ちひろ「イボとモバPのブルース」 (14)

・イボss
・キャラ崩壊注意

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ちひろ「Pさん? どうしたんですか。ぼーっとして」

モバP「いや、特に何もないんですがね」

ちひろ「そうですか? ならいいんですが」

モバP「あはは」

ちひろ「ヘラヘラしてないで、ほら仕事ですよ! 仕事!」

モバP「ひぇ~。事務員がキビシー!」

モバP (いつもの仕事風景だが、ちと悩みがある)

モバP (あいつが出現してしまったのだ)

モバP (ワキにイボが出来始めたのだ)

モバP「コレァ見事だなァ」

モバP (それも大きな、存在感のあるイボである)

モバP (早くレェザァかなんかで焼いてもらおうかと思っていたのですが、どうにも踏ん切りが付かずじまいで)

モバP (しまいには指で弾いたらチョロチョロと動き回るこいつが可愛いとすら思ってしまう始末でございました)

モバP「なんか愛着が湧いちゃうンだよなァ」

モバP (そんなこんなしているうちに、イボは自分の身体がスッカリ気に入ってしまったようで……)

モバP (コロコロと弄べば変幻自在に転げ回るイボに、思わず昔飼ってゐた犬のワンコロを思い出すようでした)

モバP (アアこりゃマイッタとばかりに自分が仕事に疲れてしまったのかと思ってしまいます)

モバP (しかしイボは、疲れた自分の身体を、大丈夫か、俺が癒してやる、と言わんばかりに可愛らしく転げ回るのです)

モバP「このイボは、何とも言えないナァ」

モバP (風呂場で弄っていたら、オヤ、と目を見張ってしまいました)

モバP (なんと、つがいを作ったと主張しているように、イボは2ツに増えていたのです)

モバP「コリャア大変だナァ」

モバP (風呂場で、ハァと、途方に暮れてしまいました)

モバP「お願いだから、大人しくしててくれヨォ」

モバP (イボは弄っていれば、どこかしらに移ってしまうと小耳に挟んだことがある……)

モバP (イボに願ったのは只一つであった)

モバP (これ以上子を成さないでくれよと)

モバP (強いて言うのなら、これ以上の繁殖などしてくれるな、ということでありました)

モバP (しかし、本音ではイボを弄ってしまう指は止まらず)

モバP (どうしてくれよう、と悩みのタネは増えていくばかりであったのでございます)

モバP「どうしたモンかねェ」

モバP (さて、今日も仕事であります)

モバP (時代の荒波に飲まれる芸能界、その中で泳ぎ続けるアイドルたちをどうするべきか)

モバP (考え、サポートし、羽ばたかせるのが仕事ではあるのですが)

モバP「なかなかどうして……」

ニュース「先日、つゐったーでの裏アカウントが流出したアイドル……さんが引退を発表し……」

モバP (このやうに無情を感じる時分もあるのでございます)

七海「こうなっちゃア、アイドル人生も終わりれすネェ」

モバP「浅利君じゃアないか」

七海「おはよォ御座います。Pさん」

モバP「アァ。お早う」

七海「芸能界は一歩踏み間違えたら、こうなっちゃいますから……海と同じくらい、厳しい世界れすヨォ」

モバP (そう語る浅利君の目は虎河豚よりも冷ややかでありました)

モバP (矢張り彼女も厳しい芸能界に染まりつつあるのでしょうか)

七海「フゥ、連日、暑いれすネェ」

モバP「トト、浅利君。そろそろレッスンの時間では?」

七海「分かってますヨォ。そのくらい」

モバP「そんな、はしたない格好でソファに寝っ転がっては」

七海「なんれすか。その目は」

モバP「なっ」

モバP (婦女子としてあるまじき、はだけさせた格好でソファに寝ていた浅利君はこちらに冷ややかな視線を投げました)

モバP (アア、と、冷たいものが背中にひた走るような心地がしました)

モバP (ほんの少しだけ抱いてしまった劣情を、浅利君は全て見抜いているように思えてしまったのです)

モバP「あ、浅利君」

七海「困りものれすネェ。ソファにも満足に過ごすこともできないなんて」

七海「フフ、Pさん、不思議れすネェ」

モバP (浅利君は少女にしては艶っぽい貌で呟いた)

七海「七海は芸能界という大海で、自由に泳ぐつもりれしたが」

七海「もう、既に、縁日ですくわれた金魚になってしまったようれすヨ」

モバP「浅利君、そんなことは決してないのだよ。君は自由に、自由に……」

七海「フフ。嘘れすよ。童の戯言だと思って聞き流してくらさい」

モバP「アア、待ってくれ、浅利君」

七海「では、行ってきますね。レッスン」

モバP「浅利君」

モバP (浅利君の顔を見て、昨夜のイボのつがいを見たときと同じく、目を見張ってしまつた)

モバP (彼女は、まるで少女の顔をしていないのだ)

モバP (その微笑みはとっくに大人の女のそれであった)

モバP (まさか、まさか、彼女を此処が、変えてしまったというのか)

モバP (ショックで暫く途方に暮れてしまった)

ちひろ「オヤ、何をうつ伏せになっているんです。Pさん」

モバP「お早うございます。ちひろさん」

ちひろ「エエ。いつにもまして暗いじゃありませんか。しっかりなさってくださいよ」

モバP「そりゃアすみません」

ちひろ「アナタがそんなんじゃアイドルのみんなも元気に活動できませんよ。アァ忙しい忙しい」

モバP (ちひろさんは発破をかけたつもりなんだろう)

モバP (しかし先刻のやりとりで朝から気が重くなってしまったことを知らない彼の緑の女の言葉が、どうにもイガイガと喉に残った小骨のように刺してくる)

モバP (アア、こんな時にワキのイボが主張してくるではありませんか)

モバP「ン」

モバP 「イボが増えちまッた」

モバP (アア、なんてことだろう!)

モバP (ハタと何気なく指の先を見ると、中指にイボができていた)

モバP (的の真ん中を射ってヤッタと言わんばかりに真ん中に居座っているイボの存在感と違和感は計り知れない)

モバP (同時に驚いたのは、その存在に気づきもしなかった自分の鈍さなのであるが……)

モバP 「コリャア気になって仕方ねェさね」

モバP (作業をするにもこいつと向き合わないとならないらしい)

モバP (俺ァイボの神サマに何かしでかしちまったってのかヨ)

モバP (溜め息を吐くと同時に、チリンチリンと風鈴が風になびいて鳴った)

モバP (彼の緑の女からは、チロリと鋭い視線が射抜いてくるようだ)

モバP (悩みのタネが又一つ……)

モバP (そんなこんなしているうちに、すっかり日も暮れてしまうのだった)

モバP (没頭していると、時間は早く過ぎ去るモンで、虚しいと感じることもあります)

ちひろ「お疲れさまでした。Pさん。先に上がりますネ」

モバP「ハイ。お疲れさまです」

モバP (こうして彼の緑の女と気まずい空気を交わさなくても済むのは、結構落ち着くモンです)

モバP (自分の仕事を片付けていると、カツカツ、だか、タンタン、だか、そんな音が事務所に響きました)

モバP (何となく、マァ誰か来たんだろうと察しました)

モバP (軽快なリズムを刻む足音に少し嫌な予感も感じつつ……)

志希「フニャフニャ……。オヤ! こんな時間までご苦労様だネェ」

モバP「一ノ瀬君」

志希「ヤァヤァ。元気かな? あたしは、とってもフツ~!」

モバP「ア、ハイ」

モバP (キャハキャハとハイになっているらしい一ノ瀬君に戦慄しつつ、作業を進める)

モバP (しかし、フンスフンスと事務所内をチェックして回る一ノ瀬君)

モバP (彼女は何かと察しが良く、よく気がつく人だ。頭の回転の速さに凡人はしばしばついていけないことがある)

志希「オヤ。手が止まっている」

モバP「ン」

モバP (そんな時に、人差し指の爪は中指のイボに気を取られてしまう)

モバP (いつのまにか一ノ瀬君は大きくグリグリとした瞳で俺の手先をじろじろと見下ろしていた)

モバP「気にしないでくれヨォ」

志希「イイヤ。コレは一体?」

モバP「君は知らなくていいことだ」

志希「なんて人! あたしに解明できていないことで知らなくていいことなんてない。そうでしょう」

モバP「や、やめてくれェ」

モバP (爛々と目を輝かせながらこちらに迫る一ノ瀬君はまさしく鼠を前にした猫のそれであった)

モバP (グルリと手を持ち上げ、どこから出したのか分からないピンセットを取り出すと、ソレをグリグリと攻撃した)

モバP「アァ、そいつを虐めないでくれ!」

志希「ホホ! 隕石が乗っかってますわ!」

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