女上司「ちょっとあなた! こっちに来なさい!」
部下A「は、はい……」
女上司「これはどういうこと? 私に相談しないで進めて、こんなにこじれさせちゃって……」
同僚「……お、始まったぞ」
男「……」
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女上司「分からないなら、ちゃんと聞けっていったでしょ!?」
女上司「あなたの独断なんか誰も求めてない! 勝手に動くなんて五年早いわ!」
部下A「申し訳ありません……!」
女上司「あなた、顧客のニーズを全然掴めてないじゃない! なんのためにいつも訪問してるの!」
部下B「ですが、聞いてもなかなか教えてくれなくて……」
女上司「バカ正直に尋ねたって教えてくれるわけないでしょ!? もっと工夫しなさい!」
部下C「この件は、競合他社も手強いですし……」
女上司「なに弱気なこといってるの! あなたには執念が足りないのよ!」
女上司「狙った獲物は逃さないって……執念がね!」
女上司「まぁったく! 指示待ちどころか、どいつもこいつも指示すらこなせてない!」
女上司「私の部下は揃いも揃って無能揃いだわ!」
同僚「こえ~……」
同僚「あの人、美人で有能だけど、あれじゃ絶対結婚はできないよな。旦那は地獄見るぜ」
同僚「って、こんなこといったら、今じゃセクハラで訴えられちまう」
男「……」
――
女上司「ふぅ、今日はこんなところかな」
男「あのー」
女上司「あら男君、なに?」
男「質問があるのですが」
男「上司からの飲みの誘いを断る方法を教えて下さい」
女上司「それ私に聞いちゃうんだ?」
男「はい」
女上司「うーん……そうねえ」
女上司「上司だって人の子、きっぱり断られたらそうそう無理に誘えるもんじゃないわ」
男「なるほど」
女上司「しかも“見たいテレビ番組がある”みたいなしょうもない理由で断られたら」
女上司「こいつは付き合い悪いキャラなんだなって認識されて、もう誘われなくなるんじゃない?」
男「ありがとうございます」
――
男「あのー」
女上司「どうしたの?」
男「上司から家に誘われた時の断り方を教えて下さい」
女上司「またこの手の質問? まぁいいけど……」
女上司「きっぱり断ること、という点では前と同じだけど……」
女上司「“門限があります”とでもいってやったら?」
男「しかし、それだと泊まっていけという話になるのでは?」
女上司「そこで、“ママに怒られちゃうんです”っていってやるのよ」
女上司「そしたら、上司もこいつマザコンかよ……ってドン引きよ」
男「よく分かりました、ありがとうございます」
――
男「聞きたいことがあるんですが」
女上司「話してみなさい」
男「上司からホテルに誘われた時は、どう断ればいいでしょうか?」
女上司「どういう状況なのよ、それ……まぁ、答えてあげるけど」
女上司「ホテルってことは、ようするにその上司はそういうことをしたいのよね?」
男「そうなりますね。肉体関係を築きたいのでしょう」
女上司「だったらこういってやりなさい」
女上司「あなたの体には欲情しないので無理です、って」
女上司「こんだけはっきりいわれたら、さすがにホテル行く気なんて失せるわよ」
男「参考にさせて頂きます」
――
男「あのー」
女上司「なにかしら?」
男「もし上司から求婚されたら、どのように断ればよろしいでしょうか?」
女上司「……」
女上司「上司ってことは、あなたより年上でしょ?」
男「年下のケースもありますが、一般的にはそうなりますね。私の想定も年上です」
女上司「だったら、こういってやることね」
女上司「年上に興味はない、ってね」
男「承知しました。お時間を取らせてすみませんでした」
女上司「……」
――
男「あのー」
女上司「またあなた?」
女上司「今度はなにを聞くつもり?」
男「いえ、今日は質問はしません」
女上司「あらそうなの。だったらなんの用?」
男「今日はなんの用事もないですし、僕はテレビも見ませんし、二人で飲みに行きましょう」
女上司「え……!」
男「その後は、僕の部屋に来て下さい。一人暮らしですし、両親からは完全に自立してます」
女上司「なに、なんなの?」
男「ホテルにも行きましょう。僕はあなたの体にいつも欲情してるんです」
女上司「……っ!」
男「そして、結婚しましょう。僕は年上が大好きなんです」
女上司「!!!」ドッキーン
女上司「はうぅ……!? なぜ、あなた、私もこうも的確に口説けるの……!?」
女上司「ドキドキが止まらないわ……!」
男「僕はあなたの指示を忠実に守ったまでです」
男「あなたをどう口説けばいいのか分からないから、あなたにちゃんと聞きましたし」
男「バカ正直に質問してもあなたが答えてくれるわけないので」
男「“もし僕が誘われたらどう断るべきか”という体で、あなたからあなたの考えを引き出し」
男「“その逆をやる”という戦略を取りました。工夫したわけです」
女上司「うぐぐっ、いつも私が教えてることだわ……」
男「加えて――」
男「僕は、狙った獲物は逃さない」
女上司「……!」ドキドッキーン
男「この執念は、誰にも負けません」
女上司「ううっ……」ドッキンキーン
男「結婚しましょう」
女上司「……はい」
女上司「やられたわね。私としたことが、みごとに落とされたわ」
男「あなたの指示が的確だったからですよ」
女上司「……優秀すぎる部下も困りものね」
~END~
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