モバP「人に食べさせてもらうとき『あーん』って言うじゃん」渋谷凛「うん」 (10)


P「ほら、『はい、あーんして』とかさ」

凛「うん」

P「いま、ふと何であれで通じるんだろうな、って思った」

凛「……。言われてみればそうかも」

P「だろ?」

凛「『あーん』が口を開けることだって、どこで知るんだろうね」

P「な。物心ついた頃には知ってた気がするし、不思議」

凛「でも、ほら『いーっ』してとか言うよね」

P「確かに」

凛「だから特別なことじゃないのかも」

P「『あー』で口を開けて、『ん』で閉じるし、わかりやすいもんな」

凛「そうそう」

P「といったところで」

凛「? うん」

P「あーん、の時間です」

凛「前置き長くないかな」


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凛「ん。おいしい」

P「そりゃよかった」

凛「……で。そのいっぱい入ってるドーナツポップはどうしたの?」

P「千川さんにもらった。買ってきましたよ~、って」

凛「そんなにたくさん?」

P「うん。凛ちゃんとおやつにどうぞ、って」

凛「あ、だから私のこと呼んだんだ」

P「そういうこと」

凛「でも、もうちょっとちゃんと趣旨を伝えて欲しいんだけど」

P「なんで」

凛「なんで、って。お仕事終わったタイミングで『至急事務所へ』ってメッセージは焦るでしょ」

P「そうしたらすぐ来るかな、って」

凛「……それはそうだけど」

P「全然話変わるけどさ」

凛「うん」

P「さっき凛、これのことドーナツポップって言ったじゃん」

凛「うん」

P「それ聞いて、そういえば名前変わったんだよなー、って思い出してさ」

凛「あ、そっか。ちょっと前までDポップって言ってたよね」

P「そうそう。だから俺なんか未だにDポップって呼んじゃうんだよな」

凛「そういえば四角い箱も、もうないんだよね」

P「なー。かなしい」

凛「はい。どれがいい?」

P「エンゼルクリーム」

凛「はい」

P「これオールドファッションって言うんだけど凛知ってた?」





凛「オールドファッションおいしいでしょ?」

P「エンゼルクリームではないよな」

凛「うん」

P「うん、じゃないだろ」

凛「私も次エンゼルクリームにしようかな」

P「俺エンゼルクリーム食べてないけどな」

凛「まだいっぱいあるんだからいいでしょ? けちなこと言わないでよ」

P「なんで俺が駄々こねてるみたいな感じになってんの?」

凛「甘くておいしいよね。エンゼルクリーム」

P「そうですね」

凛「もう、そんな怒んないでってば。はい、次は好きなの食べていいから」

P「じゃあココナッツチョコレート」

凛「はい」

P「これもオールドファッションって言うんだけど」




凛「プロデューサーがオールドファッションばっかり食べるからもうあと2個しかないよ」

P「無類のオールドファッション好きみたいに言うのやめて」

凛「でも別に嫌いじゃないでしょ?」

P「まぁ、うん」

凛「なら別にいいんじゃないかな」

P「でもさ」

凛「うん」

P「レストランでハンバーグ頼んだのにピザが来たら、え? ってなるだろ」

凛「うん」

P「ハンバーグじゃないじゃん、って」

凛「うん」

P「頼んだもん違うじゃん、って」

凛「そうだね」

P「これはそういうことなんだよ」

凛「私、次その苺のやつ」

P「はい」





凛「おいしい」

P「ポンデリングの苺のやつおいしいよな」

凛「うん」

P「そういえばさ」

凛「うん」

P「苺ってバラ科らしいよ」

凛「バラ科、いっぱいあるよね」

P「な。びっくりするくらいバラ科だらけ」

凛「桜もバラ科だし、林檎もバラ科だし」

P「梅も桃もバラ科だっけ」

凛「うん。すごいよね」

P「バラ科おいしい?」

凛「バラ科おいしい」





P「Dポップについてるこのちっちゃいフォークっぽいやつ、かわいいよな」

凛「うん」

P「いましれっとゴールデンチョコレート食べたけど」

凛「さっきココナッツチョコレートも食べたよ」

P「俺2回飛ばされてない?」

凛「そんな決まりあったっけ」

P「ないけど」

凛「じゃあ問題ないでしょ?」

P「……まぁ、うん」

凛「もらいものなんだから、けちなこと言わないで、ってば」

P「俺が悪いの?」

凛「プロデューサーは私が悪い、って言いたいんだ」

P「そうは言ってない」

凛「はい。プロデューサーの好きなやつ」

P「…………」

凛「もう何も言わずに食べるよね」

P「無意味と悟ったからな」





凛「そんなにオールドファッションばっかり食べて喉乾かない?」

P「乾く」

凛「飲み物、欲しくなるでしょ」

P「なる」

凛「取って来たら?」

P「てっきり用意してくれる流れだと思ったんだけど」

凛「お仕事から戻って疲れてる担当アイドルにプロデューサーはそんなことさせるんだ」

P「………………」

凛「……」

P「コーヒーでいいか」

凛「うん。ミルクとお砂糖も」

P「ブラックで飲め、ブラックで」

凛「どうせ、なんだかんだ言って入れてくれるんでしょ」

P「……」

凛「取りに行く前に一個食べていっていいよ」

P「ん」

凛「これ、私一個も食べてない上に最後だから、よく味わって食べなよ」

P「そりゃ6種類24個入りだからな」

凛「はい、いってらっしゃい」

P「……。ん」





P「ただいま」

凛「おかえり」

P「お待たせしました」

凛「うん」

P「砂糖、そんなもんでよかったか」

凛「うん。大丈夫」

P「そういえば今更だけど」

凛「うん」

P「お仕事終わりに予定とか、大丈夫だった?」

凛「あんな呼び方しといて?」

P「……ごめんなさい」

凛「まぁ、うん。大丈夫だよ。こっちのが楽しかったと思うし」

P「ってことはなんかあったのか」

凛「ううん。ちょっとお買い物でもしようかな、って思っただけだし」

P「まじでごめん」

凛「いいよ、もう。過ぎたことだし。買いたいものが決まってたわけでもないからね」

P「エンゼルクリームあげます」

凛「ん」





P「わかった」

凛「何が?」

P「最初に話してたアレなんだけど」

凛「『あーん』のやつ?」

P「うん」

凛「はい」

P「そう。これ」

凛「これがどうかしたの」

P「二割増しくらいでおいしくなる気がする」

凛「そっか。なら、はい」

P「ん」

凛「二割増しくらいでおいしい?」

P「二割増しくらいでおいしい」



おわり

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