モバP「悠貴のヘソチラが気になる」 (28)
―――
P「気になりますよね。ねぇちひろさん」
ちひろ「…………」
P「そうそう、おヘソもいいんですけど……」
ちひろ「…………」
P「ショートパンツから伸びる、スラリとした脚もいいですね。かなりグッと来ます」
ちひろ「…………」
P「うーん、健康的で活発で……それでいて純粋無垢なかわいさ。最高だと思いません?」
ちひろ「…………」
P「……あれ? ちひろさん、聞いてます?」
ちひろ「警察に連絡した方がいいですかね?」
P「あ、大丈夫です。もう職質は受けました」
ちひろ「……!?」
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P「いやー、あれは大変だったなぁ」
P「確かに傍から見れば、息を切らして女の子を追いかける変質者だったもんなー」
ちひろ「ど、どういうことです!? 悠貴ちゃんを追いかけ回したんですか!?」
P「やだなぁ。そんな変態みたいなことするわけないじゃないですか」
ちひろ「どの口が言うんですか……」
P「まぁまぁ聞いてください。実はですね、たまたま朝早く起きてしまった日がありまして」
P「寝直すのもあれだし、ちょっと散歩に出掛けたんです。そしたら……なんと!」
ちひろ「なんと?」
P「朝霧の向こうから天使が走ってくるではありませんか!」
ちひろ「……はぁ。なるほど」
P「天使ってのはもちろん悠貴のことですよ?」
ちひろ「いや分かりますから補足はいらないです」
P「聞けば、陸上部としての一環で早朝ランニングをしてるそうで」
ちひろ「あら……ふふ、真面目で一生懸命ですよね、悠貴ちゃん」
悠貴『アイドルの活動にも役立つし、一石二鳥ですよねっ、えへっ♪』
P「……って。んぬふふふへぇへ……かわいいなぁ」
ちひろ「待って待って待って、笑い方が怖いですやめてください」
P「んぬふふ……え? そんな変ですか?」
ちひろ「変じゃなくて恐ろしいんですよ!」
P「いやでも、悠貴のことを思うだけで……。んぬぅふぬふふへへぇへぇへぇ……!」ニタニタ
ちひろ「いやあああああ!!」
P「というわけで、せっかくだし俺も運動しようかと思ったわけです」
ちひろ「そ、それはいいことだと思いますよ……はは、あはは……」
P「? どうして引いてるんです? ……で、最初は悠貴についていくのも大変でしたよ。そのせいで警察の世話になりかけて……」
ちひろ「あぁ、そういうことだったんですか……」
ちひろ(良かった、変質者に成り下がったわけじゃなくて……!)
P「それが今では会話を楽しみながら走っていられるんですから、人体って不思議です!」
ちひろ「なるほど。継続は力なり、ですね」
P「それで、ノルマを終えたら公園で休憩するんです。2人でベンチに座りながら」
P「俺は自販機のコーヒー、悠貴は自作のミックスジュースを飲んで……。朝のゆったりとした時間、好きなんですよね」
ちひろ「あぁ……いいですねぇ、素敵です」
P「もちろん悠貴も好きなんですけど」
ちひろ「アウト」
P「え?」
ちひろ「アウト」
P「いや、好きって言ってもあれですよ? かわいらしいから好きってことです」
ちひろ「……まぁここは信じてあげますけど」
P「悠貴だって俺のこと好きだって言ってくれますしね」
ちひろ「…………それってどういう意味なんでしょう?」
P「さぁ? 流石にそこまで聞けませんでしたけど」
ちひろ「…………」
P「…………」
P「……んぬ、んぬ、んぬんふふんふ……♪」ニタニタ…
ちひろ「やめてください!!」
P「いやいや失敬、失敬。でもあの子はまだ13歳ですからね。いつか良い人を見つけるでしょう」
ちひろ「そうですね、プロデューサーさんよりマシな人は星の数では足りないほどいるでしょうしね」
P「……うーん、でもそしたら……うーん」
ちひろ「?」
P「…………」
P「……悠貴を失ったら俺は首を吊るしか」ズゥン…
ちひろ「待ってください待ってください落ち着いて」
P「俺は! 約束したんですよ!」バンッ
ちひろ「ひゃあ! だ、誰とですか!」
P「悠貴の父君とです! あの子の将来は必ず幸せなものにすると!」バンバン
ちひろ「いつの間に悠貴ちゃんのお父様と!?」
P「酒を酌み交わす、それが男という生き物ッ!」
ちひろ「だからいつの間に!?」
P「いやそれがですね、ちょっと前に早朝ランニングのあと――」
悠貴『あのっ、お家寄って行きませんかっ? Pさんのこと、両親に紹介したいんですっ』
P「って誘われて。ぬへぇへ」
ちひろ「悠貴ちゃーん! この男は危険ですよー!」
P「で、歓迎されまして。朝ご飯に母君の手料理まで頂きました」
ちひろ「あーあーあー……!」
P「悠貴ったら、俺が恥ずかしくなるくらいご両親の前で褒めちぎってくれて……」
P「嬉しかったなぁ。あんなふうに言われちゃうと泣けてきますよ」
ちひろ「……なんて言われたんです?」
P「…………」
P「んぬっふぇへへぇ、秘密ですよそんなのんふんふぬふぬふ♪」
ちひろ「そろそろぶっ飛ばしますよ?」
P「それもあって、気に入ってもらえたみたいで……一度飲みに行きましょうと」
ちひろ「約束しちゃったんですか……。まぁ一度くらいなら――」
P「もう何度も飲みに行きましたけどね」
ちひろ「はぁ!?」
P「マブダチですよ、マブダチ!」
ちひろ「だまらっしゃい!」
P「『悠貴のことはキミに任せたぞ!』って言われました!」
ちひろ「悠貴ちゃんのお父様ぁー! 早まらないでー!」
P「そういうわけで、任されたんです。なので悠貴はそんじょそこらの男には渡しませんよ!」
ちひろ「願わくばこの男にも渡りませんように……!」
P「…………。でも、悠貴ならきっと素敵な男性を連れてくるでしょう」
ちひろ「え……?」
P「いつか、俺の手から離れて行くんでしょうね。……つらいですが」
ちひろ「…………」
P「あんなに無邪気で、表情豊かで、愛嬌もあって……しっかり者なんだから」
P「遠くない未来に……ここから巣立って行くんだろうなぁ……。ぐすっ」
ちひろ「プロデューサーさん……」
ちひろ「誤魔化そうとしてもそうはいきませんよ?」
P「あ、バレました?」
ちひろ「なーにが『巣立って行くんだろうなぁ』ですか。騙されませんよ、手放す気なんてないくせに」
P「いや、でもあの子が望むなら仕方ないですよ。アイドル以外にも道はありますし」
ちひろ「アイドルになりたいと強く願っていたのは悠貴ちゃんじゃないですか……ありえませんって」
P「……ま、そうですけど。……あーダメだ、考え出すと本当につらく……」
ちひろ「や、やめましょう? こんな話……」
P「で、ですね。それよりこれからのプロデュース方針を考えた方が――」
がちゃっ
悠貴「おはようございますっ。乙倉悠貴、今日も張り切っていきますっ!」ピョコッ
ちひろ「あ……悠貴ちゃん! おはようございます♪」
悠貴「ちひろさんっ。おはようございますっ、えへへっ」ニパッ
P「お、おはよう悠貴。ランニングは明日だったよな、確か」
悠貴「Pさんもおはようございますっ♪ ――はい、今日は少し時間がなかったので……すみませんでしたっ」
P「いや、構わないよ。用事があったんだろ?」
悠貴「よ、用事というか、なんというかっ。……でも、Pさんと一緒に走れなかったのは残念でした……」シュン
P「ふふ、そう落ち込むなって。また明日な」ポフポフ
悠貴「えへへ、はいっ♪ ……あれっ?」
ちひろ「どうかしたの、悠貴ちゃん?」
悠貴「あ、いえ……Pさん、少し考えごとかなって……どうかしましたかっ?」
P「え……いや、なんでもないぞ?」
悠貴「そうですかっ? うーん……」
P「ああ。ありがとな、心配してくれて」
ちひろ(プロデューサーさん、さっきの話まだ引きずって……!)コソ
P(ひ、引きずっちゃいますけど別に顔には出してませんよっ。……たぶん)ヒソヒソ
悠貴「…………」ジーッ
P「ゆ、悠貴? 今日の仕事は――」
悠貴「Pさんっ!」
P「は、はい!」
悠貴「えっと、大丈夫ですっ。私……ずっとPさんといますからっ!」
P「……!」
悠貴「Pさんにかわいい、かわいいって言われると、なんだか胸の辺りがぽかぽかして……」
悠貴「よく分からないんですけど、でも、すごく心地よくてっ。一緒にいると、とってもあったかいんですっ」
P「……悠貴……」
悠貴「今日だって、朝のちょっとした時間でも……一緒にいられなくて寂しかったんですっ。だから――」
悠貴「私、Pさんが考えてるような……Pさんから離れるなんて、全然思ってもないですからっ。えへへっ♪」
P「…………」
悠貴「……あっ! ご、ごめんなさい勝手に色々言っちゃってっ! あの、気を悪くしてしまったら――」
P「……ありがとう、悠貴」
悠貴「え、は……はいっ?」
P「まさか考えてることがバレるなんてな……」ナデナデ
悠貴「……えへっ。毎日Pさんのお顔、いっぱい見てますからっ。ぜーんぶっ、お見通しですっ♪」
P「ずっと一緒にいてくれな……悠貴」
悠貴「はいっ。……えへへっ」ピトッ
P「あ、こら。くっつくなって、あはは」
ちひろ(かーやのーそとー……)
悠貴「――あっ。そうだ、忘れてましたっ」
P「ん、どうした?」
悠貴「今日、ランニングお休みした理由なんですけど……あの、これっ! お弁当ですっ」スッ
P「弁当? なんでまた……」
悠貴「こないだ言ってたじゃないですかっ、お昼はほとんどカップ麺で済ませてるってっ」
P「ああ、言ったっけな……覚えてないや」
悠貴「もうっ。ダメですよ、そんなのばかりじゃ体に良くないですっ」
P「う……す、すまん」
悠貴「で、ですから、今日……そのっ、お母さんと一緒に作ったんですっ」モジモジ…
悠貴「よ、良かったら……食べてくださいっ。いつもお世話になってるお礼ですっ」
P「……お」
P「おおお! ありがとう悠貴、絶対食うぞ! 全部食う!」
悠貴「あ……! はいっ、いっぱい食べてくださいねっ♪」
P「昼休みが待ちきれないな……!」
悠貴「えへへ……♪ しっかり栄養取れるように、野菜もたくさん入れましたっ」
P「へえ……野菜か。悠貴も、栄養取るためにちゃんと野菜食べないとな?」
悠貴「えっ、わ、私はミックスジュースでいいんですっ!」
P「ふーん? ……この前朝食にサラダが出たとき、あーんしてあげたら食べたのに」
悠貴「ふあっ!? あ、あああれはお母さんがそう仕向けたんじゃないですかっ! Pさんもノリノリだったし、もーっ!」ペシペシ
ちひろ「……なにしてんですかアンタ」ゴゴゴ…
P「ひいっ!? あ、いたんですかちひろさん」
ちひろ「あ゛?」
P「スミマセン」
悠貴「……で、でもっ」
ちひろ「どうしたの悠貴ちゃん。大丈夫よ、この変質者は必ず警察へ――」
悠貴「Pさんにあーんってしてもらえるなら……野菜、頑張って食べますっ。えへへ、ふふっ……♪」テレテレ
ちひろ「悠貴ちゃん!?」
P「おー、いつでもあーんしてあげるぞ悠貴! んぬふんふぬふんふ……!」
ちひろ「だからそれ気持ち悪いですってば!!」
悠貴「あ、またそんな笑い方してるっ。お父さんと同じですっ、あははっ♪」
ちひろ「ええ!?」
P「すっかり伝染っちゃったなぁ。お互い悠貴の話をしてるとつい……」
ちひろ「お父様も相当やばかった……!?」
悠貴「お父さん、いつも言ってますっ。Pさんともっと仲良くなれ、ってっ!」
P「うん、仲良くしような~?」ナデナデ
悠貴「はいっ♪ ずっとずっと仲良しでいてくださーいっ♪♪」スリスリ
P「悠貴はかわいいなぁ! ぬへ、ぬへぇへぇへぇ!」
ちひろ「ああもう……勝手にしてください……」
おわり
というお話だったのさ
悠貴ちゃんに膝枕してもらいたい人生だった……
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