速水奏「とびきりの、キスをあげる」 (76)


――レッスンルーム

タン タン タンッ

速水奏「……ふぅ」

ルキトレ「わぁ……」

モバP(以下P)「おー……」

奏「歌、ダンス、ビジュアルの演技、一通り見てもらったけど……どうだった? ご感想は?」

P「どれも筋がいい」

奏「あら、ありがとう。全部見よう見まねでやっただけだけど、私、割と器用な方なのかしら」

ルキトレ「ですね、簡単な振り付けならすぐ覚えてしまいそうです」

奏「ありがとう。教え方がいいからじゃない?」

ルキトレ「そう言ってもらえると、えへへ……」

P「こうなると、いろいろ試したくなってくるな」

ルキトレ「ですね。奏さん、こんなのはできますか?」

キュッ

ルキトレ「えいっ」

クルッ

奏「バレエのターンかしら」

ルキトレ「はい、アイドルのダンスに多用されるわけじゃないですが、ダンスの一つの基礎なので」

奏「ええと……」

キュッ グルッ

奏「……ちょっと軸がぶれるわ」

ルキトレ「首を残してターンするのがコツなんですが……」


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キュッ クルッ

奏「どう?」

ルキトレ「おぉー、すごいです。覚えるの早いです」

P「いろいろできるな。正直助かるよ」

奏「助かる?」

P「歌に踊り、場合によっては演技、トークはラジオでもバラエティでも必要だし」

奏「多才な方がいいってことね。才があるかは分からないけど」

ルキトレ「でもこの器用さは十分に才能ですよ」

P「だな。一通りこなしてくれると、どんな仕事を持ってきてもいいのはこっちとしても助かる、ってこと」

奏「どんな仕事も、ね」

P「じゃあルキトレさん。あとは宣材写真なんで、今日はここまでで大丈夫です」

ルキトレ「そうですか? わかりました。奏さん、最初の間はわたしが基礎を担当しますので、よろしくお願いしますね」

奏「わかったわ。よろしくね」

ルキトレ「では、わたしはこれで。お姉ちゃんの手伝いに入ります」

P「分かりました。お付き合いありがとうございました」

ルキトレ「失礼しまーす!」タタタ

ガチャ  バタン

P「さて、それじゃあ宣材撮りにいこう」

奏「ええ。ねえPさん、レッスンルームって空いていたら使ってもいいの?」


P「ん? ああ、ちひろさんに話をしてくれれば大丈夫」

奏「あの事務員さんね。了解」

P「自主練でもするのか?」

奏「そうね。やるからには、ってやつよ」

P「努力家だな」

奏「そんな大層なことじゃないの」

P「そうか? まあ、速水はレッスン受ければなんでもこなせそうだけど」

奏「そう、なんでもできる……。それは、裏を返せば……なんにもできないということ」

奏「ううん。できないんじゃなくて、なにを目指せばいいか、わからなかったの。ずっとそうだった……」

P「ふん?」

奏「何にでもなれる存在って、つまり何者でもないってことでしょ。私ってカタチを、なんとなく保っているだけ」

P「言わんとすることは分かる、気がするけど」

奏「ふふっ、それで十分。最初から何もかもを知られているなんて、気味が悪いじゃない?」

P「それは確かに」

奏「とにかく、言えることがあるとしたら、あなたの導きで新しい世界を見つけたってことかな」

P「……それはどうも?」

奏「ここなら、心の空白を埋められそうな気がする」

P(ふーん? ……思ったより、変なところあるんだな)


――スタジオ

カメラマン「視線はカメラのレンズの上、ココらへんね」カシャ カシャッ

カメラマン「視線外して~顔ちょっとそらして、物憂げに……そう、良い表情よぉ」

カメラマン「顔戻して、カメラに真正面ちょうだい。肩ふーって落として、微笑んで」カシャッ カシャッ

カメラマン「あん、固い~。もっとこう……ちょっとPちゃん、声なんか写らないんだから、面白いこと言ってあげなさいよ」

P「えっ、俺がやるんすか!?」

奏「ふふっ」

カメラマン「はいいただき」

カシャッ

---

カメラマン「お疲れさま。今日のところはこれで大丈夫よ、メイク落として休憩してて」

奏「はい」

P「どうですか」

カメラマン「うん、とにかく顔がいいわね~。本当に女子高生なの?」

P「そこは今でも思います」

カメラマン「眼が魅力的。アンニュイさならお手の物、はじけるような笑顔は中々見せてくれそうにないけど、そこがまたタマラナイ系でしょ」

P「ですよね。お……いい表情撮れてますね」

カメラマン「目線外しててもいいけど、こっちを見ると射抜かれそうなくらいの眼ね」


カメラマン「この笑顔はかなりいいと思うわぁ」

P「これ、さっきのですか。毎度俺を弄るの勘弁してほしいなあ」

カメラマン「アイドルの笑顔のためなら安いもんでしょ。さて、次の撮影はいってるから、こんなところね」

P「はい、お疲れさまでした」

カメラマン「ローデータはデザイナーさんに渡す?」

P「いえ、あの人ら時間かけすぎるんで、こっちでウェブ用に軽めの補正にします」

カメラマン「そうね。素材がいいから、それでも十分に使えるでしょ」

P「カメラマンの腕もいいですしね」

カメラマン「やだもぉ、本当のこと言ってくれて嬉しいわぁ、わははは」バシバシバシ

P「ははは、は、は」ビシビシビシ

――廊下

P「いたた……あの人力強いから叩くと痛んだ」

奏「……カメラマンさん、男性よね。変わった方ね」

P「最初は面食らうアイドルもいるけど、腕は確かだよ」

奏「すごいわよね、緊張のほぐれた瞬間にシャッターきられたもの」

P「おかげでいい写真が撮ってもらえる」


奏「さっきのトレーナーさんといい、カメラマンさんといい、なんていうか……朗らかな方が多いのね」

P「んー……まあ、いろいろ正直な人が多いかもな」

奏「芸能界って、どろどろしているものって相場が決まっているけど」

P「しているさ。皆その中で正直に生きて、エネルギッシュに振る舞うからそう見えるんだろう」

奏「Pさんも?」

P「そうかも」

奏「どうしてそんな世界で生きるの?」

P「憧れと、その世界に挑戦したいという意思と……あとはお金かなぁ」

奏「正直ね」

P「だろ。正直なだけで生き残れる世界じゃないけど、速水は大丈夫だろう。優等生なだけじゃなく、目端も十分に利きそうだ」

奏「それって評価してくれているのかしら?」

P「割とね。正直さも、嘘のつき方も、覚えていくといい」

奏「嘘のつき方……ね」


奏「いざとなったら、守ってもらえるんでしょ」

P「そりゃ、事務所はアイドルの味方にならなきゃな」

奏「事務所じゃなくて」

奏「Pさんは、どうなのかしら?」

P「もちろん、速水の意に反することはさせないつもりだよ」

奏「そう。それじゃあ一つお願いしようかな」

P「ん?」

奏「名前で呼んでくれる? プロデューサーさん」

P「あ、あー。それで構わないなら」

奏「ええ」ニコッ

P「……」

奏「なあに?」

P「さっきの宣材写真、もっといい笑顔できたんじゃないのか」

奏「ふふ……さあ、どうかしら」

P「……」


――一週間後 レッスンルーム

ルキトレ「はい、じゃあ今日はここまで」

候補生たち「「「お疲れさまでしたー」」」

ガヤガヤ ワイワイ

ガチャ

P「失礼」

ルキトレ「あ、プロデューサーさん、お疲れさまです」

P「お疲れさま。候補生たち、調子はどうですか」

ルキトレ「そうですね。前から入っている子のこと、この子。あと奏さんもお姉ちゃんに任せていいです」

P「奏はまだレッスン3回目くらいでしたよね。早くないですか?」

ルキトレ「早いですよ。少しコツを教えるとすぐできちゃうんです」

P「ふぅん。まあ、ルキトレさんが言うならいいか」

ルキトレ「あはは、信頼されてるってことでいいんですか?」

P「ん? そうですね。この調子だと、ルキトレさんが教える子がいなくなっちゃいますかね」

ルキトレ「えーっ、お払い箱ですか!?」

P「はは、すぐに新しい子が入りますって」

ルキトレ「ならいいですけどー」


奏「からかうなんて、悪い人ね」

P「おう、奏。おつかれ」

奏「お疲れさま。迎えにきてくれたの?」

P「ん?」

奏「わざわざルーキーさんをからかいに来たわけじゃないでしょ」

P「まあ、そのためだけに来たわけじゃないけど。ルキトレさんはなんかこう、からかい甲斐があってなあ」

ルキトレ「まったく、ひどいと思いません?」

奏「ええ、ひどい人だわ。そんな人、私がからかっちゃおうかな」ズイ

ルキトレ「わわっ」

P「それは遠慮しておく」

奏「しれっと流しちゃって。ね、ひどい人でしょ」

ルキトレ「ソウデスネ……」

P「奏も大概、悪い子だと思うよ」

奏「ふふふ、そうね。……この後打合せだったかしら」

P「そうだな。着替えたら事務所で」

奏「わかったわ」

ルキトレ「……」プシュゥ


――事務所

奏「それで、打合せって?」

P「一口にアイドルになるといっても、いろんな方向性がある。今日はそこの提案と聞きとり」

奏「私のプロデュース方針ってことね」

P「いい話があればすぐにでも仕事を持ってきたいが、本人の意向は大事だからな」

奏「それはありがたいけど、選べる立場でもないんじゃない?」

P「仕事を持ってきた以上はやってほしい。だから仕事を選ぶ俺が聞いておきたいんだ」

P「そこらへんで互いに嫌な思いをしないようにするための、すり合わせだよ」

奏「そう。……そうね、露出が多い仕事ばかりもってこられたらどうしようかと思っていたわ」

P「そんな仕事ばかりってことはないけど……夏になったら多少はあるかもな」

奏「仕方ないわね。Pさんが見たいんだったら着てあげる」

P「んー……うん、素直に喜んでおこう」

奏「ふふふっ。それで、どんな仕事があるの」

P「まずは歌と踊り。これはどうやっても最低限必要になる」

奏「やっぱりアイドルの華だものね」

P「すぐに曲が出せるわけじゃないが……まあ、トレーナーさんにしっかり基礎を調えてもらってからだな」


P「それから、モデルの仕事を勧めたい」

奏「あら、素敵」

P「お、やっぱり憧れか? 本格的なモデルには身長がもう一声だけど、プロポーションは十分だしな」

奏「170cm以上の世界なんでしょ?」

P「いや、そんなこともない。日本でなら奏くらいは割と普通にいる」

奏「そうなの」

P「もちろん世界で通用するモデルとなると175cmとかになってくるけど」

奏「やっぱりそういうものなのね」

P「あー、失礼ながら体型の話をするけど」

奏「どうぞ」

P「奏だとむしろ肉付きがいいくらいなんだ。出てるところが出ているから。グラビア系がいけるな。顔立ちがいいから化粧品にもうってつけ」

奏「……なんか、聞いていると、恥ずかしくなってくるわね」

P「だから前置きした。こっちは真面目だ」

奏「もちろんわかってるけど。それとも……フマジメにお話してみる?」

P「さすがにそんな度胸はない」

奏「ふふ、残念」

P「映画が好きってなら、女優業も視野に入れてみようか」

奏「映画に出られるの?」

P「先輩アイドルのバーターとかでな。もちろんレッスンはきちんと受けた上で」

奏「それは楽しみね」


P「いまさらだけど、部活とかってやっているか?」

奏「いいえ? 部活と勉強と、さらにアイドルまでやるほど器用じゃないもの」

P「器用かはともかく。どうしても休日が潰れることが出てくるからな」

奏「お仕事じゃあ、仕方ないわよね」

P「けど、まだ遊びたい盛りだろ。場合によっては学校終わってからの仕事もあるかもしれない」

奏「それで部活の有無ね。安心して、いまのところ予定はないわ」

P「そりゃ助かる」

奏「学校からお仕事ってことは……Pさんが迎えに来てくれるのかしら?」

P「え?」

奏「校門に車が止まってて、年上の男性が迎えに上がっているなんて、ちょっとした憧れじゃない?」

P「んー……なかなか乙女な発想だ」

奏「乙女のつもりよ」

P「いやすまん、乙女じゃないって意味で言ったんじゃないんだ。なんにせよ……時間がやばいとかじゃなければ俺が行くことは無いと思う」

奏「そう、残念」

P「現場直行か、事務所から送迎、急ぎならタクシーの使用もOK」

奏「わかったわ」


P「CMやバラエティのテレビ系もいいよな。ラジオはどうだ?」

奏「たぶん大丈夫?」

P「多少人気が出てからだけど、握手会やサイン会もやってほしい」

奏「NGを出すほどのことじゃないけど……ねえ、際どいラインだとどんなのになるの?」

P「あー……やらせる気はないが、イメージビデオとかだな」

奏「イメージ?」

P「グラビアアイドルなんかがやるんだが、ほぼ下着姿だったり、まあその……手で隠すレベルだったり」

奏「……ふぅん」ジト

P「そっち系の予定はないから、安心してくれ」

奏「そう。……Pさんの個人レッスンでやるなら、考えたのに」

P「げほっ! ……んんっ、あのな、あまりそう言うのは」

奏「分かってる、相手は選んでいるわ」

P「……そう言うことでもないんだが」

奏「ふふっ」


P「それぐらい言えるなら、大方の仕事は大丈夫そうだな」

奏「水着モデルくらいまで?」

P「下着の仕事も持ってこようか?」

奏「……」

P「OK、NGにしとく。そのラインでとってくるよ」

奏「まだ何も言ってないわ」

P「顔に出てる」

奏「あら……表情を変えたつもりはなかったのだけど」

P「今のは見てればわかる範囲だと思うぞ」

奏「ちゃんと見ててくれるのね」

P「ん? ……そこはまあ、仕事だよ」

奏「私に見とれていた、とかならもっと嬉しかったのに」

P「……そういうのは、事務所じゃない場所で言うよ」

奏「!?」


P「やり返されて驚くくらいなら、最初からからかうな」

奏「むぅ……」

P「さて。大体のボーダーは分かった。営業資料も揃ってきた。あとはこっちの仕事だな」

奏「よろしくね、プロデューサーさん」

P「おう。そっちもきちんとレッスンで地力を付けてくれよ」

奏「わかった。そういえば、なんだけど」

P「ん?」

奏「下着の仕事も、受けていいわ」

P「なんだ、気が変わったのか?」

奏「いいえ。抵抗はあるけど……あなたが見たいなら、見せてあげる」

P「……あー……頭の片隅に置いておくよ」

奏「そうして」

P「はー……」

奏「ふふふっ」


――数週間後

P「ファンが付いたぞ」

奏「えっ?」

P「この前の雑誌モデル。カット2枚載ってたろ」

奏「載ってた、けど……ファンってそんな、すぐ付くものなの?」

P「出版社に電話が問い合わせがあったんだよ。この子は誰かって」

奏「写真2枚で、電話くるものなのね」

P「といってもその1件だけだし、同業者の調査の可能性もある」

奏「……それって、ファンって言うのかしら?」

P「どこからファンになるかなんて定義はないけど、雑誌に載った奏が、人ひとり電話かけさせる原動力になった。これは、何人もの人があの写真を見て『このモデル、いいな』ってなった証拠だ」

P「何人が『いい』と思ったか正確な数は分からないし、ファンだって公言する人もまだいないだろう。それでも確実にファンはついた。いまは実感はないだろうけど」

奏「ええ…… でも、そうなのね」

P「ああ、ここからだ。アイドルがファンを作り、ファンがアイドルを作る」

奏「ファン無くしてアイドルはあり得ないって?」

P「そういうこと」


奏「アイドル、偶像か……あまりいい意味でとらえたことは無かったけど」

奏「それでも、なんていうか……悪い気分じゃないわ」

P「そうとも、誇っていいぞ」

奏「電話の人が同業者だったとしても?」

P「同業だとしたら見る目がある。まあ、少し遅かったけどな」

奏「そうね。私はあなたのアイドルだもの」

P「ん、まぁそう言うと語弊があるけど……うちのアイドルだよ」

奏「そう? Pさんが担当してくれないんだったらやめようかな」

P「……個人的には喜んでいいんだと思うけど、なかなか攻めた発言だな」

奏「いけなかった?」

P「悪い気はしないよ。……俺の方が口説かれる気分になる以外は」

奏「あら、口説きたい方なの?」

P「職業上、そっちの方が慣れているかな」

奏「それで何人ものアイドルを口説いてきたのね。だったら一人くらい、こんなのがいてもいいでしょ」

P「んー……そういう方向性もありか」


奏「方向性って、私の?」

P「ん? ああ、別にノープランってことじゃないんだけど、速水奏のイメージをどこに着地させるかって言うのはこれからだな」

奏「ふぅん」

P「そのまま自然体でも魅力はある。ただ、ファンに見せやすい方向を持たせると、いろんな考えの主軸になる」

奏「キャラ付けってことね」

P「分かりやすく言うと。でもキャラである、キャラじゃないなんて単純なイメージでファンがついてくるかって言うと」

奏「ファンも人だもね。いろんな面を見せていくことで、役に深みを持たせる様な感じかしら」

P「役? ああ、映画的な意味でか。なるほどな」

奏「方向性……キスなんてどう?」

P「キス? あー、初めて会った時も、そういや宣材写真の時もちらちら言っていたな」

奏「そうだったわね」

P「なんか……思い入れでも?」

奏「たいしたことじゃないわ。素敵でしょう? キスって」

P「素敵、ね」

奏「だから、してみたいのよ」


P「ん……え?」

奏「え、って?」

P「えーと……」

奏「なあに?」

P「……その、ちょっとプライベートなことを聞くかもしれないんだけど」

奏「ええ」

P「奏、いま付き合っている人はいるか?」

奏「いたらアイドルやる前に話してるわ」

P「あ、そう……しっかりしてる」

奏「どうも」

P「あー……」

奏「当ててみましょうか?」

P「……当たりそうで嫌だな」

奏「キスの経験はあるか、でしょ?」

P「嫌だって言ったんだけど」

奏「あら、ごめんなさい。気づかなかったから、Pさんも気づかないフリ、してもいいよ」

P「ずるい言い方するなぁ」


奏「答えだけど……ないの」

P「……へぇ」

奏「滑稽でしょ。普段キスだの言っている小娘が、経験の一つもないなんて」

P「そこまでは思っていない」

奏「背伸びをしているとは?」

P「思った」

奏「背伸びも悪いものじゃないわよね」

P「まあ、奏はそこも含めて魅力かなとは思うけど」

奏「そうじゃなくて。背伸びをすると」

スッ

奏「ほら、とても近くなった」

P「……そうですね」グイッ

奏「なにも、肩抑えなくても。いまは本気じゃないわ」

P「こっちが本気になったらできるだろ」

奏「ああ。自制のための腕なのね」


奏「んー……」グイグイ

奏「首に手を回すには、もっと密着しないとダメかな」

P「そろそろ離れてくれないか」

奏「残念。もったいないって思わない?」スッ

P「……思うけど、それとこれとは別」

奏「仕事と恋愛は別、ね。アイドルに恋愛はご法度だって言うけど、実際どうなのかしら」

P「そうだな。……極論、ファンにばれない自信があるなら」

奏「あら意外」

P「どう言ったって惚れた腫れたはあることだろ。そういう年頃なんだし」

奏「まあ、そうね」

P「極論なんて言ったが、一流芸能人だってスキャンダルになったりするからな。正直なところ控えてほしい。といっておくよ」

奏「なるほどね。……じゃあ、その点はクリアなのかな」

P「その点?」

奏「ファンにばれるようなことはしないわよね。Pさんは」

P「……例えば最初は気を付けていたとしても、慣れたりしたらボロが出るもんだ」

奏「慣れてくれるんだ」

P「そういう意味じゃなくて」

奏「ふふっ、わかってる」

P「行動でもわかってくれるといいんだが」


奏「今日はこんなところ?」

P「そうだな。さすがにこの時間じゃ送っていけないぞ」

奏「まだ夕方でしょ。大丈夫」

P「それじゃあ……次は明後日のレッスンか?」

奏「そうね。その時にまた」

P「ああ、お疲れ」

奏「お疲れさま」

パタン

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P(速水奏のアイドルの道は順調だった)

P(俺が取ってきた仕事を問題なくこなしてくれる)

P(それだけで十分すぎるほどありがたい、優秀なアイドル)


P(ファンも着実に増え始めた。その勢いに乗って曲の発注をし、次のステップに足をかけていく)

P(そんなある日。仕事終わりに事務所に寄った彼女に、声を掛けた)

P「お疲れさま」

奏「……お疲れさま」

P「どうかしたか?」

奏「なんでも……いや、ちょっとはあったかな」

P「ふん?」

奏「今日の仕事でね」

P「ドラマのちょい役だったな」

奏「ええ……そこで見かけたの」

P「誰を」

奏「高垣楓さん」

P「ああ、あの人か」

奏「……彼女、凄いのね」

P「そうだな。同じ事務所だけど、会う機会はいままでなかったか」


P「それで、一緒に仕事をして、どうだった」

奏「話はしなかったわ。忙しくてできなかったの」

P「高垣さん、確かメインキャストだったな。仕方ないか」

奏「一応、アイドルなのよね?」

P「そうだな。元モデルと言いつつも、いまでもモデルの仕事は入ってるみたいだけど」

奏「そう。……アイドルの枠に収まらない人だった」

奏「トップアイドルって、ああいう人のことを言うのね」

P「ああ。確かにトップの一人だよ」

奏「驚くほど綺麗で……歌や踊りだけじゃなくて、演技もできて」

P「勉強になったろ」

奏「勉強?」

奏「……そうね。憧れてしまうわ」


P「機会があったら話もしてみるといい。学ぶいいチャンスだ」

奏「……学べるかな」

P「いま奏がしている仕事は、全部経験として積んでいってほしいんだ」

奏「そうね、わかってる……いろんな経験ができているって、わかってる」

P「高垣さんの凄さが分かっただけ、収穫だよ」

奏「……」

P「……満足できてないって顔だな」

奏「ごめんなさい。今日は帰るわ」

P(まぁ、見透かされるのは好きじゃないか)

P「気休めに聞こえるかもしれないけど」

奏「……」

P「俺は、奏が負けているとは思ってない」

奏「そう。嘘でもうれしい」

P「嘘のつもりはないよ」

P「そりゃあ確かに、キャリアも実力も高垣さんの方が上だろうけど」


P「奏なら、いつか彼女の隣に並ぶこともあるかもしれない」

奏「そうかしら」

P「ああ」

奏「ありがとう。お疲れさま」

P「お疲れさま」

パタン

P「……」

P(奏が帰る前に見せたあの表情は、前にも見たことがあった)

P(初めて俺が声を掛ける直前の、つまらなそうに海を見ていた、あの時の顔)

P(レッスンに楽しそうに打ち込む顔も、仕事の時の真面目な顔も、俺をからかう時の笑顔も)

P(どれも彼女の本当なのだろうけど、嘘でもあるように感じられる)

P(いつもどこか本心を隠しているのは、彼女のスタイルなんだろう)

P(だけど俺は、その下の素顔を見てみたい)

P(ただ単に仕事を与えれば、何もしなくても彼女は及第点を取り続ける)

P(それで俺は満足か? 奏は満足しているのだろうか?)


P(この日を区切りに俺の仕事は忙しくなり、奏と話す機会は減っていった)

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――ある日 廊下

P「トレーナーさん」

トレーナー「ああ、プロデューサーさん。お疲れさまです」

P「お疲れさまです。いま大丈夫ですか?」

トレーナー「ええ。どうしました?」

P「奏、最近どうです」

トレーナー「奏ちゃんですか? レッスンはいつも通りですね」

P「いつも通り、ですか」

トレーナー「ええ、特に何もなく。なんか、悩みでもありました?」

P「悩み、という程のことじゃないです。ただまぁ、最近話してないななんて」

トレーナー「そうですねぇ。……引っ掛かるほどじゃなかったんですが」

P「なにか?」

トレーナー「奏ちゃんって、要領いいじゃないですか。大抵のことはすぐこなしちゃうような」

P「ええ」

トレーナー「ここ数回のレッスンは、割と普通なんですよね」


P「普通?」

トレーナー「他の子と同じく、出来るようになるまで何回かのトライがあります。でも、みんなそれが普通なので、気に留めるほどじゃないって言いますか」

P「うーん」

トレーナー「覚えたては早くても、そこから先って地道な努力で少しずつ重ねていくしかないですよね。だから奏ちゃんも、そんな時期に来たのかなって」

P「確かに、これまでの吸収速度がすごかっただけ、ですかね」

トレーナー「ええ。まだまだ伸びると思いますよ」

P「そうですね。ありがとうございました」

トレーナー「いえいえ」

P「……」


――ある日 事務所

千川ちひろ「レッスン場の使用記録、ですか?」

P「ええ。最近使われています?」

ちひろ「使われていますよ。候補生の子も使いますし、デビューしてからの子も自主練に」

P「まあ、そうですね。誰が使っているかはわかりますか」

ちひろ「記録はしていますけど……プロデューサーさんが知りたいのは誰ですか?」

P「あー、その」

ちひろ「あら。知られたくない感じです?」

P「そういうわけでは。……そうですよね、なんでだろ」

ちひろ「ちょ、ちょっと。調子狂っちゃいますね」

P「いえ、自分でもなんでかよくわからなかったんで」

ちひろ「はぁ」

P「奏はどんなです?」

ちひろ「奏ちゃんですか?」


ちひろ(あー……)

P「ちひろさん?」

ちひろ「いえ。ええと、奏ちゃんはよく使って……あら、ここ最近はそうでもないですね」

P「そうですか」

ちひろ「彼女、なにか気になることでも?」

P「いえ……伸び悩んでいるのかなって」

ちひろ「でも、仕事もレッスンも普通にこなしてくれてるみたいですが」

P「それはそうなんですが。……考え過ぎですかね」

ちひろ「あの子はいいアイドルになると思いますよ」

P「俺もそう思います。なので、気にかけていたんですが」

ちひろ(なるほど……)

ちひろ「でも、伸び悩んでいるなら、自主練習を増やしていたりしませんか?」

P「いえ、なんか奏は、逆なタイプな気がします」

ちひろ「そうなんですか?」


P「根拠はないですが……基本、器用なんで、上手くいかないことがあると意欲も下がるのかなって」

ちひろ「そう言うことですか」

ちひろ「そうですね。誰しも壁にぶつかることはあるでしょう。気が付いたなら、プロデューサーさんが声を掛けてあげてもいいんじゃないですか?」

P「ええ……ちょっと最近忙しくて」

ちひろ「確かに、彼女だけの担当ってわけじゃないですからね。でも……」

ちひろ「彼女の担当プロデューサーは、あなただけですよ」

P「はは、耳が痛い。まあ、近いうちに話をしておきます」

ちひろ「ちゃんとコミュニケーションとって、捕まえておいて下さいね」

P「はい」

ちひろ「せっかくの食い扶持……こほん。金の成る……こほん」

P「……」

ちひろ「事務所にお金を運んできてくれる金の卵なんですから」ニコッ

P「言い直して酷くなっていくのはどうかと思います」


――ある日 撮影スタジオ

カシャッ カシャッ

アイドル「あの、もっとこんな感じのどうですか?」

カメラマン「あらっ、良いわねソレ! 服の印象がもっと良くなるわ!」

アイドル「ありがとうございます!」

カメラマン「とるわよ~」

カシャ カシャッ

カメラマン「はいOK~! 一度休憩、衣装変えて次いくわよ!」

アイドル「はーい」

P(……そういや、奏は指示には従えるけど、自分から提案するなんてことはしなかったな)

P(そこは彼女の弱点かもな)

P(まあこういうのは、回数を重ねないと中々できるもんじゃないけど)

カメラマン「お。Pちゃん、おつかれ」

P「お疲れさまです。どうですか」

カメラマン「あの子は慣れてるからなんも問題ないわよ」

P「まあ、そうですね」


カメラマン「この子より、もっとついてあげた方がいい子がいるんじゃないの?」

P「え? あ、えーっと……速水のことですか」

カメラマン「この前撮ってあげたわよ。アイドルが板についてきたわよね」

P「そう見えました?」

カメラマン「初めての写真からすごく成長したのが分かったわ。もちろん、まだまだなところはあるけど」

P「ええ。仕事はこなしてくれていますが……悩んでいるような感じしました?」

カメラマン「ちょっとリテイクあったかなってくらいよ。でも許容範囲」

P「それなら問題ないのでは……」

カメラマン「確かに何か悩みがあるっていう感じじゃないけどね。勘違いしちゃダメよ。何かがわだかまっているのはあるかもしれないわ」

P「わだかまってる?」

カメラマン「カメラを通してね、その子のスタイルが見えてくるの。身体のスタイルじゃないわよ。その子が持っている芯みたいなものね」

P「……すごいですね」

カメラマン「その子を真剣に見たら、そう言うのは分かるはず。気づいてないわけじゃないんでしょ」

P「ええ。そこは、一応」

カメラマン「ああいう子は自分の成長で悩んでいるとか、どうしたらいいかわからない、じゃなくて……たぶん、もっと先の悩みを持っているんだわ」

P「……」

カメラマン「自分の芯はあるのよ。でもまだ細くて脆い」

カメラマン「自分一人で立つにはまだ幼いその芯を、誰に委ねていいのかわからない。そんな感じ」


カメラマン「いっそ大人だったらよかったのにね。自分のことを全部自分の責任で決めていいなら、彼女も吹っ切れることができたのかも」

P「よく分かるんですね」

カメラマン「あん? そういうのはね、アンタが一番分かってあげてないといけないところでしょ」

P「返す言葉もありません……」

カメラマン「ちゃんと話聞いてあげてる?」

P「……忙しくて奏とはあまり」

カメラマン「会話はプロデューサーの重要な武器でしょ。そんなに惚れこんでいるのなら、話すためにどんなことしてでも捕まえなさいな」

P「惚れこんで……?」

カメラマン「はい? 違うっての?」

P「目立つので気にはかけていますが……うーん」

カメラマン「迂闊に下の名前で呼んで、惚れていないも何もないでしょうが」

P「えっ」

カメラマン「大人びて見えてもあの子はまだ高校生の女の子でしょ。オラッ、不安取り除いてあげなさよ!」バシッ

P「痛っ! 背中叩かなくてもいいでしょう!」

カメラマン「わははは、ごめんね! 青臭いの見ていたらつい!」


P(ちひろさんやカメラマンさんの言う通り、奏とよく話し合った方がいい)

P(というか、それが避けられない時期に来たというべきかもしれない)

P(避けられない?)

P(俺は避けようとしていたんだろうか)

P(いや……)

P(自分で気が付いている)

P(速水奏に、本気でアイドルに取り組んでもらうとき。自分も一蓮托生になるのだろうと、気づいていた)

P(彼女の本気を受け止めるには、自分の本気を見せなくてはならない)

P(これを乗り越えないとこの先に道はない)

P(この話し合いで例え、奏がアイドルをやめることになっても。それを覚悟して話さなければ、彼女は応えてくれない)

P(だからこれは)

P(奏にも、俺にも。もっと先に進むために、必要なことなんだろう)

今日はここまで
次で完結、スムーズにいけば明日終わります


――事務室

P(その日。一通のメールが届いた)

P「ああ」

カタカタ カチ

P「できたのか」

P(これで、全部のピースが揃った)

P(アイドル・速水奏を形づくるステージのピース)

P(……いや。まだ本人がいる。肝心の奏が必要だ)

P「ちょうどいいな」

P(奏と話す口実になる)

P(まだ仕事を始めてもいない頃、ここでなら心の空白を埋められそう、と彼女は言った)

P(彼女の空白を、知らなければいけない)

P(奏は素直に生きられる女じゃないのだろう。だけど、その素顔を隠し通せる世界じゃない)

P(彼女が満足できる場所。心から輝ける場所を用意してやりたい)

P(それは自分だからできることで……俺がやりたいことなんだ)


――後日 ミーティングルーム前

奏(珍しく、プロデューサーさんから呼び出された)

奏(なにかあったかな。思い当たることは、なくもないけど)

コンコンコン

奏「Pさん」

P「ああ。はいってくれ」

ガチャ パタン

P「久しぶり、という程じゃないか」

奏「数週間ぶり、な気はするわ」

P「掛けてくれ」ガタ

奏「ええ」ギシッ

P「さて。今日は、一つ大きな仕事をもってきた」

奏「大きな……期待していいのかな」

P「ライブデビュー」

奏「ライブ……」

P「そしてそのための」

P「アイドル・速水奏のデビュー曲だ」


♪~

奏「……」

P「まずは聴いてみて、どうだった」

奏「ハウス系、というのかしら」

P「EDMかな。ダンスミュージックって意味じゃ似てるところある」

奏「これが……」

P「奏の曲だ」

奏「私のイメージになるのね」

P「そう」

奏「歌詞は……へぇ、こんな感じなのね」

奏「なんて言っていいのかしら。とても格好いい曲だけど……格好良すぎない?」

P「そうか?」

奏「高校生にこんな歌うたわせるつもり?」

P「こんな曲に負けない高校生なんて、そうそういないぞ」

奏「背伸びしているみたいで?」

P「そこも含めて、速水奏が歌うからいいんだよ」

奏「そう……Pさんが言うのなら、そうなのかもね」


P「さて、是非ともこの曲でステージに立ってほしいんだけど」

奏「けど?」

P「この曲を奏にあげるには、ひとつ条件がある」

奏「条件、ね。どんな?」

P「俺の質問に答えてほしい」

奏「……内容を聞いてからでも?」

P「それでいい」

奏「じゃあ。どうぞ」

P「ああ」

P「奏。アイドル、楽しいか」

奏「……」

奏「仕事はやりがいあるわ」

奏「普通のアルバイトでも、学校の部活でも、こんなことはできないし」

奏「他のアイドルとも親交ができて、なかなかできない体験ができているわね」


P「もっとシンプルなことを聞いてるんだ。楽しいかどうか」

奏「……いまは、楽しんでいるわ」

P「いまは?」

奏「いまは」

P「いつか、楽しめなくなる予感でもしているか」

奏「……どんなことでも、いずれ飽きが来るものだと思うけど」

P「本当に飽きかな」

奏「どういう意味かしら」

P「奏は……自分の本気を出してみたことはあるか」

奏「なあに、Pさん。私が本気で取り組んでないように見えた?」

P「いや、奏は本気だよ」

P「奏が、奏でいるままの限界まで、きっちり頑張っている」

奏「私でいるままの限界?」


P「本当器用に、大概のことをやってのける。それでアイドルを続けていくことも奏にはできるかもしれない。そんなこと、多くの人が望んでもでることじゃない」

P「そんな器用な奏だからこそ、自分ができる限界が見えているんじゃないか」

奏「……」

P「それなのに、その先を軽々追い越していく人がいる。自分がたどり着けない場所に立っている人がいる」

P「何でもできるということは、何にもできないということ、なんて言っていたか」

P「少しその意味が……奏の空虚さが、分かった気がするよ」

奏「私の、何を?」

P「これまで、折れるほどに費やす何かが無かったんだろう。だから空虚だったんだ」


P「実力の差が見えた時、急に冷めたりな。自分への失望といってもいいかもしれない」

奏「…………まるで、知っているかのように言うのね」

P「まったくの見当はずれ、だとは思ってないよ。何度も考えた上で、いま聞いている」

P「高垣さんを見た時から、あの人がずっとちらついてくるんだろう」

奏「……」

P「あの人がトップだって分かって、自分にはいけないと思ったか」

P「自分にはできないなんて思ったか」

奏「……ふぅ……」

奏「そうかも、ね」

奏「酷い人。私の、自分でも嫌な部分を突き付けて。どういうつもり?」

P「どうもこうもないよ。自分のそんなところを嫌だというけど、俺にとってはそうでもないんだ」

奏「Pさんにとって?」

P「ああ。アイドルには、必要なものになってくる」

奏「それは、なに?」

P「負けず嫌い」

奏「……そんなつもりは無いわ」

P「いや、あの高垣楓と自分を比べようとしているところなんて、だいぶ負けん気が強いよ」

P「その気概は、この先に必要なんだ」


奏「負けず嫌いだったら、冷めたりしないんじゃない」

P「だから、そこも分かるんじゃないか? 自分が努力でいける限界が」

奏「……」

P「いや、正直芸能界向きだよ。その性格と器用さは」

奏「ただのコンプレックスを、長所みたいに言うのね」

P「そんなの多かれ少なかれ誰もが持っているだろ。上手く活かせたらそれは長所にもなる」

奏「……私は」

奏「私は、Pさんがいう程の女じゃないわ。ただ背伸びして、つま先立ちでよろけそうな普通の少女よ」

P「だから?」

奏「だから、って……そんな女に何の魅力があるっていうの」

P「だからいいんじゃないか」

奏「……」

P「少しはアイドルに慣れてきたと思ったけど、まだまだ候補生だな」

P「上辺だけでファンを魅了できるはずもない。嘘をつくにしても全身全霊でつかない限りファンは騙せない」

P「その奥底まで見せられるから、応援したくなるし、練習の末に絞り切った歌とダンスに心震わされるんだろう」


奏「Pさんのアイドル像は分かったわ。それで? 私にも血反吐を吐く努力をしてほしいの?」

P「ああ」

P「俺には欲しいものがある。奏にあの頂点までいってほしいと思っている」

P「いまは、奏のままでいる限界まで、きっちりやっている。だけどそこは」

P「あの人が立っている場所は、手を伸ばしただけじゃ届かないんだ。だから足をあげて一歩ずつ踏み出して、そこまで歩いていく。いや、這ってでも行きたい」

奏「……私には、できないわ」

P「できる」

P「自分を捨ててまで努力したんなら、俺がその舞台を用意する」

奏「やめて」

P「いや、聞いてくれ。なんなら聞いたあとで部屋を出ても構わない」

奏「……」

P「奏の限界じゃない。俺はその先が見たい、そこを超えた奏が見たいんだ」

P「一人で無理なら、俺が超えさせる。奏の限界はそこじゃない」


P「だから、俺の見せる景色が奏を満たせるか、俺に賭けてほしい」

P「奏が一緒にいてくれるなら、俺はどこまででも這って行ける」

奏「……」

奏「随分と……恥ずかしい言葉を言うのね」

P「あ、えっと……なんていうか、勢いで」

奏「……」

P「……」

P(いかん、いまさら恥ずかしくなってきた)

P(一緒にいてくれるなら、ってなんだよ……奏が呆れるのも当然……ん?)

奏「……」

P(耳真っ赤だな……)

奏「勢いだって別にいいけど……さすがに泥臭いんじゃない?」

P「アイドルは泥臭いもんだよ」

奏「……私にならできるって、信じているの?」

P「信じている」


P「だから、信じてほしい」

P「奏を最高のアイドルにする」

奏「あなたが、私を?」

P「そうだ」

奏「私の、限界の先まで?」

P「ああ」

P「努力が報われる世界じゃない。やっても超えられない壁があるかもしれない」

P「それでもぶつかって超えていくしかない。そうするしかない世界だから」

P「奏が歩み続ける限り、俺は背中を押し続ける」

奏「…………」

P「…………」

奏「負けたわ」

奏「はーっ……」

奏「あの人を見た時……凄い人だと思った。憧れる人だって」

奏「同時にね。あの人に追いつける気がしなかった」

奏「でも」

奏「それでも。私も……」


奏「私もそこまで行ってみたい」

P「ああ」

奏「Pさん。あの素敵な人の、隣に並ばせて」

P「ああ。もちろん」

奏「そして……追い越させてくれるのなら」

奏「あげる」

奏「Pさんに私の人生を、あげる」

P「……人生は大げさだろ」

奏「大げさでも何でもない」

奏「私のこれまでの17年を賭ける、アイドルの道なんでしょう」

奏「それがこれからの、私の生き様になるんでしょう」

奏「ならこれは、私の全てだわ」

P「……」

奏「……」

P「そうだな」

P「分かった。一部なんて言わない。丸ごと預からせてもらう」


奏「ダメだった時は、そのまま貰ってくれるのは、あり?」

P「え、えー……」

奏「ふふっ」

P「いまは、なし」

奏「いまは?」

P「いまは」

奏「じゃあ、いま、じゃない時を楽しみにしてる」

P「……調子が戻ったようで、なにより」

奏「あーあ。スポ根なんてキャラじゃないと思ったのに」

P「いいじゃないか、それでも」

奏「私のことじゃないわ」

P「ん?」

奏「Pさんのことよ」

P「それはその……勢いというか、流れというか」

奏「いいわ。そんなPさんも素敵よ」

P「……そりゃどうも」

奏「でも、覚悟してね」

P「うん?」

奏「本気になった私がどうなるか」


奏「歩くなんて言わない。駆け抜けていくから」

奏「いつまでも、背中を押してね」

P「ああ」

スッ

奏「?」

P「……あ、いや、なんかこう、握手の流れかと思ったんだ。すまん、先走った」

奏「ふっ、ふふ、ふふふっ」

P「あーもう……笑ってくれ」

奏「いえ、ちょっと慣れないことだったから。そうね、手を出してくれる?」

P「ん? ああ」ス…

ギュッ

P「……これは握手とは違うんじゃないか」

奏「握手するなんて言ってないわ。手を繋ぎたかったの」

奏「こうやって、指一本ずつ」


奏「温かい手」

P「……奏の方が温かい気がするけど」

奏「そう? 不思議ね。どちらか、熱量が高い方が冷たいって感じるのかと思ったけど」

奏「私一人では出せない熱を。あなたが持ってきてくれた」

奏「Pさんがそうしてくれたなら、私は応えなくちゃいけないわね」

コツ

P(繋いだ手に頭をくっつけて……何しているんだろう、これは)

P「奏」

奏「もう少しだけ」

P「……こんなの、誰かに見られてみろ」

奏「そう? 私と話す時間を取っているんでしょう?」

P「……まぁ」

奏「それなら、ここは月の丘の裏側よ」

P「?」

P「ああ……誰も来やしないって?」

奏「ふふっ、素敵な歌詞ね」

奏「だから、もう少しだけ」

P「……わかった」


奏「ねえ、Pさん」

奏「私が折れそうになったら」

奏「またこうしてくれる?」

P「あー…… ……誰にも見られないなら」

奏「ありがとう」

奏「あ、それに加えて……キスはだめ?」

P「悪いけど、それは気分じゃないな」

奏「そう。残念ね」

P「……そろそろいいか」

奏「ええ。名残惜しいけど」スッ…

P「部屋の時間もあるから」

奏「そうね。……続きは、このホテルで?」

P「……」

P「……そうだな、その曲についても話さないといけないんだ」


奏「ふ、ふふっ、下手な誤魔化し方ね」

P「うるさいよ。レコーディングは3週間後。ライブはその後だから、まずは歌の方を完璧にしておいてくれ。当然、ライブは踊りながらになる」

P「通常のレッスンメニューに加えて、ボーカルレッスンを集中的に入れる。振付が固まってきたらダンスレッスンも増やす」

奏「ええ……それからライブ?」

P「といってもだいぶ先の話だけどな。それまでに他のアイドルのライブで場慣れしてもらう」

奏「ライブ自体はそれまでに出られるのね」

P「でも覚悟しておいてくれよ。ソロでライブ会場に立つんだ」

奏「そう……」

P「いけるな」

奏「ええ。やってみせるわ」

P「いつもながら、頼もしいよ」


奏「この曲は、Pさんが発注したのよね」

P「そう。俺が売り出したいイメージを伝えて作ってもらった曲」

奏「私の曲……私のための曲。この曲は、Pさんからの最初のプレゼントね」

P「……別に俺自身が作曲家さんにお金を出すわけじゃない」

奏「それでも、私を想って作ってくれたものだわ」

P「アイドルとしての速水奏だよ」

奏「それでもいい。あなた色に染めあげてみせて。私、応えられるから」

P「……」

P「気にいったと受け取っておくよ」

奏「ええ」

P「そうだ、奏」

奏「なに?」

P「やってみたいことは無いか」

奏「やってみたいこと?」

P「この曲のライブデビューで、なにかやってみたい演出プランとか」

奏「……それは、あなたの仕事じゃない?」

P「いや、そんなこともない。アイドルの方から、こんなことやりたい、なんて良くある話だから」

奏「そう」

P「プランナーさんとの兼ね合いもあるけど、とりあえず言うだけ言ってみるといい。ミーティングにあげられるかは俺が判断するし、出来るだけ希望に沿うようにする」

奏「……考えておくわ」


P「そろそろ時間かな」

奏「月も沈むものね。もっと話をしていたいけど」

P「じゃあまた、時間を取るよ」

奏「ええ。有意義だった……私の歌を貰ったんだもの」

P「ほら。曲のデータと歌詞。自分で聞く分にはいいけど社外秘だぞ」

奏「それはそうよね」

P「じゃあ……奏。これからもよろしくな」

奏「ええ、よろしくね。Pさん」

P「あー。CDが出たら……」

奏「?」

P「なにか美味しいものでも食べに行くか?」

奏「……」

P「あ、いや、別に変な意味は無くて。……あの?」

奏「いえ、そのっ……そう言うのあるって思ってなくって……」

P「そうだよな、いや、気にしないでくれ」

奏「えっ? だ、ダメ!」

P「え?」

奏「その、嬉しいの……だから、行きたい……」

P「あ、ああ。うん、わかった」

奏「……楽しみにしてる」

P「ああ」

奏「俺もだ」


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

P(それから俺も奏も、目まぐるしいほど忙しい時間を過ごした)

P(CDデビューからの勢いは爆発的で、もう候補生とは呼べなくなっていた)

P(宣言通り、駆け出し始めたアイドル。その手を引っ張り、背中を押し続けて)

P(ライブの日はまだ遠く、それでも確実に近づいていた)

――事務室

P「セットリストがでたんだが、なかなか難しい位置だ」

奏「難しい? んーと……ふぅん、MC直後になるのね」

P「出番ある直後だからな。はけて出直すより、そのまま残ってソロを始める感じになるだろうけど」

奏「私一人残って、そこからイントロが入ってくるの?」

P「うーん。ビシッと決まりはしないか。でも退場している暇はない。そんな時間観客を待たせていられない」

奏「一度暗転はできる?」

P「他のアイドルが退場できなくなる」


奏「うーん……」

P「できるだけインパクトある事したいなとは思うんだが」

奏「ダンサーさんに繋いでもらう……」

P「ん?」

奏「いえ、思いつき。袖から中央の出口までじゃ、時間かかりすぎるものね」

P「そうだな。イントロにそんな時間はないし」

奏「でもやってみたいわね。まるでダンスフロアのようなステージで」

奏「イントロも照明も最高潮。1・2・キスキスの直前で初めて私の姿がみえるの」

P「あー、いいな。気持ちいいくらい盛り上がるだろうけど……」

P「そうだな……イントロのロングバージョンを用意すればできるか?」

奏「用意してもらうの?」

P「それくらいの価値はある。それに作曲の人、アレンジも得意なんだ」

奏「ライブ用に……」


P「作ってもらおう。ライブバージョンとして別に収録すればそれでまた売れる」

奏「……抜け目ないわ」

P「売るのが仕事なんですー」

奏「正直なんだから」

P「OK。プランは出たからこれで一回だしてみるよ」

奏「わかった」

P「あとはいつも通りのレッスンと、仕事と、もうそろそろライブの合同練習も始まるな」

奏「ええ。……大丈夫、きちんとやるわ」

P「頼んだぞ」

奏「こちらこそ」


――テクニカルリハーサル

スタッフ「次、照明音響セット」「はーい」「演者誘導お願いします」

スタッフ「センターへのカート、あと一人行けるよー」「曲入りだけ出して」

ザワザワ ガヤガヤ

P「やってるか」

奏「プロデューサーさん」

P「おつかれ。なんだ、今日は衣装じゃなかったか」

奏「今日はきっかけだけだから」

P「そうだったな。少し途中で時間貰う」

奏「? ええ……」

スタッフ「次きっかけ入りまーす!」「はーい」

奏「はーい」

P「出番か。いってらっしゃい」

奏「ええ……いってきます。投げキッスはいらないわね」

P「ああ」


---

奏「イントロでここにポップアップ。ライトが点灯してから0番の位置まで移動」

奏「1番サビまでここね。2番からはステージの下手に移動、か」

奏「移動中のカメラは……あぁ、あそこね。赤いランプ」

奏「目線を送って……あとは下手の端で2番のサビ終わりまで歌とダンス」

奏「曲終わりで戻ってハケ。うん、だいたい入ったかな」

奏「どうかしら? 舞台監督さん、演出家さん? 今の動きで問題があれば教えてください」

舞台監督「舞監おっけーでーす」

演出家「んー。んーー。優等生だね。まあ、問題は無いんで、本番はいい感じにお願いしますねー」

奏「はーい」

演出家「はい、じゃあPさんおっけーよ」

P「どうも。5分くらいで済みますんで」

奏「えっ?」


P「おー、思った以上に高いんだな」

奏「どうしたの? プロデューサーさんもステージに立ちたくなった?」

P「俺が立ってどうするんだよ」

奏「そうね……デュエットはちょっとしてみたいけど」

P「せいぜいカラオケ程度にしておくよ」

奏「それで?」

P「ああ。奏は程よく緊張感があるといい働きをしそうだから、いまからプレッシャーを掛ける」

奏「……そんなこと言っていいの?」

P「言っておけば軽く受け取れるだろ」

奏「そういうものかしら」

P「そういうものだよ」


P「奏。何を思ってステージに立つ」

奏「何を? んー……無事にステージを成功させる意識かしら」

奏「プロデューサーさんのことを想いながら立ってほしかった? それはいくらなんでも罪作りが過ぎるってものじゃ……」

P「ここから何が見える」

奏「客席……うん、客席一杯にいるお客さん」

P「そう、これから奏が魅了するファンのみんな」

P「その全員の視線が奏を見る」

P「客席のあの端から、反対側の端まで。君が発したものを余すことなく受け取る」

P「気張れよ。ステージの上じゃ、嘘も本当もすべてが関係ない。奏がやったことが全て真実だ」

奏「そうね。ええ……」

P「だから、思うままやって見せてほしい」


奏「思うまま?」

P「そう。奏の好きなように」

P「自分の魅力を好きなだけ、見せつけてほしい」

奏「スタッフさんの手を止めてまで何を言うのかと思えば……」

奏「私はもう、アイドルよね」

P「ああ。自慢のアイドルだ」

奏「それなら……そんな心配いらないわ」

奏「見せてあげる」

奏「ファンにも。あなたにも。最高の私を」

P「ああ」


――ライブ当日 楽屋

奏「……」

ゴク

奏「……」

ゴク

コンコンコン

奏「はい、どうぞ」

ガチャ

P「お疲れさま」

奏「Pさん……お疲れさま」

P「お客さんがはいり始めている。気分はどうだ」

奏「……そうね。人並みに緊張しているわ」

カチャ ゴク

奏「……ふぅ」

P「冷たいものはあまり飲み過ぎるなよ」

奏「……わかってるわ」


奏「Pさんがプレッシャー掛けるから」

P「それはまあ、この先も考えると、これぐらいは乗り越えてもらわないと」

奏「ひどい人。ここは、緊張をほぐす言葉でもかけるところじゃない?」

P「そうだな。キスが欲しい、とか?」

奏「……なんでプロデューサーさんが欲しがるのよ」

P「ファンにしたら絶対欲しいと思うぞ」

奏「それはそうかもしれないけど、Pさんはプロデューサーでしょう」

P「プロデューサーでもあるけど……俺が奏の、一番最初のファンなんだよ」

奏「……それは素敵なことだけど。ファンにキスするアイドルなんていちゃダメよ」

P「なら、ステージの上で」

奏「あなたを呼びつけてステージの上で? 私をそんな破廉恥なキャラで売りだそうとするなんて」

奏「ちょっと失望したわ。なんてね」

P「……」

奏「……ふふ」

P「ははは。……どうだ?」

奏「ありがとう。少しほぐれたかも」


P「とはいえ、飴の方も用意しておかないといけないよな」

奏「飴?」

P「プレッシャー掛けるだけじゃフェアじゃないだろ」

P「だから、何かご褒美を用意しよう」

奏「……ご褒美、ね」

P「せっかくのライブだからな。よし、望みをかなえよう」

奏「あら、大盤振る舞いね。望みを叶える魔法使いかしら」

P「ドレスを用意して、舞踏会に送り届けたなら、魔法使いみたいなもんだろう」

奏「ああ。確かにね」

P「それなら、シンデレラの願いに応えなきゃな」

奏「……どんなことなら叶えられるの?」

P「まあ、可能なことなら。また食事に行くか? もっとちゃんとしたところ予約入れるぞ。欲しいものなら、うーん、自腹だからあまり高価なものになると辛いかな」

奏「ふふっ……現実的な魔法使いね」

P「まぁそんなもんだ。なんなら」


P「キスでも本当にしよう」

奏「……」

P「……」

奏「……そうね」

奏「映画とディナー、なんてどう?」

P「ああ。それでいいのか?」

奏「ええ。いいでしょう。Pさんにとっても、女子高生アイドルとデートなんて」

P「まあ、それは悪くないけど」

奏「……キスを選ばなくて不思議?」

P「いや、そうでもない」

奏「私ね、欲しいものに手が届くと、臆病になるのよ」

P「もっともらしい理由だな」

奏「そうね」

奏「キスが欲しいのは本当だけど」

奏「私から望んで、あなたにさせてしまうなんて、違ったものになっていると思わない?」

P「……キスが欲しいなんて言う割には、全部相手にゆだねるんだな」

奏「そう。ずるいのよ、私」

P「面倒なアイドルだ」


奏「ふふ……デート、楽しみにしてる」

P「ああ、わかった」

奏「あ、でも普通に待ち合わせるんじゃなくてね」

P「ん?」

奏「学校に迎えに来て?」

P「おっと、急にハードル高くなったぞ」

奏「どう?」

P「……可能なことなら、なんて言いすぎたかなぁ」

奏「ふふ、私を甘く見た仕返し。どうせキスを選ぶわけないと思っていたんでしょう」

P「ん? あー……」

奏「確かに選びはしなかったけど、あなたの予想は裏切れたかな」

P「……わかった。迎えに行くよ」

奏「本当? 嬉しいわ」


奏「……そろそろ袖に向かうね」

P「ああ。見ている」

ガタ

P「奏」

奏「なに?」

P「キスが欲しい」

奏「……ここで?」

P「ステージで」

奏「あなたに?」

P「俺に、俺たち、すべてのファンに」

P「とびきりのキスを」

奏「……」

奏「ええ」

奏「見ていてね、Pさん」

奏「とびきりの、キスをあげる」


---

(遠く、歓声が聞こえる)

(MCの後、遠目に奏が見えた)

(ステージから一度、すべてのアイドルがはけて……一度暗転する)

(それから、曲が流れ始める)

(何回と、何十回と聞いた曲のイントロ。曲に合わせてダンサーが激しく揺れた)

(会場では、聞いたことのない曲に、ファンが耳を澄ませている)

(ステージの中央ではダンサーが踊り続けている。そのダンスに目を奪われているうちに)

(一部のファンが気が付いた)

(そうだ、あの曲だ。確かにあの曲だ)

(それが伝播して多くのファンがざわめく)

(イントロが高まっていく。その先にくるものをファンは、俺は、待ち望んでいる)

(曲は、会場のボルテージは最高潮に達している)

(そうだ。皆が待ち望んでいる)

(とびきりの、キスを)

(アイドル・速水奏を)

(最高のキスを)



『1.2.X.X』








おわり

ありがとうございました。
総選挙で速水奏に1票でも入れて頂ければ、本望です。


次は周子か関ちゃんあたりでなんか書こうかと思います。
でも真面目なのばかり書いてきたので、そろそろはっちゃけたい。

よければこちらもどうぞ。

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