まほチョビ『さあ、人生に繰り出そう』 (61)

 ――ガルパン本編が始まる数ヶ月前・・・・・・

アンチョビ(高校二年生)「うう・・・今月も我がアンツィオ高校は火の車だ・・・」

カルパッチョ(高校一年生)「念願の重戦車を買うにはまだ足りませんね」

アンチョビ「なんとか稼がないと・・・もうすぐ新年度だ。新入生をたくさん誘致するためにも、資金が必要だ!」

ペパロニ(高校一年生)「さっすが統帥(ドゥーチェ)!お金に目が無いッスね!」

アンチョビ「聞こえがわりーな!語弊があるぞ!」

カルパッチョ「なにか臨時収入になるようなものを探しますね」スマホ スッスッ

ペパロニ「料理大会に出場するってのはどーッスか!?ウチらなら優勝間違いなしですぜ!」アイアンシェフ!

アンチョビ「そんな都合よく大会なんかあるもんか」

カルパッチョ「あ、これなんかどうですか」

 【求む。高校二年生の戦車女子(なるべく楽しい子)報酬:応相談 応募は西住流本家まで】

アンチョビ「西住流が戦車女子を募集しているのか。一体どういう内容なんだろ」

ペパロニ「高二の戦車女子で楽しい子っていやぁ統帥にぴったしじゃないッスか~ッ!こりゃ運命ですよウンメー!」

カルパッチョ「とりあえず話だけでも聞いてみるのはどうですか?」

アンチョビ「うむ、そうだな。天下の西住流だ。きっと報酬もはずんでくれるだろうからな」

ペパロニ「統帥は金のためならなんでもするッスもんね!」

アンチョビ「聞こえがわりーな!」

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 ドーー【西住邸】ーーン

アンチョビ「・・・に、西住本家に招待されてしまった・・・」ドキドキ

アンチョビ「西住流に問い合わせの電話をしたらトントン拍子で話が進み、いつの間にかこんなことに・・・」

アンチョビ「しかしさすがに豪邸だナア。日本の古いお屋敷って感じだ」

 フスマ<スッ・・・

アンチョビ「!」ドキ

しほ「ようこそいらっしゃいました、安斎千代美さん。本日はご足労ありがとうございます」

アンチョビ「い、いえいえ。西住流のヒコーキが迎えにきてくれたから・・・」アハハ

しほ「本題に入りましょう。あなたに是非頼みがあるのです」

アンチョビ「な、なんでしょう」ゴクリ

しほ「娘と旅に出てほしいのです」

アンチョビ「・・・?」

しほ「先の夏の大会において黒森峰は決勝戦で敗戦しました。その責任を感じて次女のみほはこの家を出ていってしまったのです」

しほ「それからというものの、長女のまほは毎日とても落ち込んでいるのです。このままでは戦車道にも支障が出るやもしれません」

しほ「あなたにまほを連れ出してほしいのです。あの子の視野は狭い・・・世の中には楽しいことがまだまだあると知ってほしいのです」

アンチョビ「は、はあ・・・つまり娘さんと遊んでくれと?」

しほ「そういうことです」

アンチョビ「・・・それは構わないですけど、西住まほとは1回か2回会ったくらいで全然仲良いワケじゃないからナア」

しほ「お金を払えば娘と友達になってくれますか?」

アンチョビ「聞こえがわりーな」

しほ「もちろん旅の費用はこちらが持ちます。車も用意しますので二人でお出かけしてほしいのです」

アンチョビ「なんかざっくばらんとしてるナア」

しほ「報酬はこちらに」\

アンチョビ「こ、こんなにもらえるんですか!?」

しほ「これは前払い分です。依頼を終えたら残り分をお支払いいたします。引き受けてくれますか?」

アンチョビ「わかりました!引き受けまァす!」ビシッ

しほ「娘は少々不器用なところがあるけどよろしくね。ではさっそく・・・まほ、来なさい」

まほ「はい、お母様」スッ

しほ「こちらの安斎さんと少し旅行に出ていきなさい。少しは羽を伸ばすことも必要です」

まほ「ですがお母様――」

しほ「いいですね」

まほ「・・・はい」

しほ「安斎さん、この西住流クレジットカードをお渡しします。旅費や雑費は全てこちらで」

アンチョビ「わ、ブラックカードだ」ゴクリ

しほ「領収書は『西住流本家』でもらってね」

アンチョビ「案外しっかりしてる」

 【キャデラック ドゥビル セダン】<バタン

アンチョビ「よーし、荷物も載せたし出発するぞー西住-」

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「それじゃあしゅっぱーつ!」GOGO!

 【セダン】<ブロロロロロ・・・

アンチョビ「目的地決まってないけど、とりあえず動物園でも行くかー」

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「車内寒くないかー?」

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「後ろの席せまくないか?座席もっと前に出そうか?」

まほ「・・・平気だ」


アンチョビ(そっけねえ!)

アンチョビ(落ち込んでるとは聞いたけどここまでとは・・・なんとかしないとこのままじゃキツイぞ!)

アンチョビ「高速道路入るぞー。チケットとりたいか~?」

まほ「・・・取る」

アンチョビ「そこは取るんだな」

 【セダン】<ブロロロロロ・・・

アンチョビ「・・・西住、すまんがちょっとサービスエリア寄ってもいいか?」

まほ「?・・・ああ」

 【セダン】ブロロロロ・・・ キキーッ

アンチョビ「う~、トイレトイレ~」トタタタ

まほ「・・・これがサービスエリアか。初めて来たな」

まほ「む、お土産コーナーがある。くまモンのグッズがたくさんだ」

まほ「あ・・・これはみほが好きだったボコられグマのぬいぐるみ・・・」

まほ「・・・」

アンチョビ「ふぃ~、おまたせ西住~」フキフキ

まほ「・・・」ズーン

アンチョビ(あッ!なんかしらないがめっちゃ落ち込んでる!なんとかしてやらないと・・・)キョロキョロ

アンチョビ「み、みろ西住!食べ物の自販機があるぞ!せっかくだし食べてみるか!」

まほ「?・・・」

アンチョビ「ほら、焼きおにぎりが自販機で買えるんだ」ガチャコン

まほ「焼きおにぎりが?・・・」

アンチョビ「んー!独特のおいしさ!うますぎずまずくもない!ほれ、西住も食べてみろ」

まほ「まふ」パク

まほ「!・・・本当だ。うますぎずまずくもない」

アンチョビ「なー!?これがサービスエリアの魅力なんだよ!」

アンチョビ「ついでだ、フライドポテトも買っとくか」ガチャコン

まほ「自動販売機は飲み物しかないと思っていた」

アンチョビ「こういうとこやスケートリンク、ボウリング場なんかにはたまにあったりするんだ」

まほ「スケートリンクにボウリング場・・・行ったことないな」

アンチョビ「ほれ、食べてみろみろ」ハコ ベリリリリ

まほ「まふ」パク

まほ「あふ、あふっ」ホクホク

アンチョビ「あははは、熱々だよなー」

まほ「おいしい」

アンチョビ「そうか?これちょっと塩っけ足りなくないか?」

まほ「お母様の手料理よりずっとおいしい」

アンチョビ「お母さんかわいそうだからやめてあげて」

まほ「あ、こっちにはアイスの自販機があるぞ」

アンチョビ「食べてみるか?」ガコン

まほ「まふ」パク

まほ「!・・・ちべたい」キーン

アンチョビ「あははは!口の中がフレイザードだな西住!ははははは!」

まほ「・・・ふふふ」

今回はここまでで。更新はゆっくりになります
このスレではまほチョビをゆるく楽しくかければいいなと思っております
みなさまよいお年を

 【セダン】<ブロロロロロ・・・

アンチョビ「なんだって!?動物園行くのはじめてなのか!?」

まほ「ああ」

アンチョビ「遠足とかで行かなかったのか?」

まほ「幼い頃から戦車道漬けだったからな」

アンチョビ「スパルタ・・・」

まほ「王者になれと教えられてきた。常勝こそ西住流であり、そのためには常に鍛錬を怠るなと教育された」

アンチョビ「さすが天下の黒森峰だな」

まほ「・・・だが、この前の全国大会の決勝で敗北してしまった。そしてみほも・・・」

アンチョビ「あ」

まほ「・・・」ズーン

アンチョビ(しまった。ネガティブスイッチ入っちゃった)

アンチョビ「ほ、ほら~西住!ついたぞついた!動物園だ!」

まほ「・・・」

アンチョビ「ほら行くぞ行くぞ!ゴリラでもみりゃ元気出るだろ!ほらほらほら!」ガチャ

カバ<ブフー

 キリン<モー

  パンダ<パンダー

まほ「・・・かわいいな」

アンチョビ「よかった。少しは元気が出たか」

まほ「安斎、あっちに行ってみよう」タタ

アンチョビ「焦ることないぞー。まるで子供だな」ヤレヤレ

 サイ<フシュー

  ゴリラ<ウッホホウホホ

   ゾウ<サゴーゾ!

まほ「安斎、ゾウとマンモスってどう違うんだ?」

アンチョビ「うーん、マンモスは牙がすごいとか?」

まほ「ゾウも牙はあるぞ」

アンチョビ「う・・・たしかに」

まほ「ゴリラってけっこう最近まで未確認生物だったって本当か?」

アンチョビ「聞いたことあるな。もしUMA時代にゴリラと出くわしたらめちゃくちゃ怖いな」

まほ「サイって恐竜の仲間だと思うんだがどう思う?」

アンチョビ「どうした西住。なんだかよく喋るなテンション上がってるのか」

 虎<・・・

まほ「・・・」

アンチョビ「ソフトクリーム買ってきたぞ~」タタタ

まほ「ありがとう」

アンチョビ「虎かー。かっこいいよなー」

まほ「この虎はこの動物園で生まれ育ったらしい。安斎・・・考えたことはあるか?檻の中で育った動物は本当に幸せなのか」

アンチョビ「うーん、難しい問題だな。西住はどう思う?」

まほ「・・・わからない。私も、この虎と同じなのだろうか」

 虎<・・・アクビィ~

まほ「・・・自由とはなんなのだろうな。みほは・・・自由になれたのだろうか」

アンチョビ「・・・」

まほ「・・・」

アンチョビ「ソフトクリーム溶けるぞ。食べないのか?」

まほ「食べる」

 【セダン】<バダム

アンチョビ「いやあ~思ったより楽しめたな動物園」

まほ「ああ、楽しかった」

アンチョビ「せっかくだから水族館も行ってみるか?な~んて――」

まほ「水族館・・・それも行ったことないな」

アンチョビ「マジか!お前ほんとうに戦車道しかやってこなかったんだな」

まほ「どうやら私は動物園の虎と同じらしいな」

アンチョビ「・・・よし、わかった!西住、これからお前が行ったことない所に行って、やったことないことをいっぱいやるぞ!」

まほ「・・・なに?」

アンチョビ「カラオケ行ってー、ボウリングやってー、そうだ!スカイダイビングなんかもやってみよう!いやいや、日本横断だ!金はあるんだし!」

まほ「ちょっと待て安斎・・・話が飛躍しすぎじゃないか」

アンチョビ「今までさんざん戦車ばかりやってきたんだ。人生は踊らなきゃ!」

まほ「しかし西住流を継ぐ者がそんな・・・」

アンチョビ「私達なら出来る。いや、すべきだ!」

まほ「・・・」

アンチョビ「選択肢は2つ。世の中の楽しいことを何も知らずに檻の中で大人しく過ごすか・・・2人で“外”に飛び出すか」

まほ「・・・」

アンチョビ「・・・」

まほ「・・・・・・スカイダイビングか」ニッ

アンチョビ「そうこなくっちゃ!」ニカ

今回はここまでで

 ――・・・

アンチョビ「イヤッフェ~~~イ!」

 \ザッパァ~~~ン/

まほ「安斎、温泉で飛び込むな」

アンチョビ「いや~すまんすまん、ついやっちゃった」


 ――《大分 温泉地》――


アンチョビ「いや~極楽極楽。天然温泉は効きますな~」

まほ「安斎、お湯に入る時はちゃんとかけ湯をしなければならないんだぞ」ザバー

アンチョビ「ほへ~、詳しいんだな」

まほ「西住流として一通りの礼儀はたしなんでいる。実際に温泉地に来たのははじめてだが、マナーはしっかりとたたき込んであるからな」

アンチョビ「さっすがお嬢様」

まほ「それから湯船にタオルをつけるな。マナー違反だぞ」

アンチョビ「わわ、そうなのか」

まほ「そして温泉に入る時は髪の毛をまとめて湯につからないようにするんだ」

アンチョビ「う、うるさいなー。マナー違反をその場で指摘するのが一番のマナー違反なんだぞ」

まほ「だからと言って礼儀を軽んじていいわけではない。さあ、早くその付け毛を外せ」

アンチョビ「地毛じゃあ!」

アンチョビ「は~いい湯だった」ホクホク

まほ「安斎、こっちにお休みコーナーがあるぞ」

アンチョビ「お~、タタミ敷きの広間にマンガ本がいっぱい。温泉地って感じだな~」

まほ「そうなのか?」

アンチョビ「こういうとこに置いてる漫画って『名探偵コナン』とか『はじめの一歩』とか、ちょっとやそっとじゃ読み切れない長編置いてたりするよな。通わせようって魂胆か」

まほ「よくわからん」

アンチョビ「あ!見ろ西住!こっちにゲーセンあるぞ!」

まほ「5000円のことか?」

アンチョビ「そりゃテレビ業界の用語だ!ゲームセンターだよ!ほら、いっぱいアーケードゲームが並んでる!」

まほ「なんだか賑やかだな」

アンチョビ「うわ!見ろよ!『ストⅡ』がまだ動いてる!こっちには『源平討魔伝』に・・・ゲーッ!『ギャラガ』まであるぞ!』

まほ「詳しいな」

アンチョビ「子供のころよく行ってたんだよ~。懐かしいなア・・・よく動く大型体感ゲーム、焼き付いたゼビウス・・・」シミジミ

まほ「ふーん」

アンチョビ「こっちなんて見ろよ!テーブル筐台の『スペースインベーダー』があるぞ!こんなもん古代の化石だ化石!」

まほ「貴様何歳なんだ」

アンチョビ「えい!それっ!名古屋撃ち!」ピュピューンピューン

まほ「私も何かやってみようかな」コイン チャリン

アンチョビ「おっ、西住お前『ファイナルファイト』やるのか。ふっふっふー、どこまでいけるかなー」

まほ「・・・」ガチャガチャ

アンチョビ「しかも筋肉モリモリマッチョマンのハガー市長を選ぶとは・・・」

 <ウワー

まほ「負けた」

アンチョビ「早っ」

まほ「もう一度だ」チャリン

まほ「・・・」ガチャガチャ

アンチョビ「ああっ!あんまり敵に近づくな!ホラ!ナイフで刺された!後ろからも来てるぞ!ほら!そこそこ!」

 <ウワー

まほ「・・・」

アンチョビ「あー、また負けた」

まほ「・・・まるほど、大体わかった」チャリン

アンチョビ「え?」

まほ「・・・」ガチャガチャ

アンチョビ「あ、一面クリア」

まほ「・・・」ガチャガチャ

アンチョビ「に、二面のボスもクリアしちゃった」

まほ「・・・」ガチャガチャ

アンチョビ(こ、こいつ・・・最初はてんでポンコツかと思ったが、どのボタンで何が出来るか、どうすれば効率よく敵を倒せるかをあっという間に把握してしまった)

アンチョビ(物事の判断力と理解力がズバ抜けてるんだ。これが才能なのか・・・こいつはまごう事なき天賦の才だ!)

 <パワーゲイザー! KO!

まほ「勝った」フー

アンチョビ「す、すごい・・・1コインでラスボスのギースまで倒しちゃった」アゼン

まほ「なかなか面白いな、げーせんというのは」

アンチョビ「は、初めてなのに『ツインビー』も『バーチャロン』も『熱血硬派くにおくん』も全部ハイスコアを出しやがった・・・なんて奴だ」

まほ「少ない出費で長時間遊べる、実にコストパフォーマンスに優れた娯楽だ」

アンチョビ「・・・西住、お前やっぱ天才だよ」

まほ「そうなのか」

アンチョビ「私なんかボスを倒すのに何度も何度も挑戦したくらいだ。これが天才と凡人の差って奴か・・・トホホ」

まほ「たしかに私にはある種の才能があるかもしれない。だがお前はクリアをするために何度も挑戦をしたんだろう?」

まほ「そうして手に入れた勝利にもまた価値があるはずだ。私は私のやり方、お前はお前のやり方で勝つ。そこに違いはあれど差などはない」

アンチョビ「!」

アンチョビ「そうか・・・そうだな。お前に才能がある分、私は根性で頑張ればいいんだな」

まほ「その通りだ。だが、私も負ける気はないがな」

アンチョビ「よーし!私も根性根性ド根性でがんばるぞ!絶対に泣き言なんか言うもんか!」

 ――・・・

 ――・・・

アンチョビ「いやだ~~~!うちにかえる~~~~~!」


 ――《広島 上空4000m》――

まほ「泣くな安斎。もうここまで来たんだからあとは飛び降りるだけだ」

アンチョビ「絶対無理だ~~~!できるわけないだろ~~~!」

まほ「スカイダイビングをしようと言いだしたのはお前だろう。泣き言は言わないんじゃなかったのか」

アンチョビ「それとこれとは話が別だ!」

蝶野「そろそろ降下ポイントよ。安心しなさい、私が背中にひっついてインストラクターするんだから。ほら、行くわよ」グイ

アンチョビ「ちょちょちょ待ってくれ!無理にやらされる筋合いはない!」

まほ「ほら、背中押してやるから。一緒に行くぞ」グイ

アンチョビ「わわわ!ちょちょちょま――」


 アンチョビ「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 まほ「はっはっは!すごいな安斎!みろ!地上がどんどん迫ってくるぞ!」バサバサバサ

 アンチョビ「うるさい!おまえなんかだいっきらいだバーカ!」バサバサバサ

 蝶野「あなたたち!ダイビングしながら口げんかなんて余裕ね!よーし!そんじゃおねえさん張り切っちゃうぞ!そ~れ回転回転~!」グルグルグル

 アンチョビ「おわ~!めっちゃんこおそぎゃ~~~!(とてもおそろしい~~~!)」グルグルグル


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

 【セダン】<ブロロロ~

アンチョビ「いや~よかったなスカイダイビング!スカっとした!」

まほ「どの口が」

アンチョビ「やっぱ私ってリアクション求められるキャラクターだろ?ちょっと過剰だったかもしれんが名演だったろ。ハハハハ」

まほ「その口か」

アンチョビ「あれくらいじゃあこの統帥はぜんっぜんビビんないよ。西住はお子ちゃまだから怖かったかもしれんがな~ッハハハハハ」

まほ「この口か」グイグイ

アンチョビ「いふぁいいふぁい!すふぁんすふぁん!(いたいいたい!すまんすまん!)」

 まほ<グ~

まほ「あっ」

アンチョビ「お腹すいたか。じゃあ寿司でも食べにいくか!」

まほ「おすしか。いいな」

アンチョビ「ちょうどいい所にあった。入るぞ~」

 【セダン】<ブロロ~ キキィー


 《回転寿司》

まほ「かいてん・・・?」

アンチョビ「さ、食べよか」オテテ フキフキ

まほ「なんだここは・・・なにかの製品工場みたいだ」

アンチョビ「なんだ西住、もしかして回転寿司は初めてか?」

まほ「ああ」

アンチョビ「な~んだ。それじゃあ私がマナーを教えてやろう。まずテーブルについてるこの蛇口で手を洗うんだ」

まほ「なるほど」スッ

アンチョビ「わー待て待て!ウソだウソ!冗談だってば!」

まほ「冗談?・・・なぜそんなウソを?」

アンチョビ「お前・・・詐欺に引っかかりそうさナンバーワンだな・・・これはお湯が出るの!こうやって湯飲みにお茶を煎れるんだ」コポポ

まほ「けっこうなオテマエで」

アンチョビ「あとは好きなお寿司を好きなだけ食べればいい」

まほ「わかった。板前さーん」オーイ

アンチョビ「違う違う。このコンベヤーで回ってる寿司をとりゃいいんだ」

まほ「?・・・お寿司は板前さんに注文しないと出てこないのでは?」

アンチョビ「くっ・・・これだから金持ちは・・・ッ!」

アンチョビ「ほら、回転してる寿司をこうやって取るんだ」スッ

まほ「・・・」ス・・・

まほ「あっ・・・」スカッ

アンチョビ「ヘタクソ」

まほ「うるさい」

 まほ<スカッ

まほ「くっ・・・なんて機動力だ」

アンチョビ「食べたいネタはこのパネルで注文できるぞ。なにか食べたいものがあれば注文してやろうか?」ピッピッ

まほ「大丈夫だ、問題ない」

 まほ<スカッ

まほ「・・・」

アンチョビ「なに食べる?」

まほ「一番いいのを頼む」

アンチョビ「ほら、とってやったぞ。サーモンとイカ」コト コト

まほ「ありがとう」パク

まほ「む、美味しい」

アンチョビ「へへへー、そうかそうか」

まほ「お母様と行ったお寿司屋さんよりは美味しくないがそこそこ美味しい」

アンチョビ「それ言う必要ある?」

まほ「・・・」モグモグ

アンチョビ「しっかしよく食うナア。もう30皿だぞ」

まほ「見ろ安斎、お寿司に牛肉がのってるぞ。食べてみよう」

 まほ「これはラーメンか?お寿司屋さんでラーメンが食べれるとは」

  まほ「なんとケーキまで。なんでもありか。無法地帯だな」

アンチョビ「す、すごい胃袋だ・・・この細い身体のドコに入っとるんだ一体」

まほ「大トロか。悪くない」モグモグ

アンチョビ「あっ・・・しかもこいつ、値段の高い皿ばっか取ってる。無意識なのか本能なのか・・・チクショウ!私とは住む世界が違いすぎる!」

まほ「ふう、そろそろおあいそしてもらうか」

アンチョビ「あ、ああ。そうだな。すみませーん!お会計してもらえますかー!」

店員「お二人分で6800円です」

アンチョビ「ゲッ!・・・か、回転寿司で6000円だと・・・」アオザメ~

まほ「安いな」

アンチョビ「こ、このやろー!もう我慢の限界だ!庶民をバカにしおって~!」グリグリ

まほ「いたたた。なにをする安斎。拳で頭をグリグリするな」

アンチョビ「この歩く身代金が~!」グリグリ

 ――・・・

アンチョビ「ふわ~・・・キレイだな~」

 ――《大阪 水族館》――

まほ「まさに海の中のトンネルだな」

アンチョビ「みろ西住!こっちにマンボウがいるぞ!」

アンチョビ「こっちにはジンベイザメだ!おっきい~!」

アンチョビ「わぁ!アザラシ!かぁいいな~♪」

まほ「・・・はしゃいでるな安斎」

アンチョビ「ハッ!・・・う・・・じ、実は水族館は初めてなんだ・・・」

まほ「ふっ、そうか」

アンチョビ「あーっ!笑ったな!子供っぽいって思っただろー!」

まほ「いいじゃないか、実際子供なんだ。楽しいことは楽しむのが一番だ」

アンチョビ「う・・・大人な言い回し・・・同い年のクセに」

まほ「私の方が大人だな」フッ・・・

アンチョビ「なッ!?・・・お、お前なんてクールぶってる割に実はポンコツだろ!私の方が大人だ!大人のレディーだッ!」

まほ「見ろ安斎、ペンギンさんが行進してるぞ」

アンチョビ「え!?どれどれ!?みたいみたい!」

まほ「・・・」

アンチョビ「――ハッ・・・!」

まほ「お子ちゃま・・・」フッ

アンチョビ「ぬあーーーっ!」

 【セダン】<ブロロ~

まほ「この街は活気があるな」

アンチョビ「天下の台所、大阪だからな。道行く人もでんがなまんがなだ!」ハハハ

まほ「言っている意味がよくわからんが・・・」

アンチョビ「そうだ西住!たこ焼き食べるかたこ焼き!本場の味だぞぉ!」

まほ「たこやき?」

 ~ソレカラドシタノ~

アンチョビ「ほれ、買ってきたぞ。車ん中で食べろ」バタム

まほ「これがたこやきか。実物を見るのは初めてだ。意外と大きいんだな」

アンチョビ「はふはふっ、うンまァ~いッ!明石のタコは確かに美味だ!ほら、西住も」

まほ「いや、私は遠慮しておく。服が汚れると困る」

アンチョビ「ゥ~!あたちのおようふくがよごれちゃう~!ってか?んなこと言ってないで食え食え!」ホレホレ

まほ「どうやって食べるんだ。ここには皿もフォークもないんだぞ」

アンチョビ「なに言ってんだ。ようじで食べるんだよ。ツマヨウジ!こうやってブッ刺して口に放り込むんだ」ヒョイ パクッ

まほ「っ・・・」

まほ「まふ」パク

まほ「・・・」ングング

アンチョビ「どうだ?」

まほ「・・・どう考えても雑な料理だが・・・たしかに美味しい」

アンチョビ「だぁろぉー!」

まほ「ごちそうさまでした」

アンチョビ「たこ焼き食べたら喉渇いたな。そこのコンビニに寄ろう」

まほ「コンビニとは」

アンチョビ「なんでも売ってるんだぞ。ケーキにお菓子、文房具に生理用品、本、ゲーム、メダロットのパーツ、銀行だって入ってるんだ」

まほ「私をかつごうったって無駄だぞ」

アンチョビ「ほんとだってば。入ったらわかるよ」

 自動ドア<ウィーン

まほ「わ・・・すごい。ほんとになんでもあるな」

アンチョビ「だろ?ここならゾンビパニックが起きても一ヶ月は立てこもれるぞ」

まほ「軍手まで売ってるぞ。こっちにはプラモデルまで」

アンチョビ「お茶買ってくるから、西住は雑誌でも立ち読みしてな」

まほ「たちよみ・・・初めての体験だ」

アンチョビ「なんだか純白のお嬢様を汚してしまってるような気がしてきた・・・すみませーん、お会計いいですかー」

まほ「む」

 [月刊 戦車道時代 特集;西住流後継者徹底解剖!]

まほ「・・・」

まほ「・・・」ペラ

アンチョビ「おまたせ~。なに読んでるんだ西住?」

まほ「・・・」


 『西住流に暗雲!?』

 『昨夏に行われた全国高校生戦車道大会決勝において、歴史に残る敗戦を味わった黒森峰女学園。同校の全国大会十連覇の夢は惜しくも崩れ去った』

 『敗因はフラッグ車長が試合を放棄し、試合中に戦車を降りたことだと言われているが、果たしてそれだけだろうか?』

 『全隊の指揮官を務める同校主将、西住まほ選手の采配ミス、教育不行き届きが原因と関係者は語る』

 『西住流の後継者たる西住まほ選手は、歴代の西住流継承者に比べてつめが甘く、未熟さが目立つ』

 『圧倒的強さと完璧な采配、そして気品に満ちた姿こそが西住流のあるべき姿のハズだが、西住まほ選手にはそれらが備わっていないと筆者は感じる』

 『なぜ自身がフラッグを務めなかったのか?なぜあのような状況を招いたのか?西住まほ選手は西住流後継者に相応しいのか?と、疑問符を投げかけざるを得ない』

 『栄光を極めた西住流において、黒森峰十連覇を目前で果たせなかった責任は重い』


まほ「私は西住流に相応しくないと・・・散々な言われようだ」

アンチョビ「き、気にするな西住。ただのゴシップ記事だ。人の目をひいてナンボの商売だからわざとヤなこと書いてるんだよ」

まほ「だが、書かれていること全てを否定はできない」

アンチョビ「も~そんなの無視しろ無視!そーゆーこと言われるのは人気者だって証拠だ。ほらほら、行った行った」

まほ「・・・」

 ――《香川 うどん屋》――

アンチョビ「う~ん!うまいっ!」チュルリ

まほ「これが香川のうどんか」

アンチョビ「やっぱり本場は違うな!コシがすごいよコシが!」

まほ「ヒザも強いぞ」

アンチョビ「西住、わからないのに無理に知ったかぶりをするのはよくないぞ」

まほ「安斎、お前が注文した天ぷらうどんも美味しそうだな」

アンチョビ「ああ、揚げたてサクサクだ。エビ天ひとくち食べるか?」スッ

まほ「いただく」ガブ

アンチョビ「あー!ひとくちがデカすぎだオイ!」

まほ「ガジガジ」

アンチョビ「いってるいってるゥーッ!」

まほ「うん、うまい」ペロリ

アンチョビ「こ、こいつ~!お前のキツネうどんもよこせ!」ガブ

まほ「おい、それは私のおいなりさんだ」

アンチョビ「ん~っ♪このお揚げさんも甘い上に出汁が染みててうまいっ!」

まほ「だったらそのかき揚げはもらうぞ」サク

アンチョビ「のわー!とるなー!」

まほ「ふっふっふ」ザックザック

アンチョビ「おくちいっぱいに頬張りながら勝ち誇るなー!子供かおのれわー!」

 ――・・・

 扉<ピピッ

まほ「開いたぞ」ガチャ

アンチョビ「ゲッ・・・!」

 >,゜.:。+゜キラビヤカ~~~,゜.:。+゜<

アンチョビ「すごい豪華な部屋・・・」ゴクリ

まほ「先にシャワーに行くといい。私は一息ついてからにするよ」

アンチョビ「こ、こんなに高級そうなホテルなのに西住は慣れたご様子だな」

まほ「こういう宿は遠征でたまに利用しているからな。チェックアウトは朝の九時だ」

アンチョビ「わ、見ろ。フルーツの盛り合わせがあるぞ。だれかが忘れてったのかな」

まほ「宿泊客は自由に食べていいんだ」

アンチョビ「冷蔵庫に飲み物がある」

まほ「私達のためにスタッフが準備してくれてるんだ」

アンチョビ「お風呂にテレビがついてるんだが」

まほ「ゆっくりしながら見るといい」

アンチョビ「こ、こんなに丁寧なおもてなしされて大丈夫なのか?ほら、昔話でよくあるだろう。人間を太らせてから食べるっていうヤツ。あれみたいなやつじゃないのかこれ」

まほ「まったく、世間知らずだなお前は」

アンチョビ「おみゃーにいわれたくねーがや!」

 <チュンチュン アサチュン

アンチョビ「Zzz・・・んム・・・・・・」

 {AM 06:45}

アンチョビ「・・・まだ寝れる・・・ムニャ・・・・・・」

アンチョビ「・・・?・・・あれ・・・西住?」キョロキョロ


 ――・・・

まほ「・・・」グッ・・・ グッ・・・ グッ・・・

まほ「ふぅー・・・」

まほ「・・・次はクランチだったか」ググッ・・・


アンチョビ「まさかと思って見に来たら、ジムで筋トレしてる・・・」

アンチョビ「あんなに汗かいて・・・あんなに真剣に・・・」

アンチョビ「アイツは・・・西住は才能ある天才タイプだと思ってたけど・・・どうやらそうじゃなかった」

アンチョビ「アイツは才能を活かすために努力を怠らないヤツなんだ・・・」

アンチョビ「・・・」

 ――《愛知 船上》――

まほ「・・・」

アンチョビ「・・・」

まほ「・・・」

アンチョビ「・・・なあ、もうそろそろ引き上げないか?3時間も音沙汰なしだぞ」

まほ「釣りは我慢との勝負だとお父様が言っていた。これくらいじゃ前哨戦にもならんぞ安斎」

アンチョビ「んあ~!私はどっちかと言うとせっかちなタイプなんだ!こんなのは性に合わん!」

まほ「お前と真逆な性格でよかったよ」

 釣り竿<クイクイッ

アンチョビ「あ!引いてる!引いてるぞ西住!」

まほ「む」

アンチョビ「あせるな!急いで!慎重に!一気にいけぇ!」

まほ「ふん」グイ

 プチンッ

まほ「あっ」

アンチョビ「プーッ!ハハハハハハハ!バレてやんの~!だっはははははは!強く引っ張りすぎだよお姫様ー!アーッハハハハハ!」

まほ「・・・」

アンチョビ「ハハハハーのハー!」

まほ「・・・」ベシ

アンチョビ「あだっ、なにすんだ西住。竿を投げるな」

 ――・・・

アンチョビ「うわ~・・・懐かしいなー。町並みは変わったけどなんとなく覚えてるよ」

まほ「?」

アンチョビ「私は愛知出身だからな。ここは土俵なのさ」

まほ「この町で安斎が作られたのか」

アンチョビ「間違ってないけどヤな言い方するな」

まほ「案内してくれないか」

アンチョビ「いいだろう!昔あっちにハローマックがあってー、こっちにはおもちゃのバンバンがあったんだ」

まほ「お前一体いくつなんだ」

アンチョビ「あっ!」ダッ

まほ「待て安斎。急に走り出してどこへゆく」タタタ

アンチョビ「わあ!まだあったんだ!この駄菓子屋!」パァー

まほ「昭和のまま時間が止まっているかのような店だな」

アンチョビ「なつかしい・・・ここでよく駄菓子を買ったな~。ビックリマンチョコ、仮面ライダースナック、ココアシガレット・・・」

まほ「貴様本当にいくつなんだ」

アンチョビ「買った買った♪そこのベンチで食べよう」ガサガサ

まほ「たくさんだな」

アンチョビ「安いがけっこうおいしいんだぞ。ほら、ビックリマンチョコをやろう。2つ買ったから1つとれ」ガサ

まほ「これだ」ガサ

アンチョビ「どんなシールが入ってた?」

まほ「キラキラ光るシールだ。スーパーゼウスと書いてある」

アンチョビ「すごいな!それめちゃくちゃレアなやつだぞ!」

まほ「そうなのか」

アンチョビ「私のはどんなのかな~」ガサ

アンチョビ「・・・・・・シール入ってなかった・・・」

まほ「ある意味珍しいな」

アンチョビ「ま、まあいい。ウエハースチョコおいしいから」サクサク

まほ「懐かしいな。子供の頃、よく駄菓子を食べたものだ」

アンチョビ「ウソつけ西住。お前みたいなお嬢様がこんなの食べてたわけないだろ」

まほ「本当だ。みほと一緒におこづかい片手に駄菓子屋に行った」

アンチョビ「本当か~?大金持ちのセレブ姉妹がそんなこと~?」

まほ「・・・私だって普通の子供だったんだ」

アンチョビ「普通の子供は幼少期から戦車乗り回さないぞ」

まほ「・・・」

 ――《東京 歌舞伎座》――

 \ゼッケイカナ ゼッケイカナ!/

まほ「おお・・・」


 ――《東京 落語座》――

 \ジュゲムジュゲムゴコウノスリキレ・・・/

まほ「ふふっ・・・」


 ――《東京 劇団四季》――

 \ハクーナマタータ!/

まほ「はくなまたた・・・」



 ――《東京 スカイツリー》――

まほ「高い・・・」

アンチョビ「どうだ西住。東京巡りもオツなもんだろう」

まほ「ああ、歌舞伎も落語も演劇も初めて見たが、どれもすばらしかった」

アンチョビ「だよな~!やっぱ生で見ると迫力がすごいよな~!」

まほ「このスカイツリーからの光景もすごい迫力だ。ありがとう安斎、色々と案内してくれて」

アンチョビ「なに言ってんだ。私だって西住マネーで名所巡りしてるんだからおあいこだ!」

まほ「うちがお金持ちでよかった」

アンチョビ「そういうこと言うと反感買うぞ」

まほ「安斎のエスコート術と運転とコミュケーション力のおかげで楽しく旅が出来ている。お前には本当に世話になりっぱなしだな」

アンチョビ「ふふん、もっと褒めるといい」

まほ「安斎の無駄知識の豊富さ、使いっ走りの巧さ、物怖じしない図太さのおかげだ」

アンチョビ「聞こえがわりーな!」

まほ「ふふ、冗談だ」

アンチョビ「お前が言うと冗談に聞こえないぞ!」


記者「すみません。あなた・・・もしや西住まほ選手ではありませんか?」

アンチョビ「?」

まほ「そうですが」

記者「やっぱり!私、月刊戦車道の記者です。こんなところでスター選手に出会えるなんて。おい、写真写真」

カメラマン「はーい、目線くださーい」パシャ

アンチョビ「な、なんだなんだ?」

記者「いや~ここで会ったのも何かのご縁ということで、少しお話よろしいでしょうか?」

まほ「えっ・・・」

記者「前大会、黒森峰は残念でしたね。業界ではまほ選手の采配ミスが敗因につながったという声もありますが――」

まほ「あの・・・」

記者「そもそも一年生の西住みほ選手に重責を与えたのはどういうおつもりで――」

まほ「いや・・・」

記者「まほ選手は西住流を継ぐに相応しいのかという疑問の声も――」

まほ「・・・」

アンチョビ「ちょちょちょちょ~~~っと待った!なんだなんだアンタ達は!私達はプライベートなんだぞ!」

まほ「・・・」

記者「おや?もしや西住まほ選手の恋人ですか?これは特ダネだ!」

カメラマン「はーい、目線くださーい」カシャ

アンチョビ「ちっが~~~う!私達はツレだツレ!それにさっきから失礼だろう!なんて言い草だ!」

記者「いえ、これは私個人の意見ではなく業界の各方面からの意見を代弁しているのでありまして・・・」

アンチョビ「じゃあこいつが西住流を継ぐのに相応しくないっていうのか!」

記者「い、いえ・・・個人的には西住まほ選手を応援しておりますが・・・」

カメラマン「はーい、目線くださーい」

アンチョビ「おみゃーもさっきから撮っとんじゃにゃー!」

カメラマン「ひっ!す、すみません!」

アンチョビ「西住はがんばってる!全国大会でもがんばった!でも負けた!ただそれだけだ!誰が悪いとかダメだとかそんなこと言って何になる!人の悪口なんか書くな!わかったな!」

記者「・・・は、はい・・・申し訳ありませんでした・・・」

カメラマン「ごめんなさい」カシャ

アンチョビ「よし、謝ったからゆるすぞ」

記者「優しっ」

アンチョビ「いこう西住、おいしいイタリアンでも食べて気分を変えよう」

まほ「・・・ふっ」

アンチョビ「?・・・なに笑ってるんだ?」

まほ「いや・・・お前がいてくれると心強いよ」

 ――《福島 ラーメン屋》――

 まほ<ズズズ~~~

 アンチョビ<ズズズ~~~

まほ「うまい」

アンチョビ「なー!?めちゃめちゃ美味しいよなーこの喜多方ラーメン!」

まほ「ちぢれた麺にトロっとしたチャーシューが相まってとても美味しい。これがラーメンのおいしさか」

アンチョビ「本場の味だからな!博多のとんこつラーメンも全然違う味だけど美味いはずだ。地元では食べなかったのか?」

まほ「これが初ラーメンだ」

アンチョビ「贅沢なやっちゃな~。本場の喜多方ラーメンがはじめてなんて」

まほ「地元に帰った時の楽しみが出来たよ」

アンチョビ「北海道の味噌ラーメンもおいしいんだぞ。長崎のちゃんぽんや沖縄そばなんかも美味いって評判だ」

まほ「ほう。それは楽しみだ」ジュルリ

アンチョビ「おっと気をつけろよ西住。ラーメンは高カロリーだから太っちゃうぞ」

まほ「なんと」

アンチョビ「ところがこの喜多方ラーメンはラーメンなのにサッパリしてるからカロリーゼロなんだ」

まほ「なななんと」

アンチョビ「だからいくら食べても太らないんだぞ。安心しておかわりするといいぞ」

まほ「そうだな。女将、もう一杯」

アンチョビ「・・・お前はそのうち詐欺にでもひっかかりそうで心配だナア」

 ――・・・

 【セダン】<ブロロロ~・・・

 カーステレオ<♪~♪♪~

アンチョビ「なんだって!?西住、お前ザ・ビートルズを知らないのか!?」

まほ「ああ」

アンチョビ「この名曲『Get back』も聴いたことない?」

まほ「初めて聴くな」

アンチョビ「なんてこった・・・この曲は旅の帰り道中で聴くべき名曲だって幼稚園児でも知ってるぞ」

まほ「そうなのか?」

アンチョビ「それじゃあ西住、QUEENは知ってるだろう。この『We Will Rock You』とか『Don't stop me now』とかは聴いたことあるよな?」

 カーステレオ<♪♪♪~♪♪♪♪♪~

まほ「・・・いや、知らないな」

アンチョビ「ウッソだろ・・・日本人でQUEENを聴いたことない人なんているのか?」

まほ「音楽には疎くて」

アンチョビ「ブラックサバスは?・・・AC/DC!・・・モーターヘッド!」

まほ「???」

アンチョビ「かぁ~っ!黒森峰じゃ何を教えてんだ!」

まほ「校歌なら唄えるんだが」

アンチョビ「あ!見ろ西住!ちょうどそこにレコード屋さんがある!寄るぞ!」

まほ「えっ」

アンチョビ「ここのレコード屋、CDも置いてるじゃないか。ほれ!これQUEENの『ジュエルズ』のアルバムだ!買っとけ買っとけ!」

まほ「アルバム?子供の頃の写真とか?」

アンチョビ「アルバムっちゅうのはいっぱい曲が入ってるCDのことだ。一曲とか二曲だけのやつのことをシングルっていうんだぞ」

まほ「?」

アンチョビ「まあお前にはまだ早い話か。ほれ、AC/DCの『Back in black』も必聴だ。ロックンロールの最高峰だぞ」カチャ

まほ「よくわからんが・・・」

アンチョビ「グーグードールズにオアシスもいいぞ。レディーガガ、アリアナ・グランデ、スティーリーダンに・・・ああ、ABBAも最高だな」カチャカチャ

まほ「安斎・・・本当に世話焼きだな」

アンチョビ「世の中には素晴らしいものがいっぱいあふれてるって知ってほしいんだ」

まほ「ほう」

アンチョビ「美味しい食べ物も素晴らしい音楽も、お前が知らないものがまだまだたくさんある。それらと出会う手助けが出来るって思うとうれしいんだ!」

まほ「フッ・・・そうか」

アンチョビ「さあ、食べ物と料理の次はオシャレだ!西住が着たこともなさそうなフリフリのドレスとか着てみよう!」

まほ「えっ」

アンチョビ「はやく!洋服屋さんに行くぞ!キラッキラでキャピッキャピの服を選んでやるからな!」

まほ「いや・・・私はそういうのは・・・」

アンチョビ「西住乙女化☆計画始動~~~!!」

まほ「ぎゃー」

 ――《青森》――

 【セダン】<ブロロロ~・・・

 カーステレオ<♪~♪♪~

まほ「・・・♪」

アンチョビ「やれやれ、すっかりハマっちゃったな」

まほ「素晴らしいな、ビートルズは」

アンチョビ「チェッ、ミーハーだナア。それより西住、次はどこに行きたい?やっぱ青森と言えばリンゴ狩りか?八甲田山か?」

まほ「実は寄りたい所があってな」

アンチョビ「ム?


 ――《プラウダ学園艦》――

まほ「・・・」

アンチョビ「まさか宿敵プラウダの学園艦を見学したいなんて・・・一体何を考えとるんだ」

まほ「敵を知ることこそ勝利への近道だ。戦車道の練習場はこっちだと聞いたが・・・」キョロキョロ

アンチョビ「あっ!西住、あれを見ろ!」

まほ「!」


 \ドゴーン!/ \ギャラギャラギャラ・・・/ \ドッゴーン!/

カチューシャ「ノンナ!攻撃後に足が止まってるわよ!アリーナ!当てられないなら無理せず足を止めてちゃんと狙いなさい!そっちは装填が遅すぎる!すぎに充填しなさい!」

 ノンナ「はい」 アリーナ「わかりましただ!」 プラウダ生徒「すみませーん!」

カチューシャ「次!Cグルーヴをもう一度!次は確実に決めなさい!」

 プラウダ生徒達「「「はい!!!」」」

まほ「・・・」

アンチョビ「気合い入ってるナア。優勝したからって慢心してるわけじゃなさそうだ」

まほ「やはりプラウダは強敵だ。奴らに勝つのは簡単なことじゃない」

アンチョビ「ビビってるか?」

まほ「まさか」

アンチョビ「へへ、だろうな。言っておくが、私達アンツィオだって強敵だぞ!・・・今はカルパッチョとペパロニしかいないが、新入生にたくさん加入してもらうんだからな!」

まほ「それは楽しみだな」


 「おや、西住まほさんじゃありませんか」

まほ「!」

役人「敵情視察ですか。さすがは西住家のご息女だ」

アンチョビ「? 知り合いか?」

まほ「?」ハテ

役人「・・・オホン、文科省の辻ですよ。何度か顔を会わせてます」

まほ「そうでしたか」

役人「ところで、視察にしては黒森峰の他の方々が見えませんが・・・」

まほ「私は安斎と二人で旅行中なので、今日は寄ってみただけです」

役人「ほう・・・」チラ

役人「西住さん、私が言うまでもないでしょうが、ご友人は選ばれた方が・・・」

アンチョビ「!」

まほ「なんですって?」

役人「あなたは西住流の顔というだけでなく、日本の戦車道界を背負って立つ方です。妙な連中とつるむと品位を疑われることを自覚しておいてください」

アンチョビ「なっ、なっ、なんて言い草――」

役人「君も、安斎くんと言ったかね?西住さんに悪い影響を与えないように気をつけてくれ」

アンチョビ「!」

役人「西住さんは澄んだ小川のような方だ。泥で汚れては困る」

アンチョビ「・・・」

役人「一流は一流同士でしか交流すべきではないんだ。君がどこの誰かは知らないが、西住さんを堕落させるようなことはしないでくれたまえ」

アンチョビ「・・・あ・・・・・・」

まほ「そこまでにしてもらおう」

役人「!」

まほ「これ以上私の友人に無礼を働くのはやめてください」

役人「いや・・・私はあなたのことを思って――」

まほ「帰るぞ安斎」

アンチョビ「あ・・・でも」

まほ「帰るんだ」

アンチョビ「・・・ああ」

まほ「失礼します」ザッ


役人「・・・」

役人「ん?・・・・・・安斎?・・・たしか愛知に有望な子が居ると小耳に挟んだが・・・なんて名だったか・・・?」

 <ポツ・・・ポツ・・・ポツポツポツ・・・

 雨<ザアァーーーーー・・・


 【セダン】<ブロロ・・・

まほ「・・・」

アンチョビ「・・・」

まほ「・・・」

アンチョビ「・・・ま、まったくさぁ~!失礼な人だったな~あのオッサン!この私がアンツィオの統帥だとは知らずにさ~!」

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「・・・・・・でもさ・・・案外言ってることは間違ってないかもしれないな」

まほ「・・・・・・なに?」

アンチョビ「私なんかとつるんでると西住に悪影響があるんじゃないかってさ・・・身に覚えあるからさ。西住はお屋敷住まいのお嬢様だし、私なんかと居たら価値観崩れちゃうもんな」

まほ「・・・」

アンチョビ「西住流後継者、日本戦車道界のエース、希代の天才戦車女子・・・色んな人の期待を背負ってる天下の西住まほ様にはキレイなままでいてもらわないとな」

まほ「・・・・・・車を止めろ」

アンチョビ「・・・は?」

まほ「車を止めろ」

アンチョビ「でもこんな大雨だし早く宿に――」

まほ「いいから車を止めろ!」

 【セダン】<キキィーッ!

 ドア<ガチャ! バタン!

 雨<ザアアァーーーーー・・・

まほ「・・・」バシャッ バシャッ バシャッ

アンチョビ「待てよ!どこいくんだよ西住!」ガチャ

まほ「・・・」バシャッ バシャッ バシャッ

アンチョビ「待てって!おい西住!」


まほ「ああ!お屋敷に住んでるとも!西住流の跡継ぎともてはやされ温室でぬくぬく育てられたお嬢様だ!普通の女の子と違う世間知らずさ!」

まほ「だがマスコミは!大人達は私を西住流にふさわしくないと言う!どれだけ努力しようと一挙手一投足の揚げ足をとって西住流らしくないと悪口を言い続ける!」

まほ「西住流でもなく普通の女の子にもなれないなら、いったい私は何者なんだ!!!」

アンチョビ「っ・・・!」

まほ「お前のおかげで“普通”になれた・・・お前のおかげで“世界”を知った!私の人生の扉を開けてくれたのはお前なんだ!」

まほ「お前が私を“西住まほ”にしてくれたんだ!そのお前が!お前自身が“私”を否定するな!!!」


アンチョビ「・・・・・・西住・・・」

まほ「・・・」ハア・・・ハア・・・

アンチョビ「・・・・・・悪かった・・・私が馬鹿だったよ・・・」

まほ「・・・」

アンチョビ「・・・さあ、ずぶ濡れになるから車に戻ろう。今夜の宿を探そう。二人で・・・」

まほ「・・・・・・ああ」

 雨<ザアアァーーーーー・・・

 ――・・・

アンチョビ「お風呂さきにもらったぞ西住」フキフキ

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「・・・悪かったって。謝ってるだろ。そろそろ勘弁してくれよ西住」

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「いつまでもふくれっ面だとキレイな顔が台無しだぞ~西住~」グリグリ

まほ「・・・ああ」

アンチョビ「・・・」

まほ「・・・」


アンチョビ「・・・明日は北海道だ。美味しいもの食べような、まほ」


まほ「・・・それを待っていた」ニッ

――・・・

アンチョビ「ふわあぁぁぁぁ~~~・・・む」ムニャムニャ

まほ「大きなあくびだな」

アンチョビ「なんだってこんな朝早くに起きなきゃならんのだ」

まほ「仕方ない。これに乗れるのは早朝しかないからな」

 係員「それでは、一人ずつ順番に乗ってくださーい」

まほ「私が先に行こう」グイ

アンチョビ「じゃ、次私ー」グイ

 係員「それでは、上昇しまーす」

 \ボオオォォォオ!/

まほ「うるさい。あつい」

アンチョビ「わ!わ!浮いてるぞ!どんどん浮いてく!」


 ――《北海道 上空》――


アンチョビ「わあ・・・すごい絶景」

まほ「荘厳な景色だな」

アンチョビ「綺麗・・・世界って本当に綺麗」

まほ「気球に乗るのは初めての体験だ」

アンチョビ「私もだ。この景色は北海道じゃないとみれないな」

 係員「今、我々はウルトラマンの目線の高さにいますよ」

アンチョビ「ひえ~、こんなに高いのか。ウルトラマンが高所恐怖症だったらやってらんないな」

まほ「・・・」

アンチョビ「どうした?西住」

まほ「いや・・・この景色を目に焼き付けておこうと思ってな」

まほ「安斎と日本を旅して色々な所へ行ったが・・・最後にいいものが見れてよかった」

アンチョビ「ふふ、それはなによりだ。誘った甲斐があったよ」

 ――《北海道 函館》――

 <ジュゥ~~~

アンチョビ「本場のジンギスカンだ!はじめて食べるぞ」

まほ「これがヒツジの肉か・・・毛がモフモフなだけあって濃厚な味わいだな」

アンチョビ「西住それラード」


 ――《北海道 札幌》――

まほ「サッポロラーメンおいしいな」ズルズル

アンチョビ「ああ!これがホントのサッポロ一番だな!」

まほ「それは・・・?」


 ――《北海道 礼文島》――

アンチョビ「礼文島名物ウニ丼だ!こんな贅沢アンツィオじゃ味わえない♪」

まほ「アンツィオでは普段どんなものを食べているんだ?」

アンチョビ「そりゃあもちろんイタリア料理だ!自慢じゃないがサイゼリヤの社員さんよりイタリア料理食べてる自信があるぞ」

まほ「ほう、本格イタリアンか。いつか食べてみたいな」

アンチョビ「お!いいぞいいぞ!いつでもアンツィオに来るといい!お腹いっぱいおいしいイタ飯食べさせてやる」

まほ「言っておくが私の舌は肥えてるぞ」

アンチョビ「腕がなるねぇ」

まほ「ちなみに好きな食べ物はカレーだ」

アンチョビ「子供舌!」

アンチョビ「は~、ジャガバター焼きもおいしいな」ホクホク

まほ「ジャガイモに塩からをのせたものもおいしいぞ」ホクホク

アンチョビ「さっすが食のパラダイスだ!はるばる九州から旅してきた甲斐があったな」

まほ「旅の締めくくりに相応しい地だ」

アンチョビ「そうか、もう日本縦断しちゃったんだな。よし、そろそろ帰るか!」

まほ「また日本を縦断するのか?」

アンチョビ「ウッ・・・そこまで考えてなかった」

まほ「えっ」

アンチョビ「また旅するのはいいがけっこうな道のりだナア」

 ―――チェーーー・・・>

アンチョビ「ん?」

 ――ドゥーチェーーー・・・>

アンチョビ「どこからか私を呼ぶ声が!?」バッ


 ペパロニ「ドゥーーーチェーーー!」

 \ザッパーーーーーン/

アンチョビ「なっ!?なっ!?が、学園艦ンン~~~!?」

まほ「これはアンツィオ高校の学園艦」

ペパロニ「ドゥーチェッ!お久しぶりッス!」

カルパッチョ「お迎えにあがりました」ニコッ

 ――《アンツィオ学園艦》――

アンチョビ「お前達よく迎えに来てくれたな!」

カルパッチョ「統帥のことだから片道のことしか考えてないと思ったので」

アンチョビ「ウッ・・・す、するどい」

まほ「ふ、いい補佐役を持ったな」

カルパッチョ「さあどうぞ西住さん、こちらにお座りください」イスヒキッ

まほ「ありがとう」

ペパロニ「ささっ、まほ姐さん!ウチの激ウマイタリアンをどうぞ召し上がれ!」ジャーン

まほ「いいのか?私は君達の敵チームなんだぞ」

ペパロニ「統帥のダチはアタシたちにとっても姉御ッスよ!」ニカッ

カルパッチョ「学園艦は西住さんのご実家に向けて出航しているので、帰るまでの間ですがゆっくりしていってくださいね」

アンチョビ「ぃよーしお前ら!熊本に着くまでの間にまほをいっぱいいっぱいおもてなしするぞー!」

まほ「えっ」

 ペパロニ&カルパッチョ『おーーーっ!』

ペパロニ「まほ姐さん!肩もむッスよ!」スッ

ペパロニ「か、硬ぇ!」カチンコチン!

まほ「鉄の心、鋼の掟」テッカイ

アンチョビ「西住流は超人育成一門だからな」

カルパッチョ「では私が。ちょっと本気でいきますよ」ガキンッ! ゴキンッ!

まほ「おお、いい塩梅だ。気持ちがいいぞ」

カルパッチョ「ふふ、ありがとうございます。まだまだいきますよ~。えいっ、えい」ボギンッ!グワラキンッ!

アンチョビ「音が人体から発せられるソレじゃないぞ・・・」

まほ「凝りがだいぶほぐれたよ。ありがとう」

カルパッチョ「どういたしまして」フフ

ペパロニ「かぁ~、さっすが西住流本家のお嬢様は育ちがちがわぁ!精神も肉体も鋼鉄なんスね!カッチョイイ!」

アンチョビ「おいおいペパロニ、まほを超人バロム1みたいに言うんじゃない。たしかにすごいやつだが私達と同じ十代の女の子なんだから」

まほ「フ・・・」

ペパロニ「なるほど!まほ姐さんもただのガキってことッスね!」

 Σまほ<ガーン!

アンチョビ「言い方ァペパロニ!」

カルパッチョ「お料理追加しますね。マルゲリータピッツァにリゾット、デザートにイタリアンプリンもありますよ」コト

まほ「どれもおいしいな。プロも顔負けだ」

カルパッチョ「ありがとうございます」

ペパロニ「へっへ~ん!ウチのイタ飯はアンツィオ伝統ッスからね!ところでまほ姐さんの好きな食べ物ってなんスか?」

まほ「カレーだ」

ペパロニ「おお!やっぱ子供舌のガキなんスね!」

アンチョビ「もうちょっと言い方あるだろ!」

ペパロニ「す、すんませんッス!悪気があったんじゃないッス!まほ姐さんもまだまだケツの青いガキだってことを言いたくて・・・」

アンチョビ「ペパロニァ!」

まほ「ふふ、構わない。実際私はまだまだ未熟な子供だからな」

アンチョビ「そ、そんなことないさ!まほはしっかりしてるし大人っぽいぞ!」

カルパッチョ「その通りです。若いのに歳いってる雰囲気出てますよ」

アンチョビ「カルパッチョァ!」

まほ「ふふ、君達といると退屈しないな」

アンチョビ「イヤミか貴様ッ!」

カルパッチョ「そろそろ熊本に着く頃ですね」

まほ「ありがとう、温かく迎えてくれて感謝している」

ペパロニ「とんでもねーッス!」

まほ「君達は私を色眼鏡で見ない。自然に接してくれる相手は私にとって貴重でありがたい存在だ」

ペパロニ「でへへ~、褒められちった」

アンチョビ「礼儀っちゅーもんをわきまえてないだけでは・・・」

まほ「世の中には私が“理想通り”に振る舞わないと機嫌を損ねる人もいるが・・・君達のようにありのままの私を見てくれる人が好きだ」

ペパロニ「告られちった!」

カルパッチョ「もう付き合っちゃえば~?」

まほ「安斎との旅でわかった。私は私を演じる必要はない・・・私であればいいとな」

ペパロニ「んん?・・・どーゆー意味ッスか?」

カルパッチョ「難しいですけど、まほさんが良いならよかったです」ニコッ

まほ「うむ。君達の隊長は大したやつだ。大切にするんだぞ」

ペパロニ「ウッス!言われるまでもねーッス!」

カルパッチョ「統帥は私達の統帥ですからね」フフ

アンチョビ「な、なんだかはずかしいぞ・・・」

まほ「ふふ」

ペパロニ「到着ッスー!」

まほ「送ってくれてありがとう。手厚い歓迎までしてくれて感謝している」

カルパッチョ「また遊びに来てくださいね」

ペパロニ「ウチはいつでも大歓迎ッスよ!」

まほ「ありがとう。行こうか安斎。お母様から報酬金をもらうんだろ」

アンチョビ「いや、いらないよ。たしかに最初はお金が出るっていうから乗ったところもあるが、今さらもらう気になんかなれないからな」

まほ「だがそれではお前が旅に出てくれた意味がないではないか」

アンチョビ「意味ならあるさ。楽しかったからな」

まほ「安斎・・・」

アンチョビ「まほ、お前は期待されてる。これからも色んな声があるだろうが、批難になんか耳をかすな。お前はお前の道をいけ」

まほ「ああ」

アンチョビ「そして!今度はライバルとしてお前と戦うぞ!お前がどこにいようと、日本戦車道界の頂点にいようと、勝負に行くからな!」

カルパッチョ「チームメンバーを集められればですけどね」

アンチョビ「それをいうなっ!」

まほ「ふふ・・・楽しみにしているよ」


アンチョビ「じゃあな!まほ!」

まほ「ああ、またな、アンチョビ」





 ――そして、一年後・・・

アンチョビ「もう少しで私も卒業か~。山あり谷ありの3年間だったな~」

カルパッチョ「ドゥーチェ、卒業旅行は行かないんですか?」

アンチョビ「行かない行かない。そんなお金ないしチームで3年生は私一人だからな」

カルパッチョ「せっかくですし高校最後の思い出作りに行ければよかったのに」

ペパロニ「ドゥーチェ!大変ッスよ大変!」

アンチョビ「どうしたペパロニ。パスタが値上がりでもしたか?」

ペパロニ「ちがうッス!アレ見てくださいアレ!」

アンチョビ「なんだ?」

 西住ヘリ<ババババババ・・・

カルパッチョ「黒森峰のヘリ・・・!」

ペパロニ「ありゃぁまほ姐さんッスよ!」

アンチョビ「ぬゎにぃ!?」

まほ「やあ君達」

ペパロニ「ちわーッス!お久しぶりッス!」

カルパッチョ「ご無沙汰してます」

アンチョビ「ど、どうしたんだまほ!わざわざヘリでやってくるなんて・・・」

まほ「実は黒森峰の戦車道チーム3年生達で卒業旅行に沖縄へ行くんだが・・・お前も一緒にどうかと思ってな」

アンチョビ「えっ!?」

カルパッチョ「よかったじゃないですかドゥーチェ。せっかくですしご一緒させてもらったらどうですか?」

ペパロニ「ソーキそばのレシピ持って帰ってきてくださいッス!」

まほ「費用はこちらが持つ。遠慮することはない」

カルパッチョ「行ってきてくださいドゥーチェ」

ペパロニ「留守は任せてくださいよ!」フンス

アンチョビ「し、しかし・・・いいのか?部外者の私なんかが一緒に行って・・・」

まほ「お前がいなくて、誰が私を笑わせる?」

アンチョビ「・・・はははっ、わかった。わかったよ。私がいないとまほは缶詰の開け方もわからないもんな」

まほ「まあな」フンス

アンチョビ「なぜそこで得意げになる!」

まほ「当然だ。私は他の誰でもない世間知らずで不器用な西住流次期後継者――」


まほ「西住まほだからな」


 ―おわり―

 ~おまけ~

 ――・・・まほとアンチョビが日本横断旅を終えた直後の頃・・・――

 ――西住邸――

まほ「ただいま戻りました。お暇を頂き、ありがとうございました」

しほ「おかえりなさい。どうでしたか?」

まほ「大変実りのある旅でした」

しほ「・・・そう。疲れたでしょう。もう休みなさい」

まほ「はい。失礼します」


しほ「・・・」

菊代「まほお嬢様、気が晴れたようなお顔でしたね」

しほ「あの子を旅に出させた目的は二つ。みほが離れて行ってしまったことに対する負い目を軽減させることと・・・西住流を継ぐ者として成長してもらうため」

しほ「世の中を実際に見て知り、人間として一皮むけてもらえればと期待してのこと。あの子の目を見るに・・・どうやらうまくいったようね」

菊代「西住の名を背負うことの責任・・・その宿命は十代の少女にはあまりに重すぎるものですからね」

しほ「この旅であの子も成長できた・・・必ずや立派な西住流後継者となってくれるわ」

菊代「安斎さんのおかげですね」


菊代「まあ、娘を成長させるのなら母親が手引きをするべきだったとは思いますけどね」

 Σしほ<ギクッ

 ~おしまい~

これにて完結です。ここまで読んでくれた方ありがとうございました

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