一ノ瀬志希「失踪しちゃおうか」 (50)
一ノ瀬志希「わー海だー」
モバP(以下P)「……海だな」
志希「海が見えた時ってもっと盛り上がるもんじゃないの?」
P「どんなバラエティ見たんだ」
志希「いやー、太平洋だねー。あれ、これって日本海?」
P「太平洋でいい」
志希「ふんふん。この向こうがアメリカかー。まあどこの国でもいいんだけど」
P「大雑把だな……」
志希「結構ビーチ広いね。どっかから降りられるの?」
P「駐車場でもあればそこに車止めるけど。こんな季節に海辺でも歩きたいのか」
志希「それいいかも。こっちに戻ってから海なんて、わざわざ行かなかったし」
P「絶対寒いぞ」
志希「だよねー」
P「っていうかお前、コートどうした」
志希「ん? あれ? 事務所に置いてきちゃったかな」
P「かなって、それで外に出るのかよ」
志希「マズい?」
P「マズいっていうか……いや、でも女子高生って真冬でもミニスカート履けるんだもんな……」
志希「にゃはは、視線がおじさんだ」
P「職業病ってことにしておいてくれよ」
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P「まあ、今日は志希の話に乗るって言ったもんな。止められるところ見つけるよ」
志希「わーい」
P「しかし、何だって海に来たんだ」
志希「別に海じゃなくてもどこでも良かったんだ」
P「はあ」
志希「キミを連れだせるならどこでも良かった」
P「……」
志希「キミとふたりだけで出かけるなんて初めてだし?」
P「出かける……いや、出かけるって言うのかこれ」
志希「んふふ~、なんならデートって言ってもいいんだよ~」
P「仕事サボって担当アイドルとデートか。いい身分すぎるだろ」
志希「だから、たいぎめーぶんを与えたわけだよ、あたしは」
P「計算高いやつめ」
志希「得意だからねー」
志希「ねえねえ」
P「……なんだ」
志希「どうしたのさー、出発してからずーっと浮かない顔で」
P「浮くものは何一つない。なんでこんなところにいるんだろうって思ってるよ」
志希「それは、あたしの口車に乗ったからー♪」
P「……そうだな、そうだった」
志希「後悔してるのかな」
P「している……いや、どうだろう、わからん」
志希「にゃはは。あの時の顔は、なかなか面白かったよ」
P「そうか、忘れてくれ」
志希「むりむり。大脳皮質が忘れてくれなーい」
P「はぁ。……なんで俺、平日の夕方にこんなところにいるんだ」
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――4時間前 事務所
『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にいるか……』
P「……」
プツ
ツー ツー ツー
P「……はー」
千川ちひろ「つかまりませんか?」
P「ええ。圏外アナウンスですが、着信拒否でしょう。自宅へは……いや、やめておきましょうか」
ちひろ「その方がいいでしょうね。私がメールを出しておきますよ」
P「……俺がやるべきじゃないですか」
ちひろ「直接メールするのはハードル高いですよ。向こうももらっても読みたくはないでしょう」
P「それはそうかもしれませんが……」
ちひろ「ワンクッション挟むことで、双方嫌な思いも少なくて済みますし、私は事務的に契約破棄メールを送るだけ。全員負担は少ないんですよ」
P「……わかりました。よろしくお願いします」
ちひろ「はい、承りました」
ちひろ「あの子は、Pさんがスカウトしてきたんでしたね」
P「ええ。……いい素材だと思っていたんですけど」
ちひろ「レッスンに耐えられなかったんですかね」
P「それだけ、ではないと思います。何となく嫌になった、なんてことだって十分あるでしょうけど……」
ちひろ「思えば、そんな器用そうな子じゃなかった気がしますね。でも、もっと不器用な子でも頑張っている子はいますから……」
P「もっと早くフォローするべきでした。軌道修正できたかもしれない」
ちひろ「言ってはなんですが、本人のやる気がないとどうしようもないこともありますよ」
P「それを引き出すのも俺の仕事です。とはいえ……ポンとデビューできてちやほやされて、なんて普通できません」
ちひろ「現実と理想のギャップに負けて、ってあたりですかね」
P「ええ」
ちひろ「でも、初期のレッスンくらいで折れるようでは、この先も乗り越えていくのは難しかったのではないですか?」
P「……」
ちひろ「彼女にも私達にも、むしろ傷が浅かったという考え方もあるかもしれませんよ」
P「……そう思う自分もいます。その方が気楽でしょうけど……」
P「最近順調だったんですよね。いいユニットの担当になれて、うまく仕事が回って……少しばかり、いい気になっていたかもしれません」
ちひろ「担当に恵まれたと思えるなら、それはとてもいいことですね」
P「そうですね……」
――
P「あー……」グデー
志希「おやおや。プロデューサーがへこたれてるー」
P「……志希か。おはよう」
志希「おはよー。もうお昼過ぎてるけど」
P「そうか、レッスン終わったのか。どうした」
志希「んーん。あ、でもご飯食べたい」
P「たかりに来たのかよ。それにしては志希一人だけか」
志希「なんかみんなどっかいった」
P「なんかって」
志希「美嘉ちゃんと奏ちゃんは学校だーってあたしと入れ違いだった」
P「朝練しにきてんだよなぁ。偉いよ」
志希「周子ちゃんはこのあと羽衣小町で撮影だし」
P「宮の字は」
志希「ゼミだって」
P「ちゃんと大学行ってるんだなぁ」
志希「とまぁ、おいていかれた志希ちゃんなのでした」
P「遅めの飯か。まあ志希一人なら財布にも優しいし、いいだろ」
志希「やったー♪」
P「どこに行くかねぇ」
志希「とその前に」
P「ん?」
志希「はすはすー」グイッ
P「おい」
志希「……んー」
P「なんだよ」
志希「まいいや」
P「なんなんだ」
志希「じゃあ行くところなんだけどさ」
P「おう」
志希「あたしの気まぐれに付き合ってみない?」
P「……ん? 適当に店探すのか?」
志希「あ、それいいね。車だしてよ」
P「車で行くようなところは行けないぞ」
志希「いけるよ?」
P「なに言ってるんだ」
志希「会話がかみ合ってないねぇ」
P「よし、そこは同意見だ」
志希「だからさ」
P「おう」
志希「あたしと一緒に失踪しちゃわない?」
P「は?」
志希「にゃはは、何その顔! カートゥーンでもそんな呆けた見ないよ」
P「……呆れてるんだよ。何がしたいんだ」
志希「だからー。失踪。これから。あたしと。キミで」
P「出来ない」
志希「出来るよ」
P「あのな、俺は仕事が」
志希「してなかったじゃん」
P「……」
志希「あたしさー、最近ふらっとどこか行くのやってなかったんだよね。今回は特別に、キミの同行を許可しちゃおう」
P「失踪仲間が欲しいにしては、随分と苦しい言い訳だな」
志希「お目付け役として付いてくるってのはどう? 飛鳥ちゃんがしたように」
P「何日やるつもりだよ。明後日撮影はいってたろ」
志希「そんなん話したら失踪にならないよ。まーまー、一回やってみなって。クセになるよー?」
P「癖になっちゃまずいだろ」
P「……どこに行くつもりなんだ」
志希「お? んふふ……決めてなーい。でもまぁ、そうだにゃー。海とか見たいかも」
P「海ねぇ。山よりは寒くなさそうだ」
志希「そうだね」
P「……」
P(なにを考えてる?)
志希「にゃはは~」
P(いつもの、変わらない志希だ)
P「……」
P(猫は人が落ち込んでいると、そばにいてくれるって言うけど)
P「まあ、詮索しても意味はないか」
志希「んー?」
P「なんでもない」
志希「そう。ね、失踪しちゃおう?」
P「……ちひろさんに」
志希「ん?」
P「早退するとか言ったら、失踪じゃなくなるよな」
志希「そうだねぇ。誰にも何にも言わずに、ふらっと姿を消すの」
P「あとで大目玉だな」
志希「まぁその時は、あたしを追っていたとでも言うといいよ」
P「言うと思うか?」
志希「にゃはは。思わない」
P「失踪か。……普通、できるわけないよな」
志希「君なら、そうだろうね」
P「でも、まぁ」
P「今日のところはのってやってもいい」
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ガチャ ビュオッ
P「うわっ。風あるな」
志希「冬の海風すごいねー。にゃはは、だーれもいない」
P「物好きしか来ないだろ。こんな平日の夕方に、冬の海なんて」
志希「じゃーあたしとキミは、もの好きってこと?」
P「いま、好きで来てるか?」
志希「んー、わりと」
P「そうかい。じゃあもの好きなんだろう」
志希「でも寒いのは好きじゃないにゃー」
P「海辺におりたいって言っておいてそれか」
志希「あたしが砂浜を歩きたいってのと、寒いのは嫌だって言うのは両立するでしょ」
P「理論的なこと言ってるようだけど納得はできない」
志希「あたしもー」
P「おい」
志希「あ、じゃあ風よけになってよ」
P「は?」
志希「うりゃっ」ギュッ
P「……腕組むだけで風よけになってるか、これ?」
志希「海からの風防げてる気はする」
P「っていうか髪。いつもの自由なウェーブがすごいことなってるぞ」
志希「もってかれそー。こんなMVなかったっけ?」
P「卯月がカバーした、あの人のPVは風に吹かれまくってるけど」
志希「それそれ」
P「冬の海で撮影するか」
志希「やーだー」
P「……」
志希「また仕事のこと考えているのかな?」
P「……まあ、どうしたって気がかりになる」
志希「キミって、いままでサボタージュしたことない人?」
P「いや、そんなことは……ないはず……どうだったかな」
志希「それはまた」
P「つまんない男だってか?」
志希「マジメだなーって」
P「信頼はどこの業界でも大事だぞ」
志希「信頼は実力の後について回るだけだよ。てきとーにやってても回る物は回るって」
P「そう言えるのは、凡人じゃない証左だよ」
志希「にゃはは。それはまあ仕方ないよねー」
志希「せいぜい数時間の早退なんて、サボりにも入らないでしょ」
P「そんな感覚は持っていない。……まあ今日は、ちひろさんも見逃してくれてるのかもしれないけど」
志希「結局、電話なかったもんね。キミ、ずっと気がかりだったでしょ」
P「気が気じゃなかったよ。途中で昼飯食べてから気にしないようにしたけど」
志希「気にしようとする心そのものが、気にかかっている証拠だねぇ」
P「そんな器用にできてないんだよ」
志希「放り出すと楽になるよ」
P「そこには責任が伴うだろ」
志希「それがどうしたって言うの?」
P「俺みたいなのには、そんな言葉で返せないんだよ」
志希「そう?」
P「放り出したら、何も残らない」
志希「……あたし、アメリカで研究してたじゃない」
P「ん? ああ」
志希「日本で持て余していたこと、アメリカの大学でならいろいろ解消できるかなと思っていったんだけど、結局そこでも全部放り出して日本帰ってきちゃったでしょ」
P「だったみたいだな」
志希「そうやって、全部放り出しながら生きてきて、あたしに残ったもの、何だったかわかる?」
P「……」
志希「いまキミが持っているもの。地位も職業も、アイデンティティも好きな物も、全部放り投げた時、キミには何が残る? あたしには何が残ったと思う?」
P「少なくとも、俺がそれらを放り投げたら、何も残らないよ」
志希「そう思っていた。そう感じていたんだよね、あたしも」
P「意外だな。志希にはいろいろあるだろうと思っていたけど」
志希「でも、そうじゃなかった。あの時、ふらふらしていただけのあたしを見つけてくれたから」
P「……」
志希「キミだよ」
P「……」
志希「どこまで何もかもを放り投げたって、あたしにはあたしが。キミにはキミ自身がいる。どこにでも行ける、何にだってなれるキミがいるんだって」
志希「そう教えてくれたのは、キミだったんだよ」
P「……はーっ」
P「慰められてるのかね、これは」
志希「最初の動機はそうだったんだけどね。どうでも良くなっちゃった」
P「はい?」
志希「これでも、ちょっとは人の心も分かるサイエンティストのつもりなんだよ」
P「あー、なんだ、良く聞くマッドサイエンティストじゃなくて」
志希「んー。クレイジー?」
P「それだな」
志希「落ち込んだりとか、あたしもないわけじゃない」
志希「でもそんな時でもあたしは、自由にやってきたからさ。落ち込むのもやってらんないんだよね」
P「そうできれば、楽には生きられるだろうけど」
志希「キミにもそうあれと言う気もないよ」
P「……」
志希「ただ、いまのあたしは」
志希「あたしを見て、って思ってるだけ」
P「志希?」
志希「あたしがいいたいのは」
志希「ふたりっきりのこの時間に、仕事なんて考えなくていいよ、ってこと」
P「……」
志希「ねえ、見てて」
グイ ドサ
P「は……? なに靴脱いで……」
志希「砂浜を歩くのに靴なんて、窮屈じゃない?」
P「ちょ、おい季節考えろ」
志希「見ててよ」
スルッ ポイ
P「靴下投げ捨てるなって」
志希「キミが見ててくれるなら、こんなことだってできちゃう」
バシャッ
P「!?」
P「何やってんだ!」
志希「うひゃーっ、冬の海つめた!」
P「当たり前だろ!」
志希「あっ、ダメなやつだこれ。冷たいじゃない、痛いだこれ!」
P「さっさとあがれバカ!見てるこっちが寒い!」
志希「見てる?」
P「は?」
志希「あたしのこと、見てる?」
志希「あたしのことだけ見てる?」
志希「いまキミの眼には、あたししか映ってない?」
P「……いいから早くあがれ」
志希「見てるって言って」
P「いいから!」
志希「言って」
P「ああもう! 見てるよ! 今はお前のことしか見えてない!」
志希「にゃはは。ならまあ、いっか」
P「早くあがれ」
志希「はーい」バシャ
ビュォッ
志希「あがったらあがったでまた寒い! 気化熱やばー!」
P「言わんこっちゃない。車まで戻るぞ、いけるか」
志希「ちょっとむり」
P「あとさき考えてねえな!」
志希「やっちゃったことは取り消せないよね」
P「計算高いが聞いてあきれるわ! もう四の五の言うなよ!」
グイッ
志希「わっ、と」
P「掴まっててくれると楽なんだが」
志希「そう? じゃあ遠慮なく~」
ギュッ
志希「ふふ、キミ、結構大胆だね。アイドルにお姫様だっこなんてさー」
P「なんだ、もっと運びやすい肩に担ぐのでもいいんだぞ」
志希「ファイヤーマンズキャリー? んー、ならこっちがいい」
P「まったく……アイドルと抜け出すだけじゃ飽き足らず、風邪までひかせたら大問題だ」
P「鍵開けてくれ。ジャケットのポケットにある」
志希「はーい。うひー、足先感覚ない」
P「靴と靴下取りに戻るこっちの身にもなれ」
志希「わーい、取ってきてくれるんだ」ピッ
ガチャ
P「ほっといてもお前取りに行かないだろ」
志希「そうかも?」
P「おろすぞ」
志希「んしょ」
P「おい、足車の中に入れるな」
志希「寒いよしめてー」
P「車の中砂だらけにする気か。ハンカチでいいな」
志希「うん」
パッパッ
P「膝までだったからいいものの、全身に波かぶったら最悪心臓麻痺するんじゃないのか」
志希「この季節ならありうるよね」
P「お前な。……ほら、砂掃ったから足入れろ」
志希「いやー、足の感覚ないね」
バタン
ガチャ
P「とりあえずエアコンだけ付けておくぞ……おい、どうした」
志希「風がなくなって、改めて寒いの自覚した」ブルブル
P「毛布なんて積んでないぞ」
志希「ううー……おかしくなっちゃうよー」
P「冬の海に入るだけで十分おかしくなってるよ」
志希「まさにクレイジーだね」キリッ
P「そのキメ顔腹立つな」
カチ ゴォー
P「エアコン最大だ。とりあえず靴取ってくるからな」
志希「まだ風冷たいにゃー」
P「すぐ温かくなる」
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ガチャ
P「とってきたぞ……なにしてんだ」
志希「ここの通気口が一番勢いあるから」
P「……いや、もろに見えてるぞ」
志希「別にいいよ」
P「よくねえよアイドル」
バタン
志希「足先じんじんする」
P「自業自得だろ。感覚ないよりは戻ってきたな」
志希「骨身に染みるって表現、身体で理解できたね」
P「反省することも染みてくれないか」
志希「もちろん。化学はトライアンドエラーだよ」
P「その分野だけじゃないだろ」
志希「そうだね。んー、車のエアコンじゃ足りなーい。あたためてー」
P「エアコンは最強にしてるって」
志希「そうじゃないよ。もっと直接的に人肌が欲しいんだってば」
P「……このうえ俺の体温まで奪う気か?」
志希「んふふ。どお? 志希ちゃんのなま足、いまなら触り放題~」ニュッ
P「ちょ、おまえ……分かったから足を押し付けるな、見える!」
志希「いいからいいから」
P「……どこまで計算でやってるんだか」
志希「キミの手のひら、温かいね」
P「俺だって冷えてるんだよ。お前の足が冷たすぎるんだ」
志希「両足より、片足ずつ手の間に挟んでー」
P「言っておくけどお願いできる立場でもないからな」
志希「あたしには関係ないのだ~」
P「はいはい」
志希「何でこっち見ないの?」
P「コメントは控えさせていただきます」
志希「ちぇ」
P「ん。少し温かくなってきたか。水で冷やした後とか、手が温かくなるよな」
志希「ホメオスタシスだね。暑いときに汗を出すのと同じだよ。体の生理反応」
P「あー。聞けばわかるけど、何でそういう名称まで知ってるんだ」
志希「だって気になったら知りたいじゃない」
P「そういうもんか」
志希「そういうものだよ」
志希「ふあー」
P「温まったか」
志希「だいぶ。でもお風呂入りた~い、温泉でもいい」パタパタ
P「目の前で脚パタパタさせるな。我儘なアイドルだな」
志希「キミが甘やかすからだね」
P「じゃあ厳しくいくか」
志希「ぶーぶー」
P「まあ、なんにせよ、温泉……といくかは分からんが、泊まることも考えないといけないか」
志希「あ、今から帰るとは言わないんだ」
P「何時間かけてきたんだっけ。同じ時間かけて帰るのはちょっと……いやだな」
志希「体力的な問題だったかー」
P「どうするかねぇ。冬に車中泊はちょっと避けたいな……一眠りできれば大丈夫だろうけど」
志希「あたしは車中泊でもいいよ~。身を寄せ合って後部座席で」
P「最後の手段にしよう。どっか泊まれるところ……まあビジネスホテルなら多分……」
志希「ハイウェイ降りた時にあったモーテルは?」
P「あれはその……そういうホテルだ」
志希「あー。プランに休憩と宿泊があるやつだ」
P「地味に知ってるんだな」
志希「存在くらいは」
P「それならよかった。使い方まで知っていたらどうしようかと」
志希「にゃはは。ところでキミは知ってるのかな?」
P「はははは」
志希「どれどれ、どっちの匂いがしているか嗅いでみよう」
P「おいやめろ」
P「げ……ホテルってこんなにないもんか」
志希「一応、ビーチで有名な観光地でしょ? 皆無ってことはにゃいんじゃにゃい」
P「ホテルって言うか旅館なら……」
志希「ダメなの?」
P「ひとり5万はちょっと……」
志希「しょうがないにゃー。あたしがだしたげよう」
P「それはそれで大人としてダメじゃないか?」
志希「あたしの収入と比べてみる?」
P「やめろ。つらい。……っていうかこんな時間から予約取れるだろうか」
志希「ふーん。つまり、現状は3択になるんだ」
志希「飛び込みの高級旅館か、高速道路脇のホテルか、車中泊」
P「どれも難易度高いな……」
志希「ちなみにねー。あたしはどれでもいいよ」
P「どれでもって」
志希「旅館ならあたしがもつし。車中泊もさっき言った通り」
ズイッ
志希「ラブホテルなら……キミがリードしてくれるのかにゃ?」
P「近い」ググッ
志希「ぶえ。なにも顔を押し返さなくてもいいじゃん」
P「馬鹿なことを言うから」
志希「でもさー、何か問題ある?」
P「いや、普通にスキャンダルだ」
志希「見つかったらそうなるよね。で、誰に見つかるの?」
P「……しつこいパパラッチなら、ついてきてるかもしれない」
志希「この駐車場には、あたしたち以外に車はなし」
P「まあ、可能性は低そうだけど」
志希「お値段的には? 高いの? そういうトコ」
P「いや、普通のホテルよりは安めかな……」
志希「チェックインが面倒とか」
P「駐車場から部屋まで人目に触れずに部屋まで行けて……」
志希「逆に良くない? フロントにも人いないの」
P「人はいるだろうけど、会わない……くそー都合いいな」
志希「どうするー?」
P「……ああそうだ、予約があるわけじゃないから、確実に部屋が取れるかわからないな」
志希「そしたら車中泊に切り替えたらいいんじゃない。平日の夕方に部屋が埋まっているのかな」
P「明日休日だから……いや、うん、多分空いてるな」
志希「さてさてどうする?」
P「……二部屋」
志希「そんなのお金の無駄じゃない? 確かあれってさ、一部屋料金なんでしょ」
P「なんでそんなことは知ってるんだよ……あっ、そもそも料金そんな高くないことも知ってたな」
志希「にゃはは。バレた~」
P「どういうつもりだよ。俺だって男だぞ」
志希「さっき、あたしはいいって言ったよ?」
P「……」
志希「っていうか、何でウソつかなかったの?」
P「は?」
志希「18歳じゃ泊まれない、高速道路の近くまで戻るのも辛い、身分証明書がいる。なんか誤魔化しようあったと思うにゃー」
P「お前……」
志希「もちろん、あたしが知らないところなんてキミが分かるはずもないんだけど♪」
志希「選択肢に上がっていた時点で、それが可能だと認めちゃっていたんだよ」
P「……志希をホテルに押しこんで、俺は車で寝るって手段がある」
志希「まあ、それも元からダメなんだけどね。キミにはあたしから離れちゃいけないワケがある」
P「ワケ?」
志希「キミは、あたしの失踪のお目付け役で来たんだよ? だから目を離しちゃダメー」
P「泊まるときは別だ」
志希「いいのかな、そんなこと言っちゃって。起きたら部屋はもぬけのカラ、なんてあるかも」
P「……志希、どこからこの状況を想定していた」
志希「さてねぇ。いま必死に頭をフル回転させているかもしれないよ?」
P「……はぁ……負けたよ。もう考えるのも面倒だ」
志希「おやおや。もうちょっと抵抗を期待したんだけどな」
P「こっちが乱暴な手段をとらない限り、お前には勝てないだろ。抵抗するだけ無駄だ」
志希「残念、もうちょっと駆け引きできると思ったのに」
P「奏に毒されてないか」
志希「あたしあんなに可愛くないよ」
P「どっちもどっちだと思うけどな……」
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
ガチャ
志希「おー。なにこれ?」
P「精算機だな。ステイ料金先払い、チェックアウト過ぎたら追加料金」
志希「しゅごーって料金を吸い込ませるパイプって?」
P「そんなんいまどきないだろ……」
志希「回転するベッドもいまやマボロシ?」
P「だろうな。っていうか、そこらへんの情報どこから学んだんだ」
志希「早苗ちゃんとか志乃ちゃんとか。あと菜々ちゃんも頷いていたよーな?」
P「あ、うん、そこは触れないでおこう」
ピ ガー
P「入っていいぞ」
志希「わー」
ガチャ
志希「クンクン…… ……ぅ」
P「ん? あ、あー……」
志希「ちょっと窓開けていい?」
P「大して開かないだろうけどな」
ガチャ
志希「うわ、本当にほとんど開かない」
P「俺にはわかんないけど、やっぱり臭うのか」
志希「なんていうかね、生々しいんだよ。消臭剤に紛れてるけど。ここはそういうための部屋なんだなって」
P「志希の鼻にはつらかったか。どうする、いまからでも」
志希「料金払ったんだから、それこそもったいないでしょ。五感の中で一番マヒしやすいのは嗅覚だから、たぶん慣れるよ」
P「そうは言うけど」
志希「あ」
P「あ?」
志希「じゃあこうしよう♪」
ギュッ
志希「はすはすー」
P「……せめて窓閉めてからきなさい」
志希「わかったー」ギュー
P「言うこと聞かねえ」
パタン
P「ところでシャワーは……」
志希「浴びる? ジャケット置いてってー」
P「もうそれは諦めているけど……そうじゃなくて」
志希「バスルームはー。あ、分かりやすい」
P「……やっぱりか……」
志希「おお、すけすけだね」
P「……もういいや、さっさと寝る……」
志希「あたしは浴びようかなー」
P「は? 本気か」
志希「のぞき……もなにもないよね、見たら見えちゃう~」
P「見えちゃう~じゃねえって」
志希「でも見ないでしょ、キミ」
P「……見ないけど」
志希「一瞬考えた?」
P「見ねえよ! さっさと浴びて来い」
志希「考えてないって言わないあたり、素直でいいね~」
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志希「ふー、さっぱり。やっぱり潮風ってべたつくんだねぇ」ホカホカ
P「それはよかったな」
志希「ねえねえ、シャワーくらい浴びたら?」
P「いい……」
志希「なにがあるのか分かんないのに?」
P「うるせー、何かあっちゃ困るから浴びないんだよ」
志希「んー……まあそれはそれでキミの匂いが濃いし、いいかも?」
P「やっぱ浴びる」
志希「まあその方がいいよね~」
P「……手のひらの上で転がさないでくれ」
P(とはいえ……)
志希「♪」
P(こいつのことだ、見かねん。あっさり目の前で観察までやりかねん)
P(熱いシャワーで湯気多くしてしまうか……)
P(でもそんなんじゃ頼りないよな……)
P「……ん?」
志希「?」
P「何だこのスイッチ」ポチ
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P「ふー」ホカホカ
志希「ガラス曇らせるスイッチあるなんて聞いてにゃーい」
P「見ようとしてんじゃねえ」
志希「好奇心にあらがえなかった」
P「本当、気づいてよかった。……それで、ベッドは当然のごとくダブルベッド」
志希「あたしはいいよー」
P「ああ、そう言うと思っていた。もう俺もいいや」
志希「おや」
P「床に寝てもいいけど、今日の疲労を残さないことを優先する」
志希「ふーん? またひと悶着できるかと思ったのに」
P「それでまた体力と精神力をすり減らしたくない」
志希「この半日であたしとの付き合い方変わったね~」
P「かしこまってても仕方ないだろ」
志希「いや~、あたしとしてもこっちの方が楽でいいよ」
P「そうかい」
ギシ
P「できるだけ端で寝るから、こっち来るなよ」
志希「えー。海じゃあんなに温めてくれたのに」
P「無防備も過ぎると痛い目に合うぞ」
志希「さて、どんなことをされるのか……」
P「……もう寝ろ」
志希「んー。そだね~、志希ちゃんも今日ははしゃいだし」
P「もうちょっと抑えてくれると助かった」
志希「そっかー。いつか気を付けるよ」
P「……電気消すぞ」
パチ
P「……」
志希「……」
P「志希」
志希「ん?」
P「今日は……いや、感謝を言うのも何か違うな。なんというか……助かったよ」
志希「助かった、ね。んー、助けた覚えはなかったけど」
P「俺が落ち込んでいたから、気分転換に連れ出したんだろ?」
志希「まぁ、そこは否定しないかな。気分転換じゃなくて、あたしの失踪についてきただけだよ」
P「……何があったのか、誰かから聞いたのか?」
志希「なんにも? 聞いたからってそれ言うと思う?」
P「そうだな」
志希「今日、お昼にキミに抱き着いた時にわかったよ。なんかあったんだなーって」
P「匂いでそんなのまで分かるのか」
志希「そんなんわかんないよ」
P「え、あ、そう……」
志希「汗かいてるとか、興奮しているとかならわかるけどね。落ち着いている、と落ち込んでいる、の差は分からないにゃー」
P「なら、どうして」
志希「あたし、キミに抱き着いたでしょ。あの時に筋肉がこわばった。受け止めるために入れた力じゃないよ。自分を守ろうとした。あたしを拒絶しかけたんだ」
P「……拒絶って」
志希「もちろん無意識だけどね。言葉に出していなかったけど、一人でいたい、放っておいてくれって言ってるみたいだったよ」
P「……」
P「それで……放っておかなかったんだな」
志希「ん? まあそこは追々。なにがあったかは……んー。言いたくないなら別に」
P「ん……愚痴になるかもしれないけど……」
志希「……いいよー。きいたげる」
P「……」
P「本当に、なんてことない。良くある話なんだ」
P「アイドル候補生がひとり、レッスンに来なくなって、養成所をやめた」
P「それだけの話だ」
志希「まあ、そんなところだよね」
P「分かってたのか」
志希「推測だけだよ。キミの口ぶりから、キミの責任ではなさそう。だからキミが何かを失敗したわけじゃない。そうだったらいまごろ、こんなトコいないで必死にフォローに回ってるでしょ」
P「そうだろうな」
志希「でも責任を感じられずにはいられないのは、そうだね、多分キミがスカウトしたからだ」
P「……ああ」
P「俺に責任はない、なんて言えるわけもない」
志希「プロデューサー業だって、ある程度のドライさはいるんでしょ」
P「そりゃあ、アイドルになれずに辞めていく人なんて、いくらでもいる」
P「いままでいろんな子に声を掛けてきて、もちろん初めからな子もいたし、喰らいついて生き残ってくれる子もいた。あの子も、残れるだろうと思っていた……いや、タカをくくっていた」
志希「それで、あっさり裏切られたわけだ」
P「そういうなよ」
志希「諦めはついたの?」
P「諦めは……まあ、ついた。いくらやっても仕方の無い時はでてくる」
志希「それで、どう思った?」
P「俺が? ……なんだろうな……悔しかった。……あの候補生は違ったんだろうか」
志希「どうだろうね」
P「やりがいはあるけど、たまに嫌な商売だと思う時もある……」
志希「……ふぅん」
P「はは、本当に愚痴になったな、すまな……」
ギシッ
P「志希?」
P「……こっち来るなって言ったろ」
志希「そーだっけ」
P「軽々しく、男の上に乗るんじゃない」
志希「ねえ」
P「……」
志希「本当に、失踪しちゃおうか?」
P「……本当に?」
志希「二人だけで、何もかもを放り投げて。誰もあたし達を知らないところまで」
志希「あたしは、キミとなら行けるよ」
P「……」
志希「……」
ギュム
志希「ぶえ」
P「できるわけないだろ」
志希「ひどいなーもう 乙女の鼻つまむー?」
P「できないよ。残った子たちのプロデュース、誰がするんだ」
志希「……ま、そーだよね」
志希「それに、あたしもアイドル続けたいし」
志希「キミがプロデューサー続けてくれないと、あたしがアイドル続けたい理由も薄まっちゃうかにゃー」
P「やめないって」
P「お前のプロデュースを他人に任せるほうが不安だからな」
志希「そう」
志希「ならいいや」
志希「あ、でもさっきのは撤回しないよ」
P「ん?」
志希「やめるならいつでも言って。あたしがアイドル続けるより、キミの行き先の方が興味あるな♪」
P「そうかよ」
志希「ね?」
P「……わかった、やめる時は言っておくよ」
志希「じゃなくて連れてけー」
P「はいはい」
志希「ふふ」
P「ほら、もうどけ」
志希「えー、もったいない」
P「おしのけるぞ」
志希「ちぇー」
ドサッ
志希「ま、今日はキミの本音が聞けただけ、よしとしよう」
P「そうかい」
志希「あたしもやめたがるクチだからねー。逃げ出す子の気持ちは分からなくはないんだ」
P「志希だけじゃないけど、いま残って活躍してくれるアイドル達には、感謝しかないよ」
志希「ん? んふふふ、そう思える機会があっただけども、その候補生ちゃんに感謝してもいいんじゃない」
P「……そうか、そんな考え方もあるか」
P「ありがとうな。志希」
志希「んふふふ。感謝は誠意で返してほしいな」
P「誠意?」
志希「お願いひとつ聞いて」
P「……えー……この状況じゃ嫌な予感しかしない」
志希「あたしから何かすることじゃないから」
P「……まあいいだろ。なんだ」
志希「寝るまで抱きしめて」
P「……」
志希「温かいうえにセラピー効果も期待できるうえに、匂いも嗅ぎ放題。えっ、これいいことずくめじゃない?」
P「……わかった」
ギシ ギュ
志希「んふ。緊張してるね」
P「また、筋肉でわかったのか」
志希「あと、ちょっとだけ震えてるのがね」
P「……」
志希「リラックスしていいよ。セロトニンもっとだせー」
P「できるかよ」
志希「あたしはこんなにリラックスしてるのに」
スンスン
志希「あ。緊張じゃないんだ、これ」
P「……おい、その先を言うな」
志希「興奮してる」
P「やめろ」
志希「にゃは」
志希「……ねえ」ポソッ
志希「我慢できなくなったら、その時は言ってよ」
P「なんだよ、逃げてくれるのか」
志希「んーん」
志希「覚悟決めるから」
P「……」
志希「……」
P「はー……」
ギュウッ
志希「んんっ、きついよ……我慢できなくなった?」
P「馬鹿らしくなった」
志希「そっかー、あ、でも筋肉の緊張が無くなったね。いい傾向だよ」
P「そうか……」
志希「そしてあたしも好きなだけハスハス~」
P「……志希の髪、いい匂いだな」
志希「お。キミが嗅いでくれるなんて、初めてじゃない?」
P「そうかもな」
志希「キミを嗅がせてくれるなら、いつでも嗅がせてあげるよ」
P「いつでもはいい」
志希「そう?」
P「そう」
志希「そっかー」
P「……」
P「気分転換……いや、失踪ってのも悪くないな」
志希「でしょでしょ」
P「だから、明日には帰るぞ」
志希「えー。……ま、キミが帰るならついていくかな」
P「本当についてくるよな」
志希「わかんにゃい。明日急に気が変わって失踪してるかも」
P「……はぁ。好きにしな」
志希「ふふふ。うん、好きにする~」
ズル
志希(……?)
P「……すぅ」
志希(おや)
志希(ひどいなぁ、こんな美少女を置いて先に寝るなんて)
志希(あ、どっちが寝るまでって指定はしなかったか。日本語ムズカシイよねー)
志希「……」
ピト
志希(……キミの体温があたたかい)
志希(あんなに冷えた足も、いまはなんともない)
志希(あーあ)
志希(あたし、こんなことやるタイプじゃないと思っていたんだけどにゃー)
志希(キミって不思議なヒトだ)
志希(……)
モゾ
志希(……いい匂い)
志希「おやすみ」
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
――翌週 事務所
P「……」
P「ふー……」
ガチャ
P「おはようございます」
ちひろ「あら、Pさん。おはようございます」
P「ちひろさん、えーと……」
ちひろ「先週末はどうされたんですか? 志希ちゃんと」
P「えっ、あの、志希……?」
ちひろ「ふふふ」ニコォ
P「……」ダラダラ
P「あの……志希からなにか……」
ちひろ「いいえ? でも、お昼過ぎてから戻られなかったですよね」
P「その件については……」
ちひろ「で、志希ちゃんとどこか行ったのかしら、なんて」
P「あの、なんで志希と断定して……」
ちひろ「あら。そう言うサインだったんじゃないんですか?」
P「サイン?」
ちひろ「ご自分の席」
P「え?」
ちひろ「志希ちゃんのコートが、Pさんの椅子に」
P「なっ……!」
P「……あいつ、わざと……」
ちひろ「わざと」
P「!」ビクッ
ちひろ「とまぁ、志希ちゃんと何かがあったのかな、なんて思って、先週のところは見逃したんですよ?」
P「えっと、まあ、そんなたいしたことでは……はは」
ちひろ「お仕事半日サボるのが?」ニッコリ
P「いえ、はい、すみませんでした」
ちひろ「何をしていたのかは、きっちり聞いておきましょうね」
P「はは……眼が笑ってらっしゃらない……」
ちひろ「当分、相当な量の白封筒を覚悟してくださいね」
P「お慈悲をー!」
志希「にゃは」
おわり
ありがとうございました。
志希ちゃんの母性に包まれたい人生でした。
いまのところ書きたい話としては、
奏のシリアス、菜々さんのシリアスとか
肇か周子か関ちゃんでイチャイチャものとか
LiPPSでエロコメ(全く進んでない)とかを考えています。
よければこちらもどうぞ。
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