【艦これ】龍驤「足りないもの、その後」その10【安価】 (999)

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【艦これ】龍驤「足りないもの、その後」その9【安価】

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ーー横須賀鎮守府


提督「そうか試験には合格したのか」


多摩『なんとかなって良かったにゃ』


提督「多摩になら足りないもの鎮守府は預けられる。これからも頑張ってくれ」


多摩『任せておけにゃ。龍驤さんの様子はどうにゃ?』


提督「一日の殆どを寝て過ごしている。歩き回ると身体への負担が大きいと言っているんだ」


多摩『車椅子に乗せたらいいにゃ。閉じ込めておくのは褒められたことじゃないにゃ』


提督「その通りだ。俺も時間が空いている時はかすみの様子を見ながら龍驤の側に居る」


多摩『とりあえずはそれでいいにゃ』

多摩『……で、どうなんだにゃ』


提督「なにがだ?」


多摩『相変わらず艦娘から夜の感謝は受け取っているのかにゃ?』


提督「……」


多摩『はぁ~……ほんっとに…そういう所にゃよ』


提督「気持ちを蔑ろにしたくないんだ…」


多摩『雲龍から何回も何回も話を聞いたから分かってるにゃ。多摩が言ってるのはハマり過ぎるなってことにゃ』


多摩『自分から求めるようなったら終わりにゃよ。まさかそんなこと無いにゃ?』


提督「当たり前だ」


多摩『なら深くは追求しないでやるにゃ。ま、精々頑張るにゃよ』


提督「俺が激励していたはずなんだがな…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

妻トーーク!(他の鎮守府からもオンライン参加者あり)
テーマ:お産での注意点

ーー龍驤の部屋


龍驤「わざわざウチの部屋に集まったのはそういうことやったんやね」


霞「龍驤さんへのアドバイスをしたかったのよ」


ガングート「私は別の用事もあったが、ついでに助言くらいなら授けてやろう」


夕立『……』


龍驤「夕立は電話で参加やのに喋ってくれな分からへんで」


夕立『うるさいっぽい』


龍驤「まあ気にしてくれるだけありがたいわ」

霞「まずはある程度の覚悟は必要よ」


龍驤「そんなんとっくに済んでるよ。暫く動けれへんようになってもええ」


ガングート「口で言うのは簡単だ」


霞「私は一人産むだけでも死にそうになったのに、ガングートさんは二人でしょ?」


ガングート「それを言うなら夕立は三つ子だろう」


夕立『……』


龍驤「夕立、何かアドバイスとかない?どんなに些細なことでもええよ」


夕立『安価』


下2 この後の展開やその他起こったことなど

夕立『夕立は帝王切開だったっぽい』


ガングート「ほう?」


霞「三つ子だから当然かもしれないわね」


夕立『大きな傷が残るぽい。でも元々傷だらけだったから今更増えたところで気にしないぽい』


龍驤「ウチはお腹切るよりちゃんと産みたいわ」


夕立『自分自身と子供のためには躊躇ったら駄目っぽい』


龍驤「躊躇う?」


夕立『無理に自然分娩にこだわるよりも絶対安全っぽい』


龍驤「それは分かってるけど…」

ガングート「帝王切開は出産じゃないとでも言いたいのか?」


龍驤「そうじゃないんやけど……」


霞「目が泳いでるわよ」


龍驤「違……」


夕立『呆れた奴っぽい』


龍驤「現実的な話をしたらウチは自然に子どもを産むのはほぼ不可能や。せやから憧れるねん」


ガングート「憧れるだけにしておけ」


霞「変なことは考えないように今から対策が必要ね」


龍驤「相変わらず信用無いなぁ…でも下手に信じられるよりマシやね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ちゃんと産む、は母子ともに無事に産むってことだよ~って北上さまが釘
自然にこだわって先天的ならともかく後遺症が残ったり死産になったら、ね

>>12
遅れてゴメンね~?妊娠期間用の義手義足つくっててさ~

ガチャッ


北上「遅れてゴメンね~妊娠期間用の義足作っててさ~」


ガングート「思ったより早かったな」


北上「どっかの戦艦が置いていくから遅れたんじゃん」


龍驤「北上……義足はいらんよ…」


北上「いーや必要だね。まさかと思うけど北上様の作った義足を付けたくないなんて言わないよね?」


龍驤「違うねん…ウチは歩くだけでな…」


北上「普通に歩いてても負担はかかる。経験者は語るってやつだよ~」


龍驤「……」

北上「あのさ龍驤さん、ちゃんと産むってことは母子ともに無事に産むってことだよ」


北上「そんな引きこもり生活でいいと思ってるわけ?」


龍驤「車椅子があるし…」


北上「車椅子じゃどこにでも行けない。自分の足で歩くことは赤ちゃんの為にもなる」


北上「それとさ、下手に、自然にこだわっても後遺症が残ったりするかもよ」


霞「母体が危険な状態になると悪影響が出るわね」


夕立『最悪子どもだけ死ぬっぽい』


北上「そうそう、死産なんか笑えないでしょ?ちゃんと確実な方法を取った方がいいと思うよ~」


龍驤「……ん」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


龍驤「これ……」


北上「自然なつけ心地でしょ?」


龍驤「うん…」


北上「これ調整面倒くてさぁ、もう極力着けっぱなしにしてるのを想定で調整したんだよね~」


北上「使わない時間が長引くとまた来ていじる必要があるから……」


ガングート「ここまで言えばわかるだろう?という話か」


霞「歩いてみて振動はどうなの?」


龍驤「……」


ペタ……ペタ……


龍驤「いける……殆ど無い…」


北上「じゃ、決まりだね~」

ガングート「勘違いはするんじゃないぞ、動き回れとは北上は一言も言っていない」


北上「でもまぁ秘書艦くらいなら余裕だけどね」


龍驤「北上…ありがとう。ほんまにありがとうな」


北上「義足に関してはお礼はいらないって~」


霞「階段の使用は極力控えた方がいいわね」


夕立『……』ブチッ


北上「あ、電話切れた」


ガングート「もう必要ないと判断したんだろう」


北上「そうかもしんないけどさ、一言くらいあっても良かったじゃん」


霞「電話に出てくれただけでも珍しいんだからこれでいいわよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

試運転兼ねて歩いて食堂行って皆で食事

ーー


龍驤「これほんまに凄いわ……いつもの振動が殆ど無い…」


北上「北上様に感謝しなよ~」


提督「…龍驤?」


龍驤「司令官、あのな…」


北上「あたしの作った義足を試してたとこなんだよ~」


提督「…そのようだな。こんな義足は初めて見た」


北上「脚の形に近いのが本来の義足だけど、これは振動を少なくして身体への負担を減らすようにできるよ~」


提督「だからこんな…そうだな、板バネのような形になっているのか」


北上「その通り。このまま食堂に行っちゃお~」

ーー食堂


龍驤「ここまで全然負担になれへんかったわ…」


北上「平地とかちょっとした坂道なら問題無いよ~」


提督「階段の登り下りは素直に鎮守府の誰かを頼ってくれ」


北上「誰も居ないなら提督が飛んでいくし!」


提督「そうだな」


龍驤「ありがとう…ほんまに嬉しい。下手したら子ども産まれるまで歩けれへんと思ってたから…」


提督「そんなことはない。誰かを頼ればよかったんだ」


北上「車椅子だけじゃなくて抱っこして移動もできるしね。龍驤さんは他の人より軽いし」


龍驤「確かにな…ウチは片腕と片脚の分、他より軽いで」


提督「持って移動するには最適な重さかもしれないな」


北上「ね?こんな提督なんだからどんどん甘えちゃっていいんだって」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

甘えるといえば~で北上の(少々過激な)惚気プレイ話

北上「甘えるといえばさ~最近また憲兵と楽しみ始めたんだよね」


提督「何の話だ?」


北上「憲兵とのプレイの話」


提督「……」


龍驤「どんなんやっての?」


提督「龍驤?」


北上「首輪して散歩されるのは慣れちゃったから違う角度で行こうかなって」


龍驤「ほんで?」


北上「クリピ開けた」


龍驤「な…!」


北上「流石に今日は外してきてるけど…凄いよ?」


龍驤「過激過ぎへんか?」


北上「これでもまだもうちょい足りないんだよね」


提督「……」

ーー


北上「そうだガングートさんが提督に話があるって言ってたわ~」


提督「今更…?」


龍驤「ウチはまだ北上と話しとくから、司令官は先に行っといて」


北上「執務室で待ってると思うから急いで急いで~」


提督「北上の話を聞く前に言ってくれれば…」ブツブツ


龍驤「…で?それだけ違うやろ?」


北上「当たり前じゃん。今度は縛られたままさ…」


下1  この後の展開やその他起こったことなど

ーー執務室


ガングート「龍驤が自然な出産に異常な拘りを示している理由は知っているか?」


提督「予想は付く。腹を痛めて産んだ子で無ければ認められないと思っているんだろう」


ガングート「分かっているならなんとかしろ。これは旦那の役目であり仕事だ」


提督「もちろんだ、近日中にゆっくりと話をしようとしていた」


ガングート「していた、か。確定しない限り貴様の話は信用できん」


提督「…正直先に話してくれて助かった。一人だと強く言えた自信がない」


ガングート「そんな弱気でどうする」

提督「龍驤の行動力を知っているからだ。何度苦しい思いをしてきたか…」


ガングート「その思いを龍驤に話せ」


提督「……そうだな」


ガングート「電話でなくわざわざ出向いてきたんだ、その意味を知ってもらおう」


提督「直接言ってもらって良かった。言葉の重みが違う」


ガングート「私は双子の母だからな、龍驤は可愛い後輩だ」


提督「母親の後輩か…」


ガングート「鎮守府は違うが二人への恩は忘れたことは無い。いくらでも協力はしてやろう」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「北上の性癖はどこに行こうとしてしているんだ…」


龍驤「更なる高みに行こうとしてるのは間違いないね」


提督「だがそんな北上のお陰で秘書艦の仕事ができるようになったな」


龍驤「書類仕事は勿論できるけど、他にやれることはなんやろ?」


提督「執務室で出来ることはいくらでもある。無理のない範囲で手伝ってくれ」


龍驤「了解やで」


提督「…なあ龍驤」


龍驤「ん?」


提督「俺の話を聞いて欲しい」


龍驤「うん、聞かせてな」

提督「俺はまだ龍驤を心から信用できていない」


龍驤「当然やと思うで」


提督「勝手に退院して姿を消したり、誰にも相談せずに出て行ったりもした」


龍驤「見捨てられててもおかしくないわなぁ」


提督「だから言葉で言っても伝わらないかもしれない。だが俺の気持ちを伝えたい」


龍驤「ちゃんと聞くから聞かせて」


提督「龍驤の身体では出産の負担が大きい。帝王切開でいいのならその選択肢を選んで欲しい」


提督「…俺がこれを言ったとして龍驤はどうしていた?」


龍驤「黙って帝王切開は断ってた」


提督「……」


龍驤「お腹を痛めて産んだ子じゃないと意味が無い。霞にも負けたくなかった」


提督「勝ち負けも無いだろう」


龍驤「その通りやね。こうやって話をしやんかったらそんな事にも気付かんかった」

龍驤「司令官がちゃんと言うてくれたから伝わったよ。ウチはアホやから言うてくれな分かれへんのよ」


提督「それもいけないことだ」


龍驤「……」


提督「これから龍驤は母親になる。本当に子どもの為になることを選んでいく必要がある」


龍驤「司令官と相談して……」


提督「龍驤、その子にとって母親は龍驤だけなんだ」


龍驤「……」


提督「もちろん父親も俺だけだ、だからこそなんだ」


提督「子どもの成長は早い、二人で話している時間より育つ時間の方が早いんだ。親というものは子どものことを考える存在なんだ」


提督「俺には親が居ない。だから…」


龍驤「ちょっと焦り過ぎと違う?」


提督「……」


龍驤「かすみを育てて思うことがあったんかもしれんけど、必死過ぎても空回りするだけや。ちゃんと話し合っていこな?」


提督「…そうだな」


ーー

今日はここまでです

ーー


白露「一番教えて欲しいことがあるんだけど」


提督「どうしたんだ?」


白露「電とはどこまで進んでるの?」


提督「……本番は一度もしていない」


白露「嘘だ、そんなはずない!」


提督「本人がそう言っていたのか?」


白露「言ってなかったけどそれ以外にあり得ない!」


提督「電は何と言っていたんだ」


白露「あたしとしてるより…提督との方が気持ちいいって」


提督「……」


白露「やっぱり電としてるんじゃん!」


提督「絶対にそれは無い、神に誓って断言できる」

提督「それ以外のことは色々としている。お互いに…舐めたりだとか、指で……はある」


白露「あたしとしてることは同じだって言うの!?」


提督「俺と白露なら電にされていることの方が多い。だが電にしていることは殆ど同じだ」


白露「このあたしが……負けてるって?」


提督「勝ち負けなんか無い。電もそんなつもりで言ったんじゃないだろう」


白露「そうだよ電はすぐにあたしとは関係ないって言ってた。けど認められるはずない!」


白露「こんな気持ちになったのは初めて…いっちばん怒ってるかも」


提督「おい……」


白露「自分は悪くないなんて言ったらどうなるか分かってる?」


提督「……」


白露「この屈辱は絶対に晴らす…!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

白露さん、白露型の皆さんと特訓開始
これは白露型の誇りがかかってるから!

白露さん以外の皆さんは初めてのマジ恋だからわからなくもないけど空回りしすぎでしょ…って感じ
でも最近彗星のごとく現れたサキュバスには負けてられないから付き合う

ーー


村雨「急な話ってこれだったの?」


時雨「やれやれ」


白露「これは白露型の誇りがかかってるから!」


春雨「その通りです」


村雨「白露は電の為なのは分かるけど春雨は何なの?」


春雨「サキュバスには負けてられないんです!」


時雨「神通か…」


村雨「確かに彼女はノーマークだったわね」


春雨「私も提督を襲ったことはありますけど、二日もダウンさせるなんて!」


時雨「神通さんはまさにサキュバスだね」

村雨「特訓には付き合うけどそれ以前の問題じゃないの?」


白露「どういう意味?」


村雨「私達の基準でプレイをしてるのなら、気持ちいいより先に辛いが来てるんじゃない?」


白露「そんなこと…」


時雨「無いとは言えないんじゃないかな?」


春雨「サキュバス…負けられない!」


村雨「提督は相手を傷付けるようなプレイは一切しないはずよ。それに比べて……」


白露「そんな……あたしが…」


時雨「普段なら気にすることなんか無いのに。よっぽど電のことを好きになったみたいだね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

春雨 「私は変わりました。綾波に負けた時は本能だけでしたが、テクニックを身に付けた私なら勝てるんです!」


村雨「なら勝負してくれば良いじゃない」


春雨「分かりました!憎きサキュバスを倒してきます!」ダダダッ


白露「あ、ちょっと……そのテクニックを教えて欲しかったのに…」


時雨「行ってしまったから仕方ないね」


白露「そんな…」


村雨「そういえば聞いた話なんだけど……」

ーー


白露「悩めるレズに助言が降ってくる……都市伝説みたいなものだって村雨は言ってたけど…」


白露「ここがその場所だって言ってたけど…ただのローソンにしか見えない」


白露「こんなに悩んだこと今まで無かったのに。一番辛いかもしれない」


白露「……」


白露「村雨は気分転換をしろって意味であんなこと言ったのかな。あのまま鎮守府に居ても良くなかったかも」


白露「あたしは苦労して特務艦にまでなった。こんなことでくよくよしてられない!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

春風「貴女、恋してますね?」
春風「貴女、恋に悩んでますね?」

二人の嫁持ち春風が現れた!(ローソンってあれだよね?)

「貴女、恋してますね」


白露「え、誰?」


「貴女は恋に悩んでいますね」


白露「同じ艦娘が二人……?」


「恋の相手は同性ですね」


白露「もしかして…」


「貴女と同じ艦娘なんですね」


白露「助言が降ってくるって…本当だったんだ」


「本気で悩んでいる相手の前に私達は現れます」


「貴女を応援します」

白露「あたしは……本気で悩んでる。今までこんなこと無かったのに」


「貴女には遊びの相手が居たんですか?」


白露「遊びどころかその日だけの子なんか数え切れない」


「姫ちゃんみたいに遊ぶ人は嫌いです」


白露「嫌われて当然だと思う。こんなあたしに愛する資格なんて無いのかな」


「それとは違います」


「同性愛はより強く心で繋がる必要があるんです」


白露「心で…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

普通のお出かけを相手とした事はありますか?
ただ穏やかに隣で眠るだけの夜を過ごした事はありますか?
相手との付き合いを振り返らせると共にアドバイスを授ける二人

>>52
そして自分の思いを真っ直ぐ伝えてあげてください
愛する人を信じてあげてください
強く結びついた心は解けたりしません
目からウロコの白露

あ、でも春風さんはお互い妊娠して物理的にも~
そういう春風ちゃんこそとんでもないお○ん○んでぐっちゃぐちゃに~
なんて言い出してる二人にお礼をして戻ってくる

「普通のデートを相手とした事はありますか?」


白露「無い……デートをしたことすら…」


「穏やかにただ隣で眠るだけの夜を過ごした事はありますか?」


白露「そんなの無い……」


「それが答えになっていますね」


「相手との付き合い方をよく考えて下さい」


白露「なんでこんなこと気付かなかったんだろう……」


「大事なことには気付けないものなんです」

「相手には自分の思いを真っ直ぐ伝えてあげてください」


「愛する人を信じてあげてください」


白露「うん、帰ったらすぐに伝えるし相手を信じる」


「強く結びついた心は解けたりしません」


白露「そうなんだ……そうなんだね…」


「あ、でもこちらの彼女は相手とお互い妊娠して、物理的にも結びついています」


「ちょっと…!貴女こそとんでもないモノでぐっちゃぐちゃにされてるでしょ?」


白露「ここに来て良かった…言われて初めて気付くこともあるんだ……」

「……あれ、あの子はどこに行ったの?」


「もう帰ったぞ」


「姫ちゃん!!」


「変な言い争いをしてるからだ」


「あの人の助けになったのなら良かったですけど…」


「満足そうな顔をしてたから大丈夫だ。考え事の相談は二人に任せるに限る」


「……そうよね。姫ちゃんまた浮気したものね」


「なんだと?」


「ここに相談に来た子に…後ろから襲いかかったでしょ?『私はレズだ、動くな』って言って」


「それだけじゃないわよね、姫ちゃん?どこか深海棲艦に助っ人として頼まれて…その街で遊んでたわね?」


「……からあげさんを揚げてくる」タタタッ


「待ちなさいこの浮気者!!」


「悩める駆逐艦さん…頑張って下さいね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

電の元へ急いで向かう白露
途中で真っ白に燃え尽きてピクピクしてた春雨を見かけるけど目もくれず
食堂にいるところを見かけて気持ちを伝える
周りから見るとほぼプロポーズというか完全にプロポーズ

(極悪なのがついてたのは春風の方だったような…)

ーー食堂


電「……」


春雨「ひひ、ひ……」ピクピク


電「これはなんなのですか…?ピンク色のカーペット…?」


白露「電!」


電「白露ちゃん?そんなに急いでどうしたのです?」


白露「電、あたしは大事なことに気付いた…それを聞いて欲しくて!」


電「分かったですから落ち着くのです!まずはお水でも飲んでゆっくりするのです!」


白露「そんな時間がもったいない!あたしの気持ちを全部ぶつけるから!」

白露「あたしは電を信じ切れてなかった。だから電からあたしを求めてもらえるように何回も激しいことを続けてた」


白露「でもそうじゃない。電があたしを求めるようになってもそれは心では繋がれてない」


白露「あたしには電が必要。どんな時でも一緒に居てくれる大事な人なんだ」


電「それって…」


白露「普通にデートもしたいし、何もせずに一緒に寝たい。体だけとか、そういうのありきなのはもう止めたい」


白露「電…あたしと一緒に居てくれる?」


電「安価」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

はわわ…と真っ赤になってからよろしくおねがいします

電「はわわ…!」


白露「……」


電「よ…よろしくおねがいします、なのです!」


白露「電……ありがとう」


漣「いやぁめでたいですなぁ」


白露「…盗み見?」


漣「ここがどこだか分かってます?」


白露「あ……」


電「周りが見えなくなるくらい必死だったのですね」


白露「電のことしか考えられなくなって…」


電「そんなに電のことを考えてくれて嬉しいのです!」

漣「ちょっとアレな白露型の皆さんに春が来たということですな」


白露「そんなことも無くない?時雨には最上だし村雨は興味が無いし」


漣「そこで床と同化してる春雨さんは論外ですな」


電「コレ春雨ちゃんだったのです!?」


漣「何を思ったか神通さんにサキュバス対決を持ちかけて普通に撃退されてました」


電「頭がおかしいのです……」


漣「あ、白露さん。電は別に連れて行っても構いませんよ」


白露「漣は提督じゃないでしょ」


漣「ご主人様が断ると思ってんですか?ずっとここに居てくれるなら有難いですけど、幹部さん絡みで何かあったら遠慮なく持って行って下さいね~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー執務室


『デートのための外出許可くーださい』


提督「……許可は出すが返事くらい待てなかったのか」


龍驤「特務艦やから関係ない…そうか電の外出許可か」


提督「漣によるとウキウキで連れて行ったらしい」


龍驤「あの二人がうまいこといってるのはええことや」


提督「はしゃぎ過ぎないで欲しいが大丈夫だろうか」


龍驤「なんやかんや言うても白露は特務艦やし大丈夫やろ」


提督「そうだといいんだがな」

ーー


白露「電、もしかして楽しくない?」


電「そんなこと…ないのですよ?」


白露「ごめん……普通にデート…したこと無くて…」


電「はわわ!気にしないで下さい!」


白露「気にしないでってことは…やっぱりつまらないんだ」


電「うう…白露ちゃんが悲しむのが辛いのです…」


白露「どうすればいいんだろ……」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

逆に電ちゃんがリードして楽しいこと教える
一緒にいるってそういうもの

電「あの…白露ちゃんと一緒に行きたい所があるのです」


白露「一緒に……」


電「ここまでは白露ちゃんに連れて来てもらったので、これからはこっちの番なのです!」


白露「……お願いしてみようかな」


電「電にお任せなのです!」


白露「お任せ……うん…」

ーー


電「カードショップめぐりは面白いのです!」


白露「……」


電「投資的な価値もあるのでどんどん値上がりが続いているのです」


白露「電…楽しそうだね」


電「はいなのです!一人でも楽しいのですけど白露ちゃんと一緒だからもっと楽しいのです!」


白露「…ありがとう」


電「この調子で次に行くのです!」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーーカフェ


電「あーんなのです」


白露「あーーん……」


電「あ、頬についちゃったのです…」


白露「拭いてくれる?」


電「は~い拭き拭き、なのです」


白露「…今日デートしてみてわかったけど、焦っちゃいけないんだね」


電「お互いを楽しませたいって思いが強過ぎたのかもしれないのです」


白露「これから二人の時間はたっぷりあるんだから、急がなくていいよね」


電「司令官さんと同じでゆっくり進んでいけばいいのです」


白露「……司令官と言えばさ、どんなプレイをしてたの?」


電「司令官さんと……えっと、電のおっぱいを吸いながら司令官さんのをしこしこ…とか……他には…」


ーー

今日はここまでです

ーー執務室


ガチャッ


漣「おろ?ご主人様はどうしたんですか?」


龍驤「かすみを病院に連れて行ったんよ」


漣「何かあったんすか?」


龍驤「なにも無いのを確認しに行ってる感じやね」


漣「定期検診みたいなもんすか」


龍驤「霞の検査もするらしいから時間はかかるみたいやで」


霞「急ぎの用事じゃないんで大丈夫です。では空いた時間で黒潮をいびってやりますか!」


龍驤「教えるのもちゃんとやるんやで?」


漣「わかってますよぉ~」

漣「龍驤さんも仕事はほどほどにしといて下さいよ」


龍驤「もちろんや、身体に負担かけたらあかんしね」


漣「黒潮をいじめ飽きたら戻ってくるんで、その時に交代しましょう」


龍驤「ありがとうな、お言葉に甘えさせてもらうわ」


漣「ご主人様の為ですからね。間違っても龍驤さんじゃないですから…ってね」


龍驤「それでええよ、ウチはここでおれるだけで奇跡なんやからね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー黒潮の部屋


漣「おらぁーー!仕事を教えてやる時間だってんですよ!」ガチャッ


黒潮「ぁ……」


漣「はぁん?」


黒潮「な…なんやねん!ノックもせずに開けんなや!」


漣「あのですねぇ、漣も一応女なんで分かっちゃうんですよ」


黒潮「何がや!」


漣「下着姿で姿見の前に立って確認してんでしょ?しかもその下着は勝負下着ってヤツですな」


黒潮「なにを……」


漣「今夜はご主人様とお楽しみですか。良かったですねぇ~~」


黒潮「……」


漣「その下着ならご主人様も気に入ってくれるんで、大丈夫だと思いますよ~」

漣「ご主人様の新しい仕事について行くのはいいと思いますよ。応援してるからこそ仕事をわざわざ教えてやってんですよ」


黒潮「…なんやねん」


漣「二番目以下の女でもいいなんてねぇ…へぇぇ~」


黒潮「うちのことを馬鹿にすんのか」


漣「してますよ」


黒潮「…ほっとけ」


漣「下着姿でエロいこと考えてるアンタが悪いんですよ」


黒潮「……ノックせぇへん奴が悪い」


漣「へぇへぇ、そうでございますね~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


漣「ふーん」


黒潮「なんなんよ」


漣「頭の中はピンク色のくせして、勉強は真面目にやるんですね」


黒潮「司令はんの助けになりたいのはほんまやねん。体の関係だけ考えてるアホやない」


漣「子持ちに体の関係ねだるのも十分アホですけどね」


黒潮「…今日はもうこれでええ。あとはうち一人でやるか」


漣「そうですねご主人様が帰ってきますしね。わっかりやすぅ!」


黒潮「…もうええから出て行け」

黒潮「アイツに言われんでも分かっとる。けど好きなもん仕方ない」


黒潮「この思いは成就しやんでもええねん。うちは司令はんの側でおれたらそれでいいんや」


黒潮「龍驤さんや霞から奪うつもりも全く無い。むしろこの関係が心地ええんや」


黒潮「うちに特定の男っていらんのよね。もしできるとしたら最低でも司令はんは超えてもらわな困るね」


黒潮「……もう一回確認しとこかな。それとお風呂も入っとかなあかんね」


黒潮「司令はん……喜んでくれるかな…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー風呂場


陽炎「陽炎型会議を始めるわよ!」


不知火「議題は黒潮についてですね」


黒潮「なんでやねん!」


雪風「今日も…しれぇとするんですよね?」


黒潮「……するけど」


陽炎「ひゅ~アツいわね」


不知火「羨ましい限りです」


黒潮「二人もやっとるやろ」


陽炎「黒潮とは頻度が違うわよ」


不知火「内容も違うでしょうからね」

陽炎「夜のアドバイス、欲しいんじゃない?」


黒潮「そんなに経験無いやろ」


陽炎「ふふふふ…ねぇ不知火?」


不知火「そうですね」


黒潮「その意味深なのは何よ?」


陽炎「黒潮はそこそこ経験があるからリードできるし、動き方も分かるわよね?」


不知火「不知火達は分かりませんでした。動くにしてもぎこちないので試しに全てを司令に預けてみたんです」


陽炎「そしたら……凄かったの」


不知火「回数が増していくごとに激しさが増すんです。恐らく龍驤さんとの経験が元になっていると思います」


陽炎「あんなに気持ちいいことがこの世にあるなんて思わなかったわ」


黒潮「……」


雪風「しれぇは種馬か何かなんですか?」


不知火「似たようなものですね」

漣「おらーーー風呂ですよ~!」


潜水新棲姫「漣との風呂だ」


黒潮「前を隠せって言うとるやろ!」


漣「ブラブラさせるの気持ちいいんすよ」


雪風「ひ…」


陽炎「雪風に悪影響だからやめて!」


漣「おおっとこれは失礼しました」


潜水新棲姫「危ないところだった」


漣「あ~目が合ったんで業務連絡しまきます。ご主人様は霞と帰ってきてますよ。異常は無かったそうです」


黒潮「ほなうちはもう出るわな」ザバッ


漣「……分かりやすいなぁ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


漣「……」ぶくぶく


潜水新棲姫「黒潮の変わり方が面白くないのか」


漣「なぜそれを…?」


不知火「見ればわかりますね」


陽炎「黒潮も成長してるのよ。今までは頭痛に悩まされたり改二が安定しなかったりで大変だったけど、悩みから解放されたのが大きいわね」


雪風「そのきっかけがしれぇなんですよね?」


潜水新棲姫「そうだな、だからあんな状態になっているんだ」

不知火「短期なのもかなり改善しましたね。だから漣さんに教えて欲しいと言えたんです」


漣「そうなんですよ…それがつまんないったらありゃしない!」


潜水新棲姫「いいことじゃないか」


漣「悪口を言い合う相手は居てもいいんですよ。むしろ調子が良いんです」


陽炎「黒潮はその役目から卒業ね」


漣「仕方ないですなぁ、あのアバズレにしておきますか」


雪風「アバズレ……」


潜水新棲姫「龍驤のことだな」


陽炎「…この鎮守府って本当にピュアな子に良くないわね」


不知火「今に始まったことではありません」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

陽炎「有名なので言えばヤリ部屋での騒動もあったわね」


雪風「な…んですか……?」


漣「横須賀の前は昼間から好き放題盛ってたんですよ。それはどうなんだってなってヤリ部屋を建てたんです」


不知火「結局ヤリ部屋では無くなりましたけど、客観的に見ると凄かったです」


雪風「頭おかしいんですか…?」


潜水新棲姫「お前の感想は正しい」


漣「でも漣達にとっては大事なことだったんですよ」


陽炎「頭ごなしに否定しちゃうと、あの日々の全てを否定することになっちゃうわね」


不知火「理解できなくてもいいですが、嫌悪することだけはやめて下さい」


雪風「…はい」

ーー


漣「さーてお風呂も上がって…うちの嫁はなにをしてんですかね」


潜水新棲姫「提督の部屋を覗こうとしてる」


漣「なぜ?」


潜水新棲姫「黒潮とどうなってるか気になるだろう?」


漣「勝手にやってりゃいいんですよ」


潜水新棲姫「今日はカーテンが閉まってないから楽に覗ける。一緒に見るか?」


漣「……」


潜水新棲姫「ワタシの読唇術でなにを言っているか解説もしてやろう」


漣「ほんとは…興味無いんすけど、嫁がそう言うから覗いてみましょうかね」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


潜水新棲姫「提督はちゃんと黒潮の下着を褒めたようだ」


漣「ご主人様はそういうとこ気付く人なんすよ」


潜水新棲姫「欲に溺れることなく黒潮の感謝の気持ちを受け止めているな」


漣「依存症が治ったのがデカイですよ」


潜水新棲姫「普通なら提督は日替わりで女を楽しめる状況だ。しかしそんなことはしない」


漣「遊びとも取れますけど、感謝を受け止めるって線引きは守ってますね」


潜水新棲姫「黒潮達が提督と夜を過ごすようになって変わったな」


漣「全員がいい方向に変わってんですよねぇ」


潜水新棲姫「不満なのか?」


漣「黒潮とはもっと遊んでたかったんですけど…ご主人様から引き剥がすわけにはいきませんからね」


潜水新棲姫「その分ワタシと遊べばいいじゃないか」


漣「…そうですね、漣にはこんな出来た嫁が居るんでした」


ーー

今日はここまでです

ーー


龍驤「川内が戻ってくるんやって」


提督「忍者提督のところで修行をやり直していたあの川内が…」


龍驤「ウチといざこざもあったけど、仲間なのには違いないからね」


提督「そうなると名取と由良は帰るのか?」


龍驤「どうなんやろ…忍びが横須賀に集中してるのはええんかな?」


提督「忍びは依頼があれば何処にでも出向く。拠点がどこであっても関係ないのかもしれないな」


龍驤「川内が忍者提督から言付けられてるかもしれんから、ちょっち待ってみよか」

龍驤「由良達は川内とは会ってたんやでな?」


提督「そのはずだ。何度か忍者提督の所に戻っているから、その時に話はしているだろう」


龍驤「由良から川内の話はなんも聞いてなかったんよな…」


提督「そもそも由良はそんなことを言わないだろう」


龍驤「そうかなぁ…弟子のことは言いたくなるもんと違うんかな?」


提督「相手は由良だからな。できて当然のことは褒める必要がないと思っているのかもしれない」


龍驤「そう言われたら納得してまうわ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

スドォン…


龍驤「何の音や!?」


提督「中庭の方から聞こえてきたな」


龍驤「誰かの訓練弾の誤射か?」


提督「警報は鳴っていないが…」


龍驤「騒いでる様子も無いな……何も無かったことはないと思うんやけど」


提督「少し様子を見てくる。すぐに戻らなければ何かあったと思っていてくれ」


龍驤「スクランブルもかける用意しとくわな」

ーー中庭


川内「やぁぁぁ!!」


由良「…」


提督「二人が出していた音だったのか」


由良「少しはマシになった」


川内「師匠も変わらずです!」


提督「久しぶりだな川内」


川内「提督!!」ダキッ


提督「うぉ…っとと」


川内「響を助けに行った時は会えなかったし、いっぱい話したいことがあってさ!」


提督「分かった、分かったから…」


川内「龍驤さんにも挨拶したいし!早く執務室に行こう!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー執務室


川内「龍驤さん久しぶり!!」


龍驤「久しぶりやね、会いたかったで」


川内「…その義足はお洒落なヤツ?」


龍驤「これはな、体への負担を最小限にしてくれるやつなんや。北上が作ってくれたんやで」


提督「龍驤は妊娠しているんだ、義足も実用性より負担が少ないものの方がいい」


川内「妊娠!龍驤さんもついにママになるのかぁー!」


龍驤「ええタイミングで戻ってきてくれたんよ」


提督「助けてもらうことが多そうだ。これからも頼む」

龍驤「川内の所属はこっちに戻るでええんやでな?」


川内「そう!またお世話になりに来たよ!」


提督「そうなると由良と名取がどうなるかだ」


龍驤「名取は横須賀へ栄転ってことになっとるけど、本業は忍びやし」


提督「その辺がどうなるかは聞いていないか?」


川内「忍者提督から話は聞いてきてる」


龍驤「ほな教えてもらおか。忍者提督はどう思ってるんかって話やね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

川内「師匠はもう横須賀にはなくてはならない存在だから、無理に帰還させるような事はしないって」


提督「つまりこのままということか」


川内「最終的には本人に任せるとも言ってたよ。名取さんもそのサポートに付いて欲しいけどそれも自由だって」


龍驤「ウチらに任せてくれるんか、有難い話やわ」


川内「実はさ、私も自由だって言われたんだよね」


提督「それでここに戻ってきてくれたのか」


川内「龍驤さんのこと…今度は守りたいから。許してくれるって言ってくれたけど、それを行動で示すよ!」

龍驤「それは心強いわ。今のウチを護衛してくれるのは大助かりやで」


提督「俺だけでは守れないこともあるかもしれない。その時は遠慮なく頼らせてもらう」


川内「任せて!」


龍驤「ほな早速護衛してもらおかな。司令官は仕事しとってな」


提督「何処に行くんだ?」


龍驤「かすみの所や。川内も会ってみたいやろ?」


川内「もちろん!じゃ、龍驤さんは責任を持って護衛してくるから!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


かすみ「まぁま、りゅじょ」


龍驤「そうやで~ウチはりゅうじょうやで~」


かすみ「……?」


霞「この人はせんだいよ」


かすみ「せ、だ」


川内「凄い、もう喋れるし会話もできるんだ」


霞「現代艦娘だからこんなものよ」


川内「凄い……」

霞「力も凄いのよ。まだ乳飲み子なのに…」


川内「そんなに強いの?」


龍驤「これなんやと思う?」スッ


川内「ゴミ…?」


龍驤「この子が握り潰した玩具や」


霞「子ども用の物だけどこんなに潰れることなんか無いわよ」


川内「私でもできるけど…この子がこれをやったなんて」


霞「もうすぐ実力でも負けるわね」


龍驤「ガングートや北上から話は聞いてるからね」


川内「現代艦娘……かわいい赤ちゃんだと思って油断してたらいけないかも」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

さみだれ「そういう時は私に任せて!」


川内「……えっと」


龍驤「さみだれや。五月雨の子どもで現代艦娘なんやで」


川内「そうそう!あの五月雨とイメージが違いすぎてパッと出てこなかった」


さみだれ「力の出し方にはコツがあるの。それを教えてあげるから問題ないよ!」


霞「本当に大丈夫なのよね?」


さみだれ「任せて!ついでに艤装の使い方も教えちゃうから!」


霞「それなら任せてみるわ」

龍驤「かすみに挨拶は終わったところで執務室に帰ろか」


さみだれ「大丈夫?」


川内「護衛は私に任せておいて!」


さみだれ「川内さん強いの?」


川内「忍びなんだから強い!」


さみだれ「おぉ~」


霞「龍驤さんのことは任せたわよ」


かすみ「ん、だぁい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー執務室


川内「龍驤さん調子良さそうだけど何かキッカケがあったの?」


提督「あることはあったな」


川内「妊娠したからって話じゃないよね?」


提督「そうだな…」


龍驤「さっきから司令官のこと質問攻めやね」


川内「聞きたいことはいっぱいあるからね!色々と話を聞いて皆んなに追いつかないと!」


龍驤「川内も付き合いは長いからなぁ。今の状況やと十分古参って呼べるやろうからね」

龍驤「そうやこの話したらびっくりすると思うで」


川内「なになに?」


龍驤「黒潮な、いま司令官に夢中みたいなんや」


川内「黒潮が!?」


龍驤「司令官が次の仕事に就く時に自分も連れて行ってくれって言うくらいやからね」


龍驤「やっぱり司令官と一夜を過ごしたのが大きいんやろうなぁ」


川内「……雲龍から聞いたけど本当だったんだ」


龍驤「神通もそうやで。感謝を伝えるのはこれ以上ない方法やからね」


龍驤「ウチが安定してんのはそれもあるんかなぁ。下心のない関係やから心が痛むこともないし」


龍驤「まあウチみたいなモンが心を痛めても…って話やけどね。とにかく川内がおれへん間に色々と変わってるんや」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

川内「本当によく変わってるよね。龍田に始まり問題抱えてた子たちがみんな安定してるんだもん」


龍驤「司令官と寝るとイイことがあるかもしれんね」


提督「おいおい…」


川内「雲龍から聞いた時は半信半疑だったけど、この鎮守府を見たら納得だね」


龍驤「今のところ全部がええように進んでる。やりたいことが見つかった子もおるし、色々と落ち着いてもきてる」


川内「提督の家族計画も順調ってことか。あ、家族と言えばあの子はどこ?」


龍驤「かすみとは会ったやろ?」


川内「違う違う、朝霜だよ。確か籍を入れて養子にするって…」


龍驤「川内、ちょっと黙って」


川内「え…?」

提督「…すまん。少し席を外す」ガチャッ


川内「え、え?怒った…?なんで……?」


龍驤「言うのが遅なったわごめん。朝霜のことだけは司令官の前では絶対に言わんといて」


川内「ねぇ……まさか…」


龍驤「安定し始めてるのがどうなるかわからへんのよ」


川内「嘘でしょ……朝霜が…」


龍驤「家族のおらん司令官が娘を失った悲しみは深過ぎる。とても言葉や行動では癒やされへん」


川内「そんなの聞いてないって……」


龍驤「川内がおらん間にええこともいっぱいあったけど、司令官の心の傷も深くなってしまったんよ…」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


早霜「本来背負うべき業は私が背負い直す…魂の行き着くこの場所でなら……!


門番「あの~エンマさま~うるさいのがいるんでなんとかして下さいよぉ」


門番「……そうです見せしめで地獄に落としたあの魂関連の話なんです」


門番「こっちに来てからうるさくて仕方ないんです。黙らせようにも正規の手続きを踏んでないから手出しできないんですよね?」


早霜「姉さん……貴女は絶対に助けるから…!」


門番「もう本当にうるさい……なんとかして下さいよ」


門番「元はと言えばエンマ様が悪いんですよ。魂を戻せるなら早く戻して下さいよ」

門番「え?今から戻しても多分元の生活はできない?」


門番「地獄に居過ぎたから精神はまともじゃない…エンマ様の責任じゃないですか!」


門番「まだ体が現世にあるんなら早く戻して下さい!そうすればこれは静かになります!」


早霜「姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん…」


門番「だぁーーーうるさいーー!!」


門番「人手が足りないから地獄の管理もしてやってるんだぞ!これじゃ職員の要求が通らないブラック企業だ!」


門番「え?ここは地獄だからな…って?」


門番「…つまんないこと言う暇があるなら仕事して下さい」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

早霜「あの時世界は姉さんの死を望んだ……」


早霜「そしてあんな死に方をさせられて……姉さんは本当なら怒っていいし憎んでもいいのよ」


「あ……」


早霜「私はそれを認めない…絶対に連れて帰る…」ズルズル


「ぇ……」


門番「エンマ様、ちょうど今引きずりながら連れて帰ろうとしてます」


門番「もう面倒なんで二人とも潰していいですか?」


門番「……ほうほう」


門番「最善ではないですけどいい考えだと思いますよ。早速やってみます」

門番「はいそこまで。簡単に地獄から帰られるとマズイんだけど?」


早霜「姉さんは悪くないのよ…!」


門番「そうお前の業を背負ってるからコイツはなにも悪くない」


早霜「だったら…!」


門番「でも魂を戻しても意味ないよ。精神は崩壊してるし自我も殆ど保ててない」


早霜「姉さんには変わりない…!」


門番「じゃあ自分の魂と引き換えでも戻すって言える?」


早霜「なによ……」


門番「死んでないアンタが自ら地獄に落ちるっていうなら…」


早霜「私の魂でよければ安いものよ…!!」


門番「即答って…」


早霜「早く…早く戻しなさいよ……!姉さんは…!」


門番「もう本当にうるさい。地獄に落とした後は覚悟しろよ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

「これで……姉さんは……」


門番「はぁ……地獄に落ちた途端にこれとか」


門番「こんな自我の消えた魂に価値は無い。地獄の苦しみも味合わせることもできない」


「……」


門番「放っておけば勝手に消えるか……これ私損しただけだよね…」


門番「まあでもうるさく無くなったからそれでいっか。一つ返って一つ消えたなら損得ゼロ」


門番「ただ私が疲れただけですか……はぁぁ」

ーー


「助かったはずの……己を捧げる行為……これは尊ぶべきもの……」


「しかし……この魂は……既に自我が崩壊している……」


「ならば……汝が……身体を与えよう……」


「怪我を治すのと同じ……身体を若返らせればいい……」


「赤子にまで戻り……精神を築き上げれば良い……」


「例え見た目が違ったとしても……魂は間違いなく……」


「これで……良いのだろう……?」


「ま、そういうことでいいよ。タダ働きご苦労様~」

ーー足りないもの鎮守府


菊月「例の地下から異音だと?」


アケボノ「早霜が朝霜になにか仕掛けたんじゃないの!?」


望月「変な予知は見えないからその線は無さそう」


荒潮「開けてみるわね~」


ガチャッ


アケボノ「はぁ?」


望月「マジで?何も見えなかったんだけど」


荒潮「あらぁ~」


菊月「これは…どういうことだ……」


「んぎゃ……」


菊月「朝霜が消えて赤ん坊がいる……朝霜の抜け殻がこれに置き換わったとでも言うのか…?」


ーー

今日はここまでです

ーー


多摩「それが朝霜だと言うのか?」


菊月「そうとしか考えられない」


「だぁ…」


菊月提督「現代艦娘とも違うようだな」


菊月「艦娘には幼少期は存在しない。早霜の呪いでこうなったとも考えられる」


多摩「このことは提督には言ったのか?」


菊月「言えるはずがない。こちらが正気か疑われるだろう」

多摩「朝霜をどうするつもりだ?」


菊月「幹部の所に持っていく。精密検査でなにか分かるだろう」


菊月提督「このことは暫く提督には黙っている方がいい」


多摩「…菊月達の力を見慣れてても、これは無理だと思うにゃ」


菊月「本部に持っていくのはお前がやれ」


多摩「なぜ多摩だにゃ?」


菊月「この間のペーパーテストに合格した件も報告してこい。幹部が来るのを待つより事が早く進む」


多摩「…行くしかないみたいにゃね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー大本営


幹部「いつ生んだんだい?困るよ報告してくれないと」


多摩「おい」


幹部「冗談だよ。多摩君が難しい顔をしていたので和ませようとしたのさ」


多摩「全く……」


幹部「それで、その赤ん坊はどうしたんだい?」


多摩「これは朝霜だにゃ」


幹部「……うーん」


多摩「こっちは冗談じゃないにゃよ」


幹部「これは困ったことになったね…」
これはやはり検査してみるしかないかなと言う結論に

幹部「これは検査してみるしかないだろうね」


多摩「多摩もそう思うにゃ」


幹部「赤ん坊には悪いが仕方ないね」


多摩「じゃあこの子は預けるにゃよ」


「んぁ~」


幹部「おっとと……」


多摩「ペーパーテストに受かった報告も済んでよかったにゃ」


幹部「まさかついでに報告に来るとは思っていなかったよ……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


「んぁ~~」


幹部「んー……髪の色といい、見た目は朝霜君のようだけどねぇ」


ガチャッ


駆逐棲姫「幹部、さっき多摩が来てなかったか?」


幹部「ああ来ていたよ、その時に…」


駆逐棲姫「……」


幹部「ん?」


駆逐棲姫「そうか…私は用済みなのか」


幹部「なんの話だい?」


駆逐棲姫「やはり子どもを産める妻が欲しかったんだな」


幹部「いや…違う!これは多摩君が持って来たんだ」


駆逐棲姫「そんな朝は要らない」

幹部「嘘としか思えないのはよく分かる。多摩君が他人の赤ん坊を持ってきたなんて意味か分からないからね」


駆逐棲姫「今まで世話になったな」


幹部「待って欲しい。せめて多摩君と話としてくれないかい?」


駆逐棲姫「指輪は返す」


幹部「それはダメだ!クキ君は私の大事な…」


「んぁーー!」


幹部「おっとと…大きな声でを出してしまったから…よしよし」


「きゃっ、きゃっ」


駆逐棲姫「他人の子どもがそんなに懐くはずがない。それが何よりの証拠だ」ガチャッ


幹部「これはマズイ…追いかけようにも赤ん坊をどうにかしないといけないからね……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀鎮守府


レ級「あの野郎…ぶっ殺してやる」


暁「落ち着いてレ級」


駆逐棲姫「暴れるのはやめて欲しい。私が愛した人間だから」


レ級「クキにこんなこと言わせるだなんて…絶対に許せないからな


暁「幹部さんに限ってそんなことは無いと思うけど…」


駆逐棲姫「出張が多いから色んな地方に家を借りてる。地方には私の知らない女が居たと思う」


レ級「…ダメだ。いくら暁の頼みでもこればっかりは聞けない」


暁「分かったわ、私も行くからまずは幹部さんの話を聞きましょうよ」


レ級「今のあたしが話を聞ける冗談だと思うか?」ギギギッ


暁「それでも冷静になって。私達は力の使い方を間違えると世界を滅ぼしかねないのよ」

レ級「提督も大事だしこの鎮守府も大切だ。もちろん暁はなによりも大事な存在だ」


レ級「でもなにより大切なものがある」


駆逐棲姫「……」


レ級「世界がどうなろうと知ったことじゃない。妹を泣かせる奴は許せない!!」


暁「お願いレ級落ち着いて。そうじゃないと……私が貴女を止めないといけなくなる」


レ級「クキの為ならたとえ暁でも……」


暁「私だってレ級を止める責任があるのよ」


駆逐棲姫(止めるのが正解なんだろうがそれはできない。こんな私の為にここまで本気になってくれることが嬉しい)


駆逐棲姫(本当はいけないのに心地良さまで感じてしまう。この感情はなんなんだろうか)


下2 この後の展開やその他起こったことなど

幹部「クキ君!」ガチャッ


レ級「クソ野郎が!殺してやる!!」


暁「待って!幹部さんの話を聞いてあげて!」


駆逐棲姫「もういいんだ」


幹部「違う!あの子どもは私の隠し子なんかじゃない!」


駆逐棲姫「本妻との間にできた子どもなんだろう」


幹部「断じて違う!」


暁「幹部さん否定するだけじゃなくて理由を教えて?」


幹部「本当なら黙っておくつもりだった。提督君の為にこれは言うべきじゃ無かったんだ」


暁「いいから早く言って!」


幹部「あの子どもは…朝霜君なんだ」


レ級「ふざけやがって…!!」


暁「待って!冗談でもそんなあり得ないことは言わないわよ!なにか理由があるのよ!」

ーー


幹部「これが全てだ。信じられないのは私も同じなんだ」


暁「はっきり言って作り話の言い訳にしか聞こえないけど、そんなすぐにバレる嘘つくわけないわよね」


幹部「本当にあの赤ん坊が朝霜君自身であるかの検査を、整備士君に依頼したよ」


駆逐棲姫「嘘だ」


暁「ねぇクキちゃん、幹部さんは一瞬の場面だけで信じられなくなるような人なの?」


駆逐棲姫「幹部には子どもが出来たんだ」


暁「幹部さんが裏切ったことがあるの?」


駆逐棲姫「……無い」


暁「だったら信じるのが妻の役目だと思うわ。それでこそ真のレディーってものじゃないかしら」


駆逐棲姫「レディーかどうかは関係ない」


幹部「クキ君はこうと決めたら動かないからね……信じてもらうしか無いんだが…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

暁「ねぇクキちゃん。あの朝霜以外に幹部さんと親しい朝霜は居た?」


駆逐棲姫「いない」


暁「そもそも幹部さんと朝霜とはどんな関係だった?」


駆逐棲姫「元特務艦だ」


暁「そもそも朝霜は…死んでるのと同じだったでしょ?」


駆逐棲姫「あの子どもが朝霜と決まったわけじゃない」

幹部「すまなかったクキ君」


駆逐棲姫「謝るってことはやっぱりそうなのか」


幹部「子どもがいない事をこんなに気にしていることを気付けなかった私が悪い。本当にすまない、クキ君」


レ級「やっぱり許せねぇ」


暁「待って、レ級…」


レ級「あたしが許せないのはクキを悲しませたからだ。クキの気持ちに気付けないコイツが悪い」


幹部「それについては……言い訳できないね」


レ級「クキはあたしが預かる。誰の文句も言わせないからな」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー数日後


コンコン


暁「開けてレ級」


「……」


暁「あの赤ちゃんの検査の結果が出たのよ」


ガチャッ


レ級「やっぱり…」


暁「あの子は純粋な艦娘の赤ん坊。この時点で艦娘と人の間にできた子ではないわ」


暁「そしてDNAは……私達の知ってる朝霜と完全に一致したそうよ」


レ級「……」


暁「あの子は朝霜で間違いないわ。幹部さんが浮気した事実は無かったのよ」

暁「いつまでもクキちゃんを閉じ込めておくわけにはいかないでしょ?」


レ級「…クキは一人じゃ生きていけない」


暁「レ級じゃなくても幹部さんがいるわ」


レ級「そういう意味じゃない」


暁「……」


レ級「あいつは痛覚も含めて色んなものが鈍い。暑さと寒さもそうなんだ」


レ級「一度街を歩いている時に熱中症で倒れてる。その時は幹部が助けたらしいけど、クキは常にその危険がある」


レ級「自分の知らない所で死ぬかもしれないんだ…もうそれに耐えられない」


レ級「あたしが閉じ込めておけばあたしの前で死ぬ。それが一番いいんだ」


暁「……レ級、クキちゃんにご飯はあげてるのよね?」


レ級「……」


暁「なに考えてるのよ!早くクキちゃんの様子を見せて!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


駆逐棲姫「これは流石に食べ過ぎになると思う」


レ級「…クキは満腹かどうかも分からないんだ」


駆逐棲姫「苦しいのかよく分からない。でもこんなに食べたことが無い」


レ級「こんなクキが……」


暁「クキちゃんの生き方を決めるのはレ級じゃないでしょ!!」


暁「私達には力があるからクキちゃんくらい目を瞑っても守れるわ。けどそれは間違った力の使い方よ!」


暁「今レ級がやってることは自分の為でクキちゃんの為じゃない!」

レ級「あたしの為……あたしがそうしたいから…」


暁「クキちゃんのことは自分で決めてもらうの。それが彼女にとって一番なのよ」


レ級「あたしは間違ってたのか……」


駆逐棲姫「…?」


暁「ちなみに…クキちゃんはどう思ってるの?」


駆逐棲姫「なにがだ?」


暁「ここ数日レ級に閉じ込められてたでしょ?寂しいとかなにか思わなかった?」


駆逐棲姫「安価」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

駆逐棲姫「結論が出るまでは待っていようと思った。事実なのかどうかが気になってずっとソワソワしていた」


駆逐棲姫「脚がちゃんとあって動けるなら聞きに行っていたかもしれない」


暁「結果が出たわよね?」


駆逐棲姫「出たが関係無かった。心の奥では信じていたんだ」


暁「クキちゃんは幹部さんを信じてたそうよ」


レ級「……暁…暫く頭……冷やしてくる…」


駆逐棲姫(信じる理由は無かったのに幹部のことを信じていた、これが愛だというのだろうか。こんな私でもそんな感情を自覚できるとは思わなかった)


ーー

今日はここまでです

ーー


提督「信じられません。朝霜が突然赤ちゃんになるだなんて」


幹部「私もそうだが精密検査の結果が全てを物語っている」


提督「一体…どうしたというんですか?」


幹部「菊月提督君に話を聞いたんだが早霜の可能性くらいしか考えられないと言っていた」


提督「そんな呪いがあるんですか?」


幹部「そんなものは存在しない。ただ精神を幼児化させる術はあると由良君から聞くことができた」


提督「それを応用したものだと…?」


幹部「なくは無いだろうという結論を出すしかなかった。早霜君の存在が呪いそのものとなってしまったのだから確認のしようがない」

提督「朝霜はどうなるんですか?」


幹部「当分の間は大本営で様子を見る。整備士君によればこのまま成長しない可能性が高いらしいからね」


提督「……どうしてですか?」


幹部「艦娘は生まれながらにして成長した体を持っている。彼女達に成長期などというものは存在しない」


幹部「成長するにしても大きなものは今まで確認されていない。ということは赤ん坊の艦娘はそれ以上成長しない、という仮定は理解できるね?」


提督「…分かりました」


幹部「朝霜君には悪いがこれから何度も検査やデータを取ることになるだろう。なにせ純粋な艦娘の赤ん坊は初めてだからね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督「早霜は……消えたままなんですね」


幹部「そうだね…しかし朝霜君が居た場所に痕跡のようなものがあったらしいんだ」


提督「痕跡だけですか……」


幹部「提督君は早霜君のことも心配なんだね」


提督「早霜がやったことは許せないことです。ですがそれでも大切な仲間には違いないんです」


幹部「やはり君は優しい人間だ……」


提督「優しいだけでは駄目なんです。救うところまでやらなくては意味がありません」


幹部「君の言うことは分かるが現状はどうしようもない。早霜君のことで引き摺るのは最善ではないよ」


提督「わかっています…」

幹部「…彼女達の話は一旦ここまでにしよう。次はこれからの話だ」


提督「例の件ですか?」


幹部「私が元帥になり、提督君には鎮守府の提督ではない仕事を任せようとしている話だね」


提督「今はどこまで話が進んでいるんですか?」


幹部「役員会議で私が元帥に推薦されそれを受けるという筋書きになっているんだが、その会議がもうすぐある」


提督「ということは…」


幹部「提督君への話も同じだけ進んでいると思って欲しい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督(あの時までは早霜も良い状態になっていた。憎まれ口は叩いていたが、それは朝霜を思うが故だ)


提督(あの事故さえ無ければ、ああいった行動に出る事も無かっただろう……)


提督(過去を後悔しても何もならない。ひとまず頭を切り替えよう)


提督「自分が横須賀の提督を退くということは後任が必要になりますよね。誰か目星はついているんですか?」


幹部「最近新人提督が一人着任することになってね。人材には空きがあるんだ」


提督「ここを任せるということは、かなりの実力があるんですね」


幹部「能力は申し分無いと思っているよ」

提督「その提督は誰なんですか?自分の知っている人なんでしょうか」


幹部「……提督君、キミを横須賀から追い出すわけじゃないんだ」


提督「それは分かっています。幹部さんが勧めてくれたその仕事をやりたいから提督を退くんです」


幹部「本人は納得していても周りがどう見るかだね…」


提督「もしかして自分と因縁のある相手なんですか?」


幹部「横須賀を任せようとしているのはH幹部なんだ」


提督「彼とは特に……いや、S朝潮が迷惑をかけてしまったみたいです」


幹部「みたい、じゃないんだ。事態は深刻になってしまったんだよ」


幹部「彼の秘書艦だった朧君が解体となってしまったんだ」


提督「そんな……ことが…」


幹部「自傷の傷は大したことはなかった。しかし精神を病んでしまって再起不能ということだ」


幹部「このことは知れ渡ってしまっている。提督君は事実上クビだということは言われてしまうだろうね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー数日後、大本営


幹部「やあH幹部君。横須賀鎮守府の提督についての話なんだが…」


H幹部「悪いが……辞退させてもらう」


幹部「ど…どうしたんだい?雰囲気も随分と違ったようだが…」


H幹部「もう男漁りは辞めたんだ。一人の男として生きていくと決めた」


幹部「解体した朧君を引き取ったとは聞いていた。彼女の為にかい?」


H幹部「そうすることがせめてもの罪滅ぼしになる」


H幹部「あの朝潮をよこした龍驤に対して怒ったが、自分も朧の事を考えた行動ができていなかった」


H幹部「朧が解体したのは自分の責任でもある。そんな未熟な俺では横須賀の提督は務まらない」


幹部「そうか……朧君を幸せにできるのは君だけなんだろう。そっちを優先してもらって構わないよ」


H幹部「…すまない」

幹部「そうなると…誰に任せるかということになるね」


H幹部「菊月提督では無理なのか?」


幹部「彼というより菊月君自身に任せる方がいいだろう。菊月提督は副官ということになる」
 

H幹部「それは大丈夫なのか?昔の女が横須賀鎮守府の提督になるんだぞ」


幹部「……良くないね」


H幹部「やはり提督を辞めさせるべきでは無いんだ」


幹部「そうは言っても提督君も限界が近い。心の健康を完全に崩してからでは遅いんだ」


H幹部「なら幹部がどうにかするしかないんだな」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー軍学校


学校長「わざわざ幹部さんが来てくれるとは思いませんでした。元帥になるには私のような者の手伝いも必要なのですかな?」


幹部「いえいえ、今日はある人物に会いに来たんです。なにやら優秀な者が居るらしいと聞きましたので」


学校長「その話は間違っておりませんな。まだ若いんですが、首席卒業は確実でしょう」


幹部「そんなに素晴らしい人材なんですか?」


学校長「よければ見てみますかな?」バサッ


幹部「おお…これは素晴らしい」


学校長「絶対に提督になるという強い気持ちが彼女を前身させているようですな」


幹部「……この顔…どこかで見たことがある」

ーー


元幼女「失礼します!!」


幹部「やはり君か。とりあえず楽にしてくれて構わないよ」


元幼女「はい!!」


幹部「ふう…話をするにはもう少し砕けてもらわないといけないね。私は提督君と知り合いなんだよ」


元幼女「提督さんと!?」


幹部「うんそれでいい。普段の調子で話してくれるかい?」


元幼女「わ、分かりました……」


幹部「さて、提督君と知り合いという話だが彼とは長い付き合いになる。足りないもの鎮守府の頃からになるね」


元幼女「そんな前からお知り合いだったなんて…!流石は提督さんです!」


幹部「君は本当に提督君に憧れているんだね」


元幼女「はい!あの時助けてもらった恩は一生忘れられませんし、私の目指す人間そのものです!」

幹部「君のような提督候補生がいれば提督君も喜ぶだろう」


元幼女「ありがとうございます!」


幹部(彼女には提督君が横須賀鎮守府を退く話はしない方がいいだろうね)


幹部(提督君の行く新しい道を自分も目指したいと言われてしまうと困る。彼女は絶対に提督になるべき人材だ)


幹部(心配事が出てきてしまった……提督君に強い憧れを抱いている彼女が提督君のことを知ったらどうなるだろう)


幹部(彼女が納得する形……一番いいのは勇退だね。横須賀鎮守府で実績を挙げたから提督を辞めて次へ、というのがベストだ)


幹部(そうすれば彼女の中で提督君は優秀な提督、目指すべき目標で居続けてくれる)


幹部(そうなると……提督君には最後に大仕事をやってもらう必要が出てきてしまうね)


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀鎮守府


幹部「彼女の中では提督君はどうやら非の打ち所の無い完璧な人間らしい」


幹部「完璧な人間に憧れ、同じ道を辿る事か彼女のモチベーションとなっている」


幹部「少なくとも今は……下手に会ったりはしない方がお互いにとってはいいのかもしれないね」


提督「自分もそう思います。彼女も艦娘と接するようになれば、自分のような人間だけに執着する事も無いでしょう」


幹部「彼女はまだ若い、提督になれるまで長い時間がかかるだろう。時には挫けそうな時がある、そんな時にモチベーションが大事になってくる」


幹部「提督君、私が何を言いたいか分かるかい?」


提督「いいえ……すいません分かりません」


幹部「このタイミングで君が提督を辞めてしまうのは彼女にとってマイナスなんだ」

幹部「提督君は辞めさせられるわけじゃない。だが世間はそうは思わないだろう」


幹部「世間が、彼女が納得するものは何か?それは大きな功績だよ」


提督「……」


幹部「君は大きな仕事をやってのけて提督を勇退する。これが君と彼女にとって一番いい方法だ」


提督「自分は…何を……?」


幹部「大丈夫だちゃんと考えているからね」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

提督「あの……ところで駆逐棲姫とは仲直りされましたか?」


提督「一時期レ級が不安定だったようで…暁から心配いらないし手伝ってほしい時はきちんと頼ると言われたんですが、それでも心配で…」


幹部「心配かけて申し訳なかった、クキ君とはもう大丈夫だ」


提督「それは良かったです」


幹部「君が龍驤君と選んだ選択を私達も取るかもしれない」


提督「それは……」


幹部「まだ確定ではないがね。だが整備士君に相談すれば喜んで協力してくれるだろう」


提督「やはり子どもは女性にとってとても大事なことなんですね」


幹部「まさか自分でも思い知るとは思わなかったよ…」


ーー

今日はここまでです

ーー横須賀鎮守府


川内「師匠!」


由良「なに」


川内「走りに行きましょうよ!」


由良「走るだけは効率が悪い」


由良「サーキットトレーニング」


川内「そっちの走るじゃなくて…私達と言えばあっちですよ!」


由良「無理」


川内「なにか任務が入ってるんですか?」


由良「横須賀はバイクで飛ばせない」


由良「飛ばせる場所まで行くのも遠い」


由良「効率が悪い」

川内「ふっふっふっ、私もそうだと思ってたんです。でも思いっきり飛ばせる場所を知ったんです!」


由良「無い」


由良「都会は警察も多い」


由良「オービスも鬱陶しい」


川内「公道で走るとは言ってません!」


由良「…」


川内「かなり整備されているいい場所があるんです!師匠と二人分で予約を取ったので行きましょう!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


「……」


「貴女はまだ消えるべきではありません」


大和「私もそう思いますよ」


雪風「大和さん…」


門番「はぁぁぁ……コイツらは本当に悩みの種なんだけど……」


門番「なんで無間地獄で自我を失わないわけ?なんで苦痛に屈しないの?」


「貴女には分かりませんよ」


門番「お前は理解できるんだって。悪のみを抽出された人格だからしぶといのは当然」


門番「でも残りの奴らが……本当に意味わかんないって」

大和「早霜さんが現世に戻ればきっと楽しいことになりますね」


「武器の無い状態なら貴女より強いですからね」


雪風「私に…まだ運が残っているなら……」


「早霜さんに与えてあげて下さい」


門番「あのさぁ、全部聞こえてるんだけど?」


「それがどうしたんですか」


門番「はぁ?」


「この世界には神様なんかより強い力があるんです。地獄なんか意味がありません」


門番「はいはい、好きなだけ言ってなよ」


「世界は早霜さんを望んでいるんですよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

「……」


「」


雪風「消えた……」


大和「どういうことなのでしょうか」


「…やられました」


門番「やれやれ、これで暫くは静かになるから良しとしようかな」


「せっかく溜めていた力が…こんな奴にいいように使われるなんて」


門番「なにをしようとしてたかバレバレだって」


「……クソが」


「なんで私を殺したあの男が幸せそうにしてるんだよぉぉぉぉあああああああああああああああああああああ!!」



門番「早霜の体を乗っ取って無差別殺人?そんな考えがあるようじゃ永遠に檻の中からは出れないよ」

ーー大本営


幹部「提督君に伝えておいてくれるね?」


川内「伝えますけど…本当なんですよね?朝じゃないんですよね?」


幹部「朝霜君の赤ちゃんの隣に寝ていた赤ん坊。それは間違いなく早霜君だったよ」


由良「あり得ない」


幹部「早霜君の使う呪いの類いではないだろうね」


由良「そんなことは起こらない」


幹部「起こってしまっているんだよ」


由良「…」


川内「サーキットに行く途中に提督から緊急連絡があったと思ったら…まさかこんなことが起こってたなんて」


由良「仕事」


川内「はぁぁ…せっかく師匠と楽しめると思ったのに」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「今言ったことは…本当なのか……?」


川内『嘘じゃないよ。もう確認も終わったって』


龍驤「幹部さんが緊急事態やって言うから何事やと思ったけど、これは緊急やね」


川内『師匠はそんな呪いは無いって言ってるけど…早霜には間違いないって』


提督「まだ大本営に居るんだな?その赤ちゃんを確認したいと伝えてくれ」


龍驤「ウチも行きたいわ、この目でちゃんと確認せな気が済まへん」


川内『私は一旦帰るから提督は私が乗せて行くね。龍驤さんはタクシーか何かでゆっくり向かって』


川内『大本営には師匠が残るから連絡はそれで大丈夫。じゃ、急いで帰るから!』

ーー


川内「提督、もし早霜だって納得したらどうするの?」


提督「どうする……分からない」


川内「考えるより先に体が動いたってやつか。私も経験あるから分かるよ」


提督「どんな形であれあの二人が帰ってきてくれた…」


川内(提督にとって朝霜は特別な存在なのは知ってたけど早霜もだったんだ。考えてみれば朝霜と姉妹ってことは間接的には家族になる)


川内(あんなことをした早霜も家族だからか……提督らしいと言えばらしいな)


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー大本営


提督「ここに早霜が…」ガチャッ


駆逐棲姫「静かにしろ」


川内「あ……」


駆逐棲姫「検査をしてこれが早霜だと分かったが、この光景を見れば明らかだろう」


提督「手を繋いで寝ているのか……」


駆逐棲姫「何があったのか説明は一切できない」


川内「早霜のこんな幸せそうな顔…見たことないよ」


駆逐棲姫「魂は同じでも記憶は全て無くしているかもしれない。あの早霜とはまったく違うと言えるだろう」

漣「よしっ、追いついた!」ガチャッ


駆逐棲姫「うるさいぞ」


「ふぇ……」


龍驤「これは……早霜に間違いなさそうやね」


提督「帰ってきてくれたのか…本当に……二人が…」


駆逐棲姫「納得できたか?」


提督「あぁ……」


龍驤「早霜やとわかったのはええことや。次はこれからどないせなあかんのかを考えなあかんね」


漣「まさか本物とは、不思議なことが起こるもんですなぁ……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督「二人はどうするべきなんだろうな…」


漣「ご主人様が育てるのは無しなんですか?」


提督「朝霜も早霜も、俺達の所に居なかったらあんな事にはならなかった…」


漣「それは違います、ご主人様が居たから朝霜はあそこまで生きたんですよ。朝霜は早霜に洗脳されてたのを忘れましたか?」


龍驤「そうや、だから司令官は迷ってるんよ」


川内「中途半端に助けたって思ってるんだよね」


提督「俺は朝霜を完全に救うことはできなかった」


駆逐棲姫「コイツらを引き取るのに迷いがあるなら、私達がもらう」


漣「クキさんと幹部さんが育てると言うんですか」


駆逐棲姫「これが一番現実的だろう」

駆逐棲姫「提督達は子育てに忙しいし龍驤も出産を控えている。他の艦娘の協力を得られるとしても難しいだろう」


川内「一気に四人の子持ちは流石にね」


漣「クキさんだけなら文句はありませんけど、幹部さんのことですからきっとその子達を使いますよね?」


駆逐棲姫「私もそのつもりだ」


龍驤「当然やと思うよ、艦娘の赤ちゃんなんて聞いたことないんや。データはあるだけ欲しいわな」


駆逐棲姫「だが決して悪用もしないし二人を傷付けるようことはしない。それは約束できる」


漣「どうしますかご主人様?」


提督「幹部さんになら任せられる……あの人が艦娘に酷いことをするとは思えない」


龍驤「ウチもそれでええと思う。幹部さんとこやったら安心できるわ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


幹部「あの二人は私に任せて欲しい」


漣「本当に大丈夫なんでしょうねぇ」


幹部「クキ君の言う通り定期的に検査をしてデータは保存する。だが負荷のかかるものはしない」


幹部「実験なんてもっての外だ、不幸にさせることは必ずしないと誓おう」


龍驤「ここまで言うてくれるんやったら任せてもええやろうね」


提督「幹部さん、お願いします」


幹部「ああ、しっかりと任されたよ」

幹部「さて、丁度いいタイミングで来てくれたと思おう。実は提督君に話があったんだ」


幹部「それはだね、各国の賓客に対しての共存を望む深海棲艦を保護する計画の宣言式をやってもらいたいんだ」


漣「プレッシャーに弱弱のご主人様が宣言式ぃ?」


幹部「その場で責任者になること宣言することで、国家プロジェクトの重役になる為に提督を勇退することを印象付けられるんだ」


龍驤「国家プロジェクト…国が絡んでくるんやね」


川内「ちょっと待って、本当に提督辞めちゃうの!?」


提督「…すまない、そのつもりだったんだ」


川内「雲龍から聞いてはいたけど…関係を持つための言い訳か何かだと思ってた……」


龍驤「ちゃんと言ってなくてごめんな」


川内「ううん、聞いてたから……でも提督の口から聞くと…結構ショックだなぁ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

幹部「そのことだが…今回のことで人事を色々と考えたんだ。多摩君が足りない物鎮守府に着任するのは決定だ」


幹部「菊月提督が横須賀へ異動となって、提督君は副官として席を残す事を考えている」


龍驤「仕事を掛け持ちすることになるん?」


幹部「こうする事で主とする業務は分散させつつ、実績のある人物で内外に対して憂いを断つことができると思うんだ」


漣「それだと勇退ということは受け入れられますね」


幹部「そもそも一時保護も各鎮守府が行う計画だからね。両組織のトップは近くにいる事であることが望ましい」


川内「それは確かに……」


幹部「提督君は横須賀の提督では無くなるが、決して君達から完全に離れることは無いようにしたい」

幹部「計画の一部として、保護組織の拠点となる施設は横須賀鎮守府に併設することも検討中だ」


川内「私はそれなら嬉しいな。提督が遠くに行っちゃうって…嫌!」


漣「漣も賛成ですね。ご主人様が毎晩のように感謝されてるのは提督が完全に居なくなるからだって分かってますよね?」


龍驤「ウチも賛成やわ鎮守府に籍が残るのはかなり大きいと思うよ」


提督「幹部さんにここまで考えてもらって断る方がどうかしているな。許されるのなら幹部さんの考えに乗りたいです」


幹部「よし、ではこの案で進めていこう。提督君の最後の晴れ舞台に向けて皆も協力して欲しい」


川内「もちろん!」


漣「いい感じに忙しくなりそうでいいですねぇ」


龍驤(家族も増えて仕事もなんとかなりそうや。朝霜らに光も見えて全部うまくいっとるはずやのに…こういう時に限って嫌な予感がするんや)


龍驤(お願いやから何も起こらんといてな……お願いやで…)


ーー

今日はここまでです

ーー


幹部「菊月提督君が大本営に来れないと聞いた。これからのことについて大事な話があるんだが何があったのか説明してくれるかい?」


多摩『大事な話は多摩が提督になること関係かにゃ?』


幹部「そうだね、多摩君には先に知らせておこう。多摩君が足りないもの鎮守府の提督になって、菊月提督君は横須賀鎮守府を任せようと思っていたんだ」


幹部「提督君は深海棲艦の保護を目的とした組織の代表と、横須賀鎮守府の副官として籍を残してもらう考えだ」


多摩『提督が残るのかにゃ?』


幹部「新しい組織の拠点も横須賀鎮守府の敷地内に作る予定だ。提督君は必要な存在だということがよく分かった」


多摩『そっちの艦娘は喜ぶのが多いはずにゃ、幹部さんには感謝だにゃ』


幹部「私はお礼を言われる立場じゃない。凄いのは提督君自身だからね」

幹部「説明が終わった所で本題に入ろう。彼に何があったんだい?」


多摩『……実は多摩がこの鎮守府の提督になる話は外部の人間にも言ってたんだにゃ』


幹部「普通ならよくないことだが、足りないもの鎮守府は地域と密着している。プラスに働くことが多いだろうから咎めたりしないよ」


多摩『幹部さんの言う通りだにゃ。権力者さんに報告したら多摩が提督になるなら歓迎するし協力も惜しまないとまで言ってくれたんだにゃ』


幹部「素晴らしいね」


多摩『でもその時、多摩の指輪を見られたんだにゃ。菊月提督にも指輪があって二人は夫婦なのかと言われたんだにゃ』


多摩『勿論違うってすぐに言ったにゃ。多摩はお医者さんと結婚してて菊月提督は……って言いかけた時に深海海月姫が現れたんだにゃ』


幹部「……それで?」


多摩『海月姫が菊月提督の嫁で子どもが居て…って話をして、菊月提督がそれを認めたんだにゃ』


幹部「なるほど……それを知った菊月君が菊月提督君を…ということかい」


多摩『超絶喧嘩中でえらいことになってるにゃ。問題は暫く解決しそうに無いかもにゃ~』


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


菊月「海月姫も嫁だ……子どもがいることも事実だが……自分を……愛してくれてるのも……分かってる……」


菊月「だが……権力者の前で司令官が……公言すれば……私との関係が……」


深海海月姫「浮気ってことになるわねぇ」


菊月「……ふぐぅぅぅぅ…!!」


深海海月姫「ちょっとデリカシーが無かったわよねぇ」


菊月「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」


深海海月姫「貴女とはライバルでもあるけど…これは流石に放っておけないわねぇ」

深海海月姫「大事な人だとか言いようはいくらでもあったわよねぇ。嫁だって言い切る必要はなかったわぁ」


菊月「ひっく……あぁぁぁぁぁぁ……」


深海海月姫「あの人はきっと良い言い訳が思い付かなったのよ。下手なことを言って印象を悪くしたくなかっただけ」


深海海月姫「貴女のことも愛しているはずよ、そんなに泣かなくても…」


菊月「嫌だ…いやぁぁぁぁぁぁ…………」


深海海月姫「こんなになってる菊月なんて初めて見たわね…よっぽとショックだったのねぇ」


深海海月姫「放っておいてもいいんだけど、やっぱり無視はできないわぁ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


権力者「話そびれた事とは何かな?」


菊月提督「俺は提督になる前、記憶を失っていたんだ」


権力者「ふむ」


菊月提督「その時に自分を支え、愛してくれたのが深海海月姫なんだ」


権力者「昨日紹介してくれた奥さんだね」


菊月提督「俺を愛してくれて、愛している女は二人居るんだ」


権力者「浮気か…もしくは深海棲艦は奥さんに含まないという方針なのかな?」


菊月提督「自分を愛して信じて探し続けてくれたのは菊月という駆逐艦で、どちらも大切な妻だ」


権力者「随分と大胆なことを言うんだね」


菊月提督「嘘を言いたくなかった。誤魔化すのも苦手だからこれしか選択肢は無かったんだ」

権力者「その真っ直ぐさは提督君を思い出す…彼は元気にしているんだよね?」


菊月提督「そのようだ。また後日テレビに出てくるだろう」


権力者「それは嬉しい報せだ。ところで二人の奥さんとは式は挙げたりしたのかい?」


菊月提督「式……考えたことも無かった」


権力者「なら奥さん達を安心させてやりなさい。それがこれからも支援を続ける条件にしましょう」


菊月提督「わかった、近日中に必ず式を開く」


権力者「仲人で困っているならこちらがやろう。式場も抑えることもできる」


菊月提督「なら協力を頼もう。少しでも早い方がこちらとしても良い」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

菊月提督、菊月の元へ
もう一度プロポーズを

ーー足りないもの鎮守府


菊月提督「扉を開けてくれないか」


菊月『…』


菊月提督「聞いてくれているならそのままでもいい。まずは初めに謝らせてくれ」


菊月『……謝罪はいらない。あの言動は鎮守府のことを思ってだろう』


菊月提督「確かにそうだ。だがさっき権力者の所に行って来て菊月のことを話してきた」


菊月『どうしてそんなこと……』


菊月提督「お前のことを愛しているからだ」


菊月『そう……か』


菊月提督「菊月への気持ちは片腕が無かった頃から変わらない。あの世界では無くなってしまっても菊月は変わらなかった」


菊月提督「それどころか俺を探してまでくれた。そんな大切な人を蔑ろにはできなかったんだ」

菊月提督「菊月、結婚式を挙げよう。気持ちは伝えてあるがそれを行動に移していなかったな」


ガチャッ


菊月「…」


深海海月姫「素敵な台詞ね。私とは子どもがいるけどそれでもやっぱり焼いちゃうわ」


菊月提督「海月姫も一緒だったか。言っておくが式は三人でやるからな」


深海海月姫「本当に?」


菊月提督「二人への気持ちに偽りがない事を証明する。式も抑えてくれてるそうだ」


深海海月姫「良かったじゃない…ふふふ、これでちゃんとライバルでいれそうね?」


菊月「…うるさい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

立場も分かってるので内々の式を準備してくれる権力者さん
でもハリボテなんかじゃないしっかりした本物の式

>>264
ウェディングドレスの採寸もしっかりと
恥ずかしいやらで落ち着きがない菊月をたしなめる海月姫、こちらはどっしり構えてる

ーー


ガングート「おい孫から聞いたぞ、一体何が起こるんだ?」


多摩「菊月提督と菊月と深海海月姫の結婚式だにゃ」


ガングート「馬鹿な」


多摩「残念ながら本当だにゃ。今ちょうどドレスの採寸をしてるらしいにゃ」


ガングート「なぜこのタイミングなんだ、最後の思い出作りということか?」


多摩「結果的にそうなってしまったにゃ。因みに協力者は権力者さんにゃよ」


ガングート「む…権力者絡みなら文句は言えないな」


多摩「おみゃーも世話になってるからにゃあ」


ガングート「また今度子どもの顔を見せに行ってやるか」

ーー工廠


北上「ほらじっとしてなって~」


菊月「ん…」


深海海月姫「落ち着きがないわねぇ」


深海夕張「菊月さんも乙女なんですよ。ウェディングドレスの採寸なんて一回切りですから」


深海海月姫「あら?もしかしたら複数回あるかもしれないわよぉ?」


深海夕張「それは笑えませんよ……」


菊月「ドレス…この私が……結婚式で着るドレスを…」


北上「んもぉ~測りにくいってぇ~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

深海夕張「さ、海月姫さんも菊月さんを見てばっかりいないで採寸しますよ」


深海海月姫「私は自前のがあるからいいわぁ」


深海夕張「…え?」


北上「あ~潜水新棲姫が言ってたやつだ。ヴェールがどうこうとか」


深海海月姫「簡単に言えば伴侶に捧げる姿があるのよぉ」


深海夕張「びっくりしました…自分で作ったのかと思ったじゃないですか」


深海海月姫「うふふふふ」


北上「でもさ、あれって相手に食べられるのが前提じゃなかったっけ?」


深海海月姫「その通りねぇ」


深海夕張「菊月提督が海月姫さんを食べる…?」


深海海月姫「表現としてはなにも間違ってないわぁ」

北上「あれでしょ?菊月提督に美味しく頂かれちゃう~とか」


深海夕張「あ……もう!なんなんですか!」


深海海月姫「そっちの意味もあるけどぉ、本当に食べてもらうつもりなのよぉ」


北上「ガチ?」


深海海月姫「食べられると言っても、あの人は深海棲艦じゃないから全身を食べることはできないわぁ」


深海海月姫「でも体の一部分とか…内臓の一部なら大丈夫よねぇ」


北上「うわぁ…でもそれが深海棲艦の普通なんだもんね~」


深海海月姫「これは私達にとって最も美しく、誇りのある儀式なのよぉ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

深海夕張「と、いった事があったんですが菊月提督さん覚悟完了してます?」
菊月提督「…………髪とかでもいいのだろうか…」

菊月「私が司令官に捧げられるものはなんだ……」


北上「種族が違うんだから張り合っても仕方ないじゃん」


菊月「もちろん私自身は既に捧げたが…それでも何かあるはずだ…」


北上「ダメだこりゃ」


深海海月姫「菊月は深海棲艦とは違った、艦娘としての神聖なものがないか考えてるのよぉ」


北上「無いでしょ」


深海海月姫「そうよねぇ、艦娘は作られた存在なんだからそんなものは無くて当然なのよぉ」


北上「考えるのは自由なんだし、放っておこっか」


深海夕張「……」

ーー執務室


深海夕張「……ということを海月姫さんが言ってたんですが」


多摩「覚悟はできてるのかにゃ?」


菊月提督「……髪でもいいのか」


多摩「いいと思うのかにゃ?」


菊月提督「……なにも聞いていないぞ」


深海夕張「言わなくても分かってくれるって思ったんじゃないですか?」


多摩「かなりハードなのを想像しとかないといけないにゃ。本来なら死ぬ儀式だから片目くらい平気で差し出すと思うにゃ」


深海夕張「目で済みますか?腎臓とか内臓でくるかもしれませんよ」


菊月提督「…教えてくれて感謝する。当日までに覚悟を決めておこう」


多摩「教えてくれた夕張には特別賞だにゃ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


菊月提督「儀式の話を聞いた。お前たちの文化ならそれを否定することはしない。だが…食べる部位は選ばせてくれ」


深海海月姫「そう……自分で差し出すつもりだったけど、アナタが選んでくれるならそれでもいいわ」


菊月提督「……何を差し出すつもりだった?」


深海海月姫「子宮よ。今の私にとってこれ以上捧げられるものは無かったのよぉ」


菊月提督「……」


深海海月姫「あら、顔色が……?」


菊月提督「妻の内臓を…子宮を食べろと言われて……取り乱さない奴はいない……」


深海海月姫「あら…ごめんなさい……そんなつもりは無かったのよぉ」

菊月提督「できればお前には傷付いて欲しくない。内臓や指、腕なんかも止めてくれ」


深海海月姫「じゃあ…………うーん…」


菊月「血では無理なのか」


深海海月姫「あら菊月……そうね、血液なら問題無いと思うわぁ」


菊月提督「本当か?」


深海海月姫「全身を循環してるから、体の一部分に間違い無い。自分を受け取ってもらえるわねぇ」


菊月提督「わかった、それなら問題ないな」


菊月「司令官、私の血も飲んでくれ」


菊月提督「…菊月はそれでいいんだな」


菊月「私にも何かあるかと探した結果がこれだった。コイツと同じことをするなら納得もできる」


深海海月姫「私達の契りってことになるじゃない、いいと思うわよぉ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


深海海月姫「なにも今日じゃなくて良かったのよぉ?」


菊月提督「予行演習だ」


菊月「注射器は無いから指を切って血を流すぞ」


菊月提督「丁度もらったワインがある、それに混ぜて飲む」


深海海月姫「……はい」


菊月「これには私達の血が入っている。司令官の中に私達を入れてくれ」


菊月提督「……菊月、もう二つグラスを出してくれないか」


菊月「分かった、少し待っていてくれ」

深海海月姫「私達も飲むの?」


菊月提督「ああ、俺の血が入ったものを飲んでくれ」


菊月「司令官の……」


菊月提督「…準備はできた。それじゃあ同時に飲むぞ」


深海海月姫「……味は普通ねぇ」


菊月「少しだけだからこんなものだろう」


菊月提督「式の時はもう少し血を多くしてもいい。それを清められた酒に混ぜて飲む」


深海海月姫「どれくらいの血でヴェールが出るか分からないから、それなりの量を飲むかもしれないわよぉ?」


菊月提督「構わない。全て飲み干す」


菊月「私はあらかじめ血を抜いておく必要があるな。コイツとは体型が違い過ぎるから、同じ量の血を抜けない可能性がある」


菊月提督「二人と挙げる式がこの鎮守府での最後の大仕事になりそうだな」


ーー

今日はここまでです

ーー


龍驤「霞のときはもうお腹大きくなってきてたんよな」


霞「現代艦娘は成長が早かったからよ。龍驤さんは普通の人間の子どもを妊娠したのかもしれないでしょ」


龍驤「胸が張ったりせぇへんしお乳も出てけぇへんねん」


霞「個人差があるわよ。雲龍なんか妊娠してないのに母乳が出てたじゃない」


龍驤「中で赤ちゃん…死んでるんと違うんかなぁ」


霞「それは龍驤さんの思い込みよ。いきなり赤ちゃんの心音なんて聞こえないわよ」


龍驤「もしそうやとしたら司令官に申し訳ないなぁ…」


霞「龍驤さんは医者でもなんでも無いでしょ?そんなに気になるなら病院に連れて行ってあげるわよ」


龍驤「嫌や……もしほんまに死んどったら…正気じゃいられへん…」

霞「もう、遅かれ早かれ病院には行くんだから覚悟しときなさいよ!」


龍驤「ほんなら…せめて司令官と……」


霞「あの人は新しい組織と引き継ぎで忙しいから無理なの」


龍驤「司令官……」


霞「下手に暴れると本当に死んじゃうわよ?分かったら大人しくしてて」


龍驤「……」


霞「妊娠中は気分が浮き沈みするってやつね。私は変な方向に振り切ってたけど、龍驤さんみたいなのが本当かもしれないわね」


霞「司令官は忙しいし、病院には私が連れて行くしか無さそうね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー病院


「詳しく検査したところ、お腹の中にいるのはどうやら人間のようです」


龍驤「そうですか…」


「艦娘ならもう形にはなっているはずなんです。それが無いということはほぼ人間で間違いありません」


龍驤「……」


「今のところ経過は順調ですよ。ですが艦娘よりも人間の胎児は弱い存在です。できるだけ安静にしてください」


龍驤「はい……」


「初めての妊娠は難しいことも多いでしょう。しかしちゃんと対応できているようですね」

「この義足は驚きました。これは市販されているものではありませんよね?」


龍驤「はい……」


「専門家ではありませんが歩いている様子を見ていると殆ど揺れがありません。身体への負担も普通に歩くのと変わらないはずです」


「安定期になるまでこの調子です、もう少し頑張ってください」


龍驤「……」


(子どもは順調なのに艦娘さんの調子が悪そうですね。幹部さんは必要によってはデータも集めていいと言っていましたが、それどころじゃ無さそうですね)


下2 この後の展開やその他起こったことなど

「龍驤さん何か心配事でもおありですか?」


龍驤「いや…」


「身内には相談しづらい事もあるでしょう、私で良ければ話してみませんか?もちろんここだけの話にしますよ」


龍驤「子ども……死んでないんやんな」


「そんなことありませんよ!」


龍驤「霞が……ウチと同じ頃にはもうお腹大きくなってたんよ…」


「人間の子どもならこんなものです、すぐにお腹が大きくなったりなんかしないんです」


「そうですか、貴女は不安になっていたんですね。周りの艦娘さんと経過が違っているとそう思うのは不思議じゃありません」

龍驤「人間の子どもって……どないしたらええんよ…」


「その気持ちを心に秘めずどんどん周囲に伝えて相談してください」


龍驤「迷惑やんか…」


「そんなことありません。本当に悩んで苦しんでいる時は誰かを頼るのが正解なんです」


龍驤(ウチのことなんも知らんくせに」


「…カウンセリングに通われていましたよね。そちらの方にも行かれた方がいいと思いますよ」


龍驤「……」


「妊娠も出産も一人では出来ません。周りの力を借りることが大切なんですよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


霞「無事で良かったわ龍驤さん」


龍驤「……」


霞「人間の子どもならガングートに相談した方がいいわね。出産は特殊だったみたいだけど参考にはなるはずよ」


霞「あと司令官には報告済みだから。人間の子どもだって言ってたら喜んでたわよ」


龍驤「…そう」


霞「このまま帰るわよね?すぐにタクシーを呼ぶから待ってて」


龍驤「ううん…ちょっち行くところある」


霞「ならそこに行きましょう、一人で行かせられるわけないのは分かるわよね?」


龍驤「ええよ一人で…カウンセリングやし……」


霞「ならこうしましょう、龍驤さんを病院まで連れて行ったあと私は帰るわ。司令官に連絡しておくから迎えに行ってもらうの」


龍驤「忙しいからええって…」


霞「いいわけないでしょ。いつもの病院でしょ?すぐに向かうわよ!」

ーー


「お久しぶりですね。最近は調子が良かったようで安心してたんです」


龍驤「……」


「話は聞かせてもらいました、おめでたなんて良いじゃないですか」


龍驤「……」


「龍驤さん前向きにいきましょう。不安なことばかり考えていると良くないですよ」


龍驤「……」


「龍驤さんが望むならベッドは空いています。ゆっくり寝ることも選択肢に入れて下さい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


「では数日間こちらで様子を見ておきます」


霞「妊娠中だから不安定になってるだけだと思うけど、念を入れて損はないものね」


「一人にすることは望ましく無いんですが、一度鎮守府から離れることが必要じゃないかと考えてのことです」


霞「この病院はヤブじゃないのは知ってるから文句を言ったりなんかしないわ。龍驤さんを任せるから」


「ええ、彼女は必ず良くなります」

ーー


龍驤「……」


龍驤「あかん…」


龍驤「覚悟してたはずや…ウチみたいに精神に不安がある艦娘が妊娠なんて…」


龍驤「でも思ってる倍以上辛い……」


龍驤「霞はこれを乗り越えたんか…流石はお母さんになれるだけあるわ…」


龍驤「ウチ……負けそうや…」


龍驤「……」


龍驤「夜……明けへんなぁ……」


龍驤「ずっと夜なんと違うんかな……気のせいやないと思う……」


龍驤「……」


龍驤「この子は産みたい……ウチは頑張らなあかんねん…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーーーー


ガタンゴトン


龍驤「……夢か」


龍驤「夢と自覚してるものほど虚しいもんは無いな」


龍驤「……」


龍驤「電車の中にはウチしかおらんのか」


ガタンゴトン


龍驤「それにしても遅いな…各駅停車の電車なんか?」


龍驤「夢やから醒めるのを待つしかないか…」

ガタンゴトンガタンゴトン


龍驤「お、スピード上がったんか?って言うても快速レベルやね。各駅停車の区間が終わったんか」


龍驤「……何やあれ」


龍驤「よぉ見たら誰かおる……しかも…あれは…」


「……」


龍驤「ウチや……」


龍驤「手足のある頃の……ウチで…足りないもの鎮守府に飛ばされる前の…」


龍驤「ウチは何を見させられてるんや…?夢にしては残酷過ぎる……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

「……」


龍驤「ウチはあんな目をしとったんか……吐き気がするくらい目が濁っとる」


「なんやお前下手しよったな、ガキ孕むとかアホやろ」


龍驤「自分に向かってそう言うんか…ほんまに昔のウチは…」


「ガキなんて面倒やろ?ウチが殺したろか?」


龍驤「ふざけんな…!」


「ウチがそう言うてるんや。赤の他人やなくてウチ自身やからな」


龍驤「ウチは昔と違う!」


「そう簡単に変われるわけないやろ、なぁ?」


「そうやね」


龍驤「お前は…………」


「ウチは足りないものに来た直後の龍驤や。絶賛浮気中やで」


龍驤「そのウチとも違う!ウチにはもう司令官が、夫がおるんや!」


「夫とか頭イカれとんな」


「金ヅルに惚れるとかアホやろ」


龍驤「黙れ……お前らになにがわかるんや!」

龍驤「絶対にこの子は、ウチの子は守り通す!お前らには手出しさせへん!」バッ


「やるんかカタワ!」


「残ってる腕と脚も千切ったるからな!」


龍驤「……アホか、お前らなんか相手にするわけ無いやろ」


ガシャーンッ


「はぁっ!?」


「艦載機を電車の外にやって何をするんや!?」


龍驤「夢の中とはいえ……あの子も救うんや!」


ビシュッ

「……しゃあないな、そろそろ助けたろか」


「~~」


「危ないっ!」


「龍驤…!?」


「よっしゃ、これで感謝状頂き……」


「カンムス、嫌い!」


「な、お前……電車来てんのに……ウチの手…払い除けたら……」


「ざまあみ……」


ズガガッ


「うわっ!!」


「おっ……と…とと……」


「だ…大丈夫か龍驤………」


「何や……なにが起こったんや…電車の中から……ナニかが…」


龍驤「……」


「あ………………」

龍驤「……これは夢なんや。現実ではウチは富士を殺した。助けられた命を見逃した」


龍驤「あの駅と電車のことは一生忘れるつもりは無い。けどそれに囚われるのは違う」


龍驤「ウチはこの子のお母さんになるんや。いつまでもこの牢獄に捕らわれとったらあかん」


龍驤「……富士、許して」


龍驤「こんなウチでも幸せを掴もうとしてることを許して欲しい。最低で生きてる価値も無かったウチが言えることや無いのはわかってる」


龍驤「それでも幸せになりたいんや。司令官と家族になって未来を生きたいんよ」


龍驤「富士は優しいから許すって言うと思う、けどそれは今だけの話や。大人になって真実を聞いたら多分意見は変わるやろ」


龍驤「それこそ富士が親になろうとした時に、ウチのしでかしたことの重大さに気付くはずや」


龍驤「なあ…許してくれやんくてもいいからその時まで待ってな。どんな罰でも受けるから今だけは待って」


龍驤「せめてこの子が大きくなって…手がかからへんようになるまで……」


龍驤「親としてウチの役目が終わったら…殺してもいいから。残ってる右腕と右脚もあげるわ」


龍驤「せやから……お願いやで」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

プシュー


龍驤「……駅についたんやね」


「龍驤…」


龍驤「司令官の顔が歪んでる……周りも明るくなってきてるってことは…目が醒めかけてんのか」


「親としての役目が終わっても次があるでしょ」


龍驤「あんたは…誰や。見たこと無いけど、知ってるような……」


「お母さんの次はおばあちゃんでしょ」


龍驤「おばあちゃん……」


「例え両腕と両脚が無くたって……」

ーー


シャッ


「龍驤さん朝ですよ」


龍驤「眩し……」


「いい天気なのでカーテンを開けておきました」


龍驤「……ありがとうな」


「昨日と比べて随分と顔色が良さそうですね」


龍驤「うん…なんかスッキリしたっていうか、怖いとか不安な気持ちがマシになったんよ」


「それは良かったですね。では体温を計りますよ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「短期間の入院明けで心配していたが、見違えるくらい顔色が良くなったな」


龍驤「心配かけてごめんな、もう大丈夫やで」


霞「お母さんになる覚悟ができたってとこかしら?」


龍驤「そんな所かな。いつまでも心配かけられへんから頑張るで!」


提督「辛い時は周りを頼るんだぞ」


霞「一人で考え込んじゃいけないわよ」


龍驤「そうやね、ウチはお母さんになるんや。一人じゃ親にはなられへんのや!」


ーー

今日はここまでです

ーー


漣「安定してるのはフリじゃなかったみたいですね」


龍驤「もう前みたいなことはせぇへんよ」


漣「自分に信用無いって自覚してます?」


龍驤「せやからこうやって漣が見張ってくれてるやんか。ありがたいことやで」


漣「そりゃ目なんか離せませんよ。龍驤さん一人の体じゃないんですからね」


龍驤「うん…ほんまにウチのお腹の中におるんやね。死んでなんかなかったよ」


漣「元々が細いんで少しお腹が膨らめば丸分かりっすね」

龍驤「入院中にいつのまにかこうなってたんよ。鏡でお腹見たりできへんかったのはちょっち残念やわ」


漣「メンタルがクソ雑魚の龍驤さんが悪いんで仕方ないですね」


龍驤「そうやんな…迷惑かけたわな」


漣「それなりにかかりましたよ。でもまあ特別に許してあげますよ」


龍驤「おおにきやで」


漣「さて、今日もお仕事は待ってくれませんよ」


龍驤「気合い入れて頑張ろか!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

漣「仕事の前にこんなお知らせが来てるんすよね」


龍驤「結婚式…?菊月提督がやるんか」


漣「菊月と深海海月姫の三人でやるみたいです」


龍驤「会場は……小さい規模でやる感じなんやね」


漣「漣達は呼んでおこうってことだと思いますよ」


龍驤「司令官とウチが行くのが一番やけど、色々と忙しいんよな」


漣「お二人は祝辞だけ出して、横須賀鎮守府代表で誰か行ってもらう手もありますね」


龍驤「せめてウチか司令官は行かなあかんやろ」


漣「自分の体考えて下さいよ。ここから足りないもの鎮守府までそこそこの距離あるんすから」

龍驤「走って行くわけや無いし、まだお腹も大きくない。行くんやったら今しか無いと思うわ」


漣「付き合いの浅い人なら何がなんでも止めますけど、菊月提督なんすよねぇ」


龍驤「気を付けて行ってくるわ。無理はせぇへんから大丈夫やで」


漣「龍驤さんがそう言うと不安しかねぇんすよ」


龍驤「乗ってる電車が脱線するとかそんなことが起きれへん限り平気やって。万が一体調悪くなったらすぐに帰るから」


漣「護衛で一人は出すとしても…やっぱり不安ですってぇ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

バシュッ


漣「む?」


グラーフ「望月の予知が見えたから来た…」


漣「どんなご用件で?」 


グラーフ「結婚式には私が迎えに来るから…」


龍驤「それは有難いわ、絶対に安心な移動手段やからね」


漣「ではこちらからは、龍驤さんは確定で行くとお伝え下さい」


グラーフ「最大で何人……?」


漣「飛ばせる限界があるんでしたよね。では多くても三人だとも伝えておいてください」


グラーフ「分かった…」
 

バシュッ


龍驤「これで安心やね。不安があったわけや無いけど、絶対に安心な方がええからね」


漣「……」

ーー式当日


龍驤「川内がついてきてくれるのは嬉しいんよ。でも由良まで来る必要はある?」


川内「私もそう言ったんですけど、師匠も行くって言うんです」


龍驤「式が見たいとかそんな感じ?」


由良「近い」


由良「興味がある」


龍驤「ほぉん…まあ三人までやから由良も行くことはできるよ」   


由良「そう」


バシュッ
  

グラーフ「うわ、来た……」


龍驤「なにをビクついてんねん、そっちが迎えに来てくれたんやろ」


川内「足りないもの鎮守府にいる皆は元気かな~」 


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー足りないもの鎮守府


川内「久しぶり!!」


北上「ほんとに久しぶりだよね~」


深海夕張「川内さん、私のこと分かりますか?」


川内「雲龍から聞いてるよ、夕張が痴女になったって」


深海夕張「そうじゃないんですって!」


川内「うんうん、元気そうで良かったよ」

ガングート「龍驤も良くなったようだな」


北上「顔色が違うもんね。入院したって聞いた時はヒヤッとしたよ~」


龍驤「心配かけてごめんな。でも母親になるって自覚も出てきたし、腹も出てきたんや!」


ガングート「ほう」


北上「どれどれ失礼して……おっ!」


龍驤「皆んなも良かったら触ってな、ウチと司令官の子どもが入ってるからね」


多摩「どうやら調子の良い芝居じゃなさそうだにゃ」


川内「私もそれを心配したけど大丈夫そうだよ」


多摩「川内とも久しぶり……にゃんだけど由良はどこに行ったにゃ?」


川内「さぁ…師匠のことだから何か目的はあると思うけど」


多摩「本当に式に興味があるだけなのかにゃ…?」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


望月「そこで何してんの?」


由良「警備」


望月「今日は知らない人は入ってこないよ~」


由良「そう」


望月「ま、あたしらとしては助かるから勝手にやってて~」


由良「…」


由良「ここからなら良く見える」


由良「契りを約束する式」


由良「どんなものなのか」


由良「もし意味があるものなら」


由良「…」


由良「今はこれでいい」

ーー


富士「私たちがサプライズゲストだって!」


さみだれ「大きな声を出したらダメなんじゃない?」


富士「はっ!」


さみだれ「指輪を渡す係だって。大仕事だね」


富士「お母さんに指輪を渡す!」


さみだれ「海月姫さんはそれでいいけど菊月さんはどうなるんだろ」


富士「まだ誰か呼んでるって聞いたよ」


さみだれ「そっか、じゃあもう一回練習しよ!」


富士「うん!触手を使って指輪を……」


さみだれ「ねぇやっぱり触手は使わない方がいいと思うよ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ガチャッ


雲林院「私だ」


さみだれ「なにが!?」


富士「雲林院ちゃんが菊月に指輪を渡すの?」


雲林院「そうなった。付き合いもあるから」


さみだれ「あれ?二人って仲良かったっけ…?」


雲林院「今は友人だ」


富士「あの時はごめんね」


雲林院「全身の骨が砕けただけだ、気にしてない」


さみだれ「気にしないんだ…」


富士「指輪を渡す練習しよ!」


雲林院「そうだな。指輪の入った箱を振りかぶって……」


さみだれ「指輪は投げちゃダメだから!」


ーー

今日はここまでです

ーー


皐月「挨拶周りとか偉い人と会うのって大切なんだね」


提督「俺の場合は提督を辞めさせられるわけじゃない。だからこそこういうことは大切なんだ」


皐月「僕が横須賀鎮守府の秘書艦だから司令官と一緒に挨拶してるけど…正直僕は必要無いんじゃないかなって思ってたんだ」


皐月「けどこういう時こそちゃんと僕も居ないとダメなんだね」


提督「その通りだ。龍驤や漣の立場はあくまで秘書艦の代理であって正式な役職じゃない」


皐月「僕は秘書艦としてあんまり働けてないから…最後くらい頑張るよ!」

皐月「司令官はちゃんと休まなきゃいけないよ?挨拶回りが終わっても組織の立ち上げで忙しいんだし」


提督「休むべき時はちゃんと休んでいる」


皐月「それなら良かった!」


提督「…この調子だと今日は泊まりだな。横須賀に帰る暇が無い」


皐月「早く終われば菊月提督の結婚式に出れたけど、とてもそんな状況じゃなかったね」


提督「まだこれから役員さんに会うんだ。結婚式は龍驤が参加してくれているから良しとしよう」


皐月「もう今日は帰れないならホテルを予約しとくね」


提督「頼んだ、こっちはアポが取れているか確認の電話をしてくる」


皐月「はぁぁ…大変だけど本来ならこれが秘書艦の正しい姿だもんね。弱音は吐けないよ!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーーホテル


皐月「ふぁ~~疲れたぁ…」ボフッ


提督「ベッドに飛び込みたくなる気持ちは分かる。苦労をかけてしまったな」


皐月「これくらい平気って言いたいけど、今日は特に疲れちゃった」


提督「今日しかアポが取れない人も居てどうしても過密スケジュールになってしまった」


皐月「何人も会って話をしたけど、司令官はそれくらい期待されるんだね」


提督「深海棲艦の脅威が減ることを各方面で期待しているようだな」

提督「皐月には暫く忙しい思いをしてもらうことになる」


皐月「ハードだけど頑張るよ!」


提督「本当に大丈夫か?私生活に影響は出ていないか?」


皐月「今のところは大丈夫だけど…あ、やっぱり不安あるかも」


提督「なんでも言ってくれ、俺にできることなら…」


皐月「なんでもしてくれるんだよね?」ニヤッ


提督「……なにを考えてる?」


皐月「ふふふ、僕は先にお風呂に入ってくる…いや、やっぱり一緒に入ろうよ!」


提督「…疲れているんじゃないのか?」


皐月「それとこれとは別!今夜はほどほどに楽しませてね!」



下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


皐月「ふぅ~~鎮守府と比べると狭いけど、ホテルのお風呂も気持ちいいね」


提督「…そうだな」


皐月「んふふ、これだけ密着してるのに司令官の大っきくなってないね」


提督「……」


皐月「司令官もお父さんだから落ち着いてきたんだね~」


提督(毎日あれだけ……な。流石にこの程度だと100%にはならない)


皐月「まさか大きくならないとか無いよね?」


提督「それは大丈夫だ…」


皐月「良かった、僕に魅力が無いかと思っちゃうからね」

皐月「…司令官が遠くに行かなくてみんな喜んでるよ。感謝の形も変えてこれからも接することができるって!」


提督「皆んなが喜んでくれるなら嬉しい限りだ」


皐月「感謝の形を変える子も居るけど僕は変わらないよ!」


提督「変えてくれるともっと嬉しかったんだがな」


皐月「司令官~~」


提督「これでも父親だからな」


皐月「今日は僕に感謝されるんだから余計なこと考えないで!」


提督「お父さんだと皐月が言ったんじゃないか」


皐月「屁理屈言わないで!それ以上言うなら霞から預かってきたキメセク用の薬飲んでもらうからね!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


川内「いい式だったね」


多摩「そうだにゃあ」


川内「菊月のウェディングドレスは綺麗だったけど、深海海月姫のも凄かった」


多摩「あれが深海棲艦のヴェールだにゃ。初めて見たけど凄く綺麗だったにゃ」


川内「深海棲艦によってヴェールは違うらしいけど、深海海月姫のはオーロラみたいな感じだったね」


多摩「燃えているような感じでもあったにゃ」


川内「その表現の方が近いかも。炎で燃えてるんじゃなくて命そのものが燃えてた」


多摩「事情を知らない人は驚いてたにゃ。あんなドレスあるのかって」


川内「そりゃ驚くよね」

多摩「指輪も良かったにゃ。変わったデザインだと思ってたけど意味があったんにゃね」


川内「三本の輪が合わさって一つのリングになってるやつでしょ。あれはオーダーメイドだって」


多摩「そりゃそうにゃ、あんなの市販されてるわけないにゃ」


川内「いい式だったけど…もっと大勢の人に見てもらいたかったよね」


多摩「そういう訳にもいかないにゃ」


川内「三人で式を挙げるしその内の一人は深海棲艦だからね…」


多摩「深海棲艦の保護がもっと広まれば考え方も変わってくるにゃ」


川内「その為には提督にもっと頑張ってもらわないとね!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

多摩「提督のことよりお前はどう変わったにゃ?」


川内「…聞いちゃう?」


多摩「思い出したくないのかにゃ」


川内「そりゃあね。身体を鍛えるとか訓練はもう苦じゃないんだけど、心を鍛える修行がさ…」


多摩「そこが川内の弱さだにゃ」


川内「心を鍛えるには過去を思い返すことを何度もするんだけどさ。どう考えても龍驤さんの事が頭をよぎっちゃうの」


川内「私は龍驤さんを売って偽りの強さを手に入れようとした。それがどうやっても正当化できなかった」


多摩「正当化なんかできるわけないにゃ。お前がやったことは裏切りで擁護する点は一つも無い」


川内「なんてことをしちゃったんだろうってずっと後悔してた。辛いのは自業自得だから逃げ場が無かった」

多摩「それでも戻ってきたってことはちょっとはマシになったのかにゃ?」


川内「…うん。今度は龍驤さんを助ける番だから!」


多摩「悪くなってないならそれでいいにゃ」


川内「よし!式も終わったから龍驤さんを連れて帰るよ!」


多摩「泊まっていけと言いたいけど龍驤の体調もあるにゃ」


川内「妊婦さんに無理はさせられないからね。今日はいいもの見せてくれてありがと!」


多摩「困ったことがあったら頼らせてもらうにゃ~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー大本営


深海綾波「報告書が来てるぞ」


幹部「天鎮守府からか……ん、これはあまり良くない報せだね」


深海綾波「新人提督がやらかしたのか?」


幹部「新人を指導していた天提督が精神を病んでしまったそうなんだ」


深海綾波「出来の悪さに心労ってか」


幹部「強い喪失感に苛まれて参ってしまっているとあるね。原因が判らないと書いてあるが私は想像できる」


深海綾波「原因はなんだよ」


幹部「術後鬱というものがある。全身麻酔を用いた手術を行うとごく稀にそういう症状が出るんだ」


深海綾波「ごく稀に起こることが起こった?都合良くそんなことが起こるもんだな」

ーー天鎮守府


天提督「この喪失感はなんなんだろう……」


天提督「失った覚えも無いのに心に大きな穴がある。なにをどうやってもこの穴が埋まらない」


天提督「せっかく手術に成功してこれからだって言うのに。仕事に不満も無い」


天提督「幹部さんは術後鬱じゃないかって言ってたけど、とてもそんなものじゃない」


天提督「僕は何かを失ったんだ。その事実すらも失ってしまっている」


天提督「せめて何を失ったのか、それが分かるだけでも違うけど…」


天提督「幹部さんの言う通り…鬱なだけなのかな…」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

天提督「……なんで僕この部屋に来たんだろう。使ってないはずの部屋なのに」


天提督「物置きにもしてないから埃が…けほっ、掃除しなきゃいけないかな」


天提督「せっかくだからゴミがあれば捨てよう。えっと、何か……」


キラッ


天提督「机の上に指輪がある?これは見覚え無いけど…」


天提督「名前が掘ってある…知らない名前だなぁ。なんて読むのかも分からない」


天提督「知らないしよく分からないのに…どうして涙が溢れてくるんだろう……」


天提督「××……」


天提督「……」


天提督「あれ……なんで僕…泣いて……どうしてこの部屋に…?」


天提督「ふぅ…やっぱり鬱なのかな。直前まで自分が何をしてたのか分からないだなんて」


……


天提督「なんだろうこの汚れた指輪。何か掘ってあるみたいだけど……よく分かんないや」


天提督「捨ててもいいけど誰のか分からないからそれは止めとこう。とりあえずこの机の中にしまっておこうかな」


天提督「……カウンセリングを受けるしかないかなぁ」


ーー

今日はここまでです

ーー


漣「ご主人様が横須賀鎮守府の提督を退くことが一部のマスコミに知れてしまったようです」


提督「こちらが会見を開くまで待って欲しかったんだがな」


漣「嗅ぎ付けて来たのはとある週刊誌です。強引な手を使えば潰せましたけどあえてそれはしていません」


提督「そもそも使おうとしないでくれ。せめて俺に相談するんだ」


漣「相談してもやろうって言わないでしょう?こっちはご主人様の性格なんか知り尽くしてんすから」


提督「……」

漣「今度その週刊誌の記者が取材に来ます。応答は任せましたよ」


提督「…漣が答えてくれないか?」


漣「漣でもいいですけどご主人様の方がいいと思いますよ」


提督「俺の性格を知っているんだろう…………?」


漣「やれやれ、そんな顔しないで下さいよ。人前が苦手なの治さないと会見どころじゃないでしょうが」


提督「…そうか」


漣「まあ取材に来るのは普通の記者じゃないんで、ご主人様が緊張したりすることはないと思いますよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー数日後


「やあ久しぶり…って程でもないかな」


提督「そうか……こういうことだったのか」


「これが私の初仕事だよ、きびきび答えてね」


女記者「今日は私がフォローしてあげるから思い切ってやりなさい」


「ありがとう、そうさせてもらうよ」


提督「響……頑張っているんだな……」


「私はもう響じゃないよ。横須賀の提督さん、私の質問に答えてもらうからね」

ーー


漣「ちょっとぉ~部外者が鎮守府をウロウロしないで下さ~い」


「ごめんよ、つい」


漣「元気そうでなによりって感じですかね」


「元気だけど現実は厳しいことを思い知ってるよ。漣が司令官の情報をくれたからこうやって取材ができた」


「記者になって慣れていないのもあるけど、自分では全く取材が出来ていないんだ」


漣「その道を選んだのは貴女なんですから頑張るしかありませんよ」


「そうだね。司令官と横須賀鎮守府の情報をくれたこと改めてお礼を言わせてもらうよ」


漣「遅いながらもセンベツってやつですな。新しい人生を楽しんで下さい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

「ところで勇退する提督の奥様…いや龍驤さんは安定しているかい?」


漣「まあぼちぼちですよ」


「出来れば会って話を、いや取材。取材がしたいんだ」


漣「響……いや新人記者さん……頑張ってるんですねぇ…ううっ…」


「これは私の選んだ道だからね、毎日頑張っているんだ」


漣「感動しますよね…どうかそのまま頑張って下さいよ」

ーー


女記者「取材中に泣くのはやめてくれないかしら?」


提督「響が……頑張っていたんだ…」


女記者「たかが艦娘一人でこうなるなんて。艦娘を大切にするとはいってもそれはどうなのかしら」


提督「…取り乱してすまない」


女記者「取材は成立したから問題ないわよ、これであの子の首も繋がったわね」


提督「……どういうことなんだ?」


女記者「記者になるっていって出版社に来たのはいいけど、これが初めての取材。とてもじゃないけど…」


提督「記者は才能が大事な仕事なのか?」


女記者「そんなわけ無いじゃない。彼女にいつくか記事を書かせてみたけど丁寧な内容だったわよ」


提督「それがいけないのか」


女記者「売れる記事じゃなかったわ。いい文章が売れる世界じゃないのよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

女記者「だから良い文章でなおかつ読ませる記事を書けるようにしてあげたいのよ。でも私自身、いつも頭を抱えてるんだけどね…」


提督「仕事が変わっても大変なことには変わり無いということか」


女記者「あの子は元艦娘で国からお金を貰ってたでしょ?でも私は深海棲艦。まずは陸に適応する所からだったわ」


提督「それに比べれば響はまだ甘いか?」


女記者「どうしてもそう思っちゃうわね。明日死ぬかもしれない状況を生き抜いてきた私からすれば、この仕事がダメでも次を探せる」


女記者「けどあの子はそうはいかない。きっと貴方や知り合いに泣きついて自分ではなんともできないでしょうね」


提督「だからって諦めることはしないでくれ」


女記者「当たり前よ、あの子が実力を付けてくれれば私といいコンビになれる。けどその前に会社から切られたらおしまいなの」


提督「響には頑張って欲しい…たとえ艦娘と提督という関係で無くなったとしても、関係が切れるわけじゃないんだ」

ーー夜


ガチャッ


「ただいま」


うすしお「にゃあん」


「いい子にしてたかい」ナデナデ


うすしお「うにゃあ」


「今日は司令官と会って来たんだよ」


うすしお「にゃ~~」


「元気そうにしてたし龍驤さんのお腹の中には赤ちゃんがいるんだ」


うすしお「にゃ」


「どうしたんだい?カレンダーの方を見てるけど何かあるの?」


「……そうか、今日はあの日だったね」

「今日は私の大好きだった人が死んでしまった日。死んでしまって何年か経つけど私はこうやって写真に向かって手を合わせることしかできない」


「艦娘を辞めていて良かった……もしあのまま今日を迎えていたらきっと私は酷いことをしていた」


「これは私が選んだ道なんだ。うまくいかなくても努力を続けるしかない」


「誰かに迷惑をかけるよりずっといい。頑張ることは得意だからね」


うすしお「にゃっ」


「明日も頑張ろう。今日はいい取材もできたからきっといい記事が書けるはずだ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


うすしお「にゃああ」


「……」


うすしお『寝るって言ってたのにまだ起きてる。仕事が大変なのかなぁ』


うすしお『お母さんとも会えなくなって時間が経つけど、とうとう鎮守府からも離れちゃった』


うすしお『ここは艦娘が居なくてひびきだけ。凄く部屋が狭いけど生活はできてる』


「違う…こうじゃない……」


うすしお『頑張り過ぎてる気がするなぁ、早く寝ないと体調が悪くなっちゃうよ』


「……」


うすしお『こういう時にあの人が居ればいいのに…居ないからどうにもできない』


うすしお『ねぇ~~早く寝ないと~~』


「うん……もう少しだから…」

うすしお『この狭い部屋に来る前は良かったのに。飛鳥さんも居たから誰かが困ってたらすぐに知らせられた』


うすしお『みんなどこ行ったの~~ひびきが辛い思いしてるのに~』


「……」


うすしお『もしかしてもう体調が悪くなってる?だとしたら少し逃げた方がいいかな……一回首を締められて殺されかけたし』


うすしお『でもここには他に誰も居ないから…う~~どうすればいいんだろ』


うすしお『ここがどこだか分からないから助けを呼べない。もうこうなったら…』


「……わかったよ、続きは明日の朝にしよう」


うすしお『え、なにが?』


「ほらおいでうすしお」


うすしお『寝る?寝るの?ちゃんと寝るんだ!お布団!』

「そんな不安そうな声を出されたら気になってしまうからね」


うすしお『一人で寝るのと全然違うや』


「うすしおにまで心配されるなんて…私はまだまだだね」


うすしお『あ、寝る…寝れる……』


「また今度先生のところに行こう。親子の再会だ」


うすしお『おやすみひびきぃ…』


「……もう寝てしまったか。私も寝るとしよう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


女記者「この前の記事が好評だったみたいね」


「司令官のことは悪く書くことは難しかったから」


女記者「横須賀提督は辞めさせられるんじゃないことが良く分かる記事だったわ」


「深海棲艦を保護する組織のことには触れなかったよ」


女記者「それでいいの。横須賀提督がどんな方向性で動いているかを書けば良かったのよ」


「司令官の会見の後でまた本を出すから…だよね?」


女記者「週刊誌は一週間で新しい本が出る。情報は小出しにしていかないと意味がないのよ」


「その上で読者を惹きつけるような内容が必要なんだね」


女記者「ようやくわかってきたって所かしら?」

「私なりに頑張っていたんだけど、それだけじゃいけなかったんだ。不快にさせてしまっていたみたいだね」


女記者「不快だなんてそんな…」


「分かるんだ。精神を病むと視線が刺さるのを感じるようになるんだよ」


女記者「そうだとしても私は口には出していない。貴女の思い込みで解決してしまうの」


「怒らせるつもりは無いんだ。だから私の謝罪を受け入れて欲しい」


女記者「もういいわよ、次のネタを探しに行くわよ」


「ウラー……なんて今は言えないか」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー足りないもの鎮守府


菊月「いかなる取材も受けないからな」


「わかったよ、じゃあ素直に里帰りってことにして欲しい」


菊月「お前はこの鎮守府の出身じゃないだろう」


「ここが私にとっての鎮守府だから何も間違っていないよ」


菊月「……好きにしろ」


「もう好きにさせてもらっているよ。うすしおはちゃんとした里帰りだからね」

うすしお『お母さん、お母さん!』ぴょんぴょん


先生『貴女は相変わらずねぇ。子どもがそのまま大きくなったみたい』


うすしお『なにそれ?』


先生『もし響さんになにかあったら、野生で生きていかないといけないのはわかってる?』


うすしお『わかんない。ひびきとはずっと一緒だから』


先生『一緒…お母さんと貴女が離れたように、響さんとお別れがくるかもしれないのよ?』


うすしお『その時は多分一緒にお別れすると思う。ひびきとは最後までお別れしない!』


先生『その自信はどこから来るのかしら…』


うすしお『むぅ~適当なオス猫と子作りしたお母さんにそこまで言われたくない!』


先生『貴女は発情期を知らないからよ。アレは……凄かったのよ』


うすしお『知らないものは知らない!ひびきとはずっと一緒!』

ーー


飛鳥『今日はここに初めて来ました。こういうときに好奇心旺盛なあの二人の猫はどうしたでしょうか』


瑞鶴「こっちね」


飛鳥『そういえば先生はうすしおが鎮守府を離れたことを知りません。そのことを知った時にショックを受けなければいいんですが…』


瑞鶴「飛鳥、まだ歩くのね」


飛鳥『はいご主人。ちょうどこの病室ですよ』


瑞鶴「ここか、ありがとう……翔鶴姉、なにしてるのよ!!」ガチャッ


飛鳥『先生、私の主人は元気ですよ。今日はお姉さんが緊急入院したということでいつもと違う匂いの病院に来ています』


飛鳥『レンタンやハイシンという聞き慣れない言葉を沢山聞きましたが、お姉さんは無事なようです』


飛鳥『お二人もどうかそれぞれの主人とお元気で。またお会いすることを楽しみにしております』


ーー

今日はここまでです

ーー横須賀鎮守府


提督「霞、大丈夫か?」


霞「痛いけどなんとか平気よ」


提督「俺が側に居ればよかったんだが…」


霞「貴方は仕事を頑張るのが役目でしょ。かすみの面倒を見きれなかった私が悪いの」


提督「かすみは普通ならまだ乳飲み子だ。しかし現代艦娘ともなると成長速度が違う」


霞「ハイハイは通り越して歩くこともできるの。それに力も凄いのよ」


提督「かすみは簡単な単語なら喋ることができるがその意味までは分からない」


霞「だから私がやめてって言っても、力が強いと言っても聞くことはないのよ」


提督「…やはり霞の怪我は俺のミスだ。現代艦娘の成長速度を知らないはずは無かったんだ」

霞「済んだことをあれこれ考えても仕方ないわ、次からは気を付けるでいいじゃない」


提督「もしまた同じことが起こったら、次は霞の命が…」


霞「そうならないように頑張ってもらうしかないわね」


提督「かすみの子育てには細心の注意を払うとして…」


霞「話がまとまったらまた話しましょう。あなたは次の仕事があるんでしょ」


霞「それに私ばっかりに構うのはよくないわ、龍驤さんの様子もちゃんと見てあげてね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「事故が起きないようにするためには、先達のノウハウを知る必要がある」


提督「艦娘で医者の利根さんや五月雨に話を聞ければいいんだが、教えてくれるだろうか」


提督「まずは利根さんに電話を……」


ピピピピピ……


提督「…その前に電話がかかってきたか。もしもし?」


五月雨『横須賀の提督か』


提督「……何の用事だ?」


五月雨『お前の所の霞がやらかしたって聞いたからな』


提督「悪いが今忙しいんだ」


五月雨『おいおい折角アドバイスをやろうっていうのに、すぐに切っていいのか?』


提督「……教えてくれ」


五月雨『簡単な話だ、成長が早いのは体だけじゃない。言い聞かせたらすぐに言うことを聞く』


五月雨『ま、そっちがちゃんと躾けられたらの話だけどな。精々頑張ってみな』


提督「…感謝する」

ーー


霞「かすみ、お母さんを叩いたり物を投げたらしちゃいけないの」


かすみ「うん」


龍驤「強い力で触ったら、相手が痛い痛い言うてしまうからね」


かすみ「いたいのだめ」


龍驤「そうや、それでいいんやで」


霞「もう言ってることが理解できるのね…」


龍驤「さすがは現代艦娘やなぁ、全てが規格外やわ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


ガングート「順調に育っているようだな」


龍驤「お腹も大きくなってきてるんやで」


ガングート「まだ生まれてもないのにアドバイスを聞きにくる様子を見ると、そのようだな」


龍驤「ガングートがこっちに来るっていうからね。そりゃ話を聞かなあかんで!」


ガングート「いくらでも教えてやるが…まずは何を聞きたい?」


龍驤「全部やね!心構えから気を付けなあかんこと、ガングートから学べることは全部学ぶで!」

ーー


龍驤「霞と一緒にかすみを育ててるつもりになってたけど、人間の子どもは成長が遅いんやね」


ガングート「現代艦娘と比べ物にならないくらい遅い」


龍驤「二時間おきに母乳をあげなあかんのは嘘やなかったんか」


ガングート「睡眠も二時間おきだ。寝て起きてを繰り返す」


龍驤「それに合わせて生活をせなあかんのか…凄いことになるね」


ガングート「怖気ついたなら堕ろすことも視野に入れておく必要がある」


龍驤「いいや覚悟ができたで。片腕と肩脚が無くても立派に育ててみせるからな!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ガングート「いや、両腕両足合っても人間の子を育てるのは一人では難しかった」


ガングート「孫という存在が無ければ無理たった。夫、提督を頼る事を忘れるんじゃないぞ」


龍驤「もちろんや、ここまで一人じゃ来られへんかった。司令官と皆がおったからこうなってるんや」


龍驤「子どもの為に一人じゃできないことは、周りを頼るのも母親としての役目やね」


ガングート「言葉ではそう言ってるが本当に分かっているか?」


龍驤「もう大丈夫やで。一人で突っ走ることもせぇへんし、嘘ついて困らせることもせぇへんから」


ガングート「一応信じておいてやろう」

ガングート「野暮用はこれくらいにしておく。私は提督に用事があるんだ」


龍驤「足りないもの鎮守府での用やんな?」


ガングート「鎮守府の敷地内に病院を建てる計画がある。それについて意見を聞きに来た」


龍驤「その病院って多摩の夫のお医者さんのやんな?」


ガングート「リハビリ専門の病院を建てたいらしい」


龍驤「そうなったら夫婦で一緒のところで働けるもんな。応援してるで」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「普通に考えれば鎮守府は軍施設だ。建物は繋がってない形にする必要はあるだろう」


ガングート「そうすれば建設はできるということだな」


提督「鎮守府と併設という形をとるのがいいだろう。今後鎮守府の役割が多様化していくことが考えられる」


ガングート「足りないもの鎮守府はもう多様化の域に入っているな」


提督「地域に密着する事は誰にとってもメリットになる」


ガングート「だが密着する分セキュリティや警備を厳重にする必要が出てくるな」


提督「そこは街が協力してくれるかどうかだ。あの街の人達なら…」


ガングート「甘いな、部外者のことを考えていない。話を聞きつけた旧大本営の連中が通院患者を装うこともありえる」


提督「……そうだな、その可能性がある」

ガングート「そこで私は自分の子どもが使えないかと考えている」


提督「子ども……現代艦娘か」


ガングート「現代艦娘が一人居れば警備は十分過ぎる。この考えは何かに使えると思わないか?」


提督「現代艦娘を戦争に使わせない道……」


ガングート「いざと言うときには戦力になるような存在が各地の鎮守府に配備される。これは外から攻められることを防ぐ役割にもなる」


提督「そのアイデアは…もしかするとこれからの未来を開くものかもしれない」


ガングート「私も現代艦娘の母だからな。彼女らの幸せを願いたくなる」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー足りないもの鎮守府


菊月提督「この書類は俺のサインが必要になる」


多摩「これは提督が書いた方がいい」


提督「この街のことは俺が詳しいからな。孫さんに言えば建設会社も紹介してもらえる」


多摩「この書類の束は菊月提督で処理が必要になる」


菊月提督「こんなにあったか…」


提督「本来なら提出義務の無いものも含まれている。引き継ぎの時はいつもより面倒臭いんだ」


多摩「経験者が居たお陰で話がスムーズに進む」


菊月提督「そのようだな…これは疲れる」

多摩「ちょっと休憩にするかにゃあ」


提督「俺はもう少しやる。幹部さんが承認するだけで済むように念入りにしておきたい」


多摩「なら多摩も手伝うにゃ~」


菊月提督「…俺は休む。こんな量は区切りながらじゃないとできない」


多摩「こっちが空いたら手伝うにゃ」


提督「俺も漣に手伝ってもらったからな。一人じゃ無理なのは分かっている」


菊月提督「……ちょっと待て、横須賀から俺への引き継ぎはどうなってる」


提督「……」


多摩「おい」


提督「まあ…なんとかなる」


多摩「にゃあああっ!!」


提督「威嚇しないでくれ…現実を見たくないんだ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー深夜


深海海月姫「アナタ、夜食を作ったわよ」


菊月「疲れたなら私が癒してやろう」


菊月提督「助かる……」


提督「……」


多摩「ごめんなさいにゃ、まだ鎮守府で仕事中…え、そんにゃあ……うにゃ……にゃあ…」


多摩「うにゃ……頑張るから…応援…嬉しい……にゃ」


提督「……」


菊月「食べさせるのは私の役目だ」


深海海月姫「私だって食べさせたいわよぉ」


提督「……」


多摩「そうにゃ、病院を建てるって話も進んでて……うにゃ!?子ども……うん…欲しい……にゃ…」


提督「……」

ーー横須賀鎮守府


漣「お疲れ様でした、かなりお疲れなのは聞いています」


提督「……」


漣「こちらへの移動中に少しは寝れましたか?」


提督「少しはな…」


漣「そんなお疲れのご主人様に朗報です!奮闘の様子を嗅ぎ付けた皆さんがぜひご主人様を癒したいと言ってくれていますよ!」


提督「……」


漣「今日は仕事はしなくていいです!存分に癒されて体力と気力を回復して下さい!」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


漣「今日一日はどうでしたか?」


提督「随分とゆっくりできた…」


漣「そりゃそうですよ、今回はあっち系のことは抜きでゆっくり休んで欲しかったですからね」


提督「ありがとうと何度伝えても足りないくらいだ…」


漣「十分に睡眠は取ったでしょうけどもうすぐ夜です。またゆっくりと寝て下さい」


漣「眠りにつくまで…こんなのはどうでしょうか?漣の膝枕がお安くなっておりますよ」


提督「一つ…頼もうか」


漣「毎度あり!ぐぇへへへ、この時間は漣が独占してやります!」


提督「……あぁ」


漣「ではでは、夢の中にご案内~~一名様入りま~す」

ーー翌日


提督「なんとか一日で体力も戻ったか」


漣「ではここからが本番ということですね!」


龍驤「ウチらも手伝うから頑張ろな!」


深海新棲姫「ワタシが手伝っていいのか?」


漣「この際ヨシとします!だって横須賀の引き継ぎの資料アホみたいな量があるんですもん!」


提督「俺一人でもできないことは無いが時間がかかり過ぎる。申し訳ないが龍驤達を頼るしかない」


龍驤「ウチらに任せとき!」


漣「四人でやれば流石になんとかなりますよね」


提督「この書類の束が減っていくと、俺が横須賀鎮守府の提督で無くなることに近づいていく」


提督「以前はいい意味で捉えることはできなかっただろうが今は違う。書類が減るということは新しい道に近付いているということなんだ」


ーー

今日はここまでです

ーー大本営


幹部「引き継ぎや新しい組織の件で毎日忙しいようだね」


提督「秘書艦である皐月も忙しい思いをしています」


幹部「横須賀鎮守府の秘書艦ともなれば、顔を出さなければいけない場面は多いからね」


提督「様々な所を周りましたが、どこも深海棲艦の保護に賛成してくれました」


幹部「深海棲艦の扱いに困っている企業や役所は多い。攻撃してこなくとも姿が見えれば漁や養殖業は不可能だ」


提督「需要が多そうな仕事になりそうです」


幹部「ただ深海棲艦を捕まえて保護するのではいけない。だからこそ提督君にこの仕事をやってもらいたいんだ」

幹部「私が元帥として大本営に就任することは後回しにした。まずは提督君のことを優先しよう」


提督「それくらい重要だと言うんですね」


幹部「一定の需要はあると読んでいたがそれ以上に反響があった。我々が思っているより深海棲艦の数は多い」


提督「深海棲艦の姿を見かけても、攻撃してこなければまあいいかと放置している所がいくつもありました」


幹部「深海棲艦の成虫化により殆どの深海棲艦が姿を消したと思っていたが…」


提督「確認されていたり潜伏していた好戦的な深海棲艦の姿が消えた、という表現が正しかったのかもしれません」


幹部「認識を改める必要がありそうだね…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

幹部「保護に加えて深海棲艦に対してのイメージアップも図らないといけないね」


提督「それはもちろんです」


幹部「これまで戦っていた相手だから、思うところがある人は大勢いるだろう」


提督「真面目に内職の仕事をしていた深海棲艦がいるのを知っています。それを知ってもらえれば違うと思います」


幹部「内職ではインパクトが少ないね。もっと万人に理解してもらえるものの方がいい」


提督「そんなものがあるんでしょうか?」


幹部「あるといえばある。成功すればこちらの思惑通りにいくが失敗すれば大きな痛手になる」

提督「それはどんなアイデアなんですか?」


幹部「深海棲艦を企業のCMで使えないかと思っている」


提督「彼女らを公共の電波に載せるんですか」


幹部「諸刃の剣かもしれない。だがやる価値はあるはずなんだ」


提督「CMに使ってもいいという企業はあるんですか?」


幹部「仮の話だが許可は出ている」


提督「悩みどころですね…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督「出演者にあてはあるのですか?」


幹部「まずは横須賀鎮守府や、足りないもの鎮守府にいる子にお願いできればと考えてる」


提督「うちには中枢棲姫のように外に出すのはマズいのが居ます……」


幹部「潜水新棲姫君は大丈夫だろう?」


提督「大丈夫ですけどぉ…」


幹部「話を持ち帰ってみてくれないかい?今日中にどんな企業が許可をしてくれそうなのか資料を送っておくよ」

ーー横須賀鎮守府


龍驤「それで変な顔しながら帰ってきたんやね」


提督「こんな話になるとは思っていなかった」


龍驤「ウチは幹部さんの言うことよく分かるで。一番ええ考えやと思うわ」


漣「幹部さんから資料が来ましたぜぇ~」


龍驤「まずはそれを見てからやね」


提督「本当に大丈夫なんだろうか…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


漣「子どもの姿の深海棲艦の方が敵愾心も出にくいと見込まれると…なるほど」


龍驤「これは絵本とか扱ってる書籍関係の企業やね」


漣「うちらでいえば北方棲姫と北方棲妹が出せますね」


提督「潜水新棲姫も出そうと思えば出せる」


漣「え~~」


龍驤「漣があかんのやったら仕方ないな」


漣「嫌ってわけじゃないんすけどぉ、なんかなぁ」


提督「本人達にも話を聞きに行こう」

ーー


北方棲姫「カエレ!」


龍驤「やっぱりあかん?」


北方棲妹「姐御に聞かないと」


提督「お前たちは中枢棲姫の下僕という立場だからか」


北方棲妹「そういうことだ」


北方棲姫「カエレ!」


漣「どうしますか?あのロリコンに話すと凄く面倒なことになると思うんですけど」


提督「そうは言っても話すしかないだろう」


龍驤「CMに出すのはハードルが高そうやなぁ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


中枢棲姫「同じくらいの外見の者が何人か必要だ。深海棲艦、艦娘、人間も同時に映せ」


提督「どんな理由でだ?」


中枢棲姫「その方がメッセージ性が上がる


提督「確かにそうかもしれないが…」


中枢棲姫「現代艦の子どもも必要だな」


提督「……撮影にはお前は来れない」


中枢棲姫「保護者として行く権利はある」


提督「……」


中枢棲姫「それが無理ならこの話は無かったことになる」


提督「やはりそうなるか…」

提督「あのな…うちの艦娘はともかく人間の子どもを襲うことは犯罪だ」


中枢棲姫「同意があれば問題ない」


提督「あっても無理だしそもそも取れるわけないだろう」


中枢棲姫「やってみなければ分からない」


提督「万が一にでも手を出してみろ、最悪深海棲艦を保護するという話が無くなる可能性がある」


中枢棲姫「ふむ…」


提督「…見るだけなら許される。それで我慢してくれ」


中枢棲姫「我慢できればいいと思っておいた方がいいだろう」


提督「不安だ…不安でしかない」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー某所


提督「とりあえず今日はCMを撮りたいという企業と話をしに来た。だが丁度良く子役の方もこの企業に来ていたんだ」


提督「もし深海棲艦を使わなくとも、子役を使ってCMを撮ることは決定していたようだった」


提督「深海棲艦の有無で撮影はどう違うのか、子役のプロダクションはわざわざ直接確認しに来たそうだ」


提督「このまま深海棲艦を撮影に使いそうだとなると子役と撮影することになる。本番で何かあってはいけないと試しに会わせてみたんだが…」


中枢棲姫「おぉ…」


提督「何があったのか教えてくれないか?」


中枢棲姫「私は見たんだ……」


提督「なにを?」


中枢棲姫「この世に天国はあった…」

中枢棲姫「舐めるだけが全てでは無かった…尊い…この光景は護らねばならない……」


中枢棲姫「ロリには人種は関係ない…深海棲艦も艦娘も…全てのロリが共に歩める……そんな未来を守るのは…我々の責務だ…」


提督(なんだか変な方向にキまっているぞ)


中枢棲姫「…提督」


提督「どうした?」


中枢棲姫「深海棲艦の保護は私も手伝わせてもらおう」


提督「……正直ありがたい。お前ほどの深海棲艦が居てくれるだけでどれだけプラスになるか分からない」


中枢棲姫「ロリの素晴らしさを同時に広めてやろう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー後日


幹部「君たちの台本はこれだ。とは言っても台詞があるわけではないよ」


北方棲姫「ホンヨム」


北方棲妹「それだけでいいのか」


さみだれ「カメラ目線じゃなくてもいいんだ~」


電「電が一番年上になるのですね」


幹部「本来なら海防艦を使うところなんだが、ちょうど電君くらいの見た目の艦娘が欲しいということだからね」


電「わかったのです!」


提督「優しい姉のような視線が欲しかったのだろう」


電「ロリコンの言うことは説得力があるのです」


提督「……」

幹部「霞君とかすみの二人ももしかするとオファーがあるかもしれない」


提督「こっちは大丈夫ですが…」


電「かすみが司令官さんとの子どもだと知られるとイメージがマイナスなのです」


幹部「そこなんだ。提督君が見た目が幼い子が好きだということはなるべく避けたいからね」


電「ロリコンが庇いあってるのです」


幹部「…電君はなにかあったのかい?」


提督「少し…色々とありまして」


幹部「ま、まあいいだろう。とにかく撮影がうまくいくことを願っているよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


幹部「完成したCMは私も見たが、巷の話題となっているようだね」


提督「多様な種族が同じ所で本を読む。言葉以外でも繋がれるのだというメッセージ性が強いCMになりました」


幹部「印象も良く仕上がっている。深海棲艦もただ恐ろしいだけの存在ではないと伝わったはずだね」


提督「CMの話を聞いた時はどうなるかと思いましたが、うまくいってよかったです」


幹部「良かったで済ませてはいけない。これをプラスに変えていこうじゃないか」


提督「はい、深海棲艦を保護するだけでなくその先。人間社会に適応するところまでやるのが自分の使命だと思っています」


幹部「その通りだ!流石は提督君だね」

幹部「今回のCMの成功をうけて様々な企業からオファーが来るかもしれないね」


提督「そうなると…マネジメントを管理する必要も出てくる可能性がありますね」


幹部「当面は大本営が行う予定だが、将来的にはそうした方がいいね」


提督「まさか芸能事務所のようなものを持つとは思いませんでした…」


幹部「プラスに捉えていこうじゃないか!彼女達の将来が広がったと考えよう!」


提督「はい……」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

幹部「改めて思うと宣言式に向けていいことが続いているね。式が楽しみになってきたよ」


提督「確かに準備は順調に進んでいます」


幹部「深海棲艦の彼女達が受け入れられる日はもうすぐだ」


提督「突然中止になるようなことはありませんよね?」


幹部「悪意を持った連中が現れない限りは大丈夫だろう」


提督「組織…この名前だけだと旧大本営のあの組織を思い出してしまいます」


幹部「某所にて残っていた最後の生き残りも捕まえてある。不安な要素はなにもない、もし何かあっても私達が全力で阻止する。私達を信じて君は式に集中してくれ」


ーー

今日はここまでです

ーー執務室


漣「ご主人様、深海棲艦の保護を目的とした組織の準備は進んでいるようですね」


提督「そのおかげで毎日忙しい思いをしている」


漣「横須賀鎮守府からは黒潮がご主人様について行くのは確定ですよね?」


提督「本人がそう言っているしな。俺には止める権利はない」


漣「そして横須賀鎮守府の新しい提督は菊月提督が勤めることになりますね」


提督「本人は乗り気では無かったが他に適任が居ない。今ではやる気になっているから任せて心配は無いだろう」


漣「着々と整ってきているということですね」

漣「ちなみに龍驤さんはどうなりますか?」


提督「子どもを産むまでは横須賀鎮守府にと思っていたが、産んでからもここに残るという話になった」


漣「ほう?」


提督「俺としてはついて来て欲しかったが考えがあってのことだ。俺も龍驤の思いを聞いて納得した」


漣「なるほど……そうなりましたか」


提督「それがどうしたんだ?」


漣「ぶっちゃけ漣が迷いまくってるんです。ご主人様について行きたいしここに残りたい。丁度半分半分なんすよ」


提督「悩む時は結論が出ているとき…しかし時に例外がある」


漣「フィフティフィフティじゃどうにもなんないっす。ここのところ嫁を抱いても寝れないんすよ」


提督「それは俺がどうこう言える問題じゃないな。こちらはギリギリまで待つ、充分に悩んでくれ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー書庫


潜水新棲姫「ワタシはもう戦闘はできないが事務はできる。重巡棲姫がいる漣だからこそできることもある」


潜水新棲姫「提督に会うだけならいつでも可能だ。自分の活躍できることを考えて適所に行くのが後悔しない」


漣「できること…漣は色々できますよ?」


潜水新棲姫「戦闘もできるし事務もできるのは知ってる」


漣「その上でどっちから選ぶって難しいんですけど」


潜水新棲姫「なぜどっちかだけなんだ」


漣「え、だって」


潜水新棲姫「それ以外の選択肢もあるだろう」


漣「それ以外って……」

潜水新棲姫「漣が艦娘を辞める選択肢もある」


漣「いやありますけど…」


潜水新棲姫「ワタシが深海に帰る選択肢もある」


漣「ちょ……」


潜水新棲姫「漣はできることが多い、だから選択肢を少なくすることはやめてくれ」


漣「どんな選択肢を取ってもあんたとは離れませんよ」


潜水新棲姫「物理的に離れることは想定している。心は繋がっているぞ」


漣「……先に言うのはズルいです」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

重巡棲姫『漣』


漣「…なんすか」


重巡棲姫『自我の無い深海棲艦はより強い者に従うのは知っているな』


漣「前に教えてもらいましたしねぇ」


重巡棲姫『深海棲艦の女王になれば深海棲艦をコントロールできるぞ』


漣「いや…そんな強さは漣には無いですって」


潜水新棲姫「強さの話をしているのか。重巡棲姫が表に出ている時の強さはそれなりのものだ」


漣「でも女王だなんて…あんたに迷惑が…」


潜水新棲姫「ワタシの心配はするな。力が必要な時に無力じゃないようにすることくらいできる」

潜水新棲姫「この辺りを仕切っていたのは中枢棲姫だ。奴に協力を仰げば不可能じゃない」


漣「いや…現実的じゃないですって」


重巡棲姫『漣が裏で寝ている間に潜水新棲姫と話し合いは何度かやっている』


漣「……」


潜水新棲姫「その道を選ばなくてもいい。ただ選択肢があることを知って欲しかった」


重巡棲姫『決定権は漣にあることは間違いない』


漣「そんな……三人分の人生決めるって重過ぎるんすけど…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


中枢棲姫「私に話だと?」


漣「貴女はこの辺りの深海棲艦のボスだったんですよね」


中枢棲姫「この国の周りは私が仕切っていた」


漣「貴女より上の深海棲艦は居ますか?」


中枢棲姫「興味が無い」


漣「どうしてですか?」


中枢棲姫「欧州にも強い個体がいるらしいが会うことがない」


漣「なるほど……一番強い深海棲艦が存在するわけでは無いんですね」


中枢棲姫「そうでは無いな」

漣「実はですね、深海棲艦の女王になれないかと思ってたんですよ」


中枢棲姫「お前のような奴がか?」


漣「これでも一家の大黒柱なんですよ」


中枢棲姫「目的はなんだ?」


漣「自我の無い深海棲艦のコントロールです」


中枢棲姫「下僕を持つというのか」


漣「ようは人間を襲わなければいいんです。自我が無くて話が通じないなら力で支配するしかないかと」


中枢棲姫「紛いなりに王を名乗るにも器が必要だ。お前にそれがあるか?」


漣「三人分の人生は背負ってます、人より重いものは持ってるつもりですよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

中枢棲姫「たった三人か」


漣「なんですと?」


中枢棲姫「獣のような深海棲艦の大群を従える事が出来るのか?重巡棲姫に頼りきりなお前にそれが出来るとは思えない」


漣「漣だってやる時はやりますよ」


中枢棲姫「王になるのならいつでも力を見せる必要がある。寝首をかかれる立場であることを忘れるな」


漣「ロリコンの癖に…こういう時はちゃんとするんすね」


中枢棲姫「従えていた雑魚が刃向かってきたことは一度や二度じゃない。その度に私の力を思い知らせてやったからな」


漣「そっちはそんなに治安が悪かったんすか」


重巡棲姫『違う、自我が無いからだ。あるものは純粋な力と上下関係だけだ』

中枢棲姫「我々は共食いは滅多としない。だがヒエラルキーの概念があり私がその頂点だった」


漣「この辺りの頂点だから……うーん」


中枢棲姫「そもそも全ての深海棲艦を従えるという考えが破綻している。私は頂点に居たが体は一つだ」


中枢棲姫「私の知らない所で人間を襲い、艦娘を襲う個体が居る。これを止める方法は無い」


漣「女王という考えが無理だと言うんですね」


中枢棲姫「深海棲艦の全員がお前たちのように優れた通信機器を持っていない。一人一人を管理することは不可能だ」


漣「深海棲艦の脅威は一生続くって言うんすか…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

中枢棲姫「そういった深海棲艦にも轟くような力を示せるのならば、もしもというのはあり得る」


漣「やはり力が最強だと」


中枢棲姫「だがそんな事は私には不可能だ。私が無理なことをお前ができるのか?」


漣「うぐぅ…」


中枢棲姫「戦うのと従わせるのは雲泥の差だ。安直な考えでは実現は不可能だと覚えておけ」


漣「安直なんかじゃなかったっすよ…けどめちゃくちゃ大変そうなのはよくわかっちゃいました……」


ーー

今日はここまでです

ーー


不知火「荷物をまとめるのはまだ早くないですか?」


黒潮「こんなん遅なっても慌てるだけやから、これでええんよ」


陽炎「不知火と隼鷹さんは一応残るのよね?」


不知火「二人でやりたいことはありますがまだ結論が出ていませんから」


雪風「雪風も残ります…しれぇは居ませんけど…ここは安全なので…」


黒潮「そういう考え方は有りやと思うよ」


陽炎「私達は司令について行くから横須賀は頼んだわね!」

不知火「二人の他には誰がついて行くんですか?」


黒潮「神通はんはほんまは行きたかったみたいやけど、泣く泣く諦めたらしいわ」


不知火「なにか理由があるんですか?」


陽炎「ほら…神通さんってアッチが激しいでしょ?司令の身体がもたないかもって…」


不知火「…?」


陽炎「居ないわよね……なら…」キョロキョロ


陽炎「……あのサキュバ


シュバッ


雪風「消えた…!?」


黒潮「不知火…わざとやろ」


不知火「司令のことは好きです。隼鷹さんには劣りますが、少しくらい妬いたって落ち度はありません」


黒潮「こうやって横須賀で遊べるのも残り少ないし…知らんぷりしといたるわ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

雪風「あの…そもそも引っ越し先って…」


黒潮「さてさて引越し先の宛先は~ってすぐお隣やんか!手で抱えてもってけるわ!」


不知火「最初から知ってましたよね」


黒潮「まあそうやねぇ」


雪風「これが漫才というものですか…」


不知火「陽炎型の十八番ですね」


黒潮「人数多いところやったら、もっと賑やかなんが見れてたやろうね」


雪風「皆さん出身の鎮守府は違うんですよね?」


不知火「違ってもチームワークは抜群です」


黒潮「この鎮守府やからっていうのもあるけど、姉妹艦やから変な話やないで」

雪風「私にとっては全てが新鮮です」


不知火「この鎮守府でなら貴女のやりたいことも見つかるかもしれませんね」


雪風「やりたいこと…」


黒潮「艦娘やから出撃しとけばええって時代は終わるかもしれんよ」


不知火「無理に見つける必要はありませんが、選択肢を狭める必要もありません」


ぎゃえーーーーー!


黒潮「陽炎もそうやって言うてるわ」


雪風「……今のは悲鳴なんじゃないですか?」


不知火「もっと激しいツッコミでも良かったですね」


黒潮「まだまだこれからやなぁ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー工廠


明石「秋津洲ちゃんはここに残るよね?」


秋津洲「向こうで工廠の出番は無さそうかも」


明石「そうだよね」


秋津洲「明石の居るところがあたしの居場所かも!」


明石「私もそうだよ!」


秋津洲「明石~~」


明石「秋津洲ちゃ~ん」


神通「……」


明石「ひっ!?」


秋津洲「なにを引き摺ってるかも…?」


神通「……あとはお任せします」ポイッ


陽炎「」


秋津洲「……陽炎かも?」

明石「神通さんどうしちゃったんだろう。ここ最近暴力的になってきたような…」


秋津洲「あれは照れ隠しもあるかも」


明石「そうなの?」


秋津洲「提督とヤ……ううん、感謝を伝える例のあれで神通の本性が知られちゃったかも」


明石「あぁ…」


秋津洲「明石は興味無いからあんまり知らないかも」


明石「うん、提督には普段からありがとうって言われてるし…」


秋津洲「それに明石には恋人がいるかも。無理して変なことをする必要は無いかも~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

秋津洲「明石ぃ……最近彼とはどうなってるかも?」


明石「聞いちゃうの……?」


秋津洲「聞くかも聞くかも!」


明石「あのね…彼は結婚まで考えてくれるみたいで…」


秋津洲「おおっ!」


明石「私がうまく喋れない時から気になってくれてた人だから…一緒になっても幸せにしてくれるはず…」


秋津洲「いいなぁ~!あたしも運命の人を見つけたいかも!」

明石「そんな急に見つかるものじゃないよ」


秋津洲「分かってるけどぉ~!」


明石「もしくは提督にアプローチしてみるとか?」


秋津洲「うーーん…もう龍驤さんと霞がいるかも」


明石「黒潮ちゃんはそれでもいいって言ってたらしいよ」


秋津洲「三人目の女…黒潮ってそんな子だったかも…」


明石「秋津洲ちゃんがどんな人を選んでも、私とは一緒だからね!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー食堂


明石「あ、提督」


秋津洲「こんな時間に会うなんて久しぶりかも!」


提督「最近は新しい組織の件で出張が多かったからな」


明石「今日はお休みですか?」


提督「いいや今日も組織関係の仕事だ。職員を何人か雇うんだがその面接をやっていた」


秋津洲「提督が自分で面接をするかも?」


提督「他人に任せても良かったんだが、事情を知って直接話しておきたいと思ったんだ」


明石「特殊な事情がある人なんですね」


提督「その人に事情があるわけでは無いんだ。ここのと関係性が特殊ということだな」


秋津洲「…よく分からないかも」

提督「なら簡単に言ってやろう、面接をしたのは男だった」


秋津洲(ロリじゃなかったかも)


提督「その男はなんとなく仕事を続けていたがある人と出逢って自分は変わったと言っていた」


提督「生きることに目的を見つけ、ある人と共に人生を歩みたいとまで思ったそうだ」


秋津洲「ひょっとしてロマンチックな話かも?」


提督「そうかもしれないな」


明石「まさか……」


提督「その彼はある人とは離れて暮らしている。出逢った時は同じアパートだったらしいんだが…」


明石「……!!」


秋津洲「その男の人はどうなったかも?」


提督「正直言って秀でた能力があるわけでは無かった」


明石「あ……」


提督「だが熱意を、情熱を感じた。それは仕事の内容に対してのものでは無かったが、立派な動機だと思う」


明石「その人はどこに居るんですか!?」


提督「もう帰ってしまったな。だがまだ駅には着いていないだろう」


明石「提督!外出許可をお願いします!」ダダダッ


秋津洲「…あーあ、やっぱり寂しいかも」


提督「秋津洲と明石はずっと一生の友達なんだ、少しくらい譲ってやってもいいだろう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


明石「はあ…はあ……っ!」


A男「……」


明石「A男さん!!」ダキッ


A男「うわ!……明石さん?」


明石「聞きました!新しい組織の面接に来たって!」


A男「あ……はい」


明石「どうして…」


A男「らしくないことをしたと自分でも思っています。けど募集を見た瞬間…考えるより先に応募してしまいました」


明石「うううぅ……!!」


A男「明石さん、泣いて……」


明石「嬉しい…近くに貴方が居てくれることが凄く嬉しいんです!」

A男「貴女の側に居たかったのは自分も同じです」ギュッ


明石「大好きです……」


A男「自分も…です」


明石「…いつこっちに引っ越して来るんですか?」


A男「……」


明石「あの…?」


A男「これも何かの縁なのでしょうね。貴女があのアパートに引っ越してきたから出逢って、次は自分が引っ越して貴女と再会できた」


A男「どんな部屋にするのかは決めていません。貴女と…決められたらと思ってました」


明石「ど…同棲……?」


A男「…ダメですか?」


明石「そんな訳ありません!ぜ、是非…お願いします!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


秋津洲「明石、今日は祝い酒かも!」


明石「ええっ…!?もしかして見てた…?」


秋津洲「そのニヤけた顔を見たら誰でも分かるかも!」


明石「う…そんなだらしない顔してた?」


秋津洲「ゆるゆるかも」


明石「恥ずかしい……」


秋津洲「良かったかも、明石!」


明石「…うん。ありがとう秋津洲ちゃん!」

ーー後日


A男「組織の面接は合格でした。なので今日は部屋を探したいんですけど…」


明石「いきなりいい物件がありましたね……」


A男「鎮守府にも近くて不便なことは無さそうな…強いて言うなら少し広いかも…」


明石「か…家族が増えたとき…余裕がある……です…」


A男「…ここにしましょうか」


明石「……はい」


A男「顔…真っ赤ですよ」


明石「言わないでください…!」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー食堂


龍驤「これは何の騒ぎなんよ?」


秋津洲「明石が荷物まとめてるのを見つかったかも。最初はまさか異動するのかってなったんだけど、本当の理由を知ったらこうなったかも」


龍驤「彼氏と同棲するからってお祝いか…ちょっち早くない?」


秋津洲「これはプチお祝いかも。本番は結婚までとっておくかも!」


龍驤「プチか…そう言われたら馬鹿騒ぎはしてないみたいやね。ほんならウチも参加していこかな」


秋津洲「明石なら喜ぶかも!一緒にお祝いして欲しいかも!」


龍驤「秋津洲は明石が幸せそうにしてたら自分のことみたいに嬉しがってるなぁ。これからも仲良くしていくんやで」


ーー

今日はここまでです

ーー


龍驤「いよいよ工事が始まったみたいやね」


漣「新しい組織の拠点になる建物ですからそれはもう立派な……プレハブです」


龍驤「プレハブっていうかコンテナハウスなんやろ?」


漣「横にも上にも繋げられるってやつですね。イチから建てるよりかなり安く仕上がるみたいです」


龍驤「横須賀鎮守府には使ってない部屋が多いからそれを使っても良かったんやけどなぁ」


漣「ご主人様の組織は鎮守府ではありません。攻撃や迎撃を主体とした鎮守府と同じ施設を使うのは良くないでしょう」


龍驤「それはそうやけど…もったいないと思ってしまうね」

漣「使える物は横須賀からいくつか持っていくと言ってました。横須賀の空いてる部屋を倉庫として使うとも言ってたのでそれでいいじゃないですか」


龍驤「悪いことは無いけど…まあ色々言うてもしゃあないか」


漣「それより漣が心配してるのはご主人様のお金関係ですよ。立ち上げたばっかりの組織でやっていけるんですか?」


漣「ご主人様だけじゃありません、黒潮や陽炎が向こうに行くらしいですけど給料とか大丈夫なんすよね?」


龍驤「最悪……司令官が自腹切るって言うやろうね」


漣「それはなんとしてでも止めてくださいよ。それは妻の役割なんですから」


龍驤「そうやね、あの人にはちゃんと分かってもらうよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「金については心配要らない。国から補助金が出ているんだ」


漣「本当ですかぁ?」


提督「その為に皐月と出張を繰り返していたんだ。国以外にも様々な企業が協力してくれることになった」


龍驤「でもいつまでも補助金を頼ってばっかりやったらあかんのと違うん?」


提督「いずれは独立採算を目指す。その用意も進めている」


漣「それが本当なら安心ですけどねぇ~」


提督「信用が無いのは分かっている。だが安心して…」


龍驤「司令官、ほな質問を変えるわな」

龍驤「コンテナハウスに使う備品とか家具とか…補助金の対象外のもんで自腹切った?」


提督「……ああ」


漣「ほらもーーーー!!」


龍驤「あのな司令官…」


提督「話を聞いてくれ。そんな大金を使ってはいないんだ」


漣「金額じゃねぇんですよ、自腹切るなって言ってんです!」


龍驤「過去にあれだけ言うたんやから大金は使ってないやろね。でも簡単にお金は出したらあかんねん」


漣「これくらいなら大丈夫という線引きが出来てしまうのが怖いんすよ。例えば一万の自腹を十回やれば十万になるの分かってますか?」


提督「……」


龍驤「その顔は分かってなかったんやろうね」


漣「義務教育じゃやらないことですから仕方ないかもですけど」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督「しかしだな…これは必要な出費なんだ」


龍驤「それやったらウチら皆で出しあうべきやないの?」


漣「何でご主人様だけが出すんですか」


提督「……」


龍驤「新しい組織で使うんやったらその子らには出してもらわなあかんね」


漣「なにを買ったか事細かくリストアップしてもらいますよ!」

ーー


黒潮「ほんまに司令はんは!」


陽炎「おかしいとは思ってたけど…もう!」


龍驤「化粧品が補助金でおりるわけ無いやんか」


漣「もうちょっと考えて欲しかったですねぇ」


黒潮「自由に使える枠があるとかなんとか…うまいこと騙されたなぁ」


陽炎「司令を疑うことを忘れてたわね」


漣「こういう時は頭が回りますから手強いですよ」


龍驤「帳簿調べたけど避妊具もうまいこと誤魔化して買っとったわ。これはまたよーく話し合わなあかんわ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

漣「新しい組織に行ってもヤりまくるつもりなのか、それとも無意識なんですかね」


龍驤「 まあウチはかまへんけど…」


黒潮「お金はこっちもちゃんと出すわ。司令はんにはうちからも言うとく」


陽炎「そんなものまで買ってるなんて……」


漣「あのですね、どうせ向こうでヤりまくるんでしょうけど節度持たないと駄目っしょ」


漣「新しい組織になるんですぜ、スキャンダルはご法度なのは理解しといて欲しいですぜ」


龍驤「漣の言うことはもっともやけど、ウチは禁止とは言うてないよ。そっちの方でも司令官を頼んだで」

漣「随分と余裕なこと言いますね」


龍驤「…あのな、黒潮らが発散してくれるのは助かるねん」


漣「なぜですか?」


龍驤「深海棲艦にもロリはおるやろ」


漣「……察し」


黒潮「言い訳と違うけどうちらもそれを思ってたんよ」


陽炎「龍驤さんみたいに一晩で五回は無理だけど黒潮と二人でならなんとかなるでしょ?」


黒潮「保護するはずの深海棲艦に欲情とか、それこそ一発アウトや」


漣「…その通りなんで文句は言えないっすね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー数日後


漣「えらい勢いで工事が進んでますな」


龍驤「コンテナハウスってどんなもんかと思ってたけど、なかなか頑丈で良さそうやわ」


漣「コスト削減ってことでこれを採用したらしいすけど、そんな感じとは思えませんね」


龍驤「今日は周りをやるから中を見学してもええらしいねん。一緒に見に行こか」


漣「もちろんです。単純に興味もありますし色々と参考になるかもしれませんからね」

ーー


龍驤「これ…かなりええんと違う?」


漣「事務所みたいなコンテナもあって、集合住宅みたいなコンテナがありますよ」


龍驤「こっちは戸建てみたいなスペースになってるんか」


漣「外見がカクカクしてるっていうのはありますけど、そんなの全く気にならないくらいイイですね」


龍驤「これ…舐めとった。ここまで良いもんやとは思ってなかったわ」


漣「幹部さんが各地に深海棲艦の保護施設を建てると聞いて、はじめは無理だって思ってたんすよ」


龍驤「これやったらいける……深海棲艦でも快適に過ごせるのは間違いない」


漣「そんでもってこれ、相場よりかなり安く建ててんですよ。幹部さんのツテだからと思ってたんすけど違いますね」


龍驤「最初に幹部さんが…大本営が大量にコンテナを買ったんや。せやからコンテナ一つ辺りの単価が安くなる」


漣「やっばぁ…幹部さんの有能さを改めて知りましたね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー提督の部屋


龍驤「施設も完成していよいよやね」


提督「そうだな…その日が迫ってきている」


龍驤「この部屋は残すんやでな」


提督「まだ横須賀鎮守府に籍がある。向こうで過ごすようになってもここは残しておきたい」


龍驤「それって司令官のこだわり?」


提督「そうなるか……うん」


龍驤「よかったら理由聞かせて欲しいわ」


提督「……朝霜のことを忘れたくないんだ。ああいう形で朝霜は存在しているが俺の娘になるはずだった朝霜はもう居ない」

提督「今でも時々思い出すんだ。顔を真っ青にした朝霜が俺の所に来て…」


龍驤「朝霜は生きてるからお墓はたてられへん。せやからこの部屋を残しておきたいんやね」


提督「それだけじゃない。ここには龍驤と霞と朝霜と…数え切れないくらい様々な経験をした」


龍驤「ここでのことって辛いことの方が多くなかった?」


提督「足りないもの鎮守府でのことを思えばどうということは無い」


龍驤「せやね…ウチもいっぱい迷惑かけたわ」


提督「ここに来れば自分がどんな人間か思い出すことができる。横須賀は足りないもの鎮守府とは違った方向で俺を成長させてくれた」


龍驤「司令官は人としても立派になったよ。父親としても文句無しやで」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

中枢棲姫「お楽しみの所邪魔をする」ガチャッ


提督「どうしたんだ?」


北方棲妹「私達も参加する」


北方棲姫「シテヤル!」


龍驤「保護組織に参加してくれるって言うん?」


中枢棲姫「そうだな、お前たちの言葉で言えば平和を実現する為だ」


提督「参加を決めてくれたきっかけは何だ?」


中枢棲姫「ロリは尊い」


提督「……」


中枢棲姫「だが世界はロリだけでは成り立たない。それを守る存在が必要になる」


龍驤「そんな理由でか…」


中枢棲姫「私は大真面目だ」


提督「中枢棲姫が正式に参加してくれるならこれ以上のことは無い。役職も用意して本気であることを世界に示せる」


中枢棲姫「好きにしろ。ただしロリの深海棲艦を保護したら真っ先に私に知らせることを忘れるなよ」


北方棲妹「うわ…」


北方棲姫「キモイ」


ーー

今日はここまでです

ーー


神通「あの…話って…?」


由良「貴女を鍛える」


川内「私と師匠はここを離れるかもしれないの。だから神通が強くなっておいて損は無いでしょ?」


神通「私は…そこまでの強さは…欲してしません…」


由良「黙りなさい」


神通「由良さん…」


由良「サキュバスに拒否権は無い」


シュバッ


神通「由良さんまでそんなこと…!!」ギギッ


由良「見た」


川内「はい……やっぱり凄いです」


神通「川内さんまで!誰が性欲の塊なんですか!」


由良「違う」


川内「神通…今さ、師匠と互角だったの自覚してる?」


神通「……え?」

由良「サキュバスと煽った瞬間の初速」


由良「それだけで言えば私より上」


川内「注射が嫌だって暴れ回った時もそうだけど、神通は才能があるんだよ」


神通「私が…」


由良「戦闘狂が生きて帰ってくる」


由良「一度じゃなくて何度も」


由良「そんなことはあり得ない」


川内「足りないもの鎮守府が崩壊してたとき、何度も出撃して黒潮が止めても出撃を止めなかった」


川内「それでも神通は戻ってこれてた。思い出したくないかもしれないけど、異常なことだって思うでしょ?」


由良「鍛えて損は無い」


由良「力を開花させることも損は無い」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

神通「ちょっと待って下さい、二人がここを離れるってどういう事ですか?」


川内「それはね」


神通「新しい施設に移るんですか?いくら私を鍛えても二人分の穴を埋めるのはさすがに無理です…!」


由良「話を聞きなさい」


神通「……わかりました」


川内「横須賀には菊月提督と一緒に菊月達が来るでしょ?戦力的には神通がいれば充分なの」


由良「足りない物鎮守府」


川内「あそこにはガングートがいるけど子育てに忙しい。菊月達が抜けてできる穴は埋めないといけない」


由良「私たちが行く」


神通「でも……」

由良「なにが嫌なの?」


神通「嫌というか…いきなり強くなれと言われても…」


川内「師匠、混乱するのは仕方ないですよ」


由良「だって」


由良「神通の能力に気付いたのは最近」


川内「…神通は感情でスイッチが入るタイプだから気付くきっかけが」


由良「サキュバス」


神通「またそれを言う!!」


由良「この瞬間の握力」


由良「勝てない」


川内「素直に勝てないって言う師匠がどれだけ凄いか…神通には伝わってないかな」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

春雨「サキュバス!?」ダダダッ


神通「この……!」シュバッ


由良「待ちなさい」


春雨「あっはぁ!!またボロ雑巾になるまで痛めつけてくれるんですか!!」


川内「前にそんなことあったの?」


春雨「それはもう凄かったんです!神通さんに夜戦を仕掛けたら…ああん!思い出すだけで気持ちよくなっちゃうう!」


神通「問答無用で襲う貴女が悪いんです!」


由良「神通」


由良「春雨は元特務艦なのは知ってる」


神通「知ってますけど…元じゃないですか」


由良「元でも特務艦を圧倒してる」

神通「春雨さんはそこまでの強さは無いと…白露さんが言っていました…」


川内「いやでも倒したのが事実なら…」


神通「すいません…この話は無かったことに…」


由良「ダメよ」


神通「由良さん…」


由良「断るなら」


由良「貴女が提督を襲った映像を」


由良「ばら撒く」


由良「大音量で」


由良「中庭で流す」


シュバッ


川内「……師匠は強い人と戦えるからあんなに乗り気なんだよね…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


由良「サキュバス」


神通「……!」





由良「性欲の塊」


神通「この…!」





由良「絶倫女」


神通「もう…!!」





由良「発情期」


神通「おぉぉっ!」





神通「もう……こんなこと何回続けるんですか…!」


由良「何度でも」

由良「感情がスイッチ」


由良「だから仕方ない」


神通「いくら由良さんでも…もう我慢の…!」


由良「貴女」


由良「龍驤さんにも知らせてないこと」


由良「あるのを知ってる」


神通「……」


由良「提督に飲ませたわね」


由良「キメセク用の薬」


由良「あれを使えば提督も耐えられる」


由良「それを分かって飲ませた」


由良「そして貴女は」


由良「避妊薬を飲むからと」


神通「それ以上はやめて下さい…!!」

由良「だから避妊具無しで迫った」


由良「でも実際は違った」


由良「むしろその日は危険日」


由良「それでも良かった」


由良「もし出来てしまっても堕ろせばいいと思ってた」


由良「なんでそんなことをしたか」


由良「それは」


由良「孕まなくても自分の卵子が」


由良「提督の精子で塗れることを期待した」


由良「そうすることで極限の絶頂を得ようとした」


由良「妊娠しても構わないという考え」


由良「頭の中は卵子が詰まってるの?」


神通「…うあぁぁっ!!」

安価の出し忘れ


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ドゴォッ


由良「…これが貴女の力」


神通「……」


由良「怒りに任せた一撃なんて当たらない」


由良「けど万が一当たればこうなる」


神通「このクレーターは…今ので…」


由良「鍛えたくないのならそれでいい」


由良「だけど」


由良「力のコントロールは覚えて」


神通「……はい」


由良「今の話は私の胸に仕舞っておく」


由良「でと自分を見詰め直す事も必要」


神通「その通り……です」

由良「性欲もそう」


由良「私にだってある」


由良「けどコントロールできる」


由良「欲に溺れず」


由良「力をコントロールする」


由良「根っこは同じこと」


神通「分かりました……どうか…お願いします…」


由良「貴女なら難しいことじゃない」


由良「問題は心だから」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


由良「…」


ドガッ


神通(提督が受け入れてくれたことが嬉しくて…調子に乗ってしまったんです)


神通(今まで抑えていたものが爆発するように…全てを提督にぶつけてしまいました)


神通(抑えるようになってしまったのは自分が悪かったからです。弱かった自分が皆さんに迷惑をかけていたから、これじゃいけないと抑えるようになりました)


神通(全ては自分からなんです。私が強くなれば迷惑をかけることも無くなっていくんです)


ドガガッ


由良「…」


神通「続き…いきますよ」


由良「来なさい」

神通(提督とのあの夜のこと…由良さんはどうやって知ったのでしょうか)


神通(あれだけハッキリ言われると逆にスッキリしました。今では恥ずかしいより先に諦めがきます)


神通(あの夜の出来事を思い出すと今でも興奮してしまいます。でもそれじゃいけないんです)


由良「……」


神通(体が動く…由良さんが押されていることが分かります。私と組手をしてるのにそれがわかるなんて)


神通(客観的?俯瞰で見てる?なんだか不思議な感覚です)


神通(ひょっとしてこれが由良さんの言っていた…)


由良「ぐっ」ガクッ


神通「ゆ、由良さん…!」


由良「何か…掴んだようね」


神通「あの、私……」


由良「組手で負けたのは初めて」


由良「本気じゃなかったけど」


由良「それくらいの実力がある」


神通「…はい。この感覚を忘れずに…頑張ります」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

川内「すごいですね神通は、ねぇ師匠…」


由良「…」


川内「師匠?」


由良「やっぱり悔しい」


由良「走り込み」シュバッ


川内「流石は師匠だなぁ…」


神通「あの…川内さん…」


川内「…やる?」


神通「お願いします…」


川内「絶対勝てないけど…やるしかない!」

ーー


川内「もうこの時点で負けてるとか…あの修行はなんだったの…」


神通「元気を出して下さい…」


川内「うん出すよ…後で出すから今は落ち込まさせて…」


神通「……由良さんの情報網は凄いですね」


川内「なんの話ぃ~…」


神通「提督と二人だけの秘密を…由良さんは知っていました…」


川内「ああそれね…あれは全部知ってるわけじゃないよ」


神通「え…でも…」


川内「事実を神通の趣向に合わせて繋ぎ合わせただけ。霞からかすみが出来た時の話を聞いたのは本当。最高に気持ち良かったらしいね」


川内「提督に薬を飲ませて一晩中ヤりまくったのも本当。でもそれ以外は全部師匠が推理したんだよ」


神通「そんな…」

川内「数年前とかの話じゃないから神通の周期を逆算すれば危険日かどうかくらいわかる」


川内「心を読むとかってあるじゃん?あれの種明かしってこうなってるんだよ」


神通「それを堂々と…言える由良さんが凄いです…」


川内「師匠は凄いからね!」


神通「そんな人から学べる…貴重な機会なんですね…」


川内「盗めるものは全部盗んでいって!師匠のはどれも一級品だから!」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


由良「神通」


由良「良くなった」


川内「そうですね、もうサキュバスでも無いですしバトルジャンキーなんかにもなりません!」


由良「掴んだ」


川内「皐月が言ってたオッパイ…ヘブン?みたいな感覚なんですかね」


由良「残念ながらそう」


川内「私も聞きましたけど皐月のアレは意味わかりませんよね?」


由良「無の境地の類い」


由良「けど意味不明」


川内「普通そんな簡単に無の境地にたどり着けませんよ…」


由良「神通はやった」


由良「提督への気持ちが大きかった」


川内「私が追いかける方になるなんて…でも負けてられない!」


ーー

今日はここまでです

ーー


秋雲「はい横須賀組集合~」


山城「何の話をしたいのかは分かるわよ」


名取「新しい横須賀鎮守府に着任した艦娘の半分は消えちゃいましたね…」


秋雲「異動が二人に異動先でサイコって再起不能が一人。これをどう見るか」


山城「青葉と蒼龍は相性が悪かったと言えばそれまでね」


名取「でも半分は多過ぎるって考え方が一般的だと思う」


秋雲「秋雲さんもそう考えるよ。この鎮守府の事情を考えればそんなこと無いんだけど、物事は客観的に見ないとね」

山城「ここに残る以外の選択肢は無いわよ」


秋雲「あるって言ったら?」


名取「変なことを考えてるの」


秋雲「はいその忍びオーラはしまって下さ~い」


山城「普段の行いが悪いのよ」


秋雲「秋雲さんのアイデンティティを否定しないでー」


名取「…じゃあなにを考えているんですか」


秋雲「大本営に栄転とかどうよ」


山城「無理に決まってるじゃない。私たちだけ大本営にだなんて」


秋雲「それができるんだって。幹部さんが元帥になろうって話は知ってるでしょ?」


名取「そんなセコイことを考えてたなんて…」


秋雲「セコくっても作戦には変わりない!手伝ってくれるならちゃちゃっと済ませちゃうよ!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

山城「私はやっぱり残るわ」


秋雲「どうして?」


山城「なんだかんだ言ってもここに愛着もあるのよ。天提督の顔を立てるつもりの異動だったけど、今はそうじゃないの」


名取「私も別に…これ以上の栄転には興味も無いかな」


秋雲「が~ん…秋雲さん寂しいよ~」


山城「やるなら一人でやってなさい」


名取「ごめんね…」

提督「秋雲、ここに居たのか」


秋雲「なんなの~~」


提督「秋雲にある話を持ってきたんだ。クオリティの高い同人誌を作る才能を活かすために、広報の仕事をやらないか?」


秋雲「いくらで?」


提督「そこは要相談だ。予算が下りるなら同人誌の売り上げまで保証する」


秋雲「広報か……ちなみに白鶴さんはどうなるの?」


提督「翔鶴は横須賀の広報のままだ。それに今は入院中だから無理もさせられない」


秋雲「ん~~白鶴さんに話を持っていきたかったけど、無理させられないから秋雲さんにやれって?」


提督「そうじゃない。もし翔鶴が万全の体調なら秋雲と翔鶴に新しい組織の広報をやってもらおうとしていた」


秋雲「ならとりあえず拒否はしないかな。誰かの代わりになんて死んでも嫌だからね!」


提督「前向きに考えてくれると嬉しい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


秋雲「話を何回か聞かせてもらったけど、悪くは無さそうだね」


提督「なら引き受けてくれるのか?」


秋雲「それはギャラ次第って話!さあさあ大人の話をしようよ!」


提督「…そうか」


秋雲(本音を言えば公的に頼られたのが嬉しいから返事はイエスしか考えてない。だからって簡単に引き受けちゃうのは悔しいんだよね)


秋雲(この条件なら引き受けてあげよう!っていうスタンスの方が気持ちいいし、秋雲さんにとってもプラスになる)


秋雲(いや~秋雲さんもくるとこまで来ちゃったね!)

ーー


提督「……秋雲の同人誌はかなり売れるからな」


秋雲「壁サーで毎回完売してるからね!しかも新刊三冊描くときもあるし!」


提督「……」


秋雲(秋雲さんの本は紙質とか表装に拘ったりするから売り上げの割に利益はぼちぼちなんだよね)


秋雲(流石に売り上げ金を保証しろっていうのは言い過ぎだから、利益の何パーセントかを保証してもらって…)


提督「……すまない」


秋雲「へ、なに謝ってるの?」


提督「そんなに売り上げがあるとは…正直想像していなかったんだ」


秋雲「ちょっとちょっと、秋雲さんの本のクオリティを舐め過ぎじゃない?」


提督「本当に申し訳ない、その金額を保証するのは無理だ」


秋雲「仕方ないなぁ、だったら…」


提督「この話は無かったことにさせてくれ」


秋雲「…はい?」

提督「国から補助金が出るとはいえそんな大金は賄えない」


秋雲「ちょ、ちょっと待ってよ」


提督「俺のポケットマネーを出すつもりでもいたんたが、黒潮達の備品を買ったのを知られてしまった」


秋雲「給料をポケットマネーって…」


提督「本当に……すまない」


秋雲「いやいやいや!頭下げないでって!」


提督「そもそも秋雲の創作活動を邪魔するような事を依頼すべきじゃ無かった。反省すべき点はそこだ…申し訳ない」


秋雲「あの……え…マシで……そんな…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

秋雲「広報の話は秋雲さんにお任せしてよ!」


提督「だが…」


秋雲「元々売上全部なんてつもりはなかったし!なにより放っておけないって」


提督「秋雲が納得する給料は出せないんだぞ?」


秋雲「そこは気にしなくていいって!」


提督「引き受けてくれるならそれに越したことは無いが…」


秋雲「あのさ、馬鹿正直なのもどうかと思うよ?こういう交渉もできないと困るでしょ?」


提督「……」


秋雲「ん?ある意味では交渉成功なのかな?」


提督「…肝に銘じておこう。それより早速仕事に取り掛かって欲しいんだ」


秋雲「やることは聞いたからバリバリやっちゃうよ!」

ーー


駆逐棲姫「なにしに来た」


秋雲「保護された深海棲艦へのインタビューってやつ」


駆逐棲姫「なぜ私なんだ」


秋雲「絵になりそうだから。駆逐棲姫の体験談を漫画にしたいんだよね」


駆逐棲姫「お姉ちゃんから許可は取ったのか」


秋雲「R18な内容を書かないならオッケーだって!」


駆逐棲姫「それならいい。全て話してやる」


秋雲「いいねいいね~どんどんやってちゃうからね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

駆逐棲姫「ところで漫画の内容はそれでいいのか?公的な広報であって同人活動の延長では無いんだろう」


秋雲「なんかね、提督さんの考えがあるらしいよ」


駆逐棲姫「聞かせてくれ」


秋雲「提督さんが伝えたいのは二つ。自我の無い深海棲艦が存在することと、戦いを望まない深海棲艦がいること」


秋雲「駆逐棲姫って人間を襲ったりはしてないんだよね?」


駆逐棲姫「しなかった」


秋雲「それなら大丈夫だね。その二つ漫画にしてわかりやすく伝えたいってことなんだって」


駆逐棲姫「私の過去が見世物にされるのか?」


秋雲「そこは要相談。脚のことを描かなければ駆逐棲姫だって特定されないでしょ?」


駆逐棲姫「ノンフィクションじゃなくなるぞ」


秋雲「この世にはノンフィクションを元にしましたって便利な表現があるんだよね」

駆逐棲姫「なら断る」


秋雲「ん~~…」


駆逐棲姫「私の経験したことは私が伝える。他人に誇張されたくない」


秋雲「了解…無理強いはしないから大人しく引き下がっとく」


駆逐棲姫「お前はそれでいいかもしれないが、一度他人を交えてお前の使い方を会議した方がいいぞ」


秋雲「マジ?」


駆逐棲姫「私はそう思う」


秋雲「幹部さんの隣で色々見てる駆逐棲姫がそう言うなら…ちょっと会議しないとかな」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


山城「どうして私達が呼ばれたの?」


提督「第三者の意見が欲しかったんだ」


名取「幹部さんの方が良いと思いますけど…」


提督「それは経営者や上司から見た意見になる」


秋雲「秋雲さんを助けると思ってさ~お願い」


山城「やれと言われたらやるわよ…」


名取「秋雲さんの使い方の話ですよね」


提督「さっき言った通りあれがベストだと思っていた。だが他に意見があるなら聞かせて欲しい」

山城「漫画だけを描く必要は無いと思うわよ」


名取「宣伝の仕方とか…情報の発信の仕方を考えた方がいいと思います」


秋雲「マルチに活躍しろってこと?」


山城「その方がいいでしょうね」


秋雲「秋雲さんにできるかな~」


提督「いい意見だと思う。やれなくともチャレンジはして欲しい」


秋雲「ん~~ちょっと思い浮かんだのがあるから、試しにそれをやってみよっかな」


山城「とにかくやるだけやりなさい」


名取「応援してますからね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


飛鷹「この本を配ればいいのね?」


秋雲「そーそー、我がサークルを訪れるのは本物の猛者達だからね」


清霜「でも新刊既刊を買った人にだけ配るのは効率悪いよ?」


秋雲「それでいいっていうかそれが目的だし。流通が少ければ注目度は上がるからね」


飛鷹「それをやるにはいい作品が必要になってくるけど…貴女なら問題無いわね」


秋雲「秋雲さんの描く本は誰よりも面白い!」


清霜「自分で言えるのが本当に凄いよね」


秋雲「自分に発破かけるものあるけど、面白くないものは世に出さない主義だからね!」

飛鷹「あら?このQRコードはなに?」


秋雲「それこそがメインなんだよね!それは動画配信チャンネルの情報!」


清霜「動画もやるの?」


秋雲「本命はそっちだから!駆逐棲姫が自分で語りたいって言ってたし、深海棲艦には自分の言葉で言ってもらう!」


飛鷹「注目が集まればあとは広がるだけね」


秋雲「秋雲さんだから思い付いたこの作戦!あ、そっちの成功も祈ってるね~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


駆逐棲姫『私は駆逐棲姫。深海棲艦と呼ばれる存在だ』


駆逐棲姫『まず初めに言っておくが私は人間を襲ったことは無い。信じられないのならそれでいい』


駆逐棲姫『人間に危害を加えられたことは無いが、私の不注意で怪我をした』


駆逐棲姫『この両脚は人間の船のスクリューに巻き込まれた結果こうなった』


駆逐棲姫『皮一枚のところで繋がっていたが治す手段も持っていなかったから自分で引きちぎった』


駆逐棲姫『その日から私は自分一人で生きていくことが困難になった。仲間に助けてもらっていたがそれも限界がきて、人間に保護されることになった』


駆逐棲姫『私は幸福だった。もし悪意を持った人間に捕まっていれば私は生きていなかった』


駆逐棲姫『人間を攻撃する深海棲艦は存在するが私のような深海棲艦もいる事は知っておいて欲しい』

ーー


提督「駆逐棲姫の動画が話題になっているようだ。真剣に話す姿が老若男女問わず引き込まれるものがあった」


秋雲「よしよし、作戦成功だね」


提督「だが漫画の方は…」


秋雲「いーの、あんまり本気に取られてないので正解だから」


提督「そうなのか?」


秋雲「だって漫画だよ?読む層が限られてるし話題になればそれでいいから!」


提督「秋雲がそう言うのならいいんだが…」


秋雲「自分の価値はよく知ってるつもりだからね。これからも広報として張り切っちゃうから!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


山城「貴女は青葉と蒼龍が異動する詳しい経緯を覚えているの?」


名取「提督と仲違いしたのは覚えてますけど…気付いた時にはもう異動した後でした」


山城「Y朝潮は精神病棟で拘束されている。その経緯も全て覚えているのにあの二人の詳細は覚えていないのよ」


名取「何かがあったん…ですよね?」


山城「間違いなくそうでしょう、それを知る方法があればいいのだけれど」


名取「提督が関係していないとすれば天提督ですよね」


山城「天提督……秘書艦の深雪が…深雪……?違うわ、確かあま


ピシッ

山城「…特に思いつかないわね。何かがあったことは覚えておきましょう」


名取「何の話ですか?」


山城「…そもそもなんだったかしら」


名取「山城さん…もう年なんじゃ」


山城「…見かけによらず毒を吐くのね」


名取「これでも忍びですから」


山城「不幸だわ…」


名取「……」


ーー

今日はここまでです

ーー大本営


多摩「終わった……」


幹部「ご苦労様だったね」


多摩「試験はこれで全部終わりだにゃ…?」


幹部「そうだね、後はこちらが提督業の資格を出すだけになる」


多摩「これで本当に多摩が提督に…」


幹部「色々な手続きがあるからすぐにというわけにはいかない。だが多摩君が提督になることは間違いないよ」


多摩「……」


幹部「艦娘としての活躍と難しい試験に合格した多摩君にはその資格がある。なにも不安に思うことはないよ」

幹部「足りないもの鎮守府に建てている病院も順調らしいね。多摩君が提督になる頃には、先生君の病院も開業できるだろう」


多摩「多摩にとって全部良いことが起こってる…起こりすぎてるにゃ」


幹部「それは多摩君が頑張ったからだよ」


多摩「そんなことはにゃい!多摩なんかより龍驤さんの方が…」


幹部「君達には嘘を言っても仕方ない。だから私が正直に思うことを君に伝えるよ」


幹部「多摩君は本当に頑張ったんだ。崩壊した鎮守府をなんとか留めておいて、艦娘の精神的な柱になった」


幹部「それに引き換え龍驤君は……」


多摩「龍驤さんの悪口を言うな!!」


幹部「因果応報という言葉がある、多摩君の日頃の行いの良さが返ってきているんだ」


多摩「……」


幹部「多摩君、これから君は他人を使い評価する立場になる。物事を客観的に見る必要もあるんだよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀鎮守府


多摩「試験が全部終わって、もうすぐ多摩は正式に提督になるにゃ」


提督「おめでとう、素直に凄いと思う。多摩の提督であれたことを誇りに思う」


多摩「…提督も大変だったんだにゃ」


提督「急にどうしたんだ?」


多摩「幹部さんからこれからは他人を使う立場になると言われたにゃ」


提督「提督とはそういう立場なんだ。艦娘を使い、評価することが求められる」


多摩「サラッと出てくるあたり…流石だにゃ」

提督「勘違いすることが多いんだが提督は必ずしも作戦を建てる必要は無い」


多摩「提督みたいに細かい修正は旗艦に任せるやり方は珍しいって知ったにゃ」


提督「細かい指示を出す提督もいる。しかしそれだと臨機応変にできない」


多摩「提督が評価されてたのはそういう所もあったんだにゃあ…」


提督「作戦に正解は無いと思っている。全員生きて帰ってくることが最優先で無ければならない」


多摩「指揮官として……提督に勝てる自信が無いにゃ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督「俺は現場が実際どうなっているかまでは分かっていないんだ。駒の配置を知っているにすぎない」


提督「多摩は現場を、戦場を知っている。多摩は必ず俺を超えていくだろう」


多摩「プレッシャーをかけるなぁ…」


提督「そんなつもりじゃない、事実を言っているだけだ」


多摩「うぐぐっお、うう」


提督「な、な、なんだ?」


多摩「今までに感じたことの無い重圧に潰されそう…」


提督「多摩に限って…いやその様子を見ている限り冗談じゃ無さそうだな」

多摩「覚悟はしてたのに…いざなるとなったら…」


提督「気にしすぎじゃないのか?」


多摩「怖いにゃ…」


提督「提督をやるだけでそんなに怖がることは無いだろう…他に何かあるんだな?」


多摩「多摩にとって良いことが続いて…いつか絶対大きなミスをする前兆だにゃ…」


多摩「その時死ぬのが自分なら納得できるにゃ、でも他人を殺してしまうとなると…」


多摩「お腹が痛くなってくるにゃ…正気度がガリガリ減っていくにゃ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

多摩「提督ごめんにゃ…今まで色々とキツい事を言ったけど…結局当事者じゃなかったから言えたんだにゃ…」


提督「本当にどうしたんだ多摩?」


多摩「多摩はそういう役目だと思ってやってたけど…そんなことはなかったんだにゃ…」


提督「…俺は多摩に厳しく言われることは嬉しかったぞ」


多摩「やめてにゃ…うにゃあぁぁ…」


提督「プレッシャーで一時的におかしくなっているだけなのか?改二になって猫成分が増したせいなのだろうか…」


多摩「にゃぉぉぉぉ…」


提督「多摩が提督になることはほぼ決定していて止められない。俺にできることは話を聞いてやることくらいだな」


ーー

今日はここまでです

ーー


富士「お母さん達は引っ越すの?」


深海海月姫「ええ、貴女の居る横須賀に行くのよぉ」


富士「やったぁ!またお父さんとも暮らせるんだ!」


深海海月姫「富士、貴女は横須賀に居続けるべきでは無いわよ」


富士「え…お母さん?」


深海海月姫「さみだれのように貴女も世界を知る必要があるわ」


富士「でも……」


深海海月姫「貴女の力は世界を滅ぼし兼ねないの。貴女が善と悪を間違えれば世界の均衡は簡単に狂ってしまうのよ」


富士「難しい話は分かんないよ…」

深海海月姫「寂しくなったら横須賀に帰ってきなさい。その時は貴女が見たり体験したことを教えて」


富士「うん……」


深海海月姫「お母さんも富士と別れるのは悲しいわ。けど道を見極めることは貴女にとって必要なこと」


深海海月姫「富士が本気で世界を滅ぼしたいと思ったら私は止めないわ」


富士「お母さん……」


深海海月姫「悪に染まらない生物は存在しないの。この世界が貴女にとって耐えられないものだと判断すれば好きに暴れてもいいのよ」


富士「そんなことしないよ…」


深海海月姫「そうなることを祈っているわ。さあ富士…世界を見てきなさい」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


深海海月姫「あんなことは言いたくなかったけど……」


菊月提督「富士の為を思えば正しい選択だ」


深海海月姫「せっかく生活も安定してきて、楽しく生活しようと思えばできるのよぉ」


菊月提督「その通りだがそれは富士の未来を狭めることになる」


深海海月姫「富士とあなたとの生活……楽しかった毎日…」


菊月「嘘泣きか」


深海海月姫「菊月には分からないでしょうねぇ…」


菊月「分からない。だが私の司令官を独占していることは確かだ」


菊月提督「菊月…」


菊月「司令官、悪いがとことん邪魔をさせてもらうからな。私に子どもができるまで負けたままなんだ」


菊月提督「勝ち負けはない…」


菊月「私が負けだと言えば負けだ。これからも覚悟をしておけ」

ーー


富士「どこに行こう…行く当てなんか思い付かないし」


富士「さみだれちゃんに会いに行ってもいいけど…ちょっとお腹空いてきたなぁ」


富士「……」


富士「早い安い旨い牛丼屋さんがある…」


富士「カードがあるからお金は心配無いし…とりあえずご飯を食べようかな」


富士「牛丼を食べながら考えよう……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


富士「牛丼は美味しいから……とりあえず食べれば元気が出るし…」


はいオッケーで~す


富士「…何かやってたのかな?」


「コレデイイノカ」


「このお店の宣伝になるだけじゃないの?」


「広報の一環ですので」


「意図があるならそれでいいけど」


富士「艦娘と深海棲艦…!」


「あれ?まだお客さん入れませんよね?」


「あ!ごめんねお嬢ちゃん、今撮影してて…」


「オマエニンゲンジャナイナ」


「え…?」

富士「その通りだよ、私は現代艦娘の富士」


「現代艦娘…?」


「貴方達は知らないでしょうね。艦娘と深海棲艦よりも強い存在だって言えば伝わるかしら?」


「コドモデモワタシヨリツヨイ」


「こんな子どもなのに……?」


富士「二人は何をしてたの?」


「広報って言っても伝わらないわよね…」


「シーエムダ」


「それね。この店の宣伝をしてたのよ。美味しそうに食べればお客さんがいっぱいくるでしょ?」


富士「それを艦娘と深海棲艦でしてたんだね」


「リクデシゴトシタイ」


「艦娘だからって出撃だけしてる時代は終わりよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

しゃーせぇ~


富士「もぐもぐもぐもぐ」


「落ち着いて食べなさいよ」


「ギュウドンハニゲナイ」


富士「んぐ……二人はコンビなの?」


「コンビ…どうかしらね。セットで扱われることが多いのは確かよね」


「オナジジキニコンナシゴトヲヤリハジメタ」


富士「一緒に居て嫌じゃないなら仲は良いんだね!」


「そうね…悪くはないわ」

「もう戦いたくないっていう考えが同じなのよ」


「モウヒキガネヲヒキタクナイ」


「それも同じ。引き金を引いた先に深海棲艦がいることに耐えられなかったのよ」


富士「二人はそれで幸せ?」


「シアワセ」


「今まで艦娘に生まれたことを後悔しかしてなかった。けどこの仕事をやり始めたら世界が変わったわ」


富士「世界が変わった……」


「オオゲサジャナイ。ホントウ」


「貴女が世界を見て回るっていうのは否定しないわ。でも現代艦娘だからって私達の世界を潰したりしないで」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

富士「お母さんもお父さんと結婚してるけど、やっぱりこうやって平和に暮らしたい人達もいるんだね」


「必ずしもこの仕事をしてるから平和とは言えないけど、こっちの意図は伝わったでしょ?」


「テレビニデテルカンムスモイル」


「白鶴でしょ?艦娘を続けながら広報って建前でテレビで活躍してるあの女…」


「あれは私には無理。艦娘と芸能活動は両立させるのは不可能に近いわ」


富士「ありがとう!すごくいいお話が聞けて嬉しい!」


「役に立てたのならそれでいいわ、貴女も頑張りなさい」

ーー


さみだれ「久しぶりだね富士ちゃん」


富士「なんだか…成長した…?」


さみだれ「私は先に鎮守府の外を見てきたけど、そこで学ぶことは色々あったよ」


富士「聞かせてくれる…?」


さみだれ「その前に一つ手伝って欲しい」


富士「なになに?」


さみだれ「私の父親を消すの」


富士「だ…ダメだよ!殺したりなんかしちゃいけないんだよ!」


さみだれ「殺すなんて言ってないよ」


富士「でも消すって…」


さみだれ「私は父親がやったことの重大さに気付いたの。あんなクソ親父だけじゃどうやっても罪を償えない」


さみだれ「罪を償えないなら罪を消すしかない。あの父親の存在を消せば罪も消える」


さみだれ「私に考えがあるから、富士は少し手伝ってくれるだけでいいんだよ」


富士「さみだれちゃんが変わっちゃった…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

さみだれ「私と富士の力があれば人間の一人くらい消せるんだよ」


富士「…それは間違ってると思うよ」


さみだれ「なにが間違ってるの?」


富士「力はそんな風に使うものじゃないよ!さみだれちゃんはなにを見てきたの?」


さみだれ「お父さんがなにをしたか知ってるよね?」


富士「だからってさみだれちゃんがやる必要は無い!」


さみだれ「…うん、それでいいんだよ富士ちゃん」


富士「さみだれちゃん?」


さみだれ「少しだけとか、手伝うだけって言って悪いことへ誘ってくる人に必ず出会うから。その時は今みたいにちゃんと断ってね」

富士「さみだれちゃん……」


さみだれ「相手に流されるようだと世界を見て回るどころじゃないから」


富士「ねぇ、さみだれちゃんは…」


さみだれ「富士ちゃんならきっと大丈夫だよね」


富士「嫌だ…さみだれちゃん……」


さみだれ「私みたいに騙される馬鹿にならないでね」


富士「どこ行くの!?」


さみだれ「誰も知らない場所。富士ちゃんとは違う所」


富士「嫌だよ一緒に行こうよ!」


さみだれ「一緒のものを見ても意味ないよ。富士ちゃんが見るべきものがあるから」


富士「さみだれちゃん!」


さみだれ「じゃあね富士ちゃん……また、会えたらいいね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


さみだれ「私は色々なものを見た…見させられた。大好きなあのゲーム以上に現実は過酷なものだった」


さみだれ「命はお金より軽い。あんな紙切れの集まりより人の命の方が軽いだなんて現実とは思えなかった」


さみだれ「そして社会は漫画の世界より陰湿だった。なにもいいことなんて無かった」


さみだれ「全員殺してもいいって思った…けど優しい世界も確かにあった」


さみだれ「人間のことは好きだけど嫌い。大好きだけど大嫌い」


さみだれ「富士ちゃんはこんな私になっちゃいけない…汚れのない心のままで居て欲しい」


さみだれ「将来……私と富士ちゃんは戦うと思う。そして私を倒すのは富士ちゃん…」


富士「待ってぇーーー!!」


さみだれ「……富士ちゃん」

富士「一緒のものを見たらお話しできるし、間違えそうなときは助け合えるよ!」


さみだれ「無理だよ…」


富士「無理じゃない!今私が間違ったらダメなことは、間違えそうな友達を一人にしちゃうことだもん!」


さみだれ「…っ!」


富士「友達がいなくなっちゃうなんて絶対に嫌!!」


さみだれ「心が汚れた私と…富士ちゃんは一緒にいれないよ…」


富士「一緒にいれるもん!」ギュッ


富士「この手は絶対に離さないからね!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


さみだれ「あのね、今私は家族と上手くいってないの」


富士「マイケルの家族みたいに?」


さみだれ「そんな感じ……私がマイケルなら富士ちゃんはトレバーかな?」


富士「それはさすがにちょっと………アレが私なのは…」


さみだれ「ふふ…分かってるよ」


富士「私の旅は始まったばっかりだけど、さみだれちゃんのことを放っておけない!」


さみだれ「これは私の家族の問題だから…」


富士「それにさみだれちゃんの心は汚れてるわけじゃない!私と一緒に行けばそれがよく分かるよ!」


さみだれ「気持ちは嬉しいけど…」


富士「思い立ったら即行動だよ!」

さみだれ「どこに向かってるの?」


富士「さみだれちゃんのお父さんとお母さんのところ!」


さみだれ「や…嫌だ……」


富士「私が一緒だから大丈夫!」


さみだれ「私が大丈夫でも…あのクソ親父が…」


富士「そんな言い方しちゃダメ!ちゃんと話し合うんだよ!」


さみだれ「五月雨も…」


富士「大丈夫!もし暴れたりってなっても触手でなんとかなるから!」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー某所


五月雨「さみだれ……大きく…なったな…」


さみだれ「……」


富士「さみだれちゃん」


さみだれ「…手だけならいいよ」スッ


五月雨「……」ダキッ


富士「うんうん」


さみだれ「……」


五月雨「本当に…大きくなったな……」

さみだれ「アレはどこに居るの」


五月雨「アイツならここにいねぇ」


富士「お仕事してるの?」


五月雨「艦娘の競技団体は軌道に乗り始めてる。アイツが居なくても成り立つくらいにはなった」


さみだれ「じゃあなにしてるの」


五月雨「島風提督は寺で修行してるよ」


富士「知ってる!出家ってやつだ!」


さみだれ「…朝潮ちゃんの為なの」


五月雨「蘇ったか復活したか知らねぇが、あの朝潮は五月雨とアイツで殺した。それには間違いねぇ」


五月雨「ケジメをつけるためだ。お前が大きくなったら五月雨もケジメを付けるから安心しろ」


さみだれ「……」


富士「さみだれちゃん?」


さみだれ「ちょっと……一人で考えさせてね」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


さみだれ(お父さんがやってることも、お母さんがやろうとしてることも結局は自己満足。過ちは埋めきれない)


さみだれ(それでも頑張ってる。自己満足でも救われた人達が確かに居る。なら自分ができることは……)


さみだれ(あんな最低の親だったから最低な子に育ったと言われない事。後ろ指をさされないよう立派になってみせる)


さみだれ(多くの人を救えば認められるかな…でもその方法が分からない)


富士「さみだれちゃ~ん!」


さみだれ(…今は分からなくていいや。富士ちゃんと一緒に居れば答えは見つかるはずだから)


さみだれ(お母さん、何をしようとしてるか分かるけど私は止めないからね)


さみだれ(私はお母さんみたいに一人じゃないし、お父さんみたいに過ちも犯さない。絶対にお前たちみたいにはならない…)


ーー

今日はここまでです

ーー


漣「龍驤さんのお腹が育つと共に物事は進みますな」


龍驤「新しい組織の拠点も完成したね」


漣「結局ご主人様は任期満了と共に提督を退くという形になりましたね」


龍驤「手続きや引き継ぎに手間取ったからなぁ。今辞めても中途半端やからってことになったからね」


漣「そこのところは幹部さんにお世話になりまくりました。我々は幹部さんに足を向けて寝れません」


龍驤「引き継ぎが遅れたのもこっちが悪いし、幹部さんやなかったらクビでもおかしくなかったわ」


漣「実質の大本営トップと繋がりがあるって楽ですなぁ」


龍驤「司令官が頑張ったから幹部さんとも仲良くなれたんや」

漣「龍驤さんはギリギリまで働くんすよね?」


龍驤「つわりも酷く無いし臨月とかそれくらいになるまでは入院せぇへんよ」


漣「菊月提督の秘書艦代理をやるんですか?」


龍驤「そのつもりやで」


漣「あの龍驤さんがご主人様以外と…」


龍驤「ほぼ隣に司令官がおるし、ウチは何も心配せんでええねん。変なことを考える暇なんか無いやろうし」


漣「一昔前の龍驤さんなら半殺しにしてでも止めてましたよ」


龍驤「それで止まるウチや無かったやろうな。同じ過ちは繰り返さへんから安心しとき」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー足りないもの鎮守府


菊月提督「菊月……」


菊月「離さないからな」


深海海月姫「抜け駆けは見逃せないわねぇ」


菊月提督「二人して密着しないでくれ…」


菊月「お前が離れろ」


深海海月姫「あら、それは貴女じゃないの?」


菊月「使用済みの年増は近付くな」


深海海月姫「言うじゃない……」


多摩「お前ら仕事しろにゃーーーーーーー」

深海海月姫「この人の仕事はもう無いでしょう?荷物の整理くらいじゃない」


菊月「お前が働け」


多摩「ああん?」


菊月提督「俺を挟んで会話しないでくれ…」


多摩「おみゃーが悪いんだにゃ」


菊月提督「無理矢理振りほどけば俺が悪いんだろ?」


多摩「当たり前だにゃ」


菊月提督「どうすればいいんだ……」


多摩「せめてこっちの邪魔をするにゃ」


菊月「私は垂れてきているお前とは違う」


深海海月姫「……」ピクピク


菊月提督「この二人に言ってくれ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

多摩「でも菊月と深海海月姫も、なんだかんだで仲いいにゃ~」


菊月「当たり前だ」


深海海月姫「私達はこの人の妻だもの」


多摩「仲が悪いなら殴り合いの喧嘩にゃ。認めあってるからこそ軽口も言えるんだにゃ」


深海海月姫「でも流石に垂れてるは悪口じゃないかしら?」


菊月「一人産んだから体がくたびれてるぞ」


深海海月姫「ふーん……」ピクピク


多摩「……ほどほどにするにゃよ」

ーー数日後


多摩「準備は全部終わったにゃ?」


菊月提督「問題ない」


菊月「万が一忘れ物があっても取りに帰ってくる」


多摩「おみゃーらはそれがあるから便利にゃ」


菊月提督「お前が提督になる正式な日はまだ先だが、運営はもう大丈夫だな」


多摩「問題ないにゃ」


菊月提督「提督から引き継いだこの鎮守府を多摩に返す形になった。俺は提督として最低限の仕事はできたと思っている」


多摩「多摩も秘書艦として提督を支えられたと思うにゃ」


菊月提督「今までありがとう。秘書艦として最高の艦娘だった」


多摩「おみゃーは指揮官としては提督には勝ててないにゃ。でも指示は的確で指揮官として申し分無かったにゃ」


菊月提督「頑張れよ…は俺らしくないか」


多摩「いつも通りでいいにゃ。そっちこそ横須賀でクビにならないように頑張るにゃ~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

深海海月姫「最近いつもそれを持ってるわねぇ」


菊月「ああ…あいつからなるべく常に近くに置いておけと言われてるからな」


深海海月姫「あいつ…?前に言ってたあの子?」


菊月「そうだ」


深海海月姫「貴女にしては気に入ってた子よね」


菊月「唯一の友人と言うくらいだからな」


深海海月姫「なら近くに置いておかないといけないわねぇ」


菊月「多少かさばるくらいどうということはない」

ーー横須賀


雲林院「待っていたぞ菊月」


菊月「…どうした」


雲林院「提督の組織であの二人共々共々お世話になるんだ」


菊月「あの二人は…」


雲林院「……」ふるふる


菊月「……」


雲林院「できることは少ないがそれでもいいと提督は言ってくれた。実のところ凄く助かった」


菊月「金が尽きたか」


雲林院「あのままだと病院を追い出されることは決まっていた。あの提督はそれを知っていたんだと思う」


雲林院「私にはもう価値は無い。だから菊月、せめてあの槍はずっと近くに置いていてくれ」


下1~3高コンマ この後の展開やその他起こったことなど

雲林院「まあその槍が役に立つ場面なんて来ないに越したことはないが」


菊月「その組織でなにをするんだ」


雲林院「私は働く。そこで稼がせてもらってあの二人にもっと良い医療を受けさせてやりたい」


菊月「できる仕事があるのか?」


雲林院「分からない。最悪は体を売る」


菊月「そんなことをするくらいなら私がお前を買う」


雲林院「……ありがとう」


菊月「変なことを考える前に私やあの提督に相談しろ。必ず答えは返ってくる」


雲林院「そうか…それはありがたい」

菊月「お前も相談することを覚えろ」


雲林院「……」


菊月「震えるくらい怖いなら尚更だ」


雲林院「あの二人は私のせいでああなったんだ」


菊月「お前が犠牲になる必要は無い」


雲林院「進んで犠牲になる必要は無いことはわかっていた。金が足りなくなるまで最後の手段としてとっておいた」


菊月「やめろ」


雲林院「…やめる」


菊月「どいつもこいつも自分が犠牲になることで必死だ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

菊月「お前の頑張りは眠っているあの子達にも必ず伝わる」


雲林院「だが目覚める気配すらない」


菊月「一つ教えてやる、心の傷を癒やすのは愛だ」


雲林院「愛……」


菊月「再起不能レベルだった奴が今も普通に生活している。それは愛があったからだ」


雲林院「愛…愛情を二人に……」


菊月「これからは距離的に近くなる。何かあればすぐにこっちを頼れ」

ーー


雲林院「愛情……どうすればいいのだろうか」


雲林院「二人は私を愛してくれていたのか?だからあんなに世話をしてくれたのか…」


雲林院「今度は私が二人を愛する番なのか…」


雲林院「……」ギュッ


雲林院「どうか…………」


「…」
「…」


雲林院「ん?今…手を握り返してくれたような…」


雲林院「気のせいなんかじゃない……今確かに…」


雲林院「よし…この調子でいけばきっと…」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


菊月「あの提督は雲林院を悪いようにはしないのは確かだろう。しかしそれでも心配だ」


菊月「くれぐれもと釘を刺しておくか…そうだそうする必要がある」


菊月「何故か雲林院のことは放っておけない。私をこんな奴にさせる奴はそうはいない…」


菊月「いつもの私なら無視をしていても良かった。あんな子どもの一人くらい居なくなっても問題ない」


菊月「まったく……提督の所に向かうか」

ーー


菊月「おい」


提督「菊月…?そうか、引っ越しは今日だったか」


菊月「何をしていたんだ」


提督「新しい組織の宣言式での原稿を覚えている」


菊月「それくらいすぐに出来るだろう」


提督「俺の場合は人前で何かを言うということがハードルが高い」


菊月「それでも横須賀の提督だったのか」


提督「残念ながらな」


菊月「そんなことはどうでもいい。何があっても雲林院達を守れと言いにきたんだ」


提督「あの三人か…」


菊月「アイツらに何かあればお前たちの命は無いと思っておけ。くれぐれも注意していろ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「よし…原稿はほぼ覚えた。あとは当日緊張せずに言えるかどうかだな」


雲林院「提督!」


提督「そんなに急いでどうしたんだ?」


雲林院「二人が目を開けてこっちを見たんだ!」


提督「そうか…雲林院の気持ちが届いたのかもしれないな」


雲林院「私の愛が届いたんだな!」


提督(医者によればあの二人が心を閉ざしていたのは恐ろしい存在から守る為、そして何よりも大切な雲林院を守る為の防衛本能ではないかと言っていた)


提督(雲林院の必死の介護は確実に二人の心を解している。三人の絆はあんな奴らに壊されるようなものじゃないんだ)


提督( 三人は深海棲艦ではないが日常を脅かされる存在だ。俺は彼女達も平和に暮らせる社会を実現させるんだ)


ーー

今日はここまでです

ーー足りないもの鎮守府


北上「多摩提督が着任しました~~これより艦隊の指揮に入りま~す」


多摩「まだ正式な提督じゃないにゃ」


北上「そうは言っても菊月提督はもう横須賀に行っちゃったけど?」


多摩「辞令が出るまで提督じゃないにゃ」


北上「変に几帳面なんだから~」


多摩「北上がいい加減なだけにゃ」


北上「うわ酷~い」


多摩「事実を言っただけだにゃ」

北上「秘書艦は雲龍さんになるんでしょ?」


多摩「なんだかんだで仕事はできるにゃ」


北上「子どもの世話がなかったら、あたしがやってもよかったんだけどね~」


多摩「北上は持ち場に戻るか子どもの世話をしてろにゃ」


北上「いや~せっかくだから多摩提督とテレビでも見ようかなと思ってね」


多摩「工廠で見ればいいにゃ……」


北上「せっかくなんだし一緒に見ようって。一応提督の晴れ舞台なんだしさ」


多摩「…仕方ないにゃ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

北上「そういえば提督服は届いてるんだよね~」


多摩「まあそうだにゃ」


北上「ちょっと着てみなよ~」


多摩「遠慮しとくにゃ」


北上「いいからいいから。減るもんじゃないでしょ?」


多摩「…少しだけにゃよ」


北上「よし、そうと決まれば試着タイムだね~」

多摩「ど…どうにゃ……?」


北上「おお~似合ってるじゃん、写真取ろ写真」


多摩「写真って…そんなの大袈裟にゃ。これから毎日着るものになるにゃ」


北上「はいチーズ」


多摩「……にゃ」


北上「おおーやっぱり提督服ってかっこよさ増すねぇ。これ先生にも送っとこ~」


多摩「やめろにゃあぁぁ!」


北上「やっぱり先生となると未だに照れるか~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

多摩「いつもの多摩ならここで北上のケイタイを取り上げるところにゃ。でも提督になる多摩は余裕が…」


北上「あ、先生からメール返ってきたよ」


多摩「うにゃあっ!?」


北上「多摩さん、またそれを着たまま帰って来てくださいってさ」


多摩「先生ぇ……?制服フェチだったにゃ…?」


北上「この前多摩が私に白衣を着たままして欲しいと言ってので…」


多摩「先生ーーー!なんで北上にそんなこと言ってるにゃぁぁぁぁ!」


北上「興奮してあたしが送ってるって忘れてるのかもね~」

北上「あ、先生のメッセージが取り消された。多分気付いたね~」


多摩「……多摩のケイタイが震えてるにゃ…」


北上「どうする?気付いてないフリしとく?」


多摩「既読……」


北上「あちゃ~~」


多摩「……忘れろ」


北上「はいはい~っと」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

多摩「……」


北上「もう~せっかくの提督の演説なんだからちゃんと聞こうよ~」


多摩「知らないにゃ…」


北上「それじゃあ鎮守府に併設する病院の話でもする?」


多摩「もういいにゃあ…」


北上「あーらら、完全に拗ねちゃった」


多摩「これに関しては先生も悪いにゃ…なんであんなことメールしたんだにゃ……」

北上「しかし提督のあがり症はどうにかならないのかね~今日の演説もイマイチって感じだわ~」


多摩「……」


北上「なんか顔色も悪いし…大丈夫かねぇ」


多摩「北上……」


北上「ん~~?」


多摩「菊月にすぐに連絡をしろ…」


北上「え、どうして?」


多摩「いいから早く!」


北上「提督になにかあった…?」


多摩「あの顔色の悪さは精神的なものじゃない!誰かにやられた後だ!」


北上「マジで言ってんの!?」


多摩「腹の辺りが不自然だ…刺されたのを無理やり止血してる可能性が高い!」


北上「幹部さんも気付いてないとか…提督我慢強いとかってレベルじゃない!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


望月「うん、これはかなりやばいね」


菊月「おい」


望月「あ~察しのいい菊月なら分かっちゃうか」


アケボノ「こんな奴が新しい組織の代表で大丈夫なの?」


望月「ぜんぜん駄目。この事件をきっかけに提督は終わっちゃう」


グラーフ「どうする…?」


望月「下痢止めを転送とかできない?」


神威「できないことはないと思います。うまくいくかは分かりませんが」


望月「やるしか無いでしょ。最悪荒潮がいるんだしなんとかなるって」


荒潮「私……漏らすとか漏らさないで殺されるの……?」

望月「まあとりあえずやってみようって。じゃあ神威お願い」


神威「いきますね……」シュンッ


アケボノ「薬は消えたわね」


荒潮「お願い…うまくいかないと…最低な理由で殺されるの…」


望月「……おっけー、最悪な未来は消えたっぽい」


荒潮「良かったぁ……」


菊月「なら次は私の番だな」


望月「あたしも行くから神威お願い~」


アケボノ「多摩の連絡を聞いた時はびっくりしたわよ」


菊月「提督は刺されはしなかったが艦娘に襲われている」


望月「ナイフを持った頭のイカれた艦娘にね」


菊月「あの場に居るということは自分でどうにかしたんだろう。その詳細を聞いてくる」


望月「しっかしY朝潮が拘束ブチ破って逃げるとはね。そんな未来予測できてなかったわ~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「Y朝潮はすぐに退役したかったから俺を襲ったらしい」


望月「提督やっちゃったら強制解体っていう死刑なのに」


提督「それでもよかったと言っていた」


菊月「そんな異常者をどうやって説得したんだ」


提督「俺の艦娘として解体されることを条件に出した。Y朝潮はそれを認めて大人しくなったんだ」


望月「提督ってもうそんな権限無いよね?」


提督「まだ籍は横須賀だ。俺の最後の仕事になりそうだ」


菊月「お前に執着していたからアイツはそれで納得したのか…」

提督「幹部さんにも報告している。解体後は精神が安定するまでまた病院で療養する予定になりそうだ」


菊月「私達の手間が省けたのはよかったが、 身の危険を感じなかったのか?」


提督「Y朝潮がああなったのは俺のせいだ。あそこで逃げ出すのは無責任にも程がある」


望月「それで殺されてたら意味ないけどね~」


提督「殺されない自信があった」


菊月「護衛でも居たのか?」


提督「Y朝潮は俺を殺したいとも思っているが、一番に考えているのは俺の特別な存在になることだ。興味を示すことを持ち出せば止まるという確信があった」


望月「そこまではカッコいいけど演説中に漏らしそうになるのはどうかな~」


提督「……ノーコメントにさせてくれ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

望月「腹痛はこっちでなんとかしたのに気付いた?」


提督「…確信は無かったがそうだろうと思っていた」


菊月「お前の為にやったことじゃないのは理解しておけ」


提督「わかってる…俺の後を引き継ぐ菊月提督に迷惑がかかるところだったからな」


望月「薬が効いても演説はスムーズじゃなかったね。けど必死で一所懸命なことは伝わったかな」


菊月「中枢棲姫の存在も大きかっただろう」


提督「そうだ…やはりあれだけ強力な深海棲艦が仲間になるといことは大きなプラスだった」

望月「でも途中で幼い少女がどうだとか言い出したのは危なかったけど」


菊月「どいつもこいつもロリコン共が」


提督「あれは予測していた。だからうまくフォローできたんだ」


望月「見てる側からすれば中枢棲姫は子ども好きってことになったと思うよ~」


菊月「…私が確認したいことは終わった。帰るぞ」


望月「帰るときもいきなりだねぇ~じゃ、そういうことで」


提督「ああ…わざわざありがとう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀鎮守府


提督「演説も終わった……これで提督として執務するのも最後になるな」


漣「しんみりなんかさせませんよーー!」ガチャッ


龍驤「これからお疲れ様でしたと司令官の門出を祝う会があるんやで!」


提督「……よし、行こうじゃないか!」


漣「さすがはご主人様!こういう時に乗らないでいつ乗るんですかって話です!」


龍驤「もう準備はできてるから、あとは主役が来るだけやで!」


提督「主役は遅れて登場するものだ。ちょうどいい感じになるだろう」

ーー食堂


北上「提督の登場だ~!」


提督「驚いたな…足りないもの鎮守府からも来ているのか」


多摩「多摩が許可したにゃ」


雲龍「多摩提督が言うから仕方なくよ」


提督「多摩と雲龍…足りないもの鎮守府は任せたぞ」


多摩「任せろにゃ」


雲龍「貴方が居たときより立派な鎮守府にしてみせるわ」


漣「さあさあ皆さんグラスは空いてませんね?それでは乾杯の音頭を…ご主人様、お願いします!」


提督「よし…」


龍驤「皆んなに祝ってもらって…良かったなぁ司令官…」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


S朝潮「司令官の門出ですから祝わないという選択はありません」


八島「やれやれ…あたしは付き合いだからね」


芙蓉「この日本酒美味しいわね」


S朝潮「芙蓉さんはともかく八島さんまでありがとうございます」


八島「朝ちゃんがいるからだもん。そうじゃなきゃこんな所に来ないからね~」


芙蓉「このワインも美味しい…」


八島「はいお酒飲み過ぎだから没収~」


芙蓉「ああん……」

S朝潮「八島さん、この景色は想像できましたか」


八島「そんなわけないじゃん。よくて半分残ればいいと思ってたからね」


S朝潮「十人じゃなかったんですか?」


八島「チャンスがあれば他もやろうとしてたからね~」


S朝潮「そんなことにはなりません。間違えることはあっても司令官達は諦めずに前に進み続けます」


八島「残念ながらそうだったね…」


S朝潮「八島さんの望むものは現実になりません」


八島「……まだ残ってるから諦めないよ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

S朝潮「貴女がそういう存在だということはわかっています。それでも…今日この場では私と楽しんで貰えませんか?」


八島「しょうがないな~特別だからね」


S朝潮「ずっと悪役なのも疲れるんじゃないですか?」


八島「あたしは悪役なんかじゃないよ、そういう存在だから」


S朝潮「ならその存在であることに疲れませんか?」


八島「全く!」


S朝潮「…そうですか」


八島(ごめんね朝ちゃん、気持ちは分かるけどそうはいかないんだよね。この世界はあたしが作ったからね)


八島(犠牲無しで富士を葬れたのは良かったけどそれじゃつまんないもんね!)


八島(せめてあと一人くらいはサクッとやれたらいいんだけどな~)


八島(きひひひひひ、どうなるのか楽しみだな~)


ーー

今日はここまでです

ーー


提督「演説も終わってあとはその日を待つだけになったか」


龍驤「ほんまやったら全部仕事は終わってるんやけど、最後に仕事ができてしまったね」


提督「Y朝潮の解体か…」


龍驤「響と同じように書類にサインするだけでいいはずなんやけど、それじゃあかんのやろ?」


提督「解体される寸前まで俺のことを見たいと言っていた」


龍驤「警備は厳重にするらしいけど、それでも不安やわ」

提督「約束した以上は行く必要がある。大本営に行くしかない」


龍驤「…無事に帰ってきてな」


提督「もちろんだ」


龍驤「無茶だけはせんといてよ。お腹の中には子どもがおるんやからね」


提督「十分わかっている」


龍驤「…最後の仕事、行ってらっしゃい」


提督「行って…きます」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

漣「別に行かなくてもいいじゃないですか」


提督「だが……」


漣「書類は後で送っておけばいいんです。ご主人様が行く必要はありません」


提督「しかし…約束した以上そういうわけには…」


漣「なぁんか行かない方がいい気がするんですよ…」


龍驤「それはウチも思ってるよ。嫌な予感しかせぇへん」


漣「そうですね、どうしてもと言うなら…」

ーー大本営


幹部「二人が来たのはそういう理由なんだね」


皐月「僕達がいなくても大丈夫だとは思うけど」


神通「用心して損はありません…」


提督「Y朝潮はどうしてますか?」


幹部「拘束した上で特務艦達が監視している。武器もなにも持っていないことは確認しているよ」


皐月「朝潮は二人だけで話したいって言ってるんだよね?」


幹部「彼女の両手足を拘束する。これならできることは殆ど無いだろう」


提督「…朝潮と会います」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


Y朝潮「司令官には感謝しているんですよ」


提督「どういうことだ」


Y朝潮「思えば迷惑ばかりかけていましたよね。それでも最後は私の希望を尊重してくれたじゃないですか」


提督「……」


Y朝潮「貴方のお陰で艦娘を辞めるという可能性が開けました。最後までお世話になってばかりですね」


提督「そうか…」


Y朝潮「今後もう会うことは無いでしょう。だから最後に感謝を伝えたかったんです」

Y朝潮「司令官は私のことは忘れて下さい。子どものことを優先して考えるんですよ」


提督「……」


Y朝潮「どうしたんですか司令官、これで最後なんですからもっと話しましょうよ」


提督「朝潮…」


Y朝潮「貴方の艦娘になれて良かったです、嘘なんかついていません」


Y朝潮「最後の仕事が私で幸せです。どうもありがとうございました」


下3コンマ判定


奇数 ○
偶然 ×

提督「…これでいいんだな」


Y朝潮「大丈夫です。あ、念のために書類を見せてくれませんか?」


提督「……」


Y朝潮「もっと近くで見せて下さい、拘束されているので見にくいんです」


提督「ほら…」


Y朝潮「ほんと司令官って馬鹿ですよね」ガタッ

皐月「司令官!!」


神通「大丈夫ですか…!」


提督「ぐ……っ」


Y朝潮「あははははははははははは!!」


幹部「彼女を…運び出すんだ」


Y朝潮「その首筋の跡は一生消えませんよ!噛みちぎる一歩手前までいきましたからね!」


Y朝潮「ざまあみろざまあみろざまあみろ!あっはははははは!」


Y朝潮「お前が全部悪いんだ!私がこうなったのはお前のせいだ!」


Y朝潮「お前は絶対に幸せになれない!私みたいなのに殺されて惨めに終わる!そう決まってるんだ!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


Y朝潮「……」


Y朝潮「すいません司令官」


Y朝潮「貴方は無防備過ぎます、これがもう会うことのできない私の最初で最後の恩返しです」


Y朝潮「本当はもっと違うことを考えていたんですけど、薬が効いたみたいで実行に移せませんでした」


Y朝潮「……」


Y朝潮「あは…あはははははははははは」


Y朝潮「あはははははははははははははははははははは…」


Y朝潮「もう私は笑うことしかできませんよ」

ーー


幹部「本当に強制解体にしなくていいんだね?」


提督「ええ…」


皐月「甘いよ司令官……」


提督「朝潮が本気なら動脈に噛みつくことだってできたはずだ。それをしなかった」


神通「それはたまたまじゃ…」


提督「手洗い餞別だということだろう。俺にも悪いところがあるのも事実だからな」


幹部「傷は残るだろうが……」


提督「これくらいなら構いません。とにかく朝潮は通常の解体でお願いしますね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


八島「ぐぬぬ……」


S朝潮「やっぱり無理なんですよ、この世界はもうほぼ固まりつつあります」


S朝潮「また新しい世界でもない限り、貴女の期待したようにはならないと思いますよ」


八島「新しい世界かあ…」


S朝潮「三日月さんと如月さんが居た世界はほとんど手付かずなんじゃないですか?」


八島「本来の八島が完成してる世界にあたしが干渉できると思う?」


S朝潮「カミサマなんですからできて当然なんじゃないんですか?」


八島「無茶言わないでよ……」

八島「あたしが新しい世界を作ることはもう無理だし…ここまでなのかな」


S朝潮「どうして無理なんですか?」


八島「一度だけって決めたから。その制約があったからその後の世界を作ることができた」


S朝潮「制約をかけると力が強くなる…」


八島「まあアイツがその後の世界を作ったのをパクった感じかな。アレにできるならあたしにも出来るしね」


S朝潮「八島さんくらいしか世界を作ることはできませんからね」


八島「いつかみたいに新たな創造者が現れない限り無理。そもそも今回は切り札が使えなかったから不利なのは承知だったけど」


S朝潮「切り札?」


八島「♯×××××××を殺すこと」


S朝潮「それは…」


八島「語り手がいなければ世界は回らない。あたしが作った世界でもあたしが語ることは不可能」


八島「あたしがこの次元で存在する限りどうやっても覆らない。未来をねじ曲げることも何もできない」


八島「まあ本気を出せば次元くらい越えれるけどやらないよ。だってあたしは…八島だからね~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

S朝潮(むふ…ちょっと落ち込んでる八島さんも可愛い…じゃなくて可哀想ですね)


S朝潮「諦めるなんてらしくないですね」


八島「あのねぇ朝ちゃん、あたしの味方するっていう事は世界を…」


S朝潮「前に言いませんでしたか?私にとって世界なんてどうでもいいんです、貴女が一番なんですよ」


八島「……ズルいよ朝ちゃん」


S朝潮「私にとっての世界は八島さんです。貴女が救ってくれたから今の私があるんです」


八島(それは違うよ…救ったという行動はあたしだけど、それをやったのは『あたし』じゃない)


八島(あたしは朝ちゃんに愛される資格なんか無い。けどY子じゃなくて八島になったのはあたしの意思)


八島(その責任は果たす……絶対に朝ちゃんは不幸にしないからね)

芙蓉「私も居るんだけれど…影が薄いわね…」


八島「残りカスのお姉ちゃんだしね」


S朝潮「多分私より力もありませんよね?」


八島「当たり前じゃん、こうやって存在があること自体凄いからね」


芙蓉「存在が残ったのは、私に役割があったからじゃないの?」


八島「その通り!でも必要とされなかったから出番はありませんでした~」


芙蓉「…受け入れるわ。菊月達を騙した罪は消えることは無いもの」


八島「こっちの世界に菊月達を呼んだのはお姉ちゃんだしね。あたしが菊月なら絶対許せないもん」


S朝潮「なんであんなことをしたんですか」


芙蓉「……あの時はそれしか頭に無かったのよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

S朝潮「本当だったら芙蓉さんはどうなるはずだったんですか?」


芙蓉「それは私も気になるわ」


八島「色々候補はあったけど、一番やって欲しかったのは移動役かな。横須賀の地下にある倉庫みたいなところに乗り物がある予定だった」


S朝潮「乗り物…」


八島「機関車でもなんでも良かったよ。富士って名前を使いたいなら電気機関車だったかな」


芙蓉「それを私にやらせてどうしたかったの?」


八島「登場人物を殺しまくる為の道具に決まってるじゃん」


芙蓉「……だから電車なのね」


八島「さすがに轢き殺すは無いけど。あたしが瞬間移動するのは不自然だから、お姉ちゃんを使って全国を移動したかったんだよね」

八島「可能ならミニ八島を牽引して街ごと消したりとかも考えてたよ」


S朝潮「ミニ八島なんてものがあるんですか?」


八島「菊月達を燃料にすれば十分。三日月がいるからどうとでもなったよ」


芙蓉「どのルートを通っても貴女は登場人物を葬ろうとしていたのね」


八島「ミニ八島を使うなら殺す人数は20だったね。10個の棺は菊月達の人数でもあったし」


S朝潮「本当に殺そうとしていたんですね…」


八島「菊月達の世界の富士にこの世界を滅ぼされるよりマシでしょ?一時はモブしか生き残らない未来も考えてたからね」



下2 この後の展開やその他起こったことなど

S朝潮「八島さんはもう世界の破壊なんてしちゃダメです。私は八島さんを幸せにしたいし私を幸せにして欲しいんです」


八島「……」


S朝潮「世界を破壊したって八島さんも私も幸せにはなりません」


八島「富士を殺さないとこの世界が滅んだんだよ」


S朝潮「構いません」


芙蓉「そうよね…貴女にとってはこの世界は重要てはないのよね」


S朝潮「私は司令官に受け入れられなかった時点で、自分の世界は滅んだんです」


八島「知ってる……嫌っていうくらい知ってるよ」

S朝潮「もし世界と引き換えに八島さんが手に入るなら喜んで滅ぼします。自分の命と引き換えでも構いません」


八島「…死んでもあたしが助けるもんね」


S朝潮「私の世界は貴女なんです。八島さんがいるから私は生きています」


芙蓉「貴女達の関係なら愛が重いということではないわね」


八島「…あたしが朝ちゃんに抱いている感情はペットと同じものなのかな」


S朝潮「それ以外にあるんですか?」


八島「やめてよ…」


S朝潮「貴女が死ねというなら喜んで死にます。貴女の目の前で首を吊ります」


八島「……次の質問にいこっか。なかったらそれでいいし」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

八島「黒い羽は門が開いた時に現れるモノが落とすアイテム。龍飛の時と天城によって門は開かれた」


八島「現れるモノは成虫ではないけと意味は同じ存在。幼虫から蛹になる段階を飛ばして一つ上の存在になったモノ」


八島「門が開かれない限りそれが現れることはない」


八島「理想郷の扉と違って門を開く方法は知ることができる。でも生贄が必要になるから、やるには覚悟と準備が必要になってくる」


芙蓉「天城は自分を深海棲艦化して深雪を生贄にしたのよね?」


八島「それじゃ生贄が足りない。弾薬庫で深雪を殺したあと、仕掛けられていた爆弾を起爆、鎮守府まるごと生贄にした」


S朝潮「深雪さんは傀儡だったので爆弾が体内にあったんですね」


八島「全てのパーツが揃ってた…だから天城からすればやるという選択肢しか無かったね」

S朝潮「深海棲艦の成虫はこの世界を滅ぼすんですよね?」


八島「結果的にはそうなるけど成虫はそう思ってないよ。弱肉強食なだけ」


芙蓉「本来ならこの世界は深海棲艦の成虫が支配していたのよね」


八島「深海棲艦はそういう生き物だからね。いつも見てる形
ただの幼虫。原因があって繭になれてないだけ」


S朝潮「その理由はなんですか?」


八島「単純に栄誉不足。リュウジョウの中で一年以上育ってたのはずっと栄誉を溜めてたから」


S朝潮「艦娘の役割は深海棲艦の母胎」


八島「それが世界の理だった。でもまあ扉のせいで色々と変わって今の世界が出来上がったんだね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

八島「門番は天提督の手術の時にだけ出てきた女の子の伏線を回収しただけ。あの男は由良を元に戻すための道具」


八島「チョビヒゲまで出して何かあるように思わせたけどそれは違う。由良を元に戻す方法がそれしか無かったから」


八島「結果的にそれで良かったと思ってるよ。富士を誘き出す為の手鏡をあたしに届ける役割も出来たしね」


S朝潮「由良さんの為だけに作られた存在なんですか?」


八島「正確に言えば響を殺して由良を戻すための道具」


芙蓉「響はエピローグに出ていなかったものね」


八島「響が死ねば電も殺せたのに残念だよ」

八島「さてと、もういいかな?」


芙蓉「それを決めるのは貴女じゃないわ」


S朝潮「…やっぱり八島さんは八島さんなんですね」


八島「どうしたの?」


S朝潮「さっき私は貴女が死ねというなら首を吊ると言いました」


八島「言ったね」


S朝潮「貴女は私に首を吊って欲しかったんですね?」


八島「どうかな」


S朝潮「貴女はその××が出ることを期待した」


八島「残念、朝ちゃんはその言葉を発せません」


S朝潮「……」


八島「事実はあたしの中にだけある。これで終わっちゃう会話なんだよ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

S朝潮「今のは実際には八島さんが考えた事じゃありませんよね。貴女もそういう役割を与えられた存在なんです」


八島「そうだよ、役割が無ければ存在出来ないからね」


S朝潮「存在出来ないにしても忘れ去られていく運命です」


八島「朝ちゃんは忘れ去られた方が幸せだったかもね」


S朝潮「そんなことになれば恨みしか考えていない私が司令官を殺していました」


八島(提督だけで済むわけないじゃん)


S朝潮「忘れられていた方が幸せだったという事も多々ありました。でも私のこの台詞もそれを言わせたかった誰かの意志なんです」

八島「はいそこまで。それ以上進むと取り返しのつかないことになるからね」


S朝潮「私は八島さんのようなことはしません」


八島「本当なら『壁』を認識してる時点でマズイんだからね?」


S朝潮「それも貴女が勝手に決めたことですよね」


八島「……もういいよ」


芙蓉「貴女が考えていることがあってもそれは形にならなければ何も無いのと同じ。意志が働かなれければ…」


八島「あたしが本気になる前にやめておいた方がいいよ残りカスさん」


芙蓉「……そう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

八島「平和……なにをもって平和なの?人が全く死なない世界なんかあり得ないんだよ」


八島「どんな道でも楽な道は無い。大変な思いをしたのはあたしだけじゃない」


S朝潮「貴女は私のことが嫌いなんですか?」


八島「…好きだよ」


S朝潮「それは八島さんがそういう役割だからですか?」


八島「……」


S朝潮「貴女に課せられたのは役割だけで思考は関係ない。貴女のその気持ちに役割はありません」


八島「この気持ちも与えられたものだから」


S朝潮「拒否しなかったのは貴女の意志です」


八島「……」

S朝潮「定義が曖昧な平和でもいいじゃないですか」


八島「…あたしが居るから?」


S朝潮「この世界が選ばれたからです」


芙蓉「貴女の思い描いていたシナリオとは違うものだった。だけどそれは不正解ではないわ」


S朝潮「正義も平和も曖昧なのが真実なんです。八島さんの望む純粋な感情は手に入りません」


八島「それが…」


S朝潮「それがたとえ空想の中であってもです。空想を作れる存在の世界がそうだからなんです」


芙蓉「結局この世界にも理想の世界は無いの。なぜなら誰もそれを知らないから」


S朝潮「知らないものは語れません。ですからこれが私達が勝ち取った世界であっていいんです」


S朝潮「行きましょう八島さん…もう私達にできることはありません」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀


黒潮「司令はん、また違う鎮守府から連絡やで」


陽炎「こっちも連絡が来たわよ!」


提督「これは予想以上だな…」


黒潮「なんだかんだ言うて中枢棲姫が仲間になったのが大きいみたいやなぁ」


陽炎「保護した深海棲艦が穏やかそうにしてるのも印象が大きいみたいよ」


黒潮「うちらが知らんだだけで忍んで仕事をしとった深海棲艦達はそれなりにおったんや」


陽炎「そういう子達は仕事も真面目にやるでしょうね」


提督「戦う必要が無いとわかってくれたんだ……深海棲艦も戦いたくなかったんだ」


黒潮「うちらに保護するって選択肢がもっと前からあったらよかったんやなぁ…」


陽炎「深海棲艦と艦娘と…種族を超えても私達は仲良くできるのは証明済みよ」


提督「人間と艦娘と深海棲艦による新しい社会が作られようとしているのか…」


ーー

今日はここまでです

ーー


幹部「提督君たちの組織が動き出してから、全国の鎮守府に次々と深海棲艦が投降しているようだ」


提督「規模の小さい鎮守府を優先してコンテナを運んでいますが、現状で追い付いていません」


幹部「コンテナもじきに足りなくなる。追加で発注はしておいたがいつ来るかは未定だ」


提督「見通しが甘かったということになりますね…」


幹部「そう言われても仕方ない状況なってしまった。対応が遅いと批判の声も多くもらっている」


提督「片っ端から対応していますがそれでも追いつきません。電話も常に鳴りっぱなしです」


幹部「電話応答で済むものはこちらが処理しよう。提督君にしかできないことを優先的にやってくれ」

提督「組織として動き出すのは早かったのでしょうか」


幹部「そんなことは無い、私も計画書を入念に確認したがそれで問題無いと判断したんだ」


提督「彼女達は救いを求めていた…その事実をもっと大切にすべきだったんです」


提督「対話もせずに一方的に攻撃していたのはこっちなんです、人間が彼女達を…」


幹部「それは違うとハッキリ言えるよ。自我の無い深海棲艦とずる賢い深海棲艦のせいで、彼女達は人間と敵対する存在になった。血の珊瑚礁を忘れるわけはないね?」


提督「……」


幹部「武器を破棄することに抵抗した深海棲艦は原則受け入れない。この条件がとんでもなく大切なんだ」


幹部「保護されるフリをして鎮守府を襲う、これまで何度もあったことだ。その事件のせいで大本営は深海棲艦の保護を表立ってすることができない」


幹部「すまないが落ち込んでいる暇は無い、愚痴を吐く暇があれば自分ができることをするんだ!これは君にしかできない仕事なんだよ!」


提督「…はい」


幹部「仕事が終わればゆっくりと休めばいい。疲れたと言えば誰もが君を癒したいと言う、そんな仲間に囲まれているんだからね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀


「ダレカキタゾ」


北方棲姫「カエレ!」


「エエ…」


北方棲妹「人間社会のルールを教える」


「オマエニデキルノカ?」


港湾棲姫「……」


潜水新棲姫「ワタシが教える。お前達は見学だ」


北方棲姫「ナゼダ!」


潜水新棲姫「陸に来て日が浅いからだ。こういう役目はワタシに任せておけ」

黒潮「どんな感じやった?」


潜水新棲姫「問題なく講習は終わった。何度かやれば普通に働けるようになるだろう」


黒潮「あんたに頼んで良かったわ、あの姉妹だけやったら不安で仕方なかったからなぁ」


潜水新棲姫「他の鎮守府でも深海棲艦が協力しているのか」


黒潮「友好的は深海棲艦はおることはおったからなぁ、喜んで協力してくれるみたいや」


潜水新棲姫「一つ聞かせてくれ、お前は深海棲艦が人間社会で働けると思っているのか?」


黒潮「…思うしかないねん」


潜水新棲姫「人間の働き方は異常だ。それを押し付けられた深海棲艦がどうなるかまで考えているか?」


黒潮「司令はんは考えてる。うちやあんたらが何か言える問題や無いんや」


潜水新棲姫「そうか、今はその言葉を信じてやろう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀


提督「紹介していただきましたがこの企業は無しですね」


「どうしてですか?」


提督「時間外労働が多すぎます。正当な理由も無しに彼女達は残業をしようとはしません」


「しかし…」


提督「それが常識だと言いたいんですよね?しかし私からすればそんな会社が非常識です」


「貴方は残業をしたことが無いんですか?」


提督「何度もあります休日が無かった月も経験しています」


「は…?」


提督「私が言いたいのは理由の無い時間外労働をさせるなということです。合理的な理由があれば彼女達は従います」


「……」


提督「人間じゃないからと安い賃金で働かせようとしている企業はいくつもあります。この企業もその中の一つでしょう」


「…今日の所は帰らせてもらいます」

陽炎「睨まれてたわね…」


提督「恨みが俺に向けばいいんだ。深海棲艦が傷付けられてしまえば意味がない」


陽炎「深海棲艦を保護して独り立ちまでマネジメントするのがこの組織の存在意義。司令はその先まで考えているのね」


提督「企業との契約の間に入ったり、労働環境の確認をするのが俺の仕事だ」


陽炎「独り立ちできるまで、施設に住んでる深海棲艦が貰った給料から家賃等を支払ってもらって運営費用に当てるのはわかるけど…本当にそれで利益が出るの?」


提督「問題ない」


陽炎「深海棲艦が支払う家賃は給料の数パーセントでしょ?独り立ちしたらこっちにはお金が入らないのよね?」


提督「大丈夫なはずなんだ。次は別の企業の紹介を受けてくる」


陽炎「本当に大丈夫なのよね……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


黒潮「司令はん、ある鎮守府から連絡がきてるんやけど」


提督「ここより横須賀に知らせた方がいいんじゃないか?」


黒潮「それがな、深海棲艦と戦闘してて劣勢だった艦隊を助けた深海棲艦がおったらしいんや」


提督「深海棲艦が艦娘に味方したのか。友好的な存在ならあり得ないことじゃない」


黒潮「それがな、その深海棲艦は戦艦水鬼らしいんやけど艦娘を助けたら姿を消したんやって」


提督「…友好的ではなかった?」


黒潮「縄張り争いやったら深海棲艦を倒したあと艦娘を攻撃してたはずや。それが無かったから敵意は無いやろうけど、友好的とも言い切られへんなぁ」

陽炎「どうやらその個体だけじゃないみたいよ。同じような報告が大本営に何件も来てるらしいわ」


提督「何かあることは間違い無いな…集団で同じことをしているということは何か意図がある」


黒潮「人間の世話になりたくないけど艦娘を助けたいとかなんかなぁ?」


提督「艦娘を助けたいならコミュニケーションは必要だろう。艦娘を攻撃していると勘違いされたくないはずだ」


黒潮「確かになぁ」


陽炎「…ねぇ、仮定の話なんだけど聞いてくれる?」


提督「話してくれ」


陽炎「深海棲艦を保護する時に武装を破棄しないと受け入れないのは当然だと思うの。でも武器を捨てられない深海棲艦もいると思わない?」

陽炎「私や不知火には傀儡だから使える力がある。それを手離せって言われたら…嫌なの」


陽炎「だから…武器を捨てられない深海棲艦が集まっているとは考えられない?」


提督「そうも考えられる。だがそうだとすれば俺達にできることは少ない」


黒潮「万が一があるから怖いわなぁ…」


陽炎「それは艦娘も同じじゃないの?」


提督「…陽炎の言いたいことはよく分かった。もしコンタクトを取ることができれば、対応する」


陽炎「ちゃんと考えておきなさいよね」


提督「もちろんだ、今日は寝ずにどうするのか案をまとめておく」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー夜中


提督「コンタクトが取れて有効的だとわかれば共に海を守るということもできる。だがそれは彼女らが裏切られないのであればの話だ」


提督「武装を破棄しない以上そのリスクが常にある。それに向こうに連絡する手段が…」


提督「……ダメだ、その手段が思いつかない」


提督「仕方ない、今はコンタクトが取れたあとの事を考えよう。そもそも陽炎の仮説が合っていない可能性もある」


提督「考えられる全ての可能性とその対処を文字にしておこう」


提督「俺にできるのはこれくらいなんだ。できることが少ない分、全力でやり切るのが仕事なんだ」

ーー翌日


菊月提督「味方かどうか分からない深海棲艦の話は俺も聞いている」


提督「なら話は早いか?」


菊月提督「こちらでも動こうとしていた。なぜなら…」


深海海月姫「私がいるからよねぇ」


提督「そうか彼女の胞子を使えばいいのか」


深海海月姫「私の胞子で何をしようとしているのかくらいは分かるわぁ」


提督「お願いしてもいいか?」


深海海月姫「報酬は~?」


提督「そうだな、俺の給料で足りないなら予算を削って…」


菊月提督「おい」


深海海月姫「それは無いんじゃないかしらぁ」


菊月提督「お前は組織のトップであることを忘れるな。もっと冷静に物事を考えろ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


菊月「胞子をばら撒いた結果はどうだ」


深海海月姫「……長門…」


菊月「なにがだ?」


深海海月姫「戦艦水鬼が…長門……」


菊月「奴が深海棲艦になったというのか?」


深海海月姫「耳が聞こえないまま……深海棲艦になってもそれは変わらない…」


菊月「あれだけの騒ぎを起こしたんだ、たとえ死んだとしても罪が消えることはない」


深海海月姫「そんなことがあるだなんて……」

菊月「奴らの目的はなんだ?」


深海海月姫「艦娘を守るために戦う……そう強い意志を感じるわ」


菊月「なら陸に来い」


深海海月姫「馴れ合うつもりは無いみたい…それに武装の放棄を認められない深海棲艦も存在するわ」


菊月「ふん…」


深海海月姫「艦娘と人間は嫌いだけど自我の無い同胞はもっと嫌い。だからそれを狩る深海棲艦もいるみたいよぉ」


菊月「つまり奴らは陸に来ないが敵ではないと言うことか」


深海海月姫「下手にコンタクトを取れば関係が拗れる可能性もあるわねぇ」


菊月「現状維持しか無さそうだな」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


戦艦水鬼(私は私の信じるものの為に戦いそして敗れた。敗者が勝者と手を組むことはあってはならない)


戦艦水鬼(勝者が存在する限り敗者の事実は無くならない。勝者と敗者とはそういう関係でなくてはならない)


戦艦水鬼(かつてあの光で沈んだ時のように…勝者こそが正義なのだ)


戦艦水鬼(敗者は勝者と同じことはできない。人間を頼れというのが奴らの正義。ならばそれに抗うことが私の正義だ)


戦艦水鬼(自我の無い深海棲艦や敵意のある深海棲艦をこの手で沈める。今の私の立場からすれば同胞殺しになるが些細なことだ、誰も私と関わらないんだからな)


『あの海域で群れを発見した』


『頭がおかしいヤツらを沈めた。そいつらが使っていた基地から物資を奪える!』


戦艦水鬼(…関わらないはずだったんだがな。いつからこうなったんだ?)


『目的も無く暴れ回っているヤツがいる。この近くまで来ているようだがお前はどうする?』


戦艦水鬼「……」スクッ


『決まりだな』


『主砲をぶっ放す瞬間ほど興奮するものは無い。行くぞ!』


『私には陸でチマチマした生き方はできない。これこそが私なんだ』


戦艦水鬼(陸に行く気の無い連中が集まるようになってしまったか。問題がありそうな奴もいるがその時は黙らせてやればいい)


戦艦水鬼(どうだ提督、これが私の正義だ。お前達では絶対にたどり着くことが出来なかった結果だぞ)


ーー

今日はここまでです

ーー病院


「順調に育っていますよ、安定期にも入ったので流産の心配もほぼ無くなりました」


龍驤「良かった……」


「このまま普段の生活にも注意を続けて下さい。その義足ならば歩いたりしても問題はありませんよ」


龍驤「これは大切な義足で高性能やからね…離されへんよ」


「この調子で頑張っていきましょうね」


龍驤「産むまでがウチの仕事やから絶対に無茶なことはせぇへんよ」

「入院はまだ先で大丈夫ですね?」


龍驤「まだ動けるし仕事もせなあかんから。それに近くに旦那がおるから安心やで」


「わかりました、体調が悪くなったりしたらすぐに連絡して下さいね」


龍驤「……よし。この子は順調に育ってる…ウチでも子どもは産めるんや」


龍驤「この子と司令官とウチで幸せな家族になる…なれるんや。待っててな司令官……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀


陽炎「司令、思った通り深海棲艦の子達は真面目に働いてるわ。ちゃんとした雇用条件を出してる企業の受けがいいみたいね」


陽炎「これはチャンスよ、スポンサーを募れば絶対に応募が来るわ。そうなれば安定した収入が得られるようになるわよ」


提督「俺は金儲けをしたいわけじゃ…」


陽炎「龍驤さんもこれから大事なときなんだから、安定した収益は大切でしょ」


提督「……」


陽炎「コンテナに企業のロゴを入れたり家電メーカーなら家電製品を使わせてもらったりとか、スポンサーが一つでも付けば楽になるのよ?」


提督「そうか……そうかもしれないな」


陽炎「慈善団体じゃないんだからお金を稼げるチャンスがあるなら逃さないのが当たり前じゃない!」

陽炎「認めてくれると思ってたから、スポンサーになってくれる企業にアポは取ってあるわ!」


提督「…いつだ」


陽炎「今からに決まってるでしょ!私も一緒に行くから急いで!」


提督「準備は…」


陽炎「もう終わってるわよ!泊まりになるからって言ったら龍驤さんと漣も手伝ってくれてすぐに終わったわ!」ドサッ


提督「……」


陽炎「荷物は持ったわね!すぐに出発するわよ!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

黒潮「……行ってらっしゃい」


提督「なにかあったのか?表情が暗いようだが…」


黒潮「そこの女に聞いてみ」


陽炎「大人数空ける訳にもいかないのでしょ?話し合って決めた結果じゃない」


黒潮「運が良かっただけやろ!司令はんと二人きりで出張……うちも行きたいに決まってるやんか!!」


陽炎「残念でした。留守は頼んだからね」


黒潮「ぎぃぃぃぃ~~!!」


提督「…早く行こう」

ーー


陽炎「どうだった司令?」


提督「あんなに前向きに考えてくれているとは思わなかった…」


陽炎「労働力が増えれば消費者も増える。win-winの関係を築きいていきたいとも言ってくれたわね」


提督「スポンサーの件は前向きに……いや、やってもらうしか選択肢は無い」


陽炎「この調子で頑張っていけばスポンサーも増えて収入も増える!」


提督「この仕事が商売として成り立つ日が来るのか…本当にそんなことが…」


陽炎(司令は自己評価が低いのよね。鎮守府に居た時は周りがフォローしてたからなんとかなってた。これからは私達がそれもやらないといけないのね)


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


陽炎「さっきの企業はどうだった?」


提督「すまない……化粧品のことはまるで分からないんだ」


陽炎「男の人だし仕方ないと思うわ。けどあの企業が深海棲艦を欲しがっているのはわかったでしょ?」


提督「それは伝わってきたな」


陽炎「深海棲艦を化粧品のモデルに採用したいっていうのはよくわかるわ。美人でスタイルも良くて肌も透き通るように白いのよ?」


提督「ふむ……」


陽炎「化粧品は映えるし会社のイメージも良くなる。使いたくない企業なんか居ないわよ」

陽炎「同じ理由でアパレル企業からも話が来てるわよ。肌が白くて美人なのって凄いことなんだから」


提督「それはいいがやりたがる深海棲艦はいるのか?」


陽炎「いるに決まってるでしょ!?化粧品が嫌いな女の子なんかこの世にいないわよ!」


提督「そういうものなのか…」


陽炎「こっちじゃ選べないからモデルは企業に選んでもらった方がいいわね。アパレルの方は体型があるからある程度はこっちで選ぶ必要があるわ」


提督「…分かった」


陽炎「とりあえず今日の分はこれで終わりだから、ホテルに行ってまとめましょう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーーホテル


提督「これで資料を全部だな」


陽炎「簡単にまとめるだけでも結構な量があったわね」


提督「今日だけでも門外漢な事は何度もあった…周りとの協力が大切だな」


陽炎「提督とは違って専門外のことが何度も出てくるわ。一人でやろうだなんて思っちゃダメよ!」


提督「その通りだな…特に陽炎には迷惑を掛けるかもしれないがこれからもよろしく頼む」


陽炎「……ふーん」

提督「どうしたんだ?」


陽炎「司令によろしくって言われるのは変な感じよね」


提督「俺はもう提督じゃない、威厳も何もないただの男だ」


陽炎「もう、ただの男に可愛い女の子がついていくわけないでしょ」


提督「……」


陽炎「失礼ね、可愛くないって言いたいの?」


提督「そんなことは言っていない、ただ…」


陽炎「ん」


提督「……」


陽炎「ふふふ、私からするキスは初めてだったわよね?黒潮と同じくらいに司令のことは好きなのよ!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー数ヶ月後


漣「龍驤さんのお腹も気が付けば大きくなりましたなぁ」


霞「そろそろ臨月ってところね。私の時とは違ってお腹が大きくなってもすぐには生まれないのよ」


漣「現代艦娘と人間の子との違いですな」


霞「入院はまだだけど龍驤さんには極力部屋で過ごしてもらってるわ」


漣「それがいいですな、準備が整ってからゆっくりと入院すればいいんです」


霞「私もそうだけど皆んなが龍驤さんを支えてるわね」

漣「ご主人様の仕事も順調なんですよね~」


霞「軌道に乗ってからは早かったわね。深海棲艦達も楽しそうに仕事をしているみたい」


漣「怪しい企業や変な団体からのオファーを全て断ったご主人様が偉いです。そのお陰で深海棲艦が損をすることなくちゃんと働けてるんです」


霞「放っておいたら働き続けるのはあの人の悪い癖だけど、そこは陽炎と黒潮がうまくやってるみたい」


漣「まさかあの二人がライバルになろうとはねぇ」


霞「私は気にしてないわよ、勝てるものなら勝ってみなさい」


漣「ヒューやりますねぇ」


霞「龍驤さんの予定日前後は休むように言ってあるからあとは龍驤さんよ」


漣「ですな…ちょっと様子を確認しがてら部屋に行ってみますか」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー龍驤の部屋


漣「それはなにをしてんですか?」


龍驤「お腹にケアクリーム塗ってるんよ」


霞「産んだあとのことがあるから大事なことなの」


漣「なるほどねぇ」


龍驤「ここまで来たらあたふたしてもしゃーないやろ?ウチにできることはこれくらいやからね」


漣「随分と落ち着いてますな…開き直ってないですか?」


龍驤「そんなことないよ、自然分娩やないと堕ろすとか言ってた頃とは違うで」


霞「予定通り帝王切開で産むのよね」


龍驤「形にはこだわれへんからこの子を産んであげたい。今はそれだけしか考えてないんよ」


漣「まあ今のところは信じてあげますよ」

龍驤「漣はそれでええんやで、ウチが変なこと考えてたらすぐに止めてな」


漣「止めるってもナイフで刺していったのは何処のどいつですか」


龍驤「…あの時はごめんな」


漣「謝って済むなら警察は要らないんですよ~~」


龍驤「…ウチはどれだけ罪を犯したんやろうな」


漣「浮気一回を罪とカウントするなら、とんでもない数になります」


龍驤「謝って許されるものもあればそうや無いものもある…」


漣「命をもって贖罪とすると言われたら?」


龍驤「この子だけは守りたい。何があってもこの子は産む。絶対に、何があってもや」


霞「漣には分からないでしょうね、お腹の中に赤ちゃんがいるって凄い感覚なのよ。自分の命なんかよりこの子だけは守りたいって感情が生まれるの」


龍驤「こんなんでも母親になれるんや……嬉しい限りやで」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

霞「龍驤さんが入院する時は、万全を期すために利根が診てくれるのよね」


漣「利根さんは産休明けですが思いっ切り頼らせてもらいますよ~」


龍驤「利根先生か…また妊娠したとか聞いたで」


漣「はあああっ!?」


霞「凄いわね。四人目?それとも五人目だったかしら」


龍驤「旦那さんは種馬とかのレベルと違うかもしれんね」


漣「いや、ちゃんと仕事してくれるならいいんですけど…」


龍驤「そこは問題ないよ、予定日の一週間前まで仕事しとったらしいから」


漣「一度妊娠したらまたしやすいとかあるんですかね…」


霞「そんな話は聞いたことないわ。利根の所が異常なだけよ」


龍驤「もう一人なんか今は考えられへん…とにかくこの子を無事に産むことしか頭に無いんや」


ーー

今日はここまでです

ーー


提督「すまない龍驤…」


龍驤「入院するだけやからまだ大丈夫やで。予定日はちゃんと休めるんやろ?」


提督「ああ…だがこの出張だけは俺が行かなければならないんだ」


龍驤「大事な時期なんやから分かってるよ」


提督「本当なら病院に一緒に行きたかったが……」


龍驤「仕事を優先せなあかん時もあるんや、提督のときやったら考えられへんかもな」


龍驤「司令官の仕事がうまくいっててウチは嬉しいんよ。せやから仕事を頑張ってきてな」

龍驤「……行ってしもたか」


龍驤「前の出張は陽炎やったから今日は黒潮を連れて行くんやろうな…」


龍驤「……楽しそうでええな…」


龍驤「この子のお陰で司令官の気持ちが分かってきたわ…」


龍驤「こんな辛いことを司令官は何回…何十回…何百回と経験してたんか……」


龍驤「浮気してたのは司令官には気付いて欲しくなかったなぁ……能天気な男であって欲しかったなぁ…」


龍驤「妊娠してから考えることが多くなったけど…ウチの罪を振り返る時間になってたな…」


龍驤「ウチは死んでもええから…この子だけは産ませてな……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

漣「ようやく龍驤さんも分かるようになりましたか」


龍驤「分かる……痛いくらいにわかるよ」


漣「でもその子を片親にしても良いようなネガティブ思考じゃダメですぜ」


龍驤「……そうやね」


漣「ご主人様も限界までスケジュールを詰めて早く帰れるようにしてます。反省するのはいいですが鬱るのはやめて下さい」


龍驤「迷惑かけるわけにはいかんからね…気を付けて反省しとくわ」


漣「いいから病院に行きますよ、準備はとっくに終わってんすから」

ーー病院


利根「あとは吾輩に任せておけばよい!」


漣「それはいいんすけどまた妊娠したってマ?」


利根「……」


漣「イキやすいと妊娠確率が高いって聞いたんですけど本当ですかね?」


利根「…龍驤は預かった、手術の予定日は変わらずじゃ」


漣「嫁へのアドバイスが欲しいんすよ、そろそろ種を仕込みたいんすけどね…」


龍驤「……」


龍驤「ここやっとゆっくりできる…一人でじっくり考え事もできそうや」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


利根「よいか絶対に言いふらすでないぞ」


漣「わかってますから早く教えて下さい」


利根「…体外から子宮をマッサージして活性化すると良いんじゃ」


漣「体外から…?」


利根「お主はどっちもあるんじゃろ。やってみせるからそこに寝てみるがよい」


漣「変なことしないで下さいよ~?」


利根「我慢するんじゃぞ」むにゅ


漣「……」


利根「こうやってじゃな…」むにゅむにゅ


漣「ん…ぉ……」


利根「コツは優しく触ることじゃ。自分で練習すればすぐに容量がわかるじゃろ」


漣「気持ちいいというよりぽーっと熱くなる感じですね」


利根「活性化が目的じゃからな」

利根「あとは旦那の方の食生活にも心身精力健康になる秘伝のコツがあるのじゃ」


漣「それも教えて下さい!」


利根「まずはありきたりじゃが精のつくものは大事じゃな」


漣「それはそうでしょうな」


利根「じゃがそれは健康な体があってこそ。体作りが大事なんじゃ」


漣「そのコツとはなんですか?」


利根「……これじゃ」ドンッ


漣「瓶…お酒?」


利根「薬用の酒じゃな。これを毎晩飲めば良い」


漣「これって市販品ですよね?それを飲むだけって…」


利根「飲んでみてから文句を言ってみることじゃな」


漣「分かりましたよ、言われた通りにやってみます~」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー横須賀鎮守府


菊月「おい」


菊月提督「自分の状態をわかっているか?」


漣「ごめんなさい……元気になり過ぎてスカートが…」


菊月「盛る暇があれば仕事をしろ」


漣「違うんです!興奮してるわけじゃなくて…菊月提督も男なら分かりますよねぇ!?」


菊月提督「原理は分かるがそれは異常だぞ」


漣「あの薬用のお酒が効きすぎたんです…」


菊月「処理をするかズボンを履いてこい」


漣「わかりましたぁ……」


菊月「……その薬用のを教えろ」ヒソヒソ


漣「…とっておきのマッサージも伝授しますぜ」

ーー某所


黒潮(深海棲艦と艦娘の社会進出に伴う婚姻の話についての有識者会議なぁ…)


黒潮(司令はんが元提督やからって呼ばれたみたいやけど、結構難しい話をしとる)


黒潮(艦娘や深海棲艦は女性だけやけど、人口比では大きな影響は無い。せやけど結婚適齢期で言えば男女比のバランスが崩れる)


黒潮(深海棲艦は基本同性としかくっつけへんけど、男と一緒におる個体もおる。でも子どもはできへんって言うてたな)


黒潮(正確に言えば人間と深海棲艦との間には子どもができへん…例外はあるらしいけど、ほぼ無理と思ってええ)


黒潮(結婚しても子どもが生まれんかったら人口は減る一方や。それやったら同性婚を認めつつ一夫多妻みたいな事も検討していきたい)


黒潮(なんというかまあ司令はんにピッタリやな。龍驤さんと霞以外にうちらまで手を出しとる司令はんやから呼ばれたんと違うか?)


黒潮(まあ迫ったのはうちらからやけど、拒否せぇへん司令はんも悪いわな)


黒潮(……今日の夜…楽しみやなぁ…)


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー夜、ホテル


提督「……」


黒潮「そんな考え込んでどないしたん?」


提督「俺は関係のある皆を愛せているだろうか……」


黒潮「……」


提督「あの会議を聞いていると俺は…」


黒潮「このあほ」ビシッ


提督「黒潮…」


黒潮「司令はんはできる限り最大限で、うちらの気持ちを受け止めてくれとるからそれで十分なんや」


黒潮「いつうちらが愛してくれなんか言うた?皆にはちゃんと伝わっとるから胸を張ってええんやで」

黒潮「司令はんとする度に道具みたいに扱われるとか、最低なことはせぇへん。ほんまやったらしてもええはずや」


黒潮「それだけでうちらは満足やし、気持ちを受け取ってもらってるなってよくわかんねん」


提督「本当か?」


黒潮「ほんまやて!しゃあないな…普段うちはこんなことせぇへんけど特別やで?」


黒潮「……」シュルッ


黒潮「見て司令はん……今日のために色々準備してきたんよ。好みの下着を穿いてちゃんと処理もしてきて…」


黒潮「嫌な相手にここまでせぇへんやろ?司令はんは自分の行動に自信持ってええんやで」


黒潮「明日は朝早く無いから……死ぬほど楽しませてな?」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー翌日、横須賀


提督「泊まり込みの準備する前に有識者会議の内容について話そうと思う」


黒潮「どんな内容やったかはその資料見てくれたら早いで~」ツヤツヤ


霞「……黒潮が高揚してるのには突っ込むべき?」


黒潮「突っ込まれたのはうちやけど」


霞「そんなくっっだらない冗談が言えるくらいには良かったのね」


黒潮「最高やったわ……」


霞「…黒潮は放っておいて私の意見を言わせてもらうわね」

霞「必然って感じの内容よね。深海棲艦と結婚しても子どもが生まれないなら一夫多妻は検討されるべき」


霞「それに…かすみが名実共にあなたの子と認められるようになるのは嬉しいわ」


黒潮「男の方は認知すれば養育費と引き換えに、籍に子どもが入る感じやね」


霞「お金で子どもを買うとか批判されそうだけどそれでいいと思うわ。甲斐性のない人間に一夫多妻は無理だもの」


黒潮「司令はん借金まみれやなかった?」


提督「もう返済は終わっている」


霞「黒潮たちの為に借金しようとしたお馬鹿が偉そうに言うんじゃないの」


黒潮「あれはほんまにアカンで司令はん…」


霞「あなたは子どもを二人持てるし私とは繋がりがある。二人にとって良いことしかないわ」


提督「そうだな…この路線のまま進んでくれるのが一番だ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー病院


利根「ほう、予定通りとは流石じゃな」


提督「皆の協力もあったお陰で間に合わせることができました」


利根「こっちの準備はもう完了しておる。あとは体調を見ながら予定日をズラすかどうかじゃな」


提督「龍驤はどうなんでしょうか?」


利根「…お主が確認すればよい」


提督「なにかあったんですか?」


利根「思う所があったんじゃろう。あとはお主の手にかかっておるからな」

ーー病室


龍驤「……ずっと一人で考えてたんよ」


龍驤「あの時の司令官はこんな気持ちやったんやろうなとか…なんであんなことしたんやろうなとか…」


龍驤「司令官のは理由があるからウチも認めてる…けどウチがやってたことはただの浮気や」


龍驤「司令官が嫌いとかやなくてただ単純に男と遊びたかった……最低やねウチ…」


龍驤「人間の子どもが生まれるまで十ヶ月ちょっと…日数にしたら100日くらいや」


龍驤「100日くらい……これは偶然やない…」


龍驤「ウチが浮気した回数と同じなんやで…神様はその罪をウチに分からせようとしてるんや…」


龍驤「この子を妊娠してから浮気してた頃を思い出すようになった…これは偶然やないよ…」


龍驤「司令官……こんなウチやけど…この子だけは無事に産むから…応援しててな…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

提督「確かに偶然じゃないかもしれない。でも龍驤と最後に関係を持ったのは俺だ」


提督「龍驤は浮気を何度もしたが最後に大事なものに気付けたじゃないか、それは成長したからだ」


提督「お腹の子も時間をかけて成長して大切な存在として生まれて来ようとしてるんだ」


提督「俺にとってなにより大切なのは家族だ。龍驤もお腹の子もどちらも揃って俺の家族になるんだ」


龍驤「……ありがとう…こんなウチを元気付けてくれるなんて…」


提督「生まれてくる子にそんな顔は見せられない。ちゃんと笑顔を見せてやろうな」


龍驤「…うん」

利根(様子が心配で盗み聞きをしてみたが大丈夫そうじゃな。とりあえずは合格点といったところかの)


利根(マタニティブルーを拗らせて別れた夫婦は多いから注意が必要じゃ。本心が出るとも言うしな)


利根(しかし……あの龍驤はマタニティブルーとはまた違ったものかもしれん)


龍驤(懺悔させるのにシスターを呼んできてもいいかもしれん。そんなことが考えられるくらいあやつはおかしい)


利根(百人と浮気をするなんぞ考えられん。まともな思考を持っておらん)


利根(子どもは産んでも別れるタイプになりそうじゃな…そうでなくとも上手くいくことは無いじゃろう)


利根(子は鎹というがそれでどこまで持つかじゃな。人間も艦娘もそう簡単に改心せんのは何度も見てきとる)


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー出術当日


提督「……」


提督「…………」


提督「………………」


提督「……………………」


ふぎゃぁ…


提督「…!」


提督「生まれた…のか……」


提督「俺と龍驤の子どもが……俺の…」

龍驤「……」


龍驤「手術……終わったんや…」


利根「元気な女の子じゃったぞ」


龍驤「どこにおるん……抱いてあげたい…」


利根「まだ麻酔が効いておる、無理はするな」


龍驤「いける……抱かせて…」


利根「そっとじゃからな。手伝ってやるから慎重にな」


龍驤「ウチの子ども……お母さんになれたんや…」


龍驤「良かった…良かったよぉ……」ポロポロ


利根「…お主はこれからじゃぞ」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督「麻酔も覚めたようだな」


龍驤「うん……ウチ頑張ったで…」


提督「よく頑張ってくれた…!ありがとう龍驤!」


龍驤「この子も…産まれてきてくれて良かった…」


提督「力は入るか?手伝わなくて大丈夫か?」


龍驤「いける……見て…ウチの腕の中にこんな小さい子が…こんな可愛い子が……」


提督「ああ、龍驤が頑張ってくれたからだ」


龍驤「愛しい…なんやのこの気持ちは……司令官への好きとは違う…心から湧いてくる…」


龍驤「ウチはどうなっても絶対幸せにしたるからな……安心するんやで…」


ーー

今日はここまでです

ーー横須賀


漣「退院おめっとさんです」


龍驤「そんなんええからウチの子見たってや」


「……」


漣「んぎゃ~可愛いですなぁ!」


龍驤「とてもウチの子とは思われへんくらい可愛いやろ?」


漣「失礼かもしれませんけど龍驤さんにはあんまり似てない…いや、口元がそうですかね?」


龍驤「司令官の怖い感じも無くて…ウチと司令官の良いところだけをとったみたいな感じやねん」


漣「言い得て妙ってやつかもしれません。かすみも可愛いかったですけど、この子も可愛いっすよ」

漣「で、仕事はどうなるんです?」


龍驤「とりあえず産休もらって…育児休暇がもらえるんやったら欲しいところやけど」


漣「多分無理ですよ、艦娘が出産することを考えられてませんからね」


龍驤「そうやんな…」


漣「解体はせずとも一旦鎮守府を辞めるとかできませんか?家庭に入るって理由だったら多分いけますよ」


龍驤「そうかなぁ…」


漣「バックアップならお任せ下さい。ご主人様と龍驤さんと…お子さんの為ですから!」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


龍驤「いやぁお祝いやなんやで皆からぎょーさん貰ってしまったわ」


霞「それだけ皆嬉しいと思ってるのよ」


龍驤「ウチのためにありがたいわ」


霞「先に言っておくけど一人で抱え込んだら絶対に駄目だから。私にはあの人の他に榛名お姉さまも居た」


霞「子育ては全部自分が…なんて思うかもしれないけど、それこそ子どもの為にならないから」


龍驤「他の人を頼れってことやね」


霞「そうよ、疲れたり大変な時は必ず周りを頼ること」


龍驤「霞はお母さんの先輩やし頼らせてもらうことが多いかもしれんね」


霞「私でよければいくらでも手伝ってあげる。手伝うには頼ってもらわないと無理なのよ?」


龍驤「そうやね…気を付けるわ」

龍驤「……ふぅ。少し疲れたから部屋に戻るわな」


霞「一人で大丈夫なの?」


龍驤「問題ないよ、部屋に戻るだけやから皆んなは仕事しとって」


霞「様子も見に行くから安心して寝てればいいわ」


龍驤「前と比べて体力が無くなってるみたいで…ちょっち休憩したらすぐに良くなるから」


霞「龍驤さんは体力が戻りにくいのかもしれないわね…本当に無理はしないで」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー龍驤の部屋


龍驤「ふぅ……思ったより体力が落ちとるな…」


「ふえぇぇ…」


龍驤「おっと……オッパイやなちょっち待っててな…っと」


「……」


龍驤「大人しく飲んでくれて助かるわ…」


「だぁ…」


龍驤「飲んだらすぐおねんねやね……ええ子やから大人しく寝てな…」


「……」


龍驤「……あ~…これは大変や…」

龍驤「病院やと看護師さんがおったけど、ここではそうはいかへん…皆んなを頼らせてもらわなあかんなぁ」


龍驤「それにこの子はまだ乳飲み子やからええけど、動き回るようになったら大変や……」


龍驤「体の調子おかしい日が増えてきてるし…自分のことで精一杯な日も出てくる…」


龍驤「想像以上に大変や……けどこの子はウチがちゃんと育てるんや」


「……」


龍驤「負けへんで……」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


「それは育休を取るべきですよ」


提督「そうですかね…」


「組織のトップであっても育休は当然の権利です。むしろトップが積極的に育休を取る組織は信用できます」


提督(ここでも賛成だと言われたか…霞が育休を取るべきと言っていたが俺は反対だった)


提督(設立した初年度にいきなり休むとなると、流石に周囲の理解が得られないと考えていた)


提督(しかしここでも言われたように、いくつかの企業に話をしてみたらどの企業も取るべきだと言ってきた)


提督(これは俺の認識を改める必要がありそうだな…)

ーー


漣『もしもし漣ですぞ~』


提督「今は大丈夫か?」


漣『暇してたんで大丈夫っす』


提督「そうか…実はな、子どもの面倒を見るために育休を取ろうかと思っているんだ」


漣『絶っっっ対に取って下さい。取る以外の選択肢はありません』


提督「漣もそう言うのか。ならやはり取った方がいいんだろうな」


漣『重要な判断はご主人様がすればいいんです、軌道に乗ってきたならトップは居なくても大丈夫ですよ』


提督「そうは言っても俺の分を減ったままにはできない。俺は代表でもあるが社員の一人だ」


漣『それならバイトを雇うとか色々あるじゃないですか』


提督「アルバイトよりもっといいものを思い付いたんだ」

提督「俺の人見知りはマシになったと言ってもまだ残っている。今から他人と友好な関係を気付くのは難しい」


提督「ならある程度知っていて能力の高い人材に頼めばいいんだが…」


漣『…Me?』


提督「イエス、というところだ」


漣『黒潮は十分仕事できると思いますけどねぇ』


提督「人手が足りないんだ」


漣『……どうしても漣がいいと?』


提督「漣しか考えられないと思っている」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

漣『嬉しい話なんですけど、漣も子づくり予定してんすよね…』


提督「難しいか……」


漣『 でもすぐにデキて出産とは行きませんから、それまでに人を増やすのはどうですかね?』


提督「なるほどな」


漣『常に100%で働かないといけない環境だと、欠員がこういう時にダメージになっちまいますから』


提督「その通りだな。人員を増やすことを前提として、漣に来て欲しい」


漣「断る理由はありません、これからも宜しくお願いします』

ーー


潜水新棲姫「向こうに行くことになったのか」


漣「どうするかを決め兼ねてたんでちょうど良かったですな」


潜水新棲姫「本当にそれでいいんだな?」


漣「今のところは」


潜水新棲姫「そんなものでいいのか」


漣「いいんですよ、ご主人様みたいにこれだ!っていうものが浮かんで無いんです」


漣「そんな時に声をかけてくれたら乗るしかないでしょうに。もちろんあんたの…」


潜水新棲姫「ワタシを理由にしないでくれ」


漣「……」


潜水新棲姫「漣がそれでいいなら何も言わない。ワタシを理由にしなければいけないなら考え直してくれ」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

漣「あんたを理由になんてしません!一緒に行きますよ!」


潜水新棲姫「……」


漣「仕事も家庭も両立してみせます!」


潜水新棲姫「そうか…ワタシを理由にしないならそれでいい。漣についていく」


漣「これであんたに子どもがデキるまでは、なんとかなりそうですね」


潜水新棲姫「新しい仕事を覚える必要が出てくる」


漣「そこは一緒にやりますぜ!頭の良さでいえば漣は負けてますからフォローお願いします!」


潜水新棲姫「漣のためならなんでもしてやる」

ーー龍驤の部屋


龍驤「育休取ってくれるんやね…」


提督「龍驤への負担を減らしたいんだ」


龍驤「正直……助かるわ。ほんまに最近体調というか調子悪くてな…」


提督「病院には行ったのか?」


龍驤「まだ……でも明日行こうとしてた所なんよ…」


提督「恐らく疲れが溜まっているんだろう。育児は俺と龍驤で一日交代でもいいかもしれない」


龍驤「できれば司令官と一緒にやりたい……」


提督「なら可能な限りはそうしよう」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー大本営


整備士「骨とか筋肉には異常は無さそうだけどなぁ」


吹雪「身体が怠かったりするんですよね?」


龍驤「そうやねん…」


整備士「突き放すわけじゃないけど僕には責任が無いよ。体には不具合も見当たらない」


龍驤「うん……」


吹雪「お医者さんはなんて言ってたんですか?」


龍驤「ホルモンのバランスが崩れてて…産後鬱やないかって…」


整備士「ふぅんなるほどね」

吹雪「これまでにも精神疾患はあったんですよね?」


龍驤「そうやねんけど…今までとは明らかに違うねん…体は怠いし、やりたくないことしかなくて…」


整備士「躁鬱と鬱は似てるようで違うらしいから、いつもと違うパターンだからって当てはめるのはどうかな」


吹雪「薬を飲んで療養しかありませんね…」


整備士「周りに原因があるんじゃなくて、ホルモンバランスが原因なのが難しいよね」


龍驤「とりあえず…体に異常が無いことが分かって良かったわ…」


吹雪「ご主人とよく話し合って下さいね」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


龍驤「ゆっくりするのがウチの仕事か……それもやりたくないわ…」


龍驤「司令官や霞と相談して…暫くは育児は軽くするって言うてたけど…」


龍驤「ウチがやらなあかんのに…司令官とウチの子やのに…」


龍驤「こんなことしてる暇あったら…」


コンコン


千歳「久しぶりね、調子はどう?」ガチャッ


龍驤「……」


千歳「軽くお話しでもしましょう。時間はゆっくり使っていいわよ」

ーー


提督「助かった千歳。龍驤の調子はかなり良くなってきている」


千歳「龍驤さんは気負い過ぎてたのよ、自分がやらなくちゃってかなり強く思ってたみたい」


提督「熱心にしていると…思ってしまった」


千歳「そう思いたくなるのは仕方ないわね」


提督「俺はまた龍驤を…」


千歳「こんなに早く良くなったのは提督のお陰よ、育休を取ってあげたのが大きかったわね」


千歳「おかしいと思ったら私や霞にすぐ相談するのよ?」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


龍驤「司令官を信頼してなかった訳やないけど、他の娘と関係を持つと辛くなってたんよ」


龍驤「それと頭では分かってても、心の奥では無意識に自分がやらなあかんと思ってたんやと思う…」


龍驤「でもな……司令官が休みを取って助けてくれたおかげで、安心することができたんよ」


提督「……すまなかった」


龍驤「謝らんでええよ、怒ってないしもう辛くも無いから。それにな、一夫多妻が始まったら望む娘は奥さんにしたらええと思ったんよ」


提督「それは……」


龍驤「責任取り。雲龍とかは興味無いやろうけど黒潮や陽炎は喜んで手挙げるで」


龍驤「子どもが欲しいって言い出したら話は別やけどな。要話し合い…やけど多分認められへんわ」

龍驤「これが一番ええと思うんよ。これやったらキミは誰かのところには行かへんし、皆が提督の元にいて暮らせるんや」


龍驤「 この子にも司令官がやってる事のいい訳をせんでも良くなるし、皆が家族で誰かに子どもができたとしても育児も分かち合える」


龍驤「それが司令官の子どもやったら……仕方ないけどウチも手伝うよ」


提督「そこまで…考えていたのか…」


龍驤「頭がおかしくなった思いつきやなくて、休んでる間なんで辛いのか考え続けて出したウチの真剣な答えや」


提督「……」


龍驤「ほんまやったら司令官は浮気するような人なんかや無い。たとえ皆からの感謝やって言われても断ってたはずや」


龍驤「せやけど今は何人とも……その理由も考えてた」


龍驤「ウチが浮気してたことへの当てつけか?」


提督「……そのことを…考えたこともあった」


龍驤「…………」


龍驤「この子の前で話すことやないね…一旦区切ろか」


下1 この後の展開やその他起こったことなど

「ふぎゃ……」


提督「おっと…おむつか?」


龍驤「おっぱいかな…」


提督「いやこれは…」


龍驤「…どっちもやね」


提督「おむつは任せてくれ」


龍驤「ほなウチは自分の準備するで~」


提督「……」


龍驤「…ウチら息ピッタリやね」


提督「そうだな」


龍驤「司令官にとってウチは一番?」


提督「当たり前だ」


龍驤「即答してくれるんやね」


提督「……一番好きだからな」


龍驤「ウチもやで」


提督「…ありがとう」


龍驤「ウチこそありがとうな」


ーー

次回、最終回

ーー


漣「この地域の鎮守府に深海棲艦が投降したと連絡がありました」


陽炎「私が行って確認してくるのね」


漣「嫁を連れて行って下さい、言葉が通じないようです」


潜水新棲姫「行ってくる」


黒潮「あの鎮守府で保護してた深海棲艦についてクレーム来てるで~」


漣「その内容は?」


黒潮「コンテナ壊したらしいわ。まだ力加減分かってないんやろうな」


漣「漣が出て解決しそうなら…よし行ってきます」


黒潮「司令はんは最後の手段にしたってな。うちらでよかったらいくらでも頭は下げるで」


漣「わかってますよ。それでは留守を頼みました」


漣「全く……ご主人様の代わりにと思ってましたけど、あの人働き過ぎですよ。二人分は働いてるんじゃないですか?」


漣「そのお陰でこっちは大忙しですぞ…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー某鎮守府


潜水新棲姫「深海棲艦の方はワタシに任せろ」


陽炎「なら私はこっち…これがあの子が持ってたっていう手紙ね」


『我々は独自に国家を作り、人類と対等な存在であることを世界に宣言する』


陽炎「これは……」


『我々は保護され人間社会に組み込まれる事を望んでいない。あくまで人類と対等である』


陽炎「人類に対して宣戦布告とかならまだ分かりやすかったけど…」


『人類に敵意しか無い同朋や自我の無い個体は我々が処理していく』


陽炎「……ダメね、私じゃ判断できないから幹部さんに相談だわ」

幹部『自分たちで国家を作るというのは難しいだろうね』


陽炎「でも下手に刺激すると逆効果よね」


幹部『いや…彼女達とは戦うしか無いのかもしれない』


陽炎「え……そんなどうしてよ?」


幹部『やろうとしていることがマズイ。我らの神を信仰しない人間は認めないとテロ行為を働く連中と同じだ』


陽炎「そうかもしれないけど……」


幹部『彼女らのいう悪意を持った同朋の定義も曖昧だ。虐殺を繰り返す国家と何も変わらない』


陽炎「せっかく大規模な戦いが終わったのに…」


幹部『君たちは自分の仕事をしていてくれ。あとはこちらの仕事だからね』


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー後日


幹部「どういうことだ… 彼女らの国としての体裁が出来上がっていっている…」


幹部「他の国もそれぞれ動き始めた。国としてパイプを持ちたいという思惑もあるのか…」


幹部「この国の政府も……その思惑を考えている」


幹部「私に交渉を可能にしてほしいと正式に頼まれるとは思わなかった。相手は軍事国家としか言えない状態であるのにも関わらずだ」


幹部「暴れるだけの集団がこれほど纏まるとは…一体どんな深海棲艦が統率しているんだ?」

深海綾波「ドンパチやらないならこっちの出番は無いな?」


幹部「いや護衛を頼むつもりだよ」


深海綾波「クソがぁ…!」


幹部「他の国と繋がりを持っているならこの国とだって持ちたいはずだ。交渉のチャンスはある」


深海綾波「まあでも護衛くらいならいいか…」ぶつぶつ


幹部「君には護衛以外にもやってもらうことがある。暇はさせないから安心したまえ」


深海綾波「たまには休ませろっての…」


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


戦艦水鬼『久しぶりだな、と言ってもこの姿ではわからないか?』


提督「…それを使っているということは長門か」


戦艦水鬼『夕張にまた同じものを作らせた』


提督「彼女に危害は加えていないな?」


戦艦水鬼『夕張と言ったがあれは深海棲艦、我らの仲間だ。然るべき対応を取った』


提督「……」


戦艦水鬼『私は私のやり方で平和を掴み取る。 お前では出来ない、やりたくないと思う方法だ』


提督「お前のやり方…これがそうなのか」


戦艦水鬼『私を軽蔑するか?できるはずないだろうな』


提督「そうだ…俺のやり方が絶対的とは考えていない」

提督「まだ折り合いがつかない部分はたくさんあるだろうが、これから先も交渉は続くんだろう?なら…」


戦艦水鬼『お前以外と交渉する気はない』


提督「なぜだ?」


戦艦水鬼『私が手に入れようとしている平和、正義をお前に認めさせる為だ』


戦艦水鬼『我々の集団は国として認められるだろう。私のやり方で国を作ったのだ』


戦艦水鬼『お前が勝ち取ったものは無い。時間が経てば消えていく泡沫でしかない』


戦艦水鬼『私の勝ちだ』


下2 この後の展開やその他起こったことなど

ーー


提督(長門…戦艦水鬼の作った国とこの国とのパイプは出来上がった)


提督(保護したが社会に馴染めず出戻りする深海棲艦を向こうは受け入れ、逆に人間社会に興味を持った深海棲艦が現れれば橋渡しをする)


提督(あいつの作った国は俺に足りないものを補うどころかそれ以上に価値のあるものだった)


提督(艦娘と深海棲艦の小競り合いが劇的に減った事が一番の変化だった。戦艦水鬼も艦娘を守っていた)


提督(俺は負けた…あれだけ苦労して考え抜いたものをあっという間に追い抜かれた)


提督(結局……なにも…残せないんだろう)

龍驤「司令官……?」


提督「…どうした?」


龍驤「なんか怖い顔して考え込んでたみたいやけど…大丈夫なん?」


提督「……ああ、問題ない」


龍驤「それやったらええんやけど…」


提督(…何も残せなくても構わない。俺が作り上げたものが壊れたとしてもそれは仕方ないことだ)


提督(俺には才能が無かった、それだけで済む。誰かに負けたとしてもそれだけじゃないか)


「ぱ……ぱ…」


提督(俺には家族がいる、これ以上の幸せは無い。あれもこれもと求めるのは俺には合わない)


提督(試合に負けて勝負に負けても構わない。俺には帰る場所があるんだからな)


下2 LAST

霞「なにを考え込んでるのよ」


かすみ「パパぁ~」


榛名「榛名たちにできることはありませんか?」


提督(周りには家族が、皆んながいる)


提督(俺の想いも…喜びも怒りも哀しみも楽しみも分かち合える。これ以上の幸せは無い)


提督(他人との勝負には負け続けたが、これがもし世界との勝負なら、俺は間違いなく……)


ーーーー

ーー数年後


「なに聴いてるの?」


「例の歌手の新曲」


「深海出身のだっけ?有名だよね~」


「昔は保護団体と国で別れてたらしいけど、今は国で統一されたよね」


「結婚とかマジどうすんのかと思ってたけどさ…」


「そういえば深海のって言えば…」


ざわざわざわざわ


龍驤「今日は楽しみやなぁ、我が娘の晴れ舞台なんやからなぁ」


「この歳でクラブの応援とか止めてよね…」


龍驤「何言うてんのよ言い出したのはパパなんやからな」


「超過保護……」


提督「……」


龍驤「お姉ちゃんが手かかれへんだから、どうしてもあんたは過保護になってまうんよ」


「現代艦娘なのは知ってるけど…っていうか物心ついた時から家に居なかったし」

龍驤「たまには家に帰ってくるけど、かすみも忙しいんよ」


「知ってる、嫌ってほど聞かされたから」


龍驤「霞がお姉ちゃんの代わりやったから寂しくもなかったやろ?」


「霞さんと榛名おばさんとシモシモは仲良ったしね」


龍驤「シモシモって…あの二人は一応先輩なんやからな?」


「小さい頃からずっと一緒だから先輩とは思えない」


龍驤「そうかもしれんけど…ウチからしたら朝霜らと同じ学校になるとは思わんかったわ」


「早霜はともかく朝霜は頭悪過ぎだもん」


龍驤「あんたは人のこと言えんのか?」


「聞ーこーえーまーせーん」


龍驤「ほんまに…ちゃんと勉強しぃや」

提督「……」


「あーあ、シモシモを話題に出したからお父さんは黙っちゃった」


龍驤「はぁ……あんたが成人するまで黙ってるつもりやったんやで?」


「クキさんが口を滑らせなくても雲龍さんから聞いてたよ」


龍驤「なんやて!?」


「神通とかいうサキュバスも…」


龍驤「年頃の娘がその言葉はあかん!!」


「なら年頃の娘がいる家で昼間から盛らないで」


龍驤「……それはごめん」


「あたしはお母さんに似なくて良かったよ。スレンダーで背が高かったら安心だしね」


提督「…間違っても娘にそんな感情は抱かない」


「黙れロリコン」


提督「……」


龍驤「お父さんにその言い方はないやろ?」


「はーい反省してまーす」

龍驤「ふう…しかしまだ電車は来ぇへんのか?」


「遅れてるっぽいね…うわ、ぽいとか言ったらアレがうつる」


龍驤「ええ加減にしときよ…ほんまその口の悪さは誰に似たんや」


ドンッ


提督「おっとと……」


「深海の子どもだ」


龍驤「艦娘も深海棲艦も普通に街で見るようになったなぁ」


「お父さんのお陰なんでしょ」


龍驤「そうやお父さんは凄いことをやったんやからな」


「それも何度も聞いた…飽きるくらい聞いた」


龍驤「何度でも言うたるで!ウチのパパは凄い人なんや!」


「もういいって……」

カンカンカンカン…


龍驤「あ、やっと来たみたいやな」


「ギリギリ座れるかな…」


提督「時間は大丈夫か?」


「余裕もって出てきてるでしょ」


提督「…そうだったな」


タタタタッ


「あ、さっきの深海の子ども…」


タタタタッ


提督「優先座席が空いてればいいが…」


龍驤「立ったままでもええよ、ウチ…」


タタタタッ


グラッ


「あっ!!」


龍驤「え?」


提督「…!」


「たぁぁぁぁぁーーーっ!!」

キキキィィィィ…!


「なんだどうした!?」


「子どもが電車の前に落ちた!」


「それを助けようと女子高生が……」


龍驤「あ……!!」


提督「……」


「……ふぃぃ…間に合った…」


「え…ぇ…?」


グチャッ


「あっぶな……カバンぐちゃぐちゃになってるし。思ったよりギリギリだった…」


「なにが…あったの…?」


「こら!ホームで遊んじゃダメでしょ!」


「ひっ…ごめんなさい……」


「わかればよし!」

「お姉ちゃんは艦娘なの…?」


「ん、これ?これは違うよ、人間が使える艤装。聞いたことない?」


「かんむすのプロのやつ?」


「そうそう!お姉ちゃんはこれを使って弓道をしてるの」


「…あ!壊れてる!」


「うっそぉ!?……うわほんとだ…今から試合なのに……」


「わたしのせいでごめんなさい…」


「あーうん仕方ないよ。試合はまたあるけど命は一つしか無いし」


「でも…」


「大丈夫ですかーー!」


「駅員さんが来たね、ちょっと怒られるかもしれないけど仕方ないよ」


「うん…」


「じゃあお姉ちゃんは行くね」


「あ……待ってお姉ちゃん!」


「んー?」


「お名前聞かせて!お姉ちゃんの試合見に行きたい!」


「あたしの?へたっぴだから見ても面白くないよ」


「命のおんじんだから見にいきたい!」


「ま、観客が増えても損しないか…いいよ、あたしの名前はね…」


ーーーー

色々と言いたいことはありますが長くなるのでここまでです


ありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 19:36:23   ID: S:RsFbAB

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2 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 03:55:10   ID: S:Yu_sph

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