バットマン「グランド……オーダー?」 (937)

ブルース「デッドショットの次の計画は……」カタカタ

ブルース「……やはりジョーカーか。今回の裏にも……」カタカタ

ブルース「……」カタカタ、タンッ

アルフレッド「どうぞ」コトッ

ブルース「……コーヒーか、ありがとう」チラッ

アルフレッド「午前三時です。今夜『バットマン』になる予定がおありでないのなら、もうお休みになっては?」

ブルース「そういう訳にもいかない。情報を集めるところから戦いだ、悪党は休んでない」

アルフレッド「……」ハア

ブルース「キミこそ休んでくれ、アルフレッド。毎日付き合わせてすまない」

アルフレッド「ご主人様がお休みになられれば、私も休みましょう」

ブルース「……」ハア


カタカタ、カタ。カタカタ。カタ……

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511494020

…………

ブルース「……? 何か言ったか?」

アルフレッド「? いえ、何も……」

ブルース「そうか……」グラリ

ブルース「…………!?」グラグラグラッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ブルース「これは……!!」

アルフレッド「ブルース様!! 地震です!!」

ブルース「いや、違う、これは……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

ブルース「爆発!? 核か!?」グラグラ

ガラス「」パリィィィィン

アルフレッド「ブルース様危ない!!」ガバッ、グサ

ブルース「なっ、アルフレッド……」ドサッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!! ドゥゥゥゥゥゥゥム!! ドゥゥゥゥゥゥゥム!!

ブルース「くっ、瓦礫が……アルフレッド!! アルフレッド!!」

アルフレッド「……どうか、お逃げ下さい、ブルース様」バタッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ガラガラガラ……

…………


どれほどの間、意識を失っていたのだろうか。気が付けば、瓦礫の下でうずくまっていた。

全身を鈍い痛みが走っていた。何故自分が倒れているのか、思い出すのにしばらくかかった。

ブルース「……アルフレッド、アルフレッド……」

ブルース(重い……身体にのしかかっているこれは……バットウィングの片翼か。破壊されてる……くっ)


ブルース「……うおおおお……」ドサッ、ムクリ

ブルース(やったのは誰だ? ジョーカー? ベイン? それともリドラ―か? いや、そんな事よりアルフレッドは……)

ブルース(……とにかく見晴らしの良い場所に出て……)ヨロヨロ

ブルース(……)ピタッ

ブルース「…………何……」

見慣れたゴッサムシティは消えていた。猥雑なネオンも、光を振りまく中華街も、ゴードンが居た警察署も、何一つ残っていない。

見渡す限り、一面の焼け野原だ。赤黒い景色にざあざあと雨が降りしきる。信じられない光景だった。

ブルース(馬鹿な)ザアザア

ブルース(そんな、馬鹿な。一瞬にして? 恐怖ガスの幻覚か?)

ブルース(それとも夢か? いや、この雨の冷たさは夢ではない……)ザアザア

ブルース(……こんな焼け野原では、もはや生存者は……)

ブルース「……そうだ、アルフレッド……アルフレッド」ヨロ、ヨロ

――――

ブルース「アルフレッド……アルフレッド!! 何処だ!!」ガシ、ガラガラ、ガラガラ

ブルース(くっ、瓦礫が重い……やはりさっきの崩壊のダメージが響いている……)

ブルース「アルフレッド! 返事をしてくれ! アルフレッド!」

ブルース「アルフ……」ガラガラ、……ピタッ


ブルース「……アルフ、レッド」


ブルース「……アルフレッド、目を覚ましてくれ。街がこんな……キミの力を借りたいんだ、アルフレッド」

ブルース「………………アルフレッド」

ブルース「……………」

ブルース「……」


――――


ブルース「……」ガリ、ガリ、ガリ

ブルース「……」ポスッ

『我が生涯の友、アルフレッド。ここに眠る』

ブルース「……」

ブルース「……」ガチャガチャ、ガチャ。スチャ、スッ

ブルース「……」ガシ、ガシリ。カチャッ

ブルース「…………」スッ

バットマン「……」

バットマン(希望は未だに潰えていないハズだ。生存者を……犯人を捜す)

バットマン「……」スタ、スタ

バットマン(どこもかしこも焼け野原だ。建物の面影すらない……一体誰が、何のために?)

バットマン「ここは時計塔だったはず……だが、もはや瓦礫すら……」

バットマン「オラクル! どこだ!! ロビン!! 居ないのか!?」

バットマン「……」

バットマン「……応答は無しか」

――――

バットマン「ゴードン! 何処に居る!?」

バットマン「……」

バットマン(駄目だ、警察署にも誰一人居ない。ペンギンも、ブラックマスクも……見る限りゴッサムシティの向こうも同じか)

バットマン(……諦めるな、希望はまだ……)スタスタ

パトカー内の無線「……ザザ……」

バットマン「!」

無線「……もしもし、もしもし! 聞こえていたら返事をしてくれ! 繰り返す、こちらは人理継続保障機関『フィニス・カルデア』! 生存者が居たら返事をしてくれ!!」

バットマン「……」パリン、ガシッ、スチャ

バットマン「こちらゴッサムシティ。生き残りだ。そちらも生存者か?」

無線「なんだって!? 待ってくれ、ゴッサムシティ……と、遠い……いや、とにかくこちらに来てくれ! 座標は……」

バットマン「待て。そちらは何者だ? 同じ被害者なのか、それともこの事態を引き起こした犯人なのか」

無線「……」

バットマン「答えろ。こちらは既に逆探知している、黙秘は立場の悪化を招くだけだ」

無線「……こちらは人理保障機関、フィニス・カルデア。突拍子も無い話をするかもしれないが、聞いてもらえるだろうか」

バットマン「……」

………………

バットマン「……つまり、人理が焼かれ……この惨状が?」

無線「そうだ、いやまだ焼かれては居ないが!……常識から外れすぎてて取り合ってもらえないかもしれないが、とにかくそういう事なんだ! 信じてくれ!」

バットマン「……」

バットマン「……いや、信じる。そちらの座標を教えてくれ」

無線「えっ……でも、さっき逆探知……」

バットマン「真実を聞くための嘘だ。座標を送ってくれ」

無線「……いや、それが……キミの国とカルデアは海を隔てて存在してる。来るのは非常に……」

バットマン「問題無い。バットウィングを修理してそちらへ向かう。座標を」

無線「バット……なに?」

バットマン「座標を。くれ。早く」

バットマン「……」ガチャガチャ、ガチッ

バットマン「よし……」

バットマン(完成だ。エンジンと燃料に若干の不安はあるが、この飛行距離なら何とか保つハズ)

バットマン「……ゴッサムシティ……」

バットマン(必ず救う。どんな困難が立ち塞がろうとも。アルフレッドのためにも)

――――

バットマン「……」

バットマン(空の上から見ても分かる。生存者など望めない、最悪の焼け野原だけが広がっている)

バットマン「……」

バットマン(この陸地は……二ホンか。ここも形無しか……ともかく急ぐしかない)

バットマン(二ホン上空を通過し、4時間ほど……ここが目的地のハズだ……雪山にしか見えないが。着陸スペースは見えず……降下するしかない)

バットマン「自動操縦モード」カチャカチャ

コンピューター『了解、自動操縦モード。お気を付けて』カチャッ、ウィーン

バットマン「……フッ!」バッ、バサササササササ

バットマン「……」スタッ、スクッ

雪山「」ビュオオオオオオオオ

バットマン(激しい吹雪だ。いくら多機能のバットスーツと言え、ここに長時間留まれば凍死は免れない……カルデアとやらは何処だ?)

??「おーい!! こっちだ、こっち!」

バットマン「……誰だ!!」

??「うわっ、わわっ!? キミ、ずいぶん変わった格好してるなぁ……いや、そんな事は今はどうでもいい! こっちに来てくれ! カルデアへの入り口はこっちだ!」

バットマン「……分かった」

期待

バットマン「こんなところに入り口が……」

??「さあ、早く! 入ってくれ!」

バットマン「……」スタスタ

??「ふう、キミを発見できてよかった。レーダーに映った飛行体を見てもしや、と思ったんだ。会えて光栄だよ、ボクはロマニ・アーキマン。Dr.ロマンと呼んでくれ」

バットマン(偽名か……いや、言っている場合ではないか)

バットマン「……私は……」スッ

ブルース「私はブルース・ウェイン。よろしく頼む、ドクター」

ロマニ「へえ、キミはそんな顔だったんだね! マスクをしてたら怖かったけど、外したら普通に接していけそうだ……って、そんな和んでる場合じゃなかった! 緊急事態なんだ、こっちへ来てくれ!」タッタッタッ

ブルース「……」

どのブルースだろうか
感じ的にダークナイトシリーズかな

ブルース「……随分ボロボロの施設だな」スタスタ

ロマニ「……それについても説明するよ。ここ、本来は人理の継続を確かなものにするための機関っていうのは説明したよね?」スタスタ

ブルース「ああ、聞いた。巨大な地球儀を観測し続けて、その証明で世界の維持を助けるとか……」スタスタ

ロマニ「うん。そこで問題が発生した。どうやら人類は来年の七月に滅びるらしく、それを防ぐにはどうやら過去の世界を変えなければならないようだ、と」

ブルース「……そんな事が可能なのか?」

ロマニ「うん。自然な流れなら人類は繁栄の一途だったからね、その流れを変えた『誰か』もまた、過去の因果を変えたんだ。川の流れを、ずっと上流でせき止めたみたいにね……」

ブルース「……」

ロマニ「そして、ボクたちはその対策に『レイシフト』を生み出した。過去へ飛び、因果を乱す原因を正し、そして戻って来る! シンプルかつ合理的だ!」

ブルース「信じられない」

ロマニ「あ、うん……だよなぁ、普通はそうなるよね。でも、ここは信じてくれ。何故ならこのバカでかい施設がそのまま、今はレイシフトのために存在するんだから」

ブルース「……そんなに大がかりな計画なら、もっと大人数でやるハズだ。他のメンバーは?」

ロマニ「……あぁ、その事についても、話す。これはこの施設がボロボロな事にも関係するんだけどね」


ロマニ「他のメンバーは全員死んだ。レイシフトの装置……霊子筐体に仕掛けられた爆弾によって」

ロマニ「僅かに残ったのは十数名のカルデア職員、そしてボクだけだ」

ブルース「……そうか」

ロマニ「ああ。……疑わないのかい?」

ブルース「……死を疑うほど無神経ではない。それに、それほど沈痛な面持ちの男など疑えない」

ロマニ「……うん、ありがとう。こっちだよ」スタスタ

ブルース「……」スタスタ

ブルース(……嘘だ。疑いはある。だが、外の惨劇とこの男の話は噛み合っている……信じるしかない)

ブルース(……それに、レイシフトの話が本当なら。解決策も有りそうだ)

ロマニ「ようこそ、カルデアの管制室へ!」

ブルース(……広く、大きい。破壊の痕跡の中、数名が活動しているか……)

職員A「ドクター、そちらの方は……」

ロマニ「ブルース・ウェインさん。適性は分からないが、外に居て生き残った数少ない人間だから可能性はあると思う」

職員B(変わったスーツに……手に持ってるのはマスク? ネコミミが生えてるのかなぁ、あれ)

職員C「それよりもドクター、そろそろレイシフト先に誤送された職員の存在証明が難しくなっています! 生存報告も無く、時間が惜しい……!」

ロマニ「そ、それってヤバいなぁ! よし分かった、説明を早めに済ませるとしよう! ブルース、キミをここに呼んだのは他でもない、キミにレイシフトをしてほしいからだ!」

ブルース「過去に飛ぶというアレか。分かった、やろう」

ロマニ「戸惑う気持ちも分かる! けどこれは……え?」

ブルース「何をぼんやりしている。どうすればレイシフトできるんだ?」

ロマニ「い、いや……待ってくれ、インフォームド・コンセントというモノがあるだろう!?」

ブルース「人命が懸かっているのだろう。早くしろ」

職員達「「「……」」」(呆然)

ロマニ「き、キミ……悪くすれば死ぬんだ、分かってるのかい?」

>>10 期待サンクス、面白いSS目指して頑張る

>>12 自分のイメージ的にはダークナイトシリーズだけどずれるかもだから先に謝罪をしておきます

ご都合主義のクソSSだからあんまり期待しないでね……

ブルース「分かっている。ノーリスクでそんな試行ができるハズもない。だがやるしかないんだろう?」

ロマニ「……分かった。まずはこの霊子筐体(コフィン)に入ってくれ」

ブルース「……」スタスタ、スチャッ

ロマニ「いいかい、時間が惜しいんでキミの覚悟に便乗して任務だけ伝える。
まず、レイシフトが完了したら、あちらに居ると思われる職員とコンタクトを取ってくれ。会えばそうと分かるハズだ、我々と同じような白衣を着ている。

そして何より大事なのは……『聖杯』と呼ばれる魔力の塊を持って帰還する事!」

ブルース「聖杯?」

ロマニ「ああ、レイシフト先に巨大な魔力が観測されている。恐らく、この事件を引き起こした犯人が所持しているハズ……
それと、これが一番大事なんだけど! 一般人のキミは向こうで強大な敵に出会うかもだけど、絶対に直接戦闘はしない事! 人間じゃ相手にならないから!」

ブルース「……分かった。尽力する」

ロマニ「頼むよ! それじゃあ閉じる! レイシフト先でも適宜指示を出すから、そこで会おう!」ガチャッ


コフィン内「」シーン……


ブルース「……」チラッ

マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……コフィン(棺)か。皮肉だな」

ロマニ『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』

バットマン「……」

『3! 2! 1!』

バットマン「……!!」グッ

『0』

マシュ(痛い……熱い)

マシュ(瓦礫にのしかかられてる……重い。それに、何か燃えてる……世界が……燃えてる……)

マシュ(ああ、身体の感覚が……死ぬのかな)

マシュ(……何も、残せなかった)ツー

マシュ(ああ、駄目だな。泣くなんて……覚悟してた、ハズなのに)

マシュ(熱さが増して……痛みも……ああ、息も、だんだん……)

マシュ(……楽になって、きてる?)


???「無事か」ゴバッ、ガラガラ

バットマン(ひどい傷だ。もう助からない)

???「か、はっ……あ、貴方は……」

バットマン「ブルース。ブルース・ウェインだ。
……もしもしドクター、レイシフト先にて職員と思われる女性を発見。しかしこの傷ではもう……」

ドクター『……ま、マシュかい!? 待って、それなら……ブルース、キミと魔力回路を繋げてデミ・サーヴァントとして覚醒させれば……』

バットマン「ドクター、落ち着け。まずは手順を説明してくれ」

ドクター『あ、ああ。まずは魔術回路の確認から……』

バットマン「……マシュ。少し手荒な真似になるかもしれない。先に謝っておく」

マシュ「ごほっ……ええ、構いません……」

バットマン「……」

マシュ「……」

バットマン「……安定したようだが、目を覚まさない。ドクター、何が原因か分かるか」

ドクター『これは……回復に回す分の魔力まで供給できてない。生存で手一杯か……ブルース、キミの近くに霊脈はあるかい?』

バットマン「霊脈……と、言うと」

ドクター『ああいや、それはこっちの仕事だね。検索するよ……! 待って、敵生体反応多数! 周囲を警戒してくれ!』

バットマン「!」

???「グルルルル……!」

???「グルァァァァ……」

バットマン「……」

ドクター『太刀打ちできない! ブルース、すまないがマシュを抱えて逃走できるかい!? 分が悪すぎる……ブルース?』


バットマン「……」

???「グルォアアアアッ!!」シュバッ

ドクター『うわああああああ!! ブルースくん!!』


バットマン「フン!!」ガキィ

ドクター『ええええええええええ!?』

バットマン(重い……だが想定内)

バットマン「シッ」グルッドゴォ

???「ゴギャアアアアアア!!」バタッ

バットマン(次だ)

???「グガアアアアアアア!!!」バババッ

バットマン「……」スッ

???「グ……エッ?」

バットマン「フンッ!!」ドッゴォ

???「ギャアッ!!」バタッ

バットマン(次……)

………………

……………

バットマン(負傷は軽微。敵は撤退……上々だ)

ドクター『……ブルースくん、キミって一体何者なんだい? 確かにあの敵は弱かったとはいえ、生身の人間が撃退できるような連中じゃ……』

バットマン「私の事より、霊脈は見つかったのかドクター。移動可能になったぞ」

ドクター『あ、ああ。そこから二キロほど西に歩いた場所に発見できた。もう一つ反応があるのを考えると、恐らくそこにも生き残りの職員が居るハズだ』

バットマン「了解。合流を試みる」

ドクター『頼んだよ! あと、さっきの勝ちはどう考えたって幸運で拾ったんだから、さっきみたいな無茶しない事! いいね!」

バットマン「……保証はしかねる」

ドクター『ブルースくん!』

バットマン「……」

マシュ「……ぐ……貴方は、一体……」

バットマン「……無理はせず、寝ておけ。すぐに霊脈へ連れて行ってやる」スタスタ、ガシッ

マシュ「……う……」ガクッ

バットマン(……ひどい焼け野原だ。ゴッサムシティと同じか、それ以上の)

バットマン(……こんな荒れ地を作って、何がしたいんだ。犯人の真意を推測しかねる……)

バットマン(ジョーカーのように楽しんで破壊をしただけか? それとも、何かに絶望した末の破壊行動か?)

バットマン(……いずれにせよ、まともな神経の持ち主ではない。何処かで狂ってしまった者がやる事だ)

マシュ「……うっ……先輩……」

バットマン「もうすぐだ。踏ん張れ」スタスタ

マシュ「……」


???「……止まりなさい!」

バットマン「……」ピタッ

???「マシュを抱えて何処へいくつもり? 貴方は何者ですか? 答えなさい!」

バットマン(敵意有り。距離三十メートル。鉄バットを所持……やれる)

ドクター『ま、待った! 所長、ボクがレイシフトさせたんです!』

所長「……その声、ロマニ? ああ良かった、ようやく味方が来たのね……じゃなくて!!
アンタ、レイシフトされたんですって? 状況を全て説明しなさい! なんでこんな焼け野原になってるの!? どうして私までレイシフトに巻き込まれたわけ!?」

バットマン「……ドクター。説明は頼んだ」スタスタ

所長「ちょ、まちなさ……ちょっと! そもそも何なのよその悪趣味極まりないスーツとマスクは! ネコミミ!? ネコミミなの!?」タッタッ

バットマン「……つまり、私達三人がここでの最後の生存者か」

ドクター『そのようだね。残念だけど……他に生命反応はない。あるのは蠢く魔力反応、そして敵性反応だけだ』

所長「待って、レフは? さっきから気になってたんだけど、なんでロマニが仕切ってるのよ!?」

ドクター『いや、何故と言われても……』

バットマン「死んだ。爆発に巻き込まれて」

所長「……え? 爆発?」

バットマン「そうだ。何者かによって仕掛けられた爆弾によって過半数が吹き飛び、生き残った職員、レイシフト要員は十数名。そうだな、ドクター」

ドクター『ぶ、ブルースくん、こういう事はもうちょっとオブラートに……いや、そうだな。今言った通りです、所長』

所長「……レフも死んだのね。そう。うちじゃ一番優秀だったけど仕方ないわね」

バットマン「……」

所長「何よ」

バットマン「ヒステリーを起こすものとばかり思っていた」

所長「あのねえ、私だって解決に繋がる興奮とそうでない興奮くらいは弁えてるわ。それより、これからの行動指揮は私が取るけど異議無いわね?」

バットマン「無い。好きに指示を出してくれ」

ドクター『こちらも、霊脈とのつながりを得た事でいつでも通信可能になりました! 助けが必要になったら遠慮なく通信を!』

所長「……何にしても、マシュが目覚めない限りはどうしようもないけど。早く目覚めてくれないかしら……」

バットマン「……」

所長「……ところで、その耳は本当に何なの? 猫なの?」

バットマン「………………」

マシュ「……う……」

バットマン「……!」

バットマン(本当に生き返った……!?)

所長「あのダメージから蘇生するなんてなかなか……ね。動けるようになるまであとどれくらい掛かるか分からないけど、それまでキャンプを……」

バットマン「ああ、動かずに守る。……それよりも、マシュは何故蘇生できた? あの傷じゃあ、人間は生存不可能なはずだ。デミ・サーヴァントとは何だ? 魔力とは? 何故『聖杯』とやらはこんな事をする?」

所長「……そうね。部外者を引っ捕まえて協力させてるんだから、まずはそもそもの説明からしなきゃ駄目よね」

バットマン「……」

所長「……長くなる話だから丁度良いわ。ただ、駆け足気味になるけど」

バットマン「構わない。理解する」

所長「頼もしいわね。それじゃあ、まずはサーヴァントから……」

所長「……これがサーヴァント。歴史から生まれた、人間の影よ」

バットマン「……つまり英霊というのは、過去の英雄たちを呼び出して使役する際の呼び名で……聖杯という願望器をめぐって争うためのコマだと」

所長「大雑把に言えばそんな感じね。それで、デミ・サーヴァントっていうのは……」

マシュ「……うっ……」ムクリ

マシュ「……」キョロキョロ

マシュ「ここは……私、死んでない……」

所長「っと、起きたわね。悪いけど、後の説明は帰ってからで良いわね?」

バットマン「……分かった」

所長「マシュ、起きたばかりで悪いけど状況の説明をするわ。のんびりしている時間は無いから納得できなくても納得して頂戴。いいわね」

マシュ「え、え……」

バットマン「……大丈夫だ」

マシュ「……は、はいっ」

マシュ(誰だろう……ネコミミが可愛いけど……)

所長「……ていう事。話は通じたわね?」

マシュ「はい。任務、特異点の元となった聖杯を回収し、無事にカルデアへ帰還を果たす事。了解しました」

所長「それじゃ……ロマニ! 聖杯の位置は割り出せた!?」

ドクター『いえ、それが頑張ってるんですけど、方角くらいしか割り出せなくて……』

バットマン「それだけ分かれば十分だ。すぐに向かう」

所長「ちょ、ちょっと! 私が指揮するって言ったじゃない!」

バットマン「…………」

所長「う……そ、そうね。それ以外に選択肢も無いし、向かうわよ!」

マシュ「行きましょう、マスター」

バットマン「……」

バットマン(マスター……アルフレッドを思い出す)

バットマン(……必ず解決してみせる。アルフレッド)

バットマン「……」スタスタ

所長「……」スタスタ

マシュ「……」スタスタ

ドクター『……』


バットマン「…………」ピタッ

ドクター『止まって! 敵性反応!!』


???「グルアアアアア!!!」


所長「きゃあああああああ!! マシュ! 戦闘体勢!!」

マシュ「了解! マスター、下がってください!」

バットマン「断る」

マシュ「えっ……」

所長「ちょ、ちょっと!! 頭おかしくなったんじゃないの!?」

バットマン「やれる。行くぞ」

マシュ「えっ、えっ……」

???「グルアアアアアオォォォォォ!!!」

バットマン「……フン!」シュバッシィィンン

???「グエッ……」


マシュ「!?」

バットマン「ぼうっとするな! マシュ! 後ろだ!」

マシュ「え……」

???「グオオオオオオオオオ!!」

マシュ「あ……ま、マシュ・キリエライト、戦います!」

???「シャアッ!!」シュバッ

マシュ「くっ……」ガキィ


ドクター『……待て、戦場に高速で反応が近付いてる!!』

ドクター『こ、この反応……冗談じゃないぞ! 覚醒したてのマシュじゃ無理だ、ブルースくんにも! 逃げろ!』

所長「ちょっと、なんだって言うのよ! そんなに騒ぎ立てて、訳くらい話しなさい……よ……」

バットマン「……あれは……」


マシュ「これで……終わりです!」ドゴォ

???「グギャアアアアア……」ドサッ

マシュ「はあ……はあ……やりました、マスター! 敵性体を撃破し……まし……」


影「……」


ドクター『シャドウサーヴァントだ……! これまでのとは比べ物にならない! 撤退しろ、ブルースくん!』

バットマン(シャドウ……サーヴァント)

バットマン(見れば分かる。自分よりも遥かに強い。まるでメタヒューマンのような……無策に飛び掛かっていっても返り討ちが関の山だ)

バットマン「くっ……」グワッ

所長「きゃ、ちょ、ちょっと! 下ろしなさい! 無礼よ!」ジタバタ

バットマン「マシュ! 撤退だ、後方へ……」タッタッタッ……ピタッ


影2「ニガサヌ。 タタカウ マエカラ トウボウ トハ ワラワセル」


マシュ「挟まれました、マスター。逃亡は不可能と判断します……!」

バットマン「……くっ……」ドサッ

所長「いたっ、落とすならもうちょっと優しく……」

バットマン「逃げていろ! 時間を稼ぐ!」ダッ

影「……」バッ

影2「ハハハハ!! ソノ イキヤ ヨシ!!」

マシュ「私も……私だって!!」ダダッ

 蹂躙、という言葉がある。

 黒いスーツで覆われた腹部に蹴りが入り、彼は転がって血を吐いた。痛みをこらえて起き上がる彼の目の前に、影は既に立っている。

 速い。バットマンは咄嗟に右拳に爆破ジェルをスプレーし、前方目掛けて拳を繰り出した。

「ノロイ」

 掌底と拳がかち合い、爆発。バットマンだけが吹き飛び、瓦礫に背中を打ち付けた。更に吐血。右腕の激痛をこらえ、彼は歯を食い縛って顔を上げ、前を見る。
 
 マシュが盾で必死に攻撃を防ぎつつ、二人のシャドウサーヴァントを相手に立ち回っている。それも長くは持たず、彼女は殴られて吹き飛んだ。

「マシュ」

 彼は震える手を伸ばした。燃える瓦礫の向こうに少女が突っ込み、破砕音と粉塵を散らして止まる。

 バットマンは唸りながら立ち上がり、影の前に立ちはだかった。

「……ムダナコト ヲ。ミスミス シヌ カ」
「……」

 彼は実際死ぬつもりだった。隠れる場所もない広所での戦闘、相手は数段格上だ。だが戦いをやめるつもりはない。

 世界を救うという目的のため……死ねばアルフレッドや両親と同じ場所へ行けるのではないかという、微かな希望のため。

「……ナラバ、シネ」

 振り上げられた黒い腕を見上げ、バットマンは不屈の防御姿勢を取った。だがその腕が振り下ろされる事は無かった。

「アンサズ!!」

 誰かが叫んだ。男の声だった。バットマンは咄嗟にそちらを見た。飛来する火の玉を。それはあやまたず、シャドウサーヴァントの頭部に直撃した。

???「おう、間に合ったみてえだな。兄さんよぉ、自殺願望は頂けねえなァ」

バットマン「……お前は」

???「さあなあ、少なくとも敵じゃねえんじゃねえの? そこの影野郎を攻撃したわけだし」

マシュ「……くっ……そちらのかたは」

???「お、いいねえ。可愛い嬢ちゃんだ、役得役得……って言ってる場合じゃねえな」

影「……」ムクリ

影2「フン、キカヌ ワ」

???「ともかく、まだやれるな嬢ちゃん? いっちょ俺と共同戦線と行こうや」

マシュ「……マスター、指示を……」

バットマン「……共に戦う以外に無い。やれるか、マシュ」

マシュ「はい! マシュ・キリエライト、いきます!」

影「……!」

影2「ナメルナ……!!」

???「オラッ、くたばりな!!」ゴッ

影「…………ぐっ……」ドサッ

マシュ「ここ!」ガゴッ

影2「オノレ……ここ、までか……」ドッ

???「よぉっし、なかなかやるじゃねえの嬢ちゃん。でも宝具解放はしねえんだな?」

マシュ「は、はい。まだデミ・サーヴァントとして覚醒したてで……」

???「……フーン、よく分かんねえけどそんなモンか。おい、そっちの兄さんは平気か?」

バットマン「……ああ。助かった」

???「いーっていーって、俺もボランティアで動いてた訳じゃねえし。アンタら、ここの聖杯が狙いだろ?」

バットマン「……何故知っている」

???「サーヴァントってのは耳も良いんだぜ、知っとくべきだったな。ま、俺もアレだ、この聖杯戦争をさっさと終わらせてえってワケ……」

バットマン「……つまり、敵対意志は無いと」

???「かてえ言い方だなぁ、アンタらの味方だっての。俺の名はクー・フーリン、そっちは?」

バットマン「……ブルース。ブルース・ウェイン」

バットマン(クー・フーリン……槍の名手。ゲイ・ボルグの使い手。伝説の人物だ。敵に回れば厄介この上無い……コイツが裏切った時、どう動くのが正解だ?)

クー・フーリン「……目の険しさが変わんねー……おう、そっちの嬢ちゃんは名前何てんだい?」

マシュ「マシュ・キリエライトです! よろしくお願いします!」

クー・フーリン「おう、こっちはもう警戒無しか……なんだか両極端だなぁ」


所長「……戻って来たけど、何、これ……どうなってるの……味方? 味方なの?」

ドクター『……成程。どうも複雑な事情が絡んでいると見た』

クー・フーリン「そうそう、複雑な事情。便利な言葉だよなぁ!」スタスタ

バットマン「……」スタスタ

クー・フーリン「……なあブルースさんよ、いい加減俺の後方5メートルを確保して歩くのやめねえ? 殺気が気になって仕方ねえ……」

バットマン「……」スタスタ

クー・フーリン「無視かよ」

マシュ「す、すみません。マスターは……その……警戒しがちみたいで」

所長「妥当だと思うけど? 真名以外に分かってることもないし」

クー・フーリン「だーっ、だから俺は味方だっての! こうやって聖杯に導いて……」

バットマン「……」

クー・フーリン(信用ねえなあマジで……あ、いや待てよ?)


クー・フーリン「……クックックック……ハァーッハッハッハ!!」

マシュ「ど、どうしたのでしょう。急にベタな悪役じみた笑い声をあげ始めました、クー・フーリンさん……」

バットマン「……」スッ

所長「あの、ブルース。何かある度に私を抱え上げようとするのはやめて」


クー・フーリン「ふふふ……そこまで疑われちゃあ仕方ねえ! 正体を表すとしようじゃねえか! 俺はてめえを殺すために来たんだ、ブルース!!」


マシュ「そ、そうだったのですか!!! 妙にフレンドリーで疑えませんでした!」

バットマン「……」

所長「いや、あの……マシュ?」

クー・フーリン「行くぞマシュ!! せいぜいてめえのマスターを護ってみせろや!!」

マシュ「マスター、指示を! 敵キャスター、来ます!」

バットマン「…………」

マシュ「くっ……」

マシュ(ふざけた空気だと思ってたのに、強い……! この炎、防ぎ切れるものじゃない!)

クー・フーリン「ほらほらどうしたァ! もっと強い守りを見せてみろ、そんな盾じゃあマスターは守り切れねえぞ!」

マシュ「ッ!」ガガッ

クー・フーリン「アンサズ! オラァ!」ボボボッ、ドッガァ

マシュ「うっぐ……」ドガガッ、ズシャア

マシュ(パワーが圧倒的に不足してる! さっきの戦いはブルースさんも戦ってたからあんまり実感しなかったけど……

護るのが、こんなに難しいなんて!)


クー・フーリン「そうとも! 護る戦いってのは苦しいモンだ、マシュ! 今のまんま腑抜けてちゃあ、サーヴァントでもねえブルースに負けっぱなしだぞ!」



バットマン「……」

所長「ね、ねえ。アレ、助けに行かないの?」

バットマン「さっきの戦いの傷が深刻だ。支援には行けない」ギュウウウウ……

所長「そ、そう……(ならなんでそんなに拳握り締めてるのよ……)」


マシュ「ぐぅっ!!」ゴロゴロッ

クー・フーリン「そろそろ決着と行くかァ、くたばりな!! 『ウィッカーマン』!!」キィィィィィィィィイイイイイイ

マシュ「!!!!」ガバッ

マシュ(避けたらブルースさん達に当たる! 回避という選択肢は無い!)

マシュ(だからと言ってまともに受ければ消し炭! あの爆発は受け切れない!)

マシュ(……どうすれば……!)

盾「」カッ

マシュ「! 盾が……」


マシュ(そうだ、私には盾がある。何かを護り、生かすのに最適な盾が)

マシュ(……命を受けたんだ。たとえ偽物でも……なら、ここで負ける訳にはいかない!)

マシュ「いきます! 疑似宝具、展開!! 『人理の礎(ロード・カルデアス)』!!」


盾「」キィィィィィィィィン

ドドォォォォォォォォォォン‼ ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン‼




クー・フーリン「……やっべ、ついつい魔力を注ぎ過ぎちまった。やっちまったかも……」


クー・フーリン「……いや……待て、これは……」


クー・フーリン「これは……!!」

マシュ「…………敵宝具、受け切りました……」シュゥゥゥゥゥ

クー・フーリン「……やるじゃねえの。全開じゃ無かったとはいえ、流石に無傷で受け止められるとは思ってなかったぜ。ちょっとショックだな」ポリポリ

マシュ「クー・フーリンさん……じゃあやっぱり、最初から」

クー・フーリン「トーゼン。本気でやる訳ねえだろ、お前さんの力を引き出すためだよ。狙い以上にやってくれやがって、将来有望だな」

マシュ「……」パァァァァァ

マシュ「あっ、ありがとうございます! 見ていてくれましたか、マスター!!」


バットマン「……」(逃走準備万端)
所長「ちょ、ちょっとブルース、これ本当に空気読めてないから……」ジタバタ


マシュ「……マスター、その手に構えたものは」

バットマン「……グラップネル・ガンだ。これでロープ付きアンカーを射出し、巻き上げ機構で移動する」

マシュ「つまり、逃げる気満々だったと」

バットマン「……」

マシュ「全然信用してくれてないじゃないですか!!!!!!!!!!」

バットマン「…………悪かった」


クー・フーリン「……」ハア
所長「……」ハア

クー・フーリン「……ともかく移動しようぜ、な」

マシュ「むぅ……分かりました」

バットマン「……」

所長(なんで山場を越えたのにこんな空気なのよ……ブルース!! 空気を読みなさい!!)ヒソヒソ

バットマン(……)

クー・フーリン「……あ、そうだ。ブルースさんよ、ちょいと言っとく事がある」

バットマン「何だ」

クー・フーリン「魔術師ってのは、術式の発動中に攻撃受けりゃあ意識が逸れて魔法が途切れる事が大半だ。だからアンタ、こっから先で魔術師に会ったら……」

バットマン「……成程、実践してみよう」

クー・フーリン「おう。まあ精々アンタに敵として会わねえ事を期待しとくぜ」

バットマン「……こちらとしても、そう祈る」

クー・フーリン「……へっ、素直じゃねえヤツ」

クー・フーリン「さて、この洞窟を抜けりゃあ聖杯だ。勿論タダじゃあ手に入らねえ、護り手ってのがある……」

バットマン「どんなヤツだ」

クー・フーリン「正直言ってこれまでのシャドウサーヴァントなどとは比べ物にならねえ。剣の一振りで腑抜けのサーヴァントなら上半身とおさらば」

マシュ「……」ゴクリ

クー・フーリン「……まあそう深刻な顔をしなさんな。俺も居るし、お前さんだって実戦経験も積んできたろ」

ドクター『ちょっと待った! その洞窟の奥、何か居るぞ!』

クー・フーリン「あー、まあ無駄話もここまでに。いわゆる護り手の護り手が居てだな……いや、信奉者と言うべきか」

影「……」

クー・フーリン「おう、相変わらず聖剣使いを護ってんのか、テメエは」

影「……ふん。信奉者になった覚えは無いがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

クー・フーリン「け、言ってくれるぜ。おう兄さん達、もうちょい気張りなよ。コイツも一筋縄じゃ行かねえんだ、守りが必要だぜ」

バットマン「マシュ」

マシュ「いけます」

クー・フーリン「行くぜ、アンサズ!!」ボボゥ‼

影「ッ!!」ガッ

クー・フーリン(ち、洞窟内が暗くて影のアイツが見にくくてしょうがねえ……! つうか炎の魔術を発射したら洞窟内が照らされんのに、終わったら途端に見えなくなりやがる!)

クー・フーリン(撃った後だけ標的が見える銃にどんな意味があんだよチクショー!!)

影「キャスターは向いてないんじゃないか?」

クー・フーリン「やかましい野郎だ、燃え尽きてから撤回しやがれ」


バットマン(クー・フーリン)ヒソヒソ

クー・フーリン(うおっ、なんだよ!? 急に背後に出てくんな!)

バットマン(暫く炎の魔術は打ち止めにしてくれ。考えがある)

クー・フーリン(ちっ……三十秒だけだぞ!)

バットマン(十分だ)

影「……どうした、撃ってこないのか」

クー・フーリン「テメエ相手に魔術なんざ必要ねえんだよ、掛かって来いや」クイクイ

影「……口がデカいのはクラスが変わっても治らないか!」ババッ

クー・フーリン「チィッ」ガガガッ

マシュ「させません!」バッ

影「まだまだ動きが甘い!」ヒュドッ

マシュ「あぐっ……!?」ドサッ


クー・フーリン「おいおい峰打ちかよ、女には甘ったるい野郎だな!」

影「キミには容赦しないようにしよう!」バババッ

クー・フーリン「ああそうかい!」ガッガッガギン

影「そこ!」シュバッ

クー・フーリン「!! しまっ……!?」ガィン


ドシュッ


影「……? なんだ、この……ぐっ!?」シュルルルルルルル

影「ま、巻き上げられ……!? まさか!?」

影(あのマスターが後ろに……暗くて、視認できなかった……!? サーヴァントの視力でも!?)


バットマン「今だ! クー・フーリン!」


クー・フーリン「……! オウ! 『焼き尽くせ、木々の巨人』……」


クー・フーリン「『ウィッカーマン』!!」

ドォォォォォォォォォ……

バットマン「……無事か、マシュ」

マシュ「は、はい……平気です」

マシュ(宝具が使えるようになったからって、舞い上がってた。自分の戦闘能力が急に上がる訳じゃない……分かってたハズなのに)

バットマン「……」

所長「どう、ドクター? この辺りの反応は?」

ドクター『……もう確認できない。そこは安全だ』

所長「そう、なら良かった。休憩にしましょう」

バットマン「いや、必要ない。このまま聖杯を回収に行く」

所長「このまま……ってあなたねえ、今の自分の顔色見てみたらどうなのよ」

バットマン「……」

マシュ「……私も、休息を提案します、マスター。真っ青ですよ」

クー・フーリン「ま、多数決だ。休めよ、ブルース」

バットマン「……分かった」

ブルース「……」

クー・フーリン「……アンタ、マスク外したらそんな顔してたのか」

ブルース「……ああ」

クー・フーリン「そっちの方が好感持てるぜ、青年。俺はもっと殺伐とした顔してると思ってたぜ」

ブルース「……」

マシュ(……まままマスクを取ったら普通にイケメンでした……なんでモノローグでも敬語になってるのか分かりませんが多分混乱してるのだと思います)

マシュ(えーっと、えーっと、今までどうやって話してましたっけ……マスクを着け直して欲しい……)

マシュ「あ、蜂蜜たっぷりの紅茶が沸きました」スッ

ブルース「ああ、有難う」パシ

マシュ「いえ」

マシュ(あれ? こんな感じでしたっけ?)


所長「……生きたまま帰れるのかしら、カルデアに」

ブルース「必ず生きて帰らせる。それが第一歩の任務だ」

所長「……ええ。そうね、これが最後の一歩じゃないものね」

ブルース「当然だ。世界を救うまでは戦いが続く。覚悟は済んでいる」

所長「……」

所長(……初めて会った時から思ってたけど、コイツの精神はどうなってるのよ……狂ってるの? 猫のコスプレしてる奴がまともとは思ってないけど……)


クー・フーリン「……」

マシュ「……」

所長「……」

ブルース「……」スッ


バットマン「そろそろ出発しよう。休憩は十分だ」スクッ

???「……ほう、これは」

バットマン「ドクター、目の前に黒い騎士が居る。コイツが聖杯を持っているのか」

ドクター『待って、サーチしてる……うん、合ってる。今、ブルースくんの目の目に居るのが、この特異点を終わらせるカギを持つ存在だ』

バットマン「……」

バットマン(話が通用……するなら、クー・フーリンがとっくに奪っているか。武力行使しかありえない)


???「我が名はアルトリア。アルトリア・ペンドラゴン。そこの娘、名前は何という」

マシュ「え……わ、私ですか? 私はマシュ・キリエライトです」

アルトリア「マシュ。面白い奴だ。そしてそこの……猫のコスプレの男」

バットマン「……ブルース・ウェインだ」

アルトリア「ふむ、覚えた。地獄行きの前に面白いものが見れた、良い余興だ。構えろ」

クー・フーリン「……言っとくが、アイツの剣はまともに食らうなよ。勢いを逸らして直撃をさける、それが命だ」ギシッ

マシュ「了解……!」ザシッ


アルトリア「行くぞ!」バッ

バットマン「……!」

 黒い騎士が剣を振り上げ、振り下ろす。盾を頭上に構えながら、マシュはゾクリとした予感に身を任せ、身体を僅かに横にずらした。

 そして、直撃。火花。マシュは歯を食い縛る。腕がガクガクと震え、痺れを伝える。剣はそのまま振り下ろされ、地面を砕く。

「上手い」

 アルトリアの口から賛辞が漏れる。その手に握られた剣が跳ね上がり、マシュの喉を狙う。防御直後のマシュは体勢を立て直せない……

 だがその瞬間、アルトリアの剣は跳ね返り、背後から迫っていた炎の玉を切り裂いた。

「ちっ、無詠唱ならやれると思ったんだけどなァ!」
「甘い」

 興奮で僅かに口元を緩めながら、アルトリアは剣を振り回す。マシュは盾でそれを防ぎ、数メートル弾き飛ばされる。

「がら空きだぞ、キャスター!」
「やべっ……」

 そのまま凄まじい勢いでこちらに駆け出すアルトリアを見、キャスターのこめかみに冷や汗が伝う。

 だがまたしても、アルトリアは素早く剣を打ち振り、虚空を薙ぎ払った。火花が散り、小さな何かが宙を舞う。

「……なんだこれは」

 アルトリアはそれを見た。コウモリの形をした手裏剣だ。それの投擲元を見た。自分と同じ、黒い騎士だ。

「フン……」

 アルトリアは鼻を鳴らし、魔力を集中させた。そして詠唱を開始する。

「『卑王鉄槌』」

ざわり。空気がゆらぐ。

「おいおいチクショウ、消し炭は御免だぜ!」

 キャスターはバットマンを庇うように回り込み、魔力を練り上げる。アルトリアは口元を歪めたまま、詠唱を続ける。

「『極光は反転する』」
「クッソ、間に合わねえ……!」

 キャスターは歯を食い縛る。その目の前、マシュが立った。

 マシュとアルトリアの視線がかち合った。上等だ。二人の目が光った。

「『光を飲め』!」
「『宝具、展開』!!」

 マシュは見ていた。相手が宝具を打ち込むそのポイントを。アルトリアの目の光は、闇の奔流に飲まれて行った。

「『エクスカリバー・モルガーン』!!」
「『ロード・カルデアス』!!」

 輝く盾が顕現した。闇の奔流が直撃した。

「直撃を……直撃を、逸らす!」

 マシュは叫んだ。闇の津波は僅かに盾の中心から逸れ、虚空へと流れ始める。アルトリアが目を見開く。

「……!!」

 盾が火花を散らす。アルトリアの魔力が尽きて行く。マシュはまっすぐに相手を見据える。真っ直ぐに!

 そして……そして、やがて奔流が止まった。アルトリアは皮肉の笑みを浮かべた。

  マシュの後方、魔術を完成させたキャスターは笑う。燃え盛る木の巨人が立ち上がる。

「……見事」

 アルトリアは、再度、賛辞を送った。マシュは煙を上げる盾を構えたまま、アルトリアを見据えていた。

「ウィッカーマン!」

 魔術師の叫びの直後、大爆発が巻き起こった。

クー・フーリン「……おっし、これで終わりだな。ったく、長いお役目だったぜ」シュウシュウシュウ……

バットマン「……何故お前まで消える。ダメージは受けていなかったように思うが」

クー・フーリン「役目を終えた英霊は消えるのさ、当然だろ。今回の役目はゲームへの参加……俺以外の最後の参加者が消えて、ようやくゲームオーバーってワケだ」

バットマン「……そうか」

クー・フーリン「……そうだ」

バットマン「……色々と、助かった。礼を言う」

クー・フーリン「……おう、また何かあったら呼べや。アンタの猫のコスプレだけは理解しかねるが、肝の座りっぷりは嫌いじゃねえからよ」

バットマン「……ああ。またな」

クー・フーリン「おう、またな……」シュゥゥゥゥゥ……

バットマン「……」

所長「……よし、見つけたわ。アレが今回の聖杯ね」

バットマン「……待て。嫌な予感がする」

所長「はあ? ここまで来てどんな嫌な……予感が……」



???「……まさか猫のコスプレをしただけの部外者がここまでやるとはね。想定外であり、私の寛容さの許容外だ」



マシュ「……れ、レフ教授!?」

ちょっと離脱。

おつ、楽しみ

バッツは神とか化け物とか異世界人や異星人との
戦闘経験がハンパないからなぁ

すまん、ちょっと休眠しようと思ったらガチ寝してこんな時間だ。残りの書き溜めを投下する。

ドクター『レフ!? レフ教授だって、彼がそこに!?』

レフ「うん? その声はロマニ君かな? キミも生き残ってしまったのか。

すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく……」


レフ「どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな」

バットマン「――――!!」

バットマン「……全員、下がれ。あれは危険だ」

所長「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!」

所長「良かった、あなたがいなくなったらわたし、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」タッタッ

バットマン「やめろ! 戻れ! そいつは……」


レフ「ああオルガマリー、オルガマリー。キミも大変だったようだね、同情するよ……」

所長「そう、そうなの! 予想外の事ばかりで……でもいいの、あなたがいれば何とかなるわよね?」

わよね? だって今までだって……」

レフ「ああ、もちろん。予想外の事ばかりで頭にくるよ。特に……」

レフ「キミの生存がね。まったく、爆弾はキミの足元に設置したのに、生きているなんて」


オルガマリー「……え?」

レフ「いや、もう肉体は死んでるのかな? 成程、肉体のくびきから解放されたキミの魂だけが、この地にレイシフトされたのか。全く」

レフ「全く、皮肉だな。キミは死んだ事ではじめて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ」

オルガマリー「……え……」

レフ「さて、キミをこのまま殺すのは簡単だが、それではあまりに芸がない。死ぬ前にキミの生涯をかけたカルデアが……

どうなっているのか、見せてあげよう」ブゥン

所長「え……カルデアスが、真っ赤に……嘘、でしょ。ただの虚像よね?」

レフ「無論、本物だとも。人類の生存を示す青色は絶え、球体全てが真っ赤に染まる。あれが今回のミッションが引き起こした結果だよ」

バットマン(……この角度……やれるか。いや、やるしかない)

レフ「良かったねえマリー? 今回もまた、キミのいたらなさが悲劇を呼び起こしたわけだ!」

所長「ふ……ふざけないで! 私の責任じゃない、わたしは失敗してない、わたしはしんでなんかいない……!

あんた、どこの誰なのよ!? わたしのカルデアスに何をしたっていうのよぉ……!」

レフ「アレはキミの、ではない。まったく……最期まで耳障りな小娘だったなぁ、キミは」

オルガマリー「なっ……身体が、宙に……何かに引っ張られて……」

レフ「言っただろう、そこはいまカルデアに繋がっていると。

このまま殺すのは簡単だが、それでは芸がない。最後にキミの望みをかなえてあげよう」


レフ「キミの宝物とやらに触れるといい。なに、私からの慈悲だと思ってくれたまえ」


レフ「……ま、分子レベルで分解される地獄の具現だがね。遠慮なく、無限の死を味わいたまえ」


所長「いや……いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!」

所長「だってまだ……」シュポッガシッ


所長「いった……え?」


バットマン「踏ん張れ……グラップネルガンのアンカーは痛いが強力だ……!」ググググググググ……

所長「いた、いだだだだ、いだだだだだだ!! ちょっ、ちょっと!! 胸が!! 胸が外れる!」ギギギギギギギギ……

バットマン「(引き込む力が予想以上に強い!)マシュ! 手伝ってくれ!」ググググググググ……

マシュ「は、はいっ!!」ガシッ、ググッ



レフ「……虫けらがよく足掻く。ならばその命綱を、ちょいっと切って……」ストッ

レフ「っつ……なんだこれは、コウモリの……手裏剣?」


バットマン「爆破ジェル付きだ」ポチッ


ドドォォォォォォォォォォン‼

レフ「ぐわあああああああ!?」

所長「げぶっ」ドサッ

聖杯「」カラン


マシュ「……! マシュ・キリエライト、聖杯を確認! 回収します!」ダダッ


レフ「おのれ虫けら……!」クワッ

バットマン「通さんぞ」バササッ

レフ「コケに……しやがって……!」

バットマン「…………」

レフ「…………」

バットマン「……」


所長「ごほっ、ごほっ……た、たすかった、の……?」ムクッ

マシュ「オルガマリー所長!!」タッタッ

バットマン「……三対一だが、まだやるか」

レフ「……フン、何が三対一だ。こんなもの、物の数にも……」

バットマン「……」ジリッ

レフ「……チッ、興が覚めた」


レフ「オルガマリー所長、この空間が崩壊するまでの短い余生をどうぞお楽しみあれ!」ブゥン

バットマン「……消えたか。レフ・ライノール」

マシュ「……はい。今回の特異点は任務完了です。しかしマスター、所長が……」

バットマン「……」

所長「……そっか、私……あっちで死んじゃったから、もう戻れないんだ……」

バットマン「……」

マシュ「オルガマリー所長……」

バットマン「……必ず生きて連れて帰る。約束だ」

所長「……そんな事、言ったって」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

マシュ「……! 空間が崩壊を開始! ドクター! 帰還を!」

ドクター『今全速力で進めてる! 進めてるけど……空間の崩壊が早いかも! 二人とも、自我を強く保って!』

バットマン「マシュ、聖杯を渡してくれ」

マシュ「え、これ……でも、マスター」

バットマン「大丈夫だ」

マシュ「……はい!」スッ

バットマン「よし」パシ

所長「……」

バットマン「所長、自我を強く保て。帰るんだ」

所長「帰るって……どこに?」

バットマン「カルデアに。戦う為に」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ゴゥン……

特異点F 炎上汚染都市 冬木 

生存者 ブルース・ウェイン マシュ・キリエライト オルガマリー・アニムスフィア

死者  多数

序章は一応、これで終わりです。始まったばかりのクソSSですがどうぞよろしく……

あ、今日はこれで打ち止めです。再開はまた今度です

>>51 あんまり過度な期待はしないでプリーズ(懇願)
>>52 人間が一番人間離れしてるっていう矛盾大好きです

バットマンがサーヴァントかと思ったらマスターだった。
サーヴァントならライダー辺りだろうか

ヴィランだけじゃなくヒーローにも対抗策常備してる位だしな、特にクリプトナイト
GOだと割と同鯖と二戦三戦する機会あるし楽しみ

JLは結成されていたのかとか、スーパーマンはいたのかとか、ウェイン社の認知度が低すぎるとか色々気になるところがあるので続きに期待



理性を保つバーサーカーの土方
人殺しをしないアサシンのバットマン的な

これは期待

胸が外れるって何処にアンカー巻いたんですかねそこのとこ詳しく

日付が変わった……奴が来る。俺には見える……

>>65 ここは大穴のルーラーを……(異端派)
>>66 バッメンは敵だけじゃなく味方にも対策を練るイイ子(なお両者に不信を生む模様)
>>67 時系列はほら……曖昧な方が楽しめるし(作者が)
>>68 気配遮断EX持ってそうだしスキル構成とか考えると面白そう。不殺の誓いEXとか
>>69 ……キミは知り過ぎた(ズドンズドン

『殺しは出来ないだと? そいつが一体何人俺達の仲間を殺したと思ってる!?』

『どけ、ブルース! 俺達は分かり合えない! お前は信用できない!』

『私達は仲間じゃなかったの……? なんでこんな武器が必要なの!? 仲間に武器を向けるの!?』

『すまない、ブルース……もう終わりだ、俺達は』

『ハハハハハ、がっかりするなよバッツ! 俺は確かにロビン小僧を殺したが? それは大した問題じゃないさ、誓うよ、お前はすぐに立ち直る! 
なんたって冷血漢だもんなぁ? ある朝、何気なく食べたひとつのサンドイッチが思ったより美味かったら……ポカン! 哀れロビンは記憶の彼方だ! ヒャハハハハハハハ!!』

『お前は狂っている』

『お前こそ狂ってる!!』

『やめろ』

『やめろ、映すな』

『見たくない』

『ブルース、大丈夫よ。今日のオペラは……』

『全く、ブルースは臆病だな。大丈夫、闇の中には何も居ない』


ザアザア……ザアザア

『あなた、ブルースが風邪をひいてしまうわ。早くタクシーでも捕まえましょう』

『そうだな、そこの裏路地を通って……』スタスタ

『止まれ……財布を寄越せ』

『お、お父さん……』

『くっ、この……!』ガシッ

『抵抗するんじゃねえ! この……!』カチッ

パン、パン

『……ぐっ、逃げろマーサ、ブルース……』ドサッ

『あ、あなた! いや! そんな!』

『うるせえ! 騒ぐんじゃねえ!!』カチッ、パン‼

『あ……』ドサッ

『ちくしょう、大人しくしねえから……馬鹿な連中だ!!』タッタッ

『……』

『……』

『おとう、さん……おかあさん……』

ザアザア、ザアザア……

>>70
全レス気持ち悪い

空調機「」サアサア……

ブルース「……」

???「お、目が覚めたかい? 真っ青な顔でずっと唸り続けてるものだから病気でもひっかけて帰って来たかと思ったよ、ブルースくん」

ブルース「ここは……」ムクリ

???「ここはカルデアの宿泊棟、キミの部屋さ! 気軽にマイルームと呼びたまえ、実は装飾には私も一枚噛んでて……」

ブルース「お前は」

???「よくぞ訊いてくれました! 訊いて驚くことなかれ、私の名前はレオナルド・ダ・ヴィンチ! どうだい、世紀の大天才が目の前に居るんだぜ? 感想は?」

ブルース「……以前のレイシフトはどうなった。所長は。無事なのか」

レオナルド「……キミ、リアクションが希薄って言われない? もうちょっと人生楽しんでもバチは当たらないんじゃないかな?」

ブルース「マシュと所長はどうした」

レオナルド「……成程、変り者とは聞いてたけど、私以上かもね。安心するといい、オルガマリー・アニムスフィア、マシュ・キリエライトの両名は無事だよ」

ブルース「……そうか」

>>73 すまん、正直初スレでどうしたらいいやら分かってない。なんか助言あったら頼む

やりたいようにやったらええ

SSさえ面白けりゃ文句はない

>>76 そうなんか……サンクス。それでも一応気を付けるわ、どっちもありがとう

>>75
少なくとも黙々と投下だけしてりゃ叩かれはしない
後は答えた方がいい質問だけ答えてりゃブルースのように見かけはスマートになれる

>>78 おっけ、黙って投下な。取り敢えず当面の目標はブルースで頑張るわ……とかやってたら全レスになっちゃうからこの話ここまでで。ありがとう

レオナルド「それで、どうやってオルガマリーをこちらに転送させたのかな?」

ブルース「……」

レオナルド「彼女が死んだのは彼女自身でよーく分かっていた。それを覆すとなると……」

ブルース「……」

レオナルド「……キミ、使ったね? レイシフト先で入手したあの聖杯を」

ブルース「ああ、そうだ」

レオナルド「おおう、即答か。躊躇いとか無かったのかな?」

ブルース「……何に対する躊躇いだ?」

レオナルド「例えば、それは……命を軽々しく復活させる事へのためらいだよ、ブルースくん」

ブルース「…………」

レオナルド「常人ならば躊躇う。その決断は、願望器を手渡されて僅か数秒で下せるものじゃない」

レオナルド「常人ならば狼狽える。その重責は、一人の精神で抱え込めるものじゃない」

レオナルド「常人ならば放棄する。あの場にはマシュも居た。彼女に押し付ける事も出来ただろう」

レオナルド「……この全てをクリアして、素早く聖杯に願いをかける? いやいや、少し信じがたい」

ブルース「ならどうした。信じがたい事が起こらないとでも?」

レオナルド「……いや、そうは言ってないが……」ジッ

ブルース「……」

レオナルド「……キミは……」

ブルース「……」

レオナルド「……キミは、狂っているのかい?」

ブルース「……」

レオナルド「……これには即答してもらえないんだね、ブルースくん」

ブルース「……」

レオナルド「いや、良い。別に答えが欲しかったわけじゃないんだ。
ともかく、寝起きに不躾な質疑応答を強いて悪かった、ブルースくん。こっちに来たまえ、食堂にご飯が出来てるよ」

ブルース「…………」

ブルース「……」スタスタ

レオナルド「いやあ、それにしても今日も照明の調子がいい! 私の発明した発電機が上手く稼働しているようで何よりだ!」スタスタ

マシュ「あ、マスター。それにダ・ヴィンチさん、おはようございます」

レオナルド「おはようマシュ、よく眠れたかな?」

マシュ「ええ、今から朝ご飯ですか? 私もご一緒しても?」

レオナルド「構わないとも、いいよねブルースくん?」

ブルース「……ああ」スタスタ

マシュ「…………」チラッ

ブルース「…………?」クル

マシュ「!」スタスタスタスタスタスタ


レオナルド「お、おーいマシュくん。ちょっと……一緒に食べるならもうちょっとゆっくり歩いてほしいんだけど」スタスタ

ドクター「あ、ブルースくん。マシュ、それにダ・ヴィンチちゃんも。おはよう、ここ空いてるよ」

マシュ「おはようございます、ドクター。失礼しますね」

レオナルド「おはようロマニ、今日もくせ毛がすごいぞぅ~??」チョンチョン

ドクター「やめてくれ、触らないでくれ。これは僕のチャームポイントなんだ」

レオナルド「どうだか……おっと」ガシッ


ブルース「……放してもらえるか」ググググ

レオナルド「なーに一人だけ向こうの席に行こうとしてるのかな? 皆で一緒に食べなきゃ駄目だぜ?」ググググ

ブルース「……」

レオナルド「イェーイ、粘り勝ち」

ドクター「あ、あははは。そういえばブルース、体調に変化はないかな? 変な夢を見たり、頭がふらついたりは?」

ブルース「……」

『逃げろマーサ、ブルース……』


ブルース「いや、無い。健康だ」

マシュ「…………」

ドクター「そうか、それは何よりだ! なにしろ急なデミ・サーヴァントとの契約だったわけだし、キミは三日間眠りっぱなしだったんだ!体調に未知の変化をきたす可能性も否定できないからね!」

ブルース「ああ。これからも重々気を付ける」

ドクター「うん、そうしてくれ。……それじゃ、マシュはどうかな?」

マシュ「えっ、わたし……いえ、私も平気です。いつも通り」

ドクター「ふむ、良かった。レイシフト要員は全員準備万端だね」


職員A「ドクター、カルデアの残エネルギー量の事で少し話が……」コソコソ


ドクター「……ごめんよ、ご飯の時に。三人で食べててくれ、少し離れる」スクッ

レオナルド「いや、エネルギーの話なら私も行こう。役に立てるよ」ガタッ

ドクター「そうかな、ごめんよ……じゃあマシュ、ブルースは朝ご飯を食べ終わったら自由に過ごしてね」


ブルース「…………」

マシュ「…………」

ブルース「……」カチャカチャ

マシュ「……」モグモグ

ブルース(……マシュ・キリエライト。盾のサーヴァント。技術的に今は稚拙だが、成長すれば恐ろしい使い手になる……)

ブルース(……敵に回った時、どう戦う? 弱点は何だ?)ジッ

マシュ「……???」

マシュ(な、何かすごく視線を感じます……)

マシュ「……あっ、そうだ、マスター」


所長「ちょっと失礼するわよ、ここ空いてるわよね?」ガタガタガタッ

ブルース「……」

マシュ「あ、オルガマリー所長。おはようございます」

所長「……」

マシュ(え、無言で距離を取られました……何故でしょうか)

所長「……ごほん。ええ、おはようマシュ」

マシュ「??? は、はい……」

ブルース「…………」

ブルース(オルガマリー・アニムスフィア。情報不足。戦えないわけでは無さそうだが……)

ブルース(……調査を続け、弱点を探っておくべきか)ジッ


所長「……その、ブルース。そんなに見られると食べにくいんだけど」

ブルース「悪かった」カチャカチャ

所長「いえ、別に悪くは……良いんだけど……」

ブルース「……身体に異常は無いか、所長」

所長「何よそれ。アンタまでロマニみたいな事訊いてくるのね……平気よ、おかげさまで」

ブルース「……そうか」

所長「…………」

ブルース「…………」

マシュ「…………」

マシュ(……誰も自分から喋り出さない!!!!)ドーン

ブルース「…………」

所長「…………」

マシュ「あ、あのですねマスター!?」(裏声)

ブルース「なんだ」カチャカチャ

マシュ「今日、この後、お暇でしたら……訓練に付き合っていただけませんか!?」

ブルース「……」ピタッ


ブルース(何が狙いだ? 本当にただの訓練か? 訓練に乗じて伝えたい事でもあるのか? それとも……)ザワリ

マシュ(なんで訓練のお付き合いをお願いしただけで殺気立つんですか!?)ビクビク


ブルース「……」

マシュ「……えっ、えっと……」


所長「良いじゃない、訓練。付き合ってやったら?」モグモグ


ブルース「人間では力不足だ」


マシュ「! い、いえ! マスターの動きは、その、何と言うか……人間離れしてるので! とても参考になります!」


ブルース「……」

マシュ「……駄目、でしょうか」

ブルース「……分かった。手加減はできないが」

マシュ「はっ、はい! よろしくお願いします!」パァァァァァ


所長「あぁ、二人とも。カルデアのエネルギー残量に不安があるから、しばらく戦闘シミュレーターは稼働停止よ」

マシュ「わ、分かりました! つまり、ブルースさんと直接組手……になるんですかね?」

ブルース「……」


所長「……頼むから、死人を出さないように気を付けてね。責任を負いかねるわ」

……………………

ブルース「…………」ガチャガチャ、ガチャリ

ブルース「……」ガチャッ、ガチ

マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……」


マシュ「……よろしくお願いします、マスター!」バッ

マシュ(あの猫のコスプレしないと戦えないのかな……)

バットマン「構えろ。まずは構えから見る」

マシュ「は、はい!」ガシャリ

バットマン「……」

バットマン(盾に力が入り過ぎだ。これでは振り回される)

バットマン「良いか、…………、…………」


――――

マシュ「こ、こうですか!」ガシャッ

バットマン「……かなり良くなった」


バットマン(実際、飲み込みがかなり早い。あと数か月もあれば教える事がなくなる)

マシュ(構えだけでこんなに苦労するなんて……やっぱり、まだまだ私は弱いんだ……)


バットマン「……次はこの『バットラング』を投げる。徐々に枚数を多くする。全て防いでみせろ」

マシュ「は、はいっ!」ガシャッ

バットマン「……行くぞ……」ググッ……シュパッ‼

………………

マシュ「ハァーッ……ハァーッ……」ドサリ

バットマン「……」

バットマン(投擲したバットラングの8割を防いだ。見込み以上だ。恐ろしいほどの学習能力)

バットマン(遠からず、驚異的な戦士になることは明白……やはり、弱点は調べておくべきか)


バットマン「立て、マシュ。まだ終わっていない。次は組手だ」

マシュ「くっ……わ、分かりました……!」ヨロヨロ

バットマン「盾を使って戦うのなら、その重さを利用しない手はない。ただし振り回されるのは違う。良いか……」


――――

バットマン「シィッ!!」シュガガッ

マシュ「くっ……」ドドッ

バットマン「……!」ゴォッ

マシュ「え? きゃっ……」ドサッ


バットマン「遅い。盾が地面に付いていた。力任せに戦うな……もう一度だ」

マシュ「……はい!」スクッ

――――

バットマン「盾だけに頼るな。盾を奪われても、まだ武器は残っている」

マシュ「はい!」ハアハア

バットマン「もう一度だ」

――――

バットマン「動きに無駄が多い。敵はそれを見逃さない、もっと限られた時間の中に身体をねじ込め」

マシュ「はいっ!」ハア、ハア

バットマン「もう一度だ」

――――

バットマン「敵の考えを読め。今の手に掛かるのは思考が安易すぎる証拠だ、もっと敵を恐れろ」

マシュ「は、いっ……!」ゼイゼイ

バットマン「もう一度だ」

――――

バットマン「足元を見ろ。敵の動きはそれで大方の予測が……」

マシュ「…………はぃ……」ゼーヒュー、ゼーヒュー

バットマン「……そろそろ休みを入れよう」

バットマン(……熱くなり過ぎた。まるでロビンを相棒にしていた時のような……)

バットマン(……ロビン……)

バットマン(……ロビンも、あの炎に巻き込まれたのだろうか。ゴッサムシティの他の悪党と同じように、燃やされてしまったのだろうか)

バットマン(……何故、私だけが助かった)


マシュ「あの、ブルースさん」ハア、ハア

バットマン「どうした」

マシュ「いえ、あの……あれだけ動いても、息が全く乱れていないので……そのスーツに秘密があったりするんですか?」

バットマン「……このスーツに身体能力の促進効果はない。ただ、着ていると落ち着くだけだ」

マシュ「は、はあ……」


マシュ(猫耳のコスプレで落ち着く人……少し普通ではないのかもしれません)


バットマン「……」

マシュ「……あの」

バットマン「何だ」

マシュ「ブルースさんって……一体、何者なんですか?」


バットマン「……」

バットマン「……知りたいのか」


『おとう、さん……おかあさん……』


マシュ「……っ……はい」

バットマン「…………私は……」


『あー、あー! 緊急呼び出しだ、マシュくん、ブルースくん! 至急管制室に来てくれたまえ! 繰り返す、マシュくん、ブルースくん! 至急管制室へ!』

バットマン「! 行くぞ、マシュ」スクッ

マシュ「あっ、はい!!」バッ


マシュ(……結局、聞きそびれてしまった。あの夢で泣いてた少年は、誰なのかを……)

レオナルド「早速集まってくれてありがとう、猫のコスプレがイカすね!」

バットマン「…………」

ドクター「冗談言ってる場合じゃないって。ブルースくん、マシュくん、レイシフトだ。過去に設置された聖杯の時代が特定できた」

マシュ「ほ、本当ですか!」

所長「嘘は言わないわよ。次の目的地は中世のフランスよ、そこに聖杯の存在が確認されたわ」

マシュ「ちゅ、中世と言うと……」

バットマン「宗教的にかなり立て込んでいた時期か。あちらでの発言には気を付けた方が良さそうだ」

ドクター「そうだね、その通り。迂闊な発言一つで火あぶり、そんな事が本当に行われてる時代だ」

レオナルド「本当、うっかり変な事は言えないよね。宗教関連で敵を作ると馬鹿を見るよ」


所長「えー、ごほん。二人を呼んだけど、これは今すぐレイシフトしようっていう事じゃないわ」

バットマン「……?」

バットマン「なら何だ、用件は」

所長「話を聞きなさい。実は、カルデアの残エネルギー量がかなり落ち込んでて……レイシフトを維持するのにはかなり電力が必要なの」

バットマン「足りないのか」

所長「そうね、足りないわ。あと一歩というところなんだけど、どうしても足りない。そこで、レイシフトする人数を減らして……」

ドクター「……ブルースくんとマシュ、どちらかはこっちに残ってもらおうっていう案が出たんだ」


バットマン「不可能だ」
マシュ「無理です!」

レオナルド「だよねー。ほら言ったじゃん、私言ったじゃん」

誰も言わないが今の所長の状態はどうなってるんだ?ゾンビ?

バットマン「……電力量が足りないんだな?」

レオナルド「うん、こっちとしても資材さえあれば発電機も作るんだけどその資材がね……」

バットマン「ならウェインテックから少し運んで来る。あそこには小型リアクターもあったはずだ」

ドクター「ちょ、ちょっとブルースくん……世界的な大企業相手に盗みを働く宣言なんて、キミも肝が据わってるなぁ」

バットマン「……自分の企業だ。盗みにはならない」

ドクター「ははは、ジョークがきつ……え?」


バットマン「私がウェインテックの社長だ。資材なら補給できる」


マシュ「……え?」
ドクター「……え?」
所長「……え?」


レオナルド「あはは、皆して口開けちゃって。見ろよブルース、あの絵面ちょっと面白くないか? 
……ところで、ウェインテックって何?」

バットマン「…………」

>>101 一応完全体での復活を果たしたという事にしておいてくれさい

ドクター「……うぇうぇうぇウェインテックの社長って言ったら、あのプレイボーイで億万長者の……」

所長「ああああああの、世界の企業が束になっても敵わない財力の……」

マシュ「どどどどどもりすぎデスヨ皆さん、素数を数えて落ち着いて……1,2,3,4,5,6……」

バットマン「……」


――――


バットマン「……落ち着いたか」

ドクター「うん、ようやく落ち着いた。コップの水を5杯くらい飲み干しちゃったけど」

レオナルド「水もタダじゃないんだぞ~、気を付けたまえ」

ドクター「分かってる、分かってるけどこんな事って……」

所長「……」(復旧作業中)



バットマン「…………名前で気付かなかったのか」

ドクター「いや、社長の名前なんていちいち覚えてないし……あっ、ごめんよ! 傷付ける意図はないんだ!」

マシュ「でも、そうですね……何処かで聞いた事がある名前だな、とは思ってたのに……」

所長「……」(復旧作業中)


バットマン「そんな事はどうでもいい。問題は、ウェインテックに資材を取りに行くとして……バットウィングの飛行可能距離だ」

レオナルド「ほうほう、バットウィング……」

バットマン「積載可能重量はおよそ5トン。おそらく一度の往復で十分な資材は入手できる」

バットマン「……だが、問題は燃料、そして機体のメンテナンスだ。ゴッサムシティからここまでの飛行はかなり無理をおしてきた」

バットマン「優秀なメカニックがここに居るなら……」

レオナルド「………………」キラキラキラキラキラキラキラキラ

バットマン「…………」

レオナルド「………………」キラキラキラキラキラキラキラキラ

バットマン「……………………レオナルd」

レオナルド「はいはーいはーーーーい!!! もっちろん、そんな面白そうな改造はダ・ヴィンチちゃんにお任せに決まってる! 
いやあキミは賢い選択をしたよブルース!! やっぱり天才の輝きってのは表に出てしまうものなんだね!!」


バットマン「…………」

バットマン「改造しろとは言ってn……」

レオナルド「で、そのバットウィング? は何処にあるんだい!? 早速修理に行かなきゃね!」ワクワクワクワク

バットマン「……カルデアのすぐ近く、出口から40メートルの地点に自動着陸したらしい。いいか、改造するなら先にエンジンを抜いてから……」

レオナルド「出口から40メートルだね、了解! じゃあちょっと行ってくるよ、晩御飯までには戻ると思うから!!」


バットマン「……」

ドクター「……い、いやぁ、うん。彼女、魔改造の腕は超一流だから」

マシュ「……心中お察しします、マスター」

所長「……はっ!?(復旧完了)
ぶ、ブルースが億万長者になった夢を見てたわ、ごめんなさい……」


バットマン「………………」

バットマン「この時間に不足電力量の話を詳しく聴いておきたい。ドクター、所長。構わないか」

ドクター「ああ、勿論だ。座って話そう、詳しくなると長いしね」

所長「ええ、話しておくわ。レイシフト一回につきどれほどの電力が消費されるかも話しておかないと駄目ですし」


マシュ「あ、じゃあ私はお茶を!」タッタッ

所長「……わ、わたしは要らないから二人の分だけ……」ビクビク

マシュ「……?? わ、分かりました……?」


――1時間後――


ドクター「……だから、どうしてもここで余剰電力が必要になって来る」

所長「本来なら必要ないかもしれないけど、この電力が無ければ保険が利かなくなるの。つまり、少しでも存在証明を失敗すると、貴方達が戻って来れなくなってしまう」

バットマン「成程、つまりここでバッファをもたせて……」

ドクター「そうだ、余裕は大事だからね。命と電力は秤にかけられないし」

バットマン「分かった」


タッタッタッ

バターン‼


レオナルド「改造が完成したよ、見てくれ! 最高にイカすデザインに仕上がったぜ!」キラキラキラキラキラキラキラキラ

バットマン「…………早いな」

ドクター(マスク越しでも分かるくらい露骨に嫌そうな顔になった……気の毒になぁ)ヤレヤレ

レオナルド「見ろよ、この黄金の羽を! そしてこの動力が完全に電力に代替されたクリーンなエンジン部分を!」

レオナルド「出力が落ちる? ノンノン、そんな懸念は天才にとっては全くナンセンスだね! 見たまえ、この機動力! むしろ前のエンジンより良くなってるぜ! わずかな光で即充電も可能!」

レオナルド「宙を翔ける金色の機体、名付けるならそう、『黄金バッt』

バットマン「バットウィングだ」

レオナルド「えぇ~? でも『黄金バッt』

マシュ「ばっ、バットウィングにしておきましょう! ダ・ヴィンチさんのその名前は何か不味い気がします!」

レオナルド「うーん、天才のセンスは凡人には理解しがたいという事かな……残念だが仕方ない、バットウィングにしておこう」



バットマン「では早速行ってくる。ここからなら東南アジア支部が近い」

マシュ「わ、私も行って良いですか?」

バットマン「……いや、残ってここを守っていろ。何かが無いとも限らない」

マシュ「っ……わかりました、では……気を付けて下さい、マスター」

バットマン「ああ」


バットウィング「」ウィーン

ガタガタッ
ドサッ

バットマン(成程、コックピットも改良してある)

コンピューター『お帰りなさいませ』

バットマン「手動操縦」

コンピューター『了解、手動操縦』

ゴォォォォォォォォ……キィィィィィィィィン……

バットマン(垂直離陸、そこからの発進もスムーズ……メカニックとしての腕は確かだな)

レオナルド『やっほーブルース! 快適な旅を送れているかな?』

バットマン「……何をしている」ポチッポチッ

レオナルド『バットウィングの電脳基盤部分を少しいじってカルデアとの無線を繋げておいたよ! いやいや感謝はしなくても良いのさ、天才からのサービスだと思ってくれ!』

バットマン「そうか」カチャカチャ、グイッ

レオナルド『……本当につれないなぁキミは! 今回、キミが一人旅だから少しでも不安を和らげようとしてるんだぜ?』

バットマン「……面白そうな装置があるからいじってしまえ、と」ポチポチ……カチャッ

レオナルド『ギクッ』

バットマン「……別に構わないが、操縦の邪魔はやめてくれ」

レオナルド『も、勿論だとも! その辺は弁えてるさ!』

バットマン「……怪しいものだ」ハァ


…………

…………

バットマン(……どこもかしこも変わらない。火の海が地上を飲み込んでいる……)

バットマン(果たしてウェインテックにどれほど使える資材があるか……)


レオナルド『おっ、そろそろ目的地の周辺かな? 降下の準備はOK?』


バットマン「いける。……いや、待て……」

レオナルド『どうしたんだい、ブルース』


バットマン「地上に人が居る。降下する」

レオナルド『えぇっ!? ちょちょ、ちょっと待ちなよ、こっちからは確認できない……』

バットマン「自動操縦」

コンピューター『了解、自動操縦モード。お気を付けて』ウィーン



バットマン「……フッ!」バッ、バサササササササ

 真っ赤な景色の中心に、黒い騎士は降り立った。着地の風が周囲の炎を薙ぐ。

 うずくまった姿勢から立ち上がり、騎士は前方、燃え盛る風景の中の背中を見る。

(見られている)

 その人物がこちらを向いていないにも関わらず、バットマンには確信があった。見られている。今、ではない。昨日今日、という話でもない。

 ただ、人類が生まれた時から見られていた……奇妙な、悪寒にも似た錯覚が彼を包んでいた。

「何者だ」

 バットマンの声を聞き、その人物は身体を震わせた。笑ったようにも、驚いて震えたようにも見えた。

 そして、真っ白な髪を揺らしながら、その人物は振り向いた。真っ赤な目が、何も映していない目が、バットマンを見た。

 勝てない。戦意を持つ前から、バットマンは察した。警戒など無意味だと。『アレ』は……人間から遠く離れた場所にいる。


「何者だ」


 だが、彼は問うた。炎の中、『それ』は笑みで頬を引き裂き、口を開いた。


「我が名はソロモン」


 パチリ。炎が爆ぜた。

今日はここまでです、寝ますね()

バットマン「……ソロモンだと? 古代イスラエルの、あのソロモンか」ジリッ

ソロモン「ククク、見苦しいぞブルース。警戒など無意味だ、分かっているだろう……ああ、そのソロモンだとも。魔術王、ソロモンだ」

バットマン「……その魔術王が何故ここに居る」

ソロモン「無論、貴様と話をするために、だ」

バットマン「私と……話?」

ソロモン「クク……そうだ、話だ。この惨劇についての説明と……貴様が何故生き残ったか、その説明をしてやろうというのだ」

バットマン「……!!」

バットマン「お前がこの事態を引き起こした犯人か!」

ソロモン「つまらん言い方をするな、興が覚めるぞ。犯人ではない。創造主だ」

バットマン「何が創造主だ、世界を破壊しつくすのが創造だとでも!?」

ソロモン「ハハハハハハ! 創造の前に破壊有り、当然だ! 人間などという愚かな出来損ないの生き物は破壊されて当然だ!」

バットマン「出来損ないだと……!?」

ソロモン「出来損ないだ! ……その事実は貴様自身、よく分かっているハズだ」

バットマン「…………」

ソロモン「なあ、そうだろう? 貴様の両親が死んだのも、人間という存在のせいじゃないか」

バットマン「……っ!」

ソロモン「限りある命! 苦しみ抜いて果てる狂気! 人生は美しい、限りがあるからこそ……などと美辞麗句で飾り付けてはいるが。貴様の両親は薄汚い路地裏で、コソ泥に殺されたじゃないか」

バットマン「黙れ……!」

ソロモン「美しい死にざま? 違うな、ただ弾丸に腹を貫かれて死んだだけだ! 命乞いして財布を渡していれば良かったのに、無駄死にだ!」

バットマン「黙れ!!」

ソロモン「これはすべて貴様の心の内にある真実だ!」

バットマン「違う!!」

ソロモン「何が違うものか!!」

バットマン「……」ヨロッ

ソロモン「ブルース。世界は狂っている……貴様は狂っていない。分かるだろう? 貴様と私はよく似ている」

バットマン「似ている……だと?」

ソロモン「死は恐ろしい。死は苦しい。死は認めたくない。私達は、死を恐れている」

バットマン「!!」

ソロモン「だからこそだ。ゴッサムシティで腐った犯罪者を相手に、それでも殺人を犯そうとしない貴様を見て……私を理解できる、と直感した。
だからこそ、貴様は生かされた。人理焼却の際、貴様だけを生かすように……苦労したのだ」

バットマン「…………」

ソロモン「こちらへ来い、ブルース。共に新たな人類を作り出そう。無限の命を生み出そうではないか。二度と貴様の両親の二の舞は起こらない」

バットマン「……私は……」

ソロモン「…………」

バットマン「…………私は」

ソロモン「……」

バットマン「……私は……」


バットマン(……)ピッピッ


ソロモン「…………」

バットマン「……お断りだ!」


バットウィング『武装展開、標的直下』バババババババババ


ソロモン「……それが貴様の答えか」ズドドドドドドド

バットマン(ガトリング砲が通用していない……!?)

ソロモン「ククク、良いだろう。今回は見逃してやる……だが、そういつまでも私の問いから逃げられるとは思わない事だ」ニヤリ

ソロモン「また会おう、ブルース・ウェイン」ブゥン


バットマン「……」

バットウィング「」ウィーン

バットマン「……」バッ

ドサッ

コンピューター『お帰りなさいませ』

レオナルド『無事だったのかい、ブルース!? どうしたのさ、飛び降りたと思ったら急に武装を展開させて……一体何があったんだい!?』

バットマン「……何もない。敵と遭遇、交戦していた」

レオナルド『そ、そうか……まあ無事なら良かったんだ。さっき言ってた人影は?』

バットマン「……目の錯覚だった。このままウェインテックへ直行する」ポチッポチッ、グイッ


バットウィング「」キィィィィィィィィン

…………

マシュ「ま、マスターが敵と交戦!? そ、それで無事だったんですか!?」

レオナルド「ああ、無事じゃないなら無線連絡はできないからね。全く、いつも冷静沈着で何を考えているのやら」

所長「……」バシッ

レオナルド「あっ、ちょっと、その無線機は壊れやすいんだからもっと丁重に……」


所長「ブルース! アンタ何やってんのよこの馬鹿! 敵と交戦するなら生身は最悪の条件でしょう!!」グワッ


ドクター「うわわわ……」キーン
マシュ「ひえっ……」キーン
レオナルド「うおう、ワイルド……」キーン


バットマン『……生身ではない。バットウィングを使った』

所長「そんな屁理屈が通ると思ってるの!? 貴方はカルデア最後のレイシフト要員なの、人類最後の希望なのよ!? もっと自分を重く扱いなさい!」

バットマン『……』

所長「……スーッ、ハーッ……。こちらの予測も甘かったわ。次からはマシュを連れて行かせます。絶対に。いいわね?」

バットマン『……了解した』ブツッ


所長「フン、分かってないだろうけど次からは連れて行かせるわ」


ドクター「ひょえぇ……所長ってあんなに顔を真っ赤にして怒鳴るのか……」

マシュ「ちょ、ちょっと怖すぎましたね……あんなに怒るなんて」

レオナルド「無線機のマイク、壊れてないかなぁこれ……」カチャカチャ

…………

バットマン(人類最後の希望……人類を救う最後の手段)

バットマン(……だが、ソロモンの言葉も否定できない。命が無限になれば、悲劇は二度と起こらない……)

バットマン(……トーマス、マーサ……)

バットマン(その選択を迫られた時、私に決断が下せるのだろうか)

バットマン(何が間違っていて、何が正解なのか……)

バットマン(見分ける事が、できるのか?)


コンピューター『到着しました。ホバリングに切り替えます』


バットマン「…………」ガチャッ

バットマン「……」バッ、バサササササササ

…………

マシュ「……遅いですね、マスター」

レオナルド「うーん、時間的にはそろそろ帰って来てもいいくらいの時間なんだけどね」

ドクター「ひょっとしたら、怒られて帰りにくくなってたり……」アハハ


所長「……」ピクッガチャン


マシュ「お、オルガマリー所長!? ふ、服がコーヒーまみれに……」

所長「……そうなのかしら。私のせい? そうかも……怒鳴っちゃったし……」ブツブツ

ドクター「い、いやだなぁ冗談ですよ冗談……」

所長「……」ブツブツブツブツ


ドクター(うわーわわー、なんか押しちゃ駄目なスイッチ押したかもしれないぞぅ……ブルースくん、早く帰って来てくれ~!!)


職員B「! 周辺レーダーに感あり! これは……バットウィングです、ネコミ……ブルースさんだ!」


マシュ「む、迎えに行きます!」ダッ

所長「わっ、私も!!」ダダッ

バットウィング「」ゴォォォォォォォォ……

バットマン「……」ガチャッ、スタッ


バットマン(大型リアクター1つ、小型リアクター3つ、資材はまんべんなく大量に……これで当分は保つはずだ)


マシュ「お帰りなさい、マスター!」タッタッタッ

バットマン「マシュ。このコンテナを運ぶ必要がある、手伝いを頼みたい」

マシュ「りょ、了解です!(本当に5トン一杯持って帰って来てる……)」


所長「……お、おかえり」

バットマン「……ああ。勝手な行動を取ってすまない」

所長「あ、そ、そう……いや、反省してるなら良いわ! ……わ、わたしもちょっと、言い過ぎたから……」ボソボソ

バットマン「手を借りたい。所員を集めてくれ、このコンテナを運ぶのにはもう少し人数が必要だ」

所長「あ、え? に、人数? すぐに集めて来るわ!」タッタッ


マシュ「うぅぅぅぅぅぅぅぅ……お、重いいぃぃ……!!」ジリジリジリ


バットマン(一人で押せている……サーヴァントというのはつくづく……)

バットマン(……しかし、手伝うか……)ガシッ

職員達「「「せーのっ!」」」グッ‼‼

コンテナ「」ズリズリズリ

職員A「もう一回!」

職員達「「「せーのっ!」」」グググッ‼‼

コンテナ「」ズリズリズリ


マシュ「うぅぅぅぅぅぅ……!!」ググググググググ

コンテナ「」ズズズズズズズズ


ドクター「力仕事は苦手なんだけどなあ!! 重いし手は痛いし!!」クッ

コンテナ「」シーン

ドクター「ちょっとは動いてよ!」ガーン


バットマン「……」グググッ

コンテナ「」ズズ……ズズ……



所長「うぅん……! くぅっ……う、動きなさいよ!」ダンダン

コンテナ「」シーン



レオナルド「ここで我が発明品、『引き寄せクレーンくん』の出番だ! これをこうして……」ポチポチ

コンテナ「」ズズズズズズズズッ‼

レオナルド「うわっあぶなっ!!」

コンテナ「」ゴォン!


レオナルド「あははは、勢いが良すぎたな。改良の余地ありだね」

バットマン「……運搬完了だ」

…………

職員B「……後は、ここをこうして……」ガチャガチャ、カチリ

リアクター「」グゥゥゥゥゥゥゥゥン……

職員B「やった、やりました!! カルデア内の貯蓄エネルギー量が跳ね上がりました、これならレイシフト可能です!」


ドクター「やった! これでようやく解決に乗り出せるぞぅ!」

レオナルド「まあ元はと言えば私の発明のお陰みたいなところもあるし、感謝はいつでも受け付けているよ!」


バットマン「で、レイシフトはいつだ。今すぐに行くのか」

所長「いいえ、マスターである貴方に多少の疲労が認められる以上、明日に持ち越しよ。カルデアとしても今回が初の能動的特異点サポートになるから、職員ともミーティングをし直しておきたいし」

ドクター「うん、そうなるね。ブルース、マシュ、キミはもう休んでいてくれ。レイシフトの日程はまた追って連絡する」

マシュ「は、はいっ!」

バットマン「……分かった」

バットマン「……」スタスタ

レオナルド「あっ、ちょっと待ったブルース。そのスーツ、ちょっと私に預けてみないかい?」

バットマン「……これを? 何故?」

レオナルド「ほら、前回のレイシフトでボロボロになってるじゃないか。補修ついでに改良とかもしてあげるけど、どうだい?」

バットマン「カラーリングを決して変えないと誓えるなら頼もう」

レオナルド「うっ……か、変えないよ、勿論さ! 天才であるダ・ヴィンチちゃんが、デザインはそのままに素晴らしい機能をつけてあげよう!」

バットマン「……」スッ


ブルース「なら頼む。ただし、あまり妙な機能はつけないでくれ」

レオナルド「もちろん! 出来上がったらキミのところへ持って行くから、是非審査してくれたまえ!」


ブルース(……ルーシャスと一緒に居たころを思い出す)

ブルース「……」フッ

…………

ブルース「……300……301……302……303……」グッ……グッ……


ブルース(モンスターとの戦い。シャドウサーヴァントとの戦い。アルトリアとの戦い)

ブルース(全て、及第点未満の戦いぶりだ。鍛え直すしかない。連中は全員、ウブーより……ベインより強い)


ブルース「……400……401……」グッ……グッ……


ブルース(マシュだけには頼れない。次のレイシフト先で裏切られないとも限らない)


ブルース「……554……555……」グッ……グッ……


………………


ブルース「……中世フランスにおいては、様々な王朝が現れ……」ペラリ、ペラリ

ブルース「……宗教対立が国外との戦争を引き起こす事も……」ペラリ、ペラリ

ブルース「……」チラッ


『03:12』

ブルース(もうこんな時間か……)

ブルース(そろそろ休むとしよう。根を詰めすぎて体調を崩しては元も子もない)


ピピピピ‼ ピピピピ‼

ブルース「……」ムクリ

ブルース「……」チラッ

『07:00』

ピーンポーンパーンポーン

レオナルド『おはようカルデア、お目覚めかな? 朝から館内放送で爽やかな目覚めを邪魔してすまないが、職員、レイシフト要員はみんな管制室に集まってもらいたい。朝食を取りながらミーティングを行うよ』


ブルース「……」スクッ

ブルース「……」スタスタ


…………


マシュ「あ、マスター。おはようございます」スタスタ

ブルース「ああ、おはよう」スタスタ

マシュ「……」

ブルース「……?」チラッ


マシュ「あ、ご、ごめんなさい。なんでもないんです」


ブルース「……怖いのか、マシュ」

マシュ「っ!」ビクッ

ブルース「安心しろ。お前の腕は確かだ。それに一人じゃない」

マシュ「え、えぇ……ありがとう、ございます」

ブルース「……」

ウィーン

レオナルド「おはよう諸君! 今日も寡黙な顔立ちで何より!」

ブルース「……」

マシュ「おはようございます、ダ・ヴィンチさん」


ドクター「おはよう、ブルースくん、マシュ。今日も体調に異常はないかな?」

ブルース「ああ。万全だ」

マシュ「はいっ、いつでもレイシフトできます!」


 スタスタ

所長「集まってもらってありがとう。これから第一回レイシフト前、最後のミーティングを開こうと思います。全員居るわね? ……よし」

マシュ「……」モグモグ

ドクター「……」パクパク

レオナルド「あっそうだブルース、スーツは完成したから持って行ってくれ」モグモグ

ブルース「そうか、ありがとう」


所長「そこ! 無駄話をしない!」

レオナルド「ごめんなさい!」
ブルース「すまない」

所長「まったく……それで、この令呪システムだけど。今回運び込まれた三つの小型リアクター分を消費すれば、最大で三つは使えるわ。だから、ブルース」

ブルース「……?」


所長「聞いてなかったの!? だ・か・ら!! サーヴァントの宝具を即解放させたい時、傷を癒してやりたい時! その令呪が使えるって言ったの!!」

ブルース「……令呪?」

所長「…………」プルプルプルプル


職員A(あー……)
職員B(ネコミミさん……)
職員C(やっちまったよ……)


ドクター「……」(素早く机の下に隠れる)
マシュ「……」(頭を抱えて対ショック体勢を取る)
レオナルド「……」(耳栓を耳に詰める)

所長「ミーティングは!! 何のために!! あると思ってんの!!!」ドッガァァァァァァァアン

所長「ハァーッ……ハァーッ……いい、使う時は……『令呪を以て命ずる』……こうよ……ハァーッ……ハァーッ……」ゼイゼイ

ブルース「……分かった」

所長「……ふぅ。マスターの身体強化ができる使い方もあるけど、基本はサーヴァントに使う事。分かってるわね? 生身は……」

ブルース「分かってる、生身での戦闘はできるだけ避ける」

所長「……なら良いわ。次はサポート班!」

職員達「「「はい!」」」


レオナルド「ま、令呪なんて奥の手もいいとこだからね。あんまり使う機会は無いだろうけど、念のためさ」

ブルース「……」

マシュ「多分、このミーティングの後、右手の甲に刻印を投影されます。それが令呪の目安になるので、参考にはなるかと」

ブルース「……分かった」


所長「……以上が、今回のレイシフトにおける概要となります! 何か質問がある者は!?」

シーン……

所長「……よし、それじゃあレイシフト要員の準備に移るわよ。目標時刻は09:00! それまでに準備を整え、コフィンにスタンバイする事!」

ブルース「分かった」

マシュ「分かりました!」

レオナルド「見たまえブルース、スーツは完璧に直しておいた!」

ブルース「……」スッ

レオナルド「防御力も多少上げた。特にブレーサーは多少の衝撃じゃあ壊れないよ、シャドウサーヴァントの一撃くらいじゃとてもじゃないが無理だね」

ブルース「……礼を言う、レオナルド。完璧だ」

レオナルド「! 良いのさ、また帰って来た時に補修と改善をさせてくれればね!」

ブルース「ああ……また頼む」フッ

ブルース「……」ガチャガチャ、ガチャリ。ガチッ

ブルース「……」ガチ、ガチャ。カチャッ、シュッ

マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……」

ドクター「時刻は08:57。ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライトの両名ともにコフィンにスタンバイ完了」

職員A「存在証明式を走らせ始めました! 両名の肉体を観測開始!」

職員B「電子機器類に異常無し! 稼働式、全て正常に作動!」

職員C「シバによる時代特定、良好! いつでもレイシフトできます!」

ドクター「所長、あとは貴女の決断だけです」


所長「……レイシフトへのカウントダウンを開始しなさい!」

職員達「「「了解、カウントダウン開始!」」」


ドクター「さーて、ここからだぞ……」ガチガチ

レオナルド「ほら、肩の力を抜いて……キミが一番緊張してどうするのさ」カタカタカタカタ、カタカタ。タンッ

コフィン内「」シーン……


バットマン「……」


ドクター『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』


バットマン「……」


ドクター『3! 2! 1!』

バットマン「……」グッ


『0!』

第一章

邪竜百年戦争 オルレアン

今日はこれで終わりです……お付き合い有難うございました。

コメント返してないけど全部見てるし有難いです、あとバッメンはJLでも脆い人間だから良いんだ間違いない。俺は詳しいんだ

サワサワ……チュン、チュンチュン……サワサワ……

バットマン「…………」ムクリ

マシュ「ここは……レイシフトが完了したのでしょうか」ムクリ

バットマン「そのようだ。身体に異常はないか」

マシュ「は、はい! 私は大丈夫です!」

バットマン「ドクター、念のためバイタルサインのチェックを頼む」

ドクター『今やってる……うん、異常なしだ。二人とも無事にレイシフトできたようだね。年代特定も進んでる、少しそこで待機してくれ』

バットマン「了解した」


マシュ「……あ……ま、マスター……」

バットマン「どうした」

マシュ「上を……空を見て下さい!」

バットマン「……? ……!!」

マシュ「ドクター、ドクター!! 上空に謎の光帯が……!」

ドクター『……なんだアレは……巨大な光の輪……? いや、大きすぎるぞアレ! 下手をすれば北米大陸くらいはある!』

バットマン「アレは……」

ドクター『いや、ともかく、アレの解析はこちらに任せてくれ。キミたちは現地の調査に専念してくれ』

バットマン「了解。まずやるべき事は……」

マシュ「霊脈の探索、この時代の人間との接触、周囲の探索……山ほどあります。一つずつこなしましょう」

バットマン「ああ。……いや、警戒しろマシュ」

マシュ「……?」


バットマン「向こうの丘の中腹、何かが動いている。あれは……」

マシュ「兵士……ですね。どうしますか? 接触しますか?」

バットマン「……慎重に行こう」

兵士A「くそ、魔女の連中め……滅茶苦茶にやりやがって……」

兵士B「ぐっ……もう無理だ、あんな化け物に勝てるわけがねえよ……ぐっ」ドサッ

兵士C「おい、しっかりしろ、おい! もう少しで砦だ、治療を受けられる!」ガシッ


マシュ「ヘイ、エクスキューズミー。こんにちは。わたしたちは旅の者ですが――」

兵士D「……」

マシュ「? あの、すみません……?」

バットマン「すまないが、話を……」

兵士D「ヒッ……敵襲! 敵襲ーーーー!!」


バットマン「……」


兵士A「化け物め、こんなところまで追ってきやがって!」

兵士C「やっちまえ!」

兵士達「「「おう!!」」」


ドクター『ヤッホー、手が空いたから様子を見に……って、なんでまわりを武装集団に取り囲まれてるんだい!?』


マシュ「き、気を落とさないで下さい!」

バットマン「……落ち着かせるために、少しだけショックを与える。殺しは無しだ」スッ

マシュ「りょ、了解です!」ガシャッ

バットマン「……」ガシッドゴキィ

兵士A「ウッ」ドサッ

バットマン「……」ガッベキィ

兵士D「グエッ……」ドシャア



マシュ「フッ!」ドッ

兵士C「ギャアッ!?」ドドッ

マシュ「やあっ!」ヒュンッ

兵士E「いぎゃ!?」ドムッ


兵士B「も、もう駄目だぁ!! にげろぉぉぉ!!」


兵士達「「「うわああああああああ!!!」」」ダダダダ


バットマン「……少しだけやり過ぎた」

マシュ「お、追いましょう! 次は刺激しないように!」

マシュ「兵士達が逃げて行く先には……あれは砦でしょうか? ぼろぼろですが……」


ドクター『キミたちが大立ち回りしている間に年代特定が済んだよ! そっちは1431年のフランスだ、休戦中の!』

マシュ「休戦中? ですが、あの砦はどう見ても大戦真っ只中の……」

バットマン「……恐らく、それが特異点の原因だ。今、この国は何かと戦っている。負傷兵を抱えて砦に逃げ帰るなど、休戦中の振る舞いではない」

マシュ「えぇっ!? という事は、この特異点は国同士の戦争に巻き込まれると……?」

バットマン「決めつけるには時期尚早だ。話を聞きに行くぞ」スタスタ

マシュ「あっ、待って下さい! せめてマスクは脱いで……」タッタッ

バットマン「……」スッ

ブルース「少し話を聞きたい、ムシュー。構わないか」スタスタ


兵士A「ひっ!? あ、アンタは……さっきの化け物か! よ、寄るな!」

マシュ「お、落ち着いて下さい! 危害を加えるつもりはありません!」

兵士A「敵じゃ……ないのか……?」ドサッ


ドクター『……随分簡単に信用するね。理性を取り戻したのか、あるいは……戦う気力もないほど萎え切っているのか』


マシュ「この砦の有様……シャルル七世は休戦条約を結ばなかったのですか?」

兵士B「シャルル王? 知らんのか、アンタ」


兵士B「王なら死んだよ。魔女の炎に焼かれた」



…………

???「ジル。彼を連れて来て頂戴」

ジル「はい、畏まりました」

???「手は出してないでしょうね、ジル?」

ジル「もちろんですとも。ですが、どうするかはお考えですかな?」

???「……フン、決まってるわ。考えるまでもない些末事です」


――――

???A「……な、なんだ!? 此処は、どこで、お前達は一体……!? 答えろ、答えないか! そこの……ヒィッ!?」ガタガタ

???「ああ、ピエール! ピエール・コーション司教! お会いしとうございました! 貴方の顔を忘れた日は、このジャンヌ・ダルク一日とてございません!」

ピエール「バカな。バカな、バカな、バカな、バカな……!」


ピエール「お、お、お、お前は……ジャンヌ・ダルク!? 有り得ない! 有り得るハズがない!」

ピエール「三日前に死んだハズだ! 殺したハズだ! じ……」


ジャンヌ・ダルク?「地獄に堕ちたハズだ、と?」

ジャンヌ・ダルク?「かもしれませんね、司教」

ピエール「これは、夢だ。悪夢だ。悪夢以外の何だというのだ……!」

ジル「おやおや、現実から逃避し始めましたぞ。これはいけない。気付けをしなくては」ゴッ


ピエール「ぎゃあああああ!? ひっ、ひっ、ひぃっ……!」

ジャンヌ・ダルク?「さあ、どうします司教? 十字架を握り、天に祈りを捧げなくて良いのですか? 私を罵り、嘲り、踏み付け、蹂躙したくてよいのですか!? 勇敢な獅子のように吼えなくても良いのですか!?」


ピエール「た……」


ジャンヌ・ダルク?「た?」


ピエール「たす、けて。助けてください」ボロボロ


ピエール「何でもします。助けてください、お願いします……!」

ジャンヌ・ダルク?「あ――アハハハハハ!! ねえ、聞いたジル!? 助けて下さい、助けて下さいですって!!」

ジャンヌ・ダルク?「私を縛り、私を嗤い、私を焼いたこの司教様が!」

ジャンヌ・ダルク?「私は虫のように殺されるのだと、慈愛に満ちた眼差しで語った司教様が、命乞いをしてるなんて!」


ジャンヌ・ダルク?「ああ……悲しみで泣いてしまいそう。だって、それでは何も救われない」

ジャンヌ・ダルク?「そんな紙のような信仰では天の主には届かない。そんな羽のような信念では大地には芽吹かない」

ジャンヌ・ダルク?「神に縋ることすら忘れ、魔女へ貶めた私に命乞いするなど、信徒の風上にも置けません」

ジャンヌ・ダルク?「わかりますか、司教? 貴方は今、自分のことを異端者だと証言してしまったのです」


ジャンヌ・ダルク?「……ほら、思い出して司教。異端をどういう刑に処すか、貴方は知っているでしょう?」ニヤリ


ピエール「……!? 嫌……嫌だ、嫌だ、嫌だ!! 助け……たすけ、てっ……!」

ジャンヌ・ダルク?「残念。救いは品切れです。この時代にはまだ……」


???「まあ待てよ、魔女サマ……」

ジャンヌ・ダルク?「……チッ。また貴方の面倒な性格が出てるみたいね」

???「面倒かどうかじゃねえ、問題はフェアかどうかだ……コイツは命乞いをしてる。生きたいと言ってる。なら、チャンスをやらねえとな……」

ジャンヌ・ダルク?「……フン、良いわ。せいぜいそのケチなコインでその屑の命運を決めてあげれば?」

ピエール「あ……ああ、ありがとう、ありがとう!! 感謝するよ、お前は恩人だ……」ガシッ

???「おっとぉ、まだ生存と決まったワケじゃねえぞ。見ろ……このコインを」スッ

ピエール「……?」


???「ニブい野郎だな? 焼け焦げてる方……こっちが死で、この綺麗な女神サマが見えてる方が生だ。いいか、これからコイントスしてやる……」

ピエール「……そ、そんな! 待ってくれ! 死にたくない!」

???「オイ、俺はチャンスをやってんだぜ? このコインでテメエの命を五分五分まで持って行ってやってるのに……そんなに嫌なら、魔女サマに譲るが?」


ジャンヌ・ダルク?「……」ニヤリ


ピエール「ひっ……わ、分かった! こ、コインだ、コインにする!!」

???「あぁ、賢明だぜ司教サマ……」

???「ではジャッジだ! テメエの罪はここで決まる!! 生存か、死刑か! 陪審員の皆さんはどうぞ静粛に! 公平な……裁きの時間だ」

ピエール「…………すまなかった、ゆるしてくれ、私がわるかった……」ガタガタガタガタ

???「…………」キィン

???「……」パシッ


ピエール「…………ど、どうなんだ!?」ガタガタガタガタ

???「……ああ、おめでとう司教サマ」ニヤリ

ピエール「ほ、本当か!? た、たすかっ」


ドォン


???「ここで人生とはお別れだ」カチャリ

ピエール「」ドサッ


ジャンヌ・ダルク?「終わったかしら?」

???「ああ、満足だ」

ジャンヌ・ダルク?「なんでこんな厄介なものが召喚されてしまったのかしら……次の戦場からは貴方も出てもらうわよ、トゥーフェイス」


トゥーフェイス「……ああ、勿論だ」

…………

バットマン「だが、1431年には既にジャンヌ・ダルクは焼かれ、死んでいたハズだ」

兵士A「ああ、だけど生き返ったんだ! 悪魔と取引して!」

マシュ「悪魔……?」

バットマン「それを見たのか?」

兵士B「……俺はオルレアン包囲戦と式典に参加した。だからよく覚えてる」

兵士B「髪や肌の色は異なるが、アレは紛れもなくかつての聖女様だ」

兵士B「イングランドに捕らえられ、火刑に処されたと聞いて俺達は憤りに震えたものさ……ゲホッ、ゲホ」

兵士A「おい、もう喋るな……」


マシュ「……先程言っていた、悪魔とは一体」


ドクター『……待った! 何かが近付いてる、超高速で……この反応は……!!』


バットマン(羽ばたきの音が聞こえる。有翼だ)

ドクター『ワイバーンだ! 群れだぞ……!』

マシュ「行きましょう、マスター!」

バットマン「目視した。対処を始める」ダッ


ワイバーン達「「「ゴギャアアアアアアアア!!!」」」

ワイバーンA「ガアアアアアアッ!!」

兵士C「くそ、やれ、やれぇ!! 突っ込め!!」


バットマン(あれに肉体での攻撃は悪手。まずは地面に引きずりおろす……グラップネルガンを使う)

バットマン「フッ!」バシュッ

ワイバーンB「グゲッ!?」ズドッ

バットマン「オォォォォォ!!!」グググイッ

ワイバーンB「グギャアアアアア!!!」ドッサァァァアン

バットマン「今だ! マシュ!」

マシュ「やああっ!!」ガガッ

ワイバーンB「ぐげ……」シュウシュウシュウ



兵士A「お前は逃げてろ!! 戦えないだろ!」

兵士B「ちくしょう……ちくしょう……」ズリズリ


ワイバーンC「ゴギャアアアアアアアア!!」バサッ

兵士B「しまっ……」

ワイバーンC「ガアアアアアアッ!!」ブワァァァァァッ


兵士B(ちくしょう、炎が……)

兵士A「ぐっ!!」ガバッ

兵士B「なっ……お前何やってんだ!!」

兵士A「ぐ、ぐわあああああああああ!!」

ワイバーンC「ギャアアアアアアス!!」


バットマン「フッ」バサササササササッ、ドゴォ

ワイバーンC「ギッ……」グラリ

バットマン「まだだ」クルッドドッ

ワイバーンC「……」ドサッ


バットマン「無事か」

兵士A「あ、ああ、恩に着る……」

兵士B「無事じゃねえだろ馬鹿! 何やってんだ!」

ワイバーン「ゴギャアアアアアアアア!!」

兵士B「ちくしょう、ちくしょうアイツら何体来やがる……無理だ! 勝てっこねえ! アンタらだけでも逃げろ!」

バットマン「……」

???「そこの御方! 武器を取って!」

兵士B「……!?」

???「私と共に! 戦いましょう!」


マシュ「あ、あの方は……?」

ドクター『おおう、サーヴァントだ! しかし反応が弱いな……彼女は一体』


バットマン「何者かは知らんが、やれるのか」

???「もちろんです!」

バットマン「行くぞ」

???「ええ!」


ワイバーン達「「「ギャアアアアアアス!!」」」

マシュ「はぁっ、はぁっ……やりました、全敵性体を撃破!」


???「ふぅ……怪我はありませんか?」

兵士C「えぇ、有難う御座います。あの、よろしければ名前……!?」

兵士C「そんな、貴女は……いや、お前は! 逃げろ! 魔女が出たぞ!!」ダダダッ

マシュ「え、魔女……?」

バットマン「……」

バットマン「あの兵士の反応から察するに、お前がジャンヌ・ダルクか」

ジャンヌ「……えぇ。先程は助けて頂き、ありがとうございます」

ジャンヌ「私はサーヴァント。ルーラー、真名をジャンヌ・ダルクと言います」

マシュ「で、ですが貴女は、魔女になったと……」

ジャンヌ「……その話は、後で。彼らの前で話すことでもありません」


兵士達「「「……」」」


ジャンヌ「こちらへ。お願いします」

マシュ「……マスター」

バットマン「行くぞ、貴重な手掛かりだ」

………………

スタスタ……スタスタ……ザッザッ、ザッザッザッ

バットマン「森の中にもモンスターが居た事を考えると、かなり侵略は進んでいるようだな」

ジャンヌ「えぇ。見た通り、兵士の士気は最低レベルです。長く続く、一方的な苦しい蹂躙……もはや、事は一刻を争います」

バットマン「……」

ジャンヌ「この辺りで、落ち着きましょう」

ドクター『周囲に敵性体反応なし。安全だね』


――――

マシュ「貴女は、正規の英霊ではないのですか?」

ジャンヌ「……そうですね。まずはその事からはっきりさせましょう」


ジャンヌ「私は確かにサーヴァントです。クラスもルーラー、そのことは理解できています」

ジャンヌ「しかし、本来与えられるべき聖杯戦争に関する知識が、大部分存在していません。知識だけではなく、ステータスも……対サーヴァント用の令呪も、真名看破もできません」


バットマン「お前はいつこちらに来た? サーヴァントなら……召喚、というのを通すものなのだろう」

ジャンヌ「私も、つい数時間前にこちらに現界しました。そして、事情を探るうちにはっきりしたのが……どうやら、この世界にはもう一人、ジャンヌ・ダルクがいるという事」

ジャンヌ「あのフランス王シャルル七世を殺し、オルレアンにて大虐殺を行ったというジャンヌが……」


バットマン「……」

ドクター『……何故ジャンヌが二人居るか、その理由は定かではないけど、はっきりした事がある』

ドクター『シャルル七世が死に、オルレアンが占拠された。それはつまり、フランスという国家の崩壊だ』

ドクター『フランスは史上初めて、人間の自由と平等を謳った国だ。他の多くの国はそれに追随した』

ドクター『この権利が百年遅れれば、それだけ文明は停滞する……現代の我々が、中世のような生活をしていた可能性だって否定できない』

バットマン「……それが特異点か」

ドクター『そうだね、はっきりした。今回の敵は魔女になってしまったジャンヌ・ダルクだ』

バットマン「……」


ジャンヌ「あの、先程から声だけで姿の見えない御仁が……」

マシュ「失礼、マドモアゼル・ジャンヌ。次は我々の番ですね」

ジャンヌ「……ワイバーン、そして魔女。認めたくありませんが、恐らく、あの竜達を操っているのは私(ジャンヌ)でしょう」

マシュ「ええ、そうなるのが妥当かと。ですが、問題がひとつ」

ドクター『ああ。問題は、召喚の難易度だ。竜の召喚は最高難易度と言って差し支えないほど難しい。現代の魔術師じゃあまず不可能だし』

所長『なんですって、ロマニ!?』

ドクター『ごご、ごめんなさい! ……でも、難しい。たとえその時代の魔術師でも容易にはいかない』


ジャンヌ「……生前の私は、そのような術には精通していませんでしたし……」

バットマン「……聖杯か」

ドクター『うん、そうだ。恐らく、魔女のジャンヌは聖杯を使って竜を召喚しているね』


バットマン「……大方の把握はできた。問題は、こちらの戦力が少なすぎる事だ」

マシュ「ええ、否定できません。……マドモアゼル・ジャンヌ。貴女はこれからどうするのですか?」

ジャンヌ「一人でも戦います。オルレアンに向かい、都市を奪還する」

バットマン「自殺行為だ」

ジャンヌ「ですが、放っておけません」

マシュ「な、なら一緒に行動する、というのはどうでしょう!? 戦力も増えますし、目的の利害も一致しています!」

バットマン「…………」


ジャンヌ「……確かに、それが理にかなってますね」

マシュ「それでは……改めて、マドモアゼル・ジャンヌ。私達の行動目的は別にありますが、それはそれとして、私達は貴女を助けたい。その旗の下で戦う事を、許して頂けますか?」

ジャンヌ「いえ、こちらこそお願いします。どれほど感謝しても足りないほどです」


ジャンヌ「……ありがとう。私は、一人で戦うものだとばかり思っていました」

バットマン「……いや、戦力が増えて有難い。よろしく頼む」



バットマン(……救国の聖女、ジャンヌ・ダルク。死因は炎。裏切られた際は……炎を使えば通用するはずだ)

ジャンヌ「まずはこの森を抜け、オルレアンの方へ向かいましょう。周辺の街や砦から情報を集め、奪還の手立てを探る」ザッ、ザッ

バットマン「……慎重だな。焦っているものとばかり」スタスタ

ジャンヌ「……いえ、内心焦っています。もう一人の”私”は、どう考えても正気ではない。そんな怪物が人を支配して、何をするかなど……など想像するのは容易い」

バットマン「…………」


マシュ「ちょ、ちょっと待って下さい……あちらの空を!」

バットマン「……煙?」

マシュ「街が……燃えてる……!?」


ドクター『待て、その先の街にサーヴァント反応だ! す、すごい勢いで遠ざかっていく……駄目だ、反応がロストした!』

ジャンヌ「急ぎましょう、何かがあったに違いない!」ダッ

マシュ「はい! マスター、私達も!」

バットマン「ああ」

バットマン「……」

バットマン(駄目だ。遅すぎた。侵略から時間が経ち過ぎている)


ジャンヌ「そんな……まさか……」

マシュ「……ドクター、生体反応を……」

ドクター『……駄目だ、その街に命と呼べるものは残っていない』

マシュ「そんな……」

バットマン「……」

バットマン(死体、ワイバーンの火炎痕……これをやったのも竜の魔女、ジャンヌで間違いない)

ジャンヌ「いったい……どれほどの憎悪があれば、こんな……」


ドクター『待った!! 先程去っていったサーヴァントが反転して向かってくる! まずい、キミたちを察知したようだ!』

バットマン「数は」

ドクター『……おい、冗談だろ……数は6騎! は、速い! 逃げろ皆! 数で負けてる!!』


バットマン「……いや」


バットマン「もう遅い」

バットマン「……」

バットマン(報告通り、6人だ。白髪で槍を持った男、仮面を被りアイアンメイデンを引きずる女)

バットマン「……」チラッ

バットマン(背丈ほどの十字架を握った女。女装した男騎士。そして……黒い旗を背負った女。アレが竜の魔女、ジャンヌ・ダルクに間違いない)

バットマン(だが、問題はもう一つ……)


???「ハァー、ハァー。会えてうれしいぜ、バットマァン……てめえとも腐れ縁ってヤツだなァ!!」

バットマン(顔の半分が焼け焦げた男。トゥーフェイス)

バットマン「何故ここに居る」

トゥーフェイス「こっちが聞きてえくらいだがな、生憎今はそんな気分じゃねえ。ようやく長年の恨みを返してやれるってもんだ、なあ?」

バットマン「……」ジリッ


ジャンヌ「……」

ジャンヌ・ダルク?「…………」

何故最後はさげた……昼前はこれで終わりです。お付き合い有難うございました。

ブルースが疑いすぎて鬱陶しいそこのあなた! 正常です。ブルースがおかしいんだよどんだけ用心深いんだよ(愚痴)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9

悪役の参考資料を取り急ぎ……これちゃんとURL貼れてますかね

駄目でした……各自での確認を願います(情弱)

うぅむ、下手に全部描写すると駄目になっちゃうって事ですかね。気を付けてみます

URL貼れてる確認有難いです。誰かが召喚のくだりは恐らく作中でフォローを入れることになるかと(今現在クー・フーリン(術)だけは厳密に言えばそのフォローからは外れるでしょうが面倒なので一緒の扱いで良いです)

ジャンヌ・ダルク?「……なんて、こと。まさか、まさかこんな事が起こるなんて」

ジャンヌ「……」

ジャンヌ・ダルク?「ねえ。お願い、誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気でおかしくなりそうなの」ニヤニヤ

ジャンヌ・ダルク?「だってそれぐらいしないと、あんまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう!」



バットマン(囲まれてる……いや、あの一点は突破できるか?)

女装騎士「……」ギリッ

十字架聖女「……」ガシッ

バットマン(……問題はタイミングか)スッ



ジャンヌ・ダルク?「……こんな小娘(わたし)にすがるしかなかった国(フランス)なんて、ネズミにも劣る矮小さね」ギリィ

ジャンヌ「……貴女は……貴女は、誰ですか!?」

ジャンヌ・ダルク?「……それは私の質問ですが。良いでしょう、答えて差し上げましょう。私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女ですよ」

ジャンヌ「馬鹿げたことを……! 貴女は聖女などではない、私がそうではなかったように。そして……そして、何故この街を襲ったのです!?」

ジャンヌ・ダルク?「何故……? 同じジャンヌなら、理解していると思っていましたが」


ジャンヌ・ダルク?「単にフランスを滅ぼすためですよ」


ジャンヌ「馬鹿な事を……」

ジャンヌ・ダルク?「バカなこと? 愚かなのは私たちでしょう、ジャンヌ・ダルク。何故。こんな国を救おうと思ったのです? 何故、こんな愚者たちを救おうと思ったのです?」

ジャンヌ・ダルク?「ここに居るのは……裏切り、唾を吐いた人間達だと知りながら!」

ジャンヌ「それは……」


バットマン(千日手だ。相互理解は不可能……話し合いでの解決は不可)


ジャンヌ・ダルク?「私はもう騙されない。もう裏切りを許さない。そもそも、主の声も聞こえない。……主はもう、この国に愛想をつかしたから」

ジャンヌ・ダルク?「だから滅ぼします。主の嘆きを私が代行します。すべての悪しき種を根本から刈り取ります」

ジャンヌ・ダルク?「フランスが……いいえ、人類が存在する限り、私のこの憎悪は治まらない。あまねく憎悪に喝采を……裏切り者には死を」

ジャンヌ・ダルク?「それが私。死を迎え、新しい存在となったジャンヌ・ダルクの救国方法」


ジャンヌ・ダルク?「貴女の理解は期待していませんよ、私(ジャンヌ)。いつまでも聖人を気取って……」ギリィ

ジャンヌ・ダルク?「憎しみも喜びも見ないフリをして、人間的成長をまったくしなくなったお綺麗な聖処女さまには!!」

ジャンヌ「な……」


バットマン(3で行くぞ)ボソリ

マシュ(え? は、はい!)

バットマン(1……2……)


ドォン


バットマン「……っ」ギャリィン


トゥーフェイス「お見通しだ、コウモリ。なめられちゃ困る」

ジャンヌ・ダルク?「フン。こざかしい奴が居たものね……良いわ、バーサーク・ランサー。バーサーク・アサシン。相手をしてあげなさい。久々の強敵よ、楽しみなさい」

白髪の男「……よろしい。では、私は血を戴こう」

仮面の女「いけませんわ王様。私は彼女の肉と血、そして臓を戴きたいのだもの」


バットマン(……真名は何だ。血を欲する王……槍……いや、あれは串? ならば結論は出たようなもの)

バットマン(……恐らくあれはヴラド。オスマンのヴラド三世……ヴラド・ツェペシュ)

バットマン(……ならば、それと並んで血を欲する女は?)


ヴラド「強欲だな。では魂は? 魂はどちらが戴く?」

仮面の女「魂なんて何の益にもなりません。名誉や誇りで、この美貌が保てると思っていて?」


バットマン(……若い娘の血を、自らの美貌のために使う。高貴な喋り方。ほぼ間違いない)

バットマン(バートリ・エルジェーベト。ハンガリー貴族……)

バットマン(つまり、どちらとも、吸血鬼の伝説が残るサーヴァントか)


ヴラド「よろしい、ならば私が魂を戴こう! まさか、血を啜る悪魔となり果てて彼女の美しさが理解できるとは……」

エルジェーベト「ええ。だからこそ感動が抑えられない。……自分より美しいものは許さない。いいえ、それより……」

エルジェーベト「私より美しいものの血は、どれほど私を美しくしてくれるのかしら?」


マシュ「……マスター。敵、戦闘態勢に入りました」ガシャッ

バットマン「構えろ。これしかない」


トゥーフェイス「俺も良いか? 良いよなァ、戦うぜ」

ジャンヌ・ダルク?「……フン、好敵手でも見つけましたか。好きになさい、ただし消えるのは許さないわ」

トゥーフェイス「ハァー、ハァー! バットマン!! ようやくだ!!」ザリッ

バットマン「くっ……」

マシュ「くっ……」ガガッガィン‼

ヴラド「なかなか粘るが、あとどれほど保つものか……貴様の鮮血を見るのが楽しみでならないぞ」ヒュンッヒュンッヒュンッ

マシュ(速い……! 盾が追い付かない!)ザッザザッ


ジャンヌ「ふっ!」ブゥン

エルジェーベト「くっ……」ガッギィィィィィ

ジャンヌ「目を覚ましなさい、貴女方のやっている事は自分を貶める行為に他ならない……!」ギリギリギリギリ

エルジェーベト「あら、それがどうかして? 美貌と誇りのどちらを取るかなんて、言うまでもない事でしょう?」ギチギチギチ

ジャンヌ「(目に理性が無い……)はぁっ!!」ギャリリィ


トゥーフェイス「遅いぞコウモリ、鈍ったか!?」パァンパァン、ブゥン

バットマン(以前より身体能力が飛躍的に向上している! 人間ではない!)ザザッ、ババッ

ドクター『解析結果が出た! そこに居るサーヴァントには狂化属性が付与されている、話し合いでの解決は無理だ!』

バットマン「ドクター、私の眼前に居る男の解析を頼みたい」

ドクター『……キミの目の前? うわっ、怖い顔してるなぁ! この人もサーヴァントだ、クラスは……』


バットマン「いや、クラスまでは良い。サーヴァントだな、ならばサーヴァント用の反撃をする」

トゥーフェイス「御大層な口を利くじゃねえか! 反撃なんて許すとでも!?」ブンブン

バットマン(ここだ!)ガッ‼


バットマン「フッ!!」ガシッ、グィィィッ

トゥーフェイス「うお、おぉぉぉぉ!?」グワンッドシャアアアアア


バットマン「……やったか?」ジリッ

トゥーフェイス「っはぁ、やってくれるぜコウモリ野郎が!!」ガバッパァン

バットマン「(なっ……)……っぐ」ドシュウ


マシュ「!! マスター!!」

ヴラド「どこを見ている」ヒュンッ

マシュ「ッ!!」ドッズシャアアア、ゴロゴロ


ジャンヌ「……っ」

エルジェーベト「あらあら、お仲間は倒れたようだけど」クスクス

ジャンヌ「……!!」

ジャンヌ「っマシュ! 貴方達だけでも逃げて下さい!!」

マシュ「で、でもジャンヌさん!」

ジャンヌ「共倒れよりはるかにマシです! さあ!!」

マシュ「……っ!!」

バットマン「……っ……く、マシュ……伏せろ!」ガバッ

マシュ「え、きゃっ!?」チュイン


トゥーフェイス「ちっ、サイレンサー付けてても殺気はバレるもんだなぁ。ならいいさ。次は外さねえように工夫するだけだ……それじゃ、コイントスといくか」

トゥーフェイス「さあ、立ちな嬢ちゃん。運命の時間だ」

マシュ「え……」スクッ

マシュ(か、身体が、勝手に……!?)


トゥーフェイス「ではジャッジの時間だ。テメエの罪はここで決まる……生存か、死刑か。陪審員の皆さんはどうぞ静粛に。公平な……裁きの時間だ」

マシュ(動けない。身体が、動かない)


バットマン「……ぐっ……」ジリッ

トゥーフェイス「……」キィン

トゥーフェイス「……」パシッ


トゥーフェイス「……残念だったな、嬢ちゃん」カチャッ


???「その裁判、待ってくださいな!!」

トゥーフェイス「!?」ザザッ

マシュ「(動ける!)っはぁ、はぁ……!」ドサッ

???「……優雅ではありません。この街の有様も。その戦い方も。思想も主義もよろしくないわ」


バットマン(あれは……ガラスの……薔薇?)


ジャンヌ・ダルク?「何者です!」

???「貴女はそんなに美しいのに、血と憎悪でその身を縛ろうとしている。善であれ悪であれ、人間ってもっと軽やかにあるべきじゃないかしら?」

ジャンヌ・ダルク?「……サーヴァント、ですか」

???「ええ、そう。嬉しいわ、これが正義の味方として名乗りをあげる、というものなのね!」

???「貴女が誰かは知っています。貴女の強さ、恐ろしさも知っています。正直に告白してしまうと、今までで一番怖いと震えています」

???「それでも……貴女がこの国を侵すのなら、わたしはドレスを破ってでも、貴女に戦いを挑みます」

???「何故なら、それは……」


女装騎士「貴女、は……!?」

???「まあ、私の真名をご存知なのね! 知り合いかしら、素敵な女騎士さん?」


ジャンヌ・ダルク?「セイバー。彼女は何者?」

女装騎士「……」

ジャンヌ・ダルク?「……」答えなさい」

女装騎士「この殺戮の熱に浮かされる精神でも分かる。彼女の美しさは、私の目に焼き付いていますからね」


女装騎士「ヴェルサイユの華と謳われた少女。彼女は……マリー・アントワネット」


マシュ「マリー・アントワネット王妃!?」

バットマン(……という事は、あの騎士の名も自ずと割れる。マリー・アントワネットと接点がある女装騎士……あれはシュヴァリエ・デオン)

マリー「はい! ありがとう、私の名前を呼んでくれて!」


マリー「そしてその名前がある限り、どんなに愚かだろうとわたしはわたしの役割を演じます。我が愛しの国を荒らす竜の魔女さん。無駄でしょうけど質問をしてあげる」

マリー「貴女はこのわたしの前で、まだ狼藉を働くほど邪悪なのですか?」

マリー「革命を止められなかった愚かな王妃(わたし)以上に、自分は愚かな魔女であると公言するの?」

ジャンヌ・ダルク?「……黙りなさい。貴女如きがこの戦いに関わる権利はありません」

ジャンヌ・ダルク?「宮殿で蝶よ花よと愛でられ、何もわからぬままに首を断ち切られた王妃に、我々の憎しみが理解できると?」


マリー「そうね、それはわからないわ。だから余計に貴女を知りたいの、竜の魔女」

ジャンヌ・ダルク?「……なに?」

マリー「わからないことは、わかるようにする。それがわたしの流儀です」

マリー「だから今の貴女を見過ごせない。ああ、ジャンヌ・ダルク。憧れの聖女! ……今のわたしにわかるのは、貴女はただ八つ当たりしているだけということ」

マリー「理由も不明、真意も不明、何もかも消息不明だなんて、日曜日にでかける少女のようでしてよ?」


トゥーフェイス「ハハハハ! 突然出て来てビビったが、高貴なたとえだ!」

ジャンヌ・ダルク?「黙りなさい!」


マリー「そんな貴女に向ける礼はありません。わたしはそこの、何もかも分かりやすいジャンヌ・ダルクと共に、意味不明な貴女の心を、その身体ごと手に入れるわ!」

マシュ「……な……」

ジャンヌ「え、えっと……はい?」

マリー「あ、しまった。しっぱいしっぱい。誤解なさらないで、今のは単に『王妃として私の足元に跪かせてやる』という意味ですから」


バットマン(……意識か無意識かは分からないが、この少女の演説で徐々に敵が一か所に集められつつある。……これなら脱出できる)ムクリ

ジャンヌ・ダルク?「……茶番はそこまでだ。いいでしょう。ならば。貴女は私の敵です」


マリー「ええ、ええ。そうでしょう! こちらも分が悪いのは十分分かっています。だから……アマデウス!」

マリー「機械みたいにウィーンとやっちゃって!」


アマデウス「任せたまえ。宝具、『レクイエム・フォー・デス』」グオォォォォォォォ


バットマン(くっ、音波系……いや、こちらに危害は無い……のか?)


エルジェーベト「もう一人……ああ、でもなんて壮麗で邪悪な音……!」

ヴラド「くっ、重圧か……!」


ジャンヌ・ダルク?「ちっ……!」


マリー「それではごきげんよう皆様。オ・ルヴォワール!」タッタッ

マシュ「マスター、走れますか!?」

バットマン「問題無い、行くぞ」ダダッ

マシュ「はい!」ダッ


トゥーフェイス「次は逃げられると思うな! 俺のコインが待ってるぜ!」


ジャンヌ・ダルク?「……ふん。ライダー!」

十字架聖女「……何かしら」

ジャンヌ・ダルク?「追いなさい。貴女の馬なら追いつけるでしょう。戦う必要はありません、居場所を報告してくれれば一気に叩き潰します」

十字架聖女「……了解。追いついてみせるわ」


ヴラド「……ルーラー。ライダー一人で十分だと考えているのか」

ジャンヌ・ダルク?「十分でしょう。殲滅する、という事だけならライダーの宝具は確実です」

ジャンヌ・ダルク?「……ですが念には念ですね。私は帰還して新たなサーヴァントの召喚に掛かります」

ジャンヌ・ダルク?「貴方たちは好きに暴れなさい。彼らと運よく遭遇したのなら、蹴散らしても良い」

ジャンヌ・ダルク?「……まさか、宮殿で愛でられていた后如きに遅れを取る貴方達ではありませんよね?」



…………

マリー「ふう。ここまで逃げれば大丈夫かしら?」

マシュ「ドクター?」

ドクター『うん。周辺の反応は消失している。ついでに言うと、そこからすぐ近くの森に霊脈の反応を確認した』

バットマン「了解。すぐに向かう」


マシュ「ですがマスター、銃創の手当てが……」

バットマン「大丈夫だ、スーツが弾き返した」

マシュ「ほ、本当ですか! 流石ダ・ヴィンチさん!」


マシュ「そ、それでは……ジャンヌさん、それから……マリーさん?」コワゴワ

マリー「マリーさん、ですって!」ガッ

マシュ「し、失礼しました。それでは、ええと……」

マリー「失礼じゃないわ、とっても嬉しいわ! いまの呼び方、耳が飛び出るくらい可愛いと思うの!」キラキラキラキラ


バットマン「……」


マリー「お願い、素敵な異国のお方! これからもそう呼んでいただけないかしら……!」キラキラ

マシュ「は、はぁ……ミス・マリーとか、マドモアゼル・マリーとかでは?」

マリー「ダメ。ぜんぜんダメ。マリーさん、がいいのっ! 羊さんみたいで!」


バットマン「…………」


マリー「それで、御用事は何かしら?」

マシュ「ええと、この近くの森に強い霊脈が探知されました。拠点とするため、そこに向かいたいのですが……皆さん、問題ありませんか?」


マリー「もちろん構わないわ。いいですか、アマデウス?」

アマデウス「僕に意見を求めても無駄だってば。キミの好きにすればいい、マリア」


ジャンヌ「分かりました。問題はない、と思います」

マシュ「では、その森で腰を落ち着けて、これから先のことを話し合いましょう」スタスタ


バットマン「……」スタスタスタ……ズキッ

バットマン「……っ……」

バットマン(……流石に外しはしないか、トゥーフェイス……)ドク……

…………

マシュ「サークル作成、完了です!」

ジャンヌ「ふう。オルレアンに近付くにつれ、魔物達も強くなってますね。どうでしょう、今日はこの辺りで休憩に……」

マリー「そうね、賛成よ!」

アマデウス「ああ、ようやく休憩だ……王妃なのにマリアは健脚すぎる」


バットマン「……少し外す」

マシュ「え? あ、ついていきましょうか?」

バットマン「良い。残って休んでいてくれ」スタスタ


マシュ「……」

マリー「あの人、面白いのね! 猫の扮装だなんて、変わってるわ!」

アマデウス「いや……あの人はコウモリなんじゃないか? 同じ仮面趣味として通じ合う何かがあるよ」

ジャンヌ「では、改めて自己紹介を……私はジャンヌ。ジャンヌ・ダルクです」

マリー「私はマリー! マリー・アントワネットです、会えて光栄よジャンヌ!」


――――


バットマン「……」ドサッ

バットマン「……」スッ

ブルース「ハァッ、ハァ……」ドクッ、ドクッ……

ブルース(まず打つべきなのは何だ? 止血剤……いや、スーツのアイソメトリック機能を使うべきか)

ブルース(いや……判断を誤るべきではない。ここはまず、体内に埋め込まれた銃弾を抜き取る……)


ブルース(……木の枝……あった。これを、噛む)ガシッ

ブルース(ユーティリティベルトのピンセット……ああ、あった。よし……これを消毒……傷の中に突っ込んで……)ググッ

ブルース「……ッッッッ!!」グチッ、グチッ

ブルース「っ!! っっ!!」ギリギリギリ、ギチ……ガチッ

ブルース(よし、捕まえた……これを後は……一気に……)ズズズッ‼

ブルース「っぐ……」


ブルース(しまった、声が……悟られていないか……?)ジッ


シーン……


ブルース(よし、平気だ……)

ブルース(あとは、止血剤を打って……)プシュッ

ブルース(スーツのアイソメトリック力を……)ギュゥン‼


ザザザザッ


ブルース「!!」スクッ


十字架聖女「……見つけた」


ブルース「しまった……!」スッピピピッ

バットマン「マシュ、今すぐこちらに……!」

十字架聖女「させないわよ!」ギュウン

バットマン「っ!!」ザッザザァ!

十字架聖女「誇りも何もない戦争だけど、一人くらいは倒さなきゃね」ジリッ

バットマン「……」ジリジリ

少し離脱します。お付き合い有難うございました。

あげちまったすみません!

 風が一陣、抜けて行った。


 沈んで行く夕陽、きらめく十字架。抱えた聖女は動かない。黒い騎士は高速で思考を回転させる……目の前のサーヴァントの、真名は何だ。

「動かないの?」

 聖女が問う。バットマンは答えない。下手に意識を逸らせば、致命的な一撃が来る。自分が再起不能になれば、人類は滅ぶ。その重責。マシュを連れて来なかったという甘さ。今更になって、前回の所長の叱責が重くのしかかる。

「……動かないなら、こっちから行くけど」

 聖女は十字架を動かした。一瞬の閃光……バットマンは素早く跳び退く。一瞬前まで彼が居た場所で光球が弾け飛ぶ。

 あれを食らえば危なかった。バットマンは警戒し、意識を前方へ向ける……聖女は居ない。


 頭上。黒い残像を錯覚する速度で、バットマンは転がった。またしても光球が降り注ぎ、空中で弾けた。

「シッ!」

 バットラング投擲。聖女は片手で全て摘み取り、投げ返す。バットマンはグラップネルガン射出、上方へと回避。

 聖女は十字架をかかげ、何かを唱えた。これまでとは比にならない大きさの光球が飛び出し、バットマンの背後へ迫る。だが彼は空中でグラップネルガンを手放し、これを躱しながらマントを広げ、グラインド飛行へ移る。

「へえ、猫かと思ってたらコウモリなんだ!」

 楽しそうに笑い、聖女は更に十字架を振り上げる。光球が連射され、光の火線が飛行するバットマンを追う。だが騎士はマントをたたみ、急降下して聖女へ向かって行く!

 彼は聖女の眼前に着地し、拳を引き絞った。聖女の瞳に暴力的な輝きが宿る。バットマンはパンチを放った。聖女は同じく拳を繰り出しそうになり……一瞬でみずからを抑え、十字架でこれを防御した。

 森の中、隅々まで、甲高い音が鳴り響いた。

――――

マシュ「! 今の音は……!」スクッ

ジャンヌ「私も聞こえました」

アマデウス「うん? ちょっと待てよ……? ああ、不味いな、戦闘音だ。行こう、休んでる場合じゃないぞ」ヨッコイセ

マリー「それって誰が戦ってるのかしら、アマデウスは分かる?」

アマデウス「……うーん、マントを着た誰かと……これはあの時の十字架の聖女サマかな?」

マシュ「……!! 私は先に行きます、また後で!!」ダダッ

ジャンヌ「ま、マシュ! ちょっと待って!!」ダッ


――――

バットマン(駄目だ。やはり膂力では負ける……)ギリギリギリギリ

聖女「アンタ、タイマンで向かってくるなんて良い度胸してんじゃない。名前はなんての?」ググググググググ

バットマン「……人に名を訊く時はまず自分から、だ……!」ギリギリ……ガクッ

聖女「跪いた姿勢で偉そうに言ってくれるじゃない。良いわ、私はマルタ。聖女マルタよ、ネコミミさん」

バットマン(マルタ……イエスの旅に同行し、弟を蘇生してもらい……追放され……どうなった?)

聖女「アンタの態度に敬意を表して、一個だけヒントをあげるわ。あのいけ好かない竜の魔女を打ち倒すヒントをね」グググググ

バットマン「……ヒントだと?」ギリギリ……グググ

マルタ「あの魔女は今、どうやっても倒せない。アンタたちじゃ無理よ。何故なら切り札があるから」グググ

バットマン「……倒せない? 切り札だと?」グ……

マルタ「そう。その切り札は……『ファヴニール』よ。究極の竜種。山みたいな身体をしてる。ワイバーンとは比べ物にならないわ」

バットマン(ファヴニール。シグルドとジークフリートに倒された伝説の竜……比喩抜きの怪物だ)

バットマン「そんなものまで従えているのか……!」グググ‼‼

マルタ「そうよ。アンタが戦ってるのはそういう相手なの。だから対策をたてなきゃ駄目」グッ

バットマン「……!」

マルタ「……良い? 『ドラゴンスレイヤー』を探しなさい。リヨンへ行くの」

バットマン「……リヨン?」

マルタ「そう、リヨンよ。貴方達の最後の希望がそこに居るハズだわ……おっと!」ザザッ


マシュ「マスター!」ババッ

バットマン「無事だ」スクッ

マリー「間に合ったみたいね、良かったわ!」

マルタ「ふぅん、駆け付けてくれる仲間は居たんだ。では聖女らしく、杖で戦ってしまいましょうか」

マシュ「貴女は……」

マルタ「あ、名前を知りたいなら後からそのネコミミさんから聞いてね。こんな大勢の前で、魔女の使い走りさせられてる聖女だー、なんて名乗りたくないし」

マシュ「……マスター」

バットマン「敵だ。杖から光の球を出して攻撃する」


マリー「うんうん、名前を悟られたくない時ってあるわよね。お忍びで城下町に出かけてる時とか」

アマデウス「キミのそれと比べてしまったら少し気の毒なんじゃないかなぁ、アレ」


ジャンヌ「間に合った! 敵は……!」ザザッ


マルタ「遅いっての。じゃ、さっさと始めましょうか。言っとくけど、多対一だからって手ェ抜いてたら死ぬから、そのつもりで掛かってらっしゃい」


マシュ「敵、戦闘態勢! マスター、指示を!」

バットマン「ああ……行くぞ」

………………

マルタ「……うぅん、流石に分が悪かったか。いえ、よくやりました」シュウシュウシュウ

マルタ「……なんて、試練ぶっても駄目か。ごめんね、タラスク。次の召喚は、もっと真っ当な……」サァァァァァァ


マシュ「……消えました。倒したようです、マスター」ガシャ

バットマン「ああ。……助かった、有難う」

マシュ「……いいえ、間に合ってよかった」

ジャンヌ「……最後まで、十字架だけで戦っていました。あの人、鉄みたいな精神力で……」

マシュ「ええ。恐らく、会話するのにも相当な精神力を使っていたハズ。それを……」

マリー「ええ、とても穏やかで、同時に激しい人でした。わたしにはわかります。あの人は鉄の聖女。なんであれ、最後は拳で解決する金剛石のような人です」


バットマン「……彼女からヒントを貰った。究極の竜種、そして……ぐっ……」フラリ

マシュ「マスター!?」ガシッ


バットマン(しまった、出血が……血が足りない状態で動きすぎたか……)

バットマン「……平気だ、それより、リヨンへ……リヨンへ向かう。そこでドラゴンスレイヤーを仲間に……」グラリ、ドサッ


マシュ「ま、マスター! マスター!!!」


バットマン(……ああ、不味い……視界が……)


………………

………………

ジャンヌ・ダルク?「……ライダーが自決しましたか。狂化しても理性が残っているなんて困りものです」

ジャンヌ・ダルク?「とはいえ、彼女は全力で戦ったのでしょう。それを葬り去ったとなると、油断なりませんね」


トゥーフェイス「次は俺が出る」

ジャンヌ・ダルク?「……あら、そう? なら二人見張りをつけておくわ、貴方だけだと信用ならないもの」

トゥーフェイス「信用? 信用……そうか、良いだろう。公平さを欠く行為は避けるべきだ」

ジャンヌ・ダルク?(……チッ、魂が抜けたような人格の方が出て来てるわね……その癖、あの集団に対する執着は残してる。コイツは一体何なの……?)

ジャンヌ・ダルク?「良いわ。ワイバーンの集団を貸してあげる。それと、湖の騎士『ランスロット』。処刑人『シャルル・アンリ・サンソン』」


ランスロット「Urrrrr……」

サンソン「了解しました、マスター。王妃の首の話なら、僕以外に適任はおりません」

トゥーフェイス「……殲滅すれば良いんだな?」

ジャンヌ・ダルク?「そうです。彼の地『リヨン』を、生きる者の居ない、廃墟に。良い報告を待っていますよ」

…………

マシュ「ここなら安全でしょうか」ヨイショ、ヨイショ

マリー「まあ! 知っているわ、こういう場所を『庶民の宿』と言うのよね!」

アマデウス「うんうん、知ってて偉いなぁ。でも宿屋の中で『庶民』だなんて大声を張り上げるのは少しマナー違反かな?」

マリー「あ、ごめんなさいわたしったら……」ペコリ

店主「いやいや、構わないよ。金さえ払ってもらえれば」



マシュ「そうだった、お金……私はこの世界の通貨を一枚たりとも持っていません」

???「……良いよ、そいつらの金は俺が払うから」

マシュ「えっ……あ、貴方は……」

兵士C「覚えてねえだろうけど、砦で助けられた兵士だよ。アンタが背負ってるネコミミの相棒さんはよく覚えてる。
魔女と行っちまったから、死んだかと思ってたけど……生きてたなら、ささやかな恩返しくらいさせてくれ」

マシュ「……ありがとう、ございます」ペコリ

兵士C「いいよ、訳アリなんだろ? 俺、この街の……『ティエール』の出身だから、ゆっくりしてってくれ」


…………


マシュ(マスター……)

マシュ「必ず後で、迎えに来ます。それまで、安静にしていて下さい」スタスタ

バタン

バットマン「…………」


…………


ジャンヌ「どうでしたか、マシュさん。ティエールの宿はいつも混雑してるから心配でしたが……」

マシュ「いいえ、何とか一人分の宿泊はさせてもらえるようです。それに知り合いも居ましたし、恐らく心配はいらないかと」

マリー「ああ、友情というのは麗しいものね! 人を助け、人に助けられ……とても美しい有りようだと思うわ!」

ジャンヌ「えぇ、良かった……ここからリヨンまではもうすぐです。ドラゴンスレイヤーを迎えに行く準備はできていますか?」

マシュ「はい! 素早く迎えに行って、素早く帰って来ましょう!」

…………

子供「うわあああああああ!! 助けて!! 助けてええええええ!!」

母親「やめて! 子供だけは、子供だけは……っぐ……」ドサッ



トゥーフェイス「なあ、サンソン」

サンソン「なんだ、トゥーフェイス」

トゥーフェイス「俺達のやってる虐殺ってのは、公平な事なのか? こうやって、街をぶっ壊して……俺達は間違ってねえのか?」

サンソン「……今更正義の確認か、トゥーフェイス。似合わないな」

トゥーフェイス「違う。違うんだ。こうやって、確認してねえと、アイツに飲まれちまう……殺しが楽しくてしょうがねえアイツになっちまう」

サンソン「……お前は、死が、苦しく、どうしようもないものだと思うか?」

トゥーフェイス「当たり前だろ、死んだらそれまでだ。死ってのは終わりだ」

サンソン「……僕は、死は褒美だと思ってる。その瞬間、すべての罪は許される。全部終わって、あの世へ行ける。それは紛れもなく、解放だ」

トゥーフェイス「……処刑人か。お前は何人殺したか覚えてるのか?」

サンソン「……人数は、もう、覚えてない。でも、一人だけ忘れられない。首を斬られる前の、真っ白なあの顔が」

トゥーフェイス「……」


ランスロット「AAArrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrr!!!!」バッ

サンソン「行こう。遅れる」

トゥーフェイス「……ああ、そうだな」

今日はここまでです。明日からまた業務再開なので今まで通り更新できるかどうか……頑張りまうす


………………

マシュ「……そんな……」

ジャンヌ「リヨンが、壊滅してる……」

マリー「……酷いわ、酷過ぎる。これじゃ、“竜殺し”さんも……」

アマデウス「ごめんよ、感傷におぼれてる暇も無さそうだ。辺りから何かが動き回る音が聞こえる」

マシュ「ドクター!」

ドクター『これは……リビングデッドだ。共食いしてるのか……!?』

マシュ「……まさかこの方たちは、元々はここの……」ジリッ

ジャンヌ「マシュ、悲しむのは後です。これ以上の非道を行わせてしまう前に、彼らを止めなければ」スッ

アマデウス「そうだね。鎮魂歌は僕の十八番だ、少しでも安らかに眠らせてあげるとしよう」

???「……安らぎ……安らぎを望むか……。それは、あまりに愚かな言動だ。
彼らの魂に安らぎはなく。我らサーヴァントに確実性は存在しない。この世界は、とうの昔に凍り付いている……」

マシュ「……サーヴァント!」

ジャンヌ「――何者ですか?」

???「然様。人は私を――オペラ座の怪人(ファントム・オブ・ジ・オペラ)と呼ぶ」

ファントム「“竜の魔女”の命により、この街は私の絶対的支配下に。
さあ、さあ、さあ。ここは、死者が蘇る地獄の只中。
――君たちは、どうする?」

マリー「国を蹂躙する貴方を放っておくわけにはいかないわ! 地獄ですって? いいえ、ここはフランスよ! 貴方達から取り戻し、輝きを灯してみせる!」

マシュ「その通りです、マリーさん! 行きます……!」ガシャッ


――――

マシュ「はあっ、はあっ……敵サーヴァント、鎮圧完了……!」

ファントム「く……しかし、務めは果たしたぞ。報われぬ、まったく報われぬ務めだったが……私の歌はここで途絶える。されど、地獄はここから始まる」

ファントム「喝采せよ、聖女! おまえの邪悪は、おまえ以上に成長した!」

ジャンヌ「――黙りなさい。もう、喋るのも辛いでしょうに」

ファントム「これは言葉ではない。これは歌だ。おまえの先を嘆き、憂うためのな。
“竜殺し”は諦めろ。あれの呪いは、誰にも解けぬ」

ジャンヌ「……呪い?」

ファントム「呪いだ。生きているのも不思議なほどの大量の呪いが掛けられている……奴は遠からず死ぬ」……ジリジリジリ

ファントム(……そして貴様も、その呪いに掛かる……もう少し、もう少しだ……)

マシュ「ですが、呪いは解呪ができるハズ……聖人と呼ばれるジャンヌさんなら」

ジャンヌ「程度によります。特に、今の私の力は弱まっており……」クルッ

ファントム(今だ!)

ファントム「背中を見せたな! 油断を呪い、呪われろ! 『地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ』!!」グオォォォォォォォ

ジャンヌ「なっ、しまっ……」

マシュ「ジャンヌさっ……」

???「……『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!」ドッガァァァァァァ‼‼

ファントム「……な……んだと……」ドシャリ

???「うぐ……(やはり一発の宝具だけでもかなり無理がある)……無事か」

マシュ(け、剣で呪いごと切り裂いた……この人は一体)

ジャンヌ「助かりました、名も知らぬ剣士……いえ、まさか、貴方は……」

???「俺はジークフリート。呪いに耐え、近くの砦で忍んでいたら……俺の名を呼ぶのが聞こえたのでな。必要とされれば、来る」

マシュ「じ、ジークフリートさんだったのですね!」

ジャンヌ「とてもありがたいです。ですが、呪いが掛かっていると……」

ジークフリート「ああ、本来なら俺の宝具『バルムンク』は連発が可能な技。だが、今は一発ごとにインターバルを挟まねば……」

ドクター『ちょっと待った! マシュ、そちらにサーヴァントを上回る超極大の生命反応が接近中!』

マシュ「サーヴァントを上回る……!? そんな生命が存在するのですか!?」

ドクター『あるところにはあるものさ、世界は広いしね! って、そんな事より撤退を! サーヴァント反応も三騎、追随してきてる! くっ、撤退が間に合うか……』

マリー「……アマデウス、迎撃の準備をしましょう。……その、一緒に戦ってくれる?」

アマデウス「いま、しましょうって命令しただろ、君。いつものように、背筋を伸ばして笑顔でいればいい。
……なに、僕に気を遣う事はない。やばくなったらひとりで逃げるからな、僕は!」

マリー「そうね。それでこそアマデウスだわ。大丈夫、時間を稼ぐだけですもの。
わたしは死なないわ。まだ、ここではね」

マシュ(……来る! 空気の震えで、存在感が分かる……! 怪物が、来る!)


『グゴオオオオオオオオアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!』

マシュ「っっ……」ビリビリ

マシュ(吼えた、だけなのに……踏ん張らないと、吹き飛ばされそう……!)

黒龍「フシュルルルルル……」

ジャンヌ・ダルク?「どうしました、急に止まっ……おや、これはこれは。懐かしい顔ぶれですね」

ジャンヌ「……あれが、究極の竜種……」

ジャンヌ・ダルク?「丁度いいわ。焼き尽くしなさい、ファヴニール」

黒龍「ゴゥゥゥゥゥ……」シュシュシュシュシュ


マシュ「黒龍、上体を仰け反らせ始めました。あれは……周囲の空気を取り込んで……ブレスの準備をしています!」

ジャンヌ「今からの回避は間に合いません。一旦ここで受け止めるしか……」


マリー「やあっ!!」ザワザワザワ

アマデウス「時間は稼ぐよ、あとは頼む!」グワォォォォォォォォン


マシュ「あのお二人がブレスまでの時間を延ばしてくれている間に……宝具の魔力を、展開して……」

ジャンヌ「私も、いけます! 宝具を展開し、防御を! 戻って下さい、二人とも!」バササッ

マシュ「仮想宝具、展開!!」

ジャンヌ「『我が神は(リュミノジテ)……』

マシュ「『ロード・カルデアス』!!」ギュオォォォォォ

ジャンヌ「『ここにありて(エテルネッル)!』ズォォォォォォ


黒龍「ガァッ!!」ドグォォォォォォォォ‼


マシュ(お、重い……二人がかり、なのに!)ガガガガガガガガ

ジャンヌ(なんという熱量、エネルギー……! まともに受ければ、灰になる暇もなく溶かされていた! 抑え込むので、精一杯……!)ゴゴゴゴゴゴゴゴ

マリー「きゃっ!」

アマデウス「うわっと、こりゃあ激しいな……!」


マシュ(もうすぐ、もう少しのハズ……息継ぎすら難しい……!!)ガクガクガクガク



黒龍「……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ピタッ


マシュ「っ、今です!! 走って!!」

ジャンヌ「行きましょう!!」ダダッ

マリー「ジークフリートさんは歩けないみたい! アマデウス、おぶってあげられる!?」

アマデウス「ああもう!! お代は後でもらうからな!」ガシッ

ジークフリート「すまない……本当にすまない……」ユッサユッサ


ジャンヌ・ダルク?「ククッ、地を這う虫じみてて本当に無様。追いなさい、ファヴニール!」

黒龍「ゴアアアアアアアアアア!!」ドシン、ドシン


マシュ「お、追って来てます!!」

ジークフリート「……今、魔力を溜めてる……撃退の分の魔力を」ユッサユッサ

マリー「わたしの魔法も使ってるけど、あまり回復できてないみたい。やっぱり呪いが根幹まで届いちゃってるみたいだから、それを解かなきゃ」

ジャンヌ「くっ、私にもっと力があれば……!!」

アマデウス「ああもうっ、こんな時に! 前方にフランス軍だ、こっちに砲を向けてるぞ!」

マシュ「……!!」

ジャンヌ「くっ、私が居たら確実に魔女の一味だと勘違いされて……!!」


???「砲兵隊、撃て!! 狙いは後方、あの竜だ!」

ジャンヌ「!?」

兵士達「「「発射―――――――!!!」」」


ドドドドドドン‼‼

黒龍「グゴ……」

ジャンヌ・ダルク?「ちっ、あれは……『染まってない方』じゃないの。面倒なのが居るわね」


ジャンヌ「あれは……ジル!」

ジル「まだだ! 火力を集中させろ!! 第二部隊展開! 一斉砲火!」

兵士達「「「砲火!!!」」」


ドドドドドドン‼‼


黒龍「ガアアアアアアッ!!」イライラ

ジークフリート「……いける。魔力が溜まった」

アマデウス「ようやくか、降ろすぞドラゴンスレイヤー!」

ジークフリート「ああ。感謝する。そして……久しいな、ファヴニール」


黒龍「……」


ジャンヌ・ダルク?(何? ファヴニールが怯えてる……? まさか、この男は……!)


ジークフリート「二度蘇ったのなら、二度この宝具を打ち込むまで……!」

ジークフリート「蒼天の空に聞け! 我が真名はジークフリート! 汝をかつて打ち倒した者なり!」

ジークフリート「宝具解放……『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!」ズォォォォォォ

ジャンヌ・ダルク?「回避しなさい、ファヴニール!! 上へ!!」

ファヴニール「グオォォッ!!」バサッ‼

ジークフリート「遅い!!」ヒュンッドシュウ‼

ファヴニール「グ……ガァァァァァァ!!」バサッバサッバサッ

マシュ「あ、あの竜が空へ向けて撤退していきます!」

ジークフリート「……すまないが、今はこれが限界だ。戻って来ないうちに逃げてくれ……」

マリー「賛成よ、早く逃げましょう!」

アマデウス「よし来た、さっさと逃げるとしよう!」



ジル「ジャンヌ! お待ちを! 貴女は確かにジャンヌ・ダルク! “竜の魔女”ではない、正真正銘の聖女……!」

ジャンヌ「……」

マリー「……返答しなくて良いのですか?」

ジャンヌ「私が返答すれば、ジルの立場が危うくなります。現状、彼らに頼ることもないでしょう。……何より、かつて共に戦った人々に憎まれるのはさすがに堪えますから」

マリー「でも……本当に彼らは、憎んでいるのでしょうか」

ジャンヌ「――行きましょう」



ジル「……もう一度、“竜の魔女”について調べ直せ」

兵士「えっ……?」

ジル「シャルル七世を討ったのが、本当にジャンヌ・ダルクだったのか。悪質な偽物なのか。あるいは……」

ジル「ジャンヌ・ダルクはこの世界に二人存在するのか」



マリー「……やっぱり駄目ね、治し切れない……というか、効果があるのかすら怪しいわ。ごめんなさい、ジークフリート」

ジークフリート「……いや、構わない」

ジャンヌ「彼には今、複数の呪いが掛かっています。……生きているのが、不思議なほどの」

マシュ「ジャンヌさんほどの力があっても……解呪はできないんですか?」

ジャンヌ「はい。これほどの呪いとなると、せめてあと一人の聖人が欲しい」

マシュ「聖人のサーヴァント……ですか」

ドクター『ああ、可能性はある。聖杯を持っているのが“竜の魔女”ジャンヌ・ダルクならば、その反動……抑止力のようなもので聖人が召喚されている可能性はある』

ドクター『現に聖女マルタが召喚されていたしね。それで、キミたちに聖人サーヴァントのあてはあるかい?』

マシュ「いえ……」

ジークフリート「俺も、敵以外だと君達が初めて出会うサーヴァントだ」

マリー「……うーん……あてもなく探す、というのも大変ですし。危険かもしれないけど、手分けして探すっていうのはどうかしら?」

ジャンヌ「……そうですね、私もそれが妥当だと思います」

アマデウス「で、組み合わせはどうやって決めるんだい? 仲の良い奴同士だと、僕が真っ先にはぶられちゃいそうだけど」

マリー「もちろん、こういう時はくじ引きよ! アマデウス、作って頂戴!」

アマデウス「くじを引きたいだけだろうキミは。……わかったよ、くじを作る。それでグループ分けをしよう」


マシュ「……」ガチガチ

マリー「もう、マシュったらそんなに緊張しなくていいのに! ……本当よ?」

マシュ「い、いえ。何と言うか、発言一つで国際問題になりそうというか!」

マリー「んもぅ、大げさよ! ……アマデウス、ジャンヌさん達をお願いね」

アマデウス「正直、今キミと離れるのは不安だが……くじは運命によるもの。これに逆らうのはよけいに悪運を呼びそうだ」

アマデウス「まあ、キミの宝具は逃走に使える。マシュは守護に特化している。むしろ不安なのは怪我人を抱えたこちら側かな……」

ジークフリート「……すまない……本当にすまない……」

アマデウス「あ、いや違うんだ。今のはどちらかというと、自分の力不足を嘆いた言葉だよ」

マリー「アマデウス、仲良くするのよ。あなた、お友達に誤解されるタイプだから」

アマデウス「キミに言われたくはないよ。それより、マリア」

マリー「うん?」

アマデウス「……いや、何でもない。道中気を付けるように。空腹になったからって洋菓子店を探すんじゃないぞ」


マリー「なあんだ! わたし、てっきりまたプロポーズされるかと思ってドキドキしていたわ!」

アマデウス「待て。なぜ今その話をするんだキミは!」

マシュ「プロポーズ……ですか? え? マリーさんと? アマデウスさんが?」

ドクター『あれ、知らないのかいマシュ? わりと有名な話だよ、それ』

ドクター『そちらにいらっしゃるミスター・アマデウスは六歳の時、七歳の彼女(マリー)にプロポーズしたんだよ』

マリー「ええ、転んだ彼にわたしが手を差し出すとキラキラした目で見つめて――」

マリー「『ありがとう、素敵な人。僕はアマデウスと言います。
もし、貴女のように美しい人に結婚の約束がないのなら、僕が最初でよろしいですか?』

……そう言ってくれたの! あんなにときめいたのは、生まれて初めてだったわ!」

アマデウス「まさか後世にまで伝わっているとは……悪夢だ……」

マリー「うふふ、それはそうでしょうとも。わたし、嬉しくって嬉しくって方々に広めたんですもの!」

アマデウス「君のせいか! 君のせいだったのか! 断ったクセに、なんて魔性の女なんだ!」

マリー「それは仕方ないわ。だってわたし、婚約相手は自分では決められなかったのだし。
それに――」


マリー「その後のわたしの人生を知っているでしょう? わたしはあれで良かったの。断って良かったの」

マリー「だから貴方は音楽家として多くの人に愛される事になった。
だからわたしは愚かな王妃として命を終えた」

マリー「しょうがないの。しょうがないじゃない。だってわたし、いつだって恋に夢中なんだもの」

マリー「……わたし、きっと、フランスという国に恋をしていたのね。人々を愛さず、国そのものしか愛さなかった。
……そんな風に思い上がった女だから、最期はあんなふうに、国民たちの手で終わったのよ」

ジャンヌ「マリー、それは……」

アマデウス「……なんだそれ。馬鹿じゃないのか、君」

マリー「馬鹿なの、わたし?」

アマデウス「ああ。とんでもない勘違いだ。フランスという国に恋をしていた、だあ?」

アマデウス「それは違う。フランスという国が、君に恋をしていたんだ」

マリー「…………うん。ありがとう、モーツァルト」


マリー「……あれ? でもそれっておかしくない? じゃあ私に恋をしてくれた人が、私を殺したってこと?」

アマデウス「ああ。人間とはそういうものだ。愛情は簡単に憎しみに切り替わる。君は愛されたからこそ、人々に憎まれたんだよ」

マシュ「……愛されたから憎まれた……恋しながら、その恋人を手にかけた……」

マリー「そっか。人間ってむつかしいのね。結局死んでも、愛には届かなかったわ……」

マリー「でも、今はそれでいいわ! 私はマリー・アントワネット、フランスに恋された女だもの!」

マリー「じゃあね、アマデウス! 行ってくるわ! 帰ったら久しぶりに、貴方のピアノを聞かせてちょうだい!」タッタッ

マシュ「あ、ジャンヌさん。連絡を一定時間ごとに取り合いましょう。カルデアの通信機をどうぞ。魔力で念話が可能になります」

ジャンヌ「分かりました。お預かりします……どうか、お気をつけて」

マシュ「そちらも、どうか……では、また」



聖人探索班

1 マシュ マリー

2 ジャンヌ アマデウス ジークフリート




ブルース(…………)

ブルース(……口が……いや、口に何かを突っ込まれている)

ブルース(誰かに何かを咀嚼させられ、飲まされている……)

ブルース(これは毒か?)


バットマン「!!」ガバッガシィ‼

兵士C「うわああああ!! や、やめろ!! 看病してただけじゃねえか!!」ワタワタ

バットマン「……ここは……」

兵士C「お、起きるなり首引っ掴んできやがって、ビックリするだろ……ここはティエールだよ、アンタ、この宿に預けられたんだ。ツレはどっか行っちまったぞ」

バットマン「……すまなかった。助かった」

兵士C「い、いや、こっちも一回助けられた身だから何も言わねえけど……」

バットマン「マシュの……一緒にいた者の行き先は知らないか?」

兵士C「いや、何も言わずに出て行っちまったから……ただ、アンタを頼むとだけ言われて」

バットマン「……」

兵士C「何にせよ、回復したんなら良かった。起き上がれるか? 助けが要るか?」

バットマン「いや、大丈夫だ。礼を言……」


< コノッ‼ コノ、コノ、コノッ‼ ナマイキ‼ ナノヨ‼ キョクトウノ‼ ドイナカリスガ‼
< ウフフフフ。ナマイキナノハ、サテ、ドチラデショウ。
< ギャーギャー‼ ワーワー‼ オイオイケンカダゾ、シッポハエテル、ヒヲフイテル


バットマン「……礼は改めてさせてもらう」

兵士C「いーっていーって、こっちも助けられたんだ……から……」

シーン……

兵士C「き、消えた……!?」



???「出来損ないの竜が、真の竜であるこのわたくしに……勝てるとお思いで。エリザベートさん?」

エリザベート「うーーーーーっ!! ムカつくったらありゃしないわ! カーミラの前に、まずはアンタを血祭りにしてあげる!」

バットマン(カーミラ? エリザベート? あの赤い髪の少女はまさか、あの時戦ったエルジェーベトの少女時代なのか? ならそのエリザベートと言い争っている、角の生えた女は……?)

エリザベート「この泥沼ストーカー!」

???「ストーカーではありません。『隠密的にすら見える献身的な後方警備』です」


バットマン(ストーカー……極東の雅な服装……あれはキモノか。駄目だ、歴史上で思い当たる人間は居ない……)

???「この清姫、愛に生きる女です故」

バットマン(……奴らに警戒心は無いのか……清姫。一晩を安珍と過ごし、帰って来ると約束したものの帰って来なかった彼を追い、恨みから大蛇に……そのまま、鐘に隠れた安珍を焼き殺した。その後入水自殺)

エリザベート「アンタの愛は人権侵害なのよ!」

清姫「血液拷問フェチのド変態に言われたくありませんね」

バットマン(という事は、あの赤髪はやはりエルジェーベトの少女時代。……エリザベート・バートリー……。
どうやら、未来の自分に敵意を持っているようだ。この喧嘩の発展具合によっては止め、説得してこちらの戦力に……いや、だがもう少し様子を……)

清姫「どうせ貴女のことです、アレしながらナニしてたんでしょう……?

エリザベート「ああああああああ! うるさいうるさいうるさい! 取り敢えず……殺す!」

清姫「返り討ちにさせて頂きます!」

二人「「たああああああああああ!!」」

バットマン(駄目だ、サーヴァント同士となると近隣の被害も見過ごせない。病み上がりだが行くしかない……!)


バットマン「フッ!!」シュパパパパッ

清姫「!! シャアアッ!」ゴウ‼

エリザベート「何よ!」ガキキキィン‼

バットマン(投擲したバットラングを、清姫は炎を吐いて溶かし、エリザベートは槍で弾いたか……ふざけているように見えて、戦闘力は予想以上)

バットマン「落ち着け。今ここで争えば……」

清姫「いきなり出て来てなんですか貴方は! 猫のコスプレなんてして!」

エリザベート「そーよそーよ! 引っ込んでなさい、キャットファイトに猫は不要なのよ!」

バットマン「……」

清姫「喧嘩に混ざりたいなら話は別ですが!」シャーッ‼

エリザベート「やるっての!? じゃあやってやろうじゃない!!」キシャーッ‼

バットマン(駄目だ、完璧に頭に血が上っている。一旦落ち着かせるためにも、多少のショックを与える……どこまでやれるかは不明だが、幸いここは街の中)

バットマン「やってやろう。掛かって来い」

バットマン(建造物を利用すれば、勝ちの目はある)



清姫「シャーーー!!」ゴゴゴウッ‼

バットマン「!」ババッ、バササササササ

エリザベート「ほんっと、逃げ足だけは一流ね! こ……のっ!!」ダンッ

バットマン「!!(凄まじい跳躍力……! 屋根の高さまで跳んだ!?)」

エリザベート「つっかまえたぁ!」ブンッ

バットマン「くっ……!」グルッシュパッ

エリザベート「なっ、マントで視界を……」グラッ

バットマン「ここだ……!」シュポッガシッ

エリザベート「きゃっ!? ちょっと、なんなのよこれ!? ま、巻き上げられて……」ギュルギュルギュルギュル

バットマン「フッ!」ドドッ

エリザベート「きゃあ!?」ゴロゴロッ

清姫「カアッ!!」ゴゴッ‼

バットマン「くっ……」バッシャァァァァァン

清姫「なかなか足掻かれますね、ただの人間にしては……」


清姫(炎を食らった瞬間、噴水の中に飛び込んだ……まさか、こちらの行動を予測尽くで動いていたとでも?)


エリザベート「ネコミミのくせして!!」ガバッ


エリザベート(ほんと何なのよアイツ……不気味すぎるわ。清姫が炎を吐くのを見越してたみたいに、私をブレスの軌道上から蹴り飛ばして……)



バットマン(…………さて、ここからどうするか。奴らの頭がどれだけ冷えたかにもよるが……サーヴァント相手の戦いというのはやりにくい……)

バットマン(……いや、待て。なんだ、この、気配は……)




ワイバーン達「「「ギャース!! ギャアアアアア!!」」」

ランスロット「Arrrrrrrrr……」

ランスロット「Arrrrrrrrthurrrrrrrrrrrr!!!!」


少なくて申し訳ない。今日の更新はここまでとさせて頂きます。

ベンアフバッメン良いよね……私ベールのスマートなバッメンも好きだけどベンアフのごっついバッメンも大好き……

時系列とか知名度は……ほら、アースいっぱいあるし。ウルトラマンとか居たし。ね。見逃して下さい。お願いします。


バットマン「…………」スクッ

ワイバーン達「「「ゴギャアアアアアアアアア!!」」」


バットマン(上空にワイバーン多数。その内の一匹の背に乗るのは……)

???「Arrrrrrr……」


バットマン(鎧の騎士……剣を所持。兜で顔は見えない……あの存在感、間違いなくサーヴァント)


清姫「お知り合いですか?」

バットマン「……悪いが違う」

エリザベート「それじゃ、敵よね。どう考えても」

バットマン「恐らくそうだ」

ドクター『ちょちょ、ちょっとブルースくん! いつ目覚めたんだい!?』

バットマン「ドクター、あの騎士の解析を頼む」

ドクター『全くキミは、ちょっと目を離すとすぐにこれだ! 前回はトイレに行ったのかと思ってたら戦闘してるし、今回は寝てるかと思ったらよく知らないサーヴァントと並んでるし!』

バットマン「ドクター」

ドクター『わ、分かってるよ。解析解析……あの鞘に納められた剣の反応、かなり強固な霊子だ。刃こぼれには期待しない方が良さそう』

バットマン(……頑丈な剣を持つ騎士……駄目だ、候補が多すぎる)


???「Arrrrrr……Arrrrrrrrrthurrrrrrrr!!!!」バッ

ワイバーン達「「「ギャアアアアアアアア!!!!」」」バサバサバサバサッ‼


バットマン「来るぞ!」

清姫「ええ!」

エリザベート「言われなくても!」


黒甲冑の騎士が降り立った。流麗な着地の後も数秒、彼はじっと動かなかった。

バットマンは警戒した。上空から舞い降りたワイバーン達が二人の間を荒れ狂う吹雪じみてよぎっても、二人は動かなかった。
 
 エリザベートと清姫は既に冷静さを取り戻し、街を守るための戦いを開始している。周囲では炎が舞い、エリザベートの槍が打ち振られ、清姫の扇子が踊る。

 だが、二人の騎士は動かなかった。兜のバイザーから漏れ出た赤い眼光と、マスクから覗く鋭い視線がかち合った。


 バットマンはバットラングを投擲した。だが空中で火花が散った。剣が振られ、弾かれたのだ。それを理解した時には、騎士は既に蝙蝠の眼前に居た。

「!!!」

 ブレーサーが掲げられ、振り下ろされた『それ』とぶつかり、火花を散らした。バットマンは力を受け流し、回転しながら拳を繰り出す。

 騎士は横に構えた『それ』で受けた……木の枝で。

(馬鹿な)

 折れない。頑丈すぎる木の枝に困惑したその一瞬の隙を突き、蹴りが叩き込まれた。

「ッ!?」

 石畳を破砕しながら転がって威力を流し、バットマンは高速思考する。真名。真名は何だ。あの能力は何だ。木の枝にすら圧倒的な強度を付与するあの能力は。

 それは伝説……何かの伝説に基づいた能力のハズだ。騎士の伝説……そう、例えば、拾った木の枝で、敵を打ち倒した伝説のような。

「Arrrrrrrthurrrrrrr!!」

 あの叫び。Arthur(アーサー)。アーサー王伝説に近く、拾った物で敵を打ち倒す……。

(フェロット。フェロットの策に嵌まり、丸腰で戦う事になってしまい……楡の枝で敵を倒した騎士)


 騎士が近付き、踏み込んだ突きを繰り出した。スピードがうねり、風となって周囲を走る。

 バットマンは素早く身体を起こし、膝立ち状態で木の枝を受け流していた。ブレーサーの表面で枝が滑り、火花を散らす。

(ランスロット。湖畔の騎士)

 眼光が輝いた。反撃のアッパーカットが繰り出された。



…………

マシュ「では、私は酒場で情報の聞き込みを。マリーさんは街中の探索を」

マリー「ええ、分かったわ! ……ところで、アマデウスとジャンヌは無事かしら?」

マシュ「そ、そうですね。そろそろ連絡を取ってみましょう……もしもし、ジャンヌさん。そちらの首尾は如何でしょうか」


ジャンヌ『……ザザ……っエールから煙……ザザ……』

マシュ「ジャンヌさん? もしもし? 通信機の不調でしょうか……」

ジャンヌ『……ティエールから煙です、煙が上がっています!』

マシュ「なっ、ティエール……マスターは!? マスターは……ドクター、マスターはどうなっていますか!?」

ドクター『だ、大丈夫だ! 敵と交戦中だが、その場に居合わせたサーヴァント二騎と上手く協力して戦っている! だけど、もう少し火力が足りないみたいだ……』

ジャンヌ『今ティエールへ向かっています! もう少しで到着するのでそれまで持ちこたえるように伝えて下さい!』

ドクター『分かった! ブルースくんなら大丈夫、それよりマシュ、君もやるべき事を!』ブツッ


マシュ「マスター……」

マシュ(なんで一番大事な時に私が傍に居ないんですか……これじゃ、何も……)

マリー「マシュ? 大丈夫よ、ジャンヌはやると言ったらやるし……アマデウスも案外強いのよ? それに、私達もやるべき事があるでしょう?」

マシュ「……は、はい! 聖人の情報を手に入れ、ジークフリートさんを救います!」

マリー「ええ、行きましょう! ドラゴンスレイヤーさんを……フランスを救えるのは私達だけ、なんだから!」


………………

マシュ「……」

マシュ(ひ、人に溶け込むためになるべく目立たない恰好を選んだのですが……このフード、ボロボロすぎますかね……)

マシュ(そ、そんな事を考えてる場合ではありませんでした! 酒場に入って、情報を集めなければ!)

マシュ「お、お邪魔します……?」

男A「……」

男B「……おい、あれ」

男C「ひゅうっ! 良い身体してるぜ、姉ちゃん!」

男D「……」ヒソヒソ


マシュ(お、お酒臭い……それに、肌に感じるほどの悪意の視線……長居は無用ですね……)


マシュ「すみません。お尋ねしたいのですが」

店主「……いらっしゃい、何にします?」

マシュ「いえ、飲み物は結構です。その、少しお尋ねしたい事が……きゃっ!?」ドッ

男A「いってえなあオイ! ぶつかりやがって、何処見てやがる!?」

マシュ「す、すみません。不注意でした」

男A「謝罪で済んだら世話ねえんだよ。責任取れや……ちょっと店の裏まで来い」

マシュ「そ、それは、その……」

男A「いいから来いって言ってんだよ!」ガシッ

マシュ「……っ……」


???「やめろ、でかい男がみっともない」

男A「あんだてめ……え……」


トゥーフェイス「……やめろって言ったんだが。聞こえなかったなら耳の風通しを良くしてやろうか?」


男A「……ちっ、運が良かったな!」タッタッ


トゥーフェイス「三下が……お嬢さん、怪我はないか?」


マシュ(え? これは……き、気付かれてない……のでしょうか? へ、変装が効いてる?)


トゥーフェイス「……良いんだ、怪我は無かったようだな。男を代表して謝罪しとく、決してああいうのばっかりじゃあないんだ……すまんな……」


マシュ(そ、それに……この前とは人が変わったみたいに……)


マシュ「は、はい。助かりました、ありがとうございます」

トゥーフェイス「ああ、構わない。さっきのような現場を見てると、地方検事をやってた頃を思い出してな……つい、余計な正義感が頭をもたげる……いや、関係無い事だったな、お嬢さんには」

マシュ(地方検事……この方は一体……)


サンソン「トゥーフェイス、こんなところに居たのか。探させるなよ」

トゥーフェイス「良いだろうが、酒くらいは飲ませてくれ。この後の事を思うとやってられん」

サンソン「……一杯だけだぞ。それに、この付近にサーヴァントの気配がある。気を抜くな」

トゥーフェイス「ああ、平気だ。その気配も『聖人』のものだろう、さっさと片付けて戻るとしよう」

マシュ「……!」



マシュ(駄目だ、今店主に聖人の事を尋ねたら私の正体がバレる……でも急がないと、この人達も聖人が目当て……)

トゥーフェイス「……聖人を殺す、か。いよいよもって公平さの欠片もない行いだ」

サンソン「仕方ないさ。召喚されたんだから、やるしかない。それに……殺しは問題じゃない。問題は、死が美しいかどうかだ」

トゥーフェイス「……理解しかねる」グビッ

サンソン「処刑人と地方検事じゃ、仕事が違うさ」


マシュ(……行かなきゃ。マリーさんと合流して、聖人を見つけ出して、この街を離れなきゃ)

トゥーフェイス「お嬢さん、そういえば店主に何か尋ねてたみたいだが」

マシュ「……っ……」

トゥーフェイス「いいのか? 俺達に気を遣う必要は無い、話すといい」

マシュ(どうする……この場を切り抜けるには、どうすれば……)

サンソン「……?」


マリー「マシュ、見つけたわ! この人が……」バタン‼

???「……私に用があると聞いたのだが」




サンソン「……王妃?」

マシュ「!!!!!」

トゥーフェイス「……?」


マシュ(こうなったら!)

マシュ「やあああっ!!」ガッ‼


トゥーフェイス「なっ……」グラッ

サンソン「ちいっ!?」ドサッ


マシュ「マリーさん、逃げましょう!」ダダッ

マリー「え、ええ! そうね、そうしましょう! ゲオルギウスさん? どうかご一緒してくださいな!」ガシッタッタッ

ゲオルギウス「待ちなさい、まだ住民の避難が……待って下さい!」ズルズル


トゥーフェイス「野郎、嘗めた真似を……」ギリィ

サンソン「行くぞトゥーフェイス、追うんだ!」ムクリ

トゥーフェイス「ああ、公平さを教えてやる!」ダッ



マシュ「……駄目です、街の外にワイバーンが大挙して……」

ゲオルギウス「……私はここに残ります。貴女達だけでも、どうか逃走を」

マシュ「で、でもゲオルギウスさん!」

ゲオルギウス「この街の市長と約束したのです。ここは守る、と」

マシュ「っ……」

ゲオルギウス「申し訳ない。たとえ大局を見失った行為だとしても、目の前の惨劇を見てみぬふりができるほど器用ではないのです」

マリー「……もう、ゲオルギウスさんったら。考え方も姿勢も、お髭まで硬い人なのね」

ゲオルギウス「なんですと?」

マリー「でも、そんなところがとってもキュート。わたし、感動しちゃったみたい」

マシュ「マリーさん……?」

マリー「逃げて、二人とも。わたしがここを守るわ、それで良いわよね?」




マシュ「……それなら私も残ります。一人でダメでも、二人なら行けます」

マリー「ノン。駄目よ、マシュ。ゲオルギウスさんを送り届けるという役目があるでしょう?」


マリー「……それに、わたし、分かるの。今回召喚されたのは、このためだったんだ、って。今度こそ、命を懸けて、民を守るためだったんだ、って」

マリー「今度こそ……今度こそ、わたし、正しい事を、正しく行うの。この国を、フランスを守るために」


マリー「……だから、マシュ。また後で会いましょう。わたし、後で追いつくわ?」

マシュ「……っ……分かりました。後でお会いしましょう、マリーさん」ダッ


マリー「……ふう。ごめんなさい、アマデウス。ピアノ、また聴けないみたい……」ジリッ



サンソン「……ようやく会えたね、王妃(マリー)」スタスタ


マリー「来たのね、サンソン」


サンソン「来たとも。処刑には資格がある。する側にも、される側にもだ。
僕以外に君を処刑する資格を持つ者はいない……それは君も実感しているはずだ、マリー」

マリー「……えーと、ちょっと待ってねサンソン。わたし、あなたが素晴らしい処刑人である事は知ってるわ。
だって残忍で冷酷で非人間だけど、あなたは深い敬意をもってギロチンの番をしていた」

マリー「でも、だからってあなただけがわたしを殺す資格を持つの? それっておかしくないかしら?」



サンソン「おかしくないとも。僕は処刑人の家に生まれ、処刑の事だけを教え込まれた」

サンソン「そこに妥協はない。心がけだけの話じゃない。なにより殺し方……処刑の技量にこだわった」

サンソン「いい処刑人が、罪人に苦しみを与えないのは当然だ。僕はその先を目指した」

サンソン「……つまり、快楽だ。その瞬間、まさに『死ぬほど気持ちいい』」

サンソン「僕はそんな斬首を心掛けたつもりだ。そして生涯最高の一振りが、君に向けた斬首だった」


マリー「……」



サンソン「だからこれは運命だ。僕はどうしても、もう一度君に会って尋ねたかった」

サンソン「だから聞かせてくれ、マリー」


サンソン「僕の断頭はどうだった? 君、最期に絶頂を迎えてくれたかい?」



マリー「……あなたが本気で、心からわたしに敬意を表してくれているのはわかるわ、サンソン。
でもごめんなさい、ちょっと、それはムリ。とても口にはできない事だし……」

マリー「わたし、倒錯趣味の殿方はもう間に合っているの。申し訳ないけど、二度目の口づけは受けられないわ」

サンソン「うん、知ってる。でもきっと君は喜んでくれるよ。だって僕はあの時より、もっと巧くなった……」

サンソン「だからこそサーヴァントとして召喚された。君にもう一度、最期の恍惚を与えよう……!」


…………

バットマン(ワイバーンはほぼ片付けた。あとはランスロットだけだ。だけだというのに)


ランスロット「Arrrrr!!!」

バットマン(いまひとつ、有効打がない……!)


バットマン「エリザベート! 躱せ!」

エリザベート「え? きゃっ!?」

ワイバーン「ゴアアアァァァァァァ!!」バサッ

清姫「この、しつこい……!」ゴッ

ワイバーン「ア……アァ……」ドサッ


バットマン(よし、これで全てのワイバーンを殲滅完了だ。あとはランスロット……何だ、この威圧感は……)


ランスロット「Arrrrr……Arrrrrrrrr!!!!!」


バットマン(嫌な予感がする)

バットマン「エリザベート! 清姫!! 伏せろ!」

エリザベート「なんなのよぉ!」バッ

清姫「えっ……」オロオロ

バットマン「くっ……」ガシッドサッ

清姫「え!?」ドサッ


ランスロット「Arrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!」ドドドドドドドドドドドドドドドドドド‼‼‼


バットマン「くっ……(ガトリングガンだと……? 時代錯誤にもほどがある……!)」チュゥン‼ チュィン‼

エリザベート「もーサイアク! 何なのよアイツ……キャッ!?」チュンッ‼


バットマン(駄目だ、凌ぎ切れない……)チュインッ‼


「『リュミノジテ・エテルネッル』!!」グォォォォォォォン


バットマン「!!」

ジャンヌ「遅れました!!」

アマデウス「無事だね、よし!」

ジークフリート「すまない……遅れた原因だ」


エリザベート「なんだか知らないけど反撃よぉーっ!!」

バットマン「……」ムクッ


ランスロット「Arrrrrrrrrrrr!!!!」シュウゥゥゥゥゥゥゥ……



…………

ジャンヌ「はあっ……はあっ……や、やった……」

ランスロット「Arrrrrr……A……王よ、どうか私を……」シュウシュウシュウ……ドシャッ

ランスロット「……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


バットマン「……」

ジャンヌ「ご無事で何よりです」

バットマン「ああ。礼を言う。……マシュは何処に?」

アマデウス「マシュくんならマリアと一緒に行動してるよ、今は聖人を探して探索してると思うね」

バットマン「聖人……?」

ジークフリート「俺の呪いを解くための手段だ」

バットマン「……」

ジャンヌ「ええと、この人はドラゴンスレイヤーのジークフリートさんです。
ですが、彼は呪われていて……その呪いを解くには、私ともう一人の聖人が必要。なので今、その方を捜索しているのです」

バットマン「成程。マシュとマリー・アントワネットはそれを探しに行ったと……」

アマデウス「うーん……? この足音、噂をすればってヤツかな? マシュくんじゃない?」


マシュ「……マスター!」タッタッ


バットマン「マシュ。無事だったか」

アマデウス「マリアはどうした?」

マシュ「っ……それが……」




サンソン(そんな、バカな……どうして僕が打ち負ける……!?)

サンソン(あの時から何人も殺して、何倍も強くなったのに、どうして……!?)


マリー「……やあっ!!」ガガッ‼

サンソン「くっ……」ドサッ


マリー「哀しいわね、シャルル=アンリ・サンソン。再会した時に言ってあげれば良かった」

マリー「あの時、既にあなたとの関係は終わっていたって……だって、本当に、貴方の刃は錆びついていたんだもの」

マリー「あなたは……」ドシュゥ


マリー「っぐ……」


トゥーフェイス「茶番は終わりだ、さっさとケリつけろサンソン」カチャリ

サンソン「トゥーフェイス……手を、出すなと……!」ギリッ

トゥーフェイス「いつまでもやられてるからだ。やれ、膝を撃ち抜いた。その女はもう立てねえ」

サンソン「……」スクッ、ガチャ


マリー(ああ、もう。最期まで思い通りにならないものね。
……でも、満足よ。きっとマシュはやり遂げる。マシュと、アマデウスと、ジャンヌと……ネコミミのあの人は、強いもの)


サンソン「真っ白な顔、真っ白なうなじまで、何一つ同じだ。同じなんだ、マリー。
でも、僕は強くなった。今度こそ、君を満足させてあげられるから……」グッ……


マリー「……サンソン。お馬鹿さんなんだから……」


サンソン「……だから、今度こそ、僕は失敗しない」


ヒュッ

ドシュッ



…………

アマデウス「そうか。そう言って残ったのか。んー、なら仕方ないか……あ、気にしなくて良いよ。僕らがいたとしても彼女はそうしただろうし。
マリアは限りのない博愛主義者だからなあ。そういう生き方で、そういう死に方をする女だよ」

アマデウス「……それより、早くジークフリートの呪いを解いてやったら?」

ジャンヌ「は、はい!」


マシュ「アマデウスさん……」

アマデウス「いいんだって。こうなるってわかってたし。ほら。マリア、ピアノの話をしていただろ?

あれはさ、彼女なりの別れの言葉なんだ。生前、一度も叶わなかったからね……ピアノを聴かせて、なんて言われたら僕としては止めようがないさ」


アマデウス「でもまあ、二度目の別れは堪えるね。一度目より辛い。もう出会えないかと思うと余計にだ」


アマデウス「……ま、ともあれ、ちょっと疲れたな。しばらく席を外すから、出発の時は声を掛けてくれ」

マシュ「待っ……」

バットマン「マシュ」

マシュ「マスター、でも……」


エリザベート「いいじゃない。誰だって一人になりたいときはあるわよ」

清姫「そうです、マシュとやら。男心が分かっておりません」

マシュ「そうですね。それはそれとして。

……何でいるのですか?」

エリザベート「別にいいじゃない。ねえ?」

清姫「わたくしたちがいて、何の不満が? 戦闘も手伝って差し上げますのに」

マシュ「はあ、それは有難いことですが……」


清姫「ところでマスター」

バットマン「……」

清姫「仮ですが、マスター契約を結んで下さいますか?」

バットマン「…………」

清姫「ええ、小指を出して下されば十分です」

バットマン「………………」

ガシッ……ミキミキミキミキ……

バットマン「……………………」グググググ

清姫「…………ゆーびきーりげーんまーんうそついたらはりせんぼんのーますー……」ググググググググ……

マシュ「えっ……」

清姫「これで契約完了です。
マスター契約は絶対なので、以降わたくしに嘘をついた場合、針を千本呑んで貰います。
よろしいですね? それでは、よろしくお願いいたします」パッ

バットマン「……」ジリッ


マシュ(どう見ても小指で鍔迫り合いをしていたような……)



…………

マシュ「マスター、ジャンヌさんたちがジークフリートさんの解呪に成功したそうです!」

ジャンヌ「ええ、成功しました。……マリーのおかげです。やはり、ひとりではうまくいかなかったでしょう」

ジークフリート「……よし、動くようになった。骨を折ってもらって申し訳ない。そして、感謝しよう。これより、この身は剣であり、盾だ。
真名ジークフリート。竜を殺す以外には能の無いサーヴァントだが、使ってくれれば光栄だ」


ドクター『よし、これで可能な限りの戦力は揃った訳だ』

マシュ「そうですね、マスター」

バットマン「ああ。次はオルレアンへ攻め入る」

マシュ「はい、了解しましたマスター!」

エリザベート「……ふん。そういうコトなら手伝ってあげてもいいわよ、ネコミミ」

清姫「あらエリザベート。わたくしの旦那様(マスター)にネコミミとは失敬ですよ」

エリザベート「……アンタいま、とんでもない変換しなかった……?
ま、まあいいけど。わたしはそんな安いドラゴンじゃないし。とっておきのマスターにいつか必ず出会うんだし!」

清姫「あら。ヒン曲がっているのは頭の角だけじゃないのね。見果てぬ夢を見ているなんて、頭の中は大丈夫?」

エリザベート「見果てぬ夢じゃないってーの! これは確信! 確信だから! 
きっとわたし好みの、わたしを大好きになってくれる、子ブタみたいなマスターと出会えるんだってば!」

清姫「はいはい、今日も頭は日本晴れですねぇ」


バットマン「…………」


ゲオルギウス「……賑やかで結構ですな、こちらの陣営は。もちろん、助力させていただきます」

アマデウス「おっと、もう出るのかい? じゃあ僕も付き合うよ、ここまで来たら最後までだ」


ジャンヌ「……今の私は、力無きサーヴァントです。それでも、この世界を守りたいと願っています。どうか、共に戦って下さい」

バットマン「……ああ、それが役割だ。こちらこそ、手を借りる」

ジャンヌ「……ええ、勿論! よろしくお願いします!」



ジャンヌ「今夜はここで野営を取りましょう。明日の決戦に備えて」

バットマン「……」

マシュ「マスターは休んでいて下さい。私は見張りを」

アマデウス「あ、なら僕も行くよ。耳の良さには自信があるからね」

ジャンヌ「では、私は水を汲みに……」


バットマン「……」カチャリ……シュポッガシッ

バットマン「フッ!」ギュルギュルギュルギュルッ‼

――――

バットマン(恐らく、ここが森で一番高い木の上だ。そして、明日の戦場が一望できる……)スタッ


バットマン(……凹凸の少ない平野だ。だがくぼみが無い訳ではない。なら究極の竜種とやらの炎も少しは防げる……問題はどこが主戦場になるか、だ)

バットマン(……戦線が全て維持できるなどと期待してはならない。すべての戦線に、常に最悪を想定する……
もし、あそこに構えたラインが消えたなら……あそこのラインが敗走を開始したなら……ドラゴンスレイヤーが消えたなら……裏切りが、発生したなら?)

バットマン(……すべての可能性への対策は、必要だ)ギシッ……



マシュ「……」

アマデウス「~~~♪ ~~~~……
どうしたんだい、浮かない顔じゃないか。明日の決戦を前に、悩みでもあるのかい?」

マシュ「い、いえ……ただ、マスターに信頼されてるのかというのが、どうしても気になってしまって……
私、大事な時にマスターの傍を離れてしまいましたし……それに、何処かよそよそしい感じがするというか、何と言うか……」

アマデウス「……成程。まあ、傍から見ててもよく分かる程度にはあのマスターも偏屈な奴みたいだしね」

マシュ「そんな事は……いえ、否定できません」

アマデウス「そうだろう? 猫のコスプレをして中世をうろつく人間なんて、ちょっと正気を疑うよ」

マシュ「……」

アマデウス「まあ、信頼なんて依存の裏返しさ。悪い事とは言わないが、そこにはデメリットだってきっと付きまとう。
彼は多分、そういったものから何かを守ろうとしてるんだよ」

マシュ「守ろうとしてる……いったい、何をでしょうか」

アマデウス「……そこは分からないなぁ。彼には彼の世界がある訳だし。
ただまあ、理由の無い行動ってのは絶対にしないタイプだろうね、アレ。一種の狂人だよ、僕とは別ベクトルの」

マシュ「……」

アマデウス「……だからまあ、君が不安に思うのも分かる。彼も恐らく、どうしたら良いか分かってないハズだ。
君が味方だと心で分かっていても、頭の中では何千通りも裏切られるイメージが浮かんでるんだと思う。人間の善性というヤツを根本から信じられないんだ。
……うん、こう言うと僕に並ぶくらいには屑っぽいな」

マシュ「どうしたら……」

アマデウス「……うーん。それは僕には難しい問いだ。
だって僕も屑だからね、同じ屑を救う方法なんて、分かってたらとっくに自分で実践してるし」

マシュ「…………」

アマデウス「……大丈夫、あのマスターは悪いヤツじゃないさ。
途轍もなく不器用だろうけど、決してそれは悪い事じゃない。君が手を差し伸べれば、必ず応えは返るはずだ」

マシュ「……はい。ありがとうございます。……すみません、こんな事を聞かせて」

アマデウス「良いのさ。これが終わったら僕の愚痴も聞いてもらうとするよ、主にマリアとかその辺のね……」



オルレアン決戦前夜

人理守護側戦力

バットマン
マシュ
ジャンヌ
アマデウス
ジークフリート
ゲオルギウス
清姫
エリザベート


人理焼却側戦力

ジャンヌ・ダルク(黒)
トゥーフェイス
ジル(黒)
ヴラド三世
エルジェーベト
サンソン
ファヴニール
デオン

今日の更新はここまでです、お付き合い有難うございました。
ブルースの知識量は変態的すぎて作者も扱いかねている。読者様の中にブルースとタメを張れる代行者は居ませんか


………………

黒ジャンヌ「……ふぅん、ケチな王妃一人を殺して逃げ帰って来たと」

トゥーフェイス「フン……」

サンソン「……」ギリッ……

黒ジャンヌ「まあ良いでしょう。所詮、生きていても虫けら以下の足掻きしかできないような連中です。所在さえ掴められれば……」

黒ジル「ジャンヌ、どうやらセイバーが戻って来たようです」

黒ジャンヌ「……セイバーが?」


デオン「帰還したよ」

黒ジャンヌ「何かしら。あなたには南東部の捜索を任せていたハズだけど」

デオン「奴らの居場所を特定した。オルレアンからすぐ南の森に潜伏してる。どうやら明日あたり、決戦を仕掛けて来る腹積もりのようだ」

黒ジャンヌ「……へえ?」


黒ジャンヌ「ここで出て来たという事は、勝算があるということね……」

デオン「ああ。だがキミも、決戦なら望むところだろう? あちらも、こちらも、戦力は随分と揃ったようだ。凄絶な戦いになるだろう」

黒ジャンヌ「楽しそうね?」

デオン「楽しいさ。何しろイカれてるからね、頭が。私としては、滅ぼすのもいいし滅ぼされるのも良い」

黒ジャンヌ「フン……ジル。すべてのサーヴァント、竜を呼び戻して。決戦に備えるわよ」

黒ジル「畏まりました。フランスに散った竜という竜を、サーヴァントというサーヴァントを招集しましょう」


黒ジャンヌ「……我々が勝てば、世界は滅びる。たとえ負けたとしても、それでどうなるものでもない」

黒ジャンヌ「世界はとうに終わっている。ここを修繕したところで、先は果てしない旅路だ」

黒ジャンヌ「それでも。……それでも、世界を肯定するのか。彼らとジャンヌ(わたし)は」


黒ジャンヌ「ならば、私は世界を叩き落す。この世界を繋がせはしない」

黒ジャンヌ「それが私の望み、そしてジルの望み。……そう、その筈。それが、私の望みの筈だ……」



「……」

「……」

「……彼女の、首を斬った時。僕は彼女の顔を見られなかった」

「……」

「僕は怖かった。自分が必死に、否定できない何かを否定しようとしている気持ちになっていた」

「……」

「……お前は、死が公平であるべきだと言ったな」

「……ああ、そうだ。死は公平に、裁きは公平に。俺達は皆、運の中でだけ平等だ」

「……僕は、運命があると思っていた。世界は運ではなく、もっと大きな流れの中にあるのだと。僕と彼女の世界は、そうあるべきだと思っていた。
だって、僕の……僕の、人生の一振りだったんだ。最高の一振りで、だから、僕は」

「……結局、俺達は損な役回りだったのさ。割り切れよ」

「……ひとつだけ、頼みがあるんだ」

「言ってみろ、聞いてやる」

「明日の決戦を、そのコインで占って欲しい」

「――あぁ、良いとも。俺も知りたいと思ってた。行くぞ……」キィン



バットマン「……ドクターによる地形計測に目測の修正を少し加えた結果、最終的な地形図はこうなった」

ジークフリート「成程、この地形……それなら、戦力は固めず、面のように広がって……」

バットマン「いや、それだと分断された時に囲まれる危険がある。むしろここは二手に分かれて動いた方が……」

ジークフリート「しかし、相手の出方が分からない以上……」

バットマン「……ある程度、サーヴァントとしての能力に寄りかかる戦い方もできる。だがそれは一人に対して一騎当千の働きを強いてしまいかねない」

清姫「あら旦那様、わたくし、少なくともその辺に居る雑魚ワイバーンなどよりよほど腕が立ちますよ? 心配して下さるのは有難いですが」

エリザベート「あ、ネコミミ。アタシ、ちょっと殴り合わなきゃ駄目なヤツが居るからそのつもりでよろしく」

バットマン「……未来のエルジェーベトか」

エリザベート「そーそー、年取った方のアタシ。……なんか分かりづらいからあっちの事は『カーミラ』って呼ぶわね」

バットマン「カーミラをやれるのか、一人で」

エリザベート「バカにしないでよね、泥啜ってでも殴り勝つわよ」


ジャンヌ「……わたしは……もうひとりの私をやります」

バットマン「勝てるのか」

ジャンヌ「……えぇ。必ず勝ってみせます」

バットマン「……そうか」


ジークフリート「……こう言っている以上、集団もそう多くは作れない」

バットマン「なら面攻撃か。次の問題はファヴニールの配置場所だが……」

ジークフリート「妥当な場所としては……」

バットマン「しかし、この位置だと……」



バットマン「……では、これで行こう」

ジークフリート「よし。朝日が昇り始めた。丁度良い、このまま進撃の準備をしよう」

ジャンヌ「……」スゥスゥ

清姫「……」シーン……(狸寝入り)

エリザベート「……」グゴォォォォォギリギリギリギリ


バットマン「……起きろ、そろそろ移動を開始するぞ」



マシュ「おはようございます、マスター!」

アマデウス「おはよう、快晴だね」

バットマン「何事も無かったか」

マシュ「はい! 無事に一夜を切り抜けました!」

アマデウス「うん、静かだ。昨日から不自然なほどにね。多分、あちらも決戦の準備を整えてるんだろう」

バットマン「……そうか」

ジャンヌ「うぅん……おはようございます」コシコシ

エリザベート「くわぁ~……」

清姫「おはようございます、旦那様」

ゲオルギウス「うむ、準備万端だ」


ジークフリート「このまま森を迂回、平野で一度戦線を組むことになるだろう。
……戦闘の準備は怠らないでくれ。ここからは引き返せない」

バットマン「……ああ」


バットマン(さあ、どう来る)



ジークフリート「……そろそろ森を抜ける……見え始めたな」

マシュ「…………あれが、フランス中のワイバーン達……そして、ファヴニール……人理を、焼こうとする者達……」ゴクリ

バットマン「……行くぞ、マシュ。この世界を救う」

マシュ「……はい!」



黒ジャンヌ「あら、来たのね。尻尾を巻いて逃げ出すと思っていましたが」

ジャンヌ「ええ、来ました。貴女を止め、世界を守る。散っていったひとりひとりの仲間のためにも」

黒ジャンヌ「……」


バットマン「…………」

トゥーフェイス「よう、脇腹に開けてやった穴は痛むか? もう一発ぶち込めば楽になるぜ」

バットマン「お前達を止める。未来は取り戻す」

トゥーフェイス「できっこねえさ、壁は俺達だけじゃねえんだぜ?」

バットマン「すべて乗り越える。お前達はひとつめに過ぎない」


デオン「すまないな、名も知らぬ盾の騎士よ。本意ではないのだが、やはり剣技は所詮殺しの技術だ。君を殺したい衝動を抑えられそうにない」

マシュ「……そのための盾です。どうぞ遠慮なく、打ち込んで下さい。私が止めます」

デオン「期待しているよ。……どうか、止めてくれ」


ジークフリート「……死を跨ぎ、三度もまみえるとはな。よほど俺達の因縁は深いらしい」

ファヴニール「……」

ジークフリート「決着をつけるとしよう。ここで終わらせてやる」


サンソン「……」

アマデウス(うわあ、一番面倒なのに当たっちゃったな……いや、わざわざこっちに来てたから、あっちはそのつもりだったのか?)

サンソン「……マリーは、僕にとって特別な人だった」

アマデウス「……そうか? 君にとっては単なる処刑対象の一人じゃないのか?」

サンソン「黙れ! 僕は! マリーを……マリーを、今度こそ……!」ギリリッ

アマデウス「フン、笑わせないでくれ。マリアは君だけの特別じゃあない。
……僕にだって怒りというものはある。特別だ、開幕から終幕、アンコールまでたっぷり聴かせてやるさ」


エリザベート「……」

カーミラ「……ああ、嫌。嫌ね、本当に嫌だわ。目の前を飛ぶ蠅みたい、叩き潰して捨ててやりたいわ」

エリザベート「悪いけど、叩き潰されるのはアンタだから。覚悟しなさいよ、年増になんて絶対に負けない」

カーミラ「……このガキ」ピキッ


ヴラド三世「おお、その魂の輝き! 貴様の如く若き者こそ、我が槍が屠り、その血を啜るにふさわしい!」

清姫「あらあら、全く。血液趣味のド変態など、一人も居れば十分です。
どうか、抵抗なさらず。すぐに串焼きにして差し上げます」ニコッ


ゲオルギウス「……」

ワイバーン達「「「グルルルルォア……」」」




ワイバーン達「「「ゴギャアアアアアアアアア!!!」」」




 その瞬間、聖女は走り出した。ほぼ同時に魔女も走り出す。二人の間にあった距離が縮まって行く。

 
 黒ジャンヌの後方から光弾が飛んだ。敵の支援射撃を、ジャンヌは走りながらの旗の一振りで打ち払った。逸らされた魔法は地面を抉り、土くれが弾け飛ぶ。

 同時に、ジャンヌの後方からも炎の塊が飛んだ。黒ジャンヌは鼻で笑い、旗で切り裂いて駆け抜ける。黒聖女の後方、切り裂かれた炎弾が爆発する。

 瞬間の静寂。踏み込みが地面を砕き散らす。二人の旗がぶつかる。火花が散る。

 一瞬遅れ、全軍が衝突。混沌が、戦争が始まった。




トゥーフェイス「どうした、まだウォーミングアップ中か!?」パァンパァン

バットマン「くっ……」バッババッ


マシュ「マスター、下がって……!」

デオン「余所見か、余裕だね!」ヒュンヒュンヒュンッ

マシュ「っ……」ガガッガッ


ジークフリート「ハァッ!」

ファヴニール「グオォォォォォォウル!!」ドォッ

ジークフリート「ちいっ」ダダッ

ワイバーン達「「「シャアッ!!」」」バサバサッ

ジークフリート「この……」


ゲオルギウス(駄目だ、ワイバーンの数が多すぎる! 手が回らない!)ズバッ‼ドシャッ‼

ワイバーンT「ゴアアアアアアア!!!」
ワイバーンU「ギャアアアアアアア!!」
ワイバーンV「ギギアアアアアアア!!」

ゲオルギウス(単純な物量で押し寄せられては……太刀打ちが出来ん!!)


黒ジャンヌ「こっちが押し気味じゃないの! 今のうちに降伏しとけば!?」ガガンッ‼ガインッ‼

ジャンヌ「いいえ、いいえ! 断ります! 世界が焼かれるのを伏せって見ているより、立って戦う事を選ぶ!!」ギィン‼ギャリィン‼

黒ジャンヌ「アンタたちが戦おうと戦うまいと、どうせ世界は焼かれるのよ! 
ジャンヌ(わたし)が死ぬのを見捨てた、こんな世界ですら末端に過ぎない! アンタも分かってるでしょう! 私達を倒したところで、根本的な解決には……」ガッギィィィィ‼

ジャンヌ「なら、私の敵は貴女の中の『諦め』です! 
世界は腐っていない! 人間は腐った部分だけではない! 必ず光の部分がある! 私はそれを信じます!」ギャギャギャッガァン‼


バットマン(……しかし、このままでは物量負けするのも確かだ。何処かに巻き返しの要素は無いか……)


???「騎兵隊、構えー!!! 突撃!!」

兵士達「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


ジャンヌ「……!! ジル!!」



ジル「ワイバーン達はお任せを! 必ず片付けます!」

兵士A「負けてたまるかァァァァァァ!!」

兵士B「押せ、押し切れ!!!」

兵士C「やっちまえええええええ!!!」



マシュ「……皆さん、あの時の……!」

ゲオルギウス「手が空いた! 助太刀に来たぞ!」

マシュ「助かります!」

デオン「ふっ、二対一でも譲る気はないさ!」ヒュォンッ



トゥーフェイス「ハン、こんな戦場に駆り出されるなんざ運の悪い連中だぜ。ひとりずつ、撃ち殺して……」カチャッ

バットマン「……」ヒュッ

トゥーフェイス「おっとぉ!」ザザァッ‼

バットマン「お前の相手は私だ」

トゥーフェイス「大口叩きやがる!」パァン



サンソン「ぐあああああああ!! うぐああああああああ!!」

アマデウス「まだまだ第一楽章だ、倒れられたら困るな! ここからが楽曲の真骨頂さ!」グォォォォン‼

サンソン「ぐ……うグ……」

サンソン(きょ、狂化が……これ以上精神攻撃を受ければ、理性のタガが外れる……)ガクガクガクガク




マシュ「やあっ!」ズガッ

デオン「!! くっ」ズサアッ

ゲオルギウス「ここで仕留める……! 『汝は竜、罪ありき!』」

デオン「しまっ……」

ゲオルギウス「『力屠る祝福の剣(アスカロン)』!」ズガガガッ‼

デオン「ぐあっ……っまだだ! 王妃に認められた者として、私はまだ終われない……!
『王家の百合、永遠なれ……』」グググググッ

マシュ「ゲオルギウスさんっ、危ない!」バッ

デオン「『百合の花咲く豪華絢爛(フルール・ド・リス)』!」ギュオオオオオオオオ

マシュ(……っ……力が、入らない……盾を支えていられないほどの脱力……これは、呪い!)



トゥーフェイス「どうやらもうすぐ佳境だな、この戦場も! こっちもそろそろ終わらせるか!?」ブゥン‼

バットマン「うぐっ……」ガッ、ドサァ……

トゥーフェイス「『ジャッジだ』!」



 マシュはその叫びを聞き、後ろを振り向いた。

 彼女のマスターがトゥーフェイスの宝具に縛られ、立ったまま苦悶の表情を浮かべているのを。二面の怪人が懐からコインを取り出すのを。

「テメエの罪はここで決まる。生存か、死刑か。陪審員の皆様はどうぞ静粛に……」


 マシュは殆ど考える猶予も無く、ブルースの前に立った。未だデオンの宝具影響下にある彼女は、盾を構えられるほどの力が肢体に籠らない。

 だが、それでも、背後に庇ったマスターは、命を懸ける価値があるのだと思えた。覚悟に唇を引き結んだ。

 
 トゥーフェイスは一瞬驚いたような表情になり、すぐにまた、諦めたように冷酷な顔に戻った。


「公平な、裁きの時間だ」


 キィン……コインが弾かれ、回転して宙を舞った。



 その音は、アマデウスの演奏を切り裂き、サンソンの耳に届いた。サンソンは理性がほぼ消し飛んだ瞳で、それを見た。マスターを庇って立つマシュを。かつて二度処刑した王妃と同じ、真っ白な顔を。


 その瞬間、卑怯な自己擁護を繰り返していたサンソンの理性は吹き飛び、ただ、自分は間違っていたのだという、どうしようもなく決定的な結論だけが、彼の剥き出しの心に突き刺さった。気が付けば彼は走り出していた。


 トゥーフェイスはコインをキャッチし、掌のそれを見た。そして溜息を吐き、銃を向けた。


「……あばよ、お嬢さん」


 二面の怪物は発砲した。

 弾丸は真っ直ぐマシュを狙って飛び……飛び込んできた影が、それを受け止めた。サンソンだった。彼の心臓を貫き、弾丸は止まった。


 トゥーフェイスは驚いたような表情でそれを見ていた。横からゲオルギウスに斬り付けられ、膝をついた時も、地面に倒れたサンソンをじっと見詰めていた。


「……たち、間違ってたんだ、僕達、間違ってたんだ……トゥーフェイス……トゥーフェイス、僕達、間違ってたんだよ……トゥーフェイス……」

 嗚咽混じりの声が漏れる。トゥーフェイスは呆れたように溜め息を吐き、やがて仰向けに倒れた。底抜けの青い空が彼を見下ろしていた。

「……そんな事は、分かってんだよ……」

 誰かが呟いた。悪人は、それが自分の口から出た言葉だと気付き、苦笑した。





バットマン「……」

マシュ「――デオン、トゥーフェイス、シャルル・アンリ・サンソン。消滅しました」


清姫「ファイヤーーーー!!」ゴゴウッ‼

ヴラド三世「ぐっ……」ボボボボッ

兵士達「「「撃て! ご婦人の援護に回れ!!」」」

ヴラド三世「おのれ……」シュウシュウシュウ


エリザベート「この!! 年増! アイドルは若いのがセンターやるって決まってんの!」ガッゴッガガッ

カーミラ「フン、大人の魅力を知らないなんて可哀想なちんちくりんですこと! 精々吼えてるが良いわ!」ギャンッギャリッギギギギッ‼

兵士達「「「耳栓を用意しろ! 一応、あの大人の方が敵だ!」」」


ファヴニール「グオォォォォォォル……」シュルシュルシュルシュル……

ジークフリート「……言ってなかったが、ここで終わりだ。『邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす』……」

ファヴニール「ゴアアアアアアッ!!」ゴゴゴゴゴゥッ‼‼

ジークフリート「――『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!」ジュゴゴゴゥッ、ズバァァァン‼

ファヴニール「……ゴ……ガ……」ドッサァァァァァン

ジークフリート「……さらばだ、ファヴニール」



黒ジャンヌ(趨勢は決まりつつある……このままでは負ける)

黒ジル「ジャンヌ! 一度砦へ撤退を! 新たなサーヴァントを召喚し、立て直しましょう!」

黒ジャンヌ「ジル……ええ、ここからでも十分巻き返せる……聖杯さえあれば!」ダダッ


ジャンヌ「待ちなさ……」

ワイバーン達「「「グギャアアアアアアアアス!!!」」」

ジャンヌ「くっ」

バットマン「ワイバーンを突破し、追うぞ。焦りで足並みを乱すな。このメンバーで突入する」

ジャンヌ「っはい!!」

マシュ「いきます!!」


中途半端で申し訳ない。今回の更新はここまでです。
バットマンのスーツ良いですよね。円卓守ってた時のも好きです……

 彼女が死んだのは、世界の冷たさゆえである。



 両親が死んだのには何の理由も無い。


 
 人の為にと立ち上がった彼女は、人がゆえに殺された。



 私の為にと立ち向かった両親は、私が原因で殺された。



 だからこそ、私は世界を憎む。世界は何一つ、彼女を顧みなかったのだから。



 だからこそ、私は自身を憎む。闇の中で震え、世界を変えられなかった自分を。


 

…………


黒ジル「ファヴニールは滅び、ワイバーンたちもこのままでは……」

黒ジャンヌ「わかっています。新たなサーヴァントを召喚しましょう」

黒ジル「おお! 私が時間稼ぎを受け持ちます、ゆるりと強力なサーヴァントを召喚なされるとよろしい。
そうですね……騎士王などはいかがでしょう?」ニコリ

黒ジャンヌ「……イングランドの騎士が召喚に応じるとは思えませんが。やるだけはやってみます。その間の守りは任せましたよ、ジル」

黒ジル「勿論です。では、行ってくるとしましょう」

黒ジャンヌ「武運を」

………………


バットマン「……砦の門を開く! 突入するぞ!」

マシュ「はい!!」

ジャンヌ「行きます!!」

バットマン(……血の匂い。腐敗臭。これは……)


ゾンビ達「「「ぁー……」」」ガチャ、ガチャ

マシュ「くっ……ゾンビ兵です! 死した兵士が魔力によって操られています! それに……あ、足場が悪すぎる……」

ジャンヌ「破壊の痕跡をそのまま城の護りにしている……?」

バットマン「注意しろ、少しの過負荷で崩壊が起こる! フッ!」ガシッドシャア‼

ゾンビA「ぅぁー……」グッタリ

マシュ「ますた……」


 ブォンッ


マシュ「!!」ガキィン‼

黒ジル「――おやおや、お久しぶりですな」

マシュ「……!」

ジャンヌ「ジル……!」

黒ジル「まさかファヴニールを倒し、このオルレアンまで乗り込んでくるとは……」


黒ジル「正直に申し上げまして、感服致しました」


バットマン「……」


黒ジル「しかし! しかしだ! ああ、聖女よ! そしてその仲間たちよ!」


黒ジル「何故私の邪魔をする!?」


黒ジル「私の世界に土足で入り込み、あらゆるモノを踏みにじり、
あまつさえジャンヌ・ダルクを殺そうとするなど!」

ジャンヌ「……その点に関して、、私はひとつ質問があるのです」


ジャンヌ「ジル・ド・レェ。彼女は本当に、ジャンヌ(わたし)なのですか?」


バットマン(……? ……!!)


黒ジル「……何と、何と何と何と許せぬ暴言!
聖女とて怒りを抱きましょう、聖女とて絶望しましょう!」

黒ジル「あれは、確かにジャンヌ・ダルク。その秘めたる闇の側面そのもの!」


バットマン(……そういう事だったのか。ようやく事のあらましが読めたぞ……)

ジャンヌ「――そうですか。ではいずれにせよ、闇ではない私は彼女と対決しなければ」

黒ジル「ジャンヌ。たとえ貴女といえども……その邪魔はさせませんぞ!」クワッ


ゾンビ達「「「ぁー……」」」ガシャ、ガシャ


マシュ「敵、来ます! マスター!」

バットマン「やるぞ。ここで止める」

マシュ「はい!」

ジャンヌ「ええ!」

バットマン「フッ!」ドドッ

ゾンビB「あぁー……」バタッ


バットマン「……ハァッ!」ガガガッ

ゾンビC・D「「ぅああぁ……」」ドササッ


バットマン(動きは鈍い……対処は可能。問題は……)

ゾンビB「ぁー……」ムクリ

バットマン(……何度倒しても起き上がって来る。きりがない)

バットマン「……良いだろう」カチャッ、プシュー……



マシュ「やあっ!」ヒュゴッ

黒ジル「ぐぅっ……」ズザザ


ジャンヌ「はあぁっ!!」ブンッ

黒ジル「ぬぐ……まだだ!」ゴオッ

ジャンヌ「しまっ……」


マシュ「危ない!」ガァン‼


黒ジル「チィ……」

黒ジル(この盾の少女……厄介だ。このままでは押し負ける……)

黒ジル「かくなる上は……」


バットマン「……させん!」バッ、バサササササササ……ドドッ‼

マシュ「マスター!?」


バットマン「フッ!」ヒュゴッ

黒ジル「チィッ、貴様は何だ!?」ガガッ

バットマン「知る必要は無い」プシュー……ガッ、シュドドッ


黒ジル(なんだ? 床に手をついた時、何かをスプレーした……? いや、それよりもこの巧みな攻め手……!)

黒ジル「何者かは知らないが、所詮は人間! 冒涜され、死ぬが良い!」


バットマン「……マシュ!」

マシュ「は、はい!」

バットマン「押し込め!」

マシュ「……? ……あ! はいっ!」ブォン‼


黒ジル「ぐわあっ!? おのれ、『螺湮城(プレラーティーズ)……』」

バットマン「そこだ……」ポチッ


床「」ドドドドドドォッ、ガラガラガラガラ……

黒ジル「なにっ……」ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ…………


バットマン「……よし、成功した」

ジャンヌ「ゆ、床が爆発して……ジルが落ちて行った……?」

バットマン「……アレは爆破ジェル。老朽化が激しかったからこその荒業だ。それと……」シュポッガシッ

ゾンビ達「「「ぁ……」」」

バットマン「……フンッ!」グイイイッ

ゾンビ達「「「ぁぁぁぁぁ……」」」ヒュゥゥゥゥゥゥ……


バットマン「……ゾンビ達も落としておく。あの男、ゾンビ兵からは距離を置いていたからな……恐らく、連中の細かな制御は出来ないんだろう。穴の中で互いに争う事になるハズだ、時間稼ぎにはなる」

マシュ「……は、はい」

バットマン「行くぞ。今の内に竜の魔女を倒す。この奥に居るはずだ、準備は良いか」

マシュ「はい、いつでもいけます!」

ジャンヌ「いけます。いきましょう。私(ジャンヌ)を止めます」

……

黒ジャンヌ「……思っていたより、早かったですね。なら、術式を組み替えるしかありませんか――」

ジャンヌ「――“竜の魔女”」

黒ジャンヌ「とうとう、此処まで辿り着いてしまったのですね。
ジルは――まだ生きていますが足止めされましたか」


黒ジャンヌ「まあいいでしょう、こちらも準備は整っています」

バットマン「……始める前に、聞きたい」

黒ジャンヌ「何ですか。今更問いかけなど……」


バットマン「お前は、憎悪を持つ前の生活を覚えているのか?」

黒ジャンヌ「……え?」

ジャンヌ「…………」

バットマン「……やはり」

ジャンヌ「えぇ。戦場での記憶がどれほど強烈であろうとも、私はただの田舎娘としての記憶の方が、はるかに多い……」

ジャンヌ「……たとえ私の闇の側面だとしても、あの牧歌的な生活を忘れられるはずがない」

ジャンヌ「いえ、忘れられないからこそ……裏切りや憎悪に絶望し、嘆き、憤怒したはず」


黒ジャンヌ「……私、は……」

ジャンヌ「……記憶が、ないのですね」

バットマン(……やはり、竜の魔女は……)

黒ジャンヌ「それが……それが、どうした!」ギリィ

黒ジャンヌ「記憶があろうがなかろうが、私がジャンヌ・ダルクである事に変わりはない!」


ジャンヌ「確かに、その通りです。貴女に記憶があろうがなかろうが、関係ない。

……ですが、これで決めました。私は怒りではなく哀れみを以て“竜の魔女”を倒します」


黒ジャンヌ「――サーヴァント!」グワッ


影達「「「……」」」


マシュ「冬木で戦ったのと同じ……シャドウサーヴァントです! それもこんなに……」

バットマン「……」


黒ジャンヌ「通常のサーヴァントを召喚する暇はありませんでしたが、この程度ならば幾らでも量産できます」

黒ジャンヌ「では……屠れ!」


マシュ「マスター、来ます!」

バットマン「まずは周囲から片付ける」

マシュ「はい!」

影A「……」ヒュォンッ

マシュ「っく……」ガガッ


マシュ(力任せに戦わず……)ドドッ、ドォッ


影B「……」ジャギィィィ‼

マシュ「ふっ……!」ギャリィン


マシュ(盾だけに、頼らず……!)ドガッ


影C「……」ギュオォォォッ‼

マシュ「……!!」ズォッドゴッ


マシュ(動きの無駄を減らし、限られた時間の中に身体をねじ込み……)ガシャリ


影D「……」スッ

マシュ「……やあっ!」ブォンッ


バットマン(駄目だ、あれはフェイント!やられる……! 間に合うか!?)ガシッ


影D「……ッ!」ガギリ

マシュ「……安易な手に掛からないよう、敵を、恐れる……!」ギリギリギリィ‼

バットマン「……!」


影D「……!!」ヒュンッ

マシュ(そして、足元を見れば、敵の考えは読める……!)


マシュ「やああっ!!」ドッゴォ


影達「「「……」」」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


バットマン「……」

マシュ「やりました、マスター! 全シャドウサーヴァント、消滅!」

バットマン(凄まじい成長……一度戦場を経験しただけで、こんな……)



黒ジャンヌ「くっ……」ガギッ‼

ジャンヌ「はあっ!!」ギャリィン‼

ジャンヌ「今度こそ決着の刻です、“竜の魔女”!」ギリギリギリ……

黒ジャンヌ「黙れ! ここからだ! ここから私の殺意を、絶望を! 見せてやる……ジャンヌ・ダルク!」ギャギャアン‼


マシュ「敵サーヴァント、魔力が急激に増大していきます……これは、宝具展開の前兆!」

バットマン「下がれマシュ……(いや、間に合わない。逃走経路……ジャンヌが殺される。ならば竜の魔女の妨害……この距離では不可能。残された手はひとつ)」

黒ジャンヌ「『これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……』!」


バットマン「『令呪をもって命ずる』! マシュ、宝具を展開しろ!」キィィィィィ……

マシュ「っはい! 真名、偽装登録……行けます!」

バットマン「ジャンヌ・ダルク!」シュポッガシッ、ギュルギュルギュルギュルッ‼

ジャンヌ「きゃあ!?」


黒ジャンヌ「『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュヘイン)!』」ゴゴゴゴゴゴゴゥッ‼

マシュ「はあああああああああっ!!!」ドォォォォォォォォォォォ……

黒ジャンヌ「……ぐ……はあ、はあ……」


黒ジャンヌ「……ふ……あははははははっ、灰も残らないでしょう! あれだけの火力で、生き残るヤツなんて……」


黒ジャンヌ「……」


黒ジャンヌ「な……に……」

マシュ「……敵宝具、受け切りました」シュウゥゥゥゥゥ……

黒ジャンヌ「そん、な。馬鹿な。有り得ない。嘘だ。だって、あれほど全力で撃って……」シュウシュウシュウ

黒ジャンヌ(肉体が崩れ始めるほどの魔力を込めたのに、受け切られただと……!?)シュウシュウシュウ


黒ジャンヌ「私は……聖杯を所有しているはず……! 聖杯を持つ者に、敗北はない。その筈なのに……!」


黒ジル「おお、ジャンヌ! ジャンヌよ! 何というお痛ましいお姿に……」ヨロヨロ

黒ジャンヌ「ジ、ル……」ドサリ

黒ジル「ですが、このジル・ド・レェが参ったからにはもう安心ですぞ。

 さあ、安心してお眠りなさい」

黒ジャンヌ「でも――私は、まだ、まだ、フランスを滅ぼせては……」

黒ジル「それは私が引き受けます。私に全てお任せを」


黒ジル「大丈夫、貴女が死ぬはずがない。
ただ、少しだけ……少しだけ、疲れただけ」

黒ジル「瞼を閉じ、眠りなさい。目覚めたときには、私が全て終わらせています」ニコリ

黒ジャンヌ「……」

黒ジャンヌ「そう、そうよね」

黒ジャンヌ「ジル……貴方が戦ってくれるなら、安心して……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


聖杯「」カラン

黒ジル「……」

ジャンヌ「……やはり、そうだったのですね」

黒ジル「勘の鋭い御方だ」

バットマン「……」


マシュ「あの、ジャンヌさん? いったい……」

ジャンヌ「聖杯を持っているのは、“竜の魔女”ではありません。
……いえ、そもそもあのサーヴァントは英霊の座には決して存在しないサーヴァントです」

ジャンヌ「私の闇の側面ではない以上、そう結論せざるを得ません」


ジャンヌ「……では、あの強力な力をどうやって手に入れたのか。
それは即ち、聖杯に他なりません。つまり“竜の魔女”そのものが……」


黒ジル「その通り。“竜の魔女”こそが、『我が願望』。すなわち、聖杯そのものです」

マシュ「な……!?」

バットマン「……」

ジャンヌ「貴方は……ジャンヌ・ダルク(わたし)を作ったのですね。聖杯の力で」


バットマン(ジル・ド・レェ。軍人。初めはジャンヌ・ダルクの監視を命じられていたが、いつしか彼女に感化され、協力してオルレアンを守護……)


ジル「私は貴女を蘇らせようと願ったのです。心から、心底から願ったのですよ。当然でしょう?」


バットマン(……彼女が火刑に処された後は荒れた生活を送り……絞首刑)


黒ジル「……しかし、それは聖杯に拒絶されました。万能の願望器でありながら、それだけは叶えられないと!
だが、私の願望など貴女以外には無い! ならば、新しく創造する……!」ギリィ


黒ジル「私が信じる聖女を! 私が焦がれた貴女を! そうして、造り上げたのです!
ジャンヌ・ダルク――“竜の魔女”を。聖杯そのもので!」


ジャンヌ「……そう。彼女は無論、最後までそのことを知らなかったのでしょうね」


ジャンヌ「ジル。もし、私を蘇らせることができたとしても、私は“竜の魔女”になど、決してなりませんでしたよ」


ジャンヌ「確かに私は裏切られたのでしょう。嘲弄もされたでしょう。
無念の最後――と言えるかもしれません」


ジャンヌ「けれど、祖国を恨むはずがない。憎むはずがない。何故なら、この国には貴方たちがいたのですから」

黒ジル「……お優しい。あまりにお優しいその言葉。

しかし、ジャンヌ」

黒ジル「その優しさゆえに、貴女はひとつ忘れておりますぞ。たとえ、貴女が祖国を憎まずとも――

私は、この国を、憎んだのだ……! 全てを裏切ったこの国を滅ぼそうと誓ったのだ!」」

ジャンヌ「ジル……」


黒ジル「貴女は赦すだろう。しかし、私は赦さない! 神とて、王とて、国家とて……!」ギシギシギシ


黒ジル「滅ぼしてみせる。殺してみせる。それが聖杯に託した我が願望……!」



黒ジル「我が道を阻むな、ジャンヌ・ダルクゥゥゥゥゥッ!!!」

ジャンヌ「…………………そう、ですね。確かにその通りだ。
貴方が恨むのは道理で、聖杯で力を得た貴方が国を滅ぼそうとするのも、悲しいくらいに道理だ」


ジャンヌ「そして私は、それを止める。聖杯戦争における裁定者、ルーラーとして。

貴方の道を阻みます。ジル・ド・レェ……!」


黒ジル「ならば、今の貴女は私の敵だ。決着をつけよう。救国の聖女、ジャンヌ・ダルク――!」

ジャンヌ「望むところ……!」


マシュ「マスター、聖杯を確認しました。指示をお願いします!」

バットマン「ああ、最後の戦いだ。行くぞ」

マシュ「はい! これより、聖杯回収へ向かいます! マシュ・キリエライト……行きます!」

 彼の者のクラスはキャスターだ……そう報せる通信を受けながら、バットマンは腹部に光球を食らい、吹き飛んでいた。

 マシュが入れ替わりに飛び込み、盾を突き出す。

 ジルはまともに受け、吹き飛びながらも何事かを詠唱した。途端、マシュの身体がすくむ。おぞましい何かを覗き込んだ時のように……。

「どれほどあなた方が強かろうと、黒魔術は私が上だ。精神汚染を受けていない者など、話にならない」


 ジャンヌが歯を食い縛り、恐怖を抑え込んで打ち込む。だが腰の引けた打撃は通用せず、魔術師に弾き返された。

「貴女もです、ジャンヌ・ダルク。貴女たちは純粋すぎる」

 ジルは微笑み、瘴気を放つ闇を全身から放出した。ジャンヌは咄嗟に口を覆い、マシュはマスターを背に庇う。


「終幕です。フランスは滅ぼす。我が道は、ついに憎悪の果てへと到着する」


 朗読じみたキャスターの声が響く。


(あれは詠唱だ)


 バットマンは理解する。何かが来る。マシュの宝具を展開させるべきか……いや、これは。


「『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』!」


 ジャンヌは見た。ジルが掲げた本から、冒涜的な、存在してはならない存在が飛び出すのを。

 マシュは少し遅れて認識した。黒い触手がのたうち回り、津波じみて向かって来ているという事実を。


 バットマンは直感した。アレはまだ、発端に過ぎない。いずれ本体が飛び出してくる。


「あ、あ、あ……」
「……え……」


 聖女は膝をつき、マシュは頭を抱えてうなだれる。異様なまでに冒涜的な光景を目の当たりにした彼女らの精神は、汚染を防ぐため、シャットダウンを開始したのだ。


「仕方のない事です! 諦めなさい! フランスは終わる! この手で、必ず終わらせる!」
「そうはさせない」


 キャスターはふと、おのれの呪文がもたらした触手の上を見た。一匹の巨大なコウモリが、意志の力に目を光らせ、こちらを睨んで立っていた。


「何故……」

 何故、狂わない? キャスターは問おうとし、愚問を取りやめた。


 簡単な事だ。ヤツは既に狂っている。狂人だったのだ。


 バットラングが投擲され、ジルの腕に突き立った。激痛が彼の集中を遮り、呪文が消失した。

  ジャンヌ・ダルクの旗が振るわれ、甲高い音と共に血しぶきが舞った。

黒ジル「馬鹿、な……! 聖杯の力を以てしても、届かなかった……だと……

 そんな筈はない! そんな理不尽があってたまるか! 私、は、まだ……!」


ジャンヌ「ジル。もう、いいんです」


ジャンヌ「もう大丈夫です。休みなさい。貴方はよくやってくれた。
右も左も分からぬ小娘を信じて、この街の解放まで」


ジャンヌ「……今の貴方がどうあれ、私はあの時の貴方を信じている。
大丈夫。私は最後の最後まで、決して後悔しません。

私の屍が、誰かの道へ繋がっている。……ただ、それだけで良かったんです」



ジャンヌ「さあ、戻りましょう。在るべき時代へ」



黒ジル「……ジャンヌ。地獄に堕ちるのは、私だけで――」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


聖杯「」カラン……

ドクター『聖杯の回収を完了した! これより、時代の修正が始まるぞ!
レイシフト準備は整っている、すぐにでも帰還を!』

マシュ「了解しました、ドクター!」

バットマン「……」


ジャンヌ「もう、行かれるのですか?」

バットマン「ああ。まだやるべきことが残っている」



――――

エリザベート「……っはあ、この……」

カーミラ「いい加減、しぶと……あら?」シュウシュウシュウ

エリザベート「……アンタ」

カーミラ「ちっ、終わりみたいね。……まったく、鬱陶しい小娘だったわ……」

エリザベート「ふん、こっちこそ! 絶対にアンタみたいにならないんだから!」シュウシュウシュウ……


カーミラ(……まったく、終わった途端に狂化が消えるんだもの。次は、もっと……)

カーミラ「……選り好みできる立場でもないわよね。全く」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

エリザベート「……馬鹿なやつよね、我ながら。ほんとに……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


…………


清姫「……あら?」シュウシュウシュウ

ヴラド三世「ふむ。終わりか」シュウシュウシュウ

清姫「……やってくれたようですわね。ワイバーン達が消えていきます」

ヴラド三世「敵ながらあっぱれ、と言っておこう。そして……礼を言う、名も知らぬ婦人」

清姫「あら、これはどういたしまして」

ヴラド三世「お前が居なければ、更に多くの無為なる魂を屠っていただろう。……次があれば、お前のように戦いたいものだ」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

清姫「……手のかかる御人でした事。マスターは……もう、砦の中ですのね。いくさの勝利は妻も祝うものですのに、まったく」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


…………

ゲオルギウス「……聖杯戦争、というにはあまりに歪んだ形でしたが。ともあれ、ドラゴンスレイヤーと共に戦えて光栄でした」

ジークフリート「俺の方こそ、名高き聖ゲオルギウスと同じ陣営で戦えるとはな……ともあれ、あのマスターの旅路はまだ続くだろう。

俺達も、もう一度助力できると良いのだが」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

ゲオルギウス「フ……その日も遠くないでしょうな。ああ、待ち遠しいものだ」シュゥゥゥゥゥゥゥ……



アマデウス「ようやくお役目ゴメンか。ああ疲れた、働き尽くしでケツが痛い!
……っと、その手のネタはマリアから禁止されてたな。失敗失敗」

アマデウス「まあ、いい指揮だったよ、ネコミミさん。実に、実にやり甲斐のある仕事だった」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


――――

バットマン「……そろそろか」

マシュ「はい、マスター。空間が……」

ジャンヌ「……これは、夢のようなもの。世界の可能性から既に除外された、小さな枝葉のような世界。
恐らく、こうしてマシュさん達と出会った事も、戦った事も、失った命すら……無かったことになるのでしょうね。私はそれが、少し悲しい」

バットマン「……」

ジャンヌ「……もちろん、失ったはずの命が戻ってくるのは喜ばしいことでしょうけれど。
お二人とは、また何処かで会えそうな予感がします。私の勘は、結構当たるんですよ?」


マシュ「ジャンヌさん……」シュウシュウシュウ……

ジャンヌ「――さようなら。そして、有難う。

 全てが虚空の彼方に消えるとしても、残るものが、きっと……」


バットマン「……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……


ギュォォォォォォォォオオオオオッ

バットマン「……」ムクリ

所長「……! レイシフト完了、ブルースが帰還したわよ!」

――――

ドクター「お帰り、マシュ、ブルースくん! お疲れさま! 初のグランドオーダーは君達のおかげで無事遂行された!」

バットマン「グランド……オーダー?」

ドクター「ああ、人理修復の事ね。まだ第一歩だけど、これは大きな一歩だ!」

マシュ「……はい! やったんですね、私達!」

ドクター「――うん、本当によくやってくれた。
補給物資も乏しい、人員もいない、さらには実験段階のレイシフトという最悪の状況だったんだ。君達はこれ以上ない成果を出してくれた」


バットマン「……いや、カルデアのサポートがあってこそだ。礼を言う」

職員A「! おい聞いたかよ!」

職員B「やったぁ! 完遂できた!」

職員C「ヤッホー!! 俺達やり遂げたんだ! 初仕事、初レイシフト、初サポートで! ノーミスだ!」

所長「……ま、まあ、当然よね。私が指揮したし」


ドクター(所長、ブルースが倒れた時には捨てられた子犬みたいな目でじっとバイタルを確認してたなぁ……)

レオナルド「おや、お帰り。大分お疲れみたいだね。
はい、これ最新の観測記録。見てごらんドクター」

ドクター「お……おおおおお! やった、十五世紀フランスの修正は完璧だ! まだ七つの内、たった一つだけだが……
我々は人類史をきちんとあるべき姿に戻したという訳だ! やったな、ブルースくん!」

バットマン「ああ。だが、レフ・ライノールは現れなかった……奴の事だ、妨害に来てもおかしくないと思ったが」

ドクター「なら、彼は残り六つのうちどれかの時代に潜んでいるんだろう。……いや、潜むはずがないか。
彼はそれほどの力を手にしている。同じ時代にいれば必ず僕たちを妨害してくる」

バットマン「……近い内に、必ずまた現れるだろう」

ドクター「ああ。それまでに、こちらの陣営も強化しておかないとね」

バットマン「……」


ドクター「……まあ、そんな細かいことはどうでもいいさ! 今日のところはこれでミッション終了だ!
暖かいベッドとシャワーが恋しいだろう? 遠慮せず、部屋に帰って休むと良い」

バットマン「……ああ、そうしよう」スタスタ

マシュ「それでは失礼します、ドクター」ペコッ、スタスタ

バットマン「……」スタスタ

マシュ「……」スタスタ

バットマン「……」スタスタ

マシュ「……あの、マスター。ひとつだけ、お尋ねしても良いでしょうか?」

バットマン「……なんだ?」

マシュ「トゥーフェイスさんの弾丸から、サンソンさんが庇ってくれた理由が……私には、分からなくて。マスターなら、分かるかと」

バットマン「……」

マシュ「あ、いえ、どうしても知りたいという訳ではなく。ただ、心に引っかかっているというか」

バットマン「……いや、言いたい事は分かる。敵なのに助ける理由がない。そういう事だな」

マシュ「……はい。疑問が、離れないのです」

バットマン「……」

バットマン「……人には常に、二つの道がある。そして二つの側面がある」

マシュ「……」

バットマン「誰もが正しい道を歩き続けられるとは限らない。どんな悪人も、悪の道だけを歩き続けるとも限らない」

マシュ「はい。分かります」

バットマン「……そして、人は後悔する生き物だ。自分の選択の間違いを受け、悩み、行動を翻すこともある。だからこそ、人は不確定だ。特に、愛は」

マシュ「……はい」

バットマン「人は変わらない。だが世界は呆気ないほど簡単に変わり、人を翻弄する。サンソンは……恐らく、後悔を抱えたまま、戦場でその後悔への結論が出てしまったんだろう」

マシュ「…………」

バットマン「……マシュ、お前が思い詰める必要は無い。だが、知っておくべきだ。世界は人を殺し、人は世界を支える。サンソンは彼自身にとっては至極真っ当な行動をとっただけだ」

マシュ「……は、い……」

バットマン「……それだけだ」スタスタ

マシュ「おつかれさまでした、マスター……」



マシュ(……マスターは、世界を怖がっているのでしょうか……)

第一章

邪竜百年戦争 オルレアン

生存者 ブルース・ウェイン マシュ・キリエライト

死者 無し

第一章はこれで終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。

間違いを見つけたので修正させてください……()

>>325
ヴラド三世「お前が居なければ、更に多くの無為なる魂を~」

ヴラド三世「お前が居なければ、更に多くの無垢なる魂を~」

幕間

ブルース「……召喚システム?」

ドクター「そうそう、召喚。余剰電力が発生したことによって誰か……英霊を召喚できるようになったんだ」

ブルース「成程」

ブルース(信頼できない要素をわざわざ呼び込む事になるかもしれないが……)

マシュ「現状、こちらの戦力は不足しがちなので……どんな英霊の方でも、助力は助かります」

ブルース「……分かった。召喚してみよう」

ドクター「その気になってくれてよかった! それじゃあこっちへ、部屋に案内するよ」

ブルース「……ここが?」

ドクター「そう。このサークルの中に魔力を照射、触媒無しでランダムな召喚を行うんだ。
まあ難しい話じゃないよ、キミはそこに立ってくれていればいいだけだからね」

ブルース「……ふむ」


ブルース(召喚した途端、襲い掛かってくるようなヤツかもしれない……)

マシュ「大丈夫です、マスター。私が傍に付いていますので」

ブルース「……ああ」


ドクター「まあ、百聞は一見にしかずって言うしね。早速誰かを召喚してみよう!」ガチャ


バチバチバチ……ギュオォォォォォォォォォォォォッ



ブルース「……」


カッ‼

シュゥゥゥゥゥゥゥ……


???「……あら、あらあら」

ブルース「……」

清姫「サーヴァント、清姫。またお会いできましたね、旦那さm」


ブルース「……」ガチャリ


ドクター「ぶ、ブルースくん? ドアを開けてあげなきゃ、いきなり閉めたらビックリさせちゃうよ」

ブルース「ドクター。召喚システムの故障だ。もう一度機器をチェックし直す必要がある」

ドクター「いや、でも、あれは……え? いや……え?」

マシュ(マスター……)

清姫「こうして召喚された事、とてもうれしく思いますわ。やはり旦那様もわたくしを恋しく思っていてくださったのですね」

ブルース「……」

ドクター「ああ、うん。カルデアへようこそ清姫くん! 歓迎するよ、僕はロマニ・アーキマン」

マシュ「私はマシュ・キリエライトと言います。お久しぶり……ですね、清姫さん」

ブルース「……ブルース・ウェインだ」

清姫「よろしくお願いしますね皆様、そしてマスター。……うふふ、見れば見るほど安珍様の魂がにじみ出てくるようで……うふふ……」

ブルース「……」

ドクター「さっそく仲が良いようで何よりだ! ところで、カルデアの施設を案内したいんだけど良いかな?」

清姫「あら、それは是非ともお願いいたします。マスターのお部屋を拝見しなければ……ふふふ」

ブルース「…………」

――――

ドクター「ここが君達サーヴァントのプライベートエリアになるだろう。部屋が47個あるから、そのうちのひとつを使って欲しい」

清姫「成程、それでマスターのお部屋は……」ニコニコ

ドクター「う、それは……」

ブルース「……構わない。連れて行ってやってくれ」

ドクター「……いいのかい?」

ブルース「ああ。見られて困るものはない」

マシュ「そ、それじゃあ私も失礼しますね!」ワクワク

ドクター「う、うん! じゃあ僕もお邪魔するよ!」ドキドキ


ブルース「……?」

――――

ドクター「お、おじゃましまーす……」

マシュ「失礼します……こ、これは……」

清姫「……ずいぶん殺風景なお部屋ですね? それに何処となく薄暗いような……」

ブルース「暗い方が落ち着く。それに、物が多すぎるとかえって本当に欲しいものが見つけられない事がある」

マシュ「でも、これは……」


マシュ(電気スタンド、机、ベッド、置き時計……部屋にはこれだけ……)


ドクター「……カウンセリングとか必要ないかい、ブルースくん?」

ブルース「頼めるならしてもらいたい」

清姫「ふふふ……こういう時は、ベッドの下に何か隠してあると相場が決まっていますわ」ゴソゴソ……ガシッ

清姫「やっぱり、見つけました……? これは!?」


マシュ「マスター、あれは……?」

ブルース「……いつものスーツだ」


清姫「これ! これ着ても良いですか、マスター!?」

ブルース「サイズが合わないだろう……駄目だ」

マシュ「じゃ、じゃあ私は!?」

ブルース「……レオナルドに頼め」


ドクター「そ、それじゃそろそろ他の施設の紹介に行ってみようか!」

更新遅れてすみません、生きています。
ただいま二章へのつなぎの作成、そしてシナリオ見直しのために二章を復習しています。思った以上に二章を見返すのが苦痛で手間取っています。本当に申し訳ない。今少し待って頂きたい。

ドクター「ここがレクリエーションスペース! どうだい、ビリヤードや卓球、ダーツなんかもできるぞ! こっちには昔懐かしのゲーム筐体だってある!」

マシュ「ドクター、管制室以外でたまに見かけるといつもここにいらっしゃいますよね……」

ドクター「やっぱりゲームは楽しいしね! メタルスラッ〇とか、いつまでも飽きないよ……ブルースくんも今度どうだい?」

ブルース「……いいや、遠慮しておく」

ドクター「そうかい? まあ、また今度お付き合いを頼むよ」

ブルース「……ああ、また今度にな」

清姫「わたくしは卓上の札遊びなど……花札や百人一首などはいかがでしょうか?」

ブルース「極東のゲームか……いや、私は詳しくないんだ」

マシュ「じゃあポーカーとか」

ブルース「……ポーカーは苦手だ」



ドクター「成程ね、まあブルースくんは得意そうな……えっ」

マシュ「マスターの表情って読みにく……えっ」

清姫「旦那様は感情が表に……えっ」

職員C「えっ」←とおりすがり


ブルース「なんだ」

ドクター「いや……いやいや! キミ、絶対強いだろ! 手の内絶対読めないよ!」

マシュ「そ、そうです! いつも何を考えているのか分からないし、ポーカーをやらせたら鬼のように強いに決まってます!」

清姫「旦那様、まずルールをご存知なのですか……?」

職員C「ま、まさか賭け事はやらないとかそういう……」


ブルース「……本当に強い相手は目を読んでくる。アルフ……いや、昔の友人と何度かプレイした事はあったが、一度も勝てた事がない」


ドクター「ああ、成程。次元の違う戦いだね……うん、カードゲーム極め過ぎじゃないかなぁ、そのご友人さん……」

マシュ「一度会ってみたいですね……」

ブルース「……次の施設を、ドクター」



…………

職員C「ここはカルデアスの観測ルームです。今はまだアレは真っ赤ですが、いつか青く染め直せる日が来ます!」

清姫「まあ、大きな球体ですわね。真っ赤だとどうなっているのです?」

職員C「……残念ながら、人類の死滅を意味します。青は生存です。あ、このロープの仕切りを超えないで下さい。あまり近付くと危険です」

ブルース「……この部屋を取り囲むように置かれたレンズは何なんだ? 何枚もあるが」
職員C「これは『シバ』と呼ばれるカルデアスの観測装置です! 
レイシフトを行うにはまずこのシバで時代を『観測』して楔を打ち込み、AI達が危険度や必要電力量を計算、結果を我々職員が協議し、所長の許可を得ることで初めて、レイシフトの許可が出されます!」

マシュ「……あらためて聞くと、人理崩壊後もこれほど体制を重視しているのは凄いですね。そんな場合ではないと抗議する人も出そうですが」

ドクター「うぅん、それがそうでもないんだ。こんな時だからこそ、体制というのはとても重要でね……ほら、こんな狭い空間でバラバラになっちゃったら酷いしさ」

ブルース「……オルガマリー所長は上手くやっているようだな」

ドクター「ああ、うん。彼女なりに必死にやってくれてる。おかげで職員達も少しずつ、彼女を尊敬し始めてるしね」



清姫「……」ソォーッ

ブルース「……」ガシッ

清姫「……あ、あら旦那様! いきなり腕を掴まれるなんて……」

ブルース「ロープを越えるなと言われたはずだ。好奇心で動くな」

清姫「むぅ……」




…………

ドクター「ここが中央管制室だよ」

レオナルド「やあロマニ、そっちは新入りかい?」

清姫「どうも、この度マスターの妻になりました、清姫と申します」

レオナルド「はっはっは、パンチが強いね。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。ダヴィンチちゃんとでも呼んでくれたまえ。
あ、ロマニ。そろそろ次のレイシフト先の観測が完了しそうだからブルースとマシュの健康診断を済ませておいてくれ」


ドクター「あ、もうそんなになるのか……うちの職員は優秀だなあ。
よし、じゃあブルースくん、マシュくん。今日の16時からキッチンに集まってくれ。健康状態のチェックを行うよ」

ブルース「分かった」

マシュ「了解しました、ドクター」


ブルース(そうなると、16時までは)

清姫「そうすると16時までは暇ですね、ますたぁ! さあ、ここはわたくしとめくるめく愛の物語を……」

マシュ「ま、マスター。私の特訓にまた付き合って頂けないでしょうか」

清姫「駄目ですマシュ! マスターは私と……」

ブルース「分かった。いつも通り手加減は無しだが」

清姫「マスター!? ふ、ふつうは新入りの娘をちやほやする場面では!?」

ブルース「……来たいならお前も来い、英霊の参考になるかは知らないが」

清姫「勿論ついて行きます! 特訓と称してふしだらな行為をされては困りますので!」

マシュ「そ、そしそそそんな事するワケないじゃないですか!」

ブルース「……」



ブルース「……」ガチャ、ガチャリ。ガチッ

ブルース「……」ガチッ、ギュッ。カチャッ

マスク「」

ブルース「……」スッ


バットマン「……今回は五感の訓練だ」


マシュ「はい! よろしくお願いします、マスター!」

清姫「よろしくお願いいたします」



バットマン「バットラングを投げる。その中にいくつかホログラムを混ぜる、認知して動け」

マシュ「分かりました!」

清姫「ではそのように……急所は避けて下さいね?」

バットマン「当然だ。行くぞ」カチャリ


マシュ「くっ」ギギギィィィン‼ ギャリィン‼

バットラング「」ヒュォォォォォンッ‼

マシュ「っ!」ギャァン‼

バットラング「」ズオッ‼

マシュ「っきゃあ……あれ?」スカッ


バットマン「それはホログラムだ! 五感を駆使しろ!」シュパッ、シュパパパパパッ

清姫「うふふ、旦那様からの愛がこんなに……」ゴゴゥッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼

バットマン「全て溶かさず見極めて溶かせ! マシュ、立て! まだ投げるぞ!」シュパパパパッ


マシュ「はい!!」ムクッ

マシュ(五感……五感……五感を、全て使う……!)




バットラング「」ヒュォォォォゥゥゥゥゥゥッ‼

マシュ「本物!」ギィン‼

バットラング「」ズォォッ‼

マシュ「……本物!」スカッ

マシュ(ホロ、グラム……)

マシュ「くっ……」ギリッ


マシュ(落ち着いて……見る。聴く。感じる。五感だ。張り巡らせて。戦場を、自分の身体の一部の如く……)


バットラング「」ヒュォォォォォンッ‼

マシュ「!」ガキィン‼

マシュ(本物。音を聴けば判別可能。いや……
マスターの目を読めば。ブラフか、本気か。全ての動作は次につながる)


バットマン「……」チラ

バットマン「……」カチャリ

バットマン「……」ブォンッ


マシュ(アレは)


マシュ(アレは、ホログラム)ピタッ


バットマン「……!」


マシュ「……」スカッ


マシュ「……あっ! や、やりました! マスター、見てくれましたか!?」

バットマン「……ああ、よくやった。だがもう一度だ、偶然を必然へ引き上げる」

マシュ「はっ、はい!」


バットマン「……今回はここまでだ」

マシュ「は、はいっ……かなり、つかれ、ました……」ハァ、ハァ

清姫「あらあら、修行が足りませんよ。いえ、わたくしも若干息切れならぬ燃料切れを起こしてはいますが……」

マシュ「清姫さんは純粋なサーヴァントですし……」ムー


バットマン「そろそろドクターの健診の時間だ。マシュ、行くぞ」

マシュ「あっ、はい! 行きましょう!」

清姫「あら、それではわたくしもご一緒に……」

マシュ「き、清姫さんが来る必要は……」

清姫「ですから、健康診断と称して旦那様とチョメチョメされては困りますので……」

マシュ「そそそそんな事しないって言ってるじゃないですか!」



バットマン「……」スタスタ

所長「……」コソコソ

バットマン「……所長。そこで何をしている」

所長「ひゃああああっ!? ぶ、ブルース!? なんでそこに!?」

バットマン「……ドクターの健診の前にトイレに寄ろうと思っただけだ。廊下の隅に屈んで何をしている」

所長「い、いいえ何も!? た、ただその、廊下の埃が気になっ『フォウ、フォウ』……」

バットマン「……フォウ?」

所長「……」


所長「……ちょっとアンタ、黙ってなさいって言ったばっかりでしょ……! な、なんでもないの! ほんとうよブルース!」

バットマン「……ならその後ろで、もぞもぞ動いている白い塊は何だ?」

所長「こ、これはほら……近頃のルンバは埃を絡めとれるようにふかふかにしてあるのよ!」

???「フォウ、フォーウ」

バットマン「そうか。機械が鳴く時代か」

所長「え、ええそうね! 技術は日進月歩ってよく言うわよね!」

バットマン「……所長」

所長「ごめんなさい。話します」


マシュ「マスター、遅かったのでお迎えに……ど、どうしたんですか、オルガマリー所長……?」


バットマン「……つまり、こうか。
ドクターに『竜種の召喚は不可能』と言われた事が気に障り、召喚術を試したら……この獣が?」

???「フォウ。」ノソノソ

マシュ「わわ、もふもふですね……よしよし」ナデナデ

???「フォーウ……」ウットリ

所長「結局召喚は失敗した挙句、こんな小さな獣が出てきちゃって……私、魔術師としての才能は壊滅的だなって……」ズーン

バットマン「……召喚してしまったからには仕方ないだろう。返す事はできないのか」

所長「そ、それはちょっと……この子の体力が尽きるまで殴ればどうにかなるかもだけど」

マシュ「倫理に反します! 駄目です!」

所長「うぐっ……」

バットマン「……どうしようもないのなら世話をするしかないだろう。名前は?」

所長「いえ、まだ何の情報も分かってないのよそれが……」

???「フォウ、フォウ」

マシュ「この特徴的な鳴き声……フォウ、という名前なんてどうでしょう?」

バットマン「フォウ……」

所長「フォウ……」

フォウ「フォウ……」

マシュ「……ええ、はい。ネーミングセンスの無さは自覚しています」


…………

ドクター「……うん、特に問題は無いようだ。どうする? カウンセリングも、本当に必要ならするけど」

バットマン「……いや、今は健診だけで良い。有難うドクター」

ドクター「いやいや、こっちこそお礼を言わなきゃね。次のレイシフトも大きな負担になる事は想像に難くない……
……ところでキミ、全身の傷は元からかい?」

バットマン「……ああ。戦闘に支障はない」スクッ

ドクター「そうか、あまり深くは聞かないよ。でも、あんまり自分を追い詰めるやり方はしないように」

バットマン「善処しよう……」スタスタ


ドクター(……うーん、本当に何者なんだろう。あのコスプレと胆力、そして完成された肉体に常人なら何度も死んでるほどの傷跡……人間離れしてるよなぁ)


ブルース「……」スタスタ


レオナルド「あ、ブルース。丁度いいところに」

バットマン「レオナルド。何か用か?」

レオナルド「ああ、キミのスーツをまた預かりたい。良いアイディアが浮かんでね、そのブレーサーを少し改造したり、色々してみたいんだけど良いかな?」

バットマン「……そういう事なら」スッ

ブルース「スーツは預けよう。ただ、前回と同じように、カラーリングは変えないように頼む。
それと、防御力が上がったのは良いが関節が動かしにくい場面が何度かあった。対処可能ならそれも」

レオナルド「おおう、そんな欠点が……そうだなぁ、関節の防御はいっそ捨ててみるのも……」

ブルース「ある程度は動きやすさを……急所だけの防御でも私が動いてカバーして……」

レオナルド「しかし、人間とサーヴァントの最低限の壁を考えると……キミのテクニックと私の技術の妥協点は……」


ピーンポーンパーンポーン


所長『あー、あー。カルデア内の職員は今すぐ管制室へ集まりなさい。次のレイシフト先の特定が完了、これより協議を行います』


レオナルド「おっと、朗報だね。行こうブルース、呼ばれてる」

ブルース「ああ、行こう」



…………

所長「集まったわね? 良いわ、これより協議を始めます。よろしく」

職員達「「「よろしくお願いします」」」

所長「今回のレイシフト先は西暦が始まって間もない古代ローマ。シバでの特定には苦労していましたが、ようやく時代が固定され『フォウ、フォーウ』……されました」プルプル


マシュ(ふぉ、フォウさん! こっちに戻って!)ヒソヒソ

フォウ「フォーウ」ピョンッ

マシュ「もう、勝手に飛び出しちゃ駄目です」ナデナデ

フォウ「フォウ……」ウットリ

ブルース「……」

職員A「なんだアレ?」

職員B「ペットかなぁ?」

職員C「リスみたいな……猫?」

ドクター「いや、アレは狐じゃない?」



所長「……えー、ごほん! 今回特に注意して欲しいのは、『皇帝』という存在です!」

ブルース「皇帝……古代ローマにおいての実質的な独裁者か」

所長「まあ議会が力を持っていたのはそうだけど、暴君の前では殆ど気休めみたいなモノだったと聞きます。まだ私達が言う所の『モラル』も確立前の時代ですし。
気に入らなければ下の者が蜂起し、上の者を殺して成り代わる……それが常の世界」

マシュ「か、かなり恐ろしい世界ですね……」

レオナルド「それが中世頃まで続いてたんだ、恐ろしいけど常識さ」



所長「問題が無ければレイシフトは明日にでも行いたいのだけど……ロマニ!」

ドクター「健康診断の結果は良好、ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライトの両名ともに問題ありません」

所長「二人とも、本当ね?」

ブルース「問題ない」

マシュ「はい!」

所長「良いわ。レイシフト班は解散を許可します。次、サポート班! 明日に向けての手順の再確認をします!」

職員達「「「はい!」」」


レオナルド(スーツは明日の朝にキミに渡すからね)コソコソ

ブルース(ああ。頼んだ)スタスタ



マシュ「それじゃあ、私はこれで。また明日お会いしましょう、マスター」ペコッ

ブルース「ああ。また明日に」スタスタ

マシュ「……」スタスタ


…………


電灯「」ジー……


ブルース「……」ペラッ

ブルース「ローマはロムルスが建国し……王政期、共和政期、帝政期に分けられ……」ペラッ

ブルース「……ネロ帝の大迫害によってキリスト教が弾圧され……コンスタンティヌス帝がミラノ勅令を……」ペラッ、ペラッ


コンピューター『警告! 警告! ワード感知!』ビープ‼ビープ‼

ブルース「……?」ピタリ



…………

電灯「」シーン……



職員C「えーと……『ゴッサム 猫 コスプレ』……検索」カタカタッ、タン

職員B「……なにこれ、キャットウーマン? ブルースさんは男だよ……」

職員A「えーと、じゃあ……いや、待て。見ろよこれ、そのキャットウーマンを縛り上げて警察に渡してる奴の映像……」

職員C「あ、これ……このスーツ、ブルースさんじゃねえか」

職員B「本当だ! これは、ええと……バットマン? って呼ばれてるのかな」

職員A「それじゃあ……『ブルース・ウェイン バットマン ゴッサム』で検索して、と」カタカタッ、タン

職員C「……うわ、なんだこれ……ウェイン・エンタープライズのパーティー……? そこで暴れてた男達がボコボコに……」



ブルース「なにをしている」

職員達「「「うっひゃあああああ!?」」」


…………

ブルース「……成程、それで正体が気になって調べていたと」

職員A「す、すみません……」

ブルース「……言ってくれれば教えた。真夜中の管制室でわざわざ電気を消して調べるまでも無い事だ」

職員B「はい……」

職員C「そ、それでブルースさんは一体……」

ブルース「……ゴッサムシティの自警団じみた活動をしていたんだ。一時期、警察すらも汚職で機能していなかった事があったからな……横行する犯罪を止めるには、あれが一番だった」

職員A「つ、つまりヒーロー活動みたいな!?」

職員B「悪党を派手に吹き飛ばしたり!?」

職員C「正義の鉄槌を!?」

ブルース「……さあな。最初の頃は自信があった筈だが、今はもう分からない。戦っていく中で、誰かを信用する事が……少なくなって……」


ブルース(……そして、誰もついて来なくなった……?)



職員達「「「……」」」

ブルース「……そうだな。戦う理由を失いつつあるのは確かだ」

職員C「で、でも今は俺達が! 俺達が居ます!」

ブルース「……あぁ、有難う。まだ戦える」

職員B「あ……その」

ブルース「それより、もう夜も遅い。君達も休むべきだろう……おやすみ」スタスタ

職員A「……お、おやすみなさい……」



…………

ブルース(……まったく油断していた。必要以上の情報漏洩は防ぐべきか……)ドサッ

ブルース(今の内にネット上のデータをハッキングし、バットケイブの位置や時計塔の秘密特定に繋がりそうなモノは消す……)ピッピッ

コンピューター『これらのデータをデリートしますか? Y/N』

ブルース「……」ピッ

コンピューター『処理中……処理完了』

ブルース「……ついでだ。コンピュータのファイルクリーンアップも頼む」ピッピッ

コンピュータ『了解。不要・不審なファイルを除外領域へ移行させます。この作業には暫くかかる事があります』クォォォォォォン


ブルース「……」チラ


時計『02:20』

ブルース(そろそろ眠るか。明日はレイシフトだ……)トサリ




…………


シーン……


???「ふふふ……この扉の向こうが旦那様の……げへへへ」コソコソ

???「おっと、いけない。思わず下卑た笑いが……抜き足差し足、忍び足で……」コソコソ

扉「」ウィーン

???「お邪魔しま~……?」プツッ

???「何か脚に触れたような……」シャガミ


バットラング「」ヒュオォォォォオォォンッガガッ‼


???「ひゃっ!?」ドサッ


ブルース「……誰だ」ムクリ

電灯「」パッ

清姫「あ……う、うふふふ。こんばんは、旦那様」

ブルース「……」




ブルース「……清姫か。扉の外に『呼び鈴を鳴らせ』と張り紙をしていたと思うが」

清姫「あ、はい、見ました」

ブルース「……何故無視して入って来た? 仕掛けていたトラップが発動しただろう」

清姫「だってぇ……気付かれたら旦那様、絶対逃げ出しちゃいますし」

ブルース「……時と場合によるが」

清姫「ではわたくし、正直に申し上げますわね! 夜這いに来ました!」カッ

ブルース「……」シュポッガシッ

清姫「あ、あ~れ~?」ギュルギュルギュル

ブルース「……」ギチギチギチッ、グイッ

清姫「あ、あの……こんなミノムシじみて吊り下げられては身動きが……」

ブルース「……」ジーッ、ピッ

清姫「むむーっ! むーっ! むぅーっ!」(ガムテープ越しの悲鳴)


ブルース「……」トサリ、ゴロン

清姫「むーっ! むぅーっ!」ビヨンビヨン


ブルース「……」スゥ、スゥ……


…………

ピピピ‼ ピピピ‼ ピピピ‼

ブルース「……」ムクリ

時計『07:00』

ブルース「……」チラ

清姫「……」スゥスゥ


グラップネルガン「」カラーン


ブルース(縄抜けか……)


ピーンポーンパーンポーン

ドクター『もしもし、聞こえてるかな? って確認しても答えは返ってこないよね、うん。
おはよう、第二回レイシフトのミーティングを始める。職員、レイシフト要員は管制室へ集まってくれ。朝食もそこで用意してある』


ブルース「……起きろ、清姫」

清姫「う、うーん……もう朝ですか……あと5分……」クシクシ

ブルース「先に管制室へ行っているぞ」スクッ、スタスタ

清姫「あっあっ、お待ちを……わたくしもすぐに支度を、ああっ!」ドターン

ブルース「……」



マシュ「あ、マスター。おはようございます」ペコリ

フォウ「フォウ、フォフォーウ!」パタパタ

ブルース「ああ……おはよう」

マシュ「……その、腕にくっついている清姫さんは……」

清姫「妻として、夫の傍に居るのは当然ですわ♡」ピース


ブルース「……『古代ローマ 川 人を沈める』で検索してくれ」ピッピッ

清姫「!?」


マシュ「……なんだか、察したしまった自分が居ます。ご愁傷様です、マスター」

フォウ「フォーウ……」


ドクター「おはようブルースくん、マシュ! 今日も体調は大丈夫かな?」

ブルース「問題ない」

マシュ「はいっ、平気です!」

ドクター「清姫くんは一応初めてのレイシフトだけど、平気かな?」

清姫「れいしふと、というのが何かは分かりませんが……旦那様の居る場所へなら何処へでも付いて行きますわ」

ドクター「あはは、心強いなぁ。ところで、ブルースくんの手首と繋がってるその手錠は……」

清姫「勿論、いつ如何なる時でも離れないようにと……うふふ」カチャリ

ドクター「なるほどなぁ……ブルースくん、マジ?」

ブルース「……」バキィ

清姫「ああっ、手錠が! 愛の絆である手錠が!!」


ブルース「……この通りだ」

ドクター「うん、そうだろうとは思ったけど……」


所長「はい、静かに! これより第二回レイシフト前、最後のミーティングを行います!」

職員達「「「はい!」」」



所長「今回のレイシフト先は古代ローマ。精確な年代特定は例の如くレイシフト後になると思います。到着後の行動には重々気を付けるように」

ブルース「分かった」

マシュ「了解です!」

清姫「分かりました……旦那様の束縛も無しで?」


所長「無しに決まってるでしょ、それにブルースはアンタの旦那じゃないわよ。ブルース、清姫の動向には目を光らせておいて」

ブルース「ああ」

清姫「むぅ……」

所長「まったく……今回のレイシフトも、令呪の数は三画に定めます。それ以上使うと存在証明式に危険が出るから、いいわねブルース」

ブルース「把握した」


所長「……頼んだわよ。それじゃあサポート班! 今回の動きを確認します!」

職員達「「「はい!」」」

ドクター「は、はい!」



…………

レオナルド「見てくれブルース、今回のスーツはちょっとした細工があってね。防御力はもちろんだが、このブレーサー。ちょっと意識して手のひらを開いてみてくれ」

ブルース「……こうか」

ブレーサー「」プシュッ‼

レオナルド「どうだい、スプレーが手のひらから発射できる優れものだ! キミの『爆破ジェル』が入った瓶もこのブレーサーに嵌め込んで使えるぜ! わざわざ取り出す手間が減るってものさ」

ブルース「成程……前腕の内側からノズルが流れているから衝撃にも強いと」

レオナルド「そういう事だ! 爆破ジェルだけじゃない、ビンの中身を入れ替えればオイルや水なんかもスプレーできる! このスプレーは結構広範囲に広がるから、狙ったものに当たらないって事はないと思うぜ」

ブルース「……役に立ちそうだ。礼を言う、レオナルド」

レオナルド「ふふん、天才だからね。今回も是非生きて帰ってくれたまえ、そしてスーツの使用感の感想を待ってるよ」

ブルース「ああ、勿論だ」




ブルース「……」ガチャガチャ、ガチッ

ブルース「……」ガチリ、シュッ。カチッ

マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……」



ドクター「よし、今回もバッチリだね。コフィンへ入ってくれ、そろそろ時間だ」

バットマン「ああ」

マシュ「はい!」

清姫「できれば旦那様と同じ筐体で……」

バットマン「駄目だ」

清姫「ああん、もう!」


ドクター「時刻、08:56。ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライト、清姫の三名ともにコフィンにスタンバイ完了」

所長「……ふぉ、フォウは何処に行ったのかしら……」キョロキョロソワソワ


職員A「存在証明開始! 三名ともに証明続行中!」

職員B(あれ、一瞬だけスクリーンに緑のハテナマークが浮かんだような……き、気のせいだよね。疲れてるのかなぁ)

職員B「電子機器類に異常、ありません! こちらも良好!」

職員C「シバによる時代特定も良好です!」


所長「分かりました。古代ローマへのレイシフト、カウントダウン開始!」

職員達「「「了解、カウントダウン開始!」」」


ドクター「よし、今回もよろしく」

レオナルド「大雑把な八割は任せたまえ。大事な二割はキミの仕事だ」

ドクター「よぉし、やるぞ!」




コフィン内「」シーン……

バットマン「……」

ドクター『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』

バットマン「……」

???「フォウ」

バットマン「……! 何故ここに入って来た……!?」

ドクター『3! 2! 1!』

フォウ「フォウ、フォーウ!」

バットマン「……くっ、離れるな!」ガシッ

フォウ「フォーウ!」


『0!』



第二章

永続狂気帝国 セプテム

今回の更新はここまでです。

最近バットマンの映画のサントラ聴きながら書くのがマイブームなんですけど良い曲とかありますかね……(クレクレ厨)

皆さん良い曲ばっかり知ってて作者のニワカぶりがバレちゃう……(畏怖)

あとこのSSにアベンジャーズは出ないんだ。すまんな。本当にすまん。


――――


レフ「……ふん、奴に引っ張られて余計な存在まで召喚されたようだが……まあいい。
ロムルス。『ローマ』を作れ」

ロムルス「無論である。召喚された理由も把握している。すなわち、この世界に消えることの無いローマを作る。それこそが我が使命」

レフ「良いぞ、それこそが貴様の使命。いや、貴様ら『ローマ皇帝』の使命だ! 頭に立つ者として、民を愛する者として、いずれ消える土台など不要! 永遠を築き上げろ!」

???「……なぞなぞだ」

レフ「……あ?」

???「なぞなぞだ。奴はどんな時でも必ずやってくる、しかし到達する事は決してない。それは何だ?」

レフ「……下らん事を言ってないで策を考えておけ」スタスタ


???「あ~あ、行ってしまったか。アレは結構自信作だったんだが」

ロムルス「……『明日』だな」

???「なんだって?」

ロムルス「どんな時でも必ずやってきて、到達する事はできない。それは『明日』だ。我々は明日に届かない。そうだろう、リドラ―」

リドラ―「……まったく皮肉な事だが、大正解だね」

ロムルス「ふ……」

リドラ―「いいや、やってしまおう。消えないローマを作る。馬鹿げているが面白いじゃないか」

ロムルス「ああ、面白い。やってやろう、我々が永遠を証明する」


…………

「……シュ……おき……」ギィン‼ ガィン‼

「旦那様……あぶな……」

「うおおおお!!」
「あああああ!!」

マシュ「……う、うぅん……」ピクッ


「マシュ……くっ、目を覚まさ……」ギャリィン‼ ガァン‼

「旦那様、後ろを……」ガギャァン‼

「フォウ! フォーウ!!」


マシュ「……はっ」バッ



バットマン「! 起きたかマシュ! 戦闘が既に開始されている!」

ドクター『周囲をサーチ中! 魔力反応は両陣営から確認されている! キミたちは残念ながら戦争の真っ只中にレイシフトしてしまったようだ!』

清姫「それはおかしい話ですね、確か絢爛な首都が我々を出迎えてくれるはずでは!?」ゴゴウッ‼

ドクター『座標は固定してあったが……何者かが介入したのか、もしくは首都の位置がズレているか、だ! いずれにせよ、その窮地を脱してくれ!』

兵士A「おおおおお!!」キィン
兵士B「やああああ!!」ギィン
兵士C「たああああ!!」ガァン
兵士D「どらあああ!!」ギャァン


マシュ「あ……ど、どちらの陣営を……いえ、どちらも真紅と黄金の意匠があしらわれた鎧……非常に似ていて……」

バットマン「自分の身の安全をまず確保しろ! 突破口を開くのはその後だ!」ガシッ、ドッガァ‼

兵士A「おがあああ!?」ドサァン

マシュ「は、はいっ!」ガチャリ



兵士B「おらあああ!!」ブゥン‼

バットマン(真紅と黄金の意匠……古代ローマで好んで使われた色だ。レイシフトした場所に間違いは無いようだが、しかしこの戦争は……)ガシッ


バットマン「ドクター、年代特定を頼む。ローマでの内紛があった時代なのか?」グイッドスッ

兵士B「うごっ!?」ドシャァン

ドクター『……いや、そこは1世紀ごろのローマだ。そんな戦争は歴史にはない』

バットマン(ならば、歴史の異常による戦争の可能性が高いか……)

マシュ「やああっ!」ブォン‼

兵士C「ぐげっ!?」ドゴォン

清姫「カァァァッ!」ゴウッ‼

兵士D「あづぁづぁづぁ!?」ゴロゴロゴロッ


ワーワー‼ ギャリィン‼ ガァン‼


バットマン(キリが無い。少々強引でも、この混乱を突破して……)


???「我が!!!! 愛しき!!!! 妹の!!!!! 子よ!!!!!!」ゴォッ

バットマン「……!?」



マシュ「アレは……」

兵士E「カリギュラ様だ……テメェらもう終わりだぜ!」


カリギュラ「ネロォォォォォォ!!」

???「叔父上……!」


バットマン(何だ? 戦場の動きが硬直した? あの二人は一体……? いや、先程ネロ、カリギュラと……)


バットマン「ドクター、あの二人の分析を頼む」

ドクター『……男性の方はサーヴァントだ。女性の方は……奇妙だな、魔力はあるけどサーヴァントじゃない。魔術師か? いや、でもあの手に持った真っ赤な剣は……』


バットマン(あの二人の会話を鵜呑みにするならば、女性の方がネロ。男性の方がカリギュラだ。カリギュラはサーヴァントであり、ネロは生身……)

バットマン(ならば、歴史を乱そうとする陣営はあちらで合っている……のか?
だがこの物量差、カリギュラの陣営が圧倒的に人数が多い……)


バットマン「マシュ! 援護に……」

バットマン「っ」ゾクリ


清姫「旦那様!!!」


???「圧政!!!」ゴォッ

バットマン「っ!!」ババッ

ドッゴォォォォォォン‼



パラパラ……


???「キミからは圧政者の気配がする。すなわち、我が愛の対象である」

兵士F「す、スパルタクス!! てことは、ブーディカ様も……! へっ、俺達に分があるみてえだな!」

兵士E「くっ……」


スパルタクス「さあ、圧政者よ! 我が愛を! 受け取るがいい!!」

バットマン(……熱狂に呑まれた瞳。清姫と同じ、話を聞く者ではない。そして……)

地面「」グチャグチャ

バットマン(この膂力……ほぼ間違いなく、サーヴァント。さあ、いよいよどちらの陣営を援護したものか)

スパルタクス「ふははははははは!! さあ! さあ、黒き猫の扮装者よ!! 来るがいい!!」

バットマン「(正面からでは勝ち目が薄い)マシュ!」


マシュ「はい! マシュ・キリエライト、援護を……っ!?」ガガッ

???「だぁーめ。アンタはお姉さんが相手してあげるから」ヒュンヒュンッヒュンッ

マシュ「くっ……!?」ガガッガィン‼ ギュリィン‼


兵士G「ブーディカ様! いいぞ、やっちまえ!!」

ブーディカ「ふふ……」

マシュ「……退いて下さい!」

ブーディカ「退かせてみなさい」



清姫「旦那様、ここはわたくしが……!」

???「■■■■■■――――――!!!!!」ドォン‼

清姫「チッ……そこを退きなさい、無粋な……!」

兵士H「りょ、呂布様まで……やっぱり首都は堅牢なんだ!」


バットマン(……成程、読めたぞ。防衛戦だ。向こうに見える都市の影……こちらの陣営は守りを固めていたのか。そして、それを落とそうとする勢力の戦争……)


呂布「■■■■■■■■■―――――――!!!」ブゥン‼

清姫「ああもう……」ガガッ


バットマン(……冷静に考えろ。この時代の人物として正しいのは、ネロ・クラウディウスだ。史上では暴君ではあるが、それでも時代に合った皇帝だ。
だが今、その陣営に敵視されている……)

バットマン「……不味いか」

スパルタクス「ハハハハハハハ!」ドッガァァァァァァァ

バットマン「……」バッババッ

スパルタクス「素早いな、圧政者よ! だが同じように素早い者がこちらにも居るぞ!」

???「……」スタッ

バットマン「……」スッ

バットマン(この身のこなし。暗殺者か)



兵士I「け、荊軻様まで! やれるぞ! 物量差なんてメじゃねえ!」


荊軻「……堅物の匂いがするな。これまでの人生、遊びという言葉とは縁遠かった者の発する匂いだ」

バットマン「……」

荊軻「どうも、苦手だが……やるか」ヒュンッ

バットマン「っ」パシィ‼

バットマン(針……毒針)


荊軻「そこっ!」ヒュォン

バットマン「くっ……」ダッ、ゴロゴロッ

スパルタクス「圧政!」ドッゴォォォン‼

バットマン「ふっ!」シュポッガシッ、ギュルギュルギュルギュルッ

荊軻「遅い!」ヒュンッドガッ

バットマン「うっぐ……!?」ドッシャァァァ

スパルタクス「愛を! 愛を!! おお愛を受け取り給え!!」グワッ

荊軻「どう、どう。コイツは人間だ、殺さず捕縛するんだぞ」

スパルタクス「……至極不満である」


バットマン(油断しきっている……スモークペレット……いや、爆破ジェルで地面を砕いて……)スッ

荊軻「おっと、妙な真似はしてくれるなよ? 本当に殺す羽目になる」ガシッ

バットマン「……」ピタッ



マシュ「マスター!」

ブーディカ「ほら、余所見は危険だっての」ヒュンッ

マシュ「あぐっ……」ドサッ

ブーディカ「……まったく、可愛い顔してこんなに粘るんだもんなー。捕縛隊、ロープを……っ!?」

マシュ「……ふっ!」ガガァン‼

ブーディカ「狸寝入りなんてやってくれるじゃない!」ババッ

マシュ「マスターを助けます……そこを、退いて下さい!」ギリィ

ブーディカ「駄目じゃないのさ、女の子が血塗れで歯を剥き出したりしたら……嫌いじゃないけどね」ニッ



清姫「ああもう! しつこい殿方ですね!」

呂布「■■■■■■■――――!!!」

清姫「せめて人語を操ってはいかがです!?」

呂布「■■■■■■■■■■■■■■―――――!!!」ブゥン

清姫「うっく……」ガガッ

清姫(一発一発が重い……ふざけている余裕もなくなってきてしまいますね……)

清姫(そして、旦那様……ああもう、ここは宝具を……ああでも、それでは安珍様に被害が……)

清姫「あーもー!!!」キシャーーーー‼‼

呂布「■■■■■■■■■■■■■■―――!!」



マシュ「はあっ、はあっ……」ヨロッ

ブーディカ「……もうやめときなって。これ以上やっても結果は分かってるでしょ」

マシュ「……でも、私は……マスターの、盾に……守らなきゃ……」ヨロ、ヨロ

ブーディカ「……」


スパルタクス「おおおおおおおお!! か弱い少女を力でねじ伏せるのはまさに圧政者の如き振る舞い! しかし毒を以て毒を……」ドスドス

ブーディカ「……やめだよ、スパルタクス。この娘はもう戦えない。縛って連れて行くんだ」

スパルタクス「であれば納得である! 私はあくまで反抗者であり、それ以上になれば私は私を……」

ブーディカ「ほら、ロープ」

荊軻「……すまないな、ブーディカ。結局いつもキミがスパルタクスの操縦役になる」

ブーディカ「いいよ、慣れてるし」

マシュ「私は、まだ……!」

ブーディカ「ふっ」ガッ

マシュ「あぅっ……」ドシャッ

ブーディカ「……あーあ、いつから娘みたいな年頃の奴が戦うようになったんだかね」



清姫「……」

清姫(わたくし以外が撃沈しましたわね。ええ、見事に今回も行き遅れです。川があったら飛び込みたい。……自分のブラックジョークが身に染みますこと)

呂布「■■■■■■■……」ゴトッ

清姫「……あらあら、武器を置かれたりなんてして。『勝負あった』とでも仰るつもりですか?」

呂布「……」

清姫「……良いでしょう。女清姫、負けを勝ちと言い張るほど盲目ではないつもりです」

呂布「■■■■■■■■■■■■■■―――――!!!」



カリギュラ「……」

ネロ「……とった!」ザシュッ‼

カリギュラ「……撤退せよォォォォォォ……」スゥゥゥゥゥ……

ネロ「……くっ、今回もまたあの不可解な消え方か……トドメを刺し損ねた」


兵士E「クソッ、撤退、撤退ーーーー!!!」ダダダダダダダ

兵士達「「「撤退しろーーーー!!!」」」ダダダダダダッ



荊軻「今回もお疲れ様だな、皇帝殿」

ネロ「ああ。だが、このままではいずれやられてしまう……相手方の皇帝も一斉に出てくれば、こちらの勝ち目は薄いしな」

荊軻「……兵の消耗も激しい。それに今回捕らえた捕虜の事もある。一度首都に戻り、策を練ろう」

ネロ「うむ、それが最善であろう。多勢に無勢はいくさの常であろうが、余も少々疲れた。無勢の側は嫌になる」




ゴトゴト……ゴトゴト……

バットマン「……マシュ、居るか」

マシュ「はい、マスター。ここに居ます」

バットマン「……こちらは目隠しをされていて状況が把握できない。縛られていて身動きも取れないが、そっちはどうだ?」

マシュ「私もです……」

清姫「わたくしも……どうやら荷台の中のよう。炎を吐いたら旦那様を燃やしてしまうやも……あ、でもそれも良い」

バットマン「……とにかく、このまま連行されるぞ。ネロは味方である可能性が高い。話をする必要がある」

マシュ「でも危険が……」

バットマン「……危険はあるが、今はこれが最善だ」

清姫「……旦那様?」

バットマン「平気だ。危険は引き受ける」

清姫「旦那様」

バットマン「……もし駄目だったなら、清姫。お前に賭ける」


ゴトゴト……ゴトゴト……


………………

「さっさと歩け!」

マシュ(目隠ししてるままなのに、無理を言いますね……)ソロソロ

ブルース「……」スタスタ

清姫「……旦那様? 異様に歩くのがお早いですが、まさか旦那様だけ目隠しが外されてたりはしませんよね?」ソローリ

ブルース「……音と足裏の感触で大体の予測は可能だ」スタスタ

マシュ「……いや、無理では……」


「ここで装備は全て剥奪する! 抵抗はしないように!」ガチャガチャ

バットマン「……」

マシュ「……」

清姫「……あ、今誰かおしりを触りましたね? 後で燃やしますので。ええ、匂いで覚えました。逃げても無駄です。ええ」




…………

ブルース「……」ムクリ

マシュ「……おはようございます、マスター。牢の中で眠るのは初めてで、少し戸惑いましたが……
マスターはよく眠れましたか?」

ブルース「……ああ。最低限はな」


ブルース(地下牢の中だと時間を把握しにくいが……恐らく今が朝だ。そろそろ尋問に誰かが引き出される頃合いか)


ドクター『……駄目だな、その周囲に聖杯の反応はない。そっちの陣営は聖杯を所持していないようだ』

ブルース「……なら計算通りだ。今日の尋問でネロの信用を勝ち取る……」

マシュ「……マスター、やはり私が……」

ブルース「……お前はバックアップを」


兵士「男。出ろ」

ブルース「……」スクッ

清姫「……」

清姫(ご武運を)

ブルース(頼むぞ)


兵士「もたもたするな!」

ブルース「……」スタスタ



…………

兵士「捕虜を連行して来ました、ネロ様」

ネロ「うむ、ご苦労。行って良いぞ」

兵士「はっ」ススッ


ブルース「……」

ネロ「さて、この玉座の間へようこそ! どうだ? 赤と金の絨毯が映えるであろう? ふふん、この国最高峰の技術を持つ者共に作らせたのだ、当然最高に決まっておる!」

ブルース「……」

ネロ「おお、あの絵が気になるか? あれもこの国の最高の絵師に描かせたのだ! 余の美しさが溢れるようだ、うむ、つくづく素晴らしい仕事ぶりであるな!」

荊軻「皇帝殿」

ネロ「あ……ごほん。うむ、今回呼んだのは尋問のためだったな。よし、貴様! 名を何という?」

ブルース「……ブルースだ。ブルース・ウェイン」

ネロ「ぶるーすうぇい……ん。聞き慣れぬ名であるな。まあ良い、それではブルース。何故『連合』側についたのか、理由を述べよ!」

ブルース(連合……?)

荊軻「……」ジッ



ブルース「……少なくとも、どちらの側について戦った覚えもない」

ネロ「むぅ、隠し通せると思っているなら……」

荊軻「……嘘はついていないかと」

ネロ「むむむ、そうなのか? ……ケーキの勘は当たるゆえ、馬鹿には出来んな」

荊軻「あぁ、真偽と臆病者は見れば分かる。……あと、ケイカだ」

ネロ「ならばブルース! なにゆえあの場所に居た? 戦場の真っ只中で何をしていたというのだ?」

ブルース(……さて、ここからが正念場だが……)

ブルース「……これから話す事は、妄想でも出任せでもない。それをよく念頭においてくれ」

荊軻「それを判断するのは私の役目だが……良いだろう、聞いてみよう」


…………

ネロ「……未来から来た……それはまことか?」

荊軻「……」

ブルース「……ああ、本当だ」

ネロ「ううむ、事実だとしたら難儀な事よな。階段から転げ落ちでもしたか?」

ブルース「……狂ってはいない」

荊軻「……」

ネロ「しかしな……」

荊軻「ひとつ質問を許してくれ」

ブルース「……」

荊軻「お前の身のこなし……お前は暗殺者なのか?」

ブルース「……!」


荊軻「一目見た時から分かってはいた。……お前が私の事を暗殺者だと見抜いたように、私もまた見抜いた。
お前は修羅場を潜って来たのだろう。よく鍛えられた暗殺者だ」

ネロ「……それが本当ならば、今までの話は全て嘘八百だという事か? やはり、こやつは余を殺しに来たと?」

ブルース「……」

荊軻「いや……これまでの言葉に偽りはない。だからこそ、試させてほしい。一度、手合わせを。それで分かる」

ブルース(…………成程、不味い事になった……)ピッピッ



………………

ドクター『……! マシュ、清姫、連絡だ。ブルースくんの救援要請』

マシュ「!! 早く助けに行かないと……」

清姫「……ここを、こうして、こうやって……縄抜け完了ですね」スルスルッ

清姫「ふふふ、旦那様の縄からも脱したわたくしに隙はありません。さあマシュ、戒めを解いてさしあげましょう」

マシュ「お、お願いします!」

清姫「こうして……うふふふ、造作もない事です」スルスル

マシュ「行きましょう! 牢屋の外に武装が置いてあったハズです!」

清姫「お待ちなさい。まずは鉄格子を……」ガシッ

マシュ「私も……!」ガシッ


鉄格子「」グググググ……グンニャリ


マシュ「マスターは上階です!」ダッ

清姫「では急ぎましょうか」


盾「」

マシュ「……」パシッ、ガシャリ

マシュ(必ず守ります、マスター……!)

???「ちょっと待ちなさいな」

マシュ「……!」




ブーディカ「牢屋の警護やってたら、やっぱりというかなんと言うか……脱走するとは思ってたよ」

スパルタクス「キミたちは反抗者だ! 好ましく思うが、我が反抗には敵うまい!」

清姫「まあ。手早く燃やして昇りましょう」

マシュ「退いて下さい。私達は行かなければ」

ブーディカ「そりゃ、そっちもこっちも事情があるしね。ま、ただじゃ通れないのは分かってたでしょ?」

マシュ「……」ガシャリ

ブーディカ「そうそう。……それじゃ、やろうか」



………………

荊軻「……戒めを解く。いいな、皇帝殿」

ネロ「……構わんが、余は手助けをせんという事で良いのだな?」

荊軻「ああ。そこで見ていてくれ。この男の戦いぶりを」スパッ


縄「」ハラハラ


ブルース「……」スクッ

荊軻「ふ。少し滾っているのも事実だ。私とキミは正反対だが、根本の部分で似ている気がしてな」

ブルース「……」

荊軻「……では、やろうか」


上等な絨毯を踏みしめ、荊軻は円を描くようにジリジリとすり足で移動する。

ブルースは動かず、向き合った姿勢を維持したまま、じっと相手の動きを見詰め、全ての一撃を想定する。


荊軻はなおも動き続け、動かないブルースの構えを見る。

その時、地下から轟音が響いた。


(地下牢。マシュ)


 その瞬間、マスターは無防備になった。気付いた時には、暗殺者は踏み込み、懐から抜いた隠し刀を一閃させていた。

 ブルースは肘で荊軻の腕をブロック、手首を掴んで舞うように放り投げる。だが彼女は軽やかな身のこなしで着地、絨毯のたわみを足にかけ、蹴り上げた。

 腕で絨毯を払う……その先に居たハズの暗殺者は既に消えている。

(いや)

絨毯の下だ。勘をフル活用し、ブルースはストンプを繰り出す。絨毯に出来ていた不自然な膨らみが移動し、ブルースから数メートルの場所で布を切り裂いて荊軻が飛び出した。

「成程、やる」

 荊軻は不敵な笑みを浮かべ、手に手に小刀を持ち替え始める。次の一撃の方向を悟らせないためのフェイントだ。

(……あまり刺激してはこちらが殺される……だが本気で向かわなければ、それも殺される。マシュ達は何らかの妨害にあっていると見ていいだろう。独力で切り抜ける……それが可能か?)

 一方の騎士は、自身の生死に際して異常なほど冷静に思考を回す。

(荊軻。単独で始皇帝を暗殺しようとし、失敗。斬殺。……伝説では、脚をまず斬られ……身動きが出来なくなったところを斬り殺されたハズ)


 狙うべきは脚。ブルースもまた暗殺者の目になり、冷徹な足運びで距離を詰める。荊軻も相手の雰囲気が変わったことを悟り、腰を落として構える。

 荊軻がまず仕掛けた。匕首を高速で持ち替え、目にもとまらぬ突きを繰り出した。

 だがいくら素早かろうとも、予測済みでは意味がない。ブルースは既に数センチ横にずれ、突きを躱して拳を繰り出している。

 荊軻はステップで躱した……

「っぐぅ!?」

 予想外の部分から伸びた打撃が荊軻の脚を打った。暗殺者は拳の勢いを利用し、身体を捻って足払いを繰り出していたのだ。堪え切れず倒れるそこへ、ブルースは更に蹴りを放つ。

 だがたおれた暗殺者も伊達ではない。蹴りを両手で弾き、脚を庇いながらもスムーズに立ち上がる。

 ブルースも反動を利用し、するりと立ち上がる。二人の暗殺者が見合う。身体能力を除けば、二人の力は拮抗しているといえる。


(……次はどう来る)


 過熱した頭で考えるのは荊軻だ。熱中ともいえるほどに没頭し、荊軻は舌なめずりすらしかねないほど興奮している。恐怖などない。生前、単身で皇帝の暗殺に挑んだ彼女に、恐怖など。笑わせる。

 目の前の男にも恐怖は無い。見れば分かる。分かるのだ。彼はずっと考えている。次の手を。自分はあくまで彼を取り巻く世界に過ぎず、所詮は脅威のひとつでしかない。

(最高じゃないか。ようやく分かって来たぞ)

 この男が嘘など吐くはずがない。何故ならば、私を見た時に既に気付いていたからだ。嘘は通じないと。そして利用しようとしていたのだ。ネロの信用を得るための装置として。

 そこまで気付き、荊軻はふとうすら寒い心地を覚えた。

(ならば)

 生唾を嚥下し、彼女は男を見た。ここまで賢しいのならば。

(この男は……世界と別離してしまっているのか?)

 ぞわり。最悪の孤独を想像してしまった彼女の身体が震えた。

 そこへ、踏み込んだ掌底が叩き込まれた。



荊軻「うっ……!?」ドズシャァァ

ブルース「……勝負あり、で良いか」スッ

ネロ「……うむ、一本入ったと見るべきであろうな」

荊軻「……私の、負けか……」


マシュ「マスター!!」ダダダッ

清姫「旦那様!!」タッタッ


ブルース「……無事だ」


――――

ブーディカ「あいたたた……もー、やってくれるわ……」グッタリ

スパルタクス「やはり圧政者以外への愛は表現が難しい! ふはははははははは!! だが悪くないぞ!!」

ブーディカ「アンタは良いよね、元気で……」


荊軻「……」

ネロ「うむ。今なら一対一の話し合い……とはいかぬが、そちらの本音が聞けそうだな。目的を聞かせて欲しい」

ブルース「……目的は、この戦争の元を取り除く事だ。皇帝の暗殺でも、こんな打ち合いの試合でもない」

ネロ「……ふむ、成程。だがそれだけの戦力では厳しいのではないか?」

ブルース「……ああ。そちらも、戦力不足が深刻なようだ」

ネロ「ナマイキな奴め。……だが事実だ。これを余から言うのは恥ずかしくて毎回慣れぬのだが……余に力を貸して欲しい」

ブルース「……良いだろう。こちらこそよろしく頼む」

マシュ「え……え?」

清姫「待って下さい。旦那様のピンチにわたくしが颯爽と駆け付けて助けてからキスするシーンは? 『待たせたな』は何処です?」

ブルース「……そんなものはない」


荊軻「ふー……ようやくショックから立ち直れたぞ、うん」

荊軻(……身体能力は人間のそれに合わせたとはいえ、まさか打ち負けるとはなぁ)

荊軻(……何者なんだ、ブルース・ウェイン)


ブルース「……」


ネロ「うむ、協力すると決まったなら早速現状の確認に入ろう。未来人とはいえ、この世界の事は知らぬようだからな」


………………

ブルース「『連合ローマ帝国』?」

ネロ「……そうだ。そう名乗る国が西に突如現れ……うむ、まさに突如現れたのだ。そして、余の……ゴホン、東ローマを脅かし始めた」

マシュ「ですが、突如現れたにしては……その、物量が凄まじかったというか」

ネロ「……」

荊軻「それは……」

ネロ「いや、良い。ついて来て欲しい、未来の客人たちよ」

ブルース「……」


ネロ「……このバルコニーに立ってみて欲しいのだ。見渡して欲しいのだ、この首都を」


ザワザワ……ガヤガヤ……


ブルース「……普通の都市に見えるが」

清姫「ええ。何の変哲もない……」

ネロ「そこが問題なのだ。数か月前まで、この都市はもっと活気に満ち溢れていた。
全ての国の者がここに集い、昼夜を問わず祭りじみて……それが、消えた。連合ローマ帝国が現れた事によって、民の大部分はあちらへと移住を始めた。兵達でさえ」

ブルース「……」

ネロ「余は皇帝としての誇りを持っているつもりだった。だが、民が居なくなった途端、その誇りは……情けなくも揺らいでいる」

ブルース「……民が居てこその皇帝だ。それは正しい揺らぎだろう」

ネロ「……うむ、有難う。噂では、あちらには『過去の皇帝達』が居るらしい。眉唾なものだが、我が叔父カリギュラが妖しげな術を行使している事を考えると……」

ブルース(……十中八九、サーヴァントだろう。この特異点はつまり……ローマを懸けた戦いか)



ネロ「そこで! いつまでも守りに入っている訳には行かぬと見た余は、そろそろ攻勢をしかけようと思うのだ!」

荊軻「ジリ貧だしな」

ネロ「うむ、そのとお……いいや、ローマならばいつまででも籠城戦ができるぞ! できるもん!」

荊軻「悪かった、できるよな。すまない。話を続けてくれ」

ネロ「むぅ……我々はまずマッシリアへ赴き、ガリアの砦を取り返そうと思う。そこで大きな戦争を起こし、敵の目を引いている内に『連合』の首都へと少数精鋭で殴り込むのだ!」

ブルース「……地図を見ても?」

ネロ「構わんぞ、見てみろ」スッ


地図「」ペラッ


ブルース「……ドクター、この地図に現在の衛星観測による地形を重ね合わせてくれ」

ドクター『ほい来た、ちょっと待ってくれ……ローディング完了。展開するよ』ブゥゥン

ブルース「……」

ブルース(マッシリア……どうやら連合首都のすぐそばにあるようだな。
ガリアの砦はそこからやや離れた場所に……地理的には確かに重要。ここを取らなければ挟み撃ちにされる)

ブルース「……その作戦に賛同する」

ネロ「おお、本当か!? よし、出発はすぐにでも……と言いたいが」

マシュ「?」ボロボロ

清姫「??」ボロッ


ネロ「……うむ、一晩だけでも休憩を取らせるとしよう。明日の明朝に出発だ、準備をしておけ」

ブルース「了解した。ところで私のスーツを……」



………………

マシュ「凄いですマスター、見て下さい! この大きな建物が全部お風呂らしいです!」

清姫「さあ旦那様、お背中をお流しします……」グイグイ

バットマン「……私は夜風に当たってくる。二人は入っていろ」


ネロ「む、異国の者共も丁度入浴か! よし、余と共に入る栄光を与えよう!」

清姫「チッ」

ネロ「!?」

ブーディカ「騒がしいわね、何を……あら、アンタ達も入るの?」

スパルタクス「アッッッッッッ!!! セイ!!!!!」

ブーディカ「いやアンタは駄目だから」


…………

ヒュオオオオオオゥ……

バットマン(……ここが首都で最も高い建物か。グラップネルガンで……)シュポッガシッ

バットマン「ふっ」ギュルギュルギュルギュルッ

スタッ

荊軻「やあ、こんばんは」

バットマン「……」


荊軻「良い眺めだろう。天にも星はあるが、地上にだってそれはある。見ろ、灯された篝火がポツポツと」

バットマン「……」

バットマン(……地形を肉眼で一望して簡易の戦略を立てるつもりだったが)

荊軻「……そう身構えないでくれ。昼間の戦いは見事だった」

バットマン「……そうか。こちらも、かなり追い詰められた」

荊軻「ふふ、まあな。暗殺者の名は伊達ではないよ」

バットマン「……」

荊軻「…………」


荊軻「ところで」

バットマン「……」スッ

荊軻「ごほん。ところで、キミは酒に興味があるか?」

バットマン「……残念だがあまり無い」

荊軻「ふむ……」

バットマン「……」

荊軻「……」

バットマン「…………」

荊軻「少し頼みがあるんだが」

バットマン「……聞こう」


…………

松明「」パチパチ

ワーワー、ギャーギャー


バットマン「……ここが?」

荊軻「ああ。お気に入りの酒場だったんだが、最近どうにも治安が悪くてな。
戦争難のあおりというのはやはり、こういう場に出やすい」

バットマン「……私に頼らなくとも鎮圧できると思うが」

荊軻「ふふ、サーヴァントが人間の営みに口を出すのもな」

荊軻(……そして君の本質を見極めるためにも、君にやってもらわなければな)

バットマン「……分かった」



バットマン(……しかし、今見ている限りでは普通の酒場だが)


???「……」スタスタ

???2「……」スタスタ

???3「……」スタスタ

???4「……」スタスタ


バットマン(……フードを被った人物が四名。歩き方がぎこちない? 顔は見えない。背丈が全く同じ……)


???「……」ドンッ

酔っ払いA「ああああ~?? いってえなあこの野郎!」

酔っ払いB「どこ見て歩いてやが……ぐえっ!?」ドンッ

???『うるさい奴だ、黙っていろ!』


バットマン「……合成音声?」



酔っ払いA「上等だこの野郎! ぶっ飛ばしてやるぁ!!」

酔っ払いB「クソ喰らえ! ぶん殴ってやる!」

???「……」スッ


バットマン(ここで止めるか……)ヒュンッ

バットラング「」ヒュォンッ

松明「」パッ


酔っ払いA「なんだ!?」
酔っ払いB「灯りが……真っ暗だ」


バットマン「……」バッ、バサササササササ




???『環境の急変への対応策を検索しています』

バットマン「……」ガッ

???『ガピー! ガガガー!』ドシャッ


酔っ払いA「なんだ!? 何の音だよ!?」

酔っ払いB「俺が知るかよ!!」


バットマン(思った通り。このフードの連中はロボットだ……ならば)グシャア

ロボット『……』キュゥーン……

バットマン(次だ)


ロボットB『一体目の反応消失を確認。サーヴァント反応確認できず』

バットマン「ふっ!」ガシッ、ゴギッ

ロボットB『……』キュゥーン……


バットマン(次を)


ロボットC『サーモグラフィーに切り替えます』

ロボットD『互いの視界をカバー……』ガシッ

バットマン「一気に……!」ドドッ‼


ロボットC『ギギッ‼』グジャア
ロボットD『ゴゴッ‼』ドシュウゥ


バットマン「……片付いたか」



…………


松明「」パチパチ……

酔っ払いA「なんだこの……鉄が動いてたってのか」

酔っ払いB「ぎゃははははは! 飲みすぎて幻覚が見えるぜ、あぁぁ~」ドタッ


バットマン(基盤からチップを引き抜き、解析に掛けてもらうか……)

荊軻「お見事、手際は見せてもらったよ」

バットマン「このロボット……鉄の人形に見覚えは?」

荊軻「……残念だが無いな。キミは?」

バットマン「……」

バットマン(緑の塗装、背中に描かれた自己顕示欲の塊のようなクエスチョンマーク……思い当たる人物は居るには居るが)

バットマン「……いいや」

荊軻「嘘か?」

バットマン「何故?」

荊軻「目に出ている」

バットマン「……こんな事をしそうな奴に覚えがある。それだけだ。
ドクター、チップのデータを送る。周波数の特定を頼む」ピッ

ドクター『……zzz……』

バットマン「……ドクター」

ドクター『……うぅん、ハッ!? ご、ごめんよブルースくん、ちょっと寝てた!』

バットマン「……今送ったデータの解析を頼む」


店主「近頃この辺の店を荒らしている連中が居ると聞いて……本当に恐ろしかったです。
助けて頂いて、何とお礼を言ってよいやら……この酒はこの店で一番上等なものです、よろしければ」

バットマン「……いや、私は」

荊軻「良いじゃないか、酒の礼なんて洒落てる。貰っておくといいさ」

バットマン「……」

店主「どうか受け取って下さい」スッ

バットマン「……分かった」パシッ

荊軻「……店主、この酒は本当に上等なモノじゃないか。前に私が来てコレをねだっても頑として譲ってくれなかったアレだろう」

店主「……」

荊軻「ブルース、金なら出すぞ。その冗談のように度数の高い酒を私にもくれ」

バットマン「……お礼の品を本人の目の前で他人に渡す奴は居ない」スタスタ

荊軻「なら目の前じゃなかったら良いんだな!? まあ待てブルース! 待つんだ!」タッタッ


…………

荊軻(……あの時、暗闇でも見えた)

荊軻(彼は致命的な攻撃を繰り出す直前に、それが人間かどうかを確かめていた)

荊軻(……彼の事を暗殺者、などとは言ったが。アレは失言だったかもしれないな……)


バットマン「……急に黙り込んだが、どうかしたか」

荊軻「いいや、なんでもないさ。ともかく……」

バットマン「なんだ」

荊軻「ありがとう、と言いたかったんだ。全く君は性急に過ぎるぞ」

バットマン「それは……すまない」

荊軻「……いいのさ」



今回の更新はここまでです。
今頃BvS観たんですけど、バッツが物凄い勢いで人を殺してましたね……ちょっとびっくりしました

今頃観返した()
本当に文章というのは……

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC

今回の悪役の参考資料です


チャプチャプ……カポーン……

ブーディカ「ふー、やっぱりいい湯だね……」

ネロ「うむうむ、そうであろう! この湯を引くのにはかなり苦労したのだ!」

マシュ「……本当に、こんなに大きな……」

清姫「油断したら溺死しますね、この深さ……全く逸話持ちの身というのは」フゥ

フォウ「フォウ、フォーウ!」ジャブジャブ

マシュ「あ、フォウさん泳いじゃ駄目ですよ」



ネロ「向こうには露天風呂もあるぞ! 今の時期は寒いが……」

ブーディカ「贅沢すぎるでしょ」

マシュ「じゃあ私、露天風呂に行ってみますね」ジャバッ

ブーディカ「あ……ちょっと待ってよ、私も行くからさ」


ネロ「……」

清姫「……」ニコリ

ネロ「待ってくれ! 余も! 余も!」ジャバジャバ

清姫「あらあら、どうして嫌がるのですか皇帝様ぁ~? 少しお話でもしましょう?
わたくしは旦那様の束縛を許可されていなかったのに、皇帝様だけ旦那様を縛った事とか……ね?」ギラリ

ネロ「待ってくれ! 何か誤解が……目にハイライトが無いぞこやつ! まだ余は死にたくない! 誰かー!!!」


ギャアアアアアアアアアア……




カポーン……

ブーディカ「ふー……綺麗な星だね」チャプ

マシュ「……はい、本当に」チャプチャプ

フォウ「フォーウ……」ブクブク


ブーディカ「……その、さ。昼間は悪かったね、斬り掛かったりして」

マシュ「……」ビクッ

ブーディカ「痛くなかった? 確か、腕を斬り付けちゃったけど」

マシュ「……ええ、大丈夫です。デミ・サーヴァントなので、傷の治りも早いんです」

ブーディカ「……」



ブーディカ「……あのさ、もうちょっと近くに寄ってもいい?」

マシュ「え? ……はい」

ブーディカ「……」チャプチャプ

マシュ「……」

ブーディカ「……」ピトッ

マシュ「……」プルプル


ブーディカ「……」

ブーディカ(やっぱり、この娘……)



ブーディカ「……ねえ、マシュ達はさ。未来から来たって、そう言ったよね?」

マシュ「はい、そうです」

ブーディカ「戦うのって、やっぱり未来のためなの?」

マシュ「……そう、なのだと思います。今の私には、はっきり分かりませんが」

ブーディカ「へえ……未来じゃ、戦うのって普通なの?」

マシュ「……いいえ。戦うのも、戦争に立ち会うのも……全くと言っていいほど経験が無くて」

ブーディカ「……怖い?」

マシュ「……!!」



マシュ「私、は……」

ブーディカ「別に恥じる事じゃないよ。そんな歳の娘が急に戦争に放り込まれて、ビックリしない方が無茶なんだ。怖がってしまうのも当たり前」

マシュ「……はい。情けないとは思いますが、私は……戦いが怖い。人が死ぬのを見るのが怖い。たとえそれがサーヴァント相手だとしても、怖くてたまらないんです。
マスターが居てくれるから、私は立っていられますが……守るものが無くなった時、私は……」

ブーディカ「……」ガシッ

マシュ「!? ぶ、ぶーでぃ……」

ブーディカ「シー。今はこのまま……ね? よしよし……」ナデナデ


マシュ「……」ジワ

ブーディカ「……いいの、いいんだ。怖かったら怖いって言っていい。無茶しすぎなんだよ、こんな歳で……」ギュッ

マシュ「……わ、私、は……」ポロ

ブーディカ「……大丈夫。アンタは十分強いし、頑張ってるんだ。盾の後ろが重くなったら、他の奴だって支えてやれるんだから……」ナデナデ

マシュ「……」ポロポロ……

ブーディカ「……」

ブーディカ(……そう、支えてやれるんだ。だから、守ってやらないと……今度こそ)


チャプ……


ガラガラッ‼‼

ネロ「助けてくれ!! もう一人では抑えきれん!!」ダダダダ

ブーディカ「コラ! 風呂場で走んな!」

清姫「あらあら、少し『お話』しただけだというのに、やわなお方ですね……」スルスル

ブーディカ「アンタもねー……空気を読みなさいよ、もー」

マシュ「……あ、あははは……」クシクシ


…………

ネロ「ほれ、風呂場の中でもここに立てば……都市が一望できるぞ!」

清姫「ふむ……これは素晴らしいですね。旦那様にも見せてあげたかったです」

ネロ「あそこに見えるのが花屋だ! 先週娘が産まれてな、大層喜んでいたぞ!
そしてアレが鍛冶屋! 良い仕事をする男でな、剣の話ならあやつに任せれば間違いない!
アレが服屋! 世界の流行の最先端はあそこで生まれるのだ!」

清姫「流行の最先端……ですか。それはその、可愛いようなものも……?」

ネロ「? うむ、無論である。今からでも余の衣装の数々を見せてやっても良いぞ?」

マシュ「わ、私も良いですか?」

ネロ「ふむ、どうやらドレスに興味があるようだな! 良い良い、試させてやる! 目にも明るく、着るに楽しく! 道行く民の視線を釘付けにする数々の服を!」ザバァッ

ブーディカ「コラ! ちゃんと肩まで浸かって100数えろ!」



………………

清姫「こ、これはちょっと……攻めすぎではないでしょうか……」

ネロ「そうか? 真っ赤なドレスが映えると思うが」

清姫「だってこれ……背中が丸見えで……うう、すうすうする……」

マシュ「……」フムフム

ネロ「マシュにはこれであろう! この黒のフリルがついているものを!」

マシュ「……これは……その……随分胸元が強調されていますね?」

ネロ「無論、余・セレクションのドレスは女の武器を活かすのだ! 全身武器庫の貴様にはこれがふさわしい!」


マシュ(……着てみたら、これ……丈が足りなくてお尻も見えそうになりますね)カァァ

清姫「……赤い色で身を包んでいたら何だか興奮してきました! 旦那様! 旦那様は何処ですか!!」フーッ、フーッ

ネロ「お、おうおう。その姿で息を荒くしておると痴女にしか見えんな……余が選んだとはいえ……」

清姫「もう我慢できません! 旦那様を探してまいります!!!」ダッ

バットマン「戻っ……た……」ガチャリ

マシュ「あ……」

清姫「あ……」カァァ

ネロ「うむ、よくぞ戻った! 今、乙女たちがこうして……」


バットマン「邪魔をした」バタリ

ネロ「あれっ?」



荊軻「どうしたんだブルース」

バットマン「……」

――――

清姫「どどどどうしましょう……勢いに乗っていたとはいえ、完全に痴女っぽかったですね今の……」ヘナヘナ

マシュ「お、落ち着いて下さい! 今からリカバーすればきっと……」

ネロ「ふっ……落ち着け、清姫よ。見られたからには押し倒しに行く、これで万事解決だって本に書いてあったぞ」

清姫「な、成程! 一理あるような無いような!」スクッ

マシュ「無いですよね。理の欠片も」

清姫「では清姫、行ってまいります!」ダダッ

ネロ「武運を祈る!」

マシュ「マスター……」



…………

荊軻「成程なぁ、それで突進して来て押し倒したと思ったら返り討ちにあい、グルグル巻きにされたと」

清姫「はい……」プラーン……プラーン……

バットマン「……」ギュッ、ギリッ

清姫「痛い痛い痛い!? 旦那様!? つ、吊り下げられてるだけで十分な罰では!?」ギチギチギチギチ

バットマン「懲りない奴には追加の罰を与える。これで二度目だろう」ギュリギュリギュリ

清姫「どうかお慈悲を! そんな残酷な!」ギチギチギチギチ

バットマン「もうしないと誓うか?」

清姫「何度でもします。諦めたらそこで試合終了です」

バットマン「……」ギュリギュリギュリ

清姫「痛い痛い痛い痛い!! ……あ、でも気持ちイイかも……」ギチギチギチギチ

バットマン「……」ギュリギュリギュリ

清姫「いややっぱり痛いだけでした!!」ギチギチギチギチ

荊軻「ははは、夫婦漫才だな……それじゃあ私はこの辺りで。失礼するよ」スタスタ

清姫「荊軻さん!? ここはわたくしを助けるところでは……いだだだだ!」ギチギチギチ



…………

バットマン「……」

清姫「……あ、……あう……」プラーン……プラーン……

バットマン「……ひとつ聞いてもいいか」

清姫「ハイなんでございましょうか!」ピーン

バットマン「何故私に固執する。お前と私とは何のかかわりも……」

清姫「貴方様が安珍様の生まれ変わりだからです。一目で分かりました」

バットマン「……一目で? どうやって?」

清姫「……ふらんすで、わたくしをあの騎士から庇ってくれた時に。迷いなく人を助ける事ができるその魂の気高さに、安珍様を見たのです」

バットマン「……」

14

バットマン「……意外だな。お前は安珍を憎んでいると思っていたが」

清姫「どうして憎むハズがありましょうか。……いいえ、そうですね。
確かに、わたくしは安珍様を焼き殺しました。ですがそれも愛ゆえです。離れたくなかったのです。
証拠に、わたくしは安珍様を焼き殺した直後に……溺れ死ぬ事を選びました」

バットマン「……死ねば、魂は共に……」

清姫「その通りです。
愛は、それそのものでは甘い蜜でしかありませんが……悲しみが加われば、途端に激しく燃え上がる炎と化しましょう」

バットマン「……」

清姫「……あの、わたくし、格好の良い事を言っている自覚はあるのですが、吊るされてて恰好が付かないと言いますか……」プラーン……

バットマン「……」ス、ガチャリ……バシュッ

清姫「……」スタッ

バットマン「……行け、着替えてこい」

清姫「……旦那様は?」

バットマン「もう少しここに居る」

清姫「でも……」

バットマン「行け。久々の着替えなんだろう。楽しんで来ると良い」クルリ、スタスタ


(14とかいう数字は気にしないで下さい)


清姫(……)

清姫(その時去っていく背中が、やっぱりわたくしを置いて行く安珍様にそっくりで)

清姫(声を掛けたかったのに、掛けられず)

清姫(ああ、わたくしは……史実で定められた存在なのだと、感じてしまう)



バットマン(死ねば共に居られる、か)

バットマン(私も、死ねば……)

バットマン(……いや、違う。人理を救う使命がある)

バットマン(……だが、いずれ死ぬ命ばかり抱える世界を……命を賭して守る価値は、あるのだろうか)

バットマン(死を潜り抜けても、待つのは死……あの時ソロモンの言っていた事は、本当に全ての生命の理想なのか……? 永遠は、悲劇を避けられるのか?)

バットマン(不確定な悲劇より、確定された平穏の方が望ましいのではないのか?)


バットマン(……私は……)


…………

チュン‼ チュンチュン‼

フォウ「フォウ、フォーウ! フォウ!」パタパタ

ブルース「……」ムクリ

ブルース(朝か……)


ブルース「……」ガチャ、ガチリ。ガキッ

ブルース「……」ガキ、ガチッ。シュルッ

マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……」


フォウ「フォウ、フォーウ!」

バットマン「……ああ、おはよう」



マシュ「おはようございます、マスター」

ネロ「良い朝であるな!」

バットマン「ああ、おはよう……」

ネロ「早速行こうではないか! ガリアまでの遠征は遠いぞ、気を張れ!」

ブーディカ「アタシが一番心配なのはこの皇帝なんだけど……まあいいや、行こっか」


ネロ「第一から第八大隊はマッシリアへ行き、連合首都へ向けて大きく布陣を展開させろ! 囮とはいえ油断は禁物であるぞ!」

兵士達「「「はい!!」」」


マシュ「……荊軻さん、確か囮の布陣を指揮なさるんでしたよね」

荊軻「ん? ああ、指揮というよりは呂布と共に大暴れする役目だが……どうかしたか?」

マシュ「この通信機をどうか。ガリアを侵攻する我々と、常に連絡を取り合えるようにしていて下さい」ス

荊軻「ほう、こんなものが……良いだろう、よろしく頼む」パシ


ネロ「では第九、第十大隊は我々について来い! ガリアの砦を取り戻すぞ!」

兵士達「「「おおーーー!!!」」」

バットマン「……」

バットマン(さて、一筋縄で行くか……)



ザッザッザッザッ

バットマン「……待て」ピタッ

清姫「へぶっ」ドスッ

ネロ「全隊、停止! ……どうした、ブルース?」

バットマン「…………」ジッ

清姫「は、鼻が……」

マシュ「マスター?」


バットマン「フッ!」ヒュンッ


地面「」ドッガァァァァァァァァァァ……


ネロ「!? なんと!?」


バットマン「……やはり、地雷だ」

マシュ「地雷!? こんな時代にそんな技術が……」

バットマン「有り得ないだろうな、聖杯にでも頼まない限りは……荊軻、聞こえるか」ピッピッ

荊軻『やあブルース、どうかしたか?』

バットマン「地面に注意しろ。爆発物が仕掛けられている」

荊軻『……成程な。了解した』

バットマン「ドクター、辺り一帯の地面の解析を頼めるか? 荊軻の方も頼む」

ドクター『ちょっと待ってね……オッケー、解析完了だ。レーダーに点が表示されただろう? それが地雷さ』

バットマン「ふむ……」


マシュ「しかし、こうまで多いと……って、マスター!?」

バットマン「念のため離れていろ……」ザリザリ

バットマン(地雷を掘り出し、詳しい解析にかける……)ザリ、ザリ

清姫「……」ジッ

バットマン「離れろと言ったハズだが」

清姫「死ぬ時は一緒に、です」

バットマン「……好きにしろ……よし、見つけた」ゴバンッ、パラパラ……

地雷「」ピピッ、ピピッ

バットマン(……緑の塗装がされている。これもリドラ―の仕業か)

バットマン(見た限りでは……重量を感知するタイプか。だが、中の機構に電子的な発光体が見える……やはりジャミングでコントロールが可能。
これから支配するつもりの土地に操作不能の爆弾を撒くほど愚かではないか……)


バットマン「ドクター、この前チップの解析を頼んだと思うが」

ドクター『うん、完了してる……ってええええ!? ブルースくん何持ってんの!?』

バットマン「……これも解析にかけてくれ。ジャミングを……」

ドクター『ぶ、ブルースくんが自爆する気だ! 大変だ!!』

レオナルド『なんだってぇ!? はやまるなブルース! キミのスーツをダサいって思ってた事は謝るから!』

所長『ちょっとブルース!? やめなさい! そんな事したって……やめて! やめなさいよ!!』


通信機『』ギャーギャー‼ ワーワー‼


バットマン「……解析を頼みたいんだが」



ドクター『……うん、同じ周波数だ。それじゃあ通信機から電磁パルスを放射するよ!』

荊軻『よく分からないが、爆弾が無力化できるという事か?』

バットマン「そうだ。だが少し待て」

ドクター『3、2、1、0!』ブゥゥゥゥゥーン……

地雷「」シーン……

ネロ「どうだ? うまく行ったか?」

バットマン「退いてくれ、試す……フッ!」ブゥン

地雷「」ヒューン

バットマン「シッ!」ヒュンッ

バットラング「」ヒュォォォォガッ‼

ドサッ

地雷「」シーン……

バットマン「……成功だ」


ネロ「よし! ではこのまま一気に……」

バットマン「数百メートル進むごとにもう一度電磁パルスを放つ必要がある。荊軻も行軍を遅くしてくれ」

ネロ「えぇー!! ……ごほん、うむ、仕方なかろう。兵のためよな」

バットマン「…………行くぞ」



バットマン「……待て、止まれ」

ネロ「今度は何……おお、あれは」


バットマン(砦の前……端が霞むほどの兵士の列が並んでいる……)

バットマン「あれほどの人員がローマに居るのか?」

ネロ「……い、居るぞ! ローマの兵士の数は海よりも……」

ブーディカ「居ないね。どう考えても多すぎる」

バットマン「……だが、あそこには確かに……」


マシュ「……いいえ、居ません」



清姫「と、言うと?」

マシュ「……聴覚を研ぎ澄ませてみて下さい。鎧の擦れ合う音も、足音も、何も……聞こえないんです」

清姫「……成程たしかに。ではあれは、『ほろぐらむ』というやつですか」

バットマン「……」

バットマン(凄まじい成長だ……教えた事以上に学んでいる……)


ネロ「なんだ、見掛け倒しであるか! ならば突撃だ! 全隊、ガリア砦を奪取せよ!」


バットマン「!? 待て、それは……」


兵士達「「「うおおおおおおお!!」」」ダダダダダダダ

ネロ「余も行くぞぉぉぉぉぉおぉぉ!!!」

バットマン「待て! 止まれ! その先は……」



地面「」ドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォォン‼‼‼



ネロ「!? なんだ、また地面が爆発した……!?」

兵士E「うわああああ!!」グシャァ

兵士F「いぎゃあああああ!?」ドシャァ

兵士G「あが……」ドチャッ


マシュ「な、なんで……!? 電磁パルスは正常に機能してたハズ……なんで……!?」

バットマン「……」



バットマン(やられた)



バットマン(電磁パルスで停止させる事が出来る地雷を手前に置き、停止不可能な地雷は本命の周囲へ置く。この可能性は確かに有り得た。
……止められなかったとはいえ、油断していたとしか言いようがない)

バットマン(……となると、そろそろ出て来るか)

ネロ「戻れ、全隊戻れ! か、壊滅状態に……」

ブーディカ「落ち着け! 頭のアンタが混乱してたら全員にそれが伝わるよ!」


???『ハローハロー、久しぶりだなバットマン? 引っ掛け問題の味はどうだ?』ブゥゥゥゥゥゥン……

バットマン「……リドラ―」



バットマン「わざわざホログラムでの登場か」

リドラー『天才はそうそう簡単に人前に姿をさらさないものだ。会えて嬉しいぞぉバットマン、ここでひとつナゾナゾでも出してやりたいが……
今回はそう暇ではないのでな』

ドドドドドド……

ネロ「……今度は何の音だ?」

リドラー『天才が本気になった時には、誰一人として逃れられないのだ! 諦めたまえ!』

バットマン「……陣形を組み直せ! 来るぞ、兵士達のホログラム後方から……『本物』だ!」

敵兵達「「「うおおぉおおおおおお!!!」」」ドドドドドドッ‼

ネロ「なっ……陣形をたてなおせ! 我らも出るぞ!」

ブーディカ「当然!」

マシュ「はい!」

清姫「ええ!」

スパルタクス「迫りくる濁流に立ち向かうのもまた、圧政への愛である!!」




兵士E「いてえ、いてえよぉ……」

バットマン「……」シュポッガシッ

兵士E「ぐわあああ!?」ギュルギュルギュルギュルッ

バットマン「下がっていろ!」ヒュドッ

敵兵A「うぎゃっ!?」ドシャッ


敵兵B「おらぁ!」

敵兵C「逃がすかぁ!」

兵士F「たすけてくれぇ!」

兵士G「う……うぐ……」


バットマン(形勢は既に圧倒的に不利。敗走を始める兵達も多い)

ネロ「逃げるな! 戦え! 戦死した者には死した後、とこしえの栄誉を約束する! ローマの地を守るのだ!」ガィン‼ギャァン‼

ブーディカ「そうは言ってもね……!」ギュリィン‼


???「……どおりゃああああっ!」ドッゴォォォォォォォン

バットマン「なっ……」

バットマン(この上に、更にサーヴァント……不味いか)



???「テルモピュライの戦いとは逆! ですが! 手加減するつもりは毛頭ありませんぞぉぉぉぉ!!」

マシュ「テルモピュライ……? まさか貴方は、レオニダス!?」

レオニダス「いかにも! だがここでは私も一個の兵である! さあ、打ち合いといこう!」ブォン

マシュ「くっ……」ガギィン‼ガァン‼


敵兵C「うらああ!!」ヒュン‼

敵兵D「どらあああ!!」ブゥン‼

バットマン「くっ……」ババッ


バットマン(兵のひとりひとりがよく訓練されている……いや、訓練されているという言葉では生ぬるい! 奴らの腕の一振り一振りがまるでサーヴァントのように)


バットマン「まさか……! この兵士は!」


レオニダス「そちらにも聡明な人間は居たか! そう、その通り! 私は『テルモピュライの戦いで共に戦った戦士三百人』を、宝具で召喚できる!
本来なら守りに使うこの宝具ですが、兵の強さも馬鹿になりませんぞ!!!」


バットマン(これはいよいよ全滅を覚悟しなければならないか)


敵兵V「やああっ!」

敵兵W「らあっ!!」

スパルタクス「うぐ……圧政……これぞ、これぞ圧政! 圧政の極みである!! ハハハハハハハハハハハハハハ!!!」



ブーディカ「しまった、スパルタクスが暴走状態に……くっ!」ガガァン‼

ネロ「なんだ!?」


スパルタクス「この痛み! この圧力! 私は! 今! 圧政の下にある! ふあぁぁはははははっはは! 行くぞっ! 我が愛は、爆発するぅぅぅ!!!」


ブーディカ「……! 全員衝撃に備えて!! スパルタクスが……」


スパルタクス「『疵獣の咆哮(クライング・ウォーモンガー)』!」グオォォォォォォォォォォォォォッ‼


バットマン「なっ……」

清姫「旦那様……!」

マシュ「ますた……っ」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォガガガァァァァァァァァァァァ‼‼ 




バットマン「うっぐあ……!?」ゴォッ‼

バットマン(しまった、爆風がモロに……吹き飛ばされ……)ヒュォォォォォオッ

清姫「――――!! ――――!」

バットマン(……意識が、飛ぶ……)

バッシャァァァァァァァン‼


マシュ「……!」ムクッ

マシュ(マスターと清姫さんが川に……助けに行かないと!)


レオニダス「隙だらけだ!」ガッ

マシュ「あうっ……!?」ドサッ

レオニダス「……」

レオニダス(むう、あと何人だ? 砂埃で視界が遮られる……)


敵兵D「倒れた女性サーヴァントを一人発見! ネロは逃亡した模様!」

レオニダス「捕縛しろ。皇帝は後だ」

レオニダス(……若干の不安要素は残ったか)




ネロ「けほっ、こほっ……なんだったのだ、あの爆発は……」

ネロ「……」

ネロ「……おい! 誰も居ないのか? マシュ! 清姫! スパルタクス! ブーディカ!? ブルース……?」

ネロ「……いかん、すぐに街を見つけて隠れねば。ここは危険だ」

ネロ「……」ダッ



今回の更新はここまでです。年末が近いので少し更新が難しくなる時期が来るかもしれませんが、ご容赦ください

生存報告です。すみません、身の回りがゴタゴタしていてなかなか更新できず。
元旦から十日ほどすればまたペースを戻せると思います。一部終了までの構想はあるので失踪はしません。しそうになったら殴って下さい。良いお年を。



 世界に取り残されるのは、初めてではなかった。


 愛した人は、自分を置いて行ってしまう。どこか遠い、手の届かない場所へ。消えていくあの人の笑みは、未だ瞼裏から離れない。


 こうなる事は、分かっていた。世界が私をそう定義付けているのだ。どれほどの召喚を重ねようとも、現世での恋心は叶わない。



 だから、ああ、だから。目の前で死にゆく貴方を見ても、わたくしはちっとも悲しめない。それどころか、歓喜の情すら湧いて来る。また一緒になれる。


 その筈、なのに。


(違います、旦那様)



 水が全身にまとわりつき、力を奪ってくる。私は皮肉な笑みを浮かべ、旦那様の頬に手を添える。世界はやはり私達を裂くのだ。だってこんなにも、貴方に生きていて欲しいのだから。


 唇を重ね、空気を送り込む。旦那様の瞼が跳ね、目を見開く。


(美しい瞳)


 私が恋した人なのだ。零れない涙があふれ、水中へ溶けだして消えた。



バットマン(……清姫)コポポ……



バットマン(……)ガシッ、ゴポポポポポ……



バットマン「……っはあ、はあ、はあ……」バシャッ‼

バットマン「清姫、清姫! 目を開け! 清姫!」


ザザァン……ザザァン……

バットマン(……海まで流されたのか。向こうに島がある、上陸するしかない)


バットマン「清姫、今陸に上げる! 待っていろ!」バシャバシャ


ザザーン……ザザーン……


バットマン「……っく……」ドシャリ

バットマン「清姫……」


バットマン(脈……無し。呼吸無し。心肺蘇生を……いや、令呪を。通信して準備してもらう)


バットマン「ドクター、清姫に心肺蘇生を施す。令呪発動の準備を頼む」

通信機『……ザザッ……ブルース……ザザ……ザザザザザ……』

バットマン「ドクター! 令呪のリアクター発動準備を!」

通信機『……そちら……ザザ……大気中の神力の濃度が高い、通信に支障……今対応中……ザザ……』


清姫「……」シュウシュウシュウ……

バットマン(消滅が始まってしまった……! 心臓マッサージだけでも!)ガバッ


バットマン「待て、清姫……! 死ぬな! 死ぬんじゃない!」グッ‼ グッ‼ グッ‼


清姫「……」シュウシュウシュウ……


バットマン(動かない……冷たい。まるで死体のように……)グッ‼ グッ‼ グッ‼


ドクター『ブルース! ああ、ようやく通信機能が復活した! 待ってくれ、モニタリングを……ああ、そんな……』


ドクター『ブルース、彼女の霊基はもう死んでいる。いくらやっても、無理だ』

バットマン「……令呪はどうだ」グッ‼ グッ‼ グッ‼

ドクター『……残念だけど、彼女自身が離別を覚悟してしまっている。誰より強い、自分への呪いだ。……カルデアの令呪じゃ、覆せない』

バットマン「……」グッ‼ グッ……ドサッ


ドクター『……ブルースくん、残念に思うけど……』


バットマン「…………」



バットマン(……)


バットマン「……マシュは何処だ。無事なのか」


ドクター『ああ、マシュの方もしっかり見てる。どうやら敵に捕らえられてしまったようだ、自由に動けるのは君だけ』

バットマン「……荊軻は?」

ドクター『荊軻くんも、連合首都の軍勢相手に奮闘していたようだけど……今は呂布と一緒に、一旦マッシリアまで戻ってる。やっぱり守りは固いみたいだ』

バットマン「……」


バットマン「……マシュに通信を試みる」

ドクター『気を付けて。その間に、キミが流れ着いたその島をこちらでよく調べてみるよ』

バットマン「頼んだ」

……………………

カタカタ、カタ。ピッ……ピッ……ウォォォォォォォォォン……


職員C「ドクター、清姫……さんは、その。どうなったんですか」

ドクター「……あと一歩、間に合わなかったみたいだ。僕の力不足だ、すまない」

職員B「そんな! 違います、ドクターのせいなんかじゃ……」

レオナルド「それを言うなら、通信機のメンテナンスを怠った私の責任でもあるしね。これは誰の責任でもない。強いて言うなら皆の責任だ。へこたれるより、今は次へ繋げよう」

ドクター「……」

レオナルド「……」バンバン

ドクター「いたた、分かったよ切り替えるよ……そうだね、悔やむのはブルースくんとマシュくんが帰って来てからにしよう」

レオナルド「当然さ! さあ、観測観測!」


所長「…………」

職員B(……でも、大気中の神力の濃度が高かったからって、本当にそれだけで通信に支障を来すかなぁ……)

職員B(……なんか、変な感じ。今のは、なんというか……)

職員B(誰かがわざと計器を狂わせた、みたいな。通信を……ジャミングするために)

職員B「……まさか、外部からのハッキングとか……そ、そんなワケないよね、ハハハ……」


…………


ピピピ‼ ピピピ‼


マシュ「……うぅ……ん……こ、ここは……?」

マシュ(確か……マスターを助けようとして……一撃をもらってしまって、そこから意識が……)

マシュ(鉄格子……捕らえられた、みたいです)


通信機『』ピピピ‼ ピピピ‼

マシュ「もしもし、もしもし。こちらマシュ・キリエライトです」

バットマン『マシュ。無事か』

マシュ「! マスター! はい、装備を剥奪されて囚われていますが、無事です! そちらも……」


バットマン『清姫が死んだ』


マシュ「え……」


マシュ(あまりに平坦な声色だった。感情が読めなかった)

マシュ(私は、聞き間違いかと思った。だって、戦いの前は、あれほど元気で……)


バットマン『彼女は助けられなかった。そこは何処だ? 一人だけ捕らえられているのか?』

マシュ「わ、私……はい、私一人です。場所は分かりません。その、清姫さんは……」

バットマン『恐らくだが、そこはローマ連合首都本部だろう。少し時間はかかるが、救助に向かう。下手な動きは起こすな。また連絡する』

マシュ「あ、あの!」


通信機『』プツッ、ツー、ツー……


マシュ「……ます、たー……」


マシュ(なんで)

マシュ(なんで、平気なんですか、マスター)


???「んっん~、どうやら大変な行き違いの時期に直面しているようだな?」コツ、コツ

マシュ「……誰ですか!」

???「おっと、そう怒鳴らないでくれ。私はそうだな、ニグマと呼んでくれ。または……そう、リドラーと」コツ、コツ……ピタッ

マシュ「リドラー……?」


マシュ(そう言えば、マスターが何か言っていたような……思い出せない)


マシュ「どうするつもりですか」

リドラー「どうもしない。話がしたくて来ただけだ、キミがあの黒くておっかないマスターの事をどれだけ知っているのか、把握しておきたくてね」

マシュ「どれだけ知っているか……?」

リドラー「ああそうとも。さっき盗み聞かせてもらった限りじゃ、あまり知らないみたいだが……
そうだな……芸がない言い方をするが、キミはあのマスターの事が信用できないんだろう? 『いつか私も捨てられる』と」


マシュ「……!」



リドラー「……その反応! 可能性には気付いていたが、考えないようにしていたんだな? けなげな抵抗だ」

マシュ「そんな事! マスターが、そんな事……」

リドラー「ではキミは、今までにあの男の態度に不信感を抱いた事はないと……そういう事か? ん?」

マシュ「……」


マシュ(他者への隠し事。不気味なほどの冷静さ。そして絶対にこちらを信頼してくれないあの瞳……)

マシュ(……違う。そんな筈はない。マスターはそんな人じゃない)

マシュ(……でも、清姫さんは……)


リドラー「揺れているな? そうだろうとも。奴は嘘つきだ。私はキミよりもっとアイツの事を知っているが、ロクな男ではないぞ? 嘘を吐き、裏切り、仲間でさえ道具のように利用してはばからない奴さ」

マシュ「……」


リドラー「なぞなぞだ。仲間を大切にしない男を信じられる奴は誰だ?」

マシュ「…………」

リドラー「誰も居ないのさ! 信頼できるとしても、それは騙されているからだ! 目を開けてみろ、キミにあの男はどう見える!?」

マシュ「……私は、」

マシュ「……私、は……」


(おとう、さん……おかあさん……)

(安心しろ。すぐに霊脈へ連れて行ってやる)

(……大丈夫だ)

(必ず生きて連れて帰る。約束だ)

(清姫は死んだ)


マシュ「……私は……」


リドラー「時間をやろう。難しいなぞなぞだ、考えておいて損はないだろう。キミの答えを楽しみにしておこう……」コツ、コツ……


マシュ「……」

マシュ(……私は、何を信じれば……)



リドラー「……踊る子らを止める事はできないし、止める必要もない……冷たい心があるなら、うなだれる事も無い……朝が来たら、忘れなさい……何事も、いつかは終わるのだから」コツ、コツ……

コンピューター『通信機の電波発信源を特定。周波数をロック、レーダーに表示します』ピッピッ

リドラー「……だから、もう子供のせいにはできないぞ。楽しくなってきたなバットマン……さあ、次は彼女に繋げ」ニヤリ

コンピューター『了解しました』




………………





荊軻『……そうか。清姫が……』


バットマン「……ああ。そちらの状況はどうだ?」

荊軻『マッシリアまで後退してる。兵士の疲労も大きい。相手にサーヴァントが居てな』

バットマン「真名は判明したか?」

荊軻『ああ。アレはカエサルと名乗っていた。見事な兵指揮と奇抜な計略、まず間違いなく本人だろう』

バットマン「……私も、この島を脱出した後にマッシリアへ赴く。それまでは兵を休めさせておいてくれ」

荊軻『分かった。……ブルース』

バットマン「何だ」

荊軻『……気を落とすな』

バットマン「……ああ、分かっている。そちらで会おう」

荊軻『ああ、またな』プツッ


サア……サア……


バットマン(雨か……)


バットマン「……」スッ

ブルース「……」


ブルース(……)


(どうか、お逃げ下さい。ブルース様)

(死ぬ時は一緒に、です)


ブルース「……」


ザアザア……ザアザア



ドクター『ブルースくん、その島周辺の解析が終わった。どうも強い神性が島の中心から発されていて、ジャミングじみて通信が妨害されていたが……
サーヴァント反応が二騎、少し離れた海岸に確認できたよ』

ブルース「そうか。島を出る算段を立てつつ、サーヴァントに接触を試みる」

ドクター『……大丈夫かい? キミを守ってくれるサーヴァントはそこには……』

ブルース「大丈夫だ。幸いこちらは雨、夜も近い。隠密には丁度良い」スッ


バットマン「グランドオーダーを続行する。引き続きサポートを頼む、ドクター」



………………

ザアザア……ザアザア……


???「……キャットは雨が嫌いなのだ……」

???2「アタシだって嫌いよ、もー! もうちょっとそっち詰めらんないの!?」

???「無理だ。というか、このキャットアンブレラはキャットのもの。まずは図々しくも傘下の割合を占めるその体積をどうにかするのだな」

???2「キィー、何よそれ! アイドルのアタシが太ってるっての!?」

???「……フッ、胸は太れていないがナ」

???2「ジョートーよこのクソ猫! ぶっ潰してやるわ……は、はっくち!」

???「うわ、きちゃな」

???2「ズズ……ホントにお願いだから、ちょっと詰めてよ……」

???「……モー、しょーがないナ……一分五百円」

???2「ちょっと何よソレ!」


バットマン「……」


バットマン(聞き覚えがある声が一つ。聞いた事のない声が一つ)


バットマン(……接触か、回避か。どうしたものか……一旦退いて考えるか)ジリッ

枝「」パキッ

バットマン(! しまっ……)


???「オノレ何奴ーーーー!!!」ブゥン‼

バットマン「っ」バッ

包丁「」ガァン‼


エリザベート「何よ!? ……あ」

バットマン「……」

???「む? 知り合いカ?」


エリザベート「ちょっとちょっと、何よ小鹿。もしかしてアタシの追っかけになっちゃっ……」

バットマン「違う」

エリザベート「……そう」


???「……よく分からないガ、シリアスとそうでない空気は見分けもとい嗅ぎ分けがつくアタシ。今回のそれは後者と見た」

バットマン「敵意はない。邪魔をするつもりもない。ただ、島を出る手段が欲しい」

???「その前に自己紹介だナ。微妙にキャラ被りしている感じがするが、アタシはタマモキャット。よろしくだワン」

バットマン「ブルース・ウェインだ。で、手段だが」

キャット「焦るなネコミミ、冷静な行動こそが勝利のカギだ」

バットマン「……」

キャット「ここはそう、水泳を極めたキャットに任せるが良い。水が苦手だが」

バットマン「…………」


バットマン「……実質、脱出手段は無いと」

エリザベート「そんなものがあったらアタシが逃げ出してない訳ないじゃない。誰が好き好んでこんな猫と一緒に居るもんですか」

キャット「む、それはこちらの台詞なのだナ。というか、そろそろキャットアンブレラから出るのダ」グイグイ

エリザベート「ちょ、やめなさいよぉ」グイグイ

バットマン(……進退極まったか。いや、この辺りの木を伐採してイカダを……)


「ネロォォォォォォォオオオ!!!」ゴォッ


バットマン「……!」


エリザベート「もー、今度は何よ!?」

バットマン「伏せろ」バサッ

キャット「むー、アレは……」

バットマン(……以前見たことがある。アレは確か……カリギュラ。兵を率いてここに来たようだ)



カリギュラ「探せ……黒き、衣装の……男を。そして、捕縛……せよ」

敵兵達「「「はっ!!!」」」



バットマン(……成る程、私を探しに来たのか)

バットマン(……船で来たらしい。上出来だ)


エリザベート「うわー、あんな大量の兵を引き連れちゃってる……アタシパス、帰るわね」ゴソゴソ

キャット「何処へ帰るのダ、男らしく腹をくくれ」ガシッ

エリザベート「うわーん! アタシ女だし、だいたい戦う理由が無いわよぉー!」

キャット「助太刀するぞ、黒猫よ。弱きを助け強きを挫くは一匹オオカミ……いや、一匹猫の使命。猫同盟と行こうではないカ」

バットマン「……恩に着る。しかしアレだけの物量相手となると、ジャングルへ引き込みながらのゲリラ戦になるが」

キャット「それこそキャットの本領発揮。飼いならされた野生を解放し、兵士全員をズタズタのミネストローネに変えてやるのだワン」

バットマン「……分かった。だが殺しは無しだ。
兵士を少しずつ倒して島の中心へ退きつつ、罠も仕掛ける。そして船を奪い、大陸へ移る。準備をしろ、行くぞ」

エリザベート「ちょ、ホントにアタシもやんの!?」


プシュ-……ギコギコギコ


カチャカチャ、ガチャリ


敵兵A「……? 森の中からか?」ガサガサ

プツッ

ヒュオンッ!!


敵兵A「グワァッ!?」ドガァッ



敵兵B「なんだ、どうした!?」

ガサガサ

敵兵B「……! 敵を発見! 森の中へ退却して行くぞ、追え!!」


敵兵達「「「オオーーー!!!」」」ドドドドドッ


敵兵B「何処だ……ん?」ガサガサ

敵兵B「何だこれは……何か見つけたぞ!」

敵兵C「なんだ」ガサガサ

敵兵D「これは……」

敵兵E「ニンジン?」


「獲ったりィーーーーー!!!」シュイン!!!


敵兵B「ぐわっ!?」ドサッ

敵兵C「ぎゃっ!?」ドシャッ

敵兵D「のごっ!?」ドッ

敵兵E「うげっ!?」ゴシャッ


キャット「……ふふ。キャットにかかればこの程度、晩飯前。しかしこのニンジンは返してもらうのだナ!」ガサガサ


敵兵F「奴らめ、何処に……なんだこれは?」

敵兵G「土くれで作られた……舞台か?」


エリザベート「フッフーン! 今日はアタシのリサイタルによく来たわね豚共!」


敵兵H「見つけたぞ! あそこだ!」

敵兵I「行くぞ、ひっ捕らえろ!」


エリザベート「ちょちょ、アタシアイドルなのに全然友好的じゃないんですけど!?」

バットマン「急げ!」

エリザベート「わ、分かったわよぉ! 歌えば良いんでしょ! スゥーーーッ……」ググッ……

エリザベート「ボォエエエエエーーーーーーーーーーーーーー♪」ドドドドドドドドドドドドドガガガガガッ!!!!!!

敵兵達「「「うぎゃあああがああああああああああ!?!?」」」ゴォォォォォッ!!!


バットマン(……やり過ぎたかもしれないな……)

バットマン「よくやった。もっと奥へ退却するぞ」ガサガサ

エリザベート「なーんか複雑……」ガサガサ


バットマン(……)ガサガサ……ピタッ


バットマン(前方に敵兵士……3人。いける)スッ


バットマン「……」ゴッ

敵兵J「うご……」ドサッ


バットマン「…………」シュドッ

敵兵K「ごあ!?」ドササッ


敵兵L「なんだ!? どうし……なっ、貴様!?」

バットマン「……」シュポッガシッ

敵兵L「うわぁぁぁぁぁ!?」ギュルギュルギュルッ


バットマン「フッ!」ド ゴ ォ !!

敵兵L「あっぐ……」プラ-ン……


エリザベート「アンタ、なんか怖いわね……」ガサガサ

バットマン「……行くぞ、合流地点へ急ぐ」ガサガサ


キャット「おお、無事だったカ」ガサガサ

バットマン「ああ、そちらも」

エリザベート「良かった、無事……い、いや! 別に無事で居て欲しかったとかそんなの全然ないけど!!」


キャット「……嬉しくないツンデレであるナー。ま、キャットは野生の使徒。そう簡単には……!!」


「ネロォォォォォォォオオオ!!!」ドッゴォォォォオオオオオ!!!


エリザベート「あぶなッ!」ババッ

キャット「ぬお!?」ガバッ

バットマン「くっ……来たか。正念場だ」


パラパラ……ザアザア……

カリギュラ「我が、愛しき、妹の、子。その、同盟者よ」ポタ……

カリギュラ「たとえ、光射さぬ森の中に、逃げ込もうとも。たとえ、我が兵を、幾百倒そうとも……」

カリギュラ「……我が名は、カリギュラ。ローマの礎を、築かんとする者。月の光を、見上げる者……」ググ……

カリギュラ「その美しさ! その永遠に!」グワァッ!

カリギュラ「すべてを!! 捧げよ!!」



キャット「--なるほど、月に魅入られた男であるカ。狂ってしまったのだナ」

バットマン(……カリギュラ。ローマ皇帝。初めは優れた統治を行っていたが、狂気に飲まれ……その治世は長続きせず、暗殺された)

エリザベート「……なんか、親近感というか……」


敵兵達「「「…………」」」ゾロゾロ

バットマン「……撤退戦になるが、良いか」

キャット「構わんのだワン」

カリギュラ「逃が、さん!!」グォォッ!!


キャット「むっ!!」ガギィィィ!!

カリギュラ「ネロォォォォォォ!!!」ドゴォォォ!!

キャット「ワンッ!?」ズシャァァァ!!


エリザベート「ちょっ、何なのよコイツ!?」

カリギュラ「愛しき! 皇帝よ!!」ゴァッ!!

エリザベート「アタシはアイドルだけど皇帝じゃないっつーの!」ガガァン!!


敵兵M「オラァ!」ブゥン!!

敵兵N「そらっ!」ヒュン!!

敵兵O「どりゃああ!!」シュオン!!

バットマン「くッ!!」ガギィィィィン!!


バットマン(敵の数……数十。森の奥でも陣形を維持しつつ攻め立ててくるか……
仕掛けたトラップを踏み壊し、進んで来るほどの人数。……駄目だ、押し切られる。このエリアからも撤退するしかない)


バットマン「退くぞ! この数ではまともにやり合えない……シッ!」ズドドドドッ!!

敵兵達「「「うがあ!?」」」ドシャアアアアッ!!


エリザベート「しつこいわね!!」ギャリィン!

カリギュラ「ウォォォォォ!!!」ゴゴァ!!


敵兵達「「「ウォォォォォ!!!」」」ドドドドドドッ

キャット「ぬおーー!! 舐めるな人類!!」ガァァァッ!!


バットマン(ここから考えられる最悪のシナリオは……分断、各個撃破の流れだ。それは避ける……)スチャ……


バットマン「フッ!」ドシュウゥゥゥゥゥ……




敵兵Q「なっ……煙幕!?」


キャット「これは……」

エリザベート「けほっ、こほっ! なにこの煙、纏わりついてくる!?」


バットマン「行くぞ! 全員C地点へ向けて走れ!」ダダッ

キャット「む、心得た!」

エリザベート「アイドルなのに、何でこんなことぉ!!」

バットマン(スモークペレット、残数……少し心もとないか。だがこの場を切り抜けるにはじゅうぶ……)


「逃が、さん」ブゥン!!



バットマン「!!」ガガッ、ゴロゴロッ

バットマン(馬鹿な……天候は雨、既に夜、しかも森で視界は最悪な中、さらに煙幕まで炊いたというのに……ここまで正確に追撃を!?)

ザアザア……ゴロゴロ……ピシャアッ!

カリギュラ「闇夜の、戦士よ。月の祝福を、受けぬ、者よ」

カリギュラ「貴様の、覚悟を、聞かせよ。ローマを打倒する、その覚悟を聞かせよォ!」

バットマン「ローマを……打倒だと!? 逆だ、私達はローマを守る為に……」

カリギュラ「否で、ある! 覚悟を、定めよ! 守るべきものを、自らの手で滅ぼす、その覚悟を!」グワッ!!

バットマン「ぐっ……」ガガァン!!



キャット「黒猫! 注意するのダ、森の奥から何か……!」


ガサガサガサガサッ!!

???「「「フシュルアアアアアアッ!!」」」

バットマン「なっ……」

バットマン(人間の上半身、蛇の下半身……ラミア!?)


バットマン(大量の、ラミアの群れ? 今でさえ撤退しつつの戦いだというのに……!)

バットマン「タマモキャット! エリザベート! プランFだ!」ゴガガッ!!


ラミアA「ギャアッ!?」ドッシャアアアアア!!

エリザベート「プランF!? ってなんだったっけ!?」

キャット「敵に構わず逃走だワン!」ダッ


カリギュラ「逃が、すな……!」グッシャア‼

ラミアB「ギャアアアア!!?」ドサッ



ラミア達「「「フシュルアアアアアアアッ!!」」」

敵兵達「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

ガァン‼ギャァン‼ギィン‼



バットマン(……ラミア達は見境なく襲っている? これならまだ、勝機はあるか?)

ラミアC「フシャアッ!」ブンッ! 

バットマン「フッ!!」ガシィ‼


バットマン(……当然、そう甘くはないな。無差別な襲撃は混沌を産むだけだ、むしろこちらのコンビネーションが崩れる可能性もあり得る……やはり撤退するしか)


キャット「黒猫! 気を付けるのダ、そっちは……!」

バットマン「何? ……!?」ガラガラッ

バットマン(しまった、こんなところに大穴が……!!)ヒュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……



エリザベート「ちょ、洞窟の中に落ちたァーーーーーー!?」

キャット「む……仕方ない、あのカラーリングなら洞窟の暗闇はむしろ好都合のハズ。放っておいて我々は逃げるべしだワン!」ダッ


カリギュラ「ウォォォォオオオオ!! 待てェェェェェェェェェ!!!」




バットマン(落ちる……深い)バッ、バサササササササ……

バットマン(暗い……地面が、見えない……)バサササササササ……

バットマン(!!)ドシャアッ


バットマン「っぐ……」ゴロゴロ……

バットマン(……深さ、数十メートル……遥か上方に落ちて来た穴が見える……)

ピチャッ……ピチャッ……

バットマン(水の気配。天井から垂れて来る水が跳ねて……地底湖か?)

バシャッ


バットマン(……何か居る)

バットマン「誰だ」



???「あら、落ちて来て早々に生意気な口がきけるのね。でも、まずはそちらが名乗るべきではなくて?」

バットマン(少女の……声? だが、暗さで見えない……)

バットマン「……ブルース・ウェイン」

???「へえ、面白い名前ね。良いわ、その愉快な名前に免じて土足でこの領域を踏み荒らした事は許してあげる。
……でも、頭が高いようね? 跪いたらどう?」フアァァァ……

バットマン(……? なんだ、これは……)ググググ……


バットマン(まるで、本能が、跪けと言っているかのような……)


???「あら? ……妙ね、貴方」



バットマン「……」ググググ……

???「……あらそう、つまらない人。良いわ、立ってなさい」

バットマン「……」ガクッ

バットマン(一体何だ? 消耗が激しい……息が乱れる)

???「……理性だけで生活してきて本能が衰弱してるのね、怪物みたい。素直でない殿方は嫌われるのに」

バットマン(……たった一言で、精神に働きかけてきたのは確か……つまり、見えないこの相手も、サーヴァントか)

ドクター『ザザ……ルースくん、今そこは何処だい!? キミの目の前にとんでもない反応があるんだけど!?』

バットマン「……ドクター、今恐らく『それ』と対話している。解析を頼めるか」

ドクター『解析なんてするまでもない、これは神の力だよ! キミの目の前には神霊が居る! どの伝説に属しているかは知らないけど……ぼ、防護策を……!』


バットマン「神……?」

バットマン(……不味い。相手の正体を掴まなければ、無策のままここに居れば相手の掌の上だ……)

???「あら、私の事を話しているのかしら? ふふ……美しいモノを見たら、誰だって驚くものね。構わないわよ」

バットマン「……」

バットマン(……)


???「クスクス……ふふふ……でも、気を付けてくださる? 聞こえない会話というのは、苛立つものなの」

???「特に、目の前でされるとね……思わず、微笑んであげたくなってしまうほどに」

???「女神を苛立たせたら……その気が無くても、殺してしまうかもしれないのよ?」


ザワザワ……ザワザワッ


バットマン(……逆鱗に触れたか? 周囲に蠢く気配。三つ。不味いか)


???「クスクス……私は死んでほしくないけれど、この暗闇でどうするつもりでしょうね?」

バットマン「……」スッ


バットマン(……五感を、研ぎ澄ます)


ザワザワ……ピチャン……ジャバッ



バットマン「……」

バシャリ……バシャバシャバシャッ‼

バットマン「フッ!」ガシッ、ドゴォ‼

ゴギャアアアアアアアアア‼

ドシャッ


バットマン(残り気配……二つ。足元に水。下手に動かず、相手を待つ)ジリッ

フシュルルルル……シャァァァァ……

バシャッ‼

バットマン「!!」

バットマン(顔面に冷たい感触……!)

シュドッ‼

バットマン「うぐ……!?」バッシャアン……


バットマン(……水だ。水を顔にかけられ、動揺した所に鳩尾へ一撃……)

バットマン(だが、位置は特定)チャプ……


バットマン「……」チャキ、ヒュンッ

ドシュッ‼

ゴギャアアアアアアアアア!?

バットマン「シッ!」ヒュドッ‼

ドッシャアアアア……


ヒュンッ!


バットマン「ッ!!」バシッ‼


バットマン(次の奴は間髪を入れずに来たか……手練れだ)

ヒュンッヒュンッヒュンッ‼

バットマン(だが)バシッ、ザザッ……スッ

バットマン(甘い)ザシッ……


ヒュンッ‼


バットマン「フン!」ギュドォッ‼


ドバッシャァァァァァァン‼



???「……へえ、やるのね」

バットマン「……」

バットマン(さて、どうする)


???「暗闇では目が見えない、と思っていたけど……そうね、訂正しておきましょう。貴方は見えるのね、闇の中が」

バットマン「……」

???「ふふ、勇者にはそれなりの敬意を払うわ、私は女神ですもの」パチンッ

ボ、ボ、ボボボ……


バットマン(洞窟が、明るく……三体のラミアが倒れている。つまり、暗闇で襲い掛かって来たのは奴等か)

???「私の名はステンノ。……ほら、跪きなさい? 見下ろされるのは嫌いなの」


バットマン(そして、ラミアを操っていたという事は……このステンノも、上の兵達を少なからず疎ましく思っているハズ)


バットマン「……ここから出たい。可能か?」

ステンノ「あら、出る必要があるの? むしろ美しい私と二人きりになれる栄光に浸れるのよ、動きたくないんじゃなくて?」

バットマン「……上に兵達が来ている。彼らの蹂躙は恐らくこの地下洞窟にまで及ぶぞ」

ステンノ「脅しかしら? 私は構わないわよ、無粋な連中は指先ひとつで従わせられるもの」

バットマン「……いや。このまま何もせずに居れば、人理が焼かれる。人が滅ぶぞ」

ステンノ「ふふ……それがどうかして? 私に関係、あるかしら?」

バットマン「その美しさを理解できる者が少なくなる。お前もそれは本望ではないだろう」

ステンノ「……何が言いたいの?」

バットマン「手を貸して欲しい。後悔はさせない」

ステンノ「……」


………………

ザアザア……ザアザア……


キャット「うむむ、こっちカ……?」ガサガサガサ

エリザベート「もーサイアク……きゃっ!?」ドッターン‼


敵兵「!! 今あっちから音が!」


キャット「ええい、走るのだ!!」

エリザベート「ぐすっ……もう無理よぉ……」

キャット「……諦めるという選択肢は野生には無いのだ! さあ立つが良い!」グイッ

エリザベート「うぅ……」


カリギュラ「ウォォォォオオオオ!!!」


キャット「む……」



ザアザア……ザアザア……

キャット「……先に行け、ドラゴン娘。ここはアタシが引き受ける」

エリザベート「えっ……あ、アンタ何言ってんの……」

キャット「行け。共倒れは御免だワン」

エリザベート「だって、あんなに沢山……いるのに。あ、あのイカれた男だって居るのよ?」

キャット「……心配するな、猫は気まぐれなのだ。今日はたまたまそういう気分だったから、ここに残るに過ぎないのだワン。
……ああ、だが。お前と過ごした時間は、鬱陶しかったが……悪くなかったと言っておくぞ」

エリザベート「……」

キャット「さあ行け。デレタイムはもはや終了、ここからは血みどろの酒池肉林大騒ぎ。イヌまっしぐらの大激闘である。お前だけなら逃げられるだろう」

エリザベート「……」


エリザベート「……んなのよ……」

キャット「む?」

エリザベート「……なんなのよっ、そんなのでアタシが逃げる訳ないでしょ! 一緒に戦えば勝てるわよ!!」

キャット「……ふむ、ではやる気は起きたか?」

エリザベート「あったりまえでしょ! あんなに言われてへこたれてるような尻尾してないわよ!」ピョンッ‼

キャット「ではやるぞ。アタシも逃げにはうんざりなのだ、ここで一発反撃の狼煙をぶち上げようではないカ」

エリザベート「……ええ、やってやるわ!」


ドッサァァァァァァァァァン……

カリギュラ「……見つ、けたぞ」パラパラ……

ザアザア……ザアザア……




キャット「月に魅入られた男よ。そろそろしつこいナ、決着といこう」

カリギュラ「……!!」ブォン‼

キャット「フン!」ガガァン‼


エリザベート「こんにゃろー!! 吹っ飛びなさい!」ブンブンブンッ!

敵兵S「ぐわああっ!?」ドッシャア‼

敵兵T「おらあっ!」ブゥン‼

エリザベート「このっ!」ガァン‼



キャット「やはり貴様を抑えれば勝機はあると見た!」

カリギュラ「不可能、だ!」ドッゴォォォ!

キャット「ちぃっ!」ガガッ


エリザベート「ボォォォォエエエエエエエエ~~~~~♪」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼

敵兵達「「「ぐわああああああああ!?」」」ドシャシャシャシャシャシャッ


キャット(ドラゴン娘の調子はかつてないほどに良い……だが森の向こう、続々と兵達は来ている。ここで一気にこの男を片付けねば駄目なようだナ!)

キャット「やはりここで決める!」

カリギュラ「……ネロ……ネロォォォォォォ!!!」ドドッ、ドッガァァァァァァ‼

キャット「なっ……」ズサァァァァァ

キャット(この上に、更に膂力が上昇するとは……いや!!! 違う、これは)




 タマモキャットは気付く。上空、雲の切れ目より、月が顔をのぞかせている事に。

(まさか、月の光が……)

 呪いじみて、彼女の力を奪っている。その事実に気付いた時、カリギュラは既にタマモキャットの懐に飛び込んでいた。

「しまっ」

 防御姿勢を取ろうとし、よろめいた彼女の鳩尾に蹴りがめり込んだ。一瞬遅れて衝撃が胴体を貫き、吹き飛ばす。

「キャットっ!!!」


 エリザベートは我を忘れて叫び、カリギュラへ……狂った男目掛けて駆け出す。だが、雨粒を滴らせ、彼は笑った。

 エリザベート渾身の槍の振り下ろしは、いともたやすく腕甲で止められる。反撃の裏拳が脇腹に叩き付けられ、彼女は横ざまに吹き飛んだ。

「ネロォォォォォォ!!」


 叫ぶ。それは彼にとって、自分が人間であった最後の記憶。美しい皇帝。華のような。だが月の美しさには敵わない。あの輝きには。彼は歯を食い縛る。

 とどめを。カリギュラは目付きを鋭くし、倒れたタマモキャットへ歩いて行く。


 その時、輝きが降り注いだ。月の輝き……ではない。それはもっと神々しい、何かだった。


 カリギュラは飛び退いた。森の奥、小さな少女がクスクスと笑っていた。

「このステンノの誘いを断るなんて……無粋な人」


 カリギュラは本能的にそれを恐れた。

 月より美しいものなど無い。あってはならない。彼の存在理由が汚されてはならない。狂気が汚されてはならない。

 彼は月を見上げた。すがるように。だがその視線は、無情にも遮られる。


 月の光を背に受け、巨大な蝙蝠のシルエットが飛来した。


「やめろ」


 カリギュラは呻く。黒い騎士が降り立つ。雨が月光を湿らせる。


 力無く振られた腕を止め、バットマンは蹴りを繰り出した。まともに受け、カリギュラはよろめく。そこへ光球が着弾、爆発。ステンノ。


「っぐぅ……」


 カリギュラは転がり、起き上がろうと……力が籠らない。狂気が、消えてゆく。彼の存在理由が。月より美しいモノを、見つけてしまったのだ。


「……ネロ……」

 小さな呟きが、雨音に呑まれる。月光はもはや曇天に包まれ、わずかの輝きを灯す雨粒が降るのみである。

「……必ずローマを救う。約束する」

 雨に打たれ、ブルースは、死に行く彼を見下ろしていた。

 カリギュラは消えながら、笑みを浮かべた。その輝きの最後の一片が消えた時、彼の永遠もまた途絶えた。



ザアザア……ザアザア……


バットマン「……」

エリザベート「はあ、はあ……ようやく終わった、かしら……」

キャット「うーん……ここは? む、黒猫! 無事だったのカ!?」ガバッ

バットマン「ああ、無事だ。……ドクター、海岸の船の位置を探してくれ」ピッピッ


ステンノ「行くの?」

バットマン「……ああ。船を奪い、あちらに戻る。力を合わせれば可能なハズだ」

ステンノ「残念だけど、私はここまでよ。これ以上はついていけない」

バットマン「……そうか。世話になった。必ず世界は救う」

ステンノ「くすっ……期待してるわ、勇者さん。それじゃあね」

バットマン「ああ、さらばだ」




バットマン(…………雨は未だにやまず、だが皇帝の一人は仕留めた)

バットマン(どこまでが奴の計算通りかは知らないが、マシュを助け出し、必ずこの世界を救う……)

バットマン(その為にはまず、荊軻達と合流。可能ならばブーディカを救出し、ガリア砦を奪取する……)

バットマン(……絶対に、やり遂げる)


バットマン「……覚悟しろ」


バットマン(ローマを、救う)


今日の更新はここまでです。
第二部が始まってもともと矛盾だらけだった私の脚本が致命的な穴だらけになったのでもうこれはFGOに似た何かだと思っといて下さい(半ギレ)


 世界に取り残されるのは、初めてではなかった。


 何かを守ろうと伸ばした手は、アタシじゃ決して届かない。


 戦争だから、仕方ない事なんだ。手を伸ばせば、届かぬ痛みも必ず返る。覚悟していたハズだ。アタシは自分に何度も言い聞かせた。そうして、自分の世界が蹂躙されたのを許容した。


 たとえ、娘達の悲鳴が聞こえたような気がしても。それはとっくの昔に終わった事だった。


 終わった事、だった。


…………



ブーディカ「……うーん……」ガチャガチャ


ブーディカ(硬い鎖……これは解けないかな。全く、捕まるなんてね……さしずめここはガリアの砦ってとこかな?)


???『ハローハロー、聞こえるか?』

ブーディカ「! 誰だ!」

???『キミは確か……ブーディカ、だったかな? 声だけで失礼するよ』

ブーディカ「……」

???『おっとすまない、まずは自己紹介だったな。私はリドラー、ここでの役割は優秀な頭脳の戦士と言ったところかな?』

ブーディカ「……あっそ。で、その頭脳の戦士が何の用?」




リドラー『まあそうカリカリしてないで、遊ぼうじゃないか。なぞなぞだ』

ブーディカ「……なに?」

リドラー『なぞなぞだよ、キミにとってはとても簡単なハズだ』

ブーディカ「……何かは知らないけど、お遊びなら付き合ってらんない……」

リドラー『では一問目! プラスタグス王の死に便乗してブリタニアを蹂躙したのは何処の国だ?』

ブーディカ「……!」


ブーディカ「何が言いたいのか知らないけど……!」

リドラー『おやぁ、本当かな? 答えは……古代ローマ! 少し簡単すぎたかもしれないが、許してくれ。では次の問題!』

ブーディカ「ふざけんな! 何が言いたいんだ!」

リドラー『その古代ローマを率いていたのはだーれだ?』

ブーディカ「この……」ギリィ


リドラー『……そう、ネロ皇帝だ』




ブーディカ(……まだ、悲鳴が聞こえる。涙が見える。ローマに蹂躙しつくされる郷土が見える。
違う、幻だ。それはとっくに終わった、過去の幻だ。飲まれては駄目だ。飲まれては……)


リドラー『不思議でならなかったよ、キミがネロの側についたと知った時は……だが合点がいった。どうやらキミも、自分を誤魔化して生きるのが好きなようだ。
何故自分を誤魔化す? 人理を守る為か? 自分の故郷すら守れなかった者が?』

ブーディカ「……うるさい……」

リドラー『キミは誇り高き女王だった。そしてその誇りが、更に故郷を追い詰めた……にも関わらず、何故こんな状況に甘んじている? 仇も討たずに』

ブーディカ「黙れ! やめろ!」

リドラー『キミは気付いているな? その自制心も長くはもたない。キミは永遠に自責の念から逃れられない……ネロを討つ、その時までは』

ブーディカ「そんな事は……」


ブーディカ(……無い、なんて、言えない。言えるわけがない。だって……)



ブーディカ(まだ、終わってないんだもの。アタシの中じゃ、あの戦争はまだ続いてる)



リドラー『……キミに良い事を教えよう。未来から来たあの男はまだ生きている』




ブーディカ(未来から来た男……マシュのマスター。ああ、生きていたのか……)


リドラー『奴は必ずキミを助けに来るだろう。チャンスをあげよう、ブリタニアの女王よ』

ブーディカ「チャンス……?」

リドラー『なに、簡単な事だ。奴を殺せ。そうすればキミをこちらに迎え入れよう。ネロの処分もぐっと楽になる』

ブーディカ「そんな事……!」

リドラー『できない? 触れる事もできない未来がそんなに大事か? ……ならもう一つ、教えてやろう。人理焼却が完遂した後も、この世界は残る』

ブーディカ「え……?」


リドラー『残るのだよ。時が満ちれば、この世界は聖杯の力によって正式な時流の中に食い込み、歴史を阻む異物として永遠に残る。
……さあ、考えてみろ。ブリタニアを救うチャンスだ。キミがただの妻に戻り、娘と夫に出会う事も出来るだろう。全て順調な世界を作れるのに、何故今の世界を救う必要がある? この永遠の中に身を浸そうじゃないか』



ブーディカ「…………あ……」

リドラー『……返答は要らない。時間はやる。バットマンが助けに来るその時まで、じっくりと考えるがいい』プツッ



ブーディカ「……」


ブーディカ(……アタシは、王国に永久の繁栄を祈っていただけだった)

ブーディカ(ローマが来て、蹂躙されて。それでも、故郷の永遠は取り返せると思っていた)

ブーディカ(そんな自分の身の程知らずな願いが、故郷を追い詰めて……)

ブーディカ(でも、今、贖罪のチャンスが目の前にある。今度こそ、ブリタニアを救えるかもしれない。
……それどころか、あの頃の幸せが、取り戻せるかもしれない。夫娘二人と暮らしてた、あの頃の……)

ブーディカ(……)



ザアザア……ザアザア……

ジャバッ、ジャバ……バシャッ……

エリザベート「もー無理、もー限界。腕動かない」ダラー

キャット「だらしない奴だワン。黒猫を見習え、ずっと漕ぎっぱなしでも文句ひとつ言わないではないカ」

バットマン「……陸までもう少しだ、気張れ」ジャバッジャバッ

エリザベート「だってぇ……大体、キャットの役目だっておかしいでしょー!? 何よ、船尾に座って微動だにしてないじゃないの!」

キャット「風を読むのだって立派な役目だワン。……む、そろそろ帆を張るぞ。手を休めろ、黒猫よ」ゴソゴソ

バットマン「分かった……」

エリザベート「休めるー!!」

キャット「休みっぱなしだったクセに……」



帆「」ブワァッ‼

キャット「おおおおお、良い勢いで進むナ……」ユラユラ

エリザベート「はー、チョー快適……」

バットマン「……すぐに陸に着くが、お前達二人はどうする?」

キャット「……んー、気分次第で」

エリザベート「アタシは街でちょっと休むぅー……」

バットマン「分かった。なら、今までの礼を言っておく……手を貸してもらった事、感謝する」

キャット「構わんワン……ん? 構ワン? え?」

エリザベート「お礼はファンクラブの拡張で良いわよ! ええ!」

バットマン「……前向きに検討する」


バットマン(……あのリドラーの事だ。今まで通りにいくとは思えない……何か仕込んでいるハズだ。用心しなければ)


ザザーン……ザアザア……

エリザベート「とぉ~ちゃくっ!!」

バットマン「……よし。私はマッシリアへ」

キャット「アタシもついて行くぞ。街に行かねば猫缶も無い」

エリザベート「あ、アタシもアタシも!」

バットマン「……街に行っても猫缶は保証できないが」




………………

ザアザア……ザアザア……

呂布「■■■■……■■■■■■■―!!」

荊軻「……」ハァ……


荊軻(……マッシリアへの駐在、二日目。ガリアの戦線が崩れた事は未だに知らせていないが……勘のいい兵士は気付き始めている、か)

荊軻「……」

荊軻(こんな時、ブーディカが居れば。呂布も上手く扱いつつ、兵士も綺麗に纏め上げただろうに……)

コン、コン

荊軻「どうした?」

兵士A「失礼します! ブルース様がこちらにいらっしゃいました!」

荊軻「!! ブルースが!?」


………………

バットマン「……荊軻」

荊軻「ブルース、ようやく会えたな。で……あの話は本当なのか? マシュが囚われ、皇帝とブーディカ、スパルタクスも行方不明と……」

バットマン「……残念だが、本当だ。戦力は半減したと言っても過言ではない」

荊軻「……それでは、我々の勝ち目が……」


バットマン「いや、ある。ガリア砦へと少数精鋭で攻め込み、そこに囚われているであろうブーディカとスパルタクスを救出する」

荊軻「救出……と言っても、二人は生きているか死んでいるかも分からないのに」

バットマン「必ず生きている。アイツは……リドラーとはそういう男だ。
自分の知性を証明するために、敵の存在を利用したがる。殺せば、それが不可能になる。歴史に残っているような人物が相手なら、なおさらその性質は強く出るハズだ」

荊軻「……何と言うか」

バットマン「異常だ」

荊軻「……だな。それか、極めて正常か」

バットマン「…………」


荊軻「それで、いつ行く?」

バットマン「……早い方が良い。明日か、行けるなら今からでも」

荊軻「随分と急ぐな……何故だ?」

バットマン「通信機の位置を探知されている。私が川から流された時、精確な追撃を寄越して来た。可能性としてはそれしか考えられない」

荊軻「成程な……では、稲妻のように速く攻めるとするか」

バットマン「それが望ましい」

荊軻「好みだ」

バットマン「頼りにしている」


荊軻「しかし、問題もある……キミたちが遭遇したというサーヴァント、レオニダスの事だ」

バットマン「……」

バットマン(炎門の守護者、レオニダス。三日に渡り、三百の兵で三千のペルシア軍を堰き止めていた英雄)

バットマン「……そちらについても、対抗策はある」

荊軻「本当か?」

バットマン「……『本来は守りに使う宝具』。奴はそう言った」

荊軻「……?」

バットマン「そのままの意味だ」


バットマン「ガリア奪還メンバーは私、呂布、荊軻、それと大隊を一つ。これで行く」

荊軻「随分……少ないな?」

バットマン「あれだけ派手に敗北した以上、もう戦力は過剰には注ぎ込めない。最低限の戦力で、最高の戦果を納めるしかない」

呂布「■■■■■■■……」

荊軻「……ふむ。兵士には伝えておこう」

バットマン「頼んだ。それと、通信機を兵に渡しておいてくれ。連絡は常に取り合いたい」

荊軻「了解した。では」

バットマン「ああ」

バットマン(……雨も止み始めた。太陽も昇り出した。決行のタイミングは今を置いて他にない……さあ、この挑発に食いつくか、リドラー)




………………

ネロ「むむ……マッシリアを目掛けて戻って来たつもりが、ここは全く違う都市か……」

ネロ「……しかし、四の五の言ってはおれんな。ここに潜伏し、あわよくば連合ローマ帝国の事も探らねば!」

敵兵A「待て! この先はパレードの最中だ、身分証を!」

ネロ「……ってしまったァー!!」ダダッ

敵兵A「なっ……」



ガヤガヤ……ワイワイ……

ネロ「……はあ、はあ。何とか逃げきれたか……」

ネロ「……布で顔を隠しておいた方が良さそうだな。ブルースと微妙にキャラが被るが、致し方なし!」クルクル、キュッ

ネロ「それにしても、なんと活気に満ち溢れた通り! 余の統治していたローマでもここまでは……これほどの大きな都市とは、いったいここは何処だ……?」


果物屋の店主「いらっしゃい、いらっしゃい! とれたての果実が美味いよ!!」

ネロ「む、丁度良い。店主、この都市はいったい何と言う街なのだ?」

果物屋の店主「なんだ、見ねえ顔だな! ここは連合ローマ帝国の首都だよ、こんなでけえ都市なんてそうそうねえだろ!」


ネロ「……え?」


果物屋の店主「今、そこで皇帝様がパレードもやってる! どうせなら見て行ったら……あれ? どこ行った?」



ガヤガヤ……ガヤガヤ……

ネロ「……」

ネロ(なんという事だ。敵をまくために都市に逃げ込んだというのに、ここは敵の本陣だったというのか)

ネロ(……いや、そんな事より、この活気。余が統治していたローマの……何倍の活気だ? 
人の表情は生き生きと輝き、通りの犬は元気に吠え、子供達は喜んで聖職者の説教を聞き……熱量が、違い過ぎる。
余の、ローマでは、こんな……)

ネロ「……まるで……」

ネロ(まるで、余は皇帝として……間違っていたかのような)



ドドォン‼ ジャァァァァン‼


ネロ「!?」

『これより、ローマ神祖様が凱旋なされる! 花弁の用意をせよ!』

子供「ろむるす様だ!!」
聖職者「おお、偉大なる神祖……」
店主「凱旋だー!! 捧げる料理を用意しろー!!」

ガヤガヤガヤ……ウォォォォォォォォォ‼‼


ネロ「神祖……ロムルス!?」


花弁「」ブワァァァァァァァッ‼‼


ウォォォー‼ ロムルスサマ‼ ロムルスサマバンザイ‼


???「民よ!」

ネロ(あの声が……神祖? 人だかりで見えぬ……)

ネロ「すまぬ、どいてくれ……すまぬ」グイグイ……グイグイ


???「全ての民よ! 命ある者達よ! 聞くがよい!」

シーン……

ネロ(ようやく抜けた……)

ネロ「……あれが、」



ロムルス「我が名はロムルス! 私こそはローマ!」


ロムルス「民よ! 果てぬ欲望を持つ者よ! 満たされて尚、乾く者よ!」

ロムルス「手を伸ばすが良い! このローマでは、それが許される! たとえ世界が果てようとも、ローマの先に果てはない!」


ロムルス「民よ! 永遠の安寧を望む者よ! 潰えぬ国を望む者よ!」

ロムルス「地を、空を、隣人を見るが良い! それこそがローマ! お前達のひとりひとりが、絶対に失わぬ光!」


ロムルス「民よ! 苦難の時を迎える者よ! 歩みを止め、下を向いた者よ!」

ロムルス「前を向け! 歩き出せ! たとえどんな歩みであろうと、すべての道はローマに通ず! 胸を張れ! 此処こそ、ローマである!!!」


ウォォォォォォォォォ‼‼ ロムルスサマ‼ バンザーイ‼ ローマ、バンザーイ‼



ネロ「……あ……」

ネロ(……何処かで、望んでいた。ローマ皇帝を名乗る偽物の軍団が、この件を操っているという筋書きを)

ネロ(だが、同時に分かっても居た。偽物が皇帝を名乗ったとして、民や兵までもが移っていくはずもない。だが……)

ネロ(だが、余は……)


『ロムルス様は暫く休まれる! 供物は兵達に預けるように!』


ネロ「……」

ネロ(……思い出せ、ネロ・クラウディウス。ローマを取り返すのだ。今、ここで神祖を尾行し、暗殺できれば。形勢逆転が可能になる……)



………………

ロムルス「……良い凱旋であった」

???「そうかな? アレは派手すぎだと思わないでもないが……まあ良いさ、民衆は馬鹿だ。馬鹿をまとめるのはキミに任せる」

ロムルス「お前は変わらんな、リドラー。民衆こそ至高の宝だ。忘れてはならん」

リドラー「あーあー、聞き飽きた。僕には興味が無い。この世に頭脳以上の宝など存在しえない」

ロムルス「……ゆえに、今回の敵にこだわるか」

リドラー「……それはとても繊細かつ腹立たしい質問だ、回答は控えさせてもらうよ」

ロムルス「ふふ……世界は広いぞ」

リドラー「狭いさ」



ウワッ!? ダレダ……ウグッ!?

ドサッ……ドシャッ


ロムルス「……」

リドラー「……来たか。お客様だ、一体どっちの客かな?」

ロムルス「先程私が凱旋していたのだ。私だろう」

リドラー「んー、簡単すぎるなぞなぞだったか」



敵兵A「ろ、ロムルス様! お逃げ下さい、敵襲……っぐ」ドシャッ

ネロ「……」スタスタ

ロムルス「……」

リドラー「おやおや、なんとまあ」

ネロ「……神祖」

ロムルス「ふむ……」


ロムルス「来たか、ローマ皇帝よ」

ネロ「……」

ロムルス「……」


ロムルス(……やはり、迷いがあるか。しかし、乗り越えてみせよ)

ネロ(……これは、絶好の、機会! ここで躊躇う事は許されぬ!)


ネロ「ここで首を獲る……! 今は余の時代だ!」チャキッ

リドラー「ふっふふ、言うね。流石暴君様」

ネロ「……何?」


ロムルス「リドラー!」

リドラー「何だ、聞かせてやれば良いじゃないか。辛い事は一度に済ませた方が良いだろう?」

ネロ「何の事だ!? 何故余が暴君などと呼ばれねばならぬ!?」

リドラー「おっとっと、怒らないでくれよ。ただ、キミが後世でそう呼ばれてるだけさ……最悪の弾圧、暴政。悪名高きローマ皇帝、ネロ・クラウディウスとね」

ネロ「弾圧……暴政?」


ネロ(馬鹿な……余は、そんな……)


リドラー「ふふふ……キミは今まででも我儘で人を苦しめた事があるはずだ。暴政なんてその延長線上、気にする事は無いだろう?」

ロムルス「リドラー、もうよせ!」

リドラー「ああ、ロムルスが言う『至高の宝』である『民衆』だったかな? そいつらが自分のせいで苦しんで死んでも、気に病む事はない。世界にとっては小さな誤差で、それがキミの正しい姿だ」

ネロ「……余の……」


ネロ(……では、余は……本当に、民衆から必要とされなくなる……?)

ロムルス「……リドラー」

リドラー「……おっと、そろそろ黙るかな。味方に殺されちゃあ不味い」



ロムルス「ネロ・クラウディウスよ。たとえ未来でその言葉が本当になったとしても、お前はローマの御子。今はなすべき事をなせ」

ネロ「……ひとつ、聞かせて欲しい」

ロムルス「……」

ネロ「神祖、ロムルス……貴方は、永遠のローマを作る気なのか」

ロムルス「……」


ロムルス「……ああ、そうだ」


ロムルス「私とて、その魅力には抗えん。その熱には」

ロムルス「永遠に続くローマ帝国。事実、私はそれを夢見た」

ロムルス「神祖としてのロムルスではなく、一人の男として」

ロムルス「理性の対極にあるそれは、浪漫だ。私の胸で燃え盛る、世界への挑戦だ」

ロムルス「……私も、永遠のローマへ辿り着きたい。祖でありながら、私は未だにその頂点を欲している」



ネロ「……」

ロムルス「……だが、世界が燃え尽きれば、ローマが消えるのもまた事実。さあ、ネロ・クラウディウスよ。私を斬るのだ。斬ってこの夢を終わらせてくれ」


敵兵B「……なんだ!? テント前の護衛が倒れているぞ、応援を呼べ! 敵襲、敵襲―!!」

ザワザワ……


ロムルス「急げ。あと30秒もあれば、我が兵達が突入してくるだろう。さあ、やるのだ」

ネロ「……」チャキ


ネロ(……余に、斬れるのか。神祖を)

ネロ(斬って、どうするというのだ。神祖が死に、望まれぬ皇帝としてまた玉座に座るのか)

ネロ(誰が幸せになれる? 誰が望む? このような、半端な皇帝など……)

ネロ(……やはり……)


ネロ「……やはり、余には斬れぬ……」ガチャンッ

ロムルス「……」


敵兵達「「「ご無事ですか、ロムルス様!!」」」ゾロゾロ

ロムルス「……ああ、心配は要らぬ。侵入者があった……あちらの皇帝だ。処遇は追って伝える、今は牢に入れておけ」

ネロ「……」


リドラー「くくく……僕の事を悪く言うが、キミもなかなか良い性格をしてるじゃないか。斬れ、だって?」

ロムルス「……」

リドラー「できる訳がない。分かってただろ? 自分で止まるしかないんだ。それをキミは」

ロムルス「……」

リドラー「……こうなったらもう止まれない。まっしぐらに、永遠めがけて落ちて行く」

ロムルス「望む所だ。それならば、浪漫を追求してやろう」

リドラー「……結局、キミには負ける選択肢なしか。羨ましいね」

ロムルス「お前と同じ、負けず嫌いなのだ」

リドラー「ふっ……」



………………

ガシャンガシャン、ガシャンガシャン

マシュ「……?」ムクリ

ガゴーン‼

敵兵B「入れ!」ドサッ

ネロ「うぐっ……」

ガシャン‼


マシュ「……ネロ皇帝!?」

ネロ「……ましゅ……ましゅうううううううううう!!!」ダキッ

マシュ「え、えええええ……」



………………

ピピピ‼ ピピピ‼

バットマン「……もしもし、マシュか。どうした?」スタスタ

マシュ『あの……ネロさんも捕まってしまいました』

バットマン「何? ネロ……ネロ・クラウディウスがか?」ピタッ

マシュ『はい、その……すごく心を折られてて……泣き喚いています』

ウワァァァァァァァン‼ ヨハイラナイコニナッテシマッター‼

バットマン「……生きている事が確認できて良かった。こちらは今、ガリアへ向けて進行中だ。砦を奪還した後、可能な限り速くそちらへ向かう」

マシュ『は、はい。その、ネロさんはどうしたら?』

バットマン「……好きにさせてやれ」プツッ



荊軻「どうかしたか?」

バットマン「ネロの生存が確認できた」

呂布「■■■■■■■―――――!!!!」

荊軻「朗報じゃないか。よし、希望が見えてきたな」

バットマン「……ああ」


バットマン(心を折られた……か。厄介な事をする)

バットマン(誰がやったかは、大方の想像がつく)

バットマン「やってくれたな……」

荊軻「どうした?」

バットマン「……いや。必ずガリア砦を取り戻そう」

荊軻「……ああ、勿論だ」


ドクター『その辺り一帯の地雷は一時停止状態とはいえ、気を付けてくれ。派手な衝撃が加われば危険だ』

バットマン「ああ。……ドクター、敵性反応は未だに無いか?」

ドクター『……それもそろそろ、だね。戦闘の準備をしておいてくれ』

バットマン「了解した……」

通信機『』ピーッ‼ ピーッ‼

バットマン「……緊急だ。すまないドクター、少し切る……」ピッピッ

兵士A『もしもし! こちらマッシリア駐留部隊! 大変です、敵の首都より大部隊がこちらへ……!』

バットマン「……」


バットマン(やはり、来たか)



荊軻「どうした? 緊急か?」

バットマン「連合首都から、敵の大部隊がマッシリアへ向けて進行中だ」

荊軻「……どうする? 戻るか?」

バットマン「いいや、計算通りだ。もしもし、そちらで出来得る限りの時間稼ぎを。ガリア砦を取り戻し次第、こちらもすぐに加勢する」

兵士A『了解! 武運を!』

バットマン「そちらも」プツッ


荊軻「成程、素早く攻め落とす必要がある訳だ」

バットマン「行くぞ……隠密状態解除! 砦奪取へ動け!」

兵士達「「「おおおおおおーーーー!!!!!」」」

呂布「■■■■■■■―――!!!!」



レオニダス「……来ましたな。あの数、あの気迫。速攻戦に違いなし」

レオニダス「ならば、我が三百の宝を見せるまで。たとえ十倍の数が相手であろうとも……」

レオニダス「スパルタとしての意地! 誇り! 今度こそ守り抜いてみせる!!!」


敵兵達「「「おおおおおおおおおおお!!!!」」」



バットマン(相手も三百の兵を展開済み! 全速力でこちらへ突っ込んで来る!)

バットマン「良いか、教えた通りの戦法をとれ!」

兵士達「「「うおぉぉぉぉぉーーーー!!!」」」ドドドドドドド

呂布「■■■■■■■――!!!」

バットマン「別れるぞ! 武運を祈る!」

荊軻「キミも! 無事を祈るぞ、ブルース!!!」


バットマン「フッ!」ドシュゥゥゥゥゥゥ……

レオニダス「……?」

レオニダス(煙幕? あんな小規模な……)


レオニダス「!!」ガガァン‼


レオニダス(これは……シュリケン?)


レオニダス「ああ、バットラングというヤツですな! 報告はあがってきており……」

荊軻「そらっ!」ヒュンッ

レオニダス「おおう!?」ガァン‼

荊軻「ちっ、一撃で上手く行かないのはもはやお約束か!」

レオニダス「成程、兵に構わず私を潰しに来たか! 賢明ですが、そう上手く行きますかな!?」ブゥン‼

荊軻「舐めるなッ!」ギィン‼



兵士B「矢を撃て! 放て! 狙うのは大将だ!」

兵士達「「「おおおおおーーーー!!!」」」ヒュンヒュンヒュンヒュンッ‼


敵兵「ぐっ……」ギギィン‼ ギャァン‼

レオニダス(厄介な……三百の兵の『防衛的性質』を見抜いた者が居たのか。私が狙われれば、この兵達は私を守る……反撃に転ずる事が出来ない!)

レオニダス「……なんの、この程度の逆境で泣きが入ってはスパルタの名も傷付くというもの! ここからですぞおおおおおおお!!!」

荊軻「くっ……」

荊軻(うまくやってくれ、ブルース……!)




………………

バットマン「……」タタタタ……


バットマン(砦の内部に潜入したは良いが……見張りが居ない?)

バットマン(嫌な予感がする……)


バットマン「……」スタスタ……

バットマン(この下が地下牢か。ブーディカ達が居るのか、それとも……)




バットマン(鍵は……これか。よし、あとは牢を見つけるだけだ)ジャラリ

バットマン(……それにしても、この砦は静かすぎる。……外敵が攻め入ってくる事を想定していないとでも?)

バットマン(いや……成程な。最初から、私達をおびき寄せるためだけの餌だったという事か)



「おーーーい!!! こっち!! 誰か居るんでしょーーー!!!」


バットマン「!!」

バットマン(あの声は……)



バットマン「見つけたぞ、ブーディカ」


バットマン(……? 何故だ、違和感が……)


ブーディカ「えへへ、ごめんね。ドジ踏んじゃってさ、捕まっちゃった」

バットマン「……心配いらない。すぐに出してやる」ジャラ……ガチャガチャ

ブーディカ「……本当に、ごめんね……」

バットマン「敵の策を予測できなかった私の責任だ。……開いたぞ、外に出ろ」

ブーディカ「……いいや、謝ったのは、それに対してじゃなくてね」

バットマン「何に対してだ?」


バットマン(……何に対してだ? 何故さっき、私は違和感を抱いた? 何がおかしい?)



バットマン(リドラー。心を折る。ブーディカ。ブリタニアの女王)

(((引っ掛け問題の味はどうだ、バットマン?)))

バットマン(引っ掛け問題。……ああ、そうだ、なんて単純な答えなんだ)

バットマン(牢の中に繋がれていたのに、何故武装が解除されていない?)



ブーディカ「ふッ!!!」ブゥンッ‼

バットマン「っぐ!?」ガギィィィィ‼



ブーディカ「……やっぱり、一瞬じゃ無理か。キミ、手練れっぽいもんね」ギリッ

バットマン「くっ……」ヨロ


バットマン(何故? ……ああ、考えるまでもない。この裏切りは想定できていた)

バットマン(ブーディカ。ブリタニアの女王。ローマに……ネロ・クラウディウスに蹂躙された地を取り戻そうと戦った、誇りの女王)

バットマン(……なら、こうなる方が自然か)



ブーディカ「ごめんね。死んでほしいんだ」

バットマン「……」


バットマン(大方、あちらにつけばブリタニアが取り戻せるとでも言われたのだろう)


ブーディカ「っ!」ヒュッ‼

バットマン「フッ!」ガギィン‼

ブーディカ「やあっ!」ヒュンヒュンヒュンヒュンッ‼

バットマン「……!!」ババッバッバッ‼

ブーディカ「逃がさないよ……! アタシはブリタニアを……!」グォンッ

バットマン「!! しまっ……!」



………………

荊軻「そこ!」シュンッ‼

レオニダス「甘いッ!!」ガギィィィ‼


呂布「■■■■■■■―――!!!!」

兵士達「「「うおぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」ヒュンヒュンヒュンヒュン

敵兵達「「「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」ガガガガガガガ……


ドガァァァァァァァァン……

荊軻「何!?」

荊軻(砦の壁が……)


バットマン「ぐっ……」ゴロゴロッ

荊軻「ブルース!?」


ブーディカ「……」スタスタ


荊軻「ブーディ……」

荊軻(違うな。アレは私の知っていたブーディカではない)




レオニダス「形成逆転のようですな!!」ギャリィィィ‼

荊軻「ちぃっ!?」ガガッ‼


荊軻(こいつを抑えておかなければ……だが、それではブルースが)


ブーディカ「……」ヒュンッ

バットマン「うぐっ……」ギィン‼

ブーディカ「フンッ!」ドゴォッ‼

バットマン「っぐあ!?」ドシャアアッ


呂布「■■■■■■■―――!!!!」ドスドスドスドス

バットマン「!? 駄目だ、来るな! 戦線を維持しなければ……!」

敵兵B「今だ! 攻撃が緩んだぞ、反撃ィ!!!」

敵兵達「「「ウオォォォォォォーーー!!!」」」ドドドドドドド‼


兵士達「「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」ドドドドドドドッ‼


呂布「■■■■■■■―――!!!!」ダッ



バットマン(駄目だ、総力戦では絶対に打ち負ける!)


ブーディカ「まだだ……!」ブゥン‼

バットマン「くっ……」ギャァン‼



バットマン「ッ……お前はそれで良いのか、ブーディカ……!」

ブーディカ「……良い悪いなんて単純な動機じゃ、人間は片付けらんない時もあるんだ。アタシは絶対に負けられない! 今度は、絶対に!」ヒュンッ

バットマン「……お前は何を誤魔化している。何を恐れている。誰の為に戦っている!?」ガギィ‼

ブーディカ「アタシは! 何も! 誤魔化していない! アタシはブリタニアの為に戦ってんだ!」

バットマン「嘘を吐くな!」

ブーディカ「吐いてない!」

バットマン「目を見れば分かる!」

ブーディカ「うるさいっ!!!」ギャリィン‼



ブーディカ「アンタに分かるのか! 愛してた人が、郷土が蹂躙されて、どうにかしようと立ち上がって!! そのせいで、もっとひどい事になったのに!!」

ブーディカ「アタシが黙ってあの世界を許容していれば、娘達は生きていられたのに! ブリタニアはそのままでいられたのに!!」


ブーディカ(まだ、まだ聞こえる。あの泣き声が。耳を塞いでも、謝っても、泣いても、何をしたって消えてくれないあの声が)


ブーディカ「ローマさえ居なければ! ネロさえ居なければ! アタシさえ居なければ!」

ブーディカ「だから……! だから、これはチャンスなんだ! アンタを殺して、ブリタニアを取り戻して、今度こそ……! 今度こそ、アタシは……!」ブォン‼



バットマン「っっ……!」ガガッ、ドサッ


バットマン(しまっ……!)


ブーディカ「……!」グワッ


バットマン(ガードが、間に合わない……)



(((わ、私、は……)))

(((戦いが、怖い。人が死ぬのを見るのが怖い……)))


ブーディカ「…………」グ……ピタッ

バットマン「……?」

ブーディカ「…………」



(((大丈夫。アンタは十分強いし、頑張ってるんだ。盾の後ろが重くなったら、他の奴だって支えてやれるんだから……)))


ブーディカ「……ちくしょう……」ドシャリ

ブーディカ「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!!
あああああ!!!!! あああああああああ!!!!」ドスッ、ドスッ……ドッ……

ブーディカ「ああ……あああああ……」ポロポロ


ブーディカ(できる、わけがない。マシュの声だって、聞こえてるのに)



バットマン「……」

ブーディカ「……」


レオニダス「……フハハハハハハハハ! 良いでしょう、孤軍奮闘には慣れています! むしろスパルタの本領発揮ィ!」ヒュガガ‼

荊軻「まっっったくこの筋肉だるまはしぶといな……! ブルース! 手伝ってくれ!」ギィン‼

バットマン「……今行く」ムクリ


レオニダス「ふっ!」ギャァン‼

荊軻「ブルース!」ギリッ

バットマン「フッ!」シュポッガシッ

レオニダス「ふふ、これがグラップネルガン! 無論、報告を受けております! 驚きもしませんな!」グイッ

バットマン「ぐっ……」グワンッ

レオニダス「そぉらっ!!」ブゥン‼



バットマン(ここだ!)プシュー……


レオニダス「むぐ、何を掌から……!」

バットマン「離れろ荊軻」スタッ

荊軻「え?」

ポチッ

レオニダス「どわぁぁぁぁぁぁぁ!?」ドゴォォォォォォン



バットマン「……奥の手だ。掌から爆破ジェルが噴出できるのは、報告されていなかっただろう?」

レオニダス「ぐ……ぐむ……まだだ! 私の筋肉は未だに! 潰えていない!!」

バットマン「荊軻!」

荊軻「隙有りッ!」ドシュッ

レオニダス「……ぐっ……」ヨロ……



レオニダス「……またしても、敗れるか……」ドシャッ


敵兵達「「「……」」」シュウゥゥゥ……


バットマン「……」

荊軻「……よし! ガリア砦、奪取成功だ!」

バットマン「ああ」


ブーディカ「……」


バットマン(……このまま放置すれば、また敵になりかねない。ここで……)

バットマン「……」ス……

パシッ

荊軻「ブルース……頼む。彼女は彼女なりの結論を出すハズだ。今、ここで結論を急がせるのはやめてやってくれ」

バットマン「……それは……」


兵士A「た、頼む! 俺からも! ブーディカさんは悪いヤツじゃねえんだ!」

兵士B「そ、そうだ! 俺達だって何度も助けられた、ここではブーディカさんの方を助けるべきだ!」

兵士C「頼むブルースさん! 俺達、ブーディカさんに世話になったんだ!」


バットマン「……」

ブーディカ「……」



バットマン「……分かった……」ス……

荊軻「……!」

バットマン「では急ぐぞ。マッシリアへ」

荊軻「ああ! 行くとしよう!」


ブゥゥゥゥン……

リドラー『ハローハロー、見えるかな? ガリア砦の奪取おめでとう。だが見えている結論に飛びつくのは危険だなぁ』

バットマン「リドラー……またホログラムか」

リドラー『そう焦るな、この後生身で登場してやるさ。だが、その前に……軽率な行動を悔いる時間だ。
マッシリアに我々の大部隊が攻撃中……キミ達は占領された街に、一歩遅れて到着するだろう』

バットマン「……なら、リドラー。お前も、見えている結論に飛びつくのは危険だ」

リドラー『……何?』



………………

リドラー「どういう意味だ、この僕が何かミスを犯したとでも?」

敵兵「失礼します、リドラー様!」

リドラー「おい、今良い所なんだ! 邪魔をするんじゃない!」

敵兵「し、しかし……マッシリアを攻めている部隊が、サーヴァント二体の妨害にあっていると」

リドラー「……何? サーヴァント、二体? 有り得ないぞ、だって今、人理を守る側のサーヴァントはバットマンの周囲に全て……」

敵兵「分かりません……ただドラゴンのような娘と、猫のような恰好をした女に邪魔されているとしか」

リドラー「なんだその漠然とした情報は……!?」

………………

タマモキャット「あの黒猫!! これが分かっていてアタシ達をここに残らせたのカ!!」ゴシャアッ‼

エリザベート「せっかく羽を伸ばせると思ったのにぃ! なんでアタシ達が働かなきゃなんないのよ……ほらもっと、アンタ達もキリキリ働きなさいよ!」

兵士「は、はいっ!!」


敵兵W「ば、化け物共が……!」

………………

リドラー「馬鹿な! そんな連中はデータには無い……
なんで急に、イレギュラーが!? 計算が狂うじゃないか!」

バットマン『……リドラー』


バットマン『お前がいくら私の仲間の心を折ろうと、構わない。いくら地雷を仕掛けようと、いくらホログラムで挑発しようと、いくら仲間を誘惑しようと構わない』

バットマン『……だが、心しておけ。私は根に持つぞ』

バットマン『今からそちらへ向かう。何処へ逃げ込もうと、どんな対策を施そうと、私は必ずそこへ辿り着く』

バットマン『覚えておけ。私は、絶対に、諦めない』


リドラー「……は、ははははははははははは!! ではせいぜい楽しみにしておくとしよう、バットマン! 途中で死なない事だな!」プツッ

敵兵「あ、あれが……バットマン?」

リドラー「……フー……ふ、くくく……ああ。あれでこそバットマン。我が宿敵……最高のライバルだ」

敵兵「わ、我々は……」

リドラー「……マシュを連れてこい。そろそろ、舞台の準備を整えておかないとな」

敵兵「は、はい! 失礼します!」ダッ


リドラー「……はー……全く……」プルプル……

リドラー「……コウモリめ……!」ギリィ……



今日の更新はここまでです。お付き合い有難うございました


ネロ「……」

マシュ「……」


マシュ(あれから、何時間経ったのでしょうか……それとも、数分? 数日? 静かな地下牢だと、全く時間の経過が把握できません……)

ネロ「……マシュ。マシュよ」

マシュ「は、はい?」


ネロ「お前は……ローマがいつか滅び、余がいつか、暴君となる事を知っていたのか?」

マシュ「……それ、は……」

ネロ「……」

マシュ「……」

ネロ「……知って、いたのだな」

マシュ「……はい……ですが……」



ネロ「……良いのだ。慰めは要らぬ。余は不要とされるようになり、ローマはいつか崩れ去る。それは……理解、できる」

マシュ「……」

ネロ「……だが」

ネロ「……だが、たとえ、理解、できていても……」ジワ

ネロ「やはり、辛いものだな……」ポロポロ……




(((別に恥じる事じゃないよ。怖かったら怖いって言っていいんだ)))


マシュ「……」スッ

ネロ「……? ま、まs……」

マシュ「……」ヒシッ

ネロ「!!??」


ネロ(ななな何がどうなっておる!? マシュに頭を抱きかかえらrrrr)


マシュ「……大丈夫です、ネロさん」



ネロ「……」

マシュ「貴女は十分に強いし、頑張ってるんです。……それに、一人じゃない」

ネロ「……!!」グムッ

ネロ「う……」ジワッ

ネロ「う“わ”あ“あ”あ“あ”ん“……ま”し“ゅ”、ま“し”ゅ“ぅ”ぅ“ぅ”……」

マシュ「……」ナデナデ



………………

ネロ「……有難う、マシュ。もう大丈夫だ」パッ

マシュ「そう、ですか」

ネロ「うむ。余は……少し、弱気になっておったのだ。まるで、世界の全てが敵になったような気になっておった」

マシュ「そ、そこまで……」


ネロ「だが、もう迷わん! 余は民が好きなのだ! 民の踊り、歌声、歓声が好きなのだ!」

ネロ「余は、余の好きなローマを守ってみせる! たとえ、何が立ちはだかろうとも……」

ネロ「余は皇帝、なのだからな!」




………………

兵士達「「「うおおおおおおおお!!!」」」

敵兵達「「「やってしまええええええ!!!」」」


キャット「シャーッ! キリがないぞ!」シュババッ‼

エリザベート「もーやだ! アタシ帰る!」ギャリィン‼


???「ふむ、あの二人が防御の要。しかし落ちるのも時間の問題と言ったところか。まだ攻撃の手を緩めるな」

敵兵A「はっ!」

???「まったく、私は軍師としての働きの方が向いているというのに。前線に出すというのはそもそも運用を間違っている」


ヒュォォォォォォォォッ……

???「……」ギギィン‼

敵兵B「か、カエサル様!? ご無事ですか!?」

カエサル「騒ぐな、無事だ。……それより、このコウモリの手裏剣。真打ち共が帰って来たぞ、戦況の激化に備えろ」



バットマン「待たせたか」

キャット「黒猫! 全く、説明責任を果たすのダ!」

バットマン「すまない、敵の出方は分かっていたが残ってもらった。黙っていた事は謝る」

エリザベート「謝罪で済んだら警察は要らないわよぉ!」

バットマン「埋め合わせは必ずする。もう少し踏ん張ってくれ」ダッ

キャット「く、黒猫!? 何処へ……」



『戦闘やめ! 引き揚げろ!!』グォォォォォォォ……


敵兵A「!? あ、あれはカエサル様の声……?」

敵兵B「ど、どういう事です!? このまま続ければ、我々の勝ちは……」

ザワザワ……ザワザワ……

カエサル「……今のは私の声ではない! 戦線維持! 混乱するな!!」

カエサル(……どういう事だ、今のは私の声に似ていたが……)



荊軻「今のは?」

バットマン「ボイスシンセサイザー。人の声を真似る事が出来る機械だ」

荊軻「成程」

バットマン「混乱に乗じて突破するぞ」

呂布「■■■■■■■―――!!!!」


カエサル「そう簡単に通すと思うか!」ザザッ

バットマン「!!」ピタッ


バットマン(……ガイウス・ユリウス・カエサル。優れた軍師であり、三頭政治の一角であった男。終身独裁官に任命されたが、その後暗殺……実に23もの刺し傷をその身に負っていたという)


カエサル「ふふ、貴様らの動きは予測済みだ。この戦線に何らかの混乱を発生させ、その間にローマ連合首都に攻め入る腹積もりであったのだろう! 残念だが私には通用せんぞ!」

呂布「■■■■■■■……」

バットマン「……」


バットマン(さて、どう退かせたものか)


荊軻「……」


呂布「■■■■」スッ

バットマン「……?」

荊軻「呂布……どうするつもりだ?」

呂布「■■■」クイッ


バットマン「……まさか、一人で相手取るつもりか?」

呂布「……」コクリ

荊軻「……呂布、平気なのか」

呂布「……」ニヤリ

呂布「■■■■■■■―――――!!!!」ゴォッ‼



荊軻「……ふ、そうか。任せるぞ、大英雄殿」

呂布「■■■■■■!!!」


カエサル「ふん、嘗められたものだな。ならばその腕が如何程のものか……」

カエサル「っ」ギャギギギィン‼

呂布「■■■■■■■■……!!!」ニィィィィ

カエサル「……ほう、成程。英雄の名は伊達ではないと、そういう事か」ギリギリギリギリ……


バットマン「任せるぞ!」ダッ

荊軻「また、必ず会おう!」

呂布「■■■■■■■……■■■■!!!」



荊軻「それで……」シュドッ‼

敵兵C「ぐわっ!?」ドシャッ

荊軻「すまない。それで、これからどうする?」タタタタ……

バットマン「……事前に話した通りに動いてくれ」

荊軻「……うまく行くと思うか?」

バットマン「大丈夫だ。もしうまく行かなかった時は、一人で逃げろ」

荊軻「私だけ逃げる? そんな事はできないぞ、ブルース」

バットマン「…………だが、無駄死にも出来ないだろう」

荊軻「……計算の話をしているんじゃない。私の心の話だ」

バットマン「なら、この計画の間だけは心を殺せ」

荊軻「…………」

バットマン「……」

荊軻「……全く、キミは」


………………

ピピピ‼ ピピピ‼


マシュ「もしもし、もしもし。こちらマシュ・キリエライトです」

バットマン『マシュ。脱出は可能か』

マシュ「! マスター! はい、可能です!」

ネロ「む、その声! ブルースか!」

バットマン『立ち直ったか』

ネロ「うむ! マシュのお陰である!」

マシュ「そ、そんな事は……」


バットマン『なら……今から五分後に脱出してくれ。内側からも混乱を波及させるんだ。
こちらも、もう少しで連合首都へ到着する。そこで会おう』プツッ

マシュ「はい!」

ネロ「し、しかしだな。余が言わずとも分かっていると思うが、この脚に縛り付けられた鉄球は外せぬのでは?」

マシュ「……大丈夫です!」ガシッ


マシュ(清姫さんが教えてくれた、縄抜けの要領で……!)ギュ……ギュ……



マシュ「っ、外せました!!」

ネロ「おおおお!!」

マシュ「では、鉄格子を……」バチィッ‼

マシュ「っ」


マシュ(電流? ……サーヴァント対策……)


マシュ「……こんな事で!!」バチィッ、バチバチバチバチ‼

ネロ「……余も手伝うぞ!」バチバチバチバチバチ……



ネロ「ぐぐぐぐぐぐぬぬぬぬぬぬ……」ブルブルブルブル

マシュ「サーヴァント、じゃ、ない人、が、無理したら、駄目です!!」バチバチバチバチバチ

ネロ「もう、やめ、なのだ。いつ、までも、誰かに、守って、もらうのは。余は、皇帝で、ある……!」バチバチバチバチバチ

マシュ「……ああああああああ!!」バチ……ギュギギギギギギギギィィィィィ‼

ネロ「……開いた!」シュウシュウシュウ……



マシュ「さあ! 装備を取り返して……」


ガシャ、ガシャ……


敵兵D「あーあ、なんで俺が捕虜の移動なんて……!? な、だ、脱走だ!!」ポチッ

ウー‼ ウー‼

ネロ「な、なんという間の悪さ……このように早く見つかってしまうとは」


マシュ(警報ボタンなんてあったんですか……!)


マシュ「武装を取り返して、脱出を……!」




ガパッ、ガパパパパ……


ロボットA『脱走者有り。ただちに対処』

マシュ「な……ロボット!?」

ネロ「むむ、なんだあの人形は!? 鉄で出来ているのか……?」


ワラワラ……


ロボットB『脱走者有り。ただちに対処』

ロボットC『脱走者有り。ただちに対処』

ロボットD『脱走者有り。ただちに対処』


ロボットE~Z『『『脱走者有り。ただちに対処』』』


マシュ「……ネロさん! ここは私が引き付けます!」

ネロ「何!? し、しかしマシュはどうする!?」

マシュ「……必ず無事で追いつきます! さあ早く! 逃げて!」

ネロ「……必ずだぞ! あとで会おう!」




敵兵D「くっ、捕虜の反乱だ! 首都に居る戦力をこの城へかき集めろ!」

敵兵E「ちくしょう、なんでこんな事に!?」


マシュ「やあっ!」シュドッ‼

ロボットA『ガガッ……』ドシャッ

マシュ「はあっ!!」ドゴッ‼

ロボットB『ギ……』ドサッ


ロボットC『抵抗は』

ロボットD『無駄です』

ロボットE『ただちに捕縛』


マシュ(どれだけ時間が稼げるでしょうか……)ジリッ


ドゴォォォォォォン……

マシュ「!?」


巨大ロボットA『脱走者、有り。ただちに対処』

マシュ「なっ……」

巨大ロボットA『対処』ブォンッ

マシュ「ぐっ」ドッガァァァァァァ



巨大ロボットA『……?』ウィィィィィィィ……

マシュ「…………」グググググググ

巨大ロボットA『抵抗は無意味』

マシュ「……ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああっ!!!」グググググググググググィィィィイィィィッ‼

巨大ロボットA『サーヴァント反応増大……対処困難』ドッサァァァァァァァン

マシュ「やあああっ!!!」ドッゴォ‼

巨大ロボットA『対処たいたいたいたいたい……』バチチチッ‼


マシュ「……やりました!」スタッ



盾「」カラーン


マシュ「!」パシッ、スチャ

マシュ(これで武装も取り返せた……! ネロさんに追いつける!)


ドガァァァァァァァァン

マシュ「……?」


巨大ロボットB『抵抗は』

巨大ロボットC『無意味』


巨大ロボットD~Z『『『ただちに、捕縛』』』


マシュ「……え……」



………………

リドラー「おいおい、随分騒がしいな。何が起きている?」

敵兵F「だっ、脱走した捕虜の反乱です! 暴れているのです! 捕らえた二人のうち、皇帝は行方が知れないとの事……」

リドラー「……まさか、ロボット達を使ってないだろうな? アレは僕専用の尖兵だぞ」

敵兵F「そ、それは……使用もやむなく……」

リドラー「何だと、この無能共め! 連合帝国の永遠を約束するのはあのロボットありきだろう、全滅させられる前に動け!」

敵兵F「は、はっ!」

リドラー「まったく、使えない奴ばかりだ……! ロムルスに連絡しなければ」ピッピッ


リドラー「もしもし、ロムルスか? 玉座の間に居るのか?」

ロムルス『ああ、そうだ。何やら騒がしいが、何かあったか?』

リドラー「何かあったか、じゃあない。キミが捕らえていた捕虜が逃げ出したんだ。反乱だぞ」

ロムルス『そうか……ふ。そうか』

リドラー「……なんでキミはそんなに嬉しそうなんだ!?」

ロムルス『いや、良い。特にこだわりが無ければ、ネロの方は好きに泳がせるのだ』

リドラー「……ち、キミのローマ贔屓もそこまで行くと病気だな。良いだろう、だがマシュは僕が拘束する」

ロムルス『ふふ……言ってなかったか? お前のコウモリ贔屓も、なかなかのものだ』



リドラー「ふん、言ってろ」

ロムルス『……リドラー』

リドラー「何だ?」

ロムルス『共に永遠を目指せた事を、誇りに思う』

リドラー「……なんだ、気色悪いな。永遠の別れでもあるまいに」

ロムルス『……そうだな』

リドラー「そうだ。僕はこんなところでは終わらない。……これが終わった後に、またローマの運営について話し合いが必要だぞ」

ロムルス『……ああ。では、そこで会おう』プツッ


リドラー(……終わらない……)

リドラー「……そうだ。知性を……天才を証明するまで、終われない……!」




………………

荊軻「はあ、はあ……こんなに走ったのは久々だ」パタパタ

バットマン「……ドクター、ローマ連合首都への潜入が成功した」

ドクター『おお! 良かった、今その周辺を解析している! ……どうやら、主力敵性反応の多くは城の中に居るみたいだ』

バットマン「成程……ではドクター、マシュの位置を……」

ピピピ‼ ピピピ‼

バットマン「……すまない。一旦通信を切る」ピッピッ

バットマン「もしもし? マシュか?」


リドラー『ハロ~。元気にしてるか、コウモリくん? マシュは少し眠ってる、代わりに僕が話し相手になってあげよう!』

バットマン「……リドラー」


バットマン「マシュは何処だ?」

リドラー『それは言えないなぁ。でもヒントなら出してやろう! いいか? それは木製だ』

バットマン「お遊びに付き合っている暇は……」

リドラー『焦るな、ヒューズを入れてしまうかもしれないぞぉ? おっと、余計なヒントだったか』

バットマン「……ヒューズ?」

リドラー『くくく、続きだ! それはとても刺激的で、座った途端に電撃が走る! これまでの人生、まるで死んでいたかのような……』

バットマン「……電気椅子か!」

リドラー『……マシュは寝てるさ、快適な椅子の上でな。だが、その睡眠はいつまで続くだろうな? 
急げバットマン、私は気が短いんだ』プツッ



バットマン「……ドクター、マシュの周辺を解析してくれ」

ドクター『了解。……暗い部屋に……一人で居るのか? 何かに座ってるな、これは……まさか、嘘だろ!? 電気椅子だ!?』

バットマン「……」


バットマン(……リドラーの言葉は本当か。ならどうする……)


荊軻「……どうする、ブルース?」

バットマン「……プランHだ」

荊軻「本当に? 『やられたらやり返す計画』を実行するのか?」

バットマン「……妙な呼び名を付けるな。プランHだ。良いか荊軻、お前の働きに賭ける」

荊軻「……分かった。ブルース」

バットマン「何だ」

荊軻「必ず生きて、後で会おう」

バットマン「……確約できない誓いは立てない」

荊軻「……キミは全く本当に!」




………………

バッ、バササササササ……スタッ……


リドラー「……来たか。バットマン」

バットマン「……」

荊軻「……」スタッ


25

リドラー「まあ座ってくれ。そこの椅子に」

バットマン「……」

リドラー「安心しろ。その椅子には何も仕掛けていない」

荊軻「……」スッ

バットマン「……大丈夫だ」スタスタ……スチャッ

リドラー「ふふ……ようこそ、バットマン。お前が来るのを待ちわびていたぞ……
さあ、さっそくゲームを始めようじゃないか。彼女の命を懸けたゲームを」



バットマン「……彼女」

リドラー「ふふ、勿論彼女だ」ピッ


モニター『』ブゥゥゥゥン……

マシュ『う……ま、マスター……』


バットマン「……マシュ」

リドラー「彼女の命は、このボタンにかかっている」ゴトリ

リドラー「じゃあ遊び方の説明に入るとしようか? ……説明が要るかな? このゲームを知っているか、バットマン?」スッ

トランプ「」バサァッ



バットマン「……これは……トランプ?」

リドラー「くっくく、お前の知識不足は不安だったが……知っていて良かったよ。なら、このゲームも知っているな……『ポーカー』」

バットマン「……!」

リドラー「そうだ。ポーカー……これをして遊ぼうじゃないか。マスクは付けていて良いぞ、ハンデ有りでも圧勝してみせよう」



バットマン「何故だ」

リドラー「何故? ああ……バットマン。天才は一を見て百を知る。このポーカーというゲームこそ、私の知性を証明するのに適したゲームじゃないか?」

バットマン「……」

リドラー「チップは10枚。ドロップは連続三回まで……さあ、始めよう」


バットマン(……ここは相手のフィールド。イカサマもし放題だろう)

バットマン(……さて、ここで勝つ事が出来るのか……)


リドラー「安心しろ。イカサマなどしないよ、私は誇り高き頭脳の戦士なんだ……何なら、バットマン。お前自身がカードをシャッフルして配ると良い」

バットマン「……」

荊軻『……ブルース』

バットマン「……一度、全てのカードを確認する」

リドラー「どうぞ、ご自由に」




………………

バットマン(……カードそれぞれに判別できるような特徴無し。全て、普通のカードだ……)

バットマン(つまり、リドラーは……本当に、頭脳で勝負を仕掛けてきている?)


バットマン「……」

リドラー「面倒だからそのままシャッフルもしてくれ」

バットマン「何が狙いだ」

リドラー「言っただろう? 私は私の知性を証明したい。私は天才になりたいんだ」

バットマン「……」




バットマン「……」シュッシュッシュッシュッ

リドラー「おお、カード配りも慣れたものだ。お前もよく遊んでいたみたいだな、バットマン」

バットマン「……」シュッシュッシュッシュッ……

リドラー「……さあ、手札を確認しようじゃないか」



バットマン(……スペードのA、ダイヤのA、ハートの4、ダイヤの5、ハートの6……ワンペアか)

バットマン「……」

リドラー「私はカード交換は不要だ。お前はどうする?」

バットマン「……一枚出そう」スッ


バットマン(ダイヤの5を出し……何が代わりにドローできる?)スッ


バットマン「……」

バットマン(……クラブの6。悪くない)


リドラー「……」ニヤリ



リドラー「では……私はチップを四つ、ビッドしよう」

バットマン「……」


バットマン(初手で四つ賭けたか……動きとしては大きな方だ。それは自信の表れか、それとも……)


バットマン「……コール。私も四枚賭ける」


バットマン(……様子を見る。これで負けても、保険はある)


リドラー「ではショウアップだな!」パラッ



リドラーの手札『ハートの8、ハートのK、ハートのJ、ハートのQ、ハートのA』


リドラー「おっと、フラッシュだな。幸先が良い、ククク……」

バットマン「……」

リドラー「んん~? そちらはツーペアか。……ふふ……」

リドラー「まあ目線で分かっていたがな、バットマン」


バットマン「……」


リドラー「視線の動きだよ、バットマン。端の二枚をチラ見、そしてドローしたカードを見た時の表情筋……簡単な予測だ。キミはツーペアで、私はフラッシュ。必ず乗ってくると思ったよ」

バットマン「……」

リドラー「ともあれ、一回目は私の勝ちだ。チップ四枚、もらうぞ」スッ

バットマン「……」


バットマン(こちらの残りチップ枚数、六枚)



………………

バットマン(……二回目。手札……ハートの2、クラブの2。ダイヤの7。ダイヤの9。スペードのK)

バットマン(……さあ、あちらはどうだ)


リドラー「……」

バットマン「……」

リドラー「……」ニヤリ


バットマン(……)

リドラー「私は二枚、交換に出そう」

バットマン「……私は一枚だ」

リドラー「へえ……」

バットマン「……」


バットマン「……ドロップする」

リドラー「……ふーん? つまらないなあ」イラ

バットマン「……」


バットマン(表情を読め。こちらのぼろを出すな。心を殺せ。怪物になれ、ブルース・ウェイン)



………………

リドラー「……さあ、今回はどうだ?」

バットマン「……ビット。一枚」

リドラー「一枚だと!? レイズだ、三枚!」

バットマン「……ドロップ」

リドラー「……そうやって逃げ続けられるのも、連続で三回までだぞバットマン……!」


バットマン(…………読め。表情を。手の震えを。筋肉の動きを。心臓の拍動を聞け)



………………

リドラー「今度はどうだ! ビット、4枚!」

バットマン「……チェック」

リドラー「チェックだと……!?」


リドラー(何を企んでいる、バットマン……罠か? それともブラフ……? ここで私にドロップを使わせる気か? そんな手には乗らんぞ!)

リドラー「レイズだ。チップを五枚に増やす!」

バットマン「コール。同数のチップを賭ける」

リドラー「……!」


リドラー「スリーカードだ!」

バットマン「フルハウス。……さあ、チップを五枚もらおうか」

リドラー「……貴様……!」


リドラー(……いや、落ち着け。今のは偶然だ。次は勝つ)


バットマン「……」


バットマン(これでこちらのチップは11枚。リドラーの残りチップは9枚)



………………

リドラー(どう来る? どう出る? バットマンは気付くか?)

バットマン(……手の震え。網膜の縮み。全てをコントロールしろ……)

リドラー(私は天才になれるのか? 目の前に居る怪物を超えられるのか?)

バットマン(怪物になれ、ブルース。敵は自分だ)

リドラー(全てのモノの中で唯一価値あるもの、それは知性を持った自分という存在だ。僕はそれを証明できるのか?)

バットマン(自分を信じるな。世界はシステムであり、自分もまたシステムの一部だ。逃れ出る足掻きではなく、世界に溶け込む諦観を持て)

リドラー(目の前の怪物の)

バットマン(目の前の異常者も)

リドラー(価値を消せるのか?)

バットマン(システムへ落とし込んでみせる)



………………

ネロ「……はあ、はあ……!」タッタッ


ネロ(何階登ったのだ? ここは城のどのあたりだ……?)


ネロ「む、大きな扉が……ふっ!」ググッ


扉「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


ネロ「あれは……」スタスタ……ピタッ


ロムルス「……よくぞ来た、ローマ皇帝よ」

ネロ「……神祖」



ロムルス「私の永遠のローマを邪魔しに来たのだな」

ネロ「……そうだ」

ロムルス「……ああ、良い目をするようになった」

ネロ「神祖。確かに、貴方はローマを作った偉大なる祖。余がもっとも尊敬する男の一人。
永遠のローマ。世界でこれほどの熱を持つ夢も無かろう」

ネロ「……だが」

ネロ「だが、神祖。浪漫を追い求める、偉大なる祖よ。貴方はひとつ、見落としている」

ロムルス「……なんだ」

ネロ「すべてのものに、終わりは来るのだ」



ネロ「余は皇帝だ」

ネロ「皇帝は、永遠などという言葉に寄りかかってはならぬ。……世界を停滞の中に落としてはならぬ!」

ネロ「たとえ神々が永遠を望んでいようとも! たとえ世界が炎にまかれる事になろうとも! 余は抵抗し、立ち上がり、決して退かぬ事を誓おう!」

ネロ「退かず、君臨し、華々しく栄えてみせよう!!」

ネロ「余こそが! 紛うことなきこの世界(ローマ)である!」



ロムルス「……!!」ニィッ

ロムルス「ならば! 覚悟は出来ていような、ネロ・クラウディウスよ!」

ネロ「無論だ! 余はローマ帝国、五代皇帝! ネロである! 道を開けよ!!」チャキッ

ロムルス「開けさせてみよ!!」バッ


………………


バットマン(……あれから数戦。互いにチップは十ずつ……)

バットマン(……そして……)


通信機『』チカチカ


バットマン(……潮時だ)


バットマン「……チップ、十枚。オールインだ」スッ

リドラー「……!!」




バットマン「…………」

リドラー「…………」

バットマン「…………」

リドラー「…………」

バットマン「…………」

リドラー「……ふ、ふふふ」

バットマン「…………」

リドラー「ふふふ、ははははははは、はははははははははは!!」



リドラー「楽しいなあ、バットマン! 今、僕は確信したぞ! たとえ世界が終わっても、この瞬間だけは消えない! 人生という名の知を使い、敵を超えようとするこの瞬間だけは!」

バットマン「…………」

リドラー「僕は! この世界に爪痕を残す! 決して消えぬ傷を! そして認めさせる! 僕は知性の戦士であったと! 知性でもって世界を跪かせた天才であると!」

バットマン「……」

リドラー「代償に世界が燃え尽きようが知った事か! 僕は自分を、永遠であると認めさせる! 絶対に! お前は道具に過ぎないんだ、バットマン!」

バットマン「…………」

リドラー「さあ、ショウアップだ……行くぞ!」


バットマン側の手札『ダイヤ、スペード、ハート、クラブのK。そしてQ』フォーカード


リドラー「……はははははは……はははははは!! 勝てると思ったんだろう、馬鹿め! 哀れな男だ、バットマン!」

バットマン「……」

リドラー側の手札『スペードの10、J、Q、K……ジョーカー』ロイヤルストレートフラッシュ


リドラー「お前は! また! 愛する者を、ジョーカーに殺されたな!」

バットマン「…………」


バットマン「ああ。楽しかった」



リドラー「……何?」

バットマン「楽しかった、と言っているんだ。リドラー。良いゲームだった」

リドラー「……負け惜しみか? それとも狂ったか?」

バットマン「そう見えるか?」

リドラー「……分かっていなかったのか? マシュ・キリエライトだよ! お前のお仲間は死ぬんだ! お前がポーカーに負け、私がこのボタンを押す! すると電気椅子の機構が働いて……」

バットマン「やればいい」

リドラー「……何だと……」



リドラー「き、貴様……状況が分かっているのか?」

バットマン「……リドラー。それは私の台詞だ」

バットマン「随分私に執着していたようだな。こんな舞台まで用意してカードゲームとは恐れ入る」

バットマン「だから、だろうな。お前を欺くのも容易だった」

リドラー「何の話だ……私がいつ騙された!?」

バットマン「……本当に、まだ気付かないのか」


バットマン「ずっと、私の隣に立っていた荊軻が……ホログラムだったという事に」

荊軻『……』ザザザザ……

リドラー「……!!」


バットマン「言ったハズだ。私は根に持つと」

リドラー「ばかな……それじゃあ、本物は何処に……?」

バットマン「……天才的な知性を持つお前なら、既に気付いているだろう?」


荊軻「遅くなったな」バタン

マシュ「ま、マスター!」タタッ


バットマン「……さあ、形勢逆転だ」



リドラー「……馬鹿め! この僕が何も策を用意していないとでも!?」


ガシャン、ガシャン

巨大ロボットB『抵抗は』

巨大ロボットC『無意味』

巨大ロボットD『ただちに殺害』


リドラー「結局のところ、勝てばいいのさ! 世界の構造なんて分かってる!」


バットマン「本性を現したな、リドラー。それ以上品格を下げない内に片付けてやる」

マシュ「マスター! 指示を!」

荊軻「やれるぞ!」

バットマン「構えろ。やるぞ」




………………

ネロ「はあっ、はあ……」

ロムルス「…………うぐっ……」ドシャッ

ネロ「……ふう!」

ロムルス「……見事であった、ネロ・クラウディウス」

ネロ「……」

ロムルス「私は、お前の中に……永遠のローマを見た。満足だ」シュウシュウシュウ……

ネロ「神祖……」

ロムルス「……さらばだ、ローマの御子。お前達の道に……祝福の、あらんことを……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

ネロ「…………」




バタンッ‼

バットマン「……無事だったか!」

マシュ「ネロさん!」

荊軻「ネロ……久しぶりに会えたな」


ネロ「……ブルース、マシュ、ケーキ……」

荊軻「ケイカだ……!」



マシュ「ロムルスさんは……」

ネロ「倒した。……なんとか、といったところだが」

荊軻「心配をさせてくれる。……だが、これにて一件落着だな」


バットマン「……ドクター、聖杯の場所は?」

ドクター『今検索してる。……ん? 妙だな、反応はキミ達のすぐ目の前だ』

バットマン「何……?」


???「……いや、いや。まさかあの二人を倒し切るとは」


バットマン「……!!」

バットマン(この声……!)



レフ「サーヴァントもどきが、よくやるものだ。冬木で目にした時よりも、多少は力を付けたのか?」

バットマン「レフ・ライノール……! 全員下がれ!」

ネロ「な、なんだ?」

荊軻「……これは……」

マシュ「ま、マスター……!」

バットマン「……!」グッ


レフ「特に、そこの目障りな黒装束だよ。まったく、虫唾が走る……だが、所詮は屑サーヴァント、そして屑のマスターだ。悲しいかな、聖杯の力に勝る事などありえない」


バットマン「……大人しく聖杯を渡せ。レフ・ライノール」


レフ「ほう。相変わらずその減らず口は治らないようだな。
聞けば、フランスでは大活躍だったそうじゃないか。まったく……お陰で私は大目玉さ」

レフ「本来ならとっくに神殿に帰還しているというのに、子供の使いさえできないのかと追い返された!」ギリィ

レフ「結果、こんな時代で後始末さ。聖杯を相応しい愚者に与え、その顛末を見物する愉しみも台無しだよ」


バットマン「……」フ

レフ「……何が可笑しい」

バットマン「その愚者さえ満足に操り切れない男が高見の見物のつもりか。三流の人形師でももっと上手くやるだろう」

レフ「……」ピキピキ

バットマン「お前などを使うとは……お前のバックに居る連中も、よほど人材不足のようだ」

レフ「……嘗めるな、俗物め。我ら72の同胞の前では、貴様など塵に等しい」

バットマン「成程、やはりグループで動いているのか。挑発に乗って数まで丁寧に教えてくれた事、感謝する」

レフ「……」



レフ「……成程、認めよう。キミ達は確かによく足掻いている」

レフ「実に醜悪な足掻きだが、認めねばなるまい! その無駄な努力は!」

レフ「フランスを救い、古代ローマを救い……特異点を修復し、人理を救う? 無理だ。キミ達では、既にどうにもならない!」

レフ「抵抗しても何の意味もない。結末は確定している。貴様達は無意味、無能!」

レフ「哀れにも消えゆく貴様たちに! 今! 私が! 我らが王の寵愛を見せてやろう!」ズズズズズズ……


バットマン(何だ? 聖杯の魔力が反応して……レフの肉体が……)

マシュ「あ……あれは……」



ネロ「なんだあの怪物は……この世のどんな怪物よりも、醜いあの姿は……」


バットマン(地面に突き立った……肉の柱……? 目玉がいくつも表面に付いた、肉の柱のような……)


レフ?「はは! ははははは! それはその通り!
その醜さこそが貴様らを滅ぼすのだ!」

ドクター『この反応、この魔力……サーヴァントでもない、幻想種でもない!
これは……伝説上の、本当の“悪魔”の反応か……!?』

レフ?「改めて、自己紹介しよう。私は、レフ・ライノール・『フラウロス』!」

フラウロス「七十二柱の魔神が一柱! 魔神フラウロス……これが、王の寵愛そのもの!」

マシュ「ここまで大量の魔力は……ドクター……!」


ドクター『フラウロス。七十二柱の魔神と、確かに彼は言った。なら、彼の言う王とは……』

バットマン「ドクター、今は憶測を走らせるべき時ではない。脅威が目の前にある。解析を」

ドクター『あ、ああ。そうだ、そんな筈はない。魔神なんて実際は存在しない!』

マシュ「……!」

ドクター『詳細はすべて不明。だが、それは危険なものだ。
来るぞ……この場で完全に撃破するんだ!』


フラウロス「死ね」ドドドドドドドッ

バットマン「……っ」ガガッ


バットマン(なんだ、この攻撃は……魔法か? ノータイムで……いや)


フラウロス「滅びるがいい」ズドドドドドッ‼

ネロ「うおっ!?」ババッ


バットマン(……まるで、あの身体から魔法から染み出しているように見える。という事は……あれ自体が意思を持った魔法陣のようなものか。流石は魔神、理解が出来ない)


バットマン「ふっ!」シュパッ


バットラング「」ヒュォォォォォンッ


フラウロス「嘗めるな!」バシィ‼


バットマン(弾く……という事は、物理攻撃が通用するという事か)


バットマン「マシュ!」

マシュ「たああっ!!」ゴシャアッ‼

フラウロス「っぐぅ!?」ユラァ


フラウロス「おのれ……」

ネロ「まだだ!」ズバァッ‼

フラウロス「うぐ……『焼却式、始動』!」ガガガガガガガッ‼


ネロ「むっ、これは……」

マシュ「危ないッ!」ガギャギャギャギャギャァン‼


フラウロス「……おのれ、生意気にも防ぐか!」


バットマン(ここだ……!)


バットマン「荊軻!」

荊軻「応!」シュドッ‼

フラウロス「……な、に……」


ネロ「そこ!」ドシュッ‼

マシュ「もう一発!」ドッゴォ‼

フラウロス「な……んだと……」ユラァ……

フラウロス?「馬鹿な、この、私、が……」ズォォォォォォォォ……


レフ「……」ドサッ


バットマン(……人間の形に戻ったか)



レフ「くっ……長時間の酷使で、既に腐敗が始まっていたとはいえ……たかが英霊如きに、退けられるとは……」ギリィ

レフ「いや、計算違いだ。そうだ、そうだろうとも」

レフ「しかし、私も未来焼却の一端を任された男だ。万が一の事態は想定済み……奥の手は取ってあるさ」


ドクター『……気を付けて! 聖杯の活性化を感知! また何かが来るぞ!』

バットマン「……!」



レフ「古代ローマそのものを生贄として、私は、最強の大英雄の召喚に成功している」

バットマン「最強の……大英雄だと?」

レフ「くく……喜ぶがいい。これこそ、真にローマの終焉に相応しい存在だ」

レフ「さあ人類(せかい)の底を抜いてやろう! 七つの定礎、その一つを完全に破壊してやろう!」

レフ「――我らが王の、尊き御言葉のままに!」

レフ「来たれ! 破壊の大英雄アルテラよ!!」

聖杯「」ギュォォォォォォォォォォッ


シュゥゥゥゥゥゥ……

???「……」

マシュ「……!」


レフ「……さあ、殺せ、破壊せよ、焼却せよ。その力で以て、特異点もろともローマを焼き尽くせ!」

レフ「ははは! 終わったぞ、ロマニ・アーキマン! 人理継続など夢のまた夢!
このサーヴァントこそ究極の蹂躙者! アルテラは英霊ではあるが、その力は――」


アルテラ「……黙れ」ズバァッ



レフ「」ドシャアッ

聖杯「」カラァン


マシュ「な……」


バットマン(馬鹿な……アルテラが、レフを両断した?)


聖杯「」コロコロ……

アルテラ「……」スッ


マシュ「せ、聖杯を……吸収、した?」

バットマン「構えろ、危険だ……」


アルテラ「……私は……フンヌの戦士である。そして、大王である」

アルテラ「西方世界を滅ぼす、破壊の大王」

アルテラ「……破壊の……!」キィィィィィィィィン



バットマン(何か来る……これは、不味い!)


バットマン「『令呪を以て命ずる!』マシュ、宝具を展開しろ!」

マシュ「はい!」

アルテラ「お前達は言う。私は、神の懲罰なのだと。
――神の鞭、なのだと」


アルテラ「フォトン・レイ」ゴォォォォォォォォォォォォッ‼


マシュ「ロード・カルデアス……!!」ドォォォォォォォォォッ



バリィィィィィィィィン





………………


バットマン(……これは……)

バットマン(ここは、何処だ……私は、何故横たわっている?)

バットマン(……そうだ、私は、……アルテラの、宝具を……)


バットマン「……うおぉぉぉぉぉぉ……!」ドシャア

バットマン「ここは……」ムクリ

バットマン(……城があった場所、なのか……跡形もない……)


ピピー‼ ピピー‼



バットマン「もしもし、ドクター……アレから何分経った?」

ドクター『ブルース! ブルースくん! ああ良かった、生きてたんだね……! まだ二分ほどしか経っていない! でも、マシュのバイタルサインが極端に弱まってる! 彼女を見つけてくれ!』

バットマン「……! 了解した」


バットマン「マシュ! 何処だ!」ガシッ、ドサッ


バットマン(瓦礫……アルフレッド……いや、マシュは生きている。必ず生きている、筈だ……)


ドクター『ブルース、キミの後方三メートルの地点だ! そこにマシュの反応がある!』

バットマン「分かった……」ガシッ、ドサァ……

マシュ「……っはあ……っは……」カヒュッ、カヒュ……



バットマン「……マシュ。マシュ、聞こえるか」スッ

マシュ「ま、……すたー……」ヒュー……ヒュッ

バットマン「『令呪を以て命ずる』。回復しろ、マシュ」

マシュ「……ご、ほっ……」ブル、ブルブル……

バットマン「……ドクター! マシュの傷の治癒が……治らないのか?」

ドクター『……! これは……アルテラの「破壊した」という強い認識が、マシュの傷を呪いじみて覆ってる……! 治癒速度が極端に遅れてしまう!』

バットマン「……そのアルテラは何処だ」

ドクター『い、今は……マッシリアへ向かっている。多分、ネロの都へ向かい……そこを滅ぼすつもりだ!』

バットマン「……成程」


バットマン(……何を躊躇っている。ブルース・ウェイン)

バットマン(メタヒューマンと戦うのは……初めてじゃないだろう)


バットマン「……今、動けるのは私だけのようだ。私が向かう」

ドクター『!?』

マシュ「!?」

ドクター『駄目だ。ブルースくん、それだけは絶対に認められない!』

バットマン「……すまない、ドクター」プツッ

ドクター『ブルースく』プツン……



マシュ「ます、たー……やめて、ください……」ヒシッ

バットマン「……マシュ。ここで横になっていろ。動くな。
……時間は稼ぐ。もし私が死んだら、グランドオーダーの残りは頼む」

マシュ「だ、め……」

バットマン「……」スッ




マシュ(また、思い違いをしていた)

マシュ(マスターは、人の死を悲しまないんじゃない)

マシュ(人の命を、道具として見る事に躊躇いが無いだけ……たとえそれが、自分の命であっても)


マシュ「ます、たー……いかないで……いか、ないで、ください……」ヒューッ、ヒューッ

バットマン「……」スタスタ



………………

ドクター「ブルースくん? ブルースくん!?」

レオナルド「どうしたんだ、ロマニ」

ドクター「ブルースくんが……一人でアルテラを止めに」

職員達「「「はああ!?」」」ガタタッ

所長「!? な、なんで止めないのよ!? 死ぬに決まってるでしょ!?」

ドクター「ぼ、僕だって止めようとしたんです! でも、ブルースくんが通信を切断して……」



所長「…………いいえ、アレよ。非常通信。令呪用のチャンネルを使って、念話形式で話すアレをしましょう」

職員A「め、名案です! それにしましょう!」

職員B「そうと決まったら早速変電を……あ、あれ?」カタカタカタ、カタ、カタ。

職員C「どうした?」

職員B「……何か、おかしい。制御装置が、言う事を……」エラー‼エラー‼エラー‼


モニター『』ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……



モニター『ハローハロー、見えるかな? ようやく捕まえたぞ、カルデアの皆』

ドクター「……なんだこれは……」

レオナルド「……緑の、巨大な、ハテナマーク……?」

モニター『これが流れるって事は、私はこっちでは死んでしまったのだろう。だがまだだ、まだまだ天才の証明は終わらない!』

所長「……ふざけてるの!? はやく通常の状態に戻して!」

職員B「そ、それが……なにこれ、ハッキング……!?」カタカタカタ、カタカタカタ、カタ


モニター『さあ……』


リドラー『なぞなぞの時間だ』

今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました


 夢以上の宝は無い。分かっていたつもりだった。

 だが、私は自分を誤魔化していた。民こそ至高の宝だと言いながら夢を崇め、世界をないがしろにしながらローマの永遠の存続を願った。

 矛盾だらけだった。私の隣に立っていた怜悧な男は、何度も私を笑った。

「キミは馬鹿だ、ロムルス」

「だが、私には夢があるのだ」


私の返答はいつも決まっていた。その度に、奴はくたびれたように首を振った。


 夢など無駄だ。そう言いながら、奴は私に手を貸した。

 ……本当は、私も気付いていたのかもしれない。夢など、世界を壊すだけの凶器なのだと。




 頭脳以上の宝は無い。そんな事は分かり切っていた。

 ロムルスも、結局のところは馬鹿だったのだ。浪漫などという存在しないものを追い求め、自ら命を絶つような真似をした。

 ……奴は、本当に馬鹿だ。熱に取りつかれ、夢の行方を見失い、敵に斬られる事を選んだ。


 人間は熱無しには生きていられない。僕はその点賢いんだ。最低限の熱量だけで生きていける。いつもそうしてきた。熱など、疎ましいだけ。

 ……だから、奴の持つ夢は、眩し過ぎた。


「キミは馬鹿だ、ロムルス」


 僕はいつも言っていた。言っていないと、いつか自分の世界が壊れてしまう。僕の世界はそうではなかった。いつも雨が降りしきる、闇の世界だったのだから。

「だが、私には夢があるのだ」


 奴の返答はいつも決まっていた。その度に、僕はその愚直さから目を逸らした。



 ……本当は、僕も気付いていたのかもしれない。永遠とは、自分の夢でもあるのだと。


 取り返しがつかない時間の中で、彼は緑のシルクハットをかぶり直した。

「……さらばだ」

 誰も聞いていない別れの言葉を呟き、彼はニヒルな笑みを口元に灯す。その身体がノイズで霞んだ。





………………

職員A「不味いです! 存在証明式が途絶えた事により、二人の『輪郭』がどんどん時流に溶けて行く!」

ドクター「なんだ、これは……! ウィルス!? なんで急に!?」

レオナルド「……駄目だ、カルデアのAIも完全に機能停止している。早く復帰させなければ、ブルースとマシュだけの問題ではなくなる!」

所長「なんとかしなさい! 全ての機器を手動に切り替える事は!?」

ドクター「無茶な! ただでさえ人材不足も甚だしいのに!」

リドラー『チチチ……そんじょそこらのウィルスなんかと一緒にしてもらっちゃ困るなぁ。
僕は元々電脳系のサーヴァントだったんだ。キミ達の使う周波数から、カルデアを探知……そして、こうやってハッキングしてる。簡単な仕事だったよ』



所長「電脳系の……?」

リドラー『そうとも、僕の得意分野さ。……とまあ、身の上話はここまでにしておこう。本題だ。
なぞなぞ遊びをしようじゃないか。楽しい楽しいお遊びを……な』

ドクター「冗談じゃない、お遊びだって!? こっちは人命がかかってるんだ!」

リドラー『勿論それも計算の内だ。命をかけたお遊びほど、熱中できるものも無いだろう?』

ドクター「……!」

レオナルド「……付き合うしか無さそうだ。そのなぞなぞに答えたら、カルデアは返してもらえるのかな?」

リドラー『当然だ、そこはフェアに行こうじゃないか』


職員A「……コンピューター補助無しでの存在証明式を開始します! ほんの少しの延命にしかなりませんが、やってみます!」

レオナルド「私も手伝おう。かなり大雑把な計算になるが、少しは保つハズだ」

職員A「はい!」



リドラー『いいかな? では第一問!』


ドクター「こんな事馬鹿げてる……!」

レオナルド「ああ、そうだ。だが常識で挑んでいたら超えられない問題もある。……やるしかない」サラサラサラサラ……カタカタカタ、タン。

職員A「…………」カリカリカリカリカリカリカリカリ……

リドラー『……それは8より多い。でも9には届かない。さあ、どんな動物だ?』



所長「8……より多い、9には届かない!?」

職員B「ええーと、えーっと……8,5……8,6……」ブツブツ

職員C「……うーん……」

ドクター「……9には届かない……9には……」ブツブツ

リドラー『さあ急げ、制限時間付きだ! チクタクチクタク……あと一分!』

ドクター「馬鹿な、あと一分だって……!?」

職員C「……9……9には届かない……」



職員C「……ああ、成程。クジャクだ」

ドクター「へ?」

職員C「九弱で、クジャクです」

ドクター「……ああ!!」

リドラー『大正解だ! だがまだまだここからだぞ、次の問題!』


職員A「……不味いです、そろそろレイシフト先の二人の存在に矛盾が……」サラサラサラサラ……

レオナルド「分かってる。存在証明式を取り戻すためにも、手早く終わる事を祈ろう」カタカタカタ、カタン




………………

ブーディカ「……」


ブーディカ(もう、戻れないよね。分かってる……ここで、どうする事もできずに、傍観者のまま……居るしかない)


???「フォウ」ピョコ

ブーディカ「……アンタ……ここで何してんのさ。……さっさとご主人様達のところへ帰りなよ」

フォウ「フォウ、フォーウ……」スリ

ブーディカ「……」


ブーディカ(……ごめんね、マシュ……ごめんね、ブルース……)


ドッサァァァァァァァン‼

ブーディカ「!?」バッ

フォウ「フォーウ!?」



スパルタクス「……完全復活! 強大な圧政の下、一度は敗れ去ったが! そんなものは過去の事である!」ドスドス

ブーディカ「スパルタクス……アンタ、生きてたの……」

スパルタクス「何、自分で引き起こした爆発のせいで土の下へ埋まっていただけである! ……キミはそこで何をしている?」

ブーディカ「……別に。行きなよ、アンタ。マッシリアで皆待ってるよ」

スパルタクス「何故来ない? 仲間に何も伝えない沈黙は時に圧政足りうる……」

ブーディカ「……アタシはもう、戻れないから……」

フォウ「……」


スパルタクス「……ふむ……何かしらの致命的な過ちを犯した後と見る!」

ブーディカ「……そーだよ、そうなの。もう戻れないって……あんだけ自分勝手な事したらさ」

スパルタクス「しかし! 反抗者は時に道を違える事もあろう! だがそれでも、立ち上がるからこそ反抗者なのである!」

ブーディカ「……アタシ、もう反抗者じゃないよ。それに……アンタみたいに、反抗が上手く行けば良かったけど……反抗して、事態悪化させた馬鹿なんだから……」

スパルタクス「……」



スパルタクス「……初めから全てが分かっている者など居ない」

ブーディカ「……」

スパルタクス「圧政の下、もがき苦しみ、世界を変えようと動くのは素晴らしい事だ。反抗と反撃、そして結果。残酷ながら、世界には常に結果が付いて回る」

ブーディカ「……」

スパルタクス「だがだからこそ! まだ今、その結果は出ていないと見える!」

ブーディカ「……うるさいな……! アンタに何が……!」

スパルタクス「分かるとも、我が同盟者! 反抗者よ、成功する反乱など一握りだ!」


スパルタクス「だが、勝てる戦いにのみ挑む者を、果たして我々は反抗者と呼べるのか!? いや、人間とも呼べまい!」

スパルタクス「それは機械だ! まごう事無き圧政の業! 我々は違う! 証明してみせよう! 我らは圧政者ではなく、人間なのだと!」

ブーディカ「だって! アタシ……アタシ、世界が大変な時に、自分の欲を……」

スパルタクス「自分のために戦えない者が! 世界など救えるものか!!」

ブーディカ「……!」



スパルタクス「立つがいい、女王よ! 世界はまだ終わっていない!」

ブーディカ「……はは。アンタの勢い、本当に羨ましいよ……」

スパルタクス「……行くぞ!」

ブーディカ「……分かった。行こう」カチャリ



………………

呂布「■■■■■■■――――!!!」シュウシュウシュウ……

カエサル「ふ、私にかかれば……む?」シュウシュウシュウ……

呂布「……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

カエサル「……何故私まで消え始めて……ああ、そうか。もう『奥の手』を出したのか、奴は……」シュウシュウシュウ……

敵兵A「か、カエサル様!?」

カエサル「うるさい、騒ぐな。……良いか、この後に怪物が来るが、決して立ち向かうな。ここから逃げ出せ」シュウシュウシュウ……

敵兵A「は、はい……?」

カエサル「……全軍撤退。家族の元へと帰るがいい。世界は終わった」シュゥゥゥゥゥゥ……



キャット「……なんだ? 敵が……退いて行く……?」

エリザベート「やったんじゃない? ふー、ようやく休めるわ!」

キャット「馬鹿、もう少し空気を感じ取るのダ。先程からやけにピリピリした殺気が伝わってくる……」

エリザベート「そんなワケ……な……い……何よ、この魔力……」

キャット「……アレは……」



アルテラ「……」ズバッ

敵兵A「あぎゃ……」ドシャッ

敵兵B「あ……」ゴシャッ


キャット「……撤退する兵の波の向こう。何か来る」

エリザベート「これ……これ、ソイツの魔力なの? 異常すぎて、鳥肌が……」

キャット「……この嫌な魔力。聖杯を取り込んでいるようだワン」


アルテラ「……」スタスタ


キャット「……やれるか、ドラゴン娘」

エリザベート「……死ぬ気なら、数分は足止めできるかもね」

キャット「GOOD。ならばぶちかますとしよう」




………………

バットマン「……」ダッダッダッダッ


バットマン(あれから恐らく十分ほど。全力疾走のまま追っているが、追いつけるか……)

バットマン(……!)


バットマン「これは……」



敵兵A「う……うぐ……」

敵兵B「……たすけて、たすけてぇ……」

バットマン「……」


バットマン(連合ローマの兵士達か……本当に見境なく襲っているようだな)

バットマン(……やはり放ってはおけない。このままでは、マッシリアも危ない)


ドッゴォォォォォォォォォォォン……


バットマン「!!」

バットマン(あれは……)



キャット「ぐぬ……やはり、力及ばずか……」シュウシュウシュウ……

エリザベート「……」シュウシュウシュウ……


アルテラ「……」

アルテラ「……私の、行く手を阻むからだ」クルッ


アルテラ「……」スタスタ

アルテラ「……」スタスタ……ピタッ


バットマン「……」

アルテラ「……お前も行く手を阻むのか」チャキリ



バットマン(……周囲の地形は観測済み。そして目の前の敵の弱点も把握済み。準備も済んでいる)

バットマン(あとはどれだけ上手く立ち回れるか……)


アルテラ「私は、フンヌの戦士である。そして、大王である。西方世界を滅ぼす、破壊の大王である」

バットマン「……」スッ


バットマン(アルテラ。フン族の王。西欧世界に巨大な帝国を築き上げ、大王を自称し……)


アルテラ「……それでもなお、立ち塞がるか」


バットマン(……ローマ帝政末期のキリスト教信者からは、神の災い、神の鞭と呼ばれた。成程、彼女ほどこの世界を滅ぼすのに適した英霊も居まい)


バットマン「……それが役目なら、そうするまでだ」



アルテラ「人間は、機械にはなりえない。貴様は、怪物にはなれん」

バットマン「……試してやる。来い」

アルテラ「……哀れな男だ」ヒュォンッ


ゴガァァァァァァァァァァァァァァァッ‼


バットマン「!!!」ギャギャギャギャギャギャ……バガァァァァァァァッ


バットマン(馬鹿な……ブレーサーが、一発で……!?)



アルテラ「次は首だ」ヒュオッ

バットマン「くっ」バッ


バットマン(まだ右腕のブレーサーは残っている……立て直しを、)

アルテラ「……」ドゴッ

バットマン「うっぐぉ……!?」ドドドドドドドドド……


バットマン(この、馬鹿げた、膂力……!)ゴロゴロ……



アルテラ「……」スタスタ


バットマン(今だ!)ピッピッ

地面「」ドッゴォォォォォォォォォォォン‼


バットマン「……どうだ」


バットマン(リドラーの地雷の一時停止を解除……少しは効いたか?)


煙「」モクモク……ユラッ

アルテラ「……」スタスタ


バットマン(やはり無理か)




バットマン「ふっ!」ヒュッ

アルテラ「……」パシッ

バットマン「……くっ!」グッ、グッ‼

アルテラ「フン」ブォンッ‼

バットマン「うっ……ぐあ!?」ドッサァァァァァァァン


アルテラ「そろそろ決着を付けてやる」カチャリ

バットマン「ごほっ、ごほ……」



アルテラ「死ね」ブンッ


バットマン「……!!」プシューッ、ゴロゴロッ

アルテラ「!?」ガッシャァァァァァン‼


バットマン「……どうだ。効いたか」ムクッ

アルテラ「何だ……なにを、噴射した……」ヨロ

バットマン「……さあ、何だろうな」




バットマン(アルテラ。453年、急死……死因は……)


(((この酒はこの店で一番上等なものです、よろしければ)))


バットマン(……死因は酒。こればかりは荊軻に礼を言わなければな)カチャリ


アルテラ「……こんな……これは……」ヨロヨロ

バットマン「……そろそろ反撃させてもらうぞ」



………………


マシュ「……」ユラユラ


マシュ(……気を、失ってた……? 誰かに、運ばれて……)


荊軻「ああ、目を覚ましたか。おはよう、マシュ」

マシュ「……荊軻、さん」



荊軻「はは、友に置いて行かれる辛さは分かっている。動けないなりに、少しでも……追いつきたくてな……」ズル、ズル……

マシュ「……! 荊軻さん、脚が……」

荊軻「……全く、生前と同じじゃないか、これじゃあ。目的を一歩前にして、死にそうとは」シュウシュウシュウ……

マシュ「……」


荊軻「……マシュ。最後に、私の魔力を持って行ってくれ」

マシュ「……それは……」

荊軻「キミと共に、戦わせてくれ。……あの不器用な男は、放っておけない」

マシュ「……」

荊軻「……頼む。私を、二度も失敗した女にさせないで欲しいのだ」

マシュ「……」



シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

マシュ「……」

マシュ「……」スクッ


マシュ(……いける。走り出せる。間に合う)


マシュ「今行きます、マスター……!」ダッ




………………

職員A「……」カリカリカリカリカリカリカリカリ

レオナルド「……」サラサラサラサラ……カタカタカタ、タン


リドラー『三問目だ! キミは家を飛び出し、3回左折して帰ってくる。そこにはマスクを被った二人の男が待っていた。さあ、キミの職業は何だ?』

ドクター「……家を飛び出して……」

所長「……三回左折……」

職員B「……マスク二人……」

職員C「……」


リドラー『チクタクチクタク、あと40秒だ』

職員C「……」

ドクター「家……ホーム……野球だ! 野球選手だな!?」

リドラー『ぴんぽーん、正解だ。賢いな、だが次の問題からはもっと厳しくなるぞ』

ドクター「まだあるのか……いい加減にしてくれ!」


職員A「……」カリカリカリカリカリカリカリカリ……ツー

職員B「ちょ、ちょっと! 鼻血が……」

レオナルド「……無理をしちゃ駄目だ。脳は大切にしなよ、倒れられたら困るんだ」サラサラサラサラ……

職員A「……ブルースさん達も命懸けで戦ってるんです、俺達が命を懸けない理由が無い……!」カリカリカリカリカリカリカリカリ

職員B「だからって……!」

職員A「……鼻血で済んでる内は可愛いものさ……!」カリカリカリカリカリカリカリカリ


リドラー『ふふふ、らしくなってきたな? 命のぶつかり合いだ。もっとも、僕のは命ではなく存在意義だが……』

ドクター「……」

リドラー『……では、五問目だ』



………………

バットマン「ふっ!」シュドッ‼

アルテラ「うっぐ……」フラフラ……ブンッ

バットマン「っ……」バッ、ドゴォ‼

アルテラ「かはっ……」ドサッ

バットマン「……」ガシッ、シュドッ

アルテラ「っぶ……」

バットマン「……」シュドッ、シュドッ、シュドッ、シュドッ……

アルテラ「が……かは……」



バットマン「……」シュドッ、シュドッ、シュドッ……

アルテラ「……」パシッ

バットマン「……!」グッ

アルテラ「……ふっ!!」ブォンッ‼

バットマン「うっぐ……」ドシャァァァァァァン……

アルテラ「……」ムクリ

バットマン「……!」ムクッ


バットマン(まだ噴射の効果は続いている……ここでケリをつけなければ!)ダッ




 夕暮れを受け、輝く剣が振り抜かれた。紙一重でそれを躱しながら、バットマンはアルテラの懐へと滑り込む。

「ちっ」

 アルテラは未だに身体のコントロールを全て取り戻せない。隙だらけの胴体へ、小ぶりなフックが叩き込まれた。

 振りに見合わず身体が浮くほどの衝撃に、彼女は目を見開く。黒い騎士は身体を回転させ、肘打ちで腹部を叩く。くの字に折れ曲がる体、ダメージに呻き声が漏れる。

 バットマンは流れるように蹴りを繰り出した。だがその足首が掴まれる。

「嘗めるな」

 アルテラ。そのまま渾身の力で振り回し、騎士を地面へと叩き付ける。内臓が爆発するような感触。白く眩む視界。バットマンは歯を食い縛って意識を保つ。

 破壊の大王が剣を振り上げる。しかし彼はその顎を蹴り上げ、遠く森の木へ向けてグラップネルガンを発射した。

 巻き上げ機構が作動、コウモリが飛んで行く。しかしその足は掴まれたままだ。アルテラはバットマンの脚にしがみついたまま、剣を振り上げ、振り下ろした。火花が散り、神の鞭と黒い騎士が落ちて行く。


 地面に墜落。バットマンはいちはやく起き上がり、倒れたままのアルテラへ向かって行く。だが彼女も立ち上がり、剣で迎え討つ。ブレーサーと剣がぶつかり、甲高い音が鳴り響く。

「諦めろ」

 アルテラは冷たく言い放つ。小細工の効果もそろそろ切れる。目の前の男は死ぬ。それはどちらも、分かっているハズだ。

 だというのに、何故この男は表情を崩さない?

「……この位置は、計算通りだ」

 コンピューター操作音の直後、彼らの足元の地面が爆発した。





ドガァァァァァァァァ……

バットマン「っぐあ……」ドサァッ‼


マスク「」パキ、ボロッ……


ブルース「はあ、はあ……」ツー……


ブルース(どうだ……やったか?)



煙「」モクモク……


スタスタ


アルテラ「……」スタスタ


ブルース「……!」


アルテラ「よく戦った。だが、所詮はこの程度」

アルテラ「私は破壊の大王だ。ただの人間が、私に歯向かう。それ自体が愚かな事」

アルテラ「……もう、策もあるまい。たとえ貴様が億の策を用意していようと、全て破壊する」

アルテラ「……さあ、顔を上げろ。たった一人で立ち向かってきた勇者よ。貴様の顔は覚えておいてや……」


「一人ではないっ!!!」



アルテラ「……?」


「その者は! 一人ではない!」

ブルース「……」

「ここに居るぞ、そやつの仲間が! 余を忘れたとは言うまいな!」

アルテラ「……何者だ。名乗れ」

ネロ「余こそは! ネロ・クラウディウスである!」



アルテラ「……貴様か、皇帝よ。いずれ世界に不要とされる者よ」

ネロ「ふっ、その台詞には慣れたぞ! 余はどれだけ打ちのめされようが、絶対に皇帝である事をやめん!」

アルテラ「貴様が何者であろうと、誰が立ち塞がろうと、世界は破壊する。それが私の役目だ」

ネロ「そうはさせん。世界には花が、歌が、美が満ち溢れている! 護るべき美だ!」

アルテラ「……私はフンヌの戦士である。大王である。破壊の、大王である……!」

ネロ「これより先は、余のローマである! 退かんぞ!!」



アルテラ「ならば、破壊する。貴様も……!」ブォンッ‼

ネロ「ふっ! ……その言葉には、まるでお前の意思が感じられんぞ、アルテラ! 本音を聞かせるがいい!」ギャリィン‼

アルテラ「……本音……私は、フンヌの戦士であり……」

ネロ「そらっ!」ヒュンッ

アルテラ「っく……私は……破壊の大王である……!」ズサァァァッ

ネロ「……お前の中には矛盾がある。きっと止めてみせるぞ、アルテラ」チャキリ

アルテラ「……矛盾など、無い。私は、破壊する。それだけの存在だ……!」グォォォォォォォォォォォッ


ブルース(不味い、アレは……マシュの宝具を破った、アルテラの……!)

ブルース(だが、対抗策が無い……!)



アルテラ「『その文明を粉砕する』……!」キィィィィィィィィィ……!

ネロ「……!」


ネロ(……今、背にはマッシリア! 幾百もの民の命! 避ければそれが消える! そんな事は許されぬ!)

ネロ(余が、受け切る! 必ず!)


ブルース「ネロ! 避けろ! 無茶だ!」

ネロ「……無茶は百も承知だ、ブルース。だが、余は皇帝なのだ。ここで避ければ、その権利を失うだろう」

ネロ「……さらばだ」ニコリ


ブルース(馬鹿な! 何か手はないのか……!?)


アルテラ「フォトン・レイ!!」グォォォォォォォォォォォッ


「……『チャリオット・オブ・ブディカ』!!!」ドッガァァァァガガガガガガガガガガガガガガガギギギギギギギギギ‼



ネロ「なっ……」

ブーディカ「…………!!!」ギャギギギギギギギギギギィィィィィィィィィ‼

ネロ「ぶ、ブーディカ!?」

ブーディカ「……勝手に死なれちゃ、困るんだよ……! 一発くらい殴らせて欲しいしさ!」ガガガガガガガガガガガガガガッ‼

ネロ「な、殴る……!? 余を!?」

ブーディカ「……あーもぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」ギギギギギギギギギギ……シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……


アルテラ「……馬鹿な。私の宝具が……」

ブーディカ「代わりにアンタをぶん殴る。良いよね、やるよ」ツカツカ

アルテラ「くっ……」ガシャリ


スパルタクス「圧!! 政!!」ドゴォ‼

アルテラ「!?」ドシャアアアアア‼



スパルタクス「ははは、大王とは圧政の象徴。我が反抗の矛先に相応しい」

アルテラ「……何を……!」

ブーディカ「やああっ!」ヒュオンッ‼

アルテラ「くっ」ガキィン‼

スパルタクス「フ ン !」ゴガァァッ‼

アルテラ「っぐ……!」ドシュゥゥゥゥ


ネロ「……なんだかよく分からんが、勝機に違いなし! 一気に攻める!」ダッ



アルテラ「……まだだ……!」ギュオッ‼

スパルタクス「むぐっ!?」ドシャァッ

アルテラ「はあっ!」

ネロ「くっ!?」ガギッ、ドサァァァァァァ

アルテラ「潰れろ!」ブン‼

ブーディカ「ぐぅっ!?」ガギ、ギリギリギリ……



アルテラ「私は……破壊の大王である。それ以外の役目などありえない」ギリギリギリギリギリッ

ブーディカ「……なら、アタシは守る側だ。ローマの巻き添えでブリタニアまでやられるのは御免だからね」ギリギリギリギリギリッ

アルテラ「誰も、何も、守れはしない。美しき蝶も、楽しき調べも、愛しい人さえ。全てはいずれ、無に帰る。私は時期を早めるだけだ」

ブーディカ「…………ならその美しさに触れなよ、破壊の大王サマ! その美しさの、楽しさの、愛しさの裏にある汚い部分に触れろってんだ! 全部知った気になって、世界を滅ぼすなんてそんな事……させるか!」

アルテラ「……すべては、無駄だ!」ググッ‼

ブーディカ「うっ……」グググググ……


ブーディカ(重い……! 支えきれない……)



パシッ

グググググッ‼

ブーディカ(……なんだ? 急に、軽く……)


ネロ「むうぐぐぐぐぐぐ……」ギリギリギリ……

ブーディカ「アンタ……」

ネロ「……お前は一人ではない、ブーディカ……余も、共に戦っているのだ」

ブーディカ「……!」


ブーディカ(…………)


ブーディカ「……フン、ならせいぜい足手まといにならないようにね!」グググググッ

ネロ「無論である!」ググググググ……


アルテラ「おのれ……」ギリギリギリギリ……


アルテラ(……!)


アルテラ「っ」ギャリィン、ババッ


「たああっ!!」ドシャアアアア‼


ブーディカ「!! アンタ……」

ネロ「おお! 来たか!」


マシュ「遅くなりました!」



………………

リドラー『……いやはや、正直ここまでやるとは思っていなかった。驚いてるよ』

職員A「……っ……」カリカリカリカリカリカリカリカリ……

レオナルド「……そろそろ無理だ。あちらの世界での存在矛盾が致命的になってくる」サラサラサラサラ……カタカタカタ、タンッ


リドラー『では、最後の問題といこうじゃないか』

所長「ようやく……」

職員C「……」

ドクター「最後の問題……」


リドラー『……むかし、むかーしのお話だ。ソロモン王が、忠実なる家臣へ命令を下した。
「幸せな男が見れば悲しくなり、悲しむ男が見れば幸せになる」そういう指輪を持ってこいと。
数か月後、その家臣は見事言われた通りの指輪を持って帰った。……さあ、問題だ。その指輪には何と書かれていたでしょう?』

ドクター「……、……」


所長「……ソロモン王……指輪……何と書かれていたか?」


リドラー『制限時間は三十秒だ。よく考えるがいい』

所長「こんなの分かる訳ないじゃない! ソロモン王に直接聞きなさいよ!」

職員C「落ち着いて下さい所長! よく考えて!」

所長「落ち着いてるわよ! ……いえ、ごめんなさい。考えるわ……ああもう、なんで……!」

職員B「……幸せな男が見れば悲しくなり、悲しむ男が見れば幸せになれる……?」

ドクター「……」


リドラー『25、24、23……』




………………


アルテラ「……」


アルテラ(……この数。負ける)

アルテラ「……ならば。ここから全魔力を込めて撃ちだすまで」スッ


ネロ「……? なんだ、奴は……何処へ剣を向けている??」

ブーディカ「……海?」


ブルース(……この、角度は……!!)


ブルース「注意しろ! アルテラは……海峡を隔てて、首都ローマへ宝具を放つつもりだ!」

マシュ「な……!?」

アルテラ「『命は壊さない』」グォォォォォォォォォッ……



………………

リドラー『さあ、答えられる者は居ないか!? いなければ、二人の勇敢な戦士が死ぬまでだ』

職員C「……くそ、全然わかんねえ……!」ガリガリガリ

職員B「幸せな人が見たら……って一体なんなの……」

所長「……くっ……」ギリィ

ドクター「……」


ドクター(……でも、二人の命を救わなきゃ。僕は……)グッ……


レオナルド「……?」



………………

アルテラ「『その文明を粉砕する』」

ブルース「マシュ! 宝具を展開しろ!」

マシュ「っ、はい!」


マシュ(一度は破られた……でも、やってみせる!)

マシュ「仮想宝具、展開!」

ブーディカ「守ってみせる……!」

マシュ「ロード・カルデアス!」

ブーディカ「チャリオット・オブ・ブディカ!」


アルテラ「フォトン・レイ」ギュィィィィィィィィィィィィッ‼




ブーディカ(……ああ。こりゃ、駄目だ。受けきれない)

ブーディカ(……でも、マシュを庇えば……何とか軌道は、逸らせるかな)スッ


マシュ「……? ブーディカさ……」

ブーディカ「じゃあね、マシュ。……元気で、ね」

マシュ「……!! まっ……」


ゴォォォォォォォッ‼



ブルース「!!」

ブルース(軌道が逸れた……! ローマを逸れ、海洋の方へと飛んで行く……)


マシュ「……ブーディカ、さん……」ドサッ


アルテラ「……そうか。またしても、私には破壊できなかったのか」シュウシュウシュウ……

アルテラ「……ふ……」シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……


聖杯「」カラン……

マシュ「……聖杯、確認。回収します」



ブルース「……」シュウシュウ……


ブルース(……何だ? 身体が……いや、世界が……)グニャリ


マシュ「……? こ、これは……」シュウシュウ……グニャリ

マシュ「お、おかしいです、何かが……」シュウシュウ……


ブルース「……これは……」シュウシュウ……



………………

ドクター「トゥー・シャル・パス」

リドラー『……』

ドクター「……彼は……彼は、家臣に指輪を持って来させた。そうして、見てみた指輪には……こう彫ってあった。トゥー・シャル・パス。全ての事は、いつか終わると」

リドラー『……見事だ』プツッ




モニター『congratulations! congratulations! congratulations!』


職員C「……や……」

職員B「やった……」

職員A「喜んでる場合じゃない! 早く! 存在証明式を再稼働!」

職員B「あ、ああ! しないと!」


レオナルド「……」

ドクター「……」

レオナルド「……よくやったよ、ロマニ」

ドクター「……」



職員C「……駄目です、やっぱり遅すぎた! レイシフトが強制終了へ向かってる!」カタカタカタ、カタカタカタ

レオナルド「おっと、それってかなりヤバイ状況だね」カタタタタタタタタタ

ドクター「……もしもし、もしもし! こちらカルデア! ブルースくん、マシュ! 聞こえるかい!?」



………………


ドクター『もしもし、こちらカルデア! ブルースくん、マシュ! 聞こえるかい!?』

マシュ「……ドクター! はい、聞こえます!」シュウシュウ……

ドクター『これからそちらの世界へ「穴」を開く! 身体が崩壊する前にその穴へ飛び込んでくれ!』

ブルース「了解」

ブルース(……果たして、二人とも入れるか)



ネロ「どうしたというのだ、そのか……」ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……


ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴ……


マシュ「……消えていく……人が……世界が……」

ドクター『聞こえるかい!? 自己を強く認識して!』

ブルース「……」


穴「」グォンッ


ドクター『今開いた穴がそれだ! 飛び込んで!』



マシュ「今、いきます……!?」ググググッ

マシュ(か、身体が……重い……)


ブルース「くっ……」ズシ……ズシ……

ブルース(……やはり、無理か……)




ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……

マシュ「このままじゃ、先に世界が崩壊してしまう……!」

ブルース「……」ガシッ

マシュ「え……ま、マスター……?」

ブルース「さらばだ。マシュ」ブンッ

マシュ「きゃっ!?」グォンッ


穴「」シュポッ……シュゥゥゥゥゥン


ブルース(……閉じたか)

ブルース「……」


ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……


………………


マシュ「っ」ガバッ


ドクター「! マシュ・キリエライトが帰還!」

所長「……!」


マシュ「……ドクター、マスターがまだ!」


職員A「そ、そんな……まさか、ブルースさんはまだ、あっちに……?」

職員B「……だ、駄目です! もう穴を維持できていません! 存在救出不可!」

マシュ「……え……」

所長「……ロマニ、魔力反応は。魔力反応はどうなの」

ドクター「……駄目です、一世紀ローマからはもう……恐らく、時流に呑まれて、何処かへ……」

マシュ「……そ、それじゃ……ますたー……マスターは……」




ドクター「……すまない。僕のせいだ。本当にすまない……」

レオナルド「……」

職員A「……そんな」

職員B「……うそ……」

職員C「……」


所長「……」




第二章

永続狂気帝国 セプテム

生存者 マシュ・キリエライト

死者 清姫 ブルース・ウェイン

今回の更新はここまでです。お付き合い有難うございました


………………

マシュ「……」カチャカチャ……

レオナルド「……おはよう、マシュ。隣、空いてるかな?」

マシュ「……」ビクッ

マシュ「……ダヴィンチさん……ええ、空いてます。どうぞ」

レオナルド「ははは、いつも言ってるじゃないか。ダヴィンチちゃんと呼んでくれってね」

マシュ「……ごめんなさい」

レオナルド「……冗談だよ、これはキミに言うのは一回目だから」

マシュ「……ごめんなさい」

レオナルド「……」



マシュ「……」カチャカチャ……

レオナルド「……マシュ。キミ、スープはかき混ぜるだけじゃあお腹に入らないよ」

マシュ「……はい」カチャカチャ……

レオナルド「……」

所長「……」スタスタ

レオナルド「……ああ、おはよう所長」

所長「……あ……」

所長「……」クルッ、スタスタ

レオナルド「ちょ、ちょっと。……はあ……」


………………

ドクター「もしもし、もしもし。こちらカルデア。ブルースくん、聞こえるか? 返事をしてくれ。……駄目だ、この時代にチューニングしても答え無しか……」

ドクター「……いや、まだだ。今度は半年刻みで現在から……」カチカチ

職員B「あ、あの……ドクター? ご飯、ここに置いておきますから……」

ドクター「え? ああ、ありがとう」

職員B「いえ、良いんです。……あの、少しは休まないと……」

ドクター「え? いや、うん。大丈夫だ。……もしもし、もしもし。こちらカルデア。ブルースくん、聞こえるか? ……」カチカチ

職員B「……」


………………

職員A「……あの……所長?」

所長「……ブツブツ……ブルースの肉体を一から錬成して……ブツブツ……」

職員A「……床に描いてある魔法陣は一体……」

所長「……ああ、この部屋には入らないで。入ったら危ないわよ。比喩抜きで死ぬわ」

職員A「え……」

所長「出てって。今実験中だから」

職員A「……あの……」

所長「出てって。さもなきゃアンタを『使う』わよ」

職員A「……はい……」



………………

レオナルド「……さて、状況報告会議を」

職員B「……ドクターは一週間、何も食べていません。ずっと管制室に閉じこもって、時流の中からブルースさんを特定しようとしています」

職員A「……オルガマリー所長は、怪しげな魔法陣でブルースさん復活の儀式をしようとしています」

職員C「コフィン内の調整は一応、順調です。ブルースさんがいつでも戻って来れるようにしています」

レオナルド「……ふう。マシュは恐らく鬱だ。生活する気力すら消えそうになっている」

職員A「……」

職員B「……」

職員C「……」


レオナルド「良いかい、今のカルデアを支えていけるのは私達だけだ。空気に呑まれそうになるのは辛いけど、踏ん張りどころだぜ」

職員達「「「はい!」」」

レオナルド「うん、いい返事だ。よし、今日も一日カルデアを引っ張ろうじゃないk……」


ピーンポーンパーンポーン

ドクター『皆っ、皆聞いてくれ! ブルースくんが漂流している時代を特定した!』

レオナルド「って言おうとした途端にこれか……よし、一応管制室へ急ごう」


………………

所長「本当なんでしょうねロマニ!?」

マシュ「ドクター! あの放送は!」

ドクター「ああ、本当だ。ようやく見つけた。どうやら今から30年ほど前の時代を漂ってるみたいだ」

レオナルド「やあ、ロマニ……速いなキミたち」

ドクター「レオナルド、レイシフトの準備に取り掛かってくれ。ブルースくんを救出できる」

レオナルド「……」


レオナルド「……マシュは良いのかい?」

マシュ「はい。いつでもレイシフトできます。今からでも」

ドクター「早い方が良い。また漂流して、何処かへ消えてしまわないとも限らないんだ」

所長「レイシフトの許可は出します。早く救出を」

レオナルド「……待ってくれ。やっぱり性急に過ぎる、もう少し考える時間を置こう」

ドクター「……言いたい事は分かる、でもチャンスは少ない。少なすぎるんだ、レオナルド」



レオナルド「マシュの身の危険を考慮すべきだ。まともにAIに検査すらさせて無いんだろう?」

ドクター「……それは、……」

マシュ「わ、私は……私は、いくら危険でも……」

レオナルド「マシュも。いいかい、キミ達はもう少しよく考えるべきだ。私達は世界を支えなきゃならないんだ。それがこんな体たらくでどうするのさ?
……ブルースだって、きっと悲しむ。キミ達をこんな風にするために戦ったんじゃない、ってね」

ドクター「……」

マシュ「……」

所長「……」

レオナルド「……」


ドクター「……ごめん。軽率だった」

マシュ「……私も……急ぎ過ぎてました」

所長「……ちょっと、焦ってたかも……しれないわね。ごめんなさい」

レオナルド「……良いのさ。ただ、もう少し時間を置こう。
そうは言っても早い方が良いんだろうから、明日には協議の結果を出すようにしよう。それなら、文句は無いだろう?」

ドクター「ああ!」

マシュ「はい」

所長「そうしましょう」


………………

レオナルド「……」

レオナルド(……昼間、ああは言ったけど……やっぱり、ブルースは心配だ……)

レオナルド(明日の朝、マシュがレイシフトする事は決定した。……何か胸騒ぎはするが……それでも、やるしかない)

レオナルド「……はあ~」

レオナルド(……いつの間にか、私もこんなに感化されてたなんてなぁ。ちょっと夜風に当たってくるか……)


レオナルド「……」スタスタ


グス……ウッ……ウゥ……

レオナルド「……?」


レオナルド(誰かの……泣き声? キッチンから? こんな夜中に?)


レオナルド「……」ソォ~ッ


マシュ「……うっ……ひぐっ……うぇえ……」

レオナルド「……」

レオナルド(ああ、これは……うん。まあ、分かってたけど……)



レオナルド「……ごほんっ!」

マシュ「!!」ビクッ、バシャバシャ

レオナルド「あ~夜中に急にお腹が空いて困った困った!! 何か缶詰でも無いかな~~ってマシュじゃないか!?」

マシュ「……こっ、こんばんは。夜食ですか? 奇遇ですね」ニコッ

レオナルド「……」


レオナルド(……咄嗟に顔を洗っても、目が真っ赤だぜ)


レオナルド「うん、何か食べるモノはないかと思ってね。漁りに来たという訳さ」ガサガサ

マシュ「あ、あはは。夜にお腹が空くと困りますね」

レオナルド「全くだ。……何かないかなー……おっ、豆だ! どうだいマシュ、一緒に食べる?」

マシュ「……はい、頂きます」

レオナルド「うん、そうしよう。それじゃ、そこの椅子に座ろうじゃないか」



マシュ「……」モグ……

レオナルド「……」モグモグ

マシュ「……」

レオナルド「……どうした、食べないのか?」

マシュ「……あ……その……」

レオナルド「……お腹、空いてなかったり?」

マシュ「……」


レオナルド「……私じゃ、頼りないかもしれないけどさ。ほら、ロマニはあの性格だ、人の悩みとかも抱え込んじゃうし。その点、私ならうまく処理できる」

マシュ「……」

レオナルド「……だから、なんだ。強制するワケじゃないけど、相談も時には必要だよ」

マシュ「……」

レオナルド「……」


マシュ「……皆」

レオナルド「……」

マシュ「皆、私のせいで死んでいくんです。マリーさんもそうだったし、清姫さんだって……荊軻さんも……ブーディカさんも……」

レオナルド「……」

マシュ「……マスター、も」

レオナルド「……」

マシュ「私が、もっと強ければ……皆、守れたのに。全部、私のせいなんです。半端な覚悟で、レイシフトに臨んで……全部、駄目になる」

レオナルド「……」


レオナルド「マシュ。良いかい?」

マシュ「……」

レオナルド「ブルースが居なくなって辛いのは分かる。でもね、全部の責任を自分で背負い込む事はない。皆、行動を選択して、ベストだと思った動きをしているんだ」

マシュ「……私なんかを、救う事が……ベスト、なんですか?」

レオナルド「……自分の価値を下げて見ちゃいけないな。キミはかけがえのない存在なんだ」

マシュ「……かけがえのない……」

レオナルド「そうだ。キミだって、皆に死んでほしかった訳じゃないんだろう?」

マシュ「それは! それは、当然です」

レオナルド「なら大丈夫。キミはもう一度立ち上がれるね?」



マシュ「……はい」

レオナルド「……なら、いいんだ。ほら、豆も食べなよ」

マシュ「……はい」モグモグ

レオナルド「……」モグモグ


レオナルド(……もう少し、普段から人に興味を持ってればな……もっと上手い激励も出来たんだろうけど)


レオナルド「……」モグモグ

マシュ「……あの」

レオナルド「なんだい?」

マシュ「ありがとう、ございます」

レオナルド「……良いのさ。ほら、早く豆を食べて。夜食は職員に見つかったら怒られるんだ」モグモグ

マシュ「はい」モグモグ



………………


ブルース「…………」


 世界が流れて行く。時間が流れて行く。この場所では、物理的な概念は消えうせる。

 視界が歪む。地面に足をついたまま飛ぶ。雨粒が天へ上がる。稲妻が地を走り、砂嵐が宇宙を覆う。人々は死んで活動を始め、生まれて活動を停止する。

 極天の流星雨が、滝のように降り注ぐ。輝く世界は、嘘で覆われている。


清姫「嘘はいけませんわ、旦那様。嘘は忌むべきもの。心無き者の所業」

リドラー「だが何故嘘はいけない? 人々の世界を上手く回すためには必ず必要になる潤滑剤だ」

清姫「嘘はいけませんわ、旦那様。嘘はいけませんわ、旦那様。嘘はいけませんわ……」

リドラー「何故嘘はいけない? 何故嘘はいけない? 何故嘘はいけない?」



ブルース(……ここは、何処だ……)

荊軻「ここは何処でもない、ブルース。川の流れの途中にある、岩のようなものだ。流された者が引っかかる『淀み』だ」

ブーディカ「あちゃあ、キミもここに来ちゃったか。でも大丈夫。ここも案外心地良いよ?」


ブルース(流された……何故私はここに居る? ああ、思考が……心地良さで、染まる……)


荊軻「ここは何処でもない、ブルース。ここは何処でもない、ブルース。ここは何処でもない……」

ブーディカ「ここも案外心地良いよ? ここも案外心地良いよ? ここも案外心地良いよ……」

ブルース(……そうだ、私は……マシュを庇い、レイシフトの帰還から取り残され……)

フォウ「フォウ、フォーウ」

ブルース(……思考をクリアに保て……自分を見失うな……私はブルース・ウェイン……私はバットマン……)



バットマン「だが、何故お前がバットマンなんだ?」

アルフレッド「ブルース様、私はあなたに生きていて欲しかった。それだけが、私の望みだったのです」

バットマン?「私はバットマンではないのか?」

アルフレッド「貴方は死んでしまった。貴方をお守りするべきだったのに、私は死んでいた。私はきっと地獄へ堕ちるでしょうな」

???「私はバットマンだったはずだ」

アルフレッド「さようなら、ご主人様」

怪物「……私は、バットマンではなかったのか?」



ブルース(……)

怪物「頼む、教えてくれ。私は何だ? なぜこうなってしまった?」

ブルース(……ああ、心地いい……)

怪物「父さんと母さんは何処だ? 会わせてくれ。私を怪物にしないでくれ」

ブルース(……このまま、思考を止めてしまえば……)

フォウ「フォウ!!」ガブッ


ブルース(……ぐっ……)

怪物「あ……」

怪物?「……私は……」シュウシュウシュウ……

バットマン?「……私は……」シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

マスク「」カラン

ブルース(…………)パシッ

ブルース(……)スッ


バットマン「……」スタッ


バットマン「……フォウ。居たのか」

フォウ「フォウ、フォーウ!」

バットマン「ここは何処か、分かるか? ……いや、答えるハズも無いか」

フォウ「フォウ……」シュン


バットマン(……地面……と、呼んでいいものか……? 土の橋が、曲がりくねって奥まで続いている……先が見えないほど奥まで……)


バットマン「……とにかく、歩くとしよう。ついて来れるか、フォウ?」

フォウ「フォウ、フォーウ!」コクリ



バットマン(……妙な感覚だ。歩いているのに、脚に負担を感じない……それに、道の向こうにはずっと宇宙が広がっている……)スタスタ


バットマン「……」ピリピリッ


バットマン(……それに、視線を感じる)


フォウ「……」テクテク

バットマン「……」スタスタ



「夢、というのは奇妙なものだ。何処から何処までを夢と定義するのか、その仕切りは結構曖昧でね」


バットマン「……誰だ!」

フォウ「フシャー!」ゾワゾワ

「いやいや、キミ達に敵意は無いんだ。むしろ味方、大ファンさ。いつも見てるからね……ほら、歩いてくれ。僕の用意した道の上を、さ」


バットマン「……」ジリッ


「……そんなに警戒したって、どうせその道しか残ってないんだからさ。ほら、キャスパリーグからも何か言ってやってくれよ」


フォウ「……」ジリジリ


「……なんでキャスパリーグが一番僕の事を警戒してるんだよ。いいよ、じゃあ好きにしなよ。時間はたっぷりあるからね……」


バットマン(……妙に軽薄な声。だが敵意は感じられない……大人しく従うか?)


バットマン「……」スタスタ

「……僕、最近結構暇しててね。キミ達の活躍をずっと見てたんだ。いやぁ、素晴らしいモノだった。特にブルースくん、人間なのにガッツがあって……アレ、アルトリアにも負けないくらいスゴイんじゃないかな?」


バットマン(アルトリア……冬木で戦った、黒い騎士王……)


「いや誰かと比べるつもりは無いんだけどね、ぶっちゃけ言ってキミの精神力だけで言うなら宇宙でもダントツくらいじゃないか? ハチャメチャな時流の中で全く自我を損傷してないって、どんな精神構造してるんだ」


バットマン「……」スタスタ


「あ、ごめんよ。気を悪くしたなら謝る。褒めたんだ、一応……」



バットマン(……? 光が、見え始めた……?)


「……ああ、そろそろ着くね。この後、ちょっとした悪意がキミを襲うだろう。でも大丈夫、きっと助けが来るよ。だからいつも通り、諦めずに立ち上がってくれ」

バットマン「……お前は誰だ?」

「……言っただろう? 僕はキミの大ファンだ。頑張ってくれよ、ヒーロー……」ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……


バットマン(気配が……消えた……)


フォウ「フォウ、フォウ」

バットマン「……ああ。行こう」スタスタ



ザアザア……ザアザア……

バットマン「……!」


バットマン(妙な空間を……抜けた? ここは一体……妙に既視感が……)


母親「ふふ、公演が楽しみね」

子供「……うん」

父親「それにしても、酷い雨だな……間に合うか?」


バットマン「……!!」

バットマン(いや、まさか。そんな筈はない。そんな馬鹿な)





子供「……今日も、仮面をつけた人達がいっぱい居るの?」

父親「ははは、ブルース。怖がることはない。それがオペラのマナーのようなものだ」

母親「ブルース、大丈夫よ。今日のオペラはね、仮面をつけた正義の味方が、悪人をやっつけるお話なの」


ピシャアッ‼

子供「!! あ、あの暗いところ……あそこに何か居たよ、父さん」

父親「全く、ブルースは臆病だな。大丈夫、闇の中には何も居ない」



バットマン「……」


バットマン(……)



ザアザア……ザアザア……





………………

ザアザア……ザアザア……


ギュォォォォォォォォォォッ

マシュ「……っ」ドサッ

ドクター『もしもし、マシュ? レイシフトはうまくいった?』

マシュ「っ……はい、今回のレイシフトも上手く行きました。ここは……裏、路地……?」


バットマン「……マシュ」

マシュ「え……ま、ます、たー……?」

バットマン「……こっちへ来てくれ」

マシュ「マスター、生きてたんですね……! ここは何処なんですか? いえ、それより……」

バットマン「マシュ、頼む。来てくれ」

マシュ「……わ、わかりました……」



ザアザア……ザアザア……


バットマン「……」

マシュ「……ここは……屋根の上?」

バットマン「……ここからなら、どこまで行ったかがよく見える」

マシュ「え……」

バットマン「……」


???「……でも、こんなに怖がるなんて思わないじゃないか」

???2「それはそうだけど、でもしょうがないじゃないの」

???3「くちゅん!」

???2「大変……あなた、ブルースが風邪をひいてしまうわ。早くタクシーでも捕まえましょう」



バットマン「32年前。とある家族が、雨の日にオペラを鑑賞しに行った。
まだ幼かった子供は、舞台に出て来た巨大なコウモリ、そして仮面の男を恐れ、両親に帰りたいと伝えた」


父親「そうだな、そこの裏路地を通って……」


バットマン「……両親は子供を気遣い、舞台の途中で抜け出して帰る事を決めた。
酷い雨だった。子供の体調を思い、彼らは近道を選んだ」


強盗「止まれ……財布を寄越せ」チャキッ

子供「お、お父さん……」


バットマン「……クライム・アレイ。犯罪通りを通り抜けようとしていた彼らは……」


父親「くっ、この……」ガシッ

強盗「抵抗するんじゃねえ! この……!」カチッ


パン、パン


父親「……ぐっ、逃げろマーサ、ブルース……」


マシュ「たっ、助けに! 行かないと!」

バットマン「……駄目だ、マシュ。これは……止めては、駄目なんだ」



母親「あ、あなた! いや! そんな!」

強盗「うるせえ! 騒ぐんじゃねえ!」カチッ、パン‼

母親「あ……」


マシュ「なんでですか!? なんで助けては……」

バットマン「……」



父親「……」

母親「……」

子供「おとう、さん……おかあさん……」


マシュ「……ぁ……」

バットマン「……これは、私が私になるための……必要な、時間だ」



ザアザア……ザアザア……


???「……ふん、つまらん。肉親の死を見せても助けにすら行かんか」

バットマン「……ソロモン。やはりお前の仕業だったのか」

ソロモン「そうだ。貴様に命のもろさをもう一度教え……あわよくば、貴様という存在を消そうとしていたのだ」

マシュ「……あなたが……!」

バットマン「よせ、マシュ……では、今回の特異点はこれで終わりだな」

ソロモン「……怪物め。お前は怪物だ、ブルース・ウェイン」



バットマン「……」

ソロモン「……だが、覚えておけ。怪物は、自分以上の怪物には勝てん。お前はいつか敗れ去る」

バットマン「……」

ソロモン「……さらばだ。次に会うその時こそ、貴様の答えを聞こう」シュゥゥゥゥン……

バットマン「……」



ピピー‼ピピー‼


ドクター『……マシュ、随分長い間通信が途切れていたが……大丈夫かい?』

マシュ「……はい、ドクター。マスターを発見しました」

ドクター『本当かい!? 良かった、それじゃ……これよりレイシフトを終了、帰還させる! ブルースくんの手を掴んでいてくれ!』

マシュ「……はい。マスター」スッ

バットマン「……ああ」パシ


ギュォォォォォォォォォォッ



………………

バットマン「……」ムクッ


ドクター「……! ブルース、くん……よかった、ブルースくん」

所長「ブルース! ああ、本物よね? 良かった、ブルース……ブルース?」

バットマン「……すまない。迷惑をかけた……」スタスタ


レオナルド「ちょっとブルース、皆心配してたんだ。いくらなんでもそれは……」

マシュ「ダヴィンチちゃん……」

レオナルド「……どうしたんだ?」

マシュ「……」フルフル

レオナルド「……?」




バットマン「……」スタスタ


バットマン「……」ピタッ


バットマン「…………っ……」ググググ……


(((おとう、さん……おかあさん……)))



バットマン(……私は、怪物だ……)グググ……



今日の更新はここまでです。
次のスレ立てとかしておいた方が良いんですかね……?

そうだぞ

バットマン「……これは、私が私になるための……必要な、時間だ」

マシュ「……違う! あなたはどう生きてもあなたになる!」

マシュ「あなたが過去に打ちのめされ! 動けぬのであれば!」

マシュ「わたしは! わたしの盾を! あなたを打ちのめす過去に!」

ブルース「マ、シュ……私、は……」

マシュ「叩きつけてやる!」

強盗「うわあああああ!」ドンッ

マシュ「はやく! ここは私に任せて逃げてください!」

トーマス「だがこんな場所できみ一人で!」

マシュ「大丈夫です! それより警察を呼んでください!」

トーマス「……すまないがここは任せる! マーサ、ブルース!」

ブルース「(あの日は、暗い雨の夜だった)」

ブルース「(あの夜、両親と、私を助けてくれた彼女の姿は、既に朧気なものとなっていた)」

ブルース「(だが、あの時、芽生えた憧憬は)」

ブルース「(私を常に突き動かした)」

ブルース「(両親は、放蕩息子の道楽としか言い様のない活動に気付いてはいたが、黙認してくれた)」

ブルース「(唐突に現れ、唐突に姿を消した彼女に、恩人に)」

ブルース「(何らかの形で報いたかったのだろうと、私は考えている)」

ブルース「……さて」

ブルース「デッドショットの次の計画は……」カタカタ


………………

マシュ「…………」カチャカチャ……

レオナルド「……やあ、おはようマシュ」

マシュ「あ……ダヴィンチちゃん。おはようございます」

レオナルド「隣、いいかな?」

マシュ「はい。どうぞ」

レオナルド「ありがとう」



マシュ「……」モグモグ

レオナルド「……あれから、ブルースと話、したかい?」

マシュ「……」ピタッ

レオナルド「……まあ、そんな事だろうとは思ったけどさ」

マシュ「……おかしい、ですよね。会いたくて、話をしたくてたまらなかったのに……いざ会ってみると、こんな……」




レオナルド「あのレイシフト先で何があったのさ? 短時間すぎて、こちらでは何の情報も……」

マシュ「……それは……」

レオナルド「……言えない?」

マシュ「……ごめんなさい」

レオナルド「別に、謝る事じゃない。……でもその反応から察するに、何かは確実にあったんだろうね」

マシュ「……」




マシュ「……ときどき、思うんです」

レオナルド「何を?」

マシュ「人間である事をやめられたら、どれだけ楽なんだろうって」

レオナルド「……それは、キミ。どちらにしても辛いものさ」

マシュ「……そう、なんでしょうか」

レオナルド「ああ、保証するよ」



………………

ブルース「……」ペラ、ペラ……カタカタ


コンピュータ『マシュ・キリエライト サーヴァント
英霊の真名:未判明 弱点:未判明
長物相手の戦いだと苦戦しがちな傾向有り
精神面の弱さが目立つ それも留意』


ブルース「……」


(((お前は怪物だ)))

ブルース「……」カタカタ


コンピュータ『オルガマリー・アニムスフィア 人間
       人理継続保障機関カルデアス  所長
       魔法の使用が可能 格闘の才能は無し
       パニックを起こしやすい 留意』

コンピュータ『レオナルド・ダ・ヴィンチ サーヴァント
       発明家 頭が非常にキレる 天才型
       魔法の使用が可能  格闘の才能は不明
       実質カルデアの柱 負担大 留意』



ブルース「……」

コンピュータ『ロマニ・アーキマン 素性不明
       ドクター 腕は確か 優柔不断
       魔法の使用・格闘の才能:不明
       カルデアの陰の柱 負担大 留意』

ブルース「……」カタカタ

コンピュータ『ロマニ・アーキマンについては不明な点が多い。今後も気を抜くべき相手ではn』


ガチャリ

所長「……こんなところに居たの、ブルース」

ブルース「……オルガマリー所長か」ピッピッ、シュゥゥゥゥン……




所長「何をしてたの?」

ブルース「……本を読んでいた」

所長「そう。図書室だものね」

ブルース「……ああ」

所長「……」グッ……

ブルース「……」

所長「うそ、つかないでちょうだい」キッ

ブルース「……」



所長「……また、死ぬ気?」

ブルース「違う」

所長「何が違うの? 全部秘密にしてるのに、なんで違うなんて言えるの?」

ブルース「……それは……」

所長「……」

ブルース「……すまない」

所長「……そう。また、何も言わないのね」

ブルース「……」



所長「……でも、もう、他人じゃないでしょ。私と……私達と、アンタって」

ブルース「……」

所長「いきなり、居なくなったら……辛いのよ。こっちだって」

ブルース「……」

所長「……だから……」

ブルース「……悪かった」

所長「……」



所長「……そう言って、何も反省してないくせに。私だって分かってる」

ブルース「……」

所長「だから、私……アンタが帰って来たら、これだけは伝えようと思ってた。
アンタのやり方、大っ嫌い。本当に大嫌い。心の底から、嫌いよ」スタスタ、ガチャッ

ブルース「……」


ブルース「……」パタン

ブルース「…………」スクッ



………………


ブルース「……」スタスタ

レオナルド「やあブルース! スーツをまた直しておく……どうしたんだ、眉間の谷間が凄まじいぜ?」

ブルース「……いや、何でもない」スタスタ

レオナルド「おいおい、それが何でもない奴の顔かよ……おーい、ちょっと? 聞いてるー?」

ブルース「……」スタスタ


レオナルド「……まったく、なんだってどいつもこいつも! いくら天才の私だって堪忍袋の緒が切れるぜ!」プリプリ

レオナルド「…………まったく、なんだって……」シュン

レオナルド「……は~……」ガクッ


………………

ブルース「……ふっ!!」ゴズッ、ズズズズズズズズ……

ブルース「ふーっ、ふーっ……!」ズズズズズズズズ……


(((逃げろマーサ、ブルース……)))

(((お前は怪物だ)))

(((アンタのやり方、大っ嫌い)))


ブルース(私は、死ぬ言い訳が欲しかっただけなのか? 誰かを守ろうと思っていた事などあるのか?)


ブルース「……ふーっ……ふーっ……!」ズズズズズズズズ……


重り「「「」」」ズズズズズズズズ……



ドクター「……精が出るね、ブルースくん」

ブルース「……ドクターか」ズズズズズズズズ……

ドクター「それ、何キロの重り?」

ブルース「……450キロだ……!」ズズズズズズズズ……

ドクター「……それ、絶対サーヴァント用のトレーニング器具だよね。全く、無茶しすぎだよ」

ブルース「……」ズズ……ピタッ

ドクター「休憩するかい?」

ブルース「……ああ」

ドクター「ん」



ブルース「……」

ドクター「……」

ブルース「……」

ドクター「……水、いるかい?」

ブルース「……ありがとう」

ドクター「どうぞ」スッ

ブルース「……」パシ



ブルース「……」

ドクター「……大変みたいだね」

ブルース「……」

ドクター「カウンセリング、必要かい?」

ブルース「……何故、私なんだ」

ドクター「そりゃ、……男友達だし。何か話せる事とかあるんじゃないか?」

ブルース「……」



ブルース「……私のやり方は、ここでは受け入れられないのかと思ってな」

ドクター「……そうだね。いきなり消えられたら、ちょっとびっくりしたかな」

ブルース「……私にとっては、最適解だった」

ドクター「うん、分かってる。でも……でも、頼ってくれれば、何とかできたかもしれない」

ブルース「……」



ブルース「……できたかもしれない、というのは、理想だ。理想で世界は救えない」

ドクター「分かってる。でも、理想が無きゃ戦えないだろ?」

ブルース「……そうかも、しれない。だが私には理解できない」

ドクター「……ブルース、キミは人間なんだ。人間として人理を救わなくちゃ……そうでなくちゃ、何のためのカルデアなんだい?」

ブルース「……」



ブルース「…………考えてみる」

ドクター「……うん。ふふ……」

ブルース「何か可笑しかったか?」

ドクター「いや、何でもないんだ。……そうだね、考えてみてくれ」

ブルース「……ああ」



ブルース(……怪物では、怪物には勝てない)

ブルース(私は……私は、戻れるのか)

ブルース(……いや、戻るしかない。たとえ、不可能でも……挑戦し続けるしかない)

ブルース(何故なら、その必要性があるからだ。カルデアと共に戦うには、人間に……なる必要が、ある)

ブルース(……ゴッサムシティとは、真逆か……)



………………


レオナルド「……」チュイイイイィィィィィィ……カチャカチャ

レオナルド「……うーむ、このスーツのチタンの構造は正直……流体金属に……」カチャカチャ


ブルース「……そこは軽さを重視して欲しい」

レオナルド「……うん、私もそう思ってた。工房へようこそ、ブルース」



ブルース「……昼間は悪かった」

レオナルド「何、お互い様さ。私も空気が読めないところは自覚してるしね」チュイイイイィィィィィィ

ブルース「……スーツの機構も。特異点で、もっと活かせられれば良かった」

レオナルド「そこも、お互い様かな。ま、次があるだけ良いって事だよ」カチャカチャ

ブルース「……」

レオナルド「……」カチャカチャ……ジュウッ

ブルース「……」

レオナルド「……マスク、割れてたっけ」

ブルース「……ああ」



マスク「」ボロッ

レオナルド「また随分無茶をしたもんだ」

ブルース「……」

レオナルド「……まあ、アルテラを一人で相手するって言われた時から分かってたけどね。一応強化しておいた防具をよくまあここまで」

ブルース「……怒っているのか?」

レオナルド「怒ってないと思うか?」

ブルース「……」

レオナルド「当然、怒ってるさ。一人で聖杯持ちのサーヴァントの相手? 無茶にも程があるよ。人理を焼かれる前に心配で死ぬさ。皆の前だから冷静に振る舞ってたけど、私だって心がある」

ブルース「……」

レオナルド「……まあ、キミをいくら責めても何の足しにもなりゃしない。レイシフトは元々危険なものだし、命懸けだって事くらい把握して、理解してた」



レオナルド「……でも、頼れよ。そのための仲間だろう?」

ブルース「……」

レオナルド「……それとも、仲間だと思ってたのはこっちだけかい?」

ブルース「…………」

レオナルド「……はあ、呆れた。キミはよっぽど孤独体質みたいだ」

ブルース「……すまない」

レオナルド「責めてないよ。ただ、不器用なんだなって思っただけだ」

ブルース「……悪かった」

レオナルド「だから……まあいいや」



レオナルド「でも、次からは頼る事。でないと、もうスーツを直してやらないぞ」

ブルース「それは困る」

レオナルド「だろう? ふふ、人の弱みに付け込むのはいいものさ」

ブルース「……良い性格だな」

レオナルド「誉め言葉として受け取っておくよ」チュイイイイィィィィィィ



………………


所長「……」

ブルース「……」

所長「何よ」


ブルース(……手強い……)



ブルース「……昼間は、悪かった」

所長「昼間? だけ?」

ブルース「……この前の特異点でも」

所長「……それだけ?」

ブルース「……冬木でも」

所長「……」

ブルース「……計算だけの行動だった」



所長「……はあ……」

ブルース「……」

所長「別に、ね。アンタが計算して行動する事は、悪いとは思ってないわよ。それは必要な事だし、やらなきゃ駄目な時に躊躇ってたら死んじゃうし」

ブルース「……」

所長「……アタシも、ごめんなさい。自分の感情に振り回されるなんて、所長としてあるまじき醜態よね」

ブルース「……」

所長「……」




所長「……だけど……だけどね、ブルース」

ブルース「……」

所長「やっぱりアタシ、アンタに……いえ、誰にも死んでほしくないのよ」

ブルース「……必ず善処する」

所長「……」

ブルース「……」

所長「……ごめんなさい」

ブルース「……いや」



………………

ブルース「……マシュ」

マシュ「……!」タタッ

ブルース「……」

………………

【キッチン】

ブルース「マシュ」

マシュ「!!」ダッ

ブルース「……」


【廊下】

ブルース「マシュ」

マシュ「!!」シュンッ

ブルース「……」


【図書室】

ブルース「ま」

マシュ「!!」ヒュンッ

ブルース「……」



………………

ブルース(……マシュに避けられている。被害妄想ではない)


ピーンポーンパーンポーン


ドクター『もしもし、こちら管制室。次のレイシフト先が特定できた。カルデアの職員、レイシフト要員はただちに集合してくれ』

ブルース「……」


ブルース(……この最悪なコミュニケーション状態のまま、レイシフトができるのか……?)



………………

所長「では、今回のレイシフトの説明を始めます。よろしく」

職員達「「「よろしくお願いします!!」」」

所長「時代は16世紀後半。場所は……何処かの海洋という事は判明していますが、判然としません。性質から判断するに、ヨーロッパ、大西洋……その辺り」


マシュ「……」ジ……

ブルース「……?」チラ

マシュ「……」フイ

ブルース「……」



所長「今回のレイシフトも恐らく過酷なものになるでしょう。ロマニ、レイシフト組の二人の健康状態は?」

ドクター「良好です。ただ、今回のレイシフト先は海ばかりだと聞いてて……いきなり湿気と潮風まみれになると、人間であるブルースくんの健康状態に少し懸念があるかと」

所長「……レオナルド、なんとかできるかしら?」

レオナルド「勿論、既にスーツには超速乾燥機能と暖房機能をつけておいた。あと、沈まないための軽量化も完璧」

所長「流石ね。ではレイシフト要員は解散して大丈夫よ。次、サポート班。今回の動きを確認します」

職員達「「「はい!!」」」



マシュ「……」スタスタ

ブルース「……マシュ、待ってくれ」

マシュ「……」ピタッ


マシュ「はい、なんでしょう?」クルッ



ブルース「この前のレイシフトの事を……」

マシュ「大丈夫です。……大丈夫、ですから」

ブルース「……大丈夫とは?」

マシュ「……私は、平気です」

ブルース「……」



ブルース「……だが……」

マシュ「話はそれだけですか? では失礼しますね」スタスタ

ブルース「……」


ブルース(……これは、厄介かもしれない)



マシュ(……もう、分からない。どうしたら良いのか、分からない)

マシュ(マスターは……ご両親を殺されて……自分も、死のうとしてて……それが、理解できてしまう)

マシュ(……これ以上、近付いたら……もしマスターが私を庇って死んだら……耐えられない……)


マシュ「……」スタスタ



………………


ブルース「……」

時計『03:27』

ブルース(……)

ブルース(……私の努力など、所詮その場しのぎの一時的なものに過ぎないのだろう)

ブルース(……だから、か。マシュにはそれが通用しない。彼女は純粋で……私の魂胆など、すぐに見抜く)

ブルース(……根底の部分は変えられない、か……)


(((お前は怪物だ)))


ブルース(……本当に、変われないのか……)

ブルース(……コウモリの怪物に怯える、子供の頃から……何も……)

ブルース(……)


ピピピピ‼ ピピピピ‼


時計『07:00』ピピピピ‼ ピピピピ‼


ブルース「……」ムクリ



ピーンポーンパーンポーン

所長『朝の七時です。おはよう。第三回レイシフト前最後の打ち合わせをするので、関係者は管制室へ集合してください。今から20分後、遅れないように!』

ブルース「……」スクッ、スタスタ


マシュ「あ……」

ブルース「……おはよう」

マシュ「……おはよう、ございます」

ブルース「マシュ、少し話が……」

マシュ「……」スタスタ


ブルース(……成程、アルフレッドに「人と触れ合え」と言われたわけだ……大人の女性ならまだしも、この年頃の娘の扱い方が全く分からない)フム……




………………

所長「……以上が、今回のレイシフトにおける概要となります。何か質問は?」

職員達「「「……」」」

ブルース「……」

マシュ「……」


所長「……あの、ちょっといい?」

ブルース「……ああ。何だ?」

所長「貴方とマシュって、いつもそんな離れて座ってた?」


ブルース「……」

マシュ「……」

ドクター「……」

レオナルド「……」


所長「……い、いえ。別に構わないのだけど、ちょっと気になっただけだし……それじゃ、九時までに準備を!」



ドクター(……マシュとブルースくんって……)

レオナルド(シッ、静かに。あれは二人で解決させるべき問題だよ)


マシュ「……」スタスタ、ガチャッ

ブルース「……」ジッ


レオナルド「……ごほん! そろそろ準備をしなよ、ブルース」

ブルース「……ああ、そうだな」スクッ



ブルース「……」ガチャガチャ、ガチッ

ブルース「……」シュッ、カチリ。シュルッ


マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……」



ドクター「時刻、08:58。ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライトの両名ともにコフィンにスタンバイ完了」

職員A「存在証明式、運転開始。観測は順調」

職員B「電子機器類に異常は認められません! AIによるウィルス検査もクリア!」

職員C「シバによる時代特定、良好! 16世紀後半の特異点をロック!」


所長「では……海洋へのレイシフト、カウントダウン開始!」

職員達「「「了解、カウントダウン開始!」」」


ドクター「……ほんとに上手くいくのかなぁ」

レオナルド「大丈夫だ。ブルースは不器用な男だが、馬鹿ではないからね」

ドクター「……うん、確かに。よし、僕たちはしっかりサポートしなきゃね!」

レオナルド「勿論! 今回もやってやろうぜ!」



(((大丈夫です。私は、平気です)))

バットマン(……拒絶か……)

ドクター『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』


バットマン(……いや、諦めるわけにはいかない)

ドクター『3! 2! 1!』

バットマン「……」グッ

『0』




第三章

封鎖終局四海 オケアノス

今日の更新はここまでです。
どう足掻いてもマシュがこじらせた思春期の娘にしかならない。ブルースが超難しい父親にしかならない。何故だ。お付き合い有難うございました。

(ぶでぃかさん召喚の儀を素で忘れてたなんて言えない……)

ブルース帰還からやり直させて頂いてよろしいですか……(瀕死)

バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」
バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517495048/)

明らかに足りないのでもう次のスレへ移行します。二度も同じ場面見せることになってごめんね……

HTML? とかいうのも申請しておきます。何度もすみません

まとめ「らくして稼ぎたいからお前の所の奴勝手にまとめるわwww」
荒巻「俺に還元してくれるならいいよww(俺は儲けた金をss速報に還元しないけど)」
バカ「まとめさんまとめてくれてすげー!荒巻さん場所提供してくれてすげー!」

だもんな

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年11月25日 (土) 17:44:15   ID: ZmGTT5gn

まさかのコラボで笑ったわ
期待してる

2 :  SS好きの774さん   2017年12月14日 (木) 00:21:25   ID: evJqVoRd

面白い、完結までみたくなる

3 :  SS好きの774さん   2018年01月25日 (木) 22:57:27   ID: POAb3o2X

これ天才だろ…

4 :  SS好きの774さん   2018年07月22日 (日) 01:46:59   ID: a4cD2Dsp

時空の流れの中を走ってる赤い閃光がいると思うんだが、出てこないかなぁ

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