女怪人「ともかく、まずこの国を力で支配するために、そのステッキが必要なのよ」

兄「ふーん……お、自販機がある」

女怪人「ええーっ、こんな所に自販機があるんだ……」

兄「川でバーベキューとかする人向けだろうな」

女怪人「この国の事情とかあまり知らないけど、この国って色んな所に自販機があるわよね」

兄「治安がいいのと、ここまで電気を引けるからだな」

女怪人「いい国ね」

兄「この国を力で支配するとか言ってた人のセリフじゃないよね」

兄「ここに自販機があるって事は、このまま歩けば街に出られるって事だな」

女怪人「ノド乾いた……ん? あれ? サイフどこだったかしら」ゴソゴソ

兄「そもそもその服にサイフをしまうような部分あるの?」

女怪人「……サイフ忘れた」

兄「おごるよ」

女怪人「えっ?! いいよ、悪いよ」

兄「いいからいいから」チャリンチャリン

女怪人「じゃっ、じゃあ……これ」ガコン

兄「ホットココアを買いよった」

女怪人「あー生き返るー」

兄「ホットココアをここまで爽やかに飲む奴はじめて見た」


ゴゴゴゴゴゴゴ……


兄「……ん?」


《ズッ友だょ…》ゴゴゴゴゴゴゴ……


兄「なんだ?」

女怪人「これは……!」

ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「なっ、何か降ってくる!」

ズズウウウウウゥゥン……!

兄「なんだ、この4メートルくらいある冷蔵庫みたいな形のロボットは!?」

ロボ《ズッ友だょ…》プシュウウウウウウ

兄「こええー! 土煙あげて目を光らせながら『ズッ友だょ…』とか言ってる!」

女怪人「これは……我が組織が保有する遠隔操作ロボット」

兄「遠隔操作ロボット……!」

女怪人「その名も、『戦うロボ』」

兄「その絶望的なネーミングセンスはどこから来るんだ」

ロボ《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「てかこいつ、なんでさっきから『ズッ友だょ…』しか言わないんだ」

女怪人「音声変換機能? とか言う物が壊れてるそうなのよ」

ロボ《……》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「あれ、何か他の声が聞こえる」

女怪人「音声変換機能の代わりに普通の無線がくっつけてあるみたい」

ロボ《背中のメモを読め》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「エンジン音とズッ友のせいで全然聞こえない」

女怪人「背中がナントカって言ったわね。あら、紙が貼ってあるわ」

兄「なんて書いてあるんだ?」

女怪人「……ステッキの持ち主が渡すのを拒否するのなら、このロボで持ち主ごと連れ帰る、ですって」

兄「なっ、何だって?!」

ロボ《この女は役に立たなかったようだな》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「え? 何?」

女怪人「聞こえない」

ロボ《本当の力ずくという物を、私が見せてやろう》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「『本当の私を見て』とか言ってるっぽいけど」

女怪人「遠隔操作してるロボを通して言われてもねぇ……」

ロボ《くらえ!》《ズッ友だょ…》ズオオオオンッ

兄「うわっ、殴りかかって来る!」

ズドンッ!

兄「あぶねぇ!」

女怪人「ちょっと、何のつもりかしら! ステッキを奪うのは私の役目でしょう!」

ロボ《え? 何? 聞こえない》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「なんか相手も聞こえてなさそうだけど」

ロボ《ズッ友だょ…》プシュウウウウウウ

女怪人「ロボのジェスチャー的に、私は見ていればいいみたいだけど……」

兄「ちょっちょっと待って! こんなのに本気で殴られたら死んじゃう!」

女怪人「そう言われても……私こっち側だし……」

ロボ《ステッキを渡すか、ここで死ぬか選ぶがいい》《ズッ友だょ…》ズオオオオンッ

兄「え? 何って? 何ぶがいいって?」

ロボ《ほう、ステッキを渡さないか。見上げた勇気だ》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

ロボ《だが少しばかり愚かだったな。ここで朽ち果てるがいい》《ズッ友だょ…》ズオオオオンッ

兄「う、うわーっ!」


妹「……お兄ちゃーんっ!」

兄「妹!」

妹「お兄ちゃん……はあはあ……お兄ちゃん……」

兄「何か背徳感を感じるのはなぜだろう」

妹「そこのロボ! お兄ちゃんから離れなさい!」

ロボ《今お兄ちゃんって単語が聞こえたぞ?!》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「何かの単語に反応した」

ロボ《録音するからもう一回言ってくれ!》《ズッ友だょ…》ズシンズシン

妹「ひえぇっ?! ズッ友って何が?!」

兄「あっ妹の方を向いた!」

兄「やめろ、妹に手を出すな!」ダッ

女怪人「あっ、ちょっと!」

ロボ《邪魔だ!》《ズッ友だょ…》ブンッ

ドゴォッ

兄「ぐえっ!」ドサァッ

女怪人「……!」

妹「お、お兄ちゃん!」

兄「か……はぁ……っ! うう、腹いてえ……」

ロボ《ああもう雑音が多すぎて全然ダメだ》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

ロボ《もっと近付こう》《ズッ友だょ…》ズシンズシン

兄「ゲホッ、や、やめろ……!」

ロボ《ズッ友だょ…》ブンッ

ドゴォッ

兄「ぐあぁっ!」ドサァッ

妹「いやーっ! お兄ちゃーん!」

女怪人「ま、待ちなさい!」

女怪人「あなたはステッキを奪いに来たんでしょう! その男をそこまで痛めつける必要なんてないはずよ!」

ロボ《え? 何?》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「や……めろ……!」ポタポタ

妹「お兄ちゃん、血が……!」

ロボ《雑魚がうっとうしいな。先に片付けるか》《ズッ友だょ…》プシュウウウウウウ

兄「はあ、はあ……うう……」

ロップ「妹さん、お兄さんが危ない! 魔法少女に変身するんだ!」

妹「うん!」バッ

女怪人「! あれはステッキ! 他にもステッキがあったの?!」

妹「変身!」

ロップ「あ。上にかかげるんじゃなくて、こう、杖を地面と垂直にした状態で前に突き出して」

妹「はい」

ロップ「あと合言葉は『チェンジ・ラブリー・インシュレーション』だから」

妹「インシュレーションってどういう意味なの?」

ロップ「断熱材」

妹「断熱材?!」

妹「なんで断熱材なの?!」

ロップ「魔法少女の服が断熱材で出来ているからさ」

妹「なんか夢がないよ!」

ロップ「そんな事ないよ。魔法少女の服に使われている断熱材は特別なんだ」

ロップ「魔法少女の服は魔法の国の技術の結晶」

ロップ「とても薄い布なのに、あらゆる攻撃を受け流せる、夢の衣服なのさ」

妹「それを断熱材って呼んじゃう魔法の国の人達に夢がないよ!」


ロボ《とりあえずこの男が持ってるステッキを先に回収するか》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

兄「うう……」


ロップ「説明は後だ、このままだとお兄さんが!」

妹「うん! よーし!」バッ

妹「チェンジ・ラブリー・インシュレーション!」キラキラキラキラ

妹「わ、なんか全体的に光りだした!」キラキラキラキラ

パカッ

妹「ステッキの先のハートがフタみたいに開いた?! あ、なんか魔法っぽい紋章がある!」キラキラキラキラ

ロップ「今度はステッキを横向きにして、その紋章に、もう片方の手をかざすんだ!」

ロップ「それでその姿勢のまま『マジック・オン』って言うんだ!」

妹「こうだね! マジック・オン!」ピキーン

シュピーン

妹「わっ、髪の毛が光りだした!」キラキラキラキラ

妹「わー! 私の体が回る回る! 私これどうしてればいいの?!」キラキラキラキラ

ロップ「自然体でいいよ。手を広げたりするといいんじゃないかな」

妹「私の服も光りだしたよ!」

ロップ「いいぞ、君は予想以上に魔法少女に向いてそうだよ!」

キラリラリーン

妹「わっ、髪の毛が伸びてピンク色に!」


キラリラリーン

妹「靴下がフリル付きのニーソックスに!」


キラリラリーン

妹「ズボンがフリルのミニスカートに!」


バリバリバリババーン

妹「いやー! 服のソデが凄い勢いで破れ飛んだああ!」

キラリラリーン

妹「あ、でもソデが破れた後にファンシーな感じの服になった」

妹「肩もパフスリーブで魔法少女っぽい感じになったし。ソデ破れる意味あるのこれ」


キラリラリーン

妹「わ、頭にリボンが付いた?!」


シャキーン

妹「わー、全体的に魔法少女っぽくなった!」

妹「魔法の国の人達のセンスに若干不安を感じてたけど、変な衣装じゃなくてよかった!」

ロップ「変身成功だね!」

妹「全体的にピンク色かわいい!」

兄「おお……」

女怪人「おおー」

ロボ《チッ、変身されたか……》《ズッ友だょ…》ズズズズズズ……

妹「お兄ちゃんを血まみれにするなんて許さない! 覚悟!」

ロボ《だがしょせん小娘。わがロボからすればお前など》《ズッ友だょ…》プシュウウウウウウ

ロボ《捕まえて『お兄ちゃん』を録音してやる!》《ズッ友だょ…》ズシンズシンズシン

妹「く、来る!」

ロップ「パンチしてくる! よけるんだ!」

ロボ《くらえ!》《ズッ友だょ…》ブンッ

妹「きゃっ!」

ドォーンッ

兄「妹ーっ!」

兄「妹!」

妹「ぐぐぐぐ……」ググググ

ロボ《ほう、受け止めるとは》《ズッ友だょ…》プシュウウウウウウ

女怪人「これが魔法少女の力……!」

ロボ《だがこちらの右腕を両手で受け止めていては、左腕に対処できまい》《ズッ友だょ…》ズズ……

ロボ《要するに、ボディがガラ開きという事だ!》《ズッ友だょ…》ブンッ

ドゴォ

妹「がはぁーっ!」ビューン

兄「い、妹がすごい勢いで飛んでいった!」

ドカァン

妹「ぐあぁ!」

女怪人「木に叩きつけられたわ!」

兄「妹! 大丈夫か!」

妹「うう……大丈夫……お兄ちゃん心配しないで……」

メキメキメキ……ドサァー

兄「き、木が折れた……そこまでの勢いだったのか……」

ロップ「違うよ」

兄「え?」

ロップ「敵の攻撃を軽減するために、攻撃を受けた瞬間、魔法で後ろに飛んだんだ」

兄「そのせいで木に叩きつけられてますけど」

ロップ「妹さんは、まだ魔力のコントロールに慣れてないみたいだから仕方ないよ」

兄「結構危なっかしいな魔法少女」

妹「うう……でもあんまり痛くない!」

ロボ《立ち上がるとは。なるほど。さすが話に聞く魔法少女だ》《ズッ友だょ…》プシュウウウウウウ

ロボ《だがダメージはしっかり受けるようだな。次で終わりにしてやろう》《ズッ友だょ…》ギュイイイイン

妹「ロップ! ビームどうやって撃つの?!」

ロップ「呼び捨て?」

妹「ロ……ロップくん! ビームどうやって撃つの?!」

ロップ「ステッキを相手に向けて、強く念じるんだ!」

妹「何を念じればいいの?!」

ロップ「般若心経」

妹「ええー」

ロップ「何でもいいんだけど、魔法の国では般若心経が効率いいって言われてるんだ」

妹「なんか魔法の国のイメージがどんどん変になっていくよー」

ロップ「『お菓子を食べたい!』とかでもいいよ」

妹「般若心経との差が凄い」

ロボ《トドメだ!》《ズッ友だょ…》ズシンズシンズシン

ロップ「早く般若心経を心の中で唱えるんだ!」

妹「魔法少女が般若心経を唱えるイメージが沸かないよ!」

ロボ《はぁっ!》《ズッ友だょ…》ブオン

妹「ど……どりゃあああああー!」

カッ

兄「!」

女怪人「!」

ごはん食べるのでちょっと空けますごめんなさい
戻ってきて落ちてたら立て直します

キラキラキラ……ドシュウウウウウウウウウン!!!

ロボ《なっ……?!》《ズッ友だょ…》

ドッカーーーーーーン



兄「す、凄い」

ゴゴゴゴゴ……

妹「や……やったの?!」

ゴゴゴ……


ロボ《……》シーン……


兄「完全にぶっ壊れたな」

ロボ《……》


……


ロボ《ズッ友だょ…》ギュイイイイイン


妹「?!」

兄「ま、まだ動くのか!」

ロボ《ズッ友だょ…》ズシン……ズシン……

女怪人「無線が完全に壊れたみたいね」

兄「ズッ友の方が壊れればまだマシだったのに」

ロボ《ズッ友だょ…》ズシンズシンズシン

ロップ「さあ妹さん、必殺技でトドメを刺すんだ!」

妹「うん!」

ロップ「必殺のボディーブローを叩き込んでやれ!」

妹「ボディーブロー?! 必殺技ボディーブローなの?!」

ロボ《ズッ友だょ…》ズシンズシンズシン

ロップ「必殺技を発動する合言葉は、君の頭の中に自然と浮かんでくるはずだよ!」

妹「よ、よーし、いくよ!」

ロボ《ズッ友だょ…》グオオオオン!

妹「はああああー!」キュイイイイン!

ロボ《ズッ友だょ…》グオオオオオオオオ

妹「血ヘド吐き散らして視界から消えてね☆」キュイイイイイイイ

妹「必殺! マジカル・スクリュー・ボディ――――ブロォォォ――――!!!」

ロボ《ズッ


カッ



ズドオオオオオオオオン!!!


兄「うおっ! 風圧が!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「凄い砂ぼこり……はっ、妹! 大丈夫か!」

妹「……必殺技のセリフがだいぶ可愛くなかった」

兄「そもそも必殺技がボディーブローな時点で察するべきだな」

兄「うおぉ、ロボが岩壁に小さいクレーター作ってめり込んでる」

妹「これが魔法少女の力……」

ロップ「お兄さん、お兄さんのステッキは?」

兄「そうだ。拾っておかないと……あれ?」

女怪人「お探しのステッキはこれかしら」

兄「あっ、しまった! 返してくれ!」

女怪人「ロボを倒したのは凄かったけど、詰めが甘かったわね」ズオォォ

妹「いつぞやの黒いモヤが!」

女怪人「じゃあね」ズオォォ

兄「待てーっ!」

ズオオォォォォォ……

妹「き、消えちゃった……」

ロップ「……なるほど」

ロップ「つまりあの女の人は黒いモヤで姿を隠せるけど、どこに出るかは自分でも分からないと」

兄「はい。俺の時から察するに、そんなに遠くまでは行ってないと思います。ホントすいませんでした」

ロップ「いいよ。あのステッキの妖精は力を失ってたし、敵の手に渡ること自体は予想していたよ」

ロップ「ただ問題はあの女の人の行き先だね」

ロップ「どこに出るか分からないって事は、僕達もどこを探せばいいかも分からないって事だ」

妹「どうしよう」

ロップ「ひとまず数日様子を見よう」

妹「え? そんな悠長な事してていいの?」

ロップ「ああ。ステッキの妖精が力を取り戻せば、彼から場所を知らせてくれるはずだ」

ロップ「お兄さんがここに居るって分かったのも彼の連絡のおかげなんだよ」

ロップ「ただ、彼はその連絡で力を使い果たしてしまったんだ」

ロップ「彼が復活するまでしばらく様子見するしかないのさ」

ロップ「あとお兄さんのケガも心配だからね。ひとまず病院で診てもらおう」

兄「あ、ああ」

ヒューン

妹「あ、変身解けた」

ロップ「変身できる時間は、個人差があるけど最大5時間くらいだから気をつけてね」

兄「5時間」

妹「地味に長い」

兄「あれっ妹、服のソデが破れてタンクトップ状態になってるけどどうしたのそれ」

妹「ああ! 忘れてた! こんなんじゃ外歩けないよ!」

兄「凄いワイルドじゃん。格ゲーのキャラみたいじゃん」

ロップ「ああ、お兄さんには言ってなかったね。変身すると服のソデが破れ飛ぶんだよ」

兄「ええー」

妹「変身が解けたら格ゲーのキャラみたいになってる魔法少女なんてやだよ!」

数日後・病院

妹「お兄ちゃん、怪我は大丈夫?」

兄「ああ。幸い骨も無事だし、明日にも退院できそうだよ」

兄「それより警察には言ったの?」

妹「言ったけどイマイチ信じてもらえなくて……一応傷害事件として捜査はするって」

兄「変身する所やロップを見せれば信じてもらえそうなんだが」

妹「なんか変身するための力がなくて変身できなかった……」

妹「ロップくんも前の変身で力使っちゃったって言って杖の中に閉じこもっちゃってて」

兄「そうなんだ」

妹「私おまわりさんの前で『チェンジ・ラブリー・インシュレーション!』とかやったんだよ?!」

妹「5秒くらいの沈黙のあと、おまわりさんの方見たらすごい遠い目してて死ぬかと思った!」

兄「そ……それは大変だったね……」

翌日・自宅

ロップ「ようやく魔力が戻ったよ。さあステッキを取り返しに行こう」

妹「じゃあもう1回警察に行こう!」

ロップ「それはダメだよ。事態が大きくなったらステッキを狙う連中が増えちゃうよ」

兄「だとしても俺達だけでどうにかなるのか?」

ロップ「魔法少女に変身できる人間がここに2人もいるじゃないか」

兄「相変わらず俺が魔法少女に数えられてる件」

ロップ「それに魔法少女とステッキは引かれあうんだ。君達がいないとステッキは探せないよ」

妹「そのもう1つのステッキが今どこにあるかは分かるの?」

ロップ「一定の方向からステッキの魔力を感じる。そこに向かっていけばきっと見つかるはずだよ」

兄「そこに行けばいいのか」

妹「私が行くよ。お兄ちゃんは留守番してて」

兄「いや俺が行くよ。妹は留守番してなよ」

ロップ「めんどくさいから2人とも来ればいいよ」

妹「めん……」

兄「そうこうしてるうちに悪の組織の建物の前に来てしまったわけだが」

妹「ここ閉鎖されたピクニックコースの休憩所じゃん。こんな所にあるの?」

兄「入り口の上にある看板に組織名がデカデカと手書きで書いてあるから間違いない」

妹「『世界征服したいです隊』を×印で消して『シュヴァインシュタイガー』って書いてある」

兄「お。俺の採用されてる」

妹「でもよく見ると×印は『世界征服したい』までしか消してないね」

妹「これだと『シュヴァインシュタイガーです隊』じゃない?」

兄「これはひどい」

ロップ「そろそろ着いたかい?」

妹「あれ? ロップくん今までどこに居たの?」

ロップ「ステッキの中で寝てたよ」

兄「いい身分だな……」

ロップ「じゃあ入ろうか」

妹「いきなり入っちゃって大丈夫なの?」

ロップ「ああ。もう1つのステッキの妖精から、警備はザルだって連絡来てるから」

妹「警備ザルなんだ」

兄「なんか悪の組織ってたいてい警備ザルなイメージ」

兄「ここに忍び込んであのステッキを取り戻せばいいんだな」

ロップ「いや。取り戻すステッキは2つさ」

妹「2つ? これとお兄ちゃんが取られたの以外にもステッキがあるの?」

ロップ「ああ。この世界には3つのステッキが来てるんだ」

兄「その3つ目のステッキもこの組織の中にあるのか」

ロップ「そういう事さ」

妹「あ。休憩所の床に鉄でできたフタみたいなのがある。ここが入り口なのかな」

ロップ「みたいだね。さっさと入ろうか」

兄「鍵ががかかってるみたいだぞ」

ロップ「大丈夫、この鍵くらい余裕で開けれるよ」

兄「え?」

妹「魔法で開けれるの?」

ロップ「いや普通にピッキングする」

兄「えっ」

ロップ「単純なピンシリンダー錠だからタンブラーを押してシアラインを整えれば簡単に開くよ」カチャカチャ

兄「何言ってるのか全然分からない」

ガチャ

ロップ「ほら開いた」

兄「お前こええよ」

妹「なんでそんな道具持ってるの?! なんで使い方知ってるの?!」

地下・秘密基地


女怪人「ボス」

ハゲ「どうした」

女怪人「入り口に書いてある組織名なんですけど……なんで『です隊』付いたままなんですか」

ハゲ「組織名は重要な要素。丁寧に名乗りたいからこそ『です』は必要なのだ」

ハゲ「あと『隊』付いてないと組織って事わからないし」

女怪人「そうですか……」

デブメガネ「フッ。そんな下らない事にこだわるようでは、世界征服などできんぞ」

女怪人「デブメガネ」

ハゲ「ここに顔を出すとは珍しいな。何かあったのかデブメガネ」

デブメガネ「先ほど、入り口のセキュリティシステムが部外者の侵入をキャッチした」

ハゲ「侵入者か」

女怪人「入り口のセキュリティシステム……ってただの防犯カメラじゃ」

デブメガネ「見たところ先日の兄妹のようだ」

女怪人「先日の兄妹……!」

ハゲ「ステッキを取り返しに来たか」

デブメガネ「そのようだ。それにステッキを持っていた。妖精も一緒だ」

ハゲ「ほほう。まさかステッキの方からこちらに来るとは」

ハゲ「総員、侵入者を始末しろ」

デブメガネ「御意」

女怪人「ボス」

ハゲ「どうした」

女怪人「総員って言われても、この組織ってステッキの妖精を含めても4人しかいないじゃないですか」

ハゲ「細かい事を気にする奴だな」

女怪人「え、いえ……」

ハゲ「とにかくさっさと捕まえて口を封じなければな」

女怪人「口を封じるというのは……」

ハゲ「我々のジャマになりそうなら殺すという事だ」

女怪人「……!」

女怪人「こ……殺すんですか」

デブメガネ「仕方ない。奴らが我々に素直に従ってくれればいいが、そんな甘くないだろう」

女怪人「そうですか……それでデブメガネ、侵入者は今、この秘密基地のどこにいるのかしら」

デブメガネ「さあ」

女怪人「えっ」

デブメガネ「この秘密基地のセキュリティシステムは入り口にしかない」

デブメガネ「だから全員で地道に探していく以外に侵入者を捕捉する方法はないのだ」

女怪人「なんてザルな秘密基地なの」

妹「下りのエレベーターめっちゃ長かったね」

兄「ああ。しかしピクニックコースの休憩所の地下にこんな金属質というか、鉄っぽい基地があるとは」

妹「歩くと床がカンカン響くから気付かれそうで怖いかも」

ガチャ

ロップ「よし、この部屋の鍵も開いたよ」

兄「手口が慣れ過ぎてて怖い」

妹「どの部屋の鍵も10秒くらいで開けちゃってるし」

男の声「おお、ロップ!」

ロップ「! その声は、竹元!」

兄「た……たけもと?」

水色の猫「助けに来てくれたんだな、ありがたい」

妹「わっ、お兄ちゃん、水色の猫だよ!」

兄「は、はじめまして」

水色の猫「君達とは先日会ったじゃないか。私はあの水色のステッキの妖精だよ」

兄「あなたが」

水色の猫「改めて自己紹介をしよう。私はエルニーニョ竹元(えるにーにょたけもと)だ」

妹「エルニーニョ」

兄「竹元」

竹元「エルニーニョが苗字で竹元が名前だ」

兄「竹元が名前の方かよ」

妹「ええと……竹元さんのステッキは近くにあるの?」

竹元「これだ。見たところそちらの女の子はもうロップのステッキを持っているね」

竹元「じゃあ男の子の方、キミが持っているといい」

兄「あ、ああ」

ロップ「……! 全員、注意して! 部屋の外から敵が来てるよ!」

兄「え?」

竹元「ハゲた男が階段を上がって来てるな」

妹「今変身した方がいいかな」

ロップ「ああ。だが変身できる時間には限りがあるから、念のため今は妹さんだけ変身しておこう」

ロップ「あとお兄さんは変身する方法を見ておくといい。いつかお兄さんも変身する事になるだろうから」

兄「ああ……やっぱ俺もいつか変身するのか……」

妹「いくよー」

妹「チェンジ・ラブリー・インシュレーション!」キラキラキラキラ

兄「相変わらずすごいなー。どうなってんだろこれ」

ロップ「あ、変身中の魔法少女に触ったら危ないよ!」

兄「そうなの? 変身が変な事になったりするの?」

ロップ「変身中の方は無敵だけど、触った方は触った手が腕ごとミンチになるよ」

兄「こええー!」

兄「ああ! だからアニメとかで魔法少女が変身してる間に敵が攻撃して来ないのか!」

キラリラリーン
キラリラリーン
キラリラリーン
バリバリバリババーン
キラリラリーン
キラリラリーン
シャキーン

妹「変身完了!」

兄「おおー」

ロップ「慣れたもんだね」

妹「ところでふと思ったんだけど、この衣装、色とか選べたりするの?」

ロップ「ああ。3色から好きな色を選べるよ。色はピンク色・黄土色・灰緑色の3種類さ」

妹「ああうん実質ピンク一択だね」

兄「残り2色が地味過ぎる」

竹元「ちなみに私の方は、水色・黄土色・灰緑色の3種類だ」

兄「黄土色と灰緑色ってデフォなの?!」

ハゲ「……ほう。キミが例の戦うロボを倒した魔法少女かね」

兄「もう来やがったか」

妹「あなたは誰?」

ハゲ「私は『シュヴァインシュタイガーです隊』のボスだ」

妹「いきなりボスが出てきちゃった」

兄「あーやっぱ『です隊』まで正式名称なのね」

支援ありがとう

なんか投稿し過ぎると規制かかるっぽいのでちょっと間隔長くします
またどっかで止まるかも
もし落ちたら後日途中から立て直します

ハゲ「そちらが魔法少女なら、こちらも魔法少女で戦わねばなるまい」

兄「そっちにも魔法少女がいるのか……!」

ハゲ「チェンジ・ラブリー・インシュレーション!」キラキラキラキラ

兄「お前かよ!」

ハゲ「マジック・オン!!!」

キラリラリーン

兄「うわあああ! あのハゲの髪の毛が伸びて緑色になったああ!」

妹「しかもハゲてる部分はハゲのままだよ!」


キラリラリーン

兄「く……靴下がフリル付きのニーソックスに!」


キラリラリーン

妹「ず……ズボンがフリルのミニスカートに!」

バリバリバリババーン

兄「服のソデが凄い勢いで破れ飛んだ!」


キラリラリーン

妹「ソデが破れた後にファンシーな感じの服になった!」


キラリラリーン

妹「あ……頭にリボンが付いた……ハゲてるのに……」

兄「後頭部の髪の毛にくっ付いてるのかな……」


シャキーン

ハゲ「フハハハハ! 変身完了だ!」ビシッ

妹「うわぁ……ハゲたおじさんが魔法少女っぽい格好になった……」

兄「道歩くだけで警察に捕まるヤツだコレ」

兄「腹出てるし……」

妹「絶対領域からのぞくスネ毛が気持ち悪い……スネ毛まで緑色になってるし……」

兄「俺も変身したらあんな感じになるのか……」

ロップ「あのハゲの持ってる緑色のステッキ……まさか」

竹元「ああ。間違いない。ピュアだ」

妹「ピュア?」

竹元「ピュアは我々と同じステッキの妖精だ。こちらの世界に来ていた事は知っていたが」

ロップ「悪の組織に手を貸していたとはね」

ハゲ「くらえ!」ブンッ

妹「きゃっ!」サッ

ハゲ「ほう、避けるか。もう魔法のコントロールが出来るとは」

妹「い、いきなり殴りかかって来た!」

兄「妹!」

ハゲ「ビイィィィム!!!」ドシュン

妹「きゃーっ!」バリバリバリ

ドゴォォォン

兄「妹ー!」

妹「う……ゲホ、ゲホ」

竹元「あれを受けて無事とは、とっさにバリアを張ったのか。いい判断力だ」

ハゲ「なるほど若いだけあるが、数回変身した程度で何度も変身を経験している俺にかなうわけもない」

兄「あいつ、何度もあの格好になってるのか……」

妹「うぐぐ……」

兄「お、俺も変身した方がいいかな」

竹元「待て。まだこの基地にはヤツ以外の敵が最低2人いるはずだ」

竹元「そいつらの位置がわからん以上――」


《ズッ友だょ…》


ドゴオオオン!

ゴゴゴゴ……


ロボ《ズッ友だょ…》ギュイイイイイン


兄「うう……いってて……いきなり壁突き破って来やがった……!」

竹元「いかん、変身しよう! ステッキはどこに?!」

兄「あれ……しまった、今のでどっかに……!」

ロボ《お前らのおかげでロボを新造する事ができたよ》《ズッ友だょ…》

ロボ《静音性も上がって快適だ》《ズッ友だょ…》

兄「他に直すべき所がある気がするんだが」

ロボ《だが少ない予算を使い切るハメになった》《ズッ友だょ…》

ロボ《お前らにお返しをしなければな》《ズッ友だょ…》ズズズズズ

妹「えいやー!」ブンッ

ハゲ「おっと」サッ

妹「ビーム! ビーム! ビーム!」ドシュンドシュンドシュン

ハゲ「そんなむちゃくちゃに撃った所で当たらんよ」サッササッサ

ビシ

ハゲ「あ痛っ」

ロップ「あ、当たった」

ハゲ「こしゃくな……ふん、だが出力が弱いせいで大したことは無いな」

妹「ビーム! ビーム! ビーム!」ドシュンドシュンドシュン

ハゲ「チッ」サッササッサ

ロボ《まずはお前からだ》《ズッ友だょ…》

兄「ひっ」

妹「ビーム!」ドシュン

ビシ

ロボ《ん?》《ズッ友だょ…》

妹「う……どっちにもイマイチ効かない……」

ロボ《フッ、当然だ。今回は装甲を強化してるからな》《ズッ友だょ…》

ロボ《低出力で乱射したビームなど効くわけがない》《ズッ友だょ…》

ハゲ「お前の相手は俺だ! くらえ、マジカル・パンチ!」

ドゴオオオ

妹「えぐぅ!」ビューン……ドガラガッシャァ

兄「妹ー!」

兄「い、妹が飛んで行っちゃった……ハゲのパンチラまで見ちゃったし最悪だ」

ロボ《フッ、妹の心配をしている場合か?》《ズッ友だょ…》

ロボ《ガレキに押しつぶされるがいい》《ズッ友だょ…》ズオ

兄「うわ、でかい破片を持ち上げてる!」

竹元「あれを投げるつもりか、逃げろ!」

兄「逃げるったって、部屋の外にはあのハゲがいるよ」

ロボ《クククク……》《ズッ友だょ…》ズシンズシン

兄「妹もどっかに飛んで行っちゃったし……くそ、どうすれば……」

ロボ《くらえ!》《ズッ友だょ…》ブンッ

竹元「うわっ! 逃げれない、伏せろ!」

兄「も、もうダメだ!」

兄「……」

竹元「……」

兄「……? あれ、破片は?」

ロボ《貴様……何のつもりだ、女怪人》《ズッ友だょ…》

女怪人「……」

兄「あ、あんた……今、何をしたんだ……? 破片は……」

女怪人「あのロボが投げた破片を、闇を使って別の場所に移動させただけよ」

ロボ《ほう、どうやら我々を裏切るつもりか》《ズッ友だょ…》

兄「俺達を助けてくれたのか? でも、なんで……」

女怪人「……ホットココアのお礼よ」

ロボ《この女、こうも簡単に裏切るとは》《ズッ友だょ…》

ロボ《世界の色々な所に行きたいとかいう、ふざけた理由で組織に居るだけの事はあるな》《ズッ友だょ…》

女怪人「ロボを作る予算が欲しいという理由で組織に居るあなたに言われたくないわ」

兄「お、おい……」

女怪人「早く逃げなさい! ボスは近くにいないわ!」

ロボ《生意気な》《ズッ友だょ…》

女怪人「あらあら、お怒りかしら? どこからでもかかって来なさい」ズオォ

ロボ《えい》《ズッ友だょ…》ブン

ビシ

女怪人「えぶし」バタッ

兄「瞬殺だー!」

女怪人「ふえぇ……痛いよぉ」

兄「ちょっと手で払った程度の攻撃でやられちゃったよ」

女怪人「闇で攻撃防ごうとしたけどダメだった……」

ロボ《じゃれ合いは終わりだ。二人まとめて始末してやる》《ズッ友だょ…》

兄「……! おい、竹元さん!」

竹元「どうした」

兄「……」

女怪人「……!」

竹元「……! いいだろう。理屈から言えば問題ない」

ロボ《何を相談している。ん?》《ズッ友だょ…》

ロボ《ああ。床がもろい所にロボを誘導して下に落とそうって事か》《ズッ友だょ…》

兄「即バレたし」

兄「うるせぇ! かっこ悪いロボ作りやがって! ホラかかってこいよホラホラ!」

ロボ《じゃあお言葉に甘えてやろうか》《ズッ友だょ…》ズシンズシン

兄「回り込んで来たし」

ロボ《命乞いするなら今のうちだぞ》《ズッ友だょ…》ズシンズシン

兄「こ……このさい言わせてもらうけどな、そんなポンコツ、何の役にも立たないんだよ!」

ロボ《何?》《ズッ友だょ…》

兄「燃費だって相当悪いんだろ? 人間よりデカイからほとんどの建物に入れないんだろ?!」

兄「おおかたアニメに影響されて似たような物を作りたかっただけだろ!」

兄「操作してる自分が強くなった気になって自分に酔いしれてるんだろ!」

兄「そんなロボットでお前が俺を倒したとしてもな、俺はお前に負けた気はしねえぞ根暗野郎!」

ロボ《……言わせておけば貴様ァ!》《ズッ友だょ…》ズシン

ロボ《もう命乞いは聞かん!》《ズッ友だょ…》ズシン

ロボ《このロボの右ストレートで後悔させてやる!!!》《ズッ友だょ…》ググググググ

兄「来いよコラァ! 男は散り際だって事を見せてやらァ!」

ロボ《黙れクソがああ!!!》《ズッ友だょ…》ブオオオオォン!


兄「チェンジ! ラブリー! インシュレーション!!!」


ロボ《?!》《ズッ友だょ…》


カッ

バキバキバキバキ

バキバキバキバキババーン

ロボ《あああ! ロボの右腕が! 右腕が粉々にいいいい!!!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

ロボ《くそおお! 作るのにいくらかかったと思ってるんだあああ!!!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

兄「マジック・オン!」ピキーン

ロボ《ステッキを隠してやがったのかクソがあああ!!!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

竹元「面白い作戦を考えたものだ」

女怪人「はー心臓止まるかと思った……よかったー」

兄「あー怖かった……死ぬかと思った……うお、体が光りだした」

キラリラリーン
キラリラリーン
キラリラリーン
バリバリバリババーン
キラリラリーン
キラリラリーン
シャキーン

兄「わーい凄い水色! 髪の毛まで水色! もう自分を直視できない!」

竹元「素晴らしい。どこからどう見ても魔法少女だ」

兄「どこからどう見ても変態だよ。しかもあのハゲの後だから微妙にインパクトが薄いよ」

ロボ《ぐぐぐ、右腕が無いせいでバランスが取れん、うまく歩けん!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

ロボ《大事なロボをこんな風にしやがって!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

ロボ《ぶっ飛ばしてやる、血まみれにしてやるぞクソがあああ!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

兄「竹元さん、魔法少女って電気に耐えれたりする?」

竹元「あの程度ならギリ大丈夫だ。さすがに雷ほどの電気は無理だがな」

兄「『ギリ』って言葉が引っかかるけどやるしかないな」

女怪人「何をするつもり?」

兄「ヤツのもげた腕の付け根にビームを打ち込もうかと思って」

また規制かかって書き込めなくなってた
支援、感想、雑談は保守にもなるので二重に助かります

ロボ《させるか! 左腕だけでも貴様をミンチにしてやる!》《ズッ友だょ…》ビリビリバチバチ

女怪人「闇よ!」ブワッ

ガラガラガラガラ

ロボ《なっ……しまった、足場が崩れ……ぐああ!》《ズッ友だょ…》

ドンガラガッシャーン

竹元「ロボが足を乗せていたガレキを崩したのか」

女怪人「私の闇は、物体を全部覆わないと移動させれないの」

女怪人「でもガレキを微妙なバランスで支えてる小さい破片を移動させるくらいなら一瞬でできるわ」

竹元「なるほど」

兄「ロボは下の階に落ちたか。しかも腕がもげた右側面を上にして倒れてるときた。これならいける!」

兄「とうっ」スタッ

ロボ《貴様……くそっ右腕が無いせいでうまく起き上がれない!》《ズッ友だょ…》ジタバタ

兄「よっこいしょっと」

ロボ《やめろ! 登るな! ロボの頭に足をかけるな!》《ズッ友だょ…》

ロボ《メインカメラにお前のパンチラが映るだろうがああ!》《ズッ友だょ…》

ロボ《あああ畜生ドアップじゃねえかああ! 夕飯食えねえよ!》《ズッ友だょ…》

兄「ここがもげた右腕の付け根だな。ここから動力源に直接ビームをおみまいしてやるぜ!」

ロボ《やめろ! やめろおおおおおおおお!!!》《ズッ友だょ…》

兄「食らえっ、渾身のビイィィィィィィィム!!!」キュイイイイイイイイイン

ロボ《やめろおおおおおおおおあああああああ!!!》《ズッ


ズガアアアアアン!!!

竹元「うおっ!」

女怪人「きゃっ!」

兄「ウギャー!」


ズズズズズ……


竹元「ゲホッ、お兄さんよ、無事か?」

兄「うう……爆発に思いっきり巻き込まれた……」

女怪人「その割には結構平気そうね」

兄「魔法の断熱材のおかげでギリ耐えれた……」

兄「うわぁ、脇毛やスネ毛まで水色になってる……」

兄「しかもちょっと長くなってる……頭髪ほどではないけど」

竹元「もはやキミも立派な魔法少女だな」

兄「魔法少女って何だろう」

女怪人「ともあれ助かったわ、色々ごめんなさい」

兄「いいっていいって。むしろこっちがお礼する所だよ」

竹元「あとはロボを操作してたヤツと、あのハゲとピュアを倒せば終わりか」

兄「はっ……そうだ、妹! 妹が危ない!」

ハゲ「がっかりしたぞ。せっかくこの基地で一番広い場所まで誘導してやったというのに」

ハゲ「やみくもにビームを撃つ事しかできないとは」

妹「ま、まだまだ! ビーム! ビーム!」パシュンパシュン

ハゲ「そんなもの、片手間に張ったバリアで簡単に凌げるわ」バシンバシン

ハゲ「若いお嬢ちゃんとの戦いゴッコを楽しめるかと期待したが、飽きた」

ロップ「まずい……ビームの出力が落ちてる。魔力が尽きかけてる」

妹「そ、そんな!」

ロップ「このままだと魔法少女の姿も保てなくなるかもしれない」

妹「ど、どうしよう……」

ロップ「……一か八か、残された全部の力で最後の一撃を決めるしか勝つ見込みがない」

妹「……やるよ。私、お兄ちゃんを助けに行かないと」

ロップ「……いいのかい?」

妹「ロップくん、私を信じて」

ロップ「……わかった。魔力を全開放する。全力のボディーブローを叩き込んでやれ!」

妹「ありがとう!」

ハゲ「お話は終わったか? 必殺技で終わりにしてやる」キラキラキラ……

妹「いくよ!」キラキラキラ……

ハゲ「ラブリーパワーは勇気の証☆ 愛の力で敵を討つ!」キュイイイイイイイ

妹「なんで向こうの決めゼリフかわいいの?!」

妹「……ち、血ヘド吐き散らして視界から消えてね☆」キュイイイイイイイ

ハゲ「必殺! マジカル・フライング・パ――――ンチ!!!」

妹「必殺! マジカル・スクリュー・ボディ――――ブロォォォ――――!!!」


ドゴオオオオオオオオン!!!

ロップ「その結果負けたと」

妹「うう……てかロップくん全魔力放出したはずなのになんでステッキの外に出れてるの……」

ヒューン

妹「変身とけちゃったし……」

ハゲ「さてステッキを渡してもらおうか」

ロップ「あなた強いですね」

ハゲ「ん?」

ロップ「ステッキはお渡ししますので、ぜひ僕も仲間に加えてもらえませんか」

妹「はい?!」

ロップ「大丈夫、これも作戦だから」ヒソヒソ

妹「ええー」

ハゲ「いいだろう。それを持って来い」

ロップ「はいどうぞ」

ハゲ「ビーム!」ドシュン

ロップ「おぶぇあ!」ドサァ

ハゲ「そんな言葉を信じると思ったかバカめ!」

ロップ「おぐぅ……そ、そんなバカな……」

緑色の猫「ステッキの妖精は一人いれば充分なのだみゅん☆」

ロップ「ぴ、ピュア……きみは……うっ」

妹「あの子がピュアって子なんだね?」

ロップ「オ……オエェェェ!」

妹「わああああ! 吐いた! 妖精も吐くんだ!」

ロップ「うう……胃の中のビールとギョウザが……」

妹「出てきた物が生々しいよお!」

ピュア「そういう訳であなたたちは用済みみゅん☆」

ハゲ「わが野望の糧となってもらおう」

ロップ「く……くそぉ……」

妹「い、嫌……」

ハゲ「最後に言い残す事はあるかな? この世にお別れを告げるなら今のうちだぞ」

妹「た、たす……」

ロップ「助けてくださいィ! 何でもしますからァ!」

ピュア「黙れみゅん☆」ドカッ

ロップ「うぶぇっ!」ドサァ

ハゲ「ゴミ共が。俺のビームで仲良く消し飛ぶがいい!」

妹「やだ……助けて……」

妹「お兄ちゃん……!」


ドシュウウウン……ズガアアアン!

ピュア「そういう訳であなたたちは用済みみゅん☆」

ハゲ「わが野望の糧となってもらおう」

ロップ「く……くそぉ……」

妹「い、嫌……」

ハゲ「最後に言い残す事はあるかな? この世にお別れを告げるなら今のうちだぞ」

妹「た、たす……」

ロップ「助けてくださいィ! 何でもしますからァ!」

ピュア「黙れみゅん☆」ドカッ

ロップ「うぶぇっ!」ドサァ

ハゲ「ゴミ共が。俺のビームで仲良く消し飛ぶがいい!」

妹「やだ……助けて……」

妹「お兄ちゃん……!」


ドシュウウウン……ズガアアアン!

ゴゴゴゴゴ……


妹「っ……」


妹「……?」

ハゲ「な、何だ今のビームは! どこから撃ってきた!」

ピュア「あっちだみゅん☆」

兄「……チッ、よけられたか」

妹「お兄ちゃん!」

兄「待たせたな、妹!」ビシッ

妹「うわあすごい格好……ポーズまで決めてる」

兄「ああ、妹の目からみるみる光が失われてゆくのが良く分かる」

兄「別に俺この格好気に入ってたりしないからね?! 魔法少女になったせいだからね?!」

妹「大丈夫だよお兄ちゃん私そんな事でお兄ちゃんを見る目を変えたりしないから本当大丈夫」

兄「ああこれ大丈夫じゃないヤツだ」

ハゲ「ジャマが入ったか……まあいい。お前もまとめて始末してやる」

兄「妹に怖い思いさせやがって! お前だけは許さねえぞ!」

ピュア「その威勢がどこまで続くか、試してみたいみゅん☆」

ハゲ「ビーム! ビーム!」ドシュンドシュン

兄「うおっ!」サッサッ

ハゲ「ビーム!」ドシュン

ドゴォッ

兄「ぐはっ!」

妹「お兄ちゃん!」

兄「だ、大丈夫だ、心配すんな……」

竹元「妹さん、こっちへ」

妹「う、うん……あれ、ロップくんは?」

桃色ステッキ「あれ、もう安全になったのかい?」

妹「わあいつの間にかステッキの中に避難してる」

竹元「ロップも一緒に来るんだ!」

ピュア「そうはさせないみゅん☆」

竹元「ピュア、いい加減にするんだ。そんな事をして何になるっていうんだ」

ピュア「部外者がしつこいみゅん☆」

竹元「今すぐにでも、あのハゲに手を貸すのをやめて魔法の国に戻ろう。王国には私が言い訳をする」

ピュア「ピュアはギリシャ人を根絶やしにするまでは絶対に戻らないみゅん☆」

妹「なぜにギリシャ人」

ピュア「ともかく世界征服は止めないみゅん☆ 止めたいなら力ずくで来るみゅん☆」

竹元「く……仕方ない」

ピュア「みゅん☆」ドカッ

竹元「おぶぅ!」

妹「えっ普通に殴りあうんだ」

ピュア「みゅんみゅん☆」スタタンスタタン

竹元「く……」スタタンスタタン

妹「2人ともすごい軽快なステップ……構えや首の動きが素人じゃないんだけど……」

ロップ「ステッキの妖精はある程度格闘技を経験してないとなれないんだ」

妹「ステッキの妖精ってそんな特殊部隊みたいな物なの?!」

竹元「セイッ!」ビュッ

ピュア「みゅん☆」サッ

ピュア「みゅみゅん☆」ドゴォ

竹元「ぐはっ!」

妹「た、竹元さん!」

ロップ「とにかく僕らだけでも逃げよう」

妹「でも竹元さんは……?」

竹元「私は大丈夫だ、早く安全な所まで!」

妹「う、うん!」

ロップ「よし、この位置なら多少なり安全だろう」

妹「それにしても、なんでステッキの妖精たちはこっちの世界に来たの?」

ロップ「まず最初にこっちの世界に渡ったのはピュアなんだ」

ロップ「僕と竹元は、ピュアを魔法の国に連れ戻すためにこっちの世界に来たんだ」

妹「そうなんだ……じゃあピュアさんはなんでこっちの世界で世界征服なんかしようとしてるの?」

ロップ「……ピュアはもともと、とても善良な妖精だったんだ」

ロップ「ところがあるとき、株で5万の損失を出してしまい、世界に失望してしまったんだ」

妹「株?! え、てか5万程度で世界に失望しちゃったんだ」

ロップ「5万といっても円じゃなくてユーロだよ」

妹「ユーロ?!」

ロップ「2010年、ギリシャを発端としてヨーロッパ全体を巻き込んだ債務危機……通称ユーロ危機」

ロップ「その影響でピュアの持っていた株が暴落したんだ」

妹「よくわかんないけど私の中で魔法の国のイメージが暴落しつつあるのはわかった」

ロップ「ピュアはその失望と怒りをギリシャに向け、ギリシャを滅ぼすと言ってこっちの世界に渡ったのさ」

妹「そうなんだ……」

ロップ「おそらく世界を渡った先にあったこの国で、あのハゲと出会って志を共にしたんだろう」


ピュア「お前のパンチは止まって見えるみゅん☆」ドゴォ

竹元「がはっ! く、くそ……」


兄「はあ、はあ……くそ、歯が立たない……」

ハゲ「くらえ!」ドゴォ

兄「あがっ!」

ハゲ「そら、どうした」ドゴォ

兄「ぐふぁっ!」ドサァ

兄「うう……打撃がいちいち重い……」

ハゲ「ふっ。その程度では、俺の世界征服は止められんな」

兄「あ……あんた、なぜ世界征服なんか……」

ハゲ「おりゃあああッ!」ズドォン

兄「ぐああああああーッ!」ビューン……ドゴォ


妹「お、お兄ちゃんが吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた!」

妹「どうしよう、お兄ちゃんが! 私ももう一度変身できないの?!」

ロップ「ダメだ、僕の魔力が回復するまであと1時間はかかる」

妹「1時間も待てないよー!」


兄「う……ゲホッ、くそ、強い……」

兄「ビームも避けられる、打撃も流されてカウンター食らっちまう……」

兄「どうすりゃいいんだ……!」

ピュア「みゅん☆」ドゴォ

竹元「あがぁッ! 最初にいいのをもらっちまったせいで劣勢をくつがえせない……」

ピュア「みゅんみゅん☆」ドゴドゴォ

竹元「がッ、ゲホォッ!」

兄「た……竹元さん……」

竹元「仕方ない……お兄さん、こうなったら究極魔法少女に変身するしかない!」

兄「究極魔法少女?」

竹元「魔法少女を超えた最強の魔法少女だ。デメリットが大きいから使いたくなかったんだが」

兄「だけど、それをやれば強くなるんだろ?! やるしかない!」

竹元「ああ……もはや迷ってるヒマは無い、やるぞ!」

ピュア「竹元がアイツを究極魔法少女にさせようとしてるみゅん☆」

ハゲ「させるか! ビーム!」ドシュン

兄「バリアー!」ガキィン

兄「竹元さん、こっちへ!」

ハゲ「チッ!」

ピュア「あいつら廊下に逃げやがったみゅん☆」

ハゲ「探せ!」


竹元「どうにか追撃を避けられたな」

兄「すぐ見つかるだろうから、手短に説明してくれ」

竹元「究極魔法少女へ変身する手順は、普通に変身するときとほぼ変わらない」

竹元「最初の構えと合言葉が違うだけだ」

竹元「ステッキを頭上に高く掲げて『チェンジ・アルティメット・インシュレーション』だ」

兄「究極魔法少女に変身すると何が起きるんだ?」

竹元「服が全部破れる」

兄「ええー」

兄「じゃあデメリットってのは服が破れるって事?」

竹元「そういう事だ。しかも究極魔法少女の有効時間は3時間程度だが、服が破れた状態は2週間持続する」

兄「2週間て……服を着なおせばいいんじゃないの?」

竹元「どれだけ服を着ても即座に全部破れる」

兄「ええー」

竹元「あと破れる時も、最初の変身の服のソデみたいにはならず、光も音もなく服が全部破れて足元に落ちる」

兄「え、じゃあ変身した瞬間、光も音もなく全裸になるの?!」

竹元「全裸にはならないから安心してくれ。そのフリル付きニーソックスと頭のリボンだけは残るから」

兄「もっと嫌だよ!」

話としてはすでに4分の3は終わってるくらいで中途半端になってしまいますが、
規制が厳しくてこのままだとかなり時間がかかりそうなので改めてSS速報に同名のスレを立てて投下しようと思います
まだ投下してない続きは明日の夕方あたり更新します

見てくださった方、支援してくださった方、ありがとうございます。申し訳ありません。

スレ立てました
今日は途中まで書いて終わります

SS_妹「魔法少女らしいよ」兄「俺が?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376838555/)

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