Doctor Who series0(29)

『ドクター』

この言葉を聞いて、あなたは何を想像するだろう?

「医者」?「医師」?「先生」?

どれも間違いではない。むしろ、正解である。学力試験や一般常識の範疇では、文句なしの合格だろう。

しかし、それは我々が体験することのできる『常識』の範囲内でだけ通用する常識であり

一歩、ほんの一歩外へ出れば、この知識は間違いとなる。



では、どこから一歩外へ出るのか?……



              その答えは、『地球』である

永遠に絡みついた呪いのような血塗られた大戦争から、この宇宙を守った人間がいる。



……否、人間ではない。

『男』である。

彼の名は『ドクター』。宇宙の謎を解く男。

種族の名は『タイムロード』。時を支配する一族。



この宇宙において『ドクター』という言葉は、無限の呪いを背中に背負った、孤独な英雄のことである。

この男を語るには、まずタイムロードの話からしなくてはなるまい。



タイムロードはその名の通り『時の支配者』である。

時空間のすべてを見通し全並行世界を一括して支配する彼らは、あることに気が付いた。



宇宙最強の種族『ダーレク』の存在である。



かつて、1人の大天才がいた。自分だけの世界にどっぷりと肩まで浸かった天才がいた。

カレド族の1人である彼は、サール族との戦争に悩んでいた。この戦況を打開できる策はないものかと。

彼は、自らの種族であるカレド族を遺伝子組み換えした。

冷たい金属のボディに埋め込み、憎悪以外の感情を消し去った。

これがダーレクの起源。

全盛期には全宇宙の半分を領土にし、宇宙最大の脅威と怖れられた一族の起源。

タイムロードは考えた。

「天才を殺し、ダーレクを歴史から抹消すれば、この宇宙は救われる」

タイムロード達は、1人の離反者を利用した。遠い昔、不干渉主義を貫いた彼らに離反した行動的な男を。

……『ドクター』を。



計画は失敗に終わった。博士の殺害には失敗し、ダーレク族は消え去ったはずの怒りの炎を燃やし始めた。

最強達は怒涛の勢いで進撃した。時間の王達は懸命に応戦した。

全宇宙、全時空からダーレク族が結集した。タイムロードの科学は、彼らの侵入を必死に拒んだ。



やがてダーレク族は異空間メデューサ・カスケードを通りタイムロード達の惑星ガリフレイを襲った。

惑星は炎に包まれた。24億7000万人の子ども達が、ダーレクに銃口を向けられた。

ドクターも、戦争へ参加した。

「慈悲の心を持ち、正しいことをやり抜く勇気を持つ」

そう考えていたドクターも、銃を持ちダーレクと撃ち合う日々を送ることになってしまった。



タイムウォーは終わった。

ドクターが終わらせた。

ダーレクとタイムロード、全能の2種族を滅ぼして。

誰よりも多くの血で手を染めた男。宇宙が静まり返るほどの大罪を犯した男。それがドクター

この物語はそこから始まる。

戦争を終わらせ、宇宙に平和をもたらした直後のドクターから。




ドクターの手が光り始める。エネルギーを放ち始める。始まるのだ。『再生』が。

ウォードクター「……」フォォォオオ……

ウォードクター「……当然、か」フォォォオ……

ウォードクター「次は、耳が小さくなるといいが……」

ゴォオッ!!!

爆発するかのようなエネルギーが噴射される。

顔の形が少しずつ、しかし大胆に変化していく。

ドクター「」ゴォォォオオオオオオオ!!!

ドクター「ふうッ!!」ボフゥウッ!

ドクター「……」ハァ……

ドクター「終わった、か……」

ドクター「よし!どんな姿になったかなッ!?鏡!」バッ!!

鏡「」チャッ

http://imgur.com/V0iggnx.jpg

ドクター「ぉおー……」

ドクター「……うん、悪くはない。ハンサムって部類には……入るかなあ?うん」

ドクター「うー、耳がイマイチだな……」ペチペチ

ドクター「……」

ドクター「……さて、ターディス。早速で悪いが、模様替えを頼もうか」

ターディス。それが彼の操縦する船の名前。

TARDIS。次元超越時空移動装置、つまりはタイムマシンのことである。

ドクター「行き先は……ジュラ紀のビーチにでもしておこうか」ガチャンッ

グォォオオオン… グォォオオオン……

ターディス。宇宙一美しいエンジン音で時空を旅する最高の船。

唸るような音は、あらゆる者に安心を与えていた。

その姿は1960年代の英国にありふれていたポリスボックスそのものである。

カメレオン回路という装置でその時代にありふれた物に姿を変える機能があるが、1960年代英国で故障。以来、ドクターはそのレトロな外観を気に入り、修理しないでいる。

ズズ……ン……

ドクター「よし、着いたな。初旅行はジュラ紀のビーチ!ゆっくりと羽を伸ばすとするか」

ドクター「それじゃあ、模様替えをよろしく頼もう。内装はお任せするよ」ガチャッ

パタン

ドクターがターディスの模様替えをするのは、これが初めてではない。これまでに何回もやっていることだ。

しかし、今回の模様替えは今までとは重みの違う模様替えである。

タイムウォー。彼が体験した想像絶する過酷な戦争。その過去を断ち切るために、船は姿を変える。



ドクター「さあ。どんな冒険が待っているかな」

戦争の影に囚われた英雄の、新たな冒険が始まる。

NHKで放送されていた長寿SFドラマ「ドクター・フー」のSSです。

「The Day Of The Doctor」とシリーズ1の間、9代目ドクターがローズ・タイラーに出会うまでの話を書きたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=Wt-R305F91U

ザザーン… ザザーン…

ドクター「……母なる海」ザザーン…

ドクター「39億年前、スカロスの宇宙船が爆発し生命が誕生した。この海で」

ドクター「つい3億年前までこの海が進化の舞台だったわけだ。そして、今も」

ドクター「なんて偉大なんだ、生命よ……1億年もすればサルはヒトへ進化する」

ドクター「人類が引き起こした全ての事象は海から始まっている……」

ダルウィノプテルス「シャーッ!」バサッ バサッ

ドクター「翼竜か。魚が欲しいのか?悪いが道具を持っていないから手伝えないな」ニコッ

ドクター「……」

青い雄大な海。その光景を見て彼は真逆の景色を思い出す。

いや、思い出すというのは正確ではない。常に頭の中に存在する記憶。それが強調されるのだ。



赤い壮大な星。ガリフレイが。

ドクター「……」

ドクター「……何を考えているんだ、僕は」

ダルウィノプテルス「シャーッ!」

ドクター「せっかく明るいビーチに出ているんだ、セロトニンも出る!何を落ち込んでいるんだ」

ダルウィノプテルス「」バシャァッ!

ダルウィノプテルス「」バクッ ゴクンッ

ドクター「そうそう、アイツみたいに美味い食事でも食べようか」

ドクター「尾が長いが頭部は洗練されている……ダルウィノプテルスだな。ダーウィンはまだ生まれていないけど」

ドクター「さて、どこがいいかな。16世紀のイタリア料理でも食べようか……」

ヒュンッ!!!

ダルウィノプテルス「ギャッ!!!」ドズゥッ!!

ドクター「ッ!?」

ダルウィノプテルス「ギャ……」グラン

ダルウィノプテルス「」パシャァン

ザパァァン… ザパァァン……

ドクター「……!!」

ドクター(『槍』ッ!!槍が高速でダルウィノプテルスを落としたッ!それも打製石器ではなかったッ!もっと鋭く鍛錬されているッ!)

ドクター(ここはジュラ紀!磨製石器の槍を作って投擲できる種族は……ッ!!間違いないッ!)

ドクター「……くッ」クルッ!!

サイルリアン1「よォし!仕留めたぜッ!!一撃!」ザッ!

サイルリアン2「あーあ、海まで取りに行くのが面倒なんだよ……陸にいる時を狙えって」

サイルリアン1「狙える時に仕留めないとな。もし陸に来ずに沖まで行っちまったらどーすんだ?テメー」

サイルリアン2「……おい」

サイルリアン1「ンあ?話題をそらそうってのか、その手は……」

サイルリアン1「……あ?ンだありゃあ……」



ドクター「……」

サイルリアン2「明らかにサイルリアン族じゃあない……地球生物でもなさそうだ。よその星から来たヤツだな……」

ドクター(『サイルリアン族』ッ!!!)

ドクター(人類登場以前の地球を長らく支配していた優良種族ッ!爬虫類型ヒューノマイドだ)

ドクター(連中が冬眠している間に人類が進化して地球を支配したから人類を忌み嫌っているが……この時代、人類がいないのが幸いしたな)

ドクター(不審に思われてはいるが、即座に射殺ってこたあないだろう……)

ドクター「なあ!そこのお2人さん!」

サイルリアン1「!」

サイルリアン2「……」

サイルリアン2「我々に話しかけるとは……随分度胸があるな……死にたがっているのか?」ヒソヒソ

サイルリアン1「異星のお方の考えることは分からんよ。とっとと射殺だ」ヒソヒソ

ドクター「君らの部族で『降伏』のジェスチャーってどうやるのかな?」

サイルリアン1「……アァ?」

サイルリアン2「……」

ドクター「両手を上げよう。武器は持っていないし、攻撃する気も僕にはない」

サイルリアン2「……降伏するとはな」

サイルリアン2「降伏した相手は殺害するわけにはいかん……仮に異分子でも、な」

サイルリアン1「おい……じゃあどうするんだよ?」

サイルリアン2「長老のところまで連れていき、尋問だな」

サイルリアン2「そこの肌色のデカ耳!手を頭の後ろに回したまま、ここまで歩いてこい」

ドクター「デカ耳だって!?」

サイルリアン1「無駄口を叩くんじゃあないッ!」

ドクター「はいはい、わかったよ」ザッ

ドクター(先住民族サイルリアン……それにしては妙だな)

ドクター(サイルリアンなら巨大な生態系を維持して大陸サイズの宇宙船を外へ飛ばせる程の科学力を持っているはずだが……)

ドクター(彼らの服装はアマゾン川のほとりに住む少数民族さながら……一般的なサイルリアンが身に着ける衣服じゃあない)

ドクター(それに、ダルウィノプテルスを仕留めるのに槍だと?少なくとも銃はあるはずだが……)

サイルリアン2「よし、手を出しな」

ドクター「」スッ

サイルリアン2「逃げようとは思うなよ」シャッ グルグル ギュッ!!

ドクター「ああ。君等の生活に興味がある。逃げたりはしないさ」

サイルリアン2「……」

ドクター(ツタで縛るか……強化合成繊維のロープもないのか?)

サイルリアン2「おい、おいおい、お前」

サイルリアン1「あ?」

サイルリアン2「翼竜を拾って来い。せっかく仕留めたんだ、もったいないだろーが」

サイルリアン1「おうよ」タンッ

タンッ タンッ バシャンッ

ドクター(しかし)

ドクター(あの跳躍力……3跳びで海水へ到着できるとは……やはりサイルリアンと見て間違いない)

ドクター(この時代に何が起きている?)

サイルリアン1「ん、少し体が小さいな」ガシッ バシャッ

サイルリアン1「……まあ、いいか」ザバァッ

サイルリアン2「行くぞ」グイッ

ドクター「ああ。早く案内してくれ」

サイルリアン2「……貴様、スパイか?」ザッ

ドクター「スパイ?」

サイルリアン1「ンだテメェ、スパイも知らねーのかよ?他所の部族とかに忍び込んで情報を探るヤツだよ。知らねーとかどんだけ田舎者だよ」

ドクター「」ブッフォ

サイルリアン1「アァッ!?テメエ何笑ってやがるッ!!」

ドクター「す、すまない、急にむせたんだ。年をとるとどうも……」ゴホッ ゴホッ

サイルリアン1「チッ……」

ドクター(田舎者に田舎者と言われるとはな……笑いが止まらないぞ)クク…



ザワザワ… ドヨドヨ……

ドクター「ふむ、市場に出てみたけど、皆僕らに釘づけだな」ザッ ザッ

サイルリアン2「当たり前だ、貴様のような地球外生命体がいれば皆驚く」ザッ ザッ

ドクター「みんな小型恐竜をペットに連れているな……あれは……コエルルスだな」

ドクター「小型のネズミなんかを食べるから、害獣駆除にはもってこいか。君らの主食って?」

サイルリアン2「やかましいぞ。無駄な話はするんじゃあねえ」

ドクター「ごめん。おしゃべりな性格なんだ。何年も前からこれが悪い癖って言われてるんだけど……」

サイルリアン1「悪い癖って分かってるんならとっとと黙れッ!!」

ドクター「はは、すまないすまない」

サイルリアン2「……着いたぞ」

ドクター「おお、どれどれ……」

大木「」

ドクター「……これ、木だろう」

サイルリアン1「上だ」

ドクター「上?」




ツリーハウス「」バァァーーーーーン!!!



ドクター「ああ、ツリーハウスか。高みから全てを見下ろせるってわけだな」

コンコン

サイルリアン2「失礼致します」

「……入れ」

サイルリアン2「はッ」バサァッ

サイルリアン2「長老、海辺で不審人物を捕らえました」グイッ

長老「……ほう」

ドクター「うぐッ」ドサッ

ドクター「ちょ、ちょっと待ってくれよ。引っ張らないでくれ!倒れただろ!!」ガバッ!!

サイルリアン1「体力のない動物だ」

ドクター「30mもある巨木を、僕を引きずりながら登るからだッ!正気じゃあないぞッ!どうかしている!!痛いだろうッ!!」バン!

サイルリアン2「黙れ。これから尋問を始めるんだ、静かにしろッ!」

ドクター「……」

サイルリアン2「……長老、尋問の許可を」ス

長老「……うむ」

長老「いいだろう、始めよ」

サイルリアン2「御意ッ!」

今日はここまで。

サイルリアン(仮面装備)
http://i.imgur.com/AFYU0ak.jpg

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