「全て恐ろしい」 (28)

彼女は家族を無くしていた。
三年前、家族は病気に侵されていた彼女を友人に預け年に一度の親戚会へと旅に出た。
それっきり、彼女の家族が帰ってくる事はなかった。

森の中には朽ち果てた洋館がある。かなり大きい洋館ではあるが、朽ち果てている。彼女は洋館の前に花を起き、手を合わせた。
彼女にとって、今が年に一度家族に会える日なのである。
この洋館は、彼女の家族が死んだと言われている洋館であった。

彼女は近況を家族に打ち明けた。返事は当然無い。ないとは分かっているがやはり、虚しい。虚しいが、少し気が晴れた。

彼女は振り返りこの洋館から出ようと決心した。対した決心ではない。ごく普通の墓参りから帰るぐらいの決心だ。

だがその日の決心は余りにも軽すぎた。

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森がざわめき始める。まるで話し合っているかのように。まるで彼女を返さないかのように、ざわめき始める。

「やだ...なに?」

彼女はなにか怖くなった。心霊番組を見たあとトイレになかなかいけないような感覚に近い。
だが、帰らなければいけなかった。彼女は家族を失ったとはいえ、彼女を大切に育ててくれる人はいるのだ。それだけ彼女を思う人も沢山いる。
だから、ここから帰らなければいけない。

彼女は走って森から抜けようとした。まだ太陽は空にある。明るいのに何故か怖い。怖くてたまらなかった。

走り続けて10分ぐらい経った。目の前には出口と思われる空間が広がっていた。

「もう...すこ、し......」

彼女は最後に踏ん張り、その開けた空間に入った。

そこには、洋館があった。朽ち果てている洋館ではない。確かに、写真でしか見たことのない立派な洋館がそこにはあった。

「ここ......は...?」

彼女は自分の目に広がる景色が信じられなかった。
立派な洋館が信じられなかった。
花が咲き誇る花畑が信じられなかった。
侵入者を通そうともしない正門が信じられなかった。
何よりも、先ほど置いた花束が消えているのが信じられなかった。

ここはどこ?
彼女はそう思った。

彼女がぽけーとしていると、洋館の扉から誰かが出てくるのが見えた。彼女は今正門にいるためここからではよく見えない。
次第にその人物が近づいてくる。
段々と。少しづつその顔の輪郭が分かってくる。

その人物の顔がはっきりと見れた瞬間、彼女は喜怒哀楽が混じりに混じって......気絶してしまった。

「...う、ん...?」

彼女が瞼を開けて最初に見たものは、天井と光源であった。
彼女はその光がうっとおしく感じながらも少しづつ記憶を取り戻そうとする。
次第に彼女は喜怒哀楽が混じりそうになり、何とか押さえ込んだ。

有り得ないのだ。洋館が立派であることさえあり得ないのに、何故、何故、何故何故何故?と彼女は頭がこんがらがる。

何とかまとめようとしてそれでもまとめられなかったが、一つだけシンプルな疑問が胸に残った。

「なんで、お兄ちゃんがここに...?」

そう呟いてしまってから、彼女は意識せずに涙を一滴流してしまったのだ。

トントンと、扉を叩く音が響いた。

「入ってもいいk...ですか?」

あぁ、この仕草。この敬語をつかいたくないという態度。かつ言い直す態度。兄だ。お兄ちゃんだ。

彼女はまた思い、涙が出そうになったが堪えた。そして、少し声を抑えて返事をした。

「いいですよ」

ガチャと扉が返事をした。扉の向こうに立っていたのは間違いなく。見間違える事もなく、彼女の兄だったのだ。

彼女は彼が兄と判断したら直ぐに兄に飛びついた。
どうして洋館があるのか?
どうして朽ち果ててないのか?
どうして花束が消えているのか?
どうして兄が生きているのか?
そんな疑問が彼女の頭を何度もよぎっていたが今の彼女にとってはどうでも良かった。
ただ兄がいる。それだけで彼女は満足だった。

「!?!?おいおいおうおうおいういうう!!!」

兄も駄目だった。

「おに...ぃ...ちゃんぅ......お兄ちゃん......だ...えへ...」

彼女は兄に抱きついた。抱きつき方は問題ではない。迷子になった時母を見つけた子供のように純粋に抱きついていたのだ。
そして堪えていた涙が堪えきれなくなったのか、抱きついたままわんわん泣き始めた。

兄「おうおいいいおういあうしいすうでゅじkl」

兄は思考回路が回らなかった。今の兄は彼女が妹だとは知らずか弱い女の子だと思っていた。さらに妹はこの3年間胸がグレートに変化していた。cからeへの超進化。そんな胸が直にぷにぷに当たっているものだからもうこれは大変である。

「おーい、兄ー?さっきの女の子はどうなったー?」

女の声である。

「お兄ちゃん...お兄ちゃ、ん......!」

兄「おいちょっとまてお兄ちゃんってどういうことだよ!?」

女「............」

氷の如く冷たい視線が兄に刺さる。その視線に兄は気付き、女がアイコンタクトで何かを語っているのがはっきりと理解できたのだ。

こいつ......3分も立たずに見知らぬ女をお兄ちゃんと呼ばせるまでに精神操作したのか...。やべぇよ、こいつ...。

確かに、女は冷酷な視線でこう語っていた。兄に既に弁明の余地はない。言うなれば精神の崖っぷちである。

兄「違うからな!!俺は決してそんなこと出来るような魔術師でもないし、そもそもこの女が勝手に妹だのなんだの」

彼女に胸には兄の言葉が刺さった。二度と会えないと思っていた実の兄にただの女呼ばわりされたのが悲しくて悲しくて。彼女は耐えきれず先程とは意味の違う涙を流し始めた。

「うっ、うっ、ぐしゅ...ひっぐ、えっぐ...うわぁああああん......」

知らないとは罪である。知らないまま知ることを傷つけてしまうのだから。

女「あぁもう!お前にこの娘は任せられないね!私が預かるわ。あんたは少し懺悔してなさい!」

知らないとは本当に罪である。知らなければ、何故出来事が起きたのか理解もできないのだから。

兄「俺が......何したって言うんだよ...。神様...」

彼女は泣き止んだ。兄の知人と思われる女に全てを明かしたのだ。無論最初は泣きながら、しゃっくりしながら聞き取り辛い声で話していたが女の真剣に聞いてくれる態度に安心して少しづつ泣き止みながら話を続けていた。
今の状況は彼女に理解できる状況ではない。彼女は混乱の中から兄が生きているという喜びを見つけたのだ。だから、今の状況を話せば普通の人なら鼻で笑い馬鹿にして相手にしてはくれないだろう。だが女は真摯に今の状況を考えてくれた。その態度に彼女は感動してしまい、色々な話をした。学校の事、兄の事、家族の事、朽ちた洋館の事......。
彼女が話題を出せば話題を返すように女は自分の周りの事を話してくれた。徐々に徐々に、かつ速く二人は仲良くなっていったのだ。
この短時間で2人は友と呼べるまでに発展した。これも女の許容能力あってこそである。何処かの変態とは大違いではなかろうか。

兄「くしゅん!」

扉が開く音がした。今宵の客人を招いた部屋に男は入り、女に彼女の様子を聞いた。彼女は小さな寝息をたてて眠っている。彼女の手には女の手が繋がれている。

兄「どうだ?妹の様子は?」

兄は先程女より今彼女がおかれている状況を聞かされた。兄は女と同じく彼女の話すすべての真実を受け入れられた。妹がこんなボインに成長しているのは予想外だったが、しっかり育ってくれている事が嬉しかった。出来るならば揉みたい。揉もうとしたら殴られた。下衆が。

女「可愛いよ。こんな顔して寝ちゃっている」

ほら、と男に向けて寝顔を見せる。実に安心した寝顔。怖いことは何も知らないような可愛い可愛い寝顔。

男「まったくだ。自分の妹がこんな風に成長してくれるのは嬉しいな。」

しかし、どうして彼らは簡単に彼女が話した真実を受け入れられたのだろうか?普通の人間ならば、自分の死など聞かされしぬとわかると死なないように対策を立てたり発狂したりするものである。だが彼らは今も心から落ち着いている。何故だろうか?

女「えぇ、まったく可愛いわ」

何故なんだろうか?

「She is a visitor?」

「はい。彼女は兄の妹にあらせます。」

「Oh, so.Although it is good for her to solve a mystery,Can she bear?」

「それは分かりません。私たち人というものは計り知れない事ばかりで御座います。」

「It solves.The mystery in hell」

彼女は目覚めた。ふかふかしているものが覆いかぶさっていたのですぐにベッドの中で寝ていたのだと認識した。部屋は彼女を残し誰も居なかった。
彼女は少し寂しかったがその寂しさも心の中に押し込み、ベッドから這い出て扉に近寄り扉を開けた。
キィという声を発し扉は開いた。扉の先には兄......と彼女の産み親が居た。

「おか...さん......?」

いるはずのない死人が目の前で動いていた。死人は生前の格好をしており、腐ることもなく生きていた頃のようにただそこに居た。

母「あら、妹。目覚めたのね。」

死人は生前の声を発し、彼女を惑わせた。生前の格好をして、生前の声を発し、生前の如く動き回り、生前のような性格をしている。まさに死人。生きているはずのない死人である。

彼女は自前の勘が働いたのか、少し後ろに下がった。恐怖の念が意思と正反対に彼女を動かしていた。お化け屋敷に入る前の警戒心を今持っていた。

死人は尚も生きているように振る舞う。まるで自分は人間だと、生きているのだと言いたげのように生を振る舞う。

母「妹?どうしたの?どこか具合が悪いの?」

彼女は警戒心、恐怖を打ち払い一歩踏み出た。何故だろうか?彼女は普段このような勇気はない。むしろ怯えているだけのチワワな毎日を送っていた。
それがどうである?今や彼女は死人に立ち向かう勇敢な妹だ。何かの意思が彼女に力を貸しているかのようにも感じられる。

母「妹?どうしたの?妹?大丈」

死人が偽りを言い切らないうちに、死人は廊下の少し先へと飛んでいった。彼女の拳が、死を吹き飛ばしたのだ。

間違えた

彼女の拳が

彼女の言葉が


妹むきむきサイキョーマンは嫌だ

彼女は言葉を放っただけであった。彼女は女の中でも非力でありとても母を押し飛ばす程の力はない。彼女はとある言葉を放っただけである。とある言葉を放っただけで彼女は死人を吹き飛ばしたのだ。

「死人が、母の真似をするな」

彼女は至極真っ当な言葉を口にしただけであった。

彼女は驚いていた。驚くというよりも、虚しいような悲しいようなそんな気持ちに包まれていた。

「嘘......私がやったの?」

彼女が殺した。死人といえども、殺した事に変わりはない。
彼女は震えてしまった。先程の勇気は何処へやら、彼女は今の出来事に怯えてしまっている。

気がつくと兄がいなかった。きっと、こんな私を見て逃げ出したのであろうと彼女は深い悲しみに包まれていた。それは届くこともない闇のような、悲しみである。


ふと見ると、死人が倒れたと思われる場所に手紙がおいてあった。彼女は少し引いたが、意を決して手紙の中身を見ることにした。
宛先などは書かれておらず真っ白の封筒の中に一枚手紙が挟まれていた。

「貴方は選ばれました。

貴方はこの家系の末端であるとともにこの真実を知る資格があります。

今から貴方は空想の3年前、事件が発生した5日間を体験してもらいます。ですが実際の5日間と違う所は犯人が誰もいないという事です。空想の5日間では誰も悪しき心を持っておらず皆が皆を思いやり皆が平和に過ごします。

そこで貴方に選択権を差し上げます。
1、貴方が何も行動を起こさず5日間をゆっくりと過ごす事。
貴方は貴方が望んだ世界を体感することが出来ますが5日目の0時になったら世界は消滅し、貴方は現実へと戻りこの世界の記憶は思い出として残るだけです。

1、貴方が貴方以外の皆を殺し、貴方自身が犯人となること。貴方自身の覚悟を図るために、貴方に犯人になっていただきます。もし貴方が5日目の0時までに全員を殺せたのなら貴方に覚悟があるとお見受けし、3年前の5日間に何があったかを見せ、貴方を現実へと返します。
もし貴方が5日目の0時までに全員を[ピーーー]ことができなかったのならば、貴方を[ピーーー]ない身体にさせこれからずっとずっと私の道具となってもらいます。例えば、私の暇潰し人形として一時間に一回は肉片になってもらうなどお仕事はあります。

差し当たって貴方には二つの能力をお貸しいたします。
・勇気の能力
どんな恐怖をも打ち払い何事にも負けない勇気を出すことのできる能力。

・言葉の暴力の能力
正論または答え、答えに近い証拠を口に発した場合のみに発動する。人間なら有無を言わせなくさせ、自分の言葉を無理矢理認めさせる能力。化け物なら[ピーーー]事ができる能力。

信じられないと思いますが、貴方には信じてもらいます。そのために、私は死人を送りました。能力は完璧だと思います。

15時、貴方を一日目の舞台にご案内致します。
楽しみにしていてください。そして楽しませてください。」

やばいこれではピーの部分に変な解釈が起きる

化け物を犯す事ができる能力とかいらんわ

「貴方は選ばれました。

貴方はこの家系の末端であるとともにこの真実を知る資格があります。

今から貴方は空想の3年前、事件が発生した5日間を体験してもらいます。ですが実際の5日間と違う所は犯人が誰もいないという事です。空想の5日間では誰も悪しき心を持っておらず皆が皆を思いやり皆が平和に過ごします。

そこで貴方に選択権を差し上げます。
1、貴方が何も行動を起こさず5日間をゆっくりと過ごす事。
貴方は貴方が望んだ世界を体感することが出来ますが5日目の0時になったら世界は消滅し、貴方は現実へと戻りこの世界の記憶は思い出として残るだけです。

1、貴方が貴方以外の皆をころし、貴方自身が犯人となること。貴方自身の覚悟を図るために、貴方に犯人になっていただきます。もし貴方が5日目の0時までに全員を殺せたのなら貴方に覚悟があるとお見受けし、3年前の5日間に何があったかを見せ、貴方を現実へと返します。
もし貴方が5日目の0時までに全員をころすことができなかったのならば、貴方をしねない身体にさせこれからずっとずっと私の道具となってもらいます。例えば、私の暇潰し人形として一時間に一回は肉片になってもらうなどお仕事はあります。

差し当たって貴方には二つの能力をお貸しいたします。
・勇気の能力
どんな恐怖をも打ち払い何事にも負けない勇気を出すことのできる能力。

・言葉の暴力の能力
正論または答え、答えに近い証拠を口に発した場合のみに発動する。人間なら有無を言わせなくさせ、自分の言葉を無理矢理認めさせる能力。化け物ならころす事ができる能力。

信じられないと思いますが、貴方には信じてもらいます。そのために、私は死人を送りました。能力は完璧だと思います。

15時、貴方を一日目の舞台にご案内致します。
楽しみにしていてください。そして楽しませてください。」

さて寝るか

お休み

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