【アークナイツ】ドクター「執務室に戻ってきたらでかいダンボールが置いてあった」 (63)

艦内放送『ピンポンパンポーン。ロドス艦内放送部が、13時をお伝えします。現在の天候は晴天。本日いっぱい続く見込みです。気温は現在11℃。視界は14kmとなっています。なお、本日は』

艦内放送『はいはーい、ロドスのみんなー!今日も元気ー?カシャだよー!』

艦内内放送『ちょっとカシャさん、今はマジメに館内放送をしていてですね』

艦内放送『ごめん、ちょっと宣伝するだけだから!すぐ終わるから!というわけでみんな!今日は21時からチャンネルで生放送をするから、絶対見に来てねー!21時だよ!よろしくー!それじゃ、お邪魔しましたー!ごめんね、ありがと!ばいばーい!』

艦内放送『…はい、今度は事前に打ち合わせをお願いしますね、もう…。それでは気を取り直して…本日は———』

ドクター(カシャ、大丈夫か?艦内放送の割り込みとか、ケルシーが後で怒りそうだけど…)トコトコ

ドクター(まあ人の心配してる場合じゃないな。急な現場指揮やら提携企業との挨拶だのに駆り出されて、みんなと戻ってきたのがさっき。終わってない仕事が山積みだし。今日中に終わらせないとまずいのもある…)トコ

ガチャッ

ドクター「そうは言っても、疲れたもんは疲れた…!?」

ダンボール箱「…」

ドクター(執務室のど真ん中に…でかいダンボール箱が置いてある…)

ドクター(ぱっと見でも三辺すべてが1m強はある…でかい…)

ドクター(『フェリーンもダメにするクッション』でも買ったんだったっけ…?いや、あれは購買部の予約が即完売して買えなかったし…じゃあこれはいったい…)

ダンボール箱「…」ゴソッ

ドクター「!?」ビクッ



注意書き
・アークナイツSSです
・キャラ崩壊注意!解釈違いなどあれば、お口に合わなかったということでご容赦ください
・アンジェリーナとドクターがデレデレしてるSSの予定です
・公式OSTの「Beginning Autumn」はいいぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1610339941


ドクター(…えー動いたよー?)

ドクター(じゃあ中身は生き物?バニラがオリジムシの面倒を見て欲しくて送ってきたとか…?)

ドクター(それにしては事前の連絡が何も無かったことに違和感がある。今はどこかに遠征しているというわけでもないし…)

ドクター(…確認してみるしかないか?さすがにロドス内部で超危険生物がパッケージングされて送られてくることはないはず…と信じたいが)

ドクター(一応、用心はしておくか…)

ドクター「シラユキ」

シラユキ「御前に」シュタッ

ドクター「この荷物を持ってきたのが誰か、分かるか?」

シラユキ「御意。ペンギン急便のクロワッサン」

ドクター「クロワッサンが?」

ドクター(クロワッサンなら、少しは安心できるか…?)

ドクター「クロワッサンに、何か普段と違う様子はあったか?」

シラユキ「笑顔が隠し切れない様子であった」

ドクター「…」


ドクター(逆に怪しくなってきた…)

ドクター(でもまあ、命に関わるような内容ではなさそうだな。最悪手の込んだいたずらなら、俺が驚いたりするだけで済むし…)

ドクター「シラユキ、今からこの箱を開けるから、もし何かあったら助けてくれ」

シラユキ「御意」

ドクター(…一応、中身を傷つけないよう手で開けるか)

ビリッ、ベリベリベリッ

ドクター(…ままよ!)

ガバッ

アンジェリーナ「チャ、チャオ~、ドクター。シラクーザからのトランスポーター、安心院アンジェリーナだよ~、…なんちゃって///」ヒラヒラ

ドクター「…」チラッ

シラユキ「…」チラッ

ドクター「クロワッサンに送り返すのはもったいないから、うちで引き取るか」

シラユキ「御意」コクッ

アンジェリーナ「え?あ、うれし…じゃなくてっ!は、恥ずかしい…///」カオカクシ


ドクター「まあまあ、アンジェリーナ、とりあえず立てるか?ほら、手を」スッ

アンジェリーナ「うぅ…あ、ありがとう…///」ハシッ

ドクター「よいしょー、っと。そしたら…お茶でも淹れるか。とりあえずそっちのソファに座ってくれ。シラユキも」

アンジェリーナ「え、え?そんな、お仕事があるんじゃ」

シラユキ「感謝する」ストン

ドクター「まあお茶でも飲みながら、まずはゆっくり今回のサプライズの話を聞こうじゃないか。仕事はそれからでも遅くない。ほら、シラユキの隣に座った座った」

アンジェリーナ「う、うぅー、失礼、します…///」スッ

ドクター「よしよし…」コトコト(正直箱に入ってたアンジェリーナもしおらしいアンジェリーナもめっちゃ可愛いかったな…。疲れた脳みそに染み渡っていくー)

シラユキ「…」(緑茶か)

アンジェリーナ「…///」(は、はずかしー!///なんかとんでもないことを口走っちゃった気もするし!もうクロワッサンめー!)

???「」ブイーン


アンジェリーナ「シラユキさんも、ごめんね、迷惑かけちゃって…」

シラユキ「障りなし」スッ

アンジェリーナ「大丈夫ってことかな…?…ありがとう。この、丸くてかわいいのは?」

シラユキ「極東の菓子なり。召し上がられよ」

アンジェリーナ「へー!ありがとう!シラユキさん!それじゃ、あたしも…はい、はちみつクッキー!ラヴァさんとヴァルカンさんがキッチンで作ってたから、私も混ぜてもらったの」

シラユキ「頂こう」

アンジェリーナ「どうぞ、召し上がれ!あたしも頂くね。…この丸いの、名前はなんていうの?」

シラユキ「大福なり」

アンジェリーナ「ダイフク、ダイフクっていうんだ。お母さんなら知ってるかな…」


ドクター「ほら、今日は緑茶を淹れたぞ。ご賞味あれ」コトッ

アンジェリーナ「ありがとうドクター!炎国でもよく見るけど、極東でもそうなんだよね?」

シラユキ「製法に違いはあれど、同様に親しまれている」

アンジェリーナ「それじゃあダイフクはきっと、相性バッチリだね!」

ドクター「んー?もうすっかり落ち着いたみたいだな。わざわざお茶を用意することなかったか?」

アンジェリーナ「そんなことないよ!ドクターとシラユキさんがこうして用意してくれたからなんだか落ち着いて…」

ドクター「そうか、なら良かった。…お、もうお茶請けまで出てるじゃないか。これは?」

アンジェリーナ「あ、それはあたしがラヴァさんとヴァルカンさんと作ったの…お口と、お茶に合えばいいんだけど」

ドクター「アンジェリーナも合わせて安心できるメンツだ。多分大丈夫だろう。ありがたく頂く。こっちは?」

シラユキ「大福なり」


ドクター「ほう、これが噂のダイフクか…白くて丸くてかわいいな」

アンジェリーナ「知ってるの?」

ドクター「あぁ、まあ聞いた話だけど、中にはアンコという甘い中身が入っていて、時にはイチゴを入れたものもあるとか…」

アンジェリーナ「へ~!それもおいしそう!」

シラユキ「甘露なり」

ドクター「シラユキが言うなら相当だろうな。そのうち食べてみたいもんだ」

シラユキ「善処する」

ドクター「助かる。そしたらまたアンジェリーナも呼んでお茶会だな」

アンジェリーナ「いいの?」

ドクター「もちろん」

シラユキ「相違なし」

アンジェリーナ「ありがとう!あたしもキッチンのみんなに、またお菓子の作り方を聞いておくね!」


ドクター「もう次の楽しみができちゃったな。まあとりあえず今のお茶会も楽しもうか。実はもう甘いものが待ち切れん」

アンジェリーナ「ふふっ、そうだね。じゃあいただきます!」

シラユキ「いただきます」

ドクター「いただきます」

ドクター「お、アンジェリーナ、このクッキーおいしいぞ、お茶にも合う」ズズズ

アンジェリーナ「ありがとう!シラユキさんも、このダイフクすごいおいしい!緑茶と相性抜群だね!アンコの甘さ、好きかも!」モグモグ

シラユキ「何より。御身、滋味深き味わい、結構なお点前で」ズズズ

ドクター「お、褒められたな?良かった良かった」

アンジェリーナ「ドクターはお茶も上手に淹れられるんだ…。すごいね」

ドクター「まあ自分で淹れることも結構あるしな…。さて、それで、アンジェリーナはどうしてダンボール箱に入ってたのかを聞いてみようじゃないか」

アンジェリーナ「あ、うん、そうだよね…。えっと、ついさっきの話なんだけど」


—ついさっき—


アンジェリーナ(ドクター、まだ帰ってこないのかなぁ…。今日はあたしが秘書当番の日だけど、一人でできることは少ししかなかったし、ドクターが居ないと捗らないなぁ…)

アンジェリーナ(急に出て行っちゃったみたいだし、きっと疲れて帰ってくるんだろうなぁ。ラヴァさんとヴァルカンさんに手伝ってもらってクッキーを作ってみたけど、ほかにも何かできること、ないかな)

アンジェリーナ(それに今日はせっかくだし、早めにお仕事終わらせて、夜は一緒に…)

クロワッサン「アーンジェリーナはん!こんな吹きさらしの甲板でどないしたん?風邪ひいてまうで~」ポンッ

アンジェリーナ「わわっ!ク、クロワッサン!?どうしてここに!?」ビクッ

クロワッサン「どうしてもなんも、エクシアはんとカシャはんが新しいドローン用意したゆうんで、テストフライトしに来たってわけや。ま、たまたま通りがかってついてきただけなんやけど。ほら、向こうにおるやろ?」

エクシア・カシャ「「元気出せアンジェリーナー!」」ブンブン

アンジェリーナ「ホントだ…。あたし、そんな落ち込んだ顔してた?」

クロワッサン「2人が気ぃ使うくらいには物憂げやったで。ウチらに気付かんぐらいやったしな」

アンジェリーナ「確かに…。ごめーん!大丈夫だからー!」ブンブン

エクシア・カシャ「「」」グッ


クロワッサン「ほんで、ホンマに大丈夫なん?ウチで良ければ話してみーや?」

アンジェリーナ「え、いや、ホントに大したことじゃないんだけど…。ドクター、急なお仕事で出て行っちゃって、執務室にはまだ残っているお仕事がいっぱいで、きっと疲れて帰ってくるだろうし、あたしにできることなんてそんなにないけど、何か力になれないかなぁ、って…。そ、それだけ、ホントに大したことじゃなくて!」

クロワッサン「ほうほう、なるほど、アンジェリーナはんはホンマに旦那さんが大好きなんやねー」

アンジェリーナ「え!?い、いや、好きとかじゃなくて、単純に大変だなって!それだけっ!それだけだからっ!!///」ワタワタ

クロワッサン「うんうん、そうやね、分かるで。旦那さんいろんなお仕事抱え込んでていつも疲れた顔しとるもんな」

アンジェリーナ「で、でしょっ!勘違いは良くないよクロワッサン!」

クロワッサン「うん、よーく分かったで。そんなアンジェリーナはんのために、ウチが一肌脱いだろうやないか」

アンジェリーナ「え、何かいいアイディアがあるの?」

クロワッサン「モチのロンやで。ウチに任せとき!」

アンジェリーナ「一応、どんな考えか聞いてもいい?」

クロワッサン「名付けて、『プレゼントはあ・た・し♡大作戦』や!!!」

アンジェリーナ「え、えぇ!?」


クロワッサン「作戦はこうや。ウチの部屋にちょーど!アンジェリーナはんが入りそうなダンボールがあるから、そこに入ってもらってウチが運んでおいて、帰ってきて中を見た旦那さんが大喜び、仕事も捗る!っちゅー寸法や!」

アンジェリーナ「え、え、そんな、プレゼントはあたしだなんてそんな、恥ずかしいよ!ムリムリムリッ、ムリだよっ!///」

クロワッサン「いやいや、アンジェリーナはん、それがこのクロワッサン調べ、実は世の多くの男性はかわいい女の子がある日突然自分の元に送られてこないかと夢見ているらしゅーてな、需要は間違いなくあるで!」

アンジェリーナ「か、かわっ…!///…そんなこと言って、担がれないんだからねっ!クロワッサン調べも微妙に眉唾っぽいし!それにドクターが喜んでくれるかは分からないと思うっ!」

クロワッサン「いやいや、アンジェリーナはん、あれで旦那さんも男なわけやし、きっと喜んでくれると思うんやけどな~?」

アンジェリーナ「うぅん、そ、そうかな…?喜んでくれるかな…?いや、いやいやっ!でもでもさすがにプレゼントはあたしは恥ずかしすぎるし…!///」

クロワッサン「ほらほら、今なら裸にリボンを巻くところまでサービスしたるで?」

アンジェリーナ「い、いらないよそんなサービスっ!///」

クロワッサン「うーん、ナイスアイディアかと思ったんやけどなぁ…」

アンジェリーナ「どっちかというと、クロワッサンがその様子を見て楽しみたいだけでしょ…?」

クロワッサン「まあ、それも半分ぐらいやな」

アンジェリーナ「もう…」

クロワッサン「でも、アンジェリーナはんが乗り気やない、っちゅーんやったらしゃーない、ウチが入ってくるかな」


アンジェリーナ「…え?えええ!?ちょ、ちょっと待って」

クロワッサン「ウチも旦那さんが辛い思いしとるのは、よー分かっとんねん。ウチじゃ需要は満たせへんかもしれんけど、少しでも力になれるならやろうかと思うねんな。それに一肌脱ぐって言ったばっかりやし?」

アンジェリーナ「一肌脱ぐってそういう!?そ、それにクロワッサンは十分かわいい女の子だから需要は満たしてると思うし、いやむしろ満たしてるからこそダメっていうか…」ゴニョゴニョ

クロワッサン「んー?どないしたんやアンジェリーナはん?ウチそろそろダンボール箱に入りに行こっかなー?」

アンジェリーナ「う、うぅ…!待って、ちょっと待って…!」

クロワッサン「ええでー、旦那さんが戻ってくるまでは待つでー?」ニッコニコ


―少し離れたロドス号甲板上―


カシャ「向こうはなんだか賑やかそうにしてるねー。気になるー」カチャカチャ

エクシア「うっわー、クロワッサンめっちゃいい笑顔してるなー。あれは悪いこと考えてる時の顔だなー」

カシャ「余計気になってきた…!よし、これでこっちの端末とつながった。…映像も、問題なさそう!エクシア、飛ばしてみて」

エクシア「ラジャ!ゴー、ペンギン号!」

撮影用ドローンことペンギン号「」ブイーン

カシャ「あっ、ちょっと勝手に名前付けないでよー!全く…。うん、映像は問題なし、っと。あとは高感度暗視機能がどの程度のものかだけど、あとでどこに飛ばしてみるか、もうぶっつけかな…。レンズはあとで変えるとして、一応動作は確認しておくかな。あとは…?」

エクシア「カシャ、このドローン中々動かしやすいね!風の中でもバランスとりやすいし!カメラの方はどんな感じ?ちゃんとアンジェリーナとクロワッサンは映ってる?あたしにも見せてよー!」

カシャ「いいけど、水平線の方にドローンを向けてもらってもいい?」

エクシア「ラジャ!」

ペンギン号「」ブイーン

カシャ「…これ、この車両は」

エクシア「あ、リーダーたちっぽいねーこれ」


―ロドス号甲板上、アンジェリーナとクロワッサン―


アンジェリーナ「う、うぅ…いやでも、さすがにやっぱり恥ずかしいし…でもクロワッサンが入っちゃってドクターがそれを開けちゃったら…」

クロワッサン「うふふー、どないするー?ウチはどっちでもええでー?」ニッコニコ

アンジェリーナ「で、でもでもでも…」

エクシア「おーいクロワッサーン!アンジェリーナー!リーダーたちが戻ってきたみたいだよー!」

アンジェリーナ「え゛っ!?」バッ

クロワッサン「おー?あ、あの米粒かいな?あのドローン、よっぽど優秀みたいやなぁ」

アンジェリーナ「えっ、でもでも、どうしよう、もう戻ってきちゃう!?」ワタワタ

クロワッサン「アンジェリーナはん、今が決断の時や!リボンはもう時間がないから諦めるけど、入るか、入らんか、どっちや!」

アンジェリーナ「う、うぅ~!…は、入る!あたしが入る!」

クロワッサン「よっしゃその言葉が聞きたかったんや!ほなエクシアはん、カシャはん、また後でな~!」

エクシア・カシャ「「ファイトー!」」フリフリ

クロワッサン「急ぐでアンジェリーナはん!ダッシュや!抱っこするで!」

アンジェリーナ「え?わひゃっ、ちょ、ちょっとクロワッサンってばー!」


―今―


アンジェリーナ「…という感じで」(ドクターのことが…その…モニョモニョな辺りとか、だいぶ省いたけど、問題ないよね…?)

シラユキ「良い茶請けであった」ズズズ

ドクター「まあ、方法はアレにしろ、アンジェリーナの手伝ってくれるっていう気持ちは嬉しいよ。ありがとな」

アンジェリーナ「うん…///」(やっぱり方法はアレだったんだ…)

ドクター「それに、クロワッサンを肯定するわけじゃないけど、まあ、俺も、嬉しかった…よ///」

アンジェリーナ「え…?あ、その、それなら、良かった…///」

シラユキ「甘露なり」ズズズ

シラユキ「…御身、窓を」

ドクター「どうした?ってあー、なるほど」

アンジェリーナ「え?あ、ドローン…?!」

ペンギン号「」ブイーン


―ロドス号甲板―


クロワッサン「いやー、あのクッション買っといてホンマ正解やったわ。まさか梱包箱の方がこんなに活躍するとは思っとらんかったけど」

エクシア「あー、あの『フェリーンもダメにするクッション』?あたしも欲しかったんだけど買えなかったんだよねー。さすがクロワッサン」

クロワッサン「絶対人気やおもてん、前日からスタンバってたわ」

カシャ「すごいね!あたしも買えたらリポート動画撮れたのになー。ホントにあのデカいフェリーンたちがダメになるのか検証したかった…」

エクシア「あぁ、そういう使い道ね」

カシャ「しかしそろそろ冷えてきたんだけど…風もあるし…」

エクシア「あたしも温かい部屋の中でお茶したいなー。いいなー」

クロワッサン「でも気になるやろ?」

エクシア・カシャ「「うん」」


クロワッサン「うんうん、それでこそ話を持ち掛けた甲斐があったってもんやで…って、あっかーん、見つかってもうたでペンギン丸」

カシャ「ペンギン号じゃないの?…もしかして、やばい?」

エクシア「まあここらが引き際だね。カシャ3号も引き揚げよっか」カチャカチャ

カシャ「今ドローンの名前からペンギンを消そうとしたよね?もうペンギン号で行くからね?見つかったら一蓮托生だからね?」

クロワッサン「まあもうウチらなのはばれとるやろうけど、しゃーない。とりあえず…逃げてみよか」ニコッ

エクシア「あたし温かい場所がいいー!」カチャカチャ

カシャ「あたしもー!…あと、あたしの部屋によってもいい?」

エクシア「ホッカイロでもあるの?」カチャカチャ

カシャ「まあ、それもあるんだけど、レンズとか取っていきたいんだ」

エクシア「暖を取れるなら構わないよー!」カチャカチャ

クロワッサン「今晩の生放送の話やろか?そんな余裕があるかはわからへんで?」

カシャ「まあまあ、本番はまだまだこの後ってことだよ!カシャのチャンネルをー、よろしく!」

ペンギン号「」ブイーン


―ドクターの執務室―


アンジェリーナ「カシャが新しいドローンを買ったって言ってたから、たぶん…」

ドクター「あいつら…」

シラユキ「御身」

ドクター「まあ、ドローンは一旦逃がしてやろう。新しいドローンを落とされちゃ、カシャも不憫ではあるしな」

ドクター「それはそれとして、主犯おそらく3名の身柄は取り押さえてもらおうかな。動画をどう使うつもりかは気になるし。シラユキ、適当なオペレーターに声をかけてもいい。ドローンを追いかけてくれ。頼んだ」

シラユキ「御意」シュバッ

アンジェリーナ「…あの、」

ドクター「アンジェリーナは悪くないから、謝らなくていい。向こうはシラユキに任せて、こっちは当初の予定通りに仕事をしよう。手伝ってくれるか?」

アンジェリーナ「…うん、もちろん!今日はあたしが秘書だもん」

ドクター「任せた」

アンジェリーナ「任されました!」ニコッ

ドクター(…こりゃー、頑張れちゃうな。もう疲れなんて吹っ飛んじゃったし)

ドクター「それじゃ、まずはこの仕事からいこうか」


―数時間後—


ドクター「もうムリ…」グタッ

アンジェリーナ「ドクター、頑張って!もう決済の書類はなくなったし、各部署への書類も配達してきたし、もうちょっとだよ!」

ドクター「うん、紙はもうない…やりきった…。最後は、この仕事をしようか…」

アンジェリーナ「ロドス艦内視察事前調査?」

ドクター「あぁ、提携企業の一つがロドスの現状視察に来るから、不備がないように視察ルートを点検しておいてくれ、ってやつだな。ケルシーとアーミヤと俺で3分割してるんだ」

アンジェリーナ「書類仕事で疲れた後だし、軽くウォーキングも兼ねてリフレッシュにはちょうど良さそうだね!どこを見に行くの?」

ドクター「俺の担当は…加工所、事務室、訓練室だな」

アンジェリーナ「よし、じゃあ早速行こう!」

ドクター「そうだな。まずは加工所に向かおう」


―加工所道中―


ドクター「なあアンジェリーナ」

アンジェリーナ「どうしたのドクター?」

ドクター「なんだか少し騒がしくないか?」

アンジェリーナ「あ、うん、それなんだけど…」

ドーベルマン「あぁ、ドクター、アンジェリーナ。クロワッサン達を追い詰めに来てくれたのか」

ドクター「え?クロワッサン達を?シラユキに追いかけるよう頼んではいるが…」

ドーベルマン「うむ、そのことはシラユキから聞いた。そのあとは連絡を取っていないのか?」

ドクター「あぁ、書類仕事が終わらなくてな…。どうも、状況は俺の知っている事態より数段進んでる気がする。なぜドーベルマン教官が彼女たちを追っているか、聞かせてくれないか?」

ドーベルマン「ふむ…。それなら話すが、クロワッサン達が訓練室から物資を略奪していってな。ほかでもあちこちやらかしながら移動しているらしい」

ドクター「え、マジ?」

アンジェリーナ「あたしもなんだかすごい逃げてるらしいっていうのは聞いてたんだけど、訓練室の話までは…」

ドーベルマン「マジだ。おかげで訓練メニューも中断だ…。規律破りには罰をということで、訓練中だった行動予備隊A4も狩り出して行方を追っている。まあかえってこれもいい訓練になるかもしれないな」

ドクター「A4はまとまって動いてる?」

ドーベルマン「あぁ、さすがにあの4人相手ではまとまらないと分が悪い」

ドクター「ん?4人?」

ドーベルマン「クロワッサン、エクシア、カシャと、…フランカだ」


―ドーベルマンの話、訓練室B305―


ドガァッ

クロワッサン「開いたで!」

エクシア「雪崩込めー!」

カシャ「お邪魔しまーす!」

ドーベルマン「おい、お前達、今はこちらで訓練を行っているから邪魔はしないよう…!」

クロワッサン「ホンマすいまへん、すぐ出ていきますんで!」

エクシア「クロワッサン!盾と鈍器あったよ!」

クロワッサン「オッケー!すぐ行くわ!」

カシャ「弾はこれぐらいあればいい?」

ドーベルマン「…お前達、まさかと思うが」

カシャ「借りていきます!」

ドーベルマン「ちゃんと申請して許可を取っているのか?」

クロワッサン「おおきに!」

ドーベルマン「返事になっていないぞ…」ピシッ


フランカ「あら、どうしたのドーベルマン」

ドーベルマン「こいつら、許可も取らずに備品を持っていくつもりらしい。見過ごせないな」

フランカ「ふーん?メランサ、剣術の訓練はちょっとストップね」ピタッ

メランサ「は、はい…」ハァハァ

フランカ「どういう事情なの?」

エクシア「うーん、こそこそいたずらしてたらばれて追っかけられてる、って感じかなー?」

カシャ「そろそろシラユキ達が来るよ!」

クロワッサン「あかんなぁ、まごついてられへんなぁ」ジリ…

ドーベルマン「ふむ、どうやらこちらには援軍が来るらしいな。それまでは私達と遊んでいてもらおうか」

フランカ「ふーん、…それなら、私はそっち側につこうかな♪」

ドーベルマン「なに?」


フランカ「それっ」ブンッ

ドーベルマン「くっ、…ギリギリだったぞ」タッ

カシャ「え?なになに?」

フランカ「そっちの方が面白そうだから、味方するわ」

クロワッサン「ホンマか!?助かるわ!」

エクシア「こっち!ゴー!弾幕張るよ!」ズダダダダッ

フランカ「メランサー!」

メランサ「は、はい!」

フランカ「頑張ってねー!」

メランサ「は、はい!?し、師匠ー!?」

ドーベルマン「…訓練用とは言え、こうも弾幕を張られると身動きが取れん。メランサも物陰に!」

メランサ「わ、分かりました!」スッ


グラニ「あ、いたよっ!」バンッ

バグパイプ「反対側の出口から出ようとしてるべ!」

シラユキ「承知した」ブンッ

フランカ「あっ、やばいの飛んできてるわよ」

シラユキ「刃は潰してある」

クロワッサン「ゆーてもな!任せとき!訓練用でも、盾は盾や!」ガッキーン

カシャ「みんなどいてー!当てる気はないけど当たると痛いよー!」パシャパシャパシャ

フランカ「ねぇねぇ、あとでリスカムにいたずらしに行ってもいい?」

エクシア「通りがけならオッケー!」ズダダダダダダッ

フランカ「よーし、やる気わいてきたー!ほら入って入って!ドア軽く溶接しとくねっ!」ジジジッ

カシャ「それ真剣?」

フランカ「刃は潰してあるから、いいとこ巨大溶接トーチかな」

クロワッサン「ほな逃げるでー!」


グラニ「ま、待てー!開かない!」ガシャガシャ

バグパイプ「ぶち破るべか」

シラユキ「致し方なし」

ドーベルマン「ぶち破るのはいいが、少し待て」

グラニ「どうしました?ドーベルマン教官」

ドーベルマン「奴らを追うなら、行動予備隊A4と教官のジュナーも参加させる。情報共有しよう」

シラユキ「承知した」

ドーベルマン「メランサ!」

メランサ「はい!ドーベルマン教官!」

ドーベルマン「A4を招集だ。ジュナーにも声をかけろ。フランカ達を追うぞ」

メランサ「あ、…分かりました。招集します」タッタッタッ

―今―


ドーベルマン「…というわけだ」

ドクター「オペレーター同士の私闘は禁止だが…、今回は俺がシラユキに指示を出してるのがまずかったかなぁ…。それにしてもそこまで徹底抗戦するとは思ってなかったが…」

ドーベルマン「私としても罰則を与える名目で追ってはいるが、あまり乱闘事にまで発展させたくはないのが本音だ。周囲への示しとしても、関係したオペレーターの事後処理に困る。…不幸中の幸いなのは、武装が訓練用かそれ以下で被害は少なそうということぐらいだな」

ドクター「ふむ、事後処理については他人事ではいられないな…。ところで、訓練室のドア、ぶち破ったのか?」

ドーベルマン「あぁ、まあへこんだのと錠がダメになったくらいだ。あと、溶接部は少し溶け込みが目立つか」

ドクター「…そうか」

アンジェリーナ「シラユキさんやクロワッサン達も心配だけど、ドクター…」

ドクター「まあ、うん、ドアの方は、訓練室だし、そういうこともあるということで…。修繕が間に合えば、それで良しだし…ついでにあそこも自動ドアにする名目が立ったということで、あっはっはっは」

ジュナー「あらドクター、アンジェリーナ、お疲れ様。2人もクロワッサン達を?」

ドクター「うーん、そっちはメインではなかったんだが、メインと被ってきたところだ」

ジュナー「なんだか大変そうね。ドーベルマン、向こうは事務室を通ったらしいわ。オーキッドが書類を荒らされて怒髪天だって。A6にエイヤとウタゲを連れて出てるみたいよ」

ドーベルマン「ふむ、そうか」


ドクター「オーキッドには…いつも書類仕事で苦労をかけて…申し訳ないなぁ…。あと、事務室、無事だといいなぁ…」ウル

アンジェリーナ「ド、ドクター…」ウルウル

ドーベルマン「ドクター、悪いんだが、もし良ければ」

ドクター「あぁ、俺で良ければ指揮に入ろう。とりあえずは加工所を守れるよう陣地を敷きたい」

ドーベルマン「加工所か、なるほど…」

ジュナー「ドクターの読みは当たりかもね。どうやら上を目指してるのはあってるみたいだし、事務室B205の上の加工所B105は物資もあるし通るかも」

ドクター「もう読みというか、流れというか、祈りというかなんだが、そうか…」

ドーベルマン「近くにはA4がいるはずだ」

ドクター「すぐにドアの手前で守りを固めてもらおう。待ち伏せして追っているシラユキ達と廊下で挟撃して投降を勧告して終わらせたい。ドアもくぐらせたくない」

ジュナー「分かったわ。指示を出す」

アンジェリーナ「ドクター、私達もすぐ向かおう!」

ドクター「あぁ、そうだな。出来ればシラユキたちとは逆側から向かって、逃げ道を防ぐようにしよう。行くぞ。あとは…」


―加工所B105前―


メランサ「…」

カーディ「本当に来るのかな?」

スチュワード「来るんじゃないかな。ここの防衛はドクターの指示だし」

アンセル「即席バリケードも組みましたが、あとはカーディとメランサに前方を抑えてもらうしかないですね」

アドナキエル「メランサちゃん?大丈夫?」

メランサ「…あ、はい、大丈夫です。アドナキエルさん。少し考え事をしていて」

アドナキエル「何を考えていたのか、良ければ教えてください」

メランサ「うん、師匠…フランカさんが来たら、私が1人で抑えます。アドナキエルさんにはカシャさんを狙ってもらって、メイリィにはクロワッサンさんと…できればエクシアさんの攻撃も抑えてもらいたいです。アンセルさんとスチュワードさんにはメイリィの援護をお願いします」

スチュワード「さすがに…無理があるんじゃないかな…せめてメランサがアンセルの援護は受けるべきだと思う」

メランサ「でも、師匠の剣を前にして、打てる手は遠距離で仕留めるか、これぐらいしかないと思うんです。この廊下の直線距離では、仕留める前に距離を詰められます。あとは私ができるだけ攻撃を受けず、撃破を目指す…。師匠にも頑張れと言われましたし、私が1人で立ち向かうべきだと、思うんです」


カーディ「メランサちゃん、援護もなしにフランカさんに立ち向かうなんて、流石にムリだよ!私ならアンセルくんの援護がなくても何とか耐えてみせるから!」

メランサ「でも…」

アンセル「…確かに、難しいですね、僕が両方を見るしかないでしょうか…。それにクロワッサンとエクシアの2人を抑えられるか…。あ、ジュナー教官から無線が」

ジュナー『メランサはそこにいる?』

メランサ「はい、こちらメランサです」

ジュナー『ドクターからの指示よ。加工所内にいるオペレーターと協同で作戦に当たること。そのオペレーターは…』

ガチャッ

グラベル「前線はこっちで良かったかしら~?」


―B205からB105への通路―


エクシア「アップルパーイ!」ズダダダダダ

フランカ「エクシアが牽制してくれるから暇ねー」

クロワッサン「ちょいちょい投げ物や弾は飛んできよるけどな!よっ!…あぁ、もうボロボロやでこの盾」カキーン

エクシア「こっちも弾切れが近くなってきたよ、っと」

リスカム「待ちなさい、フランカっ!!!」バンバンッ

フランカ「あら~、リスカム、追いついたの?眉間に皺を寄せたら、小皺が増えちゃうわよ~?」キンキンッ

リスカム「フランカーッ!」バンバンバンッ

グラニ「挑発してないで、いい加減止まりなさーい!」ピピーッ

バグパイプ「そうだべ!いくらリスカムがかわいいからって、公衆の面前でパイタッチしてお尻撫で上げてスカートめくりして逃走してもいいわけないべー!」

リスカム「~っ!!!///」バンバンバンッ

シラユキ「…合流地点が近い」

グラニ「うん、もう少しだね」

ニェン「へぇー?このお祭り騒ぎをもう終わらせちまうのかい?」ゴッ


リスカム「ッ!」ガッ

バグパイプ「はっ!」ドッ

ニェン「ふんっ、悪くはねぇが、モップの柄なんかより向いた得物があるんじゃねーか?」ガンッ

グラニ「…ニェン、そこをどいてくれない?」

ニェン「やだね。さっきまであのチャンネルで逃走ライブ放送をやってたんだが、これがなかなか面白くてな。このまま取っ捕まっちゃー、今夜の生放送が見れなくなりそうだろ?…っつーわけだ!お前ら、早く行け!」

エクシア「サンキュー!」

クロワッサン「おおきにー!」

フランカ「じゃ~ね~!」

ニェン「ん?なんか足んなくねーか?…まあいいか。そんじゃ、お前らの相手はこの私ってわけだ。盾も剣も出来合いの模造品で悪いが、よろしく頼むぜ」

リスカム「速攻で行きます!サンダーストーム!」バヂッ

バグパイプ「そうだべな!」

グラニ「行くよっ!」

シラユキ「…油断大敵か」

ニェン「子の矛を以て、子の盾を陥さば如何、そしたら全部ドカーン!ってな!」ゴォッ


―加工所B105前の廊下―


クロワッサン「もうすぐ加工所や!なんや使えるもんがあるとええなー」

エクシア「弾~、弾が欲しいよ~」

フランカ「上手くいくかしらね~?」

クロワッサン「まあ、今んとこは悪くないねんな」

フランカ「ま、それもそうね。リスカムにもいたずらできたし」

エクシア「衝撃的な高速セクハラだったね」

フランカ「まあね。慣れたもんよ」

クロワッサン「いっつもあんな調子なんか…」

フランカ「っ!加工所前にバリケード!」

エクシア「ありゃりゃ、ばれてたっぽい?」

クロワッサン「こら、追い込まれてたかもしれへんな」

エクシア「とりあえず牽制してから引き返そっか?」

クロワッサン「せやなぁ…」

グラベル「あら、そんな連れないこと言わないでよ」スッ


フランカ「チッ!」ブンッ

エクシア「おっとっとー!」ズダダダダダ

グラベル「危ないわね~」フッ

クロワッサン「ウチも無視せんといてーな!」ズンッ

カーディ「させないよっ!」ガンッ

メランサ「師匠!皆と一緒に、頑張らせていただきます!」チャキッ

フランカ「あら、悪くないわね。来なさい」スッ

グラベル「じゃあ、エクシアさんは向こうが片付くまであたしとダンスね?よろしく頼むわ」スッ

エクシア「ひぇ~グラベルさんか、今日は防御堅い感じ?」チャキッ

グラベル「試してみたら?」ヒュッ

エクシア「それじゃあロックンロール!」ズダダダダダ

クロワッサン「エクシアはん早めに頼むわ!向こうの援護が厚くてあんまもたん…って盾がー!」バキャンッ

カーディ「スチュワードくん!」

スチュワード「OK!」


メランサ(師匠の攻撃は、受け太刀したら最悪こっちの武器が溶かされる。鍔迫り合いは避けて、回避しつつ攻めるしかない)

フランカ「来ないの?それならこっちから…」

メランサ「行きます!」ヒュッ

フランカ「うんうん、やっぱり実戦形式の方が成長を見れるわね~。前よりも着実に良くなってる。でも…」ヒュヒュン

メランサ「!」ゾクッ

アドナキエル「それ!」バシュン

フランカ「おっと、…やっぱり、悪くないわね」キンッ

メランサ「アドナキエルさん!」

アドナキエル「カシャさんはいないみたいだ!このまま援護続けるよ!」

メランサ「はいっ!」ヒュッ

フランカ「これは旗色悪いかしら…?」


フワッ

エクシア「お、およよ?体が…」フワッ

フランカ「浮いてる…!?」フワッ

クロワッサン「このアーツは…アンジェリーナはん!?」フワッ

アンジェリーナ「みんな、そこまでだよっ!」ゴォォ

ドーベルマン「全員動くな!A4とグラベルもだ!」

エクシア「あちゃー、これは…タイムアップかな?まあもう弾もないしね」

クロワッサン「ウチも盾が割れてもうてるし、限界や。ギブやで」ヒラヒラ

フランカ「…ま、こんなとこか~。まあまあ楽しめたわね」

クロワッサン「最初はここまでやる気は無かったんやけど、興が乗ってしもうたな」

エクシア「で、どうするリーダー?さすがに騒ぎ過ぎちゃったかなとは思ってるんだけど」

ドクター「ま、まあ、そう急くな、落ち着け…。ぜ、全員、いるか…?」ゼヒーゼヒー

ジュナー「ドクターも鍛えた方がいいわよ、ホントに」


アンジェリーナ「ドクター、大丈夫…?カシャさんはいないみたいだけど、あとはみんないるよ」ゴォォ

ドクター「わ、わかった…。それじゃあ、はぁ、一回、ふぅ、アーツを解いてやってくれ」ゼヒー

アンジェリーナ「了解!」スッ

ドクター「ふぅ、それでは、みんなに、…ひぃ…、よく聞いてほしいんだが、…今回の、模擬訓練は、ここまでとする!」

クロワッサン「ん?」

エクシア「模擬訓練?」

フランカ「ふーん?」

グラベル「…ドクターがそう言うなら、それでいいわ~」

ドクター「うん、ふぅー、…今回は敵の強襲とそれに対する反撃を想定した、模擬訓練だった。臨場感を出すためにクロワッサン達には事前予告なしで突入してもらっている。訓練はこれにて終了として、ここからは原状回復に入ってもらうぞ」

フランカ「…そんな話、通るの?」


ドクター「全員使ってたのは訓練用の武装か、それ以下の物品だろ?これが訓練であったことの証明だ」

エクシア「訓練武装の持ち出し許可とかは…」

ドクター「各書類は俺のところに届いている。問題ない」

クロワッサン「だ、旦那さん…!」

ドクター「それに、強襲側にも教官が一人紛れ込んでることだしな。監督下で行われてたなら問題ないだろう」

フランカ「…もしかして、あたしのことかしら?」

ドクター「まあ、そういうことだ。ただし訓練武装・訓練室以外の弁償や補償、人的被害に対するアフターケアは、各人が責任をもって行うこととする。カシャが撮ってた動画もあるみたいだし、キッチリやるんだぞ。あとでリスト化してチェックして回るからな」

ドーベルマン「ドクターの指示を受け、行動予備隊A4、A6他随伴・同行していたオペレーター達には各所の原状回復に入ってもらう。各員、行動を開始せよ!」

A4「はい!」タタタッ

グラベル「じゃああたしはここまでかしら?」

ドクター「あぁ、一先ずは、そうなるかな。急な話で悪かった。本当に助かったよ。ありがとう」

グラベル「うふっ、ドクターのためなら、これぐらいなんでもないわ。また呼んでね~?」

ドクター「あぁ、次はランチにでも呼ぶことにするよ。…強襲部隊もご苦労様。早速原状回復に入ってもらいたい」


エクシア「ドクター、なんて言ったらいいか…」

ドクター「あはは、珍しく殊勝な態度じゃないか、エクシア。でもまあ、トラブルの円滑な解決はロドスのお仕事だ。特に感染者が関わっている場合はな。そうだろ?」

フランカ「…悪ノリしちゃった身でこんなこと言うのもなんだけど、ありがとね、ドクター」

ドクター「いいんだ。それに、フランカには教官側としてレポートも提出してもらいたいと考えてるしな」

フランカ「え?それあたしだけ?」

ドクター「まあ強襲メンバーで意見を寄せ合う分には構わない。動画もあるし何とかなるだろう」

フランカ「動画を見返すだけで時間がかかりそうなんだけど…まあ分かったわ」

エクシア「まあ、それぐらいなら手伝うよー」

フランカ「そうね、リスカムも呼んで…って、あ」


クロワッサン「旦那さん、ほんま恩に着るで。原状回復も頑張らせていただきます」ペコッ

ドクター「頼んだ。…それで、カシャはいったいどこに行ったんだ?」

クロワッサン「まあうちらも知らんのやけど、『ここまで視聴者を掴んでおいて、今晩の生放送前に捕まるわけにはいかない!』っちゅーもんで、そんならってことで別れてこっちが陽動やってたわけやんな」

ドクター「あー、そういう流れか。派手にやって視聴者を増やしていろいろあわよくば…な感じだったわけね」

クロワッサン「そういうこっちゃな」

ドクター「ところでその生放送って、中身は何をやるんだ?」

クロワッサン「そうやね、内容は」

ドーベルマン「すまないドクター、フランカからの話だが、第三作業場前の通路でニェンとシラユキたちがまだ模擬戦をしているようだ。すぐ止めに行こう」

フランカ「そうそう、リスカムもいるのよね。連れてかなきゃ」


ドクター「グラニとの通信は?」

ジュナー「ダメね。壊れたか電池切れか、そんな余裕がないのか」

ドクター「分かった、それならすぐ行こう。…アンジェリーナ、ちょっといいか」

アンジェリーナ「うん、どうすればいい?ドクター」

ドクター「執務室に戻って、このメモに書いてある書類を揃えておいてくれ。内容は俺が書くから」

アンジェリーナ「…うん、わかった。それじゃあ、先に行ってるね!」

クロワッサン「アンジェリーナはん!」

アンジェリーナ「?どうしたの?」

クロワッサン「サプライズとか、そのあととか、半分は2人のためやったけど、半分はごめんなさいや。騒ぎも大きくして迷惑かけてしもうたしな」

アンジェリーナ「ううん!全然気にしてないよ。むしろクロワッサンはどこかで見ている気もしてたし…。それに…クロワッサンのおかげで次の楽しみもできたから…、うん、背中を押してくれてありがとうね!」


クロワッサン「ウチは、…全然、礼を言われるようなことはなんもしとらんて。ほな、ウチも行ってくるわ。アンジェリーナはんも頑張ってな!」

アンジェリーナ「うん!またね、クロワッサン!」ブンブン

エクシア「あれが若さかなー」

クロワッサン「せやなぁ、アンジェリーナはんはええこやでホンマ。…ほな行こか、エクシアはん、フランカはん」

エクシア「そうだね、カシャの生放送も見たいし、チャチャっと終わらせよっか」

フランカ「私はドクター達の後を追いながらにしようかな。もう行っちゃったし」

クロワッサン「せやな、手分けして対応した方が早いかも知れへんな」

エクシア「じゃああたしとクロワッサンで訓練室から回ろっか」

クロワッサン「ラジャ!…後はカシャはんがどうなるかやけど…、まあ楽しみにしとこか!」


—その後執務室—


ガチャッ

ドクター「すまない、遅くなった。シラユキたちには今日はもう休んでもらうことにして、また明日ということにした。あとはいろんな部署に口裏合わせをお願いしてたらこんな時間に…」

アンジェリーナ「ううん、大丈夫だよ。分かる範囲でだけど、書類を進めておいたから確認して欲しいな」

ドクター「え!?ホントか?助かるよ、正直そこまでしてもらえるとは思ってなかった…」

アンジェリーナ「ふふーん、あたしだって、ドクターの働いてる姿から少しずつ勉強してるんだからね!」

ドクター「そんな熱心に見られていたとは、参ったな」

アンジェリーナ「え、いや、そ、そんなずっと見つめてたとかじゃなくて、要所要所で目に入ってたというか、書類の内容に目を通してるから覚えただけで!///」

ドクター「そうだな、きちんと内容を読んで確認してくれてたってことだな。…なんだか嬉しいよ」

アンジェリーナ「えへへ…///あたしもやっぱり、早く力になりたいし…でも、間違いとかあったら嫌だから、ちゃんと確認してね?」

ドクター「あぁ、分かったよ。でも、間違いがあったとしても怒らないさ。もうその気持ちだけで十分だ」

アンジェリーナ「うぅん、そう言ってもらえるのはあたしも嬉しいんだけど、…できれば、ちゃんと指摘して欲しいな。次に少しでも活かしたいんだ。…もし手間なら、その、いいんだけど」

ドクター「わかった。じゃあ俺の横に来て」

アンジェリーナ「えっ!?」

ドクター「間違ってたとこは口頭で伝えながら進めるから、メモの準備はいい?」

アンジェリーナ「あ、うん、わかった!メモも大丈夫!」ワタワタ

ドクター「…手間なんてことはないさ、学ぼうとしてくれる姿勢をぞんざいにするなんてことはしない。そこの丸椅子持ってきて座ってくれるか?」

アンジェリーナ「うん、ドクターなら、そうだよね。それじゃ、お隣、失礼します…///」(うぅ…さすがに近すぎたかな…///)

ドクター「よし、それじゃ見ていくか…」(…ちょっと、いい匂いがする)


—書類の修正も終わって残りを作り始めてしばらく—


ドクター「訓練武装の借用届、訓練計画、参加者名簿、損壊箇所リスト、エトセトラエトセトラっと…。よし、これで書類は一通りできたかな」

アンジェリーナ「お疲れ様。ホットチョコを作ったから、良かったらどうぞ」

ドクター「あぁ、ありがとう。…疲れた体に染み渡るな…」ホゥ

アンジェリーナ「結局、こんな時間までかかっちゃったね。もうすぐ21時か…」

ドクター「悪いな、遅くまでいてもらっちゃって」

アンジェリーナ「ううん、全然いいの。さっきも言ったけど、あたしも力になりたいし、ドクターのお仕事も勉強できるし…。それに、今回の騒動を訓練って形で着地させるのは、あたしもそれが一番いいと思ったから、だからいいの」

ドクター「アンジェリーナ…。本当にありがとな。お礼と言ってはなんだが、何か俺にできることがあれば言ってくれ。できる範囲で一つ、応えるよ」

アンジェリーナ「え…?ホントに?」

ドクター「あぁ、あんまり突拍子もないことや、すごい高いものを買ってくれとかは出来ないかもしれないが」

アンジェリーナ「それだったら…これから一緒に甲板まで行って、星を観たい…かな…」

ドクター「それぐらいなら、お安い御用だ。寒いだろうから少し着込んでいくか。アンジェリーナはジャケットも手袋もあるけど…マフラーがあるから、巻いておくか?」

アンジェリーナ「いいの?…それなら、お借りしようかな」グルグル

ドクター「いいさ。俺も上からジャケットを羽織ろうかな…。よし、行こうか」バサッ

アンジェリーナ「うんっ!」

ドクター「しかし、どうして星を観たいんだ?俺はてっきり、今度近くの移動都市に寄る時車を出してくれとか、新しいクッションを買ってくれとか言われるものかと思ってたよ」

アンジェリーナ「あっ、…確かにそういうのも魅力的だけど、でもね、今夜は…年に一度、一番輝いて、一番多く降る、…流星群が観られるんだよ?せっかくだから、誰かと一緒に観たいと思わない?」


—ロドス号艦内—


艦内放送『ピンポンパンポーン。ロドス艦内放送部が、21時をお伝えします。現在の天候は晴天。気温は6℃。視界は14kmとなっています。なお本日は一年の中でも最大規模の流星群が観測されています。そこで艦内放送部では特別に18時以降の放送を行い、特別ゲストからコメントをいただいております。それでは本日最終回となる放送、ロドスのオペレーターでありながら天文学者でもある、アステシアさんからコメントをいただきたいと思います。それではアステシアさん、お願いします』

艦内放送『はい、マイクをお預かりしました、アステシアです。それでは早速本日の流星群について、簡単に特徴や見方のお話をしていきたいと思います。まずは本日の放送でもすでに何度か言われている通り、最大規模の流星群であるというところから話をしましょう。この流星群は1時間に45個程度、ピーク時には100個を観測することもある、年間でも流星数が最大の流星群となります』

艦内放送『なるほど、他の流星群よりも流れ星を見るチャンスが多い、ということですね』

艦内放送『その通りです。今日は新月で、夜空のどこでも流れ星が見られますので、楽な姿勢で一方向を眺めたり、思い切って寝転がってみるのも良いかと思います』

艦内放送『今日は寒いですから、外で観測される方は十分、厚着をしてくださいね』

艦内放送『そうですね。種族にもよりますが暗い場所に目が慣れるまでは多少時間がかかりますので、焦らず待っていられるように暖かくしてもらえればと思います』


—ロドス号甲板—


カシャ「はいはーい!チャンネルをご視聴いただいている皆様!お待たせしましたー!予定通り流星群観測生放送を開始するよー!普段より視聴者数が多いのは、昼間のドタバタのおかげかな?昼間のあれはロドスメンバーにだけ公開してたんだけど、あんなのは稀…たまに…そんなにないからね!特別特番だからね!本命はこういうアウトドア物なのがカシャのチャンネルだからねー!せっかくだから、ちょっと覗いていってもらえると嬉しいな!」

カシャ「それで、今日の流星群については…さっきウチの天文学者さんの解説が聞こえたから、もういいよね?とにかく今日は、この寒い中外には出たくない皆さんと一緒に、この天体ショーを共有するのが目的です!あたしはちゃんと防寒対策してるから大丈夫だよ!」

カシャ「ちゃんと流れ星を見つけられるように、ドローンも新しくしてレンズも広角にしてきたんだから、しっかり眺めて行ってよね!ちなみに甲板にはほかにもロドスのオペレーターが何人かいるみたい。細かく説明はしないけど!あれ、今甲板に出てきたのはもしかして…」


—カシャの前方の甲板—


ドクター「本当だ、艦内放送も全然耳に入ってなかったから、気付いてなかった…」

アンジェリーナ「今日は一生懸命お仕事してたもんね、仕方ないよ。そんな一日頑張ったドクターだから、ご褒美として流星群の天体ショーをプレゼントだよ!」

ドクター「あはは、俺がご褒美をあげるつもりが、逆に貰っちゃうなんて…」

アンジェリーナ「ふふっ、ホントはあたしが観たかっただけなのもあるけど、でもドクターと一緒に観られて良かったな」

ドクター「あぁ、そう言ってもらえるとありがたい。俺も誘って貰えて本当に良かったよ」

アンジェリーナ「ホントに?」

ドクター「ホントだよ。アンジェリーナが誘ってくれなかったら、気付かずに一日を終えてそのまま寝てた可能性が高い」

アンジェリーナ「あはは、確かに!夜更かしは体に良くないしね」

ドクター「そうそう、今日もこれを観たら、ご飯食べてもう寝ちゃうかなー」

アンジェリーナ「あたしもお腹空いちゃったから、一緒に食堂行こう!…でも、まだ開いてるかな?」

ドクター「あぁ、いや、こういう時のために夜食を作り置きしてもらってるから、何かはありつけるはずだ。何もなければ俺のおやつを分けてもいいし」

アンジェリーナ「あ、あれ?あれはちょっと遠慮したいかなー、なんて」

ドクター「うーん、みんなそんな感じなんだよな。味はそんなに悪くないと思うんだけど…」


アンジェリーナ「それよりほら、そろそろ目が慣れてきたんじゃない?」

ドクター「うん、そうだな。少しずつ星が見えるようになってきた気がする」

アンジェリーナ「欄干のところまで行ったら、きっと地平線の方まで広く見えるよ!行ってみよ!」

ドクター「分かった」

アンジェリーナ「ほらほら、こっち!」

ドクター「うん、…こうして眺めてるだけでも、いい景色だな」

アンジェリーナ「そうだね、これからもたまにこうして星空を観に来る?」

ドクター「あぁ、悪くない」

アンジェリーナ「ふふっ、…あ、あそこ!今流れ星が!」

ドクター「え!?どこどこ!?」

アンジェリーナ「一瞬で見えなくなっちゃった…」

ドクター「くそー、やっぱり流れ星ってのは一瞬なんだな…」

アンジェリーナ「そうだね、ずっと眺めてないと見えないかも…。あ、あそこ!」

ドクター「どこっ!?」

アンジェリーナ「あはは、もう見えなくなっちゃった…」


ドクター「これ、難易度めちゃくちゃ高くないか?」

アンジェリーナ「高いよー?しかも見えてる間に3回唱えないと、願い事が叶わないんだって」

ドクター「マジか…俺はそれ以前の段階だけど…」

アンジェリーナ「あ、そうだ、いいこと思いついちゃった」

ドクター「なんだ、何を思いついたんだ?」

アンジェリーナ「えっとね、確かポケットに…あった!」

ドクター「予備の小型アーツロッド?」

アンジェリーナ「うん、今のあたしなら、これでもできるはず…。ドクター、もうちょっと寄って。…はい、手を」スッ

ドクター「はい。…もしかして」スッ

アンジェリーナ「うん、そのもしかして、だよ!」ギュッ

フワッ

ドクター「おぉー!浮いてる、浮いてるぞ!」フワッ

アンジェリーナ「改めてドクターを、空中天体ショーにご招待だよ!」フワッ


ドクター「すごいな、アンジェリーナ!視界が広がって、さっきよりもよく見える!」

アンジェリーナ「でしょ!もうちょっと高度を上げてほかのみんなの邪魔にならない位置に移動するから、ちゃんと手を握っててね!」

ドクター「分かった!」ギュッ

アンジェリーナ「!…ふふっ、行くよー!」スィー

ドクター「すごいな、こうやって空を飛ぶのは、初めてだ」スィー

アンジェリーナ「喜んでもらえて良かった!こんな風に回ったりもできるよ?」クルッ

ドクター「あはは、まるで踊ってるみたいだ」クルッ

アンジェリーナ「ドクター、右手も出して」スッ

ドクター「うん?はい」スッ

アンジェリーナ「こうしたら、2人でずっと回ってられるよ」クルクル


ドクター「おー!なんだか社交ダンスみたいだな。…あ、でも、少し、酔ってくる」クルクル

アンジェリーナ「ドクター、動き回る景色を見てるから酔うんだよ。目の前の、あたしだけを見るようにして」クルクル

ドクター「わ、分かった」ジー

アンジェリーナ「…」ジー

ドクター「…」ジー

アンジェリーナ「…むむむ」ジー

ドクター「…あははっ!」

アンジェリーナ「…ふふっ///」ニコッ

ドクター「…はははっ、確かにアンジェリーナを見てると、酔いが収まってくるな」

アンジェリーナ「そうでしょ?…じゃあそろそろ上も見てみよっか。右手を離すから、仰向けになって」クルッ

ドクター「いよいよメインイベントだな。待ってました」クルッ


—ロドス号甲板—


アレッテドクタートアンジェリーナ?…
イイナー…
タノシソー…
ウフフフ…

カシャ「これは思わずいい画が撮れちゃったなぁ…。このまま2人を撮影するのも悪くないかも。…って、あぁ!ペンギン号がっ!」

ペンギン号「」ブブブ

シラユキ「終止…」

カシャ「あ、シラもがもが」

チャット41『あーあ、とうとう捕まっちまったかー』

チャット42『そりゃ甲板に出てることがモロバレだしねー』

チャット43『まあここまでよく逃げた方でしょ』

チャット44『お疲れ様やで』

チャット45『待って今映ってたのってドクターとアンジェリーナ?』

チャット45『メッセージが削除されました』

チャット46『ヒェッ』

チャット47『認識する前に消された…』

チャット48『どんな速度だよ…』

チャット49『全然読めなかった…』

チャット50『個人情報の拡散は良くないですよ?』

シラユキ「向こう側を撮影するなら、今は解放しよう」

カシャ「ふがっ、へっ?向こう?…あ、なるほど。オッケー、分かったよ」

シラユキ「良し」パッ

ペンギン号「」ブイーン!

カシャ「はい、じゃあちょっと脇道に逸れてトラブルもあったけど、ちゃんと本命の天体観測の方を、引き続き生放送していくよー!」

シラユキ「うむ」


—ロドス号甲板より上空20m—


ドクター「あ、アンジェリーナ、真上で流れ星!」

アンジェリーナ「うん!あたしも見えた!」

ドクター「すごいな!初めて流れ星を見たよ!一瞬だった!」

アンジェリーナ「…そっか、そうだよね。うん、すごいよね!」

ドクター「あぁ、すごい!あ、あっちにも!あっちも!」

アンジェリーナ「すごいすごい!本当に短い間隔で流れてるんだね」

ドクター「いやー、もうすごいしか言葉が出ないな」アハハ

アンジェリーナ「初めて流星群を観たら、そうなっちゃうよ」フフッ

ドクター「そうかな、自分の語彙力の無さに涙が出そうだったけど、それならいいかな」

アンジェリーナ「うん、大丈夫だよ。それで、願い事は言えた?」

ドクター「いや、あの速度じゃ厳しいな!ホントに短い単語じゃないと…」

アンジェリーナ「うーん、二文字か三文字くらいなら言えるかな?」

ドクター「なんだろ、カネカネカネとか?」

アンジェリーナ「それは俗っぽ過ぎるよ」フフッ

ドクター「確かになぁ。アンジェリーナの願い事はなんなんだ?」


アンジェリーナ「あたし?あたし、あたしは…うーん、そうだなー」

ドクター「思いつかない?」

アンジェリーナ「ううん、その逆で、いっぱいあり過ぎるのかな…。お腹いっぱいおいしいご飯を食べたいし、カワイイ服とか、お化粧品とかも欲しいし、落ち着いた雰囲気の喫茶店に入ってコーヒーを飲みたいし、ロドスのみんなと楽しく過ごしたいし、ドクターの力にもなりたいし…。ホントにたくさん」

ドクター「それは確かに、叶えたいことがいっぱいだな」

アンジェリーナ「うん、それに…いつかは、シラクーザの友達や、家族にも、また会いたい、かな…」

ドクター「会えるさ、きっと」

アンジェリーナ「…ふふっ、そうだね、きっと会えるよね」

ドクター「…」

ドクター(寂しそうで、悲しそうな笑顔だ)

ドクター(プロファイルと本人の話を聞く限り、アンジェリーナは彼女の言う『普通の人』じゃなくなった時に、それまでの『普通の生活』を一度諦めている。それは恐らく、周りの人達の『普通の生活』を守るためだったんだろう。あるいは、自分自身も)


ドクター(頼ったら、巻き込んでしまう。今までと同じではいられない。自分も、周りも。感染者に対する態度は、厳しい。友が、家族が、どんな態度になるか、味方でいてくれてもどんな目に遭うか、分かったものじゃない)

ドクター(思い出を綺麗なままに、みんなの生活を守るために、彼女は諦めた。聡明で優しいが、悲しい選択だ。頼れる人が、周囲の鉱石病への理解や知識が、彼女を守ってくれる環境が無かったことを示している。それに気付くことができる彼女の聡さも)

ドクター(一度諦めたことをもう一度夢見るなんてことは、とても怖いことなんじゃないだろうか。一度失った恐怖が、再び脳裏を過ぎるんじゃないだろうか。彼女の何分の一しか思い出がない自分には、ちゃんと理解はできていないだろうけども)

ドクター(だからアンジェリーナはきっと、これからを夢見てはいても、過去は思い出として大事にしまっているんだろう。思い出の光景を未来に重ねて夢見てはいても、故郷に帰ることは、きっと諦めている。全てが変わってしまったことを受け入れるそれは、彼女の強さだ)

ドクター(それでも彼女がそれを夢見ていて、もし家族や友人の元に戻れる日が来るとしたら、それは…)

アンジェリーナ「綺麗だね、ドクター。お星さまに願い事が出来なくたって、この空は綺麗だよ」


ドクター「あぁ、綺麗だな。世界中でこの光景が見られてるんだと思うと、また感慨深い」

アンジェリーナ「…そうだね。お母さん達も、見てるのかな」

ドクター「きっとな。時差の問題はあるけども」

アンジェリーナ「…ドクター、それは野暮じゃない?」

ドクター「あはは、悪い」

アンジェリーナ「もう…」

ドクター「それじゃあ、いつか今日のことを聞きに行ってみよう」

アンジェリーナ「え?」

ドクター「アンジェリーナのご家族に。あの日の流星群は綺麗でしたね、って」

アンジェリーナ「ドクターってば…」

ドクター「そのためには、まずは一日一日を生きて行かなきゃならないな。まずは今日で、そしたら明日だ」

アンジェリーナ「…うん」

ドクター「たくさんトラブルがあるだろうな。戦闘も不可分だろう」

アンジェリーナ「…鉱石病も、あるしね」


ドクター「そうだな。治療も少しずつ進歩しているがこれからだ。正しい知識の啓蒙活動もまだまだだ」

アンジェリーナ「…」

ドクター「一つずつでも、全部解決していくよ」

アンジェリーナ「…え?」

ドクター「トラブルは解決する。戦闘は犠牲を抑えて勝利する。偏見を覆して、正しい知識を広げよう。そして、鉱石病は少しずつでも治療していく。人々の間の溝が深くて広くても、埋めたり飛び越えたり橋をかけたりして、そうやって明日を作っていく。アンジェリーナや、みんなが笑って暮らしている明日を。そうすれば、たどり着けるだろ?」

アンジェリーナ「…あたしの家に?」

ドクター「君の未来に」

アンジェリーナ「…ふふっ、あははははっ!少し、かっこつけ過ぎだよ、ドクター」

ドクター「ダメか?悪かった。…胸を張って君の家に行ける、そんな明日だ」

アンジェリーナ「…素敵だね、そんな未来」

ドクター「だろ?正直、今までだって完璧とはほど遠いし、これからだって散々苦汁を飲まされるだろうさ。それでもやるよ。出来ることは全部やる」


アンジェリーナ「きっと、大変だよ?苦汁を味わうだけじゃすまないことも、あるかもしれない。全てを出し尽くしても、届かないことも」

ドクター「あぁ、そうかもしれない。だから、みんなの力も借りる。俺だけじゃ出来ないこともたくさんあるし」

アンジェリーナ「みんなの未来を守るために、みんなの力を借りるんだね」

ドクター「そうだ。そのためには、俺に出来る全てを、それでも足りないかもしれないけど、みんなにしてあげないと釣り合わないだろうな。やっぱり」

アンジェリーナ「…ドクターなら、みんなはきっと応えてくれるよ。あたしはそう思う」

ドクター「うん、みんなと一緒に、ロドスの日常を、みんなの明日を守ってみせる」

アンジェリーナ「…うん!」ニコッ

ドクター(この星降る夜に誓う。君の願いを叶えてみせると。今の日常を君の夢見る幸福なものにして、かつての日常を過去にさせた全ての問題を解決すると。だから笑っていてくれ、アンジェリーナ。心の底から。俺が君にとっての流れ星になるから。君の傍で願いを聞き続ける、そんな星に)

ドクター「…なんて、これもかっこつけ過ぎだったかな?」

アンジェリーナ「うーん、ちょっとそうかもしれないけど、…でも今のは私への返事でもあったから、オッケー!かな?」

ドクター「良かった良かった。これ以上ダメ出しされたらダメダメドクターになってしまうところだった」

アンジェリーナ「ふふっ、大丈夫だよ、ドクターは全然ダメダメじゃないよ?」

ドクター「ホントに?」

アンジェリーナ「ホントだよ?もう、ドクターは甘えたがりやさんだなぁ」


ドクター「飢えてるからな、愛に。満たされてるのは仕事のキャパシティぐらいなもんさ」

アンジェリーナ「あはは…。それはちょっとかわいそうかも。じゃあ流れ星へのお願いは決まったね」

ドクター「あぁ、そうか、そうだな。じゃあ次に流れ星が流れたら…あっ!」

ドクター・アンジェリーナ「「愛・愛・愛っ!!!」」

アンジェリーナ「あはははっ!今のは言えたね!あたしもつい言っちゃった!」

ドクター「よっしゃー!やったな!これで俺も愛が手に入るかー!?」

アンジェリーナ「は、恥ずかしー!愛って!愛って!!///」

ドクター「そう言われると確かに恥ずかしい気もするけど、でもホントに足りてないからな!」

アンジェリーナ「ふふっ、叶うといいね、ドクター」

ドクター「そうだな。アンジェリーナも」

アンジェリーナ「うんっ!」


ドクター「よし、お願い事も終わったし、そろそろおいしいご飯でお腹を満たしに行こうか!もう限界だっ!」

アンジェリーナ「了解っ!あたしもお腹ぺこぺこ!下に降りるよっ」ギュッ

アンジェリーナ(あぁ、こんな寒空なのに、なんだか暖かいな…。ドクターのマフラー、暖かいし…。繋いだ手も、今日は暖かい…。いつもは一人で飛んでるから知らなかったけど、手を握ってくれる人がいると、こんなに違うんだ…)

アンジェリーナ(ビルの間を飛んでた時は、もっともっと寒かった気がする。ロドスに来てからは少し良くなったけど、でもホントに暖かいと感じるのは、家を出てからは始めてかも)

アンジェリーナ(うん、あたし、なんだか、なんだか今日はもうドキドキして…。安心して、嬉しくて…。今までもそうかもとは思ってはいたけど、でもこれは、それ所じゃなかった。今まで思ってたのなんて、全然序の口だった。スタートラインにも立ってなかった。今、気付いたんだ。そうなったんだ。あたしは、ドクターのことを…)

アンジェリーナ「ねぇドクター」

ドクター「どうした?」

アンジェリーナ「見つかるといいね、愛」

ドクター「あぁ、アンジェリーナもな」

アンジェリーナ「ふふっ!よく考えたら、あたしはもういっぱい見つけてるから!愛っ!」

ドクター「え、そうなの!?」

アンジェリーナ「そうだよ?だからあたしのお願いは、ドクターにも見つかるようにってことにしてあげるね」

ドクター「それはめちゃくちゃ助かるな。アンジェリーナのお願いならご利益ありそうだし」

アンジェリーナ「ふふっ、どういたしまして!だから頑張ってね、ドクター!」

ドクター「了解!」

スタッ


—後日、ドクターの執務室前廊下—


アンジェリーナ「ドアの修繕、間に合って良かったね!」トコトコ

ドクター「あぁ、ケルシーに諸々怒られながらも頭を下げた甲斐があった。お陰で各所の修繕はフリーパス状態だったし」トコトコ

アンジェリーナ「提携企業の人も、なんだか雰囲気良かったし…」トコトコ

ドクター「そうだな。あとはケルシーとアーミヤが上手いことやってくれるだろう。ずっと2人に頼りっきり、ってわけにもいかないけどな」トコトコ

アンジェリーナ「ロドスの最高権力者の一人だからね、ドクターは」トコトコ

ドクター「あんまり実感はないけどな。いいとこ中間管理職だ、まだまだ」トコトコ

アンジェリーナ「頑張れドクター。またコーヒー淹れたげるから」トコトコ

ドクター「あぁ、ありがとう。今の楽しみはそれぐらいだよホント」トコ

ガチャッ


アンジェリーナ「さ、執務室に到着だね。残務を片付け…って、このおっきいクッション、どうしたの?」

ドクター「あぁ、アンジェリーナにはまだ話してなかったか。打ち合わせは会議室だったし。クロワッサンがこの間のお詫びに、って持ってきてくれたんだ。『フェリーンもダメにするクッション』」

アンジェリーナ「へぇ~!あたしも座ってみていい?」

ドクター「どうぞどうぞ」

アンジェリーナ「よいしょ、っと…。あ、あぁ、これは、…はふぅ、ダメになるね~」

ドクター「ヴァルポもダメにするクッションだったか」

アンジェリーナ「これはダメだよ~。ダメになる~。はわぁ~」

ドクター「あのシルバーアッシュですらダメになってたからな。むべなるかな」

アンジェリーナ「これは…、ダメ、だよ…。もう、起きれなく、なっちゃう…」

ドクター「いいぞ、今日も朝から忙しかったからな。少しぐらい休んだって、バチは当たらないさ」

アンジェリーナ「そうは…言っても…くぅ…」

ドクター「あ、せめて胸に抱えた書類は…って、ダメか」

アンジェリーナ「くぅ…くぅ…」

ドクター「えーと、毛布毛布っと。普段は自分がかけられる側だから、こういうのは珍しいな。まあ容赦なく起こしてくる人も少なくないが」

ドクター「あったあった。…おやすみ。お茶会の時間になったらまた起こしてあげるから、それまではいい夢を…」ファサッ

アンジェリーナ「えへへ…」ニヘラ


end

これにて書き溜め投下終了です。
駄文失礼しました。

アンジェリーナのイメージとしては昇進後会話1後、昇進後会話2前、信頼上昇後会話2後、信頼上昇後会話3前ぐらいです。

新コーデでも大変な戦場に投入されている様子の彼女ですが、せめてその背景では幸福な日常で、笑顔でいてくれたらと願っています。

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